おしっこ大好き曜ちゃんと、曜ちゃん大好き善子ちゃんのお話です。


*前々スレ(1さんが立て逃げしたネタスレを乗っ取りました)

曜「善子ちゃんをくすぐり続けたら失禁した」
(堕天)

*前スレ(立てて貰ったのにうっかり落としましたごめんなさい)

曜「善子ちゃんをくすぐり続けたら失禁した」その2
(堕天)

↑の続きですが読んでなくても大丈夫です。


【前回のラブライブ!】

*おね正月編

お父さんに会うため実家に行っていた曜ちゃん。戻ってきて早々、善子ちゃんは男装をさせられて初詣に行きます。

一日彼氏。巫女さんをナンパする曜ちゃん。ランチデート。おばさんごめんなさい。

ショッピングモールで千歌ちゃん梨子ちゃんに会った善子ちゃんは、梨子ちゃんが男装善子ちゃんにドキドキしているのを知り、曜ちゃんを嫉妬させようと試します。

付き合ってわずか二週間で訪れた別れの危機でしたが、Aqoursメンバーの協力もあって何とか仲直りできた二人。しかし善子ちゃんは何だか熱っぽいようで……。



前スレに少し書きましたが、落ちてしまったので再放送します。
(所々手直ししてありますがほぼ同じです)



3: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:32:04.05 ID:oMcc4SEV.net

【不治の病編】

……

 保健室

曜「降ろすよ」スッ

善子「ええ」

曜「よいしょっと……」ギシ

善子「……その、ありがと」

曜「え? こっちがありがとうって感じだよ」アハハ

善子「そうでしょうね」

曜「善子ちゃんさえよければ、毎日でもしてあげたいな」

善子「やめてよ。私、お姫様なんかじゃないもの」

曜「じゃあ私をお姫様抱っこする?」

善子「しない」

曜「昨日してもらっとくんだった……」ハァ

善子「で、飲むの?」

曜「え?」

善子「飲みたいって言ってたじゃない」

曜「何を?」

善子「は?」

曜「私に何を飲ませたいのかな? 言ってくれなきゃ分かんないよ」

善子「私は飲ませたいわけじゃないんだけど」

曜「そっか。無理にとは言わない」

善子「曜さんが素直に聞き入れるなんて珍しいわね」

曜「善子ちゃんの嫌がることはしないって決めたから」

善子「そう」

曜「もしこの先善子ちゃんが二度とおしっこを飲ませてくれないとしても……」

曜「私は大好きだからね」

善子「ありがと」

曜「善子ちゃんのおしっこのこと」

善子「私のことは?」



4: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:32:42.14 ID:oMcc4SEV.net

曜「善子ちゃんのことももちろん好きだよ」

善子「何で私がおしっこのついでなのよ」

曜「あー、そうじゃなくて。善子ちゃんのことなんて言うまでもないでしょ?」

善子「言ってくれないの?」

曜「言われたい?」

善子「当たり前でしょ」

曜「えへへ……大好き♡」ギュ

善子「私も」

曜「うん。私のはいつでも飲ませてあげるからね」

善子「おしっこじゃなくて曜さんのことがよ」

曜「おしっこは?」

善子「そんなに好きじゃない」

曜「がーん……」

善子「そんな高望みされても困るんだけど」

曜「まあ、少しずつ好きになってもらえればいいよ」

善子「ならないと思う」

曜「私のことは、会った瞬間から好きだった?」

善子「は? 何よ急に」

曜「私はほとんど一目惚れだったけど善子ちゃんはどうかなーって」

善子「ごめんなさい。全く何とも思ってなかったわ」

曜「えー」

善子「だって私と曜さんじゃキャラが違いすぎるっていうか……接点なんてないじゃない」

曜「同じバスだよね?」

善子「同じバスってだけでしょ」

曜「私はずっと後ろの席から『あの子可愛いな』って見てたよ」

善子「それ、私に限ったことじゃないでしょう?」

曜「うっ……善子ちゃんの可愛いは特別だもん」

善子「嘘つかなくてもいいわよ。私のことなんて眼中になかったでしょうが」

曜「……」

善子「曜さんの目にはもっとキラキラした子しか映ってなかったわよね」



5: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:33:21.22 ID:oMcc4SEV.net

曜「何で私、善子ちゃんのこと見えてなかったんだろう? 幽霊かな?」

善子「そもそも私、不登校だったじゃない」

曜「あ、そっか」

善子「曜さんがいかに適当なこと言ってるかよく分かるわね……」

曜「善子ちゃんの不登校解除とAqoursに入るのはほとんど同時だったんだよね」

善子「そうよ。だからAqoursに入る前の私なんて、曜さんが知っているわけないの」

曜「私の知らない善子ちゃんか……見てみたかったな」

善子「酷いもんだったわ」

曜「そんなことないんじゃない? 事故紹介、もとい自己紹介で事故ったくらいで大げさだよ」

善子「毎日カップめんばっかり食べてたし……今よりげっそりしてたわね」

曜「そんな姿見たら毎日ご飯作ってあげないと気がすまなくなっちゃう」

善子「はいはい」

曜「もし私と会ってたら不登校にならなかった?」

善子「え? 関係ないと思うわよ」

曜「私に会いたくて学校に来るんじゃない?」

善子「……」

曜「あれ? 私何か変なこと言った?」

善子「別に」

曜「もしかして今も? 私に会うために学校来てるの?」

善子「今は学校に来るの嫌じゃないもの」

曜「私は毎日楽しくて仕方がないよ」

善子「まあ、そうでしょうね。学校行くのが嫌っていう気持ちが理解できなかったりして」

曜「善子ちゃんがいなかったら嫌だな」

善子「私がいなくても曜さんなら楽しいでしょ。明るい性格してるし」

曜「あっ、さては私がいつもこんな風に明るいと思ってるね?」

善子「学校で沈んでるところ、滅多に見ないわよ」

曜「それは明るい曜ちゃんを演じてるだけだよ」

善子「そうなの?」

曜「いつも明るい私が急に暗くなってたら、みんなも暗くなっちゃうでしょ?」

善子「さすがに自意識過剰じゃないかしら」



6: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:33:58.52 ID:oMcc4SEV.net

曜「善子ちゃんだって、周りからこう見られたい、ってのあるんじゃない?」

善子「え……まあ、なくはないけど」

曜「私だって思うよ。インテリ系美少女キャラで通ってる私としては……」

善子「能天気おバカキャラが何ですって?」

曜「善子ちゃん辛辣だね……」

善子「私だって、自己紹介のときは失敗しちゃったけど、今ではちゃんと『天界を追放されたヒトならざるモノ』として通ってるわよ」

曜「本当かな?」

善子「本当よ」

曜「でも私の前では『ヨハネよ!』って言わないよね」

善子「曜さんが好きなのは私でしょ?」

曜「あ、うん」

善子「何その『別にどっちでもいいけど』みたいな反応」

曜「いや、だってどっちも善子ちゃんだし……」

善子「ヨハネと私は別人なんだからね。いくら曜さんでも浮気はダメ」

曜「えぇ……」

善子「あっ、ほら面倒くさそうな顔した」

曜「し、してないよ!」

善子「心配しなくても曜さんの前では私でいるから……」

曜「みんなの前でも善子ちゃんでいればいいのに」

善子「何よそれ。ヨハネ全否定?」

曜「あ、そうじゃなくてさ。私には善子ちゃんのままでいてくれるんだから、善子ちゃんって自分のこと嫌いなわけじゃないんだよね?」

善子「……今はそんなに嫌いじゃない」

曜「前は嫌いだった?」

善子「そうよ。こんな人間みたいな体捨てて天使の姿に戻りたかったもの」

曜「人間の姿だからできることもあるよね」

善子「例えば?」

曜「え? 私と付き合うとか」

善子「天使の姿だったら嫌なの?」

曜「人間なんかと恋したらそれこそ羽を折られちゃうんじゃないの」

善子「まあ、確かに」



7: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:34:32.03 ID:oMcc4SEV.net

曜「でも善子ちゃんは今も天使だもんね」

善子「曜さんにとって?」

曜「そうだよ。天使と恋なんてしたら地獄行きかな?」アハハ

善子「そのときは私も一緒に行ってあげるわ」

曜「それじゃ天国だね」フフッ

善子「曜さんって地獄に落ちても笑ってそうね」

曜「善子ちゃんと一緒ならどこだって天国だよ」

善子「私と一緒じゃなかったら?」

曜「一人で地獄は嫌だなぁ」

善子「私も嫌ね」

曜「まあ、でもそんな先の話しても仕方ないよね。今こうして善子ちゃんといられるだけで十分かな」

善子「ん、まあね」

曜「今のうちにたくさん聖水を浴びておくことにするよ」

善子「聞こえはいいのに、やってることは地獄行き待ったなしよね」

曜「かなり罪深いね。特に学校でするなんて」

善子「そう思ってるならやめなさいよ」

曜「やめないよ」

善子「地獄に落ちても知らないわよ」

曜「死んだ後のことなんて死んでから考えればいいんじゃないかな?」

善子「その前向きさはどこから出てくるのかしら」

曜「もちろん、善子ちゃんからだよ」

善子「私?」

曜「善子ちゃんと話してると、何でもできそうな気がしてきちゃう」

善子「曜さんは本当に何でもできちゃいそうだから怖いわね」

曜「大抵のことならね。いくら私でもできないことはあるし……」

善子「そう? 自分で分かるようになっただけでもよかったわ」

曜「誰かさんが激辛生姜を食べさせたおかげでね」

善子「まだ根に持ってるの?」

曜「そりゃ持つよ。それだけショックだったもん」

善子「ふーん……」



8: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:35:03.66 ID:oMcc4SEV.net

曜「あ、根っこだけに、とかいうツッコミはないんだね」

善子「ないわね」

曜「善子ちゃんと話してると、どうも調子狂っちゃうんだよねぇ」アハハ

善子「私も曜さんと話してると疲れるわ」

曜「分かった、今から喋るの禁止にしよっか」

善子「え?」

曜「私と話すの疲れるんでしょ? ならお互い黙ってようよ」

善子「いや、別にそこまでじゃ」

曜「声出した方が負けね」

善子「いいけど……」

曜「それじゃゲームスタート!」

善子「……」

曜「……」

善子「……」

曜「あ、そうだ」

善子「はい、曜さんの負け」

曜「ルール説明してなかったから説明するね」

善子「何よ、勝手に始めておいて勝手に負けたんじゃない」

曜「何されても声出しちゃダメだよ」

善子「ええ」

曜「声出した瞬間恐ろしい罰ゲームが待ってるからね」

善子「何よ」

曜「えーと、それはあとのお楽しみで」

善子「思いつかなかっただけじゃない」

曜「それでは改めて、ゲームスタート!」

善子「……」

曜「……」ニヤニヤ

善子「……」ビクッ

曜「……」スッ

善子「っ!?」ガタッ



9: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:35:41.86 ID:oMcc4SEV.net

曜「……」パクパク

善子「??」

曜「…………」パクパク

善子「???」

曜(おしっこ飲ませて)

善子(は!? ダメに決まってるじゃない)

曜(何で? さっきは飲ませてくれるって言ったじゃん)

善子(ベッド汚したくないし……)

曜(私を誰だと思ってるの? 善子ちゃんのおしっこなんてこぼすわけないじゃん)

善子(……)

曜(さ、体調悪いんでしょ? 横になった方がいいよ)

善子(そう思うなら寝かせてよ)

曜(トイレ行くのも大変だもんね。私に任せて)

善子(トイレくらい行けるわよ)

曜(まあまあ、遠慮せずに)スッ

善子(下着脱がそうとしないで!)バッ

曜(そのままするの? さすがにこぼさない自信ないなぁ)

善子(分かったわよ、そこの紙コップにするから……)

曜(直飲みは?)

善子(絶対にダメ)

曜(何で? 確実じゃん)

善子(絶対変なことしてくるでしょ? びっくりして溢れるのが目に見えてるわよ)

曜(じゃあ見てるよ)

善子(別に見なくてもいいんだけど……)スッ

曜(下着、脱げる?)

善子(脱げるわよ)スルッ

曜(おぉ……)ドキドキ

善子(あ、あんまり見ないで……)カァアア

曜(なかなか大胆な下着だね)



12: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:38:30.59 ID:oMcc4SEV.net

善子(勝負下着だから)

曜(何の勝負?)

善子(曜さんと仲直りするためのよ!)

曜(なるほどね。こんな可愛いの見たら許しちゃうよ)

善子(見せるつもりで履いてきたわけじゃないわよ)

曜(またまたー、こうなることを期待してたんじゃないの?)

善子(してないわよ)

曜(いいから早くして)

善子(えぇ……)スッ

曜(……)

善子(ん……)チョロロ

曜(すー……はー……)

善子(うわっ、気持ち悪いわね……)チョロロ

曜(んんー! いい匂い!)クンクン

善子(そんな至近距離にいたら顔にかかるかも)チョロロ

曜(え!? 本当?)ワクワク

善子(かけないわよ! こぼしたら嫌だって何度も言わせないで)チョロロ

曜(……)シュン

善子(もう少し……)チョロ

ポタッ ポタッ

曜(コップ一杯ぴったりで溢れないなんて、いつの間にこんな技術を……?)ジッ

善子(いや、もう出ないから)

曜(私、教えてないのに……。ってことは善子ちゃんのママかな?)ジー

善子(だからもう出ないって)

曜(私のいない間に親子で何してたの……!? とんでもない変態じゃん)ヒキ

善子(え……何かごめんなさいこれしか出なくて)シュン

曜(まあ、とりあえず頂くとしますか……)スッ

ゴクッ

曜(うへぇ……♡)ウットリ

ゴクッゴクッ



13: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:39:03.37 ID:oMcc4SEV.net

善子(幸せそうな顔して………)

ゴクッゴクッ

曜(ぷはー! やっぱり善子ちゃんのおしっこは最高だよ)ニコニコ

善子(よかったわね……)ハァ

曜(お代わり!)スッ

善子(ん? ごちそうさま?)スッ

曜(お代わりくれるの!? やった!)

善子(このコップどうしよう……)

曜(お代わり♡ お代わり♡♡)ウキウキ

善子(いや、飲んだんだから自分で片付けなさいよ)スッ

曜(……?)

善子(ほら! 自分で飲んだんでしょ!?)スッ

曜(あっ!!)スッ

曜(私のも飲みたいってことだね!? いいよ!)スルッ

善子「え!!?」ガタッ

曜(でも出せるかなぁ? うーん……)

善子「ちょ、ちょっと曜さん? 出さなくていいから……」

曜(しまった、今日はあんまり水分補給してないから出そうにないぞ……)

善子「って言うか私もう喋っちゃったわ。私の負けよ」

曜(いや、善子ちゃんが飲みたいって言ってるのに出せないなんて恋人失格だ……)

善子「曜さん? 聞いてる?」

曜(善子ちゃんのこと好きなんだよね? なら出せるよ私!)モゾモゾ

善子「だめだ、自分の世界に入っちゃってる……」ハァ

曜(善子ちゃんへの気持ちをおしっこに込めればきっと……!)モゾモゾ

善子「あ、あの……出ないなら無理に出さなくても」

曜(……)モゾモゾ

善子「……」

曜「私の負けです」

善子「ん?」

曜「参りました」ペコッ



14: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:39:40.24 ID:oMcc4SEV.net

善子「いや、私とっくに喋っちゃってるから……」

曜「そういえば昨日から飲まず食わずだったの忘れてたよ。これじゃ出ないわけだ」

善子「よく今まで平気だったわね」

曜「善子ちゃんに嫌われたと思ってたから……もうおしっこする意味もないしね」

善子「おしっこって好きな人のためにするものじゃないんだけど」

曜「ちょっと飲み物買ってきてもいいかな? 少し飲めば出せると思うから……」スタッ

善子「飲み物買うのはいいけど、出さなくていいからね」

曜「ごめんね、体調悪いのに待たせちゃって……。すぐ行ってくるから」

ガラッ

善子「私の話聞こえてる?」

曜「……」

ストンッ

善子「……」

善子「何なのよ……」ハァ

善子「やっぱり曜さんといると疲れるわ」

善子「自分勝手で私のことなんてお構いなし」

善子「……」

善子「おっと……急に眠気が」

善子「あっ、そういえばまだ拭いて……」フラッ

善子「なかったような……」

ポスッ

善子「……」スー

……

ガラッ

曜「お待たせ。自販機だと二リットルのペットボトル売ってなかったからコンビニまで行ってきたんだ」

ストンッ

曜「善子ちゃんの分も買ってきたからね」ゴトッ

曜「あれ? もしかして寝たふりしてる?」

曜「まあいいや、ちょっと水分補給させてね」キュッキュッ

ゴクッゴクッ



15: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:40:14.63 ID:oMcc4SEV.net

曜「ぷはー! これでよしと」キュッ

曜「善子ちゃんも飲む?」

善子「……」スー

曜「え? 口移し? なかなか甘えん坊さんだねぇ」

曜「って言ってもまだおしっこは出せそうにないから普通の飲み物で我慢してね」キュッ

ゴクッ

曜(いくよ……)チュッ

チュル……

善子「げほっ!!?」ビクッ

曜「あ、むせちゃった?」

善子「げほっ、こ、げほっ、殺す気!!?」

曜「もしかして本当に寝てた!?」ガシッ

善子「最悪だわ……げほっ、おしっこが変なところに入っちゃったじゃない」ゲホッ

曜「安心して! 普通のお茶だよ!!」

善子「え? よかった……」ホッ

曜「ごめん……。まさかこんな短時間で寝ちゃうと思わなくて」

善子「寝不足なのよ。言わなかったかしら?」

曜「言ってたね」

善子「曜さんとだからつい楽しくお喋りしちゃったけど、こう見えてけっこう熱もあるみたいだし……」

曜「さっきより顔が赤いような? 何かあった?」

善子「どう考えても今のでしょ!?」

曜「熱、測ってみたほうがいいんじゃない?」

善子「そうね……」

曜「普通の体温計と曜ちゃん体温計、どっちがいい?」

善子「普通ので」

曜「はい」ピトッ

善子「普通のって言ったんだけど」

曜「んー、これはかなりある感じかな」

善子「朝から寒気が止まらなくて……。ただの寝不足かと思っていたけれど、本当に風邪かもしれないわ」

曜「これは……インフルエンザかもしれないね」



16: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:40:50.15 ID:oMcc4SEV.net

善子「え? そうかしら……」

曜「ちゃんと検査してもらわないとだよ」

善子「そうね、放課後になったら行くから連れて行ってくれる?」

曜「何言ってるの!? 今行かなきゃダメだよ!」

善子「そんなこと言われても……曜さんだって講習全部サボるのはマズいでしょ」

曜「大丈夫。私、今日は出席してないから」

善子「何も大丈夫じゃないし」

曜「いいから、病院行こう」

善子「気持ちは嬉しいけど……。曜さん、勉強の方はいいの?」

曜「後で一緒にやればいいよ。ね?」

善子「学年違うわよ」

曜「私が留年すれば同じ学年か」

善子「えっ……やめてよ?」

曜「善子ちゃんと同じクラスで同じ勉強ができる……」ゴクリ

善子「私は嫌よそんなの」

曜「何で? 私と一緒なのに?」

善子「少しは自分のことも考えなさいよ」

曜「……」

善子「留年なんて絶対しないでよね」

曜「そっか。うん、そうだね。さすがに留年するような恋人は嫌だよね」

善子「だから自分のことを考えなさいって」

曜「善子ちゃんも」

善子「私? 私はそこまで成績悪くないし……」

曜「自分のこと考えてさ、病院行っとこうよ」

善子「……ずるくない?」

曜「え?」

善子「曜さんって人を丸め込むの上手よね」

曜「そうかな? えへへ」

善子「褒めてないわよ」



17: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:41:27.88 ID:oMcc4SEV.net

曜「まあいいや、行こうか」スタッ

善子「そうね」スタッ

フラッ

曜「おっと……」ガシッ

善子「ごめんなさい」

曜「本当に大丈夫? さっきよりフラフラしてない?」

善子「あれ……何か床、斜めってない?」

曜「平らだよ」

善子「壁も何だか曲がってるような……」

曜「平らだよ?」

善子「……」

曜「大丈夫、善子ちゃんの胸はちょっとあるから」

善子「は?」

曜「嘘! 平らだよ」

善子「何ですって!?」ガタッ

曜「あっ、今のは素で間違えた! 平らじゃないよ!」

善子「視界が歪むってのは……それなりに重症ってことなのかしら……」

ピピッ

曜「えーと、三十九度? だいぶ熱もあるみたい」スッ

善子「え、いつ測ったのよ」

曜「さっき体温計の話したじゃん。覚えてないの?」

善子「あ……あれ、ちゃんと普通の体温計で測ってくれてたのね」

曜「善子ちゃんが普通のでって言ったんだよ?」

善子「ちなみに……曜さん体温計だとどんな測り方をするのかしら」

曜「それはね……ふふ♡」ニヤリ

善子「何よ」

曜「そんなこと聞いちゃうんだ? 善子ちゃんてば変態さん」カァアア

善子「え!? せめてキスとかじゃないの!?」

曜「仕方ない、そこまで言うなら測ってあげるよ。脱いで」

善子「嫌よ!! 病院連れて行ってくれるんでしょ? 早く行きましょう」スタッ



18: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:42:01.22 ID:oMcc4SEV.net

曜「ちぇ……」

善子「肩、貸してくれる?」

曜「もちろん。というかお姫様抱っこは?」

善子「恥ずかしいからいいわよ」

曜「んー、病人なんだから遠慮しないでいいのに」

善子「特に遠慮はしてないわ」

曜「じゃあ肩で」スッ

善子「ええ」

曜「近所の診療所でいいよね? 内科ならすぐ診てくれるはずだよ」

善子「私、そこ行ったことない」

曜「いつもどこ行ってるの?」

善子「えーと、堕天使は風邪なんて引かないから……」

曜「真面目に答えて。かかりつけの病院があるならそっち行ったほうがいいから」

善子「ないわよ。病院なんてもう何年も行ってないわ」

曜「なら近くのところにしよう。大丈夫、ちゃんと女の先生だよ」

善子「あ、そういうの気にしてくれてるんだ……」

曜「当たり前でしょ」

善子「優しいのね」

曜「私がおじさん先生の前で裸になってたらどう思う?」

善子「命の保証はしかねるわ」

曜「怖っ……」

善子「冗談……。先生は仕事なんだから裸なんて見たって何とも思わないでしょう」

曜「そうだよ。一日にたくさんの人を診てるんだから」

善子「それでも、あんまりいい気はしないわね」

曜「私ですらちょっと抵抗あるんだもの、善子ちゃんはもっと抵抗あるかなと思って」

善子「何よもう……。普段からこのくらい優しくしてくれればいいのに」ボソッ

曜「やっぱりお姫様抱っこでいい? 歩きにくいや」ヒョイ

善子「わっ、降ろして! 恥ずかしいから!」

曜「病人なんだから大人しくして」

善子「う……」



20: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:43:31.85 ID:oMcc4SEV.net

曜「大丈夫、パンツは見えてないよ」

善子「あっ、そういえば拭いてなかった!」

曜「え? じゃあ舐めるから待ってて」

善子「普通に拭いて! ううん、自分で拭くわ」

曜「もう乾いちゃってるでしょ。舐めたほうが綺麗になるって」

善子「ウェットティッシュあるから大丈夫よ」

曜「善子ちゃんの?」

善子「は? 他に誰のがあるのよ」

曜「そっか……うん」ドキドキ

善子「??」

曜「あ、何でもないよ。拭いてあげたいのは山々だけど、早いところ病院へ行かないとだからごめんね」

善子「待って? まさか歩きながら拭くわけ?」

曜「その方が早く着くでしょ?」

善子「お願いだから先に拭かせて」

曜「じゃあ私が拭くよ」スッ

善子「え、いいわよ。自分で拭けるから……」

曜「遠慮しないで」スッ

善子「あっ……」ビクッ

曜「ちゃんと拭かないとカブれちゃうからね」フキフキ

善子「っ……」

曜「ん? また顔が赤くなってきたかな。熱上がった?」

善子「だ、誰のせいだと……」カァアア

曜「……っと、こんなものでしょう」クンクン

善子「何嗅いでるのよ!」

曜「うん、善子ちゃんの匂いだ」

善子「それ拭けてないってことじゃ」

曜「まだしてほしいの? 我慢できなくなりそうだから遠慮しとくよ」

善子「どうしておしっこを拭くだけなのに我慢できなくなるのかしら? ねぇ?」

曜「いいから行くよ」ヒョイ

善子「わっ……」



22: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:45:14.72 ID:oMcc4SEV.net

曜「歩いてそんなにかからないから寝ててもいいよ」

善子「……」

……

 診療所

曜「インフルエンザかもしれないので検査してほしいんですが」

看護師「熱はありますか?」

曜「さっき測ったら三十九度ありました」

看護師「寒気や体の痛みは?」

曜「私に抱きついてないと凍え死んじゃうそうです」

善子「ちょっと! 変なこと言わないでよ」

看護師「えっと……」

曜「あ、診てもらいたいのは私じゃなくてこっちの子です」

看護師「それではこちらの問診票を書いてください。インフルエンザの疑いがあるのであちらの隔離スペースでお願いします」

善子「はい……」

曜「行こっか」

善子「え? いいわよ、一人で行くから。曜さんが行ってもウイルスを貰ってくるだけじゃない」

曜「一人で寂しくない?」

善子「別に」

曜「私は寂しいよ」

善子「せめてマスクくらいしなさいよ?」

曜「入り口にあったね。善子ちゃんの分も貰ってきてあげる」

善子「ありがと」

曜「それとも私がマスクになろうか?」

善子「え?」

曜「私が鼻と口を塞げば……」

善子「死ぬわよ」

曜「確かに」

善子「問診票書いてるから、その間に行ってきて」

曜「うん」スタッ

スタスタ



23: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:46:09.18 ID:oMcc4SEV.net

善子「……」

善子「ふぅ……」

善子「思ったより視界がグニャグニャで気持ち悪いわね……」

善子「一人じゃ真っ直ぐ歩くのすら難しいかも」

善子「曜さんがいてくれて助かったわ」

善子「……」ブルッ

善子「うぅ……寒い」ガタガタ

善子「曜さん早く戻ってきて……」

善子「……」

善子「意識が……」

善子「」バタンッ

……

……

「善子ちゃん」ユサユサ

「善子ちゃん大丈夫?」ユサユサ

善子「うぅ……」

「すごい汗……」フキフキ

善子「曜さん……?」

「ん?」

善子「診察まだ……?」

「もう終わったよ」

善子「そう……私寝ちゃってたのね」

「先生には私が説明しといたから」

善子「何から何まで悪いわね」

「目、開けられる?」

善子「眩しいから嫌……」

「部屋の中なのに?」

善子「すごく眩しく感じるの……目がチカチカして頭が痛くなるから」

「そっか……。熱出てるとね、あるよねそういうの」

善子「こんなに出たのいつぶりかしら?」



24: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:46:52.20 ID:oMcc4SEV.net

「代わってあげられなくてごめんね」

善子「ママみたいなこと言わないでよ」

「善子ちゃんが辛い思いしてるのに、何もできない自分が嫌になるよ……」

善子「十分してくれてるじゃない」

「そうかな……」

善子「私のそばにいてくれて……病院にも連れてきてくれて」

「恋人だもん」

善子「きっと恋人じゃなくてもしてくれたでしょうね」

「善子ちゃんだからしてるんだよ?」

善子「曜さんは優しいから……誰にでもしてあげるでしょ」

「こんなときまでヤキモチ? 調子が悪いときくらい休もうよ」

善子「……そうね」

「……」

善子「……」

「こんなときに言うのは変かもしれないけどさ……」

善子「私も好きよ」

「おしっこしたくなったらいつでも言ってね」

善子「……は?」

曜「あっ、その、変な意味じゃなくてね!? トイレ行くの大変でしょ。遠慮なく私を使っていいから」

善子「……」ハァ

「それとも私が連れて行こうか」

善子「できればそっちでお願いするわ」

「うん……」

善子「こんなときくらい我慢できないの? 私、これでも体調悪いんだけど」

「善子ちゃんはそのまま寝てればいいよ。私が飲みに行くから」

善子「……」

「自分でトイレ行くより楽だよね!? 私だけかな!?」



25: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:47:26.21 ID:oMcc4SEV.net

善子「分かったから大きな声出さないで」

「やった!」グッ

善子「飲ませるとは言ってないんだけど……まあいいわ」

「……」

善子「……」

「私、うるさいかな?」

善子「え?」

「ゆっくり寝たいかと思って」

善子「ううん。そこにいてくれてるって分かるから……」

「そっか、目を瞑ったままだから見えてないんだ」

善子「……」

「善子ちゃんってまつげ長いよね。羨ましいな」

善子「何よ急に」

「見てると吸い込まれそうだよ……」

善子「吸い込まれるの?」

「自分をこう、抑えてないとね」

善子「……」

「キスはダメだって言われちゃったからなぁ」

善子「は?」バサッ

曜「キス。先生に止められちゃった」

善子「あっ……頭が」フラッ

「無理しちゃダメだよ」

善子「先生に何言ったのよ」

「え? 診察のとき善子ちゃんが寝てたから、起こさないように診察してもらっただけだよ」

善子「それで、どうしてキスの話が出てくるの」

「どこまでならしてもいいですか? って聞いたの」

善子「えぇ……」

「過度な身体接触は控えるように言われちゃった」

善子「ならこんな近くにいたらダメじゃないの」

「特に粘膜の接触がダメらしいよ」



26: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:48:01.41 ID:oMcc4SEV.net

善子「つまり……キス?」

「それと、善子ちゃんが想像したようなこと」

善子「べ、別に想像なんてしてないし!」

「おしっこ飲むのはセーフなのかなぁ? 聞きそびれちゃった」

善子「ダメだと思うわよ……」

「そっか……そうだよね」シュン

善子「そんなに落ち込むようなことなのかしら……」

「そういえば、インフルエンザじゃなかったみたいだよ」

善子「えっ、そうなの!?」バサッ

曜「よかったじゃん」

善子「う……また頭が」フラッ

曜「急に飛び起きるから……」

善子「ただの風邪じゃ公休にならないじゃない……」

「冬季講習は欠席にならないから大丈夫だよ」

善子「ただでさえ短い冬休みがほとんど残らないわね」

「始業式の後はテストだからね、勉強もしておかないと」

善子「確か……講習でやった内容が出てくるんだっけ」

「そうだよ。講習を真面目に受けてればほとんど満点取れる簡単なテストらしいけどね」

善子「『らしい』って何よ」

「梨子ちゃんが言ってた」

善子「それは曜さんとは別の意味で信用ならないわね……」

「梨子ちゃんは私と頭の作りが違うんだよきっと」

善子「でも梨子さん、毎日欠かさず勉強してるって聞いたわよ」

「絶対嘘だよ。あれだけ頭よかったら勉強なんてする必要ないでしょ」

善子「逆よ。勉強してるから頭がいいの」

「うーん」

善子「曜さんだって真面目に勉強したら絶対いい成績取れるわよ」

「勉強しないと頭がよくなれないでしょ? でも頭がよくないと勉強はできないよね」

善子「だから?」

「勉強が先か、頭が先か……」



27: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:48:40.64 ID:oMcc4SEV.net

善子「やる気が先よ」

「なるほど。天才かな?」

善子「私はやる気がないからできない。曜さんもそんな感じするわね」

「私はやる気はあるんだよ? でもいざ机に向かうとさぁ」

善子「関係ないことばかり気になってきちゃうのね。あるあるだわ」

「善子ちゃんのこととかね」

善子「わ、私も曜さんのこと……思い出しちゃったりして」

「善子ちゃんも? だったら一緒に勉強すれば解決だ」

善子「そうかしら……」

「あっ、もちろん勉強中は変なこと禁止だからね? 分かってるとは思うけど」

善子「曜さんこそ変なこと言ってこないでよ。おしっこ飲まないとやる気が出ないとか」

「私はやるときはやるタイプだからね。そういうところはしっかりしてるよ」

善子「やらないときはやらないタイプなのね」

「どうしてそんなに後ろ向きなの」

善子「さあ? 風邪のせいかしら」

「私もそれなりに面倒くさいけど、善子ちゃんもけっこう面倒くさいね」

善子「何よ、急に悪口?」

「善子ちゃんが家庭教師雇っても、みんなやめちゃいそうだなぁ」

善子「曜さんが頭よかったらお願いしたのに」

「私が頭よかったら……?」

……

…………

 善子の部屋

コンコンッ

曜『こんにちは善子ちゃん』

善子『あ、先生来たんだ?』

曜『今日はね、ちょっとお話があるの』

善子『いつもの授業じゃないの?』

曜『善子ちゃん、もう少し真面目に勉強してくれると嬉しいな』

善子『勉強なんてやめて私と遊びましょ?』ギュッ



28: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:49:18.37 ID:oMcc4SEV.net

曜『そういうわけにはいかないよ。私は家庭教師として雇われてるんだから』

善子『家庭教師なんてやめちゃえば?』

曜『うっ……どうしてそんなこと言うの? 私のこと嫌い?』

善子『家庭教師じゃなくて……普通に遊びに来てくれたら……』ボソボソ

曜『善子ちゃん、授業が分からないから学校行くの嫌なんでしょ。一緒に勉強して、早く学校行けるようになろうよ』

善子『私が学校へ行けるようになったら……嬉しい?』

曜『もちろんだよ! そのために私は来てるんだからね』

善子『なら勉強なんてできないままでいいわ』

曜『そんなぁ』

善子『先生が毎日来てくれるなら……学校なんて行かなくても寂しくないもの』

曜『……』

…………

……

「善子ちゃんとは一緒にいたいけど、一緒にいると善子ちゃんのためにならないなぁ」

善子「どんな想像したのよ」

「ううん、不登校の善子ちゃんの元に私が家庭教師に行ったらって話」

善子「来なくていいわ」

「善子ちゃんは私のことに夢中になりすぎて勉強をしなくなっちゃって」

「私もいけないとは思いつつも善子ちゃんを好きになっちゃって……」

「そのうち、いつまで経っても不登校が直らないのは私のせいだってバレちゃうんだ」

善子「学校に行かなかったのは私の意思なんだから、誰のせいでもないわよ」

「まあでも、今はもう不登校じゃないんだし。私が家庭教師でもいいのかな?」

善子「真面目に教えてくれるならありがたいわね」

「教えるよ! 私に教えられればだけど……」

善子「ところで曜さんって成績どの位?」

「え?」

善子「聞いたことなかったから」

「千歌ちゃんよりは上で梨子ちゃんよりは下かな」

善子「千歌さん、今の聞いたら怒るわよ」

「具体的には、赤点ギリギリ回避するくらいの成績かな」



31: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:52:09.83 ID:oMcc4SEV.net

善子「そんなので私に教えられるのかしら……」

「いい成績が取りたいなら、私じゃない人に教わったほうがいいかもね」

善子「梨子さんとか?」

「それかダイヤさん。厳しそうだけど」

善子「そうね……」

「二人が暇ならだけどね? たぶん忙しいからやめた方がいいよ」

善子「……」

「でも二人とも優しいから、善子ちゃんがお願いすれば教えてくれるかな」

善子「それは何だか申し訳ないわね」

「私でよければいつでも暇だからね?」

善子「どこがよ。次の衣装、まだできてないんでしょ?」

「あ……うん」

善子「いいわよ、自分で頑張るから」

「……」

善子「そもそも、講習だって半分出てるから50点は取れると思うわ。赤点レベルの曜さんに教わることなんてないわよ」

「うっ……」

善子「だけど曜さんがどうしてもって言うなら……教えてあげてもいい」

「善子ちゃんが?」

善子「曜さんが赤点取って補習漬けになったら、練習に出られなくなるでしょ?」

「そうだけど……」

善子「それに、周りが満点近く取ってるのに私だけ50点なんて……」

「素直に『元気になったら一緒に勉強しましょ』って言ってくれればいいのに」

善子「言わない」

「私とじゃ嫌?」

善子「『善子ちゃんがしたいって言ったんだよ……?』とか言って変なことしてくるから」

「むぅ」

善子「だから私からは言わない」

「じゃあ……私から言うよ」

「一緒に勉強しよう」



32: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:52:48.77 ID:oMcc4SEV.net

善子「ええ」

「いいの?」

善子「私としたいんでしょ? いいわよ」

「善子ちゃんとしたい! 勉強だけじゃなくて色んなことしたいよ!」

善子「そういうのはダメ」

「えー? お菓子作ったり食べたりしようよ……」

善子「あ、そういうの? ならいいけど」

「期待させちゃったかな? ごめんね」

善子「してないから」

コンコンッ

ガラッ

「失礼します」

曜「あ、看護師さん」

看護師「点滴、終わりましたか?」

曜「えっと……はい! 確か三十分くらい前に」

善子「あっ……いつの間にか空っぽだわ」

点滴「」カラーン

看護師「終わったら声かけてくださいねって言いましたよね」

曜「忘れてたのそっちじゃないですか」アハハ

善子「ちょっと、やめなさいよ」

看護師「体調悪そうだから少し休ませてあげようと思ったら、楽しそうにお喋りしてるし……」

看護師「学校サボりたいだけなら帰ってもらえるかしら」

曜「は? 善子ちゃんは本当に体調悪いんですけど!? こんなに汗びっしょりだし! いい匂いするし!!」

善子「本当にやめなさいって」ガシッ

看護師「まあいいわ。次の患者さんが待ってるから、荷物まとめて」

ガラッ

ストンッ

曜「……」

善子「よほど話し声がうるさかったのね」

曜「酷くない? あれでも看護師??」



33: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:53:30.94 ID:oMcc4SEV.net

善子「向こうも仕事なんだから仕方ないわよ」

曜「ちょっと美人でナース服が似合ってるからって何言っても許されると思ったら大間違いだよ」

善子「べた褒めじゃない」

曜「善子ちゃんが注射されてるの見て」

曜「『いいなぁ……私もこのお姉さんに注射(意味深)されたいなぁ』」ニヤニヤ

曜「なーんて思った私がバカだったよ」

善子「それは本当にバカね」

曜「くっ……どうせ彼氏持ちのくせに!」

善子「関係ないでしょ」

曜「こうなったらナース服善子ちゃんを見せてギャフンと言わせてやる」

善子「私を巻き込まないで」

曜「あー、ムカついたら喉乾いた! おしっこ!!」

善子「あのねぇ……」ハァ

曜「早くしないと『まだですか?(イライラ』って来ちゃうよ」

善子「ここでするの!? 次の患者さん来てるって言ってたし、とりあえず出ないと……」

曜「じゃあトイレで飲む!」

善子「いいから、早く荷物持って。できれば私の分も持ってくれるといいんだけど」

曜「はい」スッ

善子「何?」

曜「お姫様抱っこ」

善子「大丈夫よ。点滴打ってもらったら少し楽になったわ」スタッ

善子「……っと」フラッ

曜「ほら! 無理しないで」

善子「じゃあ、肩だけ……」

曜「背中貸そうか」

善子「……」

曜「病院だもん、恥ずかしくないよ」

善子「そうよね……」グイッ

曜「よっと……」ヒョイ

善子「曜さん温かいわね」



34: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:54:08.17 ID:oMcc4SEV.net

曜「え? 善子ちゃんすっごく熱いけど」

善子「まだ熱あるのかしら? 自分だと分からないわね」

曜「このまま家まで帰れる? バスの中で大丈夫かな」

善子「……」

曜「分かった、一旦保健室に戻って休もう。落ち着いてから帰ればいいよ」

善子「曜さんは講習出てきなさいよ。帰りに迎えに来てくれればいいから」

曜「そんなこと言わないで。側にいさせてよ」

善子「赤点取っても知らないわよ」

曜「善子ちゃんに教わるから大丈夫」

善子「それでも先輩? プライドとかないわけ?」

ガラッ

看護師「……」

曜「あっ、今から出るところなんで大丈夫です」

看護師「さっきはごめんなさい。患者さんにクレームつけられて八つ当たりしちゃった」

曜「え?」

看護師「本当に大丈夫? お家まで帰れる? 何なら保護者の方に連絡して……」

曜「私、この子の恋人なので」

善子「……」カァアア

曜「このまま家までは心配なので、とりあえず学校の保健室に戻ります。どうしても帰れなそうなら電話して迎えに来てもらうつもりです」

看護師「そう……」

曜「あ、あの……私もごめんなさい。病院なのにうるさくして、迷惑かけたのはこっちなのに……」

看護師「ううん。ちょっとうるさかったのは事実だけど……」

善子「ごめんなさい……」

曜「ナース服、とっても似合ってますね」

看護師「え?」

曜「私にも注射してくれますか?」

善子「曜さん?」

曜「あ……えっと、変な意味じゃなくて。私が調子悪くなったら、そのときはお姉さんに注射してほしいんです」

看護師「私に……?」



35: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:54:44.78 ID:oMcc4SEV.net

曜「注射するときのお姉さん、すっごく楽しそうな顔してたので……」

善子「えっ」

看護師「そ、そんなことないと思うわよ?」

曜「人に針刺すの好きなんですよね? 私も刺されたいなぁ」アハハ

善子「」

看護師「……」

曜「えぇ……割りと真面目にドン引きされてる……」

善子「私も正直引いたわよ」

看護師「針を刺すときにね……いつも思うのよ」

看護師「ここで血管じゃないところに刺したらどうなるんだろう……って」

善子「そんなこと思ってたの!? 怖っ……」

看護師「患者さんの苦痛に歪む顔を想像して……それから刺すの」

看護師「もちろん現実ではちゃんと、血管の真ん中にそっと刺すわよ」

看護師「痛くないように、そっと……」

曜「優しいんですね」

善子(そうかしら!?)

