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SS速報VIP:金剛「テートクのハートを掴むのは、私デース!」瑞鶴「!?」 二隻目
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602: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/07(木) 01:01:54.39 ID:Tv7gdA8Qo

トントン──トン──。

救護妖精「──おかえり」ガチャ

パタン──

提督「…………」ドサッ

救護妖精「結構持ってきたねー……これ大丈夫なの?」

提督「……問題が無かったから頭が痛い」

救護妖精「へ?」

提督「あのジジイ共……大切な非常食を個人の理由で使っていたようだ」

救護妖精「……どゆこと?」

提督「詳しくは私も分からん。……調べれば足が付くだろうが、どうやら何日かに一度、非常食を十人分ほど持ち出し

ていたようだ」

救護妖精「…………」

提督「備蓄倉庫の警備連中は賄賂を貰って見逃していたようだったから、私も同じ事をしてきた。元帥や大将でしか分

からない事もありますでしょう、などとほざいていたな。危うく蹴り倒す所だった」

救護妖精「ま、まあ……これで食料の問題はなんとかなるんだよね?」

提督「なんとか……な」

提督「しかし、そんなに長くは持たないだろう。できればさっさと私の鎮守府へ送ってやりたい」

救護妖精「そうだねー」

救護妖精「……それとさ、本当に全員、殺しちゃったの?」

提督「ああ。特に最後の一人には苦しんで死んでもらった」

救護妖精「何やったのさ……」

提督「聞かない方が良い」

救護妖精「手足を切断する手術もしている私にそれを言う?」



603: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/07(木) 01:16:23.49 ID:Tv7gdA8Qo

提督「釈迦に説法だったか。──肩、肘、手首、太腿、膝、足首に計十五発の弾丸を撃ち込んだ。動く事は叶わん。血

が流れ切って死ぬまで傍観してやった」

救護妖精「また惨たらしい事を……。呪われるよ?」

提督「構わん。返り討ちにしてくれる」

救護妖精「……冗談に聞こえないよ」

提督「そうか。──あの部屋は燃やすのが一番だな」

救護妖精「人を燃やしたら臭うよ。──埋め立てたらどう?」

提督「ダメだ。資材を運んで行く時にバレる。──では溶かすか」

救護妖精「そんな危険な劇薬を大量に手に入れたらバレるって。──穴掘って埋めるのは?」

提督「時間と労力が掛かり過ぎる」

提督「……面倒だな、死体の処理は。──資料だけ全部燃やして封鎖するか」

救護妖精「それしかないよねぇ……」

提督「準備をしておく」

救護妖精「……それにしても、随分と平然としているね。普通なら吐いたり震えてたりするもんだよ?」

提督「自分がホムンクルスだと知ってから、色々と吹っ切れてな。今なら大抵の事をやれそうだよ」

救護妖精「…………」

提督「……さあ、この話は終わりだ。私はこれを持っていくから、外の様子を見てきてくれ。あと、地下にガスバーナ

ーと水はあったよな──」

……………………。



604: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/07(木) 01:29:23.06 ID:Tv7gdA8Qo

救護妖精「──提督、配分し終わったよー」

提督「全員に行き渡ったか。……案外大変だな、こういうのも」

救護妖精「本当だねぇ……。けど、やりがいがあるよ。あの時は助けれなかったからさ」

提督「……そうか。お前は二回目なのか」

救護妖精「……今度こそ、助けれるんだよね?」

提督「上手くやれば、な」

救護妖精「頼んだよ、提督」

提督「私こそ頼む」

古鷹「あの……」

提督「どうした、おかわりか?」

古鷹「いえ、そうではなくて。……えっと、現状が理解できないのですけど、教えてもらっても良いです?」

那智「特に、どうして私達が布切れに包まれているのかとかな」

救護妖精「……説明が面倒そうだね。頼んで良い?」

提督「男の私が説明しても納得しにくい所があるだろう。任せた」

救護妖精「なっ! わ、私は騙すのは得意だけど、説明自体はそこまで得意じゃないんだよ! それに、この子達を助けようって言い出したのは提督じゃないか!」

那智「どっちでも構わん。さっさと言え」

提督「……なら、私が説明しよう」

……………………。



605: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/07(木) 01:43:21.69 ID:Tv7gdA8Qo

最上「ふぅん……ボク達が艦娘に、ねえ」

摩耶「なーんかよくワカンネーけどよー、助けてくれたって考えて良いのか、これ?」

足柄「良いんじゃないかしら? 本当だったらこの変な機械の中で、意識も無いまま一生を過ごす事になったのかもしれないでしょう?」

加古「じゃあ、あたし達の恩人って事かー!」

青葉「ではでは! 取材をしても宜しいですか!」

衣笠「どこにそんなものがあるのよ……」

提督「──それと、お前達を匿う為に私の鎮守府へ来てほしい。だが、一度に運べる人数は限られている。詰めれば十人くらいはいけるだろうが、相当長い時間、窮屈な思いをする。六人くらいが限界だと思ってくれ。そして、一日に何回も運べるわけではない。六人ずつ、話し合って決めてくれ」

羽黒「あの……その前に一つ、よろしいでしょうか……」

提督「なにかね」

羽黒「私達は……本当にあなた方を信用しても良いのですか……?」

提督「どう答えても不信感が残るだろう。何をすれば信用してくれるか言ってくれ」

三隈「……いくらなんでも、投げやりではありません?」

提督「それが一番手っ取り早い方法だ。私自身、この場でお前達を信用させる術は無い」

利根「ならば、我輩が先行しようではないか。そして見定め、帰ってくる。その内容を皆に伝えれば良いだろう?」

提督「構わんが、危ういと考えないのか」

利根「ふふふ。我輩は人を見る目はある……と、勝手に自負しておる。お主は信用に値する者と見た」

提督「そうか。では頼む」

利根「うむ! 任されよ!」



606: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/07(木) 01:43:55.13 ID:Tv7gdA8Qo

筑摩「──利根姉さんが行くのなら、私も行きましょう。利根姉さんを一人にする訳にはいきません」

提督「そうか。では二人だな」

愛宕「ちょっとちょっとぉー! トントンと話が進んでるけれど、本当に大丈夫なの? もしかしたらって事もあるじゃないのよ」

高雄「私も愛宕に同意します。どう動くにも危険過ぎます」

利根「ふむ? だからこそ我輩達が行くのであろう?」

愛宕「それが危険って言ってるのよぉ……」

利根「なに。案ずるでない。我輩はこの者を信用しておる!」ポン

提督「不思議な奴だ」

利根「それはお主もだろう。ここまですんなりと信用できる人間はそう居らぬぞ?」

提督「…………」

羽黒「わ、私は……少し怖いです……」

鳥海「私も少し……」

鈴谷「そう? 良い人そうじゃーん?」

熊野「……なんだか、危険を感じますの」

提督「と言っているが?」

利根「お前達もすぐに我輩の言っている意味が分かるだろう」

提督「……頑固だな」

利根「うぬ。そうだぞ」

提督「まったく……。──では、最初に利根と筑摩の二人が私の鎮守府へ行く。それで良いな? それから、勝手に外へ出るのを禁ずる。各自、外へ出る時は必ず私に一言声を掛けなさい」

鈴谷「はーい! もし勝手に外に出たらどうすんのー?」

提督「吊るす。恥ずかしいと思えるくらいの高さでな」

全員「!?」

提督「まあ……お前達はそんな事をしないだろうが、一応な」

摩耶「ほ、本気か……?」

提督「うむ」

那智「……ふん。脅しだろう。誰がそんなものに屈するか。出口はこっちだな。勝手に出させてもらう」スタスタ



607: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/07(木) 01:44:23.74 ID:Tv7gdA8Qo

提督「────」タンッ

提督「誰が許可した」スッ

那智「なっ!? う、上から!?」

青葉「い、今、人間ではありえない跳び方をしましたよね……?」

鈴谷「何今の!? すっげーかっこいい!!」キラキラ

救護妖精「あーあ……」

那智「ちぃっ!」ブンッ

提督「…………」ペシッ

那智「!!」ヒュヒュッ

提督「…………」ペシペシッ

那智「…………っ!!」ヒュッバヒュッ

提督「…………」ペシン

青葉「おおー……マンガみたいですねー……。くぅ~! カメラが無いのが悔しいです!! というより速くて良く分かりませんでしたけど何が起きたんですか!!」

利根「まず右ストレートを軽くあしらわれ、ニ連続ジャブをするも弾かれたのう。フェイントの膝蹴りには反応せず、そこからの蹴りを叩き落としおった。うむ、見事じゃ」

羽黒「あの……右手しか動いていないように見えましたけれど……」

利根「無論、右手だけでやってのけていたからのう」

摩耶「本当に何者だ、あいつ……」

熊野「そんな事よりも、あんな布キレを纏っているだけですのに、蹴りなんて……破廉恥よ!」

那智「く……っ!」ブンッ

提督「…………」ガシッ

那智「!! ────くぅ……!!」ググ

提督「……どうやらよほど吊るされたいらしい」ジッ

那智「ヒッ──」



608: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/07(木) 01:44:52.00 ID:Tv7gdA8Qo

バサッ──ヒュルッ──ギュッ

利根「おお、上着で目隠しをして、その上着ごと縛り上げたか。天晴れ天晴れ」

那智「は、離せっ!!」バタバタ

提督「離せと言われて素直に離す阿呆がどこに居る」ヒュッ─ビィン

利根「おお、あんな場所に縄を引っ掛けるフックがあったのか! 気付かなんだぞ!」

提督「…………」グイグイ

那智「あ……ぁぁあ!! や、止めろ!! みひぇ、見えてしまうだろ!!!」ブラーン

救護妖精「噛んだね」

青葉「噛みましたね。おおー、これはスキャンダルですよー! いくら低くてもこのアングルからだとバッチリです!」

那智「!!!! み、見るな……見るなぁ!!!」バタバタ

提督「…………」

那智「こ、この……! 私は辱めなどには屈しないぞ!!」

提督「そうか。もっと高くしなければならないか」グイグイ

那智「ひぃっ!? やだ、やだぁぁ!!!」

提督「…………」ジッ

那智「っっ!!」ビクン

提督「…………」

那智「う……うぁ……!」ビクビク

提督「……お望みとあらばまだ高くするが」

那智「わ、分かった!! 勝手に外に出ない! 出ないからぁ!!!」

提督「うむ」スルスル

那智「あ………………う、うぅ……」ペタン

青葉「えー……もう終わっちゃうんですかー……?」

救護妖精「珍しいね。いつもはちゃんと謝るまで吊るしてるのに」

青葉「今回もそれで良かったと思いますのに……」

提督「この子は私の部下ではない。そこまで酷な事はせんよ。本当はこんな事をしたくなかったが、やらなかった場合は本当に外に出られかねないからな」ホドキホドキ

利根「今のはコヤツが悪かろう。勝手に出れば吊るすと言うておったし、手を出したのもコヤツじゃ。……まあ、お主は自身に見えぬよう計らっておったから、実際に花園が見えたのはオナゴだけじゃろう」



609: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/07(木) 01:45:20.68 ID:Tv7gdA8Qo

提督「……よく見ているな」

利根「我輩は周りを見るのは得意じゃからのう」

那智「ほ、本当に見てないんだな……?」

提督「うむ」

那智「……はぁ~~~~…………」

青葉「心底、安心したって感じの安堵ですね」

救護妖精「まあ、そりゃあ見られたくないでしょうよ」

青葉「それにしても、こんなに面白いイベントがありましたのに、どうして皆は静かなんでしょうかね?」

提督「ただ単に怯えているか引いているかなだけだろう」

提督「それよりも、時間があまり無い。出来ればすぐに出発したい。利根、筑摩、ついて来てくれ」

利根「うむ! ワクワクするのう!」

筑摩「は、はい……」

提督「そう怯えないでくれ。よほどの事をしない限りあんな事はせんよ」

筑摩「……外に出るのは、よっぽどですか?」

提督「下手したら大混乱と共にお前達全員が実験体にされる可能性もある」

救護妖精「ああー……そうなったらどうするの?」

提督「……言わせないでくれ」

救護妖精「……ごめんよ」

提督「では行こう。────ああ、言い忘れていた。そこの板を張り付けてある部屋には入らない方が良い。入ったらトラウマを抱えるだろう。そして、機械には触らないでくれ。その子達も助ける為には準備が必要だ。良いな?」

全員「はいっ!!」ピシッ

提督「…………」

救護妖精「くっくっくっ。どこに行ってもこうなるんだねぇ提督」

提督「なぜだ……」

……………………。



610: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/07(木) 01:45:52.32 ID:Tv7gdA8Qo

監守「──お? やあ新元帥。車なんか乗っちゃって。お出掛けかい?」

提督「一度、鎮守府に帰ろうと思ってな。あと、元帥になるつもりはない」

監守「おいおい……まだ総司令部は混乱してるんだぜ? あまり居なくならないでくれよ」

提督「色々な仕事を放り出してまで来たんだ。あと、艦娘達に電報の送り方を教えておかなければな。他にもやらなければならない事が山ほどある。あっちもこっちも大忙しだ」

監守「身体が一つじゃ足りそうにないなぁ」

提督「出来れば、あと五つは欲しいよ」

監守「ははは! それは贅沢ってもんだ。──おっと、急いでるんだったな。今開けるぜ」

監守「にしても、なんだその箱? やたら大きいな」

提督「必要な書類のコピーだ。早くこの総司令部を動かせる人物を選定せねばならん。そしてその仕事の割り振りも考えなければならないからな。向こうに着いてもこれと睨めっこだよ」

監守「ご苦労なこって。俺にはそんな事は出来そうにねぇや」

提督「一度経験してみるのも良いかもしれないぞ?」

監守「冗談は止してくれ。──んじゃま、いってらっさーい」

……………………。

提督「……顔を出して良いぞ」

モゾモゾ……。

利根「──ふぅ。動かぬようにするのは存外に辛いものじゃ」

筑摩「はい……動きたくてウズウズしました……」

利根「それにしても、先程の監守はやけにフレンドリーであったが、友人か何かなのか?」

提督「いや、誰に対してもあんな感じだ。仕事を娯楽と間違えていそうな節もあって頭が痛くなるよ」

利根「……苦労していそうじゃのう」

提督「苦労をするのはこれからだ。──まあ、お前達は向こうに着いたらのんびりすると良い。少し飛ばすぞ」

……………………。



630: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/07(木) 20:19:05.81 ID:Tv7gdA8Qo

提督「──着いた。ここが我々の鎮守府だ」

利根「ほー。ここがそうであるか。……意外と普通じゃのう」キョロキョロ

提督「何を想像していたのかね」

利根「対艦砲や対空砲がびっしりと並べられ、地面には地雷、海中には機雷を。しかしひっそりと可愛らしい花を育てているという意外な一面でもあるのかと思うておったのじゃが」

提督「残念だが一つも当て嵌まっていない」

利根「残念じゃのう……」

筑摩(普通で良かった)ホッ

……………………。

金剛「…………」

利根「うん?」

筑摩「…………」

瑞鶴(また自分の艦娘以外の女の子を連れてきてる……)

金剛「提督。帰ってきたから抱き付こうと思いましたが、どういう状況ですか、これ」

提督「そう睨むな。私の部屋で説明する」

金剛「むー…………」

……………………。

金剛「艦娘のベースとなった子……ですか。私達はそういう風に成り立っていたのデスね」

瑞鶴「…………それで、どうしてここに連れてきたの?」

提督「今の所ここが一番管理しやすく安全だからだ。……すぐにとは言わないが、新しい住居も与えて自由に暮らせるようにもしていくつもりだ」

金剛「それって大丈夫なのデスか? 消えた艦娘と同じ顔をした人が街中を歩いていたら騒ぎになると思うのデスが」

提督「人というものはその人のイメージというもので人を認識している。艦娘特有の艤装も無く、雰囲気も多少ながら違い、カプセルに入っていたせいで髪も全員長い。海から遠く離れた場所で服装も変えれば他人の空似としか思われんよ」

瑞鶴「そんなものなのかしら……」

提督「そんなものだ。有名人が私服と帽子を被るだけで気付かれないのと変わらん」

瑞鶴「あー、なるほどね」

金剛「イエス! 納得しまシタ!」

提督「すまないが、明日は二人に鎮守府を案内してやってくれないか? その間に私は総司令部の面倒事を考えておきたい」

瑞鶴「面倒事?」

提督「ああ。総司令部を動かす人間の選出や予算や軍政、他にも色々とな」

金剛「…………あの……」

提督「なにかね」

金剛「ヘルプしても……良いデスか? お役に立ちたいデス……」オズオズ

提督「ふむ……」

金剛「…………」ドキドキ

提督「……………………よし、頼む」

金剛「──ヤッタァ!」

筑摩「そんなに喜ばしい事なのですか?」

金剛「一日もテートクと離れ離れだったのデス! 一緒に居られるのはハッピーな事デース!」ダキッ

瑞鶴(あ……良いなぁ……)



631: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/07(木) 20:19:33.08 ID:Tv7gdA8Qo

提督「金剛」

金剛「!!」ピシッ

提督「客人の前で抱き付かないように」

金剛「はい……」

利根「ふむふむ。よく躾けられておるようじゃ」

瑞鶴「金剛さんが提督さんの手伝いをするのなら、私が二人を案内するわね」

利根「うん? お主は一緒に居らんでも良いのか?」

瑞鶴「だって私はそういうの考えるのが苦手だもん。適材適所、よ」

利根「なるほどのう」

提督「では、今日は寝るとしよう。部屋を案内する」

……………………。

提督「鍵はこれだ。あと、夜は明かりを点けた状態ではカーテンを開けないでくれ。敵に砲撃されかねないからな」

利根「うむ。心得た!」

提督「では、私はこれで失礼する。何かあればさっきの部屋へ来てノックをしてくれ。──おやすみ」

利根「よい夢を」

筑摩「おやすみなさい」

ガチャ──パタン

筑摩「…………」キョロキョロ

利根「うん? どうした筑摩?」

筑摩「いえ……初めて入った部屋って見渡したくなりませんか?」

利根「うむ。その気持ちはよーく分かるぞ! 私も入った瞬間に見渡してしまった」

筑摩「相変わらず利根姉さんは見る事が得意ですね。気付きませんでした」クス

利根「なに。我輩はいつ筑摩に抜かれてしまうかヒヤヒヤしておる」

筑摩「もうっ、利根姉さんったら」

利根「それにしても、ここは心地の良い場所じゃな」

筑摩「この部屋ですか? 確かに落ち着きますけれど……」

利根「いや、この鎮守府じゃ。明るく温かい気持ちで溢れておる」

筑摩「そう、なのですか? 私には良く分かりませんでした……」

利根「ハッハッハッ! 筑摩もこのような雰囲気を感じ取れるようにならねばな」

利根「──ここは、大切にされておる人達で一杯なのじゃろう。実際に会わずともそれが分かる」

筑摩「利根姉さんがそう言うのであれば、そうなのでしょうね」

利根「何を言っておる。筑摩は筑摩で判断をせぬか。我輩の言葉を鵜呑みにするでない」

筑摩「はーい」

利根「うむ! それでは寝ようかのう。明日が楽しみじゃ!」

筑摩「はい。なんだか私も楽しみになってきました」

???『隣に駆逐艦がぁ!!? ──ぁいだァ!!? ご、ごめんってばー!!』

利根「……なにやら騒がしい奴が居るようじゃな」

筑摩「なんなのでしょうか……」

……………………
…………
……



660: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/08(金) 17:46:14.90 ID:Rz6xto7Lo

コンコン──。

提督「入れ」

ガチャ──パタン

瑞鶴「提督さん、今良い?」

提督「どうした、こんな夜中に」

瑞鶴「一緒に寝たいんだけど……ダメ?」

提督「構わん。私も丁度寝る所だ」

瑞鶴「ホント!? やったぁー!」

提督「本当に嬉しそうにするな。お前達は」

瑞鶴「むー……」

提督「……なぜ不貞腐れる」

瑞鶴「二人っきりの時はあんまり……他の子の話はして欲しくない」

提督「…………」

瑞鶴「ヤダもん……」

提督「……悪かった。今度から言わないようにする」

瑞鶴「ありがとね♪」ギュー

提督「よしよし」ナデナデ

瑞鶴「んー♪」ギュー



662: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/08(金) 18:06:22.96 ID:Rz6xto7Lo

提督「ほら、寝るぞ」

瑞鶴「はーいっ」

瑞鶴「今日は寒いわねー」モゾモゾ

提督「……寒いか」モゾモゾ

瑞鶴「うん、寒い」

提督「…………なら、温めないとな」ギュ

瑞鶴「──うん!」ギュ

瑞鶴「…………」ドキドキ

提督「…………」

瑞鶴「…………」ドキドキ

提督「…………」

瑞鶴「…………?」

提督「…………」

瑞鶴「……あれ?」

提督「ん?」

瑞鶴「…………」

提督「…………」

瑞鶴「……もういい」ムスッ



665: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/08(金) 18:28:12.18 ID:Rz6xto7Lo

提督(ああ……そっちの意味で温めて欲しかったのか……。失敗したな)

提督「……今日はこれで許してくれ」チュ

瑞鶴「ん、ちゅ……。…………もう……しょうがないわね」

提督「気難しい妹を持ったものだ」

瑞鶴「……嫌?」

提督「嫌ならこうして抱き締めていない」

瑞鶴「でも、一人の女の子として愛してはいないわよね?」

提督「それは……」

瑞鶴「ん、ごめん。ちょっと意地悪しちゃった。──でも、いつかぜーったいに振り向かせるんだから。覚

悟していなさいよ」

提督「覚悟しておこう」

瑞鶴「よろしいっ」

瑞鶴「──それじゃ、おやすみなさい」

提督「おやすみ──」

提督(今度……それと、いつか、か……)

……………………
…………
……



666: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/08(金) 18:51:47.77 ID:Rz6xto7Lo

コンコン──。

提督「入れ」

ガチャ──パタン

利根「やあ提督! 我輩だ!」

筑摩「お邪魔します」

瑞鶴「提督さん。全部回ってきたわよ」

提督「ふむ。案内が終わったか」

利根「うむ! 案内は瑞鶴が丁寧にしてくれた! 良い場所ではないかここは! のう、筑摩!」

筑摩「はい。艦娘の皆さんも私達を歓迎してくれて、沢山お話もしました。貴方は皆さんを愛し、愛されているのですね」

金剛「もっちろんデース! この鎮守府で、テートクがライク オア ラブでない艦娘は一人も居まセーン!」

利根「艦娘の者達からその思いは充分に伝わってきた! 素晴らしい場所じゃなここは!」

提督「気に入ってもらえたようで何よりだ」

利根「これならば皆に良い言葉を伝えれよう!」

金剛「皆……というと、また総司令部へ行くのデスか?」

利根「うむ。我輩と筑摩は言わば偵察じゃ。我輩は一目で信用できたが、他の者はそうでなかったからのう。だが、提督と付き従う者達の姿を我輩達が伝えれば多少は信用するじゃろうて」

提督「そういう訳だ。すまないが、また向こうへ行く事となる」

金剛「ぅー……また寂しい思いをする事になるのデスね……」

提督「これも必要な事だ。なに。すぐになんとかしよう」

金剛「……約束デスよ?」

提督「また約束か。お前と果たせていない約束はこれで六個目だな」

金剛「あ、ちゃんと憶えてくれていたのデスね!」

提督「お前こそ、忘れていないだろうな」

金剛「一言一句憶えていマース!」

瑞鶴(…………ものすっごく気になる……)

