女提督「黒百合鎮守府」【前編】

女提督「黒百合鎮守府」【後編】



SS速報R:女提督「黒百合鎮守府」
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531: ◆CaWSl75vrE 2015/10/31(土) 22:45:00.18 ID:lPX4wYIj0

金剛「幸せに暮らしましょうネー♪」

提督「いやっ……いやあああああああっ!!!」

ガッ

「待て!!」

金剛「What!?」

提督「き、木曾…!?」

木曾「その子から離れろっ!」ドンッ

金剛「うぐっ!?」

ドサッ

金剛「く…この……」

バチバチッ!!

金剛「があっ…!?」

バタッ

木曾「はぁ…はぁ…」

提督「あ……」



532: ◆CaWSl75vrE 2015/10/31(土) 22:52:10.04 ID:lPX4wYIj0

提督「木曾、あの…」

木曾「…!逃げるぞ!」グイッ

提督「えっ!?ちょ、ちょっと待ってよ!逃げるって、どこに…」

木曾「分からないけど…どこか、遠くにだ」

提督「遠くって……失踪するってこと?そんなことしたら、ここの子達はどうなるの!?」

木曾「それも分からない…けど、今はとにかくこの女から逃げるんだ!」

提督「ダメだよ!私がいなくなったらみんなが混乱して…」

木曾「まだ分からないのか!この女は、お前がここにいるからおかしくなってしまったんだ!」

提督「え……?」

木曾「そんな異常者をこのまま放っておいたら、お前どころかこの鎮守府全体が危険にさらされることになるんだぞ…」

提督「…それ、は……」



533: ◆CaWSl75vrE 2015/10/31(土) 22:58:09.57 ID:lPX4wYIj0

木曾「……確かに、困惑してることも、離れたくない気持ちも分かる。けど、これは俺やお前の意思でどうこう出来る問題じゃないんだ」

提督「…………」

木曾「今は……時間が必要なんだ。分かるか?」

提督「………うん」

木曾「…なら行こう」クイ

提督「…待って、メモか何か…」

木曾「ダメだ、そんなもの残したら簡単に足取りが掴まれるぞ」

提督「じゃあ、どうやってここに…」

木曾「……機を見るか、他の誰かが探してくれるのを祈るしかない」

提督「そんな……」

木曾「……行こう、時間がない」

提督「…うん……」

ダッ

ーーー
ーーーー
ーーーーーー



534: ◆CaWSl75vrE 2015/10/31(土) 23:03:08.65 ID:lPX4wYIj0

ガタッ
ガタン ゴトン ガタン

木曾「……………」

提督「……………」

木曾「……………」

提督「……私達の…」

木曾「………?」

提督「…私達のいた鎮守府…どんどん遠くなっていっちゃう…」

木曾「…………ああ」

提督「……ねえ、木曾」

木曾「……なんだ?」

提督「本当に、これでよかったのかな……」

木曾「………分からない」

提督「…………」

提督(これから、どうなるんだろう……)



536: ◆CaWSl75vrE 2015/11/03(火) 16:52:13.65 ID:6xJojIX90

キィーッ…

ストン

提督「ふぅー…やっとついた…」

木曾「…………」キョロキョロ

提督「木曾?」

木曾「あ、いや。鎮守府以外の場所に来るのは新鮮で…」

提督「それもそうだね……はぁ、空気が綺麗だなぁ…」ググ

木曾「ああ…緑がいっぱいだ…」

提督「……さてと、少し歩こうか」

木曾「? 遠いのか?」

提督「うん、ちょっとだけね」



537: ◆CaWSl75vrE 2015/11/03(火) 17:03:03.25 ID:6xJojIX90

木曾「あ、荷物持つぞ」

提督「ん?大丈夫だよ、これくらい。それより木曾も長旅で疲れてない?」

木曾「俺なら平気だが…ただ…」

提督「?」

木曾「……暑いな」

提督「ああ…まあ、ずっと南に下りてきたからね…」

木曾「電車に船にバスに…俺たち、今どのあたりにいるんだ?」

提督「九州のどこか、かなあ…」

木曾「そんなに遠くまで、逃げてきたんだな…」

提督「うん…」



538: ◆CaWSl75vrE 2015/11/03(火) 17:10:13.50 ID:6xJojIX90

木曾「……でも、よかった」

提督「なにが?」

木曾「お前の元気、幾分か戻ってきたみたいだからな」

提督「そう?」

木曾「ああ、鎮守府から抜けてきた時よりよく笑うようになったぞ」

提督「そっか…うん、今は金剛がいないから、安心してるのかも」

木曾「…さすがにここまでは追って来られないだろうが、もしまた何かあったら…その時は俺が守ってやるからな」

提督「…うん」



539: ◆CaWSl75vrE 2015/11/03(火) 22:50:45.83 ID:6xJojIX90

提督「さて……着いたよ」

木曾「うお…大きいな…」

提督「今日からここが私たちの家になるんだよ」

木曾「そうか…しかしよくこんなところ見つけられたな」

提督「小さい頃、夏になるとよくこっちの家に帰省しててね。母方のおじいちゃんとおばあちゃんが亡くなってからはずっと買い手が見つからないからそのまま放置されてたんだ」

木曾「誰も買わないのか…こんな広い家なのに…」

提督「まあ、こんな田舎に来る人なんて今時いないからね…都心部から遠いってだけでも不便だし…」

「あら……あんたもしかして、古湊さんとこの…?」

提督「え?あ、おばさん!?」

おばさん「あ〜やっぱり!」

提督「うわあ、久しぶりですね!10年ぶりぐらいかな?というか、私の姓は狭霧なんですけども…」

おばさん「おお、そうだったねぇ。すまんね」

提督「あはは、相変わらず覚えてくれてないんですね」

木曾「………?」



540: ◆CaWSl75vrE 2015/11/03(火) 22:58:52.37 ID:6xJojIX90

木曾「なあ、この人は…」

提督「ん?ああ、私が小さい頃よく面倒見てもらってた人」

おばさん「んん?嬢ちゃん、その娘っ子はもしかしてあんたの子かい?」

提督「え?違う違う、そんなんじゃないってば!そもそも私、まだ独り身だし…」

おばさん「おお、そうか…そりゃすまんねえ…」

木曾(俺、そんなに子供っぽいのか…)

おばさん「ああ、そうだ…こないなところになんの用事かい?大荷物を持っとるけど」

提督「あー…まあ、色々事情があって…」

おばさん「ふむぅ…複雑な話かい?」

提督「……うん」

おばさん「なら深く聞きはせん、荷物も重いじゃろうしそろそろウチに戻りんさい」

提督「うん…あ」

おばさん「どうした?」

提督「家、掃除し直さなきゃいけないんだ…」

おばさん「そのことなら心配いらん、わしが綺麗なまんまにしとるでの」

提督「え、そうなの?」

おばさん「仏様がおる場所に埃積もらせるのも忍びないからのう、ほほほ」



541: ◆CaWSl75vrE 2015/11/03(火) 23:03:23.60 ID:6xJojIX90

提督「へー…そうだったんだ、ありがとね」

おばさん「いやいや、わしが好きでやっとることじゃ、礼なんぞいらんよ」

提督「うん…それじゃ、落ち着いたらまたお邪魔しにいくね」

おばさん「うむ、待っとる」

スタスタ

木曾「……すごい老人だな、髪が真っ白なのにまっすぐ歩いてるぞ…」

提督「私が5歳の時からあんな感じだったよ」

木曾「仙人か何かか?」

提督「さあ…どうなんだろ…」

ガラッ

提督「わあ…昔のままだ…何も変わってないや…」

木曾「とりあえずこの廊下に荷物置いていいか?」

提督「うん、一通り片したらお昼にしよっか」



542: ◆CaWSl75vrE 2015/11/03(火) 23:17:06.67 ID:6xJojIX90

〜〜〜

提督「どう?」

木曾「ん?どれも美味いぞ」

提督「ふふっ、よかった」

木曾「………なんだか、こうしてると…夫婦みたいだな」

提督「ふふ…木曾と夫婦かぁ……」

木曾「…満更でもないって感じだな」

提督「ん?うん、木曾と一緒なら楽しいもん」

木曾「………っ///」プイ

提督「?」

木曾「そ、そういうことを誰彼構わず言うからこんなことになるんだぞ」

提督「…それもそうか…」



543: ◆CaWSl75vrE 2015/11/03(火) 23:25:59.09 ID:6xJojIX90

提督「……あ、そうそう」

木曾「なんだ?」

提督「ちゃんとした服、買わないとね」

木曾「俺はこのままでもいいんだが…」

提督「ダメだよ、木曾も私もこの格好のままじゃ目立ちすぎるから」

木曾「そうか?」

提督「そうだよ、他の人はみんな洋服着てるのに私だけ軍服っておかしいでしょ?木曾もそうだけど、常にお腹出してマント羽織ってる人なんていないよ」

木曾「え…そうなのか…」

提督「だから、ご飯食べ終わって休憩したら服買いに行こう?夕方までに行けばバスはあるから」

木曾(この服カッコいいのに…)



547: ◆CaWSl75vrE 2015/11/04(水) 19:26:07.44 ID:RTBnYQvj0

木曾「…………」

提督「………うーん……」

木曾「…………」

提督「…………とりあえず、色々見繕ってみたけど…どう?」

木曾「ん…やっぱり、どれもしっくりこないな」

提督「似合ってはいるんだけどね。普段着てた服のせいかな」

木曾「…なんか、悪いな」

提督「いいよいいよ、これから慣れていけばいいから」

木曾「ああ」

木曾(これから、か…)



548: ◆CaWSl75vrE 2015/11/04(水) 20:43:52.55 ID:RTBnYQvj0

提督「そうだ木曾、先にお風呂入る?」

木曾「ん、いいのか?」

提督「うん、疲れてるでしょ?さっきおばさんが沸かしてくれたのが外にあるから、入っておいで」

木曾「そういうことなら……って、外?」

提督「? うん、ドラム缶風呂」

木曾「ドラム缶で風呂!?」

提督「この家、ガスが止まってるから…しばらくはドラム缶風呂になるかな」

木曾「そ、そうなのか…ずいぶん原始的なんだな…」

提督「そのまま入ったら熱いからこれ、底敷き」ポイ

木曾「あ、ああ」

提督「あともたれる時に熱くないように手拭い」ポイ

木曾「ああ…」

提督「それと着替えと、身体拭くタオルね」ポイ

木曾「…………」ズシッ

提督「あとは…何もないか。熱いうちに入ってきてね、ご飯作ってるから」

木曾「…ああ」

木曾(風呂だけで大荷物だな…)フラフラ



549: ◆CaWSl75vrE 2015/11/05(木) 19:36:05.25 ID:NAHt3wtL0

ザブン

木曾「ふぅー……お、いい湯加減……」

木曾「…………」

木曾「……そうか、ここ、丘の上だから…海が見えるのか…」

木曾「………綺麗だな……」

木曾「…………」ガタ

ジュワ

木曾「ああ゛っつ゛!!?」バシャア

木曾「あちち…そうだった、ドラム缶だからちゃんと手拭い置かないと熱いのか…」

ペタ

木曾「よし、と……ふぅ…」

木曾「…………あ」

木曾(髪、どうやって洗おう……)



551: ◆CaWSl75vrE 2015/11/06(金) 19:18:14.35 ID:snRx4Ug40

提督「よいしょっと……」

ガシャン

提督(しばらくはガスコンロかな…不便だけど、仕方ないか)

提督「………さてと、とりあえず豚汁でも作ろうっと…」

ザクッ

提督(料理するのなんて、いつぶりだろう……鎮守府にいた頃は、鳳翔さんが……)

ザクッ

提督「……………」

提督(……みんな、今どうしてるんだろう…)

ザクッ

提督(誰にも、何も言わないで出てきたから…大騒ぎになってるんじゃ……)

提督(朝潮とか、夕立とか…泣いてないといいけど…)

ザクッ



552: ◆CaWSl75vrE 2015/11/06(金) 21:30:33.59 ID:snRx4Ug40

提督「……………」

提督(大淀……生きてるのかな……)

ザクッ

提督(榛名に…加賀も……)

提督(ちゃんと、怪我治ってるかな…)

ザクッ

『逃げるんですか?』

提督「……………!」

『私があんなに辛い思いをしたのに』

提督「……………」

『私たちはあなたを守ろうとしたのに』

『榛名達を見捨てるのですか?』

提督「………違う……」

『何もかも捨てて』

『二人だけで、のうのうと』

提督「違うっ!!!」



ザクッ



554: ◆CaWSl75vrE 2015/11/07(土) 07:43:00.23 ID:zRa2iAf+0

木曾「ふぅ……上がったぞー」

提督「…あ、木曾…」

木曾「お、もう夕飯出来てたのか。さすがに早いな」

提督「うん、食べよう?」

木曾「そうだな。いただきます」カチャ

提督「…いただきます」

木曾「……うん、やっぱりお前の料理は美味いな」モグモグ

提督「そう?」

木曾「ああ、これから毎日食べられると思うと幸せだ」

提督「そっか…ふふ」



555: ◆CaWSl75vrE 2015/11/07(土) 07:47:08.01 ID:zRa2iAf+0

木曾「ところでお前……その手の傷、どうしたんだ?」

提督「え?ああ、これは……料理するのなんて久しぶりだったから、ちょっと切っちゃって…」

木曾「そうか…消毒はしたのか?」

提督「うん、ガーゼも貼ってる」

木曾「…………」

提督「傷は浅いから心配は…って、聞いてる?」

木曾「……ああ、聞いてるよ。早く治るといいな」

提督「ふふ、そうだね」

木曾(傷は浅い、か……それにしては血が滲みすぎているような…)



556: ◆CaWSl75vrE 2015/11/07(土) 18:35:57.15 ID:zRa2iAf+0

木曾「……ふぅ、ご馳走様」

提督「あ、もういいの?おかわりは?」

木曾「いや、いいよ、もう満腹だ」

木曾(ご飯三杯も食べさせておいてよく言うよ…)

提督「そっか…なら、向こうの部屋に布団敷いてあるから今日はもう休んでおいで」

木曾「え、でも」

提督「いいよ、長旅でちゃんと眠れてなかったでしょ?お皿は私が片付けておくから、ね?」

木曾「……わかった、ありがとう」

提督「うん、ゆっくり休んでね」

木曾「……なんていうか、さ」

提督「?」

木曾「俺たち……夫婦みたいだな……///」ポリポリ

提督「っ……!///」ドキン

木曾「…悪い、変なこと言ったな!お、おやすみ!」パタパタ

提督「う、うん…おやすみ…///」カァ



558: ◆CaWSl75vrE 2015/11/07(土) 23:05:30.89 ID:zRa2iAf+0

ボフッ

木曾「ああ……久々の布団だ……」

木曾「…………」

木曾(暖かい……もう思考する気も…起きない……)ウトウト

木曾(さすがに…疲れたな……)スゥ

木曾「………zzz…」

スー…

提督「木曾、毛布……あ」

木曾「すぅ……すぅ……」

提督(もう寝ちゃったんだ…よいしょっと…)

パサ

木曾「ん……んぅ…」

提督「…………」



559: ◆CaWSl75vrE 2015/11/07(土) 23:16:53.46 ID:zRa2iAf+0

提督(普段は凛々しいけど…こうしてみると、やっぱり子供らしくて可愛いなぁ……)ナデ

木曾「くぅ……」

提督(……私もそろそろ寝よう…明日はやることがいっぱいだし…)ゴソゴソ

提督「…………」




提督「…………」

提督「……違う…」

提督「私は…ただ…」

提督「……やめてよ…」

提督「違う……」

提督「違うよ…」

提督「私は……」

〜〜〜



560: ◆CaWSl75vrE 2015/11/07(土) 23:39:39.54 ID:zRa2iAf+0

パタパタ
チチチ…

ツン

木曾「ん………んお…」ゴロ

ピッ
パタパタ…

木曾「う……朝か……」ムク

木曾「…………?」キョロキョロ

木曾「いない…?」

木曾「…………ん、この匂いは…」

スタスタ



561: ◆CaWSl75vrE 2015/11/08(日) 18:33:18.26 ID:Jz/AL23B0

ガラッ

提督「…ん?」クル

木曾「やっぱり、起きてたか」

提督「あ、木曾。おはよう」

木曾「ああ、おはよう……というか、早いな」

提督「? 何が?」

木曾「いや、昨日俺より早く寝ていたのにもう起きてるからさ…ちゃんと眠れたのか?」

提督「うん、私もさっき起きたところだから大丈夫」

木曾「そうか……ならいいんだが」

提督「それよりほら、もうすぐ朝ご飯できるから向こうで待ってて」

木曾「ああ」

パタパタ

提督「…………」



562: ◆CaWSl75vrE 2015/11/08(日) 19:04:28.85 ID:Jz/AL23B0

コト

提督「よいしょっと…さ、食べよっか」

木曾「おお…和食って感じだな」

提督「海苔いる?」

木曾「ああ、もらうよ」

提督「はぁ……こうしてゆっくり朝ご飯を食べられるのって、なんだかいいなぁ…」

木曾「…鎮守府にいた頃は忙しかったもんな」

提督「うん……まあ、毎日忙しかったのは私だけだけど…」

木曾「……そうだな。今は、好きなだけゆっくりすればいいさ」

提督「……うん」



565: ◆CaWSl75vrE 2015/11/11(水) 17:24:38.37 ID:1kBoXtzr0

木曾「そういえば、今日は何をするんだ?」

提督「ん?えっと、今日は新しく服とか食材とか…日用品を揃えに行こうかなって」

木曾「また街に行くのか?」

提督「うん、大きいデパートじゃないと一度に買い揃えられないから…」

木曾「そうか、なら俺もついて行くよ。荷物とか大変だろう?」

提督「うん…助かるよ」

木曾「いつからだ?」

提督「そうだね、ご飯食べてちょっと休憩したら行こうか」

木曾「わかった、準備しておこう」



566: ◆CaWSl75vrE 2015/11/11(水) 17:36:23.32 ID:1kBoXtzr0

提督「木曾ー、行くよー」

「あ、待ってくれ!すぐ行く!」

バタバタ

木曾「悪い、待たせたな」

提督「うん、鍵は私が閉めるから先に出て」

木曾「ああ」

ガチャッ

提督「よし、バス停まで歩こうか」

木曾「ああ……しかし、暑いな…」

提督「もう夏だからね…仕方ないよ」



568: ◆CaWSl75vrE 2015/11/11(水) 19:07:49.85 ID:1kBoXtzr0

ブロロロ…

木曾「……バスの中、誰もいないな」

提督「まあ、そもそもここに住んでる人自体少ないからね…出かけるのなんて私たちくらいだよ」

木曾「そうなのか……すごい田舎だな…」

提督「…ごめんね、こんなことに巻き込んじゃって」

木曾「謝らないでくれ。俺が勝手に連れ出したんだから、責任は俺にあるんだ」

提督「…それでも私は木曾が悪いとは思ってないよ」

木曾「……そうか…ありがとう」

提督「あ…私の方こそ、ありがとうね。今さらだけど、あの時助けてくれたお礼が言えてなかったから」

木曾「いいってことさ、俺はお前のためならなんだって…」

提督「…うん。信じてる」



569: ◆CaWSl75vrE 2015/11/11(水) 19:13:53.38 ID:1kBoXtzr0

ビーッ

ストン

木曾「うお……さすがに街は人が多いな」

提督「車も走ってるから気をつけてね。木曾、鎮守府から出たことあったっけ?」

木曾「いや、ないな」

提督「なら危ないから、ほら」

ギュ

木曾「!」

提督「こうすれば安心でしょ?」

木曾「あ、ああ…でも、こんな…」

提督「……嫌?」

木曾「そういうわけじゃないが…」

提督「じゃあこのまま行こ、ね?」

木曾「…わかった」



570: ◆CaWSl75vrE 2015/11/11(水) 19:17:23.39 ID:1kBoXtzr0

提督「ふあぁ……」

木曾「……さっきからよくあくびをしているが…本当にちゃんと眠れたのか?」

提督「ん?うん、大丈夫だよ。それに明日からは特にやることもないしゆっくり休めるからね」

木曾「…それもそうだな」

提督「はい木曾、カゴ持って」スッ

木曾「あ、ああ」

提督「よいしょっと、私も……さーて、買い込むよー」

木曾「…………」ゴクリ



571: ◆CaWSl75vrE 2015/11/11(水) 19:27:40.61 ID:1kBoXtzr0

提督「……えーっと、石鹸と洗剤と…」

木曾「すごい量だな…」

提督「長期保存できるものは買い溜めておかないと何回も街に出ることになるからね、今のうちに買っておかなきゃ」

木曾「艤装より重いぞこれ…」

提督「ごめんね、あと少しだから…」

「ヘーイ!」

提督「っ!??」ビクッ

木曾「ん?」クル

「エート、服ハドコデ売ッテマスカネー?」

「ああはい、衣類はあちらの方に……」



木曾「……元気な外国人もいたものだな。なあ?」

提督「…………」ブルブル

木曾「………?どうかしたのか?」

提督「………え?あ、ああ…そうだね、うん…」

木曾「………?」



572: ◆CaWSl75vrE 2015/11/11(水) 19:35:33.67 ID:1kBoXtzr0

提督「っ……ふぅ……」

木曾「お、おい、大丈夫か?」

提督「…うん、ちょっと目眩がしただけ…」

木曾「目眩……少し休むか?向こうに椅子があるぞ」

提督「うん…ごめんね、そうする…」

木曾「よし、肩貸すぞ」グイ

提督「ありがと……」

木曾「…やっぱり、ちゃんと眠れてなかったんだな」

提督「………うん、ごめん……」

木曾「…謝らなくていい、帰ったらすぐに休めばいいさ」

提督「……うん……」



576: ◆CaWSl75vrE 2015/11/15(日) 17:29:00.73 ID:936vjRNJ0

〜〜〜

木曾「ふぅ……ほら、着いたぞ」

提督「……あ……うん、すぐご飯作るから…」フラフラ

木曾「そんなことしなくていい、お前は休んでてくれ」

提督「でも……」

木曾「今のお前にはそれが必要なんだ、簡単な料理くらいなら俺でも作れるから大丈夫さ」

提督「…………」

木曾「……お前が苦しむところなんて見たくないんだ。頼む」

提督「……分かった……」

木曾「今日やれることは明日でもやれるんだ。焦らなくてもいい」

提督「……そう、だね…おやすみ……」フラフラ

バタン

木曾「……………」



577: ◆CaWSl75vrE 2015/11/15(日) 18:46:25.73 ID:936vjRNJ0

木曾「……飯、か……何にしようか……」

木曾「………悩むまでもない、俺にはカレーしか作れないんだ」

木曾「久々に張り切るか…」ガチャッ



提督「……………」

提督(頭がぼーっとする……)

提督(寝たら治るかな…木曾もそう言ってたし、きっとそうだよね……)

提督(……寝よう……)

提督「……………」

提督(寝なきゃいけないのは分かってるのに……)

提督(どうして…こんなに不安なんだろう…)



578: ◆CaWSl75vrE 2015/11/15(日) 19:06:17.24 ID:936vjRNJ0

ゾワ

ザワッ…

『テイトク』

提督「………う……」

『逃げる場所なんてどこにもないんデスヨ?』

提督「………っ!?」ガバッ

『いつどこで何をしていても、ワタシはずーっとテイトクを見てるネー♪』

提督「あ、あ…!うあああああっ!?」

『ほら、今もテイトクのすぐそばで……フフッ』

提督「いや…来ないで……いやあっ!!いやああああああああっ!!!」



579: ◆CaWSl75vrE 2015/11/15(日) 19:29:42.82 ID:936vjRNJ0

「いやああああああああっ!!!」

木曾「……!?」ビクッ

ダダダ

バンッ

木曾「どうした!?何かあったのか!?」

提督「あ、あ、あ…ああっ…」ブルブル

木曾「え…?何に怯えて……っ!」ハッ

提督「いや、いや、いやぁ…!もうやめてよ!!どうしてこんなことするの!?」

ガシッ

木曾「落ち着け!そこには誰も居ない!それは偽物なんだ!」

提督「違う!違うっ!!私はあなたのものなんかじゃない!!」

木曾「目を覚ませ!ここには俺とお前しかいないんだぞ!」ユサユサ

提督「何も悪いことはしてないのに…なんでっ……!」

木曾「くそっ……どうすればいいんだ…!」



582: ◆CaWSl75vrE 2015/11/17(火) 19:56:09.02 ID:q7e+mKCf0

〜〜〜

おばさん「………ふむ」

木曾「…どうだったんだ?」

おばさん「こりゃPTSDかもしれんの」

木曾「ぴ、ぴーてぃー…??」

おばさん「あー………トラウマって言えば分かるかね?」

木曾「ああ、聞いたことはあるな」

おばさん「簡単に言うとな、今この子は心に傷を負っとるんじゃ」

木曾「心に、傷…?」

おばさん「人が死んだところを見たり、自分が死にかけたりとか……よっぽどショックなことがあったりするとなる心の病気さね」

木曾「心の…病気…」チラッ

提督「…………」ブルブル



583: ◆CaWSl75vrE 2015/11/17(火) 20:04:12.04 ID:q7e+mKCf0

おばさん「何があったかは分からんが、この子は相当精神が強い方じゃからのお。よほどのことがない限りこんな病気にはならんはずじゃが…それこそ信頼してた人に裏切られるとかじゃないと…」

木曾「…………!」

おばさん「なんか心当たりはあるかね?」

木曾「……ある」

おばさん「そうか……まあ、詳しくは聞かんね。そっちの方がいいじゃろ?」

木曾「ああ、ありがたい…」

おばさん「それと、症状についてじゃが………まず代表的なのは睡眠障害かね」

木曾「眠れなくなる、ということか?」

おばさん「まあこの病気の場合はそういう認識でええ、他の病気だと話は別だがの」



584: ◆CaWSl75vrE 2015/11/17(火) 20:32:30.77 ID:q7e+mKCf0

おばさん「あとは幻覚やら幻聴やら……この子の様子を見るとその症状が出とるのはよくわかるがね」

木曾「ああ…ずっと、何かに怯えてるみたいだ…」

おばさん「こうなっとるということは、相当傷は深いみたいだねぇ…」

木曾「…治せるのか?」

おばさん「もちろん。けど、身体の病気と違って特効薬ってもんがないから時間はかかる」

木曾「どのくらいかかるんだ?」

おばさん「うむう…わしも大人の症例は初めて見るからのお……子供は感受性が高くて数ヶ月で治ることもあれば数年かかることもあるから正直なところよくわからんのじゃ…」

木曾「そう、か……ありがとう、助かるよ」

おばさん「うむ。今はとにかく静養するのが一番じゃ、あまり動かしてやらんようにな」

木曾「ああ」



585: ◆CaWSl75vrE 2015/11/17(火) 20:37:00.22 ID:q7e+mKCf0

おばさん「それじゃ、わしはそろそろ戻るでの」

木曾「おう、今度はお茶でも用意しておくよ」

おばさん「ほほほ、気が利くのう……あ、そうそう」

木曾「?」

おばさん「この病気は、誰かがそばにいてくれるのが何よりの薬じゃ。だから、できるだけそばに居って、安心させてやっとくれ」

木曾「………ああ。必ず」

おばさん「……うむ、その目を見ると心配はいらんの。それじゃあな」

カラララ
ピシャッ

木曾「……言われなくたって、そうするさ」

木曾「もう、決めたんだからな」



587: ◆CaWSl75vrE 2015/11/20(金) 18:02:47.64 ID:YCFdSlCaO

提督「…………」フルフル

木曾「…………」

ストン

木曾「…落ち着いたか?」スッ

提督「ひっ……」ビク

木曾「あ…悪い」

提督「あ……ち、違うの…木曾、違うの……」

木曾「…ああ、分かってる。何も心配しなくていい」

提督「おかしいよ、私…金剛なんていないはずなのに、声が聞こえてくるんだよ…どうして…?」

木曾「今は……ちょっと疲れてるだけなんだ。しばらく休めば、また元気になれるさ」

提督「うん………っ」ビク

木曾「また何か聞こえるのか?」

提督「はっ…はっ、はぁ、はぁ……」ギュウゥッ

木曾「……大丈夫だ。何かあっても、必ずお前だけは俺が護るから」

提督「ふーっ……ふーっ……」コクコク

木曾(瞳孔が開いてる……それほどまでに深いトラウマに苛まれてるんだな…)

