SS速報VIP:ハルヒ(あー、キョンに私の心を読む力でもあればなぁ)キョン「……!?」
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1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 17:34:38.69 ID:z2wv/BWZo

キョン(見慣れた教室の扉を開けると、真っ先にハルヒと目が合った。今日も平穏無事に過ごしたいもんだぜ)

キョン「おっす」

ハルヒ「おはよう。ねえ、何か面白いことない?」

キョン「唐突だな。今更、驚かないが」

ハルヒ「最近、SOS団も目立った活動してないじゃない? なんか、こう、パーッと大きなイベントをやりたいんだけどね」

キョン(人力でどうにかなる程度のイベントなら何でもいいが、宇宙やら未来やら超能力でどうにかしなきゃいけないのはNGだぞ)

ハルヒ「はぁーあ……なにかないかしらねぇ……」

キョン(こいつにとって面白いこと、か。世界がひっくり返るぐらいのことは期待してても、ハルヒはそんなこと起こらないと思っている)

キョン(分かりやすい季節行事があれば、それで満足してくれはするんだが、如何せんこの時期は目立った催しはない)

キョン(不思議探索だけでは物足りなさそうにしているし、遊園地やショッピングモールとか普通の場所に行こうと誘ってもいい顔はしやがらない)

キョン(ハルヒを退屈にさせず、楽しませるのは酷く難しい。こいつの心でも読めれば、簡単に接待もできるんだがな)

ハルヒ「ふぅ……」

キョン(こいつが今、何を考えているのかなんて常人の俺にはさっぱりわから――)

ハルヒ(あー、キョンに私の心を読む力でもあればなぁ)

キョン「……!?」

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3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 17:43:03.84 ID:z2wv/BWZo

ハルヒ(そしたら、結構楽しくなると思うのよねぇ)

キョン(これは……なんだ……。ハルヒの声が直接頭に響いてくるぞ……)

ハルヒ(キョンはあたしに対してきっとすごく優しくなるだろうし、気もかけてくれるだろうし)

ハルヒ(あたしが今、こうしたいって思うだけでキョンはすぐに準備してくれるに違いないわ)

ハルヒ(不思議探索のときだって、キョンが自分から俺はハルヒと一緒がいいって言ってくれるかもしれないしね)

ハルヒ(あたし自身、もう気持ちに嘘はつけなくなるし……いいことかもしれないわねぇ……)

キョン「ハ、ハルヒ!!」

ハルヒ「な、なによ」

キョン(声が止んだ……)

ハルヒ「どうしちゃったの?」

キョン「いや……そのだな……」

キョン(これはまずいぞ……。ある意味、世界が変わっちまうことより、朝倉が復活することよりも恐ろしい事件が起こってる……)

ハルヒ「ちょっと、なんなのよ。用もなく大声で呼ばないでくれる? ふんっ」

ハルヒ(いきなり好きだって言われるかと思ったじゃない。全く。キョンってたまに期待させるだけさせてくるのよね)

キョン(すぐに長門のところに行ったほうがいいな、これは……)



6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 17:51:41.06 ID:z2wv/BWZo

ハルヒ「ん? キョン、どこいくのよ」

キョン「トイレだ」

ハルヒ「もうチャイムなっちゃうわよ。あとにしたら?」

キョン「そういうわけにも行かないんだ」

ハルヒ「ふぅん。ま、遅刻するのはアンタの勝手だしね」

キョン「そうだ。気にしないでくれ」

ハルヒ「はいはい」

ハルヒ(体調でも悪いのかしら。顔色もあんまりよくないし。岡部には上手く言い訳しておかないとね)

キョン(おいおい……丸聞こえだぞ、ハルヒさん……)

キョン(その声を口に出してくれたら、俺だって素直に感謝の言葉を並べられるんだがな)

キョン(今は長門のところにいかねば……!! このままじゃ、とてつもない地雷をいつか踏む、いや、見てしまうことになりかねん!!)

ハルヒ(一応、保健室に行くように勧めてみたほうが――)

キョン「ん……?」

キョン(ハルヒの声が途切れたな……。どこに居ても聞こえるわけじゃないってことか。とりあえず距離をとればいいんだろうか)

キョン(だが、教室内においてあいつは俺の真後ろにいるわけだから、なんとか早期解決をしなきゃならんことには変わりないな)



7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 18:05:18.68 ID:z2wv/BWZo

長門「……」

キョン(廊下に出ると、長門が立っていた。昔ながらの罰で廊下に立たされているわけでもないだろう)

キョン「長門、悪い。とてつもない事件が起きてるようだ」

長門「わたしのほうでも感知した。5分前、涼宮ハルヒを中心に小規模な拡散性思索音波が発生した」

キョン「なんだ、それは」

長門「周囲の生命体に感情や言語などあらゆるコミュニケートツールを介さずに意思疎通が可能となる音波」

キョン「ハルヒの考えていることがわかっちまうってことか」

長門「そう」

キョン「拡散性ってことは俺以外のやつにもその音波は届いてるのか?」

長門「半径1メートル以内にいた者が対象」

キョン(あのとき、ハルヒの近くにいたのは俺だけだな……。最悪の事態は避けれたわけだ……)

キョン「治す方法はあるか?」

長門「……」

キョン(長門の沈黙ほど、恐ろしいものはないぜ。言葉を選んでいるようにも、答えに詰まっているようにもとれるからな)

長門「厳密にいえば、対処は不可能」



8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 18:14:26.86 ID:z2wv/BWZo

キョン「なに……?」

長門「涼宮ハルヒから発生した音波は極めて特殊且つ複雑な情報因子が混在。音波を浴びた時点で、涼宮ハルヒの意志が強制的に脳内へ流入される仕組み」

長門「その因子を調査、解読、解除するためには時間が必要」

キョン「どれぐらいだ?」

長門「60万時間ほど」

キョン「それは困るな」

長門「困る」

キョン(最悪の事態は避けられても、俺の生き地獄までは避けられなかったか……。世界はそんなに甘くないんだなぁ)

長門「ただし、貴方が浴びた音波を解除する方法はある」

キョン「聞かなくてもわかる。ハルヒの力を利用するんだろ」

長門「そう」

キョン(だが、どうやって利用したらいいんだ? あいつに力を自覚させるのは論外として……)

長門「できる限りのサポートはする」

キョン「ああ、すまないが頼らせてくれるか」

長門「了解した」



10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 18:25:14.45 ID:z2wv/BWZo

キョン(すぐに対処は出来ないとなれば、今日一日はこの現状に身を置く必要があるわけだな)

キョン(教室に戻りたくねえな……)

キョン(ハルヒの頭の中を見てみたいと思ったことは幾度もあったが、実際に見ることができるとただただ、恐ろしい)

キョン(アホの谷口あたりなら苦笑いで済まられたものを、相手がハルヒだからなぁ)

ハルヒ(――遅いわねぇ。キョン、大丈夫かしら)

キョン(教室に入る前で聞こえてきやがった……。ハルヒの声が聞こえる距離は、大体半径10メートルから15メートルぐらいか……?)

ハルヒ(風邪とかじゃないわよね。早退とかしたら、どうしよう。そのときはSOS団の活動をお休みにして、お見舞いにいかなきゃ)

キョン(なんか色々と考えてるみたいだな……)

ハルヒ(キョンの家に行く前に買い出しもしなきゃね。うーん、そこまですると流石に世話を焼きすぎかしら。いや、でも、キョンが風邪で数日休むとかなっても困るし)

キョン(それはどうしてなんだ。雑用がいなくなるからか)

ハルヒ(キョンに会えないのは日曜日だけで十分だもん)

キョン「……」ガラッ

ハルヒ「ん?」

ハルヒ(あ、戻ってきた。よかった)

ハルヒ「はい、ちこくー! これで進級が一歩遠ざかったわね。安心して、留年してもSOS団にはちゃんと居させてあげるから」



13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 18:34:53.26 ID:z2wv/BWZo

キョン「そりゃ、ありがとよ」

ハルヒ「でも、SOS団はエリート集団でなきゃいけないんだから、留年とか絶対にダメよ。わかってる?」

キョン「分かってるって。岡部にはどう説明してくれたんだ?」

ハルヒ「はぁ? なんであたしがキョンの遅刻理由を説明しないといけないわけ? SOS団員だからって調子に乗らないで。自分の身は自分で守るものよ」

キョン「そうか」

ハルヒ(なんてね、ちゃんと岡部には遅刻はしてないっていってあるわよ。感謝しなさいよね)

キョン(何もかも筒抜けだぜ、ハルヒよ。ありがとよ)

ハルヒ「ねえ」

キョン「な、なんだ」

ハルヒ「なんであたしのほう、向かないわけ」

キョン「向く必要、あるのか?」

キョン(今、お前の目を見て話せる自信はこれっぽっちもないんだよ)

ハルヒ「ま、別にあんたの間抜け面なんて、見たくないし、いいけどね」

ハルヒ(まだ体調がよくないの……? やっぱり保健室まで一緒に行こうかしら)

キョン(やれやれ……。耐えられるのか、俺……)



14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 18:46:44.58 ID:z2wv/BWZo

キョン(授業が始まり、教室は静まり返っている。授業を妨害するように私語を話すような輩はこの教室には存在していない)

キョン(ただ、俺の頭の中では容赦なくハルヒの声が反響している)

ハルヒ(あーあ、つまんない。ここ、もう予習してるし、聞き流しても問題なさそうね)

ハルヒ(いきなりテロリストとか入ってこないかしらね)

キョン(おおい!! やめろ!! 実現したらどうなるんだよ!! コラ!!)

キョン(こんな山の上の県立高校にテロリストが襲来する理由はないだろうが、万が一ってこともあるんだからよ)

ハルヒ(私が人質にされそうになったら、きっとキョンは守ろうとしてくれるわよね)

キョン(ああ、そうだな。立ち上がって、「やめろ!」ぐらいは言ってやる)

ハルヒ(けど、相手はテロリストだし、銃器は持ってるわね。うーん、そんな相手にキョンが立ち向かって殺されちゃったら……)

キョン(殺されるのか、俺)

ハルヒ(ダメね。そんな恐ろしいこと考えちゃ。絶対にテロリストなんてきませんよーに)

キョン(どうやら、北高最大の危機は脱したようだな)

ハルヒ(こういう時間はダメね。色んなこと妄想しちゃって)

キョン(地球の存亡にかかわる妄想だけはやめてほしいね)

ハルヒ(早く、放課後にならないかしら)



15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 18:57:28.91 ID:z2wv/BWZo

キョン(二限目になってもハルヒの声が治まることはなかった。いつもの俺みたいに居眠りでもしてくれたらいいんだけどな)

ハルヒ(キョンの背中って見るたびに突きたくなるのよね)

キョン(俺が眠ってしまえればよかったが、こんな声が聞こえていたら眠気なんぞ地球の裏側まで行っちまうぜ)

ハルヒ(足を挫いたら、キョンはあたしのこと負ぶってくれるかしら? でも、お姫様抱っこなんてのもいいわよね)

キョン(何を考えてやがる。ちゃんと授業に集中しろ)

ハルヒ(キョンはちゃんと抱っこできるわよね。今現在のあたしの体重が――)

キョン「(ハルヒ、ハルヒ)」

ハルヒ「(なによ?)」

キョン「(今日のSOS団はどんな活動をするつもりだ?)」

ハルヒ「(なんでそんなことを今、聞くのよ)」

キョン「(スムーズに始めたいと思ってよ)」

ハルヒ「(ちゃんと考えてあるから、アンタは授業に集中しなさい。余計バカになっちゃうわよ)」

キョン「(悪かった)」

ハルヒ(うーん。今日は何をしようかしらね。みくるちゃんに新しい衣装でも来てもらって撮影会でもしようかしら)

キョン(別の事を考えてもらったほうがまだいいな。体重なんて別に知りたくはないしな。興味はあるが)



16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 19:07:24.59 ID:z2wv/BWZo

ハルヒ(おなかすいたぁ)

キョン(午前最後の授業にて、ハルヒは三大欲求の一つを俺に送り付けてくる。何もしてやれないが)

ハルヒ(今日はキョンと一緒にお弁当食べるわよ。谷口や国木田くんに邪魔はさせないわよ)

キョン(俺と一緒に食べたいのか?)

ハルヒ(部室までキョンをダッシュで連れて行けば、なんとかなるでしょ)

キョン(稀に部室まで連れて行かれるのは、ハルヒの気まぐれだったわけか)

ハルヒ(有希が居たらちょっと困るけど、まぁ、大丈夫でしょ)

キョン(お前がそう思った時点で、長門は察してくれているからな)

ハルヒ(チャイムが鳴った瞬間に、立ち上がって、お弁当もって、部室にダッシュよ!!)

ハルヒ(ちょっとシミュレーションしておこっと)

キョン(そのシミュレーションは必要なのか)

ハルヒ(キーンコーンカー、ぐらいで「いくわよ、キョン!!」って私がキョンの胸倉をつかんで、いや、腕を引っ張ったほうがいいかしら)

キョン(どっちでも構わん)

ハルヒ(とにかく周囲には静止すらさせないよにしないとね)

キョン(弁当の用意だけはしっかりしておくか)



17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 19:12:00.34 ID:z2wv/BWZo

キョン(昼休みを告げるチャイムが鳴った。俺は即座に弁当を手にとる)

ハルヒ「キョン!!」

キョン「おっと」

ハルヒ「あら?」

キョン(ハルヒの行動が分かっていたからか、つい反射的に避けてしまった)

ハルヒ「キョン!!」グイッ

キョン「うお!?」

キョン(改めて胸倉をつかむのかよ)

ハルヒ「行くわよ!!」

キョン「はいはい。一緒に行ってやるから、走ろうとするな」

ハルヒ「いいから急ぐ!!」

ハルヒ(クラス中の視線が痛いでしょ!!)

キョン(恥ずかしいのか? なら、こんなことするならよ)

谷口「付き合ってないって嘘だろ」

国木田「どうなんだろうね。キョンはずっと否定してるけど」



18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 19:16:25.27 ID:z2wv/BWZo

ハルヒ「やっほー!! ゆっきー!! あら、有希はいないのね」

ハルヒ(都合がいいわ)

キョン(やっぱり、長門は部室にいないか)

ハルヒ(鍵を閉めてっと)

キョン「鍵は閉める必要あるのか?」

ハルヒ「あたしの勝手でしょ」

ハルヒ(誰かが入ってきたらどうするのよ)

キョン「見られて困ることでもあるのか」

ハルヒ「別にないけど。なに、鍵はあけておいてほしいの?」

ハルヒ(見られて困ることをするかもしれないじゃない。あたしがキョンにあーんとかすることになったら、どうするのよ!)

キョン(絶対にならん)

ハルヒ「ほら、はやいとこお弁当食べましょ」

キョン「そうだな」

ハルヒ「いただきまーす」

キョン「いただきます」



23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 19:24:15.25 ID:z2wv/BWZo

ハルヒ「はむっ」

ハルヒ(ん? キョンのお弁当、美味しそうね……。お母さんが作ってるのかしら……)

ハルヒ「はむっ]

キョン(相変わらず器用だな。こちらに殆ど視線を向けずに、俺の弁当を観察するなんて)

ハルヒ(ふーん。キョンってこういうおかずも好きなのかしら)

キョン「気になるか?」

ハルヒ「え!? な、なにがよ」

キョン「弁当は昨日の残り物だ。今朝作ったのは卵焼きぐらいだな」

ハルヒ「へぇ。そうなの。あたしは、ちゃんと早起きして作ってるわよ」

キョン「そりゃ偉いな」

ハルヒ「ほらほら、綺麗に魚も焼けてるし、おかずもバランスいいでしょ?」

キョン「確かにな。美味そうだ」

ハルヒ(俺も食べてみたいって言ってくれたら、作ってきてもいいんだけど。キョンがそんなこと言うわけないわよね)

ハルヒ(こんなに美味しいお弁当を作ってくれる女が目の前にいるのに、利用する気もないんだもんね。毎回、お弁当の中身は見せつけてるのに)

キョン(そんな風に考えての行動だったのか……。気づくわけないだろうが)



25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 19:33:20.80 ID:z2wv/BWZo

ハルヒ「お弁当だから傷みやすいものは入れられないでしょ。だからどうしても調理法や食材は限られてきちゃうけど、これぐらいは30分もかからないわ」

ハルヒ(だから、二人分を作ることになっても大したことないのよね)

キョン(こいつの考えていることは手に取るように、いや、既に手に取ってしまっている。ここまで知ってしまって、無視するのもな……。ハルヒがここまで甲斐甲斐しいとは思わなかったが)

キョン「なぁ、ハルヒ」

ハルヒ「なによ」

キョン「……俺にも、作ってきてくれないか?」

ハルヒ「は? なにを?」

ハルヒ(お弁当のことかしら……)

キョン「弁当。本当に美味そうだし、是非食ってみたい」

ハルヒ「はぁ!?」

ハルヒ(やったわ!! おっしゃー!!! 願いかなったー!!!)

