SS速報VIP:勇者「メリークリスマス!」
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1: <僧侶ルート> 2011/12/27(火) 03:29:57.51 ID:INM5vSnZo

【教会】

勇者「僧侶、メリークリスマス!」

僧侶♀「あ……勇者様っ」

勇者「あ。っとすまない、まだ仕事中だったか」

僧侶♀「は、はい。今日は特別な聖夜ですので……遅くまでかかりそうです」

勇者「そ、そっか。……も、もし良かったら、僧侶と一緒に過ごせたらとか思ってたんだけど」

僧侶♀「えっ? わ、私と?」

勇者「あ、も、もちろん僧侶が嫌じゃなければだけど」

僧侶♀「い、いえそんな、嫌なんてとんでもないです!」

勇者「えっ?」

僧侶♀「あ、いえその……」



2: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 03:30:51.57 ID:INM5vSnZo

シスター「ふふっ、構いませんよ僧侶。後のことは私に任せておきなさい」

僧侶♀「シスター。でもまだ作業が……」

シスター「あなたはこれまで不満一つ漏らさず、真摯に神に仕えてきました」

シスター「今日だって、いつ命を落とすかもしれない長旅から久々に帰ってきたというのに――」

シスター「冷え込みの厳しい中、遅くまでこの教会に尽くしてくれました」

シスター「これでわずかばかりの楽しみすらないというなら、かえって罰が当たるというものです」

僧侶♀「シスター……」

勇者「僧侶。お前最近ちょっと根詰め過ぎだっただろ? た、たまにはいいんじゃないか?」

僧侶♀「勇者様……」

シスター「行ってきなさい。もし納得できなければ、後で取り戻せばいいだけのこと。ね?」

僧侶♀「は、はい。で、では、お言葉に甘えさせて頂くとします」

勇者「いいのか、シスター。肉体労働なら俺も喜んで手伝うけど――」

シスター「大丈夫です、お気遣いありがとうございます。その代わり僧侶をよろしくお願いしますね」

僧侶♀「シ、シスター!」

シスター「ふふっ」



3: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 03:31:35.88 ID:INM5vSnZo

勇者「えっと、行く前にちょっと」

シスター「?」

勇者「まだお祈りをしてなかったから。こんな形でちょっと何だけど……」

シスター「まあ」

勇者は 教壇にひざまずき いのりをささげた―― ▼



シスター「勇者様は敬虔な方なのですね」

僧侶♀「はい。勇者様は長旅の中でも、神への信仰だけは常々重んじているのです」

シスター「そんな方がそばにいれば、なんと心強いことでしょう」

僧侶♀「そうなんです! それに勇者様は優しくて、たくましくて、頭も良くて――」

シスター「……」

僧侶♀「あ……」

シスター「その続きは?」

僧侶♀「も、もう、シスター!」

シスター「ふふっ」




4: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 03:32:54.34 ID:INM5vSnZo

勇者「よし、それじゃあ行こうか、僧侶」

僧侶♀「は、はいっ」

シスター「お気をつけて」

勇者「シスターもな。今日もすごく寒いから、身体に障りないように」

シスター「お気遣い頂きありがとうございます。勇者様は本当にお優しいのですね」

僧侶♀「あ、あの、お一人で大丈夫ですか?」

シスター「好きで一人になっているのです。これでも多くの男性に言い寄られたのですよ?」

僧侶♀「そ、そういう意味じゃ……」

シスター「そういえば僧侶、あなたも村の若者に人気がありましたね」

僧侶♀「ちょ、ちょっとシスター!」

勇者「そ、そうなのか?」

シスター「ええ。でも僧侶には、すでに想い人が――」

僧侶♀「行きましょう勇者様! 夜が更けちゃいます!」

勇者「う、うわっ お、おい――」

シスター「ふふっ。いってらっしゃい」



シスター「……あの二人に、神のご加護がありますように……」




5: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 03:33:51.93 ID:INM5vSnZo

【町】

勇者「さ、さすがに外は寒いな……」

僧侶♀「ええ。北方の真冬ですものね」

勇者「僧侶はそんな薄着で寒くないか?」

僧侶♀「私はこの土地で育ったので平気です。寒さには強いんですよ」

勇者「それならいいけど」

僧侶♀「」クチュン

勇者「こら」

僧侶♀「ご、ごめんなさいっ。で、でも本当に大丈夫ですから!」クチュン

勇者「もしかして風邪気味なんじゃないのか?」

僧侶♀「ち、違います! ちょっと今日は思ったより寒いだけで……」クチュン

勇者「うーんやっぱりまずいみたいだな。今日はもうナシにするか」

僧侶♀「えっ?」

勇者「無理に連れ回して悪かった。教会に戻ろう」

僧侶♀「嫌です! あ、そ、その、私なら大丈夫です! 大丈夫ですから……!」

勇者「そ、そうか? 無理だけはするなよ?」




6: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 03:35:26.17 ID:INM5vSnZo

勇者「で、僧侶は久しぶりの羽伸ばしな訳だけど……どこか行きたい場所はあるか?」

僧侶♀「わ、私はどこでも……勇者様と一緒なら……」

勇者「えっ? すまない、よく聞こえなかった」

僧侶♀「い、いえ! 特に行きたい場所というのは、ないです」

勇者「そっか。じゃあちょっと町を出て歩くけど、いいか?」

僧侶♀「は、はい」

勇者「すまないな。ルーラは町や村の入り口にしか飛べないから……」

僧侶♀「私、大丈夫です。歩きますよっ」

勇者「寒くないか? 大丈夫か?」

僧侶♀「だ、だいじょ……」クチュン

勇者「……」

僧侶♀「あ、あの、本当に大丈夫ですから、どうぞお気になさらず……」

勇者「……急ごう。手、取っていいか」

僧侶♀「えっ? あっ……」

勇者「少し小走りで行く。きつかったらすぐ言ってくれ」




7: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 03:36:27.05 ID:INM5vSnZo

【外】

勇者は トヘロスをとなえた ▼

辺りから まものの 気配が きえた ▼



勇者「大丈夫か?」

僧侶♀「は、はい」

勇者「何かあったらすぐ教えてくれ。まだもうちょっと歩くからな」

僧侶♀「あ、あの……どちらまで……」

勇者「高いところだよ」

僧侶♀「高いところ?」

勇者「まぁ、着いてみれば分かるさ」

僧侶♀「は、はい……」

勇者「……手、冷たいな」

僧侶♀「す、すみません、しばらく暖炉に当たってなかったから……」

勇者「俺の手はあったかいだろ? メラを覚えているからな」

僧侶♀「は、はいっ。あったかいです……とても……」




8: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 03:37:07.52 ID:INM5vSnZo

【丘】

僧侶♀「ハァ……ハァ……」

勇者「ご、ごめんな、疲れさせて」

僧侶♀「い、いいえ。平気です」

勇者「もう……ほら。着いたぞ」

僧侶♀「えっ?」

僧侶♀「! こ、これは……」

勇者「すごいだろ? ここだと村が一望できるんだ」

勇者「クリスマスで大体の家に明かりが点いてるから、こんな夜景を拝めるんだよ」

僧侶♀「……きれい……」

勇者「……」

勇者「あれ。こんなところに宝箱があるぞ」

僧侶♀「えっ?」

勇者「僧侶、手が冷たいだろうけど、ちょっと開けてみてくれ」

僧侶♀「? ? は、はい……」




9: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 03:39:08.88 ID:INM5vSnZo


僧侶は たからばこを あけた! ▼

中には マフラーが入っていた! ▼

中には 手袋が入っていた! ▼

中には ぼうしが入っていた! ▼

僧侶♀「!! こ、これ……」

勇者「おお。ちょうどいいのが入っていたな」

勇者「きっと日頃がんばっている僧侶に、神様がご褒美をくれたんだ」

僧侶♀「……」

勇者「せっかくだから貰っておこう。ほら僧侶、装備装備」

僧侶♀「…………勇者様……」

勇者「ん?」

僧侶♀「勇者様……私……」


僧侶♀「……私、こんなに幸せでいいのでしょうか?」

勇者「ふっ。急に何を言い出すんだ」

僧侶♀「世の中には恵まれない方もたくさんいるのに、今夜だってどこかで震えてるかもしれないのに……」

僧侶♀「聖夜に勇者様と一緒に過ごせて……暖かいものを頂いて……」

僧侶♀「私……なんだか申し訳ないです……」

勇者「……僧侶は本当に、根っこから謙虚なんだな」




10: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 03:40:11.54 ID:INM5vSnZo


勇者「でも、僧侶には幸せになる資格があると思う」

僧侶♀「そ、そんなこと……」

勇者「僧侶の言う貧しい人々は、長旅の辛さを知っているのか?」

僧侶♀「え?」

勇者「魔物たちとの命を懸けた戦いに加わったり、危険な未踏のダンジョンを歩き回ったりするのか?」

勇者「……それらを経験していたとして、久々に帰ってきた故郷で、なおも働きづめでいられるのか?」

僧侶♀「……」

勇者「僧侶は頑張っているよ。こんな見返りじゃとても足りないくらいに」

勇者「誰にも文句は言わせない。勇者の名にかけて、俺が保証する」

僧侶♀「勇者様……」

勇者「お、おい、なんで泣き出すんだ」

僧侶♀「あ、ありが……」

僧侶♀「ありがとう……ございます……」

勇者「うん。どういたしまして」

僧侶♀「勇者様……勇者様……っ」




11: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 03:41:41.37 ID:INM5vSnZo

勇者「あ……雪だ。ほら僧侶、見てみろよ。雪が降ってきた」

僧侶♀「……あ……」

勇者「村一面に降ってるぞ。すごいもんだな」

僧侶♀「……きれい……」

勇者「っといけない。これ以上冷えこんだらまずいな」

勇者「ほら、宝箱に入ってたアイテム、装備して」

僧侶♀「は、はい……」

僧侶は マフラー てぶくろ ぼうしを そうびした ▼

僧侶♀「……あったかい……」

勇者「だろ? 一番いいのを見繕って……い、いや! 違う違う、これは神様からの贈り物で!」

僧侶♀「ふふっ」

勇者「こ、こら笑うな」

僧侶♀「勇者様……ありがとうございます」



僧侶♀「私いま、きっと世界で一番幸せです」


僧侶ルート END



12: <盗賊ルート> 2011/12/27(火) 03:43:04.79 ID:INM5vSnZo

【村】

勇者「盗賊、メリークリスマス!」

盗賊♀「ん……別にあたしは興味ないよ」

勇者「つれないなー。一緒にどっか行こうぜー」

盗賊♀「無理。仕事の依頼が入っているんだ」

勇者「えっ、今日は空いているんじゃなかったのか?」

盗賊♀「気持ち悪いな。なんで人のスケジュールを知っている」

勇者「そ、それはパーティーの長として、メンバーの状況把握は欠かさずにだなー」

盗賊♀「そうか、殊勝なことだ。だがま、どのみち勇者とつるむ気はないさ。そゆことで」

勇者「待て! その仕事の依頼、俺も同行させてもらう!」

盗賊♀「何を急に。ついてこなくていい、気持ちだけは受け取っておく」

勇者「いいや、ついていく。決めた」

盗賊♀「はぁ。まぁはっきり言うとだな、勇者は足手まといに」

勇者「にはならない! 約束する!」

盗賊♀「……頼むよ。今回の依頼は失敗するわけにはいかないんだ」

勇者「俺からも頼むよ。今夜はひとりぼっちで過ごしたくないんだ……」

盗賊♀「うっ。切実だな」




13: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 03:43:49.80 ID:INM5vSnZo


盗賊♀「時間の無駄っぷりに負けてしまった」

勇者「よろしくなっ」

盗賊♀「はぁ……まぁ人手があった方が効率はいいけど」

勇者「どういう依頼なんだ?」

盗賊♀「まあ、そのうち分かるさ。とりあえず北東の塔に潜りたい」

勇者「? あそこでなにをするんだ?」

盗賊♀「いつか勇者がやってたのと同じやつさ」

勇者「ん? 何かやったっけ?」

盗賊♀「まあ、そのうち分かるさ。で、厚かましいのは承知でルーラを頼みたいんだが」

勇者「いいけど」


勇者はルーラをとなえた! ▼


【北東の塔】

勇者「到着」

盗賊♀「よし始めるか。おどるほうせき狩り」

勇者「ゴールド稼ぎかよ!」




14: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 03:45:20.49 ID:INM5vSnZo

【北東の塔】

おどるほうせきをたおした! ▼

おどるほうせきをたおした! ▼

おどるほうせきはにげだした! ▼

勇者「待ちゃーがれえ!」

盗賊♀「うん、いい感じの収穫だ」

勇者「残念逃がしてしまった。って何やってるんだ?」

盗賊♀「見ての通り宝石あさりだよ。お、これもいいな」

勇者「どうせ全部安いゴールドに替えちゃうんだから、別にわざわざ分けなくても」

盗賊♀「今回はそういう依頼なんだよ」

勇者「こんなありふれた宝石を? 変な依頼だな」

盗賊♀「勇者、これ」ポイッ

勇者「キャッチ! ん、やっぱり安物宝石だ。でもいいツヤしてるな」

盗賊♀「それをピカピカに磨いてくれ。あとヒモも結び付けてくれ」

勇者「なんだそれ面倒くさいな!」

盗賊♀「つべこべ言わない」

勇者「くそう分かったよ!」




15: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 03:48:39.64 ID:INM5vSnZo

勇者「この。この」キュッキュッ

盗賊♀「よし、分別が終わった。あとはこいつらも頼む」ドザー

勇者「ええええ多い!」

盗賊♀「本当は半分でよかったのに、勇者が張り切りまくったからな」

勇者「だだだだっていつもの稼ぎかと」

盗賊♀「せっかくだから取れた分だけ頼むよ。おっと文句は言わせない」

盗賊♀「足手まといにはならないと、自分で約束したんだからな」

勇者「ピャー」

盗賊♀「お。なかなか綺麗に磨けてるじゃないか。ヒモも器用につけてるな」

勇者「いくら磨いたってアクセサリーっぽくしたって、なんにも価値は変わんないぞ」

盗賊♀「そうでもないさ。見てみなよ。ほら――光ってるだろ?」

勇者「? 当たり前だろ、磨いたんだから」

盗賊♀「それがいいのさ」

勇者「??」




16: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 03:50:06.91 ID:INM5vSnZo


