1: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:09:24.55ID:E0797p92.net
梨子「えっ? サプライズパーティ?」
曜「うん。千歌ちゃん、もうすぐ誕生日でしょ? だからみんなでお祝いしたいなって」
梨子「いいんじゃないかしら。きっと喜ぶと思うわ」
曜「それで、梨子ちゃんにも協力してほしいなって思って」
梨子「もちろん」
2: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:10:42.32ID:E0797p92.net
梨子「でもサプライズねぇ……。いつもはどうやってお祝いしていたの?」
曜「千歌ちゃんの家でパーティすることが多かったかなぁ」
梨子「それじゃあサプライズにならないわよね。……マリさんに頼んでみるとか?」
曜「あっ、それいいかも! たしかにマリちゃんなら会場とか用意してくれそうだね。わたし、頼んでみるよ!」
梨子「それじゃあ私はプレゼントとかプログラムとか考えてみようかな」
曜「ありがとう! 最高のパーティにしようね!」
梨子「そうね」
曜(ふふふっ、千歌ちゃん喜ぶだろうなぁ。よしっ、がんばろっと!)
…………
………
……
…
ピッ
曜「渡辺曜! いきます!」
バッシャーン
…………
………
……
…
曜「ふぅ。今日はこれくらいにしとこうかな」
コーチ「渡辺、帰るのか?」
曜「はい。今日もありがとうございました」
コーチ「その前に少し話がある。時間はとらせないからついてこい」
曜「……?」
曜「……えっ? 私が大会に?」
コーチ「ああ。以前に話しただろ? 日本のトップレベルの選手が集まる交流会みたいなもんだ。出場する予定だった選手が急遽出られなくなってな。それでお前に席がまわってきたってわけだ」
曜「…………」
コーチ「お前ならそいつらと比べてもそこまで見劣りしないはずだ。こんな機会はめったにない。きっと上を目指す上でいい刺激になる。まぁ、急な話だ。強制はできんが……」
曜「ぜひ参加させてください」
コーチ「……そうか。日時は8月1日の10時から。場所は東京の……」
曜「えっ? 8月1日?」
―曜の部屋―
曜「はぁ、なんでよりにもよって重なっちゃうのかなぁ……。一応返事は明日まで待ってもらったけど……」
曜(大会に出てみたいっていうのは本当だ。ここまで頑張ってきたんだ。上を目指したいって気持ちはもちろんある)
曜(だけど、私はこれまで千歌ちゃんの誕生日には必ずいっしょに過ごしてきたし、千歌ちゃんだって私の誕生日には絶対にそばにいてくれた)
曜(それに、飛び込みをはじめたのだって……)
曜「…………」
曜「まっ、いくら考えたところで答えは決まってるよね」
曜「さて! パーティの準備も大詰めだし、そろそろ寝ようっと!」
―パーティ当日―
千歌「もうっ! 本当にびっくりしたんだから!」
曜「あはは、ごめんごめん!」
千歌「……でも、すっごく嬉しかった。曜ちゃん、ありがとう」
曜「えへへ、どういたしまして」
鞠莉「ちかっち! ケーキ切っちゃうわよ!」
千歌「あっ! 待って! わたしが切りたい!」テテテテッ
曜「…………」
曜(やっぱり、こっちが正解だよね)
曜「千歌ちゃーん! 待ってよー!」
―パーティ翌日―
曜「はぁ。昨日は楽しかったなぁ。……あっ! 千歌ちゃんだ!」テテテテッ
曜「千歌ちゃん! おはよーそろー!」
千歌「…………」
曜「千歌ちゃん?」
千歌「曜ちゃん、ちょっと部室にきて」
曜「えっ?」
千歌「はやく」
曜「う、うん」
―部室―
曜「あ、あの、千歌ちゃん?」
千歌「高飛び込みの大会、断ったって本当?」
