SS速報VIP:駆け出しな武内Pのパラレル日記
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1445793418/



1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/26(月) 02:16:59.19 ID:Vj2kbUXCo

モバマスSSです。
設定改変。
更新不定期。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1445793418




2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/26(月) 02:18:00.16 ID:Vj2kbUXCo

○月△日 洗濯物が乾かない日

記念だ。特に意味はない。
今日は忙しいから明日から書き始める。

今更気づいたが、書くことがないならそもそも書く必要がなかったような気がする。

 ◇

○月△日 曇り空の日

346プロに入社してプロデューサーを始めたはよいものの、いまいち振るわない。
振るわないというのも、なんというべきか。

……なにが悪いのかが分からない。なにが良いのかも分からない。
ただ流されるままに雑務やヘルプに腕を振るっている日々だ。



3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/26(月) 02:19:21.82 ID:Vj2kbUXCo

○月△日 コンビニの前に座り込む若者に視線を向けたら逃げられた日 

今西部長は人のいい方だ。
入社当初から私のなにかを買ってくれているのか、なにかと優遇されている気がする。

もしかしたら、気のせいかもしれない。
今時の若者には、「へへっ、あの娘俺に気があるんだぜ」というものがテンプレートとして存在するらしいが、遅れてきたその類のものかもしれない。

変な意味ではない。

 ◇

○月△日 癖で首に手をやろうと腕を上げたら女性に悲鳴をあげられた日

経験を積むために今勢いのある子役の子のプロデューサーもどきをしてみてはどうかと今西部長に提案された。
どうやらその子はモデル部門所属の今西部長の知人らしく、紹介してくれるとのこと。

二つ返事でお願いした。



4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/26(月) 02:22:56.12 ID:Vj2kbUXCo

○月△日 髭剃りに失敗して顎から流血した日

子役の子と会った。
どちらかというと冷たい相貌というか。年齢不相応な中身をしている気がした。

年齢的に子役というには丁度よく、女優と呼ぶには幼すぎる。
そんな印象を感じた。

 ◇

○月△日 情けない日

元来のスペックが高い。彼女、岡崎泰葉は非情に優秀だった。
同時に一人きりで完結し得る人材だ。

……今西部長は私になにを求めているのだろうか。



5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/26(月) 02:23:55.76 ID:Vj2kbUXCo

○月△日 とても情けない日

「今更貴方に教えてもらうことなんてない」
そう言われた時、私の中のなにかを粉々に砕かれた気がした。

私は教授される側で岡崎さんは教授する側。
そんなことはとっくに分かっていたはずなのに、どこかで驕っていた。
所詮は年端もいかぬ子供だと。

 ◇

○月△日 清々しい日

一日経って、なぜか体が軽くなっていることに気づいた。
心の中にあったわだかまりを打ち砕かれた気分だ。

それを岡崎さんに打ち明けると、それは『どえむ』というのだと教授された。
なるほど、わたしは『どえむ』だったらしい。

一人、言葉にしながら納得していると、岡崎さんがきょとん、とした表情の後にお腹を押さえながら笑いだした。

瞳の端に涙を溜めながら笑う姿がなぜか瞼に焼き付いて離れない。



6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/26(月) 02:24:41.88 ID:Vj2kbUXCo

○月△日 不思議な日

岡崎さんの私に対しての態度が和らいだ気がする。
多分気のせいだろう。

 ◇

○月△日 趣味が増えた日

ボトルシップなう
続きは後で書く。

-追記-
後で書こうと思ったが、日にちが変わったので明日書く。

-追記2-
明日は今日だった。今日書く。



7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/26(月) 02:26:33.92 ID:Vj2kbUXCo

○月△日 時代の波に乗る日

数日日記を書くのを忘れていた。
纏めて書くと、岡崎さんはドールハウスを作るのが趣味らしい。

岡崎さん曰く、コミュニケーションの円滑化は必須らしい。
……ので、趣味を理解をするのもプロデューサーの職務と心得た。
流石にこの歳と見た目でドールハウスを買うのも憚れたので、ボトルシップの制作キットを買ってきた。