ハルヒ「な、なんでキョンなんかに作ってこなきゃいけないのよ。バッカじゃないの。絶対、嫌よ」

ハルヒ(違う!! なにいってんのよ、あたし!! そこは素直にしょうがないわねーでいいじゃないの!! バカじゃないの!?)

キョン(自分で自分を罵ってやがる)

ハルヒ「身の程を知りなさいよね。もっとSOS団に貢献してくれたら、考えてあげてもいいけど」



29: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 19:45:45.09 ID:z2wv/BWZo

キョン「そうか、簡単には行かないんだな」

ハルヒ「当たり前でしょ。あたしの手料理なんてのはね、とっても希少価値があるのよ。選ばれた人間しか口することはできないの」

ハルヒ(もうここまで来たら引き返せないわね……。条件はできるだけ緩くしないと……)

キョン(前言撤回したらいいだろうに)

ハルヒ(うーん……どうしよう……。そうだわ!! 今日の放課後、部室の掃除をさせましょう。それで条件達成でいいわね)

ハルヒ(掃除と引き換えのお弁当なら、まぁ、許容範囲よね。多分)

キョン(掃除か。それぐらいなら別にいいか)

キョン「何をしたらいいんだ?」

ハルヒ「放課後まで秘密よ。ふっふーん、どんなこと言われるか、ドキドキしてるでしょ?」

キョン「そうだな。無理難題なら断るかもしれん」

ハルヒ「そんな弱気でどうするのよ。食べたいんでしょ、私のお弁当? ほらほら、美味しそうよー」

ハルヒ(やっぱりいらないとか、言わないでよ!!)

キョン「ああ。その弁当が食えるなら出来る限りの努力はさせてもらう」

ハルヒ「いい心がけじゃない。高嶺の花だからって見上げるだけじゃ意味ないもの。登らなきゃ絶対に手には入らないんだから」

ハルヒ(今日の帰りは忙しくなるわね。食材はなにがいいかしら。キョンのお弁当を見てるし、好みは大体合ってるはずなんだけど……)



33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 19:57:10.48 ID:z2wv/BWZo

キョン(教室までの帰り道。ハルヒはずっと弁当の内容について思考し続けている)

ハルヒ(やっぱり、ハンバーグはいるわよね。男の子だし、お肉が入ってればきっと喜ぶだろうし)

キョン(こいつが実は優しいぐらいのことは理解していたが、ここまで尽くしてくれるとは)

キョン(誰かが体調を崩したときぐらいだと思っていたが)

古泉「どうも。こんにちは」

キョン(俺とハルヒがここを通ると分かっていたかのように、古泉が微笑みながら廊下にいた)

ハルヒ「あ、古泉君。やっほー」

ハルヒ(サラダもつけないとね。トマトとレタス、いや、キャベツね。色の濃い野菜はいれてあげなきゃ)

キョン「よう、古泉。どうかしたか」

古泉「いえ、少しお話がありまして」

ハルヒ「なになに? なんかあった?」

ハルヒ(デザートなんかもつけちゃえ)

古泉「申し訳ありません、涼宮さん。彼をお借りしてもよろしいですか?」

ハルヒ「別にいいけど? どこにでも持って行って」

ハルヒ(むぅ……。古泉くん、空気読んでよね)



34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 20:07:22.01 ID:z2wv/BWZo

キョン(ハルヒの恨み言を脳内で感じ取りながら、俺は古泉とその場を離れ、人気のない場所にあるベンチに腰をおろすことにした)

古泉「どうですか?」

キョン「どうって?」

古泉「長門さんからお聞きしています。今、貴方が置かれている状況のことは」

キョン「そうかい。助けてくれるのか」

古泉「あの長門さんが匙を投げた案件です。申し訳ありませんが僕では手の施しようがありません」

キョン(だろうな。残る朝比奈さんにだって期待してはいけない)

古泉「今、涼宮さんの心の声が聞こえている状態なのですね」

キョン「ある程度、あいつの傍にいないと聞こえないみたいだがな」

古泉「これで超能力者の仲間入りですね。どうですか、機関に来ませんか。貴方なら大歓迎です」

キョン「断る。俺は一般人だ。このハルヒ専用の読心能力も一時的なもんだろ」

古泉「僕は神にも匹敵する特殊能力だと考えていますが」

キョン「何故だ」

古泉「涼宮さんの行動を常に先読みできるのですよ? 神をコントロールしているのも同義です」

キョン(確かにハルヒの思考の方向を無理矢理変えたりは既にしているが、それだけでハルヒをコントールできるか? さっきだってハルヒの思惑通りに行動しても弁当を素直に作るとは言わなかったしな)



35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 20:15:05.84 ID:z2wv/BWZo

古泉「本心とは裏腹の行動をとってしまう。人間であれば誰しもが経験することですよ」

キョン「そんなもんかね」

古泉「実は、ご相談があるのですが」

キョン「なんだ」

古泉「貴方は今、その症状を治そうとしている」

キョン「当然だろう。ハルヒの心の声なんて、ずっと聞いていられるもんじゃない」

キョン(今はまだいいが、そのうちハルヒの見る目が180度変わっちまうことにもなりかねん)

古泉「世界安寧のために、その力を是非とも今後も残してほしいのです」

キョン「……断固、拒否する」

古泉「んふ。そうですよね。すみません、言ってみただけです」

キョン「ハルヒだって俺に心が読まれているとは思ってないはずだ。このままでいるのは、ハルヒに悪い」

古泉「では、どのようにして元に戻すおつもりですか」

キョン「気持ち悪いって思わせるしかないかもな」

古泉「心を読まれているかのような行動を繰り返されたら、涼宮さんもある種不安になるでしょうね」

キョン(ハルヒには嫌われちまうかもしれないがな)



36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 20:30:15.03 ID:z2wv/BWZo

古泉「では、僕としましては貴方を応援するわけにはいきません。貴方と涼宮さんの仲を不穏にさせたくはありませんので」

キョン「機関に怒られるからか」

古泉「それもありまずが、それ以上にお二人にはこのまま末永く幸せに人生を謳歌してほしいからです」

キョン「心を読めちまうと、どうしたって相手の嫌な部分は見えてくるぞ」

古泉「僕の中での選択肢は二つしかありません。一つは貴方がこのまま読心能力を身につけたまま過ごしてもらうか」

キョン「それはないぞ」

古泉「承知しています。では、涼宮さんに嫌われることなく、また涼宮さんにご自身の力を自覚させることなく、貴方の読心能力を消去してもらうしかありません」

キョン「そんなことできるのか?」

古泉「まず涼宮さんには貴方に対して「心を読まないで欲しい」という願いを持ってもらわなくてはいけません」

キョン「それを実行しようとするとハルヒに気持ち悪がられるだろ」

古泉「ええ。涼宮さんは超能力を心から信じているわけではありませんから」

キョン「無理じゃねえか」

古泉「そうでもありませんよ。涼宮さんの行動を全て先読みするのは問題ですが、ある程度だけ読み、ほんのわずかにピントをずらすことができれば、察しの良い人止まりになるはずです」

古泉「心を読まれているのにも似た感覚に陥れば、涼宮さんも「心を読まないで欲しい」という願いを持つかもしれません」

キョン「察しの良い人ね……。それ、本当にそう願うか? なんつーか、理解者の一人っていう認識になっちまいそうだが」



38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 20:42:20.49 ID:z2wv/BWZo

古泉「その場合もあるでしょう」

キョン「そのときはどうするんだ」

古泉「そうならないことを願うしかなさそうです」

キョン「てめえ」

古泉「大前提として僕は貴方と涼宮さんを守る立場でいなくてはなりません。ですので、お互いが険悪になるような可能性はまず排除しておきたい」

古泉「その上で貴方の能力を消すとなると、その方法しかないように思えます」

キョン(俺だって別にハルヒに嫌われたいとは思わない。このままの関係が維持されるのならそれでいい)

キョン「やるしかないか」

古泉「涼宮さんは純粋で純情な人です。羞恥心から願う可能性は決して低くないでしょう」

キョン(なんとも覚束ないプランだが、他に手はなさそうだしな……)

古泉「いつもあなたには苦労をおかけしますが、よろしくお願いします」

キョン「やれるだけのことはやるつもりだ」

古泉「僕もお手伝いできることがあれば喜んで手を貸します。いつでも声をかけてください」

キョン「感謝するぜ、古泉」

キョン(だがな、俺はハルヒに嫌われてでもこの能力を消す覚悟はしてるぜ、古泉)



41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 20:56:42.20 ID:z2wv/BWZo

キョン(午後の授業が始まったが、俺は一向に授業に傾注することはできない。黒板には歴史上の人物とそのときの出来事が羅列しているが、ノートをとるきにもなれない)

ハルヒ(無難に好みは聞いておこうかしら。いや、そこを聞くのはダメよね。キョンのことずっと見てきたわけだし、そこを分かってないとキョンだってガッカリしちゃうかもしれないし)

キョン(既に30分以上は、弁当について脳内会議をしてないか?)

ハルヒ(深く考えることはないわよね。キョンのお弁当をつくるだけなんだし)

キョン(そもそもお弁当は放課後の課題をクリアしてからではなかっただろうか)

ハルヒ(だからって、妥協はできないわ。あたしはいつだって全力なんだから!)

ハルヒ(今日の夜に下ごしらえをして、朝は5時に起きないと)

キョン(後ろのハルヒがどんな顔をしているのかがとても気になるが、振り返る勇気はない)

ハルヒ(うー……やっぱ聞いちゃおうかなぁ……魚がいいか、お肉がいいか……)

ハルヒ(ちょっとメモ用紙に要望を書いてもらっちゃおうかしら)

キョン(もはや、どちらでもいい。ハルヒがここまで真剣になってくれているだけで十分だ)

ハルヒ(これを渡すだけ……渡せば完璧なお弁当が作れる……)

キョン(渡すのか、ハルヒ)

ハルヒ(……やっぱり、やめよう!! 自分の日頃の観察眼を信じればいいだけじゃない!! キョンにいちいち要望なんて聞いてなんてられないわ!! キョンも調子にのっちゃうしね!!)

キョン(頑張れ、ハルヒ。ありがとう、ハルヒ)



42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 21:04:35.02 ID:z2wv/BWZo

キョン(全ての授業の終了を意味する鐘の音が鳴ると、真後ろの席が一気に騒がしくなる。俺の脳内はずっと騒がしかったが)

ハルヒ「さぁ、キョン!! 部室に行くわよ!!」

キョン「お、おう。そうだな」

ハルヒ「とーっておきのことしてもらうわよ。SOS団にとって有益なことではあるけど、アンタ一人にできるかしらねぇ」

ハルヒ(部室の掃除だけよ!! 頑張りなさい!!)

キョン「ああ。やらせてもらう」

ハルヒ「やる気満々じゃない。感心感心」

ハルヒ(キョンも可愛いところあるじゃない。あたしのお弁当、期待してるのね)

キョン(期待しないわけにはいかなくなってるからな)

ハルヒ(期待してるのか……。だったら、下手なものは作れないわね……)

キョン「なぁ、ハルヒ」

ハルヒ「なに?」

キョン「できれば、ハンバーグなんかを入れてくれると嬉しい」

ハルヒ「はぁ? そんなこと言える立場なの? まだお弁当を作るかどうかも決まってないんだからね。あたしに注文なんて10年早いわ」

ハルヒ(ハンバーグ!! よし、ハンバークね!! わかったわ、キョン!!)



44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 21:12:04.14 ID:z2wv/BWZo

ハルヒ「いやっほー!!!」バーンッ!!!!

朝比奈「ひゃぁ!?」

キョン(部室の扉が勢いよく開いた先にはマイエンジェル朝比奈さんと本を読む長門がいた。古泉はまだみたいだな)

ハルヒ「みくるちゃん、あっつーい、お茶いれて!」

朝比奈「はぁーい」

ハルヒ「有希、調子はどう?」

長門「別に」

ハルヒ「そう! それはよかったわ!」

ハルヒ(特製ハンバーグにしなきゃね! キョンから希望を聞けるなんて思ってなかったわ! 想いは信じれば届くのね!)

朝比奈「キョンくん、キョンくん」

キョン「なんでしょうか」

朝比奈「涼宮さん、とても機嫌がいいですね」

キョン(そりゃいいでしょうねぇ。悩んでたことが解決したんだから)

ハルヒ(む……。キョンめ、まーたみくるちゃんとコソコソ話してる……)

ハルヒ「こら! キョン!! お茶をいれてるみくるちゃんの邪魔をしないの!!」



45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 21:23:44.69 ID:z2wv/BWZo

朝比奈「す、すみませぇん」

キョン「俺と朝比奈さんが話してちゃいけないのか」

ハルヒ「いけないに決まってるでしょ」

ハルヒ(みくるちゃんは可愛いんだから)

キョン(ちょっとした会話でもハルヒは気になっていたのか)

キョン「すまん。ハルヒ。今は朝比奈さんがお前の機嫌が良いから嬉しいという報告を受けただけだ」

ハルヒ「ふぅん。あっそ」

ハルヒ(その程度ならいいか)

キョン(別に朝比奈さんと何を話そうがいいだろうに)

朝比奈「どうぞ、お茶です」

ハルヒ「ありがとう」

ハルヒ(みくるちゃんはいつもメイド服だし、あたしもそろそろ部室内ではバニーガールで過ごそうかしら。そしたらキョンも喜ぶかもしれないもんね)

キョン(喜びはするが、そこまでは求めてないからな)

ハルヒ「うー……」

ハルヒ(けど、コスプレはみくるちゃんの役目だし、あたしもみくるちゃんぐらいロリ萌えな感じがあればよかったのに)



47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 21:41:21.92 ID:z2wv/BWZo

キョン「……で、いつハルヒの試験が始まるんだ」

ハルヒ「そうだったわ!」

ハルヒ(早くキョンに合格っていわなきゃ)

キョン(合格なのか)

ハルヒ「今からキョンにある課題を与えます!!」

朝比奈「へぇ? 何をするんですかぁ?」

ハルヒ「安心して、みくるちゃん。これはキョンにだけだから」

朝比奈「キョンくんにだけですか」

ハルヒ「キョンが本当にSOS団に相応しいかどうかのテストでもあるのよ」

ハルヒ(お弁当、美味しいっていってくれるわよね……)

キョン(緊張してるのか)

ハルヒ「さぁて、キョン。あたしがどんな課題を用意したかわかる? わかんないでしょうねぇ」

キョン「部室の掃除でもするのか?」

ハルヒ「違うわよ!! そんなこと簡単なことで合格できると思ってるわけぇ!?」

ハルヒ(あぁー!! しまったー!! なんでキョンは的確に図星をついてくるわけ!? 反射的に否定しちゃったじゃない!! あたし、バッカじゃないの!? どうしよう……)



48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 21:49:49.27 ID:z2wv/BWZo

キョン(マズイ……。つい言っちまった……。すまん、ハルヒ)

ハルヒ(掃除がダメってなると……他になんか、誰にでもできそうな……うーん……)

長門「……」

朝比奈「涼宮さん、どうしたんですか?」

ハルヒ「キョンにはあれよ!! 今からみくるちゃんの新衣装の撮影会をするから、そのカメラマンになってもらうわよ!!」

朝比奈「えぇぇぇ~!?」

ハルヒ(これしかないわね……。本当ならカメラマンは古泉君にしてもらいたかったけど)

キョン「どうしたら合格になるんだ」

ハルヒ「勿論、あたしが満足できる写真を撮ることができればよ」

キョン「どうしたら満足するんだ?」

ハルヒ「んなもん、決まってるでしょ。みくるちゃんの可愛さが写真からでもモーレツに伝わるような奇跡の一枚が10枚は欲しいわね」

ハルヒ(キョンにカメラマンをさせるなら、あたしがモデルになりたいぐらいなのに)

キョン(朝比奈さんを着せ替え人形か何かと思ってるわけじゃないのか。それに被写体になりたっていう願望まであったのかよ)

キョン「……なぁ、ハルヒ。提案なんだが、朝比奈さんの写真は古泉に任せるとして、俺はお前の写真をとるっていうのはどうだ?」

ハルヒ「へ?」



50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 21:59:29.60 ID:z2wv/BWZo

キョン「どういう目的の撮影会かは知らんが、別にお前でも問題はないんだろう」

ハルヒ「何いってるのよ!! アホキョン!! みくるちゃんを撮りたいの!! あたしじゃ意味がないのよ!!」

ハルヒ(いきなり何を言い出すのよ。びっくりするじゃない。あたしをモデルにしたいって、なによそれ、嬉しいじゃない)

キョン(一応、喜んでるのか)

キョン「朝比奈さんの写真は結構あるしな。ハルヒか長門の写真があってもいいと思うが」

ハルヒ「だから、あたしはみくるちゃんがいいんだってば」

ハルヒ(食い下がってきた……。キョンってあたしのこと撮りたいのかしら……)

キョン「俺はお前のことを撮りたいがな」

ハルヒ「な……!?」

ハルヒ(意味わかんない!! あたしはみくるちゃんを撮りたいっていってるのに!! なんでそこであたしを撮りたいってなるのよ!? おかしいわ!!)

