SS速報VIP:三船美優「フルオーダーメイド」
1: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:05:11.04 ID:bQXDSAAk0
美優(上京して小さな会社でOLとして働いていた私でしたが、ある日突然アイドルに
スカウトされました)
美優(最初は断ろうと思いましたが、一週間悩んだ末に頂いた名刺を手に取り、気が
付けば事務所に電話をかけていました)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1362996310
2: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:06:21.13 ID:bQXDSAAk0
美優(退職する時は、会社の皆に送別会を開いてもらいました。ダメだったらいつでも
戻って来いと社長に温かい言葉をかけて頂いた時は、思わず泣いてしまいました)
美優(今の生活に不満があったわけではありません。でもスカウトをお受けしたのは、
私も心のどこかでおとぎばなしのシンデレラに憧れていたからでしょうか――――)
―事務所にて―
瑞樹「あ、え、い、う、え、お、あ、お、」
留美「ええと、来週のスケジュールは……」カタカタカタ…
美優「瑞樹さん、お茶です……」コト
瑞樹「ありがと美優ちゃん。でも同じアイドルなんだから気を遣わなくていいのよ?」ニコ
美優「いえ、ちょうど暇でしたから…… 留美さんにはコーヒーを……」コト
留美「ありがと」カタカタカタ…
瑞樹「ちょっと、その態度はどうかしら。美優ちゃんはあなたの部下じゃないのよ」
美優「み、瑞樹さん、気にしないで下さい。留美さん忙しそうですし……」アタフタ
留美「ごめんなさい美優、ちょっと手が離せなくて。いただくわ」ズズ…
瑞樹「全く、私の後輩だったら1時間説教コースよ。最低限の礼儀は弁えなさい」
留美「あら、私達は同じアイドルじゃなかったのかしら。先輩も後輩もないと思うけど」
瑞樹「そういう事じゃなくて、私は社会人としてね……」
留美「お説教は今度聞くわ。悪いけどこれからオーディションだから時間がないのよ。
ごちそうさま美優。それじゃあ行ってくるわ」
美優「い、いってらしゃい……」
カツカツカツカツ……バタン
瑞樹「相変わらず可愛気のない子ね。おまけにスーツにピンヒールって、まだ前職の
雰囲気抜けてないじゃない。アイドルとしての自覚あるのかしらあの子」ハア
美優「わ、私は格好良いと思いますけど…… 留美さんは私と同じ年なのにしっかり
してるし、お仕事も自分で選んで取ってきてるし……」
瑞樹「いくら優秀でも愛想のない女は嫌われるわ。クールビューティーなんて幻想よ。
同じアイドルだったら、世間ではあの子より美優ちゃんの方が支持されるわよ」
美優「そ、そうでしょうか…… でも私なんて何の取り柄もないし……」
瑞樹「そんな事ないわ。あなたはとっても笑顔が素敵よ。優しいし気配りも出来るし、
私が男だったら思わず押し倒しちゃうわよ」ニコ
美優「お、おし……!? 」カアア
瑞樹「うふふ、冗談よ。それじゃ私も仕事に行ってくるわ。今日はそのまま向こうの
スタッフと飲み会だから、プロデューサーに言っといてくれる?」
美優「わ、わかりました…… 頑張ってください……」
スタスタスタ……バタン
美優「すごいなあ二人とも…… それに比べて私は……」ハア
美優(事務所の方針は特に厳しくないので、プロデューサーから頂いたお仕事以外にも、
自分のなりたいアイドル像に向かって自主的に頑張っている人もいます)
美優(留美さんや瑞樹さんは事務所の仕事の他に、前職のツテや個人的にオーディション
に応募して独自に仕事をしていますが、私は基本的にプロデューサーに全てお任せ
しています。特にこだわりや希望はないので……)
美優「別に今のままでも不満はないけど、でもこのままでいいのかしら……」
美優(ただでさえ不安定な職業なのに将来の展望も理想もなく、このまま漠然とアイドル
を続けていて大丈夫なのだろうか。地味でも堅実に働いていた方が良かったのでは
ないだろうか。最近になって、昔を懐かしむ事が多くなりました)
美優「今日は17時からボイスレッスンだけね……」
美優(シンデレラになることを夢見て入ったアイドル事務所ですが、最近迷っていました。
やっぱり普通のOLだった私には、敵わぬ望みだったのでしょうか……)
―17:00・レッスン場にて―
真奈美「本日急遽レッスンを行う事になった木場だ。トレーナーは熱を出してダウンした。
この事務所には皆と同じアイドルとして所属しているが、前職はトレーナー
だったので技術指導は大丈夫だ。よろしく頼む」
頼子「はい……」
のあ「…………」
美優「よ、よろしくお願いします……」
真奈美「声が小さあああああいっっっ!!!!!! 」クワッ
頼子・美優「「 !? 」」ビクッ
のあ「…………」
