1: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 16:52:58.74 ID:BvJdIiuDO


-8月某日、早朝、第一学区某所



???「ったく、わざわざ朝っぱらこンなくっだらねェことしなくてもいいだろォが」

???「実験中に部外者が乱入する事態はあまり好ましくありませんので、とミサカは実験時刻に対する疑問に答えます」

???「分かってても愚痴の1つもこぼしたくなるンだっつーの。こちとらお前ら人形と違って人間やってンだからよ」

???「そういうものですか、とミサカは未知の知識に感嘆します」

???「やっぱ人形にゃ分かンねェか。つーかオマエ本当に強くなってンのか?
     経験値積ンで俺でもてこずる相手になるとか聞かされてたンだがなァ」

???「初手で戦闘不能になっていた第1次実験よりは確実に強くなっておりますが、とミサカは成長の軌跡をアピールします」

???「そンな微々たる成長でよくもまあ飽きもしねェで向かってこれるな。アホくせェ」

???「理論上ではいずれあなたの脅威になるはずですのでご心配なさらずに、とミサカは被験者の不安を払拭します」

???「説得力皆無だボケ。その境地にたどり着くまで何千回すり潰されてもいいンですかァ?」

???「構いません。それがミサカの存在理由ですので、とミサカは戦闘に備えて暗視ゴーグルに手をかけます」

???「……あァそォかい。そンじゃあ今日はノルマも少ないし、まずは1発サクッといっときますかァ」

???「午前5時19分を迎えました。第9981次実験を開始します」

???「はいはい。いい加減俺の能力がなンなのか理解してから死ンでくれよ? かれこれ9980回も死ンでンだからよ」




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3: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 16:55:12.00 ID:BvJdIiuDO


-日中、第七学区とある病院最上階立ち入り禁止区域



防音が施された手術室に患者着を着た1人の男がいた。

手術室にあるはずの機器はすべて撤去され、代わりに1本の丸太が固定されて部屋の中央に立っていた。


ステイル「……『巨人に苦痛の贈り物』!」


ボォウ! と男の左手から巨大な火球が飛び出す。

真っ赤に燃え盛る火球は一直線に丸太に向かい、そのまま丸太に激突した。

激突された丸太はその火球に包まれて音を立てて燃え上がる。

激しく燃える丸太を見て、男は満足そうにもう1度左手を掲げた。


ステイル「終われ」


ふっ、と燃え盛っていた丸太から一瞬で火が消えると、丸太は真っ黒な炭になっていた。

焦げ臭さが立ち込めると同時に、部屋の隅で待機していたバケツと消火器を持った集団から ワッ! と歓声が上がった。


インデックス「スゴいスゴい! 完璧なんだよ!」

削板「はっはっは! これでもういつでも退院できるな!」


歓声を上げる一団に対して、男は義手の左手を掲げて得意げに笑ってみせた。







4: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 16:56:08.96 ID:BvJdIiuDO


横須賀「見事なものだな。義手でも魔術を使えるのか。」

冥土帰し「どうってことないね?」

原谷「先生いったい何者なんですか……」

冥土帰し「医者だね?」

神裂「おめでとうございます、ステイル」

ステイル「ああ、ありがとう。久々に魔術を使ったから清々しいよ」

インデックス「よかったね! 精度も安定性もバッチリだったんだよ!」

ステイル「ふふ、まあね。以前と何ら遜色ないはずだよ」

削板「さすがの根性だな! 1ヶ月も経たずにここまで回復するとは大したもんだ!」

ステイル「……ボクとしては回復したというより回復させられたという感覚だけどね」


ワイワイとステイルの見舞いついでにリハビリを見学に来た一団が雑談で盛り上がる。

かつて左腕と右足を失った神父は今やなんの障害もないように見えた。





5: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 16:57:14.79 ID:BvJdIiuDO


冥土帰し「あとは耐久チェックだね? 明日までそれらを付けててなんの異常も見られなかったら退院だ」

ステイル「分かりました」

原谷「それにしてもスゴいですね。どっからどう見ても普通の腕にしか見えませんよ」

神裂「機能はともかく、外見までそっくり見せるとは……」

冥土帰し「さすがに塗装技術は外部任せだけどね? 入浴も含めて日常生活にはなんの支障もないから安心していいよ」

インデックス「よかったね、ステイル! 本当に近くで見ても義手だとは思えないんだよ!」

ステイル「ああ。ボクはてっきりロケットパンチ仕様みたいなものが出てくるかと……」

冥土帰し「うん? 付けた方がよかったかい?」

原谷「出来るんですか!?」

冥土帰し「技術は確立出来てるんだけど誰も付けたがらなくてね?
      一週間待ってくれればガス噴射仕様のモノを準備できる」

横須賀「面白いな。付けてもらったらどうだ?」ニヤニヤ

ステイル「遠慮しておきます」キッパリ

冥土帰し「そうかい? 義足の方も踵からふくらはぎにかけて
      噴射口を設ければ護身用のターボキック仕様に仕上げることが……」

ステイル「あなたはボクをビックリ人間か何かに仕立てあげるつもりですか?」

冥土帰し「この話をするとみんなそうやってツッコんでくれるよ」ニッコリ

削板「はっはっは!」





6: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 16:58:17.07 ID:BvJdIiuDO


冥土帰し「さて、今日の予定はこれで終わりだ。リハビリついでに歩くのは構わないけど
      範囲は病院の敷地内と隣の公園までだからね? それから17:00までには病室に戻っていること」

ステイル「ええ。心得ています」

冥土帰し「うん。じゃあボクはこれで失礼するね? それからここの部屋は空けといてくれ。ちょっと換気しないとダメそうだ」

削板「丸太は俺が処分するぞ! 知り合いが炭がほしいって言ってたからな!」

横須賀「それ炭になっているのか? 表面を焼いただけだろう?」

ステイル「ああ、大丈夫。ちゃんと中まで火が通ってるよ」

原谷「なんでそんな鶏肉焼いてるみたいな表現になるんですか」

冥土帰し「とにかくボクは失礼するよ。何かあったらすぐに知らせてくれ」

神裂「ええ。ありがとうございました」

インデックス「ありがとうなんだよ!」






7: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 16:59:52.28 ID:BvJdIiuDO


ステイル「じゃあ、外に出ようか。久しく外に出ていないから外の空気が吸いたいんだ」

神裂「吸いたいのはニコチンでしょう?」

ステイル「……バレたか」

削板「俺はこいつ片付けるぞ。持ってても邪魔だしな。仲間のバイト先まで持っていく」

横須賀「なら、俺もそっちに行こう。」

インデックス「一緒に来ないの?」

原谷「たまには3人で過ごした方がいいんじゃないかな。なんやかんやでいっつも僕たちが近くにいたし」

ステイル「別にキミたちがいたところで会話の内容が変わるとは思わないけど……ま、断る理由もないね」

神裂「では、そうしましょうか」

削板「おう。あとでインデックスを引き取りに行く。それまで頼むぞ」

横須賀「また誰かが狙っている可能性もあるからな。」

インデックス「大丈夫! かおりとすているがいれば百人力なんだよ!」

原谷「たしかにね。じゃ、またあとで」







8: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:02:09.14 ID:BvJdIiuDO


-数十分後、第七学区公園


雲1つない快晴が広がる中、削板ら一向はしっかりと火の通った巨大な炭をポリ袋の中に入れ、削板の仲間のバイト先に向かっていた。

白ランの下に旭日旗を着た削板、標準の夏服の学生服を着た原谷、筋肉が強調されるような丈の短いカノコのポロシャツを着た横須賀。

つい最近まで学園都市のそこら中で見られた女っ気0の集団は目的地へのショートカットとなる公園にさしかかっていた。


原谷「――ですからね? タダだからってたくさん食べればいいってモンじゃないんですよ」

横須賀「分かっていないな。ガリは元々口直しの食い物だ。1貫ごとに食べて何が悪い。」

削板「口直しなら茶があるだろ。アレは口の中を洗うほどの根性があるからな」

原谷「アンタほとんど熱湯のまま飲んでるじゃないですか。しかも冷やした麦茶飲むみたいにゴクゴク飲むし」

横須賀「後味流すどころかほとんど滅菌だろう。お前のは。」

削板「なに言ってんだ。熱いモンほど根性があるんだろうが」

原谷「舌を火傷したら元も子もないって言ってんですよ」

横須賀「味の分からぬ舌で寿司を食うなど寿司に対する冒涜。つまり根性なしの所業だ。」

削板「馬鹿言え! 俺の舌は熱湯ごときで火傷するほど根性なしじゃないぞ!」





9: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:03:34.37 ID:BvJdIiuDO


たどり着くまでに他愛のない話をしながら歩いていく。

何かにつけて根性を引き合いに出すのは、もはやこの一団の特徴である。


原谷「イヤ、普通に指突っ込んでも火傷するかもしれないようなものを粘膜にぶち混んで火傷しないわけが……ん?」


何かの異変を察知し、原谷が言葉を途切らせた。

公園の奥の方から男女の言い争う声が聞こえてきたのだ。

痴話喧嘩のような声は次第に大きくなり、だんだんとこちらに近づいてくる。


横須賀「なんだ?」


近づいてくる内に、天気のいい昼日中にも関わらず青い電撃が走っているのがはっきりと見えた。

どうやら女の方が怒りのあまり電撃をそこら中に放っており、それを男が避けるために逃げ回っているようである。


削板「おい、あれ上条じゃないか?」


そして、その逃げ回っている男には見覚えがあった。

つい最近、魔術による大規模爆撃を右手1本で反らしたツンツン頭である。





10: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:05:06.00 ID:BvJdIiuDO


上条「だーっ! ストップストップ! 落ち着けって!」

???「うるさい! 今日という今日は決着つけてやるんだから!」


そして、女の方はシャンパンゴールドの髪をした制服姿の少女だった。

周りに静電気では済まないレベルの電気をバチバチと帯電させ、ツンツン頭に詰め寄っている。


上条「だー、もう! なんだってんだよ! どうしてこう常盤台の連中ってのは揃いも揃って……」

削板「おい、上条。なにしてんだ?」


とうとう捕まったツンツン頭に白ランの男が声をかけた。


上条「あ! 軍覇たち! いいところに! 助けてくれ!」

???「ん? 誰よこの人たち」


2人の視線が削板らに向けられる。

少女の方は怪訝な顔をしていた。


横須賀「緊急事態というなら助けるが……痴話喧嘩ではないのか?」

???「ち、痴話!? って、んなわけないでしょうが! 誰がこんなヤツと!」

原谷「違うんですか?」

上条「つーか俺がこの間ビルのテレビに映ってたのってどっちなんだって話をしたら急にビリビリが……」

???「やめろっつってんでしょうが!」


バチバチと再び青い火花が飛び散る。

だが、キュィインといういう音と共にすぐにそれはかき消された。


上条「あっぶねぇ!」

???「ああもう! なんなのよその右手!」





11: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:06:28.62 ID:BvJdIiuDO


削板「……つまりなんなんだ? イマイチ状況が掴めんが……」

上条「そんなの俺もだよ! なんでか知らんけどビリビリがいつもの如くビリビリし始めて……」

???「ビリビリビリビリうっさいわよ! 私の名前は御坂美琴! ちゃんとした名前があんの!」

横須賀「……御坂美琴?」

原谷「え!? Level5の!?」

削板「おお!【超電磁砲】か! 言われてみれば見たことある顔だな!」

上条「あれ? みんな知ってんのか?」

御坂「……ふん。ま、知名度はある方なのよ。私」





12: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:07:54.81 ID:BvJdIiuDO


横須賀「……テメェそこら辺のスキルアウト片っ端から潰してる上に『ビッグスパイダー』を壊滅させたらしいな」

御坂「はぁ? アイツらが集団で能力者を襲ってたから退治しただけよ。
    そもそも警備員が一網打尽にして全員捕まえたんだし、それ以前に鎮圧したのは固法先輩と黒妻って人よ」

横須賀「……黒妻のヤツあの爆発で生きていたのか……」

原谷「まあまあ、そーゆー物騒な話は置いておきましょうよ。
    ところで、テレビに映ってたのはどっちだ、ってどういう意味です?」

上条「ああ、こいつが双子の妹と一緒にいて……って、あれ? 妹どこ行った?」


キョロキョロと上条が誰かを探すように辺りを見回す。

しかし、公園には削板たち以外には誰もいなかった。


御坂「! し、しまった! 私としたことが……!」

削板「ん? なんだなんだ?」

御坂「うー……仕方ない。私はあのコを捜さないといけないの。勝負は預けておくわ」

上条「預けんな持ってけ!」

御坂「いい? 忘れんじゃないわよ!」


最後にそう呼び掛けると、常盤台の制服を着た少女は駆け足で公園を後にした。






13: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:11:03.37 ID:BvJdIiuDO


削板「行っちまったが……なんなんだ?」

上条「だから俺が知りたいって……」

横須賀「……」

原谷「あー、お礼言いそびれちゃった……」

削板「ん? なんか世話になったのか?」

上条「初対面みたいなリアクションしてなかったか?」

原谷「会うのは初めてだったんですけどね。ずーっと前に救われたことがあるんです」

横須賀「……俺はあの女はあまり好かんな。アイツにやられたスキルアウトはごまんといる。
     『ビッグスパイダー』の件にも、絡んでいるのは確かなようだしな。スキルアウト潰しと言っても過言ではない。」

削板「潰してんのは根性なしのスキルアウトだけだろ。
    アイツはめちゃくちゃ根性あると聞いたぞ。【幻想御手】を解決したのもアイツらしい」

上条「な、なんか賛否両論だな……。俺はそんな悪いヤツじゃないと思うんだけどなぁ」







14: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:12:14.20 ID:BvJdIiuDO


-夕暮れ、第七学区大通り



その後、上条は削板らと合流し、一緒にキャンプ場に向かった。

無事キャンプ場に着き、削板の仲間に炭を引き渡すと、お礼に肉をもらえることになったので有り難く4等分していただいた。

上条に至っては涙を流す勢いで肉をつつんだ袋をカバンの中に突っ込んでいた。

帰りの道中でアウレオルスと姫神が今どこで何をしているのか色々想像を巡らせたあと、上条はタイムセールの戦場の中に飛び込んでいった。

再び3人に戻った頃には日が大分傾いてきた上に、雲が出てきて薄暗くなっていた。


原谷「おかしいですね。天気予報じゃ明日も晴れだったんですけど……」

横須賀「最近ちょくちょく外しているな。【樹系図の設計者】も寿命か?」

削板「早すぎるだろ。世界中の分子の動きを計算できる根性があるヤツがそんなに早く壊れるはずがない」

原谷「イヤ、だからこそ逆に寿命を迎えるのが早いんじゃないですか?」

横須賀「じゃなきゃ制御不能になったかブチ壊されたか……っと。」


不意に横須賀が言葉を切らし、ポケットに目をやった。


削板「ん? どうした?」

横須賀「スマン、舎弟からの電話だ。おう、どうした? ……なに?」


電話に出た瞬間、横須賀の表情が変わる。

ゆるんでいた表情から険しい表情に早変わりした。


原谷「……なんか緊急の用件ですかね」





15: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:14:12.04 ID:BvJdIiuDO


通話はなかなか終わらず、横須賀の顔はどんどん表情が険しくなっていく。

明らかにいい内容の話ではなかった。


横須賀「それで、相手の装備は? ……ライフルに軍用ゴーグル、常盤台の制服か。分かった。すぐに向かう。」


頭から携帯電話を放し、横須賀はようやく通話を終了させた。


削板「おい、なんか物騒な名前が聞こえたが?」

横須賀「俺たちが最近使っていなかったアジトを占拠されたらしい。」

原谷「! まだあの学区にそんな馬鹿いたんですか……」

横須賀「どこの馬鹿か知らんが俺らのシマを荒らすとはいい度胸だ。叩きだしてくれる。」

削板「……手ぇ貸すか?」

横須賀「これは俺のチームの問題で俺のケンカだ。お前の出る幕ではない。
     この【内臓潰し】の横須賀、たかだかライフルごときに遅れは取らん。」

原谷「そこは取ってくださいよ。人間として」

横須賀「とにかく、俺は今からアジトに向かう。また何かあったら呼べ。」

削板「分かった。気をつけろよ」

横須賀「ふっ、誰にモノを言っている」


最後に不敵に笑い、スキルアウトは薄暗い街並みに消えていった。






16: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:15:12.93 ID:BvJdIiuDO


-十数分後、第七学区とある病院



病院に戻ると、すでにインデックスと神裂が玄関口で待っていた。


インデックス「あれ? よこすかは?」

削板「途中で別れた。急用らしい。ステイルはどうした?」

神裂「病室に戻りました。あの様子なら明日には退院できるでしょう」

原谷「そうですか。じゃあ明日は退院祝いでも開きますか」

インデックス「あ、いいねそれ! またあの食べ放題のお店行きたいんだよ!」

削板「おっ、ならそうすっか! モツにも言っておかないとな!」

神裂「ええ、ステイルも喜ぶと思います」

原谷「じゃあ明日12:00ごろにまた病院に集まりましょう。そこから第四学区に行く感じで」

インデックス「やったあ! 明日が楽しみなんだよ!」

削板「うし! それじゃあまた明日な!」


それぞれが別れを告げ、それぞれが帰る場所へと明日の予定を思い描いて微笑みながら帰っていく。

平穏な世界がそこにはあった。







しかし、この一団の平穏な日常など長く続きはしない。

翌日この約束が果たされることはなかった。







17: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:17:04.42 ID:BvJdIiuDO


-40分後、第一一学区路地裏



日は完全に沈み、完全下校時刻はすでに過ぎていた。

ほとんど人気のない裏道をスキルアウトのリーダーは早足で通り抜けていく。

その服装は日中のものとは変わっており、ジーンズを履いた下半身と不釣り合いな大きさのレザージャケットを着ていた。

このレザージャケットは丈が長いというわけではなく、上半身が不自然に大きく見えるものだった。


スキルアウト「あ、横須賀さん! こっちッス!」


人気のない裏道でたむろしていたガラの悪い集団の1人が横須賀に気付いて声をかける。

全員が真剣な表情をしていた。


横須賀「待たせたな。で、シマを荒らした馬鹿はどこだ?」

スキルアウト「この先ッス」


1人のスキルアウトが今いる通りよりもさらに細く狭い路地裏を指差す。

明かりがほとんどないため先が見えなかった。





18: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:19:17.80 ID:BvJdIiuDO


スキルアウト「俺らも自分らで追い払おうとしたんスけど、いきなりライフル出して銃口向けてきやがって……」

横須賀「ほう? なかなかにイカれた馬鹿だな。昨今の常盤台はそこまで荒れているのか。」

スキルアウト「さすがにお嬢様学校の情勢なんか知らねーッスけど……
        てか、別に横須賀さんが出張る必要なんかねーッスよ。今着てるそいつ貸してくれれば俺が自分で行くッス。
        女にケンカ売られて強いモンに泣き付くなんてダセェ真似したくねーッス。自分のケツくらい自分で拭くッスよ」


金髪のド派手な頭をした男が眉間にシワを寄せながら、身体が不自然に大きく見える横須賀のレザージャケットをさす。

どうやらこれも横須賀の秘密兵器のようである。


横須賀「まあ待て。『ビッグスパイダー』の件もある。上手く立ち回らんと警備員が出てくるぞ。」

スキルアウト「なに言ってんスか! 警備員が怖くてスキルアウトやってられっかってんスよ!」


スキンヘッドの1人が噛み付く。

スキルアウトにはスキルアウトのプライドというものがあるのだ。


横須賀「ふっ、威勢がいいな。だが、相手は常盤台だぞ? 最低でも強能力者クラスの能力を持っているはずだ。」

スキルアウト「ぐっ……か、関係ねーッス!」

横須賀「ふはは。意地を張るな。ここは対能力者戦闘のエキスパートに任せておけ。
     火遊びを覚えたお嬢様に少しばかり怖い目に遭ってもらおう。お前らはここで待っていろ。」


納得のいかないような顔をしている舎弟たちを抑え、大男は路地裏の中へと入っていった。







19: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:20:52.85 ID:BvJdIiuDO


-路地裏



先ほどの裏道よりさらに狭く人気のない一本道を慎重に進んでいく。

物音1つしない路地裏は人がいるとは思えないような静けさだった。

とはいえ、舎弟たちの話ではライフルを持った能力者がこの奥に控えているのだ。

遮蔽物のない一本道で遠距離から気付かれたらひとたまりもない。

わずかにでも影が見えないかどうか、横須賀は目を凝らしながら進んでいた。


横須賀(……暗いな。こんなに暗い道だったか?)


以前にここのアジトを訪れた時はもう少し明るい道だったはずだが、今はなんの明かりもない。

おまけに生憎の曇り空で月明かりすらない。

ほんの数メートル先を目視することすら難しかった。





20: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:23:11.81 ID:BvJdIiuDO


横須賀(っと、突き当たりか。)


しばらく歩くとT字路に差し掛かった。

この道を右に行くとアジトに、左に行くと操車場にたどり着く。


横須賀(……やり合うとしたらここは重要なポイントだな。)


どちらに曲がるかを決めるよりも先に、横須賀は今まで歩いてきた道の右手側の壁に背を預けた。

遮蔽物のない路地裏では曲がり角は銃弾やりすごすのに絶好の地形だ。

壁に背を預けたままゆっくりと角から顔を出し、通路を見渡す。


横須賀(……人影なし。物音もなし。気配はゼロ、か。ということはアジトに籠もっているのか? 大したものは置いていないはずだが……ん?)


角から顔を出しながら、横須賀は妙なものを発見した。


横須賀(……これは、銃痕?)


よくよく見ると、壁のあちこちに穴が空いているのだ。

暗さ故に壁に顔を密着させない限り判別することはできなかったのだが、今はまさに密着させている状態である。





21: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:24:11.95 ID:BvJdIiuDO


横須賀(……こちらの壁にあるということは、向こうからこちらに向けて撃ったのか。)


銃痕は操車場に向かう通路からアジトの方向へ銃弾が撃たれたことを表していた。

しかし、それはライフルの持ち主がそれほど追い詰められていたことも表している。


横須賀(アイツらは全員揃っていたはず……
     ということは、常盤台のヤツはライフルを持たなければ勝てないようなヤツを相手に追われていた?
     もしくは、敵がこの路地裏に身を隠していたのを追い詰めた? どちらにしてもここで銃撃戦になったということだな。)


どう考えてもとんでもない話である。

少なくとも日本で起きていい類いの事件ではない。

だが、目の前の銃痕はそれを示している。


横須賀(ということはだ。その常盤台を追っているヤツもライフルかそれに匹敵する飛び道具を有しているはずだな。)


しかし、この男はそれを理由に戸惑うこともなければ臆することもない。

正直彼にとっての日常はとっくの昔に一般人の非日常になっていた。

襲い掛かる炎の巨人や降り注ぐ巨大な赤い雷に比べればまだまだ現実味のある話である。


横須賀(硝煙の匂いもまだする。が、血の匂いはしないな。ここでは決着がつかなかったのか?)





22: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:25:24.29 ID:BvJdIiuDO


ようやく横須賀は角から身を完全に出した。

そして、アジトと反対方向、操車場に続く道に足を向ける。

今分かっていることは殺傷能力を有する飛び道具を持った人物が2人以上いるということだ。

仲裁するにしてもどちらもブチのめすにしても情報が必要である。


横須賀(……薬莢だらけだな。これだけ撃って誰も気付かなかったのか?)


足元には真鍮が大量に転がっていた。

少なくとも一方はかなり激しく撃ったようである。

さらに歩をすすめると、横須賀の足に何かが当たった。


横須賀(ん? ……暗視ゴーグル?)


それは軍用の暗視ゴーグルだった。

既に破損しており、使えそうにない。


横須賀(……常盤台のヤツが装備していると言っていたな。やられているのか?)


その考えに至った時、通路のずっと奥で音が聞こえた。


横須賀(! まだ戦闘は続いている?)


