※「アイドルマスター シンデレラガールズ」のSS

※キャラ崩壊あり、人によっては不快感を感じる描写もあるかも

※決して変態的なプレイを……うん、健全な純愛物を目指してます

以上の事が駄目な方はブラウザバック奨励


タイトルあんまり関係無いかも





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2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/14(火) 06:33:37.72 ID:q99gSoWJ0
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/14(火) 06:35:26.95 ID:q99gSoWJ0

4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/14(火) 06:43:07.65 ID:q99gSoWJ0

「まゆ……」


「プロデューサーさん……んっ」


都内にある高級ホテルの一室。


その室内で一組の男女が互いに互いを見つめ合う。


男は普段着慣れているスーツでは無く、きちっとした燕尾服を着用している。


それに対して女はこの部屋にいても遜色の無い、紅色のドレスを身に纏っている。


そして男が女の体を抱き寄せると、その唇にキスをした。


そっと触れるだけの優しいキス。数秒もすれば男は女から唇を離してしまう。






5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/14(火) 06:43:48.60 ID:q99gSoWJ0

しかし、これは挨拶代わりの様なものである。


この後に二人がする事を考えれば、これは序の口と言えるだろう。


「うふふっ、まゆは嬉しいです。こうして、プロデューサーさんにキスして貰えるだなんて……」


女……まゆと呼ばれた少女はそう言うと、自分の指で先程キスされた自分の唇に触れて、恍惚な笑みを浮かべる。


まだそこに残る僅かな温もりに触れ、ご満悦だといった所であった。


「でも、それよりも嬉しいのが……今日という日に、まゆを選んでここに連れて来てくれた事です」


まゆはそう言ってから、男……プロデューサーのPの傍から離れると、室内の窓側の方にへと向かっていく。






6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/14(火) 06:44:16.00 ID:q99gSoWJ0

近づく程に広がっていく窓の外の光景。


それはまさに、絶景と言ってもいい光景であった。


ホテルの最上階に近いこの一室から見下ろせる景色。


ネオンに照らされた都内の街並みは、幻想的とも思えてしまう。


「ここの部屋……まゆの為に、予約してくれてたんですよね?」


まゆがそう問い掛けると、Pは黙ったまま首肯して答えた。


「こんな立派な部屋……きっと高かったんじゃ……」


「そんな事は無いさ」


Pはまゆの言葉を否定すると、窓際にて佇むまゆに近づく。


そしてまゆの右肩にそっと手を乗せると、


「まゆが喜んでくれるのなら、安いものさ」


と、歯を見せる様にPはニカッと笑い、そう言うのだった。






7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/14(火) 06:46:06.48 ID:q99gSoWJ0

「……ねぇ、プロデューサーさん」


「ん? どうしたんだ、まゆ」


「まゆ……あの言葉、聞きたいな」


「あの、言葉……?」


Pはそう言われてピンとこなかったからか、首を傾げてまゆに聞き返した。


「ほら、あれですよ、あれ。こういう所での、定番の言葉です♪」


「……あぁ、あれか」


そしてPは思い当たったのか、手を打ってそう言った。


それから服装を正すと、まゆに再び視線を送り、






8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/14(火) 06:46:34.82 ID:q99gSoWJ0

「ごほんっ。あぁ、えーっと……ほら、まゆ。見てご覧。綺麗な夜景だろ?」


と、ぎこちない感じに告げるのだった。


「はい、そうですね。美しい景色です」


Pのわざとらしい言葉に、まゆはそれに続く様にそう言った。


「けど、さ。それよりも……」


「あっ……」


Pはそう言った後、まゆに向けて手を伸ばすと、その顎の先を右手で触れる。


その行為にまゆは特に嫌がる事無く、それを受け入れ、そして……


「まゆの方が、ずっと綺麗で美しいよ」


「プロデューサーさん……」


こういったシーンで定番とも言える様な言葉を吐くのであった。


照れや恥ずかしさからか、顔を紅潮させるP。


対して嬉しさのあまりに涙を目元に浮かべるまゆ。


それぞれが違った反応をして見せたのだった。






9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/14(火) 06:47:01.27 ID:q99gSoWJ0

「やっぱり、こう……恥ずかしいな、この台詞」


「うふふっ、そうですかぁ? まゆはぁ……とぉっても、嬉しいですよ♪」


「そ、そうか?」


「はい♪」


「……なら、良かった」


まゆの満面の笑みを見て、Pは自分のした事が無駄では無かったと分かり、達成感が身を包む。


そして一安心とばかりにホッと一息吐いた。


「それで、その……プロデューサー、さん……?」


「何だ? 今度はどうしたんだ?」


「えっと、あの……これからの、事なんですけど……」


これからの事と言われて、Pはハッとしてまゆを見る。


まゆが何に対してそれを言っているのか、Pも分からない訳では無い。






10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/14(火) 06:48:43.81 ID:q99gSoWJ0

それが今後のアイドル活動の事について言っている訳では無い事も、当然分かっている。


まゆは今から……自分達がする事について、聞いているのだった。


「そ、そうだな……」


Pは歯切れの悪い感じにそう言った。


こんな場所に連れてきているのだから、下心が無い事なんて無い。


この部屋に連れてくる前に、下の階で食事を取った。


高級ホテルらしい、普段は口にしない様なディナーに散々と舌鼓を打った。


けど、それが目的で無い事は知れていた。


全てはそう、この後の為の前菜でしか無いのだ。


「その……まゆは、いいですよ?」






11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/14(火) 06:49:09.37 ID:q99gSoWJ0

