1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:05:55 ID:bkO4z7PY

全国大会二回戦 中堅戦開始前

久「バナナよーし、牛乳よーし、その他諸々よーし……」ソワソワ

久「そろそろかしら……」ドキドキ

久「……よっしゃ、今日もちゃちゃっとやっちゃいますか!」イソイソ

まこ「まだ早いじゃろ」

久「いいのよ! 行ってくるわね!」

タッタッタッ

久「…………あれ? 何か落ちてる?」



2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:07:32 ID:bkO4z7PY

久「四角いメガネ……? なんでこんな廊下の真ん中に」

久「…………」

久「かけてみようかしら。誰も見てないし……」キョロキョロ

スッ

久「へーんしんっ。なんつって」チャッ


ぐにゃっ



3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:09:13 ID:bkO4z7PY




…………ちょー、部長! 起きてください、部長!!


.



4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:11:05 ID:bkO4z7PY

【久 ①】

久「…………はっ!?」ガバッ

李緒「お、起きたね」

杏果「出番ですよ、部長」

久「…………え?」

閑無「早く行ってきてよ部長! 大事なとこなんだから!」

はやり「……お願いします」

久「ここ……は……?」キョロキョロ



5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:13:04 ID:bkO4z7PY

李緒「ここは、って……。試合会場だけど」

久「へ?」

李緒「市大会の会場。さ、副将戦だよ」

玲奈「頑張って、部長!」

亜搖子「がんばれー」

美凛「ファイトー」

久「…………誰たち…………?」



6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:14:41 ID:bkO4z7PY

久「いやいやいや。よくわかんないけど人違いよ」

閑無「はあ?」

李緒「なに言ってるの」

閑無「いまさら見間違えるわけないでしょー、そのおさげとメガネを」

玲奈「うん」

久「……いやいや」



7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:16:20 ID:bkO4z7PY

久(………そういえば、いつの間にか着てる服が違う……)

久(清澄の制服じゃなくて、この子たちと同じ……中学の制服?)

久「……どーしちゃったのかしらこれは……」

はやり「…………部長? どうしたんですか?」

久「!」

はやり「はやっ?」

久「あなたは……」



8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:18:37 ID:bkO4z7PY

久(私の知ってる姿よりずいぶん幼いけど……。確かにあの人の面影……と「はやっ」)

はやり「はや~……?」

久「えーっと……。あなた、お名前は……?」

はやり「えっ?」

閑無「なんだそりゃ」

玲奈「新しい情緒不安定かな?」

杏果「はやりの名前忘れちゃったんですか?」

久「はやり……」

はやり「瑞原はやり……ですけど……」

久「瑞原はやりって…………瑞原プロ!?」

はやり「はやっ!?」



9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:20:59 ID:bkO4z7PY

玲奈「なんですかプロってー?」

杏果「中学一年生ですよ?」

久「中学……生……?」

千沙「当たり前だろ」

久「いやいやいや…………って、あっ」

ガサッ

久「これ……大会のプログラム……?」

はやり「?」

久「『全国中等学校麻雀選手権大会・島根県松江市大会』……」

久「『開催日:○年△月◇日』……!?」

久「……15年……前……?」



10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:22:53 ID:bkO4z7PY

慕「ただいま……です……」

閑無「ほら、慕帰ってきちゃったよ」

久「慕……? 慕って……」

慕「部長……。あとのこと、お願いします」

久「……あなたは……まさか……」

慕「?」

久「……白築……慕さん……!?」

慕「? ……はい」

久「……マジ……で……?」



11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:24:18 ID:bkO4z7PY

閑無「何を今更びっくりしてんだよ! どんだけ情緒不安定なのさ!」

千沙「いいからもう早く行けよ、失格になるぞ」

久「え、あ、はい……」

李緒「ほらほら、急いで。試合始まっちゃうよ」

閑無「しっかりしてよね! 決勝進出がかかってるんだ!」

杏果「お願いします!」

久「え、ええ……」



12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:25:43 ID:bkO4z7PY

対局室

久(さて……。わけわかんないまま対局室に来ちゃったけど)

久(やっぱりあれはどう見ても……。中学時代の瑞原プロ、そして……あの白築慕さん)

久(…………そして、その二人に部長と呼ばれている私)

久(何を言っているのかわからないと思うけど……。私もわからないわ)

久(…………でも!)



13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:27:06 ID:bkO4z7PY

久(深く考えても仕方ないわ……。打つなら打つで、目の前の麻雀に集中……!)

久(逆境こそ楽しまなくっちゃね! それが私のやり方よ!)

久(わけわからな過ぎて、一周回って肩の力も抜けてきた感じだし!)

久(正直、今日は朝からなーんかフワフワソワソワしてたんだけど……。吹っ飛んじゃったわ!)

久(……気合入り直した!)

タンッ

久(よっし! ツモもいい感じ!)



14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:28:28 ID:bkO4z7PY

キュッ

久(…………きた!)

パシュッ

ヒュルルル…

ズガン!!

久「ツモ! 4000・8000!!」

ワァァァァーーーー


閑無「なんだよあれ……」

杏果「部長、あんなキャラだっけ……?」

李緒「情緒不安定の極みね」

はやり「はや~……」

慕「…………牌がかわいそう」



15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:30:30 ID:bkO4z7PY

副将戦終了後

李緒「おつかれ」ポップコーンボリボリ

久「うん、ありがと」

李緒「凄かったじゃない! 別人みたいだったよ」ポップコーンモシャモシャ

久(……まあ、そうよね)

李緒「でもね、あの牌ピシュンってやるのはさすがにどうかな」ボリボリ

久「…………そう?」

李緒「普段が普段だからさ。ついに情緒不安定メーター振り切っちゃったかと思ったよ」モシャモシャ

久(…………ずいぶんね)

李緒「ま、勝てたからよかったけどさ」ボリボリ

久(……にしても、ポップコーン離さない子ね)

李緒「?」モシャモシャ

久(…………優希のタコスみたい)クスッ

李緒「??」ボリボリボリボリボリボリ



16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:32:20 ID:bkO4z7PY

決勝戦

実況「湯町中優勝ー! 決勝戦は先鋒から中堅まで3連続トップ! 県大会進出決定ですっ!!」

ワァァァァーーーー

久(あっららー、副将の出番なしとは……)

久(中学生ながらこの実力……。そして、噂に聞こえたあの鳥さんツモ……)

久(やっぱり……本物なの……?)

…………

……

李緒「さ、部長」

久「?」

李緒「何ボケっとしてんのさ! シメの一言!」

久「…………ああ、うん」



17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:34:07 ID:bkO4z7PY

久「みんな、今日はおつかれ! この調子でどんどんいくわよ!」

全員「おー!」

李緒「じゃ、解散だ!」

久「うん、気をつけて帰ってね」

全員「はーい!」

久(…………さて)

久(解散って言ったって、これからどうしたものかしら……)



18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:35:54 ID:bkO4z7PY

雫父「おつかれさん」

久「えっ、あ、はい?」

雫父「さあ、帰るよ。迎えに来たから」

久「あ、あの……?」

雫父「? どうした?」

久「すみませんが、どちらさまでしたっけ……?」

雫父「おいおい、父さんの顔忘れちゃったのか?」ハハハッ

久(……ついて行くしかない、か)