真奈美「おっとすまない、ついつい昔のくせが出てしまった。皆は歌手活動は行ってない
のだったな。しかし今後歌う事もあるかもしれないし、人前で話す事も必要に
なるかもしれない。だからボイスレッスンもしっかり受けてくれ」
頼子・美優「「は、はいっ!」」
真奈美「いいな、のあ?」ジロ
のあ「…………お願いするわ」ボソ
真奈美「前途多難だなこれは……」ハア
***
真奈美「頼子、背筋を伸ばして。ではもう一度。ラーラーラーラー……♪」
頼子・美優・のあ「「「ラーラーラーラー……♪」」」
美優(確か木場さんって先月入ったんだっけ。もうあんなに堂々としているなんて
すごいなあ。私なんて最初の1ヶ月誰にも話かけられなかったのに……)
美優(前職はトレーナーさんって言ってたっけ。やっぱり留美さんや瑞樹さんみたいに
社会人から転職した人はしっかりしているなあ。全然敵わないよ……)
真奈美「美優さんどうしましたか?何やら上の空のようだが」
美優「あ、す、すみませんっ!」ハッ
真奈美「そんなに緊張しなくても結構ですよ。私はあなたより年下なんだから。手を
抜かれては困るが、もっとリラックスしてやりましょう」ニコ
美優「ご、ごめんなさい……」シュン
真奈美「では最初からもう一度。のあ、お前はもう少し声を出せ」ジロ
のあ「………………らー」
美優(のあさんは前は何をしていたのかしら。でもいつも悠然と構えているし、自分に
確固たる自信があるのね。そういえば木場さんと一緒に、自信ありそうな元気な人
が何人か来たって聞いたわ。確か元婦警さんと元スチュワーデスさんと……)
レナ「真奈美―――――っ!いる―――――っ?」バーン!!
頼子・美優「「 !? 」」ビクッ
真奈美「……なんだレナ。今はレッスン中だから後にしてくれないか?」
レナ「あらそうだったの。じゃあ終わるまで待たせてもらうわ♪ いや~早苗さんと夏美と
飲みに行くつもりだったけど、両方ともパッショングループのミーティングだとか
で無理になっちゃってさ~」
真奈美「私はレッスンがあるから断ったはずだが。まあいい、遅くなっても構わない
なら付き合おう。ただしそこで待たれていても気が散るから、お前もレッスンに
参加していけ」ジロ
レナ「え~!? 私競馬番組のリポートで疲れてるんだけど~」
真奈美「問答無用。嫌なら出て行け。ただしその場合は今夜の飲みもナシだ」ニヤリ
レナ「うう、真奈美が冷たいよう…… 初めて会った頃は『レナ先輩♪』って可愛く慕って
くれたのに」シクシク
真奈美「そんな事実は存在しない。すまない皆、予定外だがレナも入れて構わないか?
邪魔をしたらすぐにつまみ出すから」
美優「私はいいですけど……」
頼子「私も……」
のあ「…………………らー」
真奈美「よし、じゃあ再開しようか。実に癪だがレナは元ディーラーで、人前で話す事に
慣れているから発声など参考になる点は多いと思う。レナもお手本になるように、
しっかりやってくれよ」
レナ「わかってるわよ。よろしくねみんな!真奈美コワかったでしょ?でも本当は良い子
だから、みんなも仲良くしてあげてね♪」キラン☆
真奈美「よ、余計な事を…… じゃあもう一度最初から始めるぞ。ラーラーラーラー……♪」
頼子・美優・のあ・レナ「「「「ラーラーラーラー……♪」」」」
美優(真奈美さんとレナさんは仲が良いのね…… 私は仕事の中でも外でも、あんな風に
遠慮なく付き合える人いないわ。小さい子達は慕ってくれるけど……)
***
真奈美「よし、じゃあ今日のレッスンはここまでとする。家でしっかり復習してくれよ」
頼子「ありがとうございました……」ペコリ
美優「ありがとうございました(ふう、結構しんどかったわ)」ペコリ
のあ「ありがと………………らーらー」スタスタスタスタ……バタン
真奈美「相変わらず何を考えてるのかよくわからないな。悪い奴ではないんだが……」
レナ「なになに?あの銀色ちゃんと知り合いなの?」
真奈美「先週モデルの仕事で一緒だった。一日中隣にいたが、片手で数えるほどしか
話していない。あれでちゃんと仕事が務まっているのだろうか」
レナ「しゃべらなくてもあの子才能ありそうだし、きっちり結果は出すタイプでしょ。
だったら余計な会話はいらないんじゃない?」
真奈美「それはそうだが、しかしそう言われてしまうと私の立場がないな。やはり自分の
主義主張はしっかり言葉にして相手に伝えないと」
美優(自分の主義主張は言葉にして……か。そんなの全然持ってない私は、一体何を
しゃべればいいのかしら…… きっと頼子ちゃんも……)チラ
頼子「…………」プルプル
美優「?どうしたの頼子ちゃん?顔色が悪いけど……」
頼子「…………ぐすっ」ポロポロ
美優「え!? わ、私何か言っちゃった!? 」ギョッ
真奈美「ぬあ!? お、落ち着け頼子!? レッスンが辛かったのか!? 」アタフタ
レナ「あ~あ、なーかしたーなーかしたー♪」ケラケラ
真奈美「お前は黙ってろ!」クワッ!!