一回集中して作り始めると存外に楽しい。
ちなみに、今の若者の間ではなう、と語尾に付けるのが流行っているそうだ。岡崎さんにそう教授された。

ボトルシップなう。



8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/26(月) 02:27:50.79 ID:Vj2kbUXCo

○月△日 親愛度が上がった気がする日

前日の日記で記したことを岡崎さんに伝える。
岡崎さんは途端に下を向き、ふるふると震えていた。

今日は岡崎さんが笑顔を向けてくれることが五度もあった。記録更新だ。
理由に心当たりはない。

 ◇

○月△日 指先にキレがない日

こう、指の調子が良くない。ボトルシップに食指が伸びない。
理由は分かっている。今日は余り岡崎さんにとって好ましい現場ではなく、機嫌が芳しくなかったからだろう。

ただ、最後に言っていた「この世界は華やかなだけじゃありませんよ?」というセリフが耳を離れない。

そんなことは分かっている。ただ、薄っぺらな私の言葉とは重みが違ったことだけも分かってしまうのだ。



9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/26(月) 02:29:11.89 ID:Vj2kbUXCo

○月△日 若干アンニュイな日

なぜ私はプロデューサーを志したのだったか。
ただ、笑顔とは素敵なものだと思う。

正確には最近になって思うようになった。
仕事で笑わない彼女の日々の笑顔が評価されないのはおかしい。

叶うならば、この少女の自然な笑顔をもっと見てみたいものだ。
なんともなしに、PCに中身のない無題のドキュメントを一つ作ってその日の業務を終了させた。

 ◇

○月△日 小雨が降った日 

岡崎さんの仕事が好調だ。
仕事は次から次へと舞い込んでくる。

やはり、彼女は本物だ。
ただ、忙しくなればなるほどに彼女が笑顔を見せることが少なくなっている気がする。
それだけが気がかりだ。

そういえば、最近美城常務が一人のアイドルのプロデュースを始めたという。

先輩プロデューサーたちは現場を知らない人間のお遊びと鼻で笑っていた。



10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/26(月) 02:30:20.36 ID:Vj2kbUXCo

○月△日 空が灰色な日

岡崎さんが熱を出した。
38℃超え。当然仕事など出来るものではない。
恥ずかしながら、おろおろとしていた私を手で制して岡崎さんは仕事に出ようとしていた。

当然止めた。

 ◇

○月△日 雨音がうるさい日

今西部長と少し話をした。
私は勘違いをしていた。彼女を有り余る才持つ才女として見るあまり、岡崎泰葉という一人の少女として見れていなかった。

彼女と共に歩むには無機物ではいられない。
変えなくては、私を車輪からプロデューサーへ。
歯車はやめよう。だが、役目を終えれば消えるだけの魔法使いでもいたくない気がする。
もっと――、もっと―――。

私はどうなりたいのだろう。



11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/26(月) 02:31:25.66 ID:Vj2kbUXCo

○月△日 水たまりで少年少女が跳ねる日、ただし私が視線を向けると逃げる

「人間でいいじゃないですか」
岡崎さんを見舞った際にそう言われ、心臓を鷲掴みされたような気分になった。

それでいいのだろうか。それで、許されるだろうか。
そう問う私にまだ熱で辛いだろうに、瞳を潤ませて笑ってみせた岡崎さんに酷く救われた気がする。
 
 ◇

○月△日 久しぶりに布団を干した日

熱が下がった後も岡崎さんの躍進は止まることはない。
そして、調整も仕事の内容も私が調整することに変わりはない。

もう二度と失敗などしない。無機質な歯車では彼女の隣には立てないのだから。

ただ、終わりの日は近い。
その時までに決断しなければ。



12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/26(月) 02:33:32.66 ID:Vj2kbUXCo

○月△日 人生に数度レベルで驚いた日

気づいたら私の所属がアイドル部門のプロデューサーからモデル部門のプロデューサーに変わっていた。

そして、呆然とする私に岡崎さんは笑いかけたのだ。
「どうしても欲しいから貰っちゃいました。生まれて始めてのわがままかもしれませんね」、と。

ベテラン大人気モデルと新米の域を出ないプロデューサーの権力の差は山より高く、海より深かった。

だが、冷静になって考えてみればやっていることは変わらない
大丈夫だ。まだ私のアイドルプロデュースは始まったばかりだ。修正が効く。
そもそも、アイドルプロデュースも今やってることもそんなに変わらない気がする。
ヴィジュアル系アイドル。これでいいじゃないか。

