1 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:36:51.64


健夜「…やっぱり似てますね、鷺森選手」

恒子「ふぁい?」

健夜「私が10年前に戦った、赤土選手の打ち方に似ています…」

恒子「おお、赤土選手といいますと、今阿知賀の監督をやっている…」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1417246601



2 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:38:04.68


咏「へえ…あの小鍛冶さんが、10年前に打っただけの相手の打ち方を覚えてる?」

えり「よほど印象が強かったんでしょうか?先鋒戦の時に言っていた跳満以上のダメージというのも赤土さんですよね?」

咏「麻雀の打ち方なんて、よっぽどのことがない限りそこまで違いは出ない。さっき牌譜見たけど、赤土さんなんてきれいな打ち筋で特徴なんて細かいもんさ。それが『似てる』ってだけで話にだすぐらい意識してる」

えり「10年前の事なのに根に持ちますね…」

咏「いやー、決勝の解説のために見てた準決勝だけど、思わぬ収穫かもねい」

えり「収穫、ですか?」

咏「…そ、収穫。ま、えりちゃんには関係ないよ、麻雀プロとしての収穫さね」

えり「プロとして、ということは、小鍛冶さんに挑むおつもりなんですか?」

咏「おや、鋭いね。流石アナウンサー。けど、深入りはしないでほしいかな、別にかまわんけど」

えり「…そういう時は大体深入りされると嫌なんですよね?」

咏「分かってきたじゃん。その調子なら、そのうちこの話も話す仲になるかもね」

えり「精進します。で、鷺森選手が和了りましたが、大将戦はどう見ます?」

咏「ん~…新道寺の鶴姫ちゃんの火力を考慮しても、順当に行けば白糸台は確定かねえ。ただ、阿知賀の子も竜華ちゃんもなんかありそうだね、知らんけど」



3 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:38:46.31


あたしは、小鍛冶健夜という存在と交わることのない道を歩いて来た。

生まれた年は三年違い、学生時代は一度も交わることはなかった。
あの人に挑みたくて、学年不問の大会も出られるものは全部出たけど、あの人はインターハイしか出なかった。

中学時代、インターハイで活躍するあの人を見るだけだった。
高校時代、あの人の作った記録に挑み続る私をよそに、あの人は前人未到の9冠を達成した。

そして、大学に進学して前人未到の大学記録を作った私が鳴り物入りでプロになった時、あの人は、ほとんど引退同然の暮らしを始めた。


あたしが在籍する横浜ロードスターズは一部リーグ。
あの人が在籍するのは万年二部の弱小チーム。
リーグ戦じゃ絶対当らない。

なら、個人タイトルは?
残念ながら、9冠を取った後、あの人は一度も個人戦に出ていない。

小鍛冶健夜と三尋木咏の公式の対戦成績は0勝0敗。

プライベートで相手してもらったことはあるけど、あの人は本気で打ってはくれなかった。

いつか追いつくべき目標としてきた選手は、闘う機会すらあたしに与えてくれないまま、引退しようとしている。

あたしは、あの人と戦う「未来(あす)」を信じて自分を磨いてきた。

だけど、あたしには、あの人と戦う『現在(いま)』は訪れなかった。



4 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:39:14.57


トシ「あんたには、期待してるんだよ」

晴絵「…すみません、でも、もう少しだけ…」

トシ「一人の天才が居るだけじゃ、麻雀界は発展しないのさ」

晴絵「…」

トシ「麻雀は、四人で打つものだ、そうだろう?」

晴絵「…ええ、教え子に教わるとは思いませんでしたが、実感しましたよ」

トシ「ああ、宮永照への倍満かい?頑張ったね、あの子たちも」

晴絵「ええ、自慢の教え子です」

トシ「けど、小鍛冶健夜は、宮永照をもってしても別格の打ち手、それに対してたった一人で跳満を喰らわせたあんたを、あたしは買ってるんだよ」

晴絵「…ですが…」

トシ「もう、あたしの時代じゃないんだよ、あんたらに『未来(あす)』を託したい」

晴絵「…」

トシ「世代のトップランナーをいつまでも一人にしてやるもんじゃないよ。あの子が待ってるのはあんたなんだから」

晴絵「…近いうちに、行きますよ。ですが、今は、まだ…」

トシ「ふふ、それが聞けて安心したよ。言っとくけど、あたしが生きてるうちに頼むよ」

晴絵「御冗談を、まだまだお元気でしょう?」

トシ「いやいや、人間、いつポックリ行くかわからないからねえ」



5 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:39:44.65


灼「…は、ハルちゃ…ごめ…」ヒック

晴絵「…お前たちは良くやったよ。感謝してる」ギュッ

憧「…はあ、現実は厳しいわねー」

穏乃「宮永さんも、大星さんも、本当に凄かった!またあの人たちと打ちたい!また来年、インターハイに来たい!」

玄「穏乃ちゃん…うん!そうだね、おねーちゃんはいなくなっちゃうけど、また来年があるんだよね!」

宥「うん、私は出られないけど、応援してるから。頑張ってね、玄ちゃん」

晴絵「来年は宮永照も居ないし、玄自身も強くなるからな。ちゃんとエースの仕事をしてくれよ」

玄「うっ…た、確かに二回戦からずっとボロボロだったけど…今言わなくても」グサッ

憧「玄が原点で返って来てれば勝ってるんだよねー?」

玄「憧ちゃんまで…酷いのです!」

灼「うわああああん!はるちゃああああん!!」

晴絵「…ほら、泣くな。県民最高成績のベスト4だ、胸張っていいんだぞ」ナデナデ



6 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:40:15.71


決勝戦の前日、下見に来ていたあの人と会った。

あの人のことが気になって、実業団リーグの牌譜も取り寄せて、ずっとあの人を追いかけていた。
牌譜でみるあの人は…私にとって忘れられない打ち手は、どこにでもいる、強いだけの打ち手になっていた。

あの時のような、私の予想を上回る打牌は全くなくて。
あの頃の打ち筋にすら遠く及ばない、継ぎはぎであの頃の輝く打ち筋を繕ったような打ち筋で。
私は、私が麻雀を楽しいと思える唯一の相手を、世界を、失ったことを認識したくなくて、目を覆った。


9冠を取ってしまって、国内に敵がいないことを確認した。
銀メダルを取って、世界でも敵がいないことを確認した。

銀で終わった理由は、途中からやる気をなくしたからだ。

東風五回を打って決める形式の試合。
最初と二回戦で全員飛ばしてのトップを取って、『この人たちは私の敵じゃない』と思った時点で、世界のどこにも敵がいないと確信した時点で、私にとっての麻雀は色を失った。

教えてほしい、私はどうすればいいのか。
私の麻雀はなんなのか。
私の麻雀の行く先に何があるのか?

会場の下見に来ていたあの人は、あの頃のあの人の目をしていたように思う。

あの人が戻って来るなら…わたしの予想を上回って見せたあの人が戻って来るなら、何かが分かるだろうか?



