過去作
曜「メゾン・ド・モルゲンレーテ・日の出?」鞠莉「ひどいメドレーね」
鞠莉「そのメガネって度、入ってるやつ?」曜「うん、伊達じゃないよ」
曜「巷に雨の降るごとく」
曜「鞠莉ちゃんお味噌汁理論」
1: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 05:59:40.03 ID:dLA/U3Bd.net
曜「メゾン・ド・モルゲンレーテ・日の出?」鞠莉「ひどいメドレーね」
鞠莉「そのメガネって度、入ってるやつ?」曜「うん、伊達じゃないよ」
曜「巷に雨の降るごとく」
曜「鞠莉ちゃんお味噌汁理論」
1: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 05:59:40.03 ID:dLA/U3Bd.net
ようまりです。
2: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:00:57.14 ID:ZPxXjZi5.net
こういうの、なんて言うのかな。
全く思いがけないっていうか、夢にも思わなかったっていうか…
ひょんなことからってやつ?
「かなちゃん、ダイちゃん、どこー…あれ?」
気がつくと、目の前に…
「お姉さん、だれ?」
めっちゃちっちゃな鞠莉ちゃんがいた。
鞠莉「んー?」
きょとんとした表情で私を見つめる女の子。
言葉で説明するのは難しいんだけど、見た瞬間に「この女の子は鞠莉ちゃんだ」ってわかった。
輪っかになってないけど、特徴的な結い方をした金色の髪。
鞠莉「お姉さん、どうかしたの?」
吸い込まれそうな瞳と、透き通った声。
やっぱり間違いない。
この子は、鞠莉ちゃんだ…!
曜(でも、どうしてこんなことに…)
鞠莉「あの、おねーさん。だいじょうぶですか?」
曜「えっ?」ハッ
鞠莉「もしかして、お腹いたいのかなって…」
曜「あ、ああ!大丈夫、元気一杯だよ!?あははははは!!」
鞠莉「ふーん…?」
曜(やばい、めちゃくちゃかわいい)
曜(鞠莉ちゃんだから当然と言えば当然なんだけど、それにしたって可愛さが突き抜けてるよ…!)
鞠莉「んー?」クビカシゲ
曜(ああ、ぎゅってしたいな…)ソワソワ
曜『ちっちゃい鞠莉ちゃんかわいいいいい!!』ムギュウウウウウ
鞠莉『うひゃぁぁぁぁぁぁっ!!』
曜『かわいい、かわいいかわいいかわいいよおおおおお!!』ナデナデスリスリ
鞠莉『きゃああああああああっ!!』ウワーン
曜(…だめだ、犯罪的な光景になってしまう)ブンブン
曜(っていうかさ…今更だけど、私って今とんでもない状況に陥っているんじゃないかな…)ウーン
鞠莉(また静かになっちゃった。やっぱり具合悪いのかなぁ)
鞠莉(こういうとき、まずは挨拶からだよね…よしっ)
鞠莉「あの、はじめましてっ」
曜「え?あ、はじめまして…かな」
鞠莉「わたし、マリーっていうの」
曜「! そ、そっか。鞠莉ちゃんっていうんだね」
曜(やっぱりそうなんだ!ってことは、この世界は…)
鞠莉「それで、あの、お姉さんは…?」オズオズ
曜「あ…私は、渡辺曜!曜ちゃんって呼んでね!」
鞠莉「曜ちゃん…年上の人に、ちゃんをつけるのはダメだよっ」
曜(おお、しっかりしてる)
鞠莉「それに、お姉さん知らない人だし…」
曜(あ、そりゃそうだよね…)
鞠莉「お姉さんは、ここでなにしてるの?」
曜(…うん、難しい質問だね)
曜(状況から推測すると、ここはおそらく過去の世界なんだろうと思う…)
曜(いわゆる、タイムスリップってやつなのかな?何がどうなったのか、私が知りたいよ…)
曜「…鞠莉ちゃんこそ、どうしてここに?」
鞠莉「友達と遊んでいて、それで、えっと…」
曜「…はぐれちゃった?」
鞠莉「…ううっ」ジワッ
曜「あ、ああ!ごめんね、思い出させちゃったね!!」アセアセ
鞠莉「うっ、うう~」ポロッ…
曜(いけない、こういう時は…!)
ハグッ
鞠莉「あ…」
曜「大丈夫、大丈夫だから…ね?」
鞠莉「…うん」ギュ
曜「よしよし…落ち着くまで、こうしてるから」
鞠莉「うん…」ギュー
曜(…図らずもハグしちゃったな。非常事態だから、仕方ないよね?泣き止んでくれそうだし…)ナデナデ
鞠莉「お姉さん…あったかい」ギュ
曜「へへ、鞠莉ちゃんもあったかいよ。優しい子だもんね」
鞠莉「お姉さん、わかるの?」
曜「わかるわかる。きっと将来は美人さんで、かっこいい女の子になるよ!」
鞠莉「かっこいい…お、お姉さんみたいな…?」ウルッ
曜「!?」ドキッ
曜(いやいやいや、ドキッとしてどうする私。いくら鞠莉ちゃんとはいえ…)
??「……」ジー
??「……」ギュッ
鞠莉「ありがとう、お姉さん!」
曜「どういたしまして。もう大丈夫?」
鞠莉「うんっ!ふふ、やっぱりハグってすごいなぁ」ニコニコ
曜(お、「やっぱり」ってことは、もうこの頃からハグしてるんだね)
曜(相手は果南ちゃんと、ダイヤさんだよね、きっと)ニコ
??「…いくよ」
??「…は、はいっ」
ガサガサガサ
曜「!」バッ
鞠莉「わっ」
曜「あそこで何か動いた…鞠莉ちゃんは私の後ろにいて」
鞠莉「う、うんっ!」ギュ
ガサガサ
鞠莉「ひゃっ!」ビクッ
曜(まただ。風のせいじゃない。何かいる…!)
