1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 20:55:49.86 ID:27Yie1Ms0
※モバマスSS
複数P世界、安価スレ
エロ・鬼畜は安価下
誤字脱字・駄文・亀注意
オリジナル設定注意
舞台編ラスト
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1445082949
2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 20:57:28.14 ID:27Yie1Ms0
亜季「『皆の者、私に付き合え!』」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1441100838/
保奈美「『私に付き合いたくないの?』」
http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1441324344
沙紀「『僕は付き合うのはごめんですな』」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1441885190/
美玲「コイツらに付き合ってる場合じゃないぞッ!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1442822174/
加蓮「『あなたが付き合ってくれるなら……』」
http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1443093340
沙紀「『へぇ、僕と付き合いたいと?』」
http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1443958566
の続きです
閉幕の100-4-3作目
ここまで来た以上、最後まで行かせていただきます。
…長かった…………
深夜 南部の鬱蒼とした森林
ガサガサ…!
志希「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ…………」タッタッタッタッタッ…!
ウゥゥゥゥゥゥン……
志希「……っ…!はぁ……はぁ…………はぁ………はぁ…………!」タッタッタッタッタッ…!
ターン!
志希「ひあっ?!」ガクン…!ズシャアアアア…!
志希「……ひい…………あ、あ、アタシの…………足が…………!」
ウゥゥゥゥゥゥン……
志希「…………あ…………あ……………………ああ……………」
晶葉「おいおい、そう逃げ回らないでくれ。私は研究所だから、あまり体力が無いんだよ。クックック………………」
志希「ひっ…………あ…………………………」
晶葉「…いくら他人に一人で来いと言われたからといって、まさか……本当に護衛も付けずに一人で来るとはな……こういう事態は想定外だったか?」
志希「…………っあ…………ああ………はぁ…………あ……………」
晶葉「さすがに護衛が全員やられる、と言うのは不自然なんでなぁ。実に助かったよ……シェリダン。」
志希「………な、な、何……で………………?」
晶葉「ん……自分が消される意味が理解出来んのか?」
志希「だ、だって……アタシ…たち……仲間……で…………」
晶葉「よく聞こえんな。」ガチャ ターン!
志希「あっ…………ああああああ………………!!」
晶葉「おっと、済まん。ククク……手が滑ってしまったよ。いやぁ、本当に申し訳ない。」
志希「……っあ……うあ………うああ……………………」
晶葉「右手と左足だけだと格好がつかないな。」ターン!ターン!
志希「っ……ぎゃああああああああ……!!」
晶葉「よし、これで綺麗に四肢に一発ずつだな。ククク………」
志希「痛い痛い痛い痛い痛い痛い……!何で?何で何で何で何で?!」
晶葉「悪いなぁ、不便な事に戦争を起こすには何かしらの口実と言う物が必要なんだよ。」
志希「……!!お、お前は…………?!」
晶葉「この森は降伏をまだ見てめていない南軍の残党が出没する事で有名でね。ククク……『北部の勝利の立役者、シェリダン将軍残虐なる南軍に虐殺さるる。』国民はお前の死を悼み、新たに南部への怒りの炎を燃やす事だろう。」
志希「…………っ……!…ウィリアム・シャーマン……!!」
晶葉「アハハハハハハ!私の目的の為に死んでくれてありがとう!」ガチャ
ターン…………!!
ニューオリンズ レストラン
沙紀「奥様、食事が済んだら次はどこへ参りましょうか?」
保奈美「そうねぇ……指輪を買いに行きたいわ。」
沙紀「指輪なら先ほどお買いしたと思うのですが、僕の勘違いですかな?」
保奈美「幾つ買おうが私の勝手でしょう?……さっきはルビーの指輪を買ったから……次はダイヤモンドの指輪にしようかしら?」
沙紀「全部金を出すのは僕なのだがね?」
保奈美「あら、だからわざと高い物ばかり買っているに決まっているじゃない。」
沙紀「あんたは自分の金は1セントだって使いたくないくせに、人の金なら遠慮の欠片も無く費うんだね。」
保奈美「それは違うわよ?払うのはあなただけど、そのお金は『私たち夫婦の』お金でしょう?」
沙紀「おっと、そう言えばそうだった。どうも結婚生活と言う物にはまだ慣れないな。」
保奈美「嫌でも慣らしてあげるわ。ボーイ、この店で一番高い料理を持ってきてちょうだい。」
「かしこまりました、奥様。」
沙紀「まだ頼むのかい?どうやら胃袋の方も遠慮がないようだね。」
保奈美「何?小鳥のように飢え死にしてしまうような量だけ啄ばむ女がお望み?」
沙紀「はははははは、そんな女性はこちらから願い下げですな。女性と言うのは少々肉付きが良い方が好ましい。」
保奈美「お言葉ですが、私は腰の細さでは誰にも負けた事がないのよ。
沙紀「今までは、ね。こんな成金趣味丸出しの生活を続けていたら、すぐにドレスが入らなくなりますよ?」
保奈美「そうね、まずそんな事にはならないけど……入らなくなったら、また新しいドレスをあなたに買ってもらうから大丈夫よ。」
沙紀「ふふふ……成る程、それは盲点でしたなぁ。」
保奈美「>>10」
(バトラーと暮らし始めて、当初の目的を忘れつつある自分がいる……)
保奈美(…バトラーと暮らし始めて、当初の目的を忘れつつある自分がいる……)
沙紀「良いでしょう、ドレスぐらい幾らでも買って差し上げましょう。あなたに着られるならドレスだって本望ですよ。」
保奈美(……癪だけど……毎日が楽しい……!欲しいものは何だって手に入るし、何より自分を偽らずに生ききられる……)
沙紀「ドレスは次はどこで買いますか?あなたは行き尽くしたと思ってるのかもしれんが、ニューオリンズにはまだまだ服屋があるのですよ?」
保奈美「……それさ流石に嘘でしょう………?」
沙紀「僕が嘘なんかつくものですか。」
保奈美「…どれくらい……?」
沙紀「正確には僕も把握しちゃいませんが、少なくともあんたが回ったのは、まだほんの一部に過ぎんですよ。」
保奈美「…………………………」
沙紀「どうです、ニューオリンズは楽しいところだとは思いませんか?」
保奈美「…何もかもが活気付いていて………少なくとも、人の噂話が大好きな連中がいないって事だけで、いつもよりはずっとましよマシよ。」
沙紀「はははははは!わざわざアトランタから逃げ出してきた甲斐はあったようしな。」
保奈美「……ふん、逃げ出したんじゃないわ。飛び出してきてやったのよ
」
沙紀「ほほう。」
保奈美「メリウェザーやワイディングのばあさんたちが、憤死しないようにね。もっとも手遅れかもしれないけど。」
沙紀「憤死する物なら、とっくに憤死していますよ。人の事なんてほっていていて欲しいんですがねぇ……あの老ぼれ連中め。」
保奈美「全くだわ!早く全員くたばってしまえばいいものを…………」
沙紀「ははははははは!これは手厳しい。」
保奈美(普通ならこんな事は口が裂けても言えないけど………)
沙紀「あんたのそういう勇ましいところが好きですよ、スカーレット。…気分が良いのでぶどう酒でも頼みませんか?」
保奈美「…ええ… いいわね。」
沙紀「そうですか、そうですか。む、そう言えば淑女はぶどう酒なんか飲む物ではないらしいと聞くが?」
保奈美「淑女じゃない私には関係のない話ね。」
沙紀「だとしたら何ですか?」
保奈美「……あんたと同じ悪人よ。」
保奈美(…この男の前では善人ぶる必要はない……嫌なら嫌と言えばいいし、憎いなら憎いと言っても構わない…)
沙紀「ふふふ……確かに悪人が、ぶどう酒を飲んじゃいかんとは聞きませんな。おい、ぶどう酒を追加注文だ!」
保奈美「…………………………」
沙紀「………何か?」
保奈美「い、いえ…………(…私の目的は北部への復讐で……そのために頑張ってきたのに…………)」
沙紀「……………………………」
保奈美(気がつくと、綺麗なドレスを着て踊る事なんかで頭がいっぱいになっている時がある……………)
保奈美(…復讐なんてくだらない……どうでも良い事なんだ……と考えてしまっている時もある。)
保奈美(ひどい時は、復讐をするつもりだった事まで頭からすっぽり抜け落ちてしまっている時さえ………)
保奈美「………………………………」
保奈美(…駄目だ……このままじゃ………)
沙紀「…………………………」
保奈美(復讐を……忘れてしまう…………!!)
保奈美(……忘れたのか、タラの惨状を…!…北部の連中全員も同じ苦しみを味あわせるまでは……と天を呪った日々を…………)
沙紀「………………………………」
保奈美(………復讐を忘れてはいけない……!南部が受けた痛みを……屈辱を…………!)
沙紀「……スカーレット。」
保奈美「…………ん?」
沙紀「困るよ、僕とのデート中に他の事、ましてや殺伐とした事などを考えられたら。」
保奈美「…………………………」
沙紀「>>18」
君は僕の事だけを考えていればいいんだ。それ以外の何も考えてはいけない
沙紀「君は僕の事だけを考えていればいいんだ。それ以外の何も考えてはいけない。」
保奈美「………………………」
沙紀「その代わりに、僕も君だけの事を考えよう。如何に君を楽しませて、自分が楽しめるか。…それだけを考えよう。」
保奈美「……………えっと………」
沙紀「…瞳に他のものが写っているのに気付いてしまったら……寂しいじゃないか。……そうは思わんかね?」
保奈美「………………………………」
沙紀「………………………………」
沙紀「…金を払っているのは僕なんだ。その間注意を僕だけに向けるぐらい、やってくれたって罰は当たらないと思うんだがね。」
保奈美「……考えている内容まで、あれやこれや言われなきゃいけない理由はないわ。」
沙紀「ごもっとも。しかしね、男と言うのはそういう生き物なんですよ。女性から胸を恋焦がされていたい。」
保奈美「…私の知っている男の人には、そんな事を言う人は居なかったわ。」
沙紀「空が青い事をいちいち確認しますかね?」
保奈美「……はぁ?」
沙紀「南部の古き良き男性の諸君がその様な事を言わなかったのはですね、女は男の事を一途に想っていて当たり前、という事を一途に信じていたからですよ。」
保奈美「それは……………………」
沙紀「僕はね、女性と言うのがそう言う生き物でない事を知っている。だからこそ………一瞬ぐらいは一途に思って欲しい、そう考えてしまう訳なんだよ。」
保奈美「…………む、無理よ……私は別に……あなたを愛しては………………いないもの……」
沙紀「愛していただかなくても結構です。ただ、デート中に似つかわしくない事に気を取られさえしなければ、ね。」
保奈美「………………………………」
沙紀「美味しい料理だとか、綺麗なドレスとかを純粋に楽しめないのかい?ただ、僕との時間に喜びを感じて欲しいと思うのはいけない事かい?」
保奈美「………………………………」
沙紀「(……違う……僕は……こんな事が言いたい訳では無いのに……)僕はいわば、君との愉快な時間を買ったんだ。そこを理解してもらいたいね。)
保奈美「………はいはい……」
沙紀(違う……違う…………違う……………)
保奈美「……………………………」
沙紀(……違う……………僕はただ……スカーレットに自由になって欲しいだけだと………言うのに………)
タラ農園 表門
「いい加減に立ち退き契約書にサインをして……」
輝子「おととい来な!悪いがお前たちに振るための尻尾は生えてねえんだ!」
「……っ…!我々はこの土地を強制的に収容する事も可能なんだぞ?それを親切にも…………」
輝子「ハッ!やってみろよ。」
「なっ……?!」
輝子「おいおい、お前の顔に着いてんのは耳じゃなくてヒラタケかよ?やってみろって言ったんだよ、腰抜けがァァッ!」クイッ!
輝子「だがよぉ、それはテメエらにタラの人間全員を敵に回す覚悟があればって意味だぜ?南部人ってのは土地と心中するような人間の集まりなんだよ。」
「…舐めるなよ。お前たちが何人束になったところで我々の相手にはならんぞ?」
輝子「戦争が終わった今、テメエらの大統領は余計な火種は作りたくねえはずだぜ?」
「…何が言いたい……?」
輝子「この場で私と刺し違えるか、大人しく帰るか選べっつってんだよ、北軍野郎!」
「…………っ…………!!」
輝子「…………………………」
タラの屋敷 食堂
加蓮「…今日も北軍の兵士を追い返してくれてありがとう……ウィル………お茶をどうぞ…」ゴト……
輝子「あ、ありがとうございます…………フヒ…………」
加蓮「…………ごめんさいね…」
輝子「………?」
加蓮「……大変な役目を押し付けてしまって…………その…………」
輝子「>>26」
フヒ……お構いなく……
輝子「フヒ……お構いなく……」
加蓮「……………………………」
輝子「こ、これぐらい……どうって事ないですー…はい。もう…ホント気にしないでください……」
加蓮「……そうもいかないわ。…あなたばかりに背負わせてしまっているもの。」
輝子「フヒ?!な、ないないない……!そんなことはないですよー……は、はい……!」
加蓮「………いえ、だって……………」
輝子「わ、私が全部背負ってるなんて……そ、そんな…おこがましすぎて………ば、ば、罰が当たります……」
加蓮「………ウィル………………」
輝子「あ、いや………その……わ、私なんかメラニーさんのお手伝いに過ぎないと言いますか………え、えっと……メラニーさんに比べたら何もしてないって言うか………」
加蓮「……?…私の方こそ何も……………」
輝子「い、いえ……!…今タラを支えてるのは……メラニーさんです……よ?」
加蓮「…私………?」
輝子「あ、はい。……め、メラニーさんが居るから……安心……と言うか……そ、そんな感じです………」
加蓮「……………………」
輝子「…だから……その……私の事なんか……あ、顎で使ってくれていいぐらいですよー……なんて…………」
加蓮「……………じゃあ、ウィル。今から私のお願いを聞いてくれる?」
輝子「ど、ど、どうぞー…!な、何でも……言ってくれて大丈夫です、はい……!」
加蓮「……私に労われてくれる?」
輝子「…………フヒ…?」
加蓮「お茶を飲んで、少しの間だけでもゆっくりしてちょうだい。それが…私からのお願いよ。」
輝子「…………………………」
加蓮「……ね?」
輝子「………そ、そう言う事なら…………ご遠慮……なく…………………」
加蓮「…………ふふ……」
輝子「…………やっぱり…柱…だな……」
加蓮「………?」
輝子「フヒ……な、何でもないですよー…」
加蓮「………………………」
輝子「あ…お茶いただきます………」
ズズズ……
輝子「…………おいしい………」
加蓮「……そう…それは良かったわ。」ニコ
加蓮「お茶菓子も用意しましょうか……?」
輝子「……フヒ?!いえ、そ、そんな……貴重な物は………」
加蓮「気にしなくて大丈夫よ。スカーレットが送ってくれたの。」
輝子「……あっ………………」
加蓮「スカーレットは今はバトラー船長とニューオリンズを新婚旅行中で………お茶菓子もそこで買った物なんですって………」
輝子「…………………………」
加蓮「………………………」
輝子「……あ……え、えっと………その………す、スカーレットさんは…………」
加蓮「……分かってる。……スカーレットは冷たい人じゃないわ………私は知っているもの…」
輝子「………………………………」
加蓮「ケネディさんとの時も……何か理由があったんでしょう?……だったら…バトラー船長とのも……何か理由があるに決まっているわ。」
輝子「…………………………」
加蓮「>>37」
(スカーレット……)
加蓮(スカーレット……)
加蓮(…無理をしてないといいんだけど……スカーレットの性格から考えて、そうもいかないでしょうね…………)
加蓮(…………………心配だわ…………)
加蓮(…スカーレットは強い……だからこそ…………………)
加蓮(……………………………………)
加蓮(……強いからこそ……自分で色々抱えこもうとしてしまうから…………)
加蓮(…一番大事なところは、誰にも話さないから…………)
加蓮(……ケネディさんには悪いとは思うけど……スカーレットはケネディさんには、話をする事はできなかったでしょうね……)
加蓮(ケネディさんがいけない、とかじゃなくて………ただ単に性格が違っただけなんだけど………)
加蓮(…………………もし…………)
加蓮(……………………………)
加蓮(いえ……仮定の話を考えるのやめておこう………起こってしまったモノは……変えられないのだから。)
加蓮(もし、起こってしまったモノを変えられる人が居たら……その人はもう人ではなくて、神様よ…)
加蓮(………スカーレットを支えてあげられのは……スカーレットの事を真に理解してあげられる人だけ……)
加蓮(そしてそれが出来るのは…………)
輝子「……あ、あの……………」
加蓮「………あっ……ごめんなさい。少し考え事をしてしまっていて……」
輝子「……………………」
加蓮「…大丈夫よ、ウィル。私に気を遣ってくれてありがとう。」
輝子「………………………」
加蓮「大丈夫だってば。」
輝子「……メラニーさんも……無理をしたら……だ、ダメ……です…よ……?」
加蓮「…………ええ。」
輝子「…………………………」
加蓮「…お茶菓子を取ってくるわね。」
輝子「あっ……手伝いますよ……?」
加蓮「じゃあよろしく。」
輝子「…は、はいですー…(……………)」
トゥエルヴ・オークス屋敷 跡地
ザッザッザッザッザ……
櫂「………………………………」
ザッザッザッザッザ
櫂「……………………………」
土台石「……………………」
櫂「まるでラグナロク……だね…………どんな栄達や財産も…永遠に続くものなんてない…………」
櫂「………………………………」
櫂「……終わってしまったんだ……僕らの生きていた時代は………今はもう……その残滓だけが残っている……」
櫂「……『国破れて山河あり』……か…………」
櫂「……僕らのやってきた事とは……何だったんだろうね……ふふっ…………」
櫂「……本来は仕事をやらなくちゃならない……そんな中、僕はもう何もない場所へ思い出に浸りにやってきている……」
櫂「……辛いな……役に立てないって言うのは……何の助けにもなる事が出来ないと言うのは…………」
櫂「…………世界が変わってしまったと言うのは言い訳だ………世界が変わって役に立たなくなるなら、最初から役になど……立っていなかったのさ。」
櫂「だって……みんな立派に役立っているんだからね……結局、僕は昔から存在していて、存在していなかったんだろう。」
櫂「………………………………」
櫂「>>44」
これからもこうして存在しながら存在していない生活をしていくんだろうな
櫂「これからもこうして……存在しながら存在していない生活をしていくんだろうな………………」
櫂「……ふふっ……僕にはお似合いの生活かもしれないね………いつだか、自分の人生は影芝居、だなんて宣った事もあるぐらいだから…………」
櫂「……無くなってしまったものを夢見続け…そして、結局手に入れられずに終わる…………それがこれからの人生なんだろう……」
櫂「……何に対しても……実感が持てない………全部がそれこそ影芝居みたいだ…………皮肉な物だね……」
櫂「……痛みや疲労は確かなはずなのに、それさえ遠くに感じる………これらも僕を活かしてはくれない…………」
櫂「………ここにあるのは、アシュレ・ウィルクスの残滓なんだろう…………」
櫂「……生きながらにして死んでしまった…………ああ……いっそ、戦場で死んでしまうべきだったのかもしれない………………」
櫂「…そうすれば……こんな世界を見ずに済んだ……美しい思い出を信じたまま……死ぬ事ができた…………」
櫂「……………………………」
櫂「……いや……それは出来なかったな…………だって、僕が死んでしまっていたら……メラニーは…………」
櫂「…………結婚も…すべきではなかったのかもしれないな。……そうすれば…メラニーに苦労をかける事もなかった……」
櫂「………何だ……僕の人生は…間違いだらけじゃないか……」
櫂「生まれてから一度でも、何か正しい事が出来たんだろうか……?…何か正しい行動を…する事が出来たんだろうか……?」
櫂「……いや………出来てないから、こうしてここに居るんだ。……僕はいつだって口先だけだった……」
櫂「……口先だけで理屈を並べて、結局自分では何もしなかった。…時代の流れ、だとか、運命と言う言葉に…責任転嫁をしていただけだった………」
櫂「……戦争は起きてしまったし………南部は負けてしまった…………」
櫂「……何も出来なかった………無力だった………僕は現実に干渉する術わ、ひとつだって身につけちゃいなかったんだ……」
櫂「……………っ……」
櫂「………帰ろう…」スクッ…
櫂「…いくら何も出来ないとはいえ、ほんの少しだけ手伝う事ぐらいならできるだろう………」
櫂「……………………………」
櫂「……さよなら、トゥエルヴ・オークス………」スタスタスタスタ……カツン
櫂「……………?」
金属製のドアノブ「…………」
櫂「……これは…………?!」
タラ 北軍 研究施設 廊下
あやめ「………………」スタスタスタスタスタスタ……
あやめ「…………………」チラ
研究室「…………………」
あやめ「……………………」
スタスタスタ……ピタ
あやめ(……ここか。)
あやめ「……………………………」
「おい、そこの!」
あやめ「…む?わたくしがどうかいたしましたか?」
「ああ。……見たところ一般兵のようだが……一般兵はこの辺りに用はないはずだ。何故ここに居る?」
あやめ「はぁ……そうなのですか?すみません……実はわたくしこの前配属されて来たばかりなもので………」
「はぁ……さしずめ迷子、と言うところか?」
あやめ「あはは……そうなってしまいますね。いやはや、お恥ずかしい。」
「何、気にすることはないさ。この研究施設はデカイからな。迷う奴は偶にいるんだよ。」
あやめ「(……………)わたくしだけでは無いと聞き安心しました。……どうしてこうも広いのです?」
「機械人形の研究と言うのは何かと場所が必要なんだよ。特に、この研究施設はシャーマン将軍の物だからな。」
あやめ「>>53」
研究施設……というと?
あやめ「研究施設……というと?」
「おいおい……そんな事も知らずにここに来たのか…?」
あやめ「ああ、いえ。これだけ広いのですから、わたくしの知っている研究施設とは何かと違っているかと思いまして。」
「………お前、所属は?」
あやめ「第3守備隊の2班です。」
「第3守備隊の2班………」ピッ ブン
あやめ「………………………」
「……ハマグチ伍長か……………」
あやめ「はっ!」
「……………………」ジロジロ……
あやめ「……………………」
「………ふぅ……済まん済まん!少しでも怪しいと思ったら疑えと言われていてね……気を悪くしないでほしい。」
あやめ「いえ、ここで扱っているのは最重要機密事項。警備を厳重に行うのは当然の事です。」
「そう言ってもらえると助かる。」
あやめ「わたくしもこれから守備兵として働く以上、その態度を是非見習わせてもらいたいものです。」
「ははは……そう固く身構えんでもいいぞ。守備だの警備だのって言ってはいるが、実際にはどちらも必要の無い仕事だからな。」
あやめ「必要の無い……?」
「ああ、考えてもみろ。万が一にも、ここを攻撃しようとする連中なんて南軍の残党しかいないだろ?そんな奴らは守備の機械人形だけで片付く。」
あやめ「ふむふむ。(……………)」
「警備に関しても同じだ。ここに南部人なんかが潜り込めるはずが無い。」
あやめ「確かに。(…ここにいますよ。)」
「だから肩の力を抜いて大丈夫だ。さっきのも形式だけさ。シャーマン将軍が異常に用心深いだけで………あっ、今のは誰にも言うなよ?」
あやめ「言いやしませんよ。…不要だ、と言うことになってしまったら、わたくし配属そうそう失業してしまいますから。」
「はははははは!中々話の分かるやつだな……えっと…………」
あやめ「ハマグチです。」
「そうそう、ハマグチ伍長!なあ、今夜あたり一杯どうだ?」
あやめ「では、ありがたく。(……酒と言うのは人の口を軽くしてくれます。)」
あやめ「しかし、その前に………」
「………ああ!研究施設について知りたいんだったな。なあ、お前今時間は空いてるか?」
あやめ「午後の演習までならば。」
「ならちょうどいい。今からここを案内してやるよ。」
あやめ「警備の方は?」
「大丈夫、大丈夫、何も起きるわけがないさ!」
あやめ「(…………)ならば、よろしくお願いします。」
舞台裏
愛海「…………………」
清良「愛海ちゃん・」
愛海「……あっ…………清良さん…………」
清良「お疲れ様。何か欲しいものとかある?」
愛海「………特に……ないかな……」
清良「……………あら…?」
愛海「…………………………」
清良「いつもだったらここで、『清良さんの柔らかくて温かい優しさが欲しいです!あ、そうだ、お医者さんごっこしない?あたしお医者さんね!はい、まずは触診から!』ぐらいは言ってくるのに………」
愛海「………アタシだって、時と場合ぐらい考えるよ。清良さんまだ出番あるんだから……衣装に皺つけちゃったら大変でしょ……?」
清良「………愛海ちゃんが……まともな事を………?!……ねえ、ちょっと体温を計らせてもらってもいいかしら……?」
愛海「えっ………ひどくない……?」
清良「だって、愛海ちゃんよ?」
愛海「>>67」
そんな!風評被害もいいところですよ!
愛海「そんな!風評被害もいいところだよ!」
清良「風評……?」
愛海「まあ、あたしが淫獣とか呼ばれてるのは知ってるし、それを否定するつもりもないよ。あ、ちなみに淫獣の元ネタは正直そんななんだけど………」
清良「それは聞いてないかしら。」
愛海「……………あ、はい…」
清良「…続けて。」
愛海「……元ネタの淫獣学園シリーズなんだけど………」
清良「そっちじゃなくてね。」
愛海「………えっ……?」
清良「続けて。」
愛海「………えっと……否定するつもりもないよ……の方……?」
清良「ええ。」
愛海「……ゴホン。だってあたしが淫獣なのは事実だし、あたしはそれを誇りに思ってるから。誇りって言うか……生き様?」
清良「………お注射が必要かしら…?」
愛海「何で?!今日はまだ愛梨さ……ゲフンゲフン……!」
清良「んー……多分気のせいだと思うんだけど今愛梨ちゃんの名前が聞こえた気が………」
愛海「……き、気のせいです………」
清良「………本当に?」
愛海「……な、名前は言いました……はい………」
清良「名前を言っただけ?」
愛海「………すみませんでした………つい出来心で………………」
清良「…………で?」
愛海「…いや……その………目の前に黄金の果実があったら…仕方ないと思いませんか…………?」
清良「それはいつの話?」
愛海「午前中楽屋で一緒になった時に………愛梨さんが……部屋が暑いって言い出して………………」
清良「……………………」
愛海「………もう思い残すお山は…………あるけど……ないので……早くひと思いに………」
清良「つまり……愛海ちゃんは午前中は元気だった……と言うことよね?」
愛海「………えっ……?」
清良「……私の見る限り、劇が始まる前までも元気だったように見えたけど………」
愛海「………お、お仕置き…は……?」
清良「してほしいの?」
愛海「…………」ブンブンブンブン!
清良「私だって、時と場合は考えるのよ?……それじゃあどうして、出番が終わったら元気が無くなってしまったのかしら?」
愛海「………えっ……そ、それは……………」
清良「愛海ちゃんに限って、体力が無くなったとは考えづらいわ。理由を教えてもらえる…?」
愛海「…………………………」
清良「…………………………」
愛海「………プロデューサー……来てくれなかった………」
清良「……愛海Pさん?」
愛海「うん……あたしの出番が終わるまでには来るって………約束したのに…………」
清良「…………………………」
愛海「………ちゃんと真面目に………やったのに………」
清良「見てもらえなくて寂しかった?」
愛海「だって……みんなのプロデューサーさんたちは、ちゃんと来てるじゃん………」
清良「…………………………」
愛海「……来るのは無理って分かってはいたんだけど………でも…さ……あはは……あたしもまだまだ子供だな…」
清良「>>76」
じゃあ、あっち行こうか。忘れさせてあげるわよ
清良「じゃあ、あっちに行きましょうか。忘れさせてあげるわよ?」
愛海「………?!え、えっ……と………」
清良「生きが良くない子って言うのはあまりヤル気が出ないんだけど………しょうがないわよね?」
愛海「………あの………何を………?」
清良「聞きたい?」
愛海「………………………」
清良「………………」ニコニコ
愛海「………あ……」サァ………
清良「とりあえず………ね♪」ニコニコ
愛海「…………うん……分かった……」スクッ
清良「………………………」
愛海「………………………」
清良「……………はぁ………」
愛海「……清良さん……?」
清良「…うーん……いつもの愛海ちゃんじゃないと張り合いがなくて面白くな………元気がないのは心配ね…」
愛海「……元気……そんなに無いかな………?」
清良「お注射が何本か必要かな、って思うぐらいには元気が無いかしら。」
愛海「………そう…………」
清良「でも、お注射よりもっと効くのがあるねよ?……着いてきて、悲しいのを忘れさせてあげる☆」
愛海「…………………………」
清良「………………♪」
リハーサル室
清良「はい、到着♪」
愛海「…………ここは……」
清良「リハーサル室よ。今の時間ならここには誰も居ないから、うってつけなのよ?」
愛海「………何に………?」
清良「……ふふっ……目をつぶって。」
愛海「…………………………」
清良「目を…つぶって?」
愛海「………あ、うん……」パチ……
清良「………………」ゴソゴソ……キラ……
愛海「……………………」
清良「ふふふ……今から元気が出るお呪いをしてあげるわね?悲しい事なんか全部無くなって、幸せな気分になれるはずよ?」キラ……
愛海「……そんなはず……ないよ………だって…………」
清良「……だって?」
愛海「……プロデューサーが…………」
愛海P「はぁ……はぁ………愛海!!」
愛海「?!」
清良「愛海Pさんがどうしたの……?」
愛海「……………………」
清良「目を開けて後ろを振り返ってみて。」
愛海「…………………」パチ……クル………
愛海P「……はぁ……はぁ………はぁ…………」
愛海「…………………………」
愛海P「……すまん…!その……色々あって…………」
愛海「……ぐすっ………良かったぁぁぁ…………」ギュッ………
愛海P「……………………」
愛海「……今度こそ……ぐすっ………ホントに捕まっちゃったかと思って………それで………それで…………一緒にエロいことする……仲間が居なくなったら………どうしよう…………って………」ギュッ………
清良「……………………」
愛海「>>85」
愛海Pさぁぁぁぁぁぁぁん!!!(泣きつく)
愛海「愛海Pさぁぁぁぁぁぁぁん!!!」ギュウウウウ……!
愛海P「………………………」
愛海「…ぐすっ……ぐすっ………本当に………怖かったんだから…………」
ギュウウ………
愛海P「……当たってるぞ。」ポンポン
愛海「当たるほどないでしょ、ばかぁ………」ギュウウ………
愛海P「…大きさじゃないんだろ?。」
愛海「……あっ………………」
愛海P「俺は愛海の天保山も……好きなんだけどな………」
愛海「……ぐすっ………うわああああああん……ホントのホントに愛海Pさんだぁぁあ………」ギュゥゥゥゥ……
愛海P「……………ごめんな、愛海……」
愛海「……一緒に…お山についての談義をしてくれなきゃ………許してあげない…………」
愛海P「……朝までだって付き合うぞ………」ギュッ………
愛海「……うう……朝まで……エロエロ………だからね……!」
愛海P「おう……!エロエロだ……!」
清良(…うーん…会話を聞く限り、捕まったのもあながち間違いではない気がするけど……)
愛海「ぐすっ…ぐすっ……ううう………愛海Pさん…………」
ギュウウウウ………
愛海P「愛海ぃ……!」ギュウウウウ………
清良(…愛海ちゃんたちの様子を見る限りは……ね。……今回に限って大目に見てあげる事にしましょう。……もうイイ声で泣いてるものね。)
清良「…………」チラ
鏡「……………………」
清良「……まったく…恥ずかしがり屋さんなんですから♪」
鏡「……………………」
清良「…………………………」
アトランタ レットの家
保奈美「まぁ………………!!」
沙紀「旅行中に作らせておいたんだ。どうです、奥様。あなたのご希望通りに作らせたつもりですが。」
保奈美「素晴らしいわ!あはははは、何て大きな家なんでしょう!近所の家がみんな納屋に見えるぐらいだわ!」
沙紀「僕は住むには広すぎると思うのだがね。」
保奈美「家に広すぎる、なんて事はなくてよ?屋敷って言うのは広ければ広いほどいいの!ああ、ここでならどんな大きなパーティーだってできるわ!」
沙紀「パーティー会場には最適な事は否定出来ないね。パーティー会場としては、ね。」
保奈美「はぁ………内装から家具から、壁にかけてある絵、それに手すりの細工のどれを取ったって、アトランタのどの家より……いえ、南部のどの家よりもずっと豪華で……誰だってこれを見たら……………」
沙紀「一目で悪銭で建てた事が分かるだろうね。」
保奈美「(またレットは…………)なんて口の悪い事を言うの?」
沙紀「事実を言っているだけじゃないか。こんな悪趣味な家は見た事が無い。」
保奈美「建てさせたのはあなたでしょ?」
沙紀「僕は建設業者に金を払って、君の意向を伝えただけに過ぎないよ。」
保奈美「…………………………」
沙紀「成金趣味も良いところだね。高級品を並べただけで、センスの欠片もありゃしない。」
保奈美「フン、私の知っている金持ちの家はみんなこんな感じよ。もっと見すぼらしいけど。」
沙紀「君の知っている金持ちと言うのは商売柄知り合った成金ばかりだろうからね。どうせ、全員渡り者や利権屋の連中だろう?」
保奈美「まさか。みんな立派な身なりをした、金払いの良い立派な人たちよ。」
沙紀「詐欺師と言うのは往々にして、そう言った人間に自分を見せる者なのだよ、お馬鹿なお嬢さん。」
保奈美「>>93」
(否定できないわ……私自身も嘘で自分を塗り固めてきたから……)
保奈美「…………っ…………(否定できないわ……私自身も嘘で自分を塗り固めてきたから……)」
沙紀「本当に立派な方々は皆、貧乏と戦ってらっしゃるよ。金を持っているのは僕らみたいな悪人たちだけさ。」
保奈美「………………(でも………)」
沙紀「付き合っていて楽しい連中なのは間違いないだろうが、あまり親しくしすぎるのは感心しないな。」
保奈美「……別に詐欺師だったっていいじゃない。付き合っていて楽しいなら。」
沙紀「それも一つの考え方ではあるね。今が楽しければ、後がどうなろうと関係ない、と言うのは。」
保奈美「………何が言いたいの…?」
沙紀「いや……この家は確かに僕らにお似合いなのかもしれないとおもってね。」
保奈美「……………は?」
沙紀「……外装から内装まで確かにお似合いだ。これ以外は考えられないと言っても過言では無いね。」
保奈美「……言いたい事があるならはっきり言いなさい。」
沙紀「はははははは!だから、今言ったじゃないか。」
保奈美「…………………………」
沙紀「この家自体が、道行く人へここの住人がどんな人間かを説明してくれるんだ。自己紹介をする手間が省けて楽で良いじゃないか。」
保奈美「……ここに住んでいる人間はロクな人間じゃないって事を………かしら?」
沙紀「さあ、どうだか。」
保奈美「…………………………」
沙紀「それは僕が教える必要があることなのかね?」
保奈美「……フン、確かに言われるまでもないわね。私は悪人、そしてあなたも悪人よ。」
沙紀「ほぅ…………」
保奈美「…あなたの言う事は否定はしないわ。だけど悪人が悪人と付き合う事は、何かおかしな事かしら?」
沙紀「それがおかしい事ならば、僕には友人の一人だっていやしませんよ。」
保奈美「生まれつきの悪人のあなたならそうでしょうね。」
沙紀「ええ、仰る通りですよ。」
保奈美「……っ……私の部屋はどこ?」
沙紀「階段を上がって………まあ、部屋は幾らでも余ってるんだ。好きな部屋を使いなよ。」
保奈美「分かったわ。」
沙紀「それと…………」
保奈美「…………何?」
沙紀「……無理はするなよ。」
保奈美「……………………………」
沙紀「…………………………」
保奈美「……………ふん……」
夜 スカーレットの部屋
保奈美「はぁ……レットの口の悪さにはもう呆れ果てて腹も立たなくなってしまったわ。」
保奈美「最初のころは躍起になって言い返せそうとしていたけど……無駄だと分かったもの。」
保奈美「……結局、アイツには言いたいように言わせておくのが一番なのよ。……口が悪いのさえ除けば、あとは完璧だもの。」
保奈美「お金は幾らでも持ってる。愉快な遊びや話だってたくさん知っているし……何より顔が良いもの。」
保奈美「顔が良い男を連れて歩くって言うのがんなに楽しい事だったなんて。今まで知らなかったわ。」
保奈美「…綺麗なドレスや宝石を身につけて注目を浴びるのも気持ちが良いけど……ふふっ……レットといるのはもっと気持ちが良いわ。」
保奈美「……はぁ……口が悪いのと、根性がねじ曲がっている事さえなければ…………」
保奈美「……そしたら……私だってレットの事を少しは好きになってやるのに。」
保奈美「……どうしていつも、人を馬鹿にしていなければ気がすまないんだろう……」
保奈美「>>102」
ん……?……この甲高い機械音は……!?
保奈美「ん……?……この甲高い機械音は……!?」
キィィィィィィィ……
保奈美「…………っ……!!」
ィィィィィィィィィィィィ………!
保奈美「…………あっ…………ああ…………うあ……………………あああ………………!」
保奈美「……うう………………」
燭台「……………………」
保奈美「…………… …!」ガシ!
保奈美「……っく…………はぁ……はぁ…………!」スク……
保奈美「…………………」サッ…!サッ…!
保奈美「……っ………どこ……?!……どこなのよ………?!」
保奈美「……………はぁ………はぁ…………はぁ………………っ…………!」
保奈美「……昔の私と……一緒と思うなよ……!……逃げるものか……戦ってやる!」
保奈美「…………………ふぅぅ……………」
保奈美「……………………」
スタスタスタスタ ガチャリ……
廊下
保奈美「………………………」
スタ…スタ…スタ…スタ…スタ…
保奈美「…近くに……いるはず……!」
キィィィィィィィィィィ……!
保奈美「……っ!!……居る…居る…居る………!」
保奈美「………っ………っ…………ふぅ……………」グッ……!
燭台「…………………」
保奈美「……音がするのは………あっちの方だ………」
スタ…スタ…スタ…スタ…スタ…
〜〜〜
保奈美「……こっちで間違いない………でも……何で…………」
キィィィィィィィィィィィ……!!
保奈美「……音が近い……!そんな事を……考えている場合じゃ………ない………!」
キィィィィィィィィィィィ……!!
保奈美「………この部屋から…音が聞こえてくる………!」
ドア「…………」
保奈美「……………………」
保奈美「…………………」ガシッ!
保奈美「………………………!」
地下室
保奈美「……っ…!!」ガチャッ!
保奈美「うわああああああ……!!!」スッ………!!
沙紀「……?!ストップ、ストップ!」
保奈美「………………レット…?!」
沙紀「他の誰に見えるんだい?はぁ……何があったかは知らんが、とりあえずその振り上げた燭台を下ろしちゃくれんかね。僕の頭を叩き割るのが目的で無いのなら。」
保奈美「……………………」
沙紀「壺の次は燭台と来たか。…さすがにこれは予測が出来なかったな………」
保奈美「…………………………」
沙紀「怖い夢でも見たのかい?ふふっ、眠れないんだったら添い寝でも………」
保奈美「違う…違うのよ…!アレが……空飛ぶ鋸が……!!」
沙紀「…空飛ぶ鋸…………?」
保奈美「そう、そうよ!この街を……滅茶苦茶にしたアレの……音が……!…甲高い機械の音が聞こえたの………!!きっと……また………」
沙紀「………甲高い機械の音……………」
保奈美「だ、だから……その……早く………!!」
沙紀「はぁ……スカーレットお嬢さん、あなたが聞いた音とはこのような音ではありませんでしたか。」カチ
大型モーター「…」キィィィィィ……!!
