過去作
淡「サキ、みかん取って」
咲「宮永咲の、お先におやすみなさい」
咲「宮永咲のお先におやすみなさい」淡「二局目っ!」
咲「宮永咲の、お先におやすみなさい」モモ「3局目っすよ」
咲「宮永咲のお先におやすみなさい」健夜「4局目だね」
咲「宮永咲のお先におやすみなさい」アシ「5局目ですね」【咲先ラジオ】
健夜「咲ちゃん、アイス買ってきたよ」
咲「宮永咲のお先におやすみなさい」憧「6局目ね」【咲先ラジオ】
咲「宮永咲のお先におやすみなさい」霞「ふんふむ…7局目ね」【咲先ラジオ】
淡「大星淡の、今夜はスター☆ナイトっ!」咲「えぇ…?」【咲先ラジオ8局目】
咲「日常だよ、お姉ちゃん」 照「日常、だね」
咲「猫ちゃんかーわいいーっ!」 和「……」
咲「宮永咲の」アシ『お先におやすみなさい』【咲先ラジオ第9局目】
健夜「いよいよ開戦インターハイ」咲「私は観戦」【前編】
健夜「いよいよ開戦インターハイ」咲「私は観戦」【後編】
健夜「まだ終わらないインターハイ」咲「Bブロック、ですね」【前編】
健夜「まだ終わらないインターハイ」咲「Bブロック、ですね」【後編】
SS速報VIP:健夜「まだ終わらないインターハイ」咲「Bブロック、ですね」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1473073727/
1: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/05(月) 20:08:47.62 ID:+aSt3BUS0
淡「サキ、みかん取って」
咲「宮永咲の、お先におやすみなさい」
咲「宮永咲のお先におやすみなさい」淡「二局目っ!」
咲「宮永咲の、お先におやすみなさい」モモ「3局目っすよ」
咲「宮永咲のお先におやすみなさい」健夜「4局目だね」
咲「宮永咲のお先におやすみなさい」アシ「5局目ですね」【咲先ラジオ】
健夜「咲ちゃん、アイス買ってきたよ」
咲「宮永咲のお先におやすみなさい」憧「6局目ね」【咲先ラジオ】
咲「宮永咲のお先におやすみなさい」霞「ふんふむ…7局目ね」【咲先ラジオ】
淡「大星淡の、今夜はスター☆ナイトっ!」咲「えぇ…?」【咲先ラジオ8局目】
咲「日常だよ、お姉ちゃん」 照「日常、だね」
咲「猫ちゃんかーわいいーっ!」 和「……」
咲「宮永咲の」アシ『お先におやすみなさい』【咲先ラジオ第9局目】
健夜「いよいよ開戦インターハイ」咲「私は観戦」【前編】
健夜「いよいよ開戦インターハイ」咲「私は観戦」【後編】
健夜「まだ終わらないインターハイ」咲「Bブロック、ですね」【前編】
健夜「まだ終わらないインターハイ」咲「Bブロック、ですね」【後編】
SS速報VIP:健夜「まだ終わらないインターハイ」咲「Bブロック、ですね」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1473073727/
1: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/05(月) 20:08:47.62 ID:+aSt3BUS0
健夜「いよいよ開戦インターハイ」咲「私は観戦」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1472318624/の続きになります。
・咲さんのコーチに健夜、後輩にマホが居ます。
・前回は阿知賀編(Aブロック編)、今回はBブロック編です。
・咲ちゃんではなく、咲さんです。キャラ改変注意
・Bブロック編と言っても、Aブロックのキャラも普通に出てくると思われます。
今回は、前回のスレも見て頂いてからの方がより楽しんで頂けると思います。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1473073727
3: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/05(月) 20:17:25.40 ID:+aSt3BUS0
【始まり】
~咲・宿泊ホテル~
咲「……」パチ
咲「…ん……朝……?」ムク
咲「ふぁ……」ネムネム
咲「…よく寝たな…」ゴシゴシ
咲「……」イワカン
咲「……?」チラ
マホ「ん……」スヤスヤ
健夜「…」スースー
咲「……」スッ
マホ「んへへ……」ギュー
健夜「んぅ…」ギュッ
咲「……」グイグイ
咲「…はぁ」
咲(2人の腕が絡まってて起き上がれない……)
咲(何で二人とも私のベットで寝てるの…?)ハァ
咲「……」
咲「健夜さん、邪魔です……どいてください」グイグイ
健夜「んぅ……」ギュー
咲「もう……私は抱き枕じゃないんですよ」グイグイ
健夜「んー……お母さん…後5分だけ……」スースー
咲(お母さんって……)
咲「お母さんになる様な年齢なのは、健夜さんですよー」ホッペムニムニ
健夜「…んっ……」スヤスヤ
咲(起きないな……)
咲「……」
咲「マホちゃん、起きて?朝だよ」サスサス
マホ「ふふ…みやながせんぱい……まほと楽しみましょう…んぅ…」スースー
咲「……マホちゃーん?」ユサユサ
マホ「……」スヤスヤ
咲「……2人とも起きないし」
咲(どうしよう……もう8時だけど…)
咲「……仕方ないよね」
咲「……」スッ
咲「……」ヌクヌク
咲「……」チラ
健夜「ん……」スースー
咲「……」ジーッ
健夜「……」スヤスヤ
咲「……」フフッ
咲「ふあぁ……」アクビ
咲「……」ウト
咲「…」ウトウト
咲「」スースー
_______________
_______________
健夜「んっ……朝…」パチ
健夜「っつー…頭痛いぃ…」ズキ
マホ「おはようございます、健夜さん」コソコソ
健夜「あ、マホちゃん…おはよう」ニコ
マホ「頭痛いって…二日酔いって奴ですかー?」コソコソ
健夜「うん…昨日、良子ちゃんに強いお酒飲まされ過ぎたよ…」ウゥ
マホ「それはご愁傷様ですね……」
健夜「それより、どうしてそんなに小声なの?」
マホ「ふふっ……見てください、先輩」クスクス
健夜「え…?」
健夜「……ふふ、咲ちゃん…」クス
咲「……」スヤスヤ
マホ「1度起きた形跡がありますし、二度寝しちゃったんですね」
健夜「珍しいね、咲ちゃんが二度寝なんて」
マホ「ですねー」
咲「…んぅ……ふふ……くすぐったい…です…」スヤスヤ
健夜「……」ジーッ
マホ「……」ジーッ
咲「んん…」スヤスヤ
健夜「可愛い……」
マホ「……マホも同じ事思ってました」
健夜「……」ジーッ
マホ「……」ジー
健夜「……」ウト
マホ「……」ウト
健夜「…」ウトウト
マホ「…」ウトウト
健夜「」スースー
マホ「」スースー
咲「んぅ……朝……?」パチ
咲「って……2人ともまだ寝てるし……」
【始まり・ある日の朝、カン】
―――――――――――――――――――――――
咲「全く……一度起きたなら起こしてくださいよ…」
健夜「咲ちゃんこそ、もう少し強引に起こしてくれたら良かったんだよ?」
咲「そ、それは……その…」モジ
咲「……」
咲「健夜さんが……気持ちよさそうに寝てましたし…」ボソッ
健夜「え?私が、なに?」
咲「な、何でもありません!!」
咲「健夜さんはどうして私を起こさなかったんですか?」
健夜「んー……」カンガエ
健夜「咲ちゃん、可愛い寝顔で寝てたし……起こしたら悪いかなって」ニコッ
咲「……」
咲「……?」
咲「~~~~~ッッッ/////」ボッ
咲「な、何見てるんですか!!」
健夜「あはは、早起きしたら良いことあったなぁ」
咲「別に早起きではありませんし!……ていうか、その年になって」
咲「お母さん……あと5分だなんて言うの、止めた方が良いかと思いますが」
健夜「……へっ!?」
健夜「わ、私そんな事言ってた……?」
咲「はい」ニッコリ
健夜「恥ずかしい……/////」
健夜「べ、別に、お母さんに毎日そんな事言ってる訳じゃないからね!!////」
咲「どうだか。私のベットにまで潜り込んできて……」
咲「まさか、今でもお母さんと一緒に寝てるとか」
健夜「違うよ!?」
咲「ならどーして私のベットに?」ジト
健夜「うっ……それは…」オロ
健夜「せ、生徒とコーチの仲を深めるため……とか?」
咲「変態」ジト
健夜「なんで!?」
マホ「先輩と健夜さんは朝から仲良しですねー」ネムネム
咲「あ、マホちゃん」
マホ「お待たせしましたー!身支度完了ですっ」
マホ「私服だと浮いてしまった昨日の反省を活かして、制服にしてみましたー!」クルッ
咲「うん、マホちゃんは制服も似合うね。可愛いよ」
マホ「えへへ/////ありがとうございます///」テレテレ
マホ「宮永先輩も、制服がお似合いです!」
咲「そ、そうかな…ただのブレザーだけど」
マホ「とっても可愛いですよ!それに、半袖だと観戦室少し寒いので、丁度良いと思います!」
咲「昨日ワンピースで行って凍えそうだったからね……」
健夜「そ、そうだ!」
健夜「咲ちゃん、マホちゃんも咲ちゃんのベットに入ってたよ?」
マホ「??入ってましたよー?」
咲「マホちゃんはマホちゃんです。健夜さんは健夜さんです」
咲「分かりましたか?」
健夜「何一つ分からなかったけど、私が酷い事言われたのは分かったよ!?」ガーン
咲「全て分かってるじゃないですか」
健夜「分かりたく無かったよ!!」ガーン
マホ「もー、健夜さんは鈍いですねー」
マホ「先輩は、こう言ってるんです!……こほん」
マホ『……健夜さんのバカ…一緒のベットで寝るなんて…少し、期待しちゃいました…』(上目遣い)
咲「こ、渾身の声マネなんだろうけど……絶望的に似てないよマホちゃん」
マホ「声マネの評価は要らないんですー!」
健夜「ていうか、流石の私でも咲ちゃんがそんな事思ってないくらい分かるよっ」
健夜「ね、咲ちゃん?」
咲「……」ムッ
咲「…マホちゃん、健夜さんが美味しい高級レストラン連れて行ってくれるって」
健夜「えっ」
マホ「本当ですか!?やった!」キャー
健夜「えっ、どうして急に!?」
咲「……」プイッ
マホ「いつですか健夜さん!」キラキラ
健夜「今のは咲ちゃんの嘘だよ!?」
マホ「えっ……」シュン
健夜「……っていうのも嘘!」
マホ「!!」パァッ
咲「それも嘘なんだって」
マホ「健夜さん……」ズーン
健夜「う、嘘じゃないよ!」
マホ「健夜さん!」ヤター!
健夜「さ、咲ちゃん助けて……」ウルウル
咲「嫌です。ほら、朝ご飯食べに行きますよ」プイッ
健夜「咲ちゃんー!!」
_______________
______________________________
_____________________________________________
_______________
_______________
咲「ふぅ…お腹いっぱいです」
マホ「起きた時間が微妙だったせいか、兼お昼ご飯みたいになっちゃいましたねー」
咲「そうだね」
健夜「今日はどうしよっか?私は一先ず解説のお仕事も一息ついたし、一緒にいられるけど」
咲「レストランの予約は良いんですか?」
健夜「その話はさっき麻雀で片付いたでしょ!?」
マホ「健夜さん、大人げなかったですー」
咲「ねー。本気の本気で来るんだもん」
マホ「まあでも、高級じゃなくても連れて行ってくれる約束はしてくれるんですから、人の良さが出てますよねー」
咲「詐欺に会うタイプだよね」
健夜「酷い言われようだ…」
咲「冗談です。楽しみにしていますね、ありがとうございます」
マホ「楽しみです!」
健夜「そ、そんなに喜ばれちゃうと……」
健夜「えへへ、うん、どういたしまして」ニコニコ
咲(何だか本当に詐欺とかに合いそうで心配だな……)
健夜「それで、今日はどうしよっか?」
マホ「うーん……東京の観光はもう済ませちゃいましたしねー」
咲「私は、特に何もせずホテルで過ごすのが良いと思いますけど」
健夜「相変わらずのインドア……でも、私もそれが良いかな」
マホ「マホは、この前の観光で満足なので、2人に合わせます!」
咲「それじゃあ、決まりだね」
健夜「折角だし、何か映画でも借りてこっか」
マホ「あ、賛成です!」
咲「良いですけど、怖いのはやめt」
プルルルルルル プルルルルル
健夜「電話?」
マホ「マホじゃないですー」
咲「あ、私だ……」
健夜「誰からだろうね?」
マホ「さすがに阿知賀の誰かが、昨日の今日で掛けてくるとは思えませんけどー」
咲「私もそれはないと思うけと……一体誰が」チラ
咲「……」
健夜「咲ちゃん?」
マホ「先輩?」
咲「……」スッ
咲「……お姉ちゃんから、です」つ ケータイ
_______________
_______________
_______________
_______________
【宮永咲と宮永照】
【喫茶店】
店員「いらっしゃいませ、1名様ですか?」
咲「いえ、待ち合わせで……」
「咲、こっち」
店員「これは失礼致しました、ごゆっくり」ニコッ
咲「ありがとうございます」ペコ
咲「……」テクテク
咲「……ふぅ」スワリ
咲「ごめんねお姉ちゃん、遅れちゃって」
照「いや…こっちこそ、急に呼び出したりしてごめん」
咲「良いって良いって。どの道、用事とかは無かったから」
照「そっか、良かった」
咲「うん」
照「……何か頼む?」
咲「んー……昔と一緒で」
照「分かった」
照「すみません、オレンジジュース2つと、ジャンボパフェ1つください」
店員「かしこまりました」
咲「驚いたな……」
照「何が?」
咲「よく覚えてたなって。昔と一緒って言葉だけで」クスクス
照「……まあ。忘れないよ、咲との思い出だから」
咲「……ありがと」
照「……」
咲「……」
照「この前は……淡が失礼した」
咲「えっ?」
照「阿知賀、咲のお友達か何かだったんでしょ」
咲「友達って程じゃないよ」
照「……協力とか、してた?」
咲「どうしてそう思うの?」
照「松実玄さんの打ち筋、少しだけ咲の影がチラついてた」
照「……って言っても、私は昔の咲の打ち筋しか、知らないんだけどね」
咲「……当たりだよ。少しだけ、色々あって協力をね」
咲「さすがは、インターハイチャンピオンだね……普通、そんな事気付かないよ?」
照「私だって、小さい頃から成長してる」
照「昔の私に、今と同じ力があれば…」
照「咲のプラマイゼロだって、もっと早く」
咲「こら、お姉ちゃん」ピト
咲「それは言わないって約束……忘れた?」
照「……ごめん」
咲「お姉ちゃんは、たくさん私の為に頑張ってくれた」
咲「それで充分なの。とっても嬉しかったんだよ?」
照「……うん」
咲「…もう……お姉ちゃんってば、対局の時はあんな大魔王!って感じなのに」クスクス
照「不本意……私は普通に打ってるのに…」
咲「でも、そんなお姉ちゃんもカッコよくて好きだよ?」
照「……っ」
照「……咲がそう言うなら、まあ、うん…」
咲「照れた?」
照「照れてない」
咲「またまたぁ、耳まで赤いよ?」クスクス
照「照れてないから」プイッ
咲「ふふっ、頑固なんだかr」
咲(何かこの会話デジャブだな…)
照「咲?」
咲「あ、ううん。なんでもっ」
店員「お待たせ致しました、オレンジジュースとジャンボパフェになります」スッ
照「ありがとうございます」
咲「どうもです」ニコッ
店員「ごゆっくり」ペコ
咲「なんだか懐かしいね」
照「うん……昔は、2人で…いや、3人でこうやって一つのパフェを食べてた」
咲「……ね。皆の少ないお小遣いを出し合って」クスクス
咲「今のお姉ちゃんだったら、1人で全部食べれちゃうんじゃない?」
照「否定はできないね」パクパク
咲「ふふっ、それじゃあやっぱり1個ずつ頼もっか?」
照「……いや、一つで良いよ」モグモグ
咲「その割にはお姉ちゃん、もう半分食べてるけど」
照「……てへ」
咲「もう……お姉ちゃんってば」クスクス
_______________
_____________
_______________
_____________
咲「やっぱり、落ち込んでるんだ」
照「うん…あの子、負けず嫌いだから」
咲「……それなら、決勝戦ではもっと強くなってるね」
照「そうだね。やっと負けを知ってくれた」
照「こんな事言うのも違うけど、淡を負かしてくれた高鴨さんには少し感謝かな」
咲「感謝はしなくていいと思うけど…」
咲「……お姉ちゃんが本気で打ってれば、もう少し楽に勝てたんじゃない?」
照「私は本気で打ったよ?」
照「……なんて言っても、咲にはバレちゃうかな」
咲「うん。私を誰だと思ってるの?」
咲「宮永照の妹なんだから」
照「ふふ、そうだね」ニコ
照「確かに、アレは出さなかったけど……決勝戦までは隠しておきたかったから」
咲「そうなんだ」
照「咲こそ、もっと私の情報を阿知賀に教えて上げてたら、ヒヤヒヤせずに済んだんじゃない?」
咲「まさか。お姉ちゃん対策は協力したけど、そこまでは言う訳ないよ」
照「私は、楽しくなるなら構わないけど」
咲「……きっと永水女子がBブロックから決勝に上がってくるだろうから、楽しめると思うよ」
照「神代さん?」
咲「うん。私も、楽しみにしてるね」
照「……」
照「……久々に、咲とも打ちたいな」チラ
咲「……」
咲「今は時間がないから……また今度ね」ニコッ
照「……ん」コク
_______________
_______________
_______________
_______________
咲「へぇ、それじゃあ、お母さん元気なんだね」
照「うん。お父さんに会えなくて寂しがってる」
咲「……そこは嘘でも私って言っておこうよ」
照「咲にも会いたがってると思うけど」
咲「お母さん、お父さんの事大好きたからね……」
咲「知ってる?引っ越す前に、私がお母さんに言われた最後の言葉」
照「お父さんが浮気しそうになったら、代わりに刺していいわよ。いえ、刺しなさい!」
照「……でしょ?」
咲「ふふっ、そうそう!私まだ中学上がりたてだったのに」
照「しかも、お父さんの目の前であえて咲に言うっていうね」クス
咲「お母さんに、お父さんは今でもお母さん一筋みたいですって伝えておいてね」
照「了解」
照「……っと、そろそろ時間…」
咲「あ、本当だ……1時間なんてあっという間だね」
咲「っていうか、わざわざミーティングの前の空いた時間に会わなくても……」
照「折角咲が東京に来てるんだし、会える時には会っておきたいから」
咲「……私は嬉しいけど、お姉ちゃんが大変じゃない?」
照「妹がお姉ちゃんの心配をする必要は無いの」クス
咲「……はぁい」
咲「もう、昔からそうやって言うんだから」
照「今は只でさえ離れて暮らしてて、姉らしい事出来てないから」
咲「こうやって、空いた時間に会ってくれるだけでも、嬉しいよ」
咲「お姉ちゃんこそ、私に心配掛けさせないように、ちゃんと身体に気を付けるんだよ?」
照「うん。大丈夫」
咲「それじゃあね、お姉ちゃん」
照「うん、またね」フリフリ
咲「また」フリフリ
咲「……ふぅ…」
咲「お姉ちゃん、頑張って」グッ
_______________
_______________
【数分後】
照「……もしもし、菫?」
菫『……』
照「……迎えを頼みたい」
菫『だと思ったよ……だから私も付いていくと言ったのに』
照「咲とは……2人きりで会いたかったから」
菫『それは分かってる。それじゃ、今から行くから少し待ってろ』
照「ん、ありがと」
照「……咲は大丈夫かな」
______________________________
咲「……もしもし、健夜さんですか」
健夜『……やっぱり?』
咲「はい……迎えをよろしくお願いします」
健夜『最早定番だね…私とマホちゃんのどっちかだけでも連れていけば…』
咲「お姉ちゃんとは、2人で会いたかったので」
健夜『……分かってるよ。それじゃあ、今から迎えに行くから』
健夜『絶対、絶対に動いたらダメだからね』
咲「釘刺しすぎでしょう……すみません、ありがとうございます」
咲「……お姉ちゃん、大丈夫かな…」
【宮永咲と宮永照、カン】
【小話・2人の帰路】
咲「……」テクテク
健夜「……」テクテク
咲「……」チラ
咲「……」フゥ
咲「……すみません、迷惑掛けて」
健夜「……え?」
咲「毎回、ありがとうございます」
咲「その……迎えに、来てくれて」
健夜「……」
健夜「えっ!?」
健夜「ど、どうしたの……?いきなり改まって」
咲「…思い返せば、健夜さんにはたくさん迷惑を掛けているなと思いまして」
健夜「め、迷惑って……そんな事思ってないよ?」
咲「……」
健夜「えっと…?」
咲「……」
健夜「咲ちゃん…?」
咲「……偶には、怒ってください」
健夜「えっ……」
咲「……怒ってくれないと、不安…です」
健夜「……」
咲「……!!」ハッ
咲「す、すみません、少しボーッとしてて…」アセアセ
咲「今のは忘れてください。多分、お姉ちゃんと久々に対面して……ちょっと疲れてるだけですから」
咲「あはは……私、何言ってるんでしょう」
健夜「……」カンガエ
咲「ほ、ほら健夜さん、行きましょう?」
咲「マホちゃん待ってるんですから」スタスタ
健夜「……」
健夜「こ……」
咲「はい……?」
健夜「こ、こらーっ!」プンスコ
咲「……」ピクッ
咲「えっと…?」
健夜「怒ってみたんだけど……ダメ、だったかな……?」
咲「……」
健夜「ご、ごめんね!?怒れてないよね!」
健夜「うーん……怒る…怒る……」
健夜「別に迷惑だなんて思ってないし……難しいなぁ…」ブツブツ
咲「……」
咲「……ぷっ…」
咲「ふふっ…ありがとうございます」
咲「すみません、もう大丈夫ですからっ」ニコリ
健夜「えぇ…?」
健夜「な、何が何だかわからない……」
健夜「でも、本当に迷惑だなんて思ってないからね?」
咲「……はい」ニコッ
咲「さっきのはすみません。私、変なこと言いました」
健夜「ううん。ちょっとビックリして、熱でもあるのかと思っちゃったけど」
咲「それは酷いですよ……」
健夜「ふふっ…その、私はね?咲ちゃんを迎えに行くの、好きなんだ」
咲「えっ」
健夜「駆け付けた時の、少し嬉しそうな咲ちゃんの顔が可愛いし」
健夜「ツンツンしてるけど、ちゃんとお礼言ってくれる所も、可愛いなって思うよ?」
咲「……」
咲「……?」
咲「ッッッ!?/////」ボッ
健夜「だから、むしろ役得なの」クスクス
咲「す、健夜さん……」テレ
健夜「っていう話を、さっきもマホちゃんとしててね?」
咲「……」
咲「えっ」
健夜「マホちゃんも、同じ事思うって言って……咲ちゃん!?」
咲「……!!……!!」ベシベシ
健夜「ちょ、べしべし叩くのやめて!?」
健夜「地味に痛い!!地味に痛いよ!」アウアウ
咲「~~~っっ/////!!!」ポカポカ
健夜「ポカポカもやめて!?」
咲「もう、健夜さんの言う事は何も信じませんからね!!!」スタスタ
健夜「ちょっ、待って!?一人で行くと迷子になる!迷子になっちゃうから!」アセアセ
咲「知りません!その時は健夜さんが30秒以内に見つけてください!」ベーッ
咲「見つけてくれなかったら怒りますからっ」
健夜「私、怒れって言われてた筈なのに何で怒られる側になってるの!?」
咲「ほら、早く帰りますよ!」スタスタ
咲「……」
咲「……健夜さんの、バカ」ニコリ
【小話・2人の帰路、カン】
【咲・宿泊ホテル】
咲「へえ、それじゃあBブロックの試合の録画を見直してたんだ」
マホ「はい!第一ブロックと、第二ブロックの1.2回戦だけですけどね」
咲「第一ブロック……って事は、臨海が入ってる方だね」
マホ「外国の方が沢山いて、日本の人は先鋒だけでした」
咲「あれ?去年は先鋒も外国の人でしたよね、健夜さん」
健夜「今年からルールが変わってね、先鋒は必ず日本人って言う決まりに変わったの」
咲「へぇ、何でですか?」
マホ「去年は白糸台が優勝だった訳ですし、全員留学生で困る事とかないですよねー?」
マホ「全員留学生で出て負けてる訳ですし、戦力の調整とは思えませんよー」
健夜「うーん、詳しくは知らないなぁ……そういえば何でなんだろ?」
咲「今年の先鋒の人って、去年の個人戦3位の人でしたよね確か」
健夜「うん、辻垣内智葉さんだね」
咲「つじがい、とさとは?」
マホ「ふふっ…先輩!性と名がごっちゃごちゃになってますよー」
咲「つじ…つじがいとさ……?」ウーン
健夜「辻垣内智葉さん、だよ」クスクス
咲「辻垣内智葉さん、ですか」
咲「物凄く呼びにくい名前ですね」
マホ「珍しい苗字ですよねー」
咲「そんな、個人戦3位になれる実力を秘めた人を、昨年団体戦で先発として出場させなかった理由も想像できないです」
健夜「去年出てた先鋒の留学生選手と辻垣内智葉さんの実力は、そんなに差が無かったと思うんだけどね」
マホ「何だか怪しい匂いがしますね!」
咲「まあ、日本でやってる大会に全員留学生の高校とか出てたら、色々と不味いと思ったのかもですね」
健夜「運営にも色々考えがあるんだよ、多分」
マホ「そうそう、マホと健夜さんは、一周分見終わりましたけど、宮永先輩も見ますか?」
マホ「第一ブロックから第四ブロックまで、一応1,2回戦の映像はあるので、どれでも見れますよ!」
咲「んー……」
咲「私は見なくても良いかな」
咲「姫松、永水辺りの結果とか選手の情報とかは、昨日の喫茶店で確認したし」
咲「明日には準決勝が始まるんだから、お楽しみにしておくよ」
マホ「あー、マホが目隠しされた時ですね!」
健夜「め、目隠し?」
咲「知ってますか健夜さん」
健夜「何を?」
咲「……BブロックのBは、BIGのBなんですよ」
健夜「ど、どういう事…?」
マホ「健夜さんは、明日はまたAブロックの会場から解説ですか?」
健夜「あ、うん。こればっかりはお仕事だから、仕方ないね」
健夜「だから、マホちゃんは咲ちゃんと一緒にBブロックの会場に行ってくれる?」
マホ「元よりそのつもりですよ!」
咲「休憩中に電話、くださいね」
健夜「咲ちゃんの方に掛ければいいかな?」
咲「……それはお好きな方へどうぞ」
マホ「マホ、電話に気付かない事が多々あるので、宮永先輩の方にかけて下さいです!」
健夜「ん、分かったよ」
咲「え、でもマホちゃんに電話掛けると、ほとんど1コール内に出る気がするんだけど」
マホ「それは宮永先輩からの電話だからです!」
健夜「あれ、何か私が傷付くな……」ズーン
咲「元気出してください」
咲「私達の方でなにかあったら、メールしておきますね」
健夜「了解したよ」
_______________
_______________
マホ「んー」
マホ「今はまだ2時ですかー」
咲「麻雀でも打つ?」
マホ「さっき健夜さんと対局したので、マホは暫くコピーが使えませんけど、良いですか?」
咲「あ、そうだったね。……それじゃあ、やめとこっか」
マホ「マホの事は気にしなくても良いですよ?」
咲「ううん。と言うよりも、私も少し疲れちゃったから」
健夜「2人とも大丈夫?」
マホ「健夜さんは、流石にまだまだピンピンしてますねー」
咲「この人、よっぽどの事が無いと麻雀で疲れないからね」
健夜「そんな事ないよ?2人と打つ時は、結構消耗するし」
咲「普通は麻雀で体力なんて消耗しないんですけど」
マホ「宮永先輩が普通を語ってはいけないとマホ思うです」
咲「えっ、それどういう意味……」
健夜「まあまあ。それなら、映画でも見よっか?」
咲「あぁ、借りようとか何とか言ってましたね」
咲「どんなの借りてきたんです?」
マホ「……それなんですけどぉ」ニコッ
健夜「咲ちゃん、AかBどっちがいいかな?」ニコリ
咲「は?意味が分かりません」
マホ「2つ借りてきたので、先輩が選んだ方を見ましょう!」
咲「何でそんな面倒な事を?」
咲「まあ、良いですけど」
健夜「咲ちゃんがA、B決めてから私達がどちらか選ぶイカサマが出来ないように、事前に紙を貼り付けておいたから、安心してね」
咲「わざわざそんな事までしたんですか……」
マホ「ささっ、先輩選んでくださいです!」
咲「んー……なら、Bブロックと掛けてBで……」
咲「って行くと、少しベタですね」
咲「Aにしましょう」
健夜「」ニヤリ
マホ「おお、健夜さんの読み当たりです!」
健夜「えへへ、でしょ?」
咲「読み……?」
健夜「咲ちゃんがどっちを選ぶか、予想してたんだー」
マホ「ちなみに、どちらかはホラー!どちらかはファンタジーですよ!」
咲「へぇ………………」
咲「……え、マホちゃん今なんて?」
咲「ホラーとか何とか聞こえたんだけど」
咲「健夜さん、どういう事ですか」
マホ「宮永先輩、自問自答から質問まで立て続けにやってます」
健夜「…ふふっ……」クスクス
健夜「その問いに答えるのは、とりあえず映画を見てからね!」つ カセットオン
咲「ちょ、待って」
マホ「カーテン閉めて暗くしますねー!」
咲「な、何で暗くするのかな?」ピクッ
マホ「雰囲気を出すためです!」
咲「何の雰囲気かな!!?」
健夜「それじゃあ、再生っと」ポチ
咲「私、少しおトイレn」
TV『バリーン!!!!(窓が割れる音)』
咲「ひゃっ!!!」ビクッ
咲「な、何で急に始まって……!」
健夜「マホちゃん、これ何ていうタイトルだっけ?」
マホ「えっとぉ……」
マホ「呪牌、ですね」
咲「ゆ、許しません……許しませんよ、健夜さん……」プルプル
TV『イーシャンテン!!!!!』ドーン
咲「ひっ……!!」ブルブル
咲「ふ、2人とも……もう少しこっちに近付いて良いんだよ…?」チラ
TV『お前のチートイをトイトイにしてやろうかぁぁぁぁ!!!!!』
咲「きゃぁぁぁぁっっ!?」ダキッ
健夜「咲ちゃん?」
咲「聞こえない聞こえない……聞こえない……何も聞こえない…!!」ギュー
健夜「……」
マホ(宮永先輩可愛い……)キュン
健夜(……咲ちゃん可愛い)ニコー
咲「お、終わったら覚えていてくださいよ……っっ!!」
健夜(あ、終わった後の事考えるの忘れてたや……)
TV『タンヤオ!!!!!』バーン!
咲「ひゃぁぁぁぁっっっ!!!」ギュゥ
健夜(……まあ、可愛いからいっか)ニヘラー
マホ(宮永先輩の可愛い所が見られて嬉しいですけど……)
マホ(ま、マホもちょっと怖いんですけど……!!)プルプル
_______________
_______________
_______________
_______________
【二本視聴後】
咲「さ、映画も終わったしマホちゃんお風呂入ろっか?」
マホ「入ります!」
咲「……健夜さんはそこで少し反省しててくださいね」ジロ
健夜「ま、マホちゃんも共犯なのにこの差は一体……?」正座
咲「マホちゃんも怖がってたみたいですし、一人でお風呂に入らせたら可哀想じゃないですか」
マホ「先輩……優しいですっ」ウルウル
マホ「悪ノリしちゃってごめんなさいです……」(上目遣い)
咲「ううん、良いんだよ」ニコッ
健夜(小悪魔めー!!)
健夜「わ、私も一人で入るの怖いなー?」チラチラ
咲「大丈夫ですよ」
咲「健夜さんに近付く幽霊なんていませんから。むしろ、あっちが怖がって逃げますよ」
健夜「酷い!?」
マホ「あ、あのぉ……健夜さんも、悪気があった訳ではないと思うので……」
健夜「マホちゃん!!」パァッ
咲「マホちゃんは知らないかもしれないけど、この人同じ事やって私を怖がらせた事あるんだから」
咲「私は仏じゃないので、顔は3度も無いですよ」
マホ「そうなんですね。なら仕方ないです」
健夜「お、覚えてたの……?」
咲「忘れるはずありませんよ」ハァ
咲「……まあ」
咲「どうせ怖いなんて嘘でしょうけど、入って来たければどうぞ」
咲「健夜さんが無駄に張り切ったこの部屋、お風呂凄く大きいですし」
マホ「そうですね!マホあれやりたいです!」
マホ「泡がブクブクって出るやつ!」
咲「そんなのがあるの?」
健夜「ジャグジーだね」
咲「じゃぐじー……?」
マホ「それですっ。ほら先輩!早く入りましょう!」グイグイ
咲「ふふっ、引っ張ったら危ないよー」クスクス
健夜「……」
健夜「これは、入るべきか入らざるべきか……」ウーン
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【おふろたいむ!】
マホ「ふふっ、先輩くすぐったいですよぉ」
咲「こら、動いたら洗いにくいでしょー」ワシャワシャ
マホ「あははっ、だってぇ!」キャー
咲「はい、目瞑っててね?」
マホ「はーいっ」
咲「んしよっと…」バシャー
咲「はい、お終いっ」ナデナデ
マホ「ありがとうございますっ!」
咲「私は身体洗ったら入るから、先に入ってていいよ?」
マホ「あ、それなら!」
咲「マホが宮永先輩の身体洗いますよ!」
咲「えっ?」
マホ「いえ、洗わせてくださいですっ」
咲「そう?……それじゃあ、お願いしよっかな」クスクス
マホ「任せてくださいです!」
マホ「~~♪」ゴシゴシ
咲「んっ…ふふっ、ちょっとくすぐったいね」
マホ「少し我慢しててくださいですーっ」ムニ
キャッ マホチャンソコハイイヨー!
イイカライイカラ? マカセテクダサイッ
ンッ…マホチャ…
?「カットじゃけえ!」
_______________
_______________
マホ「ふわぁぁ……凄いです!ブクブクしてます!」キャー
咲「ふふっ、良かったねマホちゃん」ニコッ
マホ「真上に居ると気持ちいいですぅ……」ハフゥ
咲「……」クスクス
咲「……で、本当に入ってくるなんて思ってませんでしたよ」チラ
健夜「ふぅぅ…疲れが吹っ飛ぶねー…」ポカポカ
咲(聞いてないし……)
咲「確かに、気持ちいいかも…」フゥ
健夜「……」ジーッ
咲「…何ですか、人の身体をジロジロと……」
咲「変態ですか」
健夜「違うよ!?……咲ちゃん、細いなって思ってね」
咲「はぁ、そうですかね?」
健夜「ちゃんとお家でご飯食べてる?ダメだよ、しっかり食べないと」
咲「誰目線ですか……」
咲「食べてますよ。と言うか、ご飯作ってるのも私ですし」
マホ「そーいえば、宮永先輩が居ないでお父さんは生活出来てるんでしょうかー?」
咲「外食と出前で何とかしてるって、昨日電話した時に言ってたかな」
マホ「へぇ……あ、健夜さんはお料理とかするんですか?」
咲「しないよ」
健夜「え、何で咲ちゃんが答えたの!?」
咲「するんですか?なら今度手料理でも食べに行きますね」
健夜「……作れないけどさ」ショボン
マホ「えっと……じゃあ、お洗濯とかお掃除とかは……」
咲「洗濯は、入れる洗剤の量絶対間違えるし、掃除も一つ片付いたら一つ散らかってるよ」
マホ「か、壊滅的」
健夜「私も、今言われてて改めてヤバイなって思ったよ…」ズーン
マホ「花嫁しゅぎょーとかしないと、ダメなんじゃ無いですか?」
健夜「ぐっ…お母さんと同じ事を」グサッ
マホ「宮永先輩は、家事全般完璧ですから心配ありませんよねー!」
マホ「マホも覚えたいです」
咲「あはは…完璧って程じゃないけどね」
咲「お料理くらいなら、今度教えてあげるね?」
マホ「やりましたぁ!」ヤター
健夜「で、でも、私は咲ちゃんが苦手な電子機器系は使えるし、迷子にもならないもん!」
咲「何を張り合ってるんですか」
マホ「マホは家事がそんなに出来ない訳ではありませんし、機械も迷子も大丈夫なので」
マホ「先輩、マホ、健夜さんの順番ですね!」
健夜「何の順位かな!?」
咲「生活力の有無のですよ。分かるでしょう」
健夜「うぅっ…………はっ!」ヒラメキ
健夜「私は収入があるよっ!」フンス
咲「……まあ、確かに」
マホ「うわっ、そこを持ち出してくるなんて大人気ないです」
健夜「そんなことないもーん」
咲「ふっ…健夜さん、子供ですか」クスクス
咲「まあ、家事完璧で麻雀最強な……パーフェクト健夜さんなんて見たくないので」
咲「健夜さんは今のままで、大丈夫ですよきっと」
マホ「婚期は知りませんけどね!」
健夜「咲ちゃんが優しい言葉を掛けてくれたと思ったら、マホちゃんがトゲのある言葉を!?」
咲「プラマイゼロですね、なんちゃって」
健夜「傷付き度的には、少しマイナスだよ……」
咲「おお、よくぞプラマイゼロを止めました」
健夜「そのプラマイゼロは、出来ればプラスで止めたかったかな」
咲「なら料理を頑張ることですね」
健夜「ラーメンならなんとか!」
咲「それを料理と呼ぶなら、全世界の人が料理上手になりますよ」
健夜「ぐぬぬぬぬ……!」
咲「ふふっ」クス
マホ(仲いいですねー)ポカポカ
【Bブロック会場・観戦室】
恒子『さあさあ!!昨日、Aブロックの準決勝を終えたと思ったら今日!!』
恒子『今度はBブロックの準決勝開始だぁぁぁぁ!!』
恒子『という訳で!!このチャンネルで実況を務めますのは、昨日と同じ!ミラクルアナウンサー、福与恒子です!!』
恒子『そしてそして、実況をしてくれるのは皆さんお馴染み!!』
健夜『小鍛冶健夜です。本日もよろしくお願いします』
恒子『という訳で、今回も小鍛冶プロと一緒に実況を盛り上げて行こうと思います!』
恒子『宜しくお願いします!!』
健夜『よろしくお願いします』
恒子『さてさて、Bブロックの準決勝ですが…』
恒子『まずは恒例の高校紹介ですっっ!!』
健夜『Aブロックも強豪揃いで、とても見応えのある準決勝でしたが、Bブロックの高校もかなり強豪が集まっていますからね』
健夜『楽しみです』
恒子『そんな小鍛冶プロも楽しみなBブロック準決勝!!!始めに紹介しますのは、南大阪代表・姫松高校!』
恒子『昨年まではシード常連と言われていた姫松ですが、今年はなんとノーシード!!』
恒子『しかし、その実力はなおも顕在!!シード校にも劣りません!!』
恒子『小鍛冶プロはどう見られますか?』
健夜『そうですね……』
健夜『北大阪代表のシード校、千里山女子と共に、大阪の2大名門と呼ばれている姫松高校ですが、その呼び名に恥じない実力を兼ね備えていますね』
健夜『特に注目したいのは、中堅でエースの愛宕洋榎選手です』
恒子『ふむふむ、その心は!』
健夜『予選から2回戦までの全ての試合を、+3万点以上で終わっていますからね』
健夜『運の要素が絡む麻雀と言う競技で、この成績を叩き出すという事は、並み大抵な事ではありません』
健夜『間違いなく、この大会で最上位に踏み込む実力の持ち主でしょう』
マホ「健夜さん、ベタ褒めですねぇ……珍しいです」
咲「そうだね」
マホ「でもでも、強豪のエースなんですから、それくらい稼げる選手なのは当然なんじゃないですか?」
咲「んー、逆かな」
マホ「逆??」
咲「強豪のエースだからじゃなくて、愛宕洋榎がエースだから、姫松は強豪なんだと思うよ」
マホ「それはつまり、ワンマンチームですか?」
咲「簡単に言っちゃえばそうだね」
咲「でも、他の選手も実力が並よりは上なの」
マホ「典型的な強豪校って感じですねー」
咲「それとね、これは私も驚いたんだけど、能力者がほぼ居ないみたい」
マホ「……成程、それは確かに凄いですね」
咲「うん。凄いし、強いよ。姫松高校は」
マホ「能力者は、愛宕洋榎さんですか?」
咲「それも、私が知って驚いた点」
マホ「えっ…?」
咲「……」コクリ
マホ「……マホ、驚きました」
咲「中堅っていうポジションは、一番不安定な所」
咲「試合の中間で、点が少なければ稼がなくちゃいけないし、多ければ守り切らなきゃいけない」
咲「だから、中堅に弱い選手を置く高校なんて無い」
マホ「そんなポジションで、全試合を+3万点」
マホ「しかも、無能力者ときたもんですかぁ……」
咲「系統的には、白水哩だね」
咲「けど、初戦の戦いを見た感じでは……この人は、相手の心理の裏をかくのが異常に上手いね」
マホ「あ、それはマホも知ってます!清老頭ですよね!」
咲「うん。もし、私が槓材の察知を出来なかったとしたら、あの清老頭には振り込んでたと思う」
マホ「嶺上ならずって言ってツモ切りしておいて、一萬はカンして無かったんでしたか」
咲「そうそう。佐々野いちごの読みは完璧だったけど、あくまでも基本を完璧に読んだだけだったんだね」
マホ「だから、基本の裏をかいてきた愛宕洋榎さんに振り込んでしまった、ですかー」
咲「うん。……全く関係ないんだけどさ」
咲「チャンタ系って、形作るのが難しいのに翻数低いから、大阪の人は作るのに抵抗持ってそうだよね」
咲「めちゃくちゃ偏見だけど」
マホ「あー!何となくわかる気がするです!」
マホ「勿体ない精神が強そうですからね」
咲「まあ……」
咲『あれっ?安くてもチャンタ…?いや、この人は大阪人だし、チャンタなハズない!清老頭かもしれない、だからオリ!』
咲「……ってなる人は少ないだろうけど」
マホ「心理バトルみたいですねー」
隣客(…この子たちさっきから何言ってるの……!?)
