1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/11/25(火) 02:20:32.92

立ったら書く

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1416849622



2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:21:26.37

淡(ずっと、わたしはイライラしていました)

淡(プロリーグ、U-21日本代表の選考合宿)

淡(年上のプロたちの中で、わたしはなかなか対戦に勝つことができませんでした)



3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:21:55.53

淡(この合宿、代表に選ばれるのはもちろんのこと、)

淡(練習試合のベンチ入りすら大変な毎日)

淡(選手たちはみんな、なんとか選ばれようと必死な日々を送っています)

淡(わたしもその中のひとり)



4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:22:30.44



監督「そこまで、全員集合!」

監督「今日の収支ランキングを発表する」


淡(わたしにはわかっていました)

淡(わたしはよくて中の上、日によってはそれ以下も)

淡(そして上位は)


監督「上から、荒川・宮永・鶴田」

監督「以下、全員分を貼りだしておくから、見ておくように」

監督「それでは、解散!」

全員「ありがとうございました!」





5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:23:41.46




淡(上位メンバーは、だいたい決まっていました)

淡(そしてわたしは)


淡「あ…れ…」


淡(その日は、下から数えたほうが早いところにいました)






6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:24:20.62




淡(ちなみに、2位の宮永というのは、)

淡(テルではなく、その妹)

淡(宮永咲…サキのことです)

淡(テルや辻垣内、福路がここに入っていないのは、単に年齢制限やリーグの違いだけど)

淡(サキはすでに、そこに混じっても負けないぐらいの、強い選手でした)





7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:24:54.66



淡(年上ならまだしも、同年齢が活躍するのを見るのは、もちろんいい気分がしません)

淡(しかも、やっぱりテルの妹)

淡(似た顔のうえ、)

淡(麻雀のとき以外は目立たず、あまり人と交わらず、一人で表情を変えずに本を読んでいる)

淡(それが王者の証のように思えて、くやしいのでした)





8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:25:30.74




……
………


淡(今日は、長い合宿で数少ない休養日)

淡(選手たちは、仲の良い同士で出かけたり、地元に電話したり)

淡(みんな、思い思いに過ごしています)

淡(荒川憩のように、地元の福祉施設でボランティアとかいう変わり者もいますが…)



淡(友達のいないわたしは、ネット麻雀か散歩ぐらいしかやることがありません)

淡(アイスでも食べようかと、近くの公園をうろうろしていると)


淡「あ…」


淡(サキがいました)




9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:26:00.65



咲「…」ペラッ




淡(ベンチに座って、いつものように一人で本を読んでいました)

淡(指先とまぶた以外はほとんど動かさず、吟味するようにページをめくっていきます)


淡(昨日のボロ負け具合を思い出して、わたしはムカムカしてきました)

淡(こっそり近づいて、ちょっと邪魔してやろうと思いました)

淡(まあ、ただの八つ当たりなのですが)





10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:26:58.81



淡「…」

咲「…」ペラッ

淡「…」

咲「…」ペラッ

淡「…」

淡「ねえ、サキ」

咲「わ、わっ!」アタフタ



淡(なんとも間抜けな慌て方でした)

淡(こんなのがテルの妹、同世代トップかと思うと、ため息をつきたくなりました)




11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:27:31.98



淡「サキ、また一人で本読んでんの」

咲「そ、そうだよ」

淡「楽しい?」

咲「うん、楽しいというか、おもしろいよ」


淡(膝の上から落とした本を拾いながら、顔をこっちに向けて言いました)

淡(イヤミのつもりだったのですが、少し微笑みながら答えてきたので、拍子抜けでした)





12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:28:14.85



淡「ふうん、何読んでるの」

咲「イギリスの、ちょっと古い恋愛小説だよ」

咲「淡ちゃんも、本読むの?」


淡(サキが、ベンチを空けるように少し横にずれました)


淡「ふん、読むわけないじゃん」

淡「いいね、余裕で」

咲「…」



淡(かっこ悪いと思いながらも、わたしは捨て台詞をはいてその場を離れました)

淡(わたしが立ち去る間、サキがこっちを見ていたのか、すぐ読書に戻ったのか)

淡(わたしにはわかりません)

淡(自分に嫌気がさし、手に持ったアイスを口に運びながら、振り向くこともできずに歩きました)