その様子を探るべく、横須賀はさらに奥へと進んでいった。







23: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:26:29.28 ID:BvJdIiuDO


-同時刻、裏道



スキルアウト「……大丈夫かや、横須賀さん」

スキルアウト「大丈夫だって。オメーあの人のハンパなさ知ってんだろ?」

スキルアウト「んなこと言ったってオメーライフル持った能力者だぞ?」

スキルアウト「イヤ、あの人こないだ無反動砲持った能力者相手に勝ってっから。お前も地下バトル来りゃよかったのによ」


アジトへと続く道の前には相変わらずガラの悪い集団がたむろしていた。

意気揚々と闇の中に飛び込んだリーダーを待っているのである。

だが、その集団へ駆け足で近寄る人物がいた。


???「ちょっと! どいて!」


それは1人の少女だった。

長い距離を走ってきたのか、肩で息をしている。


スキルアウト「あん? 誰だテメ、って」

スキルアウト「お、おい! なんでテメェがここにいんだよ! こん中入ってったじゃねーか!」


その姿を見たスキルアウトたちは思わず後退る。

その少女は先ほど銃口を向けてきた少女だったからだ。


???「! アンタたち見たの!?」

スキルアウト「は、はぁ? 何をだよ?」

???「私よ!」

スキルアウト「あ? え? 何? ルパン?」

???「ああもう! いいからどけ!」


そう言うと少女は集団の中央に突っ込み、そのまま路地裏へと駆け抜けていった。





24: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:27:21.14 ID:BvJdIiuDO


そして、再びガラの悪い集団が取り残された。


スキルアウト「……何がどーなってんだ?」

スキルアウト「知るかよ!」

スキルアウト「てか待て! これ横須賀さん挟み討ちじゃねーか!?」

スキルアウト「! そうじゃん! ヤベーよ!」

スキルアウト「ど、どーする!?」

スキルアウト「行くしかねーだろ! もうこれはタイマンじゃねー! 乱闘だ!」

スキルアウト「だ、だな! これ以上常盤台のガキにナメられるわけにゃいかねー!」

スキルアウト「行くぞオメーら! 腹くくれ! 横須賀さん助けんぞ!」







25: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:28:50.69 ID:BvJdIiuDO


-同時刻、操車場



???「ハァ……ハァ……!」


砂利の上を1人の少女がボロボロになりながら走っていた。

常盤台の制服はボロボロになり、頭からは血が流れている。


???「どォした? 早く逃げねェと死ンじまうぞ?」


それを白い髪をした華奢な人物がゆっくりと追いかけている。

こちらはなんの傷もなく、汚れすらなかった。





26: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:30:09.58 ID:BvJdIiuDO


ボロボロの姿で走る少女は人工的に作り出された少女だった。

名前はない。検体番号は9982号。

【超電磁砲】御坂美琴のDNAマップを基に生み出されたクローンである。


9982号「ハァ……ハァ……」


そして、それを追いかけるのは学園都市トップの超能力者。

Level5第一位の一方通行である。


一方通行「おいおいどォしたへたりこみやがって。諦めたらそこで試合終了だぜ?」

9982号「……諦めたわけでは、ありません、とミサ、カは被験者の言動を、否定します」

一方通行「あァ? なンだって?」

9982号「被験者の能力は……身体を覆うように、展開、され……」

一方通行「聞こえねェよデケェ声で喋れ」

9982号「……ですが、足で歩、いて、いる以、上、足裏は無防備である……」

一方通行「あン?」


バチ、と電撃が飛ぶ。

そしてそれは一方通行の足元に埋め込まれた地雷への信号だった。







27: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:30:58.57 ID:BvJdIiuDO




9982号「目標……沈黙?」


息も絶え絶えに、爆風に煽られて倒れていた9982号は立ち上がる。

目の前では巨大な煙が上がっていた。

つい先ほど、人一人が吹き飛び身体がバラバラになる規模の地雷を爆発させたのだから当然である。

あの規模の爆発に巻き込まれればどんな人間でも木っ端微塵である。





28: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:32:33.09 ID:BvJdIiuDO


しかし


9982号「―――ッ!」


目の前の超能力者にはなんの効力もなかった。


一方通行「ざァンねン。不正解!」


ニタリ、と超能力者は煙の中から出てきて笑った。


一方通行「てンで的外れだクソボケ!」


ギュン! と一方通行が瞬時に間合いを詰める。

その速さは常人が反応できる速度ではなかった。


9982号「カハッ!?」


そのまま一方通行は弾丸のようにクローンに体当たりをかまし、クローンは吹き飛ばされる。

だが、それだけでは終わらない。

クローンの身体が勢いを失うよりも早く、地面につくよりも早く、一方通行がその脚を掴んだ。


一方通行「罰ゲーム」

9982号「う、ああああああああああ!!!」


ブチイ! といやな音がした。

一方通行が掴んだその脚はそのまま握り潰され、引きちぎられた。

クローンの少女から左足がなくなっていた。


9982号「っ、の」


バチィ! と苦悶の表情を浮かべたまま9982号は電撃を放つ。


一方通行「ハッ」


しかし、電撃は一方通行には当たらない。

それどころか自分に跳ね返り、電撃は9982号に直撃した。


9982号「う……あ……」


自らの電撃に焼かれ、クローンの少女は砂利の上に倒れこんだ。





29: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:33:51.34 ID:BvJdIiuDO


一方通行「やれやれ、これじゃもう逃げることもできねェな」


呆れたようにLevel5の第一位はクローンを見下ろす。

凶悪に顔を歪めたまま、ちぎれた脚を無造作に放り捨てた。

放り投げられた脚はドス黒い血を撒き散らしながら放物線を描いて砂利の上に落ちた。


一方通行「相も変わらず馬鹿しかいねェのかオマエらは。イラつかせやがる」


まだ諦めていないのか、クローンの少女は腕だけで這いつくばりながら逃げていた。

脚があった箇所からはおびただしい量の血液がどくどくと流れていた。


9982号「ぐ……あ……ハァ……ハァ……!」

一方通行「なンだ? まだなンかあンのか? どのみち馬鹿が考えた馬鹿みてェな仕掛けだろォが」


よりいっそう凶悪に顔を歪め、一方通行はクローンを睨み付ける。

しかし、それでもクローンは砂利の地面を這うことをやめない。


一方通行「……アホくせ。もォいいだろ。楽になれ」


怒りは失望に変わり、クローンに対する興味すら失せていた。

視線をクローンから廃車になった列車に向ける。

それと同時に古びた車体が浮き上がった。


9982号「……」


ちょうどそのころ、クローンの少女はようやく這うことをやめていた。

ゆっくりと身体を起こし、両手でカエルの缶バッチを大事そうにつかんでいた。


9982号「……お姉さま……」


そのバッチを見つめ、今日あったことを思い返し、クローンの少女は缶バッチをぎゅっと胸に抱きかかえた。






30: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:34:32.28 ID:BvJdIiuDO




御坂「うそ……」


奇しくも同じころ、クローンにお姉さまと呼ばれた少女はすべてが見える位置にいた。

歩道橋の上から見えるその光景は絶望そのものだった。


御坂「待って、お願いやめて! やめてやめてやめてやめてやめてやめて!!」


だが、彼女の願いも虚しく、巨大な列車はクローンの少女がいる地点に真上から落下していった。








31: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:35:13.91 ID:BvJdIiuDO




一方通行「……あン?」


たった今、圧殺によって今回の実験を終了させた被験者は首を傾げていた。


一方通行「なンだ今のは?」


巨大な列車の車体は衝撃でひしゃげており、窓ガラスは全て割れていた。

それはいい。

だが、決定的に何かが足りない。

一方通行には車体が落下する直前に妙なものが見えていた。

おそらくそれがこの光景に対する不信感に直結している。


一方通行「……」


その原因を確認すべく、一方通行は車体へ近づこうとした。





32: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:35:49.77 ID:BvJdIiuDO


その瞬間。

目の前を青い電撃が駆け抜けていった。


一方通行「!」


バヂイ! と電撃はすぐ近くにあったコンテナに直撃し、焦げ跡を残した。

先ほどまでとは桁違いの閃光に一方通行は思わず足を止める。

そして、電撃が飛んできたであろう方向へと視線を向けた。


御坂「ああああああああああああああああああ!!」


先ほどまで相手をしていた人形と同じ姿をした人物が怒声をあげて向かってきていた。







33: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:37:07.99 ID:BvJdIiuDO




Level5同士の戦闘が始まったそのころ、ひしゃげた車体の向こう側では小さな奇跡が起きていた。


横須賀「ぜぇ、ぜぇ……あ、頭おかしいだろう、あの野郎……」


大きなレザージャケットを着た大男は小柄な少女を押し倒していた。


9982号「あ……え……?」


満身創痍の少女は呆けた表情で自分の上に覆いかぶさっている大男を見つめる。

その手にはカエルの缶バッチがしっかりと握られていた。


横須賀「フザけた真似しやがって……。もう完全にケリはついていただろうが。」


まさに間一髪。

列車の車体がクローンの少女に直撃する寸前、横須賀が飛び込んで少女を抱えたまま回避したのだった。

最初こそLevel5同士の戦争を観察していたのだが、やりすぎだと判断したために戦争に飛び込んだのだ。






34: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:38:30.72 ID:BvJdIiuDO


9982号「むぐッ?」


ガポリ、と9982号の口にタオルが無理やり詰め込まれた。


横須賀「それくわえてろ。痛むが我慢しろよ。」


そして、横須賀はもう1枚のタオルをちぎられたた左足の断面に巻き付け、ギュッと結んだ。


9982号「~~~~~~~~~ッ!!!」


ビクン! とクローンの身体が激痛に耐えかねて大きく跳ねた。

しかし、こうでもしなければ止血にはならない。

ここからでは見えない誰かがあのイカれた第一位と戦っている間に、止血だけでも終わらせなければならない。





35: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:49:01.64 ID:BvJdIiuDO


その時、砂利石を吹き飛ばしながらもう1人の少女が落下した車体の脇を滑っていた。

相手に吹き飛ばされながらもなんとか両足で着地し、勢いを殺していたのだ。


御坂「こんのっ!!」


激情をむき出しにLevel5の第三位は敵を睨み付ける。

だが、彼女の視界の端に信じられない光景が映った。


御坂「えっ……」



彼女の頭から一瞬で闘争心が消える。


死角になっていた車体の裏側には大男と



9982号「ケホッ、あ……お姉、さま」



彼女の妹がいた。






36: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:49:58.18 ID:BvJdIiuDO



御坂「うそ、アンタ、無事なの!?」


困惑した表情で御坂は自身の妹に駆け寄る。

その顔は今にも泣きそうだった。


横須賀「あ? なんだ? 同じ顔?」


瓜二つな表情を交互に見て横須賀は困惑する。

そうこうしているうちに寄ってきた御坂美琴は倒れた御坂美琴を抱き締めていた。



9982号「お姉さま……?」

御坂「よかった……よかっ、たぁ……」

横須賀「……そう言えば双子の妹がいるとか言っていたな……」






37: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:51:17.87 ID:BvJdIiuDO


フワッ、とひしゃげた車体が浮かんだ。


一方通行「チッ、やっぱり生きてンじゃねェか」


ギュン! と車体は加速して遠くに飛ばされていった。


御坂「っ! 一方通行……!」

一方通行「オイ、そこのデカブツ。なァに実験の邪魔してくれてンだ。こンなタリィ実験をダラダラ長引かせやがって」


先ほどの光景に足りなかったもの。それは大量の血液だ。

人間1人潰して血液が見えないはずがないのだ。


横須賀「……女の足をちぎって身体をプレスすることが実験か? 何1つ理解できん。」

一方通行「つーコトはやっぱ部外者か。馬鹿が勘違いして首突っ込ンでくンじゃねェよめんどくせェ。セキュリティはどうなってンだ」


はーっ、と華奢な身体をしたLevel5の第一位は長くため息をついた。


一方通行「で? そっちの情緒不安定はもしかしてオリジナルか?
      オマエもオマエでなに自分の人形相手に泣いてンだ? 気ン持ち悪ィ。俺にはそっちの方が理解できねェよ」

御坂「……」

一方通行「一応今やってンのは極秘の実験だからよォ、ペラペラ内容喋るわけにはいかねェンだわ。
      だから、最低限の情報で取るべき行動を考えろ。まずはじめにソイツはクローン。
      俺は今からそのクローンを殺す。邪魔するならお前らも潰す。見たコト全部忘れて消えるなら見逃す。2択だ選べ」


ポケットに手を突っ込んで見下すように一方通行は命令する。

スキルアウト最強の一角もLevel5の第三位もまるで障害になるとは考えていなかった。

それこそ、そこら辺にたくさんある砂利石と同程度にしか見ていない。





38: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 17:57:16.32 ID:BvJdIiuDO


横須賀「……チッ、おい、【超電磁砲】。そいつ連れて病院行け。」


軽く舌打ちをすると、横須賀は小声で本物の【超電磁砲】に話しかけた。


御坂「ハァ? フザけたこと言ってんじゃないわよ! アイツは私がやる!」

横須賀「そうか。ならソイツは死ぬぞ。」

御坂「!?」


思わず御坂は横須賀に目を向ける。

クローンの少女はと言えば、血液を失いすぎたせいか青白い顔をして意識を失っていた。


横須賀「素人目でも放っておけば死ぬのは分かる。だが、俺は女に戦わせて尻尾を巻く気は毛頭ない。」

御坂「……」

横須賀「そもそも両手で担いで両足走っているのにどうやって殺しにかかってくる能力者から守れというのだ。
     飛び道具なしの無能力者にそんな器用な真似はできん。お前が連れていく他ない。分かったらとっとと行け。超能力者。」






39: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 18:02:03.85 ID:BvJdIiuDO


御坂「フザけんな……」


ザザ、と地面が動いた。


横須賀「あ?」


否、動いていたのは流動的に流れる砂鉄だった。


一方通行「ンン?」


その大量の砂鉄は御坂と横須賀の前で円を描くようにぐるぐる周り、やがて高速回転していく。


御坂「どいつもこいつも私の意思を全部無視して! なんでもかんでも進めてんじゃないわよ!!」


ギュオッ! と砂鉄の渦が大きく伸び上がり、同時に急加速して一方通行へと突撃していく。

細かい砂鉄で形成された黒い竜巻が白い超能力者を飲み込んでいった。






40: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 18:11:06.29 ID:BvJdIiuDO



だが、この街の学生の頂点に立つ超能力者は、あろうことか荒れ狂う竜巻の中から歩いて出てきた。

先ほどと変わらずポケットに手を突っ込んだまま、髪型すら変わらずに悠々と歩いていた。


一方通行「おもしれェな。やっぱオリジナルともなると発想力も出力もまるで……アァ?」


だが、その場に竜巻を発生させた少女はいなかった。

その少女はすでに少女をなんとか抱いたまま、磁力で歩道橋まで大きく跳んだあとだった。


一方通行「……クソが。くだらねェ真似しやがって」


つまり、先ほどの竜巻はただの目眩ましだ。

発生させた本人はせめてもの一撃という意味合いも籠めていただろうが、本命の役割はそれだ。


一方通行「磁力で立体機動かましたところで逃げ切れるとでも思ってンのか」


グッ、と一方通行が脚に力を入れた。






41: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 18:12:15.47 ID:BvJdIiuDO


横須賀「逃げるのか!!!」


ピタッ、と一方通行の動きが止まる。


横須賀「俺は逃げずに戦うという選択肢を選んだのだがな。」


歩道橋に向けられていた白い超能力者の視線がスキルアウトへと向けられた。


一方通行「悪ィが最優先事項はクローンをぶっ殺すことだ。そのあといくらでもミンチにしてやンよ」

横須賀「ほう。ならばそうすればいい。そうなるなら俺が戦う理由はなくなるということだ。
     貴様があの2人を追う間に俺はどこかに消えているだろうな。律儀に待つ理由もない。」

一方通行「そォかよ好きにしろ」


ニタリ、凶悪なテロリストのような顔をした大男は笑った。


横須賀「ああ。大手を振って喧伝させてもらおう。
     Level5の第一位はこの【内臓潰し】の横須賀にケンカを売られると尻尾を巻いて逃げ出し、
     女のケツを追いかけに行ってしまったとな。しばらくは俺たちのシマを荒らす馬鹿などいなくなるだろう。」







42: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 18:17:56.49 ID:BvJdIiuDO


ズドッ!! と学園都市最強の能力者の拳が横須賀のみぞおちにたたき込まれた。


一方通行「ア?」


ザザァ! と横須賀の身体が滑るように後ろにさがる。

だが、倒れない。怯まない。スキルアウト最強の一角はニヤリと笑い、広げられた間合いを瞬時に詰める。

横須賀「こちらの番だ。」

【内臓潰し】の異名を持つ拳が華奢な身体に向けて繰り出された。






43: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 18:18:46.90 ID:BvJdIiuDO


横須賀「ぐああああ!?」


華奢な身体に横須賀の拳が触れたとたん、嫌な音が鳴った。

固く握られた拳は手首の辺りからズレていた。


一方通行「……」


だが、能力者の頂点に立つ者は目の前の惨状などまるで気にしていなかった。

それよりも自分の手を見つめて何かを考えている。


一方通行「……あっはァ、なるほどな」


やがて、一方通行はニタリと笑った。





44: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/13(月) 18:20:11.73 ID:BvJdIiuDO


ズブリ、と横須賀の心臓の高さに一方通行の貫手が深々と突き刺さった。


横須賀「ガハッ!!」


ずるり、と突き刺さった指先が抜ける。

たまらず横須賀は後ろに下がって距離を取った。

血のついた指先をペロリと舐め、能力者の頂点は狂気の笑みを浮かべる。


一方通行「妙な体型してると思えば……中に着てンのは防弾チョッキか。
      いるンだよなァ、たまに。軍用装備持ち出せば勝てると思ってる馬鹿が。
      こちとらそれを標準装備してる集団相手にタメ張れンのが条件でLevel5やってンのによ」


指先に付着した血は明らかに少なかった。

それもそのはず。横須賀はレザージャケットの下に防弾チョッキを装着していたのだから。

指先は心臓まで届かず、胸筋のあたりで止められていた。


横須賀「……俺はもともとライフルを相手にするつもりでここに来たのでな。」


ジャケットとチョッキの上から傷口を押さえつけながら、横須賀は苦笑した。


横須賀「それよりも……貴様の能力は【念動力】という触れ込みだったはずだが……明らかに違うだろう。」

一方通行「ハッ、スキルアウトじゃその程度の情報しか流れてこねェだろォな。
      だがよ、仮にも能力者ン中で頂点に立ってる人間の能力がそンなチンケなもンじゃねェってくらい想像つかねェか?」


コキコキと首を鳴らしながら、愉快そうに一方通行は横須賀に近づく。


一方通行「さァて、オマエから売ってきたケンカだ。どうされても文句は言えねェよな?」

横須賀「……ハッ! この【内臓潰し】の横須賀が簡単に倒れてくれると思うな!」







この日、最強のスキルアウトと最強の超能力者のぶつかり合った。

その夜の決闘で大盤狂わせが起きることはなかった。







65: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:06:40.16 ID:XnTGjx6DO


-早朝、第七学区大通り



天気は雨だった。快晴だった昨日とは打って変わって厚い雲が空を覆っていた。

昨夜の辺りからかなり雲が出ていたので、この雨は簡単には止みそうにない。

だが、そんな雨の中をバシャバシャと走る少年と少女の姿があった。

共に白い衣服に身を包んでおり、雨具の類いは持っていなかった。

まだ日も昇る前から少年の携帯電話に連絡があったのだ。

「横須賀が瀕死。生死の境目をさ迷っている」という内容をパニック状態の相手からなんとか聞き取ると、2人はすぐに着替えて病院へ向かった。

全身に布地がまとわりついてくる不快感もまるで気にせず、息を切らしながら2人は走り続ける。

やがて、その2人はとある病院の敷地へ足を踏み入れた。


???「削板さん! こっちッス!」


正面入口ではなく、脇にある緊急外来用の出入口で金髪のスキルアウトが呼び掛ける。

そのスキルアウトは【内臓潰し】の舎弟の1人だった。





66: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:07:49.34 ID:XnTGjx6DO


舎弟の手招きに従い、ハチマキを巻いた少年と修道服を着た少女が緊急外来用の入口にたどり着いた。


インデックス「よこすかは!? 無事なの!?」


ドン、と勢いそのままに修道服の少女がスキルアウトに飛び付いた。


スキルアウト「うおっ!? なんスかコイツ!」

削板「俺の仲間だ。入れてやってくれ」

スキルアウト「はあ……」

インデックス「ねえ! よこすかは!?」

削板「そうだ。モツは大丈夫なのか?」

スキルアウト「今先生に手術してもらってんス。ヤブミンはもう来てるッス。こっちッス」





67: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:11:14.75 ID:XnTGjx6DO


金髪のスキルアウトに従い、削板とインデックスは病院に入ってエレベーターへと乗り込んだ。

無言のまま数階上にあがり、エレベーターを降りる。

少し歩くとガラの悪い集団と学生1人が暗い表情で手術室の前に集まっていた。


原谷「あ、削板さん」

スキルアウト「削板さん! おぁざス!」

スキルアウト「ざス。削板さん」


口々に気付いた者から削板に声をかけていく。

一時手術室前がざわついた。


削板「おう。……手術待ちか?」

原谷「ええ。なんか急患が続いたとかで【冥土帰し】の先生がすぐに入れなくて……」

スキルアウト「先に別の医者が手術始めて、さっき【冥土帰し】さんが入ったとこッス」

インデックス「よこすか……」

スキルアウト「つーか削板さんたちずぶ濡れじゃないッスか。おい、誰かタオル持ってねーか?」

削板「いい。構うな。……それより何があったんだ? ライフル持ったヤツが相手だったとはいえ、モツがここまでやられるなど……」

スキルアウト「俺らもよく分かんねえんス……。なんか女の援軍がきて、もうタイマンじゃねーから
       横須賀さん助けようと思って全員でアジト突っ込んで、そんでも誰もいなくて、探しても誰もいなくて……」

スキルアウト「そしたらなんかデッケェ音がどっかからして、みんなでアジト以外んとこ探してたら横須賀さんが血まみれで……」

スキルアウト「そんで俺らじゃどうようもねーってんで、救急車呼んでこっちの病院に……」






68: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:14:39.11 ID:XnTGjx6DO


ガチャリ、と手術室の扉が開いた。

そこにはカエル顔を医者がマスクをつけたまま立っていた。


削板「! 先生!」

スキルアウト「横須賀さんは!?」


手術室から出てきたカエル顔の医者はマスクを外し、大きくため息をついた。


冥土帰し「……本当に、医者をやってるのが嫌になってくるね?」

原谷「え……?」

スキルアウト「な、テメェこらどういうことだや!!」

スキルアウト「横須賀さん死なせたんじゃねーべなぁ!?」


今にも飛び掛かりそうな勢いでガラの悪い集団がいきり立つ。

しかし、カエル顔の医者は片手を振ってそれを否定した。


冥土帰し「一命は取り留めた。というより彼が自分で勝ち取ったという表現の方が正しいね?
       ボクの出る幕なんてほとんどなかった。あんな生命力を持った人間なんて見たことないよ。もはや学会で発表できる事例だ」


殺気立った空気が急速に萎んでいった。

そして、代わりに安堵の息が広がった。


インデックス「ホッ……よかったぁ……」

原谷「……ハハ、さすが横須賀さん」

スキルアウト「んだよ! 紛らわしいことすんなや!」

スキルアウト「あー、ガチびっくりした……。人が悪すぎんぜ、先生」

冥土帰し「ごめんごめん。言い方が悪かったね?」

削板「はっはっは! 当たり前だ! モツがそんな簡単にくたばるか!」






69: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:18:01.71 ID:XnTGjx6DO


冥土帰し「障害が残ることもない。立派な健常者として復帰できるだろう。
      とはいえ、しばらくは入院が必要だね? 目が覚めるのももう少し先になるだろう」

原谷「分かりました」

インデックス「……」

削板「心配するなインデックス。モツの根性知ってるだろ? すぐに目ぇ覚まして退院するに決まってる」

インデックス「うん……分かってる」

冥土帰し「じゃ、一旦解散してくれるかな? これから彼を病室に運ぶけど、他の患者さんはまだ寝てるからね?」

スキルアウト「……チッ、しゃーねーべな。俺らいてもどーしよーもねーし」

スキルアウト「つっても時間経てば見舞いくらいいーんだろ?」

冥土帰し「ウチの病院は9:00以降って決まってるね?」

スキルアウト「じゃあ、どっかでメシ食って時間潰すか。ヤブミン、削板さん、一緒にどうッスか?」

原谷「あ、じゃあ行きます」

削板「俺はインデックスを連れて1度戻る。全身ビチャビチャだからな」

インデックス「うん、着替えてからもう1回来るんだよ」

スキルアウト「そッスか。じゃあ先生、あざした」

スキルアウト「ありやとやした!」

冥土帰し「うん、それじゃあね」







70: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:20:34.22 ID:XnTGjx6DO


ゾロゾロと大群が階段を降りていく。

エレベーターは人数的に乗るのが難しかったので、全員が階段で移動していた。


原谷「横須賀さん無事でよかったですね」

スキルアウト「イヤ、無事ではねーべ?」

スキルアウト「瀕死だっつってんだろ」

インデックス「で、でも、よこすかなら平然と回復してくれるに決まってるんだよ! だってよこすかだもん!」

スキルアウト「だよな! なんせ横須賀さんらっけな!」

スキルアウト「あの人マジハンパねーからな。てか、誰お前?」

インデックス「私? 私の名前はインデックスって言うんだよ!」

スキルアウト「は? え? なんて?」

削板「俺の連れでモツの連れだ。根性あるぞ」

スキルアウト「あー、分かります。めっちゃ苦労してそーッスもん」

原谷「分かるんですか?」

スキルアウト「そりゃオメー、俺らが目次っつー名前つけられんだろ? 少なくとも俺ならぜってーグレるね」

スキルアウト「オメーつけられなくてもグレてんじゃねーか」

インデックス「……やっぱり変かな?」

スキルアウト「いや、この街じゃ普通の範疇だべ。女で「せいり」っつーヒデー名前つけられたヤツが中学ん時いたし」

インデックス「え……」

削板「そんなヤツいたのか。絶対根性無しの親だな」

スキルアウト「てか目次って今どっから出てきた?」

スキルアウト「インデックスは目次っつー意味なんだよ、英語で」

スキルアウト「へー、オメー頭いいな」






71: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:23:13.67 ID:XnTGjx6DO


横須賀が一命を取り留めたことで一行はとりあえず安心し、和やかな空気になっていた。

階段を下りながら雑談に花を咲かせている。

実際、何度やられようが不死鳥のように舞い戻ってくる漢だ。

医者にあそこまで言わせる人物などそうそういない。

だが、和やかな空気はそう長くは続かなかった。



スキルアウト「あーーーーーー!」


階段を下りきり、一行がロビーに差し掛かった頃、スキルアウトの1人が大声をあげた。


原谷「ちょっと、病院の中でくらい静かに」

スキルアウト「ちげーよヤブミン! アイツだ! 昨日アジトにライフル持ってきたヤツ!」


スキルアウトがロビーの中央に並べられたソファーを指さした。

そこにはまだ病院が開いていないにも関わらず、誰かが座っていた。

身じろぎ1つせず、膝を抱えたまま床を見つめている。

シャンパンゴールドの髪をし、有名中学の制服を着たその人物は


御坂「……」


Level5の第三位【超電磁砲】だった。







72: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:25:04.23 ID:XnTGjx6DO


スキルアウト「てんめー……病院にまでカチコミかけるとはいい根性してんじゃねーか」

スキルアウト「よくも横須賀さんを……!」


ガラの悪い集団が少女を取り囲む。

そこで少女はようやく気付いたのか、虚ろな目で顔を上げた。


御坂「……あぁ、アンタたち昨日の……」

スキルアウト「昨日俺らの頭が潰された。テメェ身に覚えがあんだろ?」

御坂「……そっか……そういう繋がりね……」

スキルアウト「ワケわかんねーことブツブツ言ってんじゃねーよ! 答えろコラァ!」


ガン! とスキルアウトの1人がソファーを思い切り蹴飛ばした。


御坂「………………えぇ、そうよ。私が潰した。今どうしてるの?」

スキルアウト「ようやく峠越えたとこだ。テメェ表出ろ。同じ目に遭わせてやんよ」

スキルアウト「安心しろや。俺たちゃヒキョーモンの根性無しなんざ
        今年の3月に削板さんにヤキ入れられて卒業してんだ。正々堂々真っ正面からやってやらぁ」






