492: 1です 2018/01/22(月) 20:24:58.49 ID:YASyyLDT0

それでは再開します
雪のせいで外が静かで、少し明るい……

では>>494の楓さんどうぞー



494: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/22(月) 20:26:40.08 ID:YZpRCb3V0

男装麗人



497: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/22(月) 20:38:12.26 ID:YASyyLDT0

最近、楓さんの雰囲気が少し変わった気がする

「今日も仕事を頑張ろうじゃないか、はっはっは」

いや、少しじゃない……とても変わってしまった

「プロデューサー、思い詰めた顔をしてどうしたんだ?」

「い、いえ……なんでもないです」

俺の肩を叩きながら、イケメン風な笑顔で俺に言う楓さん

歯がきらりと輝いてるぜ、ちくしょう



498: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/22(月) 20:42:46.90 ID:YASyyLDT0

俺の中の楓さんはダジャレ好きの、綺麗な女性というイメージだった

後、付け加えるなら、自分を特別扱いするのを嫌うと言うか……

ともかく、女性らしさがある人だったんだが

「おいおい、そんなんじゃうちのアイドルたちが困っちまうぜ」

こんな男言葉を使う人ではなかったはずだ

いったい彼女を何が変えてしまったのか……




499: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/22(月) 20:50:15.25 ID:YASyyLDT0

今日の恰好もそうだ

いつもならスカートなどの女性的な恰好を好むはず

なのに、最近の恰好はパンツルックを好んでいる

黒のスキニーパンツにシャツとジレ、タイこそ結んでいないがイタリアの伊達男のようなファッション

高身長なのでとても似合っているのだが、俺からすると少し寂しい

こう……脚、いや違う、太腿、いや……違くないか

「私の顔に何かついているのかい?」

髪をアップにした楓さんが、不思議そうに俺の顔を覗き込んだ



500: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/22(月) 20:53:54.56 ID:YASyyLDT0

「い、いえ……ちひろさん、ちょっと営業に行ってきますので」

同僚のちひろさんにそう言い残し、俺は事務所を足早に去った

「あっ……」

その言葉は楓さんかちひろさんかはわからない

けれど、これ以上事務所にいたくないと思ったのだ

外に出たは良いものの、営業なんてするつもりもないし

俺は適当な喫茶店に逃げ込むことにした



501: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/22(月) 21:11:07.82 ID:YASyyLDT0

からんと鈴がなって、マスターが出迎えてくれる

好きな席で良いとのことなので、日が当たる窓際を選ぶ

すると、見知った顔が静かにコーヒーを飲んでいた

「おや、プロデューサーもコーヒーブレイクか?」

「まぁそんなところです」

木場さんがカップを傾ける様は、とても絵になっている



502: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/22(月) 21:14:17.77 ID:YASyyLDT0

何を頼もうか、メニューを広げてみると、コーヒー豆の種類が多くてわからない

「私と同じものでよければ飲むかい?」

木場さんが助け舟を出してくれたので、頷く

しばらくするとコーヒーが運ばれてくる

きちんと焙煎して、丁寧に入れているであろうそのコーヒーはとても匂いが良い

「美味いですね」

豆の種類はよくわからないが、美味いということはわかった



503: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/22(月) 21:17:27.92 ID:YASyyLDT0

「ふむ、何かあったと見える」

ぎくりとした

「営業中にさぼってるだけです、特になにも」

そう言いながらカップを傾ける

「果たしてそうかな? 顔に書いてあるよ、楓さんが変わったことに困っていると」

にやりと木場さんが悪戯っぽい笑みを浮かべる

で、どうなんだ? と聞いてくる木場さんに、俺は打ち明けることにした




504: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/22(月) 21:24:20.28 ID:YASyyLDT0

「ふぅん、楓さんが変わってしまったと」

「ええ、まるでがらりと変わってしまいました」

それはもう対極のように

「なるほど、それで君は楓さんを嫌いになってしまったのか?」

俺は首を横に振る

「そんなことはないです。ただ、違和感が凄いと言うか……」

嫌いうんぬんの前に、あれだけ変わってしまうと話しづらいと言うかなんというか……




506: 訂正します 2018/01/22(月) 21:31:37.16 ID:YASyyLDT0

「ちゃんと話してみたのか? 何故変わってしまったのか」

俺はまた首を横に振る

「いえ、それはまだ……」

そして、木場さんはカップを傾けると、ふぅと息を吐いた

「わからないなら聞けば良いじゃないか。イメージがどうのとかアプローチはあるだろう」

「それにだ、あの人は君の担当だろう? 逃げ腰でどうする」



507: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/22(月) 21:35:37.28 ID:YASyyLDT0

「君は一人の女の面倒も見れないのか?」

そう言って、挑発的な視線を送る木場さん

いや、これは木場さんなりの叱咤なのだろう

「そう、ですね」

言われて気付いた、俺が楓さんから逃げていることを

滑稽な話だ、一人の女に振り回されてどうする

「私からはもう何も言う事はない。それとも、夜まで慰めてあげようか?」

それはとても魅力的な話だが、首を横に振る



508: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/22(月) 21:38:13.09 ID:YASyyLDT0

「じゃあ行くんだ、ここは私が持っておく」

ひらひらと手を振る木場さんに軽く会釈をした

「やれやれ、手のかかる男だな……本当に」

誰かの呟きが聞こえた気がする

けれど、今の俺はあの人に会って話をしなければならない



509: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/22(月) 21:47:23.04 ID:YASyyLDT0

とにかく急ごうと思って走る、息がすぐに上がるが気にしない

「楓さん!」

事務所のドアを開くが楓さんの姿は見当たらない

「楓さんなら屋上に行くって言っていましたよ」

「ありがとうございます」

ちひろさんに教えてもらった屋上へとまた走る

冬だと言うのに、ワイシャツが汗で濡れる





510: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/22(月) 21:50:43.92 ID:YASyyLDT0

階段を上って、屋上のドアを開いた

「きゃっ……プロデューサー?」

勢いあまって凄い音がしてしまった

「か、楓さん、話があります」

ぜぇぜぇと荒い呼吸をしながら話を切り出す

恰好悪いかもしれないが、そんな姿は前から見せている





511: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/22(月) 22:03:00.49 ID:YASyyLDT0

すぅはぁと深呼吸

……よし、少しは呼吸が落ち着いた

「何故、楓さんは変わってしまったんです?」

「それは……」

しばし沈黙

二人の間に風がひゅうっと吹くと、楓さんがゆっくりと口を開いた

「イメージチェンジだよ、私もそろそろ違うキャラで行こうかなと」

視線を逸らしながら、楓さんが言う




512: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/22(月) 22:07:26.84 ID:YASyyLDT0

「嘘ですよね? ようやく気付きましたよ」

楓さんの体がびくりと震えた

それは気付いてほしくなかったのか、それともきづいてほしかったのか、どちらの反応かはわからない

「楓さん、貴女……」

「言わないでください」

それは拒絶の言葉だった

けれど、俺はもう引かないことにしたんだ

「好きな人ができたんですね? それで自分を変えようと……」

「……えっ?」

あれ? 思ってたリアクションと違う



513: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/22(月) 22:11:00.45 ID:YASyyLDT0

「えっ? だって女の人が急にイメージ変えるのってそれくらいしか」

まさかの不正解である

ドヤ顔で言い切ってしまった俺はどう取り繕えば良いのか

「……はぁ」

そこで深いため息のとどめが来た

「す、すみません! 俺とち狂った事を言ってしまいました」

ここは素直に謝ろうと、頭を下げた



514: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/22(月) 22:12:53.40 ID:YASyyLDT0

楓さんの足音が聞こえる

このまま俺を通り過ぎて行ってしまうのだろうか

しかし、俺の考えとは裏腹に、楓さんは俺の目の前で止まった

「プロデューサー」

「は、はい……」

まさかビンタか? ビンタされちゃうのか!?

びくびくと返事をすると




515: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/22(月) 22:25:41.27 ID:YASyyLDT0

「顔を上げてください」

ゆっくりと顔を上げると、そこには困ったような笑顔の楓さんがいた

「てっきり怒られると思いました」

「んー……プロデューサーの答えは遠からずってところでした」

マジかぁ、やっぱり当たってたんじゃん

「木場さんやあいちゃん、それに飛鳥ちゃん、クールで人が好みなのかなと」

ははぁ、うちの事務所関係の奴か





516: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/22(月) 22:28:28.67 ID:YASyyLDT0

「それで男装も?」

「だって、ちひろさんが……」

頬をぷくりと膨らませて、楓さんが続ける

「でも、反応が悪いですし、あの目は私にドン引きしてる目でした……」

今度はよよよと泣きまねを見せる

「ちなみにどんな奴ですか? 知り合いならそれとなく聞きだしますよ」

そうすると楓さんの目が輝いたのを見逃さなかった




517: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/22(月) 22:31:08.65 ID:YASyyLDT0

「では、それはひとまず置いておいて、プロデューサーの好みを教えてください」

「俺の好み……ですか」

正直なところ、女性はこうあってほしいと言うのはない

好きになった人が好み、というのはずるい答えなのかな

「もう……それじゃわからないじゃないですか」

またまた頬を膨らませる楓さん

「次に聞くまでに答えを出しておいてください、私頑張っちゃいますから」




518: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/22(月) 22:34:16.20 ID:YASyyLDT0

楓さんはそう言うと、屋上から去って行った

「今日は風が強いですから、風邪をひかないようにしてくださいね」

と、楽しそうに言いながら

「はぁ……」

結局楓さんの本心はわからなかった

けれど、次ぎあう時には元に戻っている、そんな確信があった

さて、風邪をひかないうちに温かい所でほっとするとするか



おしまい




523: 1です 2018/01/23(火) 20:09:04.61 ID:SzLMquGe0

こんばんは、それでは再開します
では>>525の楓さんどうぞー



525: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 20:10:26.76 ID:IF4C6CIh0

ファッションビッチ



528: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 20:19:36.46 ID:SzLMquGe0

「ねぇ、プロデューサー?」

すすっと近づいてくる楓さん

「今日の私のファッションどうですか?」

白と黒のモノトーンでまとめた、大人っぽい恰好だけれど

その……スカートが短くないですか?

黒タイツははいているが、どうもこの攻めすぎているような気がする



529: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 20:22:42.67 ID:SzLMquGe0

「ふふっ、どこ見てるんですか?」

くすくすと笑い楓さんの手がスカートにかかる

「私のスカートが気になりますか?」

悪戯っぽい笑みを浮かべつつ

「そういえば暖房が効きすぎている気もしますよね……」

「ちょっと暑いから、まくっちゃおうかしら」

すすす、とゆっくりとスカートが……



530: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 20:25:52.00 ID:SzLMquGe0

「駄目! それ以上は駄目です楓さん」

見せられないよ! な状況になりそうなところを美嘉が止めてくれた

何故だか顔が真っ赤だ

「残念、すかっとすると思ったのに……」

ぺろりと舌をだして、おどけてみせる楓さん

その顔は挑発的だった






531: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 20:29:44.14 ID:SzLMquGe0

それからは硬直状態が続いていた

にこにこと笑う楓さんと、むすっとした顔の美嘉がばちばちと火花を散らしている

「どうしたの? 美嘉ちゃんは笑顔のほうが可愛いわよ?」

すっと楓さんの指が、美嘉の頬を撫でる

「な、ななな何してるんですか?」

どもりながら、美嘉があたふたとしている



532: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 20:34:22.34 ID:SzLMquGe0

「若いって素晴らしいわ、こんなにお肌がすべすべしてる」

美嘉の頬を撫でる指は、まるで別の生き物のように、魅惑的な動き

「ひゃっ! プ、プロデューサー助けて……」

涙目でこちらに助けを乞う美嘉

うーん、美女通しの絡みも悪くはないが

そろそろ助け舟を出してあげるか

うちの純情カリスマギャルには荷が重い




533: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 20:38:05.21 ID:SzLMquGe0

「楓さん、そろそろ止めてあげてください」

うらやまけしからん、俺も混ぜてください

……おっと、いけない

「うふふ、プロデューサーも混ざって良いんですよ?」

さっきより美嘉に密着した楓さんが、魅力的な提案をしてきた

「今日は美嘉を触って良いのか!?」

「駄目にきまってんでしょ!!」

なんだよ、ノリ悪いなぁ



534: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 20:42:09.75 ID:SzLMquGe0

「ちょっとくらい良いんじゃない?」

「いやです! そんな簡単に男の人に肌を……」

最後のほうはごにょごにょしてて聞こえなかった

「そう、残念……」

美嘉にそう言った楓さんは、俺の方に振り向き

「じゃあ、私のほっぺを触ってみますか?」

これはどっちに転んでも美味しい奴だ!



535: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 20:45:00.73 ID:SzLMquGe0

「フ、フヒ……良いんですか?」

やべ、なんか変な声出た

「うわ……プロデューサーキモイ」

おいやめろ、そんなゴミを見るような眼で俺を見るな

「ええ、どうぞ」

そうして、楓さんが俺の方にすっと近づく

「優しく……お願いしますね?」

瞳を潤ませ、上目遣いで俺を見る楓さん

こうかは ばつぐんだ!!




536: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 20:56:13.63 ID:SzLMquGe0

「じゃあ、触りますよ?」

生唾をごくりと飲みこみ、ゆっくりと楓さんの頬に触れる

「んっ」

目をきゅっと瞑った楓さんが、艶めかしい声をあげた

「ど、どうですか……?」

心なしか、声が震えているような気がするが気のせいだろうか

「ぷにぷにしてて、すべすべしています」

指に吸い付くような感触が心地いい

……おいやめろ美嘉、そんなジト目で見るな




537: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 20:59:15.71 ID:SzLMquGe0

「うふふ、良かった」

目を開けた楓さんがほほ笑む

その顔は少しの不安と、そして安堵を浮かべている

「ずっと触っていたいですね……」

自然と口が動く、それほど魅力的な触り心地なのだ

「貴方がそうしていたいなら……良いですよ」

その時、ちらりと楓さんが美嘉に視線を送ったのを見逃さなかった



538: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 21:02:21.60 ID:SzLMquGe0

「ちょっと待って! ……楓さんばっかりずるい」

美嘉が声を荒げる

「あら、さっき美嘉ちゃんが嫌がっていたから」

それを笑顔で迎える楓さん、余裕が感じられる

けれど、楓さんの体はふるふると震えている

寒くはないと思うだが、何故だろう



539: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 21:04:53.10 ID:SzLMquGe0

「と、とにかく! 一人だけは駄目、皆に平等に!」

こいつさらっと爆弾発言してるけど大丈夫か?

「ほ、ほら! アタシのほっぺも触らせてあげる」

楓さんの肌を堪能していた俺の指を、美嘉が強引に引っ張り

「……優しくしないと怒るからね」

ゆっくりと自分の頬に置いた



540: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 21:08:02.87 ID:SzLMquGe0

「ど、どーよ? カリスマギャルのほっぺ」

強がった言葉を使っているが、声が震えている

「うん、すべすべでもちもち」

楓さんの肌より弾力があるような気がする

なんかこう……突いて楽しんでいたい、そんな感じだ

「こ、今回だけだからねっ? ほんとはこんな簡単に肌を……」

またごにょごにょしてて聞こえない



541: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 21:10:05.74 ID:SzLMquGe0

うーん、しかし甲乙つけがたい

吸い付くような肌の楓さんの頬

そして、弾力ある美嘉の頬

これはどうしたものか……

「ね、ねぇ? ちょっと触り方が……え、えっちじゃない?」

これは堪能するためなんだ、ちかたないね




543: 訂正 2018/01/23(火) 21:16:43.53 ID:SzLMquGe0

「むぅ……私もかまってください」

可愛らしく頬を膨らませ、楓さんがずずいっと顔を近づける

「ほら、片手が空いてるじゃないですか」

そう言って、俺の肩手を握り、自分の頬に押し付けた

「プロデューサーの手、おっきいんですね……」

すぺすぺな手が俺の手に重なり、うっとりとした顔をする楓さん



544: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 21:19:37.51 ID:SzLMquGe0

片方に楓さん、そして美嘉

両手からは幸せな手触りが伝わってくる

心地よさ過ぎて、手の神経が焼ききれてしまうかもしれない

「フ、フヒ……」

「うわ、キモイ」

「ほら、もっと触ってください」

二人、極端なリアクションを頂いた

けれど、二人とも頬を赤く染めて、どこか気持ちよさそうだ



545: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 21:23:27.45 ID:SzLMquGe0

「きゃあ、手が滑っちゃいましたー」

素晴らしい棒読みで楓さんが俺にタックルをかます

バランスを崩した俺は二人を巻き込み、ソファへと倒れた

二人の体が俺の腕の中にすっぽりと収まる

「あったかいですね、ふふっ」

楓さん、さっき暑いって言ってませんでしたっけ?




