36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 18:54:21.74 ID:GOLdZ1cRO
美琴「ちょろっとー」クイクイ
上条「ん? あぁビリビリか、なんか用か?」
美琴「えへー」
ピト
上条「」
美琴「ね、ご飯食べに行こ?」
上条「………違う」
美琴「んー?」ギュー
上条「こんなのは御坂じゃない!」
美琴「なに言ってんの?」
上条「違うんだあぁぁ!」ダッ
美琴「あ、ちょっとー!」
つまり黄身のない卵だ
39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 19:39:02.77 ID:GOLdZ1cRO
卵は黄身と白身と殻がある。
貧乏学生にはこれ以上ないほど安定したタンパク源だ。
だから卵が好きだ。
生、半熟、完熟、様々な形に姿を変え、食生活に変化をもたらしてくれる黄身が好きだ。
味はさしてないが、素晴らしい食感をもたらしてくれる白身が好きだ。
サルモネラ菌は怖いが、殻も好きだ。
たぶん。
そして私こと上条当麻はとある少女に恋をしていた。
ツンデレ属性には堪らない、強気で華奢な女の子。
つい最近、その少女から黄身が消えていた。
場所は通学路上にある自販機の前。
買うつもりはない。 俺はこの自販機は信用していない。
しかし気づいたことがある。
自販機側面に付いた凹み。 もちろんこれは超電磁砲こと御坂美琴の御足の痕跡なのだが、最近“上書き”がされていないのだ。
上条「いったいなにがあったってんだ……?」
見慣れた自販機を離れ、疲れた体に休息を与えるためベンチへ向かう。
上条「まぁ、蹴り入れないこと自体はいいことなんですがねぇ…」
誰に聞かせるわけでもなく一人ぼやきながらベンチに腰掛けていると、ふいに背後から聞き慣れた声がした。
美琴「あ、こんなとこにいた!」
常盤台の電撃姫、御坂美琴の御登場である。
整った顔立ちに華奢な体つき。
傍から見ればただの女子中学生、幾多の修羅場をくぐり抜けてきた学園都市が誇るレベル5だとは誰も思うまい。
上条「おー、お前もいま帰りか?」
美琴「うん、ここに来れば当麻に会えるかなー、って」
そう言って後ろから俺に抱き着いてきたリアル・ラムちゃん。
なにか背中に当たっているような気がするが気のせいだろう。
美琴「ね、第8学区に新しいデパートが出来たんだって。 一緒に行こ?」
と、今度は俺の前に回って催促。
ちくしょう、笑顔に後光がさしてやがる。
上条「あ、あぁ、いいよ、行こうか」
美琴「えへー、デートだよデート!」ギュー
上条「で…! こら、あんまりくっつくと足引っ掛かるぞ!」
どうやら御坂美琴は俺に好意を抱いてるらしい。
傍から見れば幸せそうなカップル。
しかし、なにかが違うのだ、なにかが。
ところ変わって先程話題にも上がったデパート。
御坂美琴は相変わらず俺の左腕に抱き着いたままだ。
美琴「えへー」ギュー
上条「……さっきからずっとそうしてるけど、なにか見たいもんとかあるんじゃねーのか?」
美琴「んー、私は当麻と一緒に歩いてるだけで幸せだけど?」
咄嗟に、上を向いた。
14歳の屈託のない笑顔というのは文字通り鼻血物である。
しかも自分に好意を抱いているのが確定しているのだ。
場所が違えば何回目かの過ちを犯してしまっていたかもしれない。
美琴「……当麻?」
上条「あぁ、大丈夫だ、ちょっとお花畑が見えただけだから」
美琴「当麻の頭の中ってメルヘンなのねー」
メルヘンか。
たしかにメルヘンに汚染されているのかもしれない。
なにかが違うのだ、なにかが。
結局デパートではなにも買わず、中にあったカフェで一息ついただけ。
外はもう薄暗く、街灯の光が駐車場を照らす。
美琴「………寒いね」
上条「ん、もう冬だからな」
来た時と同じく、御坂美琴は俺の左腕にしっかりと固定されている。
冷たい風にさらされている右手と美琴の体温が伝わる左手の温度差が、俺の脳の処理速度を多少鈍らせる。