保奈美「…………!!」
沙紀「……やはりね。経営者ともあろう方が、ご自分の工場の製品をご存知無いとはね。さっき技師が新製品の確認をして欲しいと持って来たんだよ。」
保奈美「………………………」
沙紀「>>110」
怯える気持ちも分かるが、せめて工場の機械と機械兵の音の違いは分かってほしいね。
沙紀「怯える気持ちも分かるが、せめて工場の機械と機械兵の音の違いは分かってほしいね。」
保奈美「…………………………」
沙紀「自分の商売道具を怖がる商人なんて、とんだお笑い種じゃないか。しっかりしてほしいな。」
保奈美「………あっ………え、ええ……………」
沙紀「……………………………」
保奈美(………アレじゃ……無かった…………………)
沙紀「………ふぅむ…」
保奈美「え、えっと………その…………ごめんなさい………」
沙紀「いや、僕の方こそ悪かったよ。まさか君の寝室にまで機械の音が聞こえるとは思わなくてね。」
保奈美「……あ………いや………………」
沙紀「外に音が漏れないように、わざわざ地下室に持ち込んでまで確認をしたと言うのに………本当に聞こえたのかい、スカーレット。」
保奈美「……ええ……はっきり聞こえたわ………機械の……甲高い音が………………」
沙紀「………はっきりと?」
保奈美「………………」コク……
沙紀「…………………………」
保奈美「……それで………私……てっきり……また……アレが…街を襲っているのかと……思って…………」
沙紀「………………………」スクッ……
保奈美「……だから……その……また…………私たちが作り上げてきたものが…………全部……壊されてしまうんじゃないか…………って…………」
沙紀「………………」スタスタスタスタ……
保奈美「……そしたら…………また………………」
沙紀「………………」ギュッ……
保奈美「?!」
沙紀「………………」ナデ……ナデ……
保奈美「……な、な、何を………?!」
沙紀「震えている女性を落ち着けさせるには、これが一番なのだよ。」
保奈美「………私は……別に……震えてなんか………」
沙紀「……手を見なさい。」
保奈美「………手………………」
カタカタカタカタ…………
保奈美「…………………………」
沙紀「………そんなに機械兵が怖いのかい…?」
保奈美「……こ、怖い……?…そんなわけ……ないじゃない…………怖かったら……機械人形の工場なんて………………」
沙紀「……君が現場を視察するのは、何時だって機械が止まっている時と自分で気付いていたかい…?」
保奈美「…………………………!!」
沙紀「どうやら自覚は…無かったようだね……」ナデ……ナデ……
保奈美「……………………………………………………」
沙紀「……まったく……機械人形が怖いなら、もっと別の仕事を選ぶべきだっただろうに。……君は実にばかだなあ。」
保奈美「…………だって………北軍に……復讐しないといけなくて…………そのためには……力が必要で………………」
沙紀「音が聞こえたぐらいでその様子じゃ復讐なんて、夢のまた夢だと思うがね。」
保奈美「…………っ……!!」
沙紀「……無理な事はしようとするものじゃない。お嬢さん、それは子供が月を捕まえたいと願うのと同じ事だよ。」
保奈美「……あなたに……何が分かるって言うのよ………!!」
沙紀「…………………………」
保奈美「北軍は……私たちから……全てを奪ったのよ……そして……今も…………っ…………!」
沙紀「………………」ナデ……ナデ……
保奈美「あなたには………あなたには………っ………うう……………」
沙紀「………………………」
ナデ……ナデ……
保奈美「………その為に………私は…………ううう…………」
沙紀「>>121」
悪かったね……君がそんなに傷ついていたとは
沙紀「悪かったね……君がそんなに……傷ついていたとは……」
保奈美「……うるさい……!…あなたなんかに……同情されたくないわ……!」
沙紀「………………………」
保奈美「……そんな……優しくしないで……!……あなたは悪党の無頼漢でしょ……!いつもみたいに……皮肉を言いなさいよ……!」
沙紀「…………………………」
保奈美「……私は……傷ついてなんかいない…………決めつけないで……!何にもわからないくせに……!」
沙紀「……僕は君に優しくしたら……いけないのかい?」
保奈美「…いけないわよ……!だって……だって………何で……あなたなのよ………!何で………何で…………っ………うう…………」
沙紀「……………………」
保奈美「……何で………私にそんな言葉を最初にかけてくれたのが……あなたなのよ………!………うう………ううううう…………」
沙紀「…………………」ギュッ……
保奈美「……どんな男の人も……そんな簡単な事を………言ってはくれなかったのに…………何で…………」
沙紀「…………辛かっただろうね……」
保奈美「うるさい…!…そんな……在り来たりな言葉で……私が満足すると思わないで……!」
沙紀「…………………………」
保奈美「……私は……私は…………!……っ………………うう……………」
沙紀「…………………………」
保奈美「…何なのよ……もう…………あなたなんか…………大嫌いよ…………!」
沙紀「なるほど……スカーレット。僕らはとことん反目し合うように出来ているみたいだ。」
保奈美「………何よ……?!」
沙紀「……僕はね、君の事が大好きなんだ。」
保奈美「こんな時にまで冗談は………!」
沙紀「冗談で言ってるとでも?」
保奈美「…………………」
沙紀「……ふふっ……『狼少年』の気持ちがよく分かる………」
保奈美「…………………………」
沙紀「冗談ばかり言ってると、終いには信用されなくなってしまう。……自業自得、ここに極まれり、だね……」
保奈美「………………………」
沙紀「……本心から言ってるのさ。君が僕にしか見せた事がないように、僕の君にしか見せた事がない本心から、ね。」
保奈美「……………………………」
沙紀「…これを冗談と思われるのは……さすがに悲しいな。仕方が……ないんだが…………」
保奈美「…………………………」
沙紀「……それと、感違いしてほしくないんだが、僕は君に同情しているわけじゃない。……ただ……幸せになってほしいだけなんだ。」
保奈美「………また……そんな事を………どうせ…それも…………」
沙紀「……………………………」
保奈美「………………………」
沙紀「……人の話は最後まで聞くものだよ、スカーレット。」
保奈美「……………………」
沙紀「急くのが君の悪い癖だ。」
保奈美「………優しくしないで…って……言ってるじゃない……!…あなたの言葉でも縋り付いてしまいそうな自分が居るのが………よく分かるのよ………!」
沙紀「それは何か問題が…?」
保奈美「…………っ……」
沙紀「……君が僕の事をどう思っていようと構わん。だがね、僕は君にいくら嫌われようが優しくさせてもらうよ。……君の嫌がる事をするのが僕の趣味だからね。」
保奈美「>>130」
ずるいわ……あなたは……
保奈美「ずるいわ……あなたは……」
沙紀「知らなかったのかい?」
保奈美「………知ってたわよ……」
沙紀「…………ふふっ……」
保奈美「……最初に出会った時からそう………いっつも……人が一番嫌がる事ばかりして……」
沙紀「怒った君がとても魅力的だったからさ。」
保奈美「……………ふん……」
沙紀「……良いところだけ掻っ攫わせてもらうよ。その為に持てる財力を活用させてもらったんだ。」
保奈美「お金じゃ…愛は買えないわよ……?」
沙紀「きっかけを作る事は出来るさ。好みの女性を見つけてお茶に誘うのだって、お茶の代金は必要だろう?」
保奈美「…お茶に比べたら……随分と高くついたわね……」
沙紀「安いものさ。これより有用な使い方は無かったと思っている。」
保奈美「……さらにかかるわよ…………?」
沙紀「ははは、分かってるさ。」
沙紀「普通の人間が猫を飼って満足している中、わざわざ喉笛に噛み付かれる危険を背負ってまで獅子を飼ったんだ。餌代はかかって当然だね。」
保奈美「…損することばかりで、一切得する事がないじゃないの………馬鹿じゃない……?」
沙紀「いやいや、まず第一に周りに自慢できる。第二に日常に刺激が出る。第三に……僕は獅子でなきゃ満足できないのさ。」
保奈美「………やっぱり馬鹿なんじゃない………」
沙紀「男なんてそんなものさ。紳士諸君については知らんがね。」
保奈美「…………ふふ………」
沙紀「………さあ、お嬢さん。良い年をした男の純真なる告白をせせら笑った事で少しは元気が出たかな?」
保奈美「………ええ…中々笑えたわ。」
沙紀「ふふっ……それは結構。ああ、ひょっとして今夜は怖くて一人で寝れないなんて事はありませんかな?」
保奈美「お生憎様。夢見は良い方なの。」
沙紀「それはそれは…………」
保奈美「残念ね。ふふふ………」
北軍 総司令部
時子「久しぶりね、シャーマン。いつ以来になるかしら?」
晶葉「戦勝記念祝典以来になります。」
時子「へぇ……道理であなたがどんな顔をしていたか思い出せなくなるはずだわ。私の記憶の片隅に留め置いてもらえた事に感謝なさい。」
晶葉「はい、光栄の至りに存じます。」
時子「で、何が目的でここにやって来たの?」
晶葉「はて?目的……と申しますと?」
時子「とぼけてんじゃないわよ。あなたが上司の顔を拝みに来るような人間のはずがないでしょう。」
晶葉「おやおや、それは何とも心外ですねぇ。私は何時でも北部連邦の事を考えて………」
時子「私の時間は貴重なの。これ以上私に時間を無駄にさせるつもりなら、この場で叩き返させるわよ?」
晶葉「……それは困りますね。」
時子「ならさっさと本題に入りなさい。私の耳に入れるべきだと思ったからここに来たんでしょう?いいわ、今日は気分が良いから聞いてあげる。話しなさい。」
晶葉「ありがとうございます。」
時子「もしくだらない話だった場合は……」
晶葉「分かっています。何、私とあなたの両方にとって利益のある話ですよ。」
時子「大した自信ね。まるで自分には失敗などありえない、なんて考えているような。」
晶葉「まさか、私とて人の子である以上失敗の一つや二つはありますよ。……それで、話と言うのはシェリダンの事なんですがねぇ。」
時子「ああ、確か死んだんだったわよね。」
晶葉「はい、南軍の残党に………惜しい人物を失いました。」
時子「ハッ、南軍の残党如きに殺られような役立たず、死んで当然よ。」
晶葉「>>139」
ごもっともです。して、シェリダンの後釜にこの者を推薦したいと……(仮面を着けた麗奈が進み出る)
晶葉「ごもっともです。して、シェリダンの後釜にこの者を推薦したいと……」
麗奈「…………」スタスタスタスタ ストン
晶葉「…シェリダンなんぞより遥かに優秀である事は私から保証させていただきます。」
麗奈「………………」
時子「…誰?」
晶葉「それは私も知りません。」
時子「アァン?」
晶葉「ですから私も知らないのですよ。コレが人間であった時の名前など、ね。」
時子「……ああ、なるほど。コイツはあなたの新しい玩具って訳ね。」
晶葉「恥ずかしながら。クク……素晴らしい玩具ですよ、コレは。」
麗奈「…………………」
晶葉「何せ私の今までにおける生涯の中での最高傑作なのですから。」
時子「最高傑作?コレが?」
晶葉「はい、これを超える作品は神と言えども作り出す事は不可能でしょう。」
時子「……私にはただの趣味の悪い仮面をつけたガキにしか見えないんだけど?」
晶葉「ククク……分かりました。では…………」パチン
麗奈「…………」シュバッ!
時子「なっ?!き、消え………」
麗奈「………………」ピタ
ナイフ「…………………」
時子「……っ?!(……この私の背後を取っただけでなく………首筋に…ナイフを…………)」
麗奈「……………………」
時子「…………っ……!」ゾワリ……
晶葉「クックックック……これが私の最高傑作の力です。身を以て味わっていただけた事と思われますが?」
時子「…………………………」
麗奈「…………………」
時子「……っ!!こ、コイツに早く私から離れるように言いなさい!」
晶葉「おっと、失礼。ククク……離れて差し上げろ。」
麗奈「…………………」ス……
時子「あ、あなたねぇ……!私にこんな事をしてただで済むと………!」
晶葉「今のがソレの性能を最も明確かつ迅速にご理解いただける方法だと考えましたので。申し訳ありませんでした。」
時子「謝ってすむと………!」
晶葉「…………」スッ
時子「!」ビクッ
晶葉「………私の話を聞いていただけますか?」
時子「…………っ……!!」
晶葉「ククク……ご自分が反応すら出来なかったからと言って、それを恥じられる必要はありませんよ。当然の事なのですから。」
時子「…………………」ギリ……
晶葉「ソレは私が遺跡から出土した技術を元に開発した『DG細胞』で全ての能力を人間の限界を超えて遥かに高めてあります。クックックックック……代償として声や感情などを完全に失ってしまいましたがね。」
麗奈「………………………」
晶葉「さあ、グラント様。コレをシェリダンの後釜に据えてはいただけないでしょうか?」
時子「>>148」
っ……好きになさい。
時子「……っ……好きになさい…」
晶葉「と言いますと?」
時子「………あなたの言う通りにしてやるって……言ってるのよッ…!」
晶葉「クックックックック……では承認していただける、と言う事ですね?」
時子「………そうよ…!」
晶葉「クク……賢くあられるグラント様ならそう言っていただけると信じていましたよ。」
時子「…………………」ギリギリ…!
晶葉「やはりお願いしてみて正解でした。ありがとうございます……グラント将軍。」
時子「……あまり……調子に乗るんじゃないわよ……」
晶葉「はて?」
時子「……私が一言命令しさえすれば……………」
晶葉「1機あたり50人、と言ったところですねぇ。無謀な勝負はあまりお勧めしませんよ?クク………」
時子「………?!」
晶葉「…ククク……勝負というのは始めるまえに既に決着がついているものなのですよ?」
時子「………っ…………っ…………!」
晶葉「クックックック……!まあ、我々が万が一にも衝突するような事態はありえないでしょう。私とあなたの関係が友好的である限りは、ね。」
時子「……自分が何をしているのか……理解できているの……?」
晶葉「ええ、これからは私めが北軍の指揮をとらせてもえらえると言う事がね。」
時子「………………………………」
晶葉「ククク……そうでしょう?」
時子「……っ!!そ、そうよ…………!!」
晶葉「私とあなたは気があうようですねぇ?クク……では、そろそろ大事な話に移らせていただきます。私とあなた…最初にこぼした通り双方に利益の…ある話です。
時子「早く話しなさいッ!…私を何をすればいいの?!」
晶葉「簡単な事です。少しだけ私に協力していただきたいのです。」
時子「………………まさか…………?!」
晶葉「ククク……共通の敵を前にして人は団結を初めてします。……大統領選挙に出馬するそうではありませんか。票が欲しくはありませんか……?」
時子「………………………………」
タラ農園 屋敷 廊下
櫂(てっきり北軍の砲撃で破壊されてしまったものとばかり思っていたけど………まさかまだ残っていただなんて……)スタスタスタスタスタ……
櫂(…………これは……僕にあの力を使え……と言う事なのだろうか……あの力を使って……戦えと……?)
スタスタスタスタスタ……
櫂(……でも……戦争が終わった今……『ホワイトドール』の封印を解くのは……………)スタスタスタスタスタ……
聖「……………」ブツブツブツブツ……
櫂(…………僕は一体……どうすれば……………)スタスタスタスタスタ……ドン!
聖「きゃっ?!」バタッ…!
櫂「……?!……すまない、キャリーン!」
聖「……えっ……?……あれ…………?……………?!?」
櫂「立てるかい…?」スッ……
聖「…………え、えっ…と…………?」
櫂「…………キャリーン?」
聖「…………あっ……………あ、ありがとう……ございます……?」スッ……
櫂「………あ、ああ…」グイッ
聖「……………………」ストン
櫂「……………………………………」
聖「……あの……私……何が…………あったんですか……?えっと………お祈りをしてて……それから…………」
櫂「…今のは、僕とぶつかってこけたんだけど…………?」
聖「……あっ……そう、なんです…か……?」
櫂「………………………………」
聖「あの……ごめんなさい………お祈りに……夢中になってて……たぶん………」
櫂「…………………………」
聖「>>158」
ピニャコラドール様に祈れば、スエレンも戻ってくるはずですから……。
聖「ピニャコラドール様にお祈りすれば……スエレンも戻ってくるはず…だから…………」
櫂「………………………」
聖「…ピニャコラドール様はいつでも……私たちを見守ってくれて、いるから………お祈りを続ければ…………」
櫂「……キャリーン。」
聖「………何…ですか………?」
櫂「……どのくらいの間、きちんと寝ていない?」
聖「…えっ………?」
櫂「……目の下の隈が酷い……相当長い間、きちんと眠れていないんじゃないかい……?」
聖「………え、えっと…………スエレンが居なくなってから………その………全然……寝れなくて……………」
櫂「……スエレンが………ということは…もう一カ月違いじゃないか……!その間…ほとんど一睡も………?!」
聖「……は、はい……………」
櫂「……………っ…………!」
聖「……怖くて………寝れないんです……………」
櫂「怖い…って言うと…………」
聖「……はい……スエレンが……もし帰ってこなかったら……どうしよう……って…………」
櫂「…………………………」
聖「……みんな………スエレンの事を…悪く言うけど…………スエレンも……大切な家族…なのに………………」
櫂「………………………………」
聖「……もう……誰かが居なくなるのは……いや……だから………………とっても……怖いんです………………」
櫂「………寝れない間は…何を…………?」
聖「お祈りを……してました……お祈りをしていると……心が……少しだけ落ち着くんです………」
櫂「………………………」
聖「…あの……みんなには…言わないでください……特に……お父さんには………心配……させたくないから………………私は……平気………だか………」フラ……
櫂「……!!」ガシ!
聖「………………………」
櫂「…っ!キャリーン!キャリーン!」
聖「……あっ………ご、ごめんなさい………」
櫂「……良かった………大丈夫なんかじゃないじゃないか……」
聖「…………………………」
櫂「……えっと……とりあえず…………」
聖「……あああっ……!!」
櫂「どうした?!」
聖「声が……聞こえる………!!……いや……私の中に……入ってこないで………!!」
櫂「……声?!……声とは何だ?!」
聖「声が……聞こえるの……!……毎晩……毎晩……ずっと……声が………!頭の中を……蛇がのたうちまわる………!」
櫂「……っ…!…えっと……………」
聖「止めて!私たちは……敵じゃ……ないよ………怖く……ないよ………?」
櫂「…会話……しているのか………?……誰と………?」
聖「うう……怖い……怖い…………怖いよ…………」
聖「みんな……もう起きるつもりはなかったのに……もう……戦いたくなんか………なかったのに…………どうして………起こしちゃったの………?」
櫂「…っ…!みんなとは…誰なんだい?」
聖「みんな……は………土の中で……ずっと……眠っていたの………」
櫂「土の中……?!」
聖「…なのに…………ああ……………」
櫂「>>166」
(聞かなかったことにしたいが……)つまり、どういうことだい?
櫂「(聞かなかったことにしたいが……)つまり、どういうことだい?」
聖「…このままじゃ……みんな……死んじゃう………みんな………みんな…………」
櫂「………それは……ひょっとして……文明の浄化じゃ……ないか………?」
聖「……うん………一回……終わる前に……終わらせないと………本当に………終わっちゃう………から…………」
櫂(………もしやと……思ったが…………)
聖「みんなも……そんなことは……したくないのに………!」
櫂「……文明の……浄化を行うのは…………?」
聖「……光の………蝶…………」
櫂「……………………………」
聖「……光の………蝶………月光蝶が…………全部を……始まりへ……………」ガク……
櫂「?!」
聖「…………………」
櫂「キャリーン!しっかりしろ、キャリーン!」
聖「…………………………」
櫂「…っ……脈は………?」ギュッ
櫂「……良かった……弱ってはいるけど……脈はちゃんとある………」
聖「………………………」
櫂(…本当に……声を聞けたのなら……キャリーンは…………)
櫂「……ウィル!メラニー!今すぐ来てくれ!キャリーンが!」
聖「………………………」ツー……
櫂「………………涙………」
櫂「……信じたくないが……古文書に書かれていた内容は………本当だった………これが……偶然なんて事は考えられない………」
櫂「……世界に……『始まりのための終わり』がもたらされてしまう………ああ………何ということだ………!」
櫂「どうすれば……そうだ……古文書を…………………ああ…古文書は……全部……屋敷と一緒に……焼けてしまったじゃないか……」
櫂「……せめて……父さんが居てくれれば古文書が無くとも………まだ……光はあったのに…………」
櫂「………世界が……………!」
聖「……………………」
都内某所 とある古書店
ノーバwithはたき「……♪」パタパタ
書棚「……………」
ノーバ「………♪」パタパタ
文香叔父「ノーバくん。」
ノーバ「………!」
文香叔父「今日も人一倍……怪獣一倍熱心な働きぶりだね。お疲れ様。」
ノーバ「………」ペコペコ
文香叔父「そう畏まらないでくれて構わないよ。君はこの書店で二番目に偉いんだから。……と言っても、店員は僕と君の2人しかいないんだがね。ふふふ………」
ノーバ「…………?」ヌーン
文香叔父「ああ、今帰ったところさ。…これを引き取ってほしいと言われてね。」スッ
『皮表紙の本』「…………」
文香叔父「確かにこれは……普通に暮らしている人の手には、余るものだ。」
ノーバ「…………………」
文香叔父「そう、存在に罪は無いが、存在することによって周りに良くも悪くも、強い影響を与える。」
ノーバ「………………」
文香叔父「>>176」
先の連続ミイラ化殺人事件の犯人が持っていたらしくてね……文香の事務所の何人かとも関わりがある
文香叔父「先の連続ミイラ化殺人事件の犯人が持っていたらしくてね……文香の事務所の何人かとも関わりがある物なんだ。」
ノーバ「………?」ウネウネ
文香叔父「ああ……魔翌力が内包されている。いわゆる『魔導書』だ。」
ノーバ「………………」
文香叔父「……この魔導書が内包する魔法は2つ。異世界との扉を開く『召喚』とそれに命令を下せる『使役』の魔法だ。」
ノーバ「…………?」
文香叔父「良いところに気が付いたね。そう、通常の魔導書が内包出来る魔法は1冊につき1つだ。」
ノーバ「……………」ウネウネ
文香叔父「ただし、通常の魔導書における限りは、だ。通常の魔導書、と言うのは魔導書の中でも最もランクの低い物なんだ。」
ノーバ「?!」
文香叔父「魔導書の約90%はこれだ。1冊につき1つの魔法とその応用が使える。」
ノーバ「………………………」
文香叔父「次のランクの魔導書、これは全体の約9%を占める。2つの魔法が内包されているのが特徴さ。この魔導書はこのランクに当たる。」
『皮表紙の本』「…………」
文香叔父「扱う事の出来る人間も少なくなる。」
ノーバ「………………?」
文香叔父「…ああ、残りの1%は3つの魔法を内包する最高位の魔導書さ。存在が幻と言われてあるものさえある程貴重なもので、ほとんど存在しない。」
ノーバ「…………………」
文香叔父「これを扱える人間はさらに少ない。同じ時代には両手で数えられるだけしか存在しない。」
ノーバ「…………………………」
文香叔父「そう、それだけ強力という事さ。使い手がその気になれば街の1つや2つは地図から消せるぐらいにね。」
ノーバ「………?」ウニョウニョ
文香叔父「……表向きはね。しかし、どんな物にも例外は必ずある。全ての魔法を内包する魔導書、理の外にある魔導書が存在するんだ。」
ノーバ「………?!」
文香叔父「最強の力さ。物理法則さえ捩じ曲げる事が出来る程のね。世界を終わらす力があるとも言われている。」
ノーバ「………………………?」
文香叔父「安心していい。これはあくまで伝説上の存在だ。この力が世界を終わらす事はない。」
ノーバ「…………………………」
文香叔父(……尤も、伝説上の存在と言っただけで、実在していないとは言っていないが。)
文香叔父「……話が逸れたね、元に戻そう。……要約すると、このランクの魔導書はおいそれと手に入る物じゃないって事さ。」
ノーバ「……………?」
文香叔父「当然その疑問に辿り着く。何故その道の者でもない人間が、こんな物を持っていたのか……」
ノーバ「……………………」
文香叔父「ああ。しかも使いこないしていたらしい。あり得ると思うかい、偶然貴重な魔導書に貴重な使い手が現れるとは。」
ノーバ「………………」フルフル……
文香叔父「…僕も同意見だ。」
ノーバ「………………?!」
文香叔父「いや、そこまでは分からない。今の段階で決めつけるのは早計だろう。」
ノーバ「……………………」
文香叔父「…素質を見抜き、魔導書を与えた存在がいる。……とはあまり考えたくないからね。」
ノーバ「………………………」
文香叔父「まずはこの魔導書を調べてみなくてはならないだろう。読み解いてみない事には結論が出せない。」
ノーバ「…………………」
文香叔父「>>186」
(魔導書と『天の姫』、様々な種族と力……それらを繋げるあの事務所……場合によっては本当に世界を終わらせるかも……)
文香叔父(魔導書と『天の姫』、様々な種族と力……それらを繋げるあの事務所……場合によっては本当に世界を終わらせるかもしれない………)
文香叔父(………………………)
文香叔父(…意思の有無に関わらず、それだけの力があそこにあると言うのは確かだ。)
文香叔父(世界を救う力を持っている、という事はまた逆も然りだ。力事態に善悪は存在しない。力を使う者に善悪は存在する。)
文香叔父(………あの事務所は驚くべき場所だ……どの様な文献を紐解いてみても、あれ以上の多様性と調和に満ちた場所は存在しない。)
文香叔父(……誰も実現し得なかった事を実現していると言ってもいい。)
文香叔父(……力に驕る者もいない……力のある者は、それを己の大切な存在を守るためにのみ使っている。)
文香叔父(…力を持つ者を恐れる者もいない。己と異なる存在を迫害し、排斥しようとする者が存在しない。)
文香叔父(そして………………)
文香叔父(…力を持つ者を……決して孤独にする事がない………………)
文香叔父(……そうだ……世界を終わらせる力を持っていたとしていたとしたら……何だと言うんだ……)
文香叔父(本人が望んで得た力じゃ……ないじゃないか…………)
文香叔父(…強大すぎる力は……所持者を孤独にさせる……強大な力と言う存在そのものが、恐怖の対象となりうるからだ。)
文香叔父(…当然だろう。対等な立場にない者を人間は信用出来ない……怖いからだ。恐ろしいからだ。相手に対してなす術が無いと言うのは……)
文香叔父(…もし信用出来るのだとしたら……それは、相手を完全に確信を持って信じる事が出来る………強き精神の持ち主だけだろう。)
文香叔父(……それが出来る人間はほんの一握りしかいない……殆どの人間は、そのように強くない…………)
文香叔父(…人間は……弱い生き物だ…………異物を憎み、強者を恐れる。)
文香叔父(…だとすれば…………………………)
ノーバ「……………………??」
文香叔父「……む………」
ノーバ「………………??」
文香叔父「いや、少し考え事をしてしまっていたんだ…………済まないね。」
ノーバ「………………」フルフル
文香叔父「…………………………」
ノーバ「…………………………」
文香叔父「…………………………」
ノーバ「………………?」
文香叔父「……何だ……よく考えたら……君たちとだって仲良くなれたじゃないか……」
文香叔父「………僕らは皆愚かで醜いのかもしれない……だが……信じる事だって出来るんだ。」
ノーバ「……………」ウネウネ
文香叔父「……………ありがとう……」
ノーバ「……………………」
文香叔父(……世界は終わらないさ……………だって、彼女を誰よりも一途に思ってくれている相手が…いるのだから…………)
文香叔父(……あれほど嫌っていた世界を終わらせられだけの力を……自分の持つ力を……大切な存在を守れた誇りとまで……言ってくれるようになったのだから…………)
公演会場3階 特別席
文香「………………………………」
文香「……私の書いた物で……たくさんの人が喜んでくれる…………ずっと……傷付ける事しかできないと……思っていたのに………」
文香「………とても…嬉しい…………言葉に…できないくらいに………」
文香「……………………………」
ファサ……
文香「…………!」
文香P「…………………寒い…………かなって……………」
文香「………………………………」
文香P「…………あ………えっと………………ひ、ひざ掛け…………あったら………………寒くない……かな……って…………」
文香「…………………………」
文香P「………冷える……から…………だから………その………え、えっと………………うう…………よ、余計なお世話…………かも………だけど……………………」
文香「……………………………」
文香P「…………あの………ね…………」
文香「………っ………」ツー………
文香P「?!」ビクッ…!
文香「>>195」
ありがとう……ございます……
(この世の総てを憎み……憎んでも憎んでもまだ余るこの世の総てを言葉で燃やし尽くそうと考えていた私の蜘蛛の糸は……他ならないあなただから……)
文香「…ありがとう……ございます…………」
文香P「…………えっ…………あ……………うあ…………あ…………え、えっと……………」オロオロ…
文香「………っ……」ポロ……ポロ…
文香P「………あ…………えっと…………………えっと…………………えっと……………」オロオロ…
文香「………っ………すみません………その……………………違うんです…………………」ポロ……ポロ…
文香P「……ち、違……う……………?」
文香「……はい…………その……悲しい……わけでは無いんです………気持ちが…溢れてしまって………………」ポロ……ポロ…
文香P「…………気持ち………が………………」
文香「……こうして……ここに居られるのが…………とても…幸せなんです……………」ポロ……ポロ…
文香P「………………………」
文香「……世界が……こんなに美しいなんて………知らなかったから……………涙が……溢れてしまって…………っ…………だめ……ですね…………」ポロ……ポロ…
文香P「…………………………」
文香「……劇を……しっかり見なくてはいけないのに………視界が曇ってしまって………………」ポロ……ポロ…
文香P「………………」ス……
文香「………それ…は………?」
ポロ……ポロ…
文香P「………………ハン……カチ………………」
文香「………………………………」
文香P「…………そ、その………………僕の……………………だけど………………………」
文香「…………っ…………」
ポロ……ポロ……ポロ……ポロ……
文香P「?!」ビクッ!
文香「…………っうう………………」
ポロ…ポロ…ポロ…ポロ……
文香P「……あっ……えっ…………あっ…………あう…………ああ………………ご、ご、ごめんなさ………………」
文香「………………」グイッ…!
文香P「?!」フワッ……
文香「……………」ギュッ……
文香P「?!」//////
文香「………………………」
ギュ………………
文香P「………………あ………………あう………………あ……ふ、ふ、ふ、文香ちゃ……?!」//////
文香「…………っ………温……かい………………」
文香P「…………………!」
文香「……本の中の……紙と…インクでできた………存在…じゃ…なくて…………っ…………本当に………………温かくて………………優しくて…………綺麗………………………」
文香P「………………………………」
文香「…………っ…………うう………………ううう………………」
ポロ…ポロ…ポロ…ポロ……
文香P「……………文香…………ちゃん…………」
文香「………あなたが……私に………優しさが……物語の中だけの…虚構の存在じゃないと……教えて…くれたから……………」
文香P「………………………!」
文香「……私の全てを……受け入れて………くれたから……………っ………私に…………光を………くれたから…………」ギュ………
文香P「………………………」
文香「……………っ………うう…………………」
ポロ…ポロ…ポロ…ポロ……
文香P「…………………」ギュ………
文香(……文香Pさんに出会えなかったら……私は……どうなってしまっていたか……………)
文香(この世の総てを憎み……憎んでも憎んでもまだ余るこの世の総てを言葉で燃やし尽くそうと考えていた私の蜘蛛の糸は……他ならないあなただから…………)
文香(……私を…救って……くれた…………叔父さんの…優しさに気付かせてくれたのも………あなただった…………)
文香P「…………………………」
文香(……自分の…世界を終わらせてしまえるだけの力を………呪うだけだった……………私を……………)
文香「>>207」
愛しています……これからも……ずっと……
文香「愛しています……これからも……ずっと……」
文香P「……!」//////シュゥゥゥ……
文香「………………………」
文香P「………………」//////
文香「……文香Pさんが教えてくれたこの気持ちを………文香Pさんに………………」
文香P「……………あう……」//////
文香「………………………」ギュ………
文香P「…………………」//////
文香(……どの様な文章を読んでも……愛とは何か分からなかった………初々しい初恋から……生々しい官能的な愛まで……どのような本を読んでみても……………)
文香(…美しい物なのか……温かい物なのか……静かな物なのか………激しい物なのか………幻想なのか……実体なのか…………)
文香(…書いてある事がすべて違っていて……戸惑った………どれが正しい愛なのだろう………と…)
文香(……でも、どれが正しいか考えている事が……正しくなかった…………)
文香(…本当は全てが正しくて……全て同じものについて書いてあったと分かったから………)
文香(……愛を実際に理解して……初めてそれも理解できた………)
文香「………文香Pさん…」
文香P「…………うう……」//////
プシュゥゥゥ………
文香「…………………………」
文香P「………ふ、不意打ち…………は………………むり………… ……」//////プシュゥゥゥ………
文香「………………すみません…」
ギュッ………
文香P「あう…………ううう………………」//////
文香(……文香Pさん………誰よりも純粋で……澄んだ心の持ち主で………優しい……………私の……大好きな人…………………)
文香(……全部を知っても…………それでも…私を愛していると…………言ってくれた人…………)
文香(……『魔導書』である…………私を……………………)
文香P「………………あう…………あ、あ、…………っ………………あの……………………!」//////
文香「…………何で…しょうか……?」
文香P「…………ぼ、ぼ、僕も……その…………うう……………愛し…………てる…………よ………………?」
文香「………………………………」
文香P「………っ…………僕も………………ね…………あの………………その…………えっと………………あう…………………」//////
文香「…………言葉は……要りません………言葉など無くとも………分かるから…………」ギュッ………
文香P「………あう……………」//////
文香(……滅ぼす力で……守る事も出来る………文香Pさんを……私の力で守る事が……出来た…………)
文香(……文香Pさんを守れた力なら……………私は………この力だって…………誇りに思える…………)
文香P(……あう……言えな……かった…………ギュッて…………い、い、いつまで…って…………?………………あう……文香ちゃん………………あ、温かくて………い、い匂いがして…………柔らか……………)//////
ボンッ……!
文香「……文香Pさん………私は…………………」
文香P「」//////プシュゥゥゥ………
文香「……ふ、文香Pさん?!」
アトランタ 製材所 経営者室
保奈美「ふぅ…………ねえ、レット。聞いた事がある?」
沙紀「新しいドレスの噂でも聞きつけたのかい?よろしい、今度の休みに…………」
保奈美「違う、ドレスの話じゃないわよ。あのね…………」
沙紀「となると、宝石か。いや、それとも壁に掛ける絵画かもしれな…………」
保奈美「レット!」
沙紀「ふふふ……分かりました、真面目に聞くよ。」
保奈美「…………………………」
沙紀「それで、どんな珍しい宝物の話なんだい?」
保奈美「この前とんでもない噂を聞いたんだけど…か知ってる?」
沙紀「無視とは傷付くな、ふふ……僕らに対する街の人間たちの噂かな?知っているが、それをこの場で挙げだしたら就業時間をとっくに過ぎてしまうだろうね。」
保奈美「でしょうね。でも、その噂は私たちに関する事じゃないの。……噂なんて馬鹿らしいとは思うんだけど、何だか気になる噂だったから……」
沙紀「ほほう、豚が木にでも登ったのかな?」
保奈美「>>218」
もう少しで全てが終わるって……
保奈美「もう少しで全てが終わるって……」
沙紀「へぇ、そりゃあ大変だ。何の全てが終わるのです?アトランタマンドリンクラブの全てがですか?」
保奈美「そんな笑い話じゃないの。世界の全てが……終わるんですって………」
沙紀「では、やはりアトランタマンドリンクラブの話に違いない。アトランタの人間はアトランタだけが世界だと思っているからね。」
保奈美「もう!」
沙紀「ははははは!だって俄かには信じがたい話じゃないか、お嬢さん。」
保奈美「……私だって最初は耳を疑ったわよ。でもね、これの続きを聞いたら……不安になったのよ。」
沙紀「マンドリンクラブではなく、アコーディオンクラブだった?」
保奈美「……全てが終わる原因は、機械人形だって言うのよ。」
沙紀「機械人形が反乱でも起こすのかい?」
保奈美「……そこまではよく分からないけど……とにかく機械人形が原因で全てが終るらしいのよ。」
沙紀「ふぅん……だとすれば機械人形をせっせと生産している僕らは、絶賛世界の滅びに協力中と言うわけだ。」
保奈美「何があっても真面目に聴きたくないようね…………」
沙紀「可能性を検討しているんじゃないか。全ての終わりがどの様な形でやってくるのか。で、噂はそれだけなのかい?」
保奈美「……ええ……まあ…………」
沙紀「……感じた事を素直に話させてもらうなら……取り立てて騒ぐ程の噂には全く聞こえなかった。」
保奈美「…む…………」
沙紀「機械人形が怖いのは分かるが、あまりに根も葉もない話じゃないか。どう信じろって言うんだい?」
保奈美「…………………………」
沙紀「南部にも段々と機械化の波がやって来ているからね。それに対して反発する形で誰かが言い始めたんだろう。」
保奈美「…………………………」
沙紀「噂なんか信じるだけ無駄と言う物さ。その手の話は我らが愛すべきピティパットさんの領分さ。」
保奈美「…………でも…………」
沙紀「でも………………?」
保奈美「何故だか……確信が持てるのよ、この話に対して……」
沙紀「オールドミスは口癖のようにそう言うものだよ。」
保奈美「違う、そうじゃないの!……どうして信じてくれないの…?」
沙紀「世界が滅ぶなんて信じたい人間がいると思うのかい?」
保奈美「…………っ…………」
沙紀「スカーレット、君は少し…………」
保奈美「全ては……月光蝶によって終わらされるのよ……?!」
沙紀「…………?!」
保奈美「………………あら……?」
沙紀「…………今……何と言った……?」
保奈美「……えっと……どうして信じてくれないの…?」
沙紀「その後だ。」
保奈美「……月光蝶によって…全てが終わる………」
沙紀「そう、それだ!…君はいつどこで……どうやって月光蝶と言う言葉を聞いた?!」
保奈美「……え、えっと……………………」
沙紀「……………………………」
保奈美「……わ、分からない………月光蝶って何……?……どうして……私はそんな事を…………」
沙紀「……………分かった。では、さっきの噂は誰から聞いた?」
保奈美「……それは………………?!……誰から……聞いたの……?」
沙紀「…………………………」
保奈美「……気がついたら……頭の中にあって………それで………確かに……誰かから聞いたのに………」
沙紀「>>226」
誰かとは誰なんだ!(掴む)
沙紀「誰かとは誰なんだ?!」ガシッ!
保奈美「?!」ビクッ!