……これは妥協ではない。



13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/26(月) 02:36:14.74 ID:Vj2kbUXCo

○月△日 微糖コーヒーを買ったら甘すぎた日。これは詐欺だ

世間ではメイド喫茶とやらが流行っていると岡崎さんに教えてもらった。
使用人に扮した非正規雇用の女性が消費者に奉仕する、という体の喫茶店らしい。

我々プロデューサーという職業は時代の波に右往左往される職業だ。
ならば、表面だけでも理解しておく必要があるだろう。

今度、時間のある時に一度向かってみるという話を伝えると、私の顔を凝視してから、岡崎さんに慌てたようについていく旨を伝えられた。
なぜ岡崎さんがこんなに焦っているのかよく理解出来なかった。

ただ、「……一人だと、捕まりそう」という呟きがやけに耳に残った。



20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/26(月) 16:16:47.44 ID:Vj2kbUXCo

○月△日 鶏卵の可能性を再認識した日

最近になって、日下部若葉という名前をアイドル部門の方から良く聞く。
どうやら美城常務のプロデュースしているアイドルが順調に伸びているらしい。

スター性と別次元の物語性を提唱する美城常務の理念に反発する者は多い。
なぜなら、それを備えていないアイドルが殆どだからである。

物語性というのは難しいもので、イメージの固定化に繋がる。
例えば日下部若葉なら最近こなしたらしい大きな仕事で言えば、ローゼスゴシックの日下部若葉なのだ。仕事の幅は当然ながら狭まる。それだけ世界観を保つのに難儀するからだ。

茨の道ではあるだろうが、興味がないかと言えば嘘になる。
だが、少なくとも私の口出すことではない気もする。
そういえば、お昼に岡崎さんと食べた親子丼は絶品だった。また食べに行きたい。



21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/26(月) 16:17:46.92 ID:Vj2kbUXCo

○月△日 悩ましい日

仕事について考え事をしながら自動販売機で飲み物でも買って一息入れようと思っていると、廊下で日下部若葉にぶつかってしまった。

慌てて抱き起こすが、倒れた際にウェアが捲れ上がり、足首が濃い紫に変色していることに気づいた。
少なくともぶつかっただけで出来る有様ではない。服装もウェアであり、レッスンの帰りだったらしい。

目の色を変えて立ち上がった日下部さんは私に口止めをして立ち去った。
……申し訳ないが、そんな口止め出来るような内容ではなかったので美城常務に急ぎのアポを取った。



22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/26(月) 16:18:56.43 ID:Vj2kbUXCo

○月△日 きつねうどんの油揚げを岡崎さんに奪われた日

あっと言う間だった。
日下部さんの状態を伝えると、美城常務は事実確認に向かい、日下部さんは病院行きになった。

感謝する。と端的に私に伝えてこの日の美城常務は姿を消した。
その横顔には隠し切れない心配の色が浮かんでいた。

この人のことが少しだけ分かった気がする。
二人がどのような関係なのかは分からないが、少なくとも悪いものや冷えきったものではないのだろう。

帰りに油揚げを十枚ほど買って帰ったがこんなに要らないと帰ってから気づいた。
うどんに使う以外には味噌汁に入れるくらいしか活用法が浮かばない。
悩ましい。



23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/26(月) 16:20:08.38 ID:Vj2kbUXCo

○月△日 作りかけのボトルシップを棚の上から落として壊した日

今日はもう寝る。
なにもやる気が起きなくて少しイライラしながら、コンビニに夕食を買いに行くといつもコンビニの前に座り込んでいる若者たちがなぜか殺されるだのなんだのと悲鳴をあげながら逃げていった。
……解せない。

 ◇

○月△日 卵の黄身が二つ入っていた日

朝からお得感のある卵黄二つの目玉焼きに微妙に調子が上がった。
仕事は順調だ。
しかし、暫く飲んでいなかったインスタントコーヒーを久しぶりに飲もうとしたら中身が酸化していた。……試しに一口飲んでみたがもう飲まない。