19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:37:29 ID:bkO4z7PY

その夜 野津家

久「結局、家まで来てしまって……。当然のように、この家の子という扱いを受ける私」

久「……とりあえず、状況を整理すると」

久「どうやら私は、野津雫っていう子と間違えられているらしい」

久「誰もそれで違和感を持ってないっていうのも……どうなんだろうと思うけど」

久「そんなに似てるとでもいうのかしら……。このおさげにメガネ」



20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:39:24 ID:bkO4z7PY

久「…………そしてもっと問題なのは」

久「カレンダーの日付、家にあった新聞、放送しているテレビ番組……」

久「……どれを見ても、やっぱり15年前で間違いない」

久「……なーにが起こっちゃってるのかしらねー……」



21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:43:04 ID:bkO4z7PY

【雫 ①】

雫「…………えっ?」

雫「ここ……どこ……? 私は……」

雫「確か……市大会の会場にいて……」

雫「白築さんの中堅戦が終わったとこだったはず……なんだけど……」

雫「…………」キョロキョロ

雫「どこか違う……知らないビルの廊下……?」



22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:44:21 ID:bkO4z7PY

雫「……そういえばメガネしてない……。どこにしまったっけ……」

雫「えっと……服の……ポケット……」パタパタッ

雫「…………服…………!?!?!?」ハッ

雫「あ……ああ……」

雫「私……なんで……」

雫「こんな廊下の真ん中で……こんなちっちゃなジャージだけしか……」ガクガクブルブル


憧「しずー、しーずー!」



23: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:45:53 ID:bkO4z7PY

憧「ちょっと! 何ボーっとしちゃってんのシズ!」

雫「ひぅえっ!?」

憧「……何よそのリアクションは。もうお昼休み終わりよ?」

雫「……はい?……」

憧「まったく……。どこまで休憩しに行ってたの?」

雫「あの……あなたは……?」

憧「?」

雫「……人違いじゃ……ないでしょうか……」



24: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:47:19 ID:bkO4z7PY

憧「何言ってるの。あんたは、シズでしょ?」

雫「はあ……。しずくですけど…………」

憧「もう……今はボケボケ問答してる暇ないのよ!」

雫「いや……その……」

憩「しーずちゃーん。次こっちの卓で私とやでー」

憧「ほら、荒川さん呼んでる! 行くわよシズ!」

雫「……私……ですか……?」

憧「あんた以外に誰よ」



25: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:49:42 ID:bkO4z7PY

憧「さ、行った行った!」

雫「い、いや……。せめてその前に服を……」

憧「服って? いつも通りの恰好してるじゃない」

雫「いつも通りって……。あの、下は……」

憧「下? なにそれ?」

雫「なにそれって、ジャージの…… これ、上だけ……」

憧「へ? あんたそんなの持ってたっけ?」

雫「えっ」

憧「無いわよそんなもん。あんたいっつもこれだけでしょ?」

雫「ええーーー!?!?!?」



26: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:51:10 ID:bkO4z7PY

憧「…………というわけで。しずが半狂乱で怯えちゃってるんで、誰か服貸してくれない?」

宥「服を……?」

玄「ジャージを着たくないの?」

灼「めずらし……」

憧「もう半狂乱っていうか全狂乱っていうか。ちょっと見るに堪えないレベルなのよね」

玄「憧ちゃんの服じゃだめだったのかな?」

憧「なんか合わなくってさー、大きいのがほしいって言うの。だからできれば宥姉にお願いしたいんだけど」

宥「ふえぇ……」



27: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:52:49 ID:bkO4z7PY

雫着替え中……

雫「この服も……きついです……」

玄「おもちはきつくないはずだけど……?」

宥「……えっと……なにかそれ以前の問題っていうか……」

灼「根本的にサイズが違……」

憧「うーん、うちで一番大きい宥姉の服でもってどういうことよ? 宥姉155cmもあるのよ?」

雫(私160cm以上なんですけど……)



雫(中二) 164cm
穏乃(高一)139cm
久(高三) 164cm




28: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:54:33 ID:bkO4z7PY

憧「……結局、宥姉の上着にマフラー巻いてなんとかしたわ」

宥「上掛けは羽織るだけでいいから……」

雫「うう……」

灼「それじゃ行くよ。荒川さんたち待たせてる」

憧「おー!」

玄「頑張ろうね!」

雫「行くって…… どこへ……?」

憧「何言ってるのよ。特訓の続きよ」

雫「特訓って……」



29: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:56:15 ID:bkO4z7PY

憧「準決勝に向けての特訓よ! あんたから言い出したんでしょ!」

雫「準決勝……? 松江市大会にそんなの……」

憧「何ボケちゃってるの! インターハイよ、全国大会!」

雫「インターハイって……私まだ中学生……」

憧「はあ?」

憩「しずちゃーん、早よー」

憧「ほら、早く!」

雫「ひっぐ……意味が……全然わかんない……」グスン



30: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 17:59:13 ID:bkO4z7PY

【穏乃 ①】

穏乃「あれ……? ここどこ……?」

穏乃「…………」キョロキョロ

穏乃「全国大会の会場……? いつの間にか移動してきちゃった……?」

穏乃「……この部屋は……」

穏乃「……『長野代表 清澄高校控室』……?」

ガチャッ



31: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:02:03 ID:bkO4z7PY

穏乃「あ……あの……」

まこ「……どしたんじゃ、部長」

穏乃「えっ?」

優希「部長、忘れ物したのかじょ?」

まこ「ソワソワして出てった思うたらすぐ戻ってきて。せわしないのう」

穏乃「部長……って……?」



32: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:04:32 ID:bkO4z7PY

まこ「もうちょいと落ち着きんさい。対局前じゃっちゅーに」

優希「なんか部長らしくないじぇ?」

穏乃(昔の憧……じゃない、よく似てるけど違う)

咲「どうしたんですか、部長?」

穏乃(衣さんから聞いてた……清澄の大将……)

和「なにか忘れものでも?」

穏乃(和までいる……。どういうこと……?)



33: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:06:06 ID:bkO4z7PY

係員「清澄高校、中堅の選手は早く会場入りしてください」

まこ「ほれ、呼ばれとるぞ」

穏乃「えっ」

まこ「早よ行かなもう始まってしまうわ」

穏乃「行かないとって……、私がですか?」

まこ「あったり前じゃ、さっきまでワクワクしとったろ」

穏乃「いや……なんで私……」

まこ「いいから行きんさい! 失格なってしまうじゃろ!」

穏乃「は、はい……」

トタトタ



34: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:07:30 ID:bkO4z7PY

ぎゅむっ

穏乃「うわっ!」

ずべん!!

まこ「……なにやっとるんじゃ……」

優希「自分のスカート踏んでコケたじぇ……」

穏乃「……なんでこんな長いの……」



35: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:09:11 ID:bkO4z7PY

中堅戦前半戦

穏乃(……なんでここで打ってるんだろ私……。いいのかな……)キョドキョド

洋榎「……おい、それ」

穏乃「?」

洋榎「…………見えてるて、牌」

穏乃「あっ、あわわ……すみません……」アタフタ

洋榎(……一回戦とえらい違いやんけ)

胡桃(挙動不審!)

春(…………落ち着きがない)黒糖ポリポリ

…………

……



36: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:12:33 ID:bkO4z7PY

穏乃(全然集中できないよ…… 一旦落ち着きたいのに……)

洋榎「……ロンや。5200」

穏乃「…………はい」

洋榎「へいへーい、ガンガンいくでー!」

胡桃「うるさい!」

洋榎「……あ、はい……」

春(…………)黒糖ポリポリ

穏乃(ひえぇ……なんとか凌ぐだけで精一杯だよ……)

…………

……



37: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:14:09 ID:bkO4z7PY

実況「中堅戦前半終了ー! 各校が和了を重ねる中、清澄は苦戦の展開です!」

控室

穏乃「ただ……いま……です……」

まこ「どうしたんじゃ、あんたらしゅーない」

優希「ちょーし悪いのかじょ……?」

穏乃「いや……調子というかなんというか……」

ぎゅむっ

ずべん!!

