2: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:16:44.85 ID:8pDqrO06.net

曜「善子ちゃん、遊びに行こう」

 夏休み、Aqoursの練習も休みということで、一日中だらける気満々だった私の安寧を妨害したのは、家に押しかけてきた1人の先輩だった。

善子「いきなり何よ、私は寝たいんだけど」

曜「暇なんだよ、だから遊びに行こう」

 うん、駄目だ。この脳筋ヨ―ソローには日本語が通じないらしい。



3: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:18:18.34 ID:8pDqrO06.net

善子「イミワカンナイわね」

曜「お、西木野真姫さんの真似? 上手だね!」

善子「違うわよ!」

曜「うん、似てるな~」

善子「そもそもお母さん、何で普通に家に入れてるの……」

曜「善子ちゃんを誘いに来たって言ったら大歓迎されたよ」

曜「何でも、友達が誘いに来るなんて初めてだって泣いて喜んでた!」

善子「なにしてるのよお母さん!」

 いや、確かに誘いどころか、家に友達が遊びに来たことすらほとんど記憶にないから、間違ってはいないのだけど、先輩にそれを晒される娘の気持ちも考えてほしい。



4: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:20:39.79 ID:8pDqrO06.net

曜「ぼっちの善子ちゃんは、どうせ暇なんでしょ?」

善子「ぼっち言うな!」

 このリア充め。

善子「でも曜さんが暇なんて珍しいわね?」

曜「いや~、本当は千歌ちゃんと遊びに行く予定だったんだけど、赤点で補習になったらしくて」

善子「千歌さん、何やってるのよ……」

 あの人は本当に馬鹿だったのか。廃校寸前なだけあって、しょっぱな引きこもっていた私でも、赤点は回避できるレベルのはずなのに。



6: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:22:33.76 ID:8pDqrO06.net

曜「ってわけで、行こうか善子ちゃん!」

善子「行かないわよ、曜さんなら他の人にも誘える人いるでしょ」

曜「え~、私は善子ちゃんと遊びたいんだけどなぁ」

善子「くっ」

 上目遣いで懇願してくる様は反則だ。ついつい心が揺れてしまいそうになる。

曜「ねえねえ、いいでしょ~」

善子「嫌よ! 断固拒否するわ」

 リア充の圧力に流されてたまるものか。今日の私は引きこもる、そう決めているんだから。



7: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:23:42.01 ID:8pDqrO06.net

曜「もぅ、善子ちゃん~」

 無視だ無視、話しているとつい流されてしまいかねない。

曜「わかった、仕方ないね。私は善子ちゃんのお母さん少しお話して帰るよ」

善子「ちょっと待って、今なんて言ったの?」

曜「さっきね、学校での善子ちゃんの様子とか聞きたがってたから、ちょうどいいよね」

曜「私も暇だし、普段の善子ちゃんの話聞きたいし」

 学校での私――

善子『堕天使ヨハネ、降臨!』

善子『ふふふ、このヨハネ様に――』

 駄目だ、そんなことをお母さんに知られたら私は死んでしまう。
 それだけは阻止しなければ。



8: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:24:28.14 ID:8pDqrO06.net

善子「曜さん、遊びに行きましょう!」

曜「およ、急にどうしたの。そんな無理しなくてもいいんだよ?」

善子「急に遊びに行きたくなったのよ!」

曜「ふーん、そうなんだ」

 曜さんの顔はにやついている。畜生、絶対確信犯だ。

曜「じゃあ私はお母さんとリビングで待ってるから、準備できたら言ってね」

善子「5分、5分で準備するからちょっと待ってなさい!」

 ああもう、なんでこんなことに。



10: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:25:23.08 ID:8pDqrO06.net

   ※


善子「暑い……」

 外はしっかり晴れ渡り、天国のような室内とは違い、地獄のような猛暑。

曜「今日もいい天気で気分がいいね!」

 そんな中でも元気な曜さんは、化け物か何かなのだろうか。

善子「それで、どこに行くのよ?」

 室内、絶対に室内がいい。



11: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:26:01.48 ID:8pDqrO06.net

曜「決まってないよ」

善子「はい?」

曜「とりあえず外に出てれば思いつくかなぁ~って」

善子「そのぐらい決めておきなさいよ!」

曜「でもそれじゃつまんないし」

 もうヤダ、この大馬鹿ヨ―ソロー。



13: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:27:33.89 ID:8pDqrO06.net

善子「とりあえずどこかで涼むわよ! このままじゃ暑くて死んじゃうわ」

曜「え~、海とか行こうよ」

善子「水着も持ってきてないし、何でこんな糞暑い中で行かなきゃならないのよ!」

曜「口が悪いよ、よーしこー」

善子「誰のせいよ、誰の」

曜「えーと、善子ちゃんの中に眠る堕天使のせい?」

善子「……とにかく駅の方へ行って、適当な店にでも入りましょう」

曜「それよりも遊び――」

善子「ああもう、私が奢るから」



15: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:29:26.78 ID:8pDqrO06.net

曜「了解であります!」

善子「現金な人ね……」

曜「さあ行こう善子ちゃん! 駅に向かって全速全身~」

善子「やらないわよ!」

曜「よーしこー!」

善子「ヨハネ!」



16: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:31:19.51 ID:8pDqrO06.net

  ※


善子「はぁ~、生き返るわ」

 喫茶店に着くと同時に、机に突っ伏してだらける。

 これこそが夏の正しい過ごし方。外で過ごすなんて、頭のおかしい奴らのやることだ。

曜「体力無いなぁ、善子ちゃんは」

善子「貴女が異常なだけよ」

曜「おっ、返す元気は出てるね!」

 この人の明るさに場所は関係ないらしい。
 朝から無駄に高かったテンションはそのままだ。



17: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:32:37.98 ID:8pDqrO06.net

