1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 12:19:21.70 ID:85vPFVYM0

幼馴染「あぁ、ようやく気が付きましたか」

男「……ここは?」

幼馴染「保健室ですよ」

男「なんで俺はこんなところに……」

幼馴染「C組の奴と喧嘩で相打ちになったんです」

幼馴染「向こうは死んじゃったみたいですが、男はそうならなくて本当に良かったですよ」ナムナム

男「ごめん、何か記憶があやふやでさ。世界観どころか、どこまでが冗談なのかわからないんだが」

幼馴染「残念ながら、一から十まで大マジなのです」

男「喧嘩で人が死んで、騒ぎにならない学校ってなに?」

幼馴染「緊急事態なんですよ。ちょっと厄介な問題が起きてて」

幼馴染「私達、この学校に二ヶ月近く幽閉されてるんですよ」

男「に……二ヶ月? 飯とかどうなってるんだよ!」

幼馴染「空間を操る能力【ディメンション】によってこの学園は世界と切り離されてるんですよ」

幼馴染「また、時間を操る能力【マッド・ウォッチ】によって八時から十八時をループさせられているようです。これによって排泄や食事の心配はありません」



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 12:33:17.42 ID:85vPFVYM0

男「なんで能力名と詳細が割れてんだよ……」

幼馴染「二ヶ月の成果ですよ。男だって一緒に色々調査してたのに……」

男「覚えてないもの」

幼馴染「やっぱりあの人、死に際に男の記憶弄くったみたいですね」

男「そんなに人の死がチープなのは十八時になれば全て元通りだからか。焦って損したぜ」

幼馴染「やだなぁ、死んだらそのままですよ。人生はゲームじゃないんですから」

男「え?」

幼馴染「どうにもややこしい能力らしく、人間の生死と記憶だけは戻されないらしいです」

男「……」

幼馴染「まぁどちらの能力も能力者が死ねば解除される代物らしいですし、本人たちの素性もわかってます。両者とも3-Aの生徒ですよ」

幼馴染「この二人を倒せばループも解けるはずです。何が目的なのかはわかりませんけど」



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 12:44:16.37 ID:85vPFVYM0

ザッザッザッ

ガラッ

男「ん、誰だ?」

金髪「……ここにいたか」

幼馴染「あらら、一番会いたくない方に遭遇しましたね」

男「どういう立ち位置の方ですか?」

幼馴染「主犯像が全くわからなかった時は、疑心暗鬼から簡単に殺し合いになりましたから」

幼馴染「その時不運にも、彼女さんを失った方です」クスッ

金髪「……挑発のつもりか?」

幼馴染「どうどうどう、誤解ですよ。私は真実を解明したかっただけでして」

幼馴染「まぁ彼女さんが死んだのに私にも非がなかったとは言い切れませんけどそれで私を恨むのは暴論と言うか……」

幼馴染「結局のところあの人の不注意って言うか……」

金髪「黙れ、お前の話を聞く気はない」ギロッ



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 12:54:40.64 ID:85vPFVYM0

男(おいおい、何やらかしたんだよ。滅茶苦茶怒ってるじゃん)

幼馴染「逃げましょう。金髪さんは好戦的な方ですから」

金髪「逃がすかよ」グッ

男「おぶっ!」

男(なんだ、急に体が重く……)

幼馴染「金髪さんの能力は【第三の引力】。常人には知覚できない未知の粒子を操って、離れた物体に干渉する能力です」



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 13:10:37.86 ID:85vPFVYM0

男「要するに、似非念動力か」

金髪「オラァ」ボゴッ

男「うがっ!」

男「ちょ、ちょっと待ってくれよ。お前が怨んでるのはあっちの幼馴染だろ!」クイクイ

幼馴染「いや、復讐者としての彼の行動は間違ってはいないと思いますよ。彼は大事な人を殺されて怒ってるワケですし、その仕返しに男君を……」

男「そーいう考察はいらねーよ」

金髪「おらっ」ボカッ

男「……」
(防ごうにも、念動力でピンポイントに動きを縛ってきやがる)

