瑞鶴「私は幸運の空母なんかじゃない」 金剛「?」【前編】

瑞鶴「私は幸運の空母なんかじゃない」 金剛「?」【後編】



SS速報VIP:瑞鶴「私は幸運の空母なんかじゃない」 金剛「?」
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218: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/22(火) 01:03:07.28 ID:oALnMlKjo

瑞鶴「……………………」

瑞鶴「ナンデ……?」

瑞鶴「ナンデ、ソンナ……顔ヲ……」

瑞鶴「首……変ナ音が……」

瑞鶴「ワ、わタ……私…………?」

瑞鶴「ア…………ぁアアアあァぁああアぁああああああッッ──!!?!」

…………………………………………。



219: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/22(火) 01:21:42.33 ID:oALnMlKjo

金剛「────ッ!!」ガバッ

加賀「すぅー……すぅー……」

金剛「……提督?」スッ

カチャ──パタン

金剛「嫌な予感がします……提督の身に何かが……?」タッタッ

金剛「瑞鶴には違和感がありました……。まさか……瑞鶴が提督に……?」タッタッ

金剛「──いえ、そんな事ある訳がありません。私の考え過ぎです。……そうであって下さい」タッタッ

金剛「…………っ」ザッ

金剛「……………………」スッ

コンコン──

金剛「…………」

コンコン──

金剛「……………………」

金剛「……返事がありません。失礼します!」

ガチャ──

金剛「提督、瑞鶴……明かりを点けますよ」

パチン──

金剛「……瑞鶴?」

瑞鶴「────金剛、さん……わ、私……」

金剛「……どうして、瑞鶴は提督の上に乗っているのですか」

瑞鶴「どうしよう……どうしよう……!」

金剛「どうして、提督は目を覚まさないのですか」

瑞鶴「わた……私が……」

金剛「…………」ツカツカ

瑞鶴「この手で……提督さんを──」

金剛「──答えなさい、瑞鶴。そうすれば、命だけは助けてあげます」グイッ

瑞鶴「お願い、金剛さん……私が、私じゃなくなる前に……」

金剛「答えなさい!!」

瑞鶴「お願いだから……私を縛って……それで、早く救護妖精さんを……早く……お願い……!」

金剛「…………っ!」グンッ

ダァン──ッ!

瑞鶴「か、ハ……ッ!?」

金剛「……今はそれで置いておきます。ですが、何かあった場合はこんな事では済みませんからね」グイッ

瑞鶴「うぁ……ん、うん…………」ズルズル

金剛「救護妖精の所へ行きますよ。貴女を今一人で放置する訳にはいきません」

瑞鶴「ありが、とう……コホッ」フラッ

金剛「お礼を言われる筋合いもありません。艤装があれば今ここで立てなくなるまで撃っています。──行きますよ」グイッ

…………………………………………。



223: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/22(火) 01:40:22.66 ID:oALnMlKjo

救護妖精「……………………」スッ

金剛「……どう、なのでしょうか」

救護妖精「脈はそれなりに正常。呼吸もしている。瞳孔もちゃんと開くね。ここまでは普通の人と変わらない」

救護妖精「簡単な検査だから何とも言えないけど、何も問題が無いように見えるね。……何したのさ、瑞鶴」チラ

瑞鶴「…………」

救護妖精「……それと、そんなに鎖でぐるぐる巻きにされて痛くないの?」

瑞鶴「…………」

金剛「…………」ツカツカ

ヒュッ──ガッ!

瑞鶴「──ぁぐっ!」ドサッ

救護妖精「ちょっ!? 頭を蹴るのは良くないってば!」

金剛「答えなさい。貴女は何をしたのですか」グイッ

瑞鶴「ごめ、なさい……」

金剛「そんな言葉が聞きたいのではありません。何をしたのかを聞いているのです」

救護妖精(……本気で怒ってる。一周回って冷静な状態でキレちゃってるよこれは……)

瑞鶴「首、手を掛けて……力を入れて…………嫌な音がした……」

救護妖精「首……? まさか、頚椎を──!?」

金剛「こんな風にですか」ガッ

瑞鶴「────ぁッ!?」

金剛「こうして、提督の首を折ったのですか?」ギリッ

救護妖精「駄目だってば金剛さん!! 殺すのは絶対に駄目だよ!!」

金剛「安心して下さい。絶対に殺しませんから」スッ

瑞鶴「──ケホッ! カハッ! は、ぁ……はぁ……」

金剛「ああでも、拘束したままドラム缶に詰めて海を漂わせるのも良いかもしれませんね」

救護妖精「だから、そんな事をしちゃ──!!」

提督「──そうだ……そんな事は、してはいけない…………」

金剛「!!」バッ

救護妖精「提督……意識、戻ったんだ」

瑞鶴「…………」

金剛「提督! お身体は──お身体は無事なのですか!?」



224: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/22(火) 02:02:33.64 ID:oALnMlKjo

提督「首が痛むだけだ……。それよりも、瑞鶴を放してやってくれ」

金剛「いけません! 何をするか分からないのですから──」

提督「頼む、金剛」

金剛「う……」タジッ

提督「…………」

金剛「……おかしな動きを見せたら、どんな手を使ってでも止めますからね」

ジャラジャラッ……

提督「瑞鶴」

瑞鶴「ッ!!」ビクッ

提督「傍へ来てくれるか」

瑞鶴「え、と……」チラ

金剛「……何を見ているんですか。私は、貴女が変な事をしようとしたら止めるだけですよ」

瑞鶴「……ありがとう」トコトコ

提督「…………」

瑞鶴「…………」ビクッ

提督「そんなに怖がらないでくれ。私は怒ってなどいない。ただ、気になる事があるだけだ」

瑞鶴「…………?」

提督「あの時に意識はあったのかという事と、なぜ殺すのを躊躇ったのか、という事が知りたい」

金剛「…………」

救護妖精(殺すのを躊躇した……?)

瑞鶴「……………………」

提督「教えてくれるか?」

瑞鶴「……提督さんを殺そうとした時、私はちゃんと……意識はあったわ。私の意思で、私は提督さんを……殺そうと、首を絞めた」

金剛「……………………」ジッ

提督「すまない……。私がお前を沈めさせてしまったばかりに……」

金剛(沈ませた……?)

瑞鶴「でも! 私にも、分からないの……。提督さんのせいじゃないって……あれは仕方が無い事だったんだって……私が自分から犠牲艦になりに行ったんだって、分かってるのに……」

瑞鶴「なのに……あの時の私は、提督さんを凄く怨んでた……。あんなの、私じゃないって……思いたいくらいに……」

提督「人は、そんなに簡単に割り切れるものではない。いくら仕方が無い事だったからだと言っても、あの判断は私のミスだ」

提督「敵の攻撃を減らしつつ撤退しようなどど考えず、ただ全力で逃げれば良かった。そうすれば、こんな事にはならなかったかもしれない」

瑞鶴「そんなの、分からないわ……。そうしたとしても、状況が変わったとは言えないじゃない……」

提督「それでも、お前を沈めてしまったのは私の責任だ。だから、瑞鶴が私を怨む正当な理由はある」

瑞鶴「…………そんな、事──」

提督「そう思ってくれ。司令官とはそういうものだ」

瑞鶴「……はい」



225: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/22(火) 02:20:42.55 ID:oALnMlKjo

提督「次に、なぜ殺すのを躊躇った? あの時のお前は本気で私を殺そうとしていたように見えたが、なぜだ?」

瑞鶴「それは……あの時、提督さんに頭を撫でて貰ったら、訳が分からなくなっちゃったの……」

提督「訳が分からなく?」

瑞鶴「今まで一緒に過ごしてきた事とか……褒められて嬉しかった事とか、怖くても優しい事とかを思い出して……自分が何をしているのか分からなくなっちゃったの……。それで、気付いたら…………」

提督「……そうか」

瑞鶴「提督さん……ごめんなさい……」

提督「謝るな。お前は、何も間違った事をしていない」

金剛「…………!」

瑞鶴「だって……私は提督さんを──」

提督「自分を殺した相手を怨むのは当然だ。死とだけ言えば簡単だが、そのときの苦しみと痛みは生きている私達では分からないものだ」

提督「自分の身体が壊れていき、目の前のモノが判らなくなり、手や足……身体の末端から感覚を失い、そして自分自身が消えていく虚無感──。そんな苦しみと恐怖を与えてくる相手を許せる方がおかしいものだ」

救護妖精「…………」ギリッ

提督「だから、お前は何も悪くない」

瑞鶴「……………………」ジワッ

瑞鶴「……私は、提督さんを殺そうとしたのに……どうして、許してくれるの?」ポロポロ

提督「許しを請う立場なのは私の方だ。瑞鶴を殺して、そんな風にしてしまったのは私が──」

瑞鶴「違うよ……違う……そんな事ないんだから……私が……私が…………」

提督「そんなに追い詰めるな。命があるだけ有り難い。──救護妖精、首が痛むが検査をして貰って良いか」

救護妖精「──え、ああ、う、うん……すぐに取り掛かるよ」

救護妖精(死ぬ時の苦しみと恐怖、か……それを具体的に言えるって事は──)スッ

金剛(……提督は瑞鶴を許すどころか、有り難いだなんて……何か事情があるようですが…………)

金剛(私の怒りと苦しみは、どこへ向ければ良いのでしょうか……?)

…………………………………………。



241: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/22(火) 23:48:07.48 ID:s//YkrSno

救護妖精「……結果を先に言うよ」

提督「ああ。覚悟は出来ている」

救護妖精「頚椎損傷──症状は軽いのが幸いだね。主に足の付け根辺りから下だけが麻痺しているみたいだよ」

金剛「え……? それって……」

救護妖精「……そうだよ。提督は、もう二度と自分の足で立つ事は出来ない」

瑞鶴「二度、と……」

救護妖精「脊髄の神経は再生しないし、再生させる事もできない。だから、現在の医学じゃ絶対に治る事がない。……出来る事は、足が動かない状態でも暮らしていけるようなリハビリをするくらいしかないよ」

金剛「う、そ……。一生、ですか……?」

救護妖精「……一生だよ」

金剛「絶対に、治療できないのですか……?」

救護妖精「……出来ないね」

金剛「そん、な……」

瑞鶴「……………………」ペタン

提督「……そう、か。救護妖精でも無理……か……」

金剛「…………わた──」

瑞鶴「──私が、提督さんの足になるわ」

提督「瑞鶴……」

金剛「……………………」

瑞鶴「提督さんをこんな身体にしちゃったのは私だから……だから、私が提督さんの足になる」

金剛「……貴女には任せられません。私が提督の足の代わりになります」

瑞鶴「でも──!」

金剛「今回のような事がまた起きたらどうするつもりですか」ジッ

瑞鶴「う……」

金剛「それに……もし、もう一度こんな事が起こった場合……今度こそ私は貴女に何をするか分かりません」

瑞鶴「…………はい」



242: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/22(火) 23:48:36.72 ID:s//YkrSno

提督「金剛」

金剛「はい」ピシッ

提督「敬礼は良い。下ろせ。──そして、その役は瑞鶴に任せたいと思っている」

金剛「────え……?」

瑞鶴「な、何を言ってるの……?」

救護妖精「……正気?」

提督「ああ、正気だ」

金剛「……理由が、あるのですよね? 伺っても良いですか」

提督「……………………」

金剛「…………」

提督「……そうだな。もう隠すのは辞めておこうか──」

提督「──私は死にたがりなんだよ、金剛」

金剛「死にたがり、って……」

提督「一緒に出撃しているのがその証拠だ。砲雷撃戦に巻き込まれて死なないだろうか、と心の底ではいつも思っている。最初に資源を最大量で建造したのも、さっさと死にたかったからだ。戦力乏しく艦娘共々海の藻屑となったら、誰も自殺とは思わんだろう?」

提督「……私には、生きる目的も理由も無い。かと言って、自殺する理由も無い。ならば、死んでしまう状況を作り上げれば良い」

金剛「…………」

提督「その為に海軍学校からの誘いを受けた。その為にあの靴を使って共に出撃してきた。その為に──あの時、殿をやると言った」

金剛「……どうして…………?」

提督「理由は言っただろう。私は、生きる目的も──」

金剛「そこではありません!! どうして私達を置いて一人で死のうとしているのですか!? 置いていかれる私達の気持ちを考えなかったのですか!?」

提督「私は自分勝手な愚か者だよ。勿論、置いていかれるお前達の事も考えた。が、それを理解した上で死のうとしている」

提督「だが、お前達は死なせない。死の苦しみを味わわせるなど絶対にやらせはしない。私が死ぬ事で悲しむとしても、解体を施して長く生きていけば癒える傷だ」

金剛「…………そう、ですか……」



243: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/22(火) 23:49:34.07 ID:s//YkrSno

提督「幻滅しただろう? 私は、お前達が想像している強くてなんでも出来る提督ではない。ただ自分勝手で、そして弱い提督なんだ」

瑞鶴「……だから、私を傍に置くの?」

提督「本音を言えばそうだ。だが、もう一つの本音として瑞鶴の意見を尊重したいとも思っている」

金剛「……私には、分かりません。どうして死にたいと思うのか、どうしても分からないです……」

提督「理解できなくても仕方が無い。元より、理解されると思っていないから今まで黙っていた」

金剛「生きる目的も理由も無い、ですか……」

金剛(私が……生きる理由になれるのならば……──いえ、こんな汚い感情でなろうとするのは痴がましいですね……)

金剛(でも──)

金剛「──死なせません」

提督「…………」

金剛「私は、提督を死なせません。提督が私達を──私を死なせないと言いました。それならば、私も提督を死なせません」

提督「金剛……」

金剛「だから、私は食い下がります! 瑞鶴に何があったのか詳しくは分かりませんが、何かの間違いで提督を亡き者にしようとする人と二人にさせる訳にはいきません!」

瑞鶴「う……」

金剛「提督、どうしても瑞鶴を傍に置いておくと言うのならば──」

金剛(提督の生きる理由に、私はなれなくても良いから──)

金剛「──どうか、私も傍に置いて下さい!」

提督「……瑞鶴が私を殺そうとすれば、金剛が止めるという訳か」

金剛「そうです。これだけは例え提督の命令でも従いません」

提督「……………………」

金剛「……………………」

瑞鶴「…………」オドオド



244: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/22(火) 23:50:09.07 ID:s//YkrSno

救護妖精「……あーもう! なーに物騒な事を言ってるんだいアンタらは!」バァンッ

瑞鶴「ひっ!?」ビクッ

救護妖精「特に提督! 今回は提督の味方なんてしないからね!! 金剛さんは提督の傍に居なさい! 何があってもだよ!!」

金剛「え、えっと……はい」

救護妖精「あとさ、提督! 医者の前で死にたいだのなんだのって言うんじゃないよ! そんなの私が許すと思ってるのかい!?」

提督「…………」

救護妖精「運が悪かったね提督! 私は絶対にそんなのを許さない! 何回も拾った命を粗末にするんじゃないよ!!」

瑞鶴「…………っ」ビクビク

救護妖精「そして瑞鶴!!」

瑞鶴「ぴゃいっ!?」ビクンッ

救護妖精「…………」

瑞鶴「…………っ?」ビクビク

救護妖精「……明日の朝、救護室に来る事。提督と金剛も知って欲しいから、来るんだよ」

救護妖精「──深海棲艦の怨みだとかなんだとか、ちゃんと説明するからさ」

提督「……何を知っているんだ」

救護妖精「ここでは言わないよ。聞きたきゃ一回寝て頭を冷やしてから救護室に来るんだね」テクテク

提督「…………」

救護妖精「じゃあ、後は川の字で寝るなり何なりしな。金剛、頼んだよ」

ガチャ──パタン



245: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/22(火) 23:51:12.28 ID:s//YkrSno

金剛「…………」チラ

瑞鶴「ひっ……」ビクッ

金剛「……提督」

提督「どうした」

金剛「瑞鶴は、理由があって提督に手を掛けたのですよね」

提督「ああ。正当な理由だ」

金剛「……明日になったら、教えてくれますか?」

提督「話そう。約束する」

金剛「……分かりました。約束ですからね」

提督「ああ」

金剛「では、今回は私も大人しくします。──ただ、不安なのには変わりありませんので二人を監視させて貰います」

提督「言いたい事は分かった。許可しよう」

金剛「ありがとうございます。提督と瑞鶴には悪いのですが、私が二人の間を取ります。良いですね?」

瑞鶴「っ!」ビクッ

金剛「……どうなのですか、瑞鶴」

瑞鶴「そ、その……乱暴な事……しないのなら……」ビクビク

金剛「貴女がおかしな事をしないのならば、私も提督と神に誓って手を出しません。もし再び提督に手を出そうものなら……その時は貴女の口に35.6cm砲を突っ込んで水平線の向こうへと散って貰います」

瑞鶴「そ、そんな! 私もやりたくてあんな──!!」

金剛「返事は『はい』か『いいえ』のどちらかしか聞いていません」ジッ

瑞鶴「はいぃっ!」ビクゥッ

金剛「……よろしいです。では、眠りに就きましょう」

提督(明らかに私の影響を受けているな……。私が怒っている時はこういう風に見えるのか)

…………………………………………。



257: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/24(木) 23:00:24.38 ID:B7UYOqwEo

提督「──全員揃ったな。すまないが、今日は私が座ったまま朝礼を始める」

金剛「……………………」

瑞鶴「……………………」

提督「おはよう、諸君」

全員「おはようございます!」ピシッ

提督「よろしい。楽にして良い」

全員「!」ザッ

提督「では早速、本日の業務を言い渡す。まずは演習班。本日は防空射撃演習を行う。加賀の全力爆撃を防空射撃と回避のみでクリアしろ。全ての艦載機を落とせたかどうかの判定で勝ち負けを決める。防空射撃を行う者は川内、那珂、神通、島風、不知火の五人だ」

加賀「…………?」

提督「次に遠征班。今回は天龍、龍田、暁、響、雷、電の六人で長距離の遠征練習をしてもらう。今後、長時間に渡る遠征命令が下される可能性があるそうだ。その為の練習と思ってくれ」

提督「金剛と瑞鶴は哨戒をしてくれ。以上だ。何か質問はあるか」

加賀「……一つ良いかしら」

提督「どうした」

加賀「三日ほど前から、本日の出撃計画を練っていませんでしたか? あれはどうなったのでしょうか」

提督「今朝送られてきた本部からの入電で、近い内に長時間の遠征を任されるようだ。その為、今から練習をしておいた方が良いと判断した。明日になっていきなり言い渡される可能性も無いとは言えん」

加賀「なるほど。納得しました」

提督「他にはあるか? ……………………無いようだな。では金剛は演習の艦隊を──瑞鶴は遠征の艦隊の見送りをしてくれ」

響「あれ、司令官が見送ってくれるんじゃないのかい?」

提督「私はこれからすぐにでも本部へ電報を送らなければならない。長距離遠征命令が下る日付の目星でも付いているのならば聞き出す。今朝のようにいきなり言われるのは困るからな」

不知火「ちっ……これだから数字だけを見て現場を見ない上層部は……」

提督「そう言うな不知火。腐ってても我々の上司だ」

不知火「……はい」

提督「では、各自持ち場に着け」

…………………………………………。



258: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/24(木) 23:20:49.49 ID:B7UYOqwEo

コンコン──

提督「入れ」サラサラ

ガチャ──パタン

金剛「金剛、瑞鶴両名共、皆の見送りを終わらせまシタ」ピシッ

瑞鶴「!」ピシッ

瑞鶴(よいしょ……)カタッ

提督「よろしい。では、救護妖精の所へと急ぐとしよ──っ!?」スッ──ガクン

金剛「提督!?」タッ

瑞鶴「ぁ……」タジッ

金剛「何をしているのですか……。お怪我はありませんか? 首は痛みませんか?」グイッ

提督「……すまん。世話を掛けてしまった」ギシッ

金剛「そんな事はどうでも良いです。本当に大丈夫ですか? どこも痛みませんか?」ソッ

提督「ああ。特に問題は無い。……しかし、厄介だな。つい癖で立とうとしてしまう」

瑞鶴「あ、あの……提督さん……」

提督「どうした?」

瑞鶴「……杖、借りてきたの。龍田さん達、すぐに船着場へ来てくれたから……その、救護妖精さんに頼んで……」カタン

提督「そうか。その杖はその為だったのか。ありがとう、瑞鶴」

瑞鶴「…………」トコトコ

提督「……そんな顔をするな。と言いたいが……どうやら私の足の事で悩んでいる訳ではなさそうだな?」スッ

瑞鶴「えぅぁッ!?」ビクッ

提督「図星か」

瑞鶴「そ、それは、その……あの……」オドオド



259: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/24(木) 23:41:01.64 ID:B7UYOqwEo

提督「言えない事ならば言わなくても構わない。無理に言う必要は無いぞ。──よっと」グッ

瑞鶴「……………………」

提督(ふむ……立っている感覚が無いな。自分で歩くならば、足を固定して手で動かさなければならないか?)フラッ

金剛「テートク、お手伝いしマス」ソッ

提督「ありがとう、金剛」

瑞鶴「…………あの!」

提督「うん?」

金剛「……………………」ジッ

瑞鶴「っ……!」ビクッ

瑞鶴「…………」フルフル

瑞鶴「その……実は、その杖を救護妖精さんから借りようって言ったのは、金剛さんなの……」

金剛「ちょ、瑞鶴!?」

瑞鶴「私は全然そんな事も考えられてなくて……」

提督「……ほう」

金剛「…………アウチ……」ハァ

瑞鶴「だから……さっきのお礼の言葉は、私は受け取れない」

提督「……昨夜、手を上げてしまった事と冷たく怒ってしまった事への謝罪を込めているといった所か」

金剛「ああぁ……全部バレてしまいまシタ……」

瑞鶴「ごめんなさい、金剛さん……。やっぱり私、金剛さんの手柄を貰う事なんて出来ない……」

金剛(……だって……私は昨日、あんなに酷い事をしてしまいまシタ。いくら頭に血が昇っていたとしても、あの瑞鶴が提督を殺そうとする訳がないなんて、すぐに分かる事デス……)

金剛(謝るだけで済む問題ではないこれは、私が瑞鶴に何かをしなければいけまセン。私が瑞鶴へ償える方法なんて、このくらいしかないノニ……)



260: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/24(木) 23:46:41.01 ID:B7UYOqwEo

金剛「…………では、提督が歩くのを手伝って貰えますか? 私は少し先を歩いて、倒れてしまっても大丈夫なようにフォローします」

瑞鶴「そ、それもさっき金剛さんが──」

金剛「お願い、します……」

瑞鶴「うぅ……」

提督「……瑞鶴、私からも頼む。歩くのを手伝ってくれるか?」

瑞鶴「提督さんまで……。…………分かったわ。私が提督さんのフォローをするから、金剛さんは私達のフォローをお願い、ね?」

金剛「──ハイ。それでは行きましょう」

ガチャ──

瑞鶴「……提督さん、腕が疲れたら言ってね?」ソッ

提督「ああ。ありがとう」カツン

提督(感覚としては竹馬のようなものか? ……普段は使わない筋肉を使うのもあって、少し慣れが必要そうだな)カツン

提督(それよりも、金剛も相当参ってしまってるな。あそこまで暗い表情をしているのは初めて見る。……それだけ、瑞鶴への罪悪感が心を占めているという事か)カツン

金剛「…………」チラ

瑞鶴「難しそう……本当に大丈夫?」

提督「なんとか、な」カツン

金剛(ああ……自分で言った事なのに、提督の助けになっている瑞鶴が羨ましいと思ってしまっています……)

金剛(酷い上に、醜いですね……私って……)フイッ

…………………………………………。



261: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/24(木) 23:47:17.86 ID:B7UYOqwEo