穏乃「…………いったー……」

優希「またコケたじぇ……」



38: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:15:41 ID:bkO4z7PY

穏乃「あーもうっ!! こんな長いスカート無理だよ!!」

ガバッ

まこ「ちょっ、何しとんじゃ!!」

優希「いきなり自分のスカートまくり上げたじぇ!?」

穏乃「このストッキングもゆるゆるだし! ムズムズして動きにくい!!」ヌギヌギッ

優希「次はストッキング脱ぎ始めたじょ……。あっ、スカートも」

まこ「おいおい」

京太郎「こ、これは……」

咲「きょ、京ちゃん!! ダメだよ!!」ザクッ

京太郎「はおうっ!?」

和「躊躇せず目潰し!?」

京太郎「目がー!! 目がー!!」



39: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:17:30 ID:bkO4z7PY

和「部長! もう少し人の目を気にしてください!」

穏乃「こんなのいらないよー慣れないものー」

和「だからっていきなり脱ぎ出さないでくださいと言ってるんです!」

ジタバタジタバタ

まこ「……その辺にしときんさい」

穏乃「?」

まこ「咲が京太郎の目ぇ握り潰す前に」

穏乃「えっ」

咲「…………」ギチギチグリグリッ

京太郎「」グッタリ



40: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:19:53 ID:bkO4z7PY

優希「結局、代わりに清澄のジャージ着てったじぇ」

まこ「上だけでのう」

優希「大丈夫なんかじょ?」

まこ「……まあジャージの方もでかかったけえ、問題ないじゃろとは思うが……にしても」パサッ

優希「じょ?」

まこ「誰が履くんじゃ、こがな長スカート」

優希「そういえば……誰にも合わないじぇ」



41: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:21:02 ID:bkO4z7PY

優希「でも部長のやつだじぇ?」

まこ「おう、そのはずじゃが……」

優希「裾踏んづけまくってたじぇ」

まこ「どう見てもサイズ違いじゃったな」

優希「ぶかぶかの袴みたいになってたじょ」

まこ「ほうじゃのう……」

優希「…………」

まこ「……なーんかおかしいのう」

優希「……なーんかおかしいじぇ」



42: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:22:16 ID:bkO4z7PY

まこ「…………」

優希「…………」

まこ「…………ま、部長のやることじゃけえの」

優希「だじぇ」

まこ「深く考えても無駄じゃ」

優希「どーせ私たちにはわっかんないじょ」

まこ「おう」

和(…………部長に対する評価、相変わらずですね)



43: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:23:30 ID:bkO4z7PY

実況「さあ、中堅戦の後半開始です!」

穏乃「よろしくお願いします!」

胡桃「ジャージの上だけ……?」

洋榎「……おい、何のつもりや」

穏乃「動きやすくなりました! もう大丈夫です!」

春「…………」

…………

……

穏乃「ツモ! 3000・6000です!!」パタパタッ

洋榎(……やっとデクが動き出したみたいやが……、なんでジャージやねんて)

胡桃(……バカみたい)

春(…………うちの副将といい勝負)黒糖ポリポリ



44: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:25:05 ID:bkO4z7PY

実況「中堅戦、終了ーー!!」

穏乃(ふう……。少しは前半の分を取り返せた……)

洋榎「おつかれさんころ~」

胡桃「……ありがとうございました」

春「…………」ペッコリン

穏乃(……とりあえず対局は終わったけど……なんなんだろう、これ?)

和「……おつかれさまでした、部長」

穏乃「和……」



45: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:26:27 ID:bkO4z7PY

穏乃(ずっと会いたかった和……。こんな形で会うなんて……)

和「?」

穏乃「どうして……。どうしてここにいるんだよ……」

和「…………中堅戦が終わったからですが」

穏乃「……中堅戦って……それが終わるとどうなるの?」

和「……知らないんですか」

穏乃「?」

和「副将戦が始まるんです」



46: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:28:06 ID:bkO4z7PY

和「さ、交代ですよ。控室戻りましょう」

穏乃「いやあの」

初美(ボゼ)「…………」トコトコ

穏乃「……あっ、後ろ」

和「?」クルッ

初美(ボゼ)「ばぁー」

和「ひっ!?」

穏乃「……お祭りの仮面……?」

初美(ボゼ)「ですよー」

和「きゃぁぁぁぁーーー!!!」

ぎゅむっ

穏乃「おぶっ」



47: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:29:13 ID:bkO4z7PY

穏乃(私に抱きついても和…… 和の方が身長高いんだから……)

ぎゅぎゅぎゅむっ

穏乃(む、胸に顔が挟まれて…… 息が……)

和「きゃぁー! きゃぁぁーー!!」

ギュギュギュッ

穏乃(苦……し…… のど……)

…………

……



48: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:30:18 ID:bkO4z7PY

死亡確認

和「…………部長?」

穏乃「…………」グッタリ


まこ「何を遊んどるんじゃ二人で……」

優希「ぱふぱふってやつだじぇ~」

咲(…………いいなあ)



49: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:36:44 ID:bkO4z7PY

【久 ②】

次の日 湯町中

久(…………日が変わっても、事態が変わる気配は無し)

久(……結局、中学校にまで来ちゃったわ……)

李緒「さ、部活始めようよ部長」

久「…………そうね。じゃ、県大会に向けて頑張りましょう」

全員「おー!!」

久(さて。どうしたもんかしらね)

久(……まあでも、なるようにしかならないわ。こうなったことに意味があると考えましょう)

久(今の私にできることをやるだけよ)



50: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:38:13 ID:bkO4z7PY

久(さしあたって、私にできることと言えば……)チラッ

はやり「?」

久「えいっ」

おもちむにゅっ

はやり「はやっ!?」

玲奈「おおーう」

久(……でかいわね。中一でこのポテンシャル……)むにむに

はやり「ぶ、ぶちょ……やめ……」

玲奈「やりますなー」フヒヒッ

久(……さすがに、高一の和よりは小さいけど。和も中一の頃これくらいあったのかしら)むにむにむにむに



51: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:39:52 ID:bkO4z7PY

堪能後

久(…………冗談はさておき)

久(しかしなかなかになかなか、新鮮な風景よねーこれ)

久(朝酌のインハイメンバーなら……みんな面影がわかる。「小鍛治プロの時の」って言えば語り草だもの)

久(年上のはずの人たちが私より年下で、私を年上扱いする……。何を言ってるのかしらね本当に)

久(……中でも、この人。白築慕さん)チラッ

慕「?」

久(高卒でプロ入りが有望視されていながら、高校卒業と同時に失踪……。その後現在まで消息不明の謎の人)

久(噂によると、幼い頃に生き別れた母親を探すため……なんて言われていたけれど。真相は闇の中)

久(いい機会だし。仲良くなっちゃおっと)



52: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:41:13 ID:bkO4z7PY

久「白築さんっ」

慕「はい?」

久「……ちょっと、小耳にはさんだんだけど聞いていいかしら」

慕「?」

久「あなたのお母さんって?」

慕「!」



53: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:42:55 ID:bkO4z7PY

慕ちゃん説明中……

慕「という……わけで……」

久(……ふーん)

慕「私……。どうしてももう一度、おかーさんに会いたいんです……!」

久(本当だったんだ……その噂)