――

勇者「お、終わった……俺クリスマスに何やってるんだろう……」

盗賊♀「じゃ、町まで戻ろう。すまないがルーラを頼む」

勇者「残念、MP切れだ」

盗賊♀「冗談なら後でゆっくり聞くから急いでくれ」

勇者「い、いや本当なんだ。今の宝石磨きで精神力(MP)を使い果たしてしまったんだ」

盗賊♀「本当にルーラができないのか?」

勇者「うん。できない」

盗賊♀「そうか。ならば仕方がない」

盗賊♀「よっ、と」

盗賊は 塔から とびおりた! ▼



勇者「えええちょ、ちょっと待ってくれ、ここからじゃ俺には高すぎる!」

  盗賊♀「悪いが一人で帰ってくれ! 急がないと就寝時間になってしまうからな!」

勇者「ま、待ってくれ! 俺いまMPも回復アイテムもないんだよお!」

  盗賊♀「今日は助かった、礼を言う! じゃあまた後でな!」

勇者「おーい! お前は魔物が出ても絶対逃げられるけど、俺は足遅いから……」

勇者「ああもうあんなとこに!」




17: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 03:50:54.77 ID:INM5vSnZo


【町外れ】

――

盗賊♀「待たせたな」

女の子「あっおねえちゃん!」

男の子「おねえちゃんがもどってきた!」

盗賊♀「みんな寒い中よく待ってくれた」

男の子「雪であそんでたからヘーキ!」

女の子「それでおねえちゃん、『くりすますつりー』ってなにー?」

男の子「じゅんびするってなにー?」

盗賊♀「うん……君たちの家には、ツリーを飾る余裕がないからね。準備ならたったいま終わったよ」

女の子「そのおふくろ、どうするのー?」

盗賊♀「まぁ見てな。今からあの木に取り付けるから」

男の子「?」

盗賊は めにもとまらぬはやさで 木にとびうつった! ▼

つぎつぎと ほうせきが 枝に くくりつけられていく――! ▼




18: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 03:52:10.76 ID:INM5vSnZo


男の子「うわあ……」

女の子「きれい……」

盗賊♀「よし、いっちょうあがり!」ザザッ

男の子「すごいすごーい!」

女の子「『くりすますつりー』ってきれい!」

男の子「ぴかぴかの、きらきらだー!」

盗賊♀「だろう? うん、喜んでもらえてよかった」

女の子「おねえちゃんありがとう!」

男の子「ありがとう!」

盗賊♀「どういたしまして。でもしばらくしたら、片付けるからね」

女の子「ええーどうして!?」

男の子「ずーっととっておこうよ!」

盗賊♀「だーめ。一夜限りの魔法はこれでおしまい」

盗賊♀「ま、来年までパパとママに内緒にしたら、もっと綺麗なのを作ってあげるから、さ」

女の子「はあい!」

男の子「ぜったいだよ!」




19: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 03:53:23.35 ID:INM5vSnZo

――

盗賊♀「よし、回収終わり」

女の子「つぎのくりすます、ぜったいきてね!」

男の子「おれ、ぜったいパパとママにないしょにする!」

盗賊♀「よーしいい子だ。じゃ、手を出してごらん」

女の子「? あっ……木にかざってあったいし!」

男の子「あっいいな、おれにもちょうだい!」

盗賊♀「一人一個ずつだよ。いいかい? よーく聞いて」

盗賊♀「これから先、どうしても困ったことがあったら、これをパパかママに渡すんだ」

盗賊♀「絶対にあたしから貰ったなんて言っちゃだめ。ひろった、って言うんだよ」

女の子「はーい!」

男の子「うーもっとほしい!」

盗賊♀「ダメだ。これは確かに綺麗だけど、たくさんあると人の心を汚してしまうんだ」

女の子「きれいなのによごしちゃうの?」

盗賊♀「そうだ。だから欲張っちゃいけない。多くを願っちゃいけない」

盗賊♀「絶対に、あたしみたいな盗賊を増やしてはいけない……いいね? お姉さんとの約束だよ」

男の子「よくわかんないけど、はあい!」

女の子「はあい!」

盗賊♀「うん。いい子だ……」




20: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 03:55:31.16 ID:INM5vSnZo


――

盗賊♀「ふぅ、終わった。……さて……いるんだろう、勇者」

勇者「ばればればれか」

盗賊♀「遅かったじゃないか。一応の心配はしていたよ」

勇者「ま、まーな。あの後ちょっと内職を続けていたり」

盗賊♀「?」

勇者「ほらっ」ポイッ

盗賊♀「おっと。……? これは?」

勇者「6色の宝石を数珠繋ぎにした、俺の特製アクセサリーだ!」

盗賊♀「……これ、全部球形……しかもオーブと同じカラーリングじゃないか」

盗賊♀「この小ささのものを揃えるのは苦労したろう。それで、これが?」

勇者「やるよ! お前に!」

盗賊♀「へ? あたしに?」

勇者「クリスマスプレゼントだよ!」

盗賊♀「……んっ?」




21: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/27(火) 03:58:35.41 ID:INM5vSnZo

勇者「ま、まぁ休日の依頼だなんて、こんなことだろうと思ってはいたけどな!」

勇者「労いの意味もこめて、パーティーの長たる俺が、一肌脱いだわけだ!」

勇者「まあ、別に、そういう気持ち悪いとか思ったんなら、捨て置いて構わんけどな!」

盗賊♀「……ふふん。とんでもない。これはありがたく受け取っておく」

勇者「そ、そうか!」

盗賊♀「勇者もなかなか粋なことするじゃないか。見直したよ」

勇者「だろう? もっと見直せ!」

盗賊♀「大事にしておく。ありがとう」

勇者「……な……なんだ、思ってた反応とだいぶ違うな、盗賊のくせに」

盗賊♀「盗賊だからこそさ。あたしは金の価値もこのアクセサリーの価値も、相応に分かってるつもりさ」

勇者「そ、そうか。俺にはよく分からんが」

盗賊♀「さて。それじゃ、どこに行く?」

勇者「え?」

盗賊♀「一人で過ごすのは嫌なんだろ? ま、この後あたしも予定はないし」

盗賊♀「プレゼント分ぐらいは付き合ってやってもいいさ」

勇者「ほ、本当か!」

盗賊♀「ああ。まあ、あれだ」



盗賊♀「メリークリスマス、勇者。ってね」

盗賊ルート END



27: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/29(木) 22:53:33.79 ID:0FIfZ3TBo

【竹林】

勇者「武道家、メリークリスマス!」

武道家♀「あっ勇者さん! 押忍!」

勇者「また一人で鍛錬か?」

武道家♀「押忍! まだまだ自分は功夫不足ッスから!」

勇者「でも今日はクリスマスだぞ? ちょっとくらい骨休めしてもいいんじゃないか?」

武道家♀「えとあの勇者さん、『くりすます』って何でしょうか?」

勇者「えっお前知らないのか?」

武道家♀「す、すみません!」

勇者「いや謝らなくていいけど、まぁこんな東方じゃ流行らないのも無理はないか」

武道家♀「西洋の行事か何かッスか?」

勇者「ああ。何でも、どっかの偉い神様が生まれた日なんだそうだ」

武道家♀「はあ」

勇者「だからさ、武道家。今日は鍛えるのは休んで、今から二人でぶらつかないか?」

武道家♀「えっ? じ、自分とッスか?」

勇者「ああ。ちょいと西洋にあやかるつもりで、クリスマス気分を味わおうぜ!」




28: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/29(木) 22:55:59.68 ID:0FIfZ3TBo

【農村】

勇者「といっても……村の皆はいつもどおり、武芸に野良仕事に酒盛りか」

武道家♀「押忍。その、『くりすます』というものは、皆聞いたことがないと思うッス」

勇者「うーんロケーション・ギャップ。参ったな」

武道家♀「そもそも、『くりすます』にはどういうことをやるもんなんスか?」

勇者「そりゃあ若い男女二人がニャンニャンしてだなー」

武道家♀「えっ?」

勇者「い、いや、じゃなかった。サンタクロースが子供に贈り物をする日だ」

武道家♀「さんたくろうす? そんな魔物は聞いたことも……」

勇者「魔物じゃなくてれっきとした人間らしいけど、誰もみたことがないのさ」

武道家♀「えっ、そうなんスか」

勇者「だから子供たちの親がサンタの代わりになる風潮がある」

勇者「子供たちが寝ている間に、枕元にプレゼントを置いていくんだよ」

武道家♀「えーっそうなんスか!!」

勇者「……なんか今、生まれかけだった純粋無垢な夢をぶち壊しにしてしまった気がする」




29: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/29(木) 22:57:21.80 ID:0FIfZ3TBo

勇者「とまあクリスマスの概要はそのくらいだけど……」

武道家♀「なるほど、『くりすます』がどういうものか大体分かったッス!」

勇者「えっ、男女のニャンニャンまで?」

武道家♀「えっ?」

勇者「えっ?」

武道家♀「それでいいことを思いついたッス!」

勇者「何を?」

武道家♀「自分たちがその、さんたくろうすに代わってプレゼントを渡せばいいッス!」

勇者「渡すって誰に?」

武道家♀「この村の子供たちにッス!」

勇者「なるほど。それはいいけど……せっかくのクリスマスだぞ?」

武道家♀「? クリスマスだからこそッスよね?」

勇者「うん? うん……あれ……?」

武道家♀「じゃあさっそく子供たちにどんなプレゼントがいいか聞いてくるッス!」

勇者「あちょっとおい! 簡単に正体がバレちゃダメなんだって! おおーい」




30: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/29(木) 22:58:33.13 ID:0FIfZ3TBo

子供A「みかんがいい!」

子供B「カキが欲しい!」

子供C「冬イチゴが食べたい!」

武道家♀「だそうッス!」

勇者「何かもうサンタクロースのイメージが……」

武道家♀「? 子供が欲しいものをあげるのが『さんたくろうす』なんスよね?」

勇者「しかも全部くだもの……クリスマスプレゼントとしてはアリなのか……?」

武道家♀「なんせこんな村ッスからね。一にも二にも空腹しのぎの食べものッス」

勇者「この村は農業で食ってるんだろ? フルーツの一つや二つは取り扱ってないのか?」

武道家♀「とんでもないッス! 果物なんて贅沢、祝祭のときぐらいしか味わえないッス!」

勇者「でも、確かこの近くの山には、結構フルーツが実ってたような」

武道家♀「フフフ、本題に近づいたッスね! この付近の山々には魔物がうじゃうじゃいるッス!」

勇者「なるほどそういうことか」

武道家♀「押忍! さすが勇者さん、察しの通りッス!」

武道家♀「いっちょう日頃の鍛錬の成果を、村の子たちに振舞っちゃいましょう!」




31: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/29(木) 23:00:14.97 ID:0FIfZ3TBo

【山】

勇者「お。この木はもしや。→しらべる」

勇者は カキをてにいれた ▼

勇者「みっけ。おーい武道家、カキ見っけたぞー」

武道家♀「チェストーッ!」

武道家の 攻撃! ▼
かいしんの いちげき! ▼
まものを たおした! ▼

武道家♀「おおおお押-っ忍!!」

勇者「ずいぶんと張り切ってるなー」

武道家♀「押忍! 勇者さんと二人きりの機会なんてそうないスから!」

勇者「えっ?」

武道家♀「あああいえっ、ちが、違うッス! その! くりすますッスから!」

勇者「……クリスマスに俺と二人きりなのが?」

武道家♀「あっ、違、ちが、ちが……」

勇者「……うん。血が……魔物の返り血がついてる……サンタクロースみたいだ……」

武道家♀「えっ、そ、そうッスか? えへへ」

勇者「その笑顔Kゎわい」




32: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/29(木) 23:01:53.37 ID:0FIfZ3TBo


――

勇者「結構集まったな。あとはなんだっけ?」

武道家♀「えっと……リンゴに栗にさといもに……長ネギにしいたけ、湯豆腐にあと……」

勇者「ちょちょちょっと待て、いつからフルーツ以外のものが入った」

武道家♀「まあせっかくだから、村のおじいちゃんやおばあちゃんのも聞いてきたッス」

勇者「サンタクロースを装っていたらいつの間にか食糧庫になってたぜ!」

武道家♀「食糧庫と呼ぶにはカゴ盛りが足りないッス!」

勇者「大体、山のダンジョンに畑の農作物なんてあるわけないだろ」

武道家♀「大体あるッス」

勇者「なぜだ。謎だ」

武道家♀「勇者さんはこの中でどれが一番好きっすか?」

勇者「ん……ぶどうか、な」

武道家♀「えっ!?」

勇者「こんな季節だってのに、結構色づいてるし……」

武道家♀「えっ、えっ、も、もう勇者さんってば冗談が過ぎるッス!」ドゴッ

勇者「グレーップ! な、なぜだ!!」




33: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/29(木) 23:04:15.91 ID:0FIfZ3TBo


勇者「じゃあ武道家はどんな食べ物が好きなんだよ」

武道家♀「押忍! 自分は自然の幸であれば、なんでも美味しく頂けるッス!」

勇者「へー好き嫌いないのか。じゃあこのカゴの中だと?」

武道家♀「ずばり全部ッス! どれも美味しいッスよ!」

勇者「元気いっぱいだな」

武道家♀「押忍! 元気とこの拳だけが取り柄ッス!」

勇者「そうでもないけどな」

武道家♀「えっ? わ、ちょ、ちょっと勇者さん!」

勇者は 武道家を ひきよせた! ▼
勇者は べホイミを となえた! ▼
武道家の キズが 回復した! ▼

武道家♀「あ……ありがとうございますッス……」

勇者「ほら。そうやって時々見せる、もじもじの照れ照れっぷり」

武道家♀「か、からかわないで欲しいッス! こんなの取り柄でも何でも……」

勇者「赤くなったりアタフタしたり武道家は面白いなー」

武道家♀「も、もう勇者さんのばか!」ドゴッ

勇者「的確な急所ごぼっ」




34: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/29(木) 23:06:02.63 ID:0FIfZ3TBo

【村】

武道家♀「みんなーただいま戻ったッスよー!」

子供たち「「わーっ」」

勇者「子供たちのむれがあらわれた! すごい数だ!」

武道家♀「はいはい、押すんじゃないッスよ。はい、みかん。はい、カキはこれ」

子供C「冬イチゴはー?」

子供D「リンゴはー?」

爺「さといもが欲しいですじゃ」

武道家♀「順番ッス! あ、コラ! 勝手に手伸ばすと鉄拳が飛ぶッスよ!」

子供&爺「ひいーっ」

勇者「……ま。こんな形のクリスマスもありかな」

子供A「おにいちゃんも手伝ってくれたんだよね? ありがとー」

勇者「ん、どういたしまして。――ああそうだ。メリークリスマス」

子供B「なにそれー」

勇者「今日だけ皆が楽しくなれる呪文さ。メリー・クリスマス」

子供C「めりーくりすます!」

子供D「へへ、めりーくりすます!」

爺「メリぃ、栗!」

勇者「ところでじいさんアンタいつから混じっていたんだ」



35: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/29(木) 23:06:53.64 ID:0FIfZ3TBo

