前作
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし後編
白菊ほたるのコミュ2に日野茜が乱入してきた話
【モバマス】ほたるのひかりが眩しくて
【モバマス】安部菜々「ほたるちゃんの」日野茜「初仕事です!!」
【モバマス】悪魔とほたる
【モバマス】白菊ほたる「私は、黒猫が苦手です」
【モバマス】ありがちな終末
【モバマス】安部菜々と24人の千川ちひろ
白菊ほたる「黄昏に迷い道」
【モバマス】面接官「ところで白菊さん。貴女、凄くエロいですね」白菊ほたる「え」
岡崎泰葉「ヴォカリーズ」
【モバマス】あの子の知らない物語
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし後編
白菊ほたるのコミュ2に日野茜が乱入してきた話
【モバマス】ほたるのひかりが眩しくて
【モバマス】安部菜々「ほたるちゃんの」日野茜「初仕事です!!」
【モバマス】悪魔とほたる
【モバマス】白菊ほたる「私は、黒猫が苦手です」
【モバマス】ありがちな終末
【モバマス】安部菜々と24人の千川ちひろ
白菊ほたる「黄昏に迷い道」
【モバマス】面接官「ところで白菊さん。貴女、凄くエロいですね」白菊ほたる「え」
岡崎泰葉「ヴォカリーズ」
【モバマス】あの子の知らない物語
白菊ほたると不思議体験その2
【モバマス】響子「混ぜる」ほたる「混ざる」
1: ◆cgcCmk1QIM 2019/03/29(金)22:59:47 ID:C4G
○19時/某芸能事務所レッスンスタジオ
マストレ「よし、今日のレッスンはここまで。今日のステップは今度のレッスンまでに各自練習しておくこと――以上、解散」
辻野あかり(以下あかりんご)「ありがとうございました!」
砂塚あきら「ありがとう、ございました」
あかりんご「……はー、今日もレッスンきつかったねえ」
あきら「でも、だいぶ頑張れるようになったんじゃないかな。レッスンした後、こうやってお喋りできてるし」
あかりんご「あー、言われて見れば。前は余裕なかったよねえ」
あきら「あかりチャン、レッスンの後生まれたての小鹿みたいだったもんね」
あかりんご「あきらちゃんだっていつもレッスン終わったら浜辺に打ち上げられたお魚さんみたいだったよ」
あきら「……へへー」
あかりんご「あはっ。これからも一緒に頑張るんご!(着替え着替え)」
あきら「頑張るけど、レッスン終わりがもうちょっとだけ早いといいのになあ……おなかすいた(着替え着替え)」
あかりんご「あー、それは言える。ウチ晩御飯の時間早かったんご」
あきら「その語尾どうかと思うんだけどなあ――寮まで戻ったら晩御飯タダだけど、どうする? あかりちゃんは寮まで持ちそう?」
あかりんご「うーん、ちょっと無理っぽい……あれ」
<らいーん、らいーん>
あかりんご「あきらちゃん、なんかスマホ鳴ってる」
あきら「あれっ本当だ。えーと、夢見サンから?(ぽちぽち)」
夢見りあむ:<助けて>
2: ◆cgcCmk1QIM 2019/03/29(金)23:02:56 ID:C4G
夢見りあむ:<助けて>
あきら「えっ、何これ」
あかりんご「どうしたの――えっ助けてって」
あきら「何これ」
あかりんご「りあむさん、何かあったのかな。まさか事故とかじゃないよね」
あきら「いや、これだけだと何がなんだか。事故とかだったら自分らに助け求めるのは道理が――」
<ジリリリーン!! ジリリリーン!!>
あきら「わあっ!?」
あかりんご「あきらちゃん、また鳴ってるんご!!」
あきら「#嫌な予感 ……もしもし」
りあむ『うわーん! なんですぐに反応してくれないのさ! ぼくが助けを求めてるっていうのに! のに!!』
あきら「通知来てから何分も経ってないデスよ。堪え性ないんですか!」
りあむ『だってぼく、我慢とかきらいなんだもん』
あきら「うわあ一気に助けたくなくなった」
りあむ『うう、同僚が冷たい……やむ……』
あきら「自分らレッスン終わったばっかでお腹空いてるんですけど。用なら――」
あかりんご「(つんつん)ねえねえ、りあむさん何だって? 事故とかじゃなさそう?」
あきら「いや、メッチャ元気そうだったけど」
あかりんご「ねえねえ替わって替わって――もしもしりあむさん?」
りあむ『うわあんあかりちゃん助けてよう! 困ってるんだよう!』
あかりんご「でも私たちで力になれることなの?」
りあむ『むしろレッスン終わりで空腹な15歳ふたりでないと片付かない話なんだよう……ね、ね。ぼくのアパートに来て! いそいで! お腹空かせて!!!』
あかりんご「何に困ってるのかさっぱりわからないけど私たちで力になれることなら助けに行きますんご!」
あきら「あかりチャン安請け合いが過ぎないかな」
あかりんご「えっ、だって3人しかいない同期だし。困った人は助けてあげなさいっておかあちゃんいつも言ってたし」
あきら「純粋か!!」
りあむ『はー。あかりちゃんが眩しい……こんなのやむ……』
あきら「冷たくても優しくても病むのか!!」
りあむ『でもおかげで餃子が片付くよ。早くしないと皮が硬くなっちゃうから焦っちゃって――じゃ、待ってる! ほんとに待ってるからね!?』
<ガチャン。ツー、ツー、ツー……>
あかりんご「餃子だって」
あきら「困ってたのって餃子の事だったんデスかね」
あかりんご「晩御飯に餃子もいいね」
あきら「でも『助けて』ってぐらいだから凄いマズいかも」
あかりんご「ひえー! おたすけ……!」
○19時30分/夢見りあむのアパート
テテーン(生餃子の山)
あきら「何この餃子の山」
あかりんご「焼く前の餃子がトレーの上に山盛りになってるんご……」
りあむ「いやあその、ちょっと作りすぎちゃって」
あきら「いや夢見サン一人暮らしデスよね? これどう見ても山じゃん。何人前あるのこれ。一人分作ろうとしてこれになったって無理ありすぎない?」
りあむ「細かいこと気にしないでよう! とにかくこの餃子を片づけるの手伝ってほしいんだってば」
