1: 名無しで叶える物語 2017/10/23(月) 23:54:18.12 ID:hsAE26gD.net
国木田花丸「浦女のヒーローとマル。」
2: 名無しで叶える物語 2017/10/23(月) 23:59:18.20 ID:hsAE26gD.net
今日は土曜日――朝から学校で、練習です!
新しい本の続きが読みたかったんだけど―――
今は、Aqoursの練習が一番ずら。
―――でも、やっぱり続きが気になるマルは、
みんなよりも早めに部室に来て、着替えを済ませて(いつも遅いから)
新しい本の続きを読んでいました。
ドタドタ―――
しばらく本を読んでいると、地面を揺らす勢いの足音が近づいてきて―――
「おっはよ―――――!!」
ドアが開いたと思った次の瞬間――――
座っていたパイプ椅子は目の前にあるし、
読んでいた本はおらの手を離れて、宙を舞ってるし―――
マルは気づけば目を回して、地面に倒れていました。
「うわあああ!ごめん―――大丈夫?怪我とかない?」
身体が起こされる感覚―――鼻をくすぐる、かすかな海の香り。
ゆっくりと目を開けると―――
目の前に、曜ちゃんの顔があったずら。
「よ、曜ちゃん――――」
緊張しちゃって、顔が熱くなるのがわかって―――
踊りの練習でやるよりも、ずっと高くジャンプして、曜ちゃんの腕の中から脱出。
「だ、大丈夫、です―――どこもケガしてません!」
思わず敬語が飛び出るマルを見て、クスクスと笑う曜ちゃん。
「あはは、よかったぁ―――またぶつかっちゃった。ごめんごめん―――」
おらやルビィちゃんが、Aqoursに入る前―――Aqoursがまだ、
千歌ちゃんと梨子ちゃんと、果南ちゃんと曜ちゃんの4人だけだった頃。
中庭から飛び出してきた曜ちゃんと、廊下でぶつかってからというもの―――
なんだか、私にわざとぶつかってきているような―――いやいや!!
そんなことを考えたら、神様に怒られちゃうずら―――
「なんか、マルちゃんって―――こう、曜を引き寄せる何かがあるんだよね~!」
―――あれ?
もしかして、本当にわざと―――?
マルが、曜ちゃんを呼び寄せてるって―――
たしかに物語では、活発な子が大人しい子を引っ張っていく――――
って展開は、たくさんあるけど。
それは物語の中だけで。
浦女のヒーローの曜ちゃんの隣に立つには―――
ミステリー小説で最初の犠牲者になるようなみそっこのおらは、絶対似合わないし。
「わかった!」
「ひゃ―――曜ちゃん?何が分かったずら?」
「マルちゃんさ、すごく落ち着く匂いがするんだよ!」
「落ち着く―――匂い?」
「海とは違う―――そう!畳とか、本とか、そういう匂いだよ!」
本、畳―――たしかに、マルにはぴったりの匂いだけど―――
「そっかそっか、そのせいだよ~!」
くんくん――――
顔を近づけて、マルの匂いを嗅ぐ曜ちゃん。
「よ、曜ちゃん――――く、くすぐったいよぉ」
曜ちゃんはかわいくて、元気で、堂々としてて。太陽みたいにキラキラ眩しくて―――
ちびでグズでダサいおらなんかは、絶対に追いつけない存在で。
そんな曜ちゃんを、こんなマルなんかが、
ちょっとでも、落ち着かせてあげることができるなら―――
隣にいても、いいのかな―――?
津島善子「不幸のあと。」
ピピピピピ――――
―――うん、熱は下がったみたい。
せきも止まったし、一晩寝たらちゃんと治ったわね。
昨日、風邪で学校を休んだの。
調理実習があって、私はチョコレートを持っていく係だったんだけど―――
班の皆に、迷惑をかけちゃった。
他の班の子が多く持ってきた分をわけてもらって、なんとかなったらしいけど―――
胸が痛い。
調理実習、楽しみだったのにな―――。
私はいつもそうなの。
遠足に行けば必ず雨。
雪が降れば絶対に転ぶし、コンビニのくじだって1回も当たったことない。
期末試験の直前にインフルエンザにかかるし、修学旅行だって風邪で行けなかった。
ヨハネは堕天使だから、当たり前―――なんだけど。
別に、私が不幸なのはいいのよ。
修学旅行に行けなくても、試験が追試になっても、私が困るだけだから。
でも―――
今回の調理実習は、私がいないせいで、班のみんなが困った。
Aqoursの練習だって、昨日もあったはずなのに―――休みになったらしい。
私が休んだから。
もう―――ヨハネってば、運悪すぎ。
いくら不幸な堕天使だからって、皆に迷惑かけるのは―――ナンセンスよね。
はぁ……。
ピンポーン―――――
―――宅急便かな?
「今行きます――――」
ドアの覗き穴から見えたのは、宅急便のお兄さんのユニフォームじゃなくて、
見覚えのある赤いツインテール―――
「ルビィ!?」
急いでドアを開けると、ルビィはふわぁっと笑って、
「あ、よっちゃん!よかったぁ―――元気そうで♡」
―――なんて、いつもの調子で話しかけてきた。
「どうしたの?そんなに大きい荷物持って―――」
「昨日、よっちゃん休みだったでしょ?それでね―――調理実習で作ったブラウニー、一緒に作ろうかと思って」
ルビィが両手で重そうに抱えるビニール袋には、たしかにブラウニーの材料が詰まってる。
「マルちゃんは法事だっていうし、他のみんなも用事があるみたいで―――ルビィひとりなんだけど」
やだ――ルビィ、やめてよ。
ちょっと―――私は悪魔だけど、こういうの弱いんだから―――
私がうつむいていると、ルビィは震えた声で――
「ご、ごめんね!やっぱり迷惑だったよね、突然―――」
なんて言うの。
「そんなことない!で、でも―――風邪、移っちゃうかもしれないし」
「大丈夫だよぉ!ルビィ、この前風邪引いたばっかりだから♪―――あ、もしかして、ルビィの風邪、うつしちゃったのかな―――うわああああ~~~ん、よっちゃんごめんなさい!!」
ひとりで泣き出したルビィをなだめて(荷物も重そうだし)あがってもらうことにしたわ。
「うんっ♪お邪魔しまぁす!」
丁寧に靴をそろえるルビィ。
―――こういうところは、やっぱり姉妹よね。
ピロン―――
携帯には、みんなから心配のメッセージがたくさん届いてた。
―――そっか。
みんなと一緒なら、不幸が去った後に、素敵な幸福が訪れるんだわ。
「―――ありがとう、ルビィ」
「え―――ルビィ、まだ何もしてないよ?」
周りに迷惑をかけないようになら、だけど―――
運勢最悪の不幸な堕天使ヨハネでも、いいかなって―――ちょっぴり、思っちゃった。
ダイヤ「跡継ぎの道。」
なんとなく、その日は気分が晴れなくて、今日の空模様みたいに、モヤモヤしていて。
少しでも、学校に残っていたくて。
練習が終わった後、わたくしは――――
「ダイヤちゃん、どうしたの?曜、なにかしたっけ―――」
この子を誘った。
たしかに曜ちゃんは考え無しに突っ走るところがあるし、
落ち着いて話をする相手としては間違っているのかもしれない。
ちゃんと話をするなら、梨子ちゃんとか、マルちゃんの方が向いてるわね。
でも―――考えも無しに、声をかけるわたくしではないわ。
曜ちゃんに、聞いてみたいことがあったの。
「聞いてみたいこと?」
「曜ちゃん―――スイミングスクールに通っていたでしょう?」
「うん!高飛び込みの練習でね!」
「どうして休止届を出せたの?」
口に出さなくとも、頭にハテナが浮かんでいるのが見えるような顔の曜ちゃん。
「ごめんなさい―――聞き方が悪かったわ。どうして、そんなに簡単に休止を決められたの?」
曜は、全日本級クラスの飛び込み選手。
国の強化指定選手に選ばれて、将来はオリンピック選手候補だ―――
なんて言われている曜ちゃんが。
あっさり、千歌ちゃんたちとスクールアイドルをやるから飛び込みはお休みします―――だなんて。
もう大騒ぎよ。
しばらくその話題で持ち切りだったわ。
―――それで、当の曜ちゃんは。
「だって―――毎日プールに行ってたら、ダンスも歌も練習できないでしょ?」
そんなの当たり前―――そんな顔で、私を見つめる。
「だから、そうじゃなくて――」
「じゃあ―――やりたかったからかな?
千歌ちゃんが人数が足りなくて困ってる―――って聞いたとき、
やらなきゃって思ったし、面白そうだったから、やってみよう!って思って」
「でも、周りからすごく期待されていて―――色々言われたでしょう?悩まなかったの?」
「うーん―――でも、曜は曜だし。
飛び込むのも好きだけど、でも今はこっち―――アイドルやりたいし、好きだし♡
お父さんの跡を継いで船長にもなりたいし!