最近のコンビニコーヒーのレベルは高い。



24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/26(月) 16:21:16.74 ID:Vj2kbUXCo

○月△日 丸一日うどんの日

大量の油揚げを消費しなくては、と朝からきつねうどんを食べた。
自作のきつねうどんは味が果てしなく微妙だった。
やはりつゆか、つゆが違うのか。
麺も違うのだろうが、素人で改善出来るのはつゆか。

一日を仕事をしながらきつねうどんのつゆに対する考察に費やしてしまった。
岡崎さんにいつにも増して真剣な顔と言われた。
……褒められたはずが不思議と嬉しくはなかった。

 ◇

○月△日 メイドを学んだ日

岡崎さんとメイド喫茶に行って近々辞めて実家に帰るというメイドを一人テイクアウトしてきた。
疲れたので明日また続きを書くと思う。



33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/27(火) 00:33:42.00 ID:UVe8U/Aio

○月△日 よく叩かれる日

誰もを惹きつける満点の笑顔、日陰から覗くような魅力的な笑み。
世界を変革する舞踊、魂に響くような歌声。

アイドルの魅力とは様々なものがあるものだが、昨日出会った安部さんの場合は中毒性にあるものだと思う。
人を惹きつけ、踏み込ませればそこからずぶずぶと沈み込んでいく泥沼のような魅力だ。

……と、本人に言ったのだが涙目になってしまった。
半眼の岡崎さんに丸めた雑誌でぺしんと頭を叩かれた。

どうやら言葉の選択を間違えたようだ。

歌って踊れる声優アイドル。
欲張りな人だ。そして、だからこそ魅力的だ。
「ウサミン星に帰る前に少しだけ、私に貴女の時間をください」
そう言った途端に呆れたような顔の岡崎さんに雑誌で叩かれた。

……これで、私にはモデル部門のプロデューサーでは居られない理由が出来てしまった。
岡崎さんもそれを分かっているはずで、私は逆になんと伝えればいいのか分からなくなった。



34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/27(火) 00:36:20.67 ID:UVe8U/Aio

○月△日 女性に泣かれかけた日

メイド喫茶で出会った彼女、安部菜々さんにはこれからは候補生としてレッスンを受けて貰うことになっている。
私がアイドル部門のプロデューサーに戻れなくても、代わりのプロデューサーに引き受けて貰えるように取り付けた。
養成所通いもやはりお金が掛かる。その辺りの負担がこれからは346プロ持ちとなるのに加え、若干の支給も出るので以前よりも生活的にも楽になるとは思う。
空いた時間は346プロ内のカフェテリアでアルバイトに励むというのだから、恐ろしいバイタリティだ。

それはともかく、安部さんにウサミン星について尋ねてみた。
距離、人口、公用語から美味しいものまで。

設定というのはやはりこういったアイドルの肝だと思う。
……思っていたのだが、その辺りはがばがばだからこその魅力もあると今日思い知った。
やはりまだ、私も未熟者らしい。

ウサミン星の落花生パイが美味しいらしい。今度、千葉に行った時にお土産に買って帰ろう。



35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/27(火) 00:37:25.20 ID:UVe8U/Aio

○月△日 気づいたら一日中送迎をしていた日

最近は岡崎さんの仕事の幅が増え、バラエティなどのテレビへの露出も増えつつある。
特にツッコミが入らないあたり、そう嫌な訳でもないようだ。

それどころか、笑顔で居る時間が伸びている。

後は歌って踊りさえすればアイドル路線まっしぐらだ。

……別に誘導はしていない。そうなったらいいとは思っているが。
やはり私はアイドルのプロデューサーで居たいと思っているらしい。



36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/27(火) 00:37:59.35 ID:UVe8U/Aio

○月△日 ちょっと自信を持った日

安部さんのポテンシャルは想定を大きく上回って高い。
レッスン風景を何度か見せて頂いたが、数ヶ月やそこらで出来る動きではない。
養成所に長く通っていたらしく、堂に入った動きだ。