あきら「冷凍しときゃいいじゃないデスか」
りあむ「これは冷凍しておいしくなるようには作ってないんだよう。おいしくないのは食べたくないじゃん」
あきら「こんだけ拵えておいて何わけわからないこと言ってるんデスかねこの人は……」
あかりんご「解るんご……食べ物はちゃんと美味しい食べ方で食べてあげなきゃかわいそうんご……」
あきら「りんご農家の娘がトラウマ刺激されたような顔してる件について」
あかりんご「あきらちゃんも手伝ってあげようよ。美味しく食べてあげるんご!」
あきら「美味しいとは限らないじゃん。というか夢見さんて全然料理とかしそうなタイプに見えないし」
りあむ「うん、いつも大体外食かコンビニで買って食べてるよ! 普段から手料理なんてするヤツの気が知れないね!」
あきら「なんでそんな人が餃子山盛り作ってるんデスか」
あかりんご「じゃあ私は何手伝ったらいいですか? 一緒に焼いたらいーい?」
あきら「なんであかりチャンは今の発言聞いてそんな協力的なの?」
りあむ「うーん、焼くのは慣れてない人には任せられないなぁ。まあ座って待っててくたらいいよ。ぼくが焼いてどんどん出すから」
あきら「なんで普段料理しない人がそんな上から目線なの」
りあむ「いいからちょっと待っててってば。焼いたの食べればいいんだから楽なもんじゃないかー」
あきら「なんか色々納得行かないことがあるから気楽になれないんデスって、ああ、餃子もって台所に引っ込んじゃった……」
あかりんご「――ねえねえ、納得行かないことって?」
あきら「普段料理しない人が山盛り餃子作って待ちかまえてるって状況がまずわけわかんないデスよね」
あかりんご「あー。でも、あの餃子、普段料理したことの無い人が作った感じじゃなかったよ。並べ方も丁寧だったし」
あきら「案外細かいとこ見てるんデスね」
あかりんご「うちは餃子のとき家族みんなで包むんだけど、おかあちゃんが包んだのとおとうちゃんが包んだのって形も並べ方も全然ちがったんご」
あきら「アットホームなエピソード」
あかりんご「おかあちゃんは最後まできちんと同じに作るけど、おとうちゃんは普段料理しないから、途中からだんだん雑になってくるの。ヒダの数が違ったり、大きさがバラバラだったり」
あきら「そういやあの餃子、全部ビシーッと同じ大きさだったデスね」
あかりんご「うん、焼き方がどうこうって言ってたし、餃子は作りつけてる気がする。お持ち帰りの生餃子って可能性もあるかもだけど」
あきら「それだとよけいわけわかんないなあ」
あかりんご「どうして?」
あきら「餃子作り付けてる人が食べきれなくて困るような量作っちゃうのも不自然だし、餃子作るのが得意なら「助けて」じゃなくて「餃子食べにこない?」って誘えば、電話口で変な問答せずにすんだし。もしあれが持ち帰り餃子だったらさらに意味不明だよね」
あかりんご「おー。あきらちゃん名探偵んご!」
あきら「なんというかこう、すごく無計画なような、さもなきゃ逆になにか隠されてるような気がしてならないって言うか……(照)」
あかりんご(照れてるあきらちゃんかわいいんご……)
あきら「あの人あちこちで炎上してるらしいし、変なドッキリ動画とかに巻き込まれたら一緒に炎上したり、場合によってはPサンに怒られるってことも」
<ジュウウウウ……>
あかりんご「なんか凄くいい匂いがしてきたんご……」
あきら「匂いはマジ美味しそう……」
あかりんご(グウと鳴るおなか)
あきら(グウと鳴るおなか)
あかりんご「ねえ、いろいろ考えるのは餃子食べさせてもらってからにしない? 私、おなかぺっこぺこ」
あきら「賛成……(グウウ)」
○19時50分
りあむ「お待たせ! りあむちゃんの愛のこもった手作り餃子だよ! うんと誉め」
あきら「もうドッキリ餃子でも失敗作でもいいからとにかくお腹に何か入れたい(グウグウグウ)」
あかりんご「もう今ならなんでも美味しく食べられそうにな気がしますんご(グウウウウウウ)」
りあむ「なんか不当に期待値低くないかな!?……と、とにかく召し上がるといいよ。タレはこれ使ってね」
あきら「いただきます(ぱくり)……!」
あかりんご「いただきまーす(ぱくり)……うンまっ!?」
あきら(ぱくぱく)
あかりんご「りあむさん、これほんとおいしいんご!?」
りあむ「だよねー? 餃子だけは自信あるんだ、よく作るから」
あかりんご「なんかええと、皮はパリパリのとことモチモチのとこがあって」
あきら(もぐもぐ)
あかりんご「中身はシャキシャキして甘くて、ちょっとしっかり味のタレがまた――なんていうかもう、いろんな味や感じがして口の中が幸せんご!」
あきら(もぐもぐ)
あかりんご「あきらちゃんなんかもう、黙々と餃子食べる機械になっちゃってるし!――りあむさん、お料理上手んごねえ……!!」
りあむ「え、えへへ。そうでしょー? これがぼくの実力なんだよ」
あかりんご「これなら20個や30個はぺろっと食べられそう!」
りあむ「目先を変えたかったら味噌ダレも試してみてね」
あかりんご「うはー、これは一気にごはんが欲しくなっちゃう!」
りあむ「お酢と黒胡椒のタレもいいんだよ?」
あきら「これは、餃子が無限に食べられるヤツ……!」
あかりんご「最初あの山を見たときは食べきれないかと思ったけど、これむしろ足りないかも知れないんご」
りあむ「へへへー。どんどん焼くから遠慮せず食べて! ね! おかげで餃子無駄にせずにすむし!」
あかりんご「わーい! ――でも、なんか不思議」
りあむ「へ? 何が?」
あかりんご「りあむさん、こんなにおいしい餃子作れるのになんで普段お料理しないの? というかどうして普段お料理しないのに餃子こんなにおいしいの(ぱくぱく)」
りあむ「うっ、それは」
あかりんご「餃子つくり慣れてる人がどうして作りすぎて『助けて』なんてことになっちゃうんだろうとか、あきらちゃんも不思議がってたんご(ぱくぱく)」
あきら(素直に聞けちゃうのってあかりチャンの凄いとこデスよね……あっ、味噌ダレいい。白いごはん欲しい……!)
