・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 それは遠征任務の時だった。

夕立『うーん、今日もいい天気っぽい~』 ノビー

三日月『ですね~。でも、気は引き締めなきゃですね。今日の遠征任務はとっても大事だと司令官が言っていましたし』

夕立『あはは、分かってるっぽい! 一緒に頑張ろうね、三日月ちゃん!』

三日月『はいっ!』

神通『ふふ、お二人とも本当に仲が良いですね』

夕立『ぽい! 三日月ちゃんとはお互いを助け合う事を約束し合った友達同士だもん! それに三日月ちゃん優しいから、夕立は三日月ちゃんが大好きっぽい!』 ニッコリ

三日月『あはは……て、照れちゃいます』

神通(微笑ましいわねー)

神通『あっ、あちらの船ですね』

 その日の遠征任務は、船の護衛任務だった。軍人ではない一般の人達も乗っていると聞いたので、気を引き締めなきゃと何度も思った。

神通『あなたがこの船の船長ですね? 本日、貴方達を護衛することになりました、第八鎮守府海上護衛隊の旗艦、神通です。本日は命がけで貴方達をお守り致します』 ビシッ

船長『あぁ、話は聞いているよ。今日はよろしく頼む』

船長補佐『あらあら~、随分と可愛らしい娘さん達ですね。本日はよろしくお願いします』

三日月・夕立『『よ、よろしくお願いします!』』 ビシ






三日月「そう、私は命がけで守ろうと誓っていました。――命を懸けてでも、守り抜こうと……思っていました」




391: ◆jz1amSfyfg 2015/09/15(火) 03:56:31.02 ID:0GHlf6zV0


 ザー、ザー、ザー、

三日月『…………』

夕立『三日月ちゃーん、表情硬すぎっぽい~』

三日月『へ?』

夕立『緊張はするのは分かるけど、リラックスすることも大切っぽい!』

三日月『は、はい! 頑張ります!』

夕立『……そんなに緊張しなくても、大丈夫だよ。三日月ちゃん、真面目で努力家だし、成績だって優秀っぽい。だからこの遠征任務にだって抜擢されたっぽい』

三日月『……うん! が、頑張ります!』

夕立『まぁ、夕立の方が訓練成績は優秀っぽいけどね! エッヘン!』

三日月『むっ……べ、勉強は私の方が上です! あと速力だって同じくらいですし!』

夕立『べ、勉強の話はやめてっぽい~』

三日月『……ふふ』

三日月『夕立さん、ありがとう。緊張、少し解けました』

夕立『えへへ、ならよかったっぽい!』

夕立『……それに、これは遠征任務っぽい。深海棲艦が遠征任務中に出てきたケースはあんまりないっぽい。だからきっと、大丈夫っぽい!』






夕立「そう、あの時はそう思ってたよ。……けど、奴らは現れた」




392: ◆jz1amSfyfg 2015/09/15(火) 04:49:17.66 ID:0GHlf6zV0


 ザザー

 ブクブクブクブク

神通『!? これは……』

神通『……音?』

夕立『え?』

 ブクブクブクブク――バッシャーン!

ロ級『……』

ハ級『……』

ホ級『……』

リ級『…………』

三日月『……し、深海棲艦?』

神通『――提督! こちら海上護衛隊旗艦、神通です! て、敵が……深海棲艦が現れました!』

 ザザー

前提督『な、なんだと!?』

前提督『ッくそ! なんで、このタイミングで……いつもはこんなことないはずなのに……ッ!』

夕立『敵のか、数は……4隻っぽい!』

前提督『……神通! 夕立! ――三日月!』

前提督『頼む……何としても、深海棲艦を撃退させてくれ』

前提督『その船には……娘と妻が……乗員しているんだ!!』

神通『はい!』

夕立『う、うん!』

三日月『ッ……は、はい!!』 ガチャ






前提督「イレギュラーな事態だったよ。遠征任務で深海棲艦が現れるのは珍しいケースだからね。……なんでこのタイミングなんだと、僕は神を恨んだよ」




393: ◆jz1amSfyfg 2015/09/15(火) 04:57:48.34 ID:0GHlf6zV0


神通『夕立ちゃん! 三日月ちゃん! 数は向こうの方が一隻上です!』

夕立『っぽい!』

三日月『はい!』

神通『幸い、まだ敵は遠くにいます。私は奴らを近づけないために接近し迎撃します。二人は船の付近を警戒しつつ、援護をお願いします!』 ザッ

三日月・夕立『『了解です(っぽい)!!』』

神通『……撃ちます』 ドンドン!

 ボカンボカーン!!

ロ級『!!』

神通『中破ですか……撃沈させたかったわね』

三日月『援護します!』 バンバン!

夕立『当たれぇ!』 バンバン!

ハ級『…………』 シュシュ

 バシャンバシャーン!!

夕立『あ、あいつ……めちゃくちゃ速いっぽい!?』

ハ級『……』 ザッ

神通『単艦で接近……させません!』 ズドンズドーン!!

ハ級『……』 シュンシュン

 バシャンバッシャーン!!

神通『こいつ……!』

 バンバン!

神通『二人とも!! そのハ級はエリート艦です!! 気を付けてください!!』 シュ、シュッ   ドン!

ホ級『!!』 ボカーン!

ハ級『…………』 シュンッ ザザッ!

神通『ッ、奥にいた一隻は沈められたけど……抜けられた……!!』

神通『三日月ちゃん! 夕立ちゃん! ごめんなさい……そのハ級は任せました!』

ハ級『…………』 ザー!

三日月『は、はい!!』

夕立『ぽ、ぽい!!』

神通『……任せましたよ、二人とも』

ロ級『……』

神通『……私は』

リ級『…………』 ニヤァ

神通『こいつらをなんとかします』




394: ◆jz1amSfyfg 2015/09/15(火) 05:49:40.50 ID:0GHlf6zV0


夕立『当たれ……当たれ!!』 バンバン

三日月『当たって……っ!!』 バンバン

 バシャーン!! バシャンッ、ジャバン!!

ハ級『……』 ザザー!、ザザー!

三日月『あ、当たらない!!』

夕立『もう距離もだいぶ近いっぽい!』

三日月(どうすれば、どうすれば!)

三日月(相手は動きが速いエリート艦……私なんかよりも数段格上だ。そんな相手に、勝つ方法を……見つけなきゃ!)

夕立『この船は、絶対に守るんだから……当たれぇ!!』 バンバンバン   バン!

ハ級「……」 シュンシュン!

ハ級『!?』

夕立『偏差射撃!!』

 ボカァァァァン!!

三日月『あ、当たった!!』

夕立『ダメージは!?』

ハ級(小破)『…………!!』

夕立『!!』

三日月『う、うそ……直撃のはずなのに……』

ハ級『……』 ザッ!

三日月(勝つ方法を見つけなきゃ、見つけなきゃ、見つけなきゃ!)

三日月『も、もう距離が……』

 勝つ方法が見つからなかった。どうすればいいか分からなかった。
 夕立さんの攻撃を直撃しても小破にしかならないハ級に勝つ方法が、分からなかった。

三日月『……』 チラ

 船を見つめる。
 私より全然大きいのに、それは私よりも脆い。
 そしてそれには、多くの命を抱えられている。――大切な人の家族の命も。

三日月『……!!』

三日月(守らなきゃ。守らなきゃ。守らなきゃ……命がけで、守るんだ!)

三日月『夕立さん! 援護をお願いします!!』 ザッ!!

夕立『……え?』

夕立『み、三日月ちゃん!?』

 私は、ハ級に接近した。




396: ◆jz1amSfyfg 2015/09/15(火) 06:19:32.03 ID:0GHlf6zV0


 勝つ方法は見つからなかった。見つけられなかった。

三日月『……あなたは、絶対に私が……ッ』 ザー

三日月『し、沈めます!!』

三日月『この命に代えても!!』

ハ級『!!』 ドォン!!

 そうだ、私に撃つんだ。船じゃなくて、この三日月に!!

夕立『三日月ちゃん!!』

 迫り来る砲撃。それはギリギリ避けられる砲撃だ。
 ――でも、絶対に避けない。


 ボカーン!!


三日月『ぅ、っあ――ッ!!』

 身体のどこかに砲撃が当たる。でもそんなのは気にしていられない。
 近づくんだ。もっと、近くに!

夕立『三日月ちゃんッ!!』

三日月『痛くなんか……ない!! 痛くなんかない!!』 ザー!!

ハ級『……――ッ!!』 ドンドンドォーン!!

三日月『っぐ……!! ――ッ!!』 ザーッ!!

三日月『はぁ、はぁ、はぁ……!!』 ザー!!

 ハ級との距離、あとわずか。

夕立『し、沈んじゃう……み、三日月ちゃんが……』

三日月『――夕立さん!! 援護をお願いしますッ!!』

夕立『!!』

三日月『わたしは、だ……大丈夫です、から!! だから、撃ってくださぁぁぁぁいッ!!』

夕立『…………』

夕立『……っ!!』 バンバンバン!!

ハ級『!!』 シュッ、シュッ、シュッ!   バシャーン!!

三日月『……避けましたね?』

ハ級『!?』

三日月『捉えました……!!』

 あのまま攻撃を受け続けていたら、きっと私は沈んでいただろう。でも、夕立さんが援護してくれたおかげで、ハ級は避ける行動を取った。攻撃の手を止めることができた。
 ――ハ級の目の前に、近づくことができた!!

三日月『この距離なら、避けられないでしょう』

ハ級『!!』 ドォン!

三日月『ぅぐッ!!』

三日月『……ははは……もう、遅いです』 ボタボタ

ハ級『――!!』

三日月『沈んでぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!』 ガチャ

 バンバンバンバンバンバンバンッ!!

ハ級『―――――――――――!!』

 ボォォォォォォン!!




399: ◆jz1amSfyfg 2015/09/22(火) 04:56:37.97 ID:XiO/gA2B0


ハ級『…………』

三日月『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ』

ハ級『…………』 バシャーン!!

三日月(たお……した?)

三日月『はぁ、はぁ……げほ』 ガク

三日月(血が……止まらない)

ハ級『…………』

三日月『けど……倒せて……よか……っ』 グラ

 ガシ

夕立『…………』

三日月『夕立……さん』

三日月『わたし、勝ちました』 ニコリ

夕立『……バカ』

夕立『無茶し過ぎだよ……三日月ちゃん』 ポロポロ

三日月『えへへ……ごめんなさい』

夕立『とにかく、早く治療しないと……』

三日月『いえ、その前に前線で戦っている神通さんの援護を……』

夕立『……その必要は、ないっぽい』

三日月「え?」

 ボカァァァァン!!

神通『はぁ、はぁ』

ロ級『』

リ級『』

 バシャーン!! ブクブクブク……――

夕立『さすが神通さんっぽい~』

三日月『あはは……さすがです』




400: ◆jz1amSfyfg 2015/09/22(火) 05:31:12.67 ID:XiO/gA2B0


神通(さすがに重巡はきつかったわね……私もまだまだ精進しなきゃ……)

神通(単艦で戦艦を沈められるくらいに)

神通『ん?』


夕立『じーんーつーうーさーん! さすがっぽい~!!』 フリフリ


神通『あら、あの子達ハ級を倒したのかしら。……あの様子から見るにそうよねきっと』

神通『ふふ、さすがです』 ニコリ

神通『今そちらに戻りまーす』 フリフリ


夕立『おっ、手振り返してくれたっぽい!』

三日月『…………』

夕立『……み、三日月ちゃん?』

三日月『え……? はい、なんでしょうか?』

夕立『……ううん、なんでもないよ。……今は休んでていいから』

三日月『…………うん。……げほッ!』

夕立『――!!』

夕立(ち、血が……!!)

夕立『ちょ、ちょっと護衛艦の船長さんに連絡してみるから!』

 ――ザザッ

夕立『こちら夕立です。聞こえますか!?』

船長『あぁ、聞こえるよ。ありがとう。深海棲艦を――』

夕立『ごめんなさい!! 中に治療室ってある!?』

船長『え?』

夕立『あったら使わせてほしいっぽい!! 三日月ちゃんが!!』

夕立『し――』

 ドォン!!

夕立『――え?』

夕立『……げほ』

三日月『…………え?』 キョトン

三日月『ゆうだち……さん?』

夕立『……あはは……げほ、ごほ! ……あなた……』 クル

ハ級『……』

夕立『しぶとすぎっぽい』

三日月『ゆ、ゆうだちさん……夕立さん!!』

夕立『…………』 バシャーン!!

三日月『あっ』 バシャーン!!

三日月『あ、あぁ……あぁ……!!』

三日月(仕留めきれていなかった!?)

三日月『船長さん……逃げて……逃げてぇぇぇぇぇぇッ!!』




401: ◆jz1amSfyfg 2015/09/22(火) 05:33:36.87 ID:XiO/gA2B0


神通『沈めていなかったの!? くっ!』 ザッ

神通『ここからじゃ、間に合わない!!』

神通『当たって!!』 ドォンドン!!

 バシャンバシャンッ

神通『くっ、遠くまで来過ぎました……!! 離れすぎてる!』


ハ級『……』 ガチャ

三日月『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……!!』

三日月(私のせいだ、私のせいだ私のせいだ!!)

三日月(何としてでも起きないと……何としてでも起きないと!!)


船長『ッ! 全速前進だ!! この海域を何としてでも抜けるんだ! ――護衛してくれてる彼女たちのためにも、乗っている人たちのためにも!!』


三日月『はぁ、はぁ……!!』

ハ級『…………』 クル

三日月『え?』

ハ級『……』

三日月(ダメ、ダメだ。そっちを見ないで。狙わないで!!)

三日月『うわあああああああああああッ!!』 バシャ!!

ハ級『!!』

三日月『げほ、げっほ……!!』 ビチャ

三日月『はぁ、はぁ、……立てれた……!!』 ガチャリ

ハ級『!!』

三日月(視界が歪む。今にもたおれそうになる。でも、まもらなきゃいけないんだ)

三日月『沈んで……お願い!!』

 カチャ

三日月『え……?』

 カチャ、カチャ

三日月『弾……切れ……?』

ハ級『……』 ザッ!!

三日月『待って、待って!!』




402: ◆jz1amSfyfg 2015/09/22(火) 05:40:47.02 ID:XiO/gA2B0



神通『あいつ、船に直接突撃する気!?』


三日月『いかないで……いかないで!!』 グラ

三日月(しかいが……ふらつく)

三日月(けど、まもらなきゃ……ハ級を……しずめなきゃ……)

三日月(そうだ)

三日月(しずめ、しずめ、しずめ、しずめ!!)

三日月『ええーーーーい!!』 ポンポンポン!! ザッー!!


神通『!! 三日月さん!! ダメです!! 魚雷は!!』

神通『その方向に撃ったら!!』

 ザッー!!

ハ級『――――!?』

 ドガァァァァァァン!!

三日月『沈められ……た……?』

ハ級『……』 ブクブクブク……――

三日月『……がは……!! げっほ……!!』

三日月『まもれた……?』


神通『ダメ!! 船長さん!! 逃げてくださいッ!!』

神通『魚雷がそっちに向かってます!!』


三日月『――え?』


船長『ッ!? 舵を右に――』


三日月『――――――――――――』


目の前の光景を疑った。何かの間違えだと思った。まるで時が止まったかのような感覚だった。

神通『ッ!!』

 私の撃った魚雷が――

三日月『』

 護衛艦に直撃した。


 ボカァァァァァァァンッ!!

三日月『う、嘘……わ、わたし、そんなつもりじゃ……!!』

三日月『……うそ、うそうそうそうそうそうそうそうそうそ!! 嘘だ嘘だ嘘だ!!』

三日月『ぁぁぁぁ、あぁ、おぇ……!!』

 当たり所が悪かったのか、一瞬で爆発は起きた。
 乗員が脱出する時間なんかなかった。爆発はどんどん広がり。――船が、沈んだ。


三日月『うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!』




403: ◆jz1amSfyfg 2015/09/22(火) 05:41:54.15 ID:XiO/gA2B0


三日月「……そう、護衛艦は……」

三日月「私が」







夕立「あの子が」







前提督『三日月が』


 沈めた。




423: ◆8Wn59wFc0I 2015/09/29(火) 05:08:52.57 ID:Fjl+YkHv0


 目の前には真っ暗な世界が広がっていた。
 ここはどこだろうか。私は何をしていたのだろうか。全然わからなかった。
 頭がぼーっとしており、真っ暗な世界は消えない。

 けど、声が聞こえた。

夕立『……三日月ちゃん……』

 それは友達の、夕立さんの声だった。

三日月『…………ぁ』

夕立『!? 三日月ちゃん……?』

 ゆっくりと目を開き、真っ暗な世界が消える。

三日月『夕立……さん』

夕立『起きた……三日月ちゃんが、起きた!』 ガバッ

三日月『むぐっ!?』

夕立『もう……起きないんじゃないかと思った……!!』

三日月『んん~~~~~!!』

夕立『あっ……ご、ごめんなさいっぽい!』 バッ

三日月『はぁ、はぁ……だ、大丈夫です』

三日月『……あれ、ここ、どこですか?』

 頭がぼーっとしている。状況が良くわからない。私は何をしていたのだろう。ここはどこなのだろう。
わからない

三日月『私は……何を……』 キョロキョロ

夕立『ここは……鎮守府にある病室だよ。私達のいるとことは別のだけれどね』

三日月『鎮守府……?』

夕立『うん』

夕立『……神通さんと提督さんを呼んで来るっぽい。……ちょっと待ってて』 スタスタ

三日月『…………』




424: ◆8Wn59wFc0I 2015/09/29(火) 05:11:44.54 ID:Fjl+YkHv0


三日月『私本当に……何をしていたんだろう……確か……』

三日月『――ッ!?』 ズキッ

三日月(頭が……痛い!? なに、これ?)

 スタスタスタスタ

 ガチャ

三日月『!?』

神通『…………』

夕立『…………』

前提督『……………………』

三日月『神通さん。司令官』 キョトン

神通『……三日月ちゃん。体調は大丈夫ですか?』 スタスタ

三日月『はい……少し、頭が痛いくらいです』

神通『なら良かった。……あの時倒れてあと、ずっと眠っていたんですよ?』

三日月『あの時……? 倒れたあと……?』

三日月『たおれたあと……?』

前提督『……………………』

三日月『……――あっ』

三日月(段々と頭が……冴えてくる。頭が痛くなってくる。そして――思い出す)

三日月『あぁ……あぁぁ……!!』 ガクブルガクブル

三日月『わ、わたし……わたし……!!』

三日月『人が乗った船を……護衛していた船を……!!』 プルプル

前提督『……………………』

 ――沈めた。




425: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/09/29(火) 05:49:09.37 ID:Fjl+YkHv0


三日月『わたしが……私が』 プルプル

前提督『…………僕は咄嗟に君達に支援艦隊を向かわせた。私も小型の船に乗り、一緒に向かった』

三日月『!?』

前提督『君たちのいる海域に近づくにつれ、何かが見えた。燃え盛る何かが』

三日月『』

前提督『辿り着いて理解した。それが民間人の、僕の家族が乗っていた船だと』

三日月『』

前提督『……そして、血だらけの夕立と、珍しく大きな声をあげ、君の名を呼ぶ神通と、満身創痍で気絶している三日月の姿がそこにはあった』

三日月『』

前提督『状況を察した。僕は君達“三人”を船に乗せ、三日月と夕立の応急手当をして、あの海域の近くにあった鎮守府に連絡し、入渠場とこの部屋を借りた』

三日月『』

前提督『……神通。作戦結果を頼む』

神通『…………はい』

三日月『』

神通『……海上護衛遠征任務は失敗。船に乗っていた乗員は民間人含めて』

三日月『』

神通『生き残りは……一人もいません』

三日月『……わたしのせいだ』

三日月『わたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだわたしのせいだ!!』

夕立『み、三日月ちゃん!!』 ダキッ

三日月『わたしのせいだ……!! ぁぁぁあああ!! ――うわあああああああああああああああああああッ!!』

夕立『違うよ!! あなたのせいじゃない!!』

三日月『私があそこで!! 私が!! 私が魚雷を撃って!!』

三日月『ふ、ふねを……しずめた!!』

神通『……三日月ちゃん』

三日月『うっぐ……ひぐっ……!!』

神通『……取り乱して泣くことが、今のあなたのするべきことですか?』

三日月『……っ!!』

前提督『……………………』

三日月『司令官……ごめんなさい……!! ごめんなさ――』

 コンコンコン

三日月『!?』




426: ◆8Wn59wFc0I 2015/09/29(火) 06:07:37.44 ID:Fjl+YkHv0


前提督『……はい、どうぞ』

元帥『失礼するぞ』 ガチャリ

夕立『!?』 バッ

神通『……』 ビシッ

三日月『…………』

元帥『ふむ。どうやら眠っていた艦娘は目が覚めたようだね?』

前提督『はい、先ほど目が覚めたようです』

元帥『ほほう、それはよかった』

前提督『突然の申し出であったのにも関わらず、入渠場とこの場をお借しいただき本当に感謝しております』 ペコリ

元帥『なぁに、この程度のことお安い御用さ。それより君に大本営から電話が来ておる』 グイ

前提督『あぁ、恐らく先ほど電文で連絡した、遠征任務の結果についてのことかと』

三日月『!?』

元帥『なるほど。それじゃあ、わしは部屋に戻っとる。後で戻しに来てくれい』 スタスタ   ガチャ

前提督『……少し電話に出る。静かにしていてくれ』

神通『はい』

夕立『……ぽい』

三日月『…………』



427: ◆8Wn59wFc0I 2015/09/29(火) 06:46:23.38 ID:Fjl+YkHv0


 ポチ

前提督『お電話お替り致しました』

『……君が先ほど送ってきた電文を確認した』

 その電話の主の声は私にも届いた。恐らく神通さんも夕立さんも聞こえているんだろう。

『君は今の状況を理解しているのかね?』

前提督『はい。十分承知しております』

『……“君の判断ミスで船を轟沈させた”……? 全ては君の責任だと言いたいのかね!?』

神通『!?』
夕立『!?』

三日月『……え?』

前提督『その通りです』

『……良いことを教えてあげよう』

『深海棲艦が船を沈めた場合、その罪は護衛していた艦娘が償うことになる』

『そしてこんなことはあり得ないことだが、護衛任務において護衛していた船に誤射し沈めた場合も当然艦娘の罪となる』

三日月『…………』

『……艦娘を庇うなど愚かなことだぞ?』

『……替え等すぐに建造(つく)れるのだからな』

前提督『電文でお伝えした通りです』

前提督『船が沈んだ原因は私です』

三日月『司令官!!』

神通『三日月ちゃん、静かに……!!』

三日月『で、ですが……!!』

『…………』

『……君は馬鹿な男だな。本当に馬鹿な男だ。愚か者だ』

前提督『…………』

『第八鎮守府提督。第二階級降等だ。自ら給料を減らすなど愚かな男だ』

 ――プツ

前提督『……はは、僕は大佐くらいが丁度良いさ』

三日月『司令官ッ!!』

前提督『……なんだい、三日月?』

三日月『何を……言ってるんですか』

三日月『なんで!! あなたの罪になるんですかッ!!』

三日月『なんで……なんで!!』

前提督『……三日月』

前提督『僕は本当の事しか言っていないよ』




434: ◆8Wn59wFc0I 2015/10/01(木) 02:23:32.51 ID:1RVjuBA20


三日月『な、なにを言って……』

前提督『最初からさ……もっと任務に艦娘を就ければよかったんだ。その時点で、判断ミスがあったんだ』

前提督『遠征任務の万が一のことを考えていなかったんだ……大切な人が乗っていたのに……いつも通り成功するだろうと……慢心しきっていたのさ』

三日月『違います!! あなたは何も!!』

夕立『……三日月ちゃん』

三日月『夕立さん!! あなたも司令官に言ってあげてください!!』

夕立『うん。言うよ』

夕立『提督さん……』

前提督『……なんだい、夕立』

夕立『船が沈んだのはあなたのせいでも三日月ちゃんのせいでもないっぽい』

夕立『……私がしっかりハ級を確認しなかったから。あそこで夕立がちゃんと確認して、トドメをさしていたらこんなことにはならなかった』

三日月『夕立さん、あなたまで何を……!!』

神通『……私も……前に出過ぎて……慢心しきっていました。船が沈んだ……私が原因』

三日月『神通さんまで……!!』

前提督『……それぞれが皆……失敗したんだ……』

三日月(……何を言ってるんだ)

前提督『……ははは……本当に、馬鹿だよ……僕は』 ポロポロ

三日月『――――――――――』

三日月(みんなはいったい何を言っているんだ。司令官は泣きながら……何を言っているんだ)







夕立「皆が、罪を認めていたんだ」

菊月「…………」

夕立「でも、あの子は……」

夕立「…………三日月ちゃんは……全部一人で抱えた」

夕立「そして提督さんは…………耐えきれなくなって」







三日月『私のせいなんですッ!! 全部ッ!!』







夕立「壊れた」




467: ◆8Wn59wFc0I 2015/11/24(火) 08:32:56.03 ID:SFz+dHfp0


夕立「提督さんは、限界だった。でも、必死に必死に耐えていた。堪えていた」

夕立「でも、限界の人を壊すのなんて……簡単な事っぽい」







夕立『三日月ちゃん……?』

三日月『全部……私のせいなんです……全部』

前提督『三日月、それは違う』

三日月『違くなんかありません!!』

三日月『だって! 船は私が直接撃って沈めたんですよ!? 私がこの手で!!』

神通『三日月ちゃん!! 落ち着いてください!!』

三日月『そもそも……あれだけ撃って敵を沈められないなんて……私……!!』

夕立『それは……で、でも! 夕立が確認しなかったから!』

三日月『そんなの!! 関係ない!!』

夕立『……関係ない?』

三日月『そうですよ。だって、だって! 私が完璧に奴を沈めていたら確認なんてしなくても……良かった』

夕立『み、三日月ちゃん。一人で抱え込んじゃダメだよ。私達、仲間でしょ? 友達でしょ?』

夕立『ゆ、夕立達……“お互いを助け合う事を約束し合った友達同士”でしょ?』

夕立『だから、一人で抱え込んじゃ――』

三日月『そんなの今は関係ありませんッ!!』

夕立『…………』

夕立『な、なによ……それ……』

夕立『なによそれッ!!』

夕立『関係ないって……なによ、それ……』 ポロポロ

三日月『…………関係ないです』

三日月『だって全部私が――』


前提督『――そうだ。そうだよ。そうだよなぁ』


神通『え?』

前提督『そうだ、そうだ……そうだそうだそうだ……』 ブツブツ

夕立『提督さん……?』

前提督『三日月』

前提督『全部お前が悪いんだ』

三日月『…………』

前提督『全部お前が悪いんだ』




468: ◆8Wn59wFc0I 2015/11/24(火) 08:37:00.69 ID:SFz+dHfp0


夕立「提督さんは、あの子の言葉を真に受けてしまった。取り乱して、一人で抱え込む……馬鹿の言葉を真に受けてしまった」

夕立「甘えるように……何かに縋り付くように……」







神通『提督!』

前提督『神通、静かにしていてくれ』

前提督『僕は今この兵器と話しているんだ』

三日月『…………』

神通『……え?』

夕立『兵、器?』

前提督『あぁ、兵器だ。僕の家族の命を奪った、危険な兵器だ』

神通『提督ッ!!』

前提督『神通』

前提督『黙っていてくれ』

神通『…………ッ』

前提督『三日月』

三日月『は、はい……』

前提督『……役に立たない兵器だな、君は。……疫病神め』

三日月『ッ』 ギュ

前提督『役立たずめ』

 バキ!!