曜「えっ?」
千歌「水泳部の子が言ってた。すごい大会なのに曜ちゃんが断ったって」
曜「…………」
千歌「答えて」
曜「……本当だよ」
千歌「なんで?」
曜「その、ちょっとこの頃調子が悪くて……」
千歌「うそ」
曜「…………」
千歌「曜ちゃん、その大会よりも私の誕生日を優先したんでしょ?」
曜「……うん」
千歌「なんで? わたしの誕生日なんかより大会の方が大切に決まってるじゃん」
曜「そんなことなっ……!」
千歌「あるよ。わたしは曜ちゃんに大会に出てほしかった」
曜「…………」
千歌「曜ちゃん優しいから、わたしのことを想って一緒にいてくれたんでしょ?」
曜「違うよっ!」
千歌「だったらなんで?」
曜「だから、わたしにとっては大会よりも千歌ちゃんの誕生日の方が大切だったんだってば!」
千歌「……例えそうだったとしても、わたしは曜ちゃんに大会に出てほしかった」
曜「っ……!」
曜「じゃあ聞くけどさ! 千歌ちゃんは私なんかいなくてもよかったってこと!?」
千歌「そんなこと言ってないじゃん!」
曜「言ってるよ! 千歌ちゃんの言ってるのはそういうことじゃん!」
千歌「違うってば! 誕生日に曜ちゃんがいてくれて嬉しかったのは本当なの! だけど、わたしは大会の方に出場してほしかったの!」
曜「わけわかんないよ!」
千歌「っ……! だからっ……!」
曜「……もういい」
曜「そうだよね。考えてみれば今年はみんなだっているんだし、わたしなんかいなくたってどうってことないよね」
千歌「違うっ!」
曜「ごめんね。誕生日にはどうしてもいっしょにいたいって思ってたの、わたしだけだったんだね」
千歌「だからそんなことっ……!」グッ
曜「…………」
千歌「えっ? 曜ちゃん、泣いて……」
曜「離して」
千歌「よ、よーちゃ……」
曜「離してっ!」
千歌「……っ!」
曜「……今日は学校休む。部活も行かない。さよなら」
―曜の部屋―
曜「目が真っ赤だなぁ。明日も学校休まなくちゃかも」
曜「……はぁ」ゴロン
曜「千歌ちゃんと喧嘩するなんて何年振りかなぁ」
曜(誕生日に私がいて嬉しかったっていうのはきっと嘘じゃない。大会の方を優先してほしかったっていうのも私のためを想って言ったことなんだろうな。そんなの、私にだって分かってる)
曜(もしも、私じゃなくて、梨子ちゃんでも、果南ちゃんでも、きっと同じことを言うだろう。千歌ちゃんは優しいから)
曜(だけど、それでも、私と一緒にいたいって、そう言ってほしかった。誕生日だけはなにがあっても一緒にいたいって、そう言ってほしかった)
曜(なんだかんだ言っても、私は千歌ちゃんの特別なんだって思ってた。誰よりも近くにいるのは私なんだって)
曜「……虫のいい話だったのかなぁ」
曜「……ぐすっ」
曜「だ、だめなのにっ……、これ以上泣いちゃったら本当に……」
曜「……うぇぇ、うぇぇ……!」
…………
………
……
…
曜「んぅ……」
曜「わたし、いつの間にか寝ちゃってた……?」
梨子「おはよう」
曜「うん、おは……えっ!?」
梨子「よく眠れた?」
曜「な、なんで梨子ちゃんが!?」
梨子「鍵開けっ放しだったわよ。まったく、不用心ね」
曜「そういえば、かけるの忘れてたかも……、っていうか顔見ないで! ひどい顔してるから!」
梨子「今さら隠されても……、寝てる時に見ちゃったし」
曜「うぅぅ……」
梨子「それで、喧嘩の理由は?」
曜「……千歌ちゃんが話したの?」
梨子「ううん。でも、話したみたいなものね。あんな顔してる千歌ちゃんはじめて見たから」
曜「…………」
梨子「まぁ、無理にとは言わないけど」
曜「……話すよ。梨子ちゃんにも迷惑かけただろうし」
