SS速報VIP:女「それでも、だよ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1402935903/



1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:25:03.54 ID:RF4XLZSHO


「あいつ、売りやってるらしいな」

「頼めばヤラしてくれたりして」

「金なきゃ無理なんじゃね?」

「顔も身体も最高なビッチか。へへっ、たまんねーな」


女「……」スタスタ


これは、私を気に入らない人達が流した噂。

私は人付き合いが苦手だ。うわべだけの関係なんて嫌だ。

器用だとか不器用だとか。

多分、そういうんじゃなくて、私はそういう風に出来てない。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1402935903




2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:27:38.39 ID:RF4XLZSHO


きっと疲れてしまう。

少なくとも、このクラスの女子みたいには出来ない。

さっきまで一緒に笑ってたのに、離れれば平気で悪口を言う。

悪口を言い合って盛り上がってる人も、その人が居なくなれば別の人と別の居場所で悪口を言う。


何を考えてるのか、何が本当なのかが分からない。

だったらいい。一人でいい。無理に付き合うこともない。

私は私だし、周りは周り。それぞれが好きにしてるんだから。


そう思っていたら、これだ。




3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:29:34.42 ID:RF4XLZSHO


『見た目が良いからって調子に乗んな』とか、先輩には『生意気』だとか色々言われた。

それからだ。

あんな根も葉もない噂が流れ始めたのは……


でも、みんなはその噂を信じた。

私を見る目は、あの男子達のような好奇の目。

女子は軽蔑の目で、私を見る。


私はそれが嫌で、あの目が怖くて、ここに逃げて来たんだと思う。

そこで、出逢った。




4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:30:33.91 ID:RF4XLZSHO


女「放課後に校舎裏の花壇に水やりする奴なんて、初めて見た」

男「あ、えーっと……」

女「あんた、同じクラスにいる奴の名前も分からないの?」


男「分かるけど何で?」

女「何でって、なに?」

男「女さんが何でこんな所に来るのかな、と思って」


女「意外?」

男「え、まあ、うん」





5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:31:35.69 ID:RF4XLZSHO


女「私の噂、知ってるんだ」

男「知ってるけど、そんな風には見えないね。なんか、寂しそうだし」

女「……」

男「水やり終わったし、帰るよ」スタスタ


女「待って。あんたは辛くないの?寂しくないの?」

男「……」ピタッ

女「あんた、いつも一人だし。色々、言われてるし」

男「寂しくも辛くもないよ。ただ、退屈なだけ」


女「退屈?」





6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:33:14.04 ID:RF4XLZSHO


男「うん。キモい、根暗、ぼっちだとか、ただ『それだけ』」

男「あんなのは、ただの言葉。誰かを見下したいだけなんだ」

男「きっと僕じゃなくてもいいんだ。誰かを見下して、安心したいんだよ」


女「……ねえ」

男「何?」

女「放課後、いつもここに来るの?」

男「うん。先生に頼まれたから」

女「そっか…」


男「もう帰るよ。女さん、さよなら」スタスタ

女「あっ…うん」





7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:33:59.44 ID:RF4XLZSHO


【女の自宅】


女「ただの言葉、か」


男は、他の誰とも違って見えた。

同じクラスで、何度も見た顔なのに、何かが違って見えた。

話したことのない人に話し掛けられて困ってるような、そんな目。


それが当たり前の反応なんだろうけど、私には嬉しかった。

あんな風に会話したのは、あの噂が流れてから初めてだと思う。

みんなは私を知ってる。私が何をしているのかを知ってる。





8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:34:39.80 ID:RF4XLZSHO


見ず知らずの男に身体を売って、お金を貰う私を知っている。

勿論、そんなことはしてない。

それは噂で作られた私。

だけど、みんなはそれを信じて、それが私だと思っている。

私のことなんて、何一つ知らないのに。


女「はぁ…」





9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:35:48.80 ID:RF4XLZSHO


若干目つき悪いし、性格もきつめに見られてるのも知ってる。

でも、そんなに気は強くない。寧ろ打たれ弱い。

何人かに囲まれて滅茶苦茶言われた時は、怖くて何も言い返せなかった。


睨んでると思ったらしくて退散したから良かったけど、悔しかった。

悔しいのに、何も出来ない。それが情けなくて、もっと悔しくなる。


『ただ、それだけ。ただ、退屈なだけ』





10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:36:20.11 ID:RF4XLZSHO






女「男は、悔しくないのかな……」








11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:36:55.61 ID:RF4XLZSHO



翌日 放課後


女「あ、いた。っていうか、草むしりもやるんだ」

男「あの、何しに来たの?」

女「あ、えっと……手伝いに来た」


男「手伝いって、ゴム手袋もないのに?」

女「それは大丈夫。私、ミミズも虫も平気だし」ニコッ

男「……」

女「ん、どうかした?」




12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:38:15.58 ID:RF4XLZSHO