ハルヒ「いや、その、べ、別にあたしでもいいけど、みくるちゃんがコスプレする役目を担ってるわけだし」

キョン「嫌か?」

ハルヒ「キョンがどうしても撮りたいっていうなら、別にいいけど?」

ハルヒ(キョンがどうしても撮りたいっていうなら、撮りなさいよ!!)

キョン(心の声と一致するときもあるのか)



51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 22:04:55.98 ID:z2wv/BWZo

ハルヒ「い、衣装はどれにするの?」

ハルヒ(メイド服とかきてみたいけど……)

キョン「メイド服でいいんじゃないか」

ハルヒ「な……!?」

ハルヒ(なにこれ……! どうしたっていうの……。今日に限って、キョンにあたしのことが全部伝わってる気がする……)

キョン(ついに感付き始めたか)

ハルヒ(なんで……? キョンって、ここまであたしのこと理解してたのかしら……? いや、でも、今まで何度もアピールしてもキョンに伝わらなかったし……)

キョン(アピール? 何をアピールしてたんだ)

ハルヒ「メイド服ね。みくるちゃん、それ脱いで」

みくる「は、はぁい」

ハルヒ「キョンは出て行って!!」

キョン「わかったよ」

長門「……」

キョン「長門も外にいくのか?」

長門「……」コクッ



53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 22:11:35.05 ID:z2wv/BWZo

朝比奈『ああぁ!! やめてくださぁぁい!! 涼宮さぁぁん!!』

ハルヒ『いいからぬげー!!』

ハルヒ(可愛い下着つけてるわね。花柄でいいじゃない。にしてもやっぱりおっぱいおおきいわー)

キョン(ハルヒよ。頼むからそういうことは思わないようにしてくれ)

キョン「はぁ……」

長門「……」

キョン(長門の透き通る双眸が俺に向けられている。心配してくれているのかもしれん)

キョン「大丈夫だ、長門。まだな」

長門「そう」

古泉「貴方が少し部室から離れたらいいのでは?」

キョン「そうするか。古泉、遅かったな」

古泉「すみません。清掃当番でしたので」

キョン「こっちは相変わらずだが、ハルヒは気づきかけている」

古泉「ほう。早速、アプローチをかけたわけですか」

キョン「だらだらと引き延ばしたくもないからな」



55: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 22:23:38.37 ID:z2wv/BWZo

古泉「くれぐれもやりすぎないようにお願いします」

キョン「分かってる」

キョン(嫌われたときは、土下座ぐらいしてやるよ)

古泉「長門さん、音波の解除はやはり時間短縮とはいきませんか」

長門「大幅な短縮はまず不可能。これは涼宮ハルヒから生まれた情報因子が原因」

キョン「長門のボスでも解析できないんだもんな、ハルヒのトンデモパワーは」

古泉「では、涼宮さんの力を利用するしかありませんか」

長門「ない」

キョン「なんだ古泉、不安か」

古泉「貴方と涼宮さんを信じていないわけではありませんが、可能性が残されている以上この不安感は拭い切れません」

キョン(怖いのは俺も同じだけどな。最悪、SOS団に居ることができなくなるかもしれねえし)

古泉「能力との共存、視野にも入れてはもらえませんか」

キョン「結局、諦めてなかったのか。もう一つの選択肢ってやつを」

古泉「誰も不幸にはならない道かと思いますが」

キョン「何度も言うが、こんな能力はいらん」



56: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 22:28:33.61 ID:z2wv/BWZo

古泉「それは何故でしょう?」

キョン(何故って、それは多分……)

ハルヒ「もういいわよー!」

古泉「答えは後ほど」

キョン「分かった」

古泉「ちなみに今、涼宮さんは何を思っていらっしゃいますか?」

キョン「……」

ハルヒ(キョン、似合ってるって言ってくれるかしら……)

古泉「ずばり、貴方への評価を気にしているのではありませんか」

キョン「大外れだ」

古泉「おや、残念」

キョン「入るぞ」

ハルヒ「じゃーん!!」

キョン「よく似合ってるぞ、ハルヒ」

ハルヒ「あったりまえじゃない。あたしは何を着ても着こなせるんだからね」



57: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 22:38:59.46 ID:z2wv/BWZo

ハルヒ(キョンが褒めてくれたわー! これからメイド服はあたしの制服にしちゃおっと!!)

キョン(それはそれで困るな。朝比奈さんのメイド服だって見たいんだが)

ハルヒ「それじゃ、早速撮りましょ! ポーズきめるから、好きなところから撮っていきなさい」

ハルヒ(これでキョンがあたしのどこを最初に見ているのかわかるかもしれないわね)

キョン(よからんことを考えてやがるな)

ハルヒ(男は胸とかお尻が好きっていうけど……。キョンはどこが好きなのかしらね)

キョン「正面から撮るぞ」

ハルヒ「顔のアップから?」

ハルヒ(顔が好きなの?)

キョン「全体だな。お前の全体を撮っておきたい」

ハルヒ「全体なんて最後でいいじゃない。まずはやっぱりどこかのアップから撮るべきよ」

キョン「お前の全身がいいんだよ」

ハルヒ「ふぅん。そうなの。なら、好きにしなさいよ」

ハルヒ(全部好きってことね!!! キョンって、あたしに惚れてるんじゃないの!? でも、だったら、普段もっと優しくしてくれてもいいのに)

キョン(どうだろうな)



58: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 22:47:22.26 ID:z2wv/BWZo

キョン(計35枚の写真を撮ったわけだが……)

ハルヒ「うーん……」

朝比奈「これなんてよく撮れてませんかぁ」

ハルヒ「そうね。まぁまぁってことか。点数にするとこれは74点ってとこね。次はー」ピッ

ハルヒ(おぉ!? キョンってば、これすごく丁寧に撮ってるじゃないの……。こっちは100点)

キョン「おい、ハルヒ。今のは何点だ?」

ハルヒ「はぁ? 10点よ、10点」

ハルヒ(100点よ! 文句あるわけ!?)

キョン「そうか。自信あったんだがな」

ハルヒ「図に乗らないで。ふんっ」

ハルヒ(あとで保存ね)

古泉「読みすぎてはいませんか?」

キョン「まだ完全に気づいているわけじゃない。もう少し踏み込んでもいいぐらいだろ」

古泉「……わかりました。この一件は貴方に預けるしかありませんから」

キョン「悪いな」



59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 22:58:22.17 ID:z2wv/BWZo

ハルヒ「それじゃ、今日はここまでにしましょうか!」

ハルヒ(今日はなんだか、楽しかったー)

朝比奈「涼宮さん、とってもうれしそうですぅ」

古泉「余程、良い写真を撮ってもらえたのでしょう」

キョン(そりゃあ、全部ハルヒの希望通りの角度から撮ったからな)

ハルヒ「みんなー、かえるわよー」

ハルヒ(さーて、帰りにたくさん買わないとね)

キョン「ハルヒ」

ハルヒ「なによ」

キョン「いや、聞いてなかったと思ってな」

ハルヒ「何を?」

キョン「結局、合格だったのか?」

ハルヒ「ああ。ギリッギリの合格よ。あと10点足りなかったら、お弁当はなしだったわね」

ハルヒ(ハンバーグのソースはどんなのがいいかしら。そうだ。調味料もいるわね。家にあるの切らしてたし。そうなると結構多いわね)

キョン(多いのか)



60: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 23:10:11.76 ID:z2wv/BWZo

朝比奈「お弁当って?」

キョン「ああ、合格したからハルヒのやつが手作りの弁当を作ってきてくれるってことになっているんです」

朝比奈「そうだったんですか。そうだ、でしたらも私のお手製お弁当もいかがですか? みんなでおかずの交換なんてどうでしょう?」

ハルヒ「む……。いいわね。みくるちゃんのお弁当も気になるし」

ハルヒ(がおー!)

キョン「朝比奈さん、お気持ちは嬉しいですけどまた次の機会にお願いします」

朝比奈「そうですかぁ」

キョン「明日はハルヒの弁当を楽しみたいんで」

ハルヒ「……」

朝比奈「そっかぁ。そうですよね。ごめんなさい」

キョン「いえいえ。こちらこそ」

ハルヒ「あたしは別によかったのに」

ハルヒ(今日のキョン、ホントなんかいつもと違うわね)

キョン「楽しみにしてるのは本当だからな」

キョン(今更、二人の約束を破ろうって気にはならない。朝比奈さんの申し出を断るのは心が痛んだが)



64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 23:31:53.99 ID:z2wv/BWZo

ハルヒ(買う物は――)

キョン(ハルヒの脳内買い物リストにはかなりの量が書き込まれている。恐らく、弁当分だけでなく今日の夕食分も入っている)

ハルヒ「それじゃあ、あたしはこっちから帰るから」

古泉「はい、また明日」

朝比奈「さようなら」

長門「……」

ハルヒ(さーて、気合入れないとね。でも、どう考えても多すぎるわよね。ここでキョンが家まで送ってやろうかーなんて声をかけてくれたら、一緒に買い物とかもいけるんだろうけど)

ハルヒ(そこまで都合よくはいかないか)

キョン(それが今は起こるんだぜ、ハルヒさん)

キョン「ハルヒ」

ハルヒ「なによ? まだ帰らないの?」

キョン「家まで送ってやろうか?」

ハルヒ「はぁ? どういう風の吹き回しよ。いつもそんなこといわないじゃない」

キョン「ただの気まぐれだ」

ハルヒ「別にいいわよ。子どもじゃないんだから一人で帰れるわ。じゃあね」



67: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/27(火) 23:40:07.37 ID:z2wv/BWZo

ハルヒ(そーじゃないでしょ、あたし!! いい加減にしなさいよね!!! このバカハルヒ!!!)

キョン「待て」

ハルヒ「な、なんなのよぉ。今日の貴方、なんか、ちょっと様子が変よ?」

ハルヒ(あたしのこと、めちゃくちゃ察してくれすっごく幸せなんだけど……)

キョン「それはお前と出会って1年が経つんだ。お前の考えてることだって、なんとなくわかる」

ハルヒ「そう、なの?」

キョン「買う物、多いんじゃないのか?」

ハルヒ「そ、それは……」

ハルヒ(ホントに!? あたしのことをこんなに分かってくれる人、いなかった……)

キョン「荷物持ちぐらいならするぞ」

ハルヒ「あ、あれよ、これはあたしから命令したわけじゃないんだから、お弁当を豪華にするとか、そういうのはできないわよ」

ハルヒ(ハンバーグ、ちょっと大きめにはしてあげるけど)

キョン「そんなの期待するかよ」

ハルヒ「ふんっ。ほら、とっとといくわよ!」

ハルヒ(なんでありがとうって言えないんだろう……あたし……)



79: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/28(水) 20:13:15.96 ID:Olkw52hEo

キョン(周辺住民はここでしか買えないのかというほど、スーパーマーケットの中は賑わっていた。現在、午後6時過ぎ。サラリーマン風の男性がお惣菜コーナーにいたりする時間帯だ)

キョン(入店すると同時に俺はカートと籠を二つを手にする。購入量から言えば、まだ心許ないぐらいだ)

ハルヒ「……」

ハルヒ(あ、先にカゴを持たれちゃったわね)

キョン「どうした、ハルヒ? 行かないのか?」

キョン(聞かなくても今の俺には分かってしまうが)

ハルヒ「キョン、こっちよ。出来合いのモノには興味ないんだから」

ハルヒ(ありがとう……っていうタイミング、逃した……)

キョン「分かってるよ」

キョン(どうやらハルヒは心の中でしかお礼を言えないようだ。今までも胸中では感謝しているときがあったんだろうな)

ハルヒ「まずは……」

ハルヒ(挽肉ね!)

キョン「……何を買うんだ?」

ハルヒ「は? あんたの気にすることじゃないでしょ。あたしが作るんだから、何を作ろうとあたしの勝手でしょ」

ハルヒ(ハンバーグを作るって言うのは、なんか恥ずかしいわね。あたしに注文は10年早いって言っちゃったし……)



80: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/28(水) 20:21:57.49 ID:Olkw52hEo

キョン「カゴに入っていく食材で弁当の中身を想像するか」

ハルヒ「ふんっ。キョンごときに分かるわけないでしょ」

ハルヒ(挽肉からカゴに入れると、作る料理が絞られちゃうから、あえてお弁当には関係ないモノから入れるしかないわ。都合よく、家の夕食分も買うつもりだったしね)

キョン(随分と姑息な手を使うんだな、ハルヒ)

ハルヒ「まずはこれよ!! 野菜ジュース!!」

ハルヒ(お母さんが大好きな奴!!)

ハルヒ「さぁ、どんなお弁当を作ると思う?」

キョン「料理に使うのか?」

ハルヒ「ふっふーん。さぁ、使うかもしれないわよ。野菜カレーなんかにも使ったりするしね」

キョン「弁当にカレーはやめてくれ。匂いで大変なことになるぞ」

ハルヒ「それはそれで面白いかもしれないわね」

ハルヒ(絶対にしないけど)

キョン(安心した)

ハルヒ「次はこっちよ。早くきなさい」

キョン「はいはい」



81: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/28(水) 20:30:47.19 ID:Olkw52hEo

ハルヒ「卵は買っておかないとね。ねえ、キョン? どっちの卵がいいと思う?」

キョン「何か違うのか?」

ハルヒ「はぁ? あんたの目は節穴なの? 色と値段が全然、違うでしょ」

キョン「それは分かるが。まぁ、値段が違えば味も違うんだろうな」

ハルヒ「そういうことね。卵焼きなんかにしたときに違いが一番わかるのよ。良い卵はふわってなるし」

キョン「そういうもんか」

ハルヒ「……興味なさそうね」

ハルヒ(男にとっては退屈なのかしら……)

キョン「いいや。割と心から楽しんでるぞ。お前とこうしてゆっくり食材を買うなんて機会はなかったしな」

ハルヒ「あっそ。別にどうでもいいけど」

ハルヒ(お世辞でもそう言ってくれるのは、嬉しいわ)

キョン「言っておくがお世辞じゃないからな」

ハルヒ「聞いてない」

ハルヒ(何よ。そこまで言われたら、本気にしちゃうじゃない)

ハルヒ「それじゃあ、次、行くわよ!! キョン! ぼやぼやしない!!」



82: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/28(水) 20:41:20.56 ID:Olkw52hEo

ハルヒ「ほら! あっちにお買い得なものがあるのよ!」グイッ

キョン「腕を引っ張るな。危ないだろうが」

ハルヒ「つべこべ言うな! キョンのくせに!」

キョン(心の声が聞こえてしまう分、何を言われても腹が立つことはない。卑怯だぜ、ハルヒ)

ハルヒ「ふんふーん」

ハルヒ(今のあたしたちって、傍から見ればどう見えるのかしら……? 同じ学校の制服きた男女がこの時間に買い物してるなんて……)

ハルヒ「……」

キョン(ハルヒがちらりと視線を向ける。この声に反応してもいいものかどうか悩む)

ハルヒ(部活の打ち上げで使う食材を買いあさる部員と女子マネージャーって感じでは到底見えないはずだし)

キョン(それはないだろうな)

ハルヒ(やっぱ、恋人同士に見えたりするのかしら……同棲してるぐらい仲良くみえてはないとおもうけど……)

キョン「ハルヒ?」

ハルヒ「な、なによ!? 急に話しかけんな!」

キョン「悪い。ふと、思ったんだが、今の俺たちは周囲からはどう見えてるんだろうな」

ハルヒ「は? そうね、部活の打ち上げで使う食材を買いあさる下っ端部員と部内最高権力を持つ女子マネージャーって感じかしら」



83: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/28(水) 20:50:55.68 ID:Olkw52hEo

キョン「なんだ、そうか」

ハルヒ「なに? もしかして、恋人同士に見えてるとか思ってたわけ? そんな妄想しないでよね」

キョン「そうだな。俺が少し舞い上がってただけだ」

ハルヒ「気持ち悪いんだから」

ハルヒ(ごめん、キョン。人のこと言えないのに)

キョン(気持ち悪いとまではいうことないだろうに。謝っているから許すが)

ハルヒ(それにしてもキョンも同じようなこと考えてたってことよね……。少なくとも、キョンはあたしのこと意識してるってこと……?)

キョン(意識しなくてもお前の声が脳内で響いているからな)

ハルヒ(今日は、もしかしたら言えるかも……)

キョン(何をだよ)

ハルヒ(こいつなら、きっと、大丈夫だとは思うけど、あたしから言うのは、何か癪なのよね……。今までだって、男から言ってくれてたし)

キョン(何の話だ、これは)

ハルヒ「あ、これよ。これが欲しかったの。挽肉。これがないと始まらないわ」

ハルヒ(キョンはみくるちゃんや有希にばっかり優しいし……ホントのところは、どうなのかわかんないし……。あーもー!! バカキョン!!)