木曾(あの女のせいで………この子が………)ギリッ



590: ◆CaWSl75vrE 2015/11/24(火) 23:55:16.97 ID:SOIxdRop0

〜〜〜

提督「ん……くぅ……」

木曾「……………」

提督「………う……」

木曾「……………」ピクッ

提督「う、あ……や……」

木曾「………大丈夫だ」キュ

提督「ぅ………」

木曾「俺がついてるからな…」ナデ

提督「……すぅ……」

木曾「……………」ナデナデ



591: ◆CaWSl75vrE 2015/11/24(火) 23:59:30.45 ID:SOIxdRop0

提督「…………ん……」パチッ

提督「………あれ……木曾……?」

提督「…………ど、どこ…?」

提督「木曾……木曾……!」バッ

スーッ

木曾「おっ、起きてたか」

提督「……!木曾っ!」ガバッ

木曾「うおっ!?」

ギュウウッ

提督「よかった………木曾……」

木曾「お、おお…どうかしたのか…?」

提督「ずっと、怖い夢を見てたの……」



592: ◆CaWSl75vrE 2015/11/25(水) 00:03:28.92 ID:N6bg2bw50

提督「でも、木曾が助けてくれて…一人じゃなくなって、怖くなくなって…」

木曾「ああ…」

提督「なのに目を覚ましたら、木曾がいなくなってて…また、怖いことになるんじゃないかって…」グスッ

木曾「そうか……それは悪かったな」ギュ

提督「…………」

木曾「もう勝手にどこかに行ったりはしないよ、お前のそばにいる」

提督「……本当…?」

木曾「ああ、本当だ。なんなら誓いのキスでもするか?」クス

提督「うん」スッ

木曾「なんて……えっ?」

チュッ

木曾「っっ…………!?」

提督「…………っは」スッ

木曾「……え、あ…あ……?」

提督「これで、一緒に居てくれるんだよね…?」

木曾「あ、ああ…///」ドキドキ

提督「えへへ………よかった……」スリスリ

木曾(柔らかかった……)ドキドキ



594: ◆CaWSl75vrE 2015/11/26(木) 19:09:25.66 ID:aoIWRVOK0

木曾「…………」スッ

木曾(ストレスのせいか…?あの綺麗だった髪がまるで枝みたいだ…)

提督「ん…くすぐったい…」

木曾「なあ、お風呂に入ったらどうだ?髪がボサボサだし」

提督「…そう?」

木曾「ああ、ついて行ってやるから」

提督「木曾がそう言うなら…」

木曾「シャンプーも持って行こう、桶があれば髪は流せるから」

提督「うん」

木曾「ほら、タオル」

提督「ん、ありがと」

木曾「さて、行こうか」

提督「うん」スス

木曾(……すごい密着してくる)



595: ◆CaWSl75vrE 2015/11/26(木) 19:35:49.38 ID:aoIWRVOK0

木曾「…………」

提督「はふぅ……」

木曾「湯加減はどうだ?」

提督「ん…ちょうどいいよぉ…」

木曾「気持ち良さそうだな」

提督「木曾も一緒に入る?」

木曾「はは、ドラム缶だと一人しか入れないだろう」

提督「それもそっか……早くガス通さないとね…」

木曾「そうだな……夜も真っ暗だしな…」

提督「真っ暗……」

木曾「あ……大丈夫だ、暗くなっても俺がそばにいるからな」

提督「……うん」

木曾(俺がすぐそばにいる時はいつも通りなんだが………あいつを連想させるようなことや暗いところはダメだな…)



596: ◆CaWSl75vrE 2015/11/26(木) 23:57:48.37 ID:aoIWRVOK0

提督「ふぅ………」

木曾「……そろそろ髪流してやろうか?」

提督「お願いしていい?」

木曾「ああ」

パシャッ

提督「あぁ…さっぱりする…」

木曾「熱くないか?」

提督「うん、大丈夫」

木曾「よし…じゃあ洗っていくからな、痛かったら言ってくれ」

提督「わかった」



597: ◆CaWSl75vrE 2015/11/27(金) 00:08:08.86 ID:AIrvTvQX0

提督「はぁ……」

木曾「どうだ?」ワシャワシャ

提督「すごく気持ちいい……」

木曾「ふっ、ならよかった」ワシャワシャ

提督「あとね……木曾に髪触られるの、とっても安心する…」

木曾「そうか…そう言ってくれると嬉しいよ」ワシャワシャ

提督「………ねえ、木曾」

木曾「ん?」ワシャワシャ

提督「こうやって髪触るのってね、ある程度仲のいい相手じゃないと不快感を覚えるんだって」

木曾「へえ」ワシャワシャ

提督「私はそんなことはないけど…触る方は内面的に『かわいい』とか、『守ってあげたい』とか考えてるそうだよ」

木曾「へえ…そうなのか」ワシャワシャ

提督「あと………髪を触るっていうスキンシップはね」

木曾「? ああ」ワシャワシャ

提督「その……せっ、…すの後にする行為らしいよ…」

木曾「はぇっ!?!?」



598: ◆CaWSl75vrE 2015/11/27(金) 00:18:45.17 ID:AIrvTvQX0

提督「つまり今こうして木曾が私の髪を触っているのは…」

木曾「いっ、いきなり何を言い出すんだ!それに触ると言うよりは洗ってるだけじゃないか!///」

提督「……ぷっ、くくく…かわいい反応…」

木曾「まったく…油断も隙もない…」

提督「ごめんね、ちょっと安心しすぎちゃって…木曾になら言ってもいいかなって思ったの…」

木曾「それが信頼してるという意味ならいいが……ほら、流すぞ」

提督「あ、うん…ありがと」

パシャッ



599: ◆CaWSl75vrE 2015/11/27(金) 00:26:37.53 ID:AIrvTvQX0

提督「…………///」

木曾「……そろそろ上がった方がいいんじゃないか?顔が赤くなってるぞ」

提督「ああ、うん…そうする…」ガタ

木曾「! ま、待った!」

提督「へ…?」

木曾「こ、これ、タオル……女同士とはいえ、さすがに丸出しはまずいだろ…//」サッ

提督「ん、ああ…ありがと」

木曾「ま、巻き終わったら言ってくれ、一緒に家まで戻るから」

提督「うん…」

シュル…

木曾(どうしてこんなにドキドキしているんだ…落ち着け…落ち着け…)

提督「……木曾、もういいよ」

木曾「あ、ああ……戻ろうか…」

提督「うん」ザバッ



600: ◆CaWSl75vrE 2015/11/29(日) 20:08:36.12 ID:c5ifAfin0

提督「はぁ…あつ…///」パタパタ

木曾(しかし……本当に大きいな……)ジー

提督「……木曾?行かないの?」

木曾「……………」ジー

提督「木曾?」

木曾「………え?あ、ああ、悪い」ギュ グイ

提督「わっ……ず、ずれる…」グッ

木曾(…!す、すごい肉感…!)

提督「んしょ…ごめんね、もういいよ」

木曾「あ……ああ…///」ドキドキ

提督「…??」



601: ◆CaWSl75vrE 2015/11/29(日) 20:17:30.43 ID:c5ifAfin0

木曾「後ろ、向いてるから…着替えてくれ」

提督「うん…そばにいてね?」

木曾「ああ、分かってる…」クルッ

ストン

木曾「はぁ…」

木曾(おかしい…今まで、こんなにドキドキしたことなんてなかったのに…)

スル… パサッ

木曾(今は………タオルを落としたところか…)

木曾(つまり……全裸……)

木曾「…………/////」カァアッ

木曾(何を想像してるんだ俺は!ダメだダメだ!)ブンブン

木曾「うぐうぅ……」

提督「…………?」



602: ◆CaWSl75vrE 2015/11/29(日) 22:02:14.49 ID:c5ifAfin0

提督「木曾、終わったよー」

木曾「……ああ……」

提督「…どうしたの?なんだか様子が変だけ……うわっ」フラッ

ガシッ

木曾「おっと…大丈夫か?」

提督「あはは…ごめん、ちょっとのぼせちゃったみたい…」

木曾「なら、少し縁側で休もう」グイッ

提督「うん、ありがと…」



603: ◆CaWSl75vrE 2015/11/29(日) 22:08:28.45 ID:c5ifAfin0

提督「……………」

木曾「……………」

提督「……もう、夕方だね…」

木曾「ああ…じきに陽が沈む」

提督「……………」

木曾「……怖いか?」

提督「………うん…」

木曾「…大丈夫だ、俺がついてる」

提督「うん…」



604: ◆CaWSl75vrE 2015/11/29(日) 22:16:40.98 ID:c5ifAfin0

木曾「……ところで、いつまでこうしているんだ?飯は食べなくてもいいのか?」

提督「うん…今はいいや…」

木曾「そうか…なら、どうする?もう寝るか?」

提督「……ダメ…寝たら、また来るから…」

木曾「来る?……あいつのことか?」

提督「うん……」

木曾「……でも、寝ないとお前の体が持たなくなるぞ」

提督「………じゃあ、さ…」

木曾「……?」



605: ◆CaWSl75vrE 2015/11/29(日) 22:24:45.13 ID:c5ifAfin0

提督「寝かせて……欲しい、な…」

木曾「………それって……」

提督「…うん……」

スッ

木曾「………!!」ピクッ

提督「木曾……」

木曾「ま……待て!ダメだ!」

提督「…………」ピタ

木曾「……ここじゃ、ダメだ…」

グイ ギュッ

提督「ひゃっ!」

木曾「ふ…布団に行こう…///」

提督「……うん…///」



607: ◆CaWSl75vrE 2015/11/30(月) 23:11:44.86 ID:q1Rv0IeX0

ドサ…

木曾「………い、いい…のか…?」

提督「………?」

木曾「その…俺は、今からお前を汚そうとしている…」

提督「…ううん、大丈夫…私は大丈夫だから…」

木曾「だが…」

提督「…………」スッ

チュッ

木曾「っ…!?///」ドキッ

提督「こうした方が、分かりやすいかな…」

木曾「…わ、分かった……けど、今度は俺からさせてくれ…」スッ

提督「…うん」

チュッ

スリ…

提督「あっ……//」



611: ◆CaWSl75vrE 2015/12/01(火) 19:29:32.41 ID:PSufRQNW0

〜〜〜

木曾「…………」

提督「すー……すー……」

木曾「………よしよし」ナデナデ

提督「んん……んぅ…」ギュウウ

木曾(そうか……この気持ち…)

木曾(これが、恋か…)

木曾(いつからだ?……いや、ずっと前から俺はこの子に……)

木曾(ただ、自分では気付けていなかったんだ…守ってやりたい、と思っていたから…)

提督「んぁ……きそぉ……」

木曾「ああ……お前が必要としてくれるなら、俺はいつでも…お前のそばに……」



612: ◆CaWSl75vrE 2015/12/01(火) 19:32:46.08 ID:PSufRQNW0

ーーーー
ーーー
ーー

チュン チュン
チチッ

提督「ん……んん……」ゴロン

提督「んー……ん…?」パチッ

提督「…………?木曾ぉ…?」キョロキョロ

シーン

提督「……どこ行っちゃったんだろ…」

提督「えっと…眼鏡眼鏡…」

カチャ

提督「よし…」

スーッ



613: ◆CaWSl75vrE 2015/12/01(火) 19:35:11.45 ID:PSufRQNW0

提督「…………」

パタン

提督「リビングにはいない…」

ガチャッ

提督「トイレにもいない…」

ガチャッ

提督「お風呂…なわけないか…」

パタパタ

提督「あれ…木曾の靴がない…」

提督「……外かな?」

ザッ



614: ◆CaWSl75vrE 2015/12/01(火) 19:39:42.39 ID:PSufRQNW0

ガララ

提督「木曾ー?」

「ん?……お!」

提督「あ、いた…」

パタパタ

木曾「もう起きたのか。すまない、勝手に離れて」

提督「それはいいけど…その野菜、どうしたの?」

木曾「あ、これか?隣のあのばあさんにもらったんだ」

提督「おばさんに?」

木曾「ああ、余ってるから持っていきんさいって」

提督「そうなんだ…あとでお礼言わないと」



615: ◆CaWSl75vrE 2015/12/01(火) 19:43:59.98 ID:PSufRQNW0

木曾「ほら、トマト。食べるか?」スッ

提督「あ、うん、ありがとう」

シャク

提督「……うん、すごく瑞々しくて…甘いね」

木曾「ああ、俺もさっきもらったんだ。これも一緒に」スッ

提督「…種?」

木曾「そうだ。色んな野菜のな」

提督「育てるの?」

木曾「ああ、使ってない畑があるから、それを耕して自由にしていいって」

提督「へぇ〜…お世話になるね…」

木曾「どうせやることもないんだ、一緒にどうだ?」

提督「いいね、私もやる」

木曾「そう来なくちゃな!」



616: ◆CaWSl75vrE 2015/12/05(土) 17:06:50.88 ID:ioWs/Rfb0

木曾「昼から畑の整地をしようと思うんだが、お前もどうだ?」

提督「うん、私も付き合うね」

木曾「おっ、いいねえ」

提督「そうそう、あとで洗濯しないといけないから着替えておいて」

木曾「ああ、わかった」

提督「昨日はいっぱい汗かいたからね…ふふ」

木曾「い、言わなくていい!///」

提督「あはは、ウブだねえ」

木曾「茶化さないでくれよ…恥ずかしいんだから…」



617: ◆CaWSl75vrE 2015/12/05(土) 18:19:44.50 ID:ioWs/Rfb0

提督「よいしょっと…」

ガコッ

提督「ふぅ…しばらくは手洗いかな…」ジャブジャブ

木曾「不便だな、洗濯機も使えないんだろう?」

提督「うん、まだ電気が通ってないから…」

木曾「だが……こういう生活も、お前と一緒なら悪くない」

提督「ふふ、そうだね」

木曾「……ゆっくり、静かに生きていけば病気も治るさ」

提督「…うん、頑張る」



619: ◆CaWSl75vrE 2015/12/05(土) 20:13:18.09 ID:ioWs/Rfb0

ーーーーー
ーーーー
ーー

木曾「……いただきます」サク

提督「初めてケーキ焼いてみたんだけど…どうかな…?」

木曾「んん……」モグモグ

提督「……………」ドキドキ

木曾「……うん、美味い!」

提督「ほんと?よかった…」

木曾「料理だけじゃなくてお菓子作りも上手いとは…さすがだな」

提督「ふふ、ありがと…紅茶もあるからね」

木曾「ああ。お前は食べないのか?」

提督「私はいいや、今はお腹いっぱいだから紅茶だけにするね」

木曾「そうか…」



620: ◆CaWSl75vrE 2015/12/05(土) 20:18:06.74 ID:ioWs/Rfb0

提督「…………」ズズ

木曾「……紅茶、また飲めるようになったな」

提督「うん、もうカレーも食べられるよ」

木曾「発症から一ヶ月くらいか…かなり良くなったんじゃないか?」

提督「そうだね…木曾がいてくれたおかげだよ」

木曾「よせ、当然のことだ」

提督「でも……紅茶を飲んでると…ね…」

木曾「………あいつのこと、気になるのか?」

提督「……うん…」

木曾「…優しいな、お前は」

提督「だって……普通なら、処罰を受けてるだろうし…」

木曾「…………」



621: ◆CaWSl75vrE 2015/12/06(日) 19:17:02.94 ID:TlrbgXHU0

提督「もしかしたら、解体されてるかもしれないし…」

木曾「…………」

提督「……ごめんね、暗い話になっちゃったね」

木曾「…お前が気にすることはないさ、死んでるわけではない」

提督「うん……そうだよね、大丈夫だよね」

木曾「ああ、きっと大淀も生きてる」

提督「……うん。ありがと」

木曾「元気になったみたいで何よりだよ」



622: ◆CaWSl75vrE 2015/12/06(日) 19:21:19.05 ID:TlrbgXHU0

木曾「ふあぁ……悪い、ちょっと昼寝させてもらうよ…」

提督「眠いの?」

木曾「ああ…昨日の夜、遅くまで起きててな…」

提督「あー、また深夜番組見てたでしょ」

木曾「だって…深夜ドラマって面白いし…」

提督「録画できるんだから昼に見たらいいのに…」

木曾「そうだな…今度からそうするよ…」

提督「はいはい…夕方になったら起こすからね」

木曾「ああ、頼んだ…それじゃあな」

提督「うん、おやすみ」

スタスタ

バタン

提督「さてと……洗濯物干そうっと…」



623: ◆CaWSl75vrE 2015/12/07(月) 00:01:40.81 ID:hQ5KZwUy0

バサッ

提督「ふぅ………これで夜にはふかふかかな…」

提督(それにしても、日中は暑いなあ……もうセミも元気に鳴いてる…)

提督「さてと、服も干さないと…」ゴソ

提督「お……」スッ

提督「………木曾、結構可愛いの着けてるんだ…」

提督「ふふ…見かけによらず女の子らしいところあるなあ…」

提督「よいしょっと…」



624: ◆CaWSl75vrE 2015/12/07(月) 00:06:30.84 ID:hQ5KZwUy0

提督「はぁ……ちょっと休憩しよっと……」

提督「……………」ポー

提督(…静かだなぁ……)

提督(あの頃もこんな感じだったなあ…)

提督(セミが鳴いてて、風が吹いてて……自然の音しか聞こえない、田舎の特権みたいな……)

提督(あの海も、昔と変わらない輝きで……)

提督「…………ん…?」ガタッ

提督「あれって……もしかして……っ!」ダッ

タタタ…



625: ◆CaWSl75vrE 2015/12/07(月) 00:19:52.67 ID:hQ5KZwUy0

タタタ…

提督「はぁ、はぁ……あ、いた……!」




「はーっ、やっと着いたのね……」

「わあ…古い家ばかり…」

「なーんにもないところでち」

「ねえ、本当にこんなところに司令官がいるの?」

「どうでしょうか……でも、発信機はここを示していたと大淀さんが…」

「……!ねえみんな、もしかしてあの人…!」

「え?」


提督「ゴーヤ!イムヤ!イクとはっちゃんに、しおいも!あと大鯨!」

19「あーっ!?提督なのね!!」

58「てーとく!?てーとくぅーっ!」ダダダ バッ

提督「うわっ、ちょ!?」



626: ◆CaWSl75vrE 2015/12/07(月) 00:29:06.53 ID:hQ5KZwUy0

ドザァッ

58「わ゛あ゛あ゛あ゛ん゛!!!てーとく、会いたかったでちいぃいいい!!」ギュウウウ

提督「ちょちょちょ、わかったわかった!わかったから、服砂まみれになってるから一旦離れ…」

19「提督ー!!」バッ

8「提督!」バッ

168「しれいかーん!」バッ

しおい「提督ぅうう!!」バッ

提督「ひぃ!?」

ドドドドド

大鯨「ああっ、みなさん!?」

168「司令官!司令官っ!よかったぁ!」ギュゥゥゥ

19「提督のバカ!バカバカバカ!ずっと心配してたの!」ムギュウ

8「提督…無事でよかった…!」スリスリ

しおい「うええぇ…やっと会えたよおぉ…」ギュウウ

提督「お、重い…」



627: ◆CaWSl75vrE 2015/12/07(月) 00:41:09.33 ID:hQ5KZwUy0

58「あーもう!みんな離れて!今はゴーヤだけのてーとくでち!」

19「絶対イヤなのね!もう離さないなの!」

提督「わ、わかったからみんな一旦どいて…つ、つぶれる…」

大鯨「ほ、ほら、提督が困っていますから、ね?」

19「むぅ…そこまで言うなら…」スッ

168「仕方ないわ…」スッ

8「ごめんなさい、提督…」スッ

提督「あはは…死ぬかと思った…」パッパッ

大鯨「すみません提督…でも、この子たちは提督に会えて嬉しくなってしまっただけで…」

提督「いいよいいよ、気にしてないから、それに私も会えて嬉しいし」

58「えへへ、てーとくも、ゴーヤと同じ気持ち?」ススス ギュ

19「あー!抜け駆けは許さないの!」ガシッ

提督「と、とりあえずここじゃなんだし、私の家に戻ろっか」

168「司令官のお家?ここにあるの?」

提督「うん、向こうの丘に」

しおい「提督、行こ!ほらっ、早く早く!」グイグイ

提督「ああ、待って待って、両腕抱き着かれてるから歩きにくくて」

19「いひひー♪」

58「ふふん、ベストポジションでち」



635: ◆CaWSl75vrE 2015/12/11(金) 15:12:26.25 ID:71mcGZUJ0

〜〜〜

提督「……なるほど、大淀はすぐに見つかったんだね」

大鯨「はい、提督がいなくなったその翌日にみなさん総出で鎮守府まわりを捜索したのですがそのときに物置で監禁されていた大淀さんを発見したんです」

提督「そっか…怪我とかは?」

大鯨「気絶させられたときにスタンガンを使われたので少し混乱していました。あと、しばらく何も食べていなかったせいか栄養失調で弱っていましたがすぐに回復しましたよ」

提督「ならよかった…」

大鯨「提督も、ご無事でなによりです…」

提督「あはは、これでもちょっと前までは大変だったんだけど……そうだ、私たちの位置を特定するのに時間がかかったのはどうしてなの?」

大鯨「ああ、それは…」

「提督ー!身体拭き終わったのー!」

「タオルどうすればいいのー?」

提督「カゴの中に入れといてー!」

「はーい!」

大鯨「さ、騒がしくてすみません…」

提督「あはは、懐かしい感じで楽しいよ」



636: ◆CaWSl75vrE 2015/12/11(金) 15:36:49.06 ID:71mcGZUJ0

ドタドタ

19「提督ー!」ガバッ

提督「はいはい…私の膝じゃなくてちゃんとケーキの前に座ろうね」グイ

19「あーん、相変わらずいけずなのね…」

8「これ、提督が作ったのですか?」

提督「うん、紅茶もあるからね」

168「司令官が作ったもの食べるなんて、久しぶり…」

しおい「いただきまーす!」

58「ゴーヤも紅茶飲みたいでち!」

提督「はいはい…あ、話が逸れたね。続けて」カチャ

大鯨「あ、はい」



637: ◆CaWSl75vrE 2015/12/11(金) 16:01:58.23 ID:71mcGZUJ0

大鯨「実は物置に押し込まれた衝撃で、探知機が故障してしまったようで…本来ならすぐにでも修理して提督を探そうと思っていたのですが、明石さんがあの状態だったので…」

提督「ああ、なるほど…それで結果的に捜索が遅れたんだ」

大鯨「はい…申し訳ありません…」

提督「謝らないで、勝手に出て行ったのは私たちの方だから…」

19「ほんと、心配したのね」

提督「うっ…」

8「泣いてる子もいましたねえ」

提督「うっ……」

しおい「まあまあ、こうしてまた会えたんだから…」

提督「いやあ、ほんとごめんね…わざわざこんなところまで…」

ガラッ

木曾「なんだ、やけに賑や……!?」

提督「あ、木曾。おはよう」



640: ◆CaWSl75vrE 2015/12/13(日) 04:05:28.51 ID:0Z3SF/xV0

木曾「な……お前たち、なぜここに…」

19「発信機の反応を追ってきたのね!」

木曾「発信機?」

提督「うん、木曾、ちょっと私の軍服とってくれる?」

木曾「あ、ああ」

ゴソ

木曾「ほら」スッ

提督「ありがと…ここの階級章があるでしょ?その中に発信機が埋め込まれてて…」カチッ

木曾「ああ」

提督「このボタンを押すと、任意で信号が飛ばせるっていう仕組みになってるの」

木曾「はあ、なるほどな…」

提督「緊急用のために大淀から渡されてたんだけど、まさかほんとに役立つ時が来るとは思わなかったなあ…」



641: ◆CaWSl75vrE 2015/12/13(日) 04:11:23.82 ID:0Z3SF/xV0

木曾「そうか、そういうことだったんだな…すまない、わざわざこんなところまで」

大鯨「いえ、私たちがやりたくてやったことですから」

提督「…そうだ、鎮守府の様子はどうなの?」

大鯨「今はかなり落ち着いていますね、明石さんが発信機を修理して提督からの信号を探知したからはひとまず提督が無事ということが確認できたので」

提督「そっか……みんなに迷惑かけちゃったな…」

木曾「姉さんたちは元気なのか?」

168「ええ、もちろん。なんなら報告ついでに電話かけてみる?」

木曾「ああ、頼む」

168「ちょっと待って、電波が遠いから時間かかるかも…」

提督「まあ、田舎だからね…」

168「えっと、球磨型の部屋の番号は…あった」ピ

プルルル プルルル



642: ◆CaWSl75vrE 2015/12/14(月) 15:13:53.24 ID:pR8GV1790

プツッ

『もしもし、球磨だクマ』

168「あ、球磨さん?司令官と木曾さん、二人とも見つけたわ」

『……!!代われるクマ?』

168「ええ、ちょっと待ってね…はい」スッ

木曾「ああ、ありがとう…もしもし?姉さ……

『バカ木曾!!今までどこ行ってたクマ!!』

木曾「──っ」ビリビリ

『球磨たちがどれだけお前を心配……っちょ、待つクマ!あとで代わってやるから今は…ああもう!』

木曾「あ、ああ…?」

『……木曾?本当に木曾なの!?』

木曾「大井姉か?俺だよ」

『よかった…生きていたのね…ううっ……』

木曾「そう簡単には死なないさ…だから泣かないでくれ」

『もう…悪いのはあなたでしょう…』

木曾「はは…すまない…」



644: ◆CaWSl75vrE 2015/12/18(金) 18:20:09.96 ID:Asei2NWAO

『グスッ…北上さんに代わるわね』

木曾「ああ」

『………もしもし、木曾?』

木曾「北上姉、久しぶりだな」

『その声、やっぱり木曾だね。よかったー、安心したよ』

木曾「はは、心配してくれてたんだな」

『むっ、さては疑ってるなー?』

木曾「そんなことはない…すまなかった、ずっと心配かけて…」

『…いいんだよ、木曾が無事って分かっただけでも嬉しいんだから』

木曾「ああ、ありがとう……多摩姉は?いるのか?」

『いるよ。勝手にどっか行ったバカ妹と話すことなんてないにゃ!って言ってたけど号泣してる』

木曾「そうか、ふふ」



645: ◆CaWSl75vrE 2015/12/18(金) 18:44:35.13 ID:Asei2NWAO

『提督もそっちにいるんだよね?元気?』

木曾「ああ、元気だぞ」

『代わってもらっていい?』

木曾「分かった……ほら、代わってくれと」スッ

提督「あ、うん」

スッ

提督「もしもし?」

『……ほんとに提督だ』

提督「北上?うん、私は正真正銘提督だよ」

『提督……よかった、生きててくれて…』

提督「あはは…急に出て行ってごめんね…」

『ううん、榛名さんが事情を説明してくれたから状況は掴めてたんだけど…まあ、無事が確認できてよかったよ』

提督「何も連絡する手段がなかったから…電話も逆探知とかされたら危険だったし」

『発信はできたけど、そのあと何かあった…って可能性も捨て切れなかったからね、みんな心配してたよ』

提督「そっか…」



646: ◆CaWSl75vrE 2015/12/18(金) 19:00:13.13 ID:Asei2NWAO

『まあ、場所は分かったし、近いうちに顔見せに行くよ』

提督「うん、楽しみにしてる」

『ふふっ、何か美味しいものでも食べさせてね』

提督「あはは、歓迎するよ」

『そろそろ鎮守府のみんなが騒がしくなってきたら切るね。もう部屋の前に押し寄せてきてる』

提督「そ、そうなんだ…」

『提督のことはまた連絡しておくから。それじゃ』

提督「うん、またね」

プツッ

168「終わった?」

提督「うん、ありがとね」スッ

168「私からも青葉さんにメール送っておくわ、その方が情報が早いし」



647: ◆CaWSl75vrE 2015/12/20(日) 01:59:02.72 ID:zCIsGtYF0

提督「ねえ、私たちがいない間に鎮守府で何があったか教えてくれる?」

大鯨「えっと、そうですね…まず提督がいないと発覚してから、鎮守府中は大騒ぎでした。単身で当てもなく提督を探しに出ようとする人や、特に駆逐艦には泣きじゃくる子もいました」