7 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:41:01.93


灼「…来年も、顧問を続ける?」

穏乃「ほ、本当ですか!?やったーーーー!!!」

憧「…」

玄「えへへ、これで来年も行けそうなのです」

晴絵「ああ、というわけで、今から一年間みっちり…」

灼「ふ…」

穏乃「ふ?」


灼「ふざけないで!!!!!!!!」ビリビリ


穏乃「うわっ!?」キーン

憧「…ま、灼はそうだよね」

玄「あ、灼ちゃん…」キーン

晴絵「あ、灼、何を怒ってるんだ?」


灼「そんなハルちゃんなんて見たくない!インターハイには、置いて来たものを取りに行ったんじゃないの!?早くプロになってよ!私は、強いハルちゃんが見たい!!!」


穏乃「…あっ…」

憧「あたしたちの顧問を続けるってことは、プロ行きが遅れるってことだからね。実業団での実績も十分だし、あたしたちをインターハイに導いたことも評価されてるんでしょ?」

玄「そっか…インターハイの時は色々言っちゃったけど、先生にとってはプロになる方が良いもんね…」

穏乃「そっか…私、自分の事しか考えてなかった…赤土先生だって、プロに行かないといけない人なのに…」

灼「そうだよ!はるちゃんは早くプロになって、活躍しないとダメなんだから!!!!」


晴絵「…そうだな、私は、まだ逃げてるのかもしれない。あの、10年前の記憶から」

灼「はるちゃん…」



8 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:42:27.96


健夜「ツモ、6000オール」

晴絵(くそっ…前半は遊んでたのか?このままじゃ、下手すると先鋒で試合が終わってしまう…)

健夜(とか思ってるんだろうなあ…で、手役無視の早和了りを目指すんだよね。知ってる知ってる。無駄だよそれ)

ーー

健夜「ツモ、2100オール」

晴絵(…くそっ、点棒が削られるばかりでなにもできない…化け物か…)

晴絵(…一か八か、とにかく、こいつの支配を抜け出すために足掻いてみよう)

晴絵(後ろの連中に、託すってのも悪くない)

ーー

健夜「ろ、ロン!6400!」

晴絵(くそっ、ダメか…)

健夜(ツモる予定だったけど、危なかったからつい出和了りしちゃった…このひと、凄い!)キラキラ

ーー

健夜「ロン!2000は3800!」

晴絵(そんな…ダメなのか…何をやっても…)

健夜(危なかった!今のも見逃したら向こうが和了ってたよ!すごいすごい、全然予想しない手ばかりだよ!麻雀って、こんなに楽しかったんだ!)

ーー

晴絵(…理屈や裏付けのある打ち方じゃ、こいつの支配は抜け出せない…なら!)

健夜(今度は、何をしてくれるのかな?)



9 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:43:17.21


晴絵「カン」

健夜(槓!?私がリーチしてるのに!?)

晴絵「…リーチ」

はやり(…勝算があるのかな?それとも、悪あがき?ま、どっちにしてもとりあえず一発消しておこうかな)

はやり「…チー」

健夜(リーチするなら槓する前の方が待ちが良いはずなのに…あ、だめだ、ズラされたから流石に和了ってないや…)タン

晴絵「ロン」

健夜(槓で符が上がってるとはいえ、リーチ一発だけでしょ…70符2翻は4500。まあ、私から直撃を取っただけでも十分すご…)

晴絵「…リーチ一発…槓裏4枚乗って12000、七本場で14100点だな」

健夜「…え?」

健夜(私が、跳満に、振り込んだ?)

晴絵(…ようやく、終わったか…この悪魔の親番が…)

晴絵(普段の私なら、あの場面で槓なんかしない。槓して聴牌が継続したのも運だし、鳴きでズレたのも、槓裏が乗ったのも運。全部運任せの滅茶苦茶な打ち方だったけど…これでなんとか繋げるかな、あいつらに)


健夜「」ゴゴゴゴゴゴ


晴絵「ひっ!?」ゾワワ

健夜「…最高だよ、赤土さん。…もっと、私を楽しませてほしいな」

晴絵(ま、まさか…今の跳満の腹いせに、私を狙う気なのか?)

ーー

健夜「ロン、24000」

ーー

健夜「ロン、16000」

ーー

健夜「ふふ、最後は随分逃げ回ってくれたみたいだけど、ようやく捕まえたよ…ロン。32000」

晴絵「あ、ああ…そんな…」カタカタ



10 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:44:33.13


晴絵「14100点取って、代わりに悪魔に目をつけられて72000の大失点…あれはトラウマだな」

灼「で、でも!あの時のはるちゃんは日本でただ一人、三年間でたった一人だけ、小鍛冶健夜から跳満以上を直撃したんだよ!」

晴絵「10年前の話だ。あの頃より、小鍛冶健夜は強くなってる…どんなに希望的観測を抱いても、10万点持ちでトバずに半荘一回終われば上出来ってところだ」

灼「そんな…」

晴絵「ま、でも、あいつは引退同然で二部リーグに隠居してるし、お前たちが背中を押してくれるなら、行ってみてもいいかもね。プロの世界に、さ」

灼「は、はるちゃん!!!」

晴絵「ま、とにかく、今年一年はあんたらの面倒を見るよ。あたしが安心してプロに行けるように、強くなってくれ」

穏乃「はいっ!」



11 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:45:07.70


バタン

咏「こんにちわー」

晴絵「だれか知らないがノックぐらいし…三尋木プロ!?」

咏「おや、あたしをご存じで」フリフリ

憧「いやいや、全日本の先鋒を知らない人は居ないでしょ」

咏「嬉しいことを言ってくれるねえ。そんな憧ちゃんにはご褒美だ」ピラッ

穏乃「ご褒美?」

咏「穏乃ちゃんにもあるぜー、はいこれ穏乃ちゃんの分」ピラッ

玄「何ですか、この紙…?」

宥「私のもあるんですか。え?これって…」

憧「U-18代表選考会の案内?え?なにこれ?」

咏「いやー、今年は無名の新人が豊作でねー。上の連中が強化合宿に呼ぶ人間すら絞れねーでやんの」

穏乃「えっと…それがどういう関係が…?」

咏「で、絞れないなら打たせて決めればって言ったら、『それだ!!』ってことで、見込みのある連中で打たせて決めることになったわけよ。それはその案内」

灼「てことは、つまり…」


咏「あんたら五人、今年のU-18代表候補に選ばれたってことさ」


晴絵「やったじゃないか!すごいことだぞこれは!」

憧「ちなみに、候補は何人ぐらいいるんですか?」

咏「照ちゃんとか憩ちゃん、衣ちゃんみたいな最初から内定してた連中は別枠で、候補段階だった人と今回のインハイで浮上した人だから、選考会に呼ばれたのは30人ぐらいかな」

玄「ということは、私たち全員、高校生のトップ30に名を連ねたわけだね!」

宥「凄いね玄ちゃん!流石阿知賀のエースだね!やっぱり見てる人は玄ちゃんを見てくれてたんだよ!」

憧「いや、宥姉も入ってるからね?てゆうか、あたしも呼ばれてるの?」

咏「上の連中は特殊な打ち手を重視してるから本当なら呼ばれないところだったけど、阿知賀で一人だけ呼ばれないのもかわいそうだし、セーラちゃんも呼んでるけど憧ちゃんはあの子といい勝負してたからってことで、あたしがねじ込んだ。ちなみに、あんたらのお友達も呼んであるよ」

