5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/12(水) 23:15:03.71 ID:n4JWz4fjO

菫「………即ち、それは私に対する宣戦布告というやつか。良いだろう。受けて立とう」

咲「へぇ、随分と余裕だね。確かに現状では私の方が弘世さんよりも出遅れてる。それは認めるよ」

菫「………」

咲「でも、それは、今の現状での話なんだよ。ここからいくらでも挽回することは可能。絶対にお姉ちゃんは渡さないよ、弘世さん」

咲(そう。どんなに汚い手段を使っても、絶対にお姉ちゃんは私のモノにしてみせる)

咲(その方がお姉ちゃんも幸せになれるはずなんだよ)



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/12(水) 23:30:12.27 ID:n4JWz4fjO

菫「それは私だって同じだ。絶対に、絶対に照は渡さない。ようやく、二年越しの恋が実ったんだ」

咲「二年、ね。それで、それがどうしたの? 私がお姉ちゃんのことを想っていた期間に比べたらそんな時間は些細なモノだよ」

菫「な、に?」

咲「私は生まれた瞬間からお姉ちゃんの事を想い続けている。
それを―――ぽっと出のあなたなんかにお姉ちゃんを奪われるかと思うと、ね。もう腹腸が煮え繰り返るような気分だよ」

菫「ッ、過ごした期間は関係ない」

咲「関係ない? それは違うよ。それに先に時間のことを口に出したのは弘世さんの方ですよ」



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/12(水) 23:43:51.60 ID:n4JWz4fjO

菫「ッ…お前は照の妹だろ。それも義理ではない血の繋がりがある実の妹」

咲「うん、そうだよ。確かに私はお姉ちゃんの妹。でも、それが何か関係あるの?」

菫「そんなのあるに決まって」

咲「ないよね。そもそも女の子同士の恋愛そのものが異端なんだよ」

菫「……っ」

咲「異端に異端が加わったところで大した変化はない。それに弘世さんにはお姉ちゃんの事を完全に理解するのは不可能なんだよ」

咲「悪いことは言わないよ。今すぐにお姉ちゃんと別れて」

菫「それは…嫌だ。絶対に、嫌だ。嫌に決まっているだろう!」

咲「……はぁー」



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/13(木) 00:07:18.71 ID:rcZ0ER6TO

咲「聞き分けがないよね、弘世さん。」

菫「お互い様だろう。それは」

咲「そうかもしれないね。だけどお姉ちゃんの幸せを考えるなら素直に身を引いてよ」

菫「私が幸せにする」

咲「できないよ。お姉ちゃんを幸せにすることができるのは、その孤独を癒せる者だけ。それは即ち、私たちのような“牌に愛された子”だけなんだよ」

菫「……幸せにしてみせる」

咲「無理だよ。それは我儘。ただただ悪戯にお姉ちゃんの時間を無駄にするだけの我が儘。だから別れて」

菫「…………」

咲「一日だけ猶予をあげるよ。答えは明日、聞かせてね、弘世菫さん。良い返答を期待しているね」ニコッ



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/13(木) 00:19:12.09 ID:rcZ0ER6TO

咲が去った後に菫だけが残された。

菫(私は照のことが好きだ。愛している)

菫(だから永遠に共に在りたいとも願った。こんな気持ちになったのは照が初めてだったんだ)

菫(私はずっと一緒にいたい。だが、これは私の我が儘なのか。悪戯に時間を浪費するだけの……)

菫「…ッ」じわっ

菫(ダメだ、ダメだ、ダメだ。思考がついネガティブな方にいってしまう)

菫「…照。私は一体どうしたら…どうすればいいんだ」ボソッ



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/13(木) 00:38:33.70 ID:rcZ0ER6TO

その日の夜。

照「…咲」

咲「なに、お姉ちゃん」

照「今日の夕方、菫を連れていってたよね。何してたの?」

咲「世間話をちょっとね。あまりにも下らない与太話だよ」

照「そうなの。それなら別にいいけど。そういえば咲はいつまで東京にいるの?」

咲「その言い方、何か傷付くよ。如何にも早く長野に帰ってもらいたいみたいな」

照「…違う。別にそういうつもりで言ったわけではないよ」

咲「うん、分かってるよ、お姉ちゃん」ニコッ

咲(そう。私はお姉ちゃんのことなら何でも分かるんだよ)