ガサガサガサ
鞠莉「お、おねえさん…」ギュ
曜「大丈夫だよ。このまま静かに下がろう」
鞠莉「う、うんっ」
ガサガサ
曜(犬や動物にしては、揺れ方が不自然だ。鳴き声も無いし…)ジリ
鞠莉「…っ」ジリ
ガサガサ…
曜(よし…うまく距離を取れた。これなら――)
??「…うおーーー!!」
曜「――なっ!?」
曜(後ろから…!?しまっ…)
ガシッ
曜「うっ!?」
グイッ
曜「あだ、あだだだだぁ!!」
??「この、このおっ!」グギギギギ
鞠莉「…あっ!」パァァ
曜(な、なんなの!?小さい女の子がいきなり…ってこの子…!)
グイッ
曜「へっ?」
??「――っ」ギュ
曜(女の子がもう一人!?そうか、さっきの物音はこの子が…)
ググググ
曜「…って、わああああ!?」
??「まりからはなれろー!」ウオー
??「ゆ、ゆーかいですわー!」ピギャー
曜「いだだだだ!ご、誤解だよ、誤解!」
??「はなれろ、はなれろっ!」グイー
??「う、うーっ!」ギュー
曜「は、離れたくても、この子が足を抑えてるから離れらないんだよ!」
鞠莉「くすくす」
曜「わ、笑ってないで、説明してあげてよー!」
曜「や、やっと解放された…」ボロッ
??「むーっ」
??「…ぅぅ」
鞠莉「えっと…」
曜「ま、鞠莉ちゃんのお友達なんだよね?」
鞠莉「うん…」
??「話しちゃダメだよ、まり!」
??「へんなこと、されませんでした…?」
ああ、なんか完全に誤解されてる。
二人とも私を不審者か何かを見るような目をしてる…
??「むーっ!」
鞠莉ちゃんと、もう1人の子を背中にかばいながら、こちらを威嚇する女の子。
この子はわかる。何と言っても幼馴染だからね。
小さい頃の果南ちゃん、そのままだ。
曜「とすると、もう一人の子は…」
??「…っ」グッ
幼いからか、雰囲気は全然違うけど。
口元のホクロといい、さっきの「ぴぎゃ」といい、この子はダイヤさんに間違いなさそうだね。
おそらく、鞠莉ちゃんが知らない人に何かされてると思って、撃退しようとしたんだろうけど。
さてさて…どうしたものかなぁ…
曜「だから誤解だって!私は鞠莉ちゃんを守ろうとしただけで…」
果南「嘘だよ!見てたけどお姉さん怪しかったもん!」
ダイヤ「まりちゃんを抱きしめて、怖がらせてましたっ!」
曜「それは、2人がガサガサやってたからで…鞠莉ちゃんだって――」
果南「まりのこと、まりちゃんって呼ばないで!」ウガー
ダイヤ「で、ですわっ」ピギャー
曜「ああもう、めちゃくちゃ警戒されてる。一体どうすれば…」
…………………
果南「お姉さんやるねー」ハグッ
曜「あはは、そうでしょー。でも果南ちゃんも凄かったよー」ナデナデ
果南「ふふっ」ギュー
曜(ふぅ、わかってもらえたみたいでよかった…)
鞠莉『お姉さんはいい人だよ、私をよしよししてくれたもんっ』
ダイヤ『ほら、まりちゃんもこう言ってますし…』
果南『まりちゃんは騙されてるんだよ!私は信じないから!』
曜『じゃあ、どうすれば信じてくれるの?』
果南『私と…勝負だよ!』
曜『えっ?』
果南『私と勝負して、勝てたら信じてあげるよ!』
曜(そんなこんなで、潔白を証明するために対決することになって…)
曜(追いかけっこ、隠れんぼ、コインの裏表当て…真剣勝負をしてるうちに、果南ちゃんも心を開いてくれた)
果南「次は負けないからねー」ギュ
曜(こういうところ、果南ちゃんらしいね)クス
ダイヤ「ぴぎゃ…」モジモジ
鞠莉「う…」モジモジ
曜(おっ)
曜「ほら、ダイヤちゃんも鞠莉ちゃんもおいでよ」
ダイまり「…!」パァァ
ダイまり「えいっ」ハグッ
曜「おおっ」
曜(ふふ、急にモテモテだ)ナデナデ
曜「3人はとっても仲良しなんだね!」
果南「うん!」
鞠莉「うんっ」
ダイヤ「えへへ…」
曜(こうして見ると、鞠莉ちゃんとダイヤさん、子どもの頃はおとなしめだったんだね)
曜(ふふ、いつから「シャイニー!」とか「ぶっぶーですわ!」って言うようになるのかな)クスクス
鞠莉「おねーさん?」
ダイヤ「どうかしたんですの?」
曜「ううん、なんでも」ニシシ
曜「それにしても…」チラ
曜(随分と陽が落ちてきた。果南ちゃんとの対決も長かったしね。となると――)
果南「あ!もう帰る時間だ!」
鞠莉「あっ、本当だ」
ダイヤ「今日はここでお別れだね…」
曜「そうだね。まだ暗くはないけど、みんな1人で帰れる?」
かなダイまり「うんっ」
曜「おっ、良い返事だ!気をつけて帰るんだよー」
かなダイまり「はーい」ハグッ
曜「おっ!ハグッ!」ギュ