看護師「どんなに丁寧にやっても、針を刺すってことは患者さんを傷つけること」

看護師「体は傷つけちゃうけど……心までは傷つけたくないって、そう思ってるの」

看護師「そう思っていたいの……」

曜「私なら好きに刺してくれてもいいですよ」

善子「えっ」

曜「もちろん顔とかは嫌ですけど……目立たないところなら」

看護師「ほ、本当!? あ……ううん! そんなこと全く思ってないから!」

善子「……」ヒキ

看護師「診察室出たら会計窓口までお願いします! それじゃお大事に!!」ガラッ

ピシャッ!

曜「……」

善子「何なの」

曜「本気にされちゃったかな?」アハハ

善子「冗談だったの!?」



36: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:55:23.07 ID:oMcc4SEV.net

曜「さすがの私も針で刺されるのは嫌だよ……」

善子「たぶん本気にされてるわね」

曜「えぇ……」

善子「曜さん、いつか痛い目に遭うわよ……」ハァ

曜「私が針まみれになっても好きでいてくれる……?」

善子「黙って刺されるつもり? 誤解を解く努力はしないの?」

曜「今さら『さっきのは冗談だったんです、刺さないでください』なんて言ったらそれこそ刺されるよ」

善子「それはしないでしょ。もう殺人未遂じゃない」

曜「でも、実際私が風邪とか引いて病院へ行くことなんてないし、ましてや注射されることなんてないから大丈夫だね」

善子「どうかしら」

曜「さ、次の患者さんも待ってるみたいだし出ようか」

善子「ええ」

曜「今さらなんだけどさ……善子ちゃんパンツ見えてない?」

善子「え?」

曜「ほら、今は私に抱きついてる状態でしょ。足を開いてるわけだから……もしかすると後ろからだと丸見えなのかな……と」

善子「そ、そういうことは早く言いなさいよ!! さっきの看護師さんに丸見えだったじゃない!!」バシッ

曜「いてっ! 私が悪いの? 善子ちゃんも女の子なんだから気にしようよ」

善子「熱出てて頭も痛いのにそこまで気が回らないわよ!」

曜「じゃあ……やっぱりお姫様抱っこかなぁ。それなら私がうまく隠せるし」

善子「う……」

曜「善子ちゃんがみんなに下着を見てもらいたい変態さんなら話は別だけどね?」ニヤニヤ

善子「もう! 本当にいじわるなんだから!」

曜「はいはい。それじゃ一旦下ろすね」ヒョイ

善子「……」ムスッ

曜「それではお姫様、お城までお連れしましょう」ヒョイ

善子「え……」

曜「目覚めのキスは必要ですか?」

善子「い、いらない!」カァアア

曜「あれ、また熱出てきた? 困ったなぁ……」

善子「もう嫌……早く帰りたい」カァアア



37: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:55:59.78 ID:oMcc4SEV.net

……

 学校 保健室

曜「ふぅ……」ストンッ

善子「お疲れ様。薬局が微妙に遠かったわね」

曜「大きい病院なら出てすぐのところに薬局があるんだけどね」

善子「確かこの薬、食後なんだっけ」

曜「あ、そうだったね。何か食べないとだ」

善子「お弁当忘れちゃった」

曜「え? 善子ちゃんのお弁当分けてもらえばいいやって思ってたのに」

善子「ママが作ってはくれてたんだけど……それどころじゃなかったから」

曜「そんなに私に会いたかった?」

善子「違うわよ。会いたくなさすぎて忘れてたの」

曜「……」シュン

善子「曜さんだってそうでしょうが! 私に会いたくないから朝練サボったくせに」

曜「そのまま学校も来なくていいやって思ったよ」

善子「何で来たのよ」

曜「赤点取りたくないし……」

善子「は?」

曜「休み明けのテストだよ。ほら、私こう見えて大学はスポーツ推薦で行くつもりだからさ。あんまり内申下げたくないんだよね」アハハ

善子「そう……」

曜「やっぱり善子ちゃんに会いたくなったから、とかの方がよかった?」

善子「別に。嘘つかれるよりは本当のこと言ってくれた方がいいわね」

曜「本当は会いたかったよ」ギュッ

善子「だからそういうのいいってば」

曜「本当に……会いたかったよ?」ギュ

善子「なら朝練来ればよかったじゃない」

曜「そのときは会いたくなかったもん。でも、忘れようとするほど善子ちゃんの顔ばっかり浮かんできてさ」

曜「これはもう一度会って謝らなきゃダメだって……許してもらえないのは分かってたけど……」

善子「髪型がボサボサだったのもそう?」

曜「謝ってそれで帰ればいいやって思ってた」



39: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:57:45.40 ID:oMcc4SEV.net

善子「会いたくなかったんじゃない」

曜「正直に言えば、私の気持ちがスッキリしないからって理由だけで来たのは事実」

善子「自分勝手ね」

曜「そうだよ。本当は私、自分のことしか考えてないもん」

曜「みんなに優しくするのは、『みんなに優しい私』が好きなだけ……」

曜「善子ちゃんといたときも『善子ちゃんに優しい私』が好きなだけだったんじゃないかなって」

曜「でも昨日でそれも終わっちゃった」

曜「だからちゃんと、もう恋人じゃないんだってはっきりさせたかったの」

曜「善子ちゃんの口から言ってほしかったの……」

曜「『大嫌い』って」

善子「……」

曜「私って嫌な子だよね……」

善子「……」

曜「善子ちゃんの恋人じゃなくなれば、こんな思いしなくてよくなるんだって……それで来たの」

曜「善子ちゃんのことなんて本当は一ミリも考えてなかったよ」

曜「最低だよね」フフッ

善子「今もそうなの?」

曜「え?」

善子「こうして私といるのも、『病人に優しい自分』が好きだから?」

曜「そんなわけないじゃん」

善子「本当のことを言って」

曜「……」

曜「来る途中のバスでね、夢を見たの」

曜「善子ちゃんと出会ってから昨日までの夢」

曜「あぁ、こんな子と付き合ってたんだなって思いながら見てたんだけど……」

曜「目が覚めたらね……私、泣いてたんだ」

曜「ブラウスの襟が濡れるくらいに……」

曜「これも『善子ちゃんに好かれてる私』が好きなだけだったのかな……?」

善子「……」

曜「でも今はね……はっきり言えるよ」



40: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:58:33.27 ID:oMcc4SEV.net

曜「善子ちゃんのことが好き。善子ちゃんが私を嫌いでも……」

曜「『善子ちゃんに嫌われてる私』でもいいから……」

曜「私は善子ちゃんを好きでいたい」グスッ

曜「嫌いになんてなれないよ」

善子「……」

曜「ごめんね? やっぱり自分勝手な理由だった」フキフキ

善子「はぁ……」

曜「だからね、善子ちゃんも本当の気持ちを聞かせてほしいな」

善子「私の?」

曜「どうして私に会いたくなったのか、とか」

善子「そんなの……」

曜「私に遠慮なんてしないで、本当に思ったことを言ってくれたら嬉しい」

善子「曜さんに会うつもりなんてなかったわよ」

曜「……」

善子「朝練に来たときも鞠莉さんに『曜は?』って聞かれたんだけど……」

善子「私、何て答えたと思う?」

曜「え? うーん、『あんなバカ知らないわよ』とか?」

善子「言いそうね」フフッ

曜「何て言ったの?」

善子「『誰?』って言った」

曜「『誰?』」

善子「完全に無視することにした、ってこと」

曜「……」

善子「だから朝練に曜さんが来てようが来てまいがどうでもよかったの」

善子「もし話しかけられたって、空耳か何かだと思って気にしなければいい」

善子「そんな人、私は知らなかった」

曜「……」

善子「まあ、いなくてホッとしたのは確かね」

曜「そうなんだ……」



41: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:59:07.02 ID:oMcc4SEV.net

善子「それともう一つ……私も最低なことをしたわ」

曜「……」

善子「梨子さんにね、私と付き合わないか聞いたのよ」

曜「えっ……」

善子「今思えば、梨子さんが私を引っ叩かなかったのが不思議なくらいね」フフッ

善子「みんなの前だから抑えたのかしら?」

曜「……」

善子「昨日、男の子になった私を見てドキドキしてくれてるの分かってたし……」

善子「手を繋いたときもこっちまでドキドキしちゃうくらい熱かったし」

善子「キスしたときなんて……本当に」カァアア

曜「……」シュン

善子「と、とにかく! 私は曜さんのいなくなった穴を埋めようと梨子さんに声かけたの!!」

曜「それは……何て言うか、私が言えることじゃないけど……」

曜「かなり最低だね」

善子「うっ……。いいのよ、はっきり言ってもらえて嬉しいから」

曜「でも……私ももしかしたらそうしたのかな」

善子「梨子さんに?」

曜「ううん」

善子「じゃあ誰によ」

曜「誰だろう? よく分かんないや」アハハ

善子「何それ」フフッ

曜「たぶん誰でもいいんだと思う」

曜「私のことを好きでいてくれる人なら、誰でも……」

善子「私もその一人?」

曜「まさか。善子ちゃん以外なら、誰でも同じってこと」

善子「バスの中で夢を見なかったらそうしてた?」

曜「かもね」

善子「……」

曜「後で梨子ちゃんに謝りに行こうか」

善子「ええ。千歌さんにも」



42: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 11:59:45.67 ID:oMcc4SEV.net

曜「千歌ちゃんに?」

善子「昨日、あんなに強くぶたれたのに忘れたの?」

曜「あ……」

善子「曜さんは何もしてないかもしれないけど……千歌さんは私のためにああしてくれたんだもの」

善子「私は二人に謝らなくちゃ」

曜「私もだね」

曜「あそこまで千歌ちゃんが怒るなんて、滅多にないんだよ」

善子「私は初めて見たわ」

曜「私も久しぶりかな。前に怒らせたときは何だったっけ……」

善子「あ、前も曜さんが原因だったのね」

曜「って言ってもずいぶん昔の話だよ? 小学生とか、そのくらいの」

善子「何となく理由は想像つくわ」

曜「もう忘れちゃったけどね」

善子「……」

曜「少し楽になった?」

善子「え? ま、まあね。曜さんと話すと疲れるけど、溜まった気持ちがすーっと消えてく感じがする」

曜「あ、そうじゃなくて体調の方」

善子「あ……うん、点滴が効いてるからかしらね。今は目を開けててもそこまで眩しくない」

曜「それはよかった」

善子「曜さんが病院連れて行ってくれてなかったら、私倒れてたかも」

曜「今にも倒れそうなくらいフラフラしてたし赤い顔してたよ」

善子「そんな状態の私をよく止めなかったわね……あの二人は」

曜「花丸ちゃんとルビィちゃんのこと? あんまり心配かけちゃダメだよ」

善子「二人にも謝らなきゃか……」

曜「何だかみんなに迷惑かけて申し訳ないね」

善子「元気になったら何かお返ししましょ」

曜「そうだねぇ」

善子「……」グゥ

曜「ん?」

善子「よ、曜さん? 全く食いしん坊なんだから」フフッ



44: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:01:18.47 ID:oMcc4SEV.net

曜「……」ジー

善子「悪かったわね! 昨日から何も食べてないのよ!」

曜「私もだよ」

善子「よくそんなに元気でいられるわね」

曜「善子ちゃんに会えたからかな」アハハ

善子「私、そんなにカロリー高そうな顔してる?」

曜「豆腐ハンバーグみたいな顔してる」

善子「えぇ……」

曜「カロリーの話ね」

善子「曜さんはプリンみたいな顔してるわよ」

曜「それは『今すぐにでも食べちゃいたい』って意味かな?」

善子「カロリーの話じゃなかったの?」

曜「豆腐ハンバーグ食べたくなってきた」

善子「普通のハンバーグじゃなくて?」

曜「体調悪いのに普通のハンバーグは胃に悪そうだよね」

善子「私、別にハンバーグ食べたいなんて言ってないわよ」

曜「でもプリンじゃあまり栄養にならないよ」

善子「プリンも……いや、食べたいけど」

曜「仕方ない、曜ちゃんが買ってきてあげよう」スタッ

善子「え?」

曜「お昼。食べないと治らないよ」

善子「いいわよ、そこまでしてくれなくても」

曜「何言ってるの? 早く元気になってもらわないと困るんだけど」

善子「……」

曜「講習出ないと本気でテストがヤバそう」

善子「私のことなんて放っといて出てくればいいじゃない」

曜「そうはいかないよ。善子ちゃんと一緒に勉強する約束したもん」

善子「私のことはいいから……」

曜「プリンだけじゃ足りないだろうから、他にも買ってくるよ。何がいい?」

善子「……」グイ



45: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:02:26.04 ID:oMcc4SEV.net

曜「ん?」

善子「ここにいて」

曜「え、でもお昼が……」

善子「お願い」ギュ

曜「……」

善子「お昼食べたいのは分かるけど……今は我慢して」

曜「何で?」

善子「『何で?』」

曜「うん」

善子「曜さんにいてほしいからよ。ダメ?」

曜「ダメじゃないよ」

善子「ならもう少し、ここにいて」

曜「じゃあお昼は……私でもいい?」

善子「……」コクッ

曜「えへへ」

善子「ってやっぱりダメ! 風邪がうつるから」

曜「キスしなければいいんでしょ」

善子「そういう問題じゃないわよ」

曜「おしっこはもう飲んじゃったけど」

善子「……」

曜「いいよ。善子ちゃんがどうしても私に側にいてほしいって言うなら」

曜「いつまでもここにいてあげる」ギュッ

善子「……」ギュ

曜「少し熱、下がったかな?」

善子「曜さんのせいで……また上がってきそう」

曜「じゃあ離れる?」

善子「……」

曜「離れ……」

善子「離れない」ギュ

曜「だよね」フフッ



46: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:03:01.22 ID:oMcc4SEV.net

善子「うつしたらごめんなさい」

曜「私、こう見えて免疫は丈夫だから」

善子「バカは風邪引かないって言うものね」

ガラ……

曜「ん?」

ルビィ「あ、あの……」

花丸「あっ……!」

ススッ ストンッ

善子「え? 今誰か来たの?」

曜「ルビィちゃんと花丸ちゃんがね、一瞬だけ来て帰ってったよ」

善子「あっ! 私と曜さんが抱き合ってるの見られたんじゃないの!?」

曜「見られたね」

善子「早く追いかけて連れ戻しなさい!」

曜「でも私と離れたくないんだよね?」

善子「一分以内に戻ってくること! いいわね!?」

曜「おっけー。待ってて!」ダッ

ガラッ ピシャッ!

善子(ふぅ……)

善子「まだ視界がグニャグニャするわね……」

善子(熱は下がったのかしら……? よく分からないけど)

善子(曜さんの暖かさがもう……)

善子(……)ブルッ

善子(寒い……)ガタガタ

善子(……)

善子(早く戻ってきて……)

善子(私のこと好きなんでしょ? だったら今すぐ……)

善子(そこのドアを開けて、私に『お待たせ』って言いなさいよ……)

善子(……)

善子(ねぇ、これって……本当に風邪?)

善子(病院の先生、何て言ってたのかしら……)



47: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:03:37.84 ID:oMcc4SEV.net

善子(インフルエンザじゃないとは聞いたけど……)

善子(……)

善子(私、死んじゃうのかな)

善子(このまま誰にも気づかれずにここで……)

善子(最後に曜さんの顔が見たい……)

善子(大好きって言ってほしい……)

善子(もう一度だけ……キスしてほしい)

善子(うつったらごめんなさい)

善子(曜さん……)

善子(……)

ガクッ

……

……

ガラガラ

曜「お待たせー! もう、二人ともあんなに足速かったっけ? なかなか捕まえられなかったよー」アハハ

花丸「見つかって十秒もなかったような……」ハァハァ

ルビィ「曜さん足速すぎだよ……」ハァハァ

曜「うん、一分以内だね。善子ちゃん、約束は守ったよ」

ルビィ「お弁当忘れたって聞いたから……ルビィたちのでよければ分けて食べようよ」

花丸「曜さんも一緒に食べる?」

曜「いいの!? 二人とも大好き」ギュッ

ルビィ「わわっ!? 善子ちゃんの前ではダメだよー!」カァアア

花丸「曜さんちっとも反省してないずら……」カァアア

曜「今のはわざと。ごめんね善子ちゃん」

シーン

曜「善子ちゃん?」

善子「」

曜「何だ、寝ちゃったのかぁ」

ルビィ「善子ちゃん、すごい辛そうだったから……」

花丸「お昼食べて、薬を飲んでから寝ないとよくならないよ?」



48: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:04:14.56 ID:oMcc4SEV.net

曜「そうだよね。善子ちゃんには悪いけど一旦起こそう」

曜「起きて」ユサユサ

曜「お昼、分けてくれるって」ユサユサ

ルビィ「一緒に食べようよ」

花丸「ちょっと様子が変じゃないかな」

曜「起きないとキスしちゃうよー?」

ルビィ「キス……」ドキドキ

花丸「善子ちゃん、息してる?」

曜「え」

花丸「……」

善子「」

ルビィ「ど、どうしたの花丸ちゃん」

花丸「わっ……すごい熱! 呼吸も弱くなってるし……」スッ

曜「……嘘でしょ?」

ルビィ「ええと……救急車、救急車はいくつだっけ……」

花丸「119だよ! 曜さんは善子ちゃんを呼んで! 起こして!!」

曜「息してるよね……? 大丈夫だよね……??」

プルル

『もしもし、ルビィ? 何の用ですの?』

ルビィ「あっ、間違えてお姉ちゃんにかけちゃった」

花丸「ちょっとルビィちゃん! 貸して!」パッ

ルビィ「あ……」

花丸「鞠莉さんいますか!?」

『いますけど……』

花丸「今すぐヘリコプター貸してください! 沼津総合病院まで!!」

『ちょ、ちょっと何ですのいきなり……』

花丸「善子ちゃんが大変なんです! お願いします!」

『鞠莉さん、今の聞こえましたか?』

『ええ、ええ……。救急車より早いでしょう。お願いします』

曜「そ、そこまでしなくても大丈夫だと思うよ? ほら、心臓だって普通に動いてるし……」



50: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:05:46.23 ID:oMcc4SEV.net

花丸「善子ちゃん、どんな症状か言ってなかった?」

曜「熱っぽいのと、寒気がするのと、フラフラして歩けないのと……」

曜「でも、お医者さんもインフルエンザじゃないって言ってたしさ」

花丸「他には? 他には何か言ってなかった!?」

曜「え……? あっ、そういえば……視界がグニャグニャするとか何とか」

花丸「!!?」

曜「で、でもそんなの、熱が出ればよくあることだよね?」

花丸「……」ガサゴソ

花丸「あった」スッ

ルビィ「体温計? 病院で測ったんじゃ……」

曜「うん。三十九度で変わらずだよ」

花丸「三十九度……」

曜「ね、ねぇ本当にヘリ出すの? 病院に怒られないかなぁ……」

ピピッ

花丸「えっと……四十二度」

ルビィ「ピギッ!?」

曜「え!? そんなに出てた!?」

花丸「解熱剤は? 飲んだ?」

曜「ううん、お昼食べてないから……」

花丸「今すぐ飲ませなきゃ」

曜「お昼食べてないよ?」

花丸「そんなこと言ってる場合じゃないよ!」

ルビィ「あ……これだ。はい」つ

花丸「寝ててうまく飲めるかは分からないけど……」プチッ

曜「わ、分かった。私が飲ませる」

キュッ ゴクッ

ルビィ「え!? 曜さんが飲むの!?」

曜「口移しならいけるでしょ」グイ

善子「」グッタリ

曜「ちょっと苦しいかもだけど……我慢してね」チュッ



51: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:06:22.35 ID:oMcc4SEV.net

ルビィ「……」カァアア

花丸「善子ちゃん……」

曜「飲んで!」グッ

善子「」ゴクッ

花丸「やった!」

曜「ええと……後は熱冷ましかな? どこにあるんだろ……」

ルビィ「あ、熱冷ましなら……」ガサゴソ

ルビィ「はい! でもおでこの汗拭いてからじゃないとくっつかないかも……」

曜「ありがと!」フキフキ

曜「……」ペタッ

『もしもし!? ヘリの準備はできたわ! 今果南がそっちに向かってるから……』

ガラガラッ!

果南「大丈夫!? すぐ屋上まで運ぶよ!」

曜「うん!」

ガシッ

タッタッ

ルビィ「ね、ねぇ先生たちには連絡しなくていいのかな?」

『それは私に任せてください。善子さんの保護者にも連絡しておきます』

ルビィ「お姉ちゃん大好き!」

『わ、わたっ……私もですわ』

花丸「ルビィちゃん」

ルビィ「ごめん」

果南「こんなに熱いのに何してたの?」

曜「ええと……四十度いってないから休んでいれば大丈夫かなって」

果南「バカ! あんたは大丈夫でも善子は大丈夫じゃないの!!」

曜「うぅ……」

花丸「善子ちゃん……」スッ

善子「」

ルビィ「すごい汗だね……」

果南「やっと屋上だ……!」キィッ



52: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:07:05.13 ID:oMcc4SEV.net

バババ

曜「わっ……すごい風圧」

鞠莉「早く乗って! すぐ出るわよ!」

ルビィ「えぇ!!? 鞠莉さんが操縦するの!? パイロットさんは!!?」

鞠莉「今日は休みよ。大丈夫、私も何度も飛ばしてるから」

花丸「アウトローずら……」

果南「えーと、ヘリには全員は乗れないから……」

ルビィ「ルビィたちはお留守番してるね。果南さんは一緒に行ってあげて」

果南「え?」

花丸「善子ちゃんを運ぶのに、曜さんだけじゃ大変だよね?」

鞠莉「果南! アシスタントお願い!」

果南「えぇ……私ヘリの操縦なんて全く知らないんだけど」

曜「よいしょっと……」グイッ

善子「」

曜「シートベルトしてね……あ、変なところ触ってごめん」カチャカチャ

ダイヤ「い、今、善子さんのお母様には連絡しましたわ……。病院にも今から連絡します」ハァハァ

ルビィ「お姉ちゃん!」

花丸「曜さん、善子ちゃんをお願い」

曜「うん!」

鞠莉「それじゃ、みんな離れて! 離陸するわよー!」

バババ

果南「えっ、嘘、浮いてる!? 降ろして! 私じゃなくて他の人にしてよ!!」

鞠莉「何言ってるの。ダイヤにこんなことさせられないわよ」

果南「私はいいの!? 高いところダメなんだってばー!!」

バババ

ルビィ「気をつけてねー!」ブンブンッ

花丸「鞠莉さんー!」フリフリ

ダイヤ「そ、そういえば鞠莉さん、操縦免許なんて持っていましたのね」

ルビィ「高校生なのにすごいよねぇ」

花丸「一応、十七歳以上で取れるみたいだよ」



54: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:08:49.63 ID:oMcc4SEV.net

ダイヤ「しかし鞠莉さんが持っているかは……」

ルビィ「ま、まあ緊急だからね! 仕方ないよ!」

花丸「お留守番で心底よかったずら……」ホッ

……

 上空

バババ

果南「もう嫌だよ……降ろしてよ……」メソメソ

鞠莉「うーん! 気持ちのいい空ねぇ」

曜「善子ちゃん見える? あれが富士山……」

善子「」

果南「何でヘリって床が透明なの!? 考えた人バカじゃないの!?」

鞠莉「下が見えないと着陸のとき困るでしょ?」

果南「そうだけどさ……」ガタガタ

曜「少し薬が効いてきたかな? 熱冷ましのおかげかな?」スッ

鞠莉「大丈夫そう? できるだけ飛ばすけど……」

果南「お願いだからゆっくり行こう!? 危ないよ!」

鞠莉「早く着けばその分早く降りられるわよ」

果南「そ、そうだけど……」

鞠莉「じゃあ百五十ノットまで行きましょうか」

曜「大丈夫なの?」

果南「時速三百キロ……あああ落ちたら死ぬ」ガクガク

曜「善子ちゃん見える? 今新幹線と同じスピードで飛んでるんだよ?」

善子「」

鞠莉「百四十……百五十……」

果南「百五十超えてる! やめよう!」

鞠莉「ねぇ知ってる? このヘリ、ただのヘリだと思ったら大間違いよ」

曜「そういえば……普通のとちょっと違うね」

鞠莉「ふふ……」グイッ

バババ



55: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:09:35.03 ID:oMcc4SEV.net

果南「嫌ぁぁあ!!!(悲鳴)」

曜「ひゃああ!!(興奮)」

善子「うるさい!!!」

曜「あ、ごめんね寝てたのに」

鞠莉「まあ……私もこんなに出すのは初めてだしやめておきましょうか」スッ

果南「初めてだったの!!?」

善子「え……何なのこの状況……」キョトン

曜「熱は? ちょっと測ってみようか」スッ

善子「え、ええ」スッ

鞠莉「善子の意識も戻ったことだし、少しスピード落として行くわね。通り過ぎちゃわないようにしないとだし」

果南「こ、怖かった……」

曜「果南ちゃんだって水上バイクで百キロとか出してるよね」

果南「あれは海じゃん! 波さえ読めれば安全だよ!」

鞠莉「空だって風さえ読めれば安全よ?」

果南「無免許のくせに!!」

曜「無免許なの!!?」

善子「えっと……もしかして、今って無免許運転の現行犯なの?」

鞠莉「飛行禁止区域さえ気をつければ捕まらないわよ」

曜「果南ちゃんは水上バイクの免許持ってるの?」

果南「当たり前だよ! ウチは商売でやってるんだから!!」

ピピッ

善子「あ、鳴ったわ……」スッ

曜「ん……? 三十九度、最初と同じかぁ」

鞠莉「でもさっきは四十二度あったんでしょう? 少し下がったじゃない」

善子「え、私そんなに出てないわよ。病院で測ったときから三十九度で……」

曜「花丸ちゃんがすごく頑張ってくれたからね」

果南「曜がついていながら全く役に立たなかったからね!」

曜「わ、私だって薬飲ませたし!」

善子「薬? そういえば早く何か食べて飲まないと……」

曜「口移しで飲ませたから大丈夫!」



56: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:10:18.39 ID:oMcc4SEV.net

鞠莉「マウス・トゥ・マウス? やるじゃない♡」

果南「曜はみんなの体も自分と同じだと思わない方がいいよ……」

鞠莉「あら、果南は思ってるんじゃない?」

果南「思ってないよ! 鞠莉にだって優しく……って何言わせるの!」カァアア

善子「もしかして二人って付き合ってたりする?」

鞠莉「ええ♡」

果南「ないから」

曜「どっち?」

果南「ない。本当にないよ」

鞠莉「果南ってノリ悪いよね? ここはキスの一つくらいしてくれても……」スッ

果南「前見て! 前!!」

鞠莉「あら、もう着いちゃったの。もう少しゆっくり飛べばよかった……」ハァ

善子「えっと……私が寝てる間に熱が上がったから、鞠莉さんのヘリで病院まで連れてきてくれたってことでいいのかしら」

曜「そうだよ。救急車より全然速いからね」

鞠莉「ざっと三倍以上ね。救急車はマックス八十キロだから」

果南「病院が海の上だったらなぁ……」

善子「いや、悪いけど水上バイクで百キロの方が遥かに危険よ。一般的には」

曜「善子ちゃん、いつものキレが戻ってきた感じかな?」

鞠莉「ツッコミ不在だったものね。果南はいい歳してメソメソ泣いてたし」

果南「高いところは本当にダメなんだって……」

鞠莉「着陸するわよ。首の骨やらないように気をつけて」

果南「え」

曜「善子ちゃんの首は私が守るよ!」ギュッ

善子「いいからシートに体くっつけときなさいってば!!」

バババ

果南「地面が! 死ぬ!! 死んじゃう!!」

鞠莉「よっと……」

スッ

バババ……



57: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:10:52.48 ID:oMcc4SEV.net

曜「おお……」

善子「本当に無免許?」

鞠莉「風がなくてラッキーだったわね」

果南「」

鞠莉「さっ、曜は善子を連れて行ってあげなさい。病院にはダイヤが連絡してくれたから」

曜「ありがと!」

善子「えっと……果南さん、大丈夫?」

鞠莉「軽く死んでるけどノープロブレム☆ 人工呼吸すればすぐに……」

果南「死ぬ!! 降ろして!!!」

曜「あ、起きたよ」

果南「あれ……?」

善子「果南さん大丈夫?」

果南「だ、大丈夫……善子こそ大丈夫?」

善子「さっきよりは」

鞠莉「よかった。果南も起きたことだし行きましょうか」スタッ

果南「あっ、待って……」フラッ

ズテッ

曜「果南ちゃん!!」

果南「やばい……ヘリ酔いした」

善子「初めて聞いたわ」

鞠莉「まったくもう……だらしないんだから」スッ

果南「うぅ……気持ち悪い……」

曜「果南ちゃんもついでに診てもらおうよ」

鞠莉「ヘリ酔いですって言えば吐き気止めくらいなら貰えるかしら?」

善子「無免許バレたくなかったらバス酔いにしときなさい」

曜「そういえば酔い止めの薬って、電車と車と飛行機と……船は書いてあった気がするけど、ヘリでも効くのかな?」

鞠莉「ん?」

善子「バカなこと言ってないで行くわよ。ほら早く」

曜「帰り、飲んでみてくれる?」

果南「バスで帰るからいい……」



58: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:11:30.27 ID:oMcc4SEV.net

……

 診察室

先生「一旦は別の病院で診てもらって、インフルエンザじゃないと言われたのね?」

曜「はい。その時も熱は三十九度だったんですけど……」

善子「私が寝ている間に……四十二度まで上がったみたいです」

先生「そんなに出て大丈夫だった?」

曜「大丈夫じゃないから来てるんですよ」

先生「ま、まあそうよね」

善子「あんまり覚えてないんです……どうやって病院へ行って帰ってきたのかとか」

曜「視界がグニャグニャするって言うから私がお姫様抱っこして……」

先生「え?」

曜「お姫様抱っこです」

先生「そっちじゃなくて。視界がグニャグニャするって?」

善子「今も……何だか部屋が黄色く見えるし」

曜「やばいね! それはおしっこだ!」

善子「絶対違うわよ」

先生「えっと……」

曜「こんな感じに今は落ち着いてツッコミ入れてくれます」

善子「疲れるわ……」ハァ

先生「ちょっといいかな……目を開けてもらって」

善子「え? はい……」パチ

先生「……」スッ

善子「きゃっ!? 眩しいわよ!」ブンッ

曜「おっと、危ない」ガシッ

善子「あ……曜さんありがと」

曜「先生にビンタ食らわせたら大変だからね」

先生「瞳孔が少し開いちゃってるわね……これじゃまともに見えないでしょ」

善子「さっきは少し落ち着いてたんですけど……今は眩しくて」

曜「そういえばフラッシュも苦手だったね」

先生「それはたぶん関係ないかな」



60: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:13:17.89 ID:oMcc4SEV.net

善子「私もそう思います」

曜「そういえば花丸ちゃん、善子ちゃんの症状を聞いた途端びっくりしてたけど……あれ何だったんだろう?」

先生「?」

曜「あ、ええと、実は私が善子ちゃんの側にいて看病してたんですが」

曜「花丸ちゃんっていう可愛い子がいて……私の後輩なんですけど、その子が善子ちゃんの症状を聞いてきたんです」

善子「可愛いは言わなくていい」

曜「熱っぽいのと、寒気がするのと、フラフラするのと、視界がグニャグニャするって言ったんです」

曜「でも、どれも熱が出るとよくあることですよね?」

先生「……」

善子「先生?」

曜「一通り風邪の薬は貰ったし、食べて飲んで寝るしかないかなって……思ったんですけど」

先生「ちょっと詳しい検査をしてみましょうか」

善子「えっと……私、どこか悪いんですか?」

曜「頭かなぁ」

善子「失礼ね! 曜さんほど悪くないわよ!」

曜「ううん。そうじゃなくて、熱が出ると頭が痛くなるでしょ。検査するとしたら頭しかないじゃん」

先生「一応、血液の検査と、そうね……MRIかな」

曜「あのうるさいやつ!? ダメです! 善子ちゃんは頭が痛いんですよ!? あんなの聞いてたらそれこそおかしくなっちゃうよ!!」

善子「え……そんなにヤバい検査なの? やったことないんだけど……」

先生「昔のMRIは動作音がうるさくて大変だったけど、今のはだいぶ静かになって時間もそれほどかからなくなったのよ」

曜「そうなんですか? でもなぁ……」

善子「私のこと気にしてくれるのは嬉しいけど、検査しないことには悪いのか悪くないのか分からないじゃない」

曜「入れ墨してると受けられないんですよね?」

先生「えっ」

善子「してません!!」

曜「すみません、お金がないので後で払うのでもいいですか?」

先生「え、ええもちろん。そういえば親御さんは? まだいらしてない?」

曜「私が親です」

先生「えーと、まだいらしてない?」



61: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:14:08.31 ID:oMcc4SEV.net

善子「はい。何かすみません……」

曜「今は私が親です! え、おっぱいが飲みたい? ごめん無理」

善子「ちょっと黙ってられないの?」

曜「……」シュン

先生「そ、それでは血液検査お願いします」

「はーい、今行きます」スタスタ

曜「おっ、こっちのお姉さんもナース服似合ってるなぁ……」

看護師「それでは腕を出してもらって」

曜「はい」スッ

善子「私よ」

曜「だ、だよね」

看護師「あら? こっちは……」

善子「点滴打ってもらったので」

看護師「じゃあ仕方ないわね。同じところに刺すわけにはいかないし」スッ

曜「一つ聞いてもいいですか?」

看護師「え、私?」

曜「人に針を刺すのって楽しいですか?」

看護師「……」

善子「やめなさいよ」

曜「心配じゃん」

看護師「楽しくはないけど……」

曜「もし刺したくなったら私にしてください。善子ちゃんにはしないで」

善子「変な心配してくれてありがとう」

看護師「えっと、いいかな?」

善子「お願いします」

スッ プス

善子「っ……」ビクッ

曜「いい顔してるね」

善子「気持ち悪いわよ」



63: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:15:49.61 ID:oMcc4SEV.net

看護師「本当に仲がいいのね」フフッ

曜「はい! 恋人なので!」

看護師「ん?」

善子「あ、えっと! 部活の先輩と後輩です!」

看護師「そ、そうなの。何部?」

曜「そんなこと聞いちゃうんだ……?」カァアア

善子「スクールアイドル部です」

看護師「アイドル! すごいわね。歌って踊るあのアイドルでしょ?」

曜「曲や衣装も自分たちで作るんだよ」

看護師「はぁ……。今の子たちってすごいのねぇ」

曜「やだな、看護師さんも若いじゃないですか」アハハ

善子「ちょっと曜さん?」

曜「私の制服着てみます?」

看護師「……遠慮しておくわ」

曜「ところでご結婚は?」

看護師「一応ね。子どもも二人いるわ」

曜「」

善子「曜さん」ツンツン

曜「」

看護師「これで終わり。しばらく押さえておいてね」

善子「はい」

看護師「ええと、次はMRIだっけ? ここを出て左に進むと放射線科があるから、そっちの方へ行ってもらえば分かると思うわ」

善子「ありがとうございます」

曜「」

善子「行くわよ」

看護師「大丈夫? 生きてる?」

善子「軽く死ん……いえ、大丈夫です」

看護師「そう……」

ガラッ



64: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:16:25.48 ID:oMcc4SEV.net

ストンッ

善子「危うく言っちゃいけない冗談を飛ばすところだったわ……」

曜「まだ二十代前半だよね? なのに子ども二人もいるのかぁ……」

善子「あのねぇ」

曜「あ、心配しなくてもそういう目では見てないよ」

善子「見てたでしょ。見てなかったらあんなこと言わない」

曜「いや、さすがに結婚してて子持ちの人にこの制服を着せるのはまずいかなって思っただけだよ」

善子「何で着させる前提なの」

曜「たぶんあの人、浦女の出身だからね」

善子「え?」

曜「私たちの制服見て、懐かしそうな目で見てたから」

善子「よく観察してるわね」

曜「むしろ観察されてたんだけどね」

善子「いいから、早くMRIだか何だかの部屋まで行きましょ」

曜「はい」スッ

善子「よっと……」

曜「私が最後に受けたときは酷い音と振動で吐きそうになったよ」

善子「そんなに?」

曜「んーとね、例えるなら耳元でファクスが百台くらい動いてる感じ」

善子「……イマイチ分かりにくい例えね」

曜「受けてみれば分かるよ。そうとしか表現しようがないもん」

善子「そもそもファクスってどんな音だったか忘れちゃったわ。今の時代使わないじゃない」

曜「『ぴーー』『がーー』」

曜「みたいな音だよ」

善子「全く分からなかったわ」

曜「今度学校の職員室で聞いてみるといいよ」

善子「別に聞きたくないけど」

曜「そう……」

善子「とにかく、嫌な音だってのは伝わってきたわ」

曜「精神衛生上よくないねアレは」



66: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:18:01.43 ID:oMcc4SEV.net

善子「……」

曜「おっと、もう着いちゃった。部屋の中には私は入れないからここでお別れだね」

善子「えっ……側にいてくれないの?」

曜「うっ……そんな可愛いこと言われたらいてあげたくなっちゃうよ」

曜「でもダメなの。動いてる途中は検査技師の人ですら部屋に入れない」

善子「……」

曜「怖い?」

善子「怖くない……わけない」

曜「そうだ、今のうちにトイレ行っておこうよ。始まったら最後、終わるまでトイレなんて言い出せる雰囲気じゃないからね」

善子「分かったわ」

……

 トイレ

キィ バタン

ガチャ

曜「さて、私が見ててあげるからしていいよ」

善子「見なくていいわよ。そこにいてくれればそれで」

曜「本当は私が飲んであげたいくらいなんだけど……ダメって言われちゃったからなぁ」

善子「それなら仕方ないわね。潔く諦めなさい」

曜「煮沸したら飲めると思う?」

善子「臭そうね」

曜「いい匂いすぎて頭おかしくなっちゃいそう」

善子「変なこと言ってないで、あっち向いててよ」

曜「はいはい。あんまりいじわるしたら可哀想だし……」クルッ

善子「……」スッ

ショワァ……

曜「あー、いい音」

善子「気持ち悪いわね……」

ジョボボ

善子「ふぅ……」

ジョボボ



67: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:18:40.51 ID:oMcc4SEV.net

曜「ごめん、やっぱり私もする」クルッ

善子「え? こっち向かないでって言ったじゃない」

曜「善子ちゃんの上からしてもいい?」スッ

善子「は?」

曜「大丈夫、善子ちゃんにはかけないから」

善子「ちょ、ちょっと何私の上に座ろうとしてるわけ?」

曜「重かったらごめんね」ズシッ

善子「うっ……」

曜「そんなに重い?」

善子「重い」

曜「すぐ終わるから」

ジョボボ

善子「う……曜さんの匂いがする」

曜「やっぱりそっち向いてしてもいいかな」

善子「もう出てるんだから無理よ」

曜「そっか……こぼしたら嫌だしなぁ」

ジョボボ

善子「……」

曜「何かさ、これって二人羽織りみたいだよね」

善子「何?」

曜「二人羽織り。蕎麦を二人で食べるやつ」

善子「あぁ……」

曜「というわけだから、拭くのは善子ちゃんがやってね」

善子「何でよ」

曜「私は善子ちゃんの目隠しを」スッ

善子「あっ、こら見えないでしょ!」

曜「そんなに私の見たい?」

善子「そうは言ってない」

曜「見たくない?」

善子「見たくないわよ」



68: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:19:18.17 ID:oMcc4SEV.net

曜「じゃあどうしてこんなにドキドキしてるのかな」

善子「こ、これは……熱っぽいだけだから」カァアア

曜「私とそういうことしたいんじゃないの」

善子「べ、別にいいでしょ? 今は関係ないし」

曜「見えないと可哀想だからトイレットペーパーは渡してあげる」スッ

善子「……」

曜「さ、早く拭いて」

善子「病人にこんなことさせるなんて、酷い恋人ね」

曜「どうしても嫌ならいいよ」

善子「どうしても嫌」

曜「本当に?」

善子「本当に」

曜「うぅ……」スタッ

善子「あぁ……足がフワフワする」

曜「そんなに重くないよ! 失礼だね!」

善子「……」

曜「嫌なんでしょ?」

善子「嫌よ」

曜「じゃあ自分で拭いて」

善子「……」

曜「私が拭くのはいいのかな」

善子「……」

曜「いいんだね?」スッ

善子「っ……」ビクッ

曜「言っておくけど善子ちゃん、私、そこまでこういうことしたいわけじゃないからね」

善子「……」

曜「おしっこは大好きだけど、セクハラは趣味じゃない」

善子「どの口が言うのよ」

曜「着せ替えだって衣装係の血がそうさせるだけで、決して変な気持ちではないよ」

善子「嫌な血」



69: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:19:53.90 ID:oMcc4SEV.net

曜「おしっこ拭いてあげるのも善子ちゃんだからしてあげるよ。誰にでもこんなことするわけじゃないから」

善子「他の子にしてたら大変よ」

曜「あんまり強く拭くと粘膜傷つけちゃうからこのくらいで」

善子「……」

曜「善子ちゃん、してほしいのは分かるけどさ、この後検査なんだからね?」

善子「拭いてくれてありがと。早く行きましょ」

曜「まだ私が拭いてない」

善子「早く拭いて」

曜「善子ちゃん拭く?」

善子「……そういうこと、好きじゃないんじゃなかったの?」

曜「善子ちゃんならいいよ」

善子「でも嫌なんでしょ?」

曜「嫌じゃないよ」

善子「ほんの少しでも嫌だと思うなら言って」

曜「……嫌」

善子「そう。なら自分で拭いていいわよ」

曜「ここでは嫌」

善子「は?」

曜「私だって我慢してるんだからね」ボソッ

善子「そ、そう……」カァアア

曜「早く元気になって、またおしっこ飲ませてよ」

善子「元気になっても飲ませない」

曜「じゃあ元気にならなくてもいい? そんなわけないよね」

善子「どうしておしっこを飲ませるイコール元気なのよ。大丈夫?」

曜「それで、私は誰に拭いてもらえばいいのかな」

善子「自分」

曜「分かった」スッ

フキフキ

善子「……」

曜「見すぎ」



70: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:20:30.78 ID:oMcc4SEV.net

善子「えっ、あ……だって目の前でされたら見るしかないじゃない」

曜「そういうのはまた後で」フキフキ

ポイッ ジャー

善子「……」

曜「さ、早く検査行こ」

善子「そうね……」

……

 MRI室前

看護師「あっ、どこ行ってたの? もしかして迷っちゃった?」

曜「ちょっとお花を摘みに」

看護師「え? あぁ、お花……」

善子「……」

看護師「準備がよければ中で検査を受けてもらうけど……大丈夫?」

善子「……」

曜「怖い?」

善子「少し」

看護師「残念だけど、付き添いの方は部屋に入れないの。ここで待っててね」

曜「頑張って行ってらっしゃい」

善子「う……」

看護師「大丈夫よ。初めてだと訳が分からないうちに終わるから」

曜「善子ちゃんをお願いします」ペコッ

看護師「ええ。それじゃ入りましょうか」

善子「……」

曜「怖いんだね。分かるよ……」ギュ

善子「ここで待っててよね」

曜「もちろん」

善子「すみません、待たせてしまって」

看護師「大丈夫よ。それにしても、本当に恋人みたいに仲がいいのね……」ガラッ

スタスタ

トスッ



71: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:21:04.34 ID:oMcc4SEV.net

曜「……」

曜「何ともないといいけど……」

曜(それにしても、頭が痛いときにあの音は本当にキツいよねぇ)

曜(しかも変な機械で頭を固定されちゃうし)

曜(でも……頑張ってね)

……

 十分後

ドタンッ ダッダッ ドシーン!