13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:28:56.63




……
………


淡(次の日も、その次の日も、わたしの対戦成績は低迷していました)

淡(上位メンツとの差は、ますます開くばかり)

淡(戦い方をいろいろ工夫しても、どうしてもうまくいきません)

淡(高校生のころは、こんなことなかったのに)


淡(さすがのわたしも、だいぶまいってしまいました)





14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:29:42.73



淡「…」

淡「ヒック…ヒック…」


淡(またある日の夜、食事と入浴を終え、他のみんなが自由時間を過ごしているころ)

淡(フロアのランドリールームで洗濯しながら、わたしはひとり泣いていました)

淡(さっきまで、自分の部屋にいた時はなんともなかったのに)

淡(洗濯という単純作業が一段落したとたん、急に気持ちが弱くなってしまったのでした)


淡「ヒック…ヒック…」


淡(涙というのは、流したことのない期間が長ければ長いほど)

淡(いったん流れ始めると止まりません)

淡(顔をぬぐう余裕もなく、次から次へと悲しい気持ちが吐き出されていきます)





15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:30:34.14



淡(そして、声を抑えるのが難しくなってきたそのとき)

淡(こっちに近づいてくる足音がしました)

コツ、コツ、コツ

淡「ヒッ……」

コツ、コツ、コツ

淡「……」



ガチャ

淡「……」

咲「あ、あ…淡ちゃん…?」





16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:31:10.76



淡「うう……ヒック…ヒック…」


淡(一番見られたくない相手に、見られたくない姿を見られてしまいました)

淡(わたしは終わりだ、と思いました)




咲「淡ちゃん…」

淡「…」ヒック…ヒック…

咲「淡ちゃん」

淡「…うっさい! あっち行け!」ヒック…ヒック…



淡(サキは、何も言わずに隣に座りました)





17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:31:53.36



咲「…」

淡「あっち行っちゃえ、ばぁか」ヒック…ヒック…

咲「…」

淡「サキには、関係ないでしょ…」ヒック…ヒック…


咲「…」

咲「淡ちゃん」ニコッ

淡「…?」

カキカキ

咲「これ、わたしの部屋番号」

淡「……え…?」

咲「よかったら、こんど来て」

咲「じゃあ、おやすみなさい」ヒョイ


ガチャ



淡「…」



淡「…ふんだ、行くもんか…」





18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:32:30.89




……
………


淡(その次の日も、練習は続きます)

淡(もちろん、サキと対戦することも)

淡(この前のこと、サキはどう思っているのかわかりませんが、)

淡(わたしは平静を装って打ちます)




咲「ツモ、嶺上開花 1600・3200です」





19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:33:08.66



淡(サキは、強いです)

淡(今日は一日中、サキの打ち方を観察していました)




咲「ツモ、嶺上開花、チンイツ、ドラドラ 4000・8000です」





20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:34:06.47



淡(毎度、呼吸をするように嶺上開花で和了るのにはあきれますが)

淡(強さの秘訣)



咲「ツモ、嶺上開花、ドラ3 8000」




淡(サキの麻雀は、わたしやテルや菫先輩のように破壊的ではありません)

淡(むしろ、すべてを包み、許すような)

淡(そんな、愛情深く、母性的な勝ち方をします)


淡(わたしは、認めたくありませんでした)





21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:35:05.04




……
………


淡(そして久々の休養日の午後)

淡(扉の前で、深呼吸をします)


淡「…」

淡「…」

淡「…」


淡(焦げ茶色のドアをノックしてみます)



トントン



「は、はーい?」

淡(わたしは答えません)

「あ、あの…」




22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:35:32.81



トントン




咲「…はい?」ガチャ

淡「…」





23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:36:08.65




淡(昼すぎだというのに、サキは起き抜けのまま、麻雀番組を見ていたようでした)

淡(わたしを部屋に入れると、あわてて身支度をしていました)


咲「ごめんね、ちょっと見始めたら止まらなくて」

咲「えへへ…」

淡「…」



淡(これが咲の部屋)

淡(ぬいぐるみのひとつもない、かわいげのない部屋でした)





24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:36:49.65



咲「お姉ちゃん、いまドイツに遠征中なんだって」

淡「…」

咲「チョコレート送ってくれたの」

淡(サキは、紅茶のポットをテーブルに置きながら、そう話し始めました)



