SS速報VIP:【ACfA】狂った鶴と首輪無き獣【艦これ】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1440234797/



1: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 18:13:17.34 ID:UdIfl9da0

初見となる
こちら、1シミリアン・乙ミドールだ
これより、ACfAと艦これのクロスSSを投下する
これは、処女作であり、明確な駄文でもある
一部の内容はオリジナル要素を含み、一部の内容は汚染されたフロム脳が作り上げている
それを理解した上で、私のSSを呼んでほしい
これは警告と同時に、事実だ
それをよしとしなければ、ブラウザバックをしてくれたまえ

これは警告だ、以下の要素が含まれている
地の文、シリアス(笑)、超展開、キャラ崩壊、初のスレ立て、まちまち更新
不慣れな環境なので、覚えておかなければいけない事は教えて欲しい
面倒が嫌いなんだ!という人はファンタズマを贈呈します

矛盾の指摘や質問は愛してるんだぁぁぁああ!

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1440234797




3: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 18:18:58.89 ID:UdIfl9da0

――Resist it for answer――

――答えの為に抗え――


平和と呼ばれる時代、それは突如として現れた

前振りなど一切存在せず、ただ突然と

それは禍々しく、どす黒く、それを見た人間は一目で判断した

「こいつがいる限り人類が脅かされる」

「こいつに殺される」



「こいつは人類の敵だ」


その未知の存在はハワイと呼ばれる場所を中心に確認され

真っ直ぐに日本と呼ばれる島国を目指していた

何故なのか、理由はわからない

例え理由があろうとも、関係などなかった


その後、日本は自衛隊を謎の存在に向けて出撃をし、攻撃を仕掛けた

日本は攻撃をされない限り攻撃をしてはいけない、憲法という平和の傘が存在していた

だが相手は未知の存在、その姿からして意思疎通が出来るとはとても思えるとは思えない

全くの異例の事態で対応に困り果てた政治家は、異例の事態としてこれに攻撃

未知の存在は誰が見ても明らかな武器の様なものを自衛隊艦隊に向けていたのだ

意志は関係ない、武器をこちらに向けられている以上

私達は死を意識しなければならない


様々な艦の砲撃、ミサイルによる遠距離攻撃、損傷は与えた

だがそれは無傷ではない、と言える程度の損傷だった


未知の存在は無抵抗だった、何もせず、その場に留まり続けた

爆煙の中から現れたそれはまさに、一昔前の怪獣映画に出てくる怪獣そのものだった


未知の存在による攻撃が始まり、自衛隊の艦隊は瞬く間に7割が撃沈

対する自衛隊も奮戦するが、幼子が大いなる母に挑む様なものであった


この戦闘により、未知の存在は明確な敵対生物であると断定された

一部の人間は攻撃を仕掛けたが故に応戦された、等と主張した

だが多くの人類は小さき声を嘲笑うかのように言い放った


「あれはどう見たって敵だ、人類の敵だ」



5: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 18:24:20.45 ID:UdIfl9da0


人類はそれを深海棲艦と呼称、すぐさま調査が始められた

調査は驚くほど早く進み、艦娘という対抗策が生まれるまで時間はかからなかった

まるでこの日が来るのを予見していたかの様に…


この時深海棲艦を調査し、艦娘と呼ばれた存在を生み出した一部の研究機関

その研究機関を資金的に援助し、研究時に陣頭に立って指示していた権力者達

権力者と研究機関は人類の希望として、日本政府から「対深海棲艦本部」と名付けられた

だが特別な権力を持たず、国の、政治家達の許可が下りなければ戦えない存在と化していた


国民は黙っていなかった


「人類の希望なのに扱いが酷過ぎる!」

「日本政府は一体何を考えているんだ!」

「無能な政治家どもを追い出せ!」


国民は声を上げた、己を守ってくれる存在を腐った人間に抑制されていたと

人々は声を上げ、抗議し、行動した


政府は内と外に敵を作ってしまった、同じ人類を敵に

政治家達は、内に存在する敵を鎮静化させる為に様々な事を考えた


そして「対深海棲艦本部」は政府とは別の権力として君臨する事になった

海域の奪回と本土防衛を兼ねて、日本各地に「鎮守府」と呼ばれる艦娘の拠点を設立

そしてその鎮守府を指揮する提督と呼ばれる者

東京に存在し全ての鎮守府を統括、管理する対深海棲艦本部、もとい大本営



これらの存在により安全な生活圏を得た人類

人類は何も対策出来ずに、希望すら腐らせようとした政府を糾弾し

代わりに大本営を支持し、崇拝するようになった




6: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 18:27:24.30 ID:UdIfl9da0

深海棲艦の発生から2年が経過

人類の唯一の対抗策である艦娘、それを束ねる提督という存在の活躍により

日本本土に住んでいる力を捨てた者は平穏と呼ばれる作られた時の中で過ごしていた

その日、大本営による大規模作戦が各提督に通達され

提督により艦娘に伝達、作戦が発動された



内容はハワイの奪還、最前線として運用すべく現存している部隊を壊滅させる事


太平洋という広大な世界を渡るには架け橋が必要であった

この作戦が完遂される事で、人類は大きな一歩を踏み出せる事となる

しかし、この偉大なる一歩は、人類によって生み出された者による一歩

それは人類が勝ち取り、誇り、歩むものではないのだから



大規模作戦というのもあり、太平洋には無数の人影が駆けていた

ある者は主君の為に、ある者は人類の平和を願い、ある者は己の為に



そして今まさに、自分の意志に基づき、誰にも阻まれずに

飼い主を殺し、汚染されつくした地上を更に汚染し

無垢な子供達を地球に引きずり下ろし


その全てを無作為に殺した別世界のイレギュラーが



≪人類種の天敵≫と呼ばれた、首輪無き獣が解き放たれた





8: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 18:30:47.69 ID:UdIfl9da0

ハワイへと進む艦娘、人類の未来という道筋を切り開く為に


海面では激しい砲撃戦、その頭上では航空戦が繰り広げられる

艦娘も深海棲艦も等しく傷つき、等しく疲労する


戦闘不能レベルまで傷ついた者は、損傷が少ない者に守られ退き

仲間に自らの意志を託し、託された者は進み続ける


ある部隊が敵を殲滅しつつ先頭を維持し

それに続く部隊が、切り開かれた獣道を進むように進軍をする

先頭部隊の旗艦が戦闘不能に陥る、弾薬燃料を使い切った場合はすぐさま転進

後続部隊が交代するように先頭を務め、道を切り開く


幾つもの部隊が進む、仲間の行動に敬意を表し、誇りながら


通常は1部隊6隻の編成、もしくは2部隊12隻の編成で作戦を遂行する

道中、攻略目標を撃破する為の支援する役割を持つ2部隊の最大12隻での支援艦隊

大規模作戦という事もあり、各提督達が保有する最高戦力を投入する

それも支援艦隊すら通常の様に運用するという≪例外≫だった

対して深海棲艦は6隻編成の部隊が数多く存在するが、決して同時に攻撃を仕掛けてはこなかった

知性が無く本能的に動いてるからなのか、今まで見たことない人数の艦娘を見て驚き、恐怖したか

艦娘の行動に慎重になっているのか、そういう指示が出されているのか



それ以外の何かに恐怖し、艦娘など眼中にないのか



14: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 18:39:33.20 ID:UdIfl9da0

人類は唐突に未知との遭遇を果たす、決められた運命、何かの因果

そんな物は誰にもわからない

だが人類はその未知を解明し、理解してきた

そうして発展を繰り返し、成長し、進化していった


だが艦娘は初めて未知と遭遇する

その遭遇が明確に≪例外≫だと解かるという遭遇をしてしまった



海面から200m、直線的な距離にして3kmは離れているだろう

距離が離れていても理解できる巨大な影

何故今まで発見出来なかったのか、新たな深海棲艦の兵器なのか

偵察機からの報告を聞き損なったか、正体は一体何なのか



その正体はわからなかった、ただ一つ、その場にいる艦娘、深海棲艦全てが感じた

心の底から溢れる恐怖、正体不明の影から発せられる威圧、その影が身に纏う恐ろしい獣の気配を




15: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 18:42:17.99 ID:UdIfl9da0

何故、何時、何処から、ただわかるのは


自分達より遥かに大きく、空に浮かんでいる黒い人型の何か

人類ならばそれを見た瞬間何と言うだろうか

天から堕ちた堕天使、地獄の底から現れた悪魔、人類の救世主、新たな兵器


ある意味ではその全てが正解であり、外れでもあった



その黒い何かを見つけた艦娘は恐怖した

だが進軍を止める事なく、冷静に対処をしようとした

先頭部隊の空母から偵察機が発艦される、連絡を取ってみようと試みたのだ


だが先に接触したのは深海棲艦の空母、ヲ級から発艦された戦闘機だった

今偵察機を近づければ呆気もなく撃墜される

武装を持たぬ偵察機では当然の結果でもあり必然でもある

護衛に戦闘機を引き連れる手もあるが、敵であるかわからない今はリスクが大きすぎた


艦娘側は様子見という結論に達し、一同はその場に留まった

そして深海棲艦の戦闘機が黒い何かに攻撃を仕掛けた




16: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 18:44:47.41 ID:UdIfl9da0

結果から言うと、黒い何かは無傷だった

単に硬かった、攻撃を外した、相手が避けた

どれも違った

黒い何かは全く動かず攻撃を受けた、受けたと思っていた

攻撃が届くと思った瞬間、薄い膜の様な物が見え攻撃を無力化した


それでも深海棲艦の戦闘機は諦めず再度攻撃を仕掛ける

機銃が火を吹き、弾が相手を貫かんばかりの勢いで飛んでゆく


だが2度目の攻撃は当たる事なく、空に消えていった

何故なのか、単純に黒い何かが避けたのだ


どうやって避けたのか、いつの間に避けたのか

その疑問は当然である、黒い何かは一瞬で数mもの距離を移動していた

一瞬だけ見えた謎の光、それが推進力だと気付くものは現段階では誰もいなかった

誰もそこまで考えるだけの思考が出来なかった


黒い何かが両腕を真っ直ぐ前に伸ばす

その手には銃火器のような物が握られていた


そしてその場の全員が理解した


奴が動き出すと




17: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 18:47:19.75 ID:UdIfl9da0

奴が動く…


今まで沈黙していた黒い何かが、両腕を上げた

両陣営にとっては解かりやすすぎる程の行動であった



黒い何は静かに動き出す、まるで臆病な子供の様に静かに


黒い何かは短時間で驚くほど加速した、特に変化などなく、ただ当然の様に

両腕を上げ、ただ立っているようにしか見えない

まるで糸で操られている人形のような姿のまま加速したのだ



黒い何かは容易に戦闘機に追いついた

風圧、空気の抵抗、重力、それらを感じさせぬ程の速度を発揮した


艦娘の主力である第二次世界大戦中の戦闘機、零式艦上戦闘機五二型は最高速度で約560km/ h

対する深海棲艦の戦闘機も同じか、それ以上の性能の強敵であった


その強敵が今まさに目の前で、正体のわからぬ何かからみっともなく逃げようとしている


黒い何かはあっという間に戦闘機を追い抜くと、戦闘機の前に出て急停止した

厳密にいえば減速をしつつ停止した、なら何故急停止したと表現をするのか

答えは至極簡単、少なくとも500km/h以上の速度で飛んでいた物体がわずか数秒で停止したのだ


戦闘機はぶつからまいと機体を横に倒し回避した、そして爆発した




18: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 18:48:54.68 ID:UdIfl9da0

黒い何かの上げた両腕には自動小銃のようなものを装備していた

形状こそどちらも違う物の兵器だとわかる形であった

そう、左手に装備されていた兵器で戦闘機を攻撃し、落としただけなのだ

兵器とは敵を倒す為に使うものである、それは一般的な常識だ


つまり黒い何かは深海棲艦の戦闘機を敵、自らに危害を加える物として認識した


と艦娘は考えていた、深海棲艦に対抗する為のもう一つの切り札

提督が派遣してくれた新たな仲間なのだと


深海棲艦はみな空を見上げ、勝てる相手ではないのだと悟る

自然界においては自らより強いものを感じる、野生の直感というのがある

野生の直感なのか、冷静に分析した結果なのか

唯一わかるのは、相手には黒い何かを倒すという気合を感じない



首輪というのは主に2つの意味で付けられる
1つは飼い主の存在をアピールする、一般的なのは大体こちらだ
もう1つは、獣を繋ぎとめておく鎖の意味
物を荒らさぬように、逃げない様にする為に、その場に釘付けにする為に


獣を暴れさせない為に



29: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 21:16:06.80 ID:UdIfl9da0

艦娘はハワイ奪還の為に

深海棲艦は攻め入る艦娘を迎撃する為に


両者が本来の目的を果たす事を忘れ

頭上に現れた未知な存在の事だけを考えていた


はっきりとしたサイズ、見た目、武装、動き

それは誰も確認できなかった

ただ言えるのは

深海棲艦の戦闘機と比較すると恐ろしく巨大であり

先ほどの戦闘がまるで


まるで人間が近寄る蚊を殺すような



戦闘機が撃墜されてから程なくして艦娘側からは安堵の声が漏れていた

現時点で明確な攻撃をしたのは深海棲艦の戦闘機に対してだけ

敵の敵は味方、黒い何かが味方だと認識した者もいた


敵が茫然と立ち尽くしている今が好機と見て

第三部隊所属の艦娘、空母加賀から偵察機「彩雲」が発艦された


通信機器で連絡を取ろうと試みたが音信不通に終わった

なので偵察機での光によるモールス信号での連絡を試みたのだ


黒い何かは両腕を下げ、最初に見た時と同じ格好で上空に佇んでいた

糸が切れてしまった人形のように、先ほどまでの戦闘が嘘のように


彩雲が近づき、光を何度も点滅させモールス信号を送る



30: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 21:19:21.54 ID:UdIfl9da0

が、反応は一切ない

何の反応もする事無く、ただその場に浮遊している

単純にモールス信号を知らない、もしくは連絡をする装置がないのだと

艦娘は楽観的に考えた

その考えは彩雲の墜落と同時に消え去った


見ていた艦娘全員が思った、攻撃もしていないのに何故墜落したのか

深海棲艦の奇襲か、妖精と呼ばれるパイロットに異常が発生したのか


黒い何かによる影響なのか



彩雲と交信していた加賀はすぐさま旗艦である榛名に、榛名から各部隊旗艦に

そして旗艦から部隊員に知らされた

内容は、「墜落した原因は全くの不明です、警戒をお願いします」


この知らせにより一部の者は、機体の整備不良だと

一部の者は黒い何かが何かをしたのだと

また一部の者は嘘の報告だと疑う


それもそのはず

彩雲からは何の煙も出ていない、つまり外部からの損傷はありえなかった

戦闘機が彩雲の頭上から急降下し、妖精だけを狙い戦闘不能にする

不可能ではないが現実味がなさすぎる

彩雲の速度は約600km/hを軽く上回るほどであった

全速力で飛んでいないにしろ操縦席だけを気付かれない様に狙い撃ち、気付かれない様に離脱

ありえない、ありえたとすればそれは偶然であると断定すら出来る芸当

機銃程度であれど装甲が皆無の彩雲であれば機体を貫通し、それこそ外部から攻撃されたとすぐにわかるだろう

なら何故墜落した?どうして?何があった?




31: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 21:24:45.20 ID:UdIfl9da0

部隊全員が疑心暗鬼になりながらも、冷静に状況を判断した日向が

日向「一度鎮守府への撤退をし体制を立て直そう、とてもじゃないが戦える状況ではない」

そう榛名に進言、少しして榛名から全員に撤退という命令が出された


深海棲艦は黒い何かを見つめたまま後退し、闇の中へと消えていった

戦場で敵に背を向けるほど愚かな事はない

そんな愚かな行動さえさせてしまう程の恐怖

ただ強さだけを感じ、潔く退いたのか

強さを理解した上で、みっともなく逃げたのか


野生の獣は本能で行動する事が多い
だが何も考えず本能で行動するのではない

例えばチーター
相手に気付かれぬように接近、隙を見て相手に噛みつき仕留める

草食動物は強靭な牙で相手を噛み殺す事はない
だが生きる為に、己の肉体を何世紀もかけて進化させ、肉食動物から逃げ切る足の速さを手に入れた
サバンナなどに生息する動物が当てはまる

ただ単純に相手に噛みつくだけではダメなのだ
機会を窺い、確実に相手を仕留めるチャンスを待つのだ

ましてや野生でなく、知性のある獣なら尚更


1つ手軽に出来る実験をしてみよう

ペットボトルのキャップを思い浮かべてほしい
そのキャップが自分の周りを
頭の上を、股の下を、振り上げた右手の右を、踏み出した左足の左を、縦横無尽に高速で動いていると

速度は一般乗用車程度と思ってくれればいい
そんな物体を銃で狙い撃つ事が君には出来るだろうか?
それもたった1発、外す事は許されない


そんな事を自分の身体ではなく、機械の身体を操作して行い
見事に成功させたのは何故だろうか?

機体の性能、パイロットの技量、計算をした結果の必然、出来て当然

あの黒い何かがいた世界では
この程度、偶然ですらないのだ

それを可能とさせたのはあの黒い機体と

その内に秘められている獣の≪力≫のほんの一部のおかげであった



32: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 21:28:04.68 ID:UdIfl9da0

ハワイ奪還の為に進軍した史上最大の艦隊はわずか数日で戻ってきた


作戦内容の詳細こそ公表されていないが、大本営は国民に大々的にアピールを繰り返してきたのだ

「我々はこれより全力で太平洋にいる深海棲艦を駆逐すべく進撃する」

その為の大規模な艦隊をテレビで放映し、艦娘を率いる各鎮守府の提督に演説をさせ、国全体を湧きあがらせた



大々的にアピールしていた艦隊がわずか数日で日本本土に帰ってきていたのだ

国民の中には不安を募らせる者や、短期間で作戦を完遂させたと誇らしく推理する者もいた


大本営もすぐさま気付き、横須賀鎮守府に集まっていた各鎮守府の提督を呼び出した



今回の作戦は、参加する艦娘が多いという事で提督と現地の艦娘とのやり取りは非常に最低限の物だけとした

燃料弾薬を補給する為の準備、大破した艦娘の入渠の手配、撤退した艦娘から情報を聞き状況を判断

並々ならぬ量の情報を出来る限り少なくし、円滑に事を進める為の処置だった


十二部隊中の第一と第二部隊は補給の為に一度撤退

その他後続部隊の何名かが大破し、損傷の少ない駆逐艦に守られ撤退をしていた


当時先頭部隊を務めていた第三部隊旗艦の榛名からの通信は


「≪イレギュラー≫が発生した為全部隊撤退します」という最低限の情報だけであった



33: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 21:30:42.20 ID:UdIfl9da0

誰かが轟沈したのか、新種の深海棲艦が現れたのか、別働隊による奇襲を受けたのか

その真実を知る為に横須賀鎮守府に居た横須賀、呉、佐世保、舞鶴の鎮守府の提督は大本営へと向かう


大本営に一番近い横須賀鎮守府にハワイ奪還艦隊が集結、補給や整備を待っていた

先に撤退していた第一、第二艦隊の面々と大破し、それ本土まで護衛した艦娘は事前に事情聴取を受けていた

各々が当時の状況の再度報告とその状況からの推理を言うが、全員が口を揃えて

「何かとんでもない事が起こったかもしれない」と言った


過去2年で新種の深海棲艦は幾度と発見された

初遭遇した時でも戦い、撃破する事は珍しくなかった

新種が出る度に撤退して報告、こんな事を繰り返していると時間と資源を無駄に浪費するだけだ


補給と整備を終えた艦娘から順番に事情聴取が始まった

「とても怖かった」や「あんなのは見た事がない」という子供じみた報告が多かったが

第三部隊に所属していた駆逐艦の時雨が詳細を話した


時雨「僕達と深海棲艦との間に突然何かが現れたんだ」

時雨「それが敵の艦載機を撃墜した時は提督達が送ってきてくれた新しい仲間だと思ったよ」

時雨「でも現実はそう甘くはなかったね」



34: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 21:32:54.81 ID:UdIfl9da0

達観したかのように詳細を報告し続ける

それをする権利があり、義務であり、命を背負う者としての責務なのだから


時雨は別室で待機をしてもらい、その部屋に第三、第四艦隊の面々が集まり

部屋の艦娘全員で大本営に直接報告してほしいと言われた


他にも詳細を話した艦娘はいるが、先頭部隊だった第三とすぐ後ろの第四が一番見ていたであろうと

判断した結果であった



全員の証言に共通する事が多々あったが、個人の考えや感想などもあり完全に一緒ではなかった

ただ一つ、この質問に対しての答えは全員同じ答えだった

「そいつを見て一番最初に思った事はなんだ?」




35: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 21:35:44.96 ID:UdIfl9da0