73: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:26:33.95 ID:XnTGjx6DO


削板「待て、お前ら」


荒れ狂う集団に削板が制止をかけた。


スキルアウト「削板さん、でもコイツが……」

削板「そいつは【超電磁砲】だ。根性なしじゃない」

スキルアウト「な、【超電磁砲】!?」


ビクリ、と何人かが目の前の少女が予想以上に大物だったことに驚き、後退りした。


スキルアウト「そういやコイツ見たことあんぞ……」

スキルアウト「なるほど、『ビッグスパイダー』の次は俺たちっつーわけか」

御坂「……」


再び少女は床に視線を落とした。

精神的に重要な何かが欠落しているようで、完全に塞ぎ込んでいた。


スキルアウト「ナメやがって! あんなヤツらと一緒にしたこと後悔させてやらぁ!」






74: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:27:58.29 ID:XnTGjx6DO


削板「待てっつってんだろうが!!!」


収まらない殺気に削板が喝を入れる。

シン……、とロビーに一瞬で静寂が訪れた。


インデックス「ぐんは……」

御坂「……」


だが、こちらの少女はスキルアウトに囲まれようが削板が叫ぼうが大したリアクションを取らなかった。

ひたすらぼんやりとした目で床の一点を眺めていた。


原谷「聞き方を変えましょうか。横須賀さん……あぁ、キミが潰したって言ってる大男だけど、直接手を下したのはキミなの?」

御坂「……」


常盤台の制服を着た少女は少しだけ視線をズラし、原谷の足元を見つめた。


スキルアウト「はあ? なに言ってんの? ヤブミン」

スキルアウト「しっ。様子が変だ」





75: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:29:27.09 ID:XnTGjx6DO


ややあって、少女が口を開いた。


御坂「………私じゃない」

スキルアウト「!」

削板「だろうな。じゃなきゃそんな顔するはずがない」

御坂「でも、私が潰したようなものよ。私があの人を置いていかなきゃ、今ごろピンピンしてたはずよ」

スキルアウト「???」

スキルアウト「おい、馬鹿にも分かるように説明しろや」

御坂「……」


再び少女は口を閉じる。

まるで何かを躊躇しているようだった。


原谷「悪いけど、僕たちも引き下がれないよ。仲間が殺されかけたんだ。なんであの人がああなったのか、知る権利くらいあるよね?」





76: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:30:59.97 ID:XnTGjx6DO


御坂「…………あの人は、私の………そうね、妹、を助けてくれたの」


慎重に、余計な情報を漏らさないように言葉を選びながら御坂は答えた。


削板「ほう、お前に妹なんていたのか」

スキルアウト「……あ? んじゃ、ライフル持ってたヤツがお前の妹?」

スキルアウト「なんで横須賀さんはシメにいったヤツ助けてんだよ」

御坂「……詳しいことは言えないけど、あの人は私と妹を逃がして敵と戦ったの。私はそこまでしか知らないわ」






77: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:32:18.61 ID:XnTGjx6DO


インデックス「やっぱりよこすかは根性あるんだよ。ところでその妹さんは?」

スキルアウト「そうだ。助けてもらったんだろ?」

スキルアウト「礼の1つでも言いにくるのが筋ってモンだろ」

御坂「………今は動けないの。全身、ボロボロで……脚、脚もちぎられて……」


ツー…、と御坂の頬を一筋の涙が伝った。


原谷「!?」

スキルアウト「あ、脚ちぎられた?」

スキルアウト「ど、どんな化け物と戦ってたの? オメーの妹」


だが、少女はすぐには答えられなかった。

凄惨な光景がフラッシュバックし、今では肩を震わせて嗚咽をもらしている。






78: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:33:46.63 ID:XnTGjx6DO


動転した気を落ち着かせ、ようやく少女は口を開く。


御坂「……グスッ、これ以上は言えない」

削板「言えないってどういうことだ? お前が知ってることはまだ何かあるのか?」

スキルアウト「せめて敵がどんなヤツかくらい言えや。1人か? 複数か?」

スキルアウト「そんな説明で納得できるわけねーべ」

御坂「ダメよ。今のでも話しすぎたくらいだわ。これ以上はアンタたちも巻き込みかねない」


突如として、少女の声に覇気が籠もる。

よかれ悪かれ、少し泣いたことで止まっていた感情が動きだしたのだ。

彼女本来の正義感と責任感、何よりも屈強な精神が戻ってきた。

瞳から消えていた輝きが再び灯り、絶望に打ちのめされた少女をLevel5第三位の【超電磁砲】へと変えていく。






83: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:38:31.82 ID:XnTGjx6DO


インデックス「……聞いた限りだと、あなたはとてつもなく大きくて怖い出来事に巻き込まれてる。そういうことなのかな?」

御坂「ええ、そうね。そこまで理解できてるならさっさと消えてほしいんだけど」


先ほどまで肩を震わせていた少女はもはや完全に臨戦状態へとシフトしていた。
そのせいか傍若無人な態度が前面に出ていた。


インデックス「なら、いったいどんな出来事に巻き込まれてるの? 教えてほしいんだよ」


だが、修道服を着たシスターはその少女に対して少しも怯まなかった。


御坂「……アンタ話聞いてたの? 教えるわけにはいかないって言ってるのよ」

インデックス「どうして?」

御坂「これは本当に大きな事件なの。下手したら学園都市をひっくり返すくらいのね。
    アンタたちじゃ何もできないし、私の問題に巻き込むつもりもない。
    知りすぎたから暗殺されるなんてベタな最期を迎えたくなければ引っ込んでなさい」


バチチ、と少女の周りにスパークが走る。

それは威嚇しているようでもあり、警告しているようでもあった。





84: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:41:51.76 ID:XnTGjx6DO


インデックス「……ふーん。抽象的すぎてイマイチ分からないけど、それは英国の軍事力と権力の一角と同じくらい強大な敵なの?」

御坂「……は?」


一瞬、御坂は肩透かしを食らったような気がした。

目の前のシスターは怯むどころか意味の分からないことを言い始めた。


インデックス「1人で魔術結社を潰せるプロの魔術師よりも、世界に20人といない【聖人】よりも
     頭の中で思い描いたイメージを全部実行できる錬金術師よりも、暴走した10万3000冊の魔導書よりも恐ろしい敵なの?」

御坂「アンタ、なに言って……?」

インデックス「よこすかも、やぶみも、ぐんはも、みんな私を助けるために
     ただベランダに引っ掛かってただけの私を助けるためだけに地獄の底までついてきてくれたんだよ。
     そんなとてつもなく大きいだの学園都市をひっくり返すだのなんて形容詞に怯むような根性なしじゃないかも」

御坂「……」


先ほどまで気を張っていた少女は呆気に取られていた。

だが、なぜだか分からないがこの少女には言葉で説明できない説得力があった。


インデックス「当然、私もね!」


フンス、と胸を張るシスターを見て、少女は不思議な感情に包まれた。






85: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:44:39.37 ID:XnTGjx6DO


削板「……自己紹介が遅れたな。俺はLevel5の第七位【ナンバーセブン】削板軍覇だ」

御坂「!」

削板「モツのことは……まぁいい。昨夜のそれはアイツのケンカだ。野暮な真似したら俺がアイツに殺される。
    だが、目の前でそんな顔した女を放っておくことなどできん。仮にもお前と同じLevel5だ。何かしら力になれるぞ」

御坂「でも……」

原谷「早く全部しゃべって楽になった方がいいよ? この人スイッチ入ったら意地でも助けるから」

御坂「……」

スキルアウト「俺たちは……正直何できっかわかんねーけどよ」

スキルアウト「横須賀さんがあそこまで身体張ったんだ。俺たちが後を継ぐのが筋だろ」






88: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:46:16.14 ID:XnTGjx6DO


ここまで言われて、御坂はとうとう決心した。


御坂「………………『絶対能力進化実験』」

インデックス「?」

御坂「アンタたちが知ろうとしてる学園都市の闇よ。
    【樹形図の設計者】を用いた演算の結果、Level6たる絶対能力者になれる人物は一方通行のみと判明した。
     現在Level5第一位の一方通行がLevel6となるためには2つの手段の内いずれかが必要とされる。その方法は」


スゥッ、と御坂は息を吸った。


御坂「通常のカリキュラムを250年かけて行うこと」

御坂「もしくは【超電磁砲】を128回殺害すること」





89: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:48:08.97 ID:XnTGjx6DO


削板「!?」

御坂「物理的に一方通行に250年かけてカリキュラムを行わせることは不可能。
    【超電磁砲】を128体確保することも不可能。代案として【超電磁砲】のクローンを用いることを検討した」

御坂「数年前に発案された『量産型能力者計画』を流用し、Level2~Level3程度の強度を持つ【超電磁砲】のクローンと戦闘を行わせる。
    【樹系図の設計者】に演算を依頼したところ、
    【超電磁砲】のクローンである『妹達』を2万通りの戦闘で2万体殺害することで一方通行がLevel6に進化することが判明した」

原谷「……」

御坂「……私も知ったのは昨日よ。実験を見たのも昨日が最初。だから、あそこに飛び込んでいったの」

スキルアウト「……お、おう」

スキルアウト「……ダメだ。全然ついていけねー……」





93: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:51:13.13 ID:XnTGjx6DO


インデックス「ぐんは、クローンってなに?」

削板「えーと、DNAから創られたそっくりな人造人間、というところか?」

御坂「簡単に言えばね。前に筋ジストロフィーっていう病気を治すためにDNAマップを提供してくれって言われたことがあったの」

原谷「は、はあ!? じゃあそれを悪用されたの!?」

御坂「ええ。……今にしてみれば本当に迂濶だった。私の不注意が元々の原因よ」

原谷「イヤ、それは違うでしょ!! アンタのしたことはとんでもなく尊くてスゴいことだよ!!」


ふいに、今まで冷静だった原谷が激昂した。


インデックス「やぶみ……?」

御坂「……何よ。アンタに何が分かんのよ」

原谷「善悪の判断くらいつくわ!! なんで正しいことしたアンタが責任感じてんだ!!」


だが、その様子はいつものそれとは違う。

もっと真に迫るような、本当に激昂している様子だ。





94: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:53:25.41 ID:XnTGjx6DO


スキルアウト「お、おい、落ち着けヤブミン」

原谷「フザけん……イヤ、違う!!! マズいだろ!!?? アンタさっきなんつった!!??」


ガッ、と原谷が御坂の肩に掴み掛かった。


御坂「きゃっ!?」


ガラの悪い集団の中で唯一まともな学生に見える男の豹変に、思わず御坂も怯んでしまった。


削板「やめろ原谷! 手ぇ出すのは

原谷「そうじゃない!!! その実験ってのは2万人捌かなきゃならないんでしょ!!??
    だったらここでこんなコトしてる場合じゃないでしょうが!!! 何してんだよ!!??」


バッ、と止めに入ろうとした削板の手を瞬時に振り払い、原谷はさらに激昂していく。


スキルアウト「や、ヤブミンが壊れた?」

原谷「考えろよ!!! 2万人だぞ!!?? 1日10人捌いたって5年半はかかるんだ!!!
    おまけに屋外でやってるなら昼日中に堂々やるはずがない!!! やるなら夜か……早朝!!!」

御坂「!!」

原谷「インターバル挟んでるのかどうか知らないけど、下手したら今この瞬間にだって実験が行われてる可能性だって……!!」


ダッ! と御坂がソファーから飛び降りて一目散に駆け出した。


インデックス「わっ! 待って、たんぱつ!」


だが、外に出たわけではない。

向かった先はフロアの隅。

目立たないところで申し訳なさげに存在している公衆電話。

そこに自分の端末を手際よく差し込み、御坂は電子の世界へダイブした。


御坂「お願い、これ以上、あの子たちを……!!」


瞳いっぱいに涙をため込みながら、御坂は情報を探していく。

あらゆるセキュリティを破壊し、あらゆるパスワードを解除し、たどり着いた先には


御坂「……!? こ、これって……?」







95: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:55:59.41 ID:XnTGjx6DO


-時を遡り、深夜、第三学区とあるホテル



第三学区のとあるホテルのVIPルーム、さらにその両隣のVIPルームは1週間の間とある個人の貸し切りだった。

フロアの廊下には黒服が数人と警備ロボが数体立ち、部屋の扉は厚さが1mある上に静脈認証以外では開けられない。

更には対能力者用に『AIMジャマー』が随時機能している。

下手に能力を発動しようものなら、能力が暴走して自爆すること請け合いだ。

大きな窓ガラスは強化ガラスであり、銃弾ごときでは砕けやしない。

部屋に監視カメラの類いはもちろん存在しない。部屋の中のクリーニングはロボット任せである。

備え付けの金庫に至ってはミサイルでも直撃しない限り壊れないほどの頑丈さだ。

プライバシーに対する保護は完全完璧。セキュリティは学園都市最高ランク。

となれば、貸し切っている人間もそれなりの人物である。

貝積継敏。学園都市統括理事会の1人である。





96: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:57:04.92 ID:XnTGjx6DO


貝積「……うむ、これでよし」


彼は1日の公務を終え、既にパジャマ姿だった。

シャワーも浴びたし歯も磨いた。今は就寝前のメールチェックを終わらせたところだ。

2、3通のメールに目を通し、緊急のものがないことを確認すると、彼はパソコンを閉じた。

こんな時間に寄越すメールだ。向こうも返信がくるとは思っていないだろう。

部屋の明かりはベッドランプだけ残し、パジャマ姿の老人はふかふかのベッドへと潜り込んでまぶたを閉じた。

最高の寝心地のベッド。最高のランクのセキュリティ。最高の快適さを誇る環境。

世界でこれ以上安心して眠れる部屋など存在しないだろう。

そんなことを考えながら、貝積継敏はまどろんでいった。





98: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:58:21.49 ID:XnTGjx6DO


ちょうどその時。

ガチャリ、と扉が開いた。


貝積「……?」


ゆっくりと老人は半身を起こす。

あり得ないことに、侵入者だ。

黒服ではない。彼らではこの部屋に入れない。

どんな方法かは分からないが、黒服も警備ロボもAIMジャマーも静脈認証もすり抜けてきた人物がいるのだ。

思わず老人の身体が強張る。





99: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/19(日) 23:59:11.13 ID:XnTGjx6DO


パッ、と部屋の明かりが点いた。

少し間を空け、老人は軽くため息をついた。


貝積「……キミか」


なんてことはない。

侵入者は黒服と警備ロボの前を堂々と歩いてきたのだ。

静脈認証は元々登録してあったのだ。

なぜなら侵入者は


雲川「起きろ貝積。嬉しい報せだ」


老人のブレーンである女子高生だったからだ。






100: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/20(月) 00:00:49.85 ID:aAFYlNxDO


貝積「こんな時間にわざわざ私の部屋まで来るほどの報せかい?」


楽しそうな顔をしている女子高生を前に、老人は若干の苛立ちを顕にした。

こんな時間に就寝を邪魔されれば誰でもそうなるとは思うが。


雲川「ああそうだ。メールや電話ではいささか都合が悪いのでな」


だが、セーラー服姿の女子高生の方はまるで気にしていなかった。

興奮した顔でうっすらと笑みを浮かべている。


貝積「ほう? いったいなんだい?」

雲川「『絶対能力進化実験』を止める算段がついたけど」


女子高生は爛々とした目で即答した。





101: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/20(月) 00:03:14.70 ID:aAFYlNxDO



一瞬の沈黙があった。


貝積「……」


そして、老人は首を横に振った。


貝積「……キミが自分の休日を返上してそれにあたっていたのは知っている。
    だからこそ、昨年からやたら休みを要求するキミに応えてあげた」

雲川「当然だ。優先順位で言えば、実験が開始された時点で最下位だ。
    やらなければいけないことは他にいくらでもある。これはもはや私のプライベートな案件だけど」

貝積「ああ。そして私はキミの試みが上手くいってなかったことも知っている」

雲川「そうか。だが、今回は今までとは違う。もっとシンプルなやり方だよ」

貝積「ほう? いったいどんな方法だ?」

雲川「根回しや権力で止めようとするからダメだった。もっと単純に、実験そのものを破壊すればよかったんだ」

貝積「……つまり?」


ニヤリ、とカチューシャをつけた女子高生は笑った。



雲川「一方通行を倒せばいい」







103: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/20(月) 00:05:12.46 ID:aAFYlNxDO






貝積「……分からないね。いったいどうしてそれが実験を止めることになる?」

雲川「気づいてしまえば簡単な話だ。『絶対能力進化実験』は一方通行が最強であるという前提で動いている。
    ならば、Level5最強であるはずの一方通行が最強じゃなければ? 最弱なLevel0の無能力者に負けてしまうほど弱ければ?」


女子高生は更に深く、笑みを浮かべる。


雲川「実験の前提は覆ってしまうと思わないか?」



だが、そんな何かにとり憑かれたように興奮している女子高生を目にして、老人は落胆した顔をした。



貝積「……つまり、彼はキミの差し金か」

雲川「彼? なんの話だ?」

貝積「先ほど横須賀くんが実験に介入したらしい。
    残念ながら、無惨にも敗北したそうだ。だからキミの計画は既に破綻してるよ」







104: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/20(月) 00:06:49.47 ID:aAFYlNxDO






雲川「プッ、アッハハハハ!! アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」



突如、老人のブレーンは腹を抱えて笑い始めた。



雲川「おいおい、どうした貝積! 呆けたか!?」



目尻に浮かぶ涙を人差し指で拭いとり、雲川は楽しそうに言い放った。







雲川「Level0の無能力者なら目の前にいるけど?」







105: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/20(月) 00:10:33.20 ID:aAFYlNxDO


ぽかん、と老人は口を開けた。

開いた口がふさがらなかった。

ややあって、ようやく老人は動き始めた。


貝積「『AIMジャマー』か? 『キャパシティダウン』か?」

雲川「おいおい。おいおいおい。本当に呆けたのか? 貝積」


もはや狂気とも言えるような笑顔でブレーンの少女は話し続ける。


雲川「重要なのは一方通行という人間ではなく一方通行という能力だ。
    その能力を封じて倒したのでは前提は覆らないけど。ヤツの能力に制限をかけるような真似はしない」

貝積「無茶だ! 倒せるわけないだろう!」


ここに来てとうとう老人が声を荒げた。


貝積「相手は軍隊クラスの戦闘能力を有しているんだ! キミにそれほどの力があるのか!?」

雲川「相手が1人の人間であることには変わりないけど」


セーラー服の少女は肩をすくめた。


雲川「とはいえ、もちろん道具は使うけど。『妹達』も武器の使用は許されている。
    無傷で帰ってくるつもりはない。でも、死ぬつもりもない。貴様には【瓶詰工場】にある私の部品を一通り準備しておいてほしい」


くるり、と女子高生は踵を返して扉へと向かった。


貝積「待て! いったい今いくつの案件を抱えていると思っている!
    この実験と同じくらい止めなければならない悲劇が山ほどあるんだ! 分かっているのか!?」

雲川「だから、死ぬつもりはないけど。自爆するくらいなら最初から突っ込んでいた。勝てる算段がついたから挑むのだけど」


ニッ、と少女は肩越しに笑ってみせた。

そして、有無を言わさぬ彼女の覚悟を前に、老人はもう何も言えなかった。


雲川「……【瓶詰工場】の部品を準備しておけ。頼んだぞ」


丈の短いセーラー服をなびかせ、少女はVIPルームを後にした。







128: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/30(木) 23:51:38.82 ID:sfwBl4ZDO


-早朝、第七学区倉庫街



天気は雨だった。快晴だった昨日とは打って変わって厚い雲が空を覆っていた。

昨夜の辺りからかなり雲が出ていたので、この雨は簡単には止みそうにない。



一方通行「くァ……ン。……毎日毎日遅寝早起きってなァいただけねェな」


うっすらと空が明るくなったころ、白髪の人物が欠伸を隠しもせず倉庫の連なる通りを闊歩していた。

あちこちに水溜まりができているのだが、髪も服も靴もまったく濡れていなかった。

こんなにも朝早くから出歩いている理由は、もちろん健康のためなどではない。

とある実験を行うためだ。

『絶対能力進化実験』における第9983次実験。あと10分もすればその実験は開始される。

ちなみに、前回の実験は散々だった。

邪魔が入った上にクローンにトドメをさせなかった。

結果的には『邪魔が入らなければ殺害は成功したと判断できるため、実験を続行する』という結論が出されたが。

更に深夜には『実験に僅かなズレが生じたため、第9983次実験は場所を変える』と連絡がはいった。

何をどう計算したらその結論に至るのかは分からないが、とにかく一方通行は指定された場所に向かった。





129: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/30(木) 23:53:21.48 ID:sfwBl4ZDO


雨を弾き飛ばしながら細い道を歩いていくと、ちょっとした開けた空間が見えてきた。

ロボットが倉庫の荷物を棚卸しする以外は滅多に往来がないこの通りには普段から人の気配はない。

倉庫の方はコンクリート造りであり、重厚な鉄の扉が設置されている。

開けた空間には倉庫の扉が面しており、その倉庫の両脇に同じように細い道があった。

もうすぐこの場所も戦場に変わってしまうだろう。


一方通行「……?」


しかし、深夜に連絡があったその場所にはまだ誰もいなかった。

いつもなら見飽きた顔が見飽きた表情に見飽きた装備で先に待っているはずなのだが、今朝はまだ姿を見せていない。


一方通行「……なンだ、呼び出しといて遅刻ですかァ?」

???「いいや、定刻通りに動いているけど」





130: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/30(木) 23:55:36.31 ID:sfwBl4ZDO


返事を求めていない独り言に返事があった。


一方通行「あァ?」


スッ、と一方通行から見て倉庫の右側の通路からビニール傘をさしたセーラー服の少女が出てきた。


雲川「はじめまして、一方通行。私の名前は雲川芹亜」


含みのある笑みを浮かべ、少女は開けた空間に足を踏み入れた。


一方通行「……はァ、昨日に引き続きまた侵入者かよ。ホントにセキュリティはどォなってンだ」


ガシガシと一方通行は頭を掻く。

その様子は心底うんざりしているようだった。


雲川「ちゃんと機能しているけど。ここじゃないところで」

一方通行「さっきからなに言ってンだ? オマエ」

雲川「昨夜に実験場の変更の連絡があっただろう? あのメールの差出人は私だよ。実験場が変更されたというのは嘘さ」


少女は笑みを崩さない。

自信たっぷりに一方通行の前に立ちはだかっている。


一方通行「……へェ、なかなか愉快なイタズラしてくれるじゃねェか」


ギロリ、と一方通行が雲川を睨み付ける。

一瞬で一方通行を纏っていた空気が変わった。


一方通行「なンで実験のこと知ってンのかも俺のアドレス知ってンのかもどォでもいい。
      だが、実験を妨害するってンなら許さねェ。どこの回しもンか知らねェがイタズラで済まないことしたと後悔させてやる」





131: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/30(木) 23:56:30.95 ID:sfwBl4ZDO