――

武道家♀「はーっ、やっと終わったッス!」

勇者「お疲れ様。あんだけカゴに盛ってたのに、もう空っぽか」

武道家♀「まぁ最後には余った分も配り回ったッスからねぇ」

勇者「え、それじゃ武道家の分は?」

武道家♀「えっ? あー……うっかり忘れてたッス」

勇者「調達してる間も、何も食べてなかっただろ?」

武道家♀「ま、いいんス。自分は旅の中で、いつもおいしいもの食べてるッスから」

勇者「いつも美味しいものって……ここ最近はオンボロ宿の三文定食ばっかだったぞ」

武道家♀「勇者さんと一緒なら、なんでもご馳走ッスよ」

勇者「そうか?」

武道家♀「押忍」

勇者「俺と一緒だと?」

武道家♀「あ!? ちちちがち違うッス! これはそのそういう意味じゃなくって!!」

勇者「そっか。俺と一緒だと何でもご馳走っていうんなら……」




36: SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) 2011/12/29(木) 23:07:51.96 ID:0FIfZ3TBo

勇者は ふくろの中身を開けた! ▼
なんとふくろには たくさんの食べ物が はいっていた! ▼

武道家♀「えっ……こ、これは……」

勇者「別に珍しくもなんともないけど、さっき山で取れたやつだよ」

武道家♀「い、いつの間に……」

勇者「主に武道家が魔物と戦っているときに、ちょっとな」

武道家♀「これ……全部の種類が一コずつ入ってるッス……」

勇者「武道家がさっきのカゴの中身、全部好きっていってたからな。全部用意した」

武道家♀「あ、あのこれ……」

勇者「俺からのプレゼントだ。これで今日が終わったら、武道家の働き損だからな」

武道家♀「え……あ……」

武道家♀「ありがとうございますッス!!」

勇者「どういたしまして。こいつは次の宿で一緒に食べるとしよう。それとも今食べるか?」

武道家♀「……えへへへ」

勇者「な、なんだよ。顔真っ赤でヘラヘラするなよ」

武道家♀「し、してないッス!」

勇者「表情変わってないって」

武道家♀「そ、そんなことないッス! あ、そだ! えっと」



武道家♀「メリークリスマス、勇者さん!!」

武道家ルート END




39: <商人ルート> 2012/01/02(月) 03:48:39.03 ID:z5w80SwBo

【町】

勇者「商人、メリークリスマス!」

商人♀「あっ勇者さん、どうもどうも」

勇者「……右に行ったり左に来たり、バタバタしてるな」

商人♀「ええ、この時期は書き入れ時ですからね」

商人♀「入荷した商品はすぐ売れるんです。がぜん商魂がみなぎってくるってもんですよ」

勇者「せっかくお里に帰ってきたってのに、のっけから実家の手伝いか」

商人♀「いえいえ逆です、実家での商売のために、旅先で色んな商材を仕入れてきたんです」

勇者「でも、なにもクリスマスにそんなに働かなくても……」

商人♀「クリスマスだからこそ、お客さんの財布のヒモが緩くなるんです」

商人♀「商売はタイミングが命っ。機を見定められない商人は一流とはいえませんよ」

勇者「……今日は丸一日忙しいのか?」

商人♀「見ての通りです。あっごめんなさい、ちょっとそこどいててください」

勇者「……一応ダメもとできいてみるけど、もし今日時間が空いたら……」

商人♀「はは。もし空き時間が売られてるなら、値段次第で私が買い占めたいぐらいですよ」

勇者「だよなあ」




40: SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) 2012/01/02(月) 03:49:27.90 ID:z5w80SwBo

商人♀「……えーっと予算はこれだけだったから、粗利は何割を目安にしようかな……」

商人♀「……この価格設定で全部売り上げられたとして、えーっとそろばんそろばん」

勇者「ほい」

商人♀「あ、ありがとうございます」

勇者「何か手伝おうか?」

商人♀「えっ? いやーいいですよ。勇者さんは魔王との決戦に備えてゆっくり休んでてください」

商人♀「なんならいいリラックスグッズ紹介しましょうか? もちろん有料ですけど」

勇者「商人だってまた旅についてくるんだろ。しっかり休まないと」

商人♀「大丈夫です、再出発の際は、決してパーティーには迷惑はかけませんから」

勇者「そういうことを言いたいんじゃなくて……」

商人♀「よし、今日はこの売価で勝負してみようかな。あとは値札を作るだけっと」

勇者「それぐらいなら俺も手伝えそうだな。ほら、インクはここ」

商人♀「いえいえ、いいですよう。私一人で切り盛りできますから」

勇者「いやだって、さすがに何もしないで突っ立ってたら邪魔になるのくらい分かるし」

商人♀「邪魔だなんてとんでもない、勇者さんと話すのはいい気分転換になります」

勇者「えっ、こんな忙しいのに?」

商人♀「ええまあ。えーとこれは210ゴールドっと」

勇者「すごいな……商人の頭の中どうなってるんだろう……」



41: SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) 2012/01/02(月) 03:50:08.63 ID:z5w80SwBo

勇者「店の名前は『極南東の雑貨屋』か……なんか迫力あるな」

商人♀「まあこの地方が世界の南東に位置してるってだけで、別に極南東ではないんですけど」

勇者「でも看板のマークは好きだな。一枚のコインに、右下向きのでかい矢印が突き刺さってる」

商人♀「私も気に入っているんです。ゆくゆくは世界ブランドとなるデザインですよ」

勇者「野心あるな」

商人♀「勇者さんが魔王を打倒すれば、自ずと有名になる予定です」

勇者「そういう魂胆か!」

商人♀「ネームバリューは最大限活用させてもらいます。余裕のない商売に綺麗事は言ってられませんから」

勇者「シビアな世界なんだな……」

商人♀「もちろん有名になるというのは、私自身の実力や経験を前提としての話です」

商人♀「名声に乗っかるだけでなく、勇者パーティーの一員として恥じない店づくりに尽力するつもりです」

勇者「そりゃー立派な店になるだろうなぁ」

商人♀「ええ、今にしてまだこんな小さな店ですけど、最初はカウンターもない出店だったんです」

商人♀「年々、確実に成長しています。店も、私も」

勇者「応援するよ」

商人♀「ありがとうございます。まぁ商人としては『宣伝する』の方が嬉しいかもしれないですが」

勇者「商いってほんとシビアだな!」




42: SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) 2012/01/02(月) 03:50:50.63 ID:z5w80SwBo


勇者「……ところで、お前一人か?」

商人♀「はい。自分と同じ思考回路を持った人間があと2、3人欲しいです」

勇者「実家なんだろ? 家族は?」

商人♀「父も母も、数年前に亡くなりました。姉妹たちは行方知れずです」

勇者「! そ、それは悪かったな……」

商人♀「あ、でも勘違いしないで下さい。全然しめっぽい話じゃないんです」

商人♀「両親たちは別に魔物に襲われて死んだわけじゃないですし」

商人♀「姉妹たちも攫われたとかじゃなくて、自分たちでここを発っていったんです」

商人♀「一家離散にありがちな理不尽さはありません。それだけでも恵まれているほうかと」

勇者「……ここにはお前一人しかいなくても?」

商人♀「そう、誰もいないので、残った家、お店は私が総取りというわけです」

商人♀「ま、そんな顔しないで下さいよ。もう勇者さんが考えているようなヤマは乗り越えましたから」

商人♀「それに姉妹たちだって、店が大きくなって商品が出回れば、きっとどこかで私と繋がるはずです」

商人♀「どうせ先のことが分からないなら、足元にだけ気をつけつつ楽観的に考えましょう」

勇者「……商人は強いな。俺なんかよりよっぽど勇気がある」

商人♀「おっとそれは困りますね。勇者さんにはきっちり魔王を倒していただかないと」

勇者「や、やっぱり商人は強いな……」




43: SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) 2012/01/02(月) 03:51:37.88 ID:z5w80SwBo

――

勇者「ずいぶん内装が整ったな」

商人♀「第三者的に見ていかがですか? 居心地は? 間取りは?」

勇者「悪くないよ。旅先でこういう店があったら、しばらく常連になるかもしれない」

商人♀「それは何より。もっとも勇者さんの好みに沿うのが正解と判断したんですけどね」

勇者「なんでだ?」

商人♀「私たち商人は、アイテムと顧客心理ぐらいしか分かりませんが――」

商人♀「勇者さんはさすがにパーティーの長だけあって、長旅さながらのいい審美眼を持ってますからね」

商人♀「私は勇者さんの建物を見る目にも信用を置いています」

勇者「そ、そんなつもりはないが……よく俺のことを観察しているな」

商人♀「すべて商売のためです」

勇者「商売のためか」

商人♀「ではそろそろ開店しますね。勇者さんもそろそろ宿屋で休んで……」

勇者「いや、やっぱり手伝うよ」

商人♀「えっ、いえいいですって。人件費なんてとても割けませんし」

勇者「そんなもんいらないって。まあ実は俺もヒマだったしな。もうけもんと思って使ってくれ」

商人♀「……分かりました。このご恩は必ずお返しします」

勇者「別にいいって」

商人♀「ではさっそくこの服に着替えて、そこの大タルを一箇所にまとめといてください」

勇者「切り替わり早いな!」




44: SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) 2012/01/02(月) 03:52:22.46 ID:z5w80SwBo

勇者「この服、商人仕様か。勇者として呼び込みした方が売り込めるんじゃないか?」

商人♀「言ったでしょう。その肩書きを売るのは魔王を倒したあとだと」

商人♀「絵に描いたモチではお客さんの信用を失います。宣伝は事実のみが私のモットーなんです」

勇者「うーんハリボテ勇者に用はないってことか」

商人♀「そんなことはないですが、今だけは一人の商人の方がありがたいですね」

勇者「頑張るよ」

商人♀「期待しています」

勇者「ところで大体商品が用意できたけど、この店の目玉はどれなんだ?」

商人♀「そちらの一等地の棚に固まってます」

勇者「おおっワインボトルか! そういえばいつかどこかで買い占めてたな」

商人♀「ええ。全てこの日のために、異郷の酒場で大量に調達しました」

商人♀「口当たりはまろやか且つ上品、またしつこさが全くないので清流のように喉を通ります」

商人♀「後味の芳香がやや強く、同時に胸元からすぐぬくもりを醸しだすので、心地よい飲み口を味わえます」

勇者「へえ……さすがに商品一つ一つを熟知してるんだな。欲しくなったくらいだ」

商人♀「この町では需要のある商材と踏んでいるので、1本1050ゴールドです。どうですか?」

勇者「よしそれなら買おう!」

商人♀「毎度ありがとうございます! でも営業中の飲酒はタブーですからね」

勇者「そうだった残念、こいつは閉店までおあずけか……」



45: SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) 2012/01/02(月) 03:52:54.28 ID:z5w80SwBo


商人♀「『極南東の雑貨屋』、開店! では勇者さん、一応呼び込みをお願いします」

勇者「わ、わかった。やったことないけど……いらっしゃ、いませ? いらっしゃ、いませ!」

商人♀「代わりましょう。ちょっとの間カウンターお願いします」

勇者「めんぼくない」

商人♀「「いらっしゃいませえーっ、いらっしゃいませえーっ!」」

商人♀「「本日『極南東の雑貨屋』、期間限定の営業となりまぁーっす!!」」

商人♀「「世界中の珍しい掘り出し物が盛りだくさんございまぁーっす! どうぞごひいきにぃーっ!!」」

勇者「……す、すごいな。かわいい顔してこんな大声張り上げるんだな……」

商人♀「ぜひっお立ち寄り……えっ、何か言いました?」

勇者「い、いやなんでも」

町人A「おお! 商人ちゃん帰ってきたのか!」

町人B「まぁ。ちょうどクリスマスのプレゼントを探していたところなのよ」

旅人A「ほう、世界中の……立ち寄ってみるか……」

勇者「な、なんだ? 急にお客さんが入ってきたぞっ」

商人♀「あ、いらっしゃいませ! いらっしゃいませ! ちょっとカウンターすみません!」

勇者「うひい役に立たなくてすまないっ!」




46: SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) 2012/01/02(月) 03:53:46.48 ID:z5w80SwBo


――

町人「いい買い物をした。また来るよ」

商人♀「帰り道にお気をつけくださいね。どうも、ありがとうございましたーっ」

勇者「……ようやく店じまいか。お疲れ様」

商人♀「勇者さんもなんだかんだで手伝ってくださって、ありがとうございました」

勇者「俺は大したことできなかったけど、大繁盛だったじゃないか」

商人♀「元々商売しやすいコンセプトですし、地元のお客さんたちも馴染みなんです……」

勇者「余裕のない商売とか言ってた気がするけど、ちっともそんな風には見えなかったぞ」

商人♀「それは……旅をしながらの不定期商売なので……店の維持費がかさばっちゃうんです……」

勇者「なるほどな。でもこれだけ売れれば、収支もプラスになってるだろ」

商人♀「まだトントンです……滞在中に在庫を売り切らないと、目標予算には……」

勇者「お、おい商人? 何かちょっとフラついてないか?」

商人♀「だ、大丈夫です……明日の……準備……」

勇者「大丈夫か!?」

商人♀「あ……」

勇者「おい商人! 商人! しっかりしろ! この、やっぱり無理してたんじゃないか……」




47: SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) 2012/01/02(月) 03:54:37.30 ID:z5w80SwBo


――

勇者「Zzz」

商人♀「…………」

商人♀「………………お母さ――……」

勇者「……んっ? 起きたのか?」

商人♀「あ……あっ!」

勇者「あ。起こしてしまったのか」

商人♀「す、すみません! ご迷惑をおかけしてっ!」

勇者「全くだ。疲れてたんなら休むべきだろう」

商人♀「は、はい、これは商人にあるまじき不覚、申し訳ないです」

商人♀「いけない、もうこんな時間! 急がなくては――」

勇者「ストップ。急ぐってのは明日の準備以外のことか?」

商人♀「で、でも滞在期間が無駄に……」

勇者「まずは旅の疲れを癒すことが最優先だ。滞在日時なら延ばす」

商人♀「そっそこまで足を引っ張るわけには」

勇者「いいから休め。泣いた跡が隠しきれてないんだよ」

商人♀「!」

勇者「何が『ヤマは乗り越えた』だ。ずっと思いつめてたんじゃないか……」




48: SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) 2012/01/02(月) 03:55:47.76 ID:z5w80SwBo