_______________
_______________
恒子『続きまして!!!南北海道代表、有珠山高校!!!なんとなんと、初出場で準決勝進出という快挙を成し遂げました!!!』
健夜『このチームは、新道寺女子の様なWエースチームですね』
健夜『副将の真屋選手、大将の獅子原選手はとても強いです』
恒子『私情報によりますと、副将の真屋選手は牌のお姉さんを目指しているそうです!』
恒子『これには、現牌のお姉さんである瑞原プロは危機感を覚えているのではないでしょうか!』
健夜『どうして選手の打ち方とかの情報はあんまり覚えてないのに、そんな事は覚えてるの!?』
恒子『若いし可愛い!これは、牌のお姉さんの座の行方にも期待が高まります!』
健夜『怒られても知らないからね!?』
咲「獅子原爽……」
マホ「先輩?どうかしましたか?」
咲「マホちゃん、有珠山の映像は見たんだよね?」
マホ「はい、見ましたよ!」
マホ「健夜さんの言ってた通り、最後2人以外の方は、正直全国クラスではなかった様に感じました」
マホ「と言うか、大将の方も……言ったら何ですが、ギリギリの戦いしてましたよ?」
咲「多分、1,2回戦で全力は出してないと思う」
マホ「そうなんですか?うーん、確かに何か微妙に打ち方がおかしかった気も……」
咲「……」
咲「もしも、獅子原爽と卓に着くことがあっても照魔鏡は使わないようにね…」
マホ「へ?」
咲「……見えちゃいけないものが…見える気がするから…」プルプル
マホ「な、何ですか…?それは……?」ビクッ
咲「獅子原爽……絶対に対局したくないよ…」コワイ
マホ(意味深に話を終わられると怖いんですけどー!)プルプル
隣客(な、何が見えるのー!?)ビクビク
_______________
_______________
恒子『続いて紹介しますのは、Bブロックシード校の内の一校!!!鹿児島県代表、永水女子高校ですっっ!』
恒子『2回戦では、まさにシード校といった圧倒的な戦いを見せました!!』
健夜『このチームはとても強い。姫松高校を差し置き、シード校になった実力は本物です』
恒子『このチームには、天照大神の内の一人の選手がいますね!』
健夜『先鋒の神代選手ですね』
健夜『神代選手は、白糸台高校の宮永選手にも劣らない実力を秘めている選手ですが、如何せんブレ幅がある様に思います』
健夜『まさしく、調子の良い時は神が降りている様な闘牌を見せる』
健夜『間違いなく、準決勝の鍵の一人になってくるでしょう』
恒子『巫女服も可愛いです!』
健夜『そうですね……って、それは関係ないでしょ!?』
マホ「5人とも巫女服を着てるなんて、面白いですねー」
咲「そうだね」
咲「巫女服が制服って言われても納得しちゃいそう」
マホ「えっ、違うんですか!?」
咲「当たり前だよ……いや、そんな光景も見てみたいけどさ」
咲「この5人は、皆が神代さんの実家?の神社でお手伝いとかしてるらしいよ」
マホ「だからって、インハイに巫女服で出場する必要があるんですかね?」
咲「せ、正論だけど……」
咲「きっと、巫女服を着てないと神様が降りてきてくれないとか、そんな感じなんだよ!」
マホ「ふむふむ……なるほど」
マホ「神様は巫女服萌えなんですね!」
咲(違うと思うけど……)
マホ「宮永先輩も巫女服似合いそうです!」
マホ「マホ、見てみたいです」ジーッ
咲「そ、そうかな」
マホ「メイド服とか、スクール水着とかも見てみたいです!!」キラキラ
咲「ま、マホちゃん落ち着いて……」
マホ「チャイナドレスとか、ちょっと趣向を凝らして、モコモコぱじゃまとかも可愛いです!!」ハァハァ
咲(ダメだこりゃー)
咲「……」チラ
小蒔『……』テクテク
咲(神代さん、見せてもらうね)
咲(あなたの実力を)
マホ「他にも他にも(ry」
咲「マホちゃん帰ってきて」
隣客(巫女服が制服じゃなかったんだ……)
_______________
_______________
恒子『そしてそして!!最後に紹介しますのは、予選からこの準決勝まで、全ての試合をトップ通過』
恒子『しかも、選手全員が全ての試合をプラス収支で終えるという、圧倒的な実力で準決勝までやってきました!!』
恒子『東東京代表、臨海女子高校!!!』
恒子『15年連続地区代表という偉業を成し遂げていますっっ!!』
健夜『この学校の方針として、留学生を多く採用している点が特徴的ですね』
健夜『しかも、ただの留学生ではありません。全員が全員、世界の名だたる大会で成果を残しています』
恒子『高校生で世界大会とか、カッコいい!』
健夜『中でも注目したいのが、中堅の明華ちゃ……コホン、失礼』
健夜『中堅の雀明華選手と、大将のネリー・ヴィルサラーゼ選手です』
恒子『すこやん、今何言い直したのー?』
健夜『か、噛みそうになっただけ!』
健夜『 コホン、まず中堅の雀明華選手は、フランスからの特待生で、欧州選手権での活躍から風神【ヴァントール】と呼ばれている』
健夜『世界ランカーです』
恒子『世界ランカーとか、何それ凄い!』
恒子『でもでも、元世界2位の小鍛冶プロからしたら』
恒子『へっ、雑魚めっ!……って感じなんですか?やっぱり』
健夜『そんな事思うはずないでしょ!?』
健夜『高校生…いや、中学生でも、想像を遥かに越える能力を持つ人は存在します』
健夜『それこそ、プロでも軽く捻ってしまえる様な』
健夜『年齢と実力は、必ずしも比例しない。それが、麻雀という競技ですからね』
恒子『さすがっ!年齢の分だけ実力がある小鍛冶プロの有難いお言葉!』
健夜『年齢の分だけとか言わないで!?』ガーン
恒子『それでそれで、ネリー選手は?』
健夜『ヴィルサラーゼ選手は、サカルトヴェロからの留学生で、世界ジュニアで活躍している選手ですね』
健夜『先ほど言った、年齢と実力は必ずしも比例しない、という言葉が最も相応しいインハイ出場選手です』
健夜『恐らく、高校一年生で彼女より強い日本人は、数える程でしょうね』
恒子『これは、珍しく若い子を褒めていると思わせておいて、日本の若い子を落とすという、高等手段です!!』
健夜『だから違うからね!?私のイメージ落とすような事言わないで!?』
マホ「ネリー・ヴィルサラーゼ選手、ですかぁ……」
咲「……」
マホ「……?先輩?」
咲「あっ、ううん」
咲「ごめんね、何?」
マホ「いえ、ネリーさんって方、強そうですね」
咲「あぁ……間違いなく、牌に愛された子クラスだね」
咲「……一度対局してみたいかも」
マホ「やっぱり世界は広いですねー」
咲「そうだね。ちょっと興味が出てきたかも」
マホ「日本は、高校生では世界大会に出られませんからねー」
咲「うん。…まあ、大会とかには興味が沸かないから、見るだけで我慢するかな」
マホ「宮永先輩はどうして、大会とかには出ないんですかー?」
マホ「インハイだって、個人戦とかありますよね?」
咲「……それは、秘密かな」
咲「ただ、昔に約束……っていうか、戒めたの」
咲「二度と、大会には出ないって」
マホ「……そう、ですかー」
マホ「マホ、先輩と一緒に大会とか出たかったです」
咲「……」
咲「マホちゃんのお願いなら……考えておくね」
マホ「ふふっ、先輩はマホには敵わないんですもんね♪」ニコッ
咲「本当にね」クスクス
咲(……大会、か)
隣客「大会、かぁ……」ハァ
咲「ん……?」チラ
真佑子「あ……」メガアウ
咲「……」ペコリ
真佑子「と、どうも~……」ニ、ニコリ
咲(この人は確か…大星淡と予選で対局した…)
恒子『さあさあ!!注目のBブロック、準決勝大将戦は、午前11時より開戦です!!』
恒子『お前らぁぁぁ!!飲み物とお菓子の準備を忘れるなぁぁぁぁ!!』
健夜『映画館じゃないんだよ!?』
恒子『Bブロック準決勝、一体どんな戦いが見られるのか!!』
恒子『こうご期待ですっっっっ!!!!』
「一旦休憩でーす」
恒子「はふう…」
健夜「お疲れ様、こーこちゃん」
恒子「どったの、すこやんが労いの言葉なんて」
健夜「私だって労いの……って、この会話2回目!!」
恒子「あれ、そだっけー?」アハハ
健夜「もう…」
健夜(……咲ちゃん、何やってるかな)
_______________
_______________
【Bブロック会場・ある時、ある場所】
咲「もぅ…自販機くらい一人でも行けるのに、マホちゃんは心配症すぎだよねっ」プンスカ
咲「ちゃんと早く戻って、一人でも大丈夫って所を見せつけなくちゃ」グッ
咲「自販機は確か……こっち?」テクテク
咲「……」テクテク
咲「……」キョロキョロ
咲「……」テクテク
咲「……」キョロ
咲「……」タチドマリ
咲「……」ミワタス
咲「……」
咲「あ、あれ…?」
咲「……」
咲「ここ、どこだろう…」アセアセ
_______________
______________________________
_____________________________________________
咲「……ヤバい、迷った…」
咲「しかも、ケータイの充電切れてる」
咲「……どうしよう…」ズーン
咲「何でいっつも知らない内に知らない場所に来ちゃうんだろう……」
咲「……」
咲「……」グスッ
「おいそこの、こんな所で何をしている?」
咲「えっ」チラ
「あら……?もしかして、貴女は…」
「咲さんではないですか?」
「なんだ、知り合いか?」
「サキサンって何?サキイカみたいな?」
咲「辻垣内智葉……さんに、ネリーさん……それと…」
智葉「なんだ、知っていたのか」
ネリー「このカイジョーに居るんだから、知ってるでしょ!」
明華「やっぱり!咲さんですね!?その角みたいな髪…!J’ai rencontr? l’?me s?ur?!」スッ
咲「明ちゃ…………むぐっ!!」
明華「あぁ、お久しぶりです咲さん!中学2年の頃以来ですので、3年振り程ですね」ムギュー
明華「~~~~~♪」rararara-
咲「みょ、明ちゃん落ち着いて……」
智葉「なあネリー、一体どういう状況だ?これは?」
ネリー「さぁ…キューユーってヤツなんじゃない?」
智葉「旧友…まあ、様子を見るにそうみたいだが」
明華「小鍛冶さんはお元気ですか?あぁ、本当に運命の様ですね」ギューッ
咲「明ちゃん、ちょっとストップストップ!」
智葉「そうだ。明華、一旦落ち着け」
ネリー「ネリー達完全に蚊帳の外だよ」
明華「はっ……どうもすみませんサトハ」
咲「ふぅ……死ぬかと思ったよ」
智葉「一応自己紹介が必要か…?私は辻垣内智葉、臨海女子の3年だ」
ネリー「ネリーはネリーだよ。臨海の一年生」
明華「雀明華です、今は臨海女子二年です」
咲「宮永咲です。高校一年生、インターハイには観戦に来ています」
ネリー「……」ジーッ
咲「……」
ネリー「……」ジーッ
智葉「それで、聞いても良いか?」
明華「気になるのですか?」
智葉「まあ、な。雇われの傭兵だなんて言われていても、私にとっては信頼できる仲間だ」
智葉「只でさえ自分の事を話しては貰えないからな。良い機会だから聞きたい」
咲(え、こんな所で?私迷子なんだけど……)
ネリー「ネリーも、そこのミヤナガについては少し興味があるかな」
咲(言える雰囲気じゃないや)
明華「分かりました!コホン」
明華「あれは、私が中学2年の頃……お母さんの仕事で茨城県に少しだけ滞在していた時の話です」
智葉(楽しそうに話すな)クス
咲(あの頃は確か………)
_______________
______________________________
_____________________________________________
【咲・中学1年生、冬休み】
咲「うぅ…寒い…」ブルブル
咲「果たして、こんなに寒い思いをしてまで健夜さんしか居ない部室に向かう必要があるのか……いや、ない…」プルプル
咲「……帰ろうかな…」
咲「……」
咲「……健夜さん、待ってるかな…」
咲「……」カンガエ
咲「……はぁ、行こ…」テクテク
咲「……」テクテク
咲「ん……?」チラ
「うぅ…」グスッ
咲(こんな寒い日に、一人で座り込んで何してるんだろ)
咲(雪だるまでも作ってるのかな)
咲(髪の色からして外国の人だよね…?)
咲「……」カンガエ
咲「もう……仕方ないな」
「……」シクシク
咲「あの、こんな所に一人で座って、何かお困りですか?」
「!!」ピクッ
咲(下向いてたから分からなかったけど、私と同じくらいの歳か少し下……かな?)
「え、えっと…」
「っくしゅっ」クシャミ
咲「マフラーも巻かないで……」スッ
咲「はい、私の貸して上げますから、取り敢えず立ってください」つ マフラー巻く
「そ、そんな……悪いです」
咲「日本ではですね、親切を無駄にする方が失礼なんですよ」
「でも……」
咲「うるさいですね、私が良いって言ってるんですから良いんですよ」
咲「……ね?」
「……ありがとう、ございます」ニコ
咲「いえ……」
咲「……」ジーッ
咲「……もしかして、迷子か何かですか?」
「え……」
咲「私もよく迷子になるので、何となくですが分かるんです」
咲「……出来れば分かりたく無かったんですけどね」アハハ
(不思議な方……)
咲「こんな寒い所に居たら風邪引いちゃいます、話聞かせてもらえますか?」
「……実は…」
_______________
______________________________
_____________________________________________
咲「なるほど……お母さんのお仕事でフランスからここへ昨日来て、周辺をお散歩してる内に知らない所に迷い込んでしまった、と」
「はい……」コクリ
咲「何だか親近感を覚えますね」
「え?」
咲「あ、いえ。なんでも」
咲「一先ず、お名前を伺っても?」
「そうでした……」
明華「私は雀 明華と申します」
咲「みょ、みょーは……?」
明華「明華、です」
咲「みょん……みょんふぁ…」
咲(言いづらい)
咲「それじゃあ、明ちゃんで良いですか?」
明華「明ちゃん……」
咲「……ダメでした?」
明華「い、いえ!!是非、明ちゃんでお願いします!」パアッ
咲「は、はい……」
咲(急に元気になった)
明華「それで……その、貴方のお名前は…」
咲「あ、私は宮永咲って言います。すぐそこに見える中学の一年生です」
明華「い、一年生ですか!」
咲「あはは……やっぱり見えないですかね…」
明華「いえ逆です。こんなにもしっかりした方が、私より年下だなんて、少し驚いてしまって」
咲「!!!」
咲「えへへ……そうですかね////」
咲「どこぞのアラサーと違って、明ちゃんは優しいね」
明華「あらさー、ですか?」
咲「あ、ううん気にしないで…………って」
咲「私が明ちゃんより年下……という事は、中学二年生以上って事ですか?」
明華「はい。日本で言うと、中学二年生の年ですね」
咲(蹲って泣いてたのと、外国人さんで顔が人形みたいなのが相まって、同い年か小学生かと思った……)
明華「咲さん?」
咲「あ、すみません。何度も黙りこくって」
咲「……一先ず、私と一緒に来ますか?」
明華「一緒に……?」
咲「はい。私、そこの中学の麻雀部に入っていて、今から向かう所だったんです」
明華「まーじゃんぶ……何かのクラブの事ですね」
咲「家への帰り方が分からないのなら、ここでずっと座っていても仕方ありませんから」
明華「で、でも……ご迷惑じゃ?」
咲「他の部員を気にしているなら大丈夫ですよ」
明華「え?」
咲「麻雀部の部員、私1人だけだけで後はコーチが一人居るだけですから」
_______________
______________________________
_____________________________________________
【旧校舎・麻雀部部室前】
咲「明ちゃん、こっちだよ」
明華「は、はいっ!」タッタ
明華「あちらの大きな建物の中ではないんですね…」
咲「うん。どういう訳か、こっちの旧校舎にあるの」
咲「ちょっとだけ近いから、お得感あるよね」クスクス
明華「本校舎からは遠いので、頻度的には損では……?」
咲「あ、確かに」
咲「ふふっ、明ちゃん頭良いね」
明華「そ、そんな事は…」テレテレ
咲「日本語も上手だし、来る前に勉強とかしたの?」
明華「はい。元々日本が好きでしたし、お母さんも教えてくれたので」
咲「……へぇ…」
明華「……?」
咲「っと、着いたね」
明華「ここが…」
咲「じゃ、入ろっか」スッ
ガチャ
咲「おはようございます」
健夜「あ、咲ちゃん!おはよ……う?」
健夜「えっ……」
明華「…っっ…」アセアセ
健夜「さ、さささささ……」
健夜「さささささささ咲ちゃんがと、とととととお友達を!??!!」
咲「うるさいですよ」ハァ
健夜「だ、だって!!」
咲「明ちゃんごめんね、うるさくて」
明華「い、いえ……」後ろに隠れてる
健夜「みょ、明ちゃ……っっ!!?」
健夜「…あぁ…咲ちゃんにも、やっと友達が出来たんだね……」シクシク
健夜「きっとこれからは、ここに来る頻度も減って……減って……」
健夜「はぁ……」ズーン
咲「……」ハァ
咲「健夜さん、来る時にプリン買ってきましたけど食べます?」
健夜「食べる!!」パァッ
咲「……」呆れ
咲「…明ちゃん、紹介するね」
咲「この人が、ここの麻雀部のコーチの小鍛冶健夜さん」
明華「雀明華、です……」ペコリ
咲「あぁ…ほらもう、健夜さんのせいで困ってますよ?」
健夜「ご、ごめんね?」ハンセイ
健夜「それで、明華さんはどうして咲ちゃんと?」
咲「それがですね……」
_______________
______________________________
_____________________________________________
健夜「迷子……」チラ
咲「なんですか」
健夜「なんでもっ!」アセアセ
健夜「そういう事なら、大丈夫だよ。外、寒いしね」
明華「あ、ありがとうございます」
咲「そうだ、明ちゃんって麻雀やる?」
明華「まーじゃん……?いえ、知らないです」
咲「折角だし、ちょっとだけやってみない?」
明華「咲さんは出来るんですか?」
咲「うん。私、麻雀部だからね」アハハ
明華「……なら、ご一緒したいです!」
咲「よし、じゃあそこに座って?」
健夜「ルール教えてる間に、私は少し明華さんの家に電話掛けてくるね」
咲「え、電話番号分かるんですか?」
健夜「うん。もしもの時用に持たせてたのかな、住所と番号の書いてあるカードがあったから」
健夜(咲ちゃんにも持たせておいた方が良いかな)
咲「そうですか。……今、何か変なこと考えましたね」ジトー
健夜「そ、そんなこと無いよ!!」
健夜「……じゃあ、少し待っててね」
咲「りょーかいです」
咲「……ふう、それじゃあやってみよっか」
明華「とても仲が良いんですね」クスクス
咲「えぇ…」
咲「今の見てそう感じたの?」
明華「はいっ。咲さんの小鍛冶さんを見る目、とても素敵でしたから」
明華「逆に、小鍛冶さんが咲ちゃんを見る目も」ニコッ
咲「そ、そんな事無いよ……」テレ
明華「ふふっ、そうですか?」
咲「そーなの!」
咲(さすがフランスから来た子だなぁ……情熱的)
咲「よし、それじゃあまずは簡単なルールを……」
_______________
______________________________
_____________________________________________
明華「ツモです、3000.6000」
咲「明ちゃん凄い……ちょっと教えただけで、点数計算まで完璧だよ」
明華「いえそんな……咲さんの教え方が上手いんですよ」
明華「~~~♪」rararara-
咲「歌、好きなの?」
明華「はい。お母さんに教わった曲で……お父さんが好きだった曲らしいです」
咲(好きだった……らしい…)
咲「……そっか…」
咲「……ん?」ジーッ
明華「咲さん?」コォォォ
咲(歌った後で、急にオーラが……)
咲「ねえ明ちゃん、今度は対局中ずっと歌いながら打ってみて?」
明華「そ、それは……流石に恥ずかしいのですが///」
咲「良いから良いから」
咲「私、もっと明ちゃんの歌声聴きたいな」ニコッ
明華「そ、そうですか…?///」
咲「うんっ」
明華「それなら、分かりましたっ」
健夜「二人ともお待たせ」ガチャ
咲「あ、健夜さんどうでした?」
健夜「お母さん、心配してたよ?連絡入れても返事帰ってこないーって」
健夜「ケータイ見てみて?」
明華「ケータイ……」スッ
咲「けーたいって何です?」
健夜「咲ちゃんにはまだ早い物だよ」
咲「むっ……嫌な言い方ですね」ムスッ
健夜「……お家の固定電話使える?」
咲「いえ、一度触ったら警察に掛けてしまって大事になったので、それ以来使わせて貰えません」
健夜「やっぱりあと3年は早いかな……」
咲「3年後には、健夜さん名実ともにアラサーですね」
健夜「嫌なこと言わないで!?」ガーン
明華「本当です。マナーモードになっていて気付きませんでした……」
健夜「場所を伝えたら、迎えに来てくれるって言ったから、後30分位待っててって」
明華「すみません、ありがとうございます」
健夜「ううん、良いの良いの。咲ちゃんの友達なんだし!」
咲「別に友達って訳じゃ……」
咲「良いですから、取り敢えず打ちましょう」プイッ
健夜(意識させすぎちゃったかな?)
咲「折角ですし健夜さんも入ってください」
咲「明ちゃんは対局中歌うので、よろしくお願いします」
健夜「う、歌う?」
健夜(そういえば、何やら雰囲気が……)
咲「では、始めましょうか」
_______________
______________________________
_____________________________________________
明華「~~~♪~~~♪」rararara-
明華「ロン、18000です」
咲「はい。……終局ですね」
健夜(咲ちゃんが振り込んだ……?プラマイゼロ…はやる訳ないか)
明華「何でしょうか、歌ったらとても良い牌ばかりツモれる様になりました」
咲「はい、とても強かったです」
明華「まーじゃん、とても面白い競技ですね」
咲「ホントに?」
明華「はいっ!」
咲「……良かった」ニコ
明華「……/////」カァ
健夜「明華ちゃん、お母さん来たって」
明華「あ、分かりましたっ」
明華「……」チラ
咲「??」
明華「えっと……」
明華「日本は、今は冬休み何ですよね……?」
健夜(お……これは…?)
咲「うん、そうだね。もうすぐクリスマスだし」
明華「その……私は、あと数週間ほどここに居るんです」チラチラ
咲「うん?そうなんだね」
咲「……?」
健夜(鈍い!!咲ちゃん鈍いよ!!)
健夜(その、何を言いたいのかさっぱり分かりませんって顔やめようよ!)
咲「あっ、迷ったらまたここに来ても良い?っていう事?」
健夜「違うよ!?そんな事の許可を取る必要性を感じないよ!!」
咲「うわっ……びっくりした……」ビク
咲「何ですか健夜さん、急に大声出して」ジトー
健夜「はっ……咲ちゃんの鈍さに、思わず声に出しちやったよ」
咲「鈍さって……健夜さんには言われたくないです」
健夜「えっ、どういう意味?」
咲「知りません」プイッ
明華「その!……もし、宜しければ…えっと」
明華「家に居ても…お母さんがお仕事の時は一人なので、その……」
明華「ここに、来てもいいですか……?」
咲「え?良いけど」
健夜(返答早いよ咲ちゃん!?)
明華「!!」パアッ
明華「ありがとうございます!」ニコリ
咲「ううん、私も健夜さんだけとしか打てないのは飽きてきてたし」
健夜「私飽きられてたの!?」ガーン
咲「嘘ですから、そんな本気で落ち込まないでくださいよ」
咲「少し前の、あの滾ってた健夜さんはどこへ行ってしまったんですか」
健夜「素の私はこっちだよ!!滾ってないよ!」
明華「ふふっ…」クスクス
明華「ありがとうございます、咲さん小鍛冶さん」ペコリ
健夜「ううん、気にしないで。一応、お正月以外はここ開いてるからね」
咲「クリスマスも開いてるのは、健夜さんに予定が入っていないからですよね」
健夜「よ、余計なお世話だもん!!」
健夜「ていうか、咲ちゃんだって予定無いくせに!」
咲「私はありますもん、予定」
健夜「えっ………………!?」唖然
咲「嘘ですって、健夜さんは何度私の嘘に騙されるんですか」
健夜「さ、咲ちゃん!!」プンスカ
咲「取り敢えず、私も暇ですしここに来ると思いますので、安心して来ると良いですよ」
明華「はいっ!……では、また」フリフリ
咲「……うん、またね」フリフリ
健夜「またね!」
バタン
咲「ふぅ……」
健夜「久々に知らない子と打って、緊張した?」
咲「それは、まあありますけど……」
咲「それ以前に、危うく負けちゃう所でしたから」
健夜「確かに、私も少しビックリしたな」
咲「歌うと強くなる……」
健夜「日本の大会ではあんまり奮わないかもしれないけど、海外の大会は容認してる所もあるし、化けるかもしれないね」
咲「明日からも来たいって言ってましたけど、本当に来るんでしょうか?」
健夜「うーん……来ると思うよ?」
咲「……そうですか」
健夜「ふふっ、友達できたね?」
咲「だから友達じゃ無いですし……それに、数週間後にはフランスに帰るんです」
咲「そうなれば、もう会うことも無いでしょう」
健夜「素直じゃないなぁ…」クスクス
咲「……うるさいです」
_______________
______________________________
_____________________________________________
【明華・宅】
明華「……ふふっ」
明華「歌……お母さん以外に初めて褒めて貰った…」
明華「まーじゃん……咲さん、強かったな」
明華「続けていれば、もっと咲さんを楽しませられるでしょうか…」ウーン
明華「……」
明華「……よしっ!」
明華「お母さん、まーじゃんって知っていますか?」
明華「ほうほう……フランスでも流行っていたんですか…」
明華「欧州選手権?高校生から……」
明華「分かりましたっ!」
明華(フランスに戻ったら、まずはそこを目指しましょう)
明華(でも、それまでは……)
明華「咲さん、あなたの近くで楽しませてくださいね」
_______________
______________________________
_____________________________________________
【回想終わり】
明華「……という事があったんですよ」
咲「明ちゃん……」
ネリー「明華……」
智葉「明華」
3人「「「話長い」」」
明華「そうでしたか……?これでも凝縮して……」
明華「それこそ、これから親しくなってクリスマスを共に過ごしたり、初日の出を共に見たりしたんですよ?」
智葉「しかし、驚いたな……」
智葉「明華が対局中に歌うキッカケ…それ以前に、麻雀を始めたキッカケが宮永とは」
明華「無視は辛いですサトハ」
智葉(それにしても宮永、か……偶然か?)
ネリー「2人のカンケーは分かったけどさ、ミヤナガはどうしてこんな所にいるの?」
咲「……それがですね…」
マホ「あー!!宮永先輩、こんな所にいました!!」
咲「マホちゃん!!」
マホ「もう、心配で後を付けてたら急に居なくなるんですもん!マホ、ビックリしました!」
咲「ご、ごめんね?私でも、どうしてこんな所に居るのか分からなくて」
マホ「まあ、自販機行くって言いながら全く別の方向に向かった時点で、声を掛けておくべきでした」
マホ「マホの失態です……」
咲「私の迷子でそこまでマホちゃんに凹まれると、こっちが申し訳なくなるよ……」
智葉「なんだ、迷子だったのか?」
明華「咲さん……変わっていませんね」クスクス
ネリー「へぇ……」ジーッ
マホ「って、臨海女子の皆さんじゃないですか」
マホ「宮永先輩を保護してくださって、ありがとうございます」ペコリ
咲「保護って……」
智葉「いや、こちらこそ。チームメイトの面白い話を聞けて、良かったよ」
マホ「宮永先輩、戻りますよ?」
咲「あ、うん」
明華「咲さん、待ってください!」
明華「……これを、よければ」つ 紙切れ
咲「これは……メールアドレスと番号?」
明華「はい。よければ、ですけど」チラチラ
咲「……うん、ありがとう」ニコッ
明華「~~~/////」ドキッ
咲「また連絡するね」クス
明華「はい!待ってます!」
智葉「ふっ……それじゃあ、戻るぞ。ネリー、明華」
ネリー「はーい。ミヤナガとそこの紫の人、いつか打とうね」
咲「あはは…機会があれば是非」
マホ「さよならですー」
明華「……それじゃあ、咲さん、また」フリフリ
咲「うん、明ちゃん。……またね」フリフリ
宮永咲と雀明華、カン
_______________
______________________________
_____________________________________________
【Bブロック・観戦室】
マホ「……」ウトウト
咲「マホちゃん、大丈夫?」
マホ「!!は、はい、なんですか?」ピクッ
咲「何か、凄く眠そうだけど……」
マホ「実は……昨日見た映画が怖かったせいか、夜全然眠れなくて……」ネムネム
マホ「マホ、瞼と瞼が今にもごっつんこしそうです……」ファ
咲「そんなに……?」
咲「ここで寝ても大丈夫だよ?」
マホ「いえ……宮永先輩にご迷惑を掛ける訳にはいかないので…」
マホ「幸い、ホテルもここから数分の所にありますし……一度戻って寝てきますです…」
マホ「ぁ……でも、それだと宮永先輩の迷子を監視できませんね…」
咲「大丈夫だよ。私、自分で何度も迷子になって、ある法則性に気付いたの」
マホ「法則性、ですか……?」
咲「うん。ずばり、建物の中に居るときは迷子になっても外へは出ない事と、迷子に一度なったら、その後8時間は迷子にならない事」
マホ「そ、そんな法則性があったんですか」
咲「だから、安心してホテルに居ても良いよ?」
マホ「それは世紀の大発見ですね……!」
マホ「では、お言葉に甘えさせて貰うです」
咲「うん、それじゃあホテルまでは送るから」
マホ「そ、そんな悪いですよ……」
咲「良いから、ね?」ニコッ
マホ「は、はい……っ///じゃあ、お願いします……」テレテレ
咲「じゃ、行こっか」つ 手
マホ「あれ、宮永先輩手繋ぐの恥ずかしいんじゃ?」
咲「あっ……」
咲「さ、最近はずっとマホちゃんと手繋いでたから……いつの間にか慣れてたよ…///」
マホ「ふふっ、嬉しいです」ギュッ
咲「ま、迷子対策……だからね?」
マホ「あれれ?8時間は迷子にならないんじゃなかったですかー?」ニコニコ
咲「うっ……//」
咲「い、行くよ!」テクテク
マホ「はーい♪」フフッ
_______________
_______________
【マホ送り後・ホテル前】
咲「ふぅ……さて…」
咲「果たして、私はここから会場まで迷わずに行けるのか……」ウーン
咲「さっきは、私に気使って貰うのが悪くて嘘吐いちゃったけど……」
咲「ふふふ、甘いねマホちゃん。私の迷子癖は、プラマイゼロよりも悪質なんだよ」フンス
咲「そう簡単に謎が解けるわけが……」
咲「……」
咲「……はぁ…どうしよ、迷わない確率は50%くらいかな…」
咲「ま、まあ平気だよね?さすがに、徒歩5,6分だし……迷う訳」ピクッ
咲「……?」フリカエリ
洋榎「あ、バレてもうた」
咲「……」スタスタ
洋榎「ちょっ、待ってーな!」タッタッタ
洋榎「アンタさん、どっかで見た顔やなー思っとったんやけど、思い出せんのや!」
咲「へー」テクテク
洋榎「な?分かるやろ?あの、思い出せそうで思い出せん、気になる事の答えが分からん、気色悪い感覚!」
咲「へー」テクテク
洋榎「……ん?この淡白なリアクション……」
洋榎「思い出したで!一昨日、Aブロックの会場でたこ焼き食っとった子や!」ヒラメキ
咲「へー…………は?」
咲「いや……おかしいでしょう…」ハァ
咲「何でこんな暑い中、暑い物を好んで食べなきゃいけないんですか」
洋榎「ん?ほんなら何やっけ……」ウーン
洋榎「あぁ!思い出したで!たこ焼きアイス食べとったやんな?」ヒラメキ
咲「なんでやねん」
洋榎「おおぅ……なんや、鋭いけどやる気の感じられんツッコミやな」
咲(しまった……園城寺さんの影響で…)
洋榎「ほんで、自分こんな所で何しとるん?」テクテク
咲(何で並んで歩いてくるの……)
咲「いや、それは私が聞きたい所……いや、別に会話したくないので聞きたくないんですけど」
咲「私が聞くべき質問だと思うんですけど」
洋榎「ん、ウチ?ウチは串カツ食べたなったから、買ってきたんや」つ 串カツ
咲「大丈夫なんですか、試合前に……」
咲「ミーティングとか無いんです?この間も、アナタが居なくてミーティング出来ないって、探しに来てたじゃないですか」
洋榎「誰が相手でも勝つだけやからな!」ドヤッ
咲「……」
咲「……ふぅん、そうですか」
洋榎「なんや、突っ込まんかい」
咲「いえ……アナタなら、永水と有珠山の中堅さんになら勝てるでしょうから」
咲「言葉とは裏腹に、油断を感じませんし」
洋榎「えらい評価高いやん?」
咲「逆に、明ちゃ……臨海女子の中堅には勝てませんよ」
咲「少なくとも、串カツなんて食べてる暇は無いと思いますが」
洋榎「串カツ舐めとるん?アンタが好きなタコ焼きアイスよりは美味いで?」
咲「だからタコ焼きアイスってなんですか……大阪の方って、タコ焼きが好きなあまりそんな物に走ってるんですか?」
洋榎「今のは突っ込む所やで」
咲「……うざ」
洋榎「おおぅ……えらいストレートにジャブ打ってくんなぁ」ケラケラ
咲(ストレートなのかジャブなのかどっちなの)
咲「……」
咲「あの、それで何か用ですか?」
洋榎「ん?いや、別に用なんて無いで?」
咲「ならどうして話し掛けて来たんですか……」ハァ
洋榎「そら、あれやん?知った顔見かけたら取り敢えず声掛けるやろ?」
咲「私はアナタのこと忘れかけてましたけどね」
洋榎「そうなん?ミーティングの事とか覚えとったやん」
咲「……」
洋榎「ははっ、一本取ったで」クスクス
咲「鬱陶しい……」
咲「……あぁ」
咲「そう言えば、貴方に一つだけ聞きたい事があるんです」
洋榎「この髪は地毛やで!」ドヤッ
咲「初戦の清老頭、壱萬をカンしなかったのは何故ですか?」
洋榎「無視かいな!」
咲「何故ですか?」
洋榎「それは、あれや。1回カン見せたんやから、普通は2回目カンできるならするって、思わせられるやん?」
咲「……ダウト、ですね」
洋榎「ダウトちゃうわ!」
咲「2番目の嶺上牌が、リーチへの当たり牌だって分かっていたんじゃないですか?」
洋榎「……」
咲「……もっと詳しく言いましょうか」
咲「あなたは、他家がリーチを掛けた時、その人の当たり牌が分かっていますね」
咲「その牌の種類、どこに埋まっているか、誰が持っているか……全てを」
洋榎「……」
咲「異常な防御力の高さは、その所以」
洋榎「……くく…」
洋榎「あっはっはっはっ!!オモロイ!オモロイで、あんた!」
咲「……」
洋榎「うちの部員ですら気付かん事に、何で気付けたん?」
咲「やっぱり……」
咲「普通に気付くでしょう……アナタの牌譜を見ましたが、他家のリーチ時の振込み率0%」
咲「しかも、平気で超危険牌を切っていても全て当たっていません」
咲「まあ当たり前ですかね」
咲「……貴方にとっては、当たり牌以外は全て完全安牌なんですから」
洋榎「そんだけで見抜けるもんなん?」
咲「最初は半信半疑ですよ。……決め手になったのは、あの清老頭の時」
咲「あの局面、確かにアナタはカンをしないというブラフは打ったでしょう」
咲「けど、見ていたのは違う所。それが、当たり牌の埋まっていた嶺上牌です」
洋榎「…もしかして、自分……嶺上牌が見えたりするんか?」
咲「察しが良いですね。……健夜さんにも見習って欲しい」
洋榎「うん?」
咲「あ、いえ、なんでも」
咲「……言われた通り、私は嶺上牌が見えます」
咲「だから、二枚目の嶺上牌がリーチへの当たり牌だと言うことに気付きました」
洋榎「なるほどなぁ……」
洋榎「こら一本取られたわ」アハハ
洋榎「てか、ウチの能力を知ってどないするつもりなん?」
咲「いや、別に……」
咲「……あぁ」
咲「ほら、あるじゃないですか?」チラ
洋榎「ん?」
咲「気になって仕方の無いことの答えが分からないと、気持ち悪いって事」クスクス
洋榎「!!」
洋榎「……ふふっ、せやな」
洋榎「こら二本目、取られたなぁ」フフッ
_______________
_______________
【Bブロック・会場前】
咲(話してたら迷わず会場に着いてた……)
洋榎「良かったやん?迷子にならんで」
咲「……」
咲「……は?」
洋榎「はっはっは!」
咲「貴方……愛宕さん、まさか、それで?」
洋榎「さぁ、どうやろ?」クスクス
咲「……うざ」
洋榎「おおぅ、今度のその言葉は感謝の言葉に聞こえる不思議やな」ケラケラ
咲(この人……)
由子「あ、洋榎おったのよー」
洋榎「おう、由子やん。出迎えご苦労!なんちって」
由子「なんちって、ってそんなくだらないボケ垂れ流してる暇じゃないのよー」
咲(凄い辛辣だな……)
由子「洋榎が帰ってこんからミーティング出来へんって、恭子と代行までカンカンよー?」
由子「富士山も噴火する勢いなのよー」
洋榎「えっ」
由子「あーあ、今度は私も味方できへんよー」
洋榎「そ、速攻で土下座してきますー!!」タッタッタ
咲(忙しないなぁ……)
由子「……相変わらず忙しないのよー」
由子「……ん?」チラ
咲「その節は、どうもです」ペコリ
由子「あぁ、あん時も洋榎と一緒におった女の子やねー」
由子「制服やと雰囲気変わるもんやなー」
咲「そうですかね?」
由子「うんうん、可愛いのよー」
由子「それはそうと、洋榎を捕獲して貰って感謝感激よー」
咲「ミーティングも忘れて串カツ食べてましたよ、叱ってあげてください」
由子「今頃、雷が落ちてるのよー」クスクス
由子「ほんなら、さよならねー」フリフリ
咲「はい。試合、見てますね」
由子「……」ジーッ
咲「?」
由子「……前回も思ったんやけど、中々不思議な雰囲気の子なのよー」
咲「それを言うなら貴方こそ……不思議ちゃんっぽいと思いますよ……語尾的に」
由子「あはは、これは癖なのよー」
咲「良いと思いますよ、優しい感じがして」
咲「可愛いです」ニコリ
由子「……えっ、そ、そんな事は無いと思うのよー」テレ
咲「そうですかね?……まあ良いですけど……」
咲「行かなくて良いんですか?」
由子「あ、忘れてたのよー!ほな、またねー」フリフリ
咲「はい、さようなら」フリフリ
咲「……関西には色んな人がいるんだなぁ…」シミジミ
咲「おっと…試合始まっちゃう……急ご」タッタッタ
_______________
_______________
由子「……」
由子「始めて、言われたのよー……」
由子「……」
由子「……////」タッタッタ
宮永咲と、愛宕洋榎・カン
【観戦室】
咲「はぁ……思いもよらぬ再会だったな…」スワリ
咲「……」ポツーン
咲「……マホちゃん居ないと少し寂しいけど…我慢するしかないね」
真佑子(あ、帰ってきた……)チラ
咲「ん?」メガアウ
真佑子「!!」メソラシ
真佑子(め、目合っちゃった……!)