キョン(この野郎。何関係ないところで俺を罵ってやがるんだ)



86: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/28(水) 21:01:36.66 ID:Olkw52hEo

キョン(心ここにあらずとはこのことを言うのだろう。目の前のハルヒは真剣に食材を吟味しているが、心の中では全く別の事柄で詰まっている)

ハルヒ「次は玉ねぎよ!!」

ハルヒ(キョンはあたしのことどう想ってるのよ……。毎回、アピールしたって、気づいてくれないし……興味がないのかも……)

キョン(アピール。そういえば部室でもそんなことを言ってたな)

ハルヒ(まぁ、確かにあたしのアピールの仕方が悪かったのかもしれないけど)

ハルヒ「これぐらいで十分ね。キョン、行くわよ」

キョン「おう」

ハルヒ(けど、少しぐらい気がついてくれてもいいじゃない……アホキョン……)

キョン(何に気が付けばいいんだ。今のところ気が付けたのは、お前が外見も中身も美少女だったってぐらいだが)

ハルヒ「キョンが奢ってくれるの?」

キョン「……わかったよ」

ハルヒ「じょ、冗談よ!! 何、本気にしてるわけ!?」

ハルヒ(じょ、冗談よ!! 何、本気にしてるわけ!? ここまで付き合ってくれたお礼をしたいぐらいなのに!!)

キョン「のってやっただけだ」

ハルヒ「んが……!? だったら、もっと分かりやすくノリなさいよね!!」



88: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/28(水) 21:13:03.05 ID:Olkw52hEo

キョン(会計を終えると、今にも破裂しそうな白いビニール袋が3つ並んだ。さて、液体モノが入っている袋が一番重いことになるが)

ハルヒ(流石に飲み物が入ってるのはあたしが持たないとね)

キョン「これは俺が持つ」

ハルヒ「な……」

ハルヒ(分かっててやってるの? なんで、こんなに優しいのよ……)

ハルヒ「あら、殊勝な心掛けね。一番重いのを自ら選ぶなんて、雑用としての意識が芽生えてきたかしら」

キョン「そうだな。お前はこれを持ってくれ」

ハルヒ「……ふんっ。ほら、いくわよ」

ハルヒ(軽い……。ありがとう、キョン……)

ハルヒ「って、もしかしてあたしの家まで来る気?」

キョン「ダメなのか?」

ハルヒ「勝手にしたら?」

ハルヒ(家まで一緒……家まで……。そうよ、夕飯に誘っちゃえばいいんじゃない? あたしってば天才!!)

ハルヒ「……」

キョン(脳内では夕飯勧誘作戦が展開されているようだが、少し前を行くハルヒは黙々と歩を進めるだけだった。そういえば、こいつの家に行くのは2回目になるな)



91: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/28(水) 21:23:38.67 ID:Olkw52hEo

キョン(結局、殆ど会話もなくハルヒの自宅前に到着した。ただ、夕飯勧誘作戦は完璧なものに仕上がっている)

ハルヒ(第一関門ね。ここでキョンが「重いから家の中まで運んでやるぜ」っていうのよ。そしたらあたしが「あっそ」って言って、自然な流れでキョンを家の中に招く)

ハルヒ(台所に着いたらエプロンをつけて「折角だから食べて行けば?」ってキョンを誘う。で、キョンは「いいのか?」っていう。絶対に言う。言ってくれないと困る)

ハルヒ(そしてあたしは「食べたきゃ食べさせてあげるけど?」って言うと思う。キョンは「なら、頂く」っていう。多分、言うはず)

ハルヒ(で、あたしの料理の味でキョンはあたしを見直す。完璧ね)

キョン(もう随分と見直してるがな。さて……)

ハルヒ「着いたわね」

キョン「そうだな」

ハルヒ「……」

ハルヒ(言え!! 言うのよ!! 「重いから家の中まで運んでやるぜ」って!!)

キョン(悪いがハルヒ。そこまでやっちまうと違う意味で面倒になるだろうし、何より捨て身の作戦はまだ早いんだ)

キョン「ほら」

ハルヒ「え?」

キョン「あとは一人で運べるだろ」

ハルヒ「あ、うん」



92: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/28(水) 21:32:28.71 ID:Olkw52hEo

キョン「それじゃあな」

ハルヒ「また明日ね」

ハルヒ(作戦変更よ!! あたしが誘っちゃえばいいのよ!!)

キョン(そうだな。そうなると俺も断る勇気はない)

ハルヒ(言え!! ちょっと待ってっていうのよ!! あたしが言えばキョンだって……!!)

キョン(悲痛な声が聞こえる。後ろ髪を引かれる思いだが、ハルヒの思い通りに行動しすぎるのは危険すぎる)

ハルヒ(言え!! 言いなさいよ!! キョン――)

キョン(ハルヒの声がプツリと途絶えた。領域外まで来たようだ)

キョン(肩越しに後ろを見ると、ハルヒがまだ自宅前に立っているのが見えた)

キョン(まだ迷ってるのか? 悪いことしたな)

キョン(十数歩歩いたあとに、また後ろを見てみる。そのときにはもうハルヒの姿はなかった)

キョン「やれやれ……」

キョン(心の声が聞こえるってのは想像以上に厄介だな)

キョン(ハルヒに対してここまで強烈な罪悪感を抱いたのは初めてかもしれん)

キョン(明日、どんな顔で会えばいいんだろうか)



94: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/28(水) 21:45:02.92 ID:Olkw52hEo

キョン(翌日。長い坂道を重い足取りで進む。単純に坂道で足が疲れたわけではなく、教室に行くのが億劫なだけだ)

キョン(ハルヒのやつが俺の顔を見て、どんな声を出すのかが怖いな)

キョン(何かの奇跡で扉が開かなかったら言い訳もできるのにな。などと思いながら教室のドアをスライドさせた)

ハルヒ「あら」

ハルヒ(キョン!)

キョン「よう」

ハルヒ「いつもながらだらしのない顔ね。朝なんだからしゃきっとしなさいよね」

キョン「悪かったな」

ハルヒ「そうそう約束通り作ってきたわよ」

ハルヒ(朝4時に起きて作ってきたけど……キョンの口に合うかしら……)

キョン「弁当か? 楽しみだな」

ハルヒ「度肝抜いてあげるわ」

ハルヒ(味見もちゃんとしたし、味には自信あるけど、こればっかりは味覚の問題だし)

ハルヒ「まぁ、あたしの高尚な料理についてこれる味覚をキョンが持っていればの話だけどね!!」

キョン(そうやって心に保険をかけてやがるのか)



95: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/28(水) 22:03:14.36 ID:Olkw52hEo

キョン(昨日のことは昨日のこととして、しっかり切り替えている。実にハルヒらしい。だが、授業中、俺の脳内に入ってくるのは古文文法ではなく、ハルヒの煩悶の声だった)

ハルヒ(調味料だって分量を間違ってはないし、万人に受ける味付けになってるはずだし)

ハルヒ(けど、キョンに受けるかはわからないわよね……満足してくれるの……?)

ハルヒ(ねえ、キョン)

キョン(何度、名前を呼ばれたことか。いっそのこと振り返って、美味いに決まってるだろうよと叫びたくなる)

キョン(そんなことをしてしまえば、俺が変人扱いを受ける羽目になるのは明らかだがな)

ハルヒ(やっぱり忘れたって嘘つこうかしら……)

キョン(おいおい。こっちはかなり楽しみにしてんだぜ。それはやめてくれ。追及もできないだろうが)

ハルヒ(ダメよ。約束を守らないなんて団長として示しがつかないし、キョンも楽しみだって言ってたし)

ハルヒ(あー昼休みが永遠に来なかったらいいのに)

キョン(夏休みの再来かよ!?)

ハルヒ(それだと、いつまでたってもキョンにお弁当を食べてもらえないわね……。お昼は来てくれなきゃ困るわ)

キョン(昨日のテロリスト襲来未遂といい、北高は何度も未曾有の危機に晒されていたのかもしれん)

ハルヒ「はぁ……」

キョン(溜息一つにも色んな感情が混じっていることを俺は今日、学ぶことができた。古文のことはもう知らん。中間テストで勝手に震え上がっていればいい)



96: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/28(水) 22:15:37.16 ID:Olkw52hEo

キョン(そうして昼休みが来た)

ハルヒ(来ちゃったわね……)

キョン(覚悟を決めたとハルヒが脳内で呟いている)

ハルヒ「キョン。ついてきなさい」

ハルヒ(部室でないと、堂々と渡せないわね)

キョン「部室だな」

ハルヒ「都合がいいでしょ、お互いにね」

ハルヒ(いや、あたしの都合がいいだけなんだけどね)

キョン「そうだな」

キョン(谷口に冷やかされる前に早足で教室を出ていく。ハルヒの速度は俺よりも少しばかり上だ)

ハルヒ「……」

ハルヒ(美味しいに決まってるじゃない。あたしが作ったんだから。美味しいに決まってるわ)

キョン(呪文のように何度も心で同じ言葉を繰り返す。ハルヒが如何に不安がっているのかが分かる)

キョン(万が一、口に合わなくてもハルヒの弁当に対して不味かったと言える畜生がこの宇宙にいるだろうか?)

ハルヒ(美味しいのよ……絶対……あたしの料理は美味しい……)



97: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/28(水) 22:24:02.67 ID:Olkw52hEo

キョン(部室の扉を開けると、想像通り、誰もいなかった)

ハルヒ(鍵、しっかりかけておかないと)

キョン(今日は突っ込まないでおこう。ハルヒが何故、鍵をかけたいのかもわかるしな)

ハルヒ「さて、お待ちかねのお弁当よ!!」

キョン「開けてもいいか」

ハルヒ「まずは目で味わうのよ。いいわね?」

ハルヒ(見た目は完璧だもん!!)

キョン(なるほどな。弁当はおかずの色が他の食材に移ってしまい、見栄えが良くないときもある)

キョン(ハルヒの弁当にはそれが一切なく、個々の色が輝いているようにすら見える)

ハルヒ「どうよ」

キョン「美味そうだ」

ハルヒ(おっしゃー!!! ほめられたぁー!!!)

キョン「んじゃ、いただきます」

ハルヒ「どーぞ。ふふん。舌がびっくりして文字通り巻いちゃうかもね」

ハルヒ(あ、そんな、まだ心の準備が……)



98: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/28(水) 22:33:37.26 ID:Olkw52hEo

キョン(注文通りのハンバーグが入っているので、それから一口いかせてもらうか)

ハルヒ(ハンバーグから……メインから……いくの……)

キョン(ハルヒの震える声を無視して、ハンバーグを一口サイズにし、舌に乗せた)

ハルヒ「美味しいでしょ」

ハルヒ(美味しいよね?)

キョン「ハルヒよ」

ハルヒ「何よ?」

ハルヒ(不味かった……!?)

キョン「はっきり言って、めちゃくちゃ美味いぞ」

ハルヒ「ふんっ。当然じゃない。あたしが作ったんだから。というか、当たりまえで普通すぎる感想で全然嬉しくないわね。もっと捻った感想を言えないわけ? 料理マンガみたいに」

ハルヒ(うっしゃあぁぁ!! キョンに美味しいっていわれたー!!! あたしの完全勝利よー!!! 敗北ってものを知りたいわね!!)

キョン(眼前のハルヒは俺の感想を鼻で笑い、目に見えないほうのハルヒは恐らくだが踊っている気がする)

ハルヒ「よく味わいなさいよね。もう二度と味わえないかもしれないんだから」

ハルヒ(やった、やった。また作ってあげようかしら)

キョン(不覚にも口元が緩む。笑うな、俺)



100: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/28(水) 22:47:28.90 ID:Olkw52hEo

キョン「マジで美味かった。サンキューな」

ハルヒ「別に。約束だったし」

ハルヒ(お弁当を作るのってこんなに幸せなのね……。明日も作ってくれって、言ってくれないかしら)

キョン(ありがたい話だ。ここまで想われて不幸だと嘆く男はまずいない)

キョン(そして、ハルヒがここまで喜ぶ理由を察せない男もいないだろう)

キョン(思い返せば確かにハルヒはアピールしていたように思えなくもない。俺に対する好意とやらを)

ハルヒ「お茶のおかわり、いる?」

キョン「淹れてくれるのか?」

ハルヒ「特別よ、特別」

ハルヒ(お茶も美味しく淹れよっと)

ハルヒ「ふんふふーん」

キョン「……」

キョン(幸福を感じる反面、気分だけは重くなっていく)

キョン(このままハルヒの心を読み続けるわけにはいかない。俺はこんな能力などいらん。だから、なんとしても治さなくてはならない)

キョン(そのためには『ハルヒに嫌われる』というリスクを負わなくてはいけない……。それは、とても恐ろしいことだな)



103: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/28(水) 23:12:41.02 ID:Olkw52hEo

古泉「無理に治すことはない。そう思い始めているではありませんか?」

キョン(放課後、部室に直行する気にはならず、古泉を誘って中庭に来ていた。が、失敗だったかもしれん)

キョン「そんなことはない」

古泉「僕に相談とは、そのことではなかったのですか」

キョン「お前の方法が本当に上手く行くのか分からなくなったからだ。他意はない」

古泉「最初から貴方は気が付いていたはずです。涼宮さんの好意にも、そして自身の気持ちにも」

古泉「直接心を見たことで強く実感してしまい、困惑したというのもわかりますが、そこまでご自身の気持ちを偽ることはないと思いますよ」

キョン「俺に超能力は必要ない。本心だ」

古泉「そこではありません。一時的にとはいえ、こうして涼宮さんから距離をとったのは、怖いからではないですか。これ以上深みに嵌ってしまうのが。僕としては願ったりなんですがね」

キョン(俺が怖がってるだと? 何言ってやがる)

古泉「涼宮さんはとても素直な人です。けれど、それを表に出すのが不得手なのです」

古泉「だからこそ、涼宮さんは孤立してきた。誰も自分の気持ちには気づいてくれない。自分の考えなんて誰にも分からない。そうやって殻に閉じこもっていました」

キョン(いつか聞いたな。自分がとても普通な人間だってことに気が付いたとかなんとか)

古泉「貴方は理解者の一人。それも初めての理解者です。自分のことをより深く考えてくれる人物に好意を寄せない人はいないでしょう。涼宮さんも例外ではありません。ですから、貴方はどこかで思っていたはずです」

古泉「『涼宮ハルヒは俺のことが好きなのではないか?』と。そして自分も涼宮ハルヒに惹かれていることに気が付いた」



104: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/28(水) 23:27:40.41 ID:Olkw52hEo

キョン「やめろ」

古泉「いいではないですか。このまま深みに嵌っても。きっと涼宮さんは全てを受け入れてくれるはずです」

キョン「何をいってやがる」

古泉「何故、貴方は涼宮さんを好きになることを拒むのですか? 僕からみても両想いは確立しています」

キョン「勝手に話を進めるなよ。俺はこの能力を消したいって言ってるだけで、ハルヒのことが好きとか嫌いとか今は関係ないだろうが」

古泉「心を読む能力を惜しくなるのが怖いのでしょうか」

キョン(くそ。返す言葉が出ない。つまりは、これが答えか)

古泉「涼宮さんの気持ちを知れば知るほど、貴方は涼宮ハルヒに惹かれていく。元々惹かれていたのですから、赤裸々な彼女の本心を知れば無理もありませんね」

古泉「涼宮さんとの関係を崩す可能性があるのですから、やはりその読心術と上手く付き合っていくことを僕は強く勧めます」

キョン「何度も言うがホントに俺はいらないんだ。こんな力なんてな」

古泉「明確な理由を聞かせてください」

キョン(そんなこと、決まってる……)

キョン「ハルヒの何を考えているのか分からないところに、惹かれたからだ」

古泉「おや、なるほど。確かに、涼宮さんの魅力の一つではありますね」

キョン「あいつが何を考えているのかわかったら、そんなの面白くもなんとない」



106: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/28(水) 23:38:55.64 ID:Olkw52hEo

古泉「ですが、その気持ちとは裏腹に、能力の良さも実感している」

キョン(そうなるのかもしれないな。実際、ハルヒの心は俺にとって心地よかった。なんというか、普段の言動からは想像もつかないほど澄んでる)

キョン(橘が佐々木の心象世界をそう表現したこともあったな。今なら共感できるぞ、橘)

古泉「それでも、貴方はその能力を手放したいのですね」

キョン「そりゃそうだろう。大体、俺だけ心を読めるのはフェアじゃないしな」

古泉「お互い、心が読み合える関係ならいいのですか? ふふ、微笑ましいですね」

キョン「うるせ」

古泉「ですが、それは敵わないでしょう。涼宮さんも相当恐れているはずです」

キョン「何がだよ」

古泉「無論、貴方の気持ちを知るのがですよ。涼宮さんも心では貴方が自分に惹かれていると思うこともあるでしょう」

キョン(何度かあったな)

古泉「ですが、大半は「私のことなんてどうせ……」と卑下して考えている」

キョン(何とも言えんな)

古泉「だからこそ、涼宮さんは貴方の気持ちを知りたいとは願わず、自分の気持ちが貴方に伝わることを願った。この度の事象、もし貴方と涼宮さんの立場が逆だったら世界は塗り替わっていたでしょう」

キョン(まぁ、俺の心がハルヒに読まれていたら、全部バレていただろうからな)



109: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/28(水) 23:55:37.03 ID:Olkw52hEo

古泉「奥ゆかしい人です」

キョン「古泉。俺は止めないからな」

古泉「良いのですか。一度離れてしまったら、二度と今の立ち位置には戻れなくなりますよ」

キョン「お前は言ったよな。この能力は神をコントロールすることと同義だって」

古泉「ええ」

キョン「でも、その力はハルヒのトンデモパワーのおかげだ。つまるところ、アイツの思惑通りってことだ」

古泉「ほう。そう考えますか」

キョン「俺はハルヒの我儘に付き合うつもりはない」

キョン(なにより、全部がアイツの手のひらの上っていうのが気に食わん。たとえ、ハルヒは無自覚だとしてもな)

古泉「貴方の決意は伝わりました。僕からいうことは何もありません。貴方の行動が結果的に世界を作り替えることになろうとも、批難はしません」

古泉「神が唯一選んだのは、貴方なのですから」

キョン「神に選ばれたなんて思いたくもないね」

古泉「貴方が涼宮さんを選んでやったと?」

キョン「神とは思わんってことだ。ハルヒは俺にとって、同級生の女子なんだよ。今はな」

キョン(そんな同級生の女子は俺に弁当を作るだけで喜んでやがる。そんな奴の心を読みたいなんて俺は思えないんだよ。どうしてもな)



111: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/29(木) 00:04:05.13 ID:rAe44KnOo

キョン(古泉と二人きりで話すのも飽きたので部室へと向かった。そして部室に近づくと脳内にアイツの声が届き始める)

ハルヒ(キョン、遅いわね。どこいったのかしら。キョンがいなきゃつまんないんだけど)

キョン「……」

古泉「おや、何か嬉しいことでもありましたか?」

キョン「気のせいだろ」

古泉「そうですか」

ハルヒ(キョン、はやくこーい。キョン、まだー?)