かなダイまり「えへへ、ばいばーい」フリフリ
曜「またねー」フリフリ
曜(…またね、か)
曜「…」
曜(鞠莉ちゃんと出会ったところに戻ってきたけど…手がかりも何もないや)
曜(…海に太陽が沈んでいく。鞠莉ちゃんと初めてぶっちゃけトークしたときも、こんな感じだったっけな…)
鞠莉『何一人で勝手に決めつけてるんですか?』
鞠莉『うりゃ、うりゃ、うりゃ、うりゃ、うりゃ!』
鞠莉『二年間も無駄にしてしまった私が言うんだから、間違いありませんっ』
曜(鞠莉ちゃん…私、これからどうなっちゃうのかな…)
鞠莉「あ、あの…」
曜「ん…って、鞠莉ちゃん!?」
鞠莉「えへへ…」
曜(なんで、ここに…)
鞠莉「あの、よかったら私のうちにきてくれませんか?」
曜「えっ?」
鞠莉「私、お姉さんともっと一緒にいたいなって…」
曜「…ありがとっ、嬉しいよ!だけど、知らない人を家に呼んじゃいけないよ?おうちの人も困っちゃうだろうし」ナデナデ
鞠莉「だいじょうぶ、なんとかしますっ。それに私のうちたくさんお部屋あるからっ」
曜(確かに。ホテルだもんね)
鞠莉「それに…おねえさんは特別なお客様だから」
曜「特別?どうして?」
鞠莉「なんとなく…でも、そんな気がするの。だから…」
鞠莉「だからお願い…」ウルッ
曜(う、そんな目をされると気持ちが揺らぐ…)
曜「確かに、お財布も電話もないから、泊めてもらえるとありがたいけど…でも、どうするの?」
鞠莉「まかせてっ」
…………………
曜「私は夏休みを使ってあちこちを旅している高校生です。偶然立ち寄ったこの淡島で、大きな野良犬に襲われていた鞠莉ちゃんたちを見つけまして」
曜「必死になって、なんとか犬を追い払ったのですが、その時にバッグをどこかにやってしまったみたいで…着替えや財布を入れていたので、船にも乗れず困っていまして…」
曜(…ということになってる。らしい)
「お嬢様からご事情を伺いました。危ないところを助けていただき、感謝の言葉もございません」
「お礼と言うには僭越なのですが、お部屋をご用意いたしますので、ぜひご利用ください。きっとお嬢様もお喜びになります」
鞠莉「♪」ニコニコ
曜(事前に果南ちゃんとダイヤさんにも示し合わせてたのか、2人の家からもお礼の連絡があったみたい)
「かなちゃんとダイちゃんのご家族も、とても感謝されていました。くれぐれもよろしくと…本当に、ありがとうございます」
曜「いえ、そんな…」
鞠莉「♪」ギュー
曜(まだ小さいのに、この手際の良さと大胆さ…)
曜「鞠莉ちゃんって、すごいね…」
鞠莉「えへへっ♪」ニコニコ
曜(それから、小さい鞠莉ちゃんと一緒の時間を過ごした)
曜(ホテルのディナーをご馳走になって。敷地の中を散歩しながら、友達のこと、学校のこと、家族のこと…色んなことを話した)
曜(私は本当のことは言えないから、誤魔化したり、作り話を交えたりもしたけど…小さい鞠莉ちゃんは素直で可愛くって、とっても楽しかった)
曜「2人のこと、かなちゃん、ダイちゃんって呼んでるんだね」
鞠莉「うん。私が『まり』だから、一緒が良いなって」
曜「かなちゃん、ダイちゃん、まりちゃん、か。ふふ、2人のこと、大好きなんだ?」
鞠莉「うんっ。転校してきてからずっと一緒なの。いつもみんなで遊んで、みんなでハグするの」エヘヘ
曜(小さい頃から仲良しだった3人が、2年間もすれ違っちゃうんだもん。辛かったよね…)
曜「よかったね、仲良しになれて」ナデナデ
鞠莉「うんっ!」
…………………
曜「改めて思うけど、すごく豪華だなぁこの部屋。広いし、ベッドもふかふかだし、お風呂もとってもゴージャスだった」
曜「空いてる部屋で申し訳ないって言ってたけど、いやいや…まさかスイートルームに案内されちゃうとは」
曜「本当の事を言えない後ろめたさもあるし、色々落ち着かないなぁ…」ソワソワ
曜「ま、とりあえず、ベッドに寝てみようかな…」ポスッ
曜(あ…横になると急につかれが…)
鞠莉『おねえさんっ!』
曜「ふふ…小さい鞠莉ちゃん、ほんとうに可愛いな」クスクス
曜「…私はこれからどうすればいいんだろう。どうなっちゃうのかなぁ」
曜「パパ、ママ、千歌ちゃん、梨子ちゃん…」
曜「鞠莉ちゃん…」グスッ
コンコン
曜「!」グシグシ
曜「は、はーい」
「わたし、マリーだよ」
曜「! 今、開けるね」ガチャ
鞠莉「こんばんは、おねえさんっ。あれ、目、どうかしたの?」
曜「っ、なんでもないよ。痒かったから、ついゴシゴシしちゃって」
鞠莉「わっ、ダメだよ。痛くなっちゃうよ」メッ!
