1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:00:58.94 ID:MSL6grdDO

禁書目録のSSです
時間軸は新訳2巻から数日後くらいです

《注意》
・新訳2巻までしか読んでません
・話の都合上オリキャラが出てしまう可能性があります。

如何ともしがたいのはこの二点です
口調がおかしいとかとかあったら脳内補完してくれれば幸いです
物理的におかしいとかあったら学園都市すげぇと思ってくれたら幸いです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1329314458(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)




2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:03:10.75 ID:MSL6grdDO

???「…超遅いですね」

???「まあ、そろそろだろうな」

???「…大丈夫かな」

学園都市のとあるファミレスの一角を3人の女子が数時間占領していた。3人の名は絹旗最愛、滝壺璃后、麦野沈利である。彼女たちは軽食をとったあとはひたすらドリンクバーのみで粘っていた。先ほどから店長らしき人間が何かを促す用に彼女たちの席の近くを行ったり来たりしているが、彼女たちは気にも留めない。




3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:04:48.35 ID:MSL6grdDO

麦野「大丈夫なわけないだろ。泣かれて、罵られて…下手すりゃ殺されるかもな」

滝壺「むぎの」

麦野「分かってるよ。ただ、そうされても私はなんにも文句は言えないさ」

絹旗「…」

彼女たちは一人の少女を待っていた。少女は他の3人と違い学校に通っているために遅れて合流することになっていた。ただ、今回は遊ぶために会うわけではない。謝罪するためだった。過去に犯した過ちを、彼女の肉親を殺害したことを。



4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:06:08.97 ID:MSL6grdDO

彼女たちは学園都市の裏社会で暗部として生きてきた人間だった。時には人殺しどころか、依頼内容によっては組織ひとつだって壊滅させてきた。だが、紆余曲折を経て暗部は解散したため、今は自由に生活していた。

絹旗「…あー、浜面、ジンジャー…って」

麦野「アンタそれ今日何回目よ」

絹旗「すいません、超クセってやつで…」

滝壺「はまづらはドリンクバー係だからね」

そして、そのドリンクバー係は今はいない。件の少女を迎えに行っていた。




5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:07:51.83 ID:MSL6grdDO

絹旗「まったく、一体なにやってんですかねバカ面は。小学校なんて超放課になってていい時間帯なんですがね」

そして、そんな話をしているとふいに声が聞こえた。

???「いやー悪い悪い。遅くなっちまった。」

声のした方を3人が振り向くと、ジャージ゙にジーンズの組み合わせのチンピラがいた。彼こそが彼女たち暗部組織『アイテム』の救世主兼アッシー兼ドリンクバー係、浜面仕上である。




6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:09:01.94 ID:MSL6grdDO


絹旗「超遅いです浜面!一体どこでなにやってたんですか!」

浜面「す、すまん。乗るバス間違えちまって…」

絹旗「文字も読めなかったんですか?本当にバカ面ですね」

浜面「いや、そうじゃなくて同じバス停で路線が複数あって…」

滝壺「大丈夫、そんなおっちょこちょいなはまづらを私は応援してる」

来た早々に浜面はフルボッコにされていた。これも救世主兼アッシー兼ドリンクバー係の肩書きを持つものの業である。




7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:11:01.72 ID:MSL6grdDO

麦野「まあ、その辺にしときな」

放っておくと延々と続きそうな漫才を麦野が制した。そこで他の3人は促されるがままに口を閉じた。

麦野「それで、アンタの後ろに隠れてんのが…」

ヒョコっと浜面の後ろから金髪の少女が姿を見せた。その容姿はかつてこの場にいたもう一人の『アイテム』の仲間を容易に思い出させた。

滝壺「…こうして見ると本当にそっくりだね」

絹旗「超瓜二つです」

滝壺と絹旗が声を発した。その声は先ほどまでとは打って変わって静かな声だった。





8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:12:28.84 ID:MSL6grdDO

???「大体この前ツンツン頭の人の家に来た人たち?」

金髪の少女は未だに浜面の後ろから顔だけ出していた。

麦野「あー…たぶんそうね。あそこにいたツンツン頭が家主だっていうのなら」

???「ふーん…」

そこまで喋っても金髪の少女はまだ出て来ないで警戒した顔を見せている。しかしそれも無理はなかった。なぜなら彼女は数日前に見知らぬ集団から訳もわからぬままに命を狙われたのだから。




9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:15:11.83 ID:MSL6grdDO

浜面「えーっとな、フレメア。このお姉様たちはフレンダの仲間なんだ」

フレメア「! お姉ちゃんの!?」

少女の顔から警戒心が消え、一気に笑顔が広がった。

絹旗「え、ええ。フレンダの仲間の絹旗最愛です。」

滝壺「滝壺璃后」

麦野「…麦野沈利よ」

フレメア「私はフレメア=セイヴェルン。大体はじめまして、にゃあ」

滝壺「よろしくね、ふれめあ。ここ座っていいよ」






10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:16:57.98 ID:MSL6grdDO

浜面の後ろから出て来たフレメアはトテトテと空いていた滝壺の隣の席に座った。姉の仲間というだけで警戒心は一気に解けたらしい。

絹旗(仲間って言ってくれるのはありがたいですが、あとのことを考えると…)

麦野(無駄に与えるダメージがでかくなるだろうが…いや…ちゃんとありのままのことを話せってことか)

滝壺(うん、近くで見てもやっぱりふれんだにそっくり)

浜面(…あれ、俺の席なくね?)




11: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:18:14.52 ID:MSL6grdDO

フレメア「ねえ浜面、これ食べたい」

浜面「ん?ああ、パフェか」

麦野「いいよ。私が奢ってあげる。好きなだけ食べな。」

麦野「ほんと!?ありがと、ええと」

麦野「麦野」

フレメア「麦野、にゃあ」

絹旗「てゆーか浜面、いつまでつっ立ってんですか。超邪魔ですよ」

浜面「だって俺の座る場所ねーもんよ」

麦野「じゃ、浜面。アンタ先帰ってな。」

浜面「ええ!?なんでだよ、俺来たばっかだぞ!」

滝壺「大丈夫、来て早々戦力外通告を出されるはまづらを私は応援してる」




12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:24:24.83 ID:MSL6grdDO

麦野「…浜面ちょっと耳貸せ」

そう言うと麦野は浜面の袖を掴んで強引に顔を近付けさせた。バランスを崩してコケそうになった浜面が何か非難したが気にも留めない。

麦野(いいか?私はこれからあの子にフレンダのこと話すつもりだ)ヒソヒソ

浜面(分かってるよ、そのために連れて来たんだろ?)ヒソヒソ

麦野(じゃあお前、いきなり目の前の人間が「お前の姉ちゃんは私がぶっ殺しました。ごめんなさい」って言ってきたらどうする?)ヒソヒソ

浜面(…どう、だろうな…とりあえず疑って…キレて…っつーかお前上条の家でおもいっきり言ったよな)ヒソヒソ

麦野(お前とあの子がそんなに親しいと思ってなかったしな。…とにかく少なくとも穏便に済まないのは確かだ。それにたぶん一緒にいたやつらは全員殺人鬼の仲間だって思うだろうな。仲良く一緒にお帰りなんてことはまずありえねぇ)ヒソヒソ

浜面(…なるほど)




13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:27:27.81 ID:MSL6grdDO


麦野(だからお前はただ私らにパシられただけで詳しくは知らない、ってことにして店の近くで待っとけ。そうすれば今後もあの子と親しくいられるし、後で慰めてやることもできる)ヒソヒソ

浜面(でもよ…)ヒソヒソ

麦野(言う通りにしろ。これは私のけじめだ。それにあの子に必要なのは殺人鬼の仲間じゃない。ヒーローだ)ヒソヒソ

浜面(…分かった)ヒソヒソ

滝壺「二人とも何話してるの?」

麦野「なんでもないよ。ちょっとばかし秘密のお話さ」

フレメア「大体気になる、にゃあ」

浜面「気にするな。それじゃフレメア、俺ちょっと用事があって帰らないといけないからさ。このお姉様方と一緒でも平気か?」

フレメア「お姉ちゃんの友達なら平気」フンス

浜面「そうか、じゃあ何かあったら連絡くれ。」




14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:29:45.10 ID:MSL6grdDO

絹旗「ちょ、浜面!本気で行っちゃうんですか?」

冗談半分でからかっていたのだが、本当に帰ってしまう様子を見せはじめた浜面を絹旗が引き止めようとした。しかし、その隣で麦野が鋭い目付きで絹旗を射ぬいたため、絹旗はそれ以上なにも言えなかった。

浜面「ああ、立ってると邪魔だしな。別に俺がいなくても問題ないだろ?」

絹旗(問題ないだろっていうか問題しかないんですが!修羅場確定で超心細いんですが!)

そうは思っても口に出すことはできない。隣で学園都市第四位がにらんでいるのだから。

絹旗「そう…ですね…問題ないです」

浜面「ん、じゃあな。」

滝壺「ばいばい、はまづら」




15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:32:42.24 ID:MSL6grdDO

しばらくすると注文していたパフェが運ばれてきた。小学生にしてはかなりの量だったが、余程お腹が空いてたのかフレメアはペロリと平らげてしまった。

フレメア「ごちそうさま、にゃあ」ケフ

滝壺「すごい、完食だね」

絹旗「ちゃんとごちそうさまが言えるあたりフレンダより礼儀正しいですね」

麦野「そうかもね」クスクス

フレメア「そうだ、お姉さんたちはお姉ちゃんとなかよしなの?」




16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:34:29.14 ID:MSL6grdDO

いよいよ本題に入る流れとなった。【アイテム】の3人の間にピンと緊張した空気が張り詰め、3人の表情は少し強ばった。

麦野「ええ、そうね。とてもなかよしだった」

麦野は『なかよしだった』と過去形にした。もはやなかよしとは呼べる間柄ではなくなってしまったから。
フレメア「じゃあ」

しかし、フレメアはそんなことを気にしなかった。というよりは気付かなかった。まだ小学生ということもあって微妙な言い回しが分からないのだろう。

フレメア「アクトって知ってる?」



17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:36:26.18 ID:MSL6grdDO


滝壺「…あくと?」

フレメア「うん、アクト」

麦野「…アンタ知ってる?」
絹旗「知らないですね。聞いたことないです」

フレメア「そっか…」シュン

輝いていた少女の顔は一瞬にして暗い顔になってしまった。ころころと表情が変わるのも恐らく遺伝であろう。

滝壺「その人?もふれんだの友達なの?」

フレメア「うん」

絹旗「なんとフレンダに私たち以外の知り合いがいたとは。超どんな人です?」

フレメア「うーん…大体缶けりが強い」

滝壺絹旗「「缶けり?」」

麦野「んなことはどうだっていいんだよ」

話題が逸れてしまったため、麦野が会話をさえぎった。

麦野「あのね、フレメア。私はあなたに話さないといけないことがあるの。聞いてもらえないかしら」



18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:38:55.35 ID:MSL6grdDO

???「あのー、申し訳ございませんお客様」

いよいよ本題というところで先ほどからテーブル席を行ったり来たりしていた店長らしき人間が話かけてきた。

麦野「あぁん?」

店長「--ッ。た、大変申し訳ございませんが、店内大変混み合ってまいりましたのでお会計の方お願いしてもよろしいでしょうか?」

学園都市の最恐とも最凶とも敬称できる女に凄まれ、たじろぎながらも店長は言い切った。店内を見渡すと、なるほど、いつの間にか客で席が埋まっていた。どうやら完全下校時刻になる前に、自炊を避けたい学生たちが早めの夕食を済ませようとしているようだった。




19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:40:13.57 ID:MSL6grdDO

麦野「あ-、悪いけど私らまだ話が…」

滝壺「いいよ、むぎの。もう出よう」

麦野が店長の意向をガン無視しようとしたところで滝壺が制した。

絹旗「滝壺さん?」

滝壺「みんなでうちに来て。そこで話そう」

フレメア「お姉さんのおうち?」

麦野「待て滝壺。それだと…」

麦野(…いや…むしろ…)

姉を殺した人間(の仲間)の家に妹を招くのはまずいのではないか。そう考えファミレスにフレメアを呼んだのだが、ここで麦野は考えを変えた。




20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:42:21.14 ID:MSL6grdDO


絹旗「滝壺さん、それはちょっと…」

麦野「イヤ、そうしよう。なんならそのまま滝壺の家に泊まるか」

フレメア「! お泊まり会!?」キラキラ

絹旗「ちょ、ちょっと麦野!?」

滝壺「大丈夫だよきぬはた。私は問題ない」

絹旗「いえ、そういう問題でなく…」

麦野「なんだ?」

絹旗(いいんですか?こう言ってはなんですけど姉を殺した人間とひとつ屋根の下で寝るなんて超恐ろしすぎると思うんですが)ヒソヒソ

麦野(イヤなら出ていくだろ。外に浜面でも待たせておけば問題はない。それにこんなうるさいところで話すなら家の方がいい)ヒソヒソ

滝壺「今度はきぬはたと?」

フレメア「ヒソヒソ話はよくない、にゃあ」



21: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:44:06.67 ID:MSL6grdDO

麦野「悪い悪い。それでフレメア、滝壺の家に泊まりでもいいかしら?」

フレメア「うん、一回やってみたかった」

麦野「よし、なら一旦解散してから荷物揃えて滝壺の家に集合ね。フレメアはまた浜面に送ってもらいなさい」

フレメア「わかった」

滝壺「うん」

絹旗「…分かりました」

麦野「じゃあここは私が払って--」




22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:45:24.85 ID:MSL6grdDO






フレメア「ねえ麦野、お姉ちゃんは来るの?」









23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:47:48.35 ID:MSL6grdDO

麦野「…後で話してあげる」
フレメア「? 分かった」

滝壺「行こ、ふれめあ」

滝壺に促されてフレメアは席を立ち、同時に滝壺も立った。彼女たちのテーブルで成り行きを見守っていた店長らしき人間は、なんとか面目躍如だな、と胸を撫で下ろしレジへと向かっていった。

絹旗(今の一瞬ですらあの空気ですか…一晩中となると超先が思いやられますね…)

麦野「どうした絹旗。まだなんか飲みたいの?」

伝票を持ってレジへ行こうとした麦野が未だにグラスを握ってストローをグラスのふちに器用に滑らせている絹旗に声をかけた。

絹旗「いえ、行きますよ」




24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:49:31.13 ID:MSL6grdDO

レジで会計を済ませてから滝壺、フレメア、絹旗、麦野の四人は一緒に歩いた。

途中でなぜだか目を丸くした浜面が息を切らせて走ってきた。かなりテンパっていて、絹旗に「超キモイです!超浜面です!」と散々言われていたが、今後の予定を説明するとフレメアを連れてフレメアの家へと向かっていった。

またしばらく歩くと今度は滝壺が「私の家はこっちだから」と言って別れた。

最終的に麦野と絹旗が一緒に歩いていた。太陽はすっかり沈み、代わりに街灯がまばらな人波を照らしていた。十一月も半ばを過ぎ、本格的な冬の訪れを予感させるような冷たい風が吹いていた。

麦野「ねえ、絹旗」

ふいに麦野が口を開いた。



25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:51:45.92 ID:MSL6grdDO

絹旗「なんです?」

麦野「無理しなくてもいいのよ?」

絹旗「え…」

麦野「これはあの子と私の問題だ。アンタも滝壺も無理に付き合う必要はない。」

絹旗「…」

麦野「それに『アイテム』だって解散したんだ。私とツルんでる必要だって-」
絹旗「麦野」

まだ喋ろうとしている麦野を絹旗が低い声でさえぎった。

絹旗「確かに暗部組織『アイテム』は解散しました。ですが私は麦野がいて、滝壺さんがいて、フレンダがいて、私がいて、浜面がいた、居場所としての『アイテム』が解散したとは思ってません。」

麦野「…そう」




26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/15(水) 23:55:27.42 ID:MSL6grdDO


絹旗「ええ…では、私こっちなんで」

麦野「ん」

気が付くと先ほどよりも人波が減り、辺りにはほとんど人気がなくなっていた。
麦野「絹旗!」

段々と小さくなっていく小さな背中に超能力者が声をかけた。

絹旗「なんです?」

小さな背中は見えなくなり、代わりに小さな顔が不思議そうに麦野の方を見据えた。

麦野「あー…そのなんだ、アレだ」

絹旗「いや、分かりませんよ。なんなんですか」

麦野「…ありがとう。こんな化け物が居る組織を居場所だと思ってくれて」




27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 00:03:03.80 ID:eDH9zsQDO

絹旗はポカンした顔を浮かべ、次第にクスクスと笑いはじめた。

絹旗「どうしたんですか麦野。超似合いませんよ」クスクス

麦野「な、テメェ!人がせっかく感謝してるっつぅのに」

絹旗「化け物はこんなすてきな居場所作れませんよ。私だって超感謝してますよ、麦野」

麦野「あ…」

絹旗「では、また後程会いましょう」

そう言うと再び小さな背中が見え、再び小さくなっていき、ついには角を曲がって見えなくなってしまった。




28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 00:05:18.95 ID:eDH9zsQDO

麦野「…超感謝してますよ、か」

麦野はポツリと自分にかけられた言葉を繰り返した。

麦野「あー…ダメね。確かに柄じゃないわ」

だが、悪いものではない。そう思うことができた。そう思うことができただけでで、自分はまだ人間なんだと思うこともできた。

麦野「…行くか」

そして、麦野は歩きはじめた。とりあえずは荷物を揃える。そして、滝壺の家に行く。そして、フレメアに-----




29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 00:06:34.01 ID:eDH9zsQDO






そこで、麦野の視界が奇妙に揺れた









30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 00:09:16.88 ID:eDH9zsQDO

麦野「が…!?」

違う。視界が揺れているだけじゃない。脳も揺さ振られてる。身体もバランスを失っている。
それに気付いてから今度は顎に激痛が走った。

???「今ので倒れへんの。さすがはLevel5の第四位やね」

麦野(声…どこから…!?)

声は聞こえた。しかし、朦朧とする意識のせいかどこに誰がいるのか何も分からない。

???「せやけど、さすがにかなり脳震盪起こしとるやろ。大人しう眠っときや」

そんな声が聞こえた後、麦野の意識は完全に途絶えた。



31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 00:35:55.99 ID:eDH9zsQDO






麦野(…こ…こは……?)

身体がぐらぐらと揺れている感覚がする。思考が回らない。何もしたくない。もう少し意識を飛ばしてもかまわないだろう。
そんな感情が霞みがかった頭の中で浮かんできた。だが、次の瞬間には自分の身体の異変に気付いた。自分は椅子に座っている。そこまでなら、特に問題はない。だが自分の両足が椅子の足にヒモで括り付けられている。自分の両手が椅子の背にヒモで括り付けられている。




32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 00:38:18.59 ID:eDH9zsQDO

明らかな異常。そこで意識を失う直前のことをようやく思い出した。

麦野(クソが!なに日和ってやがんだ私は!)