美琴「ねぇ、当麻」
上条「ん?」
美琴「寒い」
上条「あぁ、寒いな」
ふと交差点の向こうに目をやると、赤や緑といった電飾で彩られた街がひろがる。
……あぁ、もうすぐクリスマスか。
どうりで寒いわけだ。
美琴「ねぇ当麻、こっからだと当麻の家のほうが近いよね?」
上条「そうだけど……」
美琴「……当麻の家、行きたい」
上条「それは……」
美琴「ダメ?」
またしても、空を仰いだ。
寒さで紅く色づいた頬、潤んだ瞳。
身長差があるので必然的にそれは上目使いとなるのである。
幸い、ウチの居候は安定した食生活を求めて小萌先生のところに寄生している真っ最中。
上条「いや、大丈夫だ」
美琴「ホント? やったぁ!」
もう我慢はしない。 これ以上は首の骨が折れてしまう。
美琴「ちょ、ちょっと! 鼻血、大丈夫!?」
……大丈夫ではない気がする。 おもにアタマが。
――――なにかが違うのだ、なにかが
上条「足元、滑るから気をつけろよー」
美琴「大丈夫、当麻が助けてくれるもん」
冷えたコンクリートの階段を一歩一歩あがっていく。
すこぶる上機嫌で跳ねるように登っていく美琴に注意を促した直後。
それは多分、偶然だった。
美琴「きゃっ……!」
上条「……御坂!」
美琴が、足を踏み外した。
上条「くっ……!」
美琴の華奢な体を抱き留め、傷つけぬよう自分の体で包みながら階段を転がりおちていく。
最下段まで達した時、俺の脳が確認したのは体全体から伝わる痛みと
上条「―――!?」
唇の温もりだった。
美琴「あ……」
すぐに離れた温もり。
美琴はいま俺の上で馬乗りの状態でフリーズしている。
上条「御坂……」
冬の夜空の下、アパートの申し訳程度の明かりの中でも、美琴の顔が真っ赤に染まっていくのが確認できた。
美琴「当麻……」
それは2人とも無意識に、ごく自然と。
もう一度、お互いの唇を確かめようと腕を交差させたその刹那。
土御門「あのにゃー、クリスマスが近いとはいえ、唯一の階段を塞がれるとどうしていいか……」
美琴「………」
雷鳴が轟いた。
上条「はい、どうぞ」
無事、部屋の前へとたどり着いた俺は英国の紳士よろしく美琴を中へと招きいれる。
階段の踊り場に炭が転がっていた気がするが気のせいだろう。
美琴「おじゃましまーす♪」
普段から整理している、もとい整理するだけの物がない俺の部屋はいつも片付いている。
普段は寂しいが、こういうときには安心きわまれり。
美琴の後をついて部屋に入る。
上条「ん? どこいった?」
先に入った電撃姫の姿が見当たらない。
思案しながら寝室に入り、部屋の明かりを付けるとベッドにぬいぐるみが一つ増えていた。
美琴「えへへ、当麻の匂いだー」
……鼻血はもう、でない。
美琴「ね、当麻」
自らの欲望を必死に押さえ付けているのを知ってか知らずか、御坂美琴はベッドの上でバタ足をこいている。
美琴「このベッドなら、2人で寝られそうだね」
三度、天井を仰ぐ。
普通、これなら夜の遊びもバッチコイだね! 今日は燃えちゃうぞー! なんて妄想が頭をよぎるだろう。
私こと上条当麻も例外ではない。
過熱した脳を冷やす為しばらくそのまま立ち尽くしていると、お姫様はまたバタ足を始めた。
美琴「ねぇ、聞いてる? ……て、ちょっと! また鼻血!? 大丈夫!?」
お姫様は短パンを履いていなかった。
気がつくと、俺は美琴を押し倒していた。
我ながらよく我慢したと思う。
だが、物事には限度というものがあるだろ?
思春期の男が自分を好きな女の子の誘いを無視できるわけないだろ?
美琴「当麻……?」
俺を見上げてくる、あどけない顔。
中学生だからまだこの状況を理解できないのか?
上条「御坂……!」
もうなにも考えられない、なにも……。
そして―――
ピンポーン……
玄関の呼び鈴が、鳴った。
上条「……すまん、御坂」
美琴「当麻……」
ゆっくりと体を起こし、玄関へ向かう。
ちくしょう、頭が痛い。
両想いなんだ、好きにやっちまっていいはずだろう?