穏乃「和も来るんですか!?」

咏「そ、代表を賭けた真剣勝負、思う存分打つがいいさ」

穏乃「うおおおーーーー!!燃えて来たーーー!!」

灼「…」

晴絵「…これで、お前らが日本代表にでもなってくれたら安心してプロになれるな。頑張れよ」

灼「…うん!」



12 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:45:34.54


咏「おや?今、プロになるとか聞こえたねい」

晴絵「ええ、今年、プロテストを受けようかと思っています」

咏「ほうほう…しかし、テストなんか受けなくても、向こうから声がかかることもあるぜー?」

晴絵「そうならいいんですけどね。あいにく、唯一頂いたお話も蹴ってしまいまして…」

咏「ほうほう…それなら、こんなのどうかね?」ピラッ

晴絵「アマプロ戦…?」

咏「中堅どころのプロも参加するから、成績次第ではってことでスカウトも注目してる。出てみたらどうだい?」

晴絵「…」

咏「プロテストにかまけて指導がおろそかになるぐらいだったら、実戦一発勝負でスカウトをうならせてさっさとプロ入り決めちまう方が教え子にとってもいいんじゃないかね?知らんけど」

灼「私、はるちゃんが勝つところ見たい!」

咏「なんなら、教え子たちも参加させても良いぜ?」

晴絵「…三尋木プロ、どっちがついでの用件ですか?」

咏「いやいや、変な勘繰りは困るね。もちろん代表選考のお知らせを渡すのがメインだよ、アマプロ戦のお知らせもこの子ら向けに持ってきたのさ。知ってるかい?それ、前回の優勝者、龍門淵の衣ちゃんだぜ」

晴絵「そうですか…いや、タイミングが良すぎると思って変な疑いを持ってしまいました。熊倉さんあたりが発破でもかけてきてるのかと…」

咏「あはははは、まあ、そうだったらあたしにゃ逆らえねーけど。安心しなよ、あたしの独断だ」

晴絵「そうですか。ありがとうございます、参加、前向きに検討します」

咏「それは良かった。じゃ、そろそろ帰るよ。またねー」フリフリ



13 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:46:10.76


咏「ま、あたしの独断ではあるけど、何も仕組んでないとは言ってないからねー。悪いけど、餌にさせてもらうよ」



14 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:46:40.39


咏「はろー、小鍛冶さん」

健夜「あ、咏ちゃん。どうしたの?」

咏「いやいや、面白い話を聞いてねー。小鍛冶さんにも教えておこうかと」

健夜「面白い話?」

咏「いやね、今年もアマプロ戦が荒れそうなんだよ。なんでも、実業団で活躍した有名どころが、プロへのアピールのために出て来るってさ」

健夜「…実業団」

咏「でも、去年の衣ちゃんに続いて二回連続でアマに優勝されちゃ、プロの面目丸つぶれなわけよ、てなわけで、あたしが出ようかと」

健夜「それだと、荒れるって言っても、咏ちゃんが荒らしてるんじゃ…」

咏「そうなるねい。いやいや、本来ならあたしが出なくてもそこらのタイトルホルダーぐらいで十分なんだけどさ、昔小鍛冶さんに跳満喰らわせたなんて話があるから、念には念を入れてね」

健夜「え?実業団出身で、私に跳満を喰らわせたって、まさか…」

咏「売名目的で大会荒らすようなセミプロには、二度と牌を持てないぐらいのトラウマ刻んでやろうと思ってるんだよね。プロなめんなってことで」

健夜「あ、あの、そこまでしなくても…」

咏「いーや、潰すね、絶対潰す!あたしの全力を持って潰す!てなわけで、余裕があったら潰すの手伝ってよ。組み合わせ次第じゃ当たんないかもしれないから。じゃーねー!」

健夜(赤土さん…立ち直ったみたいだったのに…咏ちゃんが本気じゃ、また潰されちゃう…)

健夜(そんなこと、させない!)ゴゴゴゴ


咏(うっひょー、こえー…このプレッシャー、マジっすかー…やっと、小鍛冶健夜と打てるんだね)

?(立ち聞きしてたら凄く面白そうな話をきいちゃったんだゾ☆健夜ちゃんと久々にガチで打てそうっ☆)



15 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:47:31.38


晴絵「お前たち、本当に参加しないのか?」

玄「はい、先生の雄姿を拝見させていただくのです!」

憧「教え子にカッコいいとこ見せてよね、ハルエ」

穏乃「打つのに使う分のパワーを応援に回しますから!」

宥「えっと…寒いけど、頑張って応援します」

灼「はるちゃん、ガンバ」

晴絵「ああ、任せとけ!プロって言っても中堅どころぐらいなら私の方が格上だ、軽く優勝してきてや…え?」


【参加者一覧】

プロ

小鍛冶健夜
三尋木咏
瑞原はやり
藤田靖子

一般

赤土晴絵
〇○○○
×××
△△△△△

学生

――――
―――
―――
――――
―――――
――――
――――

……


晴絵「何だこれえええええええーーーーー!!!??」



16 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:48:23.51


ナンダコレエエエエエエエエーーーーー


咏「おやおや、この声、ようやく主役のご到着みたいだね」

はやり「赤土さんと会うのは久しぶりなんだゾ☆」

靖子「…いや、これ何のタイトルの決勝ですか?私の場違い感が凄いんですけど」

健夜「咏ちゃんは知ってたからいいとして、なんではやりちゃんまで居るの!?」

はやり「はやりは、ガチの健夜ちゃんと打てる機会を逃すようなマヌケじゃないよっ☆」

健夜「い、いや、流石にアマプロ戦で本気は出さないよ」

はやり「健夜ちゃんが赤土さん相手に手加減するはずないし、赤土さんの居る卓で確実に健夜ちゃんと打つために運営を脅して最後にトップ四人での決勝卓を設けさせたよっ☆」

咏「はやりさんグッジョブ!あたしが言ってもルールだからの一点張りだったんだよね」

靖子(絶対に入りたくないぞこんな卓…流して打とう、そうしよう)