咲「合宿も、あと半分だね」

咲「だいぶ、疲れたなあ」

淡「…」

咲「ねえ見て、この雑誌」

咲「お姉ちゃんと菫さん、かっこいいね」

淡「…」

咲「他にも、石戸さんに白水さん、清水谷さん、愛宕さん、加治木さん」

咲「みんなすてき」

淡「…」





25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:37:37.72



淡(雑誌には、かつて戦った他校の選手たちが掲載されていました)

淡(もちろん、みんながプロとして活動していることは、わたしも知っています)

淡(でも、改めて見ると、みんな---)




淡「…サキ…」

咲「なあに?」

淡「…」

淡「なんで来たのかとか、こないだのこととか、聞かないの?」

咲「…」

淡「休みの日に、いきなり押しかけて」

咲「…」

咲「ニコッ」





26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:38:33.72



咲「ねえ淡ちゃん」

淡「ん…」

咲「淡ちゃんは…」

淡「…」

咲「淡ちゃんは、麻雀、好き?」

淡「え…」




咲「麻雀牌の絵柄の意味ってね、一説によると」

咲「昔の中国で、役人さんが一生懸命お仕事して、」

咲「お金をかせいで幸せになる、っていう意味なんだって」


咲「でも、わたしには違うふうに見えるなあ」





27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:39:22.23



咲「そこは、とてもすてきな場所なの」

咲「広い海に囲まれて、東西南北から太陽の光をうけ」

咲「…空には鳥が舞い、河には魚が泳ぎ、木々や草花が豊かに育つ」

咲「そんな景色が、千年も万年も続いてゆく」


咲「わたしは、嶺の上に花を咲かせる役目」

咲「淡ちゃんは、夜空に星を輝かせ、人々を導く役目」

咲「…わたしたち、自分の手でその美しい自然を作る、ストーリーテラーなんだよ」





29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:39:59.78



咲「淡ちゃん、麻雀は好き?」

淡「……」

咲「麻雀って、楽しいよね」

咲「わたしは、麻雀が大好き」

淡「……」

淡「…サキ」

咲「淡ちゃん」ニコッ





30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:40:36.70



淡(それから、わたしはサキの前で大泣きしました)

淡(サキの細い体に抱きついて、)

淡(謝るように、甘えるように)

淡(何を言いたいかもわからず、ただひたすら言葉にならない思いをぶつけました)


淡(サキは、そんなわたしの体を両腕でずっと包んだまま、何も言いませんでした)

淡(ただずっと、わたしが泣き止むまで、)

淡(わたしの髪を、その指で、やさしくなで続けていました)

淡(サキが強い理由が、わかりました)





31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:41:29.72




……
………



淡(それからというもの、わたしは毎晩、練習後にサキの部屋を訪れました)

淡(あたたかいものを飲みながら)

淡(麻雀の話をしたり、たわいないおしゃべりをしたり、)

淡(悩みを聞いてもらったりしていました)

淡(翌日が休みのときは、朝まで一緒でした)


淡(まるで世を忍ぶ恋人同士のように)

淡(というか、実際にそうなっていったのですが)


淡(わたしは、生まれて初めて、人を愛するということを知りました)





32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:42:09.55




淡(人間、気の持ちようというのは大事なもので)

淡(そこから、わたしの対戦成績はどんどん上がっていきました)

淡(最近わかってきた、場を包み込むようなイメージ)

淡(そのイメージが、わたしを勝ちにつなげてくれるのでした)

淡(まだトップ3にはかなわないけど、あと一歩といったところで)

淡(監督も、周囲のメンバーも、とてもびっくりしていました)



淡(もちろん、サキとのことは、誰にも話していません)

淡(もっとも、日頃の行動を見ていれば、自然とわかってしまうものですが)

淡(わたしもサキも、それを表立って話題には出しませんでした)





33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:42:39.29




……
………


淡(とてもうれしかったことがあります)


淡(サキには、変わったくせがありました)

淡(大切なものを、心ゆくまで指先で確かめるくせです)

淡(まあ、プロの雀士ならよくあることなのかもしれませんが)


淡(以前、おそろいのコーヒーカップを買ったとき、)

淡(部屋に戻ってからずっと指でなぞっていて、気づきました)





34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:43:31.92



咲「ああ、これ…子供のころからのくせなんだ」

咲「もし何か、いやなことや辛いことがあっても」

咲「その感触を思い出せば、乗り越えられるんじゃないかって…あはは」



淡(夜、いっしょのベッドに入ると、サキは手をわたしの方に伸ばします)