慕「?」



54: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:44:43 ID:bkO4z7PY

久(…………そんなに会いたいものかしらね、いなくなった親なんて)

久(…………)

久(……正直、私には持てなかった感情だわ……)

慕「…………部長?」

久「…………でも」

慕「?」

久(…………彼女も……私と同じ、か)



55: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:46:02 ID:bkO4z7PY

久「…………大丈夫よ」

慕「……えっ」

久「待ち続けてたら……きっと会えるわ。何だって最後にはいいツモが入ってくるものよ」

慕「そう……でしょうか……」

久「ええ。この私が言うんだからね!」ニコッ

慕「……?……」

久「…………」

慕「…………」

久「…………私もね。いなくなった親がいたんだけど」

慕「!」



56: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:48:25 ID:bkO4z7PY

久「……残念ながら。白築さんみたいに、また会いたいと思える関係じゃなかったけどね」

慕「…………」

久「そのおかげで、苗字も変わって進路も変わって……。ろくに麻雀すら打てなくなっちゃったりもしたわ」

慕「進路?」

久「あ、ごめんごめんこっちの話。気にしないで」

慕「…………はあ」

久「……それでも、代わりと言っちゃなんだけど」

慕「?」

久「それからずっと待ち続けたことで……別の出会えたものがあった」

慕「…………」



57: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:50:02 ID:bkO4z7PY

慕「……なんですか、その出会えたものって……?」

久「…………大切な仲間たち」

慕「!」

久「なにも無いところから……待ち続けて2年。結果的には、そこで最高の出会いがあったと思ってる」

慕「2年…………」

久「ま、分の悪い待ちだーなんて。いろんな人に言われちゃったけどね」

慕「…………」

久「……それでも、諦めずに待ち続けたら。どんなに悪い状況でもきっと返ってくるものがある」

慕「…………」

久「…………私はそう思うわ」



58: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:51:55 ID:bkO4z7PY

慕「……怖く……ないんですか?」

久「?」

慕「どんなに悪い状況でも待ち続けるなんて……。部長は、怖くないんですか?」

久「…………ないわね」キリッ

慕「……どうして……」

久「……それが私の生き方だから」

慕「?」



59: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:53:06 ID:bkO4z7PY

久「麻雀でもそうだけど。悪い状況、悪い待ちでいる方が……最後にいい結果になっちゃうこと多いのよね、私」

慕「……悪い……待ち……」

久「昨日の試合もそうだったでしょ? みんなにはびっくりされちゃったけど」

慕「……そういえば、昨日の打ち方……。いつもと全然違って……」

久「…………まあね、そのいつもは世を忍ぶ仮の姿ってとこかしら」キリッ

慕「…………」

久「……だから、今のこの変な状況も。自分がしっかりしていれば、そのうちいい方向が巡ってくるって思ってるわ」

慕「?」

久「いいえ、こっちの話よ」



60: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:54:35 ID:bkO4z7PY

久「……まあ、私がそうだったから他の人も同じとは思わないし」

慕「…………」

久「だからあなたのお母さんも……、ただ待ってたらいいわよなんて軽くは言えないけど」

慕「…………」

久「待ち続ける気持ちって、大切にしたらいいと思うわ。諦めちゃったらそこまでよね」

慕「…………」

久「…………」

慕「…………続けられるでしょうか、そういう気持ち」

久「?」



61: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:56:04 ID:bkO4z7PY

慕「私も……。もう2年待ちました」

久「…………」

慕「その気持ちは、ずっと変わってないつもり……。今でも、持ち続けているつもりです」

久「…………」

慕「それでも……最近は……」

久「…………」

慕「やっぱり……無理なのかなって、思う日があって……」



62: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 18:57:22 ID:bkO4z7PY

慕「5年経っても10年経っても……。ずっと見つからなかったらどうしよう、って……」

久「…………」

慕「どこかで諦めちゃうかもしれない自分が……凄く怖くて……」

久「…………そう」

慕「…………」グスン

久「……それじゃあ、白築さん。私とひとつ、約束をしない?」



63: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 19:01:13 ID:bkO4z7PY

【雫 ②】

阿知賀特訓中……

憩「ツモ! 4000オールやでー」

雫「……はい」

……

藍子「ロン! それ当たりだよ!」ミョワワワワン

雫「ひぃっ」

……

利仙「ロン。5800の一本場は6100です」フワッ

雫「うう……」

…………

……



64: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 19:02:53 ID:bkO4z7PY

絃「ツモ。2000・3900」バシッ

雫「はうぅ……」

……

もこ「…………ロン、8000」ギロッ

雫(こ……こわい)ビクビク

…………

……

憩「しずちゃん午後はいまいちやねー」

憧「どうしたのよしず……」

灼「何か急におかしくなった……?」

雫(いや……おかしいのはあなたたち……)

宥「やっぱりその服じゃあったかくない……?」

玄「どんまいだよ!」

雫(……なんでみんな気がつかないの……)



65: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 19:04:12 ID:bkO4z7PY

休憩中

雫(はぁぁ…… 全然勝てない……)

雫(全国大会に出るような高校生になんて…… 勝てるわけないわよ……)

憧「……おつかれ」

雫「あ、はい。おつかれさまです……」

憧「……私に敬語とか……ほんっと、らしくないわね。お昼何か変なもん食べた?」

雫「…………いえ、そういうわけじゃ」

憧「……まったく。あんたがそんな感じじゃ、みんな調子狂っちゃうじゃない」

雫「…………」



66: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 19:06:26 ID:bkO4z7PY

憧「しずはさ。とにかくうおおおおーーーーって突っ走ってりゃいいのよ。フォローするのは周りの……私の役目」

雫「…………そんな」

憧「……それくらいもっとやらせなさいよね……。いつもいつも私のいないところで盛り上がっちゃって」

雫「?」

憧「だ、だから! どーせ自分じゃフォローなんかできないでしょって言ってんの!」

雫「…………はあ」

憧「……昨日今日の特訓だってそう。しずが最初にラーメン食べたい言ってくれなかったら、たぶんみんな動けなかった」

雫(……ラーメン……って言われても……)

憧「みんな感謝してるんだから。らしくなくウジウジしちゃってんじゃないわよ、当の本人が」

雫(そんなの……知らないです……)



67: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 19:08:10 ID:bkO4z7PY

阿知賀「今日はありがとうございましたー!」

憩「うん! がんばってなー」


ホテルの部屋

雫(ふう……。やっと終わった……)

雫(……わけもわからずホテルまでついてきちゃったけど……どうしよう……)

雫(…………)

雫(信じられないけど……。15年後にいるんだ、私……)

雫(……しかも、高校生として……。インターハイなんて……)

雫(おまけに、誰もそれに気づいてくれない……)

雫(帰りたいよぅ…… お父さん…… お母さん……)グスン



68: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 19:09:12 ID:bkO4z7PY

ガチャッ

憧「……ただいま」

雫「あ、おかえりなさい……。憧、さん」

憧「今……。外で熊倉さんと会った……」

雫「?」

憧「……ハルエ、プロになる話を断ったって……」

雫「……?……」



69: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 19:11:58 ID:bkO4z7PY

阿知賀女子集合……

憧「…………」

玄「…………」

宥「…………」

灼「…………」

雫(……うう…… 空気が重い……)



70: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 19:13:52 ID:bkO4z7PY

憧「…………」

玄「…………」

宥「…………」

灼「…………」

雫(どうしよう……)

雫(……正直言って、事情も何も全然わかんないけど)

雫(この人たちが、今すごく大事なところにいて……)

雫(とても深刻な問題を抱えてるんだっていうことは……よくわかる……)

雫(……なんとか、しなくちゃ……)



71: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 19:15:09 ID:bkO4z7PY

雫(私に何か、できること……)

雫(…………)

雫(ん~~~………… う~~~…………)

雫(あ~~~~~~)


ぷちっ


雫「がんばりましょう!! じゅんけつ!!」ガタガタッ

4人「!?」



72: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 19:16:15 ID:bkO4z7PY

憧「……しず?」

灼「いきなり大声出して……」

宥「……どうしたの?」

雫「正直、私には全然わかんないですけど!! 千里山が強くても! 白糸台が強くても!」

雫「私たちだって!! 強いです!!」

雫「今日私が見てた皆さんは!! 凄く強かった!!」

雫「みんな凄く真剣で! 必死で! 頑張ってたじゃないですか!!」

雫「自信持ってください!!!」

全員( ゚д゚)



73: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 19:18:49 ID:bkO4z7PY

憧「…………」

玄「…………」

宥「…………」

灼「…………」

雫(……あ、あれ…………?)