救護妖精「……さて、とうとう来たね」

提督「全てを話してくれるんだな?」

救護妖精「話せる事は話すよ。──まず、金剛さんには簡単に説明しておかないといけないね。ここまで関わっちゃったんだから、話しておくよ」

瑞鶴「…………っ」ビクッ

金剛「……はい。情報を漏らさないと誓いマス」

救護妖精「うん。良い返事だね。じゃあ単刀直入に言うけど、瑞鶴は一回沈んでるんだよ」

金剛「──え?」

救護妖精「ああ、だからと言ってこの子は別人の瑞鶴って訳じゃないよ。ただ、沈んで間もない時に運良く引き揚げられたって話」

金剛「良かったデス……」ホッ

救護要請「まあ本当に良かった事なのかどうかはちょっと微妙だけど……。半分深海棲艦になっちゃってるしねぇ……。そこも含めて今から説明するよ」

提督「頼む」

救護妖精「んじゃあ、まずは昨日言ってた深海棲艦の怨みから」

瑞鶴「…………」ビクビク

救護妖精「瑞鶴はもう分かってると思うけど、基本的に深海棲艦は艦娘を怨むんだよね」

提督「そうなのか、瑞鶴」

瑞鶴「えぅ……っ! そ、それは……」ビクビク

金剛「私の事は気にしなくて構いまセン。私も、真実を知りたいデス。──そして、私の事を怨んでいるのデスか?」

瑞鶴「……うん。ハッキリって訳じゃないけど……ぼんやりと理由も何もない怨みがあるのは確かなの」

救護妖精「やっぱりか……。半分だけ深海棲艦だから、その怨念も薄いみたいだね。だから普通に出来るのかも」

瑞鶴「あとは、怖いから……かしら……」ビクビク

救護妖精「ああ……なるほどね」

金剛「本当にごめんなさい、瑞鶴……」

瑞鶴「う、うん……」

提督「こればかりは時間に解決してもらう他ないだろう。──あと、気になる点として瑞鶴が喋れるようになっているのはどうしてなんだ?」



262: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/24(木) 23:47:46.82 ID:B7UYOqwEo

瑞鶴「私も気になる。今朝、遠征の雷に普通に喋ってるって言われてから気付いたわ」

救護妖精「自分で気付いていなかったって……それはまた凄い事だね……」

瑞鶴「うぅ……」

救護妖精「まあ、それだけ頭も混乱していたって事かね。とりあえず、私から言える事はあんまり無いね。深海棲艦になったら何かを失うってのは確かだけど、失ったものを取り戻したって話は聞いた事がないよ」

救護妖精「一時的に脳とか喉が異常をきたしていたのかもしれないし、中途半端に深海棲艦になっただけだから声を失いかけただけかもしれない」

提督「そうか。……では、少し踏み込んだ話をしよう。──深海棲艦とは何だ?」

救護妖精「……艦娘の成れの果て。といった所かな」

提督「実態はどうなんだ」

救護妖精「…………艦娘に対して無条件の怨みを抱いて、特定の人間にも同じ感情を持つ存在だよ。そして、それが原因で破壊と殺戮を繰り替えす悪魔のようなものだね」

瑞鶴「悪魔……」

救護妖精「悪魔だと言っても、それは生粋の深海棲艦だけだからね。瑞鶴は理性がちゃんと残ってるんだから別だよ」

瑞鶴「でも……私は提督さんを殺そうとしたわよ……?」

救護妖精「それが、さっき言った特定の人間にも怨みを持つって所。もう分かると思うけど、瑞鶴にとってその特定の人物っていうのが提督の事だよ」

瑞鶴「どうしてなの……?」

救護妖精「普段の提督の行動が悪かった、としか言えないねぇ……」

金剛「……提督の行動が悪かった?」ピクッ

救護妖精「善悪の悪いって意味じゃないからね?」

金剛「そ、そうデスか……」ホッ

提督「具体的に何が悪かったんだ?」

救護妖精「提督は『絶対に沈ませない』って言った。けど、実際に瑞鶴は沈んじゃった。深海棲艦になったら、そういう抑えも利きにくくなる傾向が強いよ」

提督(ああ……だからあの時にあんな事を)

瑞鶴「……………………」

救護妖精「二人は思い当たる節があるみたいだね」



277: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/29(火) 00:18:15.01 ID:3NbT8r+bo

提督「しかし、急に深海棲艦として私を襲った原因が分からん。この上なく落ち着いた様子で寝ていたのにも関わらず、いきなり襲ってきたんだが」

金剛(この上なく落ち着いた、デスか……)チラ

瑞鶴「…………」

金剛(……私はまた嫉妬を…………。今はそんな事を気にする場合ではないというノニ……)

救護妖精「そうだねぇ……。深海棲艦が活発になる時間が関係してると思うよ」

提督「活発になる時間? 夜の事か?」

救護妖精「正確には零時頃だね。瑞鶴がおかしくなったのはそれくらいの時間じゃなかった?」

提督「なるほど。確かにそうだった」

瑞鶴「活発になるって……それってつまり、毎日って事……?」

救護妖精「そういう事になるね」

瑞鶴「……ねえ提督さん。この鎮守府って牢屋とか無いの?」

提督「在ってもそんな事はさせんぞ」

瑞鶴「だって危ないじゃないの……」

提督「却下だ。どうしても危ないというのなら、毎晩私の近くに──」

瑞鶴「ヤダ。提督さんが何を言おうとしているのか分かるわよ」

金剛「私もです。そんな事は絶対にさせません」

救護妖精「だそうだよ、提督。ちなみにあたしも反対」

提督「…………」

金剛「かと言っても、瑞鶴をどこかに閉じ込めるのも私は反対デス」

瑞鶴「え……? で、でも……」

金剛「瑞鶴は少し深海棲艦になっただけじゃないデスか」

瑞鶴「それが大問題なんじゃないの……」

金剛「少し私に考えがありマス。──救護妖精、深海棲艦は本能が強く前に出てくるという考えで良いのデスか?」

救護妖精「ん。厳密には違うけど、そう思って貰っても構わないよ」

金剛「なら簡単デス。瑞鶴の中の深海棲艦が出てきても、誰も襲えないように教えれば良いのデス」

提督「そういう事か」



278: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/29(火) 00:41:02.64 ID:3NbT8r+bo

瑞鶴「え、どういう事……?」

救護妖精「二人は頭の回転が速いねぇ……あたしも分かんないや」

提督「今まで戦ってきた深海棲艦は、沈むまでずっと戦う者だけではなかった。つまり、生存本能はあるという訳だ」

瑞鶴「……うん。確かにそうだけど……」

提督「つまり、襲っても絶対に敵わないという状況を教え込めば襲えなくなるという事だな」

瑞鶴「ごめん……もうちょっと噛み砕いて貰っても良いかしら……」

金剛「誰かが深海棲艦の瑞鶴を少し痛い思いをさせれば良いという訳デス。圧倒的な戦力差を見せ付けて、ネ」

瑞鶴「そ、それってまさか……」

金剛「先に謝っておきマス。ごめんなさい瑞鶴。手加減はしマスから安心して下サイ」

瑞鶴「やっぱりぃ!! それって実力行使って事じゃないのぉ!!!」

救護妖精「まあ……本当なら何もかもを失って死んでる所をちょっと痛い思いをするだけで今までと変わらず暮らせるって考えたらどっちが良いかって事だよねぇ」

瑞鶴「う……た、確かにそうだけど……」

救護妖精「じゃあこれで決まりだね。金剛さん、頼んだよ」

金剛「任せて下サーイ!」

瑞鶴「うぅ……うー……。か、覚悟は決めておく……わね……」

提督(……私の死にたいという願望は叶えられそうにないな)

提督(かなり好き勝手やっていたつもりだったが……どうしてこうも慕われるようになってしまったのか……)ハァ

金剛「私達が想いを寄せるのは、テートクが素敵な人だからデスよ」

提督「人の心を読むんじゃない」

金剛「だって顔に書いてるネー」

提督「……………………」



279: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/29(火) 01:04:02.54 ID:3NbT8r+bo

救護妖精「まあ諦めな。提督は簡単に死んじゃいけない存在になっちゃってるんだよ」

救護妖精「皆から慕われて、沢山の可愛い子達に想われて、提督が間違いを犯そうとしているのなら叱ってくれて、提督が死んでしまいそうになったら必死でそれを食い止めようとする──それって、すっごく嬉しい事じゃないかな?」

提督「確かに……な。とても喜ばしい事だ」

救護妖精「生きる目的なんてゆっくり見つければ良いんだよ。見つかるまでは緩く生きれば良いもんさ」

提督「…………」

金剛「私がテートクの生きる目的になってみせマスね!!」

提督「そういう事は軽く言うんじゃない」

金剛「アッハハ~」

金剛(──もう無理だと分かっているからこそ、軽く言えるのですよ……提督……)

提督「…………」ジッ

金剛「? どうしまシタか?」

提督「……私が言うのもおかしい話だが、頑張れ」ポンポン

金剛「────────」

金剛「──もっちろんネ!! テートクのハートを掴むのは、私デース!」ギュゥ

救護妖精「おーおー。恥ずかしげもなく言うねぇ」

瑞鶴「人前で言えるなんてすっごい大胆……」ドキドキ

金剛「それだけテートクがラブなのデース!」

金剛(──そうです。可能性はゼロではないのですから、諦めるのはまだ早いですね)

提督「本当に、こんな私に惚れるのが不思議だよ」ナデナデ

瑞鶴(頭撫でて貰ってる……良いなぁ……)ジー

救護妖精(まったく……この提督がその気になっちゃったら何股まで可能なのかねぇ?)

……………………
…………
……



280: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/29(火) 01:25:42.58 ID:3NbT8r+bo

開発妖精「じゃ、じゃあ……確かに届けたよ!」ビクビク

提督「ありがとう、開発妖精。すぐに造ってくれて助かる」ナデナデ

開発妖精「ほぇ……」ナデナデ

開発妖精(……あれ? なんかいつもの提督さんだ?)

金剛(なんでしょうか、これ?)

瑞鶴(杖……のようにも見えるけど、何かしらこれ……?)

開発妖精「えーっと……お大事に?」

提督「うむ。また何か必要になると思うから、その時は頼む」

開発妖精「はーい……?」

パタン──

提督「──さて、次の問題を解決しよう」

瑞鶴「次の問題?」

提督「ああ。私の脚が動かなくなったのを隠し続けるのは無理だ。先に口裏合わせをしておくべきだろう」

瑞鶴「ごめんなさい……」

提督「謝るな。私の脚を引き換えに瑞鶴が帰ってきたと考えたら充分過ぎるくらいだ」

金剛(そういう言葉をサラッと出すのは本当に凄い事デスよ)

瑞鶴「……ありがとう、提督さん」

提督「私もありがたいと思っているよ。──さて、口裏合わせだが、最も自然な方法を考えよう」

金剛「脚が動かなくなった理由が頚椎損傷デスよね? そうであれば、何かしらの理由で首に強い衝撃が掛かってしまった──というのが自然ネ」

瑞鶴「例えば、階段から落ちちゃったとか?」

金剛「でも、テートクが階段から落ちるなんて想像出来ないデス……仮に落ちたとしても、途中で大道芸みたいな動きをして事無きを得そうじゃないデスか?」

瑞鶴「……うん。私もそう言われたら信じる」

提督「私は超人か何かか」

金剛「差し支えないですよネ……?」

瑞鶴「むしろ自分が普通だと思ってたの……?」



281: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/29(火) 01:52:30.89 ID:3NbT8r+bo

提督「…………なら、低血糖で意識を失った場所が階段だったというのだったらどうだ?」

金剛「あ、良いデスネそれ」

瑞鶴「今思ってみれば、よく今までそんな事が起きなかったわね……」

提督(……ふむ。低血糖で命を落とす、か。案外悪くないかもしれないな)

金剛「言っておきますケド、私が居るからには定期的に糖分を摂取して頂きマスからネ?」ジッ

提督「……分かった」

瑞鶴「今のは私でも何を考えてるのか分かったわよ」

提督「そうか。精進しなければならないな」

金剛・瑞鶴「しなくて良いです!!!」バンッ

提督「……………………」

金剛「とりあえずは、低血糖で足を踏み外して頚椎を損傷したという方向に定めまショウ」

瑞鶴「後は、階段から転げ落ちたのなら頭にも包帯を巻いてた方が自然かしら」

金剛「そうですね。……皆さんに多大なる心配を掛ける事になりますケド、今回は嘘を吐く方が遥かに良いデス」

提督「ああ。加賀や龍田、不知火辺りが真実を知ったらどうなるか少し怖いものがある」

金剛「加賀は本気で塵になるまで爆撃してきそうデスネ……」

提督「不知火は磔にして四肢の先から一回ずつ確認を取りつつ機銃を撃ちかねん」

金剛「龍田は……想像したくないデス……」

提督「龍田だけは私も想像したくないな」

瑞鶴「すっごく怖いから例えでも言わないで!?」ビクンッ

提督「とりあえず、今回の事は私以外誰も悪くないんだ。瑞鶴が悪者にならないよう細心の注意を払うようにしてくれ」

金剛「勿論デース!」

瑞鶴「……本当、ありがとう提督さん、金剛さん」



282: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/29(火) 02:29:16.76 ID:3NbT8r+bo

提督「さて……私は救護妖精にこの事を伝えてくる」スッ

金剛「ダメです。テートクは大人しく座っていて下さい」

提督「いや、早くこの新しい杖に慣れたいから行かせてくれないか」カチャ

瑞鶴「そう言えば開発妖精さんから何か造って貰ってたけど、何それ?」

提督「脚を固定した状態で、脚と連動して動かせる杖だ。ここのツマミをこっちの穴に移動させれば脚をある程度垂直の状態で固定できる。後はこうすれば」カッチャカッチャ

金剛「リアリィ!? よく思い付きましたねこれ……」

瑞鶴「……確かに普通に歩いているのとあんまり変わらないけど、車椅子じゃダメだったの?」

提督「車椅子だと一人で階段の上り下りが出来ないからこれを造って貰った」

瑞鶴「あー……なるほど。──って、階段!? 一人で!?」

提督「そうだが」

金剛「流石に階段の時は私達を呼んでくれまセンか……。怖くて仕方が無いデス……」

提督「……分かった。そうしてくれるか」

金剛「という訳で、瑞鶴、頼みましたヨー」

瑞鶴「え?」

金剛「私は書類の整理を先にやっておきマース。だから、瑞鶴がテートクを救護室まで付き添って下サイ」

瑞鶴「え、と……うん。分かったわ」

提督(……ふむ)

提督「頼んだ、金剛」

金剛「まっかせて下サーイ!」

ガチャ──パタン

金剛「……………………」

金剛(私も……瑞鶴と同じように半分だけ深海棲艦になれば、あれだけ気を向けてくれるようになるのですかね……?)

金剛「……馬鹿な事は振り払って、お仕事をしましょう。お仕事を」

…………………………………………。



283: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/29(火) 02:51:12.07 ID:3NbT8r+bo

コンコン──

提督「入れ」

ガチャ──パタン

加賀「失礼します。演習の結果報告、を……?」

提督「どうした、加賀」

加賀「ごめんなさい提督。報告の前に聞かせて。……その頭と首の包帯はどうしたの?」

提督「やはり聞かれてしまうか……」

金剛「当たり前デス……」サラサラ

提督「……階段から転げ落ちてしまってな」

加賀「ただ転げ落ちるなんて想像も付かないわ。本当に何があったの」

提督「低血糖で意識を失った場所が階段だったんだ。そのせいでこの様だ。不甲斐ない自分を呪いたくも思うよ」

加賀「……お怪我の具合はどうなの?」

金剛「…………」ピタッ

提督「……………………」

加賀「……深刻のようね。教えて下さい。気が気ではありません」

提督「……そうだな。本当は全員が揃ってから言おうかと思っていたが、加賀には先に言っておこう」

提督「脚が麻痺している。二度と動かないそうだ」

加賀「────────」

加賀「嘘、ですよね……?」

提督「残念だが、本当だ」

加賀「そんな、事って……」

金剛(……加賀の気持ちは良く分かりマス。私は受け入れたつもりデスが、やっぱり辛くて悲しい気持ちになりマス……)



284: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/29(火) 03:10:40.71 ID:3NbT8r+bo

加賀「…………分かりました……。今後、それを踏まえて、サポートをさせて……下さい……」

提督「その事についてだが、基本的に──」

コンコン──

提督「すまない加賀。少し話を切るぞ。──入れ」

ガチャ──パタン

瑞鶴「ただいま、提督さん。──あれ? もしかして今、報告中だったかしら」

提督「半分だけ合っている。瑞鶴は妖精へ哨戒の引継ぎが終わったんだな?」

瑞鶴「うん」

提督「そうか、ご苦労。……そして加賀。さっきの話に戻るが、基本的に私のサポートは瑞鶴に任せようと思っている」

瑞鶴(この話……か……。つらい、な……)

加賀「……理由を、お聞きしても良いでしょうか」

金剛(加賀、悲しいながらも少し怒っているようにも見えるネ……)

提督「瑞鶴が珍しく強い希望を出してきたからだ」

瑞鶴「だって……アレは私のせいで──」

金剛「瑞鶴!!」バンッ

瑞鶴「ひっ……!」ビクッ

加賀「なんですって……?」ジッ

提督(やってしまったな。少し面倒になった)

加賀「どういう事なのかしら。詳しく話しなさい、瑞鶴」

瑞鶴「あ……そ、その……」ビクビク

提督「加賀、瞳孔が開いている」

加賀「自覚しています」



286: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/29(火) 03:31:49.85 ID:3NbT8r+bo

提督「余計に問題がある。今すぐやめろ。手を出すなんて事は絶対にするなよ」

加賀「ごめんなさい。この感情は抑え切れそうにないわ。例え提督の命令でも、世界で一番大切な人の足が動かなくなったのに『はい、そうですか』で済ませられるほど私は聖人君子ではありません。提督の命令なので手は出しませんが、何をしたのかを答えて貰います」

提督「……分かった。話そう」

瑞鶴「…………っ」ビクッ

提督「転げ落ちる際、瑞鶴が近くに居たんだ。近くに居たのに助けられなかったから自分のせいだ、と言っている。私が悪いだけなのにな」

加賀「……そうだったのね。ごめんなさい、瑞鶴……」

瑞鶴「ごめんなさい……」

加賀「貴女が謝る事ではないわ。ほら、だからそんなに悲しい顔をしないで?」ナデナデ

瑞鶴(…………違うの……。私が謝ってるのは、それだけじゃないの……)

瑞鶴「ごめん、なさい……」ポロポロ

瑞鶴(嘘を吐いてごめんなさい……本当の事を伝えれなくて、ごめんなさい……。提督さん金剛さん、せっかく庇ってくれてるのに、もう少しでバラしちゃう所でした……ごめんなさい……。提督さん、私のせいで足が動かなくなってしまって……ごめんなさい……)

加賀「ほら、泣かないの。綺麗な顔が台無しよ?」ソッ

金剛(……本当、私は汚いデスね。未だに瑞鶴が悪いと思っている自分が居るだナンテ……。深海棲艦とはそのようなものだと聞いているノニ……そもそも、今私がここで艦娘として居られているのも瑞鶴のおかげだというノニ……)

金剛(本当に……本当に私は、自分が嫌いになります……)

……………………
…………
……



287: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/29(火) 03:50:42.85 ID:3NbT8r+bo

金剛「んーっ! テートクー、書類の処理が終わったヨー!」

瑞鶴「私も丁度終わったわ。これで良い?」スッ

提督「…………うむ。充分だ。こんな時間まで良くやってくれた二人共」パラパラ

金剛「デスクワーク後のティータイムなんてどうデスか? グッドな気分になるネ!」

提督「頂こうか。瑞鶴も勿論飲むよな?」

瑞鶴「い、良いの?」

提督「何を遠慮しているんだ」

瑞鶴「や……金剛さんは二人きりで楽しみたいんじゃないかなって思って」

金剛「そんな事ないデスよ? 私は今、お二人と一息つきたいデス」

提督「だそうだ」

瑞鶴「……えっと、ありがとう金剛さん」

金剛「お礼なんて必要ないデース。私はお二人と楽しみたいだけデース!」

瑞鶴「それでも、ありがとう」

金剛(……一番の理由は、罪滅ぼしをしたいから……なんデスよね)

金剛「それでは、すぐに紅茶とお茶菓子を用意しマスねー」スッ

コンコン──

金剛「あら?」

提督「こんな時間に珍しいな」

任務嬢「任務嬢です。元帥様がお見えになられました」

金剛・瑞鶴「!?」

提督「……お通ししろ」

任務嬢「はい」

ガチャ──

元帥「やあ少将。君の脚が動かなくなったと聞いて飛んできたよ」

榛名「…………」ペコッ

任務嬢「では、私はこれにて失礼します」

──パタン



288: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/29(火) 04:05:32.28 ID:3NbT8r+bo

提督「……ご心配をお掛けしてすみません」カチャッ

元帥「良い。不慮の事故だから仕方の無い事だ。それと、無理に立とうと思わんでくれ。そのまま座ったままで居てくれて構わん」

提督「ありがとうございます。──金剛、元帥殿と榛名へ紅茶をお出ししてくれ」

金剛「畏まりまシタ」

元帥「ほお、ありがたい事だ」

榛名「お心遣い、感謝します」ペコッ

提督「瑞鶴、お二人を席へ案内してくれるか」

瑞鶴「は、はい! こ、こちらへどうぞ」スッ

元帥「うむ」スッ

榛名「…………」ソッ

瑞鶴(……あれ?)

瑞鶴「えっと……榛名さんは座ら──お座りになられないのですか?」

榛名「──え? あ、あの……」

提督「瑞鶴」

瑞鶴「ご、ごめんなさい!?」ピシッ

元帥「いや、儂の艦娘が失礼をしてしまったな」

榛名「…………」ビクッ

元帥「榛名、座りなさい」

榛名「は、はい……」ソッ

榛名「あの……少将さん、瑞鶴さん、お気遣い頂きましたのに無礼を働いてしまい、申し訳ありません……」ペコリ

瑞鶴「い、いえ! 私こそごめんなさい!」ペコッ

提督「私も気にしておらんよ」

榛名「ありがとう、ございます……」

提督(……ほう。これは普段から何かされているな)



289: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/29(火) 04:06:15.77 ID:3NbT8r+bo

提督「しかし、私などの為にこんな時間でも来られるとは思っていませんでした。ありがとうございます」

元帥「なに。君を海軍学校の頃から気に掛けている身としては不安で仕方が無かったよ」

提督「海軍学校の頃から、ですか?」

元帥「うむ。君ならば実に優秀な提督になると見ておった。……故に、非常に残念だ」

提督「申し訳ありません」

元帥「いや、さっきも言ったように気にするでない。不慮の事故は仕方の無い事だ」

提督「ありがとうございます」

提督「……そして、お気遣いを無為にするようで申し訳ありませんが、私もそちらで座らせて頂きます。元帥殿よりも高い位置に居るのは好ましくありません」カチャッ

瑞鶴(あ、サポートしないと。えっと、これをこっちに……っと)カチッカチッ

元帥「! ほう。珍しい杖だ。些か扱い辛そうな物だが、慣れた手付きだな」

瑞鶴(座る時は戻して……よし)カチッカチッ

提督「器用なのが私の取り柄です故」スッ

元帥「ふむ……まさかとは思うが、それで海の上にも立つ気かね?」

提督「いえ、そこまでは出来そうにありません。波立つ海でも同じようには出来ないでしょう」

元帥「……そうか。いやはやしかし、君はこれからどうするつもりかね」

提督「一先ずは他の提督の方々と同じように、この鎮守府から無線を使って指揮を執ろうと考えています」

元帥「なるほどな。まだまだ現役という訳だ」

瑞鶴(……あれ? なんか一瞬、落胆したような顔をした? 気のせいかしら)

提督「はい。元帥殿から直々に提督になる機会を頂いたので、それを無碍にはしたくありません」

元帥「ハッハッハッ! 懐かしいのう! 君はあの頃から不思議な雰囲気を持っておったな」

提督「そうでもありません。私もどこにでも居るただ単なる人ですよ。ただ少し、変わっているだけです」

元帥「いやいや謙遜せんでも良い。君は逸材だと儂は信じておるからな」

提督「勿体無いお言葉です」

瑞鶴(……私は何をしたら良いのかしら。このまま提督さんの隣で立っておけば良いのかな……?)