提督「では、そろそろ行こう」

……………………
…………
……



667: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/08(金) 19:14:05.70 ID:Rz6xto7Lo

提督「…………なんだ、この書類の山は」

職員「あ、あの……昨日より全ての鎮守府から艦娘が消えたとの報告がありまして……」

提督「なに? 消えただと?」

職員「はい……。緊急事態という事で大将をお呼びしようかと思いましたが、監守の話を聞いて、お戻りになるまでお待ちしようと判断しました」

提督(ふむ。詳しくは書類を見てからの判断になるが、解放した艦娘は消えたようだな)

提督「……これは緊急事態など生温いものではない。国の命運を左右する問題だ。以後、このような大きな問題はすぐに連絡をするように」

職員「は、はい! 申し訳ございません!」

提督「下がって良い」

職員「本当……申し訳ございませんでした……。失礼しました……」

ガチャ──パタン

救護妖精「──ちゃんと艦娘は消えたみたいだね」

提督「ああ。あとは、この書類のどこかに深海棲艦からも重巡が消えたという報告がないかを探さなければな」パラパラパラパラ─スッ

救護妖精「この書類の山から……? 骨が折れるとかそういう問題じゃないよ?」

提督「読むだけだ。そう時間も掛からん。どうせ中身はほとんど同じだ」パラパラパラパラ─スッ

救護妖精「いや……捲るんじゃなくてちゃんと見ようよ……」

提督「うん? ちゃんと見ているが」パラパラパラパラ─スッ

救護妖精「え?」

提督「──む。この報告書が深海棲艦について記述している」スッ

救護妖精「は?」



672: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/08(金) 19:39:18.05 ID:Rz6xto7Lo

提督「……ふむ。敵の重巡も見掛けなくなったという報告だな。──救護妖精、どうやら良い方向へ転がっているらしい」

救護妖精「…………」

提督「どうした」パラパラパラパラ─スッ

救護妖精「いや……確かに私が強化とか担当したけどさ……ここまで人間離れするもんかねぇと思って……」

提督「だからこそこのデメリットだ。糖分は死に掛けなければ摂取できない上、幼き頃のほとんどの過去を忘れている」パラパラパラパラ─スッ

提督「私が憶えている過去は、甘味が好きだったという事と、誰か大切な人を守れなかったという二つだけだ」パラパラパラパラ─スッ

救護妖精「……ごめんよ」

提督「謝ってくれるな。私は現状でも満足している。むしろ、そのデメリットだけでこれだけの事ができるようになったんだ。ありがたい事だ」パラパラパラパラ─スッ

救護妖精「ポジティブだねぇ……」

提督「素直な感想だ」パラパラパラパラ─スッ

救護妖精「……言っとくけど、提督っていつ死んでもおかしくないんだからね? 糖分ってそれだけ大事なんだよ? それも、歳を取れば歳を取るほどその確率が高くなるんだからね」

提督「分かっているよ」パラパラパラパラ─スッ

救護妖精「だけど……」

提督「普通の人間となんら変わらん。普通の者こそいつ死ぬか分からない。確かに私は確率的には高いだろうが、そんなものに怯えていたらまともに生きる事さえ出来んよ」パラパラパラパラ─スッ

救護妖精「……強いねぇ」

提督「強くはない。自分の死に無関心なだけだ。憶えている過去で、大切な人を守れなかったという想いがやたら強くてな。その時点で私は負けているんだ」パラパラパラパラ─スッ

救護妖精「よくは分からないけど……私の目から見ると提督は強いよ」

提督「……そうか」パラパラパラパラ─スッ

提督「──よし。他にも深海棲艦の重巡が消えたという報告は三件あった。これからもそのような報告が増えていくだろう。これは決まりと言って良いな」

救護妖精「はやっ!」

提督「こっちの書類の山には用は無い。後はそっちの書類を見ながら軍政や予算などを考えるか。その後で地下へ行くぞ」

救護妖精(……本当は提督一人で総司令部はなんとかなるんじゃないのかな)

……………………。



673: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/08(金) 19:53:19.41 ID:Rz6xto7Lo

利根「──というのはどうじゃろうか」

ガチャ──パタン

提督「全員居るか?」

利根「おお提督! 全員居るが、その前にちと話を聞いてもらえぬだろうか!」

提督「どうした」

那智「話に聞くと、あの出入り口では見つかる可能性もあり、何かと不便らしいじゃないか。だったら、別の通路を作ってみるのはどうだろう、という話になってな」

筑摩「あの建物の近くは山がありますよね? 利根姉さんによると人の手が加わっていないみたいですので、そこならば一目に触れずここから出られるのでは、と」

提督「なるほど。だが、まずこのコンクリートを破壊しなければならない。そこから延々と穴掘り作業だぞ。面倒な事だが、大丈夫なのか?」

鈴谷「何も無いこの場所でダラダラするよりは遥かに有意義じゃん? むしろやらせてくれないかなー」

救護妖精「汚れてもシャワーはあるしねー。提督が鎮守府に戻ってる間に色々とここを調べたけど、穴を掘るくらいならなんとかなると思うよ。資材もあの昇降機から持ってこれるしね」

提督「……なら、頼んでも良いか?」

加古「まっかせてー! くぅ~! 身体を動かすのは好きなんだよねー!」

古鷹「加古は本当に身体を動かすのが好きよね。ここでも青葉と一緒にあちこち歩き回ってたし」

青葉「色々と救護妖精さんに止められてしまいましたけどね……」

救護妖精「これでも極力自由にさせたつもりだよ」

提督「では、その方針でやろう。後で資材を持ってくるが……その前に、コンクリートの壁はどうにかせねばな」ツカツカ

救護妖精「ハンマーで壊せば良いんじゃない?」



674: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/08(金) 19:53:48.87 ID:Rz6xto7Lo

提督「何回も叩いてはバレる可能性がある。やるなら一撃でだ。──ふむ。たしか、こっちの方角が山だったな」スッ

救護妖精「えっちょ……まさ──」

提督「シッ────!!」ヒュッ

ビキャアァッ──!!! ────パラパラ……。

提督「…………よし」

救護妖精「『よし』じゃないわこの馬鹿がぁ!!!!」スパァンッ!

提督「……痛いじゃないか」

救護妖精「ぅうるっさい!! 本当ならハリセンで済ませんわぁ!! 提督、アンタ自分の身体の事分かってんの!? 糖分を滅茶苦茶使うような真似してんじゃないよ!!!」

提督「バレるよりかは良い」

救護妖精「寿命を縮めるよりかは遥かにマシだわ!!!」

那智「……今、掌底突きでコンクリートを破壊したよな?」

利根「本当に規格外じゃのう……」

青葉「那智さん、今のご感想を一言」

那智「……あの方に手を出した自分を殴りたい」

青葉「反撃されたら確実に一撃必殺でしたね」

……………………。

提督「では、全員来るのだな?」

救護妖精「みたいだね。利根と筑摩の言葉を信じてくれたみたい」

提督「そうか。ありがとう利根、筑摩」

利根「なに。我輩は思った事をそのまま言っただけじゃ」

筑摩「私もです。貴方やあの場所を悪く言うのは少し難しいくらいですよ」

青葉「私はもう今からワクワクしているくらいです!」

提督「今日はこっちに泊まる事となる。出発は明日の夜だ。それまでに誰が行くのかを決めてくれ」

全員「はい!」

提督「では、私は戻る。救護妖精、すまないが──」

救護妖精「分かってるって。この子達の体調管理は任せておきなー」

提督「頼んだ。また明日来る」

……………………
…………
……



687: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/09(土) 00:24:19.35 ID:xDlbTjNyo

職員「──はい。確かにお預かりしました」

提督「リストに載せた提督達によろしく頼む」

職員「はい。……それにしてもお仕事が速いですね。たった三日、それもお一人で予算や軍政、それに総司令部の新しい大将の候補を見定めるなんて……」

提督「おかげで睡眠不足だよ。元帥殿はあの場所で死体すら上がってこず、他の大将殿は死亡が確認され、右も左も分からない私が総司令部を動かす事になるとは……。他に誰か適任者が居ないとは頭が痛くなる」

職員「でも、助かりました。大将が居なければこの国はどうなっていた事か……」

提督「何も変わらんよ。私以外の誰かが同じ事をしていただろう」

職員「そんな事はありませんよ。大将だからこそ出来た事です」

提督「言葉だけ頂いておこう。──私は少し休むよ」

職員「畏まりました」

提督「それと私は今夜、鎮守府に戻る。何かあったらそっちへ電報を送ってくれ」

職員「え……は、はい……」

提督「理由が必要なら話す」

職員「えっと……その…………お、お願いしてもよろしいでしょうか……?」

提督「──あの鎮守府でやらなければならない事がまだまだ沢山ある。総司令部も大事だが、あの近海や私の艦娘を護るのも私の仕事だ。片方にだけ力を注ぐ事は私には出来ん」

職員「なるほど。……しかし、今の間だけは他の者にあの近海を護らせる方が良いのでは……」

提督「そこは私の我侭だ。その問題は目を瞑ってくれると嬉しい」

職員「……はい。今の考えは無かった事にしておきますね」

提督「うむ。では下がって良い」

職員「はい。失礼しました」

ガチャ──パタン

提督(これが権力者に許された『無理を通す』というものか……)

……………………
…………
……



688: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/09(土) 00:32:41.51 ID:xDlbTjNyo

少将「──失礼しました」

ガチャ──パタン

提督「……ふぅ」

救護妖精「お疲れ様、提督。さっきの人で最後だったよね」

提督「ああ。面倒だった」

救護妖精「お茶飲む?」スッ

提督「頂こう」ズズッ

救護妖精「それで、役に立ちそうなのは居たの?」

提督「なんとか三人ほど、な」

救護妖精「三人かー……大丈夫そう?」

提督「動かすだけならば問題ないだろう。慣れてくれたら私はひっそりとするよ」

救護妖精「本当にそんな事できるの?」

提督「この身体は便利だな」

救護妖精「ああ……そういう事ね……」

提督「私は気に入った場所に居たいからな。ここは私の場所ではない」

救護妖精「普通なら元帥になれるのに、それをわざわざ蹴るなんてねぇ……。とことん分からない人だよ」

提督「自分でも良く分かっていないからな」

救護妖精「まったく……」

……………………
…………
……



690: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/09(土) 00:42:46.48 ID:xDlbTjNyo

提督「……本当にたった二日で開通させるとは」

利根「暇であったからな。ついついやってしもうた」

那智「一応、出入り口は隠せるように草などでカモフラージュしておいた。簡単には見つからないだろう」

救護妖精「いやー……本当に凄いよね。普通なら筋力とか衰えてるはずなのにさ。我ながらとんでもない強化を施しちゃったって思ってるよ……。この分ならもう食べ物は固形物でも大丈夫なんじゃないかなぁ」

青葉「ちなみに、利根さんだけずーっと笑いながら掘っていましたね」

利根「だって楽しかったであろう?」

熊野「楽しいものですか。開通するまでずっと土で汚れていましたわ」

青葉「と、二番目に頑張っていた子が申しております」

熊野「ばっ──! こ、こら!! 言わないで下さる!?」

提督「皆、良くやってくれた。というわけで、こんな物を持ってきた」スッ

利根「箱? なんじゃ? 甘味か?」

提督「良く分かったな」

全員「!!」

提督「中身はアイスクリームだ」

全員「!!!!」

利根「な、なんと!! それは真か!?」

提督「ああ。私はこういう事しか出来ないからな」

羽黒「い、良いのですか?」

提督「一人につき一つだけだがな」

愛宕「充分よー! はぁ~……頑張ったかいがあったわぁ……」

救護妖精「……こんな場所なのに、皆喜んでるね」

提督「どこにでも希望はあるというものだ」

救護妖精「提督も、希望は持っても良いんじゃない?」

提督「……私の場合は楽観になるだけだ。いつも通りで居るのが一番良い」

救護妖精「はぁ……艦娘の問題よりもこっちの方が苦労しそうだよ……」

提督「…………」

……………………
…………
……



691: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/09(土) 01:05:11.50 ID:xDlbTjNyo

提督「──以上が今月の軍方針という事になる。異論がある者は手を挙げて発言せよ。……………………居ないようだな。では、今回の会議はこれで終了とする」

……………………。

救護妖精「会議は終わったみたいだね。お疲れ」

提督「まったく……発言をしない奴らばかりで困る」

救護妖精「それだけ提督のやり方で文句も何も無いって事じゃないかな」

提督「さあな。自分で考えを述べれなかったらいつまで経っても私は離れる事が出来ないのだが」

救護妖精「やっぱ提督は人の上に立つのが似合ってるって」

提督「断る。私は自分の場所に居るのが良い」

救護妖精「勿体無いなぁ……」

コンコン──。

提督「入れ」

ガチャ──パタン

職員「失礼します。大将、本日のお仕事は終わりましたか?」

提督「先程の会議の内容を書き留めれば終わりだが、どうした」

職員「あの……大将が元帥になるつもりはないと耳に入っていますが、どうも大将が元帥になるかどうかの賭けが流行っているようでして……」

提督「下らんな……」

職員「ですが、私としてもなぜ元帥になられないのかと不思議に思っています。その理由をお聞きしても宜しいでしょうか」

提督「それはこの救護妖精がよく分かっている事だ。私は身体が弱い。いつ死んでもおかしくない。そんな人間が元帥となっていきなり死んだら困るだろう。それが理由だ」

職員「お身体が優れないのですか?」

提督「ああ。こればかりはもう受け入れるしかないようでな。いつ死ぬかも分からない程だそうだ」

職員「そんな事情がありましたか……。すみません、なんだか言わせてしまったみたいで……」

提督「元より隠す気は無い。聞かれたら答えていたよ」

提督「それよりも、今日も鎮守府へ戻る予定だ。他に用事が無いのならばその準備をするが、良いか?」

職員「し、失礼しました!」ピシッ

提督「うむ」

ガチャ──パタン

提督「……立場上、一番偉いとはいえ、どうしてこう怖がられるかね」

救護妖精「もう運命だと思いなよ」

……………………
…………
……



705: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/09(土) 23:17:53.43 ID:AVwO1VgIo

提督「さて……明後日で重巡の最後の六人を連れて帰る訳だが、その前にやっておきたい事がある」

利根「ふむ? なんじゃ?」

提督「先に六人、解放しておきたい」

那智「世話や説明をしろという事か」

提督「そういう事だ。私がやるよりも怖がらせなくて済む」

羽黒「でも……貴方を信用するかどうかの問題ですから……その、そこは貴方がなされた方が……」

提督「ふむ……。羽黒はその方が信用しやすいか」

羽黒「は、はい……。やっぱり、見ず知らずの人に連れて行かれるのは怖いですから……。それでしたら、どんな人なのか

を見定めれる期間は欲しい……と思います……」

提督「なるほど。確かにその通りだな。助言感謝する、羽黒」ナデナデ

羽黒「ひゃんっ!」ビクッ

提督「む、すまん」スッ

羽黒「──あ、い、いえ……その……ちょっと驚いただけでして…………あの……」

提督「うん?」

羽黒「…………撫でてもらって、良いですか……?」

提督「うむ」ナデナデ

羽黒「はぅ……」ホッコリ



707: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/09(土) 23:35:42.22 ID:AVwO1VgIo

妙高(あら……なんだか羨ましい……)

足柄(あらあら。あんなに気持ち良さそうにしちゃって)

筑摩(結構意外かしら。もっと怖がると思っていましたけれど)

利根「提督よ、我輩も何か良い事をしたら撫でてくれるかのう?」

救護妖精「ストレートだねぇ」

利根「これが我輩の性分よ」

提督「状況にも因るが、撫でてくれと言われれば私は撫でる」

利根「ふむ。では、少しばかりお願いしてもよいか?」ススッ

提督「ほれ」ナデナデ

利根「ぉ…………」

提督「…………」ナデナデ

利根「……………………」

提督「…………」ナデナデ

利根「ぉぉ…………」ホッコリ

利根「こ、これは……なんとも珍妙な……。ここまで抗い難いとは……」

提督「満足か?」スッ

利根「うむ! 大変良いものであった!」

那智「……………………」ジー

提督「那智、お前もしようか」

那智「な、なぜ私に言う」

提督「さてな。なんとなくだ」

那智「…………ふん」

提督「そうか。──それでは、今回は水上母艦と一部の戦艦を解放しよう」

那智(む…………)

救護妖精「なんで戦艦?」

提督「深海棲艦の戦力を削る為だ。出来れば一気に戦力を減らしたい所だが、食料の調達と車に乗せれる人数、そして私が

往復できる回数の都合もある」

救護妖精「なるほどねー」

提督「そうだな……。戦艦はこの四人で頼む」

救護妖精「あいよー」

那智「……………………」

……………………。



711: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/09(土) 23:53:31.22 ID:AVwO1VgIo

比叡「う……こ、ここは?」

霧島「どこ、でしょうか……予測すら付きません」

長門「む……」

陸奥「あら……?」

千代田「千歳お姉……無事?」

千歳「うん、大丈夫だけど、どこかしら……ここ……」

救護妖精「はい、説明お願いね提督」

提督「これを何回も言わなければならないのは少しばかり辛いな」

羽黒(あの……あまりに当たり前のように身体を拭いていってましたけど……もしかして私達も……?)

妙高(…………たぶん)

足柄(でも、男というよりも医者みたいな感じだったわよね。なんかこう、やらしさがないっていうか)

筑摩(で、でも……少し恥ずかしいですね……)

羽黒(確かにそうですけど……どうして拭き始めてから今まで誰も何も思わなかったのでしょうか……)

足柄(だって……あんなに自然と普通に触られても……ねぇ?)

那智「……ふん」

利根「何を拗ねておる那智よ」

那智「何がだ」

利根「ほれ、機嫌も悪くしておる」

那智「私は元からこうだ」

利根「ほう」ニヤ

那智「……何を考えている貴様」

利根「なに。我輩だけの秘密だ」ニヤニヤ

那智「ちっ……」

……………………。



712: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/10(日) 00:13:21.69 ID:4ya6TxlLo

長門「納得がいかん」

提督「ほう。何に納得がいかないのかね」

長門「お前が私達を助けるメリットが無い」

提督「メリットがなければいけないのか」

長門「いけないという訳ではないが、それは共に長き時間を過ごした者にのみ与えれるものだ。見ず知らずのお前では信用に足りん」

提督「尤もな意見だ。私も今ここで信用してもらおうとは思っていない」

長門「ほう。ならばどうするというのか」

提督「どうもしない……と言っては嘘になる。だが、私から何かをしようとは思っていない。私はそこに居る六人にしてやった事と同じ事をするだけだ」

長門「ほう。お前達もここから助けられた……と言われたくちか」

利根「うむ。実際に目の当たりにするまではどう助けるのか知らなんだが、助けるの意味も今回で分かった」

比叡「あのー……どういう意味でしょうか」

利根「そこのカプセルに入っている者を取り出し、飲んでしまっている液体を吐かせ、そして身体が冷えぬよう暖を取らせておった。まさしく救助と言えるじゃろう」

千歳「…………あの、それってもしかして……私達の身体を触ったって事?」

提督「ああ、そうだ」

千代田「な、なんですって!? この変態……!! 千歳お姉の身体に触るなんて!!!」

霧島「ど、どうして貴女達はそれを黙って見ていたのですか!?」

羽黒「その……あまりに自然というか普通といえば良いのか……。手際が良かったのでむしろ関心してしまったと言いますか……」

利根「先程も言うたが、まさしく救助と言えるものじゃった。医者に裸体を見せるのと変わらぬ」

陸奥「それは貴女達の言い分じゃないの。私はちょっと嫌よ」



713: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/10(日) 00:29:30.39 ID:4ya6TxlLo

利根「そうは言うてものう……。そこに浮かんでおるオナゴよりは遥かに良いと思うが」

長門「それはそうだが、その救助はお前達がやっても良かったんじゃないのか?」

足柄「水を吐かせる所からもう無理って思っちゃったわねぇ……。あの二人のようにスムーズには出来ないと思うわ。で、その手際の良さに見惚れている内にもう終わっちゃってたわ」

救護妖精「そういや提督もかなり簡単に吐かせてたね。そんな知識、どこで手に入れたのさ」

提督「海で溺れた人間を救助した際、水を吐かせる必要がある。士官学校で教えられた事を憶えていただけだ」

救護妖精「へぇ。士官学校ってそんな事も教えるんだ」

長門「……その理由は分かった。話を戻すが、私はまだ納得していない。お前に何のメリットがある」

提督「こじ付けで良いのなら一つだけメリットがある」

長門「ふん。やはりあるのではないか」

提督「私の中の『助けたいという欲』が満たされる。それがメリットでどうだ?」

長門「……ふざけているのか?」

提督「大真面目だ。これ以外にメリットと呼べるものは無い」

長門「…………。そうか、どうしても言わないか。ならば──」スッ

長門「少し痛めつけさせてもらう。殴り合いなら負ける気はしないぞ」

提督「断る。デメリットしかない。それに、救護妖精が許可してくれんだろう」

長門「ふん。逃げるのか」

提督「好きに考えたまえ」



715: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/10(日) 00:50:09.46 ID:4ya6TxlLo

長門「──なら、好きにさせてもらう」ダッ

長門「ふん──!」ビッ

提督「…………」ペシッ

長門「!」バッ

提督「…………」

長門「……まさかこうも簡単にいなされるとは思わなかった」ジリ

提督「そうか」

那智「あれでは無理だな」

救護妖精「経験者は語るねぇ」

利根「しかし、良いのか? 激しい運動は禁じておるのじゃろう?」

救護妖精「あのくらいの動きならまあ。それに、どうせすぐに決着が付くしね。ちょっとスープを用意してくるから、誰か手伝ってくんない?」

羽黒「は、はい。私が行きます」

救護妖精「ありがと。──ああそうそう長門さんとやら」

長門「今は話し掛けるな」

救護妖精「アンタはあのカプセルの中に一番長く入ってたんだから、無茶したら身体に響くよ。適度な所で諦めな」

長門「ふん。この長門が諦めるだと? 馬鹿馬鹿しいな。確かに身体は本調子ではないが、これはハンデだ」

救護妖精「まあ、私達はスープを作ってくるから、それまでの間に終わらせてねー」

長門「…………」

長門(……たしかに隙が無い。腕を後ろに自然体で立っているが、あの状態から私の拳を払える技量を持った相手……。よほど無理な体勢でもない限り攻撃は効かないか……。だが、相手は反撃をする様子が無い)



719: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/10(日) 01:03:23.35 ID:4ya6TxlLo

長門(なら──)ダッ

長門「ハッ!」ビュッ

提督「…………」タンッ

長門「そこだ!!」グルン─ブンッ

提督「…………」グッ─ストッ

長門「!!!」バッ

提督「…………」スッ

長門「……なんだ今のは」

提督「ただ乗っただけだ」

利根「ほほう。足払いで空中に逃げた相手に、そのまま後ろ蹴りとは見事。あれならば普通は避けれまい」

那智「だが、ニ撃目の足へ乗られたな。まさに屈辱の回避だ」

長門「……なら、どうして反撃をしなかった。絶好の機会だっただろう」

提督「闘う意思など毛頭無い。お前の我侭に付き合っているだけだ」

長門「なんだと……?」

提督「反撃を望むのなら一度だけしてやろう」

長門「馬鹿にするか貴様……」ギリ

長門「良いだろう。その一撃で私を負かせるのならば、お前の言っている事を信用しても良い」

那智「プライドの高い女だ……。私とよく似ている」

利根「そのプライドをバキバキに折られるのも似ておるのう」

那智「全くだ。どんなに足掻こうと、私はあの方に勝てないだろう」



724: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/10(日) 01:21:01.09 ID:4ya6TxlLo

長門「…………」ジリ

提督「…………」

長門(コイツが何をしようが与えれる攻撃をせねばならない……。いや、当たらざるを得ない状況に持ち込めばどうにでも出来るはずだ。相手の反撃は一度……ならば、掴んでからの殴り合い。仮にどんな場所へ攻撃されようと、私は怯まん!)

