1: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)12:46:24 ID:u4a
たすけて。
めっちゃボコられてる。
みんな強い。
2: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)12:46:43 ID:u4a
「凛さん!スマブラやらない!?」
紗南一行に声を掛けられたのはついさっきのこと。
事務所のスイッチが開いてるから皆で遊ぼうって誘われたんだ。
あ、事務所のスイッチっていうのはもちろん電気がつくとかそういう話じゃなくって
お馴染み最新ゲーム機Nintend○ Switchのことだよ。
プロデューサーが自分も遊ぶって買って事務所に設置してくれたんだ。
まぁ流石は天下のゲーム会社の製品、毎日が人だかりだね。
みりあや仁奈や珠美や芳乃をはじめとする小学生勢から瑞樹さんや楓さんや雫さんや海さんたち大人組まで
色んな人が夢中になって遊んでる。もうゲームってのは子供だけの娯楽じゃないってよくわかるよ。
けどその人だかりのおかげで私はこのスイッチをまだ1回も触れていない。
ちょっと日頃からクールぶりすぎたのがいけないのかな。普段の私はクールな娘として認識されている。
そのせいで私はいつしか、私にもモノを貸して、って感じのことを素直に言えなくなった。なぜかこういうことを言うのがとても恥ずかしい。
けど私だってまだ15歳。こういったオモチャにも興味あるし遊んでみたいって思う。
そういうわけで、最近の私は悶々と、誰かのスイッチのプレーを後ろから眺めているような日々を過ごしていたんだ。
奏もどうやら同じ悩みを持ってるらしいけど、その話はまぁ置いといて、
そんな中、あの子たちは私を誘ってくれた。
そのメンバーは紗南、飛鳥、ありす、智絵里、麗奈。
全員がゲーム好きなアイドルだ。
一人で暇を持て余していた私に、スイッチが開いてるから皆で遊ぼうって言ってくれた。嬉しかった。
どうも他のアイドル達は年末営業で忙しく、いま事務所にいるのがちょうど私たちだけでこの子たちも暇らしい。
私は彼女たちの誘いを快諾し、皆の輪の中に加わった。
ちなみに本当は杏もいたんだけどきらりに攫われていったよ。2人で年越しそばを作るんだって。
6人でテレビの前に集まる。
入っているソフトは最初に述べた通りの大乱闘スマッシュブラザーズ。
色んなゲームのキャラが戦うパーティゲームでシリーズ化もしておりその歴史ももう10年以上続いている。
実はこのゲーム、私が未央の家に行ったとき結構遊ばせてもらったものである。
もちろんスイッチのソフトじゃない古いやつなんだけど、卯月と未央と未央弟を大人げもなく倒していったのを覚えている。
だから、問題ないと思っていた。
私はこの娘たちと互角に遊べると思っていた。
でも…こいつらは、格が違った。
結果は冒頭でも述べたけどそれはもうぼっこぼこにされたね。
相手をステージの外に落とすどころかダメージを与えるのが精いっぱいだった。
紗南はパックマンっていう黄色い球みたいなキャラを使っていた。
動きが変態的すぎる。上下左右縦横無尽に動き回っている。いや何その動き。絶対瞬間移動してるよね?ヘレンの魂でも宿ってるの?