曜「!!?」ガタッ

「あっ、ダメよ津島さん!」

「うるさい! 早くここを開けて!!」

ドンドンッ

「今開けるから……」ガチャ

ガラッ!

善子「曜さん!」ダッ

ギュッ

曜「よ、善子ちゃん……?」

善子「ううっ……」ポロポロ

曜「大丈夫? 何があったの?」

看護師「ふぅ……。何とか検査は終わりました」

曜「すごい音がしましたけど……」

看護師「変な声が聞こえるらしくて……急に泣き出してしまったの」

曜「変な声……?」

善子「死ぬかと思ったわよバカ!!」

看護師「……」

曜「すみません」ペコッ

看護師「いえ……」

善子「もう二度とごめんだわ」グスッ

曜「怖かったね……」ナデナデ

善子「もう嫌……帰りたい」



73: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:22:34.83 ID:oMcc4SEV.net

曜「検査の結果聞いてから帰らないと」

看護師「落ち着いたら、先ほどの診察室の前でお待ちください」

曜「はい。ありがとうございます」

看護師「……」

曜「すみませんでした」ペコッ

看護師「ううん、そうじゃないの」

看護師「……まあ、先生からお話があるでしょう。それでは」

ガラ……

ストンッ

曜「えぇ……」

善子「ううっ……」グスッ

曜「あれ……」クンクン

曜「もしかして善子ちゃん、漏ら……」

善子「……してない!」

曜「トイレ、行こうか」

善子「漏らしてないってば」グスッ

曜「うん……私が行きたくなっちゃったんだよ。善子ちゃんも来るでしょ」

善子「……」グスッ

 トイレ

曜「さ、そこ座って」

善子「……」ストッ

曜「スカートでよかったね」スッ

善子「やっ……」

曜「ごめんね」スルッ

善子「や、やめてよこんなところで……」

曜「あー、やっぱり……」

善子「漏らしてないから……トイレもちゃんと行ったし」

曜「そうだね。トイレに行ってなかったら大惨事だった」スッ

フキフキ

曜「検査室に私も入れればよかったんだけどね」



74: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:23:11.13 ID:oMcc4SEV.net

善子「曜さん、あんな検査だって知ってたのよね」

曜「……知ってたよ」

善子「何で言ってくれなかったの」

曜「言ったよ? 耳元でファクスが百台動く音だって」

善子「違うわよ! 変な声がたくさん聞こえて……すごく怖かったんだから!」

曜「変な声……? どんな?」

善子「そ、それは……」

曜「……」

善子「思い出したくない」

曜「そう……。無事に終わってよかったよ」

善子「全然よくないし……」グスッ

曜「診察室行こうか」

善子「……」

曜「よいしょっと」ヒョイ

善子「……」

……

 診察室

コンコン

「どうぞー」

曜「失礼します」ガラッ

先生「あら、ラブラブね」

曜「あはは、そうなんです」

善子「……」

先生「えっと……それじゃ津島さんはこちらで寝てもらっていいわよ」

曜「はい」スッ

善子「……」ストンッ

先生「検査、大変だったって聞いたけど……落ち着いた?」

曜「何とか」

善子「……」グスッ

先生「それじゃ、検査の結果ね……」スッ



75: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:23:44.06 ID:oMcc4SEV.net

カチッ カチッ

先生「これが脳のMRI画像……」

曜「んん!!? これは!!」

善子「えっ!?」バサッ

曜「さっぱりわからん」

先生「……」

善子「何よ……」

先生「特に異状はないわね」

曜「よかった……」ホッ

先生「ただ……ちょっと気になることが」

曜「何ですか?」

先生「検査の途中、変な声がたくさん聞こえたって言う話……」

曜「どんな声なんですかね」

先生「津島さん、何が聞こえたか教えてくれる?」

善子「……嫌」

曜「善子ちゃん。先生が聞いてるんだから答えなきゃ」

先生「言葉かな? そもそも人の声?」

善子「……」コクッ

先生「男の人? 女の人?」

善子「そんなの……分からないわよ」

曜「何て言ってた?」

善子「……」

先生「ごめんね。無理に話さなくてもいいわ」

曜「……」

先生「血液検査の結果も特に異状はなし。白血球の数値は基準より高めだけど……風邪を引くと誰でも上がるから心配しなくても大丈夫」

先生「もちろん、インフルエンザではなかったわ」

曜「そうですか……」

先生「それで……お母様が来てくださると聞いたんだけど」

曜「え? そういえばまだ来てないのかな」

善子「ママは……学校の先生なのよ」ボソッ



76: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:24:21.52 ID:oMcc4SEV.net

先生「あらそう。それじゃあ抜けられないわよね」

曜「娘がこんなに辛い思いしてるのに……」ハァ

善子「無茶言わないで」

曜「私の方から連絡しておきます」

先生「ええ。お願い」

善子「……」

先生「ねぇ、この後時間はある?」

曜「ランチのお誘いですか!? 行きます!」

善子「……」

先生「……」

曜「じょ、冗談ですよ」アハハ

先生「私、こう見えて心療内科医なの。今の段階ではっきりした診断は出せないけど……」

善子「……」

先生「急性ストレス障害の疑い濃厚、ってところかしらね」

曜「何ですかそれ」

先生「心に強いストレスがかかるとね、それが体の症状に出てくるのよ」

先生「最もよくあるのは頭痛や腹痛。大事な会議の前にお腹が痛くなったりしない?」

曜「学生なので会議は……」

先生「あー、そうね。じゃあ何かの発表とか。ものすごく緊張するような場面」

曜「え? じゃあ善子ちゃんは緊張しすぎて?」

善子「ないわよ」

曜「トイレ我慢しすぎて?」

善子「ないわよ!」

先生「緊張とは限らないの。とにかく強いストレスを感じれば、ストレス反応は起こるわ」

曜「……」

先生「何か心当たりでも?」

曜「私とケンカしたことかな」

善子「……」

先生「そう……」

曜「で、でも仲直りしたよね!?」



77: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:24:54.41 ID:oMcc4SEV.net

善子「ええ」

先生「……」

曜「でも治ってないどころか酷くなってるってことは」

曜「私以外にあるってこと?」

善子「他に何があるのよ」

曜「私のこと許せないから……それがストレスなの?」

善子「あ、あれはその……。許せないってそういう意味で……本当に許さないつもりで言ったわけじゃないわよ」

曜「じゃあ許してくれてるの?」

善子「許さないわけにはいかないでしょ。曜さんの恋人でいるって決めたんだもの」

先生「え?」

曜「あ、すみません。私たち付き合ってるんです」

先生「そ、そうなの……」

曜「私のために、無理して恋人でいてくれてるのかな」

善子「そんなわけないじゃない!」ガタッ

先生「落ち着いて」

曜「……」

善子「さっき言ったこと……本当に本心だったんだけど!?」

曜「さっきのって?」

善子「曜さんの恋人でいたいからいるの。無理なんてしてないし、曜さんにもしないでほしい……」

曜「……」

先生「キスはした?」

善子「えっ!? な、何ですって? よく聞こえなかったわ」

曜「い、いえ今日はまだ」

先生「ふむ……」カキカキ

善子「それが何の関係があるのよ」

曜「キスしたら治るのかな?」

善子「そんなわけないでしょ」

先生「相手のこと、どのくらい好き?」

曜「善子ちゃんのこと……世界でいちばん好きです」

善子「わ、私も……」カァアア



78: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:25:31.78 ID:oMcc4SEV.net

先生「もう少し具体的にお願い」

曜「というと?」

先生「あー、こういうのは相手の目の前じゃ話しにくいわよね。それじゃ次の質問」

先生「もし相手に別れを切り出されたらどうする?」

曜「私は……私のどこが嫌になったのか聞いて、それを直してもう一度好きになってもらえるように努力するかなぁ」

先生「津島さんは?」

善子「え? えっと……。まず曜さんが別れを切り出してくる様子が想像できないわね」

曜「ん? じゃあやってみようか」

善子「いや、やらなくていいでしょ」

先生「そうね、せっかくだからやってみて」

善子「え」

曜「じゃあいくよ……」

曜「ごめん善子ちゃん。私、好きな人ができたんだ」

善子「……は?」

曜「あ、いやそこは乗ってよ。意味が分からなくてもいいからとりあえず話を合わせなきゃ」

善子「えっと……」

曜「善子ちゃんのことも好きだよ? でも二股はよくないと思ってさ」

善子「相手は誰?」

曜「気になる? ふふ……秘密♡」

善子「梨子さんね?」

曜「ち、違うよ」

善子「千歌さん?」

曜「ううん」

善子「じゃあ誰よ」

曜「……男の人だよ」

善子「え……」

曜「すごく優しくてカッコいい人なの……。お金持ちで、欲しいものは何でも買ってくれるんだ」

善子「そ、そんなの騙されてる! ねぇ、まさかお金貰って……!?」

曜「一回デートするだけで十万円もくれるんだよー」アハハ



79: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:26:10.74 ID:oMcc4SEV.net

善子「っ!!」ガタッ

グイッ

曜「あぐっ……」

善子「曜さんがそんなことするなんて……!」ググッ

曜「よ、善子ちゃ……苦しい」

善子「私はお金持ちじゃないから……曜さんの欲しいものなんて買ってあげられないかもしれないけど……!」グッ

曜「……っ」

善子「お金じゃ『好き』は買えないのよ!?」グイッ

曜「……」ピクピク

先生「ストップ。もういいわ」

善子「何とか言いなさいよ! このっ!!」グッ

曜(先生助けて……!)チラッ

先生「津島さん。一旦離れましょう?」

善子「ふふ……」ニヤリ

曜「」ビクッ

善子「曜さんなら私の手なんて簡単に振りほどけるのに」

善子「そうしないってことは……そうなのね?」

善子「私に殺されたいってことね??」ググッ

先生「津島さん!!」ガシッ

善子「……はっ!?」ビクッ

先生「本当に死んじゃうわよ」

曜「」

善子「あぁ!? ごめんなさい!! 私……どうして」パッ

曜「げほっ!! おぇっ!!」ハァハァ

先生「大丈夫?」

曜「本当に……死ぬかと思った……」ゲホッ

善子「わ、私……」

先生「ふぅ……危なかったわね」

善子「ごめんなさい! でも……いくら演技とはいえあんなこと言う?」

曜「せめて別れを切り出させてよ……」ゼェゼェ



82: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:28:54.78 ID:oMcc4SEV.net

善子「……」

先生「二人は、付き合ってどれくらい経つの?」

曜「二週間くらいですかね」

先生「今までにケンカは?」

曜「昨日派手にやらかしました」

先生「派手に、というと?」

善子「殴り合いとか、そういうのはないわよ」

曜「私は思い切り引っ叩かれたけど」

善子「それは私じゃないし」

先生「ケンカの原因……聞いてもいい?」

曜「私です」

善子「はい」

先生「そ、そう……」

先生「いつ仲直りしたの?」

曜「今日の午前中かな。私が会ったときにはもうフラフラでした」

善子「昨日から全く眠れてなくて……」

先生「なるほど」カキカキ

曜「それで、その……ストレス何とかは治るんですよね?」

先生「治るわよ。それに……まだ昨日のできごとなら、むしろ正常とも言えるわね」

曜「正常!? これが!!?」ガタッ

善子「曜さん落ち着いて……」ガシッ

先生「一ヶ月以上続くようだと心的外傷後ストレス障害……つまりPTSDに該当するけれど」

先生「そこまで続くことはほとんどないわ。たいてい一週間もすれば自然に収まる」

曜「一週間も我慢しろと? こんなに辛そうなのに!」

先生「待って。何もしないとは言ってないわ」

曜「ならいいですけど……」

先生「そうね……光に過敏になったり、一晩中寝付けないというのは、神経が異常に興奮しているからで間違いないでしょう」

曜「……」

先生「大切な人との別れや災害などで心に酷いダメージを受けたとき、自我を保つために起こる反応よ」

先生「だから……これは病気ではないわ」



83: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:29:37.59 ID:oMcc4SEV.net

善子「病気じゃない……?」

先生「熱が出たりフラフラしたり、風邪に似た症状が出ているのもそのせいね」

先生「もし今の津島さんが抗生物質を飲んだところで治るものじゃないのよ」

先生「とりあえず発熱は酷いみたいだから、解熱剤を出しておくわね。それで様子を見てちょうだい」

曜「ちょっと! それだけですか!?」

善子「あの……解熱剤ならさっきの病院で貰いました……」

先生「そう? じゃあ解熱剤はなしで」

曜「もっと他に……何か根本的に治す方法はないんですか?」

先生「ないわ」

曜「そんな……」

先生「時間が経つにつれて落ち着いていくとは思うけれど……」

曜「……」グスッ

善子「まあ……病気じゃないって分かっただけでもよかったわよ……」

善子「ママには高い検査費用を払ってもらわなきゃだけど」

先生「一応言っておくけれど、儲けるために高い検査をしてもらったわけではないのよ」

先生「外科的内科的要因がないとはっきりしたからこそ、急性ストレス障害だって言えるんだから」

先生「中には脳にできた腫瘍のせいだったり、脳梗塞だったりするケースもあるからね」

善子「そうなったら大手術よね……」

先生「症状も、今はだいぶ落ち着いているみたいね? 熱は相変わらずだけど」

善子「はい……。さっき解熱剤を飲んだので」

先生「もし心配なようなら、また三日くらいしたら来てちょうだい」

曜「善子ちゃんが死んじゃったら責任取れるんですか?」

先生「え?」

善子「バカなこと言わないで。病気じゃないんだし、死んだりしないわよ」

曜「風邪なら私が看病してあげるよ? でもまたさっきみたいに呼吸が弱くなったりしたら……」

曜「私、どうしたらいいか分かんないよ……」グスッ

先生「……」

善子「さっきのは熱が上がったせいよ。解熱剤が効いてるうちは大丈夫だから」

曜「私だって二十四時間善子ちゃんを見ててあげられるわけじゃないんです」

曜「もし私がトイレに行ってるとき、お風呂に入ってるとき、善子ちゃんの症状が悪くなったら?」



84: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:30:11.43 ID:oMcc4SEV.net

曜「……他に誰もいなかったら??」

曜「善子ちゃんのママだってお仕事だし、学校の先生が休めないのは私だって分かるよ」

曜「だから……」

先生「入院させろって? それは無理」

曜「どうして!?」ガタッ

先生「無茶言わないで。入院は本人や家族の希望でできるわけではないの」

先生「一定の診断基準があって、必要であれば入院してもらうけれど」

先生「今回の例ではその基準は満たさない……」

曜「くっ……」

善子「そもそも私、入院はしたくないわ」

曜「その急性何とかで入院してる人はいないんですか」

先生「いるわよ。普通の病棟ではないけれど」

善子「それって……」

先生「かなり重度で……自分や周りの命が危険な場合ね」

曜「危険じゃん! 善子ちゃんだってさっき……」

曜「私を殺そうとしたよ!!」

善子「っ!?」ビクッ

先生「あれは……」

曜「演技だったように見えますか!? どう見ても本気の目をしてた!」

善子「本気なわけないでしょ!?」

善子「私……よく分からないうちに曜さんの首を絞めてて……」

善子「曜さんを殺そうなんて、一度も思ったこと……」

先生「……」

曜「だからお願いです。善子ちゃんを……」

先生「あんまりこういうことを言いたくないのだけど」

先生「精神病棟の患者さんがどんな待遇か、あなたは知らないのね」

曜「え……」

善子「私は知ってるわ。手足をベッドに縛り付けられて……病室って名前の檻に閉じ込められるのよね」

先生「ええ。あなたが想像しているような、ナースが二十四時間付きっきりで看病してくれるようなところじゃないわ」

曜「そ、そんな……」



85: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:30:47.34 ID:oMcc4SEV.net

善子「曜さん、もういいわ。帰りましょう」

曜「……」

先生「ごめんなさい、キツい言い方をしてしまって」

先生「あなたから見たら今の津島さんは普通じゃなく見えるでしょう」

先生「でも私から見れば……これでも心療内科医として見れば、今の津島さんは至って正常」

先生「発熱は解熱剤で抑えつつ、経過を見るのが正しい判断ね」

先生「どうしても納得が行かないのなら、別の病院で診てもらってもいいけれど……」

先生「たぶん同じことを言われるでしょうね」

曜「……」

善子「曜さん。もういいでしょ」

曜「も、もし……」

先生「分かったわ。ベンゾジアゼピンを出しておくから……どうしてもというときにだけ飲んで」

善子「ベン……何ですって?」

先生「向精神薬。分かってると思うけど……用法用量は必ず守ること。それが条件」

曜「それで善子ちゃんはよくなりますか?」

先生「だから……何度も言うようだけれど」ハァ

善子「時間が経つのを待てってことね」

先生「これは治療薬じゃないのよ。そこのところ勘違いしないでね」

曜「はい……」

善子「何だかごめんなさい」ペコ

先生「ううん。本当は保護者の方に説明をした上で出すべきとは思うのだけれど」

先生「薬剤師の方から薬について説明があるから……保護者の方にも伝えてあげて」

善子「分かりました」

曜「……」

先生「それでは、お大事に」

曜「……」

善子「ほら、行くわよ。一人じゃ歩けないから手伝って」

曜「うん……」

コンコン

「失礼します」



86: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:31:24.31 ID:oMcc4SEV.net

ガラッ

看護師「車椅子を用意したので、そちらを使ってください」

善子「わざわざすみません」

曜「……」

看護師「あら? さっきはあんなに元気だったのに」

先生「……」ジッ

看護師「いえ、何でもありません……」

善子「ありがとうございました……」ペコリ

看護師「お大事にしてください」フリフリ

ストンッ

善子「よっと……」

曜「……」

善子「車椅子、押してくれないの?」

曜「押すよ」

善子「悪いわね、心配かけて」

曜「ううん。先生に失礼なこと言っちゃったかな」

善子「そうね」

曜「一応薬は貰えたから……本当に辛くなったら飲まなきゃだめだよ?」

善子「私より曜さんが飲むべきじゃないかしら」フフッ

曜「え……」

善子「冗談よ」

曜「うん……」

善子「私のほうが病人なのに、何で私が曜さんを元気づけなきゃならないのよ」

曜「そうだよね。ごめん」

善子「熱だけは気をつけましょ」

曜「そうだね」

善子「でも、結局インフルエンザでも風邪でもなかったのよね」

曜「これが正常だって言ってたね」

善子「どう見ても病気よね?」

曜「うん……」



87: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:32:02.91 ID:oMcc4SEV.net

善子「ふふ……そういうこと」

善子「ヒトの体が抱えし不治の病……」

善子「心という欠陥を持った代償ってことね」ニヤリ

曜「……何言ってるの?」

善子「う……いいでしょたまには」

曜「善子ちゃん思ったより元気だね」

善子「本当は曜さんが元気を分けなきゃいけないんだけど?」

曜「そっか。うん」

善子「私は大丈夫だから。安心して側にいてくれていいわよ」

曜「私も病気かな」

善子「え?」

曜「恋って名前の病気」

善子「いや、曜さんの場合は……」

曜「治療薬は、善子ちゃんのキス」

チュッ

善子「んっ……」

曜「好きだよ」

善子「キスはダメなんじゃなかったの」

曜「病気じゃないんだもん。関係ないよ」

善子「……そうね」

曜「安心しておしっこも飲めるね」

善子「曜さんっておしっこが好きすぎる病気……というか精神障害かも」

曜「冗談きっつ……」

善子「割と真面目に」

曜「でも、善子ちゃんはお医者さんじゃないからね」

善子「ええ。それに、たぶん診断はされないでしょうね」

曜「そう?」

善子「診断基準は決まってるわ……『生活に支障をきたしていること』」

曜「きたしてないね」

善子「きたして……ないのかしら?」



90: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:34:38.35 ID:oMcc4SEV.net

曜「それも含めて私のこと好きでいてくれてるんだよね」

善子「まあね。私は心が広いから」

曜「なら大丈夫。私もどんな善子ちゃんでも好きでいるから」

善子「じゃあさっき何で檻にぶち込もうとしたわけ?」

曜「あれは知らなかっただけだし……。って言うかその言い方は入ってる人に失礼だよ」

善子「私が曜さんを殺そうとしたですって? そんなことあるわけないじゃない」

曜「いや、あれは目が本気だったってば……」

善子「ないわよ。少なくとも、私が私でいるうちはね」

曜「善子ちゃんが善子ちゃんでいるうちは……?」

善子「曜さんが私でいていいって言ってくれるうちは」

曜「それなら心配ないね」

善子「ええ」

曜「善子ちゃんじゃない善子ちゃん、かぁ……」

善子「想像しなくていいから」

曜「見てみたい、気がしないでもないな」

善子「そんなに死にたいの?」

曜「善子ちゃんに殺されるなら恋人冥利に尽きるね」

善子「それこそ檻にぶち込まれちゃうわよ」

曜「あはは。善子ちゃんうまいね」

善子「何もうまくないし、曜さんは少しは反省してよね?」

曜「反省? 何を?」

善子「少しは周りを見て行動して」

曜「してるつもりだけどな」

善子「いつもはね。でも、余裕がなくなると周りが見えなくなるでしょう」

曜「そんなことあったっけ?」

善子「……もういいわ。帰りましょ」

曜「ねぇいつ? 教えてよー」

……

 会計後

曜「ひぇー。MRIってあんなに高いんだ……」



91: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:35:14.17 ID:oMcc4SEV.net

善子「これはママもびっくりするでしょうね」

曜「今すぐ払えって言われたらどうしようかと思ったよ」

善子「そんなこと言わないでしょう」

曜「『払えないなら体で……♡』とかさ」

善子「いや、意味が分からないわ」

曜「たぶん病院らしく血液を五リットルくらい抜かれるね」

善子「そんなに血液ないから」

曜「それとも臓器提供? さすがに今すぐは嫌だなぁ」

善子「それ闇病院」

曜「現実的な範囲だと……一生ナースさんたちのペットにされるとか?」

善子「うわ……」ヒキ

曜「win-winじゃん」

善子「気持ち悪い」

曜「大丈夫? 洗面器借りてこようか?」

善子「曜さんが気持ち悪いのよ! ってこの流れ前にもやった!」

曜「心配しなくても私は善子ちゃんだけのペットだからね」

善子「はいはい。『おしっこしたくなったら言ってね』でしょう?」

曜「うん」

善子「ペットボトルじゃないの」

曜「喉が乾いたらいつでも……あ、さっきは出せなくてごめん」

善子「え?」

曜「保健室で。善子ちゃんは出してくれたのに、私は出してあげられなくて……」

善子「な、何の話?」

曜「覚えてないの?」

善子「変な事言ってないで帰るわよ」



92: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:35:47.45 ID:oMcc4SEV.net

曜「本当に覚えてないの??」

善子「そういえばそんなことをしたような……。ううん、その手には乗らないわ!」

曜「……」

善子「何よ」

曜「ふふっ」ニヤリ

善子「あっ、また変なこと考えてる」

曜「体調悪いときの善子ちゃんは記憶がない……と」メモメモ

善子「いや、本当に体調悪いときは休ませて?」

曜「分かってるよ」

善子「本当かしら……」ハァ

曜「帰ろうか」

善子「そうね」

曜「えっと……次のバスは」

善子「あ」

曜「どうしたの?」

善子「そういえば私たち、ヘリでここまで来たのよね」

曜「鞠莉ちゃんと果南ちゃん!」

善子「すっかり忘れてたわ」

曜「電話……は病院だからやめておくとして、メールしてみようか」スッ

 曜♡善子ちゃん:鞠莉さーん

 Mari☆:診察終わった? 善子の調子はどう?

曜「おっ、返信が早い。ってことはもう終わってるね」

善子「乗り物酔いくらいでまだ診察終わってなかったら問題よ」

 曜♡善子ちゃん:熱も少し下がったし、検査も問題なかったよ

 Mari☆:よかった☆ 心配してたのよ?

 曜♡善子ちゃん:それはそうと、果南ちゃんは大丈夫?

 Mari☆:果南は……ええと

 Mari☆:すごく言いにくいんだけどね

 Mari☆:果南はもういないの。遠くに行ってしまったわ

曜「え」



93: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:36:23.18 ID:oMcc4SEV.net

善子「どうしたの?」

曜「果南ちゃん……死んじゃったって」

善子「」

曜「嘘だよね?」アハハ

スッ

プルル……

鞠莉『もしもし? 曜?』

曜「鞠莉ちゃん? 果南ちゃんが死んじゃったって……」

鞠莉『果南は先にバスで帰ったわ』

曜「そう……バスで……」

曜『んん!!?』

善子「そんなことだろうと思った……」ハァ

鞠莉『最後まで何とか引き留めようとしたのよ。でも……』

鞠莉『手の届かないところに』グスッ

曜「えぇ……」

鞠莉『あ、もう終わったのよね? ヘリポートで待ってるから来て』

曜「う、うん……」

善子「すごく今更なんだけど、ヘリポートってドクターヘリ用なんじゃないの?」

曜「それなら大丈夫。小原家専用のヘリポートが別であるみたいだから」

善子「何のために?」

曜「さぁ?」

鞠莉『酷いわね。せっかく助けてあげたのに』

善子「あっ……まだお礼も言ってなかったわ。本当にありがとう」

鞠莉『いいわよ。その代わりたっぷりお話を聞かせてもらうから♡』

曜「検査のこと? 大変だったよー? 善子ちゃんったらさぁ」

善子「こら! 余計なことは言わなくていいから!」ガシッ

曜「もごもご」

鞠莉『何? 検査がどうしたの?』

曜「善子ちゃんに殺されかけたりね」

善子「誤解されるからやめなさいって!」



94: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:36:56.66 ID:oMcc4SEV.net

鞠莉『それならいつものことじゃない』

善子「え?」

鞠莉『曜はいっつも善子のことが好きすぎて死にかけてるわ♡』

曜「そうなんだけどさー」アハハ

善子「待って!? 私の知らないところで何してるの!?」

曜「それは秘密だよ」

鞠莉『シークレット♡』

善子「は?」

曜「さーて行こう行こう。鞠莉さんが一人で寂しそうだし」

善子「ちょっと私車椅子なんだけど!? 押しなさいよ!」

曜「負けた人はジュースおごりだよ!」タッ

善子「こら! 待ちなさいってば!」

タッタッ……

善子「え……嘘でしょ」

善子「あのバカ、私を置いていくなんて」

善子「……」グイッ

キィ キィ

善子「何よこれ、全然進まないじゃない!」

キィ キィ

善子「車椅子って楽そう、なんて思ってごめんなさい……」

キィ……

善子「って曜さん本当に行っちゃったの?」

善子「はぁぁ……」

キィ キィ

「タクシーをお待ちですか?」

善子「え? 待ってないわよ……」

曜「ちょうど空車ですけど」

善子「あっ、曜さん! 酷いじゃないの置いていくなんて!」

曜「車椅子じゃ階段は登れないからね。私が連れて行ってあげるよ」グイッ

善子「ひゃあ!?」



95: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:37:31.66 ID:oMcc4SEV.net

曜「行き先はどちらで?」

善子「エレベーター使えば行けるわよね」

曜「車椅子戻しに来るの面倒だし」

善子「それは……確かにね」

曜「で、どちらに?」

善子「もう着いたわ」

曜「え?」

善子「もう着いた」ギュッ

曜「うん」

善子「……温かい」

曜「私も」ギュ

善子「さて、行きましょうか。階段じゃなくてエレベーターでね」

曜「善子ちゃん軽いから階段でも余裕だよ!」ダッ

善子「あっ、ちょっと!」

曜「屋上までヨーソロー!」

善子「私頭痛いんだけど!!?」

曜「あ……そっか」

善子「エレベーターでお願いね」

曜「うん」

善子「それと、車椅子も戻さないと」

曜「忘れてた」キィ

善子「しっかりしてよもう」

曜「うん……」

「あ、終わったんだ?」

善子「え?」

果南「どうだった? 見た感じ元気そうだけど」

曜「バスで帰ったんじゃ……」

果南「乗ろうと思ったらちょうどバスが行っちゃってさ。次のバスが一時間も後なんだもん」

善子「ヘリで帰るの?」

果南「う……そうだね。鞠莉一人の操縦じゃ心配だし」



96: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:38:04.88 ID:oMcc4SEV.net

曜「酔い止めは?」

果南「一応飲んだよ」

善子「準備万端ね」

果南「ねぇ、この薬ヘリには対応してないみたいだけど大丈夫かな?」

善子「えっ」

曜「大きいドラッグストアじゃないと売ってないのかなぁ」

善子「本気で言ってるの? だとしたらつける薬なんてないわよ」

曜「病院なんだからあるんじゃないの?」

善子「何とかにつける薬はないって言うじゃない」

果南「?」

曜「手の施しようがないってことかな?」

果南「そんな……私死んじゃうの?」

善子「……鞠莉さん助けて」ハァ

……

 屋上 ヘリポート

鞠莉「遅かったじゃない。あれ……?」

果南「鞠莉一人に可愛い後輩は任せられないからね」

鞠莉「そんなに信用ないかな……」シュン

善子「少なくともヘリの操縦に関してはね。無免許だし」

果南「私もヘリのことはよく分かんないし全くの素人だけど……」

鞠莉「おまけに高所恐怖症だけど?」

果南「それは仕方ないでしょ」

曜「高所恐怖症の治療薬とかあるのかな?」

善子「ないわよ」

曜「そっか。じゃあ私が開発すれば大儲け間違いなしだ」

鞠莉「そんな薬なくても簡単じゃない♡」

果南「あるの!?」

鞠莉「アルコールよ♡」

善子「はぁ……」

曜「ね、ねぇまさか飲酒……」



98: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:39:37.36 ID:oMcc4SEV.net

果南「飲んでないから! 何なら確かめて貰ってもいいよ」

鞠莉「あら? 曜と果南がキス? 見たい見たい!」

果南「えっ、そういう意味じゃ……」

曜「……」ドキドキ

善子「おい」

曜「善子ちゃんごめんね? これも安全のためだから……」スッ

果南「え……本当にするの?」

曜「しないの?」

果南「……したいの?」

曜「それはもちろんした……」

善子「え? ヘリの下に乗りたいですって? 途中で落ちないように気をつけてね」

鞠莉「オゥ、嫉妬ファイヤーね」

果南「さすがに善子の前ではやめようよ」

曜「わ、わかった……」ドキドキ

善子「果南さんもよ!」

鞠莉「だいぶ元気になってきたみたいね?」

善子「え? そうね、熱も下がってきたみたいだし……」

曜「やっぱり私のキスが効いたのかな?」

果南「わーお」

鞠莉「キスは禁止されたんじゃなかった?」

曜「あ、それがね。病気じゃないって分かったから遠慮なくしていいって」

善子「遠慮はして」

曜「おしっ……」

善子「遠慮はして!!」バシッ!

曜「うん……」ヒリヒリ

果南「なかなか強烈なビンタだね」アハハ

鞠莉「曜のほっぺ赤くなってる……」

善子「自業自得よ」フンッ

曜「元気な善子ちゃんならこんなものじゃ済まないからね」

果南「そうなの?」



99: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:40:09.12 ID:oMcc4SEV.net

善子「私がいつも暴力振るってるみたいな言い方しないでよ!」

鞠莉「曜はそういうの好きそうね」

曜「うん!」

善子「本当に気持ち悪いからやめて」

果南「あはは。それじゃあ私はそろそろ……」

鞠莉「あ、どうぞ乗って」スッ

果南「曜、ヘリの操縦は分かるよね?」

曜「分からないよ」

果南「善子は? ゲームと同じだよ(たぶん)」

善子「ゲームでなら……まあ」

果南「それでは良い旅を!」ゞ

曜「ヨーソロー!」ゞ

鞠莉「果南も乗るのよ」

果南「嫌だよ怖いもん」

善子「酔い止め飲んだのよね? 気持ち悪くはならないはずよ」

果南「だからヘリ対応じゃないんだってばー!」

鞠莉「いいから早く乗って!」グイッ

果南「わっ、そんな無理やり……」ズルズル

曜「善子ちゃんもヘリ飛ばせるの?」

善子「なわけないでしょ」

果南「お願いだからバスで帰らせてください……」

鞠莉「もう……仕方ないわね」

果南「本当!? やった!」

鞠莉「後ろの席でいいわ。隣には善子に乗ってもらうから」

善子「えっ」

曜「私、善子ちゃんと隣がいいな」

鞠莉「じゃあ善子がパイロット、曜がアシスタントね」

果南「嫌だ! 本当に死ぬ!!」

鞠莉「なら隣に乗って」

果南「分かった、分かったから……ゆっくり飛んでよね?」



101: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:41:43.70 ID:oMcc4SEV.net

鞠莉「ええ。帰りは急ぐ理由がないもの」

果南「ほっ……」

善子「何か扱い慣れてるわね」

曜「果南ちゃんもペット属性持ちかな?」

善子「ボトルではないわよ」

曜「え?」

善子「何でもないわ」

鞠莉「それじゃ、シートベルトを締めて」カチャ

果南「このシートベルトも大丈夫なのかなぁ……。もっとジェットコースターみたいなガッチリしたやつがいいよ」カチャカチャ

善子「まあ、墜落したらシートベルトも何もないもの」カチャ

曜「あれ? うまく入らないや……」カチャカチャ

善子「貸して。私がやるわ」スッ

曜「あっ♡」ビクッ

果南「何今の声」

鞠莉「そういうのは飛んでからにしてよね?」

善子「誤解よ」

曜「善子ちゃんの方から触ってくるなんて……♡」ドキドキ

善子「いいから早く」カチャ

曜「ふぅ……まあ私もどさくさに紛れて触ったしお互い様だね」 

善子「は?」

鞠莉「出力全開! テイクオフ♡」グイッ

果南「ちょっと鞠莉!? 全開はやめようよ!!」

シーン

曜「あれ?」

鞠莉「おかしいわね……」グイグイ

善子「エンジンかかってないわよ」

果南「大丈夫かな私たち……」

……



102: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:42:20.22 ID:oMcc4SEV.net

 上空

バババ

鞠莉「うーん、綺麗な空! 果南も見たら?」

果南「ここは地上……これはVR……」ブツブツ

曜「善子ちゃん見て! 雲の上だよ!」

善子「わぁ……」

鞠莉「飛行機が飛ぶのはずーっと上だけどね?」

曜「飛行機より現実味があって好きだなー」

善子「分かるわ。飛行機は下も見えないし……」

果南「見えなくていいよ! やっぱりバカだよ透明にした人!」

鞠莉「でも雲の上なら怖くないんじゃない?」

果南「え……?」

曜「そっか! 落ちてもふかふかだから助かる!」

果南「晴れてるじゃん! 助かるほど曇ってないよ!」

善子「……」

鞠莉「善子?」

善子「え、ううん。どこまで冗談なのかしら……」

鞠莉「本気よ。二人ともね」

善子「えぇ……」

曜「あっ、善子ちゃんが落ちたら私がクッションになるからね?」

善子「助からなそうね」

曜「もっと太らないとだめかなぁ」

果南「海に落ちれば大丈夫だよきっと」

鞠莉「ここから落ちたら海面はコンクリートより硬いわよ」

果南「そんなことない! 海は優しいよ。空と違って……」

曜「そういえば私、スカイダイビングしたことないんだよねぇ」

善子「死ぬわよ」

曜「今はやらないよ! パラシュートもないし……ん?」

鞠莉「積んでない?」

曜「ないね」



103: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:42:53.70 ID:oMcc4SEV.net

果南「うわぁぁぁ!! 聞きたくなかった!!」

鞠莉「大丈夫よ。パラシュートがあっても使い方が分からないから」

善子「大丈夫じゃないわよ」

曜「大丈夫、ずっと一緒にいるから」ギュッ

善子「だから大丈夫じゃないってば」

果南「って言うか学校まだ!? 過ぎてない!?」

鞠莉「せっかく景色がいいから空中散歩してるのよ」

果南「空は歩けないよ! 散歩なら地面か海の上でしようよ!!」

曜「果南ちゃんが可哀想だからそろそろ戻ろうよ」

鞠莉「そうね。急降下するから掴まってて!」グイッ

果南「うわぁぁあぁぁ!!?」

曜「やーん怖いぃ♡」ギュー

善子「どこ触ってんのよバカぁぁ!!」

鞠莉「学校が見えてきたわ! あと十秒もないわよ!」

果南「死ぬ!! 本当に死ぬ!!!」

曜「鞠莉ちゃん、もしかして今の……善子ちゃんが無事だったってことと掛けてたり?」

鞠莉「What?」

曜「重病もないんでしょ?」

善子「バカなこと言ってないで掴まりなさい!」

鞠莉「ふふ♡」

スッ

バババ……

鞠莉「さて、着いたわよ」

善子「果南さん大丈夫?」

果南「うぇ……気持ち悪い」

曜「やっぱりヘリ用の酔い止めじゃないとダメかぁ」ハァ

鞠莉「高所恐怖症はアルコールでごまかせるけど、むしろ酔っちゃいそうね」

善子「まだその話してたのね」

鞠莉「ヘリの中で吐かれたら最悪よ」

曜「楽しすぎて漏らすかと思った」アハハ



104: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:43:27.47 ID:oMcc4SEV.net