三日月『ぃッ!』

夕立『!? て、提督さん!!』

神通『ダメです!! 提督!!』 ガシ

前提督『止めるなぁ!!』

前提督『こいつは!! 僕の家族を……僕の家族をッ!!』

三日月『ぁ……う』 ブルブル

前提督『この役立たずめ』

三日月『…………』 ブルブル

前提督『無能。疫病神。……この役立たずが!!』

前提督『お前が僕の家族を殺したんだ!!』

三日月『…………っ!』

三日月『ごめんなさい……ごめんなさい……』



482: ◆8Wn59wFc0I 2016/01/26(火) 03:44:56.84 ID:OplaWypA0


夕立「その後、騒ぎに気が付いた元帥さんとその艦娘達がなんとか止めてくれたの」

夕立「……あのままだったら、どうなってたんだろう。想像するだけで怖い」







前提督『それでは元帥。ご迷惑をおかけしました。本当にありがとうございました。このお礼は後ほど必ず』 バッ

元帥『なぁに、別に構わんよ。同胞のためさ』

元帥『それよりも、君は自分の事を心配した方が良いと思うぞ……?』

前提督『私の事……?』

元帥『……まぁ良い。今の君は、疲弊しきっている。いつか自分で、気が付けるようにな』

前提督『……?』

神通『…………』

夕立『…………』

三日月『…………』

 誰も何も会話をしない。そのまま私達は流れるように自分たちの鎮守府へと帰還しました。

 そして、そこから時間が過ぎるのはあっという間だった。




483: ◆8Wn59wFc0I 2016/01/26(火) 03:49:02.44 ID:OplaWypA0



三日月『…………』 スタスタ

三日月『……あ』

夕立『…………』

夕立『…………ふん』 スタスタ

三日月『…………』

 気が付けば、夕立さんは私と会話しなくなっていた。本当はしたかったけど、夕立さんに嫌われてしまった今では夢のまた夢の話だ。


三日月『…………』 スタスタ

三日月「!!」 チラ


前提督『そうか、では次の作戦の旗艦は引き続き神通にやってもらう』

神通『了解しました。必ず成功させて戻って参ります』


三日月『(司令官と……神通さん)』


前提督『あぁ、期待してるよ』

神通『……あの、提督』

前提督『ん? なんだい?』

神通『その……何でいまだに私を旗艦として使ってくれるのですか?』

前提督『はは、何を言っているんだ。君とは僕が提督になる前からの知り合いだ。誰よりも信頼しているよ』

前提督『あと、自分のことを“使ってくれる”なんて言い方、するんじゃない』

神通『ですが……私はだいぶ前にですが……』

前提督『神通』

前提督『もうその話は……いいから』

前提督『それにあの事件の原因は君ではない』


三日月『…………』


神通『…………』

前提督『ほら、その話はおしまいだ。今日はもう身体をゆっくり休めなさい』

神通『……はい。失礼いたします』 スタスタ



484: ◆8Wn59wFc0I 2016/01/26(火) 03:50:34.39 ID:OplaWypA0


三日月『(し、司令官がこっちに来る)』

前提督『ん?』 ピタ

三日月『あっ……司令官。こ、こんにちは』

前提督『……こんなとこで何をしているんだ?』

三日月『え?』

前提督『プラプラとすることもなく歩き回っていたのか? そんなことしている暇があったら訓練でもしてくるんだな』

三日月『ほ、本日はもう休んでいいと神通さんから今朝言われて……その』

前提督『……はは。そんなんだから強くなれないんだ』

前提督『だったら自主錬でもしてればいいじゃないか。まぁ、君がこれ以上強くなれることはもうないかもしれないけどな』

三日月『……!!』

前提督『はは、冗談だ。まったく、嫌がらせのための嘘すら見抜けないくらい君は無能なんだな』 スタスタ

三日月『…………っ』

三日月『訓練、しなきゃ……』

三日月『もっともっと頑張って……訓練しなきゃ……!!』

 私は無能なんだから。



 いろんなことを言われ続けた。ずっと、ずっと。私が悪いから、仕方がないと思っていたけれど、やっぱり辛かった。
けど、なぜだか解体はされなかった。飛ばされることもなかった。

 あの時が来るまでは。




485: ◆8Wn59wFc0I 2016/01/26(火) 03:51:45.40 ID:OplaWypA0


三日月『え? 私が……秘書官……?』

神通『えぇ。ローテーションですからね、この鎮守府の秘書官は。今朝提督から伝達の指示がありました』

三日月『は、はぁ』

三日月『(なんでだろ……秘書官、しばらくローテーションから外されたと思ってたのに……)』

神通『という事で、朝練はこのくらいで切り上げて、ささっとシャワーを浴びてきて、お仕事に向かってください』 ナデナデ

三日月『りょ、了解しました。けど、どうしてなでなでするんですか……?』

神通『……頑張ってというおまじないです。ほら、時間はありませんよ?』 ニッコリ

三日月『は、はい! 本日もご指導ありがとうございました!』 タッタッタッタ


<司令室、ドア前>

三日月『(緊張する……身体が震える)』

三日月『(……また、色々と言われるんだろうな)』

三日月『(!! って、なんで私怖がってるんだ! そんなのあたり前じゃない。私は司令官から恨まれて、当然なんだ。嫌がっちゃ、ダメだ……!!)』 ブンブン

三日月『し、失礼します』 コンコンコン

 ガチャリ



 そして、この日私はやってしまうんだ。

 とんでもないことを。




486: ◆8Wn59wFc0I 2016/01/26(火) 03:54:03.40 ID:OplaWypA0



三日月『はぁ、はぁ、はぁ』

前提督『…………』 ボタ、ボタ

三日月『!? わ、私……!!』

三日月『(な、なんてことを……!!)』

 気が付いたら私は司令官を殴ってしまっていた。ボタボタと鼻血を流す司令官は笑っていた。

前提督『ははは、“私を馬鹿にするのは構わないけど、大切な姉妹を馬鹿にするのはやめろ”だって? 僕の家族を殺した君がそれを言うのか』

三日月『ご、ごめんなさい……ごめんなさい』

 最初はいつも通りの悪口だけだった。罵倒されていただけだった。いつものことだった。
 でも、その後の言葉は初めて耳にした言葉だった。秘書官の仕事で焦って遅くなっていた私が耳に聞き入れた言葉は。

前提督『所詮は睦月型だな。役立たずめ。加えてお前は無個性……やれやれだな』

 この時の私は――“感情を殺せなかった”。いつもの嫌がらせの言葉として聞き入れればよかったのに。ダメだった。

 殴ってしまった。殴ってしまった。私は、恨まれていて当たり前の私は。司令官を殴ってしまった。

前提督『……』 ヨロ

 スタスタスタスタ

前提督『…………中々、痛かったよ』 スッ

 司令官が、私に手を伸ばした。にこりと笑いながら。
 私は、ただひたすら怯えた。

三日月『ひっ……!!』 ビクッ

 殴られると思ったから。“あの時”みたいに。
 そうされて当たり前なのに、私は怯えてしまった。

三日月『ごめんなさい、ごめんなさい!!』

前提督『…………』

 私は……本当に、ダメな子だ。震えが止まらなかった。

 ダッダッダッダ!!

 バターン!!

神通『大きな音が聞こえましたが何の――え? て、提督!? 大丈夫ですか!? み、三日月ちゃん!?』

 騒ぎに気が付いた神通さんがやって来た。

前提督『三日月』

前提督『君はこの鎮守府から追放だ。上に伝えて、適当な場所へ飛ばしてもらう』

前提督『……僕の前から……消えるんだ』

 そして私は。







三日月「……ここへとやって来たの」




487: ◆8Wn59wFc0I 2016/01/26(火) 03:55:45.56 ID:OplaWypA0


三日月「…………」

電「…………」 グスグス

三日月「電ちゃん……どうして泣いてるの?」

電「……電にも、分からないのです」

電「けど、なぜだか涙が止まらないのです」

三日月「……ごめんなさい」

三日月「けど、全部本当の事だよ。これが私の犯してしまった罪なの」

三日月「あの人の家族を撃ってしまって、挙句の果てあの人を……殴って……暴力事件を起こして……しまった」

三日月「全部、私が悪いはずなのに……!!」 ジワァ

電「三日月ちゃん……!!」 ギュ

三日月「電ちゃんは……この話全部きいて……なんで軽蔑しないんですか? なんでこうやって、抱きしめてくれるの?」

電「電は……電は!!」

電「三日月ちゃんの味方なのです!! 何があっても!!」 ギュ

三日月「……っ、電ちゃんは、お人好しだもんね」

電「けど!! 三日月ちゃんはお馬鹿さんなのです!!」

三日月「え?」

電「大馬鹿さんなのです!! ……抱え込み過ぎなのです……頑張りすぎ……なのです……!!」 ギュー

三日月「……――だって、だって!!」

三日月「私が悪いのは……本当の事じゃない!!」

三日月「抱えるよッ!! 私がやってしまったんだから!!」

三日月「頑張るよッ!! だって、だって!!」

三日月「頑張って頑張って、頑張って……っ!!」


三日月「もっと……もっと頑張らないと……私は……!!」

電「……三日月ちゃん」


三日月「耐えられない……!!」




505: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 07:57:21.05 ID:alpQ8Sg40


三日月「耐えられないのよ……!!」

電「……でも、その頑張りが、三日月ちゃん自身を傷つけているのです」

三日月「!!」

電「確かに、三日月ちゃんがやってしまったことは……その…………許されない事なのかもしれません」

電「けど、電は……私は!!」

電「三日月ちゃんを責める事なんか、できないのです!」 ギュー

三日月「電ちゃん……」

電「……三日月ちゃんの前の司令官さん達だって、その時は……ううん」

電「今だって多分、三日月ちゃんのせいにしてなんか、いないのです」

三日月「……それは、ありえないよ……」

電「……確かに、今のあの人は、そう思っているかもしれないのです。だけど、そんなのきっと……本当の感情じゃないのです。あの人もきっと、三日月ちゃんと同じなのです」

電「自分だけで抱え込もうとしたのです。だけど三日月ちゃんもそうしようとしたから……あの人は三日月ちゃんに依存してしまっているのかもしれません」

三日月「私に……?」

電「電の予測にしか過ぎないのです。三日月ちゃん、好きの対義語はなんだか知っていますか?」

三日月「……無関心」

電「そうなのです」

三日月(私が解体されたりしなかったのは……そういう事なのかな?)

電「……人の心は、難しいのです……」

三日月「……うん……」

電「でも私は、あの人の事は……許せないのです。絶対に、許すことはできないのです」

電「大事な友達を傷付けたあの人を許すことはできません」

三日月「私があの人の家族を撃ってしまったという過去があっても?」

電「はい」

三日月「……ブレないね、電ちゃんは」

電「よくお姉ちゃん達からも頑固者だって言われてたのです」

三日月「……ふふ、意外な一面だね」

電「でも、私は、あの人よりも許せない人達がいるのです」 ボソ

三日月「え?」

電「……なんでもないのです」




506: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 08:08:47.78 ID:alpQ8Sg40


電「三日月ちゃん、もう一人で抱え込まないでほしいのです。罪を認めて償う事は……大切なことだとは思います。けど、全部自分だけで抱え込むことは良くないのです」

電「三日月ちゃんには、仲間がいます。司令官さんも、金剛さんも、電も、みんなみんな三日月ちゃんの仲間なのです」

三日月「……うん」

電「何があっても、電は三日月ちゃんの仲間なのです」

三日月「うん……!! うん……っ!!」

電「さぁ、もう電は平気なのです。三日月ちゃん、戻りましょう。一緒に、ね?」

三日月「うん……!!」 ギュー

電「…………」 ヨシヨシ

電(……やるべきことが、決まったのです)




508: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 08:48:08.42 ID:alpQ8Sg40



提督「…………」

金剛「…………」

神通「…………」

前提督「さぁ、長い長い昔話は終わったよ。少し疲れたねぇ」

前提督「――で、お二人とも黙り込んでしまったけれど、もしかして少々退屈だったかい? それとも……」

提督「なぁ」

前提督「ん?」

提督「一年前のその事件、船の船長男で、補佐は女性だったか? 大体同じくらいの年齢の」

前提督「さぁ、僕から何とも言えないよ。神通、その辺りはどうだった?」

神通「はい、あなたが言う通りでしたよ。……とても優しい方々でした」

提督「…………そっか」

金剛(……提督? なんかちょっと表情が暗い気が……?)

前提督「まぁ、そういう事で話を戻そうか。この話を聞いてどう思う?」

提督「そうだな。色々と思う所はあるさ。けど……なんでアンタは……」

前提督「……」

提督「そうなっちまったんだよ……アンタだって本当は……わかってるんじゃねぇか……」

前提督「……話が見えないね。いったい何を言っているんだい?」

提督「……アンタは、逃げてるだけだ。自分で分かってるのに、分かっていたはずなのに、なんでアンタはアイツの馬鹿な言葉に真を受けたんだよ!」

提督「何が『全部お前が悪い』だよ。アンタだってそんなはずないって思ってたのに……なんで……真に受けてんだよ……」

金剛「提督……」

前提督「……ふん」

 ガチャリ

夕立「ただいま戻ったっぽい」

菊月「…………」

前提督「あぁ、戻ったのか。おかえり、夕立……と、菊月も一緒だったのか」

夕立「うん」

神通「電さんと……三日月ちゃんは?」

夕立「えと……ごめんなさい。送った後夕立は別行動をしちゃってて……それで途中から菊月ちゃんと一緒にいたっぽい。あと、電ちゃんなら無事入渠できたから安心っぽい」

神通「そうだったんですか。けど、結構戻って来るの遅かったんですね」

夕立「じ、実は道に迷っちゃってたっぽい! それで菊月ちゃんとたまたま合流して戻って来れたっぽい! ね、ね? 菊月ちゃん」

菊月「……あぁ」

前提督「……彼女、無事だったみたいだね。良かったじゃないか、少佐殿」

提督「あぁ、本当に良かった。……とりあえず、この事に関してはちゃんと上に報告するからな」

前提督「……無駄な事だよ。君だって上に言ったところで意味はないってわかってるだろうに」




509: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 09:03:39.93 ID:alpQ8Sg40


提督「…………」

前提督「……さて、興が醒めてしまったね。彼女達が戻ってきたら僕らはそろそろ帰らせてもら――」

提督「待てよ」

前提督「ん?」

提督「後日でいい。俺達と演習をしてくれ」

前提督「は?」

提督「唐突過ぎるって事は百も承知だ。でも、さ……このままはいさよならだと色々と腑に落ちないんだよ」

提督「だから、演習を組ませてほしい」

前提督「……訳が分からないね。そんな演習、意味を成さないよ。そもそも、君が今いるこの鎮守府はできたばっかじゃないか。とても演習ができるとは思えないさ」

提督「そうでもないさ。アンタ、今連れてきている艦娘は全員合わせて三人だろ? この鎮守府にいるのも三人。ちょうど三対三だ」

前提督「……意味がないし時間の無駄だ。しかもそんなの――」

提督「勝ち負けの結果は見えてるってか? そうでもないさ。アンタだって、提督なんだから分かるんだろ? 練度」

提督「できたばっかのうちの鎮守府にも、練度の高い艦娘はいる。別のところからやって来た、自分に自信が無さ過ぎる真面目な努力家がな」

前提督「ッ!!」

提督「あの子だけじゃない。うちには金剛も電だっている。そいつらでアンタに……勝ってやる。な、金剛?」

金剛「……フフフ……フッフッフ―! 提督は最高デース! 負ける気がしないデース!!」

金剛「それに、演習だったラー……合法的にyou達をボッコボコにできる」

夕立「!!」

神通「……」

金剛「神通―、あなたの言ってる事、私は間違ってると思いマース。でも譲れないことだってことも分かってマース。だから、海の上で決着つけまショウ」

神通「ふふ、面白いですね」

前提督「!! おい、神通。何を勝手に」

神通「別に問題ないと思いますよ。演習はお互いに経験値が積めます。それに、結果は見えてるんですから、経験値はこちらが多く積めますから」 ニッコリ

金剛「ホッホーウ……面白いデース!」 ニコニコ

 バチバチバチバチ

夕立(お互い笑顔なのに火花が見えるっぽい)

菊月「…………」



「電からもその演習、お願いしたいのです」

 ガチャリ





510: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 09:04:54.08 ID:alpQ8Sg40


電「…………」

提督「電!」

金剛「電!! それに……ヅッキー」

電「はい、ただいま戻ったのです」 ニッコリ

三日月「…………」

前提督「…………」

電「……三日月ちゃん、電がいるのです」

三日月「…………うん」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 スタスタスタスタ

電「三日月ちゃん、落ち着きましたか?」

三日月「……はい。大分落ち着きました」

三日月「なんか、本当に色々とごめ――」

電「三日月ちゃん、謝らなくていいのです。どちらかと言うと、電は謝られるのは好きじゃないのです」

電「電も謝ってばっかですけどね。あはは」

三日月「……電ちゃん、ありがとう」

電「いえいえ、なのです!」 ニッコリ

三日月(……前に、司令官にも似た様な事言われたなぁ)

電「? 三日月ちゃん、どうかしました? ニコニコしてるのです」

三日月「え? 本当ですか? 私ニコニコしてました?」

電「はい。とっても可愛いのです」

三日月「か、かわ……あはは、ありがとう。けど、別になんでもないですよ」

電「ならいいのですけれど」

三日月「……電ちゃん」

電「? なのです?」

三日月「私、電ちゃんに会えてよかった」

電「!?」

三日月「電ちゃんに会えて、本当に良かった。司令官に会えてよかった。金剛ちゃんに会えてよかった……けど、あの人達の事も……私が壊してしまった関係だけど……私はあの日々の楽しさを過去のものにしたくないかな」

三日月「私なんかが言っちゃいけないことだと思うけど……ね」

電「……そんなことないのです」

三日月「……私、この前強くなるって誓ったばっかなの。でも、まだまだ弱いし、精神面でも……未熟者だし……ダメダメな私だけど……」

電「……うん」

三日月「もう、逃げない。犯してしまった罪は帳消しにできないし、私は、今でも“自分が一番悪い”って思ってる。けど、もう逃げないよ」

三日月「――ひとつひとつになっちゃうけど、解決していきたい。この先何があったとしても……私が壊してしまった過去に向き合う」

電「……それが、――それが三日月ちゃんの思いなら、電は喜んで協力するのです!」

三日月「うん。ありがとう、電ちゃん」

三日月(電ちゃんがいたから、私はこう考えれるようになったんだ。全部自分で抱え込むだけじゃ、ダメなんだ)

三日月「……電ちゃん……これからも私の友達でいてくれる……?」

電「……何言ってるのですか。これからもずっと友達なのです!」

三日月「――うん!」




511: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 09:06:02.64 ID:alpQ8Sg40


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 私はもう逃げない。

三日月「し、司令官!! 金剛さん!!」

三日月「私は、あなた達に話していないことがあります。私は昔、取り返しのつかないことをやってしまったんです」

三日月「許されないことです。絶対に。それほどの事を私はやってしまったんです」

三日月「多くの人達が犠牲になりました。私が、原因です」

三日月「……私は、あなた達にこの事を何も伝えなかった。いいえ、伝えられませんでした」

三日月「怖かったから……伝えられませんでした」

三日月「でも、もう逃げません。何を言われても、私は向き合います。詳しい内容は長くなっちゃうので今は厳しいですけれど、全部伝えます。司令官も金剛さんも……仲間ですから」

提督「…………」

金剛「…………」


三日月「……神通さん!! 夕立さん!! 菊月!! ――司令官!!」

三日月「――ごめんなさい!!」

前提督「…………っ」

夕立「…………」

菊月「…………」

三日月「……あ、あの」

神通「――それは」

三日月「え?」

神通「それは、何に対しての謝罪なんですか?」

三日月「あの……」

神通「ゆっくりでいいです。ちゃんと、全部、思ってることを言葉にしなさい。……もう、逃げないんでしょう?」

三日月「!! は、はい!!」

電「…………」



512: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 09:07:16.49 ID:alpQ8Sg40


三日月「……私は……っ、わ、私は……あの時の事、今でも“自分が一番悪い”って思っています」

夕立「っ!」

三日月「でも!! 私は、あの時なんにも考えれていなかった。皆さんの言葉に、向き合っていなかった。それが、私がやってしまった“一番悪いこと”です」

夕立「…………」

三日月「夕立さんも、神通さんも……司令官も、向き合っていました……なのに私は、全部自分で抱えました。自分一人で」

三日月「私は、一番悪いことをしました。取り返しのつかないことをしました。司令官に、恨まれて当たり前のことをしました。けど、それ以上の“一番悪いこと”をやってしまったんです」

三日月「それに、菊月にも……大切な姉妹にも何も伝えなかった。いっぱい心配かけちゃったよね?」

菊月「…………」

三日月「こんなこと言っても、意味ないってことは分かってます。ただの自己満足だって言われたら、否定できません。その通りだって思います。けど、もう一度言います」

三日月「神通さん。夕立さん。菊月。司令官」

三日月「ごめんなさい」

夕立「…………」

菊月「…………みか――」

前提督「――それで、僕の家族は戻って来るのか?」

菊月「ぁ……」

三日月「…………」 フリフリ

前提督「お前は、僕の大切な家族を、殺したんだ」

三日月「はい」 コクン

前提督「……お前は僕の大切な家族を殺したんだ!!」

三日月「はい」 コクン

前提督「もう、戻って来ないんだ。お前が撃った魚雷で、跡形もなく……なった」

三日月「はい」 コクン

前提督「……僕がお前に投げかけた言葉は、間違ってたんだ。全部お前が悪いんだ」

三日月「はい」 コクン

前提督「ッ!!」

 バシーンッ!!