男「見た目と違うんだなと思って、ちょっと面白かった」

女「え、微笑んですらないけど」

男「あははー、マジウケる。とか無理」

女「真顔でその台詞言う奴初めて見たよ。怖いわ」


男「素手で草むしりする女子も初めて見た。爪に土入ったり、嫌じゃないの?」

女「爪、伸ばしてないからね。ベキッって曲がる方が嫌だから」

男「……何で手伝いに来たの?」


女「邪魔だった?」





13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:39:39.47 ID:RF4XLZSHO


男「本当に手伝ってくれてるし、邪魔じゃないけど、何で急に」

女「根も葉もない噂立てられて、色々言われて、だけど何も言えなくて」

男「……」

女「それが、凄く悔しい」


女「昨日、あんたと話して思ったんだ。あんたは、悔しくないのかなって」

男「……」

女「ごめん。いきなり押し掛けて来て迷惑だと思うし、嫌な質問だと思う」

女「でも、どうしても聞きたくて」

男「どうして僕なの?」


女「それは…」




14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:41:06.04 ID:RF4XLZSHO


男「僕がからかわれたり、馬鹿にされたりしてるから?」

女「っ…それは」

男「自分と同じだと思った?」

女「違っ…わないよね。ごめん」


男「……中学の頃、僕は義父に虐待されてた」

男「腕にタバコ押し付けられたり、殴られたり蹴られたり」


女「……えっ?」


男「我慢したよ。怖くて怖くて仕方が無かったから。何度も殺されると思った」

男「いつか終わると思った。誰かが、助けてくれると思った」

女「……」





15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:42:21.59 ID:RF4XLZSHO



男「でもね、誰も助けてくれなかったよ」

女「!!」

男「そんな日々が数ヶ月続いた。長かったよ。数年に感じるくらいに…」

男「ある日、あいつは妹にまで手を出そうとした。その時、初めて人を殴った」


男「そしたら、あいつは呆気なく倒れたよ。でも僕は殴るのを止めなかった」

男「仕返し出来て嬉しかったのかもしれないし、興奮してたのかもしれない」

男「妹が止めてくれなかったら、本当に殺していたかもしれない」


女「……」

男「それからすぐ、母親はまた離婚したよ」





16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:43:32.74 ID:RF4XLZSHO


男「挙げ句、僕等を親戚に預けてどこかに行った」

男「引き取ってくれたのは、実父の両親だった。今は幸せだよ」

女「………」

男「どう?」


女「ど、どうって、いきなりそんな話し聞いたら

男「自分よりも不幸な人間の話しを聞いて、楽になった?」

女「ッ!!」


バチンッ…





17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 01:49:36.02 ID:RF4XLZSHO


女「……帰る」

男「そっか、さよなら」

女「さよなら」スタスタ


男「分かってたけど、やっぱり痛いな」ポツリ


女「……」ピタッ

男「?」

女「男っ!!」クルッ

男「あ、はい。何?」

女「また明日。んじゃ」スタスタ


男「えっ?」





20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 12:12:08.12 ID:RxR1ArUgO


【女の自宅】

女「……最低だ」


きっと私は、男と自分を重ねてたんだ。

話したい理由。

それは、どこか似通っている部分があると感じたからだ。

もしかしたら、単なる好奇心から自分勝手に近付いたのかも。

ただ言えるのは、そんな理由で男に近付いた挙げ句、逃げたってこと。


『どう?自分より不幸な人間の話しを聞いて楽になった?』


女「きっついなぁ…」





21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 12:13:58.39 ID:RxR1ArUgO


私は男の話しを聞いた時、『可哀想』だと思った。

自分のことなんて全部忘れて、男が語った不幸に聞き入っていた。

頭の中には


『こんなに酷く悲しい話しがあるのか』『今はもう平気なんだろうか』『本当のお父さんは?』『妹さんは元気?』


こんな言葉ばかりが浮かんでた。

視線や陰口、纏わりつく噂。

男の語った不幸は、そんなものから私を解放してくれた。


本当に最低だ。


私は自分のことなんて忘れて、男を憐れんでいた。





22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 12:16:34.41 ID:RxR1ArUgO


あの時の私は被害者を見るような、ニュースで事件を見ている時のような。

そんな『目』をしていたに違いない。


『楽になった?』


私はきっと、その言葉を否定したくて叩いたんじゃない。

男の言う通りだった。

心を見透かされた気がして、それをごまかす為に、叩いたんだ。


頭の冷え今だから分かる。


私は暴力に逃げて、あの場所から、男の言葉から、逃げたんだ。





23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 12:20:42.11 ID:RxR1ArUgO


女「謝ろう」


許してくれなくても、なんて。また自分勝手なことを思ってる。

やっぱり、人って難しい。

自分のしたいこと。やりたいこと。

でもそれが、相手にとってはして欲しくないことがある。


謝ったって、私が男にしたことは変わらない。

だけど、私がやったことだから、私が謝らなきゃ駄目なんだ。

言葉を変えても、結局は、私がそうしたいだけ。


女「何やってんだろ、私……」





24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 12:24:54.12 ID:RxR1ArUgO


結局、私は慰めて欲しかったのかな。

それとも、男なら私が望む言葉を言ってくれると思ってたのかな。

気にしないで、大丈夫、僕はそんな風には見てないよ、とか?