商人♀「は……はは……もう、恥ずかしいやら情けないやら……」

勇者「……そんなか弱い身一つで、今までずっと店を守ってきたんだな」

勇者「……自分と家族をつなぎとめるために……」

商人♀「な、何を急におっしゃいますか。私は別に、私はただ――」

勇者「まあ待て。いいものがある」

勇者「……ジャン。お前の店で一押しのワインだ。もちろん俺が買ったやつ」

勇者「ええっとこいつは、飲むと同時に胸からすぐあったかくなるから、心地よい気分を味わえるんだぞ」

商人♀「……」

勇者「おっとそんなことは知ってる、とでも言いたげだが、お前本当にこいつの真価を分かっているのか?」

商人♀「えっ?」

勇者「今ならお前にも分かるだろう。ちょっと待ってろ」

勇者「……ほら。まあ飲んでみろ」

商人♀「……あの勇者さん。私はもう何度も試飲して」

勇者「いいから飲んでみろって」

商人♀「は、はい。そこまで言うなら……」


商人は グラスのワインを のみほした! ▼




49: SS速報でコミケ本が出るよ[BBS規制解除垢配布等々](本日土曜東R24b) 2012/01/02(月) 03:56:59.23 ID:z5w80SwBo


商人♀「……あ……」

商人♀「……あったかい……」

勇者「いつもと感触が違うだろう? それはお前が本当に参っていたからだ」

勇者「身体を温める飲み物をなめてはいけない。そのリラックス効果はベホマにも劣らないんだぞ」

勇者「そしてこのワインは、間違いなくこの季節に相応しい超逸品だ。お前はいい商売をしてるよ」

商人♀「……はは」

商人♀「さすがの、勇者さんですね。あなたの旅にお供させて頂いたのは、間違いではなかった……」

勇者「ありがとな。――じゃ、そのワインボトルは、お前にやるよ」

商人♀「えっ、いえいえ、そんな悪いです」

勇者「クリスマスプレゼントだよ」

商人♀「クリスマス……」

勇者「そうだ。財布のヒモが緩くなるってのは本当だったな」

勇者「俺も客として、しばらくお前の店に世話になりそうだ」

商人♀「……ありがとうございます。いつでもごひいきに……」

勇者「ああ。メリークリスマス、商人」

商人♀「はい。メリークリスマス、勇者さん」



商人ルート END




50: <戦士ルート> 2012/01/04(水) 01:07:55.73 ID:YivuLdOTo

【村】

勇者「戦士、メリークリスマス!」

戦士♀「ああ? なんだそりゃ?」

勇者「知らないのか? 今日はクリスマスっていって、めでたい日なんだぜ!」

戦士♀「そんなもん知らねーしどーでもいい」

勇者「つれないなぁ。今日は俺とお前二人きりだってのに」

戦士♀「ああ? 戦士(♂)の奴は?」

勇者「酒場の姉ちゃんと一緒にクリスマスを過ごすんだってさ」

戦士♀「あのスケベ野郎……! じゃ盗賊(♂)の奴は?」

勇者「町で知り合った女の子に花を渡しに行くんだってさ」

戦士♀「あのキザ野郎……! ん、てことは?」

勇者「だから言ってるじゃん。今日は俺とお前二人っきりって」

戦士♀「ふ、二……ふーん、そ、そうか。ちょっと珍しいかもな」

勇者「お。ちょっとくらい意識したか?」

戦士♀「ふ、ふざけんなぶっ飛ばすぞ!!」

勇者「ひいっ! こんなとこでエモノ振り回すな!」



51: 以下、あけまして 2012/01/04(水) 01:09:16.58 ID:YivuLdOTo


勇者「ま、さ。クリスマスってことだし、たまには息抜きしないか?」

戦士♀「息抜きってなんだよ」

勇者「そうだな。『二人』でどこかに遊びに行ったり、『二人』で町に買い物に行ったり」

戦士♀「な、なんでお前となんだよ!」

勇者「いいじゃないか。どうせパーティー揃ってないんだから、お前もヒマなんだろ?」

戦士♀「はっ。あたしはこれから武器屋に行く用事があるんだよ」

勇者「そうなのか?」

戦士♀「ああ、それでそのあと――」

勇者「そのあと?」

戦士♀「……」

勇者「ないんだろ? 予定」

戦士♀「ある! あるんだけど……」

勇者「? ま、いいや。じゃあ俺もついていっていいか? 武器屋」

戦士♀「!! く、来るんじゃねえ。勇者なんかお呼びじゃねえんだよ!」

勇者「俺がいるとマズイのか? よーし絶対ついていくぜ」

戦士♀「来るんじゃねえぶっ飛ばすぞ!」

勇者「いーや、絶対ついてってやる!」

戦士♀「……か、勝手にしやがれっ」




52: 以下、あけまして 2012/01/04(水) 01:10:22.22 ID:YivuLdOTo


【武器屋】

仮面男「いらっしゃ――おお、待ってたよ戦士ちゃん!」

戦士♀「だからその戦士ちゃんってのやめろ!」

勇者「元気だったかい、おやっさん!」

仮面男「おう勇者の野郎まで! 二人でぶらついてたのかい?」

勇者「ああ、なんせクリスマスだからな! たまには二人きりで――ぎゃあっ!」

戦士♀「勝手に引っ付いてきただけだ、勘違いしてんじゃねーぞ!」

仮面男「お、おう。そうだよな。なんせ戦士ちゃんには先約が入ってるからな!」

勇者「えっ……?」

戦士♀「そっ、それより例の新しい武器ってのを見せてくれ」

仮面男「おう、ばっちりだ。そこの箱空けてみな」

勇者「ま、待てよ戦士。先約って何の話だ?」

戦士♀「しつこいな!」  勇者「痛っ!」

仮面男「なんだ戦士ちゃん、まだ話してなかったのか」

戦士♀「そこの箱ってどれだ! これか! これかぁ!?」

仮面男「あわわわそこに置いてあるじゃないか、店を壊さないでくれぇ!」




53: 以下、あけまして 2012/01/04(水) 01:11:28.84 ID:YivuLdOTo


戦士♀「おお……これが新しい武器か!」

勇者「すげー迫力のオノだな!」

仮面男「見ごたえあるだろう、新品のバトルアックスは」

勇者「いくらするんだ?」

仮面男「取り寄せも楽じゃなかったからな。定価はざっとこのくらいだ」

勇者「うげっ。ちょ、ちょっとふっかけ過ぎじゃないか?」

仮面男「こーんな南国までモノ運ぶってのもラクじゃねえんだよ」

勇者「うーむ。なんでも世間じゃユキってのが積もってるらしいからな……」

仮面男「おう、そいで思い出したが、今日はクリスマスってヤツらしいな」

勇者「おお、知ってるのか?」

仮面男「最近知ったんだよ。今日この近くで、知り合いがクリスマスパーティーってのをやってんだ」

勇者「そりゃーにぎやかでいいな!」

仮面男「おおよ、このあと戦士ちゃんも来るしな!」

勇者「えっ?」

戦士♀「あっ? えっ、えっ……と……」

勇者「ど、どういうことだ?」




54: 以下、あけまして 2012/01/04(水) 01:12:50.26 ID:YivuLdOTo


戦士♀「つ、つまりだな……その……」

仮面男「そのパーティー、もちろん酒も入るんだが、戦士ちゃんには男共のお酌をしてもらうんだ」

勇者「えっ? しゃ、酌ってその、みんなにお酒を注いで回ること?」

仮面男「ああ。なんせ華がねえってもんで、どうしてもカワイイ娘が欲しくてな」

仮面男「その宴会にゃ俺なんかよりよっぽどのお偉方も集まるから、断れなかったんだよ」

勇者「こいつじゃ無理無理! せっかくの宴席が血の海になってしまう!」

戦士♀「な、なんだとぉ……!」  勇者「ひいっ!」

仮面男「戦士ちゃんには、愛想には気を遣わなくていいから、せめて暴れないようにと約束している」

仮面男「ハ、ハズだよね?」

戦士♀「も、もちろんだ!」

勇者「だからそれが無理なんだって痛っ!」

仮面男「その代わりこのバトルアックス、なんと半額で譲っちゃうんだ」

勇者「えっ……」

仮面男「新品の武器を半額にする代わりに、宴会で大人しくお酌してもらうってな」

戦士♀「……」

勇者「……で、でも、皆酒入ってるんだろ? 戦士のやつ、こんな露出多い格好してるし……」

戦士♀「そんなことになったら問答無用でぶっ飛ばしてやる!」

仮面男「そ、それは困るよ。今度の相手に粗相があったら、俺も紹介した手前、商売できなくなっちまう」

仮面男「お、俺だけじゃないぜ。村全体が窮地に陥るかもな。それだけの権力を持つ相手もいるんだ、うん」

戦士♀「……」

勇者「…………」




55: 以下、あけまして 2012/01/04(水) 01:13:52.79 ID:YivuLdOTo


勇者「戦士。一つだけ聞きたいけど、お前、その宴会に行きたいのか?」

戦士♀「……行くに決まってんだろ。バカにすんじゃねー」

勇者「行きたいか行きたくないのか、どっちなんだよ」

戦士♀「ああ? し、仕方ねーだろ、金ねーんだし」

勇者「つまり行きたくないんだな」

仮面男「ちょ、ちょっと戦士ちゃん、俺たちもう約束したよな?」

戦士♀「バーカ行くって! だからこのエモノは持ってくからな! ほら金!」

仮面男「ありがとな! うんうん、ちゃんと半額分確認したぞ」

勇者「それじゃ足りないだろ」

戦士♀「えっ?」

仮面男「だから勇者、戦士ちゃんには半額って――」

勇者「よいしょー! 手持ちゴールドじゃらじゃらー!!」

仮面男「!!」

戦士♀「な、何やってんだよ!!」

勇者「それで同じもんが2、3本調達できるだろ。じゃ、このオノもってくからな」

勇者「行くぞ戦士」

戦士♀「あ……ちょ、ちょっと……」

仮面男「お、おい勇者! バトルアックス、まだ1本しか届いてないんだぞ! 余り分は!?」

勇者「キャンセル代だーっ。それで酒場の女の子でも雇ってやれーっ」

仮面男「で、でも今回の指名は戦士ちゃんって話が決まって……おおーい!!」




56: 以下、あけまして 2012/01/04(水) 01:14:35.22 ID:YivuLdOTo


戦士♀「おい、勇者! なんのつもりだよ!!」

勇者「だってお前、宴会ムチャクチャにするかもしれないだろ?」

勇者「さすがに村全体にメーワクかける訳にはいかねーしなぁ」

戦士♀「耐えるところは耐えられるっての! 舐めんじゃねえ!」

勇者「でもお前、行ったら本当にベロベロ舐められるぞ。ベタベタ触られるぞ」

戦士♀「ひっ」

勇者「酔った男は何するか分かんねーからなぁ。これ冗談じゃないぞ?」

戦士♀「そ、そんなの聞いたことねえっての! 茶化すんじゃねえ!」

勇者「……でも俺の経験上、そんなことされてもぐっと我慢できちゃうのが戦士なんだよな」

戦士♀「えっ」

勇者「『耐えるところは耐えられる』? 知ってるさ、何年一緒に旅してると思ってんだ」

勇者「でも、たかが一本のオノのためにその忍耐使っちゃうのは、パーティーの長として看過できないというか」

勇者「そもそも、らしくないよな。嫌なことされてすぐに暴力で返さない戦士なんてさ」

戦士♀「は……はぁ? 何を訳の意味分かんねーことブツブツと……」

勇者「ただし俺は正直見たいかもな! そのカッコで羞恥に耐える戦士!!」

戦士の かいしんの いちげき! ▼

勇者は たおれた! ▼




57: 以下、あけまして 2012/01/04(水) 01:15:26.38 ID:YivuLdOTo

【山地】

勇者「ふう、死ぬかと思ったぜ」

戦士♀「いっそくたばってろ! あーイライラする!」

勇者「ひいっ。そ、それでこんな山まで来て、何の用があるんだ?」

戦士♀「決まってんだろ! こいつの試し切りだ! あと肉!!」

勇者「肉?」

戦士♀「肉を食う!! ヤケ喰いだ!!」

勇者「そういえばここいらには『おおにわとり』『あばれうしどり』が出るな」

戦士♀「狩って狩って狩りまくるぞ! いまむしゃくしゃしてんだ!」

勇者「お、俺も一緒にか?」

戦士♀「たりめーだ! 誰が回復するんだ肉を焼くんだ!? 言ってみろよ!」

勇者「いつの間にか炊事まで押し付けられてる!」

戦士♀「ほら勇者とっとと奥に進むぞ!」

勇者「こんな男女二人きりのクリスマスなんて嫌だ! 俺は認めないぞ!」

戦士♀「つべこべ言わずついてこいってんだよ!!」  勇者「ひいっ!」




58: 以下、あけまして 2012/01/04(水) 01:16:14.75 ID:YivuLdOTo


――

戦士の こうげき! ▼
おおにわとりを たおした! ▼
あばれうしどりを たおした! ▼

戦士♀「――ちっ。こいつ、かなり使える武器だな」

戦士♀「使えなかったら散々文句言ってやろうと思ったのに……」

戦士♀「おらー勇者! また肉があがったぞー!!」

勇者「ま、またか! もうメラだけでMP切れ起こしそうだ!」

戦士♀「まだまだやるぜ! うなれバトルアックス!」

勇者「な、なあ戦士、そろそろ休憩しようぜ、な?」

戦士♀「休憩だぁ? ぬるいこと言ってんじゃねーぞ!」

勇者「でもお腹空いてるだろ? ほ、ほら、肉焼けてるからさっ」

戦士♀「……。……いい匂いだな」

勇者「だろ? それにほら。はふっ。うまっ。絶品なんだぜ!」

戦士♀「……ふん。ま、ここらで武器の手入れも必要だしな」

勇者「おお! やっと一息つくか!」

戦士♀「あと30匹ぐらい片付けたらな」  勇者「えええ」




59: 以下、あけまして 2012/01/04(水) 01:17:07.31 ID:YivuLdOTo


――

戦士♀「大体このへんにしとくか」

勇者「MPが尽きました。もう肉焼けません」

戦士♀「はっ、だらしねーな。よいっしょっと」

勇者「ほら、クリスマスプレゼント。できたてローストチキンだ!」

戦士♀「お、おお。美味そうだな」

勇者「ほら戦士、あーん」

戦士♀「や、やめろ! 自分で食えるっての!」  勇者「痛っ」

戦士♀「美味い! やっぱ一汗かいたあとの肉は格別だぜ!」

勇者「……はは。やっぱそうしてた方が戦士らしいな!」

戦士♀「うるせえな、ぶっ飛ばすぞ!」

勇者「そうこなくちゃな!」

戦士♀「……。ふ、ふん。もう殴る気も失せたぜ」

勇者「そうだぞ、それ買ったばっかなんだから大事にしろよな」

戦士♀「ちっ。こんなもんのために無駄な金使いやがって……」

勇者「だって、どうしても欲しかったんだろ?」

戦士♀「うるせえっ!」  勇者「痛っ! あ殴った!!」




60: 以下、あけまして 2012/01/04(水) 01:18:35.58 ID:YivuLdOTo


戦士♀「……でも、その、なんだ」

勇者「?」

戦士♀「この新しい武器で……とっとと魔王のヤツをぶっ飛ばしてやるからな」

戦士♀「こ、これからも引き立て役になりやがれっての」

勇者「……お前まさか、俺のために無理して新しい武器を」