真佑子(ど、どうしよう…不快にさせたりしてないかな……)
真佑子(謝った方が良い!?いや……でも、目が合ってごめんなさいって、おかしいよね!?)アウアウ
咲(……この人、さっきも目が合ったけど、何か用なのかな?)
咲(多治比真佑子さん……確か、東京の松庵女学院の大将……)
咲(大星淡に、公式戦初めて能力を使わせた人……つまり、それだけの実力者っていうことかな…?)
咲(映像を見るに、あれが能力だって気付いた表情はしてたけど……)
咲「……」
咲(何だか、玄さんがツインテールにしたらこんな感じになりそうだな)
咲(……そこはかとなく、頼れない系年上オーラを感じる)
真佑子(うぅ…なんか気まずい……)チラ
咲「……」ジーッ
真佑子(凄い見られてる!!)ビクッ
真佑子(やっぱり、私が見てたから怒ったのかな!?)
咲「あの」
真佑子「ひゃい!?」ビクッ
咲「うわっ…ビックリした…」ピク
真佑子「あ……ご、ごめんなさい」ペコリ
咲(……やっぱり玄さんっぽいなぁ…)
咲「いえ。………多治比真佑子さんですよね、予選で大星淡と対局していた」
真佑子「し、知ってるんですか……?」
咲「ええ、まあ。あの試合は何度も見ましたし、雑誌とかでも拝見した事あります」
真佑子「雑誌……麻雀TODAYですか…?」
咲「多分それですかね。宮永照とか、牌のお姉さんとかが載ってるやつです」
真佑子「そ、そんな有名な人達と並べられると、少し恥ずかしいんですけどね…」
真佑子「あの……それで、あなたは…?」
咲「あ、すみません。名前も言わずに」
咲「私は宮永って言います」
真佑子「宮永さん……」
真佑子(……宮永…?)
咲「先程から見られてた気がするんですけど、何か用でしたか?」
真佑子(やっぱりバレてた……!)
真佑子「い、いえ!ジロジロ見てしまってすみません…」
咲「別に良いんですけど……」
多治比「……」
咲「……」
多治比(き、気まずい……!)
咲「そういえば、多治比さんはお一人ですか?」
真佑子「あ……はい…」
真佑子「その、最後のインターハイなので……見に来ようかなって。麻雀は、好きですから」
真佑子「……でも、私が大将で負けちゃって……皆を自分から誘うなんて出来なかったので…」
真佑子「一人で、来たんです」
咲「……へぇ…」
真佑子「!!ご、ごめんなさい……要らないことまで話しちゃって」
真佑子(なんだろう、宮永さんと話してると……不思議な感じ……)
咲「……」
咲「……私は、良いと思いますよ」
真佑子「へ……?」
咲「白糸台高校と同じ地区で3年間戦って、負け続けてきて……それでも、麻雀を嫌いにならずに、ここに足を運んだ」
咲「そういう、多治比さんの麻雀に対する姿勢は……結構好きです」ニコッ
真佑子「えっ……!?///」
咲「…ただ、自分が大将で負けたからどうたらって言う所は、かなり嫌いですね」
真佑子「で、でも……大将の私が勝ててたら…」
咲「でもじゃありません。でもって言わないでください。玄さんって呼びますよ」
真佑子(だ、誰!?)
咲「はぁ……じゃあ、一つ言いますけど」
咲「多治比さんの理論がまかり通るならば、一番の戦犯は、先鋒の選手ではありませんか?」
真佑子「!!」
咲「だって、宮永照を抑えられなかったんでしょう」
咲「エースである松庵の先鋒の方が、宮永照を抑えられていれば、結果は違ったかもしれませんよね」
真佑子「そ、それは違うと思います!だって、宮永照さんは」
咲「……宮永照は、なんですか?」
咲「まさか、宮永照は格が違うから、勝ち目が元より無い」
咲「だから、勝てなくても仕方が無い……よって、大星淡に勝てなかった大将の自分が一番悪いんだー……」
咲「なんて、言いませんよね」
真佑子「……っっ…」
咲「……」ハァ
咲「……良いですか?」
咲「自分があの時勝っていれば、何かをしていれば、なんて意味の無い仮定をするのはアホです」
咲「先鋒が宮永照を止められなかったのが敗因、同時にあなたが負けた事も敗因です」
咲「いえ、もっと言ってしまえば、次鋒から副将でトップになって、どこかを飛ばせなかった事も敗因ですかね」
咲「あなたは大将、そして最後の大会という事もあって、尚更悔やむ気持ち、自分を責める気持ちが大きいのかもしれません」
咲「……ですが、そんな物は馬鹿馬鹿しいです」
咲「あれは団体戦。負けた場合は全員が敗因であり、勝った場合は全員が勝因なんです」
咲「もしも多治比さんが大星淡に勝利して、インターハイに出ていたら」
咲「多治比さんは、私が勝ったから皆をインターハイに出場させれた、私のおかげだって言うんですか?」
真佑子「!!……言わない…」
真佑子「そんな事、言えない……です」
咲「……では、多治比さんが負けてしまった後、チームメイトの方はあなたを責めましたか?」
真佑子「……」フリフリ
咲「……なら、多治比さんが悩んでいる事は、悩み損なんですよ」
真佑子「……そうなの…かな…」
咲「まあ、私が多治比さんに代わって松庵の大将を務めていれば、優勝出来たと思いますので、やっぱり多治比さんが敗因かもですね」
真佑子「えっ!?……やっぱり…」
咲「いや、冗談ですって。間に受けないでください」
真佑子「も、もう!!宮永さんっ!!」プンスカ
咲「あはは、すみませんすみません」クスクス
咲「少し、知り合いに似ていたので、つい」
真佑子「……宮永さんは、不思議な人ですね」
咲「えっ……それ、最近凄く言われるんですけど、どういう意味なんですか?」
真佑子「あっ、いや……嫌な意味ではなくて」
真佑子「何ていうか…すんなり心を開ける……って言うか」
咲「告白ですか、照れます」
真佑子「えっ、ち、違います!!/////」
咲「知ってます。……まあ、悪い意味で無いなら気にしないでおきます」
真佑子(な、何なの!?////)
咲(しまった……玄さんに似てるなーって思ってたらいつの間にか説教みたいな事してたよ……)
恒子『さあさあお前らぁぁぁぁ!!いよいよ準決勝、先鋒戦の始まりだぁぁぁ!!』
健夜『またスポンサーからクレームくるよ!?』
咲「あ、始まる……」
咲(そういえば、健夜さん……電話くれなかったな)ムスッ
咲(休憩って、昼休みだけだと思ってるのかな……)
真佑子「あの、宮永さん……?」
咲「はい?」
真佑子「その……良かったら、一緒に試合を見れたら…って」
咲「え?」
真佑子「あ、すみません!ダメなら良いんですっ」
咲「……」
咲「いや、隣の席で、しかも結構会話をしてしまった多治比さんを無視して、1人観戦するほど、私も嫌な人ではありませんよ」
多治比「……へ?」
真佑子(えっ、つ、つまりどういう事?)
咲「ほら、始まりますよ」
真佑子(……良いって事かな…?)
真佑子「……」
真佑子「よろしくお願いします…」フカブカ
咲「……」ジーッ
真佑子「な、何…?」
咲「……多治比さん、やっぱり似てますね…玄さんに」クスクス
真佑子「だから誰ですか…!?」
~試合開始~
宮永咲と多治比真佑子・続く(?)
_______________
_______________
こういうのを現地嫁っていうんだよな、たしか
そんな多治比さんは二年生だったりする
げっ……本当だ。多治比さんは三年生だと、何故か思い込んでました、すみません。
この世界の多治比さんは三年生という事で一つよろしくお願いします……っ
【インハイ期間中・ある時】
~会場外、ベンチ~
咲「……」ペラ
咲「……」ペラペラ
咲「……」
咲「……ふぁ…」アクビ
咲「……」ウトウト
咲「!!」ハッ
咲「……」ゴシゴシ
咲「……眠い…」
咲「……」ペラ
咲「……」ペラペラ
プルルルルル プルルルルル
咲「!!」
咲「電話……」つ ケータイ
咲「……健夜さん、やっとか」つ ケータイ
ピッ
咲「もしもし、咲です」
健夜『あ……もしもし、咲ちゃん…?』
咲「はい」
健夜『ごめんね?遅くなっちゃって』
咲「本当にですよ」
咲「急な打ち合わせが入ったーって言って会場に戻ってから、何分経ちましたっけ?」
健夜『うっ…ごめん…』
咲「……まあ、お仕事ですのでそこまで気にはしていませんけど」
健夜『……』
咲「あの?それで、電話を掛けたという事は、終わったって事です?」
健夜『そ、それがぁ……えっとぉ…』
健夜『あの……その、ね?』
咲「……長引きそうですか」
健夜『ほんっっっとうにゴメン!!』
咲「やっぱり」ハァ
健夜『思ったより大変で……結構手間取ってて…』
健夜『夕方位までかかりそう……かも』
咲「別に、良いですよ。私だってもう子供じゃ無いんですから」
咲「先にホテルに戻ってます」
健夜『うぅ…ごめんね?』
咲「気にしていませんって」
咲「誕生日の日に、どうしても外せない仕事があると、私を一人残してお父さんが仕事へ行ってしまったあの日以来……」
咲「こういう系には慣れましたから」
健夜『いやホントにごめんね!?』
咲「まあ、今の話は嘘なんですけどね」
健夜『なんでそんな暗い嘘吐くの!?凄く申し訳なくなったよ!!』
咲「あはは、健夜さん面白いです」
咲「とにかく、私の事は気にせずお仕事頑張ってください」
健夜『……思ってたんだけど、咲ちゃんってお仕事絡むと妙に心が広くなるね』
咲「それは、まあ」
咲「健夜さんの唯一の取り柄" 収入がある事"を奪ってしまえば、ただの独身アラサー家事ダメダメ麻雀狂になってしまいますからね」
咲「そこはほら、心を広く持つべきかなって」
健夜『後半は言わなくても良かったよ……』ズーン
咲「安心してください。私はそんな健夜さんでも大丈夫ですので」
健夜『……うん?それ、どういう…』
咲「ほら、私と電話をしてる暇があるなら打ち合わせしてきてください」
咲「恒子さん……でしたっけ?が、怒っちゃいますよ」
健夜『そうだった!』
健夜『それじゃあ、本当にごめんね!また掛けるから』
咲「はい。では、また」
健夜『うんっ』
ピッ
ツー ツー ツー
咲「……」
咲「さて……」スッ
咲「私の座っていたベンチは、しっかりとホテルへの道筋を覚えたベンチだったはず……」キョロキョロ
咲「……健夜さんがお仕事だって言うから言い出せたなかったんだけど…」
咲「……」
咲「ここ、どこ?」アセアセ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【会場外・どこかのベンチ】
咲「なんで座って、本読んで、電話してただけなのに、見知らぬベンチにテレポーテーションしてるんだろう?」
咲「そんな超能力者になった覚えは無いよ…」
咲「…いや……近くの自販機で飲み物も買いに行ったな…」
咲「……」
咲「それが原因か……」ガクリ
咲「はぁ…どうしてそんな短距離で……」
咲「まあ、嘆いてても仕方ないよね…」
咲「案外、その辺を歩いてれば知った道に出るかもだし」
咲「……よし、物は試しだね」スッ
咲「これで無事ホテルに帰れたら、健夜さんに報告を……」ピクッ
咲「……?」フリカエリ
咲「……」
咲「誰ですか?」
「わ、私の事見えるっすか!?」ビクッ
咲「やっぱり居た……。いえ、見えません」
咲「今のはハッタリ。気配を感じたので、適当に言ったまでです」
「なっ……!まんまと嵌められたっす……」
咲「で、誰ですか?」
「……」ススス
桃子「失礼したっす。私は東横桃子、高校1年っす」
咲「ひうっ……!!」ビクッ
桃子「?どうしたっすか?」
咲「い、いえ……何でもありません」
咲(急に出てくるからちょっと怖かった……)
咲「それで、私に何か用でしょうか?」
桃子「いやぁ…私、長野からインハイを観戦に来てるんすけど、ちょっと散歩してたら迷子になってて」
咲(長野……)
桃子「どうしたもんか!……って思ってた時に、丁度あなたを見つけたんすよ」
咲「はあ……つまり、現在地がどこなのか教えて欲しいと…」
桃子「察しが良いっすね」
咲「私も迷子なんですけど、大丈夫ですか?」
桃子「……え」
咲「私も、迷子ですよ?」
桃子「……それは失礼をしたっす…」
咲「……いえ…」
桃子「……」
咲「……」
桃子(き、ききききき気まずいっす!)
桃子(私服だったから、てっきりこの辺の子かと思ってたら、とんだ大間違いだったっす)
桃子(うぅ……先輩…助けてくださいっす)
咲「それでは、さようなら」テクテク
桃子「へっ!?ま、待ってくださいっす!」ガシッ
咲「なんですか、東横さん」
桃子「展開が早すぎて着いていけないんすけど!」
咲「別に着いて来なくても良いと思うんですけど?」
桃子「ダメっすダメっす!とにかく待ってくださいっす!」ワーワー
咲(何なのこの人……)
咲「良いですか?東横さんは迷子、そして私も迷子」
咲「でも、お互い帰る場所は違うんです」
咲「……ね?」
桃子「ね?……じゃないっす!」
桃子「とりあえず、行くというなら私も着いていくっす」
咲「どうしてですか」
桃子「本能が告げてるっす。この子について行けと!」
咲「意味が分かりませんよ」
桃子「おーねーがーいーっすー!」ギュー
咲「ちょっ……しがみつかないでください」
桃子「むーむーむー!」ギューッ
咲「……はあ」
咲「……まあ良いです。好きにしてください」
桃子「ほんとっすか?」
咲「はい。私も、1人では少し不安かなと思いましたので……」
咲「よろしくお願いします、東横さん」ニコリ
桃子「……ツンデレっすか」
咲「??」キョトン
桃子「~~~~ッッッ!!」
桃子(な、なんすかこの子!!)
桃子(物凄く庇護欲を掻き立てられるっす!)
咲「あ、私は宮永咲です」
桃子「ふむ……咲ちゃんっすね」
咲「咲ちゃ……まあいいか」メンドクサイ
咲(さて、ホテルに戻れるかな……)
桃子(迷子になる様な子っすから、しっかり見ておかないと不安っすね……)
桃子「咲ちゃん、迷子にならない様に手でも繋ぐっすか」
咲「迷子中にそんな事言われても……」
咲「というか、東横さんも迷子になってた癖に」
桃子「あ、そうだったっす」アハハ
咲(大丈夫かなこの人……)
【長野編・開始】
_______________
______________________________
_____________________________________________
【宮永咲と東横桃子】
桃子「そういえば、咲ちゃんはどうして迷子になってたんすか?」
咲「分かりません」
桃子「へぇ~……」
桃子「……ん?」
桃子「分かりませんってどういう事っすか」
咲「そのままの意味ですけど……」
咲「初めはA地点のベンチに座っていたんですけど、自販機に行って戻ってきたら、謎のベンチXに座っていました」
咲「そして迷子です」
桃子「……意味不明っす」
咲「ですから、そう言いました」
桃子「まさか、頻繁にこういう目に遭ってたりするんすか?」
咲「ええ、まあ」
咲「けど、今回みたいに全く知らない場所に居たのは初めてですかね」
桃子「は、波乱万丈な人生っすね……」
咲「幸運な事に、すぐに見つけてくれる人が居るので助かってますけどね」
咲「……というか、東横さんには及ばないと思いますよ」
桃子「……え?」
咲「先程から、少しでも東横さんから意識を逸らすと、姿が確認できなくなります」チラ
桃子「あぁ……」
桃子「やっぱり、咲ちゃんでもそうだったっすかぁ」
桃子「わりと普通に話してくれるから、もう完璧に見えてるかと思ってたんすけどね…」アハハ
咲「……」
咲「……後輩の子と、少し前にこんな話をしました」
____________
______________
マホ「先輩先輩、聞いてください!」
咲「どうしたのマホちゃん?」
マホ「マホ、色んな県のインターハイ予選決勝を見直してたんですけど、凄く不思議な人がいました!」
咲「神代小蒔とか荒川憩?」
マホ「いえ!そういう有名な方ではなくて、もっとマイナーっぽい方です!」
咲「へー?」
咲「それで、不思議って?」
マホ「えっとですね、神代小蒔さん園城寺怜さんに続いて、マホがコピー出来なさそうな人が居たんです!」
咲「!!」
マホ「あ、興味出てきましたか?」
咲「……マホちゃんがコピー出来ない条件は2つ」
咲「園城寺怜の様なまだ不完全な能力……全てを見せていない能力か、神代小蒔の様に、特別な何かを対価にしている能力」
マホ「はい!その方は、完全に後者でした!」
咲「……名前と、能力は?」
マホ「名前は……フルネームは忘れちゃいましたけど、モモさん?だった気がしますです」
マホ「そして能力は……」
マホ「卓上で消える、です」
_______________
_______________
咲「ずっと存在が朧気な東横さんを見ていて、今その話を思い出しました」
桃子「コピーって……後輩さんどんな魔物っすか」
咲「後輩の子から話を聞いた時は半信半疑でしたが……」チラ
咲(卓上の上で消える、そして何かを対価として払っている……まさかとは思ってたけど、本当に見えなくなるのか)
咲(…これは面白いな……この人なら、昔の私の±0でも止められたかもしれない)
桃子「咲ちゃん?見えてるっすか?」
咲「あ、すみません。見えてます」
咲(面白いなんて思ったらいけないね……反省)
咲(けど、後天的な私の±0と違って、東横さんのほぼ元からの体質を改善するのは……)
咲「……」
桃子「咲ちゃん、見えてるなら黙らないで欲しいっす!」
桃子「……見えなくなったんじゃって、ちょっと怖いっすから」ギュゥ
咲「……東横さんは、他人から認識されたいんですよね?」
桃子「それは、まあ、そうっすけど……今は、最悪部活の先輩にだけ見てもらえれば良いかなって思ってるっす!」
咲「……それは、このままでは難しくなるでしょうね」
桃子「……え」
咲「少なくとも、麻雀でその力を使い続けては、いずれ誰からも認識されなくなる……なんて事に繋がる可能性があります」
桃子「これは私の元からの体質っすよ?麻雀は関係ないんじゃ……」
咲「私の想像ですが、麻雀の試合中……自分以外も、対局相手の認識から外していますね?」
桃子「私以外……?」
咲「例えば、そう」
咲「捨牌、とか」
桃子「!!」ピクッ
咲「当たりみたいですね。……そうでないと相手をフリテンにしたり、リーチに無警戒にさせたり出来ないですから」
咲「原村和クラスの超デジタルなら、卓上限定でなら見る事はできるでしょうけど」
桃子「それが、さっきの話とどう繋がるんすか……?」
咲「良いですか?卓上での貴方は、自分だけでなく捨牌など、自分が触れる物までも不可視にしている」
咲「本来なら、他人が可視出来るものを、不可視化しているんです」
咲「それはつまり、その体質を能力へと昇華させて利用しているという事」
桃子「それは……そうっすね」
咲「……結論を言います」
咲「卓上で、ステルスが能力として使われて練度が上がる度に、本来の存在感が薄いという、その体質までもが大きくなっていくんです」
咲「麻雀でステルスを能力として使えば使うほど、日常での存在感の薄さも極まっていく」
桃子「そ、そんな事……」
咲「無い、と言い切れますか?」
咲「有り得ない、そう思って続けていたらある日突然、何をしても誰にも気付いてもらえない……そんな状況に陥る可能性だってあります」
桃子「それなら、兆候が出た時点でやめるっすよ!」
咲「兆候?」
咲「100%のステルスが120%になっていたとして、東横さん自身は果たしてその兆候に気付けますかね?」
咲「……それに、呪われる前に止めれば良いなんて考え、馬鹿です」
桃子「……」
咲「……」
咲「……」ハァ
咲「少し、我慢してくださいね」ギュッ
桃子「え、ちょ、咲ちゃん…?////」タジッ
咲「……」ゴッッッッッッッッッッッッ
桃子「…ぅっっ……!?」ビクッ
桃子(な、なんすかコレ……ッッ!)プルブル
咲「……」スッ
桃子「あ……」ハァハァ
咲「ねえアナタ、ちょっと良い?」
少女「ん、お姉ちゃん、なにー?」
咲「お姉ちゃんの隣で立ってる人、どう思うかな?」
少女「うーん……お姉ちゃんじゃなくて、隣の?」
咲「うん、そうだよ」
少女「隣の~……」
桃子「咲ちゃん…?何もしてない状態の私を、こんな子が見える訳」
少女「とってもかわいい!」
桃子「ない…………えっ?」
咲「そっかそっか。ありがとうね」ナデナデ
少女「えへへ、うんっ!」ニヘラー
少女「じゃあ、ばいばい!」フリフリ
咲「うん、ばいばいっ」フリフリ
咲「……」フゥ
咲「……これは応急処置と言うか、アレです」
咲「私と行動している時に、完璧に消えられてしまっては私も後味最悪なので」
咲「ついでに、ずっと袖を握られているのも落ち着きませんし」
桃子「ど、どどどどどどういう事っすか咲ちゃん!!?」
咲「私が出せるありったけを、東横さんの周りに撒き散らしました」
桃子「ありったけってなんすか!?物凄くおぞましい物が身体に入ってきた気がするんすけど!!」
咲「これで、暫くは少し影が薄い程度になると思います」
咲「……と言っても、東横さんが自ら存在を消そうとしてしまえば、すぐさま雲散霧消して見えなくなってしまいますが」
桃子「無視っすか!なんか、展開速過ぎてまたもや着いていけないっす……」
咲(ありったけの殺気を当てたのに、まだ若干薄いなんて……これ、本当にヤバかったんじゃないの?)
咲「余計なお世話だったかもしれませんが、せめて私といる時は見えるままで居てくださいね」
咲(上手くやれば、自由自在にステルスのON/OFFが出来るようになるかも……)
咲(いや、それは危険かな)
桃子「驚いたっす……というか、何か辛いことを言われてた気がするんすけど、結論は私のことが心配!……って事っすよね?」
桃子「だから、このドス黒いオーラで何とかしてくれようとしてるんすよね?」
咲「いや、別に心配なんて……」
桃子「咲ちゃんは最高っす!!大好きっす!!
」ムギュー
咲「うわわっ!ちょっと、だから急に…」
桃子「ありがとう」
咲「……」
桃子「私は、元から影が薄くて、他人との交流を切り捨てて……気が付いたらこんな風になってたんすよね」ギュゥ
桃子「後戻りなんて、出来ないと思ってたし……誰も、私の体質を解決しようとは言わなかったっす」
桃子「もう諦めてたから、何とも思わなかったけど……こうやって、認識される様になるのも、やっぱり良い物っす!」
咲「……この前、同じような人と出会って、同じような事があっただけなので、気が向いただけです」
咲「……なので、勘違いしないで下さい」フイッ
桃子「同じようなっすか?」
咲「その話はいいです」
咲「……良いですか?これは、私と約束してください」
咲「別に、麻雀で体質を活かそうと、何に使おうと構いません」
咲「……ただ、見えないのが当たり前。だから仕方ない」
咲「そんな考えは、捨ててください。その体質をそれ以上受け入れれば、それはもう受け入れではなく、乗っ取り」
咲「自分の意思とは関係なく……体質が、本質に変わってしまう可能性がありますから」
桃子「……分かったっす」グッ
咲「それでは、行きましょうか」テクテク
桃子「はいっす!!」ギュー
咲「……腕を組まないでください」グググ
桃子「照れてるんすか?」ニヤ
咲「暑いんですよ」
桃子「ふふっ、咲ちゃん可愛いっす」クスクス
咲「……はぁ」タメイキ
桃子「~~♪」
咲「……」
咲(……そう、体質を受け入れて…諦めたら、ダメ)
咲(いつか、そんな物壊して…近くに居てくれる人が現れる)
咲「……そうですよね」クス
____________
_______________________
______________________________________
【会場・どこか】
健夜「くしゅんっ!」
健夜「うう…」ズズ
恒子「すこやん風邪ー?大丈夫か!」
健夜「大丈夫だよ。……誰かに噂されてるのかも」
健夜(それか咲ちゃんが悪態ついてるか……)クスクス
恒子「すこやんの悪口なんて、すこやんに聞かれたら命が無いのに良くやるね!」
健夜「悪口確定!?」プンスカ
恒子「なはは、じょーだんじょーだん!」
健夜「ほら、馬鹿なこと言ってないで早く打ち合わせ終わらすよ?」
恒子「へーい」
健夜「まったくもう……」ハァ
健夜(……咲ちゃん、何やってるかな)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
桃子「へぇ、それじゃあ部活の先生と後輩さんと3人で観戦に来てるんすか」フムフム
咲「はい」
桃子「私の地元の長野にも、めちゃくちゃ強い人が何人かいるんすけど」
桃子「さっきの咲ちゃん並のヤバいオーラは中々いないっすね~」
咲「そういえば、長野から来たと言っていましたね」
桃子「っすよー」
桃子「インハイに出場した清澄高校の応援をしに、予選決勝進出高校がほぼ全員東京に来てるっす」
咲「は?何ですかそれ……敵同士ですよね?」
咲(そういえば、衣ちゃんも清澄と仲良さげだったな)
桃子「敵同士っすけど、4校一緒に合宿したりしてて、結構仲良いんすよねー」
桃子「特に、清澄の部長がそういう事考えるの得意みたいで」
桃子「竹井って人なんすけどね」
咲「いや、聞いてませんし……」
桃子「まあそんな訳で、皆顔見知りなんすよ」
咲「ふーん……そういう物なんですね」
桃子「あ、咲ちゃん!そこでアイス売ってるっすよ!」ワァイ
咲「本当ですね」
咲「私はここで待ってるので、食べたければ買ってきても良いですよ」
桃子「え~、一緒に行かないんすかー?」ムー
咲「丁度ここ日陰なので、待ってますよ」
桃子「ぶーぶー!それじゃあ、一人で行ってくるっすよーだ」ベー
咲「はいはい、行ってらっしゃいです」
桃子「むー……」スタスタ
咲(なんで怒ってるの……)ハァ
咲「……」キョロキョロ
咲(それにしても、結構歩いてるけど……全然知った道に出ないな)
咲(これは、ちょっと恥ずかしいけど健夜さんに電話して何とかしてもらうしか……)
桃子「とう!」ピタッ
咲「ひゃっ!?」ビクッ
桃子「あははっ、大成功っす!」 つアイス
咲「……」
桃子「必殺、ちょいステルス攻撃っす!」ドヤッ
咲「……冷たいですよ?」ゴゴゴゴゴ
桃子「あ、ちょ、ストップ!ストップっす!」
桃子「そのエグいのはもう喰らいたくないっす!」アセアセ
咲「ごめんなさいは?」ゴゴゴゴゴ
桃子「この通りっす!」ペコペコ
咲「……はぁ、全く」
桃子「……中々可愛い声も出せるんすね…」ボソ
咲「はい?何か言いました?」
桃子「何でもないっす!」
桃子「それと、はいこれどうぞっす!」つアイス
咲「??」キョトン
桃子「咲ちゃんに一つあげるっすよ。2つ買うとお得セール中だったっすから!」
咲「いや、悪いですよ」
桃子「受け取らない方が悪いと思うっす!私1人で二つも食べられないっすよ」ホレホレ
咲「……なら、有り難く頂きますね」
桃子「どぞどぞ!」
咲「あ、ミカン味ですね」つ アイス
桃子「ゴーヤ味と迷ったんすけど、夏っすしミカンかなって」
咲「夏だからって理由以前の問題でしょうそれは……なんですか、ゴーヤって」ペロ
咲「あ、美味しい」ペロペロ
桃子「想像が付かないっすね~逆に気になるっす」
咲「ならないよ……」ハァ
桃子「……」ジーッ
咲「……」ペロ
桃子「スキありっす!」パクッ
咲「あ……」
桃子「うんうん、咲ちゃんの方も美味しいっすね!」
咲「……いや、同じ味じゃないですか」
桃子「あははっ、違いないっすけどね~」
咲「……」
咲「……」ゴッッッッッッッッッッッッ
桃子「ひぇっ!?」ビクッ
咲「隙あり、です」パクリ
咲「んー」ペロリ
咲「やっぱり同じ味ですかね」
桃子「ちょっと!今のは隙ありじゃなくて、隙を作らされた形なんすけど!?」
咲「ふふっ、隙は隙です」クスクス
桃子「もう怒ったっすよー!」
咲「あはは……」ドンッ
咲「あぅ……あ、すみません、よそ見をしていて…」
「いや、こちらこそ申し訳ない。不注意だった」
桃子「咲ちゃー…………ん?」
桃子「先輩!!!」
ゆみ「モモ!!やっと見つけた、探したぞ」
桃子「ごめんなさい……散歩してたらいつの間にか迷子状態だったっす」
ゆみ「いや、無事見つかって良かったさ。蒲原達もあちこち探しているだろうから、安心させてやらなきゃな」
桃子「そんな大事だったんすか!?…それは申し訳ない事をしたっす」
ゆみ「いや、大丈夫さ」
咲「東横さんの先輩ですか?」
桃子「あ!そうっす!私の高校の先輩っすよ!」
ゆみ「おっと、すまない。私達だけで話をしてしまった」
ゆみ「私は加治木ゆみ、モモの先輩だ」
咲「……へぇ」ジーッ
ゆみ「な、なんだ?」
咲「いえ、別に……」
咲「加治木さん、ですね。覚えました」ニコリ
桃子「むっ……」
桃子「この子は私の迷子仲間の宮永咲ちゃんっす!ここまで一緒に来てくれたんすよ!」
ゆみ「迷子仲間……?って事は、宮永さんも迷子なのか?」
桃子「そうなんすよ!」
咲「なんで東横さんが答えてるの……」
桃子「えー?良くないっすか?」
咲「別にいいけどさ」
ゆみ「うん……?そういえば、今はモモがよく見えるな」
桃子「そうそう!それも聞いてくださいっす先輩!」
桃子「実はっすね……」
_______________
______________________________
_____________________________________________
ゆみ「驚いたな……」
桃子「私も最初はビックリ仰天だったっす」
咲「……」
咲「実際に体験した東横さんは別として、加治木さんは今の話を信じるんですね」
ゆみ「ああ、信じざるを得ないだろう。実際に、私もモモの存在が強くなったと実感しているし、通行人も認識しているようだしな」
咲「そうですか」
ゆみ「それで咲、今の話を含めての提案なんだが聞いてくれるだろうか?」
咲「提案?」
桃子「呼び捨て!!」ガーン
ゆみ「聞いた話では、咲を一人で歩かせるのは危険だと思うんだ」
咲(会って数分でこんな事言われる私って……)
咲「まあはい、そうですね」
咲「ですが、東横さんはもう加治木さんと会えましたので、私に付き合う必要はありませんよ」
ゆみ「それなんだが、咲」
ゆみ「改めてお礼もしたいし、私達が泊まっている宿まで来てはくれないだろうか?」
咲「はい?」
桃子「ナイスアイディアっすよ先輩!!」
咲「いや、おかしいでしょう……」
ゆみ「迎えに来れる部活の先生と言うのも、来られるのは夕方なんだろう?」
ゆみ「それなら、居場所がはっきり分かる所にいた方が良いと思うんだが」
咲「それは、まあそうかもですね」
ゆみ「今は、鶴賀以外の高校の選手も来ている。雀卓も複数台ある事だし、麻雀も打てる」
ゆみ「どうだろうか?」
咲「……」カンガエ
咲「……それなら、お世話になります」
桃子「やったっす!!」ギューッ
咲「暑いから離れて……」グイグイ
桃子「あははっ、ほら早く行くっすよ!」
咲「ちょ、引っ張らないで」ズルズル
ゆみ「ははっ、モモが同年代の友達と仲良くしているのを見ると嬉しくなるな……」
ゆみ「っておい、そっちは逆だぞ!また迷子になる気か」タッタッタ
咲(長野の高校が来てるって事は……)
~宮永咲と東横桃子、カン~
【閑話・宮永咲と……】
~咲、中学3年生・春~
「起立、さようならー」
「「「さよならー」」」
サヨナラー ウワ、ブカツダル... カエリニドッカイコ-
センセーアシタノホシュウッテ オミセシヨウオウジャノ
ザワザワ ガヤガヤ
咲(ふぅ……今日も終わった…)
生徒A「咲ちゃん、今日こそ一緒に帰らないかい!!」シュバッ
咲「わわっ…」ビク
咲「あ…すみません、今日も部活です……」
生徒A「うわぁぁぁぁん!今日もフラれたぁ!」グスン
生徒A「でも、私は諦めない!諦めたらそこで試合終了だからねっ!」フンス
咲「えっと……」オロ
生徒B「はいはい、宮永さん困ってるから……今日も私で我慢してくださいねー」ズルズル
生徒A「ちょっ、お前はもう飽きたのー!今日は咲ちゃんと帰るー!」ジタバタ
生徒B「飽きたってなんだ飽きたって!!」
生徒B「ごめんね宮永さん。でも、私もたまにでいいから一緒に帰ってみたい……かも」チラ
生徒A「私を無視して咲ちゃんを口説くなー!!」ムカー
生徒B「なーんてね、また明日!」フリフリ
咲「は、はい。その、また明日、です」フリフリ
生徒B「うんっ」ニコ
生徒A「うわぁぁぁ!!咲ちゃん好きだぁぁぁぁ!明日こそ、明日こそぉぉ!」ズルズル
生徒B「うっさい!」ベチン
生徒A「きゅぅ……」バタン
咲(行っちゃった……)
咲「……」フゥ
咲(最近いっつも帰りに誘ってくれてるのに、断って申し訳ないな……)ハァ
咲「……」
咲「さて、と」スッ
咲「……部室向かお」テクテク
______________
______________________________
_____________________________________________
~本校舎内・とある廊下~
キャーキャー ワイワイ
スイエイブドウデスカー テニスブイイデスヨー
咲「なんだか学校が賑やかだと思ったら……もうそんな時期か」チラ
咲「部員勧誘……」
二年生徒「そこのあなた!是非吹奏楽部へ!」つ チラシ
咲「……」キョロ
咲「……え、私?」
二年生徒「うんうん!」
咲「……」
咲「……私、3年生だけど」
二年生徒「へっ……先輩!?ほんとだ…」
二年生徒「ご、ごめんなさいっっ!」ペコペコ
咲「ううん、気にしないで」ニコリ
二年生徒「/////すみませんっ、失礼しますっ!」テレ
咲「……」
咲「……はぁ」
咲(去年も一年生と間違われたんだよね……リボンの色を見て欲しいよ、全く!)プンスカ
咲「……」テクテク
咲「……ん?」チラッ
「あぅぅ……」
「ひうっ……!」ビクビク
咲(新入生かな……)
「ひえぇぇ……」オロオロ
咲「……」
咲「あの、大丈夫?」
「へっ……」
咲「この辺、今の時期は人がいっぱいだから、苦手ならしばらくはあんまり寄らない方が良いよ?」
「え、えっと……その……」オロオロ
咲(……仕方ないか)
咲「……付いてきて?」ギュッ
「ぁ……(手握って…)」ドキッ
咲(あぁ……部室が遠のくよ)ハァ
_______________
______________________________
_____________________________________________
~本校舎内・昇降口~
咲「ここまで来たら、もう大丈夫だと思うから」
咲「次からは、西側の階段から降りてくると良いよ?」
咲「ちょっと遠回りになっちゃうけどね」
「あ、ありがとうございました!」
咲「うん。それじゃあ私はこれで」スタスタ
「……」
「あ、あのっ!」
咲「うん?」フリカエリ
「あっ……えっと…」モジモジ
咲「??」
「お、お名前を、教えてくださいっ!」
咲「名前……私の?」
「だ、ダメなら良いんですごめんなさいですっ!」ペコペコ
咲(小動物みたいな子だなぁ……)
咲「……」
「だ、ダメですよねっすみませ」
咲「宮永咲、だよ」
「えっ?」
咲「それじゃ、さよなら」ニコリ
「あっ…」
咲(懐かしいなぁ…1年の時、私もあのバカ先輩にこうやって……)
咲(……いや、あの時は無理やり困ってる事にされて無理やり連れ出されて、無理やり名前を覚えさせられたんだっけ)
咲「……」
咲(あの人、元気かなぁ)
(行っちゃいました……)ボーッ
「宮永咲、先輩……」
「恰好いい人でした……」
「……/////」カァ
_______________
______________________________
_____________________________________________
~旧校舎・麻雀部部室~
咲「……」ペラ
健夜「……」ペラ
咲「……」ペラペラ
健夜「……」ペラ
咲「……健夜さん、私そろそろ上巻読み終わります」ペラ
健夜「え、私まだ全然進んでないよ?」
咲「……」ペラ
咲「は?……冗談やめて下さい、こうして読書タイムが始まって、もう1時間ですよ」
健夜「咲ちゃんは読書に慣れてるから早いんだよー」
咲「はぁ……」パタン
健夜「あれ、読んじゃわないの?」
咲「私、上巻が終わったあとはすぐに下巻読みたいタイプなので」
咲「健夜さんが読み終わるまで待ってます」
健夜「えぇ……何だか悪いよ」
咲「別に、何週間掛かっても良いですよ」スッ
健夜「さすがにそんなには掛からないよ!?」
咲「どうだか」
咲「私は暇なので、ねっとまーじゃんでもやってます」
健夜「あ、パソコンの電源の入れ方分かる?」
咲「失礼ですね……もうこの前みたいに、初期化とかはさせませんよ」フンス
健夜「そ、そっか(不安だ)」
健夜「それにしても珍しいね、咲ちゃんがネトマなんて」
健夜「初めてじゃない?実際にやるのは」
咲「そうですね。前々から健夜さんがやってるのを見てて、興味はありましたけど……」タドタド
咲「はい、ここからどうやってやるんです?」つ 画面
健夜「おお…よくそこの画面までいけたね?」
咲「馬鹿にしてます……?ちゃんと、健夜さんがやってる時に見て覚えたんです」
健夜「さすがに適応力は高い……」
咲「ほら、早く次に進めてください」
健夜「えっと、自分のアカウント作る?」
咲「あかうんと?」キョトン
健夜「あ~……」ウーン
健夜「ネトマのパスポート、みたいな!」
咲「ねっとまーじゃんやるのにパスポートが必要なんですか?」
咲「凄く国際的なんですね……」オドロキ
健夜「違うよ咲ちゃん!例えだから!パスポート" みたいな "物だから!」
咲「うーん?」
咲「……よく分からないので健夜さんのでやりたいです」
健夜(健夜さんのでやりたい……)
健夜「……」
健夜(可愛い)
咲「あの、聞こえてます?」オーイ
健夜「あ、うん。分かったよ」カチカチ
健夜「パスワードは……"common sense"っと」カタカタ
咲「……常識、ですか?」
健夜「あっ、そ、そこは気にしなくて良いから!」アセアセ
健夜「三麻、東風、半荘何でも出来るけど、どれやりたい?」つ 画面
咲「改めて、こんな機械でこんなに色々出来るのは凄いですよね……」スゴイ
健夜(可愛いなぁ……)
咲「まあでも、普通に半荘戦で良いですよ」
健夜「ん、分かったよ」カタカタ
健夜(フリー卓で良いかな……色んなレートの人来ちゃうけど、マナーは良いし)クリック
咲「対局相手を探していますって出てますね」
健夜「平日のこの時間だし、人は少ないかもね」
咲「放課後の部活時間、すぐ近くにリアルな雀卓があるのにネット麻雀をやる私達」
咲「よくこの部活潰されませんね……さすが、健夜さんの権力」
健夜「何か嫌な言い方だよそれ……」
健夜「あ、人集まったね。ここからは、分かる?」
咲「はい、大丈夫です。やり方とかは覚えてますので」
健夜「ん、分かったよ」
健夜「それじゃあ、私は続き読んでるから」つ本
咲「はーい」カチカチ
健夜「……頑張って、咲ちゃん」グッ
健夜(咲ちゃん、ネトマは弱いだろうなぁ……)
_______________
______________________________
_____________________________________________
~数分後~
咲「あぁぁ……負けたぁ…」カチカチ
咲「何この"のどっち"って人……強すぎるでしょ…」グテー
咲「絶対ズルしてる……こういうの何て言うんだっけ……動物みたいな名前…」
咲「ちーたーだっけ?絶対それだよ、ライオンになれないチーターはズルして悪い事をするもんね…」
咲「……いや、意味が分からないか今のは」
健夜「あ、終わったの?」
咲「はい、取り敢えずは」
健夜「お疲れ様。結果は……」チラ
健夜「惨敗だね」クスクス
咲「だって、ネット麻雀だと何も見えないんですもん」
咲「というか見えない以前に、色々と悪運が続きすぎます」
咲「牌が言うこと聞いてくれないって言うか……分かります?」
健夜「あはは、私も始めはボロボロだったなぁ」
健夜「オカルト持ちがデジタルな事をやると、どうにも合わないみたいだね」
咲「それにしたって、5回くらい連続で同じ人に振込みですよ?」
咲「ネット麻雀って怖い……」トラウマ
健夜「んー相手はどんな人…………」チラ
健夜「……」
健夜「え!?」
咲「なんですか。画面に映った自分の顔にシワが増えてましたか」
咲「大丈夫です、いつもの健夜さんですよ」
健夜「違うよ!?急にどうしたの!?」ガーン
健夜「……ほら、この咲ちゃんが振込みまくった"のどっち"」
咲「あぁ、天使みたいで可愛いキャラクターですね」
健夜「この人、ネトマ界でプログラムなんじゃないかって言われるほどのプレイヤーだよ」
咲「そんなに?……確かに、牌効率とかは気持ち悪いくらいに完璧でしたけど」
咲(チーターじゃなくてライオンさんだったね)
咲「でも、そんな人だったらとっくにリアルで名前が知れてるハズでは?」
健夜「私も、少し興味があって調べてたんだけど、プロの中にはここまでのデジタル打ちは居ないの」
咲「……へぇ?」
咲「なら学生、ですか」
健夜「うーん……どうなんだろう?」
健夜「これほどの打ち手が、大会とかに出てるなら気付かないハズがないんだけど……」
咲「……」
咲「なら、答えは一つでしょう」
健夜「うん?」
咲「リアルを全て切り捨てて対局できるネット麻雀だからこそ、"のどっち"は強い」
咲「逆に、リアルの情報……実際の対局の空気感やらを感じる、リアルの麻雀では、本来の実力を出せない」
咲「更に言えば、ネトマではオカルトを見ないが為に、オカルトの存在を知らずに……もしくは認めずにリアルで打ってて、良いカモにされてる」
咲「……とか」
健夜「なるほどね……ありそうかも」
咲「ね?……もし仮に、この "のどっち" が本来の実力をリアルでも出せるのなら……」
咲「……」ウズッ
健夜「……まだまだ楽しみがいっぱいだね、咲ちゃん」ニコリ
咲「はい」クス
咲「……でも、もうネトマはやめます」ポイ
健夜「あれ、やる気になるかと思ったのに」
咲「だって、無理ですもん。ネトマ無理です。勝てません、絶対」ブーブー
健夜「ぷっ……咲ちゃん可愛い」
咲「うるさいです!!早く読書に勤しんでください!」プンスカ
健夜「ふふっ、はーい」クスクス
咲「はあ…」チラ
咲(それにしても、この"のどっち"……本当に強いな)
咲「……」
咲「確か、ここをこうやって……」カチカチ
咲「……」カチカチ
咲「あった、だいれくとめっせーじ」カチ
咲「えっと……」カタカタ
咲『おつよいですね、としはいくつなんですか』ポチポチ
咲「っと……送信っ」タン
咲「……」ジーッ
ピコーン
咲「あ、返信きた……」カチカチ
のどっち『光栄です。年齢は個人情報なので、すみません』
咲「まあ、そうだよね…」カチカチ
咲『そうですよね。きゅうにごめんなさい』
のどっち『いえ。それはそうと、キーボードの変換の所で、漢字に変換する事ができますよ』
咲「変換……あっ、本当だ」
咲(え、ていうか私さっきので会話終わらそうと思ってたのに…)ポチポチ
咲『本当ですね、すみません。ありがとうございま』
咲「あっ、最後の文字打ち損ねた……」ポチポチ
咲『すみません、最後のす、が抜けていました』
のどっち『ふふっ、もしかしてパソコンに慣れていないんですか?』
咲『恥ずかしながら。ネット麻雀も初めてやりまして、とても強い方がいるんだなと驚きました』
咲『是非、現実でもお相手願いたいです』
咲「……ふぅ」
咲「パソコンは目が疲れるよ……」
健夜「咲ちゃん、頑張って読み終えたよー」テクテク
健夜「って、DM?」チラリ
咲「あ、健夜さん。この短時間で読み終わるなんて中々やりますね」
咲「試しに、のどっちにメール送ってみたら返ってきたんですよ」ドヤッ
咲「上手く行けば、どんな人か分かるかも」
健夜「えっ、のどっちってメールとか一切返さないって聞いてたけど……」
健夜「どれどれ……」
健夜「……」
咲「どうです?」フンス
健夜「咲ちゃん……これは流石に無いかな…」
咲「は?何でですか?」
健夜「これじゃあまるで、現実で会ってあわよくばを狙ってる、男の人みたいだよ?」
咲「あわよくばって何ですか、意味わかりません」
健夜「だから、その……なんて言うのかなぁ」
健夜「ネットで出会いを求める……みたいな?」
咲「いや、私はこの人がどんな人か、一目見てみたい訳ですから間違ってませんよね?」
健夜「咲ちゃんは自分が送ってる側だから良いかもしれないけど、のどっちさんは違うかもしれないでしょ?」
健夜「下心のある、異性だって思われても仕方ないよ?」
咲「……まあ、確かに」
咲「言われてみたら、ちょっとダメだったかもです…」
健夜(歳を聞いて、現実で会おうとするネット上の人物とか、怪しい事この上ないよ!!)