幼馴染「私は戦い向きじゃないから、ギリギリ見守れる範囲に隠れておきますね」タッタッタッ

男「おい、薄情すぎるだろそれ」

幼馴染「後追い自殺ぐらいはしてあげますから」

男「いや、そういうのはいいから」



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 13:18:15.79 ID:85vPFVYM0

男「俺の能力は何なんだ?」

幼馴染「そこまで忘れてたんですか……物凄く集中できる能力ですよ」

男「それ戦闘向きじゃねーだろ!!」

幼馴染「失敬な、ジャンプなら主人公張れるレベルですよ」

男「スケット団はバトル漫画じゃねーから!」

金髪「ぐちゃぐちゃウルセーよ。くたばりやがれ!」ブンッ

男(これ以上こんな無謀な状態でグーパンなんかくらったら意識もってかれるな)

男「こうなりゃ破れ被れだ!」

男「【集中】」キンッ



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 13:32:20.06 ID:85vPFVYM0

男「……」
(周りがスローに見える。体は……動かないか)

幼馴染『金髪さんの能力は【第三の引力】。常人には知覚できない未知の粒子を操って、離れた物体に干渉する能力です』

男(当然、金髪には未知の粒子が知覚できているんだろうな)

男(仮説だが、知覚できなくなればこの能力はコントロールできなくなるはずだ)

男(問題は、どう知覚しているかだ)

男(目ではない。何故なら奴に対象者の方向を必要以上に見ている傾向はないからだ)

男(そして、こっちの体に負荷を掛けるタイミングと奴が声を出すタイミングが合い過ぎている……)

男(遠くにある物体を把握できるのは視覚と嗅覚と聴覚のみっつ……第六感ならどうしようもないが)

男(これまでの点から、奴は音で未知の粒子を知覚し、声でコントロールしていることがわかる)

男(ならそれを崩すッ)スゥ

金髪「!?」ピク

男「「わっ!!!」」



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 13:44:20.90 ID:85vPFVYM0

男「よしっ。拘束が解けたな」スッ

金髪「なっ!?」

男「お返しだ」パァン

金髪「うぐぐ……」

幼馴染「さっすが男君。でもそこはビンタじゃなくてグーの方が格好良かったかな」

男「ま、勝負ありだなコレで。こっちに殺す気はないから去れよ」

金髪「舐められたものだな……声を出せば【第三の引力】が防げるとでも?」

幼馴染「この期に及んで強がりを、現にさっき……」

男「いや、さっき拘束が緩んだのは、単に耳を澄ましているところに俺が急に大声を出したから、集中力が乱れたんだろう」

男「通常はちょっと煩くした程度じゃあ防げないよ。カクテルパーティー効果って言ってさ、騒音の中でも人間は聞きたい音を優先的に拾うことができるんだから」

幼馴染「……じゃあダメじゃないですか。さっきあのまま馬乗りになって殴るぐらいはしとかないと」

金髪「……」



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 13:54:49.72 ID:85vPFVYM0

男「いや、ゲームセットだよ」

幼馴染「え?」

金髪「……」ポタ

幼馴染「あ……右耳から出血してる」

男「そう、このためにグーじゃなくてビンタしたんだよ」

金髪「クソッ……片耳がなくったて」ググ

男「無理だよ。お前が一番よくわかってるはずだろ?」

男「目も耳も、片方だけだとほとんど遠近感を測れないからな」

金髪「……」

男「諦めたらどうだ? もうどっか行けよ」

幼馴染「殺しといた方が良いんじゃない? 奥の手がないとも限らないし、十八時になればどっちにしろ聴力も回復しちゃうよ」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 14:05:05.47 ID:85vPFVYM0

金髪「……」タッタッ

幼馴染「結局言われた通りに逃げるんですね」

幼馴染「格好悪」ボソッ

男(薄々気付いてたけど、コイツ性格相当悪いぞ)

金髪「……」ピタッ

男(ま、そりゃ怒るよな)

金髪「遠近感なんか掴めなきゃ、何もできないわけじゃあない」クルッ

幼馴染「へぇ。じゃあやってみてくださいよ」

幼馴染「何もできないからアナタはさっき逃げようとしたんですよ」

男(距離感を掴めなくてもできること?)