馬鹿だ。そんな都合の良い話し、あるわけないのに。


『誰も、助けてくれなかったよ』


ああそうか、私は『誰かに』助けて欲しかったのか。

だけど、そんな優しくて強い、都合良く現れて助けてくれる『誰か』はいない。


例え私に友人がいたとしても、これは『私が』何とかしなきゃならない。





25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 12:36:20.42 ID:RxR1ArUgO


嫌なら、辛いなら。


『ただの言葉だよ』


私は、男みたいに、あんな風には到底考えられない。

ビッチだのヤリマンだの、金出すからやらせろだの……

お構いなしに好き勝手言ってくれるよ。思い出したら何だか腹が立ってきた。


一人でいい、なんて強がっておきながら。

結局は周りを気にして、視線を怖がってたら話しにならない。

今更『誰かに』嫌われたって、私には何もない。離れゆく友人も、恋人もいない。


何もしないまま終わりたくない。噂が消えるまで我慢するなんて、私には出来ない。

あんな風に言われるのは嫌だ。

もう知るか、そっちがそうなら、私だって好き勝手やってやる。


あんな悔しい思いをするのは、もう沢山だ。





29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 14:45:54.34 ID:RxR1ArUgO


翌日 放課後

男「あんなこと言ったんだ。来るわけない」

シーン…

そう言えば、そうだった。

本当は、元々は『こう』だったんだ。

薄暗くて気味悪くて、人が寄りつきそうにない、僕にお似合いの場所。


たった二日間。


それもちょっと話しただけなのに、随分と賑やかに感じた。

たった一人増えただけで、あんなにも変わるものだったんだ。





30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 14:47:37.93 ID:RxR1ArUgO


まるで、全く別の場所にいるような感じがする。

たった二日。

しかも、ちゃんと話したのは一日。そのはずなのに、やけに残ってる。


草むしりを手伝うと言った時の笑顔が、懐かしい。

真っ直ぐに目を見て話す彼女が、昨日は此処に、隣りにいたのか。


『人と話す時は目を見て話しなさい。でないと、何も伝わらない』


お父さんに怒られた時、よく言われたな。目を見て、伝える。

僕は、彼女の目から逃げたのかもしれない。





31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 14:50:39.23 ID:RxR1ArUgO


逃げ出したいから、あんなことを言ってしまったのかもしれない。

彼女の真っ直ぐな瞳が、僕には辛くて、怖かったんだ。


きっと、彼女は強い人なんだろう。


あんな風に噂されても屈せずに、学校に来るだけでも十分強い。

佇まい、あの瞳が、噂が噂でしかないと証明している。

大体、彼女にこんな場所は似合わない。あれで、良かったんだ。


もう帰ろう。もう少しだけ待とう。

何度も何度も、頭の中で繰り返される言葉。でも、もういい。


男「……帰ろう」





32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 14:53:11.04 ID:RxR1ArUgO


これでいい。

明日からは、今まで通り。何も変わらない退屈な毎日。

家族のことだけを考えればいい。大切にすべきなのは、この場所じゃない。


妹が、お爺ちゃんとお婆ちゃんが待ってる。僕の居場所は、あの家だ。

明るい家族。

それだけで、僕は幸せだ。他には何もいらない。


こんな退屈な毎日も、あいつと過ごした数ヶ月に比べれば大したことはない。


『辛くないの?寂しくないの?』


そんなことはない。耐えるまでもない。

周りで起こる色々、意味を持たない言葉、それを眺める毎日。


僕は、そうあるべきだ。





33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 14:55:16.44 ID:RxR1ArUgO






女「ごめん。遅れた」









35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 16:35:31.51 ID:RxR1ArUgO


男「えっ、あの、髪が凄いことになってるけど」

女「あんたと話したら、何か吹っ切れちゃって」

男「僕?」


女「そう、あんた。あんたと話してから、色々考えた」

女「結果。やられっぱなしも、甘えるのも駄目と思ったんだ」ニコッ

男「……それで?」


女「話し合いじゃあ収まりが付かなくて、ちょっと長引いた」

男「よく見たら顔とか腕にひっかき傷あるけど、喧嘩したの?」





36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 16:36:39.17 ID:RxR1ArUgO


女「あんな風に言われて、私は我慢なんて出来ない」

女「ただの言葉なんて風には思えない」

女「もう、何も出来ないまま悔しいのは、嫌だから」


男「その傷、相手は大人数だっだんだ」

女「えっ、うん」

女「五、六人かな。掛かってきたのは二、三人だけど」ウン

男「っ、全員で袋叩きにされたかもしれない」


女「え?」





37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 16:37:58.29 ID:RxR1ArUgO


男「ひっかき傷どころじゃない。大怪我したら、どうするつもりだったんだ!!」

女「!?」ビクッ

男「保健室に行こう。ちゃんと消毒しな


女「男」


男「何?」

女「昨日は本当にごめんなさい」

男「!!」


女「実はね、自分のことを終わらせてから謝ろうと思ってたんだ」





38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 16:43:23.67 ID:RxR1ArUgO


女「ずっと、待っててくれたんだね」

男「……待ってたよ」フイッ

女「……ありがと」


男「それより傷、痛まないの?」

女「あちこち痛いけど、何とか勝ったよ」ニコッ

男「はぁ、もういいよ。取り敢えず保健室に行こう」


女「あっ、ちょっと待って」

男「まだ何かあるの?」





39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 16:52:44.96 ID:RxR1ArUgO


女「違う違う。あ、あったあった」

男「なにを、うわ…ちょっと止め


ジョキンジョキン…パラパラ…


女「よし、行こう」スタスタ

男「あの、大丈夫?変な薬でも

女「至って正常。私は素直に生きることにした」ウン

男「……」


女「どうしたの?行こう?」スタスタ

男「園芸用の鋏で髪切る女の人なんて初めて見た」

女「私も初めて切った」

男「だろうね」


女「でも、気分は良いかな」ニコッ

男「(僕は、こんな風にはなれない。こんな風に笑えない)」


男「(彼女は、僕なんかと一緒にいちゃ駄目だ)」





41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 18:28:09.47 ID:RxR1ArUgO


【ーーー】


男「何も欲しがっちゃ駄目だ。もう、十分に得た」


いつものように、あの時のように、何度も自分に言い聞かせても、ざわついたままだ。

これ以上は、望んじゃいけない。この平穏な生活こそが、僕の求めたもの。

なのに、頭から離れない。


あの笑顔が、声が、強い瞳が、焼き付いてる。

それを想う自分が、気持ち悪い。


彼女は、綺麗だ。

見た目も、きっと心も綺麗なんだろう。

だから、あんな風に堂々と歩ける。だから、あんな風に笑えるんだろう。





42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 18:30:07.24 ID:RxR1ArUgO


こんな気持ちは、知りたくなかった。

やっぱり、待つべきじゃなかったんだ。

すぐに帰っていれば、こんな思いをする必要もなかった。


男「僕は、もう何もいらない」


此処に来たばかりの頃、物音がするだけで、電話が鳴るだけで、僕は怯えていた。

妹は、泣いていた。

あの頃と同じように、小さな体を震わせて、泣いていたんだ。


困惑するお爺ちゃんとお婆ちゃんに理由を話すと、二人は優しく僕等を抱き締めてくれた。

それから、夜になると電話線を抜いてくれるようになった。





43: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 18:31:54.81 ID:RxR1ArUgO


二人は何も言わずに、僕等の為に何かをしてくれる。

僕等は、守られている。今は守ってくれる人がいる。

家って、家族ってこんなにも幸せで、安心出来る場所だったのかと思う。


お父さんが死んでから滅茶苦茶になったけど、今は幸せだ。

妹も、笑うようになった。学校も楽しいみたいだ。


でも僕は抜け出せない。


妹だって、まだ完全に抜け出せたわけじゃない。

多分、一生消えない。


相変わらず夜が怖い、暗闇が怖い。





44: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 18:36:35.26 ID:RxR1ArUgO


夜になると、思い出す。

きっと妹もそうだろう。今でも泣きながら布団に入って来る時がある。


忘れられないんだ。


あいつの怒鳴り声。

痛み、熱、狂った笑い声、見下す瞳、妹の涙。

目を閉じれば、あの時に戻ってしまいそうな気がする。


それから抜け出す方法。一時だけでも忘れられる方法を、僕は知ってる。

体に残った火傷の跡も、耳に残る笑い声も消す方法。


「ようやく見つけた。男ってのは、お前だな」

「……そうだけど、何の用?」


「病院にいるあいつの代わりに、俺がお前をやる」

「あいつって誰だか分からないけど、勝手だね」

「大体、みんな自分から仕掛けてくるのに」


「黙れ。ぶっ殺してやる」


それを消すのは、あいつが僕にしたことに他ならない。

それは『誰かを』傷付けること。早い話しが、暴力を振るうことだった。





46: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 20:54:44.85 ID:RxR1ArUgO