「……えっ?」


Pが言いあぐねていると、まゆはそれよりも先に、Pを制してそう言った。


「今日、ここに呼ばれた時から……実は分かってました。プロデューサーさんがそういう事をしたいんだって……」


「ま、まゆ……」


「だから……今日は、今日だけは獣になっても、いいんですよ?」


まゆは震えながらも、Pの背中を押す様に、そう言うのだった。


そして受け入れても大丈夫だとばかりに、笑顔をその顔に浮かべた。


「い、いいのか……?」


「はい。プロデューサーさんの……好きに、して下さい」


「……まゆっ!!」


「きゃっ!!」


Pは目の前にいるまゆを力強く抱きしめる。


それからドレスの肩紐に手を掛けると、するりとそれを肩からずり落とす。


そして……






12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/14(火) 06:50:15.78 ID:q99gSoWJ0

………………


…………


……


「はい、却下」


「そ、そんなぁ……」


事務所の事務室で仕事中のPは、目の前で自らの妄想をぶちまける少女……担当アイドルのまゆに対し、冷たくそう言った。


「せっかくの特別な日なんですから、そういう事をしても良いと思いますけど……」


「それは越権行為だから、許しません」


Pは腕を使って×サインを作ると、諦めようとしないまゆに淡々と告げた。


「もう、プロデューサーさんのいけず……」


「いけず、じゃない。駄目なものは駄目だ」






13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/14(火) 06:50:50.12 ID:q99gSoWJ0

「でも……まゆちゃんの言う事も、分からなくは無いかな」


と、Pがまゆと話していると、隣から割って入る様にそう言って現れる人影が一つ。


「智絵里、お前もか……」


もう一人の担当アイドルでもある緒方智絵里。


彼女がPの為に淹れてきたお茶を携えて、直ぐ隣に立っていた。


「あっ、これ……どうぞ」


「お、おぉ、すまんな」


智絵里はそう言ってから、手に持つお茶の入った湯呑をPの机に置いた。


それにPはお礼を言ってから、早速とばかりに口をつける。


一口だけ飲むと、熱過ぎずもぬるくも無く、絶妙な温度加減のお茶がPの喉を潤していった。






14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/14(火) 06:55:18.27 ID:q99gSoWJ0

「うん、美味い。ありがとうな、智絵里」


「あっ、はい。口に合って、良かったです」


Pが満足してそう言うと、智絵里は嬉しくなってにっこりと笑みを浮かべる。


「それで……何が分からなくは無いんだ、智絵里。というか……いつから聞いてたんだ?」


「途中ぐらいからですね。それで、えっと……分かるっていうのは、やっぱり……特別な日ですから、そう思うのも無理は無いって事です」


「うふふっ、流石は智絵里ちゃん。そう言ってくれて、助かります」


「だからって、あれは駄目だぞ」


「……でもぉ……まゆ、知ってるんですよぉ? プロデューサーさんと智絵里ちゃんが……バレンタインで似た様な事をしたのを」






15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/14(火) 06:55:47.29 ID:q99gSoWJ0

まゆにそう指摘されて、Pは口を噤んだ。


その事を指摘されてしまえば、Pは何も言い返せなかった。


「な、何で、まゆがそれを……」


「あれ? プロデューサーさん、知らなかったんですか?」


意外だとそう問い掛けるのはまゆ……では無く、智絵里だった。


私は知ってましたよ、という表情でPを見つめている。


「智絵里は……知ってたのか?」


「もちろんです。だって、まゆちゃん……プロデューサーさんの携帯に、盗聴器を仕掛けてますから。あの時の会話は全部、筒抜けでしたよ?」


智絵里はクスクスと笑い、光が消え失せた暗い瞳でまゆを見る。


「そうだよね、まゆちゃん?」


そしてまゆに同意を求める様に、そう言った。






16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/14(火) 06:56:13.55 ID:q99gSoWJ0

「……やっぱり、バレてましたか。うふふっ」


それに対してまゆは反省する訳でも無く、悪びれもせずにそう答えた。


「智絵里ちゃんが言った通り……あの時の会話は全部聞いてました。ずっと嫉妬しながら……ね」


「マジか……」


Pはそう言われて頭を抱える。


まさか自分の知らない内に、盗聴器なんてもの仕掛けられているとは思ってもみなかった。


ただ、それよりも……智絵里がその事に気づいていた事の方がPには驚くべき事だったが。


「だからぁ……まゆにも同じ様な事を、して欲しいなぁ……」


まゆはPに詰め寄ると、更に追い込む様にそう言った。


智絵里と同様の光の無い瞳は、Pの姿を捉えて離そうとしない。






17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/14(火) 06:56:41.94 ID:q99gSoWJ0