全員「…………」

雫(……わ、私また一人で暴走しちゃった……?)

憧「…………」ウフフッ

雫「?」



74: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 19:20:20 ID:bkO4z7PY

憧「そうね、しず」

雫「?」

憧「いきなり叫んで何言ってんのよって言いたいとこだけど……。あんたはいつもそう」

雫「…………」

憧「今日の午後はなんか心配しちゃったけど……。調子戻ってきたじゃない」

雫「…………」

憧「私たちはずっと。あんたのそういう大騒ぎに振り回されて引っ張られて……、支えられてきたんだ」



75: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 19:22:21 ID:bkO4z7PY

憧「なーんか、安心しちゃったわ。気も楽になった」

玄「うん! さすがみんなの大将だね!」

灼「……ムードメーカー……」

宥「……あったかい」ウフフッ

雫「あ、あはは……」



76: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 19:30:28 ID:bkO4z7PY

【穏乃 ②】

咲「ツモっ。400・800です」シャラン

豊音恭子霞「「「えっ」」」

実況「大将戦、決着ですー!! 1位通過は清澄高校!!」

優希「やったじぇ、咲ちゃーん!」

和「やりましたね!」

まこ「おう!」

穏乃(…………凄い…………!)

穏乃(これが…… 生で初めて見た清澄の大将……)

穏乃(……宮永……咲……!!)

穏乃(私が…… 決勝で打つ相手だ……!)ブルブルッ



77: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 19:32:09 ID:bkO4z7PY

穏乃(凄い……凄いっ!!)ふわふわわっ

優希「部長?」

まこ「どうしたんじゃ?」

穏乃「…………ちょっと行ってきます! 宮永さん……咲のところへ!」ガタッ

ダダダッ

和(私が先に行きたかったのに……)



78: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 19:33:59 ID:bkO4z7PY

穏乃「咲!」

咲「あ……部長……」

穏乃「凄かった! 凄かったよ!!」

咲「あ……はい……」

穏乃「嶺上開花連発で! 相手の攻めだってものともしないで!!」

咲「……ありがとう……ございます……」

穏乃(…………あれ?)



79: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 19:35:32 ID:bkO4z7PY

咲「でも……。自信ないです……」

穏乃「?」

咲「やろうと心がけてたことも……結局全然できてなかったし……」

穏乃「…………いや、そんな」

咲「次やったら……たぶん勝てません……!」グスン

穏乃「!」



80: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 19:38:20 ID:bkO4z7PY

穏乃「何……言ってるの……」

咲「…………」

穏乃「そんな風に思うこと……なにもないよ……。今の、凄かったじゃん……」

咲「でも……でも……」グズグズ

穏乃(なんで……なんだよそれ……)



81: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 19:40:51 ID:bkO4z7PY

穏乃(違うよ、そんなの……)

穏乃(今私がドキドキしたのは…… そんな姿じゃないよ……)

咲「…………」

穏乃(県大会の資料映像で見た咲は……私がわくわくしてた咲は……)

穏乃(私が一度も勝てなかった、あの衣さんに勝った……)

穏乃(……私の倒すべき相手じゃないか……!)

咲「…………」グスン

穏乃(そんなんじゃ……ダメだよ……!)



82: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 19:43:08 ID:bkO4z7PY

穏乃「…………」

咲「…………」

穏乃「…………」

咲「…………」

穏乃「…………わかったよ、咲」

咲「?」


穏乃「明日……。山に行こう……!」



83: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 20:10:05 ID:bkO4z7PY

【久 ③】

慕「約束……ですか……?」

久「……そうね。きっと大切な約束だから」

慕「?」

久「5年経っても10年経っても。あなたがその気持ちを持ち続けられますように」

慕「…………」

久「今から15年後。もう一度二人で会いましょう」

慕「…………えっ」

久「……証明してあげるわ。15年先の約束でも、守れる人がいるって」



84: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 20:12:28 ID:bkO4z7PY

久「第71回全国高等学校麻雀選手権大会……。15年後の、夏のインターハイ」

慕「インターハイ……?」

久「私は必ずそこにいる。絶対に守るわ」

慕「…………?」

久「だから、あなたもそこに来て。私に会いに来て頂戴」

慕「……???……」



85: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 20:14:42 ID:bkO4z7PY

慕「えっと……どういう意味ですか……?」

久「……15年後にそうする、って約束してたらさ」

慕「…………」

久「それまでの間は、今日の気持ちを覚えていられるでしょう?」

慕「…………はあ」

久「……もし忘れかけたら、それで思い出すといいわ。私と約束したんだから、って」

慕「…………」

久「どうかしら?」

慕「…………はい」



86: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 20:17:32 ID:bkO4z7PY

久「それじゃあ、約束のしるしに……。このメガネ」スッ

慕「?」

久「……その時まで預かっててもらえないかしら、これ」

慕「メガネ……ですか……?」

久「ええ」

慕「……でも、メガネなんて大事なもの……」

久「…………いいのよ。お守り代わりってことで」



87: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 20:19:55 ID:bkO4z7PY

久「たぶんね。15年後に会ったとき……そこにいると思うのよ、持ち主も」

慕「持ち主って……? 部長ですよね?」

久「…………だからそのとき、その持ち主に。あなたが返してくれたらいいわ」

慕「??」

久「きっとあなたがそうしてくれるって……。私も、信じてるから」

慕「???」



88: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 20:22:40 ID:bkO4z7PY

慕(……全然意味がわかんないけど……)

慕(この人なりに……私のことを考えてくれてるのかな……)

慕(……それに、このメガネ……)

慕(なんだか凄く……不思議な力を感じる。本当に信じられそうな何かを……)

慕「…………わかりました」

久「じゃあ約束よ。受け取ってくれる?」

慕「……はい」

スッ


ぐにゃっ



89: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 20:25:18 ID:bkO4z7PY

【雫 ③】

次の日 Aブロック準決勝

雫(……昨日はああ言ったものの……)

雫(どうしよう……)

雫(本当に大将戦で私が打つの……? あんなレベルの選手を相手に……)

雫(千里山の先鋒さんがあんな風に倒れて救急車呼んじゃったから……もう下手な仮病もできない……)

雫(「絶対決勝行くから!」なんて……。そのとき会った人と憧さんが約束しちゃってたし……)

