1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 02:30:11.58 ID:UDUAFp9N0

僧侶の家

勇者「おい、おい、僧侶」

僧侶(67歳)「……」

勇者「僧侶ーーー!!!」

僧侶「あっ……なんでしょう、勇者様」

勇者「魔物が出たそうだ」

僧侶「はい……今準備します」

勇者「先にいって待っているぞ」

僧侶「ええ。ではあの丘で」



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 02:32:28.00 ID:UDUAFp9N0

見晴らしのいい丘

勇者(……)

僧侶「お待たせしました」

勇者「挨拶が済んだら行くぞ」

僧侶「ええ」

僧侶「戦士様、お勤めに行ってきます」

僧侶「今日もどうか、見守っていて下さい」

墓(……)

僧侶「では、参りましょうか」

勇者「ああ」



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 02:34:01.04 ID:UDUAFp9N0

ある森

勇者「うおおおお!!」

魔物「ギギャーーーー!!」

勇者「ハァッハァ、ゴホッゴホッ」

勇者「ヒールを……」

僧侶「はい」

勇者「ウッ……ふぅ。いつもすまんな」

僧侶「いいえ……あっ」

フラッ

勇者「僧侶!?」



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 02:35:38.80 ID:UDUAFp9N0

僧侶「ん……平気ですよ」

勇者「真っ青だぞ」

僧侶「フラフラしてるのは、元々ですから」

勇者「……今日は帰ろう」

僧侶「ごめんなさい……」

勇者「いいんだ」

僧侶「歳……とっちゃいましたね」

勇者「わかっている」

勇者「泣くな」

僧侶「泣いてませんよ……」

勇者「……そうだな」



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 02:38:11.68 ID:UDUAFp9N0

??「そう簡単に帰すと思って?」

勇者「貴様か。そこをどけ」

??「一応名乗らせていただくわ。私は魔王軍四天王が一人」

勇者「万物を識る美しくも手強い紅一点、知恵の女王」

知恵「あー!もう、台詞とんないでよ!」

勇者「何度聞いたか分からん」



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 02:39:53.64 ID:UDUAFp9N0

知恵「ん?あれ?1人足りないようだけど」

勇者「足りないのはお互い様だ。斬るぞ。どけ」

知恵「冷たいなあ。ん~……ま、今日は見逃してやろっかな~」

勇者「すまんな」

僧侶「知恵ちゃん、ごめんね」

知恵「いいの。お年寄りは大切にってね!これ魔族の諺!」

勇者「お年寄りか……」



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 02:41:54.19 ID:UDUAFp9N0

僧侶の家

勇者「しばらく休め」

僧侶「ごめんなさいね」

勇者「下級ヒールだが……」

キイイン

僧侶「……ああ、気持ちいい……」

勇者「……」

僧侶「……」

勇者「眠ったか」



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 02:43:45.30 ID:UDUAFp9N0

王城

王様「勇者様から訪ねてくるとは珍しい」

勇者「ちと挨拶にな」

王様「?」

勇者「先王は立派だった」

王様「ええ、それはもう。勇者様を見出したのですから」

勇者「あなたも良い王だ」

王様「そうありたいものですね」

勇者「長い人魔の戦乱で疲弊した民をよく導いている」

王様「……よして下さいよ。何か別に本題があるのでしょう?」

勇者「魔王城へ乗り込む」

王様「!」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 02:45:24.45 ID:UDUAFp9N0