提督「だよね…」

大鯨「提督からの発信があると確認してから騒ぎは鎮圧しましたが、それでも指揮などは大変でした…提督がいないことを大本営からごまかすのも、その場しのぎで資材を集めに行くのも、とても苦労したようで…」

提督「うん…何回も言うけど、本当にごめんね…」

大鯨「いえ…思えば提督は少し頑張りすぎていたんです、これくらい休むのも大切でしょう」

提督「あはは…そういえば、金剛は…?」

大鯨「ああ、そのことについてなんですが…まだ見つかっていないんです」

提督「え?」



648: ◆CaWSl75vrE 2015/12/20(日) 02:05:32.27 ID:zCIsGtYF0

大鯨「提督たちがいなくなったあの夜からずっとです。榛名さんがふらふらと歩く金剛さんを見たそうですが…気絶させられた後のことで記憶がはっきりしていないみたいです」

提督「そっ、か……もう鎮守府にはいないんだ…」

大鯨「提督と違ってなんの手がかりもありませんし、生きているとはとても……」

提督「………そう…だね……」

コテン

提督「ん…」

58「くぅ……」スー

提督「……疲れちゃったのかな」ナデ

大鯨「鎮守府からずっとこちらまで渡って来ましたので…提督に会えて安心しているのかもしれません」

提督「木曾、向こうの部屋に人数分の布団敷いて来てくれる?」

木曾「ああ、任せろ」



649: ◆CaWSl75vrE 2015/12/20(日) 02:13:42.74 ID:zCIsGtYF0

スタスタ

提督「よいしょっと…」

58「くー……」

19「すぅ…すぅ…」

しおい「んん〜…むにゃ…」

8「…………」スースー

168「…みんな寝ちゃったね」

提督「うん、相当疲れてたみたい」

168「……………」

提督「どうしたの?」

168「…ううん、司令官の顔見てると心底安心するなぁって」

提督「ふふ、そう?」

168「そうよ、やっと会えたんだもん…私、司令官に嫌われたんじゃないかって思って、怖かった…」グスッ

提督「イムヤが私のこと好いてくれるんだもん、絶対に嫌いになんてならないよ」

168「ううっ…司令官…」ガバッ ギュウ

提督「よしよし…」ギュ ナデナデ



650: ◆CaWSl75vrE 2015/12/20(日) 02:18:52.84 ID:zCIsGtYF0

提督「こんなところまで来てくれてありがとうね…悪いのは私たちなのに…」ポンポン

168「ううん、いいの…司令官なら許してあげるから…」

提督「……うん…」

168「…私も、眠くなってきちゃった…」

提督「うん、寝てもいいよ」

168「ええ……ちょっとだけ…」

ポフ

提督「………はい、タオルケット」パサ

168「ありがと…おやすみ、司令官…」

提督「おやすみ、イムヤ…」ナデ

168「………すー……」



651: ◆CaWSl75vrE 2015/12/20(日) 02:22:10.67 ID:zCIsGtYF0

提督「……………」

提督(髪留め、取ってあげなきゃ…)スッ

シュル…

提督「よし…」

スー…

大鯨「…みなさん、もう眠りましたか?」

提督「大鯨…うん、ぐっすり」

大鯨「そうですか…ふふ、微笑ましいですね…」

提督「うん…起こしちゃいけないし、部屋出ようか」

大鯨「はい」



652: ◆CaWSl75vrE 2015/12/20(日) 02:28:10.16 ID:zCIsGtYF0

提督「ふぅ……しばらくは寝かせてあげてていいよね」

大鯨「……はい、そうですね」

提督「それにしても、ほんとに遠いところから来てくれたんだねえ…距離から考えてまだ日が昇らないうちから鎮守府を…」

大鯨「…提督」

提督「ん、どうし……」

ヒシッ

提督「わ…っ」

大鯨「すみません…今だけは、胸を貸してください…」

提督「……うん」ギュウ

大鯨「っ、う…ひぐっ、ていとくうぅ……無事でよがっだぁぁ…っ、わああああん…!!」ギュウウ ポロポロ

提督「…大鯨も、お疲れ様」ポンポン



木曾「…………」



655: ◆CaWSl75vrE 2015/12/22(火) 10:09:30.14 ID:XtFI+PYWO

大鯨「zzz……」

提督「…………」

パタン

提督「ふぅ…」

木曾「寝たか?」

提督「あ、木曾…うん、大鯨も疲れちゃってたみたいだから」

木曾「そうか……」

提督「うん……」

木曾「…………」

提督「…………」



656: ◆CaWSl75vrE 2015/12/22(火) 13:44:54.55 ID:MJ7Qq+Sn0

木曾「………もう、鎮守府にあの女はいないんだよな」

提督「うん……」

木曾「…戻るか?」

提督「……………」

木曾「……ゆっくり考えればいいさ」ポン

提督「……うん」

木曾「帰りたくないのなら帰らなくていいし、帰りたいのなら俺もそれに従う。お前の好きにすればいい」

提督「…うん、ありがと」ニコ



657: ◆CaWSl75vrE 2015/12/22(火) 14:09:08.28 ID:MJ7Qq+Sn0

提督「木曾は…優しいね」

木曾「急にどうした?」

提督「こんなところまで私に付き合ってくれて…球磨たちと一緒にいた方がよかったんじゃ」

木曾「いや……成り行きとはいえ、お前と共に来るのは俺が選んだことなんだ。だから、誰が悪いとかそういう話じゃない」

提督「でも…」

木曾「…正直なところ、俺もあの女と同類だ」

提督「え?」

木曾「お前のことが好きで、守りたいって思えて…今日来たあいつらにさえ憎しみを覚えそうになった。自分の居場所が奪われると思って」

提督「違うよ、木曾は私を守ろうと…」

木曾「いや、それも一種の欲望だ。お前を独占しようとする俺の欲望だった」

提督「……………」

木曾「けど……お前のおかげで気付けたんだ」



658: ◆CaWSl75vrE 2015/12/22(火) 14:26:41.59 ID:MJ7Qq+Sn0

木曾「お前から大切なものを奪っても、お前とは幸せになれない。誰かを不幸にした幸で、お前が幸せになれるはずもないからな」

提督「………確かに、そう…」

木曾「だから…俺はお前のためなら、なんだってやってみせる。そう決めたんだ」

提督「木曾…」

木曾「お前が望むのなら、盗みだって殺しだって…自分の首すらも斬ってみせる」チャキ

提督「………ううん。そんなこと、私は望まないよ」

木曾「……………」

提督「ただ、そばに居てくれるだけでいいから…それ以上は、何も望まないから…」

木曾「………お前を信じてよかった」



660: ◆CaWSl75vrE 2015/12/22(火) 18:32:20.70 ID:MJ7Qq+Sn0

提督「…あのね、木曾」

木曾「なんだ?」

提督「私が鎮守府に戻れば、みんなのためになるんだろうけどさ」

木曾「ああ」

提督「でも…私、行きたくない…」

木曾「…帰りたくないのか?」

提督「ううん、そうじゃなくて……帰りたくないって言うよりは、ここを離れたくないの。木曾と一緒にいるこの家から…」

木曾「………そう、か…」

提督「ごめんね、わがまま言って…木曾、球磨たちに会いたいよね?」

グイ ギュッ

木曾「……無理をするな」

提督「………ありがとう…」



662: ◆CaWSl75vrE 2015/12/25(金) 18:13:59.00 ID:SPvfWXRk0

〜〜〜

大鯨「なるほど……つまり、今のところ鎮守府に帰られる予定はないと」

提督「うん…ごめんね」

大鯨「いえ、会おうと思えばいつでも会いに来られますから。きっと、落ち着いたらみなさんもここに来ますよ」

提督「そうだね…お詫びと言っちゃなんだけど、これ。お菓子、たくさん焼いたからみんなに持って帰ってあげて」

大鯨「はい、分かりました」

168「…そろそろ出発の時間よ」

しおい「もう帰らないといけないのかぁ…」

提督「また来たらいいよ、今度はちゃんと準備してるから」

58「次来るときは遊びに連れてってくれる?」

提督「うん、約束」



663: ◆CaWSl75vrE 2015/12/25(金) 18:17:16.08 ID:SPvfWXRk0

168「司令官」

提督「ん?」

168「イムヤがいなくなっても、嫌いにならないでね?」

提督「もちろん」

168「ん…なら、私も司令官のこと、ずっと好きでいる」

提督「ふふ、ありがとう」

大鯨「…それでは、帰りましょうか」

木曾「球磨姉によろしく言っといてくれ」

大鯨「ええ」



664: ◆CaWSl75vrE 2015/12/25(金) 18:32:06.99 ID:SPvfWXRk0

ザブンッ

19「てーとくーーー!だーーいすきなのーー!!」ブンブン

しおい「また来るからねーーー!!」

提督「またねー……」フリフリ

ドッドッドッドッ…

提督「…………」

木曾「…静かになるな」

提督「うん…」

木曾「…寂しいか?」

提督「うん…」

木曾「………俺はいつでもそばにいるからな」

提督「……うん」



665: ◆CaWSl75vrE 2015/12/25(金) 18:42:18.35 ID:SPvfWXRk0

〜〜〜

提督「………あれ?」ゴソゴソ

木曾「どうかしたのか?」

提督「あれれ…ハンカチがない…」

木曾「他のところは探したのか?」

提督「うん、とりあえず家中は」

木曾「なら………外じゃないか?さっき海で遊んだときに落としたんじゃ」

提督「あっ、それだ!私、ちょっと取りに行ってくる」パタパタ

木曾「ああ、じきに日が暮れるから早く帰るんだぞ」

提督「わかった!」

ガラララ

ピシャッ

木曾「……代わりに飯の準備しておくか……」



666: ◆CaWSl75vrE 2015/12/28(月) 18:09:50.02 ID:W6Qi+po50

提督「うわっ…もう日があんなに…」

提督「いくら夏とはいえ、さすがにこの時間だと暗くなるかぁ…」

提督「……………」

ザワッ

提督「…大丈夫……」

提督「………よし」

提督「真っ暗にならないうちに行こう…」

パタパタ…



667: ◆CaWSl75vrE 2015/12/28(月) 18:54:24.65 ID:W6Qi+po50

提督「はっ……はっ……」

ザッ

提督「ふぅ……確かこのあたりに…」キョロキョロ

提督「うー…懐中電灯かなにか持ってきたらよかったかな…」

提督「特徴的な刺繍があるから分かりやすいはず……あ!」

パタパタ

提督「あった…よかったぁ…」パサッ

提督「ふぅ…もう戻らなきゃ…」

ガサガサ

提督「……………?」

「ふ、フフッ…ふふはハハ……」

提督「…………!!!」ドキッ



668: ◆CaWSl75vrE 2015/12/28(月) 19:30:47.17 ID:W6Qi+po50

提督「ど、どうして………ここにいるの…」

「あはっ…やっと、見つけマシタ…」

提督「金剛…!」

金剛「テイ……トク……」ヨロヨロ

提督「ひっ……」ビク

金剛「ワタシと………一緒、ニ……」フラッ

提督「……!?」

ドサッ

金剛「ウ………」

提督「え…こ、金剛…?金剛!?」バッ

金剛「はぁ…はぁ…」

ピト

提督「……!すごい熱……」



669: ◆CaWSl75vrE 2015/12/30(水) 18:05:29.26 ID:iKkd/Ks+0

提督「早く運ばなきゃ……」スッ

『幸せに暮らしましょうネー♪』

提督「……!」ドキッ

提督「ちが、う…こんな、迷ってる場合じゃないのに…!」グッ

提督「はぁ……はぁ……!」

提督(また…また、あの時みたいになったら…)ガタガタ

提督「う……うううぅぅ………!!」

金剛「テイ…ト、ク……」

提督(違う…違う、違う、金剛は悪い子じゃない…!)カタカタ

提督(それに、今の私には…)カタ…

提督(木曾がいる…!)

グイッ

提督「金剛、頑張って…!すぐに休ませてあげるから!」ズズズ

金剛「ぁ……」



670: ◆CaWSl75vrE 2015/12/30(水) 18:15:28.68 ID:iKkd/Ks+0

バタンッ!

木曾「ん…帰ってきたか」

スタスタ

木曾「おーい、もう夕飯ができ…」

提督「木曾!タオルと氷枕持ってきて!」

金剛「……………」グッタリ

木曾「なっ……!?な、なぜその女が…」

提督「お願い、早く!」

木曾「っ…わ、分かった。話はあとで聞く」

提督「ありがとう…!」



672: ◆CaWSl75vrE 2015/12/31(木) 20:43:38.49 ID:F32SdIFXO

金剛「はぁ……はぁ…」

提督「……………」

木曾「……タオル、濡らしてきたぞ」スッ

提督「ん…ありがと…」

ペタ

提督「……………」

木曾「……いいのか?」

提督「……何が?」

木曾「その女は、お前を…」

提督「分かってる…」

木曾「だったら、なんで…」

提督「……罰なんてあとでいくらでも受けられるでしょ?何も死ぬことはないって、そう思ったから」

木曾「……………」



673: ◆CaWSl75vrE 2015/12/31(木) 21:10:10.42 ID:F32SdIFXO

木曾「だが…仮にその女が回復したとして、お前に何をするか…」

提督「それは……そうだけど…」

木曾「………もう、あんなことは繰り返させない」チャキ

提督「………!ま、待ってよ!」バッ

木曾「止めるな。罪は俺が被る」

提督「殺す必要はないでしょ!?説得すればまた前みたいに戻れるかもしれないし、まだ何も…!」

木曾「何かあってからじゃ遅いんだ!!忘れたのか!?」

提督「っ……」ビク

木曾「俺は…もう、お前を失いたくないんだ…誰かに奪われるくらいなら、自分で…」

提督「………あの言葉は…嘘だったの…?」

木曾「………!」

提督「私のためならなんだってするって、言ったよね?」

木曾「それ、は…」

提督「それとも、私を騙したの…?」

木曾「ち、違う!俺はそんなこと…!」



674: ◆CaWSl75vrE 2015/12/31(木) 21:23:51.52 ID:F32SdIFXO

提督「だったら、私の言うことも聞いてくれるよね?」

木曾「っ………ああ…」

提督「…もう休んでて。向こうの部屋で」

木曾「……分かった……」スッ…

提督「……………」

木曾「ただ……何かあったら、呼んでくれ………それだけは…」

提督「……………」

木曾「……………」

パタン

提督「……………」



675: ◆CaWSl75vrE 2015/12/31(木) 21:26:50.14 ID:F32SdIFXO

金剛「ウウ……ぁ……」

提督「…金剛……」







「私、どうすればいいの……?」









676: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 03:22:32.16 ID:5LiSKmFf0

〜〜〜

金剛「……う…」パチ

金剛「…………?」

金剛「ここ、は…」ムク

クイッ

金剛「………?」チラ

提督「すぅ……」ギュウ

金剛「…………!!」

スッ

提督「こん……ご…ぉ………」

金剛「っ」ピタ



677: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 03:27:20.82 ID:5LiSKmFf0

金剛「…………」ソッ

ナデナデ

提督「んっ………んぅ…」

金剛「テイトク……」

「…………」

スッ

「……もし怪しいことでもするようなら、すぐにでもその手を切り落としていたところだったが…」

金剛「!」

木曾「杞憂だったようだな」

金剛「木曾…ナルホド、テイトクはユーと…」

木曾「その子に感謝するんだな、倒れたお前をここまで運んできたのはその子だ」

金剛「…ハイ」



678: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 03:35:47.14 ID:5LiSKmFf0

金剛「……………」

木曾「……自分がしたことは覚えているか?」

金剛「……ハイ」

木曾「この子がどれほどの傷を負ったか…自覚してないとは言わせないぞ」

金剛「分かっていマス…」

木曾「ここに逃げてからしばらくは、眠れないどころか飯も食えないくらいに心を病んでたんだ」

金剛「……………」

木曾「お前が………お前のせいで……」ググ…

金剛「ワタシは…」

木曾「俺は…お前を許さない」

金剛「……………」



679: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 03:44:36.63 ID:5LiSKmFf0

木曾「もし、お前がまた俺たちの前に姿を現すようなら一切容赦せずに叩き切ってやろうと思っていた……が」

金剛「………?」

木曾「お前が生きているのは、その子のおかげだ。その子がお前を助けたいと思ったから、今こうして俺と話せている」

金剛「テイトクが……?」

木曾「昨日の夜も、ずっとだ。高熱を出して苦しんでるお前を、励ますように何度も何度もタオルを変えて…定期的に汗も拭いて、氷枕だって作っていた」

金剛「…………!」

木曾「無理やりこの子を自分のものにしようとしたお前を、だ……自分を傷付けた相手なのに、それも厭わずに尽くしたんだ」

金剛「ワタシ、を………テイトク、が…助けてくれたノ…?」フルフル

木曾「そうだ。だから、勝手に死ぬだなんて言うんじゃないぞ。生きることが、この子への償いになるんだからな」

金剛「う……うううぅ……!!」ガリガリ

木曾「……………」



680: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 03:48:32.75 ID:5LiSKmFf0

提督「ん……はっ」バッ

金剛「テイ、トク…」

提督「あ…!よかった、気がついたんだ…!」

金剛「…ハイ、テイトクのおかげで…」

提督「あっ………えと、その……」

金剛「……………」

木曾「…俺は向こうに行ってるよ。二人で話すこともあるだろう」スタスタ

提督「う、うん…」

バタン

提督「……………」

金剛「……………」



681: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 03:53:56.73 ID:5LiSKmFf0

金剛「あノ…テイトク……」

提督「う、うん」

金剛「……ごめんナサイ、Scaryな思いをさせテ…」

提督「……うん」

金剛「ワタシ、テイトクに合わせる顔が……」

提督「…罪悪感?」

金剛「……Exactly」

提督「…ならいいよ」

金剛「え?」

提督「確かにあのときは怖かったけど…それよりも、金剛がいなくなる方がよっぽど怖いから…また会えてよかった」

金剛「許してくれるノ…?」

提督「ううん?許さないよ」

金剛「う…」



682: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 03:59:46.04 ID:5LiSKmFf0

提督「無事に目が覚めて嬉しいけど…ほんとは私も怒ってるんだよ?」

金剛「ハイ…」

提督「ちょっとおでこ出して?」

金剛「……?こうデスカ?」スッ

バチンッ

金剛「いっ!」

提督「デコピン、これでおわり」

金剛「こ、これだけ?」ヒリヒリ

提督「うん、私の分はね。木曾のは別だけど」

金剛「彼女には…生きて罪を償えと言われマシタ」

提督「なら、そうして。私もそれが一番いい」

金剛「……了解、デス」



683: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 04:06:22.97 ID:5LiSKmFf0

提督「もし死んだら私、もっと悲しむからね」

金剛「テイトクは……ホントに優しい人ネ」

提督「そりゃあそうでしょ、金剛だって私の大切な人なんだから…私がどうなるより、死ぬ方が怖いよ」

金剛「………あ」ポロポロ

提督「あ」

金剛「そ、ソーリー…なんだか安心して…」ゴシゴシ

提督「うん…ほら、今は身体を休めてて。疲れも出てるし、まだ熱も残ってるから」

金剛「ハイ…」

提督「お腹、空いてるでしょ?おかゆ作ってくるから、ちょっと待ってて」

金剛「ありがとうございマス…」



684: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 04:10:05.21 ID:5LiSKmFf0

パタン

木曾「ん、もういいのか?」

提督「うん、ちゃんと生きて罪を償うって」

木曾「そうか…」

提督「さてと…これから色々やることがあるんだけど、付き合ってくれる?」

木曾「ああ、もちろん」

提督「じゃあまずはおかゆから作ろっか、卵割っておいて」

木曾「任せろ」



685: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 04:14:12.12 ID:5LiSKmFf0

〜〜〜

提督「はい、あーん」

金剛「あー…」

パク

金剛「ン……やっぱり、テイトクの料理はDeliciousネー」

提督「ふふ、よかった」

木曾「ほら、アクエリアス」

金剛「Oh、ありがとうございマース」

提督「食べ終わったら薬も飲まなきゃダメだよ?」

金剛「うー…薬は苦手デス…」

提督「ダメ、いくら風邪とはいえちゃんと治さないと大変だからね」

金剛「ハーイ…」



686: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 04:19:25.22 ID:5LiSKmFf0

金剛「フー………満腹ネ」

提督「よし、と…それじゃ、また寝ててね」

金剛「ンー…全然眠くないデス…」

提督「ならテレビでも見てていいから」

金剛「テイトクは?出掛けるのデスカー?」

提督「うん、金剛の艤装を持ってくる」

金剛「あ、そういえば…」

提督「一人だと重くて持てなくて…木曾、手伝ってね」

木曾「ああ」

提督「じゃ、ちょっと行ってくるね」

金剛「ハイ、待ってマス」



687: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 04:24:19.56 ID:5LiSKmFf0

ザフッ

提督「あったあった、あれあれ」

木曾「あれか……うわ、もうボロボロだな」

提督「ずっと一人で私のこと探してたのかな…」

木曾「だろうな…」

提督「…それだけ愛されてたってこと?」

木曾「悔しいが、そうだろう」

提督「悔しい?」

木曾「…な、なんでもない!早く運ぶぞ!」ガシャ

提督「はいはい…」



688: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 04:27:37.73 ID:5LiSKmFf0

ドシャッ

木曾「ぜえ…ぜえ…お、重かった…」

提督「ぐおお…さ、さすが戦艦の艤装…腰が…」サスサス

木曾「ふぅ…さて、運んだはいいがこれはどうするんだ?このままじゃとても使い物にならないぞ」

提督「んー…修理するしかないね」

木曾「修理って…できるのか?」

提督「鎮守府にいた頃は明石の手伝いでメンテナンスとかしてたから…それなりには」

木曾「そうか…なら手伝うぞ」

提督「うん、ありがと。倉庫から工具箱持ってきてくれる?」

木曾「ああ」パタパタ



689: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 04:30:32.64 ID:5LiSKmFf0

〜〜〜

金剛「んーーっ……」ググ

木曾「もう動いて大丈夫なのか?」

金剛「はぁ…ハイ、三日も経てば大丈夫ネ」

木曾「そうか…」

提督「ん〜…?ここかな…」ガンッ

金剛「……………」パタパタ

木曾「……………」

提督「あ、合ってる…次はこれを繋いで…」ガシャガシャ

木曾「……ちょっといいか?」

金剛「何デショウ?」



690: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 04:35:00.38 ID:5LiSKmFf0

木曾「お前は、何が目的であの子を攫おうとしたんだ?」

金剛「…誰にも邪魔されない場所で、過ごしたかったからデス」

木曾「やっぱりか…」

金剛「やっぱり…?」

木曾「俺もそうだ。誰にも邪魔されずに、あの子と一緒に過ごしていたい」

金剛「fm…」

木曾「でもな、だからと言って周りの人間を排除したら、あの子が幸せじゃなくなるんだ」

金剛「…そうデスネ」

木曾「俺はそこで踏み止まれたが…お前はそうならなかったんだ」

金剛「……ハイ」



691: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 04:40:24.94 ID:5LiSKmFf0

木曾「そう考えると、俺もお前も、同類なのかもな」

金剛「……どうデショウか」

木曾「…最近になって分かったんだ、愛は二人で育んでいくものだって」

金剛「…ワタシは、ラブをテイトクに押し付けていたんデスネ…」

木曾「ああ…愛する気持ちも、一つ間違えば狂気になる…もう暴走なんてするなよ」

金剛「ハイ、約束しマス」

提督「えっと、ここを接続……うぐぐ、重いー!二人とも手伝ってー!」ブンブン

木曾「お呼びだな」

金剛「エエ、お手伝いしまショウ」

パタパタ



692: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 04:45:37.31 ID:5LiSKmFf0

〜〜〜

金剛「……オッケー、準備完了ネー!」ガシャン

提督「しばらくの間お別れだね…」

金剛「そんなに悲しい顔をしないでクダサイ、また会いに来マス!ほら、スマイルスマイル!」

提督「…うん、今度は比叡たちも連れてきてね」

金剛「イエス!」

提督「鎮守府のみんなも、ちゃんと謝るなら許してくれるって言ってるから…向こうに着いてひと段落したら連絡ちょうだい」

金剛「分かりマシタ!」

提督「それじゃ…気を付けてね」

金剛「エエ!ユーも、テイトクをよろしく頼みマス!」

木曾「ああ」

金剛「では、Goodbye!」ザザザ

提督「また来てねー!」



693: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 04:52:24.69 ID:5LiSKmFf0

提督「…………」

木曾「引っかかりが消えた、って顔だな」

提督「うん、もう何も心配しなくていいから」

木曾「ああ…やっと、本当に静かに暮らせる…」

提督「うん……時々騒がしくなるけどね」

木曾「……なあ、最後に聞いておくが……」

提督「なに?」

木曾「…………」



694: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 11:06:16.76 ID:5LiSKmFf0

木曾「本当に、鎮守府に帰らなくていいのか?」

提督「………うん。帰ろうと思えばいつでも帰れるし、それに……」

木曾「それに?」

提督「……その、私は……木曾と二人で、ここで暮らしたいから…」

木曾「……それって…」

提督「うん………ねえ、木曾」

木曾「あ、ああ」ドキ

提督「私と、ずっと一緒に居てくれる?」

木曾「……はは」



695: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 11:07:56.34 ID:5LiSKmFf0

「ーーーーああ。必ず幸せにしてみせるよ、約束する」

「幸せにしてみせる、じゃなくて二人で幸せになる、でしょ?」

「そうだな、悪い。じゃあ、改めて……」






「幸せになろう。俺たち二人で」

「………うん!」



696: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 11:18:17.32 ID:5LiSKmFf0

ーーー
ーーーー
ーーーーーー

「ねえ」

「ん?」

「あのときの約束、覚えてる?」

「ああ、覚えてる」

「幸せ?」

「ああ、幸せだ」

「なら、私も」





「私たち二人だけの───」



697: ◆CaWSl75vrE 2016/01/03(日) 11:43:01.71 ID:5LiSKmFf0

木曾編おわり
提督がトラウマを克服できずに耐え切れなくなって首吊り自殺してるところを見て、生きる意味を失った木曾が後を追うルートも考えていたんですが、さすがに同じオチを使い回すのはまずいのでハッピーエンドにしました