梨子「そう。じゃあ、お願いね」
曜「あのね、千歌ちゃんの誕生日に――」
曜「――ってことがあったの」
梨子「なるほどね。誕生日を優先して大事な大会に出なかったから千歌ちゃんに怒られたと」
曜「…………」
梨子「まぁ、曜ちゃんが悪いわね」
曜「えっ!?」
梨子「だって考えてもみなさいよ。もし、千歌ちゃんが大切なソフトボールの大会よりも曜ちゃんの誕生日を優先して、そのことをあとで知っちゃったら、曜ちゃんどう思う?」
曜「……それは、たしかに、なんで大会に出なかったんだって少しは思うかも」
梨子「でしょ?」
曜「でも、だからって後になって怒ったりはしないよ! 千歌ちゃんは私を優先してくれたんだって嬉しく思うよ!」
梨子「曜ちゃんだったらそうかもね。だって、曜ちゃんにとって一番大切なことは千歌ちゃんと一緒にいることだもん」
曜「なっ……///」
梨子「でも、千歌ちゃんは違うの。きっと自分が曜ちゃんと一緒にいること以上に、もっと大切なことがある」
曜「……そんなこと分かってるよ。私が千歌ちゃんにとって一番じゃないってことでしょ?」
梨子「ううん。千歌ちゃんの一番は間違いなく曜ちゃんよ」
曜「……?」
梨子「千歌ちゃんの一番は間違いなく曜ちゃん。だけど、千歌ちゃんにとって一番大切なことは曜ちゃんと一緒にいることじゃない」
曜「……梨子ちゃんの言ってること、ぜんぜん分かんない。そもそも、どうして梨子ちゃんがそこまで言い切れるの?」
梨子「ずっと二人と一緒だったんだもん。分かるよ」
曜「だからって……」
梨子「分かるの。だって、こっちに来てからはじめてできた、大切な、お友達のことだもの」
曜「…………」
梨子「あとは、曜ちゃんが考えてね」
曜「ちょ、ちょっと! 話がまだ……!」
梨子「全部教えてあげるほど私は優しくないの。……それじゃあね。せめて明日は、私に二人の笑顔を見せてね」
曜「あっ、……行っちゃった」
曜「……はぁ、ぜんぜん分かんないよ」
曜「梨子ちゃんの言ってたこと、どういうことなんだろう……」
曜「…………」
曜(そういえば少し前にも、千歌ちゃんに嫌われてるんじゃないかってこんなふうに悩んでたっけ。わたし、千歌ちゃんのことで悩んでばっかだなぁ)
曜(あの時は確か、千歌ちゃんが私の家まで来てくれたんだよね)
曜(千歌ちゃんも、いま、私のことで悩んでるのかな。悩んでてくれるのかな)
梨子『千歌ちゃんの一番は間違いなく曜ちゃんよ』
曜(…………)
曜「もうすぐ9時か」
曜「…………」
―千歌の家―
曜「……来ちゃった」
曜「結局、まだ何もわからないままなのに」
曜「…………」
曜「やっぱりこのまま帰ろうかな……」
千歌「えっ!? よーちゃん!?」
曜「わっ! ち、ちかちゃん!?」
千歌「どうしたの!? こんな夜遅くに」
曜「ちかちゃんこそ、こんな時間に自転車なんて」
千歌「そ、それは……」
千歌・曜「…………」
曜「……ぷっ! 目的はおんなじみたいだね」
千歌「へへっ、そうだね」
―千歌の部屋―
曜「正直に言うと、わたしはまだ気持ちの整理がついてない。だから、まだ仲直りはできないかもしれない」
千歌「わたしもおんなじ。なんで曜ちゃんは分かってくれないのって、そんな気持ちがおさまらない」
曜「うん。だから、ひとつ教えてほしいんだ」
千歌「いいよ」
曜「千歌ちゃんにとって一番大切なことはなに?」
千歌「わたしにとって、いちばん、大切なこと……?」
曜「うん。わたしにとって一番大切なことはね……、それは……」
千歌「……?」
曜「……わたしにとって一番大切なことはね、千歌ちゃんと一緒にいること。これは誰が何と言おうと絶対に曲げられないし変わらない」
千歌「……!」
