SS速報VIP:あやせ「桐乃、お願いがあるの」 桐乃「改まってどうしたの、あやせ?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311580854/



1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/07/25(月) 17:00:54.72 ID:0Q0m6Dh10

このスレは俺の妹がこんなに可愛いわけがないのPart11スレで書いたSSを続けるために立てました
若干の加筆修正を加えた話を投下した後に続きを書いていくつもりです

ぶっちゃけただの>>1のオナニーSS

このスレでの登場人物は基本的に京介・桐乃・あやせの3人だけの予定

それでも良いという方は読み進めてください



2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/07/25(月) 17:02:38.29 ID:0Q0m6Dh10

言い忘れましたが時系列的には8巻後の話です



その日は珍しいことに親父は仕事でお袋も用事があるらしく帰りが遅いとかで、俺と桐乃の2人だけで夕食を迎えることになった。

図書館で麻奈実と恒例の勉強会を終え、帰りにスーパーに寄って出来合いのものを買ってから俺は家に帰ってきた。
麻奈実は今日は俺と妹の二人だけだと知ると夕食を作りに来ようとはしてくれた。
俺としては何もしなくて済むし味は保証されているからありがたいんだが、前に麻奈実が
うちに飯を作りに来たときの事を思うと嫌な予感しかしないので遠慮させてもらった。

「ただいまー」

家に帰ってきたのは良いが、桐乃の声がしない。
あいつのことだから親がいないのを良いことに部屋に籠もってエロゲーかリビングでメルルでも見て奇声をあげてると思ったんだが。
とりあえず一度荷物を置きに部屋へ戻ったが、隣の妹の部屋はドアが開きっぱなしになってるだけで桐乃はいなかった。
どうやらリビングにいるらしい。

一階の廊下へ戻り、リビングの扉を開きながらもう一度帰ってきたことを告げる。

「ただいまー」

「チッ……お帰り」

何こいつ、なんでいきなり喧嘩腰なんだよ……。
俺が黒猫にふられて落ち込んでたときみたい、とまではいかなくてももう少し優しくしてくれても良いんじゃねーの?
しかし……

「いつまでそこに突っ立ってんの?」

「あ?あぁ。いや、お前がキッチンに立ってるなんて珍しいと思ってな」

「あんたに買い物任せるとろくなの買ってこないと思ったから、簡単そうな野菜炒め作ってんの」

「……そ、そうか」

簡単そうって言ってんのに、どうして炒めてる野菜より皿に分けてある黒々とした何かの方が多いんだろうな?
これを見てると思い出したくもないバレンタインの時にこいつが作った石炭(チョコ)を思い出す……。




3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/07/25(月) 17:03:37.13 ID:0Q0m6Dh10

数分後、桐乃は

「あれ?おっかしーなー……?お母さんがたまに作るのをマネしたはずなんだケド……」

と首を傾げながら、炒めた野菜を全滅させた。
マネしただけで料理が作れるなら誰でも料理人になれるっつーの!

「あんた、これ食べる?」

「そんな明らかに失敗したものなんて食べるか!」

恐ろしいことを素で聞いてきやがったぞ、コイツ……。

「それじゃ、あんた今からスーパー行って野菜買ってきて」

「なんで俺が行かなきゃなんねーんだよ」

自分で行けば良いじゃねーかと思ったが、桐乃は

「今ので家にあった野菜切れちゃったから。」

だからと言って俺が買いに行く理由にはならないだろ。
そもそも、1日くらい野菜を取らなくても別に良いだろうとも思ったが口には出さないでおく。

「大体、あんた中学生の女の子にこんな時間に買い物に行けっての?バカじゃん」

と言って受け付けなかった。
どうやらヘルシー志向の桐乃には野菜がないのは耐えられないらしい。
結局、俺は野菜の出来合いのものを買いに行かされた。



4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/07/25(月) 17:04:21.81 ID:0Q0m6Dh10



翌日、俺は放課後に「桐乃のことで話がある」と言ってメールであやせをいつもの公園に呼び出した。

放課後、公園に着いてしばらくするとラブリーマイエンジェルあやせたんがやってきた。

「お兄さん、こんにちは。お待たせしました」

「いや、たいして待ってないから大丈夫だ。それにあやせを待つのは苦にならないしな」

それに、あやせと待ち合わせして待ってると可愛い恋人を待ってる気分になれるんだよな。

「っ!人を見ながらニヤニヤしないで下さい!汚らわしい!」

酷い言い種だな……。
いくらあやせに罵られても平気な俺でも傷つくよ?

「それでお兄さん、桐乃のことでお話があるということですが一体なんでしょうか?」

「あ、あぁ、実は昨日は親父もお袋も夜にいなくてな、俺と桐乃の2人だけだったんだが……」

説明に入ろうと、昨夜の状況を説明し始めたところ

「まさか!桐乃と2人きりなのをいいことに桐乃に手を出したとか言い出しませんよね?
お兄さん、私、言いましたよね?桐乃に手を出したらブチ殺しましよ?って」

こえぇー!瞳から光彩が消えてやがる……。

「ちげーよ!そんなんじゃねーっての!」

ここは否定しなければなるまいっ!否定しなければ俺の命が危うい!

いくら俺がシスコンであやせには近親相姦上等の変態鬼畜兄貴と思われてるとは言え、実際に妹に手を出す気は全くない。
あやせに対してこの誤解を解くわけにいかないのが辛い……。



5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/07/25(月) 17:05:51.89 ID:0Q0m6Dh10


「人の話は最後までちゃんと聞け!
そんなわけで、昨日は桐乃と2人だけだったんだが……」

そして俺は昨日の一連の流れをあやせに説明した。

「そんなわけで、桐乃に自分の料理の下手さ加減を自覚してもらいたい。」

「それがどうして私を呼び出したことと繋がるんですか?」

「あやせには桐乃に自分の料理を自覚してもらったあと、あいつに料理を教えて欲しい。」

「わ、私が、桐乃に料理を教えるんですか!?」

美味い不味いはこの際おいといて、桐乃には形だけでも料理が出来るようになって欲しい。
でないとあいつ、いつか料理だけで人を殺しそうな気がしてならん。

「私が桐乃に料理を教えるのは良いですけど……どうして桐乃のお母さんやお姉さんじゃだめなんですか?」

桐乃は麻奈実のことをなんでか知らんが毛嫌いしてるから今回の件については頼れそうにないんだよな……。
それと実はお袋については、昨日の話に少し続きがあってな……。


お袋が帰ってきてから黒こげになって原形を留めてないアレを見て、何かを問いたげにしてるときに桐乃が

「それ、こいつが作ったやつで私が作ったんじゃないから」

なんて言いやがったんだよな。
こいつ、兄の尊厳より自分のプライドを躊躇いもなく選びやがった!?
そんなこと言ったら長男の扱いが妹より低いお袋はあっさり信じるじゃねーか!



6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2011/07/25(月) 17:06:36.08 ID:0Q0m6Dh10



そんなわけで、桐乃がごまかしたせいでお袋も頼れないんだよな……。

「そ、そういうことなら協力させてもらいます。私も桐乃が作ったまともな料理を食べてみたいですから。」

と、微笑みを返してくるあやせ。マジ天使。

「そうか、良かった。ありがとうな」

思わずにやけで頬が緩みそうになる俺。
しかし、桐乃絡みのことだから断られないとは思ってたが万一あやせに断られてたらどうしようもなかったんだよな。

「ところで桐乃にはこのこと、なんて説明するんですか?」

「それなんだが、実は昨日のうちにあいつとは話をつけてあるからその辺は心配しなくていいぞ」

「そ、そうなんですか!?」

「あぁ、だから後の細かいところは二人で決めてくれ」

「わかりました。とりあえず、料理は桐乃がお母さんにごまかしたみたいなので私の家で行おうと思います。
けど、お兄さんは私が桐乃に料理を教えている間は私の家に来ないでくださいね。
万が一のことを考えても、私がお兄さんにセクハラをされるところなんて桐乃に見られたくありませんから」

「ぐっ……わ、わかった」

さすがに妹の前で妹の親友にセクハラをするつもりはないが、あやせにここまで言われたらおとなしく引き下がるしかないだろう。

こうして俺はあやせに桐乃があやせの家で料理を行う間は新垣家に出入り禁止を言い渡されてしまった。




20: ◆WNrWKtkPz. 2011/07/26(火) 23:51:02.17 ID:xOIawt630

あやせに桐乃の料理について相談してから数日経った。実はあれから今日まで桐乃の料理訓練は行われていない。
あやせから聞いたところによると、訓練はあやせと桐乃がお互いに用事がない日に行うことになったらしい。
桐乃は陸上にオタク活動、あやせは読者モデルの仕事があることを考えるとそれが妥当なとこだろうな。