りあむ「えーと、それは、その」
あかりんご「というかこんなおいしい餃子なら、もっといっぱい人呼んでも絶対喜んで食べてくれるのに」
りあむ「ええええ、絶対やだようそんな恥さらし」
あかりんご「餃子こんなにおいしいのに、恥ずかしいことなんてないんご」
りあむ「うわああん、同僚のくもりなきまなこが眩しいよう」
あきら「でも餃子おいしいのはほんとデス。夢見さんなら自慢するかと思ってた」
りあむ「自慢できないもん。だってぼくが餃子作るのは、ダメだったときだから」
あかりんご「ダメだったとき?」
りあむ「うん、たとえば……(ほわんほわんほわん)」
●回想/鳥取Aライブバトル直後のアパート
りあむ『ただいまーって、ダレもいないんだけどさ。寂しいな』
りあむ『うーん、また負けちゃったなー。仕方ないかなー、どうせ新人のやられ役だし』
りあむ『……』
りあむ『ううううう(野菜を刻みまくる)』
りあむ『……でもあっちの方が絶対顔が良かったもんなあ(具をまぜまぜ)』
りあむ『やむ……やむ(小麦粉練って皮づくり)』
りあむ『……(無念無想で餡を皮に包んでいく)』
りあむ『できあがり。さあ、今日も一人で餃子パーティーだよ! 寂しい! よ!』
○回想終わり/夢見りあむのアパート
りあむ「――って感じで餃子作りにこう、いろいろぶつけてさ?」
あきら「あー。自分ならFPSやる感じかな。ちょっと解る」
りあむ「だからなんかおっぴらにし難いと言うか、自慢しづらいというか……正直餃子作りはめっちゃ上達したけど」
あかりんご「たしかに餃子すごく美味しかった」
あきら「じゃあ夢見サン、またなんか負けたりしたんデスか」
りあむ「うわーん、またって言うなぁ! 確かにいつも負けてるけど!!」
あかりんご「そういやりあむさん、今日事務所に来てなかったですよね?」
りあむ「――昼にオーディション受けて、そのまま直帰だった」
あきら「ということは、オーディション落ちたんデスか」
あかりんご「オーディション! 私もこないだまた落ちたんご!」
あきら「自分も。事務所のイベントでは少しずつ使ってもらえるようになったけど――やっぱ落ちまくると自信なくす」
あかりんご「わかるー……りあむさんもそうだったんだねえ」
りあむ「落ちたって前提で話進めるのやめてくれないかなあ!? まあ落ちたんだけどさあ」
あかりんご「……オーディションに落ちたの、すごく辛かったんご?」
りあむ「瞳ウルウルさせて見るのやめてよう! なんかすごい刺さるからさあ! ……それにまあ、オーデイション落ちるのはちょっと仕方ないって思ってるから」
あきら「そうなんデスか?」
りあむ「身長小さくて、胸ばっかでかくてさ。こういう体型だと仕事選ぶじゃん」
あきら「――武器だと思うんですけど」
りあむ「よかれあしかれ目立つし、フツーの身長の子と一緒にカメラ入れるのめんどくさいし。『地味な脇役』とかがまず無理じゃん。そのくせ主役を取るような人気も実績もないのがぼくなんだよう! 自覚あるもん!」
あかりんご「でも、いろいろぶつけて餃子作るって言ってたんご」
あきら「自分で処理しきれないぐらい餃子作るぐらいはストレスあったんじゃ?」
りあむ「落ちるのはいいよ。慣れてるから。餃子2人前ぐらいで気持ち立て直せるもん」
あきら「それでも一人前じゃ足りないんデスね」
りあむ「繊細で打たれ弱いからね! ザコだからね!」
あかりんご「でも、じゃあ、どうして?」
りあむ「――いいじゃんかー。そんなのー。餃子だけ食べておしまいにしてよう」
あかりんご(うるうるうる)
りあむ「だからそのうるうるした目やめてってばあ! ……すごい、ステキな子がいてさ」
あきら「ステキな子?」
りあむ「――うん。すごいステキなの。綺麗でさ、しぐさが上品で、課題のダンスなんかもう指先までばっちりで――もう、ぼくがNならあの子はSR+かなあ」
あかりんご「???」
あきら「ごめん夢見サン、その例え、あかりチャンには通じないみたい」
りあむ「あかりちゃんてソシャゲとかやんないの?」
あかりんご「影響受けやすいからダメって、PさんにSNSとかソシャゲは禁止されてるんご……」
あきら「Pさんグッジョブ」
りあむ「こっそりこのゲーム入れてさ、ぼくとフレンド登録してくんないかな? かな?」
あきら「Pサンに通報しようかな」
りあむ「うう、もっと優しく対応してよう。メンタル弱いんだってばあ――まあとにかくさ。オーデイションに来てた子はみんな思ったとおもうんだよね。ああ、この子には勝てないなあって」
あきら「で、その子に負けたと」
あかりんご「でも、そんな凄ければショックはかえって少ないような?」
りあむ「――その子に負けたんじゃないよ」