ドガガガガガガガ!! と銃弾の雨が降り注いだ。

だが、それは一方通行を狙ったものでも雲川を狙ったものでもない。

2人のちょうど中間に、2人を区切るように撃たれた。


一方通行「……?」


自分を狙ったわけではない無駄撃ちの銃弾に、一方通行は一瞬動きを止めた。

そうしている内に雲川はすでに動いていた。


雲川「後悔させたいならどうぞご自由に」


銃弾の雨が止んだ。

セーラー服の女は傘を投げ捨てて少しだけ移動しており、重厚な倉庫の扉を開け放って入口に入っている。


雲川「だが、私は自殺志願者ではない。精一杯抵抗させてもらおう」


バドム、と雲川は重たい扉を閉じ、見えなくなってしまった。





132: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:00:27.08 ID:dEY/Sh2DO




一方通行「……はァ、やっぱダメだな。全っ然ダメだ」


天に顔を向け、一方通行はため息をつく。

先ほどの銃撃は固定されたライフルによるものだ。

よく見れば雨にやられないようにくりぬいた箱をかぶせ、その上からシートまでかぶせて倉庫の屋根に設置されているのがここからでも見える。


一方通行「最強ごときじゃここまでナメられる。これじゃァダメだ」


そもそも彼は最強では満足できないからこの非人道的な実験に手を出したのだ。

最強では足りない。もっと絶対的な、敵対することすら断念する力を欲していた。

にもかかわらず、昨日に続いて今日までも敵対してくる馬鹿が現れた。

知らずに敵対してくるならまだしも、自分がLevel5第一位である一方通行だと認識しながら敵対してきた。


一方通行「……削がれてたヤル気に喝入れてくれてどォもありがとォ。お礼にたっぷり後悔させてやるよ」


再確認した。最強などではとても足りない。

これ以上敵対しようなどという馬鹿を出さないためにも『絶対能力進化実験』は必要だ。

邪魔する馬鹿は全部潰す。

濡れたアスファルトを踏みしめ、歩を進める。

重厚な扉のドアノブに手をかけ、壊れんばかりに力強く開けた。





133: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:02:28.62 ID:dEY/Sh2DO


一方通行「?」


アルビノの目に飛び込んできたのは巨大なスポットライトのようなものだった。

それが入った瞬間に点灯し、前と左右の3方向から一方通行を照らす。


一方通行「……へェ」


予想だにしないものがいきなり出てきたことに少々面食らったが、一瞬間を置けば理解できる。

馬鹿は馬鹿なりにいろいろ考えたらしい。


一方通行「強力な紫外線ってとこか。直視すりゃァ一瞬で水晶体をやられて白内障か」


物理などの直接的なダメージは反射されて自滅する。

ならば、光を使って永遠に視力を奪う。そうなれば致命的なダメージだ。

今後の戦闘に支障をきたすことは間違いない。






134: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:05:39.30 ID:dEY/Sh2DO


だが、光を直視しているこの人間は少しも動じなかった。


一方通行「及第点以下だクソボケ」


ゴシァ!! と巨大な光源は粉々に砕かれた。

一方通行の拳が突き刺さり、ガラスがとてつもない勢いで弾け飛ぶ。

さらにはそのガラスは意思を持っているかのように他の2つの光源に高速で襲い掛かり、それらも破壊した。


一方通行「有害なモンは全部反射するように設定してあンだよ。光も例外じゃねェ」


それが【一方通行】という能力。正確にはその片鱗だ。

あらゆるベクトルを観測し、触れただけで変換してしまう能力。

平常時は常に『反射』に設定されており、銃弾だろうが電撃だろうが拳だろうがベクトルを完全に反転させる。

そしてそれは光も例外ではなかった。

害のない光だけは一方通行まで届くが、有害光線は例外なく反射された。





135: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:07:37.72 ID:dEY/Sh2DO


雲川「……できれば倒れてほしかったけど。ま、それなら苦労はしない」


窓がないために薄暗い倉庫の奥から声がした。

よく見れば、高く積まれた段ボールの隙間から壁ぎわの階段の上の方に先ほどのカチューシャをつけたセーラー服の女がいた。


雲川「生憎、私は肉弾戦には向いていないのでね。こんな戦い方に依存するしかないんだ。逃げ回らせてもらおう」


タンタンッ、と丈の短いセーラー服の女は最小限の動きで上階へと姿を消した。

ホコリのすえた匂い。

裸電球の頼りない光源。

分厚いコンクリートの壁。

薄暗さと遠くから聞こえる雨の音の効果で不気味な空間が出来上がっていた。





136: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:08:51.59 ID:dEY/Sh2DO


一方通行「やれやれ。馬鹿の相手ってなァ疲れるな」


だが、この怪物はその程度の演出で躊躇するような臆病者でもなければ弱者でもない。

破壊したライトの上から薄暗い倉庫の中を見渡すと、簡単に上階へはたどり着けないようになっていた。

上に上がる手段は3つある。

中央に設置されている荷物運搬用のエレベーターか、先ほど女がいた壁ぎわの階段、その反対側の階段だ。

しかし、元々の配置なのか事前にわざわざ動かしたのかは分からないが、大きな機材や巨大な段ボールが通路を限定するように置かれている。

恐らく通路にはワイヤートラップなどをはじめ、山ほどのトラップが仕掛けられているだろう。





137: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:10:01.19 ID:dEY/Sh2DO


一方通行「アホくせ」


ふわり、と一方通行の身体が浮く。

自身にかかっている重力のベクトルを変換し、飛行を可能にさせたのだ。

そして、そのベクトルを進行方向へと変換。

高く積まれた段ボールを易々と飛び越え、ものの一瞬で階段の終わりにまでたどり着いてしまった。

カン、と1歩進むと完全に2階のフロアへと上りきる。

首を左に回せば、フロアの中央で立ち尽くしている先ほどの女の後ろ姿が見えた。


一方通行「しこたまトラップ仕込んでたみてェだが、なンの効果もねェよ。
      そもそもかかったところでダメージになるとはまるで思えねェがなァ」


ニタリ、と一方通行は嘲るように笑う。

雑魚が必死になって積み上げた努力。それをただの一手で台無しにする。

相手に圧倒的な格の違いを見せ付けて絶望させるには効果的なやり方だ。





138: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:11:02.65 ID:dEY/Sh2DO


雲川「それは残念。ま、この程度で倒れたら苦労はしない」


こもった声で軽口を叩く。

くるり、と雲川は一方通行の方を振り返った。


一方通行「ア?」


だが、そこには端正な顔立ちはなかった。

彼女の顔にはゴツゴツとした軍用の防毒マスクが装着されていた。


雲川「お前が引っ掛からないならしょうがない。私が自分で切るけど」


スッ、と雲川はスカートのポケットの中から小型の十徳ナイフを取り出す。

そして、そのまま何もないように見える彼女の左手側の空間に逆手に持ったナイフを振るった。





139: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:12:13.08 ID:dEY/Sh2DO


ブシュウウウウ! と四方八方から一方通行のいる地点に向けて煙が吹き出される。


一方通行「……」


煙は一気に噴出し、2階のフロア一杯に広がっていく。

既に一方通行からは3m先も目視できないほどの煙が充満していた。


雲川「ちょっとした神経毒さ。分かりやすいだろう?」


その頃、カチューシャをつけた女はフロア奥に向けて走っていた。

いくら防毒マスクをつけているとはいえ、着ている服はセーラー服だ。

ガスのたまった空間に長々といたくはない。

奥の階段付近に設置されている通気孔に積極的に空気を取り込ませるように細工を施し、更に喫煙者用の空気清浄器いくつか設置してある。

ちょっとした安全圏を確保し、そこに待機すれば毒ガスからは逃れられるという寸法だ。

ここまでは想定通り。イヤ、それ以上。





140: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:13:20.87 ID:dEY/Sh2DO


雲川「まともに吸い込んだらタダじゃすまない。演算もできないくらいにな」

一方通行「……」


物理はダメ。光もダメ。ならば今度は空気だ。

神経へ影響を与える毒ガスによって体内から肉体へ、脳へダメージを与える。

神経がやられればまともに演算もできるまい。


雲川「そんな状態で、数百キロの鉄の塊が突っ込んできたらどうなる?」


再び雲川はスカートのポケットの中に手を突っ込み、中から小型のリモコンを取り出す。

液晶画面の表面に指を滑らせると、エレベーターのそばで充電されていた作業用の無人ロボットが動きだし、ガスの中で動き回る。

ただ荷物を運ぶだけのロボットであり、兵器でもなんでもないものだ。

だが、数百キロの重量をもつ機械が移動すればそれだけでとてつもないエネルギーが生まれる。

華奢な肉体を破壊するには十分すぎる力だ。





141: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:15:20.45 ID:dEY/Sh2DO


一方通行「バァカ」


ガン! という音が響いた。

それと同時にガスの中からロボットが飛び出てきた。


雲川「っ!」


慌てて雲川は身を翻す。

間一髪でロボットをかわすことに成功し、ロボットは壁に激突した。


一方通行「有害なモンは全部反射してるっつってンだろォが。
      オマエが今つけてるマスクと同じで有害なモン取りのぞいて無害なモンだけ取り込めるンだよ」


スタ、スタ、とゆっくりとした足音が聞こえてくる。

この怪物には毒ガスも有害光線も何1つ効いてはいない。


雲川「チッ……!」


それを感じ取り、雲川はすぐさま階段を降って再び1階のフロアへと逃げ出した。


一方通行「アッハハァ、逃げろ逃げろ! 追いつかれたら死ンじまうぞ!」


余裕たっぷりに一方通行は相手を煽る。

最強であるからこその、相手を絶望に陥れるための行動だ。


一方通行「追いつかれたらせっかくのトラップも台無しだぜェ!? まだなンか仕込ンであンなら景気よく使わねェと……っと」


ピリリリ、と電子音が鳴った。

しかし、これはトラップの音ではない。

ポケットに入れてあった携帯電話の着信音だ。


一方通行「……そォいや忘れてたな」





142: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:16:45.51 ID:dEY/Sh2DO






雲川(……ここまでは想定通り)


小走りで機材の隙間を縫いながら、防毒マスクを放り捨てた。

とりあえずはここまでやってこれた。


雲川(無意識で行われる反射はいくら心を乱しても崩壊しない。そんな能力者に恐怖心や絶望を与えたところで無意味)


彼女は統括理事会のブレーンである。

その才能を遺憾なく発揮し、学園都市の闇でも君臨してきた。

その理由は、話術のみで人心を掌握できてしまうからだ。

まともな人間なら彼女と対立した時点で確実に破滅に追いやられる。

しかし、相手が一方通行となれば話は別だ。

寝てようが起きてようが常に反射膜が展開されているのでは話にならない。





143: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:17:37.68 ID:dEY/Sh2DO


雲川(とはいえ、戦闘の流れそのものをコントロールすることは可能だ。ヤツは既に術中にはまった……!)


しかし、それでも精神を掌握することはできる。

それができれば相手の行動をある程度制限できる。

戦闘において格上が格下にとる行動は大まかに分けて2つ。

相手に何もさせず一瞬でケリをつけるか、相手のすべてを全部正面から攻略するか。

一方通行は明らかに後者。

陳腐なスキルアウトが相手なら前者だが、実験を通して分かったように相手が何かしらの策を講じてきた場合にはそれを楽しむ傾向がある。

そうして正面から策を突破し、格の違いを見せつける戦い方を好むのだ。

それを利用すれば、流れをコントロールすることも多少なり可能となる。







144: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:19:06.84 ID:dEY/Sh2DO



飛び散った無数のガラスの上をローファーで歩き、雲川芹亜は元の出入口までたどり着いた。


雲川「……ふぅ……?」



多少乱れた息を整えつつ、雲川は思わず振り返った。

しかし、グシャグシャになった巨大なライトの残骸がそこら中に転がっているだけだった。


雲川(ここに来るまで2回は追いつかれるはずだったけど……)


短髪の白い髪が少しでも見えないかと目を凝らすが、何も見えない。

段ボールや機材の死角に入っているわけでもなさそうだ。


雲川(そもそもヤツにはそんな真似をする必要性がないけど……まあいい、好都合。より確実で安全な方法にシフトする)


ギィ、と雲川は重たい扉を開けた。





145: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:21:04.02 ID:dEY/Sh2DO


一方通行「タイムアップ」

雲川「!?」


その瞬間、雲川の背後には白い髪をした悪魔がいた。


雲川「ゴハッ!?」


強烈な掌底が雲川の背中にたたき込まれる。

肺の中の空気をすべて吐き出させられながら、開け放っていた扉から雲川の身体が放り出される。

受け身もろくにとれないまま、雲川は濡れたコンクリートの上をゴロゴロと転がっていった。


雲川「カハッ、ゲホッゴホッ!」


四つんばいになりながらなんとか身体を起こす。

しかし、ただの女子高生程度の肉体しかもたない雲川にはかなりのダメージだった。

掌底はもとより、受け身もとれずにコンクリートに叩きつけられたこともダメージとなった。


一方通行「残念ながらお時間だ。上から電話がかかってきてよォ、寝坊してンじゃねェかと勘違いされちまった」





146: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:22:47.19 ID:dEY/Sh2DO


雲川「……一応、ジャミング電波も流してあるはずだけど」

一方通行「知らねェよ。どォもクローン共がこっち向かってるみてェだからそいつらがなンかしたンじゃねェの?」

雲川「……」


この瞬間、雲川を絶望が襲った。

学園都市最強と真っ向から対峙したためか、自ら安全な方へとシフトしてしまった。

その結果、最悪のタイミングに最悪の場所で捕まってしまった。


一方通行「あァ、オマエの切り札だったコイツはちゃンと持ってきてやったよ」

雲川「!?」


ビチャ、と一方通行が何かを放り投げる。

それは、あまりにもあからさまな1本の筒状の爆弾だった。


一方通行「オマエが外に逃げ切った瞬間、そこら中に設置されてるコイツをドカン。そのまま倉庫を崩壊させて俺を生き埋めにする。
      なンて作戦を今さらとるはずねェな。倉庫は妙に頑丈な上に通気孔は小さいモンしかねェ。
      オマエの作戦は倉庫内の酸素を一気に燃焼させて俺を酸欠状態に陥らせるってところか。段ボールの中は火薬かなンかか?」


グシャリ、と爆弾は踏み潰された。





147: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:24:00.93 ID:dEY/Sh2DO


一方通行「さァて、時間も押してるからさっさと済まそォか」


ドゴッ! と一方通行の足が雲川の腹にたたき込まれた。


雲川「ごボッ!!」


再び体内の空気が全部吐き出されたような感覚が雲川を襲う。

さらには強烈な吐き気がした。

あまりの苦痛に雲川は腹を押さえてしゃがみこんでしまった。


雲川「うぇ、ゲホッ……」

一方通行「ほらほら、グロッキーになってンじゃねェよ」


俯いていた顔に再び一方通行の足が迫る。

ぐぐもった嫌な音が開けた空間に響き渡った。


雲川「が、ハ……!」


ドチャリ、と雲川はコンクリートの上に仰向けに倒れこんだ。

端正な顔立ちは真っ赤な血と青アザで見るも無惨になっていた。


一方通行「おーおー、イカしたメイクになったじゃねェか。馬鹿にはお似合いだぜ?」






148: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:24:56.35 ID:dEY/Sh2DO


その時だった。


一方通行「お?」


降っていた雨の勢いが急激に増した。

ザアアアアアアアアアア!! という音が学園都市中で聞こえた。

局地的な大雨。ゲリラ豪雨だ。


一方通行「ハッ、いい雨だな。より一層惨めに見えるぜ? クソ女」


鼻で笑う一方通行にはただの一滴も雨粒が当たらない。

対して、雲川の身体は雨に打たれて全身がグショグショになっていた。





149: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:26:23.64 ID:dEY/Sh2DO


だが、しかし


雲川「………ぷっ、あはは」


よろり、と雲川は手をついて身体を起き上がらせる。


雲川「アハハハハハハハハハハハ!!」


ふらり、ふらり、とバランスを崩しながらもなんとか立ち上がる。


一方通行「オイオイ、壊れちまったか?」


この時、天は雲川に微笑んでいた。


雲川「くっくっく、日頃の行いの違いかな」


ほんの数歩。最後の力を振り絞ってほんの数歩だけ、雲川は一方通行に近づいた。


一方通行「アァ?」


一方通行には反射がある。

ダメージを与えるにはこれを越えなければならない。

しかし、一方通行に有害なものはすべて反射されてしまう。では、どうすればいいのか?

当たる寸前で物体を引き戻す?

ただの女子高生程度の身体能力と動体視力しかない雲川には自分の身体を用いても兵器を用いても不可能。

無害で有害なものをぶつける?

そんなわけの分からない物質はこの世にない。

ならば、答えは


雲川「ハァ、ハァ……喜べ一方通行。お前の負けだ」


体内にある無害なものを有害に変えれば―――――







150: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:29:24.92 ID:dEY/Sh2DO



一方通行「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!??」


突然一方通行が絶叫した。

それだけではない。手を背中に回してのたうち回った。


一方通行「ゴァ!? ゲッ、ガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


もはや一方通行は立っていることすらできない。

前後不覚になり、コンクリートの上をバシャバシャと転げ回っている。


雲川「ハァ……ハァ……!」


その様子を見て雲川は思わず笑った。

思わず拳を握った。

決着はついた。

勝利だ!


雲川「……『オジギソウ』。コイツを手に入れるのにずいぶん時間がかかってな」


ダイナマイトは雲川の切り札ではなかった。

切り札は毒ガス。それと一緒に封入していたナノマシンだ。

特定の周波数に応じて特定の反応を起こす反射合金の粒。

それを毒ガスに混ぜ、一緒に空気中に散布した。

30秒近くその場で呼吸を行った一方通行は、浮いてるだけでは無害なこの粒をかなり吸い込んでしまっただろう。

その無害な粒子が、それそのものは無害な、肉体を透過する特殊な周波数に反応し、体内で暴れ回る。

これを動かすために一定以下の距離まで一方通行に近づく必要があったのだ。

爆弾はただの着火剤だ。その目的は段ボールを燃やしてスプリンクラーを回すこと。

自身にも付着していたであろう『オジギソウ』を洗い流すためだ。

しかし、それとて火の海に身を置くリスクがあったので一番は手っ取り早く着替えて髪を切ることだったのだが。





151: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:30:48.79 ID:dEY/Sh2DO


本来なら、外で捕まった時点で雲川の負けだった。

しかし、幸運にも天は雲川に味方し、ゲリラ豪雨は雲川の身体を洗い流した。


一方通行「アアアアアア!!! カ、ア! アアア、あ」

雲川「そろそろ肺を食い潰したか? アッハハ、いい表情じゃないか。外道にはお似合いだけど」


血走っているせいで赤いのはもはや瞳だけではなくなっていた。

その眼を見開き、苦痛の表情を前面に出しながら一方通行はアスファルトの上を転げ回る。

あまりの異常事態に反射は消え、今や血と雨でぐちゃぐちゃだった。

ただでさえ痛みに慣れていない一方通行が細胞単位で削り取られる痛みに耐えられるはずがない。


一方通行「ギ、グ、エエ、ア、ガ」

雲川「おや、血流に乗ってあちこち食い破ってるようだな。ま、9982人分の苦しみにはまだまだ遠いだろうけど」


黒い衣服に血が滲んでいく。

体内に取り込まれた『オジギソウ』は、今や血流に乗って全身を巡っていた。

それを雲川は残忍な笑顔で見下ろす。雲川芹亜は決して優しい女ではない。

実験という大義名分の下、大きな悲劇と殺戮を巻き起こした傲慢な人間を許すはずがない。

それは幼いころに経験した地獄の底だ。一歩間違えれば妹やどこぞの根性バカと一緒に沈んでいた。

自分の頭脳と力が及ぶ限り悲劇は起こさせない。

それが彼女の根性だ。





152: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:32:30.93 ID:dEY/Sh2DO


雲川(……あの馬鹿はこんなやり方を根性なしと評するだろうけど)


細胞を1つ1つ剥がすこのナノマシンはとても強力だ。

たとえ一方通行とて、この激痛の中で演算は行えない。

今から反射膜のリストを再編することは不可能。故に、それそのものは無害な周波数を遮断することはできない。

このような戦い方を、その身1つで正面からぶつかる根性バカは認めたがらないだろう。


一方通行「う、ガ、あァ……ゴ、ア」


華奢な身体の動きがようやく鈍くなってきた。

いよいよ絶命が近いと見える。


雲川「想定より時間がかかったが、吸い込んだ粒子の数が少ないのは仕方ない。
    あまり多いとお前なら気付きかねないからな。その分『妹達』の苦痛に思いを馳せることができただろう?」

一方通行「ゲ、アア、ア……」

雲川「さて、取引だ」


見下ろしたまま、『オジギソウ』を起動させたまま、雲川は本来の目的に動いた。


雲川「勝敗は決した。あとはお前を生かすか殺すかなわけだけど……
    今後、生存している10019体の『妹達』を生かす資金が必要だ。
    その費用をすべてお前が捻出しろ。なに、お前の資金力なら多少借金する程度で済む。別の実験に精を出せば――」


一方通行「ガ、アア、キ……ペッ」


ビチャ、と赤いネバネバした液体が雲川のローファーに付着した。

それが一方通行の返答だった。


雲川「……仮にも学園都市最強を謳う能力者の最期の足掻きがコレか。見下げたものだな。一方通行」






153: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:33:11.53 ID:dEY/Sh2DO







一方通行「そォかい。じゃァ嫌でも見上げさせてやるよ、クソ女」










154: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:34:43.87 ID:dEY/Sh2DO


ゾン、と音がした。


雲川「え……?」


右腕が消えていた。

否、刈り取られていた。

ブシュウ、と大量の血液が噴出する。


雲川「う、ああああああああああああ!?」


右肩を押さえ、倒れ込みながら絶叫する。

対して、最強の能力者は


一方通行「あァクソッタレ。やってくれンじゃねェか三下が」


倒れ込んだ少女を見下ろしていた。

さっきと真逆の立場だ。

再び形勢は逆転した。





155: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:36:06.57 ID:dEY/Sh2DO


一方通行「戦うコトで強くなるっつゥのはマジみてェだな。体内の精密なベクトル操作も可能になっちまった」


あろうことか、激痛の中で一方通行は演算を行っていた。

それどころか新たな領域に手を伸ばしていた。

体内のベクトル、つまり血流や生体電気、果ては自律神経から肺胞での気体のやり取りまで操ってみせた。

血管を食い破ったナノマシンを再び血管に戻し、再び血流に乗せ、再び肺まで戻し、吐き出す。

先ほど雲川のローファーに付着したのは血液と唾液、そしてもはや機能を失った『オジギソウ』だった。


雲川「そん、な……」

一方通行「さァて……殺す気で来たンだ。殺されても文句言えねェよなクソ女ァ!!!」


ドボォ!!! と、先ほどとは比べものにならない強さの蹴りが雲川の腹部を直撃した。


雲川「ぁっ!!!」


蹴られた身体は宙を舞い、更に壁に激突する。

蹴られた腹は内臓が数ヶ所破裂し、打った背中は背骨が折れていた。


雲川「ぅ……ぁ……」

一方通行「おーいおい、寝てンじゃねェぞ醜女がァ! まだまだ元本も返してねェだろォが!!
      しっかり利子つけて倍返しすっからちゃンと最後まで責任もってしっかり受けとめろクソボケェ!!!」


再び一方通行が接近する。

もっとも、もはや雲川の瞳にしっかり映っているのかは定かでないが。


雲川(死、か……当然の報い



156: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:37:45.30 ID:dEY/Sh2DO


ブン!! ともはや胴体を切断するつもりで振るった脚が空を切った。


一方通行「!?」


血ダルマになっていた女は消えていた。


一方通行「…………オイ」


正確には連れ去られていた。


一方通行「誰だオマエ?」


高速、かつ、致命傷を負った女の身体に負担がかからないようにという理屈のつかない方法で。


削板「Level5第七位【ナンバーセブン】削板軍覇」


白ランを着た漢の手によって。







157: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:38:43.40 ID:dEY/Sh2DO


雲川「そ……ぎ……?」


意識も定かでない女は、抱き上げられたままうわごとのように呟いた。


削板「黙ってろ。死ぬぞ。……てめぇが一方通行だな?」

一方通行「……あァ、そォいやいたな。そンな名前の格下」


豪雨で血を洗いながら、学園都市最強は不敵に笑った。


一方通行「そォだ。俺が一方通行だ。で? オマエはどォいうつもりだ? 格下ごときが生意気にも俺とやるつもりか?」

削板「ふん。手負いのヤツに追い討ちをかけるほど俺は根性なしじゃねぇ」





158: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:39:37.30 ID:dEY/Sh2DO


削板「それに、モツもコイツも自分からタイマン張ったんだ。俺がお礼参りってのはお門違いもいいとこだ」

一方通行「モツ……? あァ昨日のドMか。何度も何度も起きやがって気持ちわりィ」

削板「……だが、てめぇが」


クイッ、と削板は顎で倉庫脇の通路を指した。

そこには


9983号「……」


次に殺されるであろう『妹達』が雨合羽を着て待機していた。


削板「あいつらを殺すってんなら、俺はてめぇを潰す。俺はモツと雲川が守りたかったモンを守る。覚えておけ」


フッ、と白ランの漢は姿を消した。







159: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:40:57.80 ID:dEY/Sh2DO




一方通行「……守りたかったモン、ねェ」


ニタリ、と一方通行は邪悪な笑みを浮かべた。


一方通行「今、ここで、俺ァコイツをぶっ殺すンだがなァ」


ビシャリ、ビシャリ、と一方通行は歩を進める。

反射は復活し、ベクトル操作は精密化した。

今や濡れていた身体と衣服は完全に乾き、万全の状態と化していた。


一方通行「七位だろォが三位だろォが俺からは何1つ守れねェってコトを教えてやるか」






160: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:42:00.17 ID:dEY/Sh2DO


9983号「その件なのですが、とミサカはハイになっている被験者を制止します」


その威圧感にまったく臆することなく、クローンの少女は通常通りの平淡な表情で被験者に話しかけた。


一方通行「あァ?」

9983号「今朝の実験が時刻通りに行われなかったこと。被験者が想定外の戦闘を行い、負傷したこと。
     複数の要因が重なったため、実験内容を少々修正する必要が出てきました。
     そのため、被験者と全ミサカに召集命令が下されています、とミサカは懇切丁寧に報告します」

一方通行「はァ? ちっとジャレて遅刻しただけだろォが」

9983号「文句は研究所で当人に直接言ってください、とミサカは合理的な解決案を提示します」

一方通行「フザけンなボケ。今オマエを殺すのが一番手っ取り早いだろォが」

9983号「それだと『絶対能力進化実験』そのものが破綻する可能性がありますが?」







161: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:42:57.73 ID:dEY/Sh2DO


しばらくの間、雨音だけが響いていた。

すでにゲリラ豪雨は終わり、少しばかり小雨になっていた。


一方通行「…………チッ。研究所ってなァどこの研究所だ? この実験に噛んでる研究所なンざいくらでもあンだろ」

9983号「この学区にあります。迎えが来ていますので、
     あなたと9000番台のミサカはそこに向かいます、とミサカは先陣を切って案内します」

一方通行「ン」


クルリと身を翻し、制服の上から雨合羽を着たクローンの少女は来た道を引き返した。

そして、白髪の超能力者もそれに続いていった。







162: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/01/31(金) 00:44:22.80 ID:dEY/Sh2DO




9983号「……一方通行」


しばらくして、クローンの少女が口を開いた。


一方通行「あ?」


普段はクローンから話しかけられることがないため、一方通行は怪訝な顔をした。


9983号「先ほどの女性は何故あんなにボロボロになるまで戦ったのですか? とミサカは率直な疑問をぶつけます」


さらにはその内容が実験とまったく関係のない内容だったため、一方通行は更に怪訝な顔をした。


一方通行「…………さァな。……いや、『妹達』がどうこう言ってたか」

9983号「ミサカ……ですか?」

一方通行「これ以上は知らねェよ。自分で探れ」

9983号「……分かりました、とミサカは案内を続けます」







178: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/12(水) 23:35:37.49 ID:TSDkHFRDO


-第七学区、とある病院



削板「おい! 先生呼んでこい! 急患だ!!」


病院に着いて開口一番、削板はロビーにたむろしていたスキルアウトに大声で指示を出した。


スキルアウト「うお!? ヤベーぞオイ!」

スキルアウト「ひ、人なんスか? それ」

スキルアウト「お、俺呼んでくる!」


血まみれの少女を見た瞬間、スキルアウトたちは若干のパニック状態に陥った。

それほどまでに少女の身体の損傷は深刻だった。

雨と血でシャツはぐちゃぐちゃに赤く染まり、フロアのタイルを染め上げていた。


インデックス「……うそ、くもかわ?」


ロビーの奥で座っていたインデックスが静かに呟く。

顔から血の気が引いていた。


削板「ああ。……【超電磁砲】と原谷はどうした?」

スキルアウト「2人とも削板さんが出てったあとすぐに飛び出したッス。
        俺らもアシ出したんでどっかで拾ってるはずッス。連絡だけ入れときやす」

インデックス「くもかわ! しっかりして! くもかわ!」


インデックスが雲川の様態を確かめようと駆け足で近づいた。


削板「騒ぐな、インデックス。傷に障る」





179: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/12(水) 23:45:49.07 ID:TSDkHFRDO




スキルアウト「先生呼んできたッス!」

冥土帰し「やれやれ、ゆっくり寝る暇もないね?」


バタバタとスキルアウトと【冥土帰し】、そして看護士が数人、急ぎ足で現れた。

呆れ顔でやってきた【冥土帰し】だったが、瀕死の女子高生を見た瞬間、表情を変えた。


冥土帰し「………これは……すぐに手術室の準備を」

看護士「は、はい!」


急ぎ足でやってきた看護士が急ぎ足で去っていく。

【冥土帰し】の顔色はひどく厳しいものだった。


削板「先生……治せるか?」

冥土帰し「……いくらボクでも死人は生き返せない」

インデックス「!」

削板「な、こいつはまだ……!」

冥土帰し「分かってる。だから、すぐに処置にかかる。ストレッチャーに移して……?」


ふいに【冥土帰し】が言葉を切った。

白衣の袖を雲川が引っ張っていた。


冥土帰し「……何かな?」

雲川「かィ、z、み……」

削板「おっさん? がどうした?」

雲川「マィ…ろ、コs、モ……」

冥土帰し「!」

削板「ん?」

冥土帰し「だが、あれは……じゃあ、キミは?」


コクリ、と血まみれの少女はうなずいた。


冥土帰し「…………すぐに伝えよう。キミ、看護士がすぐに手術室まで連れていくから、少しそばにいてくれ」

削板「わ、分かった」






180: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/12(水) 23:46:23.24 ID:TSDkHFRDO


インデックス「くもかわ……」

スキルアウト「削板さん! コレ! さっきのナースが乗せとけって!」


ゴロゴロゴロ、とスキルアウトの1人が急ぎ足でストレッチャーを押してきた。

たしかに削板が抱き上げているよりは体制が安定するだろう。


削板「あ、ああ」


優しく、ゆっくりと削板がストレッチャーの上に寝かせた。

しかし、それでも雲川は激痛に顔をしかめていた。


雲川「ツッ……ぁ」






181: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/12(水) 23:47:33.07 ID:TSDkHFRDO




ふいに、複数の足音が響いた。

全員が看護士の誰かだと思ったが、その予想は外れた。

看護士ではなく、雨でびしょびしょに濡れた御坂美琴と数人のスキルアウトだった。


御坂「! そ、その人は……?」

スキルアウト「うお!?」

スキルアウト「ひでぇ……何があったんスか?」


血まみれになった雲川を見て、御坂とスキルアウトらの顔に驚愕と恐怖が同時に表れた。


削板「……身体張ってお前の妹を守った女……イヤ、漢だ」

御坂「!!!」





182: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/12(水) 23:49:27.28 ID:TSDkHFRDO