咲「……」シュン
健夜「あっ、ごめんね!?ちょっと言い過ぎたかも!」アセアセ
健夜「けど、流石にリアルで打とうって言われてオッケー出す人は居ないと思うから、これからは気をつけようね?」
健夜「それと、咲ちゃんもほいほい誘いに乗らないようにっ」
咲「はい……じゃあ、謝罪の意を込めて……」ポチポチ
健夜(あ、嫌な予感)
咲『今、こういう事はダメだと教えられました。ごめんなさい』
咲『しかし、のどっちさんにはとても興味があるので、いつか必ず見つけ出して対局を申し込もうと思います』
咲『なので、是非とも麻雀を続けていてくださいね』
咲「っと、これでどうです?」
健夜「いや怖いよ!?さっきのより質悪くなったよ!!」
健夜「いつか必ず見つけ出すってなに!?1歩外れたら脅迫だよこれ!」
咲「もう、うるさいです。送ってしまったものは仕方ないじゃないですか」フイッ
健夜「開き直った!?」
咲「返事も返って来なくなっちゃったので、もうやめます」つ 電源切り
健夜「咲ちゃんが電子機器使う時は隣に付いてなきゃいけないね……」
咲「ボコボコにされて少し後味悪いので、麻雀打ちましょうよ」テクテク
健夜「あ、うん。良いよ」
咲「それじゃあ、いつも通り10万点持ちでツモなしロンのみ責任払いありの、飛ばしたら勝ちルールで」
健夜「今までの勝敗数どんな感じだっけ?」
咲「うーん…途中から数えるのやめちゃいましたし、覚えてません」
咲「けどまあ、今日は私が勝つので健夜さんが少し勝ち越しって事にしてあげますよ」ニコリ
健夜「へー、後で後悔しても知らないよ」ニコッ
咲「……では、始めますk」
「し、失礼しますっっ!!」
咲「んっ……?」
健夜「え、お客さん?」チラ
「あ、あの!こちらに麻雀部の部室があると聞いて来たんですけど!」
咲(ドアの向こうで叫んでる……)
健夜(ドアの向こうで叫んでるからどんな子か分からない……)
咲「健夜さん」
健夜「え、私!?ここは同じ生徒の咲ちゃんの方が良いと思うんだけど……」
健夜「私が出ていったら、誰だってならないかな?」
咲「……それもそうですかね…」スッ
健夜(え、もしかして新入部員?去年は誰も来ない所か、麻雀部の存在すら知れ渡って無かったのに……)
「あ、あのぉ……すみませんっ!」
咲「はい、どちら様ですか」スタスタ
咲「ドアの向こうで叫んでても対応し辛いですよ……」スッ
ガチャッ
咲「何の用ですか?」チラ
マホ「ゆ、夢乃マホですっ!!えとえと、一年生で……えっと、麻雀部に入部希望なんですけど!」ビクビク
マホ「こ、ここに麻雀部の部室があるって聞いて、その……」
咲「……あれ?あなたは」
マホ「……へっ…」チラリ
咲「さっきの子?」
マホ「み……み、みみみみみ!!」
マホ「宮永先輩!!!??」
_______________
______________________________
_____________________________________________
咲「はい、紅茶で良かったかな?」つ紅茶
マホ「あ、ありがとうございますっ!」
咲「健夜さんは水で良いですよね」
健夜「なんで!?」ガーン
咲「冗談ですよ、はい」つコーヒー
健夜「最近冗談に聞こえなくなってきたよ……」
健夜「ありがとう、咲ちゃん」
マホ「………」ズズ
咲「えっと……健夜さん、どうしたら?」ヒソヒソ
健夜「分からないよ…入部希望の子なんて今年も来ないと思ってたし……」コソコソ
咲「私もですよ……」ヒソヒソ
マホ「あ、あのぉ……?マホ、どうしたら……」
咲「あ、ごめんね?えっと……入部希望、で良いのかな」
マホ「は、はいっ!」
咲「あー……」チラ
健夜「見ての通り、この麻雀部は部員がここの咲ちゃんだけ。後はコーチの私しか居ないけど……」
健夜「それでも大丈夫かな?」
咲「たまに雀荘に打ちに行ったりするけど、基本は2人打ち……夢乃さんを入れたら三麻になっちゃうけど」
マホ「そうなんですか……」
咲「うん。だから、入部はいつでも歓迎するから、他にやりたい部活とかあるならそっちも見てきてから、決めたらどうかな?」
マホ「……」カンガエ
健夜(この子……)ジーッ
マホ「いえ、むしろ宮永先輩と2人きりなら都合バッチリです!!」
咲「え?」
健夜「うん?(私は?)」
マホ「マホ、先ほど宮永先輩に助けて貰って、とってもカッコイイなって思ってて」
マホ「もう一度会いたいなって思ってたです!」
咲(な、なんか急に積極的になったな)
健夜「助けたって?」
咲「あぁ、さっきこの子が勧誘の波に飲まれてたので、少し」
健夜(何その展開!?)
マホ「なので、マホ、部員数が少なくても大丈夫です!」
咲「……」チラリ
健夜「咲ちゃんが決めていいよ?」
咲「……」カンガエ
咲「マホちゃんは、どうして麻雀部に入りたいの?」
マホ「えっとぉ……」
マホ「マホ、結構昔から麻雀をしてるんですけど、小学校の頃にとても強い人と対局したんです」
マホ「どんな方か忘れちゃったんですけど、いつかその人ともう一度対局したいって、ずっと思ってて……」
マホ「そして、その時は負けちゃったので、次こそ勝ちたいって思ってるので、もっと麻雀をやりたいんですっ!」
マホ「だから、その……はい、そんな感じ……なんですけど…」チラ
咲「……」
マホ「ダメ……でしょうか…?」
咲「……うん、分かった」
健夜(憧れ……かぁ)クス
咲「ようこそ、麻雀部へ」ニコッ
マホ「!!」パアッ
マホ「はいっ!よろしくお願いするですっ!」ペコッ
_______________
______________________________
_____________________________________________
咲「改めて自己紹介するね、私は宮永咲。3年生です」
健夜「小鍛治健夜、一応この部のコーチって事になってます」
マホ「こ、小鍛治健夜さんって…もしかして……」
咲「うん。掃除洗濯料理ダメダメの、アラサー独身麻雀狂の、あの小鍛冶健夜さんだよ」
咲「元世界2位だけど、その辺りは気にしなくて大丈夫大丈夫。なんたって、生活力が皆無だからね」
マホ「へっ?」
健夜「咲ちゃん!?いきなり私の評価落とすのやめよ!?」ガーン
咲「ぷっ……否定してこない辺り、悲しいですね」クスクス
健夜「ま、まあ…家事ダメダメなのは本当だから……って、咲ちゃん!変なこと言わせないで!?」
咲「まあ、普段はこんな感じだけど、結構頼りにはなる人だから安心してね」
マホ「は、はい……」ウタガイノメ
健夜「その微妙なフォローじゃあ失われた信用は返ってこないよ咲ちゃん……」ニヘラ-
マホ(先輩に頼りになるって言われた途端、顔が綻びました……)
咲(少し褒めたらこれなんだから……)
咲 マホ((この人、ちょろい(です)))
マホ「あっ、マホの自己紹介がまだでした……」
マホ「一年生の夢乃マホですっ。えっと……家事は一応出来なくもないですっ」
咲「ぷっ……」
健夜「マホちゃん!?そこは言わなくても良い所だから!!」
マホ「へっ?あ、ご、ごめんなさいですっ!」ペコペコ
咲「ふふっ……良いんだよマホちゃん…」クスクス
健夜「咲ちゃん笑いすぎだよ……」
マホ(宮永先輩はやっぱり可愛いです……)ドキドキ
咲「えっと、自己紹介も終わったし1局打ってみよっか?」
咲「経験者って事だし、ルールとかは大丈夫?」
マホ「あ、はいっ!大丈夫です!」
咲「健夜さん、さっき言ったルールは変更で、普通のルールに変更で」
健夜「うん、了解だよ」
咲「えっと、3万点持ちでウマオカなし、赤は2枚ね。一応、箱下でも続行にしておこっか」
マホ「分かりましたっ!」
咲「健夜さんは少し手加減してくださいね」
健夜「分かってるよ」コクリ
咲「じゃ、始めようか」
_______________
______________________________
_____________________________________________
咲 42000
健夜 25000
マホ 23000
マホ「マホ負けちゃいました……」ショボン
咲(なに、この子……?)
健夜(やっぱり、何か感じると思った)
咲(偶然……?にしては、違和感が…)
マホ「何度もチョンボしそうになってしまってごめんなさいです……」シュン
咲「……」カンガエ
健夜「咲ちゃん」
咲「!!」ハッ
咲「……チョンボの事は気にしなくて大丈夫だよ」
咲「それより、もう一局だけやってみよっか」
マホ「は、はいっ!次はチョンボしないように気をつけます!」
咲「……健夜さん」チラ
健夜「うん、分かったよ」コクリ
咲「じゃあ、よろしくお願いします」
_______________
_______________
咲「カン、もう1個、カン」スッ
健夜「ロンだよ。槍槓ドラ8」
咲「はい」チャラ
マホ「……」ジーッ
健夜「ポン」スッ
咲「それカン、ツモ責任払いで24000点です」
健夜「…はい」
マホ「……」ジーッ
マホ「……」ゴゴゴゴゴゴ
咲(これは……)
健夜(ツモ悪いなぁ……)
マホ「リーチ」ゴッッッ
咲(海底前でリーチ?)
健夜(決まり、かな)
マホ「ツモです、リーチ一発海底ツモ三色一盃口ドラドラ」
マホ「8000オールです」ボッッ
咲「!!」ガタッ
咲(この子……)
咲(何も感じなかった訳じゃない……けど、これほどの…?)
健夜「咲ちゃん?」
咲「あ、すみません。急に立っちゃって」スワリ
咲「ねえ、マホちゃん?」
マホ「は、はいっ!マホ、何かダメだったでしょうか……?」オロオロ
咲「ううん、そんな事ないよ」
咲「マホちゃんって……少し言い方は悪いんだけど、人の真似をする事が得意?」
マホ「………」
マホ「えっ……」
咲「もう少し詳しく言うと、テレビとかで見た麻雀選手の能力とかを、コピーしたり……できるよね?」
マホ「ぁ……」
咲「……どう、かな?」
マホ「えっと……あの……」
マホ「……」ガタッ
咲「え、マホちゃん?」
マホ「ご、ごめんなさい……今日は、帰ります…」タッタッタ
咲「えっ……」
ガチャ
マホ「失礼、します……」
バタンッ
咲「マホちゃん……?」
健夜「……急に帰っちゃったね」
咲「私、何か嫌な事言いましたかね……?」
健夜「うーん……聞いてた限りでは、そんな事は無かったと思うけど……」
咲「でも、能力の話をした途端に顔色変えて出ていっちゃいました」
健夜「関係があるとしたら、それかもね…」
健夜「それにしても、正直ビックリしたよ。マホちゃん」
咲「私もですよ……何か、色々な物が混ざりあっている様な違和感は感じていましたが……」
咲「一つ一つが薄いせいで、核に気づけませんでした」
健夜「あのチョンボは、制約の一つだねきっと」
咲「はい。けど、呪いとは違って意識をすれば止められるみたいですし、そこまでのデメリットにはなりませんね」
健夜「能力のコピー……そんな事できる子が、中学生にいるなんて…」
咲「……とりあえず、私も今日は帰ります」
健夜「あ、送っていくよ」
咲「じゃあ、一緒に行きましょうか」
咲「……少し、考えたい事もありますし、付き合ってください」スッ
健夜「うん、そうだね。」
健夜「電気消すよ?」
咲「はい」
咲(……夢乃マホ…か)
_______________
______________________________
_____________________________________________
~3日後・始業前、部室~
咲「……マホちゃん、あの日以来来ませんね」
健夜「うん…」
咲「……」
健夜「……大丈夫、その内」
咲「そんな言葉はいりません。分かってるでしょう」
健夜「……そうだね、ごめん」
咲「いえ……こちらこそ、すみません…」
咲「……マホちゃんの能力について触れた事が、この部室に来なくなった……もしくは、来づらくなった理由だとして」
咲「一体、どんな関わりがあるんでしょうか」
健夜「うーん……」
健夜「考えられるのは、能力を見破られたく無かった……とか」
咲「それは私も考えましたけど…もしそうなら、あの時能力を使ったりしますかね?」
咲「しかも、あれだけ強力な場の支配と海底……天江衣のコピーまでしたんですよ?」
健夜「そうなんだよね……」
咲「……」カンガエ
キーンコーンカーンコーン
咲「!!」ピクッ
健夜「続きは、放課後に考えよっか」
咲「……そうですね」スッ
咲「とりあえず、学校行ってきます」
健夜「ん、行ってらっしゃい。頑張ってね」
咲「はい」テクテク
健夜「……」
健夜「…咲ちゃん!」
咲「??」クルッ
健夜「……能力の悩みは、多分咲ちゃんが気付いてあげるのがいいと思うの」
咲「……」
健夜「だから…」
咲「大丈夫です、健夜さん」
健夜「!!」
咲「分かってますよ」ニコッ
健夜「……うんっ」ニコリ
咲「では、また後でです」フリフリ
健夜「また放課後、ね」フリフリ
_______________
______________________________
_____________________________________________
~授業後・教室~
咲「……」
生徒A「咲ちゃぁぁぁぁぁ…………ん?」
生徒A「どったの咲ちゃん、いつも可愛い顔が悩ましい表情で更に可愛くなってるよ?」
生徒B「アンタのその一言が、更に困惑の表情まで作らせるんだからやめなさい」ゲシ
生徒A「痛い!?蹴らなくたって良いじゃん!」
生徒B「それで宮永さん、どうかしたの?」
生徒A「無視すんな!この貧乳暴力女!」
生徒B「ふんっ!」ゲシッ
生徒A「きゅぅ……」
咲「二人とも……」
生徒B「あはは…ごめんね、こいついっつもこんな感じで」アハハ
咲「いえ…」
生徒A「んでんで、咲ちゃんは何を悩んでるのかな?」復活
生徒B「復活はやっ……」
咲「……別に、悩んでは……いません…」
生徒A「そんな可愛い声と可愛い顔で言われたって、説得力ないよー」
生徒B「可愛いと可愛いしか無かったんだけど?」
生徒A「咲ちゃんイズ可愛い!おーけー?」
生徒B「アンタが馬鹿って事は分かったわ」
生徒A「何も分かってない!」プンスカ
咲「……ふふっ…」クスクス
生徒A「!!!」
生徒B「可愛い……」
生徒A「お前も可愛いって思ってんじゃん」
生徒B「うそっ、今声に出てた?」
生徒A「いぇす」
生徒B「~~~~っっっ/////」
咲「ふふふっ…おかしいですね二人とも…」クスクス
生徒B「二人とも!?」
生徒A「うんうん!私たちに悩みを打ち明けちゃえば、きっと面白可笑しく解決に導いちゃうよ!」
咲「面白可笑しかったらダメだと思うけど……」
咲「……うん、じゃあ、少し聞いてくれますか?」
生徒A「少しと言わず、何時間でもいいよっ!」
生徒B「うるさい」ベシッ
咲「実は……」
_______________
______________________________
_____________________________________________
生徒A「ふむ……つまり、新入部員が1日で部活に来なくなっちゃったと」
生徒B「かいつまみすぎでしょ……」
咲「でもまあ、そんな感じです」
咲「すみません、こんな話聞いてもらっちゃって」
生徒B「ううん、むしろ嬉しいよ」ニコリ
生徒A「うーん、咲ちゃんは、まずはその子が来なくなっちゃった理由を解明しなきゃいけないの?」
咲「えっ?」
生徒A「つまりーえっとー……翻訳頼む!」
生徒B「押し付けないでよ……」
生徒B「まあ、要するに、その子に会って話を聞くのはダメなの?……って、言ってるんだと思うよ」
生徒A「その通り!!」
咲「会うって……部室に来てくれないんですよ?」
生徒A「違うよ咲ちゃん!なにも、部室でしか会えないなんて事はないでしょ?」
咲「えっ……」
生徒B「その子が来ないならさ、宮永さんから行っちゃえば良いんだよ」
咲「!!!」
生徒A「あぁ……今日も咲ちゃんとの下校はお預けか…」ガックシ
生徒B「頑張って、宮永さん」グッ
咲「……ありがとう、二人とも」スッ
咲「ちょっと、行ってくるね!」タッタッタ
生徒A「行ってしまった……」
生徒B「結末は、また明日聞くとしようよ」クス
生徒A「……だね」ニコリ
_______________
______________________________
_____________________________________________
~本校舎・一年教室~
咲「はぁ……はぁ…」スッ
ガララ
咲「……」キョロキョロ
咲「ねえ、少し良いかな?」
一年生徒「え?はい、何でしょうか?」
咲「このクラスの、夢乃マホさんってもう帰っちゃった?」
一年生徒「マホちゃんですか?えっと、はい」
一年生徒「最近はいつも早く帰ってますね」
咲「ありがとう!」ダッ
一年生徒「ぁ……行っちゃった…」
_______________
______________________________
_____________________________________________
~校舎外・ある場所~
咲「…っっ……」ハァハァ
咲「こんなに走ったの……いつぶりだろ…」ハァハァ
咲「チャイムが鳴ってからまだそんなに時間は経ってない……」キョロキョロ
咲「そんなに遠くには行ってないはず……」ダッ
咲「はぁ…はぁ……」タッタッタ
咲「……!!」ピタッ
マホ「……」
咲(あのベンチ……見つけた……)タッ
_______________
_______________
マホ「……はぁ…」
マホ「一体、何がしたいんだろう……」
咲「マホ、ちゃん……」ハァハァ
マホ「!?」バッ
咲「やっと……見つけたよ…」フゥ
マホ「宮永……先輩……?」
マホ「ど、どうしてこんな所に!」
咲「それは、こっちのセリフだよ……」
咲「初日からずっとサボりは、さすがに私も先輩として放っておけない、かな」
マホ「それは……」
咲「とりあえず、隣座っても良いかな……?」
咲「久々に走ったら疲れちゃって」アハハ
マホ「は、はい……すみません、どうぞです」スッ
咲「うん、ありがとう」スワリ
咲「……ふぅ…」
マホ「……」
咲「……」
咲「ごめんね、マホちゃん」
マホ「へっ……?」
咲「あの日以来、ずっと考えてたの」
咲「マホちゃんが帰っちゃった理由とか、部活に来てくれない理由、とか」
マホ「そ、そんな!その……悪いのは、マホですし……」
咲「……本当は、自分で気付いてからマホちゃんの悩みを…あるならだけど、解決してあげたかった」
咲「……けど、思いつかなかったんだ」
マホ「先輩……」
咲「私、誰かの先輩になるなんて初めてで、こういう時、なんて言えば良いのか分からないから……」スッ
マホ「せ、先輩……?」
咲「……」ギュッ
マホ「ぁ……」
咲「……話してくれるまで、離さないよ」ギュゥ
マホ「……先輩…っ…」
咲「辛くても、話して?人に聞かれるのが嫌でも、話して?」ナデナデ
咲「きっとその悩みは……一人で抱えこんだら、ダメなの」ギュ
マホ「そんな事……っ…」ジワッ
咲「これはね、私のワガママ……」
咲「先輩として、最初で最後のワガママにするから……」
咲「マホちゃんの事、教えてくれないかな……?」ギュッ
マホ「…うぅ……」グス
マホ「先輩は……ズルい……です…っ」
咲「うん……ごめんね…」
マホ「でも……マホの尊敬する……先輩です…」ギュッ
咲「……うん、ありがとう」ナデナデ
マホ「……」グス
マホ「……聞いて、くれるんですか…?」
咲「勿論。むしろ、頭を下げてお願いしたいくらいかな」ニコリ
マホ「……」スッ
マホ「……マホは、先輩が指摘した通り…人のマネをするのが、得意…」
マホ「コピーをするのが、能力です……」
咲「……うん」
マホ「……でも、それ以外は…ダメダメ、なんです」
咲「……」ピクッ
マホ「人のマネをしていない時のマホは、凡人以下の力しかありません……」
マホ「人のマネしか、出来ないんです……」
咲「……」
マホ「……昔、言われた事があるんです」
マホ「人マネしかしていないお前は、自分で麻雀をやっている意味があるのか?……って」
咲「……うん…」
マホ「その時、思っちゃったんです……」
マホ「確かに、マネしかできないマホが自分で麻雀を打ってる意味なんて無いんじゃないかって……」
マホ「一緒にやってる人も、楽しく無いんじゃないか……マホを、嫌いになるんじゃないかって…」
マホ「……その時以来、マホは人のコピーをするのはやめました」
マホ「でも……この前、先輩と健夜さんと打った時…」
マホ「何故かは分からないんです……無意識的に、模倣出来る中で一番強いコピーをしてしまっていて……」
マホ「マホ、本当に無意識だったんです……先輩と健夜さんを見ていたら、マホも打ちたいって思って、それで……」
マホ「先輩に指摘されて、初めてマホがコピーを使ってしまった事を知らされました……」
マホ「怖かったんです、先輩の目が……マホは、コピーしか出来ない……凡人だと、言っている様に見えて……」
マホ「逆に、コピーが出来るマホを求めていて、凡人のマホを見たら、見放されるんじゃないかって……」
マホ「先輩に、嫌われちゃったんじゃないかって……!!」グスッ
咲「マホちゃん……」
マホ「幼稚な……理由なんです…」
マホ「部室に行けなかったのも……マホの、自分勝手な…理由です…」
咲「……」
マホ「……あはは…ごめんなさいです、やっぱり呆れちゃいましたよね」
咲「……マホちゃんってさ」
マホ「はい……」
咲「ちょっと、お馬鹿さんだよね」
マホ「……へっ…」
咲「私てっきり、能力を使って人の能力を奪ってしまい、その人の人生を崩壊させちゃったー!」
咲「……とか、そういう理由かと思ってた」
マホ「そ、そんな大事な訳では!」
咲「うん、だからそんな小さな事、気にしなくて良いんだよ」
咲「コピーしか出来ない?コピーしないと只の凡人以下?」
咲「うんうん、結構だと思うよ?」
咲「私に言わせてみれば、コピーが出来るだけで物凄く凄いことだと思うし」
咲「素の状態が凡人以下なら、まだまだ強くなれるって事だよ?」
マホ「そんな簡単には……いかないんです…」
咲「今は、私が居るよ」
マホ「えっ……?」
咲「ううん、私だけじゃない。健夜さんもいる」
咲「……マホちゃん、言ってたよね?昔対局した人ともう一度対局して、勝ちたいから麻雀部に入りたいんだって」
マホ「はい……」
咲「うんうん、なら、やろうよ」
咲「私と、健夜さんと、マホちゃんで一緒に…強く、なろ?」
マホ「で、でも……コピーをしないマホと打ったってお2人の足元に及びません……それなら、マホなんて居ない方が……」
咲「私は、マホちゃんが欲しいよ」
マホ「っっっ……」
咲「コピーが出来るマホちゃんでも、素の下手くそなマホちゃんでもない」
咲「強くなろうって、頑張るマホちゃんが欲しい」
咲「さっき、私がマホちゃんをコピーしか出来ない凡人だと思ってるんじゃないかって、言ったね」
咲「私の気持ちを、勘違いしないで欲しいな」
咲「私は、マホちゃんのその能力、とっても魅力的だと思うし、例えコピーが無くなったら下手くそになっちゃうとしても」
咲「私は、強くなりたいって思うマホちゃんの麻雀を打つ姿勢、大好きだよ?」
マホ「でもっ……っっ!!」
咲「もし!!」
マホ「っっ」ピクッ
咲「マホちゃんが自分の能力が嫌いだーなんて、言ったら、私の能力だって嫌われちゃうね?」
マホ「ど、どうして……」
咲「だって、私の嶺上開花、もうコピーできたんでしょ?」
咲「それはつまり、コピーの能力=私の嶺上開花って解釈もできる訳で」
咲「あぁ……私、マホちゃんに嫌われたくないな」
マホ「き、嫌いませんよ!!嫌うはずありません!!」
咲「うん。私と健夜さんも、マホちゃんに対して、同じ気持ち」
マホ「ぁ……」
咲「良い?私は、マホちゃんのコピーの能力はとっても凄いと思うし、対局しててとっても楽しかった」
咲「強くなるように頑張ろうって、そう思って打ってるマホちゃんを見てて、協力したいって思った」
咲「私はマホちゃんと、何回でも麻雀を打ちたいな」
マホ「先輩……」グスッ
マホ「先輩は……コピーしか出来ないマホを…好きになってくれますか……?」
咲「うん。コピーまでできるマホちゃんを好きになるよ」
マホ「先輩は…弱虫なマホとも……麻雀をしてくれますか...?」
咲「うん。一緒に強くなって、大魔王健夜を倒そっか」ニコリ
マホ「先輩は……マホを…好きになってくれるんですか……?」
咲「……うん、勿論」ニコッ
咲「私が好きなマホちゃんを、マホちゃんは好きになれないかな……?」
マホ「…なれますっ……先輩が好きなものは…好きになりたいですっ……!」
咲「……夢乃マホちゃん、私を…」
咲「マホちゃんの、先輩にしてくれるかな?」
マホ「……」ゴシゴシ
マホ「……はいっ」
マホ「よろしく、お願いしますっ」ニコッ
_______________
______________________________
_____________________________________________
~旧校舎・部室~
健夜「……」ソワソワ
健夜「咲ちゃん……大丈夫かな…」
ガチャッ
健夜「!!!」
健夜「咲ちゃん!おかえり、今日もマホちゃんは…………」
健夜「………………えっ?」
咲「あ、あはは……健夜さん、どうもです」
マホ「せ、先輩!少し雨降ってきちゃいましたけど、濡れてませんか!?」ギュ-ッ
マホ「あぁ、少し濡れてます……風邪引いたらいけませんし、すぐに拭きます!」
咲「ま、マホちゃん……ちょっと過保護すぎ……」
マホ「そんな事ありません!マホの先輩が風邪引いたら、大惨事ですよ!」
咲「あ、あはは……」チラ
咲(健夜さん、助けて)
健夜(いやいやいや!?どう言うこと!?)
健夜(私、3日間くらい気絶してたかな!?それくらい状況変わってるよ!!)
咲(馬鹿なこと言わないでください……)
咲「と、とりあえずマホちゃん!一応コーチの健夜さんにも、謝っとこ?」
マホ「あ、そうでした……」
健夜(まだ頭の整理できてないよ!?)
咲(パンクしちゃえ)
健夜(咲ちゃん!?)
マホ「3日間、部活に来なくてすみませんでした」ペコリ
健夜「あっ、うん……えっと、私は全然大丈夫だよ……?」
マホ「これから、宮永先輩の後輩、健夜さんの生徒として、お世話になります」
マホ「夢乃マホですっ!よろしくお願いします!」
~宮永咲と、夢乃マホ・カン~
健夜「まだ終わらないインターハイ」咲「Bブロック、ですね」【後編】に続く
元スレ
SS速報VIP:健夜「まだ終わらないインターハイ」咲「Bブロック、ですね」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1473073727/
【始まり】
~咲・宿泊ホテル~
咲「……」パチ
咲「…ん……朝……?」ムク
咲「ふぁ……」ネムネム
咲「…よく寝たな…」ゴシゴシ
咲「……」イワカン
咲「……?」チラ
マホ「ん……」スヤスヤ
健夜「…」スースー
咲「……」スッ
4: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/05(月) 20:18:39.54 ID:+aSt3BUS0
マホ「んへへ……」ギュー
健夜「んぅ…」ギュッ
咲「……」グイグイ
咲「…はぁ」
咲(2人の腕が絡まってて起き上がれない……)
咲(何で二人とも私のベットで寝てるの…?)ハァ
咲「……」
咲「健夜さん、邪魔です……どいてください」グイグイ
健夜「んぅ……」ギュー
5: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/05(月) 20:19:46.04 ID:+aSt3BUS0
咲「もう……私は抱き枕じゃないんですよ」グイグイ
健夜「んー……お母さん…後5分だけ……」スースー
咲(お母さんって……)
咲「お母さんになる様な年齢なのは、健夜さんですよー」ホッペムニムニ
健夜「…んっ……」スヤスヤ
咲(起きないな……)
咲「……」
6: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/05(月) 20:21:47.01 ID:+aSt3BUS0
咲「マホちゃん、起きて?朝だよ」サスサス
マホ「ふふ…みやながせんぱい……まほと楽しみましょう…んぅ…」スースー
咲「……マホちゃーん?」ユサユサ
マホ「……」スヤスヤ
咲「……2人とも起きないし」
咲(どうしよう……もう8時だけど…)
咲「……仕方ないよね」
咲「……」スッ
7: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/05(月) 20:24:01.15 ID:+aSt3BUS0
咲「……」ヌクヌク
咲「……」チラ
健夜「ん……」スースー
咲「……」ジーッ
健夜「……」スヤスヤ
咲「……」フフッ
咲「ふあぁ……」アクビ
咲「……」ウト
咲「…」ウトウト
咲「」スースー
9: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/05(月) 20:42:23.41 ID:+aSt3BUS0
_______________
_______________
健夜「んっ……朝…」パチ
健夜「っつー…頭痛いぃ…」ズキ
マホ「おはようございます、健夜さん」コソコソ
健夜「あ、マホちゃん…おはよう」ニコ
マホ「頭痛いって…二日酔いって奴ですかー?」コソコソ
健夜「うん…昨日、良子ちゃんに強いお酒飲まされ過ぎたよ…」ウゥ
マホ「それはご愁傷様ですね……」
健夜「それより、どうしてそんなに小声なの?」
10: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/05(月) 20:43:43.46 ID:+aSt3BUS0
マホ「ふふっ……見てください、先輩」クスクス
健夜「え…?」
健夜「……ふふ、咲ちゃん…」クス
咲「……」スヤスヤ
マホ「1度起きた形跡がありますし、二度寝しちゃったんですね」
健夜「珍しいね、咲ちゃんが二度寝なんて」
マホ「ですねー」
咲「…んぅ……ふふ……くすぐったい…です…」スヤスヤ
健夜「……」ジーッ
マホ「……」ジーッ
11: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/05(月) 20:46:14.84 ID:+aSt3BUS0
咲「んん…」スヤスヤ
健夜「可愛い……」
マホ「……マホも同じ事思ってました」
健夜「……」ジーッ
マホ「……」ジー
健夜「……」ウト
マホ「……」ウト
健夜「…」ウトウト
マホ「…」ウトウト
健夜「」スースー
マホ「」スースー
咲「んぅ……朝……?」パチ
咲「って……2人ともまだ寝てるし……」
【始まり・ある日の朝、カン】
24: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 01:03:35.12 ID:KonRu4B30
―――――――――――――――――――――――
咲「全く……一度起きたなら起こしてくださいよ…」
健夜「咲ちゃんこそ、もう少し強引に起こしてくれたら良かったんだよ?」
咲「そ、それは……その…」モジ
咲「……」
咲「健夜さんが……気持ちよさそうに寝てましたし…」ボソッ
健夜「え?私が、なに?」
咲「な、何でもありません!!」
咲「健夜さんはどうして私を起こさなかったんですか?」
健夜「んー……」カンガエ
25: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 01:05:21.95 ID:KonRu4B30
健夜「咲ちゃん、可愛い寝顔で寝てたし……起こしたら悪いかなって」ニコッ
咲「……」
咲「……?」
咲「~~~~~ッッッ/////」ボッ
咲「な、何見てるんですか!!」
健夜「あはは、早起きしたら良いことあったなぁ」
咲「別に早起きではありませんし!……ていうか、その年になって」
咲「お母さん……あと5分だなんて言うの、止めた方が良いかと思いますが」
健夜「……へっ!?」
26: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 01:06:24.80 ID:KonRu4B30
健夜「わ、私そんな事言ってた……?」
咲「はい」ニッコリ
健夜「恥ずかしい……/////」
健夜「べ、別に、お母さんに毎日そんな事言ってる訳じゃないからね!!////」
咲「どうだか。私のベットにまで潜り込んできて……」
咲「まさか、今でもお母さんと一緒に寝てるとか」
健夜「違うよ!?」
咲「ならどーして私のベットに?」ジト
健夜「うっ……それは…」オロ
27: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 01:07:22.10 ID:KonRu4B30
健夜「せ、生徒とコーチの仲を深めるため……とか?」
咲「変態」ジト
健夜「なんで!?」
マホ「先輩と健夜さんは朝から仲良しですねー」ネムネム
咲「あ、マホちゃん」
マホ「お待たせしましたー!身支度完了ですっ」
マホ「私服だと浮いてしまった昨日の反省を活かして、制服にしてみましたー!」クルッ
咲「うん、マホちゃんは制服も似合うね。可愛いよ」
マホ「えへへ/////ありがとうございます///」テレテレ
28: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 01:08:46.43 ID:KonRu4B30
マホ「宮永先輩も、制服がお似合いです!」
咲「そ、そうかな…ただのブレザーだけど」
マホ「とっても可愛いですよ!それに、半袖だと観戦室少し寒いので、丁度良いと思います!」
咲「昨日ワンピースで行って凍えそうだったからね……」
健夜「そ、そうだ!」
健夜「咲ちゃん、マホちゃんも咲ちゃんのベットに入ってたよ?」
マホ「??入ってましたよー?」
咲「マホちゃんはマホちゃんです。健夜さんは健夜さんです」
咲「分かりましたか?」
健夜「何一つ分からなかったけど、私が酷い事言われたのは分かったよ!?」ガーン
咲「全て分かってるじゃないですか」
健夜「分かりたく無かったよ!!」ガーン
29: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 01:10:13.98 ID:KonRu4B30
マホ「もー、健夜さんは鈍いですねー」
マホ「先輩は、こう言ってるんです!……こほん」
マホ『……健夜さんのバカ…一緒のベットで寝るなんて…少し、期待しちゃいました…』(上目遣い)
咲「こ、渾身の声マネなんだろうけど……絶望的に似てないよマホちゃん」
マホ「声マネの評価は要らないんですー!」
健夜「ていうか、流石の私でも咲ちゃんがそんな事思ってないくらい分かるよっ」
健夜「ね、咲ちゃん?」
咲「……」ムッ
咲「…マホちゃん、健夜さんが美味しい高級レストラン連れて行ってくれるって」
健夜「えっ」
30: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 01:12:40.74 ID:KonRu4B30
マホ「本当ですか!?やった!」キャー
健夜「えっ、どうして急に!?」
咲「……」プイッ
マホ「いつですか健夜さん!」キラキラ
健夜「今のは咲ちゃんの嘘だよ!?」
マホ「えっ……」シュン
健夜「……っていうのも嘘!」
マホ「!!」パァッ
咲「それも嘘なんだって」
マホ「健夜さん……」ズーン
健夜「う、嘘じゃないよ!」
マホ「健夜さん!」ヤター!