546: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 21:26:58.21 ID:SzLMquGe0

美嘉はどうしたのかと思い、視線を向けてみる

「むーりぃ……」

森久保みたいな声を出して、目をぐるぐるとさせていた

「美嘉ちゃん脱落ですね」

笑って余裕をかましていますが、楓さんの体が震えているのに気付く

「ほら、両手で触ってください」

がしりと俺の手を捕まえて、強引に引き寄せられる



547: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 21:31:04.94 ID:SzLMquGe0

「楓さん、そろそろ止めにしませんか?」

鈍感な俺でも流石に気付く

楓さんが望んでやっていないことを

「まだまだこれからですよ?」

そう言って、俺に体を預けてきた

「ふふっ、こうやって誰かに体を預けられるのって良いですね」

良い匂いと、楓さんの視線で頭がくらくらする



548: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 21:33:48.02 ID:SzLMquGe0

「楓さん、これ以上は冗談で済ませられないですよ」

「冗談でこんなことしません」

その眼は冗談ではないことを伺わせる

「楓さん……」

そして、俺は自分の愚かさを再確認させられる

そっと抱いた楓さんの体は折れそうに細く、やはり震えていた



549: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 21:36:12.59 ID:SzLMquGe0

優しく楓さんを突き放し、俺は自分の頬を力いっぱいはたく

ばちんと乾いた音が事務所に響き、楓さんが目を白黒させている

「ど、どうしたんですか?」

俺はひりひりと痛む頬を抑え、言う

「こんなことしても空しいだけです」

俺の言葉を理解したのだろう、楓さんが力なく俯いた



550: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 21:40:52.47 ID:SzLMquGe0

「ごめんなさい……ごめんなさい、プロデューサー」

鳴き声が混じりながら、楓さんが続ける

「何があったかは聞きません。でも、こんなことしちゃ駄目です」

これは据え膳だったのかなぁ……勿体ないことしたかなぁ

頭が邪な考えをしていたので、今度は全力グーパンでもしようかと自分を脅す

「貴女はとても魅力的です、でも今の貴女は楓さんじゃない」

そう、俺が好きなアイドル高垣楓はこんなことはしない




551: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 21:44:45.34 ID:SzLMquGe0

「嫌いに……なったりしませんか?」

「こんなことで嫌いになるほど、短い付き合いじゃありません」

「……では、普段の私なら良いってことですか?」

「はい、普段通りの楓さんはとても魅力的です」

いつも綺麗でダジャレが好きな、目を引き付ける女性

「じゃあ、今度は普段通りの私でいきます♪」

「は……えっ?」

まさかのウソ泣きだった、女は怖いなぁ



552: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/23(火) 21:49:41.58 ID:SzLMquGe0

「なるほど、いつも通りじゃ駄目かと思いましたが」

うんうんと、一人で納得してりる楓さん

「こうして本音も聞けましたし、良しとしましょう」

あっけにとられた俺は、ただそれを見ていることしかできない

「美嘉ちゃんのことは任せましたよ♪」

上機嫌に言う楓さん、笑顔が眩しい

「じゃあ私はこれで……あ、伝え忘れました」

ぐいっとこちらに体を乗り出し、にこりと笑う

「泣いたのは嘘でしたけど、さっきの行為は嘘の気持ちはありませんよ」

俺の唇に人差し指を押し当ててから、軽快に楓さんは事務所を出て行った



おしまい




555: 1です 2018/01/24(水) 19:29:34.20 ID:5I4hyW+W0

こんばんは、それでは再開します
では>>558の楓さんどうぞー



558: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 19:31:49.66 ID:kim+s6eg0

ドラゴン



563: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 19:41:43.06 ID:5I4hyW+W0

「か、楓さん? その黄色いタイツはどうしたんですか?」

某中国の人を思わせる黄色いタイツに身を包んだ楓さんが佇んでいる

「ドラゴンです」

「はぁ……燃えよドラゴンですか?」

正解だったのだろう、楓さんは笑顔で返した

「どんしんく、ふぃーる♪」

似合わなくもないけれど……ちょっとボディラインが出て目に毒です



564: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 19:45:34.85 ID:5I4hyW+W0

「か、楓さん? そのちょっと麻雀牌はどうしたんですか?」

「ちょっと待っててくださいね」

せわしくなく卓の準備をしてから、シガレットチョコを手に挟み

「あンた、背中が煤けてるぜ」

「……あー! 哭きの龍ですね」

また正解だったようだ、楓さんが笑顔でポンをした



565: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 19:50:09.02 ID:5I4hyW+W0

「か、楓さん? その手に持っている剣は?」

「ちょっと待っててくださいね」

なにやら箱から取り出して、位置の調整をしている

よしっと声をかけた楓さんが笛と剣が合体したような武器を口にあてた

そして流れる軽快なメロディー

「がおー♪」

楓さんがおもちゃを動かし始めた

「わかった! ドラゴンレンジャーですね」

「~♪」

楓さんが笛の音色で返事をした



566: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 19:58:42.83 ID:5I4hyW+W0

「か、楓さん? そのオレンジの服はって、もうわかりましたよ」

「ちょっと待って……え?」

だって胸の所に悟って書いてあるし、そのオレンジの服は間違いようがない

「ド○ゴンボールですね」

「え、あ……はい」

しばし沈黙……のち、楓さんがヘアスプレーで髪を逆立てながら、大きな声で叫ぶ

「幸子ちゃんのことかー」

え、いや……あの、すみませんでした



567: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 20:02:48.60 ID:5I4hyW+W0

「か、楓さん? その着ぐるみはどうしたんですか?」

目の前には可愛らしいドラゴンの着ぐるみの楓さんが正座している

「もう、ネタ切れです」

「そうですか……」

ちょこんと座っている楓さんの顔は悲しそうだ

「鈴帆ちゃんに借りたんです」

「そうですか……」

どうしよう、何て声掛けたら良いかわからない



568: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 20:09:14.12 ID:5I4hyW+W0

「あ……最後に一つだけいいですか?」

「え、ええ……」

いそいそと分厚いマットを用意してきた楓さん

「では、行きます!」

そういうと、楓さんの目つきが変わる

後ろに回られたかと思うと、脇から手をまわされ、首の後ろでクラッチされる

「こいつぁまさか……」

「え~い♪」

可愛らしい掛け声とは裏腹に俺の首と体に物凄い衝撃が襲う

「ドラゴン……スープレックス……」

「はい♪ ドラゴンなだけに」

可愛いなちくしょう……

嬉しそうな楓さんの声を聞きながら、俺は意識を手放した




おしまい



570: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 20:11:12.63 ID:5I4hyW+W0

読んでくれた方に感謝を
ネタ切れです! ごめんなさい
ついでにもう一つ書きます、途中で寝るかもしれないのでご容赦を
では>>571の楓さんどうぞー



571: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 20:12:17.16 ID:imBSRErYo

オフの日が雨



574: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 20:18:54.11 ID:5I4hyW+W0

「……んん」

今何時かしら

アラームをセットしたのは覚えていますが、鳴ったのかは覚えていません

スマートフォンを手に取り、確認すると、午前10時

……寝すぎちゃった

幸いなことに今日はオフですし構いません






575: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 20:22:43.46 ID:5I4hyW+W0

けれど、どうも頭が重い気がします

カーテンを開けた窓から見える空はどうにもよく無い様子

「一雨きますかね……」

不機嫌そうな空模様で、私の気持ちもどうも落ち込みがち

……お家でゆっくりするのも良いですけれど

せっかくのお休みなのでどこかにお出かけしたいです

そうだ、藍子ちゃんに教えてもらったカフェにでも行ってみましょうか



576: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 20:27:37.96 ID:5I4hyW+W0

そうと決まれば、善は急げ

顔を洗って歯を磨いて、洋服をどうするか迷います

うーん……ワイドパンツにタートルネックのニット、それにコートでいいですかね

外は寒いし、マフラーも巻いていきましょうか

よし、これで準備万端

あいにくな空模様ですが、お出かけすっかい♪



577: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 20:36:52.15 ID:5I4hyW+W0

サイドゴアブーツに足を入れて、鍵の施錠の確認も終わり

腕時計を見てみると午前11時

歩いていたら時間つぶしにもなるし、昼食もカフェで一緒に取ってしまいましょう

ええと、あの深夜ドラマでやってた『腹が、減った……』ごっこもやってみよう

そうときまれば出発です

今日も色々な発見があればいいなぁ、と思いながら私はカフェへと向かいました





578: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 20:42:00.42 ID:5I4hyW+W0

あ、これ素敵ですね

足を止めたのはブティックのウィンドウに飾れらたコート

光を反射するような上品な光沢が綺麗

カシミアかしら、とても温かそう

どうも寒い季節は洋服が気になってしまいますね

買っても少ないオフの日に着るくらいで、まだ出番を待っている洋服を数えると両手でも足りません





579: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 20:45:19.92 ID:5I4hyW+W0

今回は保留しましょう、そう決めて歩いているとまた目に留まるものが

これは……サックス? あいちゃんがたまに吹いてくれるやつですよね

頭の中にサックスを吹くあいちゃんがイメージされる

……うん、あいちゃんは年下なのに私より大人っぽい気がします

私も何か楽器を習ってみようかしら?

今思うと縦笛やカスタネットしかできないことに気付きました



580: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 20:51:33.23 ID:5I4hyW+W0

足を止めすぎたせいでしょうか、気付くと、カフェに到着する前に雨が降ってきてしまいました

それも、結構な雨足です

仕方なくお店の軒先で雨宿りとなったのですが、なかなかやみそうにありませんでした

「どうしましょう」

ぽつりと出た言葉

運が悪く傘も忘れてしまいましたし、走ってもカフェに着く前にずぶ濡れになってしまいそう

「はぁ……」

重いため息が自然とでました



581: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 20:55:31.80 ID:5I4hyW+W0

手持無沙汰になってしまった私は、流れる人たちの観察をすることにしました

この町はたくさんの人がいて、皆さん忙しそうに歩いています

すると、何という偶然か見知った人がこちらへ向かってくるのが見えました

「プロデューサー?」

「高垣さん? どうしたんですか」

私に声をかけられたプロデューサーは目を丸くしてこちらを見ています

「お出かけの最中に雨に降られてしまって……」

経緯を説明すると、プロデューサーが傘を差しだしてきました



582: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 21:05:09.11 ID:5I4hyW+W0

「何なら送っていきますよ、暇なんで」

その手に握られている傘は大きめで、これなら大人二人でも大丈夫そう

「それならお言葉に甘えさせて頂きます」

このままプロデューサーもカフェに連れいっちゃいましょう♪

一人も良いですが、二人でお喋りするのも楽しいですし

傘に入れてもらったお礼、という形にすればプロデューサーも快く応じてくれるはずです



583: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 21:11:43.01 ID:5I4hyW+W0

「お邪魔します」

「せまいかもしれないですけど、どうぞ」

お互いが雨に濡れないように、肩が少しだけ触れあう距離

けれど、私のほうが中心にいるような気がします

ちらりと横を見てみると、プロデューサーの右肩は雨に濡れていました

私が濡れないように、傘を譲ってくれているのでしょうけれど

「風邪ひいちゃいますよ?」

ぐっとプロデューサーに寄り添って、傘をスライドさせる



584: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 21:17:38.22 ID:5I4hyW+W0

「俺は別に……」

相変わらず嘘が下手ですね、目が泳いでいますよ?

「そういうことにしておきます♪」

照れくさそうに頭をかくプロデューサーの腕を引っ張って先導することにしました

「私のせいで濡れてしまったので、暖かいものでもご馳走しますから」

「……まぁ、たまにはいいか」

これは自然な流れでお誘い出来た気がします



585: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 21:20:43.80 ID:5I4hyW+W0

雨の中を二人で歩きます

普段なら憂鬱なら雨でも、こういうのなら歓迎ですね

「高垣さん、ずいぶんご機嫌みたいですね」

「ええ、恵の雨ってやつです」

私の上機嫌が雨にうつったのか

雨粒たちが楽しそうにリズムを取っているかのように聞こえてきました



586: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 21:25:40.27 ID:5I4hyW+W0

「プロデューサーは何かご予定があったんですか?」

「いえ、先ほど言ったように何も」

ふぅん、ということは一日空いてるってことですよね

「そうですか、私も今日はぶらぶらしようかなと思って」

カフェの後に居酒屋で一人飲みでもしようかと思いましたけど

こうなればとことん付き合ってもらいましょう♪

「高垣さんも予定がない時あるんですね」

これはどうとらえていいのかしら?



587: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 21:28:27.69 ID:5I4hyW+W0

「一人で居酒屋はざらですよ?」

「ええっ? 本当に!?」

そんなに驚くことでしょうか

「プロデューサーは私のことを誤解しています」

私のことを知らなすぎる貴方には、私を知る機会が必要ですね

「という事で、今日はとことん付き合ってもらいます♪」





588: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/24(水) 21:34:26.77 ID:5I4hyW+W0

憂鬱な雨が素敵な出会いをもたらしてくれました

無計画で動くのも案外良いのかもしれません

「アイドルのケアも仕事のうちか……」

財布の中身を確認するプロデューサーに私は笑顔で語り掛けます

「お仕事なら担当の私がいないといけませんね♪」

これから雨が降っても私は憂鬱になりません

なぜなら、こんなに素敵な時間があるのを知ったのですから




おしまい




591: 1です 2018/01/25(木) 19:20:45.00 ID:6ggskohH0

再開します
では>>594の楓さんどうぞー



594: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/25(木) 19:22:57.24 ID:srMYyZPv0

ふたなり



597: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/25(木) 19:29:43.44 ID:6ggskohH0

朝、ちょっとした違和感で目が覚めました

「……」

お腹の下のほうが何だか変

それに、ベッドを押し上げるようにしているものはなんなのかしら

恐る恐るパジャマを捲って見てみると

「これは……」

今までついていなかったオマケがついています

……これは夢ね、うん、きっとそう

現実逃避をするように二度寝をすることにしました



598: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/25(木) 19:32:10.62 ID:6ggskohH0

起床を知らせるアラームで目を覚まします

「んーっ!」

体を起き上がらせ、伸びを一つ

「……ふぅ」

今日もすがすがしい朝ですね

すがすがしいんですが……やっぱりさっきのは夢じゃなかったみたい

私の下腹部についているオマケが消えることはありませんでした



599: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/25(木) 19:33:58.80 ID:6ggskohH0

これはどうしたらいいのかしら?

プロデューサーに言う? いえ、女としてどうかと思います

しばらく脳内会議を行って、出た答え

ちひろさんに相談してみましょう

女性ですし、フォローしてくれるはずです

なにはともあれ、朝の準備をして事務所へ向かいましょう



600: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/25(木) 19:44:01.64 ID:6ggskohH0

歩きづらい……

いつもの感覚で歩くとものすごい違和感

それに、その……なんかはみ出しちゃうような……やっぱり何でもないです

四苦八苦しながら、何とか電車に乗り込んだまでは良かったのですが

電車が揺られるたびに、女子高生に体が触れた瞬間です

今まで感じたこともない感覚に驚きの声が思わずもれました

口を手で塞ぐようにしましたが、遅かったです




601: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/25(木) 19:46:51.77 ID:6ggskohH0

ちらりとこちらを向いた女子高生が不思議そうな顔をしています

それをみた私はこう思っていました

……可愛い、それに良い匂いがする

あら? 何でこんなことを思っているのかしら

ただ電車が揺れて、体がぶつかっただけなのに

何度も女子高生に体がぶつかるたびに、私の中の知らない何かが反応しています




602: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/25(木) 19:50:20.53 ID:6ggskohH0

何だか下腹部がうずうずして、気付くとオマケがちょっと大きくなっていて

急いでハンドバッグで隠します

体の変化に続いて、心にも変化が表れていることに今頃になって恐怖を覚えました

頭の中でダジャレを考えて、変なことを考えないようにしますが、焼け石に水です

たった十分少しの乗車で、こんなに疲れたのは初めて……



603: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/25(木) 19:54:56.13 ID:6ggskohH0

私はへとへとな体で事務所の扉を開きます

ちひろさんは……いました

いつものジャケットとタイトなスカート、そして黒いタイツに包まれた脚……

改めて見ると、こう……そそられ……はっ!

「おはようございます楓さん、どうしたんですか?」

首をぷるぷると振る私を見て、首を傾げるちひろさん

「おはようございます、ええと……ストレッチ?」

苦しい言い訳です



604: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/25(木) 20:02:07.98 ID:6ggskohH0

私に起きている異変をちひろさんに包み隠さずに言わなければいけない

よくよく考えると恥ずかしすぎます……?

これってセクハラになっちゃうんじゃないですか?

……でも、やっぱり言わないと駄目……ですよね

「ちひろ……」

ようやく決意して、私が口を開くと凄い勢いでドアが開かれました



605: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/25(木) 20:07:18.43 ID:6ggskohH0

「にゃはー、楓さん発見」

そして志希ちゃんの声

彼女は私を見つけると、嬉しそうな声でこう言いました

「お薬は効いているみたいだね~、それで困っちゃってる感じかにゃ?」

お薬……? 私は薬なんて飲んでいな……あっ!

「まさか昨日の栄養剤?」

「ビンゴ! 栄養もちょっぴりあるけど、本当の効果はご覧あれってね」

犯人さんとばったり出会っちゃったみたいです……



606: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/25(木) 20:16:40.43 ID:6ggskohH0

「あの、何の話をしているんですか?」

蚊帳の外だったちひろさんが、志希ちゃんに声をかけた

「志希ちゃん特製、『性別反転薬』を楓さんに飲ませました、まるっ!」

花丸をあげたいくらいの笑顔ですけど、私的にはバッテンです

と言うか、今聞き捨てならない単語が聞こえましたけど……

ちひろさんも同じように思ったらしく、目を白黒とさせています



607: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/25(木) 20:20:23.22 ID:6ggskohH0

「その名の通り、性別を反転させるお薬。今回は失敗しちゃったみたい、にゃは♪」

丁寧な説明ありがとうございます

「今の楓さんは女性半分、男性半分って感じかな」

困りました、これから性別を聞かれたら何て答えればいいのでしょうか

「その……お薬の効果はいつまで続くの?」

私が恐る恐る志希ちゃんに聞きます

「ん~……これだけ」

志希ちゃんが人差し指をぴんと立たせました



608: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/25(木) 20:24:34.76 ID:6ggskohH0

「い、一日……?」

志希ちゃんはぷるぷると首を振りました

「一週間?」

またしても志希ちゃんは首を振りました

そして、目を細めてまるで猫のように

「正解は一ヶ月! いっぱい貴重な体験ができるよ、やったね♪」

一ヶ月……30日間として、時間に直したら720時間

私、アイドルやっていけるんでしょうか……?



609: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/25(木) 20:30:14.61 ID:6ggskohH0

ちひろさんはあまりに唐突な話についていけないみたいで、固まってしまいました

「ねぇねぇ楓さん、それで今どんな気分?」

いつの間にか目の前まで来ていた志希ちゃんが質問してきます

「特に変わったことはないかしら」

そう答えると、志希ちゃんが猫のように体を摺り寄せてきました

「ほんとかなー? ドキドキしたり、興奮しちゃったりしない?」

さっきより強く体を押し付けてくる志希ちゃん

柔らかな感触と、とても……良い匂い



610: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/25(木) 20:34:28.72 ID:6ggskohH0

「この汗は嘘をついている味だぜー!」

ぺろりと、志希ちゃんの舌が私の頬を舐めます

それがスイッチと言わんばかりに、気付くと私の体はとても熱くなっていました

「志希ちゃん? もうやめましょう」

この感情が何なのかわかりませんが、とても……怖い

このままだと、この感情に自分が支配されてしまいそうで……



611: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/25(木) 20:40:47.56 ID:6ggskohH0

「ふーん……やめちゃっていーんだ?」

あっさりと納得してくれた志希ちゃんが離れてくれました

「つまんないから、楓さん治すお薬でもつくろーっと」

本当につまらなそうにして、志希ちゃんが部屋を出ようとします

これで、早く治る……そう喜んでいいはずです。けれど……

「にゃは……カラダはしょーじきってやつ?」

私はいつの間にか志希ちゃんの袖を引っ張っていて

「あたしの部屋で二人で実験しちゃう?」

志希ちゃんの魅惑的な提案に、私は首を縦に振ってしまうのでした



おしまい



618: 1です 2018/01/27(土) 21:32:17.69 ID:c6fikxNd0

変態さんがいらっしゃってますね
それでは再開します
>>621の楓さんどうぞー



621: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 21:36:37.60 ID:+ZQl83mc0

実は密かにPと付き合っている



623: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 21:47:06.90 ID:c6fikxNd0

私は皆に嘘をついている

事務所の誰もしらない私の秘密

いいえ、私とプロデューサーの二人の秘密

本当は関係をもってはいけないはずなのに

お仕事だけの関係じゃなければいけないのに

でも、私はあの人を求めて

あの人は私を求めてくれた

私は……誰にも知られてはいけない、恋に落ちた





624: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 21:54:13.27 ID:c6fikxNd0

スマートフォンが震える

ライトの色からすると、lineかな

ロックを解除して確認してみると、あの人からのlineだった

『今夜九時、あの場所で』

短い文章だけど、ちょっと嬉しい

わかりました、と返事をした





625: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 21:59:38.38 ID:c6fikxNd0

ウィッグをつけて、眼鏡もかける

姿見の前でくるりと回って、チェック

うん……高垣楓とはばれないでしょう

あの場所、私とあの人の秘密の居酒屋さん

個室が用意されていて、他のお客さんの目にもつかない

本当なら、高垣楓として堂々と飲みに行きたいけれど

事情が事情だから、そこは我慢しないといけないですね




626: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 22:05:38.36 ID:c6fikxNd0

お家からタクシーであの場所へ向かう

周りを気にしないように、そして、こっそりとしない

私はただの一般人。そう演じる

しばらくして、あの場所へと到着した

久しぶりの二人で飲めると思うと、わくわくとした気持ちになる



627: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 22:11:01.80 ID:c6fikxNd0

扉を開くと、女性の店員に出迎えられた

いらっしゃいませ、と声は控えめで、落ち着いた接客

連れが来ていることを告げると、奥の個室へと案内された

純和風の造りになっていて、個室の入り口は襖になっている

逸る気持ちを抑えて、その襖をゆっくりと開けると、あの人が……いた

こちらに気付いたようで、笑顔でこちらに来るように催促される



628: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 22:17:19.23 ID:c6fikxNd0

「寒かったでしょう、熱燗にしますか?」

「良いですね、お酒の種類は任せます」

熱燗と肴を数品頼み、そろったところで静かに二人で乾杯をした

お銚子を三本ほど開けると、プロデューサーの表情が変わる

「楓さん、俺不安なんです」

この人はお酒が入ると、どうも気が小さくなってしまう





629: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 22:22:51.05 ID:c6fikxNd0

「いつか二人の関係がばれてしまうんじゃないかって……」

特にここ最近は、私との関係についてのことが多い気がする

確かに公にできる関係じゃないし、ばれたらきっと大変なことになってしまう

マスコミなんかに知られたら……と思うとぞっとする

けれど、だからと言って別れることなんてできない

「大丈夫、です。私と貴方が黙っていればばれませんよ」

私は彼を安心させるように、返事をした




630: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 22:30:54.21 ID:c6fikxNd0

…………
………
……んん、今何時?