あまりの自分の不甲斐なさに舌打ちをした。これからやらなければならないことがあるというのに…

???「目ぇ覚めたみたいやね」

男の声がした。うなだれていた頭を上げ正面を見ると、学生服を着た青い髪の大きな少年がいた。同時に自分がどこかのマンションと思われる一室に座らされていることが分かった。




33: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 00:40:09.03 ID:eDH9zsQDO

麦野「テメェか、私にこんな真似した馬鹿は」

有無を言わさず能力を使って殺そうとした。学園都市第四位の超能力者【原子崩し】。彼女は例え手足を拘束されていようと、その能力で目の前にいる人間を肉塊にできる。それどころか、その気になれば分子レベルまでバラバラにすることだってできる。
だが、演算をはじめた瞬間、頭に異変を感じた。脳震盪によるダメージではない。もっとなにか別の異変を感じた。

???「やめときぃや」

再び青い髪の少年が口を開いた。よく見るとピアスもしている。

青ピ「AIMジャマーや。だから僕もこうして能力も使わんと姿さらしとる」

麦野「…チッ」




34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 00:41:55.72 ID:eDH9zsQDO


AIMジャマー。能力の暴走を促す、対能力者用の装置である。こんなところで能力が暴走すれば、青い髪の少年と共に自分も自爆して死ぬ羽目になるだろう。

麦野「で?テメェは一体なにがしてぇんだ?私をぶっ殺して研究素体にでもするつもりか!?それともテメェのきったねえ×××で私のこと犯すつもりか!?」

青ピ「殺すつもりならとうの昔に殺しとる。レイプするつもりなら気ぃ失っとる間に服なんかひん剥いとる。僕がしたいんはそんなんちゃうで」

麦野「…ならなにが目的だ」

青ピ「…そうやね、まずは話でも聞いてもらおか」





35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 00:44:11.77 ID:eDH9zsQDO


青ピ「学園都市にとあるカップルがおった。知り合うたきっかけは男の不注意で女が入院する羽目になり、男がそれを見舞いにいって、親しくなったことや。なんのことやない。どこにでもあるフツーの話や」

青ピ「お詫びと退院祝いっちゅうことで遊び行って、もっと仲良うなって、また遊び行って、繰り返してくうちに互いに惚れていった」

青ピ「せやけど問題があった。それは片やとある暗部組織の幹部、片や別のとある暗部組織のリーダーで超能力者やったっちゅうことや」



36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 00:45:39.01 ID:eDH9zsQDO


麦野「…ハッ、黙って聞いてりゃくだらねぇ。テメェみてぇな現実と妄想の区別もつかねぇヤツの相手してやるほど私も暇じゃねぇんだよ」

麦野が青髪ピアスの話をさえぎった。最初は暗部時代に自分がコイツの恋人でも殺して、その逆恨みかなんかかと思った。だが、どういうことか自分が恋人だときた。当然麦野にそんな覚えはない。

青ピ「人の話は最後まで聞いてや。最後まで聞いて僕の妄想話やって言うんやったらその手足の拘束解いたる。AIMジャマーも切る。煮るなり焼くなり好きにすればええ。」

麦野「ああ、そうかい」

麦野はもはや相手にしないことにした。馬鹿の話を聞くよりは自力でここを脱出する手段を考えた方がいいと判断した。




37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 00:47:29.94 ID:eDH9zsQDO

青ピ「…じゃ、話戻そか」

-拘束を解くには人力では無理だな。ヒモで縛ってあるだけだが相当きつい。

青ピ「問題はあった。それでも二人は付き合うた。」

-だが、幸い左腕は義手だ。力で義手を無理やり外すのもできないわけじゃない。左半身だけならどうにかなる。

青ピ「互いの暗部に関する情報はプライベートなもん…まあ、趣味とかそんなんや。それ以外は絶対に話に出さん。調べることもアカン。そうゆうルール作って絶対に守るようにしたんや。」

-脚は…能力を使うしかないだろうな。どんなに微力で能力を使っても暴走して片脚は吹っ飛ぶ可能性が大だが、ここでこの馬鹿と無理心中なんて結末よりマシだ。




38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 00:51:24.33 ID:eDH9zsQDO

青ピ「片方でもルールを破ってもうたらその暗部組織は壊滅してもおかしないからな」

-たぶんここはどっかのマンションの一室。恐らくはあの青髪ピアスの後ろにある扉がこの部屋の唯一の出入口。

青ピ「そんな危ない綱渡りみたい交際やったんけど、一年ぐらいは続いたんや」

-能力さえつかえれば壁も一瞬で出入口になるが、そんなことができる状況だったらこんなところでおとなしくしていない。…義眼に通信機能でもつけときゃよかったな。

青ピ「せやけど、ある時急に女の方に連絡がつかんようになった。まあお互い暗部組織に所属してんやから長期任務で連絡がとれへんことはようあったんけどな。それでも二週間音沙汰なしなんてことはありえへんかった。」

-なるべく左腕に能力を出すように演算するべきか?それなら能力の推進力で扉をぶち破れる。まあ義手は確実に粉微塵になるだろうが。




39: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 00:52:44.00 ID:eDH9zsQDO

青ピ「せやけど男はそないに心配せぇへんかった。第三次世界大戦の予兆があちこちで起こって男の所属しとる暗部も大忙しやったからな」

-義手のみで済めば恩の字か。下手すりゃ背中にでっかい穴が空くかもしれない。

青ピ「やがて第三次世界大戦も終わり、さらには暗部の解散命令まで出よった。男は大喜びしたもんや。やっと汚い世界から抜け出せて、オマケに彼女とまっとうな人生を送れるんやからな」

-本来なら無茶だろうが、一度だけ能力を自ら暴走させた経験ならある。経験のあるなしで成功率は相当変わるはずだ。

青ピ「それでも女からは音沙汰はない。男はいよいよ心配になり、ルールを侵して女の暗部の情報を調べた」

-能力を使って扉に突進する。扉をぶち破ったら脚の拘束を解く。…五体満足でいられたら奇跡だな。




40: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 00:54:04.53 ID:eDH9zsQDO

青ピ「そして男は絶望した。女は連絡が取れなくなったころすでに殺されていた--その組織のリーダーの手によって!」

-だが、可能性は低くくてもやるしか…ちょっと待て今コイツはなんて言った?

青ピ「…ここらで人物紹介と一緒に自己紹介もしとこか」

-女はリーダーに殺された?コイツは私と付き合ってるって妄想話をしてたんじゃ…




41: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 00:55:32.01 ID:eDH9zsQDO






青ピ「僕は暗部組織『ウォール』のリーダー。Level5第六位の【隠密行動】(ステルスアクト)や」




-コイツが超能力者!?まさか…





青ピ「そして女は暗部組織『アイテム』の幹部」




42: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 00:56:42.06 ID:eDH9zsQDO





青ピ「フレンダ=セイヴェルン」









47: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 11:48:39.10 ID:eDH9zsQDO

麦野「な…」

青ピ「…ホンマ絶望したで。事件の詳細を調べてもっと絶望した」

麦野(フレンダに彼氏が…!?そんな話一度も…)

青ピ「神様っちゅうんはいつも意地悪で、変なところで気がきくんや」

青ピ「フレンダを殺した麦野沈利はその日のうちに下部組織の反乱より殺害された。フレンダが殺される原因になった垣根帝督もその日のうちに一方通行により殺害された」

青ピ「僕の知らんところでフレンダは殺され、僕の知らんところでフレンダの仇はとられてたんや」

青ピ「ホンマ…何してええのか分からんかったで」




48: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 11:49:35.07 ID:eDH9zsQDO

青ピ「せやけどな…やっぱり神様っちゅうんはいつも意地悪で、変なところで気がきくんや」

青ピ「何もする気がなくなってふらふらしとったら、なんと殺されたはずの人間が楽しそうに笑うてるやないの!」

麦野「-それが私ってことか」

青ピ「そういうことや。これで生きとるんがフレンダやのうてアンタやっちゅうあたり神様らしいわ」





49: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 11:50:54.50 ID:eDH9zsQDO

麦野はようやく理解した。自分が狙われた理由を。どうやら、自分の見解は当たっていたらしい。暗部時代にこいつの恋人を殺した。それがすべてだったようだ。

麦野「…なるほど、フレメアが言ってた『アクト』っていうのはテメェの能力名か」

青ピ「…半分正解や。もう半分は暗部組織のリーダーなんかやっとる『悪人』やから『アクト』や。まあ、アンタに比べたら僕なんかよっぽど善人やろうけどな」

麦野「ああ、そうだろうよ。異論の余地もねえ」

青ピ「ホンマや。ようもフレンダのこと殺しといて、フレメアちゃんと僕の名前がでるような会話ができる仲になれるな。どないな神経しとんねん」

麦野「…あの子と親しくなるつもりはない」

青ピ「いやもうなっとるやんけ」

麦野はぶっきらぼうな態度をとっているが、青髪ピアスの言葉は確実に麦野の心をえぐっていった。すでに向かい合い、受け入れたはずの自分の行いは他人を介して再び麦野を苦しめた。




50: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 11:52:28.57 ID:eDH9zsQDO

だが、一方でこれでいいと思っている自分もいた。浜面も滝壺も絹旗も、フレンダのことをあまり弾劾しなかった。自分を気遣ってか、はたまた自分がLevel5の化け物だからか。

しかし、目の前の男は自分を気遣う理由もなく、自分に近い実力をもつLevel5だ。いっそのこと思い切り責められた方がこっちだって気が楽だ。


青ピ「…なあ、ひとつだけ聞かせてくれへん?」

青髪ピアスの声のトーンが変わった。先ほどまでは怒気を含んでいたが、今はまた違う何かを含んでいた。

麦野「…なんだ」

青ピ「フレンダは…ホンマに死んだんか?」




51: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 11:53:55.56 ID:eDH9zsQDO

麦野「-ッ!」

青ピ「資料見た限りじゃアンタは確実に致命傷を負ってたはずや!腕が吹っ飛んで!目ん玉くりぬかれて!どてっ腹に5発も銃弾ぶちこまれて!それでもアンタは生きとる!それやったら…それやったらフレンダやって!」

麦野「…いいや、あいつは死んだ」



麦野「フレンダは…私が殺した」




52: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 11:55:06.94 ID:eDH9zsQDO

青ピ「…」

麦野「そこまで調べたならフレンダがどうやって死んだかも知ってるんだろう?胴体真っ二つにされて、上半身はそのまま私が持ち歩いて振り回してたんだ。いくら学園都市の技術でも無理だ」

青ピ「…なんでや」

再び青髪ピアスの声に怒気が戻った。表情すら怒りに満ちあふれていた。

青ピ「なんでそんなマネできるんや!フレンダが何をしたっちゅうんや!」




53: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 11:57:09.53 ID:eDH9zsQDO

麦野「アイツが仲間を売ったからさ。あの日敵対していた『スクール』の連中にな」

青ピ「仲間を売った!?お前それ本気で言っとるんか!?」

麦野「…実際あの日、私らのアジトにスクールの連中は襲撃してきた。あそこに私らがいることをしってるってことは…」

青ピ「『スクール』に精神感応系の能力者がいるなんて少しも思わんかったんか!?【未元物質】が生半可な手段使うて優しう尋問したとでも思ったんか!?」

麦野「…」




54: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 11:58:17.05 ID:eDH9zsQDO

麦野も気づいてはいた。浜面の話で【心理定規】という大能力者いたとも聞いた。しかしあの日の麦野にそんな理性は残っていなかった。

青ピ「…ホンマのことは知らん。すべて知ってるフレンダはもうおらん。話すことも聞くこともできへん。考えることも感じることも、泣くことも笑うことも、フレンダはもうできへんねん」

麦野「…あぁ」

青ピ「僕かてな、お互いが暗部にいる以上どっちかが死ぬかもしれんと覚悟はしとった。せやけど…せやけど!」




55: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 11:59:18.82 ID:eDH9zsQDO




青ピ「なんでお前に殺されなアカンねん!お前はフレンダの自慢のリーダーやったとちゃうんかい!!」







56: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 12:01:16.72 ID:eDH9zsQDO

麦野「…ぇ…?」

青ピ「ことあるごとにお前の自慢しとったんや!うっすらとしか話聞いてないだけの僕かて信頼してたことなんて一発で分かった!せやのに……せやのにこんなん……薄情すぎるやろ………」

麦野「…」

最後の方はほとんど涙声だった。麦野はもはや青髪ピアスの顔を見れなかった。信頼していた仲間を裏切ったのは自分だった。仲間との居場所も壊したのは自分だった。かつて自分が背負っていく決めた過去の過ちは、また別の方向からさらなる重みを得て麦野へとのしかかる。自責の念が麦野に責めかかる。




57: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/16(木) 12:02:16.94 ID:eDH9zsQDO

青ピ「…グスッ……もう、ええわ」

青髪ピアスは自身の後ろに右手を回す。再び前に出てきた右手には拳銃が握られていた。チャキっという音とともに拳銃は麦野へと向けられた。

麦野「-待って!私はまだ」

フレメアに謝ってない。そう言うつもりだった。

青ピ「そうやって命乞いしたフレンダを殺したとちゃうんかい!何を今さらガタガタ抜かしとんのや!」

だが言う前にさえぎられた。そしてもう何も言えなかった。

青ピ「…せめてこれから苦しめや。何千回でも後悔せぇ」

パァン、と乾いた音が部屋に響いた。



64: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/17(金) 10:56:05.45 ID:aqgfwEBDO

青髪ピアスはしばらく血を流す【原子崩し】を見つめていた。泣いていたせいか肩が上下に小刻みに動き、それに合わせて息も荒くなっていた。


???「よろしかったんで?」

ふいに後ろから女の声がした。ビクン、と青髪ピアスは身体を強張らせた。しかし、青髪ピアスは振り返らない。それはもう何度も聞いた人物の声だったから。

青ピ「何がや」

???「お前の惚れた女はその行為を許すのか?ということだ。」

低い男の声がした。この男の声も、もう何度も聞いた。

青ピ「許すもなにもないやろ。フレンダはもうおらん。僕がなにしようが知ることもできんし、しゃべることもできん。死んだ人間が許す許さへん言うんは生きとる人間の一方通行な幻想や」

???「相変わらず、現実主義者だな」

また別の男の声が聞こえた。先ほどの男よりは少しばかり高い声だった。




65: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/17(金) 10:57:08.16 ID:aqgfwEBDO

青ピ「…ちゅうかな、」

青髪ピアスはようやく振り向いた。そこには深緑の繋ぎを着た、ボサボサ髪に丸メガネの少女。革ジャンに身を包み、片手に牛乳パックを持った赤茶色い髪の長髪の男。ダメージジーンズに迷彩柄のジャケットを着た、いかつい体格をした大男がいた。

青ピ「君らなんでこんなとこおんねん!『ウォール』は解散や言うたやろ!」




66: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/17(金) 10:58:11.16 ID:aqgfwEBDO

???「私物を取りにきたんで」

青ピ「まだ私物あったんか!?せやったらはよ私物まとめて帰りぃや!ここにおったら襲撃されるかも知れへんねんぞ!?」

???「この【内臓潰し】の横須賀、暗部の女ども相手に遅れはとらん。」

青ピ「そうやのうて…ちょう待て、なんで襲撃してくんのが『暗部の女』やって知っとんねん」

???「…横須賀さん」

少女がジト目で横須賀と呼ばれた大男を見た。しかし、大男は少しも取り繕うとはしなかった。

横須賀「ふん、遅かれ早かれ言う予定だっただろう。」




67: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/17(金) 10:59:20.69 ID:aqgfwEBDO

???「悪いなリーダー。俺らアンタが何するか全部知ってるんだ。さすがに【原子崩し】に奇襲かけるとは思わなかったけどな」

青ピ「な…!?」

青髪ピアスは口をパクパクさせた。今回の【原子崩し】への奇襲も、今後のことも全部一人で計画したものだったからだ。

青ピ「…せやったら余計に意味分からんわ。ここが危ないって分かっとってなんで居んねん」

???「私も協力するからに決まってるんで」

青ピ「はあ!?何言うてんの、霧谷ちゃん!」

横須賀「当然、俺と黒妻もだ。」

青ピ「はあああ!?」

黒妻「『ウォール』の幹部が総出で当たれば一晩で粗方終わるだろ。この手の計画は早く終わらせるに限る、って言うのはアンタの台詞だぜ?」




68: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/17(金) 11:00:26.00 ID:aqgfwEBDO

次々に青髪ピアスの予想を裏切る『ウォール』の幹部達。青髪ピアスは自分の背後で血を流して動かない【原子崩し】のことなど半ば忘れていた。

青ピ「…ホンマに言うてんの?」

霧谷「私がいれば、そこの【原子崩し】はもっと効果的に処理できるんで」

黒妻「となると、護衛は必要だろ?」

横須賀「そして、俺がいればお前は計画以上のことを求めることも可能だ。」

青ピ「…せやけど、君らにメリットなんかない。少しでも下手踏んだら学園都市を敵に回す。ハイリスク・ノーリターンやんか」

もっともな話だった。そもそも【原子崩し】を奇襲したことも、今後のこともすべて青髪ピアスの私怨のためだった。だから他人がわざわざ動く意味が分からなかった。




69: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/17(金) 11:02:26.33 ID:aqgfwEBDO

しかし、『ウォール』の幹部たちは簡単に答えた。

霧谷「まあ、リーダーの彼女と言ったら間接的に命の恩人なんで」

横須賀「世話になった者のためとあればこの【内臓潰し】の横須賀、惜しみなく力を貸すぞ。」

黒妻「仲間が困ってるなら動く。それだけだよ」

いよいよ青髪ピアスは普段はほとんど空いてない様に見えるを思い切り見開いて驚いた。あろうことか、絆のためだけに今後の人生すら賭けると言っているようなものなのだから。




70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/17(金) 11:03:50.70 ID:aqgfwEBDO

青ピ「…分かった、百歩譲って霧谷ちゃんと横須賀はええ。けど、黒妻はんアンタはダメや」

黒妻「おいおい、ツレねぇな」

青ピ「ダメや。気持ちは嬉しいけどな、美偉ちゃんも『ビッグスパイダー』の連中も待ってんねやろ?迎えに行ってあげな」

黒妻「美偉も蛇谷たちももうガキじゃない。ちょっと遅くなっても問題ないさ。それよりも目の前で困ってるアンタの方が問題だ」

青ピ「…せやけど…たかだか2、3ヶ月しか一緒におらんかった僕のために一生を棒に振るようなマネせんでも…」

黒妻「ヒドイな。たかだか2、3ヶ月でも俺にとってはかなり濃い時間だったんだぜ?」

青ピ「…」

黒妻「命救われたこともあったんだ。少しぐらい恩返しさせてくれよ、リーダー」

そう言って黒妻はニッ、と笑ってみせた。

青ピ「…ホンマ…なんやねん君ら…仲間甲斐がありすぎるやろ」

青髪ピアスの目から一筋の涙がこぼれた。かつて、暗部組織に君臨していた『悪人』に、今や立派な仲間がいた。




71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/17(金) 11:04:59.08 ID:aqgfwEBDO

青ピ「もう一度だけ確認させてや。今回は隠ぺいしてくれる理事会も、給料よこすスポンサーも、後始末してくれる下部組織もおらん。おまけに下手踏んだら学園都市の汚い連中そっくりそのまま敵に回すかも知れへん。それでも僕に協力してくれるんやな?」

霧谷「当然で」

横須賀「まったく問題はない。」

黒妻「ああ」

青ピ「…ほな、甘えさせてもらうわ!みんな、ホンッマにありがとうな!」

こうして、暗部組織『ウォール』は非公式に再び結成された。そして、その夜の内に学園都市統括理事会に混乱をもたらすこととなる。



72: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/17(金) 11:17:33.65 ID:aqgfwEBDO





フレメア「大体こっち」ヒョイ

絹旗「くっ…!」

フレメア「あがり、にゃあ」

絹旗「だー、また負けました」

滝壺「大丈夫、8連敗したきぬはたも私は応援してる」

滝壺、絹旗、フレメアの3人は滝壺のアパートに集まっていた。全員パジャマに着替え、今はババヌキに興じていた。

フレメア「そろそろ違うゲームがしたいな」

絹旗「違うゲームですか。滝壺さん何かありますか?」

滝壺「そっちの棚にテレビゲームのソフトが何枚かあるよ」

絹旗「そうですか、どれどれ」

フレメア「どれどれ」

滝壺が示した棚を絹旗とフレメアが物色しはじめた。無造作に放っておかれた滝壺がいそいそと片付けはじめた。




73: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/17(金) 11:19:03.56 ID:aqgfwEBDO

絹旗「懐かしいですね、『アイテム』時代にみんなで超やりこんだゲームばかりじゃないですか」

滝壺「持ってっていいって言われたから全部もらっちゃった。メモリースティックもちゃんとあるよ」

フレメア「む」

絹旗「どうしました?超やりたいゲームでも見つかりましたか?」

フレメア「大体これがいい」
【とある禁薬の生命危機】

絹旗「う…顔に似合わずゾンビ系ですか。そいつカニバリズム満載で余計にグロいんですが」

滝壺「きぬはた」

絹旗「なんです?」

滝壺「ウチのテレビは3D対応だよ」bグッ

絹旗「超マジですか。なんだって立体映像で頭かじってるゾンビシスター見なきゃならないんですか」





74: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/17(金) 11:20:49.42 ID:aqgfwEBDO

フレメア「やりたい、にゃあ」キラキラ

絹旗「うー…そんなパッケージと真逆の顔で迫られても…あ、コレなんてどうです?」

【聖人無双】

滝壺「あ、きぬはたのお気に入り」

フレメア「? これなに?」
絹旗「超パワーを持った聖人が戦場を縦横無尽に駆け回る超アクションゲームです。【三河式徳川誠教】の忠勝さんなんか超最強ですよ」

滝壺「そこの教皇様の動きが遅くてむぎのが本気でキレちゃったけどね」

絹旗「『いつになったらビームぶっ放すんだよクソタヌキが!そんな手順踏まなくても指一本動かさずに千人斬りくらいできるんだよクソがァァァァ!』って言ってテレビに風穴空けてましたからね。さすがにアレは超ヒキました。」

フレメア「むう、なかなか面白そう」

滝壺「大丈夫、どっちもおもしろいし、このエピソードで悩みはじめるふれめあも私は応援してる」




75: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/17(金) 11:22:08.17 ID:aqgfwEBDO

絹旗「…それにしても超遅いですね、麦野」

チラリと時計に目をやると、既に21時を回っていた。麦野と別れてから既に三時間近くが経過していた。

滝壺「たぶんお風呂じゃないかな。むぎの長風呂好きだし」

絹旗「そうですかね…」

フレメア「唯一の対抗手段【禁薬殺し】(ウィルスブレイカー)、むぅ」

絹旗(…超不安ですね。こうなってくると別れ際のあのセリフも何かのフラグに思えてきます)

フレメア「【薩摩式十字誓教】『我らはお兄、お兄島津ぞ』、にゃあ」




76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/17(金) 11:23:06.50 ID:aqgfwEBDO