701: ◆CaWSl75vrE 2016/01/07(木) 13:12:57.95 ID:Mmar4YJ50

望月「っていう感じのさ」

提督「うん」

望月「ヤンデレに囲まれるゲームの企画をさ」

提督「うん」

望月「秋雲や夕張さんや明石さんとやってるんだけどさ」

提督「うん」

望月「キャスティング協力してくれる?」

提督「う、うん」

望月「あと艦娘に向けたテイトクプラスっていう恋愛シミュレーションも頼むね」

提督「う、うん」

望月「たぶん台詞総数千以上になるから頑張ってね」

提督「えっ!!?」



702: ◆CaWSl75vrE 2016/01/07(木) 13:13:56.00 ID:Mmar4YJ50

望月編(?)おわり



707: ◆CaWSl75vrE 2016/01/09(土) 18:19:20.20 ID:tx4Dhzs70

提督「……………」



飛龍「提督……元気ないね…」

蒼龍「うん、相当まいってるみたい…」

加賀「無理もないわ…これでもう六人目でしょう?」

赤城「ええ…提督、特に駆逐艦の子達を可愛がっていましたから…」

瑞鶴「失踪事件、ね…」

蒼龍「………私、ちょっと声かけてくる」

パタパタ…



708: ◆CaWSl75vrE 2016/01/09(土) 18:33:55.47 ID:tx4Dhzs70

提督「……………」

蒼龍「ねっ、提督」

提督「…蒼龍……」

蒼龍「その…あのことは気の毒だけどさ、あんまり落ち込んでると身体に悪いよ?」

提督「……………」

蒼龍「だからさ、ご飯でも食べて一度スッキリさせた方が…」

提督「…ごめん」

蒼龍「あ…」

提督「今は…いいから…」

蒼龍「………うん…」



709: ◆CaWSl75vrE 2016/01/09(土) 18:44:45.30 ID:tx4Dhzs70

蒼龍「その…ちゃんと食べるときは食べてね?じゃないと、ほんとに倒れるから…」

提督「…………」

蒼龍「…………」

パタパタ…

飛龍「どうだった?」

蒼龍「ダメ…完全に塞ぎ込んでるみたい」

瑞鶴「提督さんがこうだと、私たちにまで支障が…」

加賀「早急な対策が必要ね…」

赤城「でも、どうします?」

翔鶴「まずは事態の整理からした方が良さそうですね」



710: ◆CaWSl75vrE 2016/01/09(土) 22:49:01.89 ID:tx4Dhzs70

瑞鶴「確か、最初は2週間くらい前だっけ」

翔鶴「ええ、そのときに電ちゃんがいなくなって…」

飛龍「それからは、立て続けに暁型の子達が消えていったと…」

蒼龍「その次は望月ちゃんと、卯月ちゃんだったね」

赤城「どの子も提督と仲がよかった子ですね…」

加賀「ええ…よく懐かれていたから、相当なショックに違いないわ…」

瑞鶴「やっぱりこれって、誘拐よね?」

翔鶴「ええ、でも疑問点はいくつもあるわ」



712: ◆CaWSl75vrE 2016/01/10(日) 11:49:55.34 ID:8yo3LJdr0

瑞鶴「疑問点?」

翔鶴「そう。まず一つ、いなくなったのが駆逐艦だけということ」

瑞鶴「そうね、それは知ってるわ」

翔鶴「それもまだ幼い子ばかりだし、いなくなるタイミングも不規則。悪戯や故意に行われているものとは思えないの」

飛龍「提督も悲しんでるし、そんなところ見たらすぐにやめるだろうからその線はないね」

翔鶴「そう、つまり確実に犯人がいるということ」

加賀「だとしたら、誘拐ということでいいのかしら」

翔鶴「はい、それで間違いないと思います」



713: ◆CaWSl75vrE 2016/01/10(日) 11:54:30.26 ID:8yo3LJdr0

瑞鶴「他の疑問点は?」

翔鶴「ええ…おそらく、これが事件解決の糸口になると思うんだけど…」

蒼龍「なに?」

翔鶴「…一人目の、電ちゃんが失踪した時点で提督が鎮守府全体に気をつけてほしいって呼びかけてたでしょう?」

瑞鶴「あのときは欠員も誰もいなかったわね」

翔鶴「二人目のときもそうだった…けど、これだけ注意喚起を促しているのに事態が収まらないということは…」

赤城「………まさか…」

加賀「この鎮守府に、誘拐を手引きしている人物がいる…」

翔鶴「…………」コクン



716: ◆CaWSl75vrE 2016/01/15(金) 07:45:17.02 ID:L4cOqXdT0

蒼龍「でも、そんな裏切るようなことする人…」

翔鶴「分かってる…ただ、あくまで可能性の一つというだけでまだ本当にこの鎮守府に犯人がいると決まったわけではないわ」

飛龍「……で、これからどうする?」

翔鶴「私は聞き込みをしてみようかと…何か手がかりが見つかるかもしれないし」

瑞鶴「私もそうするわ!」

加賀「今までのことを考えると、犯人がさらっていったのは駆逐艦の子だけね」

翔鶴「はい、なのでよく駆逐艦の相手をしていた人を優先的に調査してみます」

飛龍「でも、駆逐艦と遊んでた人なんて………あ」

蒼龍「……いる!」

翔鶴「ええ、行ってみましょう」



717: ◆CaWSl75vrE 2016/01/15(金) 17:28:17.53 ID:WVQ2n9iWO

瑞鶴「ここね」

コンコン

「ん、少し待ってくれ」

ガチャ

長門「すまん、待たせたな…ん?正規空母が揃って、どうかしたのか?」

翔鶴「突然で悪いのですが、昨日の夜は何をしていました?」

長門「夜?夜は普通に眠っていたが…それがなんだ?」

瑞鶴「ほんとに?」

長門「嘘をつく必要などないと思うが…なにか疑われる余地でもあったか?」

翔鶴「実は、最近の事件に関する調査をしていて…」

長門「なるほど、そういうことか…」



718: ◆CaWSl75vrE 2016/01/15(金) 17:35:38.92 ID:WVQ2n9iWO

陸奥「なに、どうしたの?」

長門「ああ、陸奥…なんでも、最近の事件の調査をしているらしくてな」

翔鶴「はい、それで長門さんに聞き込みを…」

陸奥「それは長門が駆逐艦に執心しているから?」

翔鶴「う…そ、そうです…」

陸奥「ふぅん…まあ確かに長門はよく駆逐艦の子達と遊んでたけど、誘拐なんてするような人じゃないわよ?昨日の夜もすぐ寝ていたし」

長門「…ということだ」

翔鶴「そうですか…すみません、疑うような真似をして…」

長門「気にするな、緊急の事態だからな…困ったときはお互い様だ」

翔鶴「ありがとうございます…それでは、なにか分かったことがあれば私たちに教えてください」

長門「ああ、私も調べておこう」



719: ◆CaWSl75vrE 2016/01/15(金) 17:43:46.27 ID:WVQ2n9iWO

瑞鶴「うーん、さすがに違ったかぁ」

翔鶴「そうね、ダメ元で聞いてみたけど…」

飛龍「そもそも、朝にいなくなってるってことは夜にさらわれてるってことでしょ?」

蒼龍「じゃあ、夜に活発で駆逐艦好きな人……」

瑞鶴「………誰かいたっけ?」

加賀「…あの軽巡の子は?」

飛龍「それだ!前に駆逐艦の子達とお風呂入ってたし!」

翔鶴「それでは、聞きに行ってみましょうか」



720: ◆CaWSl75vrE 2016/01/15(金) 17:51:57.90 ID:WVQ2n9iWO

コンコン

「はい、お待ちを…」

パタパタ

ガチャ

神通「すみません、お待たせいたしました」

翔鶴「神通ちゃん、川内ちゃんはいる?」

神通「え?ええ、いるにはいますが…とてもみなさんの前に出られるような状態では…」

瑞鶴「なにかあったの?」

神通「はい、提督があのようになってからずっと退屈になったそうで…妹も姉さんも、ヤケ酒を起こして今は二人とも二日酔いで寝込んでいるんです…」

飛龍「そ、そうなんだ…」



721: ◆CaWSl75vrE 2016/01/15(金) 18:00:52.13 ID:WVQ2n9iWO

神通「だらしない姉で申し訳ございません、なにかご用があったのなら私から伝えておきますが…」

翔鶴「あ、ああ…そういうことなら大丈夫だから…」

瑞鶴「ねえ、川内ちゃんが夜のうちにどこか行ってたとかそういうのはない?」

神通「夜、ですか?夜の姉さんは騒がしいので縛り付けていますが…そういうことはないと思います」

瑞鶴「そ、そっか…」

神通「他にご用は…」

飛龍「ううん、もう大丈夫だよ。ごめんね、わざわざ」

神通「いえ、お気になさらずに」

蒼龍「それじゃあね」

神通「はい」

パタン



722: ◆CaWSl75vrE 2016/01/15(金) 18:02:59.20 ID:WVQ2n9iWO

瑞鶴「うーん、結局手がかりはなしかぁ…」

翔鶴「どちらもはずれだったわね…」

飛龍「まだ別の可能性もあるし、とりあえず鎮守府のみんなに聞いて回ってみる?」

翔鶴「そうね、そうしましょう」

加賀「提督があのままじゃみんな何もすることがないでしょうし…やってみる価値はあるわ」

蒼龍「提督……元気になればいいけど」

飛龍「うん…」

加賀「ええ…」



724: ◆CaWSl75vrE 2016/01/18(月) 19:55:09.02 ID:c5URER520

提督「……………」

「あなた」

提督「……………」

「ねえ、あなた…」

提督「……あ……?」

天津風「あなた、ずっと元気ないみたいだけど…大丈夫…?」

提督「ああ、天津風……うん、大丈夫だよ…」

天津風「嘘よ、目の下にクマができてるじゃない」

提督「……………」

天津風「…眠れてないの?」

提督「……………」



725: ◆CaWSl75vrE 2016/01/18(月) 20:03:28.16 ID:c5URER520

天津風「あなた、ここ最近ろくに何も食べていないし…このままだと、本当に倒れちゃうわ…」

提督「……いいよ、いっそこのまま死んだ方が楽に……」

ガバッ

天津風「そんなの、嫌よ………あなたがいなくなるなんて、絶対に嫌なんだから……」ギュウウッ

提督「…………!」

天津風「あなたがいなくなったら、私は泣くわ。涙が涸れるまでわんわん泣いて、あなたの後を追うんだから…」グスッ

提督「でも、天津風…」スッ

天津風「ねえ…だから、そんなに悲しいこと言わないでよ…私、あなたが……」

提督「……うん」

ギュッ

天津風「!」

提督「ごめんね…私、ちょっと暗くなりすぎてたね…ごめん……」

天津風「ええ……」

提督「あたしも…天津風が居てくれると……」ギュウウ…

天津風「んっ…痛いわ、あなた…」

提督「ああ…ごめんね、ふふっ……」ナデナデ



726: ◆CaWSl75vrE 2016/01/18(月) 20:27:13.75 ID:c5URER520

〜〜〜

天津風「どう、美味しい?」

提督「うん、上手になったね」

天津風「そ、そう?ふふ///」

提督「……………」ジッ

天津風「な、なに?」

提督「ん?いや、可愛いなって思って」

天津風「な、なっ…も、もう…ばか…///」カァアア

提督「ふふ……」

天津風「…………あら?」

提督「どうしたの?」

天津風「……いえ、なんでもないわ。気にしないで」

提督「…?そう?」



728: ◆CaWSl75vrE 2016/01/21(木) 20:02:56.57 ID:TKbwcael0

〜〜〜

提督「……………」カリカリ

天津風「……………」ソワソワ

提督「………よし」キュッ

天津風「! 終わった?」

提督「うん、これで全部」

天津風「久々にお仕事して疲れちゃったんじゃない?もう寝る?」

提督「んー…そうしようかな…」

天津風「それじゃあ待ってて、枕持ってくるから」

提督「え?一緒に寝るの?」

天津風「…ダメ?」

提督「いや、そういうわけじゃないけど…」

天津風「ならいいじゃない!じゃ、すぐ取ってくるわ!」

パタパタ

提督「天津風……」



729: ◆CaWSl75vrE 2016/01/21(木) 20:10:58.83 ID:TKbwcael0

バタン

天津風「ふふっ、一緒に寝られる…」

天津風「早く戻ろっと…」パタパタ

ガタッ

天津風「………?」クルッ

天津風「…………」キョロキョロ

天津風「……気のせいね…」

スッ…

ガツッ

天津風「が、ぁっ……!?」

ドサッ

天津風「あ………な、ん…で……」

「ふふっ……」

「天津風が悪いんだよ…」

「ずっと、くっついてるから…」

「ふふ………ふふふふっ…」

ズル…ズル…



734: ◆CaWSl75vrE 2016/01/27(水) 15:14:20.15 ID:MDs228+A0

〜〜〜

提督「………………」

蒼龍「提督…もしかして、また…」

飛龍「うん…天津風ちゃんがいなくなったって…」

加賀「え?けど、昨日は提督と一緒にいたと…」

翔鶴「それが、提督が近くにいない一瞬の隙を突かれたようで…」

提督「私の……せいだ……」

蒼龍「提督は悪くないよ、悪いのはこんなことする犯人なんだから」

提督「なんで…どうしてこうなるの……?私は…私……ううっ………」ググ

飛龍「提督…」



735: ◆CaWSl75vrE 2016/01/27(水) 15:37:23.82 ID:MDs228+A0

加賀「……今はそっとしておいてあげましょう。心が不安定だから、下手なことを言えば立ち直れなくなるかもしれないわ」

飛龍「そう、ですね…」

瑞鶴「私たちも、なにかしてあげられたらいいんだけど…」

翔鶴「あとでまた情報収集の必要がありそうね…」

赤城「ええ…とにかく、演習に行きましょう」

蒼龍「はーい…提督、何かあったらすぐ呼んでね?」

提督「………………」

蒼龍「………………」

バタン



738: ◆CaWSl75vrE 2016/01/31(日) 19:28:56.58 ID:E7lN5XVJ0

〜〜〜

パタパタ…

キィ…

提督「……………」ボー

時津風「……しれえー?」

提督「…ん?あ、時津風?」クルッ

時津風「しれぇ、もう大丈夫なの?元気、出た?」

提督「ああうん、元気だよ」ニコ

時津風「ほんと?」

提督「悩んでても仕方ないからね」

時津風「そっか…ならよかった!」



739: ◆CaWSl75vrE 2016/01/31(日) 19:35:09.98 ID:E7lN5XVJ0

時津風「えっとね…天津風がどこに行ったかは分からないけど、きっとすぐ見つかるよ!だから元気出そう!」

提督「ふふふ…時津風はいい子だね。ほら、おいで」

時津風「うん」パタパタ

ギュ

提督「よしよし…」ナデナデ

時津風「えへへ…しれぇ〜」

提督「時津風、もう朝ご飯は食べたの?」

時津風「ううん、まだ」

提督「なら一緒に食べに行こうか、美味しいもの作ってあげるよ」ギュ

時津風「うん!」



740: ◆CaWSl75vrE 2016/01/31(日) 19:39:38.01 ID:E7lN5XVJ0

時津風「ん〜……」モグモグ

提督「どう?美味しい?」

時津風「うん、やっぱりしれぇのご飯が一番だなぁ」

提督「そっか、ふふ」

時津風「…あれ?しれぇ、右手の指、どうしたの?」

提督「え?ああ、ちょっと切っちゃって…」

時津風「ふーん…しれぇが怪我するなんて珍しいね」

提督「そうかな?しょっちゅうやってる気がするけど」

時津風「…………?」

提督「どうかしたの?」

時津風「う〜ん…?なんか、気になるような…」

提督「??」

時津風(なんだろ、この違和感…?)



741: ◆CaWSl75vrE 2016/01/31(日) 19:44:50.26 ID:E7lN5XVJ0

提督「お腹いっぱいになった?」

時津風「うん、美味しかった」

提督「そっかぁ、私の料理も結構人気なんだなあ」

時津風「そだよー、しれぇのご飯なら毎日食べたいもん」

提督「あはは、時津風になら毎日作ってあげてもいいんだよ?」

時津風「ほんと!?なら、今日からでもいいの!?」

提督「もちろん、あたしで良ければね」

時津風「ぃやったぁー!!」



742: ◆CaWSl75vrE 2016/01/31(日) 20:09:38.23 ID:E7lN5XVJ0

〜〜〜

提督「……………」カリカリ

時津風「……ふぁ〜……」

時津風(しれぇ、こんな遅くまで大変そうだなぁ…)ジー

提督「……………」カリカリ

時津風「…………!」ピクッ

時津風(さっきの違和感……これって…しれぇ、左手でペン握ってる…?)

時津風「ねえ、しれぇ」

提督「ん?」ピタ

時津風「しれぇって、左利きだっけ?」

提督「え?そうだけど」

時津風「あれぇ…?」



743: ◆CaWSl75vrE 2016/01/31(日) 20:17:57.49 ID:E7lN5XVJ0

時津風「あたしの記憶だと、しれぇはいつも右手で作業してたような…」

提督「ああ、私の話?」

時津風「うん、私もなにも今してるのはしれぇの話でしょ?」

ガタ

提督「あはは、それもそうだね。確かに私は右利きみたいだね」

時津風「……へ?何言ってんの?」

ツカツカ

提督「でも、『あたし』は左利きなんだよ」ヒュッ

ゴスッ

時津風「ぅ、ぐぁ……?」

提督「はぁ……ダメだなあ…そんなにずっと一緒にいられたら、我慢できなくなっちゃうなぁ……」



746: ◆CaWSl75vrE 2016/01/31(日) 23:48:01.60 ID:E7lN5XVJ0

ーーー
ーーーー

カチャン…

時津風「う……」

時津風「あ……?ここは…」

ガチッ

時津風「っ…!?な、なにこれ…動けない…!」ガチャガチャ

提督「あ」

時津風「!?」ビクッ

提督「おはよう時津風、起きてたんだね」

時津風「し、しれぇ…?よかった、これ、外すの手伝ってよ…」ガチャガチャ

提督「……………」



747: ◆CaWSl75vrE 2016/01/31(日) 23:54:20.14 ID:E7lN5XVJ0

提督「いやだよ」

時津風「!?」

提督「ここに時津風を運んだのはあたし、そして時津風とそれを繋げて動けなくしたのもあたし」

時津風「なっ……なんで…どうしてそんなことするの…?」

提督「なんでって…可愛い可愛い時津風を手放したくないからだよ」

時津風「は…??」

提督「分かるかなあ…人は夕焼けを綺麗だと思うでしょ?昼と夜にある一瞬の隙間を美しいと感じるように、時津風みたいに小さい子が可愛くて仕方ないんだよ」

時津風「な、なにを言ってるの…?」

提督「子供の可愛さは一瞬だからね…成長したらすぐにそれがなくなっちゃうから、ちゃんと手元においていつでもすぐ近くで見られるようにしなきゃ安心できないからね…」



748: ◆CaWSl75vrE 2016/02/01(月) 00:00:30.19 ID:hO8zTQXR0

提督「まあ、詰まる所、もう時津風はここから出られないんだよ」

時津風「……!?」

提督「さてと、今日の分のご飯だよ。お昼は食べられなかったから、しっかり食べようね」カチャ

時津風「おかしいよ!!こんなの間違ってるよ!!」

提督「あれぇ…天津風はすぐ理解してくれたのに、時津風は素直じゃないなぁ…」

時津風「!? 天津風もいるの!?」

提督「別の部屋だけどね、暁型の子達もいるよ」

時津風「……!!じゃあ、みんなを攫ってたのって…!」

提督「うん、あたし」

時津風「そん、な…」



749: ◆CaWSl75vrE 2016/02/01(月) 00:10:22.46 ID:hO8zTQXR0

提督「ああ…そうそう、望月と天津風と響はすぐに理解してくれて助かったなあ…今も部屋に行ったら嬉しそうな顔をするし…」

時津風「……………」

提督「雷と電は…初めは抵抗してたけど、ちょっと虐めてあげたらおとなしくなっちゃって…ふふっ、そういうのも可愛らしいなあ」

時津風「……やだ……」

提督「暁と卯月は最後まで喚いてたかな…今は二人ともあたしに懐いてくれてるけど、時津風はどうかな?」スッ

時津風「ひっ…」

提督「ちょっと喋りすぎちゃったね、今日はもうお休みする?」

時津風「やだよ…こんなのおかしいよ…!やめてよ、しれぇ…!」

提督「ん〜…あたしは普段あなたたちが知ってる、私じゃないんだよね。だからあなたが私に向けて言ったことも、今はあたしにしか届いてない。だからあたしはあなたをここから出すつもりもない」



750: ◆CaWSl75vrE 2016/02/01(月) 00:21:06.89 ID:hO8zTQXR0

提督「私の方は罪悪感で苦しんでるしここにも来られないみたいだけど…あはは、まあここにはあたししか来ないけどね」

時津風「やだぁ…やだよぉ…!」ポロポロ

提督「あなたはあたしのことを知らないみたいだけど、あたしは私の中からずっとあなたたちを見てたんだよ?だから、短い付き合いなんかじゃないよ、安心して」

時津風「そんなの知らないよ…しれぇを返してよぉ…」グスッ

提督「時津風が成長するまで、ちゃんとお世話してあげるからね…一応大人になる前に成長は止めるけど、そうなったときはずっとあたしが可愛がってあげるから」ナデナデ

時津風「やだやだ!こんなの、やだぁ!!」

提督「それじゃ…今日はもうお休みしよっか、ちょっと混乱してるみたいだからね」

スタスタ

時津風「いやっ………ま、待ってよ!出して!あたし、まだっ……いやあああああああっ!!!」

バタン

「出して!!出してよぉっ!!暗いのやだぁ!!しれぇっ!!」

提督「ふふ…ああ……」ゾクゾク

提督「楽しみだなぁ…強情な子も、すぐに堕ちてくれる子も…みんな、可愛いなぁ…」



751: ◆CaWSl75vrE 2016/02/01(月) 00:23:09.22 ID:hO8zTQXR0

「まただ……また、やっちゃった……」

「私の……せいだ……」

「私の………」



「ううっ………!!」

「違う…私じゃ、ない……」

「そうだ、私……あたし、の……」

「ふふっ……あたしの…せいだ……」

「あはっ、あははは…あはははははははっ!」



752: ◆CaWSl75vrE 2016/02/01(月) 00:24:30.31 ID:hO8zTQXR0

提督編おわり
なんか、書いてて思ったんですけど二重人格オチってあんまり面白くないですね…



766: ◆CaWSl75vrE 2016/02/03(水) 23:04:04.51 ID:b7/T1NHU0

大井「提督?その指輪、誰に渡されるんですか?まさか電ちゃん…とかじゃないですよね?あんなに小さい子のどこがいいんですか?私の方がずっと大人で、結婚もできますよ?提督が好きでいてくれているのは私の方ですよね?まあ提督が人を見る目はありますし、何も言わずとも私にその指輪を渡してくれるのは分かっていますけど…ちょっと心配しすぎですか?でも他の子に浮気なんてしないか不安で仕方ないんです…提督の仕事柄そういうスキンシップも大事なのは分かりますけど、あまり度が過ぎるようならお仕置きも考えますよ…?あっ、でも安心してください!最愛の人にそんなひどいことなんてできませんから…だから、提督も私を裏切らないでくださいね?信じられませんか?…なら、愛してると言いましょうか?提督のためなら、何度でも言えますよ?ほら、愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる………ね?私の愛、分かっていただけましたか?ふふっ、私がこれだけ言ったんだから提督からも…ね?………え?どうして何も言ってくれないんですか?ああ、他の子達が嫉妬してくるのが怖いんですね?大丈夫です、提督は私が守ってあげますから。私の身は提督に捧げます。お仕事で疲れてしまったら私が慰めてあげますし、好きなものだってなんだって作ってあげられますし私の身体も提督の好きにしていいんですよ?本当は私が提督を好きにしたいんですけど、提督の好みが私の好みですから…あっそうそう、子供はどちらが産みますか?痛いのは怖いですけど、提督がくれる痛みなら私は喜んで享受しますが…提督はどうですか?怖いですか?ならやっぱり私ですね。え?女同士で子供はできない?まさかぁ!最近の科学ってすごいんですよね?大丈夫ですよ、私たちにも子供は産まれます!子供が産まれたら、どんな子に育てますか?元気なのも良いですし、大人しい子もいいかもしれませんね!あっ、これはあくまで私の願望であってさっきも言った通り提督の好きなようにしていいんですよ?ふふっ、将来が楽しみですね……私と提督、二人で家庭を築いて…提督が起きてきたら私がエプロンで朝ご飯を作っていて…どうですか?私のエプロン姿、想像してくれましたか?そのまま後ろから私に抱き付いて、朝から…その、してくれてもいいんですよ?うふふっ、そういうのも…興奮、するかも……///ああ、提督とならどんな未来でも…ふふっ、うふふふ…その指輪をもらうのは、将来の練習ですね!私は準備万端ですから、いつでもいいんですよ?提督の、好きなタイミングで、私に、指輪を」

提督「」



767: ◆CaWSl75vrE 2016/02/03(水) 23:05:00.97 ID:b7/T1NHU0

大井編(?)おわり
愛が重い



773: ◆CaWSl75vrE 2016/02/10(水) 12:42:59.90 ID:j6vLXXrv0

提督「……………」カリカリ

168「……ねえ、司令官」

提督「……………」カリカリ

168「……司令官?」

提督「……………」カリカリ

168「司令官ってば!」

提督「……え?」ピク

168「どうして何も言ってくれないの?もしかして、イムヤのこと…」

提督「あ…ち、違うよ!ただ集中して聞こえてなくて…イムヤのことが嫌いになったわけじゃないよ!」

168「ほんと…?」

提督「ほ、ほんとほんと」

168「じゃあ…ん」スッ

提督「はぁ…」



774: ◆CaWSl75vrE 2016/02/10(水) 12:50:00.64 ID:j6vLXXrv0

ギュ

168「……………」

提督「……………」

168「……ねえ、司令官」

提督「ん?」

168「もうイムヤには慣れてくれた?」

提督「……えっと」

168「ああ…ごめんね、ちゃんと私のこと考えてくれてるか、って意味ね」

提督「あ、ああ…うん、慣れたよ…」

提督(自分が病んでるのを自覚して言ってるのかと思った…)

168「そっか、よかった…」



775: ◆CaWSl75vrE 2016/02/10(水) 12:53:56.43 ID:j6vLXXrv0

168「ねえ司令官」

提督「うん」

168「イムヤのこと、嫌いじゃないよね?」

提督「うん」

168「イムヤのこと、好きだよね?」

提督「…う、うん」

168「そう…ふふ…♪」ギュ スリスリ

提督「………あの、私まだ仕事があるんだけど…」

168「え……私、邪魔だった……?」

提督「あっ……そ、そうじゃないよ!ごめん、仕事なら後でもできるね、あはは…はは…」ナデナデ

168「んっ…司令官…」

提督「はぁ……」



776: ◆CaWSl75vrE 2016/02/10(水) 17:59:16.70 ID:j6vLXXrv0

バタン

提督「はぁ……」

早霜「あら、司令官…ため息なんて、何か嫌なことでも…?」

提督「あ、早霜…まあ、嫌なことってほどでもないけどちょっとね…」

早霜「ふぅん…それは大変ね…司令官にそんな思いをさせるなんて…」

提督「あー…えっと、は、早霜が気にすることじゃないよ。私も少し休もうと思ってたところだし」

早霜「………そう?なら、私とお昼はどうですか?」

提督「気持ちは嬉しいんだけど…実は伊良湖ちゃんがご飯を作ってくれる約束をしてて…」

早霜「え…?私のご飯、食べてくれない、の…?」フル…

提督(あ、やばっ……)



778: ◆CaWSl75vrE 2016/02/11(木) 06:15:30.12 ID:R0xKnBDN0

提督「あ、あー…えっと、そう!ごめん、明日の約束だった!か、勘違いしてたよ、あははは…」

早霜「…そうなの?」

提督「う、うん」

早霜「フフ……なら、早く言ってくれればよかったのに……私、また勘違いを…フフッ」

提督「う…きょ、今日のご飯はなにかな…」

早霜「あ…ごめんなさいね、私…気持ちが先走ってしまって……今日は舞鶴仕込みの肉じゃがです」

提督「に、肉じゃがね!うん、早霜の作る肉じゃがは美味しいからね、好きだよ、うん…」

早霜「好き……だなんて、そんな…ウフフッ…照れてしまいます…///」

提督「…………」

早霜「フフ…それでは、行きましょうか…」ギュ

提督「え、ちょ…そ、そんなにくっついたら…ほら、みんな見てる…」

早霜「………何か、問題でも?」

提督「……な、なんでもないです…」

早霜「そう…変な司令官……フフ」

提督(うぅ…これじゃまるでみんなに見せつけてるみたいで…うわ、摩耶とかすっごい睨んでる…)

提督(胃が痛い…)



779: ◆CaWSl75vrE 2016/02/11(木) 06:25:50.92 ID:R0xKnBDN0

〜〜〜

提督「……………」モグモグ チラッ

早霜「……………」ジーッ

提督「」ビクッ

早霜「………どうですか?お味の方は…」

提督「え?あ、ああ、うん、美味しいよ、とっても…」

早霜「美味し……っっーーー」ゾクゾク

提督「え?」

早霜「っ、はぁ……フフッ、それはよかった…とても、嬉しい……////」

提督(……え?な、何この反応…)



780: ◆CaWSl75vrE 2016/02/11(木) 06:29:42.22 ID:R0xKnBDN0

提督「………!」

早霜「…のまま司令官の……めさんに…フフ…」ブツブツ

提督「は、早霜?」

早霜「…はい?」

提督「その指…怪我したの?」

早霜「え?……ああ、これですか…少し、包丁で切ってしまって…あ、ご心配はいりませんので…」

提督「へ、へぇー…」

提督(料理する度に切ってるような気が………いやいや、そんなことはない…はず…)



781: ◆CaWSl75vrE 2016/02/11(木) 06:34:21.06 ID:R0xKnBDN0

提督「……そ、それにしてもこの肉じゃが、美味しいけど…何か隠し味とかあるの?」

早霜「隠し味、ですか………ええ、ありますが…」

提督「お、教えてもらってもいいかな」

早霜「……ダメ…隠しているから、隠し味なの…」

提督「お願い!どうしても気になっちゃって…」

早霜「………どうしても?」

提督「うん、どうしても」

早霜「…………そうですね…詳しくは言えないけれど、強いて言うなら……真っ赤に燃える、愛……でしょうか…フフッ」

提督「………そ、そうなんだ!」

提督(何この意味深な発言……もしかしてほんとに……?)