あかりんご「えっ」
りあむ「勝ったのはぜんぜん違う子だった。そりゃステキだったけど、あの子と比べたら全然見劣りしてさ。絶対あの子のほうが輝いててさ」
あきら「……」
りあむ「あとで、合格してる子がスタッフさんと親しげに話してるの見ちゃってさ――出来レースだったんだよ。その子が合格するの、決まってたんだ」
あかりんご「そんな」
りあむ「ぼくが落ちるのはいいよ。いやよくないけど。受かってチヤホヤされたいけど」
あきら「夢見サン」
りあむ「でも絶対、だれよりあの子が素敵だったよね? 輝いてたよね? あれおかしいよね? 誰より輝いてたあの子じゃなくて、別の子がおめでとうって言われてさ、あの子がしょんぼりした顔で帰っちゃったなんて、やむよ。ほんとやむよ」
あかりんご「……」
りあむ「ぼくだって出来レースで合格できるもんならしたいよ! 評価されたいよ? チヤホヤされたいよ! でも――だめだよね? 輝いてる子にあんな顔させるのってちがうよね? アイドルは尊くなくちゃいけないよね!?」
あきら「自分も、そう思う。自分が落ちる側なら悔しいだろうけど」
あかりんご「うん……」
りあむ「本当に叫ぼうかと思ったよ。 絶対おかしいって。あの子が一番だって。泣いてたあの子を呼び戻して、君が一番だったって言ってあげてよって――まあぼく、クソザコメンタルだからできなかったんだけど」
あきら「まあ、本当に叫んだらPさんにも迷惑掛かってただろうし……」
りあむ「ですよねー……それでアパートに戻ってさ。あの子のこととか、叫べなかったこととか、ぼくのこととか考えていたら、なんかこういつの間にか餃子が山盛りに」
あきら「ほんと山だった」
りあむ「事務所にトモダチとかいないしさ? 同僚のあかりちゃんとあきらちゃんしか連絡先知らなかったし。今日はホント助かったよう……」
あかりんご「……私、またりあむさんの餃子食べたいんご!」
りあむ「それはぼくなんかオーディション落ちればいいってことかな!?」
あかりんご「違います違います――実はその。りあむさんのことよくわんかない人だなあって思ってたんご」
りあむ「ひどくない!?」
あかり「普段の自分の言動を思い返すべきデス」
りあむ「グウの音も出ない!!」
あかりんご「でも、さっきのお話聞いて、なんか――りあむさんちょっといいなって。りあむさんの事、もっと知りたいなって思ったんご」
りあむ「えっ? あかりちゃんおかしくないかな? ぼくを騙そうとしてない?(そわそわ)」
あきら「けなされても褒められてもキョドるってめんざくさすぎないデスか」
りあむ「しかたないじゃん、それがぼくなんだもーん!!」
あかりんご「私たちまだ全然ひよっこで、これからもいっぱいオーディション落ちると思う。落ちちゃったときは、一人で悔しがってないで、呼んでほしいんご。りあむさんの話し聞きたいし、一人より三人で騒いだほうがきっと早く気持ちがラクになるから」
あかりんご「折角同期なんだもん――いっしょがいいと思ったの。あと、色々お話がしたい!」
りあむ「この子ちょっとまぶしすぎないかな」
あきら「素でこれって凄いよねえ」
あかりんご「ね、ダメ?」
りあむ「――ぼくきっと弱音吐きまくってウザいとおもうけど」
あかりんご「そのかわり、私やあきらちゃんが落ち込んだり悔しい思いしたときは、お話聞いてもらうんご!」
あきら「あと、どうせならおめでとうの時も餃子作ってくれたらいいデスね。これ、ほんと美味しかったから」
あかりんご「なかなか、こうやってわいわい食べるのってなかったもんねえ」
りあむ「そっか。二人とも東北から上京してきたんだっけ」
あかりんご「うん。まだ寮にトモダチ少なくて。えへへ」
あきら「自分も。ゲームのフレンドはまた、ちょっと違うし」
りあむ「……」
あかりんご「りあむさん?」
りあむ「しかたないなあ! いつでも来るといいよ! 餃子ぐらいいつでも作ってあげるからさあ!」
あかりんご「わーい、ほんと!?」
りあむ「ホントだよう――ただし来る前日には知らせてほしいな! 普段すごい散らかってるから! そりゃもうすごく!」
あきら「目に浮かぶようデスね」
りあむ「そこは否定して欲しかったかなあ!」
あかりんご(――そうして、私たちはりあむさんちでちょくちょく餃子食べるようになったんご)
あかりんご(負けたとき、勝ったとき。餃子を食べながら、色々な話をして、悔しがって)
あかりんご(色々言いながら、それでもりあむさんはいつでも餃子を用意して私たちを出迎えてくれて、それがまんざらでもなさそうで)
あかりんご(その姿を見てると、私は、『お姉さんが居たらこんなかんじかな』って。ときどき、そんなことを考えるんです――)
(おしまい?)