雫(どうしよう……どうしよう……)ガクガクブルブル



90: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 20:27:39 ID:bkO4z7PY

昼休み 阿知賀女子控室

コンコン

玄「はーい」

宥「……誰か来た?」

晴絵「……誰だよ、こんなときに……」

ガチャッ

?「大事な試合の日にすみません。少しだけよろしいでしょうか」

晴絵「んがっ…… あな……た……は……」

慕「お久しぶりですね、赤土さん」

晴絵「白築……さん……」



91: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 20:30:26 ID:bkO4z7PY

晴絵「どうして……ここに……」

慕「……本当に久しぶり。あなたともお話ししたいことはいっぱいあるんだけど……、今日はその前に」

雫「?」

慕「そちらの、大将の彼女と。ちょっとお話させてもらっていいですか?」

晴絵「は? シズ?」

雫「!」

慕「……はい、しず部長と」

晴絵「?」

灼「えっ」



92: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 20:33:12 ID:bkO4z7PY

控室前の廊下

雫「あ、あの…… 一体……」

慕「本当に……、本当に中学生の部長なんですね……!」

雫「……?」

慕「お久しぶり……と言っていいのかわからないけれど。私にとっては、15年ぶりにお目にかかります」

雫「あなたは……」

慕「あなたの後輩、白築慕(28)ですよ。雫部長」ニコッ

雫「!!」



93: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 20:36:18 ID:bkO4z7PY

―回想 数十分前―

準決勝会場ロビー

雫(29)「遂に……この日が来たわ」

雫「……夏のインターハイ、第71回大会。確かに今年」

雫「…………阿知賀女子が準決勝を戦う日」



94: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 20:39:49 ID:bkO4z7PY

雫「今でもはっきり覚えてる。あの15年前の不思議な記憶……」

雫「……果たしてあれは何だったのか。突拍子もなさ過ぎて、あれから誰にも話せなかったあの体験」

雫「時間が経つにつれ。やっぱりただの夢だったのかな……と思って、自分の中では過ぎていた話だった」

雫「……だから、今年の奈良代表が十年ぶりで阿知賀女子に決まったときは……それはもう驚いた」

雫「夢じゃ……なかったかもしれないんだって……」



95: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 20:42:41 ID:bkO4z7PY

雫「……そう、今こそ」

雫「あれがただの夢だったのかどうか……。この目で確かめるとき!」

雫「…………とはいえ」

雫「選手控室なんて関係者以外立ち入り禁止よね……。どうしよう……」ウロウロ

慕「…………あっ、雫部長!」



96: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 20:45:21 ID:bkO4z7PY

雫「……えっ、あっ……! 白築さん……!?」

慕「……はい! お久しぶりです!」

雫「本当に……来てくれたんだ……」

慕「本当に……来てくれたんですね……」

雫「えっ?」

慕「えっ?」



97: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 20:48:02 ID:bkO4z7PY

しずしの説明中……

雫「私が……、それをあなたに……?」

慕「はい。15年後の約束に、って」

雫「…………そう。そうだったんだ…………」

慕「?」

雫「……だったら、そのメガネはね」

慕「はい」

雫「それを渡すのは、私じゃなくて……」

―回想終―



98: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 20:51:29 ID:bkO4z7PY

慕「……ありがとうございました。私の部長さん」

雫「…………えっ」

慕「私の待ち続けたもの……。無事に、見つけることができました。部長のおかげです」

雫「?」

慕「あのとき、部長が背中を押してくれなかったら……。どこかで、諦めていたかもしれない」

雫「??」

慕「挫けそうになった時も、このメガネを見て……。昔を思い返して頑張ろうって思えたんです」

雫「???」

慕「……今のあなたに言ってもわからないかもしれないけれど。どうしても一言、お礼を言いたかったの」



99: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 20:54:19 ID:bkO4z7PY

慕「……だから。15年前の預かりもの、約束通りお返しいたしますね」

スッ

雫「あ……私のメガネ……?」

慕「はい。受け取ってもらえますか?」

雫「…………はい…………。よくわかんないですけど……」



100: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 20:56:27 ID:bkO4z7PY

慕「…………では、私はこれで。お時間いただきありがとうございました」ペッコリン

クルッ スタスタスタ

雫「あ……」

雫「…………」

雫「…………」

雫「……なくしたと思ってた私のメガネ……」

雫「…………ありがとう、白築さん」

チャッ


ぐにゃっ



101: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 21:00:25 ID:bkO4z7PY

【穏乃 ③】

駅放送「高尾山口~、高尾山口~」

咲「あの……部長……?」

穏乃「高尾山! 一回登ってみたかったんだ!」

咲「……本当に……山登りなんですか……」

穏乃「ちゃんと他の人には断ってきたから大丈夫! 行こう!」



102: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 21:02:57 ID:bkO4z7PY

少女登山中……

咲「……ハァ……フゥ……」

穏乃「~~♪」

咲「……部長……そんなに早く行かないで……」

穏乃「山はいいよね~」



103: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 21:05:45 ID:bkO4z7PY

穏乃「全国大会終わったら、みんなでがっつり登山もしたいよね! この時期やっぱり立山よにゃ!」

咲(にゃ?)

穏乃「今日だって本当はもっとちゃんとした装備したかったけど! そこまで時間無いし咲も初心者だもんね!」

咲「……ちゃんとした装備?」

穏乃「そうだよ! スタッカーをエンテランスにつけてジョッパー持って! 松屋のブロークンサンダーを3ケース!」

咲「???」

穏乃「肩にはブリッコ乗せておだんご持ってプランチャー借りて! 夢が広がるね!」

咲(部長の言っている意味が全然わかんないよ……)

穏乃「山はいいよね~」

咲「…………はあ」



104: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 21:07:30 ID:bkO4z7PY

穏乃「でも……本当なんだよ」

咲「?」

穏乃「自然に囲まれた山の中を走り回ってるとさ。嫌なことなんかあっても全部吹っ飛んじゃうんだ」

咲「…………」

穏乃「心が疲れたときでも、元気になれる。大丈夫だよって言ってくれる」

咲「…………」

穏乃「……山はいつでも、私たちを助けてくれるんだ」

咲「…………」

穏乃「…………だからきっと、ここから元に戻る方法も」

咲「えっ?」

穏乃「……ううん、なんでもない」



105: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 21:10:10 ID:bkO4z7PY

山頂

穏乃「登頂ー!」

咲「……ゼェ…ゼェ…ハァ…ハァ……」

穏乃「うーん、いい空気! ね、最高でしょ!?」

咲「…………はい…………」

穏乃「悩みなんかあっても消し飛んじゃうよね!」

咲「…………」

穏乃「…………ね?」

咲「…………」



106: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 21:12:32 ID:bkO4z7PY

穏乃「……咲は、悩んでちゃダメだよ」

咲「?」

穏乃「詳しい事情は私にはわかんないけど。咲とは、そんなの関係ないところで……いい勝負がしたい」

咲「勝負……?」

穏乃「昨日の試合見てさ。本当に、心から凄いと思ったんだよ」

穏乃「こんな相手と打てるなんて、って……。凄く心がわくわくした」

穏乃「弱気になったままの咲となんて……打ちたくないよ……」

咲「??」



107: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 21:15:10 ID:bkO4z7PY

穏乃「……とにかくさ、ここで気持ち切り替えてもらったら! ほら見て、この景色!」

咲「…………はい」

穏乃「おいしい空気! 心地よい風!」

咲「…………」

穏乃「ヤッホーやる? ヤッホーやっちゃう!?」

咲「……部長……」

穏乃「あっ、売店あるよ! ソフトクリーム食べよう! とろろそばが名物だって!」

咲(……ちょっと強引だけど……。私をどうにか励まそうとしてくれてるのかな……)

穏乃(山、たーのしー!!)