飛鳥はルフレっていう白?黒?色の男のキャラを使っていた。
紗南と比べたらマシな動きなんだけど、それでも強い。雷で貫かれてやられた。飛鳥に凄いドヤ顔をされて悔しい。
ありすはマルスっていうなんか青い男のキャラを使っていた。
強いから使ってるんです!って聞いてもないのに言われた。思春期に入りかけているありすも可愛いね。けど私を躊躇なくざくざくと斬り刻んでくるのはあんまり可愛くないかな。
智絵里はリドリーっていうなんか鳥?ドラゴン?みたいなキャラを使っていた。
私の隣でごめんなさいごめんなさい…って弱弱しく言いながらも画面ではこれでもかというくらい執拗に私のキャラを掴んで右に左に轢き摺り回していた。怖かった。
麗奈はダックハントっていう犬を使っている。
近づくことすらできない。なんか缶みたいな罠を設置して非常に狡猾で頭脳的に私を追い詰めてくる。現実じゃあんなにポンコツなのにゲームの中だとこんなに恐ろしいのかこの子は。
と、いう訳で今に至る。
私のデデデではこの5人に勝つことができない。
「アイテムありでやろっか!モンスターボールで逆転狙お!」
紗南は私が勝てるように条件を付けてくれる。嬉しいけどそれはなんだか逃げたみたいで嫌だな。好意を足蹴にしているのはわかってるけど私のプライドが邪魔をする。
「ふっ…ボクはそこそこやり込んでるからね。凛さんが負けるのも当然さ」
「そういう飛鳥さんだって私と互角で6人の中じゃ最弱じゃないですか…まぁ凛さんはそれに負けたわけですけど」
飛鳥とありすは煽って来る。悔しい。けど実力差がありすぎるからどうしようもない。
6人、ってあと一人は誰…って杏か。なるほど。あの子は今日はいないけどもしいたら私はさらにボロ雑巾の様にされたという訳だね。
「ごめんなさい…けど…リドリー、使ってて楽しくて…!」
智絵里は手加減しなかったことを謝罪している。
だったらせめてあんな怖い技を使ってくるキャラを変えてせめてかわいいキャラを使って欲しいと言いたいところだが、
おそらくカービィあたりを使わせても智絵里は私を丸呑みにしてあっという間に消化してしまうだろう。
「えっと…そうだ!アタシと練習するわよ!一緒に遊べるくらい強くしてあげるわ!」
麗奈は私を特訓しようと言い出した。優しい。そんなんで悪の女王になれると思っているのだろうか。
けど今はみんなで遊んでいる。私と麗奈だけがスマブラを独占する訳にはいかないだろう。
…結局このあと日が暮れるまで私たちはスマブラに明け暮れたが
私がこの5人に勝利することは1回も無かった。
とは言えスイッチを触れて満足なのは間違いない。
負けっぱなしだったけどゲームも楽しかった。
また誘われたら遊んでみたいな。
そんな訳で、帰宅時間になった私は紗南たちに別れを告げ、帰路につくことに…
「ヒャッハアアアアアアアアア!ストップだぁ凛さん!!!」
びっくりした。何。
「フヒ…こんばんは…」
声の主は星輝子。美玲と一緒に乃々を独占している娘だ。
「凛さん…悔しくないのか?」
スマブラのこと?まぁ勝てなかったのは悔しいけど、そんな引っ張ることじゃ…
「甘ぁぁぁぁぁあああああああああああい!!それは甘えぞ凛さァァァァァんッ!!」
うわっ。いちいち叫ばないで。びっくりするから。
「あ、すまん…けどちょっと伝えたいことがあってな…」
伝えたいこと?
「ああ…ゲーム好きとして言いたい…」
輝子ってゲームするんだ。
「デレステのイベコミュを見てくれ…フヒ」
いべこみゅ???よくわかんないけど…
「まぁそれはいい…本題に入るぞ…」
「いいか聞いてくれ凛さん…」
「スマブラは…メタルであり、アイドルでもあるんだ」
!?!?!?!?!?
ど、どうしたの。そんな李衣菜みたいなこと言って。
「よく考えてみろ…スマブラにファイターとして参戦しているキャラクターを…」
え?うん、マリオにリンク…ソニックにスネークにクラウド…色んなのがいるよね。
「どうだ!!何か気づくことはないのか!?!?!?」
気づくこと?うーん…どのキャラも色とりどりの個性を持ってて楽しいとか…
「それだ!!!!!」
どれよ。
「ああ、スマブラの世界は個性の塊のファイターたちが殴り合う、嵐が巻き起こる世界だ…」
「これはアイドルやメタルでも同じだろ!?スマブラに通じるところがあると思わないか凛さァん!!!」
そ、そうなのかな。
「アイドルやメタルの世界は決して綺麗な世界とは言えない…他人を蹴落とし、のし上がっていく殺伐とした世界だ」
「その蹴落とすための武器は何だ!?そうだ!!アイドル達の持つ個性そのものだ!!!」
「そしてスマブラを見てみろ…」
「個性を持ったファイターたちが他のファイターを蹴落とし勝利している!!これってまんまアイドルの世界と同じじゃねーかヒャッハァー!!」
う、うん。そうだね。
…けど確かに一理ある気がしなくもない。
一応ではあるけど輝子の説明は理に適っているような気がする。
「そして凛さんはそのスマブラで完敗した!完膚なきまでに!!」
「つまりアイドルの世界なら引退モンだぞ!!だから悔しくないのか凛さぁぁぁんッ!!!!」
!!