あれ?そういや桐乃っていつまで読モの仕事休止してるんだ?
アメリカから帰ってきたとき珍しく桐乃が敬語を使ってたから印象には残ってるんだが……。

っと、話がそれたな。
今日は桐乃もあやせも特に用事は入ってないらしいし、そろそろ特訓でも始めてんのかね。
桐乃があやせの家に行ってる間、俺は――

1.受験勉強に専念する
2.桐乃におすすめされた(押し付けられた)エロゲーをプレイする
3.妹×妹(シスシス)のりんこルートを攻略する

「我ながら選択肢が酷いな……」

本来なら受験勉強といきたいところだが、エロゲ―を早くやらないと押し付けてきたくせして文句を言ってくるんだよな……。
仕方ない、今日は受験勉強は諦めるか。


数十分後――――
俺が息抜きに飲み物でも飲もうと一階のリビングへ向かうと

「ただいまー」

ちょうど妹があやせの家から帰ってきた。

「おかえり。なんだ、思ってたより早い帰りだな?」

「なんか予定してた分の材料を使い切っちゃったみたいで、今日はもう続けられないんだって。」

「ふーん……」

俺としては少な目に見積もった材料が切れたと信じたい。
いくら料理が壊滅的な桐乃でも、たくさんあった材料を数時間のうちに使い切ることはないだろう……たぶん。

「ところであんたは何をやってたの?」

「お前に押し付けられたエロゲーをやってて、喉が渇いたから飲み物を飲みにきたんだよ」

「ふーん、流石エロゲーマーの鑑。受験生なのに平日のこんな時間からエロゲーをやってたんだ?」

言うと思ったよ!チクショウ!



21: ◆WNrWKtkPz. 2011/07/26(火) 23:51:53.54 ID:xOIawt630



こんなやり取りをした翌日、俺はあやせに呼び出されていた。
なんでも食材の買い出しに付き合って欲しかったらしく、今は近所のスーパーに向かっているところだ。
だけどさ……

「なぁ、あやせ。買い出しに付き合うのは良いんだが、こんなに早くから買い出しに行く必要はあるのか?」

「そうですね、このタイミングで買い出しに行く必要はなかったかもしれません」

「なら、なんで昨日の今日で買い出しに行くんだ?」

「1つは日持ちする食材を買い込んでおきたいということです。
次の桐乃との特訓はまたすぐに行うんですけど、その時になって必要なものを買いに行くのでは手間がかかるんです。
だから先に日持ちするものを買い込んでおいた方が効率が良いんです」

なる程な。俺は料理なんてしないからその辺がよくわからないが、あやせが言うならそうなんだろう。

「それと、もう1つはお兄さんを呼び出すための口実です」

俺を呼び出すための口実?もしかして……

「あやせ……お前……実は俺のことが好きだったのか!?」

「な!?なんでそうなるんですか!」

そう言いながら上目遣いで見上げてくるあやせ(←超かわいい)。

「そうじゃなくて、どうしてお兄さんは桐乃に料理を覚えてもらおうと思ったのかを聞きたかったんです!」

なんだそのことか……。
俺は“妹”に料理が上手くなってほしいと思ったんだが、あやせには誤解を解くわけにいかないし……。

「それは俺が桐乃を愛してるからだよ。愛してる女には料理が上手くあってほしいって思ったからな!」

結局、こういう方向性でごまかすしかないのである。正直に言えばウソが嫌いなあやせにこんなごまかしをするのは心苦しい。
だからと言って俺は受けた人生相談を反故にすることには納得がいかないし、桐乃のためにも俺とあやせとの間にある“誤解”をバラすわけにはいかない。
そう思っていたんだが、あやせは優しい声色で―――

「お兄さんが桐乃を女として愛してるって、それウソですよね?」

なんて言ってきた。



22: ◆WNrWKtkPz. 2011/07/26(火) 23:52:51.04 ID:xOIawt630


「え?」

「わたし、気付いてたんですよ?お兄さんの嘘」

「い、一体いつからだ……?」

情けないことに思わず動揺してごまかすのも忘れ、普通に聞き返してしまった。上手く言葉になっているかあやしいものである。
嘘を吐いていたにも関わらず、あやせの口調は相も変わらず優しいまま続く。

「あのメールを送ったときにはもう……。なんとなく、あれはお兄さんが桐乃を庇うための嘘だったんだろうなって。」

『大ウソ吐きのお兄さんへ。』
そんな文面で始まるあのメール……。そうか……あの時にはもう気付いてたのか……。

「あの時、わたしは桐乃の趣味を受け入れられなくて、お兄さんをスケープゴートにしてしまいました……」

「……嘘吐いてて悪かったな。それと、あの状況で俺を悪者にするなって方が難しいだろ、気にするな」

「わたし……嘘は今でも嫌いですけど、人のために吐く嘘もあるんですね」

その後、なんとも言えない空気のまま買い出しを終え、今はあやせの家に来ている。
あやせがどう思っているかはわからないが、俺はなんとなく気まずい状態に陥っていた。

「そう言えば」

「へ、へ!?」

そんな状態のときにあやせに話しかけられたもんだから、思わず声が裏返ってしまった。

「さっき聞きたかった、お兄さんがどうして桐乃に料理覚えてもらいたい理由をまだ聞いてません。
どうして桐乃に料理を覚えてもらおうと思ったんですか?」

「あ、ああ、そのことか……」

ぶっちゃけ、どうしてかなんて聞かれても特に意味はないんだよな……。
ただ、強いて言うなら―――

「俺と桐乃のため、なんじゃねーかな?」

「お兄さんと桐乃のため……?」



23: ◆WNrWKtkPz. 2011/07/26(火) 23:53:25.38 ID:xOIawt630


俺と桐乃は1年ほど前までお互いの存在を無視しあう冷めきった関係だった。
ところがふとしたことで桐乃の趣味を知ってしまい人生相談をされるようになり、それをきっかけにまた話をするようになった。
そして桐乃に偽の彼氏ができたとき、俺は自分では自覚してなかった“妹”への想いを気付かされ、
俺に彼女ができたとき桐乃の俺に対する“兄”への想いを教えられた。
要するに俺はシスコンであることを自覚させられ、桐乃は俺に“自分を一番に見てほしい”と伝えてきたのだ。
だから俺は今までとは打って変わり、妹の桐乃と仲良くしようと思い始めた。
今回の料理についてもそれの延長線にあたると言っても良いんじゃないだろうか。
あやせにそのことを伝えると

「やっぱり、お兄さんは優しい人ですね」

と言いながらなぜか複雑そうな顔をしていた。

「……本当に優しかったら妹と喧嘩すらできないほど冷めきった関係にはならないと思うぞ」

「桐乃とお兄さんの間に昔何があったかわたしは知りませんから、それについては何も言えません。
けど初めてお会いしたときとか、わたしの相談に何度ものってくれたりとかしたじゃないですか。
これってお兄さんが優しいからできたことだと思います。」

「そ、そうか……」

なんで俺は妹の親友に優しいって褒められる、恥ずかしい目にあってるんだ?
しかもあやせの部屋でだから余計に恥ずかしいぞ……。
俺は恥ずかしさから話を変えることにした。

「な、なぁ。ところで桐乃の料理はどうなんだ?昨日、練習日だったんだろ?」

「それなんですけど……桐乃の場合、調味料を間違えるとかはしない代わりに、分量を全く計らなかったり
火を弱めるということをしないので、それが失敗の原因になってます」

「それだけを聞いてると、とてもあんなものができるとは思えないな……」

結局、この日は高坂家の夕食の時間に近いということで桐乃の料理に関する話はこれ以上はできず、俺は新垣邸を後にした。


何がきっかけと言われたらあやせとの誤解が解けたことがきっかけだったのだろう。
この日の翌日以降からあやせは俺と桐乃を巻き込み、何かと理由をつけては3人で出かけることが増えた。
それが後日、あんなことになるなんてこのときの俺は思いもよらなかった。




37: ごめんミス ◆WNrWKtkPz. 2011/07/30(土) 23:51:18.17 ID:3OPIJc280

突然だが、俺こと高坂京介は普段からは全く馴染みのない渋谷に来ている。
……言っておくが一人じゃないぞ、なぜかあやせと来ている。しかも桐乃も一緒にだ。
なぜ俺がここにいて、なぜあやせと桐乃が揃っているのか、全く持って理由は不明だ。

部屋でおとなしく受験勉強に励んでいたらいきなり桐乃が部屋のドアを勢いよく開いて

「あんた、今からあたしと渋谷ね。一応言っとくけど、拒否権はないから」

などと言い詳しい説明もなしに渋谷に連れてこられたと思ったらそこであやせと合流し、わけがわからぬまま
109のファッションショップにそのまま直行し現在に至る。
なんで俺を渋谷に連れてきたのかとかそろそろ疑問に答えてもらってもいい頃だろう。

「なぁ、そろそろなんで俺が渋谷なんかに連れてこられたのか理由を教えてくれないか?
いきなり連れてこられて馴染みのない場所に来て戸惑ってんだが……」

「あれ?お兄さん、桐乃から何も聞いてないんですか?」

「桐乃から?いや、聞くもなにもいきなり連れてこられたから事情が全然わからないんだが」

「そうなの、桐乃?」

「事情って、あやせがいきなり電話であたしとこいつ含めた3人で渋谷に行きたいって一方的に伝えてきただけじゃん。
あたしもそれ以上の事情はわからないし、なんでこいつが一緒なのか納得してないんだからね」




36: ◆WNrWKtkPz. 2011/07/30(土) 23:50:07.99 ID:3OPIJc280

そりゃ桐乃からして見れば大好きな親友と遊びに行くのに、その親友から自分の兄貴も一緒にと言われたら面白くないだろうな。
というかなんであやせは桐乃だけじゃなくて俺も一緒に呼んだんだ?

