関連
【モバマス時代劇】本田未央「憎悪剣 辻車」

【モバマス時代劇】木村夏樹「美城剣法帖」_

【モバマス時代劇】一ノ瀬志希「及川藩御家騒動」

【モバマス時代劇】桐生つかさ「杉のれん」

【モバマス時代劇】ヘレン「エヴァーポップ ネヴァーダイ」

【モバマス時代劇】向井拓海「美城忍法帖」

【モバマス時代劇】依田芳乃「クロスハート」

【モバマス時代劇】神谷奈緒 & 北条加蓮「凛ちゃんなう」

【デレマス時代劇】速水奏「狂愛剣 鬼蛭」

【デレマス時代劇】市原仁奈「友情剣 下弦の月」

【デレマス時代劇】池袋晶葉「活人剣 我者髑髏」

【デレマス時代劇】塩見周子「おのろけ豆」

【デレマス時代劇】三村かな子「食い意地将軍」

【デレマス時代劇】二宮飛鳥「阿呆の一生」

【デレマス時代劇】緒方智絵里「三村様の通り道」

【デレマス時代劇】大原みちる「麦餅の母」

【デレマス時代劇】キャシー・グラハム「亜墨利加女」

【デレマス時代劇】メアリー・コクラン「トゥルーレリジョン」

【デレマス時代劇】島村卯月「忍耐剣 櫛風」

【デレマス銀河世紀】安部菜々「17歳の教科書」

【デレマス時代劇】土屋亜子「そろばん侍」

【デレマス近代劇】渋谷凛「Cad Keener Moon 」

【デレマス銀河世紀】双葉杏「ボーン オブ ドラゴン」

【デレマス近未来】岡崎泰葉「Killing Hike」



SS速報VIP:【デレマス時代劇】城ヶ崎美嘉「姉妹剣 水鏡」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1497974138/



1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/21(水) 00:55:38.42 ID:XGvacbon0

シリーズ一覧を書くとはねられることがわかった。
読者の方々すまぬ。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1497974138




2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/21(水) 00:56:44.57 ID:XGvacbon0

 戦国が終わり、それでも侍達が死に場所を求めていた頃。

 かつての戦場には、取るに足らない野太刀を、

 1つの流派まで成長させるだけの養分があった。

 剣術、武術、兵法の爆発的増加は、

 太平の世では受け止めきれなかった。

 合意の上での果し合い、剣を試すための辻斬りは後を絶たず、

 幕府、各藩は頭を悩ませていた。




3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/21(水) 00:57:25.66 ID:XGvacbon0

 城ヶ崎美嘉は、柳生心眼流剣術の名手であった。

 17歳にして免許皆伝。

 口調と身なりは軽薄な印象を与えるが、

 人となりは至極誠実である。

 これでさらに容貌にも優れているから、藩の男だけでなく

 女らも、きゃあきゃあと色めきたっている。

 そんな彼女には、現在頭を悩ませることがあった。

 藩内で起こっている辻斬り。

 1人目は道場主の桐生つかさ。

 2人目は師範代の藤本里奈。

 3人目は美嘉が目をかけていた門下生の、大槻唯。





4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/21(水) 00:58:15.13 ID:XGvacbon0

 いずれも、美嘉には及ばぬものの、達人である。

 凄腕の剣豪か、

 もしくは複数人による凶行であると見られる。

 しかし時世が時世であるから、

 同心達は下手人に目処を付けられていない。

 しかし、美嘉には思い当たる節があった。





5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/21(水) 00:58:49.02 ID:XGvacbon0

年前、道場から追われた妹の莉嘉。

剣術に対して、異様な執着を見せていた。

幼い頃、美嘉が道場通いを始めた時は、

自分も行きたいと散々喚き、ついには蔵に叩き込まれた。

ようやく道場に入った頃には、門下生達と秘密裏に

真剣勝負を行い、何人もの死傷者を出している。

美嘉が皆伝を受けた時は、

自分にもよこせと師範に食ってかかったが、

“心の眼が曇った輩には、刀を持たせられん”と断られ、

それでも食い下がったので、道場から追放された。

動機は十二分にあるといってよい。




6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/21(水) 00:59:14.65 ID:XGvacbon0

とはいえ美嘉は、この件に関わるつもりはなかった。

先月、馬廻への勤めが決定した。

さらに、口数が少ないが、伴侶をよく立てる嫁を娶った。

今の美嘉の身分は、殿の護衛を務める一家の柱。

個人的な事情で動くことはできないのだ。




7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/21(水) 01:00:07.46 ID:XGvacbon0