健夜「さ、咲ちゃん助けて……」ウルウル
咲「嫌です。ほら、朝ご飯食べに行きますよ」プイッ
健夜「咲ちゃんー!!」
_______________
______________________________
_____________________________________________
36: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 15:19:12.84 ID:KonRu4B30
_______________
_______________
咲「ふぅ…お腹いっぱいです」
マホ「起きた時間が微妙だったせいか、兼お昼ご飯みたいになっちゃいましたねー」
咲「そうだね」
健夜「今日はどうしよっか?私は一先ず解説のお仕事も一息ついたし、一緒にいられるけど」
咲「レストランの予約は良いんですか?」
健夜「その話はさっき麻雀で片付いたでしょ!?」
マホ「健夜さん、大人げなかったですー」
咲「ねー。本気の本気で来るんだもん」
37: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 15:21:26.75 ID:KonRu4B30
マホ「まあでも、高級じゃなくても連れて行ってくれる約束はしてくれるんですから、人の良さが出てますよねー」
咲「詐欺に会うタイプだよね」
健夜「酷い言われようだ…」
咲「冗談です。楽しみにしていますね、ありがとうございます」
マホ「楽しみです!」
健夜「そ、そんなに喜ばれちゃうと……」
健夜「えへへ、うん、どういたしまして」ニコニコ
咲(何だか本当に詐欺とかに合いそうで心配だな……)
健夜「それで、今日はどうしよっか?」
38: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 15:24:15.96 ID:KonRu4B30
マホ「うーん……東京の観光はもう済ませちゃいましたしねー」
咲「私は、特に何もせずホテルで過ごすのが良いと思いますけど」
健夜「相変わらずのインドア……でも、私もそれが良いかな」
マホ「マホは、この前の観光で満足なので、2人に合わせます!」
咲「それじゃあ、決まりだね」
健夜「折角だし、何か映画でも借りてこっか」
マホ「あ、賛成です!」
咲「良いですけど、怖いのはやめt」
プルルルルルル プルルルルル
健夜「電話?」
39: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 15:27:19.19 ID:KonRu4B30
マホ「マホじゃないですー」
咲「あ、私だ……」
健夜「誰からだろうね?」
マホ「さすがに阿知賀の誰かが、昨日の今日で掛けてくるとは思えませんけどー」
咲「私もそれはないと思うけと……一体誰が」チラ
咲「……」
健夜「咲ちゃん?」
マホ「先輩?」
咲「……」スッ
咲「……お姉ちゃんから、です」つ ケータイ
_______________
_______________
40: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 16:14:16.85 ID:KonRu4B30
_______________
_______________
【宮永咲と宮永照】
【喫茶店】
店員「いらっしゃいませ、1名様ですか?」
咲「いえ、待ち合わせで……」
「咲、こっち」
店員「これは失礼致しました、ごゆっくり」ニコッ
咲「ありがとうございます」ペコ
咲「……」テクテク
咲「……ふぅ」スワリ
咲「ごめんねお姉ちゃん、遅れちゃって」
41: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 16:15:05.32 ID:KonRu4B30
照「いや…こっちこそ、急に呼び出したりしてごめん」
咲「良いって良いって。どの道、用事とかは無かったから」
照「そっか、良かった」
咲「うん」
照「……何か頼む?」
咲「んー……昔と一緒で」
照「分かった」
照「すみません、オレンジジュース2つと、ジャンボパフェ1つください」
店員「かしこまりました」
42: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 16:15:58.65 ID:KonRu4B30
咲「驚いたな……」
照「何が?」
咲「よく覚えてたなって。昔と一緒って言葉だけで」クスクス
照「……まあ。忘れないよ、咲との思い出だから」
咲「……ありがと」
照「……」
咲「……」
照「この前は……淡が失礼した」
咲「えっ?」
照「阿知賀、咲のお友達か何かだったんでしょ」
咲「友達って程じゃないよ」
43: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 16:18:50.73 ID:KonRu4B30
照「……協力とか、してた?」
咲「どうしてそう思うの?」
照「松実玄さんの打ち筋、少しだけ咲の影がチラついてた」
照「……って言っても、私は昔の咲の打ち筋しか、知らないんだけどね」
咲「……当たりだよ。少しだけ、色々あって協力をね」
咲「さすがは、インターハイチャンピオンだね……普通、そんな事気付かないよ?」
照「私だって、小さい頃から成長してる」
44: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 16:20:27.34 ID:KonRu4B30
照「昔の私に、今と同じ力があれば…」
照「咲のプラマイゼロだって、もっと早く」
咲「こら、お姉ちゃん」ピト
咲「それは言わないって約束……忘れた?」
照「……ごめん」
咲「お姉ちゃんは、たくさん私の為に頑張ってくれた」
咲「それで充分なの。とっても嬉しかったんだよ?」
照「……うん」
咲「…もう……お姉ちゃんってば、対局の時はあんな大魔王!って感じなのに」クスクス
照「不本意……私は普通に打ってるのに…」
45: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 16:30:39.92 ID:KonRu4B30
咲「でも、そんなお姉ちゃんもカッコよくて好きだよ?」
照「……っ」
照「……咲がそう言うなら、まあ、うん…」
咲「照れた?」
照「照れてない」
咲「またまたぁ、耳まで赤いよ?」クスクス
照「照れてないから」プイッ
咲「ふふっ、頑固なんだかr」
咲(何かこの会話デジャブだな…)
照「咲?」
咲「あ、ううん。なんでもっ」
46: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 16:35:40.20 ID:KonRu4B30
店員「お待たせ致しました、オレンジジュースとジャンボパフェになります」スッ
照「ありがとうございます」
咲「どうもです」ニコッ
店員「ごゆっくり」ペコ
咲「なんだか懐かしいね」
照「うん……昔は、2人で…いや、3人でこうやって一つのパフェを食べてた」
咲「……ね。皆の少ないお小遣いを出し合って」クスクス
47: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 16:36:38.70 ID:KonRu4B30
咲「今のお姉ちゃんだったら、1人で全部食べれちゃうんじゃない?」
照「否定はできないね」パクパク
咲「ふふっ、それじゃあやっぱり1個ずつ頼もっか?」
照「……いや、一つで良いよ」モグモグ
咲「その割にはお姉ちゃん、もう半分食べてるけど」
照「……てへ」
咲「もう……お姉ちゃんってば」クスクス
_______________
_____________
48: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 16:42:12.30 ID:KonRu4B30
_______________
_____________
咲「やっぱり、落ち込んでるんだ」
照「うん…あの子、負けず嫌いだから」
咲「……それなら、決勝戦ではもっと強くなってるね」
照「そうだね。やっと負けを知ってくれた」
照「こんな事言うのも違うけど、淡を負かしてくれた高鴨さんには少し感謝かな」
咲「感謝はしなくていいと思うけど…」
咲「……お姉ちゃんが本気で打ってれば、もう少し楽に勝てたんじゃない?」
照「私は本気で打ったよ?」
49: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 16:46:43.50 ID:KonRu4B30
照「……なんて言っても、咲にはバレちゃうかな」
咲「うん。私を誰だと思ってるの?」
咲「宮永照の妹なんだから」
照「ふふ、そうだね」ニコ
照「確かに、アレは出さなかったけど……決勝戦までは隠しておきたかったから」
咲「そうなんだ」
照「咲こそ、もっと私の情報を阿知賀に教えて上げてたら、ヒヤヒヤせずに済んだんじゃない?」
咲「まさか。お姉ちゃん対策は協力したけど、そこまでは言う訳ないよ」
照「私は、楽しくなるなら構わないけど」
50: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 16:47:40.08 ID:KonRu4B30
咲「……きっと永水女子がBブロックから決勝に上がってくるだろうから、楽しめると思うよ」
照「神代さん?」
咲「うん。私も、楽しみにしてるね」
照「……」
照「……久々に、咲とも打ちたいな」チラ
咲「……」
咲「今は時間がないから……また今度ね」ニコッ
照「……ん」コク
_______________
_______________
51: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 16:49:43.33 ID:KonRu4B30
_______________
_______________
咲「へぇ、それじゃあ、お母さん元気なんだね」
照「うん。お父さんに会えなくて寂しがってる」
咲「……そこは嘘でも私って言っておこうよ」
照「咲にも会いたがってると思うけど」
咲「お母さん、お父さんの事大好きたからね……」
咲「知ってる?引っ越す前に、私がお母さんに言われた最後の言葉」
照「お父さんが浮気しそうになったら、代わりに刺していいわよ。いえ、刺しなさい!」
照「……でしょ?」
咲「ふふっ、そうそう!私まだ中学上がりたてだったのに」
52: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 16:50:21.40 ID:KonRu4B30
照「しかも、お父さんの目の前であえて咲に言うっていうね」クス
咲「お母さんに、お父さんは今でもお母さん一筋みたいですって伝えておいてね」
照「了解」
照「……っと、そろそろ時間…」
咲「あ、本当だ……1時間なんてあっという間だね」
咲「っていうか、わざわざミーティングの前の空いた時間に会わなくても……」
照「折角咲が東京に来てるんだし、会える時には会っておきたいから」
咲「……私は嬉しいけど、お姉ちゃんが大変じゃない?」
照「妹がお姉ちゃんの心配をする必要は無いの」クス
咲「……はぁい」
53: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 16:51:00.98 ID:KonRu4B30
咲「もう、昔からそうやって言うんだから」
照「今は只でさえ離れて暮らしてて、姉らしい事出来てないから」
咲「こうやって、空いた時間に会ってくれるだけでも、嬉しいよ」
咲「お姉ちゃんこそ、私に心配掛けさせないように、ちゃんと身体に気を付けるんだよ?」
照「うん。大丈夫」
咲「それじゃあね、お姉ちゃん」
照「うん、またね」フリフリ
咲「また」フリフリ
咲「……ふぅ…」
咲「お姉ちゃん、頑張って」グッ
_______________
_______________
54: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 17:02:55.42 ID:KonRu4B30
【数分後】
照「……もしもし、菫?」
菫『……』
照「……迎えを頼みたい」
菫『だと思ったよ……だから私も付いていくと言ったのに』
照「咲とは……2人きりで会いたかったから」
菫『それは分かってる。それじゃ、今から行くから少し待ってろ』
照「ん、ありがと」
照「……咲は大丈夫かな」
55: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/06(火) 17:13:08.21 ID:KonRu4B30
______________________________
咲「……もしもし、健夜さんですか」
健夜『……やっぱり?』
咲「はい……迎えをよろしくお願いします」
健夜『最早定番だね…私とマホちゃんのどっちかだけでも連れていけば…』
咲「お姉ちゃんとは、2人で会いたかったので」
健夜『……分かってるよ。それじゃあ、今から迎えに行くから』
健夜『絶対、絶対に動いたらダメだからね』
咲「釘刺しすぎでしょう……すみません、ありがとうございます」
咲「……お姉ちゃん、大丈夫かな…」
【宮永咲と宮永照、カン】
73: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/07(水) 20:19:14.24 ID:bR9ctBHY0
【小話・2人の帰路】
咲「……」テクテク
健夜「……」テクテク
咲「……」チラ
咲「……」フゥ
咲「……すみません、迷惑掛けて」
健夜「……え?」
74: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/07(水) 20:20:13.38 ID:bR9ctBHY0
咲「毎回、ありがとうございます」
咲「その……迎えに、来てくれて」
健夜「……」
健夜「えっ!?」
健夜「ど、どうしたの……?いきなり改まって」
咲「…思い返せば、健夜さんにはたくさん迷惑を掛けているなと思いまして」
健夜「め、迷惑って……そんな事思ってないよ?」
咲「……」
75: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/07(水) 20:21:51.65 ID:bR9ctBHY0
健夜「えっと…?」
咲「……」
健夜「咲ちゃん…?」
咲「……偶には、怒ってください」
健夜「えっ……」
咲「……怒ってくれないと、不安…です」
健夜「……」
咲「……!!」ハッ
咲「す、すみません、少しボーッとしてて…」アセアセ
76: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/07(水) 20:23:51.43 ID:bR9ctBHY0
咲「今のは忘れてください。多分、お姉ちゃんと久々に対面して……ちょっと疲れてるだけですから」
咲「あはは……私、何言ってるんでしょう」
健夜「……」カンガエ
咲「ほ、ほら健夜さん、行きましょう?」
咲「マホちゃん待ってるんですから」スタスタ
健夜「……」
健夜「こ……」
咲「はい……?」
健夜「こ、こらーっ!」プンスコ
咲「……」ピクッ
咲「えっと…?」
77: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/07(水) 20:26:21.11 ID:bR9ctBHY0
健夜「怒ってみたんだけど……ダメ、だったかな……?」
咲「……」
健夜「ご、ごめんね!?怒れてないよね!」
健夜「うーん……怒る…怒る……」
健夜「別に迷惑だなんて思ってないし……難しいなぁ…」ブツブツ
咲「……」
咲「……ぷっ…」
咲「ふふっ…ありがとうございます」
咲「すみません、もう大丈夫ですからっ」ニコリ
78: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/07(水) 20:27:41.54 ID:bR9ctBHY0
健夜「えぇ…?」
健夜「な、何が何だかわからない……」
健夜「でも、本当に迷惑だなんて思ってないからね?」
咲「……はい」ニコッ
咲「さっきのはすみません。私、変なこと言いました」
健夜「ううん。ちょっとビックリして、熱でもあるのかと思っちゃったけど」
咲「それは酷いですよ……」
健夜「ふふっ…その、私はね?咲ちゃんを迎えに行くの、好きなんだ」
咲「えっ」
79: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/07(水) 20:29:23.25 ID:bR9ctBHY0
健夜「駆け付けた時の、少し嬉しそうな咲ちゃんの顔が可愛いし」
健夜「ツンツンしてるけど、ちゃんとお礼言ってくれる所も、可愛いなって思うよ?」
咲「……」
咲「……?」
咲「ッッッ!?/////」ボッ
健夜「だから、むしろ役得なの」クスクス
咲「す、健夜さん……」テレ
健夜「っていう話を、さっきもマホちゃんとしててね?」
80: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/07(水) 20:30:50.22 ID:bR9ctBHY0
咲「……」
咲「えっ」
健夜「マホちゃんも、同じ事思うって言って……咲ちゃん!?」
咲「……!!……!!」ベシベシ
健夜「ちょ、べしべし叩くのやめて!?」
健夜「地味に痛い!!地味に痛いよ!」アウアウ
咲「~~~っっ/////!!!」ポカポカ
健夜「ポカポカもやめて!?」
咲「もう、健夜さんの言う事は何も信じませんからね!!!」スタスタ
81: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/07(水) 20:33:26.04 ID:bR9ctBHY0
健夜「ちょっ、待って!?一人で行くと迷子になる!迷子になっちゃうから!」アセアセ
咲「知りません!その時は健夜さんが30秒以内に見つけてください!」ベーッ
咲「見つけてくれなかったら怒りますからっ」
健夜「私、怒れって言われてた筈なのに何で怒られる側になってるの!?」
咲「ほら、早く帰りますよ!」スタスタ
咲「……」
咲「……健夜さんの、バカ」ニコリ
【小話・2人の帰路、カン】
88: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 18:21:51.61 ID:vh8Si3M30
【咲・宿泊ホテル】
咲「へえ、それじゃあBブロックの試合の録画を見直してたんだ」
マホ「はい!第一ブロックと、第二ブロックの1.2回戦だけですけどね」
咲「第一ブロック……って事は、臨海が入ってる方だね」
マホ「外国の方が沢山いて、日本の人は先鋒だけでした」
咲「あれ?去年は先鋒も外国の人でしたよね、健夜さん」
健夜「今年からルールが変わってね、先鋒は必ず日本人って言う決まりに変わったの」
咲「へぇ、何でですか?」
マホ「去年は白糸台が優勝だった訳ですし、全員留学生で困る事とかないですよねー?」
マホ「全員留学生で出て負けてる訳ですし、戦力の調整とは思えませんよー」
89: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 18:23:42.83 ID:vh8Si3M30
健夜「うーん、詳しくは知らないなぁ……そういえば何でなんだろ?」
咲「今年の先鋒の人って、去年の個人戦3位の人でしたよね確か」
健夜「うん、辻垣内智葉さんだね」
咲「つじがい、とさとは?」
マホ「ふふっ…先輩!性と名がごっちゃごちゃになってますよー」
咲「つじ…つじがいとさ……?」ウーン
健夜「辻垣内智葉さん、だよ」クスクス
咲「辻垣内智葉さん、ですか」
咲「物凄く呼びにくい名前ですね」
マホ「珍しい苗字ですよねー」
90: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 18:25:26.97 ID:vh8Si3M30
咲「そんな、個人戦3位になれる実力を秘めた人を、昨年団体戦で先発として出場させなかった理由も想像できないです」
健夜「去年出てた先鋒の留学生選手と辻垣内智葉さんの実力は、そんなに差が無かったと思うんだけどね」
マホ「何だか怪しい匂いがしますね!」
咲「まあ、日本でやってる大会に全員留学生の高校とか出てたら、色々と不味いと思ったのかもですね」
健夜「運営にも色々考えがあるんだよ、多分」
マホ「そうそう、マホと健夜さんは、一周分見終わりましたけど、宮永先輩も見ますか?」
マホ「第一ブロックから第四ブロックまで、一応1,2回戦の映像はあるので、どれでも見れますよ!」
咲「んー……」
91: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 18:26:44.77 ID:vh8Si3M30
咲「私は見なくても良いかな」
咲「姫松、永水辺りの結果とか選手の情報とかは、昨日の喫茶店で確認したし」
咲「明日には準決勝が始まるんだから、お楽しみにしておくよ」
マホ「あー、マホが目隠しされた時ですね!」
健夜「め、目隠し?」
咲「知ってますか健夜さん」
健夜「何を?」
咲「……BブロックのBは、BIGのBなんですよ」
健夜「ど、どういう事…?」
マホ「健夜さんは、明日はまたAブロックの会場から解説ですか?」
92: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 18:27:48.66 ID:vh8Si3M30
健夜「あ、うん。こればっかりはお仕事だから、仕方ないね」
健夜「だから、マホちゃんは咲ちゃんと一緒にBブロックの会場に行ってくれる?」
マホ「元よりそのつもりですよ!」
咲「休憩中に電話、くださいね」
健夜「咲ちゃんの方に掛ければいいかな?」
咲「……それはお好きな方へどうぞ」
マホ「マホ、電話に気付かない事が多々あるので、宮永先輩の方にかけて下さいです!」
健夜「ん、分かったよ」
93: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 18:29:41.23 ID:vh8Si3M30
咲「え、でもマホちゃんに電話掛けると、ほとんど1コール内に出る気がするんだけど」
マホ「それは宮永先輩からの電話だからです!」
健夜「あれ、何か私が傷付くな……」ズーン
咲「元気出してください」
咲「私達の方でなにかあったら、メールしておきますね」
健夜「了解したよ」
94: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 18:30:40.96 ID:vh8Si3M30
_______________
_______________
マホ「んー」
マホ「今はまだ2時ですかー」
咲「麻雀でも打つ?」
マホ「さっき健夜さんと対局したので、マホは暫くコピーが使えませんけど、良いですか?」
咲「あ、そうだったね。……それじゃあ、やめとこっか」
マホ「マホの事は気にしなくても良いですよ?」
咲「ううん。と言うよりも、私も少し疲れちゃったから」
健夜「2人とも大丈夫?」
マホ「健夜さんは、流石にまだまだピンピンしてますねー」
95: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 18:32:06.69 ID:vh8Si3M30
咲「この人、よっぽどの事が無いと麻雀で疲れないからね」
健夜「そんな事ないよ?2人と打つ時は、結構消耗するし」
咲「普通は麻雀で体力なんて消耗しないんですけど」
マホ「宮永先輩が普通を語ってはいけないとマホ思うです」
咲「えっ、それどういう意味……」
健夜「まあまあ。それなら、映画でも見よっか?」
咲「あぁ、借りようとか何とか言ってましたね」
咲「どんなの借りてきたんです?」
96: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 18:33:27.83 ID:vh8Si3M30
マホ「……それなんですけどぉ」ニコッ
健夜「咲ちゃん、AかBどっちがいいかな?」ニコリ
咲「は?意味が分かりません」
マホ「2つ借りてきたので、先輩が選んだ方を見ましょう!」
咲「何でそんな面倒な事を?」
咲「まあ、良いですけど」
健夜「咲ちゃんがA、B決めてから私達がどちらか選ぶイカサマが出来ないように、事前に紙を貼り付けておいたから、安心してね」
咲「わざわざそんな事までしたんですか……」
マホ「ささっ、先輩選んでくださいです!」
97: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 18:34:43.58 ID:vh8Si3M30
咲「んー……なら、Bブロックと掛けてBで……」
咲「って行くと、少しベタですね」
咲「Aにしましょう」
健夜「」ニヤリ
マホ「おお、健夜さんの読み当たりです!」
健夜「えへへ、でしょ?」
咲「読み……?」
健夜「咲ちゃんがどっちを選ぶか、予想してたんだー」
マホ「ちなみに、どちらかはホラー!どちらかはファンタジーですよ!」
咲「へぇ………………」
98: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 18:35:57.69 ID:vh8Si3M30
咲「……え、マホちゃん今なんて?」
咲「ホラーとか何とか聞こえたんだけど」
咲「健夜さん、どういう事ですか」
マホ「宮永先輩、自問自答から質問まで立て続けにやってます」
健夜「…ふふっ……」クスクス
健夜「その問いに答えるのは、とりあえず映画を見てからね!」つ カセットオン
咲「ちょ、待って」
マホ「カーテン閉めて暗くしますねー!」
咲「な、何で暗くするのかな?」ピクッ
マホ「雰囲気を出すためです!」
咲「何の雰囲気かな!!?」
99: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 18:38:33.35 ID:vh8Si3M30
健夜「それじゃあ、再生っと」ポチ
咲「私、少しおトイレn」
TV『バリーン!!!!(窓が割れる音)』
咲「ひゃっ!!!」ビクッ
咲「な、何で急に始まって……!」
健夜「マホちゃん、これ何ていうタイトルだっけ?」
マホ「えっとぉ……」
マホ「呪牌、ですね」
咲「ゆ、許しません……許しませんよ、健夜さん……」プルプル
TV『イーシャンテン!!!!!』ドーン
咲「ひっ……!!」ブルブル
100: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 18:39:40.65 ID:vh8Si3M30
咲「ふ、2人とも……もう少しこっちに近付いて良いんだよ…?」チラ
TV『お前のチートイをトイトイにしてやろうかぁぁぁぁ!!!!!』
咲「きゃぁぁぁぁっっ!?」ダキッ
健夜「咲ちゃん?」
咲「聞こえない聞こえない……聞こえない……何も聞こえない…!!」ギュー
健夜「……」
マホ(宮永先輩可愛い……)キュン
健夜(……咲ちゃん可愛い)ニコー
101: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 18:40:44.82 ID:vh8Si3M30
咲「お、終わったら覚えていてくださいよ……っっ!!」
健夜(あ、終わった後の事考えるの忘れてたや……)
TV『タンヤオ!!!!!』バーン!
咲「ひゃぁぁぁぁっっっ!!!」ギュゥ
健夜(……まあ、可愛いからいっか)ニヘラー
マホ(宮永先輩の可愛い所が見られて嬉しいですけど……)
マホ(ま、マホもちょっと怖いんですけど……!!)プルプル
_______________
_______________
107: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 21:31:23.02 ID:vh8Si3M30
_______________
_______________
【二本視聴後】
咲「さ、映画も終わったしマホちゃんお風呂入ろっか?」
マホ「入ります!」
咲「……健夜さんはそこで少し反省しててくださいね」ジロ
健夜「ま、マホちゃんも共犯なのにこの差は一体……?」正座
咲「マホちゃんも怖がってたみたいですし、一人でお風呂に入らせたら可哀想じゃないですか」
マホ「先輩……優しいですっ」ウルウル
マホ「悪ノリしちゃってごめんなさいです……」(上目遣い)
咲「ううん、良いんだよ」ニコッ
健夜(小悪魔めー!!)
108: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 21:33:22.86 ID:vh8Si3M30
健夜「わ、私も一人で入るの怖いなー?」チラチラ
咲「大丈夫ですよ」
咲「健夜さんに近付く幽霊なんていませんから。むしろ、あっちが怖がって逃げますよ」
健夜「酷い!?」
マホ「あ、あのぉ……健夜さんも、悪気があった訳ではないと思うので……」
健夜「マホちゃん!!」パァッ
咲「マホちゃんは知らないかもしれないけど、この人同じ事やって私を怖がらせた事あるんだから」
咲「私は仏じゃないので、顔は3度も無いですよ」
109: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 21:35:24.39 ID:vh8Si3M30
マホ「そうなんですね。なら仕方ないです」
健夜「お、覚えてたの……?」
咲「忘れるはずありませんよ」ハァ
咲「……まあ」
咲「どうせ怖いなんて嘘でしょうけど、入って来たければどうぞ」
咲「健夜さんが無駄に張り切ったこの部屋、お風呂凄く大きいですし」
マホ「そうですね!マホあれやりたいです!」
マホ「泡がブクブクって出るやつ!」
110: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 21:36:18.04 ID:vh8Si3M30
咲「そんなのがあるの?」
健夜「ジャグジーだね」
咲「じゃぐじー……?」
マホ「それですっ。ほら先輩!早く入りましょう!」グイグイ
咲「ふふっ、引っ張ったら危ないよー」クスクス
健夜「……」
健夜「これは、入るべきか入らざるべきか……」ウーン
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
111: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 21:56:12.51 ID:vh8Si3M30
【おふろたいむ!】
マホ「ふふっ、先輩くすぐったいですよぉ」
咲「こら、動いたら洗いにくいでしょー」ワシャワシャ
マホ「あははっ、だってぇ!」キャー
咲「はい、目瞑っててね?」
マホ「はーいっ」
咲「んしよっと…」バシャー
咲「はい、お終いっ」ナデナデ
マホ「ありがとうございますっ!」
112: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 22:00:59.42 ID:vh8Si3M30
咲「私は身体洗ったら入るから、先に入ってていいよ?」
マホ「あ、それなら!」
咲「マホが宮永先輩の身体洗いますよ!」
咲「えっ?」
マホ「いえ、洗わせてくださいですっ」
咲「そう?……それじゃあ、お願いしよっかな」クスクス
マホ「任せてくださいです!」
マホ「~~♪」ゴシゴシ
咲「んっ…ふふっ、ちょっとくすぐったいね」
マホ「少し我慢しててくださいですーっ」ムニ
キャッ マホチャンソコハイイヨー!
イイカライイカラ? マカセテクダサイッ
ンッ…マホチャ…
?「カットじゃけえ!」
113: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 22:02:05.86 ID:vh8Si3M30
_______________
_______________
マホ「ふわぁぁ……凄いです!ブクブクしてます!」キャー
咲「ふふっ、良かったねマホちゃん」ニコッ
マホ「真上に居ると気持ちいいですぅ……」ハフゥ
咲「……」クスクス
咲「……で、本当に入ってくるなんて思ってませんでしたよ」チラ
健夜「ふぅぅ…疲れが吹っ飛ぶねー…」ポカポカ
咲(聞いてないし……)
咲「確かに、気持ちいいかも…」フゥ
114: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 22:02:38.34 ID:vh8Si3M30
健夜「……」ジーッ
咲「…何ですか、人の身体をジロジロと……」
咲「変態ですか」
健夜「違うよ!?……咲ちゃん、細いなって思ってね」
咲「はぁ、そうですかね?」
健夜「ちゃんとお家でご飯食べてる?ダメだよ、しっかり食べないと」
咲「誰目線ですか……」
咲「食べてますよ。と言うか、ご飯作ってるのも私ですし」
115: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 22:03:59.53 ID:vh8Si3M30
マホ「そーいえば、宮永先輩が居ないでお父さんは生活出来てるんでしょうかー?」
咲「外食と出前で何とかしてるって、昨日電話した時に言ってたかな」
マホ「へぇ……あ、健夜さんはお料理とかするんですか?」
咲「しないよ」
健夜「え、何で咲ちゃんが答えたの!?」
咲「するんですか?なら今度手料理でも食べに行きますね」
健夜「……作れないけどさ」ショボン
116: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 22:05:24.89 ID:vh8Si3M30
マホ「えっと……じゃあ、お洗濯とかお掃除とかは……」
咲「洗濯は、入れる洗剤の量絶対間違えるし、掃除も一つ片付いたら一つ散らかってるよ」
マホ「か、壊滅的」
健夜「私も、今言われてて改めてヤバイなって思ったよ…」ズーン
マホ「花嫁しゅぎょーとかしないと、ダメなんじゃ無いですか?」
健夜「ぐっ…お母さんと同じ事を」グサッ
マホ「宮永先輩は、家事全般完璧ですから心配ありませんよねー!」
マホ「マホも覚えたいです」
咲「あはは…完璧って程じゃないけどね」
咲「お料理くらいなら、今度教えてあげるね?」
マホ「やりましたぁ!」ヤター
117: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 22:06:40.43 ID:vh8Si3M30
健夜「で、でも、私は咲ちゃんが苦手な電子機器系は使えるし、迷子にもならないもん!」
咲「何を張り合ってるんですか」
マホ「マホは家事がそんなに出来ない訳ではありませんし、機械も迷子も大丈夫なので」
マホ「先輩、マホ、健夜さんの順番ですね!」
健夜「何の順位かな!?」
咲「生活力の有無のですよ。分かるでしょう」
健夜「うぅっ…………はっ!」ヒラメキ
健夜「私は収入があるよっ!」フンス
118: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 22:08:10.61 ID:vh8Si3M30
咲「……まあ、確かに」
マホ「うわっ、そこを持ち出してくるなんて大人気ないです」
健夜「そんなことないもーん」
咲「ふっ…健夜さん、子供ですか」クスクス
咲「まあ、家事完璧で麻雀最強な……パーフェクト健夜さんなんて見たくないので」
咲「健夜さんは今のままで、大丈夫ですよきっと」
マホ「婚期は知りませんけどね!」
健夜「咲ちゃんが優しい言葉を掛けてくれたと思ったら、マホちゃんがトゲのある言葉を!?」
119: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/08(木) 22:09:40.33 ID:vh8Si3M30
咲「プラマイゼロですね、なんちゃって」
健夜「傷付き度的には、少しマイナスだよ……」
咲「おお、よくぞプラマイゼロを止めました」
健夜「そのプラマイゼロは、出来ればプラスで止めたかったかな」
咲「なら料理を頑張ることですね」
健夜「ラーメンならなんとか!」
咲「それを料理と呼ぶなら、全世界の人が料理上手になりますよ」
健夜「ぐぬぬぬぬ……!」
咲「ふふっ」クス
マホ(仲いいですねー)ポカポカ
136: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/10(土) 20:22:26.62 ID:QzJvJd220
【Bブロック会場・観戦室】
恒子『さあさあ!!昨日、Aブロックの準決勝を終えたと思ったら今日!!』
恒子『今度はBブロックの準決勝開始だぁぁぁぁ!!』
恒子『という訳で!!このチャンネルで実況を務めますのは、昨日と同じ!ミラクルアナウンサー、福与恒子です!!』
恒子『そしてそして、実況をしてくれるのは皆さんお馴染み!!』
健夜『小鍛冶健夜です。本日もよろしくお願いします』
恒子『という訳で、今回も小鍛冶プロと一緒に実況を盛り上げて行こうと思います!』
恒子『宜しくお願いします!!』
健夜『よろしくお願いします』
恒子『さてさて、Bブロックの準決勝ですが…』
恒子『まずは恒例の高校紹介ですっっ!!』
健夜『Aブロックも強豪揃いで、とても見応えのある準決勝でしたが、Bブロックの高校もかなり強豪が集まっていますからね』
健夜『楽しみです』
137: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/10(土) 20:24:55.58 ID:QzJvJd220
恒子『そんな小鍛冶プロも楽しみなBブロック準決勝!!!始めに紹介しますのは、南大阪代表・姫松高校!』
恒子『昨年まではシード常連と言われていた姫松ですが、今年はなんとノーシード!!』
恒子『しかし、その実力はなおも顕在!!シード校にも劣りません!!』
恒子『小鍛冶プロはどう見られますか?』
健夜『そうですね……』
健夜『北大阪代表のシード校、千里山女子と共に、大阪の2大名門と呼ばれている姫松高校ですが、その呼び名に恥じない実力を兼ね備えていますね』
健夜『特に注目したいのは、中堅でエースの愛宕洋榎選手です』
恒子『ふむふむ、その心は!』
健夜『予選から2回戦までの全ての試合を、+3万点以上で終わっていますからね』
健夜『運の要素が絡む麻雀と言う競技で、この成績を叩き出すという事は、並み大抵な事ではありません』
健夜『間違いなく、この大会で最上位に踏み込む実力の持ち主でしょう』
マホ「健夜さん、ベタ褒めですねぇ……珍しいです」
咲「そうだね」
138: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/10(土) 20:26:24.73 ID:QzJvJd220
マホ「でもでも、強豪のエースなんですから、それくらい稼げる選手なのは当然なんじゃないですか?」
咲「んー、逆かな」
マホ「逆??」
咲「強豪のエースだからじゃなくて、愛宕洋榎がエースだから、姫松は強豪なんだと思うよ」
マホ「それはつまり、ワンマンチームですか?」
咲「簡単に言っちゃえばそうだね」
咲「でも、他の選手も実力が並よりは上なの」
マホ「典型的な強豪校って感じですねー」
咲「それとね、これは私も驚いたんだけど、能力者がほぼ居ないみたい」
マホ「……成程、それは確かに凄いですね」
咲「うん。凄いし、強いよ。姫松高校は」
139: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/10(土) 20:27:37.70 ID:QzJvJd220
マホ「能力者は、愛宕洋榎さんですか?」
咲「それも、私が知って驚いた点」
マホ「えっ…?」
咲「……」コクリ
マホ「……マホ、驚きました」
咲「中堅っていうポジションは、一番不安定な所」
咲「試合の中間で、点が少なければ稼がなくちゃいけないし、多ければ守り切らなきゃいけない」
咲「だから、中堅に弱い選手を置く高校なんて無い」
マホ「そんなポジションで、全試合を+3万点」
マホ「しかも、無能力者ときたもんですかぁ……」
140: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/10(土) 20:28:56.31 ID:QzJvJd220
咲「系統的には、白水哩だね」
咲「けど、初戦の戦いを見た感じでは……この人は、相手の心理の裏をかくのが異常に上手いね」
マホ「あ、それはマホも知ってます!清老頭ですよね!」
咲「うん。もし、私が槓材の察知を出来なかったとしたら、あの清老頭には振り込んでたと思う」
マホ「嶺上ならずって言ってツモ切りしておいて、一萬はカンして無かったんでしたか」
咲「そうそう。佐々野いちごの読みは完璧だったけど、あくまでも基本を完璧に読んだだけだったんだね」
マホ「だから、基本の裏をかいてきた愛宕洋榎さんに振り込んでしまった、ですかー」
咲「うん。……全く関係ないんだけどさ」
141: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/10(土) 20:31:22.23 ID:QzJvJd220
咲「チャンタ系って、形作るのが難しいのに翻数低いから、大阪の人は作るのに抵抗持ってそうだよね」
咲「めちゃくちゃ偏見だけど」
マホ「あー!何となくわかる気がするです!」
マホ「勿体ない精神が強そうですからね」
咲「まあ……」
咲『あれっ?安くてもチャンタ…?いや、この人は大阪人だし、チャンタなハズない!清老頭かもしれない、だからオリ!』
咲「……ってなる人は少ないだろうけど」
マホ「心理バトルみたいですねー」
隣客(…この子たちさっきから何言ってるの……!?)
