世界観はオリジナルですが、プロダクション名は346プロです。

あと、あらかじめ自白しておくと、アイドルとの出会いの場面はデレステをパク―――オマージュしてます。

ご了承ください。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1492168345




2: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 20:13:37.64 ID:gbQcrLF00



第1話 はじまりはいつも突然に



―――ある春の日の休日。


その日、あたし、神谷奈緒は、友達と映画を観に行くために待ち合わせをしていた。


奈緒「あいつ、おっそいなぁ……」

???「―――待たせたな」

奈緒「やっとかよー、遅かったじゃんか。ったく、なにやってんだ。ほら、行くぜ。つぎの上映、はじまっちゃ―――って、友達じゃねえし! アンタ誰だよ⁉」



スネーク?「俺の名は―――ス○ーク」



奈緒「嘘つくんじゃねえよ!」

スネーク?「いいセンスだ」

奈緒「やかましいわ! 背広を着たスネー○がいるか! なんか声低くしてるけど全然似てねえし!」

偽スネーク「ばれたか……その通り、俺はスネ○クじゃない。よくぞ見破った!」

奈緒「見破るも何も現実にス○ークいねぇから! お前……さてはティッシュマンだな⁉ いらねーってのにティッシュねじ込む気だろ!」

偽スネーク「ふっ、そうぞうりょくがたりないよ。俺、ティッシュ持ってますか?」

奈緒「あ、確かに……なんだ、違うのかよ? まぎらわしいな……。じゃあ、飲み屋の勧誘とか?」

偽スネーク「ぶっぶー。残念ながら飲み屋の勧誘でもありませーんっ」

奈緒(うぜっ!)

奈緒「はーあ……待ち合わせ場所、変えるか……。こんなのにつきまとわれたら、キリないしな。じゃあ、そーゆーことで」



偽スネーク「アイドルやってみませんか?」



奈緒「なんだ急に⁉」





3: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 20:14:47.56 ID:gbQcrLF00


偽スネーク「どうですか? アイドル?」

奈緒「……えっ、アイドル? アイドルって……あの……アイドル? めちゃめちゃ可愛い服着て、LIVEする、あの……アイドル?」

偽スネーク改めP「ああ。何を隠そう、この俺はアイドル事務所のプロデューサーなのさ!」

奈緒(こ、こいつがプロデューサー?)

P「そして……君をアイドルにスカウトしたい!」

奈緒(あ、あたしをアイドルに? そ、それって、あたしがめちゃめちゃ可愛い服着て、LIVEするってことだよな……。あたしがそのアイドルに……………………はっ⁉)

奈緒「いや、いやいやいやっ、そんなワケねぇし。あたしがアイドルに勧誘されるワケないよな。話がうますぎる。はいはい、でたよ、そのパターンな」

P「なんだパターンって……言っておくが俺は本物のプロデューサーだぞ。……こ、この後だって、ザギンでスーシー食べる予定だし」

奈緒「なんか急にそれっぽい業界用語使い出した! 怪しさ倍増だわ! あと、それを言うならスーシーじゃなくてシースーだろ⁉」

P「あ、やべ間違えた⁉」

奈緒「あーもうっ、絶対だまされないからなっ。いや、だまされないってか信じない!」

P「自分を信じるな! 俺を信じろ! お前が信じる俺を信じろ!」

奈緒「グレン○ガンか! だからあんたのこと信じてねぇんだよ! てゆーかホントだとしても無理に決まってんだろ!」

P「無理なんかじゃない! 君にはアイドルの見込みがある!」


怪しい男が、あたしの目を真っ直ぐに見てそう言い放った。
その言葉を聞いて、若干心が揺さぶられるあたし。


奈緒「……見込みあるって、本当? それ、本気で言ってんのか?」





P「いや、勢いで言っただけだ」





奈緒「正直だな、あんた! そこは黙っとけよ、口下手か!」

P「しまった、つい本音が……!」

奈緒(駄目だこいつ……一瞬信じたあたしが馬鹿だった!)





4: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 20:16:24.81 ID:gbQcrLF00


奈緒「付き合ってられるか! あたし、もう行くからな!」


男に背を向け、歩き出すあたし。……だが男は諦めていなかった。



P「あ、アイドルになれば、可愛い格好もできますよ!」



奈緒「!」


その言葉に、またしても揺れるあたしの心。気が付けば歩みはその場で止まっていた。


奈緒(可愛い……格好? え、それって、テレビで見るような……ああいう服、着られたりする感じ? あ、あたしに似合うかな………………じゃなくて!)

奈緒「いや……べ、べつに可愛いカッコとか……興味ねぇし……き、興味ねぇから! ホントだから!」

P「あとサイリウムコーデも着られますよ!」

奈緒「それは絶対嘘だろ⁉ あんたの事務所はプリ○ラにあんのかよ!」

P「と、とにかく話だけでも聞いてください! お願いします!」


男があたしに頭を下げてくる。


奈緒(……。…………ここまでされると、あれじゃないか? 話聞くくらいなら、してやるべきじゃないか? だってほら、可哀想じゃん。こいつ、頭まで下げてるんだし、このままどっか行くのは人としてさ。けっして、あたしがアイドルに興味があるとかじゃなく)

奈緒「はぁ……仕方ないなぁ。友達も来ないし、話ぐらい聞いてやるよ。いや、関心とかないけどさ。これはその……人助けだから!」

P「ありがとうございます! では……」



P「へい、タクシー!」



奈緒「なにタクシー停めてんの、あんた⁉」

P「話をするなら、うちの事務所に来てもらった方が早いから」

奈緒「ざけんな! 友達と待ち合わせてるって言っただろ! そんなとこまで行けるか!」

P「じゃあ、そっちはキャンセルということにしてもらえませんか?」

奈緒「なんでだよ! そんなの――」

友達「お待たせ―、奈緒」

奈緒「なんでこのタイミングで来た⁉」

友達「へ? 何が? ところでその人、誰?」

P「実はかくかくしかじかで――」

友達「え、奈緒をアイドルに⁉ すごいじゃん! 映画なんていいから行ってきなよ、奈緒!」

奈緒「いや、いいからじゃなくて! あたし、今日は映画観に来たんだけど⁉」

友達「私、応援してるよ!」

奈緒「なんか応援された! あたしやる気ないのに!」






5: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 20:16:51.65 ID:gbQcrLF00


友達「プロデューサーさん、奈緒は素直じゃないんですよ」

P「あ、な~る。そういうことですか」

奈緒「余計なこと言うな!」

P「では奈緒さん、事務所へ行きましょうか」

奈緒「行かないって言ってるだろ⁉ 2人とも人の話聞いてないのか⁉」

友達「まあまあ、映画は私が代わりに観とくからさ」

奈緒「映画観るのに代わりとか無くね⁉」

友達「入場特典はちゃんとあとであげるから」

奈緒「……え、いいのか? いやぁ、なんか悪いなぁ」

奈緒(まあ、特典が貰えるんならいいかな? 映画は後で見ればいいし)

P「では話もまとまったようだし、タクシーに」

奈緒「オッケー!」


あたしは男と一緒にタクシーに乗り込んだ。


P「じゃあ、346プロまでレッツゴー!」


そしてタクシーが動き出した瞬間―――あることに気付く。


奈緒「……ん? いや待て。あたしたちもう高校生だから、特典とかもらえないだろ!」


あたしが観ようと思っていた映画は、特典配布をするのは中学生まで。

神谷奈緒、現在高1もうすぐ高2。
友達、現在高1もうすぐ高2。
……もらえるわけがなかった。


友達「ばれたか……ま、もう遅いけどね。奈緒、頑張ってねー!」

奈緒「あとで覚えてろよ!」





6: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 20:17:58.63 ID:gbQcrLF00



―――タクシー内


奈緒「くそぅ……」

P「あ、そういえば……」

奈緒「何だよ……?」

P「お名前教えてもらってもよろしいですか?」

奈緒「神谷奈緒! しばらくほっとけ!」





7: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 20:19:26.11 ID:gbQcrLF00



―――346プロ前


P「ここが俺の事務所、346プロだ」

奈緒「ホントに来てしまった……」

P「どうだい? 結構大きいだろ?」

奈緒「確かにでかい……けど、それよりも気になることがあるんだけど」

P「何?」

奈緒「なんでこんなに建物が並んでるんだ?」

P「ああ、あっちにあるのは寮だ」

奈緒「寮?」

P「346プロに所属するモデルとか役者とかが住んでるんだよ。一応、アイドル寮もある」

奈緒「へー」

P「で、目の前にあるのが本社ビル。隣のは夏に完成予定の新本社ビルだ」

奈緒「ほー」

P「アイドル部門の事務所は、本社ビルの3階にある」

奈緒「このビルの3階か。これだけでかいビルなんだから、その事務所も広いんだろ?」

P「……そうだよ」


男は露骨に目を逸らした。


奈緒「おい、正直に言え」

P「……346プロはアイドルだけじゃなく、モデル部門とか、役者部門とかに分かれてるんだ。だからアイドル部門の事務所はこのでっかいビルのうち……一部屋だけ」

奈緒「え、こんだけでかいビルの、たった一部屋なのか?」

P「ひ、一部屋って言っても、わりと広いんだ。まあ、それ以外にもレッスン室とかあるし」

奈緒「ふーん、ビル内にレッスン室なんてあるのか」

奈緒(あたしもアイドルになったら、そこでレッスンするのかな。…………なるって決めたわけじゃないぞ⁉ か、勘違いするなよな! い、いや、誰に言い訳してんだ、あたし)

奈緒「と、ところでさ、あんたさっきから敬語とタメ口が混ざって気持ち悪いんだけど。どっちかにしてくれ」

P「オッケー、分かったでござる」

奈緒「新たに珍妙な喋り方すんな!」

P「冗談冗談。じゃ、これからは普通に喋ることにするわ。いやー、なんか堅苦しいの苦手なんだよな、俺」

奈緒「よくそれでプロデューサーが務まるな、あんた」

P「ふっ、まあな」

奈緒「いや、褒めてないんだけど」





凛「―――プロデューサー?」





奈緒「ん?」





8: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 20:20:32.30 ID:gbQcrLF00



P「よ、凛。今来たとこか?」

凛「うん、そうだよ。……プロデューサー、その子は?」

P「うちの新人アイドルだ」

奈緒「ああ! あたしは新人アイドルの―――って違う⁉ まだアイドルやるなんて言ってないだろ! 話聞きに来ただけだ!」

P「ふっ、『まだ』ということは、これからやると言うってことだろ?」

奈緒「ただの言葉の綾だから! そんな『分かってるぜ』みたいな目でこっち見んな!」

凛「プロデューサー、もしかしてスカウトしてきたの?」

P「そういうことだ」

凛「……珍しいね。スカウトなんて、全然してなかったのに」

P「あれが終わって一段落したことだし、そろそろ新戦力が増えてもいい頃だと思ってな」

凛「確かに、ずっと3人だったしね」

奈緒(……あたしにはよく分からん話をしてる)

凛「はじめまして、私は渋谷凛。あなたは?」

奈緒「あたしは神谷奈緒。まだアイドルやるかは分かんないけど、よろしくな」

凛「うん、よろしく」

P「奈緒、凛のことは知ってるだろ? 今、絶賛売り出し中だからな」

奈緒「え?……ま、まあな」
 
奈緒(凛……渋谷凛か。……え、えぇっと………………)


あたしは懸命に自分の中のアイドルの記憶を辿った。

……だが、出てきたのはアイドルアニメの映像だけだった!


凛「知らないなら知らないって言っていいよ。別に気にしないから」

奈緒「……悪い。正直知らない」

P「むぅ……まだまだ営業努力が足りないか」

プロデューサーが若干悔しそうな顔をしている。凛本人より、こいつの方が気にしてるな。

凛「プロデューサー、ここで立ち話していても仕方ないし、事務所に入ってもらおうよ」

P「それもそうだな。さ、行くぞ奈緒」

奈緒「……さっきから気になってたけど、あんた随分馴れ馴れしいよな」





9: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 20:21:26.92 ID:gbQcrLF00



―――346プロ アイドル部門


P「おはようございまーす」

ちひろ「おはようございます、プロデューサーさん。あ、凛ちゃんも一緒だったの?」

凛「うん。おはよう、ちひろさん」

ちひろ「おはよう、凛ちゃん。……? プロデューサーさん、そちらの方は?」

P「うちの期待の新人です」

奈緒「だから勝手に決めんな!」





卯月「え、新人さんですか⁉」

未央「突然すぎてびっくり仰天だよ⁉」





奈緒「あ、いや、ちが―――」

卯月「わー、この人がそうなんですね!」

未央「この事務所にも、ついに新人が入ってきたんだね!」

奈緒「いや、だからまだ新人とか――」

卯月「私、島村卯月って言います。これからよろしくお願いしますねっ♪」

奈緒「え⁉ いやこれからって――」

未央「私は本田未央。気軽に未央様って呼んでね」

奈緒「分かった未央さ――って呼ぶか! それだと、あたし家来みたいだろ!」

P「あ、俺のことはビッ○ボスでいいぞ」

奈緒「いつまでそれ引っ張るんだ! 呼ぶわけねぇだろ!」

卯月「私は卯月でいいですよ」

奈緒「だから呼ぶわけ――いや、普通の呼び方だった⁉ じゃ、じゃあ卯月はそう呼ばせてもらうな」

卯月「はいっ♪」

奈緒(この子、唯一の癒しだな……)

P「なんだよ、卯月だけひいきかよ……」

未央「世知辛い世の中だ……」

奈緒「ひいきとかじゃなくね⁉ あんたらの要求がおかしいだけだから!」




10: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 20:22:49.36 ID:gbQcrLF00


未央「ま、冗談はさておき、あなたの名前なんて言うの?」

奈緒「……神谷奈緒。奈緒でいいよ」

未央「そっか。よろしくね、かみやん♪」

奈緒「なんだその呼び方⁉ 奈緒でいいって言ったよな⁉」

凛「未央は人をあだ名で呼ぶのが好きなんだよ」

未央「そそ、しぶりんの言うとおり」

奈緒「しぶりん?」

卯月「凛ちゃんのことですよ。ついでに言うと、私はしまむーです」

奈緒「な、なるほど……かみやんは冗談じゃなかったのか」

奈緒「それでえーと、あなたは?」

ちひろ「私は346プロダクションの事務を担当している、千川ちひろと申します。神谷さん、よろしくお願いしますね」

奈緒「あ、はい。よろしくです」

P「さて、紹介も済んだことだし……奈緒、これから一緒にアイ活頑張ろうな!」

奈緒「おう!」

奈緒(よーし、目指すはトップアイドル―――)

奈緒「って、いやいやいやいやいや! あたしまだアイドルやるなんて言ってないだろ⁉ なんでやることになってるんだよ! ていうかこれ言うの何度目だ⁉」

未央「おぉ、中々のノリツッコミ!」

P「だろ? アイドルの素質あると思うんだ」

奈緒「ツッコミで分かる素質は芸人のじゃね⁉」

P「ま、とにかく話をさせてくれ。奈緒、そこのソファに座って」

奈緒「さっきからあたし、アイドルやる気どんどん無くなっていってるぞ……」

P「じゃあ率直に聞くが……アイドル、興味はあるか?」

奈緒「いや、無いって」

P「本当に?」

奈緒「ああ」

未央「本当に?」

卯月「本当ですか?」

凛「……本当?」

奈緒「詰め寄って来んな! あー、もうっ! ほ、ホントはちょっと……き、興味あるよ!」

P「やれやれ……最初から正直に言おうぜ?」

奈緒「うるせぇよ!」

P「で、アイドルに興味があるんなら、やってみないか?」

奈緒「いや、でも……」

卯月「やりませんか?」

凛「やらない?」

未央「やろうよ!」

奈緒「だからなんで詰め寄ってくるんだ!」





11: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 20:23:34.45 ID:gbQcrLF00


P「さてどうしたものか…………あ、そういえばさっき……」

奈緒「? なんだよ?」





P「奈緒、可愛い衣装着てみたいか?」





奈緒「か、可愛い衣装⁉ そ、そんな……そんなの、べ、別に着たくなんかないし! な、ないからな、ホントに! 何言い出してんだ急に!」

P「ふーん…………未央、『あれ』を持ってきてくれ」

未央「オッケー!」

奈緒「あれ?」

未央「はい、お待ちどう!」

P「サンキュー。さあ奈緒、このア○カツのDVDを今から一緒に観る―――って違う! 未央、なんでこんなもん持ってきてんだ!」

未央「だって『あれ』を持ってこいって」

P「お前の中で『あれ』って言ったらアイ○ツのDVDなの⁉ っていうか、誰だ事務所にこれ持ってきたの!」

凛「プロデューサーでしょ」

P「……あ、そうだっけ」

奈緒「お前かよ!」

P「ま、まあこれは置いといて。未央、持ってくるのは衣装だ」

未央「ならそう言ってよ。どの衣装?」

P「なんでもいい。テキトーに可愛いので」

未央「りょーかい」




12: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 20:24:14.62 ID:gbQcrLF00


―――少し経って


未央「こんな感じのでいい?」

P「ああ、十分だ。……奈緒、これ着たいか?」

奈緒「なっ⁉ そ、そんなこと一言も言ってないだろ⁉ なんなんださっきから!」

P「そうか悪かった。……あっ! 仕事のことで大事な話があるの思い出した。凛、卯月、未央、ちひろさん。ちょっと会議室に」

卯月「え?」

未央「なんでわざわざ会議室に行くの?」

ちひろ「私もですか?」

P「いいから。奈緒、悪いが少し待っててくれないか?」

奈緒「まあいいけど」


暇になったあたしは、部屋の中を眺めた。


奈緒「ふーん……これがアイドルの事務所か……」


視線をあちこち彷徨わせていると……衣装の所で視線が止まる。


奈緒「……衣装……」


扉の方を見る。


奈緒(……うん。……あいつら、まだ戻ってこない……)

奈緒「……ち、ちょっと触るだけなら……いいよな?」


恐る恐る衣装を手に取る。


奈緒「これがアイドルの衣装かぁ……。これ着てライブとかするんだよな……こ、こんな感じ?」


近くにあった鏡の前に移動し、衣装をあててみる。


奈緒「ふふーん、たらららーん♪……な、なーんて、へへっ」



《ガタッ!》



奈緒「⁉」





13: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 20:25:42.10 ID:gbQcrLF00


奈緒(なんだ今の物音⁉ まさか誰かいるんじゃ……⁉)


あたしは動きを止めたまま全神経を耳に集中すると……扉の方から、ひそひそと話し声が聞こえてきた。





P「卯月、音立てるなっ」

卯月「す、すみません」

未央「もう、しまむーったら!」

凛「未央も声が大きいよ」

ちひろ「静かにしないと気付かれちゃいますよ」





奈緒「……」


あたしは、それはもう静かな動作で、衣装を側にあるテーブルに置き、ゆっくりと扉へ近づいて行った。……よく見ると、少しだけ扉が開いている。


《ガチャッ!》



『あっ』



奈緒「な……な……何してんだ、お前らぁ――――――――っ⁉」

奈緒「ま、ままままさかずっと見てたのか⁉ 会議室行ったふりして、ずずずずっとここで覗いてたのか⁉」

凛「ううん、覗いたりなんてしてないよ」

ちひろ「ええ、そんなことしていません」


この2人、ポーカーフェイスを駆使している……!


P「の、覗くとか、ナンノコトヤラー」

卯月「み、みみみ見てないですよ?」

未央「ぴ、ぴゅーひゅるるー」

奈緒「とぼけるの下手か! 正直に言えっ!」

P「し、正直も何もないけど?」

奈緒(こ、こいつ、まだ誤魔化す気か。なら……!)

奈緒「……卯月」

卯月「は、はいっ⁉」

奈緒「怒らないから、どうか正直に言ってくれ。大丈夫、絶対に怒ったりしないから」

卯月「ほ、本当ですか?」

奈緒「ああ、信じろ。……覗いてた?」





卯月「覗いてました」





奈緒「やっぱり覗いてたんじゃねーか! ふざけんなっ!」




14: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 20:26:27.17 ID:gbQcrLF00


卯月「お、怒らないって言ったのにぃっ⁉」

未央「しまむー、チョロいにもほどがあるよ⁉」

凛「まあ言わなくても、あれじゃバレバレだっただろうけど……」

ちひろ「神谷さん、プロデューサーさんが全部悪いんです」

P「なに罪を俺1人に被せようとしてんですか! ちひろさんもノリノリで覗いてたくせに!」

奈緒「お、お前ら最低かっ! 何考えてんだ⁉」

P「いや、奈緒が衣装着たそうだったから、1人にすれば本心見せるかなーと」

奈緒「そ、それであたしはまんまと……み、見られているのにもかかわらず……あんな……あんな……」

P「思った通り、着たかったんだな」

奈緒「ち、違うっ! そん、そんなんじゃないっ! あ、あれ、あれはその、あれで……き、ききき、着たいとか、そういうんじゃなくて……とにかく違うんだっ!」

P「うんうん(にやにや)」

凛「着たくないんだよね(にやにや)」

未央「分かってる分かってる(にやにや)」

卯月「可愛いですよね、衣装(にまにま)」

ちひろ「ふふ、違うんですよね(にやにや)」

奈緒「そ、そのにやにや笑いを今すぐやめろぉーっ!」





15: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 20:26:58.50 ID:gbQcrLF00



―――数分後


奈緒「もう嫌だ……なんでこんな恥ずかしい目に……」


あたしはソファーで体育座りをしながら、ブツブツとこの世の不条理を呪っていた。


P「奈緒、そろそろ素直になってもいいんじゃないか? アイドル、やりたいんだろ?」

奈緒「……べ、別に、やりたくなんか……」

P「可愛い衣装、着たいんだろ?」

奈緒「そんなの、着たいとか思ってねぇし」

凛「今更それは無理があると思うけど」

奈緒「う、うっさい!」

P「奈緒、ここからは真面目に聞いてくれ」

奈緒「……なんだよ」

P「やりたいっていう気持ちが少しでもあるんなら……アイドル、やってみないか? 俺は、奈緒を本気でプロデュースしたい」


男は、これまで見た中で1番真剣な目をしていた。


奈緒(こいつ、こんな目も出来るのか……)

P「踏み出すのに、勇気がいるのは分かる。でも、一歩踏み出してみないか? 踏み出した先には、新しい世界が広がってるはずだ。俺と一緒に……いや、俺だけじゃないな」


男は卯月、凛、未央、ちひろを見渡してから、告げる。



P「俺たちと一緒に、その先へと進んで行こうぜ。絶対に後悔はさせないからさ」



その言葉に、あたしの心はまた……揺れ動いた。




16: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 20:27:56.72 ID:gbQcrLF00


奈緒「……あんたってさ」

P「ん?」

奈緒「口下手だと思ってたけど、案外口が上手いな」

P「プロデューサーだからな」

奈緒「なんだそれ。……じゃあ今回は、あんたの口車に乗せられてやるか」

卯月「じゃあ、奈緒ちゃん……!」

奈緒「その……ア、アイドル、やらせてもらうよ」

凛「奈緒、ようこそ346プロダクションへ」

未央「歓迎するよ、かみやん♪」

P「これでうちの4人目のアイドル誕生だな」

奈緒「4人目? 卯月、凛、未央、あたし……え、これで全員? 少なくね? 今この場にいないだけで、もっといるのかと思ってたんだけど」

P「うちのアイドル部門、去年新設されたばかりでな。それに色々事情もあったりで、ずっと3人だったんだ」

奈緒「事情って?」

P「……大人の事情だ」

奈緒「出た! 何かを誤魔化すのに便利な言葉、大人の事情!」

P「やかましい! とにかく奈緒、うちに入ったからには大船に乗ったつもりでいていいぞ。必ずお前を立派なアイドルにしてやるからな」

奈緒「……その大船、タイタ○ック号じゃないよな?」

P「いや、サント・ア○ヌ号かな」

奈緒「それアニメだと沈むんだけど⁉」





―――あたしの出会いと波乱に満ちたアイドル生活は、こうして幕を開けたのだった。




第1話 おわり




18: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:06:41.11 ID:gbQcrLF00

第2話 可憐な彼女は花蓮のように



―――???


奈緒「……ふにゅう……ふぁ……あれ?」


目が覚めると、そこは見知らぬ天井だった。


奈緒「ここどこだ⁉ あたしの部屋じゃないし!」


《ガチャ―――》


未央「かみやん、朝からどしたの?」

奈緒「未央⁉ なんで……あー、そっか。あたし、昨日から寮に入ったんだっけ」

未央「ははーん、さてはかみやん、寝ぼけてたね?」

奈緒「なんかそうみたいだ。顔洗って目を覚ますよ」

未央「そうしなよ。朝ごはんもう準備できてるからさ。食堂に来てね」

奈緒「ああ、分かったよ」





19: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:07:16.52 ID:gbQcrLF00



―――346プロ アイドル寮 食堂


奈緒「うまっ! 未央って料理上手いんだな。なんか意外」

未央「ふふん、これくらいは女の嗜みってやつさね」

奈緒「これからは毎日交代で作ってくんだよな……あたし、ここまで上手く作れないぞ?」

未央「いいって。料理は愛情だから。作る人も食べる人もね」

奈緒「なるほどなー。じゃ、せいぜいたっぷりと愛情を籠めて作ることにするよ」

未央「ラブパワーたっぷり注入してね?」

奈緒「いや、ラブじゃなくてライクだけど。……にしてもこの寮って今、あたしたち2人しかいないんだよな」

未央「そーだよ。かみやんが来るまでは私1人だったんだから。しぶりんとしまむーは実家だし」

奈緒「2人は実家が東京だもんな。わざわざ寮に住む必要ないか」

未央「その点、私たちは千葉だから、寮住まいの方が楽なんだよね」

奈緒「だな。せっかくの寮なのにあたしたちだけっていうのは、少し寂しい気もするけど」

未央「正確には、管理人のおばちゃんもいるけどね」

奈緒「あ、そういやそうか」





20: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:07:56.38 ID:gbQcrLF00



―――346プロ アイドル部門


奈緒「おはよーございまーす」

未央「やっぴー」

奈緒「なんだその挨拶」

ちひろ「おはよう、2人とも。未央ちゃん、今日はなんだかご機嫌?」

未央「えへへー、まーね。かみやんが寮に来てくれて、ようやく寂しい1人暮らしから脱却出来たからさ」

ちひろ「ふふっ、そういうことね。奈緒ちゃん、寮は気に入ってもらえた?」

奈緒「いいとこだと思うよ。逆にちょっと落ち着かないけど」

未央「すぐに慣れるって」

奈緒「そーかな。そういえばちひろさん、プロデューサーは?」

ちひろ「まだ来られてないの。多分、遅刻だと思うけど」

未央「たまにするんだよね」

奈緒「あいつ、社会人失格だろ」


《ガチャ―――》


P「うぃーっす」

奈緒「出たな人間失格」

P「出勤早々なんだいきなり⁉」

奈緒「いや、遅刻とはいいご身分だなぁと思ってさ」

P「遅刻じゃないわい! まだ出勤時間には10分も余裕あるんだよ!」

奈緒「え、そうなのか? でもちひろさんが遅刻だって」

ちひろ「プロデューサーさん、今日はいつもより30分早く来ていただくことになっていたはずですが……」

P「……あ、そういえばそうでしたね」

奈緒「やっぱり遅刻じゃんか」





21: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:08:30.37 ID:gbQcrLF00



―――数十分後


凛「じゃあ奈緒、私たちは仕事に行ってくるね」

卯月「いってきます、奈緒ちゃん」

未央「かみやんも頑張ってねー」

奈緒「ああ、そっちも頑張れよなー」


《ガチャ―――バタン》


奈緒「で、あたしは何すればいいんだ? やっぱりレッスンするのか?」

P「奈緒は今日、俺と一緒だ」

奈緒「うん? どういうことだよ」

P「ま、とりあえず付いて来てくれ。ちひろさん、いってきます」

ちひろ「いってらっしゃい、プロデューサーさん、奈緒ちゃん」





22: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:10:24.42 ID:gbQcrLF00



―――街中


奈緒「言われるがまま付いてきたけど、こんな街中で何するんだ?」

P「じゃ、俺はこっちの方見てるから、奈緒はそっちな」

奈緒「……は?」

P「……」

奈緒「……」

P「……」


無言の時間が流れる。


奈緒「いや説明しろよ! あたし何すればいいんだよ!」

P「何って……なんかいい感じの子を見つけてくれればいいから」

奈緒「なんだそれ⁉」

P「だから、今日奈緒は、俺と一緒に新人アイドルをスカウトするんだよ」

奈緒「なんで⁉ アイドルってスカウトはされても、する方じゃなくね⁉ あんたの役目だろ、それ!」

P「しょうがないだろ。今日、奈緒はレッスンの予定だったんだけど、担当のトレーナーさんが風邪ひいたらしくて来られないんだとさ。だから丸々予定空いちゃったんだよ」

奈緒「マジか……」

P「そして俺も仕事の予定が相手方の都合でキャンセルになっちゃってな。同じく予定が空いた。で、それなら暇人2人でスカウトしに行こうかと思ってな」

奈緒「思ってなじゃないだろ! せめて事前にあたしに伝えろよ!」

P「悪い悪い、ちひろさんが伝えたと思ってたんだ」

奈緒「む……なら、しょうがないか」

P「それで、スカウト手伝ってくれるか?」

奈緒「いいよ、どうせ暇らしいしな」





23: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:10:52.29 ID:gbQcrLF00



―――1時間後


ナンパ野郎「へい彼女! 可愛いねー、一緒にお茶しない?」

ギャル「え、何? 悪いけどそういうのお断りだから」


ナンパ野郎が女子高生に声をかけて、撃沈していた。


ナンパ野郎「くっ、失敗か……」


ナンパ野郎――もとい、プロデューサーがそんなことを呟く。


奈緒「……スカウトが? それともナンパが?」

P「スカウトに決まってるだろ!」

奈緒「今の台詞は完全に怪しいナンパだろ! スカウトする気ホントにあるのか⁉」

P「うーむ……もしかして言葉選びが駄目?」

奈緒「もしかしなくても駄目だよ! さっきから1人も成功してないだろ! 話すらまともに出来てないぞ!」

P「むっ、じゃあ次は奈緒がやってみろよ。意外と難しいんだぞ」

奈緒「あ、あたしか⁉」

P「ああ。そして俺の苦労を知れ」

奈緒「なんでそうなるんだ……」

P「じゃあ次にいい感じの子を見つけたらアタックしてみてくれ」

奈緒「まあいいけど……その言い方、ナンパみたいだからやめろよな」

P「……」

奈緒「…………お、あの子とかいいんじゃないか?」

P「どの子だ?」

奈緒「あの子」


あたしの指した先には、街路樹に寄りかかってスマホをいじっている少女がいた。


P「ふむ、確かにいいかもな……」

奈緒「だろ? なんかビビッときたんだ」

P「よし、行け奈緒。俺はここから見守ってるぞ」

奈緒「ついて来ないのかよ!」





24: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:11:36.70 ID:gbQcrLF00



―――あたしは、その少女に近づいて声をかけた。


奈緒「なあ、ちょっといいか?」

加蓮「ナンパなら、どっかいってよ。そーゆーの、興味ないから」

奈緒「ちげーよっ! スマホ見てないでこっち見ろ! あたし、女だろ⁉ ナンパなんかするか!」

加蓮「……ん、それもそっか。なら、どちら様?」

奈緒「あたしは神谷奈緒って言うんだけど……あんたをアイドルにスカウトしたいんだ」

加蓮「……スカウト? なにそれ、なんの冗談?」

奈緒「いや確かにうさんくさいかもだけど、マジな話だ。これがプロデューサーの名刺」

加蓮「プロデューサー……?」

奈緒「本人はあれだ。あそこの―――」



P『あ、時限イベ始まってる』



奈緒「なんでスマホゲーやってんだ!」

加蓮「あれがプロデューサー……?」

奈緒「い、一応プロデューサーなんだ。で、あたしはあいつのプロデュースするアイドル」

加蓮「アンタがアイドル? 全然テレビとかで見たことないけど」

奈緒「そりゃそうだ。あたし、先週アイドルになったばっかりだから」

加蓮「……へー、そーなんだ。じゃ、そういうことで」

奈緒「流れるようにこの場から離れようとしないで⁉ 嘘っぽいけどホントなんだって!」

加蓮「……ま、その必死さに免じて信じてあげてもいいけど。でもなんでアイドルのアンタがスカウトしてるの? そういうのってプロデューサーの仕事じゃない?」

奈緒「確かにそうなんだけど……あいつはスカウトの才能がゴミクズなんだ」


P『おい、聞こえてるぞ! 誰がゴミクズだ!』


奈緒「お前はそのまま黙々とスマホゲーやってろ!……で、仕方ないからあたしが代わりにスカウトすることになったんだよ」

加蓮「なるほどね。……でも、なんでアタシなわけ?」

奈緒「なんていうかこう、ビビっときたからかな。なんか、うちの事務所の他のアイドルと似たようなもん感じたんだ」

加蓮「何それ。でも……アタシがアイドルに? ふぅん……アタシがアイドルねー。昔、病院のテレビでよく見てたなー、アイドル番組。ふふっ」

奈緒(病院……?)