善子「でも悪いわね、結局おごってもらっちゃって」

 気づけばちゃっかり2人分のお金を払ってくれていた。
 自分の分は出すと言っても受け取ってくれないし。

曜「先輩としてこれぐらいはね」

善子「そういえば先輩だったわね、曜さん」

曜「えー、そりゃないよ」

善子「人を散々からかった罰よ」

曜「そう言われると、何にも言えないねぇ」



18: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:33:47.89 ID:8pDqrO06.net

曜「それはともかく、この後はどうしようか。」

善子「まだどこかに行くつもりだったの……。ここで駄弁ってればいいじゃない」

曜「せっかくの善子ちゃんとのデートだよ。それだけじゃ勿体ないよ」

善子「デートって貴女ねぇ」

曜「いいじゃん、たまには女の子同士でしても」

善子「その言い方だと、男とは頻繁にデートしているみたいね」

曜「まあね、そりゃそうでしょ」

善子「はい!?」

 今なんて言った、この人。



19: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:34:34.15 ID:8pDqrO06.net

善子「曜さん彼氏居たの?」

曜「あ~……、秘密かな」

善子「そんなこと言わないで教えなさいよ!」

曜「まあまあ、私たちも年頃の女子なんだし、いる方が普通でしょ」

善子「周囲を見る限り、そんな風には思えないけど……」

 辺境にある女子高なんて、出会う機会はほとんどない。
 曜さんの場合、飛び込みがあるからその時に出会った人だろうか。



21: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:35:38.66 ID:8pDqrO06.net

曜「とにかく、この話はお終い! そんなことよりもどっか行こう!」

 そう言って私の飲み物までも飲み干す曜さん。

善子「ちょ、ちょっと、何するの――」

曜「また奢ってあげるから、今は行くよ」

 かなり強引に誤魔化された気がする。

 まあ後で話してくれそうなときに聞けばいいかな。

善子「行くって、どこに行くのよ」

曜「やっぱり夏は水があるところに行くよ!」

善子「水? さっきも言ったけど水着とかは――」

曜「大丈夫、水着がなくても問題がないところだから」



23: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:41:09.74 ID:8pDqrO06.net

  ※


善子「なるほど、確かに水着はいらないわね」

曜「でしょ!」

 私たちがやってきたのは伊豆・三津シーパラダイス、ようするに水族館だった。

曜「恋アクのPV撮った時以来だよね!」

善子「あら、デートではここに来ないの?」

曜「……しつこいよ、よーしこー」

善子「だって気になるもの」



24: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:43:37.94 ID:8pDqrO06.net

曜「確かに男の人と来るけど、別に彼氏じゃないって」

善子「じゃあ誰なのよ」

曜「……パパ」

善子「お父さん? でもさっきデートって――」

曜「パパとデートしたっていいでしょ、別に」

 意外な弱点発見。
 そういえばファザコンだったっけ。



25: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:44:11.44 ID:8pDqrO06.net

善子「うふふ、いい年してお父さんとなんて、曜さんも可愛いところ――」

曜「結構活気があるね! 正直あんまり人がいるイメージ無かったのに」

善子「聞きなさいよ、もう!」

 確かに夏休みシーズンということもあり、水族館内は結構な人でにぎわっていた。

 だけどそのほとんどは、子どもをつれたファミリー客。正直私たちはだいぶ浮いている。



26: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:44:48.28 ID:8pDqrO06.net

善子「何か少し居心地が悪いわね」

曜「そうかな、気にし過ぎじゃない?」

善子「そうかしら?」

曜「あ、ほらほら、セイウチだよ! うちっちーの仲間!」

 ううん、やっぱりこの人が特殊なだけだろう。

曜「善子ちゃん、早くはやく」

 正直言動だけ見れば、子どもの中に混ざってもあまり違和感がなさそうだ。



27: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:45:55.00 ID:8pDqrO06.net

善子「本当に子どもそのものねぇ」

曜「えっ、何か言った?」

善子「気の所為よ」

曜「なんだ、いつもの堕天使の発作か」

善子「違うわよ!」

曜「善子ちゃんもまだまだ可愛いねぇ」

善子「曜さんには言われたくないわよ」

曜「いや~、可愛いなんてそんな」

善子「皮肉で言ったのよ」



28: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:48:40.24 ID:8pDqrO06.net

 この人はやっぱり馬鹿なのだろうか。

曜「そろそろイルカのショーあるみたいだし、見に行こうよ!」

善子「濡れない後ろの方の駅なら良いわよ」

曜「駄目だよ、水と戯れに来たんだから!」

善子「嫌よ、私は濡れたくないもの」

曜「大丈夫だって、私も一緒だもん!」

善子「そういう問題じゃないでしょ」

 まあいいか、私も楽しいし。



29: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:49:53.02 ID:8pDqrO06.net

 炎天下なのは変わっていないけど、気づけば最初の不満はどこかへ消え去っていた。

 曜さんと一緒だと苦手なはずのことも輝いてみえる。
 
 ただはしゃいで、笑い合って、それだけで私は――。

曜「遅いよ~これだから引きこもりは……」

善子「うるさいわね体力馬鹿! 貴女と違って繊細なのよ」

 たまにはこういう日も悪くない、そんな風に思えた夏休みの一日だった。



30: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:50:34.65 ID:8pDqrO06.net

おしまい



31: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:51:57.93 ID:8pDqrO06.net

最後までお付き合いいただきありがとうございました



34: 名無しで叶える物語 2018/02/24(土) 20:55:49.75 ID:bChwmM8Z.net

おつでした!よーしこー可愛い


元スレ
善子「リア充な先輩に連れられて」
http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1519470953/