勇者「どういう訳か、この世界に勇者は2人存在できない」

王様「それは魔王も同じですね」

勇者「うむ。勇者と魔王の魂は世界に1つずつしかありえない」

王様「そして、魔王は勇者、勇者は魔王によってのみ斃される」

王様「他者からの攻撃で肉体が弱ることはあっても、魂を分離することはできない……」

勇者「分離された勇者か魔王の魂は、一定の期間を経て新たな肉体に宿る」

勇者「まったく都合の悪い話だ」

王様「魔王が乱立されない分、均衡が取れてるとも言えますが」

勇者「その均衡が厄介だ。戦乱が終わらん」

王様「ごもっとも。最早人魔対立の起源を知る手段もありません」



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 02:47:17.59 ID:UDUAFp9N0

勇者「……ここまで話せば分かるな」

王様「ええ」

勇者「私たちの時代は長すぎた」

王様「……良いパーティでした」

勇者「ありがとう」

王様「勇者様」

勇者「む?」

王様「魔王の征伐、よろしくお願いします」

勇者「……お任せ下さい。王様」



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 02:49:19.15 ID:UDUAFp9N0

僧侶の家

カチャカチャ

僧侶「勇者様……?」

勇者「起きたか」

僧侶「どちらへ?」

勇者「魔王城だ。僧侶は寝ていろ」

僧侶「それなら、私も参ります」

勇者「そうか」

僧侶「ええ」

勇者「……先にいって待っているぞ」

僧侶「はい……準備が済み次第、あの丘で」

勇者「ああ」

バタン



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 02:51:33.64 ID:UDUAFp9N0

見晴らしのいい丘

勇者「お前が逝って6年か」

勇者「4人で魔王に挑んだが敵わず、お前1人が囮になって」

勇者「フルパーティはあれが最後になってしまったな」

勇者「……」

勇者「見守っていてくれよ」

勇者「あいつもきっと……」

墓(……)

勇者「行くか」



28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 02:54:02.36 ID:UDUAFp9N0

僧侶の家

兵士「僧侶様、ご理解下さい」

僧侶「そこをどきなさい」

兵士「そうはいきません」

僧侶「どかないと言うのなら、力尽くでも……」

兵士「勇者様から絶対に行かせるなと」

僧侶「!?……勇者様は先にいって待っていると」

兵士「……」

僧侶「先にいって……?丘で?まさか……」

兵士「……」

僧侶「ああ……」



30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 02:56:11.39 ID:UDUAFp9N0

ある森

勇者(この老体で単騎)

勇者(敵との接触はなるべく避けねばな)

……

勇者(見えてきた。魔王城だ)

ガサッ

勇者(!!)



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 02:58:24.74 ID:UDUAFp9N0

??「あぶないな、剣しまえよ」

勇者「魔法使い、お前か」

魔法使い(62歳)「勇者全体的に臭いわ。主に水臭い。あと加齢臭い」

勇者「帰れ。邪魔だ」

魔使「僧侶1人置いて死ぬ気かい」

勇者「死ぬ気はない」

魔使「勝ち目もないね」

勇者「……」



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 03:01:27.31 ID:UDUAFp9N0

勇者「ついてくるなら静かにしていてくれ」

魔使「はいはい……ん?」

魔使「魔法だ!避けろ!」

勇者「む!」

ズシャーン

知恵「爺さん2人でこそこそとなにしてんの!」

魔使「今勇者ほっといたら死んでたろ!」

勇者「そんなことはない。そもそもお前が来なければ」

知恵「あの」

魔使「やあやあ、知恵ちゃん久し振り!今日も知恵袋おっぱいでっかいね!」

知恵「焼け死ねばよかったのに」

勇者「もっともだ」

魔使「あんまりだ」



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 03:03:00.47 ID:UDUAFp9N0

勇者「見つかったからには逃がす訳にはいかん」

知恵「なに?やる気?」

魔使「見逃して貰ったばっかのくせに」

勇者「なぜ知っている」

知恵「いいよ別に。どっちにしても決着つけたいんでしょ」

勇者「そういうことだ」



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 03:05:21.74 ID:UDUAFp9N0

魔使「おい。構えてないで先いきなよ」

勇者「む?」

魔使「知恵ちゃんやっつけて追いかけるから先行けって言ってんの」

勇者「……すまん」

魔使「やっつけたあとイタズラするから遅れるかも」

勇者「分かった」

知恵「ちょっと!」



39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 03:08:13.30 ID:UDUAFp9N0

知恵「まさか魔王城に……」

魔使「そのまさかだ。が、」

ゴオオオ

知恵「あぶなっ!」

魔使「悪いけど知恵ちゃん、勇者の邪魔はさせないよ」



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 03:12:54.44 ID:UDUAFp9N0

知恵「本気みたいね」

魔使「残念だけどね」

知恵「……一応聞くけど、魔王軍の軍門に下る気は?」

魔使「ないねえ」

知恵「今なら千年の不老を誇る魔族の体もついてくるんだけど」

魔使「その体質は羨ましいけど、俺たちは人間だからね」

知恵「はー。いっつも同じ受け答え。昔っから強情だよね、君たち」

魔使「それ結構お互い様じゃないの」

知恵「……ところで私、あんたのルックス結構好みだったよ!」

ビシャーン!

魔使「えっ、いつ頃の!?」

ボウッ!!