絹旗「私ちょっと外の空気吸ってきますね」

滝壺「外は寒いよ?」

絹旗「超ちょっとですから。さすがにコートはきますけど」

そう言って、絹旗は壁にかけてあった自身の白いコートを着込みはじめた。フレメアは未だに悩んでいるようで、2つのパッケージを見比べている。滝壺はもはや眠いのか壁に寄りかかったままボーッとしている。




77: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/17(金) 11:24:06.57 ID:aqgfwEBDO

玄関から出ると冷気が一気に突き刺さった。暖かい部屋にいたため、余計に寒さを感じた。

絹旗「さて…」

絹旗は滝壺のアパート敷地から出た。そして、路上に停めてあったワゴン車を見つけ、周りに用心しながらワゴン車の窓をコンコンと叩いた。

絹旗「浜面、ちょっといいですか」コンコン

中に待機しているはずの浜面に声をかけた。彼は本来の計画ならフレメアが滝壺のアパートから出た場合に備えて待機しているはずだった。

しかし、ワゴン車の中から返事はない。それどころか、なんの反応もない。




78: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/17(金) 11:26:09.86 ID:aqgfwEBDO

絹旗「…浜面?」

浜面「…zzz」ニヘラ

絹旗「」イラッ

一瞬でも心配した自分と、これ以上ないくらいに顔を弛緩させた浜面を見て、絹旗の無双ゲージは一気にMAXになった。

絹旗「ィよっこいしょォォォ!」

無双奥義を発動させた絹旗は一気にワゴン車を頭上までかかげた。

浜面「どわぁぁあ!?な、なんだ!?何事だ!?」

絹旗「テメェはなンだって毎回毎回イラだたせてくれンですかァ!?アァ!?」

浜面「き、絹旗か!?一体どうし、ヤメロおい!回すな!死ぬ!死ぬ!」

絹旗「いっぺん死にやがれェェェ!」

浜面「ぎゃあああ!縦回転は!縦回転はムリだって!あああああ!」



絹旗「…それで浜面、ちょっといいですか」

浜面「…三半器官が治ってからでいいですか」ゼィゼィ

絹旗「それじゃちょっとお願いなんですが」

浜面「人の話聞いてた?」ウプッ

これがそこらのチンピラと『アイテム』の救世主兼アッシー兼ドリンクバー係との格の違いである。



81: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 00:01:36.08 ID:cy5Z2HqDO

黒妻は『ウォール』のアジトにいた。アジトと言えば聞こえはいいが、ふつうに高級マンションの一階にある一室である。先ほどまでは『ウォール』の幹部全員が揃っていたが、現在残っているのは黒妻と霧谷の二人である。霧谷の方は奥の部屋で【原子崩し】の相手をしている。その部屋に通じる廊下で黒妻は壁にもたれかかっていた。右側には霧谷がいる部屋。左側には玄関。正面には霧谷がいる部屋とはまた別の部屋の扉があった。




82: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 00:02:51.68 ID:cy5Z2HqDO

黒妻綿流-『ビッグスパイダー』の創設者であり、元リーダー。二年前に敵対組織の罠にかかりコンクリート建築の屋根が吹き飛ぶほどの爆発に巻き込まれるが、辛くも生存。退院後そのまま少年院へ送られ、9ヶ月ほど前に出所。3ヶ月ほど前に能力者狩りを行う武装集団と化していた『ビッグスパイダー』を素手で叩き潰す。その後、『ビッグスパイダー』の構成員達の暗部下部組織からの解放と固法美偉の過去の黙認を条件に暗部組織『ウォール』へ配属される。




83: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 00:04:38.87 ID:cy5Z2HqDO

そして、『ウォール』には解散命令が出されたが、今宵『ウォール』は再結成された。黒妻が復帰した理由は仲間の力になるためというシンプルなものだった。

黒妻(『アイテム』か…)

牛乳パックの中身を飲み干しながら考える。自分のリーダーの言葉を。

黒妻(『実はもう下手踏んでもうてん』、っつってが…)

なんと、自分で散々下手踏んだらマズイと言っていたクセに、既に下手を踏んでいたらしい。まあ、だからこそあそこまで協力することに反対してたのかと思えば納得なのだが。

黒妻(『せやけど、学園都市にバレた訳やない。襲撃に来るとしたら恐らく…)

そこまで考えると厳重にロックされている玄関扉からドゴン!、という音がした。見ると扉がありえない形にひしゃげていた。

黒妻「【窒素装甲】や』、か」

黒妻は壁から離れ、ひしゃげた玄関扉と向き合った。




84: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 00:07:08.21 ID:cy5Z2HqDO

もう一度ドゴン!という音がすると、ロックも蝶番も外れて、ドミノように上から玄関扉は倒れた。

黒妻「その扉はそうやって開けるもんじゃなかったんだけどな…」

絹旗「…麦野はどこですか?」

出てきたのはパジャマの上からコートを着た茶髪の少女だった。150cmにも満たないような少女が強引に扉を開けた言えば本来なら驚くことだが、黒妻はこの少女が【窒素装甲】という大能力者であることを知っていた。

黒妻「奥の部屋にいる。なんでここが分かったんだ?」

絹旗「携帯電話のGPS機能なんて学園都市の外でさえ超何年も前の技術です」

黒妻「…俺より初歩的なミスだな。やっぱ平常心じゃなかったか」

携帯電話は常に電波を発している。そのためその気になれば多少手間はかかるが、いつどこにいたかまで調べられるものである。従来なら携帯電話の電源をまったく関係のないところで切断するなり、逆手にとって携帯電話と所有者を別々にして撹乱させたりするのが定石であった。しかし、恋人の仇を見つけた青髪ピアスはそれらの定石を完全に失念していた。そして、気付いたのは【原子崩し】の拘束が済んでからだった。これが青髪ピアスの犯した失態だった。




85: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 00:08:17.24 ID:cy5Z2HqDO

絹旗「麦野を返してください。断るんなら力づくでも返してもらいます」

黒妻「やるのかい?俺ァ相当強ぇぞ?」

絹旗は一度目を閉じて大きく深呼吸し、再び目を開けた。

絹旗「最終通告だァ。麦野を返してください。でなきゃァテメェをブッ殺すぞォ!」

黒妻「もう少ししたら返してあげるさ。恐らくすごい見た目になってると思うけどな」

瞬間、絹旗が黒妻に飛びかかった。




86: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 08:47:25.42 ID:cy5Z2HqDO

黒妻「うおっ!」

いきなり突っ込んでくるところまでは黒妻の予想通りだった。しかし、その速さは完全に黒妻の予想を越えていた。ほとんど反射的に右側にあった部屋の中へとなだれこみ、瞬間、自身のすれすれのところを通過するところだった【窒素装甲】にまったく体重の乗っていない軽い裏拳を苦し紛れに肩に当てた。





そして、決着がつくにはそれで十分だった。





87: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 08:50:54.51 ID:cy5Z2HqDO

絹旗「うあああッ!?」

絹旗は黒妻の裏拳が当たった肩を押さえ、倒れこんだ。それもそのはずで、肩の骨には軽いヒビが入っていた。

絹旗(何かの能力者!?…違ェ、これは…!)

黒妻「…俺らのところにも君くらいの胸の女の子がいてさ」

黒妻はゆっくりと【窒素装甲】に近づく。その顔は少しばかりくもっていた。

黒妻「俺ァ無能力者だが、他の二人がその気になればいくらでもプライバシーを侵害できるような奴らでな。その対策のためにそいつらの個室を除いてこの家には至るところにAIMジャマーが設置されてるんだ」

【窒素装甲】は『暗闇の五月計画』により身につけた能力である。一方通行の演算パターンを用いているため、防御の際には自動制御で窒素が瞬間的に収縮し鉄壁の守りとなる。そのため、例え銃弾を浴びようが自身は窒素さえあれば無傷でいられる。

だが、その能力が暴走したらどうなるか。過剰に、しかもかなり通常よりも自分よりに圧縮された窒素は自身にダメージを与えていた。

黒妻(『当然、暴走やからどんな反応が起こるか分からへんし、毎回同じ結果が出るとは限らへんけどな』、か。さすがはLevel5だな)




88: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 08:52:43.53 ID:cy5Z2HqDO

黒妻「ちょっと悪いな」

黒妻は倒れた絹旗のコートを探りはじめた。

絹旗「何してンですか!」

黒妻「暴れないでくれよ。また自分にダメージがいくぞ」

絹旗にもはや打つ手はなかった。能力が使えなければただの少女。それどころか、黒妻が打撃を与えさえすれば自動制御で能力は発動してしまう。発動しないように自らで制御することくらいならできないこともないだろうが、それなら黒妻の拳がそのまま絹旗にダメージを与えるだろう。


黒妻「ケータイと財布、液体窒素…か。対遠距離用に何かあると思ったがこんなものか」

絹旗「く…」

『アイテム』全盛期の絹旗であればもっと違う装備もあったかもしれない。だが、暗部組織から離れたためにもはや武器の供給ルートは存在しない。おまけに麦野の異変に気付いてすぐに駆け付けたために新しく武器を集める暇などなかった。



89: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 08:54:20.22 ID:cy5Z2HqDO

黒妻「…っあぁ~、できればこれ以上手荒な真似はしたくないんだが」

そこまで言って、黒妻は悪寒を感じた。過去に何度か感じた、自分の人生の何かが懸かる瞬間の感覚。玄関に目をやると、金髪の男が銃に手をかけているのが見えた。

黒妻「チッ!」

黒妻は絹旗のコートをつかんで、再び部屋へと転がりこんだ。間一髪で今まで黒妻がいたところを2発の銃弾が通過し、霧谷がいる部屋の扉に当たった。

黒妻「おい!この子のことを殺す気か!」

黒妻は見えなくなった敵に向かって叫ぶ。次いで、相手も叫び返してきた。

浜面「絹旗がそのくらいで死ぬわけねぇだろ!」



90: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 08:55:39.32 ID:cy5Z2HqDO

黒妻「お前には分かんねぇだろうがこの家にはAIMジャマーが設置されている!そんなものが当たったらどうなるか分かんねぇのか!」

浜面「な…」

浜面はハッタリかと一瞬思った。しかし、冷静に考えればなんの仕掛けもないのに絹旗が倒れこんでおとなしくしているわけもない。

浜面「クソ!テメェ『ビッグスパイダー』の黒妻だろ!?こんなところで何してんだよ!」

黒妻「その言葉、そっくりそのまま返すぜ?駒場んとこの金髪くん?」




91: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 08:57:49.36 ID:cy5Z2HqDO

浜面は玄関から先へ進むに進めなかった。下手に突撃した場合、絹旗がどうなるか分からない。バレないように行くにしても、バレた瞬間に絹旗がやられる可能性もある。

浜面(考えろ!アイツの言ってことが本当ならどっかにAIMジャマーがあるはずだ!)

浜面は必死に突破口を探る。どんな修羅場も困難も、彼は機転と行動力だけで生き延びてきた男だ。

浜面(いや、AIMジャマーだって電気で動いてるはずだ。しかも室内に設置してあるっていうならバッテリーじゃなく直接電源から-)

だが、その思考もむなしく無駄に終わった。




92: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 09:00:35.04 ID:cy5Z2HqDO

絹旗「浜面…」

先ほど黒妻に部屋に放りこまれた絹旗が左肩をかばいながら出てきた。

浜面「絹旗!無事か!?」

浜面はすぐに絹旗の元へと駆け付けた。

絹旗「ええ。超ちょっと肩をやられましたが」

浜面「黒妻は…」

絹旗「なんか床に扉があって、そこから超逃げて行きました。ここはヤツの本拠地みたいですし、逃走用のルートも最初から用意してたんでしょう」

浜面「なら、俺もそこに…」

絹旗「恐らく既に遠くに逃げてるでしょうし、無駄です。それよりも超やることがあります」

浜面「なんだ?」

絹旗「麦野の捜索です。さっきの革ジャン野郎が言うには奥の部屋に居るとのことです」

浜面「! 麦野はここに居るのか!?」

絹旗「ええ、革ジャン野郎の言葉を信じるなら、ですが。まあ、どのみち麦野のケータイの発信が超途絶えたのがここですからね。何か手がかりでも見つかれば十分ってレベルでしょう」




93: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 09:02:19.69 ID:cy5Z2HqDO

絹旗と浜面はとりあえずこの家の探索をすることに決めた。麦野のケータイが現在位置を示した最後の場所。ここに何かがあるはずだった。

なぜ急に滝壺の家に来れなくなったのか。なぜこんなところに居たのか。なぜ赤茶色の髪の革ジャン-黒妻綿流がここに居たのか。それらの原因を一から推理する予定だった。

しかし、それらの予定はすべて狂う羽目になる。浜面達は知らなかった。黒妻と交戦している間、その前から、奥の部屋に居た黒妻の仲間の存在を。





94: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 09:03:57.79 ID:cy5Z2HqDO

浜面は奥の部屋へと続く扉のドアノブに手をかけた。そして、絹旗に目配せをする。

黒妻個人の家なのか、それとももっと大きな組織のアジトなのかは分からないが、ここが自分達にとって敵対関係にある者の本拠地。下手に動けば何かのトラップが作動するかもしれない。

慎重に、ゆっくりと扉を開ける。トラップの類はなかった。電気がついた、普通の部屋だった。浜面たちは部屋に入り、ぐるりと部屋を見渡した。この時、絹旗は既に嫌な予感がしていた。その原因はかつてうんざりするほどかいだ匂いだった。そして、すぐに異常を発見し、一気に心臓が飛び上がった。




95: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 09:06:45.61 ID:cy5Z2HqDO







義手を折られ、全身に深い切り傷を負い、血まみれになった麦野沈利がぐったりと椅子にもたれかかっていた。










96: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 09:10:43.10 ID:cy5Z2HqDO

浜面「麦野!」

絹旗「麦野!」

浜面と絹旗は麦野に駆け寄った。近くで見ると切り傷だけではない。顔にも切り傷があるがそれ以上に腫れあがり、脚には切り傷の他にも青アザも多くある。切り傷の方も服の上から何かで斬られたようであり、服もズタズタになっていた。
そしてなによりおびただしい量の血が麦野全身、そしてその周囲に流れていた。

絹旗「麦野!しっかりしてください!麦野!」

浜面「返事をしてくれ!麦野!」




97: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 09:12:12.23 ID:cy5Z2HqDO

絹旗も浜面も麦野に呼びかける。しかし、麦野はなんの反応も見せなかった。相変わらず、ぐったりと椅子にもたれかかっていた。それでも絹旗は諦めず、今度は脈を計った。

絹旗「!大丈夫です!まだ生きてます!浜面、救急車を!」

浜面「ああ!---!」

その時、浜面の視界に奇妙なものが映った。それは床から不自然に何かが生えているように見えた。しかし、実際には何かが生えているわけではなかった。それはなぜか床に設置された扉。恐らくは逃走用の通路のもの…




98: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 09:15:21.77 ID:cy5Z2HqDO

それに気付いた時、浜面は一目散に扉に向かおうとした。

絹旗「待ってください!」

だが、絹旗が浜面の腕を掴み制した。

浜面「放せ!麦野をこんな目に合わせたヤツを逃すわけにいかねぇだろ!」

絹旗「ですから超落ち着いてください!今行ったって追い付けません!」

浜面「関係あるか!地獄の果てまで追いかけてでもブッ飛ばしてやる!」

絹旗「滝壺さん!」

ピタリ、と浜面は抗うのをやめた。

絹旗「さっきの革ジャン野郎は私の能力を既に知っていました。ならば麦野個人が狙いというよりは『アイテム』を狙っている可能性の方が超高いです!」

浜面「-ッ!」

絹旗「救急車には私が連絡して麦野には私が付き添います!ですから浜面は滝壺さんのところへ!」

浜面「クソッ!」

浜面は部屋飛び出した。そして、浜面の心は怒りで満ちていた。ようやく暗い世界から解放されたのに、この世界の闇はいつまでもいつまでもまとわりついてくる。

浜面(統括理事会を退けたと思ったら今度はスキルアウトかよ!いつになったらアイツらは解放されるんだ!)

浜面は知らない。黒妻はスキルアウトとしてでなく、暗部組織『ウォール』として動いていることを。

浜面「クソッタレが!無事でいてくれよ!滝壺!」



99: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 09:24:53.11 ID:cy5Z2HqDO






とある路地裏にあるマンホールのふたが動いた。

霧谷「…ぃ、しょっ、と」

マンホールのふたが完全に外れると、中からボサボサ髪の少女が現れた。

霧谷「追ってこない…が、油断は禁物なんで」

少女はいそいそとふたを閉めた。実はこのマンホール、学園都市の水道局の地図にも、下水処理場の地図にも、消防局の地図にも、どの地図にも記載されてないものである。

それもそのはずで、実際には暗部組織『ウォール』の緊急避難通路の出入口である。

本来はあのマンションそのものが学園都市内のVIPが使用するために作られたものである。この逃走用の通路もVIPに万が一のことがあったため作られたもので、そのため上階の部屋よりも高値で取引されていた。『ウォール』はそのうちの一室を借りていたのである。




100: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 09:27:21.31 ID:cy5Z2HqDO

霧谷は偽マンホールのふたを閉めると、今度は大通りに向かって走りはじめた。
大通りに入ると、今度はまばらにいる歩行者に合わせて歩きはじめる。歩道橋を渡り、別の歩道に入ると、また大通りから裏道にスッと入った。

???「よう、無事か?」

少し歩くと声をかけられた。見ると牛乳パックを片手に持った男がいた。

霧谷「無事で。黒妻さんは?」

黒妻「ああ、無傷だよ」

霧谷「流石で」

霧谷は黒妻と合流し、再び歩きはじめた。




101: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 09:29:00.41 ID:cy5Z2HqDO

黒妻「そういや仕上がりはどうだったんだ?最後の方はかなり騒がしくしちまったが」

霧谷「問題なく、完璧な仕上がりなんで。チェックするんで?」

黒妻「イヤ、いいや。気分悪くなりそうだ」

霧谷「左様で」

黒妻「…っかし、俺も蛇谷のこととやかく言えねえな…装置使って能力者と対峙するなんてよ」

霧谷「しょうがないでしょう、真っ向からぶつかればリーダーでも無力化させることは難しいんで」

黒妻「そうかもしれねえけどな…」

そう言って黒妻は牛乳パックの中身をごくごくと飲みはじめた。どうにも、自分のやった行為が気に食わないらしい。




102: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/18(土) 09:30:48.43 ID:cy5Z2HqDO

霧谷「横須賀さんとリーダーは上手くいってるんで?」

あまり考えさせないために、霧谷は違う話題を振った。

黒妻「-プハッ。イヤ、まだなんにもアクションはないな。まだ接触してないんだろ」

霧谷「左様で…」

黒妻「失敗したら『ウォール』で逃亡生活…それはそれで面白そうだがな」

霧谷「…確かに。そしたら私が一番大活躍なんで」

霧谷は普段のヤル気のない顔に笑顔を浮かべた。

黒妻「ハハッ、確かにな」

黒妻も笑った。実際に逃亡生活が始まったら一番役に立つのは彼女だろうなと思っていた。

霧谷(ほっ…)

一方で霧谷は安堵した。黒妻の機嫌もいくらか戻ったようだった。

そして二人は裏道を進み、夜の帳の中に消えて行った。



107: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/20(月) 22:05:35.92 ID:eCN9Ug+DO





浜面はワゴン車に乗り、ようやく滝壺のアパートに着いた。道中、何度か滝壺の携帯電話に連絡を入れたが滝壺は電話もメールも返さなかった。

浜面(クソッタレ!黒妻の野郎…!)

浜面はワゴン車から降りて滝壺の家へと走る。滝壺の携帯電話には電波も届いているし、電源も入っているからもしかしたら寝ているだけかもしれない。だが、この状況では滝壺の身に何かあったと考えるのが妥当であった。

浜面(滝壺とフレメアだけじゃ戦力は0みたいなもんだ!せめて俺だけでも残っていれば…!)