曜「もう一回聞くね。千歌ちゃんにとって一番大切なことはなに?」
千歌「……わたしにとって一番大切なことは、……曜ちゃんの足を引っ張らないこと」
曜「……えっ?」
千歌「曜ちゃんは小さい頃から特別で、ずっとわたしの前を走ってた」
千歌「そんな曜ちゃんの近くにこんなに普通なわたしがいるなんて、とっても幸せなことなんだって思ってた」
千歌「だから、せめて曜ちゃんの足手まといにならないようにしなきゃって」
曜「…………」
千歌「スクールアイドルをはじめるとき、曜ちゃんが協力するって言ってくれて、本当にうれしかった」
千歌「でも、それとおんなじくらい、いつか曜ちゃんの迷惑になるんじゃないかなって心のどこかでずっと思ってた」
曜「千歌ちゃん……」
千歌「……ねぇ、曜ちゃん。さっき言ったことって、本当?」
曜「本当だよ」
千歌「本当にほんと? ぜったい嘘じゃない?」
曜「本当にほんとだよ。絶対に嘘じゃない」
千歌「……じゃあさ、これからは、わたしのいちばん大切なことは、曜ちゃんと一緒にいることだって言ってもいい?」
曜「……そうじゃないと、わたしが困っちゃうかも」
千歌「……えへへ、うれしいな」
曜「あの、朝はごめんね。千歌ちゃんの言うこと無視して勝手に帰っちゃって」
千歌「ううん。わたしもごめん。ついカッとなっちゃった」
曜「うん」
千歌「これで仲直りってことで、いいのかな?」
曜「いいんじゃないかな?」
千歌「……じゃあさ、もう一つだけお願いがあるんだけど」
曜「なに? なんでも言ってよ」
千歌「あのね、仲直りの印に――」
曜「……えぇ!?///」
―翌日―
千歌「おはよう!」
曜「おはよーそろー!」
梨子「おはよう、二人とも」
曜「……せーのっ」
千歌・曜「迷惑かけてごめんなさい!」
梨子「えっ!?」
千歌・曜「お礼に今日は梨子ちゃんの言うことなんでも聞きます!」
梨子「ちょ、ちょっと! 声が大きいわよっ!」
梨子「そう。仲直りできたのね」
曜「うん! 梨子ちゃんのおかげだよ!」
梨子「それで、何で二人一緒に登校してきたの?」
千歌「えっ!? そ、それは、その……///」
梨子「へぇ……。二人とも大人になっちゃったんだ」
千歌「なっ!?/// ちっ、違うよ!/// まだキスしか……」
曜「ちょ、ちょっと千歌ちゃん!?///」
千歌「あっ!?///」
梨子「……あーあ。これからはずーっとこんなのろけ話を聞かされるのね」
千歌・曜「梨子ちゃんっ!///」
梨子「さてと。それじゃあ今日は帰り道に美味しいものいーっぱい奢ってもらおうかな」
曜「えっ!?」
梨子「今日一日、なんでも言うことを聞いてくれるんでしょ?」
千歌「あうっ……」
曜「……千歌ちゃん、いくらもってる?」
千歌「わたしはあんまり……」
梨子「……ふふっ」
梨子「さて。お腹すかせておこーっと!」
おわり
おつ
とても良かった
寝る前に良いもの読めた
元スレ
曜「千歌ちゃんとけんかした日」
http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1494688164/
梨子「でもサプライズねぇ……。いつもはどうやってお祝いしていたの?」
曜「千歌ちゃんの家でパーティすることが多かったかなぁ」
梨子「それじゃあサプライズにならないわよね。……マリさんに頼んでみるとか?」
曜「あっ、それいいかも! たしかにマリちゃんなら会場とか用意してくれそうだね。わたし、頼んでみるよ!」
梨子「それじゃあ私はプレゼントとかプログラムとか考えてみようかな」
曜「ありがとう! 最高のパーティにしようね!」
梨子「そうね」
曜(ふふふっ、千歌ちゃん喜ぶだろうなぁ。よしっ、がんばろっと!)