と考える一方で、無垢な女の子に自らの欲望を叩き込むのを否定する自分がいる。
頭を抱えながら扉を開くと、そこにはまたも見慣れた顔。
黒子「お姉様は、ここにいまして?」
………今日は、厄日だ。
上条「白井か……」
黒子「お姉様の異変、もうお気づきでしょう?」
どうやら白井からはベッドの上にいる美琴は見えていないようだ。
美琴も、布団の匂いを嗅ぐのに夢中で黒子には気づいていない。
―――異変か、そのおかげで俺の脳まで異変を起こしかけているんだ、早いとこ説明してくれ。
黒子「……すみません、ちょっとした悪ふざけのつもりでしたの。 まさか、こんなに効き目があるなんて……」
白井の話によると、以前の幻想御手(レベルアッパー)の折に使用されたものを応用して、とあるソフトを作ったそうな。
木山博士監修の、名付けて「デレールガン」。
使用した者を素直にしてしまうという、ある意味くだらない装置。
上条「で、どうやったら元に戻るんだ?」
正直、元に戻すのは惜しい気がする。
しかしこのままというわけにもいくまい、俺の理性もここが限界だ。
黒子「いえ、今回のはそんなに持続性はないものでして……」
上条「つまり放っとけば元に戻ると?」
黒子「……今朝」
上条「……ん?」
黒子「今日の朝には効き目は切れるはずでしたの、なのにまだお姉様が素直なままなので気になりまして……」
上条「ソフトに異常があったってことか?」
黒子「いえ、ソフトは完璧なはず、非常に申し上げにくいのですが……」
黒子「………お姉様が演技をなされている、としか」
…………なんだって?
美琴が演技?
つまり、効き目が切れたのを自覚していながら、素直な御坂美琴を演じ続けていると?
上条「……でも、いったいどうして」
美琴なら、効き目が切れた途端に真っ赤になりながら必殺10億ボルトを放ってくるはずだ。
なぜ、そうしない。
素直でいることに、なんらかのメリットがあったから?
上条「あ……」
素直。
つまり美琴の俺への気持ちは本物。
この数日間、積極的な美琴に押された俺はいつも美琴と一緒にいた。
アイツが、望んだから。
そこまで考えたところで、俺の思考は部屋からの物音により中断された。
美琴「……」
俯き、立ち尽くす美琴。
今の話を聞かれたか。
……僅かだが肩が震えているように見える。
そして
美琴「…!」ダッ
上条「御坂………、………うわっ!?」
美琴は無言のまま俺と白井を押しのけて外へと飛び出していった。
上条「おい! 御坂ぁー! チッ……!」
おいおい、靴もほうり出してこの寒空の下どこへ行こうってんだ。
黒子「あの……」
俺は美琴の靴と上着を手に取ると、呆然としている白井には目もくれずに走り出す。
雪が、降り出した。
随分と走った。
イルミネーションに彩られた街を通り過ぎ、街灯の少ない公園へと。
なぜだかはわからないが、美琴はここにいると確信していた。
上条「はぁ…はぁ…御坂……!」
息を激しく吸い込む度、冬の空気が喉を刺す。
しかしそんなことは気にもせず、俺の両目は見慣れた姿を映し出した。
とある自販機の傍のベンチ、小さな影。
上条「…」
体育座りで膝に顔をうずめ、ちょこんと座る御坂美琴がそこにいた。
上条「……風邪、ひくぞ」
そっと上着を被せると、美琴の肩がびくりと揺れる。
まだ、顔は深く俯いたままだ。
上条「……靴も」
美琴「うん……」
靴を渡そうとした時、美琴は掠れて消えそうな声で返事をしてくれた。
美琴「……アンタ、私のこと変だと思ってんでしょ」
上条「……どうしてさ」