後悔している間に滝壺の部屋に着く。浜面はドアノブをガチャガチャと回すが鍵がかかっていて開くことはできない。

浜面(まさか滝壺もフレメアも襲われてさっきの麦野みたいに---)

最悪の可能性が頭をよぎる。さらに激しくドアノブをガチャガチャと回すが扉はびくともしない。それならば、と浜面はベルトに挟んでいた銃に手を回す。跳弾がどうのこうのと考えている余裕はなかった。




108: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/20(月) 22:06:58.71 ID:eCN9Ug+DO



しかし、ふいにガチャリと鍵を開ける音がした。

そして、眠そうに目こする滝壺が扉を開けて出てきた。

滝壺「どこに行ってたの?きぬはた。私もふれめあももう寝ちゃって…」

浜面「滝壺!」

浜面は出てきた滝壺のことを思わず抱きしめた。

滝壺「ふぇ?はまづら?」

浜面「よかった…!無事だったか…!」

滝壺「? どうしたの?何かあったの?」

浜面「…ああ。実は-」

滝壺「待って。一旦中に入って。寒いしくるしい」

浜面「えっ?あ、悪い」

そういって浜面はようやく滝壺から離れた。滝壺の方はなにがなんだか分からないという顔をしていた。




109: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/20(月) 22:08:46.19 ID:eCN9Ug+DO





滝壺「…そんな…むぎのが…」

浜面「…それで絹旗が麦野についてる。多分今ごろ治療中だろう」

浜面は一部始終をすべて滝壺に話した。フレメアの方は別室ですやすやと寝ているらしい。

滝壺「…私も病院に」

浜面「ダメだ。下手に動き回ると黒妻のヤツが狙ってくるかもしれない。それにフレメアを置いていく訳にはいかない」

滝壺「…」

浜面「滝壺を狙うなら、俺と絹旗がいなくなってる間にここを襲撃しているはずだ。襲撃してこないってことは恐らくこの場所は知られていない。ここは安全なはずだ」

滝壺「でも…」

浜面「麦野が心配なのは分かる。でも俺たちが病院に行ったところでできることなんてないだろ?」

滝壺「…わかった」

浜面「よし…じゃあとりあえずこっちの戦力だけでも確認しておくか。なんか武器になりそうなものはあるか」

滝壺「うーん…特には…体晶だってもう捨てちゃったし」

浜面「それはもう戦力として考えるな。それに相手はスキルアウトだし滝壺の能力は…」

そこまで言って浜面は違和感に気付いた。

浜面(…あそこはどう見たって高級マンションの類だったよな…スキルアウトがそんなところを本拠地にできるか?)

滝壺「…」ウーン

浜面(『ビッグスパイダー』は派手に能力者狩りをやりすぎて警備員に一斉摘発されたはずだ。それ以前に蛇谷とかいうヤツが黒妻が消えたあとに【黒妻】を名乗って『ビッグスパイダー』をまとめてたはずだろ)

滝壺「…」ブキ…ブキ…

浜面(でも黒妻本人は腕が立つってのは駒場のリーダーだって認めてた。なら…黒妻は雇われた?敵はスキルアウトなんかよりもっと大きな組織か?)

滝壺「あ」

浜面「どうした?」

滝壺「出刃包丁ならあるよ」
浜面「…ないよりマシ、か?マシだな」ウン




110: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/20(月) 22:10:45.08 ID:eCN9Ug+DO

絹旗「…そうですか。超よかったです。…はい。…了解です」

絹旗は病院のロビーで携帯電話で浜面と話していた。先ほどまで医師の診断を受けており、その結果左肩にヒビが入っていることが判明したため、三角巾で軽く固定されていた。

絹旗「ええ、まだ手術中でして…。はい…。あ、私の方は超平気です。…ええ、それでは」

絹旗は携帯電話の電源を切った。どうやら、滝壺もフレメアも無事だったらしい。そして浜面は安全圏であると思われる滝壺の家にとどまり、万が一に備えておくとのことだった。

絹旗(とりあえず、滝壺さんとフレメアの方は大丈夫でしょう。問題は…)

絹旗はロビーから手術室に向かう。そこでは重傷を負った麦野が治療を受けている。





111: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/20(月) 22:11:49.70 ID:eCN9Ug+DO

絹旗(さっきは超動転してしまいましたが…応急処置をしていた時に感じた違和感、それに駆け付けた救急隊員の反応…)

少々歩くと手術室の前に着いた。【手術中】のランプが赤く光っていた。

絹旗(超楽観的な考えかも知れませんが…もしかしたら麦野は…)

そこまで考えると、【手術中】のランプがフッと消えた。どうやら手術が終了したようである。

絹旗「あ…」

手術室の扉が開き、中から先ほど絹旗が診察を受けた医師とは別のカエル顔の医師が出てきた。【冥土返し】の異名をもつ名医である。

冥土返し「…彼女の付き添いの子だね?」




112: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/20(月) 22:12:56.51 ID:eCN9Ug+DO

絹旗「はい。あの、麦野は…」

冥土返し「心配いらないね。…っと、ちょっと退いてくれるかい?」

冥土返しが自身も端に寄りながら、絹旗に通路を開けるように促した。すると、手術室の中から数人に囲まれ、横になっている麦野が現れた。どうやらこれから病室に運ばれるらしい。

そして、絹旗は驚いた。すれ違い様に見えた麦野の顔はなんと傷ひとつないように見えた。

冥土返し「…もしかしたら、ある意味今までで一番タチの悪い手術だったかもしれないね?僕としたことが危うく麻酔の過剰投与をするところだった」

絹旗「あの…何が…」

冥土返し「切り傷も内出血もすべて偽物…良くできた特殊メイクだったね」




113: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/20(月) 22:15:21.30 ID:eCN9Ug+DO

絹旗「! そうですか。超よかったです…」

絹旗の違和感は妥当なものだった。大量の出血に対して、安定している脈拍。応急手当てをした後の少なすぎる傷口からの出血。恐らくあの大量の血液は特殊メイク用の鶏の血か、どこからか持ち出した輸血パックでも使ったのだろう。

冥土返し「それだけならまだイタズラで済んだけどね。その中にひとつだけ本物の傷が混じっていた。銃で撃たれたんだろうね」

絹旗「え…」

冥土返し「だが、それも実弾じゃなかった。恐らくは警備員の一部で使われている麻酔ゴム弾。至近距離で撃たれたみたいだけど、急所は外れてたからね。摘出は難しくなかった」

絹旗「…そう、ですか」

冥土返し「彼女には悪いけど、引っかけ問題でもやらされてる気分だったよ。とりあえず、術前に適量の麻酔を打ったから彼女は朝まで目が覚めないだろうね」

絹旗「分かりました」

麦野の安全を聞き、絹旗は安堵した。しかし、同時に混乱もしていた。もはや、麦野を襲った連中の意図が掴めなくなっていた。

絹旗(麻酔ゴム弾を使ったということは少なくともすぐに麦野を殺すつもりはなかったということ。麦野を気絶させて連れ去り、特殊メイクを施したのでしょうが、そもそも特殊メイクなんて施す意味が超分かりません)




114: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/20(月) 22:17:26.53 ID:eCN9Ug+DO

絹旗(なにより麦野が至近距離で撃たれたってことが超信じられません。ほんの一月前まで暗部の超前線で活動してた麦野にそんな真似ができる人間がいるなんて考えられませんし…)
 
冥土返し「君の方は入院する必要はないみたいだけど、時間も時間だからね?ベッドの空きならあるから、一晩くらい泊まっていってもかまわないよ」

絹旗「…では、お言葉に超甘えさせてもらいます」

絹旗(とにかく『アイテム』が狙いなら再び麦野を狙ってくる可能性も0じゃありません。ここは麦野の近くいるのが超妥当でしょう)

麦野を狙った敵の規模も、所在地も、その目的も分からない現状ではバラバラになることは得策ではない。滝壺とフレメアの守りに浜面しかついていないことは少し気がかりだが、なんとかなるであろう。あんなのでもLvel5の襲撃を三度も退け、統括理事会の刺客を返り討ちにし、さらには駆動鎧の大軍すら打ち負かしたチンピラ。なんやかんやでチート人間である。




115: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/20(月) 22:19:06.64 ID:eCN9Ug+DO

看護師「先生!」

そんなことを考えていると通路の奥から看護師が慌てて走ってきた。

冥土返し「どうしたんだい?そんなに慌てて」

看護師「た、大変です!よく分からないんですが、た、大量の駆動鎧が!」

絹旗「…え?」

冥土返し「駆動鎧?…が、どうしたんだい?」

看護師「大量の、駆動鎧が、この病院の敷地の周りにいます!囲まれてます!」




116: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/20(月) 22:20:05.03 ID:eCN9Ug+DO

絹旗「-ッ!」

冥土返し「…警備員じゃあないのかね?」

看護師「暗くてよく見えなかったのですが見たことない形をしてました!敷地内に入ってこないで囲んでいるだけなんですが、もう気味が悪くて…」

冥土返し「警備員に連絡は?」

看護師「しました!すぐに駆け付けると!」

冥土返し「なら、まずは患者が全員いるかの点呼。その後に医療スタッフ、宿直の見回りなどの点呼。敷地内に入ってこないなら、まだ大丈夫だね?」

看護師「は、はい!」

大まかな指示を受け、看護師は来た道を戻って行った。恐らく、今や院内で起きている人間は皆パニックに陥っているだろう。そんな中で、まとも点呼が取れるかどうかは不明である。




117: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/20(月) 22:23:50.43 ID:eCN9Ug+DO

冥土返し「さて、僕も手伝わないといけないね。君もどこかの部屋に行くといい」

絹旗「いえ、私はヤツらの相手をしてきます」

冥土返し「馬鹿なことを言っちゃいけないね?この病院を囲むと表現できるような数だ。おまけに君もケガをしている」

絹旗「…ヤツらの狙いは私と麦野です。私たちがここに来たからヤツらはここに来たんです」

冥土返し「ケガ人が病院に来るのは当然のことだ。責任を感じることなんてないね?」

絹旗「ですが…」

医師「先生!」

先ほど看護師が消えた通路から今度は白衣を来た若い医師が走ってきた。

医師「大変です!6階の患者さんが一人いません!」

絹旗「!」

冥土返し「本当かね?」

医師「今手が空いてるスタッフで探していますが、まだ発見されてません!消灯時間前にはいましたので、恐らくはあの駆動鎧たちが現れてから…」

絹旗「え?」

冥土返し「分かった。僕もそちらを手伝おう。点呼が終わった人間は院内の捜索にあたるように伝えてくれ」

医師「分かりました!」

冥土返し「…駆動鎧に挑もうとする元気があるなら、こちらに手を貸してほしいんだけどね?」

絹旗「…いいでしょう。超手伝いますよ」

冥土返し「助かるよ」

絹旗は駆動鎧に仕掛けるのをやめた。なぜなら、考えが変わったからだ。




118: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/20(月) 22:26:29.85 ID:eCN9Ug+DO

先ほど患者が消えたと言われた時、絹旗は麦野がさらわれたのだと思った。しかし消灯時間前にはいたという発言から麦野でないことは分かった。そして、同時に不可解な点がいくつも噴出した。

絹旗(病院に殴り込みにくるなんてことをするくらいなら、麦野をあっさり手放す訳がありません)

先ほどのマンションの守りは明らかに少なすぎた。それでも麦野・絹旗という『アイテム』の主力を無力化できたのに、浜面が出てきた瞬間に一目散に逃げ出した。

絹旗(状況から見て、あの場に少なくとも他にもう一人は革ジャン野郎の仲間はいたはず…あんなに場馴れしたヤツが銃を持った浜面一人に怯えて逃げたとは考えにくい)

AIMジャマーの範囲外から【窒素装甲】の応用で突っ込んだ絹旗に対する対応から見ても素人ではない。銃持ったチンピラを見て怯えるどころか絹旗の身を案じる余裕すら見せていた。

絹旗(てことは…浜面に怯えたんじゃない。ヤツらはあの瞬間に何かを超達成したってことですか)

にもかかわらず、病院の敷地の周りに大量の駆動鎧。そこから絹旗は結論を導き出す。

絹旗(同じ連中か、他の連中によるまったく別の事件に巻き込まれてるのかは超分かりませんが、狙いは麦野ではない)

絹旗(…というより…『アイテム』ですらない?)



124: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/21(火) 23:36:49.84 ID:9Cze5r9DO





???「ハッ…ハッ…」

暗い夜道を一人の男が走っていた。走っていた、というよりは何かから逃げていた。

???(なぜ…一体何が起きている?)

実はこの男、先ほどまで病院に入院していた。にもかかわらず、患者の衣服としては真逆の服装をしていた。身体にピッタリとフィットした黒のスーツである。おまけにヘルメットまで装着している。

端から見ればただの変人だが、分かる人間が見れば特殊な駆動鎧を動かすための装備だと分かる。更に、この装備は駆動鎧に乗らずとも様々な面で身体をサポートしてくれる。おかげで、入院中の身だというのに健常者以上の速度で走ることができた。




125: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/21(火) 23:38:38.46 ID:9Cze5r9DO

???(分からない…分からないがアレが動いてる以上、恐らく奴らの狙いは私だ。とにかく逃げねば…!)

だが、その逃走も無意味だった。

???「シルバークロース、だな?」

男の前に自分と同じ格好をした人間が現れた。スーツのためにその人間が筋骨隆々の大男であることが分かった。

シルバークロース「ちっ、何者だお前は!」

???「『卒業生』だ。どうにも『新入生』のヤンチャがすぎるようなのでな。わざわざOB自らシメにきてやったぞ。」





126: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/21(火) 23:40:20.81 ID:9Cze5r9DO

『卒業生』-第三次世界大戦終結の際に一方通行の宣言により解放された暗部組織の人間たちのことである。彼らは人質や脅迫などで無理やり暗部組織に組み込まれていることが多かった。だが、学園都市は来るべき『ある組織』との戦いに備え、自主的に暗部組織に残る、もしくは加入する人間を集めた。それが『新入生』である。




127: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/21(火) 23:42:00.52 ID:9Cze5r9DO

シルバークロース「…私の『クローゼット』から駆動鎧を動かしたのはお前か」

???「そうだ。」

シルバークロース「一体どうやって…」

???「敵に一から十まで教えてもらうつもりか?甘過ぎるぞ『新入生』。」

ヘルメットで互いの顔は見えないが、シルバークロースの顔には焦りが浮かんでいた。

対して、大男の方は表情が見えずとも異様なオーラを放っていた。

???「まあ、『卒業生』としてアドバイスくらいくれてやろう。あんな真っ昼間の、しかも地下街なんかで暴れ回れば足が着くのは当たり前だぞ。」

シルバークロースは『卒業生』である一方通行及び『素養格付』を保有する浜面仕上をつなげて危険分子とし、統括理事会に処分の許可を出させようとした。そのラインをつなげるために狙われたのが、両者と係わりをもつ人物、フレメア=セイヴェルンである。

その際に手段を選ばず動いたことが今回のことにつながったらしい。




128: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/21(火) 23:44:06.50 ID:9Cze5r9DO

???「おまけにお前が大怪我したせいでまともに下部組織に指令も出せていない。場所もセキュリティも分かれば策も利用法もいくらでも打てるぞ。」

シルバークロース「く…」

???「任務を単発で考えるから雪だるま式に失敗する。何事も繋がっているのだ。」

憮然とした態度で語る大男。対して、シルバークロースは周囲を警戒する。

シルバークロース(駆動鎧はどこに隠れてる…深夜の静けさなら動いただけで音はするはず…)

???「目の前に敵がいるのに他の心配事か?」




129: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/21(火) 23:46:16.96 ID:9Cze5r9DO


シルバークロース「なっ」

ほんの一瞬のうちに大男の間合いに入っていた。軍人のような体格をした人間が補助まで受けているため、もはや人間離れした速さになっている。

シルバークロース「ガハッ!」

そして、大男のボディブローがシルバークロースの腹に突き刺さる。それだけで、シルバークロースの身体が十数センチ浮いた。速さだけでなく、そのパワーももはや人間のそれとは違っていた。

???「肉弾戦は苦手か?」

シルバークロース「ゲホッ…ク、ソ」

もはや内臓が思い切りシェイクされてまともに息もできず、うずくまる。大男はそれを見下ろしていた。





130: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/21(火) 23:47:48.44 ID:9Cze5r9DO

シルバークロース(駆動鎧さえ…駆動鎧さえあれば…!)

???「たらればの話など考えて何になる。駆動鎧ならここにはないぞ。病院の周りに放置してある。」

シルバークロース「!?」

???「駆動鎧に乗っていたのは俺を含めて二人だけだ。移動だけなら大抵の駆動鎧は自動制御で動ける。」

つまり、あの大量の駆動鎧はシルバークロースを釣るためだけのハッタリ。それに気付かず、任務に失敗したため処分されると早とちりしたシルバークロースは慌てて病院を抜け出してしまったのだ。

だが、シルバークロースが驚いたのはそこではない。正確に言えばそこだけではない。

シルバークロース「なぜ、私の、考えが…」

???「何を驚いている。読心系能力者などこの街には掃いて捨てるほどいるぞ。」





131: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/21(火) 23:50:29.41 ID:9Cze5r9DO


???「とはいえ、俺には異能力程度しか強度はないがな。さて…」

そう言うと大男はうずくまっているシルバークロースの腹に思い切り蹴りを入れる。

シルバークロース「がッ!…ごボ、ガハッ!」

シルバークロースは身体を吹っ飛ばされ、口から血の塊を吐き出した。いよいよ内臓を損傷したらしい。

???「『卒業生』の優しいご教授の時間は終わりだ。安心しろ。俺の目的はお前の殺害ではない。お前だと分かる程度に原型を保ってお前をズタズタにすることだ。俺にズタズタにされて尚、息があれば先ほどのアドバイスを参考にしろ。」

シルバークロース「ヒ…」

さらりととんでもないことを宣言する大男。もはやシルバークロースに戦意はなかった。

???「この【内臓潰し】の横須賀、幼い少女をダシに使うような根性無し相手に容赦はせんぞ。」





135: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:25:20.95 ID:NZUPxcvDO


シルバークロースと横須賀が交戦しているころ、その場とは遠く離れたところで、一人の少女が深夜徘徊を行っていた。パンクロックな格好で、それなのになぜかビニール製のイルカのぬいぐるみが背にくっついている。

彼女もシルバークロースと同じく『新入生』である。名前は黒夜海鳥。そして、彼女は少し前に下部組織から報告を受けていた。『シルバークロースが行方不明』。それを聞いて彼女はこう思う。

黒夜(だからなんだっつーの)

確かに彼女はシルバークロースと共に動いていた。だからと言って別に馴れ合う仲でもない。利用するだけ。むしろ、入院して動けないシルバークロースなど1ミリたりとも興味はない。




136: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:27:04.97 ID:NZUPxcvDO


黒夜(そんなことで私の安眠を妨げるな。報告したやつ後でぶっ殺す)

しかし、起きてしまったらなかなか寝付けない。仕方ないしコンビニ行ってなんか買ってくるか、と出歩いてきた次第である。今は人気のない大通りに出ている。深夜なので出歩いている人間などどこにも見当たらない。人などいないのに街灯は数メートルおきに道路を照らしていた。

「なんや、住居不法侵入はせんでよさそうやな」

ふいに声が聞こえた。次いで、右腕に衝撃が走った。

黒夜「あん?」

見ると右腕が二の腕のあたりから吹っ飛んでいた。

「君も義手かいな。なんや今流行っとんの?」





137: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:28:31.09 ID:NZUPxcvDO


黒夜は素早く頭を働かせる。いや、ほとんど反射的に動く。

黒夜(敵!)

瞬間的に左腕に窒素を収縮。そして、自分の身体に巻き付ける様に思い切り振り回す。それだけでコンクリートに深い亀裂が入り、街灯が真っ二つになった。

「おっかないなあ。気ぃつけてや」

また声が聞こえた。しかし、奇妙な感覚だった。声は聞こえるのにどこから聞こえるのか分からない。どこかから叫んでる訳じゃないのに、相手の姿は見えない。普通の人間ならパニックに陥ってもおかしくない。しかし、黒夜は平然としていた。

黒夜「第六位の【隠密行動】か。『卒業生』がなンの用ですかァ?」





138: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:30:10.75 ID:NZUPxcvDO

【隠密行動】-Level5第六位の能力名。その能力は自身の存在解像度を著しく下げる能力。視覚的に完全に見えなくなり、さらには索敵レーダー、赤外線装置、サーモグラフィーなどの機器すら感知できなくなる。また、気配などの第六感的分野も感じることはできない。





139: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:31:46.42 ID:NZUPxcvDO


「なんの証拠があってそないなこと言うとんねん。そもそも第六位なんてホンマにおるの?」

黒夜「『書庫』のテメェの正規データなんざ暗部くれェのアクセス権限がありゃァ余裕で調べられンだよ。姿も気配も絶って声だけ届けさせるなンてキモイ芸当はテメェしかしねェだろォがよ」

「ふぅん。複数の能力者が補い合ってるって可能性は考えないんやね」

黒夜「ハッ、例えそうだとしてもよォ」

そして、黒夜は先ほどの様に再び左腕に窒素を収縮させる。しかしその量は、大きさは、先ほどの倍以上である。

黒夜「こォしてまとめて吹っ飛ばしゃァなンの問題もねェだろォがよォ!」

左腕を縦横無尽に振り回す。今度は凄まじい轟音と共にコンクリートはぐちゃぐちゃになり、街灯はバラバラになっていった。





140: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:33:44.54 ID:NZUPxcvDO

だが

「せやから危ないっちゅうてるやろ」

ガン!と言う音と共に黒夜の左腕は吹っ飛ばされた。

黒夜「な!?」

「ほんでそっちも義手かいな。もしかしてホンマもんの人造人間か?」

またしても不気味に声だけが聞こえる。確かに黒夜に人を蹴散らした手応えはなかった。それでも、腕を吹っ飛ばされるはずがない。【隠密行動】は見えなくなったり感じなくなったりするだけで、実際にはそこに居るはずなのだ。物質がすりぬけたりする訳ではない。

黒夜(自分でもランダムで腕ぶン回してたのに全部見切ったってのか!?遠距離から狙ったにしてもめちゃくちゃに動き回る腕を正確に狙えるもンなのか!?)