先生とか、スイミングのコーチには色々言われたけど―――千歌ちゃんたちも大事だし。
好きにしろって言われちゃったし♪そんなら、好きにやりますってことで―――
曜はとにかく、人生という一度きりの航海で、やりたいことをやるだけなのであります♪」
「曜、ちゃん――――――」
わたくしは親の言う通り、求められるとおりに優等生を―――黒澤の跡継ぎを演じる。
将来は、定められた道を歩むだけ。
自由や決定権など、わたくしには無い―――
そう考え、決め込んでいたわたくしには―――
曜ちゃんの考え方はあまりにも衝撃的でした。
「ねえダイヤちゃん、土曜日のお昼ってヒマ?曜、ご飯食べに行くつもりなんだけど―――あ、お稽古とかあったりするかな?」
「え、っと―――そうね、お琴の練習があるわ」
「そっかぁ―――さすがダイヤちゃん、休みの日まで―――」
曜ちゃんの残念そうな顔を見ていたら―――なんだか、良くないことを思いついてしまったの。
「―――ううん。やっぱり―――いいわよ、土曜日」
「ホント!?」
「ええ。別の日にしてもらうわ」
「え――――えぇ~っ!?そ、それって大丈夫なの!?」
全身を動かして驚く曜ちゃん。
フフ―――♡
本当に元気ね。
「曜ちゃん、あなたが言ったのよ」
わたくしの言葉にキョトンとして頭をひねる曜ちゃんを見て、
それがなんだか面白くて―――
「やりたいことを、やるんでしょう?」
「―――うんっ♡」
今度は、ひまわりみたいな眩しい笑顔を見せる曜ちゃん。
わたくし――――
ワガママを言ってみるのも、いいのかもしれないなんて――――
そう思ってしまったの。
わたくしの道――航海の終点は、黒澤の跡継ぎ。
それは、避けられないものかもしれないけれど。
途中でちょっと寄り道をするくらい、許されてもいいわよね?――って、手帳に書いておきましょう。
それと―――土曜日の予定もね♡
果南「変わっていくもの。」
「果南ちゃん、そうじゃなくて―――こう!」
「えーっと―――こう?」
「ちがうよ~~~~!!」
朝の仕事が終わったあとの、午前10時ごろ。
千歌と一緒に(というか強制的に)、アイドルとしての特訓をすることになった。
かわいくポーズを取るための秘訣だとか、ボイストレーニングとか―――
やたら細かい千歌の指示は、私の耳に入った後、半分くらい反対側の耳から抜けていく。
こだわって考えるの、あんまり好きじゃないんだ。
「も~、じゃあ次は筋トレね!まずは腕立てから、一緒に行くよ~!い~ち、に~い―――」
千歌の掛け声に合わせて、私も腕立て伏せをする。
うん、いい感じ。
かわいいポーズじゃ、気合入らないしね♡
「さ~~んじゅ!―――ふぅ!じゃあ次は腹筋ね!果南ちゃん、足押さえてて」
「はいよー」
身体もいい感じに温まってきたところで、ふと―――不思議な感覚に襲われた。
―――なんだろう?
「さんじゅ~!はい、次は果南ちゃんの番!―――って、果南ちゃん?」
「―――あ、ごめんごめん。次、私だね」
千歌に足を押さえてもらって、腹筋を始める。
さっきのモヤモヤはなんだろう―――。
「果南ちゃん?おーい、もう30回終わったよ?果南ちゃ―――あいたぁ!」
ぼーっとしてたら、私と千歌の頭がぶつかって―――ごつんと鈍い音がする。
「いってて―――ち、チカごめん!大丈夫?」
「―――あはは、大丈夫。果南ちゃんこそ大丈夫?」
「うん―――なんか、ちょっと考え事」
「果南ちゃんが考え事なんて、珍しいね」
「―――たしかに、そうだね」
基本的に私は、頭空っぽにして海で泳ぐか、海辺でごろんと転がってるか―――
なんだけど。そんな私が、覚えた違和感。
その後も色々やったんだけど、なんかぼーっとしちゃって―――
いったんお昼を食べることにした。
「ん~♡やっぱり果南ちゃん家の魚は美味しい♪」
「チカんちのも同じとこの魚だよ?」
「焼き加減とか味付けとか、全然違うでしょ!―――んん~♡」
むくれたかと思ったら、次の瞬間には美味しそうに魚をほおばって笑う千歌を見て、私は呟いた。
「チカは変わらないな―――」
――――あ。
そっか。
さっき、私の頭の中はもやもや、ぐるぐるしてたのは―――
千歌が変わったからなんだ。
―――千歌、大きくなったんだ。
もちろん、身長もそうなんだけど。
果南ちゃんと同じクラスになりたいのに追いつけない―――って、騒いでたのに。
筋トレだって、誘ってくるくせに―――私より先にへばってたのに。
淡島神社の階段を上るのだって―――途中で休憩してたのに。
千歌はいつのまにか、私と肩を並べるようになって。
Aqoursのリーダーとして、スクールアイドルとして――――
私たちを引っ張っていくところまで、成長したんだよね。
千歌の2番目のメンバーとして、ずっと隣に居た私としては―ー―
嬉しいけど―――なんだろう。少し―――寂しい?
「あははは♡」
「どうしたの、果南ちゃん?」
「――千歌、大きくなったなぁ、って。そう思っただけだよ」
千歌の頭をぽんと撫でて、空いた食器を片付ける。
「あー、子ども扱いしたでしょ~~!!」
「そんなことないって。ほら、早く食べちゃいなよ」
「む~~~~!!」
でも、こうして子どもみたいに怒る千歌を見ると、やっぱり――――
ずっと変わらないままなのかも。
千歌「ダイヤお姉ちゃん。」
あぁ、もぉ―――
先生ってば、話長いんだから―――!
ユニット練習が終わって解散になった後、今日が期限のプリントを出し忘れたことに気づいて―――
職員室に駆け込んで、先生の長くてつまらない話を聞かされちゃった。
はぁ―――せっかく練習楽しかったのに、気分が―――
もう、帰り道にコンビニでアイスでも買って―――
あれ?
チカが開けたのとは反対側のドアから同時に出てきたのは―――
「――――千歌ちゃん?どうしたのよ、こんな時間に職員室だなんて」
山積みの書類を抱えた、ダイヤちゃんとすれ違った。
「ふう―――ありがとう、助かったわ」
これくらいお安い御用だよ―――とチカは胸を叩いて、自慢げに返す。
あんなにたくさんの書類、いくらダイヤちゃんでも大変だもんね。
「ダイヤちゃん、AZALEAの練習出てたよね?」
「ええ。ただ―――仕事を少しだけ残していたのを思い出して」
「そっか―――大変だね、生徒会長」
「生徒会長なんて、名前だけの雑用みたいなものよ。
とは言っても―――曜やルビィみたいな人には、難しいかもしれないけれど♡」
曜ちゃんやルビィちゃんが生徒会長をしているのを想像しようとしたけれど―――
たしかに、ちょっと似合わないかも――――クスクス♡
「――――ねえ、千歌ちゃん」
ダイヤちゃんはいつもと変わらないように―――
「そういえば――今日はユニット練習だったわね。ルビィ、迷惑かけてないかしら」
――――でも、少しだけ心配そうに、チカに聞いてきた。
「うん!むしろ、チカも曜ちゃんもこんなんだから、一番しっかりしてるよ~!」
大雑把で、考えずに突っ走るタイプのチカと曜ちゃんを止めるのは、
CYaRon!ではいつもルビィちゃんなんだよね。
いつもごめんね、ルビィちゃん♡
「そう、それなら――――よかったわ」
キラキラって夕日に照らされるダイヤちゃんの顔は、ほんの少し緩んでて、すごく綺麗で―――
ちょっとだけ、寂しそうに見えたような気がしたんだ。。
「ダイヤちゃん、もしかして―――」
ルビィちゃんが立派になっちゃって、寂しいんだ?
――――って、聞いてみたら。
「はぁ?」
さっきまでの優しい顔はどこへやら―――
ルビィちゃんがいつも恐れる、コワ~イ顔になっちゃった♡
「寂しいだなんて思うわけないでしょ?
そもそも、ルビィもそれくらいできるようになってもらわないと困るわ。
あの泣き虫でへなちょこのルビィが、千歌ちゃんや曜ちゃんの前に立って
引っ張っていけるようになったのは認めるけれど―――
そんなことを言う前に、そろそろ千歌ちゃんにも、
Aqoursのリーダーとしての自覚を持ってもらえると嬉しいわ」
あはは―――チカの勘違いだったみたい。
お説教が始まっちゃった―――あ、そうだ♪
「ルビィちゃんがCYaRon!のまとめ役になれたのは、ダイヤちゃんの妹だからだと思うんだよね――」
ダイヤちゃんは「何が言いたいの?」って、チカを見てくる。
「だから、チカもダイヤちゃんの妹として、リーダーシップを育てることにするよ~~!
大丈夫!チカ、根っからの末っ子気質だから!」
ウチにいる2人と―――果南ちゃん。
いっぱいお姉ちゃんに育てられてきたからね!
「何が大丈夫なのよ―――ああ、もう。
これ以上騒がしい妹が増えたら、頭が痛くなっちゃうわ。
ほら、もう下校時刻よ。早く帰りましょう」
「は~い♪」
さっきまであんなに怖い顔をしていたダイヤちゃんは、すっかり呆れて帰る準備を始めちゃった。
チカ、お姉ちゃんからのお説教を逃げる方法は、いくらでも知ってるんだよね―――
コツは、妹アピールをして、さりげな~~く話を逸らすこと!
この方法は、全戦全勝の必勝法なのだ―――クスクス♡
「ダイヤちゃん、帰りにアイス食べにコンビニ行かない?」
「遠慮しておくわ―――と、言いたいところだけれど。
―ー―さっき、書類を運ぶのを手伝ってもらったお礼に、付き合ってあげる♪」
「やった♡」
ルビィちゃんは怖がってるし、たしかに厳しいところもあるけど―――
ダイヤちゃんはやっぱり、優しいお姉ちゃんなんだよね。
もし、チカの本当のお姉ちゃんがダイヤちゃんだったら、どうなってたんだろう―――?
やっぱり、ルビィちゃんみたいに怖がってたかな?