残念ながらそういった審美眼を私は持ち合わせていないが、トレーナーさんも同意見らしいので私の目もそう捨てたものではないのかと思う。

ただ、少々癖が強いらしい。
そして、あれは自分の為の歌と踊りなのだと気づき、一つ納得した。

舞台に立てば安部さんは歌って踊れる声優アイドル、ウサミンなのだ。
彼女は色の違うアイドルではなく、カタチから異なっているのだ。
きっと彼女のカタチを理解出来る人間でないと同じ舞台に立てない。



37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/27(火) 00:39:58.45 ID:UVe8U/Aio

○月△日 託された日

複雑な気分だ。
気を抜けば様々な感情が荒れ狂い、理性が乱される。
落ち着いてから今日あったことを明日に纏めて記そうと思う。

 ◇

○月△日 寝付けなくて若干眠気の残る日

結論から言えば日下部若葉を託された。
なぜ私に、と問えばお前しか居ないからだと返される。
それは敵が……いや、美城常務に対して好意的ではない人間が多いということを言っているのか。
それとも、それ以外なのか。

しまいには私に頭まで下げる始末だ。
彼女が貴女にとってそこまで大事なら貴女が、という言葉は声に出せなかった。
美城常務の拳が白くなるほど握りしめられていたから。

私が受け入れ、美城常務が去った。
ただ、近いうちに海外に渡るという。
……一体なにが起きている。一体彼女はなにを考えている。

そんなことを今日一日中、ずっと考えていた。



44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/28(水) 00:21:20.42 ID:1tRBA37Jo

○月△日 再スタートの日

いつの間にか、所属をモデル部門からアイドル部門へと戻されていた。
どうやら美城常務の口利きらしい。
美城常務>岡崎さん>私という346プロ内の勢力図に少しだけ虚しいものを感じた。風に流される凧になった気分だ。

そして、相も変わらず岡崎さんは私の隣に居る。
……つまり、そういうことだ。
「新しいことに挑戦してみるのもそう悪くないかもしれませんね」、とのことらしい。

思い切りが良すぎてまるで私がうじうじ悩む情けない男にしか見えない気がしたがきっと気のせいだろう。
そもそもの話、岡崎さんをアイドル部門へ移動しないかと尋ねる決意やその他諸々が毎度先回りされて粉々に砕かれているのがなんとも言えない。

話は変わるが、写真を見て期待していたら肉が薄くて衣ばかりだったカツカレーを私は絶対に許さない。



45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/28(水) 00:22:12.07 ID:1tRBA37Jo

○月△日 思い知った日

暫くの間、ごたごたしていた書く暇がなかった。

足の問題もないと医者のお墨付きを貰いった日下部さんは復帰し、私と共に行動することも増えた。

人は理屈通りに動ける訳ではない。
少し前の私はそれを知っていると口にしながら、理解していなかった。

小柄な体躯を気にして、オトナで一人前の女性になりたかった日下部さん。
才能を見出した美城常務は日下部さんの願いを叶えることに腐心した。
日下部さんは美城常務の期待に応えたかった。

だけれど、人にはバランスというものがある。
それを知らなかったから私と常務は失敗した。願うものと資質は必ずしも一致しない。
理屈と精神は噛み合わない。

だが、これまで成功していたのだ。そちらの才も伸びしろもあるのだろう。
美城常務の理想、スター性と物語性も兼ね備えている。

きっと、一つボタンを掛け違えてしまっただけなのだ。
……本当に、ままならない。



46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/28(水) 00:22:47.21 ID:1tRBA37Jo

○月△日 捗らない日

岡崎さんは面倒見が良い。
私としてはそのようなイメージはなかったが、世話を焼くこと自体が好きなのかもしれない。

最近は日下部さんによく構っているのが見受けられる。
あれでも岡崎さんが最年少なのだから、どことなく恐ろしいものがある。
安部さんがメイドさんのアイデンティティーがなどとぼそぼそと言っていたが、内容はよく分からなかった。

だが、問題がある。
私と日下部さんの間にははっきりして感じられるほどに壁がある。

岡崎さんと出会う前の私なら、業務に支障はないと、なんら思うことはなかったかもしれない。
だが、今はどうしてか居心地の悪さをはっきりと感じてしまっている。



47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/28(水) 00:23:42.51 ID:1tRBA37Jo