「あっ、でも駄目だよ、まゆちゃん」


しかし、それを咎めるかの如く、まゆを制する様に智絵里はそう言うのだった。


「智絵里ちゃん……? 何が、駄目なんですかぁ? 自分だけが得する様な事をして、まゆには駄目って言う……これって……おかしくないですかぁ……?」


「ううん、おかしく無いよ。だって……まゆちゃんの要求は、根本的に間違ってるから」


「間違って、る……? 智絵里ちゃん……何が間違ってるんですかぁ……?」


憎悪と嫉妬の籠った視線を、まゆは智絵里にへと向ける。


普通なら恐怖か委縮、または怯えるかしてもおかしくは無い程の気迫。


けど、智絵里はそんなプレッシャーなんてそよ風の様にしか感じてなかった。


だから、堂々とした立ち振る舞いで、まゆの視線から逃げようとせずに、智絵里は立ち向かう。


「前にまゆちゃんも、プロデューサーさんとキス……したよね?」


そして智絵里は怪訝そうに、まゆに向けてそう問い掛けるのであった。






18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/14(火) 06:57:30.34 ID:q99gSoWJ0

「えっ……は?」


予測した回答とは別の回答が返ってきた事で、拍子抜けしたまゆはポカンとした表情で智絵里を見つめる。


「いや、まぁ……そうだな」


Pは以前の事を思い返しつつ、頷きながらそう言った。


「私ね……ずっとまゆちゃんの事、羨ましく思ってたの。私はキスしてないのに、まゆちゃんはプロデューサーさんとしてたから……」


「は、はぁ……」


「だから、ね。これで私とまゆちゃんはイーブンって事。まゆちゃんがプロデューサーさんに求めるのは十分に越権行為になるって事なの」


智絵里の説明に、まゆは気が抜けた様にキョトンとして聞いていた。


自分がキスしたいが為に、あそこまでするのは十分に越権では無いのかとも思った。


「それに……バレンタインのお返しなんだから、最終的にはプロデューサーさんが決めないといけないんだから。私達が求め過ぎるのは、良くないと思うよ」


智絵里はそう言った後、視線をまゆから外し、Pにへと向ける。






19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/14(火) 06:57:56.07 ID:q99gSoWJ0

それからにっこりと満面の笑みを浮かべて、


「……ですよね?」


と、短くだがそう尋ねた。


「お、おう、そうだな」


それを受けて、Pはここぞとばかりに頷く。


まゆと一線を越えてしまうルートを回避できるなら、幾らでも頷こうという心境だった。


「はぁ……分かりましたぁ。そこまで言うのなら……まゆ、待ってます」


「私もお返し……楽しみに、してますからね。ははっ」


こうして何とか最悪のルートを回避出来たP。


しかし、次に待つのは『期待している二人に何を送るか』という更なる難題。


それに何とか応えてみせようと、Pはもっと頭を悩ますのであった。






21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/15(水) 06:07:36.05 ID:+h6VBbXq0

「しかし……どうしたものかな」


まゆと智絵里が帰った後、Pは一人、事務室で頭を悩ませていた。


何に対して頭を悩ませているか……それはもちろん、ホワイトデーのお返しの事である。


「ここは無難に……クッキーとかお菓子を……」


そう考えた所で、Pは頭を左右に振り、今出て来た考えを打ち消す。


そんなありきたりなものでは、二人の期待には応えられないからだ。


「なら、手作りとか……いや、二人共そんなものは求めていないだろうな」


想いの籠った手作り品。そんなもので済むのなら、ここまでは悩んではいない。


智絵里もまゆも……それ以上のものをPから貰ったり、時には奪い、採取しているからこそ、有力とも言えるものが全て、見劣りしてしまっている。


「旅行とか……どうだ? ……あぁ、駄目だ。この間の収録が確か、旅番組の収録だったから、被ってしまう」


次々と案は思い浮かぶものの、その度に否定する理由が浮かんでしまって、決まろうとしない。


最早、案なんて出尽くしてしまった……と、Pは頭を抱える。


と、その時である。






22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/15(水) 06:08:13.20 ID:+h6VBbXq0

「おっす、Pちゃーん。何を悩んでるんだYO!!」


Pの背後に突然湧いて出て来たかの様に現れて、声を掛ける男が一人。


しかもそう言った後、男はPの背中に思いっきり張り手をかました。


「痛っ!? って、誰だ……!!」


理不尽なまでの一撃に、憤慨したPは勢い良く振り返り、その犯人の顔を確認しようとする。


「よう。元気にしてるかー?」


「あっ、Aさんでしたか……」


振り向いた先に立っていたのは、事務所の先輩プロデューサーであるAだった。


その顔を見たPは込み上げていた怒りをサッと鎮める。


Aの行いは理不尽な事には違いなかったが、それで先輩に対して手を挙げる訳にはいかなかった。


「それで、何かあったのか? 何やら悩んでいるみたいだったが……何か失敗でもしたか?」


けらけらと笑いながら、AはPに問い掛ける。


その表情から察するに、もし本当に失敗したのだったら笑い飛ばしてやろうという魂胆なのだろう。


と、PはAが声を掛けた理由についてそう予測する。


そしてその推測は的外れでは無く、本当に揶揄う為だけにAはやって来ているのだった。






23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/15(水) 06:09:01.49 ID:+h6VBbXq0