曜「へへ、はーいっ」
鞠莉「もー…お邪魔しても、いい?」
曜「もっちろん!実は1人で寂しかったんだ。さ、どうぞー」
鞠莉「ところで、お姉さん本当はどこから来たの?」
曜「えっ?えっと、その…」
鞠莉「…」ジッ
曜(う、核心を突かれた…でも、未来からやって来た、なんて言っても変に思われちゃうだけだよね)
曜「うーん…すごく近くて、とっても遠い所から、かな」
鞠莉「んー、なぞなぞ?」
曜「あははっ、ごめんごめん。そう聞こえちゃうよね」
曜「…実は、わからないんだ。なんでここに来たのかも、どうすれば帰れるのかも」
鞠莉「迷子になっちゃったの?」
曜「そう、だね。私、迷子なのかもしれない…」ウルッ
鞠莉「そっか…じゃあ」ハグッ
曜「!」
鞠莉「へへ、さっきのお返しだよ」ギュ
鞠莉「かなちゃんに教わったの。悲しい時も、ハグすれば大丈夫だって」
鞠莉「ハグってすごいんだよ。嬉しいことはもっと嬉しくなるし、悲しいことがあっても元気になれるんだ」
曜「まり、ちゃん…」
鞠莉「お姉さん、辛そうな顔してるから…元気出して、ね?」ナデナデ
曜「…うんっ、ありがとう、鞠莉ちゃん」ギュ
鞠莉「えへへ、なんだか私がお姉さんみたいだね」
曜(そうだよ。鞠莉ちゃんは、私の大好きなお姉ちゃんなんだ…)
…………………
鞠莉「それでね、あのね…」ウトウト
曜「眠そうだね、ってもうこんな時間じゃん!良い子は寝る時間だよ」
鞠莉「うー、もっとお話ししたい…」
曜「寝ないと疲れがとれなくて、明日遊べなくなっちゃうよ。いいの?」
鞠莉「やだー…」
曜「だよね。なら、もうお部屋に戻って――」
鞠莉「一緒に寝る…」ウツラウツラ
曜「えっ?」
…………………
鞠莉「ありがとう…むりいってごめんなさい…」ウトウト
曜「ふふ、鞠莉ちゃんは甘えんぼさんだねー」
鞠莉「うん、まりー甘えんぼなの…」
曜(ふふ、可愛いなあ)ニコ
鞠莉「はぐ…」スッ
曜「うん、はぐっ」ギュ
鞠莉「お姉さん、あったかい…」
曜「ふふ、鞠莉ちゃんもだよ」
曜(あ、凄く心地いい…)トロン
鞠莉「とってもたのしかった…」
曜「うん、わたしも…」
鞠莉「えへへ…また、ね…」スゥ…スゥ…
曜「うん、またね…」
鞠莉「スー…スー…」
曜(かわいいねがお…おやすみ…)zzz
…………………
眼が覚めると、一緒に眠ったはずの鞠莉ちゃんの姿は無かった。
鞠莉ちゃんだけじゃない。そこは見慣れた自分の部屋で。
不釣り合いなほど豪華なスイートルームも、ふかふかなベッドも…
あの世界の痕跡は、もうどこにも見つからなかった。
曜「夢、か…」
帰ってきた。そうだ、帰ってきてしまったんだ。
日常に戻れたことにホッとする気持ちよりも、喪失感と戸惑いの方が多かった。
曜「っ、鞠莉ちゃん…!」
腕に残っていた、鞠莉ちゃんの温もりが消えていく…
あの小さくって可愛らしい、天使みたいな笑顔には、もう二度と会うことはできない。
ぼんやりした頭に現実が押し寄せてきて、夢の世界の名残を容赦なく奪い去っていく。
曜「ふふ…またねって、言ったのにな…」グスッ
曜「まりちゃ、ん…」ポロ…
ガチャ
鞠莉「あら。おはよう、曜」
曜「あ、鞠莉ちゃん…」グスッ
鞠莉「よく寝てたね。朝ごはん出来てるよ…って、もしかして泣いてるの?」
曜「…ううん、ちょっと痒かったからゴシゴシやっちゃって」
鞠莉「そう。ほどほどにしないとダメよ、キュートなおめめが台無しになっちゃうからね?」クス
曜「ふふっ…いつもの鞠莉ちゃんだ」
鞠莉「ん、いつもの?」キョトン
曜「ううん、なんでもない。あ、もうこんな時間だったんだ。ごめんね、すぐ起きるよ」
鞠莉「ん、待ってるねー」
曜(…夢、か)
曜「ごめんね、当番じゃないのに朝ごはん作らせちゃって」
鞠莉「なんだか幸せそうな寝顔だったから。起こすのもかわいそうだなーって。ね、どんな夢見てたの?」
曜「え?えっと…」
鞠莉「あ!待って、言わないで。このマリーがズバリ言い当ててみせましょう!」
曜「いいけど、人の夢って案外難しいと思うけどなぁ。ヒントいる?」
鞠莉「いーえ、自力で当ててみせるわ」
曜「ふふ、そりゃすごいや。当てられたら、冷蔵庫のアイスひとつ食べていいよー?」
鞠莉「ますます外せなくなったわね。うーん、そうだなぁ…」
鞠莉「――すごーく近くて、とっても遠い世界の夢、かな?」
終わり
良きかなようまり
素晴らしい
乙
元スレ
鞠莉「So Close, Yet So Far」
http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1507755580/
こういうの、なんて言うのかな。
全く思いがけないっていうか、夢にも思わなかったっていうか…
ひょんなことからってやつ?
「かなちゃん、ダイちゃん、どこー…あれ?」
気がつくと、目の前に…
「お姉さん、だれ?」
めっちゃちっちゃな鞠莉ちゃんがいた。
3: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:01:43.94 ID:ZPxXjZi5.net
鞠莉「んー?」
きょとんとした表情で私を見つめる女の子。
言葉で説明するのは難しいんだけど、見た瞬間に「この女の子は鞠莉ちゃんだ」ってわかった。
輪っかになってないけど、特徴的な結い方をした金色の髪。
鞠莉「お姉さん、どうかしたの?」
吸い込まれそうな瞳と、透き通った声。
やっぱり間違いない。
この子は、鞠莉ちゃんだ…!