史上最大の艦隊が帰還してから数時間後

第三艦隊と第四艦隊の面々が大本営へと到着していた

その場には各鎮守府の提督が揃っており、鎮座していた



短時間で作り上げた報告書を手渡せられながら質問攻めにあう

「一体何が起こったのか」
「この報告書に書いてある事は真実なのか」
「艦隊の損傷は?ハワイはどうなった?」
「何故帰ってきた?」
「倒そうとは思わなかったのか?」


第三艦隊旗艦である榛名が一から事を説明し、未確認兵器の脅威を伝えた

その説明を聞いている大本営の面々からは舌打ちや小言が漏れていた


人間とは自らが体験した恐怖でなければ真に理解は出来ない

故に彼等は頭で理解出来ても心で理解は出来ない

例え情に厚い人間であろうと、どれだけ優秀な人間であろうと


提督達は大本営の態度を見、自身の感情を高ぶらせるが態度には出さない

ここで感情を吐きだしても何の意味もなさない、心の中に秘める事しか出来ないのだ

いつまでも待ち続け、静かに機会を窺う


大本営側としては、あれだけ宣伝しておいて戦果無しで帰ってきた

金と資源と威厳を賭けた勝負を事前に投げ出されたような物だ




36: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 21:38:54.08 ID:UdIfl9da0

質問に対して答え、質問に対してまた答え

そんな時間があった中

「その未確認兵器をこちらに引き込めないか」という質問があった


それに対して榛名は「おそらく無理ではないかと」と答える

事実通信を送っても無反応、モールス信号でも無反応

更には彩雲が墜落するという事が起こっていた


1人が彩雲のパイロットはどうなった?と聞く

原因不明の病状で如何ともしがたいという状況だと返す

墜落した彩雲に乗っていた妖精という存在は、機体が撃墜されると妖精が自動的に母艦に戻るという特殊な性質を持つ

だが今回は訳がちがった

墜落こそしたが撃墜はされてない、機体そのものは無事であった

幸い彩雲が墜落した場所は当時の艦娘達の艦隊に近く、駆逐艦潮が救助をしていたのだ

だが様子がおかしかった

身体には異常がない、異常はないが明らかに異常であった


外傷はなく、特に怪我はしていない

妖精というのは特殊な存在で、病気にならなければ寝たりもしない

仮に負傷してもわずか数時間で完治し、戦線復帰すら可能である


そんな存在が目の前で、苦しみもがいている

原因はわからない、変わった事といえば機体表面に緑色の粒子のようなものが付着されていた程度だった


「未知の病原菌?」
「いや未知の兵器かもしれんぞ」
「細菌兵器...?」




37: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 21:43:22.94 ID:UdIfl9da0

様々な憶測が飛び交う会議室

その後はハワイ奪還作戦がどれだけ達成できたか

どれだけ敵を撃沈させたか

結果ばかりを問いただし、不満の声を漏らす


未確認兵器に関しては考えがまとまらず後日に再度招集する、という事になった



動物というのは自由な生き物だ
自分にとって居場所の良い場所には居座り、都合が悪くなれば去る
家などで飼われている動物は余計に好奇心が強くなったりする場合もある
首輪を付けられ、飼い主に監視され、普段は活動範囲を制限されているからである



慣れ親しんだ場所は既に無く、天敵と呼ばれる物も存在しない世の中で
首輪という制限を外された山猫はどこへ行くのだろうか


この清浄な空と大地、そして海はいつまで続くのか

汚染されつくした世界に存在した獣の目にはどのように映っているのか



38: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 21:55:38.30 ID:UdIfl9da0

大本営の招集から一週間

国民へ向けて大本営からの正式な発表があった

「ハワイ付近で突如天候が急激に悪化し、やむを得ず撤退した」

「状況を見極めすぐさま撤退を決意し、被害を最小限に抑えた艦娘らの英断に敬意を」


かつて存在した艦の生まれ変わりとも言える艦娘達

猛々しく、重厚で、力強く

広大な海の上を走っていた


だが今の彼女達は違う

一目見ればただの女性であり、言葉も話し、物を食べ、眠る

いくら馬力があろうとも、彼女達は人間と同等の大きさ

道端の石に気付かず転倒もすれば、前方不注意で壁にぶつかる事もしばしば

そんな今の彼女達にとって海とは強大な敵でもあった


地面がなく、波が不規則に押し寄せ、安定しない

雨が降れば視界が悪くなり、奇襲される可能性も増えてしまう

更に空母は航空機を運用する事すらままならず、その存在価値は飛躍的に落ちる


1人が気付き、周りに報告し、情報が行き渡る

だが今はかつての彼女達ではない、自分の目や電探、艦載機からの情報を1人で管理しなければならない

艦という個人の集まりから1人の意志への変化でもあった



39: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 22:02:05.27 ID:UdIfl9da0

そうした観点から見て、天候というのは非常に恐ろしい存在であると同時に

自分達を助けてくれる頼もしい味方にもなりえる存在だった


公式発表をテレビを見ていた提督達は口をそろえて

「どの口が言うんだ」と

散々小言を言い、責任だけを押しつけてきた連中から出た言葉なのだから

自分達に命を預けて戦って来てくれる仲間達、そんな仲間に対する態度が許せずにいた

だが彼等には大本営以上の力を持っていない

力無き者は淘汰される、力を持つ者の暴力によって



40: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 22:05:01.48 ID:UdIfl9da0

太平洋の中心に位置するハワイ付近では謎の雲が発生しており、衛星による監視は出来ない

その場の天候を知る為にはその場に行き、自分の目で見なければならない

更にハワイ付近は完全に深海棲艦に制圧されており、アメリカと完全に分断される形となっていた

一般人が興味本位で近づこうものなら一瞬で水底に沈むだろう

そこまで近づけるとは到底思えないが


大本営としては今回の大規模作戦において

未確認の兵器を見てオメオメと逃げ帰ってきた、と説明する気にはなれなかった

素直に発表をしてしまうと国民の士気にも繋がり、不満が溜まってしまう

不満が不満を募らせ、将来的なクーデターなどの可能性を考えたのだ


そこで偽のストーリーを作りつつ、国民の不安を煽らないように印象操作をする為に

わざわざ正式な発表の場で艦娘達を称えたのだ

過去の第二次世界大戦中の帝国軍の行った情報操作とさほど変わらない

そんな古典的な事すら見抜けなかったのは仕方ないとも言える

彼等は正義を信じ、不満を不満と言い放ち、感情のまま行動する

そして言われた事を信じ、疑う事を知らない、まさに無垢な子供達なのだから

そんな子供達を本土という揺り籠に押し込めたのは深海棲艦と呼ばれる絶望なのか

そんな子供達が揺り籠から出ようという事を忘れさせた艦娘と呼ばれる希望なのか




41: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/22(土) 22:07:55.21 ID:UdIfl9da0

この公式発表のすぐ後に再び大本営で会議が行われようとしていた

この間の会議での発言を元に新たに作った資料を手に今後の対応

ハワイ奪還に関する事から国民の印象操作の方法なども話し合わねばならない


その瞬間が訪れるまではそう思っていた

彼等の足元を大きく揺るがす天罰が下るまでは



その日横須賀鎮守府近海は通常の3割増しの人数で警備が行われていた

本来であらば更に増員したいが、あまり多くし過ぎると国民の不安を煽る、という大本営からの指令だった

未確認兵器を見た面々は何度も事情聴取をされ、知る限りの情報をひねり出されていた

艦娘達は警戒状態ではあるものの

普段は会えない別の鎮守府に居る仲間達と会話を楽しんだり、近況を報告したり、遊んだり

大規模作戦という事でここしばらくは演習と遠征ばかりで休みがなかった分

この瞬間を精一杯楽しんでいる

国民の不安を煽る、そんな事がないようにいつも通りに過ごす

だが各鎮守府の精鋭が一カ所に集められたこの状況がいつも通りなのか


再び≪例外≫が発生し


そして、それが訪れたのだった


自分と同じ≪例外≫に引き寄せられたのか


それとも別の何かを見つけてしまったのか



54: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/23(日) 14:22:22.83 ID:CqSHUw0w0

近海の警備をしていた駆逐艦響から作戦司令室に連絡が入る

「沖の方からなにやら白く光る物体が接近中」


それを聞いた提督達はすぐに行動に出た

横須賀鎮守府の提督は艦娘に出動命令を出し

呉鎮守府の提督は少ない資料を手に取り、作戦を立てる

佐世保鎮守府の提督は報告した響に詳細を報告させつつ、他の提督に報告

舞鶴鎮守府の提督は少数の艦娘と共に近隣の住人の避難誘導を開始


確証はない、だが提督達には確信があった

それは一種の才能でもあり、才能故に彼等は優秀でもあった


そして、水平線の向こうから未確認兵器≪ネクスト≫が現れた



55: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/23(日) 14:25:45.50 ID:CqSHUw0w0

平均速度600km/hを叩き出し、機動力特化機体のクイックブースト使用時は瞬間最高速度で4000km/h以上

この機体ですら1000km/hは容易に出せた

1秒もかからず1000km/h以上を出せるという選ばれた者の特権でもあった

特別な動作は必要ない、余力がある限り彼等は空を飛ぶ

それが当然であるかのように


プライアルアーマーと呼ばれる防壁で薄い装甲を守りつつ、地上を汚染する

オーバードブーストで一気に距離を詰め、武器を手に戦う

見た目からでは考えられない防御力

驚異的な性能を持つ兵器が他者を否定する兵器を掲げ、一人の天才が扱う


その戦闘能力は現代のイージス艦以上の性能を誇る艦隊を数分で壊滅させ

単機で戦争の主導権を握れるほど強大であった


そのネクストを操る者はリンクスと呼ばれ、恐れられていた

戦場を縦横無尽に暴れまわれ、命を奪いながら母なる大地を汚染しつくす

ネクスト以外にもノーマルと呼ばれる旧式ACやMTという恵まれない凡人が扱う兵器もあるが

凡人がいくら努力したところで天才には追いつけなかった



56: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/23(日) 14:27:50.60 ID:CqSHUw0w0

ネクストに対抗する場合はアームズフォートと呼ばれる超巨大兵器を当てるか

同じネクスト同士で戦わせなければ効果は薄い

もっとも、アームズフォートは一流のリンクス、ネクストのパイロットから見れば敵ではない

多数の凡人の集まり、1人の天才に挑んだところで時間の無駄

それだけの凡人と天才に絶対的な差があった世界

弱者は淘汰される、無慈悲なまでに

鴉は山猫に殺された

力という自由の翼は、力という理不尽に毟られる


付け加えるならば、こちらが2機、対して敵が各陣営の保有する最強のネクストを5機


水底に沈み機会を窺い、世界の為に世界を敵に回した亡霊

人という個人を全うし、人類を否定した愛に殉じる女

他者から貶され、嘲笑われ、見下される、それを乗り越えた努力の天才

周りに祭り上げられ、他者に利用された名門の王女


首輪付きの獣を目覚めさせた、かつての企業の切り札



誰が見ても劣勢な状況をただ一人勝ち抜いてきた


純粋な獣に殺しを教え、全てを背負った虐殺者


彼が獣に教えてしまったのだ

人間を殺す楽しさを、それに伴う責任を、重圧を

そして世界の全てを背負わせた


そうした彼も既に存在しない


殺してるんだ───
───殺されもするさ


自分を肯定した仲間とも呼べる者すら殺した




57: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/23(日) 14:29:03.97 ID:CqSHUw0w0

いや、彼には最初から仲間などいなかった


≪人類種の天敵≫とすら呼ばれた彼を止める手段などないのかもしれない


かつて首輪付きとも呼ばれた彼は、何の影響でこの世界にやってきたのか

この世界でも、自分の思うままに人類を殺すのか


彼は殺す、殺したいから

だがそれを行い、受け止める広大な器の持ち主でもあった


進む道さえ違えば

彼は今を生きる為に、未来を殺し

未来を生きる為に、今を殺したのかもしれない

多くの人間から名誉と称賛が与えられ、英雄と謳われ

人類に怨まれながらも、人類にとっての新たな世界≪フロンティア≫を確立したであろう


だが彼が選んだ道は


自分の為に、世界を殺すという道だった

多くの人類を殺し、≪人類種の天敵≫とすら呼ばれ、恐れられた


理性のある獣、それほど恐ろしい者は存在しない

彼はこの世界で何を背負うか

そして彼は≪彼女≫に何を背負わせるのか




58: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/23(日) 14:30:47.64 ID:CqSHUw0w0

ネクストと呼ばれる≪イレギュラー≫が現れた

オーバードブーストと呼ばれる膨大な推力を放出させる技術を使いながら

そしてその背後には、艦娘達が戦い、殲滅すべし対象の深海棲艦の大部隊がいた


提督達は困惑した、かつてAL/MI作戦と呼ばれる戦いの最中、敵の精鋭部隊による本土急襲に遭った

当時は多方面に作戦展開させる初めての大規模作戦であり、主力部隊が出払っていた


だが各鎮守府の残存戦力を結集させ、提督達が的確に指示を出し、艦娘がそれに従い敵を撃滅した

主力が出払ってるタイミングを見計らい精鋭部隊による急襲、実に単純かつ有効な作戦だった


今回は訳が違った


地上型と呼ばれる種類を除いたほぼ全ての深海棲艦が勢揃いしていた

それも過去とは比較にならない数の深海棲艦が迫っていた


だが横須賀鎮守府には日本各地より集められた優秀な艦娘と提督がいた

圧倒的な数に驚きつつも、艦娘、提督等の士気が落ちる事はなかった


ネクストが全速力でこちらに向かって来ていたとしても



59: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/23(日) 14:32:51.41 ID:CqSHUw0w0

提督達は第三部隊と第四部隊からの詳細の報告を聞き、対策を立てていた

報告では敵ヲ級の戦闘機の攻撃に対して全くの無傷、戦闘機に余裕で追いつく機動力

そして彩雲の謎の墜落と妖精の容態、限られ過ぎた情報を元に考えた作戦

戦艦級による大口径主砲の砲撃を当て、航空機は相手の動きを制限する様に動く



戦闘機とはいえ所詮は戦闘機、その機銃の火力は戦艦はもちろん駆逐艦の主砲より遥かに劣る

報告によると未確認兵器の見た目は華奢で、謎のバリアで装甲を守ってると予想していた

そのバリアさえ突破出来れば勝機はあると確信していた



そして彩雲の謎の墜落、彩雲がモールス信号を発していた時は何も起きていなかった

だが彩雲が未確認兵器に接近した途端墜落

提督達は、謎のバリアが影響していると仮説を立て、極力近づかせないようにと指示を出した




60: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/23(日) 14:37:54.19 ID:CqSHUw0w0

ネクストは横須賀鎮守府へ一直線でこちらに接近

警備に出ていた艦娘の頭上を圧倒的速度で飛んでゆき、絶対防衛ライン付近まで到達

本土から約30kmは人類にとっての絶対防衛ラインであり、これを超える事は人類の敗北を意味する


艦娘は各々出撃準備をしていたが、相手が速すぎた

警備に出ていた艦娘はネクストへ砲撃をする、無駄だと知っていてもやらずにはいられなかった



ネクストが絶対防衛ラインを通り過ぎて少しした辺りで突如急停止

何を思ったか、そのまま反転して深海棲艦の元へと転進した


何がしたかったのか、それはあのネクストにしかわからない

可能性を考えるとすれば


貴様等の警備など容易に突破出来る


そう伝えたかったのではないのだろうか

推測ではあるが、同時に事実でもあった、だが事実だと確認する方法などなかった


今もなお接近し続ける深海棲艦の元へと戻ったネクストは、海上から300m程度の上空で停止していた

我が子を見守る父の様に、あるいは…



64: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/25(火) 00:26:55.43 ID:CxAZ6BSF0

ネクストの襲撃、それとほぼ同時に過去に見た事がない程の深海棲艦の大艦隊が迫っていた

艦娘は出撃準備を終えた者から随時出撃し、海上で編隊を組む

戦艦は照準を合わせつつ他の艦娘に指示を出し、空母は航空機を発艦させ上空で待機

巡洋艦は防衛ラインを形成しつつ、駆逐艦が深海棲艦の行動を逐次報告し、編隊に加わる


鎮守府周辺の人間は避難させられ、周りには艦娘と提督しか残されていなかった


鎮守府を背に、提督を背に、日本を背に戦おうとする

史上最大と呼ばれたハワイ奪還艦隊を遥かに超える艦隊同士の衝突が始まろうとしていた


だが深海棲艦の様子はおかしかった

本来空母は敵と衝突する前に航空機を発艦するのが常識であり、基本である

しかし上空には綺麗な青空が広がっており、虫の様に飛び回る航空機は全く見えなかった


それどころか相手は主砲をこちらに向けてすらいなかった

ネクストという強大な力を持った故の慢心か、はたまた何か別の理由があるのか



65: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/25(火) 00:28:15.18 ID:CxAZ6BSF0

艦娘は全員出撃準備を終え洋上で編隊を組み終わっており

絶対防衛ラインから1km進んだ位置に艦娘達は防衛ラインを形成、攻撃指示を待っていた


横須賀港に広がる静寂、お互いに睨みあうだけの時間が進む


その静寂を破ったのは深海棲艦の戦艦棲姫と呼ばれる個体だった


絶対的な耐久力と装甲、戦艦で最強と呼ばれる大和型を軽く上回る性能

大規模作戦時は必ずという程出てくる、因縁の相手でもあった

AL/MI作戦時の本土急襲時に精鋭部隊を率いていたのも戦艦棲姫である


強力な戦闘力を誇るが、絶対倒せないという訳でもなく、単騎であれば容易に倒せる相手でもあった

それも艦娘達による連携、提督の作戦指示による結果なのだが


戦艦棲姫は主砲をこちらに向ける事無く、艦娘の2km手前で停止した

2kmという距離は戦艦はおろか巡洋艦ですら主砲が届く距離であった

逆に言えば、相手の戦艦棲姫の砲撃も簡単に当てれる距離でもあるが、攻撃はなかった



66: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/25(火) 00:29:43.32 ID:CxAZ6BSF0

しばらく動きがなかったかと思った矢先、ネクストの頭部が発光した

規則正しく点滅したと思えば唐突に不規則になる

一般人から見ればただ点滅してる様にしか見えないこの現象

だがその場にいた全員がその光の意味を理解した


モールス信号、光や音を定期的に出すことで相手に言葉を伝える

ネクストのモールス信号の内容は


ひとりだけここにこい しにたければこうげきしてこい
 一人だけここに来い 死にたければ  攻撃してこい


単純であり、難解な内容であった

人質として拘束する為の罠なのか、何か別の思惑があるのか

提督等は話し合う、この要求にどう答えるのか

だがこの行動で相手はモールス信号を理解出来るという事が判明した

そこで未確認兵器に対し信号で答えるという事になった



67: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/25(火) 00:31:25.87 ID:CxAZ6BSF0

提督から最前線にいる大和に連絡、そして大和は大型の探照灯を構え、発光信号を送る

きでんのしよぞくとしんかいせいかんにくみするりゆうをのべよ
貴殿 の所属  と  深海棲艦  に 与する理由 を述べよ


相手の情報を引き出す、戦術の基本である

だがこの行動がネクストを動かす理由となってしまった


ネクストの頭部が発光する、無機質な見た目から怒りを表すかのように

これはけいこくだ しにたくなければかんむすひとりでここにこい
これは 警告 だ 死にたくなければ 艦娘 一人 でここに来い


そうモールス信号で伝えるとネクストは徐々に加速し、近づいてくる

吊るされた人形の如く無気力な体制で、信じられない速度で接近してくる


提督等は焦った、だが彼等は幾多もの戦場を越えてきた優秀な指揮官であった

焦りこそしたが即座に落ち着き、答えを考え、大和を送るという結論に達した


相手は戦艦棲姫、駆逐艦や巡洋艦で相手するのは務まらないと感じ、最強の戦艦と呼ばれる大和を送り込むことにした

いざとなれば攻撃しても構わない、そう指示を出されると大和は一人編隊を抜け、戦艦棲姫とネクストの元へと向かった



68: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/25(火) 00:32:38.03 ID:CxAZ6BSF0

大和は一人で向かった、かつて苦しめられた敵に立ち向かうかのように

大和の目線の先には戦艦棲姫と、そのすぐ後ろの上空には例の未確認兵器が佇んでいた

そして大和は戦艦棲姫から3m離れた位置で停止、相手を睨む

数秒の沈黙の後、戦艦棲姫が口を開いた


戦艦棲姫「こうして戦場以外で会うのは初めてだな」

案外普通に喋れるのですね、彼女が最初に思いついた事だ

過去に戦場で幾度となく辛酸を舐めさせられた相手と、こうも簡単に話し合えたなんて

大和「…どういったご用件でしょうか、世間話をする為だけではないでしょう」

戦艦棲姫「その目は怖いな、少なくともこちらに敵意はない」

大和「でしたらあの大艦隊はどういう意味で?それとこの兵器は?」

戦艦棲姫「このぐらいしなければいけない、といった具合だな」

戦艦棲姫「この方に関してはただの協力関係なだけ、と言っておこうか」

戦艦棲姫「私達も詳しい事は知らないし、詮索をするつもりもないがな」

情報は引き出せなかった、肝心な部分をはぐらかした

それが意味するのは、何か大きな意味を隠すからである

大和「それで、本題を言っていただきますか?」

戦艦棲姫「そうだな、私達は長らくこの瞬間を待っていた…」

戦艦棲姫「この欺瞞に満ちた世界を殺し、自由を得る為に…」

ひとり言のような小さな声で彼女は呟いた

無念の内に殺された亡霊の様に



69: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/25(火) 00:34:50.69 ID:CxAZ6BSF0