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 03:16:07.91 ID:UDUAFp9N0

魔王城内部

勇者(魔王城……久し振りだな)

勇者(前回の攻撃でかなりの戦力を殺いだはずだが)

魔物「……む。人間の臭いが」

ズバァ

魔物「すぶっ……」

勇者(慎重に進まねば)

勇者(ここで体力を消耗する訳にはいかん)

勇者(魔王に小細工は通用しない)



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 03:19:13.47 ID:UDUAFp9N0

ある森

知恵「……」

魔使「ごめんな、知恵ちゃん」

知恵「いいの。分かってた」

知恵「ずっと私の方が強かったのにね」

魔使「人間は寿命が短い分、成長が早い」

知恵「その分老いて衰えるのも早い……だけど」

魔使「魔法使いは老いる程強い」

知恵「ずるい」

魔使「まったくだ」

知恵「やっとあいつらの所にいけるのかあ」

魔使「よろしくいっといてよ」

知恵「うん。じゃあね」

魔使「またね」

ボオッ



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 03:22:09.30 ID:UDUAFp9N0

魔王城―魔王の部屋

魔王「知恵の女王がやられたようだ」

側近「なんと……」

魔王「これで我が軍の四天王は全滅か」

魔王「勇者の気配も近づいている」

側近「いかが致しましょう」

魔王「通せ」

側近「仰せのままに」



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 03:25:41.50 ID:UDUAFp9N0

魔王城―魔王の部屋前

勇者(魔王め……あえて道を空けたな)

勇者(……間違いない、この扉だ)

勇者(一騎打ちか……望む所だ)

勇者(……いざ!)

ガチャ



65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 03:27:02.15 ID:UDUAFp9N0

魔王城―魔王の部屋

魔王「勇者よ。よく来たな」

勇者「待たせたか」

魔王「ああ。待っていた」

勇者「魔王よ。私が貴様と戦うのもこれが最後だ」

魔王「やはりそうなるか」

勇者「ああ」

魔王「……」

勇者「……」

魔王「来い」

勇者「うおおおおお!!!」



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 03:29:54.48 ID:UDUAFp9N0

魔王城―魔王の部屋

勇者「……」

魔王「……」

ガチャ

魔使「……」

魔王「魔法使いか。先刻、勇者は死んだ」

魔使「……そうか」



70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 03:32:21.88 ID:UDUAFp9N0

魔王「向かってこないのか?」

魔使「魔法が魔王に効くもんかい……それに」

魔使「俺は人のために死ねるような勇者じゃない」

魔王「勇敢な男だった」

魔使「パーティーの自慢だ」

魔使「じゃあ俺、逃げるね」

魔王「そう簡単に」

魔使「転送魔法」

バシュッ

魔王「フフ……逃したか……」



74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 03:35:58.67 ID:UDUAFp9N0

見晴らしのいい丘

僧侶「魔法使い様。勇者様のこと、ありがとうございました」

魔使「ついていって連れて帰っただけだよ」

魔使「それに俺たちはパーティ、お礼はおかしいんじゃない」

僧侶「そう……ですね」

僧侶「でも私たち……」

僧侶「戦争が終わったら勇者も僧侶もやめて……」

僧侶「2人で農業でもやって……のんびり暮らすって約束して……」

魔使「僧侶ちゃんの泣き虫も変わらないね」

僧侶「魔法使い様だって……あの時は……」

魔使「……前に立つやつは損だ」

二つの墓(……)



76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 03:38:30.85 ID:UDUAFp9N0

魔使「これからどうするの?」

僧侶「……魔法使い様は?」

魔使「俺はまた、どこかに身を潜めて……」

僧侶「潜めて?」

魔使「役割を果たすよ」

僧侶「そうですね……私も役割を果たします」

魔使「2人がそうしたようにね」



78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 03:40:42.81 ID:UDUAFp9N0

魔使「じゃあ、何かあったらいつでも呼んでね」

僧侶「ええ。魔法使い様も」

魔使「長生きしなよ。じゃあね」

バシュッ

僧侶「あなたこそ……」

僧侶(勇者様……そちらにいく準備は当分済みそうにありません)



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/09(木) 03:43:51.24 ID:UDUAFp9N0

――時は経ち、王城

王様「では勇者よ。魔王討伐を頼んだぞ」

勇者「はい」

王様「そうだ。旅に出る前にババ様を訪ねるといい」

王様「丘の小屋に住んでいる博識な方だ」

王様「彼女から冒険の手解きを受けられるだろう」

勇者「チュートリアルなんていりませんよ」

王様「ハッハッハ。そういわずに行ってみなさい」

勇者「はあ」

王様「気を付けてな」

おわり


元スレ
勇者(62歳)「魔王よ。私が貴様と戦うのもこれが最後だ」