4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/27(日) 18:34:57.07 ID:0dCUkcW30
――とある病院
俺の目の前にあるベットの上には一人の少女が可愛いらしい顔をしながら寝ている。
この少女の名前は滝壺理后。俺が初めて好きになった女だ。
「滝壺、早く目を覚ましてくれよ」
自然と俺の口から言葉が漏れた。
何度目だろう、俺がこの言葉を言ったのは。
8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/27(日) 18:41:01.53 ID:0dCUkcW30
「一緒にクレープでも食べに行こうぜ」
目の前にいる少女は何も言わない、なにも言えない。
「…………」
俺がしゃべらないと、部屋には沈黙が訪れる。
沈黙は嫌いだ。本当に滝壺が死んでしまったような感じがするから。
ポッン。
手のひらに一粒の水が落ちてきた。雨漏りでもしているのだろう、と俺は思い天井を見上げたが
特に濡れている様子はない。
ああ、そうか。
どうやら俺は自分でも気づかないうちに泣いてしまっていたようだ。
最近、涙もろくて困る。
昨日は、おかっぱ頭の少女が出てるドラマで泣いてしまった。
一昨日は、ピンクのジャージを着ている高校生を見て泣いてしまった。
ホント……涙もろくて困る。
俺が思いふけてしまうと誰もしゃべらないから、部屋に沈黙が訪れてしまう。
「た、滝壺……」
ダメだ、何もしゃべれない。クソッ、速く止まれ俺の瞳から流れてる涙。
俺の思いに反して、涙はどんどん瞳から流れていく。止まる気配は一ミリもないようだ。
今、俺の涙でぐしゃぐしゃな顔を見れば滝壺ならなんて言うだろう。馬鹿にするかな、笑うかな。
滝壺なら笑ってくれるかもな、あの天使のような顔で。
……もう一度だけ、もう一度だけでいいから滝壺の笑顔を見たい。
そんな幻想を俺が考えていると後ろの扉がガラガラと言いながら開いた。
多分、あいつだなと俺は思っていると後ろから声が聞こえた。
「浜面……やっぱり超来てたんですね」
「ああ、お前は遅かったな」
俺は急いで涙でくぐちゃぐちゃになっている顔を手でふきながら自分で考えられる最高の笑顔で絹旗の方に振り向いた。
「…………浜面」
どうやら俺の笑顔の芝居は絹旗には通じなかったみたいだ。
「隣に超座ってもいいですか?」
と絹旗は言いながら俺の方に歩いてきて、隣にあるイスに座った。
「おい、まだ座っていいと言ってないぞ」
俺はまた不自然なぐらいの最高の笑顔で絹旗に返事をした。
「浜面のくせに、超なまえきです」
絹旗の声は若干震えている。
俺はその震えてる事を絹旗に言って笑い話にでもしようかと考えたが、辞めた。
なぜならこいつも俺が泣いていたことに気づいてもなんにも言わなかったからだ。
「麦野とフレンダはどうした?」
「あの二人は滝壺さんを治療できる人を超探しています」
治療できる人か。そんな奴はこの地球にいるのだろうか。
滝壺が眠っている原因は『体昌』という学園都市が独自に作った謎の物質だ。
当然、学園都市独自で作っているから、学園都市でしか治療できない。
そして、学園都市最高の医者と言われてる冥土返しでさえ延命治療でやっとのレベルだ。
「そっか。麦野もフレンダも頑張ってるんだな」
「特に麦野は、自分のせいで滝壺さんをこんなめに超合わせてしまったと思ってるみたいですから」
「麦野も馬鹿だよな……。あいつは完璧な作戦を計画して、その作戦をどっかのバカが失敗してしまっただけなのに負い目を感じてるんだから」
そう、麦野の作戦は完ぺきだった。どっかのバカがでしゃばりさえしなかったら。
「……すいません。ちょっとトイレに超行ってきます」
そう言って、絹旗は走って病室から出て行った。
その声はさっきみたいに若干震えているのではなく、完璧に震えていた。あいつは泣いていたのだ。
絹旗も俺と同じように色々と思いだしていたのだろう。滝壺との思い出を。
「バカ野郎……。お前がでていってしまったら、俺は……また、泣いてしまうだろうが…………」
また、俺の瞳から水が、涙が流れてきた。涙は頬をながれて冷たい冷えた地面に落ちていく。
ポツン。ポツン。ポツン。
俺は気づいたら、声を張り上げて叫んでいた。
「なんでなんで滝壺なんだよ!あの時ミスをしたのは俺じゃねーか。なのになんで滝壺が……滝壺が傷つかね―といけないんだよ!」