「まぁ……色々とあるんですよ」


「何だ何だ。有能なPちゃんが色々とは……もしかして、これか?」


そう言ってから、AはPに向けて小指を立てる。


厳密に言えば違う……が、あながち間違ってはいない推測であった。


的を射た様な答えに、Pはその口を噤んでしまう。


「おうおう、図星か? 図星なんだな。という事は……さては、悩んでいるのはホワイトデーに関してだな」


「えぇ、まぁ……そんな感じです」


これ以上は隠し立ては出来ないだろうと悟ったPは、Aに肯定する様にそう言った。


それから『こうなったらいっその事、この人にでも相談してしまおう』


と、考えたPはAに向けてそれを口にする。


「ホワイトデーに何を返そうか……それが決まらなくて、迷ってるんですよ」


「そんなに迷うものか? そんなの、あれだろ。気持ちさえ籠ってれば、何だっていいんだよ」


「そんなに単純なものですかねぇ……」


そう言ってPはAの言葉を否定する。


そうであれば、ここまでは悩んでいないのだと、言ってやりたい心境にもなる。


しかし、先輩相手に強気にはなれず、それは心の奥底に仕舞っておいた。


「ちなみに……Aさんはホワイトデーのお返しとか、どんなものにしますか?」


「ん? 俺か? 俺はもう買ってあるからな……」


その返答に、Pは心底意外だと思った。


まだ本番当日まで猶予があるというのに、目の前の男はもう既に用意してあるというのだ。


日頃、面倒くさそうにしている割には、こういった事に関しては用意周到なのだろうか。


と、Pは心中でAに覚られない様にそう思うのだった。






24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/15(水) 06:10:04.64 ID:+h6VBbXq0

「それで、何を買われたんですか?」


「ほとんどが義理だったし、彼女もいないからなぁ……大したもんじゃないぞ」


「へぇ……例えば?」


「そうだな……Pちゃんは俺の担当アイドルの事は、知ってるだろ?」


「あぁ、はい。もちろん、うちに所属しているアイドルですから、知らない訳がありません」


Aが担当しているアイドルは全部で三人いる。


一人目はAがずっと前から担当している橘ありす。


二人目は最近になって担当する事になった結城晴。


そして三人目は晴と同じ時期に担当する事になった櫻井桃華。


全員がまだ中学生にも満たない、幼い小学生。


その三人をこのAは一人で全員を担当しているのである。


「前々から思ってたんですが……Aさんって、ロリコンなんですか?」


「ちげーよ。別に好んでスカウトしてる訳じゃないぞ」


Pからの追及にAはじとっと睨んでそう答えた。


「晴と桃華は社長から頼まれて受け持っているだけだしな」


「じゃあ、ありすちゃんは?」


「ありすは……あいつがオーディションを受けに来た時に、そのオーディション担当が俺だったから、その縁が続いているだけだぞ」


「はぁ……そうだったんですか」






25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/15(水) 06:11:06.71 ID:+h6VBbXq0

「それで、話を戻すが……まぁ、担当の三人から一つずつチョコを貰ったから、全員分一つずつしっかりと返す様に買ってあって……」


Aはそう言うと、携帯を取り出して何やら操作し出す。


「ちょっと待っててくれよ……」


手馴れた手付きで携帯を操作し、目的のものを探していく。


「おっ、あったあった。これだ、これ」


そうして見つけた画像を、AはPにへと見せる。


「まず、これが……晴へのお返しだな」


「これって……靴? レッスン用ですか?」


携帯に映っている画像には、小さめのサイズの靴が映っていた。


水色とかを基調とした、爽やかな色合いとデザインが特徴だった。


「サッカー用のグラウンドシューズだな。最近、サイズが合わなくなってきたとか言ってたしな。だから、これにした」


「……いきなり大したものが出てきたんですが」


「そうか? まぁ、次に行くぞ」


そう宣言してから、Aは携帯をまた操作して、次の画像を映し出す。


今度出てきた画像には、如何にも高級そうな感じがするティーカップが映っている。


「これは……桃華ちゃんへのお返しですね」


「そうだな。最初は紅茶にしようかと思ったけど、こっちの方が実用的だと思ってな」


確かに……と、Pは思って頷いた。


紅茶を送ったとしても、ありきたりな茶葉であれば送る意味なんて無い。


それ以上のものを、櫻井家では取り揃えているだろう。


だったら、ティーカップを送った方がまだ、実用的且つ有用的であるといえよう。


「けど、これって……見るからに高そうですけど……お幾らなんですか?」


「忘れた。というか、そんなんどうだっていいだろ。貰って喜んでくれれば、それで」


「何というか……大胆というか、大雑把ともいうか……」


「いいだろ、別に。ほら、次に行くぞ」






26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/15(水) 06:12:03.72 ID:+h6VBbXq0

そうして画像を仕舞い、次の画像をAは表示する。


残る担当アイドルは橘ありすただ一人。


Aは彼女に何を送るのか……Pは興味津々だといった感じに、携帯の画面を見つめる。


そして……


「で、これが……ありす用のお返しの品だな」


そう言ってから画面に映し出される品物が映った画像。


そこには真ん中にポツンと、巨大な赤色の塊が鎮座して置いてあった。


「……何ですか、これ」


「……見て分からないか?」


分からないからこそ聞いているのだから、Pはこくりと首肯して答える。


それにAは『何でかなぁ……』と苦々しい表情で呟くと画像を指差して、


「イチゴだよ、イチゴ。イチゴの形をした抱き枕だ」


と、声高にそう言うのであった。


あぁ、そういえば……と、Pは言われてようやくそれがイチゴなのだと気づいた。


それによくよく見てみれば、緑色の何かが登頂部にあり、それがヘタなのである。


それを把握さえ出来れば、後はもう、イチゴにしか見えなかった。


「ありすちゃん……イチゴが好きなんですか?」


「好きだよ。自分でアレンジ料理を考えて作る程、好きだ」


「へぇ……何だか美味しそうですね」


そう言うPの脳裏には、イチゴを用いたスイーツの数々が思い浮かんでは消えていく。


味覚常識人であるPの思考の中には、奇抜なイチゴ料理など一切浮かんでこない。


だからこそ、そんな事を口に出来るのであった。


そしてその実態を知っているAは、面影を思い返すだけで表情を青くさせた。


「……知らないって、素敵な事なんだな」


「いきなり、どうしたんですか……」


「いや、こっちの話だ。気にすんな」






27: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/15(水) 06:13:19.47 ID:+h6VBbXq0

