●注意●
・短編形式
・日常系SS
・のあさんのキャラ、口調、クールなイメージが『著しく』崩壊します
・独自解釈している点が多々ありますので、ご了承下さい
・雑談はご自由に

●登場人物●
高峯のあ、他
http://i.imgur.com/qZOoGJP.jpg

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1479041217




2: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 21:49:17.19 ID:A39YavOz0


━━━━━━━━━━
【吉野家・テーブル席】








時子「………………」










のあ「……」

楓「」

泰葉「(な、な、なっ……!)」

泰葉「(何でですか!?)」

泰葉「(なんであの時子さんが相席にいるんですか!! 高峯さん、聞いてませんよ私達!?)」アセアセ

楓「(メールで急に『奢るから、吉野家に泰葉と二人で来て頂戴』と連絡があったと思ったら……)」

楓「(い、一体何があったんですか、のあさん? この緊迫した状況は)」

のあ「(………………)」

楓&泰葉「……」

のあ「(……………………)」

泰葉「(喋って下さい。本当に帰りますよ私達)」スッ

のあ「(ゴ……、ごめんなさい。放心してたわ)」

のあ「(いつも通りに帰りに吉野家に出向こうとしたら……)」

のあ「(吉野家の扉の前で時子が張っていた。果たし状を送りつけ、今か今かと宿敵を待つヤンキーの如く)」

楓「(な、何故時子ちゃんが吉野家に……)」

のあ「(それで、目が合ったら物凄い剣幕で接近されて……、その……)」




~~~~~~~~~~
時子『……お腹空いてないかしら、貴女』

のあ『ハヒッ……す、空いてまスッ……!!』
~~~~~~~~~~




のあ「(……って)」

楓「(完全に委縮してる……)」

泰葉「(し、仕方ないですよ。時子さんが相手だったら誰だってそうなります、私だってそうなります)」

泰葉「(しかも、時子さんは事務所での言動からして女王気質というか、唯我独尊、利己的。部類的にはかなり難しい性格の方)」

泰葉「(特に今回のようなケースだと、その真意を測りかねるというか、私達もどう動いて良いのやら)」

時子「………ちょっと」

のあ「ヒッ……!」ビクッ

楓「ヒッ……!」ビクッ

泰葉「ヒッ……!」ビクッ



3: ☆2/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 21:50:33.55 ID:A39YavOz0


楓「(と、とにかく! 普通に接しましょう!)」

楓「(彼女の機嫌を損なわせるそれ即ち、全人類に長期戦を覚悟させる事態になります)」

のあ「(……慎重に行きましょう。一つの選択肢のミスが死を招くわ、凄惨な終焉を)」

泰葉「(アナタ達は時子さんをむき出しの核兵器か何かと勘違いしてませんか!?)」

時子「………ねえったら」

泰葉「は……、ハイハイっ。なんですか時子さん?」

時子「………注文は?」

泰葉「ッ! (注文か。良かった、至極当然の要求)」フー

泰葉「(……高峯さん)」チラッ

のあ「(……ええ。任せて)」チラッ

のあ「ス……、すみません。注文を」

店員「あっはい。お伺い致します」

のあ「牛丼並……4つでいいかしら?」

泰葉「あ、ハイ。私も同じ物で」

楓「私も同じでお願いします」

時子「………私もそれでいいわ」

店員「はい、少々お待ちください」スッ

のあ「………」

泰葉「………」

楓「………」

時子「………」

のあ「………………」

泰葉「………………」

楓「………………」

時子「………………」

のあ「(…………)」

のあ「(…………帰りたい)」

楓「(ヤ、泰葉ちゃん……何か喋って、盛り上げてさしあげて)」

泰葉「(や、やめてください! ………………本当にやめてください)」

時子「(………)」



4: ☆3/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 21:51:56.13 ID:A39YavOz0


━━━15分後━━━


泰葉「(……というか、注文すこし遅くないですか?)」

楓「(緊張で胃袋が口からボロンと出そうです……)」

店員「お待たせいたしましたー」

泰葉「(あっ、来た)」

店員「コチラ、ご注文の───」







店員「牛丼並、16杯になります」

店員B「お待たせいたしましたー」

───ゴトッ!






泰葉「(───ッッ!?)」

店員「ご注文は全てお揃いでしょうか?」

のあ「ハ……はい」

泰葉「!?」

店員B「ごゆっくりどうぞー」スタスタ

のあ「……………………」

時子「……」

のあ「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………やすは………っ」チラッ

泰葉「(な、涙目っ!!)」

時子「………泰葉?」

泰葉「ハ、ハヒッ……!?」ビクゥ!

泰葉「わ……、分りましたっ……私が、何とかしますから」

時子「…………」

泰葉「(な、何故16杯分も頼んだことになっているかは、ほとほと疑問ですが……)」

泰葉「(というか、こういう場合って店員は一度復唱するべきでは? 普通では有り得ないでしょう、4人で16杯なんて。俗な観察番組でもあるまいし)」

泰葉「(まあ、過ぎたことをあれこれ考えても仕方ない。オーダーミスとしてこのまま食べずに返品すれば良いだけの話……そもそも店員の取り違いなんだし。非は向こうに───)」

泰葉「(───えっ!?)」ギクッ

泰葉「と、時子さん!? 何で箸を付けてるんですか!?」ガタッ!

泰葉「しかも4つの器から少しずつ摘まんでる!? いや、牛臭いとか言ってる場合じゃなくて……!!」

泰葉「ッッ!?」

泰葉「ちょ、ちょっと二人とも!! いただきますのポーズ取ってる場合じゃないですよ!! ちょっと!!」

泰葉「いや、いやいやいや!! 私が何とかするっていうのは、『私が全部食べる』とかそういう意味じゃなくて!!」

泰葉「ちょっ……!!」

モグモグモグ
───カチャカチャ、パクッ


泰葉「ア……、アァ…………」

──────
────
──



5: ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 21:52:42.33 ID:A39YavOz0

6: ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 21:53:31.92 ID:A39YavOz0

7: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 21:54:54.75 ID:A39YavOz0

──
────
──────
【事務所】


のあ「『LIVEバトル』?」

P「ええ、そうです。初耳でしたか?」

のあ「(……)」

P「ソロ、またはユニットが複数単位で競合する形式のライブイベントですね」

P「足並みを揃える一般のライブとは違い、全面的に個性と個性のぶつかり合いです」

のあ「(……)」ボー

P「歌唱や踊りは勿論、演出家と相談して仕掛けや装置などの特殊効果で華を添えてもOKです」

P「とにかく相手より観客を魅了することを目標にして、磨き上げたパフォーマンスを披露します」

のあ「(……)」ボー

P「ですが安心してください。なにも『バトル』といっても、実際に得点や優劣を競ったりするわけではありません」

P「今では他事務所との合同イベントや、同事務所内でのバーターや、真剣勝負と銘打って実はあらかじめ掛け合いやプログラムが組まれてるなんて事も多々あります。3番目が特に多いですね」

P「形だけでも『競い合い』を念頭に置いているので、分かりやすい指標を明確にし努力の方向性も定まりますし、創意工夫のパフォーマンスで新たな一面を発掘できることもあります」

のあ「(……)」ボー

P「……LIVEバトルの相手は同じ事務所の木村夏樹・多田李衣菜のデュオです。ランクは遥かに上の相手……ですが」

P「ですが今回は、貴女の可能性に賭けて挑戦していきたいと思います」

のあ「(……)」ボー

P「……高峯さん? ここまでは良いですか?」

のあ「(───ハッ!?)」ビクッ

のあ「キ……聞いているわ」

のあ「世の縮図……美しく実る花も、剪定の元に成り立つ悲しき宿命」

のあ「弱肉強食……『たたかわなければ生き残れない』、という事ね」



26: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 22:28:21.47 ID:A39YavOz0


━━━━夜━━━━
【岡崎家】


楓「(……♪)」パクッ

泰葉「LIVEバトルですか」

泰葉「へえー。それにまあまあな規模のハコですね」

のあ「……」

泰葉「どの方と一緒に歌うんですか? つまり、お相手は?」

のあ「……言ってなかったわ」

泰葉「(ふつう言わない筈はないと思うんだけど……ううん)」

楓「(泰葉ちゃん、天つゆ取って下さい)」サクサク

泰葉「(あ、ハイ)」

のあ「……」

泰葉「あのLIVEって、すごいですよね。パフォーマンス」

泰葉「特殊効果と演出が、もう派手なんですよ」

のあ「……そうなの?」

泰葉「はい。例えば……、そうですね」

泰葉「割と無茶な要望も叶っちゃうんです。幸子ちゃんは野外ライブでスカイダイビングを行い上空から登場。小梅ちゃんはスリラーさながらのゾンビダンサーを大勢率いてカオスなライブを」

のあ「(……)」

泰葉「アナスタシアさんはインスタントスノーを使った煌びやかな演出を。あとニューウェーブの3人は泉さんの立案でプロジェクションマッピングを披露したりもしてましたね」

泰葉「美世さんが車をステージ最上部から落下させたときなんて、ただの事故でしたよ」

のあ「……」

泰葉「まあ、無難に演出家さんに任せている人も大勢いますけど。というかそっちが普通です」

楓「(泰葉ちゃん、ソース取って下さい)」サクサク

泰葉「(あ、ハイ)」

泰葉「のあさんは、何か要望とかはあるんですか?」

のあ「……」

のあ「……今のところは見当も付かない」

のあ「詳しく、他の子の話を聞かせて頂戴。参考にするわ」

泰葉「ええ、いいですよ」

のあ「………蘭子は?」

泰葉「蘭子ちゃん? あー、蘭子ちゃんは……」

泰葉「確か、ワイヤーアクションですね。イントロと同時に会場が暗転して、スポットが当たったと思ったら天から堕天───」

のあ「決まったわ」

泰葉「───えっ?」

のあ「私の、演出が」

泰葉「……!?」

楓「(泰葉ちゃん、抹茶塩取って下さい)」サクサク


──────
────
──



27: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 22:29:02.99 ID:A39YavOz0

──
────
──────
【事務所】


───ガチャ

蘭子「闇に飲まれよっ!」(訳:おつかれさまですっ!)

蘭子「フフ……万代不易の理は環(マワ)り、降臨(キ)たるインフェルノの鉄の火は煉獄の如く、凄烈に我が身を焦がさん」
(●訳:今日はとてもいい天気で、暖かいですね! もうすっかり春の陽気です♪)」

蘭子「桃園の空の下、時代(トキ)の反乱(ウネリ)に御旗を掲げ、奸雄達は夢を馳せん。手に盃を、口に蜜を、腹に剣を、舞う花弁は近き日の戦火の……」
(●訳:お花見の季節ですね! そう言えば大人の皆さんがお花見の計画を……)」

シーン…


蘭子「……むぅ?」

蘭子「我が朋友(トモ)、いずこに……?」(訳:あれ、プロデューサー? いないんですか??)」

蘭子「……」キョロキョロ




のあ「……」ジー



蘭子「(っ!?)」ビクッ

蘭子「ヒッ、ハ………た、高峯サンっ……!」

蘭子「ぃ、いい居たンデスネっ……」プルプル

のあ「(……)」

蘭子「(ハァー、ハァー……)」ガクガク

蘭子「(あ、相変わらず格好良いっ、けど、怖いぃっ! い、意識が……)」ガクガク

のあ「……」

蘭子「…………」プルプル

のあ「……蘭子」

蘭子「ヒッ!」

蘭子「ハヒッ……は、はいッ!!」ビシッ!




のあ「闇に、飲まれよう」(●訳:お疲れさま)」



蘭子「(!!!)」

のあ「(……)」

蘭子「あっ………」

蘭子「ぉぉぉ……、オッ、おおっ、おおおおつかれさ───」





のあ【───花風紊れて花神啼き……】

のあ【天風紊れて天魔嗤う───】

のあ【───花天狂骨───】






蘭子「(───!?)」




29: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 22:29:48.91 ID:A39YavOz0


のあ「……」

───スタスタ


蘭子「ヒ、ひっ……」ビクッ!

のあ【───届かぬ牙に 火を灯す───】スタスタ

のあ【───あの星を見ずに済むように この吭を裂いて しまわぬように───】スタスタ


蘭子「ヘ……あ、アェ……?」プルプル


のあ【───黒白の羅 二十二の橋梁 六十六の冠帯 足跡・遠雷・尖峰・回地・夜伏・雲海・蒼い隊列 太円に満ちて天を挺れ───】スタスタ

蘭子「ナ、ニ、ヲ……イ、言ッテ……???」ガクガク

───スタスタ



のあ【───滲み出す混濁の紋章 不遜なる狂気の器 湧き上がり 否定し 痺れ 瞬き 眠りを妨げる】


のあ【───爬行する鉄の女王 絶えず自壊する泥の人形 結合せよ 反発せよ 地に満ち己の無力を知れ───】スタスタ





のあ【───破道の九十 『黒棺』───】





蘭子「」

───スタスタ


のあ【───君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 真理と節制 罪知らぬ夢の壁に僅かに爪を立てよ……】


───ズイッ!


蘭子「ウ、ア……ち、近………」

のあ「……」ジー

蘭子「タ、タカミ……ネ、サ…………」ガクガク

のあ「……」ジー

蘭子「ン」

蘭子「……きゅう」グラッ

───ドサッ!



のあ「っ!!!」

のあ「(ら、蘭子ちゃん!?)」バッ!

のあ「(……!?)」

のあ「(口から泡を吹いて気を失うなんて……な、何故!?)」ユサユサ

のあ「(せ、せっかく……)」

のあ「(せっかく頑張って、通じると思って……)」

のあ「(漫画で……それっぽい漫画で、いっぱい勉強したのに……っ)」グスッ

蘭子「」


──────
────
──



32: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 22:31:55.36 ID:A39YavOz0

──
────
──────
【事務所 エントランス】


夏樹「……!」

夏樹「(ん)」

夏樹「(あっちから向かってくるのは、確か……)」



のあ「……」スタスタ



夏樹「……んんっ」

夏樹「お疲れさまです、高峯サン」

のあ「(!!!)」ピタッ

夏樹「っと……。そういえばアタシ、自己紹介してなかったか」

のあ「……」

夏樹「木村夏樹です。ヨロシクおねがいします」

夏樹「相棒と一緒にロックでクールに決めて、最高にアツいステージ目指してやってます」

夏樹「今度のライブも、お手柔らかに」

のあ「……」

夏樹「(……)」

のあ「……」

夏樹「あー……、そうだ、これ要ります? エナジードリンク」

のあ「……」

夏樹「今ウチら、このCMに起用されてて、事務所にノベルティ? 試供品? みたいのが余るほど置いてるんだよね」

夏樹「鞄の中にもさ、ホラ」ガシャッ

のあ「……」

夏樹「(……)」

のあ「………頂くわ」

夏樹「あ、ハイ」スッ

のあ「……ありがとう」

夏樹「……あ、ハイ」

───スタスタ


夏樹「(……)」

夏樹「(クールだなー。無口、無表情、無愛想? ていうか……)」

夏樹「(掴みづりー……)」










のあ「(……)」

のあ「(部外者のチーマーかと思った)」

のあ「(………殺られるかと思った)」ドキドキ




34: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 22:32:29.85 ID:A39YavOz0


のあ「(大胆に上げた前髪が特徴的なあの子は、木村夏樹ちゃんかな)」

のあ「(事務所きってのロックアイドルだと涼ちゃんが言ってたわ)」

のあ「(あぁ……初対面にも厭わず挨拶してくるなんて、ロックだわ。伊達にギターは弾いてないってカンジね。是非ともお友達になりたい)」ドキドキ

のあ「(ちょっと怖かったけど。でも根はやさしい子ね、たぶん)」

のあ「……」

のあ「(私のライブバトルのお相手って、夏樹ちゃんとその相棒? だったかしら)」

のあ「(あとで調べとこ。ふふふっ……緊張してきた)」

のあ「……」チラッ

のあ「(ジュース、3本も貰っちゃった。近年稀に見る本当にいい子)」

───カシュ
ゴクゴクゴク


のあ「(あ……美味し)」

のあ「(もう一本)」カシュッ

のあ「(……ふふふっ♪)」ゴクゴク










━━━数十分後━━━
【事務所 トイレ】


のあ「カッ、かはッ!!」プルプル

のあ「ハァー、ハァー、ハァー、ハァー、ハァー」ガクガク

のあ「おぇええっ!!」

のあ「うぐっっ、ウッ、う、フゥー、フゥー……!!」プルプル

のあ「ンフッ、ふー、ふー……はぁー、はぁー……っ」

のあ「(ど、動機が!)」ドクンドクン!

のあ「(は、激しくて、気持ち悪いっ! あのジュースを飲んでから、異常にっ)」

のあ「(……ッ!!)」

のあ「(毒!! 毒を盛られたッ……!!)」プルプル

のあ「ハァー、ふぅー、ん……ふー、…………グスッ」

のあ「…………」

のあ「(ロック……ロック過ぎるわ。こんな大胆な先手を取ってくるなんて……)」

のあ「(バトルは……戦いはもう既に始まっているのね)」

のあ「(これが、業界の闇………上下関係というものを、ダイレクトに……っ)」

のあ「(夏樹、ちゃん…………)」グスッ


──────
────
──



37: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 22:34:49.20 ID:A39YavOz0

──
────
──────
【事務所 応接室】


卯月「皆さん、LIVEバトルの話でもちきりですね」

凛「ユニットで掛け合いとか考えるの、楽しいしね。一緒にネタやったり、乱入したり」

未央「基本、何やっても自由だからねぇ。いやー、私達も出たかったなぁ」

凛「まぁ、今回は割と大きな仕事被ったから……」

凛「手伝いには参加するけど、そう言えば2人も行くの?」

卯月「はい、私は昼上がりなので、その後すぐ行く予定です」

未央「私達も最初はガッチガチに緊張してたよねー」

未央「『フライド、チキーン↑』なんて掛け声まで考えてさ♪」

凛「懐かしいね、フライドチキン。今思うと……ちょっと変な掛け声だよね、ふふっ」

未央「しぶりんがソレ言う? 少なくとも『アルティザン・デュ・ショコラ』よりはテンポ良いと思うけど」

凛「えっ。誰、その案出したの」キョトン

未央「自分だよ!! なんかあと10個くらい蒼魔法の詠唱みたいな案も出してたよ!?」


───ガヤガヤガヤ







のあ「(……)」ジー

のあ「(年度の初めだとお仕事やライブも増えるのね。それにしてもいいなぁ、あの3人)」

のあ「(ニュー……なんだっけ。ジェネ……、…………?)」

のあ「(でも、和気藹々と楽しそう。私もあの子達のようにユニットを組んでみたい)」

のあ「(いいなぁ)」ジー

グゥゥ…


のあ「(……)」スリスリ

のあ「(フライドチキンかぁ。最近そういうの食べてないわ)」

のあ「(ちょうどお昼前だし、お腹もすいたし、ローソンに行こう。ファミチキ買ってこよ)」スッ

のあ「……」スタスタ






凛「(……)」チラッ

凛「(高峯さん、ずーっと俯いて何考えてたんだろう?)」

凛「(哲学的に宇宙の真理を思考してたのかな?)」

凛「(あるいはサイボーグやアンドロイドみたいに、ずっと待機モードでじっとしてたとか?)」

未央「(いや、案外……ご飯の献立でも考えてたりして)」

卯月「(……?)」



39: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 22:35:23.47 ID:A39YavOz0

━━━10分後━━━
【ローソン】




のあ「ふぁ、ファミチキください……っ!」




ローソン店員(以下、店員)「………………」

店員「……は、ハイ?」




のあ「(───ッ!?)」ビクッ!

店員「えーっと……当店に『ファミチキ』は置いてませんが……」

のあ「えっ……、ヘ……ッ!?」

のあ「あっ!! ぁ、アー……アァー」

店員「え、『Lチキ』でしょうか?」

のあ「ア……は、ハィ」モゴモゴ

店員「お一つでよろしいでしょうか?」

のあ「ハ、ヘャい」

店員「……あ」

のあ「(ッ!?)」ビクッ!

店員「も、申し訳ありません。ただいま品切れ中でして、5分ほどお待ちいただければお作り致しますが……」

のあ「ぁ、え……ア……いや、ア、いいデス………そンな、申し訳ナイコト……」モゴモゴ

店員「えっ?」

のあ「エ、えっと……ぁ、じ、じゃあ……」プルプル










━━━10分後━━━
【事務所 応接室】


のあ「……」カサカサ

のあ「(……)」





【つくね棒】





のあ「……」モキュモキュ



未央「(こ、今度は真顔でローソンのつくね棒食べてる……)」

凛「(両手で丁寧に食べてる……なんか可愛い。ビーバーみたい)」

卯月「(……)」

──────
────
──



63: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 22:44:02.98 ID:A39YavOz0

──
────
──────
【事務所 廊下】


───スタスタ

のあ「……♪」テクテク

のあ「(あぁ、楽しい)」

のあ「(『ポケモンGO』、これはいま私の精神の支えと言っても過言ではないわ)」スタスタ

のあ「(こうやってリアルに反映されるなんて、やっぱり世代としては感慨深───)」テクテク



ドンッ!!




のあ「ッ!!!」

*「あっ……ご、ごめんなさいっ…………ふ、フフフっ……♪」ヨロッ

のあ「ァ……いいえ……」

*「……」

*「(ああ………っ! 高峯さんの匂い、感触、体温っ……!)」ドキドキ

タタタタタッ


のあ「(……)」ジー









━━━━夜━━━━
【高峯家】


のあ「んー……」

のあ「歩きスマホ、やっぱり危ないかな」

のあ「事務所があまりにも便利にプレイできる環境なのだけれど………流石に控えるべき?」

のあ「以前、真奈美さんと美優さんに教えてもらって……」

のあ「楓さんと泰葉ちゃんと一緒にスマホを買いに行って……」

のあ「更に、紗南ちゃんと美玲ちゃんが事務所でやっているところを見かけたから……」

のあ「私も便乗して、あわよくばお近づきになろうとしたのだけれど……」

のあ「…………そういえば、最近めっきり見かけない」

のあ「……」



64: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 22:45:37.97 ID:A39YavOz0


のあ「歩きスマホ……。これはある種の社会問題でもあるし」

のあ「事務所の子に怪我でもさせちゃったら、大ゴトだわ」

のあ「今日なんて、同じくスマホを弄っていたであろう………あれは確か……」

のあ「紗枝ちゃんに2回、美波ちゃんに5回、奏ちゃんとは23回も偶然ぶつかったり、ぶつかりそうになったりしたし……」

のあ「まさに前後不覚になるほど熱中するというヤツかな。ポケモンに罪はないのに」

のあ「……でもやりたい、ポケモンGO。けどぶつかるのも怖いし」

のあ「………でも、ピカチュウさん欲しいし」

のあ「…………」

のあ「視線が下に向くからダメなんだ。どうにかして、注意を喚起すれば」

のあ「(…………)」

のあ「(……!)」ピーン!

のあ「そう、だっ。アレ、確か、アレを身に付ければ……っ」ガサガサ

のあ「前に、教習所で……!!」ガサガサ








━━━━翌日━━━━
【事務所 エントランス】


のあ「……」テクテク

のあ「…………」スタスタ



李衣菜「……」ジー

夏樹「(…………)」ジー







【E. 初心者マーク】






夏樹「(だりー。なぁだりー)」

夏樹「(アレ、何だか分かるか?)」

李衣菜「(…………)」

李衣菜「(……ちょっと意味がわかんない)」

夏樹「(……アタシもさ)」


──────
────
──
※E(Equipの略)……装備中という意味



67: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 22:46:28.86 ID:A39YavOz0

──
────
──────
【続 エントランス】


のあ「……」テクテク

のあ「…………」スタスタ



李衣菜「(……)」ジー

夏樹「(…………)」ジー

李衣菜「(あれは、高峯のあさん? 私たちのLIVEバトルのお相手の)」

夏樹「(ああ、そうだ。この事務所に所属してまだ半年ちょっとの、新人の)」

李衣菜「(エントランスをグルグル歩き回って……何してるんだろ? 何かに没頭してるようだけど)」

夏樹「(ああ。けど見て欲しいのはそこじゃあない)」

夏樹「(彼女の腹と背中。まるで奇抜なデザインシャツのロゴのように我が物顔で張り付いている、2色のステッカーだ)」

李衣菜「(……初心者マーク)」

夏樹「(そう、初心者マーク。正式名称は、初心運転者標識)」

李衣菜「(ど、どういう事……!?)」オロオロ

夏樹「(初心者マーク。あのステッカーやシールは本来自動車に付けるべき標識さ)」

夏樹「(間違っても人体に装備する代物じゃない。ここまではOKかい?)」

李衣菜「(う、うん)」

夏樹「(通常、アレを付ける意味は知ってるか?)」

李衣菜「(そりゃあね。運転初心者だから、周りの車に注意して貰うように分かりやすく───……)」

李衣菜「(───ハッ!!)」

夏樹「(……気付いたか、だりー)」

夏樹「(そう。あの標識を提示する車両を保護するよう、周囲の車両に注意を喚起するための物)」

夏樹「(運転手のプレッシャーになる幅寄せや割り込みを周りから行われないようにな。事故を未然に防ぐためさ)」

夏樹「(端的に、『自分は危険だ。近寄るな』という意味合いだ)」

李衣菜「(つ、つまりッ!!)」

李衣菜「(………ろ、ロック!!!)」

夏樹「(あぁ。しかも生半可じゃねえ)」

夏樹「(スティーヴィー・ニックス、レッド・ツェッペリン、キース・ムーン、ジム・モリソン………)」

夏樹「(エキセントリックでクレイジーにぶっとんだ伝説を残した奴らなら数多くいるが……)」

夏樹「(ロック界広しと言えど、かつて存在したか? あれほどダイレクトに、かつソフトに自らの危険性を誇示する奴は)」

李衣菜「(……っ!!)」

夏樹「(時代が時代なら、スターダムにのし上がり、この天下を5回くらいかるく統一出来ただろうぜ、彼女)」

夏樹「(……アタシ達ひょっとすると、トンデモないロックな人と一緒の事務所にいるのかもしれないぜ、だりー)」

李衣菜「(な、なんということだ……、なんということだ……)」ガクガク





のあ「(……あっ! ぴ、ピカチュウさんっっ!!)」ビクッ




69: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 22:48:22.61 ID:A39YavOz0

李衣菜「(私達は、ただ……っ)」プルプル

李衣菜「(ただ、高峯さんがウロウロしてるエントランスの奥のエレベーターに乗りたいだけなのに………どうすればいいの、なつきち?)」

李衣菜「(このまま息を潜めていても、そのうち高峯さんに見つかって追い詰められて……っ)」

李衣菜「(……SATSUGAIされちゃうの?)」

夏樹「(落ち着け、落ち着くんだだりー。SATSUGAIはされない)」

夏樹「(だが、アタシも流石に対抗できないな。言動の予測ができない)」

夏樹「(というか……、フツーに気まずい)」

李衣菜「(ッ!! な、なつきちでも対抗できないの!? パッションなのに!?)」

夏樹「(パッションに過度なコミュ力を要求するもんじゃないぜ、だりー。ホント、損な役回りだ)」

夏樹「(……助っ人が必要だ)」

夏樹「(幸い時刻は早朝。まだ人も少ない。今ならまだ被害は最小限に抑えられる)」

李衣菜「(うん、そうだね。この事務所を血の海にするわけにはいかない)」

李衣菜「(まだ朝だけど、これからどんどん人が出社してくる。当然、小さい子も)」

李衣菜「(……私達が事務所を救わなきゃ。荒ぶるロックの化身から)」

夏樹「(この切迫した状況を打開できる助っ人を呼んでくるんだ。だりー、頼んだぜ)」

李衣菜「(うん!)」スタッ

夏樹「(あ、ちょっと待て)」

李衣菜「??」

夏樹「(アー……そうだな………、ンー…………)」

夏樹「(……出来ればプロデューサー、あるいは、その……、何事もなく自然に諭してくれそうな優しい大人ならグッドだ)」

夏樹「(とにかく、空気が読める人だ。空気が読める人。空気が読める人を連れてくるんだ。空気が読める人だぞ。任せたぜ、相棒)」グッ

李衣菜「(わかった! 待っててなつきち!!)」ダッ!