どれだけ怒鳴り声をあげても目の前の少女は何も反応してくれない。
どれだけ泣いても目の前の少女は反応してくれない。
どれだけ悲しんでも目の前の少女は反応してくれない。
そう、これが事実なんだ。これが結果なんだ。
俺が思い描いているような幻想は絶対に起きない。絶対にだ。
「クソッ……」
俺は、弱い。たった一人の好きになった少女も助けるどころが逆に傷つけてしまう。
「……もし『神様』て奴がいるなら滝壺を助けてやってくれよ。頼むよ……俺の命が欲しいていうならあげるから、頼むから
滝壺を、滝壺を助けてくれよ―――――!!!」
俺の叫びを、願いを聞いても滝壺は目覚めない。当たり前だ。
この世界には『神様』なんて便利な奴はいない。あるのは無情の事実と悲劇の結末だけだ。
「はははっはっは」
笑い声が口から洩れた。この笑い声はいったい何なんだろう。悲しみか、苦しみか、それとも諦めか。
「……なぁ、滝壺。俺さ、ずっとお前に言いたかったことがあるんだよ。……何だと思う?」
頭の中で、滝壺との思い出が鮮明に蘇っていく。
「多分、お前、もう気づいていると思うんだけど」
ファミレスで『アイテム』のメンバーで一緒に食べた昼飯。
「前は恥ずかしくて言えなかったんだけど……」
二人きりで食べたクレープの味。
「今なら言える気がする」
初めてしたキス。
「滝壺……」
そして、俺のために『体昌』を使って倒れた滝壺の姿。
「俺、おまえの事、初めて会ったときから好きだった」
俺の告白を聞いても滝壺の表情は相変わらず変わらない。
当たり前、当たり前なのだ。
この世界はどっかの絵本みたいに王子様がキスをしてもお姫様は目覚めない。
この世界はどっかのアニメみたいに『ヒ―ロー』が現れて助けてくれるわけがない。
そう、この世界には、悲劇しかない。
「……頼むよ。誰でもいいから滝壺を助けてくれよ…………」
――その時
ガチャッと音を立てて、後ろの扉が開いた。
――その時
ガチャッと音を立てて、後ろの扉が開いた。
俺はビクッと体を少し震わせて慌てて後ろに振り向いた。
そこには、頭をウニのようにツンツンにした男が立っていた。
「だ、誰だ!?」
俺は驚きや焦りのせいもあってか反射的に怒鳴ってしまっていた。
その男は、なにも言わずに俺の方、いや、滝壺の方に近づいてきた。
「おい、それ以上近づくな」
男は、俺の声を聞いても、無言で滝壺の方へ近づいていく。
止めに行こうと俺は、イスから立ち上がろうとしたその時、
「少し待っとけ」
と、男は俺の目を見ながら乱暴に言い放った。
……俺は、こいつを知ってる。いったいどこで……戦いか、学校か、スキルアウトの時か
いや、違う。もっと身近だ。…………ああ、そうか。こいつは、俺だ。
男の右手が滝壺の額に触れる。
病室の空気が変わった、ような気がした。
そして、男は無言で扉のほうに歩いていき、病室からでていった。
出て行く時に見た顔はどこか嬉しそうだった。
「なんだったんだよ、いったい」
と怒りながらも俺は何かに期待していた。何かとは、もちろん、さっきの男が『神様』かなにかで
滝壺を助けてくれることだ。
だが、現実は残酷だった。滝壺は相変わらずの無表情でベットの上で寝ていた。
神様などはやはりこの世界にはいないのだ。
俺は現実の残酷さにあらためて心が傷ついて、イスに座ろうとベットから振り向いその時、
――私も好きだよ、はまづら
また瞳から涙があふれてきた。
完
元スレ
「一緒にクレープでも食べに行こうぜ」
目の前にいる少女は何も言わない、なにも言えない。
「…………」
俺がしゃべらないと、部屋には沈黙が訪れる。
沈黙は嫌いだ。本当に滝壺が死んでしまったような感じがするから。
9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/27(日) 18:44:03.71 ID:0dCUkcW30
ポッン。
手のひらに一粒の水が落ちてきた。雨漏りでもしているのだろう、と俺は思い天井を見上げたが
特に濡れている様子はない。
ああ、そうか。
どうやら俺は自分でも気づかないうちに泣いてしまっていたようだ。
最近、涙もろくて困る。
昨日は、おかっぱ頭の少女が出てるドラマで泣いてしまった。
一昨日は、ピンクのジャージを着ている高校生を見て泣いてしまった。
ホント……涙もろくて困る。