○後日/おまけ
あきら「だからってうかつに餃子食べてるとこ写真をネットに上げないで欲しいデスね!?」
りあむ「うわーん、あきらちゃんが怒るよう! いいじゃんか仲良し自慢でさー!!」
あきら「こんな夜遅くに何大食いしてるんだってマストレさんが激怒してましたよ!!」
りあむ「ギャー!?」
あきら「まったくもう、今度から気をつけてください」
りあむ「ううう。水餃子も作ってあげるから許して……」
あきら「……こんどはごはんも炊いておいて欲しいデス」
(ほんとうにおしまい)
元スレ
夢見りあむ:<助けて>
あきら「えっ、何これ」
あかりんご「どうしたの――えっ助けてって」
あきら「何これ」
あかりんご「りあむさん、何かあったのかな。まさか事故とかじゃないよね」
あきら「いや、これだけだと何がなんだか。事故とかだったら自分らに助け求めるのは道理が――」
<ジリリリーン!! ジリリリーン!!>
あきら「わあっ!?」
あかりんご「あきらちゃん、また鳴ってるんご!!」
あきら「#嫌な予感 ……もしもし」
りあむ『うわーん! なんですぐに反応してくれないのさ! ぼくが助けを求めてるっていうのに! のに!!』
あきら「通知来てから何分も経ってないデスよ。堪え性ないんですか!」
りあむ『だってぼく、我慢とかきらいなんだもん』
あきら「うわあ一気に助けたくなくなった」
りあむ『うう、同僚が冷たい……やむ……』
あきら「自分らレッスン終わったばっかでお腹空いてるんですけど。用なら――」
あかりんご「(つんつん)ねえねえ、りあむさん何だって? 事故とかじゃなさそう?」
あきら「いや、メッチャ元気そうだったけど」
あかりんご「ねえねえ替わって替わって――もしもしりあむさん?」
りあむ『うわあんあかりちゃん助けてよう! 困ってるんだよう!』
あかりんご「でも私たちで力になれることなの?」
りあむ『むしろレッスン終わりで空腹な15歳ふたりでないと片付かない話なんだよう……ね、ね。ぼくのアパートに来て! いそいで! お腹空かせて!!!』
あかりんご「何に困ってるのかさっぱりわからないけど私たちで力になれることなら助けに行きますんご!」
あきら「あかりチャン安請け合いが過ぎないかな」
3: ◆cgcCmk1QIM 2019/03/29(金)23:03:14 ID:C4G
あかりんご「えっ、だって3人しかいない同期だし。困った人は助けてあげなさいっておかあちゃんいつも言ってたし」
あきら「純粋か!!」
りあむ『はー。あかりちゃんが眩しい……こんなのやむ……』
あきら「冷たくても優しくても病むのか!!」
りあむ『でもおかげで餃子が片付くよ。早くしないと皮が硬くなっちゃうから焦っちゃって――じゃ、待ってる! ほんとに待ってるからね!?』
<ガチャン。ツー、ツー、ツー……>
あかりんご「餃子だって」
あきら「困ってたのって餃子の事だったんデスかね」
あかりんご「晩御飯に餃子もいいね」
あきら「でも『助けて』ってぐらいだから凄いマズいかも」
あかりんご「ひえー! おたすけ……!」
4: ◆cgcCmk1QIM 2019/03/29(金)23:04:19 ID:C4G
○19時30分/夢見りあむのアパート
テテーン(生餃子の山)
あきら「何この餃子の山」
あかりんご「焼く前の餃子がトレーの上に山盛りになってるんご……」
りあむ「いやあその、ちょっと作りすぎちゃって」
あきら「いや夢見サン一人暮らしデスよね? これどう見ても山じゃん。何人前あるのこれ。一人分作ろうとしてこれになったって無理ありすぎない?」
りあむ「細かいこと気にしないでよう! とにかくこの餃子を片づけるの手伝ってほしいんだってば」
あきら「冷凍しときゃいいじゃないデスか」
りあむ「これは冷凍しておいしくなるようには作ってないんだよう。おいしくないのは食べたくないじゃん」
あきら「こんだけ拵えておいて何わけわからないこと言ってるんデスかねこの人は……」
あかりんご「解るんご……食べ物はちゃんと美味しい食べ方で食べてあげなきゃかわいそうんご……」
あきら「りんご農家の娘がトラウマ刺激されたような顔してる件について」
あかりんご「あきらちゃんも手伝ってあげようよ。美味しく食べてあげるんご!」
あきら「美味しいとは限らないじゃん。というか夢見さんて全然料理とかしそうなタイプに見えないし」
りあむ「うん、いつも大体外食かコンビニで買って食べてるよ! 普段から手料理なんてするヤツの気が知れないね!」
あきら「なんでそんな人が餃子山盛り作ってるんデスか」
あかりんご「じゃあ私は何手伝ったらいいですか? 一緒に焼いたらいーい?」
あきら「なんであかりチャンは今の発言聞いてそんな協力的なの?」
りあむ「うーん、焼くのは慣れてない人には任せられないなぁ。まあ座って待っててくたらいいよ。ぼくが焼いてどんどん出すから」
あきら「なんで普段料理しない人がそんな上から目線なの」
りあむ「いいからちょっと待っててってば。焼いたの食べればいいんだから楽なもんじゃないかー」