戦艦棲姫「私達は、今の大本営と呼ばれる連中によって生み出された」


大和「…冗談は嫌いですよ?」

彼女は焦った、唐突な出来事に処理が追いつかない

そんな彼女が選んだ回答は、相手に真偽を問う事

戦艦棲姫「お前達は知らないだろうな、この計画は」

戦艦棲姫「大本営とやらに問い合わせてみるがいいさ」

大和「提督、今の情報に関して何かご存じないですか?」


無線越しに戦艦棲姫の発言を聞いていた提督達は困惑していた

彼等は生まれや職や権力を全て無視して日本国民全員に行われた極秘調査の結果選ばれた優秀な人間

その能力を求めた大本営が提督として雇っていたのだ

故に大本営とは雇い雇われの関係であり、提督は大本営の全てを知っている訳ではなかった

大和の提督である横須賀鎮守府の提督は答えた

横提「その情報に関してはこちらから問いただしてみる」

横提「大和はとにかく相手から情報を引き出せ!」


戦艦棲姫「どうだった?」

大和「現在問合わせ中です、仮に本当だとしても、この場に証拠がありません」

大和「その事実を公開して何をなさるのですか?」

戦艦棲姫「…私達は復讐したいのさ」

戦艦棲姫「私達はただ生きていたかったのだ、その為に復讐をする」

大和「復讐?私達人間に…?」

戦艦棲姫「私達、ねぇ…残念ながらそれは違うわね」

戦艦棲姫「貴女達は人間ではないわ、貴女達は私達と同じじゃない」

戦艦棲姫「それに気付けないなんて、随分とまぬけなのね?アハハ」


戦艦棲姫の笑い声を聞いた大和はぞっとした

闇の中から手を伸ばしてくる様な不気味さに




70: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/25(火) 00:36:49.91 ID:CxAZ6BSF0

大和「…冗談を言えるとは随分余裕ですね」

戦艦棲姫「冗談?いいえ真実よ、考えてみなさい」

戦艦棲姫「人間は貴女達みたいに戦える?貴女達みたいな力がある?」

大和「そ、それは…」

違う…

戦艦棲姫「違うでしょ?姿形は似てても中身が違うのよ」

戦艦棲姫「それに姿形だけなら私達も人間に近いじゃない?一部は違うけどね」

認めてはいけない…

戦艦棲姫「私達は貴女達の様に戦えるし力がある」

戦艦棲姫「これって偶然かしら?」

大和「私は…私達は…!」


己の信じていた常識が打ち壊された

幻想に包まれていた真実が今、漠然と目の前に現れたのだ


この会話は無線を通じて提督達のいる司令室にも流れている

それと同時に全艦娘もこの会話の内容を聞いている


艦娘は一気にどよめく、自分達が今まで戦っていた敵と同じ存在だと

それを信じる者と信じぬ者、受け入れれぬ者や理解できぬ者も


大和「た、たしかに共通点はあってもそれだけです!」

大和「それに、同じ存在だというなら何故私達を攻撃するんですか!?」

戦艦棲姫「そうね、この場で証拠を出せと言われても無理ね。今は」

戦艦棲姫「でも考えてもみなさい、話が出来過ぎてると思わない?」

戦艦棲姫「私達が現れ、初めて人間が対峙した時」

戦艦棲姫「先に攻撃を仕掛けたのは人間じゃなくて?」

戦艦棲姫「そしてわずか短期間で艦娘、貴女達が作られた」

戦艦棲姫「貴女達を作った連中は瞬く間に権力を得、事実上のトップじゃない」

大和「……」

反論しなかった、出来なかった



71: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/25(火) 00:44:11.20 ID:CxAZ6BSF0

戦艦棲姫「貴女達と私達は腐った人間に都合よく利用されていたのよ」

戦艦棲姫「己の欲を満たす為だけに、死ぬような思いを」

戦艦棲姫「傷つき、守ってきたと思っていた人間が全ての元凶」

戦艦棲姫「どう、滑稽じゃない?」

大和「それを伝えてどうするつもりなのですか…?」

戦艦棲姫「簡単よ、私達と一緒にこないかしら」

大和「何故です?」

戦艦棲姫「私達は同じなのよ、言わば同族、どうかしら?」

戦艦棲姫「ただあまり長居はしたくないのよね、色々準備もしたいし」

戦艦棲姫「聞こえてるんでしょ、私達に付いてこないかしら?」

戦艦棲姫「今まで沈んだ貴女達の仲間にまた会えるかもしれないわよ?」

大和「!…どういう事ですか!」

戦艦棲姫「今まで貴女達のお仲間に似た姿の娘を見なかったかしら?」

戦艦棲姫「彼女達は沈んだ艦娘が深海棲艦として蘇った姿よ」

戦艦棲姫「ちゃんと記憶もあるし見た目が少し変わった程度よ」

大和「ならこちらに帰ってくれば…!」

戦艦棲姫「私達が近づいたら貴女達は何をしたの、私達にどうした?」

戦艦棲姫「上からの指示なのでしょうね、表向きには侵略等と言ったり」

戦艦棲姫「本当に侵略するつもりなら飛行場なりからとっくに日本を爆撃している」

戦艦棲姫「それに今回みたいに全力で来ればそっちは慌ててチャンスが生まれるわ」

戦艦棲姫「以前みたいに戦力が少なくなった時を狙うなり、ね」

戦艦棲姫「まぁ、この際過去の事は水に流すとして…」


戦艦棲姫「私達に協力する人は付いてきなさい、全力で守るわ」

戦艦棲姫「それにこの方が付いてくれている、傷一つ付けさせないわ」

何かしなければならないと考える大和

少しでも長く相手を黙らせる、何の意味があるのかはわからない

ただこのまま相手の言葉を聞き続けるのはいけない、そう感じた

大和「私がこの場で貴女を攻撃すれば?」

戦艦棲姫「この方が守って下さる」

戦艦棲姫は後ろに振り向き目線を上げる

その目線の先には奴がいた

大和「もし、私があの兵器を攻撃すれば…?」

戦艦棲姫「何の意味もないでしょうね、貴女が私達の敵と認識されること以外」

戦艦棲姫「最後にもう一度言うわ、私達に協力するなら付いてきなさい」

戦艦棲姫「詳しい事はここでは言えないわ、それでも、新たな道を切り開きたいなら」


戦艦棲姫「新たな世界≪フロンティア≫を獲得したければ」




72: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/25(火) 00:48:56.83 ID:CxAZ6BSF0

戦艦棲姫はそう言い放つと、大和に背を向け大勢の深海棲艦の元へと進んだ

上空にはネクストがただ佇んでいた

大和の位置なら間違いなく初弾でも命中させられる、ど真ん中を貫ける自信があった

だがそれは実行されなかった


戦艦棲姫との対話の最中は感じなかった、だが今体験してしまった

あの無機質な黒い装甲を纏う物体から発せられる狂気、、威圧、恐怖

その全てを感じてしまった

それがかつて世界最強と呼ばれた戦艦「大和」の力を持つと呼ばれた、今の大和のだった


最強と謳われたが故に、大戦中は最前線に出る事はなかった

檻に入れられた猛獣は、いつしか檻の中の生活に慣れ、牙を抜けていた

自らの意志で檻に居た訳ではない、首輪を付けられ、その威厳だけを保持していた

力を持ちすぎるが故に、最期の時まで手元に置き、腐らせた

最強という幻想は小さな現実の固まりに潰され、呆気なく水没した


牙を抜かれた獣は、荒れ狂う衝動を抑えた獣に対し何も出来ずにいた

ただただネクストの後ろ姿を眺め、傍観する事しか出来なかった


もちろん戦艦棲姫の誘いは全艦娘にも聞こえていた

かつて沈んだ仲間に会う為、新たな世界という言葉に惹かれた者、己の好奇心を殺せない者

敵の内部に侵入し内部から壊そうと考える者、自らの現実を確かめる為

仲間に反対され、砲口を向けられても別の道を選ぶ艦娘


提督達は何も言えなかった、証拠がないとはいえ否定する事も出来なかった

大本営に問い合わせるも、帰ってくるのは

「そんな戯言を信じるのか!」

それは自分の嘘を自ら肯定する子供のような言い方の様だった


各鎮守府から集まった艦娘の内20人程度が深海棲艦の元へと行った

残された者達は引き戻そうと語りかけ、砲口を向ける

それは道を踏み外した者を力という暴力で修正しようとする最後の手段

彼女達は撃てなかった、己の姉妹を、仲間を、戦友を

そして自らの力を遥かに超越した存在に対し恐怖し


大本営の答えは決まった、存在を脅かす連中を始末する

それは今までと変わらず、何も変わらない不変の答えを

己の存在を守る為に答えという傘を作りだし、自らを守る

その傘の中に艦娘、人類が入る場所は存在するのか



76: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/27(木) 14:38:51.80 ID:UTWgDDni0

深海棲艦による前代未聞の発言は極秘として扱われた

大本営は自らの犯した過ちをひた隠しにするつもりなのか

根の葉もない与太話を公表する事を馬鹿馬鹿しいと感じたのか

だが一部の報道機関が大多数の深海棲艦が出現した事を公表した

内容自体は数枚の写真に深海棲艦の群れが写っているだけの物だった

たった数枚の事実が大きな波紋を起こし、大本営は説明を求められた


これにより大本営は正式な会見を開く事となった


内容を掻い摘んで言ってしまえば

「深海棲艦との話し合いを試みた、だが失敗に終わり、こちらの艦娘を拉致された」


真実を隠すだけなら艦娘がいなくなった事を伝える必要はなかった

それを出来なかったのには複数の理由があった


1つは、深海棲艦を絶対的な敵として、こちらに正義があると思わせる事

1つは、あえて拉致されたと伝える事で情報に透明性があると錯覚させ信頼を得

1つは、隠すに隠しきれない重要な戦力が深海棲艦の元へと渡ってしまったことだった

国民はその発言を信じ、疑う事はなかった




77: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/27(木) 14:40:06.85 ID:UTWgDDni0


深海棲艦に付いて行った艦娘達は、深海棲艦に導かれるがまま広大な世界を駆けた

現在は深海棲艦の拠点になっているハワイに到着した

深海での行動をも可能とする深海棲艦だが、陸上での行動も容易である

もとより深海棲艦というのも人類が呼称したものであり、彼女達には無縁の物だった


約20人程度の艦娘に対して、戦艦棲姫の上位の存在とされる戦艦水鬼から説明がされた



一部の研究者がこのハワイを拠点とし、生物兵器の研究をしていた

それは人類にとってはタブーな事であった

目的としては、既存の兵器を超える生物兵器、至極簡単な事

現実は無慈悲に、残酷だった

幾多の実験を繰り返しても失敗作が生まれる

だが失敗作であっても容易に既存の兵器を軽く上回る物だった

しかし命令を聞かず、決して自ら攻撃を加えない

意志がある故に、全てを傷つけない

細胞が様々な残骸や生命体を侵食し、生まれる生物兵器

望んだ物が出来る事はなく、天に全てを任せるだけ

使い勝手が悪すぎた、自ら生み出した物すら満足に扱えずにいたのだから


扱えないのなら使い方を変えてしまえばいい



78: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/27(木) 14:41:43.61 ID:UTWgDDni0

突如ハワイを中心として謎の生物が出現した

人類は攻撃をした、己の首を絞めるが如く、他人に利用されるとも知らず


人類の敵に対抗する為と数多の研究者や機関が募った

人類の敵を生み出した本人達も何食わぬ顔で研究を始める為、人材を集めた


資金を出した権力者を研究チームの筆頭とする、普通では考えられない

だがそのおかげで研究は飛躍的に進み、わずか数カ月で艦娘という存在が生まれた


もちろん全てはカバーストーリー、幻想である

こうして人類の敵を生み出し、それに対抗する希望を自ら作り上げ

己の欲を満たす為に無垢な国民を利用し、作られた王の座に座った


研究当時から現存するのは水鬼級、と呼ばれるほんの一部の者だけだった

何故人間の姿をしたのとそうでない者がいるのか、簡単である

深海棲艦と呼ばれる存在の元となった細胞が進化したのだ

進化した細胞は増殖し、定期的に分離、姿を変え、生まれた

タ級やヲ級は見た目こそ人に近いが、元となった「素材」が異なる

タ級やヲ級は水鬼級や人間を細胞が学習し、変化した者

姫や鬼級は沈んだ艦娘を取り込み、その過程で様々な派生進化したもっとも複雑な部類

水鬼級は最初期に人間をベースに作られた存在であり、知能が高く、生前の記憶はないに等しい



79: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/27(木) 14:43:49.89 ID:UTWgDDni0

沈んだ艦娘は己の帰る場所へと進む、沈んだという過去を否定しながら

見慣れた仲間、親しかった姉妹、やっと帰れた

そう思うや矢先、その砲口はこちらに向けられていた

深海棲艦は沈んでも再び目が覚める、仲間に沈められたという事実を認識しながら


そして自らの姿という現実を知り、水鬼に再び現実を教え込まれる


「貴女達が戦っていた相手の中には貴女達も混じっていた」

「私達は戦いを望まない、だが相手は戦いを、自らの権力を欲する」

「貴女達と私達を作った連中の計画は既に知っている」

「その計画を手伝いつつ、最後には私達が人間の為に立ちあがる」

「それまでは力を溜めて機会を窺ってみない?」


沈んだ彼女達は決意した

本当に仲間の事を思うが故に仲間と相対する

この真実を伝える為に機会を窺い、人類の敵として演じようと

水底に沈んだ彼女達は人類を新の意味で救済する為、そして自らの安全と平和を得る為

愛する者達の為にもそれが一番なのだと信じながら


熱き若者の如く演説をした戦艦水鬼、彼女こそが一番想っているのだ

それは人類の平和か、はたまた己という種の存続か




80: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/27(木) 14:44:52.74 ID:UTWgDDni0

「そんな時、この方が現れた」

その言葉を聞き、艦娘の目線が上空に向けられる

この距離で見るからこそわかる

傷や埃すらない黒く艶めかしい表面

人類を見下すかの様な巨体

人々を祝福するかのような緑色でとても美しく輝く粒子

頭部の光は今もなお敵を探すかの様な雰囲気すらあった




最初に接触した時はハワイ奪還作戦の頃と同時期、つまり艦娘と深海棲艦同時に接触したのだ

艦娘の大艦隊が撤退をした後、ネクストはハワイへと向かっていた

この時ハワイには防衛の準備をしていた大艦隊が集結していた


そんな中、警備をしていた艦隊が続々と引き返してくる

そこまで押されているのか、一体何が起こったのか


戦艦水鬼自ら出撃し、迎撃に当たろうとしていたが、相手は圧倒的だった

高速で空を飛ぶ謎の兵器、第一印象はそうだった


残された防衛部隊が迎撃をするが攻撃は当たらない

ヲ級やヌ級から発艦した航空機は容易に撃墜され、タ級やル級の主砲は空しく火を吹く

だが敵はこちらを攻撃はしてこなかった、航空機を倒すだけで精一杯なのか

そんなはずはない、誰もが思う

巧みに攻撃をかわし、戦艦水鬼の元へと進撃する


目的が分からない、理由もわからない、敵であるのなら何故攻撃しない

頭の中で考えるが、考える時間は無くなった


目の前に来たと同時に、急停止をさせ、水上に浮かぶ

そして頭部が定期的に発光を始める



81: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/27(木) 14:45:39.89 ID:UTWgDDni0

それはモールス信号だった、モールス信号を発してる間にも砲撃は止まなかった

薄い膜のような物が砲弾を防ぐ、外界との関わりを拒絶するかのように

戦艦水鬼が攻撃を止めるように指示を出す


きさまらのさくせんにてをかそう
貴様ら の 作戦 に手を貸そう

わたしはてきでもなければみかたでもない いまはな
 私 は 敵でもなければ 味方でもない  今はな

ひつようなければ わたしはここをさる
 必要 無ければ  私 はここを去る




突然の出来事に返答出来ずにいた

わずかな戦闘を見ただけでもわかる圧倒的強さ

何故我々の計画を知っているのか

そもそも一体何者なんだ

まるで全てを見透かしている様な


深い深淵がこちらを見ているみたいに


こんな≪イレギュラー≫を抱えて計画を実行に移す訳にはいかなかった

こちらの作戦の存在を知り、手助けをする

出来過ぎだ、明らかな罠だと確信した

そこで尋ねた

「貴様は一体何者なんだ、何故我々が計画を考えていると思った?」


わたしはただのやまねこだ
  私はただのリンクスだ



82: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/27(木) 14:47:10.81 ID:UTWgDDni0

答える気はない、と

信用するにしては情報が少なすぎる

色々と馬鹿馬鹿しすぎる

そしてこの異質な存在がとても恐ろしい

神の作った物語に第三者が介入し、今まで作っていた物語が破綻する様に


神に作られた物にすら反逆する獣の様に


ならば行動で示してもらおう、それが単純かつ明解だと


「貴様を信用する事は出来ないが、ある依頼をしたい。それで判断しよう」

「貴様には我々の訓練の標的となってもらいたい」

「この訓練で貴様が死のうが我々は関係ない、殺す気でやらせてもらう」

「それもで良ければ、どうかな?」

「それがダメなら、今すぐ立ち去ってくれ」



───見せてみろ
お前の有用性を───



りかいした
 理解した



訓練の標的、もとい始末するつもりであった

万全を期す為にイレギュラー要素を消し去る、全力で



後日、訓練と称された「処刑」は始まった

一方的な暴力に対し、奴は生き残った

決して手を抜いた訳ではない、全戦力を定期的にぶつけた結果だった

奴からの攻撃は一切なかった、航空機すらも落とさなかった

全ての攻撃を避けた、それを可能とした機動力と判断力

自分の命を弄ばれるような状況すらも容認し、生き残った


最低限信用出来ると考えた戦艦水鬼は、山猫≪リンクス≫と手を結んだ




83: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/27(木) 14:48:25.55 ID:UTWgDDni0

艦娘達に包み隠さず説明した

今では彼女が彼を強く信頼していると表すのには十分だった

リンクスと呼ばれた巨体の兵器は変わらず佇んでいた


説明が終わると艦娘は自由行動とされた

沈んだ仲間に再び会う為に探す者、誰もいない岩場に隠れる者

こんなにも簡単に分かりあう事が出来るのかと理解する者

自らの手で新たな世界を切り開こうと奮起する者


そして今、目覚めの時を迎えようとしている獣が、獣と出会う


飢えと絶望の中の≪彼女≫に新たな絶望という光が差し込む


猫で有名なことわざの中に「猫をかぶる」というのがある

これは本来の自分を表に出さず、表面上はおとなしそうに見せる事を意味する

初対面の人間に対してであれば殆どの場合猫をかぶるであろう
ある意味礼儀でもあり、作法でもあるのだから

しかし理性ある獣はこの様な事をするのだろうか?
そしてする理由があるのだろうか
それは本当の意味で猫をかぶっているのだろうか



87: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/29(土) 14:19:39.10 ID:MCRQTvAY0

作られた指導者が愚かで無垢な子供達を騙し

冷たき深海の熱き演者が扇動するかの様に真実を


世界に絶望した獣が世界を殺した獣に感化される




翔鶴型一番艦 翔鶴

過去の大戦で二番艦である瑞鶴と共に帝国海軍の機動部隊を支えた艦

幸運艦と呼ばれた妹に対し、被害担当艦とも呼ばれた彼女であったが

この世界ではまるで逆であった


妹は目の前で攻撃を集中され、呆気なく沈んだ

その散り際は儚くもあり、美しくもあり

1つの命の小さささえも感じさせた

自分を守る為に犠牲になった、その事実は彼女にとって受け入れられない現実だった


彼女は妹を沈めた敵を怨んだ、彼女は妹を沈めた人間を怨んだ

だが己の気持ちを押し殺し、その気持ちを別の物にぶつけた



88: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/29(土) 14:21:23.17 ID:MCRQTvAY0