夏樹「(…………)」ジー

夏樹「(………………………)」ジー

夏樹「(……あの人、一体何なんだ?)」

夏樹「(何者だ? …………ホント何やってんだ、朝っぱらから。宇宙と交信でもしてんのか?)」

夏樹「(……ひょっとして、マジで凄い人なんじゃ───)」

李衣菜「なつきちーー!!」バタバタ

夏樹「(───!)」

夏樹「(思ったより早かったな、だりー)」クルッ





蘭子『フフフ……』

蘭子『我が魂を深淵から解き放つ者よ。血の契約のもと、汝の祈りに応えよう!!』
(●訳:夏樹さん、何かあったんですか? 私でよければ力になりますよっ!)」

李衣菜「とりあえず、近くを歩いてた闇の眷属を連れて来たよっ!!」ドタドタ



夏樹「(!?)」

夏樹「(バッ……!!)」ガタッ!





のあ「(………逃げられた)」シュン

──────
────
──



70: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 22:49:24.33 ID:A39YavOz0


──
────
──────
【レッスンルーム】


ベテトレ「今日は基礎のビジュアルレッスンだ」

卯月「はいっ」

のあ「……」

ベテトレ「カメラを意識し、役を演じ、感情を表現する。歌に踊り、撮影に舞台……君達アイドルの根幹を成す技倆とも言える」

ベテトレ「二人でペアを組み、お互いを観察しあい今日は励んで欲しい。私から言う事は以上だ」

のあ「……」

ベテトレ「(……)」

ベテトレ「……島村。ちょっといいかな? 話がある」

卯月「はい、なんでしょう?」






━━━━━━━━━━


ベテトレ「話は手短に済ませたい」

ベテトレ「高峯のことだが……今日はお前が先導して、彼女のビジュアルレッスンを付けて欲しいんだ」

卯月「わ、私が……ですか?」

ベテトレ「クールと言えば耳当たりは良いが……微笑ひとつ浮かべず、凍った仮面のように表情が乏しい高峯を、だ」

ベテトレ「高峯より経歴が長いお前の指導で、変化の兆しを見出して欲しい。今後の活動の為にも」

卯月「たしかに、無表情な人だとは思いますけど……」

ベテトレ「そうだ。お前と高峯はある種、対極の存在とも言える」

卯月「でも……私なんかに、優秀な彼女のような人の指導なんて出来るんでしょうか?」

ベテトレ「……島村。笑顔に定評のある島村」

ベテトレ「うちでは、笑顔No1はお前だ」

卯月「(……!!)」

ベテトレ「高峯を任せていいな?」

卯月「……や、やりますっ。わたし頑張りますっ!」

ベテトレ「そうか。よく言ってくれた」ポン

ベテトレ「じゃあ私はデイトレードで気になる銘柄の値動きを見張っているから、あとはお前に任せるぞ。何かあれば自己の判断で対処してくれ」スタスタ


───ガチャ、バタン

卯月「よ……、よぉし!」

卯月「頑張ろう! 高峯さんを、笑顔に……」



74: ☆2/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 22:56:12.27 ID:A39YavOz0


━━━5分後━━━
【レッスンルーム】


卯月「……と、いうわけで」

卯月「せ、僭越ながら今日は私が高峯さんのお手本になって、笑顔のレッスンをしたいと思います!」ドキドキ

のあ「……」

のあ「(あぁ……島村卯月ちゃん、可愛らしいわ。明るい笑顔がチャーミングで、穢れを知らないってカンジで本当に素敵)」ドキドキ

のあ「(是非ともお友達になりたい。しかも二人でレッスンなんて……っ)」ドキドキ

のあ「(ヤバい、緊張してきた。緊張と興奮で心臓が痛い……)」ドクンドクン!

のあ「ヨ……よろしく頼むわ。卯月」

卯月「は、ハイっ! 頑張りましょうっ!」

卯月「(う、うぅ。緊張します……)」ドキドキ

卯月「じゃあ……えっと、まずは一度、自然な形の笑顔を作ってみてください♪」

のあ「(……)」




のあ「……っ」ググッ

のあ「…………っっ」ギリギリ



卯月「(っ!?)」ビクッ

卯月「お、怒ってます? 何か私、癇に障るようなことでも……」

のあ「……え?」

卯月「(ま、まさか……)」

卯月「(コレが、高峯さんのナチュラルな笑顔ッ!?)」

卯月「(歯をギラつかせて、眉間にしわを寄せて……テンションがハイになったアントニオ猪木みたいな顔してる……)」

卯月「あ、あのっ! 口角を上げるときに───」

のあ「……」ギリッ!

卯月「ヒッ!」ビクッ!

卯月「ソ……、その、口角を上げるときに、目を細めたり眉間にしわを寄せたり首を曲げたりせずに……ですね?」

卯月「もっと柔らかく、朗らかな感じで。リラックスして……」




のあ「……っ」ニタァ

のあ「…………ヘッ」パカッ



卯月「」

卯月「(じ、邪悪な笑みッ!! て、体のいいオモチャという名の弱者を見つけた金持ちのヤンキーみたいな見下す眼光をしてる……っ!)」

卯月「(目をカッと見開いて爛々と輝かせて……正直怖い……こんなの笑顔じゃ───…)」

のあ「……」カチカチカチ!

卯月「フ、ヒッ……!」ビクッ!

卯月「う、うそ……」



75: ☆3/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 22:57:34.21 ID:A39YavOz0


卯月「(わ、私が挫けちゃダメですっ! 笑顔なら……笑顔なら誰にも負けないっ!)」

卯月「よ、よーしっ! じゃあ私の真似をしてみて下さい、一緒にやりますよ!!」

卯月「イエイっ♪」ニコッ

のあ「イ……いえーい」ニヤリ

卯月「ぴ、ピースっ♪」ブイッ

のあ「ぴーす……」ゴゴゴゴゴ…

卯月「にょわーっ☆」ビシッ!

のあ「のあー……」グググッ…

卯月「……」

のあ「……」

卯月「………………」

のあ「………」











━━━1時間後━━━


卯月「はは……、はっ…………っ」ポロポロ

のあ「……」

卯月「た、たかみねさん……うぅっ……、グスッ……」ポロポロ

のあ「……」

卯月「笑顔なんてぇ……!」

卯月「笑うなんてぇっ……!」

卯月「誰でもっ!」

卯月「出来るもんっっ!!」ダッ!

卯月「うわあぁぁーーーーーーーーーーーん!!」ダダダダッ!


ガチャ!
───バタン!!


















のあ「…」

──────
────
──



76: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 22:58:48.51 ID:A39YavOz0

──
────
──────
【岡崎家】


のあ「……」

楓「(……♪)」ズルルー

泰葉「……」

のあ「……笑顔とは」

のあ「………なんぞや」ハー

泰葉「な、なんですかいきなり」

楓「(泰葉ちゃん、わさび取って下さい)」ズズズー

泰葉「(あ、ハイ)」

のあ「……この事務所に所属した当初から、悩んでいる事よ。これは」

のあ「………ハァ」

泰葉「表情、ですか」

泰葉「失礼かもしれないですけど、確かに高峯さんは硬いですものね」

泰葉「でも、プロデューサーさんも言ってましたけど、そこも貴女の魅力だと思いますよ」

のあ「…………」

のあ「……事務所の子達と、友達になりたい」

泰葉「……エッ。あれ、今そんな話でしたっけ?」

楓「(泰葉ちゃん、辛味大根おろし取って下さい)」ズルズル

泰葉「(あ、ハイ)」

のあ「なりたい……なりたい……」

泰葉「な、なればいいじゃないですか」

のあ「私のような、コミュ───……」

のあ「……ひきこ───……」

のあ「……」

のあ「………とにかく難しいのよ。世代が違うし」

泰葉「いま何を言いかけました?」

のあ「……寡黙の女王は、孤高の運命。馴れ合いをよしとせず、ただ無情に過ぎ行く悠久の刻と歩むだけ」

泰葉「そのキャラを理由にしたらダメですよ。貴女が『寡黙の女王』キャラで通して頑張っているのはなんとなく察して来ましたけど……」

のあ「……………………」

のあ「…………………………………………」

のあ「…………………………………………だって……っ」グスッ

泰葉「ご、ごごごめんなさい!! 言い過ぎました……つらいですよね、ごめんなさい」

楓「(泰葉ちゃん、自然薯おろし取って下さい)」ズズー

泰葉「(あ、ハイ)」

楓「……♪」ズズー



78: ☆2/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 23:03:56.35 ID:A39YavOz0


楓「泰葉ちゃん。ホラ、なにか快刀乱麻を断つアドバイスを」ズズー

泰葉「うぅん、そうですね」

泰葉「月並みですけど、会話から始めましょうよ」

のあ「……私の方から?」

泰葉「難しいのであれば、相手の出方を伺いましょう。むしろ誘うのなんてどうですか?」

泰葉「趣味が合えば一番ですけど……会話のきっかけって、ほんとうに何気ない些細なものなんです」

泰葉「化粧とか、服装とか。年下狙いなら、付けている小物とか。変化を観察するのも大事ですね」

泰葉「ナンパじゃないですけど、そういう部分を褒められると、女の人って結構嬉しいんですよ?」

のあ「……小物」

泰葉「小物でいえば、ブランドの物だとか、版権物だとか、ご当地のゆるキャラだとか」

泰葉「堅い印象の高峯さんだと、そういうギャップで興味が湧く子もいるんじゃないですか?」

のあ「(そういえば……前には伊吹ちゃんとか奈緒ちゃんがそんなカンジだったかしら)」

泰葉「ああ、そうそう。事務所で最近流行っているんですけど、『ぴにゃこら太』っていう───」

のあ「(……小物……アクセサリー……)」

のあ「(版権物……ゆるキャラ……。なにかウチにあったかな……)」

のあ「(年下の興味を引くような……)」

のあ「(…………)」ボー

泰葉「……高峯さん、聞いてました?」

楓「(泰葉ちゃん、刻みネギ取って下さい)」ズズー

泰葉「(あ、ハイ)」



80: ☆3/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 23:09:21.30 ID:A39YavOz0


━━━━翌日━━━━
【事務所 応接室】


卯月「……」ジー

凛「……」ジー

未央「……」ジー






のあ「(……)」


http://i.imgur.com/NwdhQKV.jpg


のあ「(……)」チラッ






未央「ゥッ!!!」ビクッ!

未央「(ちょ、ちょっ……!! なにアレ!? なにアレ!!!)」ヒソヒソ

凛「(し、知らないよ。何でテーブルに……というか高峯さんの目の前にあんなのが置いてあるの?)」ヒソヒソ

未央「(あれ、明らかに高峯さんの私物だよね?)」

凛「(なにあのキモチ悪いキャラクターの……フィギュア?)」

凛「(いやでも、あのサイズでキーホルダーっぽいけど)」

未央「(さっきから横目でチラチラこっちの様子をうかがってるんだけど……。なに、どうすればいいの?)」ヒソヒソ

凛「(いや……無理。近寄りづらいよ、いつにも増して。私達が部屋から出る以外無いよ選択肢は)」ヒソヒソ

未央「(うーん……でもあのキャラクター、どっかで見たことあるような……)」

未央「(弟がこの前見てた漫画で………あれ、キン肉マン? 違う、バッファローマン?)」

凛「(なんだ、知ってんじゃん。ほら話しかけてきてよ)」

凛「(ボーリング一緒に行った時も、前々から高峯さんとゆっくり話してみたいって言ってたじゃん。夢が叶うよやったね未央)」

未央「(無理無理無理だよ!! バッファローマンで話が広げられる気がしないよ!!!)」

凛「(死ぬ気で行けば大丈夫だって。未央、パッションでしょ)」

未央「(死なす気!? パッションだからって過度なコミュ力を期待しないで!! )」

未央「(ホント無理だって!! ヤクザの会合の余興で“純情Midnight伝説”を歌わせるような暴挙だよ!?)」

凛「(イケるって未央なら。ちゃんとツーショット撮ってあげるよ。写真のタイトルは“SCPとの邂逅”で良い?」

未央「(ハァ!?)」

卯月「(高峯さん……っ)」グスッ








のあ「……」チラッ

のあ「……」ドキドキ

──────
────
──



81: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 23:10:36.90 ID:A39YavOz0

──
────
──────
【高峯家】


のあ「……会話。会話ね」

のあ「思い返せば、自発的に事務所の人達に話しかけるって機会は少なかったかも」

のあ「でも、私みたいに話題の引き出しが少ないと、続かないのよね。会話って」

のあ「あぁ……難しい。でもLIVEバトルする多田李衣菜ちゃんと木村夏樹ちゃんとは仲良くなっておきたい、せめて」

のあ「うーん」ペラッ

のあ「この写真の子が多田李衣菜ちゃんね」

のあ「派手なプリントTシャツ。服装やアクセサリーをカジュアルに合わせて、クールな雰囲気を醸し出して……でも、どこか幼く可愛い印象」

のあ「ああ、彼女もロックなアイドルね。なんか少し前の裏原とかを窪塚洋介と一緒に気取って歩いてそうなカンジ」

のあ「ヘッドホンを肩にかけて更に耳に付けてるけど……なんだろう。これが今の流行りなのかな」

のあ「ロックな話題…………」

のあ「無理だわ。そっち系の音楽はあまり馴染みがないし」

のあ「……!」

のあ「でも、伊吹ちゃんや小梅ちゃん達と関わったように、映画の話題の時みたいに……」

のあ「……『フリ』をすれば……」







━━━翌日・早朝━━━
【事務所 応接室】


李衣菜「~~~……♪」シャカシャカ

李衣菜「~~~~~……♪♪」シャカシャカ



ガチャ!

───バァン!!!



李衣菜「うひゃっ……!?」ビクッ!

李衣菜「な、なにっ!? だ、誰………扉を蹴破って……」

のあ「………………」

李衣菜「あ、アナタは……!!」

李衣菜「ろ、ロックの化身……、高峯のあさん!!」

のあ「(……)」



82: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 23:11:17.65 ID:A39YavOz0

李衣菜「っ!?」

李衣菜「そ、その肩に担いだラジカセは!?」

のあ「ヨ……ヨー……チェケラー……」

李衣菜「ら、ラッパー!?」

のあ「リ……李衣菜、ヨー李衣菜……、イイカンジの曲リッスンしてんじゃーん……」

李衣菜「えっ!? この距離で漏れた音聞こえてました!?」

のあ「オ……おぉ、そりゃあもう、ハート震えてビート刻むほどかなりキてたぜ……」

李衣菜「あっ!! そ、そうだ!! サイン……じゃなくて、えっと……!!」

李衣菜「あ、あのっ! どうしたら、高峯さんのようにロックになれますか!?」

のあ「わ、私みたいにロックに……? そ、そりゃ……なん、なんつーか、私はロックで、ロックは私みたいなトコあるし……ソノ……」

のあ「言葉じゃなくて……ソノ……、要は、ノリ?」

李衣菜「ノリ……!!」

のあ「も、もうちょっとロックな格好した方がいいかも……その……ほら、もっとシルバー巻くとか……」

李衣菜「シルバー……!?」

のあ「ホ、ホラ……その、シルバー……鎖? 鎖とか、その……束縛的なイメージで……何にも縛られることない自由へのアンチテーゼ……みたいな……?」

李衣菜「アンチテーゼ……!!」

のあ「ジ、じゃあ……ほら、もう私、そろそろ行くから……ちょ、ちょっとどいてネ……」スタスタ

李衣菜「えっ、いま来たばかりなのに!? ってアレっ!? ちょ、えっ……ど、何処に行くんですか!!」

李衣菜「それ、非常用梯子ですよ!?」

のあ「エッ……イヤ……その……私レベルのロックとなると……その、クセになってんの。非常用梯子から出入りすんの」

のあ「シ、新聞の一面に取り上げられてこそ、その……私の中では、ロックみたいなトコがあるから」

李衣菜「!! そ、そうか、高峯さんは存在そのものが非常事態のような人だから……」

のあ「あ……アディオス李衣菜……私達、もうソウルメイトだから……次からは言葉はいらないから……」

のあ「ぁっ」ツルッ


───ヒュンッ!!


李衣菜「……!!」

───ガチャ


夏樹「おーっす。だりー?」スッ

夏樹「…………………………………………………………だ、だりー?」

李衣菜「ひぐっ……うぅっ………、……な、なつきちぃ……」ポロポロ

李衣菜「ロックだあぁ……、なんっていうか、ロックのよくばりセットみたいな人だぁ……」

夏樹「……?」






━━━━━━━━━━
【吉野家】

のあ「……アー」グスッ

のあ「…足挫いた……なにやってんだろ……私…」

──────
────
──



83: ☆1/4 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 23:11:53.89 ID:A39YavOz0

──
────
──────
【レッスンルーム】


マストレ「……おほんっ」

マストレ「じゃあ今日の予定分を始めようか」

卯月「(……あの青木麗さんが直々に指導してくれるなんて……き、緊張しますっ)」ドキドキ

のあ「(……この人があのトレーナー4姉妹の長女、青木麗さんかぁ……か、格好良いなぁ)」ドキドキ

マストレ「……まず、島村に高峯。先日は妹が申し訳ない事をした」

卯月「え? (青木)聖さんがですか?」

マストレ「ああ。勤務中に抜け出してデイトレードに興じるなど言語道断」

マストレ「私が直に灸を据えて今後はあのような事が無いように絞っておいたから、それで手打ちにして欲しい。本当に済まなかった」ペコッ

卯月「あっ、い、いいえ」

マストレ「だが、妹の言う事も一理ある」

のあ「?」

卯月「笑顔のことですか?」

マストレ「ああ」

マストレ「君達アイドルにとって笑顔をはじめとした表情は必要不可欠な要素だ」

マストレ「高峯。人との関わりにおいて、最も多く視界に入る部分は何処かな?」

のあ「(……)」

のあ「ク……くちびる」

マストレ「そう顔、つまり表情だ」

のあ「……」

マストレ「機微・顔色・面貌。初対面の時、コミュニケーションを図る時、否が応でも目に映る」

マストレ「妹も言っていただろうが、ことアイドルという職業は色々な意味で顔を売る仕事だ」

マストレ「人並み以上に表情を使う場に直面し、そしてそれを自在に操り印象付ける技術が求められる」



85: ☆2/4 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 23:12:53.76 ID:A39YavOz0


マストレ「話は少し逸れるが、それはある種、ライブにおけるパフォーマンスであっても同じことだ」

マストレ「高峯は近いうちに、LIVEバトルを控えているらしいな?」

のあ「……ええ」

マストレ「(……)」

マストレ「高峯。妹達からも評価は聞いているが、君は歌と踊りに関して、必要な基礎は勿論、技術ですら高いレベルで習得している」

マストレ「脱帽だよ。新人にしては上出来……いや、むしろ新人であるのが不思議なくらいだ」

卯月「(さ、流石は高峯さん……!)」

のあ「(ふ、フフ……嬉しい、卯月ちゃんもコッチみてる……♪)」ドキドキ

マストレ「……だが、ハッキリ言わせて貰おう」





マストレ「君の歌も踊りも『感情』が全く無い。表情の変化が乏しい、という意味も当然兼ねてだが」

マストレ「全てが単調。まるで命令されたプログラム通りに動くロボットのように、そこに感情を見出すことは出来なかった」





のあ「(ッ!?)」グサッ!

マストレ「……島村。君達アイドルにとって最も大切なものは何かな?」

卯月「え、え~っと……」

のあ「(ろ、ろぼッ……!?)」プルプル

卯月「……ファンの皆さん、ですか?」

マストレ「そうだ。無論これは『ファンのために身を投げ打ち尽くせ』、という非情な意味ではない」

マストレ「ファンとの意思疎通……。そのために君達は自分の意図・感情を歌や踊りにのせて表現する」

マストレ「躍動感や悲壮感を、仕草や声色や拍子で形作る。謂わば、歌と踊りも全て君達の『感情』なのだ」

マストレ「ファンを想い、感情を籠め、親近感を醸し出し、一体感を生み出し、一個のアイドルとしての完成形に近づいていく」

マストレ「……高峯のあ、君は非凡で稀有な存在だ。しかしそれだけじゃあ足りない、ダメなんだ」

のあ「(ぉ……ぉぉ……っ)」プルプル

卯月「(高峯さん? け、血色が……)」




86: ☆3/4 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 23:15:06.98 ID:A39YavOz0


マストレ「高い技術は当然必要だ。だが、ただ魅せるだけでなく伝わらなければ意味がない」

のあ「(ぁ、あふっ……うくっ……)」プルプル

のあ「(フゥー、ふぅー…………ウッ、ぐっ……!)」プルプル

のあ「(ふぅー、ふぅー……フッ、ふぅー……っ!)」プルプル

マストレ「高みに上れば上るほど、自然と変容し遠退いていくものもある」

マストレ「憧憬の心は畏怖の念に。羨望の眼差しは嫉妬の視線に。孤高の歌姫は……いつしか孤独の存在に」

マストレ「皆は口を揃えて言う。『アイドルとは星が煌めくように美しく眩いが、手の届かない存在』『アイドルとは偶像であり、住む世界が違う』、と」

マストレ「……だがそれらは、『アイドルとファンの心の乖離』を正当化する言葉では断じてない」

マストレ「アイドルとは、常にファンと共に在らなければその存在価値を失ってしまう」

マストレ「ファンとの意思疎通を図る君達の表情は、いつでも重い意味を持つということを心に留めておきなさい」

卯月「は、はいっ!」

卯月「(麗さん、かっこいい……)」

マストレ「それで、だ……。話を戻そうか、表現についてだ」

マストレ「歌や踊りに感情を籠める為には、その起伏を絶妙に表現することだ」

マストレ「振り付けの流れや動き、歌唱法による音程や声量の抑揚、拍節の変化もだが……、それこそ初歩として、『顔の表情』を伴うことが重要になってくる」

マストレ「喜怒哀楽の表情、機微の基礎を習得する。それがビジュアルレッスンだ」

卯月「なるほど……!」

マストレ「最初にも言ったが、君達アイドルにとっては歌と踊り以外にも、ドラマ・CM・モデル撮影・オーディション・スポンサーやクライエントに対しての挨拶……」

マストレ「様々な仕事の場で表情を使い分ける技術が求められる」

マストレ「太陽のように屈託のない笑顔とまで言わずとも、せめて営業スマイルくらいは身に付けておいて損は無いだろう」

マストレ「基本形は笑顔だ」

マストレ「島村は笑顔に関しては満点だな。あとは状況に応じた感情の表出と、欲を言えば歌と踊りの技術も向上させれば、より洗練されたパフォーマンスが出来るだろう」

卯月「は、はいっ!」

卯月「……っ!!」チラッ

マストレ「……?」

マストレ「(なんだ……? 島村が高峯を前のめりで凝視している……)」




87: ☆4/4 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 23:19:18.73 ID:A39YavOz0

━━━2時間後━━━


マストレ「?」

マストレ「どうした高峯。そんなトコロに突っ立って」

マストレ「島村はもう戻ったぞ…………ん?」

マストレ「なんだ? 何か用か?」



「フっ……ク……グスッ……」ポロポロ



マストレ「あぁ。レッスンの続きか」

マストレ「うん。なかなか真に迫ってるぞ、哀哭と垂泣の調子を崩さず、台詞でもつけてみろ」



「カ……っ」グスッ

「ガ……感情移入ぅ、親近感っ……ヒグッ」

「……ゾ、ぞれら、それらはぁっ、ぎ、技術の低さを……ズズッ、ごッ、ごまがじでいるだけに、ズ、ずぎ、すぎな、いィィィっ……」ポロポロ

「ヒッ表情、作りばァーっ、フッ……、じ、じゅ、純然たるデグっ…デクニッグぅ……。じ、自身のっ、ないベッ、内面をっ、ォォォ……!」ポロポロ

「すっ、ストレートに、曝け、出すスタイルも、あ、あァァ、る、ケドぉ……グスン……、ゾ、そーいうのはァ、わ、わだっ、わだじの趣味ではっ、な、無いィィィッ……!」

「……グスッ! ぅ、ゥ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ゥウウ!!」ズズッ



マストレ「……うん、いいぞ。だいぶ良くなった」

マストレ「少しオーバーすぎる部分も否めないが、そこは追々慣らしてくことにしよう」

マストレ「……いや、なんだ。最初は私も少し言い過ぎたかと思ったよ。別に高峯の人格を否定しようというワケではないんだ」

マストレ「無機質な表情もお前の持ち味の一つだ。それを貫くのも良しだが……」


「ウ゛ウ゛……! ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ゥ……、ヒグッ、!、グスッ……!」


マストレ「高峯。そろそろ演技はストップだ」

マストレ「2時間ぶっ続けで疲れただろう。今日はそのくらいで……」

マストレ「………………」

マストレ「……高峯? ほら、もういいから。早くしないと…………」

マストレ「…………た、高峯………………?」

マストレ「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

マストレ「ぁっ」

マストレ「ァ……ちょ、ちょっと、ちょっとここで待っていてくれ」

マストレ「い、いま私が島村を連れてくるから……い、いいな? わ、分かったか? 絶対外に出るんじゃないぞ? 絶ッ対外に出るんじゃないぞ??」

マストレ「すす、すぐ戻ってくるから。あ、あと何か飲みたいものとかあるか? ……その、なんか奢るから、ウン……いま島村に助けを請……いや、連れ戻してくるから……、し、島村、ちょ、ちょっと待てッ……」ダッ!