ベッドに備え付けている時計を確認する

まだ時間に余裕はある、もうすこし寝ることができる

隣で眠る彼も、まだ夢の中みたい

……子供みたいな寝顔ね

つんっとおでこを突いて、彼に抱き着くようにして二度目の夢の中へ……



誰にも言えないけれど、幸せな時間が続くと思っていた

けれど、世間の目と、アイドルとしての私の立ち位置はとても危ういものだった




631: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 22:33:33.73 ID:c6fikxNd0

「楓さん、見てもらいたいものがあります」

「何でしょうか」

お仕事が終わり事務所へ戻ると、ちひろさんに手招きされた

「人に聞かれたくないので、こちらへ」

どうやら大事な話みたい

わたしは声を出さずに頷いた




632: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 22:38:56.84 ID:c6fikxNd0

後をついていくと、いつも使われていない会議室の前でちひろさんが足を止めた

「ここなら大丈夫です」

ちひろさんに続いて入室すると、ちひろさんが内側から鍵をかけた

そんなに聞かれたくない話なのかしら……?

「これに見覚えはありますか?」

ちひろさんが取り出したのは、数枚の写真

私はそれを見て絶句する

それは、私と彼の逢瀬の時の写真だった



633: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 22:43:31.81 ID:c6fikxNd0

「うそ……なんで……?」

あんなに気を付けていたはずなのに、どうして?

それに、変装していない私が映っているのは何故?

二人っきりの時以外はずっと変装していたのに……

「楓さんはこう思っているでしょう、一体何故と?」

そう言うちひろさんの顔は無表情だ

「これは、とある筋にお願いして手に入れたものです」

犯罪すれすれですけどね、と付け加えた



637: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 23:00:04.56 ID:c6fikxNd0

「私も驚きました、まさか楓さんとうちのプロデューサーができているなんて」

一枚の写真を手に取って、一瞥してから私に向き合う

「私としては応援したいところです。けれど、社会とよそ様はそれを許してくれません」

なんで……秘密がばれた……どうしよう

「一度プロデューサーとお話をしてください」

私の肩をぽんと叩き、ちひろさんが会議室から去って行こうとする



638: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 23:04:29.48 ID:c6fikxNd0

「……待ってください」

私は何とか声を出して、ちひろさんを呼び止める

「はい、なんでしょうか?」

「……このことは他の誰かに言いましたか?」

しばらくすると、ちひろさんは笑顔でこう言った

「いいえ、今のところ私だけに留めています」

「……そう、ですか」

「ええ、私と楓さんの、二人だけの秘密ですね」

そう言い残して、私だけが会議室に取り残された





639: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 23:12:38.50 ID:c6fikxNd0

とうとうばれてしまった

私とプロデューサーとの秘密が

とりあず、プロデューサーとお話をしないといけない

私は震える手でスマートフォンを取り出して、電話をかける

何回かのコールの後、プロデューサーが電話に出てくれた

『今は事務所のはずですよね、何かありました?』

「あの……お話したいことがあります」

私の声色で何かを察したのか

『わかりました、今日は車で送っていくのでその時にでも』

「……よろしくお願いします」

怖い……彼にどう伝えたらいいのか、とにかく怖い







640: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 23:16:01.31 ID:c6fikxNd0

窓の外がオレンジから群青色に変わったころ

プロデューサーが事務所へともどってきた

「お疲れ様です。ああ、ちひろさん、楓さんを送っていきますので」

「ええ、安全運転でお願いしますね」

ちひろさんは何食わぬ顔でプロデューサーに返事をした

「それじゃ楓さん、行きましょうか」

「はい……お先に失礼します」

ちひろさんに挨拶をすると

「はい、お疲れ様でした」

ちひろさんは変わらぬ笑顔で私に返した



641: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 23:22:38.93 ID:c6fikxNd0

「それで、一体なにがあったんですか?」

車に乗り込んでからすぐに、プロデューサーがそう聞いてきた

「……ばれちゃいました」

何回か深呼吸してから、そう答える

私の声を聞いてから、プロデューサーの顔が青くなっていく

「まさか……俺たちの関係が?」

それに、無言で頷く

「嘘だろ……あんなに気を使ってたのに……」

プロデューサーが信じられないと言った風に俯く



642: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 23:28:39.54 ID:c6fikxNd0

車内の空気が酷く重く感じる

どろりとしていて、とても暗い

「……どうしたら、いいでしょうか?」

ちひろさんは話し合えと言った

二人で話し合って……でも、それからどうするの?

ばれてしまった以上、この関係を続けることは不可能に近い

けれど、けれど……この人と別れたくはない

好き、愛してる、何て言葉で片付けられないほど、この人の事を想っている





643: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 23:32:41.29 ID:c6fikxNd0

「……わかりました、俺が掛け合ってみます。だから、泣かないで」

気付けば私は泣いていたみたい

視界が涙でぼやけていて、笑っているはずの彼の顔がよく見えない

「お願いします……私、私は……貴方の事を」

「大丈夫、大丈夫だから」

私の肩を抱きしめる彼の体はとても温かくて

安心しきってしまった私は、涙が枯れるまで泣き続けた



644: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 23:37:55.69 ID:c6fikxNd0

「それじゃあ、おやすみ」

「はい、おやすみなさい」

随分と恥ずかしいところを見せてしまった

お家で目を冷やさないと……そんな事を考えながら車を降りようとすると

「楓さん」

「んっ……」

唇が触れるくらいの軽いキス

「今日はゆっくりと休んでください」

「わかりました、お気をつけて」

唇に残る感触を名残惜しみながら、彼の車を見送った





646: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 23:45:38.27 ID:c6fikxNd0

そして、翌日のこと

インタビューのお仕事が終わった後、プロデューサーに呼び出された

指定された場所は……昨日と同じ会議室

胸騒ぎがする、とても嫌な……

ドアを三回ノックすると、どうぞ、と返事があった

私は心臓の鼓動が早くなるのを感じながら入室した



647: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 23:51:42.60 ID:c6fikxNd0

椅子に掛けている彼の顔色はどうも優れない

ふぅ、と息を吐いてからプロデューサーは私と向き合った

「単刀直入に言うと、交換条件を出されましたよ」

「交換条件……?」

恐る恐る聞き返す

「ええ……今の関係を続けるなら俺はクビ、それが嫌なら……」

それが嫌なら、今の関係を破棄する……

そういうことですよね








648: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/27(土) 23:55:26.19 ID:c6fikxNd0

「うちの事務所も大事にはしたくないみたいで、俺だけがクビなら別に構いません」

彼は苦笑いしながら言う

「……それは嫌です」

貴方と離れ離れにはなりたくない

お仕事に行くときも笑顔で送ってくれて、帰ってくるときも迎えて欲しい

他愛ないお話をして笑いあっていたい

貴方がいない事務所でのお仕事なんて、絶対に……嫌




649: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/28(日) 00:02:05.38 ID:IP7qx7NA0

「楓さん……」

「ほとぼりがさめて……今度は貴方と堂々とお付き合いできるように頑張ります、頑張りますから……」

今は……さようなら、私の愛したプロデューサー

私は涙声でお別れを言った

……涙がとまらない、私の中の水分がなくなっちゃうくらい

「楓さん」

彼に抱き寄せられた

「いや……いやぁ、顔……見ないでください」

こんな事されたらもっと辛くなってしまう






650: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/28(日) 00:09:38.61 ID:IP7qx7NA0

辛くなってしまうはずなのに、私は彼を求めてしまった

顔を上げて、キスをねだる

目を閉じると、彼の唇が触れる

ずっと貴方のぬくもりが……ずっと貴方の感触がのこるように

そんな長くて熱いキスが終わるころには、私の涙も止まっていた

「これからはプロデューサーと担当アイドルに戻るけど……また、戻れるように頑張りましょう」

プロデューサーの言葉に頷いて、私は笑顔で返事をした



651: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/28(日) 00:16:44.05 ID:IP7qx7NA0

プロデューサーがいなくなった会議室で気持ちの整理をする

今は我慢しなくちゃいけない

また、二人の関係を元通りにするために

そう……とにかくお仕事を頑張って、皆に認めてもらって

彼との時間を再開させられるために

……よし、今日は川島さんと早苗さんを誘って飲みにでもいきましょうか

二人の元気を少しでもわけてもらうことにしよう

頬を軽く叩いて、気持ちを整理し終えた私は事務所へと向かう

二人はまだお仕事中だから、ゆっくり待つとしましょう



652: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/28(日) 00:25:00.10 ID:IP7qx7NA0

事務所のドアを開けると、そこにはプロデューサーとちひろさんの二人だけ


そして、二人はまるで愛し合うかのように抱き合い、唇を重ねていた

さっきまで触れていた彼の唇がちひろさんの唇に触れている……

ちひろさんは閉じていた目をゆっくりと開け、私にほほ笑む

まるで私に見せつけるように、そして、私をあざ笑うかのように

……そうだ、何かおかしいと思っていた

あの写真もおかしいと思ったけれど、私が彼にばれたと伝えた後、誰にとは聞かれなかった





653: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/28(日) 00:34:58.80 ID:IP7qx7NA0

じゃあ誰に掛け合ったの? 誰にばれたか知っていたの?

ちひろさんは私との二人だけの秘密と言っていた

……そうすると、もう答えは一つだけ

そうか、私は一人で踊っていたんだ

ステージでもなく、ちひろさんとプロデューサーの掌で

くるくる、くるくる、回って、ステップを踏んで

一人のステージに、ちひろさんとプロデューサー二人の観客

なんて最悪なステージ……

カーテンコールと同時に私は目の前が真っ暗になって

意識を手放した



おしまい



660: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/29(月) 21:02:56.17 ID:l+oEqn1S0

戻ってきましたー! ということで再開します
あくらのなまはげパンクス美味しかったなぁ……
では>>663の楓さんどうぞー



663: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/29(月) 21:03:41.33 ID:LONIXP9M0

バツイチ子連れ



667: あ、1です 2018/01/29(月) 21:11:11.23 ID:l+oEqn1S0

事務所に見慣れない女の子がいる

はて? 新しいアイドルの子か……と思ったが幼すぎる

「お嬢ちゃん、どこから来たの?」

女の子は、んーと悩んだ後に

「あっち、かな」

と、指さした。うん、全然わかんねぇ



669: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/29(月) 21:16:22.63 ID:l+oEqn1S0

「そっか、お母さんは一緒じゃないの?」

目線を合わせるようにしゃがみ、できるだけ優しく聞いてみる

「おかあさんはおしごとだって」

なるほど、プロダクション関係のお子さんで間違いはないかな

……しかし、この子は誰かに似ているような気がする

涼し気な瞳と、ふわりとした髪質

それに、声は幼いが、身長は割と高い





670: >>668 今回はほのぼのにするから大丈夫! 2018/01/29(月) 21:24:21.37 ID:l+oEqn1S0

「どうしたの? もみじのかおに、なにかついてる?」

少女がじいっと俺の顔を見返してきた

どうやら、もみじちゃんと言うらしい

秋を連想させる名前だ、楓さんも秋っぽい名前だけどまさかな

「もみじちゃん、お母さんの名前ってもしかして、かえでって……」

「お疲れ様です、戻りました」

もみじちゃんに質問しようとすると、楓さんが仕事から戻ってきた



671: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/29(月) 21:30:26.60 ID:l+oEqn1S0

「おかあさん! おかえりなさい」

「ただいま、良い子にして待ってた?」

もみじちゃんが楓さんに抱き着く、『おかあさん』と呼びながら

「うん、もみじいいこにしてた」

「もみじは良い子ね。よしよし」

楓さんに頭を撫でられて、もみじちゃんはご満悦のようだ

……そっかー、もみじちゃんのお母さんは楓さんだったのかー、知らなかったなー



672: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/29(月) 21:38:01.24 ID:l+oEqn1S0

「お腹空いてない? 今日はどこかで食べて帰りましょうか」

「んー……はんばーぐがたべたいな」

「ちゃんとお野菜も食べるのよ?」

微笑ましい親子の会話が繰り広げられていて、俺が入る隙がない

というか、楓さんが子持ちだったことに驚いた

「ではプロデューサー、お疲れ様でした。行きましょう、もみじ」

「うん」

「あっはい、お疲れ様でした……じゃなくて! ちょっと待ってください」

自然に帰ろうとした楓さんたちを呼び止めた



673: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/29(月) 21:42:38.06 ID:l+oEqn1S0

「言っていませんでしたっけ。私、バツイチ子持ちなんです」

「……今日初めて知りましたよ」

説明を求めると、楓さんはあっさりと言い切った

それに、バツイチって離婚してんのかよ……

「いや、これはアイドルとしてのイメージダウンにも繋がりますし……」

お熱のアイドルに子供がいて、しかもバツイチってどうよ?

最近は物騒な世の中だし、もしものことも起こりかねないんじゃないか




674: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/29(月) 22:06:50.11 ID:l+oEqn1S0

「ファンの方たちは大丈夫みたいですよ?」

「はぁ? そんなバカな……」

ほら、と楓さんがスマートフォンでネットの掲示板を開いて見せてきた

誹謗中傷だらけかと思ったが、それはほんの少しだけだ

逆に、庇護する内容ばかりだ。楓さんのファン統制とれすぎだろ……

「ファンに対して問題がないことはわかりました。ですが、俺に言わなかったのは何故です?」

業務的に支障が出るし、何よりもやもやとした気分だ



676: 訂正 2018/01/29(月) 22:16:32.72 ID:l+oEqn1S0

「それは……」

楓さんが俯いてしまった。けれど、俺のこのやり場のない気持ちは止まらない

「俺に相談の一つもないってのがおかしいんですよ、こんなの裏切りに近いです」

ああ……何でこんなに熱くなってるんだ俺は

「おかあさんをいじめちゃだめっ!」

もみじちゃんが俺と楓さんの間に立つ、まるで楓さんを守るように

もみじちゃんから見れば、楓さんが俺にいじめられているように映ったのだろう

その顔は涙を滲ませてはいるが、強い意志を感じさせた




677: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/29(月) 22:19:05.79 ID:l+oEqn1S0

「はぁ……言いすぎました、すみません」

小さい子にあんな目で見られるのはきつい

確かに言いすぎてしまったし、ここは素直に謝ろう

「いえ、私のほうこそすみません」

「おかあさん……」

もみじちゃんが楓さんの袖をくいくいと引っ張り、不安そうな顔をしている

「お母さんはいじめられてないから大丈夫」

くしゃりともみじちゃんの頭を楓さんが撫でた



678: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/29(月) 22:34:21.66 ID:l+oEqn1S0

「言わなかった、ではなくて言えなかったんです」

もみじちゃんの手を握り、俺に楓さんが言葉を続ける

「一つは確かにアイドル活動に支障が出てしまうかも、ということ」

「もう一つはその……嫌われてしまうかなって」

もじもじとしながら、楓さんが俯きながらそう言った

「その、嫌われるってのは誰にですか?」

他のアイドルにかな? うちのアイドルたちにそんな奴いないとは思いたいが



679: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/29(月) 22:41:44.71 ID:l+oEqn1S0

「皆若くて可愛いし、それに対して私は子持ちです。もしかしたらって思ってしまって……」

顔を上げた楓さんの目尻には涙が浮かんでいる

「おかあさん……」

それを見て、もみじちゃんが心配そうな声を出した

そうか……楓さんも色々と考えてのことだったのか

「……それは気にしなくても良いいんじゃないですか」

よくよく考えると、楓さんにお子さんがいても、楓さんの魅力がなくなるわけじゃない

むしろ、母性的な楓さんの一面を見れて良かったとも言える





680: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/29(月) 22:46:02.46 ID:l+oEqn1S0

「嫌いになりませんか……?」

恐る恐るといった風に楓さんが聞いてくる

「少なくとも、俺はなりませんね」

俺は自信を持って答える、そんなことはないと

「そう……ですか」

「これからは俺も力になりますから、だから隠し事は無しですよ?」

悪戯っぽく笑って、楓さんに意趣返しだ





681: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/29(月) 22:49:22.98 ID:l+oEqn1S0

「ええ、もちろんです」

ようやく楓さんに笑顔が戻ったようだ

それを見て、もみじちゃんも笑っている

そして、くぅっと可愛らしい音が鳴った

「おかあさん、おなかすいたー」

おあずけを食らったもみじちゃんのお腹の虫が、ご飯を急かしたみたいだ

「ごめんなさいね、じゃあ行きましょうか」

あ、そうだと楓さんが振り返る



682: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/29(月) 22:53:54.45 ID:l+oEqn1S0

「その……良かったらご一緒にどうですか?」

飲みに誘う時とは違い、随分としおらしい

「もみじちゃん、おにいさんも一緒にいいかな?」

しゃがみこみ、もみじちゃんに聞いてみる

「いいよ、おじさんもごはんたべよ」

おじ……

「もう、もみじったら」

まだ若いつもりなんだけれど、まぁ……いいか

「はやくはやく」

楓さんの手をぐいぐいと引っ張るもみじちゃんを微笑ましく思いながら

俺は二人の親子の後を離れないように歩いていく




おしまい




685: 1です 2018/01/30(火) 14:15:19.63 ID:4wGR+G6H0

時間ができたので一つ書きます
それでは>>687の楓さんどうぞー



687: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 14:19:08.65 ID:L1fr61400

実は忍



689: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 14:23:05.35 ID:4wGR+G6H0

ようやく、ようやく尻尾が掴めそうです

慣れないことを続けていたせいか、お酒の量も増えてしまいました

……あ、仕事に差し支えないほどですよ? ええ

お酒を飲んでも飲まれるなってよく言いますしね

あれは酔っぱらっているフリですよ、フリ

本当ですよ? 本当ならお酒なんて避けたいんですから



690: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 14:27:00.49 ID:4wGR+G6H0

どうやって潜入しようと思っていたら、ある日スカウトされて、簡単に潜り込むことができました

それに、お仕事もとても楽しくて、没頭してしまいました

事務所のアイドルも良い人ばかりだし、ちひろさんも、プロデューサーも言わずもがな

ですが、表向きはそうかもしれませんが、裏の顔は果たしてどうなんでしょうか……?