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/13(木) 00:55:30.60 ID:rcZ0ER6TO

その頃。袴姿の弘世菫は弓を構え、目線の先にある小さな的に狙いを定めていた。

菫「………っ」

菫(何で、こんなにも心が乱されるんだ。恋人の妹から送られた宣戦布告にも似た忠告。ただ、それだけのコトなのにどうして)

菫(照に憧れ、好意を向ける人達は多い。かなり多い。今までも照に好意を向けてる者たちからの罵罹雑言は受けてきた)

菫(それは平然と聞き流せたはずなのに、なんで、どうして)

菫は弓の弦を引き、そのまま一連の流れるような動作で矢を射る。だが、その放たれた矢が的に刺さることはなかった。

菫「……また…外した」



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/13(木) 01:11:03.15 ID:rcZ0ER6TO

翌日。二人が共に通学するために決めた待ち合わせ場所に宮永照の姿がある。

照「………」

照(はやく着きすぎた。まだ待ち合わせ時間まで30分もある。読書でもして時間を)

その思考を遮るように弘世菫が到着した。

菫「おい、照。相変わらず早いな」

照「…菫。おはよう」

菫「ああ、おはよう」

照「………」

菫「………」

照(胸が高鳴る。動悸が凄い。やっぱりまだ菫を前にすると緊張する)

菫(沈黙。昨日まではこの静寂に包まれた空気すらも居心地が良かったのに、何故か今日は気まずい)

照(そういえば昨日は菫からの“おやすみメール”が来なかった。どうしたんだろう)

菫(照は私と一緒にいて楽しいのだろうか。私みたいに幸せを感じているのか…)



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/13(木) 01:22:24.95 ID:rcZ0ER6TO

照「ねぇ、菫」

菫「…なんだ?」

照「昨日の夜、いつものアレを送ってこなかったけど、何かしていたの?」

菫「別に、なんでもいいだろう」

照「…そう、だね」

照(…どうしたんだろう、菫。なんか怒ってる)

菫「……行くぞ」

照「……うん」

二人は通学路を歩き始める。



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/13(木) 01:30:07.87 ID:rcZ0ER6TO

照「菫」

菫「………」

照「…菫」

菫「…どうした?」

照「なんでそんなに機嫌が悪いの?」

菫「…ッ」

照「やっぱり私が原因?」

菫「……違う」

照「菫、もう隠さなくてもいいよ…」

菫「…別に何も隠していない」

照「嘘付き」

菫「……嘘じゃない」



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/13(木) 01:43:19.99 ID:rcZ0ER6TO

照「私、知っていたんだ。菫のこと」

菫「…?」

照「私と付き合い始めたせいで菫の悪評を広められたりしているんだよね。私、そのことを知ってた」

菫(……)

照「ずるいよね。卑怯だよね。私は菫の悪評が広がれば広がるほど心の奥底では実は喜んでたんだ」

菫「……」

照「私は菫のことが好き。大好き。愛している」



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/13(木) 01:52:53.12 ID:rcZ0ER6TO

照「だけど、菫はモテる。いつか私の元から離れていってしまうかもしれない。だから菫の悪評が広まり始めた時、喜びを感じた」

菫「………」

照「最低だということは自覚している。私は菫の悪評が広がれば広がるほど、私たちの世界も広がる。それが何より嬉しかった」

菫「………」

照「だけど、菫をここまで傷付けるつもりはなかったの。ごめんなさい」

菫「はぁー、お前はさっきから何の話をしているんだ」

照「……え?」



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/13(木) 02:01:45.36 ID:rcZ0ER6TO

菫「もしかして私があの出鱈目な噂のことを気にしていると思ったのか」

照「…う、うん。違うの?」

菫「当たり前だろう。私が気にしているのは―――」

照「菫が気にしているのは、なに?」

菫「いや、やっぱり何でもない」

照「菫、それは菫一人の問題なの?」

菫「………え」

照「私は関わらない問題なの?」

菫「それは…」

照「菫一人の問題なら私は口を出せない。だけど私に関する要因が一つでも含まれているのならそれは私たち二人の問題」

菫「………」

照「どっち…?」



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/13(木) 02:12:27.37 ID:rcZ0ER6TO

菫「…お前はどっちだと思うんだ?」

照「私は二人の問題、だと思う」

菫「そうか。…確かに私のこの懊悩の根本は私たちの問題だ。特に照の要因が色濃い問題」

照「私…?」

菫「お前は私といて本当に幸せなのか?」

照「……え」

菫「私はお前の孤独を理解することができない。自身が孤独に対面したことがないから、その苦しみや悲しみなんてのも分からない。私はお前のことを何も理解していない」

照「………」

菫「そんな私といてお前は本当に幸せだと胸を張って言えるのか?」

照「うん。言える」

菫(即答!?)



