SS速報VIP:高垣楓「お祭りと言えば?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1470900335/



1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:25:35.75 ID:FU4uAl220

今日は花火大会……なんですが、人混みの中を出歩くのは危険とのことで……

事務所の中で静かにしていることになっています。

ヘリコプターからの中継があるからといってそれで満足できるかと

訊かれれば実はNOなのですが……私がアイドルとして売れてきてしまったので
仕方がない事ではあります。

仕方がないと言っては失礼ですね、頑張ってもらっているプロデューサーに。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1470900335




2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:26:22.69 ID:FU4uAl220


 事務所の大きなテレビで映っているのは実に美しい花火です。

 ここからじゃ辛うじて音だけが聞こえるという状況ですので一緒に見ているフレデリカさんも喜んでいるようです。

尤も、フレデリカさんは画面に映る花火よりも目の前の食べ物に夢中なんですけどね。

 フレデリカさんは私の向かい側のソファに坐り、様々なお祭り食品を物色しています。





3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:27:23.30 ID:FU4uAl220

私のプロデューサーが買ってきてくれた屋台のお好み焼きや、たこ焼き、綿あめ。

お祭りに行けない私たちを気遣ってくれているのが良く解って嬉しくなります。

 でも、こうしてもらえると実に私が天邪鬼なのでしょうか、お祭りに対する憧憬がより一層強くなってしまう気がします。
 




4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:28:36.31 ID:FU4uAl220

「いやー楓さん、このたこ焼き美味しいよ? 私が作るより美味しいかも、作ったことないけど」

 私が何も手を付けていないことを見咎めたのかもしれません、フレデリカさんが声を掛けてくれます。

あまり話したことがない私と、よりによって二人きりというのは彼女にとって負担だといけないなと思いましたが、

彼女を見ているとそんなに気にしている様子が無くて私としても心が重くならなくて済みます。





5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:29:37.63 ID:FU4uAl220

「たこ焼きもいいですね、私も好きなんですよ、たまに大きなタコが入っていると嬉しくなりますね」

「ですよねー、逆に入っていないのに当たっちゃうと残念! みたいな」

「そうですね、入ってないのに当たりっていうのもおかしいですね、フフフ」

 私がしょうがない事を言うと、彼女は多くの人がする愛想笑いはせずに、

「フフフ、代わりにお祭りの楽しい空気が入ってるかもっ」

 私は考えたような事が無かった台詞が飛び出してくる。




6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:30:48.73 ID:FU4uAl220

「……っそうかもね、フレデリカさん」
 他のアイドルのみんな用に沢山買ってきてもらっている(おそらく経費?)けれど、今日は余り人がいない。

だからまぁ、必然的に私たちがまあまあ食べてもよいということになっているのですが、

ちひろさんがニッコリとしながらエナドリを持ってきてしまうので食べ過ぎはよくないでしょうね……。

そもそも胃もたれなんかにエナドリは効くのかしら?