金髪「どのみち、後でこうするつもりだった」

幼馴染「ふーん」

男(マズイ、まさかっ!)ダッ



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 14:17:57.04 ID:85vPFVYM0

金髪「  」パスン

男「……」ピタッ
(遅かったか)

幼馴染「うん?」

男「……ここを出よう。【ディメンション】と【マッド・ウォッチ】を捜さないと駄目なんだろ?」

幼馴染「金髪さんどうしちゃったんでしょうか? あれから倒れこんで動かなくなりましたよ」

男「……自殺だよ」

幼馴染「え?」

男「体内にある粒子を動かして、何処かしらの自分の器官を壊したんだろう」

男「きっと体内にずっとセットしてたんだろう。これなら位置が認識できなくなっても場所を覚えていれば大丈夫だ」

幼馴染「逃げようとしたけど、言い負かされて死んじゃうなんてダッサイですね」

幼馴染「名探偵に自殺を阻止されたシリアルキラー並みにダサいです」

男「お前……」

幼馴染「何ですか?」

男「いや、なんでもない」
(なんで記憶をなくす前の俺は、こんな奴と一緒に行動していたんだろう)



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 14:32:25.23 ID:85vPFVYM0

幼馴染「死体と談笑する趣味はありませんし、さっさとここからでましょうか」

男「……そうだな」

タッタッタッ
ガチャ

…………

男「で、例の二人の居場所はわかってるのか?」

幼馴染「……どちらも二ヶ月間全く姿を見せてませんし、情報もはっきりとしたものはないです」

男「……」

幼馴染「まぁいくつか推測を手帳にまとめ……あれ?」

幼馴染「……」

幼馴染「あ、すいません。保健室にメモ帳忘れてました。ちょっと取ってきます」



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 14:35:29.12 ID:85vPFVYM0

男(本当はこういう時、一緒に付いて行くべきなんだろうな)

幼馴染『殺しといた方が良いんじゃない? 奥の手がないとも限らないし、十八時になればどっちにしろ聴力も回復しちゃうよ』

男「……あぁ、待ってるよ」

幼馴染「あんまり動かないでくださいね」タッタッタッ

男「……」

男(今の内に逃げようかな)

妹「やっほー兄さん」スッ

茶髪「……」スッ

男「だっ、誰だお前ら!」

妹「何かがおかしいと思ったら、やっぱり記憶をやられてましたかヤレヤレ」



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 14:49:22.56 ID:85vPFVYM0

男「一人になるのを待ってたってことは俺と戦いたいってことか?」

妹「実の妹の顔も忘れちゃうなんて……」ハァー

妹「別に戦っても良いんだけどね。私の能力【バージネス】は集中力を乱すだけの能力」

男(おいおい、アンチ俺じゃねーか完全に)