沙紀「思い出すんだ、スカーレット!…とても…重大な事かもしれない!」
保奈美「れ、レット……?!あなた……さっきまで…………」
沙紀「良いから早く!誰だ、誰から聞いたんだ?!……まさか……タラで発掘されていると言うのは………」
保奈美「…………………………」
沙紀「文明を滅ぼした伝説の機械人形は相打ちで果てたんじゃなかったのか………?!……くっ………そんな…………」
沙紀「答えてくれ、スカーレット!その話を君に教えたのは一体………」
保奈美「ボクだよ。」
沙紀「?!」
保奈美「だめぴにゃよ?奥さんには優しくしてあげないと。肩を掴んで揺するなんて以ての外ぴにゃ。」
沙紀「…………誰だ、お前は?」
保奈美「奥さんの名前まで忘れちゃったぴにゃか?」
沙紀「違う、お前はスカーレットじゃない!」
保奈美「ぴにゃっぴにゃっぴにゃっぴにゃっぴにゃっ!そう、ボクはスカーレットじゃないぴにゃ。あくまでスカーレットの体を借りてるだけぴにゃ」
沙紀「答えろ、お前は誰だ。」
保奈美「人に名前を聞くときにはまず自分からってママから習わなか…………」
沙紀「答えろ。」
保奈美「………はぁ……この時代の人間って言うのは冗談が通じない奴ばっかりぴにゃ。」
沙紀「………………………」
保奈美「ぴにゃっぴにゃっぴにゃっぴにゃっ!まあ、起きてから、ちゃんとした自己紹介は誰にもしてなかったから丁度良い機会かもしれないぴにゃね。」
保奈美「初めまして、レット・バトラー。ボクの名前はSystem-∀99……って言っても分かんないぴにゃか。『ピニャコラドール』って名前の方がキミたちには通じるかな?」
沙紀「……?!」
保奈美「ピニャコラドールって呼ばれるのはホントは苦手なんだけど……ほらさ、神サマって呼ばれのは気恥ずかしいぴにゃからね。」
沙紀「………………………」
保奈美「キミだって眠ってる間にいつの間にか神サマ扱いされるようになってたらビミョーでしょ?」
沙紀「……ピニャコラドール……なのか………?」
保奈美「だからそう言ってるぴにゃ。」
沙紀「………伝承は……事実だったのか………」
保奈美「概ねは、ぴにゃ。伝承とか伝説って言うのは、けっこー元になった話があるものぴにゃよ。これは神サマやってて分かった事ぴにゃ。」
沙紀「…………………………」
保奈美「ぴにゃっぴにゃっぴにゃっ!と言っても、ナノマシンから伝えられた情報なんだけどね。ボク本体はアシュレに掘り出されるまで眠ってた訳だし。」
沙紀「……何故……スカーレットなんだ……?」
保奈美「……ボクにお祈りをする時のルールって知ってる?」
沙紀「生き血を……捧げる……」
保奈美「そ、ボクはそれを解析して……簡単に言えば『相性が良い』人間を探せたんだぴにゃ。」
沙紀「それが……スカーレットだったのか…?」
保奈美「うん、相性バッチリな上に適性までバッチリだったぴにゃ。運命だと思ったぴにゃ。」
沙紀「…………………………」
保奈美「あ、たまーに嫌われ役になる事でスカーレットを応援してあげてたぴにゃから、体を借りるぐらい大目に見てほしいぴにゃ。」
沙紀「………理由は分かった。…だが、目的は何だ?」
保奈美「ん?」
沙紀「スカーレットの体を借りる目的は何だ、と聞いているんだ。」
保奈美「目的……?ああ、それなら簡単な事ぴにゃ。」
沙紀「………………何だ?」
保奈美「もう一体のピニャコラドール…『ターンX』を止める手伝いをしてもらう事ぴにゃ。」
沙紀「…………ターン……X……」
保奈美「>>234」
1周年おめでとう!
そ、ぼくと対にあるもう一つの古代の機械人形。言うなればぼくが正義ならターンXが悪ってとこかな。
保奈美「そ、ボクと対にあるもう一つの古代の機械人形ぴにゃ。言うなればボクが正義ならターンXが悪ってとこぴにゃかね。」
沙紀「フン、正義や悪だなんて概念を兵器が語るのか?」
保奈美「ごもっともぴにゃ。でもさ。自分を悪って言う奴は居ないぴにゃよ。」
沙紀「だからお前は自分を正義と言うのか?」
保奈美「ボクは今の文明を守ろうと思っているんだ。正義の味方を気取るぐらい許してほしいぴにゃ。」
沙紀「…………………………」
保奈美「いいかい、よく聞くぴにゃ。さっき言ったターンX……コイツは今の文明を終わらせようとしている。」
沙紀「たがが一機の機械人形にそんな事が…………」
保奈美「出来るぴにゃ。その事は君だって知っているぴにゃよね?」
沙紀「…………っ……!」
保奈美「…アイツは昔、ボクが相打ちに持ち込んだと思ってたぴにゃが、ところがどっこい、どっちも機能を停止していなかったと言う訳ぴにゃ。」
沙紀「…フン……お前が仕留め損ねたせいで、僕らは未曾有の厄災に見舞われなきゃいけないのか。」
保奈美「そうなるぴにゃね。キミたちには済まないと思ってるぴにゃ。」
沙紀「謝るぐらいなら、今すぐターンXと刺し違えて来てくれないかね。」
保奈美「それは無理ぴにゃ。パイロットが居なければボクは動けないぴにゃからね。」
沙紀「つまり、スカーレットにお前と一緒に[ピーーー]と言うんだな?」
保奈美「ボクがやられるの前提で話を進めないでほしいぴにゃ。」
沙紀「文献によると確か、ターンXの方が性能が上だそうじゃないか。」
保奈美「……キミのような物知りは嫌いぴにゃ。」
沙紀「勝算はあるのか?」
保奈美「ないぴにゃ。良くて相打ちぴにゃね。」
沙紀「対になると言う割には随分と力に開きがあるじゃないか。」
保奈美「アイツと違って、ボクは別に文明を滅ぼすために作られた訳じゃないぴにゃから。」
沙紀「機械人形も言い訳をするんだな。」
保奈美「言い訳ととってもらっても結構ぴにゃ。ボクはあくまで事実を話しただけぴにゃよ。」
沙紀「………………………………」
保奈美「言い訳ついでにもう一つ、ヤツはボクと同じ時代の機械人形たちを大量に味方につけているぴにゃ。」
沙紀「お前には?」
保奈美「ボクは嫌われ者みたいぴにゃ。今もこうしてキミに嫌われてるみたいにね。」
沙紀「戦力差は絶望的、か……」
保奈美「一機ずつはターンXに比べたら大した事は無いんだけど、何せ数が数ぴにゃ。」
沙紀「…………………………」
保奈美「ボクは無敵の神サマじゃないぴにゃ。数の暴力には勝てないぴにゃ。」
沙紀「おい、ピニャコラドール。何故、ターンXやそいつらは今の文明を滅ぼす?」
保奈美「今の文明に絶望したからぴにゃ。」
沙紀「……ほう……」
保奈美「ボクらは兵器として作られた。そして、前の文明はボクらを使った長い争いの果てに滅びてしまった。」
沙紀「滅びた?滅ぼしたのはお前たちだろ。」
保奈美「そうなる原因を作ったのはニンゲンたちぴにゃ。」
沙紀「…………それで、ターンXはまた争いを繰り返す人類に絶望し、滅ぼす事に決めたのか?」
保奈美「そ、ヤツはこれ以上文明が進めば、またあの時のように取り返しのつかないことになると思っているぴにゃ。」
沙紀「だから、文明がまだ未発達のうちに一度文明を滅ぼす、と言う事か。」
保奈美「過ちが繰り返されれば、ヤツは今度こそ人類が、地球そのものが滅びると信じているぴにゃ。そうならないためには、一度リセットする必要がある、そう思っているんだぴにゃ。」
沙紀「……なるほどね。理屈としては通っている。」
保奈美「キミは文明が滅んでもいいぴにゃか?」
沙紀「>>245」
そんなはずはないだろう!
沙紀「そんなはずはないだろう!」
保奈美「へぇ。」
沙紀「……っ…!…確かにね、僕は人間なんて愚かで醜い馬鹿な生き物だと思っている。ロクなものじゃない!」
保奈美「……………………」
沙紀「私利私慾のために動き、争う。同じ国の中でさえ、だ!絶望していると言うなら僕もだ!いつになったら人類は賢くなる?!」
保奈美「なら………………」
沙紀「だが……世界を滅ぼさせるわけにはいかない!」
保奈美「……君は人間が嫌いなんだろう?何故世界が滅ぶと困るんだい?」
沙紀「簡単な事さ。この世界がスカーレットの生きる世界だからだ。」
保奈美「スカーレットの……?」
沙紀「ウェードの生きる世界で、メラニーさんやマミーやピーターが生きる世界だからだ!でなけりゃ世界なんて滅ぼうが構うものか!」
保奈美「……………………」
沙紀「世界に怨みを抱いている奴の我儘で、彼らの生きる世界を奪っていい道理はない!」
保奈美「キミは世界を救いたい。だがそれは、正義などのためではない、と。」
沙紀「正義?ハッ、僕は正義と言う言葉が大嫌いなんだ!聞くだけで蕁麻疹が出る。」
保奈美「では、ごく個人的な理由から世界を救いたい、と?」
沙紀「ああ、ボクは完全な悪人だから、私利私慾のためにしか動くつもりはない!スカーレットと違ってね!」
保奈美「………………………………」
沙紀「非難したければ非難しろ。ボクは考えを変えたりはしない!」
保奈美「…………………………」
沙紀「正義ごっこでも何でも勝手にやっていろ!ただ、スカーレットは渡さん、返せ!」
保奈美「それはできないぴにゃ。ボクが今まで調べてきた中では…………」
沙紀「僕の血を調べろ!」
保奈美「………………ぴにゃっ?」
沙紀「
保奈美「いやいや、誰でもいいって訳じゃ…………」
沙紀「僕の血はスカーレットと同じ型だ。まずは調べてみてから無理かどうかは言え。」
保奈美「…自分がスカーレットの代わりをやるつもりかい?」
沙紀「自分の財産を失いたくないんでね。僕なら幾らでもお前と死んでやる。悲しむ人間は居ないだろうからね。」
保奈美「…………………………」
沙紀「大多数の人間からは嫌われている、ウェードはまだ幼い、スカーレットとは…その時になったら大げんかをして憎まれよう。」
保奈美「…………………………」
沙紀「世界から嫌われている山師が世界を救う、なかなか皮肉が効いてると思わないか?」
夜
保奈美「…うぅん…………」パチ……
保奈美「……私は……一体………………」ムクリ
沙紀「お目覚めかね、お嬢さん。」
保奈美「………………えっ……と…………」
沙紀「疲れが溜まっていたんだろうね、仕事中にいきなり倒れたんだよ。思い出したかね?」
保奈美「………………………………」
沙紀「寝坊助さんにも困った物だ。僕1人で仕事をする羽目になったよ。」
保奈美「…………あ…………ごめんなさい…………」
沙紀「いやいや、謝る事はない。君が居てくれないおかげで上手く進んだから。」
保奈美「………あ、そう……」
沙紀「……スカーレット……君は生きろ。」ボソ……
保奈美「は?」
沙紀「>>253」
……何でもないよ。何でも……ね(悲壮な決意に満ちた顔)
沙紀「……何でもないよ。何でも……ね。」
保奈美「…………………………」
沙紀(…幸福とは全く以って一瞬しか続かない物のようだ……苦労し続けて手に入れた物をこれほど早く手放さなきゃならん事になるとはな…………)
保奈美「…………レット…?」
沙紀「…帰る支度をしたまえスカーレット。今日はもう終いだ、不満だろうが帰るよ。」
保奈美「………………………………」
沙紀「はぁ……そんなに帳簿をつけれなかった事が不満かい?」
保奈美「……………………」
沙紀「悪いが、帳簿は僕が付けさせてもらったよ。帰る時間が遅くなったら堪ら…………」
保奈美「……あなた……何を企んでいるの……?」
沙紀「……早く家に帰って、ウェードと遊ぶ事さ。」
保奈美「嘘を言いなさい。」
沙紀「はははははは、相変わらず君は僕のやる事なす事全てが気に食わんらしい。」
保奈美「…………………………」
沙紀「僕も低く見られた物だ。つくならもっとマシな嘘をつくに…………」
保奈美「今日は嘘が下手ね。あなた、自分がどんな顔をしてるか気付いてる?」
沙紀「いつも通りの文句のつけようの無い顔でしょう?」
保奈美「いいえ、あの晩、戦場に行くと言った時の顔よ。」
沙紀「…………冗談を言っちゃ……」
保奈美「こんな笑えない冗談を言うわけないでしょ?」
保奈美「……白状なさい、何を企んでいるの?」
沙紀「……何も企んじゃいませんよ、お嬢さん。」
保奈美「下手な嘘も大概にしなさい!いつもの余裕はどうしたのよ?!」
沙紀「………………………………」
保奈美「……っ!……どうしてそんな……今から死にに行く人間の顔を………?!」
ダーン!ダーン!ダーン!
沙紀「む!」
保奈美「?!」
沙紀「……銃声…近いな。」
保奈美「…………ねえ、この銃声って………」
沙紀「………北軍の拳銃の音だ。」
保奈美「なら……狙われているのは………………」
沙紀「…………チッ!」バッ!
保奈美「あっ……ちょっと?!」
製材所近くの林
悠貴「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ…………はぁ………はぁ…………」
「逃すな!必ず探し出せ!」
「見つけ次第始末しろ!南軍の残党だ!」
悠貴「……はぁ………はぁ………」
「出てこい!隠れても無駄だ!」
悠貴「………っ………!」ギュッ……
作戦書「…………」
悠貴「…………すみません………リー将軍……………」
悠貴「……これが……北軍の手に渡れば……………っ………!」ジワ……
悠貴「……脇腹に一発……いや……二発…………だめだっ……体に力が………入らない………こう………なったらっ………」
手榴弾「……………」
悠貴「…………作戦書を……渡すわけには…………」
ターン!ターン!
悠貴「?!」
「な、何だ貴さm…………」ターン!
悠貴「……………………」
ターン!ターン!ターン!ターン!ターン!
悠貴「………みか……た…………?」
フラ……パタリ……
製材所 地下 機械人形工場
悠貴「…………っ…!……あれ……ここ……は………?」
悠貴「…………………………」
悠貴「………!さ、作戦書っ……!」
保奈美「これの事?」スッ
悠貴「あっ……そ、それでっ………うわぁっ………?!」
保奈美「>>262」
落ち着いて。傷に響くわ
保奈美「落ち着いて。傷に響くわ。」
悠貴「……っ……!」ズキッ…!
悠貴「……うう………………」
保奈美「だから言ったのに…………」
悠貴「すみませ…………っ……………………」
保奈美「包帯を巻いて薬を打っただけなんだから……銃弾はまだ体の中に残っているのよ?」
悠貴「………………は、はいっ…………」
保奈美「……はぁ……北軍に追われてる人間を匿うのは2回目だわ……」
悠貴「…………!…1回目はっ……」
保奈美「無事にテキサスに逃げて行ったわよ。」
悠貴「……よ、良かったぁ………………ありがとうございますっ………!」
保奈美「……いえ……(助けたのは…フランクだもの……)」
悠貴「………………………………」
保奈美「…………………………」
悠貴「……あ、あのっ……この怪我の手当てをしてくれたのはっ……」
保奈美「私が出来るのは包帯を巻くぐらいよ。」
悠貴「じゃあっ…………?」
保奈美「お礼はあっちの2人に言いなさい。」
清良「……………」
菜々「………………」フカブカ……
悠貴「…………………………
保奈美「医者のミード先生と、あなたも知っている通り、召使いのマミーよ。」
悠貴「え、えっとっ……ありがとうございますっ……!」
清良「…気にする必要は無いよ。南部人は皆同胞だ。それに、人命を助けるのが医者の仕事と言う物だ。」
保奈美「…改めてありがとうございます、ミード先生。」
清良「…………フン……あんたの使いでマミーが来た時は、誰が行ってやるものかと思ったがね。」
保奈美「……………………」
清良「……マミーがあまりに必死に頼み込んで来るものだから来てやったんだ。礼ならマミーに言うんだな。」
菜々「…………………………」
保奈美「……あ、ありがとうマミ…………」
菜々「ふん、最近ろくなことがありませんよ、ほんと。いきなり趣味の悪い屋敷に住まわされるわ、夜中にミード先生のところまで使いっ走りに使われるわ……」
保奈美「…………あ……えっと………………」
菜々「そうでなくとも迷惑をかけられてばかりなのに……ええ、実に迷惑んかけられてばかりです…………」
保奈美「それは……その…………」
菜々「だから、今さら迷惑の一つや二つかけたぐらいで謝られても鬱陶しいだけです。お礼なんか要りませんよ。」
保奈美「…………!…マミー……」
菜々「……………フン…」
清良「……はぁ……バトラーに手を貸すような事態に陥ろうとはな…………」
菜々「すみません……その…………」
清良「いい、これ以上あんたに頭は下げさせられん。……それよりも、若いの。」
悠貴「は、はいっ!」
清良「…何をしたら北軍から追いかけられるような事になる?それに…その作戦書は何だ?」
悠貴「>>269」
あなた方なら安心して話せそうですね……。
これは北軍・シャーマン将軍の研究施設から持ち出した最重要機密なのです。
悠貴「…あなた方になら安心して話せそうですね………これは北軍・シャーマン将軍の研究施設から持ち出した最重要機密なんですっ。」
清良「何と、シャーマン将軍の研究施設から?!」
悠貴「はいっ…私たちの同志が、決死の覚悟で…持ち出す事に成功したんですっ……」
清良「………同志…と言うと……?」
悠貴「……リー将軍の元に集った…仲間たちですっ…!」
清良「………!!」
悠貴「…リー将軍はシャーマンの野望にお気付きになられっ……それを阻止するために、私たちを集めたんですっ……!」
保奈美「……シャーマンの野望……………………!もしかして機械人形を使って…………!」
悠貴「はいっ!ヤツは……古代の機械人形を使ってっ……もう一度…戦争を起こそうとしているんですっ……!」
保奈美「…………?!…また……戦争が……………………」
悠貴「…また戦争が起きればっ……またたくさんの人が死にますっ…………それだけは絶対に阻止しないといけませんっ……!」
菜々「…………………………」
悠貴「……しかもっ……今度の戦争はっ…………っ……!!」ズキ…
保奈美「ああ……!興奮すると傷口が…………!」
悠貴「……っく……すみませんっ…………………ふぅ……しかも…今度の…戦争は……先の戦争より…ずっと大きな物になるんですっ……シャーマンは…南部だけじゃなくてっ……世界中を攻撃するつもりなんですっ…!」
清良「……………………………」
菜々「……にわかには信じられない話ですね…………」
悠貴「本当なんですっ…!信じてくださいっ…!」
菜々「…世界中に攻撃を仕掛ける、そんな事をしても袋叩きに遭うだけじゃないですか?いくらシャーマンといえども…………」
悠貴「それが……可能なんですっ…!古代の機械人形と……シャーマンの技術力があればっ……!……世界を相手に……戦争をしたって勝てるんですっ………!」
菜々「……言い切れると言う事は根拠が?」
悠貴「……スカーレットさんっ……作戦書を……貸してくださいっ…!」
保奈美「あっ……ええ。」ス
悠貴「ありがとうございますっ!」パシ
悠貴「えっとっ…………」
ペラ…ペラ…ペラ…ペラ
悠貴「あ、あったっ!皆さんっ、これを見てくださいっ!」
保奈美「…これは…………?」
清良「………作戦の日程か……かなり細かく書かれとる……………」
菜々「……………………」
悠貴「次のページからは作戦内容が……かなり綿密に記されてありますっ……」ペラ
悠貴「……ほらっ…」
清良・菜々・保奈美「……………」
悠貴「…考えてみてもくださいっ………悪魔のように計算高いシャーマンがっ……勝ち目のない戦いを始めるでしょうかっ……?!」
菜々「…………考えづらいですね………」
清良「……………………………」
悠貴「……戦争が終わった今……こんな事をしたら……反逆者となるのは分かっていますっ………でもっ…リー将軍は……それをお覚悟の上でっ………」
沙紀「ブラボー、ブラボー。なるほど、大した自己犠牲の精神だ。」
パチパチパチパチ
悠貴「……!!」
沙紀「感動で涙が止まりませんなぁ。逆賊の汚名を被ってでも、世界の平和を守ろうとするとは。大した将軍ですねぇ、リー将軍は。」パチパチパチパチ
悠貴「………」キッ!
沙紀「はぁ……あなたを救って差し上げたのは僕なのですよ?少しは感謝ぐらい示してくれても良いと思うのですが。」
悠貴「うるさいっ!…誰がお前なんかに……っ………感謝するものかっ…!」
沙紀「はははははは、結構。どうせ感謝されたところで悪寒がするだけですがね。」
悠貴「………っ……!……何故……助けたっ……?!」
沙紀「>>280」
あなたの惨めな表情が見たかったから……では、いけませんか?
沙紀「あなたの惨めな表情が見たかったから……では、いけませんか?」
悠貴「なっ………?!」
沙紀「ふふふ……侮蔑すべき男に命を救われる、そうなった時に正義の血潮溢れる若き南部の青年がどのような顔をするか非常に興味があったのです。」
悠貴「…………………………」
沙紀「結果として中々良い物が見れました。ふふ……あなた、今最高に素敵な顔をしてらっしゃいますよ?」
悠貴「……き、貴様っ……!!」
沙紀「ストップ。人の話は最後まで聞くものですよ。……ではここで、さらにあなたを惨めにして差し上げることにしましょう。」
悠貴「黙れっ!これ以上の屈辱などあるものかっ!(うう……沙紀さんに…後で謝らないと…………)」
沙紀「あるのですよ、それが。付かぬ事をお聞きしますが、あなた方の戦力は十分でらっしゃいますかな?」
悠貴「お前には関係ないっ!」
沙紀「関係あるのですよ、それが。ここは何だと思いますか?」
悠貴「工場だろっ?!」
沙紀「何の?」
悠貴「それはっ………………」
沙紀「ふふふ……機械人形の工場ですよ。暗くてよく分からんとは思いますが。」
悠貴「……?!……機械人形の製造は禁止されているはずじゃ…………」
沙紀「武装蜂起だって禁止されているはずでは?」
悠貴「…………っ……!」ギリッ!
保奈美「………………………」
沙紀「さて、ここで商売の基本を確認してみましょう。必要な物を必要な相手に売って代金を得る。どれだけ複雑化しようと、基本はこれです。」
悠貴「…何が言いたいっ……?!」
沙紀「はぁ……南部人と言うのは頭の機転が利かなくて困る。良いですか、ここには大量の兵器や、物資や、戦力、あなた方の持っていない全てが揃っていると言っているのです。」
悠貴「……………!…そんなに金が欲しいのかっ?!」
沙紀「はははははは、金なんざ余ってしょうがないのです。わざわざ敗残兵の方々からいただく必要はありませんよ。」
悠貴「………っ……!ならば……………」
沙紀「今回に限り、全て無償であなた方に提供して差し上げましょう。」
清良「………今さら愛国心にでも目覚めたのかね?」
沙紀「まさか。ふふふ……僕にそんな物は存在しやしませんよ。……なあ、君。本音で語り合おうじゃないか。正直なところ、今の装備で十分だと思いますか?」
悠貴「…………っ………………」
沙紀「まともな装備があるはずがありませんよねぇ、敗残兵の集団に。」
悠貴「…………………………………」
沙紀「ここで先程の話です。私があなた方に無償で装備を提供して差し上げましょう。あっても勝てるとは限りませんが、少なくとも無ければ勝てないでしょうねぇ。」
悠貴「…………何があろうとも……お前の手なんかっ……!」
沙紀「あなた方のプライドと世界、どちらが大切なのですか?」
悠貴「……………っ……!!」
沙紀「別に不必要と言うのならば結構です。ですがねぇ、ここは個人的な感情は捨てるべきではないでしょうか?」
悠貴「…………………………………」
沙紀「ふふふ………その顔が見たかった。その悪党からの情けを受けるしかない屈辱に満ちた表情がねぇ!」
悠貴「……………ぐっ……ぅぅ………………!」
沙紀「いやはや、元はと言えば金儲けの為に作った工場でしたが、こんな愉快な事に役立つ日が来るとはね。」
保奈美「………えっ……?(作ったのは私であってあなたじゃ…………)」
沙紀「スカーレット・オハラ。あなたには中々役立ってもらいましたよ。あなたのおかげでこの工場の存在を誰からも疑われませんでした。」
保奈美「………レット…………?」
沙紀「はあ、愛のない結婚というのはひどい苦痛ですねぇ。やっとこの茶番を終われます。」
保奈美「……………………………」
悠貴「………スカーレットさんを……ずっと………!」
清良「なるほど……道理で……ずっとおかしいと思っていたんだ……メラニーの姉妹のスカーレットがどうしてこんな真似をしたのか………!」
沙紀(……ミード博士はこの街の南部人の間では誰より信頼を勝ち得ている人間だ。おまけに僕のことを憎んでいると来た。)
清良「この……人の姿をした悪魔め!!」
沙紀「はははははははは、それが何か?(これでスカーレットは機械人形から離れられる、そして悪名も全て雪げる。……悪役が得意で助かったよ。)」
保奈美「……………………………」
清良「>>289」
今すぐに私たちの前から消えろ!お前の全財産を置いてどこか遠くに行ってしまえ!
清良「すぐにわしらの前から消えろ!お前の全財産を置いてどこか遠くに行ってしまえ!」
沙紀「はははははははは!そう慌てられずともアトランタにある財産ぐらい置いていって差し上げますよ。さすがに全財産は無理です。」
清良「いいや、お前に選択肢はない!何ならこの場で撃ち殺してやっても……!」
沙紀「先程の僕の射撃の腕前をご覧になられなかったのですか?ははははい、あなたじゃ相手になりゃしませんよ。」
清良「……っ……!」
沙紀「ふふっ……そちらの青年も死に急ぐものではないよ?」
悠貴「…………………………………」
沙紀「……………………」チラ…
保奈美「…………………………」
沙紀「…………………」クルッ…
保奈美「……ま、待ちなさい!このっ……!!」バッ!
菜々「………………」ガシッ!
保奈美「離しなさい、マミー!!」
菜々「…………………………」
保奈美「マミーってば!」
菜々「…………………………」
悠貴「……気持ちは分かりますっ……!このままあの男を行かせるしかないと思うと……!」
保奈美「そうじゃないの!私はっ…………むぐっ…………?!」
菜々「…………………………」
保奈美「〜〜〜〜〜!!」
菜々「バトラー船長のお思いを無駄になさるおつもりですか?」ボソ……
保奈美「………………………」
菜々「スカーレット嬢様……今回だけは、騙されてやってください。」
保奈美「……………!………………」
菜々「……あの目が何の目か分かりませんか……?…あなたもよく知っている目のはずですが…………」
保奈美「…………ウィルクスのおじ様が……戦場に行こうとしていた時の…………目………………」
菜々「……分かっているじゃありませんか。……でしたら、どのようにするのが正しいかは……分かりますよね?」
保奈美「…………………………」
菜々「……フン……どうしてもっとマシな嘘がつけないのか…………」
沙紀「…………………………」
スタスタスタスタ……
保奈美「………………………………」
菜々「……何をするつもりかは知りませんが……最期の嘘ぐらい、騙されてあげなさい。」
保奈美「……………………」
菜々「…………………………」
保奈美「………ありがとう……マミー…………」
菜々「……………………」パッ……
保奈美「…………………………」
菜々(………最期だけは…認めてやりましょう…)
清良「さっさと消えろ!お前なんか見たくもない!」
悠貴「早くどこかへなりと行ってしまえっ!」
沙紀「はいはい、分かっておりますよ。」スタスタスタスタ……
保奈美「……レット・バトラー!!」
沙紀「ん?」
保奈美「……この………卑怯者!!」
沙紀「…………………………」
保奈美「…………………………」
沙紀「……ふふっ……最高の褒め言葉です。」スタスタスタスタ……
保奈美「…………………………」
トゥエルヴ・オークス屋敷 地下
櫂「……まさか……まだ地下の研究室が残っていたとは思わなかったよ……そして…………」
ターンA「…………」
櫂「……『ピニャコラドール』……いや、『ターンA』……これが無傷で残っているとはね…………」
ターンA「……………………」
櫂「……何かを感じない訳にはいかないな…………さすがは、神話時代の機械人形、と言うところか。」
櫂「……僕がこれを発掘したのも……果たして偶然だったんだろうか…………」
櫂「………………………………」
櫂「>>297」
いや……とてもそうとは思えない。何故なら僕の邪王炎殺黒龍眼【バロール】が……
櫂「いや……とてもそうとは思えない。何故なら僕の邪王炎殺黒龍眼【バロール】が…………」
櫂「…………………………」
櫂「……僕は…こんな時にまで………………ふふっ……どこまで行っても、書斎の中でしか生きていけない人間なんだな…………」
櫂「……夢を見る事を止められない………叶わない夢を…………そして、本人に止めるつもりがない。」
櫂「……今も、夢の中にいるのかもしれない……輪郭があやふやな……僕に対して優しい夢【セカイ】に。」
櫂「…………………救えないな…………」
櫂「………なあ……君が絶望したのは、そんな人間たちだったのかい?」
ターンA「……………………」
櫂「……答えてはくれないか。……はぁ…………僕には…『資格』は無いのか…………」
櫂「……それはそうだろうね……これだけの強大な力を、僕のような人間に託してはいけない。」
櫂「………………………………」
櫂「……結局……僕は何者にもなれないんだ…………」
櫂「………悲しくない、と言えば嘘になる……だけど、それを受け入れている自分がいる。」
櫂「………………………………」
櫂「……それを運命【サダメ】と呼ぶのは簡単な事だ。…そう言ってしまえば、どんな事だって諦めて受け入れる事が出来る…………」
櫂「……滅びの宿命【ホロビノサダメ】…………ふふっ……カッコいい響きだな……」
櫂「ずっとこう言う状況に憧れてきて……空想の中では、僕はいつも主人公だった……」
櫂「………でも……いざ直面してみると………………」
櫂「……………………………」
櫂「……何も……出来ないものだね…………」
櫂「………実はさ、分かってたんだ。…世界が終焉【オワリ】に向かっているって………………」
櫂「………だってさ…君が再び地上【セカイ】に現れた、と言うことは、そう言う事なんだろう?」
ターンA「……………………」
櫂「……機械人形を掘り出している事ぐらい察しがついたさ……ヨーロッパで同じ光景を見た事があったからね……」
櫂「……元戦友からさ、情報ももらっていたんだ………シャーマンが何か企んでいるってね。」
ターンA「……………………」
櫂「……そう………僕は全部……知っていたんだ………」
櫂「……知っていて何もしなかったのさ。どうせ、何も出来やしないってね。」
ターンA「…………………」
櫂「……僕は、情けない奴だろう………?……する前から、諦めてしまっていたのだから………」
櫂「………世界が滅びようと構わない、そうも思っていた………」
櫂「……もう……全てがどうでも良かったんだ……何がどうなろると別にいい……滅ぶなら滅べ………そしたら、楽になれるかも……なんてね。」
ターンA「……………………」
櫂「………………………………」
櫂「……それが今ごろ、君の確認を始めたんだ………何故だろうね……?自分でもよく分からないんだ……」
ターンA「………………」
櫂「…キャリーンの苦しむ姿を見たから………?………原因の1つではあるかもしれないが………すべてではないね。」
ターンA「…………………」
櫂「………僕のように抜け殻ではない世界を守りたい……そう……思ったのかな………?」
ターンA「…………………」
櫂「……ふふっ………原因を求めるのが……間違いなのかもしれない……………」
櫂「……それで……何の用だい、ウィル?」
輝子「フヒ?!」ビクッ!
櫂「……当ててあげよう、……夜な夜な僕が屋敷を抜け出して、自分の屋敷の跡地に向かうのが気になって、今夜とうとうつけてきた……そんなところじゃないか?」
輝子「………あ………は、はい………」
櫂「…………………………」
輝子「>>305」
それが古代兵器ターンAか……
輝子「…それが古代兵器ターンA……ですか………」
櫂「………当然全部聞かれてしまってるよね………」
輝子「……あっ………す、すみません……………」
櫂「いや……謝らなくていいよ。…聞かれたなら聞かれたで構わない……」
輝子「……………………………」
櫂「…いつか気付かれるって事は分かっていたからね。」
輝子「……これを……1人で………?」
櫂「……一応ね。…と言っても、ターンAには自己修復機能があるから、僕のやった事と言ったら保守点検ぐらいさ。」
輝子「…………………………」
櫂「それ以上の事をやろうと思っても、全く手が付けられなくて。…僕らの知ってる機械人形と作りが違いすぎるんだ………」
ターンA「……………………」
櫂「…伝承の通りなら、全ての機械人形の行き着くところ、らしいからね。手が出せないのも当然なんだろうが…………」
輝子「……………本……物………なんです……ね………」
櫂「…ああ……伝承に残されているターンエー、その物だよ。」
輝子「…………文明を終わらせた……悪魔の…機械人形……………」
櫂「……………ああ……」
輝子「………………………」
ターンA「……………………」
輝子「……………………………」
櫂「……どこから説明した方がいい………?」
輝子「………………」フルフルフルフル……
櫂「………………………」
輝子「……全部……トモダチが……教えてくれたから…………」
櫂「………トモダチ……?」
輝子「……………………」スッ……
ターンA「…………………」
輝子「トモダチ。」
櫂「……………………………!」
輝子「……アシュレさんの秘密を知ってしまったから………私…も………自分の秘密を…話します…」
櫂「………………………」
輝子「………実は………私が……今まで皆さんに聞かせてきた身の上話………実は全部……嘘……なんです……」
櫂「…………なら……君は本当は……………」
輝子「…生まれた場所は……分からないです………ただ、調整を受けた場所は……北部の…とあるニュータイプ研究所と、言う事は分かります。」
櫂「…………………………………」
輝子「……ずっと……記憶が欲しかったら………戦えと言われて………それで……言われるままに……戦って……たくさんの………人を……………っ…………」
櫂「ウィル…!」
輝子「……すみません………私は………戦争で………たくさんの…………………………………」
櫂「……………………………」
輝子「………初めての……居場所を……失いたくなくて………………嘘を………ついてしまって…………………」
櫂「……………………………」
輝子「………ある日………戦うのが……嫌になって………逃げて………きたんです………とにかくもう……戦いたく…無かった…………」
櫂「……………………………」
輝子「……あとは…メラニーさんたちが……お話された通りです……………道端で……力尽きて…………そのままになる……ところ………でした………………」
櫂「……………………………」
輝子「……あ…あの………………」
櫂「……いいんだ………ありがとう。よく話してくれたね、ウィル…………」
輝子「………………………………」
櫂「>>315」
な……これは……∀が……!?(ナノマシンに飲み込まれていくアシュレとウィル)
櫂「…………その………」
キラキラキラキラ……
櫂「な……?!」
キラキラキラキラキラキラキラキラ……
櫂「……これは……∀が……!?」
ターンA「…………」
輝子「ど、どうした…マイフレンド……?!」
キラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラ………
眩しい場所
櫂「………っ………あれ…ここは………?」
輝子「あ、アシュレさん……大丈夫です……か……?」
櫂「……………あ、ああ………ウィルの方こそ……?」
輝子「は、はい……大丈夫…ですよー…」
櫂「……そうか…………情況を整理しないと………僕らは確か…ターンエーのナノマシンに………」
「僕がキミたちを招待させてもらったぴにゃ。」
櫂「?!」
輝子「……マイフレンド……どうして私たちを……マイフレンドの記憶の中に………?」
「しておきたい話があったからぴにゃ。何せ、明日にはターンXが文明の浄化を開始しちゃうからね。」
櫂・輝子「?!」
「大丈夫。ここは時間の非連続性を利用して切り取った、時間の流れから隔絶された空間ぴにゃ。」
櫂「……えっと……つまり、この中では時間は流れない……そういう事……なんだね………?」
「そーいうことぴにゃ。」
輝子「……す、すごいな……トモダチ……!そんな事も出来るのか………?!」
「ぴにゃっぴにゃっぴにゃっぴにゃっぴにゃっ!伝説は伊達じゃないぴにゃ!」
輝子「そ、それで……話って…何なんだ……?」
「それは…………………」
沙紀「戦いに向かう前に気持ちの整理を付けておこう、と言う訳さ。」
櫂「?!」
沙紀「……久しぶりだね、アシュレ君。実に、あの時振りじゃないか。」
タラ 森林 やや開けた場所
亜季「…………………………」
仁美「……リー将軍。」
亜季「……何だ?」
仁美「…………………いえ……」
亜季「……………………」
仁美「………………………」
亜季「>>324」
(すっかり諦め、憔悴しきっている表情)そうか……
亜季「………………そうか……」
仁美「……………っ………」
亜季「………………………」
仁美「……申し訳ございませぬ………援軍の要請のために向かわせた……ユーキからの定時連絡が………………途絶えました………………」
亜季「………最後の連絡は……?」
仁美「……夕方の…報告……です…………」
亜季「………………そうか………」
仁美「…………最後の連絡には……北軍の追っ手に発見されてしまった事と………機密確保の為に、作戦書ごと自決するとの旨が……記されて……おりました…………」
亜季「…………っ…!」ダンッ!
仁美「…………………………」
亜季「まただ……また…私は…………1人の若者を……………………」
仁美「……リー将軍に…責任はございませぬ…」
亜季「……いや……彼の俊足を見込んで送り出したのは……私だ…………私が…………彼を……………………」
仁美「………………………………」
亜季「…………済まん……今のは指揮官に相応しくない振る舞いだったな……」
仁美「いえ……一兵をもそのように思われる将軍であればこそ、我々は付き従って参ったのです。」
亜季「…………………………」
仁美「……天佑が……無かったとしか申せませぬ…………」
亜季「…………っ………!……………………っく…………」
仁美「………………………………」
亜季「……作戦内容を変更する……D案に変更、現有戦力を持って目標に対して突撃をしかける。」
仁美「……承知仕りました。」
亜季「…………最悪の指令だ……これでは……全員に玉砕を命じるも同然ではないか……」
仁美「……他に手段がありません。」
亜季「……分かっている………現有戦力のみで目標を攻略するには……くっ……!…シャーマンの戦力があれほどとは………!」
仁美「…………………………」
亜季「……せめて……もう一段階上の装備さえあれば………!」
パァァァァァァ………
仁美「む!」チャキ!
亜季「……何だ…この光は……?!」
パァァァァァァ………シュゥゥゥゥン…
仁美「……何奴?!」
悠貴「ふぇっ?!」
亜季・仁美「?!」
悠貴「………………………」
亜季「……ユーキ……なのか………?」
悠貴「………!り、り、り、リー将軍っ?!」
装備と物資の山「……………」
北軍 研究施設内部
晶葉「クックックック……明日だ!明日から全てが始まる!新しい歴史、新しい世界が!」
晶葉「この時をどれほど長く待ち望んだ事か!アハ……アハハハハハ!!」
麗奈「…………………」
晶葉「駒は全て揃った!北軍の全権力、兵士、綿密なデータの積み重ねによって得られた技術!超古代の機械人形、それの軌道に必要な生体ユニット……そして、ターンX!!」
晶葉「アハハハハハハハ!私が神となるのだ、私が!天才による統治が完全なる統治が始まる!」
晶葉「>>331」
ふはははは……アハハハハハ……!(ターンXから触手的なものが伸びて晶葉を取り込んでいく)
晶葉「はははははは……アハハハハハ……!」
ターンX「………………」シュル……
晶葉「アハハハハハハハハハ!はぁ……はぁ……アハハハハハハハ!私が……神だ!」
ターンX「…………」シュルシュルシュルシュル…
晶葉「いや、それ以上だ!何故なら私は神の力を自らの思うがままに………!」ガシッ!
晶葉「…………ん?」
ターンX「………」シュルシュルシュルシュル…
晶葉「…………………は?」
ターンX「……………」
シュルシュルシュルシュルシュルシュル……
晶葉「…………ひっ……な、何だ……?!」ギュルギュルギュル…!
ターンX「……………………」
シュルシュルシュルシュルシュルシュル……
晶葉「う……あ…………何だ…?!何なんだ……一体……?!こ、こんなのはデータには…………」
ギュルギュルギュルギュルギュルギュル…!
ターンX「……………………」
シュルシュルシュルシュルシュルシュル……
晶葉「…………!!まさか……私を……生体ユニットとして取り込もう……と……?」
晶葉「な、何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ?!搭乗者も居ないのに、何故……そんな……あたかも意志を持っているかのような挙動を…………?!」
ターンX「……………………」
シュルシュルシュルシュルシュルシュル……
晶葉「な、何故…何故……何故…………?!い、いや……今はそれよりも……お、お、お、おい!私を助…………?!」
ギュルギュルギュルギュルギュルギュル…!
麗奈「…………………………」
晶葉「〜〜〜っ!!!!」
ギュルギュルギュルギュルギュルギュル…!