加蓮「あ……ごめん。やっぱいいや。名刺、返すよ。アイドルなんて……そんな夢みたいなこと、叶うわけないから。声かけてくれたのは嬉しいんだけどさ、アタシには無理だから」

奈緒「無理って……なんか病気とかなのか?」

加蓮「ううん、今は違うけど……だってアタシ、いろいろ最低最悪でさ……。今はもう、なんか人生諦めムード入ってるんだよね。だから、バイバイ。悪いけど他探して」

奈緒「あ、ちょっと!……行っちゃったし。何かあるのかな、あいつ……」



P「―――やっぱり失敗したか。どうだ、スカウトって難しいだろ?」



奈緒「スマホゲーしてたやつが偉そうに言うな!」






25: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:12:05.53 ID:gbQcrLF00



―――346プロ アイドル部門


奈緒・P『ただいまー』

ちひろ「お疲れ様です、2人とも。スカウト、どうでしたか?」

奈緒「駄目。全滅だよ」

P「何人か良さそうな子はいたんですけどね」

奈緒「プロデューサーのおかげで、全員まともに話すらさせてもらえなかったんだ」

ちひろ「プロデューサーさんって、そんなにスカウト下手でしたっけ?」

P「いや、そんなことは無いと思うんですが……」

奈緒「どの口が言うんだ」

P「お前だって1人失敗しただろうに」

奈緒「そうだけど……でもあの子はなんかワケアリっぽかったんだよなぁ」

P「奈緒……言い訳は見苦しいぞ?」

奈緒「あんたホントにむかつくな」

ちひろ「まあまあ」


《ガチャ―――》


卯月「ただいま戻りましたー」

未央「やっぷー」

凛「なにその挨拶」

奈緒「お、みんなお疲れー」

P「どうだった? 今日の仕事、うまくいったか?」

凛「うん、大体は」

未央「しまむーがちょっとこけたくらいかな」

卯月「い、言わないでよぉ、未央ちゃん」

P「大丈夫だ。それはいつものことだから失敗には含まれん」

卯月「プロデューサーさぁん!」

未央「それでかみやんは今日どうしてたの? やっぱりレッスン?」

奈緒「いや、プロデューサーとスカウトしてた」

凛「? なんで奈緒がスカウトなんてしてるの?」

奈緒「レッスンが急に休みになってさ。暇だからプロデューサーに付き合ってたんだ」

卯月「レッスン休みになっちゃったんだ。残念だね」

奈緒「まあなー」

未央「どんまい、かみやん。……そうだ。今日の夕飯、かみやんの好きなもの作ってあげるよ。何がいい?」

奈緒「え、いいのか?」

未央「リクエストしてくれた方が、作りやすいしさ」

P「俺、かつ丼がいい」

奈緒「プロデューサーは関係ないだろ⁉ 勝手に一人で食ってろよ!」

未央「オッケー! じゃ、今日の夕飯はかつ丼ね」

奈緒「それ採用するんだ⁉」





26: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:12:59.52 ID:gbQcrLF00



―――翌日


P「奈緒、トレーナーさんはまだ風邪が治らないらしくて、レッスンは今日も休みだ」

奈緒「またか……ま、昨日の今日だし、そうだよな」

P「今日は俺も卯月たちに付いてかなきゃいけないから、奈緒はテキトーに過ごしててくれ。いわゆるオフってやつだ」

奈緒「まだ仕事もしてないのにオフって……あっ、なら今日は映画でも観に行こうかな。この前はどっかの誰かのせいで見られなかったし」

P「……。……ま、まあ好きにしてくれ。じゃ、3人とも行くぞー」

卯月「はい、プロデューサーさん」

凛「奈緒、ちひろさん、いってきます」

未央「かみやん、今日の夕食当番忘れないでねー」

奈緒「ああ、分かってるって。いってらっしゃい」

ちひろ「みなさん、頑張ってきてくださいね」


《ガチャ―――》


奈緒「それじゃ、あたしも行くことにします」

ちひろ「はい、いってらっしゃい奈緒ちゃん」





27: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:13:53.75 ID:gbQcrLF00



―――街中


奈緒(今日こそあれを見られる……わくわくが止まらない……!……ん? あいつ……)


視線の先には、昨日あたしがナン――スカウトしようとした少女がいた。


奈緒(昨日の……そういえばあいつとの最後のやり取り……)


『だってアタシ、いろいろ最低最悪でさ……。今はもう、なんか人生諦めムード入ってるんだよね。だから、バイバイ。悪いけど他探して』


奈緒(普通に断られるんならともかく、あれはなんか気になるよな……。あ、そうだ。ちょうど2枚あるし……)


あたしは少女に近づき、声をかける。


奈緒「よ、奇遇だな」

加蓮「? またアンタ……? しつこいんだけど」

奈緒「今日は別にスカウトしに来たわけじゃないって。ホントに偶然通りかかっただけ」

加蓮「どうだか」

奈緒「えっと……そういえば、名前なんて言うんだ?」

加蓮「……加蓮だけど」

奈緒「加蓮か。加蓮は昨日も一人でいたけど、誰かと待ち合わせでもしてるのか?」

加蓮「別に。1人でぶらついてるだけ」

奈緒「へぇ……暇なの?」

加蓮「……その言い方は気に入らないけど」

奈緒「実はあたしも暇なんだ。……あ、良いこと思いついた。加蓮、あたしと映画観に行かないか?」

加蓮「はぁ? なんでアタシがアンタと映画観なきゃいけないの?」

奈緒「どうせ暇なんだろ? ちょっと付き合ってくれてもいいじゃんか。安心しろ、オススメの映画だから」

加蓮「いや、知らないし」

奈緒「1人でいるより、2人のが楽しいって! さ、映画館にレッツゴー!」

加蓮「ちょ、なんなの⁉」


あたしは戸惑う加蓮の手を握り、無理矢理映画館へと引っ張っていった。





28: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:14:20.94 ID:gbQcrLF00



―――映画館前


加蓮「ホントに映画館まで引っ張ってこられたし……それで、映画って何観るの?」

奈緒「ふっふっふ……あれだ!」

加蓮「あれって……ま、まさかプ○キュア?」

奈緒「そう! この前観るはずだったんだけど、邪魔が入って見れなかったんだよなぁ」


なぜか、加蓮が可哀想なものを見る目であたしを見てくる。


加蓮「アンタ……その歳でまだプリ○ュアとか見てるの?」

奈緒「う、うるさいな。いくつになっても面白いものは面白いの! ほら、前売り券2枚あるから、代金は心配しなくていいし」

加蓮「ホントにアタシも観るわけ……?」

奈緒「加蓮はプリキュ○見たことあるのか?」

加蓮「昔は見てたけど、今のは全然知らないよ」

奈緒「昔見てたんなら大丈夫。オールスターズだから」

加蓮「なにそれ」

奈緒「ま、観れば分かるって。入ろ入ろ」

加蓮「……なんでこんなことになってるの?」





29: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:14:46.42 ID:gbQcrLF00



―――2時間後


奈緒「いやー、やっぱ○リキュアはいいなぁ! 加蓮はどうだった?」

加蓮「まあ、思ってたよりはね。アタシの知ってるプリキュ○も出てたし……なんだか昔を思い出したよ」

奈緒「あたしはもう高校生だから、入場特典のミラクルライトが貰えないのだけが不満だけど……ま、仕方ないか」

加蓮「アンタ本当にプリ○ュアが好きなんだね」

奈緒「まあなー」

加蓮「なんとかライトだっけ。……そういえばアタシはぎりぎり中3だから貰ったけど、これあげよっか?」

奈緒「いいの⁉」

加蓮「いや、アタシいらないし。映画の代金もアンタが払ったんだし」

奈緒「じゃ、じゃあ遠慮なく……やったぁ!」

加蓮「満面の笑みだね、アンタ」

奈緒「はっ⁉ べ、別にそこまで嬉しいわけじゃないし! ほ、ホントだからな⁉」

加蓮「はいはい」

奈緒「さ、さてこれからどうする? 加蓮はどっか行きたいとことかある?」

加蓮「そうだねアタシは……待って。なんでこの後もアンタと一緒に行動する感じになってるの?」

奈緒「いいじゃんか。このまま今日1日、一緒に遊ぼう」

加蓮「あのねぇ……映画に付き合ってあげたんだから、もう十分でしょ」

奈緒「そんな冷たいこと言うなって。加蓮を映画に付き合わせたから、今度はあたしが加蓮に付き合うよ」

加蓮「いや、別にいいんだけど……」

奈緒「遠慮しない遠慮しない」

加蓮「むしろアンタが遠慮しなさすぎだと思うんだけど!」





30: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:15:18.42 ID:gbQcrLF00



―――???


奈緒「で、なんだこの店? これ何? プラモの塗料?」


店に置いてあった塗料らしきものを手に取る。


加蓮「何言ってんの? それはマニキュアでしょ」

奈緒「マニキュア……あ、ああマニキュアな! あの……あれだよな!」

加蓮「……アンタもしかして、マニキュア知らないの?」

奈緒「……プ○キュアと関係あったりする?」

加蓮「全然関係ないから。ほら、これ」


加蓮が自分の指を見せてくる。


奈緒「爪?……伸ばしすぎだろ、危ないぞ」

加蓮「アタシの勝手でしょ! そうじゃなくて爪に塗ってあるやつ! これがマニキュアなの!」

奈緒「あ、そっちか。へー、これ自分でやったのか?」

加蓮「まあね。一応、ネイルはアタシの趣味だから」

奈緒「ネイルか……なんか聞いたことあるかも」

加蓮「聞いたことあるって……アンタ本当に女子高生なの?」

奈緒「れっきとした女子高生だよ! ネイルしてない女子高生だっていっぱいいるだろ!」

加蓮「マニキュアをプラモの塗料と間違えるのはそんなにいないと思うけど」

奈緒「……よくあることだろ、多分」

加蓮「いや、まず無いから」





31: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:15:57.29 ID:gbQcrLF00



―――某ファーストフード店


加蓮「あ~、この体に悪い感じ、たまんない♪」

奈緒「マッ○ポテト食ってそんな感想言うやつ、初めて見た」

加蓮「アタシもその歳でハッピー○ット頼む人、初めて見たけどね」

奈緒「い、いいだろ別に。ハッ○ーセットのおもちゃはここでしか手に入らないんだから」

加蓮「ふぅん……」

奈緒「そ、それより加蓮は○ック好きなのか?」

加蓮「マ○クっていうか……いわゆるジャンクフードが好きなの」

奈緒「へー、ジャンクフードねぇ……」





32: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:16:34.90 ID:gbQcrLF00



―――カラオケボックス


奈緒「加蓮は何歌うー?」

加蓮「まずアンタが歌っていいよ。どうせアニソンだろうけど」

奈緒「決めつけんなよ!」

加蓮「違うの?」

奈緒「……当たりだけどさ」

加蓮「やっぱりそうなんじゃん。で、何歌うの? やっぱりプリキュ○?」

奈緒「だから決めつけんなよ! あたしが歌うのは君の知らな○物語! だからプリ○ュアは加蓮に譲る!」

加蓮「アタシは別にプリ○ュアとか歌いたくないんだけど⁉」

奈緒「ドキ○リのOPでいい?」

加蓮「良くないから。それ知らないし、歌えないから」

奈緒「ぴっぴっぴと……よし」

加蓮「ねぇ、勝手に曲入れないで」





33: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:17:08.81 ID:gbQcrLF00



―――公園


あたしと加蓮は、公園のベンチで小休止していた。

奈緒「あー、歌った歌った」

加蓮「結局、一日中アンタと一緒って……」


加蓮は小さくため息をついた。


加蓮「あのさ……」

奈緒「ん?」

加蓮「どうしてアタシのこと引っ張りまわすわけ?」

奈緒「どうしてって……一緒に遊びたかったからだけど」

加蓮「だから、なんでそんな風に思うのかって訊いてるの。アンタとは友達でもなんでもないでしょ」

奈緒「え……」

加蓮「あ、いや、うん、もう友達かも。だからそんな悲しそうな目で見るのやめて」

奈緒「べ、別にそんな目では見てないけど、あたしはもう加蓮のこと友達だと思ってるからな」

加蓮「あっそ……じゃあ訊き方変える。なんで今日、アタシにまた話しかけたの? あの時点では、友達でもなんでもないでしょ?」

奈緒「それは……ちょっと、加蓮のことが気になって」

加蓮「え、アンタそういう趣味……やっぱり昨日のはナンパ……⁉」

奈緒「そういう気になるじゃねーよ!」

加蓮「じゃあ、何が気になったわけ?」

奈緒「昨日、なんか言ってただろ? 最低最悪だの、人生諦めムードだの」

加蓮「ああ、そういえばそんなこと言ったっけ……」

奈緒「それに加蓮の目。つまんなそうっていうか、寂しそうっていうか……そんな感じの目だったからさ」

加蓮「……ふぅん。やっぱり、そういうことか」

奈緒「? なんだよ、やっぱりって」

加蓮「つまり、そんな可哀想に見えたアタシを哀れんだってことでしょ? ホント……そういうの、もういい加減にしてほしいんだけど」

奈緒「な、なに急に不機嫌になってんだ、加蓮」

加蓮「アタシ、もう行くから」

奈緒「は?」

加蓮「もうアンタに付き合う気はないって言ってんの。じゃ、ばいばい」


そう言うと、加蓮はベンチから立ち上がった。


奈緒「いやいやいや! 『じゃ』じゃないだろ! 待てよ、加蓮!」


加蓮を行かせまいと、あたしはその手首を掴む。


加蓮「手、離して。もうアンタの顔見るだけでイライラするから」

奈緒「なんだそれ! あたし、何か怒らせるようなこと言ったか⁉」

加蓮「いいから離せって言ってんでしょ!」

奈緒「そんなこと言われて離すわけないだろ! 今手を離したら、あたし、加蓮と喧嘩したまま別れることになるじゃんか!」




34: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:17:36.19 ID:gbQcrLF00


加蓮「は、はぁ? 別にいいでしょ、それで。もう会うこともないんだし」

奈緒「いいわけあるか! せっかく仲良くなったのに、このままサヨナラなんて、絶対に嫌だからな!」

加蓮「! あ、アンタ……」

奈緒「そ、それに……あ、そうだ、スカウト」

加蓮「す、スカウト?」

奈緒「そう、スカウト! あたしのスカウト、まだ終わってないぞ! 加蓮には346プロでアイドルやってもらうんだ。逃げられてたまるか!」

加蓮「なに勝手に決めてんの⁉ やらないって昨日言ったでしょ⁉」

奈緒「実は今日一緒に遊んだのも、スカウトのためなんだからな」

加蓮「さっき『あ、そうだ』って聞こえたけど⁉ 今考えたでしょ、それ!」

奈緒「そうだよ、今考えたよ!」

加蓮「開き直った!」

奈緒「あたしが加蓮と今日一緒に遊んだのは、スカウトとか関係ない! それに……哀れんだわけでもない! いや、最初に話しかけた時は、正直そういう気持ちもあったかもだけど、そんなの映画観た辺りでなくなった! ただ一緒にいて楽しかったから、一緒に遊びたかったんだ!」

加蓮「た、楽しかった……? そんな理由……?」



奈緒「友達と一緒に遊ぶ理由なんて、それで十分だろ!」



加蓮「! アンタ、本当に友達って……」

奈緒「思ってるって言っただろ」

加蓮「……。…………ふふっ。そっか、分かった。アンタ、相当な変わり者なんだ」

奈緒「え、その言い方は酷くない?」

加蓮「アンタ……えっと……そういえば、名前なんて言ったっけ?」

奈緒「今日一日一緒にいたのに、あたしの名前も覚えてなかったの⁉ 滅茶苦茶ショックだぞ!」


そういえば一度も名前を呼ばれていないことに気付く。


加蓮「だ、だから、ちゃんと覚えるために、聞いてるんでしょ!」

奈緒「なんでそっちがキレてるの?……神谷奈緒だよ。もう忘れるなよな」

加蓮「神谷奈緒……奈緒ね。うん、今度は覚えた。アタシは北条加蓮」

奈緒「それは知ってる……あ、そういや苗字は聞いてなかったっけ」

加蓮「ちゃんと覚えてよね」

奈緒「よくその台詞言えるな!」





35: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:18:52.37 ID:gbQcrLF00



―――加蓮は再び、ベンチへと腰を下ろした。


加蓮「……ねぇ奈緒、ちょっと話付き合ってよ」

奈緒「? いいけど」

加蓮「……アタシさ、小さい頃から病弱で、長い間入院してたんだ」

奈緒「入院……そっか。病院のテレビとか言ってたのって……」

加蓮「そういうこと」

奈緒「今はもう……大丈夫なんだよな?」



加蓮「けほっ、こほっ」



奈緒「大丈夫じゃない⁉」

加蓮「なーんて、今はもう全然平気」

奈緒「おどかすな!」

加蓮「まあ、ちょっと人より体力はないと思うけどね。それでも、日常生活には何ら問題ないし」

奈緒「……なら良かったよ」

加蓮「だけど、やっぱり長いこと入院してたっていうことで、家でも、学校でも、そういう風に見られるんだよ」

奈緒「そういう風?」

加蓮「いまだに病人扱いされるってこと。ホント、勘弁してほしいんだけどね」

奈緒「でも……それは加蓮を心配してるからだろ?」

加蓮「まあ、そうなんだろうけど……。それでもうざったいことに変わりないの」

奈緒「……あ、さっき怒ったのって」

加蓮「そういうこと」

奈緒「そっか……。…………。……じゃあさ、加蓮」

加蓮「何?」





36: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:19:24.91 ID:gbQcrLF00


あたしはベンチから立ち上がり、加蓮を正面から見つめて、告げた。



奈緒「一緒にアイドルやろ!」



加蓮「なんでそうなるの⁉」

奈緒「アイドルやって、今の加蓮は全然元気だって、みんなに教えてやればいいじゃんか。 ステージの上で加蓮が歌って踊ってるの見たら、みんなの心配なんて吹き飛ぶって」

加蓮「え、えぇ……? そ、それはそうかもしれないけど……」

奈緒「アイドル、全然興味ない?」

加蓮「なくはその……ないけど」

奈緒「じゃあやろ! あたしはもう、加蓮をそんな目で見たりしない。っていうか加蓮、今日一日あちこちで一緒に遊んで、ずっと元気だったし」

加蓮「で、でもアイドルとかそんなの、アタシには無理だし」

奈緒「なんで? 自分で言ってたじゃんか。今はもう全然平気って」

加蓮「言ったは言ったけど……」

奈緒「……あ、なるほど。ビビってるんだな」

加蓮「……は?」

奈緒「だって、体は平気、アイドルに興味もある、なのにやらないってことは、そういうことだろ?」

加蓮「……」


なんか、加蓮の体がぷるぷると震えている。


奈緒「そうかぁ……ビビってるんじゃ、しょうがないよな。挑戦するの、怖いんだもんな……ぷふっ」

加蓮「(ぶちっ!)」


加蓮から何かがキレたような音が聞こえると、加蓮は勢いよくベンチから立ち上がった。





加蓮「やるよ! やればいいんでしょやれば! アイドルだろうとなんだろうと、そんなの余裕だからっ!」





奈緒「そっか! じゃあ一緒に頑張ろうな!」

加蓮「もち!……はっ⁉ あ、いや、今のな――」

奈緒「よろしく、加蓮!」

加蓮「な、奈~緒~~~っ!」


それからしばらく、あたしと加蓮は公園で追いかけっこを続けた。





37: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:20:07.16 ID:gbQcrLF00



―――346プロ アイドル部門


奈緒「というわけで、加蓮連れてきたぞ」

加蓮「ど、どーもー。北条加蓮でーす」

P「というわけって何⁉ なんだその子⁉」

奈緒「ほら、プロデューサー。昨日あたしがスカウトした子だよ」

P「え? あー、そういえば昨日の子だな」

加蓮「そういうあなたは、昨日のスマホゲーの人ですよね?」

凛「スマホゲー?」

P「……いや、それはなんのことだか分からんが。え、でもなんで? 奈緒、お前今日は映画観に行ったんじゃなかったのか?」

奈緒「行ったよ。加蓮と一緒に」

P「いつの間に交友関係を⁉」

卯月「奈緒ちゃん。つまり奈緒ちゃんがその子をスカウトしてきたっていうこと?」

奈緒「あー、まあそうなるのかな」

未央「すごいね、かみやん! プロデューサーは数か月かかってようやく2人目だったのに、かみやんは2日で1人スカウトしちゃったよ!」

P「うぐぅっ⁉」

凛「奈緒、プロデューサーより全然スカウトの才能あるよ」

P「うぐぐぅっ⁉」

ちひろ「これは社長に報告案件ですかね」

P「俺が無能って報告する気ですか⁉ 勘弁してください!」

奈緒「それでさ、プロデューサー。加蓮のこと、あたしが勝手にスカウトしてきちゃったけど……大丈夫かな?」

P「……まあ、俺もその子は良いと思ってたしな。その子がアイドルやる気あるって言うなら、こっちは大歓迎だ」

奈緒「良かったぁ。連れて来といて駄目だったら、どうしようかと思ってたんだ」

加蓮「えっと……じゃあアタシ、ここでお世話になっていいのかな?」

奈緒「ああ。加蓮はもう、あたしたちの仲間だ」

加蓮「じゃあ……みなさん、これからよろしくお願いします!」





38: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:21:04.00 ID:gbQcrLF00


奈緒「よろしくな、加蓮」

凛「私は渋谷凛。これからよろしくね、加蓮」

加蓮「うん。よろしくね、凛」

卯月「島村卯月です。卯月って呼んでくださいね」

加蓮「卯月、よろしくね。私のことは加蓮でいいよ」

ちひろ「事務員の千川ちひろです。何か困ったことがあったら、いつでも私に言ってくださいね」

加蓮「はい。その時はよろしくお願いします、ちひろさん」

未央「私は本田未央! 気軽に未央様って呼んでね!」

加蓮「オッケー、未央様」

未央「ホントに呼んでくれた⁉ うぁーっ、でも実際呼ばれるとくすぐったい! 普通に未央って呼んで!」

加蓮「ふふっ、分かったよ、未央」

P「あ、俺のことはビッ○ボスでいいぞ」



加蓮「オッケー、ボ○ブラック」



P「ホントに呼んでくれ――てない⁉ なんか違う! それじゃ俺、缶コーヒーじゃん!」

奈緒「呼んでもらえて良かったな、缶コーヒーP」

凛「その呼ばれ方、似合ってるよ」

P「嘘つけ! そのにやけ顔はなんだ! うぅ……もう普通にプロデューサーって呼んでくれぇ」

加蓮「ふふっ、りょーかい、プロデューサー」





39: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:25:55.16 ID:gbQcrLF00



―――数日後、346プロ アイドル寮 玄関


奈緒「なんだ、この大量の荷物⁉」

加蓮「やっほー♪」

奈緒「加蓮⁉」

未央「かれん、これどうしたの?」

加蓮「私も今日から、ここに住むんだー」

奈緒「そんなの聞いてないぞ⁉」

加蓮「だって言ってなかったし。驚いた?」

奈緒「そりゃ驚くわ! ていうか加蓮、実家東京だろ? わざわざ寮に住む必要あるのか?」

加蓮「だってここのが事務所に近くて楽だしさ。それに奈緒と未央が一緒なら、退屈しなさそうだしね」

奈緒「退屈って……」

未央「私は寮に人が増えるのは大歓迎だよ。よーし、今日はかれんの歓迎会だー!」

奈緒「あたしの時はそんなのやってなくね⁉」

加蓮「じゃあまとめてやろうよ。2人分の歓迎会をさ」

未央「いいねー、そうしよ!」

加蓮「あ、でもその前に荷物運ぶの手伝ってくれない? さすがに一人じゃきつそうだから」

未央「うん、任せて。さ、かみやんも早く!」

奈緒「分かってるよ。まったく……」

奈緒(なんだか、楽しくなりそうだな)

加蓮「ん? 何か言った?」

奈緒「何でもないよ。さ、とっとと運ぼうぜ」

加蓮「よろしくね、奈緒。私、応援してるから!」

奈緒「おっけ、任せろ!……いや、お前も運べよ!」

加蓮「えぇー……だって重いじゃん」

奈緒「あたしだって重いよ! ほら、そっち持て!」

加蓮「しょうがないなぁ……」

奈緒「……言っとくけどこれ、加蓮の荷物だからな? 手伝ってるの、あたしだからな?」

加蓮「はいはい。ありがとありがと」

奈緒「感謝がおざなり!」



未央『2人とも、喋ってないでテキパキと運んでよー!』



奈緒「すぐやるよー。……じゃ、行くぞ加蓮」

加蓮「うん、りょーかい」



第2話 おわり





40: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:28:00.72 ID:gbQcrLF00

第3話 スタートライン


―――346プロ アイドル部門


P「奈緒、加蓮、今日は重大発表がある」

奈緒「どうしたんだ、改まって」

加蓮「重大発表って?」

P「実はな―――」



P「ついに、ソロデビューが決定したんだ!」



加蓮「ソロデビュー⁉」

奈緒「ま、マジで⁉」

P「マジだ! だから2人とも――」



P「卯月たちが事務所に戻ってきたら、お祝いしてやってくれ!」



奈緒「あたし達じゃないのかよ!」

加蓮「……ま、そりゃそうだよね。私、まだ事務所に入って1週間だし」

奈緒「プロデューサー! わざと期待させるように言ったな⁉ 一瞬期待しちゃっただろ! これが大人のやることか!」

P「ちょっとしたお茶目だ」

奈緒「……なあ、頼むから一発殴らせてくれ」

P「お、落ち着け奈緒。確かにまだ奈緒と加蓮のデビューは決まってないが、既に準備は進めてる。早いうちに伝えられるはずだ」

奈緒「ホントかよ……?」

P「俺のこの目を信じろ」

奈緒「あんたの目、なんか濁ってるんだよな……」

加蓮「うんうん」

P「……とにかく信じてくれ。さすがにこんな嘘つかないからさ」

奈緒「分かったよ。まああたしたち、まだデビューできるほどの実力がついたとは思えないしな」

加蓮「だね。気長に待つよ」

奈緒「でもさっきみたいのはもうやめろよな。次やったらマジで殴るぞ」

P「肝に銘じておきます」






41: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:28:26.76 ID:gbQcrLF00


加蓮「それよりさ、卯月たちのソロデビューはホントなんでしょ?」

P「ああ。今までは卯月、凛、未央の3人でnew generationsとしてユニット活動していたんだが、そろそろ新しい可能性を模索してもいい頃だと思ってな」

奈緒「それでソロデビューか。でもニュージェネはどうするんだ?」

P「もちろん、これからも今までと変わらず活動してくよ。ソロ活動も始めるだけで、ニュージェネをやめるわけじゃないからな」

奈緒「そっか。良かった」

P「というわけだから……3人が戻ってきたら、これ鳴らしてくれ」

加蓮「これ、クラッカー?」

奈緒「おい、誕生日じゃないんだぞ」

P「じゃ、よろしくな。俺はケーキの用意してくる」

奈緒「誕生日かっ!」

ちひろ「それだけ嬉しいんですよ。プロデューサーさん、担当するアイドルのこととなると、自分のことのように喜びますから」

加蓮「へぇ、プロデューサーにも可愛いとこあるんだね」

ちひろ「ふふっ、きっと奈緒ちゃんと加蓮ちゃんがデビューする時も、同じようなことをすると思いますよ」

奈緒「ま、マジですか……?」

加蓮「でもさ、祝ってもらって悪い気はしないよね」

奈緒「……ま、それもそうだな」





42: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:28:59.59 ID:gbQcrLF00



―――それからしばらくして


凛「ただいまー」


《パンパンッ!》


凛「⁉ な、なに⁉」

未央「まさか、事務所が襲撃を受けたの⁉」

卯月「うえぇ⁉」


P・奈緒・加蓮・ちひろ『ソロデビュー決定おめでとー!』


凛「あ……」

未央「……なるほどね。またプロデューサーのあれか」

卯月「びっくりしましたよぉ」

P「さあ3人とも、ケーキのろうそくの火を吹き消してくれ」

奈緒「だから誕生日かっ!」

加蓮「まあお祝い感はあるし、いいんじゃない?」

未央「じゃあ3人一緒に」

卯月「吹き消そう!」

凛「うん、そうだね」

卯月・凛・未央『ふぅ~』



《カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ!》



卯月「ひゃぁ⁉」

凛「ちょっと、プロデューサー! なんで写真撮るの⁉」

P「いいだろ、記念だ」

未央「それにしても撮りすぎじゃない⁉」





43: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:29:25.46 ID:gbQcrLF00


P「じゃあちひろさん、ケーキ切るのお願いできます?」

ちひろ「はい、お任せください」

凛「まったくもう……」

加蓮「そういえばさ、ソロデビューの日っていつなの?」

凛「プロデューサーから聞いてないの?」

奈緒「今日のあいつは凛たちを祝うことしか頭に無かったからな。細かいことは聞いてないんだ」

凛「……まったく、プロデューサーは」

未央「来週の日曜にニュージェネのライブをするんだけど、その時に発表するんだー」

卯月「それで、そのまま一緒に曲も披露することになってるんだ」

奈緒「へぇ、サプライズってやつか」

未央「ふふーん、そういうこと!」

加蓮「頑張ってね、みんな。私たち、ライブ応援に行くからさ。ね、奈緒」

奈緒「ああ、行くっきゃないよな」

卯月「わぁ……! ありがとう、2人とも!」

凛「応援に来てもらえるのは嬉しいけど……でも、加蓮と奈緒はレッスンがあるんじゃない?」

奈緒「……あ」

加蓮「そういえば……」

奈緒「……プロデューサー!」

P「なんだ?」



奈緒「ライブ行きたいから、レッスン休みにしてくれ!」

P「いいぞ」



奈緒「いいんだ⁉ わりとヤケクソ気味だったんだけど!」

加蓮「随分あっさりだね」

P「ライブを観るのも、勉強になると思うからな。ルキちゃんには俺から言っとくよ」

奈緒「サンキュー、プロデューサー! あたし、初めてあんたを見直したよ!」

P「……なあ、俺のこと今までどう思ってたんだ?」





44: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:30:09.42 ID:gbQcrLF00



―――翌日、街中


加蓮「今日の夕飯の買い出しかぁ……カップラーメンじゃ駄目?」

奈緒「手抜きしようとすんな! そんなことしてたら、いつまでたっても料理上達しないだろ!」

加蓮「ちぇ~、なんで寮って当番制なの? 出来る人がやった方が良くない?」

奈緒「だったら加蓮は何するんだよ」

加蓮「私は……ネイルとか?」

奈緒「うん、とりあえずその係は今いらない。あたしも未央もネイルしてないだろ」

加蓮「これからすればいいじゃん。爪も伸ばしてさ」

奈緒「でも爪伸ばすとゲームやりづらいんだよなぁ」

加蓮「奈緒さぁ……もう少し女子力上げたら?」

奈緒「今のあたしは女子力低いと⁉」

加蓮「少なくとも、現役女子高生の平均よりは下かな」

奈緒「えぇ……? けっこうショックでかいぞ……ん? なんだ?」



『なあ、一緒にお茶ぐらいいいじゃんか』

『だから、そういうのお断りって言ってるでしょ! もうあっち行って!』

『そんな冷たいこと言わんでもよくね?』



加蓮「なんか……女子高生が絡まれてるっぽい?」

奈緒「加蓮、一応聞くけどあれ、スカウトしてるんじゃないよな?」

加蓮「いや、普通にナンパでしょ」

奈緒「やっぱそうだよなぁ……。じゃあ、ちょっとでしゃばるか」

加蓮「え、ちょっと奈緒?」





45: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:30:51.24 ID:gbQcrLF00



あたしはナンパしてる2人に近づいた。


奈緒「あんたたち、その辺にしとけって」

男A「なんだお前?」

男B「急に出てきやがって。邪魔だ、あっちいけ」

奈緒「いや、その子嫌がってるっぽいじゃんか。もうやめときなって」

JK「あなた……」

奈緒「いいか? あたしが、あんたたちにいいことを教えてやるよ」

男A「いいこと?」

男B「なんだってんだ?」

奈緒「それはな……」



奈緒「嫌がってる子と一緒にお茶しても、気まずいだけだぞ!」



JK「……え、そこ?」

男A「……たしかにそうだ!」

男B「なんで気が付かなかったんだ……」

JK「納得したの⁉」

奈緒「だからナンパするんなら気が合う奴を探した方がいいって。大丈夫、世の中は広いんだからさ。きっといい子が見つかるよ」

男A「お前……いいやつだな!」

男B「よーし、さっそく出会いを見つけに行こうぜ!」

男A「おう!」


男たちはまだ見ぬ出会いへと走り出していった。




46: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:31:42.43 ID:gbQcrLF00


奈緒「頑張れよー」

加蓮「何をするのかと思ったら……何してるの、奈緒?」

奈緒「あいつらのナンパがなってなかったから、ちょっと説教を」

加蓮「でしゃばり方おかしくない?」

JK「えぇっと……一応助けてくれたんだよね。ありがと」

奈緒「大したことしてないよ。……あれ? あんた、どっかで会ったことないか?」

JK「え?」

加蓮「ちょっと、なに奈緒までナンパみたいなこと言ってるの?」

奈緒「いやそうじゃなくてさ。確かどこかで―――」



その時、あたしの頭に先日のある一場面が浮かんだ。


P『へい彼女! 可愛いねー、一緒にお茶しない?』

ギャル『え、何? 悪いけどそういうのお断りだから』



奈緒「―――思い出した! 前にプロデューサーがスカウトしようとした子だ!」

加蓮「え、そうなの?」

JK「プロデューサー? スカウト?……なんの話?」

奈緒「覚えてないか? 1週間くらい前に、背広を着た怪しい奴にナンパされただろ?」

JK「……あー、そういえばそんなことあったかも」

奈緒「あいつ実はアイドル事務所のプロデューサーでさ。あの時は、あんたをスカウトしようとしてたんだよ」

JK「え、そうだったの? てっきりナンパだと思ったんだけど」

加蓮「プロデューサー、どんなスカウトしたの……?」

奈緒「それであたしたちは、一応あいつのプロデュースするアイドルなんだ。まあアイドルって言っても、まだ初めて1ヶ月も経ってない新人だけどな」

JK「へぇ、そうなんだ」

奈緒「あたしは神谷奈緒。で、こっちが」

加蓮「北条加蓮だよ。よろしくね」

美嘉「アタシは城ケ崎美嘉。2人とも、よろしく☆」

加蓮「……ん? 城ケ崎美嘉? あなた、どこかで見たことがあるような……」

奈緒「それはもうあたしがやったんだけど」

加蓮「そうじゃなくて。……あっ、モデルの城ケ崎美嘉! 雑誌で見たことある!」

奈緒「えっ、モデル⁉」

美嘉「あはは、うん。まあ一応モデルやらせてもらってるよ」

加蓮「一応なんてもんじゃないでしょ。カリスマJKって呼ばれるくらい人気なのに」

奈緒「そうなのか?」

加蓮「女子ならみんな知ってるって! 奈緒はもっと女子力磨きなよ!」

奈緒「美嘉のこと知らないくらいで、そこまで言わなくてもいいだろ⁉」

美嘉「ま、まあまあ落ち着いてよ」

加蓮「あ、ごめん」

奈緒「わ、悪い。でも美嘉はモデルなのか……じゃあアイドルとか元から無理だったな」

美嘉「無理? アタシ、アイドルやってみたいんだけどな」

奈緒「え?」





47: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:32:48.81 ID:gbQcrLF00



―――346プロ アイドル部門


奈緒「というわけで、美嘉連れてきたぞ」

美嘉「どーもー、城ケ崎美嘉でーす☆」

P「というわけって何⁉ なんかデジャヴなんだけど!」

奈緒「ほら、プロデューサー。この前あんたがスカウトしようとした子だよ」

P「え? あー、そういえばあの時の子だな」

美嘉「あ、この前のナンパの人だよね。ホントにプロデューサーだったんだ」

凛「ナンパ? プロデューサー、どういうこと……?」


ナンパという単語に、凛の目が妖しく光った。


P「……。……いや、それはなんのことだか分からんが。え、でもなんで? まさか加蓮に続いてまた――」 

卯月「奈緒ちゃんがこの子をスカウトしてきたってこと?」

奈緒「いや別にスカウトってわけじゃないけどさ。美嘉、アイドルやりたいらしいんだ」

凛「それスカウトだよね」

未央「すごいね、かみやん! プロデューサーはこの前かみやんをスカウトしたのが半年ぶりの成果だったのに、かみやんは2週間もかからずに2人スカウトしちゃったよ!」

P「うぐぅっ⁉」

凛「もうプロデューサーより、奈緒がスカウトを担当したほうがいいんじゃない?」

P「俺の仕事を奪うような提案するなよ!」

ちひろ「これは社長に報告案件ですね」

P「なんでいちいち報告しようとするんですか⁉ お願いですから勘弁してください!」


プロデューサーがちひろへ土下座をしていると、美嘉が卯月たちを見て声を上げた。


美嘉「あっ! ニュージェネの3人じゃん! えっ、ここってニュージェネの事務所だったんだ!」

奈緒「え? 美嘉、卯月たちのこと知ってるのか?」

美嘉「そりゃ知ってるよ。だってニュージェネって言ったら、この前のスターライトステージで新人ユニット賞獲った3人だよ?」

奈緒「……スターライト? なんだそれ?」

加蓮「スターライト……えっ⁉ そうだったの⁉」

美嘉「え、同じ事務所なのに知らなかったの?」

加蓮「私、最近はアイドル番組見てなかったから……そっか、そうだったんだ」

奈緒「え、何の話?」

P「奈緒はスターライトステージ知らないのか?」

奈緒「知らない。……スターライトブ○イカーと関係あったりする?」

P「欠片も関係ねぇよ!」





48: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:33:21.55 ID:gbQcrLF00


P「いいか? スターライトステージって言うのは、1年に一回だけ開かれるアイドルたちの祭典だ。その1年で目立つ活躍をしたアイドルたちがそれぞれライブを行って、その年のナンバーワンアイドルを決めるんだよ」

奈緒「へぇ……じゃあ、それで未央たちはナンバーワンになったのか?」

未央「……古傷を抉ってくるね、かみやん」

奈緒「え?」

卯月「あはは……そんなに前のことじゃないけどね」

凛「私たちの順位は5位。1位にはなれなかったんだ」

奈緒「そ、そうだったのか、悪い」

凛「別にもう終わったことだし、気にしてないよ。……来年は絶対に勝つから」

奈緒「滅茶苦茶気にしてる!」

加蓮「でも、5位でも十分凄いよ。私、全然知らなかったなぁ」

P「別に黙ってたわけじゃないんだけどな」

奈緒「……ん? じゃあ新人ユニット賞って言うのはなんなんだ?」

P「それは順位とは別で、1年間の活躍に与えられる賞なんだよ」

奈緒「そんなのもあるのか」

P「お前、何にも知らないのな……」

奈緒「うっさいな! しょうがないだろ! そ、それよりプロデューサー、美嘉をうちの事務所に入れてくれるのか?」

P「ん? まあ一度俺もスカウトしてるしな。こっちは大歓迎だ」

美嘉「じゃあみんな、これからよろしくね☆」

卯月「はい!……なんだか私、事務所がどんどん賑やかになってきて、嬉しいです!」

未央「だね、今月だけで3人だもん」

凛「私たち3人しかいない期間が長かっただけに、感慨深いよね」

加蓮「大丈夫、まだまだ増えてくよ。奈緒がどんどんスカウトするだろうからさ」

奈緒「いや、あたしにスカウトの権限ないから! それプロデューサーの役目だから!」





49: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:34:20.40 ID:gbQcrLF00



―――その日の夜 アイドル寮 奈緒の部屋


奈緒「……なあ、なんであたしの部屋に集まるんだ?」

加蓮「だって未央、奈緒、私の順に部屋が並んでるんだから、真ん中の奈緒の部屋に集まるのが一番いいでしょ?」

奈緒「どの部屋でも大して変わらないと思うけどなぁ」

未央「それにかみやんの部屋って、漫画とかいっぱいあって退屈しないもんね」

奈緒「あたしの部屋は漫画喫茶じゃないぞ!」

加蓮「奈緒―、紅茶ちょうだい」

奈緒「自分で淹れろよ!」

加蓮「えぇー……じゃあいいや」

奈緒「いいのかよ……。……それにしても、未央たちがスターライトステージなんてのに出てたなんてな」

未央「まあ、かみやんが事務所に入る前にも、色々頑張ってたわけですよ。……でも、もうその話はやめない? まだそんなに日が経ってないから、悔しさがけっこう残ってるんだ」