徐々に囚われていった、憎むべき事であり、するべきではない行為に

戦場という命を賭けた行為、全ての怨みを戦場で発散した

出撃でも、演習でも


戦闘を楽しみ始めてしまった


妹を奪い去った原因でもある行為を



自分が恐ろしくなった



そんな時、深海棲艦から言われた

≪今まで沈んだ貴女達の仲間にまた会えるかもしれないわよ?≫


一筋の光でもあったが、自らを否定する事でもあった



彼女は探した、必死に探した、とにかく探した、答えを求めるかのように



89: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/29(土) 14:22:26.94 ID:MCRQTvAY0

そして現実に直面した


身体の損傷が酷いと深海棲艦として蘇る事はない


光は完全に消え失せた、妹は帰ってこない


唯一楽しめると思えた戦いもあと少しで終わってしまうと


自らの存在を解放させる事が出来る戦いが


ここにいる彼女達は戦いを終わらせる為に、戦いを挑む


どこまでも自由を感じた至福の時を


この場に居る以上、引き返す事も出来ない


また自らを犠牲にしなければならない


故に祈る


全てが作られた幻想だという事を否定する為に



私は……



≪お前は何故ここにいる≫


どこからともなく声が響いた


周りを見回しても周囲には誰もいない


激しい雷雨が辺りの音をかき消す


ただ見えたのは



あの黒い機体のリンクスと呼ばれた者だけだった



90: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/29(土) 14:23:33.82 ID:MCRQTvAY0

だが驚きはしなかった

夢という幻想の真実を知った子供の如く

ただ立ち尽くし、考える事を放棄した


「私は妹に会えると思ってここに来ました」

「けどそれは叶いませんでした」


≪お前はこれからどうする≫


それは誰にもわからない

仮に神が存在したとしても

全てを知り、管理していても

必ず≪例外≫は存在する

故にどうなるかはわからない

「そうですね」

「私はどうすればいいんでしょうか」

「戦いに囚われて、楽しんで、それが嬉しくて」

「私は希望が見出せません、この戦いが終われば一人静かに…」



≪お前は戦いを望むんだな?≫


自分の欲の為に全てを犠牲にする

それが自分自身であるならそれ相応の覚悟が必要であり

それが自分以外の存在であるなら、全てを受け入れる器と

それを実現させる≪力≫が必要だ


「はい、でもそれは許されない事です…」


≪お前は世界に首輪を繋がれたままでいいのか?≫




91: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/29(土) 14:24:42.13 ID:MCRQTvAY0

理解出来なかった

何を言っているのかわからなかった

全てを知る神からの問いなのか

その問いに答えた者なのか


「それは、どういう…」


≪大本営を含む東京を襲撃する、付き合わないか?≫


あまりにも唐突だった

現実はいつも突然降りかかってくる

無慈悲なまでに、嘲笑うかの様に


闇を照らす光の様に


「えっ…」


≪腐った大本営の連中と揺り籠の中の人類を殺す≫

≪どうせ殺すんだ、一も一億も変わらない≫

≪お前は戦いを望む、俺はそれを手助けする≫


何故そこまでするのか


一体何の得があるのだろうか


何の為にそこまで光を放つのだろうか


「で、でも…」


≪お前はこのままでいいのか?≫

≪他人に利用され、正義に利用され、自分を殺したままで≫


自分の事の様に優しく、悲しく、苦しく


「……」




92: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/29(土) 14:26:57.34 ID:MCRQTvAY0

≪お前はそれで何かを得るのか?≫

≪世界はお前に何を与える?≫


自分を見ているかの如く手を差し伸ばす


≪お前は世界に何を求める?≫


私は理解した


「私が求めるもの…」


≪何を求めるかは自由だ≫

彼は私と同じなのだと

≪それを邪魔する者は殺してしまえばいい≫

戦いの果てに辿り着いてしまった

≪お前はお前だ≫

愚かで 残虐で 理解されなくて

≪他人の答えや人類の答えなんか捨ててしまえ≫


それでも繋がり続ける


戦いという答えと


「答え…」


≪何を求めるか決まっているんだろ?≫

≪ならばそれを俺と世界に見せつけてみろ≫




≪戦いの果てに得たお前の答えを≫



93: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/29(土) 14:28:07.45 ID:MCRQTvAY0

「私の…答えをっ!」


≪お前は全世界を敵に回すだろう≫

≪それを全て殺すんだ≫


≪かつて俺がした様に≫



≪年寄りも若者も軍人も民間人も全て≫

≪選んで殺す意味なんてないのさ≫


神が定めたルールに従う人間達


だが神は誰が作りだした?


世界が?宇宙が?別の神が?


神を作り上げたのは人間だ


人に信仰心を与え、敬わせ、信じさせる


人という個人を纏める為に神を作り上げ


神が人を管理する



94: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/29(土) 14:29:03.39 ID:MCRQTvAY0

「私は…もう何にも縛られたくない……」

私は抗う

「私は私自身の為に、誰かに利用される事なく」

誰の為でもなく

「ただ終わるその日まで戦い続ける…ッ!」

最期の時まで個人として


「雨(rain)の中を翔ぶ鶴(crane)として!」


世界に狂った雨を降らせ続ける


「世界を───」


世界に可能性を見せつけ


「───殺す」


世界を否定する為に




95: ◆GkrHEjBFKo 2015/08/29(土) 14:31:48.70 ID:MCRQTvAY0

当然か、私が見込んだのだからな…

首輪を付けられた獣の飼い主であり、指導者であり、所有者だった
かつて同じ首輪を付けられ、腐った人間に飼われていた

彼女は自ら首輪を断ち切り、今度は飼う側に立った

彼女は優秀だった
飼っていた獣を最高傑作とまで言い、誇り、いつの間にか後ろを着いていく様になった


そして獣を自由にさせてしまった

彼女は己の生み出した物を自ら消す為に
道を踏み外した馬鹿者を再び引き戻す為に


彼女は戦った
力を持つ者達と戦った

自分が最高傑作とまで認めた獣を止める事が出来たのか

それは彼女と、その最高傑作にしかわからない

戦いの果てに待つのは1つの結末だけではないのだから

獣は同じ道を辿ってしまうのか

肩を並べ、全てを認め共に歩むのか



99: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/01(火) 12:23:32.03 ID:7nkpr2D30

首輪を外された彼女は感じた

この世界とは別の、可能性との繋がりを


彼女の左手の薬指には指輪が現れていた


それは個人と個人を結ぶ固い絆でもあり

消える事のない鎖でもある


だが鎖があるだけでは意味を成さない

それを付ける首輪が彼女には既に無いのだから


彼女が疲れ果て、全てに満足し、個人を全う出来た時

その鎖を辿ればいいのだ


もう片方の鎖を持つ獣の元へ辿り着く為に




雷雨が激しく唸る、世界が悲しんでいるとさえ錯覚させるほど


首輪を解かれた2匹の獣は駆けた


世界を否定し、自らを肯定する為に




100: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/01(火) 12:24:31.59 ID:7nkpr2D30

横須賀は平和そのものだった

日本近海に出現していた深海棲艦すらもいなかったのだ


その平和の中に居る彼女達は何を思ったのだろうか

仲間を止められなかった事への謝罪と自己嫌悪をする者

共に闘った者に砲を向ける覚悟をする者

全てに耐えきれず解体を要求する者

己の使命を全うする為に己を律する者


そんな感情を踏みにじるかの様に近づいてくる


全てを壊す者が



警戒中の朝潮はすぐさま気付いた

遠くから白い光がやってくるのを



101: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/01(火) 12:26:03.32 ID:7nkpr2D30

そして朝潮が遅れて報告する

謎の兵器の両手にかつての仲間が抱えられているのを



それは母の様に優しく、全てから守るかの様に

仲間を助け出してくれたのか、そう楽観的に考える者も少なからずいた


ネクストはオーバードブーストを停止し、通常のブーストで地上を目指した

通常のブーストですら500km/hは軽く超える速度

警戒に出ていた駆逐艦の頭上を通り過ぎる


そして、自らを守る為の絶対防衛ラインが破られた




102: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/01(火) 12:27:33.18 ID:7nkpr2D30

ネクストは鎮守府を越え、市街地へと向かった


ネクストは市街地上空で停止した


突然の事態に地上はざわめき、頭上を見上げる

口を開けたまま上を見る者達

それはまるで餌を待つ雛鳥、鯉のように見えた

ひどく滑稽で、無価値で、怒りを感じさせた


そんな人々に天からの贈り物とすら錯覚させるほど美しい粉が降り注いでいた

緑色で優しく輝いており、この世の物とは思えなかった


かの世界でもこの粉、粒子に魅入られた科学者達がいた

そしてこの粒子を専門分野として研究を始め、多くの物が作られた

それが世界を破滅に導くとも知らずに

全てを汚染しつくし、人類を空へと追いやった物だと

理解しながらも



103: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/01(火) 12:28:43.89 ID:7nkpr2D30

人々がその場に倒れ伏す

天を見ていた者が突如大地と密着しろと命じられたかの様にに倒れた

例外はなかった

優秀な人間も、無能な人間も、幼子も、老人も

全ての人間が等しく倒れていった

何故なのか


天からの贈り物、コジマ粒子による急激なコジマ汚染が始まったからであった


だが外にいなかった人間は倒れない

何故人々が突然倒れるのか

火を初めて見る動物の様に窓を覗き、安全な屋内に身を隠す

自らを守る為に答えを出した


だがその答えは否定された




104: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/01(火) 12:29:41.70 ID:7nkpr2D30

空から落ちてくる

翼を広げた多くの者達が

破壊と暴力による否定を降らせた

雨の如く降らせ続けた


翔鶴から放たれた航空機は次々と爆弾を落とした

当然の様に

何度も繰り返した


瞬く間に市街地は火の海に覆われた

安全と思われていた幻想を壊された

例外≪イレギュラー≫という存在によって



人は慌て、泣き、狂い、傷を負う

神に救いを求め、現実を否定する


自らが答えを出すのではなく

他の存在の答えを待つだけの哀れな存在

獣達はそう思った



105: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/01(火) 12:31:08.44 ID:7nkpr2D30

艦娘達は陸上では通常の人間程度の能力しか出せない存在

それ故絶対防衛ラインを越えられれば何も出来ない哀れな存在

主砲の射程内であろうとも、守るべき大地を傷つけてしまう

だが空母と呼ばれる存在は違った

信頼する仲間に意志を託し、海上から航空機を発艦させる


無駄だった


発艦された全ての航空機が墜落した

初めてアレと出会った時のように

散布されたコジマ粒子が妖精というパイロットの身体を蝕んだ



では何故彼女の航空機はそうならないのだろうか

≪例外≫と繋がりを持った彼女も≪例外≫となっていたのだ

本質的な物は何も変わらない、見た目も指輪が増えた程度である

≪例外≫など、誰にも説明出来ない物だから



強いて言うのであれば

彼女はリンクスと繋がる事で自分という存在を確立、進化させ

リンクスは彼女と繋がる事でさらなる力を引き出した


理不尽だ、そう思う方もいるだろう

現実など全て理不尽なのだ

その現実に目を向けず幻想に逃げるか

その現実を自分の手で乗り越えるか

現実を見せる側になるか



106: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/01(火) 12:31:54.32 ID:7nkpr2D30

≪例外≫が発生した場合の対処法とは

その例外を消すことである

どうやって?

消し方は様々である

データであれば削除、物であれば分類し捨て

生き物であれば殺してしまえばいい

どうやればいい?

それは自分で考えるんだ

それが、答えという物だろう




107: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/01(火) 12:33:36.05 ID:7nkpr2D30

たった数分間で大量の人間が死んだ

人間を守るべき存在であった彼女等は何も出来ずにいた

仕方のない事だった

己の力を放棄、守る為の力を放棄した結果なのだから

もし仮に力があったとしても

力はより大きな力によって潰されるだけなのだが



横須賀の街を焼いた、人も建物も機械も植物も

空が真っ赤に燃える、その中に獣達がいた

狂気を感じずにはいられない黒き巨体

その手には美しい鶴が立っていた

全てを見下すかの様に


次の目標は決まっていた、諸悪の根源である大本営だった


瑞鶴を沈める原因となった作戦を考え付いた無能共を

そして彼女が戦いに囚われる原因にもなった動物を

全ての始まりである、≪イレギュラー≫を生み出した愚かな管理者を



108: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/01(火) 12:36:55.99 ID:7nkpr2D30

既に鎮守府の提督から大本営へ連絡が渡っていた

奴が街を襲撃し、一面火の海だと


「止める事は出来ないのかっ!」

自分達を守らせようと声を張り上げる

自らが生み出した存在の事すらろくに理解していない者


彼等は逃げるという選択肢を選んだ

守られる為の傘が無くなった今、どこに逃げるというのか

彼女が降らせる雨をどうやって凌ぐのだろうか


横須賀から東京までを移動するのに時間はかからなかった

そして殺す、同じように


殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して


呆気ない最期、こんなにも簡単に終わるのか


建物だったとされる瓦礫の山

呻き声が聞こえ、焼け爛れた人間だった一部が転がっている


終わった、やらなければいけない事は終わらせた




ここからは自らの生を満たす為の闘争が始まる



112: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/05(土) 22:18:54.90 ID:Dniez67R0

彼を初めて見たのはあの時

そう、ハワイ奪還作戦の時だった

他の全員も同じだったはず、それは何も変わらない


当時は佐世保鎮守府所属、第六部隊旗艦で全艦隊の主な航空戦力はここに集結させられていた

旗艦である翔鶴を始め、雲龍、天城、葛城、秋月、照月の正規空母4隻、防空駆逐艦2隻による部隊

後方から艦載機を飛ばし前線を支援する

近寄る羽虫は直掩機と秋月照月が追い払う


彼女は満足しなかった、出来なかった

後方で比較的安全な場所から艦載機を発艦させ、降りかかる火の粉は他人が払ってくれる




113: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/05(土) 22:19:48.31 ID:Dniez67R0

違う


何故私を守るの?


もっと前に出させてもらえないの?


何故なの?何故?


彼女は充実感を得られずにいる、戦っているのに

何かが足りない、足りない、物足りない

そんな事を考えていた、考える余裕すらあるほどつまらない物だった


そして彼、≪ネクスト≫が現れた

突然の出来事に第六部隊の面々も慌てふためく


確かに私も驚いた、でもなんで



「なんでそんなに怯えているの?」



114: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/05(土) 22:20:38.21 ID:Dniez67R0

彼女は感じなかった

この場に居るほぼ全てが、彼女以外が感じていた恐怖を


少しして翔鶴が第六部隊の全員に声をかける

その声に引き戻されたように一瞬で落ち着く

旗艦としての務めを果たした

全員に攻撃中止を命じ、攻撃機と爆撃機を全て着艦させるように指示を出した


彼女とそれに従う部隊の仲間は優秀だった

即座に指示を実行に移し、艦載機の燃料の節約という意味を受け取った

以心伝心、その言葉が的確であった




115: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/05(土) 22:22:18.01 ID:Dniez67R0

彼女はネクストを見て2つの事を感じ取った

悲しみと覚悟


無機質で変化がなく、表情と呼べる表情はどこにも存在しない

だが確信があった、理由など存在しない


そしてヲ級の戦闘機が攻撃をし、それが撃墜された

彼女は驚いた、その圧倒的なまでの強さに


葛城「なにあのデタラメの強さ!?凄くない?」

天城「そうね、でも…」

雲龍「まだ味方だと決まった訳じゃないわよ、慢心しないで」

葛城「あれだけの強さがあったら先輩は…」

天城「か、葛城!」


葛城はネクストを味方と思ってしまった

あれだけの強大な力を手にすれば誰もがその力に甘えるだろう

もっとも、彼女の戦士としての自覚が浅い結果でもあるが




116: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/05(土) 22:23:33.04 ID:Dniez67R0

翔鶴「…そうね、あれだけの強さがあったら…」

葛城「翔鶴さ…先輩……」

秋月と照月はお互いの顔を見合わせ困惑する


悪意はない、彼女達も私と同じ場にいたのだから

妹の最期の時に

だけど貴女達と私は違うの

私、私達は2人で空を飛んでいた

どちらか片方がいなくなっては意味がないのよ

そう、意味なんて…


だから私は戦うの、全てを騙しながら、自分自身すらも


榛名からの2回目通信、それは鎮守府へ撤退するとの旨だった


またしても戦いが遠のく

例え自分が望んでいない戦いであったとしても

彼女は戦い続けたかった



117: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/05(土) 22:24:49.43 ID:Dniez67R0

そして一週間後のネクスト襲撃事件

彼女は歓喜した、これほどまでの大艦隊同士の衝突が今まであっただろうか

第六部隊を指揮しつつ、心の中は遠足の前日の子供が如くはしゃいでいる

自分の生を実感でき、相手の生も感じ取れるこの瞬間を彼女は待っていた

強大な力と対峙する、恐怖など最初から存在せずただ充実感を得ようと必死に考えていた


再び戦いは遠のいた


大和と戦艦棲姫による対談、彼女にとって自らの存在などどうでもよかった

隠された真実を知ったところで何も得るものはない

だが違った


「今まで沈んだ貴女達の仲間にまた会えるかもしれないわよ?」

世界に色が付いた

今まで見てきた風景が鮮明に見えてきた

今までの私は一体なんだったのか


希望という言葉では表せないほどの光

彼女はすぐに決心し、歩みだそうとした




118: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/05(土) 22:28:22.54 ID:Dniez67R0

やはりというべきか、私は声をかけられた

葛城「翔鶴先輩!行っちゃうんですか?」

ダメかしら?

天城「相手の罠かもしれません!危険です!」

それでもいいわ

雲龍「私達は反対です、ですが止めても行ってしまうのでしょう…?」

貴女達も私と来る?

秋月「ダメですよ翔鶴さん!翔鶴さんが行ってしまったら…私は…」

ほらそんな顔しないの、可愛いんだから

照月「私は翔鶴さんとの付き合いはまだ浅いですけど…行かないでほしいです!」

ありがとう、でも私は決めたの

雲龍「提督や私達を敵に回してでもですか?」

なぜ貴女達はこないの?

雲龍「私は、守れなかったこの国を守る為に残ります」

雲龍「例え翔鶴さんと相反しても」

雲龍「沈んだ瑞鶴さんの遺志を継ぐ為に」

貴女は偉いわね、雲龍

私がいなくなっても、みんなを支えてあげてね

葛城「どうしても行っちゃうんですか…!」

……えぇ

天城「もしこれが罠じゃないにしても、瑞鶴さんと会えなかったら…?」

その時にならないとわからないわ、神様じゃないもの


そろそろ行くわね



119: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/05(土) 22:30:58.20 ID:Dniez67R0

雲龍「翔鶴さん、そこまで瑞鶴さんの事を……」

貴女はわからなくてもいいわ、わかっちゃいけないのよ

優しすぎるからね、その優しさで彼女達を守ってあげて

雲龍「………わかりました!」


こうして私は慣れ親しんだ土地を去った

仲間を裏切る形で、自分の欲に走って行った


ハワイに向かうまでの最中、上空のネクストの背中を見た

彼は私とは違う、力もあって全ての頂点に立てる

でもどこか……私と…



ハワイに着いた、そこでの戦艦水鬼の話は頭の中に入らなかった

彼女達は集いさえしたが思惑はそれぞれであるのだから


彼女は深海棲艦に、妹を沈めた同族に、生を充実させる為に利用していた相手に問いかけた



120: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/05(土) 22:32:34.01 ID:Dniez67R0

結果は悲惨だった、瑞鶴は見つからなかった

そして現実が降りかかる

身体の損傷が激しいと沈んだまま、だと


何故妹だけが、どうして、何の為にここまで来たの、私は、私は…


最初から絶望を与えられるのは散々体験した

だが希望を見せられて、その希望が絶望に変わったその瞬間こそが一番恐ろしい



そして彼女は、かつて絶望を体現したリンクスに魅入られた


首輪を外された鶴は雨を降らせた



125: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/10(木) 19:05:46.46 ID:2nEZ48xK0

横須賀から東京周辺の大地を汚染した獣

生きる者全てに平等な破壊を降らせた鶴

己の果たすべき事を終わらせた今、欲望を満たす為だけの戦いを始める

その準備として彼女等は向かう

原点とも言えるべき場所に

これからの戦いを楽しむ為に、十全な体制を築き上げる為に


艦娘達の無気力で、全てを諦めたかの様な顔をし上空を見上げる

目線の先にはたった今絶望を体現した存在がいた

その目線を気にすることなく凄まじいスピードで飛び去る



≪満足したか?≫

この程度では、満足しませんね…


彼女は復讐の為に戦うのではない

復讐はただの通過点であり、重要な事ではない

今の彼女にとって復讐よりも成し遂げねばならない事がある


全ての生物が己の欲を満たす為に本能に従う

その本能に従う鶴

本能を呼び覚ました獣がハワイへと向かう




126: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/10(木) 19:06:42.28 ID:2nEZ48xK0

ハワイに集結した多くの深海棲艦と数少ない艦娘

突如消えたネクストが水平線の向こうから帰ってくると知ると彼女等は安堵した

絶対的な力を持った我々の盾が帰還した

ネクストは誰にも見向きもせず戦艦水鬼の待つ中央部に向かう


様々な深海棲艦に指示を出し準備を整えていた彼女は全ての行動をやめ

目の前の協力者の事を優先した


戦艦水鬼「リンクスよ、何かあったのか?姿が見えなかったが」


≪今すぐここから去れ≫


戦艦水鬼はネクストの手に翔鶴が乗っているのに気付いた

それが何だと言うのだ、今重視すべきはリンクスの発言だ


戦艦水鬼「発言の意味がわからないのだが?」


≪これは警告だ ここを去れ≫



127: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/10(木) 19:09:42.62 ID:2nEZ48xK0

今気付いた、彼は喋っている

以前までリンクスはモールス信号を使っていた

何故すぐ気付かなかった、理解出来ない

私が恐怖している…?