提督(い、いや…まさか、そんな…気のせいだよね、気のせい…)



783: ◆CaWSl75vrE 2016/02/15(月) 08:17:55.93 ID:YfWTjUVD0

提督「ふぅ……ごちそうさま…」

早霜「お粗末様です…」

提督「それにしても早霜、ほんとに料理上手だね」

早霜「そう…ですか?」

提督「うん、きっといいお嫁さんになるよ」

早霜「そう言われると、嬉しいです……フフッ…司令官が望むのなら、毎日でも……いいけれど…」チラ

提督「あ……あー、ごめん!私、まだお仕事があるんだった!ちょっと行ってくるね!」ガタッ

早霜「……あ……」

パタパタ…

早霜「フフ……司令官ったら、鈍感なのね……」

早霜「でも…いいわ、気付いてくれるまで…ずっと、見ているから……フフ、ウフフッ……」



784: ◆CaWSl75vrE 2016/02/15(月) 08:22:27.35 ID:YfWTjUVD0

提督「はぁ……危なかった…」

提督「…………」

提督「………あ!」

提督(そうだ…伊良湖ちゃんとの約束、すっぽかしたままだった…)

提督(謝りに行かないと…でも、うぅ〜…また変なことになるかも…)

提督(……ううん、悪いのは私なんだから。ちゃんと謝っておかないといけないよね)

提督(……うん、行こう)



785: ◆CaWSl75vrE 2016/02/15(月) 19:13:47.26 ID:YfWTjUVD0

パタパタ…

提督「ふぅ……あれ?」

シーン…

提督「………誰もいない?」

提督「…あ、厨房に明かりが点いてる…」

スタスタ

提督「伊良湖ちゃーん?」

伊良湖「…………」

提督「ああ、よかった…伊良湖ちゃん、こんなところで何を……」

伊良湖「…………」グッ

提督(!? ほ、包丁で手首を…!)



787: ◆CaWSl75vrE 2016/02/15(月) 19:20:59.79 ID:YfWTjUVD0

提督「だ、ダメ!」ガシッ

伊良湖「あ……」ポロッ

ガラン

提督「今…手首、切ろうとしてたよね?どうしてそんなことしてたの?」

伊良湖「……伊良湖は、いらない子ですから…」

提督「え?」

伊良湖「提督さん、伊良湖との約束に来てくれなかったから……私は、提督さんにとって必要じゃない存在なんだって…そう考えたら生きる意味なんてないんじゃないかって伊良湖は……」ブツブツ

提督「そっ、そんなことないよ!約束すっぽかした私が全部悪いから!伊良湖ちゃんは何も悪くないから!」

伊良湖「………提督さんは、伊良湖が必要ですか?」

提督「えっ…う、うん…」

伊良湖「提督さんは、伊良湖がいてくれると嬉しいですか?」

提督「そ、そう…だね、はは…」



788: ◆CaWSl75vrE 2016/02/15(月) 20:10:06.32 ID:YfWTjUVD0

伊良湖「じゃあ…私の作ったご飯、食べてください」

提督「えっ」

伊良湖「…食べてくれないのですか?」フッ

提督「い、いや!食べる食べる!」

伊良湖「本当ですか?では、温め直してきますね」

パタパタ

提督「……はっ…はぁぁ……」

提督(どうしてこうなっちゃうかなぁ〜…)



789: ◆CaWSl75vrE 2016/02/15(月) 20:12:46.25 ID:YfWTjUVD0

提督「……………」モグモグ

伊良湖「……………」

提督「……………」チラッ

伊良湖「……………」ジーッ

提督「……………」モグ…

伊良湖「……………」

提督「……………」

伊良湖「………どうしたんですか?」

提督「……いや、もうお腹いっぱいかなって…」

伊良湖「食べないんですか?」

提督「そういうことじゃなくて」

伊良湖「食べてくれないんですか?」

提督「ちが」

伊良湖「食べてくれないんですか?」

提督「……美味しいです」モグモグ

伊良湖「ふふっ」



791: ◆CaWSl75vrE 2016/02/18(木) 15:41:14.92 ID:RDp7YyxY0

〜〜〜

提督「うぷっ……うう…」

提督(さすがに食べ過ぎた………は、吐きそう……)

提督「う…苦し……」

提督(ちょっと横になろう…)

ボフッ

提督「……………」ゴロン

提督(…やっぱり、自分の部屋って落ち着く……)

提督(………少しだけ、寝ようかな……)

提督「…………」スヤ…



793: ◆CaWSl75vrE 2016/02/22(月) 09:55:59.73 ID:M1kOpM2B0

ギシ…

提督「ん……ぁ…?」パチ

168「……………」

提督「………っ」ビクッ

168「司令官、目が覚めた?」

提督「い…イムヤ、何してるの?」

168「司令官の寝顔を見てたの」

提督「そ、そう…」

168「可愛かったわ」

提督「ど、どうも…」



794: ◆CaWSl75vrE 2016/02/22(月) 10:00:06.09 ID:M1kOpM2B0

提督「えっと…とりあえず、退いてもらっていいかな?これじゃ動けないから…」

168「うん、でも一つ聞いていい?」

提督「な、なに?」

168「どうしてイムヤのそばに居てくれなかったの?」

提督「え?」

168「どうしてイムヤが寝てるときに一緒に居てくれなかったのかって聞いてるの」

提督「い、いや…私だって、お仕事があるから…」

168「お仕事と私、どっちが大切なの?」

提督(何回目だろう、これ…)



795: ◆CaWSl75vrE 2016/02/22(月) 10:04:21.77 ID:M1kOpM2B0

168「ねえ、聞いてる?」

提督「……イムヤ、よく聞いて」

168「うん」

提督「確かにイムヤのことは大切だけど、お仕事も大切なの」

168「どうして?」

提督「お仕事をしないと生活に関わるから、そうなっちゃうとイムヤにかまってもあげられなくなるんだよ」

168「私は司令官となら死んでもいいよ?」

提督「……私はイムヤと生きたいなあ」

168「……………」

提督「……………」



796: ◆CaWSl75vrE 2016/02/22(月) 10:10:06.10 ID:M1kOpM2B0

168「ほんと?」

提督「ほんとほんと」

168「………ふふっ……司令官がそう言うなら、そうしようかな」

提督「ああ、助かるよ。イムヤはいい子だね」ナデナデ

168「ふふ、うふふふ」

提督「それじゃ、そろそろおやつの時間だろうから…先に食堂に行っててくれるかな?」

168「うんっ、待ってるわ」

提督「私も後から行くよ」

168「絶対来てね?」ガチャ

提督「うん、わかってる」

パタパタ…

提督「……はぁ……」



800: ◆CaWSl75vrE 2016/02/25(木) 10:09:24.81 ID:eO8Q5GyA0

響「……司令官」

提督「ん…響、どうしたの?」

響「…………」スッ

提督「……?ああ、抱っこね…はいはい」ギュ

響「ん」

グイ

提督「よいしょっと…響、重くなってきたね」

響「…セクハラ?」

提督「成長してるって意味だよ」



801: ◆CaWSl75vrE 2016/02/25(木) 10:12:29.39 ID:eO8Q5GyA0

響「司令官…さっき、あの潜水艦が司令官の部屋から出てきてたのは…」

提督「あー…ちょっと、お話してただけだよ」

響「本当に?」

提督「うん」

響「………司令官がそう言うなら、本当なのかな…」

提督「…大丈夫だよ、勝手に響の前からいなくなったりしないから」ポンポン

響「………うん」



802: ◆CaWSl75vrE 2016/02/25(木) 10:31:06.05 ID:eO8Q5GyA0

提督「………もうそろそろ満足した?」

響「? どこかに行くのか?」

提督「うん、イムヤにおやつ食べに行こうって誘われちゃって」

響「そうか……わかった、ありがとう。もう大丈夫だ」

提督「ん、はいはい」

ストン

提督「じゃ、私は行くけど…何かあったら言うんだよ?」

響「ああ…分かってる」

提督「うん、それじゃ」クル

響「…………司令官」

提督「?」ピタ

響「今夜は、一緒に寝てもいいかな」

提督「…うん、寝る準備ができたらおいで」

響「…ありがとう」

提督「…………」ニコ

パタパタ



804: ◆CaWSl75vrE 2016/02/26(金) 09:45:11.81 ID:SOn2LsY70

ガチャ

提督「……………」

168「あ!司令官、こっちこっち!」

提督「ん…はいはい」

ストン

提督「ふぅ…あ、今日はアイスなんだ」

168「うん、司令官は食べないの?」

提督「え?ああ、私は…ちょっと、お昼食べ過ぎちゃったから」

168「そう…太らないようにね?」

提督「はい…」



805: ◆CaWSl75vrE 2016/02/26(金) 09:50:43.47 ID:SOn2LsY70

168「ん〜、美味しい♪」

提督(こうしてると、いつも通りなんだけどなあ…ちょっとしたことがあれば、さっきみたいに私に執心して…)

提督(いつからこうなっちゃったんだろ…)

提督「はぁ………」

168「…司令官、どうしたの?」

提督「え?」

168「またため息ついてたわよ?」

提督「ああ…まあ、色々と悩み事が尽きなくて…」

168「ふーん…何か困ったことがあったら、相談していいからね?」

提督「う、うん…」

提督(相談できないから困ってるんだけどな…)



806: ◆CaWSl75vrE 2016/02/26(金) 09:55:05.17 ID:SOn2LsY70

提督「…………」ボー

168「司令官、これからって暇?」

提督「……ん?いや、お仕事だけど」

168「そう…ならまた今度でいいわ、一緒に散歩でもしよ?」

提督「うん、いいよ」

168「それじゃ私、調べ物があるから。またね」ガタ

提督「うん」

パタパタ

提督「………ちょっとだけサボろうかな……」



808: ◆CaWSl75vrE 2016/02/28(日) 10:55:30.30 ID:QHtVHI4Q0

提督(どこかいい場所、ないかなあ…)スタスタ

提督「………ん?あの梯子…」

ガチャ

バタン

パタパタ…

提督「もしかして……」

カン カン カン

提督「……あ、やっぱりいた」

天津風「……………」

提督「天津風ー!」

天津風「! あ…あなた…」



809: ◆CaWSl75vrE 2016/02/28(日) 10:59:38.79 ID:QHtVHI4Q0

提督「また風を楽しんでるの?」ストン

天津風「ええ、そんなところ…ここはよく風邪が当たるから気持ちいいの」

提督「そっか」

天津風「あなたは?」

提督「私はサボり」

天津風「そう、悪い人ね」

提督「あはは…」



810: ◆CaWSl75vrE 2016/02/28(日) 11:02:53.67 ID:QHtVHI4Q0

提督「天津風、前と比べるとずいぶん変わったね」

天津風「そうかしら」

提督「うん、会った頃は私のことも避けてたもん」

天津風「あの時は……その、ごめんなさい…」

提督「いいよいいよ、気にしてないし。前の鎮守府の事考えたら仕方ないことだもん」

天津風「…………」

提督「…まだ、火とかは駄目?」

天津風「ええ……見ただけで、身体が震えてくるわ…」

提督「そっか……」



811: ◆CaWSl75vrE 2016/02/28(日) 11:07:24.90 ID:QHtVHI4Q0

提督「…………」

天津風「……ねえ、あなた…」

提督「うん?」

天津風「…ごめんなさい」

提督「ふふ、どうして謝るの?」

天津風「私、いつまで経っても役に立てなくて…やっとあなたを信じられて、みんなとも仲良くなったのに…私だけ、何もしてないなんて…私…」

提督「大丈夫だよ、誰も天津風のことをいらないなんて思ってないから」

天津風「でも…私、遠征にも出られなくて…本当にただの役立たずでしかないのに…」

提督「……そんなに捨てられるのが怖い?」

天津風「………!!」ビクッ



812: ◆CaWSl75vrE 2016/02/28(日) 11:14:30.14 ID:QHtVHI4Q0

提督「誰からも必要とされないのが怖い?」

天津風「っ……や、やめて……」

ギュ

提督「大丈夫…天津風は、私にとって必要だから…天津風も、大切な子だよ」ポンポン

天津風「あ……あなた……」

提督「トラウマは簡単に乗り越えられるものじゃないから…ゆっくりでいいんだよ。ちゃんとできるようになるまで、私が守ってあげる」

天津風「………うん……」ギュ

提督(天津風、体温高いなあ…あったかくて気持ちいい…)



813: ◆CaWSl75vrE 2016/02/28(日) 11:17:18.11 ID:QHtVHI4Q0

天津風「……はぁ」スッ

提督「ん、もういいの?」

天津風「ええ…あなた、優しいのね」

提督「ふふ、どうも」

天津風「私、頑張ってあなたの役に立てるようになるから…見守っててね?」

提督「うん…あ、そうだ」

天津風「?」

提督「もし、もしもの話ね?私が天津風を見捨てたらどうする?」

天津風「さっき見捨てないって言ったばかりなのにいきなりなんなの…」

提督「いや、興味本位で…」



814: ◆CaWSl75vrE 2016/02/28(日) 11:22:44.55 ID:QHtVHI4Q0

天津風「そうね……」

提督「…………」

天津風「………あなたを殺して私も死ぬ、かな」

提督(やっぱり……)

天津風「まあ、実際のところは分からないけど…どちらにせよあなたがいない世界なんて考えられないし、私はすぐ後を追うと思うわ」

提督「そうですか…」

天津風「なに、その敬語」

提督「いや、なんでも…」

提督(これは天津風も相当病んでるなあ…前からそうだったけど…)



815: ◆CaWSl75vrE 2016/03/03(木) 22:55:51.20 ID:NxnqUTO00

提督「じゃあ、私はお仕事があるから戻るけど…ほんと、焦らなくていいからね」

天津風「ええ、わかってるわ」

提督「じゃ」

天津風「あなたもあまり根を詰めすぎないでね」

提督「はーい」

カン カン

天津風「………いい風ね……」



816: ◆CaWSl75vrE 2016/03/03(木) 23:17:40.39 ID:NxnqUTO00

〜〜〜

提督「ふあぁ……」

提督(今日も一日頑張ったなあ…)ウトウト

コンコン

提督「ん…はーい」

ガチャ

響「司令官…」

提督「ああ、響…もう寝るの?」

響「うん」

提督「そっか…じゃあおいで」ポンポン

響「…うん」



817: ◆CaWSl75vrE 2016/03/03(木) 23:24:04.82 ID:NxnqUTO00

ゴソゴソ

提督「枕、持ってきてないの?」

響「駄目?」

提督「ううん、いいよ」

響「そうか…」

ボフ

提督「んっ」

響「はぁ……」

提督「もう…また人の胸を枕にして…」



818: ◆CaWSl75vrE 2016/03/03(木) 23:33:29.64 ID:NxnqUTO00

提督「そんなに好きなの?」

響「うん…司令官の胸枕は、安心する…」

提督「そう…」

響「嫌?」

提督「ううん、あったかくて気持ちいい」ギュ

響「そうか…ふふ…」

提督「…私、もう眠いから寝てもいいかな…」

響「ああ…おやすみ、司令官…」

提督「おやすみ…」



819: ◆CaWSl75vrE 2016/03/04(金) 00:23:22.01 ID:oG0F7cYm0

提督「すー……すー……」

響「……うっ……」ピクッ

提督「んっ…」ゴロ

響「あ………ああっ…!!」

提督「んー…んん…?」

響「い、いやっ…いやだ…!一人にしないで…!」ブルブル

提督「あ…!ひ、響!」

響「うああああっ!?は、あ、あ、ああ…!!」ガタガタ

ガバッ

提督「だ、大丈夫だから!響、私がそばにいるから!ね!」ギュウウ

響「う、ううう…違う…違う、私は…裏切ってなんか…」カタカタ

提督(まただ…また怖い夢を見たんだ…)ナデナデ

響「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」フルフル



820: ◆CaWSl75vrE 2016/03/04(金) 00:29:47.89 ID:oG0F7cYm0

響「…………」

提督「………響?」

響「すぅ…すぅ…」

提督(やっと寝付いた…)

提督(もう空が白んでる……今寝たら確実に起きられない…)

提督(ううー…このまま徹夜するしかないか…)

提督「はぁ……」



821: ◆CaWSl75vrE 2016/03/04(金) 00:36:00.82 ID:oG0F7cYm0

〜〜〜

提督「……………」ボー

鳳翔「提督」

提督「………ん…?あ、鳳翔さん…どうしたの?」ゴシゴシ

鳳翔「提督こそ、どうしました?ご飯を食べて眠くなりましたか?」クス

提督「ああ、うん…実は昨日、よく眠れなくて…」

鳳翔「あら、寝不足ですか」

提督「うん…」

鳳翔「そうですか…あの、眠気によく効くものが私のお部屋にあるのですが…どうですか?」

提督「ほんと?じゃあ、いただこうかな…」

鳳翔「はい、では行きましょうか」



822: ◆CaWSl75vrE 2016/03/04(金) 00:38:25.68 ID:oG0F7cYm0

ガチャ

鳳翔「どうぞ」

提督「あ、うん」

提督(鳳翔さんの部屋、いい匂い…)

鳳翔「掛けてください」

提督「うん」ストン

鳳翔「ふふ、誰かをお招きするなんて久しぶりです」ストン

提督「で…眠気に効くものって?」

鳳翔「ああ、そうでした…はい、どうぞ」ポンポン

提督「へ?」

鳳翔「眠い時は寝るのが一番です」

提督「…いや、そうだけど…」



823: ◆CaWSl75vrE 2016/03/04(金) 00:41:24.70 ID:oG0F7cYm0

鳳翔「不満ですか?」

提督「いや…お仕事があるから…」

鳳翔「大丈夫です、提督はいつも頑張っていますから。それに、少しくらい休まないと身体に毒ですよ?」

提督「でも…」

鳳翔「無理に働いて身体を壊せばみんな心配しますよ?」

提督「……じゃあ、ちょっとだけ…」スス

鳳翔「はい♪」

ポスン



824: ◆CaWSl75vrE 2016/03/04(金) 00:47:12.79 ID:oG0F7cYm0

鳳翔「提督、最近やつれているみたいですが…何かありましたか…?」

提督「……あのね、鳳翔さん…」

鳳翔「はい」

提督「実はね……イムヤや、早霜がね…ちょっと、依存してるっていうのかな…私がいないとすぐ精神が不安定になるみたいで…」

鳳翔「そうなんですか…」

提督「いつもくっついてくるから…心が休まらないっていうか…」

鳳翔「……大丈夫ですよ」ナデナデ

提督「ん…」

鳳翔「私のところに来れば、いつでもこうして休ませてあげますから…ね」

提督「……うん…」



825: ◆CaWSl75vrE 2016/03/04(金) 00:58:21.81 ID:oG0F7cYm0

提督「すぅ……」

鳳翔「……ふふ、可愛い寝顔…」ナデ

鳳翔「提督は、苦労されているのですね…」

鳳翔「でも、大丈夫です…」

鳳翔「あの子達が提督を苦しめるなら…私が、提督を救ってあげますから…」

鳳翔「ふふ……ふふふふ……」



826: ◆CaWSl75vrE 2016/03/04(金) 00:59:42.91 ID:oG0F7cYm0

メンヘラ特集おわり
イムヤの放置ボイスめっちゃ可愛い…



831: ◆CaWSl75vrE 2016/03/14(月) 11:42:10.60 ID:A1yXds4Z0


……………

………………

「……司令官さん、司令官さん」

ゆさゆさと、肩に触れる小さな感触が意識を覚醒させる。
寝惚け眼の視界に入ったのは、見知った電の顔だった。

「司令官さん、朝なのです」

「……んん、あぁ…ありがと…」

今だに眠気の抜けない瞼を擦りながら、身体を起こす。電が起こしに来たのは、たぶん目覚まし時計のリセットを忘れてたから。
人間が生み出した文明に感謝すると同時に、依存してしまっていることに奇妙な焦燥感も覚えてしまう。

「朝ご飯、できてますので…食堂で待ってるのです」

そう告げると、電はぱたぱたと忙しなく駆けていった。



832: ◆CaWSl75vrE 2016/03/14(月) 11:48:21.69 ID:A1yXds4Z0

「んっ、んんー………っはぁ……」

ぐぐーっと伸びをすると、全身の関節が音を立てて軋んだ。
……歳かな?いや、そんなことはない。

………ないはず。

そして、やっと気付いた。
のびのびとばんざいができる。

つまり、今日は手錠とかで拘束はされていない。
よかった。

まあ、されてたらされてたでなんとかしてただろうけど…寝起きに面倒ごとがあるかないかじゃ気持ちが違うよね。



833: ◆CaWSl75vrE 2016/03/14(月) 12:08:55.54 ID:A1yXds4Z0

電に言われた通り、食堂に行くために準備を始める。布団を退けて、少し乱れたパジャマを直して、スリッパに足を入れ……入れ………

「……………」

ない。つい昨日寝る前まであったはずなのに。
おおかた、敷波や羽黒あたりが持って行ったんでしょ。

「はぁ……」

しょうがないから、すぐ近くの戸棚を開けて予備のスリッパを出した。淡いピンクの生地と白い雪みたいなポンポンがなんとも可愛らしい。

「んしょ…」

お気に入り2号ちゃんを履いて自室を出る。
右、左、右。よし、今日は誰もいない。一直線にトイレへ。



835: ◆CaWSl75vrE 2016/03/14(月) 22:38:38.41 ID:A1yXds4Z0

個人的に、目を覚ますには冷たい水が一番効果的だと思う。もう何度目か分からない持論を頭の中で唱えながら顔を洗っていると、背中にずしり、と重みがのしかかった。
今日は誰だろう。額を上げて鏡を見ると、すぐ肩のあたりで小さな頭と金色の髪が揺れている。

「えへへ。おはよう、司令官」

首元に腕を回しながらにっこりと笑う皐月。可愛い。

「今日もかわいいね!」

「皐月の方がかわいいよ」

「むっ、司令官の方がかわいいもん!」

またいつも通りにくだらない冗談を言いながら、濡れた手と顔を柔らかいタオルで包む。
皐月を背負ったまま廊下を進んで、廊下へ向かう。

………途中、誰とも会わなかったのはたぶん、幸運だったと思う。



837: ◆CaWSl75vrE 2016/03/15(火) 09:20:36.88 ID:meqR6cLB0

食堂の大きい扉を開けると、温かい空気が肌に触れた。外との気温差に思わず少し身震いしてしまう。

「司令官さーん!」

声のする方を見ると、電が陽気に手を振っている。その前には卵焼きと味噌汁と、湯気を立てるご飯を乗せたトレーが置かれていた。漬け物がないのがまだ子供らしい。

「皐月、朝ご飯は食べた?」

「ううん、まだ」

「そっか、なら一緒に食べよう」

「うん」

席に着くまでに、食堂全体を見回す。

…………
埋まってる席は、4割くらい。いつもよりは多い、かな……



838: ◆CaWSl75vrE 2016/03/15(火) 09:33:03.87 ID:meqR6cLB0

ぎしりと音を立てる椅子に皐月を座らせ、続いて私も腰を下ろす。席に着くなり二つのコップに水を注いでくれる電はよくできた子だと思う。
皐月はすでに卵焼きと熱々のお米を頬張っている。

「電、暁たちは?」

「お姉ちゃんはもう食べたのです」

「そう…じゃあ電も寝坊したんだ?」

「う……は、はい…」

寝坊がバレたのが恥ずかしいのか、頬が赤みを帯び始める。現状、特にスケジュール通りに動かないといけないルールはない。
それでも決められた時間に起きて、行動するあたり習慣っていうものはすごいんだなと感じる。

………私?私は…ほら、前日の疲れがあったから…あはは…

「…今日はちょっとにぎやかなのです」

ぼそっと、呟いた言葉。電自身も、今の変化を痛感してるみたい。少しだけ嬉しそうで、寂しそうな電の表情に胸が痛む。



839: ◆CaWSl75vrE 2016/03/17(木) 14:53:28.27 ID:f4GZ+hjr0

出かけた言葉を飲み込むように、味噌汁に口を付ける。朝にぴったりの、優しい白味噌の味。具材を見るに、今日は間宮さんが作ったみたい。

「間宮さんのお味噌汁も美味しいですけど…たまには、司令官さんが作ったのも飲みたいのです」

照れくさそうに頬を掻きながら、要求を口にする電。そういえばそうだった。最近、ほとんど作ってなかったっけ…さすがに間宮さんと伊良湖ちゃんが代わりがわりだと飽きるよね。

「じゃあ、明日は私が作ろうかな」

「本当ですか?えへへ、嬉しいのです」

言葉通り、嬉しそうに笑う電。本音を言えば、私は鳳翔さんのご飯が食べたいんだけど…今は、無理……だよね…



840: ◆CaWSl75vrE 2016/03/17(木) 15:15:13.31 ID:f4GZ+hjr0

「ボクは鳳翔さんの味噌汁も飲みたいなあ」

皐月が、何気なく言った一言。本人に悪気はないんだろうけど、私には深く突き刺さる。

「…そうだね。また鳳翔さんが元気になったら、その時はお願いしようか」

「うん!」

こういう時、子供は素直だから心労がなくて済む。もしこの会話の相手が正規空母の誰かだったら………

………いや、やめよう。こんなことを考えてても、無駄でしかないんだ。もう、今さらどうにかできることじゃないから。

「鳳翔さん……まだ、目を覚まさないのですか…?」

「……………」

ずっと気にかけていたことを、ぽつりと電が呟いた。
私は、それに対して何も返す言葉を持っていない。



841: ◆CaWSl75vrE 2016/03/17(木) 15:48:45.62 ID:f4GZ+hjr0

「鳳翔さんだけじゃない……他の子だって…また、前みたいに……一体、いつになったら……」

窄むように、声が小さくなっていく。終いには、俯いたまま何も言わなくなってしまった。
電の言葉通りだ。先の深海棲艦に総攻撃を仕掛ける大規模作戦で、私たちの鎮守府は大きな被害を被った。
作戦そのものは人類の勝利という形で終わり、あとは深海棲艦の残党を撃滅するという名目で艦娘たちは世に残されている。