善子「それも嫌ね」

果南「やばい……フラフラしすぎて歩けない」

曜「それじゃ私が」スッ

果南「え?」

曜「善子ちゃんは自分で歩いてね」

善子「歩くわよ。だいぶ楽になってきたし」

曜「よいしょっと……」ズシッ

鞠莉「大丈夫? 善子と違って果南は重たいでしょ」

果南「失礼だね! これでも気にしてるんだから……」

善子「果南さんは太ってるんじゃなくて筋肉の重さのような……」

曜「筋肉は脂肪よりも重たいからね」

鞠莉「それでも、曜より重たいんじゃない?」

曜「だ、大丈夫……果南ちゃんのためだもん」ズシッ

果南「曜ってこんなに優しかったっけ? 好きになっちゃいそう」

善子「だ、ダメよ!!」

鞠莉「冗談よ。本気にしないで」フフッ

果南「あはは。善子、ヤキモチ妬いてるの?」

善子「冗談でもダメ!」

曜「二股でも許してくれる……?」ドキドキ

善子「は?」

曜「冗談だよ」アハハ

善子「果南さん降りて」

果南「え? うん……」ストッ

曜「分かったよ。私は善子ちゃん専用だから……」スッ

善子「わっ、急に持ち上げないで!」フワッ

曜「善子ちゃん軽い!」ピョンピョン

果南「……そんなに私って重い?」

鞠莉「違うわよ。曜は善子のこと大好きだもの……♡」

果南「あぁ、そういうこと」

善子「納得してないで止めなさいってばー!」



106: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:45:04.57 ID:oMcc4SEV.net

曜「そーれっ!」ピョンピョン

鞠莉「善子が病人なの忘れてない?」

果南「だよね。私も忘れてた」

曜「病人じゃないよね?」

善子「頭が痛くて熱が出てるのよ。担いでぴょんぴょん飛び跳ねるのはやめてほしいわね」ハァ

曜「じゃあ熱が下がって頭が痛くなくなってからのお楽しみだね」

善子「はぁ……頭が痛いわ」

鞠莉「さ、講習に戻らないと。果南もテストが危ないんでしょ?」

果南「まあね。鞠莉やダイヤと違って私は勉強に不向きみたいだし」

曜「私も! 同じだね」アハハ

果南「気が合うね。付き合っちゃう?」

善子「なっ……!?」

曜「……」ドキドキ

鞠莉「やめなさい。善子が可哀想よ」

果南「冗談だよ。善子面白いね」アハハ

善子「人をからかって遊ぶの禁止!」

曜「でも私には善子ちゃんがいるし……」ドキドキ

善子「曜さんもよ!」

曜「うん」

鞠莉「ところで、私と果南は講習に戻るけど……二人はどうする?」

果南「沼津まで行ったなら家で降ろしてあげればよかったね」

鞠莉「あっ……そういうことは早く言ってよ!」

善子「家にヘリが墜落したら大変だもの、いいわよ」

曜「そうだね」アハハ

鞠莉「むっ。失礼しちゃうわね」

曜「大丈夫だよ。善子ちゃんは私が責任を持って送っていくから」

果南「気が利かなくてごめんね?」

善子「そんなの気にしないで。連れて行ってもらえただけですごく感謝してるんだから……」

曜「私も善子ちゃんと空中デートができてよかったよ」

鞠莉「そういうことならいつでも乗せてあげるわよ?」フフッ



107: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:45:44.55 ID:oMcc4SEV.net

果南「やめて。お願いだから」

鞠莉「あら? 果南もついてくる気?」

果南「えっいや……鞠莉一人じゃ心配だし」

鞠莉「果南……♡」ドキドキ

「こほん」

曜「あ、ダイヤさん」

果南「ダイヤ!? お、おかえり……」

ダイヤ「鞠莉さん! あんな危険な着陸をするなんて……!」

鞠莉「スレスレだったでしょ?」

果南「死ぬかと思ったよ」ハァ

曜「私は楽しかった」アハハ

善子「わ、私は……」

ダイヤ「そういう問題ではありませんわ!! みなさんを危険な目にあわせるなんて何を考えていますの!?」

鞠莉「えーと、これには海よりも深ーい事情がね?」

ダイヤ「だまらっしゃい! もし次同じようなことがあれば内浦の海に沈めて差し上げますわよ!」

果南「ひぇっ……」

曜「あはは、ダイヤさんならやりかねないな」

善子「でも『次から』なのね」フフッ

ダイヤ「今回は善子さんを病院へ連れて行くとの事情がありましたから……」

ダイヤ「いえ、ここは素直にお礼を言うべきですわね」

ダイヤ「本当に助かりましたわ。ありがとうございます」ペコリ

鞠莉「ふっふーん! こんなこともあろうかと病院に専用ヘリポートを用意しておいてよかったわ」

果南「作ったきり一度も使ってなかったんじゃない?」

鞠莉「ええ」

曜「お役に立てて光栄です」アハハ

善子「立ちたくないわよこんな役」

ダイヤ「それはそうと、善子さんのお母様には連絡しておきましたので……」

善子「あ、ありがとう……助かったわ」

ダイヤ「それから……」グイッ

ギュッ



108: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:46:20.53 ID:oMcc4SEV.net

善子「え……?」

ダイヤ「あまり心配をかけてはいけませんよ」

善子「は、はい……」ドキドキ

果南「やめなよダイヤ。曜が嫉妬で……」

曜「……」ニコニコ

果南「やっぱりやめなくていいや」

善子「はぁ……」

鞠莉「ダイヤのハグはレア物よ? 大切にしなさい」

善子「え?」

果南「そういえばルビィちゃん以外にしてるの見たことないや」

曜「あはは、本当の姉妹みたいだね」

ダイヤ「……」

鞠莉「……」

果南「?」

善子「えっ」

曜「私、何か変なこと言った?」

ダイヤ「こほん」

鞠莉「さ、さぁ早く教室へ戻りましょ。善子は無理せず保健室で休んでね」

善子「ええ、そうするわ」

果南「今度はちゃんと見ててあげなよ?」

曜「うん。善子ちゃんに辛い思いはさせないよ」

善子「調子がいいんだから……」ハァ

ダイヤ「善子さん、帰りにお母様が迎えに来てくださるとのことですわ。それまてゆっくり休んでください」

曜「ママが来たら何て言ってやろうかな」

善子「やめなさいよ。ママだって仕事なんだから……」

果南「あはは。それじゃ行こっか」

鞠莉「二人きりだからって変なことしちゃだめよ?」

曜「えっ?」

善子「大丈夫よ。曜さんにそんな勇気ないもの」フフッ

ダイヤ「当たり前です! 保健室は体調の優れない生徒が休む場所であって、決して恋人同士のそういう……」



109: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:46:59.30 ID:oMcc4SEV.net

果南「ダイヤ?」

ダイヤ「と、とにかく場をわきまえた行動をとること! 以上ですわ!!」カァアア

善子「えぇ……」

鞠莉「ダイヤはたまーにやっちゃうのよね。お墓に入っちゃうの」

果南「鞠莉、それ死んでる」

曜「ダイヤさん可愛いなぁ……」ニヤニヤ

善子「ちょっと曜さん?」

……

 保健室

曜「ふぅ……やっと戻ってこれたね」

善子「そうね……」

曜「どうする?」

善子「どうするって?」

曜「ダイヤさんが言ってたじゃん。恋人同士のそういうことをするのは……って」

善子「し、しないわよ!」カァアア

曜「したくないの?」

善子「それは……したいけど」ボソボソ

曜「いいよ」

善子「本当に?」

曜「本当だよ。それて善子ちゃんの元気が出るなら」

善子「……私のためにしてくれるの?」

曜「そうだよ?」

善子「ならやめとくわ」

曜「えっ、何で? しないの?」

善子「私のために無理はしてほしくないから」

曜「別に無理してるわけじゃ……」

善子「曜さんはしたいの?」

曜「した……」

善子「私のためじゃなくて、曜さん自身の意思で答えて」

曜「……」



111: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:48:44.92 ID:oMcc4SEV.net

善子「曜さんっておしっこも女の子も大好きなのに、そういうことにはあんまり興味がないのね」フフッ

曜「そういう目では見てないからね」

善子「私のことも……」

曜「善子ちゃんは特別」

善子「……」

曜「約束、ちゃんと覚えてるよ」

曜「善子ちゃんのお願いは聞かない。私は私の意思で善子ちゃんと……」

善子「……」ドキドキ

曜「おしっこを飲み合いたい」

善子「えっ」

曜「で、でも私もね! 善子ちゃんに無理はしてほしくないから!」

善子「そう……」

曜「だから善子ちゃんが私に飲ませたくなったら……」

曜「それか私のを飲みたくなったら、そのときは一緒にしようね」

善子「ならないわよ」

曜「うっ……まだ分からないよ。いつかなるかもしれないじゃん」

善子「ならないわ。絶対に」

曜「じゃあ我慢する……」

善子「で、でも曜さんがどうしてもって言うなら……今日くらいは」

曜「いいよ、無理しなくて」

善子「我慢できるの?」

曜「できるよ。善子ちゃんのためなら」

善子「……」ハァ

曜「な、何?」

善子「もうやめましょ」

曜「何をやめるの? まさか私と付き合うのを……」

善子「お願い禁止を、よ」

曜「え?」

善子「結局これじゃ前と変わらないじゃない」

善子「ううん、それどころかややこしくなってる」



112: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:49:19.10 ID:oMcc4SEV.net

曜「ややこしく?」

善子「本音が言えなくなる約束なら……そんなの守らなくていいわ」

曜「いいの?」

善子「いいわよ」

曜「分かった」

善子「私がそう言うなら、なんて言わないでよね」

曜「言わないよ」

善子「安心したわ。危うく堂々巡りになるところだった」

曜「じゃあ私のお願い。善子ちゃんのおしっこを飲ませてください」

善子「えっ、ちょっと」

曜「お願い禁止、は禁止だよ?」

善子「そもそもお願い禁止されてたのって私だけじゃ……」

曜「あー、そういえばそうだね。じゃあ善子ちゃんのお願いを聞こう」

善子「そうよ。私のお願い……」

曜「服、脱いだ方がいい?」

善子「え?」

曜「私とそういうことしたいんでしょ? いいよ」

善子「ち、違……」

曜「さっきそう言ってたじゃん」

善子「言ったけどあれは……そういうのじゃなくて」

曜「お願いじゃないの?」

善子「……」

曜「じゃあ改めて聞くね。私にお願いしたいことは?」

善子「わ、私と……」

曜「善子ちゃんと?」

善子「その……」

曜「ほら、言ってみて?」ニヤニヤ

善子「……」カァアア

曜「私と『アレ』してください、って」

善子「わ、わた……」



113: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:49:59.78 ID:oMcc4SEV.net

曜「はーい、時間切れ! 残念でした!!」

善子「えっ? えっ!?」

曜「私のターンです。いくよ」

善子「やっ、おしっこは……今は出ないから……」カァアア

曜「私と……」

善子「私の側にいて」

曜「え?」

善子「私の側にいて! これがお願い!」

曜「そんなことでいいの?」

善子「そんなことって……これでも本気なんだけど」

曜「そんなの当たり前じゃん。お願いされるまでもないよ」

善子「う……。曜さんは?」

曜「私のお願い?」

善子「そうよ。やっぱりおしっこ?」

曜「キス、してもいい?」

善子「……」

曜「お願い」

善子「ええ」

曜「それじゃいくよ……」スッ

善子「っ!!」グイッ

曜「え」

善子「たまには私から……」

チュッ

曜「え、え……?」カァアア

善子「曜さんがお願いしたんだからね……?」

チュルッ

曜「や、やだ……」

善子「嫌?」

曜「嫌……じゃないけど」

善子「じゃあ何よ」



114: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:50:35.21 ID:oMcc4SEV.net

曜「キスされるのって……こんなに恥ずかしいんだね……」カァアア

善子「そういうことを私にしてるのよ」チュッ

レロッ……

曜「あ♡♡」ビクッ

善子「ふふ。いつも私には平気でするくせに」

チュパッ

曜「だめ……♡ 頭が、おかしく……♡♡」

善子「いいわよ。おかしくなっても」

曜「やだ……やだよそんなの」

善子「本当に嫌なら、私を突き飛ばしてみなさい」

チュッ

曜「怖いよ……」

善子「怖くないわ」スッ

ナデナデ

曜「うん……♡」トローン

善子「ねぇ曜さん……」

チュルッ

曜「何……?」

善子「耳貸して」スッ

曜「あっ……♡」ビクッ

善子「『好き』」ボソッ

曜「…………っ!!」ブルッ

ショワァ

善子「え?」

曜「だ、ダメだよ善子ちゃん……。耳元でそんなこと言われたら」ビクッ

ポタポタ

善子「我慢できなかったの? ふふっ……」スッ

曜「も、もうやめて……」

善子「今日だけ……だからね?」スルッ

曜「やっ……脱がせちゃ……♡」



115: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 12:51:17.00 ID:oMcc4SEV.net

ジョボボ

善子「ん……」チュッ

曜「ひゃぁ……♡♡」ビクッ

善子「……」ゴクッ

曜「善子ちゃん……私のおしっこ♡」

善子「……」ゴクッ

曜「あぁ……♡♡」ブルッ

善子「……」チュルッ

曜「やだ……もう終わっちゃう……」

善子「ぷはっ……」

チョロロ

善子「こ、これはお礼よ」

曜「え……?」ハァハァ

善子「今日はありがと」

曜「ううん……」

善子「もしかして……興奮してる?」

曜「し、してないよ」ハァハァ

善子「してるじゃない」

曜「善子ちゃんだって……同じだよ」

善子「私は曜さんに、でも曜さんはおしっこにでしょ」

曜「よ、善子ちゃんにだよ……」ハァハァ

善子「やっぱり病気よ、それ」

曜「え……」

善子「たぶん死んでも治らないわね」フフッ

曜「治療薬は……」

善子「私とのキス、でしょ?」



不治の病編 終わり



123: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:05:48.30 ID:oMcc4SEV.net

【料理教室編】



 夕方 保健室

ガラ

「遅くなってごめんなさい……」

曜「すぅ……」

善子「むにゃ……」

善子ママ「よく寝てるわ。起こしちゃ可哀想ね」

曜「善子ちゃん……」スゥ

善子「そこはだめだって……言ってるじゃない……」ムニャ

善子ママ「えっと……」

ガラガラ

千歌「二人とも、おやつの差し入れだよー」

梨子「……って、善子ちゃんのお母さん?」

善子ママ「あら、久しぶりね」

千歌「善子ちゃんなら熱も下がって寝てますよ」

善子ママ「そう……。ダイヤちゃんから連絡を貰ったときはびっくりしたわよ」

梨子「……」

千歌「仕事、そんなに大切ですか」

梨子「千歌ちゃん。そんな言い方は……」

善子ママ「曜ちゃんから状況は聞いてたから……」

千歌「きっと曜ちゃんのことだから、私に任せてくださいー、なんて言ったんじゃないの」

善子ママ「三十分おきくらいに善子の体温と……汗の味と……それから『可愛いです』って送られてきてたわ」

梨子「え」

善子ママ「こんな感じよ」スッ

 曜♡善子ちゃん:三十七度、だいぶ落ち着いてきたみたいです

 曜♡善子ちゃん:汗は舐め

 曜♡善子ちゃん:汗は拭いても拭いても出てくるけど、寒気は収まってきたみたい

 曜♡善子ちゃん:ちょっとしょっぱい



124: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:06:22.84 ID:oMcc4SEV.net

 曜♡善子ちゃん:(善子ちゃんの写真)

 曜♡善子ちゃん:寝顔も可愛いです♡

千歌「うわぁ……」

梨子「何やってるの曜ちゃん……」ハァ

善子ママ「こんなに大切にしてくれる先輩がいて、善子は幸せね」フフッ

千歌「ど、どうだろう」

梨子「うーん……」

善子ママ「ありがとうね。今度何かご馳走するから」

千歌「いいんですか!?」

梨子「そんな、気を遣わないでください。大したことはしてないですし……」

善子ママ「そういえばヘリコプターで病院へ連れて行ってくださったとか……」

千歌「鞠莉ちゃんだね」

梨子「なかなか思い切ったことをするよね……」

善子ママ「それにしても……まさか善子がねぇ」

千歌「?」

善子ママ「曜ちゃんとケンカしたことがそんなにショックだったとは思わなかったわ」

梨子「えっと……」

善子ママ「あっ、ごめんなさい。二人は聞いたかしら……?」

善子ママ「善子、ちょっと心がね、不安定みたいで」

千歌「……」

善子ママ「お医者さんの話では特に問題ないみたいなんだけど、私は……仕事上あまり側にいてあげられないから」

善子ママ「曜ちゃんには本当に助けられたわ」

善子ママ「もちろんあなたたちにもね」フフッ

梨子「わ、私も……寝不足と風邪だと思って」

善子ママ「……」

千歌「全部曜ちゃんのせいですよ」

善子ママ「え?」

千歌「曜ちゃんがあまりにも善子ちゃんを分かってあげようとしないから……」

千歌「それで善子ちゃんは、こんなことに」

梨子「……」



125: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:06:57.24 ID:oMcc4SEV.net

善子ママ「それは違うわよ。善子が曜ちゃんに甘えてるだけ……」

善子ママ「曜ちゃんは絶対に善子を責めたりしないから」

善子ママ「善子だって、曜ちゃんは怒らないって分かっててやってるのよ」

善子ママ「……」

千歌「二人が付き合うこと、反対ですか?」

善子ママ「私? ううん。どうして?」

千歌「曜ちゃんが全部悪いわけじゃなくても、曜ちゃんと付き合ってから善子ちゃんの様子が変なのは確かだし……」

千歌「本当に二人のためになってるのかな? って思っちゃう」

梨子「……」

千歌「まさか梨子ちゃんに乗り換えようとするなんて」ボソッ

梨子「ちょっと言い方! すみません……」ペコリ

善子ママ「自分が選んだことだもの、どんなに辛いことがあってもそれは仕方のないことよ」

善子ママ「それに……曜ちゃんと付き合い始めてからなんだけどね」

善子ママ「善子が家でもよく笑ってくれるようになったの」

千歌「え……」

善子ママ「おねしょは相変わらずだけど」フフッ

梨子「ん?」

善子ママ「あっ、何でもないわ! 今のは忘れて」

善子ママ「とにかく、善子が変わるきっかけになったのは確かよ」

善子ママ「スクールアイドルを始めてから善子はだいぶ明るくなったし、外へ行くようになったけれど」

善子ママ「ここ数週間で急にね。大人になった気がするわ」

千歌「そうですか……」

梨子「うん……それは私も思うかな」

千歌「梨子ちゃんも?」

梨子「今日の善子ちゃんは久しぶりに子どもっぽくて、何だか懐かしく思えたりして」クスクス

善子ママ「……」

梨子「あ、ごめんなさい……」

善子ママ「本当、いい友達に恵まれたわね」ナデナデ

善子「んぅ……」

千歌「まあ、二人が望んだことだもん。私たちは応援するしかないよね」



126: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:07:30.92 ID:oMcc4SEV.net

梨子「そうだね。ちょっと心配だったけど、二人ならたぶん大丈夫……」

善子ママ「ありがとう。二人はもう帰るところ?」

千歌「あ、はい。さっき練習が終わって、その帰りに来てみました」

梨子「これ……差し入れなのでよかったら」スッ

善子ママ「いいわよ、こんな……貰っちゃ悪いわ」

千歌「たまには善子ちゃんと一緒にいてあげてください」

善子ママ「……」

千歌「曜ちゃんがいるから寂しくない? そんなことないです」

千歌「さっきだって……寝言で『ママ』って言ってました」

善子ママ「分かったわ。ちょうど明日は休みを貰えたから……側にいてあげるつもりよ」

梨子「そうですか。よかったです……」ホッ

千歌「じゃあ私たちはこれで……」スッ

梨子「お邪魔しました……」

善子ママ「ええ。本当に……ありがとう」

ガラッ

ストンッ

善子ママ「……」

善子「ママぁ……」ムニャ

善子ママ「ごめんね……寂しい思いをさせてしまって……」ナデナデ

曜「だからもう出ないって……」

善子ママ「曜ちゃんもそうなのかしら? お母さんとはあまり……」

曜「ばぶ……」

善子ママ「……えーと」

善子ママ「今のは聞かなかったことにしましょう」

善子「わぁあ!!?」バサッ

善子ママ「きゃっ!?」ビクッ

善子「ゆ、夢か……」ハァハァ

善子ママ「大丈夫? すごい汗だけど……」

善子「ママ……? どうしてママがここに……」

善子ママ「ごめんなさい、遅くなってしまって」



127: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:08:14.52 ID:oMcc4SEV.net

善子「……別に。無理して来てくれなくてもよかったのに」

善子ママ「いちばん辛いときに来られなくて……本当に」

善子「大丈夫よ。曜さんがいてくれたから……」ナデナデ

曜「すぅ……」

善子ママ「曜ちゃんも疲れたのね」ナデナデ

曜「うへへ……」ニヤニヤ

善子「わっ、気持ち悪い」

善子ママ「幸せそうね……」

善子「それで……迎えに来てくれたのよね? せっかくだし曜さんも乗せていってくれる?」

善子ママ「当たり前でしょ。これだけやってくれたんだもの、家まで送るくらいじゃ返せないわね」スッ

曜「……」ムニャ

善子ママ「善子、自分で歩ける?」

善子「え? ええ……」

善子ママ「曜ちゃんは私が連れて行くから」グイッ

善子「起こせばいいのに」

善子ママ「何言ってるの。善子の看病で疲れてるのよ」

曜「……」スー

善子「まあ……今日くらいはいいか」

善子ママ「さ、帰りましょ。今日は曜ちゃんのお母さんも早く帰るって言ってたわ」

善子「……何で?」

善子ママ「ん?」

善子「曜さんは別に調子悪くないわよ」

善子ママ「あのねぇ……。ケンカして凹んでたのが自分だけだと思ったら大間違いよ」

善子「え……」

善子ママ「曜ちゃんだって、善子が思ってるよりずっと傷ついてたんだからね」

善子「……」

善子ママ「もう少し、曜ちゃんのことも考えてあげなきゃダメよ?」

善子「うん……」

善子ママ「恋人なんだから」

善子「曜さん……」ナデナデ



128: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:08:50.09 ID:oMcc4SEV.net

曜「ひゃあ!!?」ブルッ

善子ママ「あら? 目が覚めた?」

曜「え……嘘、私寝ちゃってた!? 善子ちゃんは!?」

善子「ここにいるわよ」

曜「善子ちゃんが歩いてる……。もう大丈夫なの?」

善子「まだ体がだるいけど……フラフラはしなくなったわ」

曜「そっか……本当に」グスッ

曜「よかったぁ」ポロポロ

善子「わっ、何で泣くのよ気持ち悪いわね」

善子ママ「善子?」

善子「あ……気持ち悪いは言いすぎたわ」

曜「私……善子ちゃんのママにおんぶされてるよ……」グスッ

善子「えっ」

曜「幸せすぎて夢みたい……」

善子ママ「……」

善子「降りて」

曜「えへへ……ママ♡」スリスリ

善子「降りなさいよこの!」グイグイ

善子ママ「あっ善子……」ツルッ

ドシーン!

善子「よ、曜さん大丈夫? ううん、悪いのは曜さんだし……」

曜「目が覚めた」

善子ママ「そ、そう……無事そうでよかったわ」

曜「えーと、迎えに来てくれたんですか? ありがとうございます」

善子ママ「曜ちゃんこそ、善子の側にいてくれて……本当にありがとう」

曜「やだな、恋人なんですから……」エヘヘ

善子「ありがと」

曜「ん?」

善子「ありがと! 行くわよママ。曜さんは歩いて帰るからいいって」

善子ママ「乗っていきなさい」



130: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:10:38.47 ID:oMcc4SEV.net

曜「私もいいんですか?」

善子「ダメ。家まで歩いて帰るの。バスもなし」

曜「冷たい……」

善子ママ「そんなにいじわる言うと嫌われちゃうわよ?」

善子「ならないわよ」

曜「うん、ならないよ」

善子「ほらね?」

善子ママ「う、うん……」

曜「いいよ、ママの車より先に着いてやるんだから!」

善子ママ「いいから乗っていきなさい。もう外は暗いし……」

善子ママ「善子の看病で疲れたでしょう? ゆっくり休んでね」

曜「ママ……!」パァアア

善子「だから私のママよ。曜さんのお母さんも早く帰ってくるって言ってたわ」

曜「お母さんが?」

善子「ええ。よかったじゃない」

曜「……」

善子ママ「嬉しくないの?」

曜「い、いえ! 嬉しいですよ」アハハ

善子「……」

曜「あっ、ママの車っていい匂いするなぁ……」クンクン

善子ママ「……」

曜「冗談です」アハハ

善子「いや本気だったわよ」

善子ママ「じゃあ……とりあえず帰るわね」カチャ

曜「はーい!」カチャ

善子「安全運転でね。危険な思いはもう懲り懲りだわ」カチャ

善子ママ「?」

曜「あっ、何でもないです……」

ブロロ……



132: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:12:32.87 ID:oMcc4SEV.net

……

 車内

善子ママ「今日は本当にありがとう」

曜「私は善子ちゃんといられて嬉しかったです」

善子「そうね」

善子ママ「熱が四十二度も出たんですって? よく大丈夫だったわね」

曜「えと……ルビィちゃんが熱冷ましくれたり、花丸ちゃんが冷静にヘリを手配してくれたり……」

善子「あの二人が?」

曜「善子ちゃんのこと、私以上に心配してたね」アハハ

善子「そう……」

善子ママ「MRI受けたんですって? 怖くなかった?」

善子「」ビクッ

曜「あ……その話は」

善子ママ「あれ、何度受けても慣れないわよね。耳元でファクスが百台くらい動く音? そんな感じ」

曜「ですよね!? やっぱり私の例えは間違ってなかったんだ……」

善子ママ「人によってはね、変な声が聞こえることもあるそうよ」

曜「えっ」

善子ママ「MRIってどういう仕組みか知ってる?」

善子「た、確か強力な磁力で人体の水素原子を共鳴させて、そのときに出る電波を画像にしてるのよね」

曜「善子ちゃん物知り!」

善子「でも人の声なんて聞こえるわけ……」

善子ママ「動作中、周囲にはものすごく強力な磁場ができるの……そうするとね」

善子ママ「近くにいるよからぬものを引き寄せてしまうらしいわ」

曜「えっ」

善子「そ、そうなのね……」

曜「それって……幽霊?」

善子ママ「幽霊かもしれないし、そうじゃないかもしれない。誰も確かめた人はいないから」

善子「あれは……そんなものじゃなかったわ」ガタガタ

曜「善子ちゃん?」

善子「思い出しただけで寒気が……」ブルブル



133: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:13:08.89 ID:oMcc4SEV.net

善子ママ「善子ったら怖がりねぇ。漏らさなかった?」フフッ

曜「あ、それなら……」チラ

善子「……」グスッ

曜「大丈夫でした。トイレに行っておいたので」

善子ママ「そう。さすが曜ちゃん、気が利くわね」

曜「ふふ」

善子「何よ……」グスッ

曜「そんなに怖かった?」

善子「もう二度と……あんな思いはしたくないわ」

曜「私もね、もう二度と……善子ちゃんに嫌われたくない」ギュ

善子「え……」

曜「分かるでしょ? 善子ちゃんとこうして一緒にいられなくなるなんて……」

曜「それこそ死んだ方がましなくらいだよ」アハハ

善子ママ「えっと……」

曜「って善子ちゃんなら言うかな?」アハハ

善子「もう! 人をバカにして!」

善子ママ「なかなかキツい冗談言うのね……」

善子「でも……私もね」

善子「曜さんに嫌われてなくて安心したわ……」ギュ

曜「ふふ……そっか」

善子「あんまりわがまま言い過ぎないように気をつけないと」

曜「ううん。私には言っていいよ」

善子「曜さんを困らせたくないから」

曜「そんなの気にしなくていいのに」

善子「私が気にするのよ!」

曜「じゃあ程々に困らせて?」

善子「程々にって……」

曜「今すぐここで……して、とか」

善子「は?」

善子ママ「も、もうすぐ家につくから……その」



134: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:13:41.45 ID:oMcc4SEV.net

曜「ママの見てる前でさ」ニヤニヤ

善子「嫌よ」

曜「さっき善子ちゃんにキスされたとき……すっごく気持ちよかったよ」ドキドキ

善子ママ「善子? 曜ちゃんに何したの?」

善子「何もしてないわよ!」

曜「それも覚えてないの? 便利だね」アハハ

善子「覚えて……」カァアア

曜「じゃあ思い出させてあげようか」

善子「覚えてるからいい!」

善子ママ「……」カァアア

曜「あれ? ママももしかして熱ありますか?」ピトッ

善子ママ「ひゃっ!? う、運転中だから……」

善子「ちょっと曜さん! 危ないじゃないの!」

曜「運転中じゃなかったらいいんですかね」ニヤニヤ

善子ママ「まあ……その、程々に」カァアア

善子「ママも! 曜さんは私の恋人なんだからね!?」

曜「あーもう可愛いなぁ善子ちゃんは」ナデナデ

善子「いい加減にして! 怒るわよ!?」

曜「やっといつもの善子ちゃんに戻ってくれたね」フフッ

善子「まだ頭痛いの! 休ませてよ……」

曜「後でゆっくり休めばいいよ」スッ

善子「だ、だから今、休ませてってば……」

善子ママ「も、もう着いたわ! さあ降りる準備をして!」

曜「むっ」

善子「た、助かった……」ハァ

ブロロ…… キキッ

曜「あれ、そう言えば私の家は……」

善子ママ「お母さんならウチにいるわよ」

善子「何でよ」

善子ママ「善子が体調悪いって言うから、ご飯作ってくれてるの」



135: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:14:17.18 ID:oMcc4SEV.net

善子「だから何でウチで」

善子ママ「曜ちゃんがウチに来るって知ってたんでしょう」フフッ

曜「……」

善子「どうしたの? さっきまでうるさいくらい元気だったじゃない」

善子ママ「さ、降りて」ガチャ

曜「乗せてもらって……ありがとうございました」ペコッ

善子ママ「気にしないで。学校から帰るより近いでしょ?」

曜「はい……そうですね」

善子「曜さんのお母さんに会うの、久しぶりかも……」

善子ママ「そう?」

善子「そりゃママはしょっちゅう会ってるものね。私よりも曜さんのお母さんの方がたくさん会ってたりして」

善子ママ「そんなことないわよ。最近はお互い仕事も忙しくて……」

善子ママ「ってそんなことはどうでもいいの。待ちくたびれてると思うから早く行きましょ」

……

ガチャ

曜ママ「おかえりなさい!」タッタッ

善子「あ……」

善子ママ「ただいま」

曜ママ「ごめんなさいね、お邪魔しちゃってて」フフッ

善子「い、いえ……」ドキドキ

善子ママ「善子?」

善子「へっ? な、何でもないわよ」

曜ママ「曜は? 一緒じゃないの?」

曜「……」

曜ママ「何だ、いるなら『ただいま』くらい言いなさい」

曜「た、ただいま……」

善子「ここ私の家なんだけど」

善子ママ「まあまあ。自分の家だと思ってくれていいんだからね」

曜ママ「ご飯できてるから。手を洗ってさっさと食べちゃって」



136: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:14:54.16 ID:oMcc4SEV.net

善子「は、はい!」タッ

善子ママ「ふふっ」クスクス

曜ママ「何笑ってんの?」

善子ママ「善子ったら緊張してるみたい。ああ見えて人見知りだから」

曜ママ「よくアイドルなんてやってるよ」アハハ

曜「善子ちゃんの悪口言わないで」

曜ママ「言ってない」

曜「善子ちゃん、自分が人見知りなの気にしてるんだから……。少しは気を遣ってよ」

曜ママ「……」

善子ママ「さ、さぁ曜ちゃんも上がって。手を洗って食べましょう?」

曜「……」タッ

曜ママ「こら! 『お邪魔します』くらい言えないの!?」

善子ママ「いいのよ。それに今日は疲れてるの……休ませてあげて」

曜ママ「悪いね。いつも迷惑かけちゃって……」

善子ママ「ううん」

曜ママ「曜、私が帰らないときはいつも泊まらせてもらってるみたいじゃん」

善子ママ「まあね。でも、あなたも悪いのよ? 仕事ばっかりで帰ってあげないから」

曜ママ「曜はもう私のことなんて……ううん。さ、早く食べないと冷めちゃう」

善子ママ「そうね」フフッ

……

 リビング

曜ママ「さあどうぞ! おかわりもあるからたっぷり食べてよね」

善子「うわ……」

善子ママ「これは……何というか、頑張ったわね」

曜ママ「たくさん食べて元気になってもらわないとだからね!」

曜「こんな食事出すとかふざけてるの?」

善子「っ!?」ビクッ

曜ママ「せっかく私が作ったのに」

曜「別に作ってくれなんて頼んでない」

善子ママ「ちょっと曜ちゃん?」



137: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:15:26.56 ID:oMcc4SEV.net

曜「善子ちゃんは体調悪いのにハンバーグ? 唐揚げ? ビーフシチュー??」

曜「頭おかしいんじゃないの」

曜ママ「なっ……!?」

善子ママ「曜ちゃん。せっかく作ってくれたのにそんな言い方ないわよ」

曜「私ならもっとまともな食事作ってあげられるのに」

曜ママ「……」

曜「余計なことしてさぁ」

善子ママ「さ、冷めないうちに食べましょ? 美味しそうな唐揚げ! だいぶ黒いけど!」

曜ママ「それハンバーグ……」

善子ママ「そ、そうよね! 唐揚げはこっちかしら……」

曜ママ「それはドーナツ」

善子ママ「唐揚げは……ええと」

曜ママ「ごめん、唐揚げ作ってないんだ……」

善子ママ「えっと……」チラ

善子「え? そ、そうね、美味しそうなビーフシチュー……よね?」

善子ママ「ぱくっ……」モグモグ

善子ママ「」

善子「ママ?」

善子ママ「お、おいしーい……」

善子「ママが『いただきます』もせずに食べるなんて……よほど美味しいのね」パクッ

善子ママ「あらやだ、『いただきます』」

善子「……」モグモグ

善子「…………」モグ

善子「ごめんなさい、ちょっとトイレに……」スタッ

曜ママ「……」

曜「ほらね」

曜「お母さんが張り切るとろくなことにならないんだよ。そのまま仕事してればよかったのに」

善子ママ「曜ちゃんのこと心配して早く帰ってきてくれたのよ? そんな言い方したら……」

曜「余計なお世話。もう帰っていいよ」シッシッ

曜ママ「……分かったよ」



138: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:16:07.02 ID:oMcc4SEV.net

善子ママ「待って! せめて夕飯だけでも一緒に……」

曜ママ「曜の言うとおりだよね。私が来たところで善子ちゃんがよくなるわけじゃないし……」

曜ママ「仕事してればよかったかも」アハハ

スタスタ

善子ママ「あ……」

曜「さっ、こんなの食べなくていいですから。すぐ私が作るので待っててください」カチャカチャ

善子ママ「……」

曜「全く、こんなに生ゴミ出して……」

善子ママ「どうしてそんな酷いことが言えるの?」

曜「え?」

善子ママ「お母さんが頑張って作ってくれたんでしょ? なのにどうして……生ゴミだなんて言えるのよ」

曜「だって……本当に美味しくないんだもん」

善子ママ「私は食べるわよ」パクッ

曜「お腹壊しても知りませんよ……」

善子ママ「これだけ火が通ってれば……お腹なんて壊すわけ」モグモグ

善子ママ「……」モグモグ

曜「やめましょう? 見ればわかる通り、硬すぎて食べられたものじゃない」

善子ママ「……」ゴクン

善子ママ「げほっ……。美味しいわ」

曜「……」

善子ママ「曜ちゃんは食べないの?」

曜「そうですね、善子ちゃんかママがおしっこかけてくれれば……」

善子ママ「」カチャ

曜「え? 本当にかけてくれるんですか?」

善子ママ「っ!!」ブンッ

パーン

曜「……っ!?」ビクッ

善子「ふぅ……」スタスタ

善子ママ「今すぐお母さんに電話して謝りなさい」

曜「……」



140: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:18:06.81 ID:oMcc4SEV.net

善子「え、えっと……どういう状況なのかしら」

善子ママ「早く」

曜「嫌です」

善子ママ「なら帰って」

曜「……嫌です」

善子「ママ? どうしたのよそんな怖い顔して……」

善子ママ「……」

善子「っていつもか」アハハ

曜「……」

善子「……何かごめんなさい」

善子ママ「善子、無理しない程度に食べましょ」

善子「え? わ、私は……」

善子ママ「ほら、ドーナツは美味しそうよ」

善子「えっ」

善子ママ「ううん、ドーナツ『も』美味しそうよ」パクッ

善子ママ「ほら、この白いやつなんて柔らかくてまるで半生……」モグモグ

善子ママ「……」ゴクン

善子ママ「善子は黒い方を食べなさい。顎が鍛えられるわ」

善子「そ、そうね……」スッ

曜「やめてよ」ガシッ

善子「え?」

曜「こんなの無理して食べなくていいよ! 体調悪いんだからさ、こんなの食べてもっと体調悪くなったら私……」

善子ママ「……」

善子「あむっ」モグモグ

善子「何これ。普通に不味いわ」

善子ママ「こら善子! 何てこと言うの!」

善子「でも……」モグモグ

善子「何だか温かくなるような……不思議な味ね」ゴクン

善子「意外といけるわ。もう一つ」パクッ

善子ママ「ふふっ。そうね」パクッ



141: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:18:47.03 ID:oMcc4SEV.net

曜「もうやめてよ!! 不味いなら無理に食べなくていいじゃん! こんなの捨てようよ!」グスッ

善子ママ「このビーフシチューも食感が新しいわね。まるでお肉が入っていないみたい……」モグモグ

曜「どうして……」ポロポロ

善子「よ、曜さん?」

曜「私に気を遣ってくれてるの? ならやめてよ。全然嬉しくないし……」

善子ママ「お母さんがどんな気持ちか、曜ちゃんに分かる?」

曜「え……?」

善子ママ「曜ちゃんのお母さんはね、休みの日は料理教室に通ってるの……」

善子ママ「少しでも美味しい料理を作ってあげたいって……毎週通ってるのよ」

善子(それ……効果あるのかしら)

善子ママ「何のためだと思う?」

曜「ママにご飯を食べさせたいから……」

善子ママ「曜ちゃんに決まってるじゃない」

曜「私に……?」

善子ママ「曜ちゃんに全部家のことやってもらってるのが申し訳ないって……いつも言ってるわ」

善子ママ「仕事ばっかりで何も母親らしいことしてあげられてないって……」

善子ママ「お母さんがどんなに悩んでるか、曜ちゃんに分かる?」

曜「……」

善子ママ「分からないわよね。曜ちゃんは何でもできちゃうんだもの」

善子ママ「料理だって冷蔵庫の余り物からすごいの作っちゃうし」

善子ママ「洗濯だって善子のおしっこシーツも真っ白にしちゃうし」

善子「恥ずかしいからやめて」

善子ママ「この前掃除してもらったときなんて床がピカピカすぎて転んだわ」

曜「それは申し訳ないです」

善子ママ「曜ちゃんには分からないのよ」

善子ママ「どんなに頑張ってもできない人の気持ちなんて……」

善子「……」

曜「私……」

善子ママ「曜ちゃんはもう少し、お母さんにも優しくしてあげて」

善子ママ「ああ見えて本当は……とっても傷つきやすい人だから」



142: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:19:22.32 ID:oMcc4SEV.net

善子「ママ……」

曜「お母さんに酷いこと言っちゃったよ……」グスッ

善子ママ「電話してあげて。たぶん今頃泣いてるわよ」

曜「せっかくお母さんが作ってくれたのに……」ポロポロ

曜「私のために料理教室まで通ってくれて……」パクッ

曜「なのに……」モグモグ

曜「どうしてこんなに不味いの……!?」

善子「」

善子ママ「よ、曜ちゃん?」

曜「不味いよね!? 私の味覚が変なのかな!?」

善子「不味いわ」

善子ママ「善子」

善子「作った人の優しさはものすごく感じるわ。でも料理としては……」

曜「ご飯もベチャベチャだし! 炊飯器の使い方知らないの!?」パクッ

曜「ミートボールも何これ! 段ボールかと思った!」パクッ

曜「味噌汁も……ん? これコンソメスープ!」チュルッ

曜「不味い! 本っ当に不味い!!」

曜「でも……」モグモグ

曜「美味しいよ……」ポロポロ

善子「いや、不味いわ」

善子ママ「ええ」

曜「……」スッ

プルル

曜「……」パクッ

プルル

曜「……」モグモグ

プルル

曜「……」チュルッ

『何よ……』



143: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:19:58.51 ID:oMcc4SEV.net

曜「お母さん大好き」

善子「え……」

善子ママ「あら……」

曜「聞こえなかった? お母さん大好きって言ったの……」グスッ

『ごめんなさい。お母さんまた失敗しちゃった……』

曜「さっきは酷いこと言ってごめんなさい」

『ううん……。私の料理……やっぱり不味かったのね』

曜「美味しいよ」

善子「いやまず」

善子「げほっ! 危ない……」

善子ママ「善子、気をつけなさい」

善子「うん……」

『たまには母親らしく……なんて思った私が悪かったのよ』

曜「何言ってるの……」

『仕事しかできないんだもの、大人しく仕事だけしていればそれで……』

曜「そんなことないよ」

『曜も子どもじゃないんだから、私なんていなくても……』

曜「お母さんはお母さんだよ」

『……』

曜「いくつになってもお母さんは私の……」

『こんな私でも?』

曜「お願い。あんなこと言った後でずるいとは思うけどさ……」

曜「戻ってきてよ。一緒に……」

曜「リメイク料理しよ?」グスッ

善子「容赦ないわね」

善子ママ「……」

『ふふっ……そうよね』

『料理教室なんて行く必要なかったのよ』

『だってこんなに上手な先生がいたじゃない……』

曜「私でよければいつでも」



145: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:21:49.21 ID:oMcc4SEV.net