7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:31:55.31 ID:FU4uAl220

「鰹節って薄いのに魚の味がしますね、元が魚だからかな?」

「さ……かな?」

「そうかな? っていいたいんですか、ちょっと無理ですかねー☆」

 キャッキャと笑う彼女の細くなった目が柔らかく私を見つめてくれるようで、心安らぐ。





8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:32:54.64 ID:FU4uAl220

「アタシ、お祭りでしかたこ焼き食べないんですよねー」
「私もそんな感じですね、そもそもそんなに食べる機会ないですからね」
 
 まだ温かいたこ焼きを彼女に差し出されて漸く私も口に入れ始めた。

ソースとマヨネーズとそれに濡れてクタクタになった鰹節を噛むたびに歯がギリギリとする。

そうして染み出る酸っぱさやしょっぱさが柔らかい小麦の生地にまろやかに溶け込む。
 
 少しぐらい濃すぎる味の方が実はたこ焼きには合うのかもしれない。





9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:33:56.32 ID:FU4uAl220

「たこ焼きに詳しい人いましたよね346に、まぁ、名前知らないんですけど」

「えっ……どうでしたかね……、そういえば関西出身の方がいらっしゃったと思いますから、その方なら知ってるかも」

「なるほどー! アタシ、大阪人の9割の家にはたこ焼き器があるって聞きました」

「残りの1割は?」

「空き家なんだって☆」
 
 二人でたこ焼きをまだ口に入れているのにも関わらず咽てしまいました。危ない危ない。





10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:34:54.94 ID:FU4uAl220

「大阪の人のたこ焼きに関する情熱は半端ないって聞きますね」

「そうなんですか?」

 私の出身は和歌山で、まあ、どちらかというと関西に近いですが、大阪の習慣にはなにぶん疎いもので……。

「なんでしょう、ご飯のおかずにするらしいです」

「そうなんですか?」

 さっきからそうなんですか? としか言ってない気がしますけど、そこは克服したいと思います。

フレデリカさんと話すとどうも私……うーん、自由奔放すぎて付いていけない?






11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:36:16.05 ID:FU4uAl220

「マジらしいですよ、アタシはしませんけど」

「そりゃ、フレデリカさんは大阪の人じゃないですしねぇ」

「そうです☆ でもお好み焼きとご飯は美味しいですね」

「えっ、たこ焼きと同系統なのに?」

「あ、確かに! じゃあやめようかなぁ……」

「フフフ、お好みにどうぞ」





12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:37:03.18 ID:FU4uAl220

たこ焼きは粗方食べ終えて、今度出てくるのは……(フレデリカさんが主に興味の惹かれるものをチョイスしているようです)あれです、

イカ焼きです。串に刺さったあのイカ焼きです。

「タコの後はやっぱりイカって気がして」

「イカはいかが?ってね」

「楓さん冴えてるぅ」





13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:37:41.65 ID:FU4uAl220

「どうも薄皮が噛みきれないですよね」

「そうねぇ……串に刺さっているから余計に」

私とフレデリカさんは少し女性がするには恥ずかしい表情をしながら丹念にイカを、串に刺さったイカさんを食べていきます。

 ビリビリと紫色の薄皮を噛み破ってようやくピンク色の身を噛み締めると醤油に付け込まれたことが分かる味が口いっぱいに広がります。
 




14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:38:32.79 ID:FU4uAl220

「……」
「……」

 ええ、不覚でした、イカの頭の三角になっている所だけをひとまず口に入れればよかったんですけど、

二人とも欲張って深く口に入れてしまったものですから喋れません。

 向かい合って座っているのでお互いがイカをムグムグと咀嚼している姿を延々と見る事となってしまいました。




15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:39:31.16 ID:FU4uAl220

今更目を逸らすのもなぁ……というのがどうやらお互いの共通認識だったらしく、

なぜか一口がひと段落するまでずっと私はフレデリカさんのヒスイ色の瞳を見続けることになってしまいました。

 彼女も私の眼をずっと見ているので、どうもくすぐったいような気がします。

ごくり。とようやく呑み込めた後に二人で笑ったのは言うまでも無く、また、欲張らないように気をつけることとなりました。
 






16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:40:34.49 ID:FU4uAl220

「やっぱりビールが欲しいですか、楓さんは」
「ええ、でも私はどちらかというと日本酒の方が好みですね」
 この濃い醤油味のイカにはどちらが合うでしょうか? うーん、ビールも合うかもしれません。