290: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/29(火) 04:06:48.10 ID:3NbT8r+bo

金剛「──お待たせしまシタ。こちらアッサムです。ミルクティーで飲むのをお勧めしマス」カチャ

元帥「ほう、素晴らしい香りだ。紅茶を淹れるのが上手いようだな」ズズッ

金剛「お褒めに頂き、ありがとうございマス」ペコッ

元帥「──うむ。味の方も素晴らしい。ミルクはどのくらいがお勧めかね?」

金剛「初めは9:1ほど少なく、二杯目で7:3、三杯目で半々がお勧めデス。移り変わっていく紅茶が楽しめマス」

元帥「なるほど。ではそうさせて貰おう」

金剛(……なぜでショウか。私は、この元帥が好きになれそうにありまセン)

元帥「しかし、君が思ったよりも元気そうで安心した。艦娘にも慕われているようだな」

提督「はい。私は幸運な提督と言っても良いでしょう。この子達にはいつも助けられていますよ」

元帥「そうかそうか。それは良かった」

金剛(……なぜこの人はそんな、知っているとデモ言いたそうな顔を? それと、なぜ榛名はそんなにも表情が暗いのデスか……?)

元帥「さて。短かったが、ここまでにしておこう」スッ

榛名「…………」スッ

提督「もうお帰りですか?」

元帥「うむ。儂も色々と忙しい身でな。今回は君の顔を見に来たという意味合いが強い」

提督「ご安心頂けたのであれば幸いです」

元帥「これからも我が国の為に力を尽くしてくれ。──では、達者でな」

金剛「どうぞ」ガチャ

元帥「うむ」

榛名「……………………」チラ

瑞鶴「?」

榛名「…………」ペコリ

──パタン

提督(……ふむ)



291: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/29(火) 04:07:19.64 ID:3NbT8r+bo

瑞鶴「……あれ? 結局、榛名さんは紅茶を飲まなかったのね」

提督「いや、飲めなかったという方が正しいかもしれん」

瑞鶴「え?」

金剛「やっぱり、テートクもそう思いまシタか」

瑞鶴「えっと……どういう事?」

提督「おそらく榛名は、あの元帥に酷い事をされてきているのだろう。勝手な行動を取れば虐待を受けているのかもな」

瑞鶴「え……」

提督「現に、榛名は一瞬だけ痛みを耐える顔を浮かべていた。礼をしている時にそれがあった事から、腹部に何かされた可能性があるだろう」

瑞鶴「どうしてそんな酷い事を……」

金剛「……瑞鶴、私達は何デスか?」

瑞鶴「え……? えっと……艦娘?」

金剛「そうデス。私達は艦娘デス。それはつまり、主の提督に何をされても文句を言えないという事なのデス」

瑞鶴「そんな事って──!!」

金剛「貴女も艦娘ならば分かるはずデス。テートクには心の底から逆らう事なんて出来ナイと」

瑞鶴「それは……」

金剛「……それを利用シテ、自分の良いように扱う人も居るという事デス」

瑞鶴「……………………」

提督「私は絶対にそういう事をしないから安心しろ」

瑞鶴「……うん」

提督「さて、紅茶を飲んで一息を入れたら寝るとしよう。元帥が日付の変わる時に来なくて、そして瑞鶴の目の色が普通と違う事に気付かれなかったようで助かった」

瑞鶴「あー……それは、うん。本当に良かったわ」

金剛「それにしても、本当にテートクの様子を見に来ただけだったのデスかね……」

提督「真意は私にも分からんが、おそらくはそれだけではないだろう。何があるのかは検討も付かんから気を付けるだけ気を付けるぞ」

瑞鶴「それってある意味、深海棲艦よりも怖いんだけど……」

金剛「あ、そう言えば、私は今日もお二人と一緒に寝ても良いのデスよね?」

提督「瑞鶴と二人で、と言ったら怒りそうだな」

金剛「勿論デス。死なせませんよ、テートク」

瑞鶴「私も……二人で寝るって言われたら逃げ出すかも……」

提督「そうか……。──では、日付変更までの間に寝る用意をしよう」

…………………………………………。



292: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/29(火) 04:08:06.92 ID:3NbT8r+bo

カチ──コチ──

金剛「あと一分で日が変わりますネ」

提督「そうだな」

瑞鶴「……なんか凄く不安になってきた」

金剛「安心して下さい。どんな手を使ってでも止めて見せます」

瑞鶴「目、怖いわよ金剛さん……」ビクビク

瑞鶴「でも……その時はお願い。提督さんを守ってあげてね」

金剛「命に代えてでも守ってみせます」

提督「お前達を死なせはせんぞ」

金剛「まず自分の命を大事にして下さい」

提督「手厳しいな。そして──」

提督「──午前零時だ」

瑞鶴「────────」ガクン

金剛「……ピッタリと変化が現れましたね」

提督「ああ。どうなるかな」

瑞鶴「…………」スッ

金剛「……………………」スッ

金剛(黄色のオーラ……目から蒼い炎のようなモノ……話に聞いた強大な深海棲艦そっくりデス)

瑞鶴「……………………フフッ」

金剛「…………?」

瑞鶴「ナァンダ……モウ ジュウブンジャナイノ」

金剛「……何を言っているのですか」

瑞鶴「タノシミネ アナタノカオガ クツウニユガム ソノトキガ」

提督「…………」

瑞鶴「フフフ……ウフフフフフフフ」

金剛「答えなさい。何を言っているのですか」

瑞鶴「マタアシタ クルワネ」

瑞鶴「────────」ガクン

金剛「……戻った、のですかね…………?」

提督「おそらくそうだろう。オーラも炎のようなモノも消えている」

瑞鶴「──はっ!!」ビクン

瑞鶴「わ、私……さっき意識が……!」

提督「戻ったか」

瑞鶴「う、うん……何も起こらなかったみたいね」

金剛「とりあえずは大丈夫でシタ。瑞鶴もおかしい所はありまセンか?」

瑞鶴「えっと……私も特におかしい所はないわね」

提督「そうか。ならば良かった」

瑞鶴「私も……また提督さんに手を出したらどうしようって思ったわ……」



293: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/07/29(火) 04:08:52.75 ID:3NbT8r+bo

金剛「私が怖くて、デスか?」

瑞鶴「う。そ、それもあるけど……やっぱり一番は提督さんに危害を加えたくないから……」

提督「……とりあえず寝るとしよう。普段はあまり使わない筋肉を使っているせいか眠気が酷い」

瑞鶴「そんな風には全然見えないんだけど……」

金剛「同じく、言われなければ分かりませんでした……」

瑞鶴「言われても私は分からないわ……」

提督「……眠い」スッ

金剛「私が明かりを消しマスので、瑞鶴はテートクと一緒に寝ていて下サイ」

瑞鶴「はーい」カチッカチッ

提督「──よっと」スッ

瑞鶴「うーん……本当に、その杖が無かったら普通に歩いているようにも見えるわ」

提督「疲れるが、慣れれば意外と普通かもしれん」

瑞鶴「それって凄いわよ……」カチッカチッ

提督「ありがとう、瑞鶴」スッ

金剛「二人共ベッドに着いたネー。では、ごゆっくり」パチン

瑞鶴「え!?」

ガチャ──パタン

瑞鶴「ちょっ! 金剛さ……行っちゃった」

提督「図ったな……」

瑞鶴「え、と……どうする? 追いかけちゃう?」

提督「すまんが、酷く眠い……」

瑞鶴「もう……。でも、声の調子からして本当に眠そう。珍しいわね?」

提督「……ああ、私もこんな経験は初めてだ」

瑞鶴「んー……じゃあ、このまま寝るわね?」

提督「そうしよう……」グイッ

瑞鶴「きゃっ──!」

提督「良い夢を見ろよ……」

瑞鶴「て、提督さん──って、もう寝ちゃってる……?」

提督「……………………」

瑞鶴(……本当に珍しいわね。やっぱり、普段は使わない筋肉を使うのって疲れるんだなぁ……)

…………………………………………。

金剛「……ふう」

金剛(深海棲艦から戻ってきたのならば安全デス。それならば、私は居なくても構いまセン)

金剛「……………………」

金剛(心、痛いデスね……諦めなサイ、私……。テートクの目は、もう私には向かないのデスから……)

金剛「……諦めないのと、しつこいのは違いマスからね」

金剛(お幸せに。テートク、瑞鶴──)

……………………
…………
……



303: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/01(金) 02:12:04.86 ID:K0ZDnjNto

瑞鶴「ん……」パチ

提督「……………………」

瑞鶴「……あれ? ここ──ああ、提督さんの部屋か」

瑞鶴「んっ……! 動けないわね……凄い力……。提督さん、朝よー」

提督「……………………」

瑞鶴「? 提督さーん?」

提督「む……」

瑞鶴「起きた?」

提督「……眠い」

瑞鶴「珍しく寝ぼすけね。ほら、早く起きないと金剛さん達が来ちゃうんでしょ?」

提督「そうだったな……。仕方が無い。起きるとしよう」モゾモゾ

瑞鶴「んーっ! それにしても、本当に珍しいわよね? そんなに昨日は疲れちゃった?」

提督「…………ふむ」

瑞鶴「?」

提督「いや、すまん。もう少し温もりたいと思ってしまっただけだ」

瑞鶴「二度寝はダメよ」

提督「いや、お前の身体がやけに温かくてな」

瑞鶴「ちょっ!? そ、それはちょっと恥ずかしい発言なんだけど……!?」

提督「事実だ。非常に心地良かった。いつまでも寝ていられると思える程にな」

瑞鶴「ぅー……」

瑞鶴(……それだったら、もう少しだけ抱き付いてみようかしら……私も、提督さんに抱き締められるのって好きだし……ね?)チラ

提督「だが、起きなければいけないのも事実だ。杖を取って貰っても良いか?」

瑞鶴「……………………」

提督「どうした、瑞鶴?」

瑞鶴「なんでもないわ……。はい、杖……」スッ

提督「ありがとう」カチャン

瑞鶴「顔、洗ってくるわね……」

提督「ああ。私も洗うとしよう」

…………………………………………。



304: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/01(金) 02:12:45.44 ID:K0ZDnjNto

提督「昨日は心配を掛けてしまったな。すまない」

全員「……………………」

提督「未だに気持ちの整理がついていない者が何人か居るように見える。本日の職務は全て取り止めるので、しっかりと休養を取ってくれ。以上だ」

不知火「……司令、脚の調子は如何ですか?」

島風「こ、この状況でそれを聞いちゃう?」

不知火「この状況だからこそ聞いているのよ。ここに居る全員が司令の心配をしている。けれど皆は気を遣って言えない。ならば私が聞くまでです」

提督「脚自体は特に変わりない。だが、良くある話の幻肢痛も無いから良い事だろう」

暁「げんしつー……?」

提督「有るはずのない痛みの事だ。今、私は脚が完全に麻痺している。神経が死んでいると言っても過言ではない。それでも、脚が痛む事があるらしい」

電「それは、まだ動く可能性があるという事なのでは……?」

提督「いや、例え脚を失っていても同じ事が起きるようだ。詳しい事は分かっていないらしく、確実な治療法も無いと聞いた」

響「それって、司令官が今凄く眠そうにしているのも関係があるのかな」

川内「へ?」

神通「眠そう……ですか?」

天龍「そうは見えねぇが……」

瑞鶴「鋭いわね……」

金剛「ええ。響の観察眼に驚きまシタ」

提督「……本当に良く分かったな。これでも隠しているつもりだったのだが」

那珂「全然そんな風には見えないよ……?」

加賀「私も、そのようには見えませんでした」

雷「凄いじゃない響!」

瑞鶴(って、金剛さんも気付いてたの……? よく分かるわね……)

提督「だが、さっきの幻肢痛とは関係は無い。また別の問題だろう」

響「別の問題、ね」チラ

瑞鶴(……え? なんで私を一瞬だけ見てきたの?)

響「例えば、誰かと一緒に寝ていて眠れなったとか?」

全員「ッ!?」

加賀「本当ですか、提督」ズイッ

不知火「本当であれば聞き捨てなりません」ジィッ



305: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/01(金) 02:13:13.40 ID:K0ZDnjNto

金剛(どうして響はそんなに鋭いのデスかね……? 昨夜に瑞鶴がテートクと共にスリープしたのを知っているのは私だけのはずデスガ……)

龍田「……………………」ニコォ

天龍「ひぃっ! 龍田、笑顔で殺気を出すのやめろ!! それものすげー怖いんだぞ!?」

龍田「あらぁ、ごめんなさい。……つい嫉妬で」

提督「……それが原因で寝不足となった訳ではない。むしろ、いつもより長い時間を深く寝ていたはずなんだ」

響「そうなのかい?」

提督「ああ。今朝はやけに眠くてな。いつも通りのはずなのだが、原因がいまいち分からん」

瑞鶴(あ……気を遣ってくれてる。嬉しいけど……やっぱり今朝の事はちょっと悲しいわね……)

響(本当に、瑞鶴さんと何があったんだろうね?)

提督「話を戻すが、今日は自由にして構わない。一日の時間があるから、普段はやれない事などをする機会にもなるだろう」

加賀「普段はやれない事……」チラ

提督「変な事をしようものなら今この場で吊るす」

加賀「そんな事は考えていません。……少ししか」フイッ

瑞鶴「あ、あはは……」

響「それじゃあ、お茶会なんてどうかな。前から日が開いたし、丁度良いんじゃないかな?」

金剛「グッドアイディアです響!」

提督「ふむ。確かにそれなりに日が開いたような気がするな。参加するものはここに残るように」

不知火「金剛さんのお茶とお菓子が出てくるのに辞退する人なんて居ませんね」

島風「金剛さん! 私手伝うー!」

金剛「サンキュー島風! じゃあ、テーブルにシーツを敷いて貰えマスか?」

島風「はーい!」

雷「島風は元気ね! 良い事だわ!」

電「なのです」

提督(うむ。今の私にとって、この温かい笑顔が一番の癒しだ)

響「……瑞鶴さん、耳を貸して」クイクイ

瑞鶴「? どうしたの?」ソッ



306: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/01(金) 02:13:50.91 ID:K0ZDnjNto

響(結局の所、司令官と昨日の夜に何かあったの?)ヒソヒソ

瑞鶴「っ!!」ビクゥッ

響(ああ、やっぱりあったんだね。どんな事をされたんだい?)ヒソヒソ

瑞鶴(な、何も無かったわよ! ただ……抱き枕にされたような感じはあったけど……)ヒソヒソ

響(羨ましいね……それって抱き締められた状態で一夜を共にしたって事じゃないか)ジー

瑞鶴(え、えっと……そんなに見てきてどうしたの……?)ヒソヒソ

響(なんでも。──でも、瑞鶴さんから司令官の匂いがするのはそういう事だったんだね)ヒソヒソ

瑞鶴(なんでそんなのが分かるのかしらこの子……)

響(まあ、何も無かったのなら良かったよ。ありがとう)ヒソ

提督(響が何か良からぬ事を考えていそうだな)

響「…………」チラ

提督「…………」

響「…………」スッ

瑞鶴(腕を組んだ……? なんか、自分を抱き締めてるようにも見えるけど……)

提督「…………」フルフル

響「…………」ジー

提督「…………」ジッ

響「…………」コクン

響「はぁ……」トボトボ

瑞鶴(なんでこの二人は視線とあんな仕草だけで会話が出来るの……?)

…………………………………………。



312: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/04(月) 22:30:12.33 ID:a6DaPNpeo

雷「でね! 電ったらそこでくしゃみしちゃったのよ! とっても可愛かったわ!」

提督「ほう。怖い雰囲気が完全に無くなりそうだな」

電「はわわわ! い、雷ちゃん……その話は、そのぉ……」

提督「む。話を切って悪いが、そろそろ昼食の時間だ。各自、食堂へ移動しなさい」

金剛「ワーォ……楽しい時間はあっと言う間デース」

瑞鶴「よいしょ。提督さん、杖よ」スッ

提督「いや、私は今日の昼は口にしない。思ったよりもさっきのお茶菓子で腹が膨れてしまった」

天龍「身体に悪いぞ?」

提督「無理して食べるのも良くないだろう?」

天龍「うーん……提督がそう言うのなら仕方ねーけどさ……」

響「来るだけでも良いからさ、行こう」クイクイ

提督「……そうだな。席に着くくらいはしようか」

瑞鶴「…………?」

金剛「やっぱりテートクは優しいデース!」バッ

金剛「!」ピタッ

金剛「…………」スッ

暁「……あれ? いつものように抱き付かないの?」

金剛「もしそうした場合、テートクがなんて叱るか目に見えてマース」

加賀「そうね。いつものように時と場所を弁えろって言うわね」

不知火「それはつまり、時と場所を弁えれば抱き付いても良いという事ですか」チラ

提督「私の言った『時』には状況も含まれるから、そこは考えるように」

不知火「抱き付いても構わない状況……ふむ……あれは──いえ……でもこれならば…………」ブツブツ

島風「真剣に考えちゃってる……」

提督「その話はここで終わりだ。食堂へ向かうぞ」カチャン

瑞鶴(……やっぱり、何かおかしいような?)

…………………………………………。



313: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/04(月) 22:31:23.14 ID:a6DaPNpeo

加賀「提督、書類の処理が終わったわ」

提督「ご苦労、加賀」

瑞鶴「お疲れ様、加賀さん」スッ

金剛「二人共ー、新しい紅茶を淹れましたヨー」スッ

提督「気が利く。ありがとう」ズズッ

加賀「いただきます」コクコク

提督「うむ。良い味だ」

加賀「ですが、いつもと少し違うわね」

提督「──ああ。何か違う茶葉でも使ったのか?」

金剛「今回は瑞鶴が紅茶を淹れたのデース! 瑞鶴も紅茶に興味を持ってくれたみたいで、私とっても嬉しいネー!」

提督「なるほど。だから味が違う訳か」

瑞鶴「ど、どんな感じ?」ドキドキ

提督「辛口で言うならば、金剛の味で慣れいるからか今一つ物足りないものがある」

瑞鶴「う……」シュン

提督「だが、経験の浅い事を踏まえれば充分じゃないか?」

瑞鶴「ほ、本当!?」パァァ

加賀「ええ。舌が肥えていると思っていたけれど、また別の味として楽しめるわ」

瑞鶴「良かったぁ! ありがとう、金剛さん!」

金剛「私はレクチャーしただけデース。その実力は瑞鶴のものネ」

瑞鶴「教えてくれる人が優秀だもの。私が本を読むだけじゃ、上手くはいっていないと思うわ」

提督「…………」ズズッ

金剛「でも、テートクも気に入ってくれたようデスよー?」

瑞鶴「それは、その……すっごく嬉しい」テレテレ

加賀「顔が赤くなっているわよ」

瑞鶴「う、ぅー……」

提督「さて、今日は珍しく仕事も早く終わったんだ。早めに寝るとしよう」

金剛「まだ22時デス──……ああ、なるほど」

加賀「それならば早く寝た方が良いわね」

瑞鶴「?」

提督「察しが良くて助かる」

瑞鶴(どういう事かしら……?)

提督「それについてだが、瑞鶴は残ってくれるか」

加賀「!」

金剛「…………」

瑞鶴「え? わ、私?」

提督「ああ。お前ならば多く語らなくても分かるだろう」

瑞鶴「あ、あー……なるほどね」

瑞鶴(確かに、金剛さんはともかく加賀さんの前であんな姿を見せる訳にはいかないもんね)



314: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/04(月) 22:32:15.81 ID:a6DaPNpeo

加賀「……それは、一夜を共にするという事でしょうか」

提督「隠語の意味ではなく、文字通りの意味でだが、な」

加賀「羨ましいわ」チラ

瑞鶴「ひゃいっ!?」ビクン

金剛「加賀ー? 嫉妬をするのも分かりマスが、これは瑞鶴の為でもあるのデスよ?」

加賀「……そうよね」

加賀(例え責任が無くても、本人が罪の意識を持っているのならば解消すれば良い事だもの。提督のサポートをするという形で、ね)

瑞鶴(あ、あれ……? すんなり引き下がってくれた……?)

加賀(特に、あの時の表情は酷いものだったわ。よっぽど気にしているのでしょうね……。羨ましいと思う事には変わりないけれど)

加賀「この件に関しては私も口出しはしないようにするわ。──瑞鶴」

瑞鶴「は、はい!」ビクッ

加賀「提督をよろしくね」

瑞鶴「え、えーと……うん。任せてね?」

加賀「けれど、提督の思いまでは渡す気なんて無いから」

提督「……いつから加賀のものになったんだ?」

加賀「いずれそうしてみせます」

提督「自信満々だな」

加賀「競争率が高いもの。まずは自信を持っている事が大事よ」

金剛「……………………」

加賀「? 金剛さん?」

金剛「え、は、はい。なんデスか?」

加賀「どうしたの? いつもならば提督への愛を豪語しそうなものなのに」

金剛「そ、そうデスかね? もしかしたら、少し眠くて頭がボーっとしているのが原因かもしれないデス!」

加賀「あら、金剛さんも提督と同じなの?」

金剛「今日は平和でシタからネー。心が落ち着くと眠くなるものデース」

加賀(春の陽気に誘われるようなものかしら?)