キョン「おっす。少し、遅れた」

ハルヒ「あ? 遅刻しておいて、なにそれ? 普通、土下座じゃないの?」

ハルヒ(キョン!)

朝比奈「お茶、いれますね」

ハルヒ「みくるちゃん、遅刻者にそんな施しなんて不要よ!! 副団長の古泉君はいいけど」

ハルヒ(キョンにはあたしが淹れたいぐらいだもん)

キョン「そうだな。いつも朝比奈さんに淹れてもらうのも悪いし、ハルヒが淹れてくれよ」

ハルヒ「はぁ!? なんであたしがキョンの奉仕をしなきゃいけないわけぇ!? ふざけんな!!」



119: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/29(木) 21:02:10.50 ID:rAe44KnOo

キョン(しまった。心が読めるからって、こんなことを言ったらハルヒはへそを曲げるに決まっている)

ハルヒ「気分が悪いわ! みくるちゃん、あたしにお茶をいれて!!」

ハルヒ(淹れてあげられるチャンスだったのに……)

朝比奈「は、はぁい。ただいまぁ」

キョン(そこまで不機嫌にはなっていない、のか?)

古泉「涼宮さん、本日は何をするのでしょうか」

ハルヒ「そうね。うーん」

ハルヒ(特に何もないけど、何もないって言ったら、みんな帰っちゃうし)

キョン(おいおい。暇を持て余すのもたいがいにしておけ。こいつがいつも突拍子もないことをいうのはその場の思い付きだったんだな。まぁ、そこはわかっていたことだが)

ハルヒ(みんな帰るとなると、キョンも帰っちゃうし、それはやだ)

キョン(そこは予想外だな)

ハルヒ「そーだ!! 本日の議題は!! 今度の不思議探索で個々のテーマを決めましょう!!」

ハルヒ(思いつきにしては良いテーマだわ!)

キョン(自画自賛してやがる)

朝比奈「テーマってなんですか?」



120: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/29(木) 21:13:00.38 ID:rAe44KnOo

古泉「個々のテーマ。つまり、不思議探索において、一つの目的を持てということですか」

ハルヒ「いいわね、古泉君。その通りよ。やっぱり副団長はあたしの考えをよく理解してくれているわ」

ハルヒ(古泉君っていつも良い感じに解釈してくれるから、助かるわ)

古泉「お褒めに与り光栄です」

キョン(哀れ、古泉)

ハルヒ「いつもいつも、町をブラブラするだけじゃ不思議は見つからないでしょ」

ハルヒ(あたしはキョンとラブラブしたいけど、って、そんなことあるかー!)

キョン「……」

古泉「眉間に皺が寄っていますよ?」

キョン「気にするな」

ハルヒ「ってわけで、みくるちゃん!!」

朝比奈「はひ!?」

ハルヒ「今度の不思議探索では、どういったテーマを持って臨むのかしら?」

朝比奈「えっとぉ……えっとぉ……」

ハルヒ(すごく困ってるわね。ごめんね、みくるちゃん。あたしの考えがまとまるまでちょっと時間を稼がせて)



121: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/29(木) 21:22:12.29 ID:rAe44KnOo

ハルヒ「ちょっと、みくるちゃん? SOS団としての意識が低いんじゃないの? こういうことはパッと思いつくのが普通でしょ」

朝比奈「そ、そうなんですかぁ」

ハルヒ「あたしなんてもう10個はテーマが浮かんでるわよ!!」

ハルヒ(嘘だけど!!)

キョン(バラしたらどういう反応になるのか知りたいが、ハルヒのことだ上手くかわすに決まっている)

朝比奈「あ、それじゃあ、私のテーマは頑張って不思議を探しますっ! で、どうでしょう?」

ハルヒ「はぁ、そんなことでいいと思ってるの?」

ハルヒ(いちいち可愛いわね)

キョン(全くだ)

朝比奈「だ、だめですかぁ」

ハルヒ「次、古泉くん!」

古泉「そうですね。では、僕は探す事象を絞り込みたいと思います。たとえば、異世界に通ずる扉が出現しそうな場所などを重点的に探そうかと」

ハルヒ「うんうん。いいわね。こういうことよ、みくるちゃん?」

朝比奈「べ、勉強になります」

ハルヒ(古泉君みたいなことを言えば、様にはなるわね)



123: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/29(木) 21:36:12.31 ID:rAe44KnOo

ハルヒ「次、有希!」

長門「……ない」

ハルヒ「そう」

ハルヒ(有希はこういうの苦手そうだもんね)

キョン(長門には多くを求めてなかったんだな、ハルヒ)

ハルヒ「んじゃ、キョンは?」

キョン「俺か。不思議は追いかけると、逃げるような気がするからな。向こうからやってくるのを待つスタイルでいこうと思う」

ハルヒ「はい、ダメ。失格」

ハルヒ(キョンって、あたしのやることには一生懸命協力してくれるのに、会議のときはいっつもやる気ないのよね)

キョン「おい、ハルヒ」

ハルヒ「あ? なによ」

キョン「こっちは真剣に考えた末のテーマだ。理由もなしに失格はないんじゃないか?」

ハルヒ(え……ちょっと怒ってる……?)

ハルヒ「うるさいわね。知るか」

ハルヒ(失言だったわ……。キョンなりに真剣だったんだ……ごめん……)



125: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/29(木) 21:48:21.81 ID:rAe44KnOo

キョン(表と裏で真逆の声しか出せないんだろうか)

キョン「で、ハルヒのテーマは?」

ハルヒ(思いついてないし……ここはいつものように……)

ハルヒ「みんなは古泉君を見習って、きちんとテーマを考えるように。1時間ほど、時間をあげるわ」

ハルヒ(キョンのツッコミは無視作戦よ!!)

キョン(なるほどな。いつも俺の発言をスルーするのはそういう作戦を展開していたからか)

ハルヒ(今の内にキョンが感心するようなテーマを考えるのよ!!)

ハルヒ(古泉君ぐらいしか参考にならなかったけど、なんとか捻りだすしかないわね)

ハルヒ(タイムマシンが置いてそうなガレージを探すとか?)

キョン(あるわけない、とは断言できんが、古泉と殆ど変わらねえだろうが)

ハルヒ(宇宙人が毎日過ごしてそうな場所を探し出すとか?)

キョン(探すまでもないだろう。それはここだ)

長門「……」

ハルヒ(くっそー。どれもインパクトに欠けるわね。うーん、どうしたらいいかしら)

キョン(団長は椅子でふんぞり返ってはいるが、その実、かなり焦燥している。不器用なんだか、器用なんだか分からん)



126: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/29(木) 21:58:55.72 ID:rAe44KnOo

キョン(朝比奈さんのお茶を味わっていると、あっという間に1時間が経過していた)

ハルヒ(うーん……怪獣が出てきそうな祠を探し出す……)

キョン(ハルヒは迷走中。全部、実現してくれるなよ)

ハルヒ(もう1時間ね……。でも、誰も気が付いていないみたいだし、このまま終わっちゃおうかしら)

キョン(やれやれ。思いついたときは威勢が良いのに、何も浮かばなければ気配を消すのかよ)

古泉「(1時間を過ぎましたね)」

キョン「(何もいうな。気づいていないフリをしておけ)」

古泉「(仰せのままに)」

ハルヒ「……」

ハルヒ(むぅ……)

キョン(なんだ、ハルヒのやつ、こっちを見つめいてるが……)

ハルヒ(みくるちゃんの淹れたお茶ばっかり、飲んでるわね。なんか面白くないわ)

ハルヒ(こっそりあたしが淹れたお茶でも飲ませてやりましょうか)

ハルヒ(さりげなく、さも自分のお茶を淹れるように動けば、バレることはないはずよ)

キョン(普段の俺なら気が付いていないかもな)



127: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/29(木) 22:18:12.05 ID:rAe44KnOo

ハルヒ「あー、のどかわいたー」

朝比奈「お茶、いれますよ」

ハルヒ「いいのいいの。勝手にやるから」

朝比奈「そうですか……」

キョン(朝比奈さんの心は読めないが、多分『残念……』とつぶやいていることだろう)

ハルヒ「ふんふふーん」

ハルヒ(さりげなく、キョンの分まで淹れて……)

ハルヒ(そして、さりげなくキョンの近くにお茶を置く)

ハルヒ「ねえねえ、古泉君」

古泉「なんでしょうか?」

ハルヒ(ここよ!!)

キョン(置きやがった)

ハルヒ「また今年の夏休みは、どこか孤島とか紹介してくれるの?」

古泉「あはは。そうですね。今から考えておきましょうか」

ハルヒ(完璧ね。さぁ、キョン。あたしの淹れたお茶を味わうがいいわ!! あ、でも、キョンがみくるちゃんの淹れたお茶だって思い込んだら、意味ないじゃない……)



128: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/29(木) 22:59:21.07 ID:rAe44KnOo

キョン(俺にお茶を飲ませるだけで一喜一憂するのか)

ハルヒ(のめー。とりあえず、のめー)

キョン(仕方ない……)

キョン「……」ゴクッ

ハルヒ(飲んだ。次は、気づけー。みくるちゃんが淹れたお茶じゃないことにきがつけー)

キョン「ん? 朝比奈さん?」

朝比奈「なぁに?」

キョン「いつもとお茶の味が違う気がしますけど、お茶の葉を変えましたか?」

朝比奈「いいえ。そんなことないけど」

キョン「そうですか」

ハルヒ(おぉ!! やっぱり、あたしが淹れると美味しくなるのよね。……キョンに伝わって、よかった)

ハルヒ(おかわり、いる?)

キョン(直接、言えよ)

ハルヒ「はー、おもしろいことないかしら」

ハルヒ(今日は最高に気分が良い日だわ!!)



130: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/29(木) 23:06:33.90 ID:rAe44KnOo

キョン(結局、ハルヒの不思議探索におけるテーマは発表されることなく、下校と相成った)

ハルヒ「それじゃ、みんなー! またあしたねー!!」

ハルヒ(日記でもかこーっと)

キョン(日記を書いてるのか、あいつ)

古泉「とても上機嫌ですね」

朝比奈「うん。ずっとニコニコしてる涼宮さんなんて初めて見たかも」

古泉「イベント中などでは表情を崩す時間は多かったですが、終始破顔状態の彼女は珍しいです」

キョン(正直、お茶の味に違いなんて何も感じなかったがな)

古泉「僕たちの知らないところで、涼宮さんの機嫌をとったのですか」

キョン「良いだろ、別に」

古泉「はい。涼宮さんの精神が安定していれば、それで構いません」

キョン(ハルヒの俺への想いははっきり言って、幸せ以外の何物でもない)

キョン(だが、ハルヒと別れた後に襲ってくる憂鬱さはなんだろうね)

キョン「考えるまでもないか……。長門、頼みたいことがあるんだが」

長門「なに?」



131: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/29(木) 23:28:35.70 ID:rAe44KnOo

キョン(ハルヒの思考回路が俺限定で垂れ流され初めて丸4日が経ち、週末を迎えた)

キョン(症状が改善されることはなく、アイツの気持ちは際限なく直に伝わってくる。こんなに想われる男も中々いないだろうぜ)

キョン(そして数日を過ごして見えてきたことがある。古泉の提案通り、全ての思惑には乗らず、絶妙なポイントで外す作戦は失敗してると言っていい)

キョン(一緒に買い物をしたときも、弁当をもらったときも、淹れたお茶に反応したときも、ハルヒはただ喜んでいるだけだ。自分の想いが伝わっている喜びをただ噛みしめている)

キョン(そして、今。いつもの喫茶店で、いつものように俺のおごりであるが、ハルヒはこう言っている)

ハルヒ「どれにする、みくるちゃん」

朝比奈「ええと、そうですね……」

ハルヒ(今日でキョンのおごりの総合計が10万円を超えちゃうわね……。どうやって返そうかしら……。現金のほうがいいわよね……? けど、現金で返すのも違う気がするし)

キョン(きっちり計算していたらしく、何らかの形でお返しまでしてくれるという。なんでそんな裏でコソコソしてやがるんだ)

ハルヒ(お弁当とかもっと作ったほうがいいかしら。といっても、あたしのお弁当なんて原価200円もしないし……。500食分のお弁当を食べてもらうしかないっていうの……)

キョン(おい、やめろ)

朝比奈「では、オレンジジュースで」

ハルヒ「あたしはレモンソーダにするわ!」

ハルヒ(10万円分のお返しなんて、現金以外に喜んでくれることあるの……? あたし自身なら10万円分ぐらいの価値はあるかしら?)

キョン(やっぱ、ハルヒはアホなんだな)



133: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/29(木) 23:40:07.18 ID:rAe44KnOo

ハルヒ「それじゃあ、恒例のくじ引きをしましょ」

ハルヒ(今日こそ、キョンと二人きりになるわよ)

キョン(ハルヒとペアになる確率は本当に低い。古泉曰く――)

古泉「(涼宮さんの本心は貴方とのペアを望んでいますが、理性がそれを拒んでいるのです)」

キョン(ということらしいが)

ハルヒ(ひけー。赤い楊枝をキョンとあたしがひけー)

キョン(ここまで熱望していて、理性で拒んでいるとはどういうことなんだろうか)

ハルヒ(……でも、キョンと二人きりになっても、いつもちゃんと話せないし……結局、口喧嘩みたいなことになっちゃうものね……)

ハルヒ(やっぱり、今日も別にいいわ。キョンとなら学校でも会えるし)

キョン(そういうことだったか。しかしな、今日は付き合ってもらうぞ)

朝比奈「赤くないです」

古泉「僕もです」

キョン「俺は赤だな。長門は?」

長門「……赤色加工を確認できない」

ハルヒ「ふぅん。あたしとキョンね。キョン、足だけは引っ張らないでよ」



139: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/30(金) 00:00:48.30 ID:MG5DASmAo

ハルヒ(おっしゃー!! キョンとだー!! でも、何を話そうかしら……)

キョン(すまん、長門。つまらんことで頼って)

長門「……」

キョン(長門の首がわずかに動く。気にするなと言ってくれているようだ)

ハルヒ(気合をいれないとね)

ハルヒ「班分けも決まったし、さっさと行きましょ」

古泉「涼宮さんはどちらへ向かいますか?」

ハルヒ「そうねぇ。キョンはどうしたい?」

ハルヒ(キョンについていくわよ!)

キョン「俺のテーマは覚えてるよな」

ハルヒ「は?」

キョン「追うこともよりも待つことを選ぶ」

ハルヒ「どうするつもりよ」

ハルヒ(二人きり……キョンと二人きり……どうしよう……久しぶりで緊張してきた……)

キョン「とりあえず、川沿いを歩くか」



140: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/30(金) 00:09:34.56 ID:MG5DASmAo

ハルヒ「ねえ、キョン。これからどこいくの?」

ハルヒ(このまま買い物でもいいんだけど……)

キョン「不思議探索だろ」

ハルヒ「それは勿論よ。あそこに不思議な空間があったりしないかしら?」

ハルヒ(ショッピングモール!)