たくさんの女性を抱える芸能プロダクションです、黒い噂もあったりします

私はそれを調べるために、ここへと潜入することとなりました



691: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 14:35:52.37 ID:4wGR+G6H0

「楓さん、今日もお疲れ様でした」

笑顔で私を労ってくれる、事務員のちひろさん

人畜無害な笑顔ですが、プロデューサーに怪しげなドリンクを飲ませ

アイドルにも、似たようなものを飲ませているとか……

私も一本飲んだことがあるのですが、その効能は凄かったです

頭がぼーっとして、何て言うんでしょう……プロデューサーに対する気持ちが変わってしまったと言うか……

あ、これは別にどうでもいいですね



692: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 14:40:17.75 ID:4wGR+G6H0

「ちひろさんもお疲れ様です」

お辞儀をしながら、相手の出方を見る

「……最近、お疲れじゃないですか?」

きた! この展開を待っていたんです

「そうですね……忙しくて、休む暇もありません」

ここはちひろささんの口車に乗せられることにしましょう

「あら、そんなときはこれがいいですよ」

懐から取り出したのは、明らかに既製品とは思えないドリンク



693: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 14:43:24.80 ID:4wGR+G6H0

私が前に飲んだドリンクも、このようなキャップをしていました

「では、お言葉に甘えて……」

キャップを開けて、ドリンクを一気に呷る

……体の内側にじわりと染み込んでいくような感覚

そしてその後は、気持ちがしゃっきりとして、力が湧いていくような……

やっぱりこれは合法じゃないですよ



694: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 14:47:34.05 ID:4wGR+G6H0

「いつもありがとうございます。そういえば、これってどこで作ってるんですか?」

コートの内側に潜ませた短刀に手をかける

返答次第では、ここで処理しなければならない

「ああ、これはですね、大手の製薬会社と漢方を取り扱う会社に共同開発してもらいました」

ふぅん、まぁ口だけならなんとでも言えますよね

「確かどこかに成分表があったと思うですが……」

自分のデスクを漁っているようにみえるが、もしかしたら飛び道具などを取り出すかもしれない

私はいつでも動き出せるように、体に力を入れる



695: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 14:50:02.52 ID:4wGR+G6H0

「ありました、これです」

ちひさんがデスクの引き出しから手を抜いた瞬間に体を動かす

……しかし、手に握られた書類を見て、急静止させた

「見せてもらっても良いですか?」

「ええ、成分がわからないのを飲むのも不安でしょうし」

にこにことした表情でちひろさんが答えた



696: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 15:04:57.43 ID:4wGR+G6H0

書類に目を走らせる

……ぱっと見では怪しそうな成分や植物は使っていなさそう

「楓さんの気持ちもわからなくはないですよ」

ちひろさんが悲しそうな顔をして、言葉を続ける

「プロデューサーさんが急に元気になったり、プロデューサーさんに対する気持ちが変わってしまったり……」

ちひろさんの言葉はもしかして本当なのかもしれない、そう思って、短刀から手を離す

「これは男女での効能が違ってしまうという、こちらの落ち度ではあります」

「ですが、アイドルの方たちもプロデューサーさんも、元気でいて欲しいという気持ちは変わりません」

ちひろさんは深々と頭を下げて、私にこう言った

「体に何かあったらすぐに言ってください、すぐ対応致しますので」

……ちひろさんはどうやらシロみたいですね



697: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 15:08:27.00 ID:4wGR+G6H0

あれから事務所を去って、家路へと向かっている時

「楓さん、お疲れ様です。今夜どうです?」

くいっとお猪口を傾けるような仕草をするプロデューサー

「良いですね、お付き合いしますよ」

ちひろさんがシロなら、プロデューサーはどうなのか?

たくさんのアイドルをプロデュースしているのなら、過ちもあるのではないだろうか

そう考えて、プロデューサーの案に乗ることにした

……決してお酒が飲みたいだけではないです、ええ



698: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 15:13:53.02 ID:4wGR+G6H0

「今日もおつかれさまでした。それでは乾杯」

ジョッキが合わさり、かちんと音を鳴らす

「……はぁ、お仕事の後の一杯は本当に美味しいですね」

これが労働に対する対価だとしたならば、最高だと思います

お酒は百薬の長と言われますが、それも頷けますね

「良い飲みっぷりですね! 楓さんと飲むと楽しいですよ」

子供みたいに瞳を輝かせて、プロデューサーが楽しそうに笑う

……まぁ、悪い気はしないですよ





699: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 15:17:11.00 ID:4wGR+G6H0

「ふぅ……これも美味しい」

日本酒に切り替えて、色々な銘柄を楽しんだ

最近飲みやすい日本酒が良いみたいな風潮ですが、私はそれが不思議です

お水ではなくお酒なのですから、それ相応の飲み口があるほうが良いのではないでしょうか?

……話がそれてしまいましたね

「プロデューサー? 私ちょっと酔ってしまったみたいです」

一つ芝居をうってみることにしましょう

邪な気持ちを持っていたら、対応はおのずとわかるはずです



700: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 15:19:46.91 ID:4wGR+G6H0

「ペースが速かったですもんね、それじゃあ――」

私はプロデューサーの言葉を待つ

「送っていきますね、タクシー呼んできます」

「……ええ、お願いします」

拍子抜け、というか、やけにあっさりとしていた

でも、まぁ良い……これはこのまま芝居を続けることにしましょう



701: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 15:22:31.01 ID:4wGR+G6H0

タクシーが到着したことを告げられて、居酒屋を出ることにした

「きゃっ……すみません」

わざとらしく、つまずいたふりをしてプロデューサーに寄りかかる

「大丈夫ですか、手を貸しますから」

これは真摯な対応ですけど、何故かもやもやします

「タクシーまでもう少しですから」

……完全に毒気が抜かれしまいました、これはプロデューサーもシロですかね



702: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 15:25:59.39 ID:4wGR+G6H0

タクシーに乗り込んだあとは、お互いに無言だった

はぁ……芝居と言ってはみたけれど、実は結構良い気分

体も熱いし、今日は簡単にシャワーを浴びて寝てしまいましょう

「ほら、着きましたよ」

「すみません、また手を貸してもらえますか?」

もちろん、とプロデューサーが笑って、手を握ってきた

手が温かい……きっと外が寒すぎるせい



703: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 15:28:10.21 ID:4wGR+G6H0

「すみません、鍵はここなので開けてもらっても良いですか?」

うう……飲みすぎてしまいましたかね

お家についた安堵感もあって、頭がくらくらとしてきました

「……抵抗はありますが、仕方ないですね」

渋々と言った風に、鍵を開けて、部屋の中まで私を運んでくれた

どうでもいいですけれど、最後にもう一芝居うちますか



704: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 15:32:08.03 ID:4wGR+G6H0

ベッドの近くまで歩いて、そこでプロデューサーも巻き込んで、ベッドへと倒れてみせる

「あったかいですね」

「か、楓さん!? 放してください」

プロデューサーの言葉を無視して、プロデューサーの胸の中に顔をうずめてみせる

あ……ドキドキしてるのがわかる

プロデューサーの心臓はとても早く鼓動していた

「今日は寒いですし、温めあいませんか?」

さぁ、貴方はどう動きますか? プロデューサー



705: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 15:35:34.04 ID:4wGR+G6H0

「酔いすぎです、俺は帰りますからね」

……あ、ちょっと女としてのプライドを傷つけられました

「そうですか、残念ですね……」

そう言いながら、自分の服をはだけさせていく

……よし、こんな感じでいいですかね

「はい、ちーず♪」

素早くスマートフォンのカメラを起動させて、タップした

ぱしゃりと機械音がなると同時に、プロデューサーが面白い悲鳴をあげた



706: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 15:40:05.90 ID:4wGR+G6H0

「なにしてんだアンタ!」

珍しく口調が乱れるプロデューサー

「ふふ♪ 他のアイドルやちひろさんが見たらどう思いますかねぇ」

貴方にお熱の子が見たら、さぞ面白いことになるでしょうね

「脅しかよ……」

はぁ、とプロデューサーがため息を吐いた

「まぁまぁ、ちょっと温かくなるまでですから……」

夜はこんなにも寒いんですから、少し温まりましょう?

忍としてはお仕事は失敗ですが、女としては成功かしら?




おしまい



712: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 19:27:37.35 ID:4wGR+G6H0

>>710 気が利かなかったね、ごめんよ

ぼちぼち再開します
それでは>>715の楓さんどうぞー



715: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 19:34:06.49 ID:L1fr61400

妊婦



721: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 19:47:13.24 ID:4wGR+G6H0

病室の窓からは元気に走り回っている少年の姿

私の赤ちゃんもあんな風に元気になってくれるかしら

随分大きくなった自分のお腹をさすってみる

小さいころに見たアニメの映画の狸みたい

何だかおかしくなって、一人で笑っちゃいました

あれってぽんぽんがぽっこりしてるから、ぽんぽこ?



722: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 19:52:10.26 ID:4wGR+G6H0

はぁ……久々に面白かった

一人でしきりに笑ったあと、待っているのは病室の静けさ

「退屈……」

今は安静にしていないといけない、それはわかりますけれど

誰かお見舞いに来てくれませんかね

むむむーん、と裕子ちゃんの真似をしてみる



723: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 19:55:39.64 ID:4wGR+G6H0

こんこんこんと、病室のドアが三回ノックされる

あら、もしかして私のお願いがつうじちゃいましたか

「どうぞ」

今日は誰が来てくれたのかしら

そんな逸る気持ちを抑えながら、返事をした

「こんにちは、楓さん」

「みりあちゃん、いらっしゃい」

元気いっぱいの笑顔のみりあちゃんに、私も笑顔を返す





724: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 20:00:14.53 ID:4wGR+G6H0

「お腹……苦しくない?」

ぽっこりとした私のお腹を心配してか、みりあちゃんの眉根が下がる

年少組の子だけど、最近はお姉さん気質が出てきたみたい

「ええ、大丈夫」

「そっかー、みりあは食べすぎちゃった時とっても苦しいの」

あはは、とみりあちゃんが笑った

「触ってみる?」

そう提案すると、みりあちゃんがこくりと頷いた





725: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 20:05:27.88 ID:4wGR+G6H0

「やさしく……そーっと」

恐る恐るといった風に、ゆっくりとみりあちゃんの手が私のお腹に触れる

「わ……凄い」

目をまん丸にして、きゃあきゃあとはしゃいでる

「楓さんの赤ちゃん、早く見たいな」

「もうちょっとしたら、ね」

みりあちゃんの髪を撫でると、さらりとした感触が手に伝わる




726: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 20:09:38.74 ID:4wGR+G6H0

「えへへ、みりあも赤ちゃんのお世話手伝うからね」

「ええ、その時はお願いね。みりあお姉ちゃん」

私がそう言うと、みりあちゃんは目を輝かせた

「やった♪ 一緒に遊びたいし、一緒にんーと……」

指を使ってやりたいことを数えているみたい

こんなに可愛いお姉ちゃんがいれば、赤ちゃんもきっと喜びますね



727: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 20:23:13.09 ID:4wGR+G6H0

「そうだ! 楓さん、これお見舞いのリンゴと暇かなって思って本持ってきたの」

みりあちゃんが可愛いバッグから、リンゴと本を数冊取り出す

ひよこクラブ、ですか

「お母さんがこれ持っていきなさいって」

後でお礼をしておかないといけませんね

「ありがとう、みりあちゃん」

「どういたしまして! そうだ、みりあがリンゴの皮向いてあげる」

果物ナイフなら引き出しにあるはずだけど、大丈夫かしら?



728: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 20:25:38.88 ID:4wGR+G6H0

「んしょっと」

はらはらしながらみりあちゃんを見ていると、それは杞憂だったみたい

慣れている手つきでリンゴの皮をするすると向いていく

「できた! ウサギさん♪」

「可愛いウサギさんね、それじゃあ頂きます」

少し耳がかけてしまったウサギさんのリンゴはとても甘くて美味しい



729: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 20:29:58.72 ID:4wGR+G6H0

「でねでね、晴ちゃんがプロデューサーに怒っちゃって大変だったの」

小さい体をめいっぱい使って、その時の状況を細かく伝えてくれる

「プロデューサーも晴ちゃんに怒られるのが日課になっちゃったわね」

やりとりがすぐにイメージできた

「でもね、晴ちゃん後でごめんなさいしてた」

「きちんと謝れるのは大事だものね」

そっか、事務所の皆は元気みたいで一安心



730: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 20:38:00.44 ID:4wGR+G6H0

落ち着いたら事務所にも顔を出してみましょうか

赤ちゃんも連れて行ったら、皆びっくりするかな

それまでにとっておきのダジャレを考えておかないと……

「あ、こんな時間になっちゃったわね」

気付くと窓の景色が茜色に染まっていた

みりあちゃんとの時間はとても楽しくて、時間があっという間に過ぎていた




731: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 20:44:49.11 ID:4wGR+G6H0

「みりあちゃん、帰る時はどうするの?」

「プロデューサーが迎えに来てくれるって」

そっか、あの人が来てくれるなら安心

「それまで楓さんのお世話するの」

えへんと胸をはるみりあちゃん

「ふふふ……頼もしいわね」

「みりあはお姉ちゃんだからね♪」

それでね、まだ聞かせたいお話いっぱいあるの! とみりあちゃんが話し始める

これは退屈してる暇なんてないわね

小さなお客さんの言葉に耳を傾けながら、赤ちゃんに語り掛けた




おしまい



732: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 20:45:52.16 ID:4wGR+G6H0

読んでくれた方に感謝を
このままもう一つ安価もらいます
それでは>>735の楓さんどうぞー



735: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 20:47:10.29 ID:e1/AoME/0

ヴァンパイアハンター



738: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 20:58:13.96 ID:4wGR+G6H0

昔々の物語

一人のヴァンパイアハンターがおりました

長身とそれぞれ色が違う瞳をもつ妙齢の美女

町をあるけば男どもが振り向いてしまうほどです

「さて、今日はどこの酒場にしましょうか」

当の本人はどこ吹く風といった感じで、マイペースでした



739: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 21:03:44.50 ID:4wGR+G6H0

「いらっしゃい……お客さん、ミルクは置いてないぜ」

酒場に入ると、いやらしい笑みを浮かべた店主がそう言いました

「エールをください、大きいジョッキで」

女性は、酒場でミルク? ……ミルクを飲んでみるく……いまいち

なんてことを思いながら、不思議そうな顔です

「お、おう……ちょっと待ってな」

店主はいそいそとしながら準備をしています



740: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 21:06:51.42 ID:4wGR+G6H0

女性が酒場に入ってからしばらく経ちました

「おかわりを」

「は、はい……」

女性の飲みっぷりに店主が恐れをなし、態度が軟化しました

「あ、そういえばこの辺りの町はヴァンパイアに困っているとか……」

何杯目かわからないエールを飲みながら、女性が尋ねます

「よくご存じで……あれは恐ろしい存在です」

店主が目をつぶり、重々しい口を開きます





741: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 21:11:36.13 ID:4wGR+G6H0

なんでも、そのヴァンパイアは小柄で銀色の髪を持っている

口には恐ろしい牙を持ち、よなよな生贄をさがしているとか

そしてなぜかキノコを落としていくとか何とか

「なるほど……あ、この干し肉美味しいですね」

女性は干し肉をもぐもぐと咀嚼しながら、返事をしました

「出会ったら逃げたほうが良いですよ」

店主の忠告に、女性はこくりと頷きました



743: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 21:22:27.33 ID:4wGR+G6H0

「さて、良い時間ですね」

外は真っ暗で、星とお月さまが輝いています

女性は酒場を出ると、腰の革袋にあるものを確認し、夜の街を徘徊することにしました

いつの間にか、冒険者風な装いから、町娘なような装いに変わっています

「さて、後は私を間違えて襲ってくればいいだけですね」

女性は寒い寒いと言いながら、軽い足取りで歩きだしました





744: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 21:28:28.45 ID:4wGR+G6H0

「だ、誰かー! カワイイボクが襲われてますよー」

薄暗闇から、まるで緊張感の無い悲鳴が聞こえてきます

「まぁ、大変」

こちらの女性も緊張感は皆無でした

声を頼りに走り出すと、そこには少女が尻もちをついていました

「大丈夫? 幸…お嬢ちゃん」

女性が、髪の毛がぴょこりと外ハネしている少女に声をかけます







745: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 21:35:15.53 ID:4wGR+G6H0

「ヴァンパイアが……ボクに……」

何故か、可愛いと自負していそうな少女が怯えながら言います

「もう大丈夫よ、どっちに行ったかわかる?」

「あっちに……」

女性の問いに、タレ目がちな少女が返しました

「貴女は安全な場所へ、それじゃあ」

女性は少女が指さした方へ走り出します

「かえ……気を付けてくださいね」

しんとした町に、少女の声が静かに響きました





746: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 21:38:53.66 ID:4wGR+G6H0

「こ、これは……」

女性が何やら見つけたようです

それは、道に点々と落ちている血……ではなく

「エリンギ……? あ、こっちにはしめじも」

どうやらキノコを落とすと言うのは本当だったみたいです

「帰ったら焼いて食べましょう♪」

女性はるんるんな気分でキノコを拾いながら、ヴァンパイアの後を追いました



747: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 21:43:16.78 ID:4wGR+G6H0

そうしてキノコをたくさん拾っていると、じめっとした洞窟にたどり着きました

「ここにヴァンパイアが……」

女性が神妙な顔をして見せますが、頭の中ではキノコで一杯やることしか考えていません

「慎重に、ゆっくり奥まで行きましょうか」

音を立てないように、差し足で女性が進みます

奥に進むにつれ、キノコの量が増えていきます

それはまるで栽培しているかのような量

「キノコ食べ放題ね」

くすりと女性が笑いました







748: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 21:47:11.43 ID:4wGR+G6H0

「ん……?」

ろうそくの明かりが見えます

そして、銀色の髪の毛も

こちらに背を向けて何かをしているようですが、好都合です

今がチャンスと言わんばかりに、女性が腰にぶら下げた革袋から透明な小瓶を取り出し

「え~い」

楽しそうな声とともに、放り投げました



749: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 21:50:42.96 ID:4wGR+G6H0

「うわっ……く、くさっ!」

銀色の髪の毛のヴァンパイアは小瓶の中身を浴びて転がりまわりました

「特製の聖水(ウォッカ)のお味はどう?」

ちょっと勿体ないことしたかしら、と女性が思っていました

「くそ……こんなところで……」

こちらに振り向いたヴァンパイアは噂通りとても小柄です

ですが、口から覗く鋭い犬歯は恐ろしさを感じさせました



750: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 21:52:52.29 ID:4wGR+G6H0

「続いてニンニクも……!」

女性がニンニクを投げます

ヴァンパイアの伝承ではニンニクも効果があり……ませんでした

ほかほかと湯気を立てるニンニクは、香ばしく焼かれていました

「あ……臭くない」

そこで女性はお酒のおつまみ用に焼いてしまったことに気付きました



751: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 21:56:07.05 ID:4wGR+G6H0