「お兄さんを呼んだ理由ですか?……お兄さんのいる今はこの場で言えません。」

「なんだそりゃ?」

「……あやせ、あたしもこいつを連れてきた理由が知りたいんだケド。電話じゃほとんど一方的だったし?」

「うーん、桐乃には説明したつもりだったんだけどな……。桐乃ごめん、やっぱり今はまだ桐乃にも言わないでおく」

あやせのその返答を聞き桐乃はまだ食い下がろうとしていた。
まぁ、たしかにあやせのこの態度は隠し事とかウソが嫌いなあやせらしくはないな。

「なぁあやせ、俺はともかく桐乃にまで理由を話さないのはなんでだ?」

「そうそう、あんたって確かウソとか隠し事って嫌いじゃなかったっけ?」

「正確には隠してるわけではなくて、お兄さんに話す時期を決めてあるのでそのときに桐乃も一緒にと思ったんです」

なんだか釈然としないが、これ以上はあやせも触れてほしくなさそうなので話題を変えることにするか……。

「ならこの店に来た理由くらいはいいだろ?こういう店に普段は馴染みがないのとお前らといるせいで、さっきからいろいろと居心地が悪いんだよ……」

「このお店に来た理由ですか?一つは私と桐乃の服を探しに来たんです。
最近の洋服の傾向とかを知っておくと、読モの仕事ときにイメージしやすかったりで役に立つんですよ?
もう一つはお兄さんのお出かけ用の洋服を私たちで見立てようかなって思ってます。」

「え、ちょ、こいつの服見立てるとかあたし聞いてないんだけど!?」

「あれ?私、桐乃には伝えたつもりだよ?『私と桐乃とお兄さんの3人で出かけて、みんなで洋服を見よう』って」

「ええ!?あれってそういう意味だったの!?」




38: ◆WNrWKtkPz. 2011/07/30(土) 23:52:20.63 ID:3OPIJc280

あやせ……それじゃ伝わらなくて当たり前だ。それだと俺を荷物持ちにして服を見に行くって桐乃に思われても仕方ない。
ともかく、俺たち3人は先に桐乃とあやせの服の傾向のチェックをしに行ったんだが……。
レディースファッションのコーナーで見た目美少女の2人と地味な男の俺が1人。
しかも桐乃と俺は兄妹でも顔立が似てないもんだからさっき以上に周りから好奇心の入った視線で見られてるのがわかって、俺にはなんとも言えない居心地の悪い空間だった……。

「さて、私たちの服の傾向チェックは終わりましたから次はお兄さんの服を見に行きましょう」

「あれ?お前ら服買わないのか?荷物くらいだったら持ってやるぞ」

「んー、何着か気になる服はあったけど、買うほど気に入ったわけでもないから良いかなって」

「そういうわけなので次はメンズ中心の方に移動しましょう」

どうやら今までいたところは109の中でも女性向けの建物だったらしく、俺はあやせと桐乃に連れられて男性向けの建物に移動することになった。


「メンズのファッションショップに移動してきたはいいが、俺は何をすればいいんだ?
正直、俺にファッションセンスがあるとも思えないし、ここにあるものでどれが良さそうだとかも考えられないんだが……」

「それに関しては心配しないでください。私と桐乃の2人でお兄さんの服を見立てますから」

「そういうことだから、あんたは試着室の前ででもおとなしく待っときなさい」

「なんでお前も乗り気なの!?」




39: ◆WNrWKtkPz. 2011/07/30(土) 23:53:08.99 ID:3OPIJc280

しかたなく試着室の前で2人を待つことにした俺だが、待ってる間が暇で店に流れてる有線の音楽を聞きながらたまにかかる懐かしい曲に耳を傾けていた。
しばらくそうして待っていると、桐乃とあやせがそれぞれに服を持ちながらやってきた。

「お待たせしました」

「はい、これがあんたに来てもらう服だから今から試着会ね」

「おいおい……俺は何回着替えなきゃいけないんだ?」

桐乃たちが持ってきた服は2,3着どころではなく5,6着だった、上下の組み合わせも考えると何通りあるんだ?
さすがに全部の組み合わせを見るとか言わないよな……少し不安になってきた。

「お兄さんって顔立は悪くありませんから、こういう服が似合うかなって思って選んでたらちょっと多くなっちゃいました。」

「ま、あたしとかあやせと違ってあんたって地味顔だし美形じゃないから選ぶの苦労したけどね、ひひっ」

「地味顔とか美形じゃないとか余計なお世話だ!」

「き、桐乃……いくらなんでも言い過ぎじゃないかな……?」

桐乃はあやせにたしなめられ、渋々前言を撤回してきた。

「なぁ、それよりも結局俺は何回着替えればいいわけ?」

「はぁ!?あんた、折角このあたしが前言撤回してやったのに、それを『それより』で片すつもり!?」

「ま、まぁ桐乃、落ち着いて、ね?それでお兄さんが着替える回数ですけど、さほど多くはありません。
下のズボンは上の服と合わせると似合わなくなるものもありますから」

「そうか何十回と着替えさせられるわけじゃないんだな、良かった」





40: ◆WNrWKtkPz. 2011/07/30(土) 23:53:43.96 ID:3OPIJc280

――――――数十分後。
俺の手には試着をした内の何着かが店の手提げ袋に入って掲げられていた。

俺はてっきり、2人は俺をおもちゃに男性用の服の着せ替えをして楽しむつもりなのだと思い込んでいたのだが……
最後の試着をしたあと、あやせは桐乃と2人の間で特に評価の高かった服を数着手に持ち会計を済ませてしまった。
これには桐乃も予想外だったらしく、俺と同じように驚いていた。

「お兄さん、これはお世話になってるお兄さんへの気持ちを込めたプレゼントです。受け取ってくださいね?」

「お、おう。ありがとな、あやせ」

「え?なに?あやせの中のこいつの好感度ってこんなに高かったっけ!?」

あやせの言葉を聞くまでは年下の女の子に服を買ってもらうなんて恰好がつかないし、
服も普段俺が着るようなものとは値段が違うので断ろうとも思ったが、あやせにそこまで言われたら断れるわけがなかった。
しかし妹よ、女の子としてその発想はどうなんだ……俺も似たようなことを一瞬考えそうになったけど。





41: おまけ ◆WNrWKtkPz. 2011/07/30(土) 23:54:14.46 ID:3OPIJc280

こうしてこの日の買い物も終わり、俺たちは地元に戻りあやせと別れを告げ家に戻ってきた。
そして夜、飯も食い終え風呂にも入り自分の部屋に戻ってきたとき事件は起こった。

「こ、これは……!」

ダークウィッチ『タナトス・エロス』EXモード……のコスプレをしたあやせの写真!?
なんでこんなものが109の店の手提げ袋から出てくるんだよ!
実にけしからんので誰にも見つからないよう保管しとこう。そうだな、財布に入れておくか?
こんなことを考えながら俺は疲れを癒すため眠りに着いたのだった。



90: ◆WNrWKtkPz. 2011/08/11(木) 21:18:56.80 ID:fCRVL6RV0

先日、俺は桐乃に連れられあやせのある考えのもと普段とは馴染みのない渋谷に行き、そこで1日を過ごした。
過ごしたと言っても桐乃とあやせのファッションチェックに付き合い、
俺を着せ替え人形にしていくつかの服を試着したあとその中の一部をあやせにプレゼントしてもらっただけなんだけどな。
まぁあやせにプレゼントをしてもらえたこと自体、少し前の俺とあやせの関係から考えるとかなりの進展だろう。
誤解が解けるまではあやせに嫌われてたしな、俺。