○月△日 理解してしまった日

一体なにが壁になっているのかいまいち分からない。
岡崎さんには顔と断言された。……少し傷ついた。

後に、愉快な性格をしているからそのうちどうとでもなるとも慰められた。
私としては、そんな愉快な性格をしているつもりはない。

 ◇

○月△日 少し進展のあった日

日下部さんが自身が上手くやらなかったことで美城常務に捨てられたのだと思い込んでいることが判明した。

あれが人を捨てる人間の態度なはずがない。
そもそも、美城常務が私に頭を下げるという驚天動地のことまでしてのけたのだから、有り得ない話だ。



48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/28(水) 00:24:23.68 ID:1tRBA37Jo

○月△日 からかわれた日

日下部さん絡みで進めていた企画を一旦止めた。
これでは良い物が出来るはずがない。

ただ、少しだけ分かったことがある。
日下部さんにとってのオトナの女性の象徴とは、きっと自身を拾い上げてくれた美城常務なのだ。

だから、ただその象徴たる美城常務に認めて貰いたかったのだ。
それが彼女の芯となっている。それがないから日下部さんは今揺れている。

同僚から「最近、リボンな美少女に狙われている」というメールが届いた。

確かに私はそういったことには疎いが、似たような猫の忍者に狙われているだかのインターネット上に流れているコピペ、だったかを昔に見た覚えがあるので悪戯かからかいだろう。「よかったですね」と返して今日は寝ることにする。



49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/28(水) 00:25:58.95 ID:1tRBA37Jo

○月△日 蕎麦湯の魅力に目覚めた日

今日はやや強引に美城常務と食事を共にした。
久しぶりに蕎麦を食べたが、これも中々いける。また来よう。

恐らくは向こうも日下部さんの最近の動向が気になっていると思ったので、それを餌にして釣り上げたが、恐らく向こうも分かっていて食いついている節がある。

これはあれなのだろう、美城常務の感じている負い目が予想以上に深いということだ。
幾つか聞き出したが、日下部さんの怪我のことが根にあるようだ。

今の自身の限界を見たとも言っていた。ある程度までは届く、そこから先の日下部さんを保証出来ないと。だから、予定を早めたと。

……先のことなど、誰にも分からない。
保証などどこにもない。それでもそれを求めるなら、それは……。

フライトの日にちだけは最後に聞き出しておいた。
勝負をかけるなら、恐らくここだ。



50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/28(水) 00:26:40.69 ID:1tRBA37Jo

○月△日 考察する日

歌って踊れる声優アイドルというのは思っていた以上に難しい。
特に担当というものを持たなかった頃は手広く、浅くしか彼女らに接しなかったからだろうか、イメージが湧かなかった。

運転をしながら考え事をしていたからか、集中してください、と岡崎さんに軽く頬をぺちぺちと叩かれた。
我に帰ると、カーステレオから流れるラジオ番組が耳に入った。

やはりこれは外せないと思った。
声で物事を表現するのは存外に難しい。だからこそ、安部さんの最初の一歩としてこれほど相応しい舞台もそうないだろう。

形態はインターネットラジオ、レギュラーは安部菜々と日下部若葉。
ラジオ名が決まらない。いっそ番組上で公募でもしてみるべきか。

上手くやれば日下部さんの名前で安部さんの知名度を引き上げ、内容によっては、美城常務の作り上げた日下部さんの既存のややお堅いイメージをゆるやかに崩せるかもしれない。

素の日下部さんもとても柔らかな魅力を秘めた女性なのだから。

だが、それ以前に解決しなければならない問題が多くて少し憂鬱になった。
もう寝よう。



51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/28(水) 00:28:59.81 ID:1tRBA37Jo

○月△日 冷凍の唐揚げを唐揚げとは認められない日

今日の岡崎さんは機嫌が悪かった。
「アイドルがあっという間に増えましたね」とのこと。

笑っていることには笑っているのだが、私の好きな穏やかな笑みではない。
いつものように笑っている貴女が好きだと伝えたら途端にそっぽを向かれた。

……年頃の少女は難しい。

 ◇

○月△日 久々に呑んだ日

久々にしっかり取れる休みだったので、一日中ボトルシップに打ち込もうと思ったが、同僚から誘われたので外で呑んだ。
リボンの美少女がどうだと相も変わらず言っていたが、私をからかって遊ぶのもたいがいにして欲しいものだ。