…………
………
……
…
3: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:12:43.24ID:E0797p92.net
ピッ
曜「渡辺曜! いきます!」
バッシャーン
…………
………
……
…
曜「ふぅ。今日はこれくらいにしとこうかな」
コーチ「渡辺、帰るのか?」
曜「はい。今日もありがとうございました」
コーチ「その前に少し話がある。時間はとらせないからついてこい」
曜「……?」
4: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:14:11.41ID:E0797p92.net
曜「……えっ? 私が大会に?」
コーチ「ああ。以前に話しただろ? 日本のトップレベルの選手が集まる交流会みたいなもんだ。出場する予定だった選手が急遽出られなくなってな。それでお前に席がまわってきたってわけだ」
曜「…………」
コーチ「お前ならそいつらと比べてもそこまで見劣りしないはずだ。こんな機会はめったにない。きっと上を目指す上でいい刺激になる。まぁ、急な話だ。強制はできんが……」
曜「ぜひ参加させてください」
コーチ「……そうか。日時は8月1日の10時から。場所は東京の……」
曜「えっ? 8月1日?」
5: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:15:58.42ID:E0797p92.net
―曜の部屋―
曜「はぁ、なんでよりにもよって重なっちゃうのかなぁ……。一応返事は明日まで待ってもらったけど……」
曜(大会に出てみたいっていうのは本当だ。ここまで頑張ってきたんだ。上を目指したいって気持ちはもちろんある)
曜(だけど、私はこれまで千歌ちゃんの誕生日には必ずいっしょに過ごしてきたし、千歌ちゃんだって私の誕生日には絶対にそばにいてくれた)
曜(それに、飛び込みをはじめたのだって……)
曜「…………」
曜「まっ、いくら考えたところで答えは決まってるよね」
曜「さて! パーティの準備も大詰めだし、そろそろ寝ようっと!」
6: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:17:19.00ID:E0797p92.net
―パーティ当日―
千歌「もうっ! 本当にびっくりしたんだから!」
曜「あはは、ごめんごめん!」
千歌「……でも、すっごく嬉しかった。曜ちゃん、ありがとう」
曜「えへへ、どういたしまして」
鞠莉「ちかっち! ケーキ切っちゃうわよ!」
千歌「あっ! 待って! わたしが切りたい!」テテテテッ
曜「…………」
曜(やっぱり、こっちが正解だよね)
曜「千歌ちゃーん! 待ってよー!」
7: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:18:20.57ID:E0797p92.net
―パーティ翌日―
曜「はぁ。昨日は楽しかったなぁ。……あっ! 千歌ちゃんだ!」テテテテッ
曜「千歌ちゃん! おはよーそろー!」
千歌「…………」
曜「千歌ちゃん?」
千歌「曜ちゃん、ちょっと部室にきて」
曜「えっ?」
千歌「はやく」
曜「う、うん」
8: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:20:29.92ID:E0797p92.net
―部室―
曜「あ、あの、千歌ちゃん?」
千歌「高飛び込みの大会、断ったって本当?」
曜「えっ?」
千歌「水泳部の子が言ってた。すごい大会なのに曜ちゃんが断ったって」
曜「…………」
千歌「答えて」
曜「……本当だよ」
千歌「なんで?」
曜「その、ちょっとこの頃調子が悪くて……」
千歌「うそ」
曜「…………」
9: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:23:27.29ID:E0797p92.net
千歌「曜ちゃん、その大会よりも私の誕生日を優先したんでしょ?」
曜「……うん」
千歌「なんで? わたしの誕生日なんかより大会の方が大切に決まってるじゃん」
曜「そんなことなっ……!」
千歌「あるよ。わたしは曜ちゃんに大会に出てほしかった」
曜「…………」
10: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:24:11.32ID:E0797p92.net
千歌「曜ちゃん優しいから、わたしのことを想って一緒にいてくれたんでしょ?」
曜「違うよっ!」