曜「ううん」

曜「お母さんと料理したい」

曜「一緒に作ろうよ。好きな人のためにさ」

『ううっ……』グスッ

善子「ほらまた平気でそういうこと言う……」カァアア

善子ママ「……」カァアア

『すぐ戻るわ。具材を買ったらね』

曜「え?」

『あのまま泣いて帰るわけないでしょ?』

曜「全くもう……本当に負けず嫌いなんだから」

善子「誰に似たんだか」フフッ

善子ママ「そうだったわね。あの人は……あんなこと言われたら意地でもやめないわ」

善子ママ「『美味しい』って言わせるまでね」

善子「怖いわね」

曜「待ってるから! それじゃ!」ピッ

善子「……」

善子ママ「曜ちゃん」クイクイ

曜「え?」

善子ママ「叩いてごめんなさい」ギュ

善子「わぁあ!!? 何してるのよ! 離れなさいってば!」ガシッ

曜「ママぁ……」グスッ

善子ママ「痛かったでしょう……。善子にも手をあげたことなんてないのに」

善子「曜さんを殴ったの!? ママ、歯を食いしばりなさい!」スッ

曜「やめてよ! 私が悪いんだから……」

善子ママ「いいのよ」

善子「それっ!」ブンッ

ペチッ

善子ママ「いたっ」

曜「すごい優しいパンチだね」

善子「実の親だもの」



146: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:22:28.45 ID:oMcc4SEV.net

曜「私にはフルスイングかますくせに」

善子「それは曜さんだからよ」

善子ママ「ふふ……仲がよくて羨ましいわ」

曜「私のお母さんには引っ叩かないんですか?」

善子ママ「えっ!!? な、なぜそのことを……」ビクッ

善子「ん?」

曜「えっ」

善子ママ「わ、私がそんな暴力女に見える!? 失礼ね!」

善子「いやいや、何してるのよあんた達」

曜「善子ちゃん、親に向かって『あんた』はないよ」

善子「曜さんに言われたくない」

曜「私は謝ったし!」

善子「謝れば何でも許されると思ってんの? 親の料理を生ゴミだなんて!」

曜「うっ……聞こえてたの?」

善子ママ「善子、それはお母さんが来たら言っちゃダメよ」

善子「そ、そうね」

善子ママ「あの人は逆に燃えちゃうから」

善子「それこそ火事にでもなりそうね……」

善子ママ「ええ」

曜「……」

ガチャ

「ただいまー!」

曜「お母さん!」ダッ

善子「ふふっ。曜さんも可愛いところあるじゃない」

善子ママ「あら? いつも可愛いわよ?」

善子「か、可愛いのに殴ったの?」

善子ママ「えっと……ごめんなさい」ペコッ

善子「ママに殴られたの、たぶんすっごく気にしてるわよ」

善子ママ「そ、そうなの?」

善子「後で二人のときにでも謝って……ちゃんと許してもらいなさい」



148: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:24:29.59 ID:oMcc4SEV.net

善子ママ「う……」

善子「それと」

善子「私の曜さんに手をあげるなんて、いくらママでも許さないからね」

善子ママ「反省してるわ」シュン

善子「今回は曜さんが悪かったみたいだし? 結果的にお母さんと仲よくなれたみたいだからいいけど」

曜ママ「もう! いい加減に離れて! 歩きにくいわ!」

曜「お母さん大好きだもん♡」ギュー

善子ママ「あらあら」フフッ

善子「……」ギリッ

善子ママ「善子、実の親子よ」

善子「分かってる……分かってるわ」フゥ

曜ママ「さっきはごめんなさい。変なもの食べさせてしまって」

善子「い、いえ! とっても美味しかったです!」

善子ママ「善子?」

曜「いや、ドブみたいな味だったよ」アハハ

曜ママ「うっ……やっぱり?」

善子「そ、そんなことないですよ。唐揚げなんてサクサクを通り越してザクザク……」

善子「私たちの世代は顎が弱いって言われてるから、むしろちょうどよかったくらいで!」アハハ

曜「唐揚げ作ってないよ」

善子「え? あ……」

曜ママ「いいんだよ、無理しなくて。不味かったって言っていいの」

善子「……」

善子ママ「不味かったわ」

曜ママ「だ、だよね……」

善子「わ、私は……美味しかったわよ?」

曜「え?」

曜ママ「本当?」

善子「作った人の愛情がたっぷり入ってて……お店には出せないけどその分家庭的って感じで」

曜ママ「そこまで言ってくれるなんて嬉しい……!」ギュッ

善子「わっ……!? や、やめてくださいぃ……」カァアア



149: 名無しで叶える物語 2018/02/11(日) 20:24:57.14 ID:oMcc4SEV.net

善子ママ「……」

曜「えっと……善子ちゃんどうしたんですかね」

善子ママ「善子は人見知りだから……こう、適切な距離感がとれないのよ」

曜ママ「それに比べてそこの二人は! 善子ちゃんを見習え!」

曜「えぇ……」

善子ママ「悪いけど、本当に不味かったわ」

曜ママ「善子ちゃんは美味しかったもんね?」ギュー

善子「は、はい……」ドキドキ

曜「善子ちゃん……」

善子ママ「……」

曜ママ「善子ちゃんってよく見ると本当に可愛いよね」ナデナデ

曜「何言ってるの。よく見なくても可愛いよ」ナデナデ

善子(誰か助けてぇ……!)カァアア

善子ママ「ふふっ」


料理教室編 終わり



172: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:21:45.63 ID:2XSzjIx+.net

 リビング

曜「どうぞどうぞ! 食べてね!」

ズラァ

善子「う、嘘でしょ……」

善子ママ「あんなに不味そうだったのに」ゴクリ

曜ママ「うるさいわね。ちょっと味付け間違えただけじゃない」

曜「お母さんの癖はだいたい分かってるから、何とか軌道修正できた感じかな」アハハ

善子「ねぇ、本当に料理教室の先生になったら? これなんてもう……」ヒョイ

善子ママ「こら、いただきますくらいしなさい」

善子「これ、元は何だっけ?」モグモグ

曜ママ「唐揚げかな」

曜「唐揚げ作ってなかったんじゃないの」

曜ママ「あ、そうだった。それは確か……元ビーフシチューだね」

曜「コロッケになってるから食べやすいはずだよ」

善子ママ「ね、ねぇ知ってたら悪いんだけど……ビーフシチューの『ビーフ』って何のことか分かる?」

曜ママ「牛肉」

善子ママ「入れた?」

曜ママ「入れてないよ。買い忘れちゃってさ」

善子「しかもやけに苦かったわね……」

曜ママ「コーヒーを入れてみたよ」

善子ママ「あぁ……それでほとんどコーヒーみたいな味だったのね」

曜「市販のルーを使えばあそこまで酷い仕上がりにはならないはずだけどな」

曜ママ「今日は頑張ってルーから手作りしようかなって……」シュン

善子「……」

善子ママ「私も一口貰うわね。いただきます」ヒョイ

善子ママ「……」モグモグ

善子「ね? 同じ料理だとは思えない……」モグモグ

善子ママ「曜ちゃん、本当は一から作ったでしょう」

曜「まさか。リメイク料理って言いましたよね」

善子「私は見てたから分かるわよ……これは紛れもなくあのビーフシチュー」



173: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:22:34.69 ID:2XSzjIx+.net

曜ママ「曜は天才だよね。こんな娘を持って幸せだよ」

曜「お、お母さん……」カァアア

善子「でも曜さん、お母さんの作った料理を『生ゴミ』って言ったわよ」

善子ママ「善子っ!?」ガタッ

曜ママ「え……」

曜「生ゴミだったね」

善子ママ「酷いわ……」

曜ママ「よく言われるから気にしてないよ」アハハ

善子「少しは気にした方がいいような……」

善子ママ「曜ちゃん、いつもお母さんにそんな酷いこと言ってるの?」

曜「いえ。私は本当のことを言っただけです」

曜ママ「私はね、お世辞とか建前とかゴマすりとかが嫌いなのよ」

善子ママ「そ、そうなの……」

善子「親子揃ってひねくれてるわね」

曜「だからしょっちゅう会社の人とケンカしてるよね」

曜ママ「あれは部長の頭が固いだけ」

善子ママ「クビにならない程度に気をつけなさい」フフッ

曜ママ「私が部長をクビにしない限りは大丈夫でしょ」

善子「え……ってことは部長より上?」

曜「役職はね」

曜ママ「今流行りのキャリアウーマンってやつよ」アハハ

善子「何か……今までごめんなさい」

曜ママ「私のこと信じてなかったでしょう? 本当にこんな人が会社勤めなんてできるのか……とか」

善子「い、いえ! そんなことはないです……」

曜「ハッキリ言っていいんだよ。こんな人雇う社長の気が知れない、とか」

曜ママ「曜と違って学校の成績はよかったからね」エヘン

曜「私だってテスト以外はできるし。というか人間としてお母さんよりずっと上だし!」

曜ママ「は?」

曜「そんなだからお父さんも帰ってこないんだよ」アハハ

善子「ちょ、ちょっと言いすぎ……」



174: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:23:50.95 ID:2XSzjIx+.net

曜ママ「……ごめん」

善子ママ「今のは曜ちゃんが悪い」

曜「料理に限らず家事だって私がいなきゃ全然ダメじゃん。よく結婚できたね?」

善子「やめなさいよ! お母さん泣きそうじゃない……」

曜ママ「……」グスッ

曜「これに懲りたら次からは勝手なことしないでよ?」

善子「そんな言い方ないでしょう? お母さんだって一生懸命……」

曜ママ「善子ちゃんは優しいね」

善子「だってあまりにも酷い言い方するから……」

曜「……ちょっと言いすぎた。ごめんなさい」

曜ママ「悪いと思ってる?」

曜「思ってるよ」

曜ママ「……じゃあ許す」

善子ママ「食べましょうか。冷めちゃわないうちに」

善子「……」

曜ママ「いただきます……」パクッ

曜ママ「……」

曜ママ「あ、これはほとんど私が作ったそのままね」モグモグ

善子(どこがよ)

善子ママ「えっと……何だっけ?」パクッ

曜ママ「ハンバーグ」

善子ママ「あ、あぁ……そうね。ひき肉を使ってるところなんてそのままよね」モグモグ

曜ママ「味付けもだよ」

善子「……」モグモグ

曜「ご飯はベチャベチャすぎてどうにもならなかったからチーズドリアにしたよ」

善子「え!? これあのご飯なの?」

曜「一度軽く焼いてるからね。食感は悪くないでしょ?」

善子ママ「なるほど……」パクッ

曜ママ「何だかんだで私のこと分かってくれてるんだね……」パクッ

曜「これでも娘だから」



175: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:24:23.82 ID:2XSzjIx+.net

善子「家でもケンカしてるの?」

曜ママ「家じゃほとんど口を聞いてくれないの。反抗期かな?」

曜「何言ってるの、夜遅くまで帰ってこないくせに」

曜ママ「そのことなんだけど……私ね、部署が異動になったのよ」

曜「それが?」

曜ママ「これまでより早く帰れると思う……」パクッ

曜「ふーん……」モグモグ

曜ママ「……」モグモグ

曜「……」パクッ

善子「素直に喜んだら?」

曜「何で」

善子「嬉しくてたまらないって顔してる」

曜「し、してない!」ガタッ

善子ママ「隠さなくてもいいのに」クスクス

曜ママ「さっきも『お母さん大好き♡』って抱きついてきたもんね」

曜「あれは……違うから! ああでもしないとお母さん、ヘソ曲げて大変だし……」

善子「動画に撮っておけばよかったわ」

善子ママ「そうね」フフッ

曜「いいから早く食べちゃってよ。後片付けやるの私なんだから」

曜ママ「私がやるからいいわよ」

曜「この家の食器が全部なくなっちゃう!」

善子「さすがにそれは……」

曜ママ「あのねぇ、そんなに割ってたら……」

曜「割ってるよね」

曜ママ「割ってる」

善子「……」

善子ママ「後片付けは私と曜ちゃんでやるからいいわよ」

曜ママ「でも」

善子ママ「ケガでもされたら大変だもの」

曜ママ「う……分かった」



176: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:25:29.96 ID:2XSzjIx+.net

曜「そうだ、私お風呂沸かしてくるからさ、食べ終わったら入ってきなよ」スタッ

善子ママ「あら、曜ちゃん気が利くわね」

曜ママ「善子ちゃんお先にどうぞ」

善子「い、いえ! お客さんなんだから遠慮しないで先に……」

曜ママ「じゃあ一緒に入ろっか」アハハ

善子「え……」

曜ママ「なんてね、冗談」フフッ

善子「……」ドキドキ

善子ママ「ん?」

曜「せっかくだし一緒に入ってきたら? あ、私の悪口はやめてね」

曜ママ「私はいいけど、善子ちゃんが嫌でしょ」

善子「嫌じゃないわよ! い、いえ……嫌じゃないです……」カァアア

善子ママ「善子ったら銭湯とか温泉とか、知らない人がいると絶対入らないものね」クスクス

曜「私とは入ってくれるのになぁ」

善子「そ、それは曜さんとだから……って言わせないでよもう!」カァアア

曜ママ「曜、まさか善子ちゃんに変なことしてないよね?」

曜「してないよ」アハハ

善子(してるわよ)

曜(してないよ?)ニコニコ

善子(して……もういいわ)ハァ

善子ママ「それじゃ曜ちゃんは私と入る?」

曜「え」

曜ママ「変なことしちゃだめだよ?」アハハ

曜「……」カァアア

善子ママ「やっぱりやめとくわ。教育者としてまずい気がする」

曜ママ「何で? 普通に入るだけだよね?」

曜「ママ、もしかして私のこと……」

善子ママ「違うわよ。どちらかと言うと曜ちゃんの方がね、心配なの」

善子「やっぱり私も一人で……」

曜ママ「曜、まだいたの? 早くお風呂沸かしてきて」



177: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:26:07.01 ID:2XSzjIx+.net

曜「うっ……分かったよ」スタスタ

……

善子「ふぅ……食べ過ぎちゃったわ」

善子ママ「美味しかったものね」

曜ママ「私だけじゃここまではできなかったな」

善子ママ「当然よ」クスクス

曜ママ「リメイク前のも食べてくれたんだってね」

善子ママ「正直、美味しくはなかったけど」

善子「で、でもまた曜さんとは違う味というか……新鮮で楽しめたわ」

善子ママ「ドーナツなんて新鮮すぎて半生だったわよ」

曜ママ「うぇ……焼き色ついてたから大丈夫かと思った」

善子「味見はしたの?」

曜ママ「えっと……味見しすぎてなくなっちゃったら嫌だから、してない」

善子ママ「してね」

曜ママ「次からはするよ……」

善子「……」

曜ママ「善子ちゃん、体調悪かったのにあんな重たい料理ばっかりでごめんね」

善子ママ「大丈夫よね。体調って言っても頭が痛くて熱が出てただけだし……胃とか腸は何ともないもの」

善子「ええ」

曜ママ「ならいいんだけど」

善子「あの……」

曜ママ「ん?」

善子「ありがとうございました」

曜ママ「え、いいよいいよ。お礼なんて」

善子「曜さんに食べさせたかったのは知っているけど……私にも作ってくれて」

曜ママ「ううん。善子ちゃんに食べてもらいたかったの。曜にはついでに食べさせればいいやって思ってた」

善子ママ「それなのに重たい料理作ったの?」

曜ママ「う……。善子ちゃんの好みが分からなくてさ」

善子「作ってくれた人の気持ちが伝わってきて……ちょっと幸せな気持ちになれた」

曜ママ「善子ちゃん……」



178: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:26:45.47 ID:2XSzjIx+.net

善子「って私、何言ってるのよ」カァアア

善子ママ「私の料理には一度だってそんなこと言ってくれないのに」

善子「ママの料理はつまらないの。いかにも学校給食みたいな栄養バランスだけの食事で」

善子ママ「……」シュン

曜ママ「今度一緒に作ってみる?」

善子ママ「遠慮しておくわ」

曜ママ「ノリ悪いね」

善子「いいじゃない、せっかくだし作ってみたら?」

善子ママ「私より善子が作りたいんじゃない?」

曜ママ「私と?」

善子「えっ……わ、私は」

善子ママ「いつも曜ちゃんに教わってるんだし、少しは上達したでしょう」

善子「私はまだ……誰かに食べさせられるほどのものは作れてないし」

曜ママ「何言ってるの。善子ちゃんの料理だもん、どんな料理だって食べたいよ」

曜ママ「ねぇ?」

善子ママ「そ、そうね。せっかく作ってくれるんだもの」

善子「私、作るなんて言ってないんだけど……」

曜ママ「決めた! お風呂上がったらさ、一緒にデザート作ろうよ」

善子「デザート?」

曜ママ「デザートならそんなに難しくないし……別腹でしょ?」フフッ

善子「わ、分かったわ。作ったら食べてくれる?」

善子ママ「え? もちろんよ。曜ちゃんも喜んで食べてくれると思うわ」

曜ママ「何がいいかな。善子ちゃんは何が食べたい?」

善子「えっと……材料は何があったかしら」

善子ママ「卵と牛乳とバターと……あとは小麦粉、生クリームとかバニラエッセンスとか、ハチミツとか」

善子ママ「そんなに大がかりなものじゃなければ、何でも一通り作れるんじゃないかしらね」

曜ママ「プリンにしよう」

善子「え?」

曜ママ「善子ちゃん、プリン食べたそうな顔してる」

善子「な、何で……」カァアア



180: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:28:25.22 ID:2XSzjIx+.net

善子ママ「プリン食べたかったの?」

善子「……」コクッ

曜ママ「あっ、先に言っておくけどお腹壊しても責任取らないからね」

善子ママ「ホットケーキにして」

善子「何でよ。プリンでいいじゃない、加熱するんだし」

善子ママ「焼くデザートにしてちょうだい。お願いだから」

曜ママ「じゃあホットケーキでいいよ……」

善子「プリン……」

善子ママ「プリン味のホットケーキならいいでしょ?」

善子「そんなの作れるの?」

曜ママ「すごい!」

善子ママ「わ、私は無理よ? でも曜ちゃんなら……」チラ

スタスタ

曜「お風呂沸かしてきたよ。あと五分くらいしたら入れるから」

三人「「……」」ジー

曜「えっ、何?」

善子「プリン味のホットケーキ、作れるわよね?」

曜「えっと……」

曜ママ「善子ちゃんが食べたいんだから、当然作れるよね?」

曜「……」

善子ママ「私からもお願い」

曜「わ、分かったよ。やってみる……」

善子「やったわ」ピョンッ

曜ママ「そんなに嬉しかったの? 飛び跳ねちゃってさ」アハハ

善子「あ……これは、その」カァアア

善子ママ「早く入ってらっしゃい。材料は曜ちゃんと準備しておくから」

曜ママ「はーい。ありがとね」

善子「うぅ……恥ずかしい……」カァアア

曜「着替えも用意しておいたからね」

善子ママ「え? 曜ちゃんいつ持ってきたの?」



181: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:29:05.79 ID:2XSzjIx+.net

曜「善子ちゃんのは善子ちゃんのクローゼットから、お母さんの分はママの……」

善子ママ「ん?」ニコニコ

曜「だって仕方ないじゃないですか! まさかお母さんに下着なしで過ごせとは……」

曜ママ「あー、うん。ありがたく借りるわね」

善子ママ「どれ!? どれ持ってきたの!?」

曜「それは見てのお楽しみです」フフッ

善子ママ「……っ!! もう!」カァアア

曜ママ「えっ? 見るの?」

善子「変なところ気が利くんだから……」ハァ

……

 お風呂

コンコンッ

「どうぞー」

ガチャ

善子「し、失礼します……」ドキドキ

曜ママ「あはは。タオルなんて巻いちゃって」

善子「恥ずかしいんだから仕方ないじゃない……」カァアア

曜ママ「曜と入るときもそうやってるの?」

善子「なっ……べ、別にどうでもいいじゃないですか」

曜ママ「ふふっ……急に敬語になってるし」クスクス

善子「やっぱり一人で入ります」

曜ママ「待ってよ。せっかくだし色々聞かせて?」

善子「何を……ですか」

曜ママ「善子ちゃんのこと」

善子「私のことなんて……聞いても……」

曜ママ「こうして二人で話すなんて今までなかったじゃない?」

善子「ええ、そうね……」

曜ママ「同じアイドルグループの……えっと、何て言ったっけ」

善子「Aqoursよ」

曜ママ「そう。Aqoursの後輩で……一年生の中でもいちばんしっかりしてるって聞いたわよ」



182: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:29:44.00 ID:2XSzjIx+.net

善子「そんなことない……です」

曜ママ「曜と付き合うって聞いたときはびっくりしちゃったけどね」アハハ

善子「う……すみません、今まで挨拶もしないで」

曜ママ「やめてよ、私こそ仕事ばっかりで全然気にかけてあげられなくて……」

善子「……」

曜ママ「善子ちゃんは私のことほとんど見たことくらいしかないと思うけど」

曜ママ「私は善子ちゃんがこーんなに小さい頃から知ってるからね」

善子「え?」

曜ママ「これでもママ友だから」

善子「そ、そうだったわね」

曜ママ「私ってほら、仕事ばっかりで友達いないし……善子ちゃんのお母さんにはいつも優しくしてもらってるの」

善子「ママが……」

曜ママ「ま、向こうも友達いないみたいだし? お互い様かな」アハハ

善子「……」

曜ママ「ごめん、悪口言うつもりじゃなかったんだ」

善子「いえ……本当のことなので」

曜ママ「……」

善子「?」

曜ママ「……」ジー

善子「な、何ですかもう」カァアア

曜ママ「お母さんにそっくりだなって思って……」ジー

善子「そ、そういうあなたはあんまり曜さんに似てないですね」

曜ママ「あはは。そうだねー」

善子「中身はそっくりですけど」

曜ママ「そうかな? あんなに子どもっぽくないよ」

善子「いや……どっちかと言うと」

善子「いえ、何でもないです」

曜ママ「私の方が子どもっぽい? よく言われるのよね」アハハ

善子「言われるの?」

曜ママ「お母さんから。外ではバリバリのキャリアウーマンで通ってるもの」



183: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:30:23.91 ID:2XSzjIx+.net

善子「ママも……外では真面目な教師ぶってるけど家ではあんな感じです」

曜ママ「そうだよね。二人きりのときなんてさー」アハハ

曜ママ「っと、これは秘密だった……」カァアア

善子「……」

曜ママ「学校でのお母さん、すっごく怖くてびっくりしちゃったよ」

善子「学校で会ったことあるの?」

曜ママ「ん? 曜が中学生のとき担任だったからねー」

善子「えっ!? 初めて聞いたわよ……」

曜ママ「あのときはまだ若かったからね、まだ新人って感じだったけど」

曜ママ「あ、今は老けてるって意味じゃないよ?」

善子「そのくらい分かるわよ」

曜ママ「今じゃすっかり生徒たちからも慕われてるしさ」

曜ママ「あーあ、私もお母さんに習いたかったなー」

善子「あ、それ曜さんも言ってた……」フフッ

曜ママ「え? 曜は習ってたよね」

善子「えっと……」

曜ママ「言ってなかったのかな」

善子「何で初対面みたいな振りしたのよあのバカ!」

曜ママ「おーこわ……」

善子「あっ……すみません、バカだなんて言って」

曜ママ「たぶん曜なりに気を遣ったのよ」

善子「知らない人の振りすることが?」

曜ママ「善子ちゃん、今じゃお母さんと仲良しだけど、最近まではそんなことなかったでしょ」

善子「え……はい、まあ」

曜ママ「それなのにいきなり上がり込んだ曜が」

曜ママ「『先生久しぶりー!』」ギュッ

曜ママ「って抱きついたらどう思う?」

善子「えっと……私に抱きつかなくていいですから」カァアア

曜ママ「ごめん、つい」パッ

善子「……あんまりいい気はしなかったかも」



184: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:30:59.69 ID:2XSzjIx+.net

曜ママ「だよね。ああ見えてちゃんと分かってるんだなぁ」アハハ

善子「曜さん……」

曜ママ「まあ、恥ずかしかったってのもあると思うわよ」

善子「そうですかね? 曜さんならそんなの気にしないような……」

曜ママ「中学のときはずいぶん迷惑かけちゃったみたいだし、久しぶりに会って緊張してたのは間違いないと思う」

善子「……」

善子(いや、上がり込んだ初日からあんなことしてたけどね)

曜ママ「曜の初恋の相手でもあるわけだしねー」アハハ

善子「えっ!?」ガタッ

曜ママ「冗談」フフッ

善子「も、もう……!」

曜ママ「でも、学校であんまり曜がベタベタするから私が怒られたのよ?」

曜ママ「『親子揃って私の胸が大好きなのね? この変態!』って」

善子「……」ヒキ

曜ママ「えっと……善子ちゃんって冗談通じないタイプの人?」

善子「あ、あぁ……冗談だったのね」ハァ

曜ママ「もしかして本気にした? 善子ちゃん面白いわね」クスクス

善子「……やっぱり曜さんとそっくりです」ムスッ

曜ママ「そうかな」

善子「子どもっぽくてわがままで私のことバカにして……」

曜ママ「そんなことないよ」

善子「曜さんだってどこまで私のこと認めてくれてるんだか」

曜ママ「曜のこと、まだ許せてない?」

善子「え?」

曜ママ「ケンカしたんでしょ。昨日」

善子「……」

曜ママ「あんなに沈んだ曜を見たのは初めてだったわ」

善子「ごめんなさい……」

曜ママ「あっ、違うの! 善子ちゃんを責めてるわけじゃないから」

善子「私のわがままで曜さんを傷つけて……」



185: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:31:43.28 ID:2XSzjIx+.net

曜ママ「きっと曜のことだから、善子ちゃんとのデート中に他の女の子をナンパしたりしたんでしょう」

善子「……」

曜ママ「違った?」

善子「いえ、それも合ってます」

曜ママ「善子ちゃんのデート中に他の女の子とメールしてたとか」

善子「それも……」

曜ママ「ごめんね、あんな子で」

善子「えっ、そんな、私は曜さんだから好きになったんだし……」

曜ママ「そう? ありがと」エヘヘ

善子「あ……今のは、違います」カァアア

曜ママ「曜ね、昨日は大変だったのよ」

善子「……」

曜ママ「私が夜遅くに帰ったんだけどね」

曜ママ「家のドアを開けたら、そこで死んでたわ」

善子「え……」

曜ママ「ううん。死んでるかと思った」

曜ママ「玄関で倒れてるんだもの……」

善子「……」

曜ママ「泣きながらね、ずっとブツブツ言ってたわ」

曜ママ「『善子ちゃんに嫌われた』って……」

善子「曜さん……」

曜ママ「あのまま放っておいたら本当に死んでたかもね」アハハ

善子「もしかして、その……」

曜ママ「寒さで。あの日は冷えたから」

善子「あ、あっそう……」

曜ママ「仕方ないから私が部屋まで運んで」

曜ママ「とりあえずベッドに放り投げておいたわ」

善子「なかなかワイルドね……」

曜ママ「曜は自殺なんてする子じゃないもの。その辺は心配してなかったわ」

善子「じ、じさ……」



186: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:32:25.94 ID:2XSzjIx+.net

曜ママ「私みたいにね、振られたくらいで死のうとはしないわよ」フフッ

善子「……」

曜ママ「や、やだなー! 冗談だってば」アハハ

善子「そ、そうよね!? あんまり笑えないけど……」

曜ママ「私の腕、見える?」ザバッ

善子「これって……」

曜ママ「そう。切った後よ」

善子「……」

曜ママ「私は曜みたいに明るい子じゃなかったから」

曜ママ「いじめられっ子の私がお母さんに恋なんかして……」

曜ママ「もしお母さんまでいじめられてたら大変だったわね」アハハ

善子「えっと……」

曜ママ「あっ、ごめんなさい! こんな話聞きたくないわよね」

善子「……」

曜ママ「私がお母さんと付き合ってるの、知ってるでしょう?」

善子「えっ、いや……そ、そうだったんですか?」

曜ママ「隠さなくていいから」

善子「……知ってました」

曜ママ「いじめられてた私を助けてくれたのがお母さん。それはもうカッコよかったわ……」ウットリ

善子「全然いじめられるようには見えませんけど……」

曜ママ「私ね、高校のときは不登校だったのよ」

善子「えっ?」

曜ママ「中学のときはとにかく大人しくて目立たない子で……」

曜ママ「何を思ったのか高校生になって初日にとんでもない自己紹介をしてね」フフッ

曜ママ「私は魔界から来た七賢人の一人だー、とか」

曜ママ「ま、まあ詳細は伏せるとして……」カァアア

曜ママ「とにかく、とんでもないやらかしをしてしまったの」

善子(それ私……)

曜ママ「昔の浦女は今みたいに人数が少なくて平和な学校じゃなかったから、それはもういじめられたわ」

曜ママ「本当に死んじゃおうかと思ったのよ?」



189: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:35:26.10 ID:2XSzjIx+.net

善子「それをママが……」

曜ママ「そう! もうこの人は天使だと思ったわ。運命の人に違いないってね」

善子(私だったら……曜さんは助けてくれたのかしら)

曜ママ「お母さんは真面目な委員長キャラだったし、いじめを見て見ぬふりができなかっただけなんでしょうけど」

曜ママ「ううん、それで私が救われたんだし……感謝はしてるわよ?」

曜ママ「何を思ったのか私は勘違いをして、私のこと好きなんじゃないか……なんて毎日ドキドキして」

曜ママ「気がついたら家まで押しかけてた」

善子「それ、ストーカー……」

曜ママ「待ち伏せして告白したの。『私と付き合ってくれるまで帰らない!』って玄関先でゴネて」

善子「……」

曜ママ「案の定嫌われたわ」

善子「うっ……」

曜ママ「それから卒業までずっと口を聞いてくれないままで」

曜ママ「お互い社会に出て相手のことなんてすっかり忘れて」

曜ママ「私はようやくここまで這い上がって、今では会社の重役にもなって」

曜ママ「あんな娘にも恵まれてね……」グスッ

善子「……」グスッ

曜ママ「だから保育園で善子ちゃんを見たとき、もうびっくりしてショック死するかと思ったわ」

善子「わ、私?」

曜ママ「今まで忘れてたことを全部思い出したの。それで、この子のお母さんに会わなきゃ! って思って……」

曜ママ「お母さんが迎えに来るまで待ち伏せしたわ」

善子「何も変わってないわね……」

曜ママ「そこでお母さんに会ったときのこと……一生忘れないでしょうね」

善子「ママは覚えてたのかしら」

曜ママ「ううん。完全に忘れてた。私なんて見たことも聞いたこともない感じ」

善子「酷い」

曜ママ「私よ! あのときの……! あのとき助けてもらった!!」

曜ママ「『え……何この人、頭がおかしいのかしら』」

曜ママ「私……ずっとあなたのことが!!」

曜ママ「『私のことが……?』」



190: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:36:05.09 ID:2XSzjIx+.net

曜ママ「す、す……」

曜ママ「『す……?』」

曜ママ「……」ハァ

善子「何よ」

曜ママ「そのとき、善子ちゃんが私の腰にドロップキックを食らわせてね」

善子「いや、そんな記憶ないけど」

曜ママ「『ママに何するのー!!』ってボコボコにされたの」

善子「嘘よね?」

曜ママ「これは本当。それを見た曜も怒って」

曜ママ「『あんたこそ! 私のおかーさんに!!』って」

善子「あぁ、子ども同士のケンカに……」

曜ママ「『酷いことしないでください!』って鼻水垂らして泣きながら謝って」

善子「えぇ……」

曜ママ「それを見た善子ちゃんはただ一言」

曜ママ「『気持ち悪い』」

曜ママ「って言ったわ……」

善子「私もなかなか言うわね」

曜ママ「それからよ。ママ友として仲良くなれたのは」

善子「仲良くなる要素あったかしら!?」

曜ママ「今でもお母さん、昔の私のこと思い出してくれないのよ」

善子「そ、そうなの……」

曜ママ「もしかしたら照れ隠しで知らない振りしてるだけかもしれないけどね?」

善子「きっとそうね」フフッ

曜ママ「それにしても……お母さんに見せてもらった卒業アルバムに私が載ってないのはびっくりしたわ」

善子「え」

曜ママ「卒業アルバムを見れば思い出してもらえるかと思ったんだけど」

善子「そ、それって……」

曜ママ「私、あれから転校してないのになぁ」

善子「……」

曜ママ「ま、たぶん風邪でも引いて写真撮影の日にいなかったんでしょ」アハハ



191: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:36:39.15 ID:2XSzjIx+.net

善子「……」

曜ママ「おっと、私の話ばっかりしちゃったわね。ごめんなさい」

善子「いえ……」

曜ママ「次は善子ちゃんの話が聞きたいな」

善子「私の話なんて……特にないわよ」

曜ママ「そんなことないでしょ? 曜のどこが好きとか」

善子「え……それは」

曜ママ「告白はどっちからしたの?」

善子「曜さんから……」

曜ママ「何て? 何て言われたの?」

善子「えっと……」

曜ママ「……」ニコニコ

善子「言わなきゃダメ、ですか……?」カァアア

曜ママ「ここまで私の黒歴史を聞いておいて自分は話さないつもり?」

善子「いや、勝手に話し始めたんでしょうが」

曜ママ「あっ、ふーん? 分かったわ。私は善子ちゃんのこと信頼して話したのに善子ちゃんは私のこと」

善子「わ、分かったわよ! 話すわ」

曜ママ「うん」ニコニコ

善子「二週間前のことよ」

……

…………

 二週間前 屋上

あれは練習が終わった後のこと……。

ガチャ

善子「いけない、忘れ物しちゃった……」



192: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:37:19.17 ID:2XSzjIx+.net

忘れ物を取りに屋上へ戻った私はね、

「ふへへ……」

善子「誰かいるの?」

誰もいないはずの屋上で笑い声を聞いたの……。

 曜ママ『えっ、これって怖い話?』

 善子『回想中だから黙ってて』

善子「そんなことより確かこの辺りに……」キョロキョロ

私は置いた場所にタオルがないから変だなと思ったのだけど……。

「善子ちゃん……」ハァハァ

物陰から私の名前が聞こえてきたのよ。

 曜ママ『やっぱり怖い話! 私苦手なのよ……』

 善子『大丈夫よ。すぐオチがつくから』

善子「誰か……呼んだ?」スタッ

そこにいたのはね……。

 曜ママ『きゃああ!!? やめて!! やめてぇぇ!!!』

 善子『うるさいわね! 聞きたいって言ったでしょうが!』

曜「善子ちゃんのタオル……いい匂い♡」

曜さんだったのよ。

善子「えっと……曜さん? こんなところで何して……」

曜「あれ……? 匂いだけじゃなくて本人が見える……」

曜さんは私のタオルを持って……。

曜「やばい……いい匂いすぎて頭が変になっちゃったのかな」ドキドキ

屋上の隅で……その……。

曜「好きです」

善子「はい?」

曜「もっと嗅がせてくれないかな……?」スッ

善子「え……やだ」

曜「答えは聞いてないよ」ギュッ

急に抱きつかれたわ。



193: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:38:01.06 ID:2XSzjIx+.net

 曜ママ『わぁ大胆♡』

 善子『耳大丈夫?』

善子「は、離して……」

曜「ごめんね……大切な後輩なのにこんなことして」

善子「えっと……何なの?」

曜「私……ずっと善子ちゃんのこと見てたんだ」

善子「そ、そう……」

見られてた。私を? 曜さんが……。

 曜ママ『やっぱり怖い話!! やめて!!』

 善子『ある意味怖いけどもう少し聞いて』

曜「最初はね、善子ちゃんのこと『いい匂いがする子』としか思ってなかったんだけど」

気持ち悪い。

曜「今はね……大好きでもう、善子ちゃんのことしか考えられなくて……」

善子「えっと……タオル、返してくれる?」

曜「それは無理」

善子「どうしてよ。私のでしょう?」

曜「もう返せない……」スッ

私のタオル。私の『だった』タオル。

曜「私の……」

アレ。

曜「……で汚しちゃったから」

 曜ママ『血でしょ!!? 血!! もう嫌!!』

 善子『ごめんなさい、何で汚れたかは言えないんだけど、血ではないわ』

善子「わ、私のタオルが……」

ずしりと重い感触。生温かくて、気持ちが悪かった。



195: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:39:42.16 ID:2XSzjIx+.net

 曜ママ『ひぃい……』グスッ

善子「これ、何?」

曜「何って……善子ちゃんのタオルだよ」

善子「そうじゃなくてこの……」

曜「我慢できなくてごめんなさい」ペコッ

謝られた。意味が分からないまま。

曜「でも……善子ちゃんも悪いんだよ?」フフッ

え……?