ちなみに今、俺は妹の桐乃と一緒にある悩みを抱えている。
……あやせが桐乃にメールで今度は3人で秋葉原にこれから行きたいと言い出したのだ。
なんでまた3人なのかも気になるが一番気になるのは……

「なんであやせからアキバに行こうって誘われるの!?」

「俺に聞くな!俺だって知りたいわ!」

そう、なぜアキバなのかということだ。
桐乃の趣味について認めてはいないものの少しずつ歩み寄ろうとしてくれているが、基本的にあやせはかなりのオタク嫌いである。
そしてアキバと言えばオタクの聖地とまで言われるほどの町であり、どう考えてもあやせとは結びつかない。

「で、どうするんだ?あやせと秋葉原にまで本当に行くのか?」

「うーん……裏がありそうで怖いケド、折角あやせが誘ってくれたんだから断らないで行くことにする」

「ってことは、俺も行かなきゃなんねーってことか」

「そういうこと。正直、まだあんたと一緒にあやせと遊ぶことには納得はしてないんだけどね。
……あやせって言い出したら頑固だし、あやせと一緒にあんたからかうのは楽しいからもういいや」




91: ◆WNrWKtkPz. 2011/08/11(木) 21:19:56.11 ID:fCRVL6RV0

おい、今聞き捨てならんことを言わなかったか、この妹……。
それにしてもこいつが俺の前で楽しいなんて言うのは珍しいな。表の友達に関しては素直なんだな。
ちなみに桐乃は今、あやせに電話をしてアキバに行くことを伝えているようだ。

「うん、そう、ちゃんとバカ兄貴も連れて行くから。……わかった、これから駅で合流してそのままアキバね。
え?兄貴に変わんの?わかった。ってことではい、あやせがあんたに変わってだって」

「あ?ああ、わかった……あやせか?電話変わったぞ」

『お兄さん、こんにちは。お兄さんに確認したいことがあったので桐乃に変わってもらったんですが、迷惑でしたか?』

「いや、迷惑なんてことはないさ。それよりも確認したいことってなんだ?」

『あの……お兄さん、念のために言っておきますが、桐乃のいる前でセクハラはしないでくださいね?』

「するか!確認したいことってそれかよ!」

妹の前で妹の親友にセクハラするとかどんな勇者だよ!

『先日の買い物のときは大丈夫でしたけど、一応念のためにお兄さんに釘を刺しておこうと思いまして……』

「俺ってそんなに信用ないのな……」

『前にも言いましたが、むしろお兄さんが今まで私にしてきた所業を考えれば当然です!
それじゃあ、お兄さんに確認したいことも言いましたし、また後で3人で会いましょう』

あやせのやつ、言いたいことだけ言って桐乃にも変わらずに電話を切りやがった。

「ねぇ、いつまで妹のケータイ握りしめてるつもり?電話終わったんならさっさと返してくんない?」

桐乃は桐乃でさっきよりもテンションをあげて嬉しそうにしながら俺に突っかかってきやがった。
事情がわからなくてもあやせとアキバに行けるのが嬉しいんだろうな。
こうして俺は出かける支度をして、桐乃と一緒にあやせの待つ駅まで向かうことになった。



92: ◆WNrWKtkPz. 2011/08/11(木) 21:20:57.88 ID:fCRVL6RV0



――――――こうして俺達は地元の駅であやせと合流し、今は秋葉原に来ている。
ここに来るまでに抑えていたんだから、そろそろあやせに今日の目的を聞いてもいい頃だろう。

「なぁ、あやせ、今日ここに来た目的はなんなんだ?」

「前から桐乃が普段ここでどんなところに行ってるのか気になってたので、案内してもらおうと思ったんです。
わたし桐乃とモデル関係以外で共通の話題が欲しいの。ダメかな、桐乃?」

「い、いや……ダメじゃないケド……あやせのその言い回し、私じゃなかったらストーカーみたいだよ?」

そう言いながら桐乃は俺に困惑の目を向けてきた。おそらく、俺と桐乃が今あやせに対して思ったことは同じだろう。
たぶん、あやせは桐乃がオタク趣味に完全に傾いてしまうのが怖いのだ。
桐乃がオタク趣味だけになってしまえば必然的にあやせとの交流は少なくなり、オタク友達である
黒猫や沙織との交流の方が増えてしまうだろう。
ただでさえ、桐乃は一つのことに集中したら良くも悪くもそれが中心になってしまう。『ラブタッチ事件』はそれが特にわかる例だ。

「あやせの目的がわかったんだし、そろそろ行動しないか?いつまでも駅の入り口付近に突っ立ってるわけにもいかないだろ」

「それもそっか。それじゃあやせ、まずはアニメイトに行こ!」

「う、うん……ねえ桐乃、アニメイトってどういうお店なの?」

「えっとね、アニメイトは……着いてから説明した方が良いんだけど……」



93: ◆WNrWKtkPz. 2011/08/11(木) 21:22:13.23 ID:fCRVL6RV0


あやせの疑問に桐乃は楽しそうに答えていく。
ちなみに、俺にはアニメイトとアキバの駅のすぐ近くにあるゲーマーズの違いがあまりわからない。
ゲーマーズは入り口から中を覗いた程度だが店舗特典というのが違うだけで、扱ってる商品がほとんど同じじゃないかと思っている。
そんなことを考えながら桐乃達と並んで歩いていると、ふとあやせが口を開いた。

「ねえ、桐乃」

「どうしたの、あやせ?」

「さっきから気になってたんだけど、どうして同じ秋葉原の中にえっとソフマップ?ってお店がいくつもあるの?」

「んー、あたしも何でっていうのは知らないんだけど、同じソフマップでも扱ってるものが違うみたいだよ」

「たぶん、ソフマップは今から行くアニメ専門店じゃなくて普通の家電量販店だから、一つのビルにいくつも
ジャンルの違う商品を入れて客層がバラバラになるより、普通の専門店みたいに一つのビルに同じ客層が来る方が
購買率とかが良いんじゃないか?」

「たしかにいくつもビルあんのにその全部が同じ構造だったらどっか一つだけで済ませちゃうかもね」

「言われてみればそうですね。よく見ると本館とかアキバ☆ソフマップ1号店って書いてありますし」

そんなことを話し合ってるうちにアニメイトに到着だ。
あやせは加奈子をコスプレ大会に出場させるためにしかアキバに来たことがないから、この辺はほぼ未知だろうと思いあやせの様子を窺ってみると……。

「き、桐乃……?なんでこんなにガチャガチャがあるの?」

「うーん……メルルのガチャガチャは今日はないか……他は……」

「き、桐乃?」

妹が暴走していた。



94: ◆WNrWKtkPz. 2011/08/11(木) 21:22:47.24 ID:fCRVL6RV0

今のうちに桐乃に釘を刺しておくか。

「おい、桐乃」

「なに?」

「一応あやせもいるんだ、あいつらと来るときとはわけが違うんだからな。いつものテンションで行動はすんなよ?」

「う……うっさい!あんたがあたしに変な指図すんな!」

「桐乃!?ま、待って!」

そう言って桐乃は俺とあやせを置いてけぼりにしてさっさと店の中に入っていき、あやせはそれを慌てて追いかけていった。
俺も2人の後に続くとするか。

「うぅ……漫画ばっかり……」

あやせは店に入った瞬間にこんなことを呟き萎縮してしまっている。
なんか既にダメっぽい?