それとも、今とあんまり変わらないかな。
さすがに、いつも一緒に遊んでくれる優しい果南ちゃんみたいには、いかないよね―――
「ねえ、ダイヤお姉ちゃんは何食べる?」
「千歌の姉になった覚えはないけれど―――わたくしはやっぱり、抹茶がいいわ。千歌ちゃんは?」
「チカはね―――」
ダイヤちゃんと千歌。
意外と珍しい組み合わせの――――お姉ちゃんと妹の2人組は。
アイスを目指して―――ゆっくりと、歩いていくのでした♪
桜内梨子「転校生と生徒会長。」
私が転校してきたばかりのころ―――。
2時間目が移動教室だったんだけど―――
職員室から戻ってきたら、もうみんないなくなってて。
急いで教室を出るけど、行き先は全然わからないし。
人見知りの梨子は、職員室に戻る勇気も、通りすがる先輩や後輩にも聞けなくて―――
廊下で途方に暮れていました。
「どうしよう―――」
ウロウロしていた、そんな時。
どん、と――――1人の女の子にぶつかっちゃいました。
謝らなきゃと思って、急いで振り向いた先に居たのは―――
「ご、ごめんなさい―――」
「こちらこそごめんなさい―――って」
わあ―――
サラサラで綺麗な黒髪に、透き通るような翡翠色の瞳と、かわいい口元のほくろ。
まるでお人形さんがそのまま動いているみたいな―――そんな人でした。
「―――あなた、転校生ね?3年生でも噂になっているわよ」
「は、はい―――」
この声、どこかで聞いたことがあるような―――
―――あ、そうだよ。
朝、いつもスピーカーから聞こえる放送と同じ―――だと、思う。
「もしかして、教室の場所がわからないとか?」
「そ、そうなんです―――」
「フフ――やっぱりね。次の時間は―――家庭科ね。案内してあげるわ」
「そんな、悪いです―――」
「いいのよ。どうせ私も近くまで行くし―――
それに、困っている生徒を放っておける生徒会長ではなくてよ♡」
そうして私は、優しい生徒会長さんと並んで被服室に向かいます――――
って、なんだか妙に見られていて――――
「こんな田舎に転校生なんて、みんな珍しいのよ。
しかも、その転校生がわたくしと並んで歩いているんだから―――嫌でも目立つわよ。フフ♡」
恥ずかしくて―――顔から火が出ちゃいそうです……。
――――放課後、部室でダイヤちゃんとふたり、みんなの到着を待っているとき。
そんなことを思い出していました。
―――まさか、あの生徒会長さんと一緒に、しかもアイドルをやるだなんて。
あの時は思いもしなかった――――
ううん、今でも信じられないくらい。
――――って話を、ダイヤちゃんにしてみたんだけど。
「そんなこと―――あったかしら?」
あっさり、こんなことを言われちゃった。
あはは―――やっぱり、覚えてないかな。
って―――思ったんだけど。
「フフ♡ そんな顔しないで。ちゃんと覚えていてよ?
でも、半年も立っていないのに、随分昔のことのように思えるわ。
だって梨子ちゃんってば―――昔から一緒にいたみたいに、すっかり浦女に馴染んじゃっているんだもの♡」
どきり。
私の胸が、大きく跳ねた気がした。
この辺の子たちは、ずっと昔から知り合いで、お友達で―――
都会でも地味な方だった私が、そんな中に引っ越してきて―――不安で仕方なかった。
でも―――そっか。
私、馴染めてるかな。
ダイヤちゃんの言葉を聞いたら、なんだか―――胸がじーんと熱くなってきて。
「ちょっと、梨子ちゃん―――なに泣いてるの!?やだ―――」
ダイヤちゃんはすぐに、私の方に駆け寄ってきてくれて。
その優しさが嬉しくて、また涙が――――
「り、梨子ちゃん―――わたくし、何か嫌なことでも―――」
「ううん、そんなんじゃなくて―――嬉しかったんです。ダイヤちゃん、ありがとう――――」
ぎゅっと――――優しいダイヤちゃんに、思わず抱き付いてしまいました。
「もう―――また、妹が増えてしまうわね」
その言葉の意味はよくわからないけれど―――優しく、梨子の頭を撫でてくれました。
ダイヤちゃん。みんなが来るまでの、もう少し。
もう少しだけ――――
ダイヤちゃんの優しいあたたかさに、甘えさせてください―――――♡
曜「浦女スポーツ王女決定戦!」
お昼休みだ~~~~~!!
午前中の授業は退屈で全部寝てたから―――元気いっぱい!
ノートは―――あとで梨子ちゃんとかに見せてもらうとして。
カロリーメイトで栄養補給して、レッツ運動~!
――――と、体育館に駆け込んだ曜の目が真っ先に見つけたのは、
内浦では珍しいけど、でも馴染みのある、眩しい金色の髪の毛の――――
「鞠莉ちゃんだ!」
「ワォ、曜♡ How are you?」
鞠莉ちゃんはウインクをして、なんか英語で話しかけてきた。
こういう時の返しは――――えーっと、なんだっけ?
「あいふぁいんせんきゅー?」
「えっと―――どうして疑問系なの?」
「アハハ、よくわかんない♡ そんなことより―――鞠莉ちゃん、どうしたの?部室に忘れ物とか?」
練習とか、打ち合わせとか―――
お昼休みにAqoursで集まることが無いときは、ほとんど鞠莉ちゃんとは会わないんだよね。
あ――――曜がそこらじゅうを走り回ってるからかな?
「午前中はず~っと座ってて、授業は退屈で、マリーのかわいいお尻も悲鳴を上げてたの―――」
大げさに肩をすくめて、お尻をさする鞠莉ちゃん。
「だから、体をほぐしに―――ちょっと、運動でもしようかなと思って♪」
「鞠莉ちゃん、運動好きだったっけ?」
「Of course!マリーはsportsも趣味なのよ☆」
そうだったんだ―――じゃあ、やることはひとつだね♡
「さあ鞠莉ちゃん、曜と勝負だ~~~~~!!」
勝負のルールは、バスケの1on1―――
先にシュートを3本入れたほうの勝ちにしたんだけど。
気合十分、体調万全だったはずの曜は――――
「クスクス―――♡ 相手が悪かったわね♪」
得意げにボールを抱える鞠莉ちゃんを前に、うなだれるしかなかったんです……。
そんな――――――ウソだ~~~~~!!
もう、めっちゃ悔しい――――
今日の曜は絶好調で、それなのに―――
おのれ~~~~!!
鞠莉ちゃんめ!
「ウソ、あの曜ちゃんに勝っちゃうなんて―――」
「ヒーロー陥落!?」
「鞠莉ちゃん、運動得意だとは知ってたけど、まさかあんなに―――」
いつのまにかたくさんできてたギャラリーからの声に―――ううん。
思わぬ強敵の登場に、曜の闘志は燃え上がっているよ!
「鞠莉ちゃん!次は―――」
結局。
ギャラリーの皆が帰っていったことにも気づかず―――
5時間目のチャイムの音で、やっと勝負は中断。
曜と鞠莉ちゃんは――――ふたり揃って、授業に遅刻するのでした。
あ、ほ、ほら、ヒーローは遅れてやってくるって言うし――――
あ、あはははは――――♡
「どういうことなの、曜、鞠莉―――」
放課後の練習前、ダイヤちゃんに呼び出された曜と鞠莉ちゃんは―――お説教を受けていました。
「もちろん、お昼休みに遊ぶなとは言わないけれど。でも、授業に遅れていくのは―――」
もう、そんなに言わなくても反省してるって~~~~~!!
そう思って、ちらっと鞠莉ちゃんのほうを見ると。
鞠莉ちゃんも曜のほうを見てて―――ウインクのあと、急に立ち上がった。
「あ、そうだわ―――ダイヤごめん、先生に呼ばれてたの忘れてた☆」
「え?―――はぁ、そういうことは早く言ってくれる?
―――とにかく、今後は気をつけること。わかったわね?」
「はーい!」
もう一回、鞠莉ちゃんのほうを見ると―――
小さく舌を出して、曜に笑いかけてくれました♪
職員室に行くフリをして隠れてた鞠莉ちゃんを待って、一緒に部室に向かう。
「あはは―――怒られちゃったね」
「たしかに、授業に遅れちゃったのはよくなかったけど―――
でも、楽しかったし♪――また勝負しようね、曜♡」
「もっちろん―――♡」
固く握手を交わす、ふたりのスポーツマン。
―――あれ、スポーツウーマン?
体育の時間のヒーロー、って――――女の子はヒロイン?
――――まあ、いっか。
勉強じゃ、鞠莉ちゃんに勝てそうにないけど―――
浦女のヒーローの名にかけて、渡辺曜―――スポーツでは絶対に、負けないのであります!
ヨーソロ♡
小原鞠莉「心揺らす音楽。」
うん―――やっぱり最高ね♪
意外にノリノリな、朝の放送のダイヤの声も―――
どーんと立っている大きな木が見せる、木漏れ日も―――
マリーの耳に届く、ピアノが奏でる旋律も―――
とっても綺麗なの♡
―――ん~~、やっぱりいい音♪
このハートのこもった素敵な音色。
間違いないわ―――梨子ね♪
春に―――梨子が転校してきて、1ヶ月も経たない頃かな?
私がAqoursに入る前―――朝の中庭で、このピアノを聞いてからというもの―――
マリーは密かに、ピアニスト梨子の大ファンなの♪
だからこうして、毎日ちょっと早く登校してきて―――
中庭のコンサートが始まるのを、待っているのよ♡
――――あれ?