三日月「ぃッ!!」

提督「!!」 ガタッ

 バッ

提督「!?」

電「…………」 フリフリ

提督「……電……」




513: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 09:07:53.31 ID:alpQ8Sg40


前提督「……なんなんだよその目は。いつも通り怯えろよ。苦しめよ!! 嫌がれよ!! ――そんな目で、僕と向き合うな!!」

三日月「……嫌です、司令官。私は、もう逃げないって決めたんです。好きなだけ、殴っていいです。罵っていいです。私は、それだけの事をやってしまったんです。けど、もう、怯えません。逃げません」

前提督「ッ――!!」

三日月「司令官。本当に、ごめんなさい」

前提督「……黙れッ!!」

三日月「ッ」 ビク

前提督「はぁ……はぁ……はぁ……」

前提督「……少佐殿。すまない。僕はもう帰らせていただくよ。気分が悪い」

提督「…………」

前提督「……演習は、一週間後でいいかい?」

提督「ん?」

前提督「一週間後なら、演習は可能だ。連れてくるのは、今いるこの三人だけだ。君の出した条件で受けて立ってやる」

前提督「……そこにいる兵器に、後悔をさせてやる。ボコボコにしてやる。心を折ってやる」

三日月「…………」

提督「演習を組んでくれることに、感謝するよ。……けど」

提督「絶対に負けねぇ」




514: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 09:09:00.09 ID:alpQ8Sg40


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

提督「いやー本当に疲れたな~」

金剛「本当デース! もうクタクタデース」

提督「はっはっは! 明日からまた演習の連続になるから、今日はもう思う存分休むがよいぞ?」

金剛「HAHAHA! もう夜じゃないですカー!」

提督「おう、そうだったなー」

三日月「あ、あの……」

提督「そういえば電のやつ、本当にマメだよな。見送りは良いってあっちから言ってんのにわざわざ見送りに行くなんてな」

金剛「この鎮守府の子はみんな真面目でいい子デスからネー」

提督「はっはっは! そうだったな!!」

三日月「あ、あの!!」

提督「ん? どうした三日月?」

金剛「レディーが突然大きな声出すのは良くないデース!!」

三日月「え、えと……そろそろ話してもいいですか? 私の隠していた罪についての話を」

提督「……なぁ、三日月」

三日月「はい」

提督「あのさぁ……別に全部話す必要なんてなくないか?」

三日月「へ?」

提督「誰だって秘密はあるし、隠したいことだってあるに決まってる」

三日月「そ、それは……」

提督「だからさ、三日月。別に話さなくても大丈夫だぞ? その罪ってやつを俺に伝えようが伝えなかろうが、俺は……お前の味方だ。仲間だ」 ニッコリ

三日月「……お気遣い、ありがとうございます。司令官」

三日月「でも、これは……話したいことなんです。伝えたいことなんです。司令官にも、金剛さんにも」

提督「……わかった。それがお前の本当の気持ちなんだな?」

三日月「はい! 私はもう逃げません。ちゃんと、全部、伝えます」

提督「……実はな、俺も金剛もアイツから全部聞かされてるんだ」

金剛「……アハハ……」

三日月「……へ?」

提督「全部、知ってるよ……けど、俺はお前から全てを聞きたい。お前の気持ちに、正面からぶつかりたい」

三日月「……司令官」

金剛「……ワタシも、ヅッキーから聞きたいデス」 ニッコリ

三日月「……金剛さん」

三日月「……っ」 ゴシゴシ

三日月「聞いてください。私の罪の話を――」




515: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 09:09:57.48 ID:alpQ8Sg40


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

電「本日は遠い所からお訪ねいただき、ありがとうございましたなのです」

前提督「……あぁ、お見送りわざわざありがとう。一応お礼は言っておくよ」

電「いえいえ。電も秘書官の建前としてやっているだけなのです」

前提督「……ふん」

電「そう言えば夕立さん」

夕立「……何?」

電「電の事、運んでくれたって聞きました。ありがとうございました」

夕立「……別に、いいっぽい」

電「……けど、言いたいことがあるのです」

夕立「…………」

電「……電は、三日月ちゃんの味方です。彼女が言う事に協力してあげるつもりです。……ですが、私個人として、言いたいことがあるのです。……夕立さんも神通さんも……菊月さんも……あなた方の司令官さんも」

電「電は絶対に許しません」




516: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/01(金) 09:11:57.93 ID:alpQ8Sg40


前提督「……ほう?」

電「夕立さん、三日月ちゃんにしたことは、ただの裏切り行為なのです」

夕立「は?」

電「……本当の友達だったら、友達が間違っている事を言っていたら……それを伝えてあげるべきなのです」

電「……夕立さんは、三日月ちゃんから逃げているだけなのです」

夕立「ッ、この……」

電「神通さん。あなたの忠誠の仕方は、間違っているのです。……あなたは三日月ちゃんに優しくしてるみたいですが、それこそ自己満足なのです」

電「――優しくするんだったら、どうしてあの子がその人にいじめられている時に、助けてあげないんですか!! 守ってあげないんですか!!」

電「……あなたが守りたいのはその人なんですか? 三日月ちゃんなんですか?」

神通「…………」

電「菊月さんだって、そうなのです」

菊月「っ」

電「さっきから、黙っているばかり……全部、知ったのでしょう?」

菊月「…………」

電「……三日月ちゃんがあなた達姉妹に何も話していなかったのは、確かに彼女が悪いとは思います。でも、なんで受け身の形なんですか。あの子は、抱え込んでしまう子だって、姉のあなたが一番理解しているはずでしょう!?」

電「……姉妹ってのは、正面からぶつかり合うものなのです! 姉妹の様子がおかしかったら、無理矢理でも聞き出すものなのです……!! 今あなたが良くしてもらってるかもしれませんが、その分三日月ちゃんは苦しんでいたのです!!」

夕立「……黙って聞いてれば……!!」

菊月「夕立!」

夕立「……菊月ちゃん」

菊月「……大丈夫だ」

電「……今のあなた方は、三日月ちゃんに擦り付けているだけなのです。達観している気分になってるのかもしれませんが、それこそ自己満足なのです」

電「……私は、あなた達に絶対負けません」

電「……三日月ちゃんのお馬鹿さに甘えて、いじめるわからず屋なんかに」

前提督「…………」

電「友達の間違いを正さない、被害者気取りのわからず屋なんかに」

夕立「…………」

電「上官のくせにどっちつかずの優柔不断なわからず屋なんかに」

神通「…………」

電「本当の事を知っても、何を言うべきか分からない、姉妹を一番理解をしているはずなのに……迷っているわからず屋なんかに」

菊月「…………」

電「――電は、絶対に負けないのです!!」

電「なにが……そこにいる兵器に、後悔をさせてやる。ボコボコにしてやる。心を折ってやる……ですか! こっちの台詞なのです!!」

電「後悔させてやるのです!! ボコボコにしてやるのです!! 心を折ってやるのです!!」

電「――電の本気を見るのですッ!!」




521: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/04(月) 08:26:00.55 ID:nLMgEvvH0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

三日月「――以上が……私の罪の話です」

提督「…………」

金剛「…………」

三日月「幻滅……しましたよね? ……でも、私はもうこの事を秘密にしないことにしたんです。私は、もう逃げたくないから」

提督「……」 ガタッ

三日月「ッ」 ビクッ

提督「三日月、お前さ」 スタスタスタスタ

三日月「は、はい!」

 スタスタ、ピタ

提督「……ホント、真面目だよなぁ」

三日月「へ?」 キョトン

提督「いや、真面目すぎるわ。……本当に、さ」 ナデナデ

三日月「? ……?」

提督「……俺の母さんと父さんもさ、本当に真面目な人達だった。いや、むしろ真面目すぎだったな」

提督「息子の俺と弟の世話はちゃんとしてくれてたけど、やっぱり仕事一番の人達だった。仕事柄家にいないことも多かった。久々に帰って来たなぁと思ってたら、仕事で失敗してきたのか、すっげぇ落ち込んでたし、いつまでも反省してた。……息子の俺から見ても、気にしすぎだろって思えたな」

提督「……けど優しかった。俺、本当に二人の事……尊敬してた」

三日月「…………」

金剛「…………」

提督「真面目に何かできて、何事にも真っ直ぐ向き合えるって事はさ、誰にでもできる事じゃない」

三日月「…………」





522: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/04(月) 08:30:04.67 ID:nLMgEvvH0


提督「三日月はさ、なんか俺の親に似てるんだ。それが雰囲気で伝わるって来るって言うかさ……えと、な……最初会ったばっかの時からそんな感じがしてた」

提督「……ごめん、ちょっと気持ち悪いよな。こんなこと言われて」

三日月「!! そんなことないです」 フリフリ

提督「ははは、ありがとな。……三日月と会ったばっかの時さ、俺が手を伸ばした時、お前はすごく怯えたし、拒絶したよな」

三日月「……はい。あの時は、本当に失礼しました」

提督「いや、いいんだ。けど、当時はめっちゃ落ち込んだ。溜息も出ちまった」

三日月(……あの時の溜息はそういう事だったんだ)

提督「でも、今俺は三日月の過去の話を聞いて、何で拒絶されたのかって理由も分かったし、好きで拒絶したわけじゃないって事もわかった」

提督「……三日月」 スッ

三日月「え? し、司令官!?」

 ギュー

三日月「え、えええええ!? ぁ、あの!! 司令官!? ……こ、ここここ金剛さんが見てますよ!? そ、それに……は、恥ずかし……ぃ……!!///」 カァァァァ

提督「俺はお前を責めない」

三日月「――え?」

提督「俺はお前を責めない。幻滅もしない」

提督「……お前の頑張りを、知ってるから」

三日月「……司令官」

提督「三日月がやっちまった事は……許されることじゃない。多くの人が……犠牲になった。犠牲になった人の親族も、三日月の事……恨むと思う。俺だって多分、お前と会ってない状態でその事を聞いたら……三日月を許していないと思う。俺は聖人じゃないしな」

三日月「…………」

提督「けど、俺はお前を知ってる」

提督「お前の頑張りを知ってる」

提督「お前が罪を抱えて、一人で頑張ってきたことも今知った」

提督「……そんなお前の姿を知っていて、どうやってお前を責めろって言うんだよ……幻滅しただなんて……言えるんだよ。――無理に決まってんだろ!!」

三日月「…………」

提督「お前、ほんと真面目過ぎだ……全部一人で抱えるなよ……」 ギュー

三日月「……司令官も、電ちゃんと同じことを言うんですね」

金剛「――そんなの当たり前じゃないッ!!」





523: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/04(月) 08:31:09.58 ID:nLMgEvvH0


三日月「金剛さん……」

金剛「……ワタシも、同じ気持ち……責めないヨ……失望なんてしない!!」

金剛「……ワタシ、ヅッキーの事……大好きだもン。ヅッキーが頑張ってる事、知ってる」

金剛「ワタシが言っていい事じゃないってことも承知してる。……でも、ワタシは言うワ!」

金剛「ワタシは、ヅッキーの罪を許しマスッ!!」

三日月「こんごう……さん……!!」

 ガチャリ

電「そう言う事なのです」

三日月「……電ちゃん」

電「三日月ちゃん」

金剛「ヅッキー」

提督「三日月」


電「電はあなたを責めないのです」
金剛「ワタシはあなたを責めないワ」
提督「俺はお前を責めない」





524: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/04(月) 08:33:16.56 ID:nLMgEvvH0


三日月「……はは……あはは」

三日月「……わたし、さいきん……ほんとに……泣き虫なんです……!!」 ポロ、ポロ

三日月「……皆さん……お人好しすぎますよ」 ポロポロ

三日月「……ひっぐ……ぁう……!!」 ボロボロ

提督「…………」 ナデナデ

 司令官は何も言わず、私の頭を撫でてくれた。優しく抱きしめてくれた。泣いてる私を、静かに、抱きしめてくれた。
 ――優しい。皆、本当に優しい。こんな人達、珍しいと思う。お人好し過ぎる。おかしいとすら思ってしまう。

 ――けど、私はこの人たちが大好き。本当に、大好き。

三日月「……ぅぐっ……ぅう、っ……!!」

提督「…………」 ナデナデ

 トクン――と胸がときめく。ちょっと胸が苦しくなる。泣いているからなのかもしれない。
 トクン、トクン、トクン。胸が苦しいのに、全然気分が悪くない。むしろ、なんだか心地良かった。――この痛みが何なのかは、結局最後まで分からなかった。





525: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/04(月) 08:50:40.92 ID:nLMgEvvH0


提督「…………」

 ガチャ

金剛「ヘーイテートクー? 紅茶入れてきたデース」

提督「おぉ、ありがとう。……三日月は大丈夫だったか?」

金剛「ハイ。今はもうぐっすりデスヨー。電が一緒にいてくれてるし、ノープログレムだと思いマース」

提督「そっか。運んでくれてありがとうな、金剛」

金剛「お安い御用デース! ハイ、提督の紅茶だヨー」 ホイ!

提督「おう、ありがとう。いただくよ」

金剛「ふっふー、テートクー……お隣失礼するデース!!」 ポフン

提督「……なぁ、金剛。お前にだけは伝えておくよ」

金剛「ンー?」

提督「……俺は、上層部の人間が……大っ嫌いなんだ」

金剛「……理由、あるんでショー?」

提督「あぁ。……あいつらはな」

提督「艦娘を人間とは思ってない。ただの道具としか思っていないんだ」

金剛「…………」

提督「全員がそういう考えを持っているわけじゃないんだけどな。まぁ、それでも大抵の奴らは、艦娘を道具として扱ってる」

提督「俺は、どうしてもそれが許せないんだ」

金剛「どうしてデース?」

提督「え?」

金剛「提督。ワタシ達は、あなた達とは違うヨ」

金剛「艤装さえあれば海に浮かべる。力もある。……深海棲艦にまともに対抗できるのはワタシ達艦娘だけデス。……人類が、どうすることもできない、“敵”に対抗できる唯一のへい――」

提督「兵器じゃないよ」




526: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/04(月) 08:58:46.72 ID:nLMgEvvH0


金剛「……どうして?」

提督「お前らは、俺達と変わらない人間だよ」

提督「泣いて、笑って、怒って、時には苦しみながら、一生懸命……戦ってる。そんなお前達が、兵器なわけない」

金剛「……提督」

提督「感情があるんだ。戦うために、努力だってしてるんだ。……なんで上の奴らはそんなお前らの事を兵器だなんて言えるのか、俺には理解できねぇよ」

金剛「…………」

提督「けど、現実的に考えちまうと、俺みたいな考え方の奴がおかしいってのが今の現状だ。……でも、それでも俺は一つの鎮守府を任せられた、“提督”というものになれた。……お前らの練度を見れるっていう不思議な才能があったからな」

金剛「…………」

提督「こんな変人な俺ですら提督にしなきゃいけないくらい、今は人材不足なのさ。……この才能があったら、子供でも、女でも、老人でも、誰でも“提督”になれる。……当然士官学校には入れられて、色々と勉強させられるけどな」

提督「……俺は、いつか上の奴らにお前らの考え方は間違ってるって言えるくらい、偉くなるつもりだ。その結果が……深海棲艦以外にも敵を増やすことになってもだ。――だから」

金剛「――もちろん、ついて行きマスヨ?」

提督「!!」

金剛「ワタシは、一生あなたについて行きマース」

金剛「……だって、提督の…………――○○さんの笑顔が……守りたいから」 ニッコリ

提督「……金剛……」

提督「本当にありがとう、な」 ニッコリ

金剛「えへへー……ハイデースっ!!」 ニコニコ

提督(……本当に金剛は……頼れる奴だな。アイツらも同じこと……言ってくれるのだろうか?)

金剛「……うふふふふー……でもでもぉ~/// 乙女に恥ずかしいことを言わせたテートクにはー……こうデース!」 ガバ

提督「おぅ!?」

金剛「えへへー、ヅッキー達がいたらこういう英国式スキンシップもできないもんネー! 今はワタシになすがままニ! ギューってされるデース!」 ギュー

提督「い、いや別にいいんだけどさ!! こ、紅茶こぼれる!!」

金剛「ヅッキーばっかり羨ましいからネー……ワタシだって甘えたいんですかラ~」 ギュー ニコニコ

提督「聞いてらっしゃらない!? って、金剛、本当にあぶ……――あっつーッ!!」




527: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/04(月) 08:59:57.14 ID:nLMgEvvH0


三日月「すぅー……すぅー……」

電「ふふ、三日月ちゃん可愛いのです」 ニッコリ

電「……今日は疲れたんですよねー? 本当に、お疲れさまなのです」 ナデナデ

三日月「……すぅー……んんー?」 ピクリ

電(はわわ!? 起きちゃったのです!?) ビク

三日月「……いなづまちゃん?」

電「はわわ……三日月ちゃん、ご、ごめんなさいなのです お、起こしちゃ――」

 ギュー

電「……なのです?」

三日月「……いなづまちゃん……ありがとう……ね……」

三日月「……すぅー……すぅー……」

電「ね、寝ちゃった……それとも、寝ぼけて、た? なのです?」

 ギュー

電「……えへへー……まぁ、可愛いから何でもいいのです!」

三日月「……すぅー……すぅー」

電「……ふわぁ~……電も眠くなってきちゃったのです」 ウトウト

電「けど……」 ジー

 ギュー

電「あははー……手、放してくれないのです」

電「――ハッ!! そうなのです! 電も三日月ちゃんと一緒にここで寝ればいいのです!!」 キラーン

電「そうと決まれば早速、お邪魔するのですー」 ヌクヌク

三日月「……すぅー……すぅー」

電「…………」

電(三日月ちゃん……電は、何があっても三日月ちゃんの味方なのです)

電「…………し、司令官さんだって……三日月ちゃんになら…………私はそのくらい、三日月ちゃんの事…………す……」

三日月「……すぅー……すぅー」

電「……三日月ちゃん、おやすみなさいっ、なのです」




528: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/04(月) 09:58:38.72 ID:nLMgEvvH0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 一週間なんて、すぐに過ぎるんだなって、実感できた。

 ザバーンッ!!

三日月「電ちゃん!! 金剛さんまでだいぶ距離が近づいたから、ここは!――」 ザッ

電「はいなのです! 二手に分かれて左右から攻めた方が良いですよね!」 ザザー

三日月「――うん!! そう! 電ちゃん頼りになります!!」 ザー



金剛「中々やるじゃなーい……けど、負けないデース!! ファイアー!!」 ズドーン!!


 朝から夕方まで。たまに夜戦の演習。それがみっちり続いた。それだけじゃない。強くなるために、色々な事をやった。


提督「三対三で、相手は軽巡一人と駆逐艦二人。こっちは金剛がいるから、状況的にはこっちのが有利だな」

三日月「ですけど、あちらは神通さんがいます」

提督「……あそこの神通、良く育ってたな。相当厄介そうだな」

三日月「はい。……戦うとしたら本当に厄介な方です」

金剛「うーん、まずは神通をなんとかしないとだネー」

提督「そうだな。そのためには彼女に対抗できる火力と射程距離のある金剛が重要となってくるな」

電「なのです! 金剛さん、一緒に頑張ろうなのです!」

金剛「もちろんデース!」

提督「けど、他の二人も油断していい相手じゃないよな。金剛には神通との戦いに集中してもらいたいが、そのためにはあの二人も何とかしなきゃだもんな」

電「……その事に関して、電からの作戦提案があるのです」

提督「おぉ、聞こうか」

電「まず――」

 ――作戦を立てて、連携訓練なんかもやった。
 すごく疲れたし、大変だった。けど、とても楽しかった。





529: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/04(月) 10:02:17.74 ID:nLMgEvvH0


電「……今日もクタクタなのです……金剛さん、更に強くなった気がするのです」

三日月「あはは……金剛さんも一緒に訓練してるから、強くなってるんだよ。けど、今日は何回か当てれたよね」

電「はい! あれは素直に嬉しかったのです!」

三日月「うん、私も嬉しかった」 ニッコリ

電「……そう言えば三日月ちゃん、電と話す時敬語じゃなくなったのですね」

三日月「へ? あぁ、うん」

三日月「電ちゃんは……私の……一番大事な友達だから。自然体でいこうかなぁって思ったの。……も、もしかして嫌だった?」

電「い、いえいえ! むしろ嬉しいのです!!」

三日月「ふふ……よかった」 ニコニコ

電「……三日月ちゃん」 スッ

三日月「……どうしたの? 電ちゃん」 ギュ

電「……ついに、明日が演習ですね」

三日月「……そう、だね」

電「電、明日は絶対、ぜぇったいに負けたくないのです」

三日月「…………私は……」

電「三日月ちゃんは、勝ちたくないのです?」

三日月「……正直言うと、よくわからない、かな。神通さんにも、夕立さんにも、菊月にも……司令官にも……思いはぶつけたけど……あの後何も言われなかったから……。正直、ちょっと会うのも怖い。会いたいのに、まだ怖いんだ」

電「…………」

三日月「……けどね、電ちゃん」

電「ん?」

三日月「それは、一つの私の気持ちにしか過ぎないよ」

電「……三日月ちゃん」

三日月「勝って、皆さんと喜び合いたい。あの人たちに私の成長を見せてあげたい。もう昔の私じゃないって事を、証明したい。……そして、私が撃ってしまった人たちの分、多くの人達を救ってあげたい」

三日月「……あはは。色々な気持ちがごちゃ混ぜになり過ぎちゃって、よくわからないんだぁ」

電「三日月ちゃんらしくて、なんか良いですね」

三日月「そ、そうかなぁ」

電「はいなのです!」 ニッコリ

電「……けど三日月ちゃん」

三日月「?」

電「難しく考えてもしょうがないのです。だから、ひとまず演習、頑張りましょう! なのです!」 ニッコリ

三日月「……ふふ、そうだね。難しく考えても、しょうがないよね」

三日月「――うん! 電ちゃん! 私、頑張る! 頑張るしか取り柄がない私だから!」

電「そんなことないけど、その意気なのです! 電も頑張るのです! おー!! なのです!!」

三日月「おー!!」


 色々な事があったけど、ここからがスタートだ。私は――三日月は、この演習から変わるんだ。


 ――そしてついに、演習の日がやってきた。




531: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 03:00:53.65 ID:7mTxrmSz0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


菊月『……最近、三日月の様子がおかしい気がするんだ』

如月『……菊月もそう思う? 私も最近そう思うの。何か、暗いわよね』

菊月『…………この前の任務から帰ってきてからだな』

如月『うん……』

菊月『……最近の司令官は、どうにも三日月に対して態度が――』 ボソボソ

如月『あ、司令官』

菊月『!!』

前提督『…………』 スタスタスタスタ

如月『あらあら、どうしたの司令官ぼーっとして?』 ニコニコ

前提督『……うるさい』

如月『へ?』
菊月『へ?』

前提督『君らはさっさと遠征に行ってこい』 スタスタスタスタ

菊月『……司令官……』

如月『き、きっと機嫌が悪かったのね……あんな態度の司令官、見たことないもの』

菊月『……そうだな……あ、三日月』

如月『あら、本当。どうしたの、こんなところでぼーっとしてて』

三日月『ごめんなさい』

菊月『え?』

三日月『先ほどの司令官の態度が悪かったの……きっと、私のせいです……私の……』

如月『み、三日月?』

三日月『私、みんなにまで迷惑かけてるんだ……本当に……ごめんなさい!』 ダッ!

菊月『み、三日月!』

 私たち姉妹と三日月は、それ以降あまり関わらなくなってしまった。部屋も変わり、あの子は日中ずっと訓練をしていたから、中々顔を合わす機会が無くなってしまった。




532: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 03:19:18.06 ID:7mTxrmSz0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 ――づき! ――菊月!!

菊月『…………ぇ?』

前提督『き、気が付いた!! よ、良かった……!! 本当に良かった!!』

如月『ごめんなさい……菊月……! 私が敵に気が付かなかったから……菊月は!』

前提督『…………とにかく今は入渠が先だ……僕が連れていく! 如月も一緒に来てくれ!!』

前提督『僕は……またやらかしてしまう所だった……ちゃんとした指示で遠征に出していれば……くっ!!』

 意識が朦朧としていた。けど、司令官の声はしっかりと聞こえていた。
 入渠が終わった後、私はずっと司令官から謝られっぱなしだった。

 ――そして、三日月は気が付けば私達の元から去っていて、私は今の部隊に配属された。




533: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 03:47:17.43 ID:7mTxrmSz0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

夕立『……ぽ、ぽい~……』

 鎮守府に配属が決まった。けど、問題が発生した。司令室がどこだか分からない。

夕立『地図なんて見ても分からないっぽい……』

夕立『ど、どうしよ……このままじゃ夕立、餓死しちゃうっぽい!?』

夕立『そ、そんなの嫌ぽいいいいいいい!!』

『あ、あの……』

夕立『……ぽい?』 クル

三日月『ど、どうしたんですか? もしかして、迷子?』

夕立『お……おぉ~!! あなた、この鎮守府の人っぽい!?』

三日月『え、えぇ』

夕立『お願いします!! 司令室まで連れてってぇ~!!』

 それが彼女との出会いだった。




534: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 04:15:29.23 ID:7mTxrmSz0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

夕立『えへへー、今回も三日月ちゃんのおかげで助かったっぽい!』

三日月『ふふ、ならよかったです』 ニッコリ

夕立『三日月ちゃんには、ここに配属された時からお世話になってばっかだよね。ホントごめんっぽい』

三日月『えっ、いやいや、このくらい大丈夫ですよ。全然』

夕立『ほ、ほんと?』

三日月『ほんとです』

夕立『~~~!! 三日月ちゃん本当に優しいっぽい! 三日月ちゃんと友達になれて、私ほんとに嬉しいっぽい!』

三日月『と、友達?』

夕立『うん! ……嫌っぽい?』

三日月『い、いえ! そんなことないです! むしろ嬉しいですよ?』

夕立『ならよかったっぽい!』 ギュー

三日月『……えへへ』

夕立『けど、夕立はちょっと三日月ちゃんにお世話になってばっかだから……もっと成長しないと!』

三日月『そんなの大丈夫なのに……』

三日月『……と、友達はお互いを助け合うものだと思いますし』

夕立『お互いを助け合う?』

三日月『はいっ。友達ってそういうものな気がします』

夕立『なら、私は三日月ちゃんが何か困っていたら助けてあげるっぽい!』

三日月『……なら、私は夕立さんが何か困っていたら助けてあげますねっ』 ニコ

夕立『ぽい~! 約束っぽい!』 ニコニコ

三日月『はい! 約束です!』 ニコニコ

 ただの口約束だったのかもしれない。けど、私にとっては大切な思い出だったし、初めてできた友達との約束だった。







 だから――


夕立『み、三日月ちゃん。一人で抱え込んじゃダメだよ。私達、仲間でしょ? 友達でしょ?』

夕立『ゆ、夕立達……“お互いを助け合う事を約束し合った友達同士”でしょ?』

夕立『だから、一人で抱え込んじゃ――』

三日月『そんなの今は関係ありませんッ!!』


 その言葉だけは聞きたくなかった。




535: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 04:53:46.96 ID:7mTxrmSz0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 小さい頃に、私はあなたと出会いました。

神通『…………』

 私は何なのだろう。私はそれが分からなかった。

『今から貴様らには!! こいつらの指導係となってもらう!! これも大事な訓練の一つだ!! 手は抜くなよ!!』

 怖い雰囲気の男の人が何か言っている。そして、少し経つと私の前には優しそうな人がやって来た。

『やぁ』

神通『お兄さん……誰?』

前提督『僕は君の……そうだな、先生みたいなものかな? 訓練兵だから、あまり立派な人とはまだ言えないけどひとまずよろしくね』 ニッコリ

 優しい、笑顔だった。







神通『先生?』

前提督『ん? どうしたんだい神通』

神通『問題……解けました』

前提督『もうかい!? 早いねぇ……どれどれ』

前提督『……驚いた、全問正解じゃないか! 偉いぞ!』 ナデナデ

神通『……えへへ』

 私は自分が何なのかは分からない。けど、これだけは分かった。私はこの人の喜ぶ顔が好き。




536: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 04:56:38.98 ID:7mTxrmSz0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

『来たか、訓練生145番よ』

前提督『はい。言われた通りこの子も連れてきました』

神通『…………』 ペコリ

『よろしい』

 あの時の怖い人だ。何かあるんだろうか。

『ではこれから一つだけ指示を出す。彼女の数字を見て、私に教えろ』

前提督『え?』

『時間がないんだ早くしろ』

前提督『数字を見ろって言われましても……』

『よく見てみろ。じぃーっくりとな』

前提督『うーん……』 ジー

神通『…………』

前提督『……』 ジー

神通『……///』 カァァァァ

 ちょっと恥ずかしかった。

前提督『……1、ですね』

『!! 貴様、見えるのか?』

前提督『は、はい……』

『……すばらしい。君には才能がある。おめでとう、晴れて君は訓練兵卒業だ』

前提督『え?』

神通『?』

 それから、ちょっと先生とは離れ離れになった。けれど、私はその間も勉強を頑張り、訓練も頑張った。そして私は次第に、自分が艦娘という存在だという事を知った。
 ――それでも私は何なのか分からなかった。艦娘? 艦娘は人間? 兵器? 分からない。分からなかった。そして、自分が何でありたいかも分からなかった。




