2: 名無しで叶える物語 2018/03/12(月) 17:59:11.44 ID:U6EEYi5Y.net

なぜ言えなかったのだろうか

なぜすれ違ってしまったのだろうか

そればかり考えてしまう

私は間違えたのだろうか、正解はあったのだろうか

それらを堂々巡りに考えてこの道を歩く

そのせいで最近はよく眠れていない、今日もこんなに朝早く目覚めてしまった

フラフラする足取りに不安を覚えてベンチに座る

顔を上げると満開の桜が広がっていた

「....綺麗」

思わず声に出してしまっていた

美しい景色が私の不安を少しだけ洗い流してくれる

そのせいか、段々と瞼が重くなって


私は眠りについた



6: 名無しで叶える物語 2018/03/12(月) 18:09:09.51 ID:U6EEYi5Y.net

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家から帰ってきてタオルで汗をぬぐう

コップと冷蔵庫から取り出した水差しを持って部屋へ行く

そして、机の引き出しの奥の方から瓶を取り出した

「.....よし」

その瓶には『注意』と書かれ細かい注意書きが書かれている


これは『毒』


私は今からこの毒を飲んで死ぬのだ



7: 名無しで叶える物語 2018/03/12(月) 18:14:14.25 ID:U6EEYi5Y.net

粉末状の『毒』をコップの中へ入れる

そして水差しで水を入れてよくかき混ぜる


後は飲むだけ


それだけで私はこの世を去ることができる

「.....」

喉が乾くのは緊張のせいか、汗をかいたせいだろか

ふと、コップを見るとコップには桜の花びらの絵が書かれていた

「桜....」

私はそれを見て思い出す


春に会った『白ゆき』に



8: 名無しで叶える物語 2018/03/12(月) 18:15:37.47 ID:U6EEYi5Y.net

暖かくなってきて春の陽気が少しずつ頭を出してきた頃

朝日が出るのが速くなったのを感じながら私は上着を1枚羽織り出掛けた


特に理由もなく

強いて言えば最近河原の桜が満開になって綺麗だと母に聞いたから

人気がない朝方に見てしまおうと、そんな思いがあったかもしれない



9: 名無しで叶える物語 2018/03/12(月) 18:19:11.17 ID:U6EEYi5Y.net

「....すごい」

河原には川の流れに沿うよう桜が植えられて

人為的に植えられた物だとしてもその美しさに目が奪われてしまった


せっかくなので、河原と桜のベストな組み合わせを眺めながら朝の散歩を続けることにした


しばらく歩いた後、1度休もうとベンチの方へ向かった


幸いにも、ベンチは今いるところから少し先の方にあるのを覚えている



そしてベンチに向かったその先で



私は春を見付けた。



10: 名無しで叶える物語 2018/03/12(月) 18:23:48.97 ID:U6EEYi5Y.net

ベンチに座っているのはまるで黒檀のように美しい黒髪をした少女だった。

清楚な印象を持たせる白いワンピース着ていて、それがより彼女の黒髪を引き立たせている

少女は安らかに目を閉じており、まるでこの桜の中から生まれてきたかのような錯覚さえしてしまう


まるで一枚の絵画のように場面に遭遇して私は思わず息を呑んだ


「......あっ」


長い間、彼女の顔を見つめ続けていたことに気が付いた私は誰もいないのに慌てて目を反らした



11: 名無しで叶える物語 2018/03/12(月) 18:26:03.12 ID:U6EEYi5Y.net

その後、周りに誰もいないことをもう一度確認してまた彼女を見てみる

あまりに静かなので実は死んでしまっているのじゃないかと変な心配をしてしまったが、よくよく観察すると肩が微かに上下に動いているのがわかる。


けれども、彼女の持つ神秘的な雰囲気とこの桜の風景が重なって、その空間だけ私とは別の空間のように思えてしまう。

その空間だけ切り取られて、時間が止まってしまっているような....

彼女がこのまま目を覚まさないような....

「まるで白雪姫みたいだ....」


いや、お姫様なんて現代にはいないから白ゆきの方がいいのかな...?



13: 名無しで叶える物語 2018/03/12(月) 18:31:14.17 ID:U6EEYi5Y.net

起こしてあげた方が良いのだろうか?

私は少女を起こそうと声をかけようとした

でも

「っ!」

彼女から一筋の涙が流れた

怖い夢でも見たのだろうか

いや、こんな朝方に河原のベンチで寝てたんだ、何か嫌なことがあってここに来たのかもしれない

「えっと.....ごめんなさい」

臆病な私は起こすことも涙を拭うこともできず、一言軽く謝ってその場を引き返した....