今日は千歌ちゃんの声、聞こえてこないわ。
いつもはスタンディングオベーションの代わりに―――
千歌が大きな声で、梨子のこと褒める声が聞こえてくるんだけど。
じゃあ、今日は――――
マリーが代わりに、梨子を褒めに行っちゃおうかな♡
ピアノのある音楽室に近づくにつれて―――
聞き慣れない曲が聞こえてきたの。
―――でも、この演奏、たしかに梨子の旋律だわ。
もしかして――――新曲かしら♪
そっとドアを開けて、音楽室を覗くと―――
Aqoursで歌って踊るのとは違うけど―――でも、やっぱり楽しそうに、梨子がピアノを弾いていたわ。
マリーは聴き入っちゃって―――
すぐに、1曲終わっちゃった。
ぱちぱちと拍手をすると、梨子はびくっと立ち上がって。
「ま、鞠莉ちゃん―――いつからそこに!?」
あら―――ピアニスト梨子から、いつものcuteな梨子に戻っちゃったわね♪
「梨子が演奏を始めてからずっとよ―――♡」
「も、もう―――いるなら言ってよぉ……」
「だって―――ピアノのコンサート中におしゃべりなんて、ナンセンスじゃない?」
「コンサートって―――」
眉を下げて、照れ臭そうにしてる梨子。
もう―――梨子ちゃんってば、反応がかわいいから―――
マリー、ちょっとイジワルしたくなっちゃうの♡
「こう見えても私、梨子のことrespectしてるのよ?」
「リスペクト?」
「そうよ♪我らがAqoursの曲を作り上げ―――このマリーの心を揺らす、
天才ピアニスト―――桜内梨子ちゃんをね♡」
我ながらべた褒めね―――なんて思っていると、案の定梨子は顔を真っ赤にして―――
「ま、鞠莉ちゃん―――そんなに褒められると、恥ずかしいっていうか―――私は別に、特別なことをしてるわけじゃないし―――」
ウフフ―――ホント、かわいいんだから♪
「ねえ梨子、今度はマリーと一緒に、ロックな曲を作ってみない?とってもexcitingよ♪」
「ロック、って―――私、全然聞いたことないし―――」
「No problem♪」
「で、でも―――」
マリーが押しても押しても、梨子ちゃんは引いて引いて、引き下がるばかり。
まったく、もう―――いつもこうなんだから。
って――――それが、梨子の魅力でもあるのかな?
でも――――
ハードなロックが好きな私のハートを掴んだんだから――――
もっと自信を持ってほしいわね♪
マリーの心を盗んだ罪は、重いのよ?
責任取ってもらわなきゃ――――ね♡
黒澤ルビィ「ルビィのまま。」
お父さんとお母さんとお姉ちゃん、明日のお昼まで、踊りの発表会でいないんだぁ。
だからルビィ、おうちにひとりです―――。
―――お姉ちゃんは、すごい。
ルビィとは違って、お稽古も、勉強も、なんでも完璧にできちゃうんだぁ。
そんなお姉ちゃんのことが、羨ましいし――――
ルビィには似合わないんじゃないかなぁ、って思うんだぁ。
ドジでチビで――――
アイドルをするにも、いっぱいなルビィには。
って―――――そんなこと考えても、仕方ないよね。
せっかくのお休みなのに、落ち込んじゃっててももったいないし。
いい過ごし方を考えよう――――。
いつもなかなか見れない、テレビを見ようかな?
それとも、マルちゃんを誘って一緒に遊ぼうかな――――
――――って、思ったんだけど。
DVDは千歌ちゃんに貸しちゃってたし、マルちゃんもお寺の用事があるって。
じゃあ―――ちょっと、お散歩してこようかな。
この前、果南ちゃんに教えてもらったんだぁ。
ちょっとでも悩んだら、海を見れば、どうすればいいか教えてくれる、って―――
だから、ルビィはふらふら歩いて、千歌ちゃん家の前の海岸まできてみたの。
えっと――――
海さん。ルビィはどうするのがいいんでしょうか―――
って、心の中で聞いてみるけど。
海さんは何も答えてくれない。
うわーん―――やっぱり、小さい頃から海で泳いでる果南ちゃんとは違って、
なかなか泳げない、へなちょこのルビィには何も教えてくれないよ―――!!
「ルビィ~~~~~~~~!!」
――――あれ?
ルビィを呼ぶ声が聞こえて――――もしかして、本当に海さん!?
「お~~~~~~~~~~い!!」
―――――あれ?
対岸の淡島で、誰かが手を振ってる。
茶色いおうまさんに乗った、内浦では珍しい、眩しい金髪の女の子。
こっちにまで聞こえてくる、ルビィじゃとても出せないくらい大きくて―――きれいな声。
「ま、鞠莉ちゃん―――」
「どうしたの~~~~~~~~!!!!」
―――――決~めた!
エヘヘ、果南ちゃん―――どうすればいいか、海さんが教えてくれたよぉ♡
「ハァイ、ルビィ♪」
こんなちっちゃなルビィを、海の向こうから見つけてくれたことが嬉しくて―――
鞠莉ちゃんに会いに、淡島に来ちゃいました。
「珍しいわね、ひとりで淡島に来るなんて―――」
港で迎えてくれた鞠莉ちゃんは、ルビィの頭を撫でてくれます。
お姉ちゃんは絶対こんなことしてくれないから―――ちょっと嬉しい♪
「えっとね――今日はルビィ、家にひとりだから―――何をしようかなって、迷ってたところだったの」
「そうなんだ。ダイヤは?」
「お琴の発表会で、明日まで帰ってこないんだぁ」
「なるほど―――それで、口うるさいsisterも、ダディたちもいないわけね!」
く、口うるさいって―――
「じゃあルビィ、うちに来ない?」
「へ―――――?」
「さ、乗って!スターブライトの乗り心地は最高よ―――!」
あ、あわわわ―――
鞠莉ちゃんにされるがまま、スターブライトさんに乗せられたルビィは―――
なにがなんだかわからないまま、鞠莉ちゃんのおうちに向かうのでした。
「す、すご~~~~~~~い!!」
鞠莉ちゃんのホテルは、ルビィがいつも暮らしてる家とは全然違って、キラキラしてて―――
「もう、かわいいんだから♡
ウフフ―――今日はマリーと一緒に、た~くさん遊びましょ♪
今日はマリーが、ルビィのsisterなんだからね―――☆」
鞠莉ちゃんの妹――――
ルビィにできるかな?
「―――あのね、ルビィ」
鞠莉ちゃんはルビィをまっすぐ見つめて、言いました。
「別にお姉ちゃんに似合う妹になる必要はないのよ!
ルビィはマリーやダイヤに比べて小さいし、ちょっとドジかもだけど―――
それがルビィのかわいらしさなんだから、ね?」
ルビィのことをぎゅっと抱きしめて、頭を撫でてくれる鞠莉ちゃん。
「きっとダイヤもそう思ってるよ。ルビィはルビィのままでいいの♪」
ルビィから離れて、くるっと回って、そう言う鞠莉ちゃん。
――――そう、かな。
ルビィ、お姉ちゃんの―――妹で、いいのかな?
「せっかくのholidayに、そんな暗い顔してたら―――
オテントサマに怒られちゃうって、果南が言ってたよ?
さ、なにして遊ぼうかしら――――♪♪」
ルビィに向けて伸ばしてくれた鞠莉ちゃんの手を、ぎゅっと掴む。
お姉ちゃんや鞠莉ちゃんみたいに、強くて、立派になるなんて、ルビィにはできないって思うから――――
ルビィは、これからもルビィのままでいることにします。
弱虫で、泣き虫で―――マルちゃんやみんながいないとダメダメな、
お姉ちゃんの妹の、ルビィのままで。
だけど、今日だけは―――
ダイヤお姉ちゃんじゃなくて、鞠莉お姉ちゃんの妹なんだけどね♪
エヘヘ♡
このスレはここでおしまいにします
登場メンバーが偏ってしまって申し訳ない
ここでもらった組み合わせはまた近々スレ建てて書こうと思いますのでその時はよろしくお願いします
お付き合いいただきありがとうございました
元スレ
【SS】G`s設定で短編集ずら
http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1508770458/
今日は土曜日――朝から学校で、練習です!
新しい本の続きが読みたかったんだけど―――
今は、Aqoursの練習が一番ずら。
―――でも、やっぱり続きが気になるマルは、
みんなよりも早めに部室に来て、着替えを済ませて(いつも遅いから)
新しい本の続きを読んでいました。
ドタドタ―――
しばらく本を読んでいると、地面を揺らす勢いの足音が近づいてきて―――
「おっはよ―――――!!」
ドアが開いたと思った次の瞬間――――
座っていたパイプ椅子は目の前にあるし、
読んでいた本はおらの手を離れて、宙を舞ってるし―――
マルは気づけば目を回して、地面に倒れていました。
3: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 00:03:37.09 ID:ay6TDxZd.net
「うわあああ!ごめん―――大丈夫?怪我とかない?」
身体が起こされる感覚―――鼻をくすぐる、かすかな海の香り。
ゆっくりと目を開けると―――
目の前に、曜ちゃんの顔があったずら。
「よ、曜ちゃん――――」
緊張しちゃって、顔が熱くなるのがわかって―――
踊りの練習でやるよりも、ずっと高くジャンプして、曜ちゃんの腕の中から脱出。
「だ、大丈夫、です―――どこもケガしてません!」
思わず敬語が飛び出るマルを見て、クスクスと笑う曜ちゃん。
「あはは、よかったぁ―――またぶつかっちゃった。ごめんごめん―――」
おらやルビィちゃんが、Aqoursに入る前―――Aqoursがまだ、
千歌ちゃんと梨子ちゃんと、果南ちゃんと曜ちゃんの4人だけだった頃。
中庭から飛び出してきた曜ちゃんと、廊下でぶつかってからというもの―――
なんだか、私にわざとぶつかってきているような―――いやいや!!
そんなことを考えたら、神様に怒られちゃうずら―――
「なんか、マルちゃんって―――こう、曜を引き寄せる何かがあるんだよね~!」
―――あれ?