頼子「ひっ、ご、ごめ、ごめんなさい……」ビクッ
真奈美「いや、頼子に言ったんじゃない、だから謝らないでくれ……」
美優「だいじょうぶだいじょうぶ、ゆ~っくり深呼吸して。誰も怒ってないから、理由を
教えてくれないかな……?」ポンポンナデナデ
レナ「優しいねえ美優さんは。それに比べてどこかの女コマンドー殿は……」ニヤニヤ
真奈美「」ズーン
レナ「ちょ!? 冗談よ冗談!真に受けないでよ!? 」アセアセ
頼子「ひっく……ひっく……」ポロポロ
美優「だいじょうぶ、だいじょうぶだから……」ヨシヨシ
***
頼子「ご、ご迷惑をおかけしました……」グス
美優「ううん、全然迷惑だなんて思ってないよ。もう大丈夫なの……?」
頼子「はい……三船さんもありがとうございました……」ペコリ
美優「いいよ全然。それよりどうしたの?言いたくなかったら言わなくてもいいけど……」
頼子「いえ、ちゃんと言います…… 言葉にしないと伝わりませんから……
そうですよね……?」チラ
真奈美「う、うぐ…… そうしてくれると私も助かるが……」ビク
レナ「何ビビッてんのよ。あんたは今日はトレーナーなんだからもっと堂々としてなさい」
真奈美「そうは言っても、全く心当たりが無いのに急に泣かれるとだな……」
頼子「木場さんは悪くありません…… ただ私、自分がどうしていいのかわからなく
なっちゃって……」
美優(ああやっぱり。この子も私と同じなのね……)
頼子「アイドルなんて柄じゃないって分かってましたけど、それでもスカウトされた時は
夢を見ちゃって…… でもただ華やかな世界に憧れていただけで、具体的な目標とか
全然なくて……」
美優(私も一緒。ただプロデューサーに言われた仕事を毎日こなすだけで、自分の
やりたい事や主義主張なんて全然なくて……)
頼子「それでもプロデューサーは気にしないでいいって言ってくれて、私のために
レッスンのスケジュールを組んでくれるのに、でも私は歌もダンスも全然ダメで、
今日も皆さんの足を引っ張っちゃって……」
真奈美「いや、お前よりのあの方がひどかったが。そもそもあいつ、今日ほとんど
声出してなかったし……」
美優(でものあさんは私達とは違う。あの人は歌わなくても、それくらいで自分を見失う
ような弱い人じゃない。きっとしっかりした自分の主義があるのでしょう)
頼子「人前で話すのも苦手だし、地味で猫背気味の私がアイドルになるなんて、やっぱり
無理なんです…… ましてやシンデレラなんて……」グス
美優「頼子ちゃん……」
真奈美「ふむ、なるほど……」
美優(出来れば励ましてあげたいけど、頼子ちゃんと同じ悩みを抱えている私には
無理だわ。でもこのままだとこの子は事務所を辞めてしまう。一体どうすれば……)
レナ「ねえ頼子ちゃん、シンデレラってどんな女の子だったっけ?」
頼子「え?な、何ですか急に……」ビク
美優(レナさん……?)
レナ「確かあのお話って、イジワルな継母と義姉に虐められていた女の子が魔法使いに
お姫様にしてもらって、お城のパーティーに参加して王子様とダンスして、ガラス
の靴を落として、それを拾って追いかけてきた王子様と結ばれる話よね?」
頼子「は、はい。そうですけど……」
レナ「じゃあシンデレラってどんな子だったの?身長は?体重は?スリーサイズは?
趣味は?好きな食べ物は?好みのブランドや男のタイプは?」
頼子「え?え?え?」ドギマギ
真奈美「おいレナ、突然何を……」
レナ「ちなみに私は知ってるわよ。教えてあげよっか?」
美優(え?そんなのお話に書いてあったかしら……?)