【女の自宅】

女「 変だ 」


おかしい、何かが引っ掛かる。

こういうのが胸騒ぎってやつなのかな。部屋にいるのに、落ち着かない。

自分のことも一段落付いたはずなのに、何でだろ。


本当は話し合いで解決したかったし、やりたいこととは違ったけど、何とかなった。

顔とか腕とかピリピリするけど、心はすっきりしてる。

なのに、妙にそわそわする。


男、保健室に入ってから急に口数減ったし、顔も暗かったな。





47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 20:56:25.17 ID:RxR1ArUgO


そういえば、怒鳴った声聞いたのも初めてだ。

話すようになってまだ二日。

知らないことがあって当たり前だけど、怒鳴った時の男は何か変だった。

目つきが違ってた。

なんかこう、睨むのとはちょっと違う感じ。


あんな顔、見たことない。正直、めちゃくちゃ怖かった。

学校でも睨み付けたりする人いるけど、ああいうのとは違う。

威嚇とかじゃなくて、本当に何かをするような、そんな危ない感じが……


いやまさか、男がそんなことするようには見えない。

ないない。





48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 20:58:06.72 ID:RxR1ArUgO


こう言っちゃ悪いけど、何かされても、何かする側じゃない。

あくまで見た目だけを判断しての話しだけど、そう見える。


背はそこそこ高いけど体は細いし、顔は大人しそうだし、優しそうだし。

それに、今日校舎裏で私を見た時の男は、少し微笑んだような気がした。


でもその後すぐに、あの目。暗いのに、ぎらぎらして見えた。


女「それを知りたいと思うのは、何でだろ」


まあいいや。また明日の放課後に話せばいいんだ。

謝ったけど、まだお礼を言ってない。

保健室に入ってから妙な雰囲気だったし、言い辛かった。





49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 20:59:00.10 ID:RxR1ArUgO


昨日の夜、あの女子達と話そうと決めた。真正面から行こうと決めた。

言いたいこと全部言って、後でどうにかなっても絶対に逃げないって決めた。


決めたのは私だけど、きっかけは男の言葉に違いない。

ぐさっと来たけど、あれがなかったら、私は動けなかっただろう。

だから、ありがとうって伝えたい。


女「早く、男に会いたいな」


あ、髪は一応整えておこう。このままじゃ流石にマズい。

その場の気分で何かをするのは、これきりにしよう。


お母さんにはちゃんと伝えたし、お父さんには上手く言ってくれるはずだ。

お母さん、泣いてたな。私も泣いたけど、心配かけちゃったな。

これからは気を付けよう。





53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 22:11:47.43 ID:EOa3EEBFO


五日後 校舎裏


女「……男、学校休んで何してるんだろ。って言うか、何で私が水やりしてるんだろ」


あれから五日が経った。あの日の放課後から五日が経った。

男は、あれから学校を休んでる。

理由無く休むようには思えないし、風邪とかかもしれない。


教師は触れなかった。

男なんていないみたいに、時間が流れる。

本当に、教室にぽっかり穴が空いたような感じがした。

一番仲の良い友達が休んだ時の気持ちに似てる。


友達いないけど。





54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 22:15:40.18 ID:EOa3EEBFO


家庭の事情とかだったら悪いし、教師にも何だか聞き辛いんだよね。

そしたら、あっと言う間に五日が経った。そのうち来るだろうと思ってた。

でも、男は来なかった。


女「心配させんな。私には怒鳴ったくせに」


男がいないと暇で退屈で、急に学校がつまらくなった。

つまらくなったってことは、楽しかったってことだ。


男と校舎裏で出逢ってからは、学校が楽しかった。

学校っていうより、この場所に来るのが楽しみだったのかもしれない。


暗くてじめっとしてるけど、ちょっと落ち着く。

そんな、不思議な場所。


男は私がここに来るずっと前から、ここにいたんだよね。




55: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 22:18:31.09 ID:EOa3EEBFO


どんな気持ちだったんだろう。

何を考えてこの場所に立っていたんだろう。

今は、どこにいるんだろう。


もしかして、違う居場所があるのかな。

男にとって居心地の良い場所が、どこかにあるのかな。

もしそうなら、ちょっと寂しい。


それから、こんなことを考える度に、決まって胸騒ぎがする。

背筋ぞわぞわして、鳥肌が立つ。


女「駄目だ、やっぱり気になる。担任に聞いてみよう。何か、嫌な感じがする」


私は職員室に走った。

迷っている所為か、やけに脚が重いけど、とにかく走った。




56: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 22:28:31.89 ID:EOa3EEBFO


盛大に転けて、笑われて、また走る。

そんな私を指差して、また笑う。

だけど、もう誰の視線も怖くない。笑いたきゃ好きなだけ笑え。

好きでもない友達と、好きなだけ笑えばいい。


女「はぁっ、はぁっ」


こんな風になれたのは、男と出逢って、ぐさっとされたからだ。

ありがとうって言いたい。

また、あの場所で話したい。


何かあったのなら力になりたい。私は、男に救われた。

救ったなんて思ってないだろうけど、私はそう思ってる。





57: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/17(火) 22:36:03.19 ID:EOa3EEBFO


あの時、保健室で別れてから話してない。

今想えば、何かを決めたのかも。

何を決めたのかは分からない。でも、そんな気がしないでもない。

何を決めたって別にいいけどさ、せめて学校には来てよ。


女「はぁ、はぁっ…」


たった一日二日話した相手に、何でそこまでしようとするのか。

知るか、私にも分からない。


もしかしたら、単純に、男を好きなのかもしれない。

単なる好奇心で、男を知りたいだけなのかもしれない。

そんなのどうでもいい。どうせ、どっちも似たようなものだ。


心配、暇、退屈、怖い、知りたい、知りたくない。

行こう、やっぱり止めよう、きっと迷惑だ、嫌われる。

走りながら色々な言葉が浮かんできたけれど、本当の答えは出てる。



私は、男に会いたい。






61: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 01:29:16.20 ID:MdClivtcO


【男の自宅前】


女「どうしよう。勢いに任せて来てしまった」


担任は、表情一つ変えずに男の住所を私に教えた。

目上の人間に言う台詞じゃないけど、正直気に食わなかった。

担任ならもう少し何かあるはずだ。心配じゃないのか。


あんな無気力な、まるで何も感じないような目。何だか気味が悪かった。

本当に生きてるのか疑いたくなるくらいだ。

大人になると、ああなっちゃうかな。

何か、嫌だな。


それはともかく、担任への怒りも手伝って、私は何も考えずに男の自宅へ来た。





62: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 01:30:36.88 ID:MdClivtcO


その場の気分で何かするのは止めようと決めたばかりなのに。

だけど、ここまで来たんだ。

今更逃げるわけには行かない。

会いたくて来た。心配だから来た。理由なんて、そんなものだ。


女「……行こう」


呼び鈴を鳴らす手が震える。

どうやら、緊張とかではなく、怖じ気付いてるみたいだ。

何とか呼び鈴を押すと、可愛らしい女の子が。どうやら男の妹さんみたいだ。


妹「お兄ちゃんの友達ですか?」





63: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 01:31:47.97 ID:MdClivtcO