もしかして、本当にわざと―――?
6: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 00:08:33.28 ID:ay6TDxZd.net
マルが、曜ちゃんを呼び寄せてるって―――
たしかに物語では、活発な子が大人しい子を引っ張っていく――――
って展開は、たくさんあるけど。
それは物語の中だけで。
浦女のヒーローの曜ちゃんの隣に立つには―――
ミステリー小説で最初の犠牲者になるようなみそっこのおらは、絶対似合わないし。
「わかった!」
「ひゃ―――曜ちゃん?何が分かったずら?」
「マルちゃんさ、すごく落ち着く匂いがするんだよ!」
「落ち着く―――匂い?」
「海とは違う―――そう!畳とか、本とか、そういう匂いだよ!」
本、畳―――たしかに、マルにはぴったりの匂いだけど―――
「そっかそっか、そのせいだよ~!」
くんくん――――
顔を近づけて、マルの匂いを嗅ぐ曜ちゃん。
「よ、曜ちゃん――――く、くすぐったいよぉ」
曜ちゃんはかわいくて、元気で、堂々としてて。太陽みたいにキラキラ眩しくて―――
ちびでグズでダサいおらなんかは、絶対に追いつけない存在で。
そんな曜ちゃんを、こんなマルなんかが、
ちょっとでも、落ち着かせてあげることができるなら―――
隣にいても、いいのかな―――?
9: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 00:13:24.59 ID:ay6TDxZd.net
津島善子「不幸のあと。」
10: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 00:16:28.35 ID:ay6TDxZd.net
ピピピピピ――――
―――うん、熱は下がったみたい。
せきも止まったし、一晩寝たらちゃんと治ったわね。
昨日、風邪で学校を休んだの。
調理実習があって、私はチョコレートを持っていく係だったんだけど―――
班の皆に、迷惑をかけちゃった。
他の班の子が多く持ってきた分をわけてもらって、なんとかなったらしいけど―――
胸が痛い。
調理実習、楽しみだったのにな―――。
私はいつもそうなの。
遠足に行けば必ず雨。
雪が降れば絶対に転ぶし、コンビニのくじだって1回も当たったことない。
期末試験の直前にインフルエンザにかかるし、修学旅行だって風邪で行けなかった。
ヨハネは堕天使だから、当たり前―――なんだけど。
11: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 00:20:03.12 ID:ay6TDxZd.net
別に、私が不幸なのはいいのよ。
修学旅行に行けなくても、試験が追試になっても、私が困るだけだから。
でも―――
今回の調理実習は、私がいないせいで、班のみんなが困った。
Aqoursの練習だって、昨日もあったはずなのに―――休みになったらしい。
私が休んだから。
もう―――ヨハネってば、運悪すぎ。
いくら不幸な堕天使だからって、皆に迷惑かけるのは―――ナンセンスよね。
はぁ……。
ピンポーン―――――
―――宅急便かな?
「今行きます――――」
ドアの覗き穴から見えたのは、宅急便のお兄さんのユニフォームじゃなくて、
見覚えのある赤いツインテール―――
「ルビィ!?」
12: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 00:25:16.96 ID:ay6TDxZd.net
急いでドアを開けると、ルビィはふわぁっと笑って、
「あ、よっちゃん!よかったぁ―――元気そうで♡」
―――なんて、いつもの調子で話しかけてきた。
「どうしたの?そんなに大きい荷物持って―――」
「昨日、よっちゃん休みだったでしょ?それでね―――調理実習で作ったブラウニー、一緒に作ろうかと思って」
ルビィが両手で重そうに抱えるビニール袋には、たしかにブラウニーの材料が詰まってる。
「マルちゃんは法事だっていうし、他のみんなも用事があるみたいで―――ルビィひとりなんだけど」
やだ――ルビィ、やめてよ。
ちょっと―――私は悪魔だけど、こういうの弱いんだから―――
私がうつむいていると、ルビィは震えた声で――
「ご、ごめんね!やっぱり迷惑だったよね、突然―――」
なんて言うの。
14: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 00:29:16.67 ID:ay6TDxZd.net
「そんなことない!で、でも―――風邪、移っちゃうかもしれないし」
「大丈夫だよぉ!ルビィ、この前風邪引いたばっかりだから♪―――あ、もしかして、ルビィの風邪、うつしちゃったのかな―――うわああああ~~~ん、よっちゃんごめんなさい!!」
ひとりで泣き出したルビィをなだめて(荷物も重そうだし)あがってもらうことにしたわ。
「うんっ♪お邪魔しまぁす!」
丁寧に靴をそろえるルビィ。
―――こういうところは、やっぱり姉妹よね。
ピロン―――
携帯には、みんなから心配のメッセージがたくさん届いてた。
―――そっか。
みんなと一緒なら、不幸が去った後に、素敵な幸福が訪れるんだわ。
「―――ありがとう、ルビィ」
「え―――ルビィ、まだ何もしてないよ?」
周りに迷惑をかけないようになら、だけど―――
運勢最悪の不幸な堕天使ヨハネでも、いいかなって―――ちょっぴり、思っちゃった。
15: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 00:32:13.45 ID:ay6TDxZd.net
ダイヤ「跡継ぎの道。」
16: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 00:36:32.99 ID:ay6TDxZd.net
なんとなく、その日は気分が晴れなくて、今日の空模様みたいに、モヤモヤしていて。
少しでも、学校に残っていたくて。
練習が終わった後、わたくしは――――
「ダイヤちゃん、どうしたの?曜、なにかしたっけ―――」
この子を誘った。
たしかに曜ちゃんは考え無しに突っ走るところがあるし、
落ち着いて話をする相手としては間違っているのかもしれない。
ちゃんと話をするなら、梨子ちゃんとか、マルちゃんの方が向いてるわね。
でも―――考えも無しに、声をかけるわたくしではないわ。
曜ちゃんに、聞いてみたいことがあったの。
17: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 00:40:46.90 ID:ay6TDxZd.net
「聞いてみたいこと?」
「曜ちゃん―――スイミングスクールに通っていたでしょう?」
「うん!高飛び込みの練習でね!」
「どうして休止届を出せたの?」
口に出さなくとも、頭にハテナが浮かんでいるのが見えるような顔の曜ちゃん。
「ごめんなさい―――聞き方が悪かったわ。どうして、そんなに簡単に休止を決められたの?」
曜は、全日本級クラスの飛び込み選手。
国の強化指定選手に選ばれて、将来はオリンピック選手候補だ―――
なんて言われている曜ちゃんが。
あっさり、千歌ちゃんたちとスクールアイドルをやるから飛び込みはお休みします―――だなんて。
もう大騒ぎよ。
しばらくその話題で持ち切りだったわ。
―――それで、当の曜ちゃんは。
「だって―――毎日プールに行ってたら、ダンスも歌も練習できないでしょ?」
そんなの当たり前―――そんな顔で、私を見つめる。
18: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 00:46:40.28 ID:ay6TDxZd.net
「だから、そうじゃなくて――」
「じゃあ―――やりたかったからかな?
千歌ちゃんが人数が足りなくて困ってる―――って聞いたとき、
やらなきゃって思ったし、面白そうだったから、やってみよう!って思って」
「でも、周りからすごく期待されていて―――色々言われたでしょう?悩まなかったの?」
「うーん―――でも、曜は曜だし。
飛び込むのも好きだけど、でも今はこっち―――アイドルやりたいし、好きだし♡
お父さんの跡を継いで船長にもなりたいし!
先生とか、スイミングのコーチには色々言われたけど―――千歌ちゃんたちも大事だし。
好きにしろって言われちゃったし♪そんなら、好きにやりますってことで―――
曜はとにかく、人生という一度きりの航海で、やりたいことをやるだけなのであります♪」
「曜、ちゃん――――――」
19: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 00:51:59.11 ID:ay6TDxZd.net
わたくしは親の言う通り、求められるとおりに優等生を―――黒澤の跡継ぎを演じる。
将来は、定められた道を歩むだけ。
自由や決定権など、わたくしには無い―――
そう考え、決め込んでいたわたくしには―――
曜ちゃんの考え方はあまりにも衝撃的でした。
「ねえダイヤちゃん、土曜日のお昼ってヒマ?曜、ご飯食べに行くつもりなんだけど―――あ、お稽古とかあったりするかな?」
「え、っと―――そうね、お琴の練習があるわ」
「そっかぁ―――さすがダイヤちゃん、休みの日まで―――」
曜ちゃんの残念そうな顔を見ていたら―――なんだか、良くないことを思いついてしまったの。
「―――ううん。やっぱり―――いいわよ、土曜日」
「ホント!?」
「ええ。別の日にしてもらうわ」
「え――――えぇ~っ!?そ、それって大丈夫なの!?」
全身を動かして驚く曜ちゃん。
フフ―――♡
本当に元気ね。
20: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 00:58:41.80 ID:ay6TDxZd.net
「曜ちゃん、あなたが言ったのよ」
わたくしの言葉にキョトンとして頭をひねる曜ちゃんを見て、
それがなんだか面白くて―――
「やりたいことを、やるんでしょう?」
「―――うんっ♡」
今度は、ひまわりみたいな眩しい笑顔を見せる曜ちゃん。
わたくし――――
ワガママを言ってみるのも、いいのかもしれないなんて――――
そう思ってしまったの。
わたくしの道――航海の終点は、黒澤の跡継ぎ。
それは、避けられないものかもしれないけれど。
途中でちょっと寄り道をするくらい、許されてもいいわよね?――って、手帳に書いておきましょう。
それと―――土曜日の予定もね♡
21: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 01:02:12.12 ID:ay6TDxZd.net
果南「変わっていくもの。」
22: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 01:09:55.57 ID:ay6TDxZd.net
「果南ちゃん、そうじゃなくて―――こう!」
「えーっと―――こう?」
「ちがうよ~~~~!!」
朝の仕事が終わったあとの、午前10時ごろ。
千歌と一緒に(というか強制的に)、アイドルとしての特訓をすることになった。
かわいくポーズを取るための秘訣だとか、ボイストレーニングとか―――
やたら細かい千歌の指示は、私の耳に入った後、半分くらい反対側の耳から抜けていく。
こだわって考えるの、あんまり好きじゃないんだ。
「も~、じゃあ次は筋トレね!まずは腕立てから、一緒に行くよ~!い~ち、に~い―――」
千歌の掛け声に合わせて、私も腕立て伏せをする。
うん、いい感じ。
かわいいポーズじゃ、気合入らないしね♡
「さ~~んじゅ!―――ふぅ!じゃあ次は腹筋ね!果南ちゃん、足押さえてて」
「はいよー」
身体もいい感じに温まってきたところで、ふと―――不思議な感覚に襲われた。
―――なんだろう?