長門「…………!」バッ

利根「掴みに掛かったか!」

長門「もらった!」グッ

長門「────なっ」スカッ

利根「おお。これはなんと……」

長門(ど、どこだ? 右……左……後ろ……居ない……?)キョロキョロ

提督「…………」スッ

陸奥「長門さん! 後ろ!!」

長門「な──」バッ

提督「…………」ポン

長門「に…………?」ナデナデ

提督「…………」ナデナデ

長門「…………ふ」ナデナデ

長門「──ざけるなぁ!!!」ブン

提督「…………」ペシッ

長門「らあぁッ!!」ビッブンッヒュッ

提督「…………」ペシペシペシッ

長門「ちゃんと闘え!!」ブンッ

提督「しっかりと反撃したではないか」ペシッ

長門「なんだと!?」ヒュッ

提督「頭を撫でただろう」ペシッ

長門「それのどこが反撃だ!!」バッ

提督「お前が一番分かっていると思うが」ヒョイ

長門「…………ッ!!」ギリ



726: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/10(日) 01:41:18.89 ID:4ya6TxlLo

提督「…………」ジッ

長門「…………」

提督「…………」ジッ

長門「ぅ……ぐ…………」

提督「…………」ジッ

長門「……どうやって後ろに回り込んだ。どこにもお前は居なかったぞ」

提督「上だ」

長門「あの体勢で跳んだのか!?」

提督「正確には横に跳んでからお前の背後に向かって跳んだ」

長門「……お前、本当に人間か?」

提督「よく言われる」

長門「………………何回だ」

長門「何回、私を倒せた」

提督「お前が行動する度に倒せただろう」

長門「…………」

提督「…………」

長門「……負けだ。お前の言った事は信用する。そして、私を好きにするが良い」

那智(本当に訳の分からない方向にプライドの高い奴だ)

提督「じゃあ好きにしろ」



729: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/10(日) 01:55:41.27 ID:4ya6TxlLo

長門「なんだそれは……」

提督「そのままの意味だ。好きにしろ。制限は付けるが、その中であれば自由にしていれば良い」

長門「……その制限はなんだ」

提督「お前達が外に出ると大混乱が起きるから勝手に出るな。それだけだ」

比叡「あ、あのー……」スッ

提督「なにかね」

比叡「勝手に、という事は……貴方に申し出れば良いのでしょうか」

提督「うむ。姉と似て察しが良いな」

比叡・霧島「!!!」

比叡「お姉様を知っているのですか!?」

霧島「でも……金剛お姉様はそのカプセルの中に……」

提督「艦娘としての金剛が私の秘書として鎮守府を護ってくれている。いつも良くしてくれている」

比叡「貴方の鎮守府に……」

霧島「金剛お姉様が……」

比叡・霧島「私、行きます!!」

提督「榛名も居る。きっと二人も喜ぶだろう」

比叡「榛名も……!」

霧島「榛名お姉様も……」

救護妖精「おーい。スープ出来たよー」

提督「その前に……スープが出来たみたいだ。先に食事を済ませておけ」

比叡・霧島「はいっ!」ピシッ

提督「…………」



731: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/10(日) 02:08:40.44 ID:4ya6TxlLo

長門「む……」フラッ

提督「おっと」ヒョイ

長門「なっ!? 何をする!」ジタバタ

提督「暴れるな。落ちる」

長門「離せば暴れる事もない!!」バタバタ

提督「……大人しくしろ」ジッ

長門「ぅ…………わ、分かった……」

提督「あれだけ派手に動いたんだ。そうなって当然だろう。これはその結果だと思え」

長門「……恥ずかしい」

提督「それもお前が暴れた結果だ」

長門「…………受け入れる……」

提督「素直でよろしい」

那智「……………………」ジー

利根「ほう」ニヤ

那智「……なんだ」

利根「いやいや、なんでもない」

那智「…………ちっ」

……………………。



733: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/10(日) 02:17:50.67 ID:4ya6TxlLo

陸奥「あの……長門さん……」コクコク

長門「ん? どうした」

陸奥「ごめんなさいね……。勝負に水を差しちゃって……」コクコク

提督「…………」スッ

長門「んくっ。……いや、構わない。あれはどうであれ私が負けていた」

陸奥「でも……」

長門「構わないと言っている」

提督「…………」スッ

長門「んぐっ……」

長門「それよりも……なぜお前が私の世話をしているんだ」

提督「なんとなくな」スッ

救護妖精「身体が弱ってるのにあんなに動くからだよ。他の子も皆飲んでるし、自業自得。諦めな」

長門「あむ……。だが、これは……その……」

救護妖精「恥ずかしいとか言っても説得力無いよ。あんた蹴り放ったじゃん。あれと比べたら背中を預けて口にスプーンを運ばれるなんて可愛いものだろう?」

長門「あれは闘いだったからだ。闘いの中ならば特に気にする事はない」

那智「必要だからか」ズズッ

提督「…………」スッ

長門「んっ……。そうだ」

那智「お前とは気が合いそうだ」

提督「那智と通ずる何かがありそうだな。勝気なのも似ている」スッ

那智「私はあそこまで諦め悪くない」ズズッ

長門「んむ……。お前もこいつと一戦交えたのか」

那智「ああ。お前と全く同じ結果だった」

長門「……ここまで完敗なのも初めてだ」

提督「ほら、これで最後だ」スッ

長門「あむ……。…………すまない。ごちそうさま」

提督「これに懲りたらもう無茶をするな」ナデナデ

長門「むぅ……」



734: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/10(日) 02:35:25.62 ID:4ya6TxlLo

救護妖精「随分と大人しくなったねぇ」

陸奥「うん。私もそれは思ったわ」

長門「……逆らってはいけないという感情が占めていてな」

那智「非常に良く分かる。私も始めはそうであった」

長門「ほう? では今のお前はどうなんだ?」

那智「畏怖は勿論だが、それ以上に尊敬もある」

利根「あと、それともう一つ大きな感情があるようじゃがな」

那智「喧嘩を売っているのか?」

利根「何も隠さんでも良かろう」

那智「……ふん」

長門「…………?」

提督「深くは考えなくて良い」ナデナデ

長門「う、うむ……」

提督「──では、仮眠室のベッドに運んでくる」ヒョイ

長門「わっ……」

那智「…………」

陸奥「……今更だけど、長門さんがお姫様抱っこされるのって初めてじゃない?」

長門「…………うむ」

陸奥「どんな感じがするの?」ワクワク

長門「その………………恥ずかしいと同時に、何かこう……胸にモヤモヤとした感覚が……」

陸奥「……よく分からないわ」

長門「私だって分からないんだ……。今日は初めてが多すぎて少し戸惑っている……」

提督「行くぞ」スタスタ

長門「わっ! い、いきなり歩き出すな」

提督「知らん。お前は早く横になって休め」スタスタ

長門「う……分かった……」

那智「……………………」

陸奥「……本当、長門さんがあんなに言う事を聞くなんて初めてね」

救護妖精「…………」

救護妖精(艦娘のベースとなった子……全員が偽者の記憶だから辛いなぁ……)

……………………
…………
……



754: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/10(日) 22:44:29.94 ID:4ya6TxlLo

提督「艦娘、深海棲艦が急速に消えているという異例の事態が発生しているのは知っているな」

少将「はい。私の鎮守府でも同じ現象が発生しています」

中将A「私もだ。一体何があったのでしょうかね……」

中将B「右に同じく。……おかげで戦力はガタ落ちですよ」

提督「知っての通り、私は艦娘の数が絶対的に少ない。そのせいか私自身の目で確かめれない状況だが、ここまで多くの報告が集まっているのも事実。実際に、消えた艦娘は皆同じのようだ」

提督「重巡、水上母艦、軽空母、潜水艦は全滅。戦艦は金剛、榛名を除く八隻。軽巡、駆逐艦は半数。空母は加賀と飛龍の二隻。これが現在確認されている被害だ」

提督「今の所消えている艦娘は私が所持している艦娘以外という関連性以外、見つけられない。他に何か気付いた者は居ないか」

中将B「もしかすると、ですが……特に戦力の高い艦娘が優先的に消えていないでしょうか」

提督「私もそれを思った。だが、いまいち納得が出来ない。戦力の高い艦娘が優先的に消えるのであれば、戦艦や空母は全て居なくなっているはずだ。そして、駆逐艦でも特に戦力の高い島風や雪風、夕立……軽巡では球磨と名取は消えたが長良は消えていない。安易に戦力の高い艦娘だけとは思い難い」

少将「では艦娘ではなくて深海棲艦側に何かがあるのでしょうか? 報告によると、深海棲艦も艦娘と同じように消えているようですし」

提督「残念だが私ではその関連性が見つけれない。何か分かったら私に報告をしろ」

中将A「……ここまでくると、もはや世界が艦娘や深海棲艦を消しに掛かっているように思ってしまいますね」

提督「それはそれで結構だが、そうなると他国の事で心配になる」

中将A「他国……ですか?」



755: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/10(日) 23:10:19.69 ID:4ya6TxlLo

提督「現状、深海棲艦が海に蔓延っているおかげで我々の国は侵略されていない。だが、艦娘や深海棲艦が居なくなる事でこの国は他国に怯える事は無い。……どちらに転んでも痛いのだよ」

少将「ですが、我が国は負けません! 大和魂は必ずや勝利を導くでしょう!」

提督「そのような根拠の無い理論は嫌いだ」

少将「大将! その言葉は──!」

提督「では少将。艦娘六隻で百隻の深海棲艦を沈めれるか」

少将「それは…………」

提督「大国を相手にするという事はそういう事だ。士気を高めるのは素晴らしい事だ。だが、勝てない戦を勝てない戦法で挑むのは愚の骨頂と知れ」

提督「そして、その戦法によって生み出される被害と未来も考えろ。──例えば中将A、お前は錬度の低い駆逐艦を犠牲に戦っているな?」

中将A「はっ。効率良く敵を落とせる戦術だと思っております」

提督「確かに戦術面では良い。だが、戦略面ではどうだ」

中将A「…………と、言いますと」

提督「深海棲艦は無限と思わせる程に多い。いつまで続くのか分からない非常に長期的な戦いだが、果たしてその戦術でいつまで戦える」

中将A「…………申し訳ありません。私では答えれません」

提督「良い。戦術面ではお前のやり方は非常に良い。だが、戦略的な面で見るとやってはいけないやり方だ。そのようなやり方では必ず疲弊してくる。その内、艦娘が足りなくなって戦えなくなる」

提督「中将A、戦いとは勝つ事だけではない。退却も重要だ。戦線が保てれるのならば無理に押し進めなくても良い。無理に推し進めた分、必ずツケが返ってくる。疲弊した戦力では敵の精鋭を倒す事などできないだろう」

中将A「……はい。そのよな経験を一度しております」



759: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/10(日) 23:35:46.25 ID:4ya6TxlLo

提督「ふむ。では今の話はよく分かってくれると思う。我々の国はただでさえ小さい。そんな国が、使い捨てなどしていれば必ず足りなくなる。視野を広く持て中将A。先の事を見据えて行動せよ」

中将A「はっ! 有り難いお言葉、感謝します!」ピシッ

少将「…………」

提督「少将はまだ納得できないかもしれない。だが……そのような考え方もあると思ってくれたまえ。我々だけが特別ではないのだ」

少将「……納得は出来ませんが、憶えておきます」

中将B「少将! 貴様そのような事が言える立場か!!」

提督「よい中将B。私はこのように情熱的で怖いもの知らずの彼を気に入って招き入れた。──だが、このままお咎め無しでは他の者に示しがつかない」

少将「いかなる罰も受け入れます」

提督「良い言葉だ。──では少将、お前には三日間、私とチェスをしてもらう」

少将「……は? どうしてでしょうか」

提督「お前は戦いの腕は良いが、大事な部分を分かっていない。その三日間でその大事な部分に気付けなかった場合、この場へ呼ぶ事は無くなる」

少将「……了解しました」

提督「ただ呼ぶ事が無くなるだけではない。永遠に呼ぶ事が出来なくなるという意味でもある事を心得よ」

少将「な……!」

中将B「大将……それはいくらなんでも……」

提督「このくらい、こなしてもらわねばここへは留まれぬよ。それと、私の見込み違いでなければ少将はこの課題をクリア出来ると思っている。失望させるなよ、少将」

少将「──受けて立ちます!!」

提督「良い返事だ」

中将B「…………」

提督「正義というものは、人によって変わってくるものだ中将B。そこは憶えていて欲しい」

中将B「……深く考えてみます」

提督「うむ」

提督「こんな若造だが、三人共、私を──そしてこの総司令部を支えてくれ。上からの目線ですまないが、少しばかりこの若造に付き合ってくれないか」

……………………
…………
……



764: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/11(月) 00:01:07.35 ID:MD8A4934o

救護妖精「残った艦娘は軽巡と駆逐艦が半分。そして戦艦二隻と空母の大半、か……だいぶ少なくなってきたねぇ」

戦姫「あと、もう少しなのですね」

ヲ級「♪」スリスリ

提督「ああ。……すまない。お前達の提督にはなれなかったよ」

戦姫「いえ、それはもう叶っています」

ヲ級「!」コクコク

提督「む?」

戦姫「沖ノ鳥島海域にて一度、貴方は私達に指示を与えて下さいました。あれは、何よりも喜ばしい事でした」

戦姫「あの時、分かったのです。私達は『もう一度、艦娘の時と同じように提督と共に戦いたかった』と。貴方は、しっかりと提督として私達を扱って下さったじゃないですか」

提督「だが、私は海へ出ていない」

戦姫「それが普通です。普通、提督が指示を与えて艦娘がそれを遂行する。艦娘は、それに喜びと幸福を感じる。──それは、提督を失い、深海棲艦となった私達では得られる事の出来ない喜びです。艦娘の当たり前──その当たり前だからこそ、その時が来るまで気付きませんでした」

救護妖精「…………」

戦姫「きっと貴方の艦娘も、指示を与えたら喜びませんか?」

提督「…………なるほど。確かに心当たりがある」

提督「だが、お前達は本当にあの一度きりで満足したのか?」

戦姫「満足とは言えませんが、充分です。艦娘を解放するという話と、あの作戦指示を聞いた時には受け入れていました。例え私達が消える事になろうと、私達を艦娘のように扱って下さるこの方について行こう、と」

提督「……消えてしまった仲間は、どうだった」

戦姫「夏に降った雪のように消えていきましたが、その子達の最後は笑顔でしたよ。普段から笑わない子も、笑顔で消えていきました」



765: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/11(月) 00:15:35.22 ID:MD8A4934o

提督「寂しくはないのか」

戦姫「勿論、寂しさもあります。けれど、羨ましい気持ちもあるのです。あの子達は苦しまず、笑顔で深海棲艦という枷から解き放たれたのですから」

提督「……そうか」

戦姫「……これから、どうするおつもりで?」

提督「艦娘に真実を話す」

救護妖精「……まだちょっと早くない?」

戦姫「私もそう思います。どうして解放が先ではないのでしょうか」

提督「……私の我侭だ。最後は、艦娘達に嫌われて終わりたい」

救護妖精「嫌われてってそんな……」

提督「私は彼女達をも利用して人を殺している。解放する直前で話しても、ただの逃げだ。彼女達には、考える時間も与えてやりたい」

戦姫「……最後まで話さないという選択肢は無いのでしょうか」

提督「それは出来ない。それこそ彼女達の心を蔑ろにしている。……私を信じてくれているのだからな」

救護妖精「…………」

戦姫「…………」

提督「では……話しに行こう────」

……………………。



766: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/11(月) 00:33:53.51 ID:MD8A4934o

提督「……今から、お前達に言わなければならない事がある」

全員「…………」

提督「薄々気付いている者も居るかもしれないが、なぜ私が艦娘と同じ顔をした少女を匿っているか、についてだ」

金剛「…………」

提督「ハッキリと言おう。この世界に残された人類は、もはやこの国だけと言っても良いだろう」

瑞鶴「へ……? ど、どういう事?」

提督「艦娘というものは、元は人間だ。詳しい事は省くが、元となった人間の魂を複製して艦船に宿らせる。それが艦娘だ」

響「……それは、私達はその人達の偽者って事なのかな」

提督「偽者ではあるが、お前達の心は本物だ。そこは勘違いするな。──そして、その艦娘を製造する方法が一つの大国に渡り、そして大国の実験は失敗した。そのせいか、この世界の人間はこの国以外で確認されていないそうだ。そして、艦娘の沈んだ姿である深海棲艦が蔓延した」

天龍「ちょ、ちょっと待ってくれ! いきなり色んな事を言われても訳がわかんねーって! 俺達が倒してきた深海棲艦は、本当は艦娘とか人間だって言うのか!?」

提督「そうだ。だが、失敗によって人間が深海棲艦になったかどうかは分からない。艦娘が深海棲艦になるのは事実だ。実際にこの鎮守府に居る戦姫と空母ヲ級は、実際に艦娘の時の記憶を持っている」

榛名「私達は今まで……同族を殺してきたのですか……」

提督「それに関しては否定しておく。人に危害を加える悪霊を祓うのと変わらん。深海棲艦になった時点で、艦娘とは似て非なる存在だ」

提督「──前置きはここまでにしておこう。私は、そうして生まれてきた艦娘や深海棲艦を放っておく事が出来ない。だから艦娘の基となった子を助け、ここへ匿った。……それによって、それに対応した艦娘や深海棲艦は消えていったそうだ」

提督「そして、全ての艦娘を解放する為に、私は今までお前達を利用し、真実を隠し、そして人をこの手で殺した」

全員「…………っ」

金剛(提、督……?)

瑞鶴(人を……殺した……)



767: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/11(月) 00:46:05.03 ID:MD8A4934o

提督「お前達も、いずれ消えてしまうだろう。だから、これからは各自好きなように行動してくれ」

提督「端的に言うならば、深海棲艦は元々艦娘であると知っていながら、私はお前達に深海棲艦を沈めさせ続けてきた。そして、艦娘解放の障害になる者は全て殺してきた」

提督「私をどう思っても構わない。殺しても構わん。私はお前達にそれだけの事をしてきた。だが、殺すに当たって条件がある。私を殺した際は、解放した子の全てに普通の暮らしが出来るようにしてくれ」

提督「──以上だ。色々な情報を叩き付けられて混乱している者も居るだろう。その者は自分の部屋へ戻ってゆっくり考えてくれ」

全員「…………」

提督「…………」

神通「……すみません、提督」スッ

提督「なにかね」

神通「少し……部屋へ行って考えてきます……。よろしいですか……?」

提督「うむ。他の者も神通と同じであれば部屋へ戻れ。私に断りを入れる必要は無い」

全員「…………」

ガチャ──ゾロゾロ……──パタン

金剛「…………」

提督「金剛は戻らなくて良いのか? それとも、私に話でも?」

金剛「……提督に、聞きたい事があります」

提督「なにかね」

金剛「提督は、必要だから人を殺したのですよね」

提督「ああ。艦娘が二度と造られる事のないように、な」



768: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/11(月) 00:59:14.02 ID:MD8A4934o

金剛「やっぱり……。──では、私達に話さなかったのも、私達を気遣ってですよね」

提督「…………」

金剛「沈黙は肯定と取りますよ」

提督「……そうだ」

金剛「最後に一つ。──提督は、約束は破りませんよね?」

提督「死なない限りは、約束は守る」

金剛「でしたら、私のやる事は一つです。提督、銃を貸して下さい」

提督「分かった」スッ

金剛「……あと、目を瞑って下さい」チャキ

提督「…………」スッ

金剛「……提督…………」



769: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/11(月) 01:16:30.40 ID:MD8A4934o

──ちゅっ

提督(──は?)

金剛「…………」スッ

提督「……どういう事だ?」

金剛「I don't mind that everthing is a lie. As long as I love you forever. ──たとえ全てが嘘でも構いません。私が貴方を愛している限り、永遠に──私はこう言いました」

提督「…………」

金剛「ですので、私は何もかもが嘘でも構わないんです。私が貴方を愛している──それだけで、私は貴方について行きます」

提督「…………」

金剛「…………」

提督「馬鹿だな」

金剛「死んでも治りません」

提督「私はこれから死ぬかもしれないぞ」

金剛「地獄の底でもお供します」

提督「何も残らないぞ」

金剛「私の魂に刻まれます」

提督「それすらも消えるぞ」

金剛「提督を愛した事実は残ります」

提督「…………」

金剛「…………」

提督「……また負けたな」

金剛「また私の勝ちです」

提督「なぜ拳銃を借りた?」

金剛「ささやかな仕返しです。お返しします」スッ

提督「……そうか。殺されるかと思ったよ」スッ

金剛「大成功ですね」ニコ

提督「やられたよ」

金剛「……では提督、ご褒美が欲しいです」

提督「何が良いのかね」

金剛「耳、お借りしますね」スッ

金剛「────────」ヒソ

提督「……分かった。あいつには内緒にしてくれよ?」

金剛「はい。分かってますよ」ニコ

提督「……あとは、皆の意見を聞くだけだな」

金剛「……大丈夫ですよ」ギュ

提督「……そうか」ナデナデ

金剛「大丈夫……大丈夫です────」ギュゥ

……………………
…………
……



770: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/11(月) 01:38:07.78 ID:MD8A4934o

瑞鶴「一日考えたけど、私達が言える事は少ないわ。だから、提督さんに聞きたいの」

提督「なんでも言ってくれ」

瑞鶴「……提督さんは、どうしても人を殺さないといけなかったのよね?」

提督「そうだ。二度と艦娘が造られないようにな」

瑞鶴「次に、私達に黙っていたのも、私達を思っての事よね?」

提督「そうだ」

瑞鶴「だったら、私達が言える事は一つね」

瑞鶴「──ついて行くわよ。私達は皆、提督さんについて行く」

提督「…………そうか。金剛と同じだな」

雷「当たり前よ司令官! 私達は司令官に骨抜きにされちゃってるんだもの!」

龍田「雷ちゃんの言う通りよ~。良い意味でも悪い意味でも、ね?」

提督「まったく……お前達は馬鹿だな」

島風「そんなの、あの時から分かってる事でしょ!」

川内「提督が攫われた時かぁ。なんでだろうね。懐かしい感じがするよ」

榛名「……提督は攫われたのですか? 想像付きませんね……」

電「あの時は本当にビックリしたのです」

響「金剛さんが一番大変だったね。焦燥していたし」

金剛「ぅー……それだけショックだったのデース……」

榛名「くす……金剛お姉様らしいですね」

金剛「笑わないでくだサイ!」

提督「……何はともあれ、私は命拾いした。ありがとう、皆」

提督「──今日はもう遅い。各自部屋に戻って休んでくれ。後の事は明日話そう」

……………………
…………
……



789: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/11(月) 23:40:53.95 ID:MD8A4934o

コンコン──。

提督「入れ」

ガチャ──パタン

金剛「提督、お休みの途中にすみません。今、宜しいですか?」

提督「構わん」

金剛「良かった。──昨日のご褒美を受け取りに来ました」

提督「そうだな。……本当に良いのか?」

金剛「勿論です」

提督「今度こそ、消えたくなくなるぞ」

金剛「大丈夫です。私の魂に刻まれますから」

提督「……本当に好きだな、その言葉」

金剛「提督への愛ほどではありません」

提督「まったく……本当に、お前は私が好きだな」

金剛「はい! それはもう!」

提督「……火を点けよう」

金剛「はい──」

……………………。



790: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/11(月) 23:43:10.98 ID:MD8A4934o