加蓮「未央もなんだ……」

未央「そしてしまむーもね」

奈緒「そっか、なんかごめんな」

未央「ううん、別にいいって」




50: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:34:49.87 ID:gbQcrLF00


奈緒「じゃあ話変えるけど……美嘉が事務所に入っても、寮は3人のままか」

加蓮「美嘉は東京に住んでるんだから、わざわざ寮に入ったりしないでしょ」

奈緒「それは加蓮もだろ」

加蓮「私はここの方が楽なんだもーん」

未央「そういえば美嘉ねーって、妹がいるらしいよ」

奈緒「妹? それって未央じゃなくて?」

未央「私はただニックネームで呼んでるだけだって。そうじゃなくて本物の妹。美嘉ねーとその子、すっごい仲良しみたいだから、寮に入ったりはしないんじゃないかな」

加蓮「妹かー。いいなー、私一人っ子なんだよね」

奈緒「あたしもだ」

未央「私は兄と弟がいるよー」

奈緒「え、マジで?」

加蓮「てっきり未央も一人っ子かと思ってたよ」

未央「なんか分からないけど、よく言われるなーそれ」

奈緒「じゃあ未央は妹であり姉でもあるのか……一粒で二度美味しいな」

未央「私はグ○コじゃないよ⁉」

加蓮「ほら未央、加蓮お姉ちゃんが飴あげるよー」

未央「わーい!―――って喜ばないから! なにいきなりお姉ちゃんぶってるのさ!」

加蓮「せっかくだから、姉の気分を味わってみたくて。ちょっと付き合ってよ」

未央「えぇ……結構恥ずいよ、それ」

加蓮「それ未央、飴ちゃんとっておいでー! ぽいっ!」

未央「わーい!」

奈緒(なんだかんだ言っても、ちゃんと付き合ってやる辺り、さすがだよな……)

未央「―――ってこれ妹っていうより犬じゃん!」

加蓮「あはは、ごめんごめん。そういえばさ、私犬も飼いたいんだよね」

奈緒「残念ながら、この寮はペット禁止だぞ」

加蓮「じゃあ未央、次は犬を――」

未央「もうやらないよ!」

加蓮「ちぇ~」

未央「まったくもー……あ、でもそういえばしぶりんが犬飼ってるよ」

奈緒「凛が?」

未央「ハナコって言うんだ。もうしぶりん溺愛してるの」

奈緒「溺愛って……なんか想像つかないな」

加蓮「凛って、ペットの前だと性格変わるタイプなのかな」

未央「しぶりんとハナコの写真あるよ。えーと……これこれ」

奈緒「凛、めっちゃ笑顔だ!」

加蓮「へー、いつもクールなのに、ペットの前だとこんな感じなんだ」

未央「意外でしょ?」





51: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:35:28.32 ID:gbQcrLF00



―――渋谷家


凛「くしゅん!……風邪かな?」

ハナコ「キャンキャン!」

凛「ハナコ、心配してくれてるの?」

ハナコ「キャン!」

凛「ふふっ。ありがとね、ハナコ」





52: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:36:09.67 ID:gbQcrLF00



―――翌日、346プロ レッスン室


奈緒「今日からは美嘉も一緒にレッスンか」

美嘉「2人とも、よろしくね☆ それでさ、レッスンって何するの? やっぱりダンスしたり、歌ったり?」

加蓮「うん、大体そんな感じかな。あとは基礎体力をつけるトレーニングとか」

美嘉「へぇ、そんなのもやるんだ」

ルキトレ「やるんですよー」

美嘉「わっ⁉ び、びっくりしたー……」

加蓮「やっほー、ルキちゃん」

美嘉「ルキちゃん?」

加蓮「ルーキーのトレーナーだから、ルキちゃん。私たちと同じで新人なんだよ」

美嘉「あ、そうなんだ。……え、本名は?」

奈緒「そういえば聞いてないな……」

ルキトレ「別にルキちゃんでいいですよ。プロデューサーさんすら、そう呼んでますし」

美嘉「じゃあ、ルキちゃん☆」

ルキトレ「はい。あなたが城ケ崎美嘉ちゃんですよね? ふっふっふ、今日からバシビシいきますから、覚悟してくださいよ……!」

美嘉「は、はい……ん? バシビシ?」

加蓮「ルキちゃん、ビシバシじゃない?」

ルキトレ「あぅっ⁉……間違えたぁ」

奈緒「威厳が無いのに威厳を出そうとしても、無理な話だぞ。0.1秒でボロが出てるし」

ルキトレ「うぅ……やっぱりまだ私はお姉ちゃんみたいには無理だなぁ」

美嘉「お姉ちゃん?」

加蓮「ルキちゃんのお姉さんって3人いるんだけど、みんなトレーナーなんだよ。その中でも一番上のお姉さんは、ルキちゃんとは違って威厳ありありらしいよ」

ルキトレ「いつか、お姉ちゃんのようになるのが私の目標なんです……!」

美嘉「そっか……頑張ってね、ルキちゃん☆」

ルキトレ「はい!……あっ⁉ 今日のレッスン内容書いた紙、更衣室に忘れちゃった⁉ ご、ごめんなさい、ちょっと取ってきます!」

奈緒「……目標に届くのは、当分先になりそうだな」





53: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:37:15.96 ID:gbQcrLF00



―――レッスン休憩 346プロ 廊下


あたしは1人、自販機の前に立っていた。


奈緒(くっそー、『ジャンケンで負けた奴が飲み物買ってくることにしよう』とか言わなき
ゃ良かったなぁ。まさかあたしが負けることになるなんて……言い出しっぺは損だな)

奈緒「……あれ? そういえば買ってくる飲み物決めてなくないか?……あたしたち、バカなのか? どうしよっかな、色々あるけど……うーん……」



???「すみません。悩んでいるのでしたら、先に買わせてもらってもよろしいですか?」



奈緒「え? あ、すみません、どうぞどうぞ」

???「ありがとうございます」

奈緒(……え、この人抹茶買ったよ)

???「実はさっきからのどが渇いていて、ずっと飲み物が欲しかったんです」

奈緒「そうでしたか。でも抹茶とは渋いですね」

???「ふふ、少し苦いですけど、慣れれば美味しいですよ。だから私、最近抹茶にはまっちゃってるんです」

奈緒「へぇ、抹茶にはまっちゃ―――」

奈緒(え、まさか今のダジャレ?……いや、そんなこと言うような人には見えないし、偶然か)

???「あなたは……どこかの新人さんですか?」

奈緒「あ、はい。この前アイドル部門に入った、神谷奈緒って言います」

???「アイドル部門……そんな部門あったかしら?」

奈緒「なんか、半年前くらいに出来たばっかりみたいですね」

???「ああ、そうだったの。アイドル部門……アイドル……」

奈緒「あの、どうかしましたか?」

???「あ、いえ、なんでもありません。では」

奈緒「あ、はい。……なんか不思議な人だったな。凄い美人さんだったけど。さて、飲み物どうしようかな………………抹茶でいいか」





54: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:37:51.82 ID:gbQcrLF00



―――レッスン室


美嘉「ちょっと奈緒! なんで抹茶なんて買ってきてるの⁉」

加蓮「ジャンケン負けたからって、これは酷くない? 罰ゲームじゃないんだからさ……」

奈緒「いや、自販機の所で会った人が美味いって言っててさ。2人とも、抹茶飲んだことあるのか?」

加蓮「無いけど……」

美嘉「そういえば、アタシも無いなぁ」

奈緒「だったら飲んでみなくちゃ苦いかなんて分かんないだろ? 意外と美味いかもだぞ?」

加蓮「えぇー……ホントかなぁ?」

美嘉「じゃあ、試しに飲んでみる?」

奈緒「飲め飲め。文句は飲んでから言えって」

加蓮「しょうがないなぁ」





奈緒・加蓮・美嘉『…………苦っ⁉』





55: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:38:33.40 ID:gbQcrLF00



―――レッスン後 346プロ廊下


加蓮「ほら奈緒。きびきび歩く」

美嘉「早くしないと置いてくよー」

奈緒「くぅう……なんであたしが2人の分の荷物まで持たなきゃならないんだ……」

加蓮「あんなもの私たちに飲ませてくれたんだから、当然の罰でしょ?」

美嘉「うんうん。まだ口の中に苦みが残ってるんだからね」

奈緒「だから悪かったって何度も謝ったじゃんかー」

加蓮「事務所までなんだから、そんなかからないでしょ。さ、行くよ」

奈緒「うぅ……いつもより廊下が長く感じるなぁ……」





56: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:39:12.35 ID:gbQcrLF00



―――346プロ アイドル部門事務所


奈緒「やっと着いたー!」

加蓮「お疲れ、奈緒」

美嘉「運んでくれてありがとね☆」

奈緒「持たせといてよく言うよ……」

???「おかえりなさい、奈緒さん」

奈緒「あ、ただいま―――ってさっき自販機のとこで会った人じゃん⁉ なんでいるの⁉」

加蓮「自販機……?」

美嘉「っていうことは、この人が抹茶の人?」

???「抹茶の人……? いえ、私は高垣楓と申します」

美嘉「あ、これはどうもご丁寧に。アタシは城ケ崎美嘉って言います」

奈緒「ちひろさん、どういうことなんだ?」

ちひろ「いえ、それがですね―――」


《ガチャ》


P「戻りましたー」

楓「おかえりなさい」

P「あ、ただいま―――ってどちら様ですか⁉」

未央「なになに? どうしたのプロデューサー?」

卯月「あ、なんだか凄く綺麗な人がいます!」

凛「本当だね……誰だろう?」





57: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:39:42.18 ID:gbQcrLF00


P「え、えーっと……はじめまして、私はこの事務所のプロデューサーをしている者です」

楓「あ、そうでしたか。私は高垣楓と申します」

P「高垣さんはうちの事務所に何かご用が?」

楓「実は私、346プロのモデル部門に所属しているのですが……」

P「ああ、高垣さんはモデル部門の方でしたか」

楓「はい。ですがこの度、アイドル部門に異動したいと考えていて……」



P「これから一緒に頑張りましょう、楓さん!」



奈緒「即決かよ!」

楓「では、異動しても大丈夫なのでしょうか? まだモデル部門の上の方には伝えていないのですが……」

P「大丈夫です。そんなもんどうとでもなります」

奈緒「おいプロデューサー、ホントに勝手に決めちゃっていいのか?」

P「いいんだよ。楓さんが来たいって言ってくれてるんだから」

奈緒「いや、でもモデル部門の上の人の許可とかいるだろ」

P「まあいるだろうけど……あ、そうだ。モデル部門と言わず、社長の許可取ってくりゃいいんだ。俺、ちょっと行ってくるな」

奈緒「いや、やめとけよ! 社長に直訴とか下手すりゃクビだぞ!」

加蓮「……もう行っちゃったよ」

奈緒「……あいつとも今日でお別れか」





58: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:40:26.53 ID:gbQcrLF00



―――30分後


P「楓さんの異動、OKだってさ」

奈緒「許可取れたの⁉ あんた、意外にデキるやつなのか⁉」

P「うちの社長は話が分かる人だからな。楓さんの意思を尊重してくれたんだ。アポなしで突然会いに行ったからぶん殴られたけど」

奈緒「うちの社長バイオレンスだな!」

P「楓さん、そういうわけなので、これからはアイドル部門所属になります」

楓「ありがとうございます、プロデューサーさん。私のためにわざわざ……」

P「いえいえ。アイドルのために尽力する、それが私の仕事ですから」

楓「まあ……さすがはプロデューサーさんですね」

P「いやぁ、それほどでもないですよ。あっはっはっは」





凛「……プロデューサー、年上が好きなの?」





P「どうした急に⁉」

凛「随分嬉しそうだったから」

P「そりゃ所属アイドルが増えたら嬉しいだろ」

凛「ふーん……」


凛が少し不機嫌になっている。





59: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:41:28.05 ID:gbQcrLF00



――少し離れた位置で


加蓮(……あれ? 凛ってもしかして……)

未央(あ、気付いた?)

美嘉(え、そうなの⁉ 意外……)

奈緒(え、何の話?)

卯月(凛ちゃんがプロデューサーさんのことを好きだって話だよ)

奈緒(へー、そうなのか……)



奈緒「えぇぇぇぇぇええええええええええええええええ⁉」



P「奈緒⁉ どうした⁉」

奈緒「おま、お前、凛……えぇ⁉」

加蓮「あまりの驚きに錯乱してる……」

凛「奈緒、一体どうしたの?」

卯月「あのね―――」

凛「うん。―――なに余計なこと教えてるの⁉」

卯月「だ、駄目だった?」

凛「駄目だよ!」

未央「どうせすぐバレるんだから、いいじゃん」

凛「良くないよ! せ、せめて加蓮と美嘉には……」

加蓮「いや、もう知ってるけど」

美嘉「うん」

凛「なっ⁉……。……2人とも、今知ったことは他言無用のトップシークレットだから。誰かに話したりしたら、絶対に許さないよ……?」

加蓮「怖い怖い怖い! 目が怖いって!」

美嘉「わ、分かった、誰にも言わないから!」

凛「ならいいよ。……奈緒も――」



奈緒『なおはプロデューサーにこうげきした』

P『ちょぉいっ⁉ 何こんらん状態になってんだ⁉』



凛「……奈緒には後で釘を刺そう」





60: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:41:55.89 ID:gbQcrLF00



―――???


???「ふむ……この短期間に神谷奈緒、北条加蓮、城ケ崎美嘉、高垣楓の4人がアイドル部門に新たに所属、か……。あいつだけの力とは考えにくいな……。ならやはり……偶然かもしれんが、試してみる価値はあるか……」





61: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:42:39.99 ID:gbQcrLF00



―――ニュージェネライブ当日 楽屋


奈緒「よ、3人とも」

加蓮「約束通り、応援に来たよー」

美嘉「やっほー☆」

楓「お邪魔しますね」

卯月「あ、みなさん!」

未央「おっ、来たねー」

凛「みんな、わざわざありがとう」

加蓮「いいって、レッスンサボれるし」

奈緒「おい」

加蓮「ジョーダンだって」

奈緒「ホントかよ……」

美嘉「ライブ、けっこう大きなとこでやるんだね」

卯月「うん。今までで一番大きな会場なんだ。だから緊張が……」

凛「こればっかりは、何度ライブしてもね」

未央「じゃあ私たちの緊張をほぐすために、かみやんの一発ギャグをどうぞ!」

奈緒「やらねーし! 持ちネタとか無いから!」

加蓮「奈緒、未央たちのために一発ギャグくらいやってあげなよ」

奈緒「他人ごとだと思って何言い出すんだ、加蓮!」

美嘉「大爆笑のやつでお願いね☆」

奈緒「そしてハードル上げるの⁉ ますますやだよ!」

楓「みんなの緊張を、奈緒ちゃんが治してあげて。……ふふっ」

奈緒「楓さんそれ言いたいだけですよね⁉」

凛「奈緒。……頑張れ」

奈緒「止めてくれないのか、凛!」

卯月「大爆笑の一発ギャグ……いったいどんなギャグなのかな……私、楽しみです!」

奈緒「純粋な視線が眩しい!」





62: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:43:52.87 ID:gbQcrLF00


加蓮「さあ奈緒、準備はいい?」

奈緒「……うぅ、なんでこんな……ぎゃ、ギャグとか……何を……」

未央「じゃあ、張り切ってどうぞ!」

奈緒(くっ、こうなりゃヤケだ!)






奈緒「ライブ前は緊張でつらいぶ。な、なーんちゃって……」






『……………………』


一同の間に静寂の時間が流れる。
それはほんの数秒のことだったが……あたしには永遠に感じられた。


楓「……くすっ」


1人笑う楓さん。トドメだった。


加蓮「奈緒……今のは……」

未央「一発ギャグというか……ダジャレ……しかも若干無理が……」

奈緒「あ、あぅ……うぁぁ……うきゃぁ―――――――っ!」


《ガチャッ!》


美嘉「あ、ちょっと奈緒⁉」

卯月「奈緒ちゃん、凄い速さで出ていっちゃいましたよ⁉」

凛「恥ずかしさに耐え切れなかったみたいだね」

加蓮「しょうがないなぁ……追いかけてくるね」

未央「あー、お願いかれん。かみやんに無茶振りしてごめんって伝えといて」

加蓮「うん、りょーかい」

美嘉「じゃ、アタシたちも」

楓「そうね。みんな、ライブ頑張ってね」

卯月「はい!」

凛「絶対、良いライブにします」


《ガチャ》


凛「……2人とも、奈緒のアレで本当に緊張がほぐれたんじゃない?」

未央「あ、そういえばそうかも」

卯月「いつの間にか緊張が解けてるみたい」

凛「私もなんだ。ギャグとしてはアレだったけど、奈緒には感謝しないとだね」





63: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:45:08.21 ID:gbQcrLF00



―――観客席


奈緒「うぅ……もう寮に戻ってアニメ見たい……」

加蓮「なに言ってるんだか……。奈緒、もうすぐライブ始まるんだから、そろそろしゃっきりしなよ」

奈緒「そんなすぐ切り替えられないよぉ……」

美嘉「思ったよりダメージでかいね」

楓「奈緒ちゃん。私はあれ、いいと思ったわよ」

奈緒「うぎゃあぁ―――――っ!」

美嘉「楓さん、それはフォローじゃなくて追い打ち」

楓「あら……?」


『お待たせいたしました。これよりニュージェネレーションズ新春ライブを開始いたします』


加蓮「もう、奈緒! ホントに始まるよ!」

奈緒「うぅ、分かったよぉ……あっ! 未央たち出てきた」


ステージに卯月、凛、未央が現れ、最初の曲を歌い始めた。


『小さく前ならえ! 詰め込んだ気持ちが―――』





64: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:45:57.01 ID:gbQcrLF00



『―――未来デビューだよ、よろしくっ!』


new generationsの曲、『できたてEvo! Revo! Generation!』が終了する。


奈緒「凛たちのライブ、初めて見たけどすごいのな! な、加蓮!」

加蓮「……もうすっかり立ち直ってるし」

奈緒「ん? なんか言った?」

加蓮「なんでもないよー」


そんなやりとりをしていると、ステージで卯月が喋り始める。


卯月『ここで私たちからみなさんに、大事なお知らせがあります!』

凛『この度、私たち3人は……』

未央『なんと、ソロデビューすることになりましたー!』


その発表に、会場が沸き上がった。


卯月『ソロデビューと言っても、ニュージェネの活動はこれからも続けていきます!』

未央『だからみんな、安心してねー!』

凛『そしてもう一つサプライズ。そのソロデビュー曲を、今からここで初披露するよ。それじゃ、まずは未央から』

卯月『私たちは一旦、ステージから離れますね』

未央『―――それじゃ、聞いてね! 私のソロ曲『ミツボシ☆☆★』、本邦初公開だよ!』



『燃―やせっ! 友情パッションはミツボシ!』






65: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:46:48.82 ID:gbQcrLF00



『愛をこめてずっと、歌うよ―――――――――っ!』


卯月『ありがとうございました!』


未央の歌に続き、卯月が自分のソロ曲、『S(mile)ING!』を歌い終わる。


そのライブを、あたしは無言で食い入るように観ていた。

奈緒「……」

加蓮「奈緒? どうかしたの?」

奈緒「……ん? いや、なんでもない」

美嘉「最後は凛だね」

楓「どんな曲か、楽しみね」


未央『それじゃあ、いよいよ次で最後だね! みんな分かってるだろうけど……』

卯月『最後に歌うのは、凛ちゃんです!』 

未央・卯月『曲は―――Never say never!』


卯月と未央がそう告げると同時に、ステージの中央に凛が現れる。



『―――ずっと強く……そう強く……あの場所へ、走り出そう!』






66: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:47:46.35 ID:gbQcrLF00



―――ライブ後、楽屋


美嘉「3人とも、最高のライブだったよー!」

楓「本当に、いいライブだったわ」

卯月「ありがとうございます!」

未央「いやぁ、私たちにかかればこんなもんだよ」

凛「調子に乗らない」

未央「てへへ」

加蓮「でもホント、良かったよ。ね、奈緒?」

奈緒「……え? あ、ああそうだな。みんな凄い盛り上がってたし」

加蓮「……さっきからどうかしたの?」

奈緒「ちょっとな……」


《ガチャッ》


P「卯月、凛、未央、3人ともお疲れさん! ライブ大成功だったな!」

奈緒「いたのかプロデューサー」

P「いたよ⁉ ずっと裏で仕事してたんだよ!」

卯月「プロデューサーさんもお疲れさまです!」

凛「お疲れ、プロデューサー」

未央「お疲れさま!」

P「ああ、ありがとな」

奈緒「……」

加蓮「奈緒……?」





67: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:49:29.75 ID:gbQcrLF00



―――その日の深夜 寮の屋上


加蓮「何してるの奈緒、こんな夜中に」

奈緒「加蓮……? どうしたんだ?」

加蓮「どうしたもこうしたも、奈緒の部屋の扉が開いた音がしたから、気になって来たんだけど」

奈緒「そっか。起こしてごめん」

加蓮「別にいいけど……奈緒、ライブ終わってから変じゃない? どうしたの?」

奈緒「……あのさ、今日のライブ見て、加蓮どう思った?」

加蓮「どうって……すごかったよね、3人とも。私、ライブとか初めてだったから、すごい盛り上がっちゃったよ」

奈緒「そうなんだよなぁー……すごいんだよなぁー」

加蓮「……なんなの?」

奈緒「いやさ、あたしたちも一応アイドルなわけじゃんか。あたし、最初は普通にライブを楽しんでたんだけど、途中から色々と考えちゃってさ」

加蓮「色々って……どんな?」

奈緒「いつかデビューした時、あたしに凛たちみたいなライブが出来るのかなぁ……とか、そもそもホントにあたしがアイドルとか出来るのかなーとか……そんな感じ」

加蓮「つまり……未央たちのライブ見て、ショック受けちゃった?」

奈緒「ショック……。そっか、あたしショック受けてたのか。卯月たちがあんまりすごかったもんだから……」

加蓮「奈緒……」



加蓮「……てりゃっ!」



奈緒「うぇっ⁉ にゃ、にゃにすんだ! ほっへあひっはんにゃ!(な、何すんだ! ほっぺた引っ張んな!)」

加蓮「あははっ、面白い顔―!」

奈緒「ひゃらうにゃー! (笑うなー!)」

加蓮「奈緒さー、そんなこと考えてても仕方ないって。私たちはついこの間アイドルやろうって決めたばっかりの、アイドル新入生なんだから。もう何度もライブやって経験積んでる未央たちとじゃ、レベル違うの当然でしょ?」

奈緒「いにゃ、しょりゃしょうやけろさ……(いや、そりゃそうだけどさ……)」

加蓮「これから経験積んでいけば、きっと私たちもあんなライブが出来るようになるよ。だから、暗い顔してないで笑顔笑顔♪ ほら、むに~っ!」

奈緒「む、むりにゃりえきゃおにしゃしぇるにゃ! ひいきゃけんひゃ~にゃ~しぇ~っ!(む、無理矢理笑顔にさせるな! いい加減は~な~せ~っ!)」

加蓮「ふふっ、はいはい」

奈緒「ったく、やっと解放されたよ……」

加蓮「それでどう? ショックはまだ残ってる?」

奈緒「おかげさまで、どっかに行っちゃったよ。……そうだよな、まだあたしは何にもやってないんだ。今までは準備運動みたいなもん……気合を入れ直したここからが、あたしのアイドル活動の本当のスタートだ! よーし、やるぞー!」

加蓮「じゃあ私も、奈緒と一緒にスタートすることにするよ。目標も出来たもんね?」

奈緒「目標?……そうだな。本人たちには恥ずかしいから絶対言わないけど……あたしたちの目標は、ニュージェネだ! いつかは凛や卯月、未央に追いついて、そして追い越す! 加蓮、一緒に頑張ろうな!」

加蓮「ふふっ、りょーかい♪」





68: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/14(金) 22:51:14.03 ID:gbQcrLF00




―――屋上から降りる階段にて


加蓮「……あ、そうだ。さっきの奈緒のほっぺ、ぷにぷにしてて気持ちよかったよ」

奈緒「なっ⁉ ぷ、ぷにぷにって……そ、そんな感想とか言わなくていいんだよぉーっ!」



第3話 おわり








73: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/15(土) 23:58:44.71 ID:YNG9qWeU0



次回予告



???「アイドル部門のプロデューサーをクビにしたので、早急に手続きを」

少女「出ました! 『飴あげるからこっちおいで』って声かけてくる人です!」

おばちゃん「まあ大変! すぐに通報しなくっちゃ!」

奈緒「あたしは神谷奈緒。こっちが相棒のピカ○ュウ」

加蓮「ぴ○ちゅ」

未央「ハロー! ワターシはミオ・ホンーダ!」



―――次回、シンデレラガールズ第4話
『アリス・イン・アイドル部門』



???「壁に向かって正座でもしていろ!」

P「壁に⁉」



……だいたいあってるので、ご了承ください。







76: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/16(日) 23:30:19.27 ID:OlWwpJXf0

第4話 アリス・イン・アイドル部門


―――346プロ 社長室前


奈緒「社長から呼び出しって……あたし、なんかまずいことしたか?」

P「奈緒、社長の椅子に勝手に座ったりしてないよな?」

奈緒「してねぇよ! っていうか社長に会ったことすらないし!」

P「うーむ……奈緒が呼び出された理由は分からんなぁ。でも何もしてないんだったら、悪いことじゃないだろ」

奈緒「そうだといいけどさ」

P「それより俺が呼び出された方が問題だ。……何がバレたんだ? 社長の椅子でうたた寝したことか? それとも差し入れに持って行った弁当が賞味期限切れてたことか? いや、それともこの前こっそり落書きを―――」

奈緒「あんた色々やってんな! なんか社長に恨みでもあるのか⁉」

P「あるっちゃある」

奈緒「あるんだ⁉」

P「ま、堂々としてれば誤魔化せるか。入るぞ、奈緒」

奈緒「あんたは入らないほうがいいんじゃないか……?」


《コンコン》


???『入れ』


《ガチャ》


P「失礼しまーす」

奈緒「失礼します」

社長「よく来てくれた。私がこの346プロダクションの社長だ」

奈緒(社長って、女の人だったのか……しかも若っ⁉)

社長「君が神谷奈緒だな?」

奈緒「は、はい。はじめまして、神谷奈緒です」



P「そんで社長、俺らになんか用すか?」



奈緒「軽くね⁉」

社長「……もしもし人事部か? アイドル部門のプロデューサーをクビにしたので、早急に手続きを―――」

P「調子乗ってました申し訳ありませんでしたクビは勘弁を!」

社長「ジョークだ、安心しろ。今かけたのはただの時報だ」

P「相変わらず先輩のジョークは笑えませんね!」

奈緒「先輩?」

P「あの人、俺の学生時代の先輩なんだ」

奈緒「へぇ、そうなのか……。指差すなよ」





77: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/16(日) 23:31:33.31 ID:OlWwpJXf0



社長「後輩、それが社長に対する態度か? いっそ本当にクビにするぞ」

P「な、なんかそれは本気っぽいですね……。分かりました、先輩じゃなくて社長に対する態度にしますよ。それで……今回はどのようなご用件でしょうか?」

社長「アイドル部門の今後について、少し話があってな」

P「今後……ですか?」

社長「この半年で、お前がプロデュースしたnew generationsは新人とは思えぬほど高い人気を獲得した。少しシャクだが、このことについては、私はお前を高く評価している」

P「ありがとうございます、社長。……でも先輩が人を褒める時って、なんかあるんだよなぁ」

奈緒「心の声漏れてるぞ」



社長「だがっ!」



奈緒・P『⁉』

社長「この半年でアイドル部門に加入したアイドル、少なすぎるだろう! なんだ4人って! 何してたんだお前は!」

P「プ、プロデュース活動してたんですよ」

社長「ああそうだな、それは存分にしろ。だがお前がアイドル部門設立当初、私に言った台詞を覚えているか?」

P「……俺、なんか言いました?」



社長「半年後にはアイドルで事務所をいっぱいにしてやります! 俺に任せといてください、先輩!」



社長「……そう言ったんだ」

P「あー、そういえば……言った気も……」

社長「それなのにたった4人だと……? うちの事務所は漫喫の個室並みに小さかったか? 答えてみろ!」

P「ひぃっ⁉ その数十倍はあります!」

社長「分かっているのなら話は早い……アイドルをもっと増やせ、後輩! だからいつまで経ってもアイドル部門が弱小部署のままなんだぞ!」

P「そ、そんな理由だったんですか⁉」

社長「まあそれ以外にも理由はあるが……とにかく、お前への用件はそれだけだ! 彼女との話が終わるまで、そこで壁に向かって正座でもしていろ!」

P「壁に⁉」

社長「早くやれ!」

P「は、はい!」

奈緒(マジでやらされてるよ……すごいシュールな絵面だな)





78: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/16(日) 23:32:15.09 ID:OlWwpJXf0


社長「はぁ……すまないな、神谷。学生時代から、どうも奴という存在は私の神経を逆なでするんだ」

奈緒「いえ、その気持ち分かります」

P「分かるのかよ!」

社長「まあ奴のことはもういい。では君への用件を話させてもらおう」

奈緒「はい」

社長「今の後輩とのやり取りでも言ったように、私はアイドル部門のアイドルをもっと増やしたいと考えている。今のアイドル部門はnew generationsの一本柱で成り立っているが……それだけでは限界がある。346プロがアイドル業界のトップを目指すためには、より多様なアイドルを集め、育成する必要があるのだ」

奈緒「多様なアイドルですか……」

社長「そこで神谷奈緒、君に頼みがあるのだが―――」



社長「君にも、我が346プロのアイドルのスカウトを担当してもらえないだろうか?」



奈緒「えっ⁉」

P「ちょっと先輩、正気ですか⁉」

社長「いつ正座をやめていいと言った! それと社長と呼べ!」

P「じゃ、じゃあ正座したまま……正気ですか、社長! 奈緒はアイドルですよ!」

社長「アイドルだろうが関係ない! 少なくともお前よりはスカウトの才能があるだろう! 千川から報告を受けているぞ!」

奈緒「ち、ちひろさんから⁉」

P「あの人ホントに報告してやがった!」

社長「千川が言うに、北条加蓮、城ケ崎美嘉の2人は神谷がスカウトしてきたそうだな?」

奈緒「い、いやスカウトっていうか……偶然が重なったというか……」

社長「それに高垣楓も、神谷からアイドル部門のことを聞いたことでアイドルに興味を持ったそうだ」

奈緒「そ、そうだったんですか⁉」

社長「本人に聞いたので間違いはない。つまり神谷、君がきっかけとなり、この短期間に3人がアイドル部門に所属したんだ」

奈緒「いや、きっかけとか大げさな……どれも偶然ですよ!」

奈緒(あ、いや……加蓮はあたしがスカウトしたようなもんか。でもややこしくなるから黙っとこ……)





79: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/16(日) 23:33:14.31 ID:OlWwpJXf0


社長「偶然が3つも続くとは思えん。君にはスカウトの才能がある。私はそう判断した」

奈緒「そ、そんな才能とか……」

社長「なら一つ試してみよう。……ここに2枚の写真がある。君はこの2人の少女のどちらにアイドルの素質を感じる?」

奈緒「え? 素質とか言われても……どっちも可愛いけど、右の子かな」

社長「その写真の少女は、活躍中の人気アイドルの10年前の姿だ。やはり、君には素質を見抜く目が備わっているようだな」

奈緒「えぇ……? 二分の一の確率じゃ……」

社長「たとえ二分の一でも、君は当てて見せたのだ。外していたら見込み違いとみなしたのだが……当てたからには、私の君への期待はうなぎ上りになっているぞ」

奈緒「過剰評価!」

社長「ちなみに言うと、もう片方の写真は学生時代に後輩が女装した時の写真だ」

奈緒「これプロデューサーかよ! なにしてんだ、あんた!」

P「若気の至りで……」

奈緒「じゃあこれ、外すほうが難しくないですか⁉」

社長「いや、後輩の女装はそれなりにレベルが高い。現に君は言われるまで気付かなかっただろう?」

奈緒「う、確かに。普通に女の子に見えた……」

社長「この写真を使ったのはただのジョークだが、ここに映っている後輩は普通の女子と遜色ない。むしろ美少女と言っていい。だが君はきちんと感覚で見抜いた。良い目を持っているということだ」

奈緒「そうかなぁ……?」

社長「私が言うのだから間違いない。……はずだ」

奈緒「はずだって聞こえたんですけど⁉」

社長「幻聴だろう。引き受けてもらえないか? どうも後輩は頼りにならんのだ」

P「俺、酷い言われようですね」





80: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/16(日) 23:34:35.87 ID:OlWwpJXf0



社長「実績では神谷の方が上だろう。お前がまともにスカウトしたのは、渋谷と神谷くらいだったはずだが」

P「い、一応卯月もですよ!」

社長「それでもイーブンだ。どうだ、神谷?」

奈緒「で、でもスカウトなんて出来るとは思えないんですが」

社長「難しい話じゃない。例えば道を歩いている時に、神谷がこれだと思う子を見つけたら、話しかけて、少し話をしてくれるだけでいい。簡単だろう?」

奈緒「確かに簡単に聞こえはしますけど……」

社長「神谷はあくまでアイドルであるから、本格的にスカウトをしてくれとは言わない。日常生活のついででいいんだ。引き受けてもらえないか?」

奈緒「うーん……でも……」

社長「……まあ、首を縦に振らないのであれば、こちらも相応の手段を取るつもりだが」

奈緒「⁉ し、手段って、いったい何を……⁉」

社長「たしか神谷は、アイドル寮に住んでいるんだったな?」

奈緒「そうですけど……。ま、まさか立ち退きとか……⁉」

社長「もし君がこの話を受けないのであれば―――」



社長「アイドル寮からテレビのアンテナを全て取り除くことにしよう」



奈緒「なんてこと考えるんだ!」

社長「たしか神谷はアニメ鑑賞が趣味だったか? いやー、残念だな。アニメはネットのオンデマンドで見ることだ」


あたしの顔が絶望に染まる。


奈緒「そ、そんなの耐えられるわけが……リアタイで一切アニメ見れないとか……!」

P「先輩、なんて惨いことを……」

社長「さて、どうする? 私はどちらでも構わないが」

奈緒「くぅうう……謹んでやらせていただきます……!」

社長「そうか、やってくれるか。そう言ってくれると思っていたぞ、神谷!」

奈緒「くそぅ……この人やっぱりプロデューサーの先輩だ」

P「それどういう意味⁉」




81: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/16(日) 23:35:58.99 ID:OlWwpJXf0



―――346プロ アイドル部門事務所


P「というわけで、奈緒がスカウト部長に就任した」

奈緒「させられたの間違いだろ……」

凛「まさかホントに奈緒がスカウトを担当することになるなんて……」

ちひろ「びっくりですねぇ」

奈緒・P『報告したの、あんただろ!』

ちひろ「さて、事務仕事を片付けないとですね~」

奈緒「逃げやがった」

加蓮「私はスカウト部長、奈緒にぴったりだと思うよ。スカウトされた私が言うんだから、間違いないって」

奈緒「加蓮……」

楓「奈緒ちゃんなら、きっと出来るわ」

美嘉「うんうん、奈緒ちゃんならなんとかなるって」

奈緒「楓さん、美嘉……」

未央「かみやんがいっぱいスカウトしてくるの、期待してるよ!」

奈緒「プレッシャーかけんな!」

凛「私も、未央じゃないけど楽しみにしてるよ、奈緒」

奈緒「凛まで⁉」

卯月「奈緒ちゃん。私、奈緒ちゃんの力でこの事務所がもっと賑やかになったら、すごく素敵だと思うな」

奈緒「卯月……。はぁ……仕方ない、もうやるって言ったんだしな。ホントにあたしに出来るかは分からないけど、やるだけやってみるよ」

加蓮「うん。その意気だよ、奈緒」

P「俺も、これからもスカウト続けるからな」

未央「うん、あんまり期待しないでおくね」

P「俺の扱い、こっちでも酷い!」





82: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/16(日) 23:37:06.64 ID:OlWwpJXf0



―――街中


奈緒「スカウトかー……社長も日常生活のついででいいとか言ってたし、気楽にやるか」

加蓮「それでいいんじゃない? 無理してスカウトする必要も無いでしょ。元々プロデューサーの仕事なんだし」

奈緒「だよな。……まあ、そのプロデューサーがろくにスカウトできないから、こっちにとばっちりが来たわけだけど」

加蓮「じゃあやっぱりたくさんスカウトする? 可愛い子見つけたら、片っ端から声かけるとか」

奈緒「いや、数撃ちゃ当たるってわけでもないだろ。アイドルやれそうな子じゃないと駄目だって」

加蓮「でも、そんなの分かる?」

奈緒「社長が言うには、あたしなら見抜けるらしい。……怪しいとこだけど」

加蓮「へー。じゃあ奈緒的に見て、今周りにいる人の中でいい感じの子いる?」

奈緒「そんなポンポンいないって。アイドルのバーゲンセールか……ん?」

加蓮「いたの? アイドルの卵」

奈緒「そんなのはいないけど……迷子見つけた」

加蓮「迷子?」

奈緒「あれ」



少女『えぇと……この大通りを真っ直ぐ……? さっき右に曲がったから……左……? うーん……』



加蓮「あれは……確かに迷子っぽいね。タブレット見ながらあっちこっち動いてる。小学生かな?」

奈緒「あの子、中々の大物かもな」

加蓮「なんでそう思うの?」

奈緒「だってタブレット使ってるのに迷子とか、逆にすごいぞ」

加蓮「……確かにルート案内のアプリとかあるもんね。使ってないのかな?」

奈緒「とりあえずほっとけないし、助け船出そうぜ」

加蓮「だね」





83: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/16(日) 23:37:52.31 ID:OlWwpJXf0



あたしは、その女の子の後ろにそおっと近づいて声をかけた。


奈緒「よ、お嬢ちゃん。どうしたんだ? 迷子?」

少女「ひゃっ! な、なんですか、いきなり……! わ、私に何か用ですか……? こ、これ以上近づくと……大声で人を呼びますよ」

奈緒「え、不審者扱い? ち、違うって。あたしはただお嬢ちゃんに……あ、そうだ、飴舐める?」

少女「出ました! 『飴あげるからこっちおいで』って声かけてくる人です! い、今こそ防犯ブザーの使いどころ!」

奈緒「え⁉ ちょ―――」



《ブゥ―――――――――――――――!》



防犯ブザーのやかましい音が辺りに響き渡った!