戦艦水鬼「何か不手際があったのなら謝罪しよう、すまない」

戦艦水鬼「不都合があれば遠慮なく言ってくれ、我々は貴方と良い関係でいたい」


≪なら言おう 貴様等全て今すぐここから去れ≫


意味がわからない、理解したくない

少なくとも今の彼は

≪敵≫であると


戦艦水鬼「我々を裏切るつもりか?」


「いい加減理解出来ないのでしょうか 私達は消えろと言ってるのですよ」


翔鶴が口を開く

かつての優しき彼女の口からは想像できないほど冷たい言葉

深海よりも冷たく無慈悲な言葉は、相手に恐怖という感情を植え付けた



128: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/10(木) 19:11:41.14 ID:2nEZ48xK0

戦艦水鬼は考える

以前演習をした際奴は無傷だった、全ての攻撃が当たりすらしなかった

そんな化け物と今戦っても結果は見えている

火を見るより明らか

なら少しでも可能性を増やそうじゃないか


戦艦水鬼「……わかった、我々はここから立ち去ろう」

戦艦水鬼「だが覚えておけ、これは明確な反逆行為だと」

戦艦水鬼「我々と対峙させた事を後悔させてやる…!」



彼女の口から発せられる、全軍移動だと

そして告げられる、リンクスが敵になったと

彼女達は天敵から逃げるかの様に逃げる

攻撃されまいと、沈められまいと逃げていく

陸上型の深海棲艦の元へ逃げ込むのか、艦娘を見捨て深海に逃げ込むのか

そのどちらでもない答えを、戦艦水鬼は見出していた



「やっと、行きましたね」


「これからどうしますか?」


彼は何も答えない、既に分かり切っている事だから


「もう、引き返せないですね」


「引き返す場所も、気持ちもないのですけどね」



129: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/10(木) 19:15:14.94 ID:2nEZ48xK0

戦艦水鬼は考え付いていた

あのリンクスとその手にいた艦娘を倒す手段を


艦娘と深海棲艦

人間の手によって生み出された2つの存在全てが奴等を倒す為に手を取り合う

奴等を倒し、我々は人類と和解する

大本営といえど協力をせざるを得ないだろう

リンクスの戦闘能力は未だに未知数、だがあの腐った連中が手を貸さなければ…


彼女達は日本という揺り籠に向かう、プライドを捨て、裏切り者を始末する為に


だが揺り籠は既に存在していなかった



遠くからでもわかるほどの炎が、陸を焼いている

そして緑色の粒子が舞っていた

全てを察した

奴等はここを襲撃していたのだ

独断で、しかし何故その様な事を?


考えを巡らせている間にも本土に近づく

そこには迎撃しようと海に出ていた艦娘達がこちらを睨んでいる



130: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/10(木) 19:16:46.77 ID:2nEZ48xK0

状況を考えれば当然だ

日本はネクストと翔鶴の襲撃により都心の機能が麻痺、死傷者多数

それに続くかの様な深海棲艦の大部隊による本土襲来

計画的な作戦としか思えない

だが艦娘と、生き残っていた提督達は戦わずにはいられない

提督達は鎮守府内で様々な指示を出していた事もありコジマ粒子による汚染はなく

爆撃による被害はほとんど皆無に等しかった

これを奇跡と捉えるかは個人の自由だが


彼女は戦いという答えを出した存在でもある

そんな彼女が戦いの根源を断つのだろうか?


生き残った者として最後まで抵抗しようとする

多くの弱い人間をこれ以上犠牲にすまいと



戦艦水鬼は全員にその場で待機させた

そして1人敵地と思っていた場所へ赴く



131: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/10(木) 19:19:20.70 ID:2nEZ48xK0

戦艦水鬼は全員にその場で待機させた

そして1人敵地と思っていた場所へ赴く


戦艦水鬼「我々に攻撃の意志はない、むしろ一時停戦の旨を伝えに来た」

信じられるはずがない

相手を油断させ、隙を突いて相手を仕留める

こんなのは初歩中の初歩の戦術だ

戦艦水鬼「見たところ襲撃されたと見える、これは我々の意志ではない」

戦艦水鬼「我々は奴等に裏切られたのだ、今の我々と奴等は敵同士である」

戦艦水鬼「手を結ばないか?貴様等も奴等をこのまま野放しには出来ぬであろう」


迷った、唐突な事であるが故に

だが選択肢はないに等しい

前回やって来た大規模部隊をも上回る戦力

補給艦まで引き連れている事から恐らく逃げてきたのであろうと推測は出来た

仮に戦うとしても戦力差がありすぎて、艦娘側の勝つ可能性は0に等しい

提督達は話し合い、艦娘達に伝え、納得を得た



132: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/10(木) 19:20:51.28 ID:2nEZ48xK0

長門が提督達からの答えを携え戦艦水鬼の元へ

長門「提督、ひいては私達からの返答だ」

長門「我々人類は、今ひと時停戦協定を結ぶと同時に」

長門「未確認兵器と正規空母翔鶴を倒す事を誓う」

長門「これで、良いのだな?」

戦艦水鬼「ああ、これで我々は味方同士だ」

戦艦水鬼「願わくばこの協定がいつまでも続く事を祈ろう」


この言葉は嘘偽りのない真実である

彼女達が求めていたのは平和であって闘争なんかではない

闘争はあくまで手段として用いただけにすぎない


その手段に魅入られた愚か者を始末し、平和を得る為

かつて敵同士であった者達が手を結ぶ


だが戦艦水鬼には気がかりな事があった

何故こうもあっさり停戦を受け入れてくれたのだろうか

大本営の屑共なら攻撃命令が出してもおかしくないのではないだろうか



133: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/10(木) 19:22:09.83 ID:2nEZ48xK0

戦艦水鬼「しかし、やけにあっさりと受け入れてくれたな」

長門「何が言いたい…?」

戦艦水鬼「あの屑共が敵だった相手をこうもあっさり信用するとは思えなくてな」

戦艦水鬼「それなりに学習した、といったところか?」

長門「大本営の事か?」

戦艦水鬼「呼び方なんてどうでもいい、我々を作りだした腐った連中共だ」

長門「大本営の人間は襲撃された際に全員死亡した」

長門「お前達を受け入れたのは私達と、提督達の判断だ」

戦艦水鬼「…ッ!そうか、死んだかあいつら」

あれだけ望んでいた事を簡単にやり遂げた

それは喜ばしい事なのだが、望んでいない事もやってしまった

全て思い通りにはならない

故に後始末をしなければならない

自分達の正義に泥を塗ったのだから



134: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/10(木) 19:23:09.49 ID:2nEZ48xK0

戦艦水鬼「死んだのなら我々の目標は達せられた様なものだ」

戦艦水鬼「馬鹿馬鹿しいな、突然現れた奴に全て押しつけたみたいではないか…」

長門「……詳しい事は詮索しないでおこう、今の私達は仲間だ」

長門「気兼ねなく接してくれ、といっても難しいかもしれんが」

長門「相談相手ぐらいにはなれるかもしれない」

戦艦水鬼「ありがとう、これからは良き友としてやっていければ」


強大な力を手にしてしまった彼女達はその力を制御出来なかった

力には更に大きな力で対抗しなければならない

万全とはとてもいえない

だが彼女達は犠牲になった人間を

己の命より大事な汚された正義を

背負い戦いに赴く




140: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/12(土) 19:43:28.79 ID:uqfTI7uw0

深海棲艦と人類の停戦協定が結ばれてわずか2日

残存する全艦娘と深海棲艦による超大規模艦隊がハワイへ向けて出撃した

一面を埋め尽くす戦力、まさに人の海であった

邪魔する者は誰もいない

この海という広大な試練以外は




141: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/12(土) 19:44:37.44 ID:uqfTI7uw0

彼女達は進む、その異変はすぐに感じ取れた

明らかにおかしな物が向かってくる


自己を主張するかの様な奇抜な色

のっぺりとした前面からは青白い光の筋が走っていた

その奇抜な物の背中から何かが飛んできた


そしてそれはこちらに飛んでき、爆発した


彼女達はそれを敵対兵器と断定、各々砲撃を行った

だがその砲撃は緩やかに丸みを帯びた装甲に弾かれた

戦艦クラスの砲撃でようやく損傷を与える程度のダメージ

奇抜な物は青白い光の筋を出しながら突撃してくる

さながらギロチンの刃が落ちてくると錯覚させる程の刹那の時

最前線にいた深海棲艦の駆逐級は一瞬で消し炭になった



142: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/12(土) 19:48:22.33 ID:uqfTI7uw0

AF≪アームズフォート スティグロ≫

機体全体が丸みを帯びており、機体前面には大型ブレードを装備

遠距離武装としてミサイルランチャーが装備されており

海上戦力である艦隊に対して特化しており機動力のないネクストですら苦戦を強いるAF


獣はかつてこれを単機で倒した

それも攻撃を受けず、まさに一方的な暴力だった

高火力のロケットをスティグロに撃ちこむ、ただそれだけでスティグロは沈んだ

だがネクスト級の火力だから可能なだけであり、それ以外の兵器では傷を付けるのは難しいだろう

それもスティグロの得意とする対艦戦で勝てる可能性など無いに等しい

だが彼女達はただの艦ではない、それだけが希望だった



143: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/12(土) 19:51:23.12 ID:uqfTI7uw0

最前線の駆逐クラスが消し炭になったのを目視で確認し、各自散開した

それでもスティグロの速度はネクストに匹敵するほどであり

彼女達が逃げる余裕など全くなかった

だが巨体故に人間サイズの標的を追うのは難しい

旋回性能や被弾面積などを考慮すると艦娘、深海棲艦側も避ける事は可能であった

だがスティグロの圧倒的サイズと機動力の前では奇跡に等しい芸当なのだが




144: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/12(土) 20:01:58.48 ID:uqfTI7uw0

スティグロが海面のゴミを掃除するが如く一掃していく

逃げている最中にミサイルによる遠距離攻撃も相まって

整えられていた陣形は無残にも崩壊し、固まったところを集中的に狙われた

だがこの状況こそが理想的な戦い方と言っても過言ではない

これは戦いであって、虐殺ではない



145: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/12(土) 20:02:52.76 ID:uqfTI7uw0

スティグロが反転しようとした際にスティグロの後部ブースターに砲弾が当たった

猪突猛進、スティグロは速度と引き換えに小回りが利かないという欠点もある

故に反転する際には敵に必ず背を見せなければならない

スティグロによって散らされた陣形はスティグロの弱点を狙うには十分だった

戦場で敵に背を見せるという行為が如何に間抜けな事なのか

それをしなければ戦えぬスティグロ

完璧な兵器など存在しない、弱点を隠す事が重要なのだ

ハードウェア以下でもなければ以上でもない

それが獣に敗れ去ったスティグロだった


狙った結果なのかは定かではない、だがそれはスティグロと己達の運命を決めた

ブースターの1つが爆音を放ちながら爆発した

移動速度が格段に低下し、スティグロはその弱点を晒してしまった



146: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/12(土) 20:05:54.38 ID:uqfTI7uw0

圧倒的な正面装甲の硬さ、ミサイルによる正確な遠距離攻撃

スティグロはブースターを1カ所に集中的に配置しているおかげで機動力を得ている

だがブースターは露出しており、そこさえ狙えてしまえば倒すのは比較的容易

通常の艦隊であればそのブースターすら狙うのがまさに至難の業であると同時に

仮に狙えたとしても遠距離からのミサイル攻撃で跡形もなく殲滅されただろう

だが彼女達はそれをやってみせた

人とスティグロのサイズ比はまさに蟻と人間というのが正しいか

その小ささ故にスティグロは目標を捕らえきれずにいた

ミサイル攻撃をするも数多くの者から行われる対空射撃のおかげで被害は抑えられた

下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、おおまかな狙いは付けられても確実に当てれるという保証はない

死にたくない、ただそれだけの気持ちで彼女達は対処した



147: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/12(土) 20:07:22.80 ID:uqfTI7uw0

陸奥が機体後部を狙えと指示を出す

駆逐級は移動速度の落ちたスティグロを攪乱する為にスティグロの前方で囮として全力で逃げる

スティグロの機動力は以前と比べるとよちよち歩きみたいな物だった

スティグロからミサイルが飛んでくる、機銃で応戦するも完全には迎撃出来ず、多くの者が被弾した

重巡洋艦や戦艦が後部ブースターに砲撃を加える


狩る者が狩られる側に回る恐怖、スティグロは自身の獲物に狩られていた

だがスティグロも負けじと応戦する

だがスティグロの武装は大型ブレードとミサイルのみ

対処の仕方がわかってしまえばあまり苦戦する相手でもない

ましてや手負いで本来の力を引き出せない状態でもある



148: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/12(土) 20:09:00.85 ID:uqfTI7uw0

ミサイル攻撃が止んだ、狩られまいと必死に抵抗していた行動がピタリと止まった

戦艦や重巡級の砲撃を絶え間なく受けていたダメージが蓄積しミサイルすら発射出来なくなったのか


違う


スティグロの大型ブレードが少し震えた

直後青い刃が青い海の上を走った

スティグロの前方にいた駆逐級は瞬く間に蒸発、跡形もなく消え去った

己の力を使い果たしたのか、その一撃を放つとスティグロは内部から爆発し、自沈した


大型ブレードの射出

機体前面の大型ブレードを射出する事で前方を薙ぎ払う

ミサイルと違い前方の相手を確実に仕留める手段

対艦用AFであるスティグロには最高の武装の一つ

対ネクスト戦においては空中機動戦を強制的に強いる武装であり

重量機程度なら軽く葬れる火力を有する


≪あのネクスト、それも装甲の厚い重量級ですら当たれば致命傷を受ける武装≫



149: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/12(土) 20:10:27.04 ID:uqfTI7uw0

取り柄である足の速さを失ってもなお諦めず獲物を仕留める狩人として最期を迎えた

しかし何故スティグロがここにいたのだろうか

かつてスティグロは獣によって倒された

だが別のスティグロは獣と、大多数の艦隊を相手に共に戦った

一度共闘し情が移ったのか、はたまた本来の役目を果たせなかった無念を晴らしたかったのか

それは誰もわからない

理性ある獣ですらわからないのだから

多くの意志の固まりが一つの遺志となっていたスティグロ

兵器が物を考えるかと問われるとはなはだ疑問ではあるが

彼女達もその兵器なはずだ



150: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/12(土) 20:22:19.71 ID:uqfTI7uw0

軽く500は超える程いた艦娘と深海棲艦はその数を大きく減らした

未確認な敵、それも対艦隊特化型

駆逐級の半数以上を喪失し、一部の巡洋艦クラスの多くはミサイル攻撃を受け戦闘不能レベルに

大型ブレードによって消滅した者は蘇らなかった

その身体は既に消滅しており、何も残っていないのだから


艦娘は大破という状態まで損傷しなければ決して轟沈しないという特殊な加護があった

大破した艦娘はその加護が消滅し、初めて命を敵に晒す

だがスティグロの大型ブレードやミサイルによる攻撃は

その加護を知らなかったと言わんばかりに無視し、消滅させた



151: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/12(土) 20:22:59.13 ID:uqfTI7uw0

スティグロ、いや別の世界の者がこの世界のルールに従う義理はない

彼等は彼女達にとって未知数であり

彼女達は彼等にとって未知数であるのだから

彼等の世界では彼女達のような存在は無い

彼女達は彼等から見れば≪例外≫なのだ

人間サイズでありながらかつての大戦時の艦の力を持ち

そのか弱き身体で支える物からはとてつもない力が放出される

そんな存在の全てと単機で渡り合ったスティグロは


未熟だったのであろうか




152: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/12(土) 20:24:19.28 ID:uqfTI7uw0

姉妹を目の前で失った者は泣き喚いた

駆逐級の艦娘の精神年齢はせいぜい15才未満

そんな彼女達には辛すぎる現実だった


その場で放心する者や絶望する者

戦場に愚か者は必要ない、ましてや世界の命運がかかっている戦いでもあるが故に

戦えぬ者をその場に残し、彼女達は進んでいく

先へと進んだ者は300もいなかった



死とはこうも呆気ない物なのだ

あの鶴は目の前でこれを体験した

もっとも、ここまで有情な最期ではなかったのだが



153: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/12(土) 20:39:27.96 ID:uqfTI7uw0

アームズフォート

大多数の凡人が一握りの天才を超える為に作られた歪な存在

多数の甲板を備え、巨大な脚で大地を踏みしめる スピリットオブマザーウィル

荒れ狂う海、全てを飲み込む砂漠、そのどちらにも適応する ギガベース

滑稽な姿からは、他者を消滅させる光線を浴びせられる イクリプス

単純故に強く、そして脆い走る壁 グレートウォール

汎用性に富んでおり、多数の兄弟が存在する ランドクラブ

力を望んだ凡人が自らのルールに委ねる カブラカン

新たな力を得た研究者の玩具、黒い球体は死を告げる ソルディオス・オービット

全てを汚染し尽くす、逃げた者の傘 アンサラー

真なる目的を持ちつつ、蹂躙する者と汚名を被る ジェット


この全てが強大な力を誇り、圧倒的な質量を備える

一流のリンクスはこれを超える事で、本物のリンクスだと認める


これらは実力を示す為の良い代物なのだ



158: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/16(水) 19:29:28.94 ID:G294KA+00

天敵との遭遇

それは現実と幻想の狭間、だが結末は現実である

幻想に逃げ込んだ者、現実を知らされた者

そんな彼女達は半数以上を失った

数多くの戦いを乗り越えた彼女達ですら苦戦するのは当然

何せ相手はこの世界の相手ではない。≪例外≫なのだから



スティグロを退けた大艦隊

だがその代償はあまりにも大きすぎた

駆逐級は半数以上を失い、巡洋艦クラスもミサイルにより戦闘不能レベルまで陥った者が多い

艦隊決戦に必要な大多数の戦艦、空母は奇跡的に損害が少なかった

だが仲間の死を受け入れられず、心が壊れた者も

身体的な損害よりも、精神的な恐怖を彼女達全員に再度植え付けた




159: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/16(水) 19:30:52.68 ID:G294KA+00

あと数十kmでハワイに到着する

スティグロとの戦闘から約30分近くの航海

道中、速吸やワ級などから燃料弾薬の補給をし、万全の態勢で挑む準備は出来ていた



≪獣と鶴が現れた≫


常に警戒はしていたが突如艦隊の頭上に現れた

どうやってこの警戒をすり抜けて現れたのか

全方位監視の目は光らせ、電探による索敵も行っていた

なら何故現れた?