淡(わたしの髪の毛、くちびる、首筋、鎖骨のあたり、背骨の凹凸と)

淡(そのやわらかい指先でなぞっていきます)


淡(わたしはくすぐったくてはずかしいのですが、)

淡(それよりも、愛されていることの喜びのほうが大きいのでした)


淡(わたしは、幸せでした)





35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:44:05.50




……
………


淡(ついに、合宿の最終日を迎えました)

淡(今日は、いよいよ代表メンバーが決まる日です)

淡(さすがにゆっくり眠れず、何時間も前に目が覚めました)




淡(夕方、全員が大会議室に集まり、神妙な面持ちで発表を待ちます)

淡(発表は上位から行われ、正選手は5人、補欠は3人)

淡(その中に入らなければ、ここで終わりです)

淡(みんな、冷たい表情をしていました)



淡(監督が、ゆっくりと入室し)

淡(書類を取り出して、読み上げます)

淡(わたしは目をつぶって、隣にいたサキの手をとりました)





36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:44:40.73







淡(結果は…)








監督「宮永咲 正選手」





監督「大星淡 正選手」




淡(わたしが…わたしが、呼ばれました…)







37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:45:20.20




咲「淡ちゃん」

咲「おめでとう」ニコッ

淡「サキ…」



淡(本来なら、トップ通過のサキを賞賛しなきゃいけないのに)

淡(わたしは、その言葉がとっさに出ませんでした)

淡(でもサキは、いつものように穏やかな笑みで、わたしを祝福してくれるのです)

淡(この時ばかりは、人目をはばからずに大泣きしてしまいました)

淡(その間、ずっと)

淡(サキの両腕がわたしを包み、指がわたしの髪を静かになぞっていました)





38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:45:56.35




……
………


淡(代表入りが決まってから2週間後)

淡(わたしたちは、いっしょに暮らすことを決めました)



咲「高校生のころ、淡ちゃんは違う世界の人だと思ってたよ」

咲「明るくて、勝ち気で、都会的で」

咲「わたしは地味な田舎者だから…あはは」



淡(サキは、たまにおどけてこんなことを言います)

淡(実際、わたしはサキの友人知人にはいないタイプでした)





39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:46:36.52



淡(わたしは、サキが大勢の人に愛されているのを知っています)

淡(姉のテルはもちろん、先日の雑誌で見た面々)

淡(別のプロリーグでトップを走る親友の原村や、竹井、池田、姉帯、末原、龍門渕)

淡(すでに牌を置いた天江や高鴨とも、いまだに親交があるといいます)

淡(もちろん、プロである以上、大勢のファンもいます)


淡(そんな人たちを差し置いて、わたしなんかがサキと一緒になってしまってよいものか)

淡(わたしは悩んだあげく、サキに相談しました)





40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:47:17.33



咲「えっと…」

咲「わたしは、みんな大好き。淡ちゃんも大好き」

咲「それじゃだめかな…」


淡(はにかむように、こう答えるのでした)


淡(実際、わたしたちのことを報告したとき、みんな賛成してくれました)

淡(もちろん、テルと原村はすごくびっくりしていたのですが)

淡(ふたりいっしょに代表戦をまわれるのは大きいと、共感してもらえたみたいでした)


淡(サキといっしょにいるとき、わたしは常に将来のことを考えていました)

淡(明るい未来だけが見えていました)





41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:47:56.98




……
………



淡(ある日、不思議なことが起こりました)

淡(雲が厚く、星のない夜でした)



淡(外出からの帰宅途中、家からそう遠くないところで、道に迷いました)

淡(最寄りの駅で電車を降りて、いつも通りの道を歩いているはずが)

淡(どこまで行っても、見慣れた景色にたどり着けません)

淡(右に曲がっても、左に曲がっても、通行人にすら会いません)





42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:48:50.89



淡(怖くなって、家にいたサキに電話をかけました)

淡(その瞬間、周囲の景色は、いつもの見慣れたものになっていたのでした)



淡(次の日も、その次の日も、同じことが起こりました)

淡(知っているはずの道に迷い、サキに電話するとまたいつもの景色に戻る)

淡(どれも同じように、雲の厚い、星のない夜でした)