「とどめはこれです」

女性は腰に装備していた鞭を伸ばしました

先には金属片が付いていて、とても痛そうです

「これは痛いですよ? とっても痛いですよ?」

女性は何故か鞭を振りません

「降参するなら今のうちですよ?」

ヴァンパイアは気付きました、鞭使ったことないんだなって



752: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 22:00:58.20 ID:4wGR+G6H0

膠着状態かと思われたその時です

「輝子ちゃんをいぢめるのはやめるんですけど……」

奥のベッドから金髪のおどおどした少女が現れました

「乃々ちゃん、動いちゃだめだ」

ヴァンパイアから乃々と呼ばれた少女が女性の前に立ちます

まるでヴァンパイアを守るように、手を広げて



753: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 22:04:20.38 ID:4wGR+G6H0

これではまるで女性のほうが悪者みたいです

「事情があるみたいね、お話を聞いてもいい?」

二人のやり取りを見た女性は話を聞くことにしました

傷つけるのは得意じゃないし、これで解決できるならと思ったからです

「乃々ちゃん……」

「わかりました、お話します」

乃々と呼ばれた少女が、伏目がちに話し始めました



754: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 22:09:29.43 ID:4wGR+G6H0

「まぁ、そんなことが……」

聞けば、少女はぷろでゅうさぁと呼ばれる男性にいぢめれていて

逃げたところをヴァンパイアが助けたようです

「輝……ヴァンパイアちゃんは乃々ちゃんを襲わないの?」

女性は疑問に思い、聞いてみました

「友達を襲うわけない……」

はて? これはどういうことでしょうか

「血なんてまずいし、気持ち悪い」

このヴァンパイアはどうやら変わり者みたいです



755: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 22:12:59.80 ID:4wGR+G6H0

「じゃあ、町の人を襲ったってのは?」

「あ、あれは……キノコと他の食料を交換しようと思って」

ヴァンパイアがちらりと少女を見ました

「乃々ちゃんにごはんを食べさせるため?」

ヴァンパイアが頷きます

「でも……皆逃げるんだ……フ、フヒ……ボッチ」

女性は町の人たちが勘違いしているとわかりました



756: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 22:15:59.73 ID:4wGR+G6H0

「やっぱりもりくぼが町に出たほうが」

「だ、だめだ……またいぢめられるに決まってる」

女性は二人の友情に胸が熱くなるのを感じました

このヴァンパイアは人と共存できると確信した女性は

「私に良い考えがあるの」

ウィンクをすると、二人に話し始めました



757: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/30(火) 22:26:10.79 ID:4wGR+G6H0

町を騒がせたヴァンパイアはもういません

一人のヴァンパイアハンターに退治された……ということになっています

「キノコ―、キノコはいりませんか」

「美味しいキノコですよー♪ お鍋にも焼いても美味しいですよー」

銀色の髪の少女と、あの女性がお店でキノコを売っています

そして、その机の下には乃々と呼ばれた少女の姿もありました

女性の考えにより、ヴァンパイアは人との生き方を学んだのです

これで、この町にも平穏が訪れる事でしょう



おしまい




761: 1です 2018/01/31(水) 21:35:10.12 ID:Bg6gBDvq0

昨日の最後のレスは忘れてください、自己解決できました

それでは再開したいと思います
>>764の楓さんどうぞー



764: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/31(水) 21:37:06.43 ID:wogNyy2W0

小料理屋



766: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/31(水) 21:45:38.27 ID:Bg6gBDvq0

仕事終わりの帰り道

通り慣れた道から帰ろうと思って、ふと考える

たまには違う道から帰ってみよう

そう思って、いつもの道から一本ずれた道へ歩き出す

ずいぶんと入り組んだ道だ……ちょっと薄暗いし

そして、暗闇を薄く照らす提灯を掲げる店が一軒

『小料理 楓』

看板には達筆でそう書かれていた



767: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/31(水) 21:53:34.44 ID:Bg6gBDvq0

趣のある外装と提灯の灯りで、どこか幻想的でもある

小料理屋か……一人で入ったことないんだよな

高い場合もあるし、どうしようか

そう悩んでいると、店の入り口にいる女性と目が合った

……とんでもないレベルの美人さんだ

こちらを見て、薄くほほ笑んでいる

もっと近くで見たい、そう思った時にはもう入り口の扉に手をかけていた




768: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/31(水) 21:59:28.70 ID:Bg6gBDvq0

給料日を迎えたばかりだし、こうなりゃやけだ

扉を開けると、さきほどの女性がにこやかに出迎えてくれる

「いらっしゃいませ。外は寒いでしょう、どうぞ中へ」

身近で見ると、さきほどより魅力的に感じる

淡い緑色の着物と、後ろで結った髪、それと白いうなじに目を奪われる

「お好きな席に掛けてくださいね、とは言ってもそんなに席はないんですが」

女性を目の前でみたいばかりに、カウンターの真ん中を陣取った




769: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/31(水) 22:10:20.03 ID:Bg6gBDvq0

「お飲み物は何になさいますか?」

注文を聞かれて、はっとする

「とりあえずビール……じゃなくて熱燗で」

今日は寒いし、酒をちびちびやろう

「今日みたいな日にはぴったりですね、少々お待ちください」

慣れた手つきでお燗をしていく

まくった袖から見える腕はすらりとしていた







770: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/31(水) 22:14:36.89 ID:Bg6gBDvq0

酒を待っている間、手持無沙汰なので店の中を見回してみる

あまり広くはなくて、席はカウンターが七席ほどだ

店の人間は……この女性だけ、ってことはこの人が女将兼板前をしているのか

若そうなのに一人で店を切り盛りしてるなんて大したもんだ

一人でうんうんと頷いていると

「お待たせしました、熱燗とお通しです」

お通しの美味そうな匂いに、腹の虫がくぅっと鳴いた





771: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/31(水) 22:20:08.88 ID:Bg6gBDvq0

「では、一献どうぞ」

女将さんがお酌をしてくれるようだ

「ありがとうございます」

お猪口を傾けると、燗された酒の香が広がる

「こいつは美味い酒ですね」

「喜んでもらえて良かったです、お通しも冷めないうちにどうぞ」

これはふろふき大根と……もう一品がわからない





772: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/31(水) 22:29:49.77 ID:Bg6gBDvq0

丸くて、黄色がかった衣がついていて、それにとろみをつけた出汁が張ってある

「頂きます」

「お召し上がりくださいな」

箸を入れるとさくりと子気味良い感触

中身は白雪のように淡い白さ

それに出汁をたっぷりと絡めて口の中へ入れた




773: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/31(水) 22:36:08.34 ID:Bg6gBDvq0

ふわふわとさっくりとした食感、それを包む濃厚な出汁の味

これは噛むのが楽しい料理だ、それに美味い

「白身魚の真薯を湯葉に包んで揚げてみたんです」

「初めて食べた料理ですけど美味いですね」

俺が素直に伝えると、女将さんが嬉しそうに顔を綻ばせた

続いて食べたふろふき大根もとてもうまく炊けており

この二品のせいで、俺の腹の虫が大騒ぎしだしてしまった



774: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/31(水) 22:56:18.84 ID:Bg6gBDvq0

お品書きを手に取り、目を走らせていると良いものを見つけた

「この金目鯛の煮つけをください」

「はい。少々お待ちくださいね」

流石に良い値段だが、今日は奮発しよう

「この時期の金目鯛は美味しいですよ、ほっぺが落ちちゃうくらいに」

「それは楽しみだ」

煮つけがくるまで、女将さんの調理姿を肴に酒を呷る



775: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/31(水) 23:07:51.81 ID:Bg6gBDvq0

「お待たせしました、金目鯛の煮つけです」

皿からはみ出しそうな立派な金目鯛だ

ふわりと湯気が上がり、その匂いが食欲を刺激する

何の抵抗もなく箸が入り、ほろりとした身をこぼさないように口に運ぶ

「……美味い」

甘辛く煮つけているのに、魚の味も損なわれていない

これは味付けのせいか、それともこの金目鯛の美味さなのか

酒が進み、気付けばお銚子が空いてしまった

もう一本つけてもらうか? いや、ここはどっちかと言うと……



776: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/31(水) 23:12:25.32 ID:Bg6gBDvq0

「ふふっ、炊き立てのご飯も合いますよ?」

俺の考えを読み取ったかのように、女将さんが言った

「お願いします、大盛で」

「はい、わかりました♪」

こんなに美味い煮つけを白飯で追っかけたら……おっと、よだれが

「はい、どうぞ」

目の前につやつやのご飯が置かれた

……よし、俺の腹の虫を黙らせてやるとするか



777: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/31(水) 23:25:55.81 ID:Bg6gBDvq0

金目鯛の身をたっぷりと箸で取ってから、飯の上でバウンドさせる

それからすかさず口に運び、それから白飯を追っかける

……これが幸せってやつか

白飯が金目鯛の味を……もう御託はいいや

とにかく、もう食べる事しか頭にない

煮つけ、白飯、煮つけ、白飯、ここに完璧なループが生まれる



778: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/31(水) 23:29:28.58 ID:Bg6gBDvq0

「まぁ、凄い食べっぷり♪ おみおつけもどうぞ」

「頼んでないですよ?」

「サービスです、そんなに美味しそうに食べてもらえるお礼です」

それならありがたく頂戴することにしよう

「アラのおみおつけです、ほんの少し酒かすが入っています」

女将さんの説明を聞きながら、汁を啜る

魚のアラがたっぷりで、身をこそぎながら食べるのが楽しい



779: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/31(水) 23:36:09.77 ID:Bg6gBDvq0

「ふぅ……ご馳走様でした」

我を忘れて箸を動かしていたら、いつの間にか食べ終わっていた

「こちらこそ、ご馳走様でした」

はて? こちらから何かご馳走した覚えはない

「あなたの美味しそうに食べているお顔、です」

そう言われて、何だか恥ずかしくなってきた




780: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/01/31(水) 23:42:34.59 ID:Bg6gBDvq0

食後のお茶を飲みながら、余韻を楽しむ

それにしても、本当に美味かった

それに、女将さんも美人だし……

ちらりと女将さんを見ると、また目が会った

「どうかなさいましたか?」

そう言う女将さんの笑顔は少し悪戯っ子のようだ

「いえ……美味かったです、また来ますね」

「ありがとうございました、お待ちしています」

店の外まで見送ってくれる女将さんを背に、いつもとは違う帰り道を歩く

たまには道を変えてみるのもいいもんだ

ふと上を見上げてみると、綺麗な月が輝いて

俺の帰り道を明るく照らしていた



おしまい



786: 1です 2018/02/01(木) 20:01:25.22 ID:yjUv6ZiO0

いつも安価を頂ける皆さんに感謝です
残りスレ200強……精一杯書ききりたいと思います
二スレ目は皆さんが飽きていないのなら喜んで

それでは再開します
>>789の楓さんどうぞ



789: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/01(木) 20:02:29.64 ID:GMtTw2O6O

ライダー



796: これは若い人はわからないかも…… 2018/02/01(木) 20:15:44.73 ID:yjUv6ZiO0

普通に生活して、何も面白いものがないまま終わると思っていた

だけど、私の終わりは随分と早く訪れた

夜遅くに帰宅することになった私は、近道するためにいつもとは違う道を選ぶ

後悔するならやってから、っていう人もいるかもしれないけど

この先、後悔できない状況ならば、先に後悔してもいいと思わない?

今、前の前で行われている事。そして、それを見てしまった私

男の人がスーツの内側から何かを取り出したのは覚えてる

それから、ぱぁんって音が聞こえた後は何も覚えてない



797: 安価取ってくれた人の指定がないので、私が勝手に決めちゃいます 2018/02/01(木) 20:19:46.85 ID:yjUv6ZiO0

「……」

どうやら、私は生きているみたい

ぼんやりとした意識のなかで、それだけはわかる

けれど、ここがどこなのかわからないし、私がどうなっているのかがわからない

体に力は入らないし、ずっと頭がぼんやりしてる

それに頭が少し痛む

……もう少し寝てましょうか



798: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/01(木) 20:25:59.50 ID:yjUv6ZiO0

そう思ったけれど、思いとどまった

自分の横にある姿見、そこに映った鏡に映る自分の姿

それは私が見慣れている自分の姿ではなかった

がばりと寝台から起きる

それから姿見に近づいて、まじまじと自分の姿を確認した

見れども見れども、自分の顔じゃなかった

それに、片目の色がおかしくなっている



799: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/01(木) 20:31:36.81 ID:yjUv6ZiO0

「あら、おはようございます」

頭がパニックを起こしている中、誰かが部屋に入ってきた

「すみません、状況が状況だったので……」

ネオングリーンのジャケットを着た女性が深々と頭を下げた

「どういうことか、説明してもらえますか?」

私の言葉に女性はにこりとほほ笑んで、口を開く

しかし、この女性の笑顔はなんとなく怖い





800: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/01(木) 20:37:57.09 ID:yjUv6ZiO0

女性の話を聞いて、私が置かれている状況がわかった

一つ、私は見てはいけないものを見てしまった

二つ、銃弾を顔に受けた私の顔を整形したこと。片目にも銃弾を受けたらしいこと

三つ、その見返りに、この女性の言う事を聞くこと

「はぁ……?」

話を聞いた後に、私の第一声はそれだった

随分とふざけた話だ、第一照明するものがない

片目の視力もあるし、いまいち信用できない

「ほら、事件直後のあなたの写真ですよ」

女性が見せてくれた写真には、見慣れた自分が血まみれで倒れていた

ご丁寧に、顔がぐちゃぐちゃだ



801: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/01(木) 20:42:22.59 ID:yjUv6ZiO0

吐き気が襲ってきたけど、何とか耐える

「信用してくれます? あ、片目のことはまぁ知らないほうが良いですよ」

くすくすと笑う女性に怖さを覚えた

「……それで、私は何をすればいいんですか?」

ここは大人しく従ったほうが良いと本能が言っている

「まずアイドルになってください、それとついでに正義のお仕事を」

「はぁ……?」

この女性は何を言っているの?





802: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/01(木) 20:47:31.66 ID:yjUv6ZiO0

ついてこいと言われ、地下へのガレージへと向かう

この女性……千川ちひろさんというらしい

千川さんが働いているところは大手の芸能プロダクション

そして、裏のお仕事は正義のお仕事を少し、なんてふざけた話をされた

そんな嗜む程度ですが、みたいな話されても反応に困る

「さぁ、着きましたよ」

殺風景なガレージには布がかけられた物体がぽつりと佇んでいる

「これが貴女の……高垣楓の相棒です」

千川さんが布を両手で引っ張り、現れたのは真っ黒の一台の車だった



803: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/01(木) 20:57:57.26 ID:yjUv6ZiO0

これはスポーツカー? あまり車に詳しくないけど、外国車かしら

「これはナイト……じゃなくケイト2000です」

今なにか言いかけましたよね? この車、マイナーなところのやつなのかな

「まぁまぁ、とりあえず乗ってくださいよ」

「はぁ……」

千川さんに背中を押され、運転席へと乗り込む

左ハンドル……それに、わからないスイッチがいっぱい

「これってどうやってエンジンを……」

言い終わる前に、勝手にエンジンがかかって

『ハァイ、私KATE。ケイトって呼んでくだサイ 』

最近の車って喋るみたい……



806: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/01(木) 21:04:58.89 ID:yjUv6ZiO0

「千川さんが喋ってるんですか?」

「違いますよ?」

可愛らしく小首をかしげて返事をする千川さん

『んもう、ケイトはここヨ? ちゃんと見てくだサイ』

見てってどこを見ればいいのかわからないの……?

「もしかして、この車がケイトってこと?」

『そうですヨ、ええと……タッキー』

その呼び方は色々とまずい気がするから止めて欲しい



807: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/01(木) 21:15:40.70 ID:yjUv6ZiO0

「貴女はこれからケイトと一緒にお仕事してもらいます」

『よろしくネ、タッキー』

それほんとやめて!

「貴女をこんな風にした人物を探したくないですか?」

「この仕事を続ければ見つけられるんですか?」

できれば見つけ出したい、見つけ出して……文句の一つでも言ってやりたい

「ええ、もちろん。張り巡らされた蜘蛛の糸を断ち切れば、本体がおのずと出てきます」

「そうですか……」

もちろん、アイドルとしてのお仕事でお給料も出ますよ? そう千川さんが言い足した

お金につられたわけじゃないけれど、これは私にとってメリットだらけの話に思えた



808: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/01(木) 21:19:54.00 ID:yjUv6ZiO0

ちらりとケイトのほうを見る

『そんなに見つめられる照れまス』

ちょっと、いえ、大分不安かもしれないけれど

私をこんな風にした人物、それにお給料……

正義の味方なんて柄じゃないですけれど

「わかりました、私やります。それと美味しいお酒もご馳走してくださいね?」

私の言葉に千川さんが笑顔で頷いた




おしまい



811: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/01(木) 22:46:44.71 ID:yjUv6ZiO0

ぼちぼち再開します
それでは>>813の楓さんどうぞー



813: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/01(木) 22:47:22.00 ID:GF5U4YCS0

フィーダー(対象アイドルはおまかせ)



815: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/01(木) 22:50:39.42 ID:GF5U4YCS0

あ、補足するとフィーダーっていうのは他人を太らせるのが好きな肥育者っていう意味です



819: ミリオンのアイドルでしたか 2018/02/01(木) 23:11:41.70 ID:yjUv6ZiO0

「翠ちゃんお疲れ様。よかったらご飯でもどうです?」

珍しいお誘いです

普段はあまりご飯をご一緒しない、というかお酒を飲みに行ってしまうイメージでした

「私でよければ喜んで」

せっかくの機会ですので、もっと楓さんのことを知りたいとも思いました

「嬉しい♪ じゃあ私のお気に入りのお店にしましょう」

「はい、楽しみです」

この時の私は、楓さんを疑うなど一かけらもありませんでした



820: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/01(木) 23:18:56.47 ID:yjUv6ZiO0

「あ、楓さん」

事務所に向かっていると、前を歩いている楓さんを見つけ声をかけました

「あら、翠ちゃん。制服姿も可愛いわ」

じっと私の制服姿を見て、楓さんがほほ笑みます

……楓さんみたいな綺麗な方にみつめられると、ちょっと恥ずかしい

「そうだ、美味しいケーキ買ってきたから食べましょう」

ケーキ……お昼からだいぶ時間が経っていますし、なにより

楓さんが美味しいと言っているケーキに興味が湧いてきました



821: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/01(木) 23:24:09.76 ID:yjUv6ZiO0

「わぁ、どれも美味しそうですね」

チョコレートのケーキに、クリームのケーキ、それにタルトがたくさん

「たーくさん食べてね」

目移りしちゃってどれを食べようか悩んでしまいますね……

「食べないの?」

「お恥ずかしいのですが、どれを食べようか悩んでしまいまして」

私が言うと、楓さんが笑顔で私の横へと移動してきました




822: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/01(木) 23:32:56.69 ID:yjUv6ZiO0

「じゃあ私が食べさせてあげるわ」

楓さんがいそいそとチョコレートのケーキを取り出して

「はい、あーん」

「子供みたいで……恥ずかしいです」

嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちで、なかなか踏ん切りがつきません

「そんな……私悲しい……」

私の態度に気を悪くしてしまったのか、楓さんの大きくて綺麗な瞳が潤んでいます

「わ、わかりました! あーん」

「はい、あーん♪」

……楓さんは演技もとてもお上手の様です



823: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/01(木) 23:37:10.39 ID:yjUv6ZiO0