_______________
_______________
142: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/10(土) 20:36:15.41 ID:QzJvJd220
恒子『続きまして!!!南北海道代表、有珠山高校!!!なんとなんと、初出場で準決勝進出という快挙を成し遂げました!!!』
健夜『このチームは、新道寺女子の様なWエースチームですね』
健夜『副将の真屋選手、大将の獅子原選手はとても強いです』
恒子『私情報によりますと、副将の真屋選手は牌のお姉さんを目指しているそうです!』
恒子『これには、現牌のお姉さんである瑞原プロは危機感を覚えているのではないでしょうか!』
健夜『どうして選手の打ち方とかの情報はあんまり覚えてないのに、そんな事は覚えてるの!?』
恒子『若いし可愛い!これは、牌のお姉さんの座の行方にも期待が高まります!』
健夜『怒られても知らないからね!?』
143: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/10(土) 20:39:13.28 ID:QzJvJd220
咲「獅子原爽……」
マホ「先輩?どうかしましたか?」
咲「マホちゃん、有珠山の映像は見たんだよね?」
マホ「はい、見ましたよ!」
マホ「健夜さんの言ってた通り、最後2人以外の方は、正直全国クラスではなかった様に感じました」
マホ「と言うか、大将の方も……言ったら何ですが、ギリギリの戦いしてましたよ?」
咲「多分、1,2回戦で全力は出してないと思う」
144: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/10(土) 20:40:45.46 ID:QzJvJd220
マホ「そうなんですか?うーん、確かに何か微妙に打ち方がおかしかった気も……」
咲「……」
咲「もしも、獅子原爽と卓に着くことがあっても照魔鏡は使わないようにね…」
マホ「へ?」
咲「……見えちゃいけないものが…見える気がするから…」プルプル
マホ「な、何ですか…?それは……?」ビクッ
咲「獅子原爽……絶対に対局したくないよ…」コワイ
マホ(意味深に話を終わられると怖いんですけどー!)プルプル
隣客(な、何が見えるのー!?)ビクビク
_______________
_______________
145: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/10(土) 20:41:56.66 ID:QzJvJd220
恒子『続いて紹介しますのは、Bブロックシード校の内の一校!!!鹿児島県代表、永水女子高校ですっっ!』
恒子『2回戦では、まさにシード校といった圧倒的な戦いを見せました!!』
健夜『このチームはとても強い。姫松高校を差し置き、シード校になった実力は本物です』
恒子『このチームには、天照大神の内の一人の選手がいますね!』
健夜『先鋒の神代選手ですね』
健夜『神代選手は、白糸台高校の宮永選手にも劣らない実力を秘めている選手ですが、如何せんブレ幅がある様に思います』
健夜『まさしく、調子の良い時は神が降りている様な闘牌を見せる』
健夜『間違いなく、準決勝の鍵の一人になってくるでしょう』
恒子『巫女服も可愛いです!』
健夜『そうですね……って、それは関係ないでしょ!?』
146: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/10(土) 20:43:48.71 ID:QzJvJd220
マホ「5人とも巫女服を着てるなんて、面白いですねー」
咲「そうだね」
咲「巫女服が制服って言われても納得しちゃいそう」
マホ「えっ、違うんですか!?」
咲「当たり前だよ……いや、そんな光景も見てみたいけどさ」
咲「この5人は、皆が神代さんの実家?の神社でお手伝いとかしてるらしいよ」
マホ「だからって、インハイに巫女服で出場する必要があるんですかね?」
咲「せ、正論だけど……」
咲「きっと、巫女服を着てないと神様が降りてきてくれないとか、そんな感じなんだよ!」
147: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/10(土) 20:45:09.80 ID:QzJvJd220
マホ「ふむふむ……なるほど」
マホ「神様は巫女服萌えなんですね!」
咲(違うと思うけど……)
マホ「宮永先輩も巫女服似合いそうです!」
マホ「マホ、見てみたいです」ジーッ
咲「そ、そうかな」
マホ「メイド服とか、スクール水着とかも見てみたいです!!」キラキラ
咲「ま、マホちゃん落ち着いて……」
マホ「チャイナドレスとか、ちょっと趣向を凝らして、モコモコぱじゃまとかも可愛いです!!」ハァハァ
148: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/10(土) 20:46:05.60 ID:QzJvJd220
咲(ダメだこりゃー)
咲「……」チラ
小蒔『……』テクテク
咲(神代さん、見せてもらうね)
咲(あなたの実力を)
マホ「他にも他にも(ry」
咲「マホちゃん帰ってきて」
隣客(巫女服が制服じゃなかったんだ……)
_______________
_______________
149: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/10(土) 20:50:45.01 ID:QzJvJd220
恒子『そしてそして!!最後に紹介しますのは、予選からこの準決勝まで、全ての試合をトップ通過』
恒子『しかも、選手全員が全ての試合をプラス収支で終えるという、圧倒的な実力で準決勝までやってきました!!』
恒子『東東京代表、臨海女子高校!!!』
恒子『15年連続地区代表という偉業を成し遂げていますっっ!!』
健夜『この学校の方針として、留学生を多く採用している点が特徴的ですね』
健夜『しかも、ただの留学生ではありません。全員が全員、世界の名だたる大会で成果を残しています』
恒子『高校生で世界大会とか、カッコいい!』
150: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/10(土) 20:51:41.75 ID:QzJvJd220
健夜『中でも注目したいのが、中堅の明華ちゃ……コホン、失礼』
健夜『中堅の雀明華選手と、大将のネリー・ヴィルサラーゼ選手です』
恒子『すこやん、今何言い直したのー?』
健夜『か、噛みそうになっただけ!』
健夜『 コホン、まず中堅の雀明華選手は、フランスからの特待生で、欧州選手権での活躍から風神【ヴァントール】と呼ばれている』
健夜『世界ランカーです』
恒子『世界ランカーとか、何それ凄い!』
恒子『でもでも、元世界2位の小鍛冶プロからしたら』
恒子『へっ、雑魚めっ!……って感じなんですか?やっぱり』
健夜『そんな事思うはずないでしょ!?』
152: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/10(土) 20:54:58.13 ID:QzJvJd220
健夜『高校生…いや、中学生でも、想像を遥かに越える能力を持つ人は存在します』
健夜『それこそ、プロでも軽く捻ってしまえる様な』
健夜『年齢と実力は、必ずしも比例しない。それが、麻雀という競技ですからね』
恒子『さすがっ!年齢の分だけ実力がある小鍛冶プロの有難いお言葉!』
健夜『年齢の分だけとか言わないで!?』ガーン
恒子『それでそれで、ネリー選手は?』
健夜『ヴィルサラーゼ選手は、サカルトヴェロからの留学生で、世界ジュニアで活躍している選手ですね』
健夜『先ほど言った、年齢と実力は必ずしも比例しない、という言葉が最も相応しいインハイ出場選手です』
健夜『恐らく、高校一年生で彼女より強い日本人は、数える程でしょうね』
恒子『これは、珍しく若い子を褒めていると思わせておいて、日本の若い子を落とすという、高等手段です!!』
健夜『だから違うからね!?私のイメージ落とすような事言わないで!?』
153: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/10(土) 20:57:42.08 ID:QzJvJd220
マホ「ネリー・ヴィルサラーゼ選手、ですかぁ……」
咲「……」
マホ「……?先輩?」
咲「あっ、ううん」
咲「ごめんね、何?」
マホ「いえ、ネリーさんって方、強そうですね」
咲「あぁ……間違いなく、牌に愛された子クラスだね」
咲「……一度対局してみたいかも」
マホ「やっぱり世界は広いですねー」
154: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/10(土) 20:58:39.75 ID:QzJvJd220
咲「そうだね。ちょっと興味が出てきたかも」
マホ「日本は、高校生では世界大会に出られませんからねー」
咲「うん。…まあ、大会とかには興味が沸かないから、見るだけで我慢するかな」
マホ「宮永先輩はどうして、大会とかには出ないんですかー?」
マホ「インハイだって、個人戦とかありますよね?」
咲「……それは、秘密かな」
咲「ただ、昔に約束……っていうか、戒めたの」
咲「二度と、大会には出ないって」
マホ「……そう、ですかー」
マホ「マホ、先輩と一緒に大会とか出たかったです」
咲「……」
155: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/10(土) 21:09:37.14 ID:QzJvJd220
咲「マホちゃんのお願いなら……考えておくね」
マホ「ふふっ、先輩はマホには敵わないんですもんね♪」ニコッ
咲「本当にね」クスクス
咲(……大会、か)
隣客「大会、かぁ……」ハァ
咲「ん……?」チラ
真佑子「あ……」メガアウ
咲「……」ペコリ
真佑子「と、どうも~……」ニ、ニコリ
咲(この人は確か…大星淡と予選で対局した…)
恒子『さあさあ!!注目のBブロック、準決勝大将戦は、午前11時より開戦です!!』
恒子『お前らぁぁぁ!!飲み物とお菓子の準備を忘れるなぁぁぁぁ!!』
健夜『映画館じゃないんだよ!?』
156: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/10(土) 21:11:58.59 ID:QzJvJd220
恒子『Bブロック準決勝、一体どんな戦いが見られるのか!!』
恒子『こうご期待ですっっっっ!!!!』
「一旦休憩でーす」
恒子「はふう…」
健夜「お疲れ様、こーこちゃん」
恒子「どったの、すこやんが労いの言葉なんて」
健夜「私だって労いの……って、この会話2回目!!」
恒子「あれ、そだっけー?」アハハ
健夜「もう…」
健夜(……咲ちゃん、何やってるかな)
_______________
_______________
164: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 15:56:19.96 ID:uoN6LcRA0
【Bブロック会場・ある時、ある場所】
咲「もぅ…自販機くらい一人でも行けるのに、マホちゃんは心配症すぎだよねっ」プンスカ
咲「ちゃんと早く戻って、一人でも大丈夫って所を見せつけなくちゃ」グッ
咲「自販機は確か……こっち?」テクテク
咲「……」テクテク
咲「……」キョロキョロ
咲「……」テクテク
咲「……」キョロ
165: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 15:57:38.29 ID:uoN6LcRA0
咲「……」タチドマリ
咲「……」ミワタス
咲「……」
咲「あ、あれ…?」
咲「……」
咲「ここ、どこだろう…」アセアセ
_______________
______________________________
_____________________________________________
166: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 15:58:53.94 ID:uoN6LcRA0
咲「……ヤバい、迷った…」
咲「しかも、ケータイの充電切れてる」
咲「……どうしよう…」ズーン
咲「何でいっつも知らない内に知らない場所に来ちゃうんだろう……」
咲「……」
咲「……」グスッ
「おいそこの、こんな所で何をしている?」
咲「えっ」チラ
167: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 15:59:41.00 ID:uoN6LcRA0
「あら……?もしかして、貴女は…」
「咲さんではないですか?」
「なんだ、知り合いか?」
「サキサンって何?サキイカみたいな?」
咲「辻垣内智葉……さんに、ネリーさん……それと…」
智葉「なんだ、知っていたのか」
ネリー「このカイジョーに居るんだから、知ってるでしょ!」
明華「やっぱり!咲さんですね!?その角みたいな髪…!J’ai rencontr? l’?me s?ur?!」スッ
咲「明ちゃ…………むぐっ!!」
169: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 16:02:52.39 ID:uoN6LcRA0
明華「あぁ、お久しぶりです咲さん!中学2年の頃以来ですので、3年振り程ですね」ムギュー
明華「~~~~~♪」rararara-
咲「みょ、明ちゃん落ち着いて……」
智葉「なあネリー、一体どういう状況だ?これは?」
ネリー「さぁ…キューユーってヤツなんじゃない?」
智葉「旧友…まあ、様子を見るにそうみたいだが」
明華「小鍛冶さんはお元気ですか?あぁ、本当に運命の様ですね」ギューッ
咲「明ちゃん、ちょっとストップストップ!」
智葉「そうだ。明華、一旦落ち着け」
ネリー「ネリー達完全に蚊帳の外だよ」
170: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 16:04:37.93 ID:uoN6LcRA0
明華「はっ……どうもすみませんサトハ」
咲「ふぅ……死ぬかと思ったよ」
智葉「一応自己紹介が必要か…?私は辻垣内智葉、臨海女子の3年だ」
ネリー「ネリーはネリーだよ。臨海の一年生」
明華「雀明華です、今は臨海女子二年です」
咲「宮永咲です。高校一年生、インターハイには観戦に来ています」
ネリー「……」ジーッ
咲「……」
ネリー「……」ジーッ
智葉「それで、聞いても良いか?」
171: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 16:07:49.53 ID:uoN6LcRA0
明華「気になるのですか?」
智葉「まあ、な。雇われの傭兵だなんて言われていても、私にとっては信頼できる仲間だ」
智葉「只でさえ自分の事を話しては貰えないからな。良い機会だから聞きたい」
咲(え、こんな所で?私迷子なんだけど……)
ネリー「ネリーも、そこのミヤナガについては少し興味があるかな」
咲(言える雰囲気じゃないや)
明華「分かりました!コホン」
明華「あれは、私が中学2年の頃……お母さんの仕事で茨城県に少しだけ滞在していた時の話です」
智葉(楽しそうに話すな)クス
咲(あの頃は確か………)
_______________
______________________________
_____________________________________________
178: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:10:36.03 ID:uoN6LcRA0
【咲・中学1年生、冬休み】
咲「うぅ…寒い…」ブルブル
咲「果たして、こんなに寒い思いをしてまで健夜さんしか居ない部室に向かう必要があるのか……いや、ない…」プルプル
咲「……帰ろうかな…」
咲「……」
咲「……健夜さん、待ってるかな…」
咲「……」カンガエ
咲「……はぁ、行こ…」テクテク
咲「……」テクテク
179: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:11:46.91 ID:uoN6LcRA0
咲「ん……?」チラ
「うぅ…」グスッ
咲(こんな寒い日に、一人で座り込んで何してるんだろ)
咲(雪だるまでも作ってるのかな)
咲(髪の色からして外国の人だよね…?)
咲「……」カンガエ
咲「もう……仕方ないな」
「……」シクシク
咲「あの、こんな所に一人で座って、何かお困りですか?」
「!!」ピクッ
180: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:13:19.87 ID:uoN6LcRA0
咲(下向いてたから分からなかったけど、私と同じくらいの歳か少し下……かな?)
「え、えっと…」
「っくしゅっ」クシャミ
咲「マフラーも巻かないで……」スッ
咲「はい、私の貸して上げますから、取り敢えず立ってください」つ マフラー巻く
「そ、そんな……悪いです」
咲「日本ではですね、親切を無駄にする方が失礼なんですよ」
「でも……」
咲「うるさいですね、私が良いって言ってるんですから良いんですよ」
咲「……ね?」
「……ありがとう、ございます」ニコ
咲「いえ……」
181: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:15:15.68 ID:uoN6LcRA0
咲「……」ジーッ
咲「……もしかして、迷子か何かですか?」
「え……」
咲「私もよく迷子になるので、何となくですが分かるんです」
咲「……出来れば分かりたく無かったんですけどね」アハハ
(不思議な方……)
咲「こんな寒い所に居たら風邪引いちゃいます、話聞かせてもらえますか?」
「……実は…」
_______________
______________________________
_____________________________________________
182: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:16:26.19 ID:uoN6LcRA0
咲「なるほど……お母さんのお仕事でフランスからここへ昨日来て、周辺をお散歩してる内に知らない所に迷い込んでしまった、と」
「はい……」コクリ
咲「何だか親近感を覚えますね」
「え?」
咲「あ、いえ。なんでも」
咲「一先ず、お名前を伺っても?」
「そうでした……」
明華「私は雀 明華と申します」
咲「みょ、みょーは……?」
183: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:17:37.19 ID:uoN6LcRA0
明華「明華、です」
咲「みょん……みょんふぁ…」
咲(言いづらい)
咲「それじゃあ、明ちゃんで良いですか?」
明華「明ちゃん……」
咲「……ダメでした?」
明華「い、いえ!!是非、明ちゃんでお願いします!」パアッ
咲「は、はい……」
咲(急に元気になった)
明華「それで……その、貴方のお名前は…」
184: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:19:28.75 ID:uoN6LcRA0
咲「あ、私は宮永咲って言います。すぐそこに見える中学の一年生です」
明華「い、一年生ですか!」
咲「あはは……やっぱり見えないですかね…」
明華「いえ逆です。こんなにもしっかりした方が、私より年下だなんて、少し驚いてしまって」
咲「!!!」
咲「えへへ……そうですかね////」
咲「どこぞのアラサーと違って、明ちゃんは優しいね」
明華「あらさー、ですか?」
咲「あ、ううん気にしないで…………って」
咲「私が明ちゃんより年下……という事は、中学二年生以上って事ですか?」
185: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:21:46.72 ID:uoN6LcRA0
明華「はい。日本で言うと、中学二年生の年ですね」
咲(蹲って泣いてたのと、外国人さんで顔が人形みたいなのが相まって、同い年か小学生かと思った……)
明華「咲さん?」
咲「あ、すみません。何度も黙りこくって」
咲「……一先ず、私と一緒に来ますか?」
明華「一緒に……?」
186: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:22:22.93 ID:uoN6LcRA0
咲「はい。私、そこの中学の麻雀部に入っていて、今から向かう所だったんです」
明華「まーじゃんぶ……何かのクラブの事ですね」
咲「家への帰り方が分からないのなら、ここでずっと座っていても仕方ありませんから」
明華「で、でも……ご迷惑じゃ?」
咲「他の部員を気にしているなら大丈夫ですよ」
明華「え?」
咲「麻雀部の部員、私1人だけだけで後はコーチが一人居るだけですから」
_______________
______________________________
_____________________________________________
187: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:23:25.93 ID:uoN6LcRA0
【旧校舎・麻雀部部室前】
咲「明ちゃん、こっちだよ」
明華「は、はいっ!」タッタ
明華「あちらの大きな建物の中ではないんですね…」
咲「うん。どういう訳か、こっちの旧校舎にあるの」
咲「ちょっとだけ近いから、お得感あるよね」クスクス
明華「本校舎からは遠いので、頻度的には損では……?」
咲「あ、確かに」
咲「ふふっ、明ちゃん頭良いね」
明華「そ、そんな事は…」テレテレ
188: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:24:59.12 ID:uoN6LcRA0
咲「日本語も上手だし、来る前に勉強とかしたの?」
明華「はい。元々日本が好きでしたし、お母さんも教えてくれたので」
咲「……へぇ…」
明華「……?」
咲「っと、着いたね」
明華「ここが…」
咲「じゃ、入ろっか」スッ
ガチャ
咲「おはようございます」
健夜「あ、咲ちゃん!おはよ……う?」
健夜「えっ……」
明華「…っっ…」アセアセ
189: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:26:04.09 ID:uoN6LcRA0
健夜「さ、さささささ……」
健夜「さささささささ咲ちゃんがと、とととととお友達を!??!!」
咲「うるさいですよ」ハァ
健夜「だ、だって!!」
咲「明ちゃんごめんね、うるさくて」
明華「い、いえ……」後ろに隠れてる
健夜「みょ、明ちゃ……っっ!!?」
健夜「…あぁ…咲ちゃんにも、やっと友達が出来たんだね……」シクシク
健夜「きっとこれからは、ここに来る頻度も減って……減って……」
健夜「はぁ……」ズーン
咲「……」ハァ
190: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:27:37.39 ID:uoN6LcRA0
咲「健夜さん、来る時にプリン買ってきましたけど食べます?」
健夜「食べる!!」パァッ
咲「……」呆れ
咲「…明ちゃん、紹介するね」
咲「この人が、ここの麻雀部のコーチの小鍛冶健夜さん」
明華「雀明華、です……」ペコリ
咲「あぁ…ほらもう、健夜さんのせいで困ってますよ?」
健夜「ご、ごめんね?」ハンセイ
健夜「それで、明華さんはどうして咲ちゃんと?」
咲「それがですね……」
_______________
______________________________
_____________________________________________
191: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:29:19.77 ID:uoN6LcRA0
健夜「迷子……」チラ
咲「なんですか」
健夜「なんでもっ!」アセアセ
健夜「そういう事なら、大丈夫だよ。外、寒いしね」
明華「あ、ありがとうございます」
咲「そうだ、明ちゃんって麻雀やる?」
明華「まーじゃん……?いえ、知らないです」
咲「折角だし、ちょっとだけやってみない?」
192: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:30:52.50 ID:uoN6LcRA0
明華「咲さんは出来るんですか?」
咲「うん。私、麻雀部だからね」アハハ
明華「……なら、ご一緒したいです!」
咲「よし、じゃあそこに座って?」
健夜「ルール教えてる間に、私は少し明華さんの家に電話掛けてくるね」
咲「え、電話番号分かるんですか?」
健夜「うん。もしもの時用に持たせてたのかな、住所と番号の書いてあるカードがあったから」
健夜(咲ちゃんにも持たせておいた方が良いかな)
咲「そうですか。……今、何か変なこと考えましたね」ジトー
健夜「そ、そんなこと無いよ!!」
193: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:32:27.40 ID:uoN6LcRA0
健夜「……じゃあ、少し待っててね」
咲「りょーかいです」
咲「……ふう、それじゃあやってみよっか」
明華「とても仲が良いんですね」クスクス
咲「えぇ…」
咲「今の見てそう感じたの?」
明華「はいっ。咲さんの小鍛冶さんを見る目、とても素敵でしたから」
明華「逆に、小鍛冶さんが咲ちゃんを見る目も」ニコッ
咲「そ、そんな事無いよ……」テレ
明華「ふふっ、そうですか?」
咲「そーなの!」
咲(さすがフランスから来た子だなぁ……情熱的)
咲「よし、それじゃあまずは簡単なルールを……」
_______________
______________________________
_____________________________________________
194: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:33:42.30 ID:uoN6LcRA0
明華「ツモです、3000.6000」
咲「明ちゃん凄い……ちょっと教えただけで、点数計算まで完璧だよ」
明華「いえそんな……咲さんの教え方が上手いんですよ」
明華「~~~♪」rararara-
咲「歌、好きなの?」
明華「はい。お母さんに教わった曲で……お父さんが好きだった曲らしいです」
咲(好きだった……らしい…)
咲「……そっか…」
咲「……ん?」ジーッ
明華「咲さん?」コォォォ
咲(歌った後で、急にオーラが……)
195: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:34:30.64 ID:uoN6LcRA0
咲「ねえ明ちゃん、今度は対局中ずっと歌いながら打ってみて?」
明華「そ、それは……流石に恥ずかしいのですが///」
咲「良いから良いから」
咲「私、もっと明ちゃんの歌声聴きたいな」ニコッ
明華「そ、そうですか…?///」
咲「うんっ」
明華「それなら、分かりましたっ」
健夜「二人ともお待たせ」ガチャ
咲「あ、健夜さんどうでした?」
196: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:35:32.35 ID:uoN6LcRA0
健夜「お母さん、心配してたよ?連絡入れても返事帰ってこないーって」
健夜「ケータイ見てみて?」
明華「ケータイ……」スッ
咲「けーたいって何です?」
健夜「咲ちゃんにはまだ早い物だよ」
咲「むっ……嫌な言い方ですね」ムスッ
健夜「……お家の固定電話使える?」
咲「いえ、一度触ったら警察に掛けてしまって大事になったので、それ以来使わせて貰えません」
健夜「やっぱりあと3年は早いかな……」
咲「3年後には、健夜さん名実ともにアラサーですね」
健夜「嫌なこと言わないで!?」ガーン
197: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:38:25.77 ID:uoN6LcRA0
明華「本当です。マナーモードになっていて気付きませんでした……」
健夜「場所を伝えたら、迎えに来てくれるって言ったから、後30分位待っててって」
明華「すみません、ありがとうございます」
健夜「ううん、良いの良いの。咲ちゃんの友達なんだし!」
咲「別に友達って訳じゃ……」
咲「良いですから、取り敢えず打ちましょう」プイッ
健夜(意識させすぎちゃったかな?)
咲「折角ですし健夜さんも入ってください」
咲「明ちゃんは対局中歌うので、よろしくお願いします」
健夜「う、歌う?」
健夜(そういえば、何やら雰囲気が……)
咲「では、始めましょうか」
_______________
______________________________
_____________________________________________
198: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:40:04.83 ID:uoN6LcRA0
明華「~~~♪~~~♪」rararara-
明華「ロン、18000です」
咲「はい。……終局ですね」
健夜(咲ちゃんが振り込んだ……?プラマイゼロ…はやる訳ないか)
明華「何でしょうか、歌ったらとても良い牌ばかりツモれる様になりました」
咲「はい、とても強かったです」
明華「まーじゃん、とても面白い競技ですね」
咲「ホントに?」
明華「はいっ!」
199: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:41:16.74 ID:uoN6LcRA0
咲「……良かった」ニコ
明華「……/////」カァ
健夜「明華ちゃん、お母さん来たって」
明華「あ、分かりましたっ」
明華「……」チラ
咲「??」
明華「えっと……」
明華「日本は、今は冬休み何ですよね……?」
健夜(お……これは…?)
咲「うん、そうだね。もうすぐクリスマスだし」
200: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:42:45.03 ID:uoN6LcRA0
明華「その……私は、あと数週間ほどここに居るんです」チラチラ
咲「うん?そうなんだね」
咲「……?」
健夜(鈍い!!咲ちゃん鈍いよ!!)
健夜(その、何を言いたいのかさっぱり分かりませんって顔やめようよ!)
咲「あっ、迷ったらまたここに来ても良い?っていう事?」
健夜「違うよ!?そんな事の許可を取る必要性を感じないよ!!」
咲「うわっ……びっくりした……」ビク
201: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:43:48.46 ID:uoN6LcRA0
咲「何ですか健夜さん、急に大声出して」ジトー
健夜「はっ……咲ちゃんの鈍さに、思わず声に出しちやったよ」
咲「鈍さって……健夜さんには言われたくないです」
健夜「えっ、どういう意味?」
咲「知りません」プイッ
明華「その!……もし、宜しければ…えっと」
明華「家に居ても…お母さんがお仕事の時は一人なので、その……」
明華「ここに、来てもいいですか……?」
咲「え?良いけど」
健夜(返答早いよ咲ちゃん!?)
202: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:44:56.67 ID:uoN6LcRA0
明華「!!」パアッ
明華「ありがとうございます!」ニコリ
咲「ううん、私も健夜さんだけとしか打てないのは飽きてきてたし」
健夜「私飽きられてたの!?」ガーン
咲「嘘ですから、そんな本気で落ち込まないでくださいよ」
咲「少し前の、あの滾ってた健夜さんはどこへ行ってしまったんですか」
健夜「素の私はこっちだよ!!滾ってないよ!」
明華「ふふっ…」クスクス
明華「ありがとうございます、咲さん小鍛冶さん」ペコリ
健夜「ううん、気にしないで。一応、お正月以外はここ開いてるからね」
203: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:46:07.72 ID:uoN6LcRA0
咲「クリスマスも開いてるのは、健夜さんに予定が入っていないからですよね」
健夜「よ、余計なお世話だもん!!」
健夜「ていうか、咲ちゃんだって予定無いくせに!」
咲「私はありますもん、予定」
健夜「えっ………………!?」唖然
咲「嘘ですって、健夜さんは何度私の嘘に騙されるんですか」
健夜「さ、咲ちゃん!!」プンスカ
咲「取り敢えず、私も暇ですしここに来ると思いますので、安心して来ると良いですよ」
明華「はいっ!……では、また」フリフリ
咲「……うん、またね」フリフリ
健夜「またね!」
バタン
咲「ふぅ……」
204: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:47:19.21 ID:uoN6LcRA0
健夜「久々に知らない子と打って、緊張した?」
咲「それは、まあありますけど……」
咲「それ以前に、危うく負けちゃう所でしたから」
健夜「確かに、私も少しビックリしたな」
咲「歌うと強くなる……」
健夜「日本の大会ではあんまり奮わないかもしれないけど、海外の大会は容認してる所もあるし、化けるかもしれないね」
咲「明日からも来たいって言ってましたけど、本当に来るんでしょうか?」
健夜「うーん……来ると思うよ?」
咲「……そうですか」
健夜「ふふっ、友達できたね?」
咲「だから友達じゃ無いですし……それに、数週間後にはフランスに帰るんです」
咲「そうなれば、もう会うことも無いでしょう」
健夜「素直じゃないなぁ…」クスクス
咲「……うるさいです」
_______________
______________________________
_____________________________________________
205: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:48:35.89 ID:uoN6LcRA0
【明華・宅】
明華「……ふふっ」
明華「歌……お母さん以外に初めて褒めて貰った…」
明華「まーじゃん……咲さん、強かったな」
明華「続けていれば、もっと咲さんを楽しませられるでしょうか…」ウーン
明華「……」
明華「……よしっ!」
明華「お母さん、まーじゃんって知っていますか?」
206: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:49:16.54 ID:uoN6LcRA0
明華「ほうほう……フランスでも流行っていたんですか…」
明華「欧州選手権?高校生から……」
明華「分かりましたっ!」
明華(フランスに戻ったら、まずはそこを目指しましょう)
明華(でも、それまでは……)
明華「咲さん、あなたの近くで楽しませてくださいね」
_______________
______________________________
_____________________________________________
207: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:50:30.51 ID:uoN6LcRA0
【回想終わり】
明華「……という事があったんですよ」
咲「明ちゃん……」
ネリー「明華……」
智葉「明華」
3人「「「話長い」」」
明華「そうでしたか……?これでも凝縮して……」
明華「それこそ、これから親しくなってクリスマスを共に過ごしたり、初日の出を共に見たりしたんですよ?」
智葉「しかし、驚いたな……」
智葉「明華が対局中に歌うキッカケ…それ以前に、麻雀を始めたキッカケが宮永とは」
明華「無視は辛いですサトハ」
智葉(それにしても宮永、か……偶然か?)
208: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:51:29.55 ID:uoN6LcRA0
ネリー「2人のカンケーは分かったけどさ、ミヤナガはどうしてこんな所にいるの?」
咲「……それがですね…」
マホ「あー!!宮永先輩、こんな所にいました!!」
咲「マホちゃん!!」
マホ「もう、心配で後を付けてたら急に居なくなるんですもん!マホ、ビックリしました!」
咲「ご、ごめんね?私でも、どうしてこんな所に居るのか分からなくて」
マホ「まあ、自販機行くって言いながら全く別の方向に向かった時点で、声を掛けておくべきでした」
マホ「マホの失態です……」
咲「私の迷子でそこまでマホちゃんに凹まれると、こっちが申し訳なくなるよ……」
209: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:52:32.20 ID:uoN6LcRA0
智葉「なんだ、迷子だったのか?」
明華「咲さん……変わっていませんね」クスクス
ネリー「へぇ……」ジーッ
マホ「って、臨海女子の皆さんじゃないですか」
マホ「宮永先輩を保護してくださって、ありがとうございます」ペコリ
咲「保護って……」
智葉「いや、こちらこそ。チームメイトの面白い話を聞けて、良かったよ」
マホ「宮永先輩、戻りますよ?」
咲「あ、うん」
明華「咲さん、待ってください!」
210: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/11(日) 21:53:56.89 ID:uoN6LcRA0
明華「……これを、よければ」つ 紙切れ
咲「これは……メールアドレスと番号?」
明華「はい。よければ、ですけど」チラチラ
咲「……うん、ありがとう」ニコッ
明華「~~~/////」ドキッ
咲「また連絡するね」クス
明華「はい!待ってます!」
智葉「ふっ……それじゃあ、戻るぞ。ネリー、明華」
ネリー「はーい。ミヤナガとそこの紫の人、いつか打とうね」
咲「あはは…機会があれば是非」
マホ「さよならですー」
明華「……それじゃあ、咲さん、また」フリフリ
咲「うん、明ちゃん。……またね」フリフリ
宮永咲と雀明華、カン
_______________
______________________________
_____________________________________________
221: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/12(月) 18:12:50.62 ID:KSyig+et0
【Bブロック・観戦室】
マホ「……」ウトウト
咲「マホちゃん、大丈夫?」
マホ「!!は、はい、なんですか?」ピクッ
咲「何か、凄く眠そうだけど……」
マホ「実は……昨日見た映画が怖かったせいか、夜全然眠れなくて……」ネムネム
マホ「マホ、瞼と瞼が今にもごっつんこしそうです……」ファ
咲「そんなに……?」
咲「ここで寝ても大丈夫だよ?」
222: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/12(月) 18:13:41.62 ID:KSyig+et0
マホ「いえ……宮永先輩にご迷惑を掛ける訳にはいかないので…」
マホ「幸い、ホテルもここから数分の所にありますし……一度戻って寝てきますです…」
マホ「ぁ……でも、それだと宮永先輩の迷子を監視できませんね…」
咲「大丈夫だよ。私、自分で何度も迷子になって、ある法則性に気付いたの」
マホ「法則性、ですか……?」
咲「うん。ずばり、建物の中に居るときは迷子になっても外へは出ない事と、迷子に一度なったら、その後8時間は迷子にならない事」
マホ「そ、そんな法則性があったんですか」
咲「だから、安心してホテルに居ても良いよ?」
マホ「それは世紀の大発見ですね……!」
223: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/12(月) 18:14:15.59 ID:KSyig+et0
マホ「では、お言葉に甘えさせて貰うです」
咲「うん、それじゃあホテルまでは送るから」
マホ「そ、そんな悪いですよ……」
咲「良いから、ね?」ニコッ
マホ「は、はい……っ///じゃあ、お願いします……」テレテレ
咲「じゃ、行こっか」つ 手
マホ「あれ、宮永先輩手繋ぐの恥ずかしいんじゃ?」
咲「あっ……」
224: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/12(月) 18:15:28.15 ID:KSyig+et0
咲「さ、最近はずっとマホちゃんと手繋いでたから……いつの間にか慣れてたよ…///」
マホ「ふふっ、嬉しいです」ギュッ
咲「ま、迷子対策……だからね?」
マホ「あれれ?8時間は迷子にならないんじゃなかったですかー?」ニコニコ
咲「うっ……//」
咲「い、行くよ!」テクテク
マホ「はーい♪」フフッ
_______________
_______________
225: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/12(月) 18:16:07.94 ID:KSyig+et0
【マホ送り後・ホテル前】
咲「ふぅ……さて…」
咲「果たして、私はここから会場まで迷わずに行けるのか……」ウーン
咲「さっきは、私に気使って貰うのが悪くて嘘吐いちゃったけど……」
咲「ふふふ、甘いねマホちゃん。私の迷子癖は、プラマイゼロよりも悪質なんだよ」フンス
咲「そう簡単に謎が解けるわけが……」
咲「……」
咲「……はぁ…どうしよ、迷わない確率は50%くらいかな…」
226: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/12(月) 18:17:02.70 ID:KSyig+et0
咲「ま、まあ平気だよね?さすがに、徒歩5,6分だし……迷う訳」ピクッ
咲「……?」フリカエリ
洋榎「あ、バレてもうた」
咲「……」スタスタ
洋榎「ちょっ、待ってーな!」タッタッタ
洋榎「アンタさん、どっかで見た顔やなー思っとったんやけど、思い出せんのや!」
咲「へー」テクテク
洋榎「な?分かるやろ?あの、思い出せそうで思い出せん、気になる事の答えが分からん、気色悪い感覚!」
咲「へー」テクテク
227: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/12(月) 18:17:59.97 ID:KSyig+et0
洋榎「……ん?この淡白なリアクション……」
洋榎「思い出したで!一昨日、Aブロックの会場でたこ焼き食っとった子や!」ヒラメキ
咲「へー…………は?」
咲「いや……おかしいでしょう…」ハァ
咲「何でこんな暑い中、暑い物を好んで食べなきゃいけないんですか」
洋榎「ん?ほんなら何やっけ……」ウーン
洋榎「あぁ!思い出したで!たこ焼きアイス食べとったやんな?」ヒラメキ
咲「なんでやねん」
洋榎「おおぅ……なんや、鋭いけどやる気の感じられんツッコミやな」
咲(しまった……園城寺さんの影響で…)
228: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/12(月) 18:18:56.14 ID:KSyig+et0
洋榎「ほんで、自分こんな所で何しとるん?」テクテク
咲(何で並んで歩いてくるの……)
咲「いや、それは私が聞きたい所……いや、別に会話したくないので聞きたくないんですけど」
咲「私が聞くべき質問だと思うんですけど」
洋榎「ん、ウチ?ウチは串カツ食べたなったから、買ってきたんや」つ 串カツ
咲「大丈夫なんですか、試合前に……」
咲「ミーティングとか無いんです?この間も、アナタが居なくてミーティング出来ないって、探しに来てたじゃないですか」
洋榎「誰が相手でも勝つだけやからな!」ドヤッ
咲「……」
咲「……ふぅん、そうですか」
229: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/12(月) 18:19:50.74 ID:KSyig+et0
洋榎「なんや、突っ込まんかい」
咲「いえ……アナタなら、永水と有珠山の中堅さんになら勝てるでしょうから」
咲「言葉とは裏腹に、油断を感じませんし」
洋榎「えらい評価高いやん?」
咲「逆に、明ちゃ……臨海女子の中堅には勝てませんよ」
咲「少なくとも、串カツなんて食べてる暇は無いと思いますが」
洋榎「串カツ舐めとるん?アンタが好きなタコ焼きアイスよりは美味いで?」
咲「だからタコ焼きアイスってなんですか……大阪の方って、タコ焼きが好きなあまりそんな物に走ってるんですか?」
洋榎「今のは突っ込む所やで」
咲「……うざ」
230: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/12(月) 18:20:48.34 ID:KSyig+et0
洋榎「おおぅ……えらいストレートにジャブ打ってくんなぁ」ケラケラ
咲(ストレートなのかジャブなのかどっちなの)
咲「……」
咲「あの、それで何か用ですか?」
洋榎「ん?いや、別に用なんて無いで?」
咲「ならどうして話し掛けて来たんですか……」ハァ
洋榎「そら、あれやん?知った顔見かけたら取り敢えず声掛けるやろ?」
咲「私はアナタのこと忘れかけてましたけどね」
洋榎「そうなん?ミーティングの事とか覚えとったやん」
咲「……」
洋榎「ははっ、一本取ったで」クスクス
咲「鬱陶しい……」
231: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/12(月) 18:22:13.07 ID:KSyig+et0
咲「……あぁ」
咲「そう言えば、貴方に一つだけ聞きたい事があるんです」
洋榎「この髪は地毛やで!」ドヤッ
咲「初戦の清老頭、壱萬をカンしなかったのは何故ですか?」
洋榎「無視かいな!」
咲「何故ですか?」
洋榎「それは、あれや。1回カン見せたんやから、普通は2回目カンできるならするって、思わせられるやん?」
咲「……ダウト、ですね」
洋榎「ダウトちゃうわ!」
咲「2番目の嶺上牌が、リーチへの当たり牌だって分かっていたんじゃないですか?」
232: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/12(月) 18:23:40.64 ID:KSyig+et0
洋榎「……」
咲「……もっと詳しく言いましょうか」
咲「あなたは、他家がリーチを掛けた時、その人の当たり牌が分かっていますね」
咲「その牌の種類、どこに埋まっているか、誰が持っているか……全てを」
洋榎「……」
咲「異常な防御力の高さは、その所以」
洋榎「……くく…」
洋榎「あっはっはっはっ!!オモロイ!オモロイで、あんた!」
咲「……」
洋榎「うちの部員ですら気付かん事に、何で気付けたん?」
咲「やっぱり……」
233: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/12(月) 18:24:59.16 ID:KSyig+et0
咲「普通に気付くでしょう……アナタの牌譜を見ましたが、他家のリーチ時の振込み率0%」
咲「しかも、平気で超危険牌を切っていても全て当たっていません」
咲「まあ当たり前ですかね」
咲「……貴方にとっては、当たり牌以外は全て完全安牌なんですから」
洋榎「そんだけで見抜けるもんなん?」
咲「最初は半信半疑ですよ。……決め手になったのは、あの清老頭の時」
咲「あの局面、確かにアナタはカンをしないというブラフは打ったでしょう」
咲「けど、見ていたのは違う所。それが、当たり牌の埋まっていた嶺上牌です」
234: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/12(月) 18:26:40.83 ID:KSyig+et0
洋榎「…もしかして、自分……嶺上牌が見えたりするんか?」
咲「察しが良いですね。……健夜さんにも見習って欲しい」
洋榎「うん?」
咲「あ、いえ、なんでも」
咲「……言われた通り、私は嶺上牌が見えます」
咲「だから、二枚目の嶺上牌がリーチへの当たり牌だと言うことに気付きました」
洋榎「なるほどなぁ……」
洋榎「こら一本取られたわ」アハハ
洋榎「てか、ウチの能力を知ってどないするつもりなん?」
235: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/12(月) 18:27:35.94 ID:KSyig+et0
咲「いや、別に……」
咲「……あぁ」
咲「ほら、あるじゃないですか?」チラ
洋榎「ん?」
咲「気になって仕方の無いことの答えが分からないと、気持ち悪いって事」クスクス
洋榎「!!」
洋榎「……ふふっ、せやな」
洋榎「こら二本目、取られたなぁ」フフッ
_______________
_______________
236: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/12(月) 18:28:27.06 ID:KSyig+et0
【Bブロック・会場前】
咲(話してたら迷わず会場に着いてた……)
洋榎「良かったやん?迷子にならんで」
咲「……」
咲「……は?」
洋榎「はっはっは!」
咲「貴方……愛宕さん、まさか、それで?」
洋榎「さぁ、どうやろ?」クスクス
咲「……うざ」
洋榎「おおぅ、今度のその言葉は感謝の言葉に聞こえる不思議やな」ケラケラ
咲(この人……)
237: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/12(月) 18:29:39.22 ID:KSyig+et0
由子「あ、洋榎おったのよー」
洋榎「おう、由子やん。出迎えご苦労!なんちって」
由子「なんちって、ってそんなくだらないボケ垂れ流してる暇じゃないのよー」
咲(凄い辛辣だな……)
由子「洋榎が帰ってこんからミーティング出来へんって、恭子と代行までカンカンよー?」
由子「富士山も噴火する勢いなのよー」
洋榎「えっ」
由子「あーあ、今度は私も味方できへんよー」
洋榎「そ、速攻で土下座してきますー!!」タッタッタ
咲(忙しないなぁ……)
由子「……相変わらず忙しないのよー」
238: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/12(月) 18:30:42.77 ID:KSyig+et0
由子「……ん?」チラ
咲「その節は、どうもです」ペコリ
由子「あぁ、あん時も洋榎と一緒におった女の子やねー」
由子「制服やと雰囲気変わるもんやなー」
咲「そうですかね?」
由子「うんうん、可愛いのよー」
由子「それはそうと、洋榎を捕獲して貰って感謝感激よー」
咲「ミーティングも忘れて串カツ食べてましたよ、叱ってあげてください」
239: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/12(月) 18:31:46.58 ID:KSyig+et0
由子「今頃、雷が落ちてるのよー」クスクス
由子「ほんなら、さよならねー」フリフリ
咲「はい。試合、見てますね」
由子「……」ジーッ
咲「?」
由子「……前回も思ったんやけど、中々不思議な雰囲気の子なのよー」
咲「それを言うなら貴方こそ……不思議ちゃんっぽいと思いますよ……語尾的に」
由子「あはは、これは癖なのよー」
240: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/12(月) 18:34:15.61 ID:KSyig+et0
咲「良いと思いますよ、優しい感じがして」
咲「可愛いです」ニコリ
由子「……えっ、そ、そんな事は無いと思うのよー」テレ
咲「そうですかね?……まあ良いですけど……」
咲「行かなくて良いんですか?」
由子「あ、忘れてたのよー!ほな、またねー」フリフリ
咲「はい、さようなら」フリフリ
咲「……関西には色んな人がいるんだなぁ…」シミジミ
咲「おっと…試合始まっちゃう……急ご」タッタッタ
_______________
_______________
由子「……」
由子「始めて、言われたのよー……」
由子「……」
由子「……////」タッタッタ
宮永咲と、愛宕洋榎・カン
252: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/13(火) 01:10:07.63 ID:G8iCWYE60
【観戦室】
咲「はぁ……思いもよらぬ再会だったな…」スワリ
咲「……」ポツーン
咲「……マホちゃん居ないと少し寂しいけど…我慢するしかないね」
真佑子(あ、帰ってきた……)チラ
咲「ん?」メガアウ
真佑子「!!」メソラシ
真佑子(め、目合っちゃった……!)