「はぁ……けど、Aさん。これのどこが大したものじゃないですか。十分に考えられてるものばかりじゃないですか」


「気のせい、気のせい。ただ適当に欲しそうなものを買っただけだっての」


Pからの指摘に、手をプラプラと振って何でもないとAは反論する。


追求した所で、どうせ同じ答えしか返ってこないだろう……


と、判断したPは引き下がり、聞くのを止めたのだった。


「とりあえず、俺のバレンタインのお返しはそんな感じだな。参考になったか?」


「うーん……微妙、ですね」


「微妙って、お前なぁ……」


「いえ、参考になったのは確かですけど……それじゃあ普通過ぎて、物足りないといいますか……」


「……普通のお返しで物足りないって……お前の彼女、相当だな」


Aの発言にPは「ははは……」と乾いた笑いで返した。


その指摘は間違いではないからこそ、何も言えなかった。


「そうなると……あれだな。他にも聞いて回ったらどうだ? もっと参考になる奴がいるかもしれないしな」


「そうですね……一応、そうしてみますか」


PはAからの提案に頷いて承諾する。


一人の意見よりも、二人、三人と聞いた方が、断然良い。


そう思っての行動であった。






30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/17(金) 05:59:08.90 ID:Gy0YlUfS0

「それじゃ、そうだな……あいつなんか、いいかもな」


そう言ってAは事務室の隅に向けて指を差す。


それから指差した方角にへとPを伴って移動する。


「おーい、S氏。ちょっといいかぁ?」


「あっ、はい。どうかしましたか?」


Aが声を掛けたのはAの後輩であり、Pの同僚でもあるS。


この事務所では鷺沢文香を担当しているプロデューサーである。


AとPとは違い、真面目に仕事中だった彼は手を止めて、書類から二人にへと視線を移した。


「いやな、少し協力して欲しいんだ」


「協力ですか? 僕にできる事であれば、助力は惜しみませんが……」






31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/17(金) 05:59:35.13 ID:Gy0YlUfS0

「S氏はさぁ、バレンタインのお返しを渡す相手っているか?」


「バレンタイン……えぇ、いますけど。それが何か?」


Sの言葉にAは「おし、ビンゴ!」と言ってPの肩を軽く叩いた。


それをやられたPは「何するんですか!」と軽く顔を顰めて、迷惑そうな表情を浮かべる。


そして何が何だか分からないSは首を傾げて二人を見ていた。


「それで……もし、良かったら……お返しをどういうものにしたか、参考までに教えて欲しいんだけど……」


「はぁ……別にそれぐらいでしたら、構いませんが」


PがSにそう頼むと、Sは快く承諾してくれた。


幸先の良い出だしに、Pは心中でグッとガッツポーズを取った。


「で、ちなみにだけど、S氏はバレンタインにチョコは幾つ貰ったんだ?」






32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/17(金) 06:00:01.07 ID:Gy0YlUfS0

「僕ですか? 僕はですね……今年は一つだけでした」


「ひ、一つ!?」


「えぇ……嘘だろ」


Sがそう言うと、PとAは二人して驚きの声を上げる。


この事務所の中でも、Sは割と顔立ちは整っている方である。


優しい性格だからか、事務員の女性からも好感を持たれたりしていて、人気はあった。


それだから、一つしか貰っていないという言葉に、二人は衝撃を受けたのだ。


「いえ、嘘ではありませんよ」


しかし、二人の反応を見てか、Sは何でもないかの様にそう返した。


「いやいや、ちょっと待て。一つは幾ら何でも無いだろ、マジで」


「だから、本当ですよ。僕が貰ったのは、文香さんから貰っただけですから」






33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/17(金) 06:00:26.45 ID:Gy0YlUfS0

「いや、でも……ちひろさんが確か、俺以外のみんなに配ってたと思うけど……それはカウントしてる?」


「ちひろさんが……? そんな物、あったのですか? 僕は初耳なんですが……」


納得がいかないのか、Sはぶつくさと額に手を当てて考え出す。


「そういえば、何でPちゃんはちっひーから貰えなかったんだ?」


「まぁ、これにも色々と……事情があるんです」


Aからの問い掛けにPは曖昧にそう返す。


本当はその理由を知ってはいるが、それを口には出来なかった。


何故なら……担当アイドルの一人がそうならない様に関与していたからだ。


彼女から具体的な詳細を聞かされた時、Pは背筋が凍りつく様な思いだった。


だからこそ、PはAには言えなかった。






34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/17(金) 06:01:08.63 ID:Gy0YlUfS0