ターンX「……………………」
シュルシュルシュルシュルシュルシュル……
シュルシュルシュルシュルシュルシュル……シュルン
ターンX「………………」ヴゥン…
麗奈「……………………」
ターンX「……」ヴゥン…ヴゥン…ヴゥン…
麗奈「…………………」スクッ……
ターンX「………」ギギギギギギ……
麗奈「……………」スタスタスタスタスタ…
ガラガラガラガラガラガラ……!!
ターンX「……サイ…キドウ……」
ギギギギギギ……
公演会場 3階 特別席
日菜子「むふぅ〜……いいですねぇ……いいですねぇ……なかなか妄想が広がるシチュエーションです…………むふふふ………」
日菜子P「ふふふふふふ………妄想には気を付けてくれたまえ………ふふふふ………見てみたい気もするが…………」
日菜子「分かってますよぉ……妄想はちゃぁんと、妄想に留めておきますからぁ。」
日菜子P「いい子だ………ふふふふ………………」ナデナデ……
日菜子「むっふぅ〜…♪」
日菜子P「ふふっ………肉体を関して見る心も……悪くない……………」ナデナデ……
日菜子「むふ〜……やっぱり王子様は本物じゃなきゃ意味がありませんねぇ〜……」
日菜子P「『妄想』では……意味がないのかね………?」
日菜子「『妄想』には『心』がありませんから。…温もりも、優しさも、親しみも、恋心も、理解も、誠実さも、信頼も、愛情も、努力も、未来も、永遠も、結果も、『妄想』は『妄想』でしかないんです。」
日菜子P「ふふふ……私に心を求めると……ふふ………ふふふふふふ………」
日菜子「はぁい…日菜子の王子様は本物を日菜子にくれる人ですからぁ……ねえ、王子様?」
日菜子P「…王子様と言う柄ではないけれど………ふふっ……本物はプレゼントしよう……ふふ………ふふふふふ…………」
日菜子「………………♪」ピト…
日菜子P「おやおや……ふふふ………」
日菜子「…こうやって2人で肩を寄り添って劇を見る……ずぅーっと妄想してたシチュエーションなんですよぉ?」
日菜子P「ふふふ……妄想通りかね?」
日菜子「妄想よりずぅーっと素敵ですねぇ…………むふぅ〜……ああ〜、また新しい妄想が膨らんじゃいますねぇ………むふふ………」
日菜子P「…ふふふふふふ……そのようだね………」
日菜子「>>342」
日菜子の妄想力…最近また高まってしまっているので、もしもの時は日菜子Pさんが抑えてくださいねぇ…
日菜子「日菜子の妄想力…最近また高まってしまっているので、もしもの時は日菜子Pさんが抑えてくださいねぇ…」
日菜子P「ふふ……分かっているよ……『妄想家』の力が溢れてしまっては大変だからね………」
日菜子「ありがとうございます……はぁ……王子様は本当に頼りになりますねぇ………むふふふ…………」
日菜子P「代わりに君の心をもらうが……ふふ……ふふふふふふふふ………」
日菜子「もう、日菜子の心は元々日菜子Pさんの物ですよぉ?」
日菜子P「ふふふ………済まない………」
日菜子「日菜子Pさんはいじわるですねぇ………そんなところも素敵なんですけど……むふぅ〜……♪」
日菜子P「ふふ……君の色々な心が見てみたいのさ……」
日菜子「それてつまりぃ……ありのままの日菜子が見たいって事ですか?」
日菜子P「あながち間違いではないね。ふふふ…………」
日菜子「大胆ですねぇ……♪むふふふふ………日菜子はアレやコレやされちゃうんでしょうか……?むふふふふふふ………強引なのは好きですよぉ………?」
日菜子P「ふふふふふ…………」
日菜子「ああ、初めてはどんなシチュエーションがいいですかねぇ……ノーマルなのもいいですけど…いっそアブノーマルなのも………むっふぅ〜………♪」
日菜子P「…………………」
日菜子「むふふ……優しくしてもらうのもロマンチックですし………日菜子はシンデレラになっちゃうんですねぇ………むふふふ………妄想が妄想を…………」
日菜子P「…………………」
日菜子「………あ……日菜子Pさん……日菜子を観察してましたねぇ……?」
日菜子P「ふふふ………バレてしまった……ふふ………ふふふふふふ………」
日菜子「日菜子に妄想させて……それを観察するなんて、意地が悪いですよぉ、本当?」
日菜子P「ふふふふふ………あまりに面白い心だったんだ………つい、ね……ふふふ…………」
日菜子「乙女のピュアな心を弄んだらいけないんですよぉ〜?」
日菜子P「ふふふ………許してもらえるかな……?」
日菜子「うーん……嫌です。」
手錠「………」ガシャン!
日菜子P「これはこれは…………」
日菜子「確かぁ……こんな形でしたよねぇ?」
日菜子P「ふふふふふふ……残念、鍵穴が付いていないよ?」
日菜子「それなら大丈夫ですよぉ。でも……せっかくですし………」
手錠「…………」グニャ
日菜子「これで合ってますかねぇ?」
日菜子P「ああ……ふふっ……完璧だ………」
日菜子「褒められると照れちゃいますねぇ〜♪じゃあ、もうちょっと……………」
触手「………」シュルシュルシュルシュルシュル…!
日菜子P「……なるほど………」
グルグルグルグルグルグル……
日菜子「むっふぅ〜……触手に捕まる王子様も悪くないですねぇ〜……はぁ……はぁ…………」
日菜子P「…………………」
日菜子「さぁて、これで動けませんよねぇ?…むふふふ……日菜子を観察したんですからぁ……今度は日菜子が観察する番ですよねぇ?」
日菜子「むふふふふふ…!さあ、ナニからナニまで………」
日菜子P「ふふふふふふふふ………ところがそうはいかない……」
日菜子「……ですよねぇ………やっぱり夢を見せられてました……」
日菜子P「ふふふ……甘いよ?さあ、妄想の産物は消したまえ。」
日菜子「はぁ……王子様には敵いませんねぇ……むふふ………そこが素敵ですぅ………」パッ
日菜子P「ふふふふふふ……妄想力は確かに高まっているようだ。」
日菜子「分かっちゃいますかぁ?」
日菜子P「>>351」
あぁ、日に日に妄想力が増している。これは近いうちに本当に私を越えるかもね。
↑だが今はまだ、それを解き放つ時ではない……戻ってくるんだ……(日菜子を取り込んでいく)
日菜子P「あぁ、日に日に妄想力が増している。………これは近いうちに本当に私を越えるかもしれないね…………」
日菜子「むふぅ〜………王子様は日菜子の事はなぁーんでも分かってくれてるんですねぇ……」
日菜子P「…もちろんさ…だが………今はまだ、それを解き放つ時ではない……戻ってくるんだ……」ジャラ………
懐中時計「…………」カチ…カチ…カチ
カチ…カチ…カチ…カチ…カチ…カチ…
日菜子「分かりましたぁ。」
日菜子P「……………………」
懐中時計「…………」カチ…カチ…カチ
カチ…カチ…カチ…カチ…カチ…カチ…
ズズズズズズ……
公演会場 3階 特別席
日菜子P「………………」ナデナデ……
日菜子「むふ………♪」
日菜子P「ふふふふふふふふ………………」ナデナデ……
日菜子「……今のはどうやったんですかぁ………?」
日菜子P「……存在は認識に従う……ふふふ………日菜子ちゃんの認識をずらさせてもらった…………」
ナデナデ……
日菜子「…………………」
日菜子P「ふふ……ふふふふふふ………私は日菜子ちゃんと違って、妄想を現実にするような力はないが………日菜子ちゃん1人を手玉に取るぐらいなら容易いんだよ?」
ナデナデ……
日菜子「むふふ……手玉に取られるのも好きですよぉ……むふ………むふふふ……ミステリアスな王子様に手玉に取られる…………むっふぅ〜♪」
日菜子P「ふふふふふ……………」
ナデナデ……
日菜子「むふふふふ………」
日菜子P「…いつまで騙されてくれるかな……?」ナデナデ……
日菜子「…王子様が夢を見せてくれる限り、ですよぉ?むふふ〜♪」
日菜子P「……なら、頑張らなくてはならないね………ふふふふふふふ………」ナデナデ……
日菜子「……………♪」
日菜子P(……さっき見せたのは、ほんの片鱗に過ぎないのだろうが………その片鱗だけで、私に迫るとは………………)ナデナデ……
日菜子「むふふふふ……王子様の手は大きいですねぇ〜………むふぅ〜♪」」
日菜子P(……心の観察が楽しくて……仕方ないというものさ……ふふふふふふふふふ………)ナデナデ……
日菜子「このまま押し倒されちゃったり〜………?」
日菜子P「ふふふふふ………お望みとあらば。」ナデナデ……
日菜子「じゃあお願いしまぁす。」
日菜子P「ふふふ……冗談さ。」
日菜子「ですよねぇ………むふふ……そう言うのは大切にとっておかないといけませんからねぇ……むふふふふ…………」
日菜子P「……手のひらを貸してご覧………?」
日菜子「むふ………?」
日菜子P「ふふふふふ………いいから…………」
日菜子「…………………」スゥ……
日菜子P「………………」チュ
日菜子「!」
日菜子P「ふふふふふ……今はこれだけで………」
日菜子「王子様に口づけをもらってしまいましたぁ〜♪むっふぅ〜、むふ……むふふふふふ……ああ………妄想じゃありません……!」
パタパタパタパタ!
日菜子P「………ふふふ………」
日菜子「これはもう、一生を日菜子と添い遂げてくれると言う意味ですよねぇ?そんなぁ……急に……むふふ………むふふふふふふ………」
日菜子P(………日菜子ちゃんの心は………見ていて飽きない………ふふふふふ………)
日菜子「むふふふふ………王子様は気がはやいですねぇ……むふ……日菜子は構いませんけど……むふぅ………」
日菜子P「………日菜子ちゃん…」
日菜子「はぁい♪……あ、結婚式は神式の方が…………」
日菜子P「日菜子ちゃんはそうやって好きに妄想をするといい…………ふふふ………そんな日菜子ちゃんの心が……私は好きなのだから…………もちろん限度を守ってだが…………」
日菜子「………………………」
日菜子P「……………………」
日菜子「>>360」
むっふぅ~(大歓喜)
↑手足バタバタ、超笑顔
日菜子「むっふぅ~!」
パァァァァァァ……!
日菜子P「…………………………」
日菜子「むふ……むふ……むふふふふふふふふ……むふー!むふふ………むふふ……日菜子は今最高に幸せですぅ〜!」バタバタバタバタ…!
日菜子P「……………ふふっ……」
日菜子「ああ……日菜子からと言うのも良いなぁ…って思ってた時期もありましたけど……むふ〜!」
バタバタバタバタ…!
日菜子「王子様の方から日菜子にそう言ってもらえるなんて……むふ……むふ……むふふぅ〜!」
バタバタバタバタ…!
日菜子P「ふふふふ………僕の心を明かすのは……何も今日が初めてと言う訳ではないのに……ふふふ……………」
日菜子「女の子はいつだって王子様が、甘い言葉を囁いてくれるのを待っているんですよぉ?」
日菜子P「…ふふふふふふふ…………言った方も甲斐があると言う物だ………ふふ……ふふふふ………」
日菜子「むふぅ〜、日菜子Pさんは流石に日菜子の心がよく分かってくれてるだけの事はありますねぇ〜♪どの一言も妄想を加速させられてしまいますぅ。」
日菜子P「心は………私の専門分野だからね……ふふふふふふ………」
日菜子「という事は……むふふふふ………」
日菜子P「…ふふ………誰よりも日菜子ちゃんの事を理解している……と言う自負ならあるよ……ふふふふふ………」
日菜子「むふぅ〜!日菜子も……むふ………日菜子も日菜子Pさんの事を一番理解してるつもりですよぉ?」
日菜子P「ふふふふふふ…………なら……………」
日菜子「日菜子たちは両想いですねぇ〜!」ギュッ…!
日菜子P「……ふふ……」ナデナデ……
日菜子「むっふぅー!」
バタバタバタバタ…!
日菜子P「………さて、日菜子ちゃん…」
日菜子「何ですかぁ?むふふ……!」
日菜子P「……ふふふ……はしゃいでる日菜子ちゃんの心も素敵だが……今は…観劇中だよ………?」
日菜子「…………あっ…………」
日菜子P「……ふふふ…………」
ナデナデ……
日菜子「……………………」///
アトランタ レットの家
保奈美「ああ………もう!!何なのよ、アイツはぁ!!」ガァン!
保奈美「いっつも人を馬鹿にして!何の真似よ?!……工場は自分が作ったですってぇ……そんな訳ないじゃない!人のやった事を横取りしてんじゃないわよ!」
保奈美「はぁ……腹が立つわねぇ……!おかげで、全部が全部アイツのやった事になっちゃったじゃない!」
保奈美「私の罪を全部引き受けたとか……そんな事思ってるんじゃないでしょうねぇ……?!」
保奈美「……っ!!だとしたら大きなお世話よ!誰が頼んだって言うのよ!恩の押し売りもいいところだわ!」
保奈美「………クソッ!」ガァン!
菜々「その様な言葉使いをするもんじゃありませんよ。」
保奈美「うるさい!私が何を言おうが、私の勝手でしょう?!」
菜々「勝手じゃありませんよ。ウェード坊っちゃんが変な言葉を覚えたらどうするんです?」
保奈美「はぁ?!今はそんな事を…………」
菜々「バトラー船長だったらそう言いますよ。あの人、子供に対してだけは善人でしたから。」
保奈美「………………っ!!」
菜々「だいたい…そんなに大声で騒いだら……………」
仁奈「……ママ…?」トコトコトコトコ…
菜々「ほら、目を覚ましてしまわれたじゃないですか。」
仁奈「……どうか…したの……?」
保奈美「…………っ……何でもないわよ、早く寝なさい……」
仁奈「>>370」
パパは……
仁奈「パパは…………」
保奈美「お仕事よ。たまに遅くなるときぐらいあるでしょ?」
仁奈「………………………」
保奈美「一々心配しなくて大丈夫よ。……1人で寝れないんだったら…………」
仁奈「…ううん……違うよ。」
保奈美「………は?」
仁奈「パパは……お仕事じゃないよ……?」
保奈美「……ウェード……あんまり私を困らせないで……どうしてそんな風に思うの?」
仁奈「………だ、だって……」
保奈美「だって……?」
仁奈「……パパ……今から戦おうって……思ってるから。」
保奈美「……?!」
仁奈「……………………………」
保奈美「………戦おうと………思っている…………?」
仁奈「うん。」
保奈美「………どうして…そんなことが分かるの……?」
仁奈「だって……分かるんだもん…………」
保奈美「………………………… ……………………」
仁奈「……パパ……死んじゃう……の?」
保奈美「……し、死んだりするわけがないじゃない……!…馬鹿を言わないで……!」
仁奈「?!」ビクッ!
保奈美「ああ、分かったわ、ウェード!あんた、やっぱり怖い夢を見たんでしょう?それで、いつも寝かしつけてくれるレットが居ないからって………!」
仁奈「ち、ちが…………」
保奈美「…戦って死ぬ?!きっとどこかで聞いた戦争の話が………!」
菜々「スカーレット嬢様!」
保奈美「っ…!何?!」
菜々「気持ちはわかりますが、子供相手に怒鳴るのはいけませんよ。」
保奈美「……………っ……」
菜々「……頭ごなしに否定する事は無いじゃありませんか。」
保奈美「だって……………!」
菜々「………………」
保奈美「……………っ……」
仁奈「…………うう…………」
菜々「……ウェード坊っちゃん…今話していた事について詳しく教えてもらえませんか?」
仁奈「……………………」
菜々「…………………………」
仁奈「…………う、うん………」
仁奈「…………あの…ね……その………えっと………えっと………………」
菜々「ゆっくりで大丈夫です。……落ち着いて話してください。」
仁奈「……………うん……」
菜々「……まず、バト……あなたのお父さんが死んでしまう、と言うのは?」
仁奈「……パパがね……おっきな……お人形さんに……負けて、倒されちゃうの………!」
菜々「……大きな人形………なるほど、ありがとうございます。」
保奈美(……大きな人形……機械人形……?……ウェードはまともに機械人形なんて見た事は無いはず………)
菜々「…すると、あなたのお父さんは、大きなお人形と戦おうとしている最中で、その戦いの結果負けて死んでしまう、と。」
仁奈「…………」コクッ…
菜々「………………………」
仁奈「……………………」
菜々「……その未来を変える方法とか……そう言った物は分かりませんか?」
仁奈「……未来を変える……方法………?」
菜々「あなたのお父さんが死なないようにはどうすれば良いか……ということです。」
仁奈「………………………」
菜々「………分かりますか?」
仁奈「…………………………」
菜々「……………………」
仁奈「………さびしいから……かて……ない…………」
菜々「……寂しいから勝てない?」
仁奈「…………………」コクッ…
菜々「……と言うと……?」
仁奈「……パパ……1人で……さびしいから……まけちゃうの………悲しい……から………………」
保奈美「…………………………」
菜々「………………ニュータイプ……」
保奈美「…………えっ……?」
菜々「>>380」
……普通の人間より勘が鋭い人間の事です。だから何だと思われるかもしれませんが……
菜々「……普通の人間より勘が鋭い人間の事です。だから何だと思われるかもしれませんが…………」
仁奈「……………………」
菜々「…私が昔、あなたのお祖母様に教えていただいた通りならば、奇跡を起こせる可能性を秘めた人間でもあるのです。」
保奈美「…………奇跡……」
菜々「はい、奇跡です。この力を持つ人間がこの星の危機を救った事さえあるとか。」
保奈美「………………………」
菜々「…かなり昔にお聞きしたお話なので、ところどころ、あやふやになっているかもしれませんが…………」
保奈美(ニュータイプ…………ニュータイプ…………あれ、これより前にどこかでその名前を見た気が………………)
菜々「……スカーレット嬢様。」
保奈美「…………ああ……聞いてるわ。」
菜々「そうですか…………ゴホン……では……先ほどは分かりやすく、勘が鋭い人間、と言わせていただきましたが…ニュータイプについて軽くお話させていただきます。恐らく重要な話なので。」
保奈美「…………………………」
菜々「……ふぅ…………良いですか……勘が鋭い、と言うのを聞いて、スカーレット嬢様はどのような人間を想像しますか?」
保奈美「……えっと………危険に前もって気付ける、とか………相手の考えが何となく分かる、とか………」
菜々「その能力が圧倒的に……他の人間から見たら魔法のように見えるほど高いのが、ニュータイプと言う人間なんです。」
仁奈「…………………………」
菜々「あらゆる危険を事前に察知し、相手の考えを完全に読む。これがニュータイプの能力です。」
保奈美「………そんな人間関係が……実在するの……?」
菜々「私も半分、おとぎ話の類だと思っていましたよ。」
菜々「……しかしウェード坊っちゃんの話を聞いて……疑念へと変わりました。……ウェード坊っちゃん、あなたはそれをどうやって知ったのですか?」
仁奈「……えっと……頭の中に……ぱーっと……入ってきたの…………」
菜々「……スカーレット嬢様、普通はこんな言い方をしますか?」
保奈美「子供の言う事だから…………」
菜々「私は数え切れないほど子供を見てきましたが、こんな言い方をする子供は、今まで1人も知りませんでしたよ。」
保奈美「……………!」
菜々「……スカーレット嬢様、今から私のする質問に正直に答えてください。いいですか?」
保奈美「え、ええ…………」
菜々「…あなたは数多くの男の方たちを手玉に取ってきました。…他の誰よりも…………何故、出来たんです?」
保奈美「えっと………男って言うのは、そいつの理想通りの女を演じれば………………」
菜々「何故それが分かったんです?」
保奈美「……っ……あなたが淑女でいさえすればと…………」
菜々「でしたら、他の家の方々とも条件は同じだったはずです。」
保奈美「私の尻軽さを追及している場合……?」
菜々「今さらしやしませんよ、そんな事。問題は、あなたには周りの男性が何を考えているか、他の女性に比べてかなり分かっていたのではないか、と言う事です。」
保奈美「……別に………………」
菜々「男性だけでなく、女性の気持ちもより理解できていたのだと思いますが。」
保奈美「…………………………」
菜々「思えば昔からでした、スカーレット嬢様もキャリーン嬢様も……
スエレン嬢様も、妙に男性から人気があった。」
保奈美「ちょっと、それだけで人を……その……ニュータイプとやらにする気?」
菜々「いいえ、他にもあります。……あなたは製材所の経営に関して、素晴らしい手腕を発揮しなさっていたそうですね。」
保奈美「……それが…………?」
菜々「バトラー船長から聞きました、まるで未来の出来事を予期しているかのようだったと。」
保奈美「……それをするのが経営よ。」
菜々「一度ならず大火事が起きる前には材木を買い込んでおいて、大儲けしたそうじゃないですか。」
保奈美「…………た、ただの勘よ……」
菜々「勘が鋭い人間をニュータイプと言うんです。」
保奈美「…ほとんど言いがかりじゃない……!」
菜々「あなたのお祖母様のお祖母様もニュータイプだったそうです。……そして、ニュータイプは親から子に引き継がれると。」
保奈美「………なら…………」
菜々「ニュータイプの力の強さには人によって違いがあるそうです。強く出たのが、あなたたちの世代だったんでしょう。」
保奈美「…………………………」
菜々「>>390」
そして、ウェード坊っちゃんはより強くその素質が現れている……
菜々「そして、ウェード坊っちゃんはより強くその素質が現れている…………」
保奈美「…………!」バッ!
仁奈「?!」ビクッ!
保奈美「…………………………」
仁奈「……………………」オドオド…
保奈美「……この子が…?」
菜々「…はい。」
仁奈「…………ウェードが……どうか……したの………?」オドオド…
菜々「……ウェード坊っちゃんは、臆病な子ではなかったんですよ…………」
保奈美「……どう言う事…?」
菜々「……おそらくですが、ウェード坊っちゃんには周りの人間の気持ちだとか、そう言った物を分かってしまう力があります。」
保奈美「…………………………」
菜々「……ウェード坊っちゃん。」
仁奈「……な、なあに………?」
菜々「…坊っちゃんは街に出るのを嫌われますが、それはどうしてですか?」
仁奈「……………………え、えっと…………こわい……から…………」
菜々「……何が怖いんですか?」
仁奈「………うう…………………」
菜々「……大丈夫ですよ。」
仁奈「…………うん…………えっとね………いろんな人の……いろんな気持ちが………いっぺんにきて………こわいの………………」
菜々「…それはどんな感じですか?」
仁奈「………きらい……とか……こわいとか……かなしい…………とかが……たくさん聞こえちゃうの……
…………」
菜々「………スカーレット嬢様。」
保奈美「…………そう……だったの……ウェード…………?」
仁奈「………………………」
保奈美「……どうしてそれをもっと早く…………」
菜々「あなたがウェード坊っちゃんの為に時間を割いた事がありましたか?」
保奈美「…………っ…………!」
菜々「……話したくても、話す時間がなかったに決まっているじゃありませんか。」
保奈美「…………レットはこの事を…………」
菜々「何かは察していたでしょうね。その上で黙っていただけで。」
保奈美「何で………?」
菜々「…噂に過ぎないのですが……北軍は極秘にニュータイプの研究を行っているそうです。……そんな中で、ウェード坊っちゃんの存在を…そしてあなたの存在を知られたら……?」
保奈美「…………………………!」
菜々「…北軍に通じていたバトラー船長なら……より多くの事を知っていたでしょうね。」
保奈美「…………………………」
菜々「…………もう一つ、…………ウェード坊っちゃんにそんな能力があると分かれば…………スカーレット嬢様は今以上にウェード坊っちゃんを避けるようになったんじゃありませんか?」
保奈美「…………私が……ウェードを………………?」
菜々「……バトラー船長は、多分それも分かっていたのでしょうね。……あなたは自分が見透かされるのは大嫌いな人だから。」
保奈美「……………………………」
菜々「……自分では何か他の理由をつけていたんでしょうが……間違いありませんよ。あなたはウェード坊っちゃんをずっと避けていた。」
仁奈「……………………」
保奈美「……だ、だって…………」
菜々「…チャールズ様の面影を見るのが怖かったのでしょう…?……わかっていたから……私からは何も言えませんでした…………」
保奈美「…………っ……………」
菜々「…本当は……それでも向き合わなければいけなかったんですよ………………」
保奈美「………………っ…………っ…………」
菜々「……ウェード坊っちゃんがあなたにあまり懐かれなかったのは……それが分かっていたんでしょう………………」
仁奈「………………………………」
保奈美「>>400」
じゃあどうすればいいのよ!私は……どうすれば……
保奈美「じゃあどうすればいいのよ!私は……どうすれば……」
菜々「それはあなたが考える事です。」
保奈美「考えたって無理だったのよ……!…ちゃんと……ウェードを愛さないといけないのは…………分かってたけど…………でも…………!」
仁奈「……………………」
保奈美「……ウェードを見ていると……どうしても……チャールズを思い浮かべてしまうのよ…………」
菜々「…………………………」
保奈美「…雰囲気が……仕草が……顔が………チャールズを思い浮かばせるの………チャールズが……チャールズが………!」
菜々「…………………………」
保奈美「………っ……あの頃は若くて………まだ何も分かっていなかった………結婚と付き合う事の違いすらよく分かっていなかった………」
菜々「…………それで……?」
保奈美「……色々な経験をしてきた……辛い事、苦しい事、悲しい事…………そして……少しは物事が分かってきた………いえ、たぶんまだ………何も分かっていないんでしょうけど…………」
菜々「………………………」
保奈美「………でもね………でもね…………私がチャールズにした事が………どんな事だったかぐらいは………分かってしまったのよ…………」
保奈美「……チャールズはきっと………誰か、チャールズを本当に好きになってくれる淑女と結婚して………本当の幸せを手に入れる権利があったはずなのよ………」
菜々「……悔いているんですか……?」
保奈美「……………っ……!」
菜々「……………………………」
保奈美「………もう……遅いわよ……………」
菜々「………………………」
保奈美「……ウェードを見るのが怖いの………それは……私の罪を見る事だから………」
菜々「……………………」
保奈美「……チャールズに対してだけじゃない……フランクや……そして………バトラーに対する……罪だから…………………私は……私に関わった男たちの人生を……台無しにしてしまった……………!」
菜々「……あなたは悪くありませんよ。」
保奈美「いいえ……さっきの…レットの目を見て分かったの………私が………私が………私が………………………」
仁奈「………………………」
保奈美「……レットも……私が死なせてしまう………」
保奈美「……自分勝手で……虫の良すぎる話だって言うのは分かってる……!……でも…………レットに…………死んでほしくないのよ…………!」
菜々「……………………………」
保奈美「……レットに…………死なれたら…………もう…………何も………………っ…………」
菜々「…………………」ギュッ………
保奈美「…………っ…………っ………………ごめん……なさい………………ごめん……なさい…………」
菜々「…………………………」
保奈美「………っ…………うう………………」
仁奈「……………………」
保奈美「……ウェード……ごめんなさい………私は……あなたの母親になる資格はなかった………」
仁奈「……………………」
保奈美「…ごめんなさい………ごめんなさい………私は……………」
仁奈「……泣かないで……ママ。」
保奈美「……………えっ………」
仁奈「……………」
トコトコトコトコ……ギュッ……
保奈美「………………………」
仁奈「………ママが悲しいと………悲しいから……………」
保奈美「……………………」
仁奈「………だから……ね………泣かないで…………」
保奈美「……ウェード……あなた…………」
仁奈「……パパを……助けに行きたい………?」
保奈美「………助け………られるの…………?」
仁奈「………ママと……いっしょなら………」
保奈美「……………………」
仁奈「>>408」
それに、みんなここにいるから……おばあちゃんも……
仁奈「それに、みんなここにいるから……おばあちゃんも………」
菜々「?!」
保奈美「……分かる……の………?」
仁奈「……ママにも……かならず……わかるよ……………」
保奈美「…………………………」
仁奈「……心を……ひらいて……みんなの声を………きいて………」
保奈美「………………………」
仁奈「…………………………」
保奈美「……………!!」
保奈美「……あなた……は…………?」
仁奈「………………………」
保奈美「………………………」
菜々「……お、おばあちゃんって………お祖母様の事…ですか………?」
仁奈「………………うん………」
菜々「…………………………」
保奈美「……これ……は………………」
仁奈「……みんなの気持ち………みんなの…心……」
保奈美「………ウェードはいつも……これを……見ていたの………?」
仁奈「………………」コク……
保奈美「………………………」
菜々「……何が………見えているのですか………?」
保奈美「………説明…できないわ…………何て言ったらいいか………全然分からない………みんなが……居るのよ…………」
菜々「……………………………」
保奈美「…………力を……貸してくれるの………?」
保奈美「…………………………」
保奈美「……………マミー………」
菜々「……何ですか?」
保奈美「……どこまで私…いえ、私たちについて来てくれる………?」
菜々「……スカーレット嬢様が、立派な淑女になられるまでですかね。」
保奈美「…………ありがとう……」
菜々「…………………………」
保奈美「………ウェード。」
仁奈「………………」コク……
パァァァァァァァァ…………
菜々「……!この光は…………」
亜季「『皆の者、私に付き合え!』」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1441100838/
保奈美「『私に付き合いたくないの?』」
http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1441324344
沙紀「『僕は付き合うのはごめんですな』」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1441885190/
美玲「コイツらに付き合ってる場合じゃないぞッ!」
https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1442822174/
加蓮「『あなたが付き合ってくれるなら……』」
http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1443093340
沙紀「『へぇ、僕と付き合いたいと?』」
http://ex14.vip2ch.com/i/responce.html?bbs=news4ssnip&dat=1443958566
の続きです
閉幕の100-4-3作目
ここまで来た以上、最後まで行かせていただきます。
…長かった…………
3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 20:58:32.90 ID:27Yie1Ms0
深夜 南部の鬱蒼とした森林
ガサガサ…!
志希「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ…………」タッタッタッタッタッ…!
ウゥゥゥゥゥゥン……
志希「……っ…!はぁ……はぁ…………はぁ………はぁ…………!」タッタッタッタッタッ…!
ターン!
志希「ひあっ?!」ガクン…!ズシャアアアア…!
志希「……ひい…………あ、あ、アタシの…………足が…………!」
ウゥゥゥゥゥゥン……
志希「…………あ…………あ……………………ああ……………」
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 20:59:29.31 ID:27Yie1Ms0
晶葉「おいおい、そう逃げ回らないでくれ。私は研究所だから、あまり体力が無いんだよ。クックック………………」
志希「ひっ…………あ…………………………」
晶葉「…いくら他人に一人で来いと言われたからといって、まさか……本当に護衛も付けずに一人で来るとはな……こういう事態は想定外だったか?」
志希「…………っあ…………ああ………はぁ…………あ……………」
晶葉「さすがに護衛が全員やられる、と言うのは不自然なんでなぁ。実に助かったよ……シェリダン。」
志希「………な、な、何……で………………?」
晶葉「ん……自分が消される意味が理解出来んのか?」
5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 21:01:35.08 ID:27Yie1Ms0
志希「だ、だって……アタシ…たち……仲間……で…………」
晶葉「よく聞こえんな。」ガチャ ターン!
志希「あっ…………ああああああ………………!!」
晶葉「おっと、済まん。ククク……手が滑ってしまったよ。いやぁ、本当に申し訳ない。」
志希「……っあ……うあ………うああ……………………」
晶葉「右手と左足だけだと格好がつかないな。」ターン!ターン!
志希「っ……ぎゃああああああああ……!!」
晶葉「よし、これで綺麗に四肢に一発ずつだな。ククク………」
6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 21:02:55.77 ID:27Yie1Ms0
志希「痛い痛い痛い痛い痛い痛い……!何で?何で何で何で何で?!」
晶葉「悪いなぁ、不便な事に戦争を起こすには何かしらの口実と言う物が必要なんだよ。」
志希「……!!お、お前は…………?!」
晶葉「この森は降伏をまだ見てめていない南軍の残党が出没する事で有名でね。ククク……『北部の勝利の立役者、シェリダン将軍残虐なる南軍に虐殺さるる。』国民はお前の死を悼み、新たに南部への怒りの炎を燃やす事だろう。」
志希「…………っ……!…ウィリアム・シャーマン……!!」
晶葉「アハハハハハハ!私の目的の為に死んでくれてありがとう!」ガチャ
ターン…………!!
7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 21:04:08.17 ID:27Yie1Ms0
ニューオリンズ レストラン
沙紀「奥様、食事が済んだら次はどこへ参りましょうか?」
保奈美「そうねぇ……指輪を買いに行きたいわ。」
沙紀「指輪なら先ほどお買いしたと思うのですが、僕の勘違いですかな?」
保奈美「幾つ買おうが私の勝手でしょう?……さっきはルビーの指輪を買ったから……次はダイヤモンドの指輪にしようかしら?」
沙紀「全部金を出すのは僕なのだがね?」
保奈美「あら、だからわざと高い物ばかり買っているに決まっているじゃない。」
8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 21:05:17.78 ID:27Yie1Ms0
沙紀「あんたは自分の金は1セントだって使いたくないくせに、人の金なら遠慮の欠片も無く費うんだね。」
保奈美「それは違うわよ?払うのはあなただけど、そのお金は『私たち夫婦の』お金でしょう?」
沙紀「おっと、そう言えばそうだった。どうも結婚生活と言う物にはまだ慣れないな。」
保奈美「嫌でも慣らしてあげるわ。ボーイ、この店で一番高い料理を持ってきてちょうだい。」
「かしこまりました、奥様。」
沙紀「まだ頼むのかい?どうやら胃袋の方も遠慮がないようだね。」
保奈美「何?小鳥のように飢え死にしてしまうような量だけ啄ばむ女がお望み?」
9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 21:07:44.84 ID:27Yie1Ms0
沙紀「はははははは、そんな女性はこちらから願い下げですな。女性と言うのは少々肉付きが良い方が好ましい。」
保奈美「お言葉ですが、私は腰の細さでは誰にも負けた事がないのよ。
沙紀「今までは、ね。こんな成金趣味丸出しの生活を続けていたら、すぐにドレスが入らなくなりますよ?」
保奈美「そうね、まずそんな事にはならないけど……入らなくなったら、また新しいドレスをあなたに買ってもらうから大丈夫よ。」
沙紀「ふふふ……成る程、それは盲点でしたなぁ。」
保奈美「>>10」
10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 21:15:22.35 ID:Tz/9WCnAO
(バトラーと暮らし始めて、当初の目的を忘れつつある自分がいる……)
11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 21:25:54.94 ID:27Yie1Ms0
保奈美(…バトラーと暮らし始めて、当初の目的を忘れつつある自分がいる……)
沙紀「良いでしょう、ドレスぐらい幾らでも買って差し上げましょう。あなたに着られるならドレスだって本望ですよ。」
保奈美(……癪だけど……毎日が楽しい……!欲しいものは何だって手に入るし、何より自分を偽らずに生ききられる……)
沙紀「ドレスは次はどこで買いますか?あなたは行き尽くしたと思ってるのかもしれんが、ニューオリンズにはまだまだ服屋があるのですよ?」
保奈美「……それさ流石に嘘でしょう………?」
沙紀「僕が嘘なんかつくものですか。」
12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 21:36:34.38 ID:27Yie1Ms0
保奈美「…どれくらい……?」
沙紀「正確には僕も把握しちゃいませんが、少なくともあんたが回ったのは、まだほんの一部に過ぎんですよ。」
保奈美「…………………………」
沙紀「どうです、ニューオリンズは楽しいところだとは思いませんか?」
保奈美「…何もかもが活気付いていて………少なくとも、人の噂話が大好きな連中がいないって事だけで、いつもよりはずっとましよマシよ。」
沙紀「はははははは!わざわざアトランタから逃げ出してきた甲斐はあったようしな。」
13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 22:00:35.71 ID:27Yie1Ms0
保奈美「……ふん、逃げ出したんじゃないわ。飛び出してきてやったのよ
」
沙紀「ほほう。」
保奈美「メリウェザーやワイディングのばあさんたちが、憤死しないようにね。もっとも手遅れかもしれないけど。」
沙紀「憤死する物なら、とっくに憤死していますよ。人の事なんてほっていていて欲しいんですがねぇ……あの老ぼれ連中め。」
保奈美「全くだわ!早く全員くたばってしまえばいいものを…………」
沙紀「ははははははは!これは手厳しい。」
14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 22:10:35.39 ID:27Yie1Ms0
保奈美(普通ならこんな事は口が裂けても言えないけど………)
沙紀「あんたのそういう勇ましいところが好きですよ、スカーレット。…気分が良いのでぶどう酒でも頼みませんか?」
保奈美「…ええ… いいわね。」
沙紀「そうですか、そうですか。む、そう言えば淑女はぶどう酒なんか飲む物ではないらしいと聞くが?」
保奈美「淑女じゃない私には関係のない話ね。」
沙紀「だとしたら何ですか?」
保奈美「……あんたと同じ悪人よ。」
15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 22:20:26.86 ID:27Yie1Ms0
保奈美(…この男の前では善人ぶる必要はない……嫌なら嫌と言えばいいし、憎いなら憎いと言っても構わない…)
沙紀「ふふふ……確かに悪人が、ぶどう酒を飲んじゃいかんとは聞きませんな。おい、ぶどう酒を追加注文だ!」
保奈美「…………………………」
沙紀「………何か?」
保奈美「い、いえ…………(…私の目的は北部への復讐で……そのために頑張ってきたのに…………)」
沙紀「……………………………」
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 22:32:42.56 ID:27Yie1Ms0
保奈美(気がつくと、綺麗なドレスを着て踊る事なんかで頭がいっぱいになっている時がある……………)
保奈美(…復讐なんてくだらない……どうでも良い事なんだ……と考えてしまっている時もある。)
保奈美(ひどい時は、復讐をするつもりだった事まで頭からすっぽり抜け落ちてしまっている時さえ………)
保奈美「………………………………」
保奈美(…駄目だ……このままじゃ………)
沙紀「…………………………」
保奈美(復讐を……忘れてしまう…………!!)
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 22:55:29.58 ID:27Yie1Ms0
保奈美(……忘れたのか、タラの惨状を…!…北部の連中全員も同じ苦しみを味あわせるまでは……と天を呪った日々を…………)
沙紀「………………………………」
保奈美(………復讐を忘れてはいけない……!南部が受けた痛みを……屈辱を…………!)