もぞり、と雲川の身体が少しだけ動いた。


雲川「ぅ……ぁ……?」


虚ろな眼で雲川は御坂の顔を見つめた。

まるで、何かを訴えるように。


御坂「わ、わたし……?」


その視線を受け、御坂は雲川が横たわっているストレッチャーのすぐ側まで近づいた。


雲川「s…な、ィ」


必死に雲川が何か伝えようとする。

しかし、輪郭やあごが砕けていてまともに発声ができていない。


御坂「え……?」


加えて内臓が破裂し身体中の骨がイカれていた。

それでも、雲川は何かを懸命に訴えていた。





雲川「sくェナ……た……ズばナィ」


その中身は謝罪だった。

もっとも、それが御坂に向けた謝罪なのか『妹達』に向けた謝罪なのかは分からないが。





183: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/12(水) 23:50:39.86 ID:TSDkHFRDO


やがて、バタバタと数人の看護士があわただしく戻ってきた。

逼迫した表情のナースたちは乱暴に削板らをストレッチャーから退かす。

そして、テキパキと支度を整えたかと思えば嵐のように雲川を連れて去っていった。


御坂「……」


しばらくの間、御坂は呆然としていた。

見ず知らずの他人が血まみれになりながら自分のクローンを救おうとした現実に困惑していた。


削板「……【超電磁砲】」


いつまでも雲川が消えた方向を見つめていた御坂に削板が声をかけた。


御坂「! ……何かしら?」


声をかけられてようやく御坂は我に返る。

振り向いた方向には闘志を剥き出しにした漢がいた。


削板「悪いが、お前が何を言おうが俺はこの件に介入するぞ」

御坂「えっ……?」

削板「あんなツラ見せられて黙ってられるほど腑抜けた根性してねえんだ。俺は意地でもアイツらが守りたかったモンを守る」


ザッ、と濡れた白ランを翻し、削板軍覇はその場を去ろうとした。





184: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/12(水) 23:59:17.37 ID:TSDkHFRDO


御坂「な、待ちなさいよ! アンタ、なに考えてんの!?」


しかし、Level5の第三位であり、数々の死線をかいくぐってきた彼女はその程度では呑まれない。

立ち去ろうとする漢の背中を大声で呼び止めた。


削板「なに?」

御坂「今の人見たでしょ!? アイツは相手が誰だろうが手加減しない! アンタだって殺されるかもしれないのよ!?」

削板「あんな根性なしに殺されるほど根性なしじゃねえ。俺も、アイツらも」

御坂「そういう問題じゃないわよ! なんで……なんでアンタらはあんなヤツに真っ正面から向かってくのよ!
    なんで私のクローンのために死にに行くような真似すんの!? アンタたちになんの関係もないじゃない!」


これが御坂美琴の本心だった。

自分ではなく、他の誰かが自分のせいで、もしくは自分のために血を流していく。

昨晩の男は自分とクローンを逃がすために戦った。

今の女は救えなくてすまないと謝った。

常に自分が前線に出て戦ってきた勇猛果敢なこの少女にとって、この状況は理解しがたいものだった。





185: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 00:00:20.37 ID:y08IGEMDO




少しだけ間が空いた。

しかし、第七位は表情を変えずに真剣な眼で第三位の疑問に答えた。


削板「……関係あんだろうが。目の前でそんなツラ見せられて黙ってられるか」

御坂「!」

削板「お前もそうやって周りの人間救ってきたんだろ。理由なんてもう十分すぎるくらい揃ってんだよ」


それだけ言うと、削板は今度こそ背を向けてその場から立ち去った。


インデックス「ちょ、ちょっと待ってよぐんは!」


そして、その後を今の今まで圧倒されていたシスターが追いかけて行った。

後には気まずく顔を見合わせる数人のスキルアウトと混乱したLevel5だけが残されていた。


御坂「……なんなのよ……」







186: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 00:12:26.72 ID:y08IGEMDO


-同時刻、第七学区裏道



スキルアウト「おーい! ヤブミン!【超電磁砲】も削板さんもいたってよ!」

原谷「あ、ホントですか!?」

スキルアウト「今もう病院戻ってるってよ! 俺らも行こーぜ!」

原谷「分かりましたー!」

夏休みでダラけた学生たちが二度寝でもしようかと再びまぶたを閉じる頃、裏道では低い声が飛び交っていた。

声の主はメガネの学生とガラの悪いスキルアウトである。

つい先ほど、Level5が2人ばかり常人では追えないスピードで飛び出していったので捜していた次第である。

しかし、その2人は早くも目当ての事件を見つけたのか第七学区を1周してきたのか、スタート地点に戻ってきていた。

傘もささずに捜していた身としては骨折り損でしかないのだが、この少年も今さらそんなことをこの状況でグチグチ言うほど狭量ではない。






187: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 00:13:57.93 ID:y08IGEMDO


原谷「……ん?」


途中で合流したスキルアウトらの車に向かうべく表通りに足を向けた原谷だったが、その途中で足を止めた。


原谷「今……なんか……?」


キョロキョロと周りを見回し始める。

明らかに視界の端に妙なものが映った気がしたのだ。

そして、程なくしてそれは見つかった。


???「……」


ビニール製の雨合羽を着た少女が路地裏のすみに隠れていた。


原谷「わっ。……えと、御坂ちゃん?」

???「ミサカであることには違いありませんが、とミサカは意味深な言葉を呟いてみます」

原谷「え?」


一本調子な抑揚のない声と変わらない表情。

先ほど病院のロビーで見た御坂美琴とは明らかに違ったが、少しだけ考えて原谷はすぐに納得した。


原谷「……………あぁ、なるほど、クローン」


根性バカ2人に比べると細い身体に緊張が走る。

学園都市の闇そのものの存在。今から何が起きてもおかしくない。


ミサカ「少々お時間をいただけないでしょうか? とミサカはいわゆる同伴を要求します」

原谷「同伴って……」

「おーい! ヤーブミーン!」


先ほどより遠くからスキルアウトの声がする。

もう車を出そうと準備している頃だろう。


原谷「……すいませーん! ボクこのまま帰って着替えてきまーす!」

「あー!? いーけどオメーこの辺ガラわりーの多いから気ーつけろよー!」

原谷「分かりましたー!」





188: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 00:16:01.63 ID:y08IGEMDO


すぐに遠くからエンジン音が聞こえた。

スキルアウトらは立ち去っただろう。


原谷「じゃ、付き合うよ。僕はどうすればいい?」


メガネの少年は覚悟を決めていた。

彼には彼なりに退けない理由があるのだから。


ミサカ「……いきなり想定外の事態です、とミサカは困惑します」


だが、学園都市の闇は何もしてこなかった。


原谷「は?」

ミサカ「博士らが立てた予測ではここで追撃戦か中規模の集団戦が
     始まるはずだったのですが……、とミサカは目標のあまりの無警戒さに狼狽します」


言葉だけで狼狽した様子は見られない。

しかし、なんの行動にも移らない少女を見てメガネの少年はわざわざ緊張したのが馬鹿らしくなってきた。


原谷「……えーと、キミ何しに来たの?」

ミサカ「警告です、とミサカは即答します」

原谷「……とりあえずどっか雨の当たらないとこ行かない?」

ミサカ「……MNWを通じて許可が下りました。目標の指示に従い、ミサカは雨風を凌げる場所へと移動します」

原谷「………あぁ、そう……って言うか、まさか僕だけに警告ってわけじゃないでしょ? 削板さんもいた方がいいのかな?」

ミサカ「可能ならばそちらの方が合理的ですので取り合ってもらえると助かりますが、
     とミサカはメガネをかけた者は頭の回転が早いという都市伝説の信憑性の高さに感嘆しつつ頷きます」

原谷「…………もうツッコミ要素満載すぎて何がなんだか……」







189: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 00:19:31.95 ID:y08IGEMDO


-1時間後、第七学区とある研究所2階とある研究室



???「ふー……」


自室のチェアに腰をかけ、白衣を着た男は長く息を吐いた。

目の下に隈を浮かべ、こけた頬に若干うねらせた髪質のこの研究者の名前は天井亜雄。

『量産能力者計画』の研究に携わっていた彼は『妹達』の産みの親ともとれる。


天井「………………………上手くいってくれるだろうか、これで」


彼は正直胃に穴が空いてもおかしくない状況だった。

以前頓挫した『量産能力者計画』で多額の借金を抱え、首が回らない状況だった。

普通に働いていたのではまるで返済額に足らない。利子で精一杯の状況まで追い込まれていた。

そんな折りに破格の給金で『絶対能力進化実験』にスカウトされたのだ。

2つ返事で快諾したこの実験は順風満帆に進んでいき、借金も7割方返済できた。

しかし、突如その実験の内容を変えろという命令が上司から下された。

この実験まで頓挫すれば、深く関わってきた自分にさらなる負債が降り掛かることは明白。

さりとて今から逃げ出したとしても、実験を放り投げた時点で信用がなくなり仕事もなくなり借金地獄にもどることも明白。

もはや上司の命令をちゃんと聞くしかなかった。


天井「…………まさか、私にこれだけ重要な仕事を与えるとは……」


既に指示は出しているが、不安要素だらけである。

自分の人生すべてがかかっている実験は何度かあったが、自分自身にここまで重要な役を割り振られることははじめてである。





190: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 00:22:22.66 ID:y08IGEMDO


プシュウ、と研究室の扉が開いた。

そこにいたのはアルビノ体質の被験者だった。


一方通行「……よォ」

天井「ああ、おはよう」


もともとこの時間にくるように伝えていたので別段驚きはしない。

しかし、それでも目の前で何をするか分からない危険生物と向き合うと身体に緊張が走る。


天井「今日の実験はうまkんぐ!?」


ほら見たことか。

いきなり胸ぐらを掴まれ宙吊りにされた。

細い腕に持ち上げられて地面から足が離れた。


一方通行「あァまァいくゥン? ヤル気あるンですかァ? 2回連続で馬鹿が乱入してきたンですけどォ」

天井「ま、まて……首っ……しまっ……」


身体をバタつかせるが腕はびくともしない。

気道をほとんど絞められてめまいがした。


一方通行「オマエもさァ、責任の一端くらいあンだろォ? 俺今日会った研究者全員にこォやってンだわ。
      やっぱちゃンと役割くらいこなさなきゃだろ。俺もオマエらも。
      ここまできて実験がオジャンになったらオマエらも建物も比喩抜きで全部消し飛ばすぞコラ」

天井「わ、わかっ……」

一方通行「ン」


ドサッ、と天井の身体が床に落ちた。

同時に一気に入ってきた酸素に天井は少し咳き込んだ。


天井「ゲホっ、ゲホっ」





191: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 00:27:14.46 ID:y08IGEMDO


一方通行「でェ? わざわざこンな陰気クセェところに呼び出した理由はなンだ?」

天井「んんっ……あ、ああ、いくつか私の方から説明しないといけないことがあってな」


床からよろよろと立ち上がり、白衣を着た研究者はドサリとチェアに身体を預けた。


一方通行「あァ?」

天井「先ほどの件で実験に修正を加えないといけなくなったことは聞いているな?
    実験の修正を『樹計図の設計者』に演算させた結果、
    明日の朝6時半に実験を開始させることになった。場所は第一七学区の操車場。詳しい開始地点はメールで送っておく」

一方通行「はァ? 場所と時間しか変わンねェのかよ。だったらさっきブッ殺してもよかったじゃねェか」

天井「もちろん『妹達』にもテコ入れは行う。
    ここに来る前に別の研究者に今日の戦闘の内容を報告したな? その内容はすべて『妹達』に伝える。
    また、監視衛星が捉えた戦闘の一部の映像も見せる。それに『学習装置』での補強をし、能力の底上げも行う」

一方通行「……はっ、なンだその程度か。能力の底上げったって焼け石に水だろォが」

天井「…………それでもテコ入れにはなるという演算結果は出ている。もしかしたら、てこずるかもな」

一方通行「はっ、ふざけろクソボケ」


くるり、と一方通行は背を向け、扉まで歩いていく。

プシュウ、と扉が開き、振り返らずにあっという間に去っていった。





192: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 00:27:57.61 ID:y08IGEMDO


天井「………はぁ~………」


全身の緊張が解け、天井亜雄は再び大きく息を吐いた。


天井「………ふざけろはこっちのセリフだ。頼むから上手くいってくれよ……」


チェアから立ち上がり白衣を着た男は胃薬を探しはじめた。







193: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 00:32:00.25 ID:y08IGEMDO


-十数分後、削板宅前



原谷とクローンは学生寮の削板の部屋の前にいた。

削板に連絡を取ったところ、雲川はとりあえず助かりそうなのでインデックスが風邪をひく前に自宅に戻ったとのことだった。

そこで、原谷はクローンの少女を連れて削板の部屋まで来たのだ。

備え付けのインターホンを押すと、小気味よいチャイムの音が鳴る。

少し間を空けてガチャリと扉が開いた。


インデックス「いらっしゃい、やぶみと……短髪?」


出てきたのは銀髪の少女だった。

ただ、服装はいつもの修道服ではなく、淡い水色のパジャマだった。





194: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 00:32:46.73 ID:y08IGEMDO


ミサカ「……ミサカのことでしょうか? とミサカは消去法で解答を導き出します」

インデックス「?」

原谷「ほら、あれ、例の」

インデックス「なんだっけ? くーろん?」

原谷「城か。とりあえず上げてもらえる? 玄関先でする話じゃないし、僕びしょびしょだし」

インデックス「うん、分かったんだよ」


そういうと、銀髪の少女は一歩引いて原谷らを中に招いた。


ミサカ「お邪魔します、とミサカは礼儀正しく敷居を跨ぎます」

インデックス「ぐんはー! やぶみとくーろんが来たんだよ!」

原谷「イヤ、だからクローン……ま、いっか」






195: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 00:35:06.92 ID:y08IGEMDO


部屋の中に入ると、なんとも食欲を掻き立てる香りと色とりどりな食卓、半袖短パンジャージを履いた男が待っていた。


削板「来たか。とりあえず原谷、お前シャワー浴びてこい。風邪ひくぞ」

原谷「そうします。僕の分残しといてもらえます?」

削板「おう」

ミサカ「……朝食の時間でしたか? とミサカは溢れんばかりの料理を以て判断します」

削板「何をするにしても、まずは食わんと話にならんからな。お前、朝メシは?」

ミサカ「ミサカは定刻に定められたものを食べますのでお構い無く、とミサカはお食事の誘いを丁重に断ります」

インデックス「いいの? ぐんはの根性メシは絶品なんだよ?」

ミサカ「いえ、ですからミサカは」

削板「弁当があんなら一緒に並べろ。腹減ってんだろ?」

ミサカ「空腹と言えば空腹ですが……」

インデックス「じゃあ一緒に食べよ! 食べなきゃ損するんだよ!」

ミサカ「……」

インデックス「ほぉら、このハムエッグなんか卵の色合いとハムの焦げ目が絶妙で……」

ミサカ「…………そんなに、美味しいのですか?」ゴクリ







196: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 00:35:59.72 ID:y08IGEMDO


-数分後



原谷「ふぃー、さっぱりした。削板さん、シャワーありがとうこざいまし……」

削板「おう!」ガツガツガツガツガツ

インデックス「お先、なんだよ!」バクバクバクバクバクバク

ミサカ「は、はやすぎる! あぁ! まだその品は! あぁ! とミサ、あぁ!」

原谷「………えーと、僕のご飯あります?」

削板「釜ん中入ってるぞ! 勝手によそって勝手に食え!」モグモグモグモグモグモグモグモグ

原谷「………おかず、なさそうだなぁ……」

インデックス「あ、やぶみ! ついでに麦茶持ってきてほしいんだよ!」トクトクトクトクゴクゴクゴクゴク

ミサカ「あぁ! ポットの中身までもが!」

削板「気にすんな! もう一本ある!」ムシャムシャムシャムシャムシャムシャ

原谷「……コレで朝食だからなあ。エンゲル係数いくつだよ」





197: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 00:38:05.45 ID:y08IGEMDO


パカッ、と原谷は炊飯器を開けた。

確かに米は残ってた。2合ほど残ってた。しかし、8合炊いた後があった。


原谷「僕数分しかシャワー入ってないはずなんだけどなあ……」


ある程度よそうと、今度は麦茶を取り出すべく冷蔵庫を開けた。

冷蔵庫の中はギッチギチだったが、おそらく3日もてばいい方だろう。


原谷「おかず残ってなかったし……削板さーん! 卵1個もらっていいですか?」

削板「ん? 卵かけご飯か?」モリモリモリモリモリモリ

原谷「いえ、せっかくなんで半熟目玉焼き丼でも」スチャ

インデックス「!? なんなのそれ!? 美味しそう!」ガタッ

削板「おい原谷! 俺にも!」

インデックス「私にも!」

ミサカ「た、食べたいのにお腹がいっぱいという未知の現象にミサカは葛藤し」ケプ

原谷「言わなきゃよかったチキショー」







198: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 00:48:30.84 ID:y08IGEMDO


-数十分後



原削インミサ「「「「ごちそうさまでした!」」」とミサカは礼儀正しく合掌します」パン

削板「ふぃー、食った食った」

インデックス「今日も美味しかったんだよ!」

ミサカ「……不思議です。ミサカが知っている料理よりも濃い味付けだったはずなのにどれも美味でした
     とミサカは『学習装置』の知識に不信感を抱きつつもこれまでにない満腹感にお腹をさすります」

原谷「この人1度にとんでもない量作るからね。それはそれで味に深みがでたりするんだよ。それとこの語尾? は突っ込んだ方がいいの?」

ミサカ「これはミサカのアイデンティティーですので、とミサカは可能性に満ちあふれる胸を張ります」フフン

インデックス「ふーん。やっぱり学園都市には色んな人がいるんだね」

削板「まったくだ。学園都市でこれなんだから世界は広いな。……さて、本題に入るか。まず、お前の名前は?」

ミサカ「ミサカに名前はありません。検体番号なら10031号です、とミサカは今更ながら自己紹介します」

インデックス「? ……あ、そっか学園都市ならそれも普通の範囲内なんだよね」

原谷「範囲外だよ」

インデックス「私の名前はインデックスって言うんだよ」

削板「Level5の第七位【ナンバーセブン】削板軍覇だ」

原谷「原谷矢文。で、キミは警告に来たんだよね?」

10031号「はい、とミサカは簡易的に調べたところ盗聴の恐れはなさそうなので警告に移ります」

インデックス「いつ調べたの?」

10031号「この部屋に入ってすぐにミサカの能力でスキャン済です、とミサカは自己の有能さをアピールします」

削板「……【超電磁砲】のクローンならそのくらい出来て当然か」





199: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 00:49:21.09 ID:y08IGEMDO


10031号「では、警告の内容ですが、これ以上『絶対能力進化実験』に首を突っ込むのはやめていただきたいのです」

原谷「………キミがそういうこと言うの?」

10031号「どのミサカでも同じことを言うと思いますが? とミサカは疑問を疑問で返します」

インデックス「……だってその実験って……」

削板「待て、インデックス。こいつの言い分を全部聞いてからだ。
    命令じゃなくて警告ってんならまだまだ続きがあるんだろ?」

10031号「はい。あなたがあの場に乱入してきたということは
     貝積継敏がすべてあなた方に打ち明けたのだろうということは推測できます。
      ですが、この実験は極秘かつ学園都市の根幹に関わるものであり、大勢の研究者の悲願であります。
      実験の重要度も現在最高位であるため、失敗は許されません。
      あなた方はこのミサカと関わったこともすべて忘れ、
      以後実験に関わらないでください、とミサカは守秘義務があることも加えて警告します」





200: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 00:51:05.25 ID:y08IGEMDO


原谷「……それは横須賀さんのチームには言わなくていいの?」

10031号「? あの巨躯の方には9982号から伝えさせますが」

インデックス「じゃなくて、よこすかの仲間のことなんだよ」

10031号「………?」

削板「つーか前提が間違ってる。俺たち情報源は【超電磁砲】だ」

10031号「……………………………えっ?」

原谷「えっ?」

10031号「えっ? あの女性は貝積継敏の側近だったのでは?」

インデックス「くもかわはそうだけど私たちは違うんだよ。
     短髪から実験のこと聞いて、短髪が誰かが実験の邪魔をしてるのを知ったからみんな探してたんだよ」

削板「仮に貝積のおっさんから事情聞いてたら雲川が出る前に俺が出てる。
    ……アイツは根性あるから関係ない俺を巻き込むより自分で身体張る方を選んだんだろうがな」





201: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 00:52:51.49 ID:y08IGEMDO


10031号「………では、あなた方はお姉さまに頼まれて……?」

削板「いや? むしろ【超電磁砲】は自分でどうにかすっから引っ込んでろって感じだったな」

10031号「………………………………えっ?」

原谷「えっ?」

10031号「では、なぜあなた方はこの実験を妨害するのですか?
     とミサカは義務も利益もないのに生死をかけて介入する行動に疑問を持ちます」

インデックス「なぜって……目の前で人が殺されそうなのに放っておけるわけないんだよ」

10031号「ミサカは実験動物であり、ボタン1つで生み出せる原価18万円程度の存在ですので、特に問題ありませんが」

削板「問題しかねえだろうが」

10031号「?」

原谷「……キミさ、自分が殺されるの嫌じゃないの?」

10031号「好きではありませんが、ミサカはそのために生み出されたので、とミサカは義務と合理性に基づいた解答を述べます」

インデックス「本当に? もうご飯食べられなくてもいいの?」

10031号「……食べたいですが、ミサカは……」

削板「……少なくともな、俺から見ればお前は立派な人間だ」

10031号「人間……ミサカが、ですか?」

原谷「あんだけ美味しそうにご飯食べて、あんだけ感情豊かに喋っておいて何を今さら」

10031号「これは『学習装置』でインプットされた偽りの心であって」

インデックス「偽りの心? よく分かんないけど心であることには変わりないんだよ」

10031号「……」





202: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 00:54:01.62 ID:y08IGEMDO


削板「……10031号っつったか。警告に来たってだけで止めに来たわけじゃねえんだろ?」

10031号「戦略的に見て、ミサカ単体ではあなたに遠く及ばないため、まずは警告という形になりました」

原谷「そりゃ止めるとなれば軍隊が出ないとだもんね……」

削板「なら、とりあえず今日のところは帰れ。この後モツの見舞いとステイルの退院がある。
    神裂にも連絡いれないといけないし、他にも色々やることがある。あまりお前の相手もしてられん」

10031号「……分かりました、とミサカは帰還命令が出たことも考慮して撤退します」

原谷「イヤ、いつ連絡もらったのさ」

10031号「『妹達』は同一の脳波と能力を持つためミサカネットワークで常につながっているのです、とミサカは簡潔に答えます」

インデックス「???」

10031号「簡単に言えば『妹達』1体1体が動くパソコンであり、回線の代わりにすべて脳波でリンクしています。
     すべての情報を共有・蓄積でき、高度な演算も行えます、とミサカはMNWについての説明を行います」

削板「……つまり、どっかにいるお前の妹だか姉貴だかが帰ってこいって指令をもらって全員に配信されたのか」

10031号「そんなところです。……では、ミサカはこれで帰ります」

原谷「……分かった。玄関まで見送るよ」







203: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 00:56:34.00 ID:y08IGEMDO


10031号「ご飯、ごちそうさまでした、とミサカは再び一礼します」


ペコリ、と再び雨合羽を着た少女は玄関先で頭を下げた。


インデックス「うん、また一緒に食べようね」

削板「そん時は根性入れて作ってやるぞ」

原谷「わざわざありがとね」

削板「……あぁ、最後にダメ元で聞くが、次の実験はいつだ?」

10031号「それは極秘事項ですので、とミサカは言葉を濁します」

削板「そうか……」






204: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/02/13(木) 01:02:28.10 ID:y08IGEMDO


10031号「……では」


そう言うと、クローンの少女はきびきびと歩いて去っていった。

玄関にいた3人は扉を閉めるまで笑顔でその姿を見送っていた。


インデックス「……」

削板「……」

原谷「……」


だが、その後は沈黙と厳しい表情だけが残っていた。


インデックス「よく分かんないけど……あの人は実験動物なんかじゃないよね?」

削板「当たり前だ」

原谷「それにしても、わざわざあのコ使ってくるなんて……
    六法全書みたいなツラの皮してますね。根性が腐ってますよ」

インデックス「……やっぱり放っておけないんだよ」

削板「ああ。……原谷、病院までインデックスを連れていってくれるか?」

原谷「はい? いいですけど、削板さんは?」

削板「ちょっと用事だ。日付が変わるまでには戻る。インデックス、夜は神裂のところに行ってくれ。戻ったら迎えに行く」

インデックス「……ぐんは、勝手に危ないことしちゃダメなんだよ」

削板「あぁ。行くときはちゃんと宣言して行く」

インデックス「ならいいんだよ」

原谷「いいんかい」

削板「着替えたらすぐに出る。頼んだぞ」







213: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:44:56.37 ID:KOIcYpbDO


-数時間後、第七学区とある病院某一室



御坂「……」


昼時を少し過ぎたころ、御坂美琴は御坂美琴の看病をしていた。


9982号「……」


ベッドに横たわった自分そっくりの少女は未だ目を覚まさない。

だが、それも当然と言えば当然である。

彼女はあと少し、ほんの数十分でも病院に着くのが遅れていたら死んでいたのだから。



御坂(………このコは私のクローン。望んでもいないのに生み出されて死んでいく存在)


どうにかこうにかハッキングしたところ、『樹形図の設計者』の演算結果により、次の実験は翌朝だと記されていた。

今この時くらい目の前で眠っている彼女のそばにいてもバチは当たらないだろう。


御坂(本人もそれを理解しているし、受け入れてる。……仮にこの実験を止めたところで、余計なお世話かもしれない)

御坂(それに、彼女たちが助かったとしても、その後は?
    クローンは世界中でタブー。学園都市から出すわけにいかない)

御坂(かと言って、学園都市に残っても居場所はない。気味悪がられてまともに生きていけるはずがない)

御坂(でも、だからってこんな実験を見過ごすわけにはいかない。こんなイカレた実験、見過ごすわけにはいかない)




214: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:45:22.34 ID:KOIcYpbDO


御坂(それに……)


チャリ、と御坂は棚の上に置かれていた缶バッジを手に取った。

それは昨日プレゼントしたカエルの缶バッジだった。


御坂(昨日一緒に過ごした限りでは、彼女は普通の人間と変わりなかった。この街では普通の女の子)


くるくると、何とはなしにそれを手で弄びながら考える。

昨夜病院に担ぎ込まれた少女は意識がなかったはずなのになかなかこれを放そうとはしなかった。


御坂(私の不注意でこうなった以上、私に責任がある。私のせいでもう何千人も死んじゃったんだから)


自分のDNAマップが病院にいた大勢の筋ジストロフィーの患者を救えると言われた時はとても喜んだ。

実際に提供した後、患者からお礼のメールが何通も来た時は小踊りして喜んだりもした。

だが、それもすべて幻想だ。

自分の周囲の人間の疑念を払拭させるために向こうが一芝居打ったのだろう。

結果として取り返しのつかない過ちを犯してしまった。


御坂(そう、私に責任がある。だから、これ以上他の人に血を流させるわけにはいかない)