「そうですね……きっと、忘れられていたのでしょう。確か、その時期……文香さんと外出する事が多かったですので、渡しそびれてそのまま……といった感じなのでしょうね」


「外出? ロケか何かでか?」


「違いますよ。気分転換も兼ねて散歩に付き添って欲しいとか、相談事があるので話がしたいと言われて喫茶店に行ったりとか……休憩の合間とかの、私事での事です」


Sから説明を受けて、Pは『鷺沢さんって、割と積極的な人なんだな』と、意外そうに思い、感心する。


それに対してAは『あぁ、そういう事か……』と、察した様な表情をして聞いていた。


「……まぁ、それについては分かった。で、S氏は結局……ホワイトデーで何を返すんだ?」


「はい。お返しと言えるかどうかは分かりませんが……文香さんと出掛ける事になっているんです」


「出掛ける……って、どこに? 旅行……それか遊園地とか水族館とか?」


「図書館カフェという所みたいです」


Pからの質問にSはそう答えた。






35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/17(金) 06:01:37.75 ID:Gy0YlUfS0

図書館カフェとは文字通り、図書館とカフェが融合した施設の事である。


基本的には図書館内は飲食禁止の所が多い為、そう考えると珍しい施設だろう。


「実は以前から文香さんにそこに興味があると言われてまして。ですが、一人で行くのはどうも不安みたいなので……この機会に、お返しも兼ねて付き添おうと思っているんですよ」


「それって……ただのデートじゃあ」


「デート? いえ、とんでもない。そんな大層なものではありません」


Pの言葉にSは手を横に振り、否定する。


「そもそも文香さんと僕はそういった関係では無いですから、その範疇には当てはまりませんよ。ただの付き添いですしね」


「……その認識が、いつまで保てるんだろうなぁ」


Sの発言を聞いたAは二人に聞こえない程度の声音で、そう呟いた。


AがSを見る視線は少しばかり、憐みの色に染まっている。


彼にはSの周りに起きている事の全貌が、何となくではあるが見えているからだった。






36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/17(金) 06:02:05.07 ID:Gy0YlUfS0

「さて……僕のお返しについては以上になりますが……果たして、参考になったでしょうか?」


「うーん、そうだなぁ……」


Sにそう聞かれて、Pは考える。


正直に言うと、あまり参考にはならなかったからだ。


相手が興味を持っている所に連れて行く。その発想自体は悪くは無い。


だが、智絵里とまゆ相手であると、その案は所詮、下策でしか無いのだ。


何故なら、二人共……望んでいるのはPからの愛でしかないからだ。


それ以外には特に……


「……あぁ、そうか」


そこまで考えた所で、Pの頭に閃きが舞い降りる。






37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/17(金) 06:03:11.63 ID:Gy0YlUfS0

それは自分で思ってみても、中々の妙案だった。


これでいけばもしかしなくとも、二人はきっと……満足するに違いないだろう。


そう思ってPは成功を確信した表情をしてみせる。


「おっ、何か思いついたのか?」


Pの表情、そして反応を見て、Aはそう聞いてくる。


「はい、良い案が思いつきました」


そう言ってPはしたり顔でAにそう答えた。


「二人共、ご協力ありがとうございました。これで……何とかなりそうです」


「まぁ、良いって事よ」


「お役に立てたのであれば、何よりです」


Pは二人に礼を言うと、早速と行動に出る。


自分の席に戻るとパソコンを立ち上げ、ネットを使ってある物について調べていく。


それを探しながら、『期日までに間に合うのか』『智絵里やまゆに似合いそうな物はどれか』


と考えつつ、情報を漁っていく。


二人の喜ぶ顔が見たいが為にも、Pは事態解決に向けて奮闘していくのであった。






40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/21(火) 09:01:13.44 ID:GsVh+QjU0

後日。


それから日が経って遂にホワイトデーを迎えた。


「……よし、大丈夫だな」


Pは鞄の中身を確認してから、そう言った。


その視線の先……鞄の中には智絵里とまゆ、二人に渡す為のプレゼントが入っている。


ちなみにこの行為をPは先程から数分おきに行っている。


今日、事務所に出勤してから何度目か分からないこの行為。


そうでもしてなくては落ち着かないからだ。


この日の為に、最良のプレゼントをPは用意した。


渡す時のシミュレーションは何度も念入りに行い、万全の状態でもある。


しかし、それでも……不安はあった。






41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/21(火) 09:03:23.20 ID:GsVh+QjU0

これを渡された時に、もしも……万が一に智絵里とまゆが拒否でもしたらと思うと、不安で仕方ないのだ。


「まぁ……何とかなるだろう、きっと」


Pは自分に言い聞かせる様に、そう口にする。


言い聞かせる事で自分を奮い立たせて、本番に臨める様にと、努めるのである。


そしてPは二度、三度と深く深呼吸をして自らを落ち着かせると、意を決して携帯をズボンのポケットから取り出す。


取り出した携帯を使ってメール機能を起動させ、それからアドレス帳を用いて智絵里とまゆのアドレスを探していく。


そうして見つけ出した連絡先に、Pは携帯に文章を打ち込み、それを送信する。


メールの内容はとても簡潔な内容である。


『渡したい物があるから、学校が終わったら事務所近くの喫茶店に来てくれ』


必要以上の情報は書かずに、それだけであった。


しかし、それだけであっても二人には十分である。






42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/21(火) 09:03:50.34 ID:GsVh+QjU0