23: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 01:13:52.05 ID:ay6TDxZd.net
「さんじゅ~!はい、次は果南ちゃんの番!―――って、果南ちゃん?」
「―――あ、ごめんごめん。次、私だね」
千歌に足を押さえてもらって、腹筋を始める。
さっきのモヤモヤはなんだろう―――。
「果南ちゃん?おーい、もう30回終わったよ?果南ちゃ―――あいたぁ!」
ぼーっとしてたら、私と千歌の頭がぶつかって―――ごつんと鈍い音がする。
「いってて―――ち、チカごめん!大丈夫?」
「―――あはは、大丈夫。果南ちゃんこそ大丈夫?」
「うん―――なんか、ちょっと考え事」
「果南ちゃんが考え事なんて、珍しいね」
「―――たしかに、そうだね」
基本的に私は、頭空っぽにして海で泳ぐか、海辺でごろんと転がってるか―――
なんだけど。そんな私が、覚えた違和感。
その後も色々やったんだけど、なんかぼーっとしちゃって―――
いったんお昼を食べることにした。
24: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 01:17:41.51 ID:ay6TDxZd.net
「ん~♡やっぱり果南ちゃん家の魚は美味しい♪」
「チカんちのも同じとこの魚だよ?」
「焼き加減とか味付けとか、全然違うでしょ!―――んん~♡」
むくれたかと思ったら、次の瞬間には美味しそうに魚をほおばって笑う千歌を見て、私は呟いた。
「チカは変わらないな―――」
――――あ。
そっか。
さっき、私の頭の中はもやもや、ぐるぐるしてたのは―――
千歌が変わったからなんだ。
25: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 01:25:35.72 ID:ay6TDxZd.net
―――千歌、大きくなったんだ。
もちろん、身長もそうなんだけど。
果南ちゃんと同じクラスになりたいのに追いつけない―――って、騒いでたのに。
筋トレだって、誘ってくるくせに―――私より先にへばってたのに。
淡島神社の階段を上るのだって―――途中で休憩してたのに。
千歌はいつのまにか、私と肩を並べるようになって。
Aqoursのリーダーとして、スクールアイドルとして――――
私たちを引っ張っていくところまで、成長したんだよね。
千歌の2番目のメンバーとして、ずっと隣に居た私としては―ー―
嬉しいけど―――なんだろう。少し―――寂しい?
「あははは♡」
「どうしたの、果南ちゃん?」
「――千歌、大きくなったなぁ、って。そう思っただけだよ」
千歌の頭をぽんと撫でて、空いた食器を片付ける。
「あー、子ども扱いしたでしょ~~!!」
「そんなことないって。ほら、早く食べちゃいなよ」
「む~~~~!!」
でも、こうして子どもみたいに怒る千歌を見ると、やっぱり――――
ずっと変わらないままなのかも。
38: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 22:35:33.38 ID:ay6TDxZd.net
千歌「ダイヤお姉ちゃん。」
39: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 22:47:51.41 ID:ay6TDxZd.net
あぁ、もぉ―――
先生ってば、話長いんだから―――!
ユニット練習が終わって解散になった後、今日が期限のプリントを出し忘れたことに気づいて―――
職員室に駆け込んで、先生の長くてつまらない話を聞かされちゃった。
はぁ―――せっかく練習楽しかったのに、気分が―――
もう、帰り道にコンビニでアイスでも買って―――
あれ?
チカが開けたのとは反対側のドアから同時に出てきたのは―――
「――――千歌ちゃん?どうしたのよ、こんな時間に職員室だなんて」
山積みの書類を抱えた、ダイヤちゃんとすれ違った。
「ふう―――ありがとう、助かったわ」
これくらいお安い御用だよ―――とチカは胸を叩いて、自慢げに返す。
あんなにたくさんの書類、いくらダイヤちゃんでも大変だもんね。
「ダイヤちゃん、AZALEAの練習出てたよね?」
「ええ。ただ―――仕事を少しだけ残していたのを思い出して」
「そっか―――大変だね、生徒会長」
「生徒会長なんて、名前だけの雑用みたいなものよ。
とは言っても―――曜やルビィみたいな人には、難しいかもしれないけれど♡」
曜ちゃんやルビィちゃんが生徒会長をしているのを想像しようとしたけれど―――
たしかに、ちょっと似合わないかも――――クスクス♡
40: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 22:52:04.85 ID:ay6TDxZd.net
「――――ねえ、千歌ちゃん」
ダイヤちゃんはいつもと変わらないように―――
「そういえば――今日はユニット練習だったわね。ルビィ、迷惑かけてないかしら」
――――でも、少しだけ心配そうに、チカに聞いてきた。
「うん!むしろ、チカも曜ちゃんもこんなんだから、一番しっかりしてるよ~!」
大雑把で、考えずに突っ走るタイプのチカと曜ちゃんを止めるのは、
CYaRon!ではいつもルビィちゃんなんだよね。
いつもごめんね、ルビィちゃん♡
「そう、それなら――――よかったわ」
キラキラって夕日に照らされるダイヤちゃんの顔は、ほんの少し緩んでて、すごく綺麗で―――
ちょっとだけ、寂しそうに見えたような気がしたんだ。。
「ダイヤちゃん、もしかして―――」
ルビィちゃんが立派になっちゃって、寂しいんだ?
41: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 22:56:01.43 ID:ay6TDxZd.net
――――って、聞いてみたら。
「はぁ?」
さっきまでの優しい顔はどこへやら―――
ルビィちゃんがいつも恐れる、コワ~イ顔になっちゃった♡
「寂しいだなんて思うわけないでしょ?
そもそも、ルビィもそれくらいできるようになってもらわないと困るわ。
あの泣き虫でへなちょこのルビィが、千歌ちゃんや曜ちゃんの前に立って
引っ張っていけるようになったのは認めるけれど―――
そんなことを言う前に、そろそろ千歌ちゃんにも、
Aqoursのリーダーとしての自覚を持ってもらえると嬉しいわ」
あはは―――チカの勘違いだったみたい。
お説教が始まっちゃった―――あ、そうだ♪
「ルビィちゃんがCYaRon!のまとめ役になれたのは、ダイヤちゃんの妹だからだと思うんだよね――」
ダイヤちゃんは「何が言いたいの?」って、チカを見てくる。
「だから、チカもダイヤちゃんの妹として、リーダーシップを育てることにするよ~~!
大丈夫!チカ、根っからの末っ子気質だから!」
ウチにいる2人と―――果南ちゃん。
いっぱいお姉ちゃんに育てられてきたからね!
42: 名無しで叶える物語 2017/10/24(火) 23:12:39.28 ID:ay6TDxZd.net
「何が大丈夫なのよ―――ああ、もう。
これ以上騒がしい妹が増えたら、頭が痛くなっちゃうわ。
ほら、もう下校時刻よ。早く帰りましょう」
「は~い♪」
さっきまであんなに怖い顔をしていたダイヤちゃんは、すっかり呆れて帰る準備を始めちゃった。
チカ、お姉ちゃんからのお説教を逃げる方法は、いくらでも知ってるんだよね―――
コツは、妹アピールをして、さりげな~~く話を逸らすこと!
この方法は、全戦全勝の必勝法なのだ―――クスクス♡
「ダイヤちゃん、帰りにアイス食べにコンビニ行かない?」
「遠慮しておくわ―――と、言いたいところだけれど。
―ー―さっき、書類を運ぶのを手伝ってもらったお礼に、付き合ってあげる♪」
「やった♡」
ルビィちゃんは怖がってるし、たしかに厳しいところもあるけど―――
ダイヤちゃんはやっぱり、優しいお姉ちゃんなんだよね。
もし、チカの本当のお姉ちゃんがダイヤちゃんだったら、どうなってたんだろう―――?
やっぱり、ルビィちゃんみたいに怖がってたかな?