14: 名無しで叶える物語 2018/03/12(月) 18:36:19.43 ID:U6EEYi5Y.net

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ふと思い出した想い出に懐かしみながらも私はコップを持つ

「.....っ」

無意識に手が震えてる

死ぬことへの恐怖なんてもう無いなんて思ったのに

ずっとずっと、死ぬことばかり考えてきていたのに....

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私は比較的恵まれて生きてきた方だと思う

二人の姉や友達に囲まれながら、不自由なこともあまりなく生活を続けてきた



そんな中で私が手に入れたものは....一つも無かった


夢も将来も何も見えない


何かに興味を持とうともそれを頑張れる気になれない


将来私が何をしているのか、目を閉じてみても真っ暗な闇しか見えなかった 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)




15: 名無しで叶える物語 2018/03/12(月) 18:39:56.25 ID:U6EEYi5Y.net

きっと私は空っぽなのだろう


おまけにヒビが入っているワレモノだ


何かを注ごうとしても全て溢れてしまう

そうして、何かを手にすることも出来ず、私に身体に溜まったのはただの醜い自尊心だけで

このまま醜い自尊心が膨れ上がって私の器が悲鳴を挙げて、ヒビが大きくなったら私は醜い怪獣になってしまう

だから、死のうと思った

理科室にあった毒物を盗んでおいていつでも死ねるようにしてた


そして今日

夏の日差しが暑くて、眩しくて


私の中の醜いものを将来の不安も、夢も、全てまとめて溶かして、消してくれそうな暑い夏の日差しだから、



今日はきっと死に日和だ



16: 名無しで叶える物語 2018/03/12(月) 18:42:40.08 ID:U6EEYi5Y.net

そうだ、遺書を書こう

このままだと曜ちゃんや友達に迷惑をかけてしまうかもしれない

みんなに迷惑をかけるわけにはいかない

そして、私のこれまでの人生を振り返ってせめて何かを遺そう


私はメモ帳を開きペンを取り出す


私の....最期の言葉は......



私の人生にあったものは....





『結局私には何も無かった』



17: 名無しで叶える物語 2018/03/12(月) 18:50:28.71 ID:U6EEYi5Y.net

「.....ハハっ」

滑稽だ

死ぬ間際でも私に残っているものなんて何も無かった

死ぬ理由でさえありはしなかった

ああ、私の人生は一体何だったんだろう


.........


いいや

もう深く考えるのはよそう

私は書いた紙をぐしゃぐしゃにして空へと放った



20: 名無しで叶える物語 2018/03/12(月) 19:34:13.60 ID:U6EEYi5Y.net

私には何も無かった

死ぬ理由なんて、生きる理由が無かったから

それで十分だ


それじゃあ....


「バイバイ」

私は毒水を口に含んだ


窓から差す日差しは眩しくて

視界が白くなった


その中心に移るのは白とは正反対の


黒檀のように艶のある、あの黒髪だった



21: 名無しで叶える物語 2018/03/12(月) 19:40:13.58 ID:U6EEYi5Y.net

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....吐き出された水が床を濡らしていた

気が付くと私はその場で膝をついていてしまっていた


何で



何で私は毒を吐き出してしまったのだろう


何で最期に彼女を思い浮かべてしまったのだろう


「最低だ....」


彼女の眠る顔が


「....最低だっ」


彼女から流れた一筋の涙が頭から離れない

さっきまで死にたいと思っていたはずなのに

あなたにもう一度会いたいと思ってしまうなんて

あなたの涙ではなく、笑顔を見たいと思ってしまうなんて



22: 名無しで叶える物語 2018/03/12(月) 19:45:46.37 ID:U6EEYi5Y.net

いいのだろうか

名前さえも知らないのに

最低じゃないか

あなたに会って笑ってもらうことを私の生きる理由にするなんて


でも、私が初めてしたいことを決めたんだ

やっと生きる理由を見付けたんだ


少しくらいわがままだっていいじゃないか


そう思って私は生きるために立ち上がった



23: 名無しで叶える物語 2018/03/12(月) 19:49:14.64 ID:U6EEYi5Y.net

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春になるとこの河原を歩く

またあの子に会えるんじゃないかって淡い希望を抱いて

たぶん、いつか私は本当にやりたいことを見付けるまで私はこの河原を歩き続けるのだろう


だって、これが私の生きる理由だから


春の朝は寒い

だから私は軽く息を吸った後



毒を吐き出すように、軽く息を吐いた


おわり



24: 名無しで叶える物語 2018/03/12(月) 19:50:42.80 ID:U6EEYi5Y.net

元ネタ
n-buna『白ゆき』
一応スクールアイドルになる前のお話です
ありがとうございました


元スレ
【ss】千歌「白ゆき」
http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/lovelive/1520845017/