千歌「だったらなんで?」
曜「だから、わたしにとっては大会よりも千歌ちゃんの誕生日の方が大切だったんだってば!」
千歌「……例えそうだったとしても、わたしは曜ちゃんに大会に出てほしかった」
曜「っ……!」
11: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:27:53.38ID:E0797p92.net
曜「じゃあ聞くけどさ! 千歌ちゃんは私なんかいなくてもよかったってこと!?」
千歌「そんなこと言ってないじゃん!」
曜「言ってるよ! 千歌ちゃんの言ってるのはそういうことじゃん!」
千歌「違うってば! 誕生日に曜ちゃんがいてくれて嬉しかったのは本当なの! だけど、わたしは大会の方に出場してほしかったの!」
曜「わけわかんないよ!」
千歌「っ……! だからっ……!」
曜「……もういい」
12: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:29:52.83ID:E0797p92.net
曜「そうだよね。考えてみれば今年はみんなだっているんだし、わたしなんかいなくたってどうってことないよね」
千歌「違うっ!」
曜「ごめんね。誕生日にはどうしてもいっしょにいたいって思ってたの、わたしだけだったんだね」
千歌「だからそんなことっ……!」グッ
曜「…………」
千歌「えっ? 曜ちゃん、泣いて……」
曜「離して」
千歌「よ、よーちゃ……」
曜「離してっ!」
千歌「……っ!」
曜「……今日は学校休む。部活も行かない。さよなら」
13: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:32:41.11ID:E0797p92.net
―曜の部屋―
曜「目が真っ赤だなぁ。明日も学校休まなくちゃかも」
曜「……はぁ」ゴロン
曜「千歌ちゃんと喧嘩するなんて何年振りかなぁ」
15: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:36:54.72ID:E0797p92.net
曜(誕生日に私がいて嬉しかったっていうのはきっと嘘じゃない。大会の方を優先してほしかったっていうのも私のためを想って言ったことなんだろうな。そんなの、私にだって分かってる)
曜(もしも、私じゃなくて、梨子ちゃんでも、果南ちゃんでも、きっと同じことを言うだろう。千歌ちゃんは優しいから)
曜(だけど、それでも、私と一緒にいたいって、そう言ってほしかった。誕生日だけはなにがあっても一緒にいたいって、そう言ってほしかった)
曜(なんだかんだ言っても、私は千歌ちゃんの特別なんだって思ってた。誰よりも近くにいるのは私なんだって)
曜「……虫のいい話だったのかなぁ」
曜「……ぐすっ」
曜「だ、だめなのにっ……、これ以上泣いちゃったら本当に……」
曜「……うぇぇ、うぇぇ……!」
…………
………
……
…
16: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:38:28.33ID:E0797p92.net
曜「んぅ……」
曜「わたし、いつの間にか寝ちゃってた……?」
梨子「おはよう」
曜「うん、おは……えっ!?」
梨子「よく眠れた?」
曜「な、なんで梨子ちゃんが!?」
梨子「鍵開けっ放しだったわよ。まったく、不用心ね」
曜「そういえば、かけるの忘れてたかも……、っていうか顔見ないで! ひどい顔してるから!」
梨子「今さら隠されても……、寝てる時に見ちゃったし」
曜「うぅぅ……」
17: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:39:45.83ID:E0797p92.net
梨子「それで、喧嘩の理由は?」
曜「……千歌ちゃんが話したの?」
梨子「ううん。でも、話したみたいなものね。あんな顔してる千歌ちゃんはじめて見たから」
曜「…………」
梨子「まぁ、無理にとは言わないけど」
曜「……話すよ。梨子ちゃんにも迷惑かけただろうし」
梨子「そう。じゃあ、お願いね」
曜「あのね、千歌ちゃんの誕生日に――」
18: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:42:08.01ID:E0797p92.net
曜「――ってことがあったの」
梨子「なるほどね。誕生日を優先して大事な大会に出なかったから千歌ちゃんに怒られたと」
曜「…………」
梨子「まぁ、曜ちゃんが悪いわね」
曜「えっ!?」