その辺歩いてたおばちゃん「何なの⁉ どうしたのお嬢ちゃん!」

少女「こ、この人が飴を! 私に飴を!」

おばちゃん「まあ大変! すぐに通報しなくっちゃ!」

奈緒「いやちょっと待ってくれません⁉ この子が迷子みたいだったから声かけただけですよ!」

おばちゃん「不審者はみんなそう言うのよ! えーっと、110番って何番だったかしら」

奈緒「あたし不審者に見えます⁉ あたし女子高生ですよ⁉ こんな女の子に何かすると思いますか⁉」

おばちゃん「……言われてみればそうね。じゃああなた、この子に何するつもりだったの?」

奈緒「だから道案内ですって!」

おばちゃん「お嬢ちゃん。この人こう言ってるけど、どうなの?」

少女「……そういえば、迷子かどうか聞かれました」

おばちゃん「お嬢ちゃん、迷子なの?」

少女「ま、迷子じゃないです!……ちょっと道が分からないだけで」

おばちゃん「……そうなの。なるほどね……あなた、この子のことお願いできる?」

奈緒「え? は、はい」

おばちゃん「ごめんなさいね、誤解しちゃって。じゃあね」

奈緒「あ、はい。さよなら」

少女「さようならです」


おばちゃんは去っていった。





84: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/16(日) 23:38:58.56 ID:OlWwpJXf0



奈緒「納得してもらえたのか……良かったぁ」

加蓮「災難だったね、奈緒」

奈緒「加蓮……今までどこにいたんだ?」



加蓮「巻き込まれるの嫌だったから、そこのコンビニに行ってた」



奈緒「この薄情者!」

加蓮「もちろん、ホントに危なくなったら助けに入るつもりだったよ」

奈緒「ホントか? それ見てると信用できないんだけど」


加蓮はその手に袋の空いたポテチを持っていた。


加蓮「奈緒も食べる?」

奈緒「いらねーよ!」

少女「あの……」

奈緒「あ、悪い。えぇっと……誤解は解けたんだよな? あたし、お嬢ちゃんに変なことしたりしないからな?」

少女「はい……私の勘違いだったみたいです。すみませんでした」

奈緒「ああいや、分かってくれればいいんだ。でさ、お嬢ちゃん道に迷ってたよな?」

少女「ま、迷ってないです。ただちょっと、目的地にいつまで経ってもたどり着けないだけです」

奈緒「それを迷子って言うんだけど……まあいいや。それで、どこ行きたいんだ?」

少女「……この本屋さんです」

奈緒「ああ、ここか。じゃあ案内するよ、行こうぜ」

少女「い、いえ、道を教えてもらえれば十分です」

奈緒「あたしたちも、ちょうどその本屋に行こうと思ってたんだ。な?」

加蓮「あ、うんそうなの」

奈緒「だから遠慮しなくていいって」

少女「そ、そうなんですか? なら、よろしくお願いします」

奈緒「ああ、任せとけ」

加蓮(ほっといたらまた迷子になりそうだもんね)

奈緒(タブレットあるのに迷子になるんじゃ、道教えただけでたどり着けるかどうか分からないからなぁ)


そして、あたしたちは本屋へと歩き始めた。



85: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/16(日) 23:40:03.18 ID:OlWwpJXf0



奈緒「そういえば、お嬢ちゃんの名前なんて言うんだ? あたしは神谷奈緒。こっちが相棒のピカ○ュウ」

加蓮「ぴ○ちゅ―――って違うから。北条加蓮だよ、よろしくね」

少女「私の……名前は……橘……橘ありすです」

奈緒「ありすか。良い名前だな」

加蓮「うん、可愛い名前だね」

ありす「あの、やめてください。私、自分の名前、キライなんです」

奈緒「そうなのか?」

ありす「『ありす』なんて……童話に出てくるような子供っぽい名前ですから。だから、私のことは橘って呼んでください。奈緒さん、ピカチュ○さん」

加蓮「加蓮だからね⁉」

ありす「そ、そうでした。加蓮さん」

加蓮「もう、奈緒がふざけた紹介したせいで変な風に覚えられちゃったじゃん!」

奈緒「ははっ、やなかんじー?」

加蓮「いい加減にしなよ……?」

奈緒「わ、悪かったよ。ごめんなさい」

加蓮「よろしい」

ありす「お二人は仲がいいんですね」

奈緒「え? このやりとりのどこでそう思った?」

ありす「違うんですか?」

奈緒「いや、まあ、その……違わないけどさ」

加蓮「相棒だもんね?」

奈緒「だから、あたしが悪かったって。それで話を戻すけど……ありすのことは橘って呼んだ方がいいのか?」

ありす「はい、橘でお願いします」

奈緒「そ、そっか。うーん……」

加蓮「なんか呼びづらいね。小さい子を苗字呼びって」

奈緒「だよなぁ。でも本人の希望だし……」

加蓮「じゃあ……橘ちゃん?」

ありす「それでお願いします」

奈緒「じゃあダディヤナサンで」

ありす「誰のことですか⁉ 私はた・ち・ば・な・です!」

奈緒「……本当にありすじゃダメか?」

ありす「ダメです! 橘です!」

奈緒「……分かったよ、橘」

ありす「ようやくですか……無駄に疲れました」




86: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/16(日) 23:40:58.57 ID:OlWwpJXf0


奈緒「あ、橘、さっきの飴舐めるか? 甘いいちご味のだぞ」

ありす「で、ではいただきます。……はむっ―――」



ありす「ほわぁぁ……!」



奈緒(飴食ってこんなに幸せそうな顔するやつ初めて見た!)

加蓮(さっきまでは堅い表情だったけど、こういうとこは年相応だね)

ありす「おいしぃ……!」

奈緒(にやにや)

加蓮(にまにま)

ありす「はっ⁉ な、なんでこっち見てにやけてるんですか⁉」

奈緒「やっぱりありすって呼ぶな。うん、そっちのが似合ってる」

ありす「なんでですか⁉」

加蓮「ありすちゃん、飴美味しかった?」

ありす「はい、おいしかったで――ま、まあまあでした!」

奈緒「ぷふっ!」

ありす「なんで吹き出したんですか⁉」

奈緒「いや、ありすが面白くて」

ありす「私は何も面白いことなんてしてないです!」

奈緒「そうかそうか、悪かったな」

ありす「なんで頭なでるんですか⁉ 子ども扱いしないでください!」

奈緒「んん? ふーむ……」


あたしは、あることに気付いてありすを見つめた。


ありす「こ、今度はなんですか? じろじろ見ないでください」

加蓮「どうしたの、奈緒?」

奈緒「……例の件。ありす、良くないか?」

加蓮「例の件って……もしかして、卵発見?」

奈緒「かもしれない」

加蓮「でもありすちゃん、小学生だよ?」

奈緒「社長、多様なアイドルを集めたいとかどうの言ってたし。年齢層も広げたほうがいいんじゃないかな」

加蓮「なるほどねぇ……」

ありす「さっきからなんの話を……?」





87: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/16(日) 23:41:46.67 ID:OlWwpJXf0



奈緒「あのさ。ありす、アイドルとか興味ないか?」

ありす「アイドル? いきなりなんですか?」

奈緒「実はさ、あたしたちアイドルやってるんだ」



ありす「ふっ」



奈緒「なんで鼻で笑った⁉」

ありす「奈緒さん、私がそんな嘘に騙されると思ったんですか? 見え見えですよ」

奈緒「嘘じゃないんだって! あ、そうだ社長からこういう時に渡せって……ほら、うちの社長の名刺だ!」

ありす「私を騙すためだけにこんなものまで……用意周到とはこのことですね」

奈緒「騙してないから! ホントなの!」

加蓮「ありすちゃん、嘘っぽいけどホントなんだよ。信じてくれないかな?」

ありす「……分かりました。一応、信じてもいいです」

奈緒「なんでいつも信用されないんだ……?」

加蓮「知名度が無いからじゃない? 凛たちなら別かもね」

奈緒「確かにそうかもしれない……。それでありす。うちの事務所今アイドル募集しててさ、良かったらアイドルやってみないか?」

ありす「アイドル……私がですか?」

奈緒「そう、ありすが」

ありす「……私が……」

加蓮「アイドル、興味ないかな?」

ありす「アイドルに興味はありませんけど……。……レッスンは、ちょっと興味があります」

加蓮「レッスン?」

ありす「実は私、将来、歌や音楽をお仕事にしたいと思っているんです。でも……どうやったらなれるのかわかりませんし、家でも学校でも、練習できる場所は無いですし……」

加蓮「そっか……。レッスンやりたくても、できないんだね」

ありす「はい。だから、詳しく話を聞かせてもらってもいいですか? 親と相談して、返事しますから」

奈緒「ああ、分かった。……とか話してる間に着いたな」

ありす「あ、来たかった本屋さんです」

加蓮「じゃあ話の続きは本を買ってからにしよっか?」

ありす「はい、それでお願いします」

奈緒「あたしもちょっと見てみよっかな」

加蓮「奈緒、漫画コーナー以外にも興味持ったら?」

奈緒「なんだその言い方⁉ まるであたしが漫画以外読まないみたいな!」

加蓮「あ、ラノベも読むか」

奈緒「だからそれだけみたいな言い方するなよ! あ、あたしが見ようとしてたのはだな……えっと……れ、恋愛小説のコーナーだ!」

加蓮「ぷふっ!」

奈緒「なんで笑った⁉」

加蓮「だ、だって奈緒が恋愛小説とか……くくっ……ラブコメ漫画の間違いじゃないの?」

奈緒「勝手に決めつけんな! ま、マジで恋愛小説買うんだからな!」

ありす「あの……早く入りませんか?」





88: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/16(日) 23:43:00.81 ID:OlWwpJXf0



―――その日の夜、アイドル寮 奈緒の部屋


未央「えー⁉ もうスカウトしたの⁉ 早っ!」

加蓮「さすがはスカウト部長だよね」

奈緒「偶然だから。持ち上げるのやめい」

未央「いやいや、偶然でそんなうまくいかないって」

加蓮「だよね。奈緒、スカウトの神様に愛されてるのかも」

奈緒「そんなの担当してる神様いるのか……?」

未央「それで、今度はどんな子なの?」

加蓮「ありすちゃんだよ」

未央「外国の子⁉ アリスちゃんか……どうしよ? 私、英語話せないよ」

奈緒「ま、そこはボディランゲージで頑張れ」

未央「その手があったか! よーし、私のパッションを伝えるよー!」

奈緒(面白そうだから誤解は解かないでおこ)





89: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/16(日) 23:43:53.79 ID:OlWwpJXf0



―――翌日 事務所


奈緒(この小説勢いで買ったけど、全く読む気しないな……。『今一番泣ける恋愛小説』とかいう宣伝文句だったけど、でも読む気しない、どうしよう?)

卯月「ふんふふんふふーん♪」

奈緒(お、ちょうどいいとこに)

奈緒「卯月、これやるよ」

卯月「はい? これって、今人気の恋愛小説? どうして私に?」

奈緒「あたしは読まないけど、卯月なら読むかなーって。あ、くれぐれもあたしがあげたってのは内緒な?」

卯月「え? どうして内緒にするの?」

奈緒「馬鹿にされるから」

卯月「? よく分からないけど……ありがとう、奈緒ちゃん」

奈緒「おう」

卯月「そういえば奈緒ちゃん。未央ちゃんが急に変な動きの練習を始めたみたいなんだけど……」



未央『はっ! せい! とうぁっ!』

凛『……未央、何してるの?』

未央『国際交流の準備! えやっ! ほあっ!』

凛『ごめん、意味が分からない』

加蓮『くっ……くくっ……』

美嘉『加蓮、どうしたの?』

加蓮『う、ううん……な、なんでもない……くふっ』



卯月「あれは何をしているのかな?」

奈緒「……さあ? 未央の考えることは、たまに分からん」





90: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/16(日) 23:45:11.93 ID:OlWwpJXf0



―――そして数日後 346プロ事務所


P「えー、みんなもう知ってると思うが、今日からうちの事務所に新たなメンバーが加わることになった」

未央「待ってました!」

P「おおうっ⁉ や、やけにテンション高いな、未央」

未央「それでアリスちゃんはどこにいるの?」

P「ああ。もうすぐ来ることになってるんだが……」


《トントン》


P「お、来たみたいだな。入ってきてくれー」


《ガチャ》


未央「ハロー! ワターシはミオ・ホンーダ! よろしーくねっ!」

ありす「ひきゃぁっ⁉ な、なんですかこの人⁉ 今度こそ危ない人ですか⁉」

P「何してんだ未央⁉ なんだそのへんてこ踊りは⁉」

未央「……あれ? 日本語? それにどう見ても日本人……あなた、アリスちゃんじゃないの?」

ありす「わ、私は橘ありすですけど……」

未央「なるほど、橘ありすちゃんかー……。……かみやん、かれん、騙したなー!」

加蓮「あははははっ! も、もう駄目!」

未央「笑ってるんじゃないよ!」

奈緒「未央、騙したとは人聞きが悪いぞ。あたしも加蓮も、ありすが外国人だなんて一言も言ってないだろ?」

未央「確かに言ってないけど! 確かに言ってないけどね⁉」

凛「加蓮、どういうこと?」

加蓮「じ、実はね―――」

卯月「そ、そんなことを……」

美嘉「なるほど、最近の未央の奇行はそういうことだったんだ」

未央「くぅう……悪質! 悪質な詐欺だよ、これ! 私のここ数日の特訓時間返してよ!」

奈緒「悪い悪い。その分は料理当番代わるから、許してくれ」

未央「むー……なら許す!」

凛「許すんだ」

ありす「……あの、ここアイドル事務所で合ってますよね?」

ちひろ「はい、合ってますよ」

ありす「そうですか……」

楓「ありすちゃん、これからよろしくでありんす。ふふふっ」

ありす「でもなんだか思ってたのと違います!」





91: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/16(日) 23:45:52.09 ID:OlWwpJXf0



奈緒「これからよろしくな、ありす」

ありす「橘ですっ!」

P「未央、奈緒、加蓮。ありすはアイドル寮に入ることになってるからな」

ありす「だからたちば―――」

奈緒「え、そうなのか?」

加蓮「ありすちゃん、まだ小学生でしょ? 両親と一緒の方がいいんじゃないの?」

P「ありすの両親、共働きであんまり家にいないらしくてな。だから寮の方が安心なんだそうだ」

ありす「たち―――」

未央「そういうことなら、私たちがきちんとありすちゃんの面倒見なくちゃね」

奈緒「だな」

加蓮「ありすちゃん、何かあったらいつでも頼ってね」

ありす「た―――」

卯月「どうしたの? ありすちゃん」

凛「ありす、さっきから何か言いたそうだけど」

美嘉「ありすちゃん、何かあるなら聞くよ?」

楓「遠慮なく言ってね、ありすちゃん」

ありす「だ、だから……」



ありす「だから橘ですぅ――――――――っ!」



第4話 おわり






97: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:11:51.71 ID:tSIHsdfh0

第5話 にゃんにゃん!……うふふ♪



―――346プロ アイドル部門事務所


P「奈緒、加蓮、今日は重大発表がある」

奈緒「またこのパターンか……」

加蓮「今度は何?」

P「実はな―――」



P「ついに、初仕事が決まったんだ!」



奈緒「へー、誰の?」

加蓮「美嘉? 楓さん? それともありすちゃんかな?」

P「お前ら、リアクション薄くなったな……お前たち2人の初仕事だよ!」

奈緒「へー、あたしたちのねぇ……」

加蓮「そうなんだー……」



奈緒・加蓮『あたし(私)たちの⁉』



P「そう! その反応を待ってた!」

奈緒「ぷ、プロデューサー! ホントか⁉ ホントにあたしたちの仕事なのか⁉」

加蓮「ホントにホントなの⁉ 別の人じゃなくて⁉」

P(2人とも一回騙したせいで疑心暗鬼に……悪いことしたなぁ)

P「本当に奈緒と加蓮の仕事だ。ある雑誌の知り合いから、今度やる企画に参加できるアイドルはいないかって聞かれてな。それで2人に参加してもらおうと思ったわけだ」

加蓮「企画って……何するの?」

P「その名も―――アイドル100番勝負!」

奈緒・加蓮『アイドル100番勝負?』





98: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:12:40.30 ID:tSIHsdfh0



奈緒「なんだそりゃ?」

P「その名の通り、アイドル同士が色んな種目で100回勝負するんだ。で、勝った方が次回の雑誌の表紙を飾れる」

奈緒「へー……なんかキワモノっぽい企画だな。大丈夫か、その雑誌?」

P「ちゃんとした雑誌だよ。ほら、これだ」

加蓮「あ、この雑誌知ってる。若い女性に人気のやつだよ」

奈緒「へぇ、そうなのか。……表紙でミカン持ってるのが気になるんだけど」

P「それはあの有名雑誌のパクリだそうだ。編集長に聞いた」

奈緒「あ、やっぱそうなんだ。……大丈夫か、この雑誌」

P「そういうちょっとふざけたとこも人気の理由らしい」

奈緒「そ、そうなのか……それで勝負とか言ってたけど、まさかあたしと加蓮が勝負するのか?」

P「いや、2人はペアを組んでもらって、相手のペアと戦ってもらう。相手のアイドルは別の事務所のアイドルだ」

奈緒「加蓮とはペアか」

加蓮「頑張れ、奈緒」

奈緒「だから、あたしだけ頑張るのはおかしいぞ?」

加蓮「でもプロデューサー。100回勝負するってことは、けっこう時間かかるよね?」

P「いや、1日で全部やるらしいぞ」

奈緒「1日で⁉」

P「スタジオ何日も借りられないそうだ。だから次々に勝負をやっていくことになるな」

奈緒「なんか思ったより大変そうだな……」

P「あとこの企画、WEBとの連動企画だそうで、勝負の様子を動画に撮ってサイトに上げるらしい」

奈緒「動画⁉ Y○utubeとかにUPするってことか⁉」

P「なんでも、一気に100勝負分の動画をUPする気らしい。インパクトを与えたいとかで」

奈緒「その雑誌、ホントに大丈夫か⁉」

P「何度目だ、それ聞くの。大丈夫だって」





99: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:13:14.35 ID:tSIHsdfh0



―――その日の夜 アイドル寮 奈緒の部屋


奈緒「なんかプロデューサーって信用できないんだよなぁ」

加蓮「確かにちょっと変な企画かもね」

未央「2人とも、心配しなくても大丈夫だよ。プロデューサー、普段はちょっとアレだけど、プロデュースの腕は凄腕なんだから」

ありす「そうなんですか?」

未央「そうだよー。自分で言うのもなんだけど、ニュージェネのプロデュースしたの、プロデューサーなんだし」

奈緒「あ、そういやそうか」

未央「だから変な仕事とかは持ってこないって。……多分」

加蓮「それでも若干信じ切れてないんだね、未央も」

未央「普段が普段だからね」

奈緒「まあ当日になってみれば分かるか。さて、せっかくあたしの部屋に来たんだし、アニメでも見るか? ありす」

ありす「子供扱いしないでください」

加蓮「ありすちゃん、これは子供扱いしてるんじゃないよ。奈緒、ただのアニメ好きだから」

ありす「そ、そうなんですか?」

奈緒「うーん……でもアンパ○マンは流石に録画してないんだよなぁ」

ありす「やっぱり子供扱いしてるじゃないですか! アンパン○ンなんて見ませんから!」

奈緒「じゃあワンパ○マンでいいか」

未央「それは一文字違うだけで内容は全然違うんじゃないかな。やめときなよ」

奈緒「……確かにそうだ。危ない、ノリで見せちゃうとこだった。なら何見る?」

ありす「だから別に見たくないです!」

奈緒「じゃ、ゲームでもやる?」

ありす「……やります」

加蓮(ありすちゃん、ゲーム好きかー)





100: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:13:56.84 ID:tSIHsdfh0



―――仕事当日 某スタジオ


奈緒「ここでやるのかー、本格的だな」

加蓮「勝負って、何するんだろうね?」

P「それはお楽しみってやつだ」

奈緒「もしかしてプロデューサーも知らないんじゃないのか?」

P「ま、まあな。……さて、着いたぞ。2人とも、挨拶はきちんとな」

奈緒「分かってるよ」

加蓮「りょーかい」


《ガチャ》


P「おはようございまーす!」

奈緒・加蓮『おはようございまーす!』



???「本当にごめんなさい!」



奈緒「……なんだ?」

女性「あなたが悪いわけじゃないでしょう? 謝らなくていいわ。でも、困ったわね……」

P「編集長、どうかしたんですか?」

編集長「ああプロデューサーくん。実はちょっと困ったことになっちゃってね」

P「困ったこととは?」

編集長「この子の相方が、急に来られなくなっちゃったみたいなのよ」

???「……」

P「彼女は……もしかして、今回の企画でうちの相手をする?」

編集長「ええ、そうなの」

みく「はじめまして、前川みくって言います」





101: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:14:45.77 ID:tSIHsdfh0



P「どうもはじめまして。346プロのプロデューサーです。でもなるほど……それは確かに困りましたね」

編集長「でしょう? このスタジオは今日しか借りられないし、今から他のアイドルを呼ぶにも……」

奈緒「プロデューサー、美嘉か楓さんを呼ぶのは?」

P「ここに来るまでに結構時間かかるだろうからなぁ……」

加蓮「確かにそうだね……」

編集長「どうしたものかしらねぇ……」

みく「うぅ……」

P「うーん……」

社長「なるほどな」



『…………』



P「先輩⁉ なんでいるんですか⁉」

社長「たまたまここに仕事で来てな。時間が空いたから、お前たちの様子を見に来てみた」

加蓮「奈緒、この人どちら様?」

奈緒「うちの社長だよ」

加蓮「社長⁉」

編集長「お、お久しぶりです、社長さん」

社長「編集長、事情は大体分かった。私に良い考えがあるんだが」

編集長「良い考え?」

P「先輩、何かアイドルにあてがあるんですか?」

社長「あても何も、ここにいるだろう」

P「ここ?」



社長「お前だ」



P「……。……すみません、理解できる言語で話してもらえますか?」

社長「お前、女装して企画に参加しろ」

P「何言ってんの、あんた⁉」





102: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:15:32.73 ID:tSIHsdfh0



編集長「社長さん⁉ なんですか女装って⁉」

社長「こいつは女装すると美少女になるんだ。代わりがいないなら、こいつを使えばいい」

編集長「使えばいいって、そんな無茶な⁉」

加蓮「……奈緒。私、耳がおかしくなったかな。プロデューサーが女装するとか聞こえたんだけど」

奈緒「……残念ながら、あたしも聞こえたよ」

みく「女装て……」

P「先輩! 悪い冗談はやめてくださいよ!」

社長「本気だぞ」

P「余計たち悪いわ!」

編集長「さ、さすがにそれは……」

社長「では編集長、この写真を見てもらえるか?」

編集長「はい?……あら、凄い綺麗な子ですね」

社長「そうだろう。お前たちはどう思う?」

みく「わ、本当に美人さん」

加蓮「まさに美少女って感じの子だね」

奈緒「へぇ、どれどれ?」


気になってあたしも写真を見てみると、そこに写っていたのは加蓮たちの言うとおり、とんでもない美少女だった。

まず、そのすらりとした背丈に目をひかれた。
長い黒髪は後ろでまとめており、どこかボーイッシュさを感じさせる。
そして、何かを恥ずかしがるように赤く染まる頬。


……。……なんか、どこかで見た気がする。……いや、見た。思い出した。そうだ、これはこの前、社長室で社長に見せられた写真だ。


ということは、つまり、この子は―――。


奈緒「これプロデューサーじゃん!」

加蓮「何言ってるの? この子がプロデューサーとか――」

社長「その通り、この写真の少女はここにいるこいつだ」

加蓮「えぇっ⁉」

P「なんで写真持ち歩いてるんですか!」

みく「え、この子がこの人……嘘⁉」

編集長「女装ってレベルじゃないわよ、これ⁉」

社長「編集長、凄い綺麗な子なら企画に参加しても問題ないだろう?」

編集長「えぇ⁉」





103: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:16:00.50 ID:tSIHsdfh0



P「いやいやいや! 問題ありますから! むしろ問題しかないですから! アイドルの企画ですよ⁉」

社長「大丈夫だ。女装したお前は、既にうちのアイドル名簿に登録してある。No.0でな」

P「なに勝手にそんなことしてんですか⁉」

社長「いいからやれ! こいつらの初仕事、台無しになってもいいのか⁉」

P「ぐぅっ⁉ そ、それを言われると……」

奈緒「あの、すみません、社長」

社長「なんだ、神谷」

奈緒「女装したプロデューサーと一緒に仕事するというのは、台無しには含まれないんでしょうか?」

社長「……。……さあ後輩、やれるのか?」

奈緒「無視された!」

P「……やります」

加蓮「やるの⁉」





104: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:16:55.67 ID:tSIHsdfh0



―――十数分後


P「―――待たせたわね」

社長「相変わらずのクオリティだな、後輩」

奈緒「もう口調変えてるし……。実際に見るとホントに男だと分からないな」

加蓮「全然美少女で通用するね……」

奈緒「ていうか、よくウィッグとかあったよな」

編集長「プロデューサーくん、女装が趣味だったの?」

P「違いますよ! 高校の時に、先輩によく悪ふざけでやらされてたんです!」

奈緒「すごい青春送ってるな」

社長「編集長、今日のこいつはアイドル『Pii』ということでよろしく」

編集長「……もうなんでもいいです」

奈緒「編集長もうヤケだな」

社長「神谷と北条も、こいつのことはプロデューサーとは思わないで、『Pii』だと思え」

奈緒「そっちのが精神衛生上良さそうですね……じゃあPiiって呼ぶことにするよ」

加蓮「私もPiiさんって呼ぶね」

Pii「それでいいわ。奈緒ちゃん、加蓮ちゃん」

加蓮「ち、ちゃんって……うぅ、ちょっと鳥肌立った」

Pii「俺だってやりたくてやってんじゃないんだぞ!……じゃなかった。―――じゃないのよ!」

奈緒「あのさ、なんで声まで高くなってるんだ……?」

Pii「裏声よ」

奈緒「あんたの裏声すげぇな!」

加蓮「そういえば、前川さんは?」

編集長「彼女も着替えてくるそうよ」



みく「お待たせにゃ!」



『……にゃ?』

編集長「ま、前川さん? どうしたの、その猫耳?」

みく「よくぞ聞いてくれました! この猫耳こそ、みくのアイデンティティ! アイドルと言ったらカワイイ! カワイイと言ったらネコチャン! というわけで、みくはネコチャンアイドルなのにゃ!」

編集長「あなたはマトモな子だと思ってたのに!」





105: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:17:24.00 ID:tSIHsdfh0



加蓮(あっちのチーム、キャラ濃いなぁ)

Pii「みくちゃん。今日はパートナー、よろしくね」

みく「え、さっきのプロデューサーさんですか……? ホントに男の人とは思えない……」

Pii「もう私はプロデューサーではなく、アイドル『Pii』よ。一緒に頑張りましょうね」

みく「あ、はい……よろしくね、Piiチャン!」

奈緒「前川さんすげぇ! ドン引いてたのに、もうスイッチ切り替えたぞ!」

加蓮「やっぱり根っこのところはマジメなのかもね、前川さん」

みく「あ、2人ともみくでいいよ。前川さんとか言われるとムズムズするから」

奈緒「そっか。じゃ、あたしも奈緒でいいよ、みく」

加蓮「私も加蓮で」

みく「うん、分かったにゃ」

社長「さて、では私は仕事があるのでもう行くか」

Pii「余計なことだけして去っていくんですね」

社長「じゃあな。Pii」

Pii「やかましいわ!」

加蓮「嵐のような人だったね」

奈緒「被害甚大だもんな……」

Pii「はぁ……。さて、奈緒ちゃん、加蓮ちゃん。私はみくちゃんとペアを組む以上、あなたたちの敵……たとえ担当アイドルでも手加減はしないわ! 本気でかかってきなさい!」

奈緒「言われなくてもプロデュ―――Piiに手加減なんてする気ない! ぶっ倒してやる!」

Pii「完膚なきまでに叩きのめしてあげるわ……!」

奈緒「やれるもんならやってみろよ……!」

みく「ふ、2人とも熱いにゃ!」

加蓮(Piiさん、勝っちゃったら表紙に載ることになるって覚えてるのかな……?)





106: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:18:17.92 ID:tSIHsdfh0



―――1戦目 ジェンガ勝負


奈緒「……なぜにジェンガ?」

加蓮「これで勝負するんですか?」

編集長「そうよ」

奈緒「これ、わざわざスタジオでやらなくても……」

編集長「他にも色々やるのよ。まずはそれ。もうビデオの準備は出来てるから、早く始めちゃって」

Pii「じゃあ最初は私からよ。見せてあげるわ、私の力を! はぁっ!」

奈緒「なにぃっ⁉ 一瞬でジェンガを取っただと⁉」

Pii「ジェンガの極意―――それはためらわないこと!」

奈緒「くっ、このPiiのオーラ……! こいつ、歴戦のジェンガリストか!」

加蓮「ジェンガリストって何?」

奈緒「次はあたしの番だ! くらえ、人差しの一刺し(ワンポイントストライク)!」

Pii「必殺技ですって⁉」

加蓮「ねぇ、さっきから2人ともテンション高すぎじゃない? うざいくらいに」

Pii「次はみくちゃんの番よ! 目にもの見せちゃいなさい!」

みく「分かったにゃ! 必殺、ネコチャンハンドー!」

奈緒「猫の手でジェンガを取ろうとするだと⁉」


《ガシャーン!》


みく「しまったにゃ! 猫ちゃんの手じゃジェンガなんて取れなかったにゃ!」

奈緒「そりゃそうだろ!」

編集長「1戦目は奈緒&加蓮ペアの勝ちね」

加蓮「……まさか今日一日このテンションでいくの?」





107: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:18:51.91 ID:tSIHsdfh0



*テンションがうざいので以下ダイジェストでお送りします(本筋に全く関わらないので飛ばし読み推奨)


―――13戦目 卓球勝負


Pii「くらいなさい! シューティングスタードライブ!」

奈緒「ボールを高く打ち上げた⁉ そんなの入るわけないだろ!」

Pii「それはどうかしらね?」

奈緒「何⁉」


《シュルルルルル――――カーンッ!》


奈緒「馬鹿な⁉ 卓球台の端をかすめただと⁉」

Pii「ボールに超高速の縦回転を加えることで、ボールの高さが頂点に達した時、流星のように急降下するのよ!」

加蓮「もう人間業じゃないね」

みく「みくはネコチャンにゃ」


―――32戦目 遊○王タッグデュエル勝負


Pii「トリ○ューラでダイレクトアタック!」

奈緒「ぐぁああああっ!」

Pii「これで……満足したわ」


―――63戦目 カラオケデュエット勝負


みく「Piiチャン、何歌う?」

Pii「もう決まってるわ。みくちゃんと一緒に歌うんだもの、ここは――」

みく「ネコチャンの曲?」

Pii「『みく○くにしてあげる♪』よ!」

みく「それは違うみくにゃ!」


―――84戦目 しりとり勝負


奈緒「りんご」

Pii「ゴリラ」

加蓮「ラムネ」

みく「ネコチャン!」

編集長「はい、終了ね」





108: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:19:18.28 ID:tSIHsdfh0



―――100戦終了


編集長「さて、ようやく100戦終わったわけだけど……まさかのどちらも50勝50敗になったわ。だから延長戦として、101戦目をやってもらうわね」

奈緒「ケリをつけてやる!」

Pii「勝つのは私たちよ!」

みく「ここまで来たら負けられないにゃ!」

加蓮(ようやく終わるよ……すごい疲れた。みんなのテンションが)

編集長「最後の勝負は……ジャンケンよ!」

奈緒「最後がそれ⁉」

編集長「だって101戦目なんて考えてなかったんだもの。だから準備もしてないし」

奈緒「な、なら仕方ないか」

編集長「それぞれ代表者を出して、1対1でやってもらうわ」

奈緒「加蓮、あたしがやっていいか?」

加蓮「い-よー(もうどうでも)」

Pii「私たちはどうする?」

みく「みくにやらせてPiiチャン」

Pii「……分かったわ。頼んだわよ、みくちゃん!」

みく「任せるにゃ!」

編集長「さあ、泣いても笑ってもこれが最後よ! せーの、ジャーンケーン」



奈緒・みく『ポン!』







109: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:20:07.65 ID:tSIHsdfh0



―――スタジオ 廊下


P(ようやく元の格好に戻れたよ……。女装って何度やっても慣れないよな……慣れたくないけど。さて、奈緒と加蓮を待たせてるし、とっとと外に行くか。廊下を走るのは危ないから、競歩で……!)


《どんっ!》


???「きゃっ!」

P「うおっ⁉」



P(な、なんだ⁉ あ、女の子とぶつかっちまったのか!)