「ふぅ……ご馳走様でした」

なんやかんやで、ケーキを一人でほぼ食べてしまいました

流石に食べすぎてしまい、苦しいです

「ごめんなさい、翠ちゃんの美味しいそうにしてる表情を見てたら、つい調子に乗っちゃって……」

「いえ、せっかく楓さんが買ってきてくれたものでしたので」

「そう言ってくれると嬉しいわ」

そういえば、さっきからずっと楓さんが隣に寄り添っています

良い匂いはケーキだけではなく、楓さんの香りだったのかもしれません



824: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/01(木) 23:45:13.39 ID:yjUv6ZiO0

「私の顔に何かついてる?」

楓さんと目が合いました

「いいえ、何でもありません」

すると、楓さんの指が私の唇に触れて

「動いちゃ駄目」

「は、はい!」

これはどういう状況なのでしょうか、動いちゃ駄目って言われましたけど……

「はい、とれた」

どうやら、私の唇にチョコが付いていたみたいです

「ん……おいし」

楓さんはそれを舌でぺろりと舐めて、そしてまた私は固まってしまいました



825: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/01(木) 23:48:46.24 ID:yjUv6ZiO0

「私レッスンに行って参ります!」

バッグを取って逃げるようにして、事務所から飛び出します

はぁ……心臓がばくばくしてる

楓さんにはまた後でお礼を言っておきましょう

とりあえず今はレッスンに行って、精神を沈めないと


と思っていたのですが、いつもよりミスをしてしまい、トレーナーさんに怒られてしまいました



826: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/01(木) 23:53:23.18 ID:yjUv6ZiO0

「翠ちゃんお疲れ様。どうしたの? 浮かない顔をして」

しょんぽりとした気持ちで帰ると、楓さんが心配そうな顔をしています

「いつもより体の調子がおかしくて、失敗をたくさんしてしまいました」

頭と体がちぐはぐと言うか、感じたことのない感覚です

「そうだったの……じゃあお夕飯がてらお話しましょう」

お話を聞いてくれるのはとてもありがたいのですが

「嬉しいお誘いなのですが、あまり持ち合わせがないのです」

すると楓さんが笑顔で答えました

「大丈夫。お姉さんにお任せです♪」



827: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 00:07:41.12 ID:CrqWojfw0

「このお鍋美味しいです」

「そうでしょう、私のお気に入りなの」

魚介類がたくさんはいっていて、箸が止まりません

体も温まりますし、さきほどまでのモヤモヤもどこかへ行ってしまいました

「今日の嫌な気分は明日に持ち越さないほうが良いんですよ」

楓さんがお酒を一口飲んでから、そう言いました

「今日は楓お姉さんが付き合ってあげます。だから、言いたいことは言って良いたい」

こういう時は笑ったほうが良いのでしょうか? その……リアクション? 的な感じで



828: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 00:13:08.88 ID:CrqWojfw0

「今日はありがとうございました」

タクシーで送ってもらいましたし、どうお礼をしたら良いのか……

「良いの。私は翠ちゃんの笑顔が見たかっただけだから、それじゃあおやすみなさい」

「はい、おやすみなさい」

私はタクシーが見えなくなるまで見送りました

今日は楓さんにたくさんお話を聞いてもらって、気持ちの整理ができました

けれど……また食べすぎてしまった気もします

そういえば、楓さんは私に勧めるばかりであまり食べていなかったような気がします





829: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 00:21:27.38 ID:CrqWojfw0

私は楓さんと過ごす時間が多くなりました

楓さんの差し入れや、連れて行ってくださるお店も楽しみにしている自分がいます

今も体の違和感は消えませんが、楓さんにアドバイスを頂いて、それをあまり気にしないようにしています

「なぁ、翠。最近レッスンが上手くいってないみたいだな」

事務所で楓さんの差し入れを頂いていると、プロデューサーに声をかけられました

「そうです、ね……ですが、楓さんにアドバイスを頂いて頑張っています」

「……そうか、ならいいんだ。それにしても、よくそんなに甘いものが食えるな」

そうでしょうか? 今日の差し入れはいつもより少ない気もします



830: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 00:26:35.84 ID:CrqWojfw0

「そういえば、今日プロデューサーに不思議がられました」

楓さんとお夕飯を頂いている時に、今日あったことを話します

「いつもより少ないと思ったんだけど、変なプロデューサーね」

やっぱりですね、いつもより少ないなら全然食べられてしまいます

「ほらほら、そんなことよりお肉が焼けましたよ♪」

私の取り皿にお肉を置いて頂きました

「いただきます」

大きなお肉はとても柔らかく、ご飯と一緒にいくらでも食べられてしまいそうです



831: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 00:35:21.97 ID:CrqWojfw0

楓さんは私がご飯を食べる姿を、可愛いと言ってくれます

まだ言われ慣れないのですが、とても嬉しいです

最近服のサイズが上がってしまったのですが、楓さんは成長期だからと言っていたので気にしないことにします

今日はどんな差し入れとお夕飯を頂けるのか楽しみですね

ここ何日かはレッスンよりも楓さんとご飯を食べるのを優先的にしています

「翠ちゃん、今日もお夕飯行きましょうか」

「はい、ご一緒させてください」

ちょうどお腹が空いていたので、お言葉に甘えることにします

楓さんとのご飯は本当に美味しいのです





おしまい



834: 1です 2018/02/02(金) 19:45:15.58 ID:4sLWVE+o0

ぼちぼち再開したいと思います
それでは>>836の楓さんどうぞー



836: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 19:46:09.53 ID:4tM1yxNWO

一国の姫



839: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 20:01:24.22 ID:4sLWVE+o0

とあるお姫様のお話です

楓姫という、それはそれは美しいお姫様がおりました

この時代には珍しく、髪は結っておらず、異国の物のような独特な瞳を持っています

声もとても綺麗なものを持っていて、歌を歌う時は臣下たちがこぞって集まっておりました

その美しさは城下の民にも伝わり、まるで雲の上の人と思われていました

確かに美しさと、その仕草は見るものを魅了することでしょう

ですが、楓姫はその斜め上をいく人物なのでした



840: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 20:05:48.06 ID:4sLWVE+o0

「姫様、今日の夕餉でございます」

女中である、かな子が夕餉を持ってきました

「ええ……頂くわ」

この時代の食べ物はいわゆる薄口の味付け

「(もっと味の濃いものが食べたい……)」

楓姫の口には少し合わないようです

「ねぇかな子ちゃん? ちょっとお出かけしましょうか」

「ええっ! ばれたら怒られちゃいます……」

かな子がそう言いますが、楓姫は笑顔で

「そうなったら私も一緒に怒られてあげますから♪」

楓姫の脱走が今日も始まるようです



841: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 20:11:47.84 ID:4sLWVE+o0

「ふぅ……やっぱり城下の町は良いですね」

楓姫がぐぅっと伸びをして、軽く体をほぐしています

「姫様? やっぱり戻りませんか?」

かな子は見つかったらどうしよう、という気持ちでびくびくしています

「愛梨ちゃんに聞いたんだけど、新作の甘味があるらしいわよ?」

楓姫がそう言うと

「新作の甘味……良いですね、行きましょう!」

かな子は楓姫の言葉にまんまと釣られてしまいました



842: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 20:20:51.98 ID:4sLWVE+o0

「これは……」

「かな子ちゃん、これはほっとけぇきと言うらしいわよ」

まぁるく焼かれた焼き菓子のようです

ほかほかと湯気を立て、香ばしい匂いをさせている菓子をまずはかな子が一口

「では私が味見……いえ、毒見を」

ないふとふぉーくなるものを器用に使い、一口大に切ったものを口に運びました

「どう? 美味しい?」

目を閉じ味わっているかな子に、楓姫がそわそわしながら言いました



843: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 20:26:55.56 ID:4sLWVE+o0

かな子がほっとけぇきを飲みこむと、くわっと目を開けました

「……美味しい! 楓姫、これすごいですっ、ふわふわで食べるとふかふかです」

ふわふわでふかふか、とにかく柔らかい菓子のようです

それを聞いて、楓姫がほっとけぇきを口に運びました

もぐもぐと咀嚼して、ごくんと飲みこみます

「美味しい……確かにふわふわでふかふか」

楓姫は大層気に入ったみたいで、ほっとけぇきを食べ進めていきます





844: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 20:40:10.32 ID:4sLWVE+o0

「姫様、このめぇぷるしろっぷをかけるともっと美味しいみたいですよ」

めぇぷるしろっぷ? 楓姫が聞き慣れない言葉に首を傾げます

こんなに美味しいほっとけぇきがもっと美味しくなる……楓姫はごくりと唾を飲みます

めぇぷるしろっぷは琥珀色をしていて、蜜のような芳醇な香りがしています

「では……」

楓姫がとろりとほっとけぇきにめぇぷるしろっぷをかけ、それを口に運びました

「……!」

口の中に濃ゆい甘さが伝わります、けれどその甘さはほっとけぇきの味を一層引き立てるのです

「めぇぷるしろっぷ……恐るべしです」

ふぉーくを咥えたまま、楓姫が嬉しそうに声を上げました



845: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 20:43:18.36 ID:4sLWVE+o0

後で店主に聞いたところ、めぇぷるしろっぷは楓の木の樹液を使うとか

それを聞いた姫は

「私の名前を聞いて、これはほっとけん」

「えっ? そ、そうですね……」

お得意の冗談をかましますが、かな子は苦笑いで返します

「(とてもお綺麗なのに、これはちょっと……)」

かな子がそう思いましたが、楓姫は真剣なので性質が悪いのでした





846: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 20:55:04.21 ID:4sLWVE+o0

「とても美味しかったですね」

楓姫がほっとけぇきの余韻を感じながら、はあっと吐息を吐きます

「満足されたようなので、お城に戻りましょうか」

かな子はほっとした顔で楓姫にそう勧めました

「……えっ? 夜はまだこれからですよ」

何を言ってるの? と言わんばかりの楓姫

気付けば月の静かな光を感じられる時刻になっていました

「わかりましたよ……もう」

こうなった楓姫を止められないことを知っているかな子は、深いため息を吐きました



847: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 20:59:43.62 ID:4sLWVE+o0

楓姫は何かないかと目をらんらんと輝かせ、町を歩きます

そして、かな子はその後ろを黙って後を追います

「(これは本当に覚悟しないといけないかも……)」

かな子の心中は穏やかではありません

楓姫が口添えをしてくれるとは言え、これほど城を空けるのは流石にまずいようです

かな子の表情が曇るなか、楓姫が何か見つけたようです

店の前でじゅうじゅうと香ばしい匂いをたてるもの

それは、焼き鳥でした



848: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 21:05:55.90 ID:4sLWVE+o0

「……」

楓姫が指を唇に当てて、かな子を見ます

かな子ちゃん、焼き鳥ですよ? これはもうお酒を飲むしかありませんよね

目がそう語っています

しばらく考えた後、かな子が言います

「お銚子は二本までですよ……?」

それを聞いた楓姫が、そら来たと言わんばかりの表情で

「調子が出てしまったらごめんなさい♪」

楓姫が店に入り、かな子もそれに続きました



849: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 21:14:07.78 ID:4sLWVE+o0

「わぁ……美味しそう」

これは楓姫ではなく、かな子の言葉です

「姫様、どれも美味しそうですよ♪」

姫は、ちょろいですね……と誰にも聞かれないように呟き

「私は皮とやげん、それに砂肝を頼みます」

流れるように楓姫が注文を決めると、かな子も同じものを頼むことにしました

「かな子ちゃんはまだ飲めないんですよね……」

とても残念そうに楓姫が言います

「まだお酒は飲めませんが、姫様にお付き合いすることはできます」

かな子がそう言うと、お銚子を持って姫様にお酌をしました







850: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 21:18:06.85 ID:4sLWVE+o0

「砂肝は焼き方がキモなんですよ」

楓姫がもきゅもきゅと砂肝を咀嚼kしながら言います

「この皮も香ばしくて美味しいですね♪」

「お酒が進んで仕方ないです」

ぐいぐいとお猪口を傾ける楓姫

「あ、もう一本つけてくださーい♪」

すでに約束の二本は過ぎていますが、かな子は焼き鳥に夢中で忘れてしまっているようです

「はぁ……今日もお酒が美味しい」

ほっぺを桜色に染めて、楓姫が言いました



851: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 21:25:11.21 ID:4sLWVE+o0

「はぁ……満足しました」

焼き鳥屋を出て、楓姫とかな子が歩いています

「本当に美味しかったですね」

〆の親子丼をあっさりと平らげたかな子も満足気です

「かな子ちゃん、今日は本当にありがとう」

楓姫が立ち止まり、かな子に向き合いながら言います

「私のわがままにつきあってくれるのは、かな子ちゃんだけなの」

その表情は悲しそうでもあり、嬉しそうでもありました



852: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 21:29:32.66 ID:4sLWVE+o0

「楓姫……」

かな子が察したような表情で聞いています

姫と言う立場はとても行動が制限されてしまいます

人間というよりかは、まるで国が所有する『物』のように

楓姫のこのような行動はきっとそれが原因なんだろうな、とかな子はいつも思っています

「私はいつまでも楓姫のお側に仕えております」

楓姫を安心させるように、かな子がほほ笑みました

しかし、ちょうどその時です



853: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 21:40:18.29 ID:4sLWVE+o0

暗闇から何者かが飛び出してきて、囲まれます

「楓姫、私の後ろに!」

かな子が身を挺して楓姫を守ろうと、前に出ます

人数は、ひのふの……三人のようです

「(こんなときに……)」

かな子が目を細めて、相手を睨み付けます

「あれ……?」

飛び出してきたものは羽織を着ており、それにつけられている家紋は高垣のもの



854: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/02(金) 21:44:40.49 ID:4sLWVE+o0

そっか……見つかっちゃったんだ。かな子がそう思い

「姫様、どうやらお城に戻る時間のようです」

楓姫のほうを向くと、そこには誰もいませんでした

「まさか……」

そこには文が置かれています。かな子が手に取り読んでみると

『私はもう一軒行ってから帰ります。かな子ちゃん、後はよろしくね』

それを見たかな子はぷるぷると体を震えさせ、叫びました

「姫様の嘘つき―!」

それははたして楓姫に届いたのかどうか



おしまい



857: 1です 2018/02/03(土) 23:15:49.62 ID:l/zEA5Fv0

豆まきはやりましたか? 私は職場で勝手にやりました。あ、恵方巻食べるの忘れた……

それでは再開します
>>859の楓さんどうぞー



859: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/03(土) 23:16:41.64 ID:HPzm9Psm0

三段腹



862: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/03(土) 23:24:24.19 ID:l/zEA5Fv0

年末、そして年始

この季節には何かと酒の席がつきものですよね?

イベントが盛りだくさんなので、それは仕方ないです

かくいう私もお誘いを受けたら参加してしまう性質なので

それはもう、たくさんお酒を飲んでしまいました

お酒と美味しいおつまみ、私は片方だけだと成立しないと思っています

「あ、あら……?」

後悔先にたたず、ぷにぷにとした私のお腹は、服に包まれるのを拒んだのです



863: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/03(土) 23:28:48.00 ID:l/zEA5Fv0

「楓さん、最近少し……ええと、そのふくよかになりましたか?」

プロデューサーが何重にもオブラートに包んで言いました

「すみません、不摂生がたたってしまいました」

深々とお辞儀しようとしても、ぷにゅっとお腹に邪魔をされます

「うう……」

悲しい、悲しすぎます

このお腹は私に徹底的に反抗しているようです



864: 悪気はありません 2018/02/03(土) 23:34:02.72 ID:l/zEA5Fv0

「いえ……俺はそんなに気にしなくても良いと思いますよ。かな……いえ、ぽっちゃりも需要はあります」

今絶対何か言いかけましたよね?

「うちのアイドル達は細すぎる傾向にありますし」

ちらちらとプロデューサーが私のお腹を見てきます

そういう視線って女性はすぐ気づくんですよ? 

「そう、ですか……」

もう何と言って良いかわかりません

私のお腹を見るプロデューサーの表情が何故かほんのり桜色なのもわかりません

しかし、これは女の沽券に関わる問題なのです






865: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/03(土) 23:44:13.61 ID:l/zEA5Fv0

私のお腹に熱い視線を送るプロデューサーから、逃げるようにして事務所を飛び出しました

あの人なら……あの人ならきっとなんとかしてくれる

トレーナーさん達が待機している部屋を目指して歩きます

もう、四の五の言っている時間はありません

私は元の私に戻るんです

それが例え修羅の道であったとしても

「麗さん! 麗さんはいらっしゃいますか?」

それが、マスタートレーナーの力を借りなければいけないとしても……




866: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/03(土) 23:48:34.23 ID:l/zEA5Fv0

「どうした高垣? 随分と騒がしいじゃないか」

いらっしゃったみたいです

「私に……地獄の特訓を施してください」

ああ……本当ならばこんな言葉を言いたくありません

けれど、やらなければならないのです

明日からやればいいや、なんて思ったら絶対やらないんですから

「ほう……良い心意気じゃあないか」

にやりと笑う麗さんはとても楽しそうです



867: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/03(土) 23:51:46.51 ID:l/zEA5Fv0

「ふむ……三段ば……体を絞りたいと」

剣道三段って凄い強そうに聞こえますよね? 関係ないですけど

「はい……もうなりふりかまっていられないんです」

そう、やると思った時に行動は終わっていないといけないんです

「お前の気持ちは分かった、ただ……私の特訓は厳しいぞ?」

「覚悟の上です」

さようなら、私のお酒ライフ。さようなら、今までの私



868: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/03(土) 23:56:05.52 ID:l/zEA5Fv0

「まずは食事だ、人間の体は食べるものでできていると言っても過言ではない」

食事の見直しっと。私は麗さんに言われたことを逐一メモを取ることにしました

「それと、今回有酸素運動は行わない」

「え……? それで私の反抗期のお腹をどうにかできるんですか?」

「任せておけ」

いつもは怖い麗さんの笑顔が、今はとても頼もしく思えます

思えますけど……やっぱりちょっと怖いですね



869: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 00:09:53.32 ID:7XMPZ4Fa0

麗さんから説明を受けて、連れてこられたのはトレーニングルーム

いつもはランニングマシンやエアロバイクしか使わないのですが

「お前にはBIG3を基本として、筋トレを行ってもらう」

ビッグスリー? 聞いたことのない単語です

「ベンチプレス、スクワット、デッドリフトの三種目のことだな」

「はぁ……」

ちょっと専門的すぎて何を言ってるかわかりません





870: 1です 2018/02/04(日) 00:14:34.19 ID:7XMPZ4Fa0

「まずは私が手本を見せてやる」

まずはベンチプレスからだ。そう言って、麗さんがラックがある台に仰向けになり、重りがついている棒を持ち上げ始めました

「これは大胸筋を鍛えることができる」

こくこくと、とりあえず頷きます

「次はスクワットだ」

それは私も知っています。しゃがんで伸びてを繰り返すやつです

しかし、麗さんは重りがついている棒を担いでスクワットしてみせました

「次はデッドリフト」

響きが怖いです、特にデッドってところが



871: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 00:20:44.41 ID:7XMPZ4Fa0

麗さんがまたもや重りが付いている棒を、これは何て言ったら良いんでしょうか

……頭でイメージしたのはお芋とか、大根を収穫する時のようなイメージ

それの重いバージョンでしょうか

「とりあえずやってみろ、わからなければその都度教えてやる」

習うより慣れろの精神。嫌いじゃないですが、ちょっと、ええ……

「むー……!」

お、重い……全然持ち上がりません

「初めは軽い重量で良い。まずは正しいフォームを覚えろ」

麗さんのフォームを頭の中でイメージして……あ、持ち上がりました



872: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 00:24:51.82 ID:7XMPZ4Fa0

「そうだ、それで良い」

人間、やろうと思えば何とかなるものですね

それに……達成感というか、私の中の熱いモノが反応します

「筋トレは長く続けてようやく効果が出るんだ。道のりは長いが、その頂はお前が目指すものだろう」

にやりと笑う麗さん

その言葉にちょっぴり感化されて、調子に乗った私はもくもくと種目を消化していきました


次の日は起き上がるのも困難なほど、筋肉痛に襲われましたが……



873: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 00:28:35.76 ID:7XMPZ4Fa0

起き上がった私はマルチビタミンとプロテインを飲むことにします

これも麗さんが勧めていたので間違いはないはずです……きっと

「筋肉を作るためにはビタミンも必要だぞ」

なんて言っていましたっけ

しかし、この錠剤大きくて飲みにくいです……

プロテインは……とっても甘くて飲みやすいですね

そういえば食事のメニューも言い渡されていましたっけ

玄米と低カロリーで高たんぱくなご飯

味気ないし、美味しく感じませんが我慢です



874: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 00:33:52.00 ID:7XMPZ4Fa0

それを続けること数か月

私の体に変化が起こってきました

ぷにょっとした反抗期のお腹はいまや引き締まり、すっきりです

腕も脚も、筋トレのおかげかすっきり……と言うか逞しい?