昨日、自分たちを庇った男は死にかけてこの病院のどこかで眠っているらしい。

今朝、血まみれになって担ぎこまれた女はこの実験を止めるために立ちはだかったらしい。

本来なら真っ先に自分がそうするべきだったのに、次々に人が倒れていく。

自分のせいでこれ以上地獄の底に堕とすわけにはいかない。






215: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:46:01.68 ID:KOIcYpbDO



9982号「……ぅ……?」


眠っていた少女の身体が少し動き、うっすらと目を開けた。


御坂「!」

9982号「……………ここは……?」


ボーッとした顔でクローンの少女は呟いた。

まだほとんど意識が覚醒していないようだった。


御坂「……おはよ、大丈夫?」

9982号「……………お姉さま………?」


ほんの少し、クローンの少女は首を回した。

そこにはネットワークでつながっていない、自分の素となった本物の人間がいた。


9982号「………記憶が混乱しています、とミサカは情報収集のためMNWのログをあさります」

御坂「……」

9982号「…………? おかしい……このミサカには記憶障害が起きているようです」

御坂「……それは……そうよ。あれだけのことされたら。記憶の1つも飛ぶわよ」

9982号「いえ、忘れたのではなく、はっきり覚えてる感覚がMNWに残ってないのです、とミサカはネットワークの混乱を訴えます」

御坂「………?」

9982号「不思議な感覚でした……大きく心強い力に包まれた感覚、優しく温かい力に包まれた感覚……」






216: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:46:51.04 ID:KOIcYpbDO


ちょうどその時、コンコン、と病室の扉をノックする音がした。

そして、中で眠っているであろう少女を起こさないようにゆっくりと扉が開かれた。


原谷「失礼しまーす………。あ、なんだ起きてたんだ」


扉を開けたのは、今朝病院のロビーで怒鳴り散らしていたメガネの少年だった。


御坂「アンタ……」

原谷「えっ……と、クローンの子? それとも……?」

御坂「……御坂美琴。正真正銘、常盤台の【超電磁砲】よ」

原谷「ああ、本人か。イヤ、本人って言い方もおかしいか。とりあえずコレ。ベタだけど」


ガサ、と少年は半透明のビニール袋を差し出した。

うっすらと見える色合いとシルエットから察するに、どうやら果物の詰め合わせのようだった。


御坂「………ありがと。そこ置いといて」

原谷「うん」

9982号「それは……なんなのですか? とミサカは持ち込まれた果物に不信感を抱きます」

原谷「え? イヤ、手ぶらでお見舞いに行くのもどうかと思ったから……」

御坂「悪いわね。わざわざ」

原谷「あぁ別にいいよ。先月いろいろあって英国の宗教団体からもらったお金が余ってたから」

9982号「……お見舞いに手ぶらはマナー違反。そういうことですか? とミサカは確認をとります」

原谷「マナー違反じゃないと思うけど……あった方がいいくらいの感じかな」





217: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:47:27.85 ID:KOIcYpbDO


原谷「それでさ、ちょっとクローンの子に聞きたいことがあるんだけど」

御坂「……緊急の用事なの? このコさっき起きたばっかりなんだけど」

原谷「そうなの? じゃあ別にムリには……」

9982号「ミサカに回答が許されている範囲内ならお答えしますが、とミサカは質問を許可します」

原谷「あっ、ホント?」

御坂「……」

原谷「それじゃあさ、今までに殺されたクローンの遺体ってどこにあるの? ちょっと試したいことがあるんだけど」

御坂「!?」

9982号「すべて焼却済みですが? とミサカは少年が実験の概要を知っていることも考慮した上で回答します」

御坂「なっ……」

原谷「焼却って……えーと、火葬したってことでいいのかな?」

9982号「焼却処分です。『妹達』は極秘かつ機密情報の塊ですので
     細胞の一辺たりとも残すわけにはいかないのです、とミサカは『妹達』関連のセキュリティの高さを誇示します」

原谷「あっそう。それでもこう……灰か何かは残ってないのかな?」

9982号「そこはミサカの知る範囲ではありませんのでお答えできません、とミサカは首を横に振ります」

原谷「そっか。家畜の餌やら魚の餌やら穀物の肥料やらになってなければ




218: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:48:00.68 ID:KOIcYpbDO


御坂「出てけ!!」


バチイ!! と原谷の顔のすぐそばを電撃が通り過ぎた。


原谷「うわ!?」

御坂「出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ!! どういうつもりよ!!」


バチチチチチ!! スパークがほとばしる。

最強の【電撃使い】の力が半ば暴走していた。


9982号「お姉さま……?」

原谷「ちょっ、ストップ! タンマタンマ!」

御坂「フザけんな! これ以上このコたちに何させるつもりよ!」

原谷「ちが、あの、知り合いになんでも出来る人が、もしかしたら生き返せるかも




219: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:48:34.24 ID:KOIcYpbDO


バッチィン!! と原谷の頬に強烈なビンタが炸裂した。


原谷「~~っつぅ……!」


あまりの衝撃で眼鏡が吹っ飛んでいた。


御坂「どこまでフザけんの? ……そんな人がいたら苦労しないわよ!!」

原谷「イヤ……ホントに……」

御坂「この……!」

9982号「お姉さま、怒りの原因は分かりかねますが
     病院でこれ以上電撃を使用するのはよろしくないと思われます、とミサカは一般常識に基づいて警告します」

御坂「………あーもう! 勝手にしろ!」


ズカズカと逆上した【超電磁砲】は病室を横切っていく。

力任せに扉を開け、ドン! と力任せに扉を閉めた。





220: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:49:18.54 ID:KOIcYpbDO




病室に取り残された2人の間には気まずい空気が流れていた。


原谷「……」

9982号「……」

原谷「……はぁ、怒らせちゃった」

9982号「……お姉さまはなぜ怒っていたのでしょう? とミサカは疑問に首を傾げます」

原谷「そりゃあんな会話したらキレるさ。……あーあ、絶対キチガイだと思われた。僕だけは常識人でいようと思ってたのに」ハァー…

9982号「……? 先ほどの会話に不備があったのですか?」

原谷「一般常識で考えてさ、妹の死体になんかするから場所教えてくれって赤の他人が聞いてきたらどう思う?」

9982号「キチガイだと思いますね、とミサカは一般常識に基づいて回答します」

原谷「トドメ刺されたよ……」ズーン…

9982号「ミサカが聞いているのはあなたのキチガイ具合ではなくお姉さまが怒った原因なのですが、とミサカは再度質問します」

原谷「常識人だよ僕は。あのコも精神的にキツイのに刺激するような発言したからだよ」

9982号「どのワードが刺激になったのですか? とミサカは会話の記憶を辿ります」

原谷「イヤもう会話そのものだよ。僕もなんで前置きなしでこんな話したんだろ……」

9982号「……よく分かりません。実験動物の処理になんの問題が……?」

原谷「あのコにとって君は実験動物なんかじゃなくて1人の人間、もしかしたら身内くらいに考えてるかもね」

9982号「……」

原谷「たぶんだけどね。だから、あのコも絶対に実験を止めようとするよ。……削板さんが先にやると思うけど」





221: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:49:57.29 ID:KOIcYpbDO




御坂(やっぱりあんなヤツらに任せるわけにはいかない!)


怒りで早足になりながら御坂は病院の廊下をずんずん進んでいく。


御坂(どいつもこいつも人を小馬鹿にして……! 私を誰だと思ってんのよ!)

御坂(私がやらなきゃ……! もう1滴も血を流さない! 次の実験が始まるまでに全部ひっくり返してやる!)

御坂(そしたら私はもうここにはいられなくなる、けど……)


気が付くとすでに病院の外に出ていた。

無意識の内に高性能機器に支障をきたさないように外に向かっていたようだ。


御坂(あのコが殺されるのも他の誰かが殺されるのも私のせいなんだから……私だって人生の1つや2つくらい賭けてやる!)


雲を透かすように天を睨み付け、【超電磁砲】御坂美琴は覚悟を決めた。







222: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:50:59.29 ID:KOIcYpbDO




一通り会話を終え、原谷は病室を後にした。

聞いた限りではとある錬金術師を頼る手段はなかなか難しそうである。

もっとも、頭を冷やして冷静になった今ではその手段も倫理的にどうかと思われるが。


???「失恋かい?」


廊下に出たとたん、ふいに声をかけられた。


原谷「あぁ、ステイルさん」


声の主は先ほど退院したばかりの神父だった。

患者着ではなく、いつもの黒い神父の服をまとっている。


原谷「すいませんでしたね。こんな状況になった以上、快気祝いをやるどころじゃなくなっちゃって」

ステイル「うん? 別に気にしてないよ。回復する度に祝ったら『必要悪の教会』は毎日乱痴気騒ぎさ。
      それよりよっぽど手痛くフラれたみたいじゃないか。懺悔の言葉があるなら聞いてあげるよ?」

原谷「……フラれたわけじゃありませんよ」

ステイル「おや、そうなのかい?」

原谷「2コ下って言っても中2ですし。ちなみに僕のストライクゾーンはしっかりしてるけど天然な感じのコです」

ステイル「キミが貸してくれたゲームの主人公の1人みたいな感じかい?」

原谷「どストライクですね」

ステイル「なんだ。久々にまっとうな神父の仕事がきたと思ったんだけどね」

原谷「神裂さんとインデックスは?」

ステイル「まだ深夜に運び込まれたテロリストの部屋にいるよ。
      ボクは用を足しに行った帰りに修羅場の匂いを嗅ぎつけてね」

原谷「野次馬根性丸出しですか」

ステイル「根性には違いないさ」

原谷「絶対アンタには懺悔しない」





223: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:51:59.69 ID:KOIcYpbDO


ステイル「ところで、ガラにもなく今朝は暴力的だったそうじゃないか」

原谷「……」

ステイル「ボクらと敵対した時も、盾にはなっても戈にはならなかった。珍しいじゃないか」

原谷「……そりゃまあ、血気盛んな男子高校生ですから」

ステイル「そうかい? ボクの印象では、キミはよっぽどのことがない限りそうはならないと思ったけどね」

原谷「……」

ステイル「そうなった理由は彼女がキミの想い人だからだと思ったんだが……違うのかい?」

原谷「……あのコにはね、ずーっと昔に救われてるんです。もう何年も前ですけど」

ステイル「ふぅん?」

原谷「正直、人生に絶望してた時期があったんですよ。歩くこともできずに死ぬしかないって頃に、彼女の善意が救ってくれた」

ステイル「……」

原谷「あんだけいいコが、その善意を悪用されて、しかもそれに責任を感じてる。間違ってるでしょ、こんなの」

ステイル「そんなものさ。世の中は不条理に溢れてる」

原谷「それに屈するのを根性なしって言うんですよ」

ステイル「言うじゃないか。なら、どうするんだい?」

原谷「………手、貸してもらえますか?」

ステイル「ふふっ、あれだけ大見得切った直後に頭を下げるのかい?」

原谷「この不条理を跳ね返せるならなんだってやりますよ」

ステイル「見栄は悪いが心意気は立派だね。元よりキミたちには借りがある。いくらでも手を貸すよ」







224: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:52:30.52 ID:KOIcYpbDO


-第二一学区、山中



第二一学区には貯水ダムが数多く存在している。

平地が多い学園都市でも山岳地帯であるこの学区は他学区に比べて自然が多い。

科学で溢れかえっている学園都市にあって、ここは例外的に科学から逃げることができる。

そして、山中にあるちょっとした山小屋にも科学の手先となった化け物から逃げている人物がいた。


貝積「………ふぅ」


汗だくになりながら丸太小屋の中に入った老人は、棚の前でうずくまった。

体調を崩したわけではない。彼が足元の板をスライドさせると、何やら液晶が出てきた。

その液晶を何度か叩くと、空気の漏れる音と共に棚がスライドした。

棚があった場所には数mほどの短い通路があり、その先には鉄の扉が構えている。

ここは学園都市統括理事会の1人、貝積継敏の隠れ家である。

山小屋自体は公共のものだが、そこから続く秘密の通路は山肌を削って造られた核シェルターに繋がっている。





225: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:53:00.68 ID:KOIcYpbDO


通路に入り、棚を元に戻し、ドアノブに手をかける。

蒸し暑い外とは逆に、日の光から逃れた涼しい空気が出迎えてくれた。


???「よっ」


だが、出迎えてくれたのは涼しい空気だけではなかった。

予想だにしない先客に老人は身体を強張らせる。


貝積「………君たちは私を驚かせるのが好きだな」


だが、老人はすぐに警戒を解いた。

なぜなら


削板「すまんな。邪魔してるぞ」


その人物はかつて自分が救った少年だからだ。





226: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:54:04.74 ID:KOIcYpbDO


貝積「……なんで私がここに来ると分かった?」


汗だくになったシャツとネクタイを脱ぎ捨てながら、老人は問いかけた。


削板「俺の時も最初はここだったからな。避難と立案を同時にやるならここだと思った」


机に腰をかけていた少年は、ぐい、と持っていたコップの中身を飲み干した。


貝積「懐かしいな。……私にも1杯もらえるか?」

削板「おう」





227: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:54:47.15 ID:KOIcYpbDO


とくとくとく、とガラスのコップに透明な茶色い液体が注がれていく。

それが終わると、老人は一気に液体を飲み干した。


貝積「っはぁ、美味い。酒なんぞよりよっぽど美味い。冷えた麦茶こそ至高だ」

削板「意義なし!」

貝積「だろう? ……彼女を救ったらしいな」

削板「……まあな」

貝積「実験のことを聞きに来たのか?」

削板「概要はもう聞いた。俺が闘うには理由が揃いすぎてる」

貝積「そうか。なら、私を罵りに来たか?」

削板「そんなつもりはない。が、なんでこうなったのか興味はあるな」

貝積「私は君ほど純粋でなければ根性もない。それだけの話さ。ぶつかり合って敗北を喫し、諦めてしまった」

削板「………おっさんらしくねえな」

貝積「私は弱い人間だ。どこかで折り合いをつけることに慣れてしまった。
    あれこれ理由をつけたりつけられたり。いろいろな案件に関わっていくうちに、見切りをつけた事案はいくらでもある」

削板「この実験もその1つか?」

貝積「ああ。……彼女は諦めなかったがな。私は彼女を尊敬するよ」

削板「……だからここに来たんだろ? 今度こそ実験を止めるために」

貝積「こうならなければ止めようとしなかった。この先私が統括理事会であり続けるためにね。私は卑怯で利己的な人間だよ」





228: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:55:38.95 ID:KOIcYpbDO


削板「……ホント、らしくねえな。雲川がやられて凹んでんのか?」

貝積「……かもしれないな。あんな細くて幼い彼女を戦場に向かわせた不甲斐なさ、根性のなさに腹が立ってる」

削板「……」

貝積「案ずるな。もうそんな真似はしない。ここから先は私がケリをつける。遠回りで薄汚い戦いだ」

削板「そうはいかん。俺も出る」

貝積「ダメだ。お前の出る幕ではない」

削板「おっさんの戦場には出ねえ。役に立たないからな。だが、おっさんのやり方だとクローンは何人か死ぬだろ?」

貝積「……ああ、時間が足りない。彼女がいないのではまともな策もいくつ用意できるか……」

削板「なら、足止めは俺にやらせろ。おっさんが権力あるヤツらを倒すまで、俺が一方通行の相手をする」





229: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:56:06.42 ID:KOIcYpbDO



貝積「……相手は学園都市そのものがバックについた学園都市最強だぞ?」

削板「だからどうした」


しばらくの間、無言が続いた。

その間、少年と老人は互いに目を反らさなかった。

そしてややあって、老人の方が諦めたように首を振った。


貝積「……明日の朝6:30だ。場所は第一七学区の操車場」


その言葉を受け、少年は ニッ と笑った。


削板「それを聞きに来たんだ。それだけ分かれば十分だ」


机から下り、少年は部屋突っ切るように歩いていく。

その背中は大きく、自信と気合いと根性に満ち溢れていた。


貝積「無事に帰ってこい」

削板「おう!」






230: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:56:48.23 ID:KOIcYpbDO


-夕暮れ、第七学区とある病院某一室



横須賀「む……」


雲に覆われた空が暗くなってきた頃、テロリストのような大男が目を覚ました。


横須賀「………ああ、クソ。」


そして、視界に映った天井を見て思わずうなだれた。


横須賀「負けたか……。まだまだだな、俺も。」


記憶は途中から無いが、見慣れた天井が見える布団の中にいるということはそういうことだろう。


横須賀「……っつ! ……あぁコレは……だいぶ派手にやられたか……。」


少し身体を持ち上げただけで全身に激痛が走った。

だが、一応四肢の感覚はある。

腕をもがれたり足をちぎられたりしたわけではなさそうだ。


横須賀「……スマンな、心配をかけた。」


持ち上げた身体で部屋を見渡すと、舎弟の連中がゴロゴロいた。

しかし、全員がベッドや椅子や壁に身体を預けて眠りこけていた。

恐らく1日中気を張り詰めていたのだろう。

仮に昨日の夜からずっと付きっきりなのだとしたら、疲労もかなり溜まっているはずだ。


横須賀「……だが、この程度のケガで俺がどうにかなると思うな。ったく……」


ボスッ、と再び頭を枕に埋める。

誰にも聞かれていない憎まれ口を叩きながらも、顔は少し笑っていた。





231: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:57:15.16 ID:KOIcYpbDO


???「あの」

横須賀「うおっ!?」


ビクッ、と身体を強張らせた。

と同時に全身に激痛が走った。


横須賀「いだだだだだ……! ……包帯をしているということは妹の方か?」


首をひねって声の方向に顔を向けると枕元のイスに昨夜の少女が座っていた。

少女は全身を包帯で巻かれている上に片足がなかった。

近くの棚に松葉杖が置いてあることを考慮しても、やはり彼女は昨日血の気を失っていた少女だろう。


9982号「コントですか? とミサカは見事な自爆っぷりにいっそ感動します」

横須賀「ほっとけ。」





232: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:57:53.16 ID:KOIcYpbDO


9982号「これをどうぞ、とミサカは布団の上に手土産を置きます」

横須賀「ん? ……缶バッジ?」

9982号「お見舞いには手ぶらで行かない方が良いと聞きました。
     ですのでミサカは唯一の所持品であるの缶バッジを……お姉さまからの初めてのプレゼントである缶バッジを……」プルプル

横須賀「そんなに嫌ならくれてやるな。いらんわ。」

9982号「! で、ですが……」

横須賀「世間知らずのお嬢様に教えてやる。他人からもらったモンをそのまま他人に贈るのは、一部を除いてマナー違反だ。」

9982号「そ、そうなのですか?」

横須賀「ああ。それと、そういうのは気持ちの問題だ。なければないでかまわん。」

9982号「で、では、このゲコ太は申し訳ありませんが引っ込めさせてもらいます、とミサカはゲコ太を再び手中に収めます」ホッ

横須賀「好きにしろ。……それにしても、よく動けるな。お前も瀕死だっただろう?」

9982号「あなたに較べれば軽傷だったようなので、とミサカは目の前の男がまだ生きてることに驚愕します」

横須賀「脚ちぎられたお前よりヒドかったのか、俺は。というか、それが助けてもらったヤツの言い草か。」

9982号「……その件に関してはお礼を述べることはできません」

横須賀「あ? 死にたかったとでも言うつもりか?」

9982号「……あなたの仲間が全員知ってる以上、あなたに知れるのも時間の問題でしょう、とミサカはすべてを打ち明けます」







233: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:58:41.58 ID:KOIcYpbDO




横須賀「……『絶対能力進化実験』……『量産型能力者実験』……雲川の介入……削板の宣戦布告、か」

9982号「はい、とミサカは上手いこと要点をまとめられた大男を賞賛します」

横須賀「馬鹿にしているのか。」

9982号「スキルアウトとは教養のない粗暴な輩の集団だとインプットされています、とミサカは全責任を『学習装置』に丸投げします」

横須賀「上書きしておけ。学校行ってないだけでIQはそこらの連中と変わらん。」

9982号「かしこまりました、とミサカはMNWを通じて全ミサカに拡散します」

横須賀「……魔術師、錬金術師ときてクローンか。で、お前は見舞いついでにそれを伝えに来たのか?」

9982号「いえ、単純な好奇心で来ました、とミサカは心情を吐露します」

横須賀「あ? 好奇心?」

9982号「あなたも今朝の雲川芹亜も相手があの一方通行と知って尚、一方通行の前に立ちはだかりました。
     削板軍覇も原谷矢文もシスターもお姉さまも実験に反対するだけでなく止めようと立ち上がっています。
     しかも、殺されるために生まれた『妹達』を殺させないためにです、とミサカは整合性の取れない行動に疑問を持ちます」

横須賀「……それで、実際に第一位と戦った俺に聞きに来たということか。」

9982号「はい。何故あなた方は闘うのですか? とミサカは疑問を投げ掛けます」







234: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:59:10.70 ID:KOIcYpbDO






横須賀「決まっているだろう。漢だからだ。」





9982号「……女性もいるのですが、とミサカはまさかの回答に驚きを隠せません」

横須賀「胸に脂肪が2山ついていたら女。股間に玉が2つブラ下がっていたら男。女だろうが男だろうが根性があったら漢だ。」

9982号「理解できません、とミサカは『学習装置』には存在しない思想に驚愕します」

横須賀「理解できない内はただの女だ。一生理解できんかもしれんがな。」

9982号「……」

横須賀「分かったら部屋に戻って寝ろ。俺もまだ満身創痍だ。」

9982号「……分かりました、とミサカは病室を後にします」







235: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 12:59:57.48 ID:KOIcYpbDO


-夜、第一四学区とあるアパート



日が完全に沈み切り、街灯が辺りを照らす頃、削板軍覇はアパートの階段を登っていた。

留学生が多くいるこの学区では日本語よりもアルファベットの表記が多い。

そんな学区に今から向かう部屋に住む人物が押し込まれたのも、半ば必然かもしれない。

階段を登りきり、通路を歩き、目的の部屋に辿り着いてインターホンを押す。

ピンポーン、と軽やかなチャイムが鳴った。





236: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 13:00:41.59 ID:KOIcYpbDO


-夜、第一四学区とあるアパート



日が完全に沈み切り、街灯が辺りを照らす頃、削板軍覇はアパートの階段を登っていた。

留学生が多くいるこの学区では日本語よりもアルファベットの表記が多い。

そんな学区に今から向かう部屋に住む人物が押し込まれたのも、半ば必然かもしれない。

階段を登りきり、通路を歩き、目的の部屋に辿り着いてインターホンを押す。

ピンポーン、と軽やかなチャイムが鳴った。





237: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 13:01:25.04 ID:KOIcYpbDO


ガチャリ、と扉が開くと住人が出てきた。


神裂「……待ってましたよ」

削板「悪いな」


その人物は世界に20人といない【聖人】だった。

削板は彼女のもとに一時的に預けていたインデックスを迎えに来たのだ。


神裂「すでに全員揃っています」

削板「全員?」

神裂「ええ。とりあえずは中に入ってください」

削板「? おう」






238: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 13:02:33.91 ID:KOIcYpbDO


ガチャリ、と扉が開くと住人が出てきた。


神裂「……待ってましたよ」

削板「悪いな」


その人物は世界に20人といない【聖人】だった。

削板は彼女のもとに一時的に預けていたインデックスを迎えに来たのだ。


神裂「すでに全員揃っています」

削板「全員?」

神裂「ええ。とりあえずは中に入ってください」

削板「? おう」






239: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 13:03:15.45 ID:KOIcYpbDO


中に入ると、確かに全員揃っていた。


インデックス「ぐんは! 遅いんだよ!」


シスター。


原谷「もうご飯ありませんよ」


学生。


ステイル「……前より食べる量が増えてないかい?」


神父。


スキルアウト「パねぇ……」


舎弟。



1人暮らしの部屋に集まるには多すぎる人数が畳の上でちゃぶ台を囲んでいる。

ちなみに、全員原谷の呼び掛けに応じて集まっていた。




241: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 13:05:42.98 ID:KOIcYpbDO


削板「……何してんだ?」

神裂「夕げの時間でしたので」

削板「イヤ、そうじゃなくてだな」

インデックス「ぐんは、くーろんを助けるんでしょ?」

削板「ん? おお、まあな」

原谷「ですよね。ここにいる全員、やる気満々ですよ」

削板「!」

ステイル「ボクも神裂も話は全部聞かせてもらった。なかなかに神の教えを冒涜してる連中じゃないか。腹が立つね」

スキルアウト「全員は入り切らないで代表として俺だけ来たんスけど、横須賀さんの舎弟一同、いつでも動けるッス!」






242: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 13:09:04.27 ID:KOIcYpbDO


削板「……お前ら、気持ちは分かるがな……この人数で一方通行を袋叩きにしてどうすんだ」


決闘の基本は1対1。

この人数全員が一方通行にぶつかった場合、絵面だけ見れば完全にこちらが悪者だ。


神裂「まさか。その闘いはあなたのモノでしょう?」


だが、それは全員理解している。


削板「?」

インデックス「相手はこんな大規模な実験を展開できるくらい大きいんでしょ?
     きっと数で言ったら私たちの方がまだまだ圧倒的に不利なんだよ」


敵は1人ではない。バックに巨大な組織、学園都市そのものがついているのだ。

それも相手にするとなれば、この人数でもまるで足りない。


削板「……まあそれはそうだが」

原谷「ですから、僕たちは別のところで戦います」

削板「別のところ?」

ステイル「聞いた話じゃその一方通行とやらを倒しても実験が止まるわけではないようじゃないか」

削板「………そうだな」


『絶対能力進化実験』は一方通行を主軸に置いているが、倒したからと言って計画が頓挫する訳ではない。

ただでさえ学園都市でもイレギュラーであり、おまけにLevel5の削板が一方通行を倒したところで修正誤差の範囲内だろう。

もっとも、そうなった場合には貝積が黙っていないであろうが。


スキルアウト「だから、その首謀者連中をブッ倒すんス」





243: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 13:13:03.68 ID:KOIcYpbDO


削板「できんのか?」

神裂「まずはどこが敵の本拠地か特定して、何を勝利条件に設定すればいいのかからですが」

インデックス「それはぐんはの仕事なんだよ」

削板「は? 俺の?」

原谷「ぶっちゃけ手がかりがなんもないんです。一方通行を倒すついでに聞いてきてください」


ポカン、と削板は口を開けた。

一瞬間を空け、やがてプッと吹き出した。


削板「はっはっは! なんだそりゃ! ムチャクチャだな!」

ステイル「勝利条件は定まってないが敗北条件は定まってる。これ以上のクローンの死亡。そうだろう?」

削板「おう! その通りだ!」

スキルアウト「だから、そもそも削板さんが一方通行に勝たないと意味ねーんス」

削板「はっはっは! 無理難題ふっかけやがって! いいだろう!
    一方通行をブッ倒すまでは俺の闘い! その後はお前らに任せた!」







244: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 13:14:58.07 ID:KOIcYpbDO


-深夜、第二三学区『樹形図の設計者』情報送受信センター



御坂「嘘………なによ、コレ……」



月のない深夜、お嬢様学校の中でもエリートである御坂美琴は学園都市の最重要施設に不法侵入していた。

『樹形図の設計者』情報送受信センターに忍び込み、あろうことかデータを改竄しようとしている。

不法侵入が見つかった時点でまず退学は免れない。

データの改竄ともなれば学園都市から追放どころか幽閉される可能性もある。

しかし、そんな危険を冒してでも彼女にはやらなければいけないことがあったのだ。

『絶対能力進化実験』の阻止。

その実験の成功の可能性を示した学園都市最高のスーパーコンピューターの結果を改竄することで、実験を根本から崩そうとしたのだ。





245: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 13:19:05.37 ID:KOIcYpbDO


だが、侵入までは上手くいったものの、最後の最後で予想外の事態が待ち受けていた。


御坂「『樹形図の設計者』は、1ヶ月前に破壊されてる……!?」


実験の成功を示したコンピューターは既に破壊されていた。

そして、人1人ロボット1台いない建物の内情を鑑みるに、学園都市上層部はとっくの昔にこの事態を把握している。

つまり、今さら改竄は絶対に不可能。


御坂(謎の高熱源体による地上からの狙撃って、そんな馬鹿げた理由で、こんな……)


画面に映された『樹形図の設計者』の情報には、にわかに信じられない記述が残されていた。

しかし、実際に交信は行われていないのだ。

本当に破壊されたと見るのが妥当だ。


御坂(つまり、これでもう、実験を止める手段が……)





246: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 13:19:53.39 ID:KOIcYpbDO


御坂(……イヤ、違う。そうよ! 明らかにおかしい!)