私が…他人に敗れて引退…?
それは悔しいよ。だって…そんなのかっこ悪いじゃん。
「よし…なら特訓だ凛さん!!」
「美玲ちゃんがスマブラを買っている!うちの部屋で練習していけ!!」
わかった。行くよ!
なんでこうなったのかはまだ頭の整理が追い付いてないけど
私はスマブラの特訓をすることになった。
いや待ってなんでこうなったの。
なんでアイドルがスマブラの特訓することになってんの。
そしてそんなこんなで1カ月後
「あぁー!!もりくぼのリヒターが…!いともたやすく…」ボシュゥゥゥン
「う、ウチのガオガエンが!ダメージを与えることなく…」ボシュゥゥゥン
「強くなったな凛さん…私のルイージを倒すなんて」ボシュゥゥゥン
私は圧倒的に強くなっていた。
高ぶる本能。溢れる知能。そしてそれらを補う指の運動神経。全てが完璧だ。
もはや今の私にインディヴィジュアルズみたいなエンジョイゲーマーなんて相手にならない。
紗南や杏を連れてきてほしい。
今の私の身体は、完全に闘争を求めている。
さぁ…今こそリベンジの時だよ!
私のウルフで、紗南を倒して見せる!
そして決戦の日。私は紗南にスマブラの果たし状を叩きつけておいたのだ。
もちろん紗南は乗った。
今、私と紗南は事務所のテレビの前で熱い戦いを繰り広げている。
「凛さん!すごい!いつのまにこんなに強くなったの…!?」
「しぶりん…1カ月見ないと思ってたらこんなことに…」
「さぁ張った張った!紗南ちゃんに3倍!凛ちゃんに5倍ですっ!!」
戦いは事務所を巻き込んで一大イベントとなっていた。
第3回シンデレラガールVS最強ゲーマーアイドル。
その決戦の噂は事務所中に広がり、今もまさに観客で事務所が一杯だ。冬なのに熱気がやばい。
プロデューサーもまさか部屋に180人以上入って来るなんて思ってなかっただろう。
彼は部屋の隅で人混みに押しつぶされている。大丈夫だろうか。
話をスマブラに戻す。
紗南の動きは本当に凄い。隙が無い。それでいて相手をよく見ている。私はとにかく逃げ回るしかない。
下手に反撃しようとするとカウンターを喰らって死ぬだろう。まさに攻めも守りも完璧と言ったところだ。
「凛さん回避が上手いね!けど…私には通用しないよ!!」
紗南は逃げ回る私をすぐに追い詰める。私も飛び道具で必死に応戦するがダメージはちょっとずつしか稼げず勝利は遠い。
戦況は一見超劣勢。だけどこのダメージの積み重ねこそ、紗南に勝つ私の秘策だ。
私は紗南から懸命に逃げ回りながらちまちまと紗南にダメージを重ねていく。
輝子は言った。
「いいか凛さん!アイドルもスマブラも一緒だ!奴らは全員濃い!個性の嵐だ!!」
「故に勝つためには敵を知ることが一番大事だ!!相手を知れば、そいつの脅威は取り払われる!!」
そうだ、それはアイドルもスマブラも一緒だ。
私にも共演するのが苦手な人がいた。私のことを高圧的な態度で圧倒しようとする芸能人だ。
そこで私はその人のことを研究し、うまく付き合う術を覚えた。結果、その人は私のことを邪険にすることはあんまりなくなった。
そう、それはアイドルもスマブラも一緒なんだ!
彼女の性格を思い出せ。紗南は基礎を固めるのが非常にうまい。紗南は私の隙を見つけ次第、強力な技をねじ込んでくるはずだ。
なら私はあえて…隙を見せる!!
「もらったよ凛さん!スマッシュ!!」
当然こっちに向かってくる紗南。読み通りだよ!