けど、その犠牲はあまりにも大きすぎた。幸いにも轟沈する艦娘はいなかったものの、今だ目を覚まさない子や、身体の一部や、視力、聴覚、感情すら失った子だっている。
戦争の爪痕……ショックに苦しんで、いっそのこと死を以ってこの苦痛から解放させてあげたいと思う程の………

………そう、この鎮守府は…終末を迎えようとしている。



843: ◆CaWSl75vrE 2016/03/19(土) 19:34:24.64 ID:rvYp1sXo0

「……すぐよくなるよ、きっと」

「…………はい」

傷付けまいと、絞るように出した言葉。それを聞く電の目は、私を捉えていなかった。

本当は、電にも私の真意は見えているのかもしれない。それとも、電自身がこの状況に絶望してしまっているのか…だとしたら、私はなんて罪深いんだろう…

「…………」

「…………」

二人の間に、重い沈黙が漂う。
けど、それだってもう苦ではなくなった。他の子がしてくることに比べたら、この程度可愛いものだから。



846: ◆CaWSl75vrE 2016/03/20(日) 03:57:22.78 ID:jio7htlc0

朝食を済ませたあと、私は二人と別れて執務室に戻ろうとしていた。なんとなく窓の外を眺めながら、廊下の角を曲がろうとしたとき。

「うぎっ!?」

「いたっ!?」

誰かに衝突する痛みと共に、その勢いのまま尻餅をついてしまう。正面に目をやると、自分と同じ体勢で座り込んでいる最上がいた。

「ぐっ、いたたた…」

「あ……だ、大丈夫!?」

全身に伝わるほどの衝撃で倒れ込んだのか、しきりに右手をさする最上。白いギブスが痛々しい。

「うう…問題ないよ…提督も、怪我はない?」

「う、うん…私はないけど…その、ごめんね…折れてるのにぶつかっちゃって…」

「いやいや、これくらい慣れっこさ。それより、手を貸してほしいんだけど…」

「あ、うん」

一瞬右手を差し出そうとして、最上がくすりと笑った。慌てて左手を出し直すと、小馬鹿にしたようにぷぷぷと息を漏らし始める。



847: ◆CaWSl75vrE 2016/03/20(日) 04:10:17.04 ID:jio7htlc0

「ふぅ…」

身体を起こし、ぱんぱんとぎこちない動きの左手で埃を払う。右手はまだ痛むのか、動かそうとすらしていない。

「あーあ、早く治ればいいのになあ」

ぼやきながら、恨めしそうに右手を睨む。戦艦の砲弾が直撃したのに原型を留めているのは、当たりどころがよかったかららしい。

「…すぐ治るよ、ちゃんと栄養摂って安静にしてれば」

「だよね、へへっ」

楽観的な表情で笑ってみせる最上。普段なら喜ばしいことのはずなのに、今の私には苦痛になってしまう。

最上の右腕は、もう完全に治ることはない。明石にそう告げられていた。
外傷よりも内部的なダメージが激しく、帰還後に優先して治療を受けられなかったせいか症状が深刻になってしまったのが原因だった。
私に明石と同じ技術があれば、この手だってまた動かせるようになったかもしれないのに。

私が正しい指示を出していたら、こんなことにはならなかったかもしれないのに。

私に勇気があれば………この事実を、最上に伝えられるのに…私は、私は…



849: ◆CaWSl75vrE 2016/03/23(水) 18:37:36.51 ID:acLVOtH50

「それじゃ、ボクはそろそろ行くね。また三隈のお見舞いも来てあげてよ」

最上の一言で、はっと現実に意識を引き戻された。慌てて返事をすると、軽く会釈をしてそのまま廊下を歩き始める。

「はぁ……」

小さくため息を吐いて、私も歩き出す。頭の中には、毎日のように消えない雑念が渦巻いていた。



850: ◆CaWSl75vrE 2016/03/23(水) 18:50:37.26 ID:acLVOtH50

「これでよし、と……」

本日分の執務を終え、椅子に背を預ける。時計の短針は10の数字を指していた。
件の作戦が終わってからというもの、私の仕事はほとんど時間を要するものではなくなっていた。することといえば、治療の経過や資材増減の推移を報告するくらいで前のような多忙っぷりが嘘のよう。
外の喧騒に耳をすませていると、誰かがドアをノックする音が聞こえる。

「はーい」

「あの、羽黒です…」

「……入っていいよ」

「はい、失礼します…」



851: ◆CaWSl75vrE 2016/03/23(水) 19:01:04.34 ID:acLVOtH50

「どうしたの?」

「あ、えと…艤装の選別、終わりました…」

「そっか…ありがとう、お疲れ様」

労いの言葉をかけて、リストを受け取る。誰かに任せたわけではなかったけど、羽黒が率先してやってくれてたみたい。
使える艤装は……2号砲、三式弾に……3号砲は、ダメか…

「…………」

…羽黒がちらちらとこちらを見てる。話題を切り出せないみたいで、胸のあたりで手を組んでしきりに指先を合わせてる。

「…羽黒?言いたいことがあるなら言っていいんだよ?」

なかなか言い出せない羽黒に、促すように声をかける。これはずっと前から変わらないなぁ…

「は、はい……その、司令官さん……」



852: ◆CaWSl75vrE 2016/03/23(水) 19:37:42.21 ID:acLVOtH50

「その……足、治ったみたいですね」

そう言いながら、ちらりと私の足元に目を向ける。色々あって怪我をした足首は、今は不自由なく歩ける程度には回復していた。

「あはは…まだ少し痛むけどね」

これ見よがしに足をくいくいと動かしてみる。やっぱり痛みは残るけど、それを見た羽黒は安心したように笑顔を浮かべた。

「………ごめんなさい、私のせいで」

笑ったのは一瞬で、すぐに申し訳なさそうな表情になると頭を下げる。自分のしたことで私の怪我が長引いたことに負い目を感じているのか、私と顔を合わせるたびにこうして謝ってくる。

「いいよいいよ、気にしないで…私も気にしてないからさ」

この言葉も何度目だろう。それほど羽黒は罪悪感に苛まれているってことなのかな…



854: ◆CaWSl75vrE 2016/03/23(水) 20:36:16.71 ID:acLVOtH50

羽黒が自分のせいだと言うのは、直接的な怪我の原因ではない。けど、それを引き延ばしたのは事実。
私の足は、一時期松葉杖をつかなければ歩けないほどに損傷が激しかった。その間、身の回りのことは羽黒をはじめ色んな子がしてくれた。

………問題は、それからだった。骨折が治りかけた頃、その旨を羽黒に報告すると羽黒は突然動揺し始め、そして…

松葉杖を、蹴り飛ばした。

当然倒れ込んだ私の怪我は悪化し、完治までにさらに時間を要することになった。
戦争が終わる以前からも、羽黒は私を心の拠り所としていた。動けない私の世話をしていたせいか、それがいつしか私に尽くすことが羽黒の心の安寧に変化していった。
その世話がもう必要ないと感づき、動揺した羽黒は精神を病んで私を傷付けた。

……これも、私の責任だ。悪いのは羽黒じゃない…全部、私がしたことだから…



860: ◆CaWSl75vrE 2016/03/25(金) 13:10:56.46 ID:8pAkrjG20

「でも…でも、違うんです……私、あの時はどうかしてて…司令官さんを傷付けたかったわけじゃ……」

………様子がおかしい。瞳は光を失い真っ黒に染まって、指先が震えている。

「う、うん…分かってるよ、羽黒が優しい子だって知ってるから…」

「本当なんです!!」

「ひっ」

唐突な怒号に、心臓が跳ねた。空を切るように胸の前で構えられた手は私の肩を捉え、強く指を食い込ませる。

「私は、私は……!ただ、司令官さんを助けてあげたかったのに!どうしてなんですか!?もう私はいらないんですか!!?」

涙を滲ませて必死に訴えかける羽黒。その細身のどこにこんな力があるのか、立てられた爪が激しく衣服にシワを作る。

「は、羽黒……ぐっ!?」

首にかかる羽黒の手。ぽろぽろと涙を零しながら笑う彼女の表情は、普段の優しい面影など欠片も残していない。



861: ◆CaWSl75vrE 2016/03/28(月) 17:52:50.99 ID:1p8PpCsx0

「ぐぅあ…!?」

呼吸ができない。尋常じゃない程の握力で首根を絞め上げられ、徐々に酸素を奪われていく。

このままじゃまずい……

なんとか押し退けようと手首を掴むが、力の抜けた腕ではとても敵う気配などない。酸欠で意識が朦朧としてくる。目が霞んで、指先の感覚がなくなって……このまま…本当に、羽黒に殺され……

「何をしてるんだ!」

「きゃあっ!?」

勢いよく飛び込んできた木曾が、羽黒を引き剥がした。大きくバランスを崩した彼女はそのまま尻もちをつき、呆然とへたり込んでいる。

「げほっ、げほっ…!はぁ、はぁ…」

「大丈夫か?」

揺れる私の身体を支え、介抱に回る木曾。その目はぎらぎらと琥珀色に輝いていた。



862: ◆CaWSl75vrE 2016/03/28(月) 18:06:14.53 ID:1p8PpCsx0

「………ふぅ…」

「落ち着いたか?」

羽黒が我に帰ったように逃げた後、私は木曾が淹れてくれたお茶でひと息ついていた。

「うん、ありがとう」

「いや、いいさ……お前が無事で何よりだ」

そう言いながら、心底安心したような表情を見せる。偶然にしろ私を助けられたのが嬉しいのかな。

「しかし…また、なんだな…」

「……うん」

憂うように呟く木曾。そう、羽黒のように癇癪を起こして暴力に走る艦娘は他にもいる。その都度傷付く私を心配してくれているのか、木曾はよく私の様子を見に来るようになった。

「………今度は、ちゃんと足も治りそうだな。よかったよ」

暗い話題を避けようと、前言を覆すように話を切り替える。手際よく湯呑みを片付ける横顔には苦笑が浮かんでいた。



863: ◆CaWSl75vrE 2016/03/28(月) 18:24:55.49 ID:1p8PpCsx0

「…木曾の目も早く治るといいね」

木曾の左目は軽い損傷を受けており、普段右目を隠していた眼帯を反転させて左目の治療に勤めていた。本人曰く、『見られるのは少し恥ずかしい』らしい。その違いは私には分からないが、あの金色の目は綺麗だなと思う。

「俺はいいんだ、それよりも早く元気になってもらいたい奴の方がたくさんいる」

「……うん」

「加賀さんだって……」

「…………」

「あ……」

やってしまった、というような顔をする木曾。少し慌てた様子を見せ、すぐに謝罪の言葉を口にする。なんだかそれが微笑ましくて、思わず声を漏らしてしまう。
頬を掻きながら笑う木曾に、私も安心しちゃった。やっぱり、木曾には笑っていてもらいたい。



864: ◆CaWSl75vrE 2016/03/28(月) 18:35:14.91 ID:1p8PpCsx0

「それじゃ、俺はそろそろ戻るよ」

「うん…あ、そうそう」

「?」

「多摩に深夜のつまみ食いはやめた方がいいって言っておいて」

「そんなことしてたのか………わかった、言い聞かせておく」

ぼやきながら、軽く手を振って部屋を出る。
再び沈黙が戻った空間は思考するのには適していた。

………………

…………

……

…木曾を安心させたくて笑ったわけじゃない。慌てる木曾が可笑しくて笑ったわけじゃない。
本当は、現実を見たくなかっただけだ。辛い事実から目を背けたくて、あの手の話題を避けただけだ。
全部、私の責任だから……みんなのことも、加賀のことも……けど……一人じゃ、重すぎる…



867: ◆CaWSl75vrE 2016/03/31(木) 03:16:37.91 ID:wMESmp+o0

「……あ、提督」

「お邪魔するね」

私は、なんとなく加賀の部屋に来ていた。なんとなくっていうか、ただ顔を見たくなっただけだけど。

「いえいえ、加賀さんも喜んでいますよ」

そう言いながら視線を落とす赤城。そこにはもう見慣れてしまった光景がある。

「そっか…今日の分はもう終わったの?」

「はい、先ほど済ませておきました」

「そう…ありがとう」

「いえ…少し席を外しますね」

「……うん」

空気を察してくれたのか、会釈をしてから部屋を後にする。赤城の優しさが心に沁みる。



868: ◆CaWSl75vrE 2016/03/31(木) 03:26:08.21 ID:wMESmp+o0

「加賀、おはよう」

小さく呟きながら、ベッドの隣に置かれた簡素な椅子に腰を下ろす。座り心地はとても良いとは言えない。

「……………」

解けた髪を撫でても、頬に触れても、その反応が返ってくることはない。目を閉じたまま、かすかな呼吸が指先を掠めるだけ。
こうしていると、ほんとに眠ってるみたいに見える。ちょっと長すぎるけど…いっぱい頑張ったもんね…私のために頑張ってくれたんだよね……

「加賀……」

握り締めるその左手に輝くのは、銀色の指輪。加賀は私が指輪を渡した相手だった。性能の強化じゃない、本物の愛を伝えたくて。
受け取ってくれた時は、珍しく泣いてたっけ……

………性能の強化、かぁ……これがなかったら、ほんとにあの時…沈んでたかもしれない…



869: ◆CaWSl75vrE 2016/03/31(木) 03:31:53.51 ID:wMESmp+o0

「瑞鶴、前へ!加賀は下がって!」

「私はまだ…!」

「ああもう、いいから下がっててよ!翔鶴姉、一緒に連れてって!」

「ええ!」

「……ごめんなさい」

「提督さんも、こんな近くに居たら危険よ!早く逃げて!」

「ダメ!ここじゃないと迅速な指揮ができない!」

「そんな小型の船じゃすぐに沈められるのよ!?私たちだけでもやれるから、早く!」

「っ……」



870: ◆CaWSl75vrE 2016/03/31(木) 03:36:24.46 ID:wMESmp+o0

「! 蒼龍、危ない!」

「え?うわっ!?」

「……!まずい、弾が逸れっ…」

「え………」

ドゴオォッ

「提督っ!!」

バシャァン

「……!!!」

「あっ、加賀さん!?駄目、危険です!加賀さん!!」

「許さない…!!」



871: ◆CaWSl75vrE 2016/03/31(木) 03:38:50.45 ID:wMESmp+o0

「ちょっ…!な、なにあれ…!?」

「構えも何もない…滅茶苦茶だ…」

「違う、そうじゃない!加賀さんの目…」

「え……あ、あれって…あの青い光って…」

「まさか…深海の…」





「うああああああああっ!!!」





872: ◆CaWSl75vrE 2016/03/31(木) 03:47:03.90 ID:wMESmp+o0

「あ……雨が…」

「加賀さん!撤退しますよ!もう艦載機は飛ばせません!」

「このっ…!よくも、提督を!!」

「あ…あれ、まずいよ、もうボロボロなのに…」

「加賀さん!」

「えっ!?ちょ、鳳翔さん!危ないですよ!」

「提督!提督っ!どこに…!」

「翔鶴姉!提督さんならきっと大丈夫だから、今はここから離脱を…」



ドォン

「がっ……」

「……!戦艦の砲撃をまともに…!」

「ごめん……なさ………い……」

「加賀さん!!」



873: ◆CaWSl75vrE 2016/03/31(木) 20:29:44.83 ID:wMESmp+o0



…………

…………

…………

「う……」

「あ……提督!赤城さん、提督が目を覚ましました!」

私が目覚めたのは、それから二日後のことだった。視界に入ったのは見慣れた私室の天井と、顔を覗き込む翔鶴と赤城。最初はぼーっとしてたけど、徐々に意識が覚醒してくる。

「提督、私です。分かりますか?」

「……翔、鶴…」

「………!よかった…!」

私の言葉を聞くと、よほど嬉しかったのか翔鶴は顔を覆って泣き出してしまった。
身体を起こすのに腕を動かそうとすると、

「い゛っ……!?」

全身に激痛が走る。特に右足は少しでも動かせばそれだけで強く痛む。



874: ◆CaWSl75vrE 2016/03/31(木) 22:28:19.87 ID:wMESmp+o0

「て、提督!まだ動いちゃダメです!」

慌てて身体を押し戻す赤城。首だけを傾け、改めて自分の腕を見ると血の滲んだ包帯が巻かれている。そこだけではなく、痛む場所のほとんどは医療用品の世話になっているのだろう。

「…私、どうなったの…?」

「はい、実は……」



聞いた話によると、私はあの後海に投げ出されたらしい。そこすらも覚えていないのは、船に飛んできた流れ弾が炸裂しその破片で強く頭を打ったからだった。
その時点で気を失い、続いて発射された魚雷が船底に命中し、弾けた鉄片が身体の至るところに突き刺さり更には右足も砕いたそうだ。
荒れる海に沈む私を助けたのは、あの艦隊に随伴していたイムヤだった。

「その……提督の足は、しばらくは動かせないと明石さんが…」

「……そっか……」



876: ◆CaWSl75vrE 2016/04/02(土) 01:00:27.16 ID:bDNxS2ba0

話を聞いているうちに、だんだんと記憶が戻ってくる。…そして、大切なことも思い出した。

「……加賀は?加賀はどうなったの!?」

捲したてる私に数巡戸惑う様子を見せたが、すぐに覚悟を決めた顔つきになる赤城。

「提督…落ち着いて聞いてください」





「え……」

加賀は私が気を失った後、怒りに駆られて自分の身も顧みずに突貫を始めた。飛行甲板に砲弾が直撃して艦載機が飛ばせなくなっても、空爆に曝されても、その手だけで深海棲艦を何体も葬った。
……けど、限界は近かった。ボロボロの状態で戦い続けた加賀はついに戦艦の砲撃を受け、倒れてしまう。その救助に向かった鳳翔さんも深刻な損害を負って、すぐに退避の指示が旗艦の赤城から出された。

加賀は失血に心停止が重なり、一時は生死の境を彷徨っていたそうだ。明石の尽力もあって、なんとか一命は取り留めた……けど…



877: ◆CaWSl75vrE 2016/04/02(土) 19:22:29.59 ID:bDNxS2ba0

「加賀さんは………次、いつ目覚めるか…」

「……え……?」

そう、加賀は昏睡状態に陥っていた。長い間呼吸をしていなかったせいで脳が深刻なダメージを負い、意識が戻らなくなってしまっている。

「嘘…でしょ…?」

「…………」

無言で首を振る赤城。計り知れない絶望と罪悪感が心を支配する。

「わ……私のせいで…加賀、が…」

「提督は悪くありません…私があのとき、すぐに退避の指示を出していれば…」

「う……っ、う、あ…」

罪の意識がぐるぐると頭の中を回る。

私が指揮のために逃げようとしなかったから
私がもっと早くに加賀を退避させていたら
私が自分の力を過信せずに離れた場所で指揮を執っていたら
私が
私が

私が



879: ◆CaWSl75vrE 2016/04/03(日) 02:54:04.24 ID:gNRlyM5m0

………そうだ、私があの時判断を誤っていたから…この現状があるんだ……

「うっ……ふっ、う、ぅ…」

分かっていても、こうして加賀の隣に来ると涙が溢れてしまう。もういつもみたいにお喋りできないんじゃないかって、本当は恨まれているんじゃないかって、自分の無力さを痛感させられるみたいで。

「加賀…私もみんなも、ずっと待ってるよ…もう起きてもいいんだよ…十分休んだでしょ…?」

「だから、早く……また、一緒に笑いたいよ……」

力強く握り締めた手は、微かに暖かみを帯びている。しかし、いくら涙を流してもその指先が動くことはなかった。



880: ◆CaWSl75vrE 2016/04/03(日) 03:04:51.11 ID:gNRlyM5m0

ーーーーー
ーーー

「ん……」

ゆっくりと意識が現実に戻っていく。
ああ…ちょっと、泣き疲れて寝ちゃってたのかな。時計は…お昼前、か…

「…あ…」

身体を起こすと、背中にかかっていた毛布がするするとずり落ちた。一度戻ってきた赤城がかけてくれてたのかな?

「…………」

相変わらず加賀は眠ったまま。これ以上ここにいても仕方ないし、そろそろ戻らないと鎮守府で何があるか分からない。
お腹は…まだ空いていないし、少し散歩でもしようかな。
そう思い立って、そっと加賀の手に触れてから部屋を後にする。



881: ◆CaWSl75vrE 2016/04/05(火) 17:22:28.08 ID:m7TzL7Yi0

「…………」

風が心地いい。悩んだ時、堤防に来る癖は今も抜けていない。キラキラと太陽の光を反射して輝く海はあの頃から変わらないままだ。
少し違うところがあるとすれば、波打ち際に鉄くずや艤装の残骸が流れ着いたり油が浮いているくらい。

……あれ、もしかして結構おかしい?感覚が麻痺してるのかな…

「よっと」

隣に座ったのは…隼鷹だ。私が堤防でこうしているとよく一緒に海を眺めに来る。

「なんか悩み事?」

「そうかも…」

「ふーん」

興味なさげにポケットに手を突っ込んで、煙草を一本取り出す。続けてマッチ箱を持ったかと思えば、

「悪い、火点けて」

箱を差し出して促す。怪訝な表情を返しながらもマッチを擦って、咥えた煙草に火を点ける。

「さんきゅ」

そう言うと、マッチ箱をしまって煙草の味を吟味し始めた。本人曰く、ライターは指が熱いらしい。



882: ◆CaWSl75vrE 2016/04/05(火) 17:42:11.35 ID:m7TzL7Yi0

見上げる空にゆっくりと白煙が立ち上る。小々波の音と煙、視覚的にも聴覚的にも心が安らいでいく。

「お酒は飲まないの?」

「うん」

「もう禁酒してから結構経つけどいいの?」

「ん、飛鷹が元気になったら一緒に飲む」

「そっか」

飛鷹が無気力になってからというもの、隼鷹はお酒をやめて代わりに煙草を吸い始めた。あまり美味しくはないけど飲まないよりはマシらしい。

「そん時は提督も付き合ってよ」

「うん、いいよ」

煙草を揺らしながら呟くだけで、それ以上のことは何もしてこない。ああ、落ち着いた大人のお姉さんって素晴らしい…そう実感したひと時だった。



883: ◆CaWSl75vrE 2016/04/05(火) 18:06:43.12 ID:m7TzL7Yi0

そんな落ち着いた振る舞いでも、その胸中は色々思うことがあるだろう。飛鷹のこと、これからのこと、そして自身の右腕のこと。
かつてそこにあったはずのものは残っておらず、だらんと垂れた袖口だけがある。なんとなく目を向けたのを後悔するほど痛々しいそれは、紛れもなくあの戦いが残した傷痕だった。

「…………」

「……ん?あ、これ?そんなに気になる?」

「え、あ…えっと…」

核心を突かれ、吃ってしまう。本音を言うのはやっぱり辛い。

「大丈夫だよ、思ったより不便なことって少ないからさ。周りの子も助けてくれるし」

「……うん」

「…そんな顔するなよー、元気出せって!な!」

左手を伸ばし、髪をかき上げるようにわしゃわしゃと頭を撫でる隼鷹。その表情には前みたいに優しさと余裕が宿っていた。



884: ◆CaWSl75vrE 2016/04/06(水) 17:57:50.65 ID:D/Grl0Hr0

「……ねえ、隼鷹」

「うん?」

「もしどこかで深海棲艦の誰かと対話できたら…こんなことにはならなかったのかな…」

「……さあなー」

視線を変えずに零す隼鷹。その声には諦めの色が混じっているような気がする。
…そう、最近になってよく思う。深海棲艦の中には、拙いとはいえ言葉を話す個体もいた。何らかの方法でその子にコンタクトを取れれば誰も傷付かずに和解で済んだかもしれない。

……いや、もう過ぎたことだ。考えても仕方ないことで悩み続けるのはよくない。

「………ふー」

まだ中ほどまで巻紙が残っている煙草を指で弾き、海に投げる。

「まだ吸えるよ?」

「あれは妖精さんたちの分」

「……そう」



888: ◆CaWSl75vrE 2016/04/15(金) 13:58:08.01 ID:lgweEHvjO

隼鷹と別れたあと、私は引き続き散歩をしていた。途中、物置の屋根で多摩が昼寝をしていたが気に留めるほどのことでもないだろう。
降りるための梯子だけを固定し、そのまま庭を後にする。

「………あっ」

そういえば、もう昼を過ぎるというのにまだ着替えていないことに気付いた。別にパジャマのままでも咎める子はいないけど、根が真面目な方に張っているせいかすごい違和感を覚えてしまう。
早足で私室に戻り、扉の前に来てもう一つのことに気付く。

「……あっ」

部屋の鍵が開いている。朝の記憶を辿ると、これは誰かに開けられたわけじゃなくてただ私が鍵を掛け忘れただけ。
音を立てないようにそーっとノブを捻り、部屋に入ると……

「すーーっ……はぁー……」

「……………」

衣服の波の中で深呼吸をしている大井がいた。主に下着を集めて。



891: ◆CaWSl75vrE 2016/04/15(金) 18:14:31.41 ID:As8/4YnCO

「………大井」

「はえぇっ!!??」

声をかけると身体を跳ねさせて驚いた。まさか、といった表情でこちらを見つめている。

「何してるの」

「く……訓練」

「んなわけあるか」

頭にかぶっていた桜色のブラと、手に持っていた同じ色のショーツを半ば強引に引っぺがす。

……これ、昨日着けてたやつだ。もしかしてそうと知っていながらこんな行為をしていた?だとしたら変態的すぎる。
…いや、大井に関しては前々からこうだったような。もう慣れっこかも。

「もう…私だからいいけど、他の子にこんなことしたら一瞬で嫌われるよ?」

「あっ、て、提督以外にはこんなことしませんよ?うふふ」

そういう問題じゃない。と言いながら額を小突く。てへへと笑いながら舌を出す彼女は見た目相応に可愛らしい。
いやほんと、こうしてると普通に可愛いのになんでこんな変態なんだろ。神は二物を与えないってほんとなのかな?