315: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/04(月) 22:32:58.42 ID:a6DaPNpeo

提督「……………………」ズズッ

金剛「では! 私はお先にベッドインさせて貰いますネー! 瑞鶴、後片付けは頼みました! グッナイ!」

提督「うむ。良い夢を見ろよ」

金剛「──はい。飛び切り良い夢を見れるように頑張ります」ニコ

ガチャ──パタン

加賀「金剛さんが戻ったのなら、私も戻るわね」スッ

提督「そうか。良い夢を見ろよ」

加賀「ええ。おやすみなさい提督、瑞鶴」

ガチャ──パタン

瑞鶴「…………」チラッ

提督「うん? どうした」ズズッ

瑞鶴「えっと……その、私に残ってろって言ってた意味、だけどさ?」

提督「うむ」

瑞鶴「それって、やっぱり……昨日、みたいに?」

提督「嫌ならば──」

瑞鶴「ヤじゃない! ヤじゃないわよ!?」ズイッ

提督「では頼まれてくれるか」ズズッ

瑞鶴「う、うん……」

提督「ん、もう紅茶が空になったか」

瑞鶴「提督さんが眠そうにしていたから、少なくしようって金剛さんと決めたの」

提督「なるほど。では、片付けて貰って良いか?」

瑞鶴「うん。任せておいて」

提督(さて……ドアノブに掛ける紙を作るか)

…………………………………………。



316: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/04(月) 22:33:42.61 ID:a6DaPNpeo

瑞鶴「提督さん、片付け終わったわよー」

提督「そうか。それでは寝るとしようか」

瑞鶴「ん……うん」

提督「……もう慣れたかと思ったが、まだ恥ずかしいか」

瑞鶴「そりゃ……ね?」

提督「間違いは起こさんよ」

瑞鶴「そう言われるのもなんだか微妙……」

提督「信用が……ではないな。間違いが起こって欲しいのか……」

瑞鶴「…………」ジー

提督「すまないが、今日も酷く眠い」

瑞鶴「だよね……」

提督「お互いの調子が良い日ならば、考えよう」

瑞鶴「!」

瑞鶴「じゃあ、しっかり眠って貰わないとね!」

提督「まったく……」

瑞鶴「ほら、早く寝ましょ?」ソッ

提督「助かる」カチャン

瑞鶴「それにしても、本当にそれで歩くの慣れてきてるわね」

提督「そうだな。自分でも思ったより早く慣れて驚いているよ」

瑞鶴「でも、サポートするのは辞めないからね?」

提督「今後も頼む」

瑞鶴「うん! ──留め具、外すわよー」カチンカチン

瑞鶴「はい、座って」

提督「うむ」スッ

瑞鶴「杖を外して……っと」カチャン

提督「…………」ズリズリ

瑞鶴(あ、自分から布団に入ってってる。やっぱり、自分の出来る範囲は自分でやりたいんだなぁ……)



317: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/04(月) 22:34:17.17 ID:a6DaPNpeo

提督「良し。火を付けるから明かりを落としてくれ」

瑞鶴「うん」

パチン──

瑞鶴「!」テクテク

瑞鶴(そうだ。ちょっとだけイタズラしちゃおう)ジー

提督「? どうした。入らないのか?」

瑞鶴「ううん。入るわよ」

提督「ならば──」

提督(……ふむ? 期待しているような目だな。…………ああ、そういう事か)

瑞鶴(もう気付いたみたい。提督さんって本当に頭の回転が速いわね)

提督「ほら、入っておいで。一緒に寝るぞ」

瑞鶴「うん!」ソッ

提督「まったく……誘って欲しいならばそう言ってくれ」

瑞鶴「だって、それだったら私が言わせたみたいじゃないの」

提督「これは違うのか?」

瑞鶴「これは別なのっ」

提督「自分勝手なやつめ」ナデナデ

瑞鶴「飼い主に似るって言うでしょ?」ホッコリ

提督「ならば、ハウスと言えば良いか?」

瑞鶴「今の状態になるだけよ」ギュー

提督「……私の隣がそうか」

瑞鶴「うん!」

提督「まったく……」ギュゥ

瑞鶴「んっ……!」

提督「痛かったか?」

瑞鶴「ううん。自然に言っちゃっただけ。すっごく幸せよ」

提督「……そうか。──すまんが、そろそろ眠気が限界だ」

瑞鶴「ん……。じゃあ、明日もまたお願い、ね?」

提督「そうしよう……。良い夢を見ろよ」

瑞鶴「おやすみなさい──」

…………………………………………。



318: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/04(月) 22:35:23.04 ID:a6DaPNpeo

金剛「…………」ソロリ

金剛(そろそろ日付が変わる時間ですケド……提督室に入っても良いのでショウか……? たぶん、二人共スリープしているはずデス……)

金剛「……あれ?」

金剛(ドアノブに紙、デスか?)

『金剛へ。起こさないよう静かになら今後無断で入ってきて構わない。瑞鶴を確認するかどうかは任せた』

金剛(……お見通しという訳デスね)クスッ

カチャ──ソッ

金剛(蝋燭、持ってきて正解でシタね。今夜は月明かりもありまセンから、これだけが頼りデス)

提督「…………」

瑞鶴「すぅー……」

金剛「…………っ」ズキッ

金剛(……そろそろ、零時デスね)チラ

ユラッ……

金剛(出ました……)

金剛「…………」

瑞鶴「…………」

金剛「……………………?」

瑞鶴「……キガ キカナイワネ」

金剛「…………」

瑞鶴「イマハコレヲ タノシミタイノ ジャマダカラ デテイッテクレル?」

金剛「……貴女は提督を殺したいのですか。それとも愛したいのですか」

瑞鶴「ドッチモヨ」

金剛「今殺さない理由は何ですか」

瑞鶴「ジブンデ カンガエナサイ」

金剛(……楽観的に考えるならば、愛情が殺意を上回った……ですかね。けど、それは少し不自然です。他に何か理由があるはずですが……)



319: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/04(月) 22:35:50.38 ID:a6DaPNpeo

瑞鶴「ヒトツイウナラバ モウ ワタシハテイトクヲ コロソウトシナイ…… ソレダケハオシエテアゲル」

金剛「……信用できませんね」

瑞鶴「コロスヒツヨウガ ナイモノ」

金剛(殺す必要が無い……? では、やっぱり愛情が殺意を上回ったのですか……?)

金剛「……今はそれで納得しておきます。あとは、貴女が消えたら私も帰りましょう」

瑞鶴「チッ……」

スゥ……

瑞鶴「…………」

金剛(消えました……ね?)

瑞鶴「……ごめんなさい」

金剛「いいえ。アレは深海棲艦の瑞鶴デス。例えアレが本音で本性でも、私は今の瑞鶴があんな事を言うとは思えまセンよ」

瑞鶴「ありがとう、金剛さん……」

金剛「いえいえ。──それでは、グッナイ瑞鶴」ニコッ

瑞鶴「おやすみなさい……」

カチャ──ソッ

金剛「……ふぅ」

金剛(あの『瑞鶴』の言葉と行動を信用するならば、もう大丈夫……デスが、もう何日か様子は見まショウ)

金剛(それにしても……覚悟はしていましたケド、やっぱり心が痛みマス……)

金剛(諦めなさい……諦めなさい私……)

金剛「……外、真っ暗ですね」

金剛「…………私の心みたいです……」

……………………
…………
……



326: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/07(木) 01:58:14.03 ID:b5laCMOWo

瑞鶴(そろそろ遠征の子達が帰ってくる頃かしら? ──あ、居た。距離的に六キロくらい……かな? それだったら、あと十分ちょっとで到着するわね)チラ

加賀「…………」チラ

加賀(あら。もう遠征艦隊が帰ってくる時間なのね。時間が経つのは早いわ)

提督「…………」チラ

提督「────」フイッ

瑞鶴「え?」

提督「どうした、瑞鶴」

瑞鶴「どうしたって……それはこっちの台詞よ?」

加賀「ええ。提督、疲れているの?」

提督「……………………」

瑞鶴「……えっと、ほら。遠征の子達が見えるから、そろそろ帰ってくるでしょ?」スッ

提督「…………そうか……。すまない。少し霞んで見えていなかった。出迎えに行くとしよう」カチャン

加賀「ダメよ。疲れている時は素直に休んでいなさい。出迎えは私がするわ」スッ

提督「しかし──」

瑞鶴「それで倒れたら、悲しむ人が沢山居るんだからね?」

提督「……分かった。大人しくここで待っていよう」

加賀「そうして下さい。──瑞鶴、提督が無理をしないように見張っていてね」

瑞鶴「うん、任せて! 加賀さんも、遠征の子達をよろしくね?」

加賀「ええ。──いってきます」

ガチャ──パタン

瑞鶴「それにしても……」チラ

提督「どうした」

瑞鶴「……提督さん、私の知らない所で無茶とかしてないでしょうね? 提督さんが気付かないなんて初めてじゃないの」

提督「心当たりは無いんだがなぁ……。それに、最近は四六時中お前と一緒に居るから分かっているだろう」

瑞鶴「お風呂の時とかは一緒じゃないもん。その時に何かしてるんじゃないの?」ジー

提督「何もしておらんよ。知っての通り、自室の風呂でお前と同じく湯浴みをしているだけだ」

瑞鶴「うーん……」

提督「そんなに信じられないのなら、今度から一緒に湯に浸かるか?」

瑞鶴「…………良いかも、それ」

提督「……冗談だ。本気にするな」

瑞鶴「残念……」



327: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/07(木) 01:58:48.33 ID:b5laCMOWo

提督「お前は良い子なんだ。私なんかじゃなくもっと良い男を見つけろ」

瑞鶴「無理な相談ねぇ……どこにそんな人居るのよ……」

提督「世界は広いぞ。海のようにな」

瑞鶴「私の世界で素敵な男性は提督さんだけ、よ」

提督「…………」

瑞鶴「? 提督さん?」

提督「そうだな……これは独り言だ?」

瑞鶴「…………?」

提督「私と瑞鶴が提督と艦娘の関係でなく、瑞鶴が変わらず私を愛してくれているのであれば……私はお前と共に生涯を過ごしていただろうな」

瑞鶴「────っ!?」

提督「普通に働き、普通に家庭を築き、普通に子を授かり、普通に暮らしていっただろう……」

瑞鶴(それってつまり……)

提督「いや、艦娘は子供が出来ないんだったな……という事は二人で暮らしていくか養子を貰うかだったのか?」

瑞鶴「提督さん……」

提督「独り言だ。誰も聞かれたくない、私の内に秘めている心だ」

瑞鶴「……………………」

提督「さて瑞鶴、仕事に戻ろうか」サラサラ

瑞鶴「え……あ、えっと……うん……」カキカキ

瑞鶴(提督さんは……私と……?)チラ

提督(……………………)

…………………………………………。



328: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/07(木) 01:59:19.69 ID:b5laCMOWo

救護妖精「よーし。今日はまともに健診を受けに来たね。うんうん、やっと健康を気にするようになったかー」

提督「…………」チラ

救護妖精(うん?)

提督「……瑞鶴」

瑞鶴「ん、なぁに?」

提督「健診は少し時間の掛かるものだ。その間は書類処理を頼んでも良いか?」

瑞鶴「えーっと……良いけど、待ってるのはダメなのかしら」

救護妖精(ああ、瑞鶴には内緒の話があるんだね)

救護妖精「提督の健診は少し特殊だから、素っ裸にさせる項目もあるけど良いのかい」

瑞鶴「是非居させて下さい!」

救護妖精「おおう……積極的だね……」

救護妖精(こりゃちょっと予想外だねぇ……どうしよっか)

提督「ふむ、そうか……」

瑞鶴「…………? えっと、何かあるの?」

提督「いや、健診に時間を割くという事は詰まるところ、書類処理の時間も遅れるという事だろう?」

瑞鶴(ああ……それだと休める時間も短くなっちゃう……)

瑞鶴「提督さん、やっぱり私は書類処理に戻る」

提督「気を遣わせてしまったな。すまない」

瑞鶴「……そこは、ありがとうの方が嬉しいかも」

提督「ふむ……ありがとう、瑞鶴」

瑞鶴「うん!」ニコニコ

瑞鶴「じゃあ、私は提督室に戻るけど、どれくらいで終わるか目安があるのならその時間にこっちへ来るわよ?」

救護妖精「んー……」

救護妖精(少し多めに時間を取るかねぇ)

救護妖精「今回はたぶん二時間くらいかな」

瑞鶴「ん、分かったわ。二時間後にまた来るわね」

救護妖精「あいよー」

瑞鶴「それじゃあ救護妖精さん、提督さんをお願いします」ペコッ

ガチャ──パタン

救護妖精「……さて、話したい事があるんだろう? 検査をしながらでも良いかい」

提督「ああ、構わない」

救護妖精「……なんとなく、嫌な予感がするんだけど」

提督「勘が鋭いな。実は──」

……………………
…………
……



329: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/07(木) 01:59:57.72 ID:b5laCMOWo

提督「────!」ガクン

金剛「!!」バッ

瑞鶴「っ!?」

提督「……すまない金剛。助かった」グッ

金剛「ビックリしまシタ……。大丈夫デスか、テートク?」

提督「ああ。金剛が支えてくれたおかげで何ともない。──ああ、いや……ありがとうと言うべきだな」

瑞鶴(あ……憶えててくれてるんだ)

金剛「どういたしまシテ。……ケド、本当に大丈夫デスか? 腕で身体を支えるのが疲れてきているのデスか?」

提督「ああ、少し疲れてきているかもな。いくら慣れてきたとはいえ、ずっと腕で身体を支えるのは少々厳しいものがある」

瑞鶴「……………………」

瑞鶴(……なんか、おかしい)

金剛「それならば、今日の開発は中止にしてお休みになるデスか?」

提督「そうだな……。私としては現場を見て開発をしたい所だが……」チラ

瑞鶴「…………」ジー

提督「許してくれそうにない」

金剛「私も瑞鶴と同じデス。出来れば休んでくれまセンか?」

提督「……仕方が無い。今回は金剛に開発を任せよう」

金剛「ハイ! 任せて下サーイ!」

提督「では、私は部屋へ戻る。──瑞鶴、戻るぞ」

瑞鶴「うん。──金剛さん、開発お願いします」ペコッ

金剛「イエース! 瑞鶴も、提督を任せましたヨー?」

瑞鶴「命に代えてでも送り届けるわ」

提督「そこまで大事ではないだろう……」

瑞鶴(……………………そうかしらね?)

……………………
…………
……



330: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/07(木) 02:00:52.49 ID:b5laCMOWo

提督「──以上だ。では、各自用意をしろ」

ガチャ──ゾロゾロ──パタン

瑞鶴「……ねえ、提督さん」

提督「どうした」

瑞鶴「最近、私の出撃が少なくなったわよね」

提督「ああ。もしかして、出撃したかったか? それならば──」

瑞鶴「ううん。私の話したい事はそうじゃないの」

提督「…………」

瑞鶴「私が提督さんを殺そうとしてから、もう一ヶ月くらいは経ったわね」

提督「そうだな。金剛も、もうお前の深海棲艦部分が出ても問題ないと言っていたな」

瑞鶴「…………そろそろ、さ……話してくれても良いんじゃないかしら」

提督「何の事だ?」

瑞鶴「私さ、ずーっと提督さんの傍で提督さんを見ているのよ。気付いていないとでも思った?」

提督「……何の事やら」

瑞鶴「視力、すっごく悪くなってるわよね。書類にすら目を少し細めるくらい」

提督「…………」

瑞鶴「味覚もおかしくなってきてるでしょ。実は、昨日の紅茶はこっそり砂糖を入れてたのよ?」

提督「…………」

瑞鶴「身体なんて言う事を聞かない事が多いでしょ。最近、眠る時間が長いもの」

提督「……………………」

瑞鶴「まだ、隠す?」

提督「……そうか。もう隠す事は出来んか」

瑞鶴「話して貰うわよ」

提督「……そうだな。金剛と加賀には言うなよ? 気付いた者から言うつもりだったんだからな」

瑞鶴「うん。約束する」

提督「三ヶ月。……長くてそれだけだそうだ」










提督「──その九十日の内に、私は死ぬだろう」








331: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/07(木) 02:01:22.89 ID:b5laCMOWo

瑞鶴「……それは、救護妖精さんが言ったの?」

提督「ああ。どうにもならんそうだ」

瑞鶴「……………………」

提督「そんなに悲しそうな顔をしてくれるな。死は誰にでも訪れるものだ」

瑞鶴「…………」

提督「私の場合、それが少し早かった……それだけの事だ」

瑞鶴「……冷静ね」

提督「どうにもならんと言われたからな。受け入れるしかあるまい」

瑞鶴「受け入れる……しか……」

提督「ああ。その上で私はいつものように生きて、そして死んでいきたい」

瑞鶴「…………私は、受け入れられそうにない……」

提督「こればかりはどうしようもない。死から逃げ切る事なんて出来ないんだ」

瑞鶴「分かってる……分かってる、けど……」ポロッ

提督「……瑞鶴」

瑞鶴「何……?」ポロポロ

提督「雨が降ってきて少し肌寒い。一緒に温まらないか」スッ

瑞鶴「~~~~~~ッッ!!」ギュゥッ

提督「…………」ナデナデ

瑞鶴「こんな、のって……ないよぉ……ヤダよぉ……」

提督「……すまん」ギュゥ

瑞鶴「生きてよ……ひっく……生き続け、てよ……」

提督「すまん……」

…………………………………………。



332: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/07(木) 02:01:57.79 ID:b5laCMOWo

提督「……落ち着いたか?」

瑞鶴「……………………」コクン

提督「目が真っ赤だ。せっかく綺麗な金色の目をしているんだから勿体無いぞ」

瑞鶴「……ごめんなさい」

提督「うん?」

瑞鶴「服……汚しちゃった」

提督「洗えば良い。そんな事よりも、もう大丈夫なのか?」

瑞鶴「大丈夫……じゃないけど、マシにはなったわ」

提督「そうか」ナデナデ

瑞鶴「……ねえ、提督さん。私、今の内に思い出を作りたい」

提督「思い出、か」

瑞鶴「うん。出来る範囲で良いからさ。……ダメ?」

提督「大した事も出来んぞ」

瑞鶴「ううん。大した事じゃなくても良いの」

瑞鶴「──私はただ、提督さんといっぱい過ごせたら幸せだから」

提督「……そうか」

瑞鶴「ダメ……?」

提督「救護妖精と相談して、何ならしても良いかを聞こう」

提督「……私も、心残りがあって死にたくはない」

瑞鶴「! ……うん!」

瑞鶴(死のうとしてた提督さんが、死にたくない……か。例えそれが嘘でも嬉しい……)

提督「早速聞きに行こうか。一秒の時間すら惜しい」カチャン

瑞鶴「ダメ。私が呼びに行くから、提督さんはここで待ってて」

提督「だが──」

瑞鶴「少しでも長く、生きてよ……」

提督「……そうだな。頼まれてくれるか?」

瑞鶴「うん。……帰ってくるまでに死なないでよ?」

提督「死なんよ。心残りが多すぎて死ねん」

瑞鶴「……少しだけ安心したわ。──行ってきます」

ガチャ──パタン

提督「……大切な存在に気付いたらこれか」ギシッ

提督「神が居るのならば、よっぽど私を苦しませたいようだな……」

…………………………………………。



345: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/10(日) 03:35:29.08 ID:mE9Vt4Fko

救護妖精「……とうとう気付かれたようだね、提督」

提督「ああ。瑞鶴には見破られてしまった」

救護妖精「むしろ、よくここまで隠し通せたよね。逆に提督の立ち回りに驚くよ」

瑞鶴「それで……相談事なんだけど」

提督「今の私は何をしても大丈夫かを知りたい」

救護妖精「言うのが難しいから、何がしたいかを言ってくれるかい。それで良いかダメか言うからさ」

提督「そうだな……。瑞鶴、お前は私と何がしたい?」

救護妖精(ほほう? これってそういう事だねぇ?)

瑞鶴「え、わ、私? そうね……んっと……」

提督「…………」

救護妖精「…………」

瑞鶴「……考えると中々思い付かないわね」

救護妖精「まあ……この鎮守府と海しか知らないからねぇ」

瑞鶴「海……。えっと、海でデートしたいっていうのとか……?」

救護妖精「ダメ。提督は今の状態で滑れないだろうし、例え海の上に立つとしても敵が居るんだから危ないよ」

瑞鶴「よねぇ……。うーん……」

救護妖精「先に言っておくけど、性行為はダメだよ。寿命が縮むどころかそのまま死ぬ可能性があるかんね」

瑞鶴「ぶっ!」

提督「……直球だな」

救護妖精「愛し合った男女が最終的に行き着くのはそこだからねぇ。先に釘を刺しておくべきでしょ」



346: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/10(日) 03:36:11.38 ID:mE9Vt4Fko

瑞鶴「そ、それは置いておいて……海がダメなら、鎮守府の中を歩き回るのは良いの?」

救護妖精「ん。今ならそれでも良いだろうけど、それ楽しいの?」

瑞鶴「提督さんとのデートなら楽しいと思う」

提督「なんだか無茶を振られているような気がするが……」

瑞鶴「提督さんが楽しくないのなら私もしたくないけど、どう?」

提督「……ふむ。思えば、生まれてこの方デートというものをした事が無かったな。興味が沸いてきた」

瑞鶴「なら決まりね!」

救護妖精(本当に鎮守府内でデートするんだ……)

瑞鶴「あ、それならお弁当も作って食べて欲しいかな。食べさせたらいけないものとかある?」

救護妖精「んー……。消化に悪いものはマズイってくらいかな。油物とかはちょっと控えて欲しいね」

瑞鶴「油物はダメ……っと」カキカキ

提督「……言っておくが、私は作らないからな?」

瑞鶴「卵と塩で虹色の物体になるんだっけ……?」

提督「ああ。アレを口に入れるのならば重油の方がマシかもしれん」

救護妖精「どういう食べ物なのさ……」

提督「存在してはいけない冒涜的なものだ。食べれば冗談抜きで死と隣り合わせになる」

救護妖精「冒涜的で死にそうになるって……。──あ、そうそう。艦娘は陸の深い所に行くと死んじゃうけど、そこら辺の小高い山くらいまでなら大丈夫だよ。弁当ならそういう場所で食べた方が良いんじゃない?」

瑞鶴「それって提督さんが大丈夫なの?」

救護妖精「山っていうより丘みたいなもんだし、標高も五十メートルあるかどうかだから大丈夫だよ。無論、ゆっくり歩く事が条件だけどね」

救護妖精「むしろ、行くなら今の方が良いよ。これから段々と体力が落ちていくはずだしさ」

瑞鶴「そっか……。なら、すぐに予定を決めないとね!」

提督「楽しみにしているよ。──そうだ、救護妖精。私は風呂の時に湯に浸かったりしているんだが、マズイか?」

救護妖精「お風呂ならまあ大丈夫かな。今の提督がやっちゃいけないのは激しい運動だからねぇ。熱いお湯でもなかったら身体に負担がそこまでいかないから良いよ。ただ、長時間浸かるのは絶対ダメだからね。二十分が限界くらいだよ」

提督「ふむ。分かった」

瑞鶴「んっと、身体に負担を掛けちゃいけないのは分かったけど、頭に負担が掛かるのもダメなの? ほら、ボードゲームとか」

救護妖精「そこら辺は良いかな。検査をしてみた感じ、頭を使うのは問題ないみたいだし」



347: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/10(日) 03:37:29.73 ID:mE9Vt4Fko

瑞鶴「じゃあ、ボードゲームは良い……っと。ルール覚えとこ」

提督「囲碁と将棋、チェスくらいなら分かるぞ」

瑞鶴「じゃあ、その辺りで楽しみましょうか」カキカキ

救護妖精「あと、大前提として身体はしっかりと休めなよ。夜更かしとか論外だかんね」

提督「分かった」

瑞鶴「うーん……本当にやれる事が少ないわね……」

提督「正直に言うならば、私は瑞鶴が隣に居てくれるだけでも充分だ」

救護妖精「おーおー、言うねぇ」ニヤニヤ

瑞鶴「……ちょっと恥ずかしい」

提督「一先ずはこれくらいにしておこうか」

救護妖精「そだね。また思い付いたら私に聞きに来なよ」

瑞鶴「うん。その時はお願いします」ペコッ

救護妖精「良いって良いって。──じゃあ、安静にしておくんだよ提督。じゃあねー」

ガチャ──パタン

提督「……さて、仕事に戻るとしようか。時間を作る為に本気でやるとしよう」スッ

瑞鶴「本気で?」

提督「今まではじっくりと考えてやっていたからな。今回から即決でやる」パラパラ──スッ

瑞鶴「…………えっと」

提督「うん?」パラパラ──スッ

瑞鶴「何してるの?」

提督「一回目を通して何を書くか憶えておくんだ。後はただ筆を走らせれば良い」パラパラ──スッ

瑞鶴「……私にはただ書類をパラパラ漫画にしてるだけにしか見えないんだけど」

提督「疲れるからあまりこれはやりたくないんだ。それに、杜撰だと後が面倒になるからな。……すまんが集中するから少しの間だけ静かにして貰って良いか」パラパラ──スッ

瑞鶴「う、うん……」

瑞鶴(……本当は秘書官なんて要らないんじゃないかしら?)