沙紀「……スカーレット。」
保奈美「…………ん?」
沙紀「困るよ、僕とのデート中に他の事、ましてや殺伐とした事などを考えられたら。」
保奈美「…………………………」
沙紀「>>18」
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 22:56:37.40 ID:Tz/9WCnAO
君は僕の事だけを考えていればいいんだ。それ以外の何も考えてはいけない
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 23:06:41.70 ID:27Yie1Ms0
沙紀「君は僕の事だけを考えていればいいんだ。それ以外の何も考えてはいけない。」
保奈美「………………………」
沙紀「その代わりに、僕も君だけの事を考えよう。如何に君を楽しませて、自分が楽しめるか。…それだけを考えよう。」
保奈美「……………えっと………」
沙紀「…瞳に他のものが写っているのに気付いてしまったら……寂しいじゃないか。……そうは思わんかね?」
保奈美「………………………………」
沙紀「………………………………」
20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 23:19:33.45 ID:27Yie1Ms0
沙紀「…金を払っているのは僕なんだ。その間注意を僕だけに向けるぐらい、やってくれたって罰は当たらないと思うんだがね。」
保奈美「……考えている内容まで、あれやこれや言われなきゃいけない理由はないわ。」
沙紀「ごもっとも。しかしね、男と言うのはそういう生き物なんですよ。女性から胸を恋焦がされていたい。」
保奈美「…私の知っている男の人には、そんな事を言う人は居なかったわ。」
沙紀「空が青い事をいちいち確認しますかね?」
保奈美「……はぁ?」
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 23:29:52.89 ID:27Yie1Ms0
沙紀「南部の古き良き男性の諸君がその様な事を言わなかったのはですね、女は男の事を一途に想っていて当たり前、という事を一途に信じていたからですよ。」
保奈美「それは……………………」
沙紀「僕はね、女性と言うのがそう言う生き物でない事を知っている。だからこそ………一瞬ぐらいは一途に思って欲しい、そう考えてしまう訳なんだよ。」
保奈美「…………む、無理よ……私は別に……あなたを愛しては………………いないもの……」
沙紀「愛していただかなくても結構です。ただ、デート中に似つかわしくない事に気を取られさえしなければ、ね。」
保奈美「………………………………」
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 23:39:22.94 ID:27Yie1Ms0
沙紀「美味しい料理だとか、綺麗なドレスとかを純粋に楽しめないのかい?ただ、僕との時間に喜びを感じて欲しいと思うのはいけない事かい?」
保奈美「………………………………」
沙紀「(……違う……僕は……こんな事が言いたい訳では無いのに……)僕はいわば、君との愉快な時間を買ったんだ。そこを理解してもらいたいね。)
保奈美「………はいはい……」
沙紀(違う……違う…………違う……………)
保奈美「……………………………」
沙紀(……違う……………僕はただ……スカーレットに自由になって欲しいだけだと………言うのに………)
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/17(土) 23:51:11.49 ID:27Yie1Ms0
タラ農園 表門
「いい加減に立ち退き契約書にサインをして……」
輝子「おととい来な!悪いがお前たちに振るための尻尾は生えてねえんだ!」
「……っ…!我々はこの土地を強制的に収容する事も可能なんだぞ?それを親切にも…………」
輝子「ハッ!やってみろよ。」
「なっ……?!」
輝子「おいおい、お前の顔に着いてんのは耳じゃなくてヒラタケかよ?やってみろって言ったんだよ、腰抜けがァァッ!」クイッ!
24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 00:01:54.52 ID:BeqjCU1Z0
輝子「だがよぉ、それはテメエらにタラの人間全員を敵に回す覚悟があればって意味だぜ?南部人ってのは土地と心中するような人間の集まりなんだよ。」
「…舐めるなよ。お前たちが何人束になったところで我々の相手にはならんぞ?」
輝子「戦争が終わった今、テメエらの大統領は余計な火種は作りたくねえはずだぜ?」
「…何が言いたい……?」
輝子「この場で私と刺し違えるか、大人しく帰るか選べっつってんだよ、北軍野郎!」
「…………っ…………!!」
輝子「…………………………」
25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 00:10:00.49 ID:BeqjCU1Z0
タラの屋敷 食堂
加蓮「…今日も北軍の兵士を追い返してくれてありがとう……ウィル………お茶をどうぞ…」ゴト……
輝子「あ、ありがとうございます…………フヒ…………」
加蓮「…………ごめんさいね…」
輝子「………?」
加蓮「……大変な役目を押し付けてしまって…………その…………」
輝子「>>26」
26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 00:11:53.32 ID:jI5LmxeAO
フヒ……お構いなく……
30: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 15:46:27.51 ID:BeqjCU1Z0
輝子「フヒ……お構いなく……」
加蓮「……………………………」
輝子「こ、これぐらい……どうって事ないですー…はい。もう…ホント気にしないでください……」
加蓮「……そうもいかないわ。…あなたばかりに背負わせてしまっているもの。」
輝子「フヒ?!な、ないないない……!そんなことはないですよー……は、はい……!」
加蓮「………いえ、だって……………」
31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 15:47:05.23 ID:BeqjCU1Z0
輝子「わ、私が全部背負ってるなんて……そ、そんな…おこがましすぎて………ば、ば、罰が当たります……」
加蓮「………ウィル………………」
輝子「あ、いや………その……わ、私なんかメラニーさんのお手伝いに過ぎないと言いますか………え、えっと……メラニーさんに比べたら何もしてないって言うか………」
加蓮「……?…私の方こそ何も……………」
輝子「い、いえ……!…今タラを支えてるのは……メラニーさんです……よ?」
32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 15:48:10.89 ID:BeqjCU1Z0
加蓮「…私………?」
輝子「あ、はい。……め、メラニーさんが居るから……安心……と言うか……そ、そんな感じです………」
加蓮「……………………」
輝子「…だから……その……私の事なんか……あ、顎で使ってくれていいぐらいですよー……なんて…………」
加蓮「……………じゃあ、ウィル。今から私のお願いを聞いてくれる?」
輝子「ど、ど、どうぞー…!な、何でも……言ってくれて大丈夫です、はい……!」
33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 15:50:33.95 ID:BeqjCU1Z0
加蓮「……私に労われてくれる?」
輝子「…………フヒ…?」
加蓮「お茶を飲んで、少しの間だけでもゆっくりしてちょうだい。それが…私からのお願いよ。」
輝子「…………………………」
加蓮「……ね?」
輝子「………そ、そう言う事なら…………ご遠慮……なく…………………」
加蓮「…………ふふ……」
34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 15:51:35.14 ID:BeqjCU1Z0
輝子「…………やっぱり…柱…だな……」
加蓮「………?」
輝子「フヒ……な、何でもないですよー…」
加蓮「………………………」
輝子「あ…お茶いただきます………」
ズズズ……
輝子「…………おいしい………」
加蓮「……そう…それは良かったわ。」ニコ
35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 15:53:01.03 ID:BeqjCU1Z0
加蓮「お茶菓子も用意しましょうか……?」
輝子「……フヒ?!いえ、そ、そんな……貴重な物は………」
加蓮「気にしなくて大丈夫よ。スカーレットが送ってくれたの。」
輝子「……あっ………………」
加蓮「スカーレットは今はバトラー船長とニューオリンズを新婚旅行中で………お茶菓子もそこで買った物なんですって………」
輝子「…………………………」
36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 15:54:19.57 ID:BeqjCU1Z0
加蓮「………………………」
輝子「……あ……え、えっと………その………す、スカーレットさんは…………」
加蓮「……分かってる。……スカーレットは冷たい人じゃないわ………私は知っているもの…」
輝子「………………………………」
加蓮「ケネディさんとの時も……何か理由があったんでしょう?……だったら…バトラー船長とのも……何か理由があるに決まっているわ。」
輝子「…………………………」
加蓮「>>37」
37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 15:55:17.93 ID:jI5LmxeAO
(スカーレット……)
38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 16:07:47.23 ID:BeqjCU1Z0
加蓮(スカーレット……)
加蓮(…無理をしてないといいんだけど……スカーレットの性格から考えて、そうもいかないでしょうね…………)
加蓮(…………………心配だわ…………)
加蓮(…スカーレットは強い……だからこそ…………………)
加蓮(……………………………………)
加蓮(……強いからこそ……自分で色々抱えこもうとしてしまうから…………)
加蓮(…一番大事なところは、誰にも話さないから…………)
39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 16:17:57.75 ID:BeqjCU1Z0
加蓮(……ケネディさんには悪いとは思うけど……スカーレットはケネディさんには、話をする事はできなかったでしょうね……)
加蓮(ケネディさんがいけない、とかじゃなくて………ただ単に性格が違っただけなんだけど………)
加蓮(…………………もし…………)
加蓮(……………………………)
加蓮(いえ……仮定の話を考えるのやめておこう………起こってしまったモノは……変えられないのだから。)
加蓮(もし、起こってしまったモノを変えられる人が居たら……その人はもう人ではなくて、神様よ…)
40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 16:29:33.75 ID:BeqjCU1Z0
加蓮(………スカーレットを支えてあげられのは……スカーレットの事を真に理解してあげられる人だけ……)
加蓮(そしてそれが出来るのは…………)
輝子「……あ、あの……………」
加蓮「………あっ……ごめんなさい。少し考え事をしてしまっていて……」
輝子「……………………」
加蓮「…大丈夫よ、ウィル。私に気を遣ってくれてありがとう。」
輝子「………………………」
加蓮「大丈夫だってば。」
41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 16:37:01.84 ID:BeqjCU1Z0
輝子「……メラニーさんも……無理をしたら……だ、ダメ……です…よ……?」
加蓮「…………ええ。」
輝子「…………………………」
加蓮「…お茶菓子を取ってくるわね。」
輝子「あっ……手伝いますよ……?」
加蓮「じゃあよろしく。」
輝子「…は、はいですー…(……………)」
42: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 16:46:18.59 ID:BeqjCU1Z0
トゥエルヴ・オークス屋敷 跡地
ザッザッザッザッザ……
櫂「………………………………」
ザッザッザッザッザ
櫂「……………………………」
土台石「……………………」
櫂「まるでラグナロク……だね…………どんな栄達や財産も…永遠に続くものなんてない…………」
櫂「………………………………」
櫂「……終わってしまったんだ……僕らの生きていた時代は………今はもう……その残滓だけが残っている……」
櫂「……『国破れて山河あり』……か…………」
櫂「……僕らのやってきた事とは……何だったんだろうね……ふふっ…………」
43: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 16:57:02.36 ID:BeqjCU1Z0
櫂「……本来は仕事をやらなくちゃならない……そんな中、僕はもう何もない場所へ思い出に浸りにやってきている……」
櫂「……辛いな……役に立てないって言うのは……何の助けにもなる事が出来ないと言うのは…………」
櫂「…………世界が変わってしまったと言うのは言い訳だ………世界が変わって役に立たなくなるなら、最初から役になど……立っていなかったのさ。」
櫂「だって……みんな立派に役立っているんだからね……結局、僕は昔から存在していて、存在していなかったんだろう。」
櫂「………………………………」
櫂「>>44」
44: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 16:58:03.34 ID:whL4+tjAO
これからもこうして存在しながら存在していない生活をしていくんだろうな
46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 17:13:12.45 ID:BeqjCU1Z0
櫂「これからもこうして……存在しながら存在していない生活をしていくんだろうな………………」
櫂「……ふふっ……僕にはお似合いの生活かもしれないね………いつだか、自分の人生は影芝居、だなんて宣った事もあるぐらいだから…………」
櫂「……無くなってしまったものを夢見続け…そして、結局手に入れられずに終わる…………それがこれからの人生なんだろう……」
櫂「……何に対しても……実感が持てない………全部がそれこそ影芝居みたいだ…………皮肉な物だね……」
櫂「……痛みや疲労は確かなはずなのに、それさえ遠くに感じる………これらも僕を活かしてはくれない…………」
櫂「………ここにあるのは、アシュレ・ウィルクスの残滓なんだろう…………」
47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 17:21:08.23 ID:BeqjCU1Z0
櫂「……生きながらにして死んでしまった…………ああ……いっそ、戦場で死んでしまうべきだったのかもしれない………………」
櫂「…そうすれば……こんな世界を見ずに済んだ……美しい思い出を信じたまま……死ぬ事ができた…………」
櫂「……………………………」
櫂「……いや……それは出来なかったな…………だって、僕が死んでしまっていたら……メラニーは…………」
櫂「…………結婚も…すべきではなかったのかもしれないな。……そうすれば…メラニーに苦労をかける事もなかった……」
櫂「………何だ……僕の人生は…間違いだらけじゃないか……」
48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 17:30:57.61 ID:BeqjCU1Z0
櫂「生まれてから一度でも、何か正しい事が出来たんだろうか……?…何か正しい行動を…する事が出来たんだろうか……?」
櫂「……いや………出来てないから、こうしてここに居るんだ。……僕はいつだって口先だけだった……」
櫂「……口先だけで理屈を並べて、結局自分では何もしなかった。…時代の流れ、だとか、運命と言う言葉に…責任転嫁をしていただけだった………」
櫂「……戦争は起きてしまったし………南部は負けてしまった…………」
櫂「……何も出来なかった………無力だった………僕は現実に干渉する術わ、ひとつだって身につけちゃいなかったんだ……」
櫂「……………っ……」
49: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 17:38:45.62 ID:BeqjCU1Z0
櫂「………帰ろう…」スクッ…
櫂「…いくら何も出来ないとはいえ、ほんの少しだけ手伝う事ぐらいならできるだろう………」
櫂「……………………………」
櫂「……さよなら、トゥエルヴ・オークス………」スタスタスタスタ……カツン
櫂「……………?」
金属製のドアノブ「…………」
櫂「……これは…………?!」
50: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 17:53:24.53 ID:BeqjCU1Z0
タラ 北軍 研究施設 廊下
あやめ「………………」スタスタスタスタスタスタ……
あやめ「…………………」チラ
研究室「…………………」
あやめ「……………………」
スタスタスタ……ピタ
あやめ(……ここか。)
あやめ「……………………………」
「おい、そこの!」
あやめ「…む?わたくしがどうかいたしましたか?」
「ああ。……見たところ一般兵のようだが……一般兵はこの辺りに用はないはずだ。何故ここに居る?」
51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 18:02:39.93 ID:BeqjCU1Z0
あやめ「はぁ……そうなのですか?すみません……実はわたくしこの前配属されて来たばかりなもので………」
「はぁ……さしずめ迷子、と言うところか?」
あやめ「あはは……そうなってしまいますね。いやはや、お恥ずかしい。」
「何、気にすることはないさ。この研究施設はデカイからな。迷う奴は偶にいるんだよ。」
あやめ「(……………)わたくしだけでは無いと聞き安心しました。……どうしてこうも広いのです?」
「機械人形の研究と言うのは何かと場所が必要なんだよ。特に、この研究施設はシャーマン将軍の物だからな。」
あやめ「>>53」
53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 18:04:05.79 ID:jI5LmxeAO
研究施設……というと?
59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 21:30:38.93 ID:BeqjCU1Z0
あやめ「研究施設……というと?」
「おいおい……そんな事も知らずにここに来たのか…?」
あやめ「ああ、いえ。これだけ広いのですから、わたくしの知っている研究施設とは何かと違っているかと思いまして。」
「………お前、所属は?」
あやめ「第3守備隊の2班です。」
「第3守備隊の2班………」ピッ ブン
あやめ「………………………」
60: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 21:32:09.83 ID:BeqjCU1Z0
「……ハマグチ伍長か……………」
あやめ「はっ!」
「……………………」ジロジロ……
あやめ「……………………」
「………ふぅ……済まん済まん!少しでも怪しいと思ったら疑えと言われていてね……気を悪くしないでほしい。」
あやめ「いえ、ここで扱っているのは最重要機密事項。警備を厳重に行うのは当然の事です。」
「そう言ってもらえると助かる。」
61: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 21:33:11.69 ID:BeqjCU1Z0
あやめ「わたくしもこれから守備兵として働く以上、その態度を是非見習わせてもらいたいものです。」
「ははは……そう固く身構えんでもいいぞ。守備だの警備だのって言ってはいるが、実際にはどちらも必要の無い仕事だからな。」
あやめ「必要の無い……?」
「ああ、考えてもみろ。万が一にも、ここを攻撃しようとする連中なんて南軍の残党しかいないだろ?そんな奴らは守備の機械人形だけで片付く。」
あやめ「ふむふむ。(……………)」
「警備に関しても同じだ。ここに南部人なんかが潜り込めるはずが無い。」
あやめ「確かに。(…ここにいますよ。)」
62: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 21:35:01.89 ID:BeqjCU1Z0
「だから肩の力を抜いて大丈夫だ。さっきのも形式だけさ。シャーマン将軍が異常に用心深いだけで………あっ、今のは誰にも言うなよ?」
あやめ「言いやしませんよ。…不要だ、と言うことになってしまったら、わたくし配属そうそう失業してしまいますから。」
「はははははは!中々話の分かるやつだな……えっと…………」
あやめ「ハマグチです。」
「そうそう、ハマグチ伍長!なあ、今夜あたり一杯どうだ?」
あやめ「では、ありがたく。(……酒と言うのは人の口を軽くしてくれます。)」
63: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 21:36:30.06 ID:BeqjCU1Z0
あやめ「しかし、その前に………」
「………ああ!研究施設について知りたいんだったな。なあ、お前今時間は空いてるか?」
あやめ「午後の演習までならば。」
「ならちょうどいい。今からここを案内してやるよ。」
あやめ「警備の方は?」
「大丈夫、大丈夫、何も起きるわけがないさ!」
あやめ「(…………)ならば、よろしくお願いします。」
64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 21:38:14.05 ID:BeqjCU1Z0
舞台裏
愛海「…………………」
清良「愛海ちゃん・」
愛海「……あっ…………清良さん…………」
清良「お疲れ様。何か欲しいものとかある?」
愛海「………特に……ないかな……」
清良「……………あら…?」
愛海「…………………………」
65: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 21:41:28.30 ID:BeqjCU1Z0
清良「いつもだったらここで、『清良さんの柔らかくて温かい優しさが欲しいです!あ、そうだ、お医者さんごっこしない?あたしお医者さんね!はい、まずは触診から!』ぐらいは言ってくるのに………」
愛海「………アタシだって、時と場合ぐらい考えるよ。清良さんまだ出番あるんだから……衣装に皺つけちゃったら大変でしょ……?」
清良「………愛海ちゃんが……まともな事を………?!……ねえ、ちょっと体温を計らせてもらってもいいかしら……?」
愛海「えっ………ひどくない……?」
清良「だって、愛海ちゃんよ?」
愛海「>>67」
67: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 21:43:24.35 ID:jI5LmxeAO
そんな!風評被害もいいところですよ!
68: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 21:53:14.39 ID:BeqjCU1Z0
愛海「そんな!風評被害もいいところだよ!」
清良「風評……?」
愛海「まあ、あたしが淫獣とか呼ばれてるのは知ってるし、それを否定するつもりもないよ。あ、ちなみに淫獣の元ネタは正直そんななんだけど………」
清良「それは聞いてないかしら。」
愛海「……………あ、はい…」
清良「…続けて。」
愛海「……元ネタの淫獣学園シリーズなんだけど………」
清良「そっちじゃなくてね。」
愛海「………えっ……?」
69: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 22:04:27.39 ID:BeqjCU1Z0
清良「続けて。」
愛海「………えっと……否定するつもりもないよ……の方……?」
清良「ええ。」
愛海「……ゴホン。だってあたしが淫獣なのは事実だし、あたしはそれを誇りに思ってるから。誇りって言うか……生き様?」
清良「………お注射が必要かしら…?」
愛海「何で?!今日はまだ愛梨さ……ゲフンゲフン……!」
70: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 22:11:42.12 ID:BeqjCU1Z0
清良「んー……多分気のせいだと思うんだけど今愛梨ちゃんの名前が聞こえた気が………」
愛海「……き、気のせいです………」
清良「………本当に?」
愛海「……な、名前は言いました……はい………」
清良「名前を言っただけ?」
愛海「………すみませんでした………つい出来心で………………」
清良「…………で?」
愛海「…いや……その………目の前に黄金の果実があったら…仕方ないと思いませんか…………?」
71: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 22:18:50.38 ID:BeqjCU1Z0
清良「それはいつの話?」
愛海「午前中楽屋で一緒になった時に………愛梨さんが……部屋が暑いって言い出して………………」
清良「……………………」
愛海「………もう思い残すお山は…………あるけど……ないので……早くひと思いに………」
清良「つまり……愛海ちゃんは午前中は元気だった……と言うことよね?」
愛海「………えっ……?」
72: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 22:26:50.65 ID:BeqjCU1Z0
清良「……私の見る限り、劇が始まる前までも元気だったように見えたけど………」
愛海「………お、お仕置き…は……?」
清良「してほしいの?」
愛海「…………」ブンブンブンブン!
清良「私だって、時と場合は考えるのよ?……それじゃあどうして、出番が終わったら元気が無くなってしまったのかしら?」
愛海「………えっ……そ、それは……………」
73: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 22:34:47.58 ID:BeqjCU1Z0
清良「愛海ちゃんに限って、体力が無くなったとは考えづらいわ。理由を教えてもらえる…?」
愛海「…………………………」
清良「…………………………」
愛海「………プロデューサー……来てくれなかった………」
清良「……愛海Pさん?」
愛海「うん……あたしの出番が終わるまでには来るって………約束したのに…………」
清良「…………………………」
74: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 22:43:29.00 ID:BeqjCU1Z0
愛海「………ちゃんと真面目に………やったのに………」
清良「見てもらえなくて寂しかった?」
愛海「だって……みんなのプロデューサーさんたちは、ちゃんと来てるじゃん………」
清良「…………………………」
愛海「……来るのは無理って分かってはいたんだけど………でも…さ……あはは……あたしもまだまだ子供だな…」
清良「>>76」
76: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 23:37:41.90 ID:TxT8XWig0
じゃあ、あっち行こうか。忘れさせてあげるわよ
77: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 23:50:38.67 ID:BeqjCU1Z0
清良「じゃあ、あっちに行きましょうか。忘れさせてあげるわよ?」
愛海「………?!え、えっ……と………」
清良「生きが良くない子って言うのはあまりヤル気が出ないんだけど………しょうがないわよね?」
愛海「………あの………何を………?」
清良「聞きたい?」
愛海「………………………」
清良「………………」ニコニコ
愛海「………あ……」サァ………
78: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/18(日) 23:59:26.87 ID:BeqjCU1Z0
清良「とりあえず………ね♪」ニコニコ
愛海「…………うん……分かった……」スクッ
清良「………………………」
愛海「………………………」
清良「……………はぁ………」
愛海「……清良さん……?」
清良「…うーん……いつもの愛海ちゃんじゃないと張り合いがなくて面白くな………元気がないのは心配ね…」
79: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 00:06:22.90 ID:C6B3gZuG0
愛海「……元気……そんなに無いかな………?」
清良「お注射が何本か必要かな、って思うぐらいには元気が無いかしら。」
愛海「………そう…………」
清良「でも、お注射よりもっと効くのがあるねよ?……着いてきて、悲しいのを忘れさせてあげる☆」
愛海「…………………………」
清良「………………♪」
80: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 00:12:08.67 ID:C6B3gZuG0
リハーサル室
清良「はい、到着♪」
愛海「…………ここは……」
清良「リハーサル室よ。今の時間ならここには誰も居ないから、うってつけなのよ?」
愛海「………何に………?」
清良「……ふふっ……目をつぶって。」
愛海「…………………………」
清良「目を…つぶって?」
愛海「………あ、うん……」パチ……
81: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 00:18:26.46 ID:C6B3gZuG0
清良「………………」ゴソゴソ……キラ……
愛海「……………………」
清良「ふふふ……今から元気が出るお呪いをしてあげるわね?悲しい事なんか全部無くなって、幸せな気分になれるはずよ?」キラ……
愛海「……そんなはず……ないよ………だって…………」
清良「……だって?」
愛海「……プロデューサーが…………」
82: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 00:24:17.38 ID:C6B3gZuG0
愛海P「はぁ……はぁ………愛海!!」
愛海「?!」
清良「愛海Pさんがどうしたの……?」
愛海「……………………」
清良「目を開けて後ろを振り返ってみて。」
愛海「…………………」パチ……クル………
愛海P「……はぁ……はぁ………はぁ…………」
愛海「…………………………」
83: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 00:31:02.95 ID:C6B3gZuG0
愛海P「……すまん…!その……色々あって…………」
愛海「……ぐすっ………良かったぁぁぁ…………」ギュッ………
愛海P「……………………」
愛海「……今度こそ……ぐすっ………ホントに捕まっちゃったかと思って………それで………それで…………一緒にエロいことする……仲間が居なくなったら………どうしよう…………って………」ギュッ………
清良「……………………」
愛海「>>85」
85: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 01:09:46.98 ID:4qS4HQxAO
愛海Pさぁぁぁぁぁぁぁん!!!(泣きつく)
87: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 16:10:36.29 ID:C6B3gZuG0
愛海「愛海Pさぁぁぁぁぁぁぁん!!!」ギュウウウウ……!
愛海P「………………………」
愛海「…ぐすっ……ぐすっ………本当に………怖かったんだから…………」
ギュウウ………
愛海P「……当たってるぞ。」ポンポン
愛海「当たるほどないでしょ、ばかぁ………」ギュウウ………
愛海P「…大きさじゃないんだろ?。」
愛海「……あっ………………」
88: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 16:11:11.35 ID:C6B3gZuG0
愛海P「俺は愛海の天保山も……好きなんだけどな………」
愛海「……ぐすっ………うわああああああん……ホントのホントに愛海Pさんだぁぁあ………」ギュゥゥゥゥ……
愛海P「……………ごめんな、愛海……」
愛海「……一緒に…お山についての談義をしてくれなきゃ………許してあげない…………」
愛海P「……朝までだって付き合うぞ………」ギュッ………
愛海「……うう……朝まで……エロエロ………だからね……!」
愛海P「おう……!エロエロだ……!」
89: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 16:12:05.30 ID:C6B3gZuG0
清良(…うーん…会話を聞く限り、捕まったのもあながち間違いではない気がするけど……)
愛海「ぐすっ…ぐすっ……ううう………愛海Pさん…………」
ギュウウウウ………
愛海P「愛海ぃ……!」ギュウウウウ………
清良(…愛海ちゃんたちの様子を見る限りは……ね。……今回に限って大目に見てあげる事にしましょう。……もうイイ声で泣いてるものね。)
清良「…………」チラ
鏡「……………………」
清良「……まったく…恥ずかしがり屋さんなんですから♪」
鏡「……………………」
清良「…………………………」
90: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 16:13:45.74 ID:C6B3gZuG0
アトランタ レットの家
保奈美「まぁ………………!!」
沙紀「旅行中に作らせておいたんだ。どうです、奥様。あなたのご希望通りに作らせたつもりですが。」
保奈美「素晴らしいわ!あはははは、何て大きな家なんでしょう!近所の家がみんな納屋に見えるぐらいだわ!」
沙紀「僕は住むには広すぎると思うのだがね。」
保奈美「家に広すぎる、なんて事はなくてよ?屋敷って言うのは広ければ広いほどいいの!ああ、ここでならどんな大きなパーティーだってできるわ!」
沙紀「パーティー会場には最適な事は否定出来ないね。パーティー会場としては、ね。」
91: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 16:15:13.63 ID:C6B3gZuG0
保奈美「はぁ………内装から家具から、壁にかけてある絵、それに手すりの細工のどれを取ったって、アトランタのどの家より……いえ、南部のどの家よりもずっと豪華で……誰だってこれを見たら……………」
沙紀「一目で悪銭で建てた事が分かるだろうね。」
保奈美「(またレットは…………)なんて口の悪い事を言うの?」
沙紀「事実を言っているだけじゃないか。こんな悪趣味な家は見た事が無い。」
保奈美「建てさせたのはあなたでしょ?」
沙紀「僕は建設業者に金を払って、君の意向を伝えただけに過ぎないよ。」
保奈美「…………………………」
92: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 16:17:28.38 ID:C6B3gZuG0
沙紀「成金趣味も良いところだね。高級品を並べただけで、センスの欠片もありゃしない。」
保奈美「フン、私の知っている金持ちの家はみんなこんな感じよ。もっと見すぼらしいけど。」
沙紀「君の知っている金持ちと言うのは商売柄知り合った成金ばかりだろうからね。どうせ、全員渡り者や利権屋の連中だろう?」
保奈美「まさか。みんな立派な身なりをした、金払いの良い立派な人たちよ。」
沙紀「詐欺師と言うのは往々にして、そう言った人間に自分を見せる者なのだよ、お馬鹿なお嬢さん。」
保奈美「>>93」
93: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 16:21:38.91 ID:4qS4HQxAO
(否定できないわ……私自身も嘘で自分を塗り固めてきたから……)
94: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 16:31:12.19 ID:C6B3gZuG0
保奈美「…………っ…………(否定できないわ……私自身も嘘で自分を塗り固めてきたから……)」
沙紀「本当に立派な方々は皆、貧乏と戦ってらっしゃるよ。金を持っているのは僕らみたいな悪人たちだけさ。」
保奈美「………………(でも………)」
沙紀「付き合っていて楽しい連中なのは間違いないだろうが、あまり親しくしすぎるのは感心しないな。」
保奈美「……別に詐欺師だったっていいじゃない。付き合っていて楽しいなら。」
沙紀「それも一つの考え方ではあるね。今が楽しければ、後がどうなろうと関係ない、と言うのは。」
95: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 16:41:46.50 ID:C6B3gZuG0
保奈美「………何が言いたいの…?」
沙紀「いや……この家は確かに僕らにお似合いなのかもしれないとおもってね。」
保奈美「……………は?」
沙紀「……外装から内装まで確かにお似合いだ。これ以外は考えられないと言っても過言では無いね。」
保奈美「……言いたい事があるならはっきり言いなさい。」
沙紀「はははははは!だから、今言ったじゃないか。」
96: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 16:50:23.39 ID:C6B3gZuG0
保奈美「…………………………」
沙紀「この家自体が、道行く人へここの住人がどんな人間かを説明してくれるんだ。自己紹介をする手間が省けて楽で良いじゃないか。」
保奈美「……ここに住んでいる人間はロクな人間じゃないって事を………かしら?」
沙紀「さあ、どうだか。」
保奈美「…………………………」
沙紀「それは僕が教える必要があることなのかね?」
97: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 17:03:16.18 ID:C6B3gZuG0
保奈美「……フン、確かに言われるまでもないわね。私は悪人、そしてあなたも悪人よ。」
沙紀「ほぅ…………」
保奈美「…あなたの言う事は否定はしないわ。だけど悪人が悪人と付き合う事は、何かおかしな事かしら?」
沙紀「それがおかしい事ならば、僕には友人の一人だっていやしませんよ。」
保奈美「生まれつきの悪人のあなたならそうでしょうね。」
沙紀「ええ、仰る通りですよ。」
98: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 17:12:13.05 ID:C6B3gZuG0
保奈美「……っ……私の部屋はどこ?」
沙紀「階段を上がって………まあ、部屋は幾らでも余ってるんだ。好きな部屋を使いなよ。」
保奈美「分かったわ。」
沙紀「それと…………」
保奈美「…………何?」
沙紀「……無理はするなよ。」
保奈美「……………………………」
沙紀「…………………………」
保奈美「……………ふん……」
99: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 17:23:17.38 ID:C6B3gZuG0
夜 スカーレットの部屋
保奈美「はぁ……レットの口の悪さにはもう呆れ果てて腹も立たなくなってしまったわ。」
保奈美「最初のころは躍起になって言い返せそうとしていたけど……無駄だと分かったもの。」
保奈美「……結局、アイツには言いたいように言わせておくのが一番なのよ。……口が悪いのさえ除けば、あとは完璧だもの。」
保奈美「お金は幾らでも持ってる。愉快な遊びや話だってたくさん知っているし……何より顔が良いもの。」
保奈美「顔が良い男を連れて歩くって言うのがんなに楽しい事だったなんて。今まで知らなかったわ。」
100: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 17:30:56.74 ID:C6B3gZuG0
保奈美「…綺麗なドレスや宝石を身につけて注目を浴びるのも気持ちが良いけど……ふふっ……レットといるのはもっと気持ちが良いわ。」
保奈美「……はぁ……口が悪いのと、根性がねじ曲がっている事さえなければ…………」
保奈美「……そしたら……私だってレットの事を少しは好きになってやるのに。」
保奈美「……どうしていつも、人を馬鹿にしていなければ気がすまないんだろう……」
保奈美「>>102」
102: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 17:37:16.76 ID:1/SqbhJZ0
ん……?……この甲高い機械音は……!?
103: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 17:45:48.53 ID:C6B3gZuG0
保奈美「ん……?……この甲高い機械音は……!?」
キィィィィィィィ……
保奈美「…………っ……!!」
ィィィィィィィィィィィィ………!
保奈美「…………あっ…………ああ…………うあ……………………あああ………………!」
保奈美「……うう………………」
燭台「……………………」
保奈美「…………… …!」ガシ!
保奈美「……っく…………はぁ……はぁ…………!」スク……
104: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 17:56:09.76 ID:C6B3gZuG0
保奈美「…………………」サッ…!サッ…!
保奈美「……っ………どこ……?!……どこなのよ………?!」
保奈美「……………はぁ………はぁ…………はぁ………………っ…………!」
保奈美「……昔の私と……一緒と思うなよ……!……逃げるものか……戦ってやる!」
保奈美「…………………ふぅぅ……………」
保奈美「……………………」
スタスタスタスタ ガチャリ……
105: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 18:07:13.59 ID:C6B3gZuG0
廊下
保奈美「………………………」
スタ…スタ…スタ…スタ…スタ…
保奈美「…近くに……いるはず……!」
キィィィィィィィィィィ……!
保奈美「……っ!!……居る…居る…居る………!」
保奈美「………っ………っ…………ふぅ……………」グッ……!
燭台「…………………」
保奈美「……音がするのは………あっちの方だ………」
スタ…スタ…スタ…スタ…スタ…
106: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 18:16:23.19 ID:C6B3gZuG0
〜〜〜
保奈美「……こっちで間違いない………でも……何で…………」
キィィィィィィィィィィィ……!!
保奈美「……音が近い……!そんな事を……考えている場合じゃ………ない………!」
キィィィィィィィィィィィ……!!
保奈美「………この部屋から…音が聞こえてくる………!」
ドア「…………」
保奈美「……………………」
保奈美「…………………」ガシッ!
保奈美「………………………!」
107: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 18:26:27.87 ID:C6B3gZuG0
地下室
保奈美「……っ…!!」ガチャッ!
保奈美「うわああああああ……!!!」スッ………!!
沙紀「……?!ストップ、ストップ!」
保奈美「………………レット…?!」
沙紀「他の誰に見えるんだい?はぁ……何があったかは知らんが、とりあえずその振り上げた燭台を下ろしちゃくれんかね。僕の頭を叩き割るのが目的で無いのなら。」
保奈美「……………………」
沙紀「壺の次は燭台と来たか。…さすがにこれは予測が出来なかったな………」
108: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 18:36:24.57 ID:C6B3gZuG0
保奈美「…………………………」
沙紀「怖い夢でも見たのかい?ふふっ、眠れないんだったら添い寝でも………」
保奈美「違う…違うのよ…!アレが……空飛ぶ鋸が……!!」
沙紀「…空飛ぶ鋸…………?」
保奈美「そう、そうよ!この街を……滅茶苦茶にしたアレの……音が……!…甲高い機械の音が聞こえたの………!!きっと……また………」
沙紀「………甲高い機械の音……………」
109: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 18:47:51.73 ID:C6B3gZuG0
保奈美「だ、だから……その……早く………!!」
沙紀「はぁ……スカーレットお嬢さん、あなたが聞いた音とはこのような音ではありませんでしたか。」カチ
大型モーター「…」キィィィィィ……!!