「そういえば、あやせと学校で話するときにマンガの話ってしたことなかったっけ。
あやせってマンガ嫌いなの?」

「嫌いじゃないけど、好きでもない……かな……」

つまり興味がないのか。こりゃアキバは厳しいだろうな。
桐乃はあやせに遠慮したのか知らんが、ここではメルルを始めとするアニメグッズ少しだけを買うに留めた。
そして俺達3人は隣の建物、とらのあなに移動することとなった。




132: ◆WNrWKtkPz. 2011/09/01(木) 19:20:43.16 ID:/5nvmBjdo

さて、とらのあなに移動してきたは良いが隙を見つけてあやせに忠告しておかないといけないな。
なにせとらのあなは上の階がほとんど、いわゆる『18歳未満お断り』なものしか置いてない。
だからあやせがそれを見る前に、そのコーナーには近づけないようにしたい。
これが桐乃がいなくてあやせと二人きりなら、あやせをからかう意味も込めて誘導してもいいんだがな。
なんてことを考えているとあやせが桐乃と話をし始めたようだ。

「ねえ、桐乃」

「どうしたの、あやせ?」

「さっきのお店で聞き忘れたんだけど、桐乃が普段読んでる漫画ってどういうのを読んでるの?」

「へ?あたしの読んでる漫画?」

「うん。いくら桐乃でも、流石にこれだけある漫画を全部読んでるわけじゃないでしょ?」

「当たり前じゃん。いくらなんでもこんなにある漫画を全部読むなんてできるわけないって」




133: ◆WNrWKtkPz. 2011/09/01(木) 19:21:23.70 ID:/5nvmBjdo

さて、とらのあなに移動してきたは良いが隙を見つけてあやせに忠告しておかないといけないな。
なにせとらのあなは上の階がほとんど、いわゆる『18歳未満お断り』なものしか置いてない。
だからあやせがそれを見る前に、そのコーナーには近づけないようにしたい。
これがあやせと二人きりなら、あやせをからかう意味も込めて誘導してもいいんだがな。
なんてことを考えているとあやせが桐乃と話をし始めたようだ。

「ねえ、桐乃」

「どうしたの、あやせ?」

「さっきのお店で聞き忘れたんだけど、桐乃が普段読んでる漫画ってどういうのがあるの?」

「へ?あたしの読んでる漫画?」

「うん。いくら桐乃でも、流石にこれだけある漫画を全部読んでるわけじゃないでしょ?」

「当たり前じゃん。いくらなんでもこんなにある漫画を全部読むなんてできるわけがないって」

「そうだよね?だから私ちょっと気になったの。『こんなにある漫画の中で桐乃はどれを読んでるんだろう?』って」




134: ◆WNrWKtkPz. 2011/09/01(木) 19:22:03.14 ID:/5nvmBjdo


なるほど。
確かにあやせみたいに普段、漫画を読まないとその多さに驚くだろうし友達が読んでる漫画がどれなのか気になるのもおかしくはない。
ただし以前のあやせは漫画=オタクの象徴みたいに考えている節があった。
今は桐乃の趣味を理解するためにそういう認識は改めているようだが……。
桐乃もそのことは承知なのだろう、教えるかどうか悩んでいる様子が表情に出ている。

「なぁ桐乃、別にお前が読んでる漫画くらいあやせに教えても良いんじゃないか?」

あやせが進んで桐乃の趣味を理解しようとしてくれているのだから、これくらいは桐乃とあやせ2人のためにも言ってやって良いだろう。

「うーん……たしかにあんたに貸してあげたやつならあやせでも大丈夫だと思うケド……」

「ね、桐乃、お願い!私、桐乃が読んでる漫画を読んで桐乃と話せる話題を増やしたいの!ダメかな?」

「……わかった、今からちょっとあやせに進めるやつ選んでくるから少し待ってて」

「ほんと!?ありがとう、桐乃!」

ついに悩んでいた様子だった桐乃が折れ、ここが公共の場でなければ抱きついていたかもしれないほどあやせは喜んでいるもしかしたらここで桐乃が拒否していたらあやせは落ち込んでいたかもしれないな。




135: ◆WNrWKtkPz. 2011/09/01(木) 19:22:29.52 ID:/5nvmBjdo


「お兄さんもありがとうございます」

「え?俺も?」

「ええ。たぶんお兄さんがあたしが読んでも大丈夫だろうって
言ってくれなかったら、桐乃は私に読んでる漫画を教えてくれなかったと覆います」

「そんなことはないと思うぞ」

なんだかんだ言って桐乃もあやせも友達思いだからな、あやせが粘っていたら結局は桐乃が折れていただろう。

「ふふ、そうだとしても、です。というより、それこそ『そんなことはない』と思いますよ?」

こんなことを言われたら俺は口を閉ざすしかない。なによりあやせにこんなことを言われたら嬉しく思ってしまった。
誤解が解けるまで、俺とあやせの関係はなんとも言えないものだった。
以前のあやせは俺に対して妹に手を出す近親相姦上等の変態鬼畜兄貴という印象だったし、俺はあやせに対して
妹の趣味を俺のせいにするためにそういう印象であることを振る舞い続けていた。
しかし誤解の解けた今、あやせの口からそんなことを言われると少しは信頼されているような気になってくる。




136: ◆WNrWKtkPz. 2011/09/01(木) 19:23:11.63 ID:/5nvmBjdo


「ところでお兄さん」

「ん?なんだ?」

「お兄さんは漫画を読まないんですか?」

「俺か?そうだな、俺は桐乃みたいに単行本は集めないで漫画雑誌で読んだりするくらいだな」

「それじゃあお兄さんのおすすめも教えてくれませんか?」

「俺のおすすめ、ねえ……わかった、ちょっとここで待っててくれ」

桐乃との共通の話題が欲しいはずなのになぜ俺のおすすめまで聞くのかとも思ったが、桐乃にああ言った手前
断るのもおかしな話だと思い深くは考えなかったのだが、この後すぐに俺はそのことを後悔することになる。




137: ◆WNrWKtkPz. 2011/09/01(木) 19:23:41.52 ID:/5nvmBjdo



俺があやせにすすめても問題なさそうな漫画をいくつか選んで戻ってくるとそこにあやせはいなかった。
そしてその代わりに我が妹が不機嫌そうな顔で仁王立ちしていた。

「あれ?あやせのやつどこに行ったんだ?」

「戻ってきてあやせもあんたもいないから二人で他の漫画でも見てんのかと思ったのに、なんであんた一人だけなのよ」

「しらねーよ、俺はあやせに言われて俺もあやせにすすめる漫画探してたんだからよ」

「実はあんたが一人で戻ってきたときからなんとなく嫌な予感がしてんのよね……」

「同感だ……なんとなくだが嫌な予感しかしない……」

おそらく桐乃も薄々勘付いているんだろう、あやせがどこに行ったのか。
実は俺も桐乃と同様に戻ってきてあやせがいないことからずっと階段が気になっていた。

「桐乃、お前はここで待ってろ」

「なんであんたが指示出してんの?あやせはあたしの親友なんだからあたしが行くに決まってんじゃん!」

「お前とあやせが親友だと思ってるからこそ、だよ。
お前、もしもあやせから同人誌売り場で堂々としてることに突っ込まれたら、言い訳せずにあやせを連れてこれるか?」

「うっ……」

「だったら年齢的にも堂々と買える俺が言った方がまだ話は早いだろ……?」

「わかった……あんたじゃなくて、あやせを信じてここで待ってる」

「へいへい、そうしろ。んじゃ、俺はあやせを連れ戻してくる」




138: ◆WNrWKtkPz. 2011/09/01(木) 19:24:20.74 ID:/5nvmBjdo


……桐乃の手前、連れ戻してくるとは言ったが正直どうなるか予測がつかない。
俺とあやせの誤解の原因になったあの事件のとき、エロ同人誌を少し見せただけで平手打ちしてきたくらいだからな……。
そんなことを考えながら階段をのぼりきったところで、ちょうどあやせの後ろ姿が見えたので俺は恐る恐る声をかけてみた。

「あ、あやせ……?」

「お、おおお、お兄さん!?な、なんですか、ここは!?」

「お、落ち着けあやせ!」

「上の階にのぼったとたん……え、えええ、エッチな本ばっかりじゃないですかぁ―――っ!」

「ここはそういうものも扱ってるんだよ!
それに、勝手にいなくなってろくに売り場の確認もせずに怒るのはちょっと筋違いじゃないか?
まぁ、注意しなかった俺と桐乃も悪いかもしれんが……」

「う、うう……」

「とにかく、一度桐乃と合流してそれから外に出よう」

アキバに来たいと言い出したのはあやせとは言え、あやせを連れてアキバ巡りなんて無茶もいいところだよな!