あきら「なんか色々納得行かないことがあるから気楽になれないんデスって、ああ、餃子もって台所に引っ込んじゃった……」
5: ◆cgcCmk1QIM 2019/03/29(金)23:04:54 ID:C4G
あかりんご「――ねえねえ、納得行かないことって?」
あきら「普段料理しない人が山盛り餃子作って待ちかまえてるって状況がまずわけわかんないデスよね」
あかりんご「あー。でも、あの餃子、普段料理したことの無い人が作った感じじゃなかったよ。並べ方も丁寧だったし」
あきら「案外細かいとこ見てるんデスね」
あかりんご「うちは餃子のとき家族みんなで包むんだけど、おかあちゃんが包んだのとおとうちゃんが包んだのって形も並べ方も全然ちがったんご」
あきら「アットホームなエピソード」
あかりんご「おかあちゃんは最後まできちんと同じに作るけど、おとうちゃんは普段料理しないから、途中からだんだん雑になってくるの。ヒダの数が違ったり、大きさがバラバラだったり」
あきら「そういやあの餃子、全部ビシーッと同じ大きさだったデスね」
あかりんご「うん、焼き方がどうこうって言ってたし、餃子は作りつけてる気がする。お持ち帰りの生餃子って可能性もあるかもだけど」
あきら「それだとよけいわけわかんないなあ」
あかりんご「どうして?」
6: ◆cgcCmk1QIM 2019/03/29(金)23:05:14 ID:C4G
あきら「餃子作り付けてる人が食べきれなくて困るような量作っちゃうのも不自然だし、餃子作るのが得意なら「助けて」じゃなくて「餃子食べにこない?」って誘えば、電話口で変な問答せずにすんだし。もしあれが持ち帰り餃子だったらさらに意味不明だよね」
あかりんご「おー。あきらちゃん名探偵んご!」
あきら「なんというかこう、すごく無計画なような、さもなきゃ逆になにか隠されてるような気がしてならないって言うか……(照)」
あかりんご(照れてるあきらちゃんかわいいんご……)
あきら「あの人あちこちで炎上してるらしいし、変なドッキリ動画とかに巻き込まれたら一緒に炎上したり、場合によってはPサンに怒られるってことも」
<ジュウウウウ……>
あかりんご「なんか凄くいい匂いがしてきたんご……」
あきら「匂いはマジ美味しそう……」
あかりんご(グウと鳴るおなか)
あきら(グウと鳴るおなか)
あかりんご「ねえ、いろいろ考えるのは餃子食べさせてもらってからにしない? 私、おなかぺっこぺこ」
あきら「賛成……(グウウ)」
7: ◆cgcCmk1QIM 2019/03/29(金)23:06:18 ID:C4G
○19時50分
りあむ「お待たせ! りあむちゃんの愛のこもった手作り餃子だよ! うんと誉め」
あきら「もうドッキリ餃子でも失敗作でもいいからとにかくお腹に何か入れたい(グウグウグウ)」
あかりんご「もう今ならなんでも美味しく食べられそうにな気がしますんご(グウウウウウウ)」
りあむ「なんか不当に期待値低くないかな!?……と、とにかく召し上がるといいよ。タレはこれ使ってね」
あきら「いただきます(ぱくり)……!」
あかりんご「いただきまーす(ぱくり)……うンまっ!?」
あきら(ぱくぱく)
あかりんご「りあむさん、これほんとおいしいんご!?」
りあむ「だよねー? 餃子だけは自信あるんだ、よく作るから」
あかりんご「なんかええと、皮はパリパリのとことモチモチのとこがあって」
あきら(もぐもぐ)
あかりんご「中身はシャキシャキして甘くて、ちょっとしっかり味のタレがまた――なんていうかもう、いろんな味や感じがして口の中が幸せんご!」
あきら(もぐもぐ)
あかりんご「あきらちゃんなんかもう、黙々と餃子食べる機械になっちゃってるし!――りあむさん、お料理上手んごねえ……!!」
りあむ「え、えへへ。そうでしょー? これがぼくの実力なんだよ」
あかりんご「これなら20個や30個はぺろっと食べられそう!」
りあむ「目先を変えたかったら味噌ダレも試してみてね」
あかりんご「うはー、これは一気にごはんが欲しくなっちゃう!」
りあむ「お酢と黒胡椒のタレもいいんだよ?」
あきら「これは、餃子が無限に食べられるヤツ……!」
あかりんご「最初あの山を見たときは食べきれないかと思ったけど、これむしろ足りないかも知れないんご」
8: ◆cgcCmk1QIM 2019/03/29(金)23:07:12 ID:C4G
りあむ「へへへー。どんどん焼くから遠慮せず食べて! ね! おかげで餃子無駄にせずにすむし!」
あかりんご「わーい! ――でも、なんか不思議」
りあむ「へ? 何が?」
あかりんご「りあむさん、こんなにおいしい餃子作れるのになんで普段お料理しないの? というかどうして普段お料理しないのに餃子こんなにおいしいの(ぱくぱく)」
りあむ「うっ、それは」
あかりんご「餃子つくり慣れてる人がどうして作りすぎて『助けて』なんてことになっちゃうんだろうとか、あきらちゃんも不思議がってたんご(ぱくぱく)」
あきら(素直に聞けちゃうのってあかりチャンの凄いとこデスよね……あっ、味噌ダレいい。白いごはん欲しい……!)