女「……」

妹「えっと、あの」

女「あっ、ごめんね。私は同じクラスの女です」


女「友達なのか何なのかよく分からないけど、男が心配で会いに来ました」

妹「お兄ちゃんのこと、知ってるんですか?」

女「え?」


妹「あ、ごめんなさい。どうぞ、入って下さい」

女「う、うん。おじゃまします」





64: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 01:35:24.65 ID:MdClivtcO


女「あの、男は大丈夫なの?」

妹「……お兄ちゃんは、部屋で寝てます」

女「こんな時間に?随分早いね」


妹「女さんは、お兄ちゃんに聞いたんですか?」

女「義理のお父さんの話しなら聞いたよ。どうしたのかも、聞いた」


妹「そっか。お兄ちゃん、自分から話したんだ」ポツリ

女「ねえ、男は何をしてるの?もう、五日も学校休んでる」


妹「お兄ちゃんは、多分、病気なんです」





65: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 01:37:19.10 ID:MdClivtcO


女「病気って、そんな風には見えないけどな」

妹「風邪とか、そういうのじゃなくて、心が痛いやつです」

女「それは、あの…」


妹「あの人の所為で、お兄ちゃんは違う人になりました」


女「(あの人って、やっぱり義父のことだよね。それに、違う人って)」

妹「お兄ちゃんは毎日殴られたりして、私が殴ら…そうにな…た

女「無理しないで。それに、男はあなたを守ろうとしたんだよね?」


妹「大丈夫、です」





66: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 01:39:10.01 ID:MdClivtcO


女「でも、顔色が

妹「違うんです。お兄ちゃんは、その後も、あの人を」

女「……その、後?」

妹「夜になると、今度はお兄ちゃんが、あの人を殴るようになったんです」


女「!?」


妹「何度も謝らせて、何度も殴りました。自分がやられたように、何度も」

女「で、でも離婚したんじゃ。今は幸せだって、そう言ってたよ?」


妹「お兄ちゃんは、夜遅くになるとお家を抜け出すんです」

妹「来たばかりの頃は、殆ど毎日抜け出してました」


妹「それで、いつも痣だらけで帰って来るの……」





67: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 01:40:36.84 ID:MdClivtcO


女「そ、それって、わざわざ喧嘩しに行ってるってこと?」

妹「……」コクン

女「何で、そんな危ないことを」


妹「それをしないと、声が消えないって。そう言ってました」


女「声?」

妹「あの人の、声。お兄ちゃんを傷付ける、合図…」

女「(……酷い。体が震えてる。まだ怖いんだ。まだ、終わってないんだ)」


女「嫌な話しさせちゃって、ごめん。私、何も知らなかった」





68: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 01:45:11.92 ID:MdClivtcO


妹「あっ、あの」ズイッ

女「うわっ、な、何かな?」

妹「えっと、女さんはお兄ちゃんが好きなの?お兄ちゃんが大事なの?」


女「うん、好きだよ。だから、男のことを知りたいんだと思う」


妹「……なんか、お父さんみたい」ポケー

女「えっ?」

妹「あっ、ごめんなさい」

女「お父さんは、その…」


妹「事故で、いなくなっちゃいました」

女「……そっか」




69: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 01:48:33.73 ID:MdClivtcO


妹「すっごく強くて優しいお父さんなんだ」

妹「お兄ちゃんも私も、お父さん大好き」ニコッ

女「(凄く嬉しそう。今でも好きなんだろなぁ)」


妹「お姉ちゃん、あのね?」

女「お姉ちゃん?あ、私か。なに?」


妹「お兄ちゃんがお姉ちゃんに話したのは、お父さんに似てるからだと思うんだ」ニコッ

女「私、女なんだけど。喜んでいいのかな、それ」


妹「男の人みたいってことじゃないよ?雰囲気とか、うーん。色々、色々似てるの」





70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 02:07:11.28 ID:MdClivtcO


女「良かった。ほっとしたよ」

妹「へへっ、お姉ちゃんが来てくれて本当に良かった」

女「(何だか分からないけど、警戒解いてくれたみたい。随分とご機嫌だなぁ)」


女「(どう見てもまだ小学生。こっちの方が本当なんだろうけど、しっかりした子だ)」

妹「ねえねえ」クイクイ

女「どうしたの?」

妹「お兄ちゃんに、会いたい?」


女「そりゃあもう。その為に来たんだから」





71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 02:13:08.92 ID:MdClivtcO


妹「じゃあ、一緒に行こう?」ギュッ

女「うん、行こう」ギュッ

妹「お兄ちゃん、ずっと『夜』だったんだ……」

妹「最近、また抜け出し始めたの」


女「(なるほど、だから学校に来れなかったのか。五日間も、ずっと……)」


妹「お爺ちゃんお婆ちゃんも、心配してる」

妹「それで、お婆ちゃんが具合悪くなっちゃったんだ……」

女「(だから居なかったのか。男、そんなに酷いのか)」


妹「でもね?お兄ちゃんだって本当は心配かけたくないんだよ?」

妹「きっと痛くて泣いてる」

女「(……私に何が出来るのかは分からない。でも、会えば分かるはずだ)」



女「(私が会いたくて来たんだ。今度は何があっても、逃げない)」





74: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 13:57:51.18 ID:5nXLbPBOO


妹さんと手を握って、階段の前に立った時、突然足が動かなくなった。

膝が震える。

あの目を見たら、私は竦んでしまうだろう。


怖い、やっぱり駄目だ。行きたくない。

私がどうにか出来るような問題じゃない。


家族の問題。兄妹の痛み。私が入り込んじゃいけない場所。

これ以上、首を突っ込むのは止した方がいい。

例え好意があっても、何かをしたくても、男の心に踏み込んでいいのだろうか。


ほんの少しの間に、これだけの言葉が、全身に広がった。





75: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 13:59:54.21 ID:5nXLbPBOO