139: ◆WNrWKtkPz. 2011/09/01(木) 19:24:55.38 ID:/5nvmBjdo



さて、あの後あやせを連れて桐乃と合流してとらのあなを出た後、桐乃の提案で休憩をすることにした。
初めは渋っていたあやせだったが、休憩をする場所もアキバ巡りを兼ねていることを伝えると大人しく休憩をしてくれることになった。

ということで俺たちはメイド喫茶『プリティ・ガーデン』の扉の前にまで来ている。
何か忘れているような気がするが、思い出せないことだから重要なことでもないだろう。
しかし俺はこのことをすぐに後悔することになる。

「「おかえりなさいませ!ご主人様、お嬢様!」」

「こちらのお席へどうぞ~♪」

店に入ったとたんにあやせが落ち着かなさそうにしている。
ま、俺も初めてきたときはそうだったから気持ちはわかる、しかも一人だったしな。

「あの……桐乃、お兄さん」

「どうしたの?」

「……このお店って?」

「あぁ、初めて来たらそりゃ戸惑うよな。ここは『メイド喫茶』だ」

「め、メイド喫茶?」

「あやせ、アキバに来たなら『メイド喫茶』は当たり前だよ?」

「そ、そうなの……?じゃ、じゃあ……体験しとかないといけないね」




140: ◆WNrWKtkPz. 2011/09/01(木) 19:25:44.07 ID:/5nvmBjdo


なんだか良くわからん説明で納得してしまった。
まぁあやせが納得しているなら俺が口をはさむことでもないか。

「なぁ、そろそろ何か注文しないか?でないと休みにきた意味がないだろ」

「たしかにそれもそうか。あやせ、なに食べる?」

「なにって言われても……メニューに何が書いてあるのかよくわからないんだけど……」

「それじゃあたしと同じメニューで良い?」

「うん、お願い」

桐乃はもうメニューを決めたようだし、注文しても問題なさそうだな。

「そんじゃ注文するぞ?―――すみませーん」

「お兄さん……なにか手慣れてませんか?」

「こいつよくこの店来るからね、それで手慣れてるんじゃない?」

どの口が言うか……。

「あ!おにぃちゃん!また来てくれたんだぁ~?」

「……げぇ……っ……」

紹介しよう、俺をおにぃちゃんと呼ぶこのメイド姿の女性は星野きららさん。
初めてこの店にきたときからなぜか俺をこう呼んでいるのだが、どう見ても俺よりも■歳くらい上だろうが!




141: ◆WNrWKtkPz. 2011/09/01(木) 19:26:09.66 ID:/5nvmBjdo


「……ふーん」

「そういえば……あんた、きららさんに『おにぃちゃん』って呼ばれてるんだっけ……」

桐乃がなんとも言えない気まずそうな表情をしている。
どうして俺は妹とその親友の前でメイドさんに『おにぃちゃん』と呼ばれる辱めを受けているのだろう?

「どうして、メイドさんから『おにぃちゃん』って呼ばれているんです?」

「色々と事情があったんだよ……」

この後、きららさんがあやせに『呼び方のオーダーサービス』について説明をしてしまい、
俺は地元に戻るまでずっと、したくもない言い訳に終始することとなってしまった……。




142: ◆WNrWKtkPz. 2011/09/01(木) 19:26:36.42 ID:/5nvmBjdo



「桐乃、今日はありがとうね?」

「そんな挨拶良いって、あたしとあやせの仲じゃん」

ほんと、表の友達には素直なやつだ。普段もこれくらい素直ならいいのにな。

「今日、桐乃とお兄さんと一緒に回って、桐乃の趣味が少しわかった気がする……」

「あやせ……」

「お兄さんも、私のわがままに付き合ってくれてありがとうございました」

「おう、今日はお疲れ」

「それじゃあ桐乃、また明日ね。今日は私に付き合ってもらったけど、ちゃんと料理の練習も忘れないでね?」

「うっ……」

そういやこいつ、あやせに料理教えてもらってるんだっけ。
ここんとこ忙しかったし、すっかり忘れてた。
というか、桐乃のこの反応だとこいつも忘れてたな。

「それじゃあ、お兄さんも。失礼します」

「ああ、またな」

こうしてこの日のあやせとのアキバ巡りは幕を閉じたのだった。
そしてこのときはまだ俺も桐乃も、あやせの胸のうちには気づいていなかったんだ。




186: ◆WNrWKtkPz. 2011/10/14(金) 22:43:11.91 ID:pkNG5mAqo

あやせに連れられて桐乃を含めた3人でアキバに行った翌日、俺はあやせのお願いとして呼び出されていた。
呼び出されたと言っても、いつものような相談ではないし、場所も例の公園ではない。
俺の家で桐乃の料理の練習をするので、練習の最後に桐乃がどれほど上達したのか試食して確かめて欲しいと頼まれたのだ。
桐乃の料理ということで若干の不安があるものの、あやせが「上達した」と言っているので渡りに船とばかりに俺は了承したのだった。

実は何故かはわからないが最近、麻奈実の態度が少し冷たいので図書館で恒例の勉強会をしていても少し気まずい……。
だからこそ受験生として問題だとは思うが、あやせのお願いはタイミング的にありがたいものだったのだ。
そんなことを考えながら一人で帰宅していると、俺の家の前に不審者がいた。
いや、不審者というか俺を呼び出した張本人のあやせなんだが……。

「あやせ……なにやってんの?」

「へ?お、お兄さん!?」

声をかけただけでここまで驚かれると、なにも悪くないのにこっちが悪いことをしたような気になるな……。
それより……

「なぁ、なんで俺の家の前でキョロキョロしてたんだ?桐乃と一緒じゃなかったのか?」

「ここまでは一緒にだったんですけど、桐乃ったらちょっと待ってて欲しいって言って急いで家の中に入って行っちゃって……」

―――なるほど。そういえばあいつ、昨日はエロゲをやってたみたいだが、あやせが来るまで忘れてたんだろうな。
それであやせにそれを見られないように必死で部屋を片付けてるってところだろう。





187: ◆WNrWKtkPz. 2011/10/14(金) 22:43:50.91 ID:pkNG5mAqo

「そういえばお兄さん」

「ん?なんだ?」

「彼女と別れたって聞きましたけど……。
それって、前にわたしが『嘘つき』とか『結婚してくれって言ったのに』って言ったことと関係ありますか?」

「なんであやせが別れたことを知ってるんだよ……」

「い、良いから答えてください!」

「……関係ない。というより、そんなことを思い出してる余裕がなかったってのが正解かもな」

「そう……ですか……」

……すごく気まずいんだけど、俺はどうすれば良いの!?
答えろって言われたから答えたのに、あやせは何も喋ろうとしないし、俯いていて表情も窺えない……。

「あやせ、お待たせ!あがって良いよ……って、あれ?あんた帰ってたんだ?」

そんなことを考えていたから、玄関から桐乃が顔を出したときは緊張が緩んで足から力が抜けそうになってしまったのも仕方ないだろう。

「お、おう……ただいま」




188: ◆WNrWKtkPz. 2011/10/14(金) 22:44:49.14 ID:pkNG5mAqo


家にあがった後、あやせはさっきはなんだったのかと思うくらい普段と同じように振る舞い、そのまま桐乃と料理をするための準備を始めた。
ちなみに、なぜ今日に限って桐乃は自分の家で練習しようとしているのかというと、親父たちが法事の関係で家を空けているからである。
なんでも一年ほど前に行った福島の叔父のところへ今年も行かなければならなかったのだが、親父の仕事の関係で今日まで行けなかったらしい。

そして俺はというと、桐乃達が練習をしている間は手伝うこともないので自分の部屋で受験勉強をしていた。
受験勉強と言ってもセンター試験の過去問などではなく、夏休み前までに教わったところの復習である。
夏休みの間もちゃんと課題はあったがそれでも全部を思い出せるほどではなかったし、受験生にとって教わった内容を忘れたままでいるのは致命的だからな。
しばらくすると扉をノックする音が聞こえてきた。
桐乃の今までの行動からあいつがノックをするとも思えないから、おそらく扉の外にいるのはあやせだろう。
そして扉の外にいたのは、やはりあやせだった。

「やっぱりあやせだったか。どうかしたか?」

「ええ。桐乃の料理の練習も一段落したので事前に言っていた通り、お兄さんに試食してもらおうと思いまして」

あやせにそう言われて時間を確認してみると、家に帰ってきてからけっこうな時間が経っていた。
思っていたよりも勉強に集中していたようだ。



189: ◆WNrWKtkPz. 2011/10/14(金) 22:45:28.98 ID:pkNG5mAqo


「わかった。すぐに行くから下で桐乃と一緒に待っててくれ」

道具を片付けてから階段を下りてリビングに行くと、既に試食のための配膳を済ませた桐乃とあやせの二人が揃っていた。
ちなみに桐乃は見るからに不機嫌そうである。

「遅い!折角あやせが呼びに行ったのに、なんであんたは一緒に来ないのよ!」

「はいはい、悪かった悪かった」

桐乃の理不尽なこの反応はいつものことなので俺は軽く流していたのだが、ふと気が付くとなぜかあやせは笑みを浮かべていた。

「なぁ、あやせ。今のやり取りに笑うようなところってあったか?俺にはただ桐乃が理不尽なことを言ってきたようにしか思えないんだが……」

「ふふ、ごめんなさい。桐乃の反応がおかしくて、つい。だって桐乃、料理ができたとき―――」

「ちょ!あやせ!あんた何を言おうとしてるの!?」

あやせが何かを言いかけた瞬間、初めは何が言いたいのかわからないといった顔をしていた桐乃が慌ててあやせの言葉をさえぎった。
あやせは何が言いたかったんだ?それに桐乃もなんであんなに慌ててたんだ?
あやせと桐乃にそのことを聞こうとも思ったのだが、桐乃に