895: ◆CaWSl75vrE 2016/04/21(木) 15:21:11.59 ID:g2DczQn00

大井を部屋に返し、改めてベッドにかけてあった軍服を手に取る。
……少し汚れが染み付いてきてるかな?今度クリーニングに出そうっと…

「ふぅ」

いつものシャツを着て、厚手の軍服に袖を通すとなんだか身が引き締まるような思いになる。厳格というかなんというか、真っ黒だから真面目な印象に思えるんだろうか。
鏡の前で軍帽を整えて、きりっとした顔をしてみる。

「……………」

やっぱり、いつまで経っても母さんみたいな凛々しい顔にはなれないなぁ…
……それはそうと、堅苦しい雰囲気に見えるこの軍服だけど、私は割と気に入ってる。
別に着心地が良いとかそういうものでは決してないんだけど、肌を見せなくて済むし帽子で表情を隠せるから。小さい頃から母さんに「女性は肌を見せることを厭うもの」と教わったからか、人前で身体の半分以上が見えていると恥ずかしいと思ってしまう。

…まあ、現代だと時代遅れもいいとこなんだろうけど。



896: ◆CaWSl75vrE 2016/04/21(木) 15:30:38.22 ID:g2DczQn00

「さてと……」

着替えたはいいものの、やることがない。大本営からの書類はもう完成させた。まだお腹も微妙に空いていない。

「…………」

そうだ、明石のところに行こう。あそこは色んなものがあるから時間を潰すには適している。そう決めた私は、着替える直前に見つけた隠しカメラをクジラのぬいぐるみの前に置いて部屋を後にした。



897: ◆CaWSl75vrE 2016/04/21(木) 15:50:14.01 ID:g2DczQn00

「明石ー」

堤防付近の正面入口を無視して、裏口から入る。だってあの扉艦娘にしか開けられないぐらい重いもん。

………返事がない。この時間なら必ずいるはずなんだけど…

「明石ー?」

再度呼びかけても返事はない。不審に思いながらも工廠内を探してみると、何やら物々しい機械を弄る明石とそのそばで腰を下ろしている吹雪がいた。

「あ、司令官……」

「おはよう吹雪。何をしてるの?」

「えっと…」

吹雪が明石の方に目を向ける。明石が何か言うのかと思いきや、口元に手を当てたまま動かない。

「……………」

「……………」

「……………」

三人の間に沈黙が流れる。私は吹雪と顔を見合わせる。明石は艤装を見つめている。

なんだろうこれ。



898: ◆CaWSl75vrE 2016/04/23(土) 17:21:45.73 ID:ODB1n2JF0

しばらく明石の見ている艤装を眺めていると、突然大きな音を立てて艤装が跳ねた。同時に私と吹雪の身体も跳ねた。

「やった!成功です!」

「うぇ…?せ、成功って何が…?」

「ほら!見てください、これ!」

嬉しそうに言いながら艤装の接続部を指差す。
………一応そこに目を向けてみるけど、私にはなんのことやら分かりもしない。

「う、うん…よく分からないんだけど…」

「もっと近くで!ほら!」

「んん…?」

促されるままに顔を近付けてみる。
………あれ?この接続部、いつも見るのとは違うような…

「これって…」

「そうです!深海棲艦の艤装と私たちの艤装が結合するんですよ!」

結合するんですよ!って言われても。専門的なことは全く分からないし、これがどういう意味を成すかも分からない。私が首を傾げた方向に吹雪も首を傾げた。ぶつかった。

痛い。



899: ◆CaWSl75vrE 2016/04/23(土) 17:39:57.63 ID:ODB1n2JF0

「あー…つまり、どういうこと?」

頭をさすりながら尋ねる。今私たちの上には二つの疑問符が浮かんでいる。

「あれ?提督には説明してませんでしたっけ、深海棲艦の艤装の研究してること」

聞いてない聞いてない。どこのマッドサイエンティストですか?

「ちょっと前に艤装を拾い上げたんですけど…それがこれです」

「はあ」

明石が取り出したのは、タンブラーほどのサイズのカプセルだった。その中には透明な液体…おそらく海水と、青く発光する鉄片が浮かんでいる。

「この艤装…実は、再生するんです」

「再生ぃ?」

「はい、百聞は一見に如かずですね。やってみましょうか」

そう言うと明石はカプセルから艤装を取り出し、それを刃物で切り砕いた。そのナイフがどういう素材でできてるのかも気になるけど、まあそれは聞かないでおこう。



900: ◆CaWSl75vrE 2016/04/23(土) 17:55:33.19 ID:ODB1n2JF0

「「…………」」

食い入るように切り砕かれた破片を見る私と吹雪。しかし、その欠片にはなんの動きもない。

「……何も起こらないけど」

「この反応、結構時間がかかるんですよね。ちょうどお腹も空いてきましたし、先にお昼をいただきましょうか」

早くそれを言ってほしかったな。吹雪があからさまに呆れた顔をしてる。明石は無視してドレッシングルームに入ってるし。…一応タオルは出しておこうかな…顔が汚れだらけだったし…

「じゃあ、私たちは先に食堂に行ってようか」

「そうですね」

「立てる?」

「大丈夫ですよ」

松葉杖をついて吹雪が立ち上がる。やっぱり片足がないとバランスはとりづらいのかな。見ていられなくなって、腕の下から身体を通して肩を貸す。

「あ…ありがとうございます」

嬉しそうに笑う吹雪。気にしないで、元はと言えば私のせいだから。そう言うと吹雪が怒るのは知っていたから、相槌だけを返して歩き出す。

………松葉杖持ちながら人運ぶのってすごいやりづらい。つらい。



902: ◆CaWSl75vrE 2016/04/26(火) 17:25:04.00 ID:QD7CWy9V0

「むぐ、もぐっ…んぐぐ、はぐはぐ…」

「…………」

「…………」

目の前に並べられたいくつかの皿に箸を伸ばしては口の中にかき込み、ほとんど噛まずに飲み込んでは頬張ってを繰り返す。食事を楽しむというよりは、ただお腹に入れるという風な下品っぷりに私も吹雪も若干引いていた。

「……すごい食べっぷりだね」

皮肉交じりに言った言葉。たぶん、私の顔には苦笑が浮かんでいる。

「ほうなんれふよ!」

「うん…とりあえず飲み込んでから喋ろうね…」

指摘されてはっとしたのか、すぐに手元にあった水を飲んで口の中をすっきりとさせる。

「いやー、さすがに丸二日何も食べてないときついですねえ」

「二日!?二日も食べてなかったの!?」

衝撃の事実。どこのマッドサイエンティストですか?

「えへへ、ずっとあの艤装の研究をしてたもので」

そんなに熱中するほどのものなんだろうか。そういえばまだあの艤装の残骸について何も説明をしてもらっていない。落ち着いたみたいだし、聞けばなにか答えてくれるはず…



903: ◆CaWSl75vrE 2016/04/26(火) 17:40:18.07 ID:QD7CWy9V0

「で…明石、結局あの艤装で何ができるの?」

「あれ、まだ説明してませんでした?」

してないです。研究以外のことが頭から抜け落ちてるあたり、本当にマッドサイエンティストとしての才があるんじゃないかな。

「まあ…そうですね、分かりやすく言うと再生医療ができるんですよ」

「再生医療?」

「はい。あの艤装、実は深海棲艦の細胞を元にできているみたいで。おそらく艤装も身体の一部なんでしょう」

へー…現代科学で一番深海棲艦に詳しいのって明石なんじゃ…

「さっき見てもらった通り、私たちの艤装ともあの細胞は結合するんです」

「……つまり?」

「つまり、義手や義足を作ることができるんです。私たちのように何不自由なく、自由に動かせるものが」

「!!」



904: ◆CaWSl75vrE 2016/04/26(火) 17:52:23.70 ID:QD7CWy9V0

自然に笑みがこぼれた。ただひたすらに嬉しいという気持ちが心を満たして、箸を握る手に力が入る。
隣に座っていた吹雪も驚いたような表情をしたが、すぐに私を顔を見合わせるとにっこりと笑った。

「ただ、問題点があって…」

「え?」

「まだその技術が確立できていないんです…何分、私一人で調べていたことなので…」

申し訳なさそうに顔を伏せる明石。
ああ…そうだ、明石も、戦ってみんなの役に立てなかったことに引け目を感じているんだ。だから、せめてもの努力をしていたんだろう。

「…ううん、明石は頑張ってるよ。何か困ったことがあったら言って、私にできることならなんでもするから」

「じゃあ一発抱かせてくれません?」

なんてことを言うんだ。せっかくいい雰囲気になってたのにぶち壊しだよ。申し訳ないけど丁重にお断りさせていただきます。

「ちぇっ、残念…あー…寝てないから変なこと口走っちゃった」

……おそらく丸二日だろう。さっきから頻りに目をこすっているのはそういうことだったんだ。

「眠いなら寝なよ…工廠に布団あるでしょ」

「そうさせてもらいまーす…」

あくびをしながら明石が立ち上がる。
…明石も、頑張ってくれてたんだ。みんなのために…

「……明石!」

「はい?」

「…ありがとう」

「……はい」



908: ◆CaWSl75vrE 2016/04/30(土) 16:38:03.27 ID:61yvs06f0

そっか…治るかもしれないんだ…吹雪の足も、隼鷹の腕も…しっかりと技術が確立すれば、視力も聴力も戻るかもしれない。
……よし、忘れないうちに報告書をまとめておこう。そうと決まれば早速執務室に戻るしかない。

廊下を早足で駆けて、執務室の扉を開ける。浮かれ気分で身を乗り出した瞬間、横から飛び出してきた影に背後を取られてしまった。

「むぐっ!?」

驚きのあまり声を出そうと開いた口に布か何かを噛まされる。口元に当てられた手を引き剥がそうとしても、まるで動く気配はない。
後ろにいるのは、おそらく艤装を付けた艦娘の誰か。
そしてこの匂いは…明石が使っていた吸入性の麻酔薬が、確かこんな匂い…で……

誰かが…これを持ち出したんだ……だとしたら…だ、め………意識が………

「……ふふっ」



910: ◆CaWSl75vrE 2016/04/30(土) 17:22:27.73 ID:61yvs06f0

「……う…」

意識が覚醒すると同時に、軽い頭痛と吐き気に見舞われる。たぶん、自分の意思じゃない何かに脳が睡眠をもたらされたから。
そして、目を開けているのに視界は黒く塗り潰されたまま何も見えないのは目隠しか何かをされている。
相変わらず布は噛まされたままで、手も固く拘束されて何一つ自由が利かない。

「…………」

少し前の自分では信じられないだろうが、実はこういった状況には慣れっこだった。それが良いのか悪いのかは分からないけど。
私の腕時計には発信機が仕込まれていて、あるボタンを押し込むと大淀の受信機に信号が届く仕組みになっている。それが要救助の意味も兼ねてるから、誰かに監禁されても時間があれば助けに来られるということだった。
だから、指先までがっちりと固定されない限りはほとんど焦ることもない。もし仮にそうされても、私の姿が見えないと大淀の方から探知してくれるだろうけど。

体勢的に少し辛いけど、なんとか指は届く。ボタンは押し込んだし、あとは待っていれば大淀が助けに来てくれるだろう。あれからどれだけ経ったかは分からないけど、そう遠くない場所にいるはず。



911: ◆CaWSl75vrE 2016/04/30(土) 18:44:31.44 ID:61yvs06f0

ところで、ここはどこなんだろう…寝転ばされているのがベッドの上ということは分かるけど、それ以外の情報は何もない…

「んんっ!?」

唐突に内腿をなぞり上げられ、くぐもった声が漏れる。くすぐったがりな性分と、目隠しで触覚が鋭敏になっているのも相まって触れられただけでも反応してしまう。

「ふふ…」

「!」

この声……この、優しく落ち着かせてくれるような低い声は…

「提督…僕だ。初月だ」

やっぱり…!



914: ◆CaWSl75vrE 2016/05/01(日) 19:05:12.01 ID:DmOvFkHq0

「提督…一人で怖かっただろう?」

初月の息が首筋にかかる。どうやらかなり近い距離で話しているらしい。

「でも、もう大丈夫だからな…ここなら誰にも見つからない。僕がずっと守ってやる」

そう言って私を監禁しようとした子は何人かいたけど、結局全部失敗に終わったんだよね。もうそろそろ大淀も捜索を始めてると思うし。

「んんー」

「なんだ…そんなに怖かったのか?よしよし…」

違います。
初月が病んだ原因ってなんだっけ?
ああ、そうだ。前々から初月は私に対する庇護欲がすごかったというか、守ってやるって言ってくれてたんだよね。で、私が鳥海に連れ込まれそうになったのを見て以来こうなったというか…私が常に怯えてるように見えるみたい。
本当は全然そんなことないんだけど。

「んー」

「そうか…僕がそばにいるからな…大丈夫だ…」

あ、ダメだこれ。完全に意思疎通ができてないや。
うーん、どうしたものか…頭を撫でられるのは気持ちいいし、なんとなく安心はするんだけど…状況が状況だからなあ…



915: ◆CaWSl75vrE 2016/05/05(木) 16:18:00.73 ID:tLUSqp+f0

「…………」

というか、匿うだけなら拘束も目隠しも口封じも要らないんじゃ…さっきからなんだか手付きも怪しいし息も荒いし。

「ふ、ふふ……」

……なに、その不吉な笑い声は。いや、すでに私の身体を撫でる手が完全に情事の時にするそれに変わってるんだけど。

「それにしても…お前は本当に可愛いな…ふふふ…」

「んんっ…」

不意に手が胸に触れて、思わず声が漏れてしまった。
え?というかこの感触、もう脱がされてる?いつの間にボタンを外してたんだろう…全然気が付かなかった…

「可愛い…可愛いからな…少しくらい、いいだろう…」

全然理由になってないからそれ!とは言っても、それを伝える手段もなければ抵抗することもままならない。

あ、ちょっ、下も脱がされ……


………………

…………



917: ◆CaWSl75vrE 2016/05/05(木) 16:39:18.88 ID:tLUSqp+f0

「ふーっ……ふーっ……」

「はぁ…可愛かったぞ、提督…」

息苦しい。身体が熱い。少しってなんだろう…がっつりいかれた気がするんだけど…艦娘の体力ってすごい…
というか、口塞いでる状態でこんなことするって正気の沙汰じゃない…

……正気じゃなかった。

「提督!」

「!?」

あ、大淀の声だ。
……え?正面から突入してきたの?いや、大淀のことだから何か策があるはず。

「ボンバータックル!!」

「ぐあ!?」

タックルとか聞こえたんだけど?まさかの脳筋だった。

「提督、無事……あっ」

まあ、そういう反応しますよね…できればあまり見ないでもらいたいんだけど…



919: ◆CaWSl75vrE 2016/05/05(木) 20:15:17.05 ID:tLUSqp+f0

「……………」

無言で目隠しと口元の布と手首の拘束を解いてくれる。何か喋ってくれないと逆に気まずい。

「ぷはっ……はー、ありがとう、大淀…」

にこっと笑顔を返す大淀。ふとその横に目をやると、初月がのびている。

「いえ、気にしないでください。立てますか?」

……ダメだ。まだ腰が抜けて足に力が入らない。結構激しくされたからかな…

「そうですか…では、失礼しまして」

膝の下と、背中に手を回し、ぐいっと持ち上げられる。私も落ちないように首の後ろに手を回す。ちょっと恥ずかしいけど、割と慣れたもの。
さすがにあの状態を見られるのは慣れないけど。

「無事みたいでよかったです」

「うん…ところで、ここ…どこ?」

「鎮守府の地下室ですよ」

「そっか…」

私だって大人だし、軽くはないはずなのにやすやすと運べるのは身体のどこかに艤装を付けているからだろう。
…ゆらゆら揺れるのがゆりかごみたいで気持ちいい。抜けきらない脱力感と一緒に、眠気も出てきた…ちょっとだけ寝ようかな…



920: ◆CaWSl75vrE 2016/05/10(火) 02:52:03.34 ID:CVLTRnoV0

ーーーーー
ーーー

その日は、風ひとつない静かな夜だった。
窓辺から雲のない空を見上げると、ぶちまけられた黒いインクに無数の宝石が散りばめられている───なんて、今時詩人でもこんな詩は考えないかな。

加賀の様子を見て、大淀に助けられて、(そこはいつも通りじゃないけど) お風呂を済ませて。それを終えれば寝るだけの単調な生活。

小気味良いリズムで、ノックが刻まれた。返事をすると、廊下の光を遮るように萩風が部屋に入ってくる。

「…………」

ドアノブを後ろ手に、無言で立ち尽くす萩風。けど、言葉はなくてもその目的は分かっていた。
窓際に置かれた椅子から立ち、ベッドに腰を下ろす。そのまま視線をやると、萩風もこちらに近付いてきた。

「司令……」

肩を押され、身体が後方へ仰け反る。抵抗はしない。部屋に入った時から顔が赤かったのは、つまり、そういうことだろう。



921: ◆CaWSl75vrE 2016/05/10(火) 03:12:44.16 ID:CVLTRnoV0

頭と背中に柔らかいものが触れ、視界は見慣れた天井をとらえる。正面からも、感触は違えど同じ柔らかいものが乗せられた。

「…………」

ふわり、と垂れ落ちた髪の匂いが鼻をくすぐる。女の子らしい優しくて暖かい香りと、ミルクのようなシャンプーの匂い。全身を包むように広がるそれは、より近くに寄せられた肌も相まって安心感を与えてくれるものだった。

その形を崩して、穂先を落としたようにサイドテールが私の髪と混ざり合う。束ねられた一房の髪は………そう、私の最愛の人のそれを思わせて。どくんと高鳴る胸と、ボタンを外される音が妙に騒がしく感じた。

萩風は夜が怖くて、私に安心を求めてきた。彼女だけではなく、他にも心の安寧を求めて私の身体を欲しがる子はいる。
私は甘んじてそれを受け入れて───

………いや、違う。素直に気持ちを吐き出すなら、それは私とて同じことだった。こうして誰かに抱いてもらわない夜は、無機質な冷たさと静寂だけがその身を貫いて、夢の中でみんなが私を責め続けて。


………ただ自責の念から逃れたくて。今日も私は、一方通行な愛を受け容れる。



924: ◆CaWSl75vrE 2016/05/12(木) 02:13:32.97 ID:VRo895k20

〜〜〜

「…………」

……暑い。

「ねえ、嵐」

「いやだ」

「いやだって言っても、もう1時間もこのままだし」

「いやだ」

「はぁ…」

背後から抱き締める嵐の熱が私の身体にも伝わってくる。少なくとも額に汗が滲むくらいには暑い。
どうやら、昨日萩風が私を抱いていたことに気付いたみたい。というのも、朝方部屋を抜け出した萩風が嵐に目撃されてたからなんだけど。もう少し警戒心を持ってください、お願いします。

そしてヤキモチを妬いた嵐が今こうして談話室で私を捕まえている、と。意味合いは違えど抱かれていることには変わりないし、これで五分五分…なのかな?それよりも、周りの視線が痛い。
……主に早霜とか…金剛に至っては露骨に爪を噛んでるし。



925: ◆CaWSl75vrE 2016/05/13(金) 18:10:57.29 ID:ehizufV+0

「司令の髪、いい匂いだなー」

そう言いながら私の髪に顔を埋める嵐。嵐は今の鎮守府でも比較的危険性のない子というか、戦いが終わる前と同じような安定性を持っていた。
だからこうしたスキンシップも含みのあるものではなくて、単純に彼女の好意からくる行動なんだろう。

……とはいえ、こうして人前で抱き締めるような体勢になるのは周りの目がこわい。だってほら、金剛なんてもう露骨に身体揺すってるし。早霜なんて目力だけで人殺せそうなぐらいこっちを見てるし。
嵐が私と同じ立場で働いていたらこんな状況になったのでは…

「へへへ、サラサラで綺麗だ」

髪を触られるのは気持ちいいけど、それは恋人同士がすることだから。私は嫌じゃないけど、周りの方々がお怒りになりますから。気付いてください嵐さん、お願いします。



926: ◆CaWSl75vrE 2016/05/19(木) 15:45:27.06 ID:X8m5afJgO

「はぁ…」

胃が痛い…
満足した嵐がどこかに行った後、ずっとそれを遠巻きに見ていた早霜に無言で詰め寄られるし、摩耶はデコピンをして去っていったし、敷波は目も合わせてくれないし。
この埋め合わせをしなきゃいけないと考えると、胃が痛い。そろそろ胃に穴が空いてもおかしくないんじゃないかな、私。
人がたくさんいる場所でああいう過剰なスキンシップは、こういう事態を招くからできるだけしないようにしてるんだけど向こうからしてくる場合、私の意思は関係ない。

本能的にそれを避けたくなったのか、ふらふらとした私の足は工廠へと向かっていた。



927: ◆CaWSl75vrE 2016/05/19(木) 16:12:07.90 ID:X8m5afJgO

「……………」

音を立てないように裏口の戸を開ける。
足音を消して少し歩くとーーー

「zzz……」

やっぱり。明石、まだ寝てた。
鉄骨とフックに引っかけたハンモックの上でぐっすりだ。……工廠で生活するのって思いの外快適なのでは?年中暖かいし、静かだし。
いや、まあ、それはいいとしてなんで下着姿で寝てるんだろう?女の子としてみっともないったらありゃしない。
パジャマは買ってあげてるのに着ないってことは、本人の好みによるところが大きいのかな。全裸で寝るって人もいるみたいだし、私がどうこう言う問題ではないけど…とりあえず、風邪だけ引かないように毛布はかけておいてあげよう。

「これでよし、と…」

昨日からずっと寝てるんだろうか。丸二日寝ていなかったし、仕方ないといえば仕方ないか。



928: ◆CaWSl75vrE 2016/05/19(木) 18:09:43.39 ID:JxgzheeV0

明石のそばを抜けて、ドックの方に向かうと壁にもたれかかる吹雪がいた。
見上げた目線の先には特に目移りするものはなく、ただぼーっとしているだけらしい。
一人で暇を潰すのも忍びないし、近付いてみると足音に反応してこちらに気付いたようだ。

「あ、司令官…」

「おはよう、吹雪」

「はい、おはようございます」

相変わらず礼儀正しい子だ。けど、その挨拶に昔のような元気は込もっていない。

「こんなところでどうしたの?」

「あ、いえ…ただ、なんとなくここが落ち着くので…」

質問されたことに、困惑するようなたどたどしい口調だった。私もどうしてここに来たのかと聞かれれば、同じような答えをしたと思う。



929: ◆CaWSl75vrE 2016/05/19(木) 19:45:15.01 ID:JxgzheeV0

「そっか…」

独り言のように呟きながら、私も壁に背を預ける。

「…さっき、落ち着くって言いましたね」

「ん?うん」

「その…司令官が隣にいると、もっと落ち着くというか…安心します」

「……そっか」

嬉しいことを言ってくれる。そばにいるだけで安心してくれるなら、手間がかからなくていいことだ。

「…昨日、明石さんが言ってたじゃないですか。私の足が治るかもしれないって」

「うん」



930: ◆CaWSl75vrE 2016/05/19(木) 19:50:42.48 ID:JxgzheeV0

「また、司令官と一緒に歩けるって…そう考えると、なんだか嬉しくなっちゃって…」

てへへ、と笑う吹雪。まだあどけなさが抜け切らない表情と、付け根から先のない足が現実との対比のように見えてーーー

「それは嬉しいんですけど…やっぱり、失敗する可能性も…ある、かもしれないじゃないですか」

「うん…」

「もし…もし、ですよ?私の足が治らなかったら…」

吹雪は、俯きながら呟いた。髪が降りて目元は見えないが、声のトーンが明らかに落ちている。

「司令官は……責任を取ってくれますか…?」

「………!」

そう言いながら向けられた瞳に、光はなかった。



933: ◆CaWSl75vrE 2016/05/22(日) 16:54:33.92 ID:dQ0p1KFb0

いつの間にか正面に回った吹雪は壁に手を付き、逃げ道を塞ぐ。いや、本当は押し退けようとすれば簡単にできるんだけど。できるはずなのに、私を見上げる瞳は真っ黒な光で吸い込むように視線を捉えて離さない。
その中に渦巻くいくつもの負の感情に縛り付けられ、見えない拘束具でもあるかのように身動き一つ取れなくなってしまう。

「私……この戦争が終わったら…いっぱいお洒落して、美味しいものを食べて、楽しいことをして…たくさん友達を作って、街の女の子と同じように遊びたかったのに…」

始まった吹雪の独白。私は言葉も発せずにただそれを聴いている。

「私から全部奪ったのは、司令官なんですよ?」

それは私の心に深く突き刺さった。
そうだ。いくら艦娘と言えど、戦いが終われば普通の女の子と何ら変わりない。ましてや吹雪なんて人間の年齢に換算すればせいぜい中学生程度の年代だろう。私はそんな子供の将来を奪ってしまったんだ。

「私にはもう…司令官しかいないんですよ…?」

吹雪の細い腕が、首の裏に回される。少し背伸びをしているみたいで、うなじには等身大の体重がかかっていた。

「受け容れて……くれますよね……」

唇が近付いてくる。
ああ、そういうことか。私はそれを

───拒めなかった。



936: ◆CaWSl75vrE 2016/05/26(木) 00:57:13.13 ID:MobARvIw0

唇が触れた瞬間、するりと温かい舌が入り込んでくる。…どこでこんなこと覚えたんだろう。最近の子はませてるなぁ…

「んっ…ふ…」

少し苦しそうに息を継いだあと、またうっとりとした表情で唇を押し付けてくる。首元に回されていた手はいつの間にか肩を掴み、逃がさないようにぎゅっと指先に力を込めている。

ああ、あの真面目な吹雪がこんなことをするまでに堕ちてしまった。こうして肉欲に溺れるのは吹雪だけじゃない。何を頼りにして、何を心の安寧にすればいいのか分からない子がたくさんいる。
その理由は言わずもがな、指示すべきである私が迷っているからだろう。………迷ってる?何を自惚れたことを。
私はすでに追い詰められた。考えることを捨てて、この辛い現実から逃れようとしているだけの無責任な臆病者だ。そんなことをすれば、今まで戦うことしかできなかったこの子たちはどうなる?これから先どうあの子たちを導いていけばいい?
この責任は私一人には重すぎる。だからこうして歪んだ形で心を触れ合わせてきても、それを逃げ道にしてしまうのだろう。
どこに行ったってどうせこの状況をどうにかできるはずなんてないのに。……あはは、自己嫌悪でここまで気持ち悪くなれるなんて。吹雪がいなかったらすぐにでも吐いてたかも。



937: ◆CaWSl75vrE 2016/05/26(木) 00:58:11.75 ID:MobARvIw0

「お盛んなのはいいですけど、よそでやってくれませんかねえ」

「!」

吹雪が顔を離すと同時に、二人同じ方を向いた。そこにはあくびをしながらティーカップを準備する明石がいた。

「ごっ、ごめんなさい」

みるみるうちに頬を染める吹雪。さすがに見られていたのは恥ずかしかったらしく、気まずそうにこちらをちらちら見ている。

「ひゃっ…」

無言で頭に手を乗せると胸の前で指を組んだまま動かなくなってしまった。よく見ると目に光が戻っているけど、そういうトリガーでもあるのかな。

「まあいいですけど…ほら、終わったんなら出て行ってくださいよ。しっしっ」

どうやら寝覚めの機嫌はあまり良くないらしく、手を折ってそれをぱたぱたさせている。

「…行こうか」

「は、はい…」



938: ◆CaWSl75vrE 2016/05/26(木) 01:08:01.75 ID:MobARvIw0

「……あの、司令官」

廊下を歩いている間、ずっと黙りこくっていた吹雪がやっと口を開いた。

「本当に、すみませんでした…」

深々と頭を下げて謝る吹雪。その声は暗く沈んでいて、いつものような元気は感じられない。

「いいよ、慣れたことだから」

「慣れた!?そ、それって…」

「吹雪だけじゃないよ。他の子もしてくる」

「そ、そうなんですか…それは…むう……」

……なぜ頬を膨らませているのか。いや、まあ、吹雪の気持ちに気付いていないわけじゃないけど、一過性のものと信じたい。

「…やっぱり、私だけじゃなかったんですね…みんな司令官のことが好きだから…」

「…………」

「……ごめんなさい、私…ちょっと、迷ってて…司令官ならこの気持ちを受け止めてくれるんじゃないかって…っ!」

罪悪感に耐え切れなくなったのか、吹雪は走り去ってしまった。私はその影を追おうともしない。

迷ってた、ね。はは、よくも私の前でそんなことが言えたね。子供はいいなあ、頼れる存在がいて。私なんてもう袋小路にたどり着いたのに…まだ夢を見てるなんて、馬鹿みたい…

……ああ、どうしてこんなこと考えてしまうの?吹雪だって大切な仲間なのに、ずっと私のために戦ってくれてたのに。蔑むような気持ちになるなんて。
私、最低の人間だ。いっそのこと、死ねば楽になる?