曜「私がいる屋上に……忘れ物をするから」ニヤリ

善子「わ、私が悪いの……?」

曜「責任……とってよね」

善子「嫌……」

曜「もう私……我慢できないよ」ドキドキ

善子「嫌よ……」

曜「善子ちゃんの……」

アレ。

曜「飲ませて?」フフッ

 曜ママ『いーーやーーー!!! 無理!! もう無理!!!』

 善子『うるさい! 大きな声出さないで!』

 曜ママ『これ殺されるパターン! 善子ちゃん逃げて!!』

私は。

善子「ごめんなさい」

謝ったわ。悪くないのに。

曜「……ごめんね」

謝られた。悪いなんて思ってないくせに。

曜「答えは聞いてないんだよ」

 曜ママ『怖い怖い怖い怖い怖い』ブツブツ

 善子『大丈夫? 本当に辛くなったら言って』

その後のことはよく覚えていないの……。

とにかく私は曜さんに……



197: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:41:28.39 ID:2XSzjIx+.net

曜「思った通り……♡」チュルッ

飲まれたみたいだった。

曜「美味しいよ」ゴクリ

私の……

曜「善子ちゃんの……」

アレ。

曜「ふふっ♡」

…………

……

善子「とまぁこんな感じよ。若干盛った部分はあるけれど……」

曜ママ「」

善子「だいたい合ってるわ」

曜ママ「」

善子「大丈夫? そんなに怖い話じゃなかったと思うけれど」

曜ママ「」

善子「というか私、怖い話苦手なんだけど……」

善子「そう言えば曜さんと見たゾンビ映画は怖かったわね」

曜ママ「」

善子「寝ちゃったの? 自分で聞きたいって言ったくせに……」

善子「まあ……他人のこんな話、退屈よね」

曜ママ「」

善子「それにしても私……こんなのでどうやって曜さんを好きになったのかしら?」

善子「その前からカッコいい先輩だとは……ちょっとだけ、思ってたりもしたけど」カァアア

善子「普通はあんなことがあったら嫌いになるわよね」

善子「不思議だわ……」

曜ママ「はっ……!?」バシャッ

善子「もしかしてママもこんな気持ちだったのかしら」

善子「冷静に考えたら好きになるなんてあり得ないのに」

善子「いつの間にかこう……」

曜ママ「えーと、私寝ちゃってた?」



198: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:42:20.00 ID:2XSzjIx+.net

善子「好きに……なっちゃってたり」カァアア

曜ママ「善子ちゃん?」

善子「今はね……大好きなの」

曜ママ「ん?」

善子「曜さんのことが好きで……」

善子「何でもしてあげたくなっちゃうくらいに……」

曜ママ「えーと……もしもーし?」フリフリ

善子「って曜さんなら言うかしらね」エヘヘ

曜ママ「善子ちゃん、大丈夫? 主に頭の方」

善子「……」ニヤニヤ

曜ママ「善子ちゃん!」ガシッ

善子「ひゃっ!?」ビクッ

曜ママ「しっかりしてよ」

善子「わ、私……」

曜ママ「お風呂で寝たら死ぬから」

善子「……」

曜ママ「熱、あるんじゃない?」スッ

ピトッ

善子「あ……」

曜ママ「うーん、お風呂で温まっただけかな? どうだろ……」

善子「……」ドキドキ

曜ママ「もう上がろうか」ザバッ

善子「……」グイ

曜ママ「え……?」

善子「もう少し……入る」

曜ママ「分かった、私は先に……」ザバッ

善子「……」グイ

曜ママ「……」

善子「……」カァアア

曜ママ「えへへ。善子ちゃんったら甘えん坊さん♡」ザブンッ



199: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:42:55.58 ID:2XSzjIx+.net

善子「ち、違うから! これは……その、手がしもやけで温まってないだけで」カァアア

曜ママ「じゃあ私が温めてあげる」ギュッ

善子「ひゃぁぁ……♡」ドキドキ

曜ママ「善子ちゃんって柔らかいわね……」フニ

善子「」ボフッ

曜ママ「曜は筋肉質で硬いからなぁ」アハハ

善子「」

曜ママ「善子ちゃん?」

善子「え、えへへ……♡」カァアア

曜ママ「やば、これは曜に怒られるかも……」ハァ

……

……

 リビング

曜「ねぇママぁ」スリスリ

善子ママ「も、もう離れてよ」

曜「せっかく二人きりなんですから……ね?」ギュ

善子ママ「善子に悪いと思わないの?」

曜「今ごろ善子ちゃんだって私のお母さんとイチャイチャしてますよ」アハハ

善子ママ「そんなことしないわよ。曜ちゃんじゃないんだから」

曜「そうかなー? やたらお母さんのこと意識してたけど?」

善子ママ「あれは人見知りだからよ」

曜「その割にはすぐ仲良くなってませんでした?」

善子ママ「曜ちゃんに似てるから……じゃない?」フフッ

曜「ママも私のこと……お母さんに似てると思いますか?」

善子ママ「え……」

曜「いつも何て呼ばれてるんです?」

善子ママ「そ、それは……」カァアア

曜「『ママ♡』」ボソッ

善子ママ「だ、ダメよ曜ちゃん……本当にもう」バッ

曜「おしっこ飲ませて♡」



200: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:43:45.53 ID:2XSzjIx+.net

善子ママ「ダメ! それは本当にダメだから……」

曜「そんなこと言って本当は」ニヤニヤ

善子ママ「いい加減にしないと! 本当に怒るわよ!?」

曜「……っ!?」ビクッ

善子ママ「あ……ごめんなさい」

曜「……昔」

善子ママ「はい?」

曜「よく怒られましたよね……」ドキドキ

善子ママ「そ、そうね……曜ちゃんはやたらと手のかかる生徒だったから」

曜「あのときのこと……覚えてますか?」

善子ママ「な、何のこと……?」

曜「忘れたなんて言わせないよ?」

善子ママ「知らないわよ……」

曜「私、ずっと好きだったんですからね……」

曜「『先生♡』」ボソッ

善子ママ「あっ……♡」ビクッ

ショワァ

曜「あれ?」

善子ママ「や、やだ……見ないで」

曜「我慢できなくなっちゃいました?」

善子ママ「わ、私……ずっとトイレに行きたいって」

曜「ダメです♡」

善子ママ「なのに曜ちゃんが、ずっとくっついてくるから……」

曜「ふふっ。ママのアイスティーに何入れたと思います?」

善子ママ「ま、まさか変なクスリを……!?」

曜「私の気持ちです♡」

善子ママ「な、何入れたのよ……!? 本当に」

曜「何にも。ただこうして……」ツー

善子ママ「あっ……♡」

曜「ママとしたいなって……気持ちを」フフッ



201: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:44:20.01 ID:2XSzjIx+.net

善子ママ「こんなことして……善子に」

曜「勘違いしないでくださいね。私が好きなのは善子ちゃんですから……」チュルッ

善子ママ「だったら……今すぐやめなさい……!」ビクッ

曜「ママが止めたらいいんじゃないかな?」

善子ママ「やめる! やめるから……」

曜「おしっこ、途中で止められるんでしょ?」ペロッ

善子ママ「止められるわよ? 止められる……から、そこを退いて」

曜「私は退きません」チュルッ

善子ママ「退いて!」

曜「本当に嫌なら蹴飛ばしてもいいのに」

善子ママ「そ、そんなことできるわけ……」

曜「おしっこ、飲んでもいいですか?」

善子ママ「ダメに決まってるでしょ!? もうすぐ二人が上がってくるわ……そうしたら」

曜「早くしないとバレちゃいますね?」フフッ

善子ママ「と、トイレに……行かせて」プルプル

曜「ダメです♡」

善子ママ「本当に……もう無理なの」プルプル

曜「ここでしてください」

善子ママ「嫌……ここはトイレじゃないもの……」プルプル

曜「ううん。そうじゃなくて」

曜「『ここ』で。私の口は……自由に使ってもらっていいんですよ」

善子ママ「っ!!?」ブルッ

曜「えへへ。何だか自分で言うのは恥ずかしいな」

善子ママ「あ、あ……」

曜「先生?」

ジョボボ

曜「わぁ!」チュルッ

善子ママ「ごめんなさい……! ママ、我慢できなくて……」

ジョボボ

曜「我慢しなくていいんですよ?」ゴクッ



202: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:44:55.38 ID:2XSzjIx+.net

善子ママ「善子……」

ジョボボ

曜「善子ちゃんが見たら……」ゴクッ

善子ママ「来ないで……お願い」

ジョボボ

曜「ママのこと嫌いになるかな?」ゴクッ

善子ママ「曜ちゃんのことも……! 嫌いになるわよ!」

ジョボボ

曜「私はなりませんよ」ゴクッ

善子ママ「……」

チョロロ

曜「善子ちゃんのこと……」

善子ママ「そんなの……自分勝手よ……」ハァハァ

チュルッ

曜「ぷはっ……ママのこともね」フフッ

善子ママ「う……」カァアア

曜「ごちそうさまでした」

善子ママ「曜ちゃんって、最低よ……」

曜「ごめんなさい」

善子ママ「謝ったって許さないわ」

曜「ママも気持ちよかったんじゃない?」

善子ママ「わ、私は……」

曜「またいつでも使ってください」フフッ

曜「『先生♡』」

善子ママ「あっ……♡」ビクッ

ピュッ

曜「ふふ♡」

善子ママ「はぁ、はぁ……♡」

曜「さて、片付けましょうか。善子ちゃんたち本当に上がってきちゃう」スタッ

善子ママ「そ、そうよね……」ハァハァ



203: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:45:30.48 ID:2XSzjIx+.net

曜「続きはまた後で♡」

善子ママ「ば、バカっ……!」カァアア

曜「それとも、お母さんの方がいいですか?」

善子ママ「……」カァアア

曜「私じゃ……嫌?」

善子ママ「い、嫌……」

曜「娘の恋人だから?」

曜「いや、恋人の娘だからかな??」

善子ママ「曜ちゃんって……本当にいじわるね」

曜「私は私だよ?」

曜「あのときも……」

曜「先生のことずっと」

曜「す……」

善子ママ「その先は言わせない」ピトッ

曜「もごっ……」

善子ママ「キスはしないわよ。私、これでも教師だから」

曜「ぷはっ……! その台詞も……あのときと同じ」

善子ママ「さぁ? 何のことかしら」

曜「えへへ」

曜「やっぱり先生には勝てないや」

善子ママ「その呼び方やめて」

曜「先生♡」スリスリ

善子ママ「やめて。本当に怒る」

曜「せーんせい♡」ギュッ

善子ママ「……」プルプル

曜「先生?」

善子ママ「渡辺さん!! いい加減にしなさい!!!」

曜「!!?」ビクッ

善子ママ「いいですか!? あなたはもう高校生なんですから!!」

曜「え……」ビクビク



205: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:47:11.15 ID:2XSzjIx+.net

善子ママ「いつまでも甘えてないで!! 大人という自覚を持ちなさい!!」

曜「せ、先生……?」ビクビク

善子ママ「だからその……!!」

曜「わ、私……」グスッ

善子ママ「……せめてママにしてちょうだい」ギュッ

曜「あ……」ブルッ

善子ママ「え」

ショワァ

曜「ご、ごめっ……なさい……」ヒック

ジョボボ

曜「私っ……せん……ま、ママのことっ」ヒック

ジョボボ

曜「ずっと、好きだったから……っ」グスッ

ジョボボ

曜「だから……っ」ヒック

ジョボボ

曜「私のこともっ……好きって」グスッ

ジョボボ

曜「ずっと……言ってほしくて……っ」ヒック

ジョボボ

曜「私……っ」グスッ

曜ママ「……」

善子「えっと……」

善子ママ「えっ、いやっ、これはね!?」

曜「善子ちゃぁん!!」ダッ

ギュッ

善子「ひゃあ!!? やめてよ汚い!」バッ

曜「私ね、やっぱり……!」

曜「ママのことも好き!!」

善子ママ「」



206: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:47:44.78 ID:2XSzjIx+.net

曜ママ「ど、どうしたのこれ」

曜「でも……善子ちゃんのことがいちばん好きだから……」グスッ

善子「わ、分かったからとりあえず離れて」グイ

曜「ごめんなさい……」ペコッ

善子「え?」

善子ママ「ええと! 曜ちゃん、とりあえず拭こう!?」

曜ママ「後でゆっくり聞かせてくれる?」

善子ママ「な、何を……?」

曜ママ「曜に何したの」

善子ママ「えと……」

善子「全くもう……手のかかる恋人ね」フキフキ

曜「善子ちゃん……」グスッ

善子「こんなに派手に漏らして」フキフキ

曜「う……」

善子「ママもよ。曜さんと浮気しそうになったでしょう」

善子ママ「な、なってないわ……」

曜ママ「……」ジー

善子ママ「なってないわよ!! 曜ちゃんが無理やり……」カァアア

善子「はぁ……」フキフキ

曜「ごめんね善子ちゃん」

善子「いいから、お風呂入ってらっしゃい」

曜「うん……」

曜ママ「あーあ、ずいぶん派手に汚したね」

善子ママ「ごめんなさい……」

曜ママ「早く入っておいで」

善子ママ「ええ……」

善子「ちょっと」ガシッ

曜「え?」

善子「何一緒に入ろうとしてるのよ」

善子ママ「そ、そうよ! 曜ちゃん先に入っていいから……」



207: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:48:19.06 ID:2XSzjIx+.net

曜「でも……私が汚しちゃったから洗ってあげないと……」グスッ

善子「ん?」ニコニコ

曜「私が汚しちゃったから!! ママを洗っ」

善子「聞こえてるわよ!!!」

善子ママ「ええと……」

曜ママ「これ床までびっしょりじゃん……」

曜「あのね善子ちゃん」グスッ

善子「何?」

曜「大好きだよ」ギュッ

善子「そう」

曜「浮気してごめんね」

善子「したのね」

曜「してないよ」

善子「……したのね」

曜「して……」

善子「もういいわ」グイ

曜「え……?」

善子「思いっきりいくわよ」

曜ママ「ん?」

善子ママ「善子、やめなさい!」

善子「このっ!!」ブンッ

パーン

曜ママ「うわっ……」

善子ママ「あぁ……何てことを」

曜「」ドサッ

善子「はぁ、はぁ……」ゼェゼェ

曜ママ「曜、生きてる?」

善子ママ「……」

善子「これでも足りないくらいだわ」ハァハァ

曜「」



208: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:48:56.81 ID:2XSzjIx+.net

曜ママ「生きてはいるみたいね。そっとしておきましょう」

善子ママ「え……お風呂は?」

善子「ママもちょっといい?」クイクイ

善子ママ「え」

曜ママ「善子ちゃん、それはダメだよ」

善子「曜さんは私のものって言ったわよね」

善子ママ「ええ」

善子「曜さんが手を出してきても断るように言ったわよね」

善子ママ「ええ……」

善子「私だって我慢したのに!!」ブンッ

曜ママ「善子ちゃんっ」ギュッ

ペチッ

善子ママ「……っ!! あれ?」

善子「な、何で……」

曜ママ「お母さんを引っ叩くなんてダメだよ」

善子ママ「……」

善子「今のはママが悪いんだからいいのよ」

曜ママ「お母さんはね、曜みたいに引っ叩かれても嬉しくないのよ」

善子「えっ……だから?」

曜ママ「引っ叩くなら私にして」

善子ママ「……」

善子「わ、私……」ドキドキ

曜ママ「私のこと……好きなだけ叩いていいからね」

善子ママ「もう離れてもいいんじゃないかしら」ニコニコ

曜ママ「そうだね……。お母さんは怒ると怖いから」スッ

善子「きゅ、急に抱きつくのは……やめてください」カァアア

善子ママ「善子?」

善子「な、何でもないわよ!」カァアア

曜ママ「大丈夫、私たちは何もしてないから」フフッ

善子ママ「……」ジー



209: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 00:50:40.85 ID:2XSzjIx+.net

曜ママ「本当だよ! 善子ちゃんの怖い話を聞いてビビってただけ!」

善子ママ「そうなの?」

善子「え、いや……そうよ。怖い話を聞かせてただけ」

曜ママ「善子ちゃんがまさか一度死んでたとは……」

善子「曜さんほどは死んでないけどね」

善子ママ「何の話?」

善子「仕方ない、曜さんをお風呂に入らせてくるわ。ママはその後入って」

善子ママ「え、えぇ」

曜ママ「善子ちゃん」

善子「あ、そうだわ。聞かれる前に言っておくけど」

善子「これはヤキモチとかそういうのじゃないから」

善子ママ「……」

善子「ママと入らせたら何するか分からないから……仕方なくよ」

曜ママ「曜のこと、よろしくね」フフッ

善子「言われなくても分かってるわ」

曜ママ「そうじゃなくて……これからもよろしく、ってこと」

善子「……」

曜ママ「恋人なんでしょ?」

善子「あ、当たり前! こんなので嫌いになるほど曜さんのこと嫌いじゃないから!」

善子「って意味分かんないし!」カァアア

善子ママ「ふふっ……」クスクス

善子「いいからママはそこ片付けときなさい!!」ダッ

ダッダッ

曜ママ「善子ちゃん、本当に可愛いね」フフッ

善子ママ「そうでしょ? 私に似て」

曜ママ「……ま、まあね」カァアア

ダッダッ

善子「曜さんも! いつまで死んでるのよ!」グイッ

曜「」ズルズル



210: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 01:02:20.44 ID:2XSzjIx+.net

曜ママ「さてと、本当に派手にやらかしたねこれは」フキフキ

善子ママ「そうね……落ちるかしら?」フキフキ

曜ママ「それにしても……綺麗なビンタだったわね」

善子ママ「え?」

曜ママ「ママより上手なんじゃない?」

善子ママ「ビンタの上手さなんて気にしたこともなかったわ」

曜ママ「そう……」

善子ママ「何よその顔は」

曜ママ「べ、別に!? ママにビンタされたいなんて微塵も思ってないわよ?」

善子ママ「私じゃなくて善子にされたい、とか言ったら怒るわよ」

曜ママ「あはは、バレたか」

善子ママ「えっ」

曜ママ「いや……冗談だから……」

善子ママ「冗談でもそういうこと言う?」

曜ママ「う……悪かったわよ」

善子ママ「……」

曜ママ「善子ちゃんもそうだけど、冗談通じないよねぇ」

善子ママ「私にはまだしも、善子にはやめて」

曜ママ「どうしようかな」アハハ

善子ママ「やめてね?」ニコニコ

曜ママ「うん……」フキフキ

善子ママ「……」

曜ママ「何よ? 善子ちゃんにはしないって」

善子ママ「怒らないのね」

曜ママ「何を?」

善子ママ「さっきのこと」

曜ママ「ああ、曜におしっこ飲ませたことね」

善子ママ「飲ませてない! 曜ちゃんが無理やり……」

曜ママ「いいよ。分かってるから」

善子ママ「……」



211: 名無しで叶える物語 2018/02/14(水) 01:16:47.36 ID:2XSzjIx+.net

曜ママ「曜がわがまま言ってごめんね」

善子ママ「……」

曜ママ「?」

善子ママ「いえ、何でもないわ」

曜ママ「そんなによかった?」

善子ママ「え?」

曜ママ「曜としたの」

善子ママ「ち、違うわよ!!」カァアア

曜ママ「さすがに妬いちゃうなぁ」

善子ママ「分かってるでしょ……?」

曜ママ「んー?」

善子ママ「分かってるくせに」

曜ママ「何を?」ニヤニヤ

善子ママ「もう……本当にいじわるね」

曜ママ「ごめん」アハハ

善子ママ「いいわよ。そういうところも含めてあなたのことが……」

曜ママ「好きなのよね」

善子ママ「……ええ」

曜ママ「ありがと」

善子ママ「どういたしまして」

曜ママ「二人が上がったらさ……私と入る?」

善子ママ「入らない」

曜ママ「入ろうよ」

善子ママ「絶対に嫌」

曜ママ「どうして」

善子ママ「前に入ったとき、あなたとは二度と入らないって決めたから」

曜ママ「私、何かしたっけ?」

善子ママ「……」フキフキ


一旦終わり



238: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:05:39.68 ID:9D+05apE.net

……

……

 脱衣場

曜「」

善子(っはぁ……)

善子(お風呂から出たばかりなのに私までおしっこで……)

善子「起きて」ユサユサ

曜「……」

善子「……」

曜「」

善子「起きてるんでしょ?」ユサユサ

曜「」

善子「キスしてくれないと起きられない、とか言ったら引っ叩く」

曜「キスしてくれないと……起きられないよ」

善子「……変態ね」

曜「ありがとう」

善子「うぇっ……本当に気持ち悪いんだけど」ヒキ

曜「……私のこと好きでいてくれて」

善子「あ、そっち? よかった……」ホッ

曜「私……ママのおしっこ飲んじゃった」

善子「……」

曜「だってさ……善子ちゃんも私のお母さんと」

曜「そういうことしてるんじゃないかって……思って」

善子「曜さんじゃないんだから」

曜「善子ちゃん……お母さんにぎゅってされたとき……」

曜「すごく嬉しそうな顔してたから……」

善子「そ、それは……」

曜「少し寂しかったんだ……」

善子「だって……曜さんに」ボソボソ

善子「大人になった曜さんに……抱きしめられてる気がして」ボソ



239: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:06:16.77 ID:9D+05apE.net

善子「……」カァアア

曜「はぁ……」

善子「何よ。曜さんがため息は理不尽じゃない?」

曜「ううん……安心したの」

善子「何が」

曜「善子ちゃんが……私のこと」

曜「本当に好きでいてくれてるんだ……って」

曜「痛いほど感じられたから……」

善子「そりゃそうでしょうね。本気でやったもの」

曜「……」ヒリヒリ

善子「少しは反省した?」

曜「何を?」

善子「は? 浮気よ、浮気」

曜「私はママのことも好きだよ……」

善子「まだ足りないのかしら? もう一回引っ叩いた方がいいみたいね……」

曜「だからさ」

曜「善子ちゃんへの『好き』とは違うんだって」

善子「騙されないわよ」

曜「……」

善子「ママとそういうことしたくせに」

曜「したよ」

善子「私のこと本当に好きならしないでしょ」

曜「する……」

善子「何でよ。私だけにすればいいじゃない」

曜「だって善子ちゃん……させてくれないじゃん」

善子「曜さんだって私と……してくれないじゃない」カァアア

曜「あっ……そっちの話か」

善子「どっちの話よ!」

曜「そうだよね。おしっこじゃなくて……」

善子「私とするの嫌?」



240: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:06:54.66 ID:9D+05apE.net

曜「ううん」

善子「私だって不安になるわよ? 口では私のこと好きって教えてくれるのに……」

善子「全然その先は教えてくれないんだもの」

曜「これが私のいちばんの好きだよ……」

善子「ママとすることが!? ふざけないで!!」

曜「違うよ! 善子ちゃんと……おしっこすることがだよ」

善子「ママともしたじゃない」

曜「ママにはね、飲んでもらってない」

善子「は?」

曜「ママのは飲んだけど、私のは飲んでもらってないよ」

善子「だから何よ。ママにも飲ませたいの?」

曜「ううん。飲んでもらいたいのは善子ちゃんだけ」

善子「また適当なこと言って……」

曜「違うよ」

善子「そうやって私に『特別』って言えば許すとでも思ってるの?」

曜「……」

善子「曜さんのことは好きよ。それは何があっても変わらないわ」

善子「でも曜さんはそうじゃない」

善子「私のことを好きでいてくれるときと……」

善子「私以外を好きなときがあるわね」

曜「いつだって善子ちゃんがいちばんだよ……」

善子「……」ハァ

曜「私がおしっこを飲ませてあげるのは……これからもずっと善子ちゃんだけなんだよ」

善子「もしママが飲みたいって言ったら?」

曜「悪いけど……それはできない」

善子「嘘ね。絶対喜んで飲ませるわ」

曜「本当だよ!! 私のおしっこは……善子ちゃんだけのものだから」

善子「……」

曜「これが私の『好き』」

善子「どうだか」



241: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:07:28.78 ID:9D+05apE.net

曜「信じられない?」

善子「ええ。残念だけど」

曜「そっか……そうだよね」

善子「自覚はあるみたいね」

曜「私が普通じゃないのは分かってるよ」

善子「おかしいわよ。本当に好きなのは私だけ、って言いながらママにも好きって言うの」

曜「ママも好きだから」

善子「……」

曜「善子ちゃんは私のお母さんのこと好き?」

善子「は?」

曜「好きでしょ」

善子「何でよ。関係ないじゃない」

曜「ドキドキしてたじゃん」

善子「してな……」

曜「……」

善子「したわよ。したけどあれは違う」

曜「何が違うの」

善子「さっきも言ったでしょ。まるで大人になった曜さんに抱きしめられてるみたいで……」

善子「それでドキドキしたのよ」カァアア

曜「浮気じゃないの?」

善子「は?」

曜「浮気だよね」

善子「違うわよ。どうしてそうなるの」

曜「私以外でドキドキしたよね」

善子「そ、そんなの……!」

曜「同じだよ」

善子「全然違うわよ! 抱きつかれただけと、おしっこを飲むなんて!!」

曜「……」

善子「曜さん、それ本気で言ってるの?」

曜「本気だよ」



242: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:08:01.05 ID:9D+05apE.net

善子「だとしたら……本当におかしいわよ」

曜「……」

善子「ね、ねぇ本当のことを言ってくれれば許すから」

曜「言ってるよ」

善子「変な意地張ってないで……」

曜「本当だよ」

善子「……」

曜「……」

善子「昨日のこと覚えてる?」

曜「え?」

善子「私が梨子さんに……したこと」

曜「うん……」

善子「あのとき……止めてくれなかったわよね」

曜「……」

善子「私は止めてほしかったのよ」

曜「……」

善子「曜さんにね、ヤキモチ妬いてほしかったの」

善子「私と同じ気持ちになってほしかった……」

善子「『もうやめて』って言ってほしかったのに」

曜「……」

善子「曜さんの前で他の人と……しかも梨子さんでしょ?」

善子「あんな綺麗な人と……私が手を繋いで、ぎゅってして……」

善子「キスまでしたのよ」

曜「……したね」

善子「本当はあのとき……どんな気持ちだったの?」

曜「……」

善子「さっきお母さんから聞いちゃったわ」

善子「家に帰った後……玄関で死んでたって」

曜「死んではいないかな」

善子「例えよ! 少なくとも曜さんのお母さんは、死んでると思ったみたいだし」



243: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:08:32.90 ID:9D+05apE.net

曜「……」

善子「ずっとこう言ってたんでしょ……」

善子「『善子ちゃんに嫌われた』」

曜「っ……」ビクッ

善子「私に嫌われたって……思ってくれたのね」

曜「……」

善子「ううん、私はそこまで望んでたわけじゃない……」

善子「ただ曜さんに、ヤキモチ妬いて貰いたかっただけよ」

善子「今朝、梨子さんに付き合ってくれるように頼んだのもそう……」

善子「曜さんがまだ反省してないようなら、もっと見せてあげようと思ったの」

善子「私が、他の子と……」

善子「よりによって曜さんの親友と」

善子「目の前でベタベタするのをね」

曜「……」

善子「でもそうしないで済んだのは」

曜「梨子ちゃんが断ったから」

善子「違う」

善子「曜さんが私に会いに来たからよ」

曜「私は……善子ちゃんに嫌われるために行ったんだよ」

曜「昨日ははっきり言ってくれなかったけど……私のことを本当に嫌いになったなら」

曜「目の前で直接言ってほしかった……」

曜「『大嫌い』って」

善子「それは聞いたわ」

曜「今だって、私のこと許せないなら言ってくれていいんだよ」

善子「……」

曜「ほら」

善子「……」

曜「言いなよ」

善子「無理よ……」グスッ

曜「私がママとしたこと、許せないよね?」



244: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:09:03.11 ID:9D+05apE.net

善子「許す……」

曜「許せないでしょ」

善子「許すわよ!」

曜「……」

善子「許すから……」

曜「本当にそう思ってる?」

善子「お、思ってるわよ……」

曜「……」ハァ

善子「何よ! どうして私が責められなきゃならないの!?」

曜「責めてるつもりはないけどな」

善子「責めてるわよ!!」

善子「私が……曜さんの『好き』を分かってあげられてないから!!」

善子「ママへの好きと私への好きの違いが分からないから!!」

善子「だから……」グスッ

曜「……」

善子「そうよ」

善子「悪いのは私」

善子「曜さんはこんなにも私を好きでいてくれるのに」

善子「それを信じてあげられない私が悪いの」

曜「善子ちゃんは悪くないよ」

善子「曜さんは私だけに飲ませるんでしょう??」

曜「うん……」

善子「それが私への……『特別』なのよね?」

曜「そうだよ……」

善子「だったら……」グスッ

善子「悪いのは私じゃないの……」

曜「……違うよ」

善子「曜さんのこと分かってあげられてなかったのは」

善子「私の方でしょ……?」

曜「……」



246: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:10:48.47 ID:9D+05apE.net

善子「……」グスッ

善子「私に教えて」

曜「え?」

善子「曜さんが私をいちばん好きって……教えて」

曜「……」

善子「曜さんの『特別』を……私に教えてよ」グスッ

曜「……」

善子「教えなさいよ!! 今! ここで!!」グイッ

曜「……ごめん」

善子「は!? 今は出ないとか!? そんなの知らない!」

善子「私のことが好きなら!! 死んでも出しなさいよ!!」

善子「曜さんのおしっこを私に!!! 飲ませて!!」

曜「……」

善子「……っ!」ガシッ

曜「く、苦しい……」

善子「私だって苦しいわよ……!」グッ

曜「……」

善子「曜さんのこと分かってあげたいのに……信じてあげたいのに」グイッ

曜「ぐっ……」

善子「どうしても信じてあげられないの……」

曜「善子ちゃ……はな」

善子「こんなにも私は曜さんのことが」

善子「大好きなのに……!!」ググッ

曜「して……」

善子「口だけじゃ不安なのは……私も同じよ」グスッ

曜「……」

善子「……」パッ

曜「げほっ、ごほっ!」ゼェゼェ

善子「ごめんなさい。苦しかったでしょう」

曜「……ま、まあね」ハァハァ



248: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:12:23.37 ID:9D+05apE.net

善子「私に殺されかけるのは二回目ね」

曜「うん……」

善子「まだ私のこと好き?」

曜「好きだよ」

善子「昼間の私は……どこまでしたの?」

曜「今より本気だった、かな」

善子「……ごめんなさい」

曜「いいよ。でも……」

善子「どうしたら嫌いになってくれる?」

曜「え?」

善子「私のこと。どうすれば嫌いって言ってくれる?」

曜「……言ってほしいの?」

善子「諦めがつくわ」

曜「何の」

善子「曜さんのこと、やっぱり分からないもの」

曜「今は分からなくてもいいよ」

善子「ううん……たぶんこの先も分からないまま」

曜「……」

善子「私にどうしてほしいの? 言ってよ」

曜「……」

善子「ずっとおしっこを飲んでもらいたいのかと思ってた」

曜「飲んでほしいよ」

善子「だから飲むって言ってるじゃない」

曜「……」

善子「何よ……」グスッ

曜「ごめん」

善子「私がこんなにお願いしてるのに飲ませられないのね」

曜「ごめんね。でも……」

善子「私のこと好きなんでしょう? それを証明する方法がおしっこなんでしょう??」

善子「なのに飲ませられないってどういうことよ」



249: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:12:57.79 ID:9D+05apE.net

曜「今の善子ちゃんには……飲ませられないよ」

善子「……」

曜「ごめんなさい」

善子「そう」

曜「今の善子ちゃんは……私のこと好きで言ってくれてるわけじゃないよね」

曜「私のを飲みたいって……本当に思ってるわけじゃないよね」

善子「思ってるわよ」

曜「思ってないよ」

善子「思って……」

曜「……」

善子「もういいわ」

善子「私が曜さんに言う『好き』と」

善子「曜さんが私に言う『好き』は」

善子「全然違うんだもの……」グスッ

曜「そう……かもね」

善子「そうよ」

曜「……」

善子「ねぇ曜さん」

曜「何」

善子「やっぱり曜さんは……」

善子「曜さんの好きを分かってくれる人と付き合うべきだと思う」

曜「え……」

善子「私も曜さんのことは好きよ? でも……」

善子「たぶん、私は曜さんの期待には応えられないわ」

曜「……」

善子「本当のことを言うとね、おしっこなんて……飲みたいと思えない」

善子「それが曜さんのでもね……」

曜「そう……」

善子「曜さんだって私みたいな、嫉妬深い子を恋人にしなければ……好きなだけ他の人とできるのよ」

曜「ママと?」



250: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:13:33.62 ID:9D+05apE.net

善子「誰とでも。私とは……それなりに仲良くしてくれたらそれでいいわ」

曜「……」

善子「そんなにママが好きなら言ってみれば? もしかしたら受け入れてくれるかも」

曜「どうして……」

善子「私も曜さんのママと付き合おうかしら? 曜さんと違ってこんなにわがまま言わなそうだし」

善子「私のこともそれなりに……好きでいてくれてる気がするもの」

曜「今のは……ママたちに失礼じゃないかな」

善子「……そうね」

曜「ママはお母さんと本気で付き合ってるよ。もしかしたら本当の意味では分かり合えてないかもしれないけれど」

曜「それでもずっと一緒にいる。私の小さい頃からずっと……」

曜「ねぇ、善子ちゃんのママは昔からおしっこが好きだったのかな?」

善子「そんなわけないでしょ」

曜「私もそう思う。でも今は喜んで飲んでるよね」

善子「いや、喜んでいるかは……」

曜「お母さんがおしっこ好きなの知ってて、それでも付き合ってるよね」

善子「それは……曜さんのママがちゃんと弁えてるからじゃない?」

曜「弁える?」

善子「他の人とはそういうことしない。ママにも無理矢理は飲ませない」

曜「それもお母さんから?」

善子「バカ、聞いてるわけないわよ。私の想像」

曜「聞いてみようか」

善子「そうね、聞いて……」

善子「いや、やめましょう。たぶん聞かれたくないと思うから」

曜「そうかな?」

善子「それに……そういうこと聞くってことは、私たちのこともバレちゃう気がするの」

曜「……」

善子「ママにはもうバレてるわよ? でも曜さんのママにまでは……」

曜「バレたくない?」

善子「当たり前でしょ。こんなの知られたら……」

曜「善子ちゃんのこと嫌いになるかな」



251: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:14:16.75 ID:9D+05apE.net

善子「なる……かもしれない」

曜「ならないよ」

善子「そんなの分からないでしょう? せっかく仲良くなれたのに……」

曜「お母さんはね、そんなことで誰かを嫌いになるような人じゃないよ」

善子「何よ……昨日までギスギスしてたくせに」

曜「別にギスギスはしてない。会話はなかったけど」

善子「……」

曜「言おうよ」

善子「……」

曜「ね?」

善子「わ……分かったわ」

曜「まあでも、とりあえずお風呂に入ってからでいいよね」

善子「そうね。誰かさんに汚されちゃったから」

曜「わ、私が善子ちゃんを……」ドキドキ

善子「気持ち悪い顔」

曜「えっ酷い」

善子「どうせまたくだらないこと考えてるでしょう」

曜「何のことかな」アハハ

善子「どうしたいのか言って」

曜「え? 別に。何もないよ」

善子「私と今、したいことを言ってみて」

曜「……」

善子「何でもいいわよ。怒らないから」

曜「何でも?」

善子「言うだけね。やるかどうかは私が決めるわ」

曜「何だ……」ハァ

善子「言うだけ言ってみなさいよ。何ならおしっこだって、今の私なら喜んで飲むかもしれないわ」

曜「じゃあ……」

善子「……」

曜「善子ちゃんと」ニヤニヤ



252: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:14:49.67 ID:9D+05apE.net

善子「……」ゴクリ

曜「一緒にお風呂入りたい」

善子「……え?」

曜「お風呂、一緒に入ろうよ」

善子「……」

曜「嫌?」

善子「一緒に入るだけ?」

曜「うん……あ、一緒に洗いっこしよう」

善子「洗いっこ……」ドキドキ

曜「もちろんそういうことはナシで! そのくらい分かってるから」

善子「してもいいのに」ボソッ

曜「うーん、今日はお母さんも来てるしなぁ」

善子「だから何よ。少しくらいなら聞こえないわよ」

曜「善子ちゃん声大きいから」

善子「なっ、何でよ! 私がいつ曜さんとそういうことしたの!?」

曜「ううん。私の予想」

善子「分かったわ。そこまで言うなら確かめてみれば?」

曜「……」

善子「い、言っとくけど無理にしなくてもいいから……」

曜「する」

善子「本当!?」ガタッ

曜「そんなに私としたい?」

善子「し、したいわよ」ドキドキ

曜「じゃあ、声は抑えめでね」

善子「……最低」カァアア

……

 リビング

曜ママ「ふぅ……。こんなものでしょ」

善子ママ「そうね……」クンクン

曜ママ「まだ匂いする?」



253: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:15:23.28 ID:9D+05apE.net

善子ママ「曜ちゃんのってこういう匂いなのね……」ドキドキ

曜ママ「ちょっと?」

善子ママ「え!? う、ううん! 拭けてるか確認しただけよ!」

曜ママ「ならいいけど……」

善子ママ「……」

曜ママ「元気ないね。大丈夫?」

善子ママ「え? そんなことない……」

曜ママ「ごめんね? 曜のおしっこで汚しちゃって」

善子ママ「ううん……私は大丈夫」

曜ママ「私のせいかな」

善子ママ「何?」

曜ママ「私がこんなだから……曜まで」

善子ママ「何言ってるのよ。あなたがこうだから、曜ちゃんがいるんじゃない」フフッ

曜ママ「分かってるでしょ? 曜も……私と同じだって」

善子ママ「……」

曜ママ「おしっこが好きなんてさ、普通じゃないんだよ」

善子ママ「……」

曜ママ「ううん、たまーにはね? 排泄物愛好症みたいな病気の人もいるよ」

善子ママ「病気……というよりは障害だけれど」

曜ママ「だけど私には……おしっこはただの好きな飲み物なんかじゃない」

善子ママ「ええ。知ってるわ」

曜ママ「これがいちばんの、愛情の形なのよ」

善子ママ「……」

曜ママ「歪んでるよね? こんなのおかしいよね?」フフッ

善子ママ「おかしくたっていいじゃない」

曜ママ「よくないわよ」

善子ママ「私はあなたのことが……好きだもの」

曜ママ「……」

善子ママ「こんな性癖も含めてね」

曜ママ「性癖って……」



254: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:15:56.03 ID:9D+05apE.net

善子ママ「ごめんなさい。あなたからしたらこれは……」

善子ママ「『好き』だったわね」

曜ママ「……そうよ」

善子ママ「私も好きよ」

曜ママ「曜に飲ませたんでしょう」

善子ママ「……」

曜ママ「正直に答えて」

善子ママ「飲ませた……というか飲まれたわ」

曜ママ「確認するけど……そういうつもりで」

善子ママ「まさか。私はあなたとは違うもの」

曜ママ「そう……だよね」

善子ママ「私が浮気したと思った?」

曜ママ「思った」

善子ママ「……」

曜ママ「もう一つだけ聞いてもいいかな」

善子ママ「ええ」

曜ママ「曜のは……飲んだの?」

善子ママ「え……?」

曜ママ「正直に」

善子ママ「飲んでないわよ」

曜ママ「信じていい?」

善子ママ「……信じられない?」

曜ママ「信じる」

善子ママ「ありがとう」

曜ママ「……」

善子ママ「……」

曜ママ「私のせいで……たくさんつらい思いをさせたわね」

善子ママ「今もよ」

曜ママ「そっか……そうだね」

善子ママ「あなたと付き合ってること……誰にも言えないままだもの」



256: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:17:37.30 ID:9D+05apE.net

曜ママ「善子ちゃんと曜には言ったんだよね」

善子ママ「ええ」

曜ママ「何で?」

善子ママ「……」

曜ママ「私がこういう、病気なことも」

善子ママ「そんな言い方はしてないわ」

曜ママ「何て言ったの?」

善子ママ「……」

曜ママ「私のこと」

善子ママ「まだちゃんとは言ってないの」

曜ママ「え?」

善子ママ「あなたがこう……おしっこが好きなことはね」

善子ママ「バレちゃったのだけど」

善子ママ「あなたがこういう……体質だということは」

善子ママ「まだ……」

曜ママ「……」

善子ママ「私の口からは、とても……」

曜ママ「曜は……分かってるのかな」

善子ママ「あなたのこと?」

曜ママ「自分のこと」

善子ママ「……」

曜ママ「私、やっぱり反対だな」

善子ママ「それは言わないって決めたじゃない」

曜ママ「善子ちゃんにまで……つらい思いをさせたくないよ」

善子ママ「……」

曜ママ「善子ちゃんは……たぶん無理してるよね」

曜ママ「無理して曜に付き合ってくれてるんじゃないかな」

善子ママ「あの子は……あの子の意思で」

曜ママ「それはそう言うに決まってるよ」



257: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:18:08.66 ID:9D+05apE.net

曜ママ「善子ちゃんは本当に曜のことを好きでいてくれてる」

曜ママ「だけど……」

善子ママ「曜ちゃんだって善子のこと……本当に好きでいるわよ?」

善子ママ「あなたが仕事で家にいないってのもあるでしょうけど……」

善子ママ「毎日のようにウチに来て、善子と私のために色んなことをしてくれる」

曜ママ「おしっことか?」

善子ママ「真面目に聞いて」

曜ママ「……」

善子ママ「食事も作ってくれるし……掃除も洗濯もみんなやってくれるの」

善子ママ「私のやることがなくなっちゃうくらいに」

善子ママ「私が遅いときだけじゃないの。私がいるときもね」

善子ママ「本当に何でもやってくれるの……」

曜ママ「曜のバカ……」

善子ママ「私がやるからいいわよ、って言うとね……」

善子ママ「……」グスッ

善子ママ「何て言うと思う?」

曜ママ「え? うーん……」

曜ママ「『代わりに飲ませてくださいね』とか?」

善子ママ「最低」

曜ママ「今のは冗談。ええと……」

善子ママ「……」

曜ママ「ごめんなさい。分からないわ」

善子ママ「『代わりに善子ちゃんといてあげてください』」

善子ママ「……」

曜ママ「曜が……そんなことを」

善子ママ「本当に優しい子よ」

曜ママ「私に似て?」フフッ

善子ママ「あなたよりずっと」

曜ママ「そ、そっか……」エヘヘ

善子ママ「私が本当は善子といたいってこと……分かってくれてるのよ」



258: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:18:44.73 ID:9D+05apE.net

曜ママ「……」

善子ママ「本当に、善子のこと大切に思ってくれてるの……」

曜ママ「大人ぶっちゃって」

善子ママ「曜ちゃんは……あなたが思ってるよりずっと大人よ」

曜ママ「まだまだ子どもよ。さっきだって私に酷いこと言ったと思ったらすぐ抱きついてきたし」

善子ママ「あれは……曜ちゃんなりの照れ隠しね」フフッ

曜ママ「……」

善子ママ「変な意地張ってたのはあなたの方」

曜ママ「そ、そんなこと……」

善子ママ「ある。あなたがいつまでも子どもなせいで」

善子ママ「曜ちゃんが大人にならなきゃいけなかったのよ」

曜ママ「私のせいで……」

善子ママ「さっき私に甘えたのも……たぶん心のどこかでは寂しい思いをしていたから」

善子ママ「本当はあなたに甘えたいのに……あなたがそれを許さないから」

曜ママ「……」

善子ママ「突き放すなんてできないわよ」

善子ママ「あんなのダメだって分かってても……」

善子ママ「曜ちゃんが寂しい思いをしているのに、誰にも言えないだなんて」

善子ママ「そんなのつらすぎるじゃない」グスッ

曜ママ「……」

善子ママ「あなたは母親失格よ」

曜ママ「そ、そこまで言う?」

善子ママ「言う」

曜ママ「酷い……」シュン

善子ママ「お世辞とか建前とかゴマすりとか、嫌いなんでしょ?」

曜ママ「嫌いだけど……もう少し優しくしてくれても」

善子ママ「辞令、いつ下りるの?」

曜ママ「え?」

善子ママ「異動になるって話。さっきしてたじゃない」

曜ママ「来月一日から」



260: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:20:21.66 ID:9D+05apE.net