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/13(木) 02:31:31.09 ID:rcZ0ER6TO

照「菫は何か勘違いしている。私は別に自分を孤独だと思ったことはない」

菫「でも、だけど」

照「だって私の傍らには常に花が咲いていたから」

菫「花?」

照「うん、花。幼少期は私と咲。二人がお互いを支え合い、生きてきた」

菫「…ッ」ズキッ

照「私が咲を成長させ、咲は満開の花を咲かせた。だけど、ある時を境に妹は花を咲かせることをしなくなった」

菫「……」

照「もしかするとあの時に感じた喪失感が孤独なのかも」

菫「……」

照「その後、私は東京に渡った。そこで新しい花を見付けた。それが―――」

菫「―――私?」

照「そう。私の傍らに花が咲き続ける限り、私は孤独を感じることはない」



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/13(木) 02:57:08.61 ID:rcZ0ER6TO

照「だから私は菫を咲かせ続けるための陽光になる。だから菫は私の傍らで永遠に咲き続けていて」

菫「……ああ」

菫(私は、昨日まで、何を悩んでいたんだろうな。多分、あの子はきっと危惧していたんだ。私の照に対する愛が枯れることを…)

菫「照、私は永遠にお前の傍らにあり続けるよ」

その言葉に頬を紅潮させた照は、満開の笑みを含み、軽い疑問の孕んだ口調で言った。

照「…菫。それはプロポーズ?」

菫「なっ!?」

思わず赤面する菫の表情に照は悪戯っ子のような笑みを浮かべる。そんな照の笑顔を見た瞬間、菫は陽光を錯覚した。

―カン―



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/13(木) 03:05:46.67 ID:rcZ0ER6TO

後日談。

咲「やっと来たね、弘世さん」

菫「ああ」

咲「それで昨日の答えを聞かせてもらってもいいかな?」

菫「……昨日も言っただろう。照とは別れない」

咲「…ッ…なんで」

菫「照の傍らにあると誓ったからだ」

咲「…ッ…そこは私の居場所だったんだよ!お姉ちゃんの傍らに咲き続けるのは私だけで良い!だから」

菫「そうだな。確かに昔は咲ちゃんの場所だったのかもしれないな。だけど―――」

咲「ッ…!」

菫「今は私の場所だ」



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/13(木) 03:29:40.66 ID:rcZ0ER6TO

咲「なに、それ。なにそれ、なにそれ、なにそれ!」

菫「…咲ちゃん」

咲「なんで!私は、私は、お姉ちゃんの隣に返り咲くために!ここまできたのに!」

咲「嶺上開花を使うのも、インターハイで優勝したのも、全て全て全て全て、私のすべてがお姉ちゃんの傍らに開花するためだったのに―――!」

咲「その全てが無駄だったとでもッ」

咲「なんで、なんで、私の方がお姉ちゃんの事を知ってるのに、お姉ちゃんの全てを理解できるのに!」

菫「それは、そうかもしれない」

咲「…ッ…決めた。決めたよ。弘世菫さん、私はあなたに宣戦布告をします」

菫「…え」

咲「あなたにお姉ちゃんは渡さない!」

菫「え?え?」

咲「もう一度、お姉ちゃんの傍らに私は咲いてみせるよ!」

菫「えっ―――はぁあああああああああああ!?」

咲「ふふっ、守ってみせなよ。その場所を、ね」

終わり



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/13(木) 03:38:09.63 ID:rcZ0ER6TO

照菫が交際に至るまでのプロローグ?と菫→←照←咲のエピローグ?を書こうと思ったんだけど流石にもう眠い。おやすみなさい


元スレ
咲「お姉ちゃんは渡さないよ」