美琴の横に腰掛け、少し視線を上に向けると澄んだ星空が広がる。
美琴「アンタは……、優しいから……!」
少し嗚咽の混ざった涙声。
美琴「アンタは優しいから、私が、積極的に頼んだら断れないだけなのよ」
上条「……そう、かな」
美琴「でも…! アンタは一緒にいてくれた…! それが、すごく、嬉しくて……!」
嗚咽が混じり段々と聞き取れなくなっていく言葉。
すぐ隣に俯いたまま涙を流す少女。
だが何故か、俺の心は満たされていく。
美琴「だから…、私が素直なままでいれば、もっと、一緒にいれるかなって……!」
上条「御坂……」
美琴「ごめん…、自分勝手だよね、私、ホントに…」
上条「あのな、御坂」
美琴「……」
電撃姫はいまだ俯いたまま。
返事はないが、聞こえてはいるはず。
上条「……正直、最初はびっくりした」
美琴「…」
美琴の肩が揺れる。
だが、ここで話をやめるわけにはいかない。
上条「抱き着かれた時は気が気じゃなかったよ」
美琴「…」
上条「今まで片思いしてたやつがさ、いきなり猛烈アタックしてくんだもんな」
美琴「……ふぇ?」
やっと、顔をあげた。
うむ、泣き腫らした顔もなかなか情欲を誘う………、おっと、いかんいかん。
上条「いきなりなにがあったんだ、って思う一方でさ、このままでいいかもって思う自分がいて」
美琴「……」グシグシ
そう言いながら笑いかけると、突然顔を手で覆う。
……懸命に涙の跡を拭おうとしているようだ。
……なかなか可愛い。
上条「……でも、なーんか足りない気がしたんだよ」
美琴「ぇ…」ジワ
上条「…俺が惚れたのは、素直じゃないとこも引っくるめての御坂でさ。 素直なのも可愛いけど、なんか物足りないんだよな」
一旦、大きく深呼吸。
冷たい空気が肺に染み渡り、俺の決意をいっそう強くしてくれた。
上条「素直なままじゃなくていいからさ、このまま、ずっと一緒にいてくれ」
あれ? これは交際を申し込むというよりはプロポーズ?
まぁ、いいか、どっちもたいして変わんねぇ。
美琴「あ……あぅぁぅ……」
当の本人は口をパクパクさせながら顔を真っ赤に染め上げている。
金魚みたいだ。
そんなに間抜け面じゃないけども。
上条「御坂……」
そっと肩を抱き寄せ、今一度向き合う。
街灯がスポットライトだと、誰が言っただろうかまさしくその通りで。
明かりの少ない夜の公園、自販機と街灯で照らし出されたベンチはさながら舞台のようだ。
それはまた、ごく自然と。
向き合った美琴との距離は段々と近づいていき……。
美琴「当麻……」
あと少し、もう少しでお互いの唇が触れ合うというところで。
黒子「お姉様、こんなところにいましたの………、って、あら?」
本日の空気嫁第一号。
雷鳴が、轟いた。
.
時間は午前1時過ぎ。
場所は私こと上条当麻の部屋。
未曾有の雷によって白井を消し炭にした美琴と、そのとばっちりを受けた俺は自室にて出来たばかりの恋人の看病をうけていた。
上条「右手を出す間もなかったわけですが……」
美琴「ごめん、ちょっとやり過ぎたかも……」
上条「ま、いいさ、ところで…」
美琴「あ………」
す、と少し顔を近づけただけで耳まで紅くする電撃姫。
出会いは偶然だった。
進展も偶然だった。
今回、想いが通じ合ったのも偶然だった。
最初のキスも………
上条「偶然ばかりに任せてちゃいけないからな」
雪の降りしきる12月。
学園都市のとある一室に重なる影がひとつ。
クリスマスはもうすぐそこ………。
Happy End
続きはウェブで
最高のハッピーエンドをありがとう
ところでどこのwebで続きが読めるんですか?