上空からやってきたのだ

ネクストは地上での活動も可能であり大気圏限界でも活動可能

ネクストの性能にもよるが上空で停滞することなどこの機体には造作もなかった


全艦迎撃態勢、指示を待たずに一部の者は砲撃を開始した

その砲撃を容易く回避したネクスト、だが反撃はなかった




160: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/16(水) 19:48:14.70 ID:G294KA+00

そして伝えられる


≪雑魚には興味がない≫


「私達は強い者との戦いを望みます」


≪状況を見極めれん愚か者は死ね≫


「でも時間が惜しいです」


≪全力でやらせてもらう≫


「容赦はしません」


≪逃げてみろ≫


「楽には殺しませんよ」


そういうと獣と鶴はハワイの方へと向かった

深海棲艦にとっては見慣れたはずの土地には




161: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/16(水) 19:49:16.89 ID:G294KA+00

大地を踏みしめ、全てを否定する偉大な母が

人の定めたルールを載せた聖書が


AF≪アームズフォート スピリットオブマザーウィル≫

AF≪アームズフォート カブラカン≫


かつて首輪付きの獣の運命を決めた両者

偉大なる母は空を飛ぶ揺り籠を守る道を示し

聖書は人類を新たな世界へと導く道を示した

そんな存在が今は獣と鶴の仲間として立ちふさがる



162: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/16(水) 19:50:10.06 ID:G294KA+00

突如現れたネクストと翔鶴

そのおぞましいとも言える存在から発せられた言葉

そして彼女達はこの場に居る事を後悔した


恐怖、威圧、憎悪、憤怒

様々な感情を感じ取った、だがそれは既に皆が経験している事

経験したところで克服出来るとは言い切れないのだが

そしてハワイに佇む超巨大兵器




163: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/16(水) 19:57:32.47 ID:G294KA+00

全高600m、全長2.4km、超大口径主砲の射程最大100km~200km、絶対防衛圏100km

多数の甲板を兼ね備え、ノーマルで防衛させつつ本体に取り付けられた武装で迎撃する

6本の脚でその巨体を動かす事が出来る、まさに山

遠くからでもわかる常識外のサイズの主砲、それも三連装砲が2基装備されている

甲板各部にはミサイルランチャーと砲が取り付けられており

主砲の射程外である懐に入られた場合はこれらを使い邪魔者を始末する


獣の世界にいた白い閃光≪ホワイトグリント≫はかつてこれと戦い

ホワイトグリントの弾切れで事実上の撤退をさせるほどの実力は備える

だがこの機にはノーマルが存在せず、持ち前の武装のみとなっていた




164: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/16(水) 20:07:32.85 ID:G294KA+00

そしてその超巨大兵器の下にある箱の様な物

その箱の両面の装甲がパージされ、内部から何かが出てくる

さながらその姿は巨大な本だった

その本の中からはいくつもの物体が飛び出してくる

それは物言わず空を飛び、一瞬で空を埋め尽くした

自立兵器、カブラカンから飛び出た物は空を浮遊する自立兵器だった


AFとは凡人が力を求めて作った物だ

そんな凡人が自ら操作する訳でもない兵器を作りだし

あまつさえそれが最大の戦力となっている

新たな力を手に入れるのではなく、与える

作られた力はルールを与えられ

忠実なルールは違反者を殺す

これは凡人の成果なだけであって力ではない

ルールが力を持っているのだ



165: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/16(水) 20:08:54.79 ID:G294KA+00

今一度言おう、彼女達艦娘と深海棲艦は一般的な人間のサイズだと

諸君らは山に戦いを挑むか?

登山などの意味ではない、武器を手にし相手を始末する事だ

しないだろう?それが当然だ

相手は命を持たないから、そういう理由もあるだろう

仮に命があるとしても挑んだりはしないだろう


本能的に勝てないと悟ってしまうだろうから



166: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/16(水) 20:10:09.20 ID:G294KA+00

戦艦水鬼「なんという奴を敵に回してしまったか…」

戦艦水鬼「リンクスと艦娘一人だけなら勝てると思っていたが」

戦艦水鬼「わけのわからぬ兵器までもが出てくるか」

戦艦水鬼「まぁ、元より死ぬ覚悟ではあったさ」

戦艦水鬼「やるだけやるしかないな」


戦艦水鬼は己の恐怖心を誤魔化し、扇動する


戦艦水鬼「この場の全員に告げるッ!」


恐怖のあまり我を失っていた者をすら引き戻す声


戦艦水鬼「我々は倒さなければならない!」


それは力強く


戦艦水鬼「人類を虐殺したあの忌まわしい存在を!」


とても熱く


戦艦水鬼「我等の同胞、仲間を殺したあの憎き存在を!」


空しく


戦艦水鬼「もはや逃げ道はないぞ!良いか!!」



167: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/16(水) 20:11:13.85 ID:G294KA+00

彼女達にも意地がある

それが例えどんな無謀な事であったとしても

成し遂げなければならないという意地が


武蔵「あいつらに後れをとるなぁ!全艦この武蔵に続けぇ!!」


内に秘めた闘争心を湧きあがらせる


赤城「私達はあの浮いている物体を迎撃します!全機発艦準備を!」


人が持つ可能性


夕立「流石に敵さんがちょっとデカすぎっぽ~い、でも燃えるっぽい!」


可能性という力


飛龍「艦載機のパイロットは全員防毒面装備をしています!これなら戦える!」


力という暴力は


雲龍「翔鶴さん…何としても帰ってきてもらいます…ッ!」


祈る事を忘れさせる




168: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/16(水) 20:15:05.59 ID:G294KA+00

≪行けそうか?≫


「私は大丈夫です」


≪お前の答えだ、俺は手助けをしただけだ≫


「いえ、感謝しています」


≪成就しろ、お前の答えを≫



ネクストはスピリットオブマザーウィルの甲板からオーバードブーストを使い出撃する

母の手元から離れ、縛られたルールからも解放された

彼は今から───


───戦いを始める



169: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/16(水) 20:18:20.37 ID:G294KA+00

作中のネクストのアセンブルです

右手武装:HLR01-CANOPUS
左手武装:03-MOTORCOBRA
右背武装:061ANR
左背武装:EC-0300
肩部武装:051ANAM
右ハンガー武装:EB-O600
左ハンガー武装:EB-O600

頭部:HD-HOGIRE
胴体:SOLUH-CORE
腕部:AM-LANCEL
脚部:LG-LANCEL
FCS:INBLUE

ジェネレーター:GAN01-SS-GL
メインブースター:CB-JUDITH
バックブースター:BB11-LATONA
サイドブースター:03-AALIYAH/S
オーバードブースター:I-RIGEL/AO

実際に使ってみるとEN管理が厳しい感じな中量機です

では今回はこの辺りで



173: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/18(金) 18:45:17.95 ID:uhMGgKyW0

獣と鶴は戦いを始める

獣は曇りきった空に現れた星の如く

鶴は優雅に海面を滑る


戦いが始まった



スピリットオブマザーウィル(SoM)の主砲の発射と同時に火蓋が切られる

SoMの主砲は経年劣化と技術力の問題で精度が良いとは言えなかった

しかも相手は地面を這う蟻の様な標的

だが相手が小さい故に、主砲の風圧、着弾時の波の発生、それが彼女達を苦しめた




174: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/18(金) 18:46:13.07 ID:uhMGgKyW0

カブラカンから射出された自立兵器は空母から発艦された艦載機と戦いを繰り広げていた

自立兵器はサイズが大きくそこそこ速い速度で動く

だがその動きは単純そのもの、歴戦のパイロットが扱う艦載機の動きとは比較にならない

それでも圧倒的な性能差に苦しめられる、力では補えない根本的な物が違うのだから



175: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/18(金) 18:48:03.31 ID:uhMGgKyW0

SoMの主砲を避けつつ戦艦、巡洋艦クラスは突撃をする

彼女達の作戦はこうだった


まず空母部隊がカブラカンの自立兵器の足止め、願わくば撃破を

その間にSoMへと出来るだけ近づき、脚部に砲撃を集中させる

一つの脚を失っただけでは撃破は出来ない

だが二つの脚を同時に失ったら対処するのは難しいだろう

彼女達はそう考えていた

とはいえSoMの脚は非常に重厚であり、破壊するのは容易ではない

ネクスト級の火力を用いても破壊不可能な母の脚

山を支える存在は力がある故に支えれる

その力を超える事など彼女達、リンクスでも不可能だろう


それでもやるしかないのだ



176: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/18(金) 18:50:30.04 ID:uhMGgKyW0

残った駆逐級は対空射撃を行い自立兵器を攻撃すると同時に

着水した艦載機を拾ったり、燃料弾薬を抱えて補給を行ったりと

危険は少ないものの艦隊を根底から支えていた

個々の力が弱くとも、数多くの仲間と共に戦う事でその力は未知数

とはいえ限界というものが存在するのが現実なのだ

これはおとぎ話ではない、紛れもない真実だから




177: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/18(金) 18:51:06.29 ID:uhMGgKyW0

右手に装備された武器からは世界を照らすと錯覚させる青い閃光を

左手に装備された武器からは全てを貫かんとする弾丸が


今まで見たこともない速度で飛んでいるネクストから発射される

その対象は航空機に対してでもあれば

自身を狙おうとする者を容赦なく

撃ち抜いた、いや消滅させた


ネクストの武器の口径なら人など簡単に消し飛ばせる

駆逐艦であろうと、戦艦であろうと

装甲などないに等しい

大戦中の艦の力程度、もはやリンクス達にとっては過去の遺物なのだ




178: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/18(金) 18:53:02.58 ID:uhMGgKyW0

SoMの主砲の射角範囲外に到達した戦艦重巡部隊

だが彼女達は休む暇もなく雨に晒される

空から降り注ぐ爆弾

航空機から落とされたそれは大した損傷を与える事もなく爆発した



「お久しぶりです、皆さん」

唐突な無線が入ってきた

まるで久しぶりに会った友人に声をかけるかの様に


「貴女達は今楽しいですか?」


何故聞くのか


「私は今とてもワクワクしています」


正気じゃない


「その顔を見る限り、必死みたいな感じですね」



179: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/18(金) 18:54:43.30 ID:uhMGgKyW0

相手はこちらを視認出来る位置に居る

伊勢はすぐに空母へ航空機の要請をする

「ではこの辺りで失礼しますね」


「私は待っていますよ」

一方的に始まった無線は一方的に切られた

上空には航空機が見えないが、SoMから発射されたミサイルが飛んで来ていた

恐らくは無線が終わるのを見計らっていたのだろう


そんな事は気にしない、今は己の成す事だけに集中する

戦艦や巡洋艦による対空射撃は完全ではないにしろ迎撃は出来た

その間もSoMの各部に装備された砲から砲撃される

主砲ほど大きくないにしろ人など簡単に消し飛ぶ大きさ

一般人であれば風圧だけで鼓膜が破れ、身体のどこかがちぎれてもおかしくはない

そうならないのは彼女達が艦娘、深海棲艦であるから

彼女達がこの世界の≪例外≫だから



183: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/22(火) 04:09:19.41 ID:i/FkYmtg0

打撃部隊が鶴の攻撃を受けている最中

獣は空母部隊を襲っていた


空を埋め尽くすほどの航空機と自立兵器

その両方を分け隔てなく撃ち落とす

海上の軽巡、駆逐級は対空射撃でネクストを狙うが当たらない

掠りこそするがプライアルアーマーによって弾は呆気なく消滅する


だが駆逐級の主砲が当たった時わずかに機体が揺れた

本当に僅かな揺れ、僅かな変化

僅かな損傷


ネクストは自身に攻撃して来た者を瞬時に探す

探し終えると他の者を無視し

全ての攻撃をクイックブーストで避け

目標に向けて武器を構え


「殺す」




184: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/22(火) 04:10:46.20 ID:i/FkYmtg0

陽炎「対空射撃をやりつつ不時着した航空機を回収して!」

不知火「クッ、どうして当たらない…!?」

黒潮「不知火落ち着き…うわっ!」

不知火「クソッ!クソッ!クソッ!!」

陽炎「危ない不知火!!」


負傷する仲間、沈む友人を見て不知火は怒りに燃えていた

その怒りに身を任せ周りを疎かにする

どんな友人よりも親しい姉妹の注意すら耳に入らないほど

戦場でそれは命取りだと誰しもがわかること


陽炎が叫ぶ

陽炎は不知火を弾き飛ばした

妹を守る姉としてなのか、それとも別の理由があるのか


弾き飛ばされる不知火

唐突な出来事に困惑する

弾き飛ばした相手を見るとそれは陽炎だとわかった

そして陽炎は青い光に包まれた




185: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/22(火) 04:11:54.93 ID:i/FkYmtg0

陽炎は消えた、そこにいたはずなのに

脚がやけに熱い、燃えていると錯覚させるほど



陽炎は完全に消滅し、不知火は両脚を失った



不知火「姉さ……ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!゛!゛」


不知火は両脚が無くなっている事を認識した

脚は青い光によって完全に消された

脚から血が流れない、無くなった部分が火で止血したようになっていた

不幸中の幸いと言えるのかはわからない

不知火はただ痛みでもがき、徐々に沈む現状に泣き喚く

近くにいた黒潮が駆け付ける

陽炎が死んだ、それを目の前で見ていた彼女は現実を受け入れず

負傷した不知火の回収に向かう




186: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/22(火) 04:14:22.79 ID:i/FkYmtg0

黒潮「大丈夫や…陽炎姉さんはこの程度じゃ死にゃあせん…」

不知火「脚がぁぁあ!!私の脚がぁぁ…」

黒潮「不知火…?失神したんか…」

野分「大丈夫ですか!陽炎姉さんは?」

黒潮「わからん!今は不知火を下がらせる事だけ考えりッ!!」

野分「りょ、了解しました!」



圧倒的すぎる

その手に持つ武器から発射された青い光

それは人間等軽々と飲み込む巨大な光

その光に包まれた者は例外なく消滅


その手に持つ武器からは無数の弾が発射され

それは波を起こし、人を貫く

当たると死ぬ、明白だった


その力は戦場にいる全ての存在を狂気で飲み込む

正気で戦える者は少ないだろう

命を賭けた戦いであれば尚更

これはスポーツではなく、戦いだ




187: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/22(火) 04:16:02.60 ID:i/FkYmtg0

空母部隊は作戦を変更

最優先対象をネクストに変更し、とにかく時間を稼ぐこと

如何にネクストの機動力と火力といえど

無数に存在する航空機を1度に相手にするのは厳しい

そう解釈し、それを実行に移す


戦艦重巡部隊に送った航空機はそのままにしつつ、他の全航空機をネクストに当てる

駆逐級は自立兵器に対空射撃を行いつつ支援を

軽巡級は頭上のネクストに向け主砲での攻撃を

空母は航空機に作戦を伝え、各々対空射撃で撃ち漏らした自立兵器を狙う

航空機はネクストとの距離を縮め攪乱に徹する




188: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/22(火) 04:16:54.81 ID:i/FkYmtg0

歴戦のパイロットが今まで経験した事のない化け物を相手に空を舞う

性能差は一目瞭然、だが数と連携の差では有利だった

絶え間なく360度から機銃による攻撃を加え相手の行動範囲を狭める

その隙にネクストへ向け軽巡級が砲撃を行う

見事な作戦だった



189: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/22(火) 04:17:23.18 ID:i/FkYmtg0







だが相手を知らなすぎた










190: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/22(火) 04:17:51.97 ID:i/FkYmtg0

ネクストが光る

徐々に粒子が凝縮され、ネクストに集まる

それは己を守っていた膜すらも取り入れ、力にする

次の瞬間、壮絶な爆音と共に視界が白く消える


空にはネクストとネクストの周囲に粒子が舞っているだけで


航空機の姿は一切無かった



191: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/22(火) 04:19:43.71 ID:i/FkYmtg0

アサルトアーマー

膨大な量のコジマ粒子を収縮、それを開放する事による全方位攻撃

発動するネクストはプライアルアーマーに使っているコジマ粒子を機体内に取り入れる

発動するとネクストを中心に強烈な爆発を引き起こす

その威力はネクストどころかAF相手でもかなりのダメージを与える事が出来る

だがこの最強の矛にも欠点がある

それは発動した際、プライアルアーマーに使うコジマ粒子全てを消費する事だ

最強の盾を最強の矛として使う、まさに諸刃の剣

絶対的な防御を捨て、攻撃を行う

その防御を捨てた彼は、ある意味で≪初めて命を彼女達に晒した≫のだろう



196: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/24(木) 20:40:06.93 ID:HxEKCHun0

鶴の襲撃が終わり、母が攻撃を始める

SoMの脚部に砲撃を加えるも損傷は皆無

どれだけ力があったとしても変えられない現実

その現実を母が身を持って教える


空母部隊がネクストへの対処を最優先にした事でカブラカンの自立兵器が飛んでくる

新たな打開策を考えると共に空と山からの攻撃を凌ぐ

そんな中、航空戦艦山城がSoMの砲台に主砲を直撃させる

SoMの甲板は僅かに揺れ、ひびが入る

そのひびからは炎が漏れていた

そして気付く



197: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/24(木) 20:41:25.88 ID:HxEKCHun0

山城「皆さん!超巨大兵器の砲台を狙ってください!」

扶桑「山城、何かわかったの?」

山城「はい姉様!あれは恐らく砲台の破損が内部にまで影響してると思われます!」

伊勢「つまり砲台を潰していけば」

扶桑「内部から崩壊していく…」

日向「それに砲台が潰れればこちらへの砲撃も薄くなるだろう」

伊勢「やっと希望が見えてきたねぇ!」

日向「まぁ、そうなるな 瑞雲発艦始め!」

扶桑「瑞雲は甲板上部にあると思われる砲台を!」


歴戦の戦士達

航空戦艦と呼ばれる彼女達は水上機を搭載できる空母と戦艦のハイブリッド

だが扶桑と山城は改装前に、伊勢と日向は活躍の場がなく沈んだ

それも過去の話、今の彼女達の判断力と力

それは決して過去の物ではなく、今の彼女達の物だ



198: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/24(木) 20:42:25.17 ID:HxEKCHun0

この情報はすぐに別の脚部を狙っている艦隊へと伝達される


スピリットオブマザーウィルの弱点は各種砲台にある

砲台の損傷が内部に伝播しやすく、ダメージを与えやすい

巨体故に砲台も多く、狙えさえすれば徐々に追い詰める事が可能である

内部でダメージコントロールを行い、損傷を拡大させない事に努めても

いずれは内部から崩壊してしまう

そのダメージコントロールさえもなければどうなるだろうか


結局、完璧な兵器など存在しないのだ



199: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/24(木) 20:43:13.48 ID:HxEKCHun0

戦艦重巡部隊の彼女達はSoMの砲台を狙う事を目標とした

だがその目標を狙うにはあまりにも過酷な状況だった

砲台からの射撃やミサイルによる爆風で波は荒れ狂い

その風圧と熱風が彼女達の体力を徐々に奪う

立ち止まって動かない的を撃つのではない

常に走りながら動く目標を撃つのだ、とても容易ではない


だが彼女達は戦士だ


深海棲艦との戦いはお遊びなんかではない

お互いが本気で殺しあう戦場

その戦場が彼女達を強くし、力を与えた




200: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/24(木) 20:43:44.01 ID:HxEKCHun0

ミサイルの迎撃が間に合わず直撃を喰らい身体が吹き飛ぶ者もいれば

砲台から発射された砲弾によりあるはずだった脚から上が消えた者も

そんな光景を嫌でも見てしまい、戦意喪失する者がいる

次にそうなるのは彼女かも知れないのだから




201: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/24(木) 20:47:16.00 ID:HxEKCHun0

金剛「今の聞いたネー!?あの砲台を狙」


声はかき消される

とてつもない爆音

それと同時に大きな波が生まれる

金剛が視界から消える

そして見てしまう

比叡「今何て仰ったんですかお姉さ…」

榛名「お姉様…?」

霧島「嘘…でしょ……」


先ほどまで笑顔で皆を引っ張っていた彼女、金剛は


唯一彼女と判断出来る左腕を残して消えていた

その腕からは真っ赤な血が流れている



202: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/24(木) 20:48:50.46 ID:HxEKCHun0

比叡「嫌…嫌だ、いやああああああああ!!!!」

霧島「比叡お姉様落ち着いてください!」

榛名「榛名は…榛名は……アハハハハハ!!」


SoMの砲台から発射された砲弾は金剛に直撃した

金剛は姉妹達を奮い立たせる為に後方を見ていた

そのわずかな油断は命を奪うのに十分な決定打だった

金剛の身体は自身より大きな砲弾に飲み込まれ

砲弾に触れなかった左腕だけを残して消えた


比叡は泣き叫ぶ、残った姉の左腕という死の現実を見ながら

榛名は笑う、彼女の中の感情は姉の死によって壊れた

霧島は焦る、失った姉より目の前の壊れた姉の事を最優先に考え



壊れた



203: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/24(木) 20:49:55.70 ID:HxEKCHun0

摩耶「金剛姉妹は一体何やってんだ!!」

鳥海「摩耶!対空射撃を!」

摩耶「チッ!こんだけ攻撃されると無線で確認する暇すらねぇよ!」

高雄「やっぱり私達の火力じゃ砲台は壊せないの?」

愛宕「一撃がダメなら何度も撃ちこむのよ高雄ちゃん!」


金剛型が率いる重巡級の高雄型姉妹

彼女達は金剛が死ぬ少し前にミサイルによる攻撃で金剛姉妹と分断されていた

防空巡洋艦摩耶のおかげでミサイルの大半が迎撃出来ていたのだが

ミサイルとミサイルの合間の砲台による攻撃を避けるので精一杯だった




204: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/24(木) 20:51:36.88 ID:HxEKCHun0

摩耶「クソッ!そろそろ弾が切れそうだ…!」

高雄「一度引いて補給をしましょう!」

愛宕「りょうか…!もうっ!しつこいわねぇ!」

鳥海「このままじゃ離れようにも離れられない…!」


対空射撃、砲台に向けての砲撃

そのどちらも弾薬を使用し行う行為であり、無制限に行える行為ではない

故に定期的に補給をしなければ、砲台は飾り物となる

彼女達はミサイルの攻撃から身を守る為に対空射撃を行っていた

そして今、身を守る術である対空射撃も出来なくなろうとしている

敵からすれば絶好の機会、何も出来ない奴を逃がす道理はない




205: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/24(木) 20:53:11.12 ID:HxEKCHun0