りあむ「えーと、それは、その」
あかりんご「というかこんなおいしい餃子なら、もっといっぱい人呼んでも絶対喜んで食べてくれるのに」
りあむ「ええええ、絶対やだようそんな恥さらし」
あかりんご「餃子こんなにおいしいのに、恥ずかしいことなんてないんご」
りあむ「うわああん、同僚のくもりなきまなこが眩しいよう」
あきら「でも餃子おいしいのはほんとデス。夢見さんなら自慢するかと思ってた」
りあむ「自慢できないもん。だってぼくが餃子作るのは、ダメだったときだから」
あかりんご「ダメだったとき?」
りあむ「うん、たとえば……(ほわんほわんほわん)」
9: ◆cgcCmk1QIM 2019/03/29(金)23:07:30 ID:C4G
●回想/鳥取Aライブバトル直後のアパート
りあむ『ただいまーって、ダレもいないんだけどさ。寂しいな』
りあむ『うーん、また負けちゃったなー。仕方ないかなー、どうせ新人のやられ役だし』
りあむ『……』
りあむ『ううううう(野菜を刻みまくる)』
りあむ『……でもあっちの方が絶対顔が良かったもんなあ(具をまぜまぜ)』
りあむ『やむ……やむ(小麦粉練って皮づくり)』
りあむ『……(無念無想で餡を皮に包んでいく)』
りあむ『できあがり。さあ、今日も一人で餃子パーティーだよ! 寂しい! よ!』
10: ◆cgcCmk1QIM 2019/03/29(金)23:09:30 ID:C4G
○回想終わり/夢見りあむのアパート
りあむ「――って感じで餃子作りにこう、いろいろぶつけてさ?」
あきら「あー。自分ならFPSやる感じかな。ちょっと解る」
りあむ「だからなんかおっぴらにし難いと言うか、自慢しづらいというか……正直餃子作りはめっちゃ上達したけど」
あかりんご「たしかに餃子すごく美味しかった」
あきら「じゃあ夢見サン、またなんか負けたりしたんデスか」
りあむ「うわーん、またって言うなぁ! 確かにいつも負けてるけど!!」
あかりんご「そういやりあむさん、今日事務所に来てなかったですよね?」
りあむ「――昼にオーディション受けて、そのまま直帰だった」
あきら「ということは、オーディション落ちたんデスか」
あかりんご「オーディション! 私もこないだまた落ちたんご!」
あきら「自分も。事務所のイベントでは少しずつ使ってもらえるようになったけど――やっぱ落ちまくると自信なくす」
あかりんご「わかるー……りあむさんもそうだったんだねえ」
りあむ「落ちたって前提で話進めるのやめてくれないかなあ!? まあ落ちたんだけどさあ」
11: ◆cgcCmk1QIM 2019/03/29(金)23:11:25 ID:C4G
あかりんご「……オーディションに落ちたの、すごく辛かったんご?」
りあむ「瞳ウルウルさせて見るのやめてよう! なんかすごい刺さるからさあ! ……それにまあ、オーデイション落ちるのはちょっと仕方ないって思ってるから」
あきら「そうなんデスか?」
りあむ「身長小さくて、胸ばっかでかくてさ。こういう体型だと仕事選ぶじゃん」
あきら「――武器だと思うんですけど」
りあむ「よかれあしかれ目立つし、フツーの身長の子と一緒にカメラ入れるのめんどくさいし。『地味な脇役』とかがまず無理じゃん。そのくせ主役を取るような人気も実績もないのがぼくなんだよう! 自覚あるもん!」
あかりんご「でも、いろいろぶつけて餃子作るって言ってたんご」
あきら「自分で処理しきれないぐらい餃子作るぐらいはストレスあったんじゃ?」
りあむ「落ちるのはいいよ。慣れてるから。餃子2人前ぐらいで気持ち立て直せるもん」
あきら「それでも一人前じゃ足りないんデスね」
りあむ「繊細で打たれ弱いからね! ザコだからね!」
あかりんご「でも、じゃあ、どうして?」
りあむ「――いいじゃんかー。そんなのー。餃子だけ食べておしまいにしてよう」
あかりんご(うるうるうる)
りあむ「だからそのうるうるした目やめてってばあ! ……すごい、ステキな子がいてさ」
あきら「ステキな子?」
りあむ「――うん。すごいステキなの。綺麗でさ、しぐさが上品で、課題のダンスなんかもう指先までばっちりで――もう、ぼくがNならあの子はSR+かなあ」
あかりんご「???」
あきら「ごめん夢見サン、その例え、あかりチャンには通じないみたい」
12: ◆cgcCmk1QIM 2019/03/29(金)23:14:38 ID:C4G
りあむ「あかりちゃんてソシャゲとかやんないの?」
あかりんご「影響受けやすいからダメって、PさんにSNSとかソシャゲは禁止されてるんご……」
あきら「Pさんグッジョブ」
りあむ「こっそりこのゲーム入れてさ、ぼくとフレンド登録してくんないかな? かな?」
あきら「Pサンに通報しようかな」
りあむ「うう、もっと優しく対応してよう。メンタル弱いんだってばあ――まあとにかくさ。オーデイションに来てた子はみんな思ったとおもうんだよね。ああ、この子には勝てないなあって」
あきら「で、その子に負けたと」
あかりんご「でも、そんな凄ければショックはかえって少ないような?」
りあむ「――その子に負けたんじゃないよ」
あかりんご「えっ」
りあむ「勝ったのはぜんぜん違う子だった。そりゃステキだったけど、あの子と比べたら全然見劣りしてさ。絶対あの子のほうが輝いててさ」
あきら「……」
りあむ「あとで、合格してる子がスタッフさんと親しげに話してるの見ちゃってさ――出来レースだったんだよ。その子が合格するの、決まってたんだ」