直ぐにその意味を察してか、一分に満たない時間で二人から返信が返ってくる。


智絵里からは『楽しみです』と短く一文が。


まゆからは『学校が終わり次第、直ぐに向かいます』という内容だった。


「とりあえず、まずは一安心だな」


Pはそう呟いた後、ホッと一息吐いた。


ただお返しのプレゼント渡すだけのイベントだというのに、Pはかなり精神を擦り減らしている。


それだけ智絵里とまゆに気を使っているという事である。


「さて、それじゃあ……時間が来るまでは仕事に集中するとしようか」


Pはそう言って携帯を仕舞い、目の前の仕事に目を向ける。


そしてそれに対して今度こそ、集中して取り掛かっていくのであった。






43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/21(火) 09:04:19.89 ID:GsVh+QjU0

………………


…………


……


数時間後。仕事の切りの良い所でPは腕時計を見て時刻を確認する。


Pはそろそろ二人が学校が終わる頃合だろうと思い、席を立つ。


そして同僚に「ちょっと出掛けてくる」と告げて、プレゼントの入った鞄を持って、事務所から出て行った。


事務所を出てから歩いて数分。


距離にして五百メートルに満たない場所に、Pが言った喫茶店はあった。


Pはそこにへと足を踏み入れると、「いらっしゃいませ」と、笑顔を浮かべながら店員が出迎える。


その店員に案内されて、Pは店の奥の席にへと着いた。


店員は注文を尋ねてくるが、智絵里とまゆが来ていないので、Pは「また後で」と言って断る。


そして店員がPの下から立ち去った後、Pは鞄を開けて再度中身を確認する。


二人に渡す為のプレゼントは忘れておらず、しっかりと中に入っている。問題は何も無かった。


「後は……二人が来るのを待つだけだな」






44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/21(火) 09:04:52.38 ID:GsVh+QjU0

Pはそう言うと、時間が来るまで暇潰しをしようかと、携帯を取り出す。


しかし、数秒後……Pはその手を止め、携帯を元の位置にへと戻した。


それは何故かというと、暇潰しをする必要が無くなったからだ。


携帯を仕舞ったPは、店の出入り口にへと視線を向ける。


視線を向けたのと同時に、扉が開いて中に人が入ってくる。


遠目で見ても分かる、トレードマークと言えるツインテールの髪型の少女。


間違い無く、それは智絵里である。


智絵里は店内に入ると店員の案内を受けずに、店の奥にへと進んでいく。


そして自力でPのいる席まで辿り着くと、


「お、お疲れ様です、プロデューサーさん」


と、言ってPに向かって挨拶をする。






45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/21(火) 09:05:29.72 ID:GsVh+QjU0

「おぉ、智絵里も学校お疲れさん。意外と、早かったな」


「少しでも早く会いたくて、走って来ちゃいました。えへへ……」


Pの言葉に智絵里は笑みを零しながらそう返す。


それから智絵里はPとは逆、反対側の席にへと座る。


本当は隣に座りたいのだが、人目もある事や、まだ来ていないまゆに対しての配慮からか、そこにへと腰を下ろした。


「そうか……でも、まだまゆが来ていないんだ。だから、もう少し……」


「あっ、大丈夫ですよ」


『待っててくれ』と言おうとしたPの言葉を遮って、智絵里はそう言った。


「まゆちゃんなら、もう直ぐ来ます。今、そこの交差点を曲がった所ですから」


そう言いながら、智絵里は携帯を見つめている。


それから「二百メートル、百メートル、五十メートル……」と、小さく呟く。






46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/21(火) 09:06:01.76 ID:GsVh+QjU0

それを見たPは『あぁ、そういう事か』と、理解した。


「そろそろ窓から、まゆちゃんの姿が見えますよ」


智絵里から告げられたPはそれに従い、窓にへと目を向ける。


すると、どうだろうか。


先程の予言通り、窓には少し駆け足気味のまゆの姿が見えた。


智絵里の予言……いや、そう言うのは少し、語弊があるかもしれない。


これは間違いなく、文明の利器……要は発信機のお陰であった。


「全く、いつの間に仕掛けたんだか……」


そうした智絵里による一連の行動を把握しながらも、Pは苦笑しつつそう言った。


事実を知った所で、Pは智絵里に注意はしない。


発信機が同じく、自分にも仕掛けられているのは知っているけれども、外したりはしない。


何故なら『もっとやってくれ』と、ばかり思っているのだからだ。






47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/21(火) 09:06:28.63 ID:GsVh+QjU0

一応、補足しておくと彼はMでは無い。そういった被虐的嗜好でそう思っているのでは無いのだ。


ただ単に、彼はそういう事をしてくる女の子が好きなだけなのである。


だからこそ、Pは智絵里やまゆが自らに対して何をしてこようが、受け入れているのだ。


例え、二人によって監禁されようものでも、Pは喜んで受け入れる。


要するにPは、そう言った歪んだ性癖を持つ男なのであった。


「す、すみません、プロデューサーさん。お待たせしてしまいましたか?」


Pがそんな風に考えている内に、二人の下にまゆがやって来た。


急いできた為か息切れをしていて、まゆは肩で息をしていた。


「いや、そんな事は無いよ。智絵里もさっき来たばかりだし、俺もここに来てからそんなに経って無いからさ」


「そ、そうですか。なら、良かったです」


まゆはそう言うと、智絵里の横の席に腰掛ける。


それから荒れた息を整えて、ようやく落ち着けた様子であった。






48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/21(火) 09:06:55.36 ID:GsVh+QjU0