妹「で、こっちの方の能力は【ソリッド】。ただ頑丈になるだけの能力なんだから」

茶髪「……」

男「わざわざばらしたってことは戦意はないってことで良いのか?」

妹「当然よ、ゲンスルーじゃないんだから」

男「で、何の用なんだよ」

妹「あー記憶消えてるとやりにくいな、なんか」

妹「はっきり言うと、幼馴染さんの処刑に手を貸して欲しいのよ」

男「は?」



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 15:04:02.97 ID:85vPFVYM0

妹「あの人周りの恨み買いまくっててさ。多分あのひとがいなかったら死傷者が三桁越えることもなかっただろうし」

男「はぁ……」

妹「アイツが主犯だって言い出す人も出てきてさ、そのせいでデマが飛び交っててグチャグチャになっちゃってるのよ」

妹「殺し合いの発端もほとんど彼女だったりするし、元生徒会としてもこれ以上放置してられないのよ」

男「そんなこと急に言われても……」

男「それに普通にやってて事態が進展しないから、アイツも過激に動いてるんだろ」

妹「ま、そうだろうけどさ。やり過ぎるぐらいやらなきゃ生徒会って空気なのよ」

妹「嫌われ者の幼馴染さんを私がバッサリやれば生徒会は一躍ヒーローでしょ?」

妹「そうなれば散り散りに荒れてる全校生徒を束ねて、隠れてる犯人を簡単に捜せるでしょう?」

妹「これが私のやり方よ」

男「……」

妹「お兄ちゃんも卒業間際にこんなことになってウザッたいでしょ?」

妹「私が今日中に解決してみせるわよ。そのためには幼馴染さんを消す必要があるの」



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 15:20:01.28 ID:85vPFVYM0

幼馴染「私がどうしたんですか?」ヒョイ

茶髪「……」チッ

幼馴染「都合の良いことばっかり言って、人を悪役にしないでくださいよ。そんな言い方されたら私やさぐれちゃいますよ」

幼馴染「男君、こんな人達信用しないほうが良いですよ」

幼馴染「ほら例の二人を生徒会ぐるみで匿ってるって噂もありますし」

幼馴染「記憶喪失前、結局あなたは私を選んだんですから」

妹「……」

幼馴染「こいつらは結局のところ、男君の記憶が消えたと知って駄目元で再交渉しに来ただけなんですから」

妹「……わかったわよ。お兄ちゃんが引っ付いてる所にガチバトル吹っかける気もないし、これからもお互い無干渉で行きましょうか」

男「一つ聞きたい、この返答次第でどっちに付くか決める」

幼馴染「……」

妹「ほう」

男「幼馴染の能力は何なんだ?」



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 15:34:28.44 ID:85vPFVYM0

幼馴染「……」ニヤッ

妹「……」チッ

男「知ってるなら、できればお前から聞きたいんだが」

妹「お前じゃなくて妹なんだけど、まぁ記憶ないし仕方ないか」

幼馴染「私ってそこまで信用できませんか? 少しショックですねぇ」ハァ

男「……万が一のためだよ」

妹「まぁ、全校生徒の能力は把握してますけど」

男「もったいぶらずに教えてくれよ」

妹「【コピーハート】、手を握ると相手の考えていることがわかる能力よ……」

男「なるほど」
(似合わねぇ……)

男「危険な能力じゃないなら、俺は幼馴染に付くよ」

男「これ以上過激な行動しないためにも、見張っとく必要もあるし……」

妹「やっぱりそうなりますか」ハァ



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 15:47:50.05 ID:85vPFVYM0

妹「では、ここでサヨウナラですねお兄ちゃん。せいぜい幼馴染さんがこれ以上罪を重ねないように見張っててください」

妹「私達生徒会は七不思議の七番目、地下室を探しているので別の方面から二人を追ってください」

幼馴染「そうさせてもらいますね。あなた達と顔合わせたくないですし」ニコッ

妹「……じゃあ行きましょうか、茶髪さん」

茶髪「ああ」

タッタッタッ

幼馴染「……」フラッ

男「おっ、おい大丈夫か?」

幼馴染「二ヶ月もこんないがみ合いですから、少し限界かもしれませんね……ハハハ」ニコ

幼馴染「そろそろ決着付けないと」ボソッ



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 15:59:51.41 ID:85vPFVYM0

幼馴染「少し、久しぶりに寝て良いですか? 十三時には起きますから」

男「あぁ……」
(やっぱりこいつもただの女の子なんだな)