保奈美「…………!!」
沙紀「……やはりね。経営者ともあろう方が、ご自分の工場の製品をご存知無いとはね。さっき技師が新製品の確認をして欲しいと持って来たんだよ。」
保奈美「………………………」
沙紀「>>110」
110: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 18:49:17.42 ID:9aEsRmFAO
怯える気持ちも分かるが、せめて工場の機械と機械兵の音の違いは分かってほしいね。
114: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 21:41:52.27 ID:C6B3gZuG0
沙紀「怯える気持ちも分かるが、せめて工場の機械と機械兵の音の違いは分かってほしいね。」
保奈美「…………………………」
沙紀「自分の商売道具を怖がる商人なんて、とんだお笑い種じゃないか。しっかりしてほしいな。」
保奈美「………あっ………え、ええ……………」
沙紀「……………………………」
保奈美(………アレじゃ……無かった…………………)
沙紀「………ふぅむ…」
115: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 21:42:31.81 ID:C6B3gZuG0
保奈美「え、えっと………その…………ごめんなさい………」
沙紀「いや、僕の方こそ悪かったよ。まさか君の寝室にまで機械の音が聞こえるとは思わなくてね。」
保奈美「……あ………いや………………」
沙紀「外に音が漏れないように、わざわざ地下室に持ち込んでまで確認をしたと言うのに………本当に聞こえたのかい、スカーレット。」
保奈美「……ええ……はっきり聞こえたわ………機械の……甲高い音が………………」
沙紀「………はっきりと?」
保奈美「………………」コク……
116: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 21:43:35.97 ID:C6B3gZuG0
沙紀「…………………………」
保奈美「……それで………私……てっきり……また……アレが…街を襲っているのかと……思って…………」
沙紀「………………………」スクッ……
保奈美「……だから……その……また…………私たちが作り上げてきたものが…………全部……壊されてしまうんじゃないか…………って…………」
沙紀「………………」スタスタスタスタ……
保奈美「……そしたら…………また………………」
沙紀「………………」ギュッ……
保奈美「?!」
117: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 21:46:51.29 ID:C6B3gZuG0
沙紀「………………」ナデ……ナデ……
保奈美「……な、な、何を………?!」
沙紀「震えている女性を落ち着けさせるには、これが一番なのだよ。」
保奈美「………私は……別に……震えてなんか………」
沙紀「……手を見なさい。」
保奈美「………手………………」
カタカタカタカタ…………
保奈美「…………………………」
118: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 21:47:49.90 ID:C6B3gZuG0
沙紀「………そんなに機械兵が怖いのかい…?」
保奈美「……こ、怖い……?…そんなわけ……ないじゃない…………怖かったら……機械人形の工場なんて………………」
沙紀「……君が現場を視察するのは、何時だって機械が止まっている時と自分で気付いていたかい…?」
保奈美「…………………………!!」
沙紀「どうやら自覚は…無かったようだね……」ナデ……ナデ……
保奈美「……………………………………………………」
119: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 21:48:53.26 ID:C6B3gZuG0
沙紀「……まったく……機械人形が怖いなら、もっと別の仕事を選ぶべきだっただろうに。……君は実にばかだなあ。」
保奈美「…………だって………北軍に……復讐しないといけなくて…………そのためには……力が必要で………………」
沙紀「音が聞こえたぐらいでその様子じゃ復讐なんて、夢のまた夢だと思うがね。」
保奈美「…………っ……!!」
沙紀「……無理な事はしようとするものじゃない。お嬢さん、それは子供が月を捕まえたいと願うのと同じ事だよ。」
保奈美「……あなたに……何が分かるって言うのよ………!!」
沙紀「…………………………」
120: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 21:51:30.03 ID:C6B3gZuG0
保奈美「北軍は……私たちから……全てを奪ったのよ……そして……今も…………っ…………!」
沙紀「………………」ナデ……ナデ……
保奈美「あなたには………あなたには………っ………うう……………」
沙紀「………………………」
ナデ……ナデ……
保奈美「………その為に………私は…………ううう…………」
沙紀「>>121」
121: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 21:52:18.24 ID:4qS4HQxAO
悪かったね……君がそんなに傷ついていたとは
123: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 22:00:38.01 ID:C6B3gZuG0
沙紀「悪かったね……君がそんなに……傷ついていたとは……」
保奈美「……うるさい……!…あなたなんかに……同情されたくないわ……!」
沙紀「………………………」
保奈美「……そんな……優しくしないで……!……あなたは悪党の無頼漢でしょ……!いつもみたいに……皮肉を言いなさいよ……!」
沙紀「…………………………」
保奈美「……私は……傷ついてなんかいない…………決めつけないで……!何にもわからないくせに……!」
124: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 22:07:13.56 ID:C6B3gZuG0
沙紀「……僕は君に優しくしたら……いけないのかい?」
保奈美「…いけないわよ……!だって……だって………何で……あなたなのよ………!何で………何で…………っ………うう…………」
沙紀「……………………」
保奈美「……何で………私にそんな言葉を最初にかけてくれたのが……あなたなのよ………!………うう………ううううう…………」
沙紀「…………………」ギュッ……
保奈美「……どんな男の人も……そんな簡単な事を………言ってはくれなかったのに…………何で…………」
125: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 22:13:44.90 ID:C6B3gZuG0
沙紀「…………辛かっただろうね……」
保奈美「うるさい…!…そんな……在り来たりな言葉で……私が満足すると思わないで……!」
沙紀「…………………………」
保奈美「……私は……私は…………!……っ………………うう……………」
沙紀「…………………………」
保奈美「…何なのよ……もう…………あなたなんか…………大嫌いよ…………!」
126: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 22:21:26.16 ID:C6B3gZuG0
沙紀「なるほど……スカーレット。僕らはとことん反目し合うように出来ているみたいだ。」
保奈美「………何よ……?!」
沙紀「……僕はね、君の事が大好きなんだ。」
保奈美「こんな時にまで冗談は………!」
沙紀「冗談で言ってるとでも?」
保奈美「…………………」
沙紀「……ふふっ……『狼少年』の気持ちがよく分かる………」
保奈美「…………………………」
127: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 22:28:19.92 ID:C6B3gZuG0
沙紀「冗談ばかり言ってると、終いには信用されなくなってしまう。……自業自得、ここに極まれり、だね……」
保奈美「………………………」
沙紀「……本心から言ってるのさ。君が僕にしか見せた事がないように、僕の君にしか見せた事がない本心から、ね。」
保奈美「……………………………」
沙紀「…これを冗談と思われるのは……さすがに悲しいな。仕方が……ないんだが…………」
保奈美「…………………………」
128: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 22:37:22.54 ID:C6B3gZuG0
沙紀「……それと、感違いしてほしくないんだが、僕は君に同情しているわけじゃない。……ただ……幸せになってほしいだけなんだ。」
保奈美「………また……そんな事を………どうせ…それも…………」
沙紀「……………………………」
保奈美「………………………」
沙紀「……人の話は最後まで聞くものだよ、スカーレット。」
保奈美「……………………」
沙紀「急くのが君の悪い癖だ。」
129: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 22:45:46.06 ID:C6B3gZuG0
保奈美「………優しくしないで…って……言ってるじゃない……!…あなたの言葉でも縋り付いてしまいそうな自分が居るのが………よく分かるのよ………!」
沙紀「それは何か問題が…?」
保奈美「…………っ……」
沙紀「……君が僕の事をどう思っていようと構わん。だがね、僕は君にいくら嫌われようが優しくさせてもらうよ。……君の嫌がる事をするのが僕の趣味だからね。」
保奈美「>>130」
130: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 22:49:45.41 ID:4qS4HQxAO
ずるいわ……あなたは……
131: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 22:58:08.49 ID:C6B3gZuG0
保奈美「ずるいわ……あなたは……」
沙紀「知らなかったのかい?」
保奈美「………知ってたわよ……」
沙紀「…………ふふっ……」
保奈美「……最初に出会った時からそう………いっつも……人が一番嫌がる事ばかりして……」
沙紀「怒った君がとても魅力的だったからさ。」
保奈美「……………ふん……」
132: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 23:07:13.51 ID:C6B3gZuG0
沙紀「……良いところだけ掻っ攫わせてもらうよ。その為に持てる財力を活用させてもらったんだ。」
保奈美「お金じゃ…愛は買えないわよ……?」
沙紀「きっかけを作る事は出来るさ。好みの女性を見つけてお茶に誘うのだって、お茶の代金は必要だろう?」
保奈美「…お茶に比べたら……随分と高くついたわね……」
沙紀「安いものさ。これより有用な使い方は無かったと思っている。」
保奈美「……さらにかかるわよ…………?」
沙紀「ははは、分かってるさ。」
133: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 23:14:18.67 ID:C6B3gZuG0
沙紀「普通の人間が猫を飼って満足している中、わざわざ喉笛に噛み付かれる危険を背負ってまで獅子を飼ったんだ。餌代はかかって当然だね。」
保奈美「…損することばかりで、一切得する事がないじゃないの………馬鹿じゃない……?」
沙紀「いやいや、まず第一に周りに自慢できる。第二に日常に刺激が出る。第三に……僕は獅子でなきゃ満足できないのさ。」
保奈美「………やっぱり馬鹿なんじゃない………」
沙紀「男なんてそんなものさ。紳士諸君については知らんがね。」
保奈美「…………ふふ………」
134: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 23:22:20.88 ID:C6B3gZuG0
沙紀「………さあ、お嬢さん。良い年をした男の純真なる告白をせせら笑った事で少しは元気が出たかな?」
保奈美「………ええ…中々笑えたわ。」
沙紀「ふふっ……それは結構。ああ、ひょっとして今夜は怖くて一人で寝れないなんて事はありませんかな?」
保奈美「お生憎様。夢見は良い方なの。」
沙紀「それはそれは…………」
保奈美「残念ね。ふふふ………」
135: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 23:31:54.02 ID:C6B3gZuG0
北軍 総司令部
時子「久しぶりね、シャーマン。いつ以来になるかしら?」
晶葉「戦勝記念祝典以来になります。」
時子「へぇ……道理であなたがどんな顔をしていたか思い出せなくなるはずだわ。私の記憶の片隅に留め置いてもらえた事に感謝なさい。」
晶葉「はい、光栄の至りに存じます。」
時子「で、何が目的でここにやって来たの?」
晶葉「はて?目的……と申しますと?」
時子「とぼけてんじゃないわよ。あなたが上司の顔を拝みに来るような人間のはずがないでしょう。」
136: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 23:40:49.74 ID:C6B3gZuG0
晶葉「おやおや、それは何とも心外ですねぇ。私は何時でも北部連邦の事を考えて………」
時子「私の時間は貴重なの。これ以上私に時間を無駄にさせるつもりなら、この場で叩き返させるわよ?」
晶葉「……それは困りますね。」
時子「ならさっさと本題に入りなさい。私の耳に入れるべきだと思ったからここに来たんでしょう?いいわ、今日は気分が良いから聞いてあげる。話しなさい。」
晶葉「ありがとうございます。」
時子「もしくだらない話だった場合は……」
晶葉「分かっています。何、私とあなたの両方にとって利益のある話ですよ。」
137: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/19(月) 23:52:43.15 ID:C6B3gZuG0
時子「大した自信ね。まるで自分には失敗などありえない、なんて考えているような。」
晶葉「まさか、私とて人の子である以上失敗の一つや二つはありますよ。……それで、話と言うのはシェリダンの事なんですがねぇ。」
時子「ああ、確か死んだんだったわよね。」
晶葉「はい、南軍の残党に………惜しい人物を失いました。」
時子「ハッ、南軍の残党如きに殺られような役立たず、死んで当然よ。」
晶葉「>>139」
139: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 00:04:16.61 ID:HsqH1sfAO
ごもっともです。して、シェリダンの後釜にこの者を推薦したいと……(仮面を着けた麗奈が進み出る)
142: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 16:01:59.19 ID:N6rFUvrH0
晶葉「ごもっともです。して、シェリダンの後釜にこの者を推薦したいと……」
麗奈「…………」スタスタスタスタ ストン
晶葉「…シェリダンなんぞより遥かに優秀である事は私から保証させていただきます。」
麗奈「………………」
時子「…誰?」
晶葉「それは私も知りません。」
時子「アァン?」
143: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 16:03:39.27 ID:N6rFUvrH0
晶葉「ですから私も知らないのですよ。コレが人間であった時の名前など、ね。」
時子「……ああ、なるほど。コイツはあなたの新しい玩具って訳ね。」
晶葉「恥ずかしながら。クク……素晴らしい玩具ですよ、コレは。」
麗奈「…………………」
晶葉「何せ私の今までにおける生涯の中での最高傑作なのですから。」
時子「最高傑作?コレが?」
晶葉「はい、これを超える作品は神と言えども作り出す事は不可能でしょう。」
144: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 16:04:21.56 ID:N6rFUvrH0
時子「……私にはただの趣味の悪い仮面をつけたガキにしか見えないんだけど?」
晶葉「ククク……分かりました。では…………」パチン
麗奈「…………」シュバッ!
時子「なっ?!き、消え………」
麗奈「………………」ピタ
ナイフ「…………………」
時子「……っ?!(……この私の背後を取っただけでなく………首筋に…ナイフを…………)」
麗奈「……………………」
145: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 16:05:46.56 ID:N6rFUvrH0
時子「…………っ……!」ゾワリ……
晶葉「クックックック……これが私の最高傑作の力です。身を以て味わっていただけた事と思われますが?」
時子「…………………………」
麗奈「…………………」
時子「……っ!!こ、コイツに早く私から離れるように言いなさい!」
晶葉「おっと、失礼。ククク……離れて差し上げろ。」
麗奈「…………………」ス……
146: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 16:06:32.06 ID:N6rFUvrH0
時子「あ、あなたねぇ……!私にこんな事をしてただで済むと………!」
晶葉「今のがソレの性能を最も明確かつ迅速にご理解いただける方法だと考えましたので。申し訳ありませんでした。」
時子「謝ってすむと………!」
晶葉「…………」スッ
時子「!」ビクッ
晶葉「………私の話を聞いていただけますか?」
時子「…………っ……!!」
147: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 16:07:42.50 ID:N6rFUvrH0
晶葉「ククク……ご自分が反応すら出来なかったからと言って、それを恥じられる必要はありませんよ。当然の事なのですから。」
時子「…………………」ギリ……
晶葉「ソレは私が遺跡から出土した技術を元に開発した『DG細胞』で全ての能力を人間の限界を超えて遥かに高めてあります。クックックックック……代償として声や感情などを完全に失ってしまいましたがね。」
麗奈「………………………」
晶葉「さあ、グラント様。コレをシェリダンの後釜に据えてはいただけないでしょうか?」
時子「>>148」
148: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 16:12:59.34 ID:ClOp68do0
っ……好きになさい。
155: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 17:19:05.23 ID:N6rFUvrH0
時子「……っ……好きになさい…」
晶葉「と言いますと?」
時子「………あなたの言う通りにしてやるって……言ってるのよッ…!」
晶葉「クックックックック……では承認していただける、と言う事ですね?」
時子「………そうよ…!」
晶葉「クク……賢くあられるグラント様ならそう言っていただけると信じていましたよ。」
時子「…………………」ギリギリ…!
150: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 16:35:12.89 ID:N6rFUvrH0
晶葉「やはりお願いしてみて正解でした。ありがとうございます……グラント将軍。」
時子「……あまり……調子に乗るんじゃないわよ……」
晶葉「はて?」
時子「……私が一言命令しさえすれば……………」
晶葉「1機あたり50人、と言ったところですねぇ。無謀な勝負はあまりお勧めしませんよ?クク………」
時子「………?!」
晶葉「…ククク……勝負というのは始めるまえに既に決着がついているものなのですよ?」
151: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 16:49:42.24 ID:N6rFUvrH0
時子「………っ…………っ…………!」
晶葉「クックックック……!まあ、我々が万が一にも衝突するような事態はありえないでしょう。私とあなたの関係が友好的である限りは、ね。」
時子「……自分が何をしているのか……理解できているの……?」
晶葉「ええ、これからは私めが北軍の指揮をとらせてもえらえると言う事がね。」
時子「………………………………」
晶葉「ククク……そうでしょう?」
時子「……っ!!そ、そうよ…………!!」
152: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 17:03:27.74 ID:N6rFUvrH0
晶葉「私とあなたは気があうようですねぇ?クク……では、そろそろ大事な話に移らせていただきます。私とあなた…最初にこぼした通り双方に利益の…ある話です。
時子「早く話しなさいッ!…私を何をすればいいの?!」
晶葉「簡単な事です。少しだけ私に協力していただきたいのです。」
時子「………………まさか…………?!」
晶葉「ククク……共通の敵を前にして人は団結を初めてします。……大統領選挙に出馬するそうではありませんか。票が欲しくはありませんか……?」
時子「………………………………」
154: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 17:16:49.43 ID:N6rFUvrH0
タラ農園 屋敷 廊下
櫂(てっきり北軍の砲撃で破壊されてしまったものとばかり思っていたけど………まさかまだ残っていただなんて……)スタスタスタスタスタ……
櫂(…………これは……僕にあの力を使え……と言う事なのだろうか……あの力を使って……戦えと……?)
スタスタスタスタスタ……
櫂(……でも……戦争が終わった今……『ホワイトドール』の封印を解くのは……………)スタスタスタスタスタ……
聖「……………」ブツブツブツブツ……
櫂(…………僕は一体……どうすれば……………)スタスタスタスタスタ……ドン!
聖「きゃっ?!」バタッ…!
櫂「……?!……すまない、キャリーン!」
156: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 17:25:17.71 ID:N6rFUvrH0
聖「……えっ……?……あれ…………?……………?!?」
櫂「立てるかい…?」スッ……
聖「…………え、えっ…と…………?」
櫂「…………キャリーン?」
聖「…………あっ……………あ、ありがとう……ございます……?」スッ……
櫂「………あ、ああ…」グイッ
聖「……………………」ストン
櫂「……………………………………」
157: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 17:32:37.18 ID:N6rFUvrH0
聖「……あの……私……何が…………あったんですか……?えっと………お祈りをしてて……それから…………」
櫂「…今のは、僕とぶつかってこけたんだけど…………?」
聖「……あっ……そう、なんです…か……?」
櫂「………………………………」
聖「あの……ごめんなさい………お祈りに……夢中になってて……たぶん………」
櫂「…………………………」
聖「>>158」
158: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 17:34:54.44 ID:ClOp68do0
ピニャコラドール様に祈れば、スエレンも戻ってくるはずですから……。
159: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 17:43:09.21 ID:N6rFUvrH0
聖「ピニャコラドール様にお祈りすれば……スエレンも戻ってくるはず…だから…………」
櫂「………………………」
聖「…ピニャコラドール様はいつでも……私たちを見守ってくれて、いるから………お祈りを続ければ…………」
櫂「……キャリーン。」
聖「………何…ですか………?」
櫂「……どのくらいの間、きちんと寝ていない?」
聖「…えっ………?」
160: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 17:51:21.53 ID:N6rFUvrH0
櫂「……目の下の隈が酷い……相当長い間、きちんと眠れていないんじゃないかい……?」
聖「………え、えっと…………スエレンが居なくなってから………その………全然……寝れなくて……………」
櫂「……スエレンが………ということは…もう一カ月違いじゃないか……!その間…ほとんど一睡も………?!」
聖「……は、はい……………」
櫂「……………っ…………!」
聖「……怖くて………寝れないんです……………」
161: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 17:58:10.34 ID:N6rFUvrH0
櫂「怖い…って言うと…………」
聖「……はい……スエレンが……もし帰ってこなかったら……どうしよう……って…………」
櫂「…………………………」
聖「……みんな………スエレンの事を…悪く言うけど…………スエレンも……大切な家族…なのに………………」
櫂「………………………………」
聖「……もう……誰かが居なくなるのは……いや……だから………………とっても……怖いんです………………」
162: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 18:06:35.26 ID:N6rFUvrH0
櫂「………寝れない間は…何を…………?」
聖「お祈りを……してました……お祈りをしていると……心が……少しだけ落ち着くんです………」
櫂「………………………」
聖「…あの……みんなには…言わないでください……特に……お父さんには………心配……させたくないから………………私は……平気………だか………」フラ……
櫂「……!!」ガシ!
聖「………………………」
櫂「…っ!キャリーン!キャリーン!」
163: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 18:13:13.77 ID:N6rFUvrH0
聖「……あっ………ご、ごめんなさい………」
櫂「……良かった………大丈夫なんかじゃないじゃないか……」
聖「…………………………」
櫂「……えっと……とりあえず…………」
聖「……あああっ……!!」
櫂「どうした?!」
聖「声が……聞こえる………!!……いや……私の中に……入ってこないで………!!」
164: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 18:20:43.32 ID:N6rFUvrH0
櫂「……声?!……声とは何だ?!」
聖「声が……聞こえるの……!……毎晩……毎晩……ずっと……声が………!頭の中を……蛇がのたうちまわる………!」
櫂「……っ…!…えっと……………」
聖「止めて!私たちは……敵じゃ……ないよ………怖く……ないよ………?」
櫂「…会話……しているのか………?……誰と………?」
聖「うう……怖い……怖い…………怖いよ…………」
165: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 18:30:40.59 ID:N6rFUvrH0
聖「みんな……もう起きるつもりはなかったのに……もう……戦いたくなんか………なかったのに…………どうして………起こしちゃったの………?」
櫂「…っ…!みんなとは…誰なんだい?」
聖「みんな……は………土の中で……ずっと……眠っていたの………」
櫂「土の中……?!」
聖「…なのに…………ああ……………」
櫂「>>166」
166: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 18:32:00.61 ID:5Gx9ltSAO
(聞かなかったことにしたいが……)つまり、どういうことだい?
168: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 18:38:36.47 ID:N6rFUvrH0
櫂「(聞かなかったことにしたいが……)つまり、どういうことだい?」
聖「…このままじゃ……みんな……死んじゃう………みんな………みんな…………」
櫂「………それは……ひょっとして……文明の浄化じゃ……ないか………?」
聖「……うん………一回……終わる前に……終わらせないと………本当に………終わっちゃう………から…………」
櫂(………もしやと……思ったが…………)
聖「みんなも……そんなことは……したくないのに………!」
169: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 18:44:34.73 ID:N6rFUvrH0
櫂「……文明の……浄化を行うのは…………?」
聖「……光の………蝶…………」
櫂「……………………………」
聖「……光の………蝶………月光蝶が…………全部を……始まりへ……………」ガク……
櫂「?!」
聖「…………………」
櫂「キャリーン!しっかりしろ、キャリーン!」
170: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 18:53:10.19 ID:N6rFUvrH0
聖「…………………………」
櫂「…っ……脈は………?」ギュッ
櫂「……良かった……弱ってはいるけど……脈はちゃんとある………」
聖「………………………」
櫂(…本当に……声を聞けたのなら……キャリーンは…………)
櫂「……ウィル!メラニー!今すぐ来てくれ!キャリーンが!」
聖「………………………」ツー……
櫂「………………涙………」
171: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 19:00:25.21 ID:N6rFUvrH0
櫂「……信じたくないが……古文書に書かれていた内容は………本当だった………これが……偶然なんて事は考えられない………」
櫂「……世界に……『始まりのための終わり』がもたらされてしまう………ああ………何ということだ………!」
櫂「どうすれば……そうだ……古文書を…………………ああ…古文書は……全部……屋敷と一緒に……焼けてしまったじゃないか……」
櫂「……せめて……父さんが居てくれれば古文書が無くとも………まだ……光はあったのに…………」
櫂「………世界が……………!」
聖「……………………」
172: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 19:10:15.66 ID:N6rFUvrH0
都内某所 とある古書店
ノーバwithはたき「……♪」パタパタ
書棚「……………」
ノーバ「………♪」パタパタ
文香叔父「ノーバくん。」
ノーバ「………!」
文香叔父「今日も人一倍……怪獣一倍熱心な働きぶりだね。お疲れ様。」
ノーバ「………」ペコペコ
文香叔父「そう畏まらないでくれて構わないよ。君はこの書店で二番目に偉いんだから。……と言っても、店員は僕と君の2人しかいないんだがね。ふふふ………」
173: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 19:18:54.05 ID:N6rFUvrH0
ノーバ「…………?」ヌーン
文香叔父「ああ、今帰ったところさ。…これを引き取ってほしいと言われてね。」スッ
『皮表紙の本』「…………」
文香叔父「確かにこれは……普通に暮らしている人の手には、余るものだ。」
ノーバ「…………………」
文香叔父「そう、存在に罪は無いが、存在することによって周りに良くも悪くも、強い影響を与える。」
ノーバ「………………」
文香叔父「>>176」
176: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 19:32:24.90 ID:HsqH1sfAO
先の連続ミイラ化殺人事件の犯人が持っていたらしくてね……文香の事務所の何人かとも関わりがある
179: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 22:06:57.14 ID:N6rFUvrH0
文香叔父「先の連続ミイラ化殺人事件の犯人が持っていたらしくてね……文香の事務所の何人かとも関わりがある物なんだ。」
ノーバ「………?」ウネウネ
文香叔父「ああ……魔翌力が内包されている。いわゆる『魔導書』だ。」
ノーバ「………………」
文香叔父「……この魔導書が内包する魔法は2つ。異世界との扉を開く『召喚』とそれに命令を下せる『使役』の魔法だ。」
ノーバ「…………?」
文香叔父「良いところに気が付いたね。そう、通常の魔導書が内包出来る魔法は1冊につき1つだ。」
180: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 22:07:36.43 ID:N6rFUvrH0
ノーバ「……………」ウネウネ
文香叔父「ただし、通常の魔導書における限りは、だ。通常の魔導書、と言うのは魔導書の中でも最もランクの低い物なんだ。」
ノーバ「?!」
文香叔父「魔導書の約90%はこれだ。1冊につき1つの魔法とその応用が使える。」
ノーバ「………………………」
文香叔父「次のランクの魔導書、これは全体の約9%を占める。2つの魔法が内包されているのが特徴さ。この魔導書はこのランクに当たる。」
『皮表紙の本』「…………」
文香叔父「扱う事の出来る人間も少なくなる。」
181: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 22:08:20.46 ID:N6rFUvrH0
ノーバ「………………?」
文香叔父「…ああ、残りの1%は3つの魔法を内包する最高位の魔導書さ。存在が幻と言われてあるものさえある程貴重なもので、ほとんど存在しない。」
ノーバ「…………………」
文香叔父「これを扱える人間はさらに少ない。同じ時代には両手で数えられるだけしか存在しない。」
ノーバ「…………………………」
文香叔父「そう、それだけ強力という事さ。使い手がその気になれば街の1つや2つは地図から消せるぐらいにね。」
182: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 22:10:27.23 ID:N6rFUvrH0
ノーバ「………?」ウニョウニョ
文香叔父「……表向きはね。しかし、どんな物にも例外は必ずある。全ての魔法を内包する魔導書、理の外にある魔導書が存在するんだ。」
ノーバ「………?!」
文香叔父「最強の力さ。物理法則さえ捩じ曲げる事が出来る程のね。世界を終わらす力があるとも言われている。」
ノーバ「………………………?」
文香叔父「安心していい。これはあくまで伝説上の存在だ。この力が世界を終わらす事はない。」
ノーバ「…………………………」
文香叔父(……尤も、伝説上の存在と言っただけで、実在していないとは言っていないが。)
183: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 22:11:31.20 ID:N6rFUvrH0
文香叔父「……話が逸れたね、元に戻そう。……要約すると、このランクの魔導書はおいそれと手に入る物じゃないって事さ。」
ノーバ「……………?」
文香叔父「当然その疑問に辿り着く。何故その道の者でもない人間が、こんな物を持っていたのか……」
ノーバ「……………………」
文香叔父「ああ。しかも使いこないしていたらしい。あり得ると思うかい、偶然貴重な魔導書に貴重な使い手が現れるとは。」
ノーバ「………………」フルフル……
文香叔父「…僕も同意見だ。」
184: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 22:13:16.46 ID:N6rFUvrH0
ノーバ「………………?!」
文香叔父「いや、そこまでは分からない。今の段階で決めつけるのは早計だろう。」
ノーバ「……………………」
文香叔父「…素質を見抜き、魔導書を与えた存在がいる。……とはあまり考えたくないからね。」
ノーバ「………………………」
文香叔父「まずはこの魔導書を調べてみなくてはならないだろう。読み解いてみない事には結論が出せない。」
ノーバ「…………………」
文香叔父「>>186」
186: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 22:20:07.67 ID:HsqH1sfAO
(魔導書と『天の姫』、様々な種族と力……それらを繋げるあの事務所……場合によっては本当に世界を終わらせるかも……)
187: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 22:30:33.26 ID:N6rFUvrH0
文香叔父(魔導書と『天の姫』、様々な種族と力……それらを繋げるあの事務所……場合によっては本当に世界を終わらせるかもしれない………)
文香叔父(………………………)
文香叔父(…意思の有無に関わらず、それだけの力があそこにあると言うのは確かだ。)
文香叔父(世界を救う力を持っている、という事はまた逆も然りだ。力事態に善悪は存在しない。力を使う者に善悪は存在する。)
文香叔父(………あの事務所は驚くべき場所だ……どの様な文献を紐解いてみても、あれ以上の多様性と調和に満ちた場所は存在しない。)
文香叔父(……誰も実現し得なかった事を実現していると言ってもいい。)
188: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 22:39:19.09 ID:N6rFUvrH0
文香叔父(……力に驕る者もいない……力のある者は、それを己の大切な存在を守るためにのみ使っている。)
文香叔父(…力を持つ者を恐れる者もいない。己と異なる存在を迫害し、排斥しようとする者が存在しない。)
文香叔父(そして………………)
文香叔父(…力を持つ者を……決して孤独にする事がない………………)
文香叔父(……そうだ……世界を終わらせる力を持っていたとしていたとしたら……何だと言うんだ……)
文香叔父(本人が望んで得た力じゃ……ないじゃないか…………)
189: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 22:52:53.39 ID:N6rFUvrH0
文香叔父(…強大すぎる力は……所持者を孤独にさせる……強大な力と言う存在そのものが、恐怖の対象となりうるからだ。)
文香叔父(…当然だろう。対等な立場にない者を人間は信用出来ない……怖いからだ。恐ろしいからだ。相手に対してなす術が無いと言うのは……)
文香叔父(…もし信用出来るのだとしたら……それは、相手を完全に確信を持って信じる事が出来る………強き精神の持ち主だけだろう。)
文香叔父(……それが出来る人間はほんの一握りしかいない……殆どの人間は、そのように強くない…………)
文香叔父(…人間は……弱い生き物だ…………異物を憎み、強者を恐れる。)
文香叔父(…だとすれば…………………………)
190: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 22:59:35.76 ID:N6rFUvrH0
ノーバ「……………………??」
文香叔父「……む………」
ノーバ「………………??」
文香叔父「いや、少し考え事をしてしまっていたんだ…………済まないね。」
ノーバ「………………」フルフル
文香叔父「…………………………」
ノーバ「…………………………」
文香叔父「…………………………」
ノーバ「………………?」
文香叔父「……何だ……よく考えたら……君たちとだって仲良くなれたじゃないか……」
191: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 23:18:29.30 ID:N6rFUvrH0
文香叔父「………僕らは皆愚かで醜いのかもしれない……だが……信じる事だって出来るんだ。」
ノーバ「……………」ウネウネ
文香叔父「……………ありがとう……」
ノーバ「……………………」
文香叔父(……世界は終わらないさ……………だって、彼女を誰よりも一途に思ってくれている相手が…いるのだから…………)
文香叔父(……あれほど嫌っていた世界を終わらせられだけの力を……自分の持つ力を……大切な存在を守れた誇りとまで……言ってくれるようになったのだから…………)
192: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 23:30:08.81 ID:N6rFUvrH0
公演会場3階 特別席
文香「………………………………」
文香「……私の書いた物で……たくさんの人が喜んでくれる…………ずっと……傷付ける事しかできないと……思っていたのに………」
文香「………とても…嬉しい…………言葉に…できないくらいに………」
文香「……………………………」
ファサ……
文香「…………!」
文香P「…………………寒い…………かなって……………」
文香「………………………………」
193: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 23:41:27.14 ID:N6rFUvrH0
文香P「…………あ………えっと………………ひ、ひざ掛け…………あったら………………寒くない……かな……って…………」
文香「…………………………」
文香P「………冷える……から…………だから………その………え、えっと………………うう…………よ、余計なお世話…………かも………だけど……………………」
文香「……………………………」
文香P「…………あの………ね…………」
文香「………っ………」ツー………
文香P「?!」ビクッ…!
文香「>>195」
194: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/20(火) 23:56:21.47 ID:HsqH1sfAO
ありがとう……ございます……
(この世の総てを憎み……憎んでも憎んでもまだ余るこの世の総てを言葉で燃やし尽くそうと考えていた私の蜘蛛の糸は……他ならないあなただから……)
198: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 14:56:59.56 ID:GxGITr+g0
文香「…ありがとう……ございます…………」
文香P「…………えっ…………あ……………うあ…………あ…………え、えっと……………」オロオロ…
文香「………っ……」ポロ……ポロ…
文香P「………あ…………えっと…………………えっと…………………えっと……………」オロオロ…
文香「………っ………すみません………その……………………違うんです…………………」ポロ……ポロ…
文香P「……ち、違……う……………?」
199: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 14:57:55.10 ID:GxGITr+g0
文香「……はい…………その……悲しい……わけでは無いんです………気持ちが…溢れてしまって………………」ポロ……ポロ…
文香P「…………気持ち………が………………」
文香「……こうして……ここに居られるのが…………とても…幸せなんです……………」ポロ……ポロ…
文香P「………………………」
文香「……世界が……こんなに美しいなんて………知らなかったから……………涙が……溢れてしまって…………っ…………だめ……ですね…………」ポロ……ポロ…
文香P「…………………………」
201: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 15:01:36.12 ID:GxGITr+g0
文香「……劇を……しっかり見なくてはいけないのに………視界が曇ってしまって………………」ポロ……ポロ…
文香P「………………」ス……
文香「………それ…は………?」
ポロ……ポロ…
文香P「………………ハン……カチ………………」
文香「………………………………」
文香P「…………そ、その………………僕の……………………だけど………………………」
文香「…………っ…………」
ポロ……ポロ……ポロ……ポロ……
文香P「?!」ビクッ!
202: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 15:02:24.92 ID:GxGITr+g0
文香「…………っうう………………」
ポロ…ポロ…ポロ…ポロ……
文香P「……あっ……えっ…………あっ…………あう…………ああ………………ご、ご、ごめんなさ………………」
文香「………………」グイッ…!
文香P「?!」フワッ……
文香「……………」ギュッ……
文香P「?!」//////
文香「………………………」
ギュ………………
203: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 15:05:09.16 ID:GxGITr+g0
文香P「………………あ………………あう………………あ……ふ、ふ、ふ、文香ちゃ……?!」//////
文香「…………っ………温……かい………………」
文香P「…………………!」
文香「……本の中の……紙と…インクでできた………存在…じゃ…なくて…………っ…………本当に………………温かくて………………優しくて…………綺麗………………………」
文香P「………………………………」
文香「…………っ…………うう………………ううう………………」
ポロ…ポロ…ポロ…ポロ……
204: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 15:05:50.79 ID:GxGITr+g0
文香P「……………文香…………ちゃん…………」
文香「………あなたが……私に………優しさが……物語の中だけの…虚構の存在じゃないと……教えて…くれたから……………」
文香P「………………………!」
文香「……私の全てを……受け入れて………くれたから……………っ………私に…………光を………くれたから…………」ギュ………
文香P「………………………」
文香「……………っ………うう…………………」
ポロ…ポロ…ポロ…ポロ……
文香P「…………………」ギュ………
207: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 15:08:51.56 ID:GxGITr+g0
文香(……文香Pさんに出会えなかったら……私は……どうなってしまっていたか……………)
文香(この世の総てを憎み……憎んでも憎んでもまだ余るこの世の総てを言葉で燃やし尽くそうと考えていた私の蜘蛛の糸は……他ならないあなただから…………)
文香(……私を…救って……くれた…………叔父さんの…優しさに気付かせてくれたのも………あなただった…………)
文香P「…………………………」
文香(……自分の…世界を終わらせてしまえるだけの力を………呪うだけだった……………私を……………)
文香「>>207」
210: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 15:18:16.65 ID:BgjSUp4AO
愛しています……これからも……ずっと……
211: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 15:26:35.98 ID:GxGITr+g0
文香「愛しています……これからも……ずっと……」
文香P「……!」//////シュゥゥゥ……
文香「………………………」
文香P「………………」//////
文香「……文香Pさんが教えてくれたこの気持ちを………文香Pさんに………………」
文香P「……………あう……」//////
文香「………………………」ギュ………
文香P「…………………」//////
212: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 15:40:42.11 ID:GxGITr+g0
文香(……どの様な文章を読んでも……愛とは何か分からなかった………初々しい初恋から……生々しい官能的な愛まで……どのような本を読んでみても……………)
文香(…美しい物なのか……温かい物なのか……静かな物なのか………激しい物なのか………幻想なのか……実体なのか…………)
文香(…書いてある事がすべて違っていて……戸惑った………どれが正しい愛なのだろう………と…)
文香(……でも、どれが正しいか考えている事が……正しくなかった…………)
文香(…本当は全てが正しくて……全て同じものについて書いてあったと分かったから………)
文香(……愛を実際に理解して……初めてそれも理解できた………)
213: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 15:52:56.24 ID:GxGITr+g0
文香「………文香Pさん…」
文香P「…………うう……」//////
プシュゥゥゥ………
文香「…………………………」
文香P「………ふ、不意打ち…………は………………むり………… ……」//////プシュゥゥゥ………
文香「………………すみません…」
ギュッ………
文香P「あう…………ううう………………」//////
文香(……文香Pさん………誰よりも純粋で……澄んだ心の持ち主で………優しい……………私の……大好きな人…………………)
214: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 16:06:39.66 ID:GxGITr+g0
文香(……全部を知っても…………それでも…私を愛していると…………言ってくれた人…………)
文香(……『魔導書』である…………私を……………………)
文香P「………………あう…………あ、あ、…………っ………………あの……………………!」//////
文香「…………何で…しょうか……?」
文香P「…………ぼ、ぼ、僕も……その…………うう……………愛し…………てる…………よ………………?」
文香「………………………………」
文香P「………っ…………僕も………………ね…………あの………………その…………えっと………………あう…………………」//////
文香「…………言葉は……要りません………言葉など無くとも………分かるから…………」ギュッ………
文香P「………あう……………」//////
215: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 16:24:45.24 ID:GxGITr+g0
文香(……滅ぼす力で……守る事も出来る………文香Pさんを……私の力で守る事が……出来た…………)
文香(……文香Pさんを守れた力なら……………私は………この力だって…………誇りに思える…………)
文香P(……あう……言えな……かった…………ギュッて…………い、い、いつまで…って…………?………………あう……文香ちゃん………………あ、温かくて………い、い匂いがして…………柔らか……………)//////
ボンッ……!
文香「……文香Pさん………私は…………………」
文香P「」//////プシュゥゥゥ………
文香「……ふ、文香Pさん?!」
216: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 16:35:02.91 ID:GxGITr+g0
アトランタ 製材所 経営者室
保奈美「ふぅ…………ねえ、レット。聞いた事がある?」
沙紀「新しいドレスの噂でも聞きつけたのかい?よろしい、今度の休みに…………」
保奈美「違う、ドレスの話じゃないわよ。あのね…………」
沙紀「となると、宝石か。いや、それとも壁に掛ける絵画かもしれな…………」
保奈美「レット!」
沙紀「ふふふ……分かりました、真面目に聞くよ。」
保奈美「…………………………」
217: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 16:44:15.91 ID:GxGITr+g0
沙紀「それで、どんな珍しい宝物の話なんだい?」
保奈美「この前とんでもない噂を聞いたんだけど…か知ってる?」
沙紀「無視とは傷付くな、ふふ……僕らに対する街の人間たちの噂かな?知っているが、それをこの場で挙げだしたら就業時間をとっくに過ぎてしまうだろうね。」
保奈美「でしょうね。でも、その噂は私たちに関する事じゃないの。……噂なんて馬鹿らしいとは思うんだけど、何だか気になる噂だったから……」
沙紀「ほほう、豚が木にでも登ったのかな?」
保奈美「>>218」
218: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 16:46:16.37 ID:AHUssa6AO
もう少しで全てが終わるって……
219: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 16:54:34.37 ID:GxGITr+g0
保奈美「もう少しで全てが終わるって……」
沙紀「へぇ、そりゃあ大変だ。何の全てが終わるのです?アトランタマンドリンクラブの全てがですか?」
保奈美「そんな笑い話じゃないの。世界の全てが……終わるんですって………」
沙紀「では、やはりアトランタマンドリンクラブの話に違いない。アトランタの人間はアトランタだけが世界だと思っているからね。」
保奈美「もう!」
沙紀「ははははは!だって俄かには信じがたい話じゃないか、お嬢さん。」
220: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 17:03:12.85 ID:GxGITr+g0
保奈美「……私だって最初は耳を疑ったわよ。でもね、これの続きを聞いたら……不安になったのよ。」
沙紀「マンドリンクラブではなく、アコーディオンクラブだった?」
保奈美「……全てが終わる原因は、機械人形だって言うのよ。」
沙紀「機械人形が反乱でも起こすのかい?」
保奈美「……そこまではよく分からないけど……とにかく機械人形が原因で全てが終るらしいのよ。」
沙紀「ふぅん……だとすれば機械人形をせっせと生産している僕らは、絶賛世界の滅びに協力中と言うわけだ。」
221: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 17:10:27.58 ID:GxGITr+g0
保奈美「何があっても真面目に聴きたくないようね…………」
沙紀「可能性を検討しているんじゃないか。全ての終わりがどの様な形でやってくるのか。で、噂はそれだけなのかい?」
保奈美「……ええ……まあ…………」
沙紀「……感じた事を素直に話させてもらうなら……取り立てて騒ぐ程の噂には全く聞こえなかった。」
保奈美「…む…………」
沙紀「機械人形が怖いのは分かるが、あまりに根も葉もない話じゃないか。どう信じろって言うんだい?」
222: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 17:17:51.20 ID:GxGITr+g0
保奈美「…………………………」
沙紀「南部にも段々と機械化の波がやって来ているからね。それに対して反発する形で誰かが言い始めたんだろう。」
保奈美「…………………………」
沙紀「噂なんか信じるだけ無駄と言う物さ。その手の話は我らが愛すべきピティパットさんの領分さ。」
保奈美「…………でも…………」
沙紀「でも………………?」
保奈美「何故だか……確信が持てるのよ、この話に対して……」
223: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 17:24:13.52 ID:GxGITr+g0
沙紀「オールドミスは口癖のようにそう言うものだよ。」
保奈美「違う、そうじゃないの!……どうして信じてくれないの…?」
沙紀「世界が滅ぶなんて信じたい人間がいると思うのかい?」
保奈美「…………っ…………」
沙紀「スカーレット、君は少し…………」
保奈美「全ては……月光蝶によって終わらされるのよ……?!」
沙紀「…………?!」
保奈美「………………あら……?」
224: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 17:30:53.84 ID:GxGITr+g0
沙紀「…………今……何と言った……?」
保奈美「……えっと……どうして信じてくれないの…?」
沙紀「その後だ。」
保奈美「……月光蝶によって…全てが終わる………」
沙紀「そう、それだ!…君はいつどこで……どうやって月光蝶と言う言葉を聞いた?!」
保奈美「……え、えっと……………………」
沙紀「……………………………」
225: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 17:36:16.09 ID:GxGITr+g0
保奈美「……わ、分からない………月光蝶って何……?……どうして……私はそんな事を…………」
沙紀「……………分かった。では、さっきの噂は誰から聞いた?」
保奈美「……それは………………?!……誰から……聞いたの……?」
沙紀「…………………………」
保奈美「……気がついたら……頭の中にあって………それで………確かに……誰かから聞いたのに………」
沙紀「>>226」
226: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 17:39:09.38 ID:BgjSUp4AO
誰かとは誰なんだ!(掴む)
227: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 17:50:11.55 ID:GxGITr+g0
沙紀「誰かとは誰なんだ?!」ガシッ!
保奈美「?!」ビクッ!