元スレ
卵は黄身と白身と殻がある。
貧乏学生にはこれ以上ないほど安定したタンパク源だ。
だから卵が好きだ。
生、半熟、完熟、様々な形に姿を変え、食生活に変化をもたらしてくれる黄身が好きだ。
味はさしてないが、素晴らしい食感をもたらしてくれる白身が好きだ。
サルモネラ菌は怖いが、殻も好きだ。
たぶん。
そして私こと上条当麻はとある少女に恋をしていた。
ツンデレ属性には堪らない、強気で華奢な女の子。
つい最近、その少女から黄身が消えていた。
41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 20:07:01.86 ID:GOLdZ1cRO
場所は通学路上にある自販機の前。
買うつもりはない。 俺はこの自販機は信用していない。
しかし気づいたことがある。
自販機側面に付いた凹み。 もちろんこれは超電磁砲こと御坂美琴の御足の痕跡なのだが、最近“上書き”がされていないのだ。
上条「いったいなにがあったってんだ……?」
見慣れた自販機を離れ、疲れた体に休息を与えるためベンチへ向かう。
上条「まぁ、蹴り入れないこと自体はいいことなんですがねぇ…」
誰に聞かせるわけでもなく一人ぼやきながらベンチに腰掛けていると、ふいに背後から聞き慣れた声がした。
美琴「あ、こんなとこにいた!」
常盤台の電撃姫、御坂美琴の御登場である。
43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 20:19:18.20 ID:GOLdZ1cRO
整った顔立ちに華奢な体つき。
傍から見ればただの女子中学生、幾多の修羅場をくぐり抜けてきた学園都市が誇るレベル5だとは誰も思うまい。
上条「おー、お前もいま帰りか?」
美琴「うん、ここに来れば当麻に会えるかなー、って」
そう言って後ろから俺に抱き着いてきたリアル・ラムちゃん。
なにか背中に当たっているような気がするが気のせいだろう。
美琴「ね、第8学区に新しいデパートが出来たんだって。 一緒に行こ?」
と、今度は俺の前に回って催促。
ちくしょう、笑顔に後光がさしてやがる。
上条「あ、あぁ、いいよ、行こうか」
美琴「えへー、デートだよデート!」ギュー
上条「で…! こら、あんまりくっつくと足引っ掛かるぞ!」
どうやら御坂美琴は俺に好意を抱いてるらしい。
傍から見れば幸せそうなカップル。
しかし、なにかが違うのだ、なにかが。
45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 20:28:37.78 ID:GOLdZ1cRO
ところ変わって先程話題にも上がったデパート。
御坂美琴は相変わらず俺の左腕に抱き着いたままだ。
美琴「えへー」ギュー
上条「……さっきからずっとそうしてるけど、なにか見たいもんとかあるんじゃねーのか?」
美琴「んー、私は当麻と一緒に歩いてるだけで幸せだけど?」
咄嗟に、上を向いた。
14歳の屈託のない笑顔というのは文字通り鼻血物である。
しかも自分に好意を抱いているのが確定しているのだ。
場所が違えば何回目かの過ちを犯してしまっていたかもしれない。
美琴「……当麻?」
上条「あぁ、大丈夫だ、ちょっとお花畑が見えただけだから」
美琴「当麻の頭の中ってメルヘンなのねー」
メルヘンか。
たしかにメルヘンに汚染されているのかもしれない。
なにかが違うのだ、なにかが。
48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 20:37:34.77 ID:GOLdZ1cRO
結局デパートではなにも買わず、中にあったカフェで一息ついただけ。
外はもう薄暗く、街灯の光が駐車場を照らす。
美琴「………寒いね」
上条「ん、もう冬だからな」
来た時と同じく、御坂美琴は俺の左腕にしっかりと固定されている。
冷たい風にさらされている右手と美琴の体温が伝わる左手の温度差が、俺の脳の処理速度を多少鈍らせる。
美琴「ねぇ、当麻」
上条「ん?」
美琴「寒い」
上条「あぁ、寒いな」
ふと交差点の向こうに目をやると、赤や緑といった電飾で彩られた街がひろがる。
……あぁ、もうすぐクリスマスか。
どうりで寒いわけだ。
美琴「ねぇ当麻、こっからだと当麻の家のほうが近いよね?」
上条「そうだけど……」
50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 20:44:49.59 ID:GOLdZ1cRO
美琴「……当麻の家、行きたい」
上条「それは……」
美琴「ダメ?」
またしても、空を仰いだ。