美嘉が屋敷に戻った頃には、夜更けになっていた。

つい、他の馬廻役達と飲み過ぎてしまったのだ。

扉を開いた美嘉はぎょっとした。

伴侶が、じっとそこで佇んでいたのだ。

側人を使って、自身の帰りが遅れることを伝えていたはず。

それなのになぜ。

男は面を上げると、安心したような、

それでいて少し傷ついたような顔をした。

美嘉はぷいと顔を逸らした。

どうしようもなく、相手が愛おしかったのである。

美嘉は、酔いでふらつく身体で、

彼をそっと抱きしめた。

もそっと抱き返された。

力が強くて、少し痛かった。

その痛みすらも、美嘉は愛した。

その後、2人は初めて閨を共にした。

下手人のことは同心にまかせて、

今は、この幸せを嚙みしめよう。

美嘉はそう思った。




8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/21(水) 01:00:46.17 ID:XGvacbon0

だが今度は、その愛しい伴侶が凶刃にかかった。

美嘉は確信した。

莉嘉は自分の周囲の人間を襲っている。

理由はおそらく、自分を真剣勝負の舞台に引きずり出すためだ。

美嘉は、憎しみよりも恐怖が先に立った。

吐き気さえ催すような、剣への執着。

全てを敵に回してでも、

自身の強さを証明しようとする、真っ黒な決意。

しかし美嘉は、逃げ出すことはできなかった。

もう藩内には、莉嘉に比肩しうる剣士は自分しかいない。

同心は、莉嘉が下手人だとは露とも思っていない。

美嘉自身の手で、決着をつけるしかないのだ。




9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/21(水) 01:01:31.33 ID:XGvacbon0

藩内の山奥に、莉嘉は現れた。

道場と屋敷に貼っておいた書き置きを、

しかと読んだようだ。

「お姉ちゃん久しぶりっ! 元気だった?」

莉嘉は以前と変わらぬ様子だった。

姉に対してのみ、底抜けに明るい妹の表情を見せる。

「莉嘉…アンタと戦ってあげる」

美嘉は刀を抜いた。

目の前にいるのは肉親ではない。剣の鬼だ。

莉嘉も、嬉々として抜刀した。




10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/21(水) 01:02:03.15 ID:XGvacbon0

構えは中段。

美嘉は不可解に思った。

辻斬りに遭った死体は、

いずれも頭を縦に割られている。

となれば、莉嘉の得意は上段である可能性が高い。

それならば、なぜ中段を使う?

美嘉は八相に構えた。これは彼女の定石である。




11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/21(水) 01:02:39.31 ID:XGvacbon0

先に仕掛けたのは、莉嘉の方だった。

さらに繰り出されたのは逆袈裟である。

美嘉は完全に、構えに騙された。

それだけ相手の動きは速かった。

しかし彼女も達人、莉嘉の剣を受け止めた。

「莉嘉、強くなったね」

若干押されながらも、美嘉は言った。

妹のことが、素直に誇らしかった。




12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/21(水) 01:03:25.48 ID:XGvacbon0

一方本人は、呆けた顔をした。

「お姉ちゃん。それ、やばい」

莉嘉はざっと剣を下げて、後方に退いた。

それから息を整えて、再び美嘉に斬りかかった。

今度は本気だった。

莉嘉の剣の動きは、もう追えない。

二手どころか、三手四手も先に行っている。

美嘉は左肩と右の瞳を斬られた。

刀がぼとりと地に落ちた時、

彼女は莉嘉に背を向けて逃げ出した。




13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/21(水) 01:03:52.13 ID:XGvacbon0

何が免許皆伝だ。

何が心の曇りだ。

アタシは、怖くてしょうがない。

美嘉は山の中を駆ける。

ただ1人の人間として、生きるために。

見逃して。

たった1人の姉なのだから。

美嘉は心中でそう叫んだ。

追ってくるのは、ただ1人の妹。

追ってくるのは…。




14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/21(水) 01:04:32.48 ID:XGvacbon0

美嘉は山に流れる清流の半ばで、足を止めた。

もう、息が続かなかった。

そこで抜いた脇差を水に晒し、それを鏡として後方を見た。

莉嘉が迫ってくる。必死で追いつこうと。

美嘉は眼を閉じ、ただ音を聞いた。

ぱしゃりと、水が跳ねる音。

そして。




15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/21(水) 01:05:23.74 ID:XGvacbon0

「お姉ちゃん…待って」

それが、莉嘉の最後の声になった。

美嘉は眼をつぶったまま、

脇差を振るい、彼女の首を落とした。

眼を開いた後は、妹の身体を抱いて、

しばらく呆然と座り込んだ。




16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2017/06/21(水) 01:05:57.48 ID:XGvacbon0

おしまい


元スレ
SS速報VIP:【デレマス時代劇】城ヶ崎美嘉「姉妹剣 水鏡」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1497974138/