4: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:03:53.83 ID:ZPxXjZi5.net
曜(でも、どうしてこんなことに…)
鞠莉「あの、おねーさん。だいじょうぶですか?」
曜「えっ?」ハッ
鞠莉「もしかして、お腹いたいのかなって…」
曜「あ、ああ!大丈夫、元気一杯だよ!?あははははは!!」
鞠莉「ふーん…?」
曜(やばい、めちゃくちゃかわいい)
曜(鞠莉ちゃんだから当然と言えば当然なんだけど、それにしたって可愛さが突き抜けてるよ…!)
鞠莉「んー?」クビカシゲ
曜(ああ、ぎゅってしたいな…)ソワソワ
5: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:05:19.41 ID:ZPxXjZi5.net
曜『ちっちゃい鞠莉ちゃんかわいいいいい!!』ムギュウウウウウ
鞠莉『うひゃぁぁぁぁぁぁっ!!』
曜『かわいい、かわいいかわいいかわいいよおおおおお!!』ナデナデスリスリ
鞠莉『きゃああああああああっ!!』ウワーン
曜(…だめだ、犯罪的な光景になってしまう)ブンブン
曜(っていうかさ…今更だけど、私って今とんでもない状況に陥っているんじゃないかな…)ウーン
鞠莉(また静かになっちゃった。やっぱり具合悪いのかなぁ)
鞠莉(こういうとき、まずは挨拶からだよね…よしっ)
6: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:05:59.05 ID:ZPxXjZi5.net
鞠莉「あの、はじめましてっ」
曜「え?あ、はじめまして…かな」
鞠莉「わたし、マリーっていうの」
曜「! そ、そっか。鞠莉ちゃんっていうんだね」
曜(やっぱりそうなんだ!ってことは、この世界は…)
鞠莉「それで、あの、お姉さんは…?」オズオズ
曜「あ…私は、渡辺曜!曜ちゃんって呼んでね!」
鞠莉「曜ちゃん…年上の人に、ちゃんをつけるのはダメだよっ」
曜(おお、しっかりしてる)
鞠莉「それに、お姉さん知らない人だし…」
曜(あ、そりゃそうだよね…)
7: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:07:40.98 ID:ZPxXjZi5.net
鞠莉「お姉さんは、ここでなにしてるの?」
曜(…うん、難しい質問だね)
曜(状況から推測すると、ここはおそらく過去の世界なんだろうと思う…)
曜(いわゆる、タイムスリップってやつなのかな?何がどうなったのか、私が知りたいよ…)
曜「…鞠莉ちゃんこそ、どうしてここに?」
鞠莉「友達と遊んでいて、それで、えっと…」
曜「…はぐれちゃった?」
鞠莉「…ううっ」ジワッ
曜「あ、ああ!ごめんね、思い出させちゃったね!!」アセアセ
鞠莉「うっ、うう~」ポロッ…
曜(いけない、こういう時は…!)
ハグッ
8: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:09:21.15 ID:ZPxXjZi5.net
鞠莉「あ…」
曜「大丈夫、大丈夫だから…ね?」
鞠莉「…うん」ギュ
曜「よしよし…落ち着くまで、こうしてるから」
鞠莉「うん…」ギュー
曜(…図らずもハグしちゃったな。非常事態だから、仕方ないよね?泣き止んでくれそうだし…)ナデナデ
9: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:11:07.79 ID:ZPxXjZi5.net
鞠莉「お姉さん…あったかい」ギュ
曜「へへ、鞠莉ちゃんもあったかいよ。優しい子だもんね」
鞠莉「お姉さん、わかるの?」
曜「わかるわかる。きっと将来は美人さんで、かっこいい女の子になるよ!」
鞠莉「かっこいい…お、お姉さんみたいな…?」ウルッ
曜「!?」ドキッ
曜(いやいやいや、ドキッとしてどうする私。いくら鞠莉ちゃんとはいえ…)
??「……」ジー
??「……」ギュッ
10: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:11:49.62 ID:ZPxXjZi5.net
鞠莉「ありがとう、お姉さん!」
曜「どういたしまして。もう大丈夫?」
鞠莉「うんっ!ふふ、やっぱりハグってすごいなぁ」ニコニコ
曜(お、「やっぱり」ってことは、もうこの頃からハグしてるんだね)
曜(相手は果南ちゃんと、ダイヤさんだよね、きっと)ニコ
??「…いくよ」
??「…は、はいっ」
11: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:12:57.30 ID:ZPxXjZi5.net
ガサガサガサ
曜「!」バッ
鞠莉「わっ」
曜「あそこで何か動いた…鞠莉ちゃんは私の後ろにいて」
鞠莉「う、うんっ!」ギュ
ガサガサ
鞠莉「ひゃっ!」ビクッ
曜(まただ。風のせいじゃない。何かいる…!)
12: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:14:12.57 ID:ZPxXjZi5.net
ガサガサガサ
鞠莉「お、おねえさん…」ギュ
曜「大丈夫だよ。このまま静かに下がろう」
鞠莉「う、うんっ」
ガサガサ
曜(犬や動物にしては、揺れ方が不自然だ。鳴き声も無いし…)ジリ
鞠莉「…っ」ジリ
ガサガサ…
曜(よし…うまく距離を取れた。これなら――)
??「…うおーーー!!」
13: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:15:29.19 ID:ZPxXjZi5.net
曜「――なっ!?」
曜(後ろから…!?しまっ…)
ガシッ
曜「うっ!?」
グイッ
曜「あだ、あだだだだぁ!!」
??「この、このおっ!」グギギギギ
鞠莉「…あっ!」パァァ
曜(な、なんなの!?小さい女の子がいきなり…ってこの子…!)