戦士♀「気持ちわりぃ勘違いしてんじゃねえ!」  勇者「ぎゃあ!」

戦士♀「あたしはただ……こいつで試し切りした肉が食いたかっただけだ!!」

勇者「ああ、肉ならもうこんなどっさりあるぞ」

戦士♀「ふん。ちゃんと持って帰れよ」

勇者「ええぇっ!?」

戦士♀「さて。もう一暴れしてくるかな」

勇者「……め、めりーくりすます、戦士」

戦士♀「ああ? なんだそりゃ?」

勇者「メリークリスマスなんだよ、戦士! ほら、返して!」

戦士♀「な、なんだよ。分かったよ」



戦士♀「メ……メリークリスマス、勇者……」

戦士ルート END




63: <遊び人ルート> 2012/01/06(金) 16:07:43.53 ID:AvwLjAcNo

【町】

勇者「遊び人、メリークリスマス!」

遊び人♀「はぁい勇者様、メリィクリマ~ス!」

勇者「はいこれでクリスマス気分は終わり。今日という今日は働いてもらうぞ」

遊び人♀「ええーっ! 挨拶だけで終わっちゃうクリスマスなんて聞いたことないよぉ~」

遊び人♀「クリスマスっていうのはねっ、プレゼント渡したりねっ、パーティーしたりねっ」

遊び人♀「子供から大人まで、楽し~い一日でなきゃあいけないんだよ~?」

勇者「なにのぼせたこと言ってるんだ、お前は毎日が『楽し~い一日』じゃないか!」

勇者「一年通してクリスマスなんだから、当日一日ぐらい普通の日を過ごせ」

遊び人♀「その理屈はおかしい」

勇者「なんだそのグーは。いいから旅支度するぞ」

遊び人♀「ぶらりカジノめぐりの旅を提案しますっ!」

勇者「ぶらり魔王退治の旅だ。ここを譲ると俺のアイデンティティが崩壊する」

遊び人♀「――例え壊れてしまっても、何度でも組みなおせばいい。私は今までそうしてきた」

勇者「シリアス調でそれっぽく言ってもダメ却下」

遊び人♀「そんなー」




64: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道←じゃないです) 2012/01/06(金) 16:09:14.75 ID:AvwLjAcNo


勇者「とにかく今から町の外回りするぞ」

遊び人♀「やだ~やだ~! 寒いの~!」

勇者「寒くないって。一応南の地方なんだから」

遊び人♀「知ってる知ってる! サウス・ウェスト・バケーション!」

勇者「お前が胸張って言えるのはカジノの名前くらいだ」

遊び人♀「ねえ行こうよー今日スロットの設定6なんだよー?」

勇者「設定6って何だ。ああいい、言わなくていい、どうでもいい」

遊び人♀「勇者様のヒャド!」

勇者「いつものパターンにはもう引っかからないぞ。とにかく外に出るんだ」

遊び人♀「だから寒いのー。バニーの格好も楽じゃないのにー」

勇者「なんなら温めてやろうか?」

遊び人♀「えっ? なんてなんて? もう一回言って♪」

勇者は メラを となえた! ▼

遊び人♀「あついっ!」

勇者「寒けりゃいつでもMP割いてやるから安心しろ」

遊び人♀「勇者様のメラ!」




65: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/06(金) 16:10:18.08 ID:AvwLjAcNo

【町周辺フィールド】

遊び人♀「うう……やっぱり外は寒いよう」

勇者「冒険ってのは、灼熱のサバンナにも極寒の霊峰にも足を運ぶもんだ」

勇者「比べるまでもない、こんな南西地方の気候なんてぬる過ぎてあくびが出る」

遊び人♀「それならあくびしてみせてよ!」

勇者「また何か放り込む気だろ。ほら今拾ったもの見せてみろよ」

遊び人♀「じゃーん賢者の石でしたー!」

勇者「ほらみろ石ころだっただろうが。もう口の中には二度と……ん? 賢者の?」

遊び人♀「こうなったら歌ってでも寒気を紛らわしちゃうもんね!」

勇者「本当に賢者の石だ……どれだけ運が強いんだ……」

遊び人♀「♪ジングルベール ジングルベール すっずっがーなるー!!」

勇者「だから何なんだよジングルベルって。最近よく歌い出すけど」

遊び人♀「えっ勇者様知らないの? クリスマスの歌だよ!」

勇者「どこで知った」

遊び人♀「カジノとかー。バーとかー」

勇者「ほう。なんで出入り禁止にした場所でクリスマスの歌を知っているんだ?」

遊び人♀「勇者様ゆるして!」



66: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/06(金) 16:11:01.79 ID:AvwLjAcNo

遊び人♀「♪まっかな おっはっなっのー トぉナカぁイさーんーはー!」

勇者「……遊び人は歌が好きなんだよな」

遊び人♀「うん、大好き! 遊びの中で一番好きかも!」

勇者「前もそんなこと言ってたな」

遊び人♀「だって元気が出るし! 楽しくなるし! あと何より――」

勇者「タダだし」

遊び人♀「ビンゴ! そこ一番大事!」

勇者「何曲ぐらい歌えるんだ?」

遊び人♀「ええっとねーえ、多すぎて分かんない!」

勇者「12×12は?」

遊び人♀「分かんない!」

勇者「その歌の才能を別のものに生かせたら、少しは冒険の役に立つのになぁ」

遊び人♀「歌の才能!? 勇者様わたし歌うまいと思う!?」

勇者「な。なんだよ急に。まぁ、うん。歌は上手いと思うよ。才能割いてる分」

遊び人♀「やったー! 勇者様に初めてカジノ以外のことで褒められちゃったー!!」

勇者「情けないとは思わないのか……」




67: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/06(金) 16:11:40.54 ID:AvwLjAcNo


遊び人♀「~♪ ~♪」

勇者「こんなところで口笛なんて吹くんじゃない。どうなっても知らんぞ」

遊び人♀「だって嬉しいんだもーん♪ ~♪」


まものの むれが あらわれた! ▼


遊び人♀「きゃあっ!」

勇者「ほら出た。お前が呼んだんだからお前が何とかしろよ」

遊び人♀「ご、ごめんなさい……口笛吹くと魔物が出るなんて知らなかったの……」

勇者「ほら一緒に戦うぞ。いつまでもヒトの陰に隠れてんじゃない」

遊び人♀「ごめんなさい……本当にごめんなさい……」

勇者「し、仕方ないな。まぁ今回は敵も手強いしな」

遊び人♀「ごめんなさい……お願いします……」

勇者「ってなにどさくさ紛れに化粧直ししてる!!」

まものの こうげき! ▼

勇者は ダメージを 受けた! ▼

勇者「痛い! もうどいつもこいつも!!」




68: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/06(金) 16:13:56.26 ID:AvwLjAcNo

――

まものの むれを たおした! ▼

勇者「あ、危ない……死ぬかと思った……」

遊び人♀「勇者様だいじょうぶ?」

勇者「大体お前が戦力にならないからこんな目に――ん。おいちょっと腕見せてみろ」

遊び人♀「いやん」

勇者「っておい、ケガしてるじゃないか! さっきの魔物にやられたのか!?」

遊び人♀「な、なんじゃこりゃあ! なんちゃって」

勇者「ほらホイミ。なんで言わなかった。まさか魔物の気を引いてくれていたのか?」

遊び人♀「え、えっとね。私、『きみがいちばんよわそうだねー、やーい』って指差しただけなの」

勇者「それはおまえがわるいです」

遊び人♀「うえーん」

勇者「……ま、弾除けになってくれたには違いないんだし、今回はよしとしてやるか」

遊び人♀「ほんと? わぁいこれで町に帰れるー!」

勇者「よく見ろ、まだ宿代しか稼いでない。もう少しうろつくからな!」

遊び人♀「ええー。それカジノのコイン代じゃなかったのー?」

勇者「お前クリスマスに俺を野宿させる気だったのか!」




69: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/06(金) 16:15:22.32 ID:AvwLjAcNo

勇者「せめて武器ぐらい持て。ほらこれ」

遊び人♀「あー! これカジノの景品! 一番コイン要る武器!」

勇者「お前のおかげで手に入ったものだ。さあ装備しろ」

遊び人♀「うう……重い……。こんなの使いこなせないよう」

勇者「でも一番攻撃力が高いんだぞ。ほら、防具もある」

遊び人♀「それにしても変だよねぇー」

勇者「なにが」

遊び人♀「私のカジノのおかげで、すごいアイテムがこんなにたくさんあるのに」

遊び人♀「どうして勇者様はこのへんの魔物に手こずっちゃうのー?」

勇者「そ、それとこれとは関係ないだろう」←Lv.12

遊び人♀「だって私もうすぐLv.20だもん!」

勇者「遊びのだろう!」

遊び人♀「遊びのかも」

勇者「ろくに働きもせず変なところだけ成長しやがって……」

遊び人♀「今のはセクハラ発言とみてよろしいですね!?」

勇者「もういい! やる気がそがれた! 宿に帰る!」

遊び人♀「勝っちゃった!」  勇者「もう負けでいい!」




70: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/06(金) 16:16:09.96 ID:AvwLjAcNo

【宿】

遊び人♀「~♪ るんるん♪」

勇者「はぁ……」

遊び人♀「ため息は不幸のもと! ほら吸って♪ やれ吸って♪」

勇者「……あのな。俺はお前がどうしても『魔王退治についていきたい!』っていうから」

勇者「わざわざ余裕作ってお前を招いたんだぞ。もしずっとこの調子を続けるなら……」

勇者「……分かるよな? 言われなくても」

遊び人♀「私、絶対役に立ちます! 嘘じゃないです!」

勇者「……まぁ確かに、カジノの荒稼ぎに関してだけは感謝してるけど」

勇者「旅についてくるなら、相応の態度で示して欲しい。これは遊びじゃないんだ」

勇者「そもそもなんで戦闘能力もないのに、わざわざ付いてくるんだ?」

勇者「家柄も、食うに困らないディーラーの家系なんだろ? 遊びたいなら残ればいいじゃないか」

遊び人♀「……それは嫌」

遊び人♀「あそこにいたままだったら、ココロがダメになっちゃうの」

遊び人♀「私は、今のココロのまま、笑いたいの。歌いたいの。遊びたいの!」

遊び人♀「勇者様はもちろん、世界中の人たちもハッピーにしたいの!!」

勇者「……遊び人の考えは分かった。でも――」




71: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/06(金) 16:17:31.95 ID:AvwLjAcNo

勇者「でも魔王がいる限り、世界の人々は決してハッピーにはなれないよ」

勇者「魔王は人を傷つけ、悲しませ、そして怒らせる」

勇者「そうして生まれた恨み憎しみを糧にする生き物だ。こいつがいる限り、遊び人の理想は通らない」

遊び人♀「うん……分かってる。何だか最近ね、すこーしだけ分かってきちゃったの」

遊び人♀「人を心から笑わせるには、私はただ道化に徹していればいいって、そう思ってきたけど」

遊び人♀「それじゃちょっと限界あるかなーって。悲しみの元凶をなくしちゃった方がいいかもって」

勇者「……」

遊び人♀「だからね、勇者様。もうちょっとだけ待って」

遊び人♀「もうちょっとしたらね、私、自分の中ではっきり答えが出そうなの。ね。お願い」

勇者「……お前」

勇者「ちゃんと自分なりの考え持ってたんじゃないか。今まで皮を被ってたってわけか」

遊び人♀「被ってるのはうさみみバンドだよ! 勇者様も装備してみたい?」

勇者「いや……いい」

遊び人♀「ほら遠慮せずにほら! きゃー! うさみみ勇者!!」

勇者「いらん! ……!? こ、これ取れない!」

遊び人♀「うさみみ勇者様~!」

勇者「ちょ……これ取れないっ!」




72: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/06(金) 16:19:57.38 ID:AvwLjAcNo


勇者「――分かった。そういうことなら俺も待つよ。でも、なるべく早く開花してくれよ」

遊び人♀「うん! 勇者様もはやく強くなってね!」

勇者「こ、この……これでもくらえ!」

遊び人♀「キャー! ……? これなに? プレゼントボックス?」

勇者「ま……まぁ陰で何かしら頑張ってたのは知ってたからな」

遊び人♀「これ! もしかしてクリスマスプレゼント!?」

勇者「あ、開けてみ」「キャー! オルゴール!!」「早いわ!!」

遊び人♀「ちょっと音楽聴いてみたい! どうするの?」

勇者「は、箱を開ければいい」

遊び人♀「こう?」

 ~♪ ~♪ ~♪
 
遊び人♀「! これクリスマスの曲!」

勇者「と、特注だからな。調達するの大変だったんだぞ」

遊び人♀「勇者様どこでこの音楽知ったの? あっ、まさかカジノ? バー?」

遊び人♀「もしかしてこの時期私を出入り禁止にしたのって、これをこっそり用意するため!?」

遊び人♀「あ、もしかして今日一日真剣だったのは、全部これを渡すためのお膳立てだったり!?」

遊び人♀「勇者様ありがとう! 私一生大事にするっ!!」

勇者「……お前……」

勇者「いや、もういいや。じゃ、これだけ」

勇者「メリークリスマス、遊び人」

遊び人♀「うん!」

 ~♪ ~♪ ~♪

遊び人♀「メリークリスマス、勇者様っ!!」

遊び人ルート END




75: <魔法使いルート> 2012/01/08(日) 02:55:57.65 ID:stJi0ct8o

【工房】

勇者「魔法使い、メリークリスマス!」

魔法使い♀「あ」

勇者「あっ……ごめん。例の呪文、練習してたのか」

魔使♀「いまもう少しでできそうだったのに。許さないわ」

勇者「本当か? ちょっともう一回やってみせてくれ」

魔使♀「もう集中力が途切れてしまったわ。あなたのせいよ」

勇者「わ、悪かったよ」

魔使♀「許さないわ」

勇者「許してくださいお願いします大魔道士様」

魔使♀「許してあげてもいいわ」

勇者「でも、本当に可能なのか?」

勇者「呪文だけで食べ物……それもケーキを生み出すなんて」

魔使♀「愚問過ぎて頭を疑うわ。かしこさのたねは余っていたかしら」

勇者「そこまで言わなくてもっ」




76: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/08(日) 02:56:35.33 ID:stJi0ct8o