提督「ふー……よし、書いていく。瑞鶴はこっちの書類を処理してくれるか」スッ

瑞鶴「速っ!? 黙る必要あったのそれ!?」

提督「かなりいい加減だ。後で見返しとかしたくない。──さて、さっさと終わらせるぞ」サラサラ

瑞鶴(……本当に秘書官なんて要らないんじゃないのこれ)

瑞鶴「そういえば、救護妖精さんって私と提督さんがデートするって言っても特に驚かなかったわね。何か伝えてるの?」

提督「いや、何も言っていない。あの救護妖精の事だ。察したんだろう」

瑞鶴「……提督さんの次に敵いそうにないわ」

…………………………………………。



348: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/10(日) 03:38:10.08 ID:mE9Vt4Fko

提督「…………」パサッ

瑞鶴「え、もしかして、もう終わったの?」カキカキ

提督「ああ終わった。そっちのを半分貰うぞ」スッ

瑞鶴「本当、どれだけ速いのよ……まだ遠征の子達どころか演習すら終わってないわよ? ──って、それ絶対に半分って量じゃない! ほとんど持っていってるじゃないの! こっち二枚しか残ってないわよ!?」

提督「やりたい事があるからな」サラサラ──パラッ

瑞鶴「……すっごい速さで字が埋まっていってる」カキカキ

提督「ほら、私よりも終わるのが遅かったら罰ゲームだ」サラサラ──パサッ

瑞鶴「え、ちょっ!? 罰ゲーム!?」カキカキカキ

提督「あと四枚だ」サラサラ──パサッ

瑞鶴「あ、あと一枚……!」カキカキカキ

提督「二枚」サラサラ──パサッ

瑞鶴「は、はやっ……!」カキカキカキ

提督「一枚」サラサラ──パサッ

瑞鶴「うぅ、うー……!!」

提督「終わりだ」パサッ

瑞鶴「うそぉ……」カキ…

瑞鶴「…………終わったわ……」コトリ

提督「私の勝ちだな」

瑞鶴「……ば、罰ゲームって、何?」ビクビク

提督「そうだな……考えてなかった」

瑞鶴「思い付きだったの!?」

提督「ああ。正直な所、何もする気が無かった」

瑞鶴「何よそれぇ……」



349: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/10(日) 03:38:53.34 ID:mE9Vt4Fko

提督「くくっ。必死な顔が可愛かったぞ」

瑞鶴「……まさか、それが見たかっただけとか言わないわよね?」

提督「ほう。段々と私の事が分かってきたじゃないか。その通りだ」

瑞鶴「このイタズラ好きー……」グッタリ

提督「だが、罰ゲームは受けて貰おうか」

瑞鶴「え。……な、何する気? 吊るしたりしないわよね……?」ビクビク

提督「そうだな……瑞鶴、私の膝に座れ」ポンポン

瑞鶴「え? ……えっと、膝に?」

提督「ああそうだ。ほら、こい」ポンポン

瑞鶴「う、うん……」チョコン

提督(……まさか、向き合って座ってくるとは思わなかった。まあ、良いか)

提督「リボン、解くぞ」シュルッ

瑞鶴「……何するの?」

提督「こうするんだ」クシクシ

瑞鶴「ひゃっ」

提督「綺麗な髪をしているよな、瑞鶴」クシクシ

瑞鶴「ええっと……ありがと?」

瑞鶴(……提督さん、ブラッシングが凄い上手。気持ち良い……)

提督「瑞鶴は自分の髪が好きか?」

瑞鶴「ん、それなりには」

提督「そうか。私もお前の髪が好きだ。手触りも良いし、艶もあって癖もほとんど無い。枝毛も無くて手入れを怠っていないのは分かるぞ」クシクシ

瑞鶴「……なんだか恥ずかしい」

提督「自信を持って良い」クシクシ

瑞鶴「…………恥ずかしい……」

提督「顔が赤いぞ」クシクシ

瑞鶴「~~~~~~…………」



350: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/10(日) 03:39:25.88 ID:mE9Vt4Fko

提督「ほら、伏せるな。もっと顔を見せろ」クイッ

瑞鶴「ひゃっ」ビクッ

瑞鶴「あ、あああの提督、さん?」ドキドキ

提督「……………………」

瑞鶴「…………っ」ドキドキ

提督「……………………」ギュゥ

瑞鶴「んっ」ピクン

提督「……すまん。つい抱き締めてしまった」

瑞鶴「……うん。良いわよ。私、抱き締められるの好きだもん」コテン

提督「誰でも良いのか?」ナデナデ

瑞鶴「……その聞き方はズルイ。分かってるでしょ?」

提督「言ってくれないと分からない」

瑞鶴「ウソツキ。──私は、提督さんに抱き締められるのが一番好きなの」

提督「その言い方だと、他にも抱き締められて心地良い者が居るそうだな。金剛や加賀か?」

瑞鶴「お見通しね。……うん。私は金剛さんからも加賀さんからも抱き締められるの、好きよ。でも、一番は提督さん。これだけは変わらないわ」スリ

提督「……温かいな、瑞鶴は」ナデナデ

瑞鶴「提督さんもあったかいわよ」スリスリ

提督「このまま寝てしまいたいくらいだ。昼寝でもするか?」

瑞鶴「もう……皆頑張ってるのよ? ダメよ」

提督「しかし、今日の仕事は全て終わったぞ」

瑞鶴「う……。ほ、他に無いの?」

提督「無い。明日にならなければ出来ない事ばかりだ」

瑞鶴「うー……」

提督「頼む」

瑞鶴「……少しの間だけよ?」

提督「助かる。──瑞鶴も少し寝ておいた方が良い」

瑞鶴「え? 私は大丈夫よ?」

提督「後で役に立つから、今寝ておけ」

瑞鶴「後で役に……?」

瑞鶴(どういう事かしら……?)

提督「出来れば、このまま眠りに就きたいな」

瑞鶴「それだけはダメ。風邪でも今の提督さんには危ないんだから、ちゃんと温かくして寝ないと」

提督「……しっかりものだな」

瑞鶴「どういたしましてっ」

…………………………………………。



360: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/11(月) 02:32:27.26 ID:38kVjTGto

瑞鶴「──アナタがシヌノヲ マッテイルワ」

スゥ──

瑞鶴「……初めて知ったけど、深海棲艦の私って提督さんが死ぬのをあの日から見抜いてたのね」

提督「そうみたいだが、瑞鶴の考えていた事じゃないのか?」

瑞鶴「よく分かんない。私だけど私じゃなくて、あの私にとっては都合が良くて今の私にとっては都合が悪い事は隠されてるような……そんな感じなの」

提督「そういうものか」

瑞鶴「……ごめんなさい」

提督「何を謝っているんだ?」

瑞鶴「提督さんが死ぬのを待ってるって言っちゃって、ごめんなさい……」

提督「……ふむ。気にするな、と言いたい所だが……瑞鶴、私の前で目線を合わせてくれ」

瑞鶴「? ……こう?」スッ

提督「うむ。それで良い」ソッ

瑞鶴「あ──」

瑞鶴(すっごく優しく……私の身体が提督さんの腕の中に……)

提督「今の瑞鶴も深海棲艦の瑞鶴も、私にとっては同じ瑞鶴だ。だから、瑞鶴はありのままのお前で居てくれ。深海棲艦の瑞鶴も、お前が考えている負の感情を話しているだけだよ」ポンポン

瑞鶴「……提督さん」

提督「私は瑞鶴の全てを受け止める気だ。たかが深海棲艦になった程度では私の心は揺るがんよ。だから、もう一度言おう──」

提督「──気にするな。お前には私が居るだろう」

瑞鶴「────────」

提督「それではダメか?」

瑞鶴「……バカ。もっと好きになるじゃないの」ギュゥ

提督「良い事だ」ナデナデ

瑞鶴「これ以上、好きにさせてどうするつもりなのよ」

提督「企んでなんかおらんよ。ただ、私はお前が悲しんでいる姿を見たくないだけだ」

瑞鶴「……ばぁか」

提督「そんな優しく言っても、可愛いとしか思えんぞ」

瑞鶴「ん……良いもん」スリスリ

提督「……………………」ナデナデ

提督「さて……そろそろ良い時間か」

瑞鶴「ん、良い時間?」

提督「ああ。出掛けるぞ」

瑞鶴「出掛ける……? こんな時間なのにどこに行くの?」

提督「海だ」

瑞鶴「……海?」

…………………………………………。



361: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/11(月) 02:33:06.92 ID:38kVjTGto

提督「海をこうして近くで見るのは久し振りの気がするよ」

瑞鶴「ずっと私達が止めてたもんね」

提督「さて……瑞鶴、デートをしようか」

瑞鶴「デート? ……あー、だから昼に寝ておけって言ってたのね」

提督「そういう事だ。あと、時間も時間だから大きな声を出すんじゃないぞ」カチャッ

瑞鶴「ちょ、提督さん、何を──」

提督「よっと」スッ

パチャッ……

提督「うむ。杖を使っていても海の上には立てるようだな」

瑞鶴「……提督さん、何する気?」

提督「瑞鶴、少しこの辺りを散歩しよう」

瑞鶴「ダメ。救護妖精さんからもダメだって言われてるでしょ」

提督「私の体力はどんどん衰えるという話だ。それならば、今でないともう二度と海の上に立つ事が出来ない」

瑞鶴「それは……そうだけど……」

提督「私も海が恋しい。しばらく近くで見る事もなくて気付いたが、海は私にとって掛け替えのないものらしい」

瑞鶴「……はぁ…………。こうなったら提督さんってテコでも動かないんだから……」

瑞鶴「皆には内緒にしてよ?」

提督「すまな──いや、ありがとう、瑞鶴」

瑞鶴「困った提督さんね」クス

提督「ほら瑞鶴、おいで」スッ

瑞鶴「……海の上に誘われたのって初めてかも」チャプッ

提督「ほう。私は初めてを貰ったのか」

瑞鶴「そ、その言い方はなんだか恥ずかしいんだけど……?」

提督「嫌か?」

瑞鶴「……少し喜んでた自分が情けない」

提督「くっくっ。良かった」

瑞鶴「もう……」



362: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/11(月) 02:33:45.50 ID:38kVjTGto

提督「しかし……海の上に立つ事は出来ても、移動は出来ないようだ。瑞鶴、引っ張って貰って良いか?」

瑞鶴「ん。分かったわ」ソッ

提督「……………………」

瑞鶴「どうしたの?」

提督「いや、今思ってみれば、艦娘と手を繋ぐのは初めてだった気がしてな」

瑞鶴「そういえば見たこと無いかも……。初めて、か……」ジー

提督「どんな気分だ?」

瑞鶴「……すっごい嬉しい。こんななんでもない事で嬉しいって思うなんてビックリよ」

提督「奇遇だな。私もそう思っているよ」

瑞鶴「あんまりそうは……あ」

瑞鶴(ほんの少しだけど、笑ってるような?)

提督「どうした」

瑞鶴「……ううん。なんでもないわ。さ、行きましょ?」

提督「うむ」

瑞鶴「どこに行く?」

提督「この近海を散策はどうだ。出撃とは違った海が見えるかもしれんぞ」

瑞鶴「うん! そうしましょ! ……でも、敵が出てきたらどうするの?」

提督「放っておけば良い。攻撃してくるようであれば全力で逃げてくれるか」

瑞鶴「怖い事を言うわね……。ちょっと不安になってきたんだけど」

提督「ここら辺は比較的に穏やかだ。私達が居るせいか敵もほとんど見掛けない。だから大丈夫だろう」

瑞鶴「本当に大丈夫かしら……」

提督「逃げれなかったらその時はその時だ。……まあ、瑞鶴となら沈んでも良いかもしれんな」

瑞鶴「冗談でもそういう事は言わないの。敵と遭遇したら逃げる準備はするからね?」

提督「頼んだ」

瑞鶴「じゃあ、行くわよ」クイッ

…………………………………………。



363: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/11(月) 02:34:35.25 ID:38kVjTGto

提督「……ああ、久し振りの海の上だ。風が心地良い」

瑞鶴「本当、提督さんとまた一緒に海に出られるなんて思ってなかったわ」

提督「救護妖精には絶対に言ってくれるなよ?」

瑞鶴「勿論。他の人にも絶対言わないわ」

提督「怖いからか?」

瑞鶴「それもあるけど、なんとなく秘密にしておきたいの」

提督「ほう?」

瑞鶴「私と提督さんの、二人だけの秘密、ね?」

提督「……気分が良くなってきた。良いな、それ」

瑞鶴「私も。ちょっとだけ顔が火照っちゃう」

提督「……なあ瑞鶴」

瑞鶴「? なぁに?」

提督「月が、綺麗だな」

瑞鶴「月? ──あ、本当だ。綺麗に半分だけの月が出てるわね」

提督「……………………」

瑞鶴「星もハッキリ見える。本当に綺麗……」

提督「……そうか」

瑞鶴「あれ? どうしたの?」

提督「いや、なんでもない。──瑞鶴、星で影が出来る話は知っているか?」

瑞鶴「え。星で影なんて出来るの?」

提督「ああ。周りが真っ暗で月も出ていなかったら星で影が出来るらしい」

瑞鶴「良いなぁ。見てみたい」

提督「この国では見るのが難しいだろう。ましてや海だと尚更な」

瑞鶴「残念……」



364: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/11(月) 02:41:10.28 ID:38kVjTGto

提督「だが、星の影が見えなくとも星というものは何かと不思議な気分になるよ。──北極星は見えるか?」

瑞鶴「えっと……北斗七星があれだから……あった。うん、見えたわよ」

提督「北極星の光が地球に届くのは四百年掛かるんだ」

瑞鶴「四百……。すっごい遠いのね」

提督「そう。つまり、今瑞鶴が見ている北極星は四百年前の光という事だ。もし北極星の光で影が出来れば、四百年の時間を経て作られる影なんだよ」

瑞鶴「四百年を掛けて作った影……。ますます見てみたくなるなぁ」

提督「二百五十四万光年離れているアンドロメダ銀河の光もあるから、四百年の影とは言えないかもしれんがな」

瑞鶴「にひゃ……」

提督「不思議なものだろう? その二百五十四万年──二千四百兆キロの旅の末、私達の目に入ってきているんだ」

瑞鶴「数字が大き過ぎて実感が沸かない……」

提督「だろうな。私も知識としては持っていても実感が持てん。故に神秘的に感じるのかもしれんがな」

瑞鶴「……うん。私も、この星空が何百年も何万年も掛かっているんだって思ったら、すっごく不思議な気持ちになる」

提督「ああ。だが、私はあの北極星……四百年の歳月を掛けた光の方が魅力的に感じるよ」

瑞鶴「あ、それ私も思った」

提督「ほう。それは嬉しい」

瑞鶴「四百年の影、いつか見れたら良いね」

提督「そうだな。いつか、見てみたいものだ」

瑞鶴「二人で?」

提督「勿論だ」

瑞鶴「えへへー」ギュッ

提督「…………」ナデナデ

瑞鶴「さてと……結構沖まで来ちゃったし、そろそろ戻りましょうか」

提督「そうだな。また明日、来たいものだ」

瑞鶴「提督さんの調子が良かったらね」

提督「ほう、甘くなったな」

瑞鶴「提督さんったら、すっごく気分が良さそうなんだもん。……それに、私も楽しかった」

提督「そうか。楽しんで貰えたのならば私も嬉しいよ」

瑞鶴「また、星の話をしてね?」

提督「ああ」







北方棲姫「……………………」






……………………
…………
……



374: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/12(火) 19:51:16.07 ID:KLNRYRIao

救護妖精「再検査の結果を言うよ。とりあえず、今日は絶対安静ね」

提督「…………」

瑞鶴「提督さん、大丈夫?」

提督「私は普段とあまり変わらないと思うのだが……」

金剛「でも、再検査の数字もやっぱり良くないのデスよね?」

救護妖精「常日頃からありえない数字ばかり叩き出してるけど、その平均値が正常と考えても今回は良くないね。とりあえず寝るのが特効薬だよ」

提督「暇で死んでしまいそうだ……」

救護妖精「死にたくなけりゃ動かない事だね」

提督「……大人しくしておく」

響「珍しいね。司令官が素直に引き下がるなんて」

提督「最近になって身体を大事にしなければならないと思ってな」

救護妖精「良い事だねぇ。あたし的にはそのまま一般人と同じくらい検査数値になってくれたら万々歳だよ」

瑞鶴(数字が悪いのって、やっぱり昨日のデートのせいかしら……)

救護妖精「それじゃ、あたしは戻るよ。三人は提督が無理をしないように監視しててねー」フリフリ

ガチャ──パタン

提督「しかし、珍しい面々だな。今日はドクターストップという事で休暇を取ったはずだが、何かあったのか?」

金剛「私は加賀の艦載機メンテナンスの邪魔にならないようにと来まシタ」

響「私は司令官に会いたかったからだよ」

瑞鶴「他の駆逐艦の子達はどうしてるの?」

響「秘密のお勉強をしてる。熱心だと思うよ」

瑞鶴(秘密の勉強……?)

金剛(アー……そういう事デスか)

提督「……なるほどな。お年頃だ」



375: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/12(火) 19:51:52.80 ID:KLNRYRIao

響「で、その勉強の事についてなんだけど、金剛さんや瑞鶴さんにも教えて欲しいなってちょっと思ってる」チラ

瑞鶴「私達が? 知ってる事なら教えれるけど、何が知りたいのかしら」

金剛「……残念デスが、私は経験がありまセン。──瑞鶴ならありそうですケド」チラ

瑞鶴「ええ……? えっと……?」

提督「いや、瑞鶴も経験は無い。私が保証しよう」

響「二人とも無いのかい? という事は加賀さんも?」

提督「ああ。この鎮守府で経験は誰一人として無いはずだ」

金剛「結構意外デス……」

提督「そうでもないだろう」

瑞鶴「あの……本当になんの話なの……?」

響「……思ったより鈍いんだね、瑞鶴さんって」

提督「ああ。それは私も思う」

金剛「ア、アハハ……」

瑞鶴「なんか酷くない!?」

提督「とりあえず、昼に話す事でもないだろう。……夜でも話さんからな?」

響「残念」

瑞鶴「…………?」

提督「話は変わるが、瑞鶴達はこの鎮守府をどう思う?」

金剛「────」ズキッ

金剛(……『瑞鶴達』ですか。以前は『金剛達』だったのに……)

瑞鶴「私は大好きよ。皆が居て、提督さんが居て、楽しいし、優しいし──ここで進水できたのは本当に良かったと思ってるわ」

響「私もだよ。一番は司令官が居る……それが最高に良いと思ってる」

金剛「私は……」

金剛「……………………」

瑞鶴「?」

響「…………」

提督「…………」

金剛「……私は、良い所も悪い所もあると思います」

提督「ふむ」

金剛「悪い所は軒並み提督が関係しているんですけどね?」

瑞鶴(苦笑い……なんだか悲しそう……)

響(こんなに自虐の雰囲気を出してる金剛さんは初めて見たかも)



376: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/12(火) 19:52:24.81 ID:KLNRYRIao

提督「……すまない」

金剛「これも、仕方の無い事です」

金剛「──さて! ティータイムをしようと思いマスが、三人はどんな紅茶が飲みたいデスか?」

提督(未だに金剛は割り切れていない、か)

提督「……ケニアが良いな」

金剛「ケニア……デスか? ありますケド、でもアレは……」

提督「今はそんな気分だ。……頼めるか?」

金剛「テートクがそう言うのであれば……」

響(……瑞鶴さん、ケニアってどんな紅茶なんだい?)ヒソ

瑞鶴(ごめん……私も知らないわ)ヒソ

響(そっか。じゃあ楽しみだね)ヒソ

瑞鶴(そうね。私も少しワクワクしてるわ)ヒソ

…………………………………………。



377: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/12(火) 19:53:19.30 ID:KLNRYRIao

金剛「お待たせしまシタ」カチャ

提督「うむ」

瑞鶴(あれ? この香りって……?)

瑞鶴「提督さん、ケニアってどういう紅茶なの?」

提督「香りは分かる通り優しく甘い。コクが深くて渋みはあるが、それなりに飲みやすい紅茶だ」ズズッ

響「え?」

金剛「……………………」

瑞鶴「甘い香り……?」

提督「……金剛」チラ

金剛「…………」コクッ

提督「やってしまった、か」

金剛「……やっぱりデスか」

響「どういう事か説明してもらうよ、司令官。いつも飲んでるアッサムを別の紅茶と間違えるなんて有り得ない」

金剛「それだけではありません。提督の紅茶には砂糖を入れています。……提督がまともに飲めないくらいの量を」

提督「やられた……。まさか金剛もこんな事をしてくるとは思わなかった」

金剛「私『も』?」

瑞鶴「……金剛さん、実は私も同じ事をしてるの」

金剛「前々から何かおかしいとは思いましたが……これは、全部吐いて貰うしかありませんね?」

響「私もだよ。こればっかりはいくら司令官でも見過ごせない。何があったんだい」

提督「案外、隠し通せないものだな……」

提督「……今から話す事は他言無用だ。気付いた者にしか言わないつもりだから、そう考えてくれ」

金剛「はい」

響「了解」



378: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/12(火) 19:53:57.01 ID:KLNRYRIao

提督「私は今、味覚と嗅覚が無くなっている。視力もかなり落ちてしまった。……ここから工廠の建物がぼやけて見えるくらいにな。聴力と皮膚感覚は特に変わりない。また、体力も非常に低下している。睡眠時間が増えたのはこれが原因だろう」

金剛「ボロボロじゃないですか……なぜ平気な顔をしていられるのですか……?」

提督「……なぜ、か」

響「ポーカーフェイスには私も自信があるけど、流石に司令官と同じ状態になったら取り乱すよ。……泣き喚いて、自棄になって、周りに迷惑を掛けてしまうと思う」

提督「そう考えると、私は壊れているのだろう。……いや、支えがあるからマトモで居られるのかもしれん」

金剛「支え……」チラ

響「なるほどね」チラ

瑞鶴「わ、私!? 私が支えになれてるの!?」

提督「ああ。私の最大の支えであり、そして正気を保たせてくれる大事な存在だ」

金剛「…………」

響(ああ……金剛さんが最近大人しいのはそういう事なんだね)

瑞鶴「わ、私はそんな大層な事なんて……」

金剛「…………」ジッ

瑞鶴「────っ!」ビクッ

瑞鶴「…………」ビクビク

提督「まあ、そういう事だ」

響「……司令官、一つ気になった事を聞いても良いかい」

提督「どうした」

響「その症状、ただの病気なんかじゃないよね。……命が削れてるって意味って解釈して良いのかな」

提督「……察しが良いな。その通りだ」

金剛(やっぱり、ですか……)

提督「三ヶ月もしない内に私は、この世を去る事になる」

響「……現実味が無いね。想像すら出来ないよ」

提督「そうは言っても、救護妖精が匙を投げるレベルだ。どうしようもないのだろう」

金剛「……………………」



379: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/12(火) 19:55:06.44 ID:KLNRYRIao

提督「明日には居なくなってもおかしくない。だから、覚悟だけはしておいてくれ」

瑞鶴「……ねえ、金剛さん、響ちゃん。相談があるの」

金剛「…………?」

響「なんだい?」

瑞鶴「二人は、提督さんの事が好きよね? この鎮守府でも頭一つ抜けてるくらいに」

金剛「……ええ」

響「頭一つかどうかは分からないけど、大好きなのは確かだよ」

瑞鶴「正直に言って欲しいの。……このまま、提督さんが死んじゃったら心残りが多過ぎないかしら」

金剛「瑞鶴、それは……」

響「……心残りは凄く多いと思うよ」

瑞鶴「これから二日間、私の存在を忘れてくれるかしら。……その二日間を私の代わりに、提督さんと一緒に居てくれる?」

響「それは……」

金剛「…………」

響「……正直、魅力的な話だと思う」

金剛「……ダメです。瑞鶴はその手で私達から勝ち取りました、私達に気遣うべきではありません。私達に気遣うくらいならば、提督の傍で……一緒に過ごして欲しいです」

響「…………」

金剛「提督が心に決めた相手は瑞鶴です。それは私達が代わりになる事も、私達がそれに甘んじる事も許されない事です。それに、提督が今一番求めているのは……瑞鶴、貴女のはずですよ」