10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/27(日) 18:47:57.71 ID:0dCUkcW30
俺が思いふけてしまうと誰もしゃべらないから、部屋に沈黙が訪れてしまう。
「た、滝壺……」
ダメだ、何もしゃべれない。クソッ、速く止まれ俺の瞳から流れてる涙。
俺の思いに反して、涙はどんどん瞳から流れていく。止まる気配は一ミリもないようだ。
今、俺の涙でぐしゃぐしゃな顔を見れば滝壺ならなんて言うだろう。馬鹿にするかな、笑うかな。
滝壺なら笑ってくれるかもな、あの天使のような顔で。
……もう一度だけ、もう一度だけでいいから滝壺の笑顔を見たい。
11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/27(日) 18:52:23.28 ID:0dCUkcW30
そんな幻想を俺が考えていると後ろの扉がガラガラと言いながら開いた。
多分、あいつだなと俺は思っていると後ろから声が聞こえた。
「浜面……やっぱり超来てたんですね」
「ああ、お前は遅かったな」
俺は急いで涙でくぐちゃぐちゃになっている顔を手でふきながら自分で考えられる最高の笑顔で絹旗の方に振り向いた。
「…………浜面」
どうやら俺の笑顔の芝居は絹旗には通じなかったみたいだ。
14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/27(日) 18:56:02.34 ID:0dCUkcW30
「隣に超座ってもいいですか?」
と絹旗は言いながら俺の方に歩いてきて、隣にあるイスに座った。
「おい、まだ座っていいと言ってないぞ」
俺はまた不自然なぐらいの最高の笑顔で絹旗に返事をした。
「浜面のくせに、超なまえきです」
絹旗の声は若干震えている。
俺はその震えてる事を絹旗に言って笑い話にでもしようかと考えたが、辞めた。
なぜならこいつも俺が泣いていたことに気づいてもなんにも言わなかったからだ。
15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/27(日) 18:59:38.31 ID:0dCUkcW30
「麦野とフレンダはどうした?」
「あの二人は滝壺さんを治療できる人を超探しています」
治療できる人か。そんな奴はこの地球にいるのだろうか。
滝壺が眠っている原因は『体昌』という学園都市が独自に作った謎の物質だ。
当然、学園都市独自で作っているから、学園都市でしか治療できない。
そして、学園都市最高の医者と言われてる冥土返しでさえ延命治療でやっとのレベルだ。
16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/27(日) 19:05:10.89 ID:0dCUkcW30
「そっか。麦野もフレンダも頑張ってるんだな」
「特に麦野は、自分のせいで滝壺さんをこんなめに超合わせてしまったと思ってるみたいですから」
「麦野も馬鹿だよな……。あいつは完璧な作戦を計画して、その作戦をどっかのバカが失敗してしまっただけなのに負い目を感じてるんだから」
そう、麦野の作戦は完ぺきだった。どっかのバカがでしゃばりさえしなかったら。
「……すいません。ちょっとトイレに超行ってきます」
そう言って、絹旗は走って病室から出て行った。
その声はさっきみたいに若干震えているのではなく、完璧に震えていた。あいつは泣いていたのだ。
17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/27(日) 19:08:19.84 ID:0dCUkcW30
絹旗も俺と同じように色々と思いだしていたのだろう。滝壺との思い出を。
「バカ野郎……。お前がでていってしまったら、俺は……また、泣いてしまうだろうが…………」
また、俺の瞳から水が、涙が流れてきた。涙は頬をながれて冷たい冷えた地面に落ちていく。
ポツン。ポツン。ポツン。
俺は気づいたら、声を張り上げて叫んでいた。
「なんでなんで滝壺なんだよ!あの時ミスをしたのは俺じゃねーか。なのになんで滝壺が……滝壺が傷つかね―といけないんだよ!」
どれだけ怒鳴り声をあげても目の前の少女は何も反応してくれない。
どれだけ泣いても目の前の少女は反応してくれない。
どれだけ悲しんでも目の前の少女は反応してくれない。
そう、これが事実なんだ。これが結果なんだ。