苦味と醤油の塩辛さで引き立てられたイカの身の甘さが丁度よいかも。

 日本酒ならば、ツンとした辛みがイカの魚介臭さと合うかもしれませんね。

お料理にもある組み合わせです。魚介と醤油とお酒。

今はどちらかというとリラックスしたいから、日本酒かしら。





17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:41:20.03 ID:FU4uAl220

「うーん、プロデューサーはお酒買ってきてくれませんでしたからねー」
「……そうなのよねぇ」

 勿論屋台としては出ているのでしょうけど、未成年の子ばかりがいるので買ってきてはくれなかったのです。

道理は解るけれど、少し物足りないですね。
 
「まあまあ、これでも飲んでくださいな」
「あ、ありがとう」

 渡してくれたのはラムネ。あの押し込んで開けるあのラムネ。
 まだまだひんやりとした瓶はしっとりと濡れている。





18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:42:27.92 ID:FU4uAl220

「これ失敗すると、面倒なんだよねー、だからやってくださいっ!」

「えっ私のじゃないんですか」

「いやいや、こっちにもありますから、そうだっ、アタシが楓さんの分開けますから」

「結局自分で開けられるじゃないですか」

「あーっ確かに」

 そういうと、押し開ける為のプラスチックの器具を思い切りよく使って開栓した。

 静かな水面を保っているラムネ瓶を私に掲げて「ほらっ! 吹き出なかったですよ!」とキラキラした眼ではしゃぐ。




19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:43:33.12 ID:FU4uAl220

「ラムネって何味なんですかねー? うーんラムネ味?」

「そういえば知らないかしら、きっとお菓子のラムネは後に出来たかもしれないですね」

「あー、ガリガリってするラムネですねー、あれ別にラムネっぽくないですよね」

「そうねぇ、どんな味って訊かれたらラムネって答えるしかないですね」

「ブルーハワイもそんな感じですね。何味かわかりませんっ!」

「あー」

「まぁ両方青いですけどっ☆」





20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:44:12.51 ID:FU4uAl220

 キュピキュピと喉を鳴らしてラムネを飲み干す。
「あ、でも、ラムネは透明でしたね」
 付け足すように言う彼女は真面目なのかしら?

 もうそろそろ中継でも花火が終わりに近づいてきていると言っているわ。
まだまだ食べ物は残っているのに。





21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:45:52.98 ID:FU4uAl220

「花火って終わりの頃に凄く打ちあがりますよね」
 フレデリカさんが私の隣に移ってきた。

「こう、一瞬静かになって、その後からヒューッって上がるんですけど、焦らしてくる。そして一気に何連発も来るんですよねー」

 ヒューとか擬音の度に白い手を振り回して解説する彼女の一生懸命さを感じて私は笑う。

「そうですね、一気に明るくなって、もう一つの塊の様になってしまって最早花の形じゃなくなっていくのもまたいいですね」

「もう、稲的な感じですね、モサモサ感が稲。アタシはパン派ですけど」

「パン派なんですか」

「あ、でもお好み焼きにはご飯です」

「そのネタがまた来るとは」





22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:46:36.02 ID:FU4uAl220

 駄目だ、フレデリカさんと話すと私が突っ込み役になってしまう。
いや、いっつもボケを狙って遣ってる訳ではないんですけど、どうも頭の回転速度が私より早いらしい。


「……終わっちゃいましたね」
 ヘリが空を映すのを止めて、駅周辺の混雑具合に焦点を当てている。

黒い塊がぞろぞろと駅に向かって一意に進んでいる様は実に奇妙で、大群衆は一つの生き物の様に見えた。
「そうですね」
 と私は答えてぼうっと画面を眺める。




23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:47:16.38 ID:FU4uAl220

「楓さんお疲れ?」
「ん? うぅん? ただなんかぼおっとしちゃって」
「わかるよーわかる」

 彼女は私の隣にぴったりくっついて、身を委ねるといった表現が似合う格好にになった。
「アタシも疲れちゃったなー、一緒に寝る?」





24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:47:48.18 ID:FU4uAl220

 キラキラとした瞳が私を見つめる。細く柔らかそうな髪の毛が私の腕に絡む。
「うーん、じぁあ少し?」

 そういうと彼女は猫の様な表情を浮かべて、本格的に私の腕を取って体重を預けてきた。

暫くするとすうすうという、か細い寝息が聞こえてくる。

 その寝息がちょっぴりソース臭いのもまたいい。あ、もしかして私もかしら。





25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:48:50.82 ID:FU4uAl220

 娘を持つってこういう事なのかしら? いや、まだフレデリカさんは私の妹ぐらいだから……多分。

 私がこの子ぐらいの子を持つようになるなら、もう大分おばさんになってしまうのね。

 なんて、悲観的になることはないかなって。私も少し眠ろうかしら。

お祭り編 fin




 




28: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/11(木) 16:50:04.66 ID:NCaASvtm0

乙でした!



元スレ
SS速報VIP:高垣楓「お祭りと言えば?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1470900335/