男「睡眠も必要ないから、二ヶ月ぶりの睡眠なんだろうな」

幼馴染「……」スー スー

男「ははっ可愛い寝顔しやがって」

男「しかし【ディメンション】と【マッド・ウォッチ】か……。本当にそんな奴らに勝てるのか?」

男「……まぁ、そこまで戦闘に応用できる能力じゃなさそうだし何とかなるだろう」

男「本当、何が目的なんだか。卒業したくなかったからとか?」

男「つってもずっと隠れてても楽しくないだろうに、死者に変装してうろついてたりすんのかな?」

男「……あー、なんか考え纏まらないや。【集中】、使ってみようかな?」



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 16:19:43.96 ID:85vPFVYM0

…………
……

妹「こんな所に隠し階段があったなんて驚きね」

眼鏡「【分析】……それだけが取り柄の僕を拾ってくれたのは、アナタでしょう」クイッ

妹「私が評価したのは、その義理堅さと粘り強さよ」

茶髪「……」

妹「ん? どうしたの、何か言いたいことがありそうな顔ね」

茶髪「あまりイチャイチャしないでくれ、肩身が狭い」

妹「なななななな! 何言ってるのよ!!!」

眼鏡「久方ぶりに珍しく茶髪さんがまともな台詞を口にしたと思えばなんですか全く」アセアセ

妹「じょ……冗談なんてらしくないわね本当に!」

茶髪「……」
(気のせいだと良いんだが、嫌な予感がする……)



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 16:26:13.65 ID:85vPFVYM0

妹「こんな所に隠し階段ってことは、有り得るわね。この先にあの二人が隠れてる可能性」

眼鏡「そっ、そうですね。はい」

妹「様子見ってことで三人だけで来ちゃったけど、応援を呼んだ方が良いんじゃないかしら?」

眼鏡「こんなことでわざわざ全員呼んでたら、後手後手になりますよ」

妹「まぁそうだけど。ん、また扉か……開けるわよ」

眼鏡「人の気配はありませんけど、一応待ち伏せを警戒しておいてくださいね」

ギィ

妹「こ……これって」

眼鏡「そんな、なんでこんなところに……。コレは全員分なんでしょうか?」

妹「まぁ……軽く、見積もって……うぅ」オエッ

眼鏡「私が調べます、妹さんはこのことを早く皆へ知らせに行ってください」



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 16:38:01.65 ID:85vPFVYM0

眼鏡「にしても、とんでもない思い違いをしていたみたいですね。そりゃあの二人が見つからないワケです」

茶髪「……?」

眼鏡「地下室の隅、見てください」

茶髪「……な!」

眼鏡「いよいよ黒幕が見えなくなってきましたね」

妹「……じゃあ私は報告に行ってくるわ」スッ

スー……

?「マァ、マチナヨ」

眼鏡「これは……確か教頭先生の能力【ナイトメア】?」

?「ココマデミラレタラ、イキテハカエセナイネ」

茶髪「……何をしている妹さん、早く報告に行け」

妹「でもこうなった以上非戦闘向きの眼鏡さんを行かせた方が……」

眼鏡「霊体相手に集中力も何もありませんよ。妹さんは他の方に報告してコイツの本体を叩いてください」



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 16:48:15.53 ID:85vPFVYM0

?「ダレヒトリイキテカエスキハナイヨ」シュンッ

茶髪「……鎌?」

眼鏡(大丈夫、茶髪さんの【ソリッド】があれば刃物なんか……)

ザクッ

眼鏡「なっ!?」

妹「茶髪さん!」

?「キヒヒヒヒ」

茶髪「勘違いするなよ、ワザとめり込ませたんだ」グググ

?「…………!?」
(鎌が引っこ抜けない!?)

茶髪「早くいけぇ!!」

妹「う……うん」

眼鏡「妹さん」

妹「……」

眼鏡「また生きて会えたら、告白して良いですか?」

妹「……絶対、死なないでね」ダッ



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 16:54:45.59 ID:85vPFVYM0

茶髪「あまりイチャイチャしないでくれ、肩身が狭いだろ」ニヤッ

眼鏡「すいませんね、つい」ニャッ

?「死亡フラグ、ブッタテヤガッテ」ググッ

眼鏡「死ねない理由を作ったんですよ」

茶髪「……そろそろ鎌は諦めた方が良いぞ」ググッ

?「!」
(こんなに血ィ出しといてまだ動けるのかよッ)