真佑子(ど、どうしよう…不快にさせたりしてないかな……)
真佑子(謝った方が良い!?いや……でも、目が合ってごめんなさいって、おかしいよね!?)アウアウ
253: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/13(火) 01:11:02.38 ID:G8iCWYE60
咲(……この人、さっきも目が合ったけど、何か用なのかな?)
咲(多治比真佑子さん……確か、東京の松庵女学院の大将……)
咲(大星淡に、公式戦初めて能力を使わせた人……つまり、それだけの実力者っていうことかな…?)
咲(映像を見るに、あれが能力だって気付いた表情はしてたけど……)
咲「……」
咲(何だか、玄さんがツインテールにしたらこんな感じになりそうだな)
咲(……そこはかとなく、頼れない系年上オーラを感じる)
真佑子(うぅ…なんか気まずい……)チラ
咲「……」ジーッ
真佑子(凄い見られてる!!)ビクッ
254: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/13(火) 01:11:41.53 ID:G8iCWYE60
真佑子(やっぱり、私が見てたから怒ったのかな!?)
咲「あの」
真佑子「ひゃい!?」ビクッ
咲「うわっ…ビックリした…」ピク
真佑子「あ……ご、ごめんなさい」ペコリ
咲(……やっぱり玄さんっぽいなぁ…)
咲「いえ。………多治比真佑子さんですよね、予選で大星淡と対局していた」
真佑子「し、知ってるんですか……?」
咲「ええ、まあ。あの試合は何度も見ましたし、雑誌とかでも拝見した事あります」
255: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/13(火) 01:13:00.85 ID:G8iCWYE60
真佑子「雑誌……麻雀TODAYですか…?」
咲「多分それですかね。宮永照とか、牌のお姉さんとかが載ってるやつです」
真佑子「そ、そんな有名な人達と並べられると、少し恥ずかしいんですけどね…」
真佑子「あの……それで、あなたは…?」
咲「あ、すみません。名前も言わずに」
咲「私は宮永って言います」
真佑子「宮永さん……」
真佑子(……宮永…?)
咲「先程から見られてた気がするんですけど、何か用でしたか?」
真佑子(やっぱりバレてた……!)
256: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/13(火) 01:13:47.80 ID:G8iCWYE60
真佑子「い、いえ!ジロジロ見てしまってすみません…」
咲「別に良いんですけど……」
多治比「……」
咲「……」
多治比(き、気まずい……!)
咲「そういえば、多治比さんはお一人ですか?」
真佑子「あ……はい…」
真佑子「その、最後のインターハイなので……見に来ようかなって。麻雀は、好きですから」
真佑子「……でも、私が大将で負けちゃって……皆を自分から誘うなんて出来なかったので…」
真佑子「一人で、来たんです」
咲「……へぇ…」
257: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/13(火) 01:14:37.03 ID:G8iCWYE60
真佑子「!!ご、ごめんなさい……要らないことまで話しちゃって」
真佑子(なんだろう、宮永さんと話してると……不思議な感じ……)
咲「……」
咲「……私は、良いと思いますよ」
真佑子「へ……?」
咲「白糸台高校と同じ地区で3年間戦って、負け続けてきて……それでも、麻雀を嫌いにならずに、ここに足を運んだ」
咲「そういう、多治比さんの麻雀に対する姿勢は……結構好きです」ニコッ
真佑子「えっ……!?///」
258: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/13(火) 01:15:36.28 ID:G8iCWYE60
咲「…ただ、自分が大将で負けたからどうたらって言う所は、かなり嫌いですね」
真佑子「で、でも……大将の私が勝ててたら…」
咲「でもじゃありません。でもって言わないでください。玄さんって呼びますよ」
真佑子(だ、誰!?)
咲「はぁ……じゃあ、一つ言いますけど」
咲「多治比さんの理論がまかり通るならば、一番の戦犯は、先鋒の選手ではありませんか?」
真佑子「!!」
咲「だって、宮永照を抑えられなかったんでしょう」
咲「エースである松庵の先鋒の方が、宮永照を抑えられていれば、結果は違ったかもしれませんよね」
259: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/13(火) 01:16:36.35 ID:G8iCWYE60
真佑子「そ、それは違うと思います!だって、宮永照さんは」
咲「……宮永照は、なんですか?」
咲「まさか、宮永照は格が違うから、勝ち目が元より無い」
咲「だから、勝てなくても仕方が無い……よって、大星淡に勝てなかった大将の自分が一番悪いんだー……」
咲「なんて、言いませんよね」
真佑子「……っっ…」
咲「……」ハァ
咲「……良いですか?」
咲「自分があの時勝っていれば、何かをしていれば、なんて意味の無い仮定をするのはアホです」
260: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/13(火) 01:17:39.59 ID:G8iCWYE60
咲「先鋒が宮永照を止められなかったのが敗因、同時にあなたが負けた事も敗因です」
咲「いえ、もっと言ってしまえば、次鋒から副将でトップになって、どこかを飛ばせなかった事も敗因ですかね」
咲「あなたは大将、そして最後の大会という事もあって、尚更悔やむ気持ち、自分を責める気持ちが大きいのかもしれません」
咲「……ですが、そんな物は馬鹿馬鹿しいです」
咲「あれは団体戦。負けた場合は全員が敗因であり、勝った場合は全員が勝因なんです」
咲「もしも多治比さんが大星淡に勝利して、インターハイに出ていたら」
咲「多治比さんは、私が勝ったから皆をインターハイに出場させれた、私のおかげだって言うんですか?」
真佑子「!!……言わない…」
真佑子「そんな事、言えない……です」
261: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/13(火) 01:18:52.49 ID:G8iCWYE60
咲「……では、多治比さんが負けてしまった後、チームメイトの方はあなたを責めましたか?」
真佑子「……」フリフリ
咲「……なら、多治比さんが悩んでいる事は、悩み損なんですよ」
真佑子「……そうなの…かな…」
咲「まあ、私が多治比さんに代わって松庵の大将を務めていれば、優勝出来たと思いますので、やっぱり多治比さんが敗因かもですね」
真佑子「えっ!?……やっぱり…」
咲「いや、冗談ですって。間に受けないでください」
真佑子「も、もう!!宮永さんっ!!」プンスカ
咲「あはは、すみませんすみません」クスクス
咲「少し、知り合いに似ていたので、つい」
262: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/13(火) 01:20:00.76 ID:G8iCWYE60
真佑子「……宮永さんは、不思議な人ですね」
咲「えっ……それ、最近凄く言われるんですけど、どういう意味なんですか?」
真佑子「あっ、いや……嫌な意味ではなくて」
真佑子「何ていうか…すんなり心を開ける……って言うか」
咲「告白ですか、照れます」
真佑子「えっ、ち、違います!!/////」
咲「知ってます。……まあ、悪い意味で無いなら気にしないでおきます」
真佑子(な、何なの!?////)
咲(しまった……玄さんに似てるなーって思ってたらいつの間にか説教みたいな事してたよ……)
263: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/13(火) 01:20:52.53 ID:G8iCWYE60
恒子『さあさあお前らぁぁぁぁ!!いよいよ準決勝、先鋒戦の始まりだぁぁぁ!!』
健夜『またスポンサーからクレームくるよ!?』
咲「あ、始まる……」
咲(そういえば、健夜さん……電話くれなかったな)ムスッ
咲(休憩って、昼休みだけだと思ってるのかな……)
真佑子「あの、宮永さん……?」
咲「はい?」
真佑子「その……良かったら、一緒に試合を見れたら…って」
咲「え?」
真佑子「あ、すみません!ダメなら良いんですっ」
咲「……」
咲「いや、隣の席で、しかも結構会話をしてしまった多治比さんを無視して、1人観戦するほど、私も嫌な人ではありませんよ」
264: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/13(火) 01:22:19.06 ID:G8iCWYE60
多治比「……へ?」
真佑子(えっ、つ、つまりどういう事?)
咲「ほら、始まりますよ」
真佑子(……良いって事かな…?)
真佑子「……」
真佑子「よろしくお願いします…」フカブカ
咲「……」ジーッ
真佑子「な、何…?」
咲「……多治比さん、やっぱり似てますね…玄さんに」クスクス
真佑子「だから誰ですか…!?」
~試合開始~
宮永咲と多治比真佑子・続く(?)
_______________
_______________
269: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/13(火) 06:18:36.90 ID:D7zmk+W9O
こういうのを現地嫁っていうんだよな、たしか
270: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/13(火) 07:01:59.18 ID:tCB7hWeAO
そんな多治比さんは二年生だったりする
271: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/13(火) 16:05:48.45 ID:G8iCWYE60
げっ……本当だ。多治比さんは三年生だと、何故か思い込んでました、すみません。
この世界の多治比さんは三年生という事で一つよろしくお願いします……っ
290: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/16(金) 20:18:45.47 ID:uHLLLHzW0
【インハイ期間中・ある時】
~会場外、ベンチ~
咲「……」ペラ
咲「……」ペラペラ
咲「……」
咲「……ふぁ…」アクビ
咲「……」ウトウト
咲「!!」ハッ
咲「……」ゴシゴシ
咲「……眠い…」
291: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/16(金) 20:19:59.29 ID:uHLLLHzW0
咲「……」ペラ
咲「……」ペラペラ
プルルルルル プルルルルル
咲「!!」
咲「電話……」つ ケータイ
咲「……健夜さん、やっとか」つ ケータイ
ピッ
咲「もしもし、咲です」
健夜『あ……もしもし、咲ちゃん…?』
咲「はい」
292: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/16(金) 20:21:30.34 ID:uHLLLHzW0
健夜『ごめんね?遅くなっちゃって』
咲「本当にですよ」
咲「急な打ち合わせが入ったーって言って会場に戻ってから、何分経ちましたっけ?」
健夜『うっ…ごめん…』
咲「……まあ、お仕事ですのでそこまで気にはしていませんけど」
健夜『……』
咲「あの?それで、電話を掛けたという事は、終わったって事です?」
健夜『そ、それがぁ……えっとぉ…』
293: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/16(金) 20:22:28.47 ID:uHLLLHzW0
健夜『あの……その、ね?』
咲「……長引きそうですか」
健夜『ほんっっっとうにゴメン!!』
咲「やっぱり」ハァ
健夜『思ったより大変で……結構手間取ってて…』
健夜『夕方位までかかりそう……かも』
咲「別に、良いですよ。私だってもう子供じゃ無いんですから」
咲「先にホテルに戻ってます」
健夜『うぅ…ごめんね?』
咲「気にしていませんって」
咲「誕生日の日に、どうしても外せない仕事があると、私を一人残してお父さんが仕事へ行ってしまったあの日以来……」
咲「こういう系には慣れましたから」
健夜『いやホントにごめんね!?』
294: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/16(金) 20:23:31.39 ID:uHLLLHzW0
咲「まあ、今の話は嘘なんですけどね」
健夜『なんでそんな暗い嘘吐くの!?凄く申し訳なくなったよ!!』
咲「あはは、健夜さん面白いです」
咲「とにかく、私の事は気にせずお仕事頑張ってください」
健夜『……思ってたんだけど、咲ちゃんってお仕事絡むと妙に心が広くなるね』
咲「それは、まあ」
咲「健夜さんの唯一の取り柄" 収入がある事"を奪ってしまえば、ただの独身アラサー家事ダメダメ麻雀狂になってしまいますからね」
咲「そこはほら、心を広く持つべきかなって」
健夜『後半は言わなくても良かったよ……』ズーン
295: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/16(金) 20:26:11.23 ID:uHLLLHzW0
咲「安心してください。私はそんな健夜さんでも大丈夫ですので」
健夜『……うん?それ、どういう…』
咲「ほら、私と電話をしてる暇があるなら打ち合わせしてきてください」
咲「恒子さん……でしたっけ?が、怒っちゃいますよ」
健夜『そうだった!』
健夜『それじゃあ、本当にごめんね!また掛けるから』
咲「はい。では、また」
健夜『うんっ』
ピッ
ツー ツー ツー
296: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/16(金) 20:28:39.48 ID:uHLLLHzW0
咲「……」
咲「さて……」スッ
咲「私の座っていたベンチは、しっかりとホテルへの道筋を覚えたベンチだったはず……」キョロキョロ
咲「……健夜さんがお仕事だって言うから言い出せたなかったんだけど…」
咲「……」
咲「ここ、どこ?」アセアセ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
297: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/16(金) 20:29:50.61 ID:uHLLLHzW0
【会場外・どこかのベンチ】
咲「なんで座って、本読んで、電話してただけなのに、見知らぬベンチにテレポーテーションしてるんだろう?」
咲「そんな超能力者になった覚えは無いよ…」
咲「…いや……近くの自販機で飲み物も買いに行ったな…」
咲「……」
咲「それが原因か……」ガクリ
咲「はぁ…どうしてそんな短距離で……」
咲「まあ、嘆いてても仕方ないよね…」
咲「案外、その辺を歩いてれば知った道に出るかもだし」
298: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/16(金) 20:32:08.11 ID:uHLLLHzW0
咲「……よし、物は試しだね」スッ
咲「これで無事ホテルに帰れたら、健夜さんに報告を……」ピクッ
咲「……?」フリカエリ
咲「……」
咲「誰ですか?」
「わ、私の事見えるっすか!?」ビクッ
咲「やっぱり居た……。いえ、見えません」
咲「今のはハッタリ。気配を感じたので、適当に言ったまでです」
「なっ……!まんまと嵌められたっす……」
299: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/16(金) 20:35:21.07 ID:uHLLLHzW0
咲「で、誰ですか?」
「……」ススス
桃子「失礼したっす。私は東横桃子、高校1年っす」
咲「ひうっ……!!」ビクッ
桃子「?どうしたっすか?」
咲「い、いえ……何でもありません」
咲(急に出てくるからちょっと怖かった……)
咲「それで、私に何か用でしょうか?」
301: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/16(金) 20:39:50.29 ID:uHLLLHzW0
桃子「いやぁ…私、長野からインハイを観戦に来てるんすけど、ちょっと散歩してたら迷子になってて」
咲(長野……)
桃子「どうしたもんか!……って思ってた時に、丁度あなたを見つけたんすよ」
咲「はあ……つまり、現在地がどこなのか教えて欲しいと…」
桃子「察しが良いっすね」
咲「私も迷子なんですけど、大丈夫ですか?」
桃子「……え」
咲「私も、迷子ですよ?」
桃子「……それは失礼をしたっす…」
咲「……いえ…」
302: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/16(金) 20:44:25.63 ID:uHLLLHzW0
桃子「……」
咲「……」
桃子(き、ききききき気まずいっす!)
桃子(私服だったから、てっきりこの辺の子かと思ってたら、とんだ大間違いだったっす)
桃子(うぅ……先輩…助けてくださいっす)
咲「それでは、さようなら」テクテク
桃子「へっ!?ま、待ってくださいっす!」ガシッ
咲「なんですか、東横さん」
桃子「展開が早すぎて着いていけないんすけど!」
咲「別に着いて来なくても良いと思うんですけど?」
桃子「ダメっすダメっす!とにかく待ってくださいっす!」ワーワー
咲(何なのこの人……)
303: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/16(金) 20:47:45.77 ID:uHLLLHzW0
咲「良いですか?東横さんは迷子、そして私も迷子」
咲「でも、お互い帰る場所は違うんです」
咲「……ね?」
桃子「ね?……じゃないっす!」
桃子「とりあえず、行くというなら私も着いていくっす」
咲「どうしてですか」
桃子「本能が告げてるっす。この子について行けと!」
咲「意味が分かりませんよ」
桃子「おーねーがーいーっすー!」ギュー
咲「ちょっ……しがみつかないでください」
桃子「むーむーむー!」ギューッ
304: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/16(金) 20:53:46.85 ID:uHLLLHzW0
咲「……はあ」
咲「……まあ良いです。好きにしてください」
桃子「ほんとっすか?」
咲「はい。私も、1人では少し不安かなと思いましたので……」
咲「よろしくお願いします、東横さん」ニコリ
桃子「……ツンデレっすか」
咲「??」キョトン
桃子「~~~~ッッッ!!」
桃子(な、なんすかこの子!!)
桃子(物凄く庇護欲を掻き立てられるっす!)
305: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/16(金) 21:08:39.05 ID:uHLLLHzW0
咲「あ、私は宮永咲です」
桃子「ふむ……咲ちゃんっすね」
咲「咲ちゃ……まあいいか」メンドクサイ
咲(さて、ホテルに戻れるかな……)
桃子(迷子になる様な子っすから、しっかり見ておかないと不安っすね……)
桃子「咲ちゃん、迷子にならない様に手でも繋ぐっすか」
咲「迷子中にそんな事言われても……」
咲「というか、東横さんも迷子になってた癖に」
桃子「あ、そうだったっす」アハハ
咲(大丈夫かなこの人……)
【長野編・開始】
_______________
______________________________
_____________________________________________
315: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 13:37:48.33 ID:n6XgJdLf0
【宮永咲と東横桃子】
桃子「そういえば、咲ちゃんはどうして迷子になってたんすか?」
咲「分かりません」
桃子「へぇ~……」
桃子「……ん?」
桃子「分かりませんってどういう事っすか」
咲「そのままの意味ですけど……」
咲「初めはA地点のベンチに座っていたんですけど、自販機に行って戻ってきたら、謎のベンチXに座っていました」
咲「そして迷子です」
316: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 13:38:56.09 ID:n6XgJdLf0
桃子「……意味不明っす」
咲「ですから、そう言いました」
桃子「まさか、頻繁にこういう目に遭ってたりするんすか?」
咲「ええ、まあ」
咲「けど、今回みたいに全く知らない場所に居たのは初めてですかね」
桃子「は、波乱万丈な人生っすね……」
咲「幸運な事に、すぐに見つけてくれる人が居るので助かってますけどね」
咲「……というか、東横さんには及ばないと思いますよ」
317: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 13:40:39.53 ID:n6XgJdLf0
桃子「……え?」
咲「先程から、少しでも東横さんから意識を逸らすと、姿が確認できなくなります」チラ
桃子「あぁ……」
桃子「やっぱり、咲ちゃんでもそうだったっすかぁ」
桃子「わりと普通に話してくれるから、もう完璧に見えてるかと思ってたんすけどね…」アハハ
咲「……」
咲「……後輩の子と、少し前にこんな話をしました」
____________
______________
318: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 13:41:55.03 ID:n6XgJdLf0
マホ「先輩先輩、聞いてください!」
咲「どうしたのマホちゃん?」
マホ「マホ、色んな県のインターハイ予選決勝を見直してたんですけど、凄く不思議な人がいました!」
咲「神代小蒔とか荒川憩?」
マホ「いえ!そういう有名な方ではなくて、もっとマイナーっぽい方です!」
咲「へー?」
咲「それで、不思議って?」
マホ「えっとですね、神代小蒔さん園城寺怜さんに続いて、マホがコピー出来なさそうな人が居たんです!」
咲「!!」
319: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 13:43:29.89 ID:n6XgJdLf0
マホ「あ、興味出てきましたか?」
咲「……マホちゃんがコピー出来ない条件は2つ」
咲「園城寺怜の様なまだ不完全な能力……全てを見せていない能力か、神代小蒔の様に、特別な何かを対価にしている能力」
マホ「はい!その方は、完全に後者でした!」
咲「……名前と、能力は?」
マホ「名前は……フルネームは忘れちゃいましたけど、モモさん?だった気がしますです」
マホ「そして能力は……」
マホ「卓上で消える、です」
_______________
_______________
320: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 13:49:55.57 ID:n6XgJdLf0
咲「ずっと存在が朧気な東横さんを見ていて、今その話を思い出しました」
桃子「コピーって……後輩さんどんな魔物っすか」
咲「後輩の子から話を聞いた時は半信半疑でしたが……」チラ
咲(卓上の上で消える、そして何かを対価として払っている……まさかとは思ってたけど、本当に見えなくなるのか)
咲(…これは面白いな……この人なら、昔の私の±0でも止められたかもしれない)
桃子「咲ちゃん?見えてるっすか?」
咲「あ、すみません。見えてます」
咲(面白いなんて思ったらいけないね……反省)
321: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 13:52:51.70 ID:n6XgJdLf0
咲(けど、後天的な私の±0と違って、東横さんのほぼ元からの体質を改善するのは……)
咲「……」
桃子「咲ちゃん、見えてるなら黙らないで欲しいっす!」
桃子「……見えなくなったんじゃって、ちょっと怖いっすから」ギュゥ
咲「……東横さんは、他人から認識されたいんですよね?」
桃子「それは、まあ、そうっすけど……今は、最悪部活の先輩にだけ見てもらえれば良いかなって思ってるっす!」
咲「……それは、このままでは難しくなるでしょうね」
桃子「……え」
咲「少なくとも、麻雀でその力を使い続けては、いずれ誰からも認識されなくなる……なんて事に繋がる可能性があります」
322: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 13:56:02.00 ID:n6XgJdLf0
桃子「これは私の元からの体質っすよ?麻雀は関係ないんじゃ……」
咲「私の想像ですが、麻雀の試合中……自分以外も、対局相手の認識から外していますね?」
桃子「私以外……?」
咲「例えば、そう」
咲「捨牌、とか」
桃子「!!」ピクッ
咲「当たりみたいですね。……そうでないと相手をフリテンにしたり、リーチに無警戒にさせたり出来ないですから」
咲「原村和クラスの超デジタルなら、卓上限定でなら見る事はできるでしょうけど」
桃子「それが、さっきの話とどう繋がるんすか……?」
323: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 14:02:12.56 ID:n6XgJdLf0
咲「良いですか?卓上での貴方は、自分だけでなく捨牌など、自分が触れる物までも不可視にしている」
咲「本来なら、他人が可視出来るものを、不可視化しているんです」
咲「それはつまり、その体質を能力へと昇華させて利用しているという事」
桃子「それは……そうっすね」
咲「……結論を言います」
咲「卓上で、ステルスが能力として使われて練度が上がる度に、本来の存在感が薄いという、その体質までもが大きくなっていくんです」
咲「麻雀でステルスを能力として使えば使うほど、日常での存在感の薄さも極まっていく」
324: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 14:03:03.69 ID:n6XgJdLf0
桃子「そ、そんな事……」
咲「無い、と言い切れますか?」
咲「有り得ない、そう思って続けていたらある日突然、何をしても誰にも気付いてもらえない……そんな状況に陥る可能性だってあります」
桃子「それなら、兆候が出た時点でやめるっすよ!」
咲「兆候?」
咲「100%のステルスが120%になっていたとして、東横さん自身は果たしてその兆候に気付けますかね?」
咲「……それに、呪われる前に止めれば良いなんて考え、馬鹿です」
桃子「……」
咲「……」
咲「……」ハァ
325: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 14:14:22.79 ID:n6XgJdLf0
咲「少し、我慢してくださいね」ギュッ
桃子「え、ちょ、咲ちゃん…?////」タジッ
咲「……」ゴッッッッッッッッッッッッ
桃子「…ぅっっ……!?」ビクッ
桃子(な、なんすかコレ……ッッ!)プルブル
咲「……」スッ
桃子「あ……」ハァハァ
咲「ねえアナタ、ちょっと良い?」
少女「ん、お姉ちゃん、なにー?」
326: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 14:20:32.15 ID:n6XgJdLf0
咲「お姉ちゃんの隣で立ってる人、どう思うかな?」
少女「うーん……お姉ちゃんじゃなくて、隣の?」
咲「うん、そうだよ」
少女「隣の~……」
桃子「咲ちゃん…?何もしてない状態の私を、こんな子が見える訳」
少女「とってもかわいい!」
桃子「ない…………えっ?」
327: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 14:22:27.40 ID:n6XgJdLf0
咲「そっかそっか。ありがとうね」ナデナデ
少女「えへへ、うんっ!」ニヘラー
少女「じゃあ、ばいばい!」フリフリ
咲「うん、ばいばいっ」フリフリ
咲「……」フゥ
咲「……これは応急処置と言うか、アレです」
咲「私と行動している時に、完璧に消えられてしまっては私も後味最悪なので」
咲「ついでに、ずっと袖を握られているのも落ち着きませんし」
328: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 14:52:55.99 ID:n6XgJdLf0
桃子「ど、どどどどどどういう事っすか咲ちゃん!!?」
咲「私が出せるありったけを、東横さんの周りに撒き散らしました」
桃子「ありったけってなんすか!?物凄くおぞましい物が身体に入ってきた気がするんすけど!!」
咲「これで、暫くは少し影が薄い程度になると思います」
咲「……と言っても、東横さんが自ら存在を消そうとしてしまえば、すぐさま雲散霧消して見えなくなってしまいますが」
桃子「無視っすか!なんか、展開速過ぎてまたもや着いていけないっす……」
咲(ありったけの殺気を当てたのに、まだ若干薄いなんて……これ、本当にヤバかったんじゃないの?)
咲「余計なお世話だったかもしれませんが、せめて私といる時は見えるままで居てくださいね」
咲(上手くやれば、自由自在にステルスのON/OFFが出来るようになるかも……)
咲(いや、それは危険かな)
329: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 14:54:33.92 ID:n6XgJdLf0
桃子「驚いたっす……というか、何か辛いことを言われてた気がするんすけど、結論は私のことが心配!……って事っすよね?」
桃子「だから、このドス黒いオーラで何とかしてくれようとしてるんすよね?」
咲「いや、別に心配なんて……」
桃子「咲ちゃんは最高っす!!大好きっす!!
」ムギュー
咲「うわわっ!ちょっと、だから急に…」
桃子「ありがとう」
咲「……」
桃子「私は、元から影が薄くて、他人との交流を切り捨てて……気が付いたらこんな風になってたんすよね」ギュゥ
桃子「後戻りなんて、出来ないと思ってたし……誰も、私の体質を解決しようとは言わなかったっす」
桃子「もう諦めてたから、何とも思わなかったけど……こうやって、認識される様になるのも、やっぱり良い物っす!」
330: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 14:57:31.73 ID:n6XgJdLf0
咲「……この前、同じような人と出会って、同じような事があっただけなので、気が向いただけです」
咲「……なので、勘違いしないで下さい」フイッ
桃子「同じようなっすか?」
咲「その話はいいです」
咲「……良いですか?これは、私と約束してください」
咲「別に、麻雀で体質を活かそうと、何に使おうと構いません」
咲「……ただ、見えないのが当たり前。だから仕方ない」
咲「そんな考えは、捨ててください。その体質をそれ以上受け入れれば、それはもう受け入れではなく、乗っ取り」
咲「自分の意思とは関係なく……体質が、本質に変わってしまう可能性がありますから」
桃子「……分かったっす」グッ
咲「それでは、行きましょうか」テクテク
桃子「はいっす!!」ギュー
331: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 15:02:58.01 ID:n6XgJdLf0
咲「……腕を組まないでください」グググ
桃子「照れてるんすか?」ニヤ
咲「暑いんですよ」
桃子「ふふっ、咲ちゃん可愛いっす」クスクス
咲「……はぁ」タメイキ
桃子「~~♪」
咲「……」
咲(……そう、体質を受け入れて…諦めたら、ダメ)
咲(いつか、そんな物壊して…近くに居てくれる人が現れる)
咲「……そうですよね」クス
____________
_______________________
______________________________________
332: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 15:07:17.80 ID:n6XgJdLf0
【会場・どこか】
健夜「くしゅんっ!」
健夜「うう…」ズズ
恒子「すこやん風邪ー?大丈夫か!」
健夜「大丈夫だよ。……誰かに噂されてるのかも」
健夜(それか咲ちゃんが悪態ついてるか……)クスクス
恒子「すこやんの悪口なんて、すこやんに聞かれたら命が無いのに良くやるね!」
健夜「悪口確定!?」プンスカ
恒子「なはは、じょーだんじょーだん!」
健夜「ほら、馬鹿なこと言ってないで早く打ち合わせ終わらすよ?」
恒子「へーい」
健夜「まったくもう……」ハァ
健夜(……咲ちゃん、何やってるかな)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
334: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 15:54:27.32 ID:n6XgJdLf0
桃子「へぇ、それじゃあ部活の先生と後輩さんと3人で観戦に来てるんすか」フムフム
咲「はい」
桃子「私の地元の長野にも、めちゃくちゃ強い人が何人かいるんすけど」
桃子「さっきの咲ちゃん並のヤバいオーラは中々いないっすね~」
咲「そういえば、長野から来たと言っていましたね」
桃子「っすよー」
桃子「インハイに出場した清澄高校の応援をしに、予選決勝進出高校がほぼ全員東京に来てるっす」
咲「は?何ですかそれ……敵同士ですよね?」
咲(そういえば、衣ちゃんも清澄と仲良さげだったな)
335: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 15:57:11.14 ID:n6XgJdLf0
桃子「敵同士っすけど、4校一緒に合宿したりしてて、結構仲良いんすよねー」
桃子「特に、清澄の部長がそういう事考えるの得意みたいで」
桃子「竹井って人なんすけどね」
咲「いや、聞いてませんし……」
桃子「まあそんな訳で、皆顔見知りなんすよ」
咲「ふーん……そういう物なんですね」
桃子「あ、咲ちゃん!そこでアイス売ってるっすよ!」ワァイ
咲「本当ですね」
咲「私はここで待ってるので、食べたければ買ってきても良いですよ」
337: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 16:02:15.83 ID:n6XgJdLf0
桃子「え~、一緒に行かないんすかー?」ムー
咲「丁度ここ日陰なので、待ってますよ」
桃子「ぶーぶー!それじゃあ、一人で行ってくるっすよーだ」ベー
咲「はいはい、行ってらっしゃいです」
桃子「むー……」スタスタ
咲(なんで怒ってるの……)ハァ
咲「……」キョロキョロ
咲(それにしても、結構歩いてるけど……全然知った道に出ないな)
338: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 16:04:03.20 ID:n6XgJdLf0
咲(これは、ちょっと恥ずかしいけど健夜さんに電話して何とかしてもらうしか……)
桃子「とう!」ピタッ
咲「ひゃっ!?」ビクッ
桃子「あははっ、大成功っす!」 つアイス
咲「……」
桃子「必殺、ちょいステルス攻撃っす!」ドヤッ
咲「……冷たいですよ?」ゴゴゴゴゴ
桃子「あ、ちょ、ストップ!ストップっす!」
桃子「そのエグいのはもう喰らいたくないっす!」アセアセ
咲「ごめんなさいは?」ゴゴゴゴゴ
桃子「この通りっす!」ペコペコ
339: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 16:05:36.31 ID:n6XgJdLf0
咲「……はぁ、全く」
桃子「……中々可愛い声も出せるんすね…」ボソ
咲「はい?何か言いました?」
桃子「何でもないっす!」
桃子「それと、はいこれどうぞっす!」つアイス
咲「??」キョトン
桃子「咲ちゃんに一つあげるっすよ。2つ買うとお得セール中だったっすから!」
咲「いや、悪いですよ」
桃子「受け取らない方が悪いと思うっす!私1人で二つも食べられないっすよ」ホレホレ
340: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 16:06:53.85 ID:n6XgJdLf0
咲「……なら、有り難く頂きますね」
桃子「どぞどぞ!」
咲「あ、ミカン味ですね」つ アイス
桃子「ゴーヤ味と迷ったんすけど、夏っすしミカンかなって」
咲「夏だからって理由以前の問題でしょうそれは……なんですか、ゴーヤって」ペロ
咲「あ、美味しい」ペロペロ
桃子「想像が付かないっすね~逆に気になるっす」
咲「ならないよ……」ハァ
341: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 16:11:40.63 ID:n6XgJdLf0
桃子「……」ジーッ
咲「……」ペロ
桃子「スキありっす!」パクッ
咲「あ……」
桃子「うんうん、咲ちゃんの方も美味しいっすね!」
咲「……いや、同じ味じゃないですか」
桃子「あははっ、違いないっすけどね~」
咲「……」
咲「……」ゴッッッッッッッッッッッッ
桃子「ひぇっ!?」ビクッ
咲「隙あり、です」パクリ
咲「んー」ペロリ
咲「やっぱり同じ味ですかね」
342: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 16:14:11.72 ID:n6XgJdLf0
桃子「ちょっと!今のは隙ありじゃなくて、隙を作らされた形なんすけど!?」
咲「ふふっ、隙は隙です」クスクス
桃子「もう怒ったっすよー!」
咲「あはは……」ドンッ
咲「あぅ……あ、すみません、よそ見をしていて…」
「いや、こちらこそ申し訳ない。不注意だった」
桃子「咲ちゃー…………ん?」
桃子「先輩!!!」
ゆみ「モモ!!やっと見つけた、探したぞ」
343: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 16:15:49.25 ID:n6XgJdLf0
桃子「ごめんなさい……散歩してたらいつの間にか迷子状態だったっす」
ゆみ「いや、無事見つかって良かったさ。蒲原達もあちこち探しているだろうから、安心させてやらなきゃな」
桃子「そんな大事だったんすか!?…それは申し訳ない事をしたっす」
ゆみ「いや、大丈夫さ」
咲「東横さんの先輩ですか?」
桃子「あ!そうっす!私の高校の先輩っすよ!」
ゆみ「おっと、すまない。私達だけで話をしてしまった」
ゆみ「私は加治木ゆみ、モモの先輩だ」
咲「……へぇ」ジーッ
344: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 16:17:44.59 ID:n6XgJdLf0
ゆみ「な、なんだ?」
咲「いえ、別に……」
咲「加治木さん、ですね。覚えました」ニコリ
桃子「むっ……」
桃子「この子は私の迷子仲間の宮永咲ちゃんっす!ここまで一緒に来てくれたんすよ!」
ゆみ「迷子仲間……?って事は、宮永さんも迷子なのか?」
桃子「そうなんすよ!」
咲「なんで東横さんが答えてるの……」
桃子「えー?良くないっすか?」
咲「別にいいけどさ」
ゆみ「うん……?そういえば、今はモモがよく見えるな」
桃子「そうそう!それも聞いてくださいっす先輩!」
桃子「実はっすね……」
_______________
______________________________
_____________________________________________
345: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 16:21:44.48 ID:n6XgJdLf0
ゆみ「驚いたな……」
桃子「私も最初はビックリ仰天だったっす」
咲「……」
咲「実際に体験した東横さんは別として、加治木さんは今の話を信じるんですね」
ゆみ「ああ、信じざるを得ないだろう。実際に、私もモモの存在が強くなったと実感しているし、通行人も認識しているようだしな」
咲「そうですか」
ゆみ「それで咲、今の話を含めての提案なんだが聞いてくれるだろうか?」
咲「提案?」
桃子「呼び捨て!!」ガーン
ゆみ「聞いた話では、咲を一人で歩かせるのは危険だと思うんだ」
咲(会って数分でこんな事言われる私って……)
咲「まあはい、そうですね」
346: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 16:27:04.47 ID:n6XgJdLf0
咲「ですが、東横さんはもう加治木さんと会えましたので、私に付き合う必要はありませんよ」
ゆみ「それなんだが、咲」
ゆみ「改めてお礼もしたいし、私達が泊まっている宿まで来てはくれないだろうか?」
咲「はい?」
桃子「ナイスアイディアっすよ先輩!!」
咲「いや、おかしいでしょう……」
ゆみ「迎えに来れる部活の先生と言うのも、来られるのは夕方なんだろう?」
ゆみ「それなら、居場所がはっきり分かる所にいた方が良いと思うんだが」
咲「それは、まあそうかもですね」
347: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/18(日) 16:32:21.59 ID:n6XgJdLf0
ゆみ「今は、鶴賀以外の高校の選手も来ている。雀卓も複数台ある事だし、麻雀も打てる」
ゆみ「どうだろうか?」
咲「……」カンガエ
咲「……それなら、お世話になります」
桃子「やったっす!!」ギューッ
咲「暑いから離れて……」グイグイ
桃子「あははっ、ほら早く行くっすよ!」
咲「ちょ、引っ張らないで」ズルズル
ゆみ「ははっ、モモが同年代の友達と仲良くしているのを見ると嬉しくなるな……」
ゆみ「っておい、そっちは逆だぞ!また迷子になる気か」タッタッタ
咲(長野の高校が来てるって事は……)
~宮永咲と東横桃子、カン~
365: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:22:29.78 ID:xlk7mu3w0
【閑話・宮永咲と……】
~咲、中学3年生・春~
「起立、さようならー」
「「「さよならー」」」
サヨナラー ウワ、ブカツダル... カエリニドッカイコ-
センセーアシタノホシュウッテ オミセシヨウオウジャノ
ザワザワ ガヤガヤ
咲(ふぅ……今日も終わった…)
366: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:23:22.34 ID:xlk7mu3w0
生徒A「咲ちゃん、今日こそ一緒に帰らないかい!!」シュバッ
咲「わわっ…」ビク
咲「あ…すみません、今日も部活です……」
生徒A「うわぁぁぁぁん!今日もフラれたぁ!」グスン
生徒A「でも、私は諦めない!諦めたらそこで試合終了だからねっ!」フンス
咲「えっと……」オロ
生徒B「はいはい、宮永さん困ってるから……今日も私で我慢してくださいねー」ズルズル
生徒A「ちょっ、お前はもう飽きたのー!今日は咲ちゃんと帰るー!」ジタバタ
生徒B「飽きたってなんだ飽きたって!!」
367: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:25:10.83 ID:xlk7mu3w0
生徒B「ごめんね宮永さん。でも、私もたまにでいいから一緒に帰ってみたい……かも」チラ
生徒A「私を無視して咲ちゃんを口説くなー!!」ムカー
生徒B「なーんてね、また明日!」フリフリ
咲「は、はい。その、また明日、です」フリフリ
生徒B「うんっ」ニコ
生徒A「うわぁぁぁ!!咲ちゃん好きだぁぁぁぁ!明日こそ、明日こそぉぉ!」ズルズル
生徒B「うっさい!」ベチン
生徒A「きゅぅ……」バタン
咲(行っちゃった……)
368: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:26:27.04 ID:xlk7mu3w0
咲「……」フゥ
咲(最近いっつも帰りに誘ってくれてるのに、断って申し訳ないな……)ハァ
咲「……」
咲「さて、と」スッ
咲「……部室向かお」テクテク
______________
______________________________
_____________________________________________
369: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:27:30.33 ID:xlk7mu3w0
~本校舎内・とある廊下~
キャーキャー ワイワイ
スイエイブドウデスカー テニスブイイデスヨー
咲「なんだか学校が賑やかだと思ったら……もうそんな時期か」チラ
咲「部員勧誘……」
二年生徒「そこのあなた!是非吹奏楽部へ!」つ チラシ
咲「……」キョロ
咲「……え、私?」
二年生徒「うんうん!」
咲「……」
咲「……私、3年生だけど」
370: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:28:19.36 ID:xlk7mu3w0
二年生徒「へっ……先輩!?ほんとだ…」
二年生徒「ご、ごめんなさいっっ!」ペコペコ
咲「ううん、気にしないで」ニコリ
二年生徒「/////すみませんっ、失礼しますっ!」テレ
咲「……」
咲「……はぁ」
咲(去年も一年生と間違われたんだよね……リボンの色を見て欲しいよ、全く!)プンスカ
咲「……」テクテク
咲「……ん?」チラッ
「あぅぅ……」
「ひうっ……!」ビクビク
咲(新入生かな……)
371: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:29:08.40 ID:xlk7mu3w0
「ひえぇぇ……」オロオロ
咲「……」
咲「あの、大丈夫?」
「へっ……」
咲「この辺、今の時期は人がいっぱいだから、苦手ならしばらくはあんまり寄らない方が良いよ?」
「え、えっと……その……」オロオロ
咲(……仕方ないか)
咲「……付いてきて?」ギュッ
「ぁ……(手握って…)」ドキッ
咲(あぁ……部室が遠のくよ)ハァ
_______________
______________________________
_____________________________________________
372: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:30:09.08 ID:xlk7mu3w0
~本校舎内・昇降口~
咲「ここまで来たら、もう大丈夫だと思うから」
咲「次からは、西側の階段から降りてくると良いよ?」
咲「ちょっと遠回りになっちゃうけどね」
「あ、ありがとうございました!」
咲「うん。それじゃあ私はこれで」スタスタ
「……」
「あ、あのっ!」
咲「うん?」フリカエリ
「あっ……えっと…」モジモジ
咲「??」
373: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:31:02.91 ID:xlk7mu3w0
「お、お名前を、教えてくださいっ!」
咲「名前……私の?」
「だ、ダメなら良いんですごめんなさいですっ!」ペコペコ
咲(小動物みたいな子だなぁ……)
咲「……」
「だ、ダメですよねっすみませ」
咲「宮永咲、だよ」
「えっ?」
咲「それじゃ、さよなら」ニコリ
「あっ…」
374: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:31:58.95 ID:xlk7mu3w0
咲(懐かしいなぁ…1年の時、私もあのバカ先輩にこうやって……)
咲(……いや、あの時は無理やり困ってる事にされて無理やり連れ出されて、無理やり名前を覚えさせられたんだっけ)
咲「……」
咲(あの人、元気かなぁ)
(行っちゃいました……)ボーッ
「宮永咲、先輩……」
「恰好いい人でした……」
「……/////」カァ
_______________
______________________________
_____________________________________________
375: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:33:04.94 ID:xlk7mu3w0
~旧校舎・麻雀部部室~
咲「……」ペラ
健夜「……」ペラ
咲「……」ペラペラ
健夜「……」ペラ
咲「……健夜さん、私そろそろ上巻読み終わります」ペラ
健夜「え、私まだ全然進んでないよ?」
咲「……」ペラ
咲「は?……冗談やめて下さい、こうして読書タイムが始まって、もう1時間ですよ」
健夜「咲ちゃんは読書に慣れてるから早いんだよー」
咲「はぁ……」パタン
健夜「あれ、読んじゃわないの?」
咲「私、上巻が終わったあとはすぐに下巻読みたいタイプなので」
咲「健夜さんが読み終わるまで待ってます」
376: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:34:56.67 ID:xlk7mu3w0
健夜「えぇ……何だか悪いよ」
咲「別に、何週間掛かっても良いですよ」スッ
健夜「さすがにそんなには掛からないよ!?」
咲「どうだか」
咲「私は暇なので、ねっとまーじゃんでもやってます」
健夜「あ、パソコンの電源の入れ方分かる?」
咲「失礼ですね……もうこの前みたいに、初期化とかはさせませんよ」フンス
健夜「そ、そっか(不安だ)」
健夜「それにしても珍しいね、咲ちゃんがネトマなんて」
健夜「初めてじゃない?実際にやるのは」
377: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:36:20.46 ID:xlk7mu3w0
咲「そうですね。前々から健夜さんがやってるのを見てて、興味はありましたけど……」タドタド
咲「はい、ここからどうやってやるんです?」つ 画面
健夜「おお…よくそこの画面までいけたね?」
咲「馬鹿にしてます……?ちゃんと、健夜さんがやってる時に見て覚えたんです」
健夜「さすがに適応力は高い……」
咲「ほら、早く次に進めてください」
健夜「えっと、自分のアカウント作る?」
咲「あかうんと?」キョトン
健夜「あ~……」ウーン
健夜「ネトマのパスポート、みたいな!」
378: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:38:07.61 ID:xlk7mu3w0
咲「ねっとまーじゃんやるのにパスポートが必要なんですか?」
咲「凄く国際的なんですね……」オドロキ
健夜「違うよ咲ちゃん!例えだから!パスポート" みたいな "物だから!」
咲「うーん?」
咲「……よく分からないので健夜さんのでやりたいです」
健夜(健夜さんのでやりたい……)
健夜「……」
健夜(可愛い)
咲「あの、聞こえてます?」オーイ
健夜「あ、うん。分かったよ」カチカチ
健夜「パスワードは……"common sense"っと」カタカタ
咲「……常識、ですか?」
健夜「あっ、そ、そこは気にしなくて良いから!」アセアセ
379: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:39:22.97 ID:xlk7mu3w0
健夜「三麻、東風、半荘何でも出来るけど、どれやりたい?」つ 画面
咲「改めて、こんな機械でこんなに色々出来るのは凄いですよね……」スゴイ
健夜(可愛いなぁ……)
咲「まあでも、普通に半荘戦で良いですよ」
健夜「ん、分かったよ」カタカタ
健夜(フリー卓で良いかな……色んなレートの人来ちゃうけど、マナーは良いし)クリック
咲「対局相手を探していますって出てますね」
健夜「平日のこの時間だし、人は少ないかもね」
咲「放課後の部活時間、すぐ近くにリアルな雀卓があるのにネット麻雀をやる私達」
咲「よくこの部活潰されませんね……さすが、健夜さんの権力」
健夜「何か嫌な言い方だよそれ……」
380: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:40:30.36 ID:xlk7mu3w0
健夜「あ、人集まったね。ここからは、分かる?」
咲「はい、大丈夫です。やり方とかは覚えてますので」
健夜「ん、分かったよ」
健夜「それじゃあ、私は続き読んでるから」つ本
咲「はーい」カチカチ
健夜「……頑張って、咲ちゃん」グッ
健夜(咲ちゃん、ネトマは弱いだろうなぁ……)
_______________
______________________________
_____________________________________________
381: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:43:50.39 ID:xlk7mu3w0
~数分後~
咲「あぁぁ……負けたぁ…」カチカチ
咲「何この"のどっち"って人……強すぎるでしょ…」グテー
咲「絶対ズルしてる……こういうの何て言うんだっけ……動物みたいな名前…」
咲「ちーたーだっけ?絶対それだよ、ライオンになれないチーターはズルして悪い事をするもんね…」
咲「……いや、意味が分からないか今のは」
健夜「あ、終わったの?」
咲「はい、取り敢えずは」
健夜「お疲れ様。結果は……」チラ
健夜「惨敗だね」クスクス
382: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:44:52.80 ID:xlk7mu3w0
咲「だって、ネット麻雀だと何も見えないんですもん」
咲「というか見えない以前に、色々と悪運が続きすぎます」
咲「牌が言うこと聞いてくれないって言うか……分かります?」
健夜「あはは、私も始めはボロボロだったなぁ」
健夜「オカルト持ちがデジタルな事をやると、どうにも合わないみたいだね」
咲「それにしたって、5回くらい連続で同じ人に振込みですよ?」
咲「ネット麻雀って怖い……」トラウマ
健夜「んー相手はどんな人…………」チラ
健夜「……」
健夜「え!?」
咲「なんですか。画面に映った自分の顔にシワが増えてましたか」
咲「大丈夫です、いつもの健夜さんですよ」
健夜「違うよ!?急にどうしたの!?」ガーン
健夜「……ほら、この咲ちゃんが振込みまくった"のどっち"」
383: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:46:24.77 ID:xlk7mu3w0
咲「あぁ、天使みたいで可愛いキャラクターですね」
健夜「この人、ネトマ界でプログラムなんじゃないかって言われるほどのプレイヤーだよ」
咲「そんなに?……確かに、牌効率とかは気持ち悪いくらいに完璧でしたけど」
咲(チーターじゃなくてライオンさんだったね)
咲「でも、そんな人だったらとっくにリアルで名前が知れてるハズでは?」
健夜「私も、少し興味があって調べてたんだけど、プロの中にはここまでのデジタル打ちは居ないの」
咲「……へぇ?」
咲「なら学生、ですか」
健夜「うーん……どうなんだろう?」
健夜「これほどの打ち手が、大会とかに出てるなら気付かないハズがないんだけど……」
咲「……」
384: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:47:31.62 ID:xlk7mu3w0
咲「なら、答えは一つでしょう」
健夜「うん?」
咲「リアルを全て切り捨てて対局できるネット麻雀だからこそ、"のどっち"は強い」
咲「逆に、リアルの情報……実際の対局の空気感やらを感じる、リアルの麻雀では、本来の実力を出せない」
咲「更に言えば、ネトマではオカルトを見ないが為に、オカルトの存在を知らずに……もしくは認めずにリアルで打ってて、良いカモにされてる」
咲「……とか」
健夜「なるほどね……ありそうかも」
咲「ね?……もし仮に、この "のどっち" が本来の実力をリアルでも出せるのなら……」
咲「……」ウズッ
健夜「……まだまだ楽しみがいっぱいだね、咲ちゃん」ニコリ
咲「はい」クス
385: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:48:48.28 ID:xlk7mu3w0
咲「……でも、もうネトマはやめます」ポイ
健夜「あれ、やる気になるかと思ったのに」
咲「だって、無理ですもん。ネトマ無理です。勝てません、絶対」ブーブー
健夜「ぷっ……咲ちゃん可愛い」
咲「うるさいです!!早く読書に勤しんでください!」プンスカ
健夜「ふふっ、はーい」クスクス
咲「はあ…」チラ
咲(それにしても、この"のどっち"……本当に強いな)
咲「……」
咲「確か、ここをこうやって……」カチカチ
咲「……」カチカチ
386: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:49:47.65 ID:xlk7mu3w0
咲「あった、だいれくとめっせーじ」カチ
咲「えっと……」カタカタ
咲『おつよいですね、としはいくつなんですか』ポチポチ
咲「っと……送信っ」タン
咲「……」ジーッ
ピコーン
咲「あ、返信きた……」カチカチ
のどっち『光栄です。年齢は個人情報なので、すみません』
咲「まあ、そうだよね…」カチカチ
咲『そうですよね。きゅうにごめんなさい』
のどっち『いえ。それはそうと、キーボードの変換の所で、漢字に変換する事ができますよ』
咲「変換……あっ、本当だ」
咲(え、ていうか私さっきので会話終わらそうと思ってたのに…)ポチポチ
387: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:50:55.00 ID:xlk7mu3w0
咲『本当ですね、すみません。ありがとうございま』
咲「あっ、最後の文字打ち損ねた……」ポチポチ
咲『すみません、最後のす、が抜けていました』
のどっち『ふふっ、もしかしてパソコンに慣れていないんですか?』
咲『恥ずかしながら。ネット麻雀も初めてやりまして、とても強い方がいるんだなと驚きました』
咲『是非、現実でもお相手願いたいです』
咲「……ふぅ」
咲「パソコンは目が疲れるよ……」
健夜「咲ちゃん、頑張って読み終えたよー」テクテク
健夜「って、DM?」チラリ
咲「あ、健夜さん。この短時間で読み終わるなんて中々やりますね」
咲「試しに、のどっちにメール送ってみたら返ってきたんですよ」ドヤッ
咲「上手く行けば、どんな人か分かるかも」
388: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:53:16.47 ID:xlk7mu3w0
健夜「えっ、のどっちってメールとか一切返さないって聞いてたけど……」
健夜「どれどれ……」
健夜「……」
咲「どうです?」フンス
健夜「咲ちゃん……これは流石に無いかな…」
咲「は?何でですか?」
健夜「これじゃあまるで、現実で会ってあわよくばを狙ってる、男の人みたいだよ?」
咲「あわよくばって何ですか、意味わかりません」
健夜「だから、その……なんて言うのかなぁ」
健夜「ネットで出会いを求める……みたいな?」
咲「いや、私はこの人がどんな人か、一目見てみたい訳ですから間違ってませんよね?」
健夜「咲ちゃんは自分が送ってる側だから良いかもしれないけど、のどっちさんは違うかもしれないでしょ?」
389: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:54:08.32 ID:xlk7mu3w0
健夜「下心のある、異性だって思われても仕方ないよ?」
咲「……まあ、確かに」
咲「言われてみたら、ちょっとダメだったかもです…」
健夜(歳を聞いて、現実で会おうとするネット上の人物とか、怪しい事この上ないよ!!)