救いのない現実に飲み込まれそうになった直前、御坂は矛盾点を見つけた。


御坂(お昼にやったハッキング……たしかにあそこには『樹形図の設計者』に演算を依頼した結果を基に実験を修正したって!)


第9983次実験の現状を知ろうとハッキングをかけた時、確実に『樹形図の設計者』は動いていた。

しかし、今画面に映っている情報では1ヶ月前に『樹形図の設計者』は故障している。


御坂(……でも、埃の溜まり具合からしても、1ヶ月前に破壊されて放置されていると見るのが妥当。
    なら……なんであやふやな条件になっても嘯いてまで実験を続けているの?
    もう引き返せないくらい実験は進んでいる? それとも、裏でもっと重要な何かが水面下で進んでいる? もしくは――)






247: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 13:23:24.72 ID:KOIcYpbDO


御坂(……でも、はっきりしたことは……)


確実に存在する謀略に気付いたところで、御坂は冷静になった。

こんな妄想はなんの意味もない。


御坂(こいつらは何があろうと実験を最後までやりとげるつもりだ……。
    たとえ研究所を壊しても、機材を壊しても、データを壊しても、こいつらは……)


実験を止める方法は完全にシャットアウトされた。

虚偽の演算結果を出しても実験を継続するということは、もはや演算結果の信憑性は重要ではない。

例えば『138手で殺害されるはずの【超電磁砲】が1手でやられたため、演算結果に間違いがある』と実演しても誘導することは不可能だ。

虐殺は止まらない。

この街の研究者はたとえ一方通行が実験を拒否しても無理やり最後まで実験を進めるだろう。


御坂(こんなの……どうすれば……)





248: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/03(月) 13:24:22.60 ID:KOIcYpbDO


その時、ふと今朝の男たちが頭をよぎった。


御坂(……ダメよ。アイツらを頼りにしたところでどうしようもない。もう根っこのところでどうしようもないんだから)


もはや誰を頼ったところで事態は好転しない。

そもそも他人を頼る訳にはいかない。

これは自分の不注意が招いた悲劇であり、責任を取るのは自分だ。

無関係な人間を巻き込んでいいはずがない。

しかし、それでも、わずかにでも可能性があるならば。


御坂(……Level5が2人がかりなら……アイツを重傷か何かに追い込めば、しばらく時間は稼げるはず……)


中止は不可能でも中断ならばまだ可能性はある。

時間を稼ぎ、その間に何か対抗策を立てることができれば、あるいは。


御坂(……正直ざっくりしすぎててなんの計画性もないけど……もう時間がない。やるしかない!)


とにかく今は時間がない。

今生きている『妹達』を救うことが先決である。

学園都市最強の前に立ちはだかる覚悟を決め、他人を巻き込む覚悟を決め、御坂はその場を後にした。







259: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 22:47:58.62 ID:mOyVXXPDO


-早朝、第一七学区操車場



そして、運命の日。

実験開始から45分前。

相変わらずの曇り空の下、クローンの少女は実験場にいた。


9983号「……スケジュール通りに絶対座標に到着しました、とミサカは報告します」


万が一にも遅刻がないよう、クローンの少女はかなり早めに実験開始地点にたどり着く。

もうすぐ殺されてしまうにも関わらず、その表情はいつもと変わらない。

しかし。


9983号「……なぜでしょう」


ポツリ、とクローンの少女は呟いた。


9983号「なぜ今、あの面々が心に思い浮かぶのでしょう、とミサカは原因不明の心理状態に困惑します」







260: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 22:49:08.69 ID:mOyVXXPDO


-数分後、第一七学区表通り



ボボボボボボ、と複数のエンジンが回転している音が通りに響いていた。


スキルアウト「……自分ら、ここまでッス」

削板「おう。悪いな」


複数のバイクが通りを封鎖するように並んでいた。

その内の先頭の1台の後部座席から白ランの漢が飛び降りた。

もちろん、その漢はLevel5第七位の削板軍覇。

旭日旗のシャツ、正装である白ラン、気合いを入れるハチマキ。

すべて身につけ、削板軍覇は威風堂々と君臨する。

これらの衣装がこれほど似合う人物は他にいない。


スキルアウト「……気ぃつけてください」

削板「お前らもな」


短く言葉を交わすと複数のバイクが次々に発車していく。

グオオオオオオ! とエンジンの回転数を上げ、削板を置き去りにして行った。





261: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 22:50:11.30 ID:mOyVXXPDO


削板「……うっし」


横須賀の舎弟たちが走り去ったのを見届け、削板は歩き始める。

この道を歩き、小道に入れば操車場にたどり着く。

最強の能力者がクローン虐殺する現場にたどり着く。

そこはこの街の大多数の人間には処刑場に見えるだろう。

クローンだけの処刑場ではなく、自身の処刑場にもなりうる場所だ。

しかし、この漢にとっては戦場となるのだ。

大事なものを守るための、己の根性を守るための戦場に。





262: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 22:51:34.35 ID:mOyVXXPDO


削板「む……?」


だが、その戦場にたどり着く前に1人の少女が立ちはだかった。

有名私立中学の制服を着た、クローンの素となった少女。


御坂「……おはよ、悪いけどちょろっと付き合ってもらうわよ」


Level5の第三位【超電磁砲】御坂美琴である。


削板「……【超電磁砲】の方か。さすがに根性あるな」


ニッ、と削板は嬉しそうに笑う。

目の前の少女は噂通りの、想像通りの根性をしていた。

自分のクローンを守るために立ち上がれる人間など中々いないはずだ。

だが、この少女はこの細い身体には分不相応なほどの巨大で健全かつ逞しい根性でここに立っている。

テレビの前で憧れていた選手を直に見たら圧倒するほどにスゴかったような、そんな嬉しさが削板を満たしていた。





263: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 22:53:33.59 ID:mOyVXXPDO


御坂「ったく、アンタ昨日どこにいたのよ? こちとら一晩中捜してたってのに」

削板「む、そいつはスマン。昨日は仲間の家で作戦会議の後にさっきのスキルアウト達のアジトに泊まっててな」

御坂「あっそ。ところでアイツらなんだったの? ただの送迎ならあんな人数いらないでしょ?」

削板「悪く言えば囮だ。実験のセキュリティとやらが多数いるようだからな。この辺りを走り回ってそいつらを牽制する」

御坂「……そう。本当にこの実験を邪魔してくれるのね」

削板「当たり前だ」

御坂「なら、頼み込む手間が省けたわ。私たちで一方通行を倒す。手ぇ貸してもらうわよ」





264: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 22:55:11.38 ID:mOyVXXPDO


削板「……私……たち?」


【超電磁砲】の頼みを受け、【ナンバーセブン】は首を傾げた。


御坂「ええ。悪いとは思ってる。でもこれしかないの」

削板「なに言ってんだ?」

御坂「え?」

削板「一方通行は俺が倒す。タイマンでな。当然だろ?」


さも当たり前のように削板は語る。

しかし、今度は【ナンバーセブン】の常識に【超電磁砲】が首を傾げた。


御坂「……………タイ、マン? 1対1?」

削板「おう。2対1なんざ卑怯だろ」

御坂「な、なに言ってのよ!? 相手はあの一方通行よ!?
    ベクトル操作なんていう反則的な能力を持ってんのよ!? 卑怯だのなんだの言ってる場合じゃないでしょうが!!」

削板「その能力は一方通行が自力で身につけたもんだろ? 反則でもなんでもねえじゃねえか」

御坂「そうじゃなくて、アンタ、状況分かってんの!? 下手すれば殺される! その辺のゴロツキとのケンカとは訳が違うの!」

削板「だろうな。なんせ相手はLevel5のトップだ。」

御坂「だったら!」

削板「だが、ちゃんとした理性をもった人間だ。
    街中ブッ壊そうと暴走する【魔神】が相手ならまだしも、
    無闇に無関係の人間を巻き込むような戦い方をしねえんなら正々堂々タイマンで闘うべきだ」





265: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 22:57:05.14 ID:mOyVXXPDO


御坂「……じゃあ、アンタは殺されてもいいっていうのね?」

削板「俺はそう簡単に殺される程ヤワじゃねえ。心配いらん」

御坂「……」

削板「お前の妹も死ぬほど根性出して一方通行と闘ってきたんだ。俺だけがタイマンを張らない訳にはいかねえだろ」

御坂「……そう、じゃあ勝手にしなさいよ」

削板「悪いな。お前にも色々あるとは思うが、タイマン張るつもりがねえなら俺から行かせてもらうぞ」

御坂「ただし! もしもアンタが殺されそうになったら、アンタが何を言おうが勝手に助けさせてもらう!
    私のクローンだろうが赤の他人だろうが、もう誰かがアイツに殺されそうになるのを見るのは御免よ!」

削板「……優しいな【超電磁砲】。やっぱりお前は根性ある」

御坂「~~~っ! やっぱり殺されてこい!」

削板「はっはっは! そうはいかん!」







266: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 22:59:32.63 ID:mOyVXXPDO


-数分後、操車場



そして、実験場には


一方通行「よォ、今日の実験場はここでいいンだよな?」


学園都市最強と称される怪物がたどり着いていた。

いつもの黒い衣服に身を包み、肩で風を切りながら歩いている。


9983号「間違いありません。実験開始時刻まであと6分20秒です、とミサカは正確に報告します」


その怪物と相対するようにクローンの少女は砂利の上に立つ。

これから殺されることか分かっているにもかかわらず、その表情はいつもと変わらなかった。


一方通行「よかったよかった。また地味で陰湿で姑息な嫌がらせに踊らされてたらたまったもンじゃねェからよ」

9983号「本実験においてはそのようなことはありませんので、とミサカは被験者を安心させます」

一方通行「そォか? 俺にはどォもそンな風には思えねェンだけどよ」

9983号「……なにか不備が? とミサカは原因究明のために被験者に問いかけます」

一方通行「だってよォ」







267: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:00:16.01 ID:mOyVXXPDO





一方通行「どこの馬鹿だよ、そいつは」



削板「昨日も名乗っただろ。Level5の第七位【ナンバーセブン】削板軍覇だ」







268: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:02:09.20 ID:mOyVXXPDO




9983号「……なぜ、あなたがここに? とミサカは困惑します」

削板「仲間の守りたかったモンを守るため。訳の分からん実験とやらで虐殺をやってる根性なしを止めるためだ」

9983号「いえ、理由ではなくこの座標を知った手段を

一方通行「おーいおい、人聞きの悪いコト言ってくれンなっつの。
      こいつらはただの人形。実験動物。こちとら親切で科学の発展のために実験協力してやってンのに殺人鬼扱いですかァ?」


心底気だるそうに一方通行が反論する。

さすがに3日連続3回連続の邪魔はウザったさしかなかった。


削板「そんな理屈が通じるとでも思ってんのか?」

一方通行「そりゃオマエ、俺だって聖人君子じゃねェンだからよ。
      俺にもメリットがなきゃやってけねェよ。俺はこの実験を通してオマエらとは別の次元に行く。最強のその先、無敵にな」


天に手を掲げ、一方通行は何かを掴むようなポーズを取った。

この実験を完遂させたあとの自分を想像すれば、否応なしに笑いが込み上げてくる。


削板「話が噛み合ってねえな。メリットだのなんだのの話じゃねえ」

一方通行「あァ?」


だが、目の前の時代錯誤の白ランはそんな笑いを吹き飛ばすかのように核心に迫った。


削板「そいつらが人形だっつう理屈が通用するとでも思ってんのか?」





269: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:05:12.61 ID:mOyVXXPDO


一方通行「……訳分かンねェな、オマエ。とりあえず、こっちは忙しいから死ンどけ」


コン、と一方通行が足元の石ころを蹴る。

たが、石ころは蹴られた力の数十倍の速さで削板に迫る。

もはや石ころには激突すれば鉄骨もへし折れるほどのエネルギーが生じていた。


にもかかわらず、

白ランを着た少年はなんのためらいもなく、バシッ! とその石ころを右手で受け止めた。


一方通行「あァ?」


そして、野球の投手のようにそのまま大きく振りかぶる。


削板「ふんっ!」


足を上げ、身体をひねり、ワインドアップから全身を使ってその石ころを投げ返した。

ギュオッ!! と唸りをあげ、石ころは先ほどよりも速く一方通行に向かって突き進む。


一方通行「!」


だが、その石ころは一方通行の顔のすぐそばを通りすぎた。

ズギャン!! と石ころはコンテナを突き破って中まで到達した。

さらには摩擦熱でコンテナの中身に高熱が生じる。

開いた穴から黒煙が立ち上ぼり始めた。


削板「始球式だ。景気づけにはなっただろ」


ギン、と削板は一方通行をにらみつける。


削板「始めんぞ最強。無敵だかなんだか知らねえが、
    弱い女をいたぶり回して得たチカラなんざなんの根性もねえしみったれたチカラだってことを教えてやる!!」


ドッパァン!! と赤青黄の煙が盛大に立ち上ぼった。



一方通行「……ギャハッ、最ッ高に調子乗ってやがンなァ第七位風情が!!
      そンなにブッ殺されてェならお望みどォりドタマかち割って脳味噌引きずり出してバイオ風にデコってやンよォ!!」


ドゴォン!! と、黒煙を上げていたコンテナが爆発した。

ただでさえ曇天で天気が悪かったのだが、さらに赤青黄、そして黒の煙が混ざり合い、辺りは一時的に隔離された空間になった。







270: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:06:27.11 ID:mOyVXXPDO




9983号「………実験開始まであと2分13秒あるのですが、とミサカはいつの間にか空気になっていたことを嘆きます」

御坂「いいから黙っておとなしくしてろ!」


少し離れたところではコンテナの上に同じ姿形をした少女たちがいた。

Level5の第三位である少女が、自分のクローンが戦闘に巻き込まれないように救出していたのだ。

すでにあの2人は自分の相手にしか意識が向いていなかったので救出自体は簡単だった。

Level5同士の正面衝突。それはつまり軍隊同士がぶつかり合う戦争。

そのど真ん中に立っていたのではまず助からない。


9983号「………やはりミサカには理解できません、とミサカは心情を吐露します」

御坂「私もよ。あんな真っ正面から闘うなんて……」

9983号「なぜ、そこまでして闘うのでしょう」

御坂「……許せないんでしょ。こんな実験が。アンタが殺されるのが。私だってそうよ」

9983号「………それが………あれが、根性というものですか」

御坂「そうかもね」







271: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:09:45.86 ID:mOyVXXPDO


削板「『スゴい……」


ダッ!! と削板が地面を蹴る。

たったそれだけで、ほんの一瞬で一方通行の懐に入っていた。


一方通行「!」

削板「パンチ』!!」


ボッ!! と削板の拳が繰り出される。

科学では解明できない不可視の巨大な力。

それがLevel5第一位にたたき込まれた。





272: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:10:42.10 ID:mOyVXXPDO


はずだったのだが。

ボカァン!! と一方通行の右後ろの方向にあるコンテナがなぜか吹き飛んだ。


削板「……な?」

一方通行「……?」


思わず2人は動きを止める。

互いに驚愕していた。

理由は互いに同じだ。

能力が正確に相手に伝わってない。


一方通行「っ! らァ!」


自身に拳をぶつける形で固まっていた相手を一方通行が服を掴んで引き剥がした。


削板「むおっ!」


華奢な腕で無造作に振り払われただけなのに、削板の身体は軽々と吹き飛ぶ。

しかし、それだけだった。

ハチマキを巻いた少年は易々と着地し、すぐに体勢を立て直した。





273: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:13:32.71 ID:mOyVXXPDO


一方通行(あンだァ? 今の気持ち悪ィ感覚は。なンで反射が機能しねェ?)

削板(なんだ? 今の妙な感触は。『スゴいパンチ』が反らされたのか?)


慎重に相手の出方を伺いながら、両者は考えをまとめていく。


一方通行(だが、ベクトル操作自体は普通に作用した……。まるっきり能力が効かねェって訳じゃなさそォだな)

削板(そう言えば【超電磁砲】が能力はベクトル操作って言ってたな……。今のはそのせいか)


2人がほぼ同時に自分なりの解釈をまとめたところで、一方通行が口を開いた。


一方通行「……あァ、思い出した。第七位ってなァ、わけわかンねェから第七位だったンだよな?」

削板「おう、それがどうした」

一方通行「ッハハァ、面白ェなァ。っつゥことはだ。
      この街でも分かンねェモンが分かっちまったら俺はいよいよLevel6になっちまうンじゃねェのか!?」

削板「……ナメんなよ、最強。俺の能力は根性なしに理解できるほど簡単なモンじゃねえんだ」

一方通行「上等ォ、なンせLevel6の壁だ。そンくらい高くねェとつまンねェもンなァ!!」


ダン! と今度は一方通行の方が地面を蹴った。

ベクトルを操れる者の突進。その速度は削板にも劣らない。





274: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:15:08.42 ID:mOyVXXPDO


削板「もういっちょ!」


再び削板は不可視の力を繰り出す。

しかし、その力は一方通行に触れたとたんに軌道を変え、またもや後ろへと受け流された。


一方通行「あっはギャハァ! いいねいいねェ! もっと撃ってこいよ! ちゃンと解析してやっからよォ!」


白髪の超能力者が一気に距離を詰め、そのまま身体を捻って裏拳を繰り出す。

加速で得たエネルギーも遠心力で得たエネルギーもすべて腕全体に集中させる。


削板「なんの!」


その拳をまともには受けず、腕に腕を下からぶつける形で軌道を反らす。

カチ上げられた拳は腰を落とした削板の頭上を通過していった。


一方通行「おォ!? なンだこりゃ!? テメェ身体にも面白そォなモンまとってンじゃねェか!」

削板「ニヤついてんじゃねえ! 気色わりぃな!」


腰を落としたまま、さらに一方通行の腹部に正拳突きを放つ。

しかし、その力も後ろに反らされてしまう。


一方通行「こンな愉快なモン見つけたのに黙ってられっかっつゥの! ぜってェ解析してやンよォ!」


今度は一方通行が削板目がけて膝蹴りを繰り出す。

それを削板が手のひらで受け、一瞬で一方通行の太ももの下に肩を入れ、強引に投げ飛ばす。

ただの人間なら触れることすらできないはずだが、一方通行は削板の能力を原理を解析するためにあえて触れさせ、投げられた。

だが、ベクトルを操れる一方通行は空中で反転し、投げられたベクトルをも反転し、再び接近戦に持ち込む。

ミサイルのように迫りくる一方通行に向けてカウンターの要領で正拳突きを繰り出すも、チカラは正確に届かない。






275: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:16:55.60 ID:mOyVXXPDO


攻撃を繰り出す、攻撃を受け流す、攻撃を繰り出す、受け流す、繰り出す、受け流す、繰り出す……

Level5と称される怪物同士の争いはみるみる内に辺りを焦土に変えていく。

砂利は吹き飛び、コンテナは爆散し、色とりどりの煙が巻き上がる。

戦局はやや一方通行に有利だった。

防御を完全に思考と行動から外せる一方通行とすべての動きに対応しなければいけない削板では消耗の度合いが違う。

おまけに一方通行は完全にダメージを受け流せても削板は全体の何割かは食らってしまう。

闘いが長引くほど確実に削板が不利になっていく。

この流れを変えなければ削板に勝ち目はない。

学園都市最強のチカラか、学園都市でも不可思議なチカラか。






276: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:18:47.11 ID:mOyVXXPDO



だが、先に戦局を動かしたのは


一方通行「こォ、か!?」


バシイ! と一方通行の回し蹴りが削板の則頭部を捉えた。


削板「ぐお!?」


いつもなら堪えられたはずの蹴りが削板の脳を揺さ振る。

それと同時に削板の視界も揺れる。視界が瞬く。


一方通行「あっはァ!! よォやくコツが掴めてきたぜ!! コレか!! この演算式か!!」


ほぼすべての砂利石が吹き飛び、黒い土がむき出しになった地面の上で一方通行は歓喜の声を上げた


一方通行「だが、まァだ完全には解析できてねェな。どっかで何かが違ェンだよなァ……」


今の回し蹴りが完全に通っていれば、削板の身体は回転しながら吹き飛んでいた。

そんなベクトルをたたき込んだはずだった。

しかし、削板の身体は吹き飛ぶどころかぐらついただけだ。


削板「クソ……」

一方通行「そもそも数字の演算じゃねェのか? 既存の四則演算で解析できるモンじゃねェとか……?
      クカカカ、そォか! そォかそォか! 数字じゃ表せねェ! 科学じゃ表せねェ! つまりその先!
      科学の限界たるLevel5を超えた先にあるもの! つまりLevel6! あァア、テンション上がってきたァ!!」


狂ったように一方通行は吠える。

いつまで経っても掴めないチカラへの足掛かりが見えてきた。

いつまで経っても届かないチカラへの足掛かりが見えてきた。





277: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:21:01.33 ID:mOyVXXPDO


一方通行「なァおい! それオマエ自身も持て余してンだろ!? じゃなきゃ第七位なわけねェもンなァ!」

削板「……」

一方通行「つゥことはだ!! テメェのこの能力を完全完璧に解析しちまったらホントに無敵になれンじゃねェか!?
     クァァアアア!! ヤベェよおい! 完全にハイになってンぜ俺今! もっと楽しもォぜ格下ァ! ショボ暮れた顔してンな!」


華奢な身体からは絶対に出せないはずの速度の拳が削板に襲い掛かる。

その拳をバックステップで躱すも、一方通行の攻撃は一撃では終わらない。

そのまま突進して連続で拳を繰り出す。

ガードを取るという行為を完全に無視できるこの超能力者は攻めることしか知らない。


一方通行「逃げンなァ! テメェの能力さえ解析すりゃァ残りの10019体の『妹達』を相手しなくて済むンだ!
      プチプチプチプチ雑魚潰す作業はもォこりごりなンだよ! 逃げ足はえェとこまで再現してンじゃねェぞボーナスモンスター!」


荒れ狂う暴力の津波が削板を襲う。

その攻撃を躱し、受け流し、退けていく。

しかし、このままではジリ貧だ。先ほどまでのやり合いでそれは分かってる。

何せベクトルを操れる一方通行には受けが通じない。

例えば、蹴りにおいて体重とチカラが一番乗ってる箇所が足の甲だったりスネだったり腿だったりする。

これでは受けは悪手だ。序盤の膝蹴りの受けは上手くいったが、能力を解析されつつあるのではリスクが高すぎる。

防御の1手が潰されただけでかなり選択肢が狭まる。





278: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:22:05.25 ID:mOyVXXPDO


削板(クソ! 遠距離に持ち込もうとしてもへばりついてきやがる! 最強を名乗るだけはあるな!)


もはや戦局は完全に一方通行に傾いていた。

このまま行けば削板はやがて手詰まりだ。能力を解析されて為す術もなく倒される。

解析されないように遠距離に持ち込もうとしても、一方通行は解析のために少しでも長く削板に触れようとしている。

引き離すことはできない。


削板(根性が足りてねえぞ削板軍覇!! こんな根性なしに遅れを取ってんじゃねえ!!)


心の中で自らに喝を入れる。

しかし、そうしている間にも相手の猛攻は続いている。

具体的な策を考える暇など与えてくれはしないだろう。

おまけにこの状況が長引けば長引くほどどんどん一方通行に有利になっていく。


一方通行「どォしたどォしたァ!! さっきまでの自信たっぷりな表情はどこ行ったよ!?」


最強の能力者は攻撃の手を緩めない。

このままでは―――







279: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:22:44.20 ID:mOyVXXPDO






削板(ああ、答えは出てんじゃねえか)


天啓だった。


削板(足りてねえんじゃねえか。根性が!!)