537: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 05:03:19.49 ID:7mTxrmSz0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

神通『先生……いや、提督。お久しぶりです』

前提督『神通? 神通なのかい!?』

神通『はい、あの時の神通です』

前提督『おぉ……いや、本当に見違えたよ。立派になったね、神通』

神通『ふふ、ありがとうございます。提督も最近は何かいいことがありましたか?』

前提督『はは、そうだねぇ……まず子供が生まれた。今ではもうだいぶおっきくなってきたね。まだまだ甘えん坊さんだけど、これがまた可愛いだよ』

神通『あらあら。おめでとうございます、提督』

 先生が女性とお付き合いしてることはあの時から知っていた。だから子供がいてもおかしくないだろうし、素直に喜ばしいことだった。

前提督『いやでも、正直不安でいっぱいだったこの状況で、初めての艦娘が君で本当に安心できるよ。改めてよろしくね、神通』

神通『はい、こちらこそよろしくお願いします。あと提督』

前提督『ん?』

神通『久しぶりに会えて……本当に嬉しいです』

前提督『……僕もだよ、神通』




538: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 05:04:11.50 ID:7mTxrmSz0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

神通『ここも大所帯になりましたね』

前提督『そうだね。嬉しい限りだよ』

 私にも、仲間ができた。部下ができた。時間が経つのはとても早く感じる。

神通『けど、お忙しくなった分提督は中々実家の方に帰省できなくなってしまいましたね。娘さんも奥様も寂しがっているでしょうし……』

前提督『……まぁ、そうだね。けど、彼女は理解のある人だし、娘もこの事は承知している』

神通『…………いい子、ですね』

前提督『あぁ。あの子は本当にいい子なんだ』

前提督『どんなに寂しがっていても、僕が何か言えばちゃんという事を聞くんだ。……自分の感情を殺しているの、バレバレなんだけどね』

神通『ちゃんという事を聞く?』

前提督『あぁ。……この前、行かないでよって泣かれてしまった時も、結局は僕のわがままを言わないでくれって一言で泣き止んでしまってさ……本当にあの子は……いい子過ぎるんだ』

神通『……いい子、ですか』

前提督『ははは……うん』

神通『…………』




541: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 10:44:40.94 ID:7mTxrmSz0


『…………じん、つーさん……』 ヨロヨロ

神通『あら、三日月ちゃん。お疲れさまです』

三日月『はぁ、はぁ……ご、50……しゅうー……お、終わり……まし、た……はぁ、はぁ』 ヨロヨロ

神通『はい、ご苦労様です。他の皆さんは?』

三日月『はぁ、はぁ、はぁ……げほ……えと……みんな、倒れています……』

神通『なるほど……根性がありませんね。あとでペナルティです』

三日月『!! み、みんな限界なんです……そ、それはちょっとかわいそ……』

神通『けど、三日月ちゃんは根性でやり切りましたよね? あなたにできて他の子にできないとは私は思いません』

三日月『けど……』

神通『……なら三日月ちゃんが倒れている子達の残りの分も走り切ってください。そしたらペナルティはなしにしてあげます』

三日月『え?』

神通『この後予定していた訓練ももちろんやってもらいます。それでもやりますか?』

三日月『……っ、や、やります!! やってやります!!』

神通『そうですか。では頑張ってください』

三日月『ッ~~~~~!!』 タッタッタッタ

前提督『……神通、中々厳しいね』

神通『そうですか?』

前提督『あの子、前配属されたばかりの三日月だろ? いくらなんでも代わりに走らせるのは厳しいんじゃ』

神通『えぇ、私もあの子以外にだったら多分やらせないでしょう。問答無用で次の訓練をやらせています』

前提督『え?』

神通『あの子、多分走ってる途中で何回か吐いてますね。拭いてきたんでしょうけど、口元に薄らと跡が残ってました。それでもなお走り終えて、ここまで報告に来ました。私はその根性を買って、あの子ならやり切れると思って追加で走らせることにしました』

前提督『……オーバーワーク過ぎないか?』

神通『私が体験してきたことです。あの子にもきっとできますし、ちゃんと休息も与えます』

前提督『あの子が走り終えたという事が嘘かもしれないと言う可能性は?』

神通『あんなに馬鹿真面目な子がそんなことするとは思えません』

前提督『はははは、確かにな。……あの子、なんだか少し僕の娘に似ている気がするよ』

神通『娘さんに?』

前提督『あぁ。見た目もだけど、性格までちょっと似てるかもね』

神通『はぁ』

 三日月ちゃんは、いい子だ。そして娘さんもいい子みたいだ。
 ……私は、いい子なのだろうか? 分からない。
 そして、私が何なのかも、いまだに分からない。




542: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 11:23:38.95 ID:7mTxrmSz0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 夕立ちゃんが私に泣きながら聞いてくる。彼女は悲しみながら、怒っていた。

夕立『神通さん! ……私……私、どうしたらいいの……? 三日月ちゃんのこと……わたし……!!』

神通『……夕立ちゃん』

夕立『私……あの子の力になりたいのに……!! ……悲しんでいる三日月ちゃんの事、可哀想だと思ってるのに……!』

夕立『……許せないとも思ってるの……!』

夕立『……わたし……どうすればいいの!? 何にも、わかんないの!!』

神通『……夕立ちゃん。その質問に、私は答えることができません』

神通『いいですか、夕立ちゃん――』

 私だって、分かりませんよ。
 私達は、色々と体験し過ぎてしまいました。だけど、今の夕立ちゃんに対してそんな返答はできない。彼女は迷っている。
 ――だから私は、まるで自分に言い聞かせるように、その言葉を吐き出す。

神通『自分が選んだ道こそが、最善の選択なんです。周りからしたら、それが間違っていることなのかもしれません。だけど、そんなの関係ありません。だって、どれが正解だなんて、誰にもわからないんですから』

神通『だから、あなた自身が決めなさい。どうするべきなのか……自分で』

 私のこの言葉が、三日月ちゃんと夕立ちゃんの仲を崩壊させてしまった最大の理由なのかもしれない。




 スタスタスタスタ

神通『…………』

 <司令室前>

神通『…………』

前提督『……んで、なんで……こんなことに……』

神通(……提督の声……)

前提督『……あいつが悪いんだ。あいつが悪いんだ。そうだ、そうだそうだそうだそうだそうだ。……そうに決まっているさ』

 提督は、今精神的に不安定なんだ。

神通『……先生……』

 けど、私にはどうすることもできない。私の言葉では、彼をどうしたって救う事は出来ないんだ。では、私はどうすればいい? そんなのはわからない。自分で決めるしかないんだ。

前提督『……あんないい子が……なんで死ななきゃいけなかったんだ……!!』

神通『…………』

 そうだ。私、少しでもいいから提督の娘さんの様な存在になろう。代わりになろう。

神通『……ふふ』

 私が何なのかなんて、今はもうどうでもいい。人間じゃなくたって、兵器じゃなくたっていい。私は、提督にとってのいい子になろう。彼の言う事をちゃんと聞くいい子になろう。自分の感情なんか関係ない。彼にとってのいい子になろう。

神通『…………』 スタスタスタスタ

 何が正解で、何が間違っているのかだなんて、関係ない。――私はあの人のいい子になるんだ。











「皆、そろそろ起きるんだ」




543: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/16(土) 11:39:39.73 ID:7mTxrmSz0


神通「へ?」

夕立「ぽい?」

菊月「ん?」

前提督「ははは、三人ともぐっすりだったね。神通まで寝ているなんて珍しいこともあるね」

神通「し、失礼しました」

前提督「いや、いいんだよ。けど、もうそろそろ彼の鎮守府に着くから、準備だけはしておいてくれ」

神通「分かりました」

夕立「車はぐっすり寝れるから電車よりも好きっぽい~」

菊月「…………」

夕立「菊月ちゃん?」

菊月「なんだか、昔の夢を見ていた気がする」

夕立「菊月ちゃんも? なんか夕立もそんな気がする」

神通「……さ、二人とも。準備をしますよ。本日は演習なんですから、気を引き締めていきましょう」

夕立「了解っぽい」

菊月「…………あぁ」

神通「それで菊月ちゃん。作戦は前に菊月ちゃんが決めたもので大丈夫ですか?」

菊月「あぁ。変更はない」

神通「分かりました。では、改めて最後にもう一度確認を行いましょう」

夕立・菊月「了解」

前提督「…………」




546: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/17(日) 05:40:22.89 ID:fGAh6fJ70


 <正門前>

提督「さぁ、もうそろそろやってくる時間だな」

金剛「イエース。ちょっと緊張しマスネ……」

電「ちょ、金剛さんがそんな感じでは一番ダメなのです!」

金剛「HAHAHA! 冗談ネー!」

電「もう……三日月ちゃんも、リラックスしなきゃなのです」

三日月「は、はははははい! 落ち着いてますよ!?」

電「はいはい、ゆっくり深呼吸するのです」

三日月「うん。すーはー、すーはー」

電(緊張して固くなるのはどちらかと言うと電がそのポジな気がするのですが……今日はそんなこと言ってられる場合じゃないのですね)

提督「おっ、来たみたいだな」

 スタスタスタスタ

前提督「やぁ、一週間ぶりだね、少佐殿。車は近場の駐車場に止めさせていただいたよ」

提督「えぇ、本日はわざわざお越しいただき本当にありがとうございます」 ビシッ

前提督「猫被らなくていいよ。正直、前の感じの方が慣れてしまったからね」

提督「……そうかよ。とりあえず今日はよろしく頼みます」

前提督「あぁ、よろしく頼むよ」




547: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/17(日) 05:41:01.20 ID:fGAh6fJ70


夕立「…………」

菊月「…………」

神通「皆さん、お久しぶりですね。本日はよろしくお願いします」

金剛「オーウ、こちらこそよろしくお願いしマース!」

神通「ほら、お二人もしっかりあいさつしなきゃダメですよ?」

夕立「……よろしくっぽい」

菊月「……よろしくお願いする」

三日月「こ、こちらこそよろしくお願いします」

電(……気まずい、のは当たり前ですね。まぁ、仕方のないことなのです)

電「本日はよろしくお願いします。全力で挑ませていただくのです」

夕立「……ふんだ!」 ベー

電「…………」 ムスー

 バチバチバチバチ

三日月・菊月「二人とも、その辺に……て、あっ」 チラ

三日月・菊月「…………」 フイ

金剛(……気まずい)




548: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/17(日) 05:44:28.49 ID:fGAh6fJ70


提督「じゃあ、演習場所は今俺の言った提案でいいか?」

前提督「あぁ、それでいいよ。演習場でやるよりもそのほうが良い経験になりそうだからね」

提督「うし、了解っす」


金剛「おっ、提督たちの打ち合わせ、終わったみたいデース」

 スタスタスタスタ

提督「よし、じゃあ場所移動するぞお前ら」

前提督「神通達も行くよ」

「了解です」

提督「じゃあ、案内するからついて来てくれ」

前提督「…………」 ジー

三日月「……司令官……」

前提督「……ふん」 クル

 スタスタスタスタ

三日月「…………」

三日月「あ、あの! 夕立さん!」 クル

夕立「!!」 ビクッ

夕立「……いきなりなに?」

三日月「え、えと……今日の演習が終わった後……少し時間いただいても良いですか?」

夕立「……何かあるの?」

三日月「……」 コクン

夕立「……了解っぽい」 スタスタ

三日月「…………」

三日月(一つ一つ、解決していかなきゃ)

菊月「…………」




549: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/17(日) 05:47:19.84 ID:fGAh6fJ70


提督「うし、じゃあ今回の演習について説明するぞ」

提督「今回行う演習は、ウチにある演習場ではなく、少し外の海に出て行ってもらう。もちろん安全確認として、事前に金剛に辺りの調査はしてもらっているから深海棲艦がいる心配もない」

金剛「ばっちりデース」

神通(確かに演習場でやるよりも外の海の方が広いですからね。私としてもそっちの方が都合が良いですし)

前提督「僕は別に構わないんだけど、君達はどうだい? 意見なんかはある?」

神通「私は特にありません」

夕立「夕立も別に気にしないっぽい」

菊月「私も同意見だ」

前提督「という事だ、ウチの皆は了承してくれたよ」

提督「あぁ、感謝するよ。お前達も構わないよな?」

電「問題ないのです」

三日月「私も、大丈夫です」

提督「おし、ならそれで行こう。――では、各自準備開始だ」




550: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/17(日) 05:51:01.88 ID:fGAh6fJ70


三日月「ふぅ……」

 艤装を付け終えた私はそっと息を吐く。演習開始まであともう少しだ。やっぱり、緊張する。

提督「三日月、緊張してるのか?」

三日月「……はい。やっぱり、神通さん達が相手ですし、ちょっと怖い気持ちもあります」

提督「なるほどなぁ」

金剛「…………」

電「…………」

提督「お前ら、ちょっとこっち来てくれ。三人ともだ」

三日月「へ? あ、はい」

金剛「ん~? どうしたの提督~?」

電「なのです?」

提督「……みんな、手を出してくれ」

三日月「???」 スッ

提督「俺からの皆へのプレゼントだ」 スッ

三日月「へ? これは……?」

金剛「お守り、デスネー」

電「なのです」

提督「そう、お守りだ。妖精さんが売ってたから買ったんだ。みんなどっかに入れて持っていてくれ」

提督「そう緊張すんなって。お前らはやれることはやってきたし、それを全力でやるだけさ。緊張することなんて何もない」

提督「頑張って来い、三人とも」

三日月「司令官……」

金剛「……イエース! やる気出てきたデース!!」

電「そうですね、電達は全力でやるだけなのです! そして絶対に勝ってやるのです!」

三日月「……うん! 頑張るだけだもんね! ……全力で行きましょう! 皆さん!」

金剛・電「おー!!」




551: ◆8Wn59wFc0I 2016/04/17(日) 05:54:20.85 ID:fGAh6fJ70


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 ザザーン……ザザーン

三日月「やはり演習場と違ってちょっと波が強いですね」

金剛「ケドケドー、見晴らしはいいし戦艦のワタシは遠慮なく撃てそうデース」

電「そうですね、ここなら鎮守府に砲撃が行くこともないのです」

提督『あー、あー、聞こえるか皆』

金剛「おー、久々の通信機デスケド、バッチリデース」

三日月「問題ないですよ、司令官」

提督「オッケー、把握した」




前提督『君達も聞こえているかい?』

神通「はい、聞こえていますよ」

夕立「バッチリっぽい!」

前提督『大丈夫そうだよ、少佐殿』

提督『あぁ、そうみたいだな』

提督『あー、君達の様子はもちろん俺達も妖精さんに中継してもらって見ている。けど、通信はお互いにしないものというルールを付けた。俺達は見ているだけの傍観者になる。お互いに全力を出して、頑張ってくれ』

三日月「私たち自身の戦いになるって事ですね」

前提督『さて、もうそろそろ演習開始の時間だけど、準備は大丈夫かな?』

金剛「ノープログレムデース」


神通「私達も大丈夫です」

提督『……よし、ならそろそろ始めようか』

前提督『了解したよ、少佐殿』


提督『……三日月、電、金剛』
前提督『神通、夕立、菊月』

提督『お前達ならきっと勝てる』
前提督『君達ならきっと勝てる』


夕立・菊月「…………」 カチャ


提督・前提督『ボコボコにしてやれ』


金剛(照準を……今のうちに合わせる) ジー


神通「…………」 ガチャン


提督・前提督『演習――』


三日月「……!!」 カチャ


提督・前提督『開始ッ!!』




554: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 12:46:50.64 ID:M8Ybetj90


 ドォォォォォンッ!!


電「来たっ!! 金剛さん!!」

金剛「予測通りデス! 電ナイスネー!!」

三日月(開幕からの砲撃、電ちゃんの予想通りだ。あれは、“当たらない”。私達のするべきことは)

 じっと待つこと。



 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

提督『けど、他の二人も油断していい相手じゃないよな。金剛には神通との戦いに集中してもらいたいが、そのためにはあの二人も何とかしなきゃだもんな』

電『……その事に関して、電からの作戦提案があるのです』

提督『おぉ、聞こうか』

電『まず――あの人たちは演習が始まった瞬間何発も砲撃してくると思います。けど、距離的に届きませんので、別の目的を持って撃ってくるはずなのです。そう、水柱を作るために』

金剛『視界を少しでも塞ぐためデスネー』

電『なのです。何度か金剛さんも使ってくる手なのです。相手は軽巡と駆逐艦なのです。戦艦がいるこちらとは攻撃できる範囲が違うのです。だから、接近する必要がある』

電『だから、むしろこちらはそれを迎え撃ってやりましょう。じっと待って、水柱に紛れて近づいてきたあの人たちに、一斉射撃を仕掛けるのです。視界が塞がってるのは、相手も同じなのです。それが成功するかはまだ分かりませんが、最初にやりたいことなのです』

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 ドンドンドンドンッ!! ――バシャンバシャンバシャーンッ!!

金剛「水のパワーは恐ろしいデース」

 耳にやって来る砲撃音と、それとリズムを合わせるように飛び出る水柱は神通さん達の姿を紛らわす。

三日月「…………近づいてきました」 ガチャ

金剛「イエース。結構近いデス。この距離だと、そろそろ神通の射程圏内デスネ。電、構えてますカ?」 ガチャ

電「もちろんなのです。一斉射撃の準備を」 ガチャ

 ザバアアアアアンッ!!

 水柱の距離がだいぶ近くなってくる。私達は構える。準備を始め、いつでも撃てる状態にしていた。だけど、次の瞬間、私達は目を疑った。――水面にそびえ立つ水柱の中から、突然夕立さんが飛んで現れる。

夕立「っ~~~~!! 冷たいっぽい!!」

三日月「え?」

電「へ?」

金剛「エ?」

三日月(夕立さん、何で空中に……?)

三日月「――はっ!! 皆さん!! 撃ってくだ――」


神通「反応、遅いですよ?」


三日月「!!」

 ズドオオオオオオオオオン!! ズドンッ!!




555: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 12:48:17.71 ID:M8Ybetj90


三日月「っ!!」 グル

 バシャーン!!

 意識を削がれた。私達が視線を変えている間に、砲撃をされたんだ。何とか回避には成功したけど、体勢は崩されてしまった。

三日月(みんなは、無事!?) キョロ

金剛「ヅッキー!! こっち見てはダメ!!」

 集中が削がれる。

三日月「――――!!」

夕立「……」 バンバンバン!!

三日月「っー!!」 ヒョイ

 バシャーンバシャン!!!!

 空を舞っている状態の夕立さんは、そのまま砲撃をしてくる。空中からの砲撃なんて、聞いたことなかった。回避はできた。しかし、ずらされた意識の切り替えが難しい。




556: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 12:50:41.47 ID:M8Ybetj90


 クルクルクルクル――バシャーン!!

夕立「作戦通りだけど、神通さん投げる力強すぎっぽい!! まぁ、けど着地……? 着水? ……と、とりあえず成功っぽい!!」 バァン!!

電「!!」 シュ!! バシャーン!!

電「なのです!!」チャキ

 ドンドンドンドン!!

夕立「へぇ、中々やるっぽい。避けるの結構上手だね」 シュン、ヒョイ

 バシャンバシャン!!

金剛「ファイア――!!」

 ドオオオオオオオオオオオオオンッ!!

夕立「っぽい?」 シュン――バシャーーーン!!

金剛「な!! 避けられた!?」

夕立「……単純すぎ」

三日月「ッ、えーい!!」 バンバンバン!!

夕立「……そんなの当たらないっぽい」 ヒョイ、ヒョイ

 夕立さんは私達の攻撃を簡単に避ける。

 ドォンドン!!

夕立「てか、夕立にだけターゲット絞ってて平気なの?」 ヒョイ、ヒョイ

三日月「はっ!?」

 この時私は気付く。――夕立さんは、囮だったんだと。さっきから神通さん達の砲撃が、一切ない。夕立さんも今は一切攻撃をしてこない。避けにだけ徹している。咄嗟に視線を変える。そこから見える神通さん達の距離は、近い。

菊月「よくやった、夕立。作戦通りだ」 カチャ

神通「だいぶ近づけましたね。この距離なら……」 カチャ


 私達を挟み込むように、神通さんと菊月は接近していた。次の瞬間、撃たれるだろう。距離はだいぶ近い。――今だよね、電ちゃん。


三日月「……電ちゃん!!」

電「はい!! 今です!!」

金剛「了解デースッ!!」

 ザッ!!

 私達は、一斉に動き出す。それぞれの相手に向かって。




557: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 12:52:46.29 ID:M8Ybetj90


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

電『そこからですが、一騎打ちで戦うべきだと電は思うのです』

提督『なるほど……電がそう思う理由を教えてくれ』

電『はいなのです。神通さんとまともにこの中で相手できるのは、悔しいですが恐らく金剛さんだけなのです。先ほど司令官さんが仰っていた通り、金剛には神通との戦いに集中してもらいたいのですが、そのためにはあの二人をどうにかしなければいけません。なので、いっそのこと電と三日月ちゃんで、あの二人のどちらかと一騎打ちをしましょう。神通さんの援護をできないように、真正面から戦うのです』

電『最初の攻撃が失敗するにしろ成功するにしろ、相手が近づいてきたらこっちも近づいてあげましょう。一騎打ちで、勝利を掴むのです』

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 ドォン!!

 神通さん達が私達に向かって砲撃してくる。回避するんだ。意地でもです。

三日月「……ッ!!」

 スピードは下げない。このまま全速前進をする。――夕立さんに向かって。当たって、たまるか!!

 身体を上手くずらして、砲撃を避ける。


 バシャアアアアアアアア!!

三日月「よし!!」

 スピードを下げないまま、上手く避けることができた。――そして、夕立さんの前に辿り着く。

三日月「…………」

夕立「…………」

三日月(他の皆さんは、大丈夫かな。色々と心配だけど、気にしてはいられない。――作戦通り、やるんだ)


菊月「……そうきたか」

電「途中、ちょっと予想外のことはありましたが、電達がやるべきことは変わりません」



神通「勝利の鍵であるあなたが真正面に来て、大丈夫なんですか? ……良い的ですよ?」

金剛「HAHAHA! 勝利の鍵だからこそ、私はyouと一騎打ちするんデース」

神通「この距離でしたら、戦艦の射程距離も関係ありませんよ?」

金剛「神通」

神通「…………」

金剛「ワタシ達は、ワタシ達の考えた作戦通りにやっているんデス。それぞれの、思いがあるんデス。……ワタシは、絶対に勝つ。練度なんか、関係ない。――絶対に勝ちマス!!」

神通「……良いでしょう、受けて立ちます」 ガチャ

神通「軽巡洋艦、神通。推して参ります」

金剛「ッ、ファイアー!!」 ドォォォォンッ!!




558: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 12:54:58.79 ID:M8Ybetj90


三日月「…………」

夕立「……三人で纏まって戦うんじゃなくて、それぞれ一対一で戦う作戦ね。確かに、あなたがここにいたんじゃ他の二人の援護はできないっぽい」

三日月「そうです。一騎打ち作戦です」

夕立「……選ぶ相手、間違えたっぽいね」

三日月「いいえ、間違っていません」

夕立「…………」

三日月「夕立さんは、昔から強かった。私よりも全然強かった……ひっそりと憧れてもいましたし、同じ駆逐艦なのにどうしてこんなに差があるんだろうって思った時期もありました」

三日月「だけど、私は……今の私はもう、決めたんです。強くなるって」

夕立「…………」 カチャ

三日月「夕立さんを超えます。ずっと一緒に過ごしてきた、あなたを超えます。訓練成績ではいつも負けてたけど、今日は、夕立さんに勝ちます」

夕立「……どういう心変わり?」

三日月「へ?」

夕立「以前のあなただったら、絶対にそんなこと言わなかった。あの電ちゃんがあなたを変えたの? ……ねぇ!!」 ギロ

三日月「……そうかも、しれません」

夕立「!! はは……へぇ、そう」

夕立(私じゃ、ダメなの? 私はあなたの心を変えられなかった。やっぱり私は友達じゃなかったの? あの子の言う通り、私は友達の間違いを正さない、被害者気取りのわからず屋なの? 約束を破って裏切ったのはあなたなのに、裏切り者は夕立の方なの?)

三日月「ゆ、夕立さん?」

夕立「なんで、なんで……なんでなんでなんでなんで!!」

夕立(裏切ったのは、三日月ちゃんじゃん!! 大切な約束だったのに……それを破って抱え込んだのは三日月ちゃんじゃん。私は、それが許せなかった。だからあなたを嫌いになった。提督さんが壊れたのも、三日月ちゃんが抱え込んだからだ。なんで一人で抱え込むんだ。……どうせ、覚えてないんでしょ? あの時の約束なんか、覚えてないんでしょ!?)

夕立「……さっさとあなたを倒して、菊月ちゃんの助けに行かなきゃ。神通さんは問題ないだろうけど、菊月ちゃんはちょっと心配」

三日月「……負けません」 カチャ

夕立「……あなたなんか……大っ嫌いッ!!」




559: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 12:57:36.63 ID:M8Ybetj90


 ドォンドン!!

三日月「!!」 シュ!!

夕立「そう何度も避けられると思うな!!」 バンバンバン!!

三日月(真正面からからの砲撃の嵐。これに当たったら私なんか一発大破だ。絶対に当たっちゃいけない) ザザッ!!

夕立「逃がさないっぽい!」 ザッ

三日月(よし、追いかけてきた! ……いま!!) クル

夕立「!!」

三日月(一瞬逃げるふりをして、すぐに振り向き撃つ。隙を突くんだ)

三日月「えええええええい!!」

 ドォンッ!! ――ボカァァァァァァン!!

三日月「当たった!!」

三日月(真正面から当たったんだ、多少は――)

夕立「……そんなもんなの?」 小破

三日月「!!」 ザッ

三日月(真正面から受けてあれしか与えられないの!? くっ)

 ザザッ!!

三日月「え? はや――」

夕立「つかまえた」 ガシ

三日月(まずい――!!)

夕立「ッぽい!!」 ガッ!!

三日月「ふわ!?」 グルン

 バシャアアアアアアアアン!!