もちろんその隙は当然ブラフ!私のキャラは紗南の一撃を防ぐ!
そして紗南の操作にいくら隙がなくても、キャラ性能としての隙は必ず存在する!
「あっ!?ガード!?しまった、読まれて…!」
その紗南の技には硬直が大きいことを私は知っている!
私は紗南に向かって逆にスマッシュを繰り出す!!
「…!あたしが負けた…!すごい!強いんだね凛さん!」
ゲームセット。
勝った。紗南に勝った。
私はスマブラでアイドルの頂点に立った。つまり私が、トップアイドルってことだ。
「ええっ凛が紗南に勝った!?あいつ強かったんだな!」
「凛さん…やったな…!私は嬉しいぞ…!フヒ…♪」
「ああー!私の賭け金が…!そんなぁー!!」
会場が歓声に包まれる。その声も聴いて、私も嬉しくなる。
「凛さん、強かったよ!あの頃とは別人みたい!」
紗南も私の勝利を祝ってくれている。
この子は良い子だ。ゲーマーの鑑か。
「けど、あたしだってまだまだ負けないよ!」
「例え蹴落とされたとしてもすぐに戻ってくるから!スマブラみたいにねっ!」
事実上の紗南のリベンジ宣言。その目はにこやかだけど、熱い闘志に燃えている。
ふふっ、私も負けてられないね。いつまでもステージにいられるように、腕を磨くよ。
私と紗南は握手をする。
再び、2人がスマブラという、アイドルという戦場で会えることを祈って。
その後。
1カ月レッスンをサボっていた私は
マストレさんのレッスンで貧血で倒れることになった。
おわり
シリアスものを書けて満足です。
元スレ
「凛さん!スマブラやらない!?」
紗南一行に声を掛けられたのはついさっきのこと。
事務所のスイッチが開いてるから皆で遊ぼうって誘われたんだ。
あ、事務所のスイッチっていうのはもちろん電気がつくとかそういう話じゃなくって
お馴染み最新ゲーム機Nintend○ Switchのことだよ。
プロデューサーが自分も遊ぶって買って事務所に設置してくれたんだ。
3: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)12:47:31 ID:u4a
まぁ流石は天下のゲーム会社の製品、毎日が人だかりだね。
みりあや仁奈や珠美や芳乃をはじめとする小学生勢から瑞樹さんや楓さんや雫さんや海さんたち大人組まで
色んな人が夢中になって遊んでる。もうゲームってのは子供だけの娯楽じゃないってよくわかるよ。
けどその人だかりのおかげで私はこのスイッチをまだ1回も触れていない。
ちょっと日頃からクールぶりすぎたのがいけないのかな。普段の私はクールな娘として認識されている。
そのせいで私はいつしか、私にもモノを貸して、って感じのことを素直に言えなくなった。なぜかこういうことを言うのがとても恥ずかしい。
けど私だってまだ15歳。こういったオモチャにも興味あるし遊んでみたいって思う。
そういうわけで、最近の私は悶々と、誰かのスイッチのプレーを後ろから眺めているような日々を過ごしていたんだ。
奏もどうやら同じ悩みを持ってるらしいけど、その話はまぁ置いといて、
そんな中、あの子たちは私を誘ってくれた。
4: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)12:47:57 ID:u4a
そのメンバーは紗南、飛鳥、ありす、智絵里、麗奈。
全員がゲーム好きなアイドルだ。
一人で暇を持て余していた私に、スイッチが開いてるから皆で遊ぼうって言ってくれた。嬉しかった。
どうも他のアイドル達は年末営業で忙しく、いま事務所にいるのがちょうど私たちだけでこの子たちも暇らしい。
私は彼女たちの誘いを快諾し、皆の輪の中に加わった。
ちなみに本当は杏もいたんだけどきらりに攫われていったよ。2人で年越しそばを作るんだって。
5: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)12:48:11 ID:u4a
6人でテレビの前に集まる。
入っているソフトは最初に述べた通りの大乱闘スマッシュブラザーズ。
色んなゲームのキャラが戦うパーティゲームでシリーズ化もしておりその歴史ももう10年以上続いている。
実はこのゲーム、私が未央の家に行ったとき結構遊ばせてもらったものである。
もちろんスイッチのソフトじゃない古いやつなんだけど、卯月と未央と未央弟を大人げもなく倒していったのを覚えている。
だから、問題ないと思っていた。
私はこの娘たちと互角に遊べると思っていた。
でも…こいつらは、格が違った。
6: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)12:48:29 ID:u4a
結果は冒頭でも述べたけどそれはもうぼっこぼこにされたね。
相手をステージの外に落とすどころかダメージを与えるのが精いっぱいだった。
紗南はパックマンっていう黄色い球みたいなキャラを使っていた。
動きが変態的すぎる。上下左右縦横無尽に動き回っている。いや何その動き。絶対瞬間移動してるよね?ヘレンの魂でも宿ってるの?