あかりんご「そんな」
りあむ「ぼくが落ちるのはいいよ。いやよくないけど。受かってチヤホヤされたいけど」
あきら「夢見サン」
りあむ「でも絶対、だれよりあの子が素敵だったよね? 輝いてたよね? あれおかしいよね? 誰より輝いてたあの子じゃなくて、別の子がおめでとうって言われてさ、あの子がしょんぼりした顔で帰っちゃったなんて、やむよ。ほんとやむよ」
あかりんご「……」
りあむ「ぼくだって出来レースで合格できるもんならしたいよ! 評価されたいよ? チヤホヤされたいよ! でも――だめだよね? 輝いてる子にあんな顔させるのってちがうよね? アイドルは尊くなくちゃいけないよね!?」
あきら「自分も、そう思う。自分が落ちる側なら悔しいだろうけど」
あかりんご「うん……」
りあむ「本当に叫ぼうかと思ったよ。 絶対おかしいって。あの子が一番だって。泣いてたあの子を呼び戻して、君が一番だったって言ってあげてよって――まあぼく、クソザコメンタルだからできなかったんだけど」
13: ◆cgcCmk1QIM 2019/03/29(金)23:16:46 ID:C4G
あきら「まあ、本当に叫んだらPさんにも迷惑掛かってただろうし……」
りあむ「ですよねー……それでアパートに戻ってさ。あの子のこととか、叫べなかったこととか、ぼくのこととか考えていたら、なんかこういつの間にか餃子が山盛りに」
あきら「ほんと山だった」
りあむ「事務所にトモダチとかいないしさ? 同僚のあかりちゃんとあきらちゃんしか連絡先知らなかったし。今日はホント助かったよう……」
あかりんご「……私、またりあむさんの餃子食べたいんご!」
りあむ「それはぼくなんかオーディション落ちればいいってことかな!?」
あかりんご「違います違います――実はその。りあむさんのことよくわんかない人だなあって思ってたんご」
りあむ「ひどくない!?」
あかり「普段の自分の言動を思い返すべきデス」
りあむ「グウの音も出ない!!」
あかりんご「でも、さっきのお話聞いて、なんか――りあむさんちょっといいなって。りあむさんの事、もっと知りたいなって思ったんご」
りあむ「えっ? あかりちゃんおかしくないかな? ぼくを騙そうとしてない?(そわそわ)」
あきら「けなされても褒められてもキョドるってめんざくさすぎないデスか」
りあむ「しかたないじゃん、それがぼくなんだもーん!!」
あかりんご「私たちまだ全然ひよっこで、これからもいっぱいオーディション落ちると思う。落ちちゃったときは、一人で悔しがってないで、呼んでほしいんご。りあむさんの話し聞きたいし、一人より三人で騒いだほうがきっと早く気持ちがラクになるから」
14: ◆cgcCmk1QIM 2019/03/29(金)23:18:05 ID:C4G
あかりんご「折角同期なんだもん――いっしょがいいと思ったの。あと、色々お話がしたい!」
りあむ「この子ちょっとまぶしすぎないかな」
あきら「素でこれって凄いよねえ」
あかりんご「ね、ダメ?」
りあむ「――ぼくきっと弱音吐きまくってウザいとおもうけど」
あかりんご「そのかわり、私やあきらちゃんが落ち込んだり悔しい思いしたときは、お話聞いてもらうんご!」
あきら「あと、どうせならおめでとうの時も餃子作ってくれたらいいデスね。これ、ほんと美味しかったから」
あかりんご「なかなか、こうやってわいわい食べるのってなかったもんねえ」
りあむ「そっか。二人とも東北から上京してきたんだっけ」
あかりんご「うん。まだ寮にトモダチ少なくて。えへへ」
あきら「自分も。ゲームのフレンドはまた、ちょっと違うし」
りあむ「……」
あかりんご「りあむさん?」
15: ◆cgcCmk1QIM 2019/03/29(金)23:18:19 ID:C4G
りあむ「しかたないなあ! いつでも来るといいよ! 餃子ぐらいいつでも作ってあげるからさあ!」
あかりんご「わーい、ほんと!?」
りあむ「ホントだよう――ただし来る前日には知らせてほしいな! 普段すごい散らかってるから! そりゃもうすごく!」
あきら「目に浮かぶようデスね」
りあむ「そこは否定して欲しかったかなあ!」
あかりんご(――そうして、私たちはりあむさんちでちょくちょく餃子食べるようになったんご)
あかりんご(負けたとき、勝ったとき。餃子を食べながら、色々な話をして、悔しがって)
あかりんご(色々言いながら、それでもりあむさんはいつでも餃子を用意して私たちを出迎えてくれて、それがまんざらでもなさそうで)
あかりんご(その姿を見てると、私は、『お姉さんが居たらこんなかんじかな』って。ときどき、そんなことを考えるんです――)
(おしまい?)
16: ◆cgcCmk1QIM 2019/03/29(金)23:18:42 ID:C4G
○後日/おまけ
あきら「だからってうかつに餃子食べてるとこ写真をネットに上げないで欲しいデスね!?」
りあむ「うわーん、あきらちゃんが怒るよう! いいじゃんか仲良し自慢でさー!!」
あきら「こんな夜遅くに何大食いしてるんだってマストレさんが激怒してましたよ!!」
りあむ「ギャー!?」
あきら「まったくもう、今度から気をつけてください」
りあむ「ううう。水餃子も作ってあげるから許して……」
あきら「……こんどはごはんも炊いておいて欲しいデス」
(ほんとうにおしまい)
夢見りあむ「タレのレシピは酢1、ラー油2、醤油7」
りあむのキャラほんとずるいわー。こんなん人気出るに決まってんじゃん