沙紀「思い出すんだ、スカーレット!…とても…重大な事かもしれない!」
保奈美「れ、レット……?!あなた……さっきまで…………」
沙紀「良いから早く!誰だ、誰から聞いたんだ?!……まさか……タラで発掘されていると言うのは………」
保奈美「…………………………」
沙紀「文明を滅ぼした伝説の機械人形は相打ちで果てたんじゃなかったのか………?!……くっ………そんな…………」
228: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 17:56:26.19 ID:GxGITr+g0
沙紀「答えてくれ、スカーレット!その話を君に教えたのは一体………」
保奈美「ボクだよ。」
沙紀「?!」
保奈美「だめぴにゃよ?奥さんには優しくしてあげないと。肩を掴んで揺するなんて以ての外ぴにゃ。」
沙紀「…………誰だ、お前は?」
保奈美「奥さんの名前まで忘れちゃったぴにゃか?」
沙紀「違う、お前はスカーレットじゃない!」
229: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 18:03:45.16 ID:GxGITr+g0
保奈美「ぴにゃっぴにゃっぴにゃっぴにゃっぴにゃっ!そう、ボクはスカーレットじゃないぴにゃ。あくまでスカーレットの体を借りてるだけぴにゃ」
沙紀「答えろ、お前は誰だ。」
保奈美「人に名前を聞くときにはまず自分からってママから習わなか…………」
沙紀「答えろ。」
保奈美「………はぁ……この時代の人間って言うのは冗談が通じない奴ばっかりぴにゃ。」
沙紀「………………………」
保奈美「ぴにゃっぴにゃっぴにゃっぴにゃっ!まあ、起きてから、ちゃんとした自己紹介は誰にもしてなかったから丁度良い機会かもしれないぴにゃね。」
230: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 18:15:45.79 ID:GxGITr+g0
保奈美「初めまして、レット・バトラー。ボクの名前はSystem-∀99……って言っても分かんないぴにゃか。『ピニャコラドール』って名前の方がキミたちには通じるかな?」
沙紀「……?!」
保奈美「ピニャコラドールって呼ばれるのはホントは苦手なんだけど……ほらさ、神サマって呼ばれのは気恥ずかしいぴにゃからね。」
沙紀「………………………」
保奈美「キミだって眠ってる間にいつの間にか神サマ扱いされるようになってたらビミョーでしょ?」
沙紀「……ピニャコラドール……なのか………?」
保奈美「だからそう言ってるぴにゃ。」
231: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 18:23:38.86 ID:GxGITr+g0
沙紀「………伝承は……事実だったのか………」
保奈美「概ねは、ぴにゃ。伝承とか伝説って言うのは、けっこー元になった話があるものぴにゃよ。これは神サマやってて分かった事ぴにゃ。」
沙紀「…………………………」
保奈美「ぴにゃっぴにゃっぴにゃっ!と言っても、ナノマシンから伝えられた情報なんだけどね。ボク本体はアシュレに掘り出されるまで眠ってた訳だし。」
沙紀「……何故……スカーレットなんだ……?」
保奈美「……ボクにお祈りをする時のルールって知ってる?」
232: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 18:31:52.72 ID:GxGITr+g0
沙紀「生き血を……捧げる……」
保奈美「そ、ボクはそれを解析して……簡単に言えば『相性が良い』人間を探せたんだぴにゃ。」
沙紀「それが……スカーレットだったのか…?」
保奈美「うん、相性バッチリな上に適性までバッチリだったぴにゃ。運命だと思ったぴにゃ。」
沙紀「…………………………」
保奈美「あ、たまーに嫌われ役になる事でスカーレットを応援してあげてたぴにゃから、体を借りるぐらい大目に見てほしいぴにゃ。」
233: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 18:38:55.85 ID:GxGITr+g0
沙紀「………理由は分かった。…だが、目的は何だ?」
保奈美「ん?」
沙紀「スカーレットの体を借りる目的は何だ、と聞いているんだ。」
保奈美「目的……?ああ、それなら簡単な事ぴにゃ。」
沙紀「………………何だ?」
保奈美「もう一体のピニャコラドール…『ターンX』を止める手伝いをしてもらう事ぴにゃ。」
沙紀「…………ターン……X……」
保奈美「>>234」
234: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 18:42:47.64 ID:AHUssa6AO
1周年おめでとう!
そ、ぼくと対にあるもう一つの古代の機械人形。言うなればぼくが正義ならターンXが悪ってとこかな。
238: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 21:47:08.35 ID:GxGITr+g0
保奈美「そ、ボクと対にあるもう一つの古代の機械人形ぴにゃ。言うなればボクが正義ならターンXが悪ってとこぴにゃかね。」
沙紀「フン、正義や悪だなんて概念を兵器が語るのか?」
保奈美「ごもっともぴにゃ。でもさ。自分を悪って言う奴は居ないぴにゃよ。」
沙紀「だからお前は自分を正義と言うのか?」
保奈美「ボクは今の文明を守ろうと思っているんだ。正義の味方を気取るぐらい許してほしいぴにゃ。」
沙紀「…………………………」
239: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 21:48:32.71 ID:GxGITr+g0
保奈美「いいかい、よく聞くぴにゃ。さっき言ったターンX……コイツは今の文明を終わらせようとしている。」
沙紀「たがが一機の機械人形にそんな事が…………」
保奈美「出来るぴにゃ。その事は君だって知っているぴにゃよね?」
沙紀「…………っ……!」
保奈美「…アイツは昔、ボクが相打ちに持ち込んだと思ってたぴにゃが、ところがどっこい、どっちも機能を停止していなかったと言う訳ぴにゃ。」
沙紀「…フン……お前が仕留め損ねたせいで、僕らは未曾有の厄災に見舞われなきゃいけないのか。」
240: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 21:49:33.97 ID:GxGITr+g0
保奈美「そうなるぴにゃね。キミたちには済まないと思ってるぴにゃ。」
沙紀「謝るぐらいなら、今すぐターンXと刺し違えて来てくれないかね。」
保奈美「それは無理ぴにゃ。パイロットが居なければボクは動けないぴにゃからね。」
沙紀「つまり、スカーレットにお前と一緒に[ピーーー]と言うんだな?」
保奈美「ボクがやられるの前提で話を進めないでほしいぴにゃ。」
沙紀「文献によると確か、ターンXの方が性能が上だそうじゃないか。」
保奈美「……キミのような物知りは嫌いぴにゃ。」
241: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 21:50:19.14 ID:GxGITr+g0
沙紀「勝算はあるのか?」
保奈美「ないぴにゃ。良くて相打ちぴにゃね。」
沙紀「対になると言う割には随分と力に開きがあるじゃないか。」
保奈美「アイツと違って、ボクは別に文明を滅ぼすために作られた訳じゃないぴにゃから。」
沙紀「機械人形も言い訳をするんだな。」
保奈美「言い訳ととってもらっても結構ぴにゃ。ボクはあくまで事実を話しただけぴにゃよ。」
沙紀「………………………………」
242: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 21:51:14.12 ID:GxGITr+g0
保奈美「言い訳ついでにもう一つ、ヤツはボクと同じ時代の機械人形たちを大量に味方につけているぴにゃ。」
沙紀「お前には?」
保奈美「ボクは嫌われ者みたいぴにゃ。今もこうしてキミに嫌われてるみたいにね。」
沙紀「戦力差は絶望的、か……」
保奈美「一機ずつはターンXに比べたら大した事は無いんだけど、何せ数が数ぴにゃ。」
沙紀「…………………………」
保奈美「ボクは無敵の神サマじゃないぴにゃ。数の暴力には勝てないぴにゃ。」
243: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 21:52:03.28 ID:GxGITr+g0
沙紀「おい、ピニャコラドール。何故、ターンXやそいつらは今の文明を滅ぼす?」
保奈美「今の文明に絶望したからぴにゃ。」
沙紀「……ほう……」
保奈美「ボクらは兵器として作られた。そして、前の文明はボクらを使った長い争いの果てに滅びてしまった。」
沙紀「滅びた?滅ぼしたのはお前たちだろ。」
保奈美「そうなる原因を作ったのはニンゲンたちぴにゃ。」
244: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 21:53:13.85 ID:GxGITr+g0
沙紀「…………それで、ターンXはまた争いを繰り返す人類に絶望し、滅ぼす事に決めたのか?」
保奈美「そ、ヤツはこれ以上文明が進めば、またあの時のように取り返しのつかないことになると思っているぴにゃ。」
沙紀「だから、文明がまだ未発達のうちに一度文明を滅ぼす、と言う事か。」
保奈美「過ちが繰り返されれば、ヤツは今度こそ人類が、地球そのものが滅びると信じているぴにゃ。そうならないためには、一度リセットする必要がある、そう思っているんだぴにゃ。」
沙紀「……なるほどね。理屈としては通っている。」
保奈美「キミは文明が滅んでもいいぴにゃか?」
沙紀「>>245」
245: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 21:54:56.93 ID:BgjSUp4AO
そんなはずはないだろう!
246: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 22:01:56.23 ID:GxGITr+g0
沙紀「そんなはずはないだろう!」
保奈美「へぇ。」
沙紀「……っ…!…確かにね、僕は人間なんて愚かで醜い馬鹿な生き物だと思っている。ロクなものじゃない!」
保奈美「……………………」
沙紀「私利私慾のために動き、争う。同じ国の中でさえ、だ!絶望していると言うなら僕もだ!いつになったら人類は賢くなる?!」
保奈美「なら………………」
沙紀「だが……世界を滅ぼさせるわけにはいかない!」
247: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 22:09:40.11 ID:GxGITr+g0
保奈美「……君は人間が嫌いなんだろう?何故世界が滅ぶと困るんだい?」
沙紀「簡単な事さ。この世界がスカーレットの生きる世界だからだ。」
保奈美「スカーレットの……?」
沙紀「ウェードの生きる世界で、メラニーさんやマミーやピーターが生きる世界だからだ!でなけりゃ世界なんて滅ぼうが構うものか!」
保奈美「……………………」
沙紀「世界に怨みを抱いている奴の我儘で、彼らの生きる世界を奪っていい道理はない!」
248: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 22:18:05.54 ID:GxGITr+g0
保奈美「キミは世界を救いたい。だがそれは、正義などのためではない、と。」
沙紀「正義?ハッ、僕は正義と言う言葉が大嫌いなんだ!聞くだけで蕁麻疹が出る。」
保奈美「では、ごく個人的な理由から世界を救いたい、と?」
沙紀「ああ、ボクは完全な悪人だから、私利私慾のためにしか動くつもりはない!スカーレットと違ってね!」
保奈美「………………………………」
沙紀「非難したければ非難しろ。ボクは考えを変えたりはしない!」
249: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 22:27:09.88 ID:GxGITr+g0
保奈美「…………………………」
沙紀「正義ごっこでも何でも勝手にやっていろ!ただ、スカーレットは渡さん、返せ!」
保奈美「それはできないぴにゃ。ボクが今まで調べてきた中では…………」
沙紀「僕の血を調べろ!」
保奈美「………………ぴにゃっ?」
沙紀「
保奈美「いやいや、誰でもいいって訳じゃ…………」
沙紀「僕の血はスカーレットと同じ型だ。まずは調べてみてから無理かどうかは言え。」
250: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 22:35:48.08 ID:GxGITr+g0
保奈美「…自分がスカーレットの代わりをやるつもりかい?」
沙紀「自分の財産を失いたくないんでね。僕なら幾らでもお前と死んでやる。悲しむ人間は居ないだろうからね。」
保奈美「…………………………」
沙紀「大多数の人間からは嫌われている、ウェードはまだ幼い、スカーレットとは…その時になったら大げんかをして憎まれよう。」
保奈美「…………………………」
沙紀「世界から嫌われている山師が世界を救う、なかなか皮肉が効いてると思わないか?」
251: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 22:42:40.08 ID:GxGITr+g0
夜
保奈美「…うぅん…………」パチ……
保奈美「……私は……一体………………」ムクリ
沙紀「お目覚めかね、お嬢さん。」
保奈美「………………えっ……と…………」
沙紀「疲れが溜まっていたんだろうね、仕事中にいきなり倒れたんだよ。思い出したかね?」
保奈美「………………………………」
沙紀「寝坊助さんにも困った物だ。僕1人で仕事をする羽目になったよ。」
252: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 22:49:09.25 ID:GxGITr+g0
保奈美「…………あ…………ごめんなさい…………」
沙紀「いやいや、謝る事はない。君が居てくれないおかげで上手く進んだから。」
保奈美「………あ、そう……」
沙紀「……スカーレット……君は生きろ。」ボソ……
保奈美「は?」
沙紀「>>253」
253: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 22:49:57.75 ID:BgjSUp4AO
……何でもないよ。何でも……ね(悲壮な決意に満ちた顔)
254: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 22:59:16.23 ID:GxGITr+g0
沙紀「……何でもないよ。何でも……ね。」
保奈美「…………………………」
沙紀(…幸福とは全く以って一瞬しか続かない物のようだ……苦労し続けて手に入れた物をこれほど早く手放さなきゃならん事になるとはな…………)
保奈美「…………レット…?」
沙紀「…帰る支度をしたまえスカーレット。今日はもう終いだ、不満だろうが帰るよ。」
保奈美「………………………………」
255: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 23:06:09.09 ID:GxGITr+g0
沙紀「はぁ……そんなに帳簿をつけれなかった事が不満かい?」
保奈美「……………………」
沙紀「悪いが、帳簿は僕が付けさせてもらったよ。帰る時間が遅くなったら堪ら…………」
保奈美「……あなた……何を企んでいるの……?」
沙紀「……早く家に帰って、ウェードと遊ぶ事さ。」
保奈美「嘘を言いなさい。」
沙紀「はははははは、相変わらず君は僕のやる事なす事全てが気に食わんらしい。」
256: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 23:14:10.14 ID:GxGITr+g0
保奈美「…………………………」
沙紀「僕も低く見られた物だ。つくならもっとマシな嘘をつくに…………」
保奈美「今日は嘘が下手ね。あなた、自分がどんな顔をしてるか気付いてる?」
沙紀「いつも通りの文句のつけようの無い顔でしょう?」
保奈美「いいえ、あの晩、戦場に行くと言った時の顔よ。」
沙紀「…………冗談を言っちゃ……」
保奈美「こんな笑えない冗談を言うわけないでしょ?」
257: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 23:20:48.48 ID:GxGITr+g0
保奈美「……白状なさい、何を企んでいるの?」
沙紀「……何も企んじゃいませんよ、お嬢さん。」
保奈美「下手な嘘も大概にしなさい!いつもの余裕はどうしたのよ?!」
沙紀「………………………………」
保奈美「……っ!……どうしてそんな……今から死にに行く人間の顔を………?!」
ダーン!ダーン!ダーン!
沙紀「む!」
保奈美「?!」
258: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 23:27:43.91 ID:GxGITr+g0
沙紀「……銃声…近いな。」
保奈美「…………ねえ、この銃声って………」
沙紀「………北軍の拳銃の音だ。」
保奈美「なら……狙われているのは………………」
沙紀「…………チッ!」バッ!
保奈美「あっ……ちょっと?!」
259: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 23:36:34.47 ID:GxGITr+g0
製材所近くの林
悠貴「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ…………はぁ………はぁ…………」
「逃すな!必ず探し出せ!」
「見つけ次第始末しろ!南軍の残党だ!」
悠貴「……はぁ………はぁ………」
「出てこい!隠れても無駄だ!」
悠貴「………っ………!」ギュッ……
作戦書「…………」
悠貴「…………すみません………リー将軍……………」
260: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 23:46:32.31 ID:GxGITr+g0
悠貴「……これが……北軍の手に渡れば……………っ………!」ジワ……
悠貴「……脇腹に一発……いや……二発…………だめだっ……体に力が………入らない………こう………なったらっ………」
手榴弾「……………」
悠貴「…………作戦書を……渡すわけには…………」
ターン!ターン!
悠貴「?!」
「な、何だ貴さm…………」ターン!
悠貴「……………………」
ターン!ターン!ターン!ターン!ターン!
悠貴「………みか……た…………?」
フラ……パタリ……
261: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 23:54:20.77 ID:GxGITr+g0
製材所 地下 機械人形工場
悠貴「…………っ…!……あれ……ここ……は………?」
悠貴「…………………………」
悠貴「………!さ、作戦書っ……!」
保奈美「これの事?」スッ
悠貴「あっ……そ、それでっ………うわぁっ………?!」
保奈美「>>262」
262: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/21(水) 23:55:05.42 ID:BgjSUp4AO
落ち着いて。傷に響くわ
263: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 00:01:53.69 ID:/LAKx59B0
保奈美「落ち着いて。傷に響くわ。」
悠貴「……っ……!」ズキッ…!
悠貴「……うう………………」
保奈美「だから言ったのに…………」
悠貴「すみませ…………っ……………………」
保奈美「包帯を巻いて薬を打っただけなんだから……銃弾はまだ体の中に残っているのよ?」
悠貴「………………は、はいっ…………」
264: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 00:06:02.09 ID:/LAKx59B0
保奈美「……はぁ……北軍に追われてる人間を匿うのは2回目だわ……」
悠貴「…………!…1回目はっ……」
保奈美「無事にテキサスに逃げて行ったわよ。」
悠貴「……よ、良かったぁ………………ありがとうございますっ………!」
保奈美「……いえ……(助けたのは…フランクだもの……)」
悠貴「………………………………」
保奈美「…………………………」
265: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 00:12:06.74 ID:/LAKx59B0
悠貴「……あ、あのっ……この怪我の手当てをしてくれたのはっ……」
保奈美「私が出来るのは包帯を巻くぐらいよ。」
悠貴「じゃあっ…………?」
保奈美「お礼はあっちの2人に言いなさい。」
清良「……………」
菜々「………………」フカブカ……
悠貴「…………………………
保奈美「医者のミード先生と、あなたも知っている通り、召使いのマミーよ。」
266: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 00:21:01.00 ID:/LAKx59B0
悠貴「え、えっとっ……ありがとうございますっ……!」
清良「…気にする必要は無いよ。南部人は皆同胞だ。それに、人命を助けるのが医者の仕事と言う物だ。」
保奈美「…改めてありがとうございます、ミード先生。」
清良「…………フン……あんたの使いでマミーが来た時は、誰が行ってやるものかと思ったがね。」
保奈美「……………………」
清良「……マミーがあまりに必死に頼み込んで来るものだから来てやったんだ。礼ならマミーに言うんだな。」
菜々「…………………………」
267: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 00:26:57.52 ID:/LAKx59B0
保奈美「……あ、ありがとうマミ…………」
菜々「ふん、最近ろくなことがありませんよ、ほんと。いきなり趣味の悪い屋敷に住まわされるわ、夜中にミード先生のところまで使いっ走りに使われるわ……」
保奈美「…………あ……えっと………………」
菜々「そうでなくとも迷惑をかけられてばかりなのに……ええ、実に迷惑んかけられてばかりです…………」
保奈美「それは……その…………」
菜々「だから、今さら迷惑の一つや二つかけたぐらいで謝られても鬱陶しいだけです。お礼なんか要りませんよ。」
保奈美「…………!…マミー……」
菜々「……………フン…」
268: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 00:34:12.61 ID:/LAKx59B0
清良「……はぁ……バトラーに手を貸すような事態に陥ろうとはな…………」
菜々「すみません……その…………」
清良「いい、これ以上あんたに頭は下げさせられん。……それよりも、若いの。」
悠貴「は、はいっ!」
清良「…何をしたら北軍から追いかけられるような事になる?それに…その作戦書は何だ?」
悠貴「>>269」
269: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 00:39:17.46 ID:j+DqJiRAO
あなた方なら安心して話せそうですね……。
これは北軍・シャーマン将軍の研究施設から持ち出した最重要機密なのです。
273: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 15:12:44.25 ID:/LAKx59B0
悠貴「…あなた方になら安心して話せそうですね………これは北軍・シャーマン将軍の研究施設から持ち出した最重要機密なんですっ。」
清良「何と、シャーマン将軍の研究施設から?!」
悠貴「はいっ…私たちの同志が、決死の覚悟で…持ち出す事に成功したんですっ……」
清良「………同志…と言うと……?」
悠貴「……リー将軍の元に集った…仲間たちですっ…!」
清良「………!!」
274: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 15:13:19.50 ID:/LAKx59B0
悠貴「…リー将軍はシャーマンの野望にお気付きになられっ……それを阻止するために、私たちを集めたんですっ……!」
保奈美「……シャーマンの野望……………………!もしかして機械人形を使って…………!」
悠貴「はいっ!ヤツは……古代の機械人形を使ってっ……もう一度…戦争を起こそうとしているんですっ……!」
保奈美「…………?!…また……戦争が……………………」
悠貴「…また戦争が起きればっ……またたくさんの人が死にますっ…………それだけは絶対に阻止しないといけませんっ……!」
菜々「…………………………」
275: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 15:14:22.74 ID:/LAKx59B0
悠貴「……しかもっ……今度の戦争はっ…………っ……!!」ズキ…
保奈美「ああ……!興奮すると傷口が…………!」
悠貴「……っく……すみませんっ…………………ふぅ……しかも…今度の…戦争は……先の戦争より…ずっと大きな物になるんですっ……シャーマンは…南部だけじゃなくてっ……世界中を攻撃するつもりなんですっ…!」
清良「……………………………」
菜々「……にわかには信じられない話ですね…………」
悠貴「本当なんですっ…!信じてくださいっ…!」
276: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 15:15:32.54 ID:/LAKx59B0
菜々「…世界中に攻撃を仕掛ける、そんな事をしても袋叩きに遭うだけじゃないですか?いくらシャーマンといえども…………」
悠貴「それが……可能なんですっ…!古代の機械人形と……シャーマンの技術力があればっ……!……世界を相手に……戦争をしたって勝てるんですっ………!」
菜々「……言い切れると言う事は根拠が?」
悠貴「……スカーレットさんっ……作戦書を……貸してくださいっ…!」
保奈美「あっ……ええ。」ス
悠貴「ありがとうございますっ!」パシ
277: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 15:16:23.04 ID:/LAKx59B0
悠貴「えっとっ…………」
ペラ…ペラ…ペラ…ペラ
悠貴「あ、あったっ!皆さんっ、これを見てくださいっ!」
保奈美「…これは…………?」
清良「………作戦の日程か……かなり細かく書かれとる……………」
菜々「……………………」
悠貴「次のページからは作戦内容が……かなり綿密に記されてありますっ……」ペラ
悠貴「……ほらっ…」
清良・菜々・保奈美「……………」
278: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 15:17:04.96 ID:/LAKx59B0
悠貴「…考えてみてもくださいっ………悪魔のように計算高いシャーマンがっ……勝ち目のない戦いを始めるでしょうかっ……?!」
菜々「…………考えづらいですね………」
清良「……………………………」
悠貴「……戦争が終わった今……こんな事をしたら……反逆者となるのは分かっていますっ………でもっ…リー将軍は……それをお覚悟の上でっ………」
沙紀「ブラボー、ブラボー。なるほど、大した自己犠牲の精神だ。」
パチパチパチパチ
悠貴「……!!」
279: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 15:20:15.76 ID:/LAKx59B0
沙紀「感動で涙が止まりませんなぁ。逆賊の汚名を被ってでも、世界の平和を守ろうとするとは。大した将軍ですねぇ、リー将軍は。」パチパチパチパチ
悠貴「………」キッ!
沙紀「はぁ……あなたを救って差し上げたのは僕なのですよ?少しは感謝ぐらい示してくれても良いと思うのですが。」
悠貴「うるさいっ!…誰がお前なんかに……っ………感謝するものかっ…!」
沙紀「はははははは、結構。どうせ感謝されたところで悪寒がするだけですがね。」
悠貴「………っ……!……何故……助けたっ……?!」
沙紀「>>280」
280: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 15:30:37.85 ID:j+DqJiRAO
あなたの惨めな表情が見たかったから……では、いけませんか?
281: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 15:39:17.27 ID:/LAKx59B0
沙紀「あなたの惨めな表情が見たかったから……では、いけませんか?」
悠貴「なっ………?!」
沙紀「ふふふ……侮蔑すべき男に命を救われる、そうなった時に正義の血潮溢れる若き南部の青年がどのような顔をするか非常に興味があったのです。」
悠貴「…………………………」
沙紀「結果として中々良い物が見れました。ふふ……あなた、今最高に素敵な顔をしてらっしゃいますよ?」
悠貴「……き、貴様っ……!!」
282: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 15:52:00.06 ID:/LAKx59B0
沙紀「ストップ。人の話は最後まで聞くものですよ。……ではここで、さらにあなたを惨めにして差し上げることにしましょう。」
悠貴「黙れっ!これ以上の屈辱などあるものかっ!(うう……沙紀さんに…後で謝らないと…………)」
沙紀「あるのですよ、それが。付かぬ事をお聞きしますが、あなた方の戦力は十分でらっしゃいますかな?」
悠貴「お前には関係ないっ!」
沙紀「関係あるのですよ、それが。ここは何だと思いますか?」
悠貴「工場だろっ?!」
沙紀「何の?」
悠貴「それはっ………………」
283: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 16:01:02.88 ID:/LAKx59B0
沙紀「ふふふ……機械人形の工場ですよ。暗くてよく分からんとは思いますが。」
悠貴「……?!……機械人形の製造は禁止されているはずじゃ…………」
沙紀「武装蜂起だって禁止されているはずでは?」
悠貴「…………っ……!」ギリッ!
保奈美「………………………」
沙紀「さて、ここで商売の基本を確認してみましょう。必要な物を必要な相手に売って代金を得る。どれだけ複雑化しようと、基本はこれです。」
284: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 16:09:33.00 ID:/LAKx59B0
悠貴「…何が言いたいっ……?!」
沙紀「はぁ……南部人と言うのは頭の機転が利かなくて困る。良いですか、ここには大量の兵器や、物資や、戦力、あなた方の持っていない全てが揃っていると言っているのです。」
悠貴「……………!…そんなに金が欲しいのかっ?!」
沙紀「はははははは、金なんざ余ってしょうがないのです。わざわざ敗残兵の方々からいただく必要はありませんよ。」
悠貴「………っ……!ならば……………」
沙紀「今回に限り、全て無償であなた方に提供して差し上げましょう。」
285: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 16:19:22.08 ID:/LAKx59B0
清良「………今さら愛国心にでも目覚めたのかね?」
沙紀「まさか。ふふふ……僕にそんな物は存在しやしませんよ。……なあ、君。本音で語り合おうじゃないか。正直なところ、今の装備で十分だと思いますか?」
悠貴「…………っ………………」
沙紀「まともな装備があるはずがありませんよねぇ、敗残兵の集団に。」
悠貴「…………………………………」
沙紀「ここで先程の話です。私があなた方に無償で装備を提供して差し上げましょう。あっても勝てるとは限りませんが、少なくとも無ければ勝てないでしょうねぇ。」
286: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 16:28:11.90 ID:/LAKx59B0
悠貴「…………何があろうとも……お前の手なんかっ……!」
沙紀「あなた方のプライドと世界、どちらが大切なのですか?」
悠貴「……………っ……!!」
沙紀「別に不必要と言うのならば結構です。ですがねぇ、ここは個人的な感情は捨てるべきではないでしょうか?」
悠貴「…………………………………」
沙紀「ふふふ………その顔が見たかった。その悪党からの情けを受けるしかない屈辱に満ちた表情がねぇ!」
悠貴「……………ぐっ……ぅぅ………………!」
287: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 16:37:11.83 ID:/LAKx59B0
沙紀「いやはや、元はと言えば金儲けの為に作った工場でしたが、こんな愉快な事に役立つ日が来るとはね。」
保奈美「………えっ……?(作ったのは私であってあなたじゃ…………)」
沙紀「スカーレット・オハラ。あなたには中々役立ってもらいましたよ。あなたのおかげでこの工場の存在を誰からも疑われませんでした。」
保奈美「………レット…………?」
沙紀「はあ、愛のない結婚というのはひどい苦痛ですねぇ。やっとこの茶番を終われます。」
保奈美「……………………………」
288: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 16:48:35.95 ID:/LAKx59B0
悠貴「………スカーレットさんを……ずっと………!」
清良「なるほど……道理で……ずっとおかしいと思っていたんだ……メラニーの姉妹のスカーレットがどうしてこんな真似をしたのか………!」
沙紀(……ミード博士はこの街の南部人の間では誰より信頼を勝ち得ている人間だ。おまけに僕のことを憎んでいると来た。)
清良「この……人の姿をした悪魔め!!」
沙紀「はははははははは、それが何か?(これでスカーレットは機械人形から離れられる、そして悪名も全て雪げる。……悪役が得意で助かったよ。)」
保奈美「……………………………」
清良「>>289」
289: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 16:50:16.14 ID:JRioZ9VAO
今すぐに私たちの前から消えろ!お前の全財産を置いてどこか遠くに行ってしまえ!
290: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 17:08:26.52 ID:/LAKx59B0
清良「すぐにわしらの前から消えろ!お前の全財産を置いてどこか遠くに行ってしまえ!」
沙紀「はははははははは!そう慌てられずともアトランタにある財産ぐらい置いていって差し上げますよ。さすがに全財産は無理です。」
清良「いいや、お前に選択肢はない!何ならこの場で撃ち殺してやっても……!」
沙紀「先程の僕の射撃の腕前をご覧になられなかったのですか?ははははい、あなたじゃ相手になりゃしませんよ。」
清良「……っ……!」
沙紀「ふふっ……そちらの青年も死に急ぐものではないよ?」
悠貴「…………………………………」
291: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 17:14:27.38 ID:/LAKx59B0
沙紀「……………………」チラ…
保奈美「…………………………」
沙紀「…………………」クルッ…
保奈美「……ま、待ちなさい!このっ……!!」バッ!
菜々「………………」ガシッ!
保奈美「離しなさい、マミー!!」
菜々「…………………………」
保奈美「マミーってば!」
菜々「…………………………」
292: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 17:22:10.06 ID:/LAKx59B0
悠貴「……気持ちは分かりますっ……!このままあの男を行かせるしかないと思うと……!」
保奈美「そうじゃないの!私はっ…………むぐっ…………?!」
菜々「…………………………」
保奈美「〜〜〜〜〜!!」
菜々「バトラー船長のお思いを無駄になさるおつもりですか?」ボソ……
保奈美「………………………」
菜々「スカーレット嬢様……今回だけは、騙されてやってください。」
保奈美「……………!………………」
293: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 17:33:42.75 ID:/LAKx59B0
菜々「……あの目が何の目か分かりませんか……?…あなたもよく知っている目のはずですが…………」
保奈美「…………ウィルクスのおじ様が……戦場に行こうとしていた時の…………目………………」
菜々「……分かっているじゃありませんか。……でしたら、どのようにするのが正しいかは……分かりますよね?」
保奈美「…………………………」
菜々「……フン……どうしてもっとマシな嘘がつけないのか…………」
沙紀「…………………………」
スタスタスタスタ……
保奈美「………………………………」
294: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 17:43:02.78 ID:/LAKx59B0
菜々「……何をするつもりかは知りませんが……最期の嘘ぐらい、騙されてあげなさい。」
保奈美「……………………」
菜々「…………………………」
保奈美「………ありがとう……マミー…………」
菜々「……………………」パッ……
保奈美「…………………………」
菜々(………最期だけは…認めてやりましょう…)
295: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 17:49:33.92 ID:/LAKx59B0
清良「さっさと消えろ!お前なんか見たくもない!」
悠貴「早くどこかへなりと行ってしまえっ!」
沙紀「はいはい、分かっておりますよ。」スタスタスタスタ……
保奈美「……レット・バトラー!!」
沙紀「ん?」
保奈美「……この………卑怯者!!」
沙紀「…………………………」
保奈美「…………………………」
沙紀「……ふふっ……最高の褒め言葉です。」スタスタスタスタ……
保奈美「…………………………」
296: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 18:01:27.46 ID:/LAKx59B0
トゥエルヴ・オークス屋敷 地下
櫂「……まさか……まだ地下の研究室が残っていたとは思わなかったよ……そして…………」
ターンA「…………」
櫂「……『ピニャコラドール』……いや、『ターンA』……これが無傷で残っているとはね…………」
ターンA「……………………」
櫂「……何かを感じない訳にはいかないな…………さすがは、神話時代の機械人形、と言うところか。」
櫂「……僕がこれを発掘したのも……果たして偶然だったんだろうか…………」
櫂「………………………………」
櫂「>>297」
297: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 18:03:56.20 ID:j+DqJiRAO
いや……とてもそうとは思えない。何故なら僕の邪王炎殺黒龍眼【バロール】が……
298: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 18:12:29.13 ID:/LAKx59B0
櫂「いや……とてもそうとは思えない。何故なら僕の邪王炎殺黒龍眼【バロール】が…………」
櫂「…………………………」
櫂「……僕は…こんな時にまで………………ふふっ……どこまで行っても、書斎の中でしか生きていけない人間なんだな…………」
櫂「……夢を見る事を止められない………叶わない夢を…………そして、本人に止めるつもりがない。」
櫂「……今も、夢の中にいるのかもしれない……輪郭があやふやな……僕に対して優しい夢【セカイ】に。」
櫂「…………………救えないな…………」
299: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 18:21:55.25 ID:/LAKx59B0
櫂「………なあ……君が絶望したのは、そんな人間たちだったのかい?」
ターンA「……………………」
櫂「……答えてはくれないか。……はぁ…………僕には…『資格』は無いのか…………」
櫂「……それはそうだろうね……これだけの強大な力を、僕のような人間に託してはいけない。」
櫂「………………………………」
櫂「……結局……僕は何者にもなれないんだ…………」
櫂「………悲しくない、と言えば嘘になる……だけど、それを受け入れている自分がいる。」
櫂「………………………………」
300: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 18:29:39.18 ID:/LAKx59B0
櫂「……それを運命【サダメ】と呼ぶのは簡単な事だ。…そう言ってしまえば、どんな事だって諦めて受け入れる事が出来る…………」
櫂「……滅びの宿命【ホロビノサダメ】…………ふふっ……カッコいい響きだな……」
櫂「ずっとこう言う状況に憧れてきて……空想の中では、僕はいつも主人公だった……」
櫂「………でも……いざ直面してみると………………」
櫂「……………………………」
櫂「……何も……出来ないものだね…………」
301: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 18:36:31.75 ID:/LAKx59B0
櫂「………実はさ、分かってたんだ。…世界が終焉【オワリ】に向かっているって………………」
櫂「………だってさ…君が再び地上【セカイ】に現れた、と言うことは、そう言う事なんだろう?」
ターンA「……………………」
櫂「……機械人形を掘り出している事ぐらい察しがついたさ……ヨーロッパで同じ光景を見た事があったからね……」
櫂「……元戦友からさ、情報ももらっていたんだ………シャーマンが何か企んでいるってね。」
ターンA「……………………」
櫂「……そう………僕は全部……知っていたんだ………」
302: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 18:42:24.82 ID:/LAKx59B0
櫂「……知っていて何もしなかったのさ。どうせ、何も出来やしないってね。」
ターンA「…………………」
櫂「……僕は、情けない奴だろう………?……する前から、諦めてしまっていたのだから………」
櫂「………世界が滅びようと構わない、そうも思っていた………」
櫂「……もう……全てがどうでも良かったんだ……何がどうなろると別にいい……滅ぶなら滅べ………そしたら、楽になれるかも……なんてね。」
ターンA「……………………」
櫂「………………………………」
303: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 18:48:18.25 ID:/LAKx59B0
櫂「……それが今ごろ、君の確認を始めたんだ………何故だろうね……?自分でもよく分からないんだ……」
ターンA「………………」
櫂「…キャリーンの苦しむ姿を見たから………?………原因の1つではあるかもしれないが………すべてではないね。」
ターンA「…………………」
櫂「………僕のように抜け殻ではない世界を守りたい……そう……思ったのかな………?」
ターンA「…………………」
櫂「……ふふっ………原因を求めるのが……間違いなのかもしれない……………」
304: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 18:53:29.25 ID:/LAKx59B0
櫂「……それで……何の用だい、ウィル?」
輝子「フヒ?!」ビクッ!
櫂「……当ててあげよう、……夜な夜な僕が屋敷を抜け出して、自分の屋敷の跡地に向かうのが気になって、今夜とうとうつけてきた……そんなところじゃないか?」
輝子「………あ………は、はい………」
櫂「…………………………」
輝子「>>305」
305: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 18:55:35.70 ID:JRioZ9VAO
それが古代兵器ターンAか……
308: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 21:15:07.39 ID:/LAKx59B0
輝子「…それが古代兵器ターンA……ですか………」
櫂「………当然全部聞かれてしまってるよね………」
輝子「……あっ………す、すみません……………」
櫂「いや……謝らなくていいよ。…聞かれたなら聞かれたで構わない……」
輝子「……………………………」
櫂「…いつか気付かれるって事は分かっていたからね。」
309: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 21:16:13.32 ID:/LAKx59B0
輝子「……これを……1人で………?」
櫂「……一応ね。…と言っても、ターンAには自己修復機能があるから、僕のやった事と言ったら保守点検ぐらいさ。」
輝子「…………………………」
櫂「それ以上の事をやろうと思っても、全く手が付けられなくて。…僕らの知ってる機械人形と作りが違いすぎるんだ………」
ターンA「……………………」
櫂「…伝承の通りなら、全ての機械人形の行き着くところ、らしいからね。手が出せないのも当然なんだろうが…………」
310: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 21:17:24.24 ID:/LAKx59B0
輝子「……………本……物………なんです……ね………」
櫂「…ああ……伝承に残されているターンエー、その物だよ。」
輝子「…………文明を終わらせた……悪魔の…機械人形……………」
櫂「……………ああ……」
輝子「………………………」
ターンA「……………………」
輝子「……………………………」
311: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 21:19:04.64 ID:/LAKx59B0
櫂「……どこから説明した方がいい………?」
輝子「………………」フルフルフルフル……
櫂「………………………」
輝子「……全部……トモダチが……教えてくれたから…………」
櫂「………トモダチ……?」
輝子「……………………」スッ……
ターンA「…………………」
輝子「トモダチ。」
櫂「……………………………!」
312: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 21:20:44.65 ID:/LAKx59B0
輝子「……アシュレさんの秘密を知ってしまったから………私…も………自分の秘密を…話します…」
櫂「………………………」
輝子「………実は………私が……今まで皆さんに聞かせてきた身の上話………実は全部……嘘……なんです……」
櫂「…………なら……君は本当は……………」
輝子「…生まれた場所は……分からないです………ただ、調整を受けた場所は……北部の…とあるニュータイプ研究所と、言う事は分かります。」
櫂「…………………………………」
313: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 21:21:40.94 ID:/LAKx59B0
輝子「……ずっと……記憶が欲しかったら………戦えと言われて………それで……言われるままに……戦って……たくさんの………人を……………っ…………」
櫂「ウィル…!」
輝子「……すみません………私は………戦争で………たくさんの…………………………………」
櫂「……………………………」
輝子「………初めての……居場所を……失いたくなくて………………嘘を………ついてしまって…………………」
櫂「……………………………」
314: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 21:24:39.26 ID:/LAKx59B0
輝子「………ある日………戦うのが……嫌になって………逃げて………きたんです………とにかくもう……戦いたく…無かった…………」
櫂「……………………………」
輝子「……あとは…メラニーさんたちが……お話された通りです……………道端で……力尽きて…………そのままになる……ところ………でした………………」
櫂「……………………………」
輝子「……あ…あの………………」
櫂「……いいんだ………ありがとう。よく話してくれたね、ウィル…………」
輝子「………………………………」
櫂「>>315」
315: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 21:26:29.51 ID:j+DqJiRAO
な……これは……∀が……!?(ナノマシンに飲み込まれていくアシュレとウィル)
316: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 21:31:15.32 ID:/LAKx59B0
櫂「…………その………」
キラキラキラキラ……
櫂「な……?!」
キラキラキラキラキラキラキラキラ……
櫂「……これは……∀が……!?」
ターンA「…………」
輝子「ど、どうした…マイフレンド……?!」
キラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラキラ………
317: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 21:39:42.45 ID:/LAKx59B0
眩しい場所
櫂「………っ………あれ…ここは………?」
輝子「あ、アシュレさん……大丈夫です……か……?」
櫂「……………あ、ああ………ウィルの方こそ……?」
輝子「は、はい……大丈夫…ですよー…」
櫂「……そうか…………情況を整理しないと………僕らは確か…ターンエーのナノマシンに………」
「僕がキミたちを招待させてもらったぴにゃ。」
櫂「?!」
321: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 22:00:22.45 ID:/LAKx59B0
輝子「……マイフレンド……どうして私たちを……マイフレンドの記憶の中に………?」
「しておきたい話があったからぴにゃ。何せ、明日にはターンXが文明の浄化を開始しちゃうからね。」
櫂・輝子「?!」
「大丈夫。ここは時間の非連続性を利用して切り取った、時間の流れから隔絶された空間ぴにゃ。」
櫂「……えっと……つまり、この中では時間は流れない……そういう事……なんだね………?」
「そーいうことぴにゃ。」
322: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 22:09:00.80 ID:/LAKx59B0
輝子「……す、すごいな……トモダチ……!そんな事も出来るのか………?!」
「ぴにゃっぴにゃっぴにゃっぴにゃっぴにゃっ!伝説は伊達じゃないぴにゃ!」
輝子「そ、それで……話って…何なんだ……?」
「それは…………………」
沙紀「戦いに向かう前に気持ちの整理を付けておこう、と言う訳さ。」
櫂「?!」
沙紀「……久しぶりだね、アシュレ君。実に、あの時振りじゃないか。」
323: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 22:23:09.74 ID:/LAKx59B0
タラ 森林 やや開けた場所
亜季「…………………………」
仁美「……リー将軍。」
亜季「……何だ?」
仁美「…………………いえ……」
亜季「……………………」
仁美「………………………」
亜季「>>324」
324: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 22:24:41.81 ID:JRioZ9VAO
(すっかり諦め、憔悴しきっている表情)そうか……
325: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 22:32:00.35 ID:/LAKx59B0
亜季「………………そうか……」
仁美「……………っ………」
亜季「………………………」
仁美「……申し訳ございませぬ………援軍の要請のために向かわせた……ユーキからの定時連絡が………………途絶えました………………」
亜季「………最後の連絡は……?」
仁美「……夕方の…報告……です…………」
亜季「………………そうか………」
326: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 22:40:46.74 ID:/LAKx59B0
仁美「…………最後の連絡には……北軍の追っ手に発見されてしまった事と………機密確保の為に、作戦書ごと自決するとの旨が……記されて……おりました…………」
亜季「…………っ…!」ダンッ!