グイッ
曜「へっ?」
??「――っ」ギュ
曜(女の子がもう一人!?そうか、さっきの物音はこの子が…)
14: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:16:48.90 ID:ZPxXjZi5.net
ググググ
曜「…って、わああああ!?」
??「まりからはなれろー!」ウオー
??「ゆ、ゆーかいですわー!」ピギャー
曜「いだだだだ!ご、誤解だよ、誤解!」
??「はなれろ、はなれろっ!」グイー
??「う、うーっ!」ギュー
曜「は、離れたくても、この子が足を抑えてるから離れらないんだよ!」
鞠莉「くすくす」
曜「わ、笑ってないで、説明してあげてよー!」
15: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:17:32.39 ID:ZPxXjZi5.net
曜「や、やっと解放された…」ボロッ
??「むーっ」
??「…ぅぅ」
鞠莉「えっと…」
曜「ま、鞠莉ちゃんのお友達なんだよね?」
鞠莉「うん…」
??「話しちゃダメだよ、まり!」
??「へんなこと、されませんでした…?」
ああ、なんか完全に誤解されてる。
二人とも私を不審者か何かを見るような目をしてる…
16: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:20:06.89 ID:ZPxXjZi5.net
??「むーっ!」
鞠莉ちゃんと、もう1人の子を背中にかばいながら、こちらを威嚇する女の子。
この子はわかる。何と言っても幼馴染だからね。
小さい頃の果南ちゃん、そのままだ。
曜「とすると、もう一人の子は…」
??「…っ」グッ
幼いからか、雰囲気は全然違うけど。
口元のホクロといい、さっきの「ぴぎゃ」といい、この子はダイヤさんに間違いなさそうだね。
おそらく、鞠莉ちゃんが知らない人に何かされてると思って、撃退しようとしたんだろうけど。
さてさて…どうしたものかなぁ…
17: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:21:12.07 ID:ZPxXjZi5.net
曜「だから誤解だって!私は鞠莉ちゃんを守ろうとしただけで…」
果南「嘘だよ!見てたけどお姉さん怪しかったもん!」
ダイヤ「まりちゃんを抱きしめて、怖がらせてましたっ!」
曜「それは、2人がガサガサやってたからで…鞠莉ちゃんだって――」
果南「まりのこと、まりちゃんって呼ばないで!」ウガー
ダイヤ「で、ですわっ」ピギャー
曜「ああもう、めちゃくちゃ警戒されてる。一体どうすれば…」
18: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:22:17.13 ID:ZPxXjZi5.net
…………………
果南「お姉さんやるねー」ハグッ
曜「あはは、そうでしょー。でも果南ちゃんも凄かったよー」ナデナデ
果南「ふふっ」ギュー
曜(ふぅ、わかってもらえたみたいでよかった…)
鞠莉『お姉さんはいい人だよ、私をよしよししてくれたもんっ』
ダイヤ『ほら、まりちゃんもこう言ってますし…』
果南『まりちゃんは騙されてるんだよ!私は信じないから!』
曜『じゃあ、どうすれば信じてくれるの?』
果南『私と…勝負だよ!』
曜『えっ?』
果南『私と勝負して、勝てたら信じてあげるよ!』
19: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:23:20.84 ID:ZPxXjZi5.net
曜(そんなこんなで、潔白を証明するために対決することになって…)
曜(追いかけっこ、隠れんぼ、コインの裏表当て…真剣勝負をしてるうちに、果南ちゃんも心を開いてくれた)
果南「次は負けないからねー」ギュ
曜(こういうところ、果南ちゃんらしいね)クス
ダイヤ「ぴぎゃ…」モジモジ
鞠莉「う…」モジモジ
曜(おっ)
曜「ほら、ダイヤちゃんも鞠莉ちゃんもおいでよ」
ダイまり「…!」パァァ
ダイまり「えいっ」ハグッ
曜「おおっ」
曜(ふふ、急にモテモテだ)ナデナデ
20: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:24:13.24 ID:ZPxXjZi5.net
曜「3人はとっても仲良しなんだね!」
果南「うん!」
鞠莉「うんっ」
ダイヤ「えへへ…」
曜(こうして見ると、鞠莉ちゃんとダイヤさん、子どもの頃はおとなしめだったんだね)
曜(ふふ、いつから「シャイニー!」とか「ぶっぶーですわ!」って言うようになるのかな)クスクス
鞠莉「おねーさん?」
ダイヤ「どうかしたんですの?」
曜「ううん、なんでも」ニシシ
21: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:25:17.48 ID:ZPxXjZi5.net
曜「それにしても…」チラ
曜(随分と陽が落ちてきた。果南ちゃんとの対決も長かったしね。となると――)
果南「あ!もう帰る時間だ!」
鞠莉「あっ、本当だ」
ダイヤ「今日はここでお別れだね…」
曜「そうだね。まだ暗くはないけど、みんな1人で帰れる?」
かなダイまり「うんっ」
曜「おっ、良い返事だ!気をつけて帰るんだよー」
かなダイまり「はーい」ハグッ
曜「おっ!ハグッ!」ギュ
かなダイまり「えへへ、ばいばーい」フリフリ
曜「またねー」フリフリ
曜(…またね、か)
曜「…」
22: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:26:16.22 ID:ZPxXjZi5.net
