過去作
二宮飛鳥「スポイル」



51: 名無しさん@おーぷん 2018/05/21(月)20:48:37 ID:mhn

【飛鳥の地方巡業】 かりんとう饅頭 黒まるこ



52: 名無しさん@おーぷん 2018/05/21(月)20:49:30 ID:mhn

・グルメもの
・飛鳥は静岡中部あたりの出身という設定



53: 名無しさん@おーぷん 2018/05/21(月)20:50:12 ID:mhn

・このスレは全ての話がパラレルワールドということでお願いします



54: 名無しさん@おーぷん 2018/05/21(月)21:10:47 ID:mhn

ライブの会場の裏口に、「おかえり」という横断幕が飾り立ててあって、

ボクは苦笑した。

今、ボクは『二宮飛鳥帰郷ツアーライブ』の途上にいる。

今、ボクは見も知らぬ土地にいる。

ボクが生まれたのは静岡県の中部。

そしてここは西部。

足を踏み入れたこともなければ、知り合いもいない。



55: 名無しさん@おーぷん 2018/05/21(月)21:11:05 ID:mhn

時計の針を少し逆戻せば、

この街は“二宮飛鳥”なる人間の存在を把握していなかっただろう。

それが少し有名になると、“県の誇り”だとか、

“故郷に錦を飾る”とか言い出すのだから、

まったく不思議な心持ちがする。

さながら気分は、かのノーベル文学賞作家だ。



56: 名無しさん@おーぷん 2018/05/21(月)21:16:07 ID:mhn

ツアーバスの外からも、

しきりに「おかえり」、「おかえり」という声が聞こえる。

ボクはウィンドウを開けて、手を振った。

歓声が上がった。

ファンが喜んでくれるのは嬉しいけれども、なんだか複雑だ。

こちらが嘘をついてるような感覚を覚える。



57: 名無しさん@おーぷん 2018/05/21(月)21:22:34 ID:mhn

控え室に向かうまでの通路も、

帰郷を祝うメッセージカードで埋め尽くされていた。

その一枚一枚を浅くなでるようにして、歩く。

「ただいま詐欺」

そんな言葉が口から飛び出して来た。

あくまで、ツアーを企画したのはこちら側だから。



58: 名無しさん@おーぷん 2018/05/21(月)21:36:51 ID:mhn

控え室は目に優しくない量の花束で埋め尽くされていた。

もちろん、その全てにメッセージが添えてある。

……ライブは精一杯盛り上げるとしよう。

テーブルには菓子が盛られた籠がある。

明らかに1人で食べる量を超えていた。

美味しいから大丈夫だよ…。

そんな声がどこかから聞こえる。



59: 名無しさん@おーぷん 2018/05/21(月)21:43:46 ID:mhn

昼食はもう済ませてきたけど、

ライブの前に燃料を追加するのも悪くない。

籠の中の、白い小袋をつまみあげる。

袋の真ん中には『黒まるこ』という名前が記されている。

「まるこ…」

一文字違えば問題ないのかもしれない。



60: 名無しさん@おーぷん 2018/05/21(月)21:45:23 ID:mhn

袋全体を揉んでみると、感触が割に堅い。

袋を破いてみると、つやつやと光った饅頭が手のひらに転がりこんできた。

色は黒茶。鼻に近づけると、黒糖の香りがする。

その時、少し嫌な予感がした。

ひょっとして、皮自体が結構甘くて、

中身の餡はかなり甘くできているんじゃないか。



61: 名無しさん@おーぷん 2018/05/21(月)21:51:07 ID:mhn

苦く淹れたコーヒでもあればいいけど、

生憎今日のお供は緑茶とスタドリだ。

ねばっこく甘みが口に残るのは好ましくない。

だけど、出されたものを無視するほど人間が出来ちゃいない。

「がっかりさせくれるなよ…」

意を決して、齧る。



62: 名無しさん@おーぷん 2018/05/21(月)21:57:58 ID:mhn

ザックリだ。食感は、ザクザクとしていて、香ばしい。

皮はほんのりと苦い。

「裏切り、か」

中に入っている餡はしっとりとしている。

こしあんだ。

黒糖の香りが口いっぱいに広がる。

だけど甘みのボリュームはちょうどよく、後に引かない。



63: 名無しさん@おーぷん 2018/05/21(月)22:06:43 ID:mhn

だから、二口目にうんざりしない。

食べ終わった後にもたれない。

つい、もう一袋に手が伸びる。封を破る。

「美味しいから___大丈夫さ」

多分……。

結局、ボクは瞬く間に4個の饅頭を片付けてしまった。



64: 名無しさん@おーぷん 2018/05/21(月)22:13:59 ID:mhn

5個目に手が触れたとき、お呼びがかかった。

会場のチェックに立ち会って欲しい…。

機材の知識や何がしかの権限があるわけでもない、

無力な14歳が何を見るというのだろう。

とはいえ、仕事だ。

小娘が首を縦に振って彼らが安心するのなら、そうしよう。



65: 名無しさん@おーぷん 2018/05/21(月)22:22:06 ID:mhn

舞台は、申し訳ないが、

大都市のスタジアムに比べると慎ましい印象を受けた。

だが、それゆえに座席1つ1つに目が通る。

スタッフがマイクを手渡してきた。

音声チェックをお願いします…。

ボクが最も苦手とする行為だ。

あー、あー、というのはなんだか間が抜けている。

かといって、歌うのは熱を逃してしまう。



66: 名無しさん@おーぷん 2018/05/21(月)22:26:08 ID:mhn

なんだか。

無意識に、唇を舐めていた。

さっきの饅頭の味がすこし残っていた。

数分前の自分の姿を想像した。

あまり上品とは言えないシーンが思い浮かんだ。

「くくっ…」

忍び笑いがマイクを通して、会場に小さく響いた。

もっと大きな声でお願いします…。

スタッフからそう頼まれたので、

ボクは会場を埋め尽くす観客を想像し、叫んだ。

「ただいま! 

そして……初めてまして”、だ!!」



67: 名無しさん@おーぷん 2018/05/21(月)22:26:16 ID:mhn

おわり


元スレ
二宮飛鳥単独合同SS会場
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1526223834/