飛鳥はルフレっていう白?黒?色の男のキャラを使っていた。
紗南と比べたらマシな動きなんだけど、それでも強い。雷で貫かれてやられた。飛鳥に凄いドヤ顔をされて悔しい。
ありすはマルスっていうなんか青い男のキャラを使っていた。
強いから使ってるんです!って聞いてもないのに言われた。思春期に入りかけているありすも可愛いね。けど私を躊躇なくざくざくと斬り刻んでくるのはあんまり可愛くないかな。
7: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)12:48:45 ID:u4a
智絵里はリドリーっていうなんか鳥?ドラゴン?みたいなキャラを使っていた。
私の隣でごめんなさいごめんなさい…って弱弱しく言いながらも画面ではこれでもかというくらい執拗に私のキャラを掴んで右に左に轢き摺り回していた。怖かった。
麗奈はダックハントっていう犬を使っている。
近づくことすらできない。なんか缶みたいな罠を設置して非常に狡猾で頭脳的に私を追い詰めてくる。現実じゃあんなにポンコツなのにゲームの中だとこんなに恐ろしいのかこの子は。
と、いう訳で今に至る。
私のデデデではこの5人に勝つことができない。
8: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)12:48:59 ID:u4a
「アイテムありでやろっか!モンスターボールで逆転狙お!」
紗南は私が勝てるように条件を付けてくれる。嬉しいけどそれはなんだか逃げたみたいで嫌だな。好意を足蹴にしているのはわかってるけど私のプライドが邪魔をする。
「ふっ…ボクはそこそこやり込んでるからね。凛さんが負けるのも当然さ」
「そういう飛鳥さんだって私と互角で6人の中じゃ最弱じゃないですか…まぁ凛さんはそれに負けたわけですけど」
飛鳥とありすは煽って来る。悔しい。けど実力差がありすぎるからどうしようもない。
6人、ってあと一人は誰…って杏か。なるほど。あの子は今日はいないけどもしいたら私はさらにボロ雑巾の様にされたという訳だね。
「ごめんなさい…けど…リドリー、使ってて楽しくて…!」
智絵里は手加減しなかったことを謝罪している。
だったらせめてあんな怖い技を使ってくるキャラを変えてせめてかわいいキャラを使って欲しいと言いたいところだが、
おそらくカービィあたりを使わせても智絵里は私を丸呑みにしてあっという間に消化してしまうだろう。
「えっと…そうだ!アタシと練習するわよ!一緒に遊べるくらい強くしてあげるわ!」
麗奈は私を特訓しようと言い出した。優しい。そんなんで悪の女王になれると思っているのだろうか。
けど今はみんなで遊んでいる。私と麗奈だけがスマブラを独占する訳にはいかないだろう。
…結局このあと日が暮れるまで私たちはスマブラに明け暮れたが
私がこの5人に勝利することは1回も無かった。
9: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)12:49:09 ID:u4a
とは言えスイッチを触れて満足なのは間違いない。
負けっぱなしだったけどゲームも楽しかった。
また誘われたら遊んでみたいな。
そんな訳で、帰宅時間になった私は紗南たちに別れを告げ、帰路につくことに…
「ヒャッハアアアアアアアアア!ストップだぁ凛さん!!!」
びっくりした。何。
10: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)13:02:41 ID:u4a
「フヒ…こんばんは…」
声の主は星輝子。美玲と一緒に乃々を独占している娘だ。
「凛さん…悔しくないのか?」
スマブラのこと?まぁ勝てなかったのは悔しいけど、そんな引っ張ることじゃ…
「甘ぁぁぁぁぁあああああああああああい!!それは甘えぞ凛さァァァァァんッ!!」
うわっ。いちいち叫ばないで。びっくりするから。
11: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)13:02:50 ID:u4a
「あ、すまん…けどちょっと伝えたいことがあってな…」
伝えたいこと?