俺が思い描いているような幻想は絶対に起きない。絶対にだ。
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/27(日) 19:13:38.67 ID:0dCUkcW30
「クソッ……」
俺は、弱い。たった一人の好きになった少女も助けるどころが逆に傷つけてしまう。
「……もし『神様』て奴がいるなら滝壺を助けてやってくれよ。頼むよ……俺の命が欲しいていうならあげるから、頼むから
滝壺を、滝壺を助けてくれよ―――――!!!」
俺の叫びを、願いを聞いても滝壺は目覚めない。当たり前だ。
この世界には『神様』なんて便利な奴はいない。あるのは無情の事実と悲劇の結末だけだ。
20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/27(日) 19:17:30.24 ID:0dCUkcW30
「はははっはっは」
笑い声が口から洩れた。この笑い声はいったい何なんだろう。悲しみか、苦しみか、それとも諦めか。
「……なぁ、滝壺。俺さ、ずっとお前に言いたかったことがあるんだよ。……何だと思う?」
頭の中で、滝壺との思い出が鮮明に蘇っていく。
「多分、お前、もう気づいていると思うんだけど」
ファミレスで『アイテム』のメンバーで一緒に食べた昼飯。
「前は恥ずかしくて言えなかったんだけど……」
二人きりで食べたクレープの味。
「今なら言える気がする」
初めてしたキス。
「滝壺……」
そして、俺のために『体昌』を使って倒れた滝壺の姿。
「俺、おまえの事、初めて会ったときから好きだった」
21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/27(日) 19:21:44.54 ID:0dCUkcW30
俺の告白を聞いても滝壺の表情は相変わらず変わらない。
当たり前、当たり前なのだ。
この世界はどっかの絵本みたいに王子様がキスをしてもお姫様は目覚めない。
この世界はどっかのアニメみたいに『ヒ―ロー』が現れて助けてくれるわけがない。
そう、この世界には、悲劇しかない。
「……頼むよ。誰でもいいから滝壺を助けてくれよ…………」
――その時
ガチャッと音を立てて、後ろの扉が開いた。
22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/27(日) 19:25:45.45 ID:0dCUkcW30
――その時
ガチャッと音を立てて、後ろの扉が開いた。
俺はビクッと体を少し震わせて慌てて後ろに振り向いた。
そこには、頭をウニのようにツンツンにした男が立っていた。
「だ、誰だ!?」
俺は驚きや焦りのせいもあってか反射的に怒鳴ってしまっていた。
その男は、なにも言わずに俺の方、いや、滝壺の方に近づいてきた。
「おい、それ以上近づくな」
男は、俺の声を聞いても、無言で滝壺の方へ近づいていく。
23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/27(日) 19:29:16.59 ID:0dCUkcW30
止めに行こうと俺は、イスから立ち上がろうとしたその時、
「少し待っとけ」
と、男は俺の目を見ながら乱暴に言い放った。
……俺は、こいつを知ってる。いったいどこで……戦いか、学校か、スキルアウトの時か
いや、違う。もっと身近だ。…………ああ、そうか。こいつは、俺だ。
男の右手が滝壺の額に触れる。
病室の空気が変わった、ような気がした。
そして、男は無言で扉のほうに歩いていき、病室からでていった。
出て行く時に見た顔はどこか嬉しそうだった。
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/02/27(日) 19:31:33.75 ID:0dCUkcW30
「なんだったんだよ、いったい」
と怒りながらも俺は何かに期待していた。何かとは、もちろん、さっきの男が『神様』かなにかで
滝壺を助けてくれることだ。
だが、現実は残酷だった。滝壺は相変わらずの無表情でベットの上で寝ていた。
神様などはやはりこの世界にはいないのだ。
俺は現実の残酷さにあらためて心が傷ついて、イスに座ろうとベットから振り向いその時、
――私も好きだよ、はまづら
また瞳から涙があふれてきた。
完
浜面「滝壺、目を覚ましてくれよ」