提督「…………」

金剛「……提督が私の想像と違って、瑞鶴以外にも手を出したいというのであれば話は別ですけどね」チラ

提督「すまないが、私は愛するのならば一人だけだ」

金剛「ええ。知っています。……そんな事、万が一にもある訳がありません」

響「……………………」

金剛「悔しいですけど、ね」

響「……それじゃあ、私は別の方法を取るとするよ」スッ

提督「ほう?」



380: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/12(火) 19:55:32.82 ID:KLNRYRIao

響「瑞鶴さん、司令官の肩に触れるくらい近くで座って貰って良いかな」

瑞鶴「えっと……こう?」ソッ

響「脚もくっつけてね」

瑞鶴「う、うん」

響「それじゃあ二人共、少し失礼するね」スッ

提督「……なるほど。そういう事か」

瑞鶴「あ……これって……」

響「うん。心地良いね、これは」

金剛(……まるで、二人の子供みたいですね)

響「おとーさん」

提督「!」

響「おかーさん」

瑞鶴「…………!」

金剛(……………………)ズキッ

響「そして、おねーちゃん」

金剛「──え?」

響「傍に来て」

金剛「……えっと、響の前で良いのですかね?」ソッ

響「ん。……少し私は大きいかもしれないけど、これで家族だね」

提督「…………」ナデナデ

瑞鶴「ごめん響ちゃん。もう一回、私を呼んで?」

響「おかーさん」

瑞鶴「……ダメ。我慢できない。可愛い」ギュゥ

金剛「二人が夫婦だとしたら、私はどういう立ち位置なのデスか?」

響「おにーちゃんが大好きな妹じゃないかな。司令か……おとーさんの影響も受けてるし」

金剛「なるほど」クスッ

金剛「つまり、私は大好きな兄さんを奪っていった瑞鶴を嫌っているという事になるのデスかね?」ジッ

瑞鶴「ぅええっ!? そ、そんな……」

金剛「ジョークですヨ」クスクス

瑞鶴「も……もー! 金剛さんったら!」

金剛「ノー! さんは無しデス! 私がテートクの妹なら、瑞鶴は私の姉になりマース!」

瑞鶴「ごめん。それだけは想像でも難しいわ……」

提督「そうだな。私の妹が金剛だとしても、瑞鶴は金剛の妹という方がしっくりくる」

響「うん。私もそう思うよ」

金剛「三対一デース……。丁字戦不利でもここまで差は付けられないデス……」

瑞鶴「だって……ねえ?」

提督「うむ」ナデナデ

響(……子供というのも悪くないものだね)ニヤ

……………………
…………
……



389: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/13(水) 22:49:07.73 ID:t4XRyxxeo

瑞鶴「ダメ」

提督「だが……」

瑞鶴「絶対ダメ。今日は大人しくしないと危ないんだからね」

提督「……残念だ」

瑞鶴「今日もすぐにお仕事を終わらせて一緒に寝たからまさかとは思ったけど……今朝に救護妖精さんに絶対安静って言われてたでしょ?」

提督「時間が惜しい」

瑞鶴「それで今にでも死んじゃったら元も子も無いじゃないの。とにかく、絶対にダメだからね」

提督「…………」

瑞鶴「でも……提督さん、星の話はして貰って良い? 私、聞きたいの」

提督「ふむ。構わない……が、条件がある」

瑞鶴「条件?」

提督「私の膝に座って髪のリボンを解いてくれ」

瑞鶴「……それ、私からして欲しいって言いたいくらいなんだけど?」シュル

瑞鶴「よいしょ。お願いね?」ストン

提督「……前にも思ったが、向きが逆じゃないか?」

瑞鶴「うん。知ってる。だって、こっちの方が提督さんの顔が見れるんだもん」ニッコリ

提督「……反則だ」ギュゥ

瑞鶴「んっ……」ピクン

提督「髪を梳く前に、もう少しこうさせてくれ」

瑞鶴「──うん。私も、少しの間だけこうしていたい」ソッ

提督「ああ……心が洗われるようだ……」ナデナデ

瑞鶴「私も、すっごく落ち着く……」

提督「その割には心臓が早鐘を打っているようだが?」

瑞鶴「ドキドキしてるのは本当。だけど、安心してるのも本当よ」

提督「そうか。それは良かった」ナデナデ

瑞鶴「ん……幸せ……」

提督「私もだよ」ナデナデ

瑞鶴「…………」スリスリ



390: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/13(水) 22:49:40.25 ID:t4XRyxxeo

提督「さて……そろそろ髪を梳くとしようか」スッ

瑞鶴「うん! お願いね!」

提督「そして、星の話だったな。瑞鶴は星をどこまで知っている?」クシクシ

瑞鶴「星は何も知らないわね……。せいぜい、北極星の見つけ方と天の川って言葉くらいかしら」

提督「ふむ。ではその天の川について話そう。瑞鶴は天の川を見た事がないんだな?」クシクシ

瑞鶴「うん。どんなのかも知らないわ」

提督「天の川は、実は一年中見る事が出来るんだ」クシクシ

瑞鶴「そうなの? 織姫と彦星のお話で、七夕の時にしか見れないと思ってた……」

提督「夜、明かりが無くて空気の澄んだ場所ならばモヤのような星の帯が見える事がある。それが天の川なんだ」クシクシ

瑞鶴「……あれ。それって昨日見たような……。雲っぽく見えるやつ?」

提督「ああ、それだ。ちなみに織姫と彦星の伝説も、実はお互いが浮かれてしまったのが原因で七月七日にしか会えなくなってしまっただけだったりする」クシクシ

瑞鶴「い、意外と俗的だったのね」

提督「神話や伝説なんてそんなものだ。戦争を始めた理由が浮気からの夫婦喧嘩なんてものもあるぞ」クシクシ

瑞鶴「えええ……」

提督「さて話を戻すが、実はその天の川が星の影を作る事が出来る唯一の存在なんだ」クシクシ

瑞鶴「え……そうなの?」

提督「ああ。だが、天の川の距離までは流石に知らない。もしかしたら北極星と同じくらい近いかも知れんぞ」クシクシ

瑞鶴「そっかぁ……じゃあ、本当に四百年の影かもしれないのよね?」

提督「ああ」クシクシ

提督(銀河の中心がそんな近くにある訳がないが、黙っておこう)



391: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/13(水) 22:50:23.69 ID:t4XRyxxeo

提督「そして、天の川が一番輝く時期は夏だ。それ故に七夕伝説がある」クシクシ

瑞鶴「へぇ……季節によって見えるかどうか違うんだ?」

提督「ああ。空気が綺麗であれば綺麗なほど見えやすくもなるが、何よりも天の川が頭上に来ると一番見えるようになる。空気というものは、宇宙で考えれば光を遮るものなんだよ」クシクシ

瑞鶴「えっと、角度が直角の方が、通る空気の厚さが薄いから見えやすくなるって事?」

提督「そういう事だ」クシクシ

瑞鶴「宇宙って本当に不思議ね……空気が光を遮るだなんて……」

提督「密度の違いと言えば一言だが、そこまでいくと星とは関係が無くなるから止めておこう」クシクシ

瑞鶴「うん……。流石にそろそろ分かんなくなる……」

提督「七夕、か……。思えば、あと一ヶ月もすれば七月か」クシクシ

瑞鶴「そうよねぇ……これから暑くなるのよね……。やだなぁ」

提督「瑞鶴は暑いのが嫌いか?」クシクシ

瑞鶴「前は好き嫌いなんてなかったけど、今は嫌い」

提督「ほう」クシクシ

瑞鶴「だって、こうやって肌をくっつけると暑くて離れたくなるなんてヤダ。まあ、提督さんが嫌がらない限りくっついちゃうけど」

提督「…………」ピタッ

瑞鶴「? どうしたの?」

提督「……いや、素直に可愛いと思っただけだ」クシクシ

瑞鶴「ぅ……い、言わないでよね? 思い返したら恥ずかしいじゃないの……」

提督「顔が真っ赤だ」クシクシ

瑞鶴「イヂワル……」

提督「ああ。私はいぢわるだぞ」クシクシ

瑞鶴「知ってるわ。最近までこんなにイヂワルなのは知らなかったけど……」

提督「幻滅したか?」クシクシ

瑞鶴「……分かってる癖に」ギュ

提督「本当、私は幸せ者だ……」ギュゥ

瑞鶴「私も幸せ……」スリスリ

……………………
…………
……



392: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/13(水) 22:51:06.90 ID:t4XRyxxeo

瑞鶴「……私ってやっぱり甘いんだろうなぁ」

提督「どうした、いきなり」

瑞鶴「いくら今日の調子が良かったからって、こうしてまた提督さんと海上デートしてるんだもん。甘いわ」

提督「私がその甘さに付け込んでいるだけだよ」

瑞鶴「そりゃあ……あんな嬉しそうな顔でデートに行こうなんて言われたら頷いちゃうわよ……。むしろ、ほとんど条件反射みたいに頷いちゃった自分を叩きたいわ」

提督「そんなに嬉しそうな顔をしていたのか」

瑞鶴「おまけに自覚していないみたいだし……。だからあんな珍しい笑顔だったのね……」

提督「まあ、そう言ってくれるな。楽しい事や嬉しい事は享受したいものだろう?」

瑞鶴「そ、そうだけど……」

提督「さて、その話は置いておいて……瑞鶴、星は見えるか?」

瑞鶴「星?」

瑞鶴(……あ、提督さんって視力が落ちてるから分かんないんだ…………)

瑞鶴「んっと、今日は少し曇ってて薄っすらと見えるくらいよ」

提督「そうか……。残念だ」

瑞鶴「でも、月は見えるわね。下半分が雲に隠れちゃってるけど、これも綺麗よ」

提督「ふむ。半分の月、か……」

瑞鶴「半分の月に何かあるの?」

提督「少しばかり思い入れがあるな。いや、最近になって心を動かされた物語というべきか」

瑞鶴「?」

提督「気にしないでくれ。──それよりも、少しマズイかもしれん」

瑞鶴「え? ────っ!!」

北方棲姫「…………」

南方棲戦姫「────」

ヲ級「…………」



393: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/13(水) 22:52:22.53 ID:t4XRyxxeo

提督(あの小柄な深海棲艦は見た事も聞いた事もない容姿だ……新種の深海棲艦か……?)

提督「絶体絶命だな……」

瑞鶴(…………あれ?)

提督(……瑞鶴が警戒を緩めた? 何かあるのか?)

瑞鶴「……………………えっと」

北方棲姫「…………」クイクイ

南方棲戦姫「…………」コクン

提督(襲ってくる気配が無い……? どういう事だ)

南方棲戦姫「聞きたい事がある」

提督「……なんだ?」

南方棲戦姫「お前達は何者だ」

提督「ただの人間と艦娘だ」

南方棲戦姫「隠さなくても分かる。そっちの艦娘の姿をした者は何かがおかしい。私達と同じ雰囲気もあるが、どこか違う。二つほど気配が感じられる。お前も海の上に立っている事から、ただの人間ではあるまい」

提督「……観察眼に優れているな。察しの通りで良い。だが、私はただの人間だ。人類の技術によって海の上に立っている」

ヲ級「…………」ジー

瑞鶴「…………」ジー

提督「今度は私の質問だ。お前達は深海棲艦だろう。どうして襲わない」

南方棲戦姫「様子のおかしい二人を発見したと、この子から聞いてやってきた。……まさかここまで変な二人だとは思わなかったがな」

提督「ほう」チラ

北方棲姫「…………!」ビクッ

提督「……深海棲艦だというのに何か怯えているようだが」

南方棲戦姫「正直に言うならば、私もお前に手を出したくない。……そうすると、私も道連れにされそうな雰囲気がある。それはこの子も感じているのだろう」

提督「よく分かっているな。もし私達に手を出せば──その首を貰うつもりだ」

南方棲戦姫「手は出さないから安心しろ」

提督「私達の立場は敵同士だ。その言葉を鵜呑みに出来る訳がなかろう」

南方棲戦姫「あ、確かに……。どうしよう……」

提督「……………………」

提督(……こいつ、まさか)



394: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/13(水) 22:52:53.35 ID:t4XRyxxeo

ヲ級「…………?」ジー

ヲ級「────!!」ビクンッ

ヲ級「!」ピシッ

提督「……なぜ私に敬礼をした」

南方棲戦姫「ふむ……?」ジッ

提督「…………」

南方棲戦姫「…………」ジー

北方棲姫「…………?」

南方棲戦姫「!!?」ビックゥ

南方棲戦姫「っ!」ピシッ

提督「……なぜ敬礼をするんだ」

南方棲戦姫「はっ!? つ、つい癖で……」

提督(やっぱり……こいつアホの子か……?)

北方棲姫「……どうしたの?」

南方棲戦姫「いや……私達の提督と似ていたのでな……」

北方棲姫「そうなの?」

南方棲戦姫「ああ。……深海棲艦となった今でも、この癖は抜けていないようだ」

提督(こいつらも元は艦娘なのか……。という事は、深海棲艦は全て──)

ヲ級「♪」ギュー

提督「……は?」

瑞鶴「え……えぇ……?」

南方棲戦姫「…………」

北方棲姫「…………」

ヲ級「♪」スリスリ

提督「おい。これはどういう事だ。説明をしろ」

南方棲戦姫「……え、えっと…………たぶん、貴方が私達の提督に似ているから、かと……」

提督(そんな事がありえるのか……?)

北方棲姫「……気持ち良いの?」

ヲ級「♪」コクコク

北方棲姫「じゃあ、あたしも……」ソッ

瑞鶴「なぁ!?」

提督「……………………」

北方棲姫「ん……」スリ

提督(……とりあえず、頭を撫でておくか?)ナデナデ

ヲ級・北方棲姫「!」

ヲ級「♪」ギュー

北方棲姫「……良いかも」ギュゥ

瑞鶴「うー……!」ジー



395: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/13(水) 22:53:20.64 ID:t4XRyxxeo

提督「……すまん。ここまでにしてくれるか」

ヲ級「!」コクン

北方棲姫「ん」スッ

瑞鶴「っ!」ギュゥ

提督「おっと」ソッ

瑞鶴「……ヤだった」

提督「すまん……」ナデナデ

瑞鶴「ん……許す」スリスリ

南方棲戦姫「……様子を確認して、敵だったら倒そうかと思っていたが……まさかこうなるとは思わなかった」

提督「正直に言うと私も訳が分からん」

南方棲戦姫「ですよね……」

提督「南方棲戦姫……いや、長いな。戦姫、この状況をどうすれば収拾できると思う」

戦姫「無茶を言いますね……。私にはどうしようも出来ないと思うのですが……」

瑞鶴(あれ……口調が敬語になってる)

提督「……とりあえず、今日の所は帰るか」

戦姫「それが良いかと……」

提督「先に言っておくが、私達は毎日ここに足を運べるという訳ではない。それだけは頭に入れておいてくれ」

戦姫「分かりました。──また、いつか」

ヲ級「~♪」フリフリ

北方棲姫「…………」クイ

提督「うん?」

北方棲姫「……また、頭撫でてね」

提督「…………」チラ

瑞鶴「…………」ジー

提督「……許しが出たらな」

北方棲姫「──うん!」ニパッ

…………………………………………。

提督「……あの深海棲艦は何だったんだろうな?」

瑞鶴「分かんない……。ただ、あのヲ級とすっごく髪の長い人はなんだか……」

提督「なんだか?」

瑞鶴「……初対面じゃない、ような?」

提督「前にも戦った事があったか?」

瑞鶴「ううん。無いわ。もっと前……ずっと、ずーっと前に会ったような……そんな気がするの」

提督「……私には分からないな」

瑞鶴「私もよく分かんない……なんだったんだろうね」

提督「まあ……また会った時にでも分かるかもしれん」

瑞鶴「うん。……なんだか、また会いたいな」

……………………
…………
……



410: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/14(木) 23:22:25.66 ID:tdHb1S6Qo

提督「これで今日の書類処理は終わりだな」パサッ

瑞鶴「ん。お疲れ様」

提督「…………」ジッ

瑞鶴「? どうしたの? 私の顔に何か付いてる?」ペタペタ

提督「いや、何も付いていない。……そうだな。少し、機密文章を作る」ペラッ

瑞鶴「総司令部に送る書類?」

提督「ああ。覗くなよ? それなりに機密性の高いものだからな」サラサラ

瑞鶴「はーい。……それにしても、最近は金剛さんも加賀さんも執務に手を出してこないわね」

提督「……気付いていないのは本人だけか」サラサラ

瑞鶴「?」

提督「今、この鎮守府では『提督と瑞鶴は結ばれている』という噂で持ちきりだ」サラサラ

瑞鶴「え!? な、なんで皆に……!?」

提督「……まあ、分かるだろうな。四六時中一緒に居る上、瑞鶴を出撃させていないのだからな」パサッ

瑞鶴「ああ……だから最近、駆逐艦の子達に提督さんと何かあったのかって聞かれてるのね……」

提督(……こういうのには鈍いな。本当に)

提督「だから金剛も加賀もなるべく気遣っているんだろう」

瑞鶴「……嬉しいような恥ずかしいような」

提督「さて……私は少し救護妖精の元へ行ってくる。少しここで待っていてくれないか?」カチャン

瑞鶴「えっと、私が付いていくのはあんまり良くない事?」

提督「出来れば聞かれたくない事ではある。どうしても聞きたいのならば付いてきてくれるか」

瑞鶴「んー……。じゃあ、待ってるわね。でも、ちゃんと戻ってきてよ?」

提督「ああ。勿論だ」

…………………………………………。



411: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/14(木) 23:23:18.34 ID:tdHb1S6Qo

救護妖精「──本気で言ってるの?」

提督「無論。本気だ」

救護妖精「…………」

提督「そんなに悲しそうな顔をしてくれるな。……私にはもう、時間が無いんだ」

救護妖精「…………」

提督「このまま放っておくよりも、私自らがやる方が良い。そうだろう?」

救護妖精「……確かにそうだけどさ」

提督「……何か他に理由があるようだな」

救護妖精「あるよ。……けど、これは言えない」

提督「私相手でもか?」

救護妖精「……うん。これだけは、誰にも言う訳にはいかないから」

提督「そうか……」

救護妖精「ただ、これだけは言えるよ。……提督が進もうとしている道は、茨の道だよ。それだけは絶対に忘れないで」

提督「……ああ。忘れないでおく」

救護妖精「あと……寿命も縮むかもしれないからお勧めはしないよ」

提督「寿命が縮む?」

救護妖精「これ以上は言えない。……あと、提督の事だから総司令部には送らない気でしょ?」

提督「ああ。どうせ命が無くなる身だ。最後くらい好き勝手させて貰う」

救護妖精「……後悔するよ」

提督「生きていれば可能性などいくらでもある。あの総司令部に任せるなんて事は出来んよ」

救護妖精「……忠告はしたからね」

提督「後悔はしても、私はその道を選ぼう」

救護妖精「…………」

救護妖精(……本当、バカなんだから)

……………………
…………
……



412: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/14(木) 23:24:08.75 ID:tdHb1S6Qo

金剛「テートクと工廠に赴くだなんて久し振りデスね」

提督「……そうだな。以前までは金剛と頻繁にここへ足を運んでいたな」

金剛「そうでシタね……。ケド、瑞鶴でなくても良いのデスか?」

提督「ああ。金剛でないといけない事だ」

金剛「私でないと、出来ない事デスか?」

提督「そうだ。今回ばかりは代えなど利かない」

開発妖精「……準備、出来たよ」

建造妖精「……………………」

提督「ご苦労。少し待っていてくれ」

金剛(…………? 暗い顔をしていますケド、どうかしたのでショウか)

提督「……金剛」

金剛「?」

提督「お前とはこの鎮守府で二番目に長い付き合いだったな」

金剛「……提督?」

提督「初めに電と出撃した時の事を、私は今でも憶えている。その後、秘書艦としてずっと私のサポートをしてくれた事も、私の為に尽くしてくれた事も、私は忘れない」

金剛「まさ、か……」















提督「──金剛型一番艦、金剛に言い渡す。現時刻をもって、その役を完了。それに伴い……解体する」










413: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/14(木) 23:24:35.51 ID:tdHb1S6Qo

金剛「待って下さい!!」

提督「意見は受け付けん。これは命令だ」

金剛「なら、理由を聞かせて下さい! 私が至らなかった理由を、不要になった理由を教えて下さい!!」

提督「不要となった訳ではない。ましてや金剛が不出来だなど一切思ってもいない」

金剛「ならばナゼですか!? どうして私は解体されるのですか!?」

提督「……金剛はもう知っているだろう。私はもう、長くないんだ」

金剛「それがどうしたというのですか!!」

提督「だから、だ。私がこの世を去った後、お前達は私無しで生きていかなければいけない」

金剛「あ……」

提督「聡いお前ならば今ので分かっただろう。……通常、解体を施した艦娘は総司令部へ訪れなければならない。だが、解体を施した艦娘は一週間の時間を越えて提督へ連絡を取ってきた例は一度も無い。それが何を意味するのか、想像するのは容易い」

金剛「……………………」

提督「名前を変え、姿を変え、そして生きてくれ。……それが、死にゆく私の最後の望みだ」

金剛「……無意味かもしれません」

提督「可能性がある」

金剛「私は……提督が居なければ生きていけません!」

提督「その傷は時間で治せるものだ」

金剛「私も一緒について逝きます!!」

提督「その席は、瑞鶴が座っている」

金剛「────────」

提督「……正直に言えば、そろそろ限界が近い。自分の身体だ。死が隣に立っているのは分かっている」

金剛「…………」

提督「ソレはすぐ近くに居る。今の私ならば、多少の無茶をするだけでソレとの距離を一気に縮める事になるだろう」

提督「逃げる事は叶わん。全ての生き物に定められた必然だ。離れようにもヤツは常に私へ纏わり付き、隙あらばこの身から魂を刈り取っていく。……どうしようもない事なんだ。既に、目の前に居るお前の顔すらハッキリと見えない。こうして立っているだけでも……実は倒れてしまいそうな程だ」

金剛「……提督」

提督「どうした」

金剛「……………………」

提督「…………」

金剛「……いえ……なんでもありません」

提督「そうか……」

金剛「……私の、この心の傷は……いつか癒えるのですか?」

提督「時間が癒してくれるだろう。乗り越えられるかどうかは別として、いつかは私は記憶となり、そして過去になり、色褪せていく。……金剛の未来には、私はもう居ないんだ」

金剛「……………………」

提督「……………………」



414: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/14(木) 23:25:09.73 ID:tdHb1S6Qo

金剛「いつも……」

提督「…………」

金剛「いつも、私の隣には提督が居ました……」

提督「……ああ」

金剛「執務でも、建造でも、開発でも、出撃でも……そして、ベッドの中でさえも……提督が隣に居た時がありました」

提督「…………」

金剛「私はそれが嬉しくて、とても幸せで……永遠に続くものだと信じて疑っていませんでした……。考えてみれば、いつかは別れてしまうものなのは当たり前です」

提督「…………」

金剛「ですが……いくらなんでも早過ぎます!! 私はまだ満足していません! 提督や、他の皆ともまだまだ過ごしたい!! 過ごしたかった!!」

提督「……………………」

金剛「なぜですか!? 私達はまだ一つの四季すら巡っていません! なぜこんなに早く終わりが来てしまったのですか!?」

提督「……それが、私の運命だったからだ」

金剛「酷いです!! あんまりです!! 提督が何をしたというのですか!? 神はなぜ提督を殺そうとするのですか!?」

提督「そればかりは私にも分からない……」

金剛「私の命が、提督に渡せられるのなら……どんなに良い事か……」

提督「そんな事をして、残された私はどうなる。私のせいで死んでしまったお前に、なんて顔を向ければ良い」

金剛「……その言葉、そっくりそのまま……お返しします…………。私は、どうしたら良いのですか……? 提督に命を救われた私は……提督から沢山の大切なモノを頂いた私は……何をすれば提督へ恩返しが出来るのですか……?」