「さて、それじゃあ全員揃った事だし、何か注文を……」


「待って下さい」


店員を呼ぼうとしてPは手を挙げようとするが、智絵里の一言で手を止めた。


「まずは先に……貰う物を貰っておきたいです」


そして智絵里は無邪気な笑顔を浮かべて、そう言うのであった。


「い、いや……それは注文をしてからでもいいんじゃ……」


「そうですよ、智絵里ちゃん。それはいくらなんでも、せっかち過ぎると思うけど……」


今回ばかりはまゆもPの意見に同意だった。


事務所であればまだしも、ここは外の喫茶店である。


来て注文もせずに居座るのは、失礼というものである。


「……分かりました」


結局、二人から言われた事で、智絵里はあっさりと引き下がった。


しかし、不満はある様である。


不満だとばかりに口を尖らせて、そっぽを向いて態度で表していた。






49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/21(火) 09:07:23.81 ID:GsVh+QjU0

そんな態度を見せられて、Pの心は躍る。


可愛らしい仕草に堪らず、そう思ってしまうのであった。


そして三人は注文を済ませ、それが全て揃った所で、話を進める。


「えっと、それじゃあ……バレンタインのお返しなんだけど……」


「はい」


「えぇ」


そう切り出されると、智絵里とまゆは期待の眼差しでPを見つめる。


体をそわそわとさせて、まるで早くしてと言っている様であった。


「まぁ、色々と相談したり考えた結果……こういった物にしてみたんだ」


そう言ってPは鞄の中から用意していたプレゼントを取り出すと、二人の前に差し出した。


二人同時に差し出されたプレゼント……それは白くて小さい、アクセサリーケースだった。


「これは……?」


「えっと……中を、見ても?」


二人がそれを見ながらPに尋ねると、Pは首を縦に振った。


Pに許可を得た事で、二人はそっとケースを開ける。






50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/21(火) 09:07:49.97 ID:GsVh+QjU0

「えっ……」


「嘘……」


そしてケースの中身を見て、驚嘆の声を上げる。


中に入っていた物……それは指輪であった。


智絵里には四つ葉のクローバーの指輪が。


まゆにはハートの指輪が。


それぞれの特徴に合わせた物が、ケースに入っているのであった。


「その……婚約とか、そういうあれじゃないけど……二人の想いに応えたくて、な」


「い、いいんですか……? こんな物を頂いて……えへへ」


「プロデューサーさん……まゆ、嬉しいです。大切にします」


Pからのプレゼントに感動してか、二人の目元には涙が浮かび上がっている。


それ程にも、喜んでくれたという事であった。


しかし、Pからのプレゼントはそれで終わりではなかった。






51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/21(火) 09:08:36.19 ID:GsVh+QjU0

「それと、後……こんな物も用意してきたんだが……」


そう言って再び、Pは二人に向けて何かを差し出した。


それは銀色をした鍵状の……いや、鍵そのものだった。


「その……俺の家の鍵だから。今後はこれを使って入って欲しいんだ」


差し出された二本の鍵を、二人は唖然といった表情で見ている。


指輪を貰ってからのこのプレゼントは、流石の二人も思いはしなかった。


「二人が何とか侵入してこようと、ピッキングとか努力してくれるのは嬉しいんだ。けど……近所の人の目もあるから……な?」


Pがそう言うと、智絵里とまゆの二人は無言で素早く、それを受け取った。


二人はただただにっこりとした笑顔を浮かべ、ご満悦といった所である。


「まぁ、そういう事だから……これからはよろしく頼むな」


「はい、プロデューサーさん」


「分かりましたぁ」


智絵里のまゆの二人はPの言葉にそう言って頷く。


それからしばらく、三人で歓談を楽しみながら、一年に一度きりのイベントを終えるのであった。





終わり






52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/21(火) 09:10:21.02 ID:GsVh+QjU0

とりあえず、何とか完結です

本当はもう少し早めに完結したい所でしたが、

風邪を引いて倒れてた為に、叶いませんでした

今度はもう少し、計画的に進めていこうと思います





53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/21(火) 09:14:20.60 ID:GsVh+QjU0

しかし、ホワイトデーの話なのに、何で完結するのに一週間も掛かってるんだか……

今回はろくにプロットも立てて無かったので、右往左往としてたかもしれません

最後辺りなんて特に急過ぎた展開だったかも

それと一応……文香とか藍子とかのおまけを考えてたけど……もう無しでいいですかねぇ……





54: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/21(火) 09:16:16.63 ID:GsVh+QjU0

とにかく、一段落ついたので……凛の方も完結目指して、頑張ろうと思います

ここまで読んでくれた方々、ありがとうございます

それといつもながら智絵里PとまゆPの皆様方……本当に、すみませんでした





56: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/03/21(火) 15:37:33.73 ID:K3qUIT1so


Pもまゆ、智絵里も似た者同士か…中々にPもネジが跳んでるな

ありすの幸せが粉々に粉砕されて笑った





緒方智絵里「私の特別な、あの人からの贈り物」 おまけに続く




元スレ
SS速報VIP:緒方智絵里「私の特別な、あの人からの贈り物」
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