見えない敵の理解できない攻撃。複数人数いるというのももしかしたら本当かもしれない。





141: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:36:57.53 ID:NZUPxcvDO


「さて、君の能力…【窒素爆槍】やったっけ?腕なかったらどうにもできひんのやろ?」

黒夜「…」

「早くも詰みやね。何が『新入生』や、あっけない。そら先輩も心置きのぉ卒業できひんわ」

黒夜「ギャハッ」

「ん?」

黒夜「アッはギャハァ!ナメてンじゃねェぞ三下がァ!」

黒夜の背中に張りついていたイルカが黒夜の足元に落ちた。そして黒夜はそれを思い切り踏み潰す。

「な!?」

パァン、とイルカが弾けると中から大量の赤子の手のようなものが黒夜のなくなっていた義手の先に集まった。それだけではない。なぜか路地裏の方からも同じような赤子の手が集まってくる。もはや赤子の手だけで先ほどの義手の何倍もの大きさになっていた。

黒夜「運が悪かったな三下ァ!よりによってこんなところを襲撃ポイントにするとはなァ!」

そう言って黒夜は【窒素爆槍】を噴射して宙に飛ぶ。

そして、10mくらい飛んだところで止まった。

黒夜「もォめんどくせェ、ここいら一帯まとめて吹き飛ばしてやンよォ!」

先ほどは比べものにならない窒素の槍が辺り一帯を薙払う。それと同時に黒夜のバランスも崩れるがお構い無しである。むしろ、グラグラと揺れ回り、動き回りなので例え遠距離攻撃でも捉えきれない。





142: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:39:07.21 ID:NZUPxcvDO


先ほどの轟音が倍になり、加えて周りの建造物のガラスが軒並み割れる音がした。コンクリートどころかその下の土までぐちゃぐちゃになり、街灯も離れたところの街路樹もすべて混ぜ合わされていった。

そして、もはや黒夜の武器は【窒素爆槍】だけではない。吹き飛ぶコンクリートも街灯も街路樹も、すべてが散弾銃のように飛び散る。

黒夜「おらおらどうした三下ァ!さっきみたいに腕ぶっ飛ばしてみろよ!余裕たっぷりに見下してみろって!」

黒夜の浮遊しているところは最初の位置とは大分変わっていた。能力の推進力で浮いているのにめちゃくちゃにその能力を振り回したからだ。おかげで何度かもんどりうったが、狙いもへったくれもなくすべて薙払うつもりなのでなんの問題もなかった。

「ぐああッ!」

黒夜「お?」

今確かに聞こえた。あのムカつく声がうめき声に変わっていた。そして、街灯をぶっ壊したせいでよく見えないが、明らかに大量の血の跡。更に、その近くに奇妙に歪んだ空間。

黒夜「見ィィィィィつけたァァァァァァ!」





143: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:42:25.49 ID:NZUPxcvDO

その場所に向かって渾身の一撃を叩きこむ。瞬間、コンクリートは吹き飛び、地面が大きくえぐれた。

そして、再び大量の血が飛び散る。

黒夜「ヒャッハァ!汚ねェ花火だ、ってかァ!?」

確実に仕留めた。どう見たって致死量だ。街灯を粉微塵にしたせいで遺体がよく見えないが、あの血の量なら遺体も粉微塵になったかもしれない。

勝利を確信して、黒夜は地上に降り立つ。

黒夜「ギャハハハ!これなら安心して卒業できンだろォ!あの世でのンびり茶ァすすってろクソボケ!ギャハハハハハハハ!」





144: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:45:12.83 ID:NZUPxcvDO



「あ~、死ぬとこやった」

そんな声が聞こえた気がした。そして、見えない鉄の壁ようなものが思い切り身体の前面ぶっ叩いた。

黒夜「ご、があああああああああ!?」

十数メートルはノーバウンドで吹っ飛ばされた。衝撃で赤子の腕は全部ぶっ飛んだ。そのままぐちゃぐちゃになったアスファルトを押し退けながら転がった。

「偽装用の輸血パック。もって来といて正解やったな」

見えない敵はまだ生きていた。




145: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:47:23.07 ID:NZUPxcvDO

「まだ生きとるみたいやね」

黒夜「あ、が…」

黒夜は生きている。しかしもはやほとんど動けなかった。

黒夜(アバラがほとンどイカれてやがる…なにしやがったンだ)

「かなり不快やけど、君も僕と同じ考えやったんね」

見えない敵は語りだす。相変わらずどこから話しているのか分からない。

「学園都市は能力者を生み出す街。それと同時に科学の街や。なら、その街で一番強いんはなにか。簡単や。科学で武装した能力者に決まっとる」

この考えは黒夜とは細部が違うが、根幹は同じだった。だから黒夜は両腕を義手にし、赤子の手も常備していた。

「姿見せへんから分からんやろうけどな。実は僕今駆動鎧に乗ってんねん。」





146: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:49:06.67 ID:NZUPxcvDO

今さらだが、この見えない敵の正体は当然青髪ピアスである。

青髪ピアスは横須賀と共に『クローゼット』に乗り込み、制圧。自動制御で動かせる駆動鎧を片っ端から起動させ、自身らも駆動鎧を操り病院へと移動した。

その後、シルバークロースを横須賀に任せ、青髪ピアスは黒夜のもとへと向かった。当初は黒夜の自宅へ踏み込むつもりだったので駆動鎧を脱ぎ捨てたのだが、自宅付近で深夜徘徊中の黒夜を発見し、交戦する。




147: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:50:19.82 ID:NZUPxcvDO


黒夜との接触時、青髪ピアスの装備は横須賀と同じく駆動鎧用のスーツとヘルメット、それに衝槍弾頭が装填された拳銃、輸血パック等が入ったバッグだった。青髪ピアス自身体格がいい上に裏社会で生き抜いてきた人間。黒夜の【窒素爆槍】をかわし、義手を吹っ飛ばしたのはこの装備によるものだった。

青髪ピアスの予定ではここで黒夜は打つ手がなくなるはずだった。だが、黒夜が奥の手を発動させたために輸血パックで偽装し一時撤退。再び駆動鎧に乗り込み、油断している黒夜に駆動鎧で思い切り体当たりしたのだ。

「危なかったで実際。下手したら僕まで義手になってまうところや」





148: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:52:04.20 ID:NZUPxcvDO


黒夜「バカな…」

「なにがや?」

黒夜「『書庫』のデータじゃテメェの能力は自身にしか効かないとあった。駆動鎧にまで作用するわけが…」

「アホか。誰があない胡散臭い連中に能力丸出しにすんねん。Level5の人間やったら大抵奥の手ぇもっとるもんや。第三位は数十キロの鉄クズでも【超電磁砲】撃てるらしいし、第一位なんかよう知らんけど翼生えるらしいで」





149: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:53:10.89 ID:NZUPxcvDO


黒夜「クソが…」

「さて、すでに虫の息やけど…もうちょいアクセントがほしいな」

そして、黒夜の身体が宙に浮かぶ。

黒夜「く…」

「僕も結構なフェミニストなんやけどね。君と【原子崩し】だけには手加減できひんよ」





154: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 17:18:45.77 ID:yM4gLPsDO

-深夜、第七学区の病院を大量の駆動鎧が包囲する事件が発生しました。しかし犯人は発見されず、駆動鎧は放置された状態で警備員に回収された模様です。愉快犯の犯行とは考えにくく、また、開発中の駆動鎧も発見されたことから、警備員は開発局員の犯行、駆動鎧に積み込まれたAIの暴走の両方向から捜査方針を固めてる予定で-


-昨夜未明、第十九学区で能力者の仕業と見られる大規模破壊が行われました。これにより、被害者と思われる重傷を負った少女を現場付近で発見。警備員は詳しく話を聞く方針で-






155: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 17:21:46.97 ID:yM4gLPsDO

長い夜が明けた。結局、浜面は寝ずに夜を過ごした。滝壺が交代で起きていようと提案していたが、ワゴン車で爆睡していた浜面はこれを断った。そして、朝からこのニュースだ。浜面は慌てて電話をかけた。

絹旗『ふぁい、絹旗です。なんれすかやっと寝れると思ったのに…』

寝呆けた声が返ってきた。麦野と絹旗がいる病院が駆動鎧に囲まれたというニュースを見た時は心臓が縮み上がったが、この様子なら大丈夫そうだ。

浜面「絹旗、無事か?俺今ニュース見て知ったんだが…」

絹旗『ああ、もうニュースになってましたか。大丈夫ですよ。ただ病院の周りに駆動鎧がいただけなんで超被害0です』

浜面「そうか…なあ、これも連中の仕業だと思うか?」

絹旗『…それについて考えたんで聞いてもらえますか。ついでに、麦野の様態も』

浜面「ああ、俺も考えた分は伝える」





156: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 17:23:26.79 ID:yM4gLPsDO




浜面「なるほどな。狙いは『アイテム』じゃない、か。筋は通ってるな」

絹旗『てゆーかあの革ジャン、スキルアウトだったんですか。浜面とえらい違いですね』

浜面「おい、どういう意味だ」

絹旗『浜面の方が超いい男って意味ですよ』

浜面「けっ、まあいいや。とにかく狙いは『アイテム』じゃないなら俺らももう少ししたら病院に向かうわ」

絹旗『ええ、いいですよ。駆動鎧の代わりに警備員が病院囲んでて超鬱陶しいですが』

浜面「なら安心だろ。仮におれらの考えが外れてても、警備員の厳戒態勢の中で襲い掛かるバカもいないだろ」

絹旗『それもそうですね。では、面会時間は9時からなのでその頃に』

浜面「ああ、じゃあな」

そして、浜面は携帯を切った。




157: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 17:25:09.43 ID:yM4gLPsDO


滝壺「はまづら?」

浜面「お、おはよう滝壺。もう起きたのか?」

寝室から滝壺が起きてきた。いつものピンクジャージでなく、ピンクパジャマを着ている。

滝壺「おはよう。今しゃべってたのはきぬはた?」

浜面「ああ、どうやら麦野は大丈夫みたいだ」

滝壺「! ホントに!?良かった…」

浜面「ま、殺したくらいじゃ死なないのが麦野だからな。後で見舞いに行こう」





158: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 17:27:00.75 ID:yM4gLPsDO


滝壺「…大丈夫かな?」

浜面「ああ、さっき絹旗と話して出した結論なんだけど、たぶんヤツらの狙いは『アイテム』じゃないんだ。それに今なら警備員も…」

滝壺「それもだけど、そっちじゃなくて」

浜面「え?」

滝壺「ふれめあのこと」

浜面「あー…」

フレメアはずっと寝ていた。なので、浜面が居ることも麦野と絹旗が病院にいることも知らない。

滝壺「さすがに何も教えないわけにはいかないと思う。昨日もずっと不信がってたし」

浜面「そうだよなぁ…最低でも麦野と絹旗が病院にいることくらいは教えないと」

滝壺「…ふれんだのこと、教えるのはまた今度かな?」
浜面「…ひとまず麦野が回復してからだな。アイツが自分で話すって言ってるんだ。俺らが話すべきじゃない」

滝壺「…わかった」





159: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 17:28:01.55 ID:yM4gLPsDO




フレメア「うにゅう…」

浜面「お、起きたか」

滝壺「おはよう、ふれめあ」

しばらくすると寝室からフレメアが目をこすりながら出てきた。

フレメア「あれ?浜面?」

浜面「よっ」

フレメア「なんで浜面がいるの?」

浜面「あー…それはだな」

滝壺「わたしの彼氏だから」ダキッ

フレメア「oh…」

浜面「た、滝壺さん!?」

フレメア「でも、大体答えになってない、にゃあ」

滝壺「…そうだね」ウン





160: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 17:29:15.97 ID:yM4gLPsDO


フレメア「麦野と絹旗は?結局、昨日は滝壺お姉ちゃんしかいなかった」

浜面「えーとだな。昨日、麦野がここに来る途中に交通事故に遭ってな」

フレメア「え…?」

浜面「それで…絹旗はそれの付き添いで病院にいるんだ。うん」

フレメア「…大丈夫なの?」

浜面「あ、ああ。そんなにひどいケガじゃないんだ。ちょっと入院するくらい」
フレメア「よかった~」

交通事故というだけでこんなにも心配する。実際は拉致されて銃で撃たれた上から謎の特殊メイクだったのだが、こんなことを伝えたら必要以上に心配するに決まっている。

浜面(こりゃますますフレンダのことは言いだし辛いな)

いずれは伝えなければならない事実。しかし、それを伝えた時この少女はどんな反応をするだろうか。想像するのは容易だが、想像したくはなかった。





161: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 17:30:23.07 ID:yM4gLPsDO


フレメア「わたしも大体お見舞いに行く」

滝壺「まだダメだよ」

フレメア「? 絹旗はお見舞いに行ってるんじゃないの?」

浜面「絹旗は昨日の夜からずっと病院にいるんだ。俺たちは9時になったら行っていいみたいだから、そん時に行こう」

フレメア「わかった、にゃあ」

浜面「よし、じゃあメシにすっか」






162: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 17:31:21.16 ID:yM4gLPsDO




午前9時過ぎ、浜面たちは麦野と絹旗がいる病院にワゴン車で向かっていた。

滝壺「…なんかすごい数の警備員だね」

浜面「昨日の夜に駆動鎧が大量に徘徊してたらしいからな。調査と警備で忙しいんだろ」

フレメア「大体怖い…」

フレメアが怖がるのもうなずけた。深夜から駆り出されたせいか、事件の重大さのせいか、警備員は皆険しい顔をしていた。

それに加えて、事件を起こしたのが駆動鎧というのも怖い印象を与えているのだろう。なんせちょっと前に学園都市中を駆動鎧に追いかけ回され、命を狙われたのだから。

浜面「安心しろ。俺がついてる」

フレメア「むぅ」

滝壺「はまづらはいざというときに頼りになるから大丈夫だよ」

フレメア「…知ってる、にゃあ」

浜面「…なんかこそばゆいな。お、着いたぞ」

そして浜面たちは病院に到着し、麦野の病室に向かった。





163: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 17:33:57.07 ID:yM4gLPsDO



同時刻の病院付近某所。そこに四人の人影があった。

霧谷「目標発見、病院に入ったんで」

黒妻「だとよ。どうするリーダー」

青ピ「…zzz」

横須賀「おい起きろ。」ビシッ

青ピ「ったあ!?堪忍してや!そこ軽くえぐられてんねんて!」

横須賀「…スマン。」

黒妻「病院行った方がいいんじゃねぇか?」

青ピ「ん?もう来たん?まあでも今行ってしゃあないし、帰り際に接触すればええよ」

霧谷「そうでなく、治療的な意味で」

青ピ「大丈夫やて。応急措置の塗り薬塗っといたし。計画が終わったらちゃんとあそこやない病院行って診てもらうわ」

横須賀「…そして、エクストラステージか。」

青ピ「そうゆうことや。せやから、アイツら出てくるまで寝かせてや…ずっと能力使いっぱなしやったから…脳ミソ疲れまくりで…zzz」

黒妻「…寝たか」

霧谷「…他人の前で寝るなんて、ちょっと前まで考えられなかったんで」

横須賀「それだけ俺たちを信頼しているのだろう。」

黒妻「言ってて恥ずかしくねぇか?」

横須賀「かまわん。事実だ。」





164: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 17:35:31.48 ID:yM4gLPsDO




絹旗「お、皆さんおはようございます」

麦野の病室の前で、絹旗に出会った。

浜面「き、絹旗!?」

絹旗「ん?どうしたんです?」

滝壺「それ、大丈夫なの?」

絹旗「ああ、これですか」

そう言って絹旗は軽く三角巾で固定された左腕を動かす。絹旗は麦野の様態だけ伝えただけで、自身のケガは何も言わなかった。

絹旗「超平気ですよ、こんなの。ちょっぴり肩にヒビが入っただけなんで」

浜面「平気じゃねえだろうが!そういうことはちゃんと言え!」

絹旗「超うるさいですね。病院ですよ」

フレメア「絹旗、大丈夫?痛くない?」

絹旗「…ありがとうございます、フレメア。全然痛くないですよ」

滝壺「きぬはた、みんな心配するから言わなきゃダメだよ」

絹旗「申し訳ないです。余計な心配かけたくなかったんです」

滝壺「気持ちは嬉しいけど、言わなきゃダメ」

絹旗「はい、すいません」

浜面「あ、俺以外だったら謝るのな」

絹旗「超当たり前です」





165: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 17:36:52.75 ID:yM4gLPsDO


浜面「それで、麦野は?」

絹旗「もうすぐ麻酔が切れるはずなんですがね、なにやら超うなされてるみたいで…」

フレメア「麦野、痛いの?」

絹旗「…分かりません。とりあえずここで長話しもなんなんで入りますか」

そして浜面、絹旗、滝壺、フレメアの四人は麦野の病室に入って行った。



169: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 23:38:42.05 ID:yM4gLPsDO






-どこ?ここ…

-私はどこに進んでるの?

-どこかで見たな、この光景

-あれ…これって…






170: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 23:40:06.41 ID:yM4gLPsDO


麦野「あ゛あ゛クソッ!クソ!クソ!クソッ!」

-!? 何これ… 口が勝手に…

麦野「【未元物質】の野郎ふざけやがって…!ゆるさねぇ…ぜってぇゆるさねぇ!」

-【未元物質】?なんで今さら…

麦野「ぶっ殺してやる!ナメられたままで終われるかよ!」

-ああ、思い出した。これってあの時の…






171: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 23:41:36.78 ID:yM4gLPsDO


フレンダ「麦野!」

-! フレンダ!?

麦野「フ~レ~ン~ダ~。テメェ今までどこにいやがった!」

フレンダ「ゴ、ゴメン麦野。私今まで『スクール』連中に捕まってて…」

麦野「捕まってたぁ?ははぁ、なるほどな!」

フレンダ「え…きゃ!」

-待ってやめて!蹴らないで!





172: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 23:43:13.62 ID:yM4gLPsDO


フレンダ「ゲホ、ゲホ…麦野…何を」

麦野「うるせぇよユダが。この裏切り者がぁ!」

フレンダ「え…」

-違う!違うの!

麦野「たった今『アイテム』のアジトが『スクール』のクソどもに襲撃されたんだよ!せっかく体制立て直して反撃っつータイミングでだ!なんでアイツらはアジトの場所知ってんだ?あぁ!?」

フレンダ「…」

麦野「テメェがゲロったんだろ!?ふざけやがって!」

-やめろ!逃げろ!フレンダ!

フレンダ「…そう私は『アイテム』のアジトを吐かされた」

-しゃべるな!逃げろ!

麦野「は、やっぱそうかよ裏切り者」

-違う!フレンダは裏切り者なんかじゃない!

フレンダ「でも違うの!お願い麦野!話を」





173: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 23:44:36.36 ID:yM4gLPsDO


麦野「テメェのせいで私は【未元物質】に吹っ飛ばされた!絹旗も滝壺も【未元物質】に殺されてるかもしれねぇな!」

フレンダ「…そんな」

-違う!みんな生きてる!生きてるからそんな顔するな!

麦野「クソ野郎が!裏切り者には粛正が必要だよなぁ!」

-やめて!お願いだから!逃げてよフレンダ!

フレンダ「私、は、まだ…」

-ダメ!逃げて!

麦野「じゃあな裏切り者」

-やめて!やめろ!







174: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 23:46:55.25 ID:yM4gLPsDO






麦野「やめろぉぉぉぉおお!」

ガバリ、と起き上がった。起き上がった?

浜面「び、っくりしたぁ…」

麦野「え?あれ?浜面?」

滝壺もいる。絹旗もいる。なぜか見る顔すべてが驚いた顔をしている。驚いたのはこっちだ。ここはどこだ?なんでみんないるんだ?フレンダは…

フレメア「麦野…大丈夫?」

! うそ、まさか…

麦野「フレンダ!」

フレメア「ふぇ、にゃあ!?」

良かった!生きてる!抱き締めればちゃんと温もりがある!なぜか左腕が動かないけどそんなのはどうだっていい!フレンダは生きてる!

フレメア「ちょっ…麦野…苦しい」

麦野「あぁ…良かった!フレンダ…ホントに…」

フレメア「う…苦しいってば!離して!」

ドン、とフレンダに突き飛ばされた。フレンダに…拒絶された?

麦野「あ…」





175: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 23:48:25.10 ID:yM4gLPsDO


フレメア「大体私はお姉ちゃんじゃない。フレメアだよ?」

麦野「え…?フレメア…?」
フレメア「うん」


…そう、そうだよ。この子はフレメアだ。え?なら…フレンダは?