キョン「服でも買うのか?」

ハルヒ「そんなこと一言も言ってないでしょうが。バカなの?」

ハルヒ(一回、キョンに服を選んでほしかったのよね)

キョン「……お前がどんな服を試着しようが俺の感想はよく似合ってるぜしかないだろうな」

ハルヒ「え……」

ハルヒ(な、なに……? なんで……)

キョン「お前のことは何でもわかるぞ」

ハルヒ「はぁ? 超能力者にでもなったつもり?」

ハルヒ(嘘、よね?)

キョン「ああ。俺は超能力者なんかじゃない。ましてや宇宙人でも、未来人でも、異世界人でもない。真っ当な一般人だ。だが、お前のことは、いや、お前のことだけは誰よりも分かっちまうんだ」



141: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/30(金) 00:17:12.14 ID:MG5DASmAo

ハルヒ「バッカじゃないの。何を急に言い出すのよ」

キョン「マジなんだ」

ハルヒ「だったら、今、あたしが何を思ってるのか当ててみなさい」

ハルヒ(お昼ご飯はハンバーガーがいい)

キョン「昼飯はハンバーガーが良い」

ハルヒ「な……」

ハルヒ(ホントに……わかるの……?)

キョン「分かるんだよ。お前のことは筒抜けだ」

ハルヒ(ちょ、ちょっと待って!! それじゃあ、あたしが――)

キョン「おい、ハルヒ。待て、おかしなことを思い出そうとするな。その、それは色々とまずい」

ハルヒ「あ、うん。そうね。って、このエロキョン!!! あたしで変な想像すんなー!!」

ハルヒ(お嫁にいけなくなるでしょー!!! 責任とれー!!)

キョン「責任ってどうすればとれるんだ」

ハルヒ(そんなの結こ――)

ハルヒ「言えるわけないでしょうが!!! このあほんだらけぇ!!!」



143: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/30(金) 00:27:12.66 ID:MG5DASmAo

ハルヒ「なんなの……キョン……」

キョン「俺はお前のことを知りすぎたみたいだ」

ハルヒ「知りすぎた……?」

ハルヒ(こんなの察しが良いとかのレベルじゃないわよ……)

キョン「お前の顔を見るだけで、何を考えているのかわかるようになっちまった」

ハルヒ「嘘ね。相手の思考をコントロールする話術とか使ってるんでしょ?」

ハルヒ(教えて!)

キョン「そんな小難しいことはしてないし、できもしない」

ハルヒ「だったら、どうして……」

キョン「何度も言わせるな。お前のことは全部わかるようになった。それが全てだ」

ハルヒ「全部……」

キョン(こう告げることで事態がどう転ぶかは、未知数だな。ハルヒが心を読ませないように壁でも作ってくれると成功も分かりやすくていいんだがな)

ハルヒ(そんなの分かるわけないわ。超能力でもないと……)

ハルヒ「いつ頃から、分かるようになったの? もしかして……」

ハルヒ(会ったときから? あたしが髪を切る前、毎日髪型を変えてることに気が付いたのはキョンだけだったし)



144: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/30(金) 00:35:55.35 ID:MG5DASmAo

キョン「大半の人間は気が付いていたと思うぞ。お前に話しかけにくかっただけでな」

ハルヒ「そ、そんなのわかってるわよ」

キョン「ここ最近だ。分かるようになったのはな」

ハルヒ「ずっと、あたしの心を読んでたわけ?」

キョン「そうなるな」

ハルヒ(変なこと妄想してたのが、全部バレたっていうの!?)

キョン「北高にテロリストは来ない」

ハルヒ「あが……!?」

キョン「そうだな?」

ハルヒ「くっ……うぅ……」

ハルヒ(恥ずかしすぎる……よりにもよってキョンに……キョンに……知られちゃうなんて……)

ハルヒ(……ちょっと待ちなさい。心が読まれてるなら……あたしが……キョンのことを……)

キョン「分かってるさ。俺は、幸せ者だ」

ハルヒ(わー!!! バレてる!! あたしがキョンなんかのことを好きなっちゃったってことがバレてるの!?)

キョン「なんかとはなんだよ……」



145: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/09/30(金) 00:51:22.31 ID:MG5DASmAo

ハルヒ「どうして……なんで……」

キョン「お前は単純だからな。顔をみりゃ全部感じ取れる」

ハルヒ「……な、なら、聞かせなさいよ」

キョン「何をだ」

ハルヒ「心を読んでみればいいじゃない」

ハルヒ(あ、あたしのこと、どう思ってるわけ……?)

キョン(そうなるよな。最大の問題はここからだ。宇宙人も未来人も超能力者も異世界人もこの世にはいない。ハルヒの目の前にいるのは、ただの同級生で理解者である男子生徒にすぎないんだ)

ハルヒ(どうせ、みくるちゃんのほうが良いんでしょ)

ハルヒ「どうなのよ!! えぇ!?」

ハルヒ(あたしのこと好きなの?)

キョン「……」

キョン(言うしか、ないんだよな……)

ハルヒ「ほら、いいなさいよ!!」

ハルヒ(有希のほうがいいの!? それとも古泉くん!? やっぱりみくるちゃんのことが好きなんでしょ!?)

キョン「――すまん、ハルヒ。お前の気持ちに応える資格は俺にはない。俺は卑劣な手段で、お前の心を覗きこんだ。誰しもが知られたくないところまで、俺は見ちまったんだ」



165: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/05(水) 18:15:21.46 ID:cUxwk6iRo

キョン「気が付けば俺はお前の顔を見るだけで何を考えているのか、次に何をしようとしているのか、なんとなく分かるようになっていた」

キョン「それがなんだか嬉しくなって、お前の表情を観察しては心まで覗くようになっていたんだ」

ハルヒ「あたしの顔を見ただけで、そこまで分かるようになるの?」

キョン「言ったろ。お前は単純なんだ。その面に心の声が書いてある」

キョン「だから、俺はお前に好かれる行動ばっかりしていた」

ハルヒ「え……」

キョン「何でも分かっちまうから、お前にとって都合の良い行動ばかりをとっていた。お前は俺を好きになったんじゃなく……」

ハルヒ(まさか……やめて……)

キョン「俺がお前の心をコントロールして、惚れさせたんだ」

ハルヒ(そんなのできるわけ……)

キョン「先日の写真撮りのときだって、お前の撮ってほしい角度からしか俺は撮らなかったろ」

ハルヒ「本当、なの」

キョン「ハルヒ限定で、俺は心を覗くことが出来るんだよ。この前、一緒に帰ったときだってハルヒが俺を家に招こうとしていたことも気が付いていた。だが、あえて誘いには乗らなかった」

ハルヒ(なんでそんな意地悪するのよ……)

キョン「焦らしってやつだよ。そうしたらお前は余計に気になってくるだろ?」



166: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/05(水) 18:32:36.44 ID:cUxwk6iRo

ハルヒ「……」

キョン「けど、最近はお前を見るたびに罪悪感に苛まれてきた。心を覗くたびにお前の好意が痛かった」

キョン「だから……なんだ……」

ハルヒ「いい度胸ね。あんたがあたしを手玉にとるなんて」

キョン「すまん」

ハルヒ「からかってただけってことね」

キョン「そういう、ことになる」

ハルヒ「そう」

キョン(このときやっと気が付いた。ハルヒの心の声が途絶えていることに)

ハルヒ「やられたわ。まさかこのあたしがキョンに弄ばれていたなんてね。これまでにない、屈辱よ」

キョン「最初はお前のことが分かって、ただ単に嬉しくて……」

キョン(何で言い訳してるんだ、俺。こうしなきゃいけないはずだろうが。こんな超能力、一般人が持って良い物じゃない。何より、ハルヒの心なんて覗いていいもんじゃねえだろ)

ハルヒ「……」

キョン(今のハルヒは心でどんなことを叫んでいるんだろうか)

ハルヒ「サイッテーね!!」



168: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/05(水) 18:40:32.07 ID:cUxwk6iRo

キョン(思惑通り、ハルヒは激怒して帰っていった。捨て台詞は結構効いたがな)

キョン(今日の不思議探索は中止って旨を古泉には伝えたが、あの三人は今頃どうしているか)

キョン(暫く公園のベンチで空を眺めていると、足音が近づいてくる。あいつだろう)

古泉「隣、よろしいですか?」

キョン「なんだ、帰ったんじゃないのか」

古泉「とんでもありません。今の貴方を置いて帰路にはつけません」

キョン「閉鎖空間でも出たのか」

古泉「いえ。僕たちも覚悟はしていましたが、観測されずです」

キョン「そうか」

古泉「いっそのこと世界を作り替えて欲しかったと願っていますか」

キョン「そんな女々しいことは思ってない」

古泉「そうですか」

キョン(ただ内面のハルヒを見ることができなくなったのは、やっぱり少しだけ惜しかったとは思うが)

古泉「これからのことですが、貴方はどうされるおつもりでしょうか」

キョン(どうするもこうするもない。あとはハルヒの判断に任せるつもりだ。俺に決定権などないんだからな)



169: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/05(水) 18:51:02.40 ID:cUxwk6iRo

古泉「本当にこの方法で良かったのでしょうか」

キョン「他にあったか。アイツの能力を打ち消す方法がよ」

古泉「気づいてほしいという願いから生まれたものですから、気づかれるのが恐ろしいと思われるのが一番の解決策であったことは間違いありません」

古泉「しかし、貴方と涼宮さんの関係を崩壊させてまで選んで良いものだったのかは疑問です」

古泉「こうなるなら、やはり貴方を止めればよかった」

キョン「言ったろ。俺はハルヒの心なんて覗きたくはないんだよ」

古泉「結果はどうでしたか」

キョン「成功だ。途中からハルヒの声は聞こえなくなった」

古泉「このままSOS団に残られますか」

キョン「それを決めるのは俺じゃない。ハルヒだ」

古泉「お待ちしていますよ。月曜日に部室で」

キョン「学校では嫌でも顔を合わせるだろうが」

古泉「それでは意味がありません。部室でなければいけないのです」

キョン「どういう意味かわからん」

キョン(いや、なんとなくわかる。あの部室は大事な居場所であり、何よりハルヒが最も輝く場所なんだよな)



171: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/05(水) 22:36:55.14 ID:cUxwk6iRo

キョン(日曜日。どこに行くわけでもなく、一人自室で時間を潰していく)

キョン(明日、どうなっているのか。上手く会話できるのか。そもそも、もうアイツとは話すことなんてないのか)

キョン(最後の言葉だけがやけに耳に残っている)

キョン「サイッテーか」

キョン(仕方ない。心を読まれていたなんて、誰だって気味悪く思うだろう)

キョン(どうしたもんかね。SOS団だって、どうなるんだ。今まで通りに活動できるとは思えないが……)

キョン「って、何を今更考えることがあるんだ」

キョン(後悔、してるのか。現状を維持するために、超能力を持っていたほうが良かったっていうのか)

キョン(……違うな。ただハルヒを遠くから見るだけの観客になるのが怖いだけなんだろう)

キョン(宇宙人や未来人や超能力者を侍らせる、あの傍若無人と共に行動できないってのが面白くないだけだな)

キョン(知っているのにもう関われない。それがただただ、怖いんだろう)

キョン「結局、女々しいな、俺」

キョン(今まで楽しかったじゃねえか。世の中にはまだまだ不思議が転がっている。それが分かっただけでも良いはずだ)

キョン(暇だな。妹とゲームでもするか)

キョン(そうして俺は貴重な休日を無為に過ごした)



172: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/05(水) 22:49:10.24 ID:cUxwk6iRo

キョン(翌日。教室の扉が重々しく感じる。開ければ視線の先にハルヒがいる時間帯だ)

キョン(普通にしていればいい)

キョン「おっす」

谷口「よお、キョン」

国木田「おはよう」

キョン(無意識に谷口と国木田を見ちまった。ゆっくりと窓際に視線を移す。しかし、そこにハルヒの姿はなかった)

谷口「どうした、キョン?」

キョン「いや……」

国木田「涼宮さんならまだ来てないよ」

キョン「ハルヒは関係ない」

谷口「やっぱいねえと寂しいのか?」

キョン「関係ないと言ってる」

谷口「はいはい」

キョン(谷口のニヤケ面が妙に腹立つな。盛大な勘違いをしていると大声でいいたい)

キョン(結果が先延ばしになっただけなんだよ。寂しいとかそういう次元の話ではない)



173: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/05(水) 22:56:09.26 ID:cUxwk6iRo

キョン(席に着き、窓の外を眺める。なんとなく、あいつはもう来ないのではないかと思いはじめていた。が、始業のベルが鳴る直前に、ドアの開く音が教室に響いた)

キョン(こんな強引に扉を開ける奴は一人ぐらいだろうよ)

ハルヒ「……」

キョン(見なくてもわかる。ハルヒが教室に来た)

ハルヒ「……う」

キョン(俺の背後で教科書を鞄から出す音が聞こえてくる)

ハルヒ「お……よ……」

キョン(振り返るべきか。どうするか。悩むぜ)

ハルヒ「おはようって言ってるでしょう!!」

キョン「うお!?」

ハルヒ「おはよう」

キョン「お、おう。おはよう」

ハルヒ「無視するんじゃないわよ。ったく」

キョン「す、すまん」

キョン(振り返ると不機嫌そうなハルヒがそこにいた)



174: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/05(水) 23:04:15.54 ID:cUxwk6iRo

キョン(いつものハルヒと言えばハルヒだが、昨日のことを綺麗さっぱり忘れているとは考えにくい)

ハルヒ「ふんっ」

キョン(心を読めていた分、こいつの表情から何かを読み取る力が衰えた気がするな)

ハルヒ「また、あたしの心を覗いてるわけ?」

キョン「悪いか?」

ハルヒ「気持ち悪いからやめて」

キョン「そうだな。悪かったよ。もうしない」

ハルヒ「覗かれる身にもなれ」

キョン(全くもってその通りだ。だから、やめたんだよ)

ハルヒ「……」

キョン「……」

キョン(ハルヒのやつ、俺から顔を逸らそうとしないが……)

ハルヒ「……よし」

キョン(なんだ……?)

ハルヒ「……もう、こっちみんな」



175: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/05(水) 23:12:15.79 ID:cUxwk6iRo

キョン(それから一言も会話することなく、昼休みを迎えた)

ハルヒ「お昼ね」

キョン(ハルヒはそう言い残し、早足で教室を出ていく。あとを追う気にはなれず、谷口と国木田と昼食をとることにした)

キョン(20分もかからず昼食は終了。残りの時間は中身のない会話をしながら過ごす)

キョン(なんとも高校生らしい昼休みだぜ、なんて思っているとハルヒが戻ってきた)

ハルヒ「……」

キョン(様子がおかしい、と誰もが一目で気が付いたようで、一瞬場の空気が凍り付く)

ハルヒ「……」

キョン(睨まれたか……?)

谷口「おい、キョン。なんかしたのか?」

キョン「今日は何もしてないが」

国木田「約束とかしてたんじゃないの?」

キョン「いや、そんな覚えはない」

ハルヒ「ふんっ!!」

キョン(ハルヒは勢いをつけて椅子に座る。何があったんだ?)



176: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/05(水) 23:20:45.65 ID:cUxwk6iRo

古泉「小規模ながら閉鎖空間が発生しました」

キョン「なんだと?」

キョン(あの後すぐに古泉に呼び出され、報告を受けた。あの昼休みにハルヒを憂鬱にさせるなにかがあったってことか)

古泉「長門さんの話では部室で20分ほど過ごしたあと、その場で昼食を摂り、教室に戻ったそうです」

古泉「閉鎖空間が発生したのは丁度そのときですね」

キョン「飯を食っただけで、何がアイツの機嫌を損なわせたんだ」

古泉「長門さんはお弁当を受けとったそうですよ」

キョン「誰からだ」

古泉「無論、涼宮さんからです」

キョン「食ったんだろ?」

古泉「二つ、お弁当は存在していたのでしょうね」

キョン「どういうことだ……?」

古泉「お判りになりませんか?」

キョン「……俺の分か?」

古泉「そういうことでしょうね」



177: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/05(水) 23:28:32.83 ID:cUxwk6iRo

キョン「理解できん」

古泉「涼宮さんの乙女心がですか?」

キョン「あいつは俺に対して心を閉ざしたはずだ。なんでそんなことをする。その弁当、長門の分だったんじゃないのか」

古泉「それなら部室で20分待つ必要はありません。朝の段階で長門さんに手渡せばいいのですから」

キョン「どうして俺の分を……」

古泉「心を読むことができなくなったことと心を閉ざしたということはイコールではないのでは?」

キョン(イコールでないなら、何故読めなくなる?)