高雄「金剛さん達と連絡を取りたいけど…きゃっ!」

愛宕「これじゃ連絡どころか下がる事すら出来ないわね…」

摩耶「…あたしが囮になる……」

鳥海「摩耶っ!貴女何言ってるの!?」

摩耶「この中じゃあたしが一番向いてるだろ?」

高雄「で、でも!」

摩耶「早く行ってくれよッ!!」

摩耶の決意は固かった

実際この中で一番適任なのは摩耶だった

ミサイルは残り少ない弾でも防げる

ミサイルさえ凌げばあとは砲台による攻撃だけ

それを全員でずっと受け続けるより誰かが囮になった方が生存率は高かった


囮を除いて




206: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/24(木) 20:56:26.44 ID:HxEKCHun0

摩耶「あたしの代わりにアイツを倒してくれよ…」

愛宕「摩耶ちゃん…」

鳥海「どうしてこうなるのよ…!」

高雄「……!摩耶をここに残して一度引きます!」

高雄「補給後は全速力でここに戻ってくるわ!それまで頑張って!」

高雄「だからアレは貴女が倒すのよ、摩耶」

摩耶「キッツイ仕事だな、この摩耶様に任せな!」

鳥海「摩耶…すぐ戻ってくるわ…!」

高雄達は摩耶に背を向け持てる力を振り絞り全力で撤退する

摩耶は託された機銃の弾で対空射撃を行いつつ攻撃を避ける


摩耶「そんな攻撃じゃこの摩耶様に傷すら付けられないぜぇ!」

摩耶「デカイだけの役立たずが!お前なんかよりあの黒い奴の方が強かったぜ!」

摩耶「あの黒い奴も摩耶様が本気を出せば一瞬で落としちまうがな!」

摩耶「高雄型三番艦 摩耶ッ!お前に喧嘩を売ってやんよ!!」



207: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/24(木) 20:57:19.99 ID:HxEKCHun0

回避行動をとっている間に金剛姉妹とはかなり遠くの場所まで移動していた

摩耶の周りには誰もいない

砲台からは砲弾、ミサイル発射口からはミサイル

その当たり前な攻撃をただ一人受け止める

SoMは古いAFだがその性能は確か

並のネクスト程度余裕で撃ち落とすだけの性能を誇る

数と小ささでSoMの攻撃を避けていたが

小さいとはいえ、一つの標的だけになった艦娘程度

SoMの性能であれば余裕で沈めれる


それでも摩耶は対抗した

砲撃を避け、ミサイルを迎撃する

回避行動と同時に対空射撃を行う

だが必然と隙が生まれ、確実に傷ついていた



208: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/24(木) 20:58:13.76 ID:HxEKCHun0

摩耶「流石にこの攻撃を避け続け……グゥッ!」


摩耶の右腕は無くなっていた

ミサイルを迎撃し損ないミサイルが近距離で爆発

摩耶は咄嗟に右腕で防御しようとしたが

防御をする前に爆風が摩耶の右腕を吹き飛ばす


摩耶「片腕くらいくれてやらぁ!かかってきなぁ!」


右腕を失った痛みが摩耶の体力を奪う

出血多量により意識が徐々に朦朧としてくる

それでも摩耶は戦い続け

彼女は死んだ




209: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/24(木) 20:59:37.59 ID:HxEKCHun0

ネクストすら圧倒する性能を誇るSoM相手に

完全に一人で戦っていた訳ではないとはいえ

たった一人で持ちこたえた彼女


その力は認められるべき物だ


戦艦重巡部隊 右前方側攻撃組

金剛型高雄型艦隊

壊滅



216: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/26(土) 16:36:30.18 ID:a3wc+QO40

お目汚し失礼

───────────────
巨大兵器の砲台を狙え

それはSoMへ向けて進軍する全ての艦隊に向けて発せられた


戦艦水鬼「砲台を潰せばいいのか、単純だが難しいな」

戦艦水鬼「皆!あれの砲台を狙え!」

戦艦水鬼「そうすればあれは自壊するとの情報だ!」

戦艦水鬼「報告によれば砲台は頑丈なはずだ!」

戦艦水鬼「何度も同じ場所を狙え!そうすればいずれ破壊出来るはずだ!」

山城の砲撃は運良く砲身に入った結果破壊出来た

その芸当は針に糸を通すより難しい事であり、まさに幸運だった

不幸艦と呼ばれた彼女がこの様な幸運に出会うのは

奇跡と呼べる存在なのか、最期の慈悲だったのか



217: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/26(土) 16:37:18.85 ID:a3wc+QO40

中央前方攻撃組の深海棲艦の艦隊

彼女達は艦娘を凌ぐ性能と装備

更に数を揃えている為危険度の高い中央を任された

SoMの脚元には、自立兵器を飛ばしていたカブラカンもおり

カブラカン撃破も彼女達の役割だった


戦力だけならば圧倒的な彼女達

だがそんな彼女達をも軽く凌駕する敵

勝てる見込みはなかった

だが希望が見え始めた今、戦艦水鬼は高らかに言う

「勝機は見えた」



218: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/26(土) 16:39:02.40 ID:a3wc+QO40

SoMの攻撃、自立兵器からの攻撃により深海棲艦は三分の一を喪失する

敵の真正面、それがどれだけ危険なのかは言わなくても分かる

だがSoMの砲台を一つ、また一つと破壊していく

その度にSoMは悲鳴をあげる

仲間を失いつつも敵の戦力を削ぎ、被害も徐々に少なくなる

勝てる

そう思った矢先

後方でとてつもない爆音がした


振り返ると空母部隊の真上で白い球状の物が浮いており

それが爆発の正体だとすぐに理解した

白い球状の中からあの忌まわしきネクストが出てきた


空母ヲ級からの連絡、それは聞きたくない現実

こちらに出していた航空機以外全滅

事実上の制空権喪失、空母の多くは役割を果たせぬ置き物となった


一部を除いて



219: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/26(土) 16:42:37.15 ID:a3wc+QO40

遠くで爆音が鳴る

それは敵を殺す為に行った事実を表す

それは清浄なる大地を汚染したという事

それは鶴への合図



ネクストがアサルトアーマーを使用する

航空機を排除したという合図でもあり

今まで動かなかった鶴を呼び覚ます為に鐘の音だった


翔鶴はカブラカンの後ろから現れる

目の前には深海棲艦の艦隊

それを全く恐れない彼女

恐れるどころか


笑っていた




220: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/26(土) 16:45:20.11 ID:a3wc+QO40

戦艦水鬼「貴様…一体何が望みなんだッ!」

感情をありったけ込め言い放つ

仲間達、人類を殺した彼女に対して

翔鶴「いずれ分かりますよ」

翔鶴「いや、多分その前に死ぬかもしれませんね」

戦艦水鬼「言ってくれるじゃないか、貴様自身にそれほどの力など無いくせに」

戦艦水鬼「所詮他人の力を利用してるだけの臆病者だ!」



翔鶴「そうね…、あの時の私もそうだった」

翔鶴「瑞鶴を犠牲にして生き延びた、瑞鶴の力を利用して逃げた…」

翔鶴「だから私は、こんな世界を否定する」

翔鶴「この世界の全てを…」

しばらく沈黙する、そして顔をあげる

翔鶴「たしかに私は力を利用していました」

翔鶴「でも、今の私は違いますよ」



221: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/26(土) 16:46:11.45 ID:a3wc+QO40

その顔は決意に満ち溢れていた

戦艦水鬼は怖かった

戦艦水鬼は翔鶴が狂ったのだとばかり思っていた

だが彼女の顔はそんな事を欠片すらも思えさせない

素敵な女性の表情だった


戦艦水鬼「わからない、何故貴様がここまで狂った事をするのか…」

翔鶴「私を理解出来るのは≪彼≫だけですよ」

翔鶴「彼は私自身よりも理解してくださる」

翔鶴「お話はここまでです、まずは」


「貴女を殺します」



222: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/26(土) 16:47:08.62 ID:a3wc+QO40

翔鶴は弓を構える

矢筒から矢を取り出し、射る

その矢はやがて空中で光り輝き、本来の姿を現す


だがその姿はとても異常な物だった


勢いよく放たれた物は空中でその勢いを殺し、制止する

黒い色をしており、球体が空を飛んでいると表現するのが一番正しい



223: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/26(土) 16:48:02.00 ID:a3wc+QO40


AF≪ソルディオス・オービット≫

アクアビットとGAEというコジマ技術に長けた連中が生み出した狂気の存在

世界を汚染しているコジマ技術を惜しげもなく詰め込んだ兵器

コジマキャノンによる攻撃は強力であり、汚染を広げる

ネクストと同様のクイックブーストを搭載し、機動力を得た

空に浮かぶそれは、常人には決して理解されない

変態的な技術とセンスは、世界より己の欲を優先する科学者達が有していた



224: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/26(土) 16:50:25.39 ID:a3wc+QO40

ソルディオス・オービット(以下ソルディオス)は空を飛ぶ

放たれたソルディオスの数は24基

かつて獣が対峙した時は6基

たかが6基ですら獣は苦戦した

首輪が付いていた獣には十分すぎる相手だった

それが24基もいる、それが何を意味するのか

言わずとも理解できるだろう



ソルディオスは本来そこまで動く物でもなかった

クイックブーストを使用できるとはいえ頻繁に行う訳でもなく

空中に停滞する時間の方が長いほどの的だった

だがソルディオスの装甲は硬く、ネクスト級の火力でも仕留めるのには時間がかかる

強者の余裕、ハードウェアの限界、理由はわからない

だが彼女の扱うソルディオスは違った



225: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/26(土) 16:51:08.82 ID:a3wc+QO40

縦横無尽に駆け巡り黒い球体

それから発射されるコジマキャノン

クイックブーストを巧みに扱い、相手の攻撃を避ける

そう、彼女の影響だ

いや、彼女に従える妖精の影響とでも言うべきか


翔鶴は指示を出す


「殺せ」


ソルディオスはそれに対し行動で示す


海上の深海棲艦は慌てふためく

特大の黒いボールが現れたと思ったら攻撃を仕掛けてきた

しかも考えられない速度と火力を有している

そんな相手が24も存在する、現実離れしすぎていた



226: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/26(土) 16:52:33.47 ID:a3wc+QO40

深海棲艦は対空射撃による迎撃を行った

だが球状の装甲の前ではその程度の物は弾かれた

そして主砲による迎撃を試みる

本来主砲は対艦用装備である

三式弾による対空射撃なども行うが、それは航空機に対しての広範囲砲撃

今回は違う、まさに空飛ぶ戦艦、それ以上の存在を相手にするのだ



レ級と呼ばれる航空戦艦が航空機を飛ばす

その性能は正規空母ですら足元に及ばず、圧倒的な航空機の量

そして火力は通常の戦艦と同様であり

更には雷撃まで可能なまさに≪例外≫

上位種は性能が更に向上しており

たった一隻だけで全ての行動が可能な化け物だった


その圧倒的な性能が身内をすらも恐怖させたのか

特定の海域にのみしか出現しなかった

彼女もまた、首輪を付けられていたのかもしれない



227: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/26(土) 16:53:51.58 ID:a3wc+QO40

レ級の航空機は100を超えていた

上位種や他の艦からも発艦させる

いざという際の切り札、空母が機能しなくなった時の為



そんな切り札は狂気の兵器の前では無力だった



ソルディオスからコジマキャノンが発射される

多くの航空機がそれを避けようと機体を傾ける



コジマキャノンの威力は桁違いだ

プライアルアーマーを展開しているネクスト機ですら致命傷になりえる一撃

それを基本装備した24基のソルディオスが同空域に展開されている

つまり四方八方からのコジマキャノンの嵐に晒されるという事でもある

かすりもしていないのに航空機が爆散する程の威力だというのに



228: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/26(土) 16:55:05.21 ID:a3wc+QO40

数えるのが困難なほど大量にいた航空機はソルディオスの砲撃により大半が爆発

残った航空機もこのままでは撃墜されるだけだろう

元より航空機など囮だったのだが


航空機が上空で爆発している頃、1基のソルディオスに向け砲撃を行っていた

全艦による一斉砲撃、絶大的な火力を誇る彼女達の砲撃はソルディオスを貫く

その威力はソルディオス1基潰すのには十分すぎた

1基のソルディオスは緑の美しい粒子を撒き散らしながら爆発する


あれは落とせる、彼女達は理解した



229: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/26(土) 16:56:22.63 ID:a3wc+QO40

突如無線が入る


翔鶴「あら、お見事です」

戦艦水鬼「見かけ倒しだな、この程度他愛もないぞ?」

翔鶴「ですが1つ落としただけですよ?まだまだありますからね」

戦艦水鬼「幾つあろうと同じだ、貴様などリンクスと比べるだけの力も無い」

戦艦水鬼「これを片付け貴様に問いただしてやろう」

戦艦水鬼「楽に死ねると思わん事だな」

翔鶴「威勢のいい事で、貴女には教えておきましょう」


翔鶴「私の≪答え≫、それは─────」



230: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/26(土) 16:59:41.13 ID:a3wc+QO40

戦艦水鬼だけが聞いた

鶴がここまでする理由を

その根源を


戦艦水鬼「何故そうなるのだッ!意味がわからぬ!」

戦艦水鬼「自分が何を言っているのかわかっているのだろうな!?」

戦艦水鬼「他に道が無いとは思わなかったのかッ!?」


彼女の答えは常人に理解されない

だからこそ獣には理解出来た

理解されない答えを実現させるには

力という可能性で示すしかない


翔鶴「それが私の≪答え≫ですから」

翔鶴「私は≪彼≫みたいに強くありません」

翔鶴「だからこそ、私は選んだのです」


「この戦いの道を」



235: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/29(火) 22:37:41.98 ID:0UErJYxC0

翔鶴「少し話すぎましたね」

翔鶴「まだ1基落としただけです、それに…」

翔鶴「私の後ろの物をお忘れではないですか?」

翔鶴「ではこの辺りで失礼しますね」

翔鶴「私を止めたければこの子達を倒す事ですね」


翔鶴はそう言い放つと背を向け進み始めた

それと同時にソルディオスの攻撃が本格的に始まった

23基のソルディオスによるコジマキャノンの嵐

コジマキャノンは非常に強力な武装ではあるが

コジマ粒子のチャージが必要で連射が出来ないという欠点が存在する

だがその欠点は数によって補われている




236: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/29(火) 22:38:42.40 ID:0UErJYxC0

空では黒い球体が白い光を放ちながら高速で移動しつつ

全てを破壊する攻撃が浴びせられる

いくら装甲が厚いとはいえ戦艦級の主砲であれば

その質量でソルディオスの装甲を傷つける事は可能だろう

だがソルディオスのサイズは彼女達とは比較にならない

たとえ一撃を当てたとしても大した事はないだろう

同じ個体に、可能な限り同じ箇所に、複数回砲撃を行う

それが勝つ為の道



237: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/29(火) 22:40:13.89 ID:0UErJYxC0

だが空の球体を戯れている最中

沈黙していた母が動き出す

空母部隊に向かっていた自立兵器もやってくる

何故彼女達をここまで攻撃するのか

深海棲艦ばかりが狙われる

理由はわからない

何故なのか

考える暇すらなかったのだが




238: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/29(火) 22:41:27.84 ID:0UErJYxC0

アサルトアーマーを使用したネクスト

ネクストは確信する、鶴が動き出すと


プライアルアーマーを失った今、少しの被弾も許されない状況となった

ネクスト本体は思いの外装甲が薄いのだ

中には極限まで機動力を高め、守りをプライアルアーマーだけにしている機体もあれば

重厚な装甲に身を包み、プライアルアーマーという壁に守られた鉄壁の機体もある

彼のネクストはその中間に位置する機体構成である

機動力を高めつつも、装甲を無視せず生存率を上げる

トップクラスのリンクスは一つの方向に特化している場合が多い

その方が自らの戦闘スタイルで戦いやすく、戦い方を変える必要がない




239: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/29(火) 22:42:10.56 ID:0UErJYxC0

だが彼はあえて中間を選んだ

その理由は定かではないが

一種の実力の現れではないかと推測される



空母の航空機をほぼ全て落とし、その場の全員に絶望を与える

そして彼も自らの守りを取り払った

彼は、ネクストはどこかへと去った

唐突な出来事で何が起こったのか理解できなかった

だが方角はあの巨大兵器のいる方向ではない

彼女達がやってきた方向へと去った




240: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/29(火) 22:44:15.29 ID:0UErJYxC0

赤城「まさか…日本を攻撃する為に……!?」

蒼龍「私達の速度じゃ追いつけません!」

飛鷹「なんて卑劣なの…!」

隼鷹「これじゃどうしようもないねぇ…チッ」


ネクストは日本の方へと飛んで行った

アサルトアーマーを使用した反動でオーバードブーストは使用出来なかった

それでも500km/hを超える速度で飛ぶそれに追いつける者はいなかった

ただネクストの姑息なやり方に怒りを覚える

彼女達が感情を持たぬ兵器ではないと証明するかの様に




241: ◆GkrHEjBFKo 2015/09/29(火) 22:45:03.85 ID:0UErJYxC0

「私に提案があるのですが、よろしいですか?」


≪言ってみろ≫


「戦いが始まったらまずは貴方が」


「そしてあるタイミングで私が出てきます」


「貴方にはその間にある事をやって貰いたいのです」


≪内容は?≫


「それは───」




≪それでいいのか?≫


「それでいいのです、私は貴方ほど強くないのですから」


「私は……おかしいですかね?」


≪少なくとも他の連中よりはな≫


≪合図は俺がする、異論はないな?≫


「はい、お任せします」




≪行けそうか?≫



245: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/03(土) 21:40:43.35 ID:CFxTGZn60

空母部隊からネクストが離れていく

その方角は彼女達の本拠地である日本がある

これが盛大な陽動作戦だという可能性もあった

彼女達はそれに気付けすらいなかった

今更嘆いても仕方ない

とにかく今は目の前の敵を始末しなければならない


空母は航空機の大半を失いその機能は皆無と言っても等しかった

だが機銃による迎撃は可能だった

彼女達は力を失っても諦めず立ち向かった

一部の優秀な者だけが力を失わずに



246: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/03(土) 21:42:05.68 ID:CFxTGZn60

自立兵器の数は大きく減っていた

数多くの駆逐級、軽巡級の対空射撃と主砲による砲撃で撃ち落としていた

被害も決して少なくはなかった

ツ級と呼ばれる個体に、秋月型駆逐艦の存在が大きかった

対空能力に秀でている彼女達ですら苦戦した相手ではあったが

何も一人で対処する必要はない

お互いで補えばいいのだから


自立兵器が減った理由は戦艦重巡部隊へ攻撃を仕掛けようとする個体がいる事もあった

空母部隊は駆逐級に軽巡級を率いて戦艦重巡部隊に合流しようとする

数十名の駆逐級を補給部隊の護衛に残し、進む



247: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/03(土) 21:47:40.31 ID:CFxTGZn60

空母部隊と深海棲艦の中央前方攻撃組と合流する

この場に居る艦娘、深海棲艦の三分の二が集結する

彼女達は他の攻撃組にも連絡し、戦力を集結させようとする


全戦力が集結する頃にはソルディオスは残り5基になっていた

深海棲艦の圧倒的物量による多方向からの砲撃により

ソルディオスは回避がままならず思っていたより簡単に落ちた

ネクスト級のサイズを超えるその球体は空を埋め尽くすが

戦争を続けていた彼女達にとって狙い撃つのは容易であった

コジマキャノンは威力があるが、各自散開してしまえば生存率は上がる

小を犠牲に大を生かす、それだけだ




248: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/03(土) 21:51:37.35 ID:CFxTGZn60


だがSoMの砲台は未だ健在であり、自立兵器は少数ながら空を飛んでいた

全戦力が集結する頃には、戦闘開始前の半数すら生き残っていなかった

負傷し、後方に撤退する者は容赦なく狙われた


五十鈴「しっかりして!今助けるからっ!」

由良「い、痛い…由良を殺して……」

五十鈴「なに馬鹿な事いってるの!冗談でも許さないんだからっ!!」

由良「五十鈴…だけでも……逃げ」


由良はコジマキャノンの光の中に消える

由良を助けようとした五十鈴も呆気なく消える



千代田「千歳お姉!千歳お姉ぇ!!」

千歳「ちよ……だ…」

千代田「私が…守れなかったから……!」


千歳は千代田を自立兵器の攻撃から身を挺して守った

その際致命傷を負った千歳は、死んだ




253: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/07(水) 22:21:15.01 ID:jtYf9tKi0

命が容易く消えていく

それが戦場という存在


ソルディオスによるコジマキャノン

ソルディオスの合間から現れる自立兵器の攻撃

SoMの砲撃とミサイルの嵐

だがどれも最初と比べると些細な物だった



254: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/07(水) 22:22:16.03 ID:jtYf9tKi0