176: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 23:50:09.96 ID:yM4gLPsDO


-話すことも聞くこともできへん。考えることも感じることも、泣くことも笑うことも、フレンダはもうできへんねん


麦野「あ…」

そう、だ

-こんなん……薄情すぎるやろ………

麦野「ああ…」

フレンダは…





177: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 23:51:32.71 ID:yM4gLPsDO

-そうやって命乞いしたフレンダを殺したとちゃうんかい!何を今さらガタガタ抜かしとんのや!



麦野「あああ…」





私が殺した





麦野「いやああああああああああああ!!」







178: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 23:52:46.07 ID:yM4gLPsDO


浜面「お、おい!麦野!?」

絹旗「どうしたんですか!落ち着いてください!」

麦野「フレンダ!フレンダ!あああああああ!」

滝壺「むぎの!落ち着いて!」

フレメア「麦野、どうしたの?」

麦野「う、うう…私、は…私は!うああああああ!」

麦野は手のひらを自分の顔に向けた。そして-





179: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/23(木) 23:54:43.91 ID:yM4gLPsDO


絹旗「何バカなことしてんですか!」

絹旗が手を弾く。瞬間、麦野の顔のすれすれのところを【原子崩し】が通過した。そして病室の壁を破壊する。

滝壺「はまづら!ふれめあを連れて外に!」

浜面「待て俺も!」

絹旗「フレメアには危険すぎます!私と滝壺さんで抑えますから早く!」

麦野「離せ絹旗!私は!私は!」

フレメア「麦、野?」

浜面「-クソッ!」

フレメア「わ!」

浜面はフレメアを脇に抱えて病室を飛び出した。そして病院の廊下を疾走する。途中、異変に気付いた看護師がバタバタと走っていた。鎮静剤がどうこう言ってるのが聞こえたが、気にせず走り続けた。





183: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/25(土) 18:05:53.52 ID:dBEgBNiDO


一心不乱に走り続け、気付いたら病院の隣のスポーツ公園にいた。

浜面「はあっ…はあっ…」

フレメア「…浜面」

浜面「うん?」

フレメア「大体降ろして」

浜面「お?おお、悪い」

浜面はずっと抱えていたフレメアを降ろした。浜面もフレメアも暗い顔をしていた。





184: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/25(土) 18:07:17.50 ID:dBEgBNiDO


フレメア「ねえ、浜面」

浜面「なんだ?」

フレメア「麦野はお姉ちゃんに悪いことしたの?」

浜面「…ああ」

浜面はどうするべきか悩んだ。このままだとどうしたってフレンダの話になる。

その時、フレンダのことを自分から伝えるべきか。麦野が伝える予定だったが、あの様子では無理かもしれない。

フレメア「そっか…でもお姉ちゃんは私が悪いことしても、最後は大体許してくれたから、麦野のことも許してくれると思う」

浜面「…」

フレメア「ねえ、浜面はお姉ちゃんがどこにいるか知らないの?」

言うべきか、否か。





185: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/25(土) 18:09:03.54 ID:dBEgBNiDO


浜面「…イヤ、分からないな」

フレメア「…そう」

浜面は言わないことにした。例えどんな理由があろうと、これは麦野が乗り越えなければいけない問題。そうでなければ、麦野はまた止まってしまう。

フレメア「なら、アクトは?」

浜面「アクト?」

聞き慣れない単語が耳に入ってきた。

フレメア「うん、アクトなら大体お姉ちゃんのことも知ってるはず」

浜面「イヤ、知らないな」

フレメア「そっか…」

あからさまにしょんぼりとしたフレメア。その姿はもはや見てて罪悪感すら生まれてきた。





186: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/25(土) 18:10:19.91 ID:dBEgBNiDO

浜面「と、とりあえずなんか飲むか?喉乾いただろ?」

フレメア「うん…」

浜面「よっしゃ、何がいい?」

フレメア「じゃあ…あ!」

フレメアの表情が一瞬で明るくなった。そしてその瞬間フレメアは走りはじめた。

浜面「お、おい?」

どうしたのか分からない。とにかくフレメアの走る先を見る。そこには男が三人と女が一人の集団がいた。





187: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/25(土) 18:11:22.38 ID:dBEgBNiDO


最初は先頭にいる青い髪の男に目がいった。だが、すぐに別の男に目がいった。ほんの十数時間前に見た男だ。

黒妻- 一気に頭の中で警戒信号が鳴り響く。

浜面「待て!フレメ-!」

フレメア「アクト!」

そう言ってフレメアは青い髪の男にとびついた。





188: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/25(土) 18:13:20.97 ID:dBEgBNiDO


浜面「え…」

青ピ「久しぶりやな~、フレメアちゃん」

フレメア「大体久しぶり、にゃあ」

青ピ「アハハ、相変わらずかわいらしい口調やね」

フレメアはずっと青い髪の男に抱きついてる。青い髪の男は腰を落としてそれにつきあってる。

訳が分からなかった。あそこにいるのは間違いなく黒妻だ。黒妻に仲間が複数人いるのは分かってた。だから、目の前の青い髪の男は黒妻の味方で俺らの敵で…?なんでそいつがフレメアと仲良く話してる?アクトって?

フレメアから目を反らして黒妻の方を見る。すると、それに気付いた黒妻は苦笑しながら両手を軽く挙げた。何もしないという意味だろうか?少なくとも左手にもった牛乳パックがなんかサインなんてことはないよな?





189: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/25(土) 18:16:24.15 ID:dBEgBNiDO


フレメア「ねえ、アクト!お姉ちゃんがどこにいるか知らない?」

青ピ「え?」

フレメアの明るい声。次いで青い髪の男の疑問の声がした。そして、青い髪の男は浜面に目をやる。対して浜面は状況整理に精一杯で何もできなかった。

青ピ「…僕も知らんねん。フレメアちゃんなら知ってると思とったんけど」

青い髪の男の答えはノーだった。

フレメア「そっか…アクトも知らないんだ…」

青ピ「ゴメンなぁ。僕が分かったらすぐ連絡するさかい」

フレメア「うん…」

また落ち込むフレメア。彼女にしてみれば姉に繋がる最後の望みが途絶えたのだ。無理もないだろう。それを慰める様に青い髪の男はフレメアの頭をベレー帽ごしになではじめた。





190: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/25(土) 18:17:50.82 ID:dBEgBNiDO


青ピ「なあ、フレメアちゃん。僕そっちのお兄さんと話があんねん。せやから、その間僕の後ろにおるお兄さんお姉さんと遊んでもらっててもええ?」

フレメア「…この人たちは?」

フレメアが青髪ピアスの後ろを覗きこむ。するとボサボサ頭の女、霧谷が軽く頭を下げた。

青ピ「僕の仲間でお友達や。僕に負けず劣らず愉快で楽しいで」

横須賀「ぬ…。」

黒妻「ハードルあがったな」

フレメア「分かった、にゃあ」

霧谷「…かわいい」

そして、フレメアは青髪ピアスから離れ、黒妻たちの方に行った。





191: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/25(土) 18:19:51.16 ID:dBEgBNiDO


そこで浜面の頭の中で警戒信号が再び鳴りはじめた。

浜面「待て!フレメア!」

<フレメアちゃん何がしたい?
<んー。じゃあ、缶けり
<缶なんかないぞ。
<じゃあ、私買って一気飲みしてくるんで

しかし、フレメアはこちらを振り向かない。黒妻をはじめとする他の連中も振り向かない。

青ピ「無駄やよ」

気付いたら背後に青髪ピアスがいた。

青ピ「僕の能力は自分で触れてるもんにも適用されんねん。音かて出力次第じゃジェット機のエンジン音くらいなら余裕や。まあ適用範囲は人一人や駆動鎧でいっぱいいっぱいやけど」





192: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/25(土) 18:22:08.11 ID:dBEgBNiDO


いきなり背後をとられた。それどころか駆動鎧という単語も出てきた。間違いなく敵である。

浜面「く…!」

とにかくマズイと思った浜面はとっさにベルトに挟んだ銃に手を伸ばす。

青ピ「探してるんはこれかな?」

しかし、銃は青髪ピアスの手の中にあった。絶体絶命。もはや殺されてもおかしくはない。

青ピ「警備員がぎょうさんおんのにこんなん持っとったらアカンよ。ちょっとの間没収や」

しかし、殺されることはなかった。それどころか背後から離れ、浜面の正面に青髪ピアスは出てきた。

浜面「な…?」

青ピ「言うたやろ?話があるて。心配せんでも君にもフレメアちゃんにも手ぇなんか出さへんよ」





193: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/25(土) 18:23:22.13 ID:dBEgBNiDO


浜面「信用できるか!テメェは黒妻の仲間なんだろ!?」

青ピ「そうや。せやけど僕らは【原子崩し】の敵であって、『アイテム』の敵やない。黒妻はんかて十分正当防衛の範囲で【窒素装甲】に応戦したはずや」

浜面「…それでもよ…」

青ピ「…分かった。ほなこないしよ」

そう言って青髪ピアスは腕を挙げた。

青ピ「あそこに屋根のついたベンチあるやろ?あそこ行こうや」





198: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 22:48:16.00 ID:bAd5xvXDO


<霧谷見っけ!
<げ
<隙ありー!とりゃー!
<スコーン!
<何ィ!?やるなフレメアちゃん!

青ピ「ここやったらフレメアちゃんになんかあってもすぐ駆けつけられるやろ?ほんで」

青髪ピアスはフレメア達と真逆の方向を指した。

青ピ「警備員の視界にもバッチリ入っとる。ここなら問題ないやろ?」

青髪ピアスと浜面は屋根のついたベンチにいた。と言っても二人並んで腰をかけているわけではなく、机を挟んで向かい合ったベンチにそれぞれ腰をかけていた。

浜面「…」

青ピ「あー…うん、たしかに僕が能力つこたら意味ないかしれんけどな?せやけど、他にどうしようもないやろ?」

一人でやたらと話しまくる青髪ピアス。浜面はまだ半信半疑だった。

コイツの能力はいまいち分からない。コイツは敵に違いない。麦野の敵なら俺の敵だ。なのになんでわざわざ自分に不利なところに誘導した?なんで仕掛けてこない?





199: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 22:49:20.37 ID:bAd5xvXDO


浜面「アクトってのは…お前の名前なのか?」

とりあえず、当たり障りのないところから触れることにした。向こうの目的が分からないなら、こっちから聞き出す。向こうは今すぐ何かをどうにかするつもりはないようだし、大丈夫だろう。

青ピ「うーん。そうやね、『今は』名前のが正しいかな」

浜面「今は?」

青ピ「僕な、自分の名前が分からへんねん。せやから僕の能力【隠密行動】(ステルスアクト)からとったのと、暗部のリーダーやってる『悪人』やから『アクト』や」

浜面「!」

確実に言った。コイツは暗部のリーダー。なら、コイツはあの時の駆動鎧の連中と同じ『新入生』-





200: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 22:50:26.94 ID:bAd5xvXDO


青ピ「…フレンダが考えてくれたんよ」

浜面「え?」

今なんて言った?フレンダがコイツの名前を?

青ピ「やっと君に言えるな」





201: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 22:51:37.04 ID:bAd5xvXDO



青ピ「ホンマにありがとう。ほんで、ホンマにすまんかった」

浜面「…?」

青ピ「フレメアちゃんを『新入生』のバカどもから救ってくれたんは君なんやろ?ホンマにありがとう」

浜面「あ…」

青ピ「ほんで、君の仲間の【原子崩し】に手ぇ出してすまんかった。理由は知らんけど、今は君ら仲間なんやろ?」

浜面「…」

いきなり頭を下げる青髪ピアス。浜面の頭は再び混乱した。





202: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 22:52:34.91 ID:bAd5xvXDO


浜面「お前はフレンダの…なんなんだ?」

青ピ「なんや、お父さんみたいな聞き方やね」

青髪ピアスはケラケラ笑った。たしかに混乱のあまり変な聞き方になった。

青ピ「彼氏やよ。一年近く前からずっと」

浜面「!」

コイツが…フレンダの…!?

浜面「…なるほどな。フレンダを殺された復讐って訳か」

青ピ「…半分正解や」

浜面「なに?」

青ピ「これ見てや」

そう言って、青髪ピアスは懐から何かを取り出した。それは三枚の写真だった。




203: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 22:53:59.37 ID:bAd5xvXDO


青ピ「昨夜この病院を駆動鎧が囲ったんも、第十九学区の大規模破壊も僕らが関わってるんや」

その写真に写っていたのは凄惨な姿になった人間だった。すべて別の人間だが、その姿の凄惨さはどれも同じくらいひどいものだった。

青ピ「昨夜のうちにその写真を統括理事会の連中全員に送りつけてやったんや。『新入生』が誰の管轄で動いてるか分からへんかったからな」

浜面「…じゃあこっちの二人は…」

青ピ「そ。君とフレメアちゃんを追いかけ回したバカどもや。ちなみに、そっちの二人は特殊メイクやのうて本気でズタズタにした」

浜面「…」

青ピ「その写真、見るヤツが見たら一発で分かるやろ。『セイヴェルンの血を二度と流すな』っちゅうメッセージやってな」





204: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 22:54:56.04 ID:bAd5xvXDO


これが青髪ピアスと『ウォール』が動いた理由だった。愛した人間、その親族を守るために動いたのだった。これ以上、この街の狂気に付き合わせないために。

浜面「…なら」

青ピ「うん?」

浜面「なんで麦野は特殊メイクなんだ?お前が一番憎いのは麦野じゃ…」





205: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 22:56:07.51 ID:bAd5xvXDO



青ピ「なんや、殺ってええんか?それやったら今すぐにでも殺りに行くで」


浜面「-ッ!」

青ピ「…冗談や」

おそらく、冗談じゃなかった。一瞬感じた殺気は本物だった。





206: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 22:57:38.01 ID:bAd5xvXDO


青ピ「…あんなのでもフレンダが慕った女や。僕の自己満足のために殺しとうなかっただけや」

浜面「…」

青ピ「ま、こんな風に考えてる時点で自己満足やねんけどな。それでも殺す自己満足と殺さへん自己満足やったら殺さへん方がええやろ」

青髪ピアスの持論は変わらない。『人間、死んだらそこまで』。死んだ後で仇討ちだのなんだの言っても一喜一憂するのは生きてる人間だけ。死んだ人間は喜びもしないし悲しみもしない。





207: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 22:58:53.50 ID:bAd5xvXDO


青ピ「正直、今すぐにでも殺してやりたい。フレンダのこと殺したことも忘れて楽しそうに笑っとったの見た時は血管ぶち切れるかと思ったで」

だが、それはしない。青髪ピアスはそれを良しとしない。彼の持論では、それでは彼自身が納得しないから。

浜面「…違う」

浜面が小さくつぶやいた。




208: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 23:00:24.33 ID:bAd5xvXDO


青ピ「あ?」

浜面「忘れてなんかいない。麦野は今だって死ぬほど後悔したんだ。自分で自分の居場所を壊して、それで…」

青ピ「ふん。そんなんしたかてなんも変わらんやろが」

浜面「変わるさ。麦野は自分の罪を受け入れて、また仲間と向き合えた。当然、その中にはフレンダもいる」

青ピ「…」

浜面「麦野はちゃんと謝ったよ。フレンダを含めた『アイテム』全員に。だから、麦野は前に進めるんだ」




209: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 23:01:15.95 ID:bAd5xvXDO




青ピ「…はぁ、アホくさ」

浜面「な!?」

青髪ピアスの態度は冷えきっていた。ついさっきまで恩人だと思っていた人間に対して完全に幻滅していた。




210: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 23:02:05.20 ID:bAd5xvXDO


青ピ「なぁにが麦野は前に進める、や。フレンダに謝った、や。フレンダがこの世におる訳ないやろ」

浜面「ちゃんと謝ったさ!アイツの墓前でちゃんと!」

青ピ「それはフレンダの『墓』に謝っただけでフレンダに謝ったわけやないやろ」

浜面「…それ、は」

青ピ「そんなんはそこいらの壁に向こうて言葉吐いてるだけや。そんなんでフレンダを殺した罪が軽くなってたまるか。なぁに自己満足に浸っとんねん。ふざけたことぬかすな」

浜面「麦野はそんな風に思ってない!アイツ今だって罪を背負って後悔してるんだ!お前は…お前はさっきの麦野を見てないからそんな風に言えんだよ!」

先ほどの病室での麦野が思い出される。自分の行為に後悔し、自ら命を絶とうとすらしていた。そんな人間が自分の罪が軽くなったなどと思うわけがない。





211: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 23:03:14.38 ID:bAd5xvXDO


青ピ「知らんがな。せやけど、【原子崩し】が何をしようがフレンダには届かん。これだけは絶対覆らん。そうしたのは【原子崩し】自身や」

浜面「…」

淡々と言葉を浴びせる青髪ピアス。それに対して浜面の頭は怒りに燃えそうになっていた。





212: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 23:04:28.91 ID:bAd5xvXDO



青ピ「ま、そうさせるんが僕の最大の『復讐』やねんけどな」

そう言って青髪ピアスは残酷な笑みを浮かべる。

浜面「…何?」

青ピ「人間、死んだらそこまでや。【原子崩し】は簡単には終わらせん。何千回でも何万回でも後悔して苦しめ」

青髪ピアスの持論はブレない。ここで麦野を殺せばそれで麦野という人間はいなくなる。そんなあっけない終わりなんか青髪ピアスは望まない。何千回でも何万回でも、何年でも何十年でも、後悔し、苦しみ、できることなら自らを呪って死ね。それが青髪ピアスの考える最大の復讐。

もちろん、青髪ピアスが麦野を殺すことはフレンダが望まない。という青髪ピアスにしてみれば自己満足的な考えもあった。だからこそ、この復讐は青髪ピアスの願いをすべて満たしているとも言えた。





213: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 23:05:33.13 ID:bAd5xvXDO


浜面「…そうかよ。でも、一つだけ言っておくぞ」

青ピ「なんや」

そして浜面は真っ向から宣言する。

浜面「麦野は強いぞ」

青ピ「…ふん、自己中の間違いやろ」





214: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 23:06:34.75 ID:bAd5xvXDO






<横須賀見っけ!
<残像だ。
<スコーン!
<何ィ!?
<黒妻もっかい鬼ー!
<クソッ!ジャケット使ったフェイクかよ!