P「す、すみません、怪我は無いですか?」

少女「えぇ、すみません、だいじょうぶ……です……」

P「立ち上がれます? 良かったら手に掴まってください」

少女「あ、ありがとう……ございます……。はっ……………………」

P「? どうかしましたか?」

少女「な、なんでもありません……で、では……」

P「あ、はい」

P(あの子、行っちゃったけど……あの様子なら大丈夫そうだな。さて、やっぱり競歩も危ないな……歩いて行くことにしよ)





110: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:20:43.81 ID:tSIHsdfh0




少女「見つけた……」






111: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:21:23.34 ID:tSIHsdfh0



―――スタジオ 外


奈緒「今日は疲れたな、加蓮」

加蓮「ホントだよ。すっごい疲れた」

奈緒「やっぱ仕事って疲れるもんだなー」

加蓮(仕事かどうかは関係ないなぁ……少なくとも私は)

P「待たせたな、2人とも」

奈緒「ようやく男に戻ったかプロデューサー」

P「まあな」

加蓮「残念。似合ってたのに、『Pii』の格好」

P「似合ってても全然嬉しくないからな?」

奈緒「ノリノリだったくせに何言ってんだ」

P「ああでもしてないと、精神がもたないんだよ」

みく「Pチャン、奈緒チャン、加蓮チャン、お疲れさま」

P「お、みくちゃ―――じゃない! みく、お疲れさま」

奈緒「まだ『Pii』が残ってるな」

P「仕方ないだろ。今日一日、ずっとそう呼んでたんだから」

みく「みくは別にみくちゃんでいーよ?」

P「こっちが恥ずかしいんだ。もう普通に呼ばせてもらうよ」

みく「Pチャンがそう言うならそれでいいけど。みく、今日はすごく楽しかったにゃ」

奈緒「あたしも楽しかったよ」

加蓮「あんまり仕事って感じしなかったよね」

みく「みんな、また一緒に仕事する時があったら、その時もよろしくね」

奈緒「ああ、こっちこそだ」

加蓮「また楽しくやろうね」

みく「でも、その時は負けないにゃ! 次こそみくが勝つからね!」

奈緒「いや、今度も負ける気はないぞ。な、加蓮」

加蓮「そだねー(今度はまともなテンションだといいなぁ)」





112: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:22:01.23 ID:tSIHsdfh0



みく「それとPチャンも。もうみくとPチャンは相棒にゃ!」

P「そうだな。またどっかで一緒に仕事できるといいな、みく」

みく「その時はまた女装よろしくね」

P「いや、あれは今回限りだから」

みく「ふふっ、じゃあみくはもう行くにゃ。3人とも、バイバーイ!」

P「おう、じゃあな!」

奈緒「またな、みく」

加蓮「またね、バイバイ」


《プルルルル!》


P「ん? 電話か?」

みく「あ、みくのにゃ。……もしもし? どうしたんですか、社長? 今日の仕事はなんとか無事に……え⁉ そ、それホントですか⁉ じゃあみくは……好きにしろって何それ⁉ ちょっと社長! しゃ―――切りやがったにゃあーっ⁉」

P「お、おい。どうした、みく?」



みく「……みくの事務所、潰れたらしいの」



P「えぇ⁉」

奈緒「そんな急に⁉」

みく「いや、前々からいつか潰れるんじゃないかなぁとは思ってたんだ……。みくがネコチャンアイドルやりたいって言った時あの社長、『猫は古い! これからはキリンアイドルでいこう!』とかわけの分かんないこと言ってたし」

加蓮「キリンって……発想が明後日の方向見てるね」

みく「でもまさかこんなに早く潰れるなんて……もう駄目にゃ……みく、実家に帰るしかないにゃ……」

加蓮「みく……」

奈緒「さすがに可哀想すぎるだろ……。あのさプロデューサー、みくのこと……」

P「ああ、そうだな。―――みく、良かったらうちの事務所に来るか?」

みく「Pチャンたちの事務所……? みく、行っていいの?」

P「ああ、みくが良ければ」

みく「行く……行くにゃ! 良いに決まってるにゃ! ありがとう、Pチャン!」

P「ふっ、相棒をほっとけないからな」

みく「Pチャン……! みくは……みくは今モーレツに感動してるにゃ!」

奈緒「なんだこの茶番」

加蓮「まださっきの熱が残ってるのかな……」





113: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:22:48.69 ID:tSIHsdfh0



―――翌日 346プロ アイドル部門事務所


未央「おはよー」

???「おはようございます」

未央「うん、おは―――どちら様⁉」

加蓮「何言ってるの、未央?」

奈緒「昨日説明しただろ? 新しくみくが――」

???「おはようございます」

加蓮・奈緒『誰⁉』

ありす「この人がみくさんじゃないんですか?」

奈緒「いや違うって! みくは――」


《ガチャ》


みく「おはよーございまーす! 今日からお世話になります、前川みくでーす! よろしくにゃ!」

奈緒「みくはこっちだ!」

みく「にゃ?」

ありす「そ、それじゃあ、この人はいったい……?」

加蓮「ちひろさん、彼女は?」

ちひろ「え、えーと、それがね―――」


《ガチャ》


P「うぃーっす」

???「プロデューサーさん!」

P「えっ⁉」

奈緒「なんだ、プロデューサーの知り合いか」

P「……どちらさま?」

???「プロデューサーさん、まゆのこと、覚えてないんですか……?」

P「え、どっかで会った……?」

奈緒「おいプロデューサー、それはないだろ」

加蓮「どっかで会ったって……この子、プロデューサーに会いに来たんじゃないの?」

未央「それなのに忘れてるとは……」

ありす「最低、ですね」

みく「Pチャン、ひどいにゃ……」

P「そんな蔑むような目で見るなよ! 本当に覚えが……あっ! もしかして、昨日スタジオの廊下でぶつかった子?」

まゆ「覚えていてくれたんですね!」





114: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:23:25.07 ID:tSIHsdfh0



P「いや、まあ、うん。でもなんでここに? やっぱりどこか怪我してたの?」

まゆ「いいえ、そうじゃないです。まゆ、今日はプロデューサーさんに……プロデュースしてもらうために来たんですよ。うふふ♪」

P「プロデュース⁉」

奈緒「へぇ、いつの間にこんな子スカウトしてたんだ?」

加蓮「意外とやるね、プロデューサー」

P「えっ⁉ あれ⁉ スカウトなんてしたっけ俺⁉」

未央「何言ってるの? スカウトしたからここに来てるんじゃん」

ありす「スカウトしてないのに、事務所に来るわけないじゃないですか」

P「いや確かにそうなんだけども! でも君、えっと……」

まゆ「あ、まだ自己紹介してなかったですよね。私、佐久間まゆって言います。15才の、B型、乙女座です。うふ♪」

P「そうか、君は佐久間まゆって言うのか。……絶対スカウトしてないよね⁉ 俺、スカウトしてたら名前ぐらい聞くし!」

まゆ「はい、スカウトはされてないですよ。だから自分から来たんです」

P「どういうこと⁉ だって俺そもそも事務所の場所どころか、俺がプロデューサーだってことすら言ってないよね⁉」

まゆ「うふふ、そんなことはどうでもいいじゃないですか」

P「どうでもいい⁉ そうかな⁉ けっこう重要じゃないかな⁉」

奈緒「え、なんだ? 加蓮、あたしちょっと訳分かんなくなってきたんだけど」

加蓮「私も……。でもなんか、プロデューサーが一番困惑してるみたいだよ」

まゆ「昨日お会いしたときは、まゆ、撮影の帰りだったんです。まゆ、読者モデルだったんですよ」

P「あ、そうだったのか。……ん? だった……?」



まゆ「もうやめました」



P「昨日の今日で⁉」

まゆ「だって、まゆ、決めたんです。アイドルになって、貴方にプロデュースされるって。読モは引退して、親も説得しましたよぉ」

P「随分フットワーク軽いね⁉」

まゆ「だからプロデューサーさん、まゆのこと、プロデュースしてくれますよね?」

P「え、えぇ……うーん……」

奈緒「プロデューサー、男なら潔く決めろよ」

女性陣『そーだそーだー!』

P「何だそのお前らの観客目線は! わ、分かったよ! まゆ、君をプロデュースさせてくれ!」

まゆ「ありがとうございます、プロデューサーさん♪」

P(なぜだろう、何か取り返しのつかないことをしてしまった気がする……)





115: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:24:09.80 ID:tSIHsdfh0



―――レッスン室


まゆ「みなさん、これからよろしくお願いします」

みく「みくもよろしくねー!」

卯月「こちらこそ、よろしくお願いします」

凛「事務所に来たら、まさか2人も増えてるなんてね」

美嘉「びっくりしたよ。ね、楓さん」

楓「ええ、そうね」

まゆ「ところで、まゆ、みなさんに1つ聞きたいことがあるんですけど……」

奈緒「ん? なんだ?」



まゆ「みなさんは、プロデューサーさんのこと、好きですか?」



凛「なっ⁉」

奈緒「? まあ別に嫌いではないぞ。たまに殴りたくなるくらい、むかつく時あるけど」

加蓮「私はまあまあかな」

ありす「私は……普通ですね」

みく「Pチャンはみくの相棒にゃ!」

楓「プロデューサーのことは好きよ」

美嘉「アタシも嫌いじゃないよ」

卯月「私は大好きですよ、プロデューサーさんのこと」

未央「私もプロデューサーは好きだよ、それなりに」

凛「わ、私もまあその……嫌いではないかな」

まゆ「そうですか……分かりました」



まゆ「とりあえず、凛ちゃんだけですね」



凛「何が⁉」

まゆ「うふふ♪」

凛「うふふじゃなくて! なんだか私を見る目が急に怖くなったんだけど!」

まゆ「……」

凛「何か言ってよ!」

奈緒「お、落ち着け凛。よく分からないけど、落ち着け!」





116: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:24:41.93 ID:tSIHsdfh0



加蓮「今の質問の意図に気付けたの、どれくらいいるー?」

未央「私は気付いたよー」

美嘉「私もー」

卯月「? なんのこと?」

ありす「糸ですか?」

みく「にゃ?」

楓「……?」

加蓮「奈緒も気づいてないっぽいし、私たち3人だけかー」

未央「しぶりんに強力なライバル出現だね」

美嘉「修羅場にならないといいけど……」

加蓮「そういえば、プロデューサーって好きな人いるのかな?」



凛・まゆ『!』



奈緒「な、なんだどうした2人とも。急に動きを止めて」

未央「うーん、好きな人かぁ……」

まゆ「プロデューサーさん、好きな人がいるんですか……?」

加蓮「い、いや、分かんない。だからそんな怖い目しないで」

凛「プロデューサーの好きな人……考えたことなかったかも」

未央「無かったんだ……」

ありす「何の話をしてるんですか?」

卯月「さあ? なんでしょう?」

加蓮「ありすちゃんにはまだ早いかな」

ありす「子供扱いしないでください!」

みく「落ち着くにゃ、ありすちゃん。ほら、ねこじゃらしー!」

ありす「猫扱いもしないでください!」

奈緒「なあ、ていうかいつレッスン始めるんだ?」

加蓮「だってルキちゃん全然来ないし」

奈緒「確かに遅いな……何してんだろ?」

未央「あのさ、誰かプロデューサーに聞きに行ってみない?」

美嘉「え、直接聞くの⁉」

未央「それが一番手っ取り早いじゃん」

加蓮「でも誰が行くの?」



まゆ「……!」
凛「……!」



加蓮「とりあえず、そこでにらみ合ってる2人はやめとくとしてさ」

未央「ジャンケンでいいんじゃない?」

美嘉「テキトーだね」

未央「さあ、みんな集まってー! ジャンケンするよー!」





117: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:25:22.76 ID:tSIHsdfh0



―――346プロ アイドル部門事務所


奈緒(なんであたしなんだよ! プロデューサーの好きな人とか、激しくどうでもいいのに!……なんかいつもジャンケン負けてる気がするぞ、あたし)



加蓮『ちらっ』
未央『ちらっ』
美嘉『ちらっ』
凛『ちらっ』
まゆ『ちらっ』



奈緒(なんかあいつらドアから覗いてるし! なんだあいつら! 卯月たちと一緒にレッスン室でルキちゃん来るの待ってろよ! あー、もうっ!)

奈緒「よ、よう、プロデューサー」

P「ん? 奈緒? レッスンどうしたんだ?」

奈緒「今はあれだ、休憩中」

P「なんでわざわざ休憩中に事務所に戻ってきたんだ、お前?」

奈緒「いや、ちょっとプロデューサーに聞きたいことがあってさ」

P「聞きたいこと? なんだ?」

奈緒(えーと、さりげなく聞けとか言ってたよな……なら、好きな人という表現を変えたほうがいいな……よし!)



奈緒「プロデューサーの好きなギャルゲーのヒロインって誰?」



P「なんだその質問⁉」





118: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:25:52.31 ID:tSIHsdfh0



―――事務所の廊下


未央「なに聞いてんの、かみやん⁉」

美嘉「どうさりげなくしたらああなるの……?」

加蓮「奈緒、真面目にやってよ……」





119: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:26:26.33 ID:tSIHsdfh0



―――事務所


P「え、ギャルゲーのヒロイン? 好きなアニメのヒロインとかならまだしも、随分範囲狭いな……」

奈緒「い、いいから、とにかく答えろって!」

P「うーん……ギャルゲーのヒロインかー……でも一口にギャルゲーと言っても、色々あるからなぁ。例えば、サク○大戦はギャルゲーでいいのか?」

奈緒「あれはギャルゲーでいいと思うぞ」

P「なら、遊○王タッグフォースは?」

奈緒「そ、それは難しいとこだな……でもまあ、6はほぼギャルゲーみたいなもんだし……」


『プルルルル―――』


奈緒「ん? 電話? はい、もしもし?」

加蓮『ギャルゲーの話とかどうでもいいから! もうその話題やめて、別の質問して!』


『プツッ』


P「なんだ? 電話誰からだったんだ?」

奈緒「……なんでもない。プロデューサー、やっぱ今の質問答えなくていいや」

P「え、いいのか?」

奈緒「ああ。その代わり、別の質問に答えてくれ」

P「他にも質問あるの?」

奈緒(別の質問と言われても……どう聞きゃいいんだ?……あ、そういえばハ○ヒに○ョンが……キョ○のあれでいくか!)



奈緒「プロデューサーってどんな髪型に萌える?」



P「お前さっきからその変な質問何なの⁉」





120: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:26:56.29 ID:tSIHsdfh0



―――廊下


未央「馬鹿なの、かみやん⁉」

美嘉「……これは人選ミスじゃない?」

加蓮「……そうかも」





121: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:27:48.80 ID:tSIHsdfh0



―――事務所


P「萌え⁉ 髪型に萌えるって何⁉」

奈緒「あ、あるだろ! 男ならポニーテール萌えとか!」

P「お前男を何だと思ってるの⁉ 髪型……髪型かぁ……特にそういうの無いんだけどなぁ……」

奈緒「なるほど、可愛ければなんでも萌えると」

P「なんか言い方に棘ないか⁉」


『プルルルル―――』


奈緒「……またか。はい、もしも―――」

加蓮『ちゃんと聞いて!』


『ブツッ』


奈緒「……」

P「また電話? 相手、誰だ?」

奈緒「……そんなことより、もう一つ質問いい?」

P「えぇー……まだあるの……?」

奈緒(なんか質問考えるのめんどくさくなってきた……もう、さりげなくとかいいや)

奈緒「あー、えーと……ぷ、プロデューサーはさ」

P「今度は何だよ……」



奈緒「ぷ、プロデューサーは……その……す、好きな人とか……い、いるのか?」






122: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:28:24.02 ID:tSIHsdfh0



―――廊下


未央「直球ぶん投げたー⁉」

美嘉「ここに来てついに奈緒ちゃんがやったよ!」

加蓮「私、信じてたよ、奈緒!」



凛「!」
まゆ「!」



未央「ふ、二人の目が急に怖く……」






123: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:28:52.18 ID:tSIHsdfh0



―――事務所


P「好きな人?……そりゃ、いっぱいいるけど」

奈緒「いっぱい⁉」

P「アイドル部門のみんなだろ? あと友達もだし、家族も当然―――」

奈緒「そうじゃねぇよ!」

P「え? だって好きな人って……」

奈緒「マジかあんた⁉」





124: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:29:20.63 ID:tSIHsdfh0



―――廊下


未央「かみやんがやっと直球ぶん投げたと思ったら、今度はプロデューサーかぁ――!」

美嘉「プロデューサーあれ、本気で言ってるのかな?」

加蓮「あの顔は本気だと思うよ……」

社長「ほう、中々面白そうなことをしているじゃないか」

未央「いや、それが全然面白くならなくて―――って社長⁉」

加蓮「なんでここに⁉」





125: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:30:15.28 ID:tSIHsdfh0



―――事務所


奈緒「おいプロデューサー! せっかくあたしが聞いてやったってのにそれはないだろ⁉ それはないだろ⁉」

P「な、なんでキレてんだ⁉」

奈緒「これがキレずにいられるか!」

社長「まあ落ち着け、神谷」

奈緒「いくら社長に言われても―――社長⁉」

P「先輩、なんでいるんですか⁉」

社長「暇な時間が出来たんでな、暇つぶしに来てみた。そうしたら実に面白いことをしているじゃないか。なあ、神谷?」

奈緒「いや、面白いって……」

社長「後輩、神谷を借りていくぞ」

奈緒「え⁉」

P「先輩、奈緒をどうする気ですか?」

社長「なに、少し話をするだけだ。さあ、行くぞ」

奈緒「え⁉ え⁉ え⁉」





126: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:30:59.84 ID:tSIHsdfh0



―――廊下


社長「さあ、お前たちも付いて来い」

未央「私たちも⁉」

美嘉「お、怒られるのかな……」

加蓮「そ、そうなんじゃない……?」

社長「勘違いするな。お前たちが知りたいことを私が教えてやろうと思っただけだ」

凛「私たちが知りたいこと……?」

まゆ「それって……」

社長「あいつの好きな相手について……知りたいんだろう?」

凛・まゆ『!』

社長「ここで話すのもあれだからな。社長室で話そう。さあ、来い」

奈緒「あの、社長! それよりそろそろあたしのこと離してくれませんか⁉ あたしその話興味ないんですけど!」

社長「そう言うな、神谷。どうせだからお前も付き合え」

奈緒「なんで⁉」





127: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:31:46.03 ID:tSIHsdfh0



―――社長室


社長「さて、では話すとするか。後輩の好きな相手について」

美嘉「後輩?」

奈緒「社長、プロデューサーの学生時代の先輩なんだってさ」

美嘉「え、そうなんだ」

社長「そう。だから後輩の好きな相手についても心当たりがある」

凛・まゆ『……!』

未央「そ、それはいったい……?」

社長「結論から言おう。―――奴に好きな相手などいない!」

凛・まゆ『!』


凛とまゆが小さくガッツポーズをした。


未央「えぇ⁉」

美嘉「いないの⁉」

加蓮「でも社長、好きな相手について知ってるって……」

社長「いないということを知っているという意味だ」

奈緒「紛らわしい言い方を……」

美嘉「で、でもそれホントなんですか⁉」

社長「間違いない。……昔話をしよう、奴が高校2年生の時の話だ。その日、あいつは同級生の女子に屋上に呼び出された」

奈緒「え⁉ まさか告白⁉ プロデューサーってモテたんですか⁉」

社長「基本的にはモテないんだがな。一部からはモテたんだ」

奈緒「一部ってどんな……?」

社長「そこは今どうでもいい。とにかく後輩は屋上に呼び出され、その女子に告白された」

未央・美嘉・加蓮『おおっ!』

凛・まゆ『……』

奈緒(2人の目が怖い……)





128: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:32:48.12 ID:tSIHsdfh0



―――回想


女子「あの……私……」

P「……」

女子「私、あなたのことが好きなの!」

P「……俺も好きだ」

女子「! じゃ、じゃあ――」

P「でもなんで今さらそんなこと言うんだ? 好きじゃなきゃ友達やってないだろ?」

女子「はあ⁉」

P「え、どうかした?」

女子「……おらぁっ!」

P「げふぉっ⁉」





129: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:33:34.22 ID:tSIHsdfh0



―――現在


社長「その女子は後輩にドロップキックを食らわせて去っていった」

未央・美嘉・加蓮・奈緒『うわぁ……』

社長「つまりな……あいつは朴念仁なんだ。鈍感さが尋常じゃない。さっき神谷が聞いた時もそうだっただろう?」

奈緒「確かに……」

社長「あいつに好きなタイプを聞いてみろ。間違いなく、くさタイプと答えるぞ」

奈緒「それ好きなポ○モンのタイプ!」

加蓮「でも、なんで社長がその告白のこと知ってるんですか?」

未央「もしかして、その時告白したのって……」

社長「いや、私じゃないぞ? 私はその時物陰から隠れて見ていたんだ。ドロップキックが見事に決まった瞬間は腹を抱えるほど爆笑させてもらった。いやー、あの時は最高だったな」

奈緒(性格悪っ!)

社長「神谷、今何か思ったか?」

奈緒「いえ、何も!」

社長「まあ、とにかくあいつはそう言う奴なんだ。だから好きな相手などいるわけがない。そもそも恋愛感情を理解しているかどうかさえ怪しい。いや、多分理解していない」

未央「な、なるほど……」

社長「奴を落とすのはすさまじく難しいぞ? だからせいぜい頑張るんだな、そこの2人は」

まゆ「はい。情報提供ありがとうございます、社長さん」

凛「わっ、私は別にそんな……」

社長「渋谷……お前あんなことになっておいて、今さらごまかしても……」

凛「そ、そのことは言わないでください!」

奈緒「? そのことってなんだ?」

凛「何でもないから!」

加蓮「えぇー、気になるなぁ」

未央「いやー、実はね?」

凛「未央、あれだけは話したら絶対に許さないからね……?」

未央「……はい」

美嘉「一体何があったの……?」



 第5話 終わり





130: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/17(月) 20:34:23.66 ID:tSIHsdfh0



―――レッスン室


卯月「凛ちゃんたち、戻ってきませんね」

楓「そうね。何をしているのかしら?」

みく「こうにゃ、ありすちゃん。にゃあー!」

ありす「にゃ、にゃあー」

みく「もっと元気よく、にゃあー!」

ありす「に、にゃあー!」

みく「うん、完璧にゃ!」

ありす「……あの、これ本当にアイドルに関係あるんですか?」



……ほんとにおわり






133: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 20:56:58.58 ID:+6Ja0bG30

第6話 あたしらのウォーゲーム!



―――事務所


奈緒「おはよーっす」

未央「おはよー」

ありす「おはようございます」

P「おう、おはよう」

ちひろ「おはようございます」

P「ん? お前らだけか? 加蓮たちはどうした?」



奈緒・未央・ありす『ああん⁉』



P「うぇえ⁉ な、なんだその不機嫌そうな顔は⁉」

奈緒「プロデューサー、その名前をあたしたちの前で出すな!」

P「え、何? どしたの?」

未央「ぺっ!」

P「未央⁉ 唾吐くとか……あ、吐いたふりか。でもなんでそんな真似した⁉」

ありす「むぅー、はらわたが煮えくり返ります……!」

P「煮えくり返るて。よくそんな言葉知ってたな、ありす」

奈緒「あたしたち、もうレッスン室行くからな!」

未央「ここにいると、奴らと顔合わせることになるし!」

ありす「そんなの耐えられません……!」

奈緒・未央・ありす『じゃあな(じゃあね・では)!』


《ガチャ―――バタン!》


P「……今の、なんだったんでしょう?」

ちひろ「さあ……。虫の居所でも悪かったんですかね」





134: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 20:57:38.49 ID:+6Ja0bG30



―――数分後


加蓮「おはよー」

みく「おはよーにゃ!」

まゆ「おはようございます」

P「おう、おはよう」

ちひろ「おはようございます」

P「なあ、お前らに聞きたいんだけど、奈緒たちのこと―――」



加蓮・みく・まゆ『は……?』



P「うぇぇ⁉ な、なんだその凍てつくような冷たい目は⁉」

加蓮「プロデューサー、私たちの前でその名前を口にしないで!」

P「え、お前もそれ言うの⁉ じゃあまさかみくも――」

みく「ぷぇっくしゅ!」

P「違った! くしゃみしただけだった!」

まゆ「あぁ……はらわたを取り出して刻んでやりたいです……!」

P「こっちも違うけど、すげぇ怖いこと言ってる!」

加蓮「私たち、もうレッスン室行くから」

みく「ここにいるとあいつらと顔を合わせることになっちゃうにゃ!」

まゆ「そんなの、耐えられませんよね……!」

加蓮・みく・まゆ『じゃあね(では)!』


《ガチャ―――バタン!》


P「……あいつらまでなんなんだ?」

ちひろ「話を聞く限り……喧嘩をしているみたいですね」

P「多分そうでしょうね……ん? ちひろさん、加蓮たちレッスン室に行くって言いましたよね……?」

ちひろ「はい、そう言って――あっ⁉ 奈緒ちゃんたちもさっきレッスン室に行くと言って……⁉」

P「やべっ、あいつら鉢合わせちゃいますよ!」


《ガチャ》


卯月「おはようございます」

凛「おはよう」

楓「おはようございます」

美嘉「おはよー☆ いやー、ちょうどそこでみんなと会ってさー」

P「緊急事態だ! レッスン室に行くぞ!」

卯月「え、えぇっ⁉」

凛「緊急事態って……」

楓「穏やかではないですね」

美嘉「なになに、どうかしたの?」

P「いいから急げ!」





135: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 20:58:24.74 ID:+6Ja0bG30



―――レッスン室


奈緒「お前ら、よくあたしたちの前に顔出せたな!」

加蓮「それはこっちの台詞なんだけど!」

未央「ミャー!」

みく「ニャー!」

ありす「むくぅー!」

まゆ「むむむ…………ふふっ」

ありす「な、なんで笑うんですか!」


《ガチャ!》


P「遅かったか……!」

ちひろ「既に争いが始まっていますね……!」

美嘉「争い? あ、奈緒ちゃんと加蓮が喧嘩してる!」

楓「未央ちゃんとみくちゃんは、威嚇し合ってるわね」

凛「ありすとまゆは、にらめっこしてるだけに見えるんだけど……」

卯月「み、みなさん落ち着いてください!」

奈緒「あたしは、加蓮たちがしたことを絶対に許さないからな!」

加蓮「それもこっちの台詞だから! 奈緒たちがしたこと……まだ怒りが収まらない!」

P「お、お前ら喧嘩すんなって。そもそもなんで喧嘩してんだ? 俺たちに説明しろ」

奈緒「加蓮たちが、あたしたちの大切な―――」

加蓮「奈緒たちが、私たちの大切な―――」



奈緒「ゲームのデータを消したんだ!」

加蓮「手作りのお菓子を食べたの!」



P「……はぁ?」

凛(……なんか、すごくどうでもよくなってきた)





136: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 20:58:54.14 ID:+6Ja0bG30



―――昨日 アイドル寮 奈緒の部屋


奈緒「さあ、今日もゲームの続きやるぞー!」

未央・ありす『おぉー!』

奈緒「最近ちまちまやってるけど、まだまだ終わりそうにないもんな」

未央「今中盤くらいかな?」

ありす「多分、そうじゃないですか? もう10時間以上はやってますし」

未央「じゃあありすちゃん、操作は任せたよ!」

ありす「任されました!」





137: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 20:59:20.70 ID:+6Ja0bG30



―――同じ時間 アイドル寮 食堂


加蓮「それじゃ、まゆ先生のお菓子作り教室、始めよっか」

まゆ「加蓮ちゃん、先生はやめてくださいよぉ」

みく「まゆチャンはみくたちにお菓子の作り方教えてくれるんだから、先生でいいと思うにゃ!」

まゆ「みくちゃんまで……仕方がないですね」

加蓮「それで先生、今日は何作るの?」

まゆ「今日作るのは、ドーナツです」

加蓮「ドーナツ? ドーナツ作るのって、けっこう難しいんじゃない?」

まゆ「そんなことありませんよ。やってみれば、意外と簡単に作れるんです」

みく「へー、そーなんだぁ」

まゆ「では、まずは材料を用意しましょう。ドーナツは色々な種類がありますから、材料も作りたいドーナツによって大きく変わるんです。今日は主に小麦粉を使ってオールドファッションを作ってみましょう」

加蓮・みく『はーい、先生』

まゆ「ではまずはバターと砂糖を―――」





138: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 20:59:52.34 ID:+6Ja0bG30



―――奈緒の部屋


奈緒「ありす、こいつには氷系の魔法が効くはずだ!」

ありす「氷系ですね! 了解です!」

未央「よし、そのまま連続攻撃!」

ありす「はい、いきます!」





139: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:00:20.30 ID:+6Ja0bG30



―――食堂


『勝ったぁ―――――!』


加蓮「……奈緒たち、随分盛り上がってるね」

みく「最近、ずっとゲームにハマってるみたいだにゃ」

まゆ「そんなに面白いんですかね?」

加蓮「うーん、私にはいまいち面白さが分かんないや。それより先生、次はどうするの?」

まゆ「あとは油であげて、最後にチョコをかければ出来上がりです」

みく「よーし、ラストスパートにゃ!」





140: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:00:53.21 ID:+6Ja0bG30



―――奈緒Room


奈緒「ま、負けた……!」

ありす「強いです……!」

未央「ど、どうする? レベル上げる?」

奈緒「いや、もう攻撃パターンも弱点も分かった。このままもう一度だ!」

ありす「はい、次こそ勝ちます!」





141: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:01:38.93 ID:+6Ja0bG30



―――食堂



『出来たーっ!』



みく「やっと出来たね」

まゆ「お疲れさまでした」

加蓮「どれ、じゃあ美味しく出来たかなー?」

みく「はいストップ」

加蓮「な、なんで止めるの」

みく「もう夜中なんだから、お菓子とか食べちゃ駄目。明日にするにゃ」

加蓮「えぇ⁉ で、でもせっかく作ったんだよ?」

みく「アイドルなんだから、食生活はきちんとしなきゃ」

加蓮「うぅ……一理ある」

まゆ「明日、事務所に持って行って、みんなで食べましょう」

加蓮「そうだね……そうしよっか」

まゆ「では使った道具を片付けましょう。片付けまでが料理です」

加蓮「はーい」

みく「片付けたら、お風呂に入ろうよ」

まゆ「そうですね」

加蓮「ならとっとと片付けますか」





142: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:02:54.84 ID:+6Ja0bG30



―――奈緒Room


奈緒「行け、ありす!」

未央「これで決めるよ!」

ありす「はい!」



『いっけぇー!』



奈緒「……」

未央「……」

ありす「……」



『…………』



奈緒「よっしゃ!」

未央「勝ったぁー!」

ありす「やりましたっ! やりましたっ!」



『いえーいっ!』

《パァンッ!》



奈緒「ふぅ……中々手強いボスだったな」

未央「どうする? このまま続きやっちゃう?」

ありす「少し休憩にしませんか?」

奈緒「そうだな、少し疲れた」

ありす「じゃあセーブして……終了です」

未央「ねぇ、食堂に行って何か食べようよ。私、お腹空いちゃった」

奈緒「いいな、賛成」

ありす「けっこうエネルギー使いましたもんね」

未央「決まりだね。じゃ、食堂に行こっか」

奈緒「あ、待った待った。どうせならそのままお風呂にも行かないか?」

ありす「そうですね。ゲームに熱中していて、けっこう汗かきましたし」

未央「じゃあ着替えを持ってく感じ?」

奈緒「2度手間になるより楽でいいだろ」

ありす「では、着替えを持って食堂へ行きましょう」





143: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:03:20.06 ID:+6Ja0bG30



―――大浴場


加蓮「んー、気持ちいい♪」

みく「安らぎのひと時だね……」

まゆ「加蓮ちゃん、みくちゃん。お風呂から上がったら、奈緒ちゃんの部屋に行ってみませんか? そろそろゲームやりすぎだと思うので」

加蓮「そうだね、私たちで止めるとしますか」

みく「やれやれ、世話が焼けるにゃ」





144: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:04:25.84 ID:+6Ja0bG30



―――食堂


奈緒「あれ? 加蓮たち居ないな。あたしたちがゲーム始める前に、何か食堂でやるとか言ってなかったか?」

未央「そういえば言ってたような……何やるって言ってたっけ?」

ありす「……ゲームすることしか考えてなかったので、あまりよく覚えてないです」

未央「……私も」

奈緒「……あたしもだ。ちょっと夢中になりすぎてたかも」

未央「だね……。……んん? 何かあるよ?」

ありす「これは……ど、ドーナツです!」

奈緒「お、ホントだ。ちょうどいいや、これ貰おうぜ」

未央「お腹が空いた私たちへの、神様からのプレゼントだね♪」

ありす「ですね♪……いやいや、それはないです。加蓮さんたちのうちの誰かのものじゃないですか?」

奈緒「まあ、そうだろうけどさ。こんなとこに出してあるんだし、食べても大丈夫だろ。むしろ食べてくれって感じじゃないか?」

ありす「確かに……食べられたくないなら、しまっておきますよね」

未央「じゃあ3人で食べちゃお!」



奈緒・未央・ありす『いっただっきまーすっ!』






145: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:04:57.49 ID:+6Ja0bG30



―――奈緒の部屋


加蓮「奈緒―、まだゲームやってるのー?……あれ? 居ないし。どこ行っちゃったんだろ?」

みく「さっきまであんなに騒がしかったのに」

まゆ「もうゲームはやめているみたいですね……あ、これが奈緒ちゃんたちのハマっているゲームですか?」

みく「多分そうだと思うよ」

加蓮「……ねぇねぇ、ちょっと私たちもやってみない?」

みく「これを? うーん……じゃあ、試しにやってみちゃう?」

まゆ「でも勝手にやるのはまずいんじゃ……」

加蓮「大丈夫じゃない? 少しやるだけなら」

まゆ「そ、そうですかね……?」

みく「漫画借りるのと同じだよ。えっと電源は……これかにゃ?」

加蓮「あ、みく正解みたい。点いたよ。えーっと……はじめから、でいいのかな」





146: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:05:24.51 ID:+6Ja0bG30



―――大浴場


奈緒「にしても、さっきのドーナツ美味かったな」

未央「誰が買ってきたんだろうね?」

ありす「後でお礼を言いましょう」






147: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:05:50.59 ID:+6Ja0bG30



―――奈緒Room


加蓮「はっ! もう30分も経ってる⁉」

みく「え、そんなに⁉」

まゆ「ゲームをやっていると、時間が経つのが早いですね」

加蓮「もうやめよ。わりと面白かったけど、ミイラ取りがミイラになっちゃうし」

みく「そうだね」

まゆ「やめるには、このまま電源を切ればいいんでしょうか?」

みく「いや、ここまでやったんだし、セーブしておこうよ。そうすればまたここから再開できるはずにゃ」

加蓮「セーブって……これかな?……よし、じゃあ電源を切ってと」

まゆ「それにしても、奈緒ちゃんたち戻ってきませんね」

みく「何してるんだろ?」

加蓮「ちょっと探してみよっか」





148: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:06:27.97 ID:+6Ja0bG30



―――数分後、奈緒Room


奈緒「さて、じゃあもう少しだけやるか?」

未央「だね」

ありす「ではちょっとだけ――――あれ?」

奈緒「どした?」



ありす「せ、セーブデータが……消えてます……」



奈緒・未央『なんだって⁉』

奈緒「ちょ、え⁉ マジで消えてるじゃんか!」

未央「なんで⁉ バグ⁉」

奈緒「いやこんなバグあったら、即修正されるぞ!」

ありす「これは消えたというより、データの上書きをしたような……」

奈緒「上書き……この寮であたしたち以外にそんなこと出来る奴は……!」





149: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:07:07.03 ID:+6Ja0bG30



―――食堂


加蓮「食堂にもいないや」

みく「もしかしてお風呂入ってるのかな?」

加蓮「あ、そうかも。じゃあ部屋で待ってれば良かったかな」

まゆ「……あれ? 加蓮ちゃん、みくちゃん、ドーナツ移動させましたか?」

みく「? してないけど」

加蓮「私も」



まゆ「でも、ここにあったドーナツが無くなっているんですが……」



加蓮・みく『えぇ⁉』

加蓮「ど、どこかに無いの⁉」

まゆ「え、えーっと……」

みく「……ああっ⁉」

加蓮「どうしたの、みく?」

みく「シ、シンクに……ドーナツを乗せておいたお皿が!」

加蓮「お皿……だけ?」

みく「……うん」

まゆ「じゃあ、ドーナツは……もう……」

加蓮「この寮で、私たち以外にそんなこと出来るのは……!」


《ドタドタドタ―――ガチャ!》



奈緒「―――加蓮っ!」

加蓮「! 奈緒っ!」






150: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:07:47.41 ID:+6Ja0bG30



奈緒「加蓮たちのうち誰か、あたしたちのゲームのセーブデータ消しただろ!」

加蓮「奈緒たちのうち誰か、私たちの作ったドーナツ食べたでしょ!」

未央「ドーナツ……あっ」

みく「ゲームのセーブデータ……あっ」

ありす「そ、その反応、やっぱり心当たりあるんですね!」

まゆ「そ、そっちこそ心当たりがあるって顔に書いてありますよ!」

奈緒「ああ、ドーナツなら3人で美味しくいただいたよ!」

加蓮「やっぱり! 作った私たちもまだ食べてなかったのに!」

奈緒「それよりあたしたちのゲームやったんだな⁉」

加蓮「やったよ! 3人でちょっとだけね!」

奈緒「やっぱり! せっかくあそこまで進めたのに!」

加蓮「それより人のドーナツ食べるってどういうこと⁉」

奈緒「置いてあったんだから食べていいんだと思うだろ!」

加蓮「はぁ⁉ 普通食べたりしないでしょ! 意味分かんないんだけど!」

奈緒「あたしからすればそっちのが意味分かんないけどな! なんで人のゲーム勝手にやるんだ! いや、やるだけならまだいい! データ消すことないだろ!」

加蓮「そんなの知らないし!」

未央「知らないじゃ済まされないよ!」

みく「知らないものは知らないにゃ! それよりドーナツ返してよ!」

ありす「食べちゃったのに返せるわけないじゃないですか! それよりデータ元に戻してください!」

まゆ「消えちゃったなら元に戻らないでしょう! そもそも戻し方とか分かりません!」

奈緒「とにかくまずは謝れ! あたしたちに謝れ!」

加蓮「謝るのはそっちでしょ! 私たちに謝って!」

未央「誰が謝るもんか!」

みく「こっちだって謝るとかありえないにゃ!」

ありす「なっ⁉ そっちがその気なら、もういいです!」

まゆ「許せません! もうありすちゃんたちとは――」



『絶交だっ!』






151: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:08:44.96 ID:+6Ja0bG30



―――現在


凛(そんなくだらないことで……)

P「……お前ら、そんなくだらないことで喧嘩してたの?」

凛(言っちゃったよ)