梨子「だって考えてもみなさいよ。もし、千歌ちゃんが大切なソフトボールの大会よりも曜ちゃんの誕生日を優先して、そのことをあとで知っちゃったら、曜ちゃんどう思う?」
曜「……それは、たしかに、なんで大会に出なかったんだって少しは思うかも」
梨子「でしょ?」
20: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:44:02.56ID:E0797p92.net
曜「でも、だからって後になって怒ったりはしないよ! 千歌ちゃんは私を優先してくれたんだって嬉しく思うよ!」
梨子「曜ちゃんだったらそうかもね。だって、曜ちゃんにとって一番大切なことは千歌ちゃんと一緒にいることだもん」
曜「なっ……///」
梨子「でも、千歌ちゃんは違うの。きっと自分が曜ちゃんと一緒にいること以上に、もっと大切なことがある」
曜「……そんなこと分かってるよ。私が千歌ちゃんにとって一番じゃないってことでしょ?」
梨子「ううん。千歌ちゃんの一番は間違いなく曜ちゃんよ」
曜「……?」
21: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:46:02.45ID:E0797p92.net
梨子「千歌ちゃんの一番は間違いなく曜ちゃん。だけど、千歌ちゃんにとって一番大切なことは曜ちゃんと一緒にいることじゃない」
曜「……梨子ちゃんの言ってること、ぜんぜん分かんない。そもそも、どうして梨子ちゃんがそこまで言い切れるの?」
梨子「ずっと二人と一緒だったんだもん。分かるよ」
曜「だからって……」
梨子「分かるの。だって、こっちに来てからはじめてできた、大切な、お友達のことだもの」
曜「…………」
梨子「あとは、曜ちゃんが考えてね」
曜「ちょ、ちょっと! 話がまだ……!」
梨子「全部教えてあげるほど私は優しくないの。……それじゃあね。せめて明日は、私に二人の笑顔を見せてね」
曜「あっ、……行っちゃった」
24: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:50:06.61ID:E0797p92.net
曜「……はぁ、ぜんぜん分かんないよ」
曜「梨子ちゃんの言ってたこと、どういうことなんだろう……」
曜「…………」
曜(そういえば少し前にも、千歌ちゃんに嫌われてるんじゃないかってこんなふうに悩んでたっけ。わたし、千歌ちゃんのことで悩んでばっかだなぁ)
曜(あの時は確か、千歌ちゃんが私の家まで来てくれたんだよね)
曜(千歌ちゃんも、いま、私のことで悩んでるのかな。悩んでてくれるのかな)
梨子『千歌ちゃんの一番は間違いなく曜ちゃんよ』
曜(…………)
曜「もうすぐ9時か」
曜「…………」
25: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:51:38.59ID:E0797p92.net
―千歌の家―
曜「……来ちゃった」
曜「結局、まだ何もわからないままなのに」
曜「…………」
曜「やっぱりこのまま帰ろうかな……」
千歌「えっ!? よーちゃん!?」
曜「わっ! ち、ちかちゃん!?」
26: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:52:36.60ID:E0797p92.net
千歌「どうしたの!? こんな夜遅くに」
曜「ちかちゃんこそ、こんな時間に自転車なんて」
千歌「そ、それは……」
千歌・曜「…………」
曜「……ぷっ! 目的はおんなじみたいだね」
千歌「へへっ、そうだね」
27: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:54:07.75ID:E0797p92.net
―千歌の部屋―
曜「正直に言うと、わたしはまだ気持ちの整理がついてない。だから、まだ仲直りはできないかもしれない」
千歌「わたしもおんなじ。なんで曜ちゃんは分かってくれないのって、そんな気持ちがおさまらない」
曜「うん。だから、ひとつ教えてほしいんだ」
千歌「いいよ」
曜「千歌ちゃんにとって一番大切なことはなに?」
千歌「わたしにとって、いちばん、大切なこと……?」
曜「うん。わたしにとって一番大切なことはね……、それは……」
千歌「……?」
28: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:55:55.29ID:E0797p92.net
曜「……わたしにとって一番大切なことはね、千歌ちゃんと一緒にいること。これは誰が何と言おうと絶対に曲げられないし変わらない」