ダダダダッ!!

ガチャ!
───バタァン!!









「…」グスッ

────
──



88: ※参考画像 2016/11/13(日) 23:19:53.19 ID:A39YavOz0

91: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 23:22:10.51 ID:A39YavOz0

──
────
──────
【事務所 応接室】


夏樹「……で?」

李衣菜「まー、話題に事欠かない人だからねえ。高峯さん」

夏樹「あの容姿と風格だしな。クセの多いこの事務所でも、(色々と)頭一つ飛び抜けてるだろ」

夏樹「デビューも早いし、アタシらもあっという間に追い抜かれるかもなぁ……」

李衣菜「真奈美さんと美優さんは『意外に普通なカンジ』って言ってたかな?」

夏樹「へえ……。理由が気になる」

李衣菜「一緒にゴハン食べて世間話でもしてたりしてね」

夏樹「(あの人何食うんだろーかな………電気で動いてそうな人だけど)」

李衣菜「アーニャちゃんは、『似たものを感じる』ってさ」

夏樹「似たもの、ね。趣味とか?」

李衣菜「高峯さんのシュミって何だろ? 意外にロマンチックな趣味とかだったりして」

夏樹「さあ」

李衣菜「みくはねー。なんか『ノーコメント』だって」

夏樹「なんだソレ……、あの二人って接点あったっけ?」

李衣菜「一緒に地方イベントまわったって」

夏樹「ふぅん。でも聞いた所、そんなに大きな仕事はまだしてない感じだったな。まだ半年弱だから当然か」

李衣菜「恐ろしいほどになんでもカンペキにこなせそうな人なのにね」

李衣菜「案外不器用だったり……なーんて」

夏樹「まさか」

李衣菜「………でさ?」

李衣菜「この間、あの4人も高峯さんのコトを話してたんだけどね?」

夏樹「?」

李衣菜「映画鑑賞部」

夏樹「涼、小梅、あと伊吹に奏か。ああ、たしか一緒に映画鑑賞したんだっけか、高峯さんと」



92: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 23:24:16.84 ID:A39YavOz0

李衣菜「高峯さんに対してのコメントが三者三様でオモシロかったよ。あ、四者四様か」

夏樹「へえ。涼はなんて?」


~~~~~~~~~~
 『高峯サン?』
 『んー……噂に聞くほどは堅いカンジはしなかったぜ。取っ付き難い性格かと思ったんだけど』
 『ただやっぱり一緒にワイワイ騒いでつれそうってタイプでもないかな。んんー……年の差もあんのかなぁ』
~~~~~~~~~~


夏樹「あの面倒見が良い涼が、珍しく距離を測りかねてるな」

李衣菜「まあ、私だったら初対面でもフィーリングでバーン! ってイっちゃうけどね」

夏樹「奏は?」


~~~~~~~~~~
 『……高峯さん?』
 『あの人はね………「世界」なの』
 『退屈ではないけれど満たされない、踏み出す勇気は無いけれどもどかしい………晴れ晴れとせず微睡んでいた私のメランコリーな世界を、あの人は一瞬で、見たことのない色に染め上げた……。まるで、雲に抱かれ、朧気な漆黒の夜を切り取るように姿を見せた、眩惑する月のよ───
~~~~~~~~~
夏樹「小梅は?」

李衣菜「んん? 小梅ちゃんは……」


~~~~~~~~~~
 『えっ……? た、高峯、さん??』
 『また映画、一緒に見たいな……♪ あと、あの子も言ってたけど……』
 『色々とすっごく面白い人、だって。見えないはずなのに見られているようなフシギなカンジだって……』
 『ふふふっ、うん……良い人、だと思う。あの子も気に入ってたし……』
~~~~~~~~~~


夏樹「………なんつーか、やっぱあの人、なんか持ってるよな。いろいろ引き寄せるっつーか」

夏樹「カリスマ? いや、なんかそれ以上に人を惹きつける不可抗力の…………重力?」

李衣菜「でさ、でさ? 伊吹さんが言ってたんだけどね?」

夏樹「ん?」


~~~~~~~~~~
 『あー、高峯さん?』
 『そだねー……うーん……』
 『映画の人物で表すと、【T-X】みたいな人だよね!』
~~~~~~~~~~


夏樹「グッ! むふっ……!」プルプル

李衣菜「ねえねえ、そのT-Xって何さ?」

夏樹「ふぅ………あー、T-X? じゃあまず『ターミネーター』って映画知ってるか?」

李衣菜「うん、シュワちゃんのでしょ? それくらい乳児でも知ってるよ」

夏樹「T-Xってのは、その第3作に出てくる、女型の───」






━━━━その頃━━━━
【岡崎家】


のあ「…………」

楓「ロボットですって、のあさん」

泰葉「(…………)」


──────
────
──



93: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 23:26:08.01 ID:A39YavOz0

──
────
──────
【続 岡崎家】


のあ「……」

楓「ま、まあ落ち着いてくださいのあさん。所詮は噂ですよ」

楓「みんなも、冗談で言ってるに決まってます」

のあ「……」

泰葉「(完全に消沈してる)」

泰葉「(机に突っ伏して、微動だにしない。死んでるみたい)」

のあ「……」

泰葉「麗さんも言ってたんですか?」

のあ「……」ズリズリ

泰葉「そ、そうですか。でも悪い意味じゃないですよ、多分」

泰葉「その、うーん……」

泰葉「………………」

のあ「……」

泰葉「(か、楓さん。上手いアドバイスが見つからないです、タッチで)」

楓「(フフフ。安心してください泰葉ちゃん)」

楓「(ここはこの年上の高垣楓に……高垣楓と書いてデキる大人に任せてください)」

泰葉「(不安しかない)」

楓「……のあさん」ポン

のあ「……」

泰葉「(……)」

楓「………………」

楓「一杯、やりにいきましょう」

泰葉「(やっぱり……)」








━━━30分後━━━
【居酒屋】


泰葉「あの……いいんですか? 私も入って」

楓「大丈夫ですよ。ホラ、泰葉ちゃんは『未成年』のシール張ってますから」ペタッ

泰葉「(居酒屋……こういう大衆的なところに入るのは、初めてかも)」

のあ「……」



94: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 23:29:49.46 ID:A39YavOz0


のあ「……私」

のあ「無機質な目とか、画一的な顔とか幼い頃からよく言われてはいたけど」

のあ「……まさか無機物に例えられるとは、夢にも思わなかった」

のあ「……つらい」

泰葉「…………」

泰葉「(楓さん……。高峯さん、珍しく本当に落ち込んでますよ)」





楓「すみませーんっ、ビールもういっぱいっ!」





泰葉「って、アレェ!?」

泰葉「ちょっと!! なに普通に飲んでるんですか!!」

楓「泰葉ちゃん。大人になれば、たくさんの悩みを抱え込んでしまいます。たくさん考え込んで、たくさんストレスを溜め込んでしまいます」

楓「なら、その悩みを吐き出し、考え込む時間を奪い、ストレスを発散させてあげましょう!」

楓「これこそ私の知りうる最大限のアドバイス!! デキる大人の処世術というヤツですっ!」

泰葉「ソレ根本的な解決には結びついてないですよね!?」

楓「さあ、のあさん! ビールをあびーるほど飲んで、明日への活力にしましょう!」

のあ「……ええ」グビッ

泰葉「(ああダメだ! やっぱりこの人に頼ったのが間違いだった!!)」

泰葉「(でも……、でもここはもう大人の独壇場っ、私の出来ることは何も……っ!)」

のあ「……のんだ」ケフッ

楓「スミマセンっ! ビールもう一杯!!」

泰葉「すみません! ラーメンサラダ下さい!!」














━━━━翌日━━━━
【岡崎家】


泰葉「……」

楓「……」

泰葉「……高峯さんは?」

楓「二日酔いで寝込んでます」

泰葉「(大人って、一体……)」


──────
────
──



95: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 23:30:51.14 ID:A39YavOz0

──
────
──────
【岡崎家】


楓「……まあ」

楓「全てが完璧な人なんていませんよ」

楓「どこかしら欠点があるからこそ、愛嬌も生まれるというものですよ」

のあ「……」

泰葉「楓さんもあるんですか? なにか苦手なこと」

楓「アイドルの活動で限らせて言わせていただけば、歌と踊りと人間関係ですね」

泰葉「(それって致命的では……)」

泰葉「……あ」

泰葉「得意不得意と言えば……お二人は確認しましたか? 『成績表』」

のあ「……?」

楓「成績表?」

泰葉「あれ、ご存じないですか?」

泰葉「麗さんと聖さんの指導を受けているアイドルに半期毎で渡される、いわば習熟度評価のような形で点数とアドバイスを記した紙ですね」

泰葉「以前までは中学生までの子を対象に、通信簿のような形で渡していたんですけど……」

泰葉「一部大人の要望もあり、結局全員に渡されるようになったんですよ。ホラ、こういうの」ピラッ

のあ「……そういえば……この間……」

楓「……渡された気がしないでも……」

のあ「……探してくるわ」スッ

楓「同じく」スッ

泰葉「(そういえば私も詳しくは目を通してなかった)」カサッ








━━━━5分後━━━━


楓「無駄に凝ってますね。ここの装丁とか特に」

泰葉「無駄とか言ったらダメですよ。これを百人分以上も製作してくれているんですよ?」

のあ「……じゃあ、見せあいっこしましょうか」

楓「何だか、小学生の終業式を思い出しますね♪ HRに渡されて、皆で比べて……」

泰葉「そうですね、ふふふっ」

のあ「フフ……」

楓「(あっ)」

泰葉「(少し、笑った……)」



96: ☆2/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 23:31:30.80 ID:A39YavOz0

~~~~~~~~~~
★Vo(ヴォーカル)

岡崎:7
高垣:5
高峯:8
~~~~~~~~~~


楓「の、のあさん良いじゃないですか!!」

泰葉「(わ、私より高い……!)」

のあ「(……)」ニヤ

楓「む~……、私はやっぱり低めですね。総評にも『声量や音程など、基礎からしっかり』と頂いてます」

泰葉「点数はたしか『3』が最低ですね。小さい子もいるので、1と2は意図的に付けてなかった気がします」

楓「病院の病室番号に、不吉な4や9を付けないのと同じですね」

泰葉「何故あえて不吉な例えをするんですか」





~~~~~~~~~~
★Da(ダンス)

岡崎:7
高垣:4
高峯:9
~~~~~~~~~~


楓「のあさん、すごい……!」

のあ「(…………)」ニヤニヤニヤ

泰葉「(ぐ、くっ……)」

泰葉「マ……まあ、全アイドル対象ですから明確な基準は無く曖昧で、あくまであの二人の目線の評価ですから」

泰葉「年齢層によって多少の誤差はありますよね」

楓「総評……『枯れ枝のような細腕細足は正視に耐えず。最低限筋肉・体力を付けるべし』……んー、太くなりすぎずですよね私の場合……」

のあ「総評……『体力・筋力共に問題なし、あとは柔軟性。技術の習得もめざましく、今後も邁進するように』

泰葉「楓さんは本当に、歌と踊りが苦手なんですね」

楓「うぅっ……、もう所属して1年……これでも結構頑張ってるつもりですが……」



97: ☆3/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 23:32:48.28 ID:A39YavOz0

~~~~~~~~~~
★Vi(ビジュアル)

岡崎:10
高垣:10
~~~~~~~~~~

楓「や、泰葉ちゃん!」

泰葉「か、楓さんっ!」


楓&泰葉「すごいじゃないですかっ!!」

泰葉「やっぱり楓さん、モデル経験者なだけありますね。流石と言いますか」

楓「いやぁ。ただカメラの映りやすい角度とか表情の出し方とかメリハリとか、付け焼刃の知識がたまたま功を奏しただけですよぉ♪」

楓「泰葉ちゃんこそ、子役モデルの経歴は伊達じゃないですね」

泰葉「いえいえ。演技力には多少の自信はありますが、それが歌や踊りにも活きるとは思いませんでしたよ」

楓「またまたぁ♪ 謙遜しちゃって♪」

泰葉「楓さんこそっ。ふ、ふふふっ……♪」


のあ「…………」


楓「…………のあさん?」

泰葉「ど、どうしたんですか? まんじりともせず固まって」

泰葉「あまり良くなかったですか?」

楓「最低の3………いいえ、もしくは存在しない2、1……」

泰葉「言い過ぎですよ!? あ、あの……」

泰葉「辛いなら、見せなくても大丈夫ですよ。ご飯の用意し───」

のあ「……」スッ

楓&泰葉「!」







【 高峯:○ 】






楓「」

泰葉「ま、マル……?」

のあ「……これは、なに?」

のあ「空欄? 測定不能?」

のあ「それとも、好評価の意味の○?」

のあ「……総評がないけど」

泰葉「え、ええっとぉ…………」

のあ「もしくは…………」

のあ「………… 0?」

楓「…」

泰葉「…に、睨まないで下さい」

のあ「……睨んでないけど」

──────
────
──



98: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 23:35:07.72 ID:A39YavOz0

──
────
──────
【事務所 応接室】


卯月「あっ!」

卯月「未央ちゃん、そのキーホルダーって『ぴにゃこら太』ですか?」

未央「へへへーっ♪ この前、近くのゲームセンターで見つけちゃってさ?」

未央「弟が欲しいってせがんできたから、まあついでに2個取っちゃって」

卯月「わっ、ブニブニしてます」ブニブニ

卯月「可愛いなぁ……♪ これ、最近色々なグッズでてますよね?」

未央「ねー。正直私にはよくコイツの可愛さが分らないんだけど」

卯月「え、えぇぇっ! 可愛いですよっ!」

卯月「まあ確かに好みは分れるデザインだと思いますけど、綾瀬ちゃんとか、柚ちゃんとかも───」







のあ「(…………)」







━━━━夜━━━━
【岡崎家】



http://i.imgur.com/NwdhQKV.jpg



のあ「……」

楓「(……♪)」パクパク

泰葉「な……何ですか、この不気味なオブジェは」

泰葉「バッファローマン……!?」

泰葉「だ、ダメですよコレは………いくら寛容な皆さんでも、流石にドン引きされますよ」

のあ「……良い意味で?」

泰葉「どういう意味ですか!?」

泰葉「どれだけポジティブなんですか貴女は!?」

楓「(泰葉ちゃん、かつおぶし取って下さい)」

泰葉「(あ、ハイ)」



99: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 23:35:59.53 ID:A39YavOz0

のあ「……ゆるキャラ」

泰葉「コレは違いますね、少なくとも」

のあ「……ぴにゃこら太」

泰葉「ええ。それは先日私が言いました」

のあ「……聞いてない」

泰葉「あれ……ご、ごめんなさい。事務所で流行ってるんですよ、俗にいう『ブサカワ系』ってやつですね」

のあ「……持ってない」

泰葉「うーん……こういうグッズってどこに売っているんだろ」

泰葉「キャラクター雑貨のお店を覗いてみたりとか、あとは……」

のあ「……ゲームセンター」

泰葉「(……!)」

楓「(泰葉ちゃん、おたふくソースとマヨネーズ取って下さい)」モグモグ

泰葉「(あ、ハイ)」






━━━━翌日━━━━
【ゲームセンター in クレーンゲーム】

のあ「……」

カチャコン
ウィィィン…

のあ「……っ」ドキドキ

───スカッ


のあ「…………」

のあ「……」ゴソゴソ

のあ「……」

カチャコン
ウィィィン…

のあ「……♪」

───スカッ


のあ「………………………………」







━━━1時間後━━━

店員「お客様、あの……困ります」

のあ「チ……ちがいまス……、そのっ、ワ、私は何も……っ」ビクビク

店員「ゲーム機の筐体を揺らしたら、先程のように警報が鳴るので」

のあ「アゥ……」

店員「手で押したり、叩いたりするのはお止め下さい。マナー違反ですので」

のあ「…………ハィ」

のあ「……」シュン

────
──



100: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 23:38:21.69 ID:A39YavOz0

──
────
──────
━━━━早朝━━━━
【事務所 応接室】

───ガチャ

夏樹「おはようございまーす………ん?」



のあ「……!」



夏樹「あ……おはようございます」

のあ「……」チラッ

夏樹「…………」

のあ「…………」

夏樹「……っしょ、と」ドサッ

のあ「……」

のあ「…………」スススッ

夏樹「(遠ざかった)」

夏樹「(アタシ嫌われてんのかな。まあ、無言でいきなり隣に座るのもアレだったかな……)」

のあ「……」

夏樹「……」ペラッ

のあ「……」

のあ「……夏樹」ボソッ

夏樹「うわッ!!!」ビクッ

のあ「えっ?」

夏樹「あっ!! いや何でも……な、なんすか、高峯さん」

のあ「……この前のジュース、実に美味だったわ。魂を揺るがすほどに」

のあ「これ、お礼」スッ

夏樹「えっ、あ、あぁ……別にそんな…………あ、あざす」

のあ「プリン」

夏樹「(プリン……)」

───ドスン!


夏樹「(…………)」

夏樹「(えっ、デカッ!? これプリンなのか!?)」ズシッ!

夏樹「(お、重ェ……なにコレ……大仏のイラスト? 奈良?)」

のあ「……」

夏樹「……」

のあ「…………」

のあ「………食べないの?」

夏樹「えっ!?」

夏樹「や、その……この大きさだし、帰ってから堪能しようかなぁと」

のあ「……そう」

夏樹「は、はい。ありがとうゴザイマス」

のあ「…………」

夏樹「(……お、落ちこんだ?)」



101: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 23:41:38.03 ID:A39YavOz0

のあ「……」スッ

夏樹「あれ、どうしたんすか?」

のあ「? もう帰るのだけれど」

夏樹「(まだ早朝なのに!? この人、まさかオフなのか………なんのために!?)」

夏樹「あっ。じゃあ、その……」ゴソゴソ

のあ「??」

夏樹「これ、要ります? ミンティア」

夏樹「今ウチら、このCMに起用されてて、事務所にノベルティ……タダで貰ったソレが余るほど置いてるんだよね」

のあ「……」

夏樹「お礼の、お礼………ってことで」

のあ「お礼のお礼?」

夏樹「うん。お礼のお礼」

のあ「じゃあ私も……今度お礼するわ」

夏樹「ハハハ……期待しないで待ってます」

のあ「……ふふ」

夏樹「!!」

夏樹「(この人の笑う声、初めて聴いたな)」

のあ「………頂くわ」

のあ「……ありがとう。早速賞味するわ」ガチャ

夏樹「はい。お疲れサマです」

───スタスタ


のあ「(夏樹ちゃん……)」

のあ「(……やっぱり、良い子だわ♪)」カサカサカサカサッ

のあ「(……♪)」パクッ

のあ「(………)」バリバリバリッ、ボリボリボリッボリボリッッ!!!












━━━1分後━━━
【事務所 トイレ】


のあ「カッ、かはッ……あっ、ぁ゛っ……、ヴッ! ガフッ、ふっ、ひっ……」ガクガク

のあ「えっ、え、……おぇええっ!!」

のあ「うぐっっ、ウッ、あぅ、う、は、ハウウゥ……!!」プルプル

のあ「(こ、呼吸が、出来ないっ……!)」ヒュー

のあ「(気持ち悪い……、く、口の中に湿布を投げ込まれたかのよう……!!)」ヒューヒュー

のあ「ウ、ウウゥ……っ」

のあ「ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ゥゥゥゥゥゥゥ…………!!」

のあ「ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ~~~~~~…………っっっっっ(慟哭)」

──────
────
──



102: ☆① ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 23:43:33.32 ID:A39YavOz0

──
────
──────
【楽屋】


夏樹「フー……」

李衣菜「あと30分っ!」

夏樹「さぁ、今日もクールに、アツく盛り上げてこーぜ。だりー」

夏樹「ひっさびさのLIVEバトル。もちろん、初っ端から全開だろ?」

李衣菜「おうっ! 今日の私は一味違うんだから!」

李衣菜「なんたって、LIVEバトルの相手があのロック is ロック……!」

李衣菜「高峯のあさんだからね!」

夏樹「お。気圧されてると思ったら……」

李衣菜「まさかぁ。一回吐いたら緊張も吹っ飛んだよ」

夏樹「(吐いたのかよ……)」

李衣菜「私たちの方が、ランクもキャリアもなにもかも上なんだよ? 確かに、あの人は本当にカッコイイし、すごい人だと思うけど」

夏樹「……」

李衣菜「感情の読み取りにくい美貌と、鮮やかな銀の髪をなびかせる、類まれなる容姿の持ち主。その端麗な容姿を活かして広告媒体・雑誌モデルでの仕事を中心に、いわゆるモデルアイドル方面での活動を行う人物で……」

李衣菜「悠然として、その刺すように冷たい視線はやはり寡黙の女王の通り名に恥じぬ気品と凄味があって、でも時折覗かせる悲しい表情はどこか慈愛を漂わせ私達の心を擽りつつ優しく包むような……」

李衣菜「かと思えばロックの魂もちゃっかり持ち合わせる、才色兼備というか多芸多才というか、ケーパビリティ溢れる人で……」

李衣菜「なんかもう、こっちがバントのサインだしてるのに気付かないであっさりホームラン打っちゃいそうな、予測不能のユーモラスさとロックな行動力がもう堪らなく最っ高に……」ドキドキ

夏樹「だ、だりーさん?」

李衣菜「つまりとてつもないLoooooooooock!!! な、人なんだよなつきちィ!!」

夏樹「(Lock……?)」

夏樹「わ、分かった分かった。分かったから涎拭けよ」スッ

李衣菜「ウン」



104: ☆② ◆AL0FHjcNlc 2016/11/13(日) 23:44:21.85 ID:A39YavOz0


夏樹「じゃあ、まだ少し時間もあるし」

夏樹「よし。高峯さんの演出の補助の復習でもしとくか」

李衣菜「うん、わかった!」ゴシゴシ

李衣菜「えっと……私達のパフォーマンスが終わったら、一通り繋ぎの口上を言ったあと、会場のスポットが落ちて……」

夏樹「で、その後は私達がステージ後方に下がって────」








━━━━その頃━━━━
【楽屋】


P「───では、確認しておきましょうか」

のあ「……ええ」

P「高峯さんの出番は、『ロック・ザ・ビート』夏樹と李衣菜の直後です」

P「今回のLIVEバトルで、高峯さんはワイヤーアクションでパフォーマンスを行います。フライングとも呼ばれていますね」

P「実はこの事務所でも、最近何度か同じ演出を行ったことがあります。『自称・天使』輿水幸子、『みんなの太陽』上田鈴帆、あと……」

のあ「…………」

P「ああ、そうだ。確か『深黒の堕天使』蘭子もそうでした」

のあ「ええ。早速会話のネタにするわ」

P「えっ?」

のあ「イ……いえ、何でも」



129: ◆AL0FHjcNlc 2016/11/14(月) 01:07:16.76 ID:HUsxZy8W0

━━━━━━━━━━

P「会場が暗転したあと、李衣菜の口上の合図で……」

P「闇を切り取る月明かりのように、スポットに照らされた高峯さんが荘厳に歌いだしながら、メインステージにゆっくり降りてくる感じですね」

P「演出としては単調なパターンですが、分かりやすく注目され、盛り上がる」

のあ「……」ボー

P「設備の関係で、今回は2本吊りのワイヤーを使用します」

P「リハーサルで体験したのでご存じだと思いますが、あまり激しい動きはできません」

P「しかし安全面も保証されていますのでご安心を。滞空時間は20秒程ですので。今回は天井もそれほど高くはありませんし」

のあ「……」ボー

P「ですので……、まあ……、万が一にも有り得ませんが」

P「……高強度のポリエチレン繊維のワイヤーがいきなりばつんと切れたり、または高峯さんが空中で逆上がりとかを始めたりしない限り、怪我や事故はまず起こらないでしょう」

P「無論、こちらも万全を期して最終チェックは念入りに行いますので」

のあ「……」ボー

P「上半身をハーネスで固めているので、ロープが空中で絡むということもほぼありません。もし絡んだ場合は、担当責任者の判断で予定より早めに下すかウィンチで引き上げます」

P「さらに、仮にワイヤーが首や体に絡まったとしても、以前説明したように締め付けられない特殊な構造になっています。窒息などの心配はないので、ご安心ください」

のあ「……」ボー

P「ステージには夏樹と李衣菜が後方に下がっています。着地位置はこっそりバミってるので、床に付いたら高峯さんはそのままライブを続けてください」

P「あとはその二人が高峯さんのハーネスを外して、舞台袖にフェードアウトします」

のあ「……」ボー

P「高峯さん、ここまでは大丈夫ですか?」

のあ「……っ! エ、ええ」

P「まあ、リハーサル通りにやれば問題ないです」

のあ「リハーサル通りね」

━━━━━━━━━━




105: ☆③ ◆AL0FHjcNlc 2016/11/14(月) 00:00:50.39 ID:tN+Mrb0C0


P「……あっ、そうだ。あとですね?」

P「ステージ上部の吹き抜けでスタッフが待機しているので、直前にそこへ移動して貰います」

P「今回はそこに手伝いとして、事務所の───」









━━━20分後━━━
【上部スペース】


のあ「……!」




凛「ん……!」

卯月「あっ」

未央「おぉ!」

のあ「手伝い………あの人が言っていたのは、貴女達の事かしら」

未央「お疲れ様です、高峯さんっ!」

卯月「高峯さん、お疲れ様です。いよいよ本番ですねっ!」

未央「はーっ……! なんだか神秘的な衣装ですね、うわーっ……!」キラキラ

凛「うん、確かに」

凛「なんか高峯さんがハーネス付けると、SFの戦闘サイボーグみたいな───」

グリッ!