「良い体になってきたな高垣、とってもきれてるぞ」

「そうですか?」

もうこれで良いと思う反面、今度は筋トレが楽しくなってきました

筋肉が傷めつけられて起こる筋肉痛が、いまや愛おしく感じてしまいます




875: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 00:39:04.30 ID:7XMPZ4Fa0

私は今までの種目とそれぞれの筋肉に効く筋トレを行いました

そうして手に入れた体は……

「いいぞ高垣! フィジークの大会にでも出たらどうだ?」

鏡の前でポージングすると、筋肉が収縮して見事なカットが出るようになりました

「あ、あら……?」

私の目的はなんでしたっけ? 反抗期なお腹をどうにかすることだったような気がするんですが

「私でさえうっとりしてしまうな……」

今やプロデューサーがそっけない視線を送るかと思えば、今度は麗さんが熱い視線を送ってきます

……とりあえず、今度は増量で良いでしょうか?



おしまい



879: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 13:22:04.30 ID:7XMPZ4Fa0

お昼からの飲酒って何か良いものです、美味い酒なら尚更……
時間ができたので一つかきます
>>882の楓さんどうぞー



882: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 13:24:15.90 ID:j3+uusIA0

アルコール依存



885: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 13:41:07.21 ID:7XMPZ4Fa0

「楓ちゃん、ちょっと飲みすぎじゃない?」

あきらかにいつものペースより早い

「大丈夫ですよ早苗さん。お酒は裏切りませんし」

なにその意味深なセリフ……きっとこの子はそんな深い意味はないとは思うけど

「よし、あたしが付き合ってあげるから無理しないでね!」

「もちろんです。お酒を飲んでも飲まれるなって言いますし」

いつものやりとりだけど、今回は楓ちゃんの雰囲気が違う気がした

でも、あたしはそんなことには全然気が付かなかった



886: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 13:45:27.51 ID:7XMPZ4Fa0

「はぁ……ちょっと酔っちゃいましたねぇ」

ふらふらと千鳥足の楓ちゃん

「……何かあったの?」

これだけ楓ちゃんが酔うなんて珍しい

切り上げるタイミングと言うか、ぎりぎりのところはちゃんと考えて飲んでいたと思うのに

けど、今の楓ちゃんはそれに当てはまらない

そこら辺の疲れたおじさんみたいに、ゾンビみたいな足取りをしてる



887: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 13:48:39.53 ID:7XMPZ4Fa0

「ほら、タクシー捕まえたから乗った乗った」

「ええー、早苗さんはどうするんですかぁ?」

まるで子供みたいに拗ねた表情の楓ちゃんの背中を押していく

もう、私よりたっぱがあるから扱いづらい……

「あたしも帰るの。楓ちゃんも寄り道しないで帰るのよ?」

楓ちゃんがしばらくあたしの顔を見てから

「わかりました。おやすみなさい」

ちょっと悲しそうな、切なそうな表情をして、手を振った



888: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 13:54:08.11 ID:7XMPZ4Fa0

楓ちゃんと飲んだ翌日

あたしが事務所に入ろうとすると、どこかぽやぽやとした表情で楓ちゃんが歩いているのを見つけた

「おはよう楓ちゃん。……なんかお酒くさい気がするけど」

昨日は日付が変わる前には家に着いていたはず、あれから寝たらこんなに匂うはずがない

「おはようございます早苗さん。ちゃんとお家で寝たんですけど、夜中に目が覚めてしまって」

えへへ、と笑顔を浮かべる楓ちゃん

「もしかして……それから飲んでたの?」

「眠れるかなって思ったんですけど、駄目でしたね」

やっぱりこの子……何かあったんじゃないの?



889: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 14:09:08.02 ID:7XMPZ4Fa0

レッスン中に楓ちゃんがふらりと倒れたかと思うと、そのまま嘔吐した

他のアイドル達がしぃんとしているなか、響くのは楓ちゃんの苦しそうなうめき声だけ

あたしはすぐにタオルを持って駆け寄り、楓ちゃんの声をかける

「大丈夫? 医務室に連れて行ってあげるから我慢してね」

マストレさんにアイコンタクトを送って、あたしは楓ちゃんに肩を貸す

身長差があるけど、このぐらい……気合いよね、気合い

吐しゃ物を残してきちゃったのは気が引けるけど、この場合は仕方ないわよね



890: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 14:13:45.12 ID:7XMPZ4Fa0

このプロダクションは女性に対しての福利厚生が整ってる

医務室にいる方も女性だし、何かあった時はとても助かるの

「睡眠不足と……それに、深酒のせいですかねぇ」

「そうですか……」

相槌を適当に打つけど、あたしも楓ちゃんの状態は聞かなくてもわかる

「今日のレッスンとお仕事はキャンセルです。今日は寝かせておいてあげましょう」

「すみません、よろしくお願いします」

あたしはお辞儀をして、医務室を去る

さて……楓ちゃんがこんな風になっているのに、担当のプロデューサーは何をしているのかしら




891: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 14:16:52.39 ID:7XMPZ4Fa0

あたしは事務所に向かうと、音なんて気にしないでドアを開けた

楓ちゃんの担当は……いた

「ねぇ、ちょっとお話いいかな」

「はぁ……いいですけど」

楓ちゃんのプロデューサーはきょとんとした顔であたしに応える

はぁってなによ、はぁって! 楓ちゃんがあんな風になってるのにあんたは何してるの?

ふつふつと怒りが湧いてくるけど、ここじゃまずいと思って屋上に場所を変えた



892: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 14:20:50.74 ID:7XMPZ4Fa0

「さっき、楓ちゃんがレッスン中に倒れて嘔吐したの」

冷たい風が吹く屋上で、あたしは彼にありのままを伝えた

「高垣さんが……?」

驚いたような表情をしているけど、その裏には違う感情をあるような気がする

「ねぇ、楓ちゃんに何があったか知ってる……わよね?」

ここ最近の楓ちゃんはまるで自分の体を痛めつけるかのような行動をとっている気がするし

なにより、原因はきっとこの男にあるんじゃないかって、警察官だったころのあたしの勘がそう言っている



893: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 14:25:03.01 ID:7XMPZ4Fa0

「……じ、実はですね」

担当プロデューサーが重い口を開く

「少し前に、その……高垣さんと関係を作ってしまいまして、それから……」

あたしは絶句しちゃった

男と女の関係がもつれるほど、面倒なことはないけど

へぇ……楓ちゃんがこの男とねぇ……ちょっと見る目がないんじゃないの、楓ちゃん?

そりゃ、悪い噂も聞かないし、優しい人ってのは知っているけどさ

でもねぇ、関係がある女をほっぽっているのはどういうことなの?



894: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 14:29:37.69 ID:7XMPZ4Fa0

さっきの一言から、口を開かない担当プロデューサー

まるで、あたしの言葉をまっているような……ちっ、はっきりしない男ね

あたしが舌打ちをすると、びくりと身を縮めるのも気に入らない

「それで、それからどうしたの?」

話が進まないので、仕方なく、本当に仕方なく言葉をかける

「俺が、高垣さんを振ったんです……」

苦笑いをしながら、担当プロデューサーはあたしにそう言った




895: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 14:33:14.44 ID:7XMPZ4Fa0

「はぁ!? あんたが楓ちゃんを振った? なによ、なにが気に入らなかったの?」

ずいっと担当プロデューサーに近づいて、睨む

「そ、その……俺と高垣さんはプロデューサーとアイドルの関係ですし……」

あたしの視線から逃げるように目をそらし、言葉を続ける

「やっぱりね、良くないって思ったんですよ……はい」

へらへらと笑いながら、いけしゃしゃあと喋る男に、あたしは堪忍袋の緒が切れた



897: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 14:38:15.16 ID:7XMPZ4Fa0

あたしの右手が勝手に動いて、男の頬をびんたしてた

「……いってぇ」

「いてぇじゃないわよ! 楓ちゃんはもっと痛い気持ちを味わったのよ?」

この男はきっと楓ちゃんの体が目当てだったに違いない

楓ちゃんは押したら断れなさそうだし、顔だけは良いこの男に騙されたんだ

それに、さっきからあたしの胸ばかり見てるのにはとっくに気付いてる

ああ、楓ちゃん……あなたはもっと男を見る目を磨くべきね

あたしはまだ怒りが収まらず、そのへらへらとした顔を、もう一度ぶった



898: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 14:44:24.83 ID:7XMPZ4Fa0

もうこの男とはなすことはない、あたしはそう判断して、医務室へと向かう事にした

「え……楓ちゃん、帰ったんですか?」

「ええ、片桐さんとすれ違いですね」

タイミングが悪かったようだ、ちっ……あんな男に時間をとられるなんて癪ね

「意識もはっきりしていましたし、明日は大丈夫だと思いますよ」

「わかりました、お手数をおかけしました」

あたしは深くお辞儀をしてから医務室を後にした

……楓ちゃん、本当に大丈夫なの?

どうにももやもやして、LINEを送ったけど、楓ちゃんからの返事はなかった



899: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 14:48:09.23 ID:7XMPZ4Fa0

あの事があってから、三日目

いまだに連絡もないし、楓ちゃんが事務所に来ていない

ちひろさんもあの男も焦っているようで、あたふたとしている

しまいには「高垣さんの様子を見てきてくれませんか?」だって

はん……あんたに言われなくてもこっちはそのつもりだっての

けど、午前中は収録の仕事があったので、それが終わると同時にタクシーを拾って楓ちゃんのマンションへと向かう



900: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 14:51:56.50 ID:7XMPZ4Fa0

……この部屋よね

何度も来たことがある部屋なのに、今日は身構えちゃう

インターホンを何度か鳴らして……返答がない

楓ちゃんはこの部屋にいるはずなんだけど、どうしよう

試しにドアノブを捻ってみると、ぎぃと音と共にドアノブが回った

もしかして事件とかに巻き込まれてないわよね?

心臓の鼓動が高鳴るなか、あたしは楓ちゃんの部屋へと入った




901: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 14:55:20.11 ID:7XMPZ4Fa0

楓ちゃんは……いた

机に突っ伏すようにして、グラスに入ったお酒を飲んでる

「あ……早苗さ~ん♪」

あたしに気付いたのか、楓ちゃんが明るい声を出した

「不用心すぎるわよ、それに……」

部屋中がお酒臭い

アロマか何かわからないけど、それと相まって変な匂いがしてる

それに、部屋に転がっているお酒の瓶の数が、尋常じゃないことを物語ってる





902: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 15:06:23.17 ID:7XMPZ4Fa0

「早苗さんも飲みましょうよぉ……」

「楓ちゃん、あんたねぇ……」

楓ちゃんに近づいて説教でもしてやろうと思って、あたしは思いとどまる

「あ……」

言葉が、出てこない

「どうしたんですかぁ……?」

つやつやしてた髪はぼさぼさで、綺麗だった瞳も濁ってる

目の下にはクマができているし、私にグラスを渡そうとしている手は……ふるふると震えていた

「あ、ああ……」

あたしの目の前にいるのはアイドルの高垣楓じゃない

……お酒に溺れざるを得なかった、一人の弱い女性




903: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 15:10:46.10 ID:7XMPZ4Fa0

「きゃあ……早苗さんはあったかいですねぇ♪」

体が勝手に動いて、楓ちゃんを抱きしめてた

「もう良いのよ楓ちゃん。もう、無理しなくていいの……」

「……早苗さんも、お酒と一緒で、私と一緒にいてくれるんですねぇ」

ぼろぼろな顔で、痛々しい笑顔を作る楓ちゃん

「うん、楓ちゃんの傍にいるから……もう安心だから」

数日会わなかっただけなのに、とても細くなってしまったような楓ちゃんを抱きしめながら

あたしは涙が止まらなかった




おしまい



912: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 19:29:22.14 ID:7XMPZ4Fa0

ああ……毎日クラフトビール飲むだけの生活がしたひ

それでは再開します
>>915の楓さんどうぞー



915: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 19:31:42.36 ID:jSdsEjvM0

アイドル国会議員



921: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 19:41:39.76 ID:7XMPZ4Fa0

「高垣さん、今のお気持ちはどうですか?」

「皆さんのご期待に応えられるよう、精一杯務めたいと思っております」

たくさんの拍手と、たくさんのフラッシュ

こんな私ですが、本日から国会議員ですか

実感がわきませんし、何をすればいいんですか?

こう、あれですかね……ばかやろーとか、はげーとか言えば良いんですか?



922: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 19:48:49.88 ID:7XMPZ4Fa0

アイドルという、支持率を持つ人物を政党に組み込む

うんうん、なんとなくわかります

やる気に満ち溢れ、これからの日本を導くような人物が好ましい

あ、これ私駄目な奴じゃないですか?

超法規的措置で、アイドル活動も議員の活動とみなす

……アイドルを辞めなくていいのは助かります、が

私、アイドル活動だけで良いような気がしてきました



923: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 19:52:20.47 ID:7XMPZ4Fa0

「いやあ、とうとう我がプロダクションから議員が選出されましたか」

プロデューサーが、わっはっはと笑います

もう……他人事だと思ってのんきなものですね

「今日からは楓『先生』と呼んでくださいね♪」

「……すんません、調子乗りました」

ふふ、わかってくれればいいんです

とはいえ、私よりふさわしい人がこの事務所にはいると思ったんですけどね



925: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 19:58:50.29 ID:7XMPZ4Fa0

「楓さん、そろそろお仕事の時間です」

私に声をかけてきたのは、秘書として働いてもらっているマキノちゃん

スーツ姿がとてもきまっていて、できる女って感じです

「ええ、それじゃあ行きましょうか」

ええと……今日は委員会のお話でしたっけ

私にまかせていいんかい、んー駄目ですね

他の方たちの前で言ったら怒られちゃうかしら



926: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 20:02:47.95 ID:7XMPZ4Fa0

…………
……
…はっ! ぼーっとしてました

そっと周りを見渡してみると、偉そうな方たちが議論を交わしています

うわぁ、私にはちょっと難しくて良くわかりません……

「高垣さんはどう思われますか?」

「ええと……素晴らしいと思います」

私が当たり障りのない返事を返すと、また議論の交換が始まりました

ふぅ……退屈ですね



927: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 20:08:41.10 ID:7XMPZ4Fa0

「お偉い先生方とのお話はどうでしたか?」

意地悪そうな笑みでマキノちゃんが聞いてきます

「難しいお話でわかりませんでした、今はぱーっと飲みたい気分ですね」

そう、お酒をゆっくりと飲んで気分を落ちつかせたいな

今日はお魚の気分だし、川島さんたちも誘って飲みに行きましょうか

気分を切り替えて歩いていると、先ほどの委員会の方たちがぼそぼそと何か言っているのが聞こえました

「あの女、政治のことがまるでわかっていないんじゃないか?」

「そりゃそうでしょう、男に媚びを売る仕事しかしてないんですから」

あら、聞こえちゃってますよー? 本人ここにおりますよー



928: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 20:13:56.61 ID:7XMPZ4Fa0

「行きましょう、どうせ楓さんを妬んでいるだけですから」

「えっ? ちょっと待ってマキノちゃん」

私の前を歩き、ヒールの音を高らかに先ほどの方に近づいていくマキノちゃん

「高垣がお世話になっております」

恭しく頭を下げた後に、相手の耳元で何か言っているようですね

良くわかりませんが、とたんに顔色が悪くなっているようですけど

「挨拶が終わりましたので行きましょう」

にっこりと楽しそうに笑うマキノちゃんに、細かいことは聞けませんでした



929: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 20:18:34.87 ID:7XMPZ4Fa0

あれから川島さんたちに連絡を入れると、快く了承をもらったので飲みに行くことにしました

「楓ちゃん、いえ楓先生ね。お疲れ様でした」

「先生なんて柄じゃないでしょうに」

「あ、あの……慣れないことで疲れていないですか?」

私を笑いものにしてる、川島さんと早苗さん。ああ……美優さんだけがオアシスです

もう、今日はとことん飲んじゃいますよ

私の事を普通に扱ってくれるこの人たちとの時間はとても楽しい



930: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 20:26:22.52 ID:7XMPZ4Fa0

「きっと楓ちゃんのファンがいるわよ、間違いないわ」

「そうそう、サインの一つでもあげたら言う事きいてくれるって」

「あ、グラスが空ですね……何を飲みますか?」

やっぱり美優さんがオアシス……あら、さっきもこんなこと思いましたっけ

それにしても、だいぶ飲みましたね。時間があっという間に過ぎちゃった

「ほらほら、楓ちゃんらしくないわよ? もう一杯いっちゃおう!」

早苗さん、肩をバシバシ叩くのはおば……いえ、何でもないです





932: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/04(日) 20:38:21.86 ID:7XMPZ4Fa0

「とにかく、楓ちゃんらしくて良いと思うわよ」

ぐいっとグラスを呷りながら川島さん

「うん、他の人たちにできることがあるんだからさ」

揚げ出し豆腐をつまみながら早苗さん、それ私のですよ?