魔使♀「一ヶ月前、あなたに初めて言った私の理論をおさらいしてみなさい」

勇者「えっ? 俺が?」

魔使♀「おさらいしてみなさい」

勇者「え、えっと……呪文は『物質』を生み出すことができる、だっけ」

勇者「証拠に、ヒャドで生み出された氷は食べられる、などの例が挙げられる」

勇者「ゆえに、理論上は任意の固形物質を生み出すことができるはずである」

勇者「だっけ? 簡単に言うと」

魔使♀「それでは補足事項が多すぎて、誤解を招く以外にないわ」

魔使♀「間違ってもそんな端的に、私の理論を誰かにひけらかさないで頂戴」

勇者「あ、ああ分かってるよ。他言無用だもんなっ」

魔使♀「私の研究をあなたにだけ教えたことで、何らかの優越を感じているのならやめて」

魔使♀「あなたに偶然見られたから、そしてしつこく聞き回るから、やむを得ず明かしたまでよ」

魔使♀「所詮は私の煩わしさの淘汰の結果に過ぎないことを、肝に銘じておきなさい」

勇者「分かってるって」

魔使♀「分かってなさそうな顔ね」

勇者「だって魔法使いはいつも素直じゃないからなぁ」

魔使♀「なにか言ったかしら」  勇者「なにも?」




77: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/08(日) 02:58:07.61 ID:stJi0ct8o


勇者「そういえば、そのケーキを出す呪文の名前、決まったのか?」

魔使♀「半月前から決まっているわ」

勇者「へえ、何ていうんだ?」

魔使♀「『ケーキ』」

勇者「それでいいのかっ!?」

魔使♀「呪文に名前そのものは必要だけど、名前の決め方に意味はないわ」

魔使♀「そんなことに悩む時間があるなら、一刻も早く呪文を完成させるべきよ」

勇者「で、その新呪文『ケーキ』はどんな塩梅なんだ?」

魔使♀「早ければ今日中に完成できそう、とだけ言っておくわ」

勇者「本当か! いやー食べてみたいなぁ魔法使いのケーキ」

魔使♀「あなたに食べさせてあげるなんて一言も言ってないわ」

勇者「どうかこの卑しき勇者めに、大魔道士様の新呪文の賜物をご賞味させてくださいまし」

魔使♀「考えてあげてもいいわ」

勇者「やった!」

魔使♀「考えてあげると言ったのよ。あなたに食べさせてあげるとは名言してないわ」

勇者「期待しておくよ!」

魔使♀「勝手にしておきなさい」




78: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/08(日) 02:58:50.41 ID:stJi0ct8o


魔使♀「時に、その芳しい香りのする包みは何かしら」

勇者「何ってクリスマスケーキだけど?」

魔使♀「聞こえなかったわ。もう一度言って頂戴」

勇者「クリスマスケーキ買ってきたんだ! 安売りだったからさ」

魔使♀「そう。そういうことね」

魔使♀「あなたの私の新呪文にかける期待なんて、つまりはその程度ということね」

勇者「うわ違う違う! そういうつもりじゃなくてさ」

勇者「何か呪文完成への参考になればいいなと思って、その、研究対象に持ってきたんだ!」

勇者「俺も微力ながらお前を手伝いたいと思ってるからさ。これはその、あれだ」

勇者「俺なりのクリスマスプレゼントということで一つ!」

魔使♀「そう」

魔使♀「受け取らない理由も思いつかないから頂くわ」

勇者「よかった」

魔使♀「好きよ」

勇者「えっ」

魔使♀「ケーキ」

勇者「あっうん」




79: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/08(日) 03:00:10.94 ID:stJi0ct8o


勇者「王道の極み・イチゴショートケーキ!」

魔使♀「基本コンセプトね。でもイチゴとクリームの生成が難しいわ」

勇者「ほろ苦甘さの雄・チョコレートケーキ!」

魔使♀「悪くないわね。でもチョコレートがドロドロになってしまうのよ」

勇者「しっとり引き立つ異色の甘さ・チーズケーキ!」

魔使♀「好きよ。でもチーズの味がどうしてもケーキに馴染まないの」

勇者「渦巻くスウィート・ロールケーキ!」

魔使♀「いいわね。でも一度の呪文で凝った形状にするのは無理よ」

勇者「あとはプティングというか、カップケーキぐらいしかないな」

魔使♀「正直、この程度のものならもう出せるのよ」

勇者「えっ冗談だろう、あはは」

魔使♀「そう。いま冗談扱いしたのね。何を償いとしようかしら」

勇者「えっ?」

魔法使いは ケーキを となえた! ▼

カップケーキが あらわれた! ▼

勇者「あばば! ちょ、これっ……ええっ!?」




80: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/08(日) 03:02:27.47 ID:stJi0ct8o


勇者「す、すごいじゃないか! これ食べられるのか!?」

魔使♀「一瞬でも本気で食べられないと思って?」

勇者「ちょ、ちょっと食べてみてもいいか?」

魔使♀「駄目よ。まだ未完成だもの。もし食べたら絶交よ。嘘じゃないわ」

勇者「それは困る!」

魔使♀「困りなさい」

勇者「でもすごいじゃないか! 自分で呪文を編み出しちゃうなんて!」

魔使♀「ここ西方には魔法使いが多いのは知っているでしょう」

魔使♀「自身で新呪文を開発する術者なんて十人は下らないわ」

勇者「すごいじゃないか! 十分の一!」

魔使♀「そもそも新呪文の需要がないの。労力に比べたら、既存の呪文で間に合う場合が多いのよ」

勇者「ふうん……んっ? って待てよ?」

勇者「ケーキって材料さえあれば誰でも作れるから、別にわざわざ新呪文で作る必要は……」

魔使♀「いま婉曲的に嘲ったわね。余計な手間ヒマかけてまで、呪文でケーキを作ろうとする私を」

勇者「別にあざけってはないけど、何か理由があるなら聞きたいな」

魔使♀「個人のプライベートに踏み込む好奇心ほど、無粋で下劣なものはないわ」

勇者「そりゃあ無理にとは言わないけど、残念だなぁ。聞きたかったなぁ」

魔使♀「あなた無粋で下劣だったのね」

勇者「なんでそうなるのっ」




81: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/08(日) 03:03:59.06 ID:stJi0ct8o


魔使♀「ごちそうさま」

勇者「ごちそうさまーっ。美味しかったな、ケーキ!」

魔使♀「品質は認めるわ。良い仕事をする店にめぐり合えたのね」

魔使♀「ただ相席がお節介でなければ、もっと美味しく頂けたかもしれなかったわね」

勇者「むう、一人で食べるよりはいいだろう?」

魔使♀「そうね。例えあなた相手でも、独りよりは幾分美味しかったかもしれないわ」

勇者「おっ珍しいな! 俺相手でもなんだって?」

魔使♀「よこしまな憶測はやめて頂戴。ここで私が焦点を当てたいのは、別の人物よ」

勇者「えっ誰っ!? 男っ!? もしかして魔法使いって好きな人いるの!?」

魔法使いは メラゾーマを となえた! ▼

勇者は はげしいひばしらに つつまれた! ▼

勇者「ぎゃあああっ!!」

魔使♀「今度下衆を装ったら、その息の根を止めるわ」

勇者「ごっごめんなさいっごめんなさいっ! あぢっあぢぢぢっ!!」

魔使♀「……」

魔使♀「妹よ」

魔使♀「遠いところにいるわ」




82: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/08(日) 03:05:02.03 ID:stJi0ct8o


勇者「い、妹?」

魔使♀「家に残してきたの。あなたと違って、私に似て、とても利発的な子よ」

勇者「えっ? えっ?」

魔使♀「とても利発的な子だったから、家が貧しいことをよく分かっていたの」

魔使♀「だから食べたいものがあっても、絶対におねだりするような子じゃなかったわ」

勇者「……」

魔使♀「一度だけ、家族でケーキを食べたことがあるの」

魔使♀「父が無理して出費して、母が安く買ってきたケーキよ」

魔使♀「美味しかったわ。ケーキは小さくて粗末だったけど、美味しかったのよ」

魔使♀「以来、妹はケーキという言葉に反応するようになったわ」

魔使♀「決して口には出さなかったけど、妹はケーキを食べたかったのよ」

勇者「……」

魔使♀「あるとき私は、あの子に嘘をついたの。『ケーキが食べられるわ』って」

魔使♀「それまで私が嘘をついたことなんてなかったから、あの子はとてもとても喜んだわ」

魔使♀「私も、すべてを耐えて貯めたお小遣いで、ケーキが買えると思っていた」

勇者「……」

魔使♀「でも、結局無理だった」

魔使♀「顛末は省くけど、原因をたどると魔王のせいということになったわ」

勇者「!」

魔使♀「私に、妹に嘘をつかせた罪は重いわ。だから私は、魔王を許さないのよ」

勇者「……そ、それで俺のパーティーについてきたのか……」




83: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/08(日) 03:07:51.98 ID:stJi0ct8o


魔使♀「でも勘違いしないで。魔王は二の次なのよ」

勇者「えっ?」

魔使♀「私が魔法使いになった理由は、魔王を倒すためではないの」

勇者「えっ。それじゃあどうして……」

魔使♀「いいわ。教えてあげる」

魔使♀「いつでも妹に、美味しいケーキを食べさせてあげるためよ」

勇者「えっ!?」

魔使♀「当時の私は幼かったの。魔法使いなら、どんな魔法も叶えられると信じていたわ」

魔使♀「信じていたから、魔道の盛んなこの地、西方まで単身でやってきたのだけど。呆れたわ」

魔使♀「火炎、氷結、果ては爆発まで起こせるのに、ケーキを生み出す呪文はないのよ」

魔使♀「いつでも好きなときに、その場でケーキを出す呪文は、ないのよ」

魔使♀「だったら、自分で編み出すしかないわ。そうでしょう?」

勇者「……」

魔使♀「そして今に至るの」

魔使♀「これで私の身の上話は終わり。まだ誰にも話したことはないわ」

勇者「……どうして俺に?」

魔使♀「私なりのクリスマスプレゼントと、先払いよ」

勇者「先払い?」

魔使♀「いいこと。必ず魔王を葬りなさい。途中で倒れたら、許さないわ」

勇者「……ああ」

勇者「ありがとう。その約束だけは、必ず守るよ」

魔使♀「そう」

魔使♀「それならいいわ」




84: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/08(日) 03:10:18.20 ID:stJi0ct8o


勇者「そういうことなら……魔法使い」

魔使♀「何かしら」

勇者「俺が魔王を倒す前に、お前も新呪文『ケーキ』の完成を急がないとな!」

魔使♀「もう完成したわ」

勇者「えっ!?」

魔使♀「私に足りなかったものはケーキそのものより、ケーキを食べるイメージ」

魔使♀「独りではなく、二人以上で食べるイメージ。私と、妹と」

魔使♀「呪文を生み出そうとする動機が欠落していたんだわ」

魔使♀「それでは本気でイメージ通りのケーキなんて、生み出せるわけないわね」

魔法使いは ケーキを となえた! ▼

ショートケーキが あらわれた! ▼
チョコレートケーキが あらわれた! ▼
チーズケーキが あらわれた! ▼

勇者「お。おおおおっ! すごいっ!!」

魔使♀「偶然とはいえ、きっかけをくれたあなたには感謝をしておくわ」

魔使♀「もっとも、『感謝をしておく』で謝辞を間に合わせる形でいいわね」

勇者「はは、相変わらず素直じゃないな」

魔使♀「何か言ったかしら?」

勇者「言ったさ」

勇者「メリークリスマス、魔使使い!」

魔使♀「そう。そうだったわね」



魔使♀「メリークリスマス、勇者」

魔法使いルート END




85: <賢者ルート> 2012/01/11(水) 04:31:56.73 ID:SezphGESo

【北西のほこら】

勇者「メリークリスマス、賢者!」

賢者♀「……」

賢者♀「…………!」

賢者♀(あっ)

賢者♀(勇者っ!)

勇者「悪い、かなりご無沙汰だったな」

賢者♀(……何しに来たの?)

勇者「もちろんお前に会いに来たんだよ」

勇者「お前はこーんなに寂しくて冷たいほこらに、独りぼっちだもんな」

賢者♀(寂しくなんかない、もう慣れたし)

勇者「でも、一歩も魔方陣から出られず、ただひたすら眠るだけって相当ヒマだろ?」

賢者♀(ただ眠ってる訳じゃなくて、ここを封印するための魔力を供給しているの!)

勇者「分かってるって。お前のおかげで、異世界へ続く扉は閉じられたままだ」

勇者「だけど俺が魔王を倒すまで、お前はずっとそこに独りぼっちってわけだ」

賢者♀(何よその言い方。別に私は平気だって言ってるし)

勇者「どうかなー」  賢者♀(何よもうっ)




86: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/11(水) 04:34:17.91 ID:SezphGESo


勇者「よいしょっと。うへー床も冷たい。お前寒くないのか?」

賢者♀(私がここに何年居座ってると思ってるの)

勇者「3年だ」

賢者♀(3年と4ヶ月!)