寒さで紅く色づいた頬、潤んだ瞳。
身長差があるので必然的にそれは上目使いとなるのである。
幸い、ウチの居候は安定した食生活を求めて小萌先生のところに寄生している真っ最中。
上条「いや、大丈夫だ」
美琴「ホント? やったぁ!」
もう我慢はしない。 これ以上は首の骨が折れてしまう。
美琴「ちょ、ちょっと! 鼻血、大丈夫!?」
……大丈夫ではない気がする。 おもにアタマが。
――――なにかが違うのだ、なにかが
52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 20:55:54.21 ID:GOLdZ1cRO
上条「足元、滑るから気をつけろよー」
美琴「大丈夫、当麻が助けてくれるもん」
冷えたコンクリートの階段を一歩一歩あがっていく。
すこぶる上機嫌で跳ねるように登っていく美琴に注意を促した直後。
それは多分、偶然だった。
美琴「きゃっ……!」
上条「……御坂!」
美琴が、足を踏み外した。
上条「くっ……!」
美琴の華奢な体を抱き留め、傷つけぬよう自分の体で包みながら階段を転がりおちていく。
最下段まで達した時、俺の脳が確認したのは体全体から伝わる痛みと
上条「―――!?」
唇の温もりだった。
55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 21:03:50.45 ID:GOLdZ1cRO
美琴「あ……」
すぐに離れた温もり。
美琴はいま俺の上で馬乗りの状態でフリーズしている。
上条「御坂……」
冬の夜空の下、アパートの申し訳程度の明かりの中でも、美琴の顔が真っ赤に染まっていくのが確認できた。
美琴「当麻……」
それは2人とも無意識に、ごく自然と。
もう一度、お互いの唇を確かめようと腕を交差させたその刹那。
土御門「あのにゃー、クリスマスが近いとはいえ、唯一の階段を塞がれるとどうしていいか……」
美琴「………」
雷鳴が轟いた。
57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 21:14:06.96 ID:GOLdZ1cRO
上条「はい、どうぞ」
無事、部屋の前へとたどり着いた俺は英国の紳士よろしく美琴を中へと招きいれる。
階段の踊り場に炭が転がっていた気がするが気のせいだろう。
美琴「おじゃましまーす♪」
普段から整理している、もとい整理するだけの物がない俺の部屋はいつも片付いている。
普段は寂しいが、こういうときには安心きわまれり。
美琴の後をついて部屋に入る。
上条「ん? どこいった?」
先に入った電撃姫の姿が見当たらない。
思案しながら寝室に入り、部屋の明かりを付けるとベッドにぬいぐるみが一つ増えていた。
美琴「えへへ、当麻の匂いだー」
……鼻血はもう、でない。
58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 21:24:46.01 ID:GOLdZ1cRO
美琴「ね、当麻」
自らの欲望を必死に押さえ付けているのを知ってか知らずか、御坂美琴はベッドの上でバタ足をこいている。
美琴「このベッドなら、2人で寝られそうだね」
三度、天井を仰ぐ。
普通、これなら夜の遊びもバッチコイだね! 今日は燃えちゃうぞー! なんて妄想が頭をよぎるだろう。
私こと上条当麻も例外ではない。
過熱した脳を冷やす為しばらくそのまま立ち尽くしていると、お姫様はまたバタ足を始めた。
美琴「ねぇ、聞いてる? ……て、ちょっと! また鼻血!? 大丈夫!?」
お姫様は短パンを履いていなかった。
60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 21:31:17.54 ID:GOLdZ1cRO
気がつくと、俺は美琴を押し倒していた。
我ながらよく我慢したと思う。
だが、物事には限度というものがあるだろ?
思春期の男が自分を好きな女の子の誘いを無視できるわけないだろ?
美琴「当麻……?」
俺を見上げてくる、あどけない顔。
中学生だからまだこの状況を理解できないのか?
上条「御坂……!」
もうなにも考えられない、なにも……。
そして―――
ピンポーン……
玄関の呼び鈴が、鳴った。
62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 21:36:18.09 ID:GOLdZ1cRO
上条「……すまん、御坂」
美琴「当麻……」
ゆっくりと体を起こし、玄関へ向かう。
ちくしょう、頭が痛い。
両想いなんだ、好きにやっちまっていいはずだろう?