ガツンッ



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 17:02:51.08 ID:85vPFVYM0

…………
……

幼馴染「んん……」

男「もう今日一日寝といた方が良いんじゃないか?」

幼馴染「もう大丈夫ですよ」

男「そっか。もう少し幼馴染の寝顔見ていたかったんだけどな」

幼馴染「そっそんな///」

男「ははは……、そういうのはここを出てからにするか」

幼馴染「……。男君は来週引っ越すんでしょうが、です」

男「……そうなのか、ごめん記憶あやふやだからさ」



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 17:12:23.50 ID:85vPFVYM0

ダダダダダッ

ドサッ

男「ん、誰だ?」

妹「……」ゼェゼェ

男「ああ、さっきの人」

妹「いやさっきの人じゃなくて実の妹なんだけど」ゼェゼェ

妹「あー、よりによって最初に遭うのがアンタらだなんて」ゼェゼェ

妹「やっぱり運動不足ね、ちょっと走っただけでこんなのなっちゃうなんて」ハァ

幼馴染「……」

男「何があっんだよ?」

妹「人の生死と記憶だけは十八時にもリセットされないのは知ってるでしょう?」

男「まぁ一応」

妹「その分の死体がまとめて見つかったのよ」



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 17:22:44.92 ID:85vPFVYM0

男「死体!?」

幼馴染「……」

妹「ええ、地下室に大量の死体が転がってたの……」ゼェゼェ

妹「その中には【ディメンション】と【マッド・ウォッチ】の二人が仲良く死体になって並んでたわ」

男「えっ?」

男「ちょ……ちょっと待てよそれって」

妹「完全にこれで犯人候補が白紙になったわ」

妹「……今、犯人の操ってる遠隔能力と仲間の二人が地下で戦ってるから一緒に来てくれない?」

幼馴染「……もう手遅れじゃないですか? 能力者同士の戦いが長引くの、想像できませんし」

幼馴染「多分どっちにしろ勝敗はついてますよ」



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 17:33:07.58 ID:85vPFVYM0

妹「……アンタには言ってないわよ」

男「!! おい、そこの盗み聞きしてる奴出て来い」

隻眼の男「あれ、あれれれ。なんでばれちゃった?」

隻眼「やほー、久しぶりって程でもないかァ。俺俺俺だよ。忘れちゃった?」

隻眼「そう言えば記憶喪失だとかいう設定がありましたっけ、はぁ」

男「な……なんだよお前」

幼馴染「お兄ちゃん、なんで」

男「え?」

隻眼「ピンポーン。誕生日的にはほぼ一年違いだけど、学年は同じのお兄ちゃんだよ」

隻眼「留年したワケじゃないからね。そこ勘違いするなよな」



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 17:42:49.98 ID:85vPFVYM0

隻眼「じゃあ、俺ちゃん用事があるからサヨナラだぜ。さっきの話は俺が広めといてあげるから三人で早く助けに行きな」

妹「いや、そんな手当たり次第にやられても混乱招くかなって……」

隻眼「じゃあなー愛しの妹よ、愛してるぜィ」

幼馴染「え、あ。はぁ……」

隻眼「じゃーなー」ダダダダ

妹「……」

男「じゃあ俺らで地下に行くか」

妹「3-B、隻眼。幼馴染さんの兄で能力は【見よう見真似】」ボソッ

幼馴染「……何が言いたいのですか、お前」



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 17:53:26.30 ID:85vPFVYM0

妹「あの二人の能力者の死体が出てきた以上、この状況を作れる人間はコピー能力者しか有り得ないでしょう」

幼馴染「……隻眼兄さんはやってない」

妹「疑わしきは罰する。あなたもここに閉じ込められてからは、そんな風に生きてきたんでしょう?」

幼馴染「……早く地下に行きましょうよ」

妹「お兄ちゃん、単独で地下に向かってくれませんか?」

妹「私はさっきの変人を追いますから」

男「……わかった」

幼馴染「……」

ピンポンパンポーン

隻眼『アーアーアーアーアー! きっこえますかー!』

妹「学内放送?」



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 18:05:56.98 ID:85vPFVYM0

隻眼『マイクのテストチュー、マイクのテストチュー!』

隻眼『……これ言ってみたかったんだぁ、へへへへへ』

隻眼『放送室陣取るの初めてだし一曲歌って見て良い? 俺バンプなら90点出せるぜ』

男(コイツが幼馴染の兄貴かよ……アイツも苦労してんだな)