今の私を立ち止まらせるには、十分すぎる言葉。

もっともな言葉だ。

きっと、それは正しい。


もし今、お爺さんお婆さんがいたなら、そっとして欲しいと言うだろう。

とても繊細で脆い、触れる場所を、触れる力を少しでも間違えれば、どうなる。

幸せを、男を、私が壊してしまうんじゃないだろうか。


一体、男に何があったんだろう。





76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 14:03:08.13 ID:5nXLbPBOO


妹さんには、最近までは落ち着いていたと聞いた。

なのに何故再び夜に走ったのか、暴力に身を委ねるのかが、分からない。


学校に来なくなって、五日。

あの日から、男は夜を居場所にした。消えない声を、掻き消す為に。


五日前に何かがあったのかな。そう言えば、怒鳴ったのもあの日だ。

あのぎらついた目を見たのも、あの日。私が、何かをしてしまったのかな。

触れてはならない場所に、触れてしまったのだろうか。


じっとして動かないままで階段の上を見つめる私を、妹さんは心配してた。

とっても不安そうな顔で、私に何か言ってる。




77: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 14:04:47.83 ID:5nXLbPBOO


だけど、音が無い。何も聞こえない。

心臓がうるさくて、それだけが頭に響いてる。


やっぱり、私には無理なのかな。


我慢できなくなって階段から目を逸らした時、風が吹いた。

茶の間の対面。

廊下を挟んだ向こう側、階段のすぐ側にある和室からだった。

襖が開いている。どうやら向こうの窓から風が入ってきたみたいだ。


何の気なしに覗いみた。

その時、ちらりと見えた。


それは綺麗に手入れされた仏壇だった。男のお父さんがいる、仏壇。




78: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 14:07:28.04 ID:5nXLbPBOO


私は妹さんに頼んで、線香を上げさせてもらうことしにした。

後押し、きっかけ。

上手く行くようにと、お願いしたかったのかも。


妹さんは、ちょっと困ったような、不思議そうな顔で私を見たけれど、喜んでくれた。

二人一緒に、線香を上げた。

遺影以外にも、写真が何枚かある。

豪快で晴れ晴れとした笑顔。二人をぎゅっと抱きしめて、笑ってる。


どの写真でも笑顔だ。男も妹さんも、笑ってる。





79: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 14:11:02.37 ID:5nXLbPBOO


しばらく見入っていると、妹さん色々教えてくれた。

お父さんは、大工さん。

お弟子さんからも慕われてて、素直で真面目な人。

二十五歳で家を建てたとか、早くから親方になったとか、お酒が弱いとか、色々。


きっと尊敬していたんだろうと、大好きだったんだろうと思う。


でも、作業中の事故で亡くなってしまった。

それから、お母さんがおかしくなってしまったらしい。


支えがなくなって自暴自棄になったのか、そういう人だったのか、理由は分からない。

ただ、それから壊れていったのは確かだろう。





80: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 14:13:19.11 ID:5nXLbPBOO


線香の香りは苦手だけど、今だけは、この香りが何だか落ち着く。

もう一度手を合わせて目を閉じると、風が吹いた。

応援してくれてるのかな、とか。

勝手にそんな風に思いながら。しばらく目を閉じた。


不思議だ。


さっきまでは怖くてたまらなかったのに、今は怖くない。

心の中で何度もお礼を言って、私は再び階段の前に立った。

妹さんと手を握って、一段一段、ゆっくりと進む。





81: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 14:24:49.81 ID:5nXLbPBOO


さっきまで根が張ったみたいに動かなかった脚が、今なら動く。後は進むだけだ。

うだうだ考えて、悩んで、とても長かったけれど、やっと此処まで来れた。


人に会う。


それは、こんなにも勇気がいるものだったんだ。

人とは言っても、『好きな人』なわけだ。私にとっての、特別な人。

それなら、さっきみたいな事になっても仕方無い、のかな。


第一こんなの初めてだし、どうなるかなんて分かるわけないよ。

男の事情抜きにして、一人で此処まで、このドアの前まで来れたかどうか…


多分、いや絶対に無理だろう。





82: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 14:31:56.73 ID:5nXLbPBOO


ちゃんと妹さんにお礼言わないとな。

こんな小さい子に勇気を貰った。沢山、助けてもらった。

さあ、行こう。腹は括った。


このドアの向こうに、男がいる。

寝てるか起きてるか分からないけど、上手く話せるかも分からないけど……


もしかしたら、二度と会えないかもしれない。それで、呆気なく終わっちゃうんだ。

突き放されて、終わるだけかもしれない。きっとそうだ。傷付くだけだ。

うん、有り得ない話しじゃない。そんなの、簡単に想像出来る。


そうだね。『もしかしたら』そうなるかもね。

確かにそうなる『かもしれない』よ。だけどさ、それでもいいと思ってる。


やれるだけ、やってみる。





88: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 18:34:32.13 ID:4vrIvcY0O


これは夢だ。

こんな事が起きるわけがない。

こんな場所に、彼女がいるわけがない。


僕は君を忘れたかったのに、何故夢にまで現れるんだ。

さっさと消えてくれ。

その瞳で、僕を見ないでくれ。


もう何もいらない、何も欲しくなんかない、どうせ叶わない。

優しい家族がいる。

ご飯だって毎日食べられる。僕はそれだけで満足なんだ。





89: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 18:39:20.45 ID:4vrIvcY0O


何かを望めば痛みを伴う。

そんな日々から、ようやく解放されたんだ。


大体、君は綺麗すぎる。

あの場所にいる誰よりも、君の存在は輝いてる。

眩しいんだよ、君は……


だから妬まれるんだ。

きっとそれは、憧れからくる嫉妬。

君が戦った女子も、噂を流したであろう人間も、きっとそうなんだ。


例え何もしなくても、君はそうなんだ。

だから、みんなが君を見る。





90: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 18:41:37.26 ID:4vrIvcY0O


側にいる人間が霞んでしまうくらいの、強い光みたいなものを放ってる。

髪型を真似しても何を真似しても、誰も君のようにはなれない。


だからこそ気に入らない。君の存在が許せないんだろう。

どうやっても届かないんだ。だから妬む。


例え君が、どんなに気さくな人間でも、君の隣には誰も立てはしない。

同性なら尚更だ。必ず比較されるだろうから。

それに、あそこにいる人間は、誰もが自分を見て欲しいと思ってる。


みんな『特別』になりたいと思っている。誰もがそうさ。





91: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 18:44:00.85 ID:4vrIvcY0O


だから馬鹿をやって気を惹こうするんだ。

だから誰かを見下して、誰かを笑って、自分は特別だと思いたいんだ。


それなのに、君は最初から特別なんだ。嫉妬もするさ。

誰もがなりたいものに、既になっているんだから。

だからもう少し、自分を大事にしなよ。


もう、喧嘩なんてしちゃ駄目だ。

傷が残ったら、どうする。

あれ、違う。言いたいのは、こんなことじゃない。

あぁ、そうだ。




92: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 18:45:47.80 ID:4vrIvcY0O


君は、僕なんかといるべきじゃない。

僕は、君とは歩けない。

だから、もう消えてくれ。僕の中から、出て行ってくれ。


君と歩きたいなんて、君と一緒にいたいなんて……

そんな馬鹿げた願いが形を為す前に、僕の前から消えてくれ。


もうじき夜だ。

夜が来たら、行かないと。

君の声も君の笑顔も、あいつの声と同じように、消してやる。


あいつが僕にしたみたいに、分からせてやる。

どんなに謝っても終わらないって、どんなに願っても叶わないって、思い知らせてやる。


こんな馬鹿な願いを持った僕に、思い知らせてやるんだ。





93: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 18:47:48.63 ID:4vrIvcY0O


「辛くないの」

辛くない。

これが僕なんだ。僕は、こうあるべきなんだ。


何で泣くの?