勇者「はは、やっぱり寂しいんじゃないか」

賢者♀(だから寂しくなんかないって。普段は眠ってるし)

勇者「ふうん。それにしても、傍目には起きてるのか眠っているのか全然分からないなー」

賢者♀(前も言ったでしょ。起きても目も開けられないし、指先だって動かせないの)

勇者「なら、魔王が倒れるまでずっと眠ってるわけにはいかないのか?」

賢者♀(だからそうもいかないの。ときどき起きて、ちゃんと魔法陣に魔力を供給しないと)

勇者「そうかー。やっぱり冒険なんかより、よっぽど大変そうだな」

賢者♀(そう? 気楽なものよ。ここは絶対安全だし、食事もお風呂も要らないし)

勇者「でも、独りぼっちだ。俺だったらきっと耐えられない、気が狂いそうになる」

賢者♀(良かったわね、私が勇者じゃなくて)

賢者♀(こんな役回りを務められるのは、私ぐらいのものよ)

勇者「うん……本当に感謝している」

賢者♀(べ、別にどうってこと……)




87: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/11(水) 04:35:19.22 ID:SezphGESo


賢者♀(……他のみんなは?)

勇者「ああ、今日はパーティー全員休みなんだ。賢者、今日が何の日か知ってるか?」

賢者♀(馬鹿にしないで。クリスマスでしょ)

賢者♀(とある宗教の神が生まれた日とされているけど、正確には違うかも)

賢者♀(確か文献によれば、その神の降誕を記念する祭日、とされていたはずよ)

勇者「すごいな! 3年間その状態なのに」

賢者♀(拘束前の知識なら、いつでも楽に引き出せるの。こう見えて私は賢者なんだから)

賢者♀(それに3年間この状態っていっても、頭はしっかり3年間働いているの)

賢者♀(頭の中での物事の考察なんて、飽きるほどやってるわ)

賢者♀(もし自由になったら、試してみたい呪文もたくさんあるし)

勇者「!」

賢者♀(あ……)

賢者♀(い、今のは、もし自由になったら、って話で、別に他意はなくて)

賢者♀(自分の意志でここにいるんだから、いまはもちろん、この先もずっと平気)

賢者♀(あと10年、ううん、20年は平気なんだから)

勇者「……はは。それは頼もしいな」




88: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/11(水) 04:36:49.84 ID:SezphGESo


勇者「……それにしても本当に何もないとこだな。がらんどうだ」

賢者♀(あってもどうしようもないけどね。まぁ、人も魔物も滅多にこないけど)

勇者「話し相手もいないんじゃ、そりゃ相当のヒマだろうな」

賢者♀(あのね……もうそういう次元は、ここに居座ってから二日で通り越してるの)

勇者「はは。そりゃそうか」

賢者♀(今更ヒマがどうこういうなら、勇者の方はどうなの)

勇者「えっ?」

賢者♀(ここに来たって、ぴくりとも動かない口うるさい賢者が一人いるだけよ)

賢者♀(せっかくのクリスマスなんでしょ。もっと楽しい所に行けばいいじゃない)

勇者「『可愛い女の子と一緒に』、か?」

賢者♀(っ……)

勇者「はは、パターンが変わらないな。この手の流れなら俺が一枚上手だ」

賢者♀(な、何よ。そんな、分かった風に)

勇者「……まぁ、待ってろ」

勇者「すぐに魔王なんか片付けて、そっから出してやるからな」

賢者♀(別に急いでないって言ってる)

勇者「強がるなって」

賢者♀(もう、勝手なことばっかり……)




89: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/11(水) 04:37:46.37 ID:SezphGESo


勇者「ところで賢者。クリスマスを知っているなら、今どういう風習があるかも知ってるよな」

賢者♀(なに? プレゼントでも持ってきてくれたの?)

勇者「ああ。今日の俺は勇者サンタってわけだ」

賢者♀(ねえ、分かってる? 私いま動けないし、目も開けられないってこと)

勇者「当たり前だ。もちろんそれを踏まえてのプレゼントだ」

賢者♀(えっ……?)

勇者「えと……どこだったかな……」

賢者♀(……)

勇者「あ、いま期待してるだろ?」

賢者♀(し、してないっ)

勇者「まぁその期待に添えられるかどうか分からないけど」

賢者♀(だからしてないってっ)

勇者「あったこれだ。魔法のペンダント」

賢者♀(えっ? 魔法のって……それ、本物なの?)

勇者「すごいな。やっぱり知っているのか」

賢者♀(まさかそれ……)

勇者「ああ、本物だ。手に入れるのには苦労したんだぜ」




90: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/11(水) 04:39:19.67 ID:SezphGESo


勇者「西の方まで足を運んで作ってもらったんだ。これを魔力のある者が持って念じれば――」

勇者「ペンダントに刻んだ思い出を、頭の中で好きに映像化して再生することができる」

賢者♀(思い出って……?)

勇者「もちろん、お前が俺のパーティーにいた頃の思い出だ」

賢者♀(!!)

勇者「ま、言うなればその、あれだ。『あいのおもいで』って奴かな」

賢者♀(ば、ばかっ!)

勇者「はは。やっぱりこっ恥ずかしくなるな、俺もお前も」

賢者♀(もう訳分かんないっ)

勇者「でだ。こいつをとりあえず、お前の手に触れさせたいんだけど」

勇者「魔方陣の中に投げ込んでも大丈夫かな、賢者」

賢者♀(し、知らない……試したこともないし……)

勇者「えいっ!」

賢者♀(あ!)

勇者「お。おー良かった。大丈夫みたいだ。手にも触れてるな」

賢者♀(も、もうっ、万一のことが起きたらどうするのっ)

勇者「はは。……まぁ」

勇者「こんな状況そのものが、俺にとってはすでに『万一のこと』なんだけどな……」




91: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/11(水) 04:40:01.11 ID:SezphGESo


勇者「ちょっと試しに、ペンダントに意識を集中してみてくれよ」

賢者♀(う、うん……)

勇者「……」

賢者♀(あ……すごい。これ、本物……)

賢者♀(次々にイメージが流れ込んでくる……)

勇者「そっか。それはよかった」

賢者♀(うん。…………――)



勇者「……ん」

勇者「おい。涙か? それ」

賢者♀(……えっ?)

勇者「泣いてるのか?」

賢者♀(……うん……なんだか、すごく懐かしくなっちゃった……)

勇者「そっか」

勇者「ごめんな。拭いてやれなくて」

賢者♀(……大丈夫……平気だから……)




92: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/11(水) 04:41:07.31 ID:SezphGESo


勇者「まぁ、それがあれば、少しはヒマも潰せるだろう」

賢者♀(……うん。ありがと……)

勇者「……じゃ、仲間も戻っている頃だし、俺はそろそろ行くよ」

賢者♀(!!)

勇者「よいっしょっと」

賢者♀『待って! 行かないで!!』

勇者「!?」

賢者♀(わ、私も……)

賢者♀(私も連れて……――)

勇者「……」

賢者♀(……)

賢者♀(ごめんなさい……)

賢者♀(……先代の守護者から、この場所を受け継いだ瞬間から……)

賢者♀(こうなることは覚悟の上だったのに……)

賢者♀(私、決心していたはずなのに……)

勇者「……」

賢者♀(もっと……勇者の声を……)

勇者「……賢者……」




93: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/11(水) 04:42:21.89 ID:SezphGESo


勇者「俺は勇者だ」

勇者「家族も、友人も、この世界の人々も……仲間も、等しく救いたいと思っている」

勇者「何ひとつ犠牲にしない代わりに、残酷なまでに全てを『等しく』救いたいと思っている」

勇者「今の賢者の状態は、魔王を倒すことで救える。だから――」

賢者♀(うん……分かってる。天秤にはかけられないっていうこと)

賢者♀(私がこの場を一度でも離れたら、異世界から新たな脅威が雪崩れ込んでくるかもしれない)

賢者♀(ううん、魔王が目を付けていた以上、きっと雪崩れこんでくる)

勇者「……そうだな」

賢者♀(――ごめんなさい。さっきのは、ちょっとだけ)

賢者♀(ほんのちょっとだけ、弱音を吐き出したかっただけ)

勇者「……」

賢者♀(もう、行きなさいよ、勇者)

賢者♀(寒いんでしょ。勇者の身体が、冷えちゃう)

賢者♀(私は平気だから……)

勇者「……ごめんな。無理をさせて」

賢者♀(無理なんてしてない。それに勇者が謝ることじゃない)

勇者「……」




94: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/01/11(水) 04:43:47.77 ID:SezphGESo


勇者「俺はこの数年間な、賢者」

賢者♀(なに?)

勇者「『なんでよりによって賢者が』って思ったことも」

勇者「『異世界の脅威なんてどうにでもなる』って思ったことも」

勇者「……『今すぐ賢者に触れたい』って思ったことも、数え切れないほどある」

賢者♀(えっ……?)

勇者「でも俺はその度に胸を握りつぶして、勇者であり続けた」

勇者「最後に何の憂いもない結末を迎えるために、勇者であり続けたんだ」

賢者♀(……うん……)

勇者「だから、賢者。もう少しだけここで耐えてくれ」

勇者「魔王を倒したら、すぐに迎えにいく。すぐにだ」

勇者「その日まで……そのクリスマスプレゼントを、預かっていてくれ」

賢者♀(うん……分かった。待ってる)

賢者♀(それと……)

勇者「ん?」

賢者♀(ありがと。……うれしかった……)

勇者「うん。それは、良かった」

勇者「――……じゃあな、賢者。メリークリスマス!」

賢者♀(うん……)



賢者♀(メリークリスマス、勇者――)

賢者ルート END




97: <????ルート> 2012/01/15(日) 00:31:23.76 ID:o5pPfw2fo

【魔大陸・近海孤島の家】

勇者「メリークリスマス! 俺!」

勇者「……」

勇者(はぁ……今ごろ世間じゃみんな楽しくやってるんだろうな)

勇者(身内と盛大にパーティー開いてワイワイ騒いだり)

勇者(恋人にプレゼント渡してイチャイチャしたり)

勇者(……果たしてクリスマスにいるのだろうか)

勇者(こんな誰も訪れないような孤島で……孤独に一日を過ごす人間なんて)

勇者「……」

勇者(俺もこんな世界のド真ん中じゃなくて、外側の大陸に生まれたかったな)

勇者(来たる日が来るまでここにいろ、って言われてもな)

勇者(こんな島じゃ出てくる魔物は変わらないし、ダンジョンなんてないし)

勇者(パーティーがいないどころか、冒険もできないんじゃ完全なハズレ役だよな)

勇者(もはや俺が勇者である必要もないくらいだ。そもそも勇者って何だっけ)

勇者(勇者って――俺って何だっけ)

勇者「……」

勇者(ああ。家の中でも寒い。明かりがあるのに薄暗い)

勇者(お腹も減った。のども渇いた)

勇者(寂しい)

勇者(……)

勇者(……誰か)

勇者(……誰か来てくれないかな……)





98: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/01/15(日) 00:33:07.15 ID:o5pPfw2fo


コン コン

勇者「ん?」

コン コン

勇者(ほ、ほんとに誰か来た!?)

勇者(い、いや落ち着け、もしかしたら魔物かも)

勇者(あれーでも魔物って、ドアをノックする習慣なんてあったっけ)

コン コン

*「あれーおかしいな。寝てるのかな」

勇者「!!」

勇者「ど」

勇者「どなたですか」

*「おっ勇者か? 俺だよ」

*「勇者だよ」

勇者「!!」

勇者「そっ」

勇者「その声は――!」


ガチャ





99: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/01/15(日) 00:34:45.41 ID:o5pPfw2fo


北の勇者「メリークリスマス、勇者!」

勇者「おおおおっ! 北の勇者じゃないか!!」

北「久しぶりだな。最後の勇者会議はいつだったっけ?」

勇者「もう覚えてないくらいだ! 今日は一体どうしたんだ?」

北「いやー、お前クリスマスでも一人ぼっちなんじゃないかなーと思ってさ」

勇者「案の定だ! 歓迎するぜ!」

北「オーケー。なら……ほら」

勇者「なんだそれ?」

北「クリスマスプレゼントだ」

勇者「お。おおおお!」

北「マフラー、てぶくろ、ぼうし、とこれだけありゃ大丈夫だろ」

勇者「ほ、本当にもらっていいのか?」

北「一番いいのを見繕ってきたんだ。それにまだ余ってる。ありがたく受け取っときな」

勇者「部屋が寒いからちょうど欲しかったんだ! ありがとう、北の勇者サンタ!」

勇者は マフラー てぶくろ ぼうしを そうびした! ▼

勇者「あったかい!!」

北「だろ? なんせ北国育ちの僧侶が認めるあったかさだからな」

勇者「僧侶? お、おい、それって女の子か?」

北「あ。ああいや、その、まだ正式に恋人になったわけじゃないけど」

勇者「恋人!? お前、ここに来る前なにしてたんだ!?」

北「な、なんでもないって」  勇者「おいちょっと待て!」


コン コン

勇者&北「!」




100: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/01/15(日) 00:36:48.37 ID:o5pPfw2fo


北東の勇者「メリークリスマス、勇者!」

勇者「おお! 北東の勇者じゃないか!」

北東「おろ意外だ、先客がいるな。よう北の勇者!」

北「いよう、元気だったか?」

北東「元気すぎて、死ぬほどおどるほうせき狩りまくったくらいだぜ」

北「クリスマスに稼ぎか? 殊勝なやつだなー」

北東「まぁな。でもその後、盗賊と一緒に楽しい時間を過ごせたし」

勇者「な、なんだって? 盗賊って女の子か!?」

北「た、楽しい時間って具体的にどんな? いかん、負けてるかも」

北東「えっ? 負けてるってどういう意味だ? お前もしかして恋人いるのか!?」

北「えっ? だから今は盗賊の話を――」

勇者「えっ?」  北東「えっ?」  北「えっ?」

北東「メリークリスマス、勇者!!」

勇者「お、おお! わざわざ足を運んでくれてありがとうな!」

北東「たくさん宝石持ってきた!」ザラザラザラ

北「うわっいきなりなんだ!」

北東「よく見ると薄暗い家だよな! だから飾りつけでもしないか!?」

勇者「ど、どういう発想だよ」

北東「ふふふ。明るくなると元気も出るし心もあったまるんだぜ?」

北「ふうん、面白そうだな」

勇者「うん、正直面白そうだ」

北東「よーし、いっちょう家の中を宝石まみれにしてみよう!」

北東「それが俺からお前に捧げるクリスマスプレゼントだ!!」

北「ありだな」

勇者「ありだな! よしやろうウッヒョー!」




101: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/01/15(日) 00:37:59.97 ID:o5pPfw2fo