凛「(───いッ……?!)」

凛「(………えっ? ちょっと未央、足踏んでるよ、私の)」

未央「(しぶりん、余計なこと言わないでいいから)」

凛「(あ、うん。分かった)」

のあ「……?」



106: ※5秒でわかるハーネス講座 2016/11/14(月) 00:04:08.56 ID:tN+Mrb0C0

107: ☆④ ◆AL0FHjcNlc 2016/11/14(月) 00:05:57.98 ID:tN+Mrb0C0


未央「でも、2回目のライブでいきなりワイヤーアクションって……」

凛「派手でいいと思う。うん、高峯さんらしい」

のあ「……私、らしい?」

凛「ん、……うん」

凛「(……?)」

のあ「……続けて」

凛「う、うん」

凛「大胆不敵ってカンジで、似合ってます」

凛「こういう時って普通はみんな、もっと控えめに行くんだけど……」

凛「あえて派手な演出で対抗するところが、高峯さんらしいというか」

のあ「……そうかしら」

のあ「……詳しく、聞かせて頂戴」

凛「あ、う……えっと……」

未央「(ウッ……)」

凛「高峯さん。お、怒ってますか?」

のあ「? ………いいえ」

未央「(そうなのか……)」

凛「えーっと……」

凛「……芸能界とかって、よく段階や場数を踏めとか、序列や順序を弁えろとか言われるでしょ」

のあ「……そうね」

凛「実際、こういうLIVEバトルも、ランクやレベルがあまりに違いすぎると高い方は勝手に批判されたり、逆に低い方はややこしい変なウワサが流れたりする」

凛「だから、普通は『新人は控えて、先輩を立てる』ってのが自然の形。暗黙の了解になってる」

のあ「……」



108: ☆⑤ ◆AL0FHjcNlc 2016/11/14(月) 00:07:33.25 ID:tN+Mrb0C0


凛「でも私は……実力がある人には、それ相応の場が用意されて然るべきだと思うんだ。機会に恵まれず大成出来ない子だっているわけだし」

凛「………言い方が悪かったら、すみません」

凛「高峯さんって実際、私達三人と比べたらランクが5も6も下なワケだけど」

凛「でも、みんな噂してる」

卯月「(……)」

凛「高峯のあは、すごい人だって。歌も踊りも完璧で……容姿も顔立ちも、そこらのモデルなんて安っぽく思えてしまうほどに整ってる」

凛「これは直感だけど………私も、どれをとっても貴女には勝てる気がしない。正直」

のあ「…………」

凛「今回のLIVEバトルの相手は夏樹と李衣菜の二人」

凛「この二人も最近いろんなCMとかに出て、実力は確かだしセンスもある、コンビネーションも抜群。高峯さんよりもランクが上だけど……」

凛「貴女なら……高峯さんなら、すごい演技で圧倒できそうな気がするよ」

凛「だから、まだ2回目のライブにしては浮くくらい派手な演出だけど、貴女なら納得できる。それと確信できる」

凛「無名の新人が、ややこしい序列や暗黙の了解なんて有無を言わさないぐらい鮮烈なパフォーマンスで、会場を一気に貴女の色に染め上げる結果が」

のあ「………」

のあ「…………凛」

のあ「……優劣や数値化は、無意味な詮索よ」

のあ「人間の可能性や価値は、表層の虚飾のみでは測れない」

のあ「………私に掴むことは、まだ到底不可能だわ。感性豊かに煌めき揺れ動く、星のような人々の心を」

凛「…………」

凛「(……未央、未央! やっぱり高峯さんってアンドロイドっぽくない? 物言いが!!)」キラキラ

未央「(しぶりん静かに!!!)」バチーン!

卯月「(……)」



109: ☆⑥ ◆AL0FHjcNlc 2016/11/14(月) 00:09:23.91 ID:tN+Mrb0C0




スタッフ「10分前でーす、各自周囲のチェックお願いしまーす」



未央「お、そろそろだねぇ」

のあ「……」

凛「高峯さん。緊張してたりとか………は無用な心配、か」

のあ「してるわ」

未央「えっ」

凛「えっ」

卯月「えっ」

のあ「……えっ?」

未央「いや、その……高峯さんでも、こういう舞台だと緊張するんですね」

凛「……もしかして、人間?」

ギュッ!


凛「(ぁ痛ッ!!)」

未央「じ、じゃあアレですよ! 掛け声っ!」

未央「気合を入れる時って、やっぱり掛け声が基本ですよねっ! 好きな食べ物なんてどうですか?」

のあ「……好きな、食べ物?」

凛「そ、そうだね。じゃあ私達がよく使ってる『フライド、チキーン↓』なんてどうですか?」

未央「なんで『↓』!? 抑揚は↑に上げようよ!!!」

凛「いやだって、今回はワイヤーで下に降りるわけだし」

未央「いやそうだけども!! それ運動の方向なの!?」

のあ「……フフッ」

未央&凛「!?」

のあ「……良いものね。ユニットとは」

卯月「高峯さん……?」

のあ「私も貴女達、ニュージェネレーターズのように同じ目線で感覚を共有できる、信頼に足る『仲間』が欲しかった」

凛「ジェネ」

グリッ!


凛「高峯さん……」グリッ!

未央「(痛ァッ!?)」

卯月「……」



110: ☆⑦ ◆AL0FHjcNlc 2016/11/14(月) 00:10:49.21 ID:tN+Mrb0C0


のあ「フライドチキン」

のあ「『飛べ、臆病者』………私に相応しい掛け声だわ」

凛「あ。いや……その」

未央「べ、別に高峯さんが緊張してるから臆病だとか、そういう皮肉じゃ……」

卯月「高峯さん………お、怒ってます?」

のあ「いいえ」

のあ「怒っているように見えるかしら」

卯月「!!」

卯月「い、いえ、そのっ……!」

のあ「……いいわ」

卯月「…………っ」

のあ「……貴女達が羨ましい」

凛「羨ましい?」

のあ「……私は、笑顔は得意ではないわ」

卯月「(!!)」

のあ「周囲に、明るい笑顔で応じられない。堅い表情で語り掛ける事しか出来ない偶像」

のあ「麗の言うように、歌や踊りに感情を添える技術もない」

のあ「ファンとの距離はもとより……」

のあ「……事務所の皆から『機械』と揶揄されても、それは受け入れるべき評価」

凛「あっ……」

のあ「畏怖されるのも必然。疎まれ、嘲笑れても仕方ないかもしれない」

のあ「けれど」

のあ「………けれど、私も貴女達と同じ“人間”であり、“アイドル”よ」

のあ「常に葛藤し、自らを問い続ける」

のあ「魂の、心の、意志の生き物なの」

のあ「……」



111: ☆⑧ ◆AL0FHjcNlc 2016/11/14(月) 00:11:23.31 ID:tN+Mrb0C0


凛「…………」

未央「……高峯さん」

のあ「未央」

未央「えっ!? は、ハイ!!」

のあ「貴女の爛漫で元気な振る舞いに、太陽のように眩く輝きを放つ魂に……、いつも惹かれていた」

のあ「羽のように軽やかで鮮やかな踊りは、私の舞には無い自由さが有った」

未央「い、いやぁ……そんなそんな……え、えへへ」

未央「(な、なんだろ。この人に言われると、すごい嬉しい……)」

のあ「凛」

のあ「貴女の真っ直ぐな姿勢に、冷たさの中に熱い意志が灯るその瞳に……、いつも魅了されていた」

のあ「凛として毅然とした歌唱には、私の声には無い心揺さぶる芯が有った」

凛「……そんな風に、初めて言われたよ」

凛「(まあ、悪い気はしないけど)」

のあ「卯月」

卯月「……はい」

のあ「……貴女の笑顔に、いつも憧れていた」

のあ「明るくて可愛らしくて、周囲に幸せを分け与えるような……」

のあ「優しい貴女の人柄を余すことなく描いたその微笑みが」

のあ「………本当に、羨ましかった」

卯月「…………」




112: ☆⑨ ◆AL0FHjcNlc 2016/11/14(月) 00:12:34.82 ID:tN+Mrb0C0


のあ「凛。貴女は先程、私に勝てないと言っていたけれど」

のあ「……そんなことは断じてないわ」

のあ「貴女達3人は私と違う」

卯月「(……)」

のあ「共に支えあい、笑いあい、協力できる仲間がいる」

のあ「その団結が何者にも勝るかけがえのない力になる。3人が一緒ならば、どこまでも羽ばたける」

のあ「貴女達は既に、私という存在を遥かに凌駕している。ただ自分の可能性に気づいていないだけ」

のあ「自信を持ち、胸を張りなさい。眼に視える事象だけが、この世の全てではないわ」

のあ「…………」

未央「……」

凛「……」

卯月「………………」

のあ「…………」

のあ「そろそろ、時間よ」



スタッフ「5分前です。高峯さん、確認お願いします」



未央「……あッ!」

凛「忘れてたっ………、た、高峯さん、ワイヤー絡まってないですか?」

卯月「……っ」




卯月「た、高峯さんっっ!!」




未央「しまむー?」

のあ「……?」




113: ☆⑩ ◆AL0FHjcNlc 2016/11/14(月) 00:14:19.03 ID:tN+Mrb0C0


のあ「……なに?」

卯月「あのっ……こ、このライブが終わったら……」

卯月「無事に終わったら……っ!」

のあ「…………」

卯月「……もっと、もっと笑顔の練習をしましょう!」

のあ「(……!)」

卯月「高峯さんっ、私、頑張ります!」

卯月「貴女がにっこりと優しく、自然な笑顔が作れるようになるまで……!」

のあ「…………」

卯月「私……貴女の事を、本気で応援したくなりました。でもまだ、貴女の事を良く知りません」

卯月「完璧と称されて、機械のように無機質な表情だから内心も掴めず……」

卯月「ただただ、遠い存在とばかり思っていました。だから、いつも事務所で見かけても話しかけず、少し距離を置いてしまっていたかもしれません」

未央「(……)」

凛「(……)」

卯月「他の人だって、きっとそう。貴女の事を、もしかすると勘違いしている人もいるかもしれない」

卯月「……そんな高峯さんが、私たちは同じアイドルだと言ってくれて、私たちの事を褒めてくれた」

卯月「高峯さん………私たち、なにも違いませんよ?」

卯月「私たち、仲間じゃないですか!」

のあ「……」

卯月「楽しいときは幸せな気持ちを一緒に味わうことが出来て、苦しいときは辛い気持ちを分かち合うことも出来る」

卯月「私たち、同じ事務所の仲間じゃないですかっ………だから、その…………っ!」

卯月「これから、一緒に頑張りましょう!!」

のあ「…………」

のあ「……………………」




のあ「……ええ」

のあ「楽しみにしているわ」

のあ「すごく」




卯月「!!」

卯月「は、ハイっ!!」パアァ



114: ☆⑪ ◆AL0FHjcNlc 2016/11/14(月) 00:15:01.73 ID:tN+Mrb0C0


未央「あっ、しまむーだけずるい!!」

未央「じゃあ今度またみんなでボウリングに行きましょうよ、高峯さん!」

未央「打ち上げも兼ねて。前の約束、覚えてくれてますか?」

のあ「……当然よ。今度こそパーフェクトを獲って見せる」

のあ「また、楓も共に……」

未央「ハイッ、是非♪ 今度こそ、いろいろお話聞かせてくださいっ♪」

のあ「……」

のあ「……今はまだ私では力が及ばないかもしれない。頂には手が届かないかもしれない」

のあ「でも必ず、いつか貴女達と同じ地平に立って、共に歩み、笑いあえる日を目指して……」

のあ「まず、私に為すべき使命は……、今日というライブを全力で臨む事」

のあ「……応援、任せるわ」

卯月「はいっ!!」

未央「モチロンっ! まずは観客に『高峯のあ、降臨』ってトコ、ばばっと見せてやっちゃって下さいっ!」

卯月「高峯さん、頑張って下さいっ!!」

のあ「ええ」

のあ「…………フフッ」















凛「だ、だから高峯さんッ!! ワイヤー絡まってないですか、って!?」

凛「貴女の足元と首に、すっごい絡まってますって!!!」



スタッフ「高峯さん、一端バックしてください!! 安全装置を確認します!!!」










のあ「えっ?」



───ツルッ





のあ「 ぁ゛ っ゛ 」


未央&卯月「!!!?」



115: ☆⑫ ◆AL0FHjcNlc 2016/11/14(月) 00:16:25.45 ID:tN+Mrb0C0


───ヨロヨロ…

のあ「ぁっ、ぇっ、ああっ」


ヨロッ…



ヒュン!!






のあ「うわああああぁーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!」







卯月「た、高峯さあああぁぁぁんっっ!!!」



凛「高峯さん、ホラあれっ!!」








のあ「あああぁっ! よ、吉野家ぁぁぁーーーーーーーーーーーーーっっ!!!!!!!」








凛「よし、掛け声バッチリ……」フー



未央「バッチリじゃないよ!!! 高峯さーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!」



スタッフ「あ、あぁぁ………お、落ちた……っ」







━━━━その頃━━━━
【メインステージ】


ワアアアァァァァァァ……!!
───パチパチパチパチパチパチ……


夏樹&李衣菜『ありがとうございましたーーーーーーっっ!!』


李衣菜『いやぁー、どうでしたか!? 私たちのこのド派手でロックな演出はぁ!?』

李衣菜『花火がブワーって、パイロがボバーッと、煙がじゃんじゃん出て、もう最ッ高にロックなカンジで……!』

李衣菜『もう圧巻だったよね!!! こりゃあ客席から観てみたいよ』

夏樹『あーもう……余韻もへったくれもねえな、だりー』

夏樹『まあアタシ達は割とホットな演出だったけど、次の人はクールに決めてくれるぜ!』

李衣菜『おおっ! じゃあ早速……!』



116: ☆⑬ ◆AL0FHjcNlc 2016/11/14(月) 00:19:27.63 ID:tN+Mrb0C0

夏樹『驚・天・動・地ッ!』

李衣菜『超・絶・冷・凍ッ!!』


夏樹『さあっ、お次は高峯のあのお出ましだっ!!』

李衣菜『噂の新人、その美声と美技に酔いしれろーーっ!!』


ワァァァァァ……!!

……!!

…!?





シーン…





ざわ…



夏樹「(……?)」

李衣菜「(……あれ?)」

李衣菜「(会場真っ暗で、スポットライトが当たってるのに……高峯さん?)」

夏樹「(オカシイな、そろそろ歌い始め…………)」

夏樹「 ぁ っ 」

李衣菜「あ……、あぁぁ………………っ」



ざわ……

 ざわ…… ざわ……

ざわ…… ざわ…… ざわ……











のあ「」









のあ「」プラーン…

のあ「」ギギギギ…




夏樹「」

李衣菜「」

観客1「し、死んでる!?」

観客2「た……、高峯のあがワイヤーで首を吊って死んでいる!!!」

観客3「あ、あぁぁ……!!」



117: ☆⑭ ◆AL0FHjcNlc 2016/11/14(月) 00:21:03.88 ID:tN+Mrb0C0

ザワザワザワザワ…

李衣菜「あ、あぁっ……ひいっ……!」プルプル

李衣菜「こ、コナン君呼んでこなきゃ……」プルプル

夏樹「ま、マズイ!! 下せ!!! 早く下せ!!!!」

夏樹「こ、こりゃあ───」




観客K「待って!! みんな落ち着いて、アレは違うわ!!!」

観客1「!!!」

夏樹「(───!?)」

観客K「あれこそ……神聖すら醸し出す高峯さんの、究極のパフォーマンスに他ならないわ!!」

観客3「な、なにィ……!?」

観客S「……」パシャパシャ

観客M「あぁ、なんて神々しいっ………、さながら、人々の罪を一身に受け入れる、キリストの磔刑のよう……!」

観客M「やめましょう……。彼女は訴えているの、こんな争いは無益だと……怨嗟と悲歎の螺旋は、自分の犠牲を最後に全て断ち切ると……」

観客1「やはり……!」

観客2「そ、そうだったのか……!」

観客3「美しい……美しすぎる!!」

オオオオオオオオォォォ…………!!

───パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ……

パチパチパチパチパチパチパチパチパチ……!!


夏樹「ば、馬鹿……! そ、そんなわけ…………!」

李衣菜「うぅぅ……っ、ぐすっ…………」

李衣菜「ろ、ろっく……、首吊って登場とか、し、信じられないくらい、ロックだぁ……っ」

李衣菜「神だよぉなつきちぃぃ……、今まさに、ロックの神が舞い降りようとしているよぉっ……」ポロポロ

夏樹「だ、だりー、そんなワケ…………」


夏樹「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………そ、そーなのか……??」








のあ「(た、たすけて…………、こ、こわい………………っ…………)」プラーン








━━━━━━━━━━


スタッフ「そうだったのか……」

凛「やっぱり、ただものじゃあないね」

未央「……そだね」

卯月「…………」

【ライブは夏樹のフォローで無事成功しました】
────
──




118: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/14(月) 00:22:04.26 ID:tN+Mrb0C0

──
────
──────
【岡崎家】


楓「(……♪)」モグモグ

泰葉「仕事の誘いを、蹴った?」

のあ「……」

泰葉「高峯さんにしては珍しいですね。どんな仕事ですか?」

のあ「『鋼鉄公演』」

のあ「の、準主役」

泰葉「(今後開催のLIVEツアーかな?)」

のあ「心もたぬ、機械の役を」

泰葉「(あっ)」

泰葉「…………その、あの……」

泰葉「やっぱり、まだ気にしてたんですね」

のあ「……あの人の驚嘆の表情が、まだ焼き付いている」

のあ「……本当に、悪いことをしたわ」

泰葉「……」

楓「(泰葉ちゃん、福神漬取って下さい)」

泰葉「(あ、ハイ)」

のあ「…………」

泰葉「……」

のあ「……でも」

のあ「最近、感じた。機械と揶揄されても……」

のあ「それは恥ずべきことでも、中傷でもない」

のあ「……個性として、受け入れる宿命ではないのかしら」

泰葉「高峯さん……」

のあ「機械でも、サイボーグでも、ボーカロイドでも……」

のあ「ターミネーターでも、ロボコップでも、モビルスーツでも、人造人間でも、レプリロイドでも、スナッチャーでも、メタルギアでも、可変戦闘機でも、アクエリオンでも、武装神姫でも、グレンラガンでも、アーマードトルーパーでも、霊子甲冑でも、アナライザーでも、キングジョーでも、ドロイドでも、オーラバトラーでも、草薙素子でも、iDOLでも、ゴエモンインパクトでも……」

泰葉「そんなに言われてるんですか!?」

のあ「……盛った。1割」

泰葉「ですよね! ……いっ……!?」

楓「(泰葉ちゃん、おかわり下さい)」

泰葉「(あ、ハイ)」




119: ☆2/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/14(月) 00:22:51.60 ID:tN+Mrb0C0


のあ「……囁かれている間は、まだ私にも華があるということ」

泰葉「……!」

のあ「受け入れるわ」

泰葉「でも、嫌なんですよね?」

のあ「いいえ。抵抗はあったけれど……」

のあ「皆が、それは私の魅力というのならば、私も変わるべきだと考える」

のあ「変化を受容していくことも、一つの強さではないかしら」

泰葉「高峯さん。貴女は……」

泰葉「……とても、優しい人なんですね」

のあ「そうかしら」

泰葉「はい。私はそう思います」


pppppp……!!



のあ&泰葉「!!」

楓「(……!)」モグモグ

泰葉「電話、ですね。こんな時間に珍しい」

のあ「あの人からだわ」

泰葉「プロデューサーさんから?」

泰葉「ひょっとして、その断った仕事に関してじゃないですか?」

のあ「……」

泰葉「出ても良いですよ。聞かれたくないのなら、席を外しましょうか」

楓「電話が鳴っているなら、電話急げと言いますしね」

泰葉「言いません」

のあ「…………」

pppppppppppppp……!!!


泰葉「あれ、出ないんですか?」

のあ「………………」

のあ「………………泰葉が出て」

泰葉「い、いやいやいや!!」

楓「(泰葉ちゃん、ラッキョウ取って下さい)」

泰葉「(あ、ハイ)」

のあ「……」ピッ

のあ「……」

P『もしもし、高峯さんですか?』

のあ「……ええ」



120: ☆3/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/14(月) 00:26:21.29 ID:tN+Mrb0C0

P『遅くにすみません。今大丈夫ですか?』

のあ「……鋼鉄公演の話」

のあ「………悪かったわ」

P『!!』

P『……高峯さん、謝らないで下さい。アイドルがプロデューサーに対して謝ることなんてないですから』

P『むしろ悪いのは俺の方です。LIVEバトルの件も、少し活動を急いでしまって、貴女に負担をかけたかもしれないと』

P『……すみません』

のあ「いいえ。平気よ」

のあ「……でも、少し戸惑った」

P『……』

のあ「誉望の喝采を浴びるのは、無機質な私では不相応」

のあ「光で満ち溢れた舞台の上で、私より強く輝ける適任者がいる………そう思った」

のあ「プロとしての意識が、欠けていたのかもしれない」

P『そんなこと……!』

のあ「そんなことはない、と貴方は考えているのね」

P『……っ!』

のあ「私が知らない答えを貴方が示すというのなら、私が知らない世界に貴方が導くというのなら」

のあ「……信じるわ」

のあ「………だって、貴方の言葉だから」

P『高峯さん……』

泰葉「(……うん)」

楓「(……)」モグモグ

P『……ありがとうございます。その、俺……』

のあ「切るわ」

P『えっ?』

泰葉「えっ?」

ピッ!



のあ「オエエエエェェェっ……!!」ビチャビチャ




泰葉「何でですか!?」ガタッ!

のあ「イ、いや……、フグッ…、その、オ、男の人から急に電話とか……っ」

のあ「もう、き、緊張して……ウッ」

泰葉「思春期の女子中学生ですか貴女は!? 今何歳ですか!?」

のあ「に、24……」

楓「オエエエエェェ……」ダバー

泰葉「だから何でですか!!?」

楓「ソ、その……ゲロ食べてる時にカレーはキツいです……ぅっ」

泰葉「逆ですよ逆!! もぉー……」

のあ&楓「ご、ゴメンナサイ……」

──────
────
──

☆前半、おわり



121: ※鋼鉄公演 2016/11/14(月) 00:27:01.34 ID:tN+Mrb0C0

124: ◆AL0FHjcNlc 2016/11/14(月) 00:34:41.26 ID:tN+Mrb0C0

登場人物・後半
http://i.imgur.com/Vgm5ez1.jpg




155: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 00:58:46.92 ID:NO0o34zh0

──
────
──────
【漫画喫茶】








時子「………………」









のあ「……」

楓「」

泰葉「(だ……、だから何でですか!?)」

泰葉「(何で時子さんがいるんですか!?)」オロオロ

楓「(メールで急に『泰葉と二人で漫画喫茶に来て頂戴』と連絡があったと思ったら……)」

楓「(い、一体何があったんですか、のあさん? この緊迫した状況は)」

のあ「(その……)」




~~~~~~~~~~
時子『この辺りに……漫画喫茶という設備があると聞いたのだけど』

のあ『ゴ、ご案内しまッス………!!!』
~~~~~~~~~~




楓「(完全に恭順してる……)」

泰葉「(というか何で自ら死地へ……)」

のあ「(……)」

時子「………ちょっと」

のあ「ヒッ……!」ビクッ

楓「ヒッ……!」ビクッ

泰葉「ヒッ……!」ビクッ

時子「ホラ、何か言ってるけど」

店員「個室はご利用なさいますか?」

泰葉「!!!」

泰葉「(そ、そうだっ! 個室という手がありましたよ!)」

楓「(個室?)」

のあ「(……??)」

泰葉「(あれ、まさか二人とも初めてですか?)」



156: ☆2/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 00:59:45.31 ID:NO0o34zh0


泰葉「(……高峯さん)」チラッ

のあ「(……分かったわ)」チラッ

のあ「個室を、4つ」

店員「はい、4部屋ですね。ただいまお調べします」

楓「(……なるほど、個室利用ですか)」

泰葉「(漫画喫茶と言えば個室での休憩です。漫画を読んだり、ネットをしたり、休眠したり)」

泰葉「(流石にあの時子さんと一緒にダーツやビリヤード、卓球やカラオケを興じるのは荷が重すぎます。不可能です)」

泰葉「(時子さんは初見の興味本位で訪れたようなので、漫画喫茶の設備まではご存じない様子)」

泰葉「(個室利用であれば、利用時間いっぱい時子さんと…………その、距離を置けるかなと)」

楓「(ひどい……)」

泰葉「(あれ、じゃあ)」

楓「(ごめんなさい。ナイス采配です)」

泰葉「(……いいえ、こちらこそ語弊がありました)」

泰葉「(個室利用であれば、時子さんにゆっくり漫画喫茶をスタンダードにご堪能いただけるかと)」

時子「ねえ」

泰葉&楓「!?」ビクゥ!