それとも、今とあんまり変わらないかな。
さすがに、いつも一緒に遊んでくれる優しい果南ちゃんみたいには、いかないよね―――
「ねえ、ダイヤお姉ちゃんは何食べる?」
「千歌の姉になった覚えはないけれど―――わたくしはやっぱり、抹茶がいいわ。千歌ちゃんは?」
「チカはね―――」
ダイヤちゃんと千歌。
意外と珍しい組み合わせの――――お姉ちゃんと妹の2人組は。
アイスを目指して―――ゆっくりと、歩いていくのでした♪
58: 名無しで叶える物語 2017/10/25(水) 21:20:42.96 ID:dYn+0mtl.net
桜内梨子「転校生と生徒会長。」
59: 名無しで叶える物語 2017/10/25(水) 21:29:03.72 ID:dYn+0mtl.net
私が転校してきたばかりのころ―――。
2時間目が移動教室だったんだけど―――
職員室から戻ってきたら、もうみんないなくなってて。
急いで教室を出るけど、行き先は全然わからないし。
人見知りの梨子は、職員室に戻る勇気も、通りすがる先輩や後輩にも聞けなくて―――
廊下で途方に暮れていました。
「どうしよう―――」
ウロウロしていた、そんな時。
どん、と――――1人の女の子にぶつかっちゃいました。
謝らなきゃと思って、急いで振り向いた先に居たのは―――
「ご、ごめんなさい―――」
「こちらこそごめんなさい―――って」
わあ―――
サラサラで綺麗な黒髪に、透き通るような翡翠色の瞳と、かわいい口元のほくろ。
まるでお人形さんがそのまま動いているみたいな―――そんな人でした。
「―――あなた、転校生ね?3年生でも噂になっているわよ」
「は、はい―――」
この声、どこかで聞いたことがあるような―――
―――あ、そうだよ。
朝、いつもスピーカーから聞こえる放送と同じ―――だと、思う。
60: 名無しで叶える物語 2017/10/25(水) 21:36:29.37 ID:dYn+0mtl.net
「もしかして、教室の場所がわからないとか?」
「そ、そうなんです―――」
「フフ――やっぱりね。次の時間は―――家庭科ね。案内してあげるわ」
「そんな、悪いです―――」
「いいのよ。どうせ私も近くまで行くし―――
それに、困っている生徒を放っておける生徒会長ではなくてよ♡」
そうして私は、優しい生徒会長さんと並んで被服室に向かいます――――
って、なんだか妙に見られていて――――
「こんな田舎に転校生なんて、みんな珍しいのよ。
しかも、その転校生がわたくしと並んで歩いているんだから―――嫌でも目立つわよ。フフ♡」
恥ずかしくて―――顔から火が出ちゃいそうです……。
61: 名無しで叶える物語 2017/10/25(水) 21:39:44.22 ID:dYn+0mtl.net
――――放課後、部室でダイヤちゃんとふたり、みんなの到着を待っているとき。
そんなことを思い出していました。
―――まさか、あの生徒会長さんと一緒に、しかもアイドルをやるだなんて。
あの時は思いもしなかった――――
ううん、今でも信じられないくらい。
――――って話を、ダイヤちゃんにしてみたんだけど。
「そんなこと―――あったかしら?」
あっさり、こんなことを言われちゃった。
あはは―――やっぱり、覚えてないかな。
って―――思ったんだけど。
62: 名無しで叶える物語 2017/10/25(水) 22:01:02.12 ID:dYn+0mtl.net
「フフ♡ そんな顔しないで。ちゃんと覚えていてよ?
でも、半年も立っていないのに、随分昔のことのように思えるわ。
だって梨子ちゃんってば―――昔から一緒にいたみたいに、すっかり浦女に馴染んじゃっているんだもの♡」
どきり。
私の胸が、大きく跳ねた気がした。
この辺の子たちは、ずっと昔から知り合いで、お友達で―――
都会でも地味な方だった私が、そんな中に引っ越してきて―――不安で仕方なかった。
でも―――そっか。
私、馴染めてるかな。
ダイヤちゃんの言葉を聞いたら、なんだか―――胸がじーんと熱くなってきて。
「ちょっと、梨子ちゃん―――なに泣いてるの!?やだ―――」
ダイヤちゃんはすぐに、私の方に駆け寄ってきてくれて。
その優しさが嬉しくて、また涙が――――
「り、梨子ちゃん―――わたくし、何か嫌なことでも―――」
「ううん、そんなんじゃなくて―――嬉しかったんです。ダイヤちゃん、ありがとう――――」
ぎゅっと――――優しいダイヤちゃんに、思わず抱き付いてしまいました。
「もう―――また、妹が増えてしまうわね」
その言葉の意味はよくわからないけれど―――優しく、梨子の頭を撫でてくれました。
ダイヤちゃん。みんなが来るまでの、もう少し。
もう少しだけ――――
ダイヤちゃんの優しいあたたかさに、甘えさせてください―――――♡
66: 名無しで叶える物語 2017/10/25(水) 22:09:11.15 ID:dYn+0mtl.net
曜「浦女スポーツ王女決定戦!」
67: 名無しで叶える物語 2017/10/25(水) 22:16:14.17 ID:dYn+0mtl.net
お昼休みだ~~~~~!!
午前中の授業は退屈で全部寝てたから―――元気いっぱい!
ノートは―――あとで梨子ちゃんとかに見せてもらうとして。
カロリーメイトで栄養補給して、レッツ運動~!
――――と、体育館に駆け込んだ曜の目が真っ先に見つけたのは、
内浦では珍しいけど、でも馴染みのある、眩しい金色の髪の毛の――――
「鞠莉ちゃんだ!」
「ワォ、曜♡ How are you?」
鞠莉ちゃんはウインクをして、なんか英語で話しかけてきた。
こういう時の返しは――――えーっと、なんだっけ?
「あいふぁいんせんきゅー?」
「えっと―――どうして疑問系なの?」
「アハハ、よくわかんない♡ そんなことより―――鞠莉ちゃん、どうしたの?部室に忘れ物とか?」
練習とか、打ち合わせとか―――
お昼休みにAqoursで集まることが無いときは、ほとんど鞠莉ちゃんとは会わないんだよね。
あ――――曜がそこらじゅうを走り回ってるからかな?
68: 名無しで叶える物語 2017/10/25(水) 22:25:30.21 ID:dYn+0mtl.net
「午前中はず~っと座ってて、授業は退屈で、マリーのかわいいお尻も悲鳴を上げてたの―――」
大げさに肩をすくめて、お尻をさする鞠莉ちゃん。
「だから、体をほぐしに―――ちょっと、運動でもしようかなと思って♪」
「鞠莉ちゃん、運動好きだったっけ?」
「Of course!マリーはsportsも趣味なのよ☆」
そうだったんだ―――じゃあ、やることはひとつだね♡
「さあ鞠莉ちゃん、曜と勝負だ~~~~~!!」
勝負のルールは、バスケの1on1―――
先にシュートを3本入れたほうの勝ちにしたんだけど。
気合十分、体調万全だったはずの曜は――――
「クスクス―――♡ 相手が悪かったわね♪」
得意げにボールを抱える鞠莉ちゃんを前に、うなだれるしかなかったんです……。
そんな――――――ウソだ~~~~~!!
69: 名無しで叶える物語 2017/10/25(水) 22:29:39.81 ID:dYn+0mtl.net
もう、めっちゃ悔しい――――
今日の曜は絶好調で、それなのに―――
おのれ~~~~!!
鞠莉ちゃんめ!
「ウソ、あの曜ちゃんに勝っちゃうなんて―――」
「ヒーロー陥落!?」
「鞠莉ちゃん、運動得意だとは知ってたけど、まさかあんなに―――」
いつのまにかたくさんできてたギャラリーからの声に―――ううん。
思わぬ強敵の登場に、曜の闘志は燃え上がっているよ!
「鞠莉ちゃん!次は―――」
結局。
ギャラリーの皆が帰っていったことにも気づかず―――
5時間目のチャイムの音で、やっと勝負は中断。
曜と鞠莉ちゃんは――――ふたり揃って、授業に遅刻するのでした。
あ、ほ、ほら、ヒーローは遅れてやってくるって言うし――――
あ、あはははは――――♡
70: 名無しで叶える物語 2017/10/25(水) 22:39:24.82 ID:dYn+0mtl.net
「どういうことなの、曜、鞠莉―――」
放課後の練習前、ダイヤちゃんに呼び出された曜と鞠莉ちゃんは―――お説教を受けていました。
「もちろん、お昼休みに遊ぶなとは言わないけれど。でも、授業に遅れていくのは―――」
もう、そんなに言わなくても反省してるって~~~~~!!
そう思って、ちらっと鞠莉ちゃんのほうを見ると。
鞠莉ちゃんも曜のほうを見てて―――ウインクのあと、急に立ち上がった。
「あ、そうだわ―――ダイヤごめん、先生に呼ばれてたの忘れてた☆」
「え?―――はぁ、そういうことは早く言ってくれる?
―――とにかく、今後は気をつけること。わかったわね?」
「はーい!」
もう一回、鞠莉ちゃんのほうを見ると―――
小さく舌を出して、曜に笑いかけてくれました♪
71: 名無しで叶える物語 2017/10/25(水) 22:45:36.23 ID:dYn+0mtl.net
職員室に行くフリをして隠れてた鞠莉ちゃんを待って、一緒に部室に向かう。
「あはは―――怒られちゃったね」
「たしかに、授業に遅れちゃったのはよくなかったけど―――
でも、楽しかったし♪――また勝負しようね、曜♡」
「もっちろん―――♡」
固く握手を交わす、ふたりのスポーツマン。
―――あれ、スポーツウーマン?
体育の時間のヒーロー、って――――女の子はヒロイン?
――――まあ、いっか。
勉強じゃ、鞠莉ちゃんに勝てそうにないけど―――
浦女のヒーローの名にかけて、渡辺曜―――スポーツでは絶対に、負けないのであります!
ヨーソロ♡
120: 名無しで叶える物語 2017/10/26(木) 23:38:36.11 ID:5mI6SV3i.net
小原鞠莉「心揺らす音楽。」
116: 名無しで叶える物語 2017/10/26(木) 23:21:15.54 ID:5mI6SV3i.net
うん―――やっぱり最高ね♪
意外にノリノリな、朝の放送のダイヤの声も―――
どーんと立っている大きな木が見せる、木漏れ日も―――
マリーの耳に届く、ピアノが奏でる旋律も―――
とっても綺麗なの♡
―――ん~~、やっぱりいい音♪
このハートのこもった素敵な音色。
間違いないわ―――梨子ね♪
春に―――梨子が転校してきて、1ヶ月も経たない頃かな?