奈緒「くだらないだと⁉」

加蓮「プロデューサーには分からないかもしれないけどね!」

未央「あのセーブデータには私たちの努力が!」

みく「あのドーナツにはみくたちの真心が!」

ありす「目いっぱい詰まってたんです!」

まゆ「たくさん籠ってたんですよ!」



『だから、全然くだらなくなんてないんだよ(です)!』



P「お、おう、そうか。わ、悪かった」

奈緒「ちっ、こんな奴らと一緒の部屋でレッスンなんてできるか!」

未央「私たちは隣の部屋でやるからね!」

ありす「ふんっ、です!」


《ガチャ!》


P「あいつら……」

凛「どうする?」

P「なんとか仲直りさせるしかないだろ」

加蓮「仲直りなんてする気ないから!」

P「……駄目だ。みんな、一旦出よう」





152: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:09:14.78 ID:+6Ja0bG30



―――廊下


P「お互いにヒートアップしてるから、なんとかクールダウンさせないと、まともに仲直りとかしそうにないな……」

卯月「ど、どうすればいいんでしょう?」

P「……とにかくそれぞれと話をしよう。ちひろさん、加蓮たちの方、お願いできますか?」

ちひろ「はい。ではプロデューサーさんは奈緒ちゃんたちを?」

P「俺もゲームはわりとやるんで、奈緒たちの話をちゃんと聞いてやれると思うんです。でも俺、お菓子作りはやったことないので……」

ちひろ「そういうことでしたら、確かに私の方が加蓮ちゃんたちの話を聞くには適任かもしれませんね」

P「お願いします」

美嘉「アタシたちは?」

P「そうだな……なら2人ずつ一緒に付いて来てくれ」





153: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:10:03.29 ID:+6Ja0bG30



―――奈緒side レッスン室A


P「なあ、お前ら。セーブデータって全部消えたのか? 完全に最初から?」

奈緒「……そうだよ」

未央「くっ、別のスロットにバックアップしておけば……」

ありす「まさか消されるなんて思いませんよ……」

P(大分落ち込んでんな……)

P「ど、どのくらいやってたんだ?」

奈緒「10時間ちょい」

P「なんだそんなもんか」

奈緒「なんだと!」

P「やべっ⁉」

凛(なんで余計なこと言うかな……)

奈緒「確かに数百時間とかじゃないけどな! それでもあのゲーム、あたしたち3人で毎日ちまちまと進めてきたんだ!」

未央「それを消された悲しみと怒り、プロデューサーに分かる⁉」

ありす「分かるわけありません!」

P「お、落ち着けお前ら! そんなもんとか言って悪かったから――」



奈緒「例えばプロデューサー! あんたのモン○ンのデータ、全部消されたらどうする⁉」



P「……」

未央「それでも怒らずにいられる⁉」

P「……多分、キレる」

ありす「なら私たちの気持ちも分かるでしょう!」

P「めっちゃ分かる! 加蓮たちなんてことしやがったんだ!」

凛「プロデューサーがヒートアップしてどうするの!」

美嘉「駄目だこりゃ」





154: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:11:04.44 ID:+6Ja0bG30



―――加蓮side レッスン室B


ちひろ「みんな、ドーナツを食べられて悲しいのは分かるけれど、もう許してあげたらどう?」

加蓮「そんな簡単に許せることじゃないです!」

みく「そうにゃ! そもそもあのドーナツ、今日事務所に持ってきてみんなに食べてもらうつもりだったのに!」

ちひろ「え、そうだったの?」

まゆ「はい、プロデューサーさんにも食べてもらおうと……。それなのに……!」

加蓮「奈緒たち3人で、全部食べちゃったんですよ!」

ちひろ「そう……」

加蓮「もちろん、ちひろさんの分もあったんですけど……」

ちひろ「……それも奈緒ちゃんたちがもれなく食べたと?」

加蓮「はい」



ちひろ「許しがたい行為ね……!」



卯月「ちひろさん⁉」

楓「食べ物の恨みは怖いと言うけれど……」





155: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:11:48.81 ID:+6Ja0bG30



―――廊下


P「これはどう考えても加蓮たちのが悪いですよ!」

ちひろ「いいえ、奈緒ちゃんたちの方が酷いことをしていると思います!」

美嘉「戦火が広がったね」

凛「この2人は駄目だよ」

楓「どうすればいいかしら……」

卯月「プ、プロデューサーさん……」

P「セーブデータって言うのはですね、血と汗と涙の結晶なんですよ! それを消すなんてとんでもない!」

卯月「ちひろさんも……」

ちひろ「女の子が心をこめて作ったお菓子は、何物にも代えがたいものなんです! それを勝手に食べるなんて……!」



卯月「……2人とも、やめてくださいっ!」



P「……卯月?」

ちひろ「卯月ちゃん?」

卯月「喧嘩なんてやめてください。未央ちゃんたちを仲直りさせなきゃいけないのに、プロデューサーさんたちまで喧嘩をしていたら、仲直りなんてさせられないと思います」

P「うっ」

ちひろ「正論すぎます……」

卯月「だから、まずはプロデューサーさんとちひろさんが仲直りしませんか? それで次は未央ちゃんたちです」

P「……すみません、ちひろさん。奈緒たちに共感しすぎてました」

ちひろ「いえ、こちらこそすみません。ドーナツを食べられなかった恨みから、つい……」

美嘉「仲直りさせちゃった」

楓「卯月ちゃん、すごいわ」

凛「さすがだね、卯月」

卯月「そ、そんなことないよ」

P「いや、おかげで目が覚めた」

ちひろ「ありがとう、卯月ちゃん」

卯月「あ……えへへ」

P「さて、じゃあ次はあいつらをどうにかしないとな」

凛「ねぇ、プロデューサー。私、今いい考えが浮かんだんだけど」

P「奇遇だな、俺もだ」



卯月「……え? どうして2人とも、私を見ているんですか?」






156: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:12:19.29 ID:+6Ja0bG30



―――奈緒side レッスン室A


未央「? しまむー、どうしたの?」

卯月「え、えーっと……未央ちゃんたち、まだ加蓮ちゃんたちのこと怒ってるの?」

未央「怒ってるよ!」

奈緒「当然だろ!」

ありす「怒髪天です!」

卯月(こ、これはプロデューサーさんとちひろさんとは怒りの度合いが違うよぅ……。チラッ……やっぱり無理です、プロデューサーさぁん!)





157: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:12:48.75 ID:+6Ja0bG30



―――レッスン室 廊下


P「なんかこっちをすがるように見てるな……」

凛「助け船がいるかも……」

P「よし、行け美嘉!」

美嘉「アタシ⁉ 行けって、どうすればいいの⁉」

P「卯月とまともに話が出来るように、未央たちを落ち着かせるんだ! だから……ごにょごにょ」

美嘉「……はぁ⁉ やだよ、そんなの! ていうかそれ絶対効果ないでしょ!」

P「俺を信じろ! 凛も一緒にやるから!」

凛「なんで私を巻き込むの⁉」





158: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:14:10.15 ID:+6Ja0bG30



―――レッスン室A


卯月(プロデューサーさぁん……あれ? 凛ちゃんと美嘉ちゃんが入ってきた)

卯月「凛ちゃん、美嘉ちゃん?」

凛「……本当に……の……?」

美嘉「……しかないでしょ……」

卯月「?」

未央「しぶりんと美嘉ねー、何か用?」

美嘉「……か……か……」

未央「か?」



美嘉「カリスマJK城ケ崎美嘉の!」

凛「女子力アップ☆特別講座ー!」



『急になんか始まった⁉』

凛「さあ今日も始まりましたね~、美嘉先生」

美嘉「そうですね~、凛アシ」

卯月「なんですかこれ⁉」

美嘉「では今回は、アイドル部門の中でも女子力が格段に低い、奈緒ちゃんにスポットを当てたいと思いまーす☆」

奈緒「格段に低い⁉」

凛「『昨日TV何観た?』と聞けば『木曜はポケ○ンに決まってるじゃんか』と答え、『好きな本は?』と聞けば『最近はこ○すばかな~』と答える女子力の低い奈緒ですが……」

奈緒「べ、別にいいだろっ!」

凛「美嘉先生にかかればあら不思議! あっと言う間に女子力アップです!」

未央「さすが美嘉ねー!」

ありす「ノッてる⁉」

美嘉「じゃあまずは奈緒ちゃん、軽くメイクでもしてみよっか?」

奈緒「えぇー……」



奈緒「メイクとか仕事の時だけで十分だって。ほら、落とすのもめんどいだろ?」



『…………』



美嘉「……ごめん、これはアタシの手には負えないや」

奈緒「そんな目で見るな⁉」

凛「美嘉先生にかかっても、どうしようもなかった奈緒の女子力。彼女の女子力が上がる時は来るのでしょうか?」

奈緒「お前らもあたしに喧嘩売ってるのか⁉」

凛「……じゃ、私たちもう帰るから」

美嘉「……あとよろしくね」

卯月「え? う、うん」

奈緒「何しに来た⁉」





159: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:15:01.90 ID:+6Ja0bG30



―――廊下


美嘉「ねぇ、むしろ奈緒ちゃんヒートアップしてたけど⁉」

P「……いや、煽りすぎだろ」

凛「プロデューサーがやれって言ったんでしょ!」

P「あそこまでボロクソに言えとは言ってないけど⁉」

ちひろ「卯月ちゃん、大丈夫かしら……?」

楓(あ、今日の帰り、洗剤買って帰ろう)





160: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:15:39.25 ID:+6Ja0bG30



―――レッスン室A


奈緒「なんだったんだあいつら⁉」

卯月「み、みんな。じゃあさっきの続きだけど……加蓮ちゃんたちのこと、まだ怒ってる?」

奈緒「なんか凛たちの乱入で怒りの矛先あっちに向いた感あるけど……怒ってるよ、まだ」

未央「まあ、そうだよね」

ありす「やっぱり、許せませんから」

卯月「本当に? みんな、本当はもう怒ってないんじゃない?」

未央「そ、そんなことないよ」

卯月「未央ちゃん。本当のこと、教えて?」

未央「……うぅ、しまむーには敵わないよ。……うん、正直、もうそこまで怒ってない」

卯月「やっぱり。奈緒ちゃんとありすちゃんも、そうなんだよね?」

奈緒「あ、あたしはまだ……」

ありす「奈緒さん、意地を張るのはもうやめましょう」

奈緒「……まあ、未央と同じだよ。データ消されたのはむかついたけど……考えてみたら、あたしたちもドーナツ勝手に食べてるしなぁ」

未央「そうなんだよねぇ……」

ありす「加蓮さんたちには悪いことをしました……」

卯月「なら仲直りしようよ」

奈緒「で、でもあいつらデータ消してるしさ」

未央「私たち今、怒りと申し訳なさがミックスされた感じなんだよ」

ありす「すごく複雑な心境です」

卯月「うーん……3人とも、自分たちも悪かったって思ってるんだよね?」

未央「ま、まあね」

卯月「それなら、きちんと謝らないと」

奈緒「だけど加蓮たちも―――」

卯月「加蓮ちゃんたちも、きっと謝ってくれるよ。そうしたら、許してあげて? 奈緒ちゃんたちが謝ったら、加蓮ちゃんたちもきっと許してくれると思うから」

奈緒「……どうする?」

未央「もう、仲直り……」

ありす「……しましょうか」

奈緒「……そうするか」

卯月「良かった。じゃあ私、加蓮ちゃん達ともお話してくるね。ちょっと待ってて」





161: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:16:08.41 ID:+6Ja0bG30



―――廊下


P「よくやったぞ、卯月。これでもう奈緒たちは大丈夫だな!」

卯月「は、はい……でもその、プロデューサーさんは大丈夫ですか? 後ろから、美嘉ちゃんと凛ちゃんが、なんだか凄い目で睨んでますけど……」



美嘉「……っ!」
凛「……っ!」



P「……気にするな。さあ、次は加蓮たちだ。頼んだぞ!」

卯月「は、はいっ、頑張ります!」





162: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:16:52.01 ID:+6Ja0bG30



―――加蓮side レッスン室B


みく「あ、卯月チャン、どうしたの?」

卯月「その……みくちゃんたち、まだ奈緒ちゃんたちのこと怒ってるのかな?」

加蓮「当たり前でしょ!」

まゆ「怒ってますとも……!」

みく「みくの怒りは止まらないよ!」

卯月(や、やっぱりこっちもまともに話しができそうな状態じゃないよぅ……。チラッ……プロデューサーさぁん……!)





163: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:17:19.35 ID:+6Ja0bG30



―――廊下


P「またこっちを縋るような目で見てるな……」

凛「もうやらないからね」

美嘉「絶対にね」

P「わ、分かってるよ。……じゃあ楓さん、お願いできませんか?」

楓「私ですか?」

凛「次は楓さんにあれをやらせる気なの?」

P「違う、別のだ! ごにょごにょ……」

楓「……? そんなことでいいんですか?」

P「はい、お願いします。サポートでちひろさんを付けますので」

ちひろ「どうして私が⁉」





164: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:17:56.97 ID:+6Ja0bG30



―――レッスン室B


卯月(プロデューサーさぁん……あっ。今度は楓さんとちひろさんが入ってきた)

卯月「楓さん、ちひろさん?」

楓「では……」

ちひろ「は、はい……」

卯月「?」

加蓮「楓さんにちひろさん、何か私たちに用ですか?」

楓「はぁぁ……なんだか疲れました」

加蓮「?」

ちひろ「楓さん、それならあそこに椅子がありますよ」

楓「あ、本当ですね。ねぇ、加蓮ちゃんたち」

加蓮「は、はい」



楓「椅子に座っても、いいっすか?」



―――瞬間、部屋の空気が凍りつく。


加蓮「……」

みく「……」

まゆ「……」

卯月「……え、ええと……?」

ちひろ「か、楓さん、そういえば私の家、最近雨漏りに悩んでいまして」

楓「まあ、大変ですね」

ちひろ「多分、屋根が傷んでいると思うんですよ」

楓「屋根が……」



楓「それはやぁねぇ」



―――部屋の温度が氷点下まで下がった。(*体感)


加蓮「……な、何が……」

みく「みくたちの前で……」

まゆ「いったい、何が行われているんですか……?」

卯月「わ、分からない……何も分からないよ……」

ちひろ(も、もう十分そうですね。楓さん、そろそろ――)

楓「屋根、雷にでも打たれたのかしら? それは悲惨だぁ」

ちひろ「楓さん、もういいですよ」

楓「今日のおつまみ……とりあえず、イカはいっかな」

ちひろ「楓さん、もういいので! 卯月ちゃん、あとはお願いね!」

卯月「は、はい」

加蓮「なんだったの……?」





165: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:18:27.09 ID:+6Ja0bG30



―――廊下


P「ふっ、やはり上手くいきましたね。あいつらめっちゃクールダウンしてますよ」

ちひろ「プロデューサーさん、楓さんが止まりません。相手お願いします」

P「えっ?」

楓「プロデューサー。私、そばにある蕎麦屋の店頭で転倒してしまって」

P「そ、そうですか」

楓「それで車を呼んでもらって、来るまで待っていたんです」

P「な、なるほど……」

楓「そうしたら、猫がいきなり現れて、きゃっと驚いてしまい―――」

P(たすけて)

凛(……自業自得だよ)

美嘉(ていうか、巻き込まれたくない……)





166: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:19:16.89 ID:+6Ja0bG30



―――レッスン室B


加蓮「もう春なのに……真冬みたいな寒さだったよ……」

みく「あ、あれが、楓さんの本気……」

まゆ「恐怖すら抱きました……」

卯月「み、みんな。気を取り直して、さっきの続きだけど……奈緒ちゃんたちのこと、まだ怒ってる?」

加蓮「お、怒ってるよ……」

みく「みくの怒りはまだまだ沸騰中にゃ……」

まゆ「そんなに簡単に怒りは無くなりません……」

卯月「みんな……でも、もう怒ってるようには見えないよ?」

加蓮「いや、その、うん……楓さんのせいで、気勢が削がれたというか……」

みく「ちょっと冷静になったよね……」

まゆ「若干、落ち着きました……」

卯月「じゃあ、そんな加蓮ちゃんたちにお願いなんだけど……奈緒ちゃんたちのこと、許してあげてくれないかな?」

加蓮「で、でもあっちが……」

卯月「奈緒ちゃんたち、加蓮ちゃんたちに謝りたいんだって」

加蓮「えっ? ほ、本当に?」

卯月「うん。3人とも、まだ奈緒ちゃんたちのこと、許せない?」

加蓮「う。いや、私たちも悪かったし……」

みく「だよね……ドーナツ食べられたのは、いらっとしたけど……」

まゆ「私たちも、ゲームのデータを消しているわけで……」

加蓮「その、あっちが謝ってくるんなら……許してもいいかな」

卯月「じゃあ、加蓮ちゃんたちも、奈緒ちゃんたちに謝れるかな?」

みく「……うん、謝るよ」

まゆ「仲直り……しましょうか」

加蓮「……そうだね」

卯月「うん、それがいいよ。じゃあ私、奈緒ちゃんたち呼んでくるね」





167: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:19:45.90 ID:+6Ja0bG30



―――廊下


P「さ、さすがだ、卯月。か、加蓮たちも、ううう上手くいったみたいだな」

卯月「あ、あのー、どうしてプロデューサーさん、震えているんですか?」

P「ち、ちょっと寒さにやられただけだ。さあ、後は仲直りさせるだけ。もうひと頑張りだ!」

卯月「は、はいっ」





168: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:20:17.62 ID:+6Ja0bG30



―――レッスン室B


奈緒「……」

加蓮「……」

未央「……」

みく「……」

ありす「……」

まゆ「……」

卯月「さあみんな、お互いに謝ろう?」

奈緒「あー、その……」

加蓮「えーと、あの……」

奈緒「……なんだよ?」

加蓮「……そっちこそ。謝るんじゃないの?」

奈緒「加蓮が先に謝ったらな」

加蓮「奈緒が先に謝ってよ」

奈緒「いや、そっちが先だろ」

加蓮「そっちが先だから」

奈緒「……」

加蓮「……」



奈緒・加蓮『そっちが先に謝れっ!』



美嘉「ち、ちょっとやめなって2人とも!」

楓「どうしてまだ喧嘩するのかしら」

P「面倒な奴らめ……」

ちひろ「それ絶対言っちゃ駄目ですよ」




169: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:21:22.42 ID:+6Ja0bG30



凛「まったく……未央、最初に素直に謝って。そうすればみんな素直になるよ」

未央「ぐ……ドーナツ勝手に食べちゃって、ごめんなさい」

みく「……ゲーム、データ消しちゃってごめんなさい」

ありす「……すみませんでした」

まゆ「……ごめんなさい」

凛「さあ、あとは奈緒と加蓮だけだよ?」

卯月「奈緒ちゃん、加蓮ちゃん」

奈緒「くっ……」

加蓮「うっ……」

奈緒「……その……ドーナツ食べて……」

加蓮「……あの……データ消しちゃって……」



奈緒・加蓮『本当にごめんっ!』



奈緒「……」

加蓮「……」

凛「同時って……」

美嘉「見事にハモったね」

奈緒「か、加蓮! あたしがせっかく先に謝ろうとしたのに、被せてくることないだろ!」

加蓮「か、被せたのは奈緒でしょ⁉ 私の方が先に言おうとしてたの!」

卯月「まだ喧嘩を……」

未央「ううん、しまむー。もう仲直りしてるよ」

みく「いつも通りにゃ」

奈緒「だいたい加蓮はな―――」

加蓮「奈緒はそうやって―――」

卯月「あ……確かに、もうどっちも怒ってないね」

P「やっと仲直りしたか。卯月、今回はよくやってくれたな」

卯月「い、いえ、私はそんな褒められるようなこと――」

凛「十分褒められることしたよ、卯月。ご苦労さま」

卯月「凛ちゃん……うん、ありがとう」

P「卯月がいなかったら、もっと長引いてただろうからな」

未央「なんか、しまむーの笑顔見ると、毒気が抜かれるんだよね」

みく「うんうん、卯月チャンの笑顔は解毒剤にゃ」

ありす「その言い方はないですよ。鎮静剤の方が合っていると思います」

卯月「あ、あはは……」

卯月(どっちも微妙に嬉しくないなぁ……)





170: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:22:24.50 ID:+6Ja0bG30



P「卯月。労いに今日、晩飯でも奢ってやろうか?」

卯月「い、いいですよ、そんな」

P「遠慮するなって」

凛「プロデューサー、私たちには?」

美嘉「あんなことさせといて、何も無いわけ?」

P「わ、分かったよ。お前たちも奢ってやるよ」

ちひろ「もちろん、私たちにもですよね?」

楓「ありがとうございます、プロデューサー」

P「は、はは、分かりました」

未央「え、みんなだけ奢ってもらえるの?」

みく「ずるいにゃ! みくたちにも奢ってよ!」

P「何でお前たちにまで奢るんだ⁉ お前たちは迷惑かけた側だろ! むしろお前たちが奢れよ!」

ありす「……奢り……」

奈緒「おいプロデューサー。小学生に奢れとか、ありえないだろ」

加蓮「サイテー」

P「お前たち言い争いしてたんじゃなかったのか⁉」

まゆ「プロデューサーさんに奢り……貯金を全部おろしてこないと……!」

P「こなくていい! あー、もう、じゃあ全員奢ってやるよ! たまにはいいだろ!」

奈緒「やりぃ!」

加蓮「プロデューサー、サイコー!」

P「凄まじい早さの手のひら返し!」





171: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:23:20.09 ID:+6Ja0bG30


ちひろ「せっかくですから、ルキちゃんも呼びましょうか?」

P「なに余計なことしようとしてんですか! これ以上増やすのは――」

ルキトレ「ごちになります♪」

P「どっから出てきたの、ルキちゃん⁉」


《チロリン♪》


ルキトレ「あ、返信来た。お姉ちゃんたちも来れるそうです」

P「さらに2人増えた!」

未央「プロデューサー。今連絡したけど、社長も来るって」

P「先輩にまで連絡するな!」

未央「でも社長、プロデューサーにただ奢らせるのは悪いから……」

P「お、もしかして割り勘とか……」

未央「代わりに高級レストランの予約しておくってさ」

P「あの人、ちっとも悪いと思ってないだろ!」

奈緒「へー、高級レストランか」

加蓮「一度行ってみたかったんだよね」

P「俺は行きたくないんだけど! 俺、何人に奢るの⁉ どれだけ金かかるの⁉」



未央「ミッツボシ☆☆★→レッストッランでプロデューサーの奢り~♪」

『奢り~♪』



P「腹立つ替え歌を合唱するな! くそぅ……ちひろさん、経費で――」

ちひろ「落ちませんよ」

P「……ははは、もう笑うしかねぇや。あは、あはは、あはははははははっ」

卯月「プロデューサーさん、笑顔なのに目が笑ってないですよ⁉」



第6話 終わり





172: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/18(火) 21:24:22.44 ID:+6Ja0bG30



―――数日後、奈緒の部屋


加蓮「それで、この後どうすればいいの?」

奈緒「一旦戻って回復して、準備を整えてから、ボス戦突入だ」

加蓮「えー、めんどくさいなぁ。このまま行っちゃおうよ」

奈緒「ボスを舐めるな! そういう風に油断して行くとボコボコにやられて、むしろ時間かかるんだよ」

ありす「その通りです。一旦戻りましょう」

未央「急がば回れの精神だよ」

みく「でも、またここまで来るの大変じゃない?」

奈緒「途中までワープできるし、道順も覚えたからそうでもないだろ」

まゆ「なるほど……色々と考えてやるものなんですね」

奈緒「さあさあ、戻れ戻れ」

加蓮「はいはい……あ、もうやめる時間じゃん」

奈緒「えぇー、まだいいだろ?」

みく「駄目だよ、やりすぎは」

ありす「仕方ないですね……」

未央「また明日やろっか」

奈緒「ちぇ~」

加蓮「セーブして、と。じゃ、まゆ先生のお菓子作り教室の準備しよ」

まゆ「だから先生はやめてくださいよぉ」

奈緒「先生、今日は何作るんだ?」

まゆ「……もう一度、ドーナツです♪」



ほんとにおしまい






178: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:36:53.48 ID:3N8bA8K50

第7話 みんなで合宿!(前編)



―――アイドル部門事務所


P「よし、やっぱりこれが一番いいな」

ちひろ「何がですか、プロデューサーさん」

P「これです」

ちひろ「これは……なるほど。いよいよというわけですね」

P「ええ、いよいよです」


《ガチャ―――》


ルキトレ「プロデューサーさんっ、少しいいですか?」

P「ルキちゃん、どうかしたの?」

ルキトレ「所属アイドルも増えてきたことですし、久しぶりにあれをやるのはどうかと思いまして」

P「あれ? あれって何?」



ルキトレ「合宿です!」



P「合宿……なるほど、いいかもね。でもルキちゃん、また唆されたわけじゃ……」

ルキトレ「違いますよぅ! 今回は自分で思いついたんです!」

P「そ、そっか、ごめん」

ちひろ「合宿ですか……前にやった時は大変でしたねぇ」

P「あー、そういえばそうでしたね。……待てよ? ルキちゃん、こんなこと言い出したってことはまさか……」

ルキトレ「はい、今度レイお姉ちゃんが帰ってくるんです。だからちょうどいいかなって!」

P「……マジかー」

ちひろ「あの人が……また……」

ルキトレ「? どうかしましたか?」

P「あ、あはは、何でもない何でもない」

ルキトレ「あ、それと今回はセイお姉ちゃんとメイお姉ちゃんも来れるそうです」

P「え、ホントに? トレーナーさんたちも来てもらえるなら、それは心強いな。……うん、じゃあやろうか合宿。こっちとしてもちょうどいいし」

ルキトレ「ちょうどいいって?」

P「これだよ」

ルキトレ「……! これって……」





179: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:37:57.03 ID:3N8bA8K50



―――数日後


P「みんな、今週末に合宿を行うことになった!」

奈緒「合宿?」

加蓮「へぇ、合宿かー」

美嘉「なんか楽しそうだね」

未央「……そんな甘いもんじゃないよ、美嘉ねー」

美嘉「え? 未央、どういうこと?」

未央「前に合宿をやった時は、いつもの数割増しの厳しさでレッスンさせられたんだよぉー……」

美嘉「げっ、しんどそう……」

P「そりゃそうだ。言っておくが、遊びに行くわけじゃないんだからな?」

凛「……前の合宿の時、プロデューサー、釣り竿持って行ってたよね」

奈緒「遊びに行ってるじゃねぇか!」

P「す、少しぐらいはいいんだよ! せっかくの海なのに、遊ばないとかありえんだろ!」

奈緒「あんた本当に大人か⁉……ん? 海?」

加蓮「合宿所って海にあるの?」

卯月「うん、そうだよ。ちょっと歩けばすぐ海なんだ」

ありす「海ですか……この時期じゃ、まだ入れないですね」

卯月「でも、潮風がとっても気持ちいいよ」

凛「それに、海って見てるだけでもいいものだから」

ありす「そうですか……少し、楽しみになってきました」

楓(海はたのsea……微妙ね)

ありす「楓さん、どうかしましたか?」

楓「ううん。海、楽しみね」

みく「Pチャン、合宿って何日やるの?」

P「今回は2泊3日だ。ゴールデンウィークで休みだろ?」

まゆ「プロデューサーさんと、2泊3日……うふふ♪」

凛「まゆ、私たちもいること忘れてないよね?」

奈緒「でも、今週末って随分急じゃないか?」

P「ちょうど卯月たちの仕事が入ってなかったんだ。それにこの合宿で……いや、なんでもない」

奈緒「? なんだよ? 今、何か言おうとしてなかったか?」

P「ふっふっふ……それは後でのお楽しみだ」

奈緒「……ろくでもないことじゃないといいけどな」





180: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:38:23.99 ID:3N8bA8K50



―――その日の夜 女子寮 奈緒の部屋


奈緒「プロデューサーのやつ、何か企んでる気がするぞ」

未央「もしかして……」

みく「未央チャン、何か心当たりあるの?」

未央「プロデューサー、前の合宿の時に、私たちをユニットデビューさせることを決めたんだよ」

まゆ「そうなんですか?」

奈緒「なら、今回も……?」

加蓮「私たちの中から、ユニットデビューさせようとしてるってこと?」

未央「いや、今回もそうかは分かんないけどね」

ありす「ですが、もしそうだとしたら……」

みく「デビューチャンス到来にゃ!」

未央「ま、まだ分かんないよ? 違ってて怒るの無しだからね?」

奈緒「怒りゃしないって。……ただ、期待させた罪で未央には罰を受けてもらうけどな」

未央「怒るより酷いことされそう!」

ありす「さすがにそんなことはしないので、安心してください」

未央「良かったぁ……」

加蓮「まあデビューじゃなかったとしても、何かはありそうだし」

まゆ「合宿の楽しみが一つ増えましたね」

みく「みく、俄然やる気出てきたよー!」

奈緒「さて、どんな合宿になるんだかな」





181: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:39:04.98 ID:3N8bA8K50



―――そして、合宿の日がやって来た!


未央「うーみだぁ―――――っ!」

奈緒「おぉー! 海だ海!」

美嘉「この時期に海来るとか、初めてだよ」

加蓮「夏以外はあんまり来ようとは思わないもんね」

ありす「本当に潮風が心地いいです……」

まゆ「海に来たって感じがしますね」

みく(海が近い……ご飯に魚料理出たりしないよね……?)

楓「みくちゃん、顔が青いけれど大丈夫?」

みく「な、なんでもないにゃ!」

凛「ここに来るのも久しぶりだね」

卯月「うん、前に来たのは去年の夏だったもんね」

ちひろ「プロデューサーさん、合宿所まではあの道をまっすぐでしたよね?」

P「はい、そのはずです。じゃあみんな、合宿所に行く――」



???「よく来たな、お前たち!」



P「ぞぉうっ⁉」

奈緒「な、なんだ⁉」

加蓮「どこからか声が……⁉」

卯月「こ、この声は……」

凛「もしかして……」

未央「はっ⁉ みんな、上だよっ!」

美嘉「上?……あっ⁉」

みく「き、木の上に人がいるにゃ⁉」

ありす「なぜあんな所に⁉」



???「とうっ!」



まゆ「飛び降りた⁉」

楓「危ない!」

ちひろ「いえ、あの人なら大丈夫です」

楓「えっ?」


《ヒュ―――――ズザザッ!》


???「―――私、見参!」



奈緒「あの高さから無傷で着地した⁉」

加蓮「しかもその後にポーズまで決めたよ⁉」





182: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:40:15.89 ID:3N8bA8K50



???「ふっ、やはり登場にはインパクトがないとな。そうだろ、プロデューサー?」

P「インパクトありすぎですけどね!」

???「そうか? お、そこの4人も久しぶりだな。そして残りは、はじめましてだ」

奈緒「プロデューサー、この人のこと知ってるのか⁉ なんなんだこの人⁉」

P「あー、この人はだな……」



マストレ「私はマスタートレーナー! この合宿の間、お前たちのレッスンを担当する! よろしくな!」



奈緒「ま、マスタートレーナー⁉」

加蓮「トレーナーさんなの⁉」

マストレ「そう、トレーナーさんだ。だが私のことは師匠と呼ぶように」

美嘉「師匠って何⁉」

みく「なんでそうなるにゃ⁉」

卯月「師匠、今回もよろしくお願いします」

マストレ「おう」

ありす「本当に呼びました⁉」

P「えー、簡単に紹介するけど、師匠はルキちゃん姉妹の、一番上のお姉さんなんだ」

まゆ「あ、ルキさんたちのお姉さんだったんですね」

楓「師匠さんは、普段は346プロとは別の所でトレーナーをされているんですか?」

P「いえ、この人は普段、世界中を旅してるんです」

楓「旅……ですか?」

未央「なんとその旅、武者修行の旅なんですよ!」

奈緒「何言ってんだ。そんな漫画みたいな……」

凛「……それが、本当なんだよ」

奈緒「マジで⁉」

マストレ「この前はホッキョクグマと戦ったが、あいつ見掛け倒しだったな。てんで弱かった」

加蓮「ホッキョクグマって、そんな……」

凛「すごく嘘っぽいけど……さっき木の上から飛び降りて、無傷で着地したの見たでしょ?」

加蓮「……じゃ、じゃあ本当にクマと?」

P「みんなは知らなかったかもしれないが、トレーナーさんたちの実家は道場なんだよ。で、師匠はそこのトップ」

加蓮「トレーナーさんたちの実家、道場だったの⁉」

奈緒「何その、今明かされる衝撃の真実!」

マストレ「まぁ、私はずっと道場を空けているんだがな。道場は可愛い妹たちに任せて、武を極めるために世界を回っているわけだ」

美嘉「この人、トレーナーじゃなくて、武闘家なんじゃ……」

P「武闘家だが、トレーナーとしての腕も一流なんだよ」

美嘉「やっぱり武闘家ではあるんだ!」





183: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:40:48.23 ID:3N8bA8K50



奈緒「こ、この人がルキさんの言ってたお姉さんなんだよな……」

加蓮「ルキちゃん、威厳のある素敵なお姉さんだって言ってたけど……」

マストレ「姉妹の中でも、私が一番すごいトレーナーなんだぞ? レッスンならこの私、美人トレーナーにお任せあれ☆」

加蓮「……聞いてたイメージと大分違うね」

奈緒「だな……」

マストレ「聞こえてるぞ、そこのツインテっ娘!」

加蓮「ツイッ⁉ わ、私⁉」

マストレ「聞いていたイメージと違うだって……?」

加蓮「あ、いや、す、すみま―――」

マストレ「そうだろうそうだろう! 聞いていたよりも実物はさらに美人だろう? イメージを越えてしまって悪いな!」

加蓮「ふぇ?」

奈緒「あの言葉をそう取るなんて……!」

マストレ「さて、ではお前たち、さっそく合宿所に向かうとしようか。あの道をまっすぐだ!」

『は、はーい!』





184: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:41:14.51 ID:3N8bA8K50



―――合宿所


ルキトレ「みなさん来ましたね~」

美嘉「あ、ルキちゃん」

マストレ「おお、我が愛しの妹よ! 会いたかったぞー!」

みく「すごい速度で抱きついたにゃ!」

ルキトレ「わ、お姉ちゃん! 久しぶりー! みなさんと一緒に来たんだ!」

マストレ「ああ、木の上で待ち伏せしていたんだ」

ルキトレ「お姉ちゃんは変わらないなぁ」

トレーナー「ケイ、プロデューサー殿たちが到着したのか?」

ベテトレ「ん? 姉さんもいるな」

マストレ「出迎えご苦労! お前たちも久しぶりだな!」

卯月「これは……4人揃いましたね」

未央「これ見ると、全員集合って感じするなー」

ちひろ「今回の合宿のメンバーも、これで全員揃いましたしね」

楓「あ、そうなんですね。全員で……16人ですか」

凛「前に比べて随分増えたね、プロデューサー」

P「ああ、賑やかな合宿になりそうだ」

マストレ「さてお前たち、荷物を部屋に置いたら、着替えて玄関前に集合するように。さっそくレッスンを始めるぞ!」





185: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:41:48.17 ID:3N8bA8K50



―――砂浜


マストレ「では、まずお前たちの基礎体力を確認する。さあ、走れ!」

奈緒「いきなり走れって言われても!」

美嘉「どれくらい走ればいいんですか?」

マストレ「ん? どれくらいも何も、私がやめと言うまで走り続けろ」

みく「まさかのゴール無し⁉」

加蓮「うわぁ、一番きついやつだよ……」

P「あの、師匠? 今日の予定は―――」

マストレ「分かっている。体力の確認をするだけだ」

P「ならいいですが……みんな、ファイトだ!」

マストレ「ファイトじゃないぞ、お前も走れ」

P「俺も⁉」

マストレ「前回もそうだっただろう?」

P「またかよ……!」

奈緒「え、プロデューサーも走るのか?」

マストレ「……彼は、アイドルたちだけに苦しい思いをさせたくないそうだ。自分も一緒に走ることで、苦しみを分かち合いたいらしい」

P「俺の言葉を捏造しないでくれません⁉」

奈緒「プロデューサー、中々いいとこあるじゃんか。……存分に苦しむといい」

P「こ、こんにゃろう……!」

マストレ「では位置について、よーい…………ドン!」

卯月「みなさん、頑張りましょう!」

凛「行くよ、みんな――」



未央「一位は私が貰うよ!」

奈緒「いや、どうせやるならあたしが貰う!」

みく「トップの座はみくの物にゃ!」

P「男の俺がお前らに負けられるか!」

まゆ「ならまゆは、プロデューサーさんの後ろを走ります♪」

未央・奈緒・みく・P・まゆ『だぁあああああああああっ!』



凛「……そんなに速くは行かない方がいいと思うんだけど」

楓「最初からあんなに速いペースで……」

ありす「あの5人、絶対すぐにばてますね」

美嘉「アタシは自分のペースで走ろっと」

加蓮「私もそうするよ」





186: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:42:24.21 ID:3N8bA8K50



―――数十分後


凛「はぁ、だから言ったのに……」

卯月「大丈夫?」

未央「だ、だいじょばない……」



マストレ(ふむ、渋谷と島村は前回に比べて随分体力が付いたようだな。本田も、ちゃんとしたペースで走れば、同じくらいか)



奈緒「くそぉ……未央より、あたしたちのが……」

みく「さ、先にばてたにゃ……負けたにゃ……」



マストレ(3人に続いて、神谷と前川だな。2人とも既に、それなりに体力が付いている)



楓「まゆちゃん、そう落ち込まないで」

まゆ「ぷ、プロデューサーさんに……付いて行けませんでした……」

美嘉「いや、けっこう付いてけてたと思うよ」



マストレ(その次に高垣、佐久間、城ケ崎か。まあ、この3人は及第点といったところだな)



加蓮「はぁ……はぁ……」

ありす「か、加蓮さん、大丈夫ですか?」

加蓮「……う、うん。全然、平気……」



マストレ(そして最後に北条と橘か。橘は年齢が離れているから仕方がないとして……北条は随分体力がないな。何か理由があるのか?)