泰葉「は……、ハイハイっ。なんですか時子さん?」

時子「………あそこにダーツとビリヤードがあるけど」

泰葉「ッ!!」

楓「(や、泰葉ちゃん……!!)」

楓「(ま、まさか時子ちゃんは、な、ななな何かを御所望であらせられるのでは!?)」ビクビク

泰葉「あ、あれは…………」

時子「……………………」

泰葉「ソ、その…………あ、アレはっ……!」





泰葉「有料……べ、別箇で高い料金が掛かるんですよ………たぶん」

泰葉「あるいは……い、インテリア……じゃないですか? ビリヤード台が、テ、テーブル代わりとか……」

泰葉「は、ハハ……オシャレですね……」

時子「………………」ジー






時子「………そう」クルッ

楓「(ホントですか?)」

泰葉「(嘘です……全部…………)」

楓「(泰葉ちゃん……)」

泰葉「(なんだろ……胸の奥が痛い)」ズキズキ

泰葉「(私は一体……)」



157: ☆3/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 01:01:09.88 ID:NO0o34zh0

のあ「待たせたわ」

のあ「これ、部屋番号の伝票。私は142番、楓が143番。それぞれ普通の個室」スッ

楓「あっ、どうも♪」スッ

のあ「ト、時子は……144番。大きめの個室」

時子「ふぅん……」ジー

のあ「………さて」クルッ

泰葉「えっ?」

泰葉「あの……あれっ、高峯さん、私の個室は……」

のあ「……えっ?」

泰葉「えっ???」

のあ「………個室を、3つ」

泰葉「えっ?????」

のあ「………………………『大きめの個室』」

泰葉「えっ」







━━━10分後━━━
【ドリンクバーカウンター】

楓「(わぁーっ♪ これが全部飲み放題なんですね)」

楓「(ソフトドリンクにコーンスープ、かき氷に………味噌汁もある)」

楓「(ふふっ、ぜいたく♪ 欲を言えばビールサーバーも欲しかったところですが……♪♪)」カチャカチャ

楓「~~~……♪」





━━━━142━━━━
【普通の個室】

のあ「……っ」ガサガサ

のあ「…………っっ」ドタンバタン

のあ「………………」

のあ「(か、監視カメラっ…………ど、どこに…………!? み、見られてる……!?)」ガタンガタン!







━━━━144━━━━
【大きめの個室】

時子「…………」ペラッ

時子「……そこ、置いておいて」

泰葉「は、はい……」ズシッ

泰葉「(何冊読む気なんだろう)」

時子「………」ペラッ

泰葉「(………相部屋、気まずい)」

泰葉「(…………帰りたい)」

──────
────
──



158: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 01:02:12.62 ID:NO0o34zh0

──
────
──────
【岡崎家】


泰葉「LIVEバトル、お疲れ様でした」

のあ「……ええ」

泰葉「どうでした?」

のあ「可も無く……、といった手応えね」モゾモゾ

泰葉「も、もちろん不可も無かったんですよね?」

楓「事務所では『すごかった』って噂ですよ」

のあ「……しばらくは普通で安全な仕事が欲しいわ」ゴロン

泰葉「……そういえば」

泰葉「お二人とも、お腹の空き具合はどうですか?」

のあ「いい塩梅よ」

楓「ええ。それなりに」

泰葉「じゃあ、そろそろ出ますか」スッ







━━━━30分後━━━━
【中華料理店】


泰葉「予約した『高垣』ですが……」

泰葉「これ『名刺』です」スッ

店員「ハイ、高垣様ですね。奥へどうぞ」




楓「わぁー……♪」

楓「すごい、すごいっ! これくるくるするやつじゃないですか!」

楓「お皿とか料理を回せる、くるくるするテーブルじゃないですか! うわーっ!」

泰葉「なんかもったいない気分ですね、3人なのに」

楓「イイじゃないですかイイじゃないですか、さあ座りましょう♪」

泰葉「私、ちょっとお手洗いに行ってきます」

泰葉「コースなので早めに運ばれると思いますが…………その、折角なので待ってて下さいね。お願いします」ペコリ

楓「はぁい、ごゆっくり♪」

のあ「……」

楓「……では、のあさん。改めてライブお疲れ様でした」

のあ「……ありがとう」




159: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 01:03:59.44 ID:NO0o34zh0

のあ「会食の席まで用意してくれるとは、想定していなかったわ」

のあ「……本当に、嬉しい」

楓「いえいえ、以前お仕事をした時に教えて頂いたんですよ、このお店。結構偉い人に」

楓「その人の名刺を出すと割引までしてくれるなんて、羽振りがいいですねぇ♪」

のあ「(楓さん、ひょっとしてかなり人脈があるんじゃ……)」

楓「気にしないで下さい、私のおかげじゃありませんから。今日はいっぱい紹興酒飲みましょう♪」

のあ「……ええ」

楓「それより」

楓「これ、コレですよ! うわぁー♪♪」ガシッ

のあ「……『中華テーブル』」

楓「それがコレの名前なんですか? いやぁ、これでくるくるするの楽しみにしてましたよ!」

のあ「料理の取り分けを容易く行うための妙案。考案したのは日本人という話も」

楓「へー、へえぇー♪♪」

のあ「これでロシアンルーレットとか出来そう」

楓「出来そうですねー、盛り上がりそうですねー♪ 中華でもキワモノ料理をいくつか並べて……」

楓「テーブルを回して目の前に止まった料理は必ず完食する、みたいなバラエティのノリで♪♪」

のあ「泰葉に喰らわせたい」

楓「プロ根性でどんなリアクションしてくれるのか、楽しみですねー。昆虫食とか」

のあ「……やってみる?」

楓「そうですね! こう……狙ったポジションにその皿をピタッと……みたいなカンジで!」

のあ「……いっせーの」グッ

楓「せっ!!」バッ!!







ガシャァン!!

 パリン! パリン!

パリン!







━━━━3分後━━━━

泰葉「………」

泰葉「……………」

店員「お、お客様よろしいですよ。破片など危険ですから、我々が片付けますので」

楓「ス、スミマセン……」

楓「その、皿とか箸置きとか、こ、固定されてるかと……」ヒョイ

楓「くるくる出来るし……、サ、皿を動かす必要は、な、ない…………かと…………」ヒョイ

泰葉「(何でですか)」

のあ「ゴ……ごめんなさぃ……」ヒョイヒョイ

楓&のあ「…………」シュン


──────
────
──



160: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 01:04:52.06 ID:NO0o34zh0

──
────
──────
【吉野家】


店員「ご注文お決まりになりましたら、お呼び下さい」

のあ「あ、ス、すみません」

店員「はい、お伺いします」

のあ「こ、この……!」

のあ「松茸牛丼ってまだ………ありますか?」

店員「松茸ですね。はい、ございます」

のあ「!!!!!!!!」

のあ「……ッ!」

のあ「も! もも、もちッゲホッ!! ゴホっ、ぐっ……!」

のあ「も、持ち帰りで!!!!!」

店員「かしこまりました」

のあ「あと、並一つも」

店員「はい」スッ

のあ「……♪」

のあ「(へへ……えへへ♪)」

のあ「……」ズズッ

のあ「(ふふふふ……♪)」

のあ「…………」

のあ「……」ズズッ

のあ「(~~~……♪)」

店員「お待たせ致しました、こちら並弁当おふたつで、700円になります」

のあ「は、ハイ!!!」

店員「ありがとうございましたー」

のあ「(さて……)」スッ



161: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 01:06:04.61 ID:NO0o34zh0


━━━━夜━━━━
【岡崎家】


のあ「……かんこれ?」モグモグ

泰葉「はい、『艦これ』」

泰葉「最近、なか卯がコラボしたんですよ。知りませんか?」

のあ「……知らないわ。缶コーヒーレディの略?」モグモグ

泰葉「な、何ですかそれ」

泰葉「まあ、私も名前だけしか知らないのですが。クラスの男子が毎朝カードカードと騒いでて、パックを教室で開けてましたよ」

泰葉「……この前、楓さんも実は『かもしか出ない』ってむせび泣いてました」

のあ「……楓が、集めている」

泰葉「はい」

のあ「かもしか、氈鹿………、動物?」

泰葉「さあ、知りません。以前は『すき家』ともコラボしたみたいで」

のあ「フ……」モグモグ

のあ「艦これなど、恐れるに足りない」モグモグ

のあ「ゼンショーは、コアな客層に媚を売ることしか出来ないのね。底が知れたわ」

のあ「こっちは、『松茸』よ?」モグモグ

のあ「『松茸』とコラボしたのよ?」

泰葉「(こ、コラボ?)」

のあ「鼻腔を擽る、この圧倒的に濃厚で芳ばしいな香り」

のあ「まるで干したての畳に寝転び身を委ね、い草の感触と心落ち着く優しい匂いに抱擁されているような感覚……」

泰葉「それ単なる畳の香りでは?」

のあ「貴女も感じるでしょう、土の宝珠と讃えられるこの筆舌に尽くしがたい香りを」

泰葉「いえ、あんまり。普通の牛丼の香りがします」

泰葉「あと最近気付いたんですが、高峯さんって牛丼の話を振ると生き生きしますよね。もしかして……」

のあ「…………」モグモグ

のあ「……これ、貴女の分」スッ

泰葉「あ。ありがとうございます」








━━━翌日━━━
【なか卯】


のあ「……」モグモグ

のあ「……」

のあ「……」ピリッ

のあ「……」カサカサ

のあ「……」

のあ「…………」

のあ「(かわいい……)」


──────
────
──



163: ☆1/2 ※第4作参照 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 01:08:00.94 ID:NO0o34zh0

──
────
──────
【事務所 会議室】


のあ「(ハァ……、またエキストラの仕事)」

のあ「(別に選り好みするわけじゃないし不満でもないけど……)」


~~~~~~~~~~
楓『───さあ、今日は吉呑みしましょう♪』

楓『───「吉野家」』

楓『…………でも、呑みすぎはよしなや? ……ふふっ♪』
~~~~~~~~~~


のあ「(……)」

のあ「(いいなぁ、楓さん。私も吉野家のCMとか出たいなぁ……)」

のあ「(こう、食欲をそそる食べっぷりを撮ってほしい。絶対に自信があるのに)」ペラッ

のあ「……」

のあ「…………」

のあ「…………………」

のあ「!!!!!」ガタッ!!


~~~~~~~~~~
【某携帯キャリア、クーポンキャンペーン】

・○月毎週金曜、吉野家にて並盛1杯プレゼントのクーポン宣伝
・吉野家店舗にて撮影
・エキストラは関係事務所から募集、不都合時はスタッフを配役

・エキストラ配置、2カット
・Aカット:メインキャスト背景
・Bカット:店員・客
・店員は作業従事、客は食事風景
~~~~~~~~~~


のあ「(…………)」





~~~~~~~~~~
────客は食事風景
~~~~~~~~~~





───ガチャ

P「あっ、高峯さん。目を通していただきましたか?」

P「同じ事務所からエキストラを募れないかと要望が有ったのですが、どうです? 明後日のスケジュールですが」

P「なんでも、ただ牛丼を掻き込んでいるだけで良いらしいですよ。ハハハ、ふざけ過ぎてますか?」

のあ「だ……」

のあ「だ、大好き……」プルプル

P「(───!?)」



170: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 01:10:25.21 ID:NO0o34zh0

━━━━2日後━━━━
【撮影スタジオ】


のあ「(あぁ……ついに私、吉野家のCMに出られるんだ。しかもタダで牛丼を食べるだけの役)」

のあ「(感無量だなぁ……計り知れないほど、嬉しい。もうこれが終わったら、アイドルやめてもいいんじゃないかってくらい、満ち足りてる気持ち)」

スタッフ「本番1時間前でーす。エキストラさんは、配置確認お願いします」

のあ「ぁ、はい」

のあ「(ふふふっ♪ せめていっぱい食べて帰ろう。ふふ……♪)」

のあ「(~~~……♪)」スタスタ








━━━━本番━━━━


『はぁー、吉野家最っ高……』

泰葉『うんうん……♪』モグモグ

泰葉『……』

泰葉『……?』チラッ






店員N「…………」ジー






泰葉「ぶほッ!!!」



監督『ストップストップ! 泰葉ちゃん、大丈夫?』

泰葉「ハ、はい……す、すみません。もう一回お願いします」

店員N「……」カチャカチャ







━━━━夜━━━━
【岡崎家】


泰葉「エキストラで出演してたんですね……」

のあ「……後姿だけ」

のあ「……」

のあ「せっかく吉野家のCMだったのに……出れたのに……」

のあ「まさか、店員の役だとは……。いっぱい食べられると思ったのに……」

泰葉「気持ちはわかります。でもアレ、そもそも吉野家のCMじゃないですからね?」

のあ「…………」シュン


──────
────
──



179: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 01:12:05.62 ID:NO0o34zh0

──
────
──────
【事務所】


周子「……」ゴロゴロ

P「んー……」カタカタ

P「あっ」

P「……そうだ、なあ周子?」

周子「おなかすいたーん」

P「えっ、それ返事?」

周子「なにかね」

P「周子、近々高峯さんに合う予定あるか?」

周子「のあさんに?」

P「実は高峯さんに返したい物があるんだけどさ、明日から出張でなかなか渡す機会がないんだ」

周子「ふんふん」

P「もし良ければ、代わりに渡してくれないかと思ってさ」

P「ホラ、高峯さんと周子はアレだろ? 不都合が無ければ……」

周子「おなかすいたーん」

P「……分かったよ」

周子「察しがいいPさんは好きだよ、あたしは」

周子「で、ブツはなに?」

P「ん……、ちょっと待ってな」ゴソゴソ

P「んんっっ!」ガタンガタン!

周子「……?」

P「あぁよし、出せた。これだ」


───ゴトッ!





【ゲームギア】





周子「お……」

周子「おなかすいたーん……」

P「えっ、追加?」



187: ☆2/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 01:17:30.62 ID:NO0o34zh0


周子「なにそれ? 鈍器?」

周子「カラオケにある曲入れる機械よりおっきいけど……」

P「これは一応、携帯ゲーム機だぞ。世代を感じるなぁ」

周子「携帯かぁ。これ持ち運び出来ちゃうのか」

周子「マジかぁ」

P「このまえ送迎の時に、後部座席で高峯さんがゴソゴソしててな?」

P「気になってふとバックミラーを目をやったら、彼女の鞄からいきなりこれが姿を現したんだよ」

P「動揺して事故るかと思った」

P「目の前の光景がにわかには受け入れ難いものだった……」

周子「なんか前も似たようなこと言ってたね」

P「いやでも実際懐かしくてな。話しかけたら、いきなり『興味ある?』って貸してくれたよ」

周子「(のあさん、頑張ってるなー)」

周子「……まぁ、いいよ。重そうだけど」

周子「今度会う約束してたし。その時にでも渡すかな」

P「へえ、そうなのか?」

周子「うん。今度家に遊びに来ていいって言われたし」

P「親戚……、『はとこ』とは聞いたけど、二人は昔から仲良かったのか?」

周子「んー……」



188: ☆3/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 01:18:20.72 ID:NO0o34zh0


周子「そだね」

周子「面識もあったし、実家とかで会って遊んだりしたのは覚えてる」

周子「……でも正直、向こうがあたしの顔を覚えているとは思わなかったけど」

P「気持ちは分からなくもないな。昔の知り合いに突然会うのって、ビックリするよな。面食らうというか」

P「風貌とか変わってたら、本人かどうか疑心暗鬼で話しかけるのも少し躊躇しちゃうし」

周子「するねー。相手がこっちを覚えているのかも不安だし」

周子「………昔と変わらないようで、うれしかったよ」

P「昔の高峯さんか……」

P「彼女の性格は掴みどころがない……、というか誰にも掴ませないカンジだけど、昔もそうなのか?」

P「群れるのを嫌うというか、孤高というか」

周子「いやいや、むしろ群れさせてあげてよ」

P「えっ?」

周子「なんでもなーい」








━━━━━━━━━━
【レッスンルーム】


のあ「……」

ベテトレ「さてレッスンの前に、まずは柔軟からだ」

ベテトレ「よし、私は野暮用で少し席を外すから、その間に二人一組で準備をしておいてくれ」スッ

のあ「………」

のあ「………………」






夏樹「だりー、組もうぜー」

李衣菜「あっ……う、うん。おっけー」チラッ



奏「(美波……、そこをどいて手を放してくれると嬉しいわ)」

奏「(私は向こうにいる高峯さんと柔軟をしたいの………アナタとがっぷり四つ組んでいる場合じゃないの)」グググ…

美波「(待って奏ちゃん。話、きいて?)」

美波「(ほら、あそこの柱ならすごい柔軟しやすそうじゃないかな? 高峯さんとは私が組むから、あの柱は奏ちゃんに譲ってあげる、ねっ?)」グググググ…






のあ「(ア、あ、余ったっ……、一人余っちゃった……)」オロオロ

のあ「(いつもこうだ……あぁ、うぅぅ……っ)」グスッ


──────
────
──



227: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 21:09:34.64 ID:bZO4ESfY0

──
────
──────
【事務所 応接室】

のあ「……」

のあ「……」ペラッ



奏&美波「(……)」ジー

美波「(奏ちゃん、ほら見て。高峯さんの口元)」ヒソヒソ

美波「(……ご飯粒が付いてる)」

奏「(……)」

美波「(幼いカンジで、可愛らしいっ。母性本能が擽られるよね♪)」ヒソヒソ

美波「(普段は無表情で清楚な彼女なのに、どうしてああも不意打ちのギャップで心を揺さぶってくるのかな)」

美波「(ハァ、親密になりたいっ……)」

奏「(……違う)」

美波「(えっ?)」

奏「(違うわ、美波。あれは誘っているの)」ヒソヒソ

美波「(……えッ!?)」

奏「(例えるなら食虫植物…………いいえ、禁断の果実を唆すヘビの囁きのよう)」

奏「(さながら、ダイヤモンドのような高貴な輝きを放つあのご飯粒は禁断の果実………理性では抗えない魔性に魅了され、ついには手に取り、禁忌に身を堕としてしまう)

奏「(あぁ、高峯さん)」ギュッ

奏「(貴女が誘惑する悪魔のヘビであるならば、私はエデンの園の無垢なイヴになりましょう。その果実を口にすれば、一体どんな罪過がこの身を焼くのでしょう)」

奏「(私は……ッ)」ガタッ!

のあ「……?」ピクッ

美波「(ッ!? か、奏ちゃん! 隠れて!!)」ガタガタ!

奏「(ご、ごめんなさい……少し染まりかけていたわ)」

美波「(落ち着いて? あのね奏ちゃん、よく聞いて?)」ヒソヒソ

美波「(高峯さんはね? 貴女や紗枝ちゃんが思っているほど、高尚な人じゃないの。ちょっと語弊があるかもだけど……)」

美波「(みんなが言うほど、彼女は人間離れしてはいないの)」

美波「(もっと身近で温かくて、ちょっとドジなところもあるけど、でもそれを悟られまいと密かに頑張ってて、とても優しくて……見守りが必要な少し抜けてる長女のような人で……)」

奏「(それ以上は聞きたくないわ。またその話?)」ヒソヒソ

奏「(貴女は、高峯さんをどれだけ侮辱すれば気が済むの? 妹になりたいだの、家族になりたいだの………不敬よ)」

奏「(もういいわ。いずれにせよ、彼女を辱めるわけにはいかない。私は高峯さんに知らせに行く、あのご飯粒の存在を)」

美波「(か、奏ちゃん……)」

奏「(まっ、マウス・トゥ・マウスで)」

美波「(待って!? 無理しないで、二人で知らせに行こう!? だ、ダメ……っ!!)」ガタガタ!


───ガチャ




周子「おはよーございまーす」スッ





奏「(ま゙ッ!!!)」

美波「(???)」



228: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 21:10:11.81 ID:bZO4ESfY0

のあ「……あっ!」

周子「あれ、のあさんだ。やっほー」ヒラヒラ

のあ「し、周子ちゃん……お、おはようっ」

周子「久しぶりやぁ。そないいえば、『事務所』で会うのはこれが初めてやねえ」

のあ「もー……、周子ちゃん、こないだ一緒にどっかむしやしないでも、甘いもんでもよばれよなあ言わはったんに……」

のあ「あのあと、めちゃくちゃ探したんよ?」

周子「いやぁかんにんな……、のあさんLIVEの時は流石にへたばらはったかと思おて。その後は、えらい忙しくてどうも頭からすっぽりぬけてたわー」

のあ「もぉー……よーいわんわぁ」

───ビチャビチャビチャ!!


のあ&周子「(???)」

周子「んん?」ジー

周子「……のあさんや、口元にご飯粒ついてるよ。ほーれ」スッ

のあ「えっ、あ、ほんとだ。ありがと」

周子「のあさん、昔からちょっと天然っぽいからなー……身嗜み、気を付けた方がいいよ」

のあ「う、うん」

周子「んー、この米粒は」ジー

周子「……よ、っと!」


ピーン!



のあ「ちょ、ちょっと鏡見てくる……じゃあ、またね?」トコトコ

周子「はいよー」


───スッ

美波「周子ちゃん、おはようっ」

奏「おはよう」

周子「あ、ソファの裏にいたんだ、おはよう。美波ちゃん、口から血が滅茶苦茶出てるけど大丈夫?」

───グルグル


美波「周子ちゃん、おはようっ」スタスタ

奏「おはよう」スタスタ

周子「えっ、うん。おはよ───」

───グルグルグル


美波「周子ちゃん、おはようっ」スタスタ

奏「おはよう」スタスタ

───グルグルグルグル



周子「(───ッ!?)」



周子「(か、囲まれた!? や、ヤバっ……)」

美波「周子ちゃん、おはようっ」スタスタ

奏「おはよう」スタスタ

──────
────
──



229: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 21:10:49.77 ID:bZO4ESfY0

──
────
──────
【事務所 応接室】


のあ「……美優」

美優「はい?」

のあ「……そのネックレス、見たことがないわ」

美優「あっ、これは……!」

美優「撮影のお仕事の際に、頂いたんですよ。とても良く似合っていたからと」

美優「流石に勿体無いと遠慮はしたんですが、プロデューサーが、その……」

のあ「粋な計らいね。その意匠は大人向きとは言い難いけれど……、確かに普段より柔らかい雰囲気が出ているわ」

のあ「……とても似合ってる」

美優「ありがとうございます。ふふっ♪」






━━━━━━━━━━
【事務所 エントランス】


のあ「……伊吹」

伊吹「はい?」

のあ「……貴女の服装、普段と比べて大人しいわね」

のあ「至極上品に洗練されて……いつにも増して魅力的に感じる」

伊吹「あっ! わっ、ホントですか?」

伊吹「えへへ………春だし、ちょっと気分一新でオシャレしようと思って」

のあ「へえ……」

伊吹「でもでも、全っ然お金かかってないんですよコレ! 全部プチプラのブランドで固めて、安っぽく見えるか不安だったんだ~」

伊吹「でも高峯さんのお墨付きなら、問題ないよね! へへーっ♪」

のあ「ええ」

のあ「(…………)」








━━━━夜━━━━
【高峯家】


のあ「……」モゾモゾ



~~~~~~~~~
泰葉『趣味が合えば一番ですけど……会話のきっかけって、ほんとうに何気ない些細なものなんです』

泰葉『化粧とか、服装とか。年下狙いなら、付けている小物とか。変化を観察するのも大事ですね』

泰葉『ナンパじゃないですけど、そういう部分を褒められると、女の人って結構嬉しいんですよ?』
~~~~~~~~~~



のあ「…………」

のあ「ふ、フフフ……♪」



230: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 21:11:35.37 ID:bZO4ESfY0

━━━━翌日━━━━
【事務所 応接室】

伊吹「わっ」

伊吹「奏、なんか今日はすごいね。合コンでもあるのかってくらい気合入った服装とメイク」

伊吹「でもレザーは合コンじゃあ男の子受けはしにくいぞ? んー……攻めてるねー」

奏「……別に合コンなんて無いけど。あんまり興味ないし」

伊吹「撮影じゃないなら、デート?」

奏「伊吹ちゃん……、もちろん違うけど、そういうコトは大声で言うものじゃないの」

伊吹「うーん、奏は動じないなぁ。でもいつもとファッションが違いすぎて、遠目からだと誰かわかんないくらいだよ」

伊吹「髪も切った? 眉毛も弄ってる……カラコンも付けてる」

伊吹「極めつけに、なにその禍々しいドクロのバングル。全身革コーデといい、いつから奏はパンクロックに目覚めたの?」

奏「ふふっ。伊吹ちゃんは何でも気が付くのね、そういうトコ、私は好きよ」

伊吹「いや、アタシじゃなくても気付くよ。200人いれば199人はきっと気付くよ」

伊吹「むしろガラリと変わりすぎて非行を心配するレベルの変貌だよ」

奏「そう……!」キラキラ

伊吹「な、何で目を輝かせたの?」

───ガチャ


のあ「……おはよう。伊吹、奏」

奏「おはようございます」

伊吹「あっ、おはよーございます」

のあ「……伊吹は今日も『ぷちぷら』のコーデなのね」

伊吹「はいっ。最近ハマっちゃって♪」

のあ「……そう」

奏「(………)」ソワソワ

のあ「…………」

奏「(……………っ)」ドキドキ

のあ「………………………………」







のあ「…………小腹が空いたから、ファミマに行ってくるわ」

のあ「最近気づいたけれど、変わった商品出始めたし……」






───ガチャ、バタン



奏「…………………………………………………」

伊吹「…………」

奏「…………………………………………………………………………………………」

奏「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ファミマに、負けた……?」

伊吹「(高峯さん、ファミマ通ってるんだ)」

──────
────
──



231: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 21:12:06.87 ID:bZO4ESfY0