古泉「貴方は涼宮さんの心を読んでしまったが故に、更に鈍感になってしまったのかもしれませんね」

キョン「なんだと」

キョン(それぐらい自覚してる)

古泉「長門さん……では、参考になる意見は聞けないでしょうから、朝比奈さんに一度お訊ねしてみることをお勧めします」

キョン(朝比奈さんとハルヒはまるで違う生き物だぞ。相違がありすぎるんじゃねえのか)

古泉「お二人とも心は愛らしい少女ですよ」

キョン「違いはないってことか」

キョン(朝比奈さんか。相談、してみるか)



179: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/05(水) 23:35:44.99 ID:cUxwk6iRo

キョン「朝比奈さん、すみません。急に呼び出して」

朝比奈「いえ、大丈夫ですよ。それで相談ってなんですか?」

キョン「朝比奈さんは心が読める相手に対して、どのような行動をとりますか?」

朝比奈「へ? うーん……。読まれないようになんとかしますっ」

キョン(可愛い!)

キョン「いや、心を隠すことなんて絶対にできない場合は、どうしますか?」

朝比奈「……こまりますぅ」

キョン(可愛い!!)

キョン「困るっていうのは、具体的にどんなことで困るんですかね」

朝比奈「だって……わたしのことが全部知られちゃうってことですよね……」

キョン「ええ、まぁ」

朝比奈「それって、きっと目の前で裸になることよりも恥ずかしいことだとおもうんだけど……」

キョン(何を言っているんだ、この人は!!)

朝比奈「や、やだ! ごめんなさい!! わたしったら、なにいってるんだろう……はずかしいぃ……」

キョン(可愛い!! だが、前に進まないぞ!!)



180: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/05(水) 23:45:11.98 ID:cUxwk6iRo

朝比奈「はうぅぅ……」

キョン「ええと、ですね。その、読まれているってわかったあとに普通に接することってできますか?」

朝比奈「その人のことをよく理解していて、信頼していたら、できると思う」

キョン「信頼……」

朝比奈「変なことに使ったりしないって、思えるならできると思うな」

キョン「そう、ですか」

朝比奈「キョンくんは、もしわたしが心を読める能力を持っていたら、どうしますか?」

キョン「え……」

キョン(予想外の質問だな。だが、胸を張って言える)

キョン「朝比奈さんに対する態度は変えないでしょうね。そこで嫌われてしまうのは俺のほうです。理由もやましいことを考えていたってだけでしょうし、朝比奈さんに非は何もありませんよ」

朝比奈「そっか。わたしだって打ち明けても普通にしてくれる人を嫌いになったりしないと思うな」

キョン「そんなものですか?」

朝比奈「だって、きっとすっごく勇気のいることだと思うから。心を読めるなんて好きっていうより、勇気がいると思います」

朝比奈「そんな勇気を振り絞ってくれた人を嫌いになるなんて、できませんっ」

キョン(この人は、本当に天使なんじゃないだろうか)



182: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/05(水) 23:52:14.66 ID:cUxwk6iRo

朝比奈「あ、ええと、言葉がおかしかったかな? 言いたいのはね、えーと、告白したほうもされたほうもきっと嫌いとかにはならないってこと」

キョン「ええ。それは伝わりましたよ」

朝比奈「よかった」

キョン(もしかしたらハルヒもそうなのか。勇気をもって告白した俺のことを拒絶したりはしていないのか)

朝比奈「心配しなくても大丈夫だから」

キョン「はい?」

朝比奈「確証はないけど、自信もないけど……」

朝比奈「でも、きっと、大丈夫だと思う!」

キョン「ハルヒのことでしょうか」

朝比奈「うん……。わたしも古泉君から聞いてます。昨日のこと……」

キョン「そうですか」

朝比奈「仲直り、してくださいね」

キョン「別にケンカをしているわけではないんですけどね」

キョン(事態はケンカよりも複雑だがな)

朝比奈「考えすぎもよくないですよっ」



210: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 16:29:39.15 ID:5oBheDYKo

キョン(朝比奈さんからのアドバイスは参考になるのかどうか。ハルヒが朝比奈さんのように考えてくれているのならやりやすいが……)

キョン(などと考えつつ、肩越しに後ろを見る。午後の授業を真面目に受けているハルヒの姿があった)

キョン(かなり集中しているみたいだな)

ハルヒ「ん?」

キョン(やべ、目が合いそうになった)

キョン(って、今日はなんだかずっとハルヒのことを気にしてないか、俺)

キョン(いや、違うか……。今日も、だな)

ハルヒ「……」

キョン(おいおい、まだ俺のことを睨んでたのかよ)

キョン(これ以上はあいつの顔の覗けなさそうだな。真面目に授業を受けるとするか)

ハルヒ「うー……」

キョン(小さな唸り声は1分ほど聞こえていたが、不意に治まった)

キョン(なんの唸りだったんだろうね。まるで犬か何かだ)

キョン(ハルヒを不機嫌にさせているのは、俺と言う存在であるのは間違いないだろうが)

キョン(考えすぎもよくないと言われたが、どうしたもんかね)



211: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 16:35:47.11 ID:5oBheDYKo

ハルヒ「……」ダダダッ

キョン(放課後になるや否や、ハルヒは全速力で駆け出し、疾風のように教室を後にした)

谷口「なんだぁ? 今日はSOS団でイベントでもあるのかよ」

キョン「そんな予定はないはずだが」

国木田「ねえ、キョン。今日の涼宮さん、様子が変じゃなかった?」

キョン「変なのはいつものことだろ」

国木田「いつもとは違うよ。だって、午後の授業中はキョンの背中をずっと睨んでたし」

キョン「そうなのか?」

キョン(時折、視線を感じることはあったが、ずっとだったのか)

谷口「俺も見てたぜ。何かを訴えてるみてぇだったな」

国木田「キョン、涼宮さんに何かした?」

キョン(何もしていない、といえば嘘になるな)

キョン「心当たりはない」

キョン(これも嘘だな。心当たりなんてアレしかない)

谷口「何をしたのかはしらねえけどよ、涼宮があんな風に怒ってるのは初めてみたな」



212: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 16:49:39.53 ID:5oBheDYKo

国木田「あんな風って? ずっと相手を睨んだりしないの?」

谷口「しねえよ。涼宮ハルヒって女は怒るときは一瞬だ。怒ったあとはその場でスパッと切り替える」

国木田「うん。見ている限りではそんな感じだよね」

谷口「よっぽどのことがねえと日を跨いで引き摺ることはしねえ。まぁ、普段から不機嫌になってることは多いけどな」

キョン(その程度のこと、今更言われるまでもない。憂鬱になったり不愛想になったりはするが、ハルヒが怒りそのものを持ち越すことは稀だ)

キョン(その場で怒れば、それで終わる。ハルヒはそういう奴だ)

谷口「だから長時間ああして怒ってるところは初めて見たぜ。涼宮っぽくねえな」

国木田「余程のことがあったんだろうね」

谷口「涼宮に告った奴らが見たら、流涎ものだな」

キョン「なんでだ?」

谷口「バッカ野郎。涼宮が一人の男に対して怒るときは決まって『普通の人間と付き合ってる暇はないの!』だぜ?

谷口「それ以降、まるで石ころを見るような目で見られる」

国木田「ああ。怒られることも睨まれることもないってわけだ」

谷口「興味ないやつに感情を出すような女じゃねえからな。今のキョンを見て、羨ましいと思う奴はごまんといるぜ」

キョン(ただのマゾヒストなんじゃねえか?)



213: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 16:59:35.42 ID:5oBheDYKo

キョン(谷口と国木田とは途中で別れ、俺は癖のように部室へと向かっていた)

キョン(良いのか、悪いのか。わからんが、ここで行かないと恐らく俺はもうSOS団ではいられなくなる気がしている)

キョン「どうやって打破できるのか」

キョン(教室と同様に部室の扉も冷然としているように思えてくる。ドアノブが回しづらい)

キョン「……」

長門「……」

キョン「長門だけか」

長門「……」

キョン(安堵している自分が情けなく思えるね。いずれ、アイツもここへくるっていうのにな)

キョン(そういえば長門に確認しておきたかったこともあったな)

キョン「長門、前に言っていた、なんとか音波ってのはもう発生してないのか?」

長門「ない」

キョン「だったら、誰かがハルヒの心を読んじまう可能性はもうないんだな?」

キョン(それさえ分かれば、俺の憂いは完全に晴れるってもんだ)

長門「ある」



214: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 17:15:09.57 ID:5oBheDYKo

キョン「は?」

キョン(カンフー映画に出てきそうな似非中国人よろしく、ないアルって言ったわけじゃないよな?)

長門「拡散性思索音波は発生していない。涼宮ハルヒの思考を読み取れる可能性はある、という意味」

キョン「ちょっと待て。よくわからん。拡散性思索音波が発生しないなら、もう誰もあのトンデモ女の思考回路は読めないだろ」

長門「拡散性思索音波の発生は現在感知できない。発生しているとしてもそれは無視できるレベル」

長門「それは現在、思索音波の性質が変異してしまっているため」

長門「思索音波は発生している」

キョン「なんだと!?」

キョン(ってことは、解決できてないのかよ!?)

長門「当該惑星の知的生命体は個体差はあれど、拡散性思索音波を発生させていることが分かった」

キョン「そう、なのか?」

長門「コミュニケーションツールに頼ることなく、他の個体とコミュニケートする能力が備わっていると思われる」

キョン(言葉にしなくても察することができることってのは確かにあるが)

長門「涼宮ハルヒの場合、自身の能力によりその値が性質と共に大幅に変化し、拡散した。拡散時、近くにいた貴方に全てが伝わったと推測している」

キョン「心を読める可能性があるのは、俺に元から備わっている能力があるからってことか?」



215: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 17:29:52.53 ID:5oBheDYKo

長門「そう。涼宮ハルヒの個体からは拡散性思索音波の発生は皆無、あるいは極微弱の状態になっている」

長門「彼女の思考を解読するのであれば、元々備わっている非コミュニケートツールを用いるしか方法はないと思われる」

キョン「そうなのか」

長門「そう」

キョン(一仕事を終えた長門は分厚い本に視線を落とした。俺も椅子に腰を下ろすか)

キョン「そんな能力が俺にあるのかねぇ」

キョン(今回の1件で痛感している。俺にそんな能力はないだろうぜ)

キョン(ハルヒが今現在、何を考えて、どんなことを想っているのかなんて、わかるわけもないからな)

キョン(朝比奈さんの言うように「嫌いにはなっていない」のであれば、谷口のアホが言うように「怒ってることが既に特別」ってのにも繋がってくるかもしれない)

キョン(どうする? どうやって、それを確かめる。無神経に聞いてみるのか? ハルヒ、俺の事好きかって)

キョン「馬鹿馬鹿しいぜ」

キョン(やめだ。あいつに全てを委ねる。あいつが団長なんだからよ)

長門「……」

キョン(長門が一瞥した気がしたが、俺は構わずケータイを無意味に弄っていた)

キョン(そういえば朝比奈さんと古泉はともかく、ハルヒがまだ来ないのは珍しいな。真っ先に飛び出していったのに)



217: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 17:37:41.67 ID:5oBheDYKo

朝比奈「すみませぇん。ちょっと遅れちゃいましたぁ」

キョン「どうも朝比奈さん」

朝比奈「あら? 涼宮さんはまだなの?」

キョン「ええ。どこかに走り去ってしまいましたよ」

朝比奈「そうなんだ。あ、お茶いれますね」

キョン「お構いなく」

キョン(待ってました、なんて心を読まれたらどんな反応をしてくれるのだろうか)

古泉「おや、涼宮さんが最後とはおかしいですね。誰よりも先に教室を出て行ったのを見たのですが」

キョン「いつかみたいに笹でももってくるんじゃねえのか」

古泉「七夕まではまだ少しありますが」

キョン「だったら、新しい衣装とか」

古泉「それはありえそうですね」

キョン(メイド服をずっと着ていようかとも考えていたみたいだしな)

古泉「涼宮さんが遅れている理由。もう一つ考えられることがありますね」

キョン「なんだ?」



219: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 17:58:40.87 ID:5oBheDYKo

古泉「思い返してください。貴方はどのようにして心を読めるというあの話を涼宮さんに切り出しましたか?」

キョン「どうと言われてもな。お前のことは何でもわかるぞって言ったはずだが」

古泉「それどうして?」

キョン「顔をみりゃ全部感じ取れると言った」

キョン(超能力とか特殊能力があるからなんて言ったところで、ハルヒは信じない。それは検証済みだ)

キョン(そんな言葉を信じるならとっくに長門が宇宙人で、朝比奈さんが未来人で、古泉が超能力で、ハルヒ自身に願望実現能力があることも信じているだろうよ)

古泉「顔を見れば心まで読み取れる。ということですね」

キョン「そういうことだな」

古泉「なるほど。この世に超常現象なるものが空気のごとく存在していることを仄めかすことなく、涼宮さんに伝えたのですね」

キョン「ああ」

古泉「では、そのあと涼宮さんは貴方の力をどう感じ取ったのか」

キョン「なに?」

古泉「恥ずかしながら、僕も気が付くことができませんでした。今日、涼宮さんが貴方のためにお弁当を作ってくるまでは、本当に貴方の思惑通りに事が進んでしまっているものだと思い込んでいましたので」

キョン(こいつ、さっきからなんでいつも以上に笑ってやがるんだ)

古泉「朝比奈さん、例えばの話ではありますが、意中の人物に「お前のことなら何でもわかる。顔さえ見れば心まで読める」と言われたらどのような返答をなさいますか?」



220: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 18:09:06.50 ID:5oBheDYKo

朝比奈「へぇ!?」

キョン「おい、古泉。なんだそりゃあ」

古泉「おや? 貴方の発言を端的にした一文であることは間違いないはずですが」

キョン(そんな甘ったるい声もだしちゃいねえし、言い方もしてねえぞ)

朝比奈「それは……そのぉ……はずかしいですぅ……」

古泉「あくまでも例え話ですから。深く考えなくとも、率直な意見が聞きたいのです」

朝比奈「えっとぉ……あのぉ……う、うれしい……です……」

キョン「嬉しいんですか?」

朝比奈「だ、だって、それって、私の好きな人も、私のことを好きだって……ことなんじゃあ……」モジモジ

キョン(ああ、なんて愛らしいんだ!! だが、今の発言は聞き捨てならないぞ)

キョン「どうしてそうなるんです? 相手は心を読んで貴方のことを観察していただけなんですよ」

朝比奈「そうなの?」

キョン「ですから、俺は――」

古泉「涼宮さんはこの世に漫画や映画の中に出てくるような完璧な読心術に特化した超能力の存在は信じていないのですよ。本当に心を観察していたなどいう発想には飛躍しないと思います」

古泉「涼宮ハルヒという純粋な女の子ならば、そうした発想に至る前に、もっと違う捉え方をしていると思います。それは心を読まれていた貴方が一番わかるはずなのですが」



221: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 18:20:30.38 ID:5oBheDYKo

キョン「違う捉え方?」

古泉「今の朝比奈さんの反応と相違はないと僕は考えます。嬉しいという感情はまず真っ先にあるでしょう」

キョン(そうなるのか? 気持ち悪いって思うだけなんじゃねえのか?)

朝比奈「キョンくん。お昼にも言ったけど、心を読めるんだって告白されても、きっと嫌いにはなれないと思う」

朝比奈「だって、昨日今日会ったばかりの人じゃないんですから」

古泉「長門さんはどのような捉え方をしますか?」

長門「……」

キョン(長門がちらりと俺に視線を向ける。何を訴えているのやら)

長門「別に」

古泉「なるほど」

キョン(何を理解したんだよ、おい)

古泉「女性陣もこう言っていることです。貴方の計画は失敗したと言わざるを得ません」

キョン「どうなってるんだよ」

古泉「今、この場に涼宮さんは不在。それはなぜか? 笹を調達しているから、朝比奈さんの新しい衣装を用意しているから……」

キョン(分かった、分かった。探しに行けばいいんだよな)



223: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 18:39:44.60 ID:5oBheDYKo

キョン(そうして部室を出たものの、ハルヒがどこにいるのか見当もつかん)

キョン(今日、アイツが俺のことを睨んでいたのも、心を読ませようとしていたのか……)

キョン(だったら、どうしてあいつの声は聞こえなくなっちまったんだ? 嫌だから聞こえなくなったんだろ?)

キョン(朝比奈さんは嬉しいと言った。嫌いにはなれないとも言った)

キョン(嬉しいし、嫌いでもない。けど、心は読めなくなった)

キョン「それが分かれば良いんだろうけどな」ガチャ

キョン「ここにもいないか」

キョン(これで空き教室は全部見たぞ。中庭にもいなかったし、あとは屋上か?)

キョン(ハルヒのやつがそんな場所で待ってるとは思えないが……)

キョン「行くだけ、行ってみるか。ハズレなら……」

キョン(見つかるまで探すしかないよな)

キョン(きっとハルヒは待ってるんだろ、古泉?)