咲「……」シュン
健夜「あっ、ごめんね!?ちょっと言い過ぎたかも!」アセアセ
健夜「けど、流石にリアルで打とうって言われてオッケー出す人は居ないと思うから、これからは気をつけようね?」
健夜「それと、咲ちゃんもほいほい誘いに乗らないようにっ」
咲「はい……じゃあ、謝罪の意を込めて……」ポチポチ
健夜(あ、嫌な予感)
390: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:55:36.92 ID:xlk7mu3w0
咲『今、こういう事はダメだと教えられました。ごめんなさい』
咲『しかし、のどっちさんにはとても興味があるので、いつか必ず見つけ出して対局を申し込もうと思います』
咲『なので、是非とも麻雀を続けていてくださいね』
咲「っと、これでどうです?」
健夜「いや怖いよ!?さっきのより質悪くなったよ!!」
健夜「いつか必ず見つけ出すってなに!?1歩外れたら脅迫だよこれ!」
咲「もう、うるさいです。送ってしまったものは仕方ないじゃないですか」フイッ
健夜「開き直った!?」
咲「返事も返って来なくなっちゃったので、もうやめます」つ 電源切り
健夜「咲ちゃんが電子機器使う時は隣に付いてなきゃいけないね……」
咲「ボコボコにされて少し後味悪いので、麻雀打ちましょうよ」テクテク
健夜「あ、うん。良いよ」
391: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:57:17.88 ID:xlk7mu3w0
咲「それじゃあ、いつも通り10万点持ちでツモなしロンのみ責任払いありの、飛ばしたら勝ちルールで」
健夜「今までの勝敗数どんな感じだっけ?」
咲「うーん…途中から数えるのやめちゃいましたし、覚えてません」
咲「けどまあ、今日は私が勝つので健夜さんが少し勝ち越しって事にしてあげますよ」ニコリ
健夜「へー、後で後悔しても知らないよ」ニコッ
咲「……では、始めますk」
「し、失礼しますっっ!!」
咲「んっ……?」
健夜「え、お客さん?」チラ
「あ、あの!こちらに麻雀部の部室があると聞いて来たんですけど!」
咲(ドアの向こうで叫んでる……)
健夜(ドアの向こうで叫んでるからどんな子か分からない……)
392: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:58:41.46 ID:xlk7mu3w0
咲「健夜さん」
健夜「え、私!?ここは同じ生徒の咲ちゃんの方が良いと思うんだけど……」
健夜「私が出ていったら、誰だってならないかな?」
咲「……それもそうですかね…」スッ
健夜(え、もしかして新入部員?去年は誰も来ない所か、麻雀部の存在すら知れ渡って無かったのに……)
「あ、あのぉ……すみませんっ!」
咲「はい、どちら様ですか」スタスタ
咲「ドアの向こうで叫んでても対応し辛いですよ……」スッ
ガチャッ
咲「何の用ですか?」チラ
393: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 21:59:54.22 ID:xlk7mu3w0
マホ「ゆ、夢乃マホですっ!!えとえと、一年生で……えっと、麻雀部に入部希望なんですけど!」ビクビク
マホ「こ、ここに麻雀部の部室があるって聞いて、その……」
咲「……あれ?あなたは」
マホ「……へっ…」チラリ
咲「さっきの子?」
マホ「み……み、みみみみみ!!」
マホ「宮永先輩!!!??」
_______________
______________________________
_____________________________________________
413: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 23:24:34.56 ID:xlk7mu3w0
咲「はい、紅茶で良かったかな?」つ紅茶
マホ「あ、ありがとうございますっ!」
咲「健夜さんは水で良いですよね」
健夜「なんで!?」ガーン
咲「冗談ですよ、はい」つコーヒー
健夜「最近冗談に聞こえなくなってきたよ……」
健夜「ありがとう、咲ちゃん」
マホ「………」ズズ
咲「えっと……健夜さん、どうしたら?」ヒソヒソ
健夜「分からないよ…入部希望の子なんて今年も来ないと思ってたし……」コソコソ
咲「私もですよ……」ヒソヒソ
414: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 23:25:02.39 ID:xlk7mu3w0
マホ「あ、あのぉ……?マホ、どうしたら……」
咲「あ、ごめんね?えっと……入部希望、で良いのかな」
マホ「は、はいっ!」
咲「あー……」チラ
健夜「見ての通り、この麻雀部は部員がここの咲ちゃんだけ。後はコーチの私しか居ないけど……」
健夜「それでも大丈夫かな?」
咲「たまに雀荘に打ちに行ったりするけど、基本は2人打ち……夢乃さんを入れたら三麻になっちゃうけど」
マホ「そうなんですか……」
咲「うん。だから、入部はいつでも歓迎するから、他にやりたい部活とかあるならそっちも見てきてから、決めたらどうかな?」
マホ「……」カンガエ
健夜(この子……)ジーッ
415: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 23:26:54.25 ID:xlk7mu3w0
マホ「いえ、むしろ宮永先輩と2人きりなら都合バッチリです!!」
咲「え?」
健夜「うん?(私は?)」
マホ「マホ、先ほど宮永先輩に助けて貰って、とってもカッコイイなって思ってて」
マホ「もう一度会いたいなって思ってたです!」
咲(な、なんか急に積極的になったな)
健夜「助けたって?」
咲「あぁ、さっきこの子が勧誘の波に飲まれてたので、少し」
健夜(何その展開!?)
マホ「なので、マホ、部員数が少なくても大丈夫です!」
咲「……」チラリ
健夜「咲ちゃんが決めていいよ?」
咲「……」カンガエ
咲「マホちゃんは、どうして麻雀部に入りたいの?」
416: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 23:28:14.61 ID:xlk7mu3w0
マホ「えっとぉ……」
マホ「マホ、結構昔から麻雀をしてるんですけど、小学校の頃にとても強い人と対局したんです」
マホ「どんな方か忘れちゃったんですけど、いつかその人ともう一度対局したいって、ずっと思ってて……」
マホ「そして、その時は負けちゃったので、次こそ勝ちたいって思ってるので、もっと麻雀をやりたいんですっ!」
マホ「だから、その……はい、そんな感じ……なんですけど…」チラ
咲「……」
マホ「ダメ……でしょうか…?」
咲「……うん、分かった」
健夜(憧れ……かぁ)クス
咲「ようこそ、麻雀部へ」ニコッ
マホ「!!」パアッ
マホ「はいっ!よろしくお願いするですっ!」ペコッ
_______________
______________________________
_____________________________________________
417: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 23:29:22.23 ID:xlk7mu3w0
咲「改めて自己紹介するね、私は宮永咲。3年生です」
健夜「小鍛治健夜、一応この部のコーチって事になってます」
マホ「こ、小鍛治健夜さんって…もしかして……」
咲「うん。掃除洗濯料理ダメダメの、アラサー独身麻雀狂の、あの小鍛冶健夜さんだよ」
咲「元世界2位だけど、その辺りは気にしなくて大丈夫大丈夫。なんたって、生活力が皆無だからね」
マホ「へっ?」
健夜「咲ちゃん!?いきなり私の評価落とすのやめよ!?」ガーン
咲「ぷっ……否定してこない辺り、悲しいですね」クスクス
健夜「ま、まあ…家事ダメダメなのは本当だから……って、咲ちゃん!変なこと言わせないで!?」
咲「まあ、普段はこんな感じだけど、結構頼りにはなる人だから安心してね」
マホ「は、はい……」ウタガイノメ
418: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 23:30:28.65 ID:xlk7mu3w0
健夜「その微妙なフォローじゃあ失われた信用は返ってこないよ咲ちゃん……」ニヘラ-
マホ(先輩に頼りになるって言われた途端、顔が綻びました……)
咲(少し褒めたらこれなんだから……)
咲 マホ((この人、ちょろい(です)))
マホ「あっ、マホの自己紹介がまだでした……」
マホ「一年生の夢乃マホですっ。えっと……家事は一応出来なくもないですっ」
咲「ぷっ……」
健夜「マホちゃん!?そこは言わなくても良い所だから!!」
マホ「へっ?あ、ご、ごめんなさいですっ!」ペコペコ
咲「ふふっ……良いんだよマホちゃん…」クスクス
健夜「咲ちゃん笑いすぎだよ……」
マホ(宮永先輩はやっぱり可愛いです……)ドキドキ
419: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 23:31:13.25 ID:xlk7mu3w0
咲「えっと、自己紹介も終わったし1局打ってみよっか?」
咲「経験者って事だし、ルールとかは大丈夫?」
マホ「あ、はいっ!大丈夫です!」
咲「健夜さん、さっき言ったルールは変更で、普通のルールに変更で」
健夜「うん、了解だよ」
咲「えっと、3万点持ちでウマオカなし、赤は2枚ね。一応、箱下でも続行にしておこっか」
マホ「分かりましたっ!」
咲「健夜さんは少し手加減してくださいね」
健夜「分かってるよ」コクリ
咲「じゃ、始めようか」
_______________
______________________________
_____________________________________________
420: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 23:32:41.67 ID:xlk7mu3w0
咲 42000
健夜 25000
マホ 23000
マホ「マホ負けちゃいました……」ショボン
咲(なに、この子……?)
健夜(やっぱり、何か感じると思った)
咲(偶然……?にしては、違和感が…)
マホ「何度もチョンボしそうになってしまってごめんなさいです……」シュン
咲「……」カンガエ
健夜「咲ちゃん」
咲「!!」ハッ
422: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 23:33:20.17 ID:xlk7mu3w0
咲「……チョンボの事は気にしなくて大丈夫だよ」
咲「それより、もう一局だけやってみよっか」
マホ「は、はいっ!次はチョンボしないように気をつけます!」
咲「……健夜さん」チラ
健夜「うん、分かったよ」コクリ
咲「じゃあ、よろしくお願いします」
_______________
_______________
咲「カン、もう1個、カン」スッ
健夜「ロンだよ。槍槓ドラ8」
咲「はい」チャラ
マホ「……」ジーッ
423: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 23:34:47.64 ID:xlk7mu3w0
健夜「ポン」スッ
咲「それカン、ツモ責任払いで24000点です」
健夜「…はい」
マホ「……」ジーッ
マホ「……」ゴゴゴゴゴゴ
咲(これは……)
健夜(ツモ悪いなぁ……)
マホ「リーチ」ゴッッッ
咲(海底前でリーチ?)
健夜(決まり、かな)
424: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 23:36:11.74 ID:xlk7mu3w0
マホ「ツモです、リーチ一発海底ツモ三色一盃口ドラドラ」
マホ「8000オールです」ボッッ
咲「!!」ガタッ
咲(この子……)
咲(何も感じなかった訳じゃない……けど、これほどの…?)
健夜「咲ちゃん?」
咲「あ、すみません。急に立っちゃって」スワリ
咲「ねえ、マホちゃん?」
マホ「は、はいっ!マホ、何かダメだったでしょうか……?」オロオロ
咲「ううん、そんな事ないよ」
425: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 23:37:04.56 ID:xlk7mu3w0
咲「マホちゃんって……少し言い方は悪いんだけど、人の真似をする事が得意?」
マホ「………」
マホ「えっ……」
咲「もう少し詳しく言うと、テレビとかで見た麻雀選手の能力とかを、コピーしたり……できるよね?」
マホ「ぁ……」
咲「……どう、かな?」
マホ「えっと……あの……」
マホ「……」ガタッ
咲「え、マホちゃん?」
426: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 23:37:51.74 ID:xlk7mu3w0
マホ「ご、ごめんなさい……今日は、帰ります…」タッタッタ
咲「えっ……」
ガチャ
マホ「失礼、します……」
バタンッ
咲「マホちゃん……?」
健夜「……急に帰っちゃったね」
咲「私、何か嫌な事言いましたかね……?」
健夜「うーん……聞いてた限りでは、そんな事は無かったと思うけど……」
427: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 23:39:00.94 ID:xlk7mu3w0
咲「でも、能力の話をした途端に顔色変えて出ていっちゃいました」
健夜「関係があるとしたら、それかもね…」
健夜「それにしても、正直ビックリしたよ。マホちゃん」
咲「私もですよ……何か、色々な物が混ざりあっている様な違和感は感じていましたが……」
咲「一つ一つが薄いせいで、核に気づけませんでした」
健夜「あのチョンボは、制約の一つだねきっと」
咲「はい。けど、呪いとは違って意識をすれば止められるみたいですし、そこまでのデメリットにはなりませんね」
健夜「能力のコピー……そんな事できる子が、中学生にいるなんて…」
428: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/19(月) 23:41:37.19 ID:xlk7mu3w0
咲「……とりあえず、私も今日は帰ります」
健夜「あ、送っていくよ」
咲「じゃあ、一緒に行きましょうか」
咲「……少し、考えたい事もありますし、付き合ってください」スッ
健夜「うん、そうだね。」
健夜「電気消すよ?」
咲「はい」
咲(……夢乃マホ…か)
_______________
______________________________
_____________________________________________
433: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 00:55:10.39 ID:rkQHDwhf0
~3日後・始業前、部室~
咲「……マホちゃん、あの日以来来ませんね」
健夜「うん…」
咲「……」
健夜「……大丈夫、その内」
咲「そんな言葉はいりません。分かってるでしょう」
健夜「……そうだね、ごめん」
咲「いえ……こちらこそ、すみません…」
434: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 00:56:46.07 ID:rkQHDwhf0
咲「……マホちゃんの能力について触れた事が、この部室に来なくなった……もしくは、来づらくなった理由だとして」
咲「一体、どんな関わりがあるんでしょうか」
健夜「うーん……」
健夜「考えられるのは、能力を見破られたく無かった……とか」
咲「それは私も考えましたけど…もしそうなら、あの時能力を使ったりしますかね?」
咲「しかも、あれだけ強力な場の支配と海底……天江衣のコピーまでしたんですよ?」
健夜「そうなんだよね……」
咲「……」カンガエ
キーンコーンカーンコーン
咲「!!」ピクッ
健夜「続きは、放課後に考えよっか」
435: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 00:58:18.48 ID:rkQHDwhf0
咲「……そうですね」スッ
咲「とりあえず、学校行ってきます」
健夜「ん、行ってらっしゃい。頑張ってね」
咲「はい」テクテク
健夜「……」
健夜「…咲ちゃん!」
咲「??」クルッ
健夜「……能力の悩みは、多分咲ちゃんが気付いてあげるのがいいと思うの」
咲「……」
健夜「だから…」
咲「大丈夫です、健夜さん」
健夜「!!」
咲「分かってますよ」ニコッ
健夜「……うんっ」ニコリ
咲「では、また後でです」フリフリ
健夜「また放課後、ね」フリフリ
_______________
______________________________
_____________________________________________
436: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 00:59:23.49 ID:rkQHDwhf0
~授業後・教室~
咲「……」
生徒A「咲ちゃぁぁぁぁぁ…………ん?」
生徒A「どったの咲ちゃん、いつも可愛い顔が悩ましい表情で更に可愛くなってるよ?」
生徒B「アンタのその一言が、更に困惑の表情まで作らせるんだからやめなさい」ゲシ
生徒A「痛い!?蹴らなくたって良いじゃん!」
生徒B「それで宮永さん、どうかしたの?」
生徒A「無視すんな!この貧乳暴力女!」
生徒B「ふんっ!」ゲシッ
生徒A「きゅぅ……」
咲「二人とも……」
437: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:00:13.54 ID:rkQHDwhf0
生徒B「あはは…ごめんね、こいついっつもこんな感じで」アハハ
咲「いえ…」
生徒A「んでんで、咲ちゃんは何を悩んでるのかな?」復活
生徒B「復活はやっ……」
咲「……別に、悩んでは……いません…」
生徒A「そんな可愛い声と可愛い顔で言われたって、説得力ないよー」
生徒B「可愛いと可愛いしか無かったんだけど?」
生徒A「咲ちゃんイズ可愛い!おーけー?」
生徒B「アンタが馬鹿って事は分かったわ」
生徒A「何も分かってない!」プンスカ
438: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:01:30.40 ID:rkQHDwhf0
咲「……ふふっ…」クスクス
生徒A「!!!」
生徒B「可愛い……」
生徒A「お前も可愛いって思ってんじゃん」
生徒B「うそっ、今声に出てた?」
生徒A「いぇす」
生徒B「~~~~っっっ/////」
咲「ふふふっ…おかしいですね二人とも…」クスクス
生徒B「二人とも!?」
439: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:02:12.80 ID:rkQHDwhf0
生徒A「うんうん!私たちに悩みを打ち明けちゃえば、きっと面白可笑しく解決に導いちゃうよ!」
咲「面白可笑しかったらダメだと思うけど……」
咲「……うん、じゃあ、少し聞いてくれますか?」
生徒A「少しと言わず、何時間でもいいよっ!」
生徒B「うるさい」ベシッ
咲「実は……」
_______________
______________________________
_____________________________________________
440: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:03:10.88 ID:rkQHDwhf0
生徒A「ふむ……つまり、新入部員が1日で部活に来なくなっちゃったと」
生徒B「かいつまみすぎでしょ……」
咲「でもまあ、そんな感じです」
咲「すみません、こんな話聞いてもらっちゃって」
生徒B「ううん、むしろ嬉しいよ」ニコリ
生徒A「うーん、咲ちゃんは、まずはその子が来なくなっちゃった理由を解明しなきゃいけないの?」
咲「えっ?」
生徒A「つまりーえっとー……翻訳頼む!」
生徒B「押し付けないでよ……」
441: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:04:06.09 ID:rkQHDwhf0
生徒B「まあ、要するに、その子に会って話を聞くのはダメなの?……って、言ってるんだと思うよ」
生徒A「その通り!!」
咲「会うって……部室に来てくれないんですよ?」
生徒A「違うよ咲ちゃん!なにも、部室でしか会えないなんて事はないでしょ?」
咲「えっ……」
生徒B「その子が来ないならさ、宮永さんから行っちゃえば良いんだよ」
咲「!!!」
442: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:04:45.40 ID:rkQHDwhf0
生徒A「あぁ……今日も咲ちゃんとの下校はお預けか…」ガックシ
生徒B「頑張って、宮永さん」グッ
咲「……ありがとう、二人とも」スッ
咲「ちょっと、行ってくるね!」タッタッタ
生徒A「行ってしまった……」
生徒B「結末は、また明日聞くとしようよ」クス
生徒A「……だね」ニコリ
_______________
______________________________
_____________________________________________
443: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:05:29.60 ID:rkQHDwhf0
~本校舎・一年教室~
咲「はぁ……はぁ…」スッ
ガララ
咲「……」キョロキョロ
咲「ねえ、少し良いかな?」
一年生徒「え?はい、何でしょうか?」
咲「このクラスの、夢乃マホさんってもう帰っちゃった?」
一年生徒「マホちゃんですか?えっと、はい」
一年生徒「最近はいつも早く帰ってますね」
咲「ありがとう!」ダッ
一年生徒「ぁ……行っちゃった…」
_______________
______________________________
_____________________________________________
444: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:06:10.33 ID:rkQHDwhf0
~校舎外・ある場所~
咲「…っっ……」ハァハァ
咲「こんなに走ったの……いつぶりだろ…」ハァハァ
咲「チャイムが鳴ってからまだそんなに時間は経ってない……」キョロキョロ
咲「そんなに遠くには行ってないはず……」ダッ
咲「はぁ…はぁ……」タッタッタ
咲「……!!」ピタッ
マホ「……」
咲(あのベンチ……見つけた……)タッ
_______________
_______________
445: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:12:06.61 ID:rkQHDwhf0
マホ「……はぁ…」
マホ「一体、何がしたいんだろう……」
咲「マホ、ちゃん……」ハァハァ
マホ「!?」バッ
咲「やっと……見つけたよ…」フゥ
マホ「宮永……先輩……?」
マホ「ど、どうしてこんな所に!」
咲「それは、こっちのセリフだよ……」
咲「初日からずっとサボりは、さすがに私も先輩として放っておけない、かな」
マホ「それは……」
446: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:12:51.43 ID:rkQHDwhf0
咲「とりあえず、隣座っても良いかな……?」
咲「久々に走ったら疲れちゃって」アハハ
マホ「は、はい……すみません、どうぞです」スッ
咲「うん、ありがとう」スワリ
咲「……ふぅ…」
マホ「……」
咲「……」
咲「ごめんね、マホちゃん」
マホ「へっ……?」
447: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:13:39.81 ID:rkQHDwhf0
咲「あの日以来、ずっと考えてたの」
咲「マホちゃんが帰っちゃった理由とか、部活に来てくれない理由、とか」
マホ「そ、そんな!その……悪いのは、マホですし……」
咲「……本当は、自分で気付いてからマホちゃんの悩みを…あるならだけど、解決してあげたかった」
咲「……けど、思いつかなかったんだ」
マホ「先輩……」
咲「私、誰かの先輩になるなんて初めてで、こういう時、なんて言えば良いのか分からないから……」スッ
マホ「せ、先輩……?」
咲「……」ギュッ
マホ「ぁ……」
咲「……話してくれるまで、離さないよ」ギュゥ
マホ「……先輩…っ…」
448: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:14:45.07 ID:rkQHDwhf0
咲「辛くても、話して?人に聞かれるのが嫌でも、話して?」ナデナデ
咲「きっとその悩みは……一人で抱えこんだら、ダメなの」ギュ
マホ「そんな事……っ…」ジワッ
咲「これはね、私のワガママ……」
咲「先輩として、最初で最後のワガママにするから……」
咲「マホちゃんの事、教えてくれないかな……?」ギュッ
マホ「…うぅ……」グス
マホ「先輩は……ズルい……です…っ」
咲「うん……ごめんね…」
マホ「でも……マホの尊敬する……先輩です…」ギュッ
咲「……うん、ありがとう」ナデナデ
マホ「……」グス
449: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:15:43.82 ID:rkQHDwhf0
マホ「……聞いて、くれるんですか…?」
咲「勿論。むしろ、頭を下げてお願いしたいくらいかな」ニコリ
マホ「……」スッ
マホ「……マホは、先輩が指摘した通り…人のマネをするのが、得意…」
マホ「コピーをするのが、能力です……」
咲「……うん」
マホ「……でも、それ以外は…ダメダメ、なんです」
咲「……」ピクッ
マホ「人のマネをしていない時のマホは、凡人以下の力しかありません……」
マホ「人のマネしか、出来ないんです……」
咲「……」
450: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:16:43.75 ID:rkQHDwhf0
マホ「……昔、言われた事があるんです」
マホ「人マネしかしていないお前は、自分で麻雀をやっている意味があるのか?……って」
咲「……うん…」
マホ「その時、思っちゃったんです……」
マホ「確かに、マネしかできないマホが自分で麻雀を打ってる意味なんて無いんじゃないかって……」
マホ「一緒にやってる人も、楽しく無いんじゃないか……マホを、嫌いになるんじゃないかって…」
マホ「……その時以来、マホは人のコピーをするのはやめました」
マホ「でも……この前、先輩と健夜さんと打った時…」
マホ「何故かは分からないんです……無意識的に、模倣出来る中で一番強いコピーをしてしまっていて……」
マホ「マホ、本当に無意識だったんです……先輩と健夜さんを見ていたら、マホも打ちたいって思って、それで……」
マホ「先輩に指摘されて、初めてマホがコピーを使ってしまった事を知らされました……」
451: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:19:03.44 ID:rkQHDwhf0
マホ「怖かったんです、先輩の目が……マホは、コピーしか出来ない……凡人だと、言っている様に見えて……」
マホ「逆に、コピーが出来るマホを求めていて、凡人のマホを見たら、見放されるんじゃないかって……」
マホ「先輩に、嫌われちゃったんじゃないかって……!!」グスッ
咲「マホちゃん……」
マホ「幼稚な……理由なんです…」
マホ「部室に行けなかったのも……マホの、自分勝手な…理由です…」
咲「……」
マホ「……あはは…ごめんなさいです、やっぱり呆れちゃいましたよね」
咲「……マホちゃんってさ」
マホ「はい……」
咲「ちょっと、お馬鹿さんだよね」
マホ「……へっ…」
452: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:19:55.85 ID:rkQHDwhf0
咲「私てっきり、能力を使って人の能力を奪ってしまい、その人の人生を崩壊させちゃったー!」
咲「……とか、そういう理由かと思ってた」
マホ「そ、そんな大事な訳では!」
咲「うん、だからそんな小さな事、気にしなくて良いんだよ」
咲「コピーしか出来ない?コピーしないと只の凡人以下?」
咲「うんうん、結構だと思うよ?」
咲「私に言わせてみれば、コピーが出来るだけで物凄く凄いことだと思うし」
咲「素の状態が凡人以下なら、まだまだ強くなれるって事だよ?」
マホ「そんな簡単には……いかないんです…」
咲「今は、私が居るよ」
マホ「えっ……?」
453: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:21:33.29 ID:rkQHDwhf0
咲「ううん、私だけじゃない。健夜さんもいる」
咲「……マホちゃん、言ってたよね?昔対局した人ともう一度対局して、勝ちたいから麻雀部に入りたいんだって」
マホ「はい……」
咲「うんうん、なら、やろうよ」
咲「私と、健夜さんと、マホちゃんで一緒に…強く、なろ?」
マホ「で、でも……コピーをしないマホと打ったってお2人の足元に及びません……それなら、マホなんて居ない方が……」
咲「私は、マホちゃんが欲しいよ」
マホ「っっっ……」
咲「コピーが出来るマホちゃんでも、素の下手くそなマホちゃんでもない」
咲「強くなろうって、頑張るマホちゃんが欲しい」
454: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:22:28.95 ID:rkQHDwhf0
咲「さっき、私がマホちゃんをコピーしか出来ない凡人だと思ってるんじゃないかって、言ったね」
咲「私の気持ちを、勘違いしないで欲しいな」
咲「私は、マホちゃんのその能力、とっても魅力的だと思うし、例えコピーが無くなったら下手くそになっちゃうとしても」
咲「私は、強くなりたいって思うマホちゃんの麻雀を打つ姿勢、大好きだよ?」
マホ「でもっ……っっ!!」
咲「もし!!」
マホ「っっ」ピクッ
咲「マホちゃんが自分の能力が嫌いだーなんて、言ったら、私の能力だって嫌われちゃうね?」
マホ「ど、どうして……」
455: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:25:04.01 ID:rkQHDwhf0
咲「だって、私の嶺上開花、もうコピーできたんでしょ?」
咲「それはつまり、コピーの能力=私の嶺上開花って解釈もできる訳で」
咲「あぁ……私、マホちゃんに嫌われたくないな」
マホ「き、嫌いませんよ!!嫌うはずありません!!」
咲「うん。私と健夜さんも、マホちゃんに対して、同じ気持ち」
マホ「ぁ……」
咲「良い?私は、マホちゃんのコピーの能力はとっても凄いと思うし、対局しててとっても楽しかった」
咲「強くなるように頑張ろうって、そう思って打ってるマホちゃんを見てて、協力したいって思った」
咲「私はマホちゃんと、何回でも麻雀を打ちたいな」
456: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:29:00.85 ID:rkQHDwhf0
マホ「先輩……」グスッ
マホ「先輩は……コピーしか出来ないマホを…好きになってくれますか……?」
咲「うん。コピーまでできるマホちゃんを好きになるよ」
マホ「先輩は…弱虫なマホとも……麻雀をしてくれますか...?」
咲「うん。一緒に強くなって、大魔王健夜を倒そっか」ニコリ
マホ「先輩は……マホを…好きになってくれるんですか……?」
咲「……うん、勿論」ニコッ
咲「私が好きなマホちゃんを、マホちゃんは好きになれないかな……?」
マホ「…なれますっ……先輩が好きなものは…好きになりたいですっ……!」
咲「……夢乃マホちゃん、私を…」
咲「マホちゃんの、先輩にしてくれるかな?」
マホ「……」ゴシゴシ
マホ「……はいっ」
マホ「よろしく、お願いしますっ」ニコッ
_______________
______________________________
_____________________________________________
457: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:37:59.35 ID:rkQHDwhf0
~旧校舎・部室~
健夜「……」ソワソワ
健夜「咲ちゃん……大丈夫かな…」
ガチャッ
健夜「!!!」
健夜「咲ちゃん!おかえり、今日もマホちゃんは…………」
健夜「………………えっ?」
咲「あ、あはは……健夜さん、どうもです」
マホ「せ、先輩!少し雨降ってきちゃいましたけど、濡れてませんか!?」ギュ-ッ
マホ「あぁ、少し濡れてます……風邪引いたらいけませんし、すぐに拭きます!」
458: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:38:58.28 ID:rkQHDwhf0
咲「ま、マホちゃん……ちょっと過保護すぎ……」
マホ「そんな事ありません!マホの先輩が風邪引いたら、大惨事ですよ!」
咲「あ、あはは……」チラ
咲(健夜さん、助けて)
健夜(いやいやいや!?どう言うこと!?)
健夜(私、3日間くらい気絶してたかな!?それくらい状況変わってるよ!!)
咲(馬鹿なこと言わないでください……)
咲「と、とりあえずマホちゃん!一応コーチの健夜さんにも、謝っとこ?」
マホ「あ、そうでした……」
459: ◆.4Vb7WGlxQ 2016/09/20(火) 01:40:46.19 ID:rkQHDwhf0
健夜(まだ頭の整理できてないよ!?)
咲(パンクしちゃえ)
健夜(咲ちゃん!?)
マホ「3日間、部活に来なくてすみませんでした」ペコリ
健夜「あっ、うん……えっと、私は全然大丈夫だよ……?」
マホ「これから、宮永先輩の後輩、健夜さんの生徒として、お世話になります」
マホ「夢乃マホですっ!よろしくお願いします!」
~宮永咲と、夢乃マホ・カン~
健夜「まだ終わらないインターハイ」咲「Bブロック、ですね」【後編】に続く
元スレ
SS速報VIP:健夜「まだ終わらないインターハイ」咲「Bブロック、ですね」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1473073727/