「あ、ん……んちゅ、はぁ……んっ」
 以前と同じく薄闇の世界──。
 その中で、彼女と私は淫らな水音を出していた。
 お互いの口内を犯し、舌を絡み合わせる──。時にはその舌や唇を甘噛みしてイタズラもした。
「はぁ……ぁ、はぁ…………」
 前と同じく唾液を交換し合った私達の口は、初めてキスをした時と同じく銀の橋が出来上がっていた。
「ふふ……今日は、こんな物を持ってきました」
 その銀糸を満足気に眺めつつ、金剛は自分の胸の間に手を入れた。
 そこから取り出された物は、華奢な少女の小さな手にも収まる一つの小瓶──。それはどう見ても、瑞鶴に渡したあの小瓶と同じ物だ。一つ違う点を述べるなら、中身が一切減っていない、新品の状態だという点だろう。
 しかし、なんて場所に挟んでいるんだ。
「もう一つはお前が持っていたのか」
 胸の間に差し込んでいた事も踏まえ呆れたように言うと、彼女はにんまりと悪戯っ子の笑みを浮かべてきた。
 嫌な予感しかしない。
「最後は、提督と激しく愛し合いたいです」
 最後──。その言葉は非常に重々しい。
 なにせ間違っていない。私達がこうして肌を重ねるのも、きっとこれで最後になるだろう。
 最後だから、最高に激しくまぐわいたいという事か。
 コルクで栓をされた小瓶。そのコルクを引き抜くと、彼女は小瓶の口を唇へ当てた。
 が──何を思ったのか、中身を全て飲み干してしまった。
「……金剛?」
 苦味を堪えているのだろう。ギュッと瞼と手と唇を固く結び、震えている。
「あは……全部、飲んじゃいました……」
 目の端に涙を蓄えた少女。その表情は、どことなく不安に思っているようにも見える。
 いや、不安でない訳がない。一口──しかも三人で分けた量であれほどの効果だ。一瓶全て飲み干せばどうなるかなんて想像すら出来ない。
「何をやっているんだ……。ほら、口を開けろ。舐め取ってやる」
『私も以前と同じようになるから寄越せ』
 そういう意味だというのは、金剛ならば容易に想像が付くだろう。なにせ、今更舐め取っても何も意味が無いのだから。
 彼女は柔らかい笑みを浮かべ、目を瞑った。
 無防備で華奢な身体を抱き寄せ、今日で何回目かになるキスをする。
 舌を絡ませ、口内の粘膜を舐め上げ、歯の裏側さえもなぞる、窺う事のない、お互いを求め合うようなねっとりとしたキス──。
 今回の味は苦いが、私が唯一味わう事のできる甘いモノだ。充分に堪能させて貰わなければ。
 だんだんと身体が火照り、頭がくらくらしてくる。
 金剛に至ってはキスだけでは我慢ができないようで、身体を擦り付けてきている。
 水音が鳴る度に、同じ場所からくぐもった甘い吐息も聞こえる。
 背中を撫でるだけで、彼女の身体はビクリと跳ねた。同時に、とんがった甲高い声も出していた。
 どちらからともなく、口を離す。その頃には金剛の口内からはとっくに苦味が無くなっており、お互いの息は荒くなっていた。
 潤んだ瞳、紅く火照った頬、軽く汗ばんだ肌──。
 性に対してあまり関心の無い私でも、その姿は扇情的に思えた。
「──だめ、です……。提督、ごめんなさい……!」
 先に謝られてから押し倒された。
 私が仰向けで彼女が私の腰に座る形。以前繋がった時と同じく、女性上位の体勢だ。
「はぁ……! は、ぁぁあ……っあ、んぁ…………」
 我慢する事が出来ないのか、はたまた別の意味があるのか──金剛は熱くなっている股間を私の股間へ擦り付けている。
 艶めかしく動く腰はゆっくりと大きく、私の性器に血を溜めさせているようにも思えた。
「ていと、く……もう、良いですよね? ね?」
 金剛のその質問は、質問として意味を成していなかった。
 私の返答を聞くまでもなくズボンを下ろされ、男性の象徴が空気に曝け出された。
 その私のソレを、愛おしそうに撫でる少女。
 腫れ物を扱うかのように触れるその細い指が、少しばかり気持ち良い。
「元気が一杯です……んっ」
 息が掛かるくらいに顔を近づけ、チロリと一舐めしてきた。
「こら、汚い」
「提督のです。汚くありません」
 舌先で確かめるようにしていた動きが、その言葉と共に変化した。
 キャンディを舐めるように竿全体を舐め上げ、唾液でぬらぬらと光りだした。
 今度は亀頭部分をチラチラと舐めている。特に感覚の鋭いそこは、ザラザラとした舌の感触で、ビリッと電気のようなものが走った。
「あはっ……固いのに弾力があって、とてもビクビクしています……。こんな暴れん坊さんは、押さえ込まなければなりませんね……? ──あむ」
 遠慮がちに口を開いた少女は、一瞬の躊躇も無く先端を咥えた。
「ん……んん、ん…………」
 止めようかと思った時には既に、半分ほど呑み込まれていた。
 膣とはまた違った、生温かく柔らかい感触が襲ってくる。不意に彼女の頭を掴みたくなる衝動に駆られたが、それをなんとか抑えている内に、彼女は全てのモノを口の中に収めていた。
 喉奥に当たっているのか、先端が何かに当たっている。その状態で舐められ、裏筋に強烈な快感が走った。
 口の中の空気を抜いているのが良く分かる。私のモノ全体が柔らかい肉に包まれ、舌で攻められているからだ。
「んっぐ……」
「ぐっ──!?」
 突如、その攻め方が変わった。柔らかくねっとりとしていた口内が急に狭くなったのだ。
 口内の形どころか、舌のざらつきの一つ一つまでも分かるんじゃないかってくらいに、強く吸われている。
 そのせいで、今度は我慢が利かなかった。上半身を起こし、彼女の頭を両腕で包んで抱き締めた。



791: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/11(月) 23:44:15.99 ID:MD8A4934o

「んぅ……! ん、んふ……ん…………」
 それに一瞬だけ驚いたようだが、金剛はそれを皮切りに舌の動きを激しくした。
 裏筋だけでなく、亀頭、根元、カリ──全てを余すところ無く擦り上げ、押し付け、甘噛みも駆使して私を攻め上げる。
 声を抑えてはいるが、歯がギシギシと鳴りそうなほど食い縛っても声が漏れる。
 その声に喜びを感じているのか、特に声が大きく漏れたカリの部分への攻撃が中心となった。
 あまりの快感に身体全身が強張る。腕も抱き締めているというよりは締め付けているのではないかというくらいに力が入ってしまった。
 極力、痛くならないように抑え付けているが、その抵抗はどれ程のものなのだろうか。少なくとも、頭を全く動かせていない様子から相当な力が入ってしまっているのは分かる。
 それが流石に痛かったのだろうか、金剛の攻めが緩くなった。
 口の中は元の柔らかい状態となっており、舌も優しく触れるような動きになっている。
 余裕が生まれたので私の力も少し抜けたが、柔らかくも大きな快楽が襲う事となる。
 苦にならない、真綿で首を絞められているような、純粋に気持ちの良い快楽──。
 少しばかり呆けてしまう程に、それは心地の良いものだった。
「ん、ふ……まらでふよ……ひゃんと、出ひてくだはいね……?」
 半分、何を言っているのか分からない言葉で語り掛けた後、もう一度あの強烈な快楽が襲ってきた。
 いや、さっきのよりも強く荒々しい、強制的に絶頂へ導かそうとしているものだった。
 気の抜けていた私はモロにその攻めを受けてしまい、軽く悲鳴を上げた程だ。
 キュウキュウと痛いくらいに締め付けられ、背骨に氷の柱でも突き刺されたかのような耐え難い感覚に、またもや金剛の頭を締め付けてしまった。
 口の中の空気がほとんど無くなっているのだろう、先程から空気が細く狭い道を通る──膨らませた風船を指でなぞるような──音が聴こえる。
「あ、が……! ぐ、ぅ──!!」
 そんな強烈な快感に、免疫の少ない私が抗う術は無かった。
 グツグツと湧き上がる射精感を察知して必死に抑え込もうとしたが、それは彼女の舌技でいとも簡単にこじ開けられてしまった。
「────────ッッぁ!!!」
 尿道から彼女の喉へ快楽の塊が迸っていくのが分かる──。
 その快楽の塊を受けた金剛は、あろう事か受け止めるだけに留まらず、むしろ吸い出そうとしてきた。
 性器をストローか何かのようにして、中に入っている精液を吸い出している──。その追い討ちは、絶頂を迎えた私をもう一度果てさせる事となった。
 身体が痙攣したかのように震える。
 こんなに私を愛してくれている少女の口に欲望の塊を吐き出している背徳感が、それを増長させた。
 この前とは比にならないくらいの量が出た、と確信出来るほど精液を吐き出した。
 彼女の口一杯に広がった白濁としている液体は私の性器全体に広がっているのだ。確実に大量と言えるものだろう。
「ん、ちゅ……ちゅぅ……ちゅう…………ちゅぅっ……」
 勿体無い──そう言いたいのか、少女は尿道に残った精液を吸い出している。
 果てたばかりで敏感のそこは、それだけで淡い快楽が滲み出てきた。
「んふ……は、ぁ…………ごちそうさま、です……」
 結構長い時間を掛けて吸っていた金剛。
 肉棒から口を離し、見上げてきたその顔は、とても幸福に包まれた顔をしている。
「……無理をして飲まなくても、良かったんだぞ」
 ──書物でしか知らないが、精液は苦く、青臭く、とても飲み込めるようなものではないらしい。
 なのに、どうしてこの少女はソレを一滴残さず飲み込めたのだろうか。
「欲しかったから、です……はぁっ……」
 トロンと蕩けた笑顔で、金剛は答えた。
「愛しい提督の、精液が……子供の元が、お腹一杯になるくらい、欲しかった、です……。大好きな提督、ですから……。全然、嫌じゃないですよ……?」
 真っ直ぐ私を見つめる目──欠片も嘘偽りのない本心の言葉──。
 その言葉で、私の中で何かが動いた。
「……では、私もお前を満足させなければな」
「え……? ──きゃっ!」
 先程とは逆に、今度は私が金剛を押し倒した。
「私をあれだけ攻めたんだ。勿論、覚悟は出来ているよな?」
 自分でも口角が上がっているのが分かる。
 金剛ならば私がイタズラ好きだというのを前で分かっているだろう。だから、一切隠さずにいぢめる事にした。
「うつ伏せになって、お尻を上げるんだ」
「ん…………はい」
 素直に言う事を聞く少女。
 丸見えになった鮮やかなピンクの肉壷からは蜜が溢れ出しており、今にも私を欲しがっているように見える。
「どうやら金剛のココは、私を欲しがっていて仕方がないようだな」
「はい……。前みたいに、いっぱい──いっぱい突いて欲しいです……」
 辱めるつもりだったのだが、どうやら逆効果のようだ。
 少女はトロトロになっている淫靡な秘所を恥ずかしげもなく私に見せつけ、誘惑している。
 蝋燭の光でテラテラと輝くソコを自分の指で広げ、トロンとしている灰色の瞳で私を見詰めているのだ。
 愛おしい気持ちで一杯になり、私は少女に覆い被さった。
 期待したような顔をしていたので、頬を撫でて軽く焦らす。
 それも失敗に終わり、とても心地良さそうな笑みを浮かべている。
 しかし、その笑みも良く見ると艶かしい雰囲気がある。触れた頬は汗でしっとりとしていて熱く、息も荒く熱っぽい。
「挿れるよ──」
 添えるように、花園の入り口へ肉棒を当てる。
 触れた瞬間、金剛の身体がビクリと震えた。期待をしているのか恐れなのかは分からないが、表情を見る限りでは期待が大体を占めているようだ。
「ん──くぅんっ!」
 挿れた瞬間、以前とまったく違うと分かった。
 前は少し固かった肉壁が柔らかくねっとりと締め付け、前よりも熱くなっている。
 それに、前よりもなぜか気持ち良さが強い。キュウキュウに締まっているのは確かだが、それ以上に何か心が満たされている気がする。
 けれど、その考えもすぐに吹き飛び、金剛の秘所に集中する。膣の肉が、私のソレを呑み込まんと吸い付き、蠢いていて、ゆっくりと押し進んでいくと、簡単に沈んでいく。
「ぁー……っあ……あぁぁ……っ」
 奥へ入っていく感覚が良いのか、金剛は小さく痙攣しながらも私を受け入れていった。



792: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/11(月) 23:44:58.16 ID:MD8A4934o

 たっぷりと時間を掛けて、金剛のお尻と私の腰をくっつけた。
 奥の奥まで届いているのが自分でも分かる。突き挿れられている少女は分かっているのかいないのか、シーツをギュッと握り締めて、荒く深い呼吸を繰り返している。
 挿れた時と同じくゆっくりと引き抜こうとするが、咥え込んで放さないとでも言うかのように放してくれない。それでも無理に腰を引くと、肉棒から背骨を通って脳に直接快楽が送られてきた。
 電気のようにビリビリと痺れそうな快感──。それだけで、果ててしまいそうだった。
 少しだけ昂ぶった情欲を治めてから、再度金剛の中へと侵入する。
「……っぁ! ──ぁあ……ぅんっ!」
 再び電気が走り快楽の虜にされそうだったが、その金剛の嬌声に少しだけ引っ掛かった。
 確認する為に、また引く。
「ぁぁ……はぅ……んっ! は、ぁ……」
 ギリギリまで引き抜いた所で、ぐちょぐちょの奥へまた沈み込ませる。
「んん……っぅ! ひ……ぁぁ……ぁあっ──は、あぁぁ……」
 ……なるほど、金剛の弱い所が分かった。
 トロトロの肉壷から程々に引き抜き、声になっていない声を上げた所で止める。
 そして、その部分を突き刺すように、鋭角で肉棒を押し付けた。
「きゃぅッ!? ひ、やぁあ!! あ、あぁぁっ──か、ひ、ぁ……っ!!」
 反応は一気に変わった。
 締め付けている程度だった膣は痛いくらいに締め上げ、その部分を突く毎に少女は甲高い悲鳴で啼き続けている。
 砂糖や蜂蜜よりも格段に甘い嬌声が、止め処なく溢れ出る愛液の音が、この部屋に響き渡る。
 瞼をギュッと閉じ、身体は痙攣させ、握っている拳も固く閉じられているのが分かる。
 前はこんなにも乱れなかった。媚薬で欲情し切った身体と、弱い所を攻められ続けてこうなっているのだろう。
 何度も何度も注挿を繰り返す。
 私自身も気を抜けば果ててしまうくらいになっており、もはや意地で堪えているだけだ。
 だが、その意地もそろそろ限界が近付いてきた。
 ドロドロと熱く爆発しそうな欲望が、もう既に根元までせり上がってきているのだ。
 さっきから絶え間なく啼き続けている金剛。もう少しその姿を見ていたかったが、そろそろ終わりにさせた方が良いだろう……。
 そう思い、少しばかり小振りなお尻を掴み、今まで攻めていた部分とはまた違った甘い声を出していた場所──蜜壷の最奥へと一気に貫いた。
「──ひゃぅっ!? ぁ、あああぁ……ぁあー……! は、ぁあー……っあぁー……!」
 グリグリと押し付けるように、一番奥を突いたまま腰を動かす。
 痙攣しながらも絡み付いてくる肉壁が、とても気持ち良い。いつまでもこうしていたいと思える程だ。
 けれど、それは長く続かなかった。根元まで来ていた欲望は、もうカリ付近まで来ている。
 限界だ──。そう思って、金剛の華奢な身体にピッタリとくっつき、強く抱き締めた。
 抱き締めた影響なのか、膣がまた痛いくらいに締め上げてきて、私は我慢するのを止めた。
「あぁぁ──ッッ! ────っぁ、ぁぁぁあああッッッ!!!」
 今までで一番大きな甘い悲鳴を上げて、金剛も果てた。
 ドクンドクンと、まるで血液を送り出す心臓みたいに精液を吐き出す。
 自分でも、こんなに出るものなのかと思うくらいの量が出ている。射精が止まらない。
 絶頂が長い──。頭の中に直接麻薬を突っ込まれたかのような感覚だ──。
 ────長い長い射精が終わり、やっとまともな思考が出来るようになった頃には、とんでもない疲れが身体に圧し掛かってきた。
 金剛はまだこっちへは戻ってきていないようで、虚ろな目でぐったりとしている。
 私は、彼女が落ち着くまでこのまま抱き締めておく事にした──。


「──てぇ……とく?」
「目が覚めたか」
 金剛が起きたのは、半刻ほど経ってからの事だった。
 あのままの体勢では辛いだろうと思って横になったのは良いが、それでも一切反応を示さなかったので少し不安になっていた。だが、それも杞憂で終わったようだ。
「私……? ──あ、私……提督と…………」
 最後の方は小さくて何を言っているのか分からなかったが、大体の予想はついた。
「──えへへ」
 子供のように、無邪気な声で笑ってくれた。
 その笑い方が妙に愛おしくて、ついつい腕に力を入れてしまった。
「ん……ずっと、抱き締めてくれていたのですね。嬉しい……」
 そっ、と手を重ねてくれる金剛。
 優しく、柔らかく、私の凍り付いてしまった心を溶かすかのような、慈愛に満ちた温かみ──。
 その手は、体温だけではない、そんな温かみが確かにあった。
「──ありがとう」



793: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/11(月) 23:45:30.51 ID:MD8A4934o

「え?」
 本当にポロリと、零れ落ちた言葉。当然、金剛は戸惑った。
「あの、提督?」
 少女が説明を求めてきている。けれど、私はそれに答えなかった。少しだけ困らせたかったからだ。
 その代わり、少しだけ腕に力を込める。
 言葉の無い返事──。勘の良い彼女はこの意味に気付くだろうか?
「あのぅ……?」
 今まで聴いた事のない、困った声。どうやらこの子は気付かなかったようだ。
 それでも良い──いや、それが良い。わざわざ消えたくなくなるような事をする必要はない。
 彼女は消えても良いように、覚悟を決めて今夜この部屋を訪れたのだ。それを踏み躙るのは良くない事だ。
 だが、ヒントがコレだけでは些か酷いというものだろう。
「秘密だ」
 耳元で、もう一つのヒントを与えた。これで気付いてくれないのであれば諦めよう。
「…………?」
 いつもの勘の良い少女はどこへ行ったのやら、今日はとことん気付いてくれない。
 きっと疲れていて頭が回らないのだろう。いや、もしかしたらまだ頭の中が空中を散歩している気分なのかもしれない。
 私は諦めて、これ以上ヒントも答えも出す事なく終わらせる事にした。
「んぅ……? ──あっ」
 金剛が身じろぎをした事で、繋がっていた金剛と私の部分がズルリと抜けてしまった。
「あ、あぁぁ……こ、これは……」
 さっきの困った声に焦りを加えたような声を、抱き締めている少女が零した。
 一体、何があったのだろうか?
「せ、折角の提督の子種が……溢れちゃってます……。うぅ……止まらないです……。お腹一杯だったのに、どれだけ出ていっちゃうですかぁ……」
 ……どうやら零れたのは声だけではないようだ。
 腕の中の少女は悲しそうな声をあげている。
 まったく……本当にお前は私の事が好きなのだな……。
「ぅー……」
「ほら、代わりにキスをしてやるから」
「ほ、本当ですか!?」
 金剛はすぐに機嫌を直して身体ごと振り向いてきた。
 本当は金剛が落ち着いたらキスをしようとしていたので、代わりでもなんでもなかったりする。
「ほら」
「ん──ちゅっ」
 軽い、触れるだけのキス。たったそれだけだが、薄闇に浮かぶ愛おしい少女は満足気に顔を綻ばせてた。
 ……三つ目のヒントになってしまったが、気付く様子がない。本当に今の金剛は頭が回らないようだ。
「今日は毛布を掛けて、このまま寝てしまおう。こんなにクタクタになったのは久し振りだ」
 本音はこのまま放したくないからなのだが、それも言わないでおこう。
「はい……。私も、ずっとイキっぱなしでクタクタです」
「む? いつからイッていたんだ?」
 少し気になったので聞いてみた。金剛が果てたのは最後の一度ではなかったのか。
 金剛は頬を軽く引っ掻きながら眉をハの字にして、口元だけ笑いながらこう言った。
「口で奉仕している時に軽く三回程……。あと、先っぽだけ挿れられてから終わるまでずっとです。気を失うかと思いました」
 ……あの長い間ずっとか。道理で愛液が止まらない訳だ。
 快楽も延々と続けば地獄と聞いた事があるが、まさにそれだったのではないだろうか。
「でも、凄く幸せです。あんなに激しくしてくれて、あんなに愛してくれて。そして今、こうして抱き合っています。もう、幸せで死んじゃうかもしれないくらいです」
 さっきのハの字と違って、今度はとても落ち着いた、穏やかな表情でそう言った。
 心配しなくても良さそうだ。彼女が満足してくれているのなら、それで私も幸せな気持ちになる。
「──それでは、そろそろ寝ようか」
 でも、もう少しだけ強く抱き締めておいた。もっと、彼女を感じていたかったから。
「────はいっ」
 春の太陽を思わせる明るい笑顔で、金剛も抱き締めてきてくれた。
 ああ……心が満たされる……。こんなにも幸せな気持ちになったのは初めてではないだろうか……。
 そっと目を閉じると、一気に睡魔が襲ってきた。
 こんなにも早く意識が落ちるのも、初めてだな──。
 腕の中の愛おしい少女の優しさを、温もりを感じながら、私の意識は夢の世界へと旅立っていった────。

……………………
…………
……



797: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 03:26:11.83 ID:oeEYDgjwo

提督「……さて、これで詰みだ」コト

少将「…………」

提督「戦力が強いからと言って、簡単に重要な駒を進め過ぎだ」

少将「……助言、でしょうか? 最終日だからといって……」

提督「独り言だ。気にするな。そら、再戦だ」

少将「…………」

提督「時に少将。素手同士の人間が百人居たとしよう。その中から五十人ずつの二勢力に分かれて戦ったとする。どっちが勝つと思う」

少将「……この会話になんの意味があるのでしょうか」

提督「意味など無い。ただの雑談だ。さあ、答えてみろ」

少将「…………強い者が多い方が勝ちます」

提督「うむ。正解だ。ならば、負けた側の視点で語れ。お前ならば次に戦う時、どうする」

少将「武器を手にして戦います」

提督「うむ。ならば、その戦いで負けた側に立つと、お前ならばどうする」

少将「……相手よりも強い武器を揃えます」

提督「そうきたか。ならば、武器は相手と同じ物しか揃えれなかったらどうする」

少将「錬度を高めます」

提督「ふむ。では、相手も同じ錬度で戦いの準備をしてきた。どうする」

少将「それは……決着が付かないのではないでしょうか」

提督「いや、しっかりと付く」

少将「……………………」

提督「…………」

少将「戦い方……いえ、戦術や戦略を駆使すれば勝てる、でしょうか」

提督「その通りだ。──さて、雑談はここまでにしておこう。続きをするぞ」

少将(戦術や戦略……)

……………………。



798: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 03:38:00.06 ID:oeEYDgjwo

少将(ちっ……! またナイトがビショップに倒された…………ええい、そんなもの気合で迎撃すれば良かろう……!)コト

少将(それに対してこっちのビショップはあまり役に立っていない……いや、役に立てないよう牽制されている……)

少将(確かに私は戦術や戦略が苦手だが……どうしてここまで違いが出る? 一度くらい勝ててもおかしくないだろう……)コト

少将(まったく同じ駒だというのに、どうして……。────!!)ハッ

少将(まったく同じ……?)