この状況を打破する方策が見えた。









280: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:24:03.05 ID:mOyVXXPDO


一方通行「っつ!?」


ドッギャァァアン!! と一方通行の後方で先ほどまでとは比べ物にならないほどの大爆発が起きた。

それと同時に一方通行の腹部に鈍い痛みが走った。


一方通行「……ア?」


猛攻が止まった。

最強の能力者は驚愕していた。

確かに、今、腹部に鈍い痛みが。


一方通行「な、ン……?」


首を下に向けると、自分の身体に正拳突きを放った男がいた。


削板「おう最強。さっきまでの楽しそうな表情はどうした」

一方通行「テメ」


ブアアアア!! と上空の煙が吹き飛んだ。

最強の能力者はそれを目視していた。

先ほどまで下を向いていたはずが、なぜか上を向いていた。


一方通行「な……」


直後に額に痛み。そしてそれは首にも続き、少しだけ頭がクラクラした。


一方通行「………!?」


経験したことのない異常事態に一方通行は一気に距離を取る。

ベクトルを操作してひとっ飛びで後ろに10mほど下がった。


削板「はっはっはっはっは!! どうだ最強!!」

一方通行「なンだテメェ……一体なにしやがった!!」

削板「分かんねえか? やっぱ根性なしには分かんねえか」


胸を張り、顔を上げ、意気揚々としたその表情で、削板軍覇は言い放った。


削板「簡単な話だ。今までよりもっと根性を入れた」





281: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:25:31.47 ID:mOyVXXPDO



一方通行「……は?」


削板「お前が何回も戦闘を繰り返して成長したように、俺も数々の根性ある死闘を繰り返して成長した。
   だから俺は! 今までよりもっと根性を入れて攻撃することを可能にした! 今までよりも1段階上の必殺技! 名付けて!!」


ビシィ! と削板は正拳突きの型を取った。


削板「『超スゴいパンチ』だぁ!!」


ドッパアアアアン!! と削板の背後で3色の煙が盛大に吹き荒れた。




一方通行「………なンだそりゃァァァア!!」






282: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:26:51.20 ID:mOyVXXPDO


結局のところ、削板軍覇は削板軍覇なのだ。

根性一択。根性ゴリ押し。

彼にしかできない、彼だけの攻略法。

しかし、言ってることはあながち間違っていない。

人工石である学園都市の能力者であれ、天然石である姫神や削板の【原石】であれ、大枠では一緒だ。

そして、本気で集中して演算を繰り返すことで能力が向上することは学園都市が証明している。

手っ取り早い例を上げるならこの実験もそれに則っているし、横須賀が出ていた地下闘技場もそうだ。

そして、削板は一方通行ほどの戦闘回数はないにせよ、密度の濃い戦闘を繰り返してきた。

横須賀との決闘の日々、人命救助という名の大乱闘。

対プロの魔術師、対世界に20人といない【聖人】、対暴走する【魔神】、対怒れる錬金術師。

そのどれもが密度の濃い、死闘とも呼べる闘いの連続だった。

で、あれば。

もう1段階上の領域に達することは決して不思議なことではない。





283: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:27:53.52 ID:mOyVXXPDO


削板「さぁいくぞ最強!」

一方通行「クソッタレがァ! そいつも一緒に解析しちまえばいいンだろォがァ!」


再び削板が距離を詰める。

それを一方通行が迎え討つ。


削板「『超! スゴいパンチ』!!」


ボッッッ!! と音速を遥かに超える拳が繰り出される。


一方通行「ガッ……!」


ズギャアアアア!! と数トンあるはずのコンテナが5、6個まとめて吹き飛ぶ。

さらに、音速を超えたせいで発生したソニックムーブは黒い土を吹き飛ばす。

そして、一方通行にはダメージだけでなく。


一方通行「ウソだろ……」


絶望が襲っていた。

基本的に削板は先ほどと変わったチカラは使ってないのだ。

チカラが変化したのではなく、チカラの規模が爆発的に増加した。

その理由で一方通行にダメージがいくということは。


一方通行「俺の演算能力のキャパを超えた分が身体に来てるってのか……!?」


もともと解析出来ていなかったベクトルをたたき込まれていたために、全てを正確には観測できていなかった。

だが、それでも先ほどまでは反らせていたはずだ。

それが出来ていないということは



284: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:29:28.99 ID:mOyVXXPDO


削板「だからよ、最強」

一方通行「!」

削板「テメェみたいな根性なしに扱えるモンじゃねえんだ!!」


バッキィ!!! と遠くの鉄柱がへし折れ、ベキベキベキと倒壊していく。

アッパー気味に放った右フックが一方通行の横っ面に炸裂した。


一方通行「ガッ……っそがァァ!!」


最強の能力者が反撃に出る。

自身がやられた箇所へ、削板の横っ面目がけて右フックを放つ。

が、削板はそれを紙一重でスウェーで躱す。


削板「ふん!!」


大振りのフックでがら空きになった一方通行の顔面目がけ、おもいっきり右の拳をたたき込む。


一方通行「ギ……!」


ドドドドドドド!! とすでに巻き上がっていたレールが吹き飛ばされ、地面を転がっていく。

顔面に拳をたたき込まれた一方通行からは鼻血が出ていた。


一方通行「くっ……」


たまらず一方通行は再び距離を取る。

このままでは飲み込まれる。


削板「防御と回避の仕方も分かんねえのか! 如何に格下ばかり相手にしてたのかが分かるな!」


形勢不利になったとたんに飛び退く一方通行を見て、削板は半ば呆れながら半ば怒りながら声をぶつけた。


一方通行「……」

削板「ケンカのイロハも分かんねえヤツが学園都市最強だと?
    笑わせんな!! テメェより強いヤツもテメェより根性あるヤツもゴロゴロいるぞ!!」

一方通行「……」

削板「つまりお前は能力の序列がトップってだけだ。最強の名を冠するにはまだまだだな!」






285: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:30:34.35 ID:mOyVXXPDO


プツッ、と一方通行の中で奇妙な音がした。


一方通行「……クカカ」

削板「ん?」

一方通行「クカケキコキカカクカケカキケコカカァァァア!!」


グォオオオオオオオオ!! と空気が唸りを上げて吹き荒れる。


削板「むおっ!?」


その風は強風どころでは表せない速度となり、石や土を巻き上げていく。

速度はぐんぐん上がっていき、やがて重たいものまでも巻き上げいく。

破壊された鉄柱の破片、レールのボルト、コンテナの一部、そして


一方通行「吹き飛べ格下ァ!!」


ブワッ!! と削板の身体が宙に舞い上がる。

如何にパワーがあろうと重さは人並みの体重だ。

大きすぎるチカラには逆らえない。


削板「うおわああああああああああ!?」


巻き上がる竜巻に飲み込まれ、削板の身体は土や瓦礫と一緒に回転していく。

まるで身動きが取れずに流されるがままの状態だ。


一方通行「ケンカのイロハだァ!? ンなモン分かンなくてもテメェをミンチにする方法なンざ山ほどあンだよォ!!」


すべての物質に対してベクトルは存在している。風の流れにも当然ながら存在している。

ならば、もはや体内の精密なベクトル操作すら可能になったこの超能力者にとって大気を操るなど朝飯前だ。





286: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:31:46.14 ID:mOyVXXPDO


一方通行「くたばりやがれェ!!」


上空に伸びていた竜巻が傾く。

そして、竜巻に巻き込まれて振り回されていた削板の身体が遠心力をたっぷり得て、積み上げられたコンテナの山へと突っ込んでいく。

グァッシャアアア!! とコンテナの中へ削板はたたき込まれた。

激突の衝撃で積み上げられたコンテナはベコベコに凹んだ上に風穴が空いていた。

常人なら全身骨折に内臓破裂とショックで即死する威力だ。


一方通行「まだまだァ! テメェはこンなンじゃくたばンねェだろ!! 跡形もなく消してやンよォ!!」


最強の能力者が両手を掲げる。

風の流れを制御できるようになった一方通行がやること、それは







287: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:32:34.31 ID:mOyVXXPDO




御坂「………なによ、アレ………」


少し離れたところで、磁力でクローンと一緒にコンテナにしがみついていた少女は愕然とした。

ようやく竜巻が消えたと思ったら光り輝くまがまがしい物体が出てきた。

【電撃使い】の最高位に君臨する彼女はすぐにそれが何か分かった。


御坂「プラズマ……って、あんなの、ここら一帯全部吹き飛ぶわよ!?」

9983号「……それでも一方通行だけは生き残れるから関係ないのでしょう、とミサカは冷静に分析します」

御坂「あんなの、どうすれば……」







288: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:33:39.06 ID:mOyVXXPDO




一方通行「圧縮、圧縮、空気を圧縮! こいつをぶつけりゃさすがのテメェも塵1つ残ンねェだろ! 操車場ごと消してやるよ!」


学園都市中のすべての大気の流れを操り、一方通行は笑う。

今や削板の能力を解析したいという願望よりも削板にナメられた怒りが彼を支配していた。


一方通行「どォしたおい! 散々上からモノ言ってたくせにもォ息してねェのかァ!?
      守りてェモンがどォこォカッコつけておきながらくたばりやがったか!? ダサすぎンぜ格下ァ!!」


積み上げられたコンテナにたたき込まれて見えなくなっている削板に向けて罵声を浴びせるも返事はない。

この程度でくたばっているとは思えないが、気絶くらいはしているかもしれない。


一方通行「それならそれでかまわねェよ! 世にも珍しいプラズマ葬で成仏させてやっから感謝しろ!」


もはやプラズマは7割方完成している。

あと数十秒もすれば操車場は学園都市から消失する。







289: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:35:06.56 ID:mOyVXXPDO




御坂「……そうよ、アレは空気の流れを制御して作りだしてる。それなら、その風を乱せば……」


少し離れた場所では、御坂が必死に解決策を模索していた。


9983号「どうやって乱すのですか? とミサカは率直な疑問を投げかけます」

御坂「それは……そう、風車! アンタ達が総出で風車を動かせば、大気の流れを乱すことくらい」

9983号「ミサカ達がそれをすると思いますか?」

御坂「え……」

9983号「『妹達』はこの実験のために生み出されてこの実験のために死んでいく存在です。
     そんな『妹達』が実験を妨害するような真似をすると思いますか? とミサカは再度率直な疑問を投げかけます」

御坂「……アンタ……本気で言ってんの……?」

9983号「……」

御坂「あのデカい人だって、あの女の人だって、今闘ってるアイツだって、みんなアンタのために闘ってんじゃない!!」

9983号「…………」

御坂「生まれた理由がどうとか、死んでいく理由がどうとか、今はそんなのどうでもいい!!
    今ここにいるアンタは! これだけ色んな人に守られてなんとも思わないの!?
    あれだけ必死に闘ってる人間を見ても! アンタの心にはなんにも響かないの!?」

9983号「……ミサカは……」

御坂「……分かってる。私にこんなことを言う資格なんてない。
    それでも、必死になってアンタを救おうとしてるアイツを助けたいと思うなら手を貸して!」

9983号「ミサカは……ミサカは!」







290: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:35:42.45 ID:mOyVXXPDO




???「おい!!! 【超電磁砲】!!!」


遠くから雷鳴のような怒号が聞こえた。

思わず御坂は身体を硬直させる。

声のした方向に顔を向け、目を見開く。

なぜなら、その声は


削板「人のタイマンに手ぇ出すんじゃねえ!! 引っ込んでろ!!」


どうしようもないほどの根性バカの声だったからだ。







291: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:37:10.58 ID:mOyVXXPDO


ドッッカアアアアン!!! とコンテナの山が火山のように噴火する。

だが、上がる煙はもちろん黒ではなく赤青黄の3色。

そして、立ち上った煙は巻き戻しのように噴火口に戻っていく。

否、曲がらず腐らず正面から正々堂々と立ち向かう漢の拳へと吸い込まれていく!


削板「『超!! すごい!! パンチ』!!!!」


ズドッッッ!!!! と不可視のチカラがプラズマの中を貫いた。

そして、それに遅れてついていく形でプラズマが変形していく。

ブォワッ!! と光り輝く球体が真ん中から貫かれ、花が完全に開花するように広がった。


一方通行「な……!?」


やがて形を維持できなくなったプラズマは霧散していく。

巨大な花びらが霧になっていく様子を見て、一方通行の背筋に悪寒が走った。


一方通行(ちょっと待て! 反らしてるから気付かねェだけで、実際にはあンなデタラメなモンぶつけられてンのか!?)


ゾッ、と寒気がした。

たしかに解析できない物質が大気中を高速で移動すれば演算が破綻するのは自明の理だ。

しかし、それにしたってあの破壊のされ方はない。

もしも、あんなものがまともに当たったら



292: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:38:25.83 ID:mOyVXXPDO


削板「覚悟はいいか、最強」

一方通行「!?」


いつの間にか、白ランを着た学生は目の前にいた。

そして、あの、3色の拳が


削板「これが、根性だ!」


バキィ! と一方通行の顎を削板の拳が正確に捉えた。


一方通行「グァッ!?」


ふらり、ふらり、と千鳥足のように一方通行の身体が揺れる。

そして、どしゃり とその場で崩れ落ちた。


削板「……まともにケンカもしたことねえヤツに打撃の耐性なんてあるわけねえよな」


今まであらゆる負荷を跳ね返してきた最強に、人体の急所である顎を殴られて耐えるほどの耐性はない。

かつて経験したことのない脳の揺れが一方通行を襲い、そのまま気を失った。


削板「寝てろ。最強」


ザッ、と土の上に横たわる第一位を尻目に、第七位は背を向けた。







293: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:40:44.68 ID:mOyVXXPDO




御坂「……勝った、の?」

9983号「……信じられません、とミサカは目の前の現状を受け入れられずに茫然自失となります」


少し離れた場所に置かれていたコンテナの上で一部始終を見ていた2人は動けずにいた。

最強を謳う超能力者が負けたという事実が信じられずにいた。

むしろ、そのこと自体は望んでいたはずなのだが、それにしてもこんな形で叶うとは思ってもいなかった。


削板「……おう、そこにいたか【超電磁砲】たち」


あちこちボロボロになった漢がこちらに向かって歩きながら笑いかけている。

白ランはところどころ破け、顔は少し腫れあがっていた。


削板「わりと近くにいたんだな。もっと遠くに避難してると思ったが……やっぱ頭打って感覚狂ってたか」

御坂「……アンタが殺されそうになったら助けに行くって言ったでしょ。近くにいなきゃ戦況が分かんないじゃない」

削板「はっはっは、たしかにな」

9983号「……」

削板「さて、そこのクローン。名前は?」

9983号「ミサカに名前はありません。検体番号なら9983号です、とミサカは10031号の例に倣って名乗ります」

削板「そうか。お前に聞きたいんだ



294: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:41:33.35 ID:mOyVXXPDO


バキィ!! と削板の後頭部に何かが激突した。


削板「ガ!?」


いきなりの後ろからの衝撃に削板は前のめりに倒れる。

ドサッ、とボロボロになった身体がうつ伏せに地面に落ちた。


御坂「え……」


激突した物体はガチガチ固められた鉄の固まりだった。

もっと正確に言えば、削板が先ほど吹き飛ばしたコンテナの破片を固めたものだった。

なぜ、こんなものが急に飛んできたのか。

答えは簡単だった。



一方通行「おいおい……こンなンでケリついたと思ってンじゃねェよ、格下ァ!」



学園都市最強の能力者がその能力を使ったからだ。






295: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:43:32.69 ID:mOyVXXPDO


ふらり、ふらり、と覚束ない足取りで一方通行は歩みを進める。


一方通行「あァクソが……たかだか格下ごときの拳でフラつきやがる……。
      核撃っても大丈夫っつゥキャッチコピーは撤回しねェとかもな……」


確実に削板の拳はダメージを与えている。

しかし、それでも、学園都市最強の能力者は立ち上がる。


削板「……ってえな」


むくり、と学園都市最強の根性を持つ漢も立ち上がる。

身体の向きを180度変え、再び少し離れたところにいる一方通行と向き直る。

激突された後頭部に手を当てると、ドロリとした血が手に付着していた。


削板「……学園都市最強を名乗るヤツが後ろから不意討ちすんのか?」

一方通行「あァ? テメェが勝手に背中向けたンだろォが。気絶させた方の勝ちならさっき俺が勝ってたぜ?」

削板「言うじゃねえか」


ザッ、と2人は再び相対する。

2人の間に再び緊張が走る。


削板「1つだけ聞かせろ。お前、なんで立ち上がれるんだ? 俺の拳は根性なしに耐え切れるほどヤワじゃねえぞ」

一方通行「ハッ、決まってンだろォが。俺が最強だからだよ」

削板「……分からねえな。捨てたがってる最強って称号がお前を支えてんのか? その矜持がお前を立ち上がらせるのか?」

一方通行「当たり前だろォが。だってよォ、オマエ」



一方通行「俺が最強じゃなくなったら『妹達』はどうなンだよ」






296: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:45:10.53 ID:mOyVXXPDO


削板「……なに?」


思わず削板は聞き返した。

そして、最強を謳う能力者は続ける。


一方通行「俺が最強じゃなくなったら今生きてる『妹達』はどォなる?
      この実験が潰れればカネ食うだけのアイツらは速攻で処分される」


既に生産されている『妹達』の人数は10019体。

彼女らを1日養うだけでも莫大なコストがかかる。

用がなくなったら処分されることは火を見るよりも明らかだ。


一方通行「俺が最強じゃなくなったら既に死ンだ『妹達』はどォなる?
      この実験が潰れれば今まで死ンでいった『妹達』は報われずに無駄死にで終わる」


今まで殺されてきた9981体の『妹達』は一方通行を無敵のLevel6に押し上げるために死んでいった。

この実験がなくなったら『妹達』の死はなんの価値もなくなってしまう。


一方通行「この実験はなァ、とうの昔に一方通行なンだよ。
      それをなンにも知らねェ格下の偽善者どもが、まともな正論掲げて邪魔してンじゃねェぞコラァァァァアアア!!!!」


ドッ!!!!! と大気が揺れた。

原因は明白だ。

今、一方通行の背中からはとんでもないものが生えていた。





297: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:45:41.43 ID:mOyVXXPDO


御坂「なに、アレ……」


巨大な漆黒の翼が天に向かって伸びていた。

それは絶望そのものだった。

もはやベクトルをどうこうして作り出せる代物ではなかった。


御坂「あんなの、どうしたら………」


身体が凍っていく。

ケタ違いのチカラを前にして、身体が動かなくなる。





298: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:47:17.30 ID:mOyVXXPDO


ドッッッパアアアン!!! と大気が爆発した。

原因は明白だった。


御坂「!?」


漆黒の翼が御坂の視界から消えていた。

代わりに、赤青黄の3色の煙が御坂の視界を埋め尽くしていた。


削板「フザけやがって……」


3色の煙を爆発させた漢は眉間にシワを寄せ、憤怒の表情を浮かべていた。


削板「そこまで分かっていながら、そこまで根性がありながら、どうしてお前はそんな答えしか出せねえんだ!!!」


学園都市最強の能力者は根性がある。それは分かった。

しかし、これは違う。

救うために殺すという矛盾。

これはかつてステイルや神裂と敵対した時に感じたものと同じだ。

その根性故に間違った方向に凝り固まってしまった考え。

歪んでしまった、強大でありながらいびつな根性。


削板「止める!!」


爆発した煙は再び削板の所へ戻っていく。

否、削板の拳に、全身に、削板を纏うように圧縮されて包んでいく。


削板「てめえの根性はここで止める!! もうそれ以上間違った方向にはすすませねえぞ最強!!」


かつて【魔神】を力技で止めたチカラが削板の根性に呼応して溢れだす。

世界最大の【原石】たるそのチカラがより強く、より高密度で削板の身体を包んでいく。





299: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:48:04.80 ID:mOyVXXPDO




もはやどちらが正しいかなどではない。


意地と意地のぶつかり合い。


根性と根性のぶつかり合い。


言葉で解決できない以上、漢は身体でぶつかるしかない。



一方通行「pqxgmaj殺wagtjw」


削板「おおおおおおおおおお!!」









300: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:48:51.21 ID:mOyVXXPDO








翼と拳が、激突した。











301: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:49:33.78 ID:mOyVXXPDO













.



302: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:50:29.47 ID:mOyVXXPDO











一方通行(………ァ………?)


青空が広がっていた。

音はなかった。

すべてが吹き飛んでいた。


一方通行(………俺ァ………)


しばらくの間、一方通行は空を眺めていた。

身体がひどく重かった。

頭の回転がひどく鈍かった。





303: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:51:20.14 ID:mOyVXXPDO





一方通行(……そうだ、俺は……!)


飛んでいた記憶が戻ってくる。

そして、現状が把握できてくる。


一方通行(地面に横たわって……? なら、アイツは……)


ググッ、と頭を持ち上げる。

しかし身体が言うことを聞かない。

それでも、なんとか、頭だけでも。





304: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:52:25.04 ID:mOyVXXPDO




一方通行「……………!」


なんとか頭を持ち上げ、辺りを見渡すと、いた。

アイツだ。立っている。


削板「………」


旭日旗のシャツを着た敵が、仁王立ちしている。

あれだけの激突を経て、まだ立っている。







305: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:53:09.13 ID:mOyVXXPDO


一方通行(ク、ソが……!)


すでに限界を迎えている身体にムチを入れる。

動かない身体を無理やり動かす。


一方通行(立て……! 立たねェ、と……!)


もはや演算などできやしない。

だが、そんなものがなくとも、立たなければ―――







306: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:54:18.09 ID:mOyVXXPDO


ザッ、と学園都市最強の男は再び立ち上がった。


一方通行「は、はハはハハ……!」


立ち上がれた。当然だ。

誰であろう、学園都市最強の一方通行だ。

第七位ごときには負けない。負けるはずがない。

自分のためにも、『妹達』のためにも、負けていいはずがない。


削板「………」


向こうも動きはない。

立っているだけで精一杯のはずだ。



一方通行「ギ……ヒャ……」


少しずつ、一歩ずつ、仁王立ちをしているバカに近づく。

もはや能力は使えないだろうが、条件は向こうも同じだ。

どんな形だろうがあと1発入れれば沈む。

俺を誰だと思っている。

学園都市最強のLevel5の第一位、一方通行だ。

格下の第七位ごとき、どうこうできないはずがない。


削板「………」


もう手の届く範囲に入った。

あのイラつく顔面に、あと1発入れれば。


一方通行「終わりだ……。格下……!」







307: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:55:38.81 ID:mOyVXXPDO






ぺちん、と絶望の音が聞こえた。



一方通行(……ああ……)



それは、能力抜きの自分の拳が相手に当たった音だった。



一方通行(俺って、こンなに弱かったのか……)



それを合図に仁王立ちをしていた敵が動いた。



削板「終わりだ。最強」



バキィ! と自分の顔に拳が突き刺さる音がした。


能力ばかりを重視していた人間が、能力と身体と根性を鍛え続けた人間に勝てるはずがなかった。






308: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:57:09.73 ID:mOyVXXPDO


ドサァッ! と黒い地面の上に仰向けに一方通行は倒れた。


一方通行「ゲホッ! ガッ! ……ハァッ、ハァ……」


殴り飛ばされた顔と倒れた時に打った背中に激痛が走った。

もはや無意識で常時発動している反射すら機能していなかった。


一方通行(………負けた……)


そして、全部終わってしまった。


一方通行(……完敗だ。ぐゥの音も出ねェ……)


もはや指1本動かせない。

演算1つできない。

今度という今度こそ立ち上がれなかった。


一方通行(………空………)


だが、だと言うのに。

なぜかどこか清々しくて。


一方通行(………こンな、青かったっけなァ………)


なんとなく、嫌な気持ちではなかった。








309: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:58:14.16 ID:mOyVXXPDO





ザッ、と誰かが側に来た。


一方通行「ア……?」


それは、見飽きるほど見てきた顔だった。

その顔が神妙な面持ちで自分を見下ろしている。

恐らく、こんな表情ができるのは


一方通行「……オリジナルか」

御坂「………」




ギャハ、と一方通行は笑った。


一方通行「殺れ」

御坂「………」

一方通行「クソッタレの人生だ。クソッタレに殺されンがお似合いだ」

御坂「……」

一方通行「殺り方が分かンねェか? 簡単だ。テメェが作り出せる全てのベクトルを全力で俺にぶつけろ」

御坂「……」

一方通行「単一のベクトルを反射すンなら訳ねェが、複数同時には今の俺にはできねェよ。今なら簡単に殺れるぜ?」

御坂「……」


スッ、と御坂は一方通行の上に馬乗りになった。

そして。







310: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/04(火) 23:59:29.80 ID:mOyVXXPDO




バッチィン! と強烈なビンタを一方通行の頬に炸裂させた。


一方通行「……ってェ」


バッチィン! と、もう1度炸裂させた。


一方通行「……っ……。あのなァ、いくらなンでもビンタで人殺せるか?」

御坂「反射」

一方通行「あァ?」

御坂「できてないじゃないのよ」

一方通行「……」

御坂「もしもアンタを殺す権利が誰かにあるとしたら、それは『妹達』よ。私がアンタに直接なにかされた訳じゃない」

一方通行「……そォかよ」

御坂「だから、今日のところはこれで勘弁してあげる。一生許す気なんてないけどね」

一方通行「……どの口がほざきやがる、元凶が」

御坂「アンタにだけは言われたくないわ」








311: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 00:00:42.27 ID:WPlk6E3DO



そんな状況を目の当たりにしながらも決して慌てず、削板が2人に近寄った。

いつも白ランはどこかに吹っ飛んでいた。


削板「……おい、一方通行。お前の負けだ。俺の質問に答えてもらうぞ」

一方通行「……文章がトンでンぞ馬鹿」

削板「この実験はどこを潰せば止まる? どっかに親玉がいんだろ?」

一方通行「……俺が知るかよ」

削板「なに?」

一方通行「俺は進行表通りに動いてきただけだ。細かい利権配分だの主導権だのには興味がなかった。
      心当たりがあンのはいくつかあるが、そこを潰せば実験が止まると保証できるよォな所は知らねェよ」

御坂「……」

削板「ぬぅ……まいったな」







312: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 00:01:52.52 ID:WPlk6E3DO


9983号「あの……よろしければお教えしましょうか? とミサカはおずおずと話しかけます」

一方通行「!」

御坂「!」

削板「……お前が教えてくれんのか?」

9983号「……被験者、いえ、一方通行の考えも、お姉さまの心も、
     あなたの根性も、今なら少し分かる気がします、とミサカは自身の心境の変化を吐露します」


一方通行「……」

御坂「アンタ……」

削板「……はっはっは。やっぱりお前は立派な人間だよ」

9983号「……そうでしょうか、とミサカは少々困惑します」

削板「ああ。じゃあちょっと待ってくれ。いま仲間に連絡を……ん? ケータイどこいった?」

一方通行「……」

削板「おお、あったあった。……つながらんな」

御坂「……それどう見ても『ケータイだったもの』なんだけど」

削板「ん? ケータイはケータイだろ?」

9983号「……やはりあなたも限界を超えているのでは? とミサカは真顔でボケている少年を心配します」

削板「バカ言え。……この程度で俺、が……うお?」


ぐらり、と削板が身体のバランスを失い、地面に吸い込まれそうになった。





313: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 00:02:31.00 ID:WPlk6E3DO


しかし、倒れる前に誰かがその身体を支えた。


???「わとと、重い重いぐんは!」


それは、彼の部屋に居候しているシスターだった。

『完全記憶能力』持つ、銀髪の少女。


削板「ん……? インデックス……?」

インデックス「大丈夫? ぐんは」


『イギリス清教』の【魔導図書館】インデックスだった。






314: 以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします 2014/03/05(水) 00:03:40.98 ID:WPlk6E3DO


削板「……なんでここに?」

インデックス「あれだけドッカンドッカンやっといてそれはないんだよ。
      かおりとすているが『人払い』を張ってなかったら今ごろぐんはは護送車で牢屋行きかも」

削板「……はっは、スマンな」

インデックス「ううん、ぐんはがちゃんと根性を貫けたならそれでいいんだよ」

削板「そうか。……インデックス」

インデックス「うん?」

削板「後でみんなに言っといてくれ。ちょっと寝てから行くから、あとは、任せた……」


ガクッ、と削板は完全にインデックスに身体を預けた。

かと思えば、一気に豪快な寝息を立て始めた。


インデックス「……お疲れさま、ぐんは。次は私たちの番なんだよ」













元スレ
SS速報VIP:完・とある根性の旧約再編