「ああ…ゲーム好きとして言いたい…」
輝子ってゲームするんだ。
「デレステのイベコミュを見てくれ…フヒ」
いべこみゅ???よくわかんないけど…
「まぁそれはいい…本題に入るぞ…」
「いいか聞いてくれ凛さん…」
「スマブラは…メタルであり、アイドルでもあるんだ」
!?!?!?!?!?
12: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)13:03:07 ID:u4a
ど、どうしたの。そんな李衣菜みたいなこと言って。
「よく考えてみろ…スマブラにファイターとして参戦しているキャラクターを…」
え?うん、マリオにリンク…ソニックにスネークにクラウド…色んなのがいるよね。
「どうだ!!何か気づくことはないのか!?!?!?」
気づくこと?うーん…どのキャラも色とりどりの個性を持ってて楽しいとか…
「それだ!!!!!」
どれよ。
「ああ、スマブラの世界は個性の塊のファイターたちが殴り合う、嵐が巻き起こる世界だ…」
「これはアイドルやメタルでも同じだろ!?スマブラに通じるところがあると思わないか凛さァん!!!」
そ、そうなのかな。
13: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)13:03:21 ID:u4a
「アイドルやメタルの世界は決して綺麗な世界とは言えない…他人を蹴落とし、のし上がっていく殺伐とした世界だ」
「その蹴落とすための武器は何だ!?そうだ!!アイドル達の持つ個性そのものだ!!!」
「そしてスマブラを見てみろ…」
「個性を持ったファイターたちが他のファイターを蹴落とし勝利している!!これってまんまアイドルの世界と同じじゃねーかヒャッハァー!!」
う、うん。そうだね。
…けど確かに一理ある気がしなくもない。
一応ではあるけど輝子の説明は理に適っているような気がする。
14: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)13:03:34 ID:u4a
「そして凛さんはそのスマブラで完敗した!完膚なきまでに!!」
「つまりアイドルの世界なら引退モンだぞ!!だから悔しくないのか凛さぁぁぁんッ!!!!」
!!
私が…他人に敗れて引退…?
それは悔しいよ。だって…そんなのかっこ悪いじゃん。
「よし…なら特訓だ凛さん!!」
「美玲ちゃんがスマブラを買っている!うちの部屋で練習していけ!!」
わかった。行くよ!
なんでこうなったのかはまだ頭の整理が追い付いてないけど
私はスマブラの特訓をすることになった。
いや待ってなんでこうなったの。
なんでアイドルがスマブラの特訓することになってんの。
15: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)13:04:01 ID:u4a
そしてそんなこんなで1カ月後
「あぁー!!もりくぼのリヒターが…!いともたやすく…」ボシュゥゥゥン
「う、ウチのガオガエンが!ダメージを与えることなく…」ボシュゥゥゥン
「強くなったな凛さん…私のルイージを倒すなんて」ボシュゥゥゥン
私は圧倒的に強くなっていた。
高ぶる本能。溢れる知能。そしてそれらを補う指の運動神経。全てが完璧だ。
もはや今の私にインディヴィジュアルズみたいなエンジョイゲーマーなんて相手にならない。
紗南や杏を連れてきてほしい。
今の私の身体は、完全に闘争を求めている。
さぁ…今こそリベンジの時だよ!
私のウルフで、紗南を倒して見せる!