108: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 21:18:07 ID:bkO4z7PY

穏乃「……あっ、ほら見て! きれいな花!」

咲「…………あっ」

穏乃「こんなところにも咲いてるもんだねー」

咲「わぁ……!」


フワッ



109: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 21:22:05 ID:bkO4z7PY

――そのとき、私の脳裏に浮かんだ光景は。

大好きだったお姉ちゃんと一緒に見た、あの山の上の花。

私に微笑みかけてくれた、お姉ちゃんの笑顔。

嶺上開花を私に教えてくれた、あのときの言葉――


咲「あのときと……おんなじだ……!」



110: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 21:25:38 ID:bkO4z7PY

咲「……森林限界を超えた高い山の上でも」

穏乃「?」

咲「力強く咲く、一輪の花がある」

穏乃「咲?」

咲「…………そう。それが……私の麻雀!」

ゴォッ

穏乃(…………咲の背後に……大輪の花が咲くイメージが見えた……)ゾクゾクッ



111: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 21:28:07 ID:bkO4z7PY

咲「思い出した……。何か……、何かが見えた気がします……!」

穏乃「……うん! その笑顔!」

咲「はい!」

穏乃「…………よかった」

咲「……ありがとうございました、部長!」


穏乃「……まあ、高尾山に森林限界なんてないけどね」

咲「えっ」ガーン



112: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 21:31:08 ID:bkO4z7PY

穏乃「……じゃあ、お別れだよ咲」

咲「部長……?」

穏乃「……部長じゃないよ」

咲「?」

穏乃「私は咲の……、清澄の部長さんじゃない」

咲「…………えっ?」

ざわ…



113: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 21:34:49 ID:bkO4z7PY

穏乃「私はしず……、高鴨穏乃。なぜだかわからないけど、入れ替わっちゃったんだ」

咲「……?……」

ざわ… ざわ…

咲(木々がざわめいている…… 山のささやきが聞こえる……)

穏乃「山たちは知ってるはずだよ……本当の部長さんの名前。……元に戻ろうよ」

ざわ… ざわ…ざわ…

ビュゥゥゥ


咲(――そのとき、突然風が大きく吹いて。まるで山が話しかけてきたみたいに、遠くから聞こえたその名前――)



114: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 21:37:07 ID:bkO4z7PY





   山 「 久 ! 」



.



115: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 21:39:25 ID:bkO4z7PY





ぐにゃっ



.



116: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 21:51:26 ID:bkO4z7PY

【久 ④】

久「…………あ、あれ? 咲!?」

咲「?」

久「ここ……は……。山の中……?」キョロキョロ

咲「どうしたんですか?」

久(白築さんにメガネを渡した瞬間……。ちょっと目がくらんだと思ったら……)

咲「??」

久「……戻って……きた……」

咲「あの、部長? 大丈夫ですか?」

久「あ、うん! 問題ないわよ!」

咲(……さっきまでと雰囲気が……)



117: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 21:54:05 ID:bkO4z7PY

久「……で、ここどこ?」

咲「……高尾山……です……」

久「…………」

咲「…………」

久「…………なんで高尾山?」

咲「……部長が……登ろうって言ったから……」

久「は?」



118: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 21:57:31 ID:bkO4z7PY

久「……じゃあ、もうひとつ聞いていい?」

咲「はい」

久「どうして私は、ジャージの上しか着てないのかしら?」

咲「……部長がそれしか着てこなかったからです……」

久「…………」

咲「…………」

久「……全然話が見えないんだけど」

咲「…………はい、私も」

久「……アホなのかな? 私は……」

咲(…………はいって言いそうになっちゃった)



119: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 22:00:43 ID:bkO4z7PY

久「それにしても……。何か下に履くもの持ってない?」

咲「あ……。じゃあこの予備のスカート……」

久「おっ、サンキュー。助かるわー」


着替え中……

咲「…………あの、私も聞いていいですか」

久「ん?」

咲「部長のお名前って……何でしたっけ……」

久「あら何? 咲も下の名前で呼びたいの? 美穂子に怒られちゃうわー」

咲「……いえそういうのじゃなくて」

久「竹井久さんっていうのよ、貴女のすてきな部長さんの名前は」

咲「…………そうですよね」

久「?」



120: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 22:03:19 ID:bkO4z7PY

久「……それじゃ、帰りましょうか」

咲「はい」

久「ほら、手つないで」

ぎゅっ

咲「あ……」

久「……離したらダメよ、絶対」

咲「…………はい」

ぎゅぎゅっ

咲(……あったかい、部長の手)

久(こんなところでこの子を迷子にするわけにいかないわ……。万に一つも離さないようにしないと……)ドキドキ



121: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 22:06:14 ID:bkO4z7PY

【雫 ④】

雫「…………、はっ!?」

慕「?」

雫「あ…… しらつき……さん……」

慕「……はい?」

雫(中学生の白築さん…… みんな……)

雫(…………帰ってきた……!)

慕「部長?」

雫「白築さん……、白築さぁん!!」

ギュッ

慕「ふえっ?」



122: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 22:09:17 ID:bkO4z7PY

雫「うっ…… う゛う゛…… 心細かったぁ……」グスン

慕「ぶ、部長?」

雫「う゛え゛え゛え゛え゛~~~~」

閑無「……慕を抱きしめて号泣し始めたぞこの人」

玲奈「情緒不安定のバリエーションがどんどん広がっていくね」

はやり「はや~……」



123: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 22:12:33 ID:bkO4z7PY

慕「…………あの部長、このメガネ」

雫「うう~~、李緒~~」ギュッ

李緒「ひえっ!? 私にも!?」

雫「会いたかったぁ~~~~」

慕「…………あの」

閑無「今度は抱きつき魔かよ……」

杏果「…………やれやれだね」

玲奈「よーし、私もはやりに……」コソコソッ

はやり「はやっ!?」ビクッ

杏果「こらこら」

ワイワイ キャッキャッ



124: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 22:15:11 ID:bkO4z7PY

慕(…………詳しく聞きそびれちゃったけど)

慕(…………)

慕(…………わかりました部長。15年後に)



125: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 22:18:25 ID:bkO4z7PY

一か月後

雫「あれから一か月……。ついに来た、新たな戦いの舞台」

雫「島根県大会……決勝戦!!」


実況「副将戦、終了です! 優勝の行方は大将戦にもつれ込みました!!」

はやり「……いってきました」

杏果「おつかれ」

玲奈「やったね、後半大逆転!」

閑無「冷や冷やさせんなよー」

はやり「…………うん、ごめんなさい」



126: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 22:21:26 ID:bkO4z7PY

雫(最後の大将戦……。この勝敗ですべてが決まる、絶対に負けられない一戦……)

雫(……おまけに、なぜか私にとっては今年度の団体戦初試合)


閑無「頼むぜ部長! 最後!!」

李緒「期待してるよ!」

慕「がんばってください!」

雫「…………ええ」



127: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 22:24:39 ID:bkO4z7PY

雫(痺れるような緊張感、物凄いプレッシャー、皆からの期待の目……)

雫(……でも、不思議と落ち着いている私。この感じ初めてじゃないな……)

雫(あのときと……よく似てるわ……)

雫(本当にインターハイに出場させられるんじゃないかと思った、あの不思議な日の感じに……)

雫(…………でも)

雫(怖くて震えてることしかできなかったあのときとは……違う……!)