──
────
──────
【事務所 応接室】


夏樹「(…………)」ペラッ




李衣菜「私もレッド・ホット・チリ・ペッパーズとか最初聴いたときは、もうビビっときましたね!」

李衣菜「これがロックなんだなぁ、って、もう居てもたってもいられないくらい興奮して!」

李衣菜「体がかぁーっと熱くなりましたよ!」

のあ「確か、有名な漫画実写化の主題歌に使われた………一時期聴いていたわ」

李衣菜「えっ!? ……そ、そうなんですか?」

のあ「キャッチーだけど、Scar Tissueとか好きよ」

のあ「音楽は、凡百な言葉や理屈で説明するより直に聞くのが最も伝わる方法ではあるけれど……」

のあ「敢えて表現するならば、彼らの音楽は甘い狂気が張り付いているわ」

のあ「彼らの型破りなスタイルは力に満ちている。ファンクロックを善しとする彼らだけど優しいメロウな音も時には奏で、その世界観にあっという間に惹き込まれたわ」

李衣菜「う、ウンウン。そうそう、ファンクロック」



のあ「(…………)」

のあ「(実は聴いたことないけど)」

のあ「(……さて。会話を合わせるために付け焼刃の知識を並べて来たけど……)」

のあ「(残弾が尽きたわ。どうしよ……)」ドクンドクン




李衣菜「ウンウン……」

のあ「あと……」

のあ「えっと……」

李衣菜「??」

のあ「ほ、『ホット・バタード・ラム・カウ』とか………よく聴く」

李衣菜「へえー……!」キラキラ

のあ「カ、彼らの甘い旋律は、一度聴いたら耳から離れないわ」

李衣菜「あー、良いですよね、良いですよねっ!!」キラキラ

のあ「(……???)」

のあ「ァ……、あとは『ボヘミアン・ドリーム』」

のあ「彼らはミクスチャーロックの先駆けともいえる存在で、アルバムごとにそのスタイルは変えながらも、ボーカルとリリックセンスからはラップロックの匂いを常に感じるわ」

李衣菜「ウンウンウン……!」コクコク

のあ「(……!?)」





夏樹「(…………)」



232: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 21:12:57.61 ID:bZO4ESfY0


のあ「さ、『サザンカンフォート・スクリュー』も外せないわ」

のあ「政治的なメッセージを前面に出し、突き刺すようなラップスタイルで激しいロックを生み出す姿は……目に焼き付いて離れないわ」

李衣菜「ウンウン……分かります!」

のあ「『キッス・オブ・ファイア』……彼らが活動を休止した時は一晩中枕を濡らした」

のあ「ボーカルが逮捕された時は、私も逮捕されようかと血迷うほどショックだった……」

李衣菜「ウンウン……分かります!」

のあ「『テキーラ・サンライズ』。彼らは言わずもがな」

のあ「パラダイムに囚われずエキゾチックでアナーキーなコスチュームとパフォーマンス、エモーショナルなビートが最高にマーベラスだったわ」

李衣菜「ウンウン……分かります!」

李衣菜「いやぁ、話が合いますねっ。やっぱり高峯さんはまごうことなきロックだ!」

のあ「フフ……そうね」

のあ「……ちょっと、席を外すわ。また……あとで」

李衣菜「あ、ハーイ」





夏樹「…………」

李衣菜「ふぅー」

李衣菜「聞いてた? なつきち」

李衣菜「やっぱロックを愛する者は引かれ合うんだね。私、高峯さんとはウマがあう気がするよ」

夏樹「……ああ。聞いてたぜ」

夏樹「高峯さんに上手くあしらわれたな、だりー。遊ばれたと言うべきか」

李衣菜「うん?」

夏樹「あの人、後半は単なるカクテルの名前しかテキトーに言ってないぜ。気付いたか?」

李衣菜「えっ……?」

李衣菜「そ、そうなの……??」

夏樹「ん? んー…」

夏樹「…………うん」コクン

李衣菜「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

李衣菜「ち……」プルプル

李衣菜「ち、違うよ? なつきち………た、高峯さんは……っ」グスッ

夏樹「(な、涙ッ!?)」

李衣菜「高峯さんは、と、とてもロックで、私も、にわかではなくロックでっ……」グスン

李衣菜「わかる? ろ、ロックって、お酒のロックじゃないんだよ? なのに……」

李衣菜「な……なのに、なつきち……なんでそんなこと言うの……っ?」ポロポロ

夏樹「ご! ……ご、ごめんなだりー、アタシが悪かった」

夏樹「あの人はロックで……うん、だりーも超絶ロックだから」ナデナデ

李衣菜「うん……、ぐすっ」

夏樹「(…………)」


──────
────
──




233: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 21:13:42.24 ID:bZO4ESfY0

──
────
──────
【早朝 事務所】


───ガチャ

李衣菜「おはよーございまーっす!」

夏樹「おーっす」

美波「おはよう、李衣菜ちゃん、なつきちゃん」

奏「二人とも早いわね………あら? そのコーヒーは?」

夏樹「ああ、コレか? コンビニのカウンターコーヒーだよ」

夏樹「値段の割に味はイカしてるからよく買うんだ、アタシは」

李衣菜「そーそー。出勤する時にコレ持って颯爽と歩くと、何か『デキる大人』ってカンジでクールだよねー♪」

夏樹「だりー、そりゃ海外ドラマの見過ぎだって。どうせさ、そのためだけに買ったんだろ?」

李衣菜「へへ……、まあいーじゃん。よっと」カチャ

───パカッ


夏樹「……ハァ」

奏「ふふふっ」クスクス

李衣菜「?」ゴクゴク

夏樹「コーヒーをスポーツドリンクみたいに飲むよな、だりーは」

美波「李衣菜ちゃん? ちなみに……」

李衣菜「なに?」

美波「李衣菜ちゃんが今カップから外した、コンビニやスタバとかのコーヒーでよく見かけるそのプラスチックの蓋は『トラベラーリット』って名前なんだけどね?」

李衣菜「うん? ああコレ?」スッ

美波「実はそれ、外さないまま小さな穴から飲むのが一般的なんだよ?」

李衣菜「えっ……エエッ!?」

李衣菜「うそっ!? エイプリルフール!?」

奏「4月1日はもう過ぎたわ」

夏樹「『デキる大人』が聞いて呆れるよ……」



234: ☆2/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 21:14:32.65 ID:bZO4ESfY0


李衣菜「は、外してた。だって有り得ないじゃん!」

李衣菜「の……、飲みにくいし! 砂糖とか入れられないしっ!」

夏樹「そうか? アタシはブラック派だし慣れたら気にならないけど」

李衣菜「わ、私だってブ、ブラックくらいっ……くっ!」プルプル

李衣菜「それに香りッ! 香りを楽しめない!! この蓋に存在価値は絶対無いよっ!」

美波「ま、まあ……、認識は人それぞれあるだろうし、好きなように飲むのが正しいんだと思うよ」

李衣菜「で、でしょ! ホラぁ!」

夏樹「蓋をして飲む方が本場っぽくてカッコイイと思うけどなー?」チラッ

李衣菜「え、えぇー…」プルプル

夏樹「(正直どっちでも良いけど)」

奏「保温効果や持ち運びの利点から蓋を付けているそうよ」

奏「スタバのラテやカプチーノだと、蓋をしているとより一層美味しく飲めるっていう話もあるから、一概に意味は無いとは言えないけどね」

奏「ちなみに私も蓋をしたまま飲む派ね。運んでいる時にこぼれないし」

美波「私もどっちかと言うとそうかも。折角付いているんだし上手に活用したい気持ちはあるかな?」

李衣菜「ふ、フーン……べ、別にいーし……」プルプル

李衣菜「蓋のままチョロチョロ飲むより、蓋を外してグイっとあおった方がカッコイイし……ロックだし……」カポッ

奏「そ、そんな呑兵衛みたいに言われても」

夏樹「と言いつつ蓋を付け直したのは何故だい? だりー」

李衣菜「ま、まあさ、今日くらいは違う方法を試してみても良いかなー……って」


───ガチャ




のあ「……おはよう」スッ




李衣菜「あっ! おは……」

夏樹&李衣菜「(………あっ)」

奏&美波「───ッ!!!」

のあ「(フフフ……♪)」サッ


───パカッ


のあ「……」グビッ




235: ☆3/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 21:15:23.19 ID:bZO4ESfY0


李衣菜「た、高峯さん……、そのコーヒーは……っ!」

のあ「事務所に訪れる前、近くの店に寄ったのよ」

のあ「意図せず、近場で巡り合えるとは……。悪魔のように黒く地獄のように熱い、天使のように純粋で愛のように甘い味わいの一杯に」

夏樹「(シャルル=モーリスか。というか……)」

夏樹「(蓋が……)」

夏樹「た、高峯サン……?」

のあ「なに?」

夏樹「そ、その蓋って実は───むぐゥ!?」ガタッ!

夏樹「!?」バッ!

奏「た……、高峯さんおはようございます!」ググッ!

夏樹「か、かなえぇ……、な……ぁにを……!?」バタバタ!

奏「コンビニのカップコーヒーって美味しいですよね。私もよく買うんです」ググッ…

美波「おはようございます。その………高峯さんは、いつも蓋を外して?」

のあ「……? ……ええ」

美波「確かに、あの蓋って邪魔ですよね。私も飲む時は外すんですよ、デザインより機能性重視です」

美波「飲みにくいし、砂糖とか入れられないし、なにより一番大事な香りが楽しめない。その蓋に存在価値は絶対無いと思っています、私は」キッパリ

夏樹「(───!?)」

奏「アレ怖いですよね、蓋で隠したままだと熱い液体が口に届くタイミングが計れなくて。私の周りの友人もみんな外してましたよ。アレを付けて飲む意味なんて毛頭理解できないわ……」

奏「ほら、アナタのも外してあげる。こうすると飲むとき便利よ」グシャッ!

夏樹「」

李衣菜「ホラっ! ホラホラっ! なつきちほらぁー!!」

のあ「(……?)」ゴクゴク


──────
────
──



236: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 21:17:00.96 ID:bZO4ESfY0

──
────
──────
【続 事務所】


のあ「(ふふふ……♪)」

のあ「(早速4人の子達に見せつけることが出来た。コーヒー持って出勤している、この私の姿を)」

のあ「(昨日、真奈美さんを見てアレは良いなと思ったわ。出勤する時にコレ持って颯爽と歩くと、何か『デキる大人』ってカンジで格好良い……♪)」

のあ「(……でも)」

のあ「(初めて頑張って買ったけど、この蓋って一体なんだろ……??)」ジー

のあ「(穴が付いてる。まさかここから飲むとか? いやまさか。そんな飲みにくい……)」ジー

のあ「(……??)」ジー













美波&奏「……」コソコソ

李衣菜「……」ドキドキ

夏樹「……」

美波「(……さっきはゴメンね? なつきちゃん)」

夏樹「(いや、別にいーけどさ)」

夏樹「(けど……何でアタシまで横目で高峯さんを観察しなきゃいけないんだ……)」

美波「(……)」チラッ

奏「(……)」チラッ

李衣菜「(……)」チラッ

夏樹「……」



237: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 21:18:03.41 ID:bZO4ESfY0


夏樹「(なぁ……オイ)」

夏樹「(ソファに座ったままコーヒーとにらめっこして10分が過ぎたぞ、彼女)」

奏「(……高峯さんは今、真意を推し量ろうとしているのよ。あの蓋が持つ本来の機能を……)」

美波「(邪魔をしてはいけないわ。模倣するだけの形骸のようなシビリゼーションのご時勢、彼女はそれを啓発しようとしているの)」

美波「(はぁ……、黙して思考に耽る姿も知的で素敵。カメラ持ってくれば良かった)」

李衣菜「(アァー……カッコイイなー高峯さん……)」ドキドキ

夏樹「(アタシはお前らが何言ってるかサッパリ分かんねえよ)」

奏「(シッ! 高峯さんが動いたわ……)」

夏樹「(……?)」










のあ「……っ」

のあ「……ストロー……」キョロキョロ









夏樹「(……)」

夏樹「(…………)」チラッ

夏樹「(おい……今『ストロー』って言わなかったか?)」

夏樹「(あの小さい穴にストローを挿す気だぞ?)」

夏樹「(やる気だぞ、高峯さん。もっともダサイ飲み方を公然と)」

美波「(確かに、あの穴と位置を見たら導き出せるベストな解答かもしれない。流石は高峯さん……、なんという冷静で的確な判断力)」

奏「(待って。風味や焙煎方法に関して『ストロングコーヒー』と言及しかけただけかもしれないわ。旨味を極限まで探究する彼女の事だから、もう少し様子を見ましょう)」

李衣菜「(まってまって。ひょっとして『ストローク』かもしれない。まさか高峯さんもギターを……?)」ドキドキ

夏樹「(…………………………)」


──────
────
──



238: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 21:18:45.85 ID:bZO4ESfY0

──
────
──────
【事務所 応接室前】



夏樹「(~~~……♪)」スタスタ

夏樹「……」スッ

夏樹「(…………!)」

───ピタッ!


夏樹「(ドアの向こうから聞こえるのは……)」

夏樹「(だりーの声と)」

夏樹「(………高峯さん?)」

夏樹「(だりーの奴、今日はオフって言ってたのに一体……?)」

夏樹「(…………)」ソロソロ

夏樹「(…………)」ピタッ



 『あ、あの……!』

 *『……なに?』



夏樹「(…………)」



 『す、すみません。急に呼び止めちゃって。このあとレッスンでしたか?』

 *『問題ないわ』

 *『退屈な予定を始めるより、目の前の貴女の思惑に興味が湧き足を止めただけ』

 *『全ては私の意図する行動。貴女が気に病むことは、何も無い』

『え、えへへ……名前呼び……♪』



夏樹「(…………??)」



239: ☆2/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 21:19:27.12 ID:bZO4ESfY0



 『その、うまく言葉がまとまらなくって、えっと、なんて言えばいいのか』

 *『……何か、私に言いたいことがあるのね?』

 『は、はいっ』



夏樹「(ふーん……?)」



 *『…………』

 *『……知識は、思考を阻害する』

 *『感じたままを、貴女の想いを………声を焦がして、私に叩き付けて』

 *『遠慮はいらない。貴女の信条の“ロック”とは、飾らない言葉で語ることではなかったのかしら』

 『……!!』



夏樹「(へぇ……)」



 『……た、高峯さん』

 『私、一目見たときから、すごいロックな人だなって……、かっこよくて、クールで……』

 『………えっと』

 『最近、頭の中でぐるぐるまわっている、モヤモヤとした自分の想いに気付いて……』

 『今まで、ぴったりな言葉が思い浮かばなかったけど、最近それが分かって……』

 『あの……私……、た、高峯さんのこと……』

 『高峯さんのことが……、だ、だい……っ、……!』







夏樹「(……!?)」

夏樹「(う、ウソだろ!? まさか!!)」オロオロ

夏樹「(だ、だりー! ウソだろ、おいウソだろ!?)」ソワソワ

夏樹「(お前……、最近少しそんな気はしてたけど、高峯さんの事をそこまで……!!)」ドキドキ

夏樹「(止めるべきか!? いやでも、人の嗜好なんて人それぞれだし……)」

夏樹「(………っ!)」

夏樹「(お前は純粋でひたむきだけど………周囲に流されやすいところもあって、まだ自立するには早いかと思ってた)」

夏樹「(そんなお前が大胆にもこんな場所でそんなことを打ち明けようなんて………)」

夏樹「(きっと、一人でよっぽど悩んだんだろう。アタシにも頼らず、一人で頑張って決断したんだろう。だりー)」

夏樹「(アタシは……)」

夏樹「(…………)」

夏樹「(…………へへっ)」

夏樹「(木村夏樹は、クールに去るとするか)」クルッ




240: ☆3/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 21:21:51.14 ID:bZO4ESfY0


夏樹「(……)」スタスタ



 『た、高峯さんのことが、だい…、だい……っ!』

 *『……?』」


━━━━━━━━━━
【事務所 応接室】


李衣菜「た、高峯さんのことが、だい…、だい……っ!」

のあ「……?」






李衣菜「DAIGOみたいな人だと思ってますっ!!」

李衣菜「ロックでカッコイイけど、どことなく好感が持てて親近感があって……!!」

李衣菜「つ、つまりそのっ! 私!! そ、尊敬してますっ!!!」

李衣菜「ここ、今度! さ、サインください!! 色紙持ってきますからっ!!!」

李衣菜「い……、言いたいことはそれだけでした!!」

李衣菜「し、失礼しますッ!!!」バッ!


ガチャ!!



李衣菜「~~~っ♪」タタタッ

李衣菜「……おうっ?」

夏樹「……………………………………………………………………………………………」

李衣菜「おっはよーなつきち! これから出勤かな?」

李衣菜「……? どうしたの、そんな気の抜けたコーラみたいに疲れた顔して」

夏樹「……いや、別に」

李衣菜「?? ま、いいや」

タタタタタタタタ…


夏樹「………ハァ」

夏樹「……あッ!?」ビクッ!

夏樹「オ、おはよーございます……、高峯さん」

夏樹「ッ!? だ、大丈夫すか? 血色が悪くて、体震えてますケド………か、風邪っすか?」

夏樹「高峯さん……?」







━━━━夜━━━━
【居酒屋】


周子「……」

のあ「……DAIGOはムリ……」グッタリ

周子「DAIGOはムリかー」

──────
────
──



241: ☆1/5 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 21:23:20.88 ID:bZO4ESfY0

──
────
──────
【続 居酒屋】


周子「……のあさん。なんこつ唐揚げ頼んでいいー?」

のあ「……うん。いいよ」

周子「(急にのあさんに呼ばれたと思ったら……なんか重そうな話)」

周子「(のあさん、ずっと俯いちゃってる。負のオーラが出てるよ)」

のあ「……」ショボーン

周子「……で、話の続き」

周子「あたしには、あんまよく分かんないな」

のあ「……」

のあ「……“ミステリアス”は、まだいい」

のあ「それっぽく取り繕っておけばいいから」

周子「まあ、実際雰囲気は出てるよ」モグモグ

のあ「……“寡黙の女王”も、まだいい」

のあ「それっぽい喋り方で、ごまかせるから」

周子「のあさん、あたし以外と喋るとき全然口調違うもんね。キャラだよね」

のあ「私が……凡庸な存在であることと、特別な存在であることは、両立できる」

のあ「相互に認識し合う関係。干渉は……好きでも嫌いでもない。無意味なものでないならば」

周子「おー、ぽいぽい。それっぽい」パチパチ

周子「……のあさん。ぼんじり2本頼んでいいー?」

のあ「……うん。いいよ」

のあ「……でもこの口調、とても疲れる」ハァ

周子「そうなんだ」パクパク



242: ☆2/5 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 21:24:50.23 ID:bZO4ESfY0


のあ「……あと」

のあ「“ロボット”も、まだいい」

のあ「感情の表出と起伏が……恥ずかしくて苦手な私にはお似合いの言葉」

のあ「もちろん、みんなが悪口で言ってるつもりじゃないのも、分かってる」

周子「……」

のあ「でも」

のあ「“DAIGO”って……?」

のあ「私、どの角度から観たらあの人みたいに見えるの……?」

のあ「次は事務所でDAIGOを演じなければいけないの……?」

周子「(でも実際のあさん、あのレザーの指抜きグローブしたら中二っぽくて似合いそうだなー。今は言えないけど)」

周子「……のあさん。焦がし醤油風味油そば頼んでいいー?」

のあ「……うん。いいよ」

周子「でもさ?」

周子「のあさん。李衣菜ちゃんの目の前で変なことしてたんでしょ?」

のあ「し、した……。あと浅い知識でテキトーに会話してたら……」

のあ「……思いのほか、何故か弾んじゃった」

周子「のあさん、自分で自分の首を絞めてないかい?」

のあ「!! ち、ちが……っ!」

のあ「わ、私は、ただ……」

のあ「……ただ、みんなと仲良くなりたいだけなの……」

周子「……」

のあ「…………」

のあ「周子ちゃん。私みたいな臆病な人間はね……?」

のあ「話の引き出しが少ないから……、こと会話の場面においては、頑張らなきゃいけないの」

のあ「その人の興味に話題を合わせて、その人に興味を持ってもらいたくて、必死で取り繕うの」

のあ「今までだって、嫌いなホラー映画も、苦手なコーヒーも、関心がないロックミュージックも……」

のあ「『好きだ』って、『興味がある』って………みんなに嘘を言ってた」

周子「……」

のあ「ファンの人達や、事務所の仲間にもそう」

のあ「“ミステリアス”も、“寡黙の女王”も、“ロボット”だって」

のあ「……全部そう。みんなの思いに、期待に応じたいの」

のあ「でも、本当は違う。みんなのことなんて、きっと二の次」

のあ「自分の底を見せたくないだけ。見捨てられたくないの……」

周子「…………」

周子「……のあさん」

周子「あたしは、いまの貴女の活動や交友関係を否定して偉そうに、何かを諭すようなつもりはないよ?」

周子「ただ」

周子「ただもう一度、のあさんが普通に笑う姿を見たい」

周子「のあさん昔は、あたしの前ではいつも笑顔でいて………歌うのが本当に大好きだったよね」

のあ「……」



243: ☆3/5 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 21:25:49.31 ID:bZO4ESfY0


周子「昔、のあさんが放課後にあたしの学校に迎えに来たことあったよね」

周子「覚えてる? 正門で待ち構えててさ」

のあ「……」コクン

周子「もう学校中、滅茶苦茶噂になったよ。『外国人』とか『美人のハーフ』とか」

周子「虎の威を借る狐じゃないけど、しゅーこちゃんもその時は鼻が高かったよ。へへへ」

のあ「わ、私が………と、虎?」

周子「あっ、言葉の綾ね。そんな顔せんといて、悪い意味じゃないよ。じゃあ何がいい?」

のあ「……く、クラゲ」

周子「よし、それで行こう。可愛いもんね」パチン

周子「……のあさん。月見つくね2本頼んでいいー?」

のあ「……うん。いいよ」

周子「のあさんは昔からそうだったけど、ちょっと不器用なだけなんだよね。周りから勘違いされやすいというか」

周子「のあさんはね、外見のスペックが滅茶苦茶高いんだよ。つまり……」

周子「なんか『コイツ、デキる……ヤベェ!』ってオーラがむんむんに出てる」

のあ「そ、そうかな……」

周子「うん。きっとさ、その“寡黙の女王”のキャラもそうだけど」

周子「いつの間にか、引くに引けない状態になっちゃってるんだよね。のあさん」

のあ「……」コクン

周子「素の自分見せるって、そんなに怖いことかなあ」

周子「フラフラと生きてきたあたしには、よく分からんよ」

のあ「っ!」ブンブン!

周子「そっか。でもね、こんなのらりくらりで事なかれ主義のアタシだってアイドルやれてるんだよ?」

周子「のあさんだって、きっとだいじょーぶだよ」

のあ「……ふふっ」

のあ「ちょっと、気が楽になった」

周子「(今の例えでそう言われると若干複雑………まあいいや)」

周子「……のあさん。馬刺し頼んでいいー?」

のあ「……うん。いいよ」

周子「ま、気楽にいこーよ」

周子「のあさんはまだ、アイドルを初めて半年しか経ってないワケで」

周子「まだ色々と模索している段階だと思う。最初から上手くやれる器用な人間なんて絶対いないんだから」

周子「だからさ、深いことは考えず、ただ流れに身を任せるのもアリだと思うよ?」

周子「どこかの事務所の誰かも言ってたけど、意味や答えというのは後からついてくるもの……、なんだって」

のあ「…………」



244: ☆4/5 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 21:27:46.04 ID:bZO4ESfY0


周子「……将来がどうとか、先ずは後回しにしてさ」

周子「素の自分が出せる時が来るかもしれない。あるいは、今の振る舞いが楽しいと思える時がくるかもしれない」

周子「きっとその時がのあさんにとって、本当にアイドルをしている瞬間なんだと思う」

周子「軽いノリで過ごしてたあたしだって、そうだったからさ」

のあ「……周子ちゃん」

周子「少し偉そうだったかな?」

のあ「ううん」

のあ「周子ちゃんとお話できて、本当に良かった」

周子「……顔があっつい。の、のど乾いたなー」パタパタ

周子「ともかく。あたしが人間関係をとやかく語るなんてちゃんちゃらおかしな話だけどさ?」

周子「確かに、のあさんは事務所の人達から性格や出自を色々と勘違いされているかもしれない。意図してか、意図しないでかは知らないけど」

周子「……でもね。ちゃんと見てくれてる人も、絶対いると思う」

のあ「……そうかな」

周子「そーだよ。あたしが言うんだから」

周子「信じて?」

のあ「……うん」

周子「のあさん」

のあ「……うん?」

周子「コークハイ頼んでもいい?」

のあ「う───」

のあ「───だめ!! だめっ!!!」ムギュ!