善子ママ「そう……」

曜ママ「今すぐじゃないんだ」

善子ママ「そうよね、会社だもの」

曜ママ「実はさ……私からお願いしたんだよ」

善子ママ「そうなの?」

曜ママ「あのバカ部長もやっと一人前になってきたし」

曜ママ「そろそろ仕事を任せてもいいかなってね」

善子ママ「部長さん、あなたより年上でしょう?」

曜ママ「もう五十近いんじゃないかな」

善子ママ「そんなに上なのに、バカはないんじゃない?」

曜ママ「昔ながらの堅物だよ。私が上じゃなかったらいじめられてるね」

善子ママ「……」

曜ママ「大丈夫、昔みたいに黙ってやられる私じゃないから」

善子ママ「そう……」

曜ママ「あのときのこと……本当に感謝してるよ」

善子ママ「ね、ねぇそれなんだけど……」

善子ママ「やっぱりあなたの思い込みだと思うのよ」

曜ママ「またそんなこと言う……」

善子ママ「だって、あなたの言うとおり私と同級生で」

善子ママ「同時に浦女を卒業したのなら……」

曜ママ「卒業アルバムに載ってるはずだって?」

善子ママ「ええ」

曜ママ「たぶん休んでたんだね」

善子ママ「あのねぇ、学校で働いているから分かるけれど」

善子ママ「写真撮影当日に休んだ子は、枠外に顔写真が載るのよ」

曜ママ「そうなの?」

善子ママ「ええ。常識よ、こんなの」

曜ママ「……」

善子ママ「だから……」

曜ママ「全部私の妄想だって言いたいの?」



261: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:20:52.26 ID:9D+05apE.net

善子ママ「……」

曜ママ「私、本当に同級生だったんだけどなぁ……」ハァ

善子ママ「そう。まあいいわ」

曜ママ「いいよ、仮に全部私の妄想だったとして」

曜ママ「保育園での運命的な再会はどう説明するの?」

善子ママ「え……」

曜ママ「私、善子ちゃんを見つけたとき本当に」

曜ママ「今まで頭の隅っこにしまわれてた物が全部ふわーって」

曜ママ「初めて空を飛んだ鳥みたいな感じでふわーっとね」

曜ママ「まるで長い宇宙旅行の果てに地球を見つけたときのような……」

善子ママ「例えが大げさすぎて嘘くさいわね」

曜ママ「と、とにかくあれは運命としか言いようがないよ」

曜ママ「あのときの子に瓜二つの子がいたんだもの」

善子ママ「私は高校生だったはずだけど?」

曜ママ「面影だよ! 今だってそっくりじゃない」

善子ママ「……」

曜ママ「私のこと、本当に思い出せないの?」

善子ママ「ええ」

曜ママ「まあいいけど。あんな私を知ったら嫌いになるかもしれないわね」

善子ママ「ならないわよ」

曜ママ「私としても闇に葬りたい過去だし……」

善子ママ「だったら思い出させようとしなくてもいいじゃない」

曜ママ「うん……」

善子ママ「昔のあなたがどんな子だったかなんて関係ないわ」

善子ママ「私は今のあなたが好きなんだから……」

曜ママ「そっか」

善子ママ「あの子たちも、きっとそうよね」

曜ママ「……」

善子ママ「周りがとやかく言えることじゃないのよ」

曜ママ「そうかな……」



262: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:21:27.87 ID:9D+05apE.net

善子ママ「本人たちの気持ちを周りがね、変えることはできないもの」

曜ママ「……」

善子ママ「私は二人の気持ちを応援したいと思ってる」

曜ママ「……」

善子ママ「それが二人の幸せかは分からないけどね?」

曜ママ「そんなの無責任よ」

善子ママ「もう子どもじゃないのよ」

善子ママ「高校生だし、特に曜ちゃんはもう大人よね」

曜ママ「……」

善子ママ「善子はまだ子どもだし曜ちゃんにも私にも甘えてばかりだけど」

善子ママ「曜ちゃんとお付き合いし始めてから変わったわ」

曜ママ「それは……いいことなの?」

善子ママ「さあ? そんなの分からないわよ」

曜ママ「私たちでさえこんなに悩むのに、高校生の二人が抱えきれるのかな」

善子ママ「……」

曜ママ「やっぱり、反対すべきだったんじゃない?」

善子ママ「反対されたら嫌いになれる?」

曜ママ「嫌いになる必要はないわよ。ただ、特別な関係にならなければ」

善子ママ「私といることを誰かに反対されたら、あなたは私を捨てるの?」

曜ママ「す、捨てるだなんて」

善子ママ「きっとあの子たちもそうよ」

曜ママ「……」

善子ママ「もう少し、信じてあげてもいいんじゃない?」

曜ママ「……」

善子ママ「私のことも」

曜ママ「信じるよ」

善子ママ「ならあの子たちのことも信じてあげて」

曜ママ「……信じる」

善子ママ「ええ」

曜ママ「……」



264: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:23:04.85 ID:9D+05apE.net

善子ママ「不安なのはあなただけじゃないから」ギュ

曜ママ「……そうよね」フフッ

善子ママ「私もね、一緒に悩んであげるわよ」

曜ママ「……」ギュッ

善子ママ「……」

曜ママ「キス、してもいいかな」

善子ママ「ええ」

チュッ

曜ママ「……好き」ギュ

善子ママ「どうしたの? 甘えん坊ね」フフッ

曜ママ「私だって仕事で疲れてるの」

善子ママ「ふふ……やっぱり子どもだわ」ナデナデ

曜ママ「うぅ……言わないでよ……」カァアア

善子ママ「曜ちゃんの方がずっと大人よ」

曜ママ「むっ」

善子ママ「料理も上手だし」

曜ママ「そんなに曜がいいなら曜と付き合えば?」ムスッ

善子ママ「あら、ヤキモチ?」

曜ママ「ヤキモチだよ」プクー

善子ママ「……」フフッ

曜ママ「善子ちゃんはあんなに優しいのになぁ」

善子ママ「なら善子と付き合ったら?」クスクス

曜ママ「本気で言ってる?」

善子ママ「あの子、満更でもない感じだったけど」

曜ママ「善子ちゃんが聞いたら怒るわよ?」

善子ママ「そうね」

曜ママ「二人が出てくるまで……こうしててもいい?」

善子ママ「そういえばあの子たち遅いわね」

曜ママ「仲良くお風呂で何してるんだろうね」

善子ママ「え……まさか」



265: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:23:51.53 ID:9D+05apE.net

曜ママ「大丈夫、曜はそういうことできないから」

善子ママ「どうしてそう言えるのよ」

曜ママ「私もできないから」カァアア

善子ママ「……そうだったわね」

曜ママ「してほしいんでしょ? 知ってるよ」

善子ママ「今はダメ……」

曜ママ「誰も今なんて言ってないのに。期待しちゃったかな?」フフッ

善子ママ「もう……。親子揃って本当にいじわるね」

曜ママ「可愛いからいじめたくなっちゃうの。分かるでしょ?」

善子ママ「高校生のとき、可愛かったからいじめられてたんじゃない?」クスクス

曜ママ「え……」

善子ママ「あ、今のは不適切な発言だったわね。謝るわ」

曜ママ「そっか……あのときの子たちは私のこと」

曜ママ「好きだったのかぁ……」ニヤニヤ

善子ママ「えぇ……」

曜ママ「あっ、じゃあ逆に私のこと嫌いだった?」

善子ママ「はい?」

曜ママ「私を、いじめっ子たちから助けてくれたとき」

善子ママ「だからそれ、私知らないってば……」

曜ママ「まあいいわ。今は好きでいてくれてるんだもの」ギュ

善子ママ「ふぅ……」

善子ママ「あの子たち、本当に遅いわね」

曜ママ「寝てるのかな?」

善子ママ「起こしてこないと」スタッ

曜ママ「大丈夫だよ。それより私と……」グイ

善子ママ「……」

曜ママ「ねぇ?」

善子ママ「な、何」

曜ママ「私のこと、好き?」

善子ママ「好きよ」



266: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:24:26.93 ID:9D+05apE.net

曜ママ「娘の前でも言える?」

善子ママ「な、何でそんなこと」

曜ママ「私たちのこと……ちゃんと話そうよ」

善子ママ「……」

曜ママ「悩んでるのは私たちも同じだからって、言ってあげようよ」

善子ママ「でも……」

曜ママ「却って付き合いづらくなっちゃうかな?」

善子ママ「……」

曜ママ「分かった。私が様子見てくるから……」

曜ママ「戻ってくるまでに考えておいて」スタッ

善子ママ「えっ、ちょっと……」

曜ママ「全く、善子ちゃんに変なことしてたら許さないぞー?」ニヤニヤ

善子ママ「……」

善子ママ(私たちのこと……二人に)

善子ママ(どこまで話したらいいのかしら)

善子ママ(私たちが付き合ってることは話すとして)

善子ママ(あなたがおしっこが好きなこと……)

善子ママ(ううん。おしっこが『好き』なこと……)

善子ママ(……)

善子ママ(じゃあ私は?)

善子ママ(あなたのことは好きよ。でも)

善子ママ(私もおしっこが好き……?)

善子ママ(……)

善子ママ(私が好きなのは……)

……

 脱衣場

コンコンッ

曜ママ「まだ入ってるの? そろそろ上がらないとゆで卵になっちゃうわよ」

シーン

曜ママ「寝てるのかな」



267: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:25:14.84 ID:9D+05apE.net

曜ママ「……開けるね」

ガチャ

曜ママ「お風呂で寝ると風邪引く……」

曜「♡♡」チーン

善子「はぁ、はぁ……♡」

曜ママ「え、えっと……大丈夫?」

善子「え?」クルッ

曜ママ「曜はのぼせちゃったのかな」

曜「」

曜ママ「あ……善子ちゃん、タオルしてないんだ」ジッ

善子「きゃああ!!?」ガタッ

曜ママ「ごめん!! そういうつもりで来たわけじゃ!」

善子「わっ、私のこと! そういう目で!?」グイッ

曜ママ「そんなわけない! 私はもう大人だし子どもの体なんて見ても……」

善子「子どもじゃないわよ!」グイグイ

曜ママ「離して! それ本当に痛いから!」

善子「いいから出て! ほら!!」グイグイ

曜ママ「分かったわ! 分かったから離して……」

バタンッ

善子「ふぅ……」

「えっと……大丈夫?」

善子「何がよ」

「様子が変だなって」

善子「は? いつもこんな感じよ」

「そう……」

善子「……」

「曜は?」

善子「え? あぁこれ……」

「あんまりいじめないであげてね」

善子「いじめてなんかないわよ」



268: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:25:49.91 ID:9D+05apE.net

「むしろいじめられてる?」

善子「ええ」

「善子ちゃんが可愛いから、ついいじめたくなっちゃうのね」クスクス

善子「か、可愛いとか言うな……」

「そうやってすぐ恥ずかしがるところとか」

善子「……」カァアア

「ごめんなさい。あんまりやりすぎると曜に怒られちゃう」

善子「曜さんはヤキモチ妬いたりしないわよ……私みたいに」

「そうなの?」

善子「あんまり執着がないって言うか……私としてはもう少し執着してくれると……その」ボソボソ

「あはは。それもヤキモチ?」

善子「違うわよ。あ……いえ、そうなのかしら」

「……」

善子「それで、私に何か用? まさか本当に覗きに来たわけじゃないでしょう」

「ええ。お風呂で寝ちゃってないか確認しに来ただけ」

善子「……ある意味寝たわ」ボソッ

「ん?」

善子「何でもない! 心配してくれてありがとう」

「あまり長風呂すると体に悪いわよ」

善子「気をつけるわ」

「それじゃ……」スタッ

善子「……」

ガチャ

バタン

善子「……」

善子「曜さん、起きないとゆで卵になっちゃうわよ」ユサユサ

曜「んん……」

善子「寝てるの?」

曜「起きてるよ」

善子「……ならいいけど」



269: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:26:22.31 ID:9D+05apE.net

曜「少しお湯がぬるくなってきたね」

善子「もう追い焚き五回くらいしてるものね」

曜「指なんてふやふやだよ」

善子「わ……すごいふやふや」

曜「善子ちゃんがしゃぶるから」

善子「ち、違うし! 曜さんがふやふやになりやすいだけよ!」

曜「善子ちゃんは二回も入ってるのにそうでもないね」

善子「そう言われればそうね」

曜「お母さんとはこう……一緒に浸からなかったの?」

善子「浸かったわよ」

曜「どのくらい?」

善子「え? 時間は覚えてないわね。時計見なかったから」

曜「時間を忘れるくらい……」

善子「そういう意味じゃないわよ。お話するのは楽しかったけれど」

曜「私とどっちが楽しい?」

善子「……」

曜「え」

善子「もしかしてヤキモチ?」

曜「ううん。純粋に気になっただけ」

曜「私はお母さんとお風呂に入ったのなんてずいぶん昔のことだし」

曜「お風呂で話したことなんてあんまりないから」

善子「そう……」

曜「私とはあんまり喋ってくれないね」

善子「え? そうかしら」

曜「もっと善子ちゃんと喋りたいのに」

善子「なら話題振りなさいよ」

曜「……」

善子「何よ。まさか私から振れって言いたいの?」

曜「私の目も見てくれないね」

善子「えっ、み、見てる……わよ?」チラッ



270: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:26:53.79 ID:9D+05apE.net

曜「えへへ」ニコッ

善子「何よ! 私をからかいたいだけなら上がるわ」スタッ

曜「私のこともっと見てくれてもいいのに」

善子「見たじゃない……さっき、死ぬほど」

曜「えー? 意図的に私と目を合わせないようにしてたよね?」

善子「恥ずかしいからよ! そんなの分かるでしょ!?」

曜「裸だから?」

善子「ええ」

曜「お風呂だから?」

善子「それもあるわ」

曜「一緒にお風呂に入れば恥ずかしがる善子ちゃんを見られる……と」メモメモ

善子「どこにメモしてるのよ!」

曜「そういえば、ママと入るときはタオル巻いてたんだって?」

善子「べ、別にいいでしょ」

曜「やっぱり恥ずかしい?」

善子「……ええ」

曜「私と入るときは巻かないんだね」

善子「曜さんとは……その」

曜「私となら恥ずかしくない? んー、でもそれなら目を合わせてくれても」

善子「曜さんが見たそうにしてたから……仕方なくよ」カァアア

曜「してた?」

善子「……たぶん」

曜「善子ちゃんが見てほしかったんじゃない?」

善子「何でそうなるのよ」

曜「だって、私の体は見ないのに自分のは見せてくるじゃん」

善子「見せてなんか……ないけど」

曜「善子ちゃん少し太ったね」

善子「は?? 何よいきなり」

曜「ううん。こうしてじっくり見てて……あと触ってて思ったんだけどね」

曜「ウエスト周り、たぶん二センチは増えてるよ」



273: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:29:25.69 ID:9D+05apE.net

善子「え……」

曜「このペースだと次のライブでは衣装を直さないと動きにくいかも」

善子「……」

曜「バストサイズは変わらないね」フフッ

善子「み、見ないで!」サッ

曜「私のも見ていいよ?」パッ

善子「別に見たくなんて……」チラ

曜「私は善子ちゃんの控えめな胸も好きだからね」エヘヘ

善子「そこまで胸好きじゃないって言ってなかった?」

曜「善子ちゃんのだから」

善子「……」カァアア

曜「あ、でも善子ちゃんほどは体目当てじゃないよ?」

善子「私が曜さんの体目当てみたいな言い方しないでよ!」

曜「違うの?」

善子「違う!!」

曜「そっか……じゃあするのやめようっと」

善子「え……」

曜「私の体なんて見ても何とも思わないもんね?」

善子「お、思わないわよ」

曜「どうして目を逸らすの」

善子「別に。見たくないから」

曜「ふーん……」スタッ

善子「……?」

曜「今からおしっこするけど、見ないでね」

善子「え、ここで? 上がってからトイレでしなさいよ」

曜「お湯の中でしないだけましでしょ」

善子「当たり前でしょ! この後ママが入るんだから!」

曜「あ……じゃあここでしても匂いでバレちゃうかな」

善子「そうよ! ちゃんとトイレで……」

曜「分かった。善子ちゃんとトイレでする」



274: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:29:56.64 ID:9D+05apE.net

善子「何で私と」

曜「善子『ちゃんとトイレで』するよ」

善子「いや、私は自分のことちゃん付けで呼ばないから……」

曜「呼んでみて」

善子「……前にも呼ばされた気がするわ」

曜「あのときは私だけでしょ」

善子「そうだったかしら? よく覚えてないわ」

曜「じゃあ私から」コホン

曜「えっと……曜ちゃんはね」

善子「……」

曜「曜ちゃんは……善子ちゃんのことが大好きです」

善子「……」カァアア

曜「終わり。はい次」

善子「言わないわよ」

曜「言ってくれないの?」

善子「曜さんが好き。はい終わり」

曜「あっと、そうじゃないよ。ちゃん付けの方」

善子「私は……」

曜「ん?」

善子「よ、よし……」

曜「……」ニコニコ

善子「ヨハネちゃんは曜さんのことが好き!! はい終わり!」カァアア

曜「……」

善子「な、何よ」

曜「逃げたね」

善子「う……」

曜「そんなに恥ずかしい?」

善子「恥ずかしいし何だか気持ち悪い」

曜「私が自分のこと曜ちゃんって呼ぶのも気持ち悪い?」

善子「……」



275: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:30:30.14 ID:9D+05apE.net

曜「これから二人のときは曜ちゃんって呼ぼうかな」

善子「やめて!」

曜「何で?」

善子「みんなの前でもやりそうだからよ」

曜「二人のときだけって言ったじゃん」

善子「曜さんのことだもの、絶対に忘れてうっかり呼ぶわ」

曜「信用ないなぁ……」ハァ

善子「みんなの前ではベタベタしてこないで、って言ったのにベタベタしてくるじゃない」

曜「あれはみんなに隠してたからでしょ。私たちのこと」

善子「公表するときに約束したわ。みんなの前ではやらないって」

曜「したけどさ。却ってみんなが気を遣うからやめようってなったよね」

善子「それは曜さんが勝手に言っただけ」

曜「みんな優しいから、二人のときしかイチャイチャしないって分かっててわざと二人にしてくれたりね」

善子「余計なことを……」

曜「だからそういうの気にしないことにしようって」

善子「……」

曜「私は善子ちゃんのことも好きだけど、同じくらいみんなのことも好きだから」

善子「同じなの?」

曜「同じ『くらい』だよ。同じとは言ってない」

善子「私の方が好き?」

曜「もちろん」

善子「そう……」

曜「一応言っておくけどね、タオルの匂い嗅いだのは善子ちゃんのが初めてだからね」

善子「え?」

曜「屋上で。あのとき見られちゃったじゃん」

善子「あぁ、私が置き忘れたときの」

曜「あれを見られたのはさすがに恥ずかしかったなぁ」アハハ

善子「あれは……匂いを嗅いでたのもそうだけど、おしっこで汚してたことの方が問題なような」

曜「あ……」

善子「よく私、嫌いにならなかったわね」



276: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:31:08.05 ID:9D+05apE.net

曜「あのときの善子ちゃん、本当に気持ち悪そうな顔してたね」

善子「そりゃそうよ。曜さんがまさかそんな人だとは思ってなかったから」

曜「ちょっとドキドキしちゃったな……」エヘヘ

善子「うぇっ……」

曜「あのときはもう我慢できなくて無理やりしちゃったけど、もし嫌われてたらどうしたんだろう?」

善子「後のこと何にも考えなかったの?」

曜「考えてなかった。とにかく善子ちゃんの匂いとおしっこを味わいたくて、ただそれだけだったよ」

善子「ほとんどいじめじゃない」

曜「いじめと言うかレ……」

善子「ん?」

曜「ううん。それは犯罪だ」

善子「いや、やったことは変わりないから」

曜「もしあのとき嫌われてたら……今の私たちはなかったんだよね」

善子「それどころか私、絶対Aqoursやめてたわ」

曜「そこまで?」

善子「こんな人に衣装作られるなんて、ううん。衣装作りと称してあんなところまで採寸されるなんてごめんだわ」

善子「きっとみんなにも教えたわね。曜さんはみんなのことそういう目で見てるのよって」

曜「それは……私がAqoursをやめさせられるような気がするね」

善子「そうよ。私が言わなくたっていつか必ずバレたわ」

曜「心配しなくても、善子ちゃん以外にはしてないよ」アハハ

善子「……どうかしらね」

曜「してないよ!? 信じてもらえないかもしれないけど本当に」

善子「……」

曜「私、みんなからいじめられたりしてね」フフッ

善子「え?」

曜「だってそうでしょ? 同じ女の子なのにみんなのことそういう目で見てるなんてバレたら……」

善子「……もしかして本当に見てるの?」

曜「見てないけど。善子ちゃんがみんなにバラしたら、みんなきっとそう思うよ」

善子「まあ、そうでしょうね」



277: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:31:40.13 ID:9D+05apE.net

曜「毎日学校へ行くと『おはよう』の代わりに『気持ち悪い』って言われるんだ」

善子「……」

曜「教室に行くと私の机がなくて……」

曜「代わりに犬のケージが置いてあるの」

善子「何でケージが」

曜「一応居場所を用意してくれるあたり、みんな優しいよね」アハハ

善子「……」

曜「出欠確認のときもなぜか私だけ名前が呼ばれなくて」

曜「先生にね、『誰? 犬なんて連れてきたのは』って笑われるの」

善子「先生までいじめに加わるの? 最低ね」

曜「いや、先生はそんなことしないよ。私の願望」

善子「……本気で気持ち悪いわよ」

曜「『一応、名前は呼んであげるわ。渡辺さん』」

曜「はい!」

曜「『こらこら、犬なんだから返事は「はい」じゃなくて……』」

曜「わん!」

善子「……」ヒキ

曜「『よくできました。みんなもたくさん「可愛がって」あげなさいね♡』」

曜「えへへ……」ニヤニヤ

善子「もういいわよ。気持ち悪いからやめて」

曜「分かったよ。私の主人は善子ちゃんだもんね」

善子「いや、そういうことを言ってるわけじゃなくてね?」

曜「私のこと、首輪つけて散歩させたんでしょ?」

善子「させてないわよ。誤解されるような言い方しないで」

曜「させたいんでしょ?」

善子「させた……くない! 夢の話じゃないそれ!」

曜「夢か。善子ちゃんの夢なら叶えてあげなきゃね」

善子「夢ってそっちの夢じゃ……」

曜「ドリームでしょ? 私がカムトゥルーしてあげないと」

善子「あんな夢を見るなんて、私もどうかしてたわ……」ハァ



278: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:32:12.40 ID:9D+05apE.net

曜「しかも初夢で」

善子「そうよ。よりによって初夢でよ」

曜「本当に叶ったらどうする?」

善子「え?」

曜「ううん、どうしたい?」

善子「どうって……困るわ」

曜「そうだよね。実際そのときになってみないと」

善子「ならないわよ」

曜「そうかな?」

善子「え……いや、本当に嫌われるわよみんなから」

曜「善子ちゃんからも?」

善子「わ、私は……」

曜「善子ちゃんが喜んでくれるなら、みんなから嫌われても我慢するよ」

善子「その夢の続き、話さなかったかしら?」

曜「え? どういうんだっけ」

善子「警察に捕まるのよ」

曜「あぁ、そういえばそういうオチだった」

善子「人生終わらせたくなかったらやめなさい。いいわね?」

曜「確かダイヤさんに通報されるんだっけ」

善子「ええ」

曜「ふむ……先にダイヤさんを手懐けないとだ」

善子「曜さんが手懐けられる方よね」

曜「そうだね。ダイヤさんに私を可愛がって貰えば通報しないでくれるかも」

善子「やめて。お願いだから」

曜「それかさ、私が本当に犬になればいいんじゃないかな?」

善子「ん?」

曜「善子ちゃんが、この子は犬なのって言い張れば信じてくれるよ」

善子「信じないわよ」

曜「私は信じるよ」

善子「信じなくていいから」



279: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:32:43.76 ID:9D+05apE.net

曜「みんな、自分の目がおかしいだけなんだって気づいてくれるよ」

善子「曜さんは自分の頭がおかしいことに気づいて」

曜「『この子は犬なんだ。あの渡辺曜ちゃんに似てるけど、たぶん気のせいだ……』」

曜「『犬なら何してもいいよね? 普段は恥ずかしくてできないけど……』」

曜「えへへ」ニヤニヤ

善子「大丈夫? 病院行く?」

曜「本当にケージに入れられちゃうからやめて」

善子「全く……。気をつけなさいよ?」

曜「気をつけるって?」

善子「前にもこんなことあったじゃない」

曜「あぁ、首輪を嵌めたら犬になっちゃったときか」

善子「まさか私に嵌めるなんて」

曜「あのときの善子ちゃん、可愛かったなぁ」ニヤニヤ

善子「やめてよ。思い出したくない」

曜「今も可愛いよ?」

善子「か、かわ……」カァアア

曜「また嵌めてもいい?」

善子「嫌。それに嵌めてももう犬にはならない」

曜「そっか……」シュン

善子「曜さんは人間の私が好きなんでしょ?」

曜「うん。そうだよね、犬の善子ちゃんは可愛いけど……私が好きなのは」

善子「分かってくれてるならいいわよ」

曜「堕天使の善子ちゃんも好きだけどね?」

善子「堕天使はヨハネでしょ。私じゃない」

曜「そうだった。善子ちゃんとは別人……」

善子「気をつけてよ。ヨハネと浮気したら本気で殺すから」

曜「ひぇ……」

善子「私以外の私と浮気だなんて、いくら曜さんでも許さない」

曜「ママとは許してくれるのに?」

善子「ママとは浮気じゃないでしょ」



282: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:35:22.84 ID:9D+05apE.net

曜「うん……。分かってくれるんだね」

善子「分からないわよ。でもまあ、許さないなんて言っても無駄だから」

曜「無駄かな」

善子「許さなくても嫌いになれるわけじゃないもの」

曜「えへへ」

善子「……」

曜「私のこと嫌いにならないんだ……」ニヤニヤ

善子「その顔は嫌い」

曜「う」グスッ

善子「……でもない」カァアア

曜「キスしてもいいかな」

善子「え? 急に何よ」

曜「したくなったの」

善子「私と?」

曜「善子ちゃんと。他の人じゃなくてね」

善子「いいわよ。そこまで言うなら……」

チュッ

曜「んっ……」

善子「……」

曜「善子ちゃんの唇、ぷるぷるしてて大好き」

善子「私も曜さんの唇は好き。プリンみたいに甘くて……溶けちゃいそうで」

曜「そんなに食べたいの?」

善子「プリン、結局食べさせてくれてないじゃない」

曜「プリン味のホットケーキ作るんだっけ」

善子「そうよ。って言うかママが待ってるんだから、早く上がらないと」

曜「プリン味の私とどっちが食べたい?」

善子「プリン味の曜さん……って何」

曜「もしくは私味のプリン」

善子「それただのおしっこプリン」

曜「すっかりおしっこが定番フレーバーになっちゃったね」



283: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:36:00.44 ID:9D+05apE.net

善子「ええ。誰かさんのおかげでね……」

曜「上がろうか。ママが待ちくたびれて乾いちゃってるかも」

善子「乾く?」

曜「私のおしっこが」

善子「とっくに乾ききってカピカピしてるわよ」

曜「カピカピはしないよ。おしっこだもん」

善子「……だといいけど」

曜「あっ、私がそういうことしたと思ってるね?」

善子「したでしょ」

曜「もう……。そんなに気になるなら匂い嗅いでみれば?」

曜「善子ちゃんなら嗅ぎ分けられるでしょ」

善子「無茶言わないで」

曜「私は余裕で嗅ぎ分けられるよ」

善子「犬みたいに鼻がいいのね」

曜「まあね。代わりに耳はそんなによくないんだけど」

善子「そうなの?」

曜「だから善子ちゃんの声もあんまり聞こえないんだ」

善子「え……?」

曜「なわけないじゃん! もっと『好き』って言ってほしいってこと!」アハハ

善子「いくらでも言ってあげるわよそのくらい」

曜「言って?」

善子「好き」

曜「聞こえない。もっと大きな声で」

善子「好き!!」

曜「聞こえ……」

グイッ

曜「?」

善子「好きよ」ボソッ



284: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:36:33.33 ID:9D+05apE.net

曜「あ……♡」ビクッ

ショワァ

善子「えっ!? ここで漏らすの!?」

曜「だって善子ちゃんが耳元で好きなんて言うから……」ドキドキ

ジョボボ

善子「言ったけど! 曜さんもよくやるじゃない!」

ジョボボ

曜「あーあ、もったいない……」

善子「何がよ」

曜「おしっこ味のホットケーキ作るんでしょ?」

善子「プリン味!」

ジョボボ

曜「私味?」

善子「プリン!! 耳悪すぎ!」

曜「あはは。分かってるよ」

ジョボボ

善子「今日は曜さんのママもいるんだから絶対にやめてよ?」

曜「私のおしっこは善子ちゃんだけのものだからね」

善子「いらないけど」

曜「私のいちばんを欲しくないとは……がっかりだな」

ジョボボ

善子「できれば別の形でくれないかしら?」

曜「さっきあげたよ」

善子「そうね。貰ったわ」

チョロロ

曜「ふぅ……でも結局最後まで見てくれたね」

善子「あっ……こ、これは別に見たわけじゃ」

曜「私の目は見てくれないのにね」

善子「見てるわよ」チラ

曜「うん」ニコッ



285: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:37:04.06 ID:9D+05apE.net

善子「もう……」カァアア

曜「じゃあ上がろうか。ママが待ってる」スタッ

善子「いや、せめてシャワーで流さないと」ガシッ

曜「善子ちゃんが舐めてもいいんだよ?」

善子「なっ……」

曜「冗談。シャワーで流せば匂い消えるかな?」スッ

善子「仕方ないわね」スッ

ペロッ

曜「ひゃあっ!!?」ビクッ

善子「……」チュルッ

曜「ど、どうしたの善子ちゃん……まだ物足りなかった?」

善子「え? 曜さんが舐めてって言ったんじゃないの」ペロッ

曜「あっ♡ ち、違うよ……私が言ったのは」

善子「床のこととか言ったら引っ叩く」

曜「ゆ、床のことだよ」

善子「……」ペロッ

曜「んっ♡」ビクッ

善子「はい、終わりね。ママが待ってるから早く上がりましょ」

曜「善子ちゃん、今のは……どっちを舐めたの?」

善子「は? 床なんて舐めるわけないじゃない。って言うか曜さんも見てたわよね」

曜「そうじゃなくて、私とおしっこ」

善子「曜さんのおしっこ」

曜「本当!?」ガタッ

善子「間違えたわ。曜さん『と』おしっこよ。おしっこは次いでだから」

曜「欲張りさんだね」フフッ

善子「曜さんには言われたくないわ」ムスッ

曜「私は善子ちゃんがいちばんだけど……」

善子「私だって曜さんがいちばんよ」

曜「おしっこは次いでか」ハァ

善子「曜さんこそ私が次いでなんじゃない?」



286: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:37:35.69 ID:9D+05apE.net

曜「ううん」

善子「順位なんてどうでもいいわ。曜さんが私のこと好きなのは……たっぷり教えて貰ったから」

曜「私も。嫌そうな顔しながらおしっこを舐めてくれたし」

善子「分かってるならやらせないで」

曜「善子ちゃんがしてきたんだよ?」

善子「……知らない」プイッ

……

 リビング

曜ママ「あっ、やっと上がってきたね?」

善子「ごめんなさい遅くなって」

曜「善子ちゃんがなかなか私と離れたがらなくてね」アハハ

善子ママ「本当? あんまり曜ちゃんを困らせちゃダメよ」

善子「いちいち真に受けなくていいから……」

曜「出てくるとき追い焚き押してきたよ」

善子ママ「あら、気が利くのね」フフッ

曜「汚しちゃってごめんなさい」ペコッ

善子ママ「あっ……いいのいいの。気にしないで」

曜「……」

善子ママ「おしっこで汚れるのはね、善子で慣れてるから」

曜ママ「そうなの?」

善子「違います!」カァアア

曜「いつも善子ちゃんがごめんなさい」ペコッ

善子「何で曜さんが謝るのよ」

曜「え? 恋人だから」

善子「関係ないでしょ」

曜「汚すのは私だけにしてね」

曜ママ「ん?」

善子「あっ……ち、違うのよ? 曜さんってば冗談きついわね」フフッ

善子ママ「……」

善子「いいからママは早く入ってきて」



287: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:38:08.57 ID:9D+05apE.net

曜ママ「そうだ、その間に善子ちゃんとホットケーキ作っておくわ。上がったらみんなで食べよう」

善子「私と?」

曜「えーと、こほん。それじゃ私は気を利かせてママとお風呂に」

善子「曜さんが教えるのよ」ガシッ

曜ママ「そうよ。ここを事故物件にしたいの?」

善子ママ「……」

曜「わ、分かったよ。私がついてるので安心して入ってきてください」

善子ママ「お願いね」

曜「はい!」

……

 キッチン

曜ママ「えーと、ホットケーキだったよね。まずは小麦粉と……」ガサゴソ

善子「えっ、ミックス粉じゃないの?」

曜ママ「何言ってるの。自分たちで作らなきゃ」

善子「ミックス粉使った方がいいと思うわよ。ね、曜さん」

曜「んー?」ニコニコ

曜ママ「気持ち悪いくらい笑顔ね」

曜「酷いなぁ」

善子「で、どうするの?」

曜ママ「もちろん粉から!」

善子「曜さんに聞いてるんだけど?」

曜「私? 作るのは二人なんだから、二人で決めなよ」

曜ママ「ほら。じゃあ粉からで決まり」

善子「ちょっと! 私の意見は!?」

曜ママ「粉から作った方が楽しいよ?」

善子「大変なだけじゃない」

曜ママ「その分善子ちゃんとお話できるし」

善子「あ……」カァアア

曜「……」ニコニコ

曜ママ「はい決まり。小麦粉と……」ガサゴソ



288: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:38:43.80 ID:9D+05apE.net

善子「だ、大丈夫かしら」

曜「本当にヤバそうになったら止めるから安心して」

善子「お願いね。私じゃ止められる気がしないわ……」ハァ

曜ママ「小麦粉じゃありきたりよね。米粉にしてみようかしら」

善子「やめましょう。小麦粉が見つからないからってヤケになるのはよくないわ」ヒョイ

曜ママ「小麦粉! どうして分かったの?」

善子「いや……ここ私の家だし」

曜ママ「そうよね」フフッ

善子「それじゃ次は……篩よね」ガサゴソ

曜ママ「卵とバターは冷蔵庫かな……あった」ヒョイ

善子「バター溶けちゃうわよ」

曜ママ「う……分かってたわよ。確認しただけ」

善子「あと、ベーキングパウダーは……」ヒョイ

曜ママ「あとはボウルと……ハンドミキサー」サッ

善子「ハンドミキサー? 泡立て器じゃなくて?」

曜ママ「疲れるからね」

善子「あのねぇ、生クリーム泡立てるわけじゃないのよ? そんなものつかったら……」

曜ママ「むしろ生クリームじゃないのに何で泡立て器なんて使うの?」

善子「泡立て器って泡立てる以外にも使えるの。知ってた?」

曜ママ「聞いたことないけど大丈夫かな……」ハァ

善子「フライパンを揚げ物以外でも使うでしょう? それと同じ」

曜ママ「フライパンは揚げ物には使わないわよ」

善子「フライパンよ。フライするパン……つまり揚げ物用」

曜ママ「え」

善子「え?」

曜ママ「じゃあ金曜日は?」

善子「油のCMみたいなこと言わないで」

曜ママ「フライパンはフライするパンだったのか……」メモメモ

善子「曜さん、この人本当に頭いいの?」

曜「まさか。私のお母さんだよ?」アハハ



290: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:40:20.81 ID:9D+05apE.net

曜ママ「失礼ね」

善子「まあいいわ。バニラエッセンスはあったかしら……」ガサゴソ

曜ママ「……」

善子「バニラアイスは作らない、とか言い出さないでよ?」ガサゴソ

曜ママ「作ろう」

善子「無理。そんな時間はないわ」

曜ママ「すぐ作れないの?」

善子「冷凍庫で凍るのを待たなきゃ」

曜ママ「じゃあ明日の朝食べよう」

善子「ホットケーキの生地を作り終えて、まだ時間があったらね」

曜ママ「凍らせなきゃなんだよね? 先に作ろうよ」

善子「ホットケーキは今日食べたいの」

曜ママ「分かったよ……」ハァ

善子「……」チラ

曜「ん?」ニコニコ

善子「何でさっきから笑顔なのよ」

曜ママ「気持ち悪い」

曜「……じゃあ怒りながら見るよ」プクー

善子「……」

曜ママ「たこやき作ろうか」

善子「作らない! ホットケーキは!?」

曜ママ「あっ、そうだった。無駄話してないで早く作りましょう」

善子「……」

曜ママ「善子ちゃんとの話が無駄って意味じゃないわよ」

善子「聞いてないです」

曜「……」プクー

善子「その顔疲れない?」

曜「疲れる」プクー

善子「やめていいわよ」

曜「私いま怒ってるから気安く話しかけないで」プクー



291: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:40:56.82 ID:9D+05apE.net

曜ママ「怒ってるの? 何か怒らせるようなことしたかな……」

善子「朝ごはんになっちゃいそうね……」ハァ

……

曜ママ「小麦粉と卵はいいね。次はミルクを投入かな」

善子「ええ。入れすぎるとベチャベチャになるからちゃんとカップで計って……」

曜ママ「あっ、ミルクなのに『投入』は変よね」ドバドバ

善子「だぁぁ!!? 入れすぎ! 入れすぎよ!!」

曜ママ「あぁ……善子ちゃんが話しかけるから」

善子「私のせい!? 早くカップで掬って……」サッ

曜ママ「その牛乳どうするの?」

善子「え? 飲む?」

曜ママ「いや……卵と混ざって不味そうね」

善子「じゃあ捨てましょ」

曜ママ「小麦粉を足そう。あと卵も」ドサッ

善子「……何人前作るつもりよ」

曜「……」

善子「何?」

曜「え? いや別に」

曜ママ「先生なのにアドバイスの一つも言わないわね」

善子「そうよ。あんまり口出されるのは嫌だけど、少しくらい口出してくれても……」

曜「そのボウルだとその量は混ぜられないよ」

曜ママ「え?」

善子「確かに。こんなになみなみ入ってちゃ間違いなく溢れるわ」

曜ママ「そこは曜の腕の見せ所よね?」チラ

曜「いくら私でも無理」

善子「混ぜるの疲れるからやりたくないだけでしょう」

曜ママ「う……何で分かるかなぁ」

善子「分かるわよ、そのくらい」カチャ

善子「ボウル持ってるから……溢さないように気をつけて分けるわよ」

曜ママ「うん。そーっとね。溢したら大変……」カチャ



293: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:42:28.03 ID:9D+05apE.net

善子「……」

曜「まさか同じ大きさのボウルに移すつもり?」

曜ママ「え?」

善子「半分に分けるのよ。ボウル一つにこの量じゃ混ぜられないって、曜さんが言ったんじゃない」

曜「そう……」

善子「何よ」

曜「ううん。ただ……ちゃんと混ざってない状態で二つに分けたら、材料の比率がめちゃくちゃにならないかなって」

曜ママ「えっ?」ジョボボ

善子「わっ!!?」ガタッ

曜ママ「どうしたの、そんなに驚いて」ジョボボ

善子「何でもない……」カァアア

曜「……」ニヤニヤ

善子「だから気持ち悪いわよ」

曜ママ「?」ジョボボ

曜「善子ちゃんはね、その音を聞くと思い出しちゃうんだ」

善子「よ、余計なこと言わなくていいから……」カァアア

曜ママ「あぁ、これ? おしっこみたいな音するよね」アハハ

善子「」

曜ママ「あ」

善子「えっ!?」グラッ

曜ママ「溢れる……っ!?」

パシッ

曜「ふぅ……」

曜ママ「ナイスキャッチ」

善子「危うくママに殺されるところだったわ」

曜「もう、危なっかしくて見てられないよ。私が言うからその通りやって」

曜ママ「うん……」

……

 リビング

善子ママ「ふぅ……いいお湯だったわ」ホカホカ



294: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:43:04.51 ID:9D+05apE.net

曜「お帰りなさい」

善子ママ「ありがとう。二人は?」チラ

「だからやめなさいって!」

「ええー?」

善子ママ「まだ作ってるの?」

曜「ホットケーキは何とか作れました。あとは二人が自由に作りたいとのことで」

善子ママ「自由に……」

曜「ホットケーキはお腹壊さないと思います」

善子ママ「ホットケーキは、ね……」ハァ

曜「私はホットケーキだけ頂きます」

善子ママ「私もそうするわ」

曜「……」

善子ママ「? どうかした?」

曜「ここ、寝てください」

善子ママ「えーと……」

曜「いいから」ポンポン

善子ママ「どうして?」

曜「嫌ですか?」

善子ママ「嫌というか、どうして私が曜ちゃんの膝の上に」

曜「遠慮せずに」グイ

善子ママ「え……」

ストンッ

曜「……」

善子ママ「ええと、その」

曜「ママ、いい匂いがしますね」クンクン

善子ママ「や、やめましょう? 二人はたぶん夢中で気づいてないでしょうけど……」

曜「大丈夫です。変なことはしませんから……」ギュ

善子ママ「してるじゃない」

曜「ふふ……」ナデナデ

善子ママ「……」



295: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:43:36.41 ID:9D+05apE.net