128: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 22:27:21 ID:bkO4z7PY

雫(……本当に、昨日のことのように思い出す。あのとき、パニックになってた私を慰めてくれた彼女の声――)


憧「――しずは突っ走ってりゃいいのよ。真っ直ぐ前だけ見続けて――」


雫「…………そう……そうよ!!」



129: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 22:30:19 ID:bkO4z7PY

雫(みんなの大将が! しず部長がこんなところでくじけてるわけにはいかないの!!)

雫(あれだけのおかしなことがあったんだから! もうちょっとやそっとの事じゃ動じないわよ!)

雫(あのとき出会った、あの仲間たちの気持ちに応えるためにも! 私だって頑張らなくちゃ!!)

雫「やってやるわ! やってやるわよっ!!」クワッ

千沙(…………声がでかい)

李緒(……また情緒不安定が……)



130: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 22:34:24 ID:bkO4z7PY

雫「私だって! 私だって今が一番強いっ!!」

閑無(うわぁ……)

玲奈(……出たよ)

はやり(はや~……)

雫「うおおおおーーーー!!!!」ゴォッ

全員「…………」(ドン引き)

雫「…………あら?」



131: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 22:36:44 ID:bkO4z7PY

【穏乃 ④】

穏乃「あ…… ここは……」

穏乃「…………」キョロキョロ

穏乃「試合会場の廊下……。『奈良代表 阿知賀女子控室』……」

穏乃「戻って……きたんだ……」

ガチャッ

穏乃「ただいま……です……」

憧「あ、しず。お客さんはもういいの?」

穏乃「?」



132: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 22:39:11 ID:bkO4z7PY

穏乃「お客さん……?」

憧「あんたを呼んでた人よ。何の話してたの?」

穏乃「いや……誰もいなかったけど……」

晴絵「おいシズ! お前あの人とどういう知り合いなんだ?」

穏乃「?」

灼「しず部長ってどういうこと」

穏乃「??」

憧「…………変なしず」



133: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 22:42:17 ID:bkO4z7PY

大将戦前

穏乃「よっし! いってくるよ!」

憧「ちょっと待った!」

穏乃「?」

憧「制服着ていきなさいよ、ちゃんとした試合なんだから!」

穏乃「えぇーいいよー」

憧「いいじゃないわよ。ほら着替えて、私の貸してあげるから!」



134: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 22:45:30 ID:bkO4z7PY

穏乃「よし! 着替えた!」

憧(…………私の制服がちゃんと着れている)

穏乃「んー?」

憧(……やっぱり、昨日は何かの見間違いだったのかしら?)

穏乃「どうかした?」

憧「あんた……ここ数日で急にでっかくなったり小さくなったりしてない?」

穏乃「へ?」

憧「…………なんでもない」



135: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 22:48:26 ID:bkO4z7PY

灼「…………ただいま」

晴絵「ほら、行ってきなさい大将」

宥「がんばって……」

玄「ファイトだよ!」

憧「…………勝ってよね」

穏乃「……大丈夫だよ。約束したから!」

憧「…………そうね、さっき和と」

穏乃「ううん! 咲との約束!」

憧「はい?」



136: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 22:51:20 ID:bkO4z7PY

穏乃「いってきます!」

タッタッタッ

憧(…………やっぱりなーんかおかしいわ、昨日からのしず)

憧(…………)

憧(…………もしかしてだけど、私の服がちゃんと入るなら……)

憧(……服のサイズの方が違ってたとか? 昨日あいつにキツキツというか入りもしなかったはずのこのジャージ……)

スッ

憧(…………)

憧(…………きつくない)



137: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 22:54:48 ID:bkO4z7PY

【おさげのメガネのしず部長】

翌日 Bブロック準決勝

雫「昨日はありがとう、白築さん」

慕「……あれでよかったんですか?」

雫「…………ええ、たぶん」

慕「?」

雫「…………さて。白築さんの今日のご予定は?」

慕「明日の決勝までは、ここで観戦していくつもりです」

雫「……じゃあ、ご一緒していいかしら? いろいろ思い出話もしたいし」

慕「はい、喜んで」



138: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 22:57:03 ID:bkO4z7PY

阿知賀女子宿泊ホテル

晴絵「さて。今日は一日、玄に付き合って打つわよ」

灼「ドラゴン復活……」

玄「……うん、よろしくお願いします」

宥「がんばってくろちゃん……」

晴絵「試合の方は……。テレビつけっぱにでもしとく?」

憧「んー……。いいわ、見ないで」

穏乃「…………うん」

晴絵「そうか?」



139: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 23:00:15 ID:bkO4z7PY

憧「一昨日と同じよね。ここまで見ないで来たんだし」

穏乃「うん。信じてるから」

憧「……そうね」

晴絵「いや、対戦相手の分析とかいいのかよ」

憧「それはハルエの仕事でしょ。終わったら牌譜くらい見るわよ」

晴絵「なにィ」

穏乃「あっ、でも……」

憧「?」

穏乃「……中堅戦だけ、見ていい?」

憧「はあ?」



140: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 23:04:12 ID:bkO4z7PY

Bブロック準決勝中堅戦

パシュッ

ヒュルルル…

ズガン!!

久「ツモ! 3000・6000!!」

実況「清澄高校竹井選手、南単騎を一発ツモ! 跳満の和了ですー!」

ワァァァァーーーー


穏乃「…………うん。ちゃんといるよね」

憧(なんで中堅なんて……。まさかあの清澄の部長がしずに何か? 許すまじ……)ブツブツ


慕「……あっ、あのツモ……」



141: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 23:06:19 ID:bkO4z7PY

雫「ん?」

慕(あれは…………確かに、あのとき見た牌がかわいそうなツモ)

雫「どうかしたの?」

慕(…………それにあの打ち筋……、あのおさげ)

雫「……白築さん?」

慕(もしかして……彼女……?)



142: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 23:10:13 ID:bkO4z7PY

慕「……つかぬことを、お伺いしますけど」

雫「何?」

慕「雫部長って、今年高校三年生の娘さんいらっしゃいましたっけ?」

雫「!?」ブフォッ

慕「…………」

雫「なななな何言ってんのよ白築さん!! いるわけないでしょ!?」クワッ

慕(……あ、懐かしいこの感じ)

雫「そんなの、あなたと出会った中二の時もう居たってことよ!? 3歳児が!! 11歳の時の子が!!」

慕「…………ですよね」



143: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 23:12:11 ID:bkO4z7PY

慕「……もし、よかったらなんですが」

雫「?」

慕「今日の試合が終わったら。清澄の控室に行ってみませんか」

雫「えっ? 清澄??」

慕「…………もう一人。お礼を言わないといけない人がいた気がしたんです」

雫「???」



144: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 23:15:15 ID:bkO4z7PY

大将戦前

咲「じゃあ、いってきます!」

久「おっ、気合い入ってるわねー咲」

咲「はい! 部長と約束しましたから!」

久「ん?」



145: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/12(日) 23:18:25 ID:bkO4z7PY

久「私と? 何かしたっけ?」

咲「……覚えてませんか? 昨日二人で山に登ったとき……」ウフフッ


穏乃「――決勝で待ってる!」


咲「……最後にそう言ってくれたんですよ。しず部長が」ニコッ

久「へ?」

咲「……いってきます! 約束を守りに!!」

実況「さあ、準決勝はいよいよ大将戦! 選手の入場です!!」

ワァァァーーーー


カン



146: 以下、名無しが深夜にお送りします 2017/11/13(月) 00:14:30 ID:nLFk637M

王道な感じで面白かった。乙です
咲SSが多かった数年前が懐かしい


元スレ
SS深夜VIP:久「おさげの」雫「メガネの」穏乃「しず部長」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1510473955/