「あんたはこれ以上、余計な詮索をすんな!」

と言われ、一方的に話が終わってしまった。

「それよりも、あんたは早くあたしの作った料理を食べなさいよ」

「はぁ、わかったよ……」





190: ◆WNrWKtkPz. 2011/10/14(金) 22:46:14.31 ID:pkNG5mAqo

いまいち納得はしてないが、これ以上桐乃を不機嫌にさせることはあらゆる意味で避けたいので指示に従うことにした。
ちなみに桐乃の料理は見た目からして以前よりはるかに上達しているであろうことがわかる。
匂いも異臭が漂うどころか、むしろおいしそうな良い匂いがしている。

「ふむ、見た目は悪くない」

「当たり前じゃん。それよりも肝心の味はどうなのよ……?」

確かに見た目は悪くないのだが……いかんせん、桐乃の料理に対してはトラウマのようなものを感じてなかなか口に含む勇気が出てこない。
と、そこでそんな様子の俺に見かねたのかあやせが助け舟を出してくれた。

「お兄さん、味見は二人でしましたから大丈夫ですよ」

なるほど、あやせのお墨付きなら問題ないだろう。
今のあやせの台詞に気になることでもあったのか、近くでなにやら桐乃が騒いでいるがたいしたことじゃないだろうし気にしないでおこう。
意を決して桐乃の料理を口に含み、その様子を固唾を飲んで見守る桐乃とあやせ。
そして口の中が空になると、俺は何も言わずに再び桐乃の料理を口に含む。
それだけであやせには通じたのだろう、顔をほころばせて笑っている。
一方の桐乃は、俺が感想どころか何も言わないのでかなり不安そうな顔をしている。
さて、マンガじゃあるまいしこれ以上引っ張ることもないだろう。
俺は二人に向けて口を開いた。





191: ◆WNrWKtkPz. 2011/10/14(金) 22:46:39.53 ID:pkNG5mAqo

「あやせ」

「なんですか、お兄さん?」

「桐乃に料理を教えてくれてありがとう。」

「ふふ、どういたしまして」

「それから桐乃」

「な、なによ……」

「料理、すっげーうまかった!ごちそうさん」

「な、え、あ、当たり前じゃん!つーか紛らわしいことすんな!」

そういう桐乃は、口調は怒っているのに顔は嬉しそうという器用な表情をしていた。

「ふふ、桐乃、良かったね!けどお兄さん、なんであんなことをしたんですか?」

「いや、それはだな……」

できれば言いたくないのだが、あやせは俺の表情から察したようだった。

「お兄さん、表情でまるわかりですよ、ふふ」

「うっ……」

「え?なに?どういうこと?」

どうやら当の本人はわかっていないようなので、よしとするか。
さて、当初の目的は果たしたわけだが、この後はどうするんだろうか?
そんなことを考えているとあやせが話を切り出した。



193: ミスしたので>>192はスルーで ◆WNrWKtkPz. 2011/10/14(金) 22:49:03.14 ID:pkNG5mAqo


「桐乃、お願いがあるの」

「改まってどうしたの、あやせ?」

直前までの雰囲気のままの桐乃とは対照的に、あやせの雰囲気はなにやら真剣そうだった。

「お願い!少しの時間だけでいいからお兄さんと二人で話をさせてもらえないかな?」

「え?俺と?桐乃じゃなくて!?」

「あやせ……あんた、まさか……」

今の短いやり取りで桐乃はあやせの真意に気づいたようだが、俺にはさっぱりだ。
今までもあやせとは二人きりになることは何度かあったが、桐乃に知らせることはなかった。
それなのにわざわざこのタイミングで桐乃に確認を取ろうとする理由がわからない。

「……わかった、あたしはしばらく部屋に戻ってる。ただしあやせ、これだけは覚えておいて。
こいつは無敵の完璧超人でもなんでもなくて、ただの一人の人間なんだって」

「ありがとう、桐乃……」

なんか今、桐乃の口から信じられない言葉が出てきたのは気のせいか?というか、なんでそれをあやせに伝えたんだ?
あやせといい桐乃といい、よくわからん……。
桐乃がリビングを出て行き、後に残されたのは流れのよくわかっていない俺と、
何かしらの決意を秘めているのではないだろうかと思わされる雰囲気のあやせだけだった。

「なぁ、あやせ―――」

「お兄さん、お話をする前に少しだけわたしの独り言を聞いてくれませんか?」

「え?あ、ああ……構わないけど……」



194: ◆WNrWKtkPz. 2011/10/14(金) 22:49:48.26 ID:pkNG5mAqo


「前にも言ったと思いますけど……わたし、お兄さんと初めて会ったとき優しそうな人で良いなって桐乃が羨ましく思えたんです。
けどわたしが桐乃の趣味を知ったとき、お兄さんはいやらしい本を指しながら妹の桐乃が大好きだと言い出しましたよね?
その瞬間、わたしはお兄さんが信じられなくなりました。
ですが家に帰って落ち着いてよく考えてみると、お兄さんの目は真剣でした。真剣な目をした人があんないい加減なことを言い出すでしょうか?
そこまで考えてわたしはお兄さんがわからなくなりました。
お兄さんのあの言葉の中には本心が混じっていたのでしょうが、どこまでが嘘でどこまでが本心だったんでしょうか?
桐乃の留学の前後でお兄さんにはご相談に乗ってもらいましたが、お兄さん対して
嘘つきと思っている反面、お兄さんに惹かれているわたしがいました。
と言っても、お兄さんに惹かれていることに気付いたのはもっと後のことで、先日です。
お兄さんに彼女ができたと知ったとき、心がもやもやしました。お兄さんに彼女ができてもわたしには関係がないと思っていましたから。
そして先日買い物に付き添ってもらったとき、わたしはわたしの中にある感情にやっと気付きました。
……わたしの独り言は以上です。」

「あやせ……」

あやせの告白とも言える独り言に俺は何も反応できないでいた。



195: ◆WNrWKtkPz. 2011/10/14(金) 22:50:53.38 ID:pkNG5mAqo


「お兄さん、さっきこの家にお邪魔する前にわたしお兄さんに『お兄さんが別れたのはわたしのせいですか?』ってお聞きしましたよね?」

「…………」

「その答えを聞いたとき、わたしは嬉しいと思う気持ちと、嫉妬する気持ちの両方がありました。なぜだかわかりますか?」

俺は『わからない』と、そう言いたいのに、言葉が出てこない。

「わたしが枷になってしまってお兄さんが別れたわけじゃなくて良かった。
だけど、わたしの言葉はお兄さんにとって重要な場面で思い出してもらえるほどではなかった。
そう考えたら嫉妬せずにはいられませんでした」

あやせは自分の想いを語っているが、決して『誰に』嫉妬したのか言おうとしなかった。

ここまで遠回しな様で直球で来たのだ、恐らくあやせの次の言葉で決定的なことを言われるのだろう。
しかし、俺はそれに応えることができるのだろうか?
そんなことを考えているとき、俺のケータイの着信が鳴った。
タイミングが良いというか悪いというか、相手は黒猫だ。

「悪い、あやせ……。出ても良いか?」

「ええ……」

俺の表情から何かを察したのだろう。快くとまではいかなくとも、了承してくれた。



196: ◆WNrWKtkPz. 2011/10/14(金) 22:51:50.82 ID:pkNG5mAqo


「もしもし?」

『……思っていたより出るのが早かったわね』

「悪い、今ちょっと立て込んでるから後で―――」

『あなたの妹から事情は聞いているわ。あの女の友人から告白された、もしくはされそうになっているのでしょう?』

その通りなのだが、なぜ知っているのか、なぜこのタイミングなのか、俺は聞き出すことができなかった。

『私の自惚れかもしれないけど、あえて言わせてもらうわ。あなたのことだから告白されたとしても私のことを考えて告白を受け入れるか迷うでしょう?』

まさしくその通りだった。
あんなことがあって黒猫と別れたのに、その直後に別の女の子に告白されてその子と付き合うのは黒猫に失礼な気がしていた。

『だから言わせてもらうわ。巫山戯ないで頂戴!』

「黒……猫…………?」

『あなたにそんなつもりはないのだろうけど、その考え方は相手に失礼よ。
それにそんな天秤で量られた同情で他の子の告白を断られても、嬉しいどころかむしろ迷惑だわ』

「っ……!?」

『それからあなたの妹のことだけれど、あの子に遠慮するのも止めなさい』

「どういうことだ……?」

『どうして私がこのタイミングであなたに電話出来たのか教えてあげるわ。
わざわざあの子が私に教えてくれたのよ。あなたのことを想ってくれている女の子の告白をあなたは断るだろうって。
あの子はもう覚悟しているわ。だからあなたの恋愛まであの子に遠慮するのは止めなさい』