隻眼『そういや伝言あったんだったわ。えーっと、えーっと……』

隻眼『ごめん、忘れちゃった☆ てへぺろ』

妹「確かにコイツは犯人じゃあなさそうね」イラッ

隻眼『このまま終わらすのもなんなので、伝言の代わりに俺からのアッツイメッセージを送りますね』

隻眼『実は、俺なんですよ。【ディメンション】と【マッド・ウォッチ】コピーしてお前ら幽閉してるの』

男「!」 妹「!」

幼馴染「え……?」



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 18:16:48.82 ID:85vPFVYM0

隻眼『やーいやーい。悔しかったら早く放送室まで来いよ』

隻眼『ん、動機? 動機必要?』

隻眼『世の中の残虐な事件のほとんどが目立ちたいとか、ストレスの発散とかしかないんですよーだ。もうちょっちニュースとか見ろよ馬鹿』

隻眼『俺だって必死にソレっぽい理由見繕おうとしてけど、何も思い浮かばなかったから変に格好付けず有りのままの自分で行きますね』

隻眼『じゃ、俺はここで待ってるから早く来いよーう』

隻眼『その場凌ぎの劣化品とは言え俺は【見よう見真似】で999の能力持ちなんだから、自信のない方は黙って震えながら勇者の登場をお待ちくださーい』



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 18:26:57.09 ID:85vPFVYM0

妹「……」

男「だ、そうだが。どうするんだ妹よ」

妹「放送室に行きましょうか」

男「地下は良いのか?」

妹「【ナイトメア】は俊神鬼没な死神を操る便利な能力だけど、その間使用者が寝ている必要があるの」

妹「ああやって使用者が演説垂れてるところ見るともう手遅れよ」

幼馴染「……すいません、私一人で放送室に行って良いですか?」

男「駄目に決まってるだろ」

妹「私の気も晴れないしね」

幼馴染「でも、」

男「お前一人ここに残るか、一緒について来るかなら選ばせてやるよ」

幼馴染「……」

幼馴染「一緒に行く」

男「そうか」



63: "" 2013/03/19(火) 18:46:01.95 ID:85vPFVYM0

……
…………

「やってやったぜぇ、見たか俺の華麗な動き」
「大したことなかったな。千の能力とかいう奴」
「え? もうこれで帰れんの?」

ザワザワ

不良「あ、お前らも来たの?」

男「えーっと、この有様は……」

妹「……」

不良「見ての通りだよ。放送終わった後すぐ袋叩きになってあの有様よ」

隻眼「……」

不良「もう死んでんじゃないかな」

幼馴染「……ぁ、ぁあ」ヘタッ

不良「クラス一緒だったんだよな俺。おちゃらけた奴だけど、根は真面目で良い奴だったんだぜ本当に」

不良「あそこまで徹底的にやらなくても良いだろうに、あそこまで何か後味悪いわ」

男「……そうだな」



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 18:54:30.04 ID:85vPFVYM0

不良「家のことで悩んでたのかもな。父子家庭な上に父親が暴力野郎の大酒呑みだったらしいから」

不良「まぁ数年前に死んだらしいけど」

幼馴染「……」ギリッ

男「……ふーん」

不良「にしても、なかなか解けないな【ディメンション】の効力。流石にもう死んだだろ」

隻眼「……」フッ

男(ん? 今口元が動いた)

隻眼「  」パクパクパク

「おいおい、まだコイツ生きてんぞ」ガツンッ

ぐしゃっ

男(あの口の動きって確か……)