提督「……生きろ。生きて、私の分まで生きて、そして笑ってくれ。それが私への最大の恩返しだ」

金剛「そんな事で……」

提督「金剛。お前が私の事を想ってくれているのは知っている。この鎮守府で一番と言っても過言ではない。……ならば、私の最後の望みを叶えてくれ」

金剛「望み……?」

提督「忘れろとは言わない。だが、どうか幸せな生活を送ってくれ。私が得られなかった幸せを、悲しみを、怒りを、喜びを……私が浮かべる事のできなかった笑顔で、暮らしていってくれ」

金剛「…………それが、提督の望みですか……?」

提督「そうだ。それが、私の望みだ」

金剛「……分かりました」

金剛「お任せ、下さい……。私は……必ずや提督の望みを叶えてみせます……。そうして、提督を羨ましがらせてみせます。早く亡くなられてしまった事を後悔だってさせてみせます」

金剛「──ヴァルハラから、見ていて下さい」

提督「ああ……。約束だ」

金剛「はい……。約束です」

提督「……開発妖精、建造妖精──」

提督「──丁寧に解体してやってくれ。金剛の身を、傷一つ付けず……」

…………………………………………。



415: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/14(木) 23:25:50.12 ID:tdHb1S6Qo

ガチャ──パタン

瑞鶴「提督さん、おかえりなさい」ソッ

提督「ただいま。……ふぅ」カチャン

瑞鶴「なんだか疲れてるみたいだけど、大丈夫?」

提督「ああ、問題ない」

瑞鶴「汗掻いてるみたいだけど……まさか運動でもしてたんじゃないでしょうね?」

提督「流石にそれは出来んよ。体力がめっきりと落ちてしまったからだろう。ただ歩くだけでも疲れてしまう」

瑞鶴「お風呂でも入る? お湯、張っちゃう?」

提督「そうだな……頼んでも良いか?」

瑞鶴「うん。それじゃあ待っててね」

提督「ああ」

提督(しかし……たかが十三回の往復でここまで疲れてしまうようになるとは……。本当に体力が無くなってしまっているな……)

提督(……あとどれだけ、私は生きられるのだろうか)

瑞鶴「提督さん、湯溜めしてるからね」

提督「助かる」

瑞鶴「それにしても……提督さん専用のお風呂場ってもっと広いのかと思ってた。二畳くらいしかないんだ?」

提督「それだけあれば充分だろう。豪勢にする理由も無い」

瑞鶴「ふぅん……? そういうものなんだ?」

提督「むしろ、個人で使えるだけありがたいものだ」

瑞鶴「確かにそれは良い事かも。皆で入るのも悪くないけどね」

提督「……ふむ。皆で入る、か」

瑞鶴「うん。楽しいわよ」

提督「今までそういう経験が無いからよく分からんな」

瑞鶴「それはそれで珍しいと思うわ……。それじゃあ、私もお風呂に入ってくるわね」

提督「ああ、待て瑞鶴」

瑞鶴「?」

提督「一つ、提案がある」

…………………………………………。



416: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/14(木) 23:26:38.72 ID:tdHb1S6Qo

提督「ああ、やはり湯に浸かるのは良いものだ……」

瑞鶴「あの……提督さん……」チャポン

提督「なんだ?」

瑞鶴「……見えてないわよね?」

提督「瑞鶴のうなじと華奢な肩なら見えている」

瑞鶴「そ、そういう事も言わないの!」

提督「恥ずかしいか」

瑞鶴「当たり前じゃないの……! タオルも何も無しなのよ……?」

瑞鶴「そんな状態で……提督さんに背中向けてるし……。狭いから、どうしたって身体が触れちゃうし……」

提督「私は羞恥よりも喜びの方が上回っているな」

瑞鶴「……女の子と一緒にお風呂に入っているから?」

提督「初めて一緒に湯船に浸かった相手が瑞鶴だからだ」

瑞鶴「…………バカ」

提督「何を言っているんだ。初めてというものは一生を添い遂げたいと思う相手と行いたいだけだ」

瑞鶴「もう……またそうやって恥ずかしい事を言うー……」

提督「素直になっているだけだ」

瑞鶴「本当……提督さんってそうやって私を困らせるんだから……」

提督「嫌だったら言ってくれ」

瑞鶴「……ヤじゃない」

提督「そうか。良かった」

瑞鶴「うー……。恥ずかしいけど嬉しいって思ってる自分を呪いたい……」

提督「しかし……一人で入るのとは非常に違うな」

瑞鶴「そう、なの?」

提督「ああ。一人で入るのはただの作業だが、こうやって瑞鶴と入るのは癒されるよ」

瑞鶴「……ありがと」

提督「礼を言うのは私の方だ。風呂がこんなにも癒されるものだとは知らなかった。──ありがとう、瑞鶴」

瑞鶴「ん……」

提督「それに……」ソッ

瑞鶴「きゃっ──!?」ピクン

提督「いつも以上に瑞鶴が近くに居る気がする」ギュゥ

瑞鶴「ああ、あの、あ、のあの……! てて提督さん!? 腕が、お腹に……!!」

提督「嫌だったら言ってくれ」



417: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/14(木) 23:27:33.82 ID:tdHb1S6Qo

瑞鶴「あ、う…………ズルイ……」

提督「ふむ?」

瑞鶴「……ズルイ……恥ずかしい……えっち……バカ」

提督「散々だな……」

瑞鶴「でも……ヤじゃない。私も、裸で抱き締められるの……良いって思っちゃってる……」

提督「確かに、一切の抵抗をしていないな」

瑞鶴「……はぁ。私も、開き直った方が良いみたいね」

提督「ほう」

瑞鶴「んっ……」ソッ

提督「ふむ。身体を預けてきたか」

瑞鶴「……提督さんの身体って、硬いわね。なんだかゴツゴツしてる」

提督「男だからな。それとは対照的に、瑞鶴の肌は柔らかい。触っていて心地良い」

瑞鶴「そう言うのはちょっと……なんだかエッチっぽい」

提督「傍から見ればそうだろう。強ち間違ってはおらんよ」

瑞鶴「確かにそうだけど……」

提督「ほら、肩肘張らずに力を抜いておけ。それでは疲れるだけだぞ」

瑞鶴「う、うん……」

瑞鶴(でも、やっぱり恥ずかしいなぁ……。それ以上に嬉しくて幸せだけど、さ……)モジッ

瑞鶴(それにしても……手、あったかいなぁ……。大きくて、優しくて、包まれてるみたいな感じ……)ソッ

提督「うん?」

瑞鶴「あ……手、触っちゃダメだった?」

提督「いや、構わない。少し気になっただけだ」

瑞鶴「そ、そっか」

瑞鶴(提督さんって軍人で考えたら華奢な方だと思うけど、ガッチリしてるわよね。……ああ、だから私、こんなにドキドキしてるのかな。全身を包まれてるみたいで、提督さんの腕にスッポリ入っちゃって……いつでも好きにされちゃう、のよね……これって?)

瑞鶴(……提督さんは、そんな事しないでしょうけどね)

瑞鶴「はぁ……ぅ……」

瑞鶴(段々だけど……私も心地良くなってきた。気持ち良くて、頭がポーってなってきて……心の中から解されてるみたい……)

瑞鶴「ずっと、続けば良いなぁ……」

提督「……ああ、そうだな」

瑞鶴「……ごめん。心の声がつい…………」

提督「という事は、今のは本音だな」

瑞鶴「…………うん。本音」

提督「そう思ってくれるのなら、私も嬉しいよ」

瑞鶴(ああ……本当……)

瑞鶴(この時間が……永遠に続いてくれたら良いのになぁ……)

…………………………………………。



418: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/14(木) 23:28:03.24 ID:tdHb1S6Qo

提督「良い湯だった」ホカホカ

瑞鶴「ん……」ホカホカ

提督「さて……時間も時間だ。今日は大人しく寝るとしよう」

瑞鶴「うん……」トコトコ

パチン──

瑞鶴「……………………」トコトコ

提督「……元気が無いな。どうした」

瑞鶴「…………えっと」

提督「うん?」

瑞鶴「私……提督さんと一緒にお風呂、入ったんだなぁって……」

提督「非常に心地良かった。また機会があれば一緒に入りたいものだ」

瑞鶴「ぅ……ん……うん……」

提督(……一緒に入るべきではなかったかな、これは)

瑞鶴「あの、ね? 提督さん」

提督「どうした」

瑞鶴「……本当に、ただお湯に浸かってただけだったのに……あんなに気持ち良かったの、私……初めて」

提督「…………」

瑞鶴「癖、なっちゃいそう……」

提督「……ほう」

瑞鶴「そ、それだけ! も、もう寝ましょっ!」

提督「くくっ……そうだな。寝よう」

瑞鶴「うー……どうして笑うのよー……」

提督「なに。可愛かったからつい、な」

瑞鶴「もう……」モゾモゾ

瑞鶴「ん……」ピトッ

提督「…………」ギュゥ

瑞鶴「……やっぱり、提督さんに触られるの、好き……私」ギュッ

提督「私もだ」

瑞鶴「ふふっ……おんなじね。良かった」スリスリ

提督「…………」ナデナデ

瑞鶴「おやすみ、提督さん──」

提督「ああ、おやすみ瑞鶴──」

……………………
…………
……



429: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/15(金) 19:37:06.04 ID:eE8y8d1mo

天龍「さて、飯だ飯だ!」

龍田「はいはい。天龍ちゃん、ご飯は逃げないわよ~。あら?」

島風「ふふーん。残念でした! 入り口に一番最初に着いたのは私だよ!」

天龍「本当にお前は来るのが早いな……いつの間に来てるんだよ……」ワシワシ

島風「えっへへー」

川内「今日の献立は何かなー?」

神通「メインは肉じゃがらしいですよ」

那珂「やったー! 間宮さんの肉じゃがって美味しいよね!」

加賀「ええ。気分がとても高揚します」

不知火「じゃがいも……」

雷「そういえば、不知火はじゃがいもが苦手なんだったっけ?」

不知火「ええ……口に出来ないという訳ではないけど、あのパサつく感覚が少し……」

電「好き嫌いはメッ──なのです」

暁「肉じゃが美味しいのに……」

響「色々な物を食べれないと大きくなれないって話だよ。……色々とね」

不知火「頑張ります」

金剛「テートク、お一人みたいデスが……大丈夫デスか?」

提督「ああ。問題ない」カチャン

加賀「そういえば、瑞鶴はどうしたの? 見当たらないのだけど」

提督「ああ、瑞鶴ならば──」

島風「いっちばーん! ──って、あれ?」

瑞鶴「…………」ドキドキ

川内「あれー? 瑞鶴さん、もう来てたんだ?」

響「早いね。どうしたんだい?」

瑞鶴「う、うん。ちょっとね?」

提督「…………」ニヤ

金剛(あ、なるほど。そういう事デスか)



430: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/15(金) 20:01:27.58 ID:eE8y8d1mo

間宮「はーい。皆さん、ご飯の用意は出来ていますから取りに来て下さいねー」

島風「はーい!」

天龍「ダメだ。涎が出てきた」

龍田「もう少しの辛抱よ~」

加賀「肉じゃが……とても良い匂いです」

不知火「大きく……大きく……」

響「ハラショー。こいつはとても食欲がそそられる」

暁「あ、響待ちなさい!」

雷「ほら、電も行くわよ!」

電「わわっ。ひ、引っ張ると危ないのです」

川内「皆、お腹がぺこぺこなんだね」

神通「そういう川内も、ご飯の時間を待っていましたよね?」

那珂「ねー!」

川内「だってお腹が減ったらご飯は食べたいでしょ?」

金剛(瑞鶴)ヒソ

瑞鶴「ん?」

金剛(きっと、良い出来デスよ。とてもグッドな匂いデース)ヒソヒソ

瑞鶴「!?」ビクンッ

瑞鶴「……気付いてたのね」

金剛「イエース! テートクの顔を見れば分かるネ」

提督「……そんなに表情に出ていたか」

金剛「ニヤニヤしていたですヨー」

提督「……………………」

提督「……よし。全員に行き届いたな」フイッ

瑞鶴(あ、恥ずかしくなったんだ)

金剛「…………」クスッ

提督「では、頂こう──」

全員「──いただきます!」

天龍「んん、お?」モグモグ

間宮「如何ですか?」

川内「んー……? 味付け、変えたのかな?」モグモグ

瑞鶴「…………!」ビクン

不知火「珍しく普通ですね。普通の美味しさです」モキュモキュ

瑞鶴(普通、かぁ……)

提督「…………」モグモグ

提督「ふむ、なるほど。普通だ」



431: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/15(金) 20:21:24.31 ID:eE8y8d1mo

金剛「えと、そうデスか? 美味しいデスよ?」ムグムグ

加賀「おかわりをお願いします」スッ

天龍「はやっ!?」

島風「んー、私は前の味付けの方が好きかな?」

響「私はこの味付けもなかなか良いと思うよ」

雷「味がハッキリしているわね!」

神通「複雑な味ではない、といった所でしょうか?」

那珂(……何かが違うっては分かるけど、言われるまで違いが分かんなかった)

龍田「あらぁ~。充分だと思うわよ~?」

電「なのです」

瑞鶴「ぁぅ……」

間宮「♪」ニコニコ

提督「…………」ポン

瑞鶴「…………?」

提督「確か、初めてだったよな?」

瑞鶴「え、と……うん」

提督「初めてでこの出来ならば、充分だろう。いきなり美味い料理を作れる人など、そうそう居ない」

瑞鶴「でも……」

提督「ほら、見てみろ」

天龍「とりあえず、おかわりだ!」

島風「次は私だからね!」

川内「その次は私ー!」

加賀「おかわりです」

天龍「だから加賀は速過ぎないか!?」

加賀「肉じゃがは大好物です。まだまだ食べられます」

間宮「はいはい、順番ですよー」

瑞鶴「あ……」

提督「不味かったらおかわりなど出ない。初めての料理で『普通』だというのは、高評価の証だ」

瑞鶴「──うん!」

金剛「瑞鶴ー」

瑞鶴「うん? なぁに、金剛さん?」

金剛「私、この味が気に入ったネー」ニコニコ

瑞鶴「──あはっ。ありがとう」

提督「…………」モグモグ

提督(……ふむ)

瑞鶴(…………あれ? 今気付いたけど、なんだか皆の様子がおかしいような……)

瑞鶴(……これって、艤装の取り付けとか……出来なくなってる? なんで……?)

…………………………………………。



432: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/15(金) 20:42:37.94 ID:eE8y8d1mo

──パタン

提督「ふぅ……今日の夕飯は満足だった」

瑞鶴「え?」

提督「満足したと言ったんだ」

瑞鶴「え、でも……提督さんって味覚……」

提督「味覚が無くとも美味いと思えるとは驚いた」

瑞鶴「いやぁ……流石にそれはないでしょ」

提督「では一つ言い当ててみよう。瑞鶴、お前は今日の料理を作る時、私が食べる時の事を思い浮かべていただろう」

瑞鶴「ぅえ!? な、なななんで分かったの!?」

提督「料理において最高のスパイスはなんだと思う」

瑞鶴「あ──」

間宮『料理において一番大事な事はですね、食べて貰う人への愛情を込めるなんですよ』

瑞鶴「……本当、提督さんには敵わないわ」クスッ

提督「では、負けた瑞鶴は今晩、抱き枕となって貰おうか」

瑞鶴「あははっ。いつもの事じゃないの、それ」

提督「ダメか?」

瑞鶴「こちらこそお願いします」

提督「うむ」

瑞鶴(──あ、皆の事について聞くの忘れてた)

提督「さて……今日も昨日の疲れが響いているようだ。少し早いかもしれないが寝るとしよう。──こっちの準備は出来たぞ」

瑞鶴(……明日にしよう。今は、この温かい空気を乱したくない)

瑞鶴「うん。──電気、消すわね」

パチン──

……………………
…………
……



433: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/15(金) 21:00:43.79 ID:eE8y8d1mo

瑞鶴「……そっか。解体したのね」

提督「ああ。金剛達は私から離れて生きていくべきだ」

瑞鶴「解体する時、酷い事になってたんでしょうね……」

提督「そうだな……。詳しくは言わないが、あの顔を思い出すと心が痛む……」

瑞鶴「私、解体なんてヤだからね。提督さんと海の上に立てなくなっちゃうもん」

提督「そう言うと思っていた」

瑞鶴「あははっ。なーんだ。見透かされてたんだ」

提督「瑞鶴の事ならば、少しくらいは分かるさ」

瑞鶴「少し、なんてものじゃない癖に」

提督「そうだったら嬉しいな」

瑞鶴「きっとそうよ。──それにしても、解体しても朝礼の時間には全員ここへ来るのには驚いたわ」

提督「それは私も驚いた。もう軍に就いている訳ではないのにな」

瑞鶴「……まあ、気持ちは分かるんだけどね。私達は軍に身を置いているけど、提督さんについて行ってるだけだもん。例え解体されて普通の女の子になっても、それは変わらないって自信があるわ」

提督「……本当に私は恵まれているな。お前達みたいな艦娘が来てくれていた私は幸運だ」

コンコン──

提督「入れ」

ガチャ──パタン

川内「失礼しまーす。──あれ、やっぱり居ないなぁ」

提督「どうした、川内」

川内「んっと、神通と那珂が見当たらないんだよね。だから提督の所に居るのかなって思って来たんだけど」

提督「いや、今朝の朝礼以降見ていない。どこにも居ないのか?」

川内「うん。鎮守府のほとんどを歩いてきたけど居なかった。瑞鶴さんは何か知らない?」

瑞鶴「ごめん……。私も朝礼から見てないわ」

川内「本当、どこに行ったんだろ……?」

提督「流石に心当たりが無いな……」

川内「じゃあ、私はもうちょっと探してみるね。もし神通と那珂を見つけたら私が探してるって言ってもらって良いかな」

提督「うむ。見つけたら伝えよう」

川内「ありがと。じゃあ、またねー」

ガチャ──パタン

提督「珍しい事もあるものだな。あの三人が一緒に居ない事はほとんど無かったはずだ」

瑞鶴「うん。何かあったのかしら……」

提督(……少し、胸騒ぎがするな)

──その日、神通と那珂の姿を見た者は誰一人として居なかった。

……………………
…………
……



434: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/15(金) 21:20:29.04 ID:eE8y8d1mo

提督「──以上だ。昼食後、新しい住居を選別するから私の部屋に来るように。天龍と龍田、不知火にも伝えてくれ。自由にして良し」

全員「はいっ!」

ガチャ──ゾロゾロ──パタン

瑞鶴「……神通さんと那珂ちゃん、どこに行ったんだろ」

提督「……………………」

瑞鶴「ねえ、提督さん……」

提督「……なんだ?」

瑞鶴「私、ちょっと嫌な予感がする……」

提督「ああ……私もだ。何かが起きている。それは間違いないだろう」

瑞鶴「……怖い」

提督「瑞鶴、絶対に私から離れるなよ」

瑞鶴「うん……」

…………………………………………。

コンコン──

提督「入れ」

ガチャ──パタン

金剛「失礼しマス」

提督「……何かあったのか、金剛?」

金剛「え? いえ、少し島風を探していまシテ」

提督「島風を?」

金剛「ハイ。姿の見えない五人を探す為に全員で一度集まってから探そうという話になったのデスが、いつまで経っても島風が来ない上、鎮守府のどこにも居ませんでシタ。だから、テートクの部屋にお邪魔しているのカト」

提督「いや……私も見ていない」

金剛「そうデスか……。どこに行ってしまったのでショウか……」

提督「……神通、那珂、天龍、龍田、不知火に加えて島風が居なくなった……か」

金剛「今は他の皆さんが探していますケド、まったく見つからないデス……」

提督「……………………」

金剛「本当、どこに行ってしまわれたのでショウか……」

──その後、全員が捜索したのにも関わらず、姿が見えなくなった六人は見つからなかった。

…………………………………………。



435: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/15(金) 21:40:50.76 ID:eE8y8d1mo

提督「……一体どうなっているんだ」

瑞鶴「分かんない……いくら探しても見つからないなんて……」

金剛「誰かに伝えている訳でもなく、書置きも無し……。もう夕方なのに、帰ってこない……明らかに不自然デス」

コンコン──

提督「……入れ」

ガチャ──パタン

響「司令官、やっぱり加賀さんと暁も居なくなってる」

雷「どこに行っちゃったのかしら……」

電「司令官さん……少し、怖いのです……」

金剛「……今度は加賀と暁デスか」

提督「怪しい人物は全く見掛けていない……。本当に神隠しだ……」

瑞鶴「……どうするの、提督さん?」

提督「……………………」

提督「……一先ず、響と雷、電は部屋に戻っておいてくれ。鍵を掛けて、私が来るまで絶対に扉を開けるな。ノックを三回してから少し待って二回叩く。それが鍵を開ける合図だ」

響「了解」

雷「分かったわ」

電「分かりました、なのです……」

ガチャ──パタン

提督「……金剛、今のお前はどのくらい戦える」

金剛「……正直に言うと、私は戦力外デス。戦艦としての戦い方以外、私は知りません……」

提督「そうか……。瑞鶴は艦載機と副砲を積んできているな?」

瑞鶴「うん。言われた通り、艦戦と艦爆、艦攻、そして副砲を装備してきているわ」

提督「……瑞鶴に言い渡す。いかなる場所でも兵装を使う許可を与える。怪しい人物を見つけ次第に警告をしろ。無視をするならば攻撃して構わん」

瑞鶴「分かったわ。……それにしても、本当に何が起きているのかしら」

金剛「考えられる可能性は外部犯のみデスね。私達は今、瑞鶴を除いて普通の女性デス。拉致をするのは容易いでショウ」

提督「やはりその線しかないか」



436: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/15(金) 22:00:32.17 ID:eE8y8d1mo

瑞鶴「でも……妖精さんや私達に一切気付かれないでそんな事って出来るの?」

提督「以前の私ならば出来ただろう。もしかしたら、私と同じ身体能力を持った相手かもしれんぞ」

金剛「それって勝ち目が無いじゃないデスか……」

提督「だが、目的が分からない。仮に人身売買するにしても、なぜ鎮守府でそれを行う? 鎮守府に居るのはほとんど艦娘で危険極まりないはずだ」

金剛「そうデスよね……相手の目的が全く分かりまセン……」

バタン──ッ!