940: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/27(金) 01:04:05.27 ID:vvymOnj20

流石に走り去るのは厳しいんじゃないかなあ



941: ◆CaWSl75vrE 2016/05/27(金) 01:49:52.62 ID:4BiltDUT0

ほんとだ、なんで走り去るって書いたんですかね
たぶん頭がおかしくなってたので脳内補完してください(投げやり)



942: ◆CaWSl75vrE 2016/05/28(土) 15:30:00.58 ID:eJ3oJnXD0

「……………」

その日は眩しいほどの快晴だった。カーテンの隙間から漏れる光がそれを物語っている。
目なんてとっくに覚めているのに、身体を起こす気力すら湧いてこない。誰かと一緒に過ごさない夜はいつもこうだ。自己嫌悪と罪悪感がひたすら自分の中をぐるぐる回って、それを逃がす場所なんてどこにもなくて。ここ最近はずっとこんな調子だ…吹雪に言われたことが頭の中で何度も再生されて…そろそろおかしくなりそう。

………もう、いいよね。もう疲れた…
後のことは全部大淀や明石に任せよう。私がいなくなっても誰も悲しまないはずだ。「提督は悪くない」なんて言ってもどうせ心の中では私を恨んでるだろうし、私が死ねばせいせいするに違いない。
きっとそうだ、なんでこんな簡単なことに気が付かなかったんだろう?こんな苦しい世界で生き続ける理由なんてどこにあったの?さっさと楽になれば罪滅ぼしなんて考えなくて済んだのにね、私ってほんと馬鹿。



944: ◆CaWSl75vrE 2016/05/28(土) 15:50:32.05 ID:eJ3oJnXD0

一番下の引き出しを開ければ出てくるのは護身用の拳銃だった。今まで使ったことはないけど…まさか、最初の犠牲者が私になるとは思いもしなかった。銃口をこめかみに当てて、引き金に指を添えて、あとはこれを引くだけ。
…この口径なら即死のはず。死体の損傷は激しくなるだろうけど…まあ、死んだ後のことなんて考えてもしょうがないか。

「…………っ」

あと少しで楽になれるはずなのに指が動かない。やり残したこと?そんなものはない。後悔?さっき諦めはついたはずだ。死ねば楽になる。あと少しなんだ。動け、動け、動け



動け動け動け動け動け動け動け──────




「おーい、いつまで寝て………なっ…!?」



───



945: ◆CaWSl75vrE 2016/05/28(土) 16:21:31.00 ID:eJ3oJnXD0

──────

我に返ったのは、激しい銃声の後だった。
……あれ?どうして銃声が聞こえたんだろう?おかしいな、死んだあとに音なんて聞こえないものだと思ってたけど。

「っ……馬鹿野郎!!何を考えてるんだ!!」

耳を劈くような怒号に思わず身体が跳ねる。見開かれた視界には木曾がいた。
え?どうして?状況が飲み込めない。締め付けられる手を見ると、硝煙の立ち上る拳銃とその先の天井に弾痕が残っている。
……ああ、そういうことね。やっと理解が追いついた。偶然部屋に入ってきた木曾が私を見て止めに入ったんだろう。あの弾痕はその時の反動でできたものだ。

「……離して」

「離すわけないだろ!お前を死なせてたまるか!」

「…まあ落ち着いてよ」

「落ち着くのはお前だ!まず話をしろ!」

私は落ち着いてるんだけどね。しょうがない、ここは話を聞いておこう。もし銃を取り上げられても死ぬ手段なんていくらでもある。



947: ◆CaWSl75vrE 2016/05/29(日) 17:32:05.52 ID:whJult4L0

せっかく死ぬには良い日だったのに、嫌な気分だ。苛立ちすら感じるよ。まあ、私より明確にイライラしてるのは目の前の子なんだけど…

「……死ぬつもりだったろ」

「……………」

「答えろ」

態度は努めて冷静だけど、声に怒気が孕まれているよくわかる。はは、相変わらず怒りを抑えるのが下手だなぁ。

「……そうだよ、もう少しで死ねるところだったのに。どうして邪魔をするの?」

自分でも予期しないくらい煽るような言い方になった。当然怒りは増すだろうし、歯を軋る音も聞こえた。

部屋に乾いた音が響く。

「つっ……」

「もういっぺん同じこと言ってみろ…次は本気だからな…」

………ふっ、頬を叩かれるのは予想外だったかな。手のひらの当たった箇所がヒリヒリする。



948: ◆CaWSl75vrE 2016/05/29(日) 17:53:22.13 ID:whJult4L0

「死ぬなんて軽々しく言うな…みんなが悲しむだろ…」

…悲しむ?何を言ってるの、この子は?人の苦労も知らないで自分の都合を押し付けて。知ったような口を聞いて。そういうのって…すごく、イライラする。

「……なら…」

「………?」

「ならどうしろって言うの!?私のことなんて何も分かってないくせに!!」

心底驚いたような顔をする木曾。普段物静かな私が声を荒げたのが相当珍しかったのか、掴みかかられた手を振りほどくことなく呆然としている。
ーーーあれ、私、どうしてこんなことしてるの?私を想っての行動をしてくれているはずなのに、なんで?…自分でもよく分からない。意識だけ別の場所にあるみたいに勝手に身体が、口が動く。



949: ◆CaWSl75vrE 2016/05/29(日) 18:14:36.91 ID:whJult4L0

「罪滅ぼしのために生きればいいの?それともまだ私にあなたたちの面倒を見ろって言うの!?恋人も何もかも失った世界でこれ以上私に何を求めるの!?贖罪なんて、もう…!」

「お前……」

「もう……私、分からないよ……」

「…………」

気付けば、頬を温かいものが伝っていた。憎しみとか怒りとか罪悪感とか、暗い感情が混ぜこぜになって、さっきまで怒ってたはずなのに今度は泣いている。自分でもよく分からない。

「うっ…うっ、うあぁ…」

木曾は、嗚咽に震える肩をただ何も言わずに抱いてくれた。やめて、私はそんなことをしてもらう資格なんてない。あんなにひどいことを言ったのに優しくされる資格なんて。

「…大丈夫だ…お前は一人じゃない」

ありふれた言葉なのに、こんな時に掛けられるとまた涙が溢れてくる。背中をさすってくれるのがなんだかやけに安心感を覚えて、涙は止まらないのにすごく落ち着いてくる。



950: ◆CaWSl75vrE 2016/05/29(日) 19:46:32.37 ID:whJult4L0

「……落ち着いたか?」

「………うん…」

「…なら、少し話を聞いてくれ」

「……うん」

「お前は俺たちの面倒がどうだ、と言ってたが…確かに俺たちは艦娘という兵器で、外の世界で生きる術なんて何もわからない」

「…………」

「だから…面倒を見ろとは言わない、お前は道を示してくれるだけでいい。もうみんな子供じゃないさ、手を取り合って生きることだってできる」

「……うん」

「あと、何もかも全部お前が抱え込む必要はない…辛い時は誰かを頼れ。お前に頼られて困るやつなんていないからな」

「………うん」



951: ◆CaWSl75vrE 2016/05/29(日) 19:49:18.70 ID:whJult4L0

「最後にひとつ」

「…………?」

「お前が背負うべきなのは、罪なんかじゃない。俺たちの未来だ」

「あ……」

「お前が死ねばみんなも死ぬ。悲しみで自殺するやつもいれば、必死に生きようとして苦しんで野垂れ死ぬやつもいるだろうな」

「うん…」

「道連れも同然だからな。そんなの悲しすぎるだろ?」

「………うん」

「だから…そうならないように、生きてくれ。今は希望が見えなくても、諦めなければ必ず光は見えてくる。先の大戦だって、お前がいなきゃ俺たちも諦めてたかもしれないからな」

「……………」

「お前は…ここにいなきゃいけないんだ。俺たちにはお前が必要だ。だから、生きてくれ」

「………うん」



953: ◆CaWSl75vrE 2016/05/31(火) 20:37:50.88 ID:htlZNwel0

「未来……かぁ…」

そうだ。私、いつの間にか全部一人で抱え込んで、誰かに頼るのを忘れてたんだ。あの子たちだってもう子供じゃない。今を生きようと精いっぱい頑張ってる…少しだけでもいい、私が道を示してあげなきゃ。
あの張り手で目が覚めたのかな、さっきまで沈んでた気分が一気に楽になった気がする。

「…私…もう少しだけ、頑張ってみようかな…」

「……ね、加賀…」

独り言じゃなく、言い聞かせるように呟きながら手を握る。……暖かい。勇気をくれるような温もりだ。本当は言葉も一緒に欲しかったけど…ううん、今は贅沢を言っちゃ駄目。ゆっくりでもいいから、自分にできることをするんだ。

「……また来るね」

頬を撫でて、席を立つ。ここに来るときはいつも泣いていて、部屋を出る時も決して明るい気持ちになれなかったのになんだか今は不思議とやる気が湧いてきてる。…よし、頑張ろう。



954: ◆CaWSl75vrE 2016/05/31(火) 20:40:25.75 ID:htlZNwel0

ーーーその時。
部屋には私と加賀の二人しかいないはずなのに、背後から微かに布の擦れる音が聞こえた。……まさか。そんなこと、あるはずがない。いや、でも、もしかしたら?
諦めと希望を半分ずつに振り返ると、

「────」

「……………」




「……え………?」


その眼は、確かに開いていた。
光る琥珀色が、確かに私を見つめていた。
もう、開くことのないと思っていた眼が、最愛の人が、私の視線を捉えていた。

「……てい…と……」

「っっ」

思考より先に身体が動く。たぶん秒もなかったと思う、気付けばその肩を抱き締めていた。



955: ◆CaWSl75vrE 2016/05/31(火) 20:43:29.68 ID:htlZNwel0

「加賀…!加賀ぁっ…!」

「………痛いわ…」

怪我してるのなんて分かってる。分かってるけど、力いっぱい抱き締めずにはいられなかった。

「よかったあぁぁ…もう、目覚めないんじゃないかって…ずっと心配してたんだからぁ……!」

「……ごめんなさい…」

弱々しいけど、握られた手には力がこもっていた。ずっと…ずっと、求めていたこの感触…
……ああ、なんて言えばいいんだろう。心に花が咲いたような

いや、そんなものじゃ表現しきれない。とにかく…こう、嬉しい気持ちがいっぱいで…もうたまらなくて…

あ…

せっかく泣いてなかったのに、涙が……
…ううん、これで最後。だから…今は泣いてていいよね…



956: ◆CaWSl75vrE 2016/05/31(火) 22:24:16.20 ID:htlZNwel0

「加賀、覚えてる?自分がどうなったのか」

「……私、確か…」

「私が海に落ちたあと、怒り狂って敵に突っ込んで…ボロボロになって、二ヶ月以上眠ってたんだよ」

「…ああ…思い出してきたわ…」

「そっか…ゆっくりでいいからね」

「ええ……」

「……え?二ヶ月?」

「ん?うん」

「…戦争はどうなったの?深海棲艦は…」

「終わったよ。私たちの勝ち」

「………そう…なら、よかった…」



957: ◆CaWSl75vrE 2016/05/31(火) 22:30:37.00 ID:htlZNwel0

「終わった…のね…」

「うん…もう、戦わなくていいんだよ」

「………私、あなたを見ていたの」

「え?」

「声の届かないどこかで…私が眠っている時も、そばに居てくれたのも…暗闇の中で見ていたわ」

「…………」

「……けど…あなた、ずっと泣いてた…」

「あ…」

「もしかしたら…あなたが笑ってくれるのを、待っていたのかもしれないわ…」

「……うん…遅くなって、ごめんね…」

「…私も、ずっと一人で待たせてしまって…ごめんなさい…」



958: ◆CaWSl75vrE 2016/05/31(火) 22:35:05.47 ID:htlZNwel0

「……ねえ、加賀」

「なに?」

「私ね…今日、自殺しようとしたの」

「…………」

「でも、死ななくてよかった…また、こうして会えたから…」

「……ええ…これからは私も一緒にいるわ…」

「…うん。まずはリハビリからね」

「…それより先に、あなたの手料理が食べたいわ…」

「あはは…相変わらずだね…」


「提督、そろそろお昼に…」

「あっ、赤城!聞いて!」

「………えっ!?か、加賀さんが!?」

「〜〜………」

「〜〜〜〜」



959: ◆CaWSl75vrE 2016/05/31(火) 22:48:07.43 ID:htlZNwel0

〜〜〜

「……あ、いたいた」

「ん?おう、どうした?」

「あー…なんていうか、その…」

「なんだ、水くさいな。はっきり言えよ」

「……ありがとうね」

「何がだ?」

「いや、木曾がいなかったら私も加賀もどうなってたことかって思って…」

「まあ、手足が動かせるようになったら後追い自殺だったろうな」

「う…」

「……よかったよ、お前が元気になったみたいで」

「……うん。あのね、木曾」

「ん?なん……っ!?」

「………これくらいしかできないけど…お礼ね」

「っは…お、お前なあ…」

「ふふふ、それじゃ、またね」



「はぁ……そんなことされたら、諦めきれなくなるだろうが…」



960: ◆CaWSl75vrE 2016/06/01(水) 19:57:27.88 ID:hYFyHdB50

それから数週間後………

「………というわけで、尋常じゃないほどの痛みを伴うんですよ」

「そうなんだ…」

私は明石の再生医療の説明に立ち会っていた。技術が確立できたのはいいが、こればっかりはどうしようもないらしい。

「なんせ生きた神経を切り落として、そこにさらに無理やり神経と細胞の接続を行うわけですから…」

「麻酔は使えないの?」

「使えないことはないのですが…あくまで余計な部分を切り落とす時の痛みをなくすだけで、接続は麻酔なしで行わないと術後の正確な動作が保証できないんです」

「そっか……」

「…………」

隣でその話を聞いていた隼鷹も吹雪も、痛みが怖いのかずっと黙りこくっている。



961: ◆CaWSl75vrE 2016/06/01(水) 20:04:12.86 ID:hYFyHdB50

「あまりの痛みにショック死することだって考えられます…本当にこの改装を施しますか?」

「……あたしはもう覚悟してるつもりなんだけどね」

「隼鷹…いいの?」

「ああ、むしろ諦めてたこの腕が戻ってくるのが嬉しいよ。今すぐにでも受けたい気分だね」

「…………」

そう言い捨てた表情に、楽の感情はなかった。それはそうだ、痛いのなんて誰でも怖いに決まってる。それこそ死ぬかもしれないほどの痛みなんて…

「……吹雪は?」

「私は…」

「…嫌なら、無理はしない方が…」

「…………」



962: ◆CaWSl75vrE 2016/06/01(水) 20:14:48.96 ID:hYFyHdB50

「………いいえ、受けさせてください」

「吹雪…」

まっすぐに明石を見据える瞳は、強い光を宿していた。明石もそれを真剣な眼差しで見つめている。

「私も、もう諦めていました。けど…また、この地に両足を付けて、司令官と歩けるようになるって…そう思ったら、痛いのなんて怖くなくなりました」

「……はは。すごい勇気だねえ…」

後頭部を掻きながら苦笑を零す隼鷹。けど、少なからず隣にいる吹雪に勇気づけられたような…そんな雰囲気。

「私以外にも、手や足を失った子だっている…その子達に希望を見せてあげたいんです」

「…うん、吹雪ちゃんの気持ちはわかったわ。私も全力を尽くすから」

「……はい!よろしくお願いします!」

それから吹雪と隼鷹が部屋を出て、明石に手術の時刻を言い渡される。
フタフタマルマル。
………私のやることが片付いた後だ。しっかりと準備をしよう…



966: ◆CaWSl75vrE 2016/06/08(水) 15:00:01.27 ID:um/2kxg/0

さて、これでやることを済ませたわけではない。これからちょっとおかしくなった子の……あー、心の病気にかかっちゃった子の様子を見に行かなきゃいけない。加賀が目覚めてからというもの、ずっと処置に迷っていた私に「こういう時はかわいそうでもしっかりやりなさい」と言われて精神に異常をきたしている子は鍵付きの部屋に隔離している。

「あ、司令…」

「やあ、秋月。様子はどう?」

「おとなしくしていますよ。先ほどご飯を食べさせました」

「そっか、よかった」

どうやら初月はだいぶ落ち着いてきたらしい。聞くところによると羽黒や時雨も以前のような性格に戻りつつあるとか。
…そういえば初月にはどんな処置を施しているんだっけ。閉じ込めるだけなら余計悪化しそうな気がするけど…

「ねえ秋月、初月はずいぶん落ち着いたみたいだけど…何をしたの?」

「え?ああ、宇宙船サジタリウスを見せたんです」

………は?



967: ◆CaWSl75vrE 2016/06/08(水) 15:06:13.03 ID:um/2kxg/0

「今はふしぎの海のナディアを見てるはずですよ」

………何を言っているのか。確かにその二つは私の部屋に置いてあったし貸出も自由にしてたけど、まさかアニメを見せているとは…

「聞いてみます?おーい、初月ー」

「なんだ、姉さん…今いいところなんだ、邪魔をしないでくれ」

「司令がお見えよ?」

「ん?提督がいるのか?」

え、あ、うん。ここにいますけど。

「提督……」

「は、はい」

「……冒険がしたい」

「は?」

「僕も冒険がしたい…せっかく戦いが終わったんだ、僕も世界の色んなところを旅して見てみたい…」

………効果てきめんですね。頭を抱えながら言いたくはなかったけど。



968: ◆CaWSl75vrE 2016/06/08(水) 15:15:19.30 ID:um/2kxg/0

……いや、戦争が終わったことは認識してるし、私への固執もある程度なくなったみたいだし確実に快方に向かってるのは確かなんだけどいかんせん方法が…
…………いやいや、治るに越したことはないでしょ。うん、早く元どおりになるように祈っておこう、うん。

「ちなみに次は何を見せるの?」

「名探偵ホームズです」

名作ですね、本当にありがとうございました。あのアニメを見た人は変な趣味に目覚めることがあるらしいから、それには気を付けてほしいけど。

…世界の色んなところを旅したい、か。あの子にもやっと希望ができたんだ…しっかり私が支えてあげなきゃ。



969: ◆CaWSl75vrE 2016/06/08(水) 18:37:45.44 ID:um/2kxg/0

その日の夜。お風呂と夕飯も済ませ、約束の時まで1時間もない頃、私は自室の窓辺から外を眺めていた。
月光に照らされ煌めく海。綺麗なものを見ているはずなのに、心は騒めいて落ち着きを取り戻さない。

「……あれ?」

波止場に誰かいる。あのシルエットは…吹雪?片足がないから恐らくそうだろう。あんなところで何をしてるんだろう…少し、会いに行ってみようか。


〜〜〜


「吹雪ー」

「あ、司令官…」

振り返るその瞳には涙が浮かんでいた。私がそのことに気付くと、はっとしたようにそれを拭う。

「…恥ずかしいところ、見られちゃいましたね」

「……いや…」



970: ◆CaWSl75vrE 2016/06/08(水) 18:40:13.38 ID:um/2kxg/0

「………っ」

「わっ……と」

吹雪がいきなり抱き付いてきた。浮いたつま先を踵で支え、抱き留めるように腕を背中に回す。

「私……怖い、です…」

「…………」

「さっきはこの脚が治るなら嬉しいって言いましたけど…本当は、ずっと怖くて…死んじゃうかもしれないくらい痛いって…脚がなくなった時も、痛かったのに……」

涙を拭ったばかりなのに、また次から次へとそれは零れ落ちてくる。私は何も言えずにただ震える肩を抱いているだけ。

「…でも、私…司令官がいるから、頑張ろうって思うんです…」

「え?」

「まだ、やりたいことがたくさんありますから…もちろん、司令官と一緒に…」

「吹雪……」



971: ◆CaWSl75vrE 2016/06/08(水) 18:42:32.69 ID:um/2kxg/0

「だから……勇気を、ください……」

そう言いながら触れた唇は、震えていた。前と違って優しいだけのキスになんとなく懐かしい匂いを覚える。頬を伝う涙も、密着する身体の温もりも、全部この子が未来に進もうとしている証だ。唇が離れた後も、無意識に彼女を抱き締めていた。恐怖を忘れさせたくて、少しでも力になってあげたくて。
…もう、涙は涸れたみたい。私を見上げる瞳には希望の光が宿っている。

「……ふふ…ありがとうございます、司令官」

「ああ…ううん、元気が出たみたいでよかったよ」

「………そろそろ、ですね。行きましょうか」

「うん。肩、貸すよ」

「あ、ありがとうございます」



972: ◆CaWSl75vrE 2016/06/09(木) 18:33:40.48 ID:HdR6AsO40

「それじゃ、始めるけど…本当に麻酔はしなくていいの?」

「はい、痛いのにも慣れた方が良いと思いますから…遠慮せずにお願いします」

「……ええ。行くわよ」

「はい……」

まずは余計な部分をすっぱりと切る作業からだった。義足と身体の結合のために、断面を綺麗にしないと上手く接続できない可能性があるとのこと。付け根に刃が食い込むと、吹雪の表情が険しくなる。

「ッ……!!」

「吹雪…!」

皮膚が切り裂かれ、ぷつぷつと血が飛び散る。それと同時に握られたままの手は痛いほどに締め付けられ、額には脂汗が滲み始めた。

「っく…ああァッ……!!」

「提督、止血を」

「う、うん!」

わずかに残る脚の肉をベルトで固定し、締め上げて血の流れを止める。真っ赤に染まった手元と断面に思わず戻しそうになったが、なんとか堪えることができた。吹雪はもっと辛いはずだ、ここで私が手を止めるわけにはいかない。



973: ◆CaWSl75vrE 2016/06/09(木) 18:38:51.17 ID:HdR6AsO40

「よし…これを、縫合すれば…」

「どれくらいかかるの?」

「分かりません…私だって、初めてやることですから…手術用の針なんて持ち合わせてませんし、普通の針しかありませんけど…けど、できるだけ急ぎます」

取り出した義足を断面に合わせ、針を刺し通す。

「吹雪、聞こえてる?少しチクっとするけど、我慢できる?」

「あはっ…切られるのに比べたら、全然マシですね…ふっ……ふっ……」

激痛に反応して脳内麻薬が出ているのか、幾分か楽になったようだ。変な笑いが起こっている。

「よし…!縫合、できました!」

「やった…!吹雪、気分はどう?なんとか持ち堪えられそう?」

「ああぁ…なんだか、楽しくなって、きちゃいました……あはは、はははは…」



974: ◆CaWSl75vrE 2016/06/09(木) 18:42:13.03 ID:HdR6AsO40

「本番はこれからよ、吹雪ちゃん…恐らくその義足に含まれた深海棲艦の細胞があなたの神経との結合を図るわ。それが前に説明した死に至るほどの痛みだけど…私たちにはどうすることもできないの。あなたが、頑張るのよ」

「は、い……ぅうああっ!!?」

「吹雪!」

吹雪の身体が大きく跳ねる。脳内麻薬の分泌を遥かに上回る痛みのようで、その苦しみ方は尋常のものではなかった。

「うぐああああっ!?い、ぎゃああああっ!!!」

喉を反らし、獣のような叫び声を響かせて。あまりに痛すぎるのか口元から垂れる唾液を拭うこともなくひたすらのたうちまわっていた。
目の前にある凄惨な光景に、いつの間にか私の目には涙が浮かんでいた。それを見た明石が口を開く。

「私たちにできるのは、祈ることだけです…彼女を信じましょう…」

……そうだ、吹雪は今頑張っているんだ。祈ることしかできなくても、それが力になるはずだ。吹雪……頑張って…!



975: ◆CaWSl75vrE 2016/06/09(木) 20:01:47.46 ID:HdR6AsO40

「っ…………は、ぁ……」

糸が切れた人形のように力なく倒れ込む吹雪。
……え?ま、まさか…

「吹雪…?吹雪!?」

「……大丈夫です、眠っているだけです」

「え…?」

「はあぁ…成功ですよ……よかった〜…」

成、功…?治る、の…?吹雪の?脚が?

「や……やったぁぁーーーっ!!!」

「ふぎゃ!?ちょ、いきなり抱き付かないでくださいよ!」

「やった!やったぁ!これでまた、元気な姿を見られるんだ!」

「むぐぐ、その膨らみを押し付けてくれるのは嬉しいですけどね!確実に動くようになるわけじゃないんですよ、リハビリだって必要ですし!」

「でも成功したんでしょ?私は明石を信じてるよ!」

「あーもう!汗くらい拭かせてくださいってばー!」



976: ◆CaWSl75vrE 2016/06/09(木) 22:08:29.60 ID:HdR6AsO40

さ、さすがに取り乱しすぎた……血がついたまま抱き付いたせいか、明石の顔が真っ赤になってるし…

「もー…大人なんですから、ちょっとは落ち着いてくださいよ…」

「ご、ごめん…」

「まあ、嬉しいのは分かりますけど…さっきも言った通り、確実に動くようになるとは限りませんからね。仮に動くようになったとしても元通りになるまで時間はかかりますから」

「うん…」

「……それまでは、提督が支えてあげてくださいね」

「…うん!」

相変わらず粋なところがあるなあ、明石は。こう言ってはいるけど、明石はやると言ったらやる女だし、また動くようになるに違いない。

「お二人とも、そろそろいいかな」

裏口から入ってきたのは煙草を咥えた隼鷹だった。私たちの様子を見ていたのか、少し頬が緩んでいる。

「あ…そっか、次は隼鷹だっけ。明石、大丈夫なの?」

「はい、やれますよ。さっきので自信も付きましたし、隼鷹さんがいいなら始めましょう」

「あたしはいつでもいいよ。痛いのだってへっちゃらさ」

年端もいかぬ少女に先を任せたのに後ろめたい感情があるのだろう。そう告げると隼鷹はすたすたと奥の部屋へ入っていく。
明石と顔を見合わせて、私たちも気合いを入れる。よし…頑張ろう。



977: ◆CaWSl75vrE 2016/06/09(木) 22:13:27.93 ID:HdR6AsO40

それから数時間後…………

「………ん……」

「あ…吹雪、目が覚めた?」

目を開く吹雪の表情は、さっきのことなんて忘れたみたいにぽけーっとしている。動かした指に瞳孔がちゃんと付いてきているあたり、心配はなさそうだ。

「……司令官…終わったんですか…?」

「うん、吹雪は頑張ったんだよ。脚の具合はどう?」

「あ…これ、私の……」

「そう。動かせる?」

なんとか力を入れようとしているが、その義足が動く気配はない。吹雪も曇った表情でこちらを見つめている。

「……えいっ!」

「いたぁっ!?」

指を折って、義足の脛を弾く。と、吹雪が可愛らしい悲鳴をあげた。

「な、何をするんですか、司令官!」

「あはは!ちゃんと神経は繋がってるよ!これなら、リハビリすれば元通りになるって明石が言ってた!」

「え…そ、そう…なんですか…?」

うるうると揺れる瞳。それを堪えることもなく、次々と涙が零れ落ちていく。
…でも、それは悲しみによって生まれたものじゃない。希望を噛み締める…喜びからくるものだ。



978: ◆CaWSl75vrE 2016/06/09(木) 22:17:08.24 ID:HdR6AsO40

………………………
…………………



…………あれから、数ヶ月が経った。

「加賀、立てる?」

「ええ、もう歩けるようにもなったわ」

先の深海棲艦に総攻撃を仕掛ける大規模作戦で、私たちの鎮守府は大きな被害を被った。
作戦そのものは人類の勝利という形で終わり、あとは深海棲艦の残党を撃滅するという名目で艦娘たちは世に残されている。

「見てください司令官!私もこんなに歩けるようになりましたよ!」

けど、その犠牲はあまりにも大きすぎた。幸いにも轟沈する艦娘はいなかったものの、今だ目を覚まさない子や、身体の一部や、視力、聴覚、感情すら失った子だっている。
……そう、この鎮守府は終末を迎えようとしていた。

「これなら…また、みんなと一緒に同じ日々を過ごせますね、司令官!」

「うん……これから忙しくなるだろうけど、みんな…改めてよろしくね!」

けど、終わったからといって始まらないわけじゃない。一度は絶望の底に沈んだけど、たった一筋でも光を見つけてそれを辿れば希望は見えてくる。諦めなければ、きっと………
……そう、まだまだ問題は山積みだけど、この鎮守府は未来へ向かって少しずつ歩み始めている。





979: ◆CaWSl75vrE 2016/06/09(木) 22:19:28.12 ID:HdR6AsO40

終末鎮守府編、完
このスレが建ってから一年以上ですね
長い間読んでいただいた皆様に感謝します、ありがとうございました



981: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/09(木) 23:07:33.75 ID:+VgmH9vho

乙です



元スレ
SS速報R:女提督「黒百合鎮守府」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1431516418/