 愛しの妹よ、愛してるぜィ


男「……」



68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 19:07:45.59 ID:85vPFVYM0

……
…………

男「で、あの後【ディメンション】が解けたんだよな」

妹「……そうだったね。記憶の調子はどう?」

男「あぁ、すっかり元通りだよ」

男「で、俺は明後日から外国の大学へ行くため留学するんだっけ?」

妹「本当に記憶大丈夫?」

男「冗談冗談、大丈夫さ」

男「……結局幼馴染、あの後引き篭もって部屋から出てこなくなっちまったな」

妹「そりゃあ、ショックでしょう」

男「実はさ、お前が地下から走って来る直前まで、幼馴染の奴寝てたんだ」

男「あれって【ナイトメア】の睡眠だったんじゃないかって」

妹「……さぁね」



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 19:19:54.28 ID:85vPFVYM0

男「俺の能力が集中する能力で、お前の能力が集中を乱す能力じゃん」

男「やっぱりある程度は遺伝が関係してると思うんだよな」

男「だから……」

妹「止めてよ!」

男「……」

妹「今更責めれるワケないでしょ。事実がどうだったとしても」

男「……そうだな」

男「日本にいる間に一回だけでも顔合わせておきたかったんだけどな」

男「に、しても……」

『ん、動機? 動機必要?』
『世の中の残虐な事件のほとんどが目立ちたいとか、ストレスの発散とかしかないんですよーだ。もうちょっちニュースとか見ろよ馬鹿』
『俺だって必死にソレっぽい理由見繕おうとしてけど、何も思い浮かばなかったから変に格好付けず有りのままの自分で行きますね』
『愛しの妹よ、愛してるぜィ』

男「俺はあんな兄貴には一生なれないだろうな」

妹「ならなくて良いよ……」





75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 19:49:51.01 ID:85vPFVYM0

【誰かさんのモノローグ】

物心付いた時、私は超能力なんて何一つ持っていなかった。
強いて言えば歌うことが得意だった、よく父に褒めてもらったのを記憶している。

超能力者同士の夫婦の住む、小さく幸せな家の次女として私は生まれた。

が、そんな幸せは長くは続かなかった。

父は奇妙な読心術のせいで上司の企みを偶然暴いてしまい、
その事が切っ掛けで嫌がらせを受けるようになり、ついにはクビになってしまう。

そのことで父は塞ぎ込んでしまい、
私達に暴力を振るうようになってしまった。

母が私達を連れて離婚することを決めたのが、それから一年のこと。

その決意意を聞いた時、
父は「子供は俺が引き取る」と駄々を捏ねれば、母が離婚を諦めると思ったらしい。

ただそれは大きな検討違いだったらしく、
母はあっさりと小さな一戸建てを出て行った。

その結果、経済力のない男を幼い兄妹が養うことになってしまう。はぁ。



78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 20:13:43.89 ID:85vPFVYM0

小学校には顔に痣を作りやせ細ったような少女と関わりたいと思ってくれるような特異な人間はいなかったようで、
私は味気ない毎日を何となく過ごしていた。

三年生になったある日、アイツは現れた。

「家、割と近かったんだね。俺さ、男って言うんだ。クラス一回一緒だったけど、覚えてる?」

その日を切っ掛けに少し照れ症な少年とよく話すようになったことを、私は鮮明に覚えている。

心の寄りどころは、兄さんとその男の子だけだった。

…………。

時は流れ中学生になったある日、私は父に犯された。

父に殴りかかった兄さんが左目を酒瓶で殴られた。

その後はあまりはっきりと覚えていない。

ただ、何か紐のようなもので必死に父の首を絞めている自分の姿が、たまにフラッシュバックする。



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 20:15:13.05 ID:85vPFVYM0

その次の日から、私は握手した相手の気持ちがわかるようになった。

私の能力は、殺した人間の能力をコピーする能力だったのかもしれない。

だから私達を養ってくれると言った叔父さんの心の中なんか、本当はわかっていた。

……わかってた。

…………わかってた。

「兄」と「親友」。
この心の支えのどちらかを失ってしまえば、私はきっと壊れてしまうだろう。
どっちも失ったときどうなるかは……考えないでおこう。

今日も私は、心の拠り所を探して見知らぬ人の手を握る。

おしまい



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/19(火) 20:17:51.42 ID:x2FQ8pfmO




元スレ
幼馴染「超能力学園なのです」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1363663161/