最中に、視線を感じた気がするが、帰る頃にはなにも感じなかったので気のせいだろう。



57: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/28(水) 15:16:41.70 ID:Gtb0gc+zo

○月△日 話し合った日

日下部さんと話をした。
ここで拒否されれば、チャンスはもうなかったのだが幸い日下部さんから拒否されることはなかった。

日下部さんは美城常務とどう向き合うのか。
とんだお節介かもしれないが、プロデューサーとしての私もそれが必要だと理解し始めているらしい。

人の心は難しいものだ。
だけれど、私がプロデューサーで居続けるということは、人の心と向き合い続けることなのだろう。今の私はそれを違えたくないと、そう強く思っている。

決行は明日。
願わくば明日以降の日下部さんが笑顔で居られるように。



58: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/28(水) 15:17:33.85 ID:Gtb0gc+zo

○月△日 役者は伊達ではないと思い知った日

「言葉に説得力を持たせたいなら環境を整えることです」そう言ったのは岡崎さんだった。

だからこそ、言葉を交わすのに最後の日、日本を離れる直前、空港で、と舞台を整えた訳だが、岡崎さんは頼りになりすぎる気がする。

空港に送り届けた日下部さんが戻ってきた時には、笑顔だった。
「友達になりました」とのことだ。

どうやらそれが美城常務の選択らしい。
その選択に対して私はなんと言えば良いのか分からなかった。

どうやら私は、本当の意味で日下部若葉を託されたらしい。
日下部さん越しの伝言で「小賢しい真似は好きではない」と伝えられたのも私の胃袋に若干のダメージを与えた。



59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/28(水) 15:18:05.98 ID:Gtb0gc+zo

○月△日 一段落した日

きっと今後、美城常務は日下部さんのプロデュースに回るつもりはないのだろう。
だからこその、友人。
性格的にも身長的な意味でも真逆をひた走るようなあの二人の友人関係とやらには若干興味が湧かないでもないが、だからこそという面もあるのだろう。

日下部さんの調子も戻ったというべきか、上り調子なのでこれまでの分を取り戻すように頑張っていきたいものだ。

 ◇

○月△日 少々傷ついた日

目が回るほどに忙しい。
近々安部さんのラジオの方の収録もあるので手を抜けない日々だ。

Webで少々告知をしただけなのだが、なかなか話題になっているようだ。
安部さんが潰れないようにフォローが必要かと思ったが、日下部さんがやんわりとそちらに回ってくれているので必要もなさそうだ。

「そもそもフォロー向きの人材じゃないですよね」と岡崎さんに言われたが私はそんなことはないと信じていたいのだ。
……夢見るぐらいは許されるはず。



60: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/28(水) 15:19:13.29 ID:Gtb0gc+zo

○月△日 味噌玉作りが個人的に捗った日

今西部長にもう少ししたら大きめの企画を立ち上げても良いのではないかと言われた。
大きめの企画と言われても、いまいちピンと来ない。

とりあえずは、デスクトップの端にいつか作ったまま放置されていた無題のドキュメントに思いつく端から打ち込んでみた。

まずは数だろう。
質と中身の吟味は後に回そう。



61: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/28(水) 15:20:22.43 ID:Gtb0gc+zo

○月△日 引っ掛かりを感じる日

安部さんと日下部さんの無題のラジオの第一回放送があったが、反響が大きい。
募集して幾つも寄せられたラジオ名から二人が今のところ気に入っているのはロワイヤルリトルラジオらしい。

なんだか高貴っぽくて格好いいらしい。
別に構いはしないのだが……まぁ、本人たちが納得しているならそれでいいような気もする。

 ◇

○月△日 引っ掛かりを解消する日

ロワイヤルリトルラジオ、略してロリラジ爆誕である。
……なんとなく、こうなる気がしていた。
恐らく、この先ロワイヤルリトルラジオという微妙に語呂の悪い方の名前は使われないだろう。
どうやら今回はリスナーの方が一枚上手だったらしい。