三日月「あ、が……っ!!」

三日月(叩きつけられた。同じ駆逐艦なのに、ここまでパワーに差が――)

夕立「……」 カチャリ

三日月「!!」 クルン、クル   バンバンバン!!

 バシャン!! バシャン!! バシャーンッ!!

夕立「ちっ、避けられた……やっぱそのまま抑えといたまま撃った方がよかったっぽい」

三日月「はぁ、はぁ、はぁ」

 口の中がしょっぱい。身体もびちょびちょになる。それでも、避けられて良かった。私の砲撃でできる水柱とは雲泥の差だ。それくらい、威力に差があるんだろう。




560: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 12:58:58.17 ID:M8Ybetj90


夕立「……そんな単装砲じゃ、いくら受けたって痛くもないよ。……魚雷だって、こんな一騎打ちで当たる要素もないし」

三日月「……確かに、普通の戦い方をしていても夕立さんには勝てないかもしれませんね」

夕立「……戦い方の問題じゃないっぽい。あなたなんかに夕立は負けない!!」 バンバンバン!!

三日月「……勝ちます!!」 ヒョイ、ヒュン  バンバンバン!!

 ドンドンドンドン!!

 私も、夕立さんも、お互い避ける。撃つ。それを繰り返し続ける。また捕まれないように上手く距離を保ちながら動いているけど、決定打が無さ過ぎる。お互い攻撃は当たらないし、私の攻撃は当たっても対してダメージを当てられない。
 こっちは一発でも被弾したらおしまいだ。

三日月(勝つためには、どうしたらいいのか、考えるんだ)

 ドンドンドンドン!! ――バシャアアアアアアアアン!!

夕立「はぁ、はぁ、はぁ」

三日月「はぁ、はぁ、はぁ……げっほ」

夕立「つ……疲れてきたんじゃない? ……そろそろ、休みなよ」

三日月「ゆ、夕立さんだって……疲れてるじゃないですか」

夕立「は、はああああ!? 疲れてないし!! 全然平気っぽい!! てかあなたどんだけしぶといのよ!! 早く当たってよ!!」 バンバンバン!!

三日月「いやです!! 当たったら一発で負けちゃいます!!」 バンバンバン!!

夕立「~~~~~~!! もう、めんどくさいっぽい!! 魚雷、発射っぽい!!」 ポンポンポン!!

三日月「え!?」 ザザー!!  シュン

三日月(真正面から魚雷撃たれても、簡単に避けられるな……)

夕立「ちっ、やっぱ魚雷は今はダメっぽい。もう!!」 バンバンバン!!

 ザバンザバーンッ!!

三日月(魚雷……魚雷しか、私が勝てる方法はない!! けど、当てるためにはどうしたら――はっ!!)

 バシャンバシャンバシャーン!!

三日月(水柱……!!)

三日月「これしか、ないです!」 クイ、ドンドンドォン!!

夕立「……どっち撃ってるの?」

 バシャアアアアアアアアン!!

 夕立さんにわざと当てないように、左右に砲撃する。

 ドンドンドンドン!! バシャンバシャン!!

 そう、狭叉弾だ。




561: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 13:00:45.06 ID:M8Ybetj90

 水柱が夕立さんの周りにいくつかできる。

三日月(いまだ!! あれが水面に落ちる前に!!)

 私は、夕立さんに一気に近づく。夕立さんが迎え撃つように砲撃をしてくる。

 バシャン、バシャン!!

三日月(避ける、避ける、全部避ける!!)

 全神経を注ぐんだ。当たってはいけない。当たったら死ぬと思うんだ三日月!!
 全ての視線を砲撃に向ける。迫り来る弾に向ける、身体の神経を研ぎ澄ませる。できることは全てやって、避けるんだ。

三日月(避ける避ける避ける避ける!!)

 バシャアアアアアアアアン!! バシャアアアアアアアアン!!

夕立(は、はや!!)

 まるで時間がゆっくり進んでいるような感覚だ。水柱はゆっくりと落ちていく。全速発進しているはずなのに、遅く感じる。――力を振り絞る。

三日月「この距離なら!!」 キュ!!

 ブレーキをかける、魚雷を――“握りしめる”。水柱はまだ残っている!!

三日月「当たってえええええええええ!!」

 私は魚雷を、放り投げた。――手投げ魚雷。

夕立「え?」

 夕立さんは驚く、周りを見る。水柱が邪魔なのだろう。咄嗟に横へ飛ぶという判断が遅れたのだろう。ゆっくりと、魚雷は夕立さんに近づく。時間がゆっくりと進む感覚は、まだ続いている。でも、その感覚も終わりを迎える。

三日月「わわ!!」 ツル

 体勢のバランスを崩してしまい、私はつい転んでしまう。その瞬間、時間の感覚が戻る。視界の水柱は全て水面に落ちる。

 ボカアアアアアアアアアアアンッ!!

 そして、魚雷の爆発音が耳に届いた。




562: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 13:02:25.06 ID:M8Ybetj90


三日月「げっほ、げほ……うぅ、海水が口の中に……しょっぱい」

三日月「――はっ!! ぎょ、魚雷は!?」

 爆発と共に生まれた水飛沫の中に、夕立さんはいた。

三日月「あ、ゆ、夕立さん!!」 ザザッ

 私は気が付くと夕立さんに駆け寄っていた。

夕立「…………」 大破

三日月「ゆ、夕立さん!! 大丈夫ですか!?」 アタフタアタフタ

 服はだいぶボロボロになっていた。所々見える肌色に傷はついていないように見える。

夕立「……自分でやっといてなんでそんなに焦ってるのよ」

三日月「ご、ごめんなさい」

夕立「謝らないでよ。べつに、演習弾だから傷物にはなってないしね。……一応、これは大破扱いなんだろうけど」

 呆れ気味に夕立さんは言う。

三日月「良かった……怪我してなくて」

夕立「だからぁ、あなたがやったんでしょ? 魚雷放り投げるとか聞いたことないっぽい」

三日月「えと、普通のことやっても対応されちゃうかなと思って……夕立さんが飛んできた時みたいな感じに意外性を狙って」

夕立「あれは菊月ちゃんの作戦だから……ホント、神通さんに投げられるこっちの身になってほしいっぽい」

三日月「ふふ、ウチの姉が失礼をしました」

夕立「……っぷ、なによ、それ」 クスクス




563: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 13:03:24.72 ID:M8Ybetj90


三日月「……なんかこの感じ懐かしいですね」

夕立「あっ……ふ、ふんだ!」 プイ

三日月(一瞬笑ったかと思ったら、すぐにそっぽを向かれちゃった……)

三日月「とりあえず、何ともなくて良かったです」

夕立「……なんでよ、別に夕立の身体がどうなろうと知ったこっちゃないでしょあなたには」

三日月「え、そ、そんなことないですよ!」

夕立「はぁあああ? 嘘つかないでよ!!」

三日月「う、嘘じゃないです!!」

夕立「なんでよ!! あなたには関係ないでしょ!!」

三日月「か、関係なくなんかないです!!」

三日月「ゆ、夕立さんは……私の……と、友達だもんッ!!」

夕立「――え」




564: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/09(月) 13:05:49.00 ID:M8Ybetj90


三日月「あ、えと……ごめんなさい。夕立さんはそう思ってないかもしれませんけど……私はまだ夕立さんのこと……友達だと思ってます」

夕立「……嘘つくな」

三日月「嘘じゃないです!!」

夕立「嘘つくなぁッ!!」

三日月「!!」 ビク

夕立「じゃあ……じゃあ……なんであの時……あんなこと言ったの……!!」

三日月「あんなこと……」

夕立「はん、どうせ覚えてないんでしょ?」

夕立「あなたはあの時、私達の約束をそんなの今は関係ないって言ったんだ。覚えてる? 私とあなたがした約束」

三日月「…………」

夕立「お互いを助け合うっていう約束。あなたが最初に言ったんじゃない!! 友達はお互いに助け合うものだって!! なのにあなたはあの時一人で抱え込んで、そんなの今は関係ないって言ったんだ!! 何が関係ないよ……関係ないって何よ!! 私達、友達だったんじゃないの!? 関係ないってそんなの……ないよ……!!」 ボロボロ

三日月「…………」

夕立「あなたは……私達の思い出を、約束を関係ないって言ったんだ……なんで、なんで一人で抱え込むのよ……!! あなたは裏切ったんだ!! 夕立を!! 約束だって、覚えてないんでしょ!?」

三日月「夕立さん……」

夕立「裏切り者!! 馬鹿!! アホ!! ドジマヌケクソ真面目わからず屋!!」

夕立「ひっぐ……なんで、なんで一人で抱え込むのよぉ……私に頼ってくれないのよ……!! 関係ないなんて言ったのよ……!! うぁ……ぁぁぁ……うぐ!!」 ボロボロ

夕立「……三日月ちゃんの事……大好きなのに……!! わたし、さびしいよ……!!」 ボロボロ

三日月「ッ、夕立さん!!」 ジワァ

 ギュ

三日月「ごめんなさい……ごめんね、夕立さん……!!」

三日月「全部、全部覚えてるよ。私、その事謝りたかったの。演習終わった後にする話も、その事についてだったの。後悔してた!! 謝りたかった!! ……けど、私……正面から謝る勇気、なかったの。怖かったの」

夕立「うわあああああああん!! 三日月ちゃんの馬鹿ああああああああ!!」

三日月「ごめんね……夕立さん、本当に……ごめんね……!!」






567: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/10(火) 16:45:47.24 ID:h60+Pw5w0


<鎮守府 司令室>

前提督「……そんな……馬鹿な……夕立が、負けた?」

前提督「……こんな馬鹿なことがありえるのか!?」

提督「……三日月も努力してるんだよ。あんただって知ってるだろ」

提督(あんなに自信のなかった三日月が、あんな発言するなんてな……よく頑張ったな、三日月)

前提督「うるさい!!」

提督「……なぁ、大佐。アンタ、いつまで現実から逃げているつもりなんだ?」

前提督「……」


金剛『ファイアー!!』 ドォォォンッ!!

神通『ッ、当たりません!!』 ズドンズドン!!


提督「……死んだ人間は、もう戻って来ないんだ……。アンタだってわかってるんだろ」

 ガシ

前提督「……黙れ。君に何が分かるって言うんだ?」

提督「わからねぇよ、アンタの気持ちなんて」


電『やああああああああああ!!』 ドンドン!!

菊月『ッ!!』 バンバンバン!!


前提督「僕は現実から逃げてなんかいない。全部、アイツが悪い。事実しか言っていないよ」

提督「……ッ!!」 シュ

 バキ!!

前提督「ぐはっ……!!」 ヨロ

提督「…………」

前提督「……貴様、今殴ったのか!? 仮にも僕は君よりも階級は――」

提督「今はそんなの関係ない。ここにいるのはアンタと俺だけだ。男同士の会話だ。だから、聞けよ」

提督「……もう、現実から逃げるな!! アンタだって本当は分かってるんだって、知ってるんだ!! アンタ自身が語った過去でその事は分かってるんだよ!!」

前提督「君に何が分かるんだ!! 家族を失ったことがない君なんかに!!」

提督「俺の両親も!! あの船に乗っていたッ!!」

前提督「……え?」

提督「一年前のあの船の船長とその補佐は……俺の両親だ……」

前提督「…………」

提督「…………」




568: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/10(火) 16:46:47.61 ID:h60+Pw5w0


前提督「……君、頭おかしいよ」

前提督「じゃあ何で君は……アイツを恨んでいないんだ!! 僕達の家族を殺したアイツを!!」

提督「三日月一人に押し付けられるわけないだろ!!」

前提督「やっぱり君はおかしいよ!! 普通じゃない!!」

提督「……俺だって、最初その話を聞いた時……動揺した……」

提督「だけど、アイツだけが悪いんじゃない……アンタ言ってたじゃねぇか……みんながそれぞれ失敗したって……」

前提督「違う。違う!! 悪いのは全部アイツなんだ!!」

提督「三日月も――アンタも他の奴らも、悪くねぇよ!!」

前提督「っ!!」

提督「悪いのは全部……この戦争だ……」

前提督「違う!! 僕の家族を殺したアイツが全部!!」

提督「――辛い思いをしてるのはアンタや俺達だけじゃねぇんだ!!!!」

提督「今、こうして俺達が話してるこの瞬間にも、きっと誰かが苦しんでる。深海棲艦に、脅かされてる。駆逐イ級にすら勝てない人類だぞ……」

提督「辛い思いをしてるのは……俺達だけじゃねぇんだ……それが、戦争なんだよ……」

前提督「……黙れ!! 黙れ!! 黙れ!!」

前提督「僕の家族は……妻は、娘は!! アイツが!!」

 ガシ

提督「押し付けるな!! 三日月に罪悪感がないとでも思ってんのか!? 自分で撃ってしまったって罪を抱えながら、全部押し付けられてんだぞ!! アンタが三日月の立場だったらどうなる!?」

提督「あの子は……俺の両親と同じで真面目過ぎるんだよ!! 一人で抱え込もうとして、結果的に一人で抱え込んでるんだ!! ――なんで本当は気付いてるアンタが、三日月の馬鹿な発言に耳を傾けて真に受けてるんだ!!」

提督「一人で抱え込むなんてこと、間違ってんだ。部下が間違った方向へ行こうとしてたら、それを正しい方向へと導いてやるのが!! 提督の役目だろうぁ!!」

前提督「黙れえええええええええええええッ!!」

提督「…………」

前提督「……僕は……!!」

提督「!!」

前提督「君ほど……強くないんだ……!!」 ポロポロ




569: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/10(火) 16:47:39.15 ID:h60+Pw5w0


提督「…………」 パッ

 ピー!! ピー!! ピー!!

提督「!? 通信機に連絡?」 ピッ

提督「どうした!?」

レーダー妖精さん「テイトク!! チンジュフフキンカイイキニテ、シンカイセイカンガ!! コチラニセッキンチュウデス!!」

提督「!?」

提督「レーダーに反応があったのか!?」

レーダー妖精さん「ハイ!! ネツゲンタスウデス!! ソレニ、ポイント1-2カラモシンカイセイカンガコチラニセッキンチュウデス!!」

提督(な、なんでこのタイミングで!? 金剛に調査してもらった時、鎮守府近海に深海棲艦の反応はなかった……まさか今さっき生まれたのか!?)

提督「鎮守府付近海域の深海棲艦はどのくらいまで近づいてきている!?」

レーダー妖精さん「ジュップンモシナイウチニコチラニトウチャクスルトオモワレマス!! ポイント1-2カラノシンカイセイカンモ、マモナク1-1にトウチャクシマス!!」

提督(1-1……? あの子達がいる海域の近くじゃないか!!)




570: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/10(火) 16:48:49.04 ID:h60+Pw5w0


三日月「…………夕立さん、落ち着きました?」

夕立「……うん」

三日月「……夕立さん、ごめんね……本当に」

夕立「…………」 ギュ

三日月「……なんか、本当に懐かしいですね、この感じ」

夕立「…………」 ギュー

三日月(電ちゃん達の援護に行きたいけど、そんなことできる状況じゃなさそう……)

 ピー!! ピー!! ピー!!

三日月「!?」 ビク

三日月「通信!?」

夕立「ゆ、夕立のも鳴ってるっぽい!?」

 ピッ

提督『全員!! 一旦演習は終了するんだ!!』


神通「え?」 小破

金剛「はぁ……はぁ……提督?」 中破


電「はぁ、はぁ……司令官さん、何かあったのですか?」 中破

菊月「…………」 中破


提督『直ちに戻って来るんだ!! 深海棲艦が鎮守府近海に現れこっちに向かっていると連絡が入った』

金剛「深海棲艦デス!?」

神通「まずいですね……今、鎮守府はがら空きです。すぐに戻らないと提督たちが危ないです!」

提督『しかもそれだけじゃない。君達がいる近くの海域、ポイント1-1に深海棲艦が間もなく到着する!! それもこちらに向かっ――、る!!――』 ザー、ザー

神通「!? つ、通信が……切れた」

三日月「な、なんでこのタイミングで……」

神通「皆さん!! こちらに一旦集まってください!!」




571: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/10(火) 16:50:29.44 ID:h60+Pw5w0


 ザーザー!!

金剛「電!」

電「少し離れてしまっていたのです。あ、三日月ちゃん!」

 ザザ

三日月「ごめんなさい! 少し遅くなりました」

夕立「ごめん三日月ちゃん、肩貸してくれて……」

三日月「大丈夫です!」

菊月(!? 夕立、大破しているのか? それに三日月と会話を……)

神通「……皆さん、状況は理解していると思います。直ちに鎮守府に戻りましょう」

金剛「ケド、深海棲艦は別の方向からもやってきていマス、そちらは」

三日月「そっちには、私が向かいます!!」

電「み、三日月ちゃん?」

三日月「今は迷ってる時間はありません! 今無傷なのは現状私だけです。皆さんは鎮守府に戻ってください。私は、時間を稼ぎます!!」

電「な!?」

菊月「だ、ダメだ!!!!」

三日月「……菊月」

菊月「お前……いや、私達は今演習弾なんだぞ? その状況でどうやって時間を稼ぐんだ」

三日月「ひたすら逃げます。それに、演習弾でもトドメはさせませんが、ダメージを与えることはできる」

菊月「だ、ダメだ!! そんな危険な事!!」

三日月「今!! こうしている間にも深海棲艦は近づきて来ています!! 鎮守府に!! 迷っている時間はありません!!」

菊月「嫌だ!! だったら私も行く!! お前一人に行かせられない!!」

三日月「だ、ダメ!! 今あなた付いてこれる状態じゃないじゃない!!」

菊月「う、うるさい!! 姉の言う事を聞けぇ!!」

三日月「ッ!!」




572: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/10(火) 16:52:01.66 ID:h60+Pw5w0


神通「菊月ちゃん、落ち着いてください」

菊月「ッ!!」

金剛「……ヅッキー……」

三日月「金剛さん……止めないでください」

金剛「……必ず、助けに行くヨ。それまで、絶対に無事でいて!! 無事じゃなかったら……とっても高い紅茶を買ってもらうからネ!!」

三日月「……はい!!」

電「…………三日月ちゃん」

三日月「電ちゃん……電ちゃんも止めないで」

電「うん、止めないのです。三日月ちゃんなら大丈夫だって、信じてますから」 ニッコリ

電「だから、無事でいてください。信じてますから」

三日月「……うん!!」

菊月「……お前ら……!!」

三日月「……菊月。私を信じて? ……私、絶対に沈まないから、安心して? ……だって、久しぶりに菊月とお話ししたいから」

菊月「!!」

三日月「あとで、謝りたいこともあるから……私、絶対に沈まない。妹を信じて?」

菊月「…………ッ、わかった……」

三日月「ありがとう、菊月」 ニコ

菊月「……私は……礼を言われる筋合いなんかない……」 ボソ

三日月「……夕立さんも、ね?」

 ガシー




573: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/10(火) 16:53:16.76 ID:h60+Pw5w0


夕立「…………やだ。離したくない」

三日月「……夕立さん、私を信じて?」

夕立「…………」

三日月「……夕立“ちゃん”」

夕立「!!」

三日月「私、大丈夫だから。絶対に生きるから、ね? ……そうだ」 ガサゴソ

三日月「これ、夕立ちゃんに預かっていてほしいの」 スッ

夕立「……お守り?」

三日月「うん。大切な人から頂いた、私の大切な物。それ、預かってて?」

夕立「……なんで?」

三日月「あとで夕立ちゃんと話す時に、受け取りたいから。形見じゃないよ? それを受け取りたいから、私は絶対に無事でいる」

三日月「あとで、失った時間をたっぷり取り戻そう? 私、本当に馬鹿な事をしちゃったから……夕立ちゃんにも、菊月にも、神通さんにも……前の司令官にも……謝りたいから」

夕立「……うん。預かるっぽい」 スッ

三日月「ありがとう、夕立ちゃん」

神通「…………」

電「三日月ちゃん……信じてますからね」

三日月「うん、電ちゃん。ありがとう」

三日月「……それじゃ、行ってきます。鎮守府、お願いします!!」 ザッ!!

金剛「ヅッキー!! 絶対、絶対に無事でいてネー!!」

三日月「はい!!」 ザザー!!

三日月(……必ず、生き残るんだ。絶対に!!)




578: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/11(水) 07:22:45.60 ID:C5b0hlDv0


ザー、ザー!!


三日月「……見えた!! ポイント1-1、間もなく到着……深海棲艦は……!!」

イ級「……」

イ級「……」

ハ級「……」

三日月(イ級二隻とハ級一隻……あと……あれは、何?)

ル級「…………」

三日月「っ!!」 ゾク

三日月(せ、戦艦……ル級?)

ル級「!!」 ン?  クル

三日月「っ、こっちに気が付いた」 キキ

イ級「…………」

イ級「…………」

ハ級「…………」

ル級「…………」

 四隻から視線を受ける。

三日月「……ハ級……懐かしい相手です……っ」

三日月(怖がるな、三日月……私がここで簡単にやられてここを通してしまったら……鎮守府に……司令官達のところに!!)

三日月「……あなた達は……絶対にここで食い止めます……!!」

 負けたら、私は……殺される、沈むだろう。絶対に嫌だ。私は、生きなきゃダメなんだ。過去の罪と向き合うために。命を奪ってしまったあの人たちの分、多くの人を救わなきゃいけない。

三日月「……負けたくありません」

 私は生き残る。

三日月「戦いなんですから!!」 カチャリ




579: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/11(水) 07:47:41.16 ID:C5b0hlDv0


三日月「ええええええええい!!」 ズドンズドン!!

イ級「!!」 ドカンドカン!!

イ級「……!!」 小破

三日月(よし、演習弾でも、ダメージは与えられる!!)

ル級「!!」 カチャ

三日月「ッ――!!」 ザザッ

 ドォォォォォンッ!! ドォォォォォンッ!!

 バシャアアアアアアアアン!!

三日月「回避、できる!!」

 ドォンドン!! ドカン!! ズドォォォォォン!!

三日月「っ、っ!!」 ヒョイ、ヒョン

 耳に届く砲撃の音と、目に映る砲弾の嵐。一発も当たってはいけない。当たったら、沈む。




580: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/11(水) 07:50:14.83 ID:C5b0hlDv0


三日月「えええええええええええええいッ!!!!!」 ガチャ  ズドンズドン!!

ハ級「!!」 ボォォォォォン!!

三日月「……いける。このまま、この感じを維持するんだ」

 避ける、避ける、避ける。

三日月「!! ――っ!!」 スッ!! ヒュン

 私に迫る砲弾は、私の命を刈り取る。当たったら私は死ぬ。沈む。睦月型の装甲は、紙だ。一発でも当たったら、ダメだ。
 
 ――前の私は、所詮睦月型は役立たずだと言われ、姉妹を馬鹿にされ、現実を思い知らされ、怒ってしまった。――怒る権利なんて、ないくせに。
 前の司令官は、心の底からそんなことを思っていたわけじゃない。そんな気がするんだ。昔、司令官が菊月と如月と話す時の冷たい態度を見て、私は皆に迷惑をかけているんだなって思ってしまった。――確認もせず。それが、その時だけのたまたまの光景だったかもしれないのに、私は何も確認をしなかった。その後ずっと訓練場に籠って、部屋を変え、皆と話すことを拒絶していた。

三日月「…………」 ヒョイ、ヒョン

 私は、本当に馬鹿で、弱い。結局、いつも後悔してばかりだ。――もう、後悔なんてしたくない。
 睦月型の性能も関係ない。私自身が強くなればいいんだ。
 睦月型が弱いんじゃない。睦月型は世界一だ、私が弱いんだ。――だから、私は強くなります。

三日月「あなた達は、一歩も通しません!! 睦月型10番艦、三日月が!! この三日月があなた達を食い止めますッ!!」

三日月「全員、かかってこぉぉぉぉぉぉぉぉいっ!!!!」 カチャ  バンバンバン!!




581: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/11(水) 08:07:56.49 ID:C5b0hlDv0


ル級「!!」 ザッ

 ル級が距離を詰めてくる。

三日月「ッ!!」 ドンドンドンドン!!

 私も距離を離しながら反撃をする。でも、他の深海棲艦の攻撃も避けつつだ。

三日月「くっ……!!」

イ級「イィ――――――――――!!」 ドォンドン!!

ハ級「――――!!」 ズドンズドン!!

 ザザー!! スッ

イ級「!!」 ズドンズドン!!

水柱の数々。砲撃の嵐。――全部避けろ、三日月!!

三日月「うあああああああああああああッ!!」 ヒョイ、ヒュン

ル級「……!! ――ッ!?」

 ル級が、私を困惑するような表情で見つめる。

三日月「私は、睦月型の三日月です!!」 バンバンバン!!

ル級「ッ!!!!」

 ズドォォォォォン!!

三日月(砲撃が来た――避け)

 ツルン

三日月「え?」

 視界が揺らぐ。世界が向きを変える。なんで? ――その理由はすぐにわかる。

三日月「ふあっ!!」 バシャーン!!

 私は、転んだんだ。こんな大事な時に。頭上を過ぎる砲弾が、全てを理解させる。私は転んだ。

ル級「……」 ニヤァ

三日月「――――!!」

 ドォンドォンドォンドオオオオオオンッ!!

 ル級の砲撃が、イ級たちの砲撃が、ハ級の砲撃が――私に迫る。時間がゆっくりと進む。

三日月「っ!!」

三日月(皆さん……ごめんなさい……!!)

 ヒュウウウウウウウウウウウ

三日月「っ、司令官……!!」

 バッ

三日月「――え?」

 その時見た景色は、私の目を疑わせる。――何で?

夕立「ッ!!」 スッ

三日月「夕立ちゃ――」


 ドカンドカンドカアアアアアアアアアアアアアアンッ!!




582: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/11(水) 08:10:17.61 ID:C5b0hlDv0


神通『くっ、なんでル級が突然……!! これでは鎮守府に戻れません……!!』

金剛『こんな深海棲艦が突然現れるケース、初めてデース!!』

菊月『夕立!! 私から離れるんじゃないぞ!!』

夕立『…………』

電『……夕立さん?』

夕立(こ、こんなところにル級が現れるなんて……も、もしかして、三日月ちゃんのところにもル級がいたら……!!)