P「し、師匠。俺が一番ですよ……おぇっ……」

マストレ「それくらいでいばるな、プロデューサー。男なんだから当然のことだ」

P「あはは、そっすね、当然っすよね。……ちくしょうっ」

マストレ「それより、北条は体が弱かったりするのか?」

P「え? 加蓮からは特に何も聞いてないですけど……何か気になりました?」

マストレ「いや……なら、ただ単に体力がないだけか。随分疲れているように見えたんでな」

P「加蓮が……?」



加蓮「はぁ……はぁ……」

奈緒「加蓮、大丈夫かー……?』

加蓮「……自分の、心配したら……?」

奈緒「いや、あたしも大分あれだけどさ……加蓮も相当参ってるように見えるぞ?」

加蓮「……だい、じょぶ……」

奈緒「ホントかよ……」



P「……確かにそんな感じですね。師匠、少し休憩伸ばしてもらえます?」

マストレ「ああ、そうするか」





187: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:42:51.26 ID:3N8bA8K50



―――30分後


マストレ「さて、次のレッスンからは4組に分かれて行う」

卯月「4組ですか?」

マストレ「私たち姉妹が、それぞれの組に付く。だから4組だ」

未央「今回は師匠が全員を見るわけじゃないんですか?」

マストレ「前回はお前たちが3人だから出来たんだ。今回はお前たち、10人もいるだろう。まあ見られなくはないが、効率が悪くなる」

凛「なるほど……」

マストレ「ではまず渋谷、島村、本田の3人だが……」

ベテトレ「お前たちは私が見る」

未央「やった!」

マストレ「……本田、そんなに私じゃなくて嬉しいか?」

未央「あ、あはは。やだなー、そんなわけないじゃないですかー」

マストレ「ははは、そうかそうか」



マストレ「セイ、本田だけきつめにレッスンしてやれ」



ベテトレ「はいはい、姉さん」

未央「そんなぁ⁉」

凛(余計なこと言わなきゃいいのに……)

マストレ「では次に高垣、城ケ崎、前川の3人。お前たちは……」

トレーナー「私だ」

楓「よろしくお願いします、トレーナーさん」

美嘉・みく『お願いしまーすっ』

マストレ「そして佐久間、橘が……」

ルキトレ「私ですよ~」

ありす「まゆさんとですか」

まゆ「ありすちゃん、よろしくお願いしますね」

加蓮「あとは私と奈緒だね」

奈緒「それで、あたしたちに付くのは……」

マストレ「私だな」

奈緒「……やっぱ、そうですよねー」

加蓮(未央も嫌がってたし、一番きつそうだなぁ……)

マストレ「お前たち、今回の合宿の間は、ずっとこの組み分けでレッスンを行うからな」

加蓮「ず、ずっと?」 

奈緒「次のレッスンだけじゃないんですか⁉」

マストレ「毎回組み分け変えるのも面倒だろう。……何か文句でもあるのか?」

奈緒「……ないでーす」

加蓮「きっついなぁ……」





188: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:43:24.53 ID:3N8bA8K50



―――山中


マストレ「神谷、北条、ここがお前たちのレッスン場所だ」

加蓮「ず、随分歩かされたね……」

奈緒「海の近くなのに、山もあるとは思わなかったな……。こんな所で、どんなレッスンするんだ?」

P「さあ? 今日やる内容は、トレーナーさんたちに一任してるんだ」

奈緒「プロデューサーも知らないのかよ……っていうか、なんで付いてきたんだ?」

P「師匠に、お前も一緒に来いって言われたんだよ。まあ、言われなくてもみんなの様子は順番にチェックしようと思ってたからな」

奈緒「ふーん……」

マストレ「さてお前たち、最初に言っておくが……」



マストレ「私は今日、まともなレッスンをする気はない!」



奈緒「とんでもないこと宣言された!」

加蓮「レッスンしないの⁉」

マストレ「まともなレッスンは明日から行う。まず今日は神谷と北条の……ここを鍛える!」

奈緒「……胸筋ですか?」

マストレ「そうそう、胸筋を鍛えてバストアップ☆――って違う! 鍛えるのはハートだ!」

加蓮「ハ、ハート?」

マストレ「私がお前たちに、アイドル魂を刻みつけてやる!」

奈緒「アイドル魂ってなんだ……」

マストレ「で、だ。……神谷、私の後ろに崖があるな?」

奈緒「ありますけど……」

マストレ「では聞こう。頂上を目指して山を登っている時、目の前に崖が現れたら、お前はどうする?」

奈緒「どうするって……道を間違えたんだろうから、引き返して別の道を――」



マストレ「甘ったれるな!」



奈緒「えぇ⁉」

マストレ「崖があろうと谷があろうと、越えていくのがアイドルというものだろう!」

奈緒「それ登山家じゃないですか⁉」

マストレ「バカもの、比喩だ!」

奈緒「だったらそう言ってくださいよ! 目の前に実際に崖があるせいで、比喩だとは思いませんよ!」





189: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:44:00.37 ID:3N8bA8K50



マストレ「いいか、お前たち!」



マストレ「頂上とはトップアイドル!」

マストレ「山とはそこに至るまでの長き道のり!」 

マストレ「崖とは襲い掛かる苦境!」 



マストレ「神谷! お前がこれからアイドルとして様々な苦境に立たされた時、お前は引き返すのか!」

奈緒「そ、そういうことなら話は別です。引き返したりしません!」

マストレ「北条、お前は!」

加蓮「え、えっと……越えていこうと思います」

マストレ「よし!……だが、言葉だけならなんとでも言える」



マストレ「お前たち、実際にこの崖を登ってみろ!」



奈緒・加蓮『えぇ―⁉』

奈緒「なんでそうなるんですか⁉」

加蓮「さっきの話、比喩じゃなかったんですか⁉」

マストレ「さっきの話は比喩だが、お前たちは引き返さずに越えていくと言った。その言葉を体に刻み込むために、実際に苦境を乗り越えてみろ!」

奈緒「プロデューサー、あの人無茶苦茶言ってるぞ!」

P「ちょ、ちょっと師匠、いくらなんでもそれは話が違――」

マストレ「ふっ、安心しろ。命綱はちゃんとある」

P「確かにそれは大事ですけど! でもそういう問題じゃなくて!」

マストレ「この2人が登るのをサポートさせるために、お前を連れてきたんだしな」

P「一緒に来いって、そういうことだったの⁉ 俺、崖なんて登ったことないですよ!」

マストレ「大丈夫だ、お前ならいける」

P「何を根拠に⁉」

マストレ「さあお前たち、とっとと準備をしろ! 登るぞ!」

奈緒「や、やるしかないのか……?」

加蓮「他のみんなも、こんなことしてるのかな……?」





190: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:44:30.34 ID:3N8bA8K50



―――まゆ・ありす組 合宿所


ルキトレ「アイドルにとって大事なのは個性! というわけで、今日は自分の個性を再発見しましょ~!」

ありす「個性の再発見、ですか?」

まゆ「具体的には、何をするんでしょうか?」

ルキトレ「ふっふっふ……これでーす!」


《ば~んっ!》


ありす「な、なんですかこれ……?」

まゆ「たくさんの……服?」



ルキトレ「そう! 今日はいろんな服を着て、コスプレしちゃいましょう♪」



ありす「コ、コスプレ⁉ どうしてそうなるんですか⁉」

ルキトレ「まずはこれとかいいと思うんですよ~……魔導士の衣装♪」

まゆ「これが個性の再発見になるんでしょうか……?」





191: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:45:20.18 ID:3N8bA8K50



―――楓・美嘉・みく組 海辺


美嘉「……」

みく「……」

楓「……」

トレーナー「……」

みく「……ねぇ、美嘉チャン」

美嘉「……何?」



みく「どうしてみくたち、釣りなんてしてるのかな?」



美嘉「……アタシも知りたいよ。あの、トレーナーさん」

トレーナー「なんだ?」

美嘉「やっぱりこれ、アイドル関係なくないですか?」

トレーナー「いや、関係はある。だから続けろ」

美嘉「はあ……」

みく「どう関係が……?」

楓「中々食いつかないわね……」

みく「楓さん、真剣にやってるにゃ」

美嘉「すごいね、こんな意味不明なのに」

みく「……もしかしてこれは、アイドルとしての忍耐力を鍛えてるのかも」

美嘉「アイドルに忍耐力って必要なの?」

みく「……分かんないにゃ」

美嘉「何それ……」

楓「トレーナーさんがああ言ってるんだもの。必要なことだと思うわ」

美嘉「そうなんですかね……?」

みく「今は信じるしかないにゃ……」

美嘉「……そういえば、みくちゃん魚苦手じゃなかったっけ? 釣りとかして大丈夫なの?」

みく「……あ、アイドルを目指す先に魚が待ち受けると言うなら、みくはそれを越えていくにゃ!」

美嘉「そ、そう……」



『………………』



美嘉「……はぁ、それにしても……暇だなぁ」





192: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:45:51.15 ID:3N8bA8K50



―――ニュージェネ組 合宿所レッスン室


ベテトレ「さて、お前たちは他の組とは事情が違うからな……」

卯月「? なんの話ですか?」

ベテトレ「……お前たちに聞くが、きついのと楽なの、どちらがいい?」

未央「なんですか、その2択⁉」

凛「……きつい方で」

未央「しぶりん⁉ そっちでいいの⁉」

凛「楽な道を選んでたら、成長できないと思うから」

卯月「凛ちゃん……! うん、そうだよね!」

未央「い、いやそうかもだけど……選択肢の意味を聞いてからでも良かったんじゃ……」



凛「……あっ」



未央「逸りすぎだよ、しぶりん!」

ベテトレ「よし、きつい方だな。ならお前たちはレッスンだ。普段の3倍の厳しさで行う」

未央「3倍⁉」





193: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:46:32.17 ID:3N8bA8K50



―――奈緒・加蓮組 崖


奈緒「くそぉ、なんでこんなことに……アイドルが崖登りとかアイ○ツかっ!」

P「じゃあこの後は木の伐採だな……」

奈緒「シャレにならないこと言うなよ! ホントにやらされそうで怖いだろ!」

加蓮「はぁ、はぁ……奈緒、元気だね……意外と余裕?」

奈緒「余裕なんてないよ!」

加蓮「わりとありそうだけど……」

P「加蓮は随分余裕なさそうだな」

加蓮「わ、私はまだまだ余裕だよ?……ぜぇ、はぁ」

P「そうは見えないんだが……」

マストレ「ほれお前たち、もうすぐ上に着くぞ。ラストスパートだ」

奈緒「よ、ようやくか……」

P「よし、じゃあ一気に登り――」

マストレ「サポートなのにお前が先に上がってどうする!」

P「そ、そうっすよね。2人とも、頑張れー」

奈緒「ずっと頑張ってるよ!……よし、もうちょい……着いたーっ!」

加蓮「……も、もうちょいが……遠い……」

奈緒「ほら加蓮、あたしの手に掴まれ。引っ張るから」

加蓮「うん……」

奈緒「よし、せーの」

マストレ「ファイットォー!」

奈緒「いっぱぁあああ――――ってそんなことやってる余裕ないですから! ふざけるの
やめてくださいよ!」

マストレ「いや、今のは普通に応援しただけなんだが」

奈緒「あのタイミングじゃ紛らわしいんですよ!」

マストレ「悪い悪い」

奈緒「まったく……」

加蓮「奈緒……引き上げてくれるんなら、途中でやめないで……。この状態、すごい辛い……」

奈緒「あっ⁉ ごめん加蓮! よ、よいしょっと!」

加蓮「ようやく……着いた……」

P「よっこらせっと。ふぅ……2人とも、お疲れ」

奈緒「ああ、そっちもお疲れさん」





194: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:47:02.28 ID:3N8bA8K50



マストレ「神谷、北条、ちゃんと登りきれたな。中々根性があるじゃないか」

奈緒「そりゃどーも……」

マストレ「これは明日からのレッスン、指導しがいがありそうだな」

奈緒「……明日からは普通にレッスンするんですよね?」

マストレ「ああ、安心しろ」

奈緒「よ、良かったぁ。な、加蓮」

加蓮「……」

奈緒「……加蓮?」

加蓮「……な、奈緒……私、さ……」

奈緒「ど、どうした?」

加蓮「もう……限界っぽい……」

奈緒「限界って……」

加蓮「……」

奈緒「お、おい加蓮⁉」

P「なんだどうした?」

奈緒「加蓮が返事しないんだ!」

P「返事を……加蓮、俺の声聞こえるか?……加蓮、しっかりしろ!」

マストレ「これは……意識を失っているな。プロデューサー、北条を木陰に運ぶぞ。ゆっくりな」

P「分かりました!」

マストレ「神谷、私のバッグにタオルが入っているから、それを水筒の水で濡らしてくれ」

奈緒「は、はい!」





195: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:47:38.96 ID:3N8bA8K50



―――木陰


加蓮「……」

奈緒「加蓮……」

マストレ「そう心配するな。見たところ、貧血だろう。大事はないはずだ」

奈緒「でも加蓮、ずっと入院してたから……やっぱり心配で……」

マストレ「入院?……おいプロデューサー、話が違うぞ。どういうことだ?」

P「……俺も初耳です」

奈緒「え、加蓮から聞いてないのか?」

P「ああ、聞いてない……入院って、何かの病気なのか?」

奈緒「今は治ってるんだけど……前は難しい病気で、長いこと入院してたって」

P「そうか……」

マストレ「北条に体力がないのはそのせいか……ちっ、そうと分かっていれば……。神谷、北条の病気は完治しているんだよな?」

奈緒「そう聞いてます……」

マストレ「……なら神谷もプロデューサーも、そんなに暗い顔をするんじゃない。心配ない、じきに目を覚ます」

奈緒「……はい」





196: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:48:36.89 ID:3N8bA8K50



―――数十分後


加蓮「……う、ん……」

奈緒「! か、加蓮!」

P「加蓮、大丈夫か!」

加蓮「奈緒……? プロデューサーも……。私……あ、そっか。崖を登りきってそのまま……」

マストレ「北条、体の具合はどうだ?」

加蓮「えっと……大丈夫ですぁっ⁉」

奈緒「危なっ⁉」


加蓮が起き上がりかけると同時に倒れそうになったので、あたしは慌てて加蓮の体を支える。


P「ナイスキャッチだ、奈緒!」

加蓮「ご、ごめん奈緒……」

奈緒「全然大丈夫じゃないじゃんか……起き上がれないなら無理するなよ」

加蓮「うん……」


あたしは加蓮をそのまま地面に寝かせた。


マストレ「体力を完全に使い果しているようだな。体力が戻るまで、しばらくそのままにしていろ」

加蓮「はい……」

P「……加蓮、聞きたいことがあるんだが」

加蓮「何?」

P「なんで入院してたこと、黙ってた?」

加蓮「!……奈緒が話したの?」

奈緒「ああ。まさか言ってなかったとは思わなかった」

加蓮「そっか、バレちゃったか……」

P「バレちゃったかじゃないだろ。こんな大事なこと……」

加蓮「だって、今はもう元気だしさ」

P「いや、そうかもしれないけどな。それで何かあったらどうするんだ?……というか、今実際に倒れてるんだぞ」

加蓮「あー……ごめんなさい。言うと、そういう目で見られると思って……」

P「そういう目ってお前……」

加蓮「……嫌なんだ。いつまでも、病人を見るような目で見られるのは」

P「……」

加蓮「奈緒にも、前にそういう話したよね」

奈緒「……そうだな」

加蓮「奈緒は、私のことそんな目で見ないって言ってくれたけど……みんなそうだとは限らないから」

P「っ! お前な――」



奈緒「待て、プロデューサー」



P「……奈緒?」





197: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:49:42.00 ID:3N8bA8K50



奈緒「……加蓮、あたしが間違ってた」

加蓮「間違ってたって……?」

奈緒「確かにあの時、あたしは加蓮をそんな目で見ないって言った。でも、それで加蓮は今倒れてる。あたしがもっと、ちゃんと加蓮を見とけば良かったんだ」

加蓮「そ、それは奈緒のせいじゃないでしょ。倒れたのは、私の体力がないからだし」

奈緒「でも、加蓮に体力がないの分かってたのに、気をつけて見てなかったあたしも悪いんだ。……だから、これからはきちんと加蓮を見ることにする」

加蓮「でも、私はそんなの……」

奈緒「さっき加蓮が倒れた時……あたし、凄く怖かったんだ」

加蓮「え……?」

奈緒「また加蓮が入院することになったりしたら……どうしようって……。加蓮が起きるまで……ずっと、そんなこと考えてて……」

加蓮「奈緒……」

奈緒「あたし……そんなの、絶対に嫌だから……っ……」

加蓮「な、奈緒……? 泣いてるの……?」


加蓮にそう言われると、自分の頬から透明な滴が垂れていたことに気付いた。


奈緒「う、うぇっ⁉ な、泣いてなんてないっ!」


あたしは一旦後ろを向いて、頬と目元を拭う。


加蓮「でも今……」

奈緒「と、とにかくっ!」


あたしは涙を全部拭い、加蓮へと振り向く。


奈緒「加蓮のことは必要以上に病人扱いしたりはしない! 無理してないか気にかけるだけだから! いいだろ?」

加蓮「……でも。それでも、私……」

奈緒「そ、そんなに、あたしに気にかけられるのが嫌なのか……?」

あたしがそう訊くと、加蓮はなぜか俯きがちに答えた。



加蓮「……奈緒とは、対等でいたいから」



奈緒「た、対等?」

マストレ「……くっ……はははははっ! 対等ときたか!」

加蓮「ど、どうして笑うんですか!」

P「くっ、くふっ……あははははっ!」

加蓮「プロデューサーまで! もう、なんなの!」




198: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:50:07.45 ID:3N8bA8K50



マストレ「い、いや、お前たちは随分仲がいいんだなと思ってな。なぁ、プロデューサー?」

P「はは、そうですね。お前ら、とても出会ってからまだ1ヶ月とは思えないぞ」

加蓮「1ヶ月……」

奈緒「そっか、まだ1ヶ月しか経ってないのか……なんか、ずっと一緒の気がしてた」

加蓮「……私も」

奈緒「あのさ、加蓮。別にあたしがちょっと加蓮のこと気にかけただけで、あたしたちの関係が変わったりはしないって」

加蓮「……でも、迷惑かけることになるから……」



奈緒「てりゃっ」

加蓮「わにゃっ⁉」



奈緒「はははっ、面白い顔―!」

加蓮「にゃ、にゃにするの! ほっへはひっはらにゃいでよー!(な、何するの! ほっぺた引っ張らないでよー!)」

奈緒「加蓮。迷惑かけて、かけられるのが友達だろ? いや、そもそもあたしは迷惑だなんて思わない。加蓮が心配だから気にするんだ。そこに上だったり、下だったりはないじゃんか」

加蓮「にゃお……(奈緒……)」

奈緒「ぷふっ! い、今のみくみたいだ……!」

加蓮「にゃっ⁉ ひ、ひいきゃけんひゃ~にゃ~ひ~へ~っ!(なっ⁉ い、いい加減は~な~し~て~っ!)」

奈緒「くくっ、はいはい」

加蓮「まったく……」

奈緒「で、加蓮。まだ文句あるのか?」

加蓮「文句って……もう。……迷惑、たくさんかけるよ?」

奈緒「あたしだって、加蓮に迷惑かけることあるじゃんか。お互いさまってやつだよ」

加蓮「お互いさま、か……そうだね。じゃあ奈緒……私のこと、倒れたりしないようにちゃんと見ててくれる?」

奈緒「ああ、任せとけって」

加蓮「ふふっ。うん、任せた」





199: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:50:37.91 ID:3N8bA8K50




マストレ(……プロデューサー、これは今日の目的達成じゃないか?)

P(まあ……一応、そうですね)

マストレ(ふっ、やはり崖登りにして正解だったな。さすが私!)

P(調子に乗らないでください。今日のことは後でトレーナーさんたちに報告しますからね)

マストレ(よ、よせっ! それだけはやめろ!)






200: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:51:18.98 ID:3N8bA8K50



加蓮「そういえば、奈緒にはいっぱい迷惑かけられてるしね」

奈緒「え、いっぱい? そ、そこまでかけてはいないだろ?」

加蓮「……」

奈緒「その無言の間はなんだよ!」

加蓮「よし、決めた。これからは遠慮せずに迷惑かけることにしよっと」

奈緒「うん、それはいいんだけど。あたしの質問に答えろ、加蓮!」

加蓮「あ、そうだ。プロデューサー、今まで黙っててごめんね」

P「まぁ、もういい。だが俺も加蓮のこと、気にするからな?」

加蓮「うん。でもほどほどにお願い」

P「ああ、分かったよ」

奈緒「なぁ、あたしの声聞こえてる?」

加蓮「そういえば、他のみんなにも入院してたこと言った方がいいのかな?」

P「うーん……まあ、わざわざ言わなくていいんじゃないか? でも大人であるルキちゃんたちトレーナーとちひろさん、あと楓さんには伝えるぞ」

加蓮「はーい」

奈緒「師匠、あたし存在してます? 透明になったりしてません?」

マストレ「くっきり見えるな」

奈緒「なら無視するなよ、加蓮!」

加蓮「さっきからうるさいなぁ……現在進行形で私に迷惑かかってるんだけど」

奈緒「これ迷惑にカウントするの⁉」

加蓮「そういえばプロデューサー。私、どうやって合宿所に戻ればいいかな。まだ動けそうにないんだけど」

P「ああ、それなら……そこに人力車がいるだろ?」

マストレ「おい、それは私のことか?」

P「師匠なら加蓮を背負うのなんて、赤ん坊背負うのと変わらないでしょう?」

マストレ「そんなわけあるか! ぬいぐるみ背負うのと変わらんくらいだ!」

P「より軽いじゃないですか! じゃあお願いしますよ!」

マストレ「いやお前男なんだから、自分で背負うくらいは言ったらどうだ!」

P「え、俺が……?」

奈緒「プロデューサーが加蓮をおんぶするってことか?」

加蓮「そ、それはさすがに恥ずか――」

P「でも俺、疲れてるので、重くて運べないと思うんですが……」

加蓮「早く運んでプロデューサー」

P「なにゆえ⁉ 今恥ずかしいとか言おうとしてたろ!」

加蓮「私は重くなんかない」

P「oh……そ、そういうことか。い、いやさっきのは言葉の綾だ。加蓮は軽いよ」

加蓮「軽いなら運べるでしょ?」

P「ちくしょうっ!」





201: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/19(水) 21:52:58.35 ID:3N8bA8K50


奈緒「お、おいやめとけ加蓮」

加蓮「嫌だよ。私の乙女心は深く傷ついた」

奈緒「でも、そんなことしたら凛とまゆが―――」

加蓮「やっぱりプロデューサーはいいよ! 師匠、私を運んでください!」

マストレ「なぜ急に心変わりを⁉」

P「俺は助かったけど」

マストレ「……まあ、別にいいか。その代わりプロデューサーは私のバッグを持て」

P「ああ、それくらいなら――」

奈緒「いや、それはあたしが持ちます」

マストレ「ん? いいのか?」

奈緒「はい、持たせてください」

マストレ「……なら頼む。だがそうすると、プロデューサーだけ手ぶらになるな」

P「え、何か問題が?」

マストレ「男であるお前が、一番楽をするのは心苦しいだろ?」

P「ま、まあそうですけど……」

マストレ「……あ、ちょうどいい。プロデューサーはそこの丸太を背負っていけ」

P「背負う意味ないでしょう! 無駄に疲れるだけじゃないですか!」

マストレ「……今、お前の心の声が聞こえたぞ。私たちだけに苦しい思いをさせたくない。自分も一緒に重荷を背負うことで、苦しみを分かち合いたいと」

P「だから捏造やめてくださいよ!」

奈緒「プロデューサー。男なんだし、そんぐらいやってみせようぜ?」

P「他人ごとだと思ってお前……!」

奈緒「大丈夫だよ。そこまで大きくはないし、加蓮よりは軽いって」

加蓮「師匠、奈緒も丸太背負いたいそうです」

奈緒「言ってないけど⁉」

加蓮「私が重いとは言ったよね……?」

奈緒「い、いや重いとも言ってないだろ。丸太のが軽いって言っただけで……」

加蓮「軽いんなら持てるでしょ」

奈緒「持てるか! あんなの背負うの馬鹿がやることだろ!」

P「馬鹿がやることを俺にさせようとするな!」

マストレ「うるさいぞ馬鹿ども! いいからとっととしろ! 早く合宿所に戻らないと日が暮れるだろうが!……ほら、北条乗れるか?」

加蓮「あ、はい……よいしょ」

マストレ「よし。さあ、神谷は私のバッグ、プロデューサーは丸太を背負え!」

奈緒「わ、分かりました!」

P「俺、本当に丸太背負うの⁉」

マストレ「では行くぞ! 目指すは合宿所だ!」

加蓮「はい、お願いしますっ」

奈緒「……頑張れよ」

P「……初めて、お前に応援された気がする」



―――そうして、あたしたちは合宿所への帰路についたのだった。



 つづく




208: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 21:43:53.63 ID:0CklsS2l0

第7話 みんなで合宿!(後編)



―――合宿所


奈緒「ようやく着いたー!」

マストレ「お客様、代金は730円になります」

加蓮「タクシーですか⁉」

未央「あっ、かみやんたち、やっと帰って来たよ」

凛「随分遅かったね。みんなもう戻ってきてるよ」

奈緒「やっぱそうか」

卯月「どうして加蓮ちゃんはおんぶされてるの?」

加蓮「あはは、ちょっとね。師匠、大分体力戻ったので、もう降ろしてもらって大丈夫です。ここまでありがとうございました」

マストレ「代金がまだだ」

加蓮「ホントに払うんですか⁉」

マストレ「仕方ない、ツケにしておく。よっこいせっと――」

加蓮「わっとと……。……あの、冗談ですよね?」

マストレ「どうだろうな?」

加蓮「……冗談だと信じてます」

奈緒「未央、他のみんなは?」

未央「美嘉ねーとみくにゃんとかえ姉さまは、お風呂。ありすちゃんとさくまゆは、早めにレッスン終わったみたいで、晩御飯の準備手伝ってくれてるんだって」

奈緒「未央たちはもう風呂入ったのか?」

未央「うん。だからこれから私たちも、晩御飯の準備手伝ってくるよ。かみやんとかれんは、お風呂行っちゃって」

奈緒「ああ、じゃあそうするな」

加蓮「疲れてるから、今日のお風呂は気持ちいいだろうなー」

凛「……あれ? そういえば、プロデューサーはどうしたの?」

奈緒「ああ、あいつなら……」

加蓮「もうすぐ来ると思うけど……」

マストレ「おっ、ちょうど来たぞ」



P「―――つ、着いた……がくっ」



凛「プ、プロデューサー⁉」

卯月「どうして丸太なんて背負ってるんですか⁉」

未央「え、これどういう状況⁉」

奈緒「話せば長くなるんだ……だからあたしと加蓮は風呂行くな」

未央「話してくれないの⁉ めちゃくちゃ気になるんだけど!」

加蓮「後で話すよー」

未央「今話してほしかった!」

卯月「プロデューサーさん、しっかりしてください!」

P「……」

未央「へ、返事がない……ただの屍みたいだよ⁉」

凛「なに縁起でもないこと言ってるの!」





209: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 21:44:44.68 ID:0CklsS2l0



―――数十分後 合宿所 食堂前


加蓮「あー、気持ち良かった♪」

奈緒「加蓮、もう体は平気なのか?」

加蓮「うーん、まだ本調子じゃないけど……とりあえずはね。明日には回復してるよ」

奈緒「だといいけどさ……」

加蓮「心配ないって。それより、なんか食堂静かじゃない?」

奈緒「そういえばそうだな。みんないるはずなのに……まあ、入ってみれば分かるか」


《ガラッ―――》


『…………』


加蓮「え、なにこの雰囲気……」

ありす「あ、お2人ともようやく来ました」

奈緒「あ、ありす、みんなどうしたんだ? やけに静かだけど……」

ありす「さあ……? 多分、みなさん疲れているんだと思います」

奈緒「そ、そうか……あれ? プロデューサーがいないのはさっきの様子からして分かるけど、ちひろさんとトレーナーさんたちは?」

加蓮「楓さんもいないよ?」

ありす「なんでも、大人組は部屋で食べるそうですよ」

加蓮「ふーん……お酒でも飲むのかな?」

ありす「さあ、お2人も早く席に着いてください。奈緒さんと加蓮さんを待っていたので、まだ食べ始めていないんです」

奈緒「あ、そうだったのか、悪いな」

加蓮「早く座ろっか」


―――そうして席に座ったあたしたちの前には、とんでもないものが待ち受けていた。





210: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 21:45:19.29 ID:0CklsS2l0



奈緒「……」

加蓮「……」

ありす「ではみなさん揃いましたので、いただき――」

奈緒・加蓮『ちょっと待った!』

ありす「ひゃっ⁉ な、なんですか?」

奈緒「……なあ、ありす、聞いていいか?」

加蓮「この……お皿に乗ってるのは、何……?」

ありす「これですか? これは――」



ありす「橘流イチゴパスタです」



奈緒「……橘、流……?」

加蓮「イチゴ、パスタ……?」

ありす「私のオリジナル料理です。パスタに、生クリームとイチゴをトッピングしてみました」

加蓮「と、トッピング……?」

奈緒「あ、ありすが作ったのか、これ?」

ありす「はい、我ながら完璧な出来だと思います」

奈緒「……ありすって、料理の経験あったっけ?」

加蓮「寮では、ありすちゃんには料理当番させてないけど……」

ありす「経験はありません。ですが知識はありましたから」

奈緒(何の知識だ!……って言いたい! すごく言いたい!)

加蓮(み、みんなが異様に静かなの、これのせいだ……!)

ありす「? とにかくそういうことです。ではいただき――」

奈緒「ま、待った!」

ありす「な、なんですか、さっきから!」

奈緒「の、飲み物が足りないんじゃないか?」

ありす「え、そうですか? お茶とジュースを持ってきてありますけど……」

奈緒「みんなレッスンして疲れてるし、そんなんじゃ足りないって! もっと持ってこよう! み、みんなも手伝ってくれ! キッチン行くぞ!」

加蓮「奈緒、一体何言って……はっ! そ、そうだね! みんな行こう!」

未央「?……そ、そうか! 行くよみんな!」

ありす「いや、全員で行く必要はないんじゃないですか?」

加蓮「あ、そうだね! じゃあありすちゃんは残ってていいよ!」

ありす「い、いえそうじゃなくてですね。そもそも2人もいれば十分だと――」

奈緒「さあ、行くぞ!」

ありす「話聞いてください!」





211: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 21:46:01.81 ID:0CklsS2l0



―――大人組 合宿所、2階大部屋


楓「ふぅ……美味しいですね」

P「楓さん、明日もレッスンあるのに、お酒飲んで大丈夫ですか?」

楓「明日に残したりはしませんから」

P「ならいいですが……それにしてもちひろさん、なんで俺たちはここで食べるんですか? 凛たち、食堂で食べてるんですよね?」

ちひろ「お酒を飲むのでしたら、別々の方がいいかと思いまして」

P「うーん……まあ、そうですね」

ちひろ「……それに一緒だと、とばっちりが来るかもしれないので」

P「今なんか言いました?」

ちひろ「いえ、何も言ってません」

P「そうですか。……ところでこの夕食、俺の好きなものばかりの気がするんですけど、偶然ですかね?」

ちひろ「ああ、それはまゆちゃんがメニューを決めたからですよ」

P「まゆが?……あ、そういえば前に好きな食べ物聞かれたなぁ」

ちひろ「今日の私たちの夕食は、私とまゆちゃんで作ったんです」

P「そうだったんですか。なら、後でまゆにお礼を言っておこう……ちひろさんも、ありがとうございます」

ちひろ「いえ、私はそのために合宿に来ているようなものですから」

ルキトレ「私とありすちゃんも作ったんですよー!」

P「え、そうなの? でもちひろさん、まゆと2人で作ったみたいに……」

ルキトレ「私たちの夕食はちひろさんとまゆちゃんが作ったんですけど、子供組の夕食は私とありすちゃんで作ったんです」

P「あ、そうなんだ。ルキちゃん、料理出来たんだね」

ルキトレ「もちろんです。私の作るお菓子は、美味しいって評判なんですよ♪」

P「へぇ……ん? お菓子? え、普通の料理は?」

ルキトレ「似たようなものですよ」

P「全然違くない⁉ ち、ちひろさん、大丈夫なんですか⁉」

ちひろ「出来上がったものを見ましたが……食べられなくはないと思います」

P「その言い方、不安が募るんですけど! 凛たち、まともなもの食べてるんですよね⁉」

ちひろ「……」

P「そこで無言なんですか⁉ ち、ちょっと様子を見に――」

マストレ「落ち着けプロデューサー。私の可愛い妹が作った料理が、まともじゃないわけないだろう?」

ルキトレ「そうですよー、その言い方はひどいですっ」

P「あ……そ、そうだよね、ごめん。……でも不安が半端じゃないんだよな」

ちひろ「プロデューサーさん。いざとなれば、キッチンには私たちの作ったちゃんとした料理が余っていますから、そんなに心配いりませんよ」

P「……いざとなるかもしれないんですか?」

ちひろ「……あくまで仮定の話です」

P「本当ですね? 信じますからね?」

ちひろ「ささ、プロデューサーさんもお酒いかがですか?」

P「露骨に話を逸らしに来た!……まあ、ありすも一緒だったらしいし、変なことにはなってないか」





212: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 21:46:44.18 ID:0CklsS2l0



―――キッチン


奈緒「じゃあ、緊急会議を始めよう。……なんだあの物体Xは⁉ なんであんなもんがこの世に生まれてるんだよ⁉」

未央「私たちが来た時にはもうあったんだよ! さくまゆ、なんでああなったの⁉」

まゆ「そ、それが、ありすちゃんがせっかくだから料理を作ってみたいと……それで私とちひろさんが大人のみなさんの分を、ありすちゃんとルキさんが私たちの分を作ることにしたんです」

美嘉「どうしてわざわざ別々に作るの……」

まゆ「プロデューサーさんのご飯は、まゆが作りたかったので……うふふ♪」

凛「……」

加蓮「凛、今は睨んでる場合じゃないから」

凛「べ、別に睨んでないよ」

奈緒(嘘つけ)

みく「ていうか、ルキチャンが付いてたのに、あんなのが出来上がったの?」

卯月「ルキさんって、料理の腕はどうだったかな?」

未央「確か、お菓子は作れるとか聞いたことあるけど……」

凛「料理上手だったら、あんなものは出来上がらないよ」

未央「だよねー」

奈緒「さて、どうしてああなったのかは分かった……次は、これからどうするかだ」

加蓮「どうするって……」



奈緒「……食べるかどうかだ」



『⁉』


加蓮「あ、あれを……食べるの……?」

美嘉「でもあれはもう、食べ物と呼べる代物じゃ……」

未央「あんなの、犬でも食べないよ!」

凛「そこで犬を出すのはやめて」

未央「あ、ごめん……じゃ、じゃあ猫でも食べないよ!」

みく「猫もやめるにゃ!」

未央「めんどくさいなぁ、もう!」





213: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 21:47:42.23 ID:0CklsS2l0