周子「ありゃりゃ」








━━━━隣━━━━


早苗「…」

真奈美「(…………)」クイッ

美優「(…………)」ソワソワ

早苗「(あれ。あれ?)」

早苗「(ひょっとして、なに。あたし達、今の、聞いちゃいけないこと聞いちゃった系?)」

早苗「(ねえねえ…………、え、ちょっと………真奈美ちゃん、美優ちゃん? なんでだんまり?)」

早苗「(御簾で見えないけど、さっきまで隣にいたのって、のあちゃんだよね?)」

早苗「(だよね? のあちゃんじゃないの?)」

真奈美「(……人違いじゃないですか?)」

美優「(……ひ、人違いですね)」

早苗「(えっ? そうなのかなぁ?)」

真奈美「(そうですよ)」

美優「(の、呑みすぎたんじゃないですか、早苗さん?)」

早苗「(うぅん……うーーん……そうなのかぁ)」

真奈美&美優「(………………)」



245: ☆5/5 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/20(日) 21:30:12.38 ID:bZO4ESfY0


━━━1時間後━━━
【岡崎家】


泰葉「さて、そろそろ寝る準備……」

泰葉「……ん?」



 『ここ? この部屋?』

 *『ウ…、ン………』

 『あれ、鍵合わんよ? のあさんー?』



泰葉「(高峯さん、と………誰だろ)」






━━━━━━━━━━
【玄関】


泰葉「あれっ!?」

周子「おろ?」

のあ「うぷっ……」

泰葉「しゅ、周子さん? 何で……えっ?」

泰葉「何で、ぐでんぐでんに酔っ払った高峯さんを抱えてるんですか?」

周子「居酒屋でお話に付き合ってたんよ。というか……」

周子「……泰葉ちゃんが何でのあさんの家にいるの?」

のあ「で、でる………ウッ」

泰葉「出さないで下さい! 嘔吐は待ってください!?」

泰葉「周子さん、詳しい話は後にしますが……」

泰葉「とりあえず、高峯さんの部屋は隣です! さあ早く!!」

周子「おぉ、そかそか。ごめんね、邪魔しちゃった」

のあ「……い」

周子&泰葉「えっ??」




のあ「……ここで、いい……」




泰葉「いや普通によくないですよ!? 何でですか!?」

泰葉「ちょ、ちょっと周子さん! は、早く隣に持っていくか、あるいはもう少し我慢させてください!! いま洗面器もってきますから!!!」

───バタバタバタ……


周子「……」

周子「なぁんだ、のあさん? ………生きてる?」

のあ「…………」

周子「(私の知らないところで、楽しそうにやってそうで………まぁ、なによりかな)」

のあ「……………………ウッ」

──────
────
──



294: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/28(月) 00:54:48.64 ID:lGwxouOs0

──
────
──────
【高峯家】


のあ「そろそろ、こたつ片付けなきゃなぁ……」

のあ「……面倒くさいなぁ。明日でいいや」

のあ「……」ゴロゴロ

のあ「…………」ゴロゴロ

のあ「だ、ダメだ。このままだと一日中ゴロゴロしちゃう」

のあ「何かしないと……」







━━━━その後━━━━
【街中】


のあ「……」フラフラ

のあ「(とりあえず目的も無しに外に出向いたけど………どーしよ)」

のあ「(……!!)」

のあ「(そうだ。ひょっとして、そろそろ私……)」

のあ「(少しは、有名人の域に割り込んでいるんじゃないかな?)」

のあ「(いや、きっとそうだわ! もうライブだって2回やってるし、CDも出してる!!)」

のあ「(プロデューサーさんも言っていたわ。半年の新人にしては大躍進だって)」

のあ「(ふ、フフッ……♪)」

のあ「(……っ)」キョロキョロ

通行人1「……」スタスタ

通行人2「……」スタスタ

のあ「(……ふむ)」

のあ「(しばらくしたら、道往く人々にいっぱい声を掛けられて……)」

のあ「(サインとか握手とかせがまれたり、技掛けてくださいとか闘魂注入してくださいとか頼まれるに決まってる♪)」

のあ「(あー、こんなことならメイクしてくれば良かった。ペンと色紙持参すれば良かった)」

のあ「……っ」ドキドキ

通行人1「……」スタスタ

のあ「……」チラッチラッ

通行人2「……」スタスタ

のあ「…………」

のあ「(……………)」



295: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/28(月) 00:55:21.69 ID:lGwxouOs0

のあ「…………」

のあ「あ……、あぁー、肩が凝ったなー……?」チラッ

通行人3「……」スタスタ

のあ「(さ、流石に無理か)」

のあ「………………」

のあ「……え、えっとぉ……、ラ、来週の予定は米国大使館でライブ………っと」

通行人4「……」スタスタ

のあ「(な、難聴かな……?)」

のあ「…………………………………………」

のあ「あっ、も、もしもしぃ……、あっ、木村夏樹ちゃん? あ、そうなんだぁ、多田李衣菜ちゃん、いまCMの撮影中なんだぁ……城ヶ崎美嘉ちゃんも、へえー……、……渋谷凛ちゃん……岡崎泰葉ちゃん……緒方智絵里ちゃん……三村かな子ちゃん……双葉杏ちゃん……神崎蘭子ちゃん……関裕美ちゃん……藤居朋ちゃん……藤原肇ちゃん……白坂小梅ちゃん……五十嵐響子ちゃん……姫川友紀ちゃん……ヘレンさん……」ツーツーツー

通行人5「……」スタスタ

のあ「(スルー!? 事務所が誇る全国ネット地上波メンバーなのにっ!?)」ツーツーツー

のあ「………………………………………………………………………」








━━━1時間後━━━


通行人「……」スタスタ

───チョンチョン


通行人「! ……はい?」クルッ

のあ「………………」

通行人「なんすか?」



のあ「ぁ、あのっ……」

のあ「わた、私の名前……私のな、名前をぅぅ……」

のあ「い、い、言ってみてください……」



通行人「は、はい? し、知りませんよ」

のあ「ッ!!!」ビクッ!

のあ「ぁっ……」

のあ「わ、私の名前は………」

のあ「『高峯のあ』です………高峯のあ? ………私の名前っ……」

のあ「私の名前は、高峯のあです……っ」

通行人「へ、へぇ……」








通行人「お……、おもしろい名前っすね」

のあ「」

──────
────
──



296: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/28(月) 00:56:47.20 ID:lGwxouOs0

──
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──────
【とあるLINE:『ひとつ屋根の下』】



高峯【その日は暇を持て余し過ぎて、ポケモン100匹捕まえたわ】20:00

泰葉【変装しないで外出は危ないですよ】20:05
泰葉【でもそういう感覚、もう久しく無いですね。初めのうちは新鮮で嬉しいかもしれませんが】20:09

高峯【何故】20:10

泰葉【事務所に迷惑が掛かったら申し訳ないですし】20:13
泰葉【そう言えば、高峯さんってランクいくつですか?】20:15

高峯【面白い名前かしら】20:15
高峯【高峯のあ】20:16
高峯【Gランク】20:16

泰葉【良い名前だと思います。響きが】20:16
泰葉【Gランクってありましたっけ? まあいいか】20:20
泰葉【(´-ω-`)】20:21



▲『かえでさんがグループに参加しました』▲



かえで【v(´∀`*v)ピース】20:21

泰葉【あ、きた】20:21

かえで【すみません、LINEの入り方を忘れてました】20:22

かえで【ついに作ったんですね! 私達のLINEグループ!】20:23
かえで【ひとつ屋根の下! 名前もいいじゃないですか♪】20:24

泰葉【高峯さんがグループ作ってくれたんですよ。あと招待も】20:25

高峯【泰葉、それどうやるの】20:25

かえで【まさか高峯さんがこういうのを作るとは思いませんでしたけどね♪ 招待ありがとうございます♪】20:25

泰葉【でも作る意味あったんですか? 結局は隣にいるのに】20:26
泰葉【そして週2.3でウチに来るのに】20:27

高峯【楓、それどうやるの】20:27

かえで【いいじゃないですか♪ ほら、連絡が簡単に取れますし】20:27
かえで【必要な生活必需品とか食品とか書いてくれれば、買い足しときますよ】20:29

泰葉【(´-ω-`;)】20:29
泰葉【えっ、なんですか?】20:29

かえで【たまには皆で買い出しとか行きます? 買い出しは愉快だし】20:30
かえで【`;:゙;`;・(゚ε゚ )ブーッ!!】20:30
かえで【えっ、なんですか?】20:31

高峯【それ、どうやるの】20:31

泰葉【それ?】20:32

かえで【ダジャレ?】20:32

泰葉【あ、スタンプですね?】20:33

高峯【それ】20:33



297: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/28(月) 00:58:01.59 ID:lGwxouOs0


泰葉【左下に顔のマークがありませんか?】20:35
泰葉【そこを押すとデフォルトで持っているスタンプが表示されるので、その中から好きなのを選ぶだけです】20:36

高峯【わかった】20:36
高峯【やってみる】20:36
高峯【待ってて】20:37

かえで【そう言えば以前、お金儲けの話がありましたが】20:40
かえで【LINEのスタンプを自作して設けるというのはどうでしょう?】20:42
かえで【噂に聞くと、1000万円稼いだ人もいるとか】20:43

泰葉【今は飽和しすぎて全然儲からないらしいですよ】20:43

かえで【ガ━━(;゚Д゚)━━ン!!】20:45

泰葉【(´・ω・`)ガッカリ…】20:46

かえで【人生オワタ\(^o^)/】20:47

泰葉【アイドル活動を地道に頑張りましょうよ】20:50

かえで【だって私、のあさんより半年長いのに、デビューはまだなんですよ】20:53
かえで【正直CM起用が奇跡的なレベルでした】20:54

泰葉【世の中にはデビューせずアイドルを辞めていく人もいるんです】20:55
泰葉【楓さん、頑張りましょう。既にモデル撮影は完璧にこなしているわけですし】20:58
泰葉【(´・ω・`)_且~~ イカガ?】20:58

かえで【すみません、チキンラーメン作ってきます】21:00

泰葉【(´-ω-`)】21:02

泰葉【そういえば、このグループって3人だけなんですか高峯さん?】21:06
泰葉【少し寂しい気もしますが、まあこういう名前のグループってことなら主旨として理解できますけど】21:08
泰葉【|壁]ゝ ̄)】21:09







▲『時子さんがグループに参加しました』▲





高峯【m9( ´,_ゝ`)プッ】21:09


時子【はい?】21:09


高峯【ぁっ】21:10



























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298: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/28(月) 00:58:41.30 ID:lGwxouOs0

──
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【事務所 応接室】


美優「ふふふっ……♪」クスクス


───ガチャ

奏「おはようございます」

伊吹「おはようございまぁす、美優さん」

美優「ええ、おはよう」

伊吹「? スマホで何かやってるんですか?」

奏「もしかして、テレビ電話ですか?」

伊吹「はえー……美優さんが珍しいですね」

美優「そうね……、最近は事務連絡以外には電話機能は使わないし、埃を被らせておくのも可哀想と思って」

美優「せっかく付いているんだし、良ければ使いませんか? ……って誘われて」

伊吹「奏さ、アタシ達もああいうの使ったことあったよね?」

奏「うん。いざ使ったら、お互いの顔を凝視しながらだと……少し気恥ずかしくなっちゃったわね。一回っきりで」

伊吹「ウンウン。疎遠な親戚とかならまだ懐かしい気分が勝って平気だけど、アタシ達は普段から嫌というほど顔を合わせてるしねぇ」

奏「電話やメールって、顔が見えないからこそ良いというか……」

奏「『会話をしたいのであって、顔を見たいわけではない』………ちょっと言い方が悪いかしら」

美優「まあ、気持ちは分からなくもないかしら? 見つめ続けながら会話をするのことには慣れてないというか、どうしても『見る』ことに気が向いてしまうかも」

伊吹「部屋の様子とかも見えちゃうわけだし、色々と神経使って疲れちゃう」

美優「そうね。でも、楽しいわよ?」

美優「相手の姿が見えるのとそうでないとでは、二人が言うように大きく違うと思うわ」

美優「表情が分かるからこそ、安心して話を進められたり、逆に気を遣うことも出来るから」

伊吹「……で」

伊吹「誰と話してるんですか??」ヒョイッ

美優「うん? はい、どうぞ」スッ






のあ『…………』ヒラヒラ






伊吹「わ!」

伊吹「高峯さんだっ! お疲れ様ですー♪」ヒラヒラ

バシィッ!!


美優&伊吹「(!?)」

奏「ぁ、あぁぁ……っ」プルプル

伊吹「ちょっと奏!! それ美優さんのスマホだから大切に扱って!!」

美優「奏ちゃん……?」

奏「ら、ラブプラス……ッ!?」ガタガタ

伊吹「テレビ電話だよ」



299: ☆2/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/28(月) 01:00:04.21 ID:lGwxouOs0

奏「お、お疲れ様で、ですっ……」

のあ『……そう言えば、面と向かって貴女と会話をするのは……、随分久しぶりね』

奏「よ、4ヵ月と19日ぶりです……」

のあ『……あれから、髪を切ったのかしら。眉毛も弄って……瞳の色も違うわ』

奏「はうっ!!!!」

のあ『……何かの役作り?』

奏「い、いいえっ!」

のあ『前のような、爽やかなイメージとは異なるけれど……』

のあ『そういう表現、嫌いじゃないわ。マニッシュで、とても端整な恰好ね』

伊吹「か、奏ッ!? 全身痙攣して鼻から血が出てるけど!?」

美優「奏ちゃん!?」

奏「ぁ、ぁりがと……、ご、ござぃ、ぁすっ……」ビクンッ!

のあ『……え?』

奏「て、テレビ電話……最高……ッ」ドキドキ

美優「(さっきまで否定派だったのに……)」

伊吹「高峯さん、今おうちですか??」

のあ『ええ』

伊吹「へえー、なんか意外に質素な感じですね。でも広そう……」

のあ『大掃除したのよ』

伊吹「へっ?」

のあ『ナ、何でもないわ』

美優「のあさん。都合が良ければまた、真奈美さんと一緒にご飯に行きましょうね?」

美優「もちろん、私の家でも構いませんし、今度ゆっくり貴女のお話を聞かせてください」

のあ『……ええ。楽しみにしてるわ』

美優「ふふっ、のあさんのお部屋でも良いですけどね♪」

のあ『…………』

美優「今日は来客のために、張り切ってお掃除されたんですって」

伊吹&奏「来客?」

のあ『……』






周子『やっほー』ヒョコッ






伊吹「あれーっ!? 周子ぉ!?」

伊吹「なんで? そこ高峯さんのお部屋でしょ?」

バチィィン!!!


奏「うわあああぁぁァーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!」ドゴッ!

奏「アァァァァッ!!! あうああうあぁぁぁぁーーーーーーーー!!!??」ドゴッ!

伊吹「奏!! それ美優さんのスマホだから叩かないで!!!」

美優「(こ、怖い……)」

奏「何故………なぜぇぇっ……!!!」プルプル



300: ☆3/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/28(月) 01:00:44.76 ID:lGwxouOs0

奏「周子!! 周子ォォォ~~……っ!!」グイグイ

周子『か、奏ちゃん、口からめっちゃ血が出てるけど………なにこれ、ホラー?』

奏「ううぅっ……、ウウウゥゥ~~~~…………!!」グイグイグイ!!

伊吹「落ち着いて奏!! 顔を液晶に押し付けてもそっちの空間には行けないから!!!」

奏「何故っ……、どうして周子が高峯さんの隣に……!?」

周子『実は偶然さっき、道でのあさんとばったり会っちゃって』

周子『奇遇ね、家近くだから、良ければお茶でもどう? なんて』

伊吹「……んん? アレッ、周子がその来客じゃないの?」

伊吹「じゃあ、高峯さんは誰に備えてお部屋を片付けたの? 話がちょっと合わないけど……」

周子『あ』

周子『………じゃあ、まあそーいう事で。そろそろ切るね、美優さん、ありがとねー』ヒラヒラ

美優「あっ、はーい。じゃあ、また機会があれば……のあさん」

のあ『ええ。また』

周子『ばいばーい』

奏「し、周子!! 待ちなさい、待ってッ!!! 待って下さい周子さん!!!!」

奏「せめて近隣の建物や目立つ風景を、少しでも映してから電話を切って!! 僅かでいいから!!! 部屋の構図でもいいから!!!!」

周子『え、えぇー………なんでや』

奏「お願いします何でもしますから!! じゃないと私、もうあなたの事を名前で呼ばないから……っ!!」

伊吹&美優「……」

奏「待って! 助けて!! 待ってくださいお願いします!!! 周子!!!! しゅ──────」


───プツッ



奏「ぁっ」

伊吹&美優「(………………)」

奏「ぁ……ア? ぁ…………っ」ガクン

伊吹「か、奏さん……?」

奏「……」プルプル

伊吹「ど、どうしたんですか……しゃがみ込んで、寒そうに体を震わせて……」

奏「……ぁっ……」プルプル

伊吹「……?」




奏「ま、ママぁ…………」ギュッ




伊吹「(で、出たッ! 最近頻発する謎の幼児退行!!)」ギュウゥゥゥ!!

美優「だ、大丈夫? 伊吹ちゃんに抱き着いて………ど、どうしたの?」

奏「ぁっ……………ぐ、グランマ……」

美優「グ、グラン……っ!?」

伊吹「美優さんごめんなさいホント!! 奏最近、悪霊に取りつかれてから情緒不安定なんですごめんなさい悪気はないんです!!!」ギュウゥゥゥ!!

奏「ぁぅ…………ぅっ……」グスッ

──────
────
──



301: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/28(月) 01:01:15.43 ID:lGwxouOs0

──
────
──────
【続 高峯家】


周子「(あぶなーっ。伊吹ちゃんの誘導に引っかかるトコだった)」

周子「(ホントは偶然じゃなくて、その来客があたしなんだけど、まあPさんのお願いだし伏せた方がいよね)」

周子「(……今度から関係を聞かれたら、のあさんとはお友達ということにしておこう。うん)」

のあ「……周子ちゃん」

周子「うん?」

のあ「……ご飯が、そろそろ出来そうです」

周子「おっ、いいね。なになに?」

のあ「肉じゃが」

周子「おぉー。なんかごめんね、至れり尽くせりで」

のあ「ううん」

のあ「じゃあ、待っててね」スタッ

周子「……」

周子「(のあさん、料理が出来るようになったのかぁ。昔はからっきしだったのに)」

周子「(でも噂じゃあ最近、美波ちゃんとかみくちゃんにお弁当を作ったことがあるとか)」

周子「(努力してるんだなー……)」



のあ「……周子ちゃん」スッ



周子「……のあさんや」

周子「人の耳元まで気配無く接近してくるカンジ、相変わらずやね。あたしじゃなかったらちぃとばかし軽く声出してたよ」

周子「で、なぁに?」





のあ「……ご飯が、まだ出来なさそうです」

のあ「……あと2時間待って」プルプル





周子「……うん、あたしはかまへんよ」

周子「(…………)」

周子「(……ありゃ失敗したかな)」




【17:00】




302: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/28(月) 01:01:54.27 ID:lGwxouOs0


━━━━━━━━━━


周子「(そう言えば、部屋片付けたんだ。部屋中ファブリーズの匂いしたし)」

周子「(もう一つの部屋には絶対入るなって言われたし。なんか……色々と察せられるものがあるね)」

周子「(んー……)」ゴロゴロ

周子「(……あかん。ほんまお腹空いてきた)」

周子「(ああもー……コンビニ行きたいなー)」ゴロゴロ

周子「(……あっ)」

周子「(のあさん、パソコンの電源付けっぱなし……)」

周子「(…………)」チラッ

周子「(………………)」

周子「(ちょっと覗いちゃおう。好奇心には勝てへんわぁ)」コソコソ

周子「(へへ……、普段何見てるんだろ、のあさん?)」

周子「(うわっ、想像できない、なんだろ、楽しみ♪)」コソコソ

周子「(ニコニコ動画かな? ファッションコラムかな? お取り寄せサイトかな?)」

周子「(他人のブログチェック? どれどれ───)」

周子「(───ん?)」

周子「(…………)」

周子「(これ、クックパッド?)」

周子「(ページ戻って…………んんっ?)」






【肉じゃが】
【肉じゃが 美味しい】
【肉じゃが 簡単】
【肉じゃが 基本】
【肉じゃが 家族】
【肉じゃが アレルギー】
【肉じゃが 道具】
【肉じゃが 5分】
【プリン 本格】






周子「(…………)」

周子「のあさーーん?」

 『ナ……なに……?』

周子「いまどんなカンジーー?」

 『……しょ、醤油が……そ、ソースを……』

周子「ああ……醤油じゃなくてソースを入れちゃったのね」

周子「よし。あたしも手伝うよ」スタッ

周子「最近、他の事務所の人に教えてもらったアレンジがあるんよ。ソースならちょうど洋風に出来そうだし」




【20:00】

──────
────
──



303: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/28(月) 01:02:43.84 ID:lGwxouOs0

──
────
──────
【続 岡崎家】


楓「(……♪)」モグモグ

泰葉「親戚……!?」

周子「6親等くらい離れてた気がしたけど、紗枝ちゃん曰く“はとこ”だって」モグモグ

泰葉「すごい奇遇ですね。親戚が、同じ事務所で活動してるなんて」

泰葉「……というか周子さん? 高峯さんは今どこに?」

周子「お風呂入ってから来るって」

泰葉「(来るんだ)」

周子「そんな珍しいかね? だって他にもいるじゃん」

周子「律子ちゃんと涼ちゃんとか」

泰葉「まあ、その二人は……」

周子「留美さんとありすちゃんとか、瞳子さんと文香ちゃんとか、夕美ちゃんと礼子さんとか、春菜ちゃんと比奈ちゃんとか、心さんと麻理菜さんとか」

泰葉「え、え、えっ………」

泰葉「エエエエエェェッッ!?」

周子「ごめん、今のはテキトー。ホントにウソ」

泰葉「」

泰葉「は、ハァ……。もう、やめてくださいよ」

楓「周子ちゃん、コレ美味しいですね!」

楓「肉じゃが……のような、ビーフシチューのような、まさに筆舌に尽くしがたい一品です」

周子「おー。肉じゃがの途中で、サルサソースとチーズでリカバーしたんですよ。洋風肉じゃが」

周子「ま、何とかなったね。おすそわけと思ったんですが、善きかな善きかな♪」

周子「………で、さ?」

周子「奇遇ってのはコッチの台詞だよ泰葉ちゃんよ」

周子「なにこのアパート?」

泰葉「えっ?」

楓「……?」モグモグ

周子「女子寮かと思った。のあさんの隣が、楓さんと泰葉ちゃんなんて」

周子「珍しい偶然もあるもんやねー。ひょっとするとまだ居るとか?」

泰葉「………………………………………………」

楓「ゲホッ!! げほっ、えっほ!!」

周子「……えっ?」



304: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/28(月) 01:03:55.24 ID:lGwxouOs0


━━━━━━━━━━


周子「時子さんが? この隣に?」

泰葉「……」コクン

楓「……」

周子「うわぁ、へえー、ふーん……」

周子「時子さんっていわゆる『いいとこ育ち』でしょ? なんでこんな庶民的な安普請のアパートに?」

泰葉「……さあ」

周子「んー……♪」

周子「気になるなー。物音とかなんかしないの?」

周子「時子さんってさ、ウチの事務所のメンツの中でも私生活とか素性が知れないうちの一人じゃん」

楓「…………」

周子「こうさ、壁に耳付けると……ひょっとするとクラシックとはかけ離れた、野球中継とか聴こえて来たりして……」スッ

泰葉「アッ!! し、周子さん、まずいですよ!!」

楓「そ、そうですよ周子ちゃん……、ぷ、プライベートですよ」

泰葉「そのセリフは私に部屋の合鍵を渡してくれてから言って貰ってもいいですか?」

周子「(…………)」コソコソ








ニャー









周子「……? ね───」









ドンッ!!!!!!