「そう、ですね……私たちはアイドルなんですから」

ほっぺを桜色に染めて、美優さんが言いました

……そうですよね、私はアイドルなんですよね

歌って踊れる議員、なかなか素敵な響きじゃないですか



934: 皆さん詳しいですね 2018/02/04(日) 20:49:26.44 ID:7XMPZ4Fa0

「高垣さん、何か案はありますか?」

また呼ばれてしまった委員会のお話

しかし、今日の私は一味違いますよ

「国民の皆さんを楽しく笑顔にさせること……『アイドルでもっと笑顔に』法律案を提出したいです」

あ、皆さんぽかーんとしてる

「私たちアイドルにはその力があります、どんよりしてるより笑顔のほうが素敵じゃありませんか♪」

あ、今度はざわざわしてる

難しい話はわからないですけど、大人も子供もおじいさんもおばあさんも

笑顔にする方法は私知ってるんですから

何ていっても、アイドルですからね♪


おしまい



943: 1です 2018/02/05(月) 21:09:22.13 ID:kdhp0QQ00

こんばんは、ぼちぼち再開したいと思います
それでは>>946の楓さんどうぞー




946: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/05(月) 21:10:45.17 ID:y7ffcWpm0

ネカフェ生活満喫中



951: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/05(月) 21:21:36.36 ID:kdhp0QQ00

「すみません楓さん!」

出会い頭にプロデューサーに頭を下げられました

私、何かされましたっけ? 心当たりがありません

「ええと、どうかしたんですか?」

「こちらの不手際で、今住んているマンションの契約が……」

頭を下げたプロデューサーはとても申し訳ない顔で

「私の住んでいるマンションの契約が?」

「契約ができなくて、ええと……楓さんの住むところが無くなってしまいます」

これは一大事ってやつですよね? プロデューサー



952: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/05(月) 21:27:12.38 ID:kdhp0QQ00

「新しいマンションを探してはいるんですが、一ヶ月は無理かと……」

一年の十二分の一、書いてみると短いですが、時間に直すとものすごい数字です

「困りましたね……どうしたらいいんでしょう……」

「本当にすみません。女子寮もいっぱいで、こちらで用意できるのはビジネスホテルくらいで……」

あ、それなら安心で……良いこと思いついちゃいました♪

「私に良い考えがあります」

胸を張って、私はプロデューサーに言います

「ネットカフェに行きます」



953: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/05(月) 21:31:34.32 ID:kdhp0QQ00

ばれないように帽子を深くかぶって

私は高垣楓じゃありませんよー、見ても面白くありませんよー

手にはその日の着替えを一式。たくさんの荷物は置けないので、事務所のロッカーを借りました

……しかし、無理やりすぎましたかね

「おいアンタ何言ってんだ? 何かあったらどうすんだ、おい」

あれだけ口調が荒いプロデューサーを見たのは初めてですし……

まぁまぁ、成るようになりますよね




954: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/05(月) 21:39:33.73 ID:kdhp0QQ00

私はドキドキを抑えながら、ネットカフェの入り口へと足を踏み入れました

「いらっしゃいませ、初めてのご利用ですかぁ?」

まゆちゃんにとても似ている女の子が出迎えてくれました

「ええ、初めてです」

もしかして、一見さんお断りなんてルールがあるのかな

「会員証を作りますので、身分証の提示をお願いします」

えっと、バイクの免許証で大丈夫よね

「高垣楓さんですね、少々お待ちください♪」

……あら? バレちゃいました?

でも、私の名前には特に反応がありませんでした。同姓同名だっていますもんね、ええ




955: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/05(月) 21:45:20.11 ID:kdhp0QQ00

「じゃあ、まy……私が施設の案内をしますね」

「はい、お願いします」

店員さんが細かく説明をしてくれます

お部屋の種類とシャワーやトイレ、ドリンクバーの場所

「なるほど……ネカフェって凄いんですね」

「そうなんです、凄いんですよ」

こんなに設備が充実しているなら、期待できます

私はフラットシートのお部屋を選び、店員さんの案内通りお部屋へと向かいました





956: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/05(月) 21:49:38.36 ID:kdhp0QQ00

「おじゃまします」

周りの人たちの迷惑にならないように小声で

私はお部屋の中に入ると、何が備え付けてあるか確認してみました

クッションと大きなパソコンと机、それにゴミ箱

うんうん、広さも丁度良さそうです

荷物を置いてから伸びをすると

くぅっとお腹が鳴りました



957: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/05(月) 22:00:59.28 ID:kdhp0QQ00

もう夕ご飯の時間ですね、今日は私の新しい?お部屋が決まったのでお酒飲んじゃいましょう♪

おそらくご飯のメニューだと思われるものを広げてみます

……へぇ、何だかファミレスみたいなメニューですね

ぺらりとページをめくると、次はお酒のメニューがずらり

あっ、日本酒がこんなに置いてあるんですね

ああっ、おつまみもたくさんあるじゃないですか

「……よし」

何を頼むか決めたので、備え付けの電話で注文をしましょう





958: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/05(月) 22:16:26.14 ID:kdhp0QQ00

しばらくすると、こんこんこんとノックされます

きましたね、こちらは準備万端ですよ

どうぞ、と声をかけると「失礼します」店員さんが入ってきます

「お待たせしました、精一杯作ったのでいっぱい食べてくださいねっ」

響子ちゃんに似てますね、んん……でもこの子は左で髪を結ってますし、他人の空似でしょう

そしてテーブルに並べられるビールと冷ややっこ、それに唐揚げ

「ありがとうございます」

私がそう言うと、響子ちゃん似の店員さんは笑顔で去って行きました



959: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/05(月) 22:22:52.20 ID:kdhp0QQ00

ハイカラも良いですけど、ビールと唐揚げも素敵な組み合わせ

熱々の唐揚げを食べてから、ビールで流し込む……これは鉄板というやつです

きっと揚げたてなのでしょう、ほかほかと湯気を立てて美味しそうな匂いの唐揚げ

「いただきます、それと乾杯♪」

唐揚げを箸で掴むと、それだけでさっくりと上がっているのがわかります

口に運ぶと、鶏肉の弾力とちょっぴりニンニクを効かせた濃い味付け

そしてすかさずビールです

「はぁ……おいしい」

これはビールが進んじゃいますね



960: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/05(月) 22:30:16.51 ID:kdhp0QQ00

ひとしきり唐揚げを楽しんだ後は冷ややっこ

うん……これも美味しい

薬味がたっぷりと乗っているのが嬉しいですね

「あら、ビールが無くなっちゃいました」

気付けばもうグラスが空っぽ

もう一杯頼んじゃいましょう、まだまだ夜はこれからです

あ、パソコンもありますし何か面白いものがあるか覗いてみましょう

お酒を楽しみながら、色々なことができるところですね、ネットカフェって







961: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/05(月) 22:39:28.38 ID:kdhp0QQ00

「ふぅ……満足です」

ビールもおかわりしたし、お腹もいっぱいです

さっき動画で見た、唯ちゃんの『唯さんぽ』も面白かったですし

そろそろお風呂入って寝ましょうか

……実を言うと、ちょっと不安もありましたけど

これならここでの生活も楽しく過ごせそうですね

明日は本を見て、DVDも借りてみようかな

まだまだ私の知らないネットカフェの魅力を、満喫しましょう♪



おしまい



968: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 19:59:53.84 ID:9a03Oap20

こんばんは、それでは最終安価をもらいます
それでは>>971の楓さんどうぞー



971: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 20:02:01.51 ID:5OslIDE70

Pと結婚して夫婦



976: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 20:13:41.14 ID:9a03Oap20

柔らかくてとてもいい匂いがする

俺の好きな匂いだ、とても落ち着く

「あまえんぼさんですね」

楓さんの声が聞こえ……あれ? なんで楓さんの声が聞こえんだ?

状況を確認しようと目を開けてみても、前が見えない

ただ、顔が柔らかいものに挟まれている感覚はある

「そんなに動くとくすぐったいです」

くすくすと笑う声が、少し上から聞こえた



977: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 20:20:03.85 ID:9a03Oap20

「おはようございます、あなた」

「おはよう、楓さん」

あなた? 貴方の意味か、それとも良い人のあなたの意味か

「あん、くすぐったいですってば」

こっちはちょっと息苦しいよ? 

息苦しくて、暖かくて、良い匂い。これらが導き出すもの、それは

「私の胸の中の居心地はどうですか?」

「最高だけど、そろそろ離してもらいたいかな」

ずっとこうしていたいけど、それはちょっとまずい。男って大変なんだよ









978: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 20:24:46.35 ID:9a03Oap20

無理やり楓さんの胸の中からはいずり、枕のある高さまでたどり着く

「もっとこうしていたかったのに、残念……」

そんな台詞をはいているけど、楓さんは悪戯っ子みたいに笑ってる

「楓さん、俺たち何で一緒に寝てんの?」

俺の言葉に楓さんはぽかんとした表情の後

「ふふっ……」

いたっ! 痛いよ楓さん! ほっぺ抓らないでよ

「寝坊助さんにはこれくらいしないと」

あー……今の痛みで完全に頭が動き出した



979: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 20:31:36.03 ID:9a03Oap20

「おっけー、ようやく目が覚めた」

「自分のお嫁さんを忘れてしまうような旦那さんは知りません」

ぷいっと逆方向を向いてしまう楓さん

「……つーん」

擬音を口にしないで、可愛いけど

さて、楓さんを無理向かせるにはどうすればいいかな

「ああっ! 楓さんに抓られたほっぺが痛い、これはもう駄目かもしれない」

大げさなリアクションと声で痛いアピールをしてみた

「ああ……最後に楓さんの顔を見たかったな」

がくり……

「はぁ……仕方ない人」

そう言った楓さんはくるりとこちら側を向き、俺の顔を両手で挟み、耳元で囁く

「最後じゃなくて、これからずっと私の顔を見せてあげますからね」

やべぇ、ぞくぞくする



980: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 20:38:12.87 ID:9a03Oap20

「よーし、朝の準備終わり! 朝ごはんは?」

「ちゃんとできでますよ、今日の卵焼きは上手にできました♪」

嬉しそうに言う楓さん、その頭には寝癖がぴょこりと立っている

「そっか、それは楽しみだ」

「はい♪ たくさん食べてくださいね」

楓さんが動くたびに、寝癖もぴょこぴょこと動く

面白いから食べ終わるまで放っておこう

「いただきます……うん、卵焼き美味い!」

俺の好みの味付けだし、焼き加減も丁度いい

「では私も……うん、美味しいですね」

嬉しそうな楓さんの笑顔を見ると、俺もつられて嬉しくなってしまう



981: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 20:46:59.27 ID:9a03Oap20

「今日はお互いオフだし、どこか行く?」

「そうですね……私はあなたと一緒ならどこでも」

おおう……破壊力のあるセリフだ

「そこら辺ぶらぶらしてみようか、今日は天気も良いし」

「はい、じゃあお片付けしちゃいますね」

そそくさと楓さんが食器の片づけを始める

自分の持ち歌を鼻歌で歌いながら、何だか嬉しそうに

……しかしまぁ、俺が楓さんと結婚できたなんて奇跡に近いな

ピンク色の可愛らしいエプロンを付けた嫁さんを見ながら、そう思う

楓さん可愛いな……いかん、顔がだらしなくなってる



982: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 21:00:29.86 ID:9a03Oap20

楓さんの片付けも終わり、お互い出かけるたびに着替えることにした

「覗いちゃ駄目ですよ?」

何て言われて覗かない奴はいるだろうか? 俺は覗かないけどね、うん……

こういう時、男は準備が簡単で良い

テーパードのデニムにニット、寒いからコートとマフラーでフル装備だ

十分もあれば俺の着替えが終わるんだけど、女性はこういう時はとても長い

長いけど、それを何も言わずに待つのが男ってもんだ

長いほど、気合いを入れてくれてるってことだし、何より楓さんお洒落さんだしね

……今日はミニスカートかな、それともショーパンかな、楽しみだなぁ



983: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 21:13:21.06 ID:9a03Oap20

「お待たせしました」

白いコートにライトブルーのニットワンピースに身を包んだ楓さん

ほお……予想は外れたけどこれはこれで……

黒いタイツに包まれた脚から、顔まで見上げてみると、むぅっとした楓さんと目が合った

「えっちな目をしてます」

「そんなことないよ? うん、ほんとだよ」

い、いやー! 今日も楓さんは美しいなー! ……ちょっとわざとらしかったか

「調子良いんですから……そろそろ行きましょうか」

そう言うと、片腕に寄り添ってきた

「外は寒いですから、仕方ないですね」

そういうことにしておいてあげますよっと



984: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 21:24:13.97 ID:9a03Oap20

「あ、これなんてどうですか?」

「うーん……ちょっと若すぎないかな」

何でも揃ってそうなショッピングモール

そこで、楓さんが俺の洋服を見繕っているんだけど

「まだまだ若いでしょう? 気持ちも若くしないと駄目です」

めっ、と人差し指を立てて怒られてしまった

「そうかなぁ、楓さんの隣に立ってて変じゃない?」

俺だけなら別に良いんだけど、楓さんが変な目で見られるのは嫌だな

そんなことを言うと、楓さんはきょとんとした後

「他の人は良いんです。それに、あなたは十分素敵ですよ」

さも当然とばかりに言い切った。すごい嬉しい、けど凄い恥ずかしい





985: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 21:37:27.15 ID:9a03Oap20

「そろそろお腹空かない?」

「そうですね、そろそろお昼にしましょうか」

洋服を見たり雑貨を見たりしていたら、あっと言う間に時間が経ってしまった

女性の買い物は長いっていうけど、一緒に楽しんだらそんなの気にならないもんだ

それに、誰かの感性があると、見るものが広がって実に楽しい

「ううん……何が良いですかね?」

「なんか麺が食べたい気分だな、あそこの店にしよう」

何語かわからないから店の名前がわからないけど、パスタがありそうなのはわかる

女性は好きなんでしょ、パスタ

「私はラーメンでもいいですけど、そこにしましょうか」

この人全然飾らないよなぁ……





986: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 21:43:52.64 ID:9a03Oap20

俺はトマトソース系のパスタ、楓さんはクリーム系のパスタをそれぞれ頼んだ

「楓さん、ワインあるよ」

「夜までお酒は止めておきます。酔ってしまったらせっかくのデートが勿体ないです」

じゃあ俺も夜まで止めておくか、一人で飲むのもなんだしね

しばらくすると、頼んでいたパスタがテーブルへと運ばれてきた

「いただきますっと」

「いただきます」

お互いの声が重なり、同時にフォークを手に取った

顔を見合わせて、吹き出しそうなのを堪えながらパスタを口に運ぶ

うん、美味いな

「これ美味しいですね。では、あーん♪」

上手にパスタを巻いて、俺の口へと持ってきた







987: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 21:54:32.53 ID:9a03Oap20

「うん……美味い。じゃあお返し」

ぎこちなくパスタを巻いて、楓さんの口へ運ぶ

「あーん……あら? あーん」

ふふふ……誰がすぐ食べさせると言った? お前はこのパスタを目の前、ああっ!

「……美味しい♪」

がしりと腕を掴まれ、強引に食べられた……

「あーんしてる楓さんの顔をもっと見ていたかったのに……」

「じゃあいっぱい見せてあげます♪ はい、あーん」

それは俺への気遣いなのか?

いや、きっとパスタが美味しかったからもっと食べたいに違いない






988: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 22:00:33.72 ID:9a03Oap20

昼食を食べ終わった俺たちは、食材と今日の晩酌用の酒などを購入した

「あ、このお酒前から気になってたんです」

「これも捨てがたいですね……うーん」

「これお酒に合うんじゃないですか?」

「こっちも美味しそう……」

さっきから一人ではしゃいでる、まるで大きな子供みたいだ

「こらこら、迷子にならないように気を付けるんだよ」

そう言うと、楓さんがぎゅっと手を繋いできた

「じゃあ、ずっと繋ぎとめていてくださいね?」

そんな時だけ大人の顔をするのはずるいんじゃないかな




989: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 22:08:17.93 ID:9a03Oap20

「いやー、随分買ったな」

ようやく我が家に着いたのは夜に差し掛かる時間だ

「先にお風呂にします?」

楓さんの言葉に、俺はにやりと笑って答える

「一緒に入ってくれる?」

「ええ、良いですよ。もうお風呂は出来てますので入っちゃいましょう」

さらりと答えられた、もう少しこう……悩むとかないの? 嬉しいけどさ



そんなやりとりの後、俺は浴槽の中で楓さんを待っている

「お背中流しますね」

髪をアップにして、バスタオルを巻いた楓さんが浴室へと入ってきた

歳をとると、見えないエロさみたいなのがわかってくる

やめよ、おっさんくさい








990: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 22:18:37.96 ID:9a03Oap20

「ふぅ……良い湯だった」

マジでのぼせるかと思った

「ぽかぽかですね♪」

楓さんはほんのり桜色。色っぽい感じだ、特にうなじがせくしー

「じゃあ、飲もうか」

「はい、飲んじゃいましょう。おー♪」

おお、行動が早いな。てきぱきと楓さんが準備をしていく

あんなに細い体のどこに元気を隠し持っているのやら

テーブルには酒とおつまみがもうセットされた

楓さんが、まだですか? まだなんですか? と散歩を待つ犬みたいな表情でこっちを見てる

「今行くよ」

俺は仕方ないといった風に声をかけた



991: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 22:26:13.52 ID:9a03Oap20

「「乾杯」」

こちりとグラスが鳴る

……お、これ美味いじゃないか

「ふぅ……おいし」

どうやら楓さんも気に入ったようだ

「良い焼酎ですね、しょっちゅうは飲まないので美味しく感じます」

「俺も普段はあまり飲まないからね。でも、これならしょっちゅう飲めるよ」

俺の返事に、ぱあっと目を輝かせる楓さん

「さすが私の旦那さんですね」

「そりゃどうも、ほらほら、酒だけじゃなくておつまみも食べて」

美味い酒と美味い肴。長い夜にこれがあれば幸せだ

あと、可愛い嫁さんもね



992: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 22:33:07.37 ID:9a03Oap20

「あなた、ちょっと寒くありません?」

そう? 酒飲んでるし、空調も効いてると思うけど

「私は寒いと思うんですけどねぇ……」

ちらちらとこちらを伺うように、楓さんが視線を送ってくる

なるほど、これはそういう口実か

「うーん……言われてみれば少し寒いか、こっち来る?」

「わーい♪」

俺が言うと、楓さんがすっ飛んできた

「あったかい……」

すりすりと頬ずりをして、ご満悦みたいだ



993: 次のスレ立ててくるのでちょっと待っててくださいな 2018/02/06(火) 22:51:04.72 ID:9a03Oap20

「大丈夫? まだ寒い?」

楓さんのさらさらした髪を撫でながら聞く

「うーん……まだちょっと寒いです」

めちゃくちゃくっついてて、俺はとても温かいです、はい

「だから……」

楓さんが目を潤ませて、上目づかいで俺に言う

「お布団の中で、温めてくれませんか?」

――あなたの体温をもっと感じたいんです。最後にそう付け足した

「……汗かいちゃうくらい温かくなっちゃうけどいい?」

「良いですよ。ねぇ……早く温めてください」

おねだりするような楓さんの声で、とどめを刺された

「手のかかる嫁さんだなぁ」

お姫様だっこで楓さんを抱えると、ぎゅっと楓さんが抱きしめてきた




おしまい




994: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2018/02/06(火) 22:56:11.93 ID:9a03Oap20

読んでくれた方に心からの感謝を
たくさん安価もらって最後まで書けて良かったです

二軒目の予約取れたので、行く人はこちらへ
こっちは埋めちゃってくださいな

【モバマス】楓さんで安価 二軒目
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1517925181/



元スレ
SS速報VIP:【モバマス】楓さんで安価
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1515156470/