少将(…………さっき、この人が言ったな。人数も武器も錬度も同じ勢力が戦っても、しっかり決着が付く、と……)

少将(戦術や戦略によって結果は変わってくる。勿論、それは戦い方も含めてだ)

少将(先日、この人と中将Aが話していたな……。中将Aが戦術的に戦っていて、戦略的に考えているのがこの人……じゃあ、私はなんだ……? 戦略……いや、そんな高尚なものじゃない。戦術……いや、それも違う気がする。戦術とは戦闘の手段を考えるものだ。なら……私は、戦法か?)

少将(私は艦娘の士気を高めて突撃させ、そうして敵を倒してきてここまでやってきた……。それに間違いはないはずだ。だが、戦術的にはどうか……戦略的にはどうか……)

少将(戦術的……そう。今この人にチェスで負けているのが戦術的に負けているという証拠。では戦略的にはどうだ? もっと広く戦を見れば……)

提督『──では少将、お前には三日間、私とチェスをしてもらう』

少将(そうだ……そもそもなぜ、この人は私にチェスを……)

少将(…………!! この戦いは、盤上だけのものではない? ではもっと広く……もっと広い視野で……)

少将(────そうか。そういう事か。そういう意味だったのか)

提督「……どうした、少将。手が止まっているぞ」

少将「…………大将殿。今、大将殿の問いに答えても良いでしょうか」

提督「ほう。なんと答える」



799: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 03:48:26.98 ID:oeEYDgjwo

少将「大将殿が私に期待した答えは『艦娘と深海棲艦、味方も敵も戦力が同じ』という事ですね?」

提督「その通りだ」

少将「そして、このチェスと同じように、戦い抜けば艦娘は強くなり、そして倒されれば戦力から消えてしまう。けれど、ただ倒すだけでは強くなれない。例え強くても活かせなければ勝つ事が出来ない」

提督「ほう」

少将「大将殿が期待していた答えは『敵味方はどちらも特別でない、一つの戦力』という事。そして、気付いて欲しかったものは、このチェスの駒と同じく『いくら強い駒を持っていようと、それが活かせなければ勝つ事が出来ない』という事ですね」

提督「──おめでとう。概ね正解だ」パチパチ

少将「概ね、ですか?」

提督「答えはそれで構わない。だが、気付いて欲しかったものは『どんな戦力・戦況でも、詰みでなければやり方次第で勝ちを見出せる』という事だ。本当はチェスでも囲碁でも将棋でもなんでも良かった」

少将「……何度チェックを掛けられても、チェックメイトを取れば勝てる、という事ですか」

提督「大まかに言えばそうなる。そこに加えて味方を大事にしてくれれば、お前はこの軍で最も爆発力のある将となるだろう」

少将「────はい! 大将殿! 大変有り難いご指導、感謝します!!」ピシッ

提督「うむ。お前の首を刎ねずに終わって良かった」

少将「ほ、本気だったのですか?」

提督「残していれば我が国にとって癌となるからな。だが、初めにも言ったように、少将はこの課題をクリア出来ると思っていた。刎ねる事はまず無いと思っていたよ」

少将「はは……大将殿には敵いませんね……」

提督「私は、私の秘書に負ける事があるがな」

少将「……なんと」

提督「まったく。提督思いの子を貰ったよ」

提督「そんな子達が消えていくのが、私は悲しい……」

……………………
…………
……



800: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 03:58:40.43 ID:oeEYDgjwo

提督「さて、お前達も知っての通り、既にほとんどの艦娘を解放した。残っているのはほぼお前達だけだ」

金剛「という事は……」

提督「そうだ……」

提督「──今度は、お前達の原典が解放される番となってしまった」

全員「…………」

提督「お前達は皆、非常に提督思いの良い子ばかりだ。私の自惚れだが、二度と会えなくなってしまうのは心苦しいと思ってくれている者も居るだろう。だが、このまま放置する事はできない。賽は投げられている。この中の誰かが、解放──いや、消えなければならない」

瑞鶴「消えちゃう……」

提督「よって、まずは志願制にしようと思っている。……酷なやり方ですまない」

全員「……………………」

提督「今回の人数は二人だ。……誰か、居るか」

全員「…………」

提督「…………」

全員「……………………」

提督「…………」

全員「………………………………」

提督「…………居ないようだな。では、仕方がな──」

龍田「……はい」スッ

提督「龍田……」

龍田「いえ~……。だって、誰かが申し出ないと……提督さんは困っちゃうでしょ~……?」

龍田「でしたら……私は志願しちゃいます。なるべく提督さんを困らせたく、ないもの……」



801: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 04:07:28.92 ID:oeEYDgjwo

天龍「だ、だったら!! 俺も志願する!」

提督「天龍も……良いのか?」

天龍「へっ! 俺だって龍田と同じだ。提督が困るってんなら、俺が立候補してやるよ」

天龍「……普段、他の奴らと比べてあまり役に立てなかったんだ。これくらい、役に立ちたいんだよ……」

天龍「──あと、龍田一人だけじゃあ心配だからな! 俺が付いていてやらないと!」

提督「……ありがとう、天龍。龍田、良い姉妹を持ったな」

龍田「私の自慢の天龍ちゃんですもの。ありがとうね、天龍ちゃん」

天龍「ふふん。俺と龍田はいつも一緒だ!」

提督「本当、ありがとう……」

龍田「あ~、でも、一つだけ我侭を言って良いかしら」

提督「なんだ?」

龍田「提督さんの~、キスが欲しいな~」

全員「!!」

金剛(な……)

瑞鶴(なんですって!?)

響(…………)

提督「……分かった。最後だからな」

天龍「あ、ちょっ……! ズリィぞ龍田だけ!! 俺にもしてくれよ!?」

金剛・瑞鶴・響「!!!」

提督「天龍もか。意外だな」

天龍「ふん! 俺だって空気くらいは読めるんだぜ? ……でも、最後くらいは……な?」

提督「そうだな……分かった」

金剛・瑞鶴・響「…………!!」

龍田「うふふ……天龍ちゃんと一緒~」スッ

天龍「う……は、恥ずかしいな……」スッ



802: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 04:31:23.21 ID:oeEYDgjwo

提督「……準備は良いか?」

龍田「は~い。いつでもどうぞ」スッ

天龍「お、俺もだ……! 来るなら、来い!」スッ

提督「今までありがとう、龍田、天龍」チュ─チュ

龍田「……へ?」

天龍「お、おでこ?」

龍田「唇じゃないの~……?」

提督「……残念ながら、唇は特別な相手にだけする事にしたんだ」

金剛・瑞鶴・響(…………誰?)

龍田「あら……あらぁ……」

天龍「…………ちっ。それなら仕方ねーな」

提督「すまない」

龍田「良いのよ~。なんとなく分かってたもの~。──あー、すっきりしたぁ~」

天龍「俺はスッキリとはしていないけどな。教えてくれよ。誰なんだ?」

提督「それは解放する当日になったら教えよう。私にも羞恥心くらいはある」

天龍・龍田「はーい……」

提督「解放は明日だ。それまでの間、ゆっくりと休んでいてくれ──」

……………………
…………
……



820: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/12(火) 23:46:50.25 ID:oeEYDgjwo

金剛(特別な相手……一体誰なのでしょうか……)スッ

金剛「…………」

金剛(いえ、訊くのは野暮というものですね……。それに、明日は天龍や龍田が居なくなってしまいます。今夜提督を訪ね

る権利は、あの二人にあるです。シャワーを浴びて寝てしまいましょう)スタスタ

……………………。

瑞鶴(提督さんの特別な人……気になる。相手は誰? 金剛さん? 響ちゃん? それとも別の誰か? …………私だった

ら……嬉しいなぁ)スッ

瑞鶴「…………」

瑞鶴(でも……誰なのかを聞いた所で、私はどうするつもりなんだろう……。すっきりしたいだけ? ……ううん。私を選

んでくれていないって分かっちゃったら、私、どうなるか分かんないわね……。でも、もし私だとしたら……?)

瑞鶴「……………………」

瑞鶴(……ダメダメ。さっきから同じ考えがループしてる。シャワーでも浴びて寝よう。それに、天龍や龍田が提督と一緒

に居たいって思ってるかもしれないんだし……。──うん、そうしよう!)スタスタ

……………………。

響「…………」スッ

響(……金剛さんか瑞鶴さん、どっちかなんだろうね。大穴に大穴で私……という可能性もあるかもしれないけど、それは

夢の中の話だね)

響(それに、天龍さんや龍田さんが来るかもしれない。私がその時間を奪っては……。──うん、シャワーでも浴びよう)

トテトテ

……………………。



821: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 00:02:48.74 ID:3/RfeVNEo

ガラッ──。

シャー……。

響(あれ? こんな時間に誰か来てるのかな)

金剛(あら、また誰か来ましたネ)

瑞鶴(こんな時間に……普段からこんなにシャワー室って使われてるのかしら?)

響「……隣、失礼するね」

金剛「その声は響ですか。こんな時間にどうしたデスか?」

響「ん、ちょっと眠れなくてね。シャワーで身体を温めようと思ったんだ」

瑞鶴「ふぅん。私達と同じね」

響「二人もなのかい?」

金剛「そうデス。私と瑞鶴も眠れなくてシャワーを浴びてマース」

瑞鶴「うんうん」

響「不思議な事もあるものだね。三人一緒なんて」

金剛「理由なんて色々とありマース」

金剛「──特に、私達三人はそうですよネ?」

瑞鶴「……そうね。私達三人は、ね」

響「なるべくバレないようにしていたのだけど……まさかバレていたとはね」

瑞鶴「いやぁ……バレバレだと思うわよ?」

響「……え?」

金剛「何日か前を境に、響の様子が変わりましたものネー」

瑞鶴「うんうん。急に雰囲気がちょっと大人っぽくなったっていうか、なんというか」

響(絶対にあの日の事だ……。そうか……だから雷はあの夜に……)



822: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 00:18:38.11 ID:3/RfeVNEo

瑞鶴「変わったといえば、金剛さんもなんだか変わったわよね。幸せそうにしてるっていうか……」

金剛「んー……私も変わったと分かりましたカー……。確かに、とっても幸せな事があったデス」

響「……差支えがなければ、聞いても良いかな」

金剛「んー……。……………………シークレット デース! こればかりは言う訳にはいきまセーン!」

響(司令官絡みだね、絶対)

瑞鶴(絶対に提督さんと何かあったわね)

金剛「ただ、一つだけ言うのなら……私は、提督と離れ離れになる覚悟が出来ました」

瑞鶴・響(え?)

金剛「──さて! 私のシャワータイムはここまでデース。お先に失礼しマース」

響(別れる覚悟が出来た……? それってつまり、司令官は金剛さんを選ばなかったという事……なのかな?)

瑞鶴(……どうなんだろう、今の言葉。金剛さんの考えてる事っていまいち分からないのよね……)

響(でも……)

瑞鶴(もしかしたら……)

瑞鶴・響(私達にもチャンスはある……のかな)

……………………
…………
……



823: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 00:33:57.60 ID:3/RfeVNEo

天龍「おお、すっげぇ……なんだこれ……」

提督「機械には触らないでくれよ? 何が起きるか分からないからな」

龍田「は~い。天龍ちゃんの事、見張っておくわね~」

天龍「うぐっ……触りたくなったから何も言えねぇ……」

利根「やあ提督! そちらの二人はどうしたんじゃ?」

提督「二人は天龍と龍田。私の鎮守府で頑張っていた良い子だ」

利根「ほほう。提督が褒めるという事は、それだけの事をしてきたのかのう」

天龍「別に……俺達は基本的に遠征をしていただけで、出撃はあまりしてないぜ?」

龍田「あとは哨戒くらいかしら~」

提督「遠征や哨戒も立派な仕事だ。出撃ほど目立ちはしないが、同等の仕事でもある」

利根「ほう。そうなのか」

提督「遠征は鎮守府を運用する資材を集める仕事だ。これが何と何も始まらない。そして哨戒は、出撃している時に母港を護る役割だ。空き巣を狙われて帰る母港が無くなったらどうしようも出来ない」

利根「なるほどのう。うむ! お主達は立派な仕事をしておるではないか! もっと胸を張ったらどうじゃ?」

龍田「本当はもっともーっと役に立ちたかったって言えばいいのにねー、天龍ちゃん?」

天龍「うっせえ!」

龍田「ふふっ。怒っちゃやーよ」

提督「では三人共、夜になったらまた来る。それまでの間はここの事を頼んだ」

……………………
…………
……



825: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 01:18:41.23 ID:J+Lumwglo

提督「──いまや艦娘の数は三十にも満たさない。これは深刻な問題だ。よって、私は旧式の軍艦を使おうと思っている」

中将A「それしかないでしょうな」

少将「私も異論はありません」

中将B「私もです」

提督「よし。では試験的にお前達三人に旧式の軍艦を持ってもらいたい。構わないか?」

少将「私達三人ですか? 大将殿はどうなさるおつもりで?」

提督「噂でも知っていると思うが、私は身体が弱い。それ故に、私がいつまでも海軍の指揮をしていては、元帥三名の事故と同じ轍を踏む事となる。これから先はお前達三人が主役となって海軍を動かす事となるだろう。今回はその為だと思ってくれ」

全員「はい!」

提督「では、その内容について話し合おう。まず軍艦の種類などだが────」

……………………。

提督「──さて、今回の解放する子はこの四人だな」

救護妖精「天龍、龍田。今までありがとね」

天龍「……ああ。俺はいつでも良いぜ」

龍田「私もよー。覚悟は出来てます」

提督「────天龍」

天龍「はいっ!」ピシッ

提督「お前は最初、死ぬまで戦わせろと言っていたな」

天龍「え? あ、ああ……」

提督「あの時は叱ったが、お前のその勇気と気力は見事だった。あれは正直、羨ましくも思ったよ。そして、主に駆逐艦の皆を引率して遠征に出掛けていたな。あの時の駆逐艦の子達は、皆笑顔でお前について行っていた。戦闘では敵わない部分を遠征で補おうとしてくれていたのは良く分かっていたよ」

天龍「…………」

提督「龍田」

龍田「はいっ」ピシッ

提督「お前も天龍と同じく、危なっかしい戦い方をしていたが、自分よりも能力面で格上の敵を倒す事についてはお前の右に出る者は居なかった。それを止めさせたのは、お前の身体を思っての事だと──まあ、これはお前ならば気付いていただろうな。……傷付けば痛い。そして、私もお前達が傷付く姿は見たくなかった。今まで、我侭に付き合わせてすまなかった。そんな私を慕ってくれて、私は幸福者だ」

龍田「…………」



827: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 01:30:37.46 ID:J+Lumwglo

提督「……天龍、龍田、両名を現刻をもって鎮守府から除籍とする」

提督「二人共、今まで私の為に必死になってくれて、ありがとう──」

天龍「──ああ! 俺達はここで消えちまうけど、提督も頑張れよな!!」

龍田「私達はお先に地獄で待ってますね。──大好きですよ、提督さん」

天龍「俺も大好きだぜ提督!」

提督「ああ。ありがとう、二人共……」

救護妖精「…………」カチッ

天龍「お、おお……足が……。本当に消えてってらぁ……」

龍田「随分とゆっくりなのねぇ」

提督「…………」ポン

天龍「……提督」ナデナデ

龍田「提督さん……」ナデナデ

提督「…………」

天龍・龍田「────今まで、ありがとう」

スゥッ──。

提督「…………」

提督「…………」スッ

那智「……逝ってしまったか」

提督「ああ…………」

那智「貴方も、悲しい顔をするのですね」

提督「……生憎と、鉄仮面ではないのでな」

救護妖精「…………私はこの二人を介抱するから、提督は……」

提督「……ああ。天龍と龍田を介抱する」

……………………。



828: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 01:48:54.43 ID:J+Lumwglo

提督「…………」

天龍・龍田「…………」タジ

天龍(お、おいなんだこいつ!? 逆らったら大変な事になるって頭ん中で警報が鳴り響いてんだけど!?)ヒソ

龍田(奇遇ね、天龍ちゃん……。私、この人には絶対に頭が上がらないと思うわ~……)ヒソ

提督「……天龍と龍田だな」

天龍「そ、そうだ……けど……」

龍田「な……何かし──何でしょうか……?」

提督「…………」

提督「いや、確認しただけだ。……直にスープが出来る。それが飲み終わったら状況を説明しよう」

天龍(なんだ……? 一体こいつは何なんだ……?)

提督「ああ、それと」

龍田「は、はいっ!」

提督「…………無理をして敬語を使わなくて良い。話しやすい口調で話してくれ」

天龍「お、おう……?」

龍田「…………?」

提督「…………」

提督(……初めて出会った時と少し違うが、ほとんど変わらない……か)

提督「……………………」

……………………。



829: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 02:02:53.49 ID:J+Lumwglo

天龍「へぇー……俺達が艦娘のベース、ねぇ」

龍田「現実味の無い話ね~……」

北上「そう? あたしは結構信じちゃうかもね」

五十鈴「私は信用できないわね。ていうか、何? こんな布切れを女の子に着させるとか、変態か何かなのアンタ?」

救護妖精「人によって体型が全然違うから、こういうものしか用意できなかったんだよ」

五十鈴「貴女に言ってないわ。私はコイツに言ってるの。見た所、ここで一番偉いんじゃないかしら?」

提督「そこの救護妖精が言ったように、そういう物しか用意出来なかったんだ。鎮守府に来ればまともな服を用意する」

五十鈴「ふん。どうだか。そうやって言い包めて好き放題しそうなんだけど」

提督「…………」ジッ

救護妖精(あーあ……大丈夫かなこの子……)

五十鈴「どうなのよ。言ってみなさいよこの変態」

天龍「おい……止めておいた方が良いと思うぞ……」

那智「私からも警告しておく。それ以上暴言を吐かない方が良い」

五十鈴「はぁ? なんでよ。こんな変態の言う事を聞くくらいならここにずっと居た方がマシだと思うけど?」

龍田「私も止めておくけど、後の事は知らないわよ~?」

五十鈴「ふん。別に良いわよ」

提督「そうか。ではそのようにしよう。全ての子を助けた後にこの施設を完全に破壊し、簡単には見つからないよう出口を全て埋めるのだが、残念だ」

五十鈴「……へ? ちょ、ちょっと! どういう事!?」

那智「どうもこうも、先程から説明を受けていただろう。話を聞かなかったのか?」

五十鈴「あんなもの信用出来る訳ないでしょ!!」

北上「はーい。あたしは信じる派でーす」

天龍「俺もだな。この人はなんだか信用できる」

龍田「私も~。これでも結構疑り深い性格だと思ってたんだけどな~。この人の言ってる事は簡単に信用しちゃった」

五十鈴「う、嘘でしょ……?」

提督「どう思うかはお前の自由だ。推奨はするが、来る来ないも自由だ。お前がこの地下で一生を過ごしたいと思うのならそうすれば良いだろう」

五十鈴「……勝手に出てやる」



831: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/13(水) 02:13:43.56 ID:J+Lumwglo

那智「私ともう一人の見張り件監視役が見逃さんぞ。その場合は縛ってでも外に出さない」

提督「それでも無理矢理外に出た場合は……説明したように大混乱などが起きる前にお前を処分する事となるだろう」

五十鈴「ふ、ふん! そんな事、出来る訳が──」

提督「…………」

五十鈴「な、い………………?」

提督「…………」ジッ

五十鈴「──ひっ!?」ビクッ

那智(やっと気付いたか)

提督「もう一度だけ言おう。どうするかは、全てお前の自由だ」

五十鈴「…………ご、ごめんなさい……」ガタガタ

提督「何に対して謝っている」

五十鈴「暴言を吐いて……信用しなくてごめんなさい!!」

提督「そんな事はどうでも良い。信用出来ないのは当然だ。それと、こんな状況なら暴言の一つでも吐きたくなるだろう」

五十鈴「え……? え…………?」ビクビク

提督「……すまない。少し気が立っていた」スッ

五十鈴「っ! …………?」ナデナデ

提督「…………」ナデナデ

五十鈴「…………」ナデナデ

提督「……さて、前回助けた子達を鎮守府に案内しよう」スッ

那智「…………すまん、私には掛ける言葉が見つからん」

提督「……その言葉だけで充分だ。ありがとう」

……………………
…………
……



845: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/15(金) 22:09:55.86 ID:RTIXBGNGo

提督「……また、嫌な日が来てしまった」

全員「…………」

提督「その言葉だけでもう分かってくれていると思う。……今回も、志願制だ。だが、人数は特に定めない。志願する

者だけにしよう」

神通「あ、あの……提督」スッ

提督「なにかね」

神通「今の今まで聞けませんでしたけど……天龍さんと龍田さんは…………最後、どうでしたか?」

提督「…………」

神通「ごめんなさい……でも、どうしても気になりました……。二人は、私達のルームメイトでもありましたから……



提督「……『今まで、ありがとう』と、一言。最後まで私に気を遣って、笑顔で去って逝ったよ」

神通「そう、ですか……。笑顔で……」

提督「…………」

神通「──では、私が志願します。龍田さんが仰っていたように、誰かが志願しなければなりませんから……」

提督「……分かった」

那珂「……だったら、私も志願するよ」

川内「それだったら私もだね」

提督「お前達もか……」

那珂「だって、私達はいつも一緒だったもんね」

川内「うんうん。時々離れて任務をしていた事もあったけど、大体は一緒だったしね。誰か一人が行くのなら、私達も

行くよ」

提督「…………分かった。──今回は、川内、神通、那珂の三人だ」

……………………。



846: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/15(金) 22:11:02.06 ID:RTIXBGNGo

電「……またお仲間さんが消えてしまうのですね」

暁「仕方が無いわ……。これ以上、艦娘が苦しまないようにするにはこうするしかないんだもの……」

島風「辛いなぁ……。もう、あの天龍さんも龍田さんも居ないんだよね……」

響「そして、今度は残った軽巡の皆が……その後は、私達も……」

雷「……響、このままで良いの?」

響「……なにがだい?」

雷「もうこの際だから言っちゃうけど、司令官の事が好きよね、響」

暁「何を言ってるのよ雷。そんなの皆でしょ?」

雷「恋してるって意味よ、暁」

暁「え!? ちょ、ちょっと本当なの響!?」

響「……そうさ。私は司令官に恋している。紛れも無い事実だよ」

電「やっぱりでしたか」

島風「私にはまだ恋っていうのが分かんないのに……響、早いね」

暁「ど、どういう所が好きになったの?」ドキドキ

電「優しいから、ですか?」

島風「それとも、お父さんみたいに頼れるから?」

響「ん……それがね……」

響「──分からないんだ」

雷「へ?」

響「気付いたら、好きになっていた。最初は変な人って思っていたんだけど、気付いたら目で追いかけていて、気付いたら司令官の事ばかり考えていて、気付いたら……司令官を好きになっていたんだ。どうしても理由を付けるなら、好きになったから好き……なのかな」

電「じゅ、純粋です! 純粋な愛の気持ちなのです!」キラキラ

島風「好きだから好き、かぁ……。私もそうなのかなぁ……?」

雷「人の言葉に振り回されるのは良くないと思うわ! 自分の気持ちは自分で確かめるものよ!」

島風「むー……」

響「雷の言う通りだよ島風。自分の気持ちは自分でハッキリさせなきゃね」

暁「……それ、響にも言えないかしら?」

響「私はこの好きって気持ちさえあればそれで良いよ。好きだから好き……私はこれを気に入ってる。特別理由をつける必要もないと思うよ」

響「それよりも雷、これで良いのかって、どういう事だい?」

雷「最後に司令官と色々としたいんじゃないかって事よ」



847: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/15(金) 22:11:39.24 ID:RTIXBGNGo

響「…………」

暁(色々……? 一緒に食事とかかしら?)