と考える一方で、無垢な女の子に自らの欲望を叩き込むのを否定する自分がいる。
頭を抱えながら扉を開くと、そこにはまたも見慣れた顔。
黒子「お姉様は、ここにいまして?」
………今日は、厄日だ。
64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 21:44:49.34 ID:GOLdZ1cRO
上条「白井か……」
黒子「お姉様の異変、もうお気づきでしょう?」
どうやら白井からはベッドの上にいる美琴は見えていないようだ。
美琴も、布団の匂いを嗅ぐのに夢中で黒子には気づいていない。
―――異変か、そのおかげで俺の脳まで異変を起こしかけているんだ、早いとこ説明してくれ。
黒子「……すみません、ちょっとした悪ふざけのつもりでしたの。 まさか、こんなに効き目があるなんて……」
白井の話によると、以前の幻想御手(レベルアッパー)の折に使用されたものを応用して、とあるソフトを作ったそうな。
木山博士監修の、名付けて「デレールガン」。
使用した者を素直にしてしまうという、ある意味くだらない装置。
69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 22:04:32.67 ID:GOLdZ1cRO
上条「で、どうやったら元に戻るんだ?」
正直、元に戻すのは惜しい気がする。
しかしこのままというわけにもいくまい、俺の理性もここが限界だ。
黒子「いえ、今回のはそんなに持続性はないものでして……」
上条「つまり放っとけば元に戻ると?」
黒子「……今朝」
上条「……ん?」
黒子「今日の朝には効き目は切れるはずでしたの、なのにまだお姉様が素直なままなので気になりまして……」
上条「ソフトに異常があったってことか?」
黒子「いえ、ソフトは完璧なはず、非常に申し上げにくいのですが……」
黒子「………お姉様が演技をなされている、としか」
71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 22:10:49.77 ID:GOLdZ1cRO
…………なんだって?
美琴が演技?
つまり、効き目が切れたのを自覚していながら、素直な御坂美琴を演じ続けていると?
上条「……でも、いったいどうして」
美琴なら、効き目が切れた途端に真っ赤になりながら必殺10億ボルトを放ってくるはずだ。
なぜ、そうしない。
素直でいることに、なんらかのメリットがあったから?
上条「あ……」
素直。
つまり美琴の俺への気持ちは本物。
この数日間、積極的な美琴に押された俺はいつも美琴と一緒にいた。
アイツが、望んだから。
75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 22:20:08.90 ID:GOLdZ1cRO
そこまで考えたところで、俺の思考は部屋からの物音により中断された。
美琴「……」
俯き、立ち尽くす美琴。
今の話を聞かれたか。
……僅かだが肩が震えているように見える。
そして
美琴「…!」ダッ
上条「御坂………、………うわっ!?」
美琴は無言のまま俺と白井を押しのけて外へと飛び出していった。
上条「おい! 御坂ぁー! チッ……!」
おいおい、靴もほうり出してこの寒空の下どこへ行こうってんだ。
黒子「あの……」
俺は美琴の靴と上着を手に取ると、呆然としている白井には目もくれずに走り出す。
雪が、降り出した。
78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 22:33:30.55 ID:GOLdZ1cRO
随分と走った。
イルミネーションに彩られた街を通り過ぎ、街灯の少ない公園へと。
なぜだかはわからないが、美琴はここにいると確信していた。
上条「はぁ…はぁ…御坂……!」
息を激しく吸い込む度、冬の空気が喉を刺す。
しかしそんなことは気にもせず、俺の両目は見慣れた姿を映し出した。
とある自販機の傍のベンチ、小さな影。
上条「…」
体育座りで膝に顔をうずめ、ちょこんと座る御坂美琴がそこにいた。
上条「……風邪、ひくぞ」
そっと上着を被せると、美琴の肩がびくりと揺れる。
まだ、顔は深く俯いたままだ。
上条「……靴も」
美琴「うん……」
靴を渡そうとした時、美琴は掠れて消えそうな声で返事をしてくれた。
80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 22:43:15.01 ID:GOLdZ1cRO
美琴「……アンタ、私のこと変だと思ってんでしょ」
上条「……どうしてさ」
美琴の横に腰掛け、少し視線を上に向けると澄んだ星空が広がる。
美琴「アンタは……、優しいから……!」
少し嗚咽の混ざった涙声。
美琴「アンタは優しいから、私が、積極的に頼んだら断れないだけなのよ」
上条「……そう、かな」
美琴「でも…! アンタは一緒にいてくれた…! それが、すごく、嬉しくて……!」
嗚咽が混じり段々と聞き取れなくなっていく言葉。
すぐ隣に俯いたまま涙を流す少女。