周子「ヒッ!」

楓&泰葉「……」

周子「ァッ……え……」

周子「…………………………えっ?」

楓&泰葉「…………」


──────
────
──




305: ☆1/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/28(月) 01:04:55.31 ID:lGwxouOs0

──
────
──────
【トレーニングルーム】


のあ「……」

卯月「高峯さん、お付き合いいただきありがとうございます」

卯月「10分だけ、お時間を頂きたいなと思いまして……」

のあ「……笑顔の、練習?」

卯月「そ、そうですっ! 今日はですね、今日はですね?」

卯月「なんと助っ人を呼んできました! 名付けて『笑顔三銃士』!」

卯月「この3人で、必ずあなたを笑顔にさせて見せますっ!!」

のあ「(……♪)」

卯月「では早速お越しいただきましょう、どうぞっ!」

*『フフフ……!』

*『笑顔とは、幸せになることと見つけたり!』

笑美『笑顔三銃士が一人、難波笑美、推参!!』

笑美「あっ、同じアイドル部門の難波笑美です高峯さん。おおきにー♪」


http://i.imgur.com/nV5P7Hv.jpg


**『ふっふっふ……!』

**『笑顔とは、笑わせることと見つけたり!』

鈴帆『笑顔三銃士が一人、上田鈴帆、見参!!』

鈴帆「上田鈴帆けん、高峯しゃん。以後よろしゅうね♪」


http://i.imgur.com/nuJdHZA.jpg


のあ「……っ!」

のあ「(魔女に、ドラゴン!? こ、コスプレ!?)」

のあ「(なに、これ……二人とも可愛いっ……、こ、こんな恰好する子達だったんだ!)」

のあ「(抱きしめたい可愛さ。ぎゅーってしたい、特にドラゴンの方、もふもふしたい)」

***『そ、そして……!』

***『笑顔とは、優しくあることと見つけたり!』

卯月『笑顔三銃士が一人、島村卯月………と、登場っ!!』


http://i.imgur.com/FVdjIpb.jpg


のあ「……」ジー

のあ「(卯月ちゃん、いつのまにか猫耳付けてっ………あ、愛くるしいっ)」

のあ「(み、みくちゃんより可愛いかもしれない……、やば、みんなの写メ撮りたい……撮らせてほしい……)」ジー

卯月「(た、高峯さん……ずっとこっちを睨んでる。ふ、ふざけてると思われたかな)」

卯月「(でもこの二人なら、笑いの伝道師たるこの二人ならきっと……!)」チラッ

鈴帆&笑美「(………………)」ジーー

卯月「二人ともどうしたんですか? 訝しげな表情で……」

鈴帆「……笑美しゃん。こりゃあ逸材かもしれんね」

笑美「やっぱし分かる? 鈴帆っち。もうボケのセンサーがビンッビンきとるわ」

卯月「えっ?」



306: ☆2/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/28(月) 01:05:33.28 ID:lGwxouOs0


笑美「噂には聞いてたねんけど、ほんっまにべっぴんな人やなぁ、高峯はん」

笑美「透明感のある肌に艶と輝きのある髪。全身から滲み出る品の良さ」

卯月「は、はい。事務所でも所属当初から話題に事欠かない、綺麗な人ですが……」

鈴帆「そうたい。けんど、そいがどがんね? 卯月しゃん」

鈴帆「見てみんしゃい、あの幾何学的なデザインの服を」

笑美「ギャップよ、ギャップ」

卯月「えっ、あ、あぁ……。一風変わってて素敵だと思いますけど……」

笑美「いやいやー、一風どころちゃうやろ? ド派手なコスモを感じるで」

笑美「中二的な漫画から飛び出してきよったキャラやで、アレ。ウチらより未来に生きとるわ」

卯月「そ、それは……」

笑美「例えば、みんな真面目ななりでオーディション受けとるとするやろ?」

笑美「そんな中いきなりあんなんに出くわしたら、もう絶対に笑うわ。ウチが面接官なら笑い転げて即採用する自信あるわ」

笑美「歩く地雷やで、あの人」

鈴帆「あげな人んことくさ、『シリアスな笑い』っち言うんやね」

笑美「ウンウン……!」

卯月「ば、馬鹿にしてませんか?」

笑美「うん? いや逆や逆」

鈴帆「高峯しゃんはウチらには無い、光るもんを持っとるばい」

卯月「……えっ?」

鈴帆「……高峯しゃん!」

鈴帆「いきなりですまんばい、高峯しゃん。これば着ちゃれんですか?」

卯月「……えっ」

のあ「(………………)」





━━━━5分後━━━━









http://i.imgur.com/Wx8Eujq.jpg









笑美「くッぅ! ぷくッ……!」プルプル

鈴帆「ふふっ、フ、ふ、むっ……!」プルプル

卯月「」

のあ「(……♪)」ドキドキ



307: ☆3/3 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/28(月) 01:06:25.03 ID:lGwxouOs0

笑美「あ……」

笑美「アハ、アハハハハハッ!! あ、あかん、いやコレあかんやつやろ!」

のあ「……どうかしら?」

鈴帆「いやぁ、実に似合っとーよ、高峯しゃん♪」

笑美「せやな! 美しさと、面白さが同居しとるわ! こんなん出来る人、そうおらんで!」キラキラ

笑美「高峯はん、高峯はん? なあなあ、ウチらと写メ撮ってや、写メ♪」カシャ

鈴帆「異様な親和性ばい……、どげんしたらこぎゃん風になれるんちゃろうか……?」

のあ「がおー……」

笑美「ええなあ、可愛いわぁ♪ 高峯はん、いますっごい良いキャラしとるで!」

のあ「……無愛想?」

笑美「いやいやいやいや! それがイイんです高峯はん、その無表情だからイイんです♪」

のあ「無表情、だから……?」

笑美「いや確かにな? 確かにいつもは少しけったいな美人やなぁと思うところもあんねんけど……」

鈴帆「そーやね、今はウチの着ぐるみ着とうけん、絶妙に親しみあっけんね。これなら絶対に小さい子にも人気が出るたい!」

笑美「なにより、ウチらのリクエストに嫌な顔せず応えてくれたことがほんまに嬉しいわ」

笑美「思おてたより全然良い人やなぁって、見直したで♪」

卯月「ちょ、ちょ、ちょっと二人とも!!」

卯月「いいんですか高峯さん!! オモチャにされてますよ!?」

のあ「……卯月はどう思う?」

卯月「えっ! いえ、私のことより……」

のあ「………………どう?」

卯月「…………………………………………………ちょ、ちょっとクスっときましたっ」

のあ「……そう」

のあ「卯月。私が自発的に口を綻ばせるのは、今後も努力が必要かもしれない」

のあ「……けれど、形に拘らず、他者を笑顔にさせることが出来た。例えそれが虚飾の偶像であろうとも、この高峯のあにとって……」

のあ「今日のこの時間は、深く心に刻まれた貴重な体験となったわ」

のあ「無表情だからいい……そう言われてから、とても不思議で、あたたかい気分で満たされている」

卯月「……高峯さん」

のあ「……一つ、お願いがあるの」

卯月「な、何ですか?」

のあ「……写メ、みんなと撮りたい」

卯月「……分かりました」

のあ「ありがとう」

卯月「いいえ、高峯さん。例え表情に浮かばなかったとしても、貴女に喜んでいただけたなら……」

卯月「それだけで、私も嬉しいです」

のあ「……また、よろしく頼むわ」

卯月「は、はいっ!」

笑美「ハイハーイ、じゃあ撮るでー。コレちょっと、みんな寄らな撮られへんわ………自撮り棒じゃ無理やな」

鈴帆「流石はウチの力作たい、臨場感重視の大迫力で、カメラにも収まりきらんけんね! はっはっは!」

のあ「がおー……」

卯月「(可愛い……)」

──────
────
──



308: ◆AL0FHjcNlc 2016/11/28(月) 01:07:04.94 ID:lGwxouOs0


※参考画像
デフォルト
http://i.imgur.com/MVME8Ko.png
差分
http://i.imgur.com/NFnc7rg.jpg




309: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/28(月) 01:08:53.30 ID:lGwxouOs0

──
────
──────
【女子トイレ】


のあ「ふふふっ……!」

のあ「可愛いなぁ、このドラゴンの着ぐるみ……無理言ってちょっと借りてきちゃった♪」

のあ「あぁ、こういう仕事がしたい。着ぐるみダンサーとか、ほのぼのとして癒される仕事が欲しい……コスプレでもいい」

のあ「うわぁ、うわー……いいなぁ、鈴帆ちゃんが羨ましいなぁ」

のあ「……」パシャ

のあ「………………」パシャ

のあ「フフッ。写メ撮っとこ。お母さんに送ってあげよ」

のあ「あと待ち受けにも」パシャ

のあ「ふふふふっ……♪」

のあ「私のような無表情だからこそ似合うとか、親近感が出て小さい子にも好かれそうとか……」

のあ「心地よいことを言ってくれるわ、あの子達。お世辞でも嬉しい」

のあ「アー……ほんとに良いわコレ。あぁ……」

のあ「今度笑美ちゃんに頑張って話しかけて頼んで、あの写メ送ってもらおう」




───ガチャ





蘭子「~~~……♪」スッ








http://i.imgur.com/bvAgpSr.jpg









蘭子「ッッッ!!?」


のあ「あっ」



310: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/11/28(月) 01:10:41.29 ID:lGwxouOs0

蘭子「ヒッ、はッ、はひぇっ……!」ビクビク

のあ「……」

蘭子「し、終焉の残滓を喰らう黒蝕竜……」【訳:た、高峯さん……】

蘭子「な、な、なにゆえに……、ど、道化師の、きょ、虚飾を纏いて………」【訳:なんで、鈴帆ちゃんの衣装を着て……】

のあ「(…………)」



~~~~~~~~~~
鈴帆「そーやね、今はウチの着ぐるみ着とうけん、絶妙に親しみあっけんね。これなら絶対に小さい子にも人気が出るたい!」
~~~~~~~~~~



のあ「(……♪)」ドキドキ

蘭子「フ、ひ、ッヒグッ……、そ、その……っ!」

のあ「………」チラッ

蘭子「ウッ!」









のあ「が……がおー……っ」








蘭子「ヒッ!」ビクゥ!

蘭子「アヒッ……、す、すみま………ぁぅうわあああァァーーーーーっっっ!!」ダッ!


ガチャ! バァン!

タタタタタタタタ……






のあ「………………」





━━━━15分後━━━━
【休憩室】


美優「ぷ、プロデューサーさんっ!」バンッ!

P「ん……?」

P「どうしました、美優さん……そんなに慌てて?」

美優「はぁ、はぁっ……、ら、蘭子ちゃんがっ!」

美優「蘭子ちゃんが応接室の隅っこでうずくまって、素数を延々と数えているんです!」

美優「呼びかけても目も虚ろで反応せず、まるで何かに憑り付かれたかのように……!」

P「!?」

P「す、すぐ行きますッ! 一体何が……!?」バタバタ

──────
────
──



333: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/12/05(月) 23:34:56.23 ID:GG40NbvH0

──
────
──────
【事務所 応接室】


夏樹「おはようございます」

のあ「……ええ」

夏樹「アー、高峯さん」

夏樹「これ。この前のお礼です」

───スッ


のあ「………この袋は、何?」

夏樹「このまえ、やたらデカいプリンくれたの覚えてます? ほら、大仏のイラストの」

夏樹「奈良県の有名なお土産らしいですね」

のあ「……ああ、アレ」

夏樹「結構ウマかったです。ごちそうさまでした」

のあ「……そう」

夏樹「その袋は、そのお礼っす」

のあ「………」

のあ「……私は、貴女から貰ったドリンクのお礼にそのプリンを渡して……」【のあ→夏樹】

のあ「そのお礼として、貴女から次に錠菓を貰った」【のあ←夏樹】

のあ「私は、錠菓の対価を貴女に渡していないけれど」【のあ→夏樹】

夏樹「あぁ。まあミンティアは別に………、その袋が本命ってことで」

のあ「……開けていい?」

夏樹「あぁ、どうぞ」

のあ「……」カサカサ

夏樹「お菓子作りとか、正直ガラじゃないからさ……、まあ市販のヤツだけど」

夏樹「結構有名なトコのらしくて」

のあ「(………)」

のあ「(………………)」プルプル

夏樹「(ふ、震えてる……?)」

のあ「(うれしい……)」

のあ「(夏樹ちゃん……悪い子じゃないんだ。私を2回も殺そうとしたけど、あれは違うんだ……)」

のあ「(そう信じよう)」



334: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/12/05(月) 23:36:17.89 ID:GG40NbvH0


のあ「……夏樹。貴女って」

のあ「………結構、律儀なのね」

夏樹「ハハハ、そうですか? そんなこと、人から初めて言われたな」

のあ「今度、またお礼するわ。必ず」

のあ「……期待して」

夏樹「(アタシもなんでこんな奥手な少女みてーなことしてんのか、よく分かんねー。………けど)」

夏樹「……まあ、LIVEバトルで一緒に盛り上げた仲間ってことで」

夏樹「序盤のハードな演出は流石に度肝を抜かれたけど、高峯さんの歌、カッコ良かったです」

のあ「……ありがとう」

夏樹「ハイ、本当に」

夏樹「高峯さん、よければ連絡先とか教えて頂ければと思って」

夏樹「今度、一緒にメシとか行きましょうよ」









【アドレス帳 事務所内】

『片桐早苗』
『木場真奈美』
『木村夏樹』←new!☆
『小松伊吹』
『佐城雪美』
『白坂小梅』
『青木明(トレーナー)』
『P(プロデューサー)』
『松永涼』
『三船美優』








───ガシッ!


夏樹「(ぉッ……!?)」ビクッ!

のあ「ぁ……ぁぁっ………」プルプル

のあ「10人……10人目……、二桁突入……大願成就……」プルプル

夏樹「(!?)」

のあ「い、行こう……ご飯……一緒に……ご飯……」カタカタ

のあ「お、奢る……私、奢る……貴女に、奢る……」カタカタ

夏樹「えっ!? あ、ぇ、あ、あぁ………ハイ……」

のあ「友達っ……友達……」プルプル

のあ「夏樹……友達……、私達……友達……」プルプル

のあ「フレンド………、夏樹ちゃん、マイフレンド……」プルプル

のあ「……」グスッ

夏樹「(な、涙っ!?)」

夏樹「(こ、この人は一体……)」


──────
────
──



335: ☆1/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/12/05(月) 23:37:26.85 ID:GG40NbvH0

──
────
──────
━━━━夕方━━━━
【岡崎家】


のあ「……楓は?」

泰葉「楓さんですか?」

泰葉「今日は、居酒屋で夕飯を済ますと連絡がありましたよ。メールで」

のあ「……今日のご飯は?」

泰葉「銀鱈のみりん漬けと、揚げ出し豆腐です」

のあ「……へえ」

泰葉「別に口を挟むことじゃないですけど……、前に私から、お二人に料理の腕前について尋ねたことがあったじゃないですか」

のあ「……楓は、からっきしと言っていたわね」

泰葉「なので、コンビニ弁当か居酒屋で一品を頼むとも言っていました」

泰葉「……御節介かもしれませんが、作った方がコスパが良いと思うんです」

泰葉「コンビニ弁当なんて、添加物だらけで体に悪いですし」

のあ「……」

のあ「一人居酒屋」

のあ「……私も、してみたい」

泰葉「えっ? なんですか?」

のあ「……楓は」

のあ「楓は、私と同じ人間だと思っていた」

のあ「でも……、楓は事務所に飲み友達が多くいるし」

のあ「……以前、年下の女の子にポーズの取り方を教えたとも言っていた」

のあ「余所では、事務所のLINEで集計したランキングの『お姉さんにしたい人部門』の頂点に輝いている」

のあ「おまけに、一人居酒屋なんて………リア充の極み」

のあ「それに比べて、私はまだ10人しかアドレス聞けていないし、蘭子ちゃんには怖がられるし、ラスボスとかロボットとか噂されるし、一人で吉野家にしか行けない……」ボソボソボソ

泰葉「えっ、えっ、えっ……?」

のあ「私と楓は……」

のあ「いつから道を違えてしまったの……?」

泰葉「(アレッ、いつのまにか話がどんどんあさっての方向に)」



336: ☆2/2 ◆AL0FHjcNlc 2016/12/05(月) 23:38:15.17 ID:GG40NbvH0


━━━━夜━━━━
【居酒屋】


泰葉「(いや、だからって……)」

のあ「(…………)」コソコソ

泰葉「(楓さんのいきつけの居酒屋に、わざわざ変装までして張り込まなくてもいいじゃないですか)」

のあ「(問題ないわ。泰葉には18禁のシールを張ったから)」

泰葉「(だから何なんですかこのシール? 確かに未成年の立場ですけど、なんか、その………ニュアンスが違いませんか?)」

のあ「ス、すみません。カシスオレンジひとつ……」モゴモゴ



───カチャッ


楓「ス、すみませーん…」





泰葉「(アッ!!)」

泰葉「(高峯さん高峯さんっ! 楓さんが来ましたよ!)」

のあ「(……!)」

のあ「(楓さん……、やっぱり一人で来れるんだ)」

のあ「(すごいなぁ。羨ま───)」




楓「ア、あの~……ス、スミマセ~…ン……」




泰葉「(あれ……)」

泰葉「(店員さん居ませんね。楓さんに気付いてないのかな?)」

のあ「(居酒屋なのに、ホールスタッフが不在なんて珍しい……)」

のあ「(…………)」



楓「……」ポツーン

楓「ア、あのぅ………」








楓「ス、スミマセン……ま、間違えまシタ……エ、エヘヘ……」スッ


───カチャッ








泰葉「(帰った……)」

のあ「(楓さん……)」

──────
────
──



337: ☆1/4 ◆AL0FHjcNlc 2016/12/05(月) 23:38:49.59 ID:GG40NbvH0

──
────
──────
【事務所 応接室】


夏樹「壁ドン?」

のあ「ええ」

のあ「(泰葉ちゃんが時子ちゃんに)最近されて、頭を抱えていたわ」

夏樹「へえ……、(高峯さんが知らない)隣人から壁ドンね」

夏樹「変態とか、不審者とかじゃないんすか?」

のあ「……紙一重で」

夏樹「アパート変えたほうが良いっすよ。後々悪化するかも知れないし」

のあ「いいえ、そこまで深刻な様相を呈している程ではないの」

夏樹「いや、でもさ……」

夏樹「アタシも、伊吹とかだりーにふざけてせがまれて、やったことあるけど……」

夏樹「見ず知らずの隣人にされたら、流石に事務所に報告してもいいレベルなんじゃねーかな」

のあ「!?」

のあ「ジ、事務所に報告するレベル……!?」

のあ「……というより」

夏樹「えっ?」

のあ「夏樹が、せがまれて……???」

夏樹「ああ、うん。壁ドンだろ?」

夏樹「事務所のLINEで勝手にさ? 色々なランキングが集計されてたのって知ってますか?」

夏樹「女子力部門とか、流行センシティブ部門とか、夫を甘やかしそうな人部門とか」

のあ「あぁ……。お姉さんにしたい人部門とか、ラスボスっぽい人部門とか」

夏樹「その中に『壁ドンされたい人部門』ってのがあって……」

夏樹「ハハハ……。1位だったんだよな、何故かアタシ」

のあ「(……?? ……っ???)」

のあ「(壁ドン、されたい?? い、意味が分からない……)」

のあ「壁ドンとは……世間一般ではされたい行動の位置づけなのかしら」

夏樹「いや、アタシもよく分からないですよ。一部の女子には流行ってるらしいですが」

のあ「!? は、流行ってる!?」

のあ「(そ、そうなんだ。泰葉ちゃんにも教えてあげないと……)」

のあ「(ひょっとして時子ちゃんは、悪意はないのかもしれない)」

のあ「……でも、不快は感じない?」

夏樹「される方は嬉しいみたいですけどね」

のあ「う、嬉しい……???」

夏樹「相手が特にツラがイケてる男だと」

のあ「力のあまり、壁を壊されたりは……」

夏樹「流石に加減はしますよ」



338: ☆2/4 ◆AL0FHjcNlc 2016/12/05(月) 23:40:38.46 ID:GG40NbvH0


のあ「……じゃあ」

のあ「一度、ここでやって見せて」

夏樹「えっ? エー……」

のあ「……悪かったわ」

夏樹「あ、いや良いですよ。一回だけなら」

夏樹「ガラじゃないんだよなぁ、ホント。気取ったキザっぽい台詞なんてパっと出てこないしさ」

夏樹「ンンっ! ……じゃあ、敬称は略で行きますよ。心の準備が出来たら言ってください」

のあ「いつでもいいわ」

夏樹「…………すぅっ」

のあ「? 待って」

夏樹「はい?」

のあ「……えっ」

のあ「どちらかが、隣の部屋に移動しなくていいのかしら」

夏樹「……えっ」

夏樹「いや、移動しなくても出来るってか……、むしろ二人とも同じ部屋でしか出来ないっすよ」

のあ「???」




壁ドンッ!!




のあ「(ヒッ!!)」

夏樹「(……)」



夏樹『───俺、お前以外の女に興味ないから』

のあ「!?」

夏樹『───いい加減さ、お前が好きなの、気付けよな』

のあ「」



夏樹「(…………)」

のあ「…」

夏樹「…………ぷっ!!」

夏樹「ふははっ! ハーっ、あー……くさい、恥ずかし。罰ゲームでやらされて以来だ」

夏樹「いや、高峯さんも真顔だかあああででででででででででっ!!!??」ガタガタガタ!

李衣菜「コラァーーーーーーーッ!!!」ギュウゥゥゥ!!

李衣菜「コラァァァーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!」ギュウゥゥゥ!!

夏樹「いててててててて、痛い痛い痛いって!! 背中つねるなって!!!」

夏樹「いきなりなんだ!? どっから湧いて出ただりー!?」

のあ「……」



339: ☆3/4 ◆AL0FHjcNlc 2016/12/05(月) 23:41:35.85 ID:GG40NbvH0


李衣菜「高峯さんを馬鹿にするなぁなつきちぃ!! ナチュラルに男役を演じちゃってさ~~~!!」

李衣菜「美波さんを呼ぶぞっ!? いいの!?」

夏樹「な、何がだよ! アタシは高峯さんに頼まれたから───」

李衣菜「高峯さんはなつきちを試したに過ぎないんだよォ! ホラ、高峯さんやっちまってくださいよ! やっちまってくださいよ!!」

李衣菜「見せてやってくださいよ高峯さん! 貴女の、その世界を制する壁ドンを!!!」

夏樹「(こ、コイツ……)」

李衣菜「へ~ん? ロックの権化である高峯さんに壁ドンされたら、きっともうなつきちなんてイチコロだよ?」

李衣菜「ロックの帝王である高峯さんのカベドンを恐れるホワイトハウスは、常にアメリカ全土に厳戒態勢を敷いているんだよ!?」

夏樹「テポドンみたいに言うなよ」

李衣菜「一説によると、高峯さんが壁ドンをしたらどんな女性も心身共にジェンガの如く陥落してしまうから……」

李衣菜「それを哀れに思った高峯さんは、常に自分が壁側を歩くように細心の注意を払っているんだっ!!」

李衣菜「その気になればなつきちなんて…………、ッ、ごめん、鼻血出てきた」

夏樹「お、落ち着けって」

李衣菜「さあっ! 見せてやって下さいよっ!」

李衣菜「最っ高にクールでシビレる、高峯さんの壁ドンを!!」

のあ「……」




ドンッ




のあ「……」

李衣菜「えっ……?」

夏樹「?」

のあ「……えっ」

李衣菜「ぁ……、あ、あぁっ……」プルプル

李衣菜「ぁっ…………か、壁に、パンチを………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」グスッ

李衣菜「……グスンッ……」

李衣菜「い、言わんこっちゃないよ゙ぉ……、た、だがみ゙ね゙さんが、お、怒ったぁ……」

李衣菜「……な、なつきち、ど、どうじよ~……っ」ポロポロ

李衣菜「…ヒグッ…、や、やばいよぉ…………、地球が、ノッキングされてるよぉ……っ」ガクン

李衣菜「だ……、第三次世界大戦勃発だぁ゙ぁ゙…………」グスン

夏樹「た、高峯さん……?」

のあ「(????)」



340: ☆4/4 ◆AL0FHjcNlc 2016/12/05(月) 23:43:12.53 ID:GG40NbvH0


━━━━夜━━━━
【岡崎家】


のあ「泰葉」

のあ「ちょっと壁に背を付けて立って頂戴」

泰葉「はい、こうですか?」ピタッ

のあ「(…………)」



壁ドンッ!!



泰葉「わっ!!」ビクッ

のあ「フフフ……」

のあ『───ハイって言わないと、チューするわよ』

泰葉「ハ?」

泰葉「えっ、何ですか? 今の台詞、どこかで聞き覚えがありますけど……」

のあ「……これを世間一般では、壁ドンと呼んでいるらしいわ」

泰葉「あぁ、壁ドンですか? みたいですね」

泰葉「語源はネットスラングで、“アパートなどの集合住宅で、隣室の間の壁を叩いて、隣人への抗議や嫌がらせをする行為”を指す言葉みたいだったんですが……」

泰葉「“男性が女性を壁際まで追い込んで、「ドン」と腕を突いて腕と壁でその人を囲む行為”の意味合いの方が、今では世間に浸透しているらしいですね」

泰葉「特に恋愛系の少女漫画やアニメ・ドラマなどで見られるシチュエーションのひとつで、想い人に詰め寄るやや強引な手法として、女子中高生にウケたらしくて、一時期はメディアでも頻繁に取り上げられましたね」

のあ「……」

泰葉「な、何ですか? その訝しげな眼は……」

のあ「詳しいわね」

泰葉「いや、べつに───」






ドンッ!!!!






のあ&泰葉「ヒッ!!!」

のあ&泰葉「(……!!)」

泰葉「(た、高峯さんの馬鹿ぁ!! そういえばナチュラルに時子さんの部屋に壁ドンしちゃってましたよ私達!!)」

のあ「(こ、これは………後者の意味合い?)」

泰葉「(前者に決まってるじゃないですか!! 明確な殺意と交戦の意思を持って殴ってきますよきっと!!!)」

泰葉「(まずいですよ……、LINEで謝ったほうが良いんじゃないですか?)」

のあ「(スタンプで、謝っておくわ)」

泰葉「(わ、私が謝っておくのでいいです。高峯さんはとりあえず何もしないで下さい)」

泰葉「(ハァ……もう、心臓に悪いよぉ……)」

のあ「(損な役回りね)」

泰葉「(誰のせいですか!!)」


──────
────
──



341: ◆AL0FHjcNlc 2016/12/05(月) 23:44:03.60 ID:GG40NbvH0


【おまけ】


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【★壁ドンされたい人部門★】

☆1位:木村夏樹ちゃん
 ・歯の浮くような台詞が良い意味で最高に似合いそう
 ・人目もはばからず大胆にがっついてきそう
 ・既に李衣菜ちゃんにしてそう

☆2位:東郷あいさん
 ・じわじわと迫ってきそう
 ・全部見透かしてそうなくらい余裕な態度で淡々と
 ・そのあと冗談っぽくお茶を濁すけど密かに本気な想い

☆3位:高峯のあさん
 ・ジョン・コナーの所在を問われそう
 ・「おはよう」と実は些細な挨拶
 ・どないしたら迫ってくれはるか、妙案を募集します
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高峯のあ「牛丼並……4つでいいかしら?」【後編】に続く




元スレ
SS速報VIP:高峯のあ「牛丼並……4つでいいかしら?」
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