夕立『み、三日月ちゃん!!』 バッ

菊月『な――!? ゆ、夕立!! 待て!!』

菊月『夕立ッ!!!!』




 ――バッシャアアアアアアアアアン!!

三日月「うっ、げっほ、げほ……!!」

三日月(結構、吹き飛ばれた……頭がクラクラす――はっ!?)

三日月「ゆ、夕立ちゃんッ!!!!」

夕立「…………」

三日月「夕立ちゃん!! なんで……ゆ、夕立ちゃん!!」 バッ

夕立「……あ、あぁ……みかづき……ちゃ、ん……ぶじで……よかっ、た……」

三日月「ゆ、夕立ちゃん……ち、血が……何で大破状態で……こんな……夕立ちゃん!!」

夕立「……あはは……からだ……かってに、うごいて……た……まもれて、よかった、っぽい」

三日月「なんで……なんでぇ……!!」 ガシ

 夕立ちゃんの手を掴む。血だらけだ。全身から血の気が引く。

三日月「やだ……いや……夕立ちゃん!!」

三日月「せ、せっかく……仲直りできたのに!! なんで、なんでですかぁ!!」

夕立「……わたし、さ…………ばかだった……」

三日月「ち、ちがうよ……馬鹿なのは……わた、し……!!」

夕立「……いなづまちゃんの……いうとおり、だった……げほ、ごほ……わからずやだ、ったの……わたし……だ」

三日月「ぁぁ、やだ、やだやだやだ!! 嫌だよ夕立ちゃん!!」

夕立「……ごめんね……みかづきちゃん……!!」 ポロポロ

三日月(何が生き残るだ、何が無事でいるだ!! 肝心な時に、私は……!!)

夕立「にげてごめんね……おしつけ……て、ぇ……ごめん……ね。たすけてあげれなくて……ごめん……ぽ、い」

三日月「ひっぐ……いやだ!! 死なないでよ!! 夕立ちゃあああああん!!」

三日月「これからなのに!! や、やっと仲直りできたのに!! なんで、なんで……嫌だよ!!!!」 ガシ

夕立「……えへへ……みかづきちゃんの、て……ちっちゃくて……かわいい……っぽい……。けど、こんなちいさな……てを……わたしは、つきはなしてたんだ……!!」 ボロ、ボロ

三日月「ぁぁぁ……うぁぁぁ……っ!!」

夕立「……みかづきちゃん」

 カチャ

三日月「――――」

夕立「ごめ――」

 ドカアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!




583: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/11(水) 08:13:09.07 ID:C5b0hlDv0


 バシャンバシャンバシャーン!!

三日月「が、は……げほ、げっほ!!」

三日月「――ハッ!! ゆ、夕立ちゃん!!」

三日月「――へ?」

 私は、ずっと、夕立さんの手を握っていた。震える彼女の手を、離さなかった。――今私が見ている現実は、直視したくないものだった。

三日月「あぁぁぁ……ぁぁぁぁ……!!」

 私は確かに彼女の手を握っている。確かにここにある。――私の手には、夕立ちゃんの腕だけが残っていた。

三日月「」

 夕立ちゃんの腕が徐々に、静かに、光の粒のように、海の中の藻屑のようになり……消えていく。

三日月「」

 それが、夕立ちゃんの死を現実とさせる。――夕立ちゃんは、沈んだ。

三日月「」


イ級「……」

イ級「……」

ハ級「……」

ル級「……」

三日月「」

 ピー、ピー!!


電『はっ、つ、繋がったのです!! 三日月ちゃん!! そっちに夕立ちゃんが行ったのです!! きっと、三日月ちゃんを助けに行ったのです!!』

菊月『今私達二人はもう間もなく鎮守府に到着する!! 三日月……頼む!! 今の夕立は何をするか分からない!! だから、アイツを――守ってくれ!!』

 ドンドンドンドン!!

菊月『ハッ!? い、いなづ――!! ――』 ザザ、ザー

 ザアアアアアアアアアアアア


三日月「…………」

ル級「……」 ガチャ

 ――ブチッ

三日月「……全員……あなた達……全員」



三日月「沈めてやる」




592: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 05:31:54.96 ID:M1A2jsa80


金剛『……電、神通、菊月。このル級はワタシに任せてくだサーイ』

電『へ?』

金剛『ル級は戦艦、ワタシも戦艦デース。相手にするのは、ワタシが最適デス』

神通『でもそれじゃ――』

金剛『早くッ!! こうしている間にも深海棲艦は鎮守府に向かっていマスッ!!』

神通『……菊月ちゃん。電さん』

電『は、はい』

菊月『……なんだ』

神通『先に鎮守府へ向かってください』

金剛『なっ!? 神通!! あなたまさか残――』

神通『違います。私は夕立ちゃんを追います』

菊月『神通さん……』

神通『金剛さん。ここはあなたにお任せします。……決着はまだ付いていないんですから、こんなところで沈んだら……許しませんよ?』

金剛『……フフ、ワタシを誰だと思っているんデスカー?』

神通『……お調子者の紅茶好きです』 ニコ

金剛『違いマース!! 金剛型の金剛デス!!』

ル級『…………』 カチャ

金剛『……さっ、ル級はもう我慢の限界の様デース。……皆、早くッ』

電『……金剛さんも信じてますから!!』 ザッ

菊月『……任せた』 ザザッ

神通『金剛さん。……ご武運を』 ザッ

 …………………
 ……………
………


金剛「はぁ、はぁ、はぁ……ゲッホ……!!」 ヨロヨロ

ル級「…………」

金剛「さすがに……演習弾だとキツイ……ワネ……」

ル級「……」 カチャ

金剛(一隻撃退したのに、お替りが来たのは……さすがに厳しい)

金剛「……ケド、負けるわけにはいかないワ……」

金剛「何隻でも……相手してやりマース!!」 ガチャ




593: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 05:36:48.69 ID:M1A2jsa80


 身体はすぐに動いた。痛む身体に鞭を打ちながら、駆け抜ける。

三日月「…………」 ザー

イ級「イィーーーーーーー!!」 ドォンドォン!!

三日月「…………」 ヒュン

 避ける。そんな攻撃当たってたまるか。――それに、邪魔。

三日月「…………」 ザザッ

 考える。“どうすれば相手を沈めることができるのか”を。演習弾で、どうやって沈めるかを。演習弾は、通常弾と違い普通に当たっても死ぬことはない。ただ、痛みは感じるし、ダメージは受ける。
 なら、何かしらすれば深海棲艦も沈めることはできるはずだ。――そうだ。

三日月「…………」 チラ

 魚雷を確認する。残り、5本だ。
 ――演習弾は普通に当てても意味はない。演習用の魚雷もそうだ。――普通に当てなければいいんだ。

三日月「…………」 ザッ

 接近。回避。準備。全てを淡々と行う。魚雷を手に持つ。避ける。近づく。

 ザザー!!  ドォンドン!!  ――ヒュン  ザバァァァン!!

 ザッ!!

イ級「!?」

三日月「…………」 チャキ

 気が付けばもうイ級の“目の前”だ。――さぁ、弾けてください。

三日月「――っ!!」 シュッ

 グチャ

イ級「――!? ィ――――――――ッ!!!!」

 私は握っていた魚雷を、イ級の目に迷うことなく突き刺す。
 淀んだ色の液体が飛び散る。でも、そんなのは気にしない。すぐさま手を離し、構える。

 カチャ

三日月「…………」

 バンバンッ!!

イ級「ィ――」

 ドカアアアアアアンッ!! バシャンバシャンバシャン

三日月「――ッ!! げっほ、げほ!! ……はぁ、はぁ……ち、近くだったから……ある程度こっちにも被害がでるわね……けど」

イ級「」 ブクブクブクブク

三日月「…………これならいけそうです……」 クル




594: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 05:37:30.32 ID:M1A2jsa80


イ級「…………?」

ハ級「……!? ……?」

ル級「…………」

三日月「……内側から弾け飛べば、沈めますよ?」 チャキ

ハ級「!!」 ドォンドォン!!

三日月「ッ!!」

 バッ!!




595: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 05:51:47.82 ID:M1A2jsa80


三日月(また、私は失敗してしまった)

 ドンドンドンドン!!

三日月(あんなこと言った癖に、肝心な時に……やらかしてしまった) シュン、シュッ ヒョイ

 ドオオオオオン!! ドオオオオオン!!

三日月(……夕立ちゃん……ごめんね……) ヒョイ、ヒョイ

ル級「――!? !?」

三日月(ごめんね……夕立ちゃん……ごめんね) スッ

イ級「ィ!?」

 グチャ

イ級「ィィィィィィイィィィィイイィッ!!」

三日月「……うるさいわ」 カチャ

 バァンッ!! ――ドカアアアアンッ!!  バシャンバシャン!!

三日月「ぁ、っぐ……げっほ……はぁ、はぁ……げっほ!! はぁ、はぁ……!!」 ヨロヨロ ポタ、ポタ

三日月「……残り……二隻ぃ……!!」

三日月「……あはは……こんなに早く沈められるのに……なんで……私……あの時……」

ハ級「……」 ブルブル

ハ級「ッ!!」 バッ

ル級「!?」

ル級「!!」 ドォォン!!   ドカァァァァァン!!

ハ級「!!」 バシャーン!!

三日月「……あの時のハ級と違って、根性がないわね……」

三日月「……あの時のハ級も簡単に沈んでくれれば良かったのに」

ル級「……」 ガチャ

三日月(……こんなことはただの八つ当たりだってわかってる)

三日月(けど……今の私は……望んでいる。戦いに勝つことじゃなくて……目の前の深海棲艦を……コロ……)

三日月「…………あなた……」

ル級「…………ッ」

三日月「……楽に沈めると思うなよ?」




596: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 06:15:27.19 ID:M1A2jsa80


ル級「……タカガ駆逐艦ニ!」

三日月(こいつ、話せたの……?)

ル級「貴様ノ様ナ、駆逐艦ゴトキニ!!」

ル級「何ガデキルッテ言ウンダ!!」

三日月「…………」

ル級「貴様モ!! 貴様モサッキノ奴ノ様ニ、バラバラニナルガイイ!!」 ガチャリ

 バァン!!

ル級「――ァ、アアアアアアアアアアアアッ!! 目、目ガ……!! キ、貴様ァ……!!」 中破

三日月「……戦艦だから慢心しましたね? 人型のあなたなら、演習弾でも目に当たれば痛いでしょ? ……この近さなら、私はどこでも狙える」

 バァン!

ル級「ガァ、ッハ!! アァ、……アア、ァァァァアアアア……!! イダイ……!! 目ガァ!!」 大破

三日月「……どれだけ射撃訓練したと思ってるの?」

ル級「ッ!! ……!!」

三日月「……沈めてやる」

ル級「クッ……クッソ……!!」

三日月「沈めてやる……沈めてやる……!!」

ル級「タカガ……駆逐艦ゴトキニイィィィィイイイイイ!!」

三日月「駆逐艦を……馬鹿にするなあああああああああああああッ!!!!」 カチャ

 ガシ

三日月「――へ?」

神通「…………」

三日月「神通……さん? どうしてここに……?」




597: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 07:51:12.21 ID:M1A2jsa80


神通「……夕立ちゃんを追って……来ました」

三日月「!!」

神通「ゆ、夕立ちゃんは……?」

三日月「…………ごめんなさい」

神通「…………」

三日月「ごめんなさい……ごめんなさい……!!」

三日月「夕立ちゃん……わ、私を……守って……!!」

神通「……敵、深海棲艦は?」

三日月「……四隻中、二隻は沈めました」

神通「!?」

三日月「一隻は逃亡した際、目の前のル級に処分されました」

ル級「……ゥウ、クッソォ……!!」

神通(もう、満身創痍のル級。これを……三日月ちゃんが)

三日月「…………私のせいなんです」

三日月「夕立ちゃん……私を守って……!!」

神通「…………」

三日月「私、また……失敗しました。前は司令官の家族を……そして今度は、大切な友人」

神通「三日月ちゃん」 ギュ

ル級「ッ!!」 カチャ

神通「そこのル級、動くな」

神通「しばらくそのまま待ってろ」

ル級「ッ」 ビク




598: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 07:52:39.65 ID:M1A2jsa80


三日月「…………」

神通「三日月ちゃん、頑張ったんですね?」

三日月「!!」

神通「こんなにボロボロになって、血だらけになって……時間を稼いでいてくれていたんですね?」 ナデナデ

三日月「……けど……夕立ちゃんが……私のせいで!! 私のせいで!!」

神通「…………三日月ちゃん」 ギュ

神通「あなたは、私達を恨んでいないのですか?」

三日月「え?」

神通「私も……夕立ちゃんも、三日月ちゃんを……救ってあげなかった。提督があなたをいじめる時も、私は中途半端で、見守るだけで、あなたを救わなかった」

神通「すごく最低な事を聞いちゃうと思います。私は最低な艦娘だから」

神通「……三日月ちゃんはなんで、そんなことをした私達……夕立ちゃんを……恨んでいないの? 悲しむの……?」

三日月「……関係ないですよ!!」

三日月「そんなの、関係ないんです!!」

三日月「恨んでる? そんなわけないじゃないですか!! 私は、神通さんも、夕立ちゃんも……前の司令官も、大好きなんです!!」

三日月「思い出がいっぱいなんです!! けど、それを私が壊した!! だから……だから後悔してるんですよ!!」

三日月「救わなかったとか、そんなの関係……ないんです。恨むわけ……ないじゃないですか」

三日月「思い出をくれたあなた達を……!! 恨む理由なんて、ないんです!!」

神通「……三日月ちゃん……」

三日月「けど……壊しちゃうんです……私……全部、全部……!!」

三日月「嫌だ……もう、夕立ちゃんに会えないの……嫌だ……!!」

三日月「謝りたい……謝りたいよ……神通さん!! 夕立ちゃんに……もういちど……あやまりたいよぉ……!!」

三日月「うわあああああああああああんッ!! ――ああああああああああッ!!」

神通「…………」




599: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 07:54:24.96 ID:M1A2jsa80


神通『私は提督の御心のままに動くだけです。それが間違った事でも、私が嫌な事でも関係ありません。私は提督の命令に従うだけです』

金剛『……友人としてチューコクしマース』

金剛『そんなの、間違ってるワ』


電『神通さん。あなたの忠誠の仕方は、間違っているのです。……あなたは三日月ちゃんに優しくしてるみたいですが、それこそ自己満足なのです』

電『――優しくするんだったら、どうしてあの子がその人にいじめられている時に、助けてあげないんですか!! 守ってあげないんですか!!』

電『……あなたが守りたいのはその人なんですか? 三日月ちゃんなんですか?』



神通(……何が、提督のいい子になろうだ……)

神通(提督のいい子でもない……全部逃げていただけじゃないか……!! 何がいい子になるだ!! 近くのこんな小さな子に背負わせて……!!)

神通(……本当に、私……最低よ……)




600: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 07:57:11.67 ID:M1A2jsa80


三日月「ひっぐ……ひっぐ……!!」 ギュ

神通「…………っ!!」

ル級「……ハハ」

神通「……何がおかしいの?」

ル級「……クダラン。本当ニ艦娘トハクダラン存在ダ」

神通「…………」

ル級「余計ナ感情ヲ持チ、人間等ニ利用サレ、青ヲ取リ戻ソウトスル我々ノ邪魔バカリヲスル!!」

神通「…………」

ル級「……消耗品ノ癖ニ……邪魔ヲスルナ!! 愚カ者ドモメ!!」 ガチャ

神通「…………」 カチャ

 バァン!!

神通「え?」

ル級「――!?」

三日月「……え?」

ル級「キ、貴様……ナゼ……生キテ――」

 バァンッ!!

ル級「――」 ドカアアアアアアアアアン!!


三日月「……うそ……」

「嘘じゃないよ」





夕立「夕立、元気いっぱいっぽい!」





601: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 08:00:39.40 ID:M1A2jsa80


 ブクブクブクブク……

夕立(……あれ……ここは……どこ?)  キョロキョロ

夕立(……あぁ……私、沈んだのか……身体の感覚、無いや)

夕立(……海の中は青いのかと思ってたけど……暗いんだね……少し、怖いっぽい)

夕立(そういえば、三日月ちゃんから預かったお守り、持ったままだった)

夕立(…………三日月ちゃん、ごめんね)

「ネェネェ」

夕立(……何、この声?)

「アナタ、ヤリノコシタコトハアル?」

夕立(……あぁ、もしかして神様かな? 声が女の人っぽいから、女神様っぽい?)

「ヤリノコシタコトハアル?」

夕立「……いっぱいあるよ」

「フーン」

「ジャアサ、マダマダ艦娘トシテタタカエル?」

夕立「……よくわかんないっぽい。夕立、お馬鹿だから」

夕立「けど、夕立は戦うよ。皆のために、提督さんのために。……友達のために。守るために」

夕立「ハンモックを張ってでも、戦うよ」

「……アナタノ覚悟、ウケトッタヨ」

「直してあげるわ」

夕立「え?」

応急修理女神「私を持たせた提督は良い人ね。私達、結構高い“お守り”なのよ?」

応急修理女神「武器は12.7cm連装砲B型改二ね? 弾が変なのだったからちゃんとしたのにしておいたわ。さ、行ってらっしゃい」

応急修理女神「もう、極力無茶しちゃダメよ? 痛いのはあなたなんだから、ね?」 スゥゥゥゥ




602: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/21(土) 08:02:06.08 ID:M1A2jsa80







夕立「……ごめん、三日月ちゃん」

夕立「お守り……無くなっちゃったみたい」 アハハ

三日月「夕立ちゃん……ゆうだち、ちゃん……?」 ヨロヨロ

夕立「っぽい!」

 ダキっ

三日月「ほ、本物だ……本当に、夕立……ちゃんだ」 ジワァ

夕立「えへへ……心配かけてごめんっぽい」

三日月「ひっぐ……!! ごめんね……あああ……うぁぁぁ……!!」

夕立「……大丈夫だよ。私、生きてるから……」 ギュ

三日月「ッ――!! ……あぅ……ぅうぅ……っ!!」 ボロ、ボロ

 ダッダッダッダ!!

 ギュ!!

夕立「っぽい!?」

神通「……夕立ちゃんの、お馬鹿!! 一人で突っ走り過ぎです!! ホントに――お馬鹿ッ!!」

夕立「じ、神通さん……」

神通「ですが……」

神通「無事で……本当に良かった……本当に……良かった……っ!!」 ポロポロ

夕立「……心配かけて、みんな……ごめんなさい」

夕立「ごめんなさい……!!」 ジワァ

 私達は、皆泣いていた。
 一緒に、泣いていた。全員で――三人で抱きしめ合いながら、泣いた。






612: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/26(木) 17:42:33.89 ID:Zxl9eCpU0


電「……ん……ぅ……?」

電(あれ……?)

菊月「……あぁ、ようやく起きたか」

電「き、菊月さん……?」

菊月「……鎮守府に向かっていた深海棲艦から奇襲を受けたんだ」 ボタ、ボタ

電「!? き、傷が!!」

電(そうだ、電……菊月さんに助けられたんだ)

電「な、なんで電のこと……」

菊月「……身体は勝手に動くものなんだ。貴様は…………妹の大切な友人だからな」

電「…………」

菊月「……一緒にいたイ級は撃退できたんだが、あれは厳しかった……」

ヲ級「…………」

電「ヲ、ヲ級……?」

菊月「……奇襲を仕掛けて来たのはあれの空爆だ。……無事でよかった」

電「…………あ、ありがとうございました」

菊月「…………」

菊月「恐らくだが、司令官達から通信が途切れたのはこいつが原因だ。……空母だったら、直接乗り込まなくとも攻撃できる。……無事だと信じたいがな」

電「し、司令官さん……!!」

菊月「……鎮守府までもう間もなくだ。こいつを何とかするぞ」

電「……は、はい!!」

菊月「……私と協力するなんて……色々と思う事はあるかもしれない」

電「…………」

菊月「……けど、今は……協力してくれ。……頼む」

電「あ、当たり前なのです!」

菊月「……感謝する」

ヲ級「…………」 スッ

菊月「来るぞ!」

電「……はい!!」




613: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/26(木) 17:43:40.91 ID:Zxl9eCpU0


提督「おい!! しっかりしろ!! ……大佐!!」

提督(くっそ!! ……まさか、空爆されるとは思わなかった!! 通信することに夢中になり過ぎていた……くそ!!)

提督「……どうして俺の事を助けた!!」

前提督「…………」

提督(くっそ……血が、止まらねぇ!!)

妖精さん「テ、提督!! 消化作業終ワリマシタ!!」

提督「あぁ、ありがとう!! 天井が空いたおかげで煙が残らなくて幸いだったな……通信機の方は直せそうか!?」

妖精さん「ヤ、ヤッテミマス!!」

提督「頼む!!」

妖精さん2「……コ、コレハ……モウ、厳シソウデスヨ……提督」

提督「諦めんな!! 応急手当だけでもなんとかしなければこいつはこのまま……!!」

妖精さん2「ダ、ダッテモウ……両足ガ……ソレニコノママダトマタ深海棲艦カラ空爆サレル可能性モ!!」

提督「……どこにいたってそんなのは同じだ。やれることはやろう。協力してくれ……頼む!!」

妖精さん2「……了解シマシタ」

提督「……こんなやつでも、慕ってくれている部下はいるんだ。無事を祈っている奴らが、いるんだ!!」

提督「それに、俺はまだアンタとのしたい話がたっぷりあるんだ!! だから……死ぬんじゃねぇ!!」





614: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/26(木) 17:46:20.61 ID:Zxl9eCpU0


菊月「はぁ、はぁ、はぁ……!!」

電「はぁ、はぁ、はぁ」

ヲ級「…………ドウシタノ? モウ、終ワリ?」

電(分かってはいたけれど……まったく攻撃が通らないのです)

菊月(イ級とは比べ物にならない強さだ。こっちの攻撃は通らないのに……!!)

ヲ級「……ソロソロ沈ンダ方ガ楽ダヨ?」 スッ

 ピュンピュン!!

菊月(来る!!)

 バァンバァンバァンッ!!

電(艦載機が多い……!!艦攻と艦爆の両方が来るから常に動き回りながら対空しなければいけないのです。……厳しい)

 ボカァァン!! ボカンッ!!

電(対空が成功しても、こっちの攻撃は効かない。オマケに弾も減っていくし、疲労は溜まっていくばかりなのです!)

菊月「いけぇ!!」 バァンバァン!!

 ドカンドカァァン!!

ヲ級「……避ケルノガメンドクサカッタカラ当タッテアゲテタケド……チョットムカツイテキタ」 ギロ

菊月「……クソッ」

電「…………」

電(どうすれば、どうすればいいのだろう)

菊月「……魚雷しかないだろうな。駆逐艦の必殺技の様なものだ。奴を倒すためには、魚雷しかない」

電「え?」

菊月「どうすれば奴を倒せるか考えていたのだろう? ……私も同じことを考えていた」

電「…………」

菊月「ただ、魚雷はそうそう当たってくれないだろう。だから――」

電「ふふ……!!」 プルプル

菊月「へ?」




615: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/26(木) 17:47:09.39 ID:Zxl9eCpU0


電「ひ、必殺技って……き、菊月さんが言うとは思わなかったのです……ふふふふふ……!!」 プルプル

菊月「な!! こ、こんな時にそんなことで笑ってるんじゃない!! い、良いだろ別に!!///」

電「ご、ごめんなさいなのです……けど、ちょっと面白くて」

菊月「……くぅ、な、なんなのさいったい……!!///」

菊月「というか、貴様は私の事嫌っているのだろう!? わざわざこんな事気にして笑うんじゃない!」 プンスカ

電「……嫌ってる?」

菊月「あぁ!」

電「別に、嫌いではないのです」

菊月「は?」 ポカーン

電「菊月さんの事は、確かに許せません。けど別に、嫌いなんかじゃないです」

菊月「…………」

電「菊月さん」

電「迷っていても、何も解決しないのです」

電「……三日月ちゃんと、正面から会話してあげてください。行動するべきなのです。逃げているだけじゃ、何にも解決できないのです」

電「三日月ちゃんはきっと、行動できたから……夕立ちゃんと仲直りできたのです」

菊月「!!」

電「……菊月さんが良い人だって事は、分かりましたから」

菊月「…………」

菊月「電」

電「……はい、何ですか?」

菊月「ありがとう」

菊月「必ず、生き延びるぞ。轟沈は嫌だからな」

菊月「それに……三日月に、謝りたい。あと、一人で抱え込み過ぎだって、怒ってあげないとな。……はは……やりたいこと、たくさんだ」 ニコ

電「!! ――はいなのです!!」




616: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/26(木) 17:47:53.15 ID:Zxl9eCpU0


ヲ級「……作戦会議ハオシマイ?」

菊月「わざわざ待ってくれるなんて余裕のある奴だな」

ヲ級「……? タカガ駆逐艦ガ二隻イタトコロデ、ドウトデモナルモノ」

ヲ級「楽ニ、楽シマセテネ?」

電「いえ、楽しませないのです。勝つのは、電達なのですから」 バッ

菊月「……駆逐艦を、甘く見るなよ!!」 バッ




617: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/26(木) 17:48:54.97 ID:Zxl9eCpU0


 ザザー!!

三日月「ポイント1-1、そろそろ抜けます!!」

三日月(ダメだ、通信機も繋がらない。電ちゃん、菊月……金剛さんも司令官も無事でいて!!)

夕立「!! 神通さん、三日月ちゃん!! あれ!!」

 ザーザー!!



金剛「はぁ、はぁ、はぁ」

金剛「ごっほ……ごほ!!」 ヨロヨロ

ル級「…………」



三日月「!! 金剛さぁぁぁぁぁん!!」

神通「ル級が一隻……まずいです……!! 金剛さん!!」



ル級「…………」 ガチャリ

金剛(ま、まずい……身体、動かない……。クラクラもする)

金剛「……はは……動け……動きなさい金剛ッ!!」

金剛「――ッ!! ゲッホ!! ゲホ!!」 ボタ、ボタ

金剛「……ファック……」



三日月「ッー!! 神通さん!! 私を思い切り投げてください!! 夕立ちゃんを投げたときみたいに!!」

夕立「ぽい!?」

神通「……分かりました」

神通「本気で投げますから、気を付けてくださいね?」 ガシッ

三日月「はい、お願いします!!」

神通「行きます……でぇええええええええいッ!!!!」 バッ




618: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/26(木) 17:50:00.31 ID:Zxl9eCpU0


 ブオオオオオオオオオオオオンッ!!!!