響「ん……それは勿論そうなんだけどね。ちょっと思う所があるから考えてる所なんだ」

雷「思う所?」

響「こればかりは言えないから秘密だよ」

雷(なるほど。そういう事ね)

電(あー……なんとなく分かっちゃったのです。でも……私達の身体って、まだまだ子供……ですよね?)ペタペタ

島風(響は本当に早いなぁ……。嫉妬しちゃう)

暁(言えない事……? ──はっ! もしかして、一緒にお風呂……とか……!?)アワアワ

響「だから、何か行動を起こすにしても、もうちょっと考えてからにするよ」

雷「……要らないお節介だったわね。ごめんね?」

響「ううん。雷は私を思ってくれて言ってくれたんだから、むしろ嬉しいよ」

響「──話は変わるけど、今日は皆で一緒の布団に入って寝ないかい?」

電「あっ、それ凄く良いと思うのです!」

雷「私も賛成よ!」

島風「うんうん! 早速床に布団を敷くね!」

暁「あ、こら! ……もう、仕方がないわね……」

響(……司令官と、どうしたいか……か)

響(…………どうしたいんだろうね、私は……)

……………………
…………
……



848: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/15(金) 22:12:13.24 ID:RTIXBGNGo

救護妖精「……準備完了。いつでもいけるよ」

川内「……いよいよだね」

神通「はい……。ここで提督や、皆ともお別れですね……」

那珂「短かったねー……」

提督「お前達とも、ここでお別れだな……」

川内「……提督、最後に私達からお願いがあるんだけど、良いかな」

提督「なにかね」

神通「提督はお優しいですから、私達に最後の言葉を贈ろうと思っていませんか? ……もしそうであれば、その言葉は仕舞っていて欲しいんです」

那珂「提督が余計に辛いもんね……」

川内「別れは綺麗にサッパリと! 私達は、いつも通りにして別れようと思うんだ」

提督「……いつも通り?」

那珂「そう。いつも通り、提督の艦娘としてね! ──これが、私達の最後のお仕事ですから!」

提督「……………………分かった。いつも通りにしよう」

提督「──川内、神通、那珂。三人に仕事を与える。……消え逝く自分達の魂を、導いてやってくれ。これは最重要任務である」

川内・神通・那珂「はいっ!!」ピシッ

救護妖精「…………」カチン

川内「おお……消えていってる……」

神通「でも、なぜでしょうか……。まったく怖くないです」

那珂「むしろなんだか安心出来るよねー。ふっしぎー」

提督「……川内、神通、那珂」

那珂「なーにー? 提督ー?」

提督「──今まで、ありがとう」

川内「──うん! 私こそありがとね! 楽しかったよ!!」ピシッ

神通「はい……。とても、とても嬉しかったです」ピシッ

那珂「さよーならっ!」ピシッ

スゥッ──。

救護妖精「……逝っちゃったね」

提督「ああ……」

那智「……逆に堪えそうだが、良かったのか?」

提督「頼み事をした事が無かった三人の頼み事だ。……出来るのなら、叶えてやるべきだ」

那智「……不器用だな」

提督「まったくな……」

那智「貴方もだ」

提督「……ああ」

……………………
…………
……



849: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/15(金) 22:13:15.28 ID:RTIXBGNGo

提督「…………」

川内「…………」

神通「…………」

那珂「何ここー? 何これー? 怪しい実験場みたいだよー!」

川内「……那珂、静かにした方が身の為だと思うよ」

那珂「えー、どうしてー?」

神通「この方が、ただならぬ雰囲気を持っているからですよ」

那珂「ふーん? はっじめましてー! 自称だけど、アイドルの那珂ちゃんだよー! よっろしくぅー!」

提督「……ああ、はじめまして」

那珂「ところでー、ここはどこですかー? あと、なんでスラム街の子が着てそうな服を私達は着てるのー?」

提督「それらについては追々説明しよう。腹も空いているだろうから、今スープを用意している。それからで良いか」

那珂「はーい! わっかりましたー!」

神通「あの……うるさくしてしまってごめんなさい……」

提督「構わんよ。あまりにも耳障りと感じたら吊るす」

川内・那珂「吊るす!?」ビクゥ

提督「ああ吊るす。ここに居る者達の目の前で晒し者になるように吊るす」

川内・那珂「し、静かにします!!」ピシッ

提督「…………」

神通「川内……なぜ貴女も?」

川内「や、怖いから……。私もなんだかんだで寝言とかうるさいしね……」ビクビク

神通(怖い……? むしろ優しそうに見えるけど……)

那智「寝言がうるさいのは困る。その時は私も制裁しよう」

川内「ひぃっ!?」

提督「さすがにそこまでやると可哀想だ」

那智「……すまない」

川内(こ、この人も怖い……!!)ビクビク

……………………。



850: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/15(金) 22:13:43.71 ID:RTIXBGNGo

川内「ふぅん? じゃあ、私達がその艦娘の素なんだ?」

提督「信じなくても構わない。私は信じさせる何かを持っている訳ではないからな」

那珂「私は信じるよー」

神通「はい。私もです」

川内「私も私もー!」

提督「…………」

那智「随分と鵜呑みにするな。どういう心境だ?」

川内「えー、だってこの人すっごい真面目に話してるし。胡散臭くもないしね」

神通「はい。目を見れば分かります。何を考えているのかは良く分かりませんが、嘘を吐いていないというのだけは分かります」

那珂「私は楽しそうだから!」

那智「お前の理由は凄まじく不純だな」

那珂「えー? 人生は楽しんでなんぼだよー?」

提督「……そうだな。人生は、楽しんでこそ意味がある。私もそう思うよ」

那珂「ほらー」

那智「……ちっ」

川内「その話は良いんだけどさ、私達ってそんなに外に出ちゃ危ないの?」

提督「ここでは、な。遠く離れた場所ならば問題無いだろう」

神通「それが、私達を貴方の鎮守府へ連れて行く理由ですか?」

提督「厳密には違うが、そう考えてもらって良い」

那珂「じゃあそういう事で決まりだねっ! 那珂ちゃん、今からでも楽しみだよー!」

提督「期待する程ではないだろうが、楽しんでくれると私も嬉しい」

川内「私達が楽しむと貴方が喜ぶの? なんだか不思議な話だねー」

神通「でも、その心配はしなくても大丈夫だと思います。私も楽しみにしていますから」

川内「へぇ。神通がそう言うのって珍しいね」

神通「はい。自分でも少しびっくりしています」

那珂「那珂ちゃんねー、ちょっと眠たくなってきたんだけど、どこで寝たら良いのー?」

救護妖精「マイペースだねぇ那珂は。そっちに仮眠室があるから、そこで寝なー」

提督「…………」

……………………
…………
……



863: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/16(土) 23:35:48.94 ID:5fZulIWjo

中将B「大将殿。少し宜しいでしょうか」

提督「なにかね」

中将B「先日、大将殿が仰られていた正義についてなのですが……私だけでは大将殿のお言葉を理解する事が出来ません。どうか、私を導いてもらえませんか」

提督「ふむ……」

中将B「お願いします」

提督「中将、お前にとって正義とは何だ」

中将B「世の悪を許さないモノと思っております」

提督「では、侵略は悪か?」

中将B「勿論です。侵略・犯罪・殺生は悪です」

提督「そうか……では、一つの物語を語ろう」

中将B「物語、ですか?」

提督「少しばかり空想の世界になってしまうが聞いてくれ。中将、世界樹という言葉を聞いた事があるか?」

中将B「いえ、申し訳ながらありません」

提督「世界に命を与えている大樹と考えてくれ。その世界樹は星を護り、大地命を与え、人々にとって掛け替えのない存在だ」

提督「だが、その世界樹が枯れかかっているという状況になったとしよう。そうすれば大地は死に、星も死ぬ。つまり、人々も死んでしまうという事だ」

中将B「大層な樹ですなそれは……」

提督「なに。前に読んだ書物に書いてあったものだ。実際には無い」

提督「そして、その樹をどうしても復活させなければならないのだが、そこで派閥が二つに分かれてしまった」

中将B「派閥が、ですか?」

提督「うむ。その死にゆく世界を蘇らせる為に世界樹に頼らない新しい世界の在り方を創ろうとする者と、死にゆく世界を蘇らせる為に世界樹を転生させ、芽から育て直すという二つの派閥だ」

中将B「なぜその二つの派閥に分かれたのでしょうか」

提督「両者共にデメリットが有るという事と、もう一つはお互いが相手のやり方では世界を救えないと知っているからだ」

中将B「ふむ……」



864: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/16(土) 23:58:50.53 ID:5fZulIWjo

提督「世界樹に頼らない世界の在り方を創ろうとする改革派は、世界樹が再び枯れる事となっても影響の出ない世界を目指している。世界樹が必要なくなれば世界が死ぬ事もないからだ。そして、その為には世界中を死なせてから利用しないといけない。その為に世界樹を滅ぼそうとしている」

提督「そして、芽から育て直そうとしている保守派は、世界を安定させ、恵みをもたらし、命を与える世界樹が必要不可欠ゆえに、新しく芽から育て直す。その為には世界中をなんとしてでも死守しなければならない」

提督「改革派は今後の為に世界樹を死なせようとする。保守派は世界樹を芽から育て直す為に世界樹を護る。中将B、これはどちらが正しい?」

中将B「……………………申し訳ありません。私はどう考えて良いのか分かりません」

提督「そうか。では、改革派の立場で考えてみてくれ。今後、二度と世界を危機へ陥らせないようにする為に動く者として、未練がましく死にゆく樹にしがみ付く相手をどう思う」

中将B「ふむ……人類を滅ぼそうとしている悪に思えます」

提督「ならば、逆ではどうだ。世界の要である世界樹を殺そうとしている相手をどう思う」

中将B「……世界を滅ぼそうとしている悪に見えます」

提督「では中将B。どちらが悪でどちらが正義だ?」

中将B「……分かりません。どちらが悪でどちらが正義なのですか?」

提督「どちらも正義だ」

中将B「そんな馬鹿な! どちらかが正しくないはずです!」

提督「いいや。間違いない中将B。どちらも自分達が正義なんだ」

中将B「……どういう事でしょうか」

提督「改革派も保守派も『自分達が正しい』と思っているからこそ争っている。正義を掲げ、相手を悪と見なし、各々の正しい考えを相手にぶつけている」

中将B「…………」

提督「中将B、正義は悪と戦っているのではない。正義はまた別の正義と戦っているのだ」

中将B「また別の正義……ですか」

提督「人、立場、事情、時間……様々な要因はあるが、正義というものは変わっていくモノ。今でこそ戦争は正義だが、平和な世界となった時では、戦争は人と殺し合う悪と言われるだろう」

中将B「……そうなりますな」

提督「理解は出来たか?」

中将B「はっ! 私のような凡愚でも非常に分かりやすいご説明でした! ありがとうございます!」ピシッ

提督「お前は凡愚ではない。頑固なだけで正しき事を愛する良き人だ」

中将B「勿体無いお言葉です。──時に大将殿。先程の話はどちらが勝ち、どちらが間違っていたのでしょうか」

提督「改革派と保守派がそれぞれ勝った二つの物語だった。が、どちらも間違っていた故に人類は滅んでしまったよ」

中将B「…………なんと悲しい事でしょうか……」

提督「そういうものだ、中将B。『勝った方が正しい』というのは如何なる時でも当て嵌まるモノではないのだよ」

中将B「……心得ておきます」ピシッ

提督「うむ」

……………………
…………
……



873: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/17(日) 19:00:11.74 ID:4rCuyNc/o

戦姫「……朝礼に私達も呼ぶとは何かあったのですか?」ピキピキ

ヲ級「…………」ウトウト

提督「ああ。すまない」

戦姫「いえ……まだ、なんとか、抑えれています」ピキピキ

電(怖いのです……。戦姫さんが凄い殺気を放っているのです……)ビクビク

提督「……この鎮守府に居る艦娘も、少なくなったな。戦姫とヲ級を含めても九人か……三分の一以上も居なくなっているのだから当然だが……広くなったな、この鎮守府は」

全員「…………」

提督「そこで私は一つ我侭を言いたい。今回は金剛を除く全員を連れて行こうと思っている」

全員「!」

提督「これ以上、仲間が減っていくのが耐えれない者も居るだろう。そして私も、何回も皆を連れて行くのは心が痛む……。だが、金剛にはまだやってもらわなければならない事がある為、残ってもらう」

提督「これはほぼ私の勝手な我侭だ。異論を唱える者は遠慮をせず言ってくれ」

全員「……………………」

提督「……居ないのか?」

全員「…………」

提督「そうか……。お前達はどこまでも私に尽くしてくれるな。ありがたい事だ」

提督「出発は三日後とする。それまでの間、やり残した事がある者は悔いの無いよう終わらせよ。以上だ。各自、自由に行動して良し」

……………………。



876: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/17(日) 19:24:41.33 ID:4rCuyNc/o

──パタン

提督「お前達は戻らないのか?」

戦姫「お話がありますので残りました」

ヲ級「!」コクコク

金剛「私もお話したい事がありマス」

提督「……そうか。ならば、まず戦姫から言ってくれ」

戦姫「はい。──最後の時まで、私達をこの鎮守府に置いてもらえないでしょうか」

提督「どういった理由だ」

戦姫「私達はこの鎮守府で生まれ育ちました。なので、この鎮守府で最後を迎えたいのです」

提督「……悪い事をしてしまったな」

戦姫「なにがでしょうか?」

提督「お前達の仲間もここで最後を迎えさせるべきだった」

戦姫「それは仕方が無い事です。そうすると、ここに居る艦娘達がどうなっていた事か……」

提督「……そうか。そう言ってくれるとありがたい」

提督「良いだろう。許可する」

戦姫「ありがとうございます」ニコ

ヲ級「♪」ギュー

提督「──次に金剛、話したい事とはなんだ」

金剛「えっと……」チラ

戦姫「……なんだ?」

提督「ふむ……。戦姫、ヲ級、すまないが二人きりにしてくれるか」

戦姫「了解しました」ピシッ

ヲ級「!」ピシッ

ガチャ──パタン



877: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/17(日) 20:18:48.47 ID:4rCuyNc/o

提督「……さて、どういった話だ?」

金剛「私にやってもらいたい事、が気になりまシタ。もし準備が必要でしたら準備したいデス」

提督「あれか。あれは体の良い言い訳だ」

金剛「……へ?」

提督「お前と最後まで一緒に居たい。ただそれだけの為に言った」

金剛「え……? ぇえ? そ、それってどういう事なのですか……?」

提督「どうもこうも、そのままの意味で受け取ってくれ」

金剛「…………」

提督「どうした。今日はやけに勘が鈍いじゃないか」

金剛「こ、これは夢……ですか……?」

提督「頬を抓ってやろうか。いや、それよりもなぜそんなに信じれない」

金剛「だ、だって……私のこの想いが叶うなんて……」

提督「なら、どうすれば信用できる。愛を囁けば良いか?」

金剛「あ、愛……を……!」クラッ

提督「……本当にどうした金剛。大丈夫か」

金剛「大丈夫じゃありませんけど、大丈夫です……」クラクラ

提督「……おかしな日本語になっているぞ」

金剛「あう……あうあぅ……」

提督「……どうやらあまり頭が働いていないみたいだな。自室で落ち着いてこい」

金剛「そ、そうさせていただきます……」フラフラ

提督「……危なっかしいな。送っていこうか」

金剛「い、いえ!! 大丈夫です……!」ピシッ

金剛「それでは私はこれで……」ソソッ

ガチャ──パタン



881: うっわぁ。変なところで区切ってた。 2013/11/17(日) 20:42:34.02 ID:4rCuyNc/o

提督「……大丈夫か、本当に」

……………………
…………
……

金剛「…………」ボー

瑞鶴・榛名「…………」

榛名(あの、瑞鶴さん……お姉様は時々ああなるのでしょうか……)ヒソ

瑞鶴(ううん……あんな金剛さん初めて見たわよ……)ヒソ

榛名(何があったのでしょうか……)

瑞鶴(さあ……。でも、何か悩んでいるのは間違いないわよね……。じゃないと朝からあんな風にベッドに寝転んだりしないわよ)

榛名(心配です……)

瑞鶴(どうしたら良いのかしらね……)

榛名(どうしましょう……)

金剛「ぅーん……」パタパタ

瑞鶴(あ……足をバタバタって……なんだかちょっと可愛いかも)

榛名(……なんだかお姉様のイメージがちょっとだけ壊れたかもしれません)

瑞鶴(良い意味で?)

榛名(はい。良い意味で)

金剛「…………ぅー」ギュッ

瑞鶴(今度は枕を抱き締めたわね)

榛名(おまけに猫のように丸くなってます)

瑞鶴(これは相当深刻ね……)

榛名(でも、声を掛けにくいです……)

……………………。



882: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/17(日) 21:24:09.46 ID:4rCuyNc/o

響「あと三日、か……」

雷「それで、皆ともお別れなのね……」

暁「…………」

電「でも、仕方のない事なのです……」

島風「そうだよね……私達がいつまでも居ると、その艦娘のベースとなった子が……」

雷「……一応聞くけど、皆はやり残した事あるの?」

響「私は……うん。心残りがあるから行動に移すつもりだよ」

電「私も……実はあります」

島風「私はどっちかって言うとあるけど、どうしてもって程じゃないなぁ」

暁「……やりたかった事は一杯あるけど、それは今出来る事じゃないから私は良いわ」

雷「じゃあ二人だけね。私は響と電に協力するわ!」

雷「でも、響は分かるんだけど、電は何が心残りなの?」

電「司令官さんがここに着任してからずっと居ますので、やっぱり何かとお話したいのです」

雷「なるほどね! でも、お話だけで良いの?」

電「はい。二人きりでのんびりとお話したいのです。今夜、行こうかなと思っていました」

雷「今夜ね! 邪魔しないようにするわ! ──あとは響だけど、私達に出来る事はある?」

響「ん、実はもうやる事は決まってるんだ。大丈夫だよ」

雷「あら、そうなの?」

響「うん。だから、言葉だけ貰っておくよ。ありがとう」

暁「な、何をするつもりなの?」ドキドキ



883: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/17(日) 21:36:28.58 ID:4rCuyNc/o

響「秘密」

暁「ケチー!」

島風「暁、そんなんじゃレディになれないわよ?」

暁「もう諦めてるから良いもん!」

電「開き直っちゃってるのです……」

雷「響が何をするのか分からないけど、私達は応援してるからね!」

電「はいなのです。響ちゃん、頑張って下さいね?」

島風「でも、最後には教えて欲しいなぁ」

暁「島風、良い事を言ったわ。私にも最後には響が何をしたのか教えてよね!」

響「まったく……。これは困ったな」

雷「あ、今のなんだか司令官っぽい」

響「うん。やぱり影響されてるみたいだね」

電「その口調も響ちゃんになら似合っているのです」

暁「ふん。どうせ私には似合わないわよ」

電「はわわわわ! そ、そういう意味じゃないのです!」

暁「分かってるわよ。ちょっとイヂワルしたくなっただけよ」

電「あう……」

島風「この中で一番お子様なのは暁かもね」

暁「ふーんだ」

……………………
…………
……



900: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/18(月) 00:45:49.81 ID:cSiiceQ6o

コンコン──。

提督「入れ」

ガチャ──パタン

電「電です。お時間、よろしいでしょうか?」

提督「構わん。それにしても、珍しいな。電がこんな時間に訪ねてくるとは」

電「金剛さんと一緒に秘書をしようとした時以来ですね」

提督「そうだな……。最近の事なのに、昔の事のように感じるよ」

電「本当です。本当に、あっという間だったのです」

提督「ああ……」

電「…………」

提督「…………」

電「…………」

提督「……話があるのではなかったのか」

電「えっ、あ、あの……そのぅ……」

提督「どうした。なんでも言ってみなさい」

電「えっと……本当に、なんでも良いのでお話がしたいだけなのです」

提督「……うん?」

電「私は最初から司令官さんと一緒だったじゃないですか。だから、なんて言えば良いのか分かりませんが……何か話したくなったのです」

提督「なるほどな。そう言われたら私も何かを話したくなってきた」

電「本当ですか! 良かったぁ」

提督「飲み物を用意しよう。長く話しても良いように、な」

電「ありがとうございます! あ、お手伝いしますね」

提督「ふむ。ではお湯を沸かしてくれ。沸騰しきるまで頼む」

電「はいなのです!」

……………………。



901: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/18(月) 01:10:53.71 ID:cSiiceQ6o

提督「金剛には及ばないが、どうだ?」

電「とっても美味しいのです! このクッキーと一緒に食べると、苦いのと甘いのが混ざって不思議な美味しさになるのです!」

提督「それは良かった。遠慮はせず好きなだけ食べると良い」

電「あ、それでしたら包み紙で貰ってよろしいですか? これで皆と一緒にお茶をしたいのです」

提督「電は仲間想いだな」

電「ありがとうございます、なのです!」

提督「さて、何でも話してくれとは言ったが、いざとなると話すネタに困るな」

電「そうですね……。話したいのに何も思い付かないのです……」

提督「まあ、自然と話す事になるだろう。今はティータイムを楽しもうか」

電「はいなのです」

電「そういえば、司令官さんはどうして甘い物がダメなのですか?」

提督「建前では『喉を焼くような感覚が苦手』という事にしている」

電「建前……ですか?」

提督「人には言えない秘密があってな」

電「言えない秘密、ですか」

提督「ああ」

電「あの……お聞きしてもよろしいですか?」

提督「……最後だしな。絶対に誰にも言わないと約束出来るのなら話そう」

電「約束します」

提督「うむ。良い目だ」

提督「ならば話そう。一番最初から話せるが……────私は普通の人間ではないのだよ」

電「ほえ?」

提督「正確には色々と身体を弄られた人間だな。普通の人間よりも色々と強化されているが、デメリットとして特定状況下でしか糖分を補給出来なくなっている。今の私に糖分は劇薬にも等しい」

電「そうだったのですか……」

提督「……信じるのか?」

電「え? 司令官さんの言う事を信じるのはおかしいのですか?」

提督「いや……普通では信じられない内容だからな」

電「でも、本当なのですよね?」

提督「うむ」

電「でしたら本当の事なのです」ニコ



903: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/18(月) 01:37:40.92 ID:cSiiceQ6o