君なら何でも手に入れられる。好きなように生きられる。

それにあの時、素直に生きるって、そう言って笑ったじゃないか。


「待ってる」


もう止めてくれ。もう沢山だ。

こんなこと、あるわけない。

君が僕を待ってるなんて、あるわけがない。

君が、僕を望むような言葉を、言うわけがないんだ。





94: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 18:54:34.07 ID:4vrIvcY0O


「……あの場所で、待ってるから」


突然、彼女がゆっくりと体を傾けた。

僕の体は思うように動かない。

彼女が、僕の馬鹿げた願いが、僕を見つめたまま、少しずつ近付いて来る。

僕は何とか目を逸らそうとしたけれど、彼女の瞳がそうさせない。


一瞬。ほんの一瞬だけ重なって、彼女は離れた。

僕は呆然として、何が起きたのか分からないまま、彼女を見る。


すると彼女は涙を流しながら笑って、優しく手を握った。

僕はその手を払うことも、握り返すことも出来ない。

何故だか分からないけど、強張っていた体から、力が抜けていく。


もう夜が来るのに、あいつの声は聞こえない。

彼女は長い間、僕のベッドに腰掛けて、僕の手を握っていた。



こんな夢を見ているうちに、僕はその夢の中で眠りについた。





97: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 21:01:53.90 ID:jgsCloEmO


【女の自宅】


先に電話してて良かった。

結構遠いから、帰るのが随分遅くなっちゃったよ。

事情を話したら、お母さんも分かってくれた。勿論、全部話したわけじゃない。


それにしても、色んなことが起きた一日だったな。


帰る時、妹さんに私の番号教えた。何かあった時の為だ。

妹さんは携帯電話持ってないから、自宅の番号を教えてくれた。


何だか、凄く疲れた。

こんなに沢山走ったのは、中学校のマラソン大会以来だ。





98: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 21:05:09.49 ID:2J/VteIbO


男は熱でうなされてて、半分起きてて半分寝てるような感じだった。

上半身裸で寝てるから焦ったけど、それより衝撃的なものを見た。


顔やお腹にある幾つもの痣と火傷の跡。

擦り傷、切り傷まであった。

あんな傷、今まで一度も見たことない。


一体どれだけ殴られて、どれだけ殴ったんだろう。

手って言うか、拳が腫れてた。殴るのも痛いんだろうな。

しかも、いきなり『消えてくれ』なんて言われた時は、声出して泣くとこだった。


だから、妹さんに断って二人にしてもらった。泣くとこなんて、見られたくなかったから。

妹さんは何も言わなかったけど、了承してくれた。





99: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 21:06:44.90 ID:2J/VteIbO


本当に察しが良い子だと思う。

そこら辺は、とても小学生だとは思えない。

それから二人になって、男と話した。

ちゃんと話したって言えるのかは、分からないけど。


男って、私のことをあんな風に思ってたんだ。かなり意外だ。

私は、男が言うような綺麗な人間じゃない。私だって嫉妬とかするし。


あれは、男が作った私だ。

私も男のこと知らないけど、男だって私のこと知らない。

取り敢えず、男の中の私は置いとこう。





100: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 21:11:19.86 ID:2J/VteIbO


どんな風に想われてるのかは分かったし、素直に嬉しかった。

だけど、あんなに傷付いてるとは思わなかった。


虐待。

男の内側と外側にある傷跡。

言葉は勿論知っているけど、分かるかと言われたら、分からない。

理解した気でいた自分が、恥ずかしい。


男は言った。

望んだって叶わない、痛い思いをするだけだって。

優しい家族、毎日ご飯を食べられるだけで満足だって。


暴力を振るわれて、挙げ句、満足にご飯も食べれない日々。





101: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 21:16:56.05 ID:2J/VteIbO


そんな日々が、数ヶ月続いた。それが二人の体験したこと。

今でも忘れられない痛み、体に刻まれた傷跡、消したい記憶。


それを消す為に夜を歩いて、殴り合って、傷付いて……

ずっとあんなことを続けてたら冗談じゃなく、死んでしまう。


あの傷がもう少し深かったら?

それを考えるだけで、気が遠のく。

死ぬなんて嫌だ。もう止めて欲しい。

もう、あんな姿は見たくない。


それは妹さんも、お爺さんもお婆さんも、同じはずだ。

ちなみに、さっき電話が来た。

取り敢えず今日は大丈夫そうだと、妹さんは言っていた。





102: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 21:29:37.62 ID:2J/VteIbO


良く眠ってるらしく、顔付きも、いつものお兄ちゃんに戻ったらしい。

本当に良かった。

だけど、もしこの電話がもう一度鳴ったなら、それは悪い報せ。


出来れば鳴らないで欲しい。


それと帰り際、ちょうど病院から帰ってきたお爺さんお婆さんと話した。

挨拶と事情説明は、妹さんも手伝ってくれたお陰で助かった。

このお家に来たばかりの男の話しを聞いてる最中。


よく今まで警察沙汰にならなかったなと思って、恐る恐る聞いてみた。

そしたら妹さんが『そういう人』しか相手にしないんだって、と。

そういう人って何だろ、かなり怖い。深くは聞かなかった。


勿論、それを聞いて安心したわけじゃない。

刃物まで持ち出すなんて、喧嘩なんて言えるものじゃない。

そんなの、やらないのが一番良いんだ。





103: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/18(水) 21:33:04.36 ID:2J/VteIbO