青ピ「ホンマはフレメアちゃんを助けてくれた人たちのことも聞く予定やったんやけど、もうええわ。そんな雰囲気ちゃうしな」

そう言って青髪ピアスは席を立つ。

浜面「…どっちにしろ、アイツらはお前らみたいな暗部連中に会いたがらないだろうよ」

そして、浜面も席を立つ。





215: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 23:07:49.67 ID:bAd5xvXDO


青ピ「かめへんよ。スキルアウトなら黒妻はんが顔効くから探してもらえるやろうし、第一位は地道に自分で探してお礼言うわ」

そう言って、青髪ピアスは先ほど浜面から奪った拳銃を無造作に返した。

青ピ「ほなな」

そして踵を返し、こちらとは対照的に無邪気に遊んでいる『ウォール』のメンバーを迎えに行こうとした。





216: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 23:09:00.17 ID:bAd5xvXDO


浜面「ちょっと待てよ」

その背中に浜面は声をかけた。次いで、怪訝そうに振り向く青髪ピアスに紙切れを渡した。

青ピ「…なんやこれ」

浜面「フレンダの墓の番号だ。第十学区の墓地に行って、その数字を打ち込めば出てくる」

それを聞いて、青髪ピアスは思い切りため息をついた。

青ピ「あんなぁ、墓なんてただの飾りやろ。そこにフレンダがおるわけやないやん」

先ほど散々言った持論。それがまだ分からないのかと呆れていた。





217: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 23:10:34.39 ID:bAd5xvXDO


浜面「でも、いないと証明できるもんはないだろ?」

青ピ「証明て…」

浜面「いいから行ってやれよ。フレンダが可哀想だ」

フレンダは墓はただの飾りかもしれない。だがそれは証明できない。

フレンダの墓はただの飾りではないかもしれない。でも、それも証明できない。

なら、行ってやれ。それが浜面の考えだった。

青ピ「…アホくさ」

そう言いながらも青髪ピアスは学生ズボンのポケットに紙切れを突っこんだ。





218: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 23:11:34.99 ID:bAd5xvXDO





青ピ「お~い、そろそろ行くでぇ」

フレメア「えー、もう行っちゃうの?」

そろそろ帰るとの号令に、開口一番でフレメアが文句を言った。

青ピ「ゴメンなぁ、フレメアちゃん」

そんなフレメアに対して青髪ピアスは再び腰を落としてフレメアの頭をベレー帽ごしに撫でた。浜面はそれを青髪ピアスの後ろから見ていた。





219: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 23:12:40.01 ID:bAd5xvXDO


フレメア「アクトと浜面も缶けりしようよ!」

黒妻「まあまあ、フレメアちゃん」

尚もねだるフレメアの肩に、ポン、と黒妻が手を置いた。さすがに、もう飲み干したのか牛乳パックは持っていなかった。

黒妻「いいか?遊びってのはちょっと遊び足りないくらいがちょうどいいんだ。そしたら次遊ぶ時に誘いやすいだろ?」

フレメア「! じゃあまた遊んでくれる!?」

黒妻「おう!次はフレメアちゃんの友達も入れてな!」

フレメア「ぃやったー!」

小踊りして喜ぶフレメア。それは見ていて微笑ましいものだった。





220: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 23:13:53.84 ID:bAd5xvXDO


霧谷「…だそうなんで」

横須賀「ぬ…。また子どもの遊びに付き合うのか。」

霧谷「イヤ、さっき一番イキイキしてたの横須賀さんなんで」

横須賀「黒妻だろう?」

黒妻「霧谷だって楽しんでたろ。ま、こうゆうのはみんなでバカやるから楽しいんだよ」





221: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 23:14:58.34 ID:bAd5xvXDO



フレメア「ね!ね!アクト!それに黒妻と横須賀と霧谷も!」

アクト「なんや?」

フレメア「アドレス交換、にゃあ!」

そう言ってフレメアは目を輝かせながら携帯電話を取り出した。

霧谷「私たちもよろしいんで?」

フレメア「うん!電話帳が増えるのは大体嬉しい!」

青ピ「そやなぁ。そう言えばまだしてへんかったもんな」

青髪ピアスとフレメアも未だ互いの連絡先を知らなかった。だからこそ、フレメアはアクトの居場所を聞いて回っていたのだった。





222: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 23:17:02.79 ID:bAd5xvXDO





青ピ「よし、ほなもういくわ。またな、フレメアちゃん」

アドレス交換も終わり、青髪ピアスは笑顔で別れを告げた。

フレメア「うん、私がお姉ちゃんのことなにか分かったら教えてあげるからね!バイバーイ!」

対してフレメアも笑顔で手を振る。

横須賀「では。」

霧谷「これで」

黒妻「っと、そうだ。【窒素装甲】の子にすまなかったって言っておいてくれ」

浜面「…ああ」

笑顔で去りゆく『ウォール』のメンバーに浜面だけが難しい顔をしていた。





223: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/26(日) 23:18:07.21 ID:bAd5xvXDO


浜面「…楽しかったか?」

フレメア「うん!みんな大体いい人だった」

浜面「そっか」

フレメア「ねえ、アクトと浜面はなんの話をしてたの?」

浜面「なんでもねえよ。ただの世間話だ」





230: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/27(月) 23:41:24.31 ID:oy9AuJRDO





麦野「う…」

とある病室。左腕をなくした少女は再び目を覚ました。

絹旗「起きました?」

滝壺「むぎの、今度は大丈夫?」

麦野「…ああ」

心配そうに覗き込む二人の少女がいた。滝壺は椅子に座っていて、その後ろに三角巾で肩を固定している絹旗が立っていた。

それを確認し、一呼吸おいたところで麦野は先ほどのことを思い出した。





231: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/27(月) 23:42:17.26 ID:oy9AuJRDO


麦野「悪かったわね。みっともないところ見せちゃって」

起き上がる気力もなく、横になったまま話しはじめる。

絹旗「…かまいませんよ」

滝壺「…ねえむぎの、昨日は一体何があったの?フレンダのことも関わってるの?」

絹旗も滝壺も今回の事件の詳細をほとんど知らない。分かっているのは麦野が何者かに襲われたということだけである。





232: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/27(月) 23:43:51.15 ID:oy9AuJRDO


麦野「…昨日、絹旗と別れたあとすぐに襲撃されたんだ。Level5の第六位で元暗部のリーダーだそうだ」

滝壺「!」

絹旗「元暗部のLevel5!?」

二人は衝撃を受けた。麦野と同じクラスの怪物が襲撃してきたのだ。うっすらと、『アイテム』が解散するきっかけとなったあの日のことが脳裏に浮かぶ。

絹旗「…でも一体何で麦野を?超下克上でも狙ってきたんですか?」

滝壺「何かの逆恨み?」





233: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/27(月) 23:45:06.56 ID:oy9AuJRDO


麦野「…フレンダの…彼氏だそうだ」

滝壺「えっ」

絹旗「フレンダに彼氏!?聞いてませんよそんなこと!」

一様に驚く二人。どうやら、『アイテム』の人間全員がフレンダに彼氏がいることを知らなかったようだ。

麦野「フレメアが言ってた『アクト』っていただろ?そいつだ」

絹旗「そんな…」

滝壺「…」

麦野「私にも質問させてくれる?私はそいつに撃たれて殺されたと思ったんだけど、どうしてここにいるのかしら?」





234: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/27(月) 23:46:34.00 ID:oy9AuJRDO




麦野「ふうん。ゴム弾で急所を外して特殊メイク、ね」

麦野は話を聞いている最中に起き上がっていた。未だに頭がぼんやりするのは、昨晩の脳震盪のせいか、鎮静剤のせいなのかは分からない。

絹旗「ええ。一体何が狙いだったんでしょうか」

麦野「さあね。何回でも襲撃して何回でも苦しめてやる、とかかしら」

実際は青髪ピアスにそのつもりはない。少なくとも今は。しかし、『新入生』への襲撃の理由どころか襲撃そのものを知らない三人には青髪ピアスの目的は分からなかった。





235: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/27(月) 23:49:06.92 ID:oy9AuJRDO


滝壺「むぎのにそんなことできる様な能力者なの?」

麦野はLevel5第四位。そんな人間に奇襲をしかけたとしても、常に成功し続ける人間がいるとは思えない。

麦野「…表向きの第六位は謎だらけだけど、どんな能力かくらいなら聞いたことがある。確か姿から何から消せるような能力だ。正々堂々のタイマンなら負ける気はしねぇが、奇襲となるときついな」

滝壺「AIM拡散力場も消せるの?」

麦野「さあ?私も前に興味本位で誰かに聞いただけだし」





236: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/27(月) 23:50:56.82 ID:oy9AuJRDO

絹旗「でも…仮にそうだとして、どうするんです?そいつに警戒しながら過ごすとか超ストレスたまりそうですが…」

相手がは近づいていてもこっちはどこにいるのか分からない。そんな能力者に追われるとなると、四六時中警戒しなければならない。

だが、麦野の答えはシンプルだった。


麦野「別になにもしない」





237: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/27(月) 23:52:30.90 ID:oy9AuJRDO


絹旗「なにも…ですか?」

麦野「襲いかかってくるなら来ればいい。それならアイツの気も少しは晴れるだろ」

滝壺「…でも」

麦野「こっちも応戦しないわけじゃない。私はアイツにとって悪役だ。なら、悪役は悪役らしくふんぞり返って生きるさ」

麦野は最初から決めていた。フレメアに対してもそうするつもりだった。謝りはすれど、許してもらうつもりはない。だから、第六位が襲ってこようが、後にフレメアが仇討ちにこようが逃げたりはしない。すべて真っ正面から付き合う。

それが麦野の決意だった。




238: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/27(月) 23:53:26.22 ID:oy9AuJRDO


麦野「それと、アンタ達はもう私に近づくな」

絹旗「え…?」

滝壺「どうして?」

麦野「時が過ぎればからめ手に回ってくるかもしれない。そうなったら、一番先に狙うのは『アイテム』だ」

滝壺「…」

絹旗「…」

麦野「向こうが私を苦しめるつもりなら私のことを簡単に殺しはしないだろ。今回みたいにね。でも、アンタ達は別。私に精神的ダメージを与えるつもりならあっさり殺すでしょ」





239: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/27(月) 23:55:32.32 ID:oy9AuJRDO


絹旗「超いい加減にしてください」

絹旗が怒ったような表情で凄んだ。

麦野「…なによ」

絹旗「何回言わせるつもりですか。フレンダに関しては私にだって超責任はあります。麦野に全てを押しつけて私はのうのうと暮らせって言うんですか?」

麦野「だから言ってんだろ!?アンタに責任なんかない!全部私が悪いの!」

絹旗「勝手に人の責任まで奪わないでください!これは私の責任です!」

滝壺「二人とも」

いつの間にか熱くなっていた怪我人二人を滝壺が制した。

滝壺「ここは病院だよ。こんなにうるさくしてたら、また看護師さんが来るよ」

絹旗「…すいません」

麦野「…チッ」





240: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/27(月) 23:56:53.22 ID:oy9AuJRDO


滝壺「それと、二人とも間違ってる」

絹旗「はい?」

麦野「ああ?」

滝壺「仲間の責任とか罪っていうのは一人でもつものじゃない。みんなで背負っていくものだよ?」

絹旗「…」

麦野「あのなあ、滝壺。アンタはあの日、フレンダに関してなにもしてなかっただろ?」

滝壺「それでも、一緒に背負いたい。だって私たちは仲間でしょ?」

麦野「…」





241: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/27(月) 23:57:52.42 ID:oy9AuJRDO


滝壺「あの日『アイテム』はバラバラになっちゃったけど、また一つになれた。でも、フレンダのことで私だけなにも背負わなかったら、またバラバラになると思う」

滝壺はまるで聖人君子の様に諭す。今の滝壺の言葉にはなにか吸い込まれるような力があった。

滝壺「だから、仲間が仲間に犯した罪とその責任はみんなで背負うべきだと思う」

そこまで言って滝壺は二人を見回す。二人表情からは毒気が抜けた様だった。





242: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/27(月) 23:58:54.23 ID:oy9AuJRDO


絹旗「そう…ですね」

麦野「はぁ…相変わらず、お人好しね。自分のこと殺そうとした人間を受け入れて、挙げ句そいつの罪まで背負うなんて」

本当にどうかしてる。きっと自分にはそんなことはできない。

麦野「でも」

そんなお人好しが自分の周りにいるから、自分はあの時本物の化け物にならずにすんだ。まだギリギリ人間でいられた。

麦野「ありがとう。本当に…」

麦野の目から涙がこぼれた。







243: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/28(火) 00:00:21.18 ID:CugdWOsDO




浜面「お、起きてたか。」

しばらくすると、浜面がフレメアを連れて病室に入ってきた。

麦野「ええ」

フレメア「麦野、もう大丈夫?」

麦野「…ええ、大丈夫。でもね、フレメア。私はあなたに心配してもらえる資格なんてないの」

フレメア「?」

心配したフレメアに麦野は向き直った。そしてその顔は神妙な面持ちをしていた。

麦野「フレメア、あなたに話さなければいけないことがあるの。あなたのお姉ちゃん…フレンダのことよ」





244: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/28(火) 00:02:07.24 ID:CugdWOsDO



フレメア「そう言えば、麦野は大体教えてくれるって言ってた」

今思い出した。そんな風な顔をしたフレメアを浜面を含む『アイテム』全員が見ていた。

フレメア「ねえ、お姉ちゃんはどこにいるの?」

麦野「…あなたのお姉ちゃんは…フレンダは…」

そこで、麦野は目をつぶり深呼吸する。そして、意を決した様に目を開ける。






麦野「…私が殺した」







245: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/28(火) 00:03:30.52 ID:CugdWOsDO



フレメア「え?」

何を言っているのか分からない。そんな風にフレメアは首をかしげた。

麦野「…許されることじゃないことは分かってる。それでも-」

フレメア「ちょ、ちょっと待って!」

フレメアは慌てて両手を振る。もはや完全に混乱していた。

フレメア「大体、何を言ってるの?」

麦野「…」

フレメア「嘘…だよね?だって麦野は私にパフェをおごってくれて…お姉ちゃんの仲間で…」

たった今聞いたことを否定もらおうとフレメアは必死だった。しかし、幼い少女には辛すぎる現実が逆にそれを否定した。





246: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/28(火) 00:05:23.28 ID:CugdWOsDO


麦野「…ごめんなさい、変な真似しなければよかったわね」

フレメア「嘘…」

麦野「私はたしかにフレンダの仲間だった。でも、私はフレンダを殺したの」

フレメア「…」

麦野「…許してもらおうなんて微塵も思ってない。でも謝らせて。本当に-」

フレメア「-ッ!」

浜面「あ…おい!」

フレメアは病室から飛び出した。その瞳いっぱいに涙をためて。

浜面「フレメア!」

出ていくフレメアを浜面は追い掛けようとした。しかし、病室から出るとすでにフレメアの影は消えていた。



麦野「…ま、こうなるわよね」

分かってはいた。覚悟もしていた。それでも麦野は自嘲した笑みを浮かべた。





251: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/28(火) 23:17:25.85 ID:CugdWOsDO


-嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ。

幼い少女は病院の廊下を駆ける。まるでなにかから逃げる様に。

-あの優しいお姉ちゃんが死ぬ訳がない。しかもお姉ちゃんが仲間に殺されるはずがない。嘘だ嘘だ嘘だ。

看護師が、医師が、彼女を咎める。しかし少女は駆け回る。たった今聞いた懺悔から逃れる様に。

-大丈夫!お姉ちゃんは生きてる!きっと…きっとなにかトラブルがあって会えないだけ!

しかし、それを否定する材料が揃いすぎている。

-ただのトラブルならなんで電話に出ないの?なんでメールも返してくれないの?今までどんな忙しくても会いに来てくれたのに、なんで会いに来てくれないの?

そこで、少女はつまづいた。膝から落ちてゴロゴロ転がった。いつの間にか病院の外にいたのでコンクリートで膝を擦り剥いた。

フレメア「ふ…ぅ…うぅ…」

そして、また涙が出てくる。どうしようもなく深い悲しみが少女を襲う。

-…そうだ。知らせてあげなきゃ

少女は涙をこらえて使命感を思い出す。そして携帯電話を取り出した。






252: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/28(火) 23:18:48.31 ID:CugdWOsDO



携帯電話の相手はすぐに出てくれた。

青ピ『もしもしフレメアちゃん?どないしたん?』

相変わらず、おかしな関西弁。それだけでほんの少しだけ気持ちが和らいだ

フレメア「あの、ね。お姉ちゃんのこと、分かったの」

どう声を出しても震えてしまう。だが、しゃべるだけで精一杯だった。

青ピ『! ホンマか?』

フレメア「うん。それ、でね?お姉ちゃんは、お姉ちゃんは…」

ダメだ。また涙が出てくる。

青ピ『…フレメアちゃん。今病院か?』

フレメア「? うん。大体病院の前」

青ピ『ちょっと待っとって。すぐに行くさかい』







253: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/28(火) 23:20:26.46 ID:CugdWOsDO




ほんの数分で来てくれた。さっきの友達も来てくれた。

青ピ「フレメアちゃん!」

フレメア「う、アクト…アクトぉ!」

もう限界だった。さっきまで堪えてた全てのものがあふれ出た。

フレメア「うわああああああああん!!!」

思わずアクトに抱きついた。アクトはとっさに腰を落として受けとめてくれた。

青ピ「フレメアちゃん…」

そして、抱きしめ返してくれた。

フレメア「ヒグッ!…お姉ちゃんが…お姉ちゃんが…うぅ…!」

青ピ「…無理にしゃべらんでええ。思い切り泣いてええよ」

フレメア「うぅ…うああああああああん!」

結局、伝えられなくて、いつまでも泣いていた。







254: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/28(火) 23:23:00.31 ID:CugdWOsDO




青ピ「…落ち着いた?」

フレメア「グスッ…大体、落ち着いた…」

あれからフレメアはずっと泣いていた。何回か泣き止みそうになったのだが、フレンダのことを伝えようとする度に悲しみがこみあげて大泣きした。

青髪ピアスはその間ずっとフレメアを抱きしめていた。また、フレメアの気が済むまで誰にも邪魔させないために能力を使って誰にも気付かれないようにしていた。

霧谷「フレメアちゃん」

霧谷がウェットティッシュをさしだした。フレメアの顔は涙や鼻水でグシャグシャだった。

フレメア「ありがとう、にゃあ」

ティッシュをもらい、顔中を拭う。なにやら少しだけさっぱりした気がした。

青ピ「大丈夫そうやね」

フレメア「うん。アクトも、それにみんなも、来てくれてありがとう」

ペコリ、とフレメアは頭を下げた。

それに対して黒妻は笑って手を振り、横須賀は軽く顔を背けた。





255: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/28(火) 23:24:20.47 ID:CugdWOsDO


フレメア「それでね、アクト。お姉ちゃんのことなんだけど…」

青ピ「そうやったね…」

フレメア「あの、ね…」

再び涙がこみあげてきた。しかし、それをこらえて少女は真実を告げる。


フレメア「お姉ちゃん…殺されちゃった、って…」


青ピ「…そう、か…」

フレメア「…」

先ほどまで少しだけ明るかった空気は一気に暗くなった。





256: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/28(火) 23:25:13.55 ID:CugdWOsDO


フレメア「アクトは…」

青ピ「うん?」

フレメア「お姉ちゃんのこと聞いてショックじゃないの?」

フレメアは純粋に疑問だった。自分は姉が殺されたと聞いて、世界が崩壊したと錯覚するくらいショックを受けた。でも、目の前の男はそれほどショックを受けていない様に見えた。

青ピ「…ショックやよ。めちゃめちゃ。せやけど、フレンダと連絡つかんようになってから、もしかしたらって思うてたんや」

フレメア「…そっか…」

しかし、青髪ピアスのそれは嘘だった。正確にはそれはフレンダのことを調べる前の状態。調べた後はフレメアと同じく、世界が崩壊したように感じていた。





257: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/28(火) 23:26:57.27 ID:CugdWOsDO


フレメア「ねえ、アクト。お願いがあるの」

青ピ「なんや?」

フレメア「えっと…お姉ちゃんを…殺したって言う人がね、この病院にいるの」

青ピ「…うん」

フレメア「それで…私はその人とお話がしたいの。でも、ちょっとだけ怖いから…だから、大体ついてきてほしい」

青ピ「…それでええんか?」

青髪ピアスは思わず聞き返した。やっつけてくれ、とかそんな感じのことを頼まれると思っていたのだ。だが、フレメアはついて行くだけでいいと言う。





258: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/28(火) 23:28:00.34 ID:CugdWOsDO


フレメア「うん。大体それでいい、にゃあ」

青ピ「…分かった」

この時、青髪ピアスは再び【原子崩し】に怒りを覚えた。姉を殺した人間と話がしたいなど、こんな少女が自分から思う訳がない。

だが、フレメアは話がしたいという。これは【原子崩し】とフレメアが浅からぬ関係になっている証拠に違いない。フレンダを殺しておいてよくも、と青髪ピアスは心中で毒づいた。






259: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/28(火) 23:29:33.76 ID:CugdWOsDO



横須賀「ちょっと待て!」

不意に横須賀が青髪ピアスの肩を掴んだ。

青ピ「-ッ!だからそこ痛いんやって!」

横須賀「ああ、スマン。じゃない!」

そう言って横須賀は頭をぶるんぶるんと振った。

横須賀「正気か!?なんの策も無しに【原子崩し】の前に立つなど愚の骨頂だぞ!」

何せ相手はLevel5の第四位。おまけに明らかに敵である青髪ピアスを見て何もしない訳がない。





260: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/28(火) 23:31:02.03 ID:CugdWOsDO


青ピ「大丈夫やって。心配しすぎや」

横須賀「普段のお前なら考えなくもないが、そんなボロボロの状態だぞ!?まともに逃走すらできんだろ!」

青ピ「戦うんならな。せやけど、ここは病院やで?自分の入院してる病院を自ら血まみれの戦場にするヤツがおるか?」

横須賀「しかし…!」

青ピ「安心してや。なんも起こらへん。起こっても、フレメアちゃん連れてちゃんと帰ってきたる」

横須賀「…勝手にしろ。」

尚も反論しようとした横須賀だったが、これ以上は無駄だと判断し、引き下がった。

青ピ「…ほな、行こか」

青髪ピアスはフレメアの手を取り、病院に入って行った。




261: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/28(火) 23:32:57.13 ID:CugdWOsDO


フレメア「大丈夫」

青ピ「ん?」

フレメア「大体、麦野はそんなことしない」

青ピ「…そうか」

この時、フレメアにしてみれば青髪ピアスたちがフレンダを殺した人間を知っているのはおかしいはずだった。しかしフレメアはそれに気付かない。フレメアの心中はそれ以外でいっぱいだったから。

そして、青髪ピアスはフレメアが【原子崩し】を信用している口振りを見て、再び思う。

青ピ(【原子崩し】め…)





267: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:17:13.69 ID:W73DJ5oDO


病院のエレベーターを使い、目的の階へと到達する。そして、エレベーターから降りて目的の病室へと向かう。だが、その間にフレメアが青髪ピアスの手を握る力が徐々に増していった。