17 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:49:07.49


健夜「ツモ、8000、16000」

参加者ABC「は?」

ガラガラ

健夜「ツモ、16000オール。Cさんのトビで終了ですね」


咏「うっわー、あの卓災難だねえ…こっちはまだ東一局だってのに」

参加者D「全くです…」

咏「あ、それロン」

参加者D「あいたたた…って、え?その手…」

咏「32000。終了だね」

参加者D「」チーン

咏「悪いね、雑魚に使う時間が勿体ないんだよ。今日は、代表の時とは比べもんにならないぐらいマジなんだ」


はやり「うわー、咏ちゃんも健夜ちゃんも大人げないなー☆」

参加者E「な、生はやりんだ…生きてて良かった…」

はやり「ま、はやりも大人げないんだけどねっ☆」

参加者E「へ?」

はやり「ロン☆親の三倍満は36000☆」




18 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:50:08.27


晴絵「やりにくい…すっげーやりにくい…」


咏「いやあ、これはなかなかのもんだねい。マジであたしら出てなかったら二年連続アマが優勝ってことになってたよ」

はやり「へー☆そこでそれ切るんだ、面白いね☆」

健夜「あの時の変幻自在の打ち筋を自分の物にしているんだね。痛みも再生の糧にする、流石赤土さん…」

穏乃「ツモれ~…ツモれ~…」

憧「シズ、それ聴牌してるのバレるから。まあ、ハルエはどうせツモるけど」

玄「…おねーちゃん、このメンバー怖いのです…近寄りがたいのです」

宥「えへへ、人がいっぱいであったかーい」ルンルン

灼「小鍛冶健夜…はるちゃんをマークしてる?」


晴絵「ツモっ!3000、6000!ちょっと次の局行くの待ってくれるか?」

参加者FGH「「「はい、後ろの人どうにかしてください」」」

晴絵「ああ、というか、私が一番困ってる」



晴絵「さて、穏乃達はまだいい、静かに応援してほしいが、まあ、とりあえず現状、問題はない」

憧「うん、変なことしたら止めるから安心して」


晴絵「分かってるよなそこのプロ三人!?お前らだよお前ら!自分の試合どうしたあんたら!?」

健夜「…えっと…ごめんなさい」

はやり「赤土さんの試合を見るために速攻で終わらせた☆」

咏「観戦はオーケーだろー?いーじゃん、減るもんじゃないし」


晴絵「一回戦の開始は同時だっただろ!?まだ東場も終わってないんだけど!?」

健夜「正直、親番が一局あれば余裕だから…」

咏「あたしは今日に合わせて全力で調整してるんだ、雑魚じゃ一局ももたねーって」

はやり「咏ちゃんに同じ☆私たちはトッププロなんだよ☆」

晴絵「もうヤダこいつら…」



19 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:50:38.49


なんやかんやで決勝卓

起家 三尋木咏
南家 赤土晴絵
西家 瑞原はやり
北家 小鍛冶健夜



20 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:52:23.15


22336p234s234m北北 ツモ:4p

晴絵(聴牌…だけど、この6筒、嫌な感じがする)


健夜手牌
5556777p東東東白白白


晴絵(…相手は小鍛冶さんだ、ヌルイ打牌が一打でもあったらそこで終わる。まっすぐ行っても支配の網に捕われるだけなのは高校時代に経験済みだ。ここは一旦回ろう)

打:2筒


咏(ほー、よく避けたもんだね。見えてる限り、相当勘のいい奴じゃないと役満に刺さって死ぬとこだったんだけど)

はやり(てゆうか、健夜ちゃんってば東一局から殺す気満々だねっ☆楽しくて仕方ないゾ☆とりあえず、ほっとくとこの巡目で健夜ちゃんがツモるから…)

はやり手牌

1123p6678s4568m北

はやり「チー」

チー:1(2)3p 打:北

晴絵「ポン!」

23346p234s234m ポン:北北北

打:3p

はやり(赤土さんを聴牌させるのはサービスだよ☆)

はやり「チー」

12p6678s4568m 1(2)3p

チー:12(3) 打:8m

健夜(ズラされた…ま、はやりちゃんならそうするか。けど、この待ちならいずれツモる…)

ツモ切り:5s

咏(で、小鍛冶さんがツモるはずだった牌は…まあ6筒だよねー…つーか、あたしには次巡で小鍛冶さんが5筒ツモるのが見えてるわけで…ここはこれが最善なんだよねい)

ツモ切り:6p

健夜「ろ…」

晴絵「ロン、1000点」



21 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:53:19.59


晴絵(…サポートしてくれた…ってわけじゃなさそうだな)

咏「小鍛冶さん、なんか発声してたよね?一応、手え見せてくれるかね?発声が先だったから、この大会のルールだと誤ロンが優先するかもしんねーし」

健夜「…咏ちゃん、私と同じで大体見えてるんでしょ?一応空けるけどさ」パタ


晴絵(―――これっ、ツモ巡がズレてなかったら…)ゾワッ


咏「あー、誤ロンじゃなかったかー、残念。はい千点」

咏(目の前の魔物のヤバさを理解してもらわないとね。十分承知のつもりかもしれねーけど、多分あんたが知ってる以上だよ、このひとは)

晴絵(参ったな…高校時代から、差が縮むどころか突き放されたんじゃないかこれ?)

はやり(うわわっ☆高め役満、最低跳満の五面張とか人外過ぎるよ健夜ちゃん☆それでこそ倒し甲斐があるってもんだね☆)



22 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:54:18.41


憧「…いや、あんなの振り込むでしょフツー。ハルエのやつしれっと躱してるけど」

玄「私は振り込んでますのだ」エッヘン

宥「威張ることじゃないよ玄ちゃん…私は対面が怖いから2筒を切ると思う」

穏乃「アレに6筒は切れませんね。切ろうと思った瞬間、モニター越しでも寒気がしました」

灼「穏乃と宥さんも大概だとおも…」

憧「まあ、宥姉は阿知賀の真エースだし、シズは大星に勝った奴だから。普通に人外にカウントしていいよ」

宥「そ、そんなことないよぉ…」

玄「いや、あれで6筒以外を切れるのは、よほどのド素人じゃなければ人外なのです。私は1ー4筒が枯れてるかドラが6筒じゃない限り絶対6筒切りなのです」

?「そうか?あれに6筒を切ろうなどと、衣は夢にも思わんが」

?「衣ちゃんも人外カテゴリだから…私もそっち側みたいだけど」

?「私も、大会ならあれは6筒を残すわね」

?「ありえません、あの手は6筒切りの一手です。振り込みを避けたのは結果論でしかありません」

?「のどちゃん、この人外どもに何を言っても無駄だじぇ」

?「とりあえず挨拶せんかいおんしら」

?「お前らなんで…って、地元な上に衣に至っては前回優勝者だったな」カツドンウマー

?「あ、居たのかゴミプロ雀士」

?「衣ちゃん、かつ丼さんだって頑張ってるんだよ?」

?「靖子、お疲れ様。五位入賞おめでとう」

?「久、お前だけだよ、あの人達ホントに私のこと眼中にないし、取材の記者も化け物三人と赤土さんにかかりっきりで私なんかガン無視だし…」グスッ



23 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:54:54.50


健夜(楽しい…予想と違う手順で私の手を躱して、すり抜けてくる!やっぱり、赤土さんと打つのは楽しい!)

健夜(強さだけなら、咏ちゃんやはやりちゃんの方が強い。けど、赤土さんだけは、私の予想と違う牌を切ってくる!違う手順で攻めてくる!赤土さんと打つ麻雀は、先が見えない)

健夜(赤土さんと打つ麻雀が、私にとって唯一、麻雀と呼べるものなんだ)

健夜(さあ、赤土さん、私を楽しませて!!!)



24 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:55:52.16


晴絵(あーあ、楽しそうにしちゃってまあ…9冠がかかったタイトル戦すらつまんなそうに打ってた奴が賞金もないアマプロ戦でこの笑顔かい?)

健夜「」キラキラ

咏(危ないけど、なんか通る気がするんだよねー)

打:1筒

晴絵(お、一筒通るのか…この巡目のうちに合わせ打ち…)

打:1筒

健夜「ロン!12000!」


咏「…は?」

晴絵「おいおい、チョンボだぞ…」

はやり「何やってんの、健夜ちゃん?」


健夜「え?あ、ほんとだ、ごめんね咏ちゃん、見てなかったよ」


咏「…へえ、あたしを、見てなかったって?」ゴゴゴゴゴ

晴絵(うおっ!?)ゾワワ

はやり(化け物が増えたっていうか…それ、良く見たらあたしの4筒も見逃されてるじゃん。危なそうなのに当らない気がしたからおかしいとは思ったけど…)

はやり「あんまり舐めてるとぶっ殺すぞ根暗チビ…」ゴゴゴゴゴ

晴絵(こっちもかよ!?化け物三人とか冗談じゃないぞ!)