後、出過ぎた怒られるかと思ったら、何度もお礼を言われた。

お煎餅とか貰ったり、男とはどんな関係だとか聞かれたり。

妹さんも一緒に、四人で色んなお話しをした。

ちょっとくすぐったかったけど、とても楽しい時間だった。


女「……学校、来てくれるかな」


そう、問題はそこだ。

私の声が届いていたのか分からない。会話も成立してるか怪しかった。

聞こえてはいただろうけど、どうだろう。やっぱり不安だな。

最後の方は、私もボロボロ泣いちゃってたし。


何せよ、今の私に出来るのは待つことだけだ。言うべきことは、言えた。

だけど私には、まだ伝えてないことがある。

お礼と、私の気持ち。

伝える前に行動に移しちゃったけど、ちゃんと伝えたい。



あの場所で、男に伝えたい。






108: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 00:22:33.30 ID:FCY7BrJhO


あれから一週間が経つ。

僕は、まだ動けずにいる。

あの夢を見た翌日、妹から全て聞いた。


彼女がこの家に来たこと。

僕に会いに来たこと、この部屋に入ったこと。

あれは、夢じゃなかった。


妹は、随分と彼女を気に入っているようだった。

理由は、何となく分かる。


「僕は、どうする」





109: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 00:24:45.97 ID:FCY7BrJhO


彼女は、確かに此処にいた。

このベッドに腰掛けて、僕の手を握っていたんだ。

まだ手が熱い。唇にも熱が残ってる。


僕の為、僕に会う為。

それを聞いた時、喜びよりも戸惑いの方が勝っていた。


戸惑いと言うより、怖れているのかもしれない。

もう何も欲しがらない、そう決めていた。あの時から今まで、ずっと。


それを破った時、何かが起こりそうな気がして、怖いんだ。

そのはずなのに、僕の心はこんなにも落ち着いていて、安らいでいる。


夜の震えは収まり、あいつの声は、聞こえなくなった。





110: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 00:26:10.62 ID:FCY7BrJhO


人を殴って、降伏させて……

そうやってどうにか消していた声が、今は聞こえない。

相変わらず夜は怖いけれど、どうにか耐えられる。


何かが、変わってしまった。

たった一人、赤の他人。繋がりなんてない。

一度や二度会話しただけの存在なのに、何でこんなに大きく感じるんだろう。


僕が大切にすべきなのは、家族のはずだ。今でもそのはずだ。

なのに何で、こんなに辛いんだ。


僕は彼女に会いたいのか。彼女への想いを断ち切りたいのか。

彼女のことが好きなのか。

それとも、変わってしまうことが怖いのか。





111: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 00:27:44.60 ID:FCY7BrJhO


答えは出ているのに、動けない。

分かってるさ、本当は会いたい。

僕は、彼女が好きなんだ。


知っている。もう、知ってしまった。

あの笑顔、優しさ、温もり……

僕に向けられた何もかもが、僕の中に溢れている。


でも、こんな僕が彼女と歩くことは許されるのだろうか。

僕は人を傷付けて自分を満たすような、あいつと何も変わらない、醜い人間だ。


そんな屑みたいな奴が、何かを得ようとするなんて、許されるはずがない。





112: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 00:29:07.95 ID:FCY7BrJhO


「それでも、僕は」

何だ?

それでも、何だ。


卑屈になって、目を逸らして、痛みだけを頼って生きて行くのか。

いつまでもいつまでも、あいつのことを呪って『誰か』を傷付けるのか。


お父さんのように、なりたいんじゃなかったのか。

強くて優しい人に、憧れていたんじゃないのか。


だからこそ、彼女に惹かれたんじゃないのか?





113: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 00:30:59.15 ID:FCY7BrJhO





『あの場所で、待ってるから』








114: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 00:33:25.31 ID:FCY7BrJhO


「でも、僕は…」


『真っ直ぐに、人の目を見て話せる人間になれ』

『ははっ、大丈夫だ。間違わない奴なんて、失敗しない奴なんていないんだ』


もう、放課後。

本当に、僕を待っているんだろうか。

今も彼女は、あの場所にいるんだろうか。


それが知りたいのなら、行けばいい。


今からでも間に合うのかな。

こんな僕でも、まだ間に合うのかな。


考える暇があるなら動け。

ぐだぐだ考えるな。やりたいことを、やればいいんだ。


「……行こう。あの場所で、彼女が待ってる」





115: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 01:14:58.37 ID:FCY7BrJhO



「はぁっ、はぁっ」

「全く、遅いよ」

「はぁっ、はぁっ…遅れて、ごめん」


「ねえ」

「な、なに?」

「ありがとう。あんたのお陰で、私は変われた」


「そんなこと

「それに、私はあんたが思うような綺麗な人間じゃない」

「!!」


「勝手に決め付けないで。って、私が言えた台詞じゃないけど……」





116: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 01:17:28.46 ID:FCY7BrJhO


「あの、僕もありがとう。君に会えて嬉しい」

「う、うん。何だか、少し変わったね」

「これでも、精一杯」


「ははっ、そうなんだ。あのね……」

「うん」


「私は、あなたが好きだよ」


「でも僕は、人を傷付けて

「それは知ってる」


「でも今は関係ない」

「誰が悪いとか何が間違いだとか、私には言えないよ」





117: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 01:19:03.79 ID:FCY7BrJhO


「また繰り返すかもしれない。僕は、それが怖い」

「しないよ」

「えっ?」


「だって、此処に来れたでしょ?」

「そんなの分からないよ。それでも僕は、繰り返すかもしれない」


「それでも、だよ」

「えっ?」


「私は、それでもあなたが好きだし、あなたを信じる」





118: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 01:21:32.84 ID:FCY7BrJhO


「何で、そんなことが言えるの?」

「分かんない。目、逸らさないからかな?」


「そんな理由で

「男は強いよ。自分が思ってるより、ずっと強い」


「……っ、女さん!!」

「な、なにっ?」

「僕は…いや、違うな」

「?」





119: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 01:22:56.63 ID:FCY7BrJhO






「僕も、君が好きだ」









120: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 01:24:38.55 ID:FCY7BrJhO


終わり




122: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 01:36:07.54 ID:FCY7BrJhO

見てくれてありがとう。

最後、手抜きに見えるかもしれないけど、手抜きじゃないよ。
考えた結果、これがいいかなと思った。

気に入らなかったら、すまん。



127: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 04:40:00.97 ID:9RyU6ZcDO


すごい良かった



128: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2014/06/19(木) 05:52:39.54 ID:Ae1NYcNWo

一気に読んだ
とても面白かったです


元スレ
SS速報VIP:女「それでも、だよ」