曜(鞠莉ちゃんと出会ったところに戻ってきたけど…手がかりも何もないや)
曜(…海に太陽が沈んでいく。鞠莉ちゃんと初めてぶっちゃけトークしたときも、こんな感じだったっけな…)
鞠莉『何一人で勝手に決めつけてるんですか?』
鞠莉『うりゃ、うりゃ、うりゃ、うりゃ、うりゃ!』
鞠莉『二年間も無駄にしてしまった私が言うんだから、間違いありませんっ』
曜(鞠莉ちゃん…私、これからどうなっちゃうのかな…)
鞠莉「あ、あの…」
23: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:27:09.47 ID:ZPxXjZi5.net
曜「ん…って、鞠莉ちゃん!?」
鞠莉「えへへ…」
曜(なんで、ここに…)
鞠莉「あの、よかったら私のうちにきてくれませんか?」
曜「えっ?」
鞠莉「私、お姉さんともっと一緒にいたいなって…」
曜「…ありがとっ、嬉しいよ!だけど、知らない人を家に呼んじゃいけないよ?おうちの人も困っちゃうだろうし」ナデナデ
鞠莉「だいじょうぶ、なんとかしますっ。それに私のうちたくさんお部屋あるからっ」
曜(確かに。ホテルだもんね)
鞠莉「それに…おねえさんは特別なお客様だから」
曜「特別?どうして?」
鞠莉「なんとなく…でも、そんな気がするの。だから…」
24: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:29:46.50 ID:ZPxXjZi5.net
鞠莉「だからお願い…」ウルッ
曜(う、そんな目をされると気持ちが揺らぐ…)
曜「確かに、お財布も電話もないから、泊めてもらえるとありがたいけど…でも、どうするの?」
鞠莉「まかせてっ」
…………………
曜「私は夏休みを使ってあちこちを旅している高校生です。偶然立ち寄ったこの淡島で、大きな野良犬に襲われていた鞠莉ちゃんたちを見つけまして」
曜「必死になって、なんとか犬を追い払ったのですが、その時にバッグをどこかにやってしまったみたいで…着替えや財布を入れていたので、船にも乗れず困っていまして…」
曜(…ということになってる。らしい)
「お嬢様からご事情を伺いました。危ないところを助けていただき、感謝の言葉もございません」
「お礼と言うには僭越なのですが、お部屋をご用意いたしますので、ぜひご利用ください。きっとお嬢様もお喜びになります」
鞠莉「♪」ニコニコ
25: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:30:27.30 ID:ZPxXjZi5.net
曜(事前に果南ちゃんとダイヤさんにも示し合わせてたのか、2人の家からもお礼の連絡があったみたい)
「かなちゃんとダイちゃんのご家族も、とても感謝されていました。くれぐれもよろしくと…本当に、ありがとうございます」
曜「いえ、そんな…」
鞠莉「♪」ギュー
曜(まだ小さいのに、この手際の良さと大胆さ…)
曜「鞠莉ちゃんって、すごいね…」
鞠莉「えへへっ♪」ニコニコ
26: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:31:46.20 ID:ZPxXjZi5.net
曜(それから、小さい鞠莉ちゃんと一緒の時間を過ごした)
曜(ホテルのディナーをご馳走になって。敷地の中を散歩しながら、友達のこと、学校のこと、家族のこと…色んなことを話した)
曜(私は本当のことは言えないから、誤魔化したり、作り話を交えたりもしたけど…小さい鞠莉ちゃんは素直で可愛くって、とっても楽しかった)
曜「2人のこと、かなちゃん、ダイちゃんって呼んでるんだね」
鞠莉「うん。私が『まり』だから、一緒が良いなって」
曜「かなちゃん、ダイちゃん、まりちゃん、か。ふふ、2人のこと、大好きなんだ?」
鞠莉「うんっ。転校してきてからずっと一緒なの。いつもみんなで遊んで、みんなでハグするの」エヘヘ
曜(小さい頃から仲良しだった3人が、2年間もすれ違っちゃうんだもん。辛かったよね…)
曜「よかったね、仲良しになれて」ナデナデ
鞠莉「うんっ!」
27: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:33:32.11 ID:ZPxXjZi5.net
…………………
曜「改めて思うけど、すごく豪華だなぁこの部屋。広いし、ベッドもふかふかだし、お風呂もとってもゴージャスだった」
曜「空いてる部屋で申し訳ないって言ってたけど、いやいや…まさかスイートルームに案内されちゃうとは」
曜「本当の事を言えない後ろめたさもあるし、色々落ち着かないなぁ…」ソワソワ
曜「ま、とりあえず、ベッドに寝てみようかな…」ポスッ
曜(あ…横になると急につかれが…)
鞠莉『おねえさんっ!』
曜「ふふ…小さい鞠莉ちゃん、ほんとうに可愛いな」クスクス
曜「…私はこれからどうすればいいんだろう。どうなっちゃうのかなぁ」
曜「パパ、ママ、千歌ちゃん、梨子ちゃん…」
曜「鞠莉ちゃん…」グスッ
コンコン
28: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:34:42.73 ID:ZPxXjZi5.net
曜「!」グシグシ
曜「は、はーい」
「わたし、マリーだよ」
曜「! 今、開けるね」ガチャ
鞠莉「こんばんは、おねえさんっ。あれ、目、どうかしたの?」
曜「っ、なんでもないよ。痒かったから、ついゴシゴシしちゃって」
鞠莉「わっ、ダメだよ。痛くなっちゃうよ」メッ!