本人たち二人が若干の屈辱に塗れながらロリラジを連呼する姿に久方ぶりに笑いそうになった。
しかし、ロリラジと言うには日下部さんはともかくとして、安部さんは年齢的に――【この先は塗り潰されていて読めない】



62: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/28(水) 15:21:04.60 ID:Gtb0gc+zo

○月△日 煮え切らない日。ただし味噌鍋は煮えた

新規の人材発掘、その中でも特色の強いアイドルを育成する新規プロジェクト。
規模としてはかなり大きなものだが、スパンとしては短期。一期生を二、三年に渡って続けることはないだろう。

プロジェクト名は……未定。

片っ端から書き散らした中で一番真っ当なのは恐らくこれだろう。
だが、どうしてか気が乗らない。

 ◇

○月△日 上の空な日

一日中、どこか上の空だったからか、岡崎さんに掌で熱を測られたりと、若干情けない日だった。

日下部さんや安部さんにまで世話を焼かれる始末だ。
……彼女たちに心配されるのは気恥ずかしいものがある。



63: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/28(水) 15:21:45.57 ID:Gtb0gc+zo

○月△日 分からない日

岡崎さんの機嫌が良くない日だった。

……どうやら私は岡崎さんのプロデューサーらしい。
そんなことは当然のことだ。岡崎さんが今更問う意味が分からない。

今日はPCで開いたままだった未定のプロジェクトを一日中構想していた。

 ◇

○月△日 本当に泣かれた日

朝から安部さんに泣かれた日だった。
なぜか私がプロデュースを辞めるという話になっている。

……どういうことだろうか。
私以外では無理などと泣きながら叫ばないで欲しかった。

……最近は岡崎さん、安部さん、日下部さんをプロデュースしている私のロリコン疑惑が深刻なのだから。



64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/28(水) 15:22:42.81 ID:Gtb0gc+zo

○月△日 誤解が解けた日

どうやら、PCを見た岡崎さんが私が新規プロジェクトを立ち上げて今のプロデュースを打ち切るのではないかと思ったらしい。

そんなことがあるはずがない。
そもそもの話、私一人で転がそうと思っていたプロジェクトではないのだから。
三人アイドルを抱える中で、そんなことが出来るほど私は超人ではない。

最近同僚が一人アイドルをスカウトしたとか、押し売りされたなどと言っていたので、その同僚とそのスカウトしたという彼女を交えて立ち上げようと思っていた企画だ。
可愛らしいが難しかなくて気づいたら身が固まってそうと言っていたがなんのことだったのだろうか。

安部さんと日下部さんの誤解はきちんと解けたが、今日は生憎岡崎さんが不在だった。
明日にはしっかりと伝えなくては。



65: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/28(水) 15:23:24.69 ID:Gtb0gc+zo

○月△日 言ってみせた日

やはりここは男らしくキッパリと断言してみせた方が安心出来るのだろう。
覚悟のほどは出来ていた。

私は彼女たちの切り拓いていく道の先にあるものが見てみたい。
他でもない彼女たちの、だ。
だから出社した岡崎さんに声を張り上げて言ってみせたのだ。

「いつか来る終わりの日まで貴女を見続けていたい」、と。

なぜか大泣きされて、胸を叩かれて、ロリコンと罵られ、プロダクションのロビーで拍手が巻き起こった。

「私より先に死んじゃったら嫌ですよ」と泣きながら言われたのだが、自宅に帰ってこうして日記を記している今でも意味が分からない。なぜ私が死ぬことになっているのか。



66: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/28(水) 15:24:11.74 ID:Gtb0gc+zo











○月△日 

婚約した。










駆け出しな武内Pのパラレル日記 END



67: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/28(水) 15:24:42.27 ID:Gtb0gc+zo

これにて完結。
アニメのCPが独り立ちしていって二期生が来る展開に寂しさを感じて書いた代物でした。
ここまで見て頂けた皆さんに感謝。



70: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/28(水) 15:44:57.32 ID:pRH3aFPfo

駆け足スギィ!
もっと続けてもおいいのよ乙



71: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/28(水) 15:47:05.91 ID:y7JabkbVo


アイドル側の日記も読み返さなければ!



元スレ
SS速報VIP:駆け出しな武内Pのパラレル日記
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1445793418/



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