だが何故か、俺の心は満たされていく。
83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 22:49:09.85 ID:GOLdZ1cRO
美琴「だから…、私が素直なままでいれば、もっと、一緒にいれるかなって……!」
上条「御坂……」
美琴「ごめん…、自分勝手だよね、私、ホントに…」
上条「あのな、御坂」
美琴「……」
電撃姫はいまだ俯いたまま。
返事はないが、聞こえてはいるはず。
上条「……正直、最初はびっくりした」
美琴「…」
美琴の肩が揺れる。
だが、ここで話をやめるわけにはいかない。
84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 22:55:57.33 ID:GOLdZ1cRO
上条「抱き着かれた時は気が気じゃなかったよ」
美琴「…」
上条「今まで片思いしてたやつがさ、いきなり猛烈アタックしてくんだもんな」
美琴「……ふぇ?」
やっと、顔をあげた。
うむ、泣き腫らした顔もなかなか情欲を誘う………、おっと、いかんいかん。
上条「いきなりなにがあったんだ、って思う一方でさ、このままでいいかもって思う自分がいて」
美琴「……」グシグシ
そう言いながら笑いかけると、突然顔を手で覆う。
……懸命に涙の跡を拭おうとしているようだ。
……なかなか可愛い。
94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 23:09:50.17 ID:GOLdZ1cRO
上条「……でも、なーんか足りない気がしたんだよ」
美琴「ぇ…」ジワ
上条「…俺が惚れたのは、素直じゃないとこも引っくるめての御坂でさ。 素直なのも可愛いけど、なんか物足りないんだよな」
一旦、大きく深呼吸。
冷たい空気が肺に染み渡り、俺の決意をいっそう強くしてくれた。
上条「素直なままじゃなくていいからさ、このまま、ずっと一緒にいてくれ」
あれ? これは交際を申し込むというよりはプロポーズ?
まぁ、いいか、どっちもたいして変わんねぇ。
95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 23:16:49.34 ID:GOLdZ1cRO
美琴「あ……あぅぁぅ……」
当の本人は口をパクパクさせながら顔を真っ赤に染め上げている。
金魚みたいだ。
そんなに間抜け面じゃないけども。
上条「御坂……」
そっと肩を抱き寄せ、今一度向き合う。
街灯がスポットライトだと、誰が言っただろうかまさしくその通りで。
明かりの少ない夜の公園、自販機と街灯で照らし出されたベンチはさながら舞台のようだ。
96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 23:22:31.78 ID:GOLdZ1cRO
それはまた、ごく自然と。
向き合った美琴との距離は段々と近づいていき……。
美琴「当麻……」
あと少し、もう少しでお互いの唇が触れ合うというところで。
黒子「お姉様、こんなところにいましたの………、って、あら?」
本日の空気嫁第一号。
97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 23:23:42.60 ID:GOLdZ1cRO
雷鳴が、轟いた。
.
99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 23:33:47.83 ID:GOLdZ1cRO
時間は午前1時過ぎ。
場所は私こと上条当麻の部屋。
未曾有の雷によって白井を消し炭にした美琴と、そのとばっちりを受けた俺は自室にて出来たばかりの恋人の看病をうけていた。
上条「右手を出す間もなかったわけですが……」
美琴「ごめん、ちょっとやり過ぎたかも……」
上条「ま、いいさ、ところで…」
美琴「あ………」
す、と少し顔を近づけただけで耳まで紅くする電撃姫。
出会いは偶然だった。
進展も偶然だった。
今回、想いが通じ合ったのも偶然だった。
最初のキスも………
上条「偶然ばかりに任せてちゃいけないからな」
103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 23:38:22.51 ID:GOLdZ1cRO
雪の降りしきる12月。
学園都市のとある一室に重なる影がひとつ。
クリスマスはもうすぐそこ………。
Happy End
105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 23:39:53.89 ID:GOLdZ1cRO
続きはウェブで
106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/11/06(土) 23:40:35.14 ID:zwLv0btR0
最高のハッピーエンドをありがとう
ところでどこのwebで続きが読めるんですか?
上条「よぉデレデレ」御坂「デ…デレデレって呼ぶなぁ//////」