提督「……お前も、私の事を深く信じてくれているのだな」

電「はい! でも、それはお仲間さんなら皆同じだと思いますよ?」

提督「そうか。……本当に私は、良い艦娘を持ったな」ナデナデ

電「えへへ」

提督「そうだな。そういえば私はお前達の事を何も知らなかったな。少しお前達の事を教えてくれないか?」

電「はいなのです! 何が知りたいのですか?」

提督「お前たち第六駆逐隊の事について──」

……………………。

電「──はっ! もうこんな時間なのです!!」

提督「ふむ。思ったよりも時間の流れが速いな。今日はもう寝なさい」

電「はいなのです」

電「──あ、お願い事があるのですが、良いでしょうか……?」

提督「なにかね」

電「一緒におやすみしたいのです」

提督「甘えん坊だな。良いぞ」

電「えへへ。では、この食器を片付けますね」

提督「私もやろう。二人でやれば早いだろう?」

電「はいっ!」

……………………。

提督「これで良いか?」

電「はい。温かくて、とっても安心出来るのです」

提督「そうか」

電「なんだか司令官さん、お父さんみたいなのです」

提督「随分と若い父親だな私は」

電「そうですね。でも、似合ってますよ?」

提督「……褒め言葉として受け取っておこう」

電「えへへ……お父さん」

提督「なにかね」

電「呼んでみただけなのです。──おやすみなさい、司令官さん」

提督「ああ、おやすみ──」

……………………
…………
……



904: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/18(月) 02:03:01.99 ID:cSiiceQ6o

提督「──本日の朝礼は以上だ。各自、自由に行動して良し」

……………………。

響「…………」

提督「今日は響か。どうした」

響「ん、少し話したいな、と思って」

提督「ふむ。紅茶を淹れようか」

響「ううん。それには及ばないよ。一つだけ確認したいだけなんだ」

提督「なにかね」

響「司令官は、金剛さんを選んだんだね?」

提督「さて。それは車の中で話している事だ」

響「ふぅん……やっぱりそうなんだね」

提督「何か確信でもあるのか」

響「金剛さんがいつもと違うからね。廊下を歩いてる姿がなんだか雲の上を歩いてる様子だったよ」

提督「…………」

響「それで、私が聞きたいのは金剛さんを選んだ理由なんだ。確かに金剛さんは秘書だから接する時間が多かったし、他にも色々と勝つ要素はあったと思う」

提督「ふむ……。それを聞いてどうする」

響「どうもしないよ。ただ知りたいだけ。好きな人の好みを知りたいのはある意味当然だよ」

提督「…………」

響「ダメかな」

提督「……分かった、言おう。だが、誰にも言うんじゃないぞ。流石にこれは恥ずかしい」

響「勿論さ」



905: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/18(月) 02:26:51.24 ID:cSiiceQ6o

提督「そうだな……」

響「…………」

提督「…………」

響「…………」

提督「好き、だからかな」

響「────!」

提督「金剛には悪いんだが、理由が無い。好きになったから好き。それだけだ」

提督「あまり納得できないかもしれないが、本当に理由が無い。好き──ただそれだけで好きになったんだ」

響「…………」

提督「これが金剛を選んだ理由だ」

響「………………そっか」

提督「どうした。そんなに驚いて」

響「ん……。司令官と同じ事を言う人が居てね」

提督「ほう」

響「その人も、好きになった理由が好きだから、と言っていたよ。気付いたら目で追いかけていて、その人の事ばかり考えていて、好きになったらしい」

提督「不思議な事もあるものだな。まさか私と同じような者が居るとは」

響「本当だね。びっくりしたよ」

提督「じゃあ、その人に伝えてくれ」

響「うん?」

提督「ありがとう、とな」

響「────」



906: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/18(月) 02:54:07.37 ID:cSiiceQ6o

提督「頼めるか?」

響「……うん。必ず伝えるよ」

響「ありがとう司令官。スッキリしたよ」

提督「すまんな」

響「ううん。理由を聞けて良かったと思うよ。──それじゃあ司令官、私はこれで失礼するね」

ガチャ──パタン

提督「……まさか響と同じ理由とはな」

提督「…………辛いだろうな、響」

……………………。

響「ただいま」

雷「おかえりなさい響」

暁「どうしたの? 残るなんて珍しいじゃないの」

響「昨日言っていた事を実行したんだよ」

電「ほ、本当ですか!?」

島風「どうだったの?」

響「うん、吹っ切れたよ。訊いて良かったと今は思ってる」

暁「な、何を聞いたの?」

響「司令官の好みさ。それだけだよ」

電「なんて答えてくれたのですか?」

響「ん、それは言えない。司令官との約束だからね」

雷「それなら仕方がないわね」

暁「…………」

島風「あれ、今回は文句を言わないの?」

暁「司令官がそう言ったのでしょ? それなら仕方がないわ」

島風「素直なのか素直じゃないのか分からないね、暁」

暁「うっさい」

……………………
…………
……



907: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/18(月) 03:08:45.07 ID:cSiiceQ6o

コンコン──。

提督「入れ」

ガチャ──パタン

榛名「こんばんは」

提督「……どうやら、何か真剣に話したい事があるみたいだな」

榛名「はい。元帥様──いえ、提督の事についてです」

提督「なんでも話そう」

榛名「ありがとうございます。──では、提督は今どちらにいらしてますか?」

提督「……遺体すら残っていない。深海棲艦の攻撃で文字通り消滅してしまった」

榛名「……そう、ですか…………」

提督「沖へ出て海へ還した時、深海棲艦の群れが後ろから現れてな。私を攻撃せず、元帥の遺体に戦艦が主砲を撃った。あれでは遺体は欠片も残っていないだろう」

榛名「深海棲艦の群れ、ですか」

提督「ああ。結構な数だった。だが、あんなにも同時に沸くものなのだな。正直驚いた」

榛名「……その深海棲艦の数、憶えていますか?」

提督「いや、暗くて分からなかったが、どうした」

榛名「もしかしたら、ですけれど……その深海棲艦達は、提督の艦娘だったのではないかと思いまして……」

提督「ふむ……」

榛名「でないと、生きている貴方ではなくて死体である提督を撃つ理由が分かりません」

提督「……なるほど。それなら分かる──が、それを証明する事は出来ない」

榛名「はい……ですが、そう思わせて下さい」

提督「どうしてだ。お前は元帥を慕っていただろう」

榛名「……原因は、提督さんです」

提督「…………」

榛名「提督さんは私を本当の艦娘のように扱ってくれました。それも提督のようにではなく、優しく、私達の安全を第一に……。それは、提督とは真逆でした」

榛名「姉妹艦を失った子達は、泣いていました……。誰も提督を恨むような言葉は言いませんでしたが、やっぱり良くない感情は持っていたと思います……。現に私も、大破した霧島を無理して進軍させて沈んでいった時は、提督に僅かながら不信感を抱いてしまいました……」

榛名「でも……それが当たり前になってくると、慣れてしまったのかその不信感も抱かなくなってしまったのも事実です……。もし私が深海棲艦になって刷り込みが無くなったら、真っ先に提督を討ったと思います……」



908: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/18(月) 03:20:30.06 ID:cSiiceQ6o

提督「……そうか」

榛名「ですが、やっぱり私は提督の艦娘です。最後は、提督と一緒に居たかったです……」

提督「……すまない」

榛名「いえ。死に目にも遺体にも会えなかったのは確かに辛いですが、私はこれで良かったと思います。でなければ今頃、私はこうして元気にしていなかったでしょうね」

提督「…………」

榛名「提督さん、お願いがあります。明日、提督を海へ還した場所へ私を連れて行ってくれませんか? 私は、最後をその場所で過ごしたいです」

提督「……分かった」

榛名「ありがとうございます」ニコ

提督「……やはり、刷り直しだと分かっていたんだな」

榛名「いえ、本当に騙されかけました。提督さんが私の提督かもしれない、と思ったのは事実です。でも、どんなにそう思っても、やっぱり私の心の奥に居たのは提督──元帥様でした。そして、私を助けようとしたというのも提督さんと救護妖精さんを見ていて分かりました。ですから、私はその優しさに縋ってしまったのです」

提督「気を遣わせてしまった。すまない」

榛名「謝らないで下さい。むしろ私は嬉しいんです。短かったですが、本当に提督さんの艦娘になれた気がして……とても充実した生活でした」

提督「……そうか」

榛名「私のお話は以上です」

提督「私も、何も言う事は無いよ」

榛名「分かりました。──では提督さん、失礼しました」ペコ

ガチャ──パタン

提督「……本当、上手くいかないものだな…………」

……………………
…………
……

提督「……この辺りがそうだ」

榛名「…………ここで、提督が……」

提督「ああ……」

榛名「……………………」

提督「…………」

榛名「……はい、憶えました」

提督「……もう少し居るか?」

榛名「はい……。もう少し……もう少しだけ…………」

提督「……分かった」

……………………
…………
……



918: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/18(月) 23:33:42.37 ID:cSiiceQ6o

コンコン──。

提督(最後の夜……さて、今日は誰が来たのだろうな……)

提督「入れ」

ガチャ──パタン

瑞鶴「…………」

提督「瑞鶴……」

瑞鶴「…………」

提督「……座って話そう。ソファとベッド、どっちが良い」

瑞鶴「………………ベッド」

提督「分かった」

ギシッ──。

瑞鶴「…………」

提督「…………」

瑞鶴「……もう、会えなくなるのよね」

提督「ああ……」

瑞鶴「どうしても、なのかな」

提督「どうしても、だ」

瑞鶴「そっか……」

提督「…………」

瑞鶴「やだなぁ……」

提督「私も……出来ればしたくない」

瑞鶴「…………」

瑞鶴「提督さん……我侭言っても良い?」



919: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/19(火) 00:02:24.17 ID:Yk7ZF34oo

提督「なんだ?」

瑞鶴「……最後に、エッチな事とかしたい」

提督「…………それまた、どうしてだ」

瑞鶴「覚悟……したいから……」

提督「すまないが、それは出来ない」

瑞鶴「……やっぱり?」

提督「予想、していたのか」

瑞鶴「…………ん、金剛さんの様子を見ていたらね」

提督(これで二人目……よっぽどなのか……)

瑞鶴「絶対に提督さんと何かあったなーって思ったの。それで、自分の我侭を言うついでにって……。自分でも嫌な性格をしてると思うわ」

瑞鶴「そっかぁ……金剛さんかぁ……」

提督「……すまん」

瑞鶴「謝らないでよ……惨めになっちゃう……」

提督「…………」

瑞鶴「……私ね、金剛さんになら負けても良いかなって思ってるの。だって、金剛さんの提督さんへの想いは誰にも──ううん、想いだけじゃない。他にもいっぱい負けてない部分があるわ。だから、金剛さんになら負けても納得できるの」

提督「そうか……」

瑞鶴「だけどね、まだ時間があるじゃない。今晩で、提督さんの気が変わるかもしれない。私は、それに賭けようと思う」

提督「…………」

瑞鶴「だから……せめて一緒に寝たい、かな……」

提督「……言ってる事が滅茶苦茶だぞ」

瑞鶴「うん、分かってる。私って提督さんや金剛さんみたいに頭が良くないからさ、自分の今の気持ちをぶつけるしかないのよね」

瑞鶴「──最後まで諦めたくない。ただそれだけよ、私は」

提督「……そうか」

瑞鶴「あ、勿論提督さんは拒否しても良いのよ? 無理矢理って私、嫌いだから」



926: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/19(火) 00:30:54.80 ID:Yk7ZF34oo

提督「…………」

瑞鶴「…………」

提督「……すまん。それは出来ない。私を好いている子と眠るのは、金剛に対する裏切りにしか思えない」

瑞鶴「……妹としても?」

提督「妹としてもだ」

瑞鶴「………………そっか」

瑞鶴「──うん、分かった! ありがとね!」

提督「…………」

瑞鶴「まあそうよねー。知らなかったとはいえ妹と寝ちゃったのも本当はおかしいし、逆にお兄ちゃんと恋人になりたいって思う妹も充分おかしいわよねー」

提督「……瑞鶴」

瑞鶴「まあ、そういう事で。金剛さんを大事にしてあげなよ? おやすみー!」

提督「…………」

ガチャ──パタン

瑞鶴「────はぁ……」ソッ

瑞鶴「……フラれちゃった」ズルズル…ストン

瑞鶴「仕方がないわよね……そうよ、仕方がないのよ……。私が勝てる要素なんて、無かったんだから……」

瑞鶴「提督さんの為に全身全霊を掛けれているのは金剛さんだし……私が勝ってたのは戦闘能力って点だけ……。身も心も負けてる私じゃ……到底無理だった話なのよね……。提督さんも、金剛さんに一番の信頼と特別な感情を置いてる……」

瑞鶴「これじゃ勝てないわよね……。一ミリも入り込む隙が無いや……」

瑞鶴「お茶の淹れ方とか、戦術の本とか……金剛さんに借りて一杯読んだのになぁ……一杯、一杯勉強したのに……」

瑞鶴「少しでも振り向いてくれるように……今よりも気を向けてくれるように……勉強したのに……。大好きな提督さんと会う時間を減らしてまで……頑張ったのに……」

瑞鶴「──あれ? 提督さんと会う時間を減らしてまで……?」

瑞鶴「────────ああ、そっか。私が勉強してる間、ずーっと金剛さんが提督さんの側に居たのよね……」

瑞鶴「自分を磨く事に集中しすぎて……提督さんの事、蔑ろにしちゃってた……」

瑞鶴「ダメだなぁ私……。今頃になってこんな事に気付くなんて……」

瑞鶴「未練たらたらだなぁ……私のバーカ……」

……………………
…………
……



930: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/19(火) 00:56:30.13 ID:Yk7ZF34oo

提督「全員揃ったな。それでは出発しよう」

電「え? あ、あの司令官さん、榛名さんと戦姫さんとヲ級ちゃんがまだですよ?」

提督「三人共、別の場所で最後を迎えたいそうだ」

響「そっか……残念だね……」

提督「世の中、上手くはいかないように出来ているものだ。──さて、行くぞ」

雷「…………」ジー

提督「雷、どうした。鎮守府をそんなに見て」

雷「……もう少しだけ見ていたいの」

提督「暗くて分からないんじゃないのか?」

雷「…………よし! 見納めできたわ! 行きましょう司令官!」

提督「……ああ」

……………………。

暁「ねえ司令官。結局、司令官は金剛さんを選んだの?」

提督「……そうだが、なぜか皆分かっているようだな」

島風「まー……昨日一昨日の様子を見てればなんとなくねー。廊下ですれ違う度にいつもと違うんだもん」

電「ふわふわしているというかなんというか……そんな感じでしたね」

瑞鶴「部屋だともっと酷かったわよ。ずーっと布団で考え事しながらゴロゴロしてたり枕とか掛け布団をぎゅーって抱き締めたり、なんか唸ったりしてたもの。まるで、周りの事が見えてないようだったわね」

響「……何を言ったんだい司令官」

提督「一緒に居たいと言った。夢か何かだと疑っていたから愛を囁こうかとも言ったな」

電「ふ、ふわぁ……」

暁「普段の司令官からは想像もつかない台詞ね……」

島風「提督が愛を囁こうかって……本当に意外だよね」

響「もし私がそんな事を言われたら、金剛さんと同じになる自信があるよ」

瑞鶴(良いなぁ……)



931: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/19(火) 01:11:11.24 ID:Yk7ZF34oo

暁「ね、ねえ。金剛さんとはどこまでやったの?」ドキドキ

提督「……本当に、お前達は私と金剛の事についてしか聞かないな。全員同じか」

島風「あ、やっぱり軽巡の皆もだったんだね」

提督「どうしてそんなに知りたいかね……」

瑞鶴「……私も気になるなぁ」

響「私も」

提督「……分かった。全部話す。だが、運転している間だけだぞ」

……………………。

利根「おお提督殿」

提督「ご苦労、利根。変わりはないか」

利根「うむ! 何一つおかしな事はないぞ! ──ふむ、今回はこの六人か」

提督「ああ。すまないが、また夜まで頼む。那智にもそう言ってくれ」

利根「心得た!」

響「……カプセルの中に私達が居るね」

電「は、裸なのです……」

雷「エロいわね! でも、このカプセルが緑色に光ってるからエロく見えないわね!」

瑞鶴「こら、そういう事を言わないの」

雷「はーい」

島風「触っちゃダメ?」

提督「ダメだ。何が起きるか分からん」

島風「はーい」

提督「では、私は総司令部へ行く。また夜に会おう」

瑞鶴「提督さん」

提督「なにかね」

瑞鶴「──いってらっしゃい」ニコ

提督「…………ああ、いってくる」

……………………
…………
……



932: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/19(火) 01:12:29.27 ID:Yk7ZF34oo

提督「旧式の軍艦はどうだ」

中将A「やはり艦娘と違って図体が大きいので母港を拡張しなければなりませんな。たった五隻で場所の確保に一苦労しました」

中将B「私の鎮守府も同じです。艦娘を二十人抱えていたのでその感覚でいましたが、想像以上に場所を取ります」

少将「おまけに大きいので動きが鈍く見えて仕方がないですね。あれでは深海棲艦相手に一撃で屠られてしまうでしょう」

中将B「動かすのにも人員が沢山必要です。艦娘の偉大さが本当に良く分かりますな」

提督「だが、海で戦う術はあれしか残されていない。深海棲艦は艦娘と同様急速に減り続けているが、それは外国と国交回復の兆しとなっている。その時に軍事力が無ければ、たかが一個大隊で我が国の制海権は奪取されてしまうだろう」

中将A「救いなのは過去の資料が残されているという事ですな。あれが無ければ今以上に試行錯誤で海に浮かんでいた事でしょう」

提督「うむ。比較的平和な今の内に錬度を上げておけ。いつ動かす事になるか分からんぞ」

中将A・中将B・少将「はっ!」ピシッ

提督「このままでは艦娘が全員消えるのも時間の問題だ。もし次の会議までに全ての艦娘が消えてしまったら、即時私に連絡、そして哨戒、索敵をせよ。どこから敵が来るか分からんぞ」

提督「中将Aは母港改装を各鎮守府に連絡し、改装させろ。この原案を基に中将Aが指示を与えてくれ。中将Bは士官学校に連絡し、教育方針を変えてくれ。鎮守府に務める人間を育てるのではなく、旧式軍艦に乗れる教育をさせろ。少将は旧式軍艦での戦略、戦術、戦法を探せ。それを纏めて私に提出しろ。添削した後、各鎮守府へ送る」

提督「以上。今回の会議は終了だ」

……………………
…………
……



946: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/19(火) 23:29:10.38 ID:Yk7ZF34oo

提督「……今日で、金剛を除く全ての艦娘が解放されるのだな」

救護妖精「そうだねぇ……なんでまだ金剛だけ解放しないのかは聞かないでおくよ」

提督「ありがたい」

救護妖精「それにしても、やっぱり艦娘の時の記憶は無いみたいだね」

提督「当たり前だろう。引用元に記憶が戻ると大変な事になる」

救護妖精「そうだけどさ……。やっぱり夢は見たいでしょ?」

提督「……そうだな。世の中、上手くいかないように上手く出来ている」

救護妖精「本当にねぇ……」

救護妖精「あたしも、どうしよっかねぇ」

提督「どうした。何か困った事でもあるのか」

救護妖精「んー? だってあたしって本当は艦娘専攻の医者だからさ、艦娘が居なくなったらちょっとだけ困るんだよね」

提督「人間相手は出来ないのか?」

救護妖精「出来ない事はないけどさ、憶え直さないといけないから時間も掛かるだろうねぇ」

提督「私相手に診察をしていたように思うが」

救護妖精「提督はホムンクルスじゃん。既に構造が人間と違うよ」

提督「どれだけ違うのやら……」

救護妖精「内臓とか結構違うねー。神経系も弄られてて筋繊維もちょっとだけ違うよ」

提督「……私の身体の秘密を知っているのは救護妖精だけだったな?」

救護妖精「そだね」

提督「そうか。──実は、専属の医師を探しているんだ」

救護妖精「へぇ。やっと自分の身体を大切にしようと思ってきたの?」

提督「そんな所だ。だが、一つ問題があってな。私の身体は特殊だから普通の医師では対処出来ないだろう」

救護妖精「うん。そだね」

提督「その専属医師の枠が一つだけ空いているんだが、そこに座ってみる気はないか?」

救護妖精「その言葉を待ってたよ」スッ

提督「うむ。これからもよろしく頼む」スッ

救護妖精「あいよ。私からもよろしくね」ニギッ

提督「さて……地下へ行こう。皆が待っている」

救護妖精「……あいよ」

……………………。




947: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/19(火) 23:40:59.43 ID:Yk7ZF34oo

救護妖精「…………準備、出来たよ」

提督「……皆、今までご苦労だった」

全員「…………」

提督「現時刻をもって、瑞鶴・島風・暁・響・雷・電の六名を除籍とする。今まで、ありがとう」

瑞鶴「……これで、お別れなのよね」

提督「……そうだ」

響「もう、会えないのかな」

提督「出来ない……」

電「長いようで、短かったのです……」

提督「私もそう思う……」

雷「明るく見送ってよね! 司令官!」

提督「お前はいつも元気だな、雷」

暁「最後まで一人前のレディとして扱ってくれなかったわね」

提督「今回だけはレディとして扱おう」

島風「もう頭を撫でてくれないの?」

提督「最後に、全員の頭を撫でようと思う」

那智「……………………」

提督「そうだったなぁ。お前達は皆、これが好きだったな」スッ

提督「一番の最初から今まで、ずっと世話になってきたよ、電。お前が私の初めての艦娘で良かったと思っている」

電「わふっ……。私も、司令官の艦娘になれて良かったのです」ナデナデ

提督「持ち前の明るさで、駆逐艦の皆をいつも元気付けていたのは知っている。影ながら支えてくれて、それに頼っていた。助かったよ」

雷「良いのよ司令官。私に頼ってって言ったじゃない」ナデナデ

提督「あまりお前の速さを活かせなかったな。それでも、不満一つ言わず付いて来てくれた優しさと健気さには感謝している」

島風「初めて提督と会った時のかけっこ、怖かったけど楽しかったもん。あれだけでも私は貴重な体験が出来たと思うしねっ。出来ればもう一回したかったなぁ。またかけっこしようね?」ナデナデ

提督「うむ。──暁はいつも空回りしていたな。一人前のレディなんだからもう少し落ち着いたらどうだ?」

暁「一人前のレディ……。──ありがと! 気を付けるわね」ナデナデ

提督「駆逐艦の中で一番問題があったが、一番可愛がったのは響だったな。どうだった、私は」

響「…………うん。好きな気持ちで一杯なのは今でも変わらないよ。この気持ちのまま最後を迎えるのは、ある意味嬉しいね」ナデナデ

提督「私の艦娘の中で一番努力していたのは瑞鶴だったな。視力を落としてまで夜遅く本を読んでいたんだろう?」

瑞鶴「…………なんで気付いてるのよ。視力もちょっとしか落ちてないのに」ナデナデ

提督「戦術は良くなっていたが索敵範囲が多少落ちていて、遠くの物を見る時に少し目を細めていたからな。天龍達と演習した時から気付いていたよ」

瑞鶴「──あはっ。ズルいなぁ……。そんな事を言われたら、もっと好きになっちゃうじゃない」ポロッ

瑞鶴「でも……気付いてくれてたのね。ありがとう、提督さん……」ポロポロ

提督「……皆、今までありがとう────」

カチン──。

……………………。



948: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/20(水) 00:02:27.11 ID:zMreAUVgo