健夜「いきがるのはいいけどさ、私の『麻雀』の邪魔だけはしないでね」ゴゴゴゴゴ

咏「とりあえず2000、4000払ってくんねーかな?」

健夜「うん、まあ、ちょうどいいハンデだよね。どうぞ」チャラ

はやり「泣くまで毟ってやるよ」ゴゴゴ

咏「それは無理じゃないですかね?あたしがトバすんで」ゴゴゴ

晴絵(化け物の檻じゃないか…理不尽すぎる、なんだこの仕打ち…)



25 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:56:30.79


はやり(あたしらの世代、理沙ちゃんとあたしも合わせて黄金世代とか言われたけどさ、多分、今、麻雀界で一番空虚な世代なんだよ)

はやり(なんでか分かるよね?あんたがいないからだよ、小鍛冶健夜。あんたを目指して、あんたを倒すためにあたしらはここまで来たのに、肝心のあんたが腑抜けてるからだよ!)

はやり(そりゃさ、あんたを本気にさせられないあたしたちの弱さも問題があるけど…あんたのせいで、世界のどこに行って誰を倒しても、あたし達は頂点に立てないんだよ?)

はやり(あたしたちに「現在(いま)」はない。頂点が失われたから、目指すべき場所がないから、戦う意味を無くしたから。過去の戦いの惰性で打ち続けるだけの、もっとも空虚な世代)

はやり(全部あんたのせいなんだから、責任とってあたしの全力を受け止めるぐらいしなさいよ!この根暗チビ!)

はやり(無視なんか絶対にさせない!あんたが赤土さんしか見ないって言うなら…こっちにだってやり方があるんだから!)


はやり(咏ちゃん?分かってるよね?)ゴゴゴ

咏(…できれば自分の手でぶん殴ってこっち向かせたいんですけどねい…ちょっと東場だけ好きにやらせて下さい)ゴゴゴ

はやり(ま、あんたは本当に初対局だからね。それぐらいさせてあげようか)ゴゴゴ



26 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:57:38.85


咏「リーチ」

打:5p

晴絵(うおっ!?なんつープレッシャーだよおい!)

晴絵手牌
4556p234s111678m

晴絵(一発消さなきゃやられそうだが…この手恰好で鳴くわけにもいかない…というか、小鍛冶さんがどうにかするはずだ)

晴絵(もし、三尋木咏が小鍛冶健夜の支配を正面から突き破れるなら、それを戦術に組み込む。とりあえず、現物の一萬でオリて様子見)

ツモ:8p 打:1m


はやり(無茶苦茶するね、この子…相手の打ち筋を見極めて対応する器用な打ち方だと思ってたんだけど、この駄々っ子みたいな無茶苦茶な支配が本性か…)

はやり(とりあえず現物かな☆)

打:5p


健夜「…」タン

打:9m


咏「差し込みかい?悪いけど、んなもんいらねーよ」

咏「だってそうだろ?あたしの売りは怒涛の高火力、日本のエースがそんなみみっちい点棒もらって満足ってわけにゃかないってもんでしょ」

咏「てなわけで、あたしを見てもらおうか、小鍛冶健夜!」ダン


678p33667788s78m ツモ:6m ドラ:3s


咏「リーチ一発ツモ、タンヤオ三色ピンフ一盃口ドラドラ…裏一枚乗って三倍満だ。6000、12000」

晴絵(おいおい…跳満を見逃しかよ…本当に化け物だなこいつ)

はやり(真正面から健夜ちゃんをぶち破れるのは、日本中探してもこの子ぐらいだよね☆てゆうか、健夜ちゃんってば躊躇いもなく跳満差し込んだし…そりゃ三倍満ツモより跳満直撃の方が点差はつかないけど…自分の点は減るからね?トップしか見てないからそういうこと平気でするんだろうけど)

咏「さて、そろそろよそ見してないでこっち見てもらおうか?」


健夜「…残念だけど、咏ちゃんと打つのは麻雀じゃないんだよ」

咏「…は?」

健夜「どうしてもっていうなら付き合ってあげてもいいけど、咏ちゃんと打つのは麻雀じゃなくて…そう、パズルみたいなものかな」

咏「パズル?」

健夜「…少し難しかったり、完成させるのに時間がかかったりするけど、解き方もわかってて、解けることも決まってる、そういうゲームなの」

咏「…へえ?」

健夜「…どうしても邪魔がしたいみたいだから、少し、痛い目見ておとなしくなってもらおうかな。赤土さん、少し待っててね」

咏「上等だ、出来るもんならやってみな。こっちはあんたを倒すためだけに10年近く腕を磨いて来たんだ」



27 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 16:59:46.57


東3局

咏(と、啖呵切ったはいいけど…これホント半端ないね…)

はやり(咏ちゃん、なんにもできませんでしたってのは無しね☆)

咏(当たり前、こっちは一応全日本のエース張ってるんだよ!たとえ相手が世界最強でもあたしは勝たなきゃなんねー!)

咏(ってことで、張ったぞこんちくしょー!きっつー!)

咏手牌
2223449s888m西西西 ツモ:4s

咏(この8萬が役牌じゃないのがあたしと小鍛冶さんの差ってやつかね…そんなら、大した差じゃねーな!)

咏「リーチ」

打:9s


健夜「…リーチ、かけたね?」


咏「」ゾワッ

晴絵「」ビクッ

はやり「はややっ!?」


晴絵(こいつは…ヤバいか?)タン

はやり(はやりしーらないっっと)タン

健夜「…」タン

打:8m


咏(…これは、やっちまったかねえ…?)

ツモ:5m 

健夜「それ、槓」

咏(あ、死んだ)

健夜「ツモ」

3s111333999m 槓:5555m 嶺上ツモ:3s


健夜「対対三暗刻、8000」

咏(…別にあたしがリーチしてもしなくても変わらなくね?いや、小鍛冶さんの8萬をあたしが槓して嶺上開花できるかどうかって差があるのか…)

晴絵(リーチをかけなければ、8萬が切れなくて死んでいたかもしれない手…)

はやり(と言っても、8000だからね。三倍満を和了った咏ちゃんはまだ大きなリードがある。チョンボの満貫払いもあったし、まだ原点にすら戻ってない…)


健夜「さあ、私の親だよ」



29 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 17:00:59.35


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


咏(あ、これ無理だね…せめて天和じゃないことを祈ろうか)

はやり(咏ちゃんの本気ってのも滅茶苦茶だったけど、健夜ちゃんの本当の本気ってこんなのなわけ?これははやりもびっくりだよ)


健夜「あ、安心していいよ。咏ちゃんにぶちあてる予定だから、天和ではない」タン

打:8p

咏手牌
13345p45s23457m東北

咏(あたしにぶちあてるって、最悪なことにあたしが下家なんだよね。現状、安牌は8筒だけ、手牌にはない、と)

咏(これさあ、多分手牌崩してチョンボした方が安いんじゃねーの?ま、そんなことしないけどね)

咏(考えても無駄だな。いいぜ、あたしの勘を信じる、アタれるもんならアタってみな!)