キョン(古泉の説明だと、伝わると思い込んでいるあいつは、恥ずかしさと戦いながら俺を睨んで心の声を読ませようとしていたってことになる)

キョン(そんな相手を待たせるのは悪いからな)

キョン(最後の関所だと言わんばかりの錆びつき動きにくくなっている鍵を開ける必要はなかった。先客の姿を想像しつつ屋上へと続く扉を押した)



224: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 18:47:03.99 ID:5oBheDYKo

キョン(同時に風が吹き込んでくる。目を細めながら歩を進める)

キョン(思わずにやけた。お前らしくもない、よくある場所を選んだな)

ハルヒ「……」

キョン(顔面に怒のマークが張り付かせている。心の声はどうなのだろうか)

ハルヒ「遅いじゃない」

キョン「全員、部室にいるぞ。何やってんだよ、こんなところで」

キョン(やはり待っていたのか?)

ハルヒ「なんですって? どういう意味?」

キョン「探してたんだよ。で、ここにいるんじゃないかと思って」

ハルヒ「そう……」

キョン「早く行こうぜ」

ハルヒ「……ったのに」

キョン「なんだって?」

キョン(風の音でよく聞き取れなかった)

ハルヒ「なんでもわかるって言ったのに」



225: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 18:57:06.83 ID:5oBheDYKo

キョン(残念ながら何でもはわからん。そして今、お前がここにいる理由にも確証は得られていない)

ハルヒ「嘘つき」

キョン「俺が心を読めるって話を信じてたのか? 」

ハルヒ「あれだけで的確に当たられたら、信じるしかないじゃない」

キョン「そうか」

キョン(どうする? ここであれはただのジョークだったってことにするか? もうトンデモ音波がないなら、それでも問題ないだろうし)

ハルヒ「今日は帰るっ!!」

キョン「なに? おい、全員部室で待ってるんだぜ?」

ハルヒ「そんな気分じゃないの!!」

キョン「待てって」ギュッ

キョン(思わず手を掴んで引き留めちまった。今までの怒りとは異質だった所為か? ここでハルヒと別れたら危険な気がした)

ハルヒ「何よ!! 気安く触んな!!!」

キョン「落ち着け。あれは――」

ハルヒ(結局、あたしのことを分かってくれる人なんていないんじゃない……!! 期待させるだけさせて……!! キョンのバーカ!! バーカ!!)

キョン(な……!? なんだ……!? またハルヒの声が脳内に……!?)



227: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 19:09:32.47 ID:5oBheDYKo

ハルヒ「はなせっていってるでしょ!!!」

キョン「あ……いや……」

ハルヒ(絶対離すな!!!)

キョン(どっちだよ!?)

ハルヒ「はなせっ!!!」

キョン「悪いっ」パッ

ハルヒ「……ったく」

キョン(声が……途絶えた……。おいおい、これってまさか……)

ハルヒ「それじゃ、帰るから。みんなにも伝えておいて」

キョン「ま、まて、ハルヒ」ギュッ

ハルヒ「だから、触るなっていってるじゃない!!」

ハルヒ(もう離さないでよね。離したら逃げちゃうから)

キョン(長門よ。どうなってるんだ? 治まったんじゃなかったのかよ)

キョン(待て。長門はなんと言っていた? 音波の性質が変異してしまっているとか言ってたよな。変異した結果なのか、これは)

ハルヒ「いつまで握ってるつもりなのよ!! 手が腐るじゃない!!」



228: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 19:19:46.74 ID:5oBheDYKo

キョン(想像していたのとは違うぜ、長門さん)

ハルヒ「セクハラで訴えるわよ。大声出してもいいわけ?」

キョン「振りほどけばいいだろ。別に強く握ってるわけでもないんだ」

ハルヒ「……」

ハルヒ(できるわけないじゃない)

キョン「できないのか?」

ハルヒ「何か用なの?」

キョン「なぁ、ハルヒ?」

ハルヒ「なによ」

キョン(聞いていいのか……? このまま心を読める状態で……こんなことを聞くなんて反則じゃないのか……)

キョン(そもそも俺はどうしてここまでハルヒの心を読むことに嫌悪感を抱いていたんだ)

ハルヒ(いつまで握ってるつもりなのよ。まぁ、キョンの手、あったかいからいいけど。冷たくてもあたしの手があったかいから、問題ないけどね)

キョン(一般人には分不相応な能力だからか? 小さいころ、特別な力を手に入れたいと思ったことだってあるが、こんな力じゃなかったはずだ)

ハルヒ(ちょっと握り返してもバレないわよね)ギュッ

キョン(言い訳ばっかりしてきたが、俺は単に怖がってただけなんだろ? ハルヒの心を知ることが)



229: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 19:51:57.13 ID:5oBheDYKo

キョン(ハルヒの考えていることが分かれば面白くないなんて、あり得ないだろうよ。分かっても、面白いに決まってるんだからな)

キョン(知りたくなかったこともわかるから、逃げようとしただけだ。知ってしまうぐらいなら嫌われてしまえと思ったんだよな)

ハルヒ「いつまでこうしてるつもりなのよ」

ハルヒ(このまま、二人で帰るとか? でも噂されたら……恥ずかしいし……うーん……。あの坂道を下り終えたぐらいからならいいかしら?)

キョン「一つだけ聞かせてくれないか?」

ハルヒ「何よ」

キョン「俺に心が読まれているって聞いて、お前はどう思ったんだ?」

ハルヒ「はぁ? そんなの勿論……」

キョン(どう言うんだ?)

ハルヒ「めちゃくちゃ気持ち悪いわよ!! 全身に鳥肌がたつぐらいにね!!」

ハルヒ(すっごく嬉しかったわ!! あのとき全身に鳥肌がたっちゃったわ!!)

キョン(鳥肌は本当みたいだな)

ハルヒ「虫唾が走るってあのときのことをいうのよね、きっと」

ハルヒ(あたしの気持ちなんて誰も理解してくれないって思ってたけど、キョンは違うって信じてた……。でも、結局は一緒なのよね。面倒なあたしのことなんて……理解しようとは思わないわよね……)

キョン(これだけ聞ければ十分だ。もうハルヒの心を聴く必要なないな)



230: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 20:09:03.98 ID:5oBheDYKo

キョン「悪い。握りすぎだな」パッ

ハルヒ「あ……。話はそれだけ?」

キョン「嘘じゃないぜ」

ハルヒ「何が?」

キョン「お前のことなら何でも分かるって話だ」

ハルヒ「何言ってんのよ。今日、散々試したけど、何にも反応しなかったじゃない!!」

キョン「この前にも言ったがな、気がついてはいるんだよ」

ハルヒ「え?」

キョン「今日の部室で昼飯を二人で食べたいって願っていることも、こうして屋上で待っているから来いって叫んでいることもな」

ハルヒ「な……!! だ、だったら、なんでそうしないのよ!! 焦らしてどうするのよ!? そんなにあたしに気にされたいの!?」

キョン「それは、言葉の綾だ。本当は、ほら、あれだ……」

キョン(ええい、ここまで言ってしまえばあとに続く台詞は一つしか思いつかないぞ。こういうときのための語彙が欲しいんだが)

キョン「なんでも思い通りに動くのは、お前に主導権を握られているみたいで面白くないからだ」

ハルヒ「何言ってんのよ!! あんたは平団員で、あたしは団長! あたしの手のひらで転がされていたらいいじゃない!! 身の程を知りなさい!!」

キョン「そういうわけにもいくか。俺だって男だ。ほ、惚れた相手ぐらい引っ張りたいって思うぞ」



231: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 20:14:36.97 ID:5oBheDYKo

ハルヒ「……」

キョン(遂に言っちまったな……。はぁ……こんな台詞をよりにもよってハルヒに言うことになるとはな……)

キョン(だが、これでいい。俺だけがハルヒの心を読めるのはフェアじゃないからな)

ハルヒ「……え?」

キョン「なんだ?」

ハルヒ「ごめん。風で上手く聞こえなかったのよ、もう一回言って」

キョン「なんだと?」

ハルヒ「ほら、言いなさい」

キョン(手を握ってやるか)ギュッ

ハルヒ「あ? 誰が握れてって言ったのよ。さっさと今言った台詞を言いなさいよ」

ハルヒ(絶対惚れた相手って言った!! もう一回!! もう一回!!)

キョン「絶対に言わん!!」パッ

ハルヒ「あ……。な、なんですって!? これは団長命令よ!! 言え!!」

キョン「戻るぞ」

ハルヒ「待ちなさい!! 逃げんな!! キョーン!!!」



232: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 20:20:50.26 ID:5oBheDYKo

キョン(耳まで熱くなってるのが分かる。これ以上、ハルヒの顔を見ていられないぜ。午前とは違う理由でな)

ハルヒ「こらー!! 言えっていってるでしょー!!!」

キョン「もう廊下だ」

ハルヒ「あたしは気にしないわ」

キョン(くっそ。口を滑らせたのが敗因だな。完全にハルヒが優勢だ)

ハルヒ「ほーら、いいなさいよー。今度は録音しててあげるわよ」

キョン「するな!!」

古泉「おやおや。仲がよろしいのですね」

ハルヒ「あら、古泉君。待たせちゃったかしら?」

古泉「いえ。僕はこれからアルバイトがありますので、失礼させていただきます」

ハルヒ「そうなの?」

キョン「(おい、まさか……)」

古泉「(まさか。何も予定はありませんよ)」

キョン「(なら、どうして)」

古泉「(それは僕の心を読んでみればわかると思いますよ? んふっ)」



234: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 20:50:24.30 ID:5oBheDYKo

キョン(なんだ、古泉のやつ。相変わらず気持ちが悪いな)

長門「……」

ハルヒ「有希、どこいくの?」

長門「帰宅する」

ハルヒ「用事でもあるの?」

長門「ある」

ハルヒ「そう、なら仕方ないわね」

キョン「長門も帰るのか」

長門「帰る」

キョン「(何か、ヘンテコ現象でも発生したか?)」

長門「(涼宮ハルヒによる情報操作及び情報改竄は見受けられない。またそれに準ずる現象も確認はできない)」

キョン「(でも、用事があるんだよな?)」

長門「(ない。ある)」

キョン(どっちだ!?)

キョン(などというツッコミを入れる間もなく、長門が遠ざかっていく。長門が理由もなく帰るとは思えないが)



235: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 20:54:54.43 ID:5oBheDYKo

朝比奈「あわわわ!!」

キョン(まさに今着替え終わったばかりであろう慌て方で朝比奈さんが部室から出てきた)

ハルヒ「みくるちゃんまでどうしたのよ」

朝比奈「か、かえりますね! あの、その、鶴屋さんがどうしても、抜け出せない用事があるらしくて、私もいかなきゃいけなくて!」

ハルヒ「はぁ?」

キョン(言っている意味が全くわからんが、とにかく急いでいるようだ)

キョン「鶴屋さんに呼び出されたんですね。それも急ぎで」

朝比奈「は、はい! そ、そうなの! キョンくん!」

ハルヒ「鶴屋さんの呼び出しじゃ、引き留められないわね」

朝比奈「ごめんなさい、涼宮さん!」

ハルヒ「気にしないで。また明日ね、みくるちゃん」

朝比奈「はぁーい!! あ、キョンくん」

キョン「なんですか?」

朝比奈「良かったね」

キョン(ああ、そういうことか。古泉の考えそうなことだ。余計なことするんじゃねえよ)



238: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 21:45:43.55 ID:5oBheDYKo

キョン(部室には当然、俺とハルヒしか残っていない。ハルヒは団長席に座らず、俺の正面に腰をおろした)

ハルヒ「みんな忙しいのね」

キョン「そうみたいだな」

ハルヒ「……ねえ、キョン?」

キョン「なんだよ」

ハルヒ「やっぱり気になるわ。屋上で言ったこと、もう一度言いなさい」

キョン「言わん」

キョン(ここで折れたら、多分一生ハルヒの言いなりだ。それだけはごめんこうむる)

ハルヒ「……」

キョン(なんだ、押し黙りやがって。次はどんな攻め方で来る気だよ)

ハルヒ「……」

キョン(もしかして、心で何か言ってるのか……?)

ハルヒ「なにも伝わってなさそうね」

キョン「あのな。ただ見つめられてもわかんねえよ」

ハルヒ「顔を見ればわかるっていったじゃない」



239: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 21:52:39.27 ID:5oBheDYKo

キョン「表情を作られたら、読み取れねえよ。読めるときは、お前の自然な顔のときだ」

キョン(即興の設定にしてはいい出来じゃないか?)

ハルヒ「ふぅん。そっか。分かっててあえてとぼけてるかもしれないのよね」

キョン「ま、まぁ、そうだな」

ハルヒ「だったら、意地悪が過ぎるわ」

キョン(今、ハルヒに触れたらなんて言ったのかわかるのか?)

ハルヒ「することもないし、帰る?」

キョン「そうだな。それがいい」

キョン(無駄な時間とは言わないが、むしろ必要な時間かもしれんが、俺はここに留まりたくはない)

キョン(この状況でハルヒと二人きりなんて、血液が沸騰しそうだぜ)

ハルヒ「それじゃ、戸締りして帰りましょ」

キョン(窓のカギをチェックし、部屋の灯りを落とす。廊下にでると僅かな解放感があった)

ハルヒ「オッケー。行くわよ、キョン」グイッ

キョン「お、おい」

キョン(いきなり腕を引っ張られた。引っ張るならネクタイにしてほしかったなと思うも、後の祭りだ)



240: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 21:57:46.61 ID:5oBheDYKo

ハルヒ「ねえ、キョン? さっき、あたしが何を思ってたのか、知りたい?」

キョン「知りたいって言ってたら、教えてくれるのか?」

ハルヒ「んー。そうね、簡単には教えないわ」

キョン「どうしたら教えてくれるんだよ」

ハルヒ「分かってるくせに」

キョン「そうだな。それしかないよな」

ハルヒ「んじゃ、言いなさい」

キョン「言わん」

ハルヒ「だったら、あたしも教えないからね」

キョン「教えてもらわなくても、もう分かってるよ」

ハルヒ「ふんっ。何言ってんだが」

キョン「お前は単純だから顔に全部出てるんだよ」

ハルヒ「うそつけー!! 分かるときと分からない時があるんでしょーが!!」

キョン「分かるんだよ。こうして腕を掴まれている限りはな」

ハルヒ「益々意味がわかんないわね」



241: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 22:05:46.46 ID:5oBheDYKo

ハルヒ「――あたし、こっちだから」

キョン「おう。早く行けよ。踏切が閉まっちまうぞ」

ハルヒ「おとと。また明日ねー!!」

キョン「ああ」

キョン(ハルヒが小走りで踏切を越えていく。俺はその背中を間抜け面で眺めているんだろうな)

ハルヒ「キョン!」

キョン「どうした?」

キョン(電車の接近を知らせる鐘の音が響き渡る。遮断機がゆっくりと視界の中に入ってきた)

ハルヒ「――!!!」

キョン(電車が通り過ぎるタイミングでハルヒが何かを叫んだ気がした。わざとかよ)

ハルヒ「今のが答えよ!! バイバーイ!!」

キョン「やれやれ」

キョン(いつかあいつの口から直接聞きたいもんだが、俺がもう一度屋上での台詞を言わなきゃならんのか)

キョン(だが、知ったからには俺が折れたほうがいいんだろうな)

キョン(また、いつか言ってやるよ。今度はちゃんとな)



242: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 22:15:29.49 ID:5oBheDYKo

キョン(翌日、部室にて長門にあの音波の完全遮断を願った)

長門「時間を要する」

キョン「何万時間でも待つ。やってほしいんだ。頼む」

古泉「即効性のある涼宮さんの能力ではなく、長門さんの力を借りることにしたのですか)

キョン「急ぎじゃなくなったからな」

古泉「触れ合っていれば心の声が聞こえる。それはそれでロマンチックだと思いますが」

キョン「いいんだよ。あいつの心を読みたくないってのは本心だ」

古泉「読む必要がなくなった、の間違いでは?」

キョン「うるせえよ」

朝比奈「キョンくん、私はそれでいいと思います。確かに人の心を覗けるのは便利なこともあるかもしれないけど、嫌な思いをすることもあるから」

キョン「ええ。ただ、ハルヒのに関してはその心配はないと確信してますけど」

朝比奈「ふふっ。キョンくん、涼宮さんのこと大好きになっちゃった?」

キョン「信頼しているだけですよ。あいつのことは誰よりも理解しているつもりですから。たとえば、あと5秒でハルヒが扉をあけてやってくるのもわかる――」

ハルヒ「――ヤッホー!!! みんなー、そろってるー!? SOS団定例会議をはじめるわよー!!」バーンッ

キョン(さて、今回はどんな議題を持ってきたのか。じっくりとあいつの満面の笑みを観察して、探ってやろうじゃないか)


おしまい。



243: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 22:20:57.37 ID:DMPB9s7p0

乙キョン

面白かった
台詞回しや各キャラの喋り方が原作っぽくて愛を感じた



245: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/10/31(月) 22:32:54.06 ID:Dk3Vm7B70

乙乙
話に引き込まれて一気に読みきってしまった
めちゃくちゃ面白かったです


元スレ
SS速報VIP:ハルヒ(あー、キョンに私の心を読む力でもあればなぁ)キョン「……!?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1474965278/