三日月「――――ッ!!」 ガシ

三日月(魚雷を上手く、ル級の近くに!!)

三日月「っええぇぇぇぇぇいッ!!」 ブンッ!!

 空中で無理やり身体を動かしたからバランスが崩れ始める。感覚が変だ。どっちが上だか下だか分からなくなる。――けど、そんなの関係ない。

三日月(角度計算、着弾時間計算、風向き計算……!!) チャキ

 ――撃ち抜く。

三日月「ッッッ!! 今ッ!!」

 バァァァァンッ!!




 シュルシュルシュルシュル!!

ル級「!?」

 ――カンッ!!   ――ドカアアアアアアアアアアンッ!!

ル級「ッ――――――ァッ!?」

金剛「!?」




619: ◆8Wn59wFc0I 2016/05/26(木) 17:53:00.70 ID:Zxl9eCpU0


 バシャーン!!

三日月「いッたたぁ……ッあ、当たった!!」 バッ

 頭がくらくらする。けど、私はすぐに立ち上がる。

三日月(魚雷は、ル級の近くで爆破させることができたみたいね……目くらましできたこのチャンスに!!)

三日月「金剛さんッ!!」 ザザッ

金剛「ヅ、ヅッキー!!」

三日月「ま、間に合ってよかった、です!!」

金剛「……ごめんネ。逆に助けに来てもらっちゃっタ……」

三日月「何言ってるんですか!! 仲間なんですから、当然です!!」

金剛「ヅッキー……!!」

ル級「……ッ!!」 ギロ

三日月「…………金剛さんを傷つけた分は、しっかりと……仕返しさせていただきますからね」 ギロ

ル級「!?」

 ザッ

神通「えぇ、そうですね」

夕立「数の暴力っぽい!」

金剛「アナタ達……」

神通「……さぁ、三日月ちゃん。夕立ちゃん」

神通「久しぶりのチームプレイですが、相手はたったの一隻です。即座に撃退しますよ。……やれますね、二人とも」

三日月「はい!!」

夕立「っぽい! 今実弾なのは夕立だけだから、トドメは任せてくださいっぽい!!」

神通「えぇ、任せます。……では、行きますッ!!」

三日月・夕立「はいっ!!」



622: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 16:48:47.75 ID:FeJDxbnI0


電「電の本気を見るのです!!」 ブンッ!!

 キィィィィィンッ!!

ヲ級「ッ、ウッザイナァ……」

菊月「電、一旦離れろ!!」 チャキ

電「っはい!!」 バッ

菊月「全弾、持ってけぇぇぇえええええ!!」 バンバンバン!!

 ポンポンポンッ!!

菊月(イカリを武器にして接近するなんて、考えたな電)

菊月(砲撃と魚雷の同時撃ちだ……!!)

ヲ級「チッ」

電「なのです!!」 バンバン!!

ヲ級「な!?」

 バシャーンバシャーン!!

ヲ級(狭叉弾……!!)

ヲ級「本当ニ、メンドクサイ……」

電・菊月「いっけええええええええええええッ!!」

ヲ級「ッ!! ミンナ!!」

ヲ級「ワタシヲ守ッテ!!」

電「な!?」

 ピュンピュン!! バシャンバシャン!!

菊月(艦載機が海の中に!?)

ボシャンボシャアアアアアアアアアンッ!!

ヲ級「……ハァ……大切ナ艦載機ガ……」

菊月「……ははは……」

電「……めちゃくちゃなのです」

ヲ級「……メチャクチャ?」

ヲ級「アナタ達ノ方ガメチャクチャジャナイ」




623: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 16:49:51.84 ID:FeJDxbnI0

菊月「は……?」

ヲ級「ナンデ人間ノ味方ヲシテイルノ?」

電「え……?」

ヲ級「人間ハ、悪ダヨ」

電「あ、悪……?」

ヲ級「人間ハ全テヲ荒ラス存在」

ヲ級「人間ハ争ウ。人間ハ全テヲ汚ス」

ヲ級「人間ハ戦イノ原因ニナル」

電「!?」

ヲ級「ワタシ達ハ人間ヲ滅ボスタメニ生キテイル。アナタ達ハ人間ヲ守ルタメニ生キテイル。……私達ガ戦ウノッテ、人間ガ原因ニナッテイルジャナイ」

電「…………」

菊月「…………」

ヲ級「ネェ」

ヲ級「艦娘ハナンデ人間ノ味方ヲシテイルノ?」




624: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 16:50:52.59 ID:FeJDxbnI0


菊月「じゃあ、逆に聞くがなぜ貴様らは人間を襲うんだ?」

ヲ級「知ラナイ」

菊月「……ふざけ――」

ヲ級「別ニ、フザケテナンカイナイヨ」

ヲ級「本能ガ叫ブンダヨ」

ヲ級「人間ヲ殺セ、滅ボセ、海ヲ取リ返セッテ」

菊月「人類だって、海を貴様らから取り返すために戦っている」

ヲ級「戦ッテイルノハアナタ達ジャナイ」

菊月「ッ!!」

ヲ級「人ノ作ッタ普通ノ軍艦ナンテ、イ級一隻デ潰セル」

ヲ級「ダカラコソ、人類ハアナタ達ヲ生ミ出シタンダ。違ウ?」

電「……分からないのです」

ヲ級「……ホウ?」

電「電達は……艦娘なのです。電は、艦娘が何なのか、いまだによく分かっていないのです。私達は人間? それとも、兵器? ……分からないのです。きっと、それはみんな同じなのです」

菊月「…………」

電「けど、電は人間なのです」

ヲ級「……アナタ達ハ人間ジャナイ」

電「いえ、人間なのです」

ヲ級「ドウシテソンナコトガ言エル」

電「私達艦娘の事を、人間だと言ってくれる方がいるからなのです」

ヲ級「…………」

電「電は……私は、その人の言葉を信じているのです」

電「だから、私は人間なのです」

電「だから……人間として、人類を守りたいのです」




625: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 16:52:08.25 ID:FeJDxbnI0


菊月「電……」

ヲ級「……ハッ」

ヲ級「守リタイ? 人間ヲ? アナタノソノ今ノ感情ッテヤツモ、人間ガアナタニ刷リ込マセタモノナノカモシレナイノニ?」

電「はい」

ヲ級「……人間ハアナタ達ヲ利用シテイルヨ?」

電「それでも、構わないのです。誰かを守れるのなら、それでも、いいのです」

ヲ級「……ホラ、メチャクチャナノハアナタ達艦娘ジャナイ」

ヲ級「傷付クノハアナタ達ダ!! 人間ハソノ間何ヲシテイル? ノウノウト生キテルダケジャナイ」

ヲ級「ナゼ戦ウ? ナゼ守ル? 全テノ害悪ト化シテイル人間ナンカナゼ守ル!!」

ヲ級「“消耗品”トサレテイルアナタ達ガ、ナゼアノクズ共ヲ守ル必要ガアル!!」

電「人間が全員ひどい人達とは限らないのですッ!!」

電「色々の人がいます。ひどい人だって、たくさんいる……でも、電達が何もしなかったら、優しい人だって……死んでしまいます。電達にしかできないことなのです」

ヲ級「…………」

電「……『本音を言うと、君達を戦わせることは非常に心苦しいよ。……私達が言っていいことでは無いかもしれないが、怪我だけはしないようにな』……」

ヲ級「…………」

電「私の司令官が言ってくれた言葉なのです」

電「この言葉だけで……電は充分なのです」

電「電は、戦うのです。……全てを、守るために」

ヲ級「……メチャクチャ通リ越シテル。馬鹿ダネ、アナタ」

電「……知っているのです」

電「……菊月さん、今から言う事……聞かなかったことにしてください」

菊月「へ?」

電「……ヲ級さん」

電「電は、戦争には勝ちたいけど、命も助けたいのです」




626: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 16:53:41.95 ID:FeJDxbnI0


ヲ級「……ハ?」

電「電は……あまり戦いたくはないのです。……できれば助けたいのです」

電「……それが“人類の敵”である、あなた達であってもなのです」

ヲ級「……何ヲ言テイルンダアナタハ」

ヲ級「……今コウシテワタシノ邪魔ヲシテイルノニ?」

電「……はい」

ヲ級「……笑ワセルナ」

ヲ級「ドウヤッテ助ケルンダ? コノママワタシニ殺サレルカ?」

電「いえ、そういうわけにはいかないのです」

ヲ級「ッー!! アナタノ言ッテイル事ハ矛盾シテイルンダヨ!!」

電「知っているのです。電は、あなたが言うように馬鹿なのです。助ける明確な方法もいまだに見つけられていないのにこんなことを言う馬鹿なのです」

電「けど、自分の気持ちに嘘は付けないのです」

電「戦わなければ守れない。戦えばあなた達を助けられない。けど、何もしなければ誰も助けられないし、あなた達も助けられない……」

電「何もできないのが……一番つらいのです。だから、電は……強くなることを誓いました。全てを守れるように、助けられるように」

ヲ級「…………本当ニ馬鹿ダネ、アナタ」

電「……知っているのです」

菊月「…………」

ヲ級「…………」

電「……ヲ級さん、退いてください」

電「……多分、もうすぐ電の仲間が助けに来てくれる気がするのです。今は……退いてください」

ヲ級「…………ハハハ」

ヲ級「退クワケナイデショ?」

電「……ですよね。知ってたのです」 カチャ

ヲ級「構エルンダ」

電「退かないのなら……戦うしかありませんから。まだ、電は……あなたも救えるほど強くありませんし、やり方も見つけることができていません。だから今は……」

電「……あなたを倒して、皆を守るのです」

ヲ級「……ソウ」

ヲ級「デモ、モウ遅イヨ」

電「へ?」

ヲ級「タイムリミット」

 ドォォォォォォンッ!!

電「あっ」

――ドカアアアアアアアアアアンッ!!




627: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 16:54:57.07 ID:FeJDxbnI0


ヲ級「ガッハ……ァッ!!」

電「ッ!!」

菊月「……砲、撃……?」





金剛「……はは、命中デース……」

三日月「電ちゃん!!」

夕立「菊月ちゃんも無事っぽい!」

神通「この距離で当てるなんて、さすが戦艦ですね。……急いで彼女達の元へ向かいましょう」




電「金剛さんに……三日月ちゃん!!」

菊月「……皆、無事だったみたいだな……よかった……」

電「――!! ヲ級さん、あなた……まさか……砲撃が来るって事……」

ヲ級「……ゲホ、ゲホ!! ……サァネ。……馬鹿ナ話シテタラ避ケソビレチャッタヨ」 大破

電「……な、なんで……」

ヲ級「……ナンデアナタガソンナニ困惑シテルノ? 本当ニワケガワカラナイ艦娘ダ」

ヲ級「ゲッホ!! ゲホ!! ……アァ、コレハ助カラナイワ。艦載機モ出セナイシ、終ワッタネ」

菊月「…………」

ヲ級「ネェ、ソコノサッキカラ何モ話サナイ駆逐艦」

ヲ級「アナタハ何デ戦ウ? ナゼ人間ナンカ守ル?」

菊月「……それが私の……艦娘の……使命だからだ」

ヲ級「……マァ、ソレガ普通ノ回答ダヨネ。ヤッパオカシイヨアナタ。今マデ見タコトナイヨ、アナタミタイナ艦娘」

電「…………」

ヲ級「駆逐艦イナヅマ」

電「!!」

ヲ級「アナタノヤロウトシテルコトハ、タダノ自己満足ダヨ。タダノ綺麗事デモアル」

ヲ級「ケド……コノ不毛ナ争イヲ終ワラセルタメニハ、アナタミタイナ馬鹿ガ必要ダ。キット、必要ニナル」

電「…………」

ヲ級「……トドメヲサシテ。サスガニ、苦シクナッテキタ……至近距離デ頭ヲ撃タレタラ、満身創痍ノワタシハ多分沈メルハズ」




628: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 16:55:48.29 ID:FeJDxbnI0


菊月「……」 チャキ

電「菊月さん、電にやらせてください」

菊月「…………わかった」

ヲ級「……イナヅマ」

電「はい」

ヲ級「…………アナタッテ、本当ニ馬鹿ナンダネ」

電「はい」

ヲ級「…………敵ヲ倒ス時ニ泣ク奴、見タコトナイヨ。感情ガアル艦娘ッテ、メンドクサイネ本当ニ」

電「……それなら、あなただってさっき怒鳴ってたのです……あれも、感情なのです……!!」 ボロ、ボロ

ヲ級「……アァ、ソッカ……」

ヲ級「ワタシ達ニモ感情ッテ……アッタンダ」

電「…………ごめんね……!!」 チャキ

ヲ級「……本当ニ、馬鹿ナ艦娘ダ。戦場ニ出テクルタイプジャナイ……」

ヲ級「……………………今度生まれ変わった時には、あなたみたいな優しい友達がほしいな」 ニコ

電「ッ――――!!」

 バァンッ!!





629: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 16:57:13.49 ID:FeJDxbnI0


電「…………」

菊月「…………」

電「……菊月さん」

菊月「……なんだ?」

電「…………周りの人にこの事を話しても、別に……構わないのです」

菊月「……話す必要性がないな。それに……私は何も聞いていない」 ガシ

電「…………」

菊月「……泣くな。敵を撃って泣くなんて、相手にも、沈められた仲間たちにも失礼だ」 ナデナデ

電「……はい……」 ボロ、ボロ

菊月「…………けど、まぁ……奴はきっとお前に救われたと思う」

電「…………」

菊月「……最後に見せたヲ級の笑顔は、電にしか作ることはできない。きっと、艦娘の中で、お前にしか作ることができない笑顔だ。私には分からない気持ちだけど、お前のその気持ちは絶対に忘れてはいけないものだ」

電「……はい……」

菊月「……きっと、アイツ……深海棲艦の心を、電は助けることができたはずだ。……きっと、な……」

電「はい……はい……!!」

菊月「……戦いが苦手だろうに……よく頑張ったな……」 ナデナデ

電「……ごめんなさい……!!」 ボロボロ

菊月「……三日月達がここに来るまでに、泣き止むんだぞ」 ナデナデ




630: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 16:58:22.99 ID:FeJDxbnI0


 ザザー!!

三日月「電ちゃん!! 菊月!!」

金剛「ソーリー……神通。引っ張ってくれてサンキューネ」

神通「いえ、お安い御用です」

夕立「何はともあれ、全員合流できたっぽい!」

電「皆さん……」

菊月「あぁ、……全員無事で、良かった」

三日月「大丈夫!? 怪我は……当然してるよね。来るの遅くなっちゃって……ごめんなさい」

電「……いえ、大丈夫なのです。……三日月ちゃんも、皆さんも無事でよかったのです」

夕立「いやぁ……まぁ……色々あったっぽいけど、ね」 アハハ

菊月「勝手な行動をした挙句……さてはまた無茶したな貴様……」 ゴゴゴゴゴゴ

夕立「ひぃ!! ごめんなさいっぽい!!」

菊月「……まぁ、無事で良かった。説教はあとで当然するけどな」

夕立「はい……」

三日月「……電ちゃん、何かあった?」

電「へ?」

三日月「何か、元気ない……本当に、大丈夫?」

電「……はい、大丈夫なのです」 ニコ

三日月「……なら、良かったです。何かあったら、いつでも話聞くから、ね?」 ニコ

電「うん、ありがとうなのです」

神通「恐らく……先ほどのヲ級が最後の深海棲艦で間違いないでしょう。遠目からだったので、確実ではないですが、かなり接近していたよう見えました。大丈夫でした?」

菊月「……あぁ……援護、感謝する」

電「…………ありがとう、ございました」

三日月「…………」

三日月「電ちゃんっ」 ギュ

電「え?」

三日月「疲れてそうだから、鎮守府まで私がエスコートするね?」 ニコ

電「……あ、ありがとう……///」 カァァァ

金剛(恋人同士かな?)

三日月「さ、皆さん……司令官達が心配です。急いで戻りましょう」

神通「えぇ、そうしましょう」

三日月「はいっ!」

菊月「……三日月」

三日月「!! う、うん……菊月、どうしたの?」

菊月「ありがとう」

三日月「へ?」

菊月「……さ、急ごう。……先に行ってるからな」 ザザ

三日月「う、うん」

電「……ふふ」




631: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:00:33.35 ID:FeJDxbnI0


提督「通信機、直りそうにないか?」

妖精さん「モウ少シカカリソウデス……スミマセン」

提督「いや、大丈夫だよ。作業止めてしまってすまない。ありがとうな」

妖精さん「イエ」

提督(……全員、無事だろうか……)

 タッタッタッタッタッタ

提督「……ん?」

 タッタッタッタッタッタ

提督「まさか」

 タッタッタッタッタッタ!!

 バターン!!

金剛「はぁ、はぁ……て、提督ー!!」

提督「こ、金剛!! 無事だったか!!」

提督「でもお前ボロボロじゃないか!! はや――」

 ッタッタッタ!! ダキ!!

提督「こ、金剛!?」

金剛「…………た」

提督「え?」

金剛「……無事で、よかった……!!」

金剛「鎮守府に着いたら、色々な所に爆撃された跡があって……司令室にも……!!」

提督「……金剛も無事で良かった……心配してくれて、ありがとうな」 ナデナデ

金剛「……うん」

 タッタッタッタッタッタ!!

三日月「はぁ、はぁ……司令官!!」

電「こ、金剛さん……は、早いのです……」

神通「ど、どうして一番怪我しているあなたがそんなに早いんですか……」

夕立「さっきまで神通さんに引っ張られていたはずなのに……」

菊月「……愛だな」

提督「三日月!! 電!! それに皆も……無事で良かった」

神通「えぇ、あなたも無事で良かったです。あ、あの!! 提督は……」

提督「……あそこだ」 スッ

前提督「…………」

夕立「て、提督さんッ!!」 バッ

三日月「え……?」

菊月「し、司令官……」

神通「て、提督……?」 ヨロ、ヨロ

前提督「…………」

電「あ、足が……」

提督「…………俺の事、助けてくれたんだ」

神通「……提督!!」

提督「……応急処置はしたし、生きてはいる。けど、両足は……もう手遅れだった。……切断するしかなかった」




632: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:01:30.49 ID:FeJDxbnI0


夕立「ッ!!」

菊月「…………ッ」

妖精さん2「……提督ヲ責メナイデクダサイ」

夕立「……大丈夫、わかってる……」

提督「……大量の出血は、何とか止まった。だけど、頭部を強く打ったせいか……まだ目が覚めない。眠ったままなんだ」

神通「……い」

提督「…………すまなかった……っ」

前提督「…………」

神通「――先生ッ!!」




633: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:02:25.94 ID:FeJDxbnI0


神通「い、嫌です!! 私を置いてかないでください!!」

金剛「じ、神通!! 落ち着いテ!!」 ガシ

神通「いや……いやです……!! せんせい……ッ!!」

前提督「…………」

提督「……とりあえず、病棟に……移動しよう。手伝ってくれ」

三日月「司令官」

提督「三日月……?」

三日月「……司令官」 スタスタ

提督(あぁ、大佐の事か……)

 スタスタスタスタ

三日月「……司令官……!!」

神通「うっぐ……ぅう……!!」

前提督「…………」

三日月「私……まだあなたに謝り足りないんです……言いたいこと、たくさんあるんです。……お願いです……」

三日月「行かないで……!!」

前提督「…………」




634: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:04:01.20 ID:FeJDxbnI0


前提督(……ここはどこだ)

前提督(綺麗な景色だ。空気も澄んでいる。居心地がいいな)

前提督『あれ……だけど、僕は……さっきまで彼と……』

『あなた』

『パパ』

前提督『へ?』

前提督『お前達……!!』

『久しぶりね、あなた』

『パパ……会いたかった』

前提督『……そうか、僕はさっき……あの男を……くっそ、どうしてあんなことをしてしまったのか……』

『…………』

前提督『……ここは、あの世なのかい?』

『…………』

『…………』

前提督『そうか……けど、またお前達と暮らせるなら』

『ダメ』

前提督『え?』

『まだパパ……お仕事いっぱい残ってるもん。こっちに来ちゃだめー!!』

前提督『……な、なんでそんなこと言うんだよ……ほら、“ミカ”!! 久しぶりに僕と遊ぼう。……ずっと寂しい思いをさせてごめんな』

『…………』

前提督『あ、あれ……そっちに、上手くいけない……くっそ、どうしてだ!!』

『あなたがまだこっちに来ちゃダメよ……』

前提督『ど、どうしてだ!! 僕はもう、死んだのに!!』

『いえ、あなたはまだ生きいます』

前提督『え?』




635: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:05:26.41 ID:FeJDxbnI0


『見て』

神通「先生!!」

前提督『……神通』

菊月「司令官!!」

前提督『……菊月』

夕立「提督さん!!」

前提督『夕立……』

三日月「――司令官!!」

前提督『三日……月……』

『あなたは……まだ、眠ってるだけよ。生きてるの』

前提督『……じゃあ、このまま眠り続ければお前達といれるって事か』

『あ、あなた!!』

前提督『なんでそんなに拒むんだ!! 僕の事が嫌いなのか!?』

『…………』

前提督『……どうしてだよ……やっと会えたんだぞ……?』

『あなたの事は……愛してます』

前提督『じゃあ、どうして……!!』

『あなたの帰りを待っている人たちがいるのに……置いてくるの?』

前提督『!!』

『そんなの……無責任です……』

前提督『……僕は!!』

前提督『ずっと、ずっとお前達に……会いたかった』

『……私もです』

『私もだよ、パパ』

前提督『なら、いいじゃないか!! もう、このままでいいじゃないか!!』

『……ダメよ』

前提督『なんでだよ……!!』

『あの子と和解できてないから』

三日月「司令官……!!」

前提督『……アイツと、和解だって?』




636: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:06:37.71 ID:FeJDxbnI0


前提督『そんなこと、する必要はない。アイツは……お前達の事を!!』

『もう、逃げるのはやめにしましょう』

前提督『逃げてなんかいない!! お前も少佐みたいなこと言うのか!?』

前提督『……俺がアイツを憎む心は本物だ!! 憎いんだよ!! 三日月は……お前達の事を殺したんだぞ!!』

『けど、あの子は悪くないとも本当は思っているんでしょ!? そんなこと皆知っているんです!!』

前提督『……なんなんだ、どいつもこいつも』

前提督『僕は……俺は!!』

『…………』

前提督『お前達に何もしてやれなかった!!』 ボロボロ

前提督『家の事も任せっきりにしてしまったし……中々会う機会もなかった……!! 愛情を伝えることができなかった!!』

前提督『……久しぶりに、お前達に会えると思っていた……本当に、楽しみにしていたんだ……』

前提督『今までにないくらい……ミカと遊んであげようと思った……愛情を伝えようと思った……お前と一緒にいたかった!!』

『…………』

『…………』

前提督『なのに……なのに……!!』

前提督『お前達ともう会えないんだ!! そんなの……嫌だった……!!』

前提督『お前達と……会いたかった!!』

前提督『…………なんで俺は……もっと、護衛を付けなかったんだ……くっそ!!』

『……あなた』

前提督『突然やって来たんだ。恐怖が!! お前達ともう二度と会えない。言葉を交わせない……俺は……怖かったんだ……怖かったんだよ!!』

前提督『そんな時に……あいつが、自分が一番悪いって言ったんだ……そう、その通りなんだ!! あいつがお前達を撃ったんだ!! あいつが!! あいつがぁ!!』

『あなた!!』
『パパッ!!』

前提督『!!』

『私はあなたの事、愛していました』




637: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:07:33.72 ID:FeJDxbnI0


前提督『ッ!!』

『わたしも、パパの事大好きだったよ』

前提督『うっぐ……!!』

『しっかりと愛は伝わっていました』

前提督『お前……』

『一生懸命働くパパが、わたしの自慢だった。寂しかった時もあるけど、そんなのしかたないもん!!』

前提督『ミカ……!!』

『あなたは、まだここに来る人じゃないわ』

前提督『…………』

『パパを待ってる人たちがいっぱいいるんだから』

前提督『…………』


三日月「司令官!!」

三日月「ごめんなさい……!!」


前提督『……またいつか、戻って来る』

『はい、お待ちしています』

『わたしも……ずっと、待ってる』

前提督『……ありがとう、愛してるよ』

『私も、愛しています』

『わたしも!! パパの事大好きだから!!』

前提督『っ……ありがとう……またな……!!』


 スゥゥゥゥゥゥ――





638: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:09:02.01 ID:FeJDxbnI0


前提督「…………い」

三日月「……え?」

前提督「うるさいんだよ……君の声……耳……障り……だ」

三日月「し、司令官!!」 パァァァ

神通「せ、先生!!」

夕立「て、提督さああああああああん!!」 ブワ

菊月「司令官!! よかった……!!」

提督「よ、妖精さん!! 移動させる準備だ!! 病棟へ!!」

妖精さんs「リョ、了解ッ!!」

電「…………電も手伝うのです」 スッ




639: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:09:30.28 ID:FeJDxbnI0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 あれから、三日が経ちました。

 コンコンコン

三日月「司令官、三日月です」

提督「あぁ、三日月か。入っていいよ」

三日月「はい、失礼します」 ガチャ

提督「お疲れさま。時間かい?」

三日月「はい、もうすぐお昼です。“提督”の所へ行きましょう」

提督「うん、了解したよ」

三日月「……お忙しそうですね」

提督「ん、あぁ。今までにないケースで深海棲艦が出現したからね。その報告やら……鎮守府の修理申請やら……たくさんだよ」

三日月「あ、あの……何かあったら手伝いますから!」

提督「あぁ、ありがとう……」

提督「とにかく、大佐の所へ行こうか」

三日月「はいっ」

 鎮守府は、平和だ。




640: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:11:25.12 ID:FeJDxbnI0


〈病棟 病室〉

前提督「だから、味付けが微妙だって言っているんだ。日本語理解できないのかな君は?」

提督「おっ、テメー喧嘩売ってんのか? 俺が愛してやまないボルシチの俺流の味を否定するなんてな」

前提督「あぁ、なら君の味覚がおかしいだけだね。ごめんよ」

提督「本当にアンタムカつくなぁ……怪我人じゃなかったらぶっ飛ばしてたわ」

前提督「……ふん。というか、そもそも何でここで食事しているんだ。ゆっくり休めないんだが」

提督「うっせぇ。俺の鎮守府では食事は皆で一緒に取るって言うルールがあるんだ。我慢してくれ」

前提督「へぇ」

提督「聞いといて全然興味なさそうだなアンタ!?」

三日月「…………」

 司令か……提督は、怪我が治るまで私達の鎮守府にいることになった。当然――

夕立「お、美味しい……ぽい」

菊月「…………」 パクパク

電「き、菊月“ちゃん”!! それ電のおかずなのです!!」

菊月「え? あ、あぁ……すまん」

金剛「ウンウンー、育ち盛りだからもっと食べるべきデース! お替りいるー?」

菊月「…………い、いただこう」

 皆も泊まっています。

神通「……○○さん」

提督「ん? 何だ?」

神通「……こ、これの作り方あとで教えてください」

提督「ああ!! 良いよ!! はっはっはー! どうやら味覚がおかしいのはアンタだけみたいだなー? 大佐ー?」

前提督「……ん、あぁ。多分君が作ってるから微妙だと感じてしまうのかもしれないね。神通、完成したら僕に食べさせてほしい」

神通「元よりそのつもりですよ、提督」

提督「アンタ……全部返せ!! 食ったもの全部!!」

 ギャーギャー!!