打:3p

晴絵「…どうだ?」

健夜「…通る。ツモっていいよ、赤土さん」

晴絵(通らないでほしかったな。次は私が地雷原に足を踏み出さなきゃいけないのか)

晴絵手牌

189p278s3m東南西白発中 ツモ:9m

晴絵(配牌でお前が来れば迷わず九種九牌だったんだがな…とりあえず現物か)

打:8p

はやり(無理無理、ベタオリだよ☆)

打:8p


健夜「…ツモ」

19p19s19m東南西北白発中 ツモ:北


健夜「国士無双、16000オール」


咏(うーわ、マジっすか…配牌で純正国士?本当に人間かよこのひと…)

はやり(咏ちゃーん?東場まだ終わってないけど、まだやる?)

咏(あー、流石にサシで挑む気は失せたねー。じゃ、ボチボチいこっか?)

はやり(オッケー☆)


健夜「一本場」



30 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 17:02:30.42


健夜(まあ、流石にあんなの連発出来るほど私も人間やめてないわけだけど…咏ちゃんだって毎回私を出し抜いて三倍満和了れるわけじゃないでしょ?)

咏(お察しのとおり、こっちもそんな化け物じゃないんでね。とりあえず少しの間、普通の麻雀しよっか)

晴絵(お前らの普通は普通じゃないんだよ…ヤバそうな捨て牌しやがってホントに…)

はやり(さて、そろそろいいかな咏ちゃん?)

咏(任せろはやりん)

はやり(オーケー…あの馬鹿に、麻雀は四人で打つものだって教えてあげよう!)

健夜(…さあ、うるさいのは居なくなったよ…楽しもう、赤土さん)

咏「ほいっ」タン

打:3s

晴絵手牌

34p24s23489m西西発白

晴絵(…相手は小鍛冶さんだ、素人みたいな仕掛けだが、やるしかないな。持ち点も2000しかないし)

晴絵「チー」

打:白

はやり「このへんかな☆」

打:南

咏「ポン」

打:2p

晴絵(三色確定…三尋木咏の切った牌だ、偶然ということはないだろう。サポートしてくれてるのか?)

晴絵「チー」

打:発

はやり「ポン!」

打:7s

咏「ポン」

打:9s

晴絵「…ツモ。三色のみ。400、600」

23489m西西 チー:(2)34 2(3)4 ツモ:7m


健夜「……」

晴絵(これは、つまり、そういうことか。ま、他の二人と協力するってのは、玄がやって見せてくれた。玄の先生である私が出来なくてどうする)

咏(ほれ、これなら無視は出来ねーだろ?あんたの相手は赤土晴絵だけじゃねーんだよ?)

はやり(出来れば、赤土さんじゃなくてはやりをサポートしてほしいな、咏ちゃん☆)

咏(それは上家に言ってよ。赤土さんは他人のサポートする余裕なんかないだろうけど)



31 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 17:03:33.22


咏「ツモ、2000オール」

晴絵(三尋木咏が満貫未満の点数を言うのって何年振りなんだろうな?満貫以下の点数が言えないから常に満貫以上に仕上げてるなんて話も出たぐらいだ)

はやり(三対一の基本、親番の味方のサポート。て言っても、今回は赤土さんがトンじゃうから咏ちゃんの連荘はなしね)

咏(こうなるなら東場から共闘してても良かったね)

はやり(それは今更言っても遅いし☆)

咏(ちなみに、ここで赤土さんかはやりん飛ばしてあたしが勝つってのはあり?)

はやり(それで納得できるなら☆)

咏(へいへい、んじゃ、親番回しますか)



32 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 17:04:00.31


はやり「ロン、1000は1300☆」

咏「相変わらず早いね~、まだ三巡目だよ?」

はやり「二巡で国士和了った化け物よりはましだと思うな☆」

健夜「化け物じゃないもん…」

晴絵「さて、南二局、私の親番だな」



33 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 17:04:41.21


晴絵(さて、三対一での基本は、味方の親番でのツモをサポートすること。味方同士の差し込みで点数を調節できるから、親番でツモって削った分だけ有利になる)

晴絵(しかし、この場ではツモると瑞原プロが危険だ。となると…三尋木プロが私に差し込んで私を回復させて、瑞原プロが得意の速攻で連荘するのが理想…)

健夜(なんて思ってるのかな?悲しいよ、サポートを受けることで、赤土さんの手が二人に縛られてる…これじゃ、私が楽しみにしてた『麻雀』にならない)



34 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 17:05:36.03


晴絵「リーチ」

健夜(…少し妙な手順だったけど、これに咏ちゃんが差し込むはず…けどね?咏ちゃんが削られたら、私のトップは盤石になるんだよ?唯一追いつける位置に居る咏ちゃんを削ってどうするの?共闘という手段が目的になって、大局を見誤ってるよ)

健夜(…咏ちゃんの捨て牌、…少し臭いけど、リーチをかけた赤土さんの点数は400点。これに差し込まないはずはない、大丈夫、赤土さんのリーチだけ警戒すればいい…)

健夜(これは―――通る)

打:5筒

咏「ロン」

健夜「…え?」

3334455p南南南中中中 ロン:5p

咏「対対混一色三暗刻南中…16000」

はやり「あはははははは☆引っかかった☆」

咏「いやー、まさかホントにこんな手が効くなんてね。共闘を匂わせて差し込んだ分にお釣りが来たよ」

健夜「まさか…共闘は、ブラフ?」

咏「当たり前でしょー?死にかけ二人と共闘してあたしに何のメリットがあるのさ?」フリフリ

健夜「…そう、赤土さんをダシに使って私を釣ったんだ…?」

咏「この大会自体がそうじゃん、何を今更」

健夜「…どうやら、咏ちゃんにはお仕置きが必要みたいだね」

咏「出来るもんならやってみな…こっちはあんたを倒すことしか考えてねーんだよ」

はやり「二人で盛りあがってるとこ悪いけど、次ははやりの親番だよ?」

晴絵「…」



35 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 17:06:39.35


健夜(ドラが私のところにある。ということは、基本跳満以上で和了するこだわりがある咏ちゃんは手作りにまだ時間がかかる…)

咏「ロン、2600」

はやり「はややっ!?やっちゃった☆」

健夜「へ?咏ちゃんが2600…てゆうか、はやりちゃんが振り込んだ!?」

咏「さーて、オーラス入る前に、点数状況は…」


三尋木咏  48900
赤土晴絵    400
瑞原はやり  1300
小鍛冶健夜 49400


咏「ほうほう…こりゃ随分僅差になったね。小鍛冶さんが親だから、はやりんがツモって親かぶりでの逆転もあり得るね」

健夜「…私が和了ればいいだけでしょ」

咏「それはこっちのせりふだねい」

はやり「新旧日本代表先鋒の頂上決戦だね☆」

晴絵「…」

健夜「じゃあ、始めようか。南四局、オーラスだよ」



36 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 17:07:22.70


健夜(凄いな、咏ちゃん。卓外戦術込みとはいえ、私をここまで追い詰められるんだ)

健夜(少し、勿体ないな。この対局が終わっちゃうのが。赤土さんも、役満狙いなんだろうけど変な捨て牌してるし、はやりちゃんは本当にわけわかんない。咏ちゃんも狙いが読めない捨て牌してる)

健夜(こんなに、先が見えない麻雀はいつ以来だろう?こんなに、楽しい対局はいつ以来だろう?)

健夜(ああ、張っちゃった…1000点で十分な局面でツモれば跳満の手、こんな手張らなくてもいいのに…)

111223p東東南西西北北 ツモ:3p

打:1p

健夜(…)



37 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 17:08:00.00


健夜「…なんで、こんなのが来るのかなあ…」

ツモ:東 打:1筒

健夜(って、なんで1筒切ってるの私!?ツモ切りの一手でしょ!?)