仁美「…………………………」
亜季「まただ……また…私は…………1人の若者を……………………」
仁美「……リー将軍に…責任はございませぬ…」
亜季「……いや……彼の俊足を見込んで送り出したのは……私だ…………私が…………彼を……………………」
仁美「………………………………」
327: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 22:50:04.09 ID:/LAKx59B0
亜季「…………済まん……今のは指揮官に相応しくない振る舞いだったな……」
仁美「いえ……一兵をもそのように思われる将軍であればこそ、我々は付き従って参ったのです。」
亜季「…………………………」
仁美「……天佑が……無かったとしか申せませぬ…………」
亜季「…………っ………!……………………っく…………」
仁美「………………………………」
328: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 23:00:02.80 ID:/LAKx59B0
亜季「……作戦内容を変更する……D案に変更、現有戦力を持って目標に対して突撃をしかける。」
仁美「……承知仕りました。」
亜季「…………最悪の指令だ……これでは……全員に玉砕を命じるも同然ではないか……」
仁美「……他に手段がありません。」
亜季「……分かっている………現有戦力のみで目標を攻略するには……くっ……!…シャーマンの戦力があれほどとは………!」
仁美「…………………………」
329: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 23:09:41.96 ID:/LAKx59B0
亜季「……せめて……もう一段階上の装備さえあれば………!」
パァァァァァァ………
仁美「む!」チャキ!
亜季「……何だ…この光は……?!」
パァァァァァァ………シュゥゥゥゥン…
仁美「……何奴?!」
悠貴「ふぇっ?!」
亜季・仁美「?!」
悠貴「………………………」
亜季「……ユーキ……なのか………?」
悠貴「………!り、り、り、リー将軍っ?!」
装備と物資の山「……………」
330: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 23:19:11.25 ID:/LAKx59B0
北軍 研究施設内部
晶葉「クックックック……明日だ!明日から全てが始まる!新しい歴史、新しい世界が!」
晶葉「この時をどれほど長く待ち望んだ事か!アハ……アハハハハハ!!」
麗奈「…………………」
晶葉「駒は全て揃った!北軍の全権力、兵士、綿密なデータの積み重ねによって得られた技術!超古代の機械人形、それの軌道に必要な生体ユニット……そして、ターンX!!」
晶葉「アハハハハハハハ!私が神となるのだ、私が!天才による統治が完全なる統治が始まる!」
晶葉「>>331」
331: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/22(木) 23:21:21.25 ID:j+DqJiRAO
ふはははは……アハハハハハ……!(ターンXから触手的なものが伸びて晶葉を取り込んでいく)
334: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 14:48:32.17 ID:Q0WjXuSo0
晶葉「はははははは……アハハハハハ……!」
ターンX「………………」シュル……
晶葉「アハハハハハハハハハ!はぁ……はぁ……アハハハハハハハ!私が……神だ!」
ターンX「…………」シュルシュルシュルシュル…
晶葉「いや、それ以上だ!何故なら私は神の力を自らの思うがままに………!」ガシッ!
晶葉「…………ん?」
ターンX「………」シュルシュルシュルシュル…
晶葉「…………………は?」
335: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 14:49:58.69 ID:Q0WjXuSo0
ターンX「……………」
シュルシュルシュルシュルシュルシュル……
晶葉「…………ひっ……な、何だ……?!」ギュルギュルギュル…!
ターンX「……………………」
シュルシュルシュルシュルシュルシュル……
晶葉「う……あ…………何だ…?!何なんだ……一体……?!こ、こんなのはデータには…………」
ギュルギュルギュルギュルギュルギュル…!
ターンX「……………………」
シュルシュルシュルシュルシュルシュル……
晶葉「…………!!まさか……私を……生体ユニットとして取り込もう……と……?」
336: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 14:51:12.59 ID:Q0WjXuSo0
晶葉「な、何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ?!搭乗者も居ないのに、何故……そんな……あたかも意志を持っているかのような挙動を…………?!」
ターンX「……………………」
シュルシュルシュルシュルシュルシュル……
晶葉「な、何故…何故……何故…………?!い、いや……今はそれよりも……お、お、お、おい!私を助…………?!」
ギュルギュルギュルギュルギュルギュル…!
麗奈「…………………………」
晶葉「〜〜〜っ!!!!」
ギュルギュルギュルギュルギュルギュル…!
ターンX「……………………」
シュルシュルシュルシュルシュルシュル……
シュルシュルシュルシュルシュルシュル……シュルン
337: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 14:51:58.24 ID:Q0WjXuSo0
ターンX「………………」ヴゥン…
麗奈「……………………」
ターンX「……」ヴゥン…ヴゥン…ヴゥン…
麗奈「…………………」スクッ……
ターンX「………」ギギギギギギ……
麗奈「……………」スタスタスタスタスタ…
ガラガラガラガラガラガラ……!!
ターンX「……サイ…キドウ……」
ギギギギギギ……
338: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 14:54:41.08 ID:Q0WjXuSo0
公演会場 3階 特別席
日菜子「むふぅ〜……いいですねぇ……いいですねぇ……なかなか妄想が広がるシチュエーションです…………むふふふ………」
日菜子P「ふふふふふふ………妄想には気を付けてくれたまえ………ふふふふ………見てみたい気もするが…………」
日菜子「分かってますよぉ……妄想はちゃぁんと、妄想に留めておきますからぁ。」
日菜子P「いい子だ………ふふふふ………………」ナデナデ……
日菜子「むっふぅ〜…♪」
日菜子P「ふふっ………肉体を関して見る心も……悪くない……………」ナデナデ……
339: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 14:55:49.15 ID:Q0WjXuSo0
日菜子「むふ〜……やっぱり王子様は本物じゃなきゃ意味がありませんねぇ〜……」
日菜子P「『妄想』では……意味がないのかね………?」
日菜子「『妄想』には『心』がありませんから。…温もりも、優しさも、親しみも、恋心も、理解も、誠実さも、信頼も、愛情も、努力も、未来も、永遠も、結果も、『妄想』は『妄想』でしかないんです。」
日菜子P「ふふふ……私に心を求めると……ふふ………ふふふふふふ………」
日菜子「はぁい…日菜子の王子様は本物を日菜子にくれる人ですからぁ……ねえ、王子様?」
日菜子P「…王子様と言う柄ではないけれど………ふふっ……本物はプレゼントしよう……ふふ………ふふふふふ…………」
340: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 14:58:25.18 ID:Q0WjXuSo0
日菜子「………………♪」ピト…
日菜子P「おやおや……ふふふ………」
日菜子「…こうやって2人で肩を寄り添って劇を見る……ずぅーっと妄想してたシチュエーションなんですよぉ?」
日菜子P「ふふふ……妄想通りかね?」
日菜子「妄想よりずぅーっと素敵ですねぇ…………むふぅ〜……ああ〜、また新しい妄想が膨らんじゃいますねぇ………むふふ………」
日菜子P「…ふふふふふふ……そのようだね………」
日菜子「>>342」
341: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 15:00:34.73 ID:VWj9NA9n0
日菜子の妄想力…最近また高まってしまっているので、もしもの時は日菜子Pさんが抑えてくださいねぇ…
343: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 15:14:53.78 ID:Q0WjXuSo0
日菜子「日菜子の妄想力…最近また高まってしまっているので、もしもの時は日菜子Pさんが抑えてくださいねぇ…」
日菜子P「ふふ……分かっているよ……『妄想家』の力が溢れてしまっては大変だからね………」
日菜子「ありがとうございます……はぁ……王子様は本当に頼りになりますねぇ………むふふふ…………」
日菜子P「代わりに君の心をもらうが……ふふ……ふふふふふふふふ………」
日菜子「もう、日菜子の心は元々日菜子Pさんの物ですよぉ?」
日菜子P「ふふふ………済まない………」
344: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 15:21:30.87 ID:Q0WjXuSo0
日菜子「日菜子Pさんはいじわるですねぇ………そんなところも素敵なんですけど……むふぅ〜……♪」
日菜子P「ふふ……君の色々な心が見てみたいのさ……」
日菜子「それてつまりぃ……ありのままの日菜子が見たいって事ですか?」
日菜子P「あながち間違いではないね。ふふふ…………」
日菜子「大胆ですねぇ……♪むふふふふ………日菜子はアレやコレやされちゃうんでしょうか……?むふふふふふふ………強引なのは好きですよぉ………?」
日菜子P「ふふふふふ…………」
345: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 15:28:37.03 ID:Q0WjXuSo0
日菜子「ああ、初めてはどんなシチュエーションがいいですかねぇ……ノーマルなのもいいですけど…いっそアブノーマルなのも………むっふぅ〜………♪」
日菜子P「…………………」
日菜子「むふふ……優しくしてもらうのもロマンチックですし………日菜子はシンデレラになっちゃうんですねぇ………むふふふ………妄想が妄想を…………」
日菜子P「…………………」
日菜子「………あ……日菜子Pさん……日菜子を観察してましたねぇ……?」
日菜子P「ふふふ………バレてしまった……ふふ………ふふふふふふ………」
346: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 15:36:45.42 ID:Q0WjXuSo0
日菜子「日菜子に妄想させて……それを観察するなんて、意地が悪いですよぉ、本当?」
日菜子P「ふふふふふ………あまりに面白い心だったんだ………つい、ね……ふふふ…………」
日菜子「乙女のピュアな心を弄んだらいけないんですよぉ〜?」
日菜子P「ふふふ………許してもらえるかな……?」
日菜子「うーん……嫌です。」
手錠「………」ガシャン!
日菜子P「これはこれは…………」
347: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 15:44:52.27 ID:Q0WjXuSo0
日菜子「確かぁ……こんな形でしたよねぇ?」
日菜子P「ふふふふふふ……残念、鍵穴が付いていないよ?」
日菜子「それなら大丈夫ですよぉ。でも……せっかくですし………」
手錠「…………」グニャ
日菜子「これで合ってますかねぇ?」
日菜子P「ああ……ふふっ……完璧だ………」
348: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 15:53:57.56 ID:Q0WjXuSo0
日菜子「褒められると照れちゃいますねぇ〜♪じゃあ、もうちょっと……………」
触手「………」シュルシュルシュルシュルシュル…!
日菜子P「……なるほど………」
グルグルグルグルグルグル……
日菜子「むっふぅ〜……触手に捕まる王子様も悪くないですねぇ〜……はぁ……はぁ…………」
日菜子P「…………………」
日菜子「さぁて、これで動けませんよねぇ?…むふふふ……日菜子を観察したんですからぁ……今度は日菜子が観察する番ですよねぇ?」
日菜子「むふふふふふ…!さあ、ナニからナニまで………」
349: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 16:02:27.30 ID:Q0WjXuSo0
日菜子P「ふふふふふふふふ………ところがそうはいかない……」
日菜子「……ですよねぇ………やっぱり夢を見せられてました……」
日菜子P「ふふふ……甘いよ?さあ、妄想の産物は消したまえ。」
日菜子「はぁ……王子様には敵いませんねぇ……むふふ………そこが素敵ですぅ………」パッ
日菜子P「ふふふふふふ……妄想力は確かに高まっているようだ。」
日菜子「分かっちゃいますかぁ?」
日菜子P「>>351」
350: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 16:05:18.39 ID:57E+JNwAO
あぁ、日に日に妄想力が増している。これは近いうちに本当に私を越えるかもね。
351: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 16:07:25.99 ID:R2T2u+bAO
↑だが今はまだ、それを解き放つ時ではない……戻ってくるんだ……(日菜子を取り込んでいく)
352: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 16:19:36.78 ID:Q0WjXuSo0
日菜子P「あぁ、日に日に妄想力が増している。………これは近いうちに本当に私を越えるかもしれないね…………」
日菜子「むふぅ〜………王子様は日菜子の事はなぁーんでも分かってくれてるんですねぇ……」
日菜子P「…もちろんさ…だが………今はまだ、それを解き放つ時ではない……戻ってくるんだ……」ジャラ………
懐中時計「…………」カチ…カチ…カチ
カチ…カチ…カチ…カチ…カチ…カチ…
日菜子「分かりましたぁ。」
日菜子P「……………………」
懐中時計「…………」カチ…カチ…カチ
カチ…カチ…カチ…カチ…カチ…カチ…
ズズズズズズ……
353: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 16:26:31.38 ID:Q0WjXuSo0
公演会場 3階 特別席
日菜子P「………………」ナデナデ……
日菜子「むふ………♪」
日菜子P「ふふふふふふふふ………………」ナデナデ……
日菜子「……今のはどうやったんですかぁ………?」
日菜子P「……存在は認識に従う……ふふふ………日菜子ちゃんの認識をずらさせてもらった…………」
ナデナデ……
日菜子「…………………」
354: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 16:38:03.92 ID:Q0WjXuSo0
日菜子P「ふふ……ふふふふふふ………私は日菜子ちゃんと違って、妄想を現実にするような力はないが………日菜子ちゃん1人を手玉に取るぐらいなら容易いんだよ?」
ナデナデ……
日菜子「むふふ……手玉に取られるのも好きですよぉ……むふ………むふふふ……ミステリアスな王子様に手玉に取られる…………むっふぅ〜♪」
日菜子P「ふふふふふ……………」
ナデナデ……
日菜子「むふふふふ………」
日菜子P「…いつまで騙されてくれるかな……?」ナデナデ……
日菜子「…王子様が夢を見せてくれる限り、ですよぉ?むふふ〜♪」
355: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 16:49:21.51 ID:Q0WjXuSo0
日菜子P「……なら、頑張らなくてはならないね………ふふふふふふふ………」ナデナデ……
日菜子「……………♪」
日菜子P(……さっき見せたのは、ほんの片鱗に過ぎないのだろうが………その片鱗だけで、私に迫るとは………………)ナデナデ……
日菜子「むふふふふ……王子様の手は大きいですねぇ〜………むふぅ〜♪」」
日菜子P(……心の観察が楽しくて……仕方ないというものさ……ふふふふふふふふふ………)ナデナデ……
日菜子「このまま押し倒されちゃったり〜………?」
日菜子P「ふふふふふ………お望みとあらば。」ナデナデ……
356: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 17:00:34.46 ID:Q0WjXuSo0
日菜子「じゃあお願いしまぁす。」
日菜子P「ふふふ……冗談さ。」
日菜子「ですよねぇ………むふふ……そう言うのは大切にとっておかないといけませんからねぇ……むふふふふ…………」
日菜子P「……手のひらを貸してご覧………?」
日菜子「むふ………?」
日菜子P「ふふふふふ………いいから…………」
日菜子「…………………」スゥ……
日菜子P「………………」チュ
日菜子「!」
357: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 17:10:37.46 ID:Q0WjXuSo0
日菜子P「ふふふふふ……今はこれだけで………」
日菜子「王子様に口づけをもらってしまいましたぁ〜♪むっふぅ〜、むふ……むふふふふふ……ああ………妄想じゃありません……!」
パタパタパタパタ!
日菜子P「………ふふふ………」
日菜子「これはもう、一生を日菜子と添い遂げてくれると言う意味ですよねぇ?そんなぁ……急に……むふふ………むふふふふふふ………」
日菜子P(………日菜子ちゃんの心は………見ていて飽きない………ふふふふふ………)
日菜子「むふふふふ………王子様は気がはやいですねぇ……むふ……日菜子は構いませんけど……むふぅ………」
358: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 17:24:59.01 ID:Q0WjXuSo0
日菜子P「………日菜子ちゃん…」
日菜子「はぁい♪……あ、結婚式は神式の方が…………」
日菜子P「日菜子ちゃんはそうやって好きに妄想をするといい…………ふふふ………そんな日菜子ちゃんの心が……私は好きなのだから…………もちろん限度を守ってだが…………」
日菜子「………………………」
日菜子P「……………………」
日菜子「>>360」
359: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 17:33:09.13 ID:R2T2u+bAO
むっふぅ~(大歓喜)
360: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 18:45:37.69 ID:57E+JNwAO
↑手足バタバタ、超笑顔
363: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 21:08:32.23 ID:Q0WjXuSo0
日菜子「むっふぅ~!」
パァァァァァァ……!
日菜子P「…………………………」
日菜子「むふ……むふ……むふふふふふふふふ……むふー!むふふ………むふふ……日菜子は今最高に幸せですぅ〜!」バタバタバタバタ…!
日菜子P「……………ふふっ……」
日菜子「ああ……日菜子からと言うのも良いなぁ…って思ってた時期もありましたけど……むふ〜!」
バタバタバタバタ…!
日菜子「王子様の方から日菜子にそう言ってもらえるなんて……むふ……むふ……むふふぅ〜!」
バタバタバタバタ…!
364: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 21:09:51.76 ID:Q0WjXuSo0
日菜子P「ふふふふ………僕の心を明かすのは……何も今日が初めてと言う訳ではないのに……ふふふ……………」
日菜子「女の子はいつだって王子様が、甘い言葉を囁いてくれるのを待っているんですよぉ?」
日菜子P「…ふふふふふふふ…………言った方も甲斐があると言う物だ………ふふ……ふふふふ………」
日菜子「むふぅ〜、日菜子Pさんは流石に日菜子の心がよく分かってくれてるだけの事はありますねぇ〜♪どの一言も妄想を加速させられてしまいますぅ。」
日菜子P「心は………私の専門分野だからね……ふふふふふふ………」
日菜子「という事は……むふふふふ………」
365: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 21:10:58.36 ID:Q0WjXuSo0
日菜子P「…ふふ………誰よりも日菜子ちゃんの事を理解している……と言う自負ならあるよ……ふふふふふ………」
日菜子「むふぅ〜!日菜子も……むふ………日菜子も日菜子Pさんの事を一番理解してるつもりですよぉ?」
日菜子P「ふふふふふふ…………なら……………」
日菜子「日菜子たちは両想いですねぇ〜!」ギュッ…!
日菜子P「……ふふ……」ナデナデ……
日菜子「むっふぅー!」
バタバタバタバタ…!
366: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 21:12:10.67 ID:Q0WjXuSo0
日菜子P「………さて、日菜子ちゃん…」
日菜子「何ですかぁ?むふふ……!」
日菜子P「……ふふふ……はしゃいでる日菜子ちゃんの心も素敵だが……今は…観劇中だよ………?」
日菜子「…………あっ…………」
日菜子P「……ふふふ…………」
ナデナデ……
日菜子「……………………」///
367: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 21:13:00.45 ID:Q0WjXuSo0
アトランタ レットの家
保奈美「ああ………もう!!何なのよ、アイツはぁ!!」ガァン!
保奈美「いっつも人を馬鹿にして!何の真似よ?!……工場は自分が作ったですってぇ……そんな訳ないじゃない!人のやった事を横取りしてんじゃないわよ!」
保奈美「はぁ……腹が立つわねぇ……!おかげで、全部が全部アイツのやった事になっちゃったじゃない!」
保奈美「私の罪を全部引き受けたとか……そんな事思ってるんじゃないでしょうねぇ……?!」
保奈美「……っ!!だとしたら大きなお世話よ!誰が頼んだって言うのよ!恩の押し売りもいいところだわ!」
保奈美「………クソッ!」ガァン!
368: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 21:14:12.10 ID:Q0WjXuSo0
菜々「その様な言葉使いをするもんじゃありませんよ。」
保奈美「うるさい!私が何を言おうが、私の勝手でしょう?!」
菜々「勝手じゃありませんよ。ウェード坊っちゃんが変な言葉を覚えたらどうするんです?」
保奈美「はぁ?!今はそんな事を…………」
菜々「バトラー船長だったらそう言いますよ。あの人、子供に対してだけは善人でしたから。」
保奈美「………………っ!!」
369: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 21:15:33.44 ID:Q0WjXuSo0
菜々「だいたい…そんなに大声で騒いだら……………」
仁奈「……ママ…?」トコトコトコトコ…
菜々「ほら、目を覚ましてしまわれたじゃないですか。」
仁奈「……どうか…したの……?」
保奈美「…………っ……何でもないわよ、早く寝なさい……」
仁奈「>>370」
370: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 21:17:52.95 ID:R2T2u+bAO
パパは……
371: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 21:24:14.99 ID:Q0WjXuSo0
仁奈「パパは…………」
保奈美「お仕事よ。たまに遅くなるときぐらいあるでしょ?」
仁奈「………………………」
保奈美「一々心配しなくて大丈夫よ。……1人で寝れないんだったら…………」
仁奈「…ううん……違うよ。」
保奈美「………は?」
仁奈「パパは……お仕事じゃないよ……?」
372: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 21:32:40.99 ID:Q0WjXuSo0
保奈美「……ウェード……あんまり私を困らせないで……どうしてそんな風に思うの?」
仁奈「………だ、だって……」
保奈美「だって……?」
仁奈「……パパ……今から戦おうって……思ってるから。」
保奈美「……?!」
仁奈「……………………………」
保奈美「………戦おうと………思っている…………?」
仁奈「うん。」
373: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 21:45:30.80 ID:Q0WjXuSo0
保奈美「………どうして…そんなことが分かるの……?」
仁奈「だって……分かるんだもん…………」
保奈美「………………………… ……………………」
仁奈「……パパ……死んじゃう……の?」
保奈美「……し、死んだりするわけがないじゃない……!…馬鹿を言わないで……!」
仁奈「?!」ビクッ!
374: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 21:51:35.45 ID:Q0WjXuSo0
保奈美「ああ、分かったわ、ウェード!あんた、やっぱり怖い夢を見たんでしょう?それで、いつも寝かしつけてくれるレットが居ないからって………!」
仁奈「ち、ちが…………」
保奈美「…戦って死ぬ?!きっとどこかで聞いた戦争の話が………!」
菜々「スカーレット嬢様!」
保奈美「っ…!何?!」
菜々「気持ちはわかりますが、子供相手に怒鳴るのはいけませんよ。」
保奈美「……………っ……」
菜々「……頭ごなしに否定する事は無いじゃありませんか。」
375: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 21:57:18.97 ID:Q0WjXuSo0
保奈美「だって……………!」
菜々「………………」
保奈美「……………っ……」
仁奈「…………うう…………」
菜々「……ウェード坊っちゃん…今話していた事について詳しく教えてもらえませんか?」
仁奈「……………………」
菜々「…………………………」
仁奈「…………う、うん………」
376: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 22:04:48.14 ID:Q0WjXuSo0
仁奈「…………あの…ね……その………えっと………えっと………………」
菜々「ゆっくりで大丈夫です。……落ち着いて話してください。」
仁奈「……………うん……」
菜々「……まず、バト……あなたのお父さんが死んでしまう、と言うのは?」
仁奈「……パパがね……おっきな……お人形さんに……負けて、倒されちゃうの………!」
菜々「……大きな人形………なるほど、ありがとうございます。」
377: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 22:12:53.91 ID:Q0WjXuSo0
保奈美(……大きな人形……機械人形……?……ウェードはまともに機械人形なんて見た事は無いはず………)
菜々「…すると、あなたのお父さんは、大きなお人形と戦おうとしている最中で、その戦いの結果負けて死んでしまう、と。」
仁奈「…………」コクッ…
菜々「………………………」
仁奈「……………………」
菜々「……その未来を変える方法とか……そう言った物は分かりませんか?」
378: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 22:17:55.07 ID:Q0WjXuSo0
仁奈「……未来を変える……方法………?」
菜々「あなたのお父さんが死なないようにはどうすれば良いか……ということです。」
仁奈「………………………」
菜々「………分かりますか?」
仁奈「…………………………」
菜々「……………………」
仁奈「………さびしいから……かて……ない…………」
菜々「……寂しいから勝てない?」
仁奈「…………………」コクッ…
379: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 22:22:36.89 ID:Q0WjXuSo0
菜々「……と言うと……?」
仁奈「……パパ……1人で……さびしいから……まけちゃうの………悲しい……から………………」
保奈美「…………………………」
菜々「………………ニュータイプ……」
保奈美「…………えっ……?」
菜々「>>380」
380: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 22:24:16.72 ID:R2T2u+bAO
……普通の人間より勘が鋭い人間の事です。だから何だと思われるかもしれませんが……
382: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 22:38:58.62 ID:Q0WjXuSo0
菜々「……普通の人間より勘が鋭い人間の事です。だから何だと思われるかもしれませんが…………」
仁奈「……………………」
菜々「…私が昔、あなたのお祖母様に教えていただいた通りならば、奇跡を起こせる可能性を秘めた人間でもあるのです。」
保奈美「…………奇跡……」
菜々「はい、奇跡です。この力を持つ人間がこの星の危機を救った事さえあるとか。」
保奈美「………………………」
菜々「…かなり昔にお聞きしたお話なので、ところどころ、あやふやになっているかもしれませんが…………」
383: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 22:47:52.05 ID:Q0WjXuSo0
保奈美(ニュータイプ…………ニュータイプ…………あれ、これより前にどこかでその名前を見た気が………………)
菜々「……スカーレット嬢様。」
保奈美「…………ああ……聞いてるわ。」
菜々「そうですか…………ゴホン……では……先ほどは分かりやすく、勘が鋭い人間、と言わせていただきましたが…ニュータイプについて軽くお話させていただきます。恐らく重要な話なので。」
保奈美「…………………………」
菜々「……ふぅ…………良いですか……勘が鋭い、と言うのを聞いて、スカーレット嬢様はどのような人間を想像しますか?」
384: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 22:57:12.05 ID:Q0WjXuSo0
保奈美「……えっと………危険に前もって気付ける、とか………相手の考えが何となく分かる、とか………」
菜々「その能力が圧倒的に……他の人間から見たら魔法のように見えるほど高いのが、ニュータイプと言う人間なんです。」
仁奈「…………………………」
菜々「あらゆる危険を事前に察知し、相手の考えを完全に読む。これがニュータイプの能力です。」
保奈美「………そんな人間関係が……実在するの……?」
菜々「私も半分、おとぎ話の類だと思っていましたよ。」
385: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 23:07:27.16 ID:Q0WjXuSo0
菜々「……しかしウェード坊っちゃんの話を聞いて……疑念へと変わりました。……ウェード坊っちゃん、あなたはそれをどうやって知ったのですか?」
仁奈「……えっと……頭の中に……ぱーっと……入ってきたの…………」
菜々「……スカーレット嬢様、普通はこんな言い方をしますか?」
保奈美「子供の言う事だから…………」
菜々「私は数え切れないほど子供を見てきましたが、こんな言い方をする子供は、今まで1人も知りませんでしたよ。」
保奈美「……………!」
386: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 23:16:19.40 ID:Q0WjXuSo0
菜々「……スカーレット嬢様、今から私のする質問に正直に答えてください。いいですか?」
保奈美「え、ええ…………」
菜々「…あなたは数多くの男の方たちを手玉に取ってきました。…他の誰よりも…………何故、出来たんです?」
保奈美「えっと………男って言うのは、そいつの理想通りの女を演じれば………………」
菜々「何故それが分かったんです?」
保奈美「……っ……あなたが淑女でいさえすればと…………」
菜々「でしたら、他の家の方々とも条件は同じだったはずです。」
387: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 23:24:01.65 ID:Q0WjXuSo0
保奈美「私の尻軽さを追及している場合……?」
菜々「今さらしやしませんよ、そんな事。問題は、あなたには周りの男性が何を考えているか、他の女性に比べてかなり分かっていたのではないか、と言う事です。」
保奈美「……別に………………」
菜々「男性だけでなく、女性の気持ちもより理解できていたのだと思いますが。」
保奈美「…………………………」
菜々「思えば昔からでした、スカーレット嬢様もキャリーン嬢様も……
スエレン嬢様も、妙に男性から人気があった。」
388: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 23:31:06.06 ID:Q0WjXuSo0
保奈美「ちょっと、それだけで人を……その……ニュータイプとやらにする気?」
菜々「いいえ、他にもあります。……あなたは製材所の経営に関して、素晴らしい手腕を発揮しなさっていたそうですね。」
保奈美「……それが…………?」
菜々「バトラー船長から聞きました、まるで未来の出来事を予期しているかのようだったと。」
保奈美「……それをするのが経営よ。」
菜々「一度ならず大火事が起きる前には材木を買い込んでおいて、大儲けしたそうじゃないですか。」
保奈美「…………た、ただの勘よ……」
389: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 23:36:57.35 ID:Q0WjXuSo0
菜々「勘が鋭い人間をニュータイプと言うんです。」
保奈美「…ほとんど言いがかりじゃない……!」
菜々「あなたのお祖母様のお祖母様もニュータイプだったそうです。……そして、ニュータイプは親から子に引き継がれると。」
保奈美「………なら…………」
菜々「ニュータイプの力の強さには人によって違いがあるそうです。強く出たのが、あなたたちの世代だったんでしょう。」
保奈美「…………………………」
菜々「>>390」
390: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/23(金) 23:38:44.88 ID:R2T2u+bAO
そして、ウェード坊っちゃんはより強くその素質が現れている……
393: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/24(土) 16:24:56.03 ID:xYxKyhIt0
菜々「そして、ウェード坊っちゃんはより強くその素質が現れている…………」
保奈美「…………!」バッ!
仁奈「?!」ビクッ!
保奈美「…………………………」
仁奈「……………………」オドオド…
保奈美「……この子が…?」
菜々「…はい。」
仁奈「…………ウェードが……どうか……したの………?」オドオド…
394: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/24(土) 16:26:16.35 ID:xYxKyhIt0
菜々「……ウェード坊っちゃんは、臆病な子ではなかったんですよ…………」
保奈美「……どう言う事…?」
菜々「……おそらくですが、ウェード坊っちゃんには周りの人間の気持ちだとか、そう言った物を分かってしまう力があります。」
保奈美「…………………………」
菜々「……ウェード坊っちゃん。」
仁奈「……な、なあに………?」
菜々「…坊っちゃんは街に出るのを嫌われますが、それはどうしてですか?」
395: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/24(土) 16:27:58.94 ID:xYxKyhIt0
仁奈「……………………え、えっと…………こわい……から…………」
菜々「……何が怖いんですか?」
仁奈「………うう…………………」
菜々「……大丈夫ですよ。」
仁奈「…………うん…………えっとね………いろんな人の……いろんな気持ちが………いっぺんにきて………こわいの………………」
菜々「…それはどんな感じですか?」
仁奈「………きらい……とか……こわいとか……かなしい…………とかが……たくさん聞こえちゃうの……
…………」
396: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/24(土) 16:30:50.04 ID:xYxKyhIt0
菜々「………スカーレット嬢様。」
保奈美「…………そう……だったの……ウェード…………?」
仁奈「………………………」
保奈美「……どうしてそれをもっと早く…………」
菜々「あなたがウェード坊っちゃんの為に時間を割いた事がありましたか?」
保奈美「…………っ…………!」
菜々「……話したくても、話す時間がなかったに決まっているじゃありませんか。」
397: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/24(土) 16:31:56.33 ID:xYxKyhIt0
保奈美「…………レットはこの事を…………」
菜々「何かは察していたでしょうね。その上で黙っていただけで。」
保奈美「何で………?」
菜々「…噂に過ぎないのですが……北軍は極秘にニュータイプの研究を行っているそうです。……そんな中で、ウェード坊っちゃんの存在を…そしてあなたの存在を知られたら……?」
保奈美「…………………………!」
菜々「…北軍に通じていたバトラー船長なら……より多くの事を知っていたでしょうね。」
保奈美「…………………………」
398: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/24(土) 16:33:20.85 ID:xYxKyhIt0
菜々「…………もう一つ、…………ウェード坊っちゃんにそんな能力があると分かれば…………スカーレット嬢様は今以上にウェード坊っちゃんを避けるようになったんじゃありませんか?」
保奈美「…………私が……ウェードを………………?」
菜々「……バトラー船長は、多分それも分かっていたのでしょうね。……あなたは自分が見透かされるのは大嫌いな人だから。」
保奈美「……………………………」
菜々「……自分では何か他の理由をつけていたんでしょうが……間違いありませんよ。あなたはウェード坊っちゃんをずっと避けていた。」
仁奈「……………………」
399: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/24(土) 16:34:33.78 ID:xYxKyhIt0
保奈美「……だ、だって…………」
菜々「…チャールズ様の面影を見るのが怖かったのでしょう…?……わかっていたから……私からは何も言えませんでした…………」
保奈美「…………っ……………」
菜々「…本当は……それでも向き合わなければいけなかったんですよ………………」
保奈美「………………っ…………っ…………」
菜々「……ウェード坊っちゃんがあなたにあまり懐かれなかったのは……それが分かっていたんでしょう………………」
仁奈「………………………………」
保奈美「>>400」
400: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/24(土) 16:52:43.02 ID:JwHIccEAO
じゃあどうすればいいのよ!私は……どうすれば……
401: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/24(土) 17:00:25.05 ID:xYxKyhIt0
保奈美「じゃあどうすればいいのよ!私は……どうすれば……」
菜々「それはあなたが考える事です。」
保奈美「考えたって無理だったのよ……!…ちゃんと……ウェードを愛さないといけないのは…………分かってたけど…………でも…………!」
仁奈「……………………」
保奈美「……ウェードを見ていると……どうしても……チャールズを思い浮かべてしまうのよ…………」
菜々「…………………………」
保奈美「…雰囲気が……仕草が……顔が………チャールズを思い浮かばせるの………チャールズが……チャールズが………!」
402: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/24(土) 17:09:25.80 ID:xYxKyhIt0
菜々「…………………………」
保奈美「………っ……あの頃は若くて………まだ何も分かっていなかった………結婚と付き合う事の違いすらよく分かっていなかった………」
菜々「…………それで……?」
保奈美「……色々な経験をしてきた……辛い事、苦しい事、悲しい事…………そして……少しは物事が分かってきた………いえ、たぶんまだ………何も分かっていないんでしょうけど…………」
菜々「………………………」
保奈美「………でもね………でもね…………私がチャールズにした事が………どんな事だったかぐらいは………分かってしまったのよ…………」
403: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/24(土) 17:15:26.75 ID:xYxKyhIt0
保奈美「……チャールズはきっと………誰か、チャールズを本当に好きになってくれる淑女と結婚して………本当の幸せを手に入れる権利があったはずなのよ………」
菜々「……悔いているんですか……?」
保奈美「……………っ……!」
菜々「……………………………」
保奈美「………もう……遅いわよ……………」
菜々「………………………」
404: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/24(土) 17:24:12.69 ID:xYxKyhIt0
保奈美「……ウェードを見るのが怖いの………それは……私の罪を見る事だから………」
菜々「……………………」
保奈美「……チャールズに対してだけじゃない……フランクや……そして………バトラーに対する……罪だから…………………私は……私に関わった男たちの人生を……台無しにしてしまった……………!」
菜々「……あなたは悪くありませんよ。」
保奈美「いいえ……さっきの…レットの目を見て分かったの………私が………私が………私が………………………」
仁奈「………………………」
保奈美「……レットも……私が死なせてしまう………」
405: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/24(土) 17:34:19.58 ID:xYxKyhIt0
保奈美「……自分勝手で……虫の良すぎる話だって言うのは分かってる……!……でも…………レットに…………死んでほしくないのよ…………!」
菜々「……………………………」
保奈美「……レットに…………死なれたら…………もう…………何も………………っ…………」
菜々「…………………」ギュッ………
保奈美「…………っ…………っ………………ごめん……なさい………………ごめん……なさい…………」
菜々「…………………………」
保奈美「………っ…………うう………………」
406: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/24(土) 17:41:32.80 ID:xYxKyhIt0
仁奈「……………………」
保奈美「……ウェード……ごめんなさい………私は……あなたの母親になる資格はなかった………」
仁奈「……………………」
保奈美「…ごめんなさい………ごめんなさい………私は……………」
仁奈「……泣かないで……ママ。」
保奈美「……………えっ………」
仁奈「……………」
トコトコトコトコ……ギュッ……
保奈美「………………………」
407: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/24(土) 17:49:43.92 ID:xYxKyhIt0
仁奈「………ママが悲しいと………悲しいから……………」
保奈美「……………………」
仁奈「………だから……ね………泣かないで…………」
保奈美「……ウェード……あなた…………」
仁奈「……パパを……助けに行きたい………?」
保奈美「………助け………られるの…………?」
仁奈「………ママと……いっしょなら………」
保奈美「……………………」
仁奈「>>408」
408: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/24(土) 17:50:29.81 ID:JwHIccEAO
それに、みんなここにいるから……おばあちゃんも……
409: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/24(土) 17:56:20.48 ID:xYxKyhIt0
仁奈「それに、みんなここにいるから……おばあちゃんも………」
菜々「?!」
保奈美「……分かる……の………?」
仁奈「……ママにも……かならず……わかるよ……………」
保奈美「…………………………」
仁奈「……心を……ひらいて……みんなの声を………きいて………」
保奈美「………………………」
仁奈「…………………………」
保奈美「……………!!」
410: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/24(土) 18:02:23.83 ID:xYxKyhIt0
保奈美「……あなた……は…………?」
仁奈「………………………」
保奈美「………………………」
菜々「……お、おばあちゃんって………お祖母様の事…ですか………?」
仁奈「………………うん………」
菜々「…………………………」
保奈美「……これ……は………………」
仁奈「……みんなの気持ち………みんなの…心……」
411: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/24(土) 18:09:54.71 ID:xYxKyhIt0
保奈美「………ウェードはいつも……これを……見ていたの………?」
仁奈「………………」コク……
保奈美「………………………」
菜々「……何が………見えているのですか………?」
保奈美「………説明…できないわ…………何て言ったらいいか………全然分からない………みんなが……居るのよ…………」
菜々「……………………………」
保奈美「…………力を……貸してくれるの………?」
保奈美「…………………………」
412: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/10/24(土) 18:17:57.22 ID:xYxKyhIt0
保奈美「……………マミー………」
菜々「……何ですか?」
保奈美「……どこまで私…いえ、私たちについて来てくれる………?」
菜々「……スカーレット嬢様が、立派な淑女になられるまでですかね。」
保奈美「…………ありがとう……」
菜々「…………………………」
保奈美「………ウェード。」
仁奈「………………」コク……
パァァァァァァァァ…………
菜々「……!この光は…………」
【モバマス】保奈美「『付き合うと言う事』」【後編】に続く
元スレ
SS速報VIP:保奈美「『付き合うと言う事』」