青ピ「大丈夫か?フレメアちゃん」

フレメア「…うん。大体、平気」

だが、フレメアの顔色は明らかに悪かった。それでも、病室に向かう足を止めようとはしない。

そして、目的の病室にたどり着く。その病室は個室で、今は扉が閉まっていた。

ギュッ、と握る力が強くなる。





268: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:18:36.20 ID:W73DJ5oDO


青ピ「…ええか、フレメアちゃん」

フレメア「なに?」

青髪ピアスは腰を落とし、目の位置をフレメアと同じ高さにまで落とした。そして、フレメアの両肩を優しく掴んだ。

青ピ「なんかあっても絶対僕が守ったる。せやから、自分の好きな様にしたらええ」

一度は守り切れなかった。病室の向こうにいる死神はいとも簡単に人の命を奪う。でも、今度は守ってみせる。例えすべてを貫通する力が襲い掛かってきても、絶対に。

フレメア「…わかった」

その言葉を聞いて、フレメアは少し安堵したようだった。そして、扉の前で一度深呼吸し、その扉を開けた。





269: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:19:49.44 ID:W73DJ5oDO





絹旗「フレメアは大丈夫でしょうか…」

滝壺「はまづらが探してるから大丈夫だよ」

麦野「その浜面が拒絶されなければ、ね」

滝壺「…」

病室は暗い空気に包まれていた。それもそのはずである。

フレメアが出ていってからすでに何十分も経過していた。もしかしたら、もう二度と会うことはないかもしれない。

覚悟はしていたが、仲間の妹、それもかなり打ち解けていた子とこれ以上ないくらいに最悪の別れとなった。

病室にいるだれもがうつむいていた。





270: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:20:51.92 ID:W73DJ5oDO



ガラッ、と病室の扉が開いた。おそらくは浜面が戻ってきたに違いない。

絹旗「浜面、フレメアは…」

しかし、現れたのは浜面ではなかった。

一人はもはや二度と会うことはできないと思ってた少女。そして、もう一人は-




271: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:22:45.18 ID:W73DJ5oDO


麦野「テメェは…」

麦野はすぐに警戒心をあらわにした。ほんの十数時間前に自分を拘束して発砲した男だ。当然である。そして、絹旗と滝壺はフレメアの連れてきた謎の大男にポカンとしていた。

青ピ「安心してや。僕はフレメアちゃんに頼まれて一緒に来ただけや。フレメアちゃんに手ぇ出さん限りなんもせぇへんよ」

ポケットに手を突っ込み、薄っぺらな笑顔で青髪ピアスはしゃべる。

フレメア「アクト、麦野のこと知ってるの?」

フレメアはようやく青髪ピアスと麦野が面識があったという事実に気付いた。

滝壺「! あくと…?」

絹旗「! こいつが…!」

アクトという名前を聞き、滝壺も絹旗も一気に警戒心を強める。





272: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:23:42.49 ID:W73DJ5oDO


青ピ「…そうやね、ちょっとばかし前にケンカしたっちゅうとこかな」

それに対してなんの反応もせずに青髪ピアスはフレメアの質問に答えた。

フレメア「そう、なんだ…」

それを聞いてフレメアは困ったような顔をした。だが少しばかり考えた後、意を決した様に麦野に話しかけた。

フレメア「麦野、ちょっと話がしたいの」





273: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:26:46.02 ID:W73DJ5oDO


麦野「…かまわないわ」

滝壺「ふれめあ、これ座っていいよ」

そう言って滝壺は自分の座っていた椅子をフレメアに差し出した。少なくとも、滝壺の方はフレメアの意志を汲み取ったらしく少し警戒を解いたようである。

フレメア「ありがとう」

そしてフレメアは自分には少しだけ大きい椅子に腰をかけた。

フレメア「麦野」

麦野「…なにかしら」

そこでフレメアは大きく深呼吸をした。もう一度、辛い現実と向き合うための準備である。




274: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:28:01.44 ID:W73DJ5oDO


フレメア「麦野が…お姉ちゃんを殺したっていうのは…本当なの?」

震えた声で、途切れ途切れにフレメアは話した。

麦野「…ええ、そうよ」

瞬間、フレメアはまた少し泣きそうになった。さらにその後ろで青髪ピアスの表情がピクリと動いた。

フレメア「…じゃ、じゃあ…麦野たちがお姉ちゃんのの仲間っていうのも本当?」

泣きそうになりながらもフレメアは言葉を紡ぐ。

麦野「…そう、ね。フレンダは今も仲間だなんて思ってくれないでしょうけど」





275: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:29:38.11 ID:W73DJ5oDO


青ピ「…」

青髪ピアスは一瞬口を挟みそうになった。しかし、思いとどまる。今はフレメアと【原子崩し】の時間。自分の出る幕ではない。

フレメア「…じゃあ」

フレメアはしゃべりはじめる。両手を握りしめて。

フレメア「なんでお姉ちゃんを殺したのか教えて」

決意を新たに、フレメアは言い放った。その決意はしっかりと言葉にも表れていた。

麦野「…それは」

麦野は口をつぐんだ。自分の行為をしゃべりたくない訳ではない。ただ、幼い少女には刺激が強すぎること、この街の一番汚いことに触れること、そしてその汚いことにフレンダが手を染めていたこと。それらを考慮した上でどこまでどのように話すべきか悩んだのだ。






276: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:32:04.71 ID:W73DJ5oDO


青ピ「吐け。洗いざらい全部や」

青髪ピアスが強い口調で言い放った。

麦野「…」

青ピ「お前は姉を殺した人間の前に出てでも真実を知ってみせるっちゅう少女の決意まで殺す気なんか?」

いくらフレメアが見知った人間でも、その人間が姉を殺したと知った上でその人物の前に姿をさらすことは簡単にできることではない。

しかし、それでもフレメアは自らの意思でここに来ると言ったのだ。そこまでしたフレメアには当然全てを知る権利がある。青髪ピアスはそう思っていた。

麦野「…分かったわ」

その一言で麦野も踏ん切りがついた。





277: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:33:16.13 ID:W73DJ5oDO






麦野「…これで全部よ」

麦野は話した。学園都市の裏のことも、『アイテム』のことも、『スクール』と対峙したことも、どうして、どうやってフレンダを殺したのかも。そしておそらく、いや、確実にそれが間違っていた行為で許されない行為であることも。

フレメア「…」

フレメアの顔色は完全に悪くなっていた。異様に発汗もしている。体も震えている。絹旗も滝壺も麦野も、後ろに立っていて顔色が伺えない青髪ピアスすらも、一旦中断した方がいいのではないかと思っていた。

フレメア「…お姉ちゃんはね」

だが、フレメアは話しはじめる。体は震えていても、しっかりした口調で。





278: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:34:50.87 ID:W73DJ5oDO


フレメア「私に会いに来ると一緒に遊んでくれたの。私たちにはお父さんもお母さんもいなかったから」

麦野「…」

フレメア「えっと…私は『置き去り』で…最初はお姉ちゃんと違う施設にいたんだけど…えっと…今は『置き去り』の施設にいて…」

言葉がまだうまくまとまっていないようだった。それでも話し続ける。





279: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:36:01.65 ID:W73DJ5oDO


フレメア「それで…『置き去り』の施設に移った時にお姉ちゃんは一緒に来なかったの。住むところが見つかったからって。私も一緒に行きたかったけど、まだ小さいから来ちゃダメだって…」

絹旗「…そうだったんですか」

フレメア「うん。でも、よく私に会いに来てくれた。何してるのか聞いても教えてくれなかったけど…大体問題ないって言ってた」

滝壺「…」

フレメア「それでね、いつも話すことは…大体友達のことだった」

麦野「!」

フレメア「強くてカッコいい友達と、マイペースでのんびり屋さんの友達と、小さくて元気な友達のお話。」

麦野「…」

滝壺「…」

絹旗「…」

フレメア「大体、みんなのことだよね?」





280: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:37:20.78 ID:W73DJ5oDO


そういえば不思議だった。他人にあれだけ警戒していたフレメアが、フレンダの仲間と言っただけで疑いもせずにあそこまですんなりと心を開いたのだ。おそらく、フレンダから話を聞いていたのだろう。

フレメア「友達のお話をする時、お姉ちゃんはいつも楽しそうだった。自分の居場所だ、ってちょっと自慢してた。お姉ちゃんがアクトと出会うまでは大体その話だった」

滝壺「…」

フレメア「だから…みんなが本当はいい人だっていうのは大体分かる」

絹旗「…そんな」





281: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:38:20.59 ID:W73DJ5oDO






フレメア「…でも、麦野はお姉ちゃんを殺した」

麦野「…」

フレメア「お姉ちゃんの、仲間なのに」









282: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:40:52.51 ID:W73DJ5oDO


絹旗「超待ってください!」

絹旗が耐え切れずに叫んだ。

絹旗「悪いのは麦野だけじゃありません!フレンダを切り捨てて自分だけ脱出した私にも超責任はあります!」

滝壺「私も…自分だけ悪くないなんて思ってないよ」

二人ともフレメアに向かって主張する。きっとそれは麦野を庇うという意味もあるのかもしれないが、きっと本心で主張しているのだろう。

絹旗「麦野だけの問題じゃありません!」

滝壺「私たち『アイテム』全員に責任はある」





283: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:42:12.76 ID:W73DJ5oDO


フレメア「…わかった」

そして、フレメアはそんな三人を見つめて神妙にうなずく。フレメアは自分の姉の顔を思い出していた。

フレメア「お姉ちゃんのお墓はあるの?」

麦野「…ええ、第十学区に」






284: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:43:47.50 ID:W73DJ5oDO





フレメア「…なら、みんなお姉ちゃんのお墓の前でお姉ちゃんに謝って。私とアクトの前で。そして、お姉ちゃんのお墓の前で私とアクトにも謝って」




三人の謝罪の気持ちはフレメアに届いていた。そして、フレメアは自分が悪いことした時、ちゃんと素直に謝ったら姉はどうしてくれたかを思い出していた。

その上で思う。こんなにも申し訳ない顔でひたすらに訴えかける仲間のことを姉が許さないはずがない、と。

フレメア「それでも私自身は許すことはできないと思うけど…えっと…」

青ピ「…少しだけ納得はできる、か?」

フレメア「うん、大体それ」





285: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:45:20.66 ID:W73DJ5oDO



麦野「…分かったわ。土下座でもなんでもする」

絹旗「超当然です」

滝壺「…でも、今も謝らせて。ふれめあ、あくと、本当にごめんなさい」

次いで絹旗も頭を下げる。

絹旗「本当に申し訳ありませんでした」

そして、麦野も

麦野「ごめんなさい…本当に、ごめんなさい…!」







286: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:46:25.74 ID:W73DJ5oDO



フレメア「…じゃあ、私はそろそろ行くね」

そう言って、フレメアは椅子から降りた。

青ピ「もう、ええの?」

フレメア「大体いい、にゃあ」

そう言って、フレメアは青髪ピアスの手をとった。

滝壺「フレンダのお墓に行く時はまた連絡するね」

絹旗「ええ、その時はサバ缶でも買ってきます」

麦野「…さようなら、フレメア」

フレメア「うん、またね」

そう言って、フレメアと青髪ピアスは病室から出て行った。






287: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:47:45.35 ID:W73DJ5oDO






トンッ、と扉の閉まる音がした。

フレメア「…っはぁ…」

一気に緊張の糸が切れたのか、フレメアは軽く息を吐いた。

一呼吸おいて、二人は病院の廊下を歩き始めた。





288: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:49:03.82 ID:W73DJ5oDO


青ピ「フレメアちゃん」

フレメア「…なに?」

青ピ「フレメアちゃんは強いなぁ」

フレメア「え…?」

青ピ「あんな話聞いて泣きださんどころか立派にしゃべれるなんて誰にでもできることやない」

フレメア「…」

青ピ「せやけど、な」





289: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:50:06.12 ID:W73DJ5oDO





青ピ「泣きたい時は泣いたってかめへんよ」



フレメア「うっ…うぅ…うわああああああん!」







290: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:51:48.89 ID:W73DJ5oDO





麦野「またね、か…」

滝壺「…」

絹旗「…」

麦野「これで本当によかったのかしら…」

絹旗「どう、でしょうね…」

滝壺「…」





291: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:53:19.07 ID:W73DJ5oDO


だが、その時遠くから慌ただしい足音が聞こえた。

絹旗「…何ですか一体」

バタバタと足音は段々と近づいてくる。そして、その音が麦野たちの部屋まで来た時…


ドバ--ン!という音とともに扉が開いた。




292: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:54:26.38 ID:W73DJ5oDO


浜面「た、大変だ!フレメアが見つからねぇ!」

麦野「」

浜面「ケータイの電話もつ繋がらねぇ!」

絹旗「」

浜面「もしかしたらまた変なヤツらに追われてんのかもしれねぇ!」

滝壺「」

浜面「…おい!何だよそのリアクション!フレメアの一大事かもしれねぇんだぞ!?お前らフレメアがどうなってもいいってのかよ!」

滝壺「ふれめあなら今の今までここにいたよ?」





293: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:56:15.68 ID:W73DJ5oDO


浜面「見損なったぞお前ら!お前らにとってフレメアは…滝壺さん今なんて?」

滝壺「ふれめあなら今の今までここにいたよ?」

浜面「え?で、でもケータイが繋がらなくて…」

絹旗「大方、電源切ってたんじゃないですか?ここ病院ですし」

『アイテム』は知らない。先ほども、そして今も、フレメアが泣いている間は青髪ピアスが能力を使ってその姿を見られない様にしていることを。

そして、【隠密行動】はどんな機器もスルーできる能力。当然、電波もフレメアのケータイを探してさ迷い、発見できなかった。繋がるはずもない。





294: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:57:48.97 ID:W73DJ5oDO


浜面「え、えぇー…」

麦野「…ったく、なぁにやってんだよ、はーまづらぁ」

麦野の笑みと共に、青白い球体が出現した。

浜面「ちょっと待て!それだけは!」

絹旗「…まったく、相変わらず浜面は超浜面ですね」クスクス

浜面「うるせぇ!前から思ってたけどそれすげぇパワーアップしてんじゃねぇか!別に人造人間との最終決戦ために普段から金髪状態な訳じゃねぇよ!」

滝壺「大丈夫、最期は恩師とそのペットを巻き添えにして死ぬはまづらも私は応援してる」

浜面「滝壺さん何言って」

麦野「はぁーまづらぁ!」

浜面「うおわ!大人しくしてろよ怪我人!」

こうして、病室での喧騒は再び看護師が鎮静剤を持ってくるまで続いてしまった。





295: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/02(金) 23:58:56.09 ID:W73DJ5oDO







病院はすでに消灯時間になっていた。麦野も他の部屋に倣い、部屋の電気を消した。

片腕が未だになくてバランスが悪いし、動くと傷口が疼く。

個室だからある程度は自由にできるが病院であることには変わりはない。特にやることもないので麦野は布団に潜りこんだ。





296: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/03(土) 00:00:18.22 ID:Sd6hYfzDO


布団に入って今日のことを順に思い出す。
自分のケガの具合を聞いた。
滝壺も絹旗も私の罪を背負うと言ってくれた。
フレメアにフレンダのことを告白した。
フレメアと第六位が来てフレンダのことを話した。
フレメアはフレンダの墓でフレンダとフレメアと第六位に謝れと言い、去って行った。
肝心なところでいなかった浜面を(ちょっとキツめに)からかった。

だが、ここまで思い出して肝心なことを忘れていることに気付いた。





297: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/03(土) 00:01:19.39 ID:Sd6hYfzDO


今朝起きる前に見た夢のこと。

フレンダが出てきて、フレンダは必死に懇願して、最期は絶望に顔を染めて…

麦野「…フレンダ…」

そっと、自分が殺した仲間の名前を呟いた。

麦野「…ごめんなさい…フレンダ…」





298: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/03(土) 00:02:46.28 ID:Sd6hYfzDO



その時、コンコン、という音が扉からした。

すでに消灯時間は過ぎている。遅くまで電気が付けっ放しになっていたり、こちら側から呼ばない限り、看護師が訪れることはない。

麦野は不思議に思ったが、ベットから上半身だけを起こした。

麦野「どうぞ」

ガラリ、と扉が開いた。しかし、人の気配はしない。既に暗闇に慣れている麦野の目にも誰も写らない。

しかし、病院の夜の静寂の中、ほんのわずかにだけ足音がした。





299: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/03(土) 00:05:40.46 ID:Sd6hYfzDO


麦野(そういえば…)

ここで麦野は思い出した。

ロシアから戻って聞いた、フレンダの遺体の行方。

フレンダの遺体は一度この病院に預けられたと聞いた。というのも、上半身と下半身の発見時間が異なり、発見者も異なったからだ。

上半身は麦野が放置したあとから、暗部組織が回収した。しかし、下半身はそれよりも前にビル爆発の野次馬に発見されていた。そして、野次馬は警備員に連絡。警備員は身元確認までの一時的な安置場に困ったためにこの第七学区の病院に預けた、と。

ならば、今耳にしている音は?見えない訪問者とは?





300: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/03(土) 00:07:37.79 ID:Sd6hYfzDO



しかし、麦野は冷静だった。

麦野「なんの用かしら?第六位」

すると、なにもなかったところに急に青髪ピアスが現れた。だが、昼間に会った時と違い、患者着だった。

青ピ「ふん、さすがにビビったりせぇへんか」

麦野「当たり前だろ。いい趣味してんじゃないの」

青ピ「そうやな。仲間の上半身引きずり回すよりずっとええ趣味やわ」

麦野「…」

青ピ「フレメアちゃんはああ言ったがな、僕は少しも許す気も納得する気もあらへん。お前が何をしようがな」

麦野「…ええ、もともとそのつもり。許されることじゃない。フレメアと、私の仲間が甘過ぎるのよ」

青ピ「ふん…」


麦野「それで、なんの用かしら?また襲撃するつもりならノックする必要もないし、わざとらしい足音も消してたはずだけど」





301: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/03(土) 00:10:40.75 ID:Sd6hYfzDO


青ピ「釘を刺しにきたんや。お前の義務をな」

麦野「義務?」

青ピ「今後、何があろうともフレメアちゃんを守れ」

麦野「…」

青ピ「本来なら、フレンダが守るはずやったんや。せやけど、フレンダはお前が殺した。なら、お前はフレメアちゃんを守り続ける義務がある」

青髪ピアスは統括理事会に脅迫的なメッセージを送り付けた。そもそもフレメア自身は特異な能力を持ち合わせていないため、今後統括理事会が無理を通してまでフレメアに手を出すことはないだろう。

だが、フレメアを狙うのはなにも統括理事会だけではない。誰でもいいから金ヅルを探しているスキルアウト、研究素体を探している科学者、他にもろくでもない連中はごろごろいる。





302: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/03(土) 00:12:05.17 ID:Sd6hYfzDO


麦野「…フレメアがそれを許すと思う?」

青ピ「なら気付かれへんように守れ」

麦野「…」

青ピ「…本来なら僕かてこんなこと言いたない。せやけど、僕はまだやることがあんねん。もうしばらくフレメアちゃんのそばにはおれん」

麦野「…お前は暗部を抜けたんじゃねぇのか?」

青ピ「こっちにもいろいろあるっちゅうことや」

麦野「…そう」

青ピ「…お前がホンマにフレンダのことを後悔してるんやったら、アイツの置き形見くらい守ってみせぇ」

その言葉だけ残して、青髪ピアスは再び消えた。





303: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/03(土) 00:13:34.70 ID:Sd6hYfzDO



麦野「…言われるまでもねぇ」

麦野は決意する。

麦野「私は学園都市第四位の【原子崩し】。『アイテム』のリーダー麦野沈利だ」


麦野「ガキ一人守れないなら学園都市第四位の看板なんて下ろしてやる。仲間の宝の一つも守れないならリーダーなんて肩書きもとっぱらってやる」






304: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/03(土) 00:15:50.88 ID:Sd6hYfzDO




-フレンダ



-できることなら、もう一度会いたい



-会ってちゃんと謝りたい



-自分で殺しておいて何を今さらって思うけど…



-それでも謝りたい



-アンタは許してはくれないでしょうけど



-ならせめて、アンタが自慢に思ってくれた『麦野沈利』を最後まで貫き通す



-もう二度と狂ったりはしない



-居場所も仲間も守ってみせる



-アンタの大事なものも守ってみせる



-だから、アンタが自慢に思ってくれた『麦野沈利』らしく、身勝手に言わせてちょうだい



-今までありがとう



-本当にごめんね



-フレンダ





305: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/03/03(土) 00:30:13.98 ID:Sd6hYfzDO

麦野「フレンダは…私が殺した」本編はここまでです。

>>249
いまさらだけど浜面はこんな扱いでした
レスくれた時に返そうと思ってたんですけど、
ネタバレしたくねーなー、って
ごめんなさい

あと、俺スゲーいっぱいの人が麦のん支援してると思ったら同一人物だったw
イヤ、毎回ありがとうございます

青ピ…このスレくらいでしょうね、こんなシリアスな青ピ

あと、力尽きてませんよ!
ラストだけちょっと間が空いて申し訳ないです!


さて、以前申しました通り、この話には二回エンディングがあります
次は外伝みたいなモンすかね
後日談…とはちと違います
てか、こんだけ青ピ率いる『ウォール』出しといてこのまま終われないんで
もう少し、お付き合い願います。









元スレ
SS速報VIP:麦野「フレンダは…私が殺した」