43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:49:33.35




……
………



淡(その後、しばらくは天気がよく、不思議な体験はおさまったのですが)

淡(久々の曇りの日、予想通り、現象が起こりました)



淡(迷うことはわかっていたので、とっととサキに電話をかけようと思ったのですが)

淡(今回は珍しく、少し前を通行人が歩いていました)

淡(顔はよく見えませんでしたが、わたしと同じくらいの年かっこうの、女の子です)



淡(これまでのことも、もしかしたら解決するかもしれないと思い)

淡(わたしは、その人に声をかけました)





44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:50:35.61




淡「あの、すみません」

通行人「はい?」

淡「○○町に行きたいのですが、道に迷ってしまって」

通行人「ああ、○○町ですか。近くですね」


淡「はい、すみませんが、道順を教えてもらえませんか」

通行人「いいですよ、あそこの信号が見えますか」

淡「ああ、あそこの…」





45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:51:18.76




淡(その人の示すほうに視線をそらした瞬間)

























淡(わたしは、背中から刺されました)















46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:52:01.85




……
………


淡(そこからの展開は、早いものでした)

淡(わたしは涙を流すひまもなく、そのまま息を引き取りました)

淡(病院に運ばれたときは、すでに手遅れでした)



淡(犯人は、あの通行人)

淡(遺留品や足あとが証拠になり、すぐに逮捕されました)

淡(日本代表プレーヤーが事件にまきこまれたとあって、いろんな憶測が流れましたが)

淡(犯行動機は、いま思えば単純です)


淡(彼女は、わたしのファンだったのでした)






47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:52:44.58




淡(わたしは、サキを愛するあまり)

淡(わたし自身が他の人から愛されているということに、気づきませんでした)


淡(もちろん、ファンと呼べる人たちはいたし)

淡(手紙やプレゼントをもらったりしたことはあったのですが)

淡(それは、なにか別の世界のやりとりにしか感じませんでした)

淡(わたしは愛情を受け取る能力に乏しかったのです)



淡(あの、道に迷う現象がなぜ起こったのか)

淡(結局、まだわたしにはわかりません)

淡(あのとき、サキに電話しておけばよかった)

淡(サキの声を、聞きたかった)

淡(わたしは、そうして自分を責めました)





48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:53:23.81




淡(犯人が逮捕され、わたしの葬儀の段取りが固まってからも)

淡(サキは、ひどく取り乱していました)

淡(わたしが病院にいる間も、葬儀が始まってからも)

淡(サキはしきりにわたしを呼び、泣いていました)


淡(テルや原村、監督、その他大勢の支えのかいあって)

淡(ようやく落ち着きを取り戻し、外に出ることができたのは、わたしの納骨のときでした)





49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:54:03.09



淡(晴れた空の下、着々と儀式が進んでいきます)

淡(テルも、原村も、他のプロのみんなも泣いています)

淡(サキは、硬い表情のまま、じっと前を見ています)


淡(あちこちで、わたしの思い出話をしている人がいます)

淡(進行役の人が、次の段取りを指示し、みんながそちらを向きました)




51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:54:52.75





淡(その瞬間でした)




淡(サキが、出席者全員の目を盗んで)

淡(小石ほどの大きさの骨を、手の中におさめたのです)







52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:55:31.84




淡(もちろん、だれも気づいていません)

淡(サキは、表情ひとつ変えませんでした)




淡(儀式のあいだ、サキはずっとそれを手の中に握っていました)

淡(子供が草の露をすくうように)

淡(技術者がねじをしめるように)

淡(指先で、すみずみまで確かめていました)

淡(その愛おしむようなしぐさに、わたしは心の底から満足をおぼえたのでした)






53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:56:19.93




……
………


淡(その後、サキがどうなったのか、あまり情報はありません)

淡(風のうわさによると)

淡(以前にもまして、他人から孤立するようになったこと)

淡(日本代表を辞退したこと)

淡(破壊的なプレースタイルに変わったこと)

淡(そして、なにかをしようとしているらしいこと)





54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:57:22.86




淡(サキがなにを考えているのか、わたしにはすでにわかりません)

淡(でも、いいのです)



淡(わたしも、麻雀が大好きだよ)



カン



55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/11/25(火) 02:58:05.88




元スレ:【咲-Saki-】淡「わたしも、麻雀が大好きだよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1416849622/