卯月「み、みんな、せっかくありすちゃんが作ってくれたんだから……」

奈緒「卯月は食べると?」

卯月「えっ⁉……た…………た、食べ…………食べ、ま…………………………」





卯月「食べますっ!」





奈緒「すげぇ葛藤してたけど、食べるって言った!」

凛「う、卯月が食べるなら、私もた……た、食べるよ!」

未央「なら私もた、たべ……食べないわけにはいかないね!」

奈緒「おぉ、ニュージェネの絆を見たぞ……! こうなったら、あたしも食べる!」

美嘉「み、みんなが食べるのに、アタシだけ食べないなんてずるいよね!」

みく「あれも食材を使っている以上は食べられるはず……みくもやるよ!」

まゆ「あれが今存在するのは、私の責任でもありますから……私も食べます!」

加蓮「……え、みんな食べるの? 正気?」

奈緒「加蓮も食べるだろ?」

加蓮「えぇ……。私は……遠慮したいかなーって」

『…………』

加蓮「み、みんなしてそんな『空気読めよ』みたいな目で見ないでよ! あれ食べたら私、せっかく戻って来た体力を根こそぎ持ってかれるかもしれないでしょ!」

奈緒「う、そう言われると……し、仕方ない、加蓮の分はあたしが食べる!」

未央「かみやん本気⁉ 1人分でも相当きついよ⁉」





214: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 21:48:44.66 ID:0CklsS2l0


奈緒「いやいける。あたしは既に……あいつの攻略法を思いついた」

凛「攻略法?」

奈緒「あれは一見すると物体Xだが、冷静に考えてみると、個々のパーツはなんらおかしくはないんだ。あれはただ―――」



奈緒「パスタにイチゴパフェが乗ってるだけなんだ!」



加蓮「それ絶対おかしいけど⁉」

奈緒「だから、合わせるとおかしくなるんだよ! 別々に食べれば、大したことないんだ!」

みく「にゃるほど!」

美嘉「その発想はなかった!」

奈緒「まずは上のクリームとイチゴを平らげて、その後パスタを食べればいい。デザートとメインの順序が逆の気がするけど、いけなくはないはずだ」

卯月「て、天才です!」

まゆ「それなら、確かにいけるかもしれません……!」

加蓮「……ねぇ、みんな疲れてない? 疲れてまともな思考出来なくなってない?」

奈緒「いくぞ、みんな。これならきっといけ――」

未央「……あぁっ⁉」

凛「ど、どうしたの未央?」

未央「忘れてた……ありすちゃんの分はどうしよう⁉」

『あっ⁉』

奈緒「そ、そうか! あんなの、ありすに食べさせるわけには……!」

みく「奈緒チャン、もう1人分いっちゃうにゃ!」

奈緒「それは胃袋の容量的に無理だよ!」



卯月「……私が食べるよ」



凛「卯月⁉」

卯月「ありすちゃんの……ありすちゃんのために……っ!」

未央「し、しまむーから、優しさがあふれ出してる……!」

美嘉「まるで、聖母のような微笑み……!」

まゆ「人を幸せにする笑顔って……これのことなんですね……!」

加蓮「みんなテンションおかしいよ……合宿だから?」

奈緒「よし、みんな! 戦場に帰還するぞ!」

『おぉーっ!』

加蓮「お、おぉー」





215: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 21:49:26.88 ID:0CklsS2l0



―――決戦の地(食堂)


ありす「あ、みなさん、随分遅かったですね。……あの、飲み物はどうしたんですか?」

奈緒「あっ⁉……悪い、忘れた」

ありす「何しに行ってたんですか⁉」

奈緒「ま、まあここにあるので十分だろ」

ありす「じゃあ行かなくて良かったじゃないですか!」

奈緒「悪い悪い。さ、さあみんな、食べるとしようか」

卯月「あ、その前にありすちゃんにお願いがあるんだけど、いいかな?」

ありす「? なんでしょうか?」

卯月「ありすちゃんの分のイチゴパスタ、私にくれない?」

ありす「そうしたら私が食べる分がなくなりますよ!」

卯月「お、お願いありすちゃん。実は私、イチゴパスタが大好物なんだ」

ありす「え、そうなんですか……って、これ作ったの今日が初めてなのに、そんなわけないじゃないですか! 私のオリジナルですよ⁉」

卯月「あぅっ⁉ え、えーっと……」

奈緒「わ、分かった、ありす。あたしの分のイチゴやるから、な?」

ありす「いや、イチゴだけ貰っても……」

未央「み、みんな、ありすちゃんにイチゴあげようよ」

凛「はい、ありす」

『どーぞどーぞ』

ありす「どうしてみなさんイチゴを私に⁉」

奈緒「それだけあれば、卯月にパスタあげてもいいだろ?」

ありす「いや、デザートだけになるじゃないですか! 主食がなくなります!」

加蓮「な、ならありすちゃん。私と一緒に、キッチンで新しく料理を作ろうよ」

ありす「今からまた作るんですか⁉」

加蓮「そ、そんなに時間かからないと思うよ? 大人組の分のご飯が余ってたしさ」

ありす「で、でもせっかくのイチゴパスタが……」

奈緒「ありす……ここは大人の余裕で譲ってくれ」



ありす「! お、大人の……余裕……!」







216: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 21:50:10.08 ID:0CklsS2l0



ありす「……分かりました。どうぞ、卯月さん」

卯月「わ、わーいっ! ありがとう、ありすちゃん」

ありす「いえいえ、これぐらいどうってことないです。……ふふ」

加蓮「じゃ、じゃあキッチンに行こっか」

ありす「はい。みなさんはお先に食べていてください」

奈緒「あ、ああ、そうするよ」


《―――ガラッ、ピシャン》


奈緒「……なんとかなったな」

未央「かみやんの一言が効いたね」

凛「ねえみんな。期せずして、イチゴパスタがクリームパスタになったわけだけど……」

みく「それでも、攻略法は変わらないよ」

美嘉「クリームを食べてから、パスタを食べればいいだけだもんね」

まゆ「で、では……食べますか?」

奈緒「いよいよか……大丈夫か、卯月?」

卯月「大丈夫……頑張れば、大丈夫なはず……!」

奈緒「じゃあ……いただきます!」

『いただきます!』





217: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 21:51:00.69 ID:0CklsS2l0



―――十数分後、食堂前


加蓮「大人組の料理、結構余ってたみたいで良かったね」

ありす「はい。温めるだけだったので、そんなに時間がかかりませんでした。……そういえば、なぜ加蓮さんもイチゴパスタを食べないんですか?」

加蓮「えっ⁉ わ、私、実はイチゴとパスタを同時に食べるとアレルギーが出ちゃうんだ」

ありす「そんなアレルギーあるんですか……?」

加蓮「あるんだよ。世の中、いろんなアレルギーがあるからね」

ありす「なるほど……勉強になりました」

加蓮「さ、さて、食堂に着いたね。みんなもう、食べ終わってたりするかな?」

ありす「わりと早く戻ってきましたから、まだじゃないですか?」

加蓮「……そうじゃないといいけど」

ありす「今何か言いました?」

加蓮「何も言ってないよ。じゃ、入ろっか」


《ガラッ―――》


『…………』


加蓮「み、みんな⁉ テーブルに突っ伏してどうしたの⁉」

ありす「ど、どうなってるんですか、これ⁉」

加蓮「な、奈緒、一体何があったの?」

奈緒「……ふ、伏兵……が……」

加蓮「伏兵? 何のこと?」

奈緒「……パスタの……下、に……」

加蓮「パスタの下? パスタの下に何が……こ、これは―――」



加蓮「パスタの下に、さらにクリームとイチゴが⁉」



ありす「え? あ、はいそうですよ。見えないところも凝っておこうと思いまして、パスタの下にもトッピングをしておきました」

加蓮「……こ、これにみんなやられたんだ」

ありす「やられた?」





218: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 21:52:11.75 ID:0CklsS2l0



加蓮「こ、これはもう……。……。……ありすちゃん、みんな疲れて寝てるみたい」

ありす「え、寝てるんですか⁉ テーブルで⁉」

加蓮「そ、そうみたいだね。だから部屋に行って、布団を敷いておいてくれないかな? 私は、みんなのお皿とか片付けるから。その後に、みんなを部屋に連れていこう」

ありす「わ、分かりました。すぐ行ってきます」


《ガラッ―――》


加蓮「……これでいいね。みんな、意識はある?」

未央「……あるけど……今は、動けそうにない……」

加蓮「り、了解。じゃあ私がこの兵器を片付けるよ。食べ物を粗末にはしたくないけど……
これはもう食べ物じゃないから」

卯月「……あ、ありすちゃんに……気付かれない所に……捨てて……」

加蓮「うん、分かってる。みんな、もう大丈夫だから……ゆっくり休んでて」

凛「……そう、するよ……」

加蓮「よし、じゃあお皿を片付けて……あっ⁉」



加蓮「み、みんなパスタまでは全部食べてる!」



『…………』


加蓮「こんなになってまで……みんなの意思は、私が引き継ぐよ! こんなものは、世界に存在してちゃいけないから! 捨てるよ、ひとつ残らず……!」





 【イチゴパスター・ウォーズ】
  《ファントム・メナス》

      ~完~






219: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 21:52:41.61 ID:0CklsS2l0



―――1階 大部屋


卯月「凛ちゃん、私、頑張ったよ……」

凛「うん。すごい頑張ったね、卯月。えらいよ」

卯月「えへへ……」

奈緒「にしても、酷い目に遭ったな……」

未央「もうありすちゃんには料理させちゃ駄目だよ」

奈緒「いや、それだと隙が出来た時に危ない……むしろきちんとした料理を教えるべきだろ」

みく「そうだね、その方がいいと思うにゃ」

まゆ「なら寮の料理当番、これからはありすちゃんにも手伝ってもらうことにしましょう」

美嘉「頼んだよ、寮組」


《ガラッ》


加蓮「あ、みんなもう動け――起きてるんだね」

奈緒「ああ、起きてる。もう大丈夫だ」

ありす「てっきり、部屋に移動したらそのまま眠るのかと思っていました」

未央「ぎ、逆に目が覚めちゃったんだよ」

ありす「逆に?」

美嘉「そんなことより、みんな揃ったし話でもしようよ」

みく「あ、そうだね。ささ、ありすチャンもこっち座って」

ありす「はい、分かりました」





220: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 21:53:17.30 ID:0CklsS2l0


未央「ねぇねぇ、みんな今日のレッスンどうだった? 私たち、いつもの3倍厳しくされてさ~」

奈緒「なんだ3倍って……ん? 未央たち、どんなレッスンしてたんだ?」

未央「どんなレッスンって、ダンスにボーカルに……」

奈緒「そんな普通なのか⁉」

未央「え、なんでそんな驚いてるの⁉」

奈緒「じゃ、じゃあまさか、あたしたちだけ?」

加蓮「そりゃあねぇ……あんなのやらないよねぇ……はぁ」

凛「? 奈緒たちは、何か別のレッスンしてたの?」

奈緒「あたしたちは崖登ってたんだ」

凛「……ごめん、日本語でお願いしていい?」

奈緒「日本語だよ! 崖登ってたの!」

卯月「が、崖⁉」

凛「どうしてそんなことを……」

未央「かみやん、ア○カツじゃないんだからさ……アニメの影響、受けすぎだよ」

奈緒「いや、あたしがやりたかったわけじゃないから! 師匠が崖登るとか言い出したんだよ!」

未央「師匠が?……納得」

加蓮「納得なんだ」

凛「あの人なら言い出しそうだから」

卯月「で、でも崖って……大変だったね」

奈緒「大変なんてもんじゃなかったぞ」

加蓮「ホントだよね……。あ、じゃあさ、ありすちゃんとまゆは何してたの?」

ありす「私たちは、その……」

まゆ「コスプレ大会をしていました」

奈緒・加蓮『なんか楽しそうなことしてる⁉』

奈緒「なんだそれ⁉ あたしたちのと比べて天国と地獄だぞ!」

ありす「そ、そう言われても……」

まゆ「ルキさんが決めたことなので……」

加蓮「姉妹でこうも違うんだ……じゃ、じゃあ美嘉たちは?」

美嘉「アタシたちは……釣り」

奈緒「海満喫してる!」

加蓮「そっちもいいなぁ……。じゃあ、まともにレッスンしてたの、未央たちだけ? どういうこと?」

奈緒「あたしには分からん……未央たち、先輩アイドルとして何か思い当たることないか?」

未央「うーん……とりあえず、あれだよね」

奈緒「お、何か分かったのか?」

未央「釣りとかコスプレ大会とかって、もう普通に遊んでるよね」

奈緒「……うん、それはあたしも分かってた」

美嘉「なっ⁉ 遊んでたとか―――」





221: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 21:54:02.28 ID:0CklsS2l0



―――数時間前


美嘉「あっ、みくちゃん、引いてる引いてる!」

みく「えっ⁉ き、きたにゃ! お、重い……!」

トレーナー「重いということは、それだけ大物だということだぞ!」

楓「みくちゃん、手伝うわ!」

美嘉「アタシも!」

みく「ありがと! ぐぐぐ……」



みく・楓・美嘉『いっけぇー!』


《ざばぁーんっ!》



みく「つ、釣れたぁ!」

楓「ふぅ、やったわね」

美嘉「はいっ!」

みく「……って、魚がこっちに―⁉ め、目合ったにゃ! きもいにゃ! にゃぁ――――っ⁉」

美嘉「お、落ち着いて、みくちゃん!」

楓「網はどこだったかしら……?」

トレーナー「ここにある、私がやろう」

みく「お、お願いします、トレーナーさん! 早く!」

トレーナー「分かった分かった」

美嘉「にしてもでっかいなぁ……よーしっ、次はアタシも大物釣るぞー☆」






222: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 21:54:33.39 ID:0CklsS2l0



―――現在


美嘉「……あ、遊んでたわけじゃない……と思うよ?」

みく「そ、そうにゃ! きっと忍耐力を鍛える特訓……かもしれないし」

奈緒「2人とも疑問抱いてるじゃんか!」

まゆ「そういえばルキさんは、コスプレをするのは個性を再発見するためと言っていました」

加蓮「それで、再発見は出来たの?」

ありす「えっと……」





223: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 21:55:04.24 ID:0CklsS2l0



―――数時間前


ルキトレ「きゃー! ありすちゃん、似合ってますっ!」

ありす「そ、そうでしょうか?」

ルキトレ「少女魔導士……いいですっ! クールさの中にある可愛らしさ……ありすちゃんにぴったりですよ!」

ありす「く、クール!……ふふふ、今の私はクール橘です……っ」

まゆ(ありすちゃん、意外とノリノリ……)

ルキトレ「それとまゆちゃんは天女! 神々しいですよっ!」

まゆ「この衣装なら、プロデューサーさんに喜んでもらえるでしょうか?」

ルキトレ「ろんもちです! 写真撮っておきましょう!」

まゆ「うふふ♪ お願いします」

ルキトレ「ささ、ありすちゃんもパシャッとしましょ」

ありす「……ポーズはこうでいいですか?」





224: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 21:55:42.97 ID:0CklsS2l0



―――現在


ありす「……で、出来ましたよ?」

奈緒「ならなぜ目を逸らす」

まゆ(遊んでいただけだったような……)

加蓮「釣りもコスプレも、一応目的はあったのかな?」

奈緒「そういえば、あたしたちが崖登りさせられたのは、アイドル魂を刻みつけるためとかだったっけ」

凛「アイドル魂って、どんなものかよく分からないけど……刻みついたの?」

奈緒「……根性はついたような気がする」

卯月「……だ、大事だよね、根性」

加蓮「卯月、気を使わなくていいから」

奈緒「うぁーっ! やっぱ一日無駄にしただけの気がするぞ! ちょっとあたし、プロデューサーに今日のこと聞いてくる!」

加蓮「あ、じゃあ私も」

未央「なら、みんなで行こっか」





225: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 21:56:25.41 ID:0CklsS2l0



―――合宿所、2階大部屋


ルキトレ「えっ⁉ お姉ちゃん、奈緒ちゃんと加蓮ちゃんに崖登りなんてさせたの⁉」

ベテトレ「また姉さんは……何考えてるんだ」

トレーナー「プロデューサー殿、その場に居たのなら止めてください」

P「止めたんですけど、押し切られてしまいまして……我ながら情けないです」

マストレ「い、いやケイ、私にも考えがあってだな……」



ルキトレ「お姉ちゃん、そこに正座しなさい!」



マストレ「……はい」

ルキトレ「どんな考えがあったとしても、それで加蓮ちゃんが倒れちゃったんでしょ? お姉ちゃんが無茶させるから、そんなことになったんだよ?」

マストレ「ま、まあ、そうかもしれないが……」

ルキトレ「かもじゃないでしょ!」

マストレ「は、はい! 私のせいです!」

ルキトレ「ちゃんと反省すること!……じゃあ、ここからはお姉ちゃんたちにタッチ」

ベテトレ「ああ、引き継ごう」

トレーナー「その件以外でも、山ほど言いたいことがあるからな」

マストレ「げっ⁉」

ベテトレ「だいたい姉さんはだな―――――」





226: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 21:57:14.42 ID:0CklsS2l0



ルキトレ「ふぅ……久しぶりに怒って疲れました」

P「ルキちゃん、師匠のことあんまり怒りすぎないであげてくれる? 加蓮が倒れたのは、師匠だけじゃなくて、俺の責任でもあるからさ」

ルキトレ「プロデューサーさんは悪くないですよ。お姉ちゃんが無茶苦茶やったんですから」

P「うん、無茶苦茶やったのは否定しないけど。でも俺がちゃんと、加蓮に昔入院していたことを聞き出しておいて……それを師匠に伝えてたら、無茶させなかったと思うんだよ」

ルキトレ「それは……でも加蓮ちゃん、そのこと隠してたんですよね?」

P「そうだけど……それでも俺の怠慢だよ。俺は加蓮のプロデューサーなんだから」

ルキトレ「プロデューサーさん……なら、プロデューサーさんもお姉ちゃんたちの説教受けてきます?」

P「えっ⁉ くっ……! そ、そうだね……じゃあ俺も――」

ルキトレ「いやいや、冗談ですよ!」

ちひろ「プロデューサーさん。今後はこういうことがないように気をつけていけば、それでいいと思いますよ」

P「ちひろさん……はい、そうします」

楓「……プロデューサー」



楓「もう一杯いかがですか?」



P「この流れで⁉」

楓「今は食事中なんですから。お酒を飲むのが正しい流れですよ」

P「そ、そうですかね?……じ、じゃあいただきます」

楓「はい、どうぞ」

P「ごくごく……ふぅ」

楓「美味しいですよね、このお酒」

P「はは、そうですね。……うん、美味いです」

ちひろ(楓さん、もしかしてプロデューサーさんの心を切り替えさせるために……?)

楓「……はぁ、美味しい」

ちひろ(……考えすぎですかね)





227: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 21:58:12.59 ID:0CklsS2l0


ルキトレ「プロデューサーさん、私も一杯くださいな♪」

P「うん、じゃあルキちゃんもいっぱ―――ってまだ未成年でしょ! 駄目だよ!」

ルキトレ「むぅ、もうすぐ20歳なのに……」

P「まだ19歳なんだから駄目だってば。……そういえばさ、ルキちゃん。今日やった内容なんだけど、お互い事前に話してなかったの?」

ルキトレ「レイお姉ちゃんだけ、教えてくれなかったんですよ。今日の目的を電話で伝えたら、『それならいい考えがある!』とだけ言って」

P「いい考えが崖登りか……いや、まあ確かに結果的には目的に沿ったけど」

ルキトレ「ですけど、崖登りはやりすぎです」

P「うん、それはそうだよね」

楓「プロデューサー、今日の……レッスン? の目的とはどのようなものなのでしょうか? 私たちも、釣りをしていただけですし……」

P「あ、楓さんたちは釣りしてたんですか。ルキちゃんは、ありすとまゆに何を?」

ルキトレ「私たちはコスプレ大会です♪」

P「コ、コスプレ?……内容に姉妹の性格が表れてるなぁ」

ルキトレ「何か言いました?」

P「ああいや、なんでもないよ。それで楓さん、今日の目的なんですけど……あ、でもこれ話すとあのことも一緒に話すことになるな……」

楓「あのこと?」

P「えー、そのですね……」

楓「あ、話しづらいのでしたら……」

P「ああいえ、そうじゃないんです。……どうしようかな」

ちひろ「プロデューサーさん。どうせ明日には話すんですし、いいんじゃないでしょうか?」

ルキトレ「そうですそうです」

P「……まあ、ここで話さないのも意地が悪いですもんね。楓さん、実は―――」



《ガラッ―――》


奈緒「やいプロデューサー!」






228: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 21:59:00.07 ID:0CklsS2l0


P「うぉおおぅ⁉ な、なんだよいきなり!」

加蓮「ちょっと話があるんだー」

P「話?」

まゆ「プロデューサーさん。今日の夕飯、どうでしたか?」

P「ああ、まゆが作ったんだって? 美味かったよ、ごちそうさま」

まゆ「うふふ♪ お粗末さまでした」

凛「プロデューサー、お酌してあげるよ。どんどん飲んで。夕飯の味を忘れるくらいに」

P「そんな飲まないから! ていうか、みんな来たのか?」

みく「うん、みんな来たよー」

未央「ねぇねぇ、なんで師匠説教されてるの?」

P「ちょっとな」

ルキトレ「とりあえずほっといていいですよ」

卯月「ルキさんがそう言うなら……」

美嘉「うん、姉妹のことに他人が関わるもんじゃないよ」

マストレ『……』

ありす「助けを求めるような目でこちらを見てますが……」

奈緒「気のせいだ、ほっとけ」

ありす「はあ……」

奈緒「そんなことより、プロデューサー。今日の崖登りとか、釣りとか、コスプレ大会ってなんだ?」

美嘉「やった意味が全然分からないんだけど」

P「あー、それ聞きに来たのか……」

ちひろ「それはいいタイミングで来ましたね」

加蓮「いいタイミング?」

楓「ちょうど、私がそれを聞くところだったのよ」

加蓮「あ、そうだったんですか」

奈緒「ならあたしたちも聞くぞ、プロデューサー」

P「え、えぇー? でも、それ話すと……はぁ、仕方ないか」

ルキトレ「教えるの、1日早まるだけじゃないですか」

P「もっとこう、場の空気を整えてから伝えようと思ってたんだけど……」

奈緒「空気とかいいから、早くしろって」

P「せっかちか、お前は。あー……じゃあみんな、注目!」

まゆ「はい、プロデューサーさん♪」

みく「なになに、Pチャン?」

ありす「どうしたんですか、改まって」





229: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 22:00:13.25 ID:0CklsS2l0



P「今日みんなにしてもらったことなんだが……それぞれ、親睦を深めてもらうのが目的だったんだ」

奈緒「親睦? 今更?」

P「今だからだ。これは明日発表しようと思ってたんだけどな……みんな、よく聞けよ?」



P「みんなの、ユニットデビューが決定したんだ!」



美嘉「……え?」

ありす「ユニット……」

まゆ「デビュー……?」

楓「私たちが……ですか?」

みく「や、やった――」



奈緒「いや喜ぶのは待て!」



みく「にゃ⁉」

奈緒「慌てるな、みく。……プロデューサー、それ本当か?」

加蓮「そういえば、前科があるからね……」

P「本当だよ! 今回デビューするのは、奈緒、加蓮、楓さん、美嘉、みく、まゆ、ありすだ!」

ちひろ「ふふ、本当ですよ。私が保証します」

ルキトレ「私も、保証しますよ」

奈緒「じゃ、じゃあ本当に……」

加蓮「私たち、デビューできるの?」

奈緒「……」

加蓮「……」



奈緒・加蓮『やったぁ――――――っ!』



P「まったく、そうやって最初から素直に喜べよ」

奈緒「プロデューサーが前にあたしと加蓮を騙したからだろうが!」

P「そ、そういやそうだっけ……悪い」

奈緒「でも今はそんなのどうでもいいや! プロデューサー、ユニットってどんなユニットなんだ?」

加蓮「私、誰と一緒なの?」

P「今日親睦を深めてもらったの、なんでか考えてみ?」

加蓮「……もしかして、奈緒と?」

奈緒「加蓮とのユニット?」

P「そう! 加蓮と奈緒、楓さんと美嘉とみく、そしてまゆとありす! これがそれぞれのユニットメンバーだ!」





230: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 22:00:44.51 ID:0CklsS2l0



楓「なるほど、それであの組み分けだったんですね」

美嘉「みくちゃんと楓さんか……面白そう☆」

みく(2人とも、猫耳付けてもらおっと)

ありす「私はまゆさんと……」

まゆ「よろしくお願いします、ありすちゃん」

ありす「は、はい、こちらこそです」

未央「ついにみんながデビューかぁ……!」

卯月「なんだか、私も嬉しいです!」

凛「みんな、おめでとう」

奈緒「ああ、サンキュ!」

未央「よーしっ、今日はお祝いパーティだよ!」

みく「朝まで騒ぐにゃ!」

P「やめとけ! 明日はレッスンあるんだぞ⁉」

美嘉「でもアタシたち、嬉しくて今日は寝られそうにないよ!」

P「だから明日になってから発表しようと思ってたのに……!」

凛「そういうことだったんだ」

奈緒「おーしっ、シャンパン開けるぞーっ!」

加蓮「あはは、やっちゃえ、奈緒―!」

P「それ日本酒の酒瓶だけど⁉ 開けても普通にこぼれるだけだからやめろ!」

凛「確かに明日の方が良かったかもね……」

P「あー、もう分かった! 1時間だけ騒いで良し! だけど1時間経ったらおとなしく寝ること! いいな?」



『はーいっ!』






231: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 22:01:34.07 ID:0CklsS2l0



―――数十分後



みく「前川みく、一発芸やります!……ネコチャンの真似! にゃあー♪」

奈緒「それ、いつもどおりじゃねーか!」

加蓮「じゃあ逆に私たちがやろうよ。にゃあー♪」

美嘉「いいね、にゃあー☆」

まゆ「にゃあー♪」

ありす「に、にゃあー♪』

楓「にゃあ♪」

みく「にゃあーっ⁉ みんなでやると、みくのアイデンティティが崩壊しちゃうにゃ!」

加蓮「ほら、奈緒もやるにゃ♪」

奈緒「あたしも⁉ に……に、にゃ……そ、そんな恥ずかしいこと出来るかぁーっ!」

加蓮「もう奈緒ったら……じゃあ猫耳を付けてあげるにゃ♪」

美嘉「なら尻尾も付けようよ。これでにゃあって言わなくても、猫ちゃんになれるにゃ☆」

奈緒「いやいや! そっちのが恥ずかしいだろ⁉ や、やめ―――にゃぁあああ⁉」





P「あいつら、随分盛り上がってんなぁ……」

ルキトレ「それだけ嬉しいんですよ」

P「でもあんなに騒いで、明日のレッスン大丈夫なのか……?」

ちひろ「みんな、それくらいの分別はついていると思いますよ」

P「そうですかね……」





加蓮「さあ奈緒、どうぞ!」

奈緒「くぅぅ、もうヤケだ!……に、にゃあー♪」

美嘉「いいねー☆」


《パシャッ》


奈緒「今パシャって聞こえたぞ⁉ 美嘉、撮ったの消せ!」

美嘉「ん? いいよー、はい」

奈緒「お、わりと素直に消したな……」

美嘉「もうクラウドに保存してあるからね」

奈緒「そっちも消さないと意味ないだろ!」

加蓮「美嘉、後で私に送ってね」

美嘉「オッケー☆」

奈緒「あたしの写真を拡散するなぁーっ!」





P「……ついてますかね」

ちひろ「……おそらくは」





232: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 22:03:24.27 ID:0CklsS2l0



凛「そういえばプロデューサー。私たちだけ今日普通のレッスンだったのは、もうデビューしてるから?」

未央「今さら親睦を深める必要ないもんね」

P「え? 確かに親睦深める必要はないと思ってたけど……今日は未央たちもレッスン休みにするって話だったはずなんだが」

未央「え⁉」

P「いつもレッスンや仕事で疲れてるだろうから、今日くらいは休みにって……」

未央「ベテトレさん! 師匠に説教してないでちょっと! どういうことですか⁉」

ベテトレ「ん? いや、私もレッスンを休みにしようかと思ったんだが……お前たち、きつい方がいいと言っただろう?」

未央「あれかぁ――――っ⁉ きついか楽かってそういうこと⁉」

ベテトレ「楽な方がいいと言えば、休みにしていたんだが」

未央「ならそう説明してくださいよ!」

卯月「まあまあ、未央ちゃん」

ベテトレ「だがお前たち、説明する前に決めただろう」

未央「……しぶりん」

凛「……。……レッスンは無駄にならないよ」

未央「そうだけどさ! 休めるんなら休みたかったっていう思いもあるよ⁉」

卯月「まあまあ、未央ちゃん」

P「なんだ凛たち、今日普通にレッスンしてたのか? さすがの向上心だな」

凛「ま、まあね」

未央「なんか釈然としない……」

卯月「まあまあ、未央ちゃん」

未央「しまむー、さっきからそれしか言ってないよ⁉」

卯月「まあまあ……甘々……おいしぃ……」

未央「……あ、船こいでる」

凛「卯月、眠いみたいだね」

P「ならちょうどいいか。もうそろそろ1時間経つし、お開きにしよう。みんなー、騒ぐのはもう終わりだ! さ、部屋行って寝ろ寝ろ!」






美嘉「えぇー⁉」

加蓮「これからがいいとこなのに……」

奈緒「いいとこじゃないだろ⁉ 猫耳と尻尾だけじゃなく、肉球手袋まで着けさせやがってぇー!」

みく「みくの……みくのアイデンティティが……! 奈緒チャン、それ返してよー!」

奈緒「喜んでお返しするよ!」








233: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 22:04:09.07 ID:0CklsS2l0



P「お前たち、明日は朝からレッスンなんだから、寝ないと体力もたないぞ。……一応言っとくと、明日からはユニット単位でのレッスンになるからな」

ありす「はい、ユニットでの……れっすん、れすね……」

P「……ありすも大分眠そうだな。みんな、明日と明後日しっかりレッスンして、明後日の午後には合宿終了なんだ。体壊さないためにも、とっとと寝ること。分かったか?」

『はーい……』

P「……あとトレーナーさんたち、そろそろ説教はいいんじゃないですか? 師匠、正座したまま寝てますよ」

ベテトレ・トレーナー『えっ⁉』

マストレ「むにゃ……牛タンもう一皿追加で……」

ベテトレ「ほ、本当だ……」

トレーナー「説教するのに夢中で気付かなかった……」

P「ま、まあトレーナーさんたちも、もう寝られた方がいいですよ」

ルキトレ「ぐー……」

P「……ルキちゃん、もう寝てるしね」





234: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 22:04:37.69 ID:0CklsS2l0



―――合宿所 1階 大部屋


卯月「すぴー……」

ありす「くー……」

未央「もう食べられないよ……」

奈緒(……疲れてるはずなのに、眠れない。でもみんな寝てるっぽいし……)

未央「……でもデザートは別腹だから……食べる……」

奈緒(食べるのかよ!……いや、寝言にツッコんでも仕方ないな。羊でも数えるか……○リープが一匹……メリ○プが二匹……メ○ープが3匹……メリー○が4匹……あっ、モ○コに進化した!)

加蓮「……奈緒、まだ起きてる?」

奈緒「!……起きてたのか、加蓮」

加蓮「……眠れない」

奈緒「でも寝なきゃだぞ……ただでさえ加蓮は今日、倒れてるんだし」

加蓮「分かってるけど、まださっきまで騒いでた熱が残ってるみたいで……ね、ちょっと外の風に当たりに行かない?」

奈緒「あたしの話聞いてた?」

加蓮「ちょっとだけだって。クールダウンにさ」

奈緒「……。……みんなを起こさないように、静かに出るぞ」

加蓮「うん、分かってる」





235: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 22:05:21.44 ID:0CklsS2l0



―――合宿所、外


合宿所から出て空を見上げると、そこには満天の星空が広がっていた。


加蓮「……星、綺麗だね」

奈緒「そーだなー……こんな星空見たの、初めてかも」

加蓮「あっ」

奈緒「どうした?」



加蓮「丈夫丈夫丈夫」



奈緒「どうした⁉」

加蓮「流れ星見つけたから、3回お祈りしたの。体が丈夫になるようにって」

奈緒「なんだそういうことか……」

加蓮「奈緒だったら、何お願いする?」

奈緒「あたし?……あたしは特にお願いすることないかなぁ」

加蓮「奈緒、つまんない」

奈緒「悪かったな!」

加蓮「あ、トップアイドルとかは?」

奈緒「それは……自分の力でなるものじゃんか」

加蓮「……それもそだね。流れ星に願うことじゃないか」

奈緒「じゃあ……あたしも加蓮の体が丈夫になりますようにでいいよ。そうすれば、効果2倍だし」

加蓮「2倍って……何それ」

奈緒「あっ」

加蓮「え?」



奈緒「丈夫丈夫丈夫」



加蓮「え、怖い……」

奈緒「さっき加蓮も言ってただろ!」

加蓮「そうだけど……ん? じゃあ奈緒、今の……」

奈緒「流れ星、流れたから願っといた。これで効果2倍!」

加蓮「……ホントにやるとか」

奈緒「い、いいじゃんか別に」

加蓮「……なら、丈夫になるようにこれから頑張るかな」

奈緒「無理しない程度で頑張れ」

加蓮「うん、そうする」





236: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 22:06:18.41 ID:0CklsS2l0



そうしていると、ようやくあたしに眠気がやってくる。


奈緒「……ふぁ……。加蓮、もう戻って寝ないか?」

加蓮「そだね、もう熱も冷めたし」

奈緒「じゃあ戻ろう」

加蓮「……あっ、奈緒」


合宿所の中に戻ろうとすると、加蓮があたしを引き留めた。


奈緒「ん?」

加蓮「えっと、デビューも決まったことだし……」


加蓮は自分の頬をぽりぽりと掻いてから、あたしの目を真っ直ぐに見つめて―――はにかむように笑い、告げた。





237: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 22:07:01.26 ID:0CklsS2l0







加蓮「これからも、よろしくね。奈緒」






そして、あたしも―――。






238: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 22:07:59.63 ID:0CklsS2l0







奈緒「こちらこそ、よろしくな。加蓮」






―――笑いながら、告げたのだった。






239: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 22:09:08.35 ID:0CklsS2l0



―――翌日


マストレ「それではレッスンを始める! 準備はいいな?」

奈緒・加蓮『はい!』

マストレ「いい返事だ。ではまず、この曲を聞け」


《――――――♪》


奈緒「……この曲は?」



マストレ「お前たちのデビュー曲だ」



奈緒「デビュー曲……」

加蓮「これが、私たちの……」

奈緒「加蓮……!」

加蓮「奈緒……!」

マストレ「さあ、デビューまでそう長い時間はないぞ。私がお前たちを見てやれるのは今日と明日だけだが、みっちりレッスンしてやるからな!」

奈緒・加蓮『はいっ! お願いしますっ!』



第7話 終わり





240: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 22:10:04.60 ID:0CklsS2l0



―――合宿終了後


P「師匠、今回もありがとうございました」

マストレ「いや、私も楽しかった。やはりいいな、トレーナー業も」

P「トレーナーには戻られないんですか?」

マストレ「そうだな……修行の旅が終わったら、戻るのも悪くないかもな」

ルキトレ「プロデューサーさん。その時は、お姉ちゃんも346プロで雇ってもらえますよね?」

P「うん。ぜひ来てください、師匠」

マストレ「ふっ、まあ考えておくか。神谷と北条、それまでに立派なアイドルになっておけよ?」

奈緒「はい!」

加蓮「ありがとうございました!」

ルキトレ「お姉ちゃん、今度はどこに行くの?」

マストレ「北の果てまで行ったんだ。次は南の果てに行ってくる」

卯月「南の果て……」

凛「南極だね」

未央「そんなとこでどんな修行するんだろ……?」

ルキトレ「いってらっしゃい、お姉ちゃん!」

トレーナー「いってらっしゃい、姉さん」

ベテトレ「いってらっしゃい、あまり無茶苦茶しないように」

マストレ「ああ、またな妹たちよ!……あー、それと北条」

加蓮「? はい」



マストレ「初日は悪かった! じゃあな!」



加蓮「え? あ……行っちゃった」

奈緒「師匠、意外と気にしてたんだな、加蓮が倒れたの」

加蓮「……もう、別に師匠のせいじゃないのに」

P「さて……じゃあ、俺たちも帰るとするか」



 ほんとにおしまい






242: ◆mqlRkew9nI/5 2017/04/20(木) 22:16:36.25 ID:0CklsS2l0




次回予告



P「ん? やっと起きたか」

奈緒「な、なんでプロデューサーがあたしの部屋にいるんだ⁉」

?「とっても甘いキスだったわ……まだ舌が味を覚えてるくらい」

???「ちっちゃくてきゃわゆいーっ!」

ちひろ「そこの彼女は不法侵入者です」

??「そうなんですよー! ちょろっと警備の目をかいくぐって」

??「こ、これが、アイドルなんですね……!」



次回 第8話
『すかうてっどがーるず!』



?「印税貰いに来ましたー♪」

P「なんだその子⁉」



……だいたいあってるので、ご了承ください。






奈緒「シンデレラガールズ」【後編】に続く




元スレ
SS速報VIP:奈緒「シンデレラガールズ」
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