曜「へへ、はーいっ」
鞠莉「もー…お邪魔しても、いい?」
曜「もっちろん!実は1人で寂しかったんだ。さ、どうぞー」
29: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:35:55.80 ID:ZPxXjZi5.net
鞠莉「ところで、お姉さん本当はどこから来たの?」
曜「えっ?えっと、その…」
鞠莉「…」ジッ
曜(う、核心を突かれた…でも、未来からやって来た、なんて言っても変に思われちゃうだけだよね)
曜「うーん…すごく近くて、とっても遠い所から、かな」
鞠莉「んー、なぞなぞ?」
曜「あははっ、ごめんごめん。そう聞こえちゃうよね」
曜「…実は、わからないんだ。なんでここに来たのかも、どうすれば帰れるのかも」
鞠莉「迷子になっちゃったの?」
曜「そう、だね。私、迷子なのかもしれない…」ウルッ
30: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:36:37.79 ID:ZPxXjZi5.net
鞠莉「そっか…じゃあ」ハグッ
曜「!」
鞠莉「へへ、さっきのお返しだよ」ギュ
鞠莉「かなちゃんに教わったの。悲しい時も、ハグすれば大丈夫だって」
鞠莉「ハグってすごいんだよ。嬉しいことはもっと嬉しくなるし、悲しいことがあっても元気になれるんだ」
曜「まり、ちゃん…」
鞠莉「お姉さん、辛そうな顔してるから…元気出して、ね?」ナデナデ
曜「…うんっ、ありがとう、鞠莉ちゃん」ギュ
鞠莉「えへへ、なんだか私がお姉さんみたいだね」
曜(そうだよ。鞠莉ちゃんは、私の大好きなお姉ちゃんなんだ…)
31: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:37:23.33 ID:ZPxXjZi5.net
…………………
鞠莉「それでね、あのね…」ウトウト
曜「眠そうだね、ってもうこんな時間じゃん!良い子は寝る時間だよ」
鞠莉「うー、もっとお話ししたい…」
曜「寝ないと疲れがとれなくて、明日遊べなくなっちゃうよ。いいの?」
鞠莉「やだー…」
曜「だよね。なら、もうお部屋に戻って――」
鞠莉「一緒に寝る…」ウツラウツラ
曜「えっ?」
32: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:38:04.95 ID:ZPxXjZi5.net
…………………
鞠莉「ありがとう…むりいってごめんなさい…」ウトウト
曜「ふふ、鞠莉ちゃんは甘えんぼさんだねー」
鞠莉「うん、まりー甘えんぼなの…」
曜(ふふ、可愛いなあ)ニコ
鞠莉「はぐ…」スッ
曜「うん、はぐっ」ギュ
鞠莉「お姉さん、あったかい…」
曜「ふふ、鞠莉ちゃんもだよ」
曜(あ、凄く心地いい…)トロン
鞠莉「とってもたのしかった…」
曜「うん、わたしも…」
鞠莉「えへへ…また、ね…」スゥ…スゥ…
曜「うん、またね…」
鞠莉「スー…スー…」
曜(かわいいねがお…おやすみ…)zzz
33: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:44:35.48 ID:ZPxXjZi5.net
…………………
眼が覚めると、一緒に眠ったはずの鞠莉ちゃんの姿は無かった。
鞠莉ちゃんだけじゃない。そこは見慣れた自分の部屋で。
不釣り合いなほど豪華なスイートルームも、ふかふかなベッドも…
あの世界の痕跡は、もうどこにも見つからなかった。
曜「夢、か…」
帰ってきた。そうだ、帰ってきてしまったんだ。
日常に戻れたことにホッとする気持ちよりも、喪失感と戸惑いの方が多かった。
曜「っ、鞠莉ちゃん…!」
腕に残っていた、鞠莉ちゃんの温もりが消えていく…
あの小さくって可愛らしい、天使みたいな笑顔には、もう二度と会うことはできない。
ぼんやりした頭に現実が押し寄せてきて、夢の世界の名残を容赦なく奪い去っていく。
曜「ふふ…またねって、言ったのにな…」グスッ
曜「まりちゃ、ん…」ポロ…
ガチャ
34: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:48:53.65 ID:ZPxXjZi5.net
鞠莉「あら。おはよう、曜」
曜「あ、鞠莉ちゃん…」グスッ
鞠莉「よく寝てたね。朝ごはん出来てるよ…って、もしかして泣いてるの?」
曜「…ううん、ちょっと痒かったからゴシゴシやっちゃって」
鞠莉「そう。ほどほどにしないとダメよ、キュートなおめめが台無しになっちゃうからね?」クス
曜「ふふっ…いつもの鞠莉ちゃんだ」
鞠莉「ん、いつもの?」キョトン
曜「ううん、なんでもない。あ、もうこんな時間だったんだ。ごめんね、すぐ起きるよ」
鞠莉「ん、待ってるねー」
曜(…夢、か)
35: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:51:09.92 ID:ZPxXjZi5.net
曜「ごめんね、当番じゃないのに朝ごはん作らせちゃって」
鞠莉「なんだか幸せそうな寝顔だったから。起こすのもかわいそうだなーって。ね、どんな夢見てたの?」
曜「え?えっと…」
鞠莉「あ!待って、言わないで。このマリーがズバリ言い当ててみせましょう!」
曜「いいけど、人の夢って案外難しいと思うけどなぁ。ヒントいる?」
鞠莉「いーえ、自力で当ててみせるわ」
曜「ふふ、そりゃすごいや。当てられたら、冷蔵庫のアイスひとつ食べていいよー?」
鞠莉「ますます外せなくなったわね。うーん、そうだなぁ…」
鞠莉「――すごーく近くて、とっても遠い世界の夢、かな?」
終わり
38: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 06:59:50.14 ID:/Q8aKGOW.net
良きかなようまり
42: 名無しで叶える物語 2017/10/12(木) 08:33:07.58 ID:f4aD0hfX.net
素晴らしい
乙
鞠莉「So Close, Yet So Far」
http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1507755580/