――

コン コン

勇者「どうぞー」

東の勇者「よう、メリーkってなんじゃこりゃあ!?」

北「メリークリスマス、東の勇者!」

北東「ようこそ我らの豪邸へ!」

東「ま、待て、なんでお前たちまでいるんだ?」

北「お前と同じだよ」

勇者「わざわざ来てくれてありがとう!」

東「あ、ああ。にしてもなんでこんな宝石ばっかり……」

北東「お、なんだその袋。美味しそうなにおいがする!」

東「そうだった。これを届けに来たんだ。クリスマスプレゼントさ」

東の勇者は ふくろの中身を開けた! ▼

なんとふくろには たくさんの食べ物が はいっていた! ▼

勇者「おおお! すごい、色とりどりのフルーツがたくさんあと野菜!」

北「ほえーすごいもんだな」

東「俺が担当している地方の山で採れるんだ。まぁこれだけ集めるのは苦労したけど」

北東「うまそうだ! これ食べてもいいか?」

東「もちろんだ。皆で食べよう」

勇者「あ、ありがとう、東の勇者!」

東「まあ一人で食べるより、誰かと一緒にいた方がご馳走になるもんだしな」

北「なんか悪いなぁ。お、生野菜も入ってる」

東「ああ、スープか鍋用に持ってきたんだ。あとでちょっと厨房借りるぞ」

勇者「ありがとう、ありがとう!!」

勇者「うおおおこのフルーツ超美味い! 美味しい!」  北東「がつがつ」





102: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/01/15(日) 00:41:23.38 ID:o5pPfw2fo


――以下前略――

南東の勇者「――ああ、そういうことなら俺もワインを持ってきたぞ」

勇者「な、なんと!」

南東「ほらよ。メリークリスマス!」

勇者「キャッチ! おお、ボトルたっぷり美味そうなワインだ!」

勇者「さっそく開けてもいいか?」

南東「もちろんだ。その代わり……」

勇者「?」

南東「そのマーク。『極南東の雑貨屋』っていう店のシンボルなんだが」

南東「胸に深く刻み込んでいてくれ。いずれは世界一になる店だぜ!」

勇者「わかった、覚えておこう!」

南東「あとはまぁ、南東地方に寄ることがあったら本店があるから」

南東「その時はぜひ買い物していってくれよな」

北「なんだ? ずいぶん宣伝するじゃないか。何かひいきにする理由でもあるのか?」

南東「さ、さーてな。でもまぁ……応援したい奴がいる、とだけ」

勇者「ちょ、ちょっとどういうことだ! 女の子か!?」

南東「ど、どうでもいいだろ? それより、ボトル開けたんなら早く飲んでみな」

勇者「あ、ああ……。! う、美味い!? 胸の奥からあったまるぞ!!」

北「こ、これはすごいな。持って帰りたいぐらいだ」

南東「飲ませたい相手でもいるのか? なら『極南東の雑貨屋』をよろしくな!」

東「おぉ、ワインか……調味料にも使えるかな」   北東「あ! この酒うまい!!」





103: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/01/15(日) 00:43:24.21 ID:o5pPfw2fo


――

南の勇者「――ああ、ちょうどよかった。どうやって処分しようか困ってたんだ」

南「よいっしょっ! メリークリスマス!!」

勇者「うわ、肉が山盛り! どうしたんだこれ?」

南「山狩りみたいなことにつき合わされた結果だ。戦士が全部持って帰れって」

勇者「クリスマスにか? 血気盛んな奴をパーティーに組んだんだな」

南「でも忍耐強いし、カッコイイし、おまけに恥ずかしがり屋なんだぜ!」

勇者「ふうん……恥ずかしがり屋……」

北「かわいいおっさんなんだな」

南「おっさんじゃねーよ! 酒場の野郎どもも生唾のみこむ、美人姉御だぜ!」

北「何!?」

勇者「待ておいちょっと! ちょっとそれどういうことか詳しく!」

南「まー細かいことはおいといてほら肉! 肉をくらえ!!」

勇者「おわあ!」

南東「おお、こいつぁ『あばれうしどり』に『おおにわとり』か? いい食材だねぇ」

東「助かった! いま鍋作ってるんだけど、肉だけなくて困ってたんだよ!」

北東「これで肉が食える! それだけでここに来た甲斐があった!」

南「お、ワインがあるな。ちょっと飲んでもいいか?」

南東「『極南東の雑貨屋』をよろしくな!」

北東「へっぷし! さ、寒いな」

北「防寒具ならあるぜ、ほらよ」 >ありがとう!


勇者「なんかますます賑やかになってきたなーっ」





104: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/01/15(日) 00:47:39.69 ID:o5pPfw2fo


――

南西の勇者「……な、何だこのどんちゃん騒ぎは!」

勇者「南西の勇者! お前も来てくれたのか!」

南西「あ、ああ。お前一人じゃ寂しいだろうなと思って」

勇者「ありがとう! 確かに、ほんの数時間前は孤独死しそうだったよ」

南東「お前も何か持ち込んできてくれたのか?」

南西「あ、ああ、一応。でもこれ、要らないかもな……」

北東「食い物か!?」

東「食材なら間に合っているんだが……」

勇者「なんだっていいよ! 皆で分け合おう!」

南西「分け合うったって、これだぞ」

 ~♪ ~♪ ~♪
 
北「おお、オルゴールか! しかもこの曲はクリスマスソング」

南「悪くないな。部屋の隅にでも置いとけばいいんじゃないか」

南東「室内の音楽を舐めちゃいけないぞ。ある店とない店とじゃ雲泥の差だ」

勇者「おかげで一層ムードが盛り上がりそうだ! ありがとうな!」

南西「まぁこれ以上盛り上がってもしょうがなさそうだが……はは」

南西「じゃ、まあ、あれだ。これをプレゼント代わりにメリークリスマス、ってね」

北東「ん、盗賊みたいな言い回しだな」

南西「何の話だ?」

北「いや実は、どうも皆すでに楽しいクリスマスを過ごしてるみたいで」

勇者「あーっ、そうだよみんな!」

勇者「はぐらかされてばっかだけど、実はみんな恋人みたいな相手がいたりいなかったりで――」





105: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/01/15(日) 00:50:19.96 ID:o5pPfw2fo


――

西の勇者「な、なななな何事!?」

勇者「いらっしゃーい!」

西「えっ、えっ、勇者会議って今日だっけ!?」

勇者「俺が独りじゃ寂しいだろうからって、皆わざわざ駆けつけてくれたんだ!」

南西「よう西の勇者! お前は何を持ってきてくれたんだ?」

西「あ、ああ、ケーキだけど」

東西南北「!!」

西「どっさり持ってきたぞ。メリー・クリスマ――」

北東「ケーキだぁああ!!」

南「お、おれにまかせろー!!」

西「うわわっ! お前らハイエナか! ハイエナ勇者なのか!」

北「すごいなこれ、たくさん種類がある」

西「ちょいと魔法使いの試作に付き合ってな。たくさん余ったんだ」

南東「ふうん、魔法使いがね。ケーキ作りなんていい趣味してるじゃないか」

西「いやこれ、実は呪文で作ったんだ」  南東「はっ?」

勇者「わざわざありがとうな。まぁ奥に座れよ」

西「すまないな。すまないついでに、ちょっとのどが渇いてるんだけど」

南東「ほいよっ。ワインボトル」

西「ありがとう、南東の勇者。――ん、こいつはいいワインだ。販売元は?」

南東「『極南東の雑貨屋』だ。なんなら一本持っていくか?」

西「ありがとう。ケーキ受けしやすそうな味だから、あいつも喜んでくれるかな」

北「あいつって? もしかしてお前も?」

勇者「何なに、何の話だ?」


南「――へえ、バトルアックスの相場って本当に高かったんだな」

南西「そうそう。でもま、俺の地方にはカジノがあるから、もっといい武器が――」

北東「ケーキうんめええ!!」

東「こら一人でバクバク食べるなって、まだたくさんあるから!」

 わいわい  がやがや

 ――…… 



106: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/01/15(日) 00:52:28.37 ID:o5pPfw2fo


――

北西の勇者「で、俺が最後か」

勇者「ああ。だいぶ遅いから、今夜は全員揃わないかと思っていたぜ」

北西「まさに勇者パーティーってわけか。すごい惨状だな」

勇者「でもご覧のとーり、皆くたびれ果てて眠ってしまったよ」

北西「お前は起きてたのか?」

勇者「ああ。もしかしたらお前も来るんじゃないか、とか思って」

勇者「ほら、俺けっこう一人ぼっちが長いからさ、そういうの気にするんだ」

北西「ああ。一人ぼっちって、やっぱり辛いよな」

勇者「まぁな。今夜はひとしきり騒いで楽しかったけど、明日になれば元通り」

勇者「俺は次の勇者会議の日まで孤独に、また魔王城の監視生活ってわけだ」

北西「つかの間の夢まぼろし、といったところか?」

勇者「見方によってはそうなるかもしれないな。でもとにかく、皆には感謝してる」

北西「そうか。じゃあ、これを受け取れ」

勇者「おっと。これは? ペンダント?」

北西「そう、魔法のペンダント。お前へのクリスマスプレゼントだ」

北西「今日一日の思い出を、そのペンダントに流し込むように強く念じるんだ」

北西「そうすれば、褪せない思い出としていくらでも頭の中で再生できる」

勇者「そ、それはすごい! ありがとう!!」

北西「俺がここに来た目的は達した。じゃあ、もう行くぞ」

勇者「えっ、もう少しゆっくりしていかないか?」

北西「気持ちだけ受け取っておくよ。でも俺は、一刻も早く魔王を倒したいからな」

北西「倒さなければならない理由が、あるからな」

勇者「そうか……無理だけはするなよ」

北西「ああ、ありがとう。そしてメリークリスマス、世界の中心の勇者よ!」


北西の勇者は ルーラを唱えた! ▼





107: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/01/15(日) 00:54:52.63 ID:o5pPfw2fo


西の勇者「さて、俺も行くかな」

勇者「うわっ、いつの間に起きてたんだ!」

西「ついさっき。まぁ早く魔王を倒せば、それだけ早くあいつの憂さも晴れるだろうし」

西「妹とも再会しやすくなるだろうしな。じゃ、またな!」

西の勇者は ルーラを唱えた! ▼


南西の勇者「それじゃ俺も戻るか」

勇者「わっ。南西の勇者もか? っていうかみんなもう起きちゃってるみたいだな!」

南西「そりゃあんだけルーラの音が鳴ったらな」

南西「――で、ま。俺は今日集まった中で一番レベルが低かったからな」

南西「あいつの導いた『答え』を楽しみにしながら、自分なりに鍛錬を積むとするよ。じゃ!」

南西の勇者は ルーラを唱えた! ▼


南「なんたって俺はあいつにとって引き立て役だからな!」

南「せいぜいイイ噛ませ犬が演じられるように」

南「そしてビンタやどつきにも耐えられるよう、しっかり身の守りを鍛えてくるぜ!」

南の勇者は ルーラを唱えた! ▼


南東の勇者「魔王を倒して平和になったら、少しは商売に専念できるかな」

南東「ああいや、別に俺の話じゃないんだが――でも、そうだな」

南東「商人になるってのも悪くないかもな、うん。俺って意外と目が利くみたいだし」

南東「まぁまずは姉妹探しからだけどな。ああ、こっちの話。それじゃな!」

南東の勇者は ルーラを唱えた! ▼




108: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/01/15(日) 00:56:29.55 ID:o5pPfw2fo


東の勇者「南の勇者じゃないけど、俺も身の守り鍛えなきゃな」

東「あいつの鉄拳、冗談で受けたら冗談抜きで昇天しちゃうんだぜ?」

東「もちろん魔王も倒す! 食うに困らない村が、一つでも増えることを願ってな!」

東の勇者は ルーラを唱えた! ▼


北東の勇者「よく食べた! よく楽しんだ! よく笑った!」

北東「それだけできれば、より自分の富を増やす必要なんてないよな!」

北東「それだけできれば、誰かが人のモノ盗ろうとする必要なんてないよな!」

北東「魔王も含めて、世の中の歪みは全部俺が叩きなおして回るさ!」

北東の勇者は ルーラを唱えた! ▼


北の勇者「俺が最後か」

北「勇者。もし魔王を倒して世界に平和が訪れたら、すぐに外の大陸に来い」

北「そして、隣にいるだけで、まるで胸が切なくなるような――」

北「胸が締め付けられるような――そんな人を探すんだ」

北「大丈夫、長年ここで耐え忍ぶことができたお前なら、きっと運気も高まってる」

北「すぐに理想の相手に巡り会えるさ。俺が保証してやるよ!」

北「その時が来るまで、勝手に野垂れ死ぬんじゃないぞっ!」

北の勇者は ルーラを唱えた! ▼





109: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/01/15(日) 00:58:26.06 ID:o5pPfw2fo


――

勇者「みんな帰っちゃったか」

勇者「みんなのそれぞれの冒険が」

勇者「それぞれのクリスマスがあったんだなぁ」

勇者「そして俺なんかにも」

勇者「クリスマスがあってよかった」



勇者「……」

勇者(あの魔大陸の中心にある、魔王城)

勇者(人々を苦しめ、世界を混沌に導く元凶……それは分かってるけど)

勇者(分かってるけど……)

勇者(そんな奴でも一人ぼっちだったら、きっと寂しいだろうな……)

勇者(……)



勇者「ん!?」



勇者(いま、魔王城からルーラの光が散らばったような……)

勇者(気のせいかな)

勇者(もしかして……もしかして魔王も……)

勇者(……)



勇者(今は先のことを考えるのはやめよう)

勇者(今だけは、この世に生きるすべての者に……)



勇者(メリークリスマス……)



勇者(…………)




勇者「Zzz……」



勇者パーティールート END





110: ◆5aEzb.NanJbN 2012/01/15(日) 01:11:10.23 ID:o5pPfw2fo

25日のクリスマスから実に20日経っての完結
わざわざ付き合っていただいた方も本当にお疲れ様&ありがとうございました
それでは失礼します



112: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/01/15(日) 01:25:26.56 ID:trZBm2wDO

毎度方角が違う所にこんな複線があったとはwwwwwwwwww

最初から見てたけど、本当に心暖まる物語でした完結させてくれてありがとう!二十日遅れのメリークリスマス、>>1!



113: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(熊本県) 2012/01/15(日) 04:14:44.26 ID:3mqc5EPyo

おつ!スゲー面白かったわ
メリークリスマス!


元スレ
SS速報VIP:勇者「メリークリスマス!」