38 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 17:08:29.08


健夜(ほら、ツモ切りしてれば和了だったのに…)

ツモ:南 打:1筒

健夜(ほんと、何やってるのかな、私…)



39 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 17:10:57.56


咏「」タン

打:白

晴絵「ポン」

打:6s

はやり「」タン

打:発

晴絵「ポン」


健夜(はあ…もたもたしてたら、赤土さんが変な感じだし…まあ、三倍満直撃でも赤土さんには逆転されないけど…って)


健夜「馬鹿なの?何この手!?」

33p東東東南南南西西西北北 ツモ:中

健夜(…赤土さんは役満狙いのはず、ということは、間違いなく大三元…ここは、回らないと…)

打:3p

咏「」タン

打:中

晴絵「ポン」

健夜「はあああああああっ!!!?」



40 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 17:12:36.76


はやり「ちょっと、対局中だよ健夜ちゃん☆」

健夜「あ、ご、ごめん…」

健夜(赤土さんが張ってなかったことも驚きだけど、咏ちゃん何やってるの!?それ、大三元のパオついたよ!?)

咏(いや知らんし)

はやり「じゃ、リーチ」

健夜「はやりちゃん、そのリーチ何の意味があるの!?ラス落ちしただけじゃん!?」

はやり「健夜ちゃんにはわからない遠大な構想があるんだよっ☆」

健夜「いやいや!役満じゃなきゃ意味ない状況でしょはやりちゃん!?役満でリーチしてどうするの!?」

はやり「数えかもしれないでしょ☆」

健夜「捨て牌見る限り数えまで伸びるような役ないでしょその手!本当になにやってるのはやりちゃん!?」

咏「ちょっとすこやん、騒いでないでツモってくんねー?」

健夜「すこやん!?」

咏「あ、間違えた、アラフォー」

健夜「アラサーだよっ!!そして言い直さない方がましだよっ!!」

咏「どうでもいいからツモって」

健夜「あ、あっれー?さっきまでずっと『憧れてた目標との対決』みたいな感じでシリアスモードだった咏ちゃんはどこに行ったの?」

咏「いや知らんし、早くツモって早く切れアラフォー。年で肩が上がらないなら引退しろ」

健夜「アラサーだよっ!!えっ!?ホントになんなのこの空気!?さっきまでのシリアスどこ!?」

咏「だから早くツモ切れって」

健夜「うう…はい」タン

晴絵「ロン」

健夜「え?…あ。ああああああああああっ!?そういえば赤土さんが役満張ってた!?咏ちゃんに乗せられてツモ切りしたけどそんなあっさり切っていい場面じゃなかったあああああ!!?」

晴絵「32000を折半して、16000ずつですね」

はやり「はい、リー棒」

健夜「ちょっと待って、これって…」



41 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 17:14:05.63



三尋木咏  32900(ー16000)
赤土晴絵  33400(+33000)
瑞原はやり   300(ー 1000)
小鍛冶健夜 33400(ー16000)