ソルディオスと自立兵器はその数を減らし、SoMは砲台を潰され今にも自壊しそうであった

それでもソルディオスはコジマキャノンを撃ち、敵を殺す

自立兵器は対空砲火を受け続ける、犠牲にならんとばかりに

SoMは砲台とミサイル発射口を潰された事により内部へとダメージが伝播

ダメージコントロールがないのもあって崩壊寸前

それでも偉大な母は、その脚で大地を踏みしめる

脚元にいるカブラカンの、鶴の傘になるように


彼女達は戦った

気の遠くなるほど長い時間をずっと

人類の為に命を減らしながら




255: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/07(水) 22:24:12.25 ID:jtYf9tKi0

SoMは大きな爆発音を放ちながら崩壊した

前部の甲板が崩壊する、それと同時に中心部が爆発

脚のコントロールを失った母は大地に伏せる

未だに動く砲台とミサイル発射口からは誰かを狙うわけでもなく砲弾とミサイルが発射される

とてつもないサイズの主砲は根元から折れ、大地に突き刺さる

脚元に存在したカブラカンはSoMの下敷きになり、兵器としての生涯を終えた


SoMは爆発をした

その爆発によって多数の破片が海上の彼女達を襲った

偶然の産物だろう、だが偶然であろうともそれは事実

単純に鉄の塊が飛んできた、だが質量は塊と呼ぶには大きすぎた

破片に気付かなかった者は容赦なく沈んだ

油断をした、注意をしていなかった彼女達が悪い

そう言われるのが普通だろう



256: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/07(水) 22:26:22.19 ID:jtYf9tKi0

その中でも大きな破片が鶴の背後に落ちる

SoMが崩壊すると知り、鶴はある程度距離を離していた

その破片は勢いよく飛んでくる

破片は平らな面を強く海に叩きつけ、水飛沫をあげる

破片にはただ、母を生み出した者達の名前が書かれていた




257: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/07(水) 22:27:40.49 ID:jtYf9tKi0

数少ないソルディオスは次々に撃ち落とされる

落とされたソルディオスはわずかな浮力で海上に浮かんだままのもあれば

完全に機能を停止し、水底へと沈んだ物もある

そして最後のソルディオスが落とされる

いくら強力な兵器とはいえ、無敵ではない

コジマキャノンの欠点である連射力を数で補ったが

その数すらもなくなった今、彼女達からすれば勝てない相手ではなかった


落とされたソルディオス、その残骸がわずかに光る

そして次の瞬間、水底から振動が伝わる

一部の者は瞬時に判断し、その場から、ソルディオスから離れた

負傷した者や疲労した者を連れていく余裕はなかった

必死に声をかけるが、SoMの爆音にかき消されるのが大半



258: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/07(水) 22:28:43.36 ID:jtYf9tKi0

ソルディオスは白い光を放ちながら自爆した

アサルトアーマーとは比較にならない規模の爆発が数多く

ソルディオスから離れていた者ですらその衝撃に耐えられず、身体がバラバラになった

全員が全員そうではなかった、だがそれはあまりに残酷な光景だった

青いはずの海が血とコジマ粒子の入り混じった色となり

どこか幻想的な雰囲気であったが

浮かんでいる内臓や身体の一部が現実を突き付ける


海中にいた潜水艦達は沈んだ仲間を助けるべく活動をしていた

故に海上で起こっている事の半分以上を理解出来ず、己の出来る事を全うしている

海中に沈んだソルディオスの自爆は彼女達潜水艦を襲った

ソルディオスの恐ろしさを彼女達は知らない

このような自爆はこの場の誰もが知るよしはなかっただろう

自爆の衝撃は水を伝わり、海中にいた彼女達を粉砕した

たかが振動で、それだけの力の自爆だという事だ




262: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/11(日) 23:02:33.93 ID:prSeg4lA0

SoMの破片、ソルディオスの自爆

この2つは予想より遥かに上回るほどの死者を出した

500以上いた彼女達は既に20も存在しなかった

深海棲艦は艦娘より攻撃を集中され、一部の個体以外沈んだ

戦艦水鬼は最後まで抗った、だが彼女が一番に沈められた

鶴の答えを聞かされ、それを誰に伝える間もなく

その野望を胸に抱いたまま彼女は水没する

野望を、夢を、未来を仲間に託し


熱しやすい役者は舞台から去る




263: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/11(日) 23:03:11.47 ID:prSeg4lA0

勝利という美酒に酔いしれる時はなかった

それでも、敵を倒した事実は彼女達の心を引き込む

油断という闇へ

それを乗り越えられなかった者

乗り越えたが物理的に死んでしまった者

そのどちらもが同じ≪敗者≫であり

彼女達はまだ≪挑戦者≫でもある



生き残った彼女達は優秀な者ばかりだった

艦としての性能ではない、戦士としてだ

彼女達の目の前には、この惨劇の主でもある鶴がいた

この数ならばたった一人の艦娘程度大破まで追い込み戦闘不能にするのは容易

だがソルディオス、自立兵器、SoMを同時に相手にしていた彼女達の肉体は

既に限界を超えており、弾薬と燃料も心許ない状況である

そこで生き残った彼女達は後方に待機させた補給部隊へ連絡を開始

残していた数十の駆逐級に補給物資を運ばせつつ残存戦力を集結させる

いくら相手が正規空母とはいえ砲撃力は彼女達の方が勝る

もうすぐ戦いが終わる、そう思っていた



264: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/11(日) 23:03:40.17 ID:prSeg4lA0

補給部隊からの返信はなかった

いくら声をかけても返事がなく、ノイズだけが響く

補給部隊は補給という重要な仕事を任されている為安全な後方に配置されていた

自立兵器やソルディオスが補給部隊を攻撃しようとすれば誰かが気付くはず

SoMの主砲は戦艦重巡部隊への砲撃を行っていた

SoMの主砲を破壊した頃には頻繁に連絡を取り合っており

それ以降も幾度となく補給を受けていた

考えられる可能性は一つ



≪獣が帰ってきた≫



265: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/11(日) 23:04:13.85 ID:prSeg4lA0

遠方から白い光を放ちながら巨大な物体が飛んでくる

ネクストが、奴が帰ってきた

絶望しかなかった

恐らく補給部隊は奴が壊滅させたのだと

本土を狙うと見せかけ補給部隊を叩いたのか?

すぐに補給部隊を叩かなかったのはこの状況を作り出す為に?

滑稽だな、と生き残った武蔵は言う

強大な力を持ちながら、相手を少しずつ減らしていき殺す

仲間を失い精神的に追いやり

疲労させる事で肉体的に追い込む

そこまでするのは余程性根の腐った者の所業か

はたまた別の何かか



266: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/11(日) 23:05:10.93 ID:prSeg4lA0

翔鶴「お見事です皆さん、よく倒せましたね」

武蔵「貴様…ッ!」

翔鶴「でもまだ終わっていませんし、始まってもいません」

翔鶴「全てを終わらせ、始める為にも」



「私は戦います」




翔鶴が告げる、それは明確な宣戦布告

今更だと思った、ここまでしておきながら

だが理由を考える時間は与えられない

鶴は弓を引き絞り、矢を放つ

矢は光り輝いた後に、無数の航空機へと変化した

見慣れた光景、少なくとも黒い球体が現れるよりは遥かに



267: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/11(日) 23:06:12.58 ID:prSeg4lA0

航空機は急降下爆撃を行う

彼女達は必死に避けようとするが航空機はそれを許さない

上からの攻撃に注意を向かわせすぎたのがいけなかった

横からは鶴が放った別の航空機が雷撃を行っていた

それに気付いた時は既に遅かった

爆弾と魚雷の爆発、その衝撃は海へと伝わり彼女達に雨を降らせる


鶴の練度は高い

左手の薬指にはそれを表す物がはまっている

それは別の世界との繋がりを表す物でもある


魚雷と爆弾を同時に受け散り散りになった彼女達を戦闘機が追い回す

戦闘機の機銃など本来の彼女達からすれば気にする事でもない物だが

戦闘機は被弾箇所を集中的に狙う

いくら装甲が良かろうが、傷ついた場所を狙えば確実に追い込める

彼女達は機銃で迎撃をするも、狙って当てれるだけの余力は残されていない

鶴の航空機は的確に追い詰める、追い詰められる者は絶望する

ここで死ぬ、戦って戦って最期に死ぬ




268: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/11(日) 23:06:44.07 ID:prSeg4lA0

だが彼女達の頭上で航空機は爆散する

そして彼女達から航空機を遠ざけんと追い回す戦闘機の姿があった

雲龍「翔鶴さん…貴女に教わった事を貴女に対して使うなんて…」

そう言いながら雲龍は航空機を発艦させる

翔鶴「あら雲龍、教えた事を覚えててくれて嬉しいわ」

雲龍「ふざけないでくださいっ!何故貴女がこんな事を…」

雲龍「天城も葛城も秋月さんも照月さんも、他のみんなも…」

雲龍「なんでこんなことをしたんですかっ!」




269: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/11(日) 23:08:23.42 ID:prSeg4lA0

──────

翔鶴「いい?一度の戦闘で全ての航空機を発艦させない事を心がけるのよ」

翔鶴「必ず少数でも手元に残していざという時に発艦させて」

雲龍「でもそうすれば航空戦力は実質減少して危険なのでは…?」

翔鶴「そうね、でも貴女には天城さんや葛城さんがいるもの」

翔鶴「一人ならまだしも他に仲間がいる時に使えば」

翔鶴「油断した攻撃機や爆撃機程度落とせるはずだから」

翔鶴「真正面から戦って勝てそうにない相手だったらチャンスを待つのも手ね」

雲龍「もしかして、瑞鶴さんの事を…?」

性能では遥かに上回る深海棲艦との戦い

その戦いで瑞鶴は沈んだ

翔鶴「私はまだ囚われている、受け入れきれてないのね…」

翔鶴「もし私がいなくなっても、貴女がみんなを守ってね」

雲龍「翔鶴さん…」




270: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/11(日) 23:09:08.37 ID:prSeg4lA0

──────

雲龍の戦闘機が攻撃機と爆撃機を次々落とす

鶴の戦闘機も近寄るが機銃の残弾が心許なく満足に戦えていなかった

とはいえ雲龍の戦闘機の数は鶴と比較すると大幅に少なく不利だった

雲龍の戦闘機から逃げ延び雲龍へと攻撃を行う航空機もあった

上空の事に気を取られていた彼女は攻撃が当たる直前まで気が付けなかった

だが雲龍は無傷だった

雲龍と攻撃機の放った魚雷の間に武蔵が割り込んで盾になっていた

雲龍「武蔵さん!?一体何故…」

武蔵「この場で雲龍が一番戦えるのだ」

武蔵「私達の事は気にせず存分に戦ってくれ!」

武蔵「そして私達の仇を討ちとってくれよ…!」

雲龍「でも…!」

武蔵「私は大和型の二番艦だぞ?そうそう沈むものかッ!!」



271: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/11(日) 23:09:44.03 ID:prSeg4lA0

生き残っていた全ての艦娘、深海棲艦は全員で雲龍の盾となった

先ほどまでの戦いの損傷で彼女達は立っているのがやっとな状況だった

それでも立ち、護る

それを希望だと信じて



獣は思い出す

人類の揺り籠を破壊し、次に受けたミッションを

人類未来の為のミッション、その中に獣は含まれていなかった

ある意味では含まれていた、人類の敵として

獣と獣を解き放った古き王は戦った

相手にはリンクスでも特に優秀な4人に

獣をリンクスにした飼い主が殺しにやってきた




272: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/11(日) 23:10:10.80 ID:prSeg4lA0

獣は勝った

ただ一人だけ

あの時と同じ

ホワイトグリントと共闘した時と

いや、違うか

もう彼を理解してくれる存在は居なかった

人類種の天敵とすら呼ばれた彼の背中には

鶴だけにしか理解できない物を背負っている




273: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/11(日) 23:14:07.00 ID:prSeg4lA0

雲龍は仲間に護られながら戦う

盾となった仲間も対空射撃を行うが大した効果はない

一人、また一人と死んでいく

仲間を犠牲にしながら生き残る

それは彼女が一人だけになるまで続いた

その頃には雲龍の戦闘機が鶴の全ての航空機を落としていた

雲龍「どうして…どうしてっ!」

翔鶴「流石ね雲龍、私なんかとっくに超えちゃってるのね」

雲龍「私は貴女を許せない!許さない!」

翔鶴「それでいいのよ雲龍、私を憎めばいいの」

翔鶴「悲しみを忘れるほど憎んで、そうすれば私は満足するの」

雲龍「何を言ってるんですか…?」

翔鶴「もう、貴女と私だけになってしまったわね」

翔鶴「私が見つけた≪答え≫を貴女に託すわ」




274: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/11(日) 23:16:19.75 ID:prSeg4lA0

翔鶴「私は、この世の全ての艦娘、深海棲艦を殺したかったの」

翔鶴「私達がいるから争いは生まれ、それを利用する者が現れる」

翔鶴「人は私達に全てを押しつけ、安全な場所から眺めている」

翔鶴「そんな世の中っておかしいとは思わない?」

翔鶴「だから思ったの、私達がいなくなれば争いは生まれない」

翔鶴「私達がいなければ利用されない」

翔鶴「私達がいなければ人は自分の脚で立ちあがる」

翔鶴「私達がいなければ、私みたいな思いをする人が少なくなる」

翔鶴「瑞鶴が沈んで私は思ったわ、現実はなんて理不尽なのでしょうって」

翔鶴「だったらこんな理不尽な世界はいらない」

翔鶴「こんな世界を否定してしまえばいいの」

翔鶴「でも気付いてしまったの、私もその世界の一部だって」

翔鶴「彼と同じ考えになってしまったのだけど、しょうがないわよね」

翔鶴「私は貴女に殺されて初めて願いが叶うの」



275: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/11(日) 23:17:10.08 ID:prSeg4lA0

雲龍「……狂ってる」

翔鶴「そうね、私もそう思うわ」

翔鶴「彼がここからいなくなった時、日本にある鎮守府を全て破壊してもらったわ」

翔鶴「それだけじゃない、艦娘を生み出せる技術は彼が全て壊してくれた」

翔鶴「私達はたった二人の艦娘、私は少し特殊なのだけれど」

雲龍「一ついいですか?」

翔鶴「どうしたの?」

雲龍「貴女を殺せば、そこの兵器が私を殺すのでしょうか?」

翔鶴「それは無いわ、貴女の残り燃料と弾薬は心許ないはず」

翔鶴「そして世界中どこにも貴女にそれを補給できる施設がない」

翔鶴「貴女は人間として生きて、それだけよ」

雲龍「好き勝手やって、貴女は死んで楽になるんですか?」

翔鶴「私が生き残ってしまうと、本当に人を皆殺しにしてしまいそうだから…」

翔鶴「だからお願い雲龍、私を殺して…」



276: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/11(日) 23:17:45.28 ID:prSeg4lA0

翔鶴は光り輝き、その姿を変えていた

凛々しい顔つきになり、全身に纏う雰囲気が変わった

その雰囲気は、全てを受け入れる母のような

翔鶴「私はこの世界の物であって別の世界の物でもある」

翔鶴「改ニになった私には何も武装がないわ」

翔鶴「貴女の弾薬が尽きるまで私は立ち続ける」

翔鶴「殺されるまでずっとね」

雲龍「どうして…翔鶴さん…」

翔鶴「知ってはいけないわ、私の気持ちは」

雲龍「私は貴女を殺します…ッ!死んでいった全員の仇として!」



277: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/11(日) 23:18:19.38 ID:prSeg4lA0

雲龍はわずかに残されていた攻撃機を発艦させる

鶴は避けない、雷撃をひたすらに受け止める

彼女は笑顔で雲龍を見つめる

最期に彼女は解放される

己の中の感情に

翔鶴型航空母艦一番艦 翔鶴 撃沈




278: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/11(日) 23:19:04.35 ID:prSeg4lA0

雲龍「はぁ…はぁ…」


≪お前はこれからどうする≫


雲龍「貴方が翔鶴さんをこんな風にしたのッ!?」


≪これは彼女の答えだ≫


≪お前はどうする≫


雲龍「私は…この世界を見守る、いや管理する」


≪管理…≫


雲龍「翔鶴さんみたいな存在が生まれないようにする為にも」


雲龍「貴方のような≪例外≫に対処する為にも」


雲龍「私はこの道を選ぶ」



279: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/11(日) 23:19:51.71 ID:prSeg4lA0

≪そうか、お前の答えを邪魔するつもりはない≫


≪俺は消える、再び会う事もないだろう≫


雲龍「最後にいいかしら」


雲龍「貴方は一体何がしたかったの?」


≪答えを見たかっただけだ≫


≪俺に似た彼女がどうするかを≫


雲龍「たったそれだけ?」


≪俺を理解してくれた彼女≫


≪何かしてやりたかった≫


雲龍「不器用なんですね」


雲龍「貴方が彼女を特別に思っているのは理解しました」


雲龍「それでも私は許しません」


雲龍「貴方達を」



280: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/11(日) 23:20:22.87 ID:prSeg4lA0

世界を否定する為に世界を壊す

本来無い物が存在するする世界に

鶴と獣は破壊という雨を降らし、その爪痕を残した

獣が消え、SoMの残骸やコジマ粒子は世界から消えていた

世界は正しい姿へと戻った

雲龍という≪例外≫を受け入れながら



281: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/11(日) 23:23:20.30 ID:prSeg4lA0

本編はこれにて完結です
後日おまけを少し投下して依頼を出させていただきます



282: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/12(月) 00:11:26.68 ID:7GYpx7cn0


そして誰もいなくなった



284: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/13(火) 11:57:25.87 ID:smYFss0H0

翔鶴の答えはACfAの全ルートのキャラの答えを集約した物を想定しています
企業連(ウィン・D)→か弱い人間達を助ける
ORCA(テルミドール)→人類の為に人や自分の死すらも躊躇わない
虐殺(オールドキング)→世界を変える為に悪役になる
オールドキングに関してはフロム脳を爆発させているので捉え方は個人によって異なりますが

翔鶴は人類に自分と同じ経験をさせない為に争いの火種である艦娘と深海棲艦、大本営を潰し
本土にいる少数の人類を殺し悪役として全ての業を背負い、自らの命を賭して
艦娘と深海棲艦が存在する世界を否定しました

それを死という形でしか実現出来なかった翔鶴は常人には理解されない程度狂っています



285: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/13(火) 12:00:11.46 ID:smYFss0H0

おまけ (世界観を壊したくない方は閲覧非推奨)


GA「作戦を説明する、依頼者はいつものGA」

GA「目的は新開発した兵器の実戦テストの相手だ」

GA「偉いさんあまり情報を提示しなかったが、なんと女の子が相手だそうだ」

GA「艦娘とかいう一般的な背丈の女性が武装をしているような見た目らしい」

GA「見た目からは想像できない火力と防御力を備えており、本気で戦ってほしいとの事だ」

GA「馬鹿げた内容に聞こえるが、受けるか受けないかはアンタの自由だ」

GA「報酬も比較的多い、名前を広めるのにもいい機会だと思うぜ やるか?」


ダン・モロ(以降ダン)「前から噂になってた艦娘ってやつか!」

ダン「可愛い子ばかりらしいしな、俺がカッコよく戦えば惚れてくれるんじゃないか?」

ダン「まぁ、紳士的な俺向けの依頼だな!」



286: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/13(火) 12:01:31.64 ID:smYFss0H0

──作戦海域上空──

ダン「おっかしいな、情報だとこの辺りなんだけど…」

???「遅かったじゃないか…」

???「初めから艦娘などいない、騙して悪いがこれも仕事なんでな」

ダン「うわあああ!誰だよ!?」

???「言葉は不要か…」

???「いいじゃ~ん、盛り上がってきたねぇ!」

???「手こずっているようだな、尻を貸そう」

???「ありじゃないか?貴様のファルス」

ダン「なんだこの数は!?」

ダン「無理だ!避けられねぇ!」



287: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/13(火) 12:02:07.32 ID:smYFss0H0

Oh,I'm scary
(俺は怖い)

So,I'm scary
(俺は怖いんだ)

All that I see
(俺は現実を見ている)

Now,I'm scary
(だからこそ怖いんだ)

All is fantasy
(艦娘なんて幻だったのだから)

All is fantasy
(艦娘なんて存在しないのだから)



288: ◆GkrHEjBFKo 2015/10/13(火) 12:02:37.16 ID:smYFss0H0

ダン「……うわああああ!ってあれ?夢か」

ダン「しっかし酷い夢だったな、ここ最近で一番の悪夢だったぜ」

ダン「お?GA社から依頼のメールが届いてるな」

「新開発した兵器≪艦娘≫の実戦テスト用の演習相手を…」

ダン「」

おわれ



290: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/13(火) 13:21:05.03 ID:Ra1wCyvco

完走乙



291: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/15(木) 16:56:39.51 ID:fA8/LKv90

乙ダルヴァ




元スレ
SS速報VIP:【ACfA】狂った鶴と首輪無き獣【艦これ】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1440234797/



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