曜「私のこと、好きですか?」

善子ママ「……好きよ。変な意味じゃなくてね」

曜「私もです。変な意味じゃなくて」

善子ママ「……」

曜「それが聞きたかっただけです」ナデナデ

善子ママ「そう。ならもういいわね……」

曜「もう少し」

善子ママ「……」

曜「このままで」

善子ママ「さっき善子と何したの?」

曜「え?」

善子ママ「お風呂で。まさか変なことしたんじゃ……」

曜「してませんよ」アハハ

善子ママ「まあ、曜ちゃんのことだから……遊びでそういうことはしないでしょうけど」

曜「……」

善子ママ「私ね、曜ちゃんのお母さんと付き合ってるの」

曜「知ってます」

善子ママ「……そうじゃなくて、本当に」

曜「……」

善子ママ「今、曜ちゃんが考えたようなことしてるの」

曜「わ、私が考えたような?」

善子ママ「そう。だけどね、それは遊びなんかじゃない」

曜「そう……ですか」

善子ママ「曜ちゃん、おしっこのことが好きでしょう」

曜「はい。善子ちゃんのことが好きです」

善子ママ「その聞き間違いは冗談でも怒るわよ」

曜「え……ごめんなさい」

善子ママ「隠さなくていいわ。私たちも……曜ちゃんが想像したようなこと、してるもの」

曜「お母さんと?」

善子ママ「ええ。曜ちゃんが中学生のときからずっと……」



296: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:44:10.71 ID:9D+05apE.net

曜「……」

善子ママ「気持ち悪いって思う?」

曜「え? どうしてですか」

善子ママ「私たち……おしっことか、そういうことしてるのよ」

曜「好きなんですよね? ならいいと思います」

善子ママ「いえ、『私たちも』と言うべきかしら」

曜「……」

善子ママ「曜ちゃんが善子とそういうことしてるのは気づいてたわ」

曜「あはは……バレてましたか」エヘヘ

善子ママ「だって、あんなにいい匂いさせてたらね?」

曜「いい匂い?」

善子ママ「お風呂。あんな匂い嗅がせるなんて酷いわ」

曜「シャワーで流したんですけど」

善子ママ「シャワーで流したくらいで消せるとでも?」

曜「いえ……」

善子ママ「そうよね。曜ちゃんは鼻がいいから分かるはず」

曜「もしかしてママも?」

善子ママ「私は人並みだけれど。曜ちゃんのお母さんのせいで、特定の匂いに敏感になっちゃったわ」

曜「……」

善子ママ「善子、嫌がってない?」

曜「えっ? い、いえ……」

善子ママ「無理させてない?」

曜「……」

善子ママ「もし曜ちゃんが、この先も善子と……ずっと一緒にいてくれるって思ってるのなら」

善子ママ「あまり急ぐといいことはないわよ」

曜「わ、私は……」

善子ママ「勘違いしないでね? 怒ってるんじゃなくて、二人のために言ってるだけだから」

曜「……」

善子ママ「焦る気持ちは分からないでもないわ。若いときは私だってそうだった」

善子ママ「『今』しか見えてなくて……先のことなんてまるで考えもしなかった」



297: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:44:43.80 ID:9D+05apE.net

曜「ママが?」

善子ママ「ええ。曜ちゃんのお母さんと同級生なのは知っているでしょう」

曜「はい」

善子ママ「お母さんと出会ったのは保育園の頃だけれど、付き合い始めたのは割と最近なの」

曜「そうなんですか?」

善子ママ「ちょうど、私が曜ちゃんの担任になったときからくらいね」

曜「えっと……先生と保護者が何してるんですかね」

善子ママ「う……返す言葉がないわ」

曜「……」

善子ママ「曜ちゃんも私のことは知ってたでしょう? 小さい頃から何度も会ってるものね」

曜「それは……そうですよ。綺麗な人だなってずっと」

善子ママ「……」カァアア

曜「今も綺麗ですけど」カァアア

善子ママ「と、とにかくね。私は曜ちゃんが知り合いだからって贔屓したりはしたくなかった」

曜「あ、そこはちゃんとしてるんだ」

善子ママ「そうよ。これでも教師だから」

曜「……」

善子ママ「今思えば、逆に厳しくしすぎたかもしれないわね。ごめんなさい……」

曜「私の方こそたくさん怒らせてごめんなさい……」

善子ママ「曜ちゃん、私のこと覚えてたのね」

曜「忘れるわけないよ」

善子ママ「私のこと、すっかり覚えてないみたいな口ぶりだったわ」

曜「あぁ、『先生モードのママに授業(意味深)されてみたいなぁ……』」ニヤニヤ

曜「とかですか」

善子ママ「そんな気持ち悪い言い方はしてなかったと思うけれど」

曜「……」ニヤニヤ

善子ママ「してたわね」

曜「はい」

善子ママ「どうして私のこと忘れちゃったのかなって……思っていたわ」

曜「それは……」



299: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:46:16.21 ID:9D+05apE.net

善子ママ「私のこと、思い出したくないのかもしれない」

善子ママ「それとも、善子に気を遣って……?」

善子ママ「もしくは本当に忘れてたか」

曜「……恥ずかしかったから」カァアア

善子ママ「恥ずかしい?」

曜「大好きな先生の元に、娘の恋人として会いに行くのが」

善子ママ「……」

曜「すごく恥ずかしかったし……ちょっと怖かったです」

善子ママ「怖かった……ふふ、そうね。また怒られるんじゃないかって」

曜「特に怒られるとは思わなかったんですけど」

善子ママ「じゃあ何? 私が曜ちゃんのこと忘れちゃってるとでも?」

曜「逆です。あのときのこと……覚えててくれたら嫌だなって」

善子ママ「……どうして嫌なの」

曜「あのときママにあんなこと言っておいて、今は善子ちゃんに……ママの娘にも同じこと言ってるんだって」

曜「軽蔑される気がして……怖かったんだ」

善子ママ「軽蔑……ね」

曜「はい……」

善子ママ「そのくせ今は同じことしてるのね?」

曜「あぅ……」カァアア

善子ママ「私はしなくても善子は軽蔑するかも」

曜「そうですよね」アハハ

善子ママ「笑いごとじゃないわよ」

曜「……」

善子ママ「正直、最初は反対だったわ」

曜「そうなんですか……」

善子ママ「それはそうよ」

曜「……」

善子ママ「でも、曜ちゃんが本当に善子のことが好きだって分かって」

善子ママ「私の娘かどうかなんて関係ないってことが分かったから」

曜「ありがとうございます」ペコ



300: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:46:51.57 ID:9D+05apE.net

善子ママ「ううん。でも賛成はしてなかったわ」

曜「?」

善子ママ「実はね、善子と一度話したのよ」

善子ママ「曜ちゃんと付き合うことを反対してたことも伝えた」

曜「え……」

善子ママ「もちろん、私と曜ちゃんの関係には触れなかったわよ? ただ……」

善子ママ「女の子同士で付き合うなんて、そのせいでこの先たくさん辛い目にあうかもしれないわ」

善子ママ「それでも好きって言える?」

曜「私は言えます」

善子ママ「そう。善子も即答だった」

曜「それはちょっと意外かも」

善子ママ「善子はね、今しか見えてないから……。この先のことなんてまるで考えてないからよ」

善子ママ「私の言ったことを本当に理解して答えたわけじゃないの」

曜「そんなの……私だって」

善子ママ「曜ちゃんはある程度、考えてくれてるでしょう」

曜「まあ、ある程度は」アハハ

善子ママ「結婚式の写真を撮ったりね?」

曜「あぁ……あれ、見たんですか」

善子ママ「善子が見せて来たのよ」

曜「善子ちゃんが……?」

善子ママ「余程嬉しかったんでしょうね。寝るときも写真を抱いて離さなかったから……」

曜「そんなに嬉しかったのかぁ……」フフッ

善子ママ「おねしょで濡らしちゃいけないと思ってやめさせたわ」

曜「善子ちゃんのおしっこなら写真の私も許しそうだけど」

善子ママ「それと……私はこうも言ったわ」

善子ママ「『女の子同士じゃ結婚なんてできない』」

曜「……」

善子ママ「なかなか酷いことを言ったわね」

曜「それは……実体験ですか」

善子ママ「え」



301: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:47:27.08 ID:9D+05apE.net

曜「いえ、何でもないです……」

善子ママ「曜ちゃんって、普段は鈍感なくせにときどき妙に察しがいいわよね」ハァ

曜「ママにも好きな人がいたんですね」

善子ママ「ええ。曜ちゃんのお母さんと付き合う前にね」

曜「やっぱり……」

善子ママ「高校生のときよ。私は先輩と付き合っていて……大学もその人と同じところへ行ったくらい」

曜「……」

善子ママ「だから、曜ちゃんのお母さんに告白されたときは本当にどうしようかと思ったわよ」

曜「二股はしなかったんですね」

善子ママ「私は曜ちゃんとは違うもの」フフッ

曜「わ、私だって……」

善子ママ「やんわりとはお断りしたんだけれど。全然諦めてくれなくて」

善子ママ「結局卒業まで無視することになっちゃった」

曜「はっきり断ればよかったのに」

善子ママ「曜ちゃんのお母さんはね……」

曜「いじめられてたんですよね」

善子ママ「ど、どうしてそのことを」

曜「卒業アルバムに写真がなかったので」

善子ママ「え? いじめはあの後なくなったんじゃ……」

曜「表向きは」

善子ママ「う、嘘!」

曜「ごめんなさい。確かめたわけじゃないんですが」

善子ママ「憶測でそんなこと言わないで!」

曜「実は私……見ちゃったんです」

曜「押し入れを片付けているときに……お母さんの高校生時代の物が出てきて」

曜「教科書は油性ペンで悪口がびっしり。消そうとしたのかシンナーで印刷の字まで消えかかってて」

曜「三年生の教科書でした」

善子ママ「嘘よ!! そんなことあるわけ……」

曜「お母さんもそんなもの捨てればよかったのに、何で取っておいたのか……」ハァ

善子ママ「……」



303: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:48:58.02 ID:9D+05apE.net

曜「卒業アルバムに写真が載らないなんて、そんなの普通に考えておかしいです」

善子ママ「……そうよ。だから私は全部お母さんの妄想だと」

曜「先生まで加わるなんてあんまりじゃないですか」

善子ママ「え……?」

曜「教科書の他にも、テストの答案も出てきました」

曜「全問正解で文句なしの満点」

善子ママ「でしょうね」

曜「解答欄には丸ばっかり並んでるのに、名前のところに大きくバツが書いてあって」

曜「赤ペンで大きく……『誰ですか?』って」

善子ママ「……っ」

曜「……」

善子ママ「今の話、どこまで本当なの……?」

曜「全部本当です」

善子ママ「それじゃあ私……」

曜「それでもお母さんはずっとママのことが」

善子ママ「私……何て酷いことを」

曜「それは違います」

善子ママ「曜ちゃんも曜ちゃんよ! よりによってそんなこと私に言うなんて」

曜「だから違うんだってば」

善子ママ「こんなの知りたくなかった……」グスッ

曜「……」

曜「お母さん、何度も死のうとしたんですよね」

善子ママ「私のせいで! そうよ、あの腕の傷はどう見ても」

曜「どうして死ななかったと思いますか」

善子ママ「……」

曜「ママのことが好きだから……」

曜「ママがあのとき助けてくれたこと、ずっと覚えてたから」

曜「だからできなかったんじゃないですかね」

善子ママ「……」グスッ

曜「ママが助けてくれたんです」



304: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:49:34.35 ID:9D+05apE.net

善子ママ「そんなの……」

曜「ママが助けてくれたから、今のお母さんがいて」

曜「私もこうして……」

曜「だから、ありがとうございます」ペコッ

善子ママ「やめてよ……」

曜「お母さんを助けてくれたことだけじゃない」

曜「ママもきっと辛い思いをしたのに……私たちが付き合うことを認めてくれて、応援してくれて」

曜「本当にありがとう」ギュ

善子ママ「……」グスッ

曜「さっきママにあんなことしておいて言うのもアレですけど」エヘヘ

善子ママ「そう思うならやめなさい」

曜「ママは私のこと嫌いですか?」

善子ママ「……その質問はずるいわ」

曜「私は好きですよ」

善子ママ「また善子に怒られるわよ」

曜「おしっこは善子ちゃんだけのものなので」

善子ママ「そう……あなたって人は」

善子ママ「ううん。『あなた達』は」

善子ママ「やっぱりおかしいわよ……」グスッ

曜「それでも好きでいてくれる?」

善子ママ「もちろん」

曜「善子ちゃんも……好きでいてくれるかな」

善子ママ「それは本人に聞いて」

曜「善子ちゃんは好きって言ってくれたよ」

曜「だけど、この先もずっと私のことを好きでいてくれるかは……」

善子「バカね」

曜「え?」

善子「好きでいるわよ。ずっと……」

「善子ちゃん? まだー?」

善子「今行くわ!」



305: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:50:09.79 ID:9D+05apE.net

曜「もしかして、ずっと見てた?」

善子「まさか。ちょっと聞きたいことがあって来ただけよ」

曜「えっと……何かな」

善子「生クリームの泡立て具合が分からなくて」

曜「じゃあ行くよ」スタッ

ゴトッ!

曜「あっ! ごめんなさい!!」

善子ママ「いたた……」

曜「大丈夫ですか? 本当にごめんなさい」

善子ママ「私を乗せてたこと、完全に忘れてたでしょう」

善子「あれ? ママもいたのね。見えなかったわ」

曜「私に膝枕されてたからね」

善子「」

善子ママ「あっ、違うのよ善子」

曜「いい匂いすぎてドキドキしちゃったよ……」ハァ

善子「ママ?」

善子ママ「えーと……ちょっとお話をしてただけよ」

善子「どんな話してたのかしら?」

善子ママ「それは……」

曜「今は秘密」

善子「……」

善子ママ「大丈夫よ。善子が考えてることなんて一つもしてないから」

善子「当たり前よ!!」

曜「私はしたかったよ」ギュ

善子ママ「やめなさい。善子が見てるわ」

曜ママ「善子ちゃんまだー?」

善子「ハンドミキサー、持ってきて」

曜ママ「え?」

曜「泡立てすぎるとボッテリしちゃうから気をつけてね」

善子「曜さんをミキサーにかけるのよ」



306: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:50:42.91 ID:9D+05apE.net

善子ママ「……」

曜「や、やだなー冗談きついよ善子ちゃん」アハハ

曜ママ「はい」サッ

善子「ありがとう」カチッ

ウィーン

曜「あ、あのね? そういうのは人に向けちゃいけないって習わなかった?」

善子「やってみないと分からないじゃない?」フフッ

善子ママ「善子。人に向けちゃダメよ」コホン

曜「ママ……!」パァアア

善子ママ「今のは親として当然。曜ちゃんのためじゃないわ」

善子「ふぅ……。いいから手伝って」カチッ

曜「はーい」

善子ママ「……」

曜ママ「膝枕はずるいなぁ」プクー

善子ママ「わ、分かったわよ……後でね」カァアア

曜ママ「約束だからね?」

善子ママ「ええ」

……

 キッチン

曜ママ「それじゃ善子ちゃん、準備ができたらスイッチを」

善子「いや、一人で持てるから」

曜ママ「一緒に混ぜる」スッ

善子「ひゃっ……」ビクッ

曜ママ「行くよー? せーのっ……」カチッ

ウィーン

曜ママ「善子ちゃん?」ギュ

善子「……」カァアア

曜ママ「ほら、善子ちゃんも混ぜて」グイ

善子「だ、だって……」ドキドキ

ウィーン



307: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:51:13.20 ID:9D+05apE.net

曜ママ「あ、ごめんなさい。私に掴まれてたら混ぜづらいよね」パッ

善子「そうよ! 混ぜにくいったらありゃしないわ」ドキドキ

曜「……」ニコニコ

善子「だからその顔は何!?」

曜ママ「おっ、いい感じに泡立ってきたね」

曜「まだだよ」

善子「まだ? じゃあもう少し……」

曜ママ「疲れたらいつでも代わるわよ」

善子「ありがと……」カァアア

ウィーン

曜「もう少しかな」

曜ママ「さっきと変わってない気がするけど」

善子「そうね。途中からあんまり変化がないような……」

曜「あと三……ニ……一」

曜「はいストップ!」

曜ママ「善子ちゃんは変わったよね」カチッ

善子「へっ? 何の話……?」

曜ママ「ううん。何でも」

善子「……」

曜ママ「もういいってさ」スッ

曜「あっ! 止まってから!!」

曜ママ「ん?」

ウィーン……

善子「」ベチャッ

曜「あー……」

曜ママ「ごめんなさい」

善子「私、今日何回お風呂に入ればいいのかしら」フキフキ

曜「善子ちゃん、クリームが顔に……」

曜ママ「あむっ」ペロッ

善子「え」



308: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:51:42.52 ID:9D+05apE.net

曜ママ「うん、美味しい」

善子「い、今私を……」ドキドキ

善子「美味しいって……?」カァアア

曜ママ「あはは。クリームだよ」

善子「曜さん……」

曜「ん?」

善子「今の、見た?」

曜「見たよ。善子ちゃん顔真っ赤だね」アハハ

曜ママ「ごめんね。曜の前だからこのくらいで我慢して」

善子「そういう問題じゃないわよ!!」

曜「私は気にしないよ」ニコニコ

善子「気にして! お願いだから!」

曜ママ「さてと、クリームもできたことだし食べようか」

善子「うぅ……」フキフキ

……

 リビング

善子ママ「わぁ……美味しそうね」

曜ママ「でしょう? さすが曜だね。私でも作れちゃった」

善子「ええ。中もちゃんと火が通ってるわ」

曜「一応プリン味にはしたんだけど……口に合うかな?」

曜ママ「大丈夫。匂いだけで美味しいのが分かるもん」

善子「曜さんが味付け考えてくれたんだもの、心配してないわ」

善子ママ「そうよ。私の大好きな三人が作ってくれたんだから」

曜ママ「えっ……どうしたのママ」

曜「もちろん私がいちばんだよね?」

善子「は?」

曜「あはは、冗談だよ」

曜ママ「私よね?」

善子ママ「さっ、食べましょう。頂きます」



310: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:53:33.27 ID:9D+05apE.net

曜ママ「私よね!? ねぇ!?」ガタッ

善子「うるさい! 落ち着いて食べられないの?」スッ

曜「あっ、善子ちゃんには私が」スッ

善子「え……いいわよ、自分で食べるわ」

曜「あーん」つ

善子「……」

曜ママ「それじゃママも」つ

善子ママ「……」

善子「自分で食べるからいいわ」

善子ママ「そう? じゃあ私が両方……」

善子「っ!」パクッ

曜ママ「あれ?」

曜「善子ちゃん、今のは……わざとかな?」つ

善子ママ「じゃあ私が曜ちゃんのを食べればいいのね?」スッ

善子「あむっ!」パクッ

曜「まだ口に入ってるのに」

曜ママ「余程お腹が空いてたのかな」

善子「……」モグモグ

善子ママ「間違えたの?」

善子「ごくん……っ。そ、そうよ! 今のはわざとじゃなくて……」

曜ママ「善子ちゃんって意外と甘えん坊さん?」

曜「そうだよ。可愛いでしょ」アハハ

曜ママ「もう一口あげる」つ

善子「……」パクッ

善子ママ「そんなに急いで食べると喉に詰まらせるわよ」

善子「分かってるわよ……」モグモグ

曜「ママも食べさせてあげたら?」

善子ママ「私?」

善子「ママはいいから」

善子ママ「むっ……」つ



311: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:54:03.96 ID:9D+05apE.net

善子「いいってば」

曜「じゃあ私が食べちゃう」スッ

善子「っ!」パクッ

善子ママ「ふふっ」

曜ママ「あんまり食べすぎると太るよー?」アハハ

善子「」ピク

曜「実はね、先月からウエストが二センチも……」

善子ママ「善子?」

善子「……」プルプル

曜ママ「詰まったんじゃない?」

曜「仕方ないなぁ善子ちゃんは」スッ

チュッ

善子「っ……!!」ゴクンッ

曜「大丈夫?」

善子「の、喉が痛い……」

曜ママ「これは太るわ」

善子ママ「ちょっと? 善子、これでも気にしてるんだからね」

善子「余計なこと……言わなくていいから……」ハァハァ

曜「ママにもはい」つ

善子ママ「……」チラ

善子「……好きにしなさいよ」ハァ

善子ママ「あむっ」パクッ

曜「やったぁ」

善子ママ「……」モグモグ

曜ママ「それじゃ曜にも」つ

曜「え、私はいいよ」

曜ママ「何でよ」つ

曜「お母さん、恥ずかしくないの?」

曜ママ「う……」カァアア

曜「今日だけだからね」パクッ



312: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:54:37.08 ID:9D+05apE.net

曜ママ「……」ニコニコ

善子ママ「今日いちばんの幸せそうな顔ね」

曜ママ「し、してない」

善子「してたわ」

曜「お返し」つ

曜ママ「いらない! 自分で食べ……」

善子「……」つ

曜ママ「よ、善子ちゃん……」パクッ

曜「ん? 何で善子ちゃんのは食べるのかな?」

善子「……」カァアア

曜ママ「一緒に頑張って作ったもんね」モグモグ

善子ママ「曜ちゃんのも食べてあげたら?」

曜「もういいよ。自分で食べる……」パクッ

善子「曜さんがいじけちゃったわ」

曜「あぁ……プリンの味だ」モグモグ

善子ママ「生クリームもバッチリよ」ペロッ

曜「今度ママの生クリームも泡立ててあげるね……」グスッ

善子「気持ち悪い……」

曜ママ「ちょっと生クリーム作りすぎちゃったかな?」

善子ママ「ホットケーキもまだあるんでしょう? 食べきるかしら……」

善子「プリン味だもの、いくらでも食べられるわ」パクッ

……

曜「さてと」フキフキ

善子ママ「結局、後片付けは全部やってもらっちゃったわね」

曜「いいんです。好きでやってるんですから」

善子「助かるわ」

曜「ふふ」

曜ママ「えーと、ママ?」

善子ママ「何?」

曜ママ「さっきの」



313: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:55:11.24 ID:9D+05apE.net

善子ママ「あぁ……」

善子「?」

曜ママ「二人にね、話したいことがあるの」

曜「結婚するの? おめでとう」パチパチ

善子「えっ!?」ガタッ

曜ママ「いやー、実はそうなのよね……」アハハ

善子ママ「違うわよ」

曜ママ「ノリ悪いわね」

善子ママ「……」

善子「で、本当は何なのよ」

曜ママ「私たち……実はね、付き合ってるのよ」

曜「……」

善子「……」

曜ママ「びっくりさせちゃったかな?」

善子「知ってるわ」

曜「知ってる」

善子ママ「だから私が言っちゃったの、ってさっき……」

曜ママ「じゃあこれはどう? 私はおしっこが好き」

善子「……」

曜「……」

善子ママ「それも私が」

曜ママ「やめた」

善子ママ「え?」

曜ママ「私がドヤ顔でカミングアウトする度に恥をかきそうだから」

善子「だったら別に言わなくてもいいような……」

善子ママ「そういうわけにもいかないの」

曜「? 何で?」

曜ママ「二人が私たちについて知ってることを教えてくれないかな?」

善子「私たちが言うの?」

曜ママ「そう。どこまで知ってるのか言ってくれれば、そこから話すわ」



315: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:57:17.06 ID:9D+05apE.net

曜「えーとね、まずは二人が付き合ってて」

善子「曜さんが中学生の頃からね」

曜「女と女の関係で」

善子「ちょっ、ストレートすぎ!」カァアア

曜「おしっこが大好きで」

善子「……」

曜「私と善子ちゃんのこともある程度は知ってるってことくらいかな?」

曜ママ「」

善子ママ「どうしたの?」

曜ママ「いや、全部バレてる……」

善子「逆に隠す気あったの?」

曜ママ「一応ね、子どもたちに迷惑が掛からないようにとは思ってたのよ」

善子ママ「そうよ。現につい最近までバレてなかったじゃない」

曜「ママから聞くまでは気にしたこともなかったよ」

善子「私は……薄々気づいてはいたけれど」

曜「私が初めて恋人として来たときだよね。教えてくれたのは」

善子ママ「……」

曜ママ「どんな風に教えたの?」

善子「……」カァアア

曜「それはもう、先生らしく実技で……」ニヤニヤ

善子ママ「曜ちゃん」

曜「何?」

善子ママ「私から言うわ」

善子ママ「曜ちゃんが初めて善子の恋人としてウチに来たときのことよ」

善子ママ「まあ、そのときは恋人として来たなんて思わなかったのだけれど」

善子ママ「善子が家に誰かを連れてくるなんてなかったから……最初は驚いたわ」

善子「……」

善子ママ「善子のよそよそしい様子を見てピーンと来たの」

善子ママ「この子たち、もしかして……ってね」

曜「さすがママですね」アハハ



316: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 13:58:29.77 ID:9D+05apE.net

善子ママ「私たちが付き合ってることなんて知るはずもないのに……」

善子ママ「どうしてまた曜ちゃんなんて選んだのかしらって」

善子ママ「不思議な感覚だったわ」

曜ママ「親子だからかな?」

善子ママ「そこまでは普通によくあることだった。ううん、一般的にはね」

善子「親子で……なんてあまりないと思うけど」

善子ママ「決定的だったのは曜ちゃんがペットボトルを貰いに来たときよ」

善子ママ「工作でもするの? って聞いたのだけど……」

善子ママ「顔にね、書いてあったのよ。ペットボトルにおしっこをするって」

曜「私の表情、豊か過ぎない?」

善子ママ「善子がそういうの好きって話は聞かなかったから、すぐに曜ちゃんの趣味だと分かったわ」

曜ママ「……」

善子ママ「そう。あなたの娘だから」

曜ママ「私の……」

善子ママ「善子には普通の人生を送ってほしかったのは本当よ。だけど二人の顔を見たらそんなこと言えないじゃない」

善子「私は……こういうのあってもなくても曜さんを選んだわ」

曜「善子ちゃん……」

善子ママ「その後はなぜか私も巻き込まれて……後はあなたに話した通り」

曜ママ「そう……」

善子「えっ、ママから聞いてたの?」

曜ママ「少し」

善子ママ「ほとんど裸同然の曜ちゃんに『誰に教わったんですか?』って聞かれて」

善子ママ「答えるつもりはなかったんだけど……いつの間にか話しちゃってたわ」

曜ママ「……」

善子ママ「ごめんなさい。勝手なことをして」



318: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 14:01:18.80 ID:9D+05apE.net

曜ママ「ううん。いつかは話さなきゃいけないことだから」

善子ママ「二人に話したのはそれだけ」

善子「ほとんど全部言っちゃってるような」

善子ママ「この先はあなたの口からお願い」

曜ママ「……分かった」

曜「まだ続きがあるの?」

曜ママ「曜も知っての通り、私には……持病があってね」

曜ママ「普段は普通の人と変わらないんだけど、ときどき発作が来て」

曜ママ「おしっこを飲みたくてたまらなくなっちゃうの」

善子「……」

曜ママ「もちろん人には頼めないから……ずっと自分のを飲んでいたわ」

曜「それは辛いね……」

善子「私は突っ込まないわよ……」

曜ママ「そんなこと誰にも言えなくて……中学生までの私はとにかく目立たないように、誰かの影に隠れて生活してた」

曜ママ「これでもね、精一杯普通の人の振りをしてたのよ」

善子ママ「……」

曜ママ「浦女に行こうと思ったのは、そんな自分を変えたかったから」

曜ママ「本当の私を堂々と見せて生きて行きたかったから」

曜ママ「それで……自己紹介でやらかしたわ」カァアア

善子ママ「あのときの自己紹介、たぶん一生忘れないわ」

曜ママ「え?」

善子ママ「あっ……ええと、もし聞いていたら一生忘れないわね」

曜「……」

曜ママ「普通におしっこが好きです、なんて言ったら引かれるでしょ? そこは私も考えたの」

曜ママ「『私は魔界から来た七賢人の一人……聖水をこよなく愛し、聖水に愛された存在よ』」



319: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 14:01:49.80 ID:9D+05apE.net

曜ママ「とか何とかね」

曜「善子ちゃんみたいだね」アハハ

善子「どこがよ。全然違うわ」

曜ママ「その後は、みんな知っての通り。ママに会うまでは悲惨な高校生活だったわ」

善子ママ「……」

曜ママ「とにかく、私が普通じゃないってことが証明されちゃったわけ」

曜ママ「それからずーっと、つい十年前くらいまで私は、私を封印して生きてきたわ」

曜「保育園でママに会うまで」

曜ママ「会ったのは善子ちゃんだけどね? ママにそっくりで……」

善子「……」カァアア

曜ママ「ママは私のことなんてすっかり忘れちゃってたけど、私は却って好都合だと思ったわ」

曜「え?」

曜ママ「もう一度やり直せるチャンスが来たの。あのときほど生きてて嬉しかったときはないわね」

善子ママ「……」

曜ママ「あとはそう。少しずつ仲良くなって、少しずつ本当の私も見せて」

曜ママ「どこかで嫌われちゃうかなって思ってはいたのよ。そうしたら仕方ないなとも」

曜ママ「あのときは誤解されちゃったけど、今の私は違う」

曜ママ「相手の気持ちを考えられるくらいにはね、大人になったつもり」

善子「……」

曜ママ「結局、ママが私を嫌いになることはなかった」

曜ママ「私のこと全部見せても、顔色一つ変えずに受け入れてくれたわ」

善子ママ「……」

曜ママ「ずっと私を縛りつけていたものがやっと消えたの」

曜ママ「本当の私を認めてくれる人ができて」

曜ママ「こんな私でも好きって言ってくれる大切な人ができて」



320: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 14:02:22.70 ID:9D+05apE.net

曜ママ「だからね、私は後悔なんてしてないの」

曜ママ「ママと出会えて本当によかったと思ってるし、これからもずっと一緒にいたい」

曜ママ「……と私は思ってるよ?」

善子ママ「わ、私も……思っているわ」カァアア

曜「……」ニコニコ

善子「よかったじゃない」フフッ

曜ママ「えっと……だからね? 二人もその、ええと」

善子ママ「好きなようにしなさい」

曜ママ「え?」

善子ママ「私たちがこうだからとか、私たちの娘だからとか」

善子ママ「誰にどう言われるかなんて、そんなの関係ないわ」

曜ママ「……」

善子ママ「相手のことを分からないのが不安なのは、私も同じよ」

曜ママ「今も?」

善子ママ「当たり前。何でも知った気になるなんて傲慢じゃない」

曜「……」

善子ママ「相手のことは半分くらい理解してあげればそれで十分」

善子「半分?」

善子ママ「あまり背伸びするとね、いいことなんてないんだから」

曜「背伸び、かぁ……」

曜ママ「それ、私のこと?」

善子ママ「え?」

曜ママ「私……やっぱりママに釣り合ってないかな」

善子ママ「どうしてそう思うの?」

曜ママ「だって私……ママみたいにしっかりしてないし、仕事ばっかりで娘のこと放ったらかしてたし」



322: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 14:04:05.05 ID:9D+05apE.net

曜ママ「ママみたいにいつまでも綺麗じゃないし……」カァアア

善子ママ「……」

曜ママ「つま先立ちしすぎて足が痺れちゃったのよ」

善子ママ「……?」

曜ママ「異動になるって話したでしょ? あれね、本当はちょっと違うの」

曜ママ「本当は飛ばされるのよ」

善子「え……」

曜「……」

曜ママ「転勤ではないんだけどね、今までの花形から……いわゆる窓際に」

曜ママ「それで少し暇になるだけなの」

善子ママ「よかったじゃない」

曜ママ「よくないわ! 私がどれだけ頑張ってきたか……全然分かってもらえてなかったのよ!」

善子ママ「私は分かってる」ギュ

善子ママ「それに、会社でも必ずあなたの頑張りを見てくれている人がいるわ」

曜ママ「ママ……」

善子ママ「これからは私と……ううん」

善子ママ「私たちといられる時間が増えるじゃない」

曜ママ「仕事しか能のない私だよ?」

善子ママ「そんなことないわよ」

曜ママ「娘に何一つ母親らしいことしてあげられない私だよ?」

善子ママ「それはあるわね」

曜ママ「う……」グスッ

善子「言うわね……」

善子ママ「それでもあなたのこと……半分くらいは分かってるつもりだから」ギュ

曜ママ「こんな私でも好きって言ってくれる……?」グスッ



323: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 14:04:34.19 ID:9D+05apE.net

善子ママ「ううん。こんなあなただから好きって言いたいの」

曜ママ「……」エヘヘ

善子ママ「背伸びし過ぎて疲れたでしょう。これからは踵をつけて歩いていけばいいから」

曜ママ「うん……」

善子ママ「私たちの前ではね、あなたでいていいのよ?」

曜ママ「ちゅーしたい……」

善子ママ「え?」

曜ママ「お願い」

善子ママ「こ、ここで?」

曜「私たちのことは気にしないでいいから」アハハ

善子「私はあっち向いてる……」カァアア

曜ママ「私のこと好きなんでしょ?」

善子ママ「本当に……」

チュッ

善子ママ「どっちが娘か分からないわね」フフッ

曜ママ「……またそうやって曜と比べるんだ?」ムスッ

善子ママ「嫌ならまずは私のこと『ママ』って呼ぶのやめなさい」

曜ママ「……」

善子ママ「どうする?」

曜ママ「娘でいい」ギュ

曜「えぇ……」

善子「えーと、私見てないからよく分からないけど……」

善子ママ「娘が三人もいて大変だわ」

曜「私が大人になります」スタッ

善子「え?」



324: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 14:05:02.50 ID:9D+05apE.net

曜「私がママと結婚すれば……解決だよね?」

善子ママ「……」

善子「大丈夫? 頭とか」

曜「私とじゃ嫌ですか?」

善子ママ「そうじゃないけど……ごめんなさい」ペコッ

善子「嫌じゃないの!? そこは嘘でも嫌って言って!」ガタッ

曜ママ「ダメだよ。ママは私の恋人だから」ギュー

曜「……」

善子「曜さんには私がいるのに」

曜「私としてくれるの?」

善子「いつかね」

曜「約束」スッ

善子「ん……」スッ

善子ママ「そういえば、私はまだあなたから聞いてないわね」

曜ママ「え? 同性は結婚できないの知らないの?」

善子ママ「……」ハァ

善子「少しは空気読みなさいよ」

曜ママ「……」

善子ママ「善子、あの写真見せてもいいかしら」

善子「あの写真……?」

曜「いいですよ。そっか、お母さんは見てないんだ」

善子「あっ! あれはダメ!!」

曜ママ「何の写真? 見たい見たい!」

善子ママ「それじゃ……持ってくるわね」フフッ

善子「待ちなさい! このっ……」



325: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 14:05:32.70 ID:9D+05apE.net

曜「行かせない」ガシッ

善子「何でよ! 曜さんだって恥ずかしいでしょう??」

曜「恥ずかしくなくはないよ? でも私たちのことも言わなきゃ」

善子「今言ったじゃない……」カァアア

曜ママ「式には呼んでくれるよね?」フフッ

曜「もちろん」

善子ママ「お待たせ。これよ」サッ

曜ママ「え……これ本物?」ズシッ

善子ママ「開けてみて」

曜ママ「ん」ピラッ

善子「あぁ……」カァアア

曜「……」カァアア

善子ママ「本物みたいでしょ?」

曜ママ「これは……本物みたいと言うより」

曜「本物だよ?」

善子ママ「この善子の顔。今まで見たことないくらい幸せな顔してるでしょ?」フフッ

曜ママ「曜もこんな顔するんだね」アハハ

曜「……」カァアア

善子「だから見せなくてよかったのに……」カァアア

曜ママ「これは私たちも撮らないとかな」

善子ママ「私たちはいいわよ」

曜ママ「何で? 撮ろうよ」

善子ママ「撮りたい?」

曜ママ「すごく撮りたい」ドキドキ

曜「じゃあ今度連れて行ってあげる。知り合いの子がね、すごく上手に撮ってくれるから……」



326: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 14:06:00.85 ID:9D+05apE.net

善子「曜さんのファンの子ね」

曜「でも、大人なんだから本当に式を挙げてもいいのに」

善子ママ「それはちょっとね」

曜ママ「私も世間体ってものがあるから」

善子「大人って面倒くさいのね……」ハァ

曜「じゃあ写真だけ」

善子ママ「分かったわ。今度必ずね」

曜ママ「楽しみにしてるよ」

……

……

 夜 善子の部屋

曜「それじゃ、電気消すね」

善子「ええ」

曜「トイレは行った?」

善子「行ったわよ。って言うか一緒に行ったわよね」

曜「私が起きてれば飲むけどね、寝てたら気づかないから」

善子「さっき行ったから大丈夫よ」

曜「私が寝てても口にしていいからね?」

善子「死ぬわよ」

曜「善子ちゃんのおしっこで溺死かぁ」ニヤニヤ

善子「私を殺人犯にしないで」

曜「あ……そうだね」

善子「……」

曜「今日はごめんね?」

善子「何が」



327: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 14:06:30.83 ID:9D+05apE.net

曜「体調悪いのに親子で押し掛けてさ」

善子「あ……」

曜「もしかして忘れてた?」

善子「忘れてたわ」

曜「それはよかった」ホッ

善子「でも……またいつなるか分からないわ」

曜「治療薬が効いたんだね」

善子「それ、自分で言ってて恥ずかしくない?」

曜「恥ずかしいよ」

善子「……」

曜「私の病気は治りそうにないけど、善子ちゃんは治るね」

善子「そうかしら? 私のも延命治療みたいなものだし……」

曜「私がいれば大丈夫?」

善子「……たぶん」

曜「善子ちゃんの場合は、病気というより中毒だね」

善子「え?」

曜「最初に私を味わったから、やめられなくなっちゃったんだよ」

善子「むしろ味わわれたのは私の方だけど」

曜「私に味わわれることを味わっちゃったからね」

善子「ややこしいわね……」

曜「私のは一生治らないかもしれないけど……それでもいてくれる?」

善子「ええ」

曜「本当に嫌いになったら言ってね」

善子「ならないわよ」

曜「もしなったら」



328: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 14:07:03.33 ID:9D+05apE.net

善子「……そのときは、そのときまた考えるわ」

曜「うん」

善子「はぁ……」

曜「食べ過ぎた?」

善子「いや、もう少し考えなさいよ。確かに食べ過ぎたけど……」

曜「太ったらごめん」

善子「ダイエットに付き合ってもらうわ」

曜「あぁ、それでお風呂で……」

善子「あれは違うから!」

曜「善子ちゃん、肌がつやつや」スッ

善子「……」カァアア

曜「私もつやつやしてる?」

善子「ええ」

曜「生クリームついてないのに」

善子「私もあの後洗ったから……」

曜「今度私にもつけていいよ」

善子「別に怒ってないから大丈夫よ」

曜「ううん。生クリームかけた私、食べたいでしょ」

善子「食べ……」カァアア

曜「お風呂のときの善子ちゃん、いつもと違ってすごくドキドキしたよ」

善子「……あ、ありがと」

曜「私が天井のシミを数えてるうちに色んなことしたよね」

善子「したわね」

曜「またしたい?」

善子「……曜さんが嫌じゃなければ」



330: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 14:08:33.56 ID:9D+05apE.net

曜「今する?」

善子「や、やめとくわ。ママたちに聞こえたら嫌だし」

曜「ママたちも今ごろ……ふふ」ニヤニヤ

善子「うぇ……よくそんなの想像して気持ち悪くないわね」

曜「見てきてもいいかな」

善子「やめなさい!!」ガシッ

曜「じょ、冗談だよ」

善子「曜さんならやりかねないのよ……」ハァ

曜「……」

善子「でも、今日は助かったわ」

曜「ん?」

善子「曜さんには迷惑かけちゃったわね」

曜「いいよ、善子ちゃんのためだもん」

善子「後で何かお礼させて」

曜「やめて。お礼してほしくてしたんじゃないから」

善子「そうは言っても……曜さんは風邪なんて引かなそうだし」

曜「何も返してくれなくていいよ」

善子「……」

曜「私といてくれればそれで」

善子「……」

曜「たまにおしっこを飲ませてくれれば」

善子「それは嫌」

曜「じゃあ、いてくれるだけでいい」

善子「分かったわ」

曜「えへへ」



331: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 14:09:02.13 ID:9D+05apE.net

善子「何よ」

曜「ううん。何でも」ギュ

善子「……好き」ボソッ

曜「私も」

善子「今はそれでいいわ」

曜「……そう」

善子「ゆっくり分かっていけたらそれで」

曜「そうだね」フフッ

善子「もしかしたら一生このままかもしれないけど」

曜「それでもいいよ」

善子「ずっと一緒にいてよね?」

曜「うん」

善子「約束して」スッ

曜「約束」チュッ



お泊まり会編 終わり



332: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 14:11:01.50 ID:9D+05apE.net

サブタイトルつけ忘れました

>>172から
お泊まり会編 前編

>>238から
お泊まり会編 後編


曜ちゃんのお母さんに変な設定つけてごめんなさい



336: 名無しで叶える物語 2018/02/18(日) 19:34:51.54 ID:twYipaTB.net

曜ママの情報少ないのにキャラ立ってて良いですわゾ~


元スレ
曜「善子ちゃんをくすぐり続けたら失禁した」その3
http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1518316226/