響「司令官!!」

提督「どうした響。何があった」

響「……雷と電が……居なくなった」

金剛「なっ……!」

瑞鶴「嘘でしょ……?」

提督「…………詳しい状況を教えてくれ」

響「……言われた通り、私達は部屋に戻ったんだ。それで、二人に周りを注意して貰いながらドアを開けて、私が部屋を見渡した後……雷と電の姿が消えていた。いきなり居なくなって……怖くなって、ここまで走ってきたんだ」

提督「目を離した時間はどれくらいだった」

響「たぶん……三秒くらいだよ」

金剛「……提督。提督が万全の状態として、そんな事が出来ますか?」

提督「不可能だ。警戒している三人に気付かれる事なく、音も声も出さず拉致など出来ん」

瑞鶴「じゃあ……本当に神隠し……?」

提督「そう思った方が良い……。三人とも、絶対に私から離れるなよ」

瑞鶴「……うん」

金剛「はい……」

響「怖いよ……司令官……」ジワ

提督「……瑞鶴、少しの間だけ許してくれ」ソッ

瑞鶴「流石に私も鬼じゃないわ……お願い……」

響「うぅ……ぅぁ……あぁぁ……」ギュゥ

提督「…………」ナデナデ



442: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/15(金) 23:16:03.32 ID:eE8y8d1mo

金剛「本当に、この鎮守府は何が起きているのですか……」

提督「……金剛、瑞鶴。私のベッドの下にロープがある。それを私達全員に繋いでくれ」

瑞鶴「どうするの……?」

金剛「……なるほど。仮に拉致だった場合、それで防ぐ事が出来る訳ですね」トコトコ

提督「ああ。神隠しでも同じだ。異次元に引きずり込まれるのならば、逆にこっちが引っ張れば良い」

瑞鶴「……もし、力が敵わなかったらどうするの?」

提督「その時はその時だ。……これでダメならば何をやっても無駄だ。諦めろ」

金剛「ロープ、繋ぎますね。手首で良いですか?」シュル

提督「ああ。結びは頑丈に頼む」ギュッ

金剛「響、腕を出して下さい」スッ

響「…………」コクン

金剛「痛くないですか?」ギュッ

響「……うん。痛くないよ」

金剛「次は瑞鶴です」ギュッ

瑞鶴「ありがと。最後に金剛さんね」ギュッ

金剛「……これで、食い止められたら良いのですが」

提督「どうなるか分からん。全員、気を張るように」

金剛・瑞鶴「はい!」

提督「────な……?」

金剛「え……」

瑞鶴「嘘、でしょ……?」

提督「……響は、私の腕の中にずっと居たはずだ」

金剛「私も……ずっと目の前に居たのを見ていました」

瑞鶴「……本当に、一瞬で消えたわ。瞬きの間なんかじゃなくて、いきなり……消えた……」

提督「……ロープも切れていない。響だけが、居なくなったんだ」

コンコン──

金剛「!!」

瑞鶴「っ!!」ビクン

提督「……誰だ」



443: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/15(金) 23:16:41.39 ID:eE8y8d1mo

救護妖精「あたしだよ。救護妖精だ」

瑞鶴「救護妖精さん……?」

提督「……入れ」

ガチャ──パタン

救護妖精「邪魔するよ。……なんでロープなんか……ああ、なるほどね。それで繋ぎ止めようとしたんだ」

提督「……何を知っているんだ」

救護妖精「全部、かな」

提督「話せ。全て、包み隠さず」チャキッ

瑞鶴「提督さん……いくらなんでも銃だなんて……」

提督「今の私は疑心暗鬼になっている。僅かな可能性でも排除するのみだ」

救護妖精「そうなるだろうね。……でも、この状況を生み出したのは提督だよ」

提督「……ほう」

救護妖精「……もう、教えても問題無いだろうから言うよ。立ったままでも良いかい?」

提督「……ああ」

救護妖精「解体した艦娘は普通の女の子になる……。そう、海軍学校で教えられたでしょ。あれって、嘘なんだよね」

金剛「嘘……?」

救護妖精「考えてみなよ。解体をしたら普通の女の子になるだなんておかしいじゃないか。艦娘はあくまでも艦娘──人間じゃないんだよ」

提督「…………」

救護妖精「それに、解体して普通の女の子になるとしても、同じ顔をした同じ名前の同じ子が何人も居るって事になるんだよ? そんなの、世の中が混乱するに決まってるじゃないか」

瑞鶴「確かに……そうだけど……」

救護妖精「だから、制限時間が付いているのさ。……この世から、消えちゃう時間制限がね」

提督「……なぜお前がそれを知っている」

救護妖精「それは教えられないね。あたしは……私は、ただ解体の事を教えに来ただけだからさ」

提督「……………………」

救護妖精「続けるよ。だけど、この事実を知らせたら提督になった人達は黙っちゃいない。管理の限界なんてすぐに来るんだから、解体しなきゃならない……まあ、提督はそうならなかったみたいだけど」

救護妖精「だから、解体をしたらすぐに総司令部へ引き渡すか、総司令部で解体する事になっているんだよ。……たぶん、これを無視したのは提督が初めてだろうね」



444: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/15(金) 23:17:09.74 ID:eE8y8d1mo

金剛「という事は……私も……」

救護妖精「消える。今までの記録は一晩~五日だから、もう消えてもおかしくないよ」

金剛「そん……な……」

提督「…………防ぐ方法はあるのか」

救護妖精「無いよ。ある訳がない」

提督「そう、か……」

瑞鶴「……………………」

金剛「……提督、どうやらヴァルハラへ先に行くのは私のようですね」

提督「…………」

金剛「提督、瑞鶴……どうか最後まで幸せにしていて下さい。私、ヴァルハラから見ているね……」

フッ──

提督「────」

瑞鶴「……きえ、た…………」

救護妖精「……私が言えるのはここまでかな。……提督、これが『艦娘』だよ」

提督「……教えられないと言った原因は、これだけか?」

救護妖精「これだけじゃないよ。……けど、提督には教えられない。教えたら、提督が何をするか分からないから、出来ない」

提督「……そうか」スッ

救護妖精「……銃、下ろしてくれたね」

提督「もはや、意味が無いからな……」ブンッ

ガシャアァン──ッ!!

救護妖精(……相当キてるね、これは。提督が物に当たるだなんて思わなかったよ……)

提督「……救護妖精、一つだけ、私の願いを聞いてくれ」

救護妖精「……なんだい?」



445: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/15(金) 23:17:54.54 ID:eE8y8d1mo

提督「海に、出たい……」

救護妖精「……良いよ。もう、潮時だろうしね。……最後くらい、海の上で好きな事をしてきな」

提督「ああ……。そうする……」カチャン

瑞鶴「…………」スッ

救護妖精「……提督、最後に私からも聞かせてくれないかな」

提督「…………」

救護妖精「提督の人生は、どうだった? 辛い事ばっかりだったかい?」

提督「……………………」

救護妖精「……………………」

提督「……辛い事は、勿論あった。私がこの手で皆を殺してしまった事は……私の人生最悪の汚点だ……」

救護妖精「…………」

提督「だが……嬉しい事もあった。楽しい事もあった……大切な事にも気付けた……。平凡ではなかったが……この結末は苦しいが……それでも、私の人生は、虚無でも無意味でもなかったと思う」

救護妖精「……そっか」

提督「……瑞鶴、行くぞ」

瑞鶴「うん……」

ガチャ──パタン

救護妖精「……それが聞けて、私は満足だよ」

救護妖精「どうか、安らかに……提督──」

…………………………………………。



446: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/15(金) 23:18:30.17 ID:eE8y8d1mo

瑞鶴「……暗いね」

提督「ああ……」

瑞鶴「どこまでも暗くて……このまま、どっか別の世界に行っちゃいそうなくらい……」

提督「……そうだな」

瑞鶴「……提督さん」

提督「なんだ……?」

瑞鶴「もう、さ……目、見えてないでしょ」

提督「……ああ」

瑞鶴「私の手、分かる?」

提督「ああ……分かる。お前の温かい手が、分かる」

瑞鶴「……随分、遠くまで来ちゃったね」

提督「そうだな……今、どの辺りだ?」

瑞鶴「……たぶん、私が独りで戦った辺り」

提督「遠いな……本当に、遠くまで来たな……」

瑞鶴「うん……」

提督「……瑞鶴、止まってくれ」

瑞鶴「……うん」

提督「……………………」ゴソゴソ

瑞鶴「…………」

提督「……瑞鶴、お前は、私の事が好きか?」

瑞鶴「うん、大好き。……このまま、一緒に死んじゃっても良いくらい、好き」

提督「……そうか。……幸せ者だな、私は」

瑞鶴「…………」

提督「瑞鶴、これをお前に渡そう」スッ

瑞鶴「箱……?」

提督「開けてくれるか」

瑞鶴「うん……」パカッ

瑞鶴「────え?」



447: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/15(金) 23:19:15.72 ID:eE8y8d1mo

提督「もう、誰も居なくなってしまったが、何も無い海の上だが、雰囲気も何もないが……受け取って欲しい」

瑞鶴「これって……指輪、よね?」

提督「……そういう事だ」

瑞鶴「…………うん」

提督「……………………」

瑞鶴「……………………」

提督「この先は地獄かもしれない」

瑞鶴「それでも私は付いていくわ」

提督「私は金剛達を殺した罪人だ」

瑞鶴「好きになった気持ちは変わらないわよ」

提督「お前は天国へ行くかもしれない」

瑞鶴「私が墜ちていけば良い話ね」

提督「いつまで私の傍に居てくれる」

瑞鶴「未来永劫、輪廻を超えたその先でも」

提督「……………………」

瑞鶴「……………………」

提督「……ありがとう、瑞鶴」

瑞鶴「私こそ、ありがとう提督さん……」

提督「指輪を貸してくれ」

瑞鶴「うん」スッ

提督「左手、出してくれるか」

瑞鶴「はい。場所、分かる?」

提督「熱い手だから、すぐに分かる」スッ

瑞鶴「……わぁ。ピッタリ」

提督「良かったよ。ここでサイズを間違えていたら後悔しかなかった」



448: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/15(金) 23:19:56.46 ID:eE8y8d1mo

瑞鶴「いつの間にこんなの用意してたの?」

提督「いつぞやに作った機密文書がそれだ」

瑞鶴「あの時の……だから見るなって言ったのね」

提督「驚かせてやりたくてな」

瑞鶴「すっごく嬉しいわよ」

提督「そうか。良かった……」

瑞鶴「……提督さん。もう片方の指輪は、私に通させて?」

提督「ああ、頼む」スッ

瑞鶴「……提督さんの手、冷たいね」

提督「今日は冷えるからだろう」

瑞鶴「……そうね。今日は、冷えるものね」

提督「瑞鶴の手が熱くて、とても心地良い」

瑞鶴「……うん。あっためてあげるね」

提督「……これで、仮の結婚だな」

瑞鶴「うん……。でも、私は嬉しいわ。とっても、幸せよ」

提督「さすが幸運の空母だな」

瑞鶴「私は幸運の空母なんかじゃない」

提督「ほう?」

瑞鶴「私はね、幸運な空母なの」ギュゥ

提督「……なるほど。そういう事か」ギュッ

瑞鶴「うん……」

提督「私も、幸運な提督だったよ……」ソッ

瑞鶴「そっか……良かった」スッ

チュゥ……

瑞鶴「えへ。私、キスなんて初めて」

提督「私も……初めてだよ」

瑞鶴「良かった。お互いの初めてを捧げれて」

提督「ああ……本当に良かった……」

瑞鶴「…………」スリスリ



449: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/15(金) 23:20:28.56 ID:eE8y8d1mo

提督「なあ、瑞鶴……今日は、月も雲も無かったな……?」

瑞鶴「うん……星がすっごく綺麗に見えるわよ」

提督「なら、影はあるか? 四百年の影が……」

瑞鶴「……………………」チラ

提督「…………」

瑞鶴「……うん。あるわよ。四百年の、北極星の影が……」

提督「そうか……。見たかったなぁ……」

瑞鶴「いつか、また見れるわよ……きっと……」

提督「そうだな……また、いつか見れるよな……」

瑞鶴「うん……」

提督「……瑞鶴、私は眠くなってきた」

瑞鶴「────」ビクッ

瑞鶴「良いわよ。このまま、私を抱き枕にして寝ちゃっても……」

提督「……ありがとう」

瑞鶴「うん……」

提督「おやすみ……瑞鶴────」

瑞鶴「おやすみなさい……提督さん……」

提督「────────」

瑞鶴「……………………」

瑞鶴「私は、どうしようかな……」

戦姫「──おや」

瑞鶴「…………?」クルッ

戦姫「……邪魔をしてしまったかな」

北方棲姫「らぶらぶ」

ヲ級「♪」ニコニコ

瑞鶴「……ううん。丁度良かった」

戦姫「ふむ?」

瑞鶴「私をね、沈めて欲しいの」

北方棲姫「え……」

ヲ級「? …………?」オロオロ

戦姫「……どういう事だ?」

瑞鶴「私も、追い掛けないといけないから」

戦姫「…………」チラ

提督「────────」

戦姫「……なるほど。そういう事か」ジャキッ

ヲ級「!!」ブンブン

北方棲姫「ダメ……」ギュ



450: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/15(金) 23:20:57.03 ID:eE8y8d1mo

戦姫「いや……沈ませてやった方が二人の為だ」

北方棲姫「…………?」

ヲ級「…………」

瑞鶴「お願いします……」

戦姫「……痛いから、覚悟しておけよ」

瑞鶴「痛みなんて怖くないわ。私が怖いのは……離れちゃう事だもん」

戦姫「……分かった。では、幸せに、な……」

ドォン──ッ!!

瑞鶴「アぐ──ッッ!!」

バシャン──……

瑞鶴(背中、痛……い……。提督さん……無事かしら……?)

瑞鶴(──ああ、大丈夫みたい……。良かった……)

瑞鶴(……暗い、なぁ。私が沈んだ時よりも……ずっと暗い……)

瑞鶴(真っ暗で……何も見えなくて……ああ、提督さんは、この闇を見ていたのね……)

瑞鶴(でも……怖くない……。このまま……提督さんと同じ場所に逝けるんだもの……)

瑞鶴(ああ…………なんだか……私も眠くなってきちゃった……)

提督「────────」

瑞鶴(あれ……? おかしいなぁ……提督さんが見える……)

提督「────」

瑞鶴(手、伸ばしてくれて……私の手、掴んでくれてる……)

提督「────」

瑞鶴(……うん。一緒よ。どこまでも……いつまでも……ずっと……ずーっと…………)

瑞鶴(ねえ、提督さん……)

提督「────」

瑞鶴(生まれ変わっても……一緒に、ね──)

……………………
…………
……



451: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/15(金) 23:21:31.52 ID:eE8y8d1mo

 ざわつく町並み、溢れかえる人──
「うん?」
 そこで、ある少女の目が、一人の青年へ留まった──
「?」
 青年も、その少女の視線に気が付いた──
「────!」
 少女は、その青年へ足を運ぶ──
「────」
 青年も同じように、少女へ足を向けた──
「すみません、いきなりで変なんだけど……どこかで会いませんでした?」
「いや、知らない。だが……私もどこかで会った気がする」
「へぇ……。なんだか、運命みたいね」
「そうか。……これも何かの縁だ。どこか飯でも食べないか?」
「それだったら、私が作っても良い? 得意なの、肉じゃが」
「ほう。良いな。肉じゃがは好物だ」
「良かった! じゃあ、一緒に──」
 足取り軽く、二人は進む──
 その手を繋ぎ、どこまでも──


 輪廻を超えた約束を、果たす為──





──── 瑞鶴「私は幸運の空母なんかじゃない」 金剛「?」 ────





452: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/15(金) 23:23:20.70 ID:eE8y8d1mo

以上で終わりになります。
短い間でしたがお付き合い頂きましてありまがとうございました。

質問などがありましたらお気軽にどうぞ。
また、この製作の裏話も順次語っていこうと思います。



454: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/08/15(金) 23:27:57.02 ID:Lw8rjO6Lo

おつおつ



456: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/08/15(金) 23:34:12.72 ID:K/b/+7MDO

おつ
短いなんてとんでもない、濃厚すぎる内容でした



462: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/08/16(土) 01:03:05.32 ID:z0ltWpdcO

乙乙
じ、次回作を!



463: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/16(土) 01:44:53.99 ID:wGjOprG4o

次回作は作るかどうか未定です。でも、作るとしたら何になるんだろう。

>>461
まさか吊るす回数を数えている人が居るとは思わなかった。
今回は金剛さんを吊るして満足したのかもしれない。自分でも吊るす回数が少なくてびっくり。

また、ここから先は前作のネタバレも含むかもしれませんので、まだ読んでいない人は注意してください。



464: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/16(土) 01:56:36.31 ID:wGjOprG4o

今回、瑞鶴の話を書いたのは実は偶然だったりします。
本当は前作のIFストーリーとして金剛さんを中心としたお話を書くつもりでした。
とある理由で提督を殺しかねない接し方をする金剛さんを書いていたら、思ったよりも物語としてかなり薄っぺらいものになってそのまま没です。
そこで、前作の設定をほとんど引き継いで新たにやり直し、金剛さんではなく瑞鶴に焦点を当ててみたらこんな物語になりました。
前作と違う設定を挙げるならば

・提督は甘い物が大嫌いなだけになっている
・瑞鶴は提督の妹ではない

この二つくらいです。たぶん。
他は同じ設定です。おそらく。



465: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/16(土) 02:10:27.45 ID:wGjOprG4o

色々な方が「前作のパラレルワールドなのか?」と仰っていましたが、その通りです。
時々、響が前作の記憶を引き継いでる? のような憶測が出ていましたが、そうではなく響の素です。誰一人として前作の記憶は引き継いでいません。
ただ、提督と金剛さんにだけは夢で前作の一部を見せています。物語の冒頭で夢がなんたらとか書いていたのはその為です。
更に暴露すると、この時点では金剛さんをまだメインヒロインにする気でいました。
瑞鶴に焦点を合わせるけど、金剛さんとくっつかせよう。と思っていたのに、いつの間にか金剛さんがサブヒロインに……。

また、加賀さんや不知火を追加したのも、案の時点で没にしたシナリオから流用しただけだったりします。加賀さんや不知火が好きな人はごめんよ。
その案はいつもの三人に加えて利根さんに瑞鳳、加賀さん、不知火、雷電、那智さんでやろうとしていたのですが、駆逐艦が四隻でこの面子は流石にありえない。という事で没に。
結局、新規の子で一番大きい加賀さんと小さい不知火を追加するという形で落ち着きました。
利根さんとかも入れたかったけど、物語を書き始めた時は前作と同じようなルートを取る可能性を考慮して重巡は入れられなかったです。利根さん可愛いのにチクショウ。




469: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/16(土) 02:23:07.04 ID:wGjOprG4o

あと、前作では語らなかった設定とかをこっちで説明とかもさせています。良い例が解体とは何か、ですね。
前作で元帥が言っていた「解体するといつの間にか居なくなる」というのは嘘ではなく本当の事でした。たぶん、前作であの言い回しならば艦娘を実験体にしていると思った人が多いと思いますが、そういう訳ではなかったのでご安心を。
解体すると普通の女の子になる、という公式の設定がありますが、私はこれだと「同じ人が何人も何十人も居るって事になるよね?」と思って勝手に設定を変えました。
ゲームではどんなに可愛がって育てた艦娘でも解体すると二度と提督の前に姿を現さない……という所からこういう設定を持ってきています。本当になんで提督と顔を合わせようとしないんだろうね。気になる。

あと、謝らないといけない事として……ほのぼのになりませんでした。ごめんなさい。
>>339の方が言っていたように、あの話のパラレルでは無理がありました。色んな問題を見ないで進行すればボロがドカドカ出てきますし、何よりも読んでいて引き込まれないですよねそれって……。
ほのぼのを期待して読んでいた方達には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです……。



470: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/16(土) 02:40:02.44 ID:wGjOprG4o

また、最初の方で本職? 同人の人? と話されていましたが、前作のお話のおかげ(?)か、現在はとある会社のシナリオライターとして活動させて頂けるようになりました。
そっちの方でも少し古いラノベっぽい雰囲気の作品を書いていくつもりです。これも皆さんの反応が良かったからだと思います。この場を借りてお礼申し上げます。本当にありがとうございます。
それと、同人の方も活動は辞めるつもりはありません(生活費とかの関係で)。現在はニセコイのごにょごにょとしたゲームを作っている途中です。全然手が付いていないけど……。
一応HPとかも持っていますが、現在HP自体が休止状態なのでDLブログの方をご紹介します。リンクとか張って良いのか分からないので……「まったり猫のBlog」で完全一致検索をすれば出てきます。

SS自体は色々と書いてきましたが、PCが残念な事になった為、何を書いていたのかが半分近く手元に残っていません。バックアップって大事だね……。
HPには載ってないけど、苦い砂糖とかそんなお話を書いた気がする。

時間も時間ですので、一先ずは裏話とかステマはここまでにしておきます。また来ますね。



471: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/08/16(土) 02:44:51.81 ID:JMuZJO3uo

乙かれさまです
次回作も気長にお待ちしております



472: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/08/16(土) 02:58:59.28 ID:h1qG1DRuo

乙なのです!
エンジェルビーツみたいな感じやったね
次作も楽しみに待ってますよ!(



480: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/16(土) 19:39:20.29 ID:wKjw/R68o

>>472 >>474
エンジェルビーツはよく知らないのですが、こんなお話なのですか……。ちょっとつらい。
前にも意識朦朧状態で「やべぇ。超面白いっぽい物語思いついた」と思って嬉々として友人に話したら「あれ、それ穢翼のユースティアにすんごい似てるんだけどプレイしたん?」とか言われる始末。調べてみたらほとんどまんまで死にたくなりました。
私程度で思い付くシナリオは、既に創られてる事がほとんどなんだなぁ……。
逆に、モブ恋のような設定は先に私がネットに投下しているので少し優越感に浸った後「没にしてネットに落とすんじゃなかった……」とちょっと後悔していたり。

>>476 >>478
忙しいのもありますけど、何よりもさっさとニセコイのごにょごにょゲームとか他にもゲームとか創っていって生活費の足しに少しでもしないと(日記はここで途切れている)
本職にはなれても、支払われる金額は大きくはないので切羽詰って──とまあ……印税生活じゃーとか一発当ててウハウハじゃーとかそんなお話は、ネットでひょっこり現れた私程度では夢のお話、なのです。牛乳飲めば成長しますかね? 電同様ちっこいままになりそうで怖いですけど。



裏話の続きとして、当初は本気でほのぼの出来るよう色々と考えました。
第六駆逐隊の皆が汝は人狼也や? のゲームを元にオリジナルのゲームを作った設定とかも考えましたけど、グダりそうだったのでルール考えてプレイしている途中まで書いたのに全カットなんて事も。
そうこうしている内にちょこちょこ決めていた裏設定が足に絡まっていって、瑞鶴が努力をした結果が半分だけ深海棲艦になるとかブラックな方へ。もうここら辺から全然ほのぼのになっていないですね。反省。
それでも甘いお話に持っていこうと瑞鶴といちゃいちゃさせてみたりしましたけど、時既に時間切れ。提督余命言い渡されてるじゃねーかって自分で思いました。

また、上の方でも軽く触れましたが、とある理由で提督を殺しかねない接し方をする金剛さんの設定ですが、設定とか書きかけのSS本体を固めましたのでご自由にDLして下さい。
たかが15KB程度の物なので、速攻で読み終わると思います(参考:今回のお話は418KBほど)
http://www1.axfc.net/u/3298343?key=kongou



481: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/16(土) 19:49:06.55 ID:wKjw/R68o

長々とダラダラと裏話()とかを語りましたが、今回の物語を読んで下さってありがとうございました。
またいつかお会いしましょう。
一週間後にHTML化を出しますので、それまでの間は感想や雑談、質問などにお使い下さいませ。
質問がありましたらお答えします。



482: 妖怪艦娘吊るし ◆I5l/cvh.9A 2014/08/16(土) 19:56:33.20 ID:wKjw/R68o

これを張るの忘れてた。
現行で読めず、レスしたかったのにレス出来なかった人の為にこのSS専用のアドレスを晒しておきますので、何か感想やその他を書き残したい方が居ましたら下のアドレスにどうぞ。返せるだけ返します。

kongou_zuikaku_hibiki@yahoo.co.jp



元スレ
SS速報VIP:瑞鶴「私は幸運の空母なんかじゃない」 金剛「?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1404595227/