「……そうか」

『ただし、これだけは忘れないで頂戴。私はあなたのことを諦めたわけではない。
私が言いたい事は全て言ったわ。また今度、“友達”として皆で遊びましょう……。』



197: ◆WNrWKtkPz. 2011/10/14(金) 22:52:19.35 ID:pkNG5mAqo


言うだけのことを言ったら黒猫は俺の返事も聞かずに電話を切ってしまった。

「『友達として』、か……」

桐乃にも黒猫にも悪いことしたな。けど、黒猫のおかげで俺の気持ちは固まった。

「お兄さん……?」

「あ、ああ、悪い」

「お兄さんの電話で話が途切れてしまいましたが……。
お兄さんにはお兄さんの交友関係があるとわかっていても、わたしの知らないお兄さんがいることに不安を感じてしまいます……」

「あやせ……」

「だから、お兄さん……わたしと付き合ってください」

あやせは少し躊躇ったあと、まっすぐ俺の顔を見ながら告白してきた。

「今の電話さ、彼女だったやつからだったんだよ」

「お兄さん……?」

告白をしたのに返事をしないどころか急に電話の話を始めた俺にあやせは怪訝な表情を浮かべた。
だが俺は構わず続ける。これは俺なりのけじめだ。



198: ◆WNrWKtkPz. 2011/10/14(金) 22:53:59.17 ID:pkNG5mAqo


「あいつ、俺があやせから告白されそうなの知ってて電話してきたんだよ。そんでさ、怒られちまった。
俺はそんなつもりはなかったんだが、天秤に同情を乗せて量るな、そんなことされても迷惑だしあやせにも失礼だって。
それからあいつ、最後にこう言ったんだよ。『私はあなたのことを諦めたわけではない。また今度、“友達”として皆で遊びましょう……。』だってよ。
あいつ気付いてたんじゃねーかな?確かに俺はあいつのことが好きだったけどその好きは一番じゃなくて、それを俺が自覚してなかったこと……にさ。
情けないよな、俺。彼女だったやつに電話で怒られて、あやせに告白されてやっと気付くんだから。」

ここで俺は一息つく。あやせは初めこそ怪訝な顔をしていたが、俺の言葉をずっと真剣に聞いてくれていた。

「なぁ、あやせ。……こんな情けない俺で良いのか?」

「……お兄さんは情けなくなんかありません、むしろ優しすぎるくらいです。
もう一度言いますね。お兄さん……いえ、高坂京介さん、わたしと付き合ってください」

信じられないことに、あやせは俺の話を聞いて優しすぎると言い、改めて告白をしてきた。



199: ◆WNrWKtkPz. 2011/10/14(金) 22:54:30.07 ID:pkNG5mAqo


「……わかった。あやせ、付き合おう」

こうして俺は、妹の親友であるあやせと付き合うことになった。

「おめでとう、兄貴、あやせ」

「桐乃!?」

俺があやせに返事をした直後、いつの間にか桐乃がリビングに入ってきた。
あやせは声を出して驚いていたが、俺はあやせに返事をするときからなぜか桐乃が部屋から出てきている気がしていたので、そこまで驚くことはなかった。

「桐乃、ごめんな。あんなこと言って黒猫と別れたのに、あやせと付き合うことになっちまった」

「大丈夫。あやせと3人で遊ぶことが増えたときからなんとなくだけど、予感があったんだ。
だからもう覚悟は決めた」

「そうか……」

黒猫には今度、改めて謝らないとな。

「桐乃、ごめんね。だけど、ありがとう」

「あやせ……たぶん、これから大変だろうけど、京介のこと見捨てないでやってね」

「お前なぁ……!」

「ふふ」

あやせも笑ってないで否定してくれよ……。
この日はあやせもうちに泊まることになり、次の休みの日に二人きりでデートをする約束をした。

数年後、俺はあやせにプロポーズし結婚することになるのだが、このときは俺とあやせを含めて誰も知らないでいる。



200: エピローグ ◆WNrWKtkPz. 2011/10/14(金) 22:56:09.25 ID:pkNG5mAqo



結婚式を兼ねた披露宴にはお互いの両親はもちろんのこと、桐乃や加奈子、あやせの友達やモデル仲間、ブリジットにリア、
御鏡にゲー研の連中、田村家と赤城兄妹、そして沙織に黒猫、黒猫の妹である日向ちゃんと珠希ちゃんまでも来てくれた。

ちなみに会場は、あのメイド喫茶「プリティガーデン」である。
あやせと話し合い沙織に相談してみたところ、星野きららさんが快く承諾してくれた。
親父はメイド喫茶と聞き顔をしかめていたが、お袋とあやせの両親には意外とウケが良い様だった。

言い忘れていたが式の出席者にはなぜか、沙織のお姉さんとそのサークル仲間もいる。
香織さん曰く『あの妹が一から作りあげた仲間の結婚式だ、出席しないわけにはいかんだろう!』だとか。
香織さん達と面識があるのは俺の方なので一応新郎席側にいるが、あのサークルには加奈子のお姉さんもいるらしく、姉妹で新郎席と新婦席に分かれているそうだ。

そして今、俺は控え室であやせと一緒にいる。

「いよいよですね、京介さん」

「いよいよ……だな」

「付き合い始めたときはこんな日が来るとは信じられませんでした」

「俺もだよ……。一応は意識してたが、まさか本当にこの日が来るなんてな……。」

俺はあやせの言葉を受け、あの頃を思い出しながら苦笑する。

「今だから言うけど、俺いつかあやせにふられるんじゃないかって思ってた」

「もう!そんなことあるわけないじゃないですか!」

「はは、悪い悪い。けどさ、本当に信じられなかったんだよ、あやせと付き合えてたのが」

ふと会話が途切れるが、昔のように気まずい雰囲気はない。



202: ◆WNrWKtkPz. 2011/10/14(金) 23:00:04.75 ID:pkNG5mAqo

以上で、このスレでのSSの投下を最後とさせてもらいます
最後まで読んでくれた皆さん、本当にありがとうございました

この後、あとがきのようなものをだらだらと書き連ねるので、それに興味がない方とはここでお別れです
また本スレでお会いしましょう



203: ◆WNrWKtkPz. 2011/10/14(金) 23:27:35.64 ID:pkNG5mAqo

上で言い忘れてましたが、このスレは月曜日にでも依頼に出そうと思います


というわけで、7月からちまちまと書いていたこのSSも終わりです
告白のくだりはくどいし、最後の終わり方はちょっと強引かなーとは思いつつ、所詮は俺のオナニーだし良いかってことで終わらせました
これだけ短いなら全部書き溜めたあとに本スレでやれば良かったかもと思いつつ、最後まで書ききれたのは個別スレだったからかもしれません

最後の最後に3人以外の人物が一人電話で登場し、他の連中も名前だけですが出てきました
実はこれ、このスレを立てた頃には全く考えてなかった展開です

あの電話の部分はどうにもただあやせに告白させて、それで京介がOKしちゃったら京介が女たらしというか悪い奴みたいになりそうな展開しか出てきませんでした
ただあの部分の直前で詰まりかけたときにふと思い浮かんだので、そのままフォロー役に回ってもらいました
黒猫ファンの人には申し訳ないことしたとは思いますが、これ以外に京介を悪役にしないであやせとくっつける方法が浮かびませんでした

ついでに言うとスレを立てたときに考えてた展開は、スレタイを回収してあやせが桐乃に京介と付き合わせてくれとお願いする展開でしたし、最後のエピローグのくだりも当初の予定にはありませんでした
だというのに、9巻を読んだらあやせは黒猫と別れた理由を知らされないままだったので、自分の展開に納得がいかず少し強引に展開を変えました

エピローグについては最後ら辺を書いていたら気付いたら結婚式のことまで書き始めてました
それならせっかくだし、ということでこの結婚式の始まる直前でフェードアウトさせて完結させることにしました

今後についてはたぶん、もうスレを立てるってことはしないと思います
が、SSを書くこと自体はやめるつもりはないので、また本スレにでも投下するかもしれません

またお会いしましょう



206: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) 2011/10/15(土) 00:28:39.79 ID:lh80w2LAO

乙乙

3人メインにしては桐乃がちょっと描写すくなかったけど、それはそれとして楽しめたよ。




元スレ
SS速報VIP:あやせ「桐乃、お願いがあるの」 桐乃「改まってどうしたの、あやせ?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1311580854/