はやり「はやりの一人沈みだね☆屈辱だよ☆」

健夜「それはホントにどうでもいいよっ!」

はやり「傷つくなあ…ほら、どうよ?咏ちゃんに500点差まで詰め寄られて冷や汗ダラダラの薄氷の勝利を飾った気分は」

健夜「それも割とどうでもいいの!」

はやり「じゃあ、私たち三人のささやかな反抗の成果に感激してもらえたのかな☆」

健夜「こんなに驚いたのは多分生まれて初めてだよ!!なにこれ?何なのこれ!?」

晴絵「三人って、勝手に巻き込まないでください。瑞原さんがリー棒出した時は戦慄しましたよ、どこから狙ってたんですか?」

咏「え?いや、オーラス入ってから即興だけど?偶然いい感じの点数だったし」

はやり「なんか健夜ちゃんがらしくない闘牌してるから割とやりたい放題だったよね☆」

晴絵「私に三元牌が集まって来たのは?」

咏「あたしが送り込んだ。役満狙うしかやることないから素直に従ってくれてありがたかったねい」

晴絵「あんた以外が言ったらサマ使ったようにしか聞こえないご回答ありがとうございます」

はやり「ちなみに、健夜ちゃんに風牌送ったのは私☆」

健夜「それも割とびっくりだけどね!?はやりちゃんそんなの出来たんだ!?」

咏「で、なぜからしくない打牌したすこやんもといアラフォー、三人が作った流れにうまく乗った赤土さん。四人の合作だよ、どうだった?」

健夜「私を小鍛冶さんって呼んでくれる咏ちゃんはもういないんだね…」

咏「いや、あんた人間じゃないし「さん」付けとかねーわ。ガチで打って分かったよ、これ本物の化け物」

健夜「酷いっ!?」

はやり「咏ちゃんもそっちに片足突っ込んでるよ☆あの三倍満とか逃げ出しそうだったぞ☆」

晴絵「しかし、本当にらしくない打牌でしたね。捨て牌見る限りだと、途中で和了ってたんじゃ?」

健夜「…わからない。自分でも、なんであの時あの打牌をしたかわからない」




42 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 17:16:02.59


?「なんだ、人外じみた闘牌をするくせに、そんなこともわからないのか。日本最強とやらも大したことないな」

?「衣ちゃん、失礼だよ…」



健夜「あなた達は…えっと…天江さんと、宮永さん?」

衣「まあ、見たところ衣以上の力に振り回されていたと見える。麻雀を打たされていたことにすら気付けまい」

咲「麻雀を打つんじゃなく、打たされてる。衣ちゃんだから分かる感覚だね」

健夜「打たされている…?」

衣「左様。感覚や、自分に集まってくる牌、それを従えているようで、その実、自らの力の傀儡になっている。南三局までの貴様はそう見えた」

咲「けど、オーラスの小鍛冶プロは、違いました。牌は和了らせようとしているのに…あなたの意志がそれを拒んでいた」

健夜「和了りを…拒む?」

衣「おおかた、もっと打っていたいとでも思ったのではないか?」

健夜「…あ」

衣「喜べ、貴様は、これからもっと麻雀を楽しむことが出来るぞ。少なくとも衣はそうだった」



43 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 17:16:41.04


咲「ふふ、9冠王、グランドマスター小鍛冶健夜の復活、楽しみにしてますよ。うちのお姉ちゃんを凹ませてやってください、最近調子に乗ってるので」

健夜「…そうだね、赤土さんを見る限り、人間は一度挫折を知った方が強くなれるみたいだし」

玄「若い目を摘むのはほどほどにお願いしますのだ…照さんは私の目標なので…」

咲「あ、松実さん。赤土さんは?」

玄「あっちでうちのメンバーに胴上げされてます。なにせ、小鍛冶健夜、三尋木咏、瑞原はやりを抑えて優勝した新星ですから」

健夜「え?優勝?」

咏「上家取りだよ、ダブル優勝とかさせるわけねーだろ。もしそうならあたしもリー棒出したね」

健夜「え?私、負けたの?」

咏「そ、改めて聞くけど、どうよ、気分は?」

健夜「…そうだね、負けてこれ言うの、すごく変かもしれないけど…」

咏「安心しなよ、もともと変だから。人外だし」

健夜「茶化さないでよ!」

咏「へいへい、で、どんな気分よ?」

健夜「えっとね――――」



―――――最高の気分だよ、私が、やっと『私』になれた気がする




44 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 17:17:17.72


はやり「え?なんでリー棒出したかって?」

記者「ええ、あれが無ければ赤土選手は届きませんでした。なぜ、ノーテンリーチを?」

はやり「…ささやかな反抗ってやつかな。お前なんか負けちまえって☆」

記者「は、はあ…小鍛冶プロに恨みでも?」

はやり「無くはないけど、むしろこれは健夜ちゃんのためかな?」

記者「小鍛冶プロのため、ですか?」

はやり「…これで、あのひきこもりも、表に出てくる理由が出来たでしょ☆」

記者「つまり、小鍛冶プロへの叱咤だったということですか」

はやり「そ☆私たちの世代の頂点である小鍛冶健夜(こかじすこや)には小鍛冶健夜(グランドマスター)で居てもらわないと☆」



45 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 17:18:02.35


『は?なんでパオつけたかって?
 そりゃあれだよ、聞くだけ野暮ってもんさ』

『そこを何とか!』

『そこは察してくれよー、えりちゃーん』

『まあ、なんとなくは分かるんですが』

『おお、良いね。予想が合ってたら今夜おごってあげよう』

『では、間違っているかもしれませんが、私なりの予想を…
 まず、あなたは、オーラスに入った時点で小鍛冶プロの雰囲気が変わったことに気付いた』

『ふんふん、なんでそう思ったの?』

『勘です。なんとなく、表情でそうだったんじゃないかと思いました』

『ほうほう、続けて』

『その雰囲気の変化を感じ取ったあなたは、瑞原プロと共謀し、緩い空気を作りはじめます。
 小鍛冶プロが勝負に集中するのをやめるような、緩い空気です』

『へえ…』

『小鍛冶プロが先行きのわからない闘牌を好むという情報もあってか、あなたと瑞原プロは、聴牌を目指さず、ゲームメイクに徹します』

『まあ、それは牌譜から明らかだねえ』

『で、手が煮詰まってからは知っての通り…』

『ふむふむ、ここまでが前提ってわけだ?』

『はい。
 では、なぜパオをつけて二人を引き分けにするようなことをしたか?
 ズバリ、あなたは、小鍛冶プロに勝ちたくなかった』

『は?いやいや、勝ちたくない奴があんな全力出さないっしょ?』

『正確に言うと、小鍛冶プロが負けるのを見たくなかった。
 小鍛冶プロに、自分が全力を出してもかなわない高い壁であり続けてほしかった。
 パオが無ければ、直撃したら咏さんが小鍛冶プロを逆転、赤土さんも届きません。
 勝負に徹するなら、あんなパオはつけません』

『いや、あたしの中が無かったら張ってすらないからねあの手』

『それも、小鍛冶プロじゃなくて赤土さんに直接送り込んでいれば済んだ話でしょう?
 出来たはずですよね?』

『…』

『わざとなんです、全部。
 パオをつけたのも、パオがつくような状況にしたのも、それで引き分けになったのも。
 そうだとしたら、理由はそれしかないんです。
 小鍛冶健夜が小鍛冶健夜であるための、小鍛冶健夜に敗北を教える反抗。それでいて小鍛冶健夜が絶対的な強者であることを脅かさない、ささやかな反抗。
 それが、あの役満サポートと、パオです』

『オーラスはやりたい放題だったけど、引き分けはホントに偶然だよ。
 あの点差になったのは、運命かもね。
 神様も、小鍛冶健夜がまた本気で麻雀を打つ姿が見たかったんじゃねーの?』

『…そうですね、あの人は、三尋木咏が憧れるぐらいの凄い人ですから』

『…で、今夜は何が食べたい?
 あたしは言ったことは守るぜ、好きなもん言いなよ』



46 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 17:18:44.89


晴絵「…はい、はい…はい、すみませんが、他からもお声をかけて頂いているので、考える時間を…」

灼「またプロからの勧誘の電話…」

憧「私たちの指導に支障が出ないようにするために大会出たのに、この方が支障が出てるんじゃない?」

宥「仕方ないよ…小鍛冶プロに勝っちゃったんだもん」

玄「しかも、あれ以来小鍛冶さんがまたタイトル戦に出始めて、麻雀界は大荒れなのです」

穏乃「憧―――!!今日の新聞見た―――!?」

憧「見てないけど?どうしたの?」

穏乃「これっ!赤土先生!」

憧「『9冠王としてあの人の挑戦を待ちたい、そう思えるライバルがいます』…ああ、道理で電話が多いはずだわ」

玄「小鍛冶健夜のライバル…私たちの先生は凄い人なのです!」

灼「当然。はるちゃんは昔から凄い」

晴絵「全くもう、持ち上げてくれちゃって…普通にやったら勝負にもならない相手だろうに」

プルルルル

晴絵「あーもう!今度はどこだよ!?麻雀チームからはもう全部かかって来ただろ!?」

憧「取材かなんかでしょ。さーて、あたしらはあたしらでがんばろっか」

穏乃「おおー!!」



47 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 17:19:10.92


麻雀は、小1の頃から打ってなかった。
どこぞの誰かさんが打たなくなったから。

――私は、かつて、現在を失った。

阿知賀の部長として、あの人が作った歴史を受け継いだ。

――私は、未来を託された。


子供と戯れるあの人なんて見たくない、もっと凛として強い姿を見ていたかった。
そして、あの人から目を逸らした。

けど、私の中には、確かに、あの人へのあこがれが今も残っている。
あの人に憧れて、あの人を追いかけて麻雀を打つ私が、本当の私。

『はあ、全く、あんな化け物に勝てるかっての。お前もそう思うだろ、灼?』

だから、私は反抗する。

『はるちゃんは勝てるよ。実際、勝ったことあるし』

『おいおい…あんなのまぐれに決まってるだろ』

私が本当の私で居るためには、あなたが、私の憧れたあなたで居てくれないとダメだから。

『まぐれでもなんでも、はるちゃんは小鍛冶健夜に勝ったんだよ』

『お前は私に期待しすぎだろ…全く。仕方ない、もう一回だけ勝ちに行ってみるか』

私の、ささやかな反抗は受け入れてもらえたらしい。

私があなたに逆らうのは、いつだって、あなたに、私が憧れたあなたで居てもらうため。

私が『私』でいるために、あなたに『あなた』でいてもらうための、ささやかな反抗。


『うん、私は、世界の誰よりも、赤土晴絵を信じてるから…たとえ、誰もあなたに期待しなくなっても、私だけははるちゃんに期待し続ける』

『…そういえば、負けて帰って来た私を出迎えてくれたのはお前だけだったな』

『…うん。私だけは、いつだって、はるちゃんを待ってるから』

『じゃ、ぼろ負けしても大丈夫だな』

『できれば勝ってほし…』

『一か八かの大博打に出ないと勝てないからあんなの。外して大負けしても待っててくれるんだろ?なら、勝ちに行けるってもんだ』

『…うん!』






48 : ◆jBL8Qe1.Ns :2014/11/29(土) 17:24:36.44

今回は思いついた時に書きたいと思ったものが大体書けた感がある。
闘牌は絶対なんかミスってるけど雰囲気で楽しんでいただくようお願い申し上げます。



元スレ:【咲-Saki-】灼「Re:GENERATION」
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