16: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)13:04:17 ID:u4a
そして決戦の日。私は紗南にスマブラの果たし状を叩きつけておいたのだ。
もちろん紗南は乗った。
今、私と紗南は事務所のテレビの前で熱い戦いを繰り広げている。
「凛さん!すごい!いつのまにこんなに強くなったの…!?」
「しぶりん…1カ月見ないと思ってたらこんなことに…」
「さぁ張った張った!紗南ちゃんに3倍!凛ちゃんに5倍ですっ!!」
戦いは事務所を巻き込んで一大イベントとなっていた。
第3回シンデレラガールVS最強ゲーマーアイドル。
その決戦の噂は事務所中に広がり、今もまさに観客で事務所が一杯だ。冬なのに熱気がやばい。
プロデューサーもまさか部屋に180人以上入って来るなんて思ってなかっただろう。
彼は部屋の隅で人混みに押しつぶされている。大丈夫だろうか。
17: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)13:04:37 ID:u4a
話をスマブラに戻す。
紗南の動きは本当に凄い。隙が無い。それでいて相手をよく見ている。私はとにかく逃げ回るしかない。
下手に反撃しようとするとカウンターを喰らって死ぬだろう。まさに攻めも守りも完璧と言ったところだ。
「凛さん回避が上手いね!けど…私には通用しないよ!!」
紗南は逃げ回る私をすぐに追い詰める。私も飛び道具で必死に応戦するがダメージはちょっとずつしか稼げず勝利は遠い。
戦況は一見超劣勢。だけどこのダメージの積み重ねこそ、紗南に勝つ私の秘策だ。
私は紗南から懸命に逃げ回りながらちまちまと紗南にダメージを重ねていく。
18: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)13:04:51 ID:u4a
輝子は言った。
「いいか凛さん!アイドルもスマブラも一緒だ!奴らは全員濃い!個性の嵐だ!!」
「故に勝つためには敵を知ることが一番大事だ!!相手を知れば、そいつの脅威は取り払われる!!」
そうだ、それはアイドルもスマブラも一緒だ。
私にも共演するのが苦手な人がいた。私のことを高圧的な態度で圧倒しようとする芸能人だ。
そこで私はその人のことを研究し、うまく付き合う術を覚えた。結果、その人は私のことを邪険にすることはあんまりなくなった。
19: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)13:05:01 ID:u4a
そう、それはアイドルもスマブラも一緒なんだ!
彼女の性格を思い出せ。紗南は基礎を固めるのが非常にうまい。紗南は私の隙を見つけ次第、強力な技をねじ込んでくるはずだ。
なら私はあえて…隙を見せる!!
「もらったよ凛さん!スマッシュ!!」
当然こっちに向かってくる紗南。読み通りだよ!
もちろんその隙は当然ブラフ!私のキャラは紗南の一撃を防ぐ!
そして紗南の操作にいくら隙がなくても、キャラ性能としての隙は必ず存在する!
「あっ!?ガード!?しまった、読まれて…!」
その紗南の技には硬直が大きいことを私は知っている!
私は紗南に向かって逆にスマッシュを繰り出す!!
20: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)13:05:13 ID:u4a
「…!あたしが負けた…!すごい!強いんだね凛さん!」
ゲームセット。
勝った。紗南に勝った。
私はスマブラでアイドルの頂点に立った。つまり私が、トップアイドルってことだ。
「ええっ凛が紗南に勝った!?あいつ強かったんだな!」
「凛さん…やったな…!私は嬉しいぞ…!フヒ…♪」
「ああー!私の賭け金が…!そんなぁー!!」
会場が歓声に包まれる。その声も聴いて、私も嬉しくなる。
「凛さん、強かったよ!あの頃とは別人みたい!」
紗南も私の勝利を祝ってくれている。
この子は良い子だ。ゲーマーの鑑か。
「けど、あたしだってまだまだ負けないよ!」
「例え蹴落とされたとしてもすぐに戻ってくるから!スマブラみたいにねっ!」
事実上の紗南のリベンジ宣言。その目はにこやかだけど、熱い闘志に燃えている。
ふふっ、私も負けてられないね。いつまでもステージにいられるように、腕を磨くよ。
私と紗南は握手をする。
再び、2人がスマブラという、アイドルという戦場で会えることを祈って。
21: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)13:05:24 ID:u4a
その後。
1カ月レッスンをサボっていた私は
マストレさんのレッスンで貧血で倒れることになった。
22: 名無しさん@おーぷん 2019/01/03(木)13:05:38 ID:u4a
おわり
シリアスものを書けて満足です。
【モバマス】凛「スマブラに誘われた」