ヲ級「!」

戦姫「む……。消え始めたか……」

金剛「……お別れですネ」

戦姫「そうだな。最後にこんな美味しいお茶をご馳走してくれて感謝している。艦娘といえど感情を抑えれたのも、最初に出会った時の印象が良かったからかもな」

金剛「最初?」

戦姫「本気であの方を助ける目をしていた。だから私は、歯向かってくるお前を殺さないように撃ったのだ」

金剛「……やっぱり、あれは手加減していたのですね」

戦姫「お前は私と似ている。──もし生まれ変わるのだとしたら、親しい仲になりたいものだ」

金剛「私もです」

ヲ級「♪」コクコク

戦姫「この部屋で最後を迎えれた事を、あの方に礼を言っておいてくれ。──さらばだ」ピシッ

ヲ級「!」ピシッ

金剛「ご苦労様でした」ピシッ

スゥッ──。

金剛「……きっと、また会えますよね?」

……………………。

榛名「──あ、身体が……」

榛名「……もう、お別れですね。もう少し、この場に居たかった気もします」

榛名「提督、いらっしゃいますか? 私も、もうすぐ消えてしまうようです。最後に提督のお側に居られなくて、申し訳ありませんでした」

榛名「黄泉の国でお会いする事がありましたら、提督が良ければまたお側に置いてください」

榛名「榛名は、いつまでも待っていますから……」

榛名「そして……提督さん、ありがとうございました。私はきっと、提督と会ってみせます」

榛名「提督……今、逝きますね────」

スゥッ──。

……………………。



952: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/20(水) 00:25:02.69 ID:zMreAUVgo

響「! 消えてきたね」

電「な、なんだか不思議な感覚なのです」

暁「そうね……全然怖くないわね。鎮守府に居る時みたい」

雷「笑顔で司令官とお別れできるわ! 素敵な最後じゃない!」

島風「…………」

瑞鶴「? 島風?」

島風「っ!!」ダッ

提督「!」トンッ

ガシッ──。

島風「ぉゔッ! ……えへへ。また負けちゃった」

提督「私の勝ちだな」

島風「提督には一生掛かっても勝てそうにないなぁ」ニコニコ

提督「満足したか?」

島風「うんっ!」

暁「まったく島風ったら……」

電「島風ちゃんらしいのです」

雷「いいなーいいなー!」

響「私も走り出せば良かったかな」

瑞鶴「くすっ……。──提督♪」ギュッ

全員「!!」

提督「む」

瑞鶴「腕なら良いでしょ?」ギュー

提督「……困った妹だ」

全員「!?」

瑞鶴「ふふっ。提督、だーいすきっ!」

スゥッ──。

提督「……逝ってしまったか」

救護妖精「……逝っちゃったね」

那智「い、妹……?」

提督「そうだ。私の妹らしい。──さあ、介抱するぞ」

救護妖精「あいよー」

那智「……………………」

……………………。



955: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/20(水) 00:54:06.46 ID:zMreAUVgo

雷「なにかしらここ? まるでマンガの危ない実験室みたいね!」

電「はわわわっ。難しそうな機械があるのです!」

暁「本当にどこかしら、ここ」

響「この服、裸の上から着てるみたいだね」ジー

暁「!?」

島風「うーん……ちょっと走り難いかも」タッタッ

暁「は、破廉恥だから走るのを止めなさい!!」

島風「えー……」タッタッ

榛名「え、えーっと……?」

大和「……広い場所ですね」キョロキョロ

提督「…………」

提督(……なるほど。動くと尚更、写真と同じ顔をしている)

翔鶴「走ってる子、こけて怪我をしなければ良いのだけど……」

瑞鶴「…………」

提督「…………」

瑞鶴「……ここどこ? それと、貴方は誰よ」ジッ

提督「……………………」

翔鶴「ず、瑞鶴。あまり刺激しない方が良さそうよ……?」

瑞鶴「まさかとは思うけど、この服を着せたのは貴方?」

提督「……そうだ」

翔鶴「…………」ビクビク

瑞鶴「ふーん……? まあいっか。状況とか色々説明はしてくれるのよね?」

提督「ああ。だがその前にスープを飲んでおくように。身体が弱ってるだろうからな──」

……………………。



957: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/20(水) 01:14:02.02 ID:zMreAUVgo

瑞鶴「私達が艦娘の、ねぇ」

翔鶴「本当なのでしょうか……?」

大和「どうでしょうかね。判断できる材料が少ないからどうとも……」

榛名「迷ってしまいます……。けど、なんだか優しそうなので信じれそうですね……」

電「わ、私は信じますよ?」

雷「私もよ!」

響「私も。この人の目は嘘を言っていない」

暁「信用するの早くないかしら!?」

島風「かけっこして私に勝てるのなら信じても良いよ!」

暁「それはどうなのよ……」

提督「……お前は本当にかけっこが好きだな」

島風「あれ? 私の事を知ってるの?」

提督「…………ああ、知っている。かけっこ──いや、ほとんど鬼ごっこだったが二回したな」

島風「おおっ! だったらかけっこしよ! 今すぐ!!」ワクワク

提督「…………」チラ

救護妖精「…………一回だけだよ」ハァ

提督「一回だけな」

島風「じゃあここからあの壁まで競争ね! 皆はどっちが勝つと思う?」

瑞鶴「この人」

響「同じく」

那智「間違いなくこの方だ」

救護妖精「うん。競わなくても分かるねぇ」

島風「即答!?」ガーン

大和「元気ね。……こっちの男性の方かしら。男性の方は皆、走るのが速いですし」

榛名「え、えっと……私も同じ意見です」

雷「じゃあ私もこっちの人!」

電「私もなのです。なんだか走るのがとっても速そうなのです」

暁「え? えっと……じゃあ私も……」

翔鶴「私もです……。なんだか、ただならぬ実力を持っていそうです……」

島風「全員なのぉ!? ……よーしっ!! 絶対に勝ってやるんだから!!」

瑞鶴「じゃあ私が合図するわね」

提督「頼んだ」

瑞鶴「よーい、どん」ポン



958: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/20(水) 01:14:31.24 ID:zMreAUVgo

島風「っ!!!」ダッ

暁「はやっ!!」

提督「…………」タンッ

榛名「跳んだ!?」

瑞鶴「────」

島風「──ぉゔっ!?」

提督「……到着」ペタッ

島風「え……ええぇぇぇええぇぇええぇえぇ…………」

提督「私の勝ちだ」

島風「参りました……」ガクッ

雷「諦めたわね」

電「あ、あんなに実力の差を見せ付けられたら諦めるのも当たり前なのです……」

島風「……あなた何者? この私がまったく歯が立たないなんて……」

提督「ある鎮守府の提督だ」

大和「司令官という立ち位置は運動が出来ないというイメージがありましたけど、素晴らしいですね」

提督「何分、普通より頑丈な身体を持っているのでな」

翔鶴「す、凄いですね……」

瑞鶴「……人間の限界とか超えてそうね」

提督「島風、私は身体が弱いから何度も付き合えないが、また許可が下りたら挑戦するか?」

島風「する!! あんな負け方は悔しいもん!!」

提督「良い返事だ。──さて、私は鎮守府へ戻る」

那智「提督、今日も連れて帰るのか?」

提督「うむ」

那智「なら起こしてこよう。少し待っていてくれ」

提督「頼んだ」

瑞鶴「……どっか行くの?」

提督「さっき説明したように、解放した子は皆、私の鎮守府へ匿っている。その為の移動だ」

瑞鶴「ふーん。じゃあ、私もついて行って良い?」

翔鶴「瑞鶴!?」



959: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/20(水) 01:14:58.67 ID:zMreAUVgo

提督「……普通は疑わないか?」

瑞鶴「なんか信用出来るんだもの。良いじゃないの」

提督「姉が困っているように見えるな」

瑞鶴「あっ……。翔鶴姉はどうする? 私と一緒について行く?」

翔鶴「え、えっと……その……」チラ

提督「無理は言わない。二人で決めると良い」

翔鶴「じゃ、じゃあ……瑞鶴、どうして行こうと思ったの?」

瑞鶴「さっきも言ったけど、信用してるからよ。この人は私達を大切にしてくれるって分かるもの」

響「それには私も同意だね」

雷「目を見れば分かるのかしら?」

響「それもあるけど、後はさり気ない気配りとかかな。さっきから私達の事を観察しているように見えるけど、どこかしら温かみのある目線だと思う。特にあの島風って子を気に掛けてるけど、それはさっき走ったからじゃないかな。私達の身体は弱ってるって最初に言ったしね」

提督「……相変わらず勘が良いな」

響「ふぅん……。私は前に貴方と会った事があるんだね」

提督「ああ。少しは知っているつもりだ」

翔鶴「……………………」

瑞鶴「翔鶴姉が嫌だって言うのなら、私は行かないわよ」

翔鶴「……本当に、ただ単に信用できるから、なの?」

瑞鶴「うん。雰囲気というかなんというか……よく分かんないんだけどね」

翔鶴「…………じゃあ、私も行くわね。瑞鶴を一人で放っておけないもの」

大和「私も行って良いかしら」

提督「……構わないが、どうしてだ」

大和「なんだかこの二人を放っておけなくて……。ただそれだけなんですけどね」

提督「…………分かった。前回の三人と一緒に連れて行こう」

……………………。



972: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/20(水) 03:42:51.55 ID:zMreAUVgo

金剛「提督……」パタパタ

コンコン──。

金剛「!!」ガバッ

金剛「──どうぞ」

ガチャ──パタン

比叡「金剛お姉様! 遊びに来ました!!」

霧島「お元気ですか?」

金剛「────あ、ぅ、イエース! 元気デース!」

霧島「それは良かったです。今、お時間よろしいでしょうか?」

金剛「ハイ! オッケー デース」

比叡「間宮さんにお願いしてオーブンを貸して頂きました! 甘い紅茶と一緒に食べると美味しいらしいクッキーです!」

金剛「ワオ! ビタークッキーですか! 久々ネ!」

霧島「そのままでもいけますが、飽きたらこちらのバタークリームを付けて召し上がって下さい」

金剛「サンキュー マイ シスターズ! すぐにアッサムを淹れてきますネー!」

……………………。

金剛「うーん! ベリーベリー グッド ネ! ミルクティーととても合いマース!」サクサク

比叡「本当ですか!? よかったぁ……私達、クッキーを作るの初めてだったんですよ」

金剛「バッチリ デース!」

霧島「あ、本当です。凄く合います」サクサク

比叡「紅茶のおかげで引き立っていますね!」サクサク

金剛「ノー! どっちかが抜けてしまうとこの味は楽しめまセン! 両方あってこそのこの味デース!」

比叡「金剛お姉様……。ありがとうございます!」

金剛(このクッキー、全く砂糖を使っていないようデス! これならきっとテートクも食べられますネ!)サクサク

金剛(────あ……提督……。もう何日かすれば、私は……)

霧島「? どうかなされましたか、金剛お姉様?」

金剛「──いえ! なんでもありませんネ! 前にケーキを作った時の失敗を思い出しただけデース!」

比叡「へぇ……お姉様も失敗ってあるんですね」

金剛「勿論ありますヨー? ケーキはとってもシビアな料理なのデース! 少し工程を間違えるだけですぐにダメになりマース」

霧島「そうなのですか? 次はケーキに挑戦しようと思いましたけど、もっと勉強してからにしますね」

金剛「ハイ! 頑張って下さいね!」

金剛(ビタークッキーですか……提督が帰ってくるまでに焼いておきましょう!)

金剛「ありがとう、比叡、霧島」

比叡「いえ! お姉様が喜んでくれたようで何よりです!」

霧島「はい! 私達も嬉しいですよ!」

金剛(──そして、ごめんなさい…………)

……………………
…………
……



986: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/21(木) 23:31:14.30 ID:fwAWgJHNo

金剛(今から焼けば、提督が帰ってくる少し前にクッキーが焼けマスね。そろそろ準備をしまショウ)

コンコン──。

金剛(あら、また比叡と霧島でショウか?)

金剛「どうぞー」

ガチャ──パタン

瑞鶴「お邪魔するわね」

金剛「!!」

瑞鶴「あら、どうしたの?」

金剛「──いえ、なんでもありませんよ」

瑞鶴「ふぅん……?」

金剛「それよりも、どうしたのですか? こっち側は艦娘の寮ですヨ?」

瑞鶴「知ってるわよ。私はこの部屋を見てみたかったの」

金剛「ホワィ? なぜこの部屋のなのデスか?」

瑞鶴「ここ、前の私も使ってた部屋なんでしょ?」

金剛「────」

瑞鶴「ああ、そんな顔しないで? 別にどうこうするつもりは無いわ。……ちょっと、気になったのよ」

金剛「気になった……のですか?」

瑞鶴「うん。どんな感じだったのかなーってね。ついでに、面白い事とかないかなーって」

金剛「……面白い事?」

瑞鶴「そう邪険に扱わないで。あの人の顔を見たら、前の私がどれだけ大切にされてたのか分かるわよ」

金剛「…………」

瑞鶴「で、その子は私と同一人物でありながら別人だったんでしょ? 私の魂をなんとかかんとかって聞いたわ。だから、この部屋とかに来たら何か思い出すのかなって思ったの」

金剛「…………」スッ

瑞鶴「? そのベッドがどうしたの?」

金剛「瑞鶴──艦娘の貴女が使っていたベッドがそれデス」

瑞鶴「これが……ね」ソッ



988: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/21(木) 23:41:57.32 ID:fwAWgJHNo

瑞鶴「…………」ポフッ

金剛「…………」

瑞鶴「……………………」

金剛「……何か、思い出しましたか?」

瑞鶴「…………ううん、何も。ただ単に寝心地の良いベッドって感想しかないわ」

金剛「……そう、ですか…………」

瑞鶴「やっぱりダメかぁ……」

金剛「……やっぱり?」

瑞鶴「うん。結構悲しそうな顔してたからさ、記憶が私に戻ったりしたら、あの人は喜ぶのかなーって思って」

金剛「…………」

瑞鶴「まあ、そんなに都合の良い話なんてないわよね。ごめんね、お邪魔しちゃって」スッ

金剛「……どこかに行くのですか?」

瑞鶴「行くって言うより戻る、ね。翔鶴姉と大和さんが部屋で待ってるから」

金剛「…………」

瑞鶴「それじゃ、バイバイ」

ガチャ──

金剛「──また!」

瑞鶴「?」

金剛「……また、来ても良いですから」

瑞鶴「…………」

瑞鶴「うん。また来るわね」ニコ

──パタン

金剛「…………」

金剛「……………………」ポフッ

金剛「……心、痛いです」ギュ

金剛「…………」

金剛「クッキー、作りに行きましょう……」スッ

ガチャ──パタン…………

……………………。



989: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/21(木) 23:54:40.80 ID:fwAWgJHNo

金剛(もう少しで焼き上がるネ! 後は冷ませば完成デス!)

金剛「~♪ ~~♪」

提督「ん、ここに居たのか」

金剛「ふえぁ!? て、てて提督!? もうお帰りになられてたのですか!?」

提督「ついさっきな。どこに居るのか少し探した程度だ」

金剛「……お出迎え出来なくてごめんなさい」

提督「それは義務ではない。お前が鎮守府で待ってくれている事が私の幸せだ」

金剛「う……て、提督……そんな恥ずかしい事を真顔で……」

提督「嫌だったか?」

金剛「──私も幸せですっ!」ギュッ

金剛「てーとくぅー♪」スリスリ

提督「甘えるのは結構だが……時間と場所を弁えた方が良いんじゃないか?」

金剛「え?」

間宮「あ、あはは……」

金剛「────ご、ごめんなさい!!」バッ

間宮「えーっと…………お邪魔しちゃいました?」

金剛「そんな事ありません! ──あ、ク、クッキーが焼けましたので、もう出て行きますから!!」

間宮「ふふっ。冗談ですよ。仲睦まじくて、見ていて心が温かくなりました」

金剛「あう……あうぁうあぅぁぅぁぅ……」

……………………。



990: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/22(金) 00:07:19.49 ID:umsHAw1bo

金剛「とても恥ずかしかったです……」

提督「そういう事もあるだろう。私はあんなに狼狽える金剛を見て満足した」

金剛「ぅー……イヂワルですよ提督……」

提督「うむ。私はいぢわるが大好きだ」

金剛「それが提督の本性なのですね……」

提督「嫌いになったか?」

金剛「……その言葉もイヂワルです。分かってて言ってますよね?」ギュッ

提督「勿論」ナデナデ

金剛「もう……」スリスリ

提督「ところでクッキーを作っていたようだが、妹達への物か?」

金剛「提督への物ですよ?」

提督「私に?」

金剛「はい。砂糖を使っていないクッキーです。比叡と霧島からヒントを貰いました! これなら提督も食べられると思

ったです!」

提督「……わざわざ私の為に?」

金剛「提督と一緒に楽しみたかったからです。提督の為だけではなく、私の為でもあるのです」

提督「…………」ナデナデ

金剛「~♪」スリスリ

金剛「てぇーとくっ」ニパッ

提督「…………」ピタッ

金剛「?」

提督「…………」ギューッ

金剛「わっ──。んー♪」スリスリ

金剛「提督……私、今幸せです」

提督「私もだ」

金剛「あと何日ですか?」

提督「……明日にしようと思っている。いつまでもお前を残していると、間違いなく疑われる事となる。そうなると、総司令部地下の存在も危うくなるだろう。そして、別の鎮守府でも無理に出撃させる者が現れるかもしれない……」

金剛「……そう、ですか」

提督「だから、今日は一日中一緒にいよう」

金剛「やった!」

金剛「──あ、でもそれでしたら今から寝ないといけませんよね? 夜に運転する訳ですから」

提督「そうだな。一緒に寝てくれるか」

金剛「勿論です!」



991: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/22(金) 00:19:30.35 ID:umsHAw1bo

提督「火を灯していてくれ。私は部屋を暗くする」ツカツカ

金剛「はーい」

シャッ──パチン……。

金剛「提督ー、こっちでーす」

提督「ああ、お前の姿が見えるよ」ツカツカ

金剛「えへへー……」

提督「…………」モゾモゾ

金剛「火、消しますね」

フッ……。

提督「……真っ暗だな」

金剛「まるで、私達の未来みたいですね」

提督「まったくだ。一筋の光すら見えん」

金剛「……どうして、こうなったのでしょうかね」

提督「神が居たとしたら、随分と性格の悪い奴だな」

金剛「提督は神を信じないのですか?」

提督「生憎とな。事実、私は艦娘と深海棲艦の命を大量に屠っている。概念だけで言うならば私は歴史上最悪の殺戮者だろう。こんな者を、神が放っておく訳がないだろう?」

金剛「……確かにそうですね。平和の神がダーインスレイヴを片手に提督へ襲い掛かってもおかしくありません」

提督「間違いなく、ヴァルハラへは逝けないな」

金剛「う……。それでしたら私もヴァルハラ逝きを蹴って提督について行きます」

提督「ほう。どこまでも付いて来てくれるのか」

金剛「例え神に縛られようと、必ず抜け出してついて行きますよ」

提督「嬉しい限りだ」

金剛「……待ってますからね?」

提督「いつまでだ?」

金剛「いつまでも」

提督「案外すぐに逝ってしまうかもな」

金剛「それはダメです。ちゃんと天寿を全うして下さい」

提督「仮に私が別の女性を愛したらどうする」

金剛「……遠くで見守ります。危ない時だけ、助けに現れますね」

提督「重病だな」ナデナデ

金剛「不治の病ですものね」スリスリ

提督「…………」

金剛「…………」

提督「──離れてくれるなよ?」ギュ

金剛「──勿論です」ギュ

……………………
…………
……



992: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/22(金) 00:32:46.15 ID:umsHAw1bo

利根「おお提督殿! 今回は早いのう」

提督「ご苦労、利根。……色々と事情があってな」

金剛「…………」

利根「ふむ。事情があるのならば仕方がなかろう」

利根「ああ、そうそう。あの島風という子が提督殿とかけっこしたがっておったぞ」

提督「ふむ……。許可が下りた時に勝負するとしよう」

提督「さて……私はそろそろ行く」

金剛「……テートク」

提督「金剛はここで待っててくれ。また夜になったら来る」

金剛「…………はい」

利根(ふむ)

……………………。

利根「金剛、といったかの?」

金剛「え? ハイ。私は金剛ですケド、貴女は利根さんでよろしかったでショウか」

利根「うむ! ちと聞きたい事があったので話し掛けた。隣、良いかのう?」

金剛「ハイ……」

利根「失礼する。──我輩は人を探るのが苦手なので単刀直入に聞くが、お主は提督殿と何かしら特別な関係なのかのう?」

金剛「……凄い観察眼デスね。その通りデス」

利根「我輩はそれしか能がない。まあそれはさておき、後悔はしておらんのか?」

金剛「……していマス。ケド、覚悟も出来ていマス」

利根「ほう?」

金剛「私が我侭を言えば、沢山の艦娘や深海棲艦が苦しい思いをしマス。私はそんなの、嫌デス。それに……テートクの望む事は私のやりたい事でもありマス」

金剛「私は戦う為に生まれてきたのに、テートクは私を──私達を道具として扱わず、一人の人間として扱ってくれまシタ。これだけでも幸せな事なのに、もっと大きな幸せも貰っていマス。これ以上の幸せを望むのはバチが当たるというものデス」

利根「ふむ。立派な考えじゃな」

金剛「全然立派ではありまセン。今でも、どうにかしてテートクと離れ離れにならずに済む方法を探していマス」

利根「お主はよっぽど提督殿が好きみたいだのう。我輩も気に入っている故、少しばかり嫉妬してしまうぞ」

金剛「ふふっ。テートクの良さがどんどん広まっていマース! 嬉しい限りデス!」

利根「その考え方もかなり珍しい。お主の事も気に入った!」

金剛「今から私達はフレンド ネー!」

利根「うむうむ! 良い友を持てたわ!」

金剛(──提督……あと、もう少しなのですね…………)

……………………
…………
……



993: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/22(金) 00:44:38.67 ID:umsHAw1bo

提督「引継ぎの内容は以上だが、意見のある者は居るか。……………………居ないようだな。各々の役割をしっかりと確認しておく事。解散」

少将「……大将殿、お一つ宜しいでしょうか」

提督「なにかね。何か意見があったのか」

少将「いえ、先程の議論ではなく、大将殿のご退任についてです」

中将A・中将B「!」

少将「大将殿の手腕はとても素晴らしいものと思えます。我が国としても失うのには非常に惜しいはずです。どうしてもご退任なされるのでしょうか」

提督「この考えは変わらん。今の私は病を患った老人のようにいつ死んでしまうか分からない。少将の言うようにどれだけ役立てたとしても、死んでしまうと今以上に大変な事になる。死に損ないはとっとと身を引くべきだ」

少将「……しかし」

提督「感情論も大事だが、それに振り回されるのも良くないぞ少将」

少将「…………はい」

提督「これからの未来を切り開いていくのはお前達だ。私ではない」

提督「恐らく、私が退任してからお前達は苦労し、お互いの意見をぶつけ合うだろう。だが、そのぶつけ合いが争いではない事を祈る。お互いの意見を第三者の視点で考え、そして判断してくれ」

中将A「……それでも決着が付かなかった場合はどうするのでしょうか」

提督「どうしても決着が付かないのならば、この国が滅ぶだけだ。以前話した、世界樹の物語のようにな。お前達ならきっと上手くやってくれるだろう」

中将B「確証があるのでしょうか?」

提督「いいや全く無い。私の勘だ。私は未来など分からんからな」

中将A「……まったくもって不思議なお方ですな」

提督「よく言われるよ。──では、最終確認として最低でもあと一回はここへ来る。その時までに各担当する引継ぎをしっかりと進めておけ」

……………………
…………
……



994: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/22(金) 00:47:24.07 ID:umsHAw1bo

うん。このスレで終わらなかった。
おまけに、今から投下するものを考えると物凄くキリが悪いです。
なので次スレを立てて誘導し、余ったレス部分はちょっと論議になっている部分を答えて埋めようと思っています。
少々お待ち下さいませ。



995: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/11/22(金) 00:58:06.18 ID:umsHAw1bo
元スレ
SS速報VIP:金剛「テートクのハートを掴むのは、私デース!」瑞鶴「!?」 二隻目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1382975945/