三日月「…………」

 司令官と提督は、以前と同じく常に言い争いをしている。けど――

提督「――!!」 ガミガミ

前提督「……あはは」 ニコ

 前みたいなギスギスとした雰囲気はなくなっていた。




641: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:12:34.66 ID:FeJDxbnI0


 私達が抱えていた問題は、意外にも早く解決した。

菊月『三日月』
夕立『三日月ちゃん』
神通『三日月ちゃん』

神通・夕立・菊月『ごめんなさい』

三日月『……へ?』

 神通さん達が、私に謝ってきた。

三日月『あ、謝ることなんてないです!! 私が一番――』

夕立『ううん。そういう事じゃないっぽい』

菊月『……あぁ、私達は、お前から……逃げていた……』

神通『……全部、抱え込ませちゃって……ごめんなさい』

三日月『…………』

 話し合った。正面から、皆で話し合った。
 お互いの思っていた気持ちを、正直に話した。皆が、謝りっぱなしだった。――けど、それだけじゃない。



菊月『――本当に、そういう所あるよなお前は……何で誰にも相談しないんだ!』

三日月『だ、だって仕方ないじゃない!! 私のせいだって思ってたんだから!!』

 ワーワー!!

夕立『ふ、二人とも……もうその辺にしとこ――』

三日月『夕立ちゃんは静かにしてて!!』
菊月『夕立は静かにしていろ!!』

夕立『ぽ、ぽいいいいい!! ごめんなさいっぽい!!』 ビシ

神通『……ふふ』

神通『二人とも……お互いを大切に思っていたんですね』

三日月「へ?」

菊月「え?」

三日月『!!///』 カァァァァァ

菊月『ッ……///』 カァァァァァ

 久しぶりに、姉妹喧嘩ができた気がする。

三日月『菊月……ご、ごめんなさい』

菊月『……私の方こそ、熱くなりすぎてしまった。すまない』

三日月『……ぷっ』

夕立『み、三日月ちゃん?』

三日月『何か……皆謝ってばかりですね……ふふふ』

菊月『……ふふ、そうだな』

 案外全員が、勝手に思い悩んで、自己完結して、お馬鹿やっていたんだなぁって思いました。

三日月『……皆さん』

三日月『ありがとうございます』 ニコ




642: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:13:03.98 ID:FeJDxbnI0


 提督との問題は、私自身よく分かっていない。解決したのか、してないのか、よく分からない。

三日月『司令官……ごめんなさい』

前提督『…………』

前提督『三日月』

三日月『!!』

前提督『…………もう、いいから』

前提督『今は……休ませてくれ』 クル

三日月『……はい』

前提督『それと……もう僕は君の司令官じゃないんだ。呼び方は変えてくれ』

三日月『え?』

前提督『彼も困るだろう。どっちが呼ばれているんだって、混乱すると思う』

三日月『……はい』

三日月『て、提督』

前提督『……あぁ、なんだい?』

三日月『!! お疲れの所、し、失礼しました!!』 バッ

三日月『っ~~~~~!! ッ!!』

 許してもらえたとは思っていない。けど、普通に会話してくれた。
 それだけで、私は泣きそうになっていた。単純な女です、私。




643: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:14:53.10 ID:FeJDxbnI0


 ちなみに、これは私がチラッと見た光景の話です。

神通『……電さん』

電『…………』

神通『あの時は……本当にごめんなさい』

電『電の両腕を折った時のことなのです?』

神通『はい』

電『別に……いいのです』

電『あの時……あなたが止めなかったら腕が折れる以上の事になっていたでしょうし』

神通『…………』

電『菊月さんや神通さん達が三日月ちゃんと話しているところ、見たのです』

神通『……』

電『三日月ちゃん、笑っていたのです。あなた達も、笑っていたのです』

神通『……』

電『仲直りできて、良かったのです』

電『それ見てたら……電の怒りもどっか飛んで行っちゃったのです』

電『だから、この話はおしまいなのです』

神通『で、ですが!!』

電『――って言いたいところなのですが、神通さんはそれじゃあ納得できないと思います』

神通『…………』

電『なので、いくのです』

 ヒュン――バチィィィィィン!!

神通『ッ』

電『この一発で、いいのです』 ニコ

神通『……ふふ、良い平手打ちでした』

電『他の子達への分も力込めましたから、痛いのは当然なのです』

神通『なるほど、それは当然痛いですね』

電『ふふ、なのです!』 ニコ




三日月『…………』

 他の人達の問題も、大丈夫そうだ。




644: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:15:28.36 ID:FeJDxbnI0


~一週間後~


金剛「ウゥ……ウー!!」

三日月「こ、金剛さん……そろそろ機嫌治してください」

金剛「だ、だって……だって悔しいデース!!」

電「あとちょっとだったのです……」

金剛「うううううううう!! 負けたの本当に悔しいデース!!」

 私達は、改めた形という事で、前は中止になった演習を行いました。
 結果は、私達の負けだった。

夕立「神通さんがいなかったら夕立達の負けだったっぽいー」

菊月「あぁ、私達ももっと鍛えないとな」

神通「菊月ちゃんの作戦や、夕立ちゃんの援護が良かったんです。全員の勝利です」

金剛「……ちっきしょうめー!! 今度はギッタンギッタンにしてやるデース!!」

 当然、悔しかった。けど、それ以上に、楽しかった。

電「……夕立ちゃんの手投げ魚雷っていうわけの分からない攻撃さえなければ……どうやったらあんな破天荒な事できるのですか……」

夕立「え? あれ、三日月ちゃんが先に夕立にやって来た技だよ?」

電「え?」




645: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:16:12.79 ID:FeJDxbnI0


前提督「あれ? ボコボコにするんじゃなかったっけ?」

提督「うるっせぇ!! 次は……ま、負けねぇからな!!」

前提督「次……か」

提督「ん?」

前提督「少佐、次は多分……ないよ」

提督「……提督、辞めるのか」

前提督「……あぁ」

提督「やっぱ、その足が原因か……?」

前提督「まぁ、さすがにこれじゃあ不便だからね。仕方ないさ」

提督「……すまなかった」

前提督「いや、僕が勝手にやった事さ。君が気に病む事はないよ」

提督「…………」

前提督「それで、その事関して少し君に頼みたいことがあるんだ」

提督「へ?」




646: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:17:47.43 ID:FeJDxbnI0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

前提督「それじゃあ、短い間だったけど世話になったね」

提督「いや、こちらこそ世話になった。まっ、暇ができたら遊びに来いよ」

前提督「あぁ、暇ができたらね」

 提督達が帰る日がついにやってきました。

夕立「み、三日月ちゃん……」

三日月「ゆ、夕立ちゃん……そんなに悲しまないで? 永遠の分かれってわけじゃないんだから」

夕立「そうだけどやっぱりしばらく会えなくなるのは寂しいっぽい~!!」

電「三日月ちゃんの名前を出すだけで不機嫌になっていた人の発言だとは思えないのです」

菊月「触れてやるな。こいつは犬みたいなもんなんだ」

菊月「……電、三日月、金剛さん。世話になった」

電「こちらこそお世話になったのです」 ペコリ

三日月「お、お手紙書くから!」

夕立「ぽ、ぽい~……」

神通「さぁ、皆さん。そろそろ乗りますよ? 運転手を待たせています」

前提督「ははは、そうだね。それじゃ、そろそろ行くよ」

提督「あぁ」

金剛「じ、神通!! あなた本当に艦娘辞めちゃうデース!?」

神通「はい。提督……先生のお世話をするためには、それが一番手っ取り早いですから、皆とも相談した結果です」

夕立「…………」

菊月「…………」

前提督「……すまないね、神通」

神通「いえ、お気になさらず」

金剛「うぅ……」

神通「もう、戦艦なんですからいつまでもダダをこねないでください」

神通「別に軍から離れるわけじゃないですし、戦闘に出なくなるだけです。だから、いつかきっと会えますから。元気出してください」

金剛「……了解デース」

神通「それじゃあ、そろそろ皆さん乗りますよ」

 菊月、夕立ちゃんが車に乗っていく。本当に、しばらくお別れなんだなっと実感する。




647: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:18:41.63 ID:FeJDxbnI0


前提督「…………」

三日月「あっ」

 提督と目が合う。提督は、目を逸らさずじっと私を見つめていた。

前提督「……三日月」

三日月「はい、何ですか、提督」

前提督「僕は、君を色々と罵倒し続けてきた。ひどい態度を取ってきた」

前提督「僕は、君を憎んでいるから」

三日月「……はい」

電「…………」

前提督「……君が怒って僕を殴ったあの時、僕は君の姉妹まで馬鹿にした……君に最悪の気分を味わってほしかったから。最低な事を言ってしまった。その事に関しては……謝る。すまなかった」

菊月「…………」

三日月「……はい」

前提督「だけど、あの事件の事は……まだ恨んでいる。その気持ちは……変わらない。だから、今までの事は……謝らない」

三日月「いいんです、それで。当然ですから」 ニコ

前提督「……ちょっとこっちに寄ってくれ」

三日月「はい」 スタスタ

前提督「僕は謝らない」

三日月「……はい」

前提督「だけど」 スッ

三日月「え?」




648: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:19:30.70 ID:FeJDxbnI0


 ナデナデ

前提督「……新しいこの鎮守府の“一人”の艦娘として……頑張れ。応援している」 ナデナデ

三日月「…………」

前提督「……」 スッ

前提督「神通、押してくれ」

神通「はい。三日月ちゃん、お元気で」 スタスタ

 バタン!

 頭がうまく働かなかった。神通さん達が車に乗り込む。お別れの時間だ。
 けど、どうしていいか分からなかった。

提督「全員、敬礼ッ!」

 バッ!!

 敬礼することしかできなかった。
 離れていく車。夕立ちゃんが窓から顔を出して何か言っているが、聞き取れなかった。

 車が次第に見えなくなり、お別れは終わりを迎えた。

 ポンッと司令官が私の頭に手を乗せた。電ちゃんが私の手を握ってくれた。金剛さんが後ろから私をギュッと抱きしめてくれた。
 視界が、ぼやけていた。

提督「良かったな……三日月」 ナデナデ

三日月「ひっぐ……ひっぐ……っ……!!」

 しばらく皆そのままの状態でいてくれた。
 幸せな時間が、涙と共に流れていった――




649: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:21:28.07 ID:FeJDxbnI0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 あれからしばらくが経ちました。我が鎮守府も少しずつ艦娘が増えてきています。

三日月「え、えっと……! あの資料はどこだっけ……」

長門「…………」

三日月「あっ、あったわ! もう、誰ですか前の秘書官は……資料が元に戻ってないじゃないのぉ……!! あっ、北上さんって書いてある!! もう……!!」

長門「み、三日月?」

三日月「!! な、長門さん! お疲れさまです!」

長門「あ、あぁ。お疲れさまだ。大丈夫か……? 何か手伝おうか?」

三日月「いえ! 本日の秘書官はこの三日月です! 司令官は今別件で外されていますけど、私自身に任されたお仕事ですから!」

長門「……ふっ、そうか。あまり無理はするなよ」

三日月「はい! ところで長門さん、何かご用件があったのでは」

長門「あぁ、実はな――」

 ガチャ

加賀「艦隊帰投しました」

三日月「あっ、加賀さんお疲れさまです! 他の皆さんは入渠中ですか?」

加賀「えぇ。私は無傷だったので、報告しにきました。作戦は無事終了です。これ、報告書よ」

三日月「わぁ! ありがとうございます!! ……はい、確認できました。わざわざ報告書まで書いていただいて……本当にありがとうございます!!」

加賀「いえ。ついでですから。それでは」 スタスタ

長門「…………」

三日月「あ! ご、ごめんなさい長門さん!! それで、ご用件は」

長門「あぁ、実は資材の件で――」

 タッタッタッタッタッタ!!

 バターン!!

明石「提督ー! 建造終わったので報告……ってあれ?」

三日月「明石さん、お疲れ様です。司令官なら今席を外しておりますよ? 建造終了したんですか?」

明石「あぁ、三日月ちゃん! うん、そうですよー」

三日月「ありがとうございます。とりあえず、司令官が戻って来た時にそちらへ向かいますねっ」

明石「了解です!」 タッタッタ




650: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:22:21.89 ID:FeJDxbnI0


長門「…………」

三日月「ご、ごめんなさい長門さん」

長門「いや、大丈夫だ。……忙しそうだな」

三日月「し、仕方ないことですから」

長門「……えっと、だな。実は資材の計算が少し合わなくてな。それの確認について連絡に来たんだが」

三日月「え? ほ、本当ですか? しょ、少々お待ちを……今資材の確認書を……」 ドタバタ

 タッタッタッタッタッタ!!

電「み、三日月ちゃん!! た、大変なのです!!」

三日月「い、電ちゃん? どうしたの?」

電「じ、実は訓練中だったのですが……天龍さんと龍田さんが大喧嘩を始めてしまって……今必死に金剛さんがなだめているんです……が……み、三日月ちゃん?」

三日月「…………」

 ブチッ

電「!?」

三日月「この忙しい時に……あの二人は……何してるんですか」 ブツブツ

長門「み、三日月……?」

三日月「……すみません、長門さん。ちょっと、止めてきます」

長門「は、はい」

三日月「ごめんね電ちゃん……案内してもらえる?」

電「う、うん。こっちなのです」




651: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:24:03.58 ID:FeJDxbnI0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

天龍「す、ずみまぜんでした……」 ドゲザー

龍田「ごめんね~三日月ちゃん~」

三日月「いえ、今回は確実に天龍さんが原因ですから。龍田さんは次から気を付けて頂ければ結構です」 ニコ

三日月「んで、天龍さん?」

三日月「なぁに訓練中に喧嘩なんかしてるんですか?」

天龍「いや、だ、だってよぉ……」

三日月「だって、何ですか?」

三日月「何か言いたいことでも?」

天龍「……な」

三日月「な?」

天龍「な、ないです!!」

三日月「……私、色々と秘書官の作業してたんです」

天龍「……お、おう」

三日月「けど、あなたが喧嘩してるって電ちゃんが飛んできたから急いで止めに来たんです。……そしたら喧嘩の理由が……くっっっだらないことで? ……龍田さんに喧嘩を吹っ掛け? んで龍田さんもちょっとピキッと来ちゃって大喧嘩? 私それを作業中断して止めに来た?」

三日月「……これ、時間の無駄じゃないですか? ねぇ、どう思います? 天龍さん」

天龍「じ、時間の無駄……だな」

三日月「わかってるんだったら喧嘩なんか吹っ掛けずに訓練してくださいッ!!!!」

天龍「わ、わかった!! 俺が悪かったから!! 本当にごめん!!」

龍田「あらあら~」


金剛「ワーオ……天龍が近接戦闘でボッコボコにされましたネー。さすが我が鎮守府最高練度デース」

北上「駆逐艦って怖いね」

加賀「……いや、あの子が怒ると怖いだけなのでは……」

赤城「真面目でいい子ほど怒らせちゃまずいタイプですからねー」 ポリポリ

加賀「赤城さん、それは?」

赤城「おやつです」 ボーキポリポリ




652: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:24:43.50 ID:FeJDxbnI0


 スタスタスタスタ

提督「なんか騒がしいな……どうしたんだ?」

三日月「し、司令官!? お、おかえりなさいです!!」

提督「あぁ、ただいま。司令室に電話したけど長門が出てびっくりしたよ。何かあったのか?」

三日月「えと、まぁ、色々とありまして……あっ、あと……ごめんなさい。まだ秘書官の作業が途中で……」

提督「ん? あぁ、別に大丈夫だよ」

提督「とりあえず三日月、ちょうど君に用があったんだ。ちょっとついて来てくれ」 ギュ

三日月「ふぇ? あ、あの!! 司令官!?///」

提督「よし、行くぞー」 スタスタ

三日月「は、はい……って、自分で歩けますから!!///」




653: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:25:57.56 ID:FeJDxbnI0


 スタスタスタスタ

三日月「し、司令官? いったい何が……」

提督「……お前には真っ先に会ってほしい艦娘達が来ているんだ」

三日月「え?」

提督「実はな、大佐が引退するという事で、頼まれていたことがあったんだ」

提督「ある艦娘達を俺達の鎮守府に置いてくれってな」

三日月「は、はぁ」

提督「……今日はその子達の迎えに行っていたんだ。ほら、着いたぞ」

三日月「し、執務室?」

提督「開けてみるんだ。きっと、喜んでくれると思う」

三日月「は、はい」

 ガチャ

三日月「え?」

「…………普通、ノックはするものだぞ?」

「まぁ、細かいことは良いじゃない~」

三日月「菊月……? あと、如月!?」

菊月「久しぶりだな」

如月「はぁい、如月ですよ~」

提督「三日月、いつか約束したこと、覚えているか?」

提督「お前の姉妹は皆ウチの鎮守府に集めるって言う約束」

提督「その約束達成に一歩近づいたな」

菊月「…………ふっ」

如月「ふふ、夕立ちゃんダダこねてたわねぇ。夕立も連れていってぇ~って」

三日月「……ふふ、あの子らしいですね」 ニッコリ

三日月(……提督、ありがとうございます)

菊月「これから、よろしく頼む」

如月「如月と菊月、本日着任致しました」 ニッコリ

 姉妹が、ウチの鎮守府にやってきました。




654: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:26:38.39 ID:FeJDxbnI0


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 それからまたまたしばらくが経ちました。
 本当に、色々な事がありました。辛いこと、楽しいこと、色々ありました。もう、たくさんありました。

 強くもなりました。練度で言うと99。これ以上はもう強くなれないみたいです。

 そして、仲間が増えました。友達もたくさんできました。

 昨日はバレンタインデーでしたけど、その日も色々とドンチャン騒ぎでした。だけど、また新しい友達ができました。

 本日は月課の私が秘書官の日です。

 司令官は、本当に優しい。昨日、色々と怪我をした私の心配をしてくれる。私は大丈夫だと答えるけれど、心配そうだ。
 本当に……優しい。
 最初から、本当に優しかった。

提督「それにしても昨日は久しぶりに泣いた三日月を見たなぁ~。懐かしい気分になったよ」

三日月「なっ!! お、思い出さないでください……恥ずかしいです」

提督「ははは、何を言ってるんだ……昔あれほど見たんだ。今さら気になんてしないさ」

三日月「……もうっ、司令官はいじわるです!」 プンスカ!

 少しいじわるな所もありますけれど

提督「ははは」 ナデナデ

三日月「……///」

 私は、この人が好き。大好き。

提督「…………ところで三日月」

三日月「はい、なんでしょう」

提督「今、自分の練度がどれだけ高いか知っているよな」

三日月「当たり前じゃないですか。もうこれ以上成長しないくらいですよ」

 でも、私はこの思いを沈める。だって、司令官に比べて私はまだまだ小さい。こんな小さな私と司令官が結ばれることなんてないと思うし、それで構わないと思うしかなかった。仕方のないことだから。
 だけど、司令官は顔を赤面させている。珍しいことだ。

提督「……じ、実はな……そのことで少し話があってな……」

三日月「?」

提督「……渡したいものがあるんだ」




655: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:28:07.24 ID:FeJDxbnI0


三日月「え?」

 司令官が、スッと小さな箱を差し出してきた。

三日月「これは……?」

提督「指輪だ」

三日月「へ!?」

提督「これを付けた艦娘は、最高練度の限界が上がるらしい」

三日月「そ、そんなのいただけませんよ! 他の人が付けた方が」

提督「三日月」

提督「お前に貰ってほしいんだ。この鎮守府で練度99なのは三日月だけだし……俺は……」

提督「お前の事が好きなんだ」

三日月「……うそ……です」

提督「嘘じゃない」

提督「俺はお前の事が……好きなんだ」

三日月「……っ!!」

三日月「嘘ですよ……だって、私、こんなに小さいんですよ? それに、性格もめんどくさいですし、変なクセっ毛です。他の子達と比べたら可愛くも……ない」

提督「お前は可愛いよ」

三日月「!!///////」 カァァァァァァ

三日月「だ、ダメですよ!! こんな小さな私とあなたじゃ、釣り合いが取れません!!」

提督「小さいとか、そんなの関係ない!!」

提督「俺は三日月だから好きなんだ。小さいとかそういうの……関係ないんだ」

三日月「…………司令官は周りから冷たい目をされてもいいんですか?」

提督「いい。世間体なんか関係ない」

三日月「……ロリコンって言われますよ?」

提督「好きなだけ言わせとけばいいよ。実際、お前が好きって時点で……ロリコンなんだろうしな。構わない」

提督「俺は、三日月の全部が好きなんだ。見かけも、性格も、全部大好きなんだ」

三日月「…………」

提督「……受け取ってくれるか? 三日月」

三日月「…………」




656: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:29:02.10 ID:FeJDxbnI0


 こんなに幸せなことがあっていいんだろうか。不安になる。

三日月「司令官、私」

 けど、自分の気持ちに嘘は付けないや。

三日月「もっともっと強くなって、みんなを助けたいんです」

三日月「でも」

三日月「一番助けたいのは……司令官」

提督「……うん」

三日月「っあ、いえなんでもないです……はい……っ……///」

提督「……俺も、お前の事一番に助けたいと思ってるよ」

三日月「!! ……は、はい……」

提督「受け取って、くれるか?」

三日月「……その前に司令官、ちょっといいですか?」

提督「ん?」

三日月「少し、しゃがんでください」

提督「……あぁ」 スッ

三日月「司令官」

三日月「ずっと、お慕いしています」 スッ

 ――――――チュ




657: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:29:52.26 ID:FeJDxbnI0


 白い世界の中に、私はいた。どこまでも続く白い世界に、私はいた。

三日月「……」

三日月『……』

 目の前にいるのは、黒い世界にいた私。景色は、もう黒くならないけど、そこに私はいる。

三日月『ねぇ、あなたはそんなに幸せになっていいの? 多くの人が死んだんだよ? 私が原因で』

三日月「うん。分かっているよ」

三日月「私だって、すごく困惑してる。良いのかなって思っちゃう」

三日月『だったら』

三日月「だけど、色々な人が私を幸せにしてくれる。一緒にいてくれる」

三日月『…………』

三日月「だから私は、幸せを感じるよ。受け取るよ」

三日月『……不幸になった人がいるのに?』

三日月「うん」

三日月「多くの人を不幸な目にあわせてしまった分、私は……色々な人を幸せにしてあげたい。受け取った幸せの分も、しっかりと……」

三日月『……そっか』

三日月『私はもう……一人じゃないんだね』

三日月「……うん」 ニッコリ

三日月「私はもう一人じゃないよ」





 ピピピ――カチ

三日月「……朝、ですね……」

三日月「……新しい朝の始まりですっ」 ノビー




658: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:30:32.74 ID:FeJDxbnI0


三日月「よいしょ……朝練の前にポストの確認っと」 パカ

三日月「あ、夕立ちゃんからだ」 ペラ

夕立『ぽい! 三日月ちゃんげんきっぽい!? 夕立もあいかわらずげんきっぽい! 菊月ちゃん達もげんきしてるかな? ちょっとだけ、さびしいっぽい~』

三日月「…………」 ペラ

夕立『それでね、おどろいてほしいんだけれど、新しい提督さんが来たの! 前の提督さんが辞めた後しばらくは色々な人が来てくれてたんだけど、本格的な提督さんが着任するのはひさしぶりっぽい!』

三日月「!? え、えぇ!?」 ペラ

夕立『前の提督さんが補佐として戻ってきて、新しい提督さんがまさかのじ――』

「――ん!」

三日月「?」

電「三日月ちゃーん!」 ヒラヒラ

三日月「あ、電ちゃん! おはようございます!」

電「はい、おはようなのですっ。電もお久しぶりに朝練付き合うのですっ。お手紙なのですか?」

三日月「うん、夕立ちゃんから」

電「あぁ、夕立ちゃんからですか! 電の事も何か書いてありましたか?」

三日月「うん、書いてあるよ。あと――」 スタスタ

電「――――!?」 スタスタ


 色々な事がある日々だけれど――

 今日も一日、頑張らないと、ですね。


                   ~おしまい~




659: ◆8Wn59wFc0I 2016/06/02(木) 17:33:53.45 ID:FeJDxbnI0

 大量更新失礼しました。最後だったので一気に書きました。
 完結にするのにすさまじい時間がかかったのと、色々と不快に思ってしまう事もあったと思います。矛盾点もありますが、お付き合いいただき本当にありがとうございました。



660: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/02(木) 17:37:21.02 ID:Pi1zZi5TO


やっぱすげぇよミカは



661: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/02(木) 17:40:25.45 ID:mrO33/QHo

やすミカ




元スレ
SS速報VIP:【艦これ】三日月「もっと……もっと頑張らないと……私は」電「……三日月ちゃん」
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