私がAqoursに入る前―――朝の中庭で、このピアノを聞いてからというもの―――
マリーは密かに、ピアニスト梨子の大ファンなの♪
だからこうして、毎日ちょっと早く登校してきて―――
中庭のコンサートが始まるのを、待っているのよ♡
117: 名無しで叶える物語 2017/10/26(木) 23:30:18.24 ID:5mI6SV3i.net
――――あれ?
今日は千歌ちゃんの声、聞こえてこないわ。
いつもはスタンディングオベーションの代わりに―――
千歌が大きな声で、梨子のこと褒める声が聞こえてくるんだけど。
じゃあ、今日は――――
マリーが代わりに、梨子を褒めに行っちゃおうかな♡
ピアノのある音楽室に近づくにつれて―――
聞き慣れない曲が聞こえてきたの。
―――でも、この演奏、たしかに梨子の旋律だわ。
もしかして――――新曲かしら♪
そっとドアを開けて、音楽室を覗くと―――
Aqoursで歌って踊るのとは違うけど―――でも、やっぱり楽しそうに、梨子がピアノを弾いていたわ。
マリーは聴き入っちゃって―――
すぐに、1曲終わっちゃった。
118: 名無しで叶える物語 2017/10/26(木) 23:33:39.64 ID:5mI6SV3i.net
ぱちぱちと拍手をすると、梨子はびくっと立ち上がって。
「ま、鞠莉ちゃん―――いつからそこに!?」
あら―――ピアニスト梨子から、いつものcuteな梨子に戻っちゃったわね♪
「梨子が演奏を始めてからずっとよ―――♡」
「も、もう―――いるなら言ってよぉ……」
「だって―――ピアノのコンサート中におしゃべりなんて、ナンセンスじゃない?」
「コンサートって―――」
眉を下げて、照れ臭そうにしてる梨子。
もう―――梨子ちゃんってば、反応がかわいいから―――
マリー、ちょっとイジワルしたくなっちゃうの♡
「こう見えても私、梨子のことrespectしてるのよ?」
「リスペクト?」
「そうよ♪我らがAqoursの曲を作り上げ―――このマリーの心を揺らす、
天才ピアニスト―――桜内梨子ちゃんをね♡」
119: 名無しで叶える物語 2017/10/26(木) 23:37:39.95 ID:5mI6SV3i.net
我ながらべた褒めね―――なんて思っていると、案の定梨子は顔を真っ赤にして―――
「ま、鞠莉ちゃん―――そんなに褒められると、恥ずかしいっていうか―――私は別に、特別なことをしてるわけじゃないし―――」
ウフフ―――ホント、かわいいんだから♪
「ねえ梨子、今度はマリーと一緒に、ロックな曲を作ってみない?とってもexcitingよ♪」
「ロック、って―――私、全然聞いたことないし―――」
「No problem♪」
「で、でも―――」
マリーが押しても押しても、梨子ちゃんは引いて引いて、引き下がるばかり。
まったく、もう―――いつもこうなんだから。
って――――それが、梨子の魅力でもあるのかな?
でも――――
ハードなロックが好きな私のハートを掴んだんだから――――
もっと自信を持ってほしいわね♪
マリーの心を盗んだ罪は、重いのよ?
責任取ってもらわなきゃ――――ね♡
136: 名無しで叶える物語 2017/10/28(土) 13:59:05.45 ID:jM4esGPN.net
黒澤ルビィ「ルビィのまま。」
137: 名無しで叶える物語 2017/10/28(土) 14:04:31.06 ID:jM4esGPN.net
お父さんとお母さんとお姉ちゃん、明日のお昼まで、踊りの発表会でいないんだぁ。
だからルビィ、おうちにひとりです―――。
―――お姉ちゃんは、すごい。
ルビィとは違って、お稽古も、勉強も、なんでも完璧にできちゃうんだぁ。
そんなお姉ちゃんのことが、羨ましいし――――
ルビィには似合わないんじゃないかなぁ、って思うんだぁ。
ドジでチビで――――
アイドルをするにも、いっぱいなルビィには。
って―――――そんなこと考えても、仕方ないよね。
せっかくのお休みなのに、落ち込んじゃっててももったいないし。
いい過ごし方を考えよう――――。
138: 名無しで叶える物語 2017/10/28(土) 14:06:50.70 ID:jM4esGPN.net
いつもなかなか見れない、テレビを見ようかな?
それとも、マルちゃんを誘って一緒に遊ぼうかな――――
――――って、思ったんだけど。
DVDは千歌ちゃんに貸しちゃってたし、マルちゃんもお寺の用事があるって。
じゃあ―――ちょっと、お散歩してこようかな。
この前、果南ちゃんに教えてもらったんだぁ。
ちょっとでも悩んだら、海を見れば、どうすればいいか教えてくれる、って―――
だから、ルビィはふらふら歩いて、千歌ちゃん家の前の海岸まできてみたの。
えっと――――
海さん。ルビィはどうするのがいいんでしょうか―――
って、心の中で聞いてみるけど。
海さんは何も答えてくれない。
うわーん―――やっぱり、小さい頃から海で泳いでる果南ちゃんとは違って、
なかなか泳げない、へなちょこのルビィには何も教えてくれないよ―――!!
「ルビィ~~~~~~~~!!」
――――あれ?
ルビィを呼ぶ声が聞こえて――――もしかして、本当に海さん!?
139: 名無しで叶える物語 2017/10/28(土) 14:10:22.54 ID:jM4esGPN.net
「お~~~~~~~~~~い!!」
―――――あれ?
対岸の淡島で、誰かが手を振ってる。
茶色いおうまさんに乗った、内浦では珍しい、眩しい金髪の女の子。
こっちにまで聞こえてくる、ルビィじゃとても出せないくらい大きくて―――きれいな声。
「ま、鞠莉ちゃん―――」
「どうしたの~~~~~~~~!!!!」
―――――決~めた!
エヘヘ、果南ちゃん―――どうすればいいか、海さんが教えてくれたよぉ♡
「ハァイ、ルビィ♪」
こんなちっちゃなルビィを、海の向こうから見つけてくれたことが嬉しくて―――
鞠莉ちゃんに会いに、淡島に来ちゃいました。
「珍しいわね、ひとりで淡島に来るなんて―――」
港で迎えてくれた鞠莉ちゃんは、ルビィの頭を撫でてくれます。
お姉ちゃんは絶対こんなことしてくれないから―――ちょっと嬉しい♪
「えっとね――今日はルビィ、家にひとりだから―――何をしようかなって、迷ってたところだったの」
「そうなんだ。ダイヤは?」
「お琴の発表会で、明日まで帰ってこないんだぁ」
「なるほど―――それで、口うるさいsisterも、ダディたちもいないわけね!」
く、口うるさいって―――
140: 名無しで叶える物語 2017/10/28(土) 14:12:43.19 ID:jM4esGPN.net
「じゃあルビィ、うちに来ない?」
「へ―――――?」
「さ、乗って!スターブライトの乗り心地は最高よ―――!」
あ、あわわわ―――
鞠莉ちゃんにされるがまま、スターブライトさんに乗せられたルビィは―――
なにがなんだかわからないまま、鞠莉ちゃんのおうちに向かうのでした。
「す、すご~~~~~~~い!!」
鞠莉ちゃんのホテルは、ルビィがいつも暮らしてる家とは全然違って、キラキラしてて―――
「もう、かわいいんだから♡
ウフフ―――今日はマリーと一緒に、た~くさん遊びましょ♪
今日はマリーが、ルビィのsisterなんだからね―――☆」
鞠莉ちゃんの妹――――
ルビィにできるかな?
「―――あのね、ルビィ」
鞠莉ちゃんはルビィをまっすぐ見つめて、言いました。
「別にお姉ちゃんに似合う妹になる必要はないのよ!
ルビィはマリーやダイヤに比べて小さいし、ちょっとドジかもだけど―――
それがルビィのかわいらしさなんだから、ね?」
ルビィのことをぎゅっと抱きしめて、頭を撫でてくれる鞠莉ちゃん。
141: 名無しで叶える物語 2017/10/28(土) 14:22:25.28 ID:jM4esGPN.net
「きっとダイヤもそう思ってるよ。ルビィはルビィのままでいいの♪」
ルビィから離れて、くるっと回って、そう言う鞠莉ちゃん。
――――そう、かな。
ルビィ、お姉ちゃんの―――妹で、いいのかな?
「せっかくのholidayに、そんな暗い顔してたら―――
オテントサマに怒られちゃうって、果南が言ってたよ?
さ、なにして遊ぼうかしら――――♪♪」
ルビィに向けて伸ばしてくれた鞠莉ちゃんの手を、ぎゅっと掴む。
お姉ちゃんや鞠莉ちゃんみたいに、強くて、立派になるなんて、ルビィにはできないって思うから――――
ルビィは、これからもルビィのままでいることにします。
弱虫で、泣き虫で―――マルちゃんやみんながいないとダメダメな、
お姉ちゃんの妹の、ルビィのままで。
だけど、今日だけは―――
ダイヤお姉ちゃんじゃなくて、鞠莉お姉ちゃんの妹なんだけどね♪
エヘヘ♡
170: 名無しで叶える物語 2017/10/28(土) 14:37:35.46 ID:jM4esGPN.net
このスレはここでおしまいにします
登場メンバーが偏ってしまって申し訳ない
ここでもらった組み合わせはまた近々スレ建てて書こうと思いますのでその時はよろしくお願いします
お付き合いいただきありがとうございました
【SS】G`s設定で短編集ずら
http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1508770458/