千歌「……!」
曜「もう一回聞くね。千歌ちゃんにとって一番大切なことはなに?」
千歌「……わたしにとって一番大切なことは、……曜ちゃんの足を引っ張らないこと」
曜「……えっ?」
31: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 00:59:30.45ID:E0797p92.net
千歌「曜ちゃんは小さい頃から特別で、ずっとわたしの前を走ってた」
千歌「そんな曜ちゃんの近くにこんなに普通なわたしがいるなんて、とっても幸せなことなんだって思ってた」
千歌「だから、せめて曜ちゃんの足手まといにならないようにしなきゃって」
曜「…………」
千歌「スクールアイドルをはじめるとき、曜ちゃんが協力するって言ってくれて、本当にうれしかった」
千歌「でも、それとおんなじくらい、いつか曜ちゃんの迷惑になるんじゃないかなって心のどこかでずっと思ってた」
曜「千歌ちゃん……」
33: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 01:01:50.57ID:E0797p92.net
千歌「……ねぇ、曜ちゃん。さっき言ったことって、本当?」
曜「本当だよ」
千歌「本当にほんと? ぜったい嘘じゃない?」
曜「本当にほんとだよ。絶対に嘘じゃない」
千歌「……じゃあさ、これからは、わたしのいちばん大切なことは、曜ちゃんと一緒にいることだって言ってもいい?」
曜「……そうじゃないと、わたしが困っちゃうかも」
千歌「……えへへ、うれしいな」
35: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 01:04:13.14ID:E0797p92.net
曜「あの、朝はごめんね。千歌ちゃんの言うこと無視して勝手に帰っちゃって」
千歌「ううん。わたしもごめん。ついカッとなっちゃった」
曜「うん」
千歌「これで仲直りってことで、いいのかな?」
曜「いいんじゃないかな?」
千歌「……じゃあさ、もう一つだけお願いがあるんだけど」
曜「なに? なんでも言ってよ」
千歌「あのね、仲直りの印に――」
曜「……えぇ!?///」
36: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 01:05:14.15ID:E0797p92.net
―翌日―
千歌「おはよう!」
曜「おはよーそろー!」
梨子「おはよう、二人とも」
曜「……せーのっ」
千歌・曜「迷惑かけてごめんなさい!」
梨子「えっ!?」
千歌・曜「お礼に今日は梨子ちゃんの言うことなんでも聞きます!」
梨子「ちょ、ちょっと! 声が大きいわよっ!」
38: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 01:06:52.23ID:E0797p92.net
梨子「そう。仲直りできたのね」
曜「うん! 梨子ちゃんのおかげだよ!」
梨子「それで、何で二人一緒に登校してきたの?」
千歌「えっ!? そ、それは、その……///」
梨子「へぇ……。二人とも大人になっちゃったんだ」
千歌「なっ!?/// ちっ、違うよ!/// まだキスしか……」
曜「ちょ、ちょっと千歌ちゃん!?///」
千歌「あっ!?///」
梨子「……あーあ。これからはずーっとこんなのろけ話を聞かされるのね」
千歌・曜「梨子ちゃんっ!///」
39: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 01:08:24.86ID:E0797p92.net
梨子「さてと。それじゃあ今日は帰り道に美味しいものいーっぱい奢ってもらおうかな」
曜「えっ!?」
梨子「今日一日、なんでも言うことを聞いてくれるんでしょ?」
千歌「あうっ……」
曜「……千歌ちゃん、いくらもってる?」
千歌「わたしはあんまり……」
梨子「……ふふっ」
梨子「さて。お腹すかせておこーっと!」
おわり
40: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 01:10:26.54ID:1kktudqZ.net
おつ
とても良かった
42: 名無しで叶える物語 2017/05/14(日) 01:20:59.60ID:5CyraYMf.net
寝る前に良いもの読めた
曜「千歌ちゃんとけんかした日」
http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1494688164/