レナ「身長167センチ、体重48キロ、3サイズは上から92‐56‐84、趣味はトランプで
好きな食べ物はお酒に合う物ならなんでも。好みのブランドはCOPAGで、男の
タイプはギャンブルに強い人かな♪」
頼子「それって……」
真奈美「それはお前の事だろう。何を言うかと思えば……」ハア
レナ「でも違うとも言いきれないでしょ?シンデレラがどんな女の子だったかなんて
どこにも書いてないんだから。だったら私がシンデレラでもいいじゃない?」フフン
美優(確かに……そうだけど……)
レナ「それにシンデレラの目的が王子様をゲットする事だったら、私だったらもっと
徹底的にやるわよ。魔法使いには好みのドレスが出るまで何回でもやり直し
させるし、ガラスのヒールだってデザインに注文つけるわよ。魔法使いと私の趣味
が合わなかったらサイアクだしね」
真奈美「お前は自分を救いに来たありがたい魔法使いさんに何てひどい事をするんだ」
レナ「まあそれは魔法で何とかなったとしても、でもカボチャの馬車は戴け無いわね。
何となくだけど、馬車って乗り心地悪そうじゃない?私だったらパンプキンカラー
のフェラーリを準備してもらうわ。それで王子様のいるお城の前に颯爽と
乗り付けるの。そっちの方がクールでしょ?」
頼子「パンプキンカラーのフェラーリって……くすっ」
美優(確かに、レナさんならやりそう……)
レナ「それでガツンと決めて王子様のハートをゲットしたら、12時で魔法が切れても
ふられないわよ。ていうか私だったら家に帰らないし。もしイジワルな継母と
義姉がお城に乗り込んできても王子様に守ってもらうわ。彼にはそれくらい
してもらわないと、出来ない男はこっちからお断りよ」
真奈美「シンデレラはそんな傲慢な女じゃないぞ。もっと心優しくて、清貧を絵にかいた
ような清らかな娘だったと思うが」
レナ「そんなの幻想よ。だいたい毎日いじめられて灰をかぶったような女が、まともな
神経してるわけないじゃない。きっと負け癖がついちゃって、卑屈でジメジメ
してるに決まってるわ。そんな女が魔法でちょっと綺麗に着飾ったくらいで
お姫様になんてなれないわよ」
美優(そうよね…… 魔法の力でも、人間の内面までは変えられないわよね……)
レナ「だからね頼子ちゃん、あなたはあなたのなりたいシンデレラになればいいのよ。
そうしたらきっと素敵なアイドルになれるわ。大丈夫、あなたはプロの目に
留まった逸材なんだから。だからもっと胸を張りなさい」
頼子「私のなりたいシンデレラ……?」
真奈美「レナの話は無茶苦茶な部分もあるが、しかしシンデレラやアイドルに明確な定義
はないというのは同意出来る。歌が歌えなくたって、お前は十分輝いているぞ。
私達にはない滲み出る知性はお前の武器だ」
頼子「そ、そんな…… 私なんて……」カアア
レナ「そうそう。キラっと光るメガネがクールよね。私だったら企画モノの女教師に……」
真奈美「例えが下品だ。未成年の前では慎め」ビシッ
レナ「あうっ」
美優(わかってしまう自分が悲しいわ……)
真奈美「ボーカルトレーナーの私としては歌も続けて欲しいが、もっと色々な事に目を
向けてチャレンジすればいい。それにレナ風に言わせてもらえれば、シンデレラ
はひとりだけだが、おとぎばなしのお姫様や王子様は他にもいるんだ。頼子は
頼子だけの物語のお姫様になればいいさ」
レナ「わ、真奈美がロマンチックな事言ってる。メモっとこっと♪」
真奈美「と、とにかくだ、私はお前の将来を全く心配してないし、お前も全く不安に思う
事はない!以上だ!」カアア
レナ「『おとぎばなしのお姫様や王子様は他にもいるんだ(低音)』」キリッ
真奈美「レナ―――――ッ!!」
レナ「じゃあね美優さん頼子ちゃん♪まったね―――――☆」
マテ――――ッ!! イヤ―――ン♪ バタバタバタバタ……
美優「に、にぎやかな人達ね……」ポカーン
頼子「ふふ…… でも元気が出ました」クスクス
美優「それなら良かったわ…… 私も頼子ちゃんなら、きっと素敵なアイドルになれると
思うわよ。だから頑張ってね……」
頼子「ありがとうございます…… 美優さんにそう言われると自信がつきます」ニコ
美優「そ、そんな、私なんかが言っても……」アタフタ
頼子「いえ、美優さんはいつも事務所にお香を焚いたり、お茶やお菓子を用意してくれて
アイドルのみんなに気を配ってますよね。小さい子にも慕われているし、私ずっと
すごいと思ってました」
美優「あ、あれは趣味でやってるだけで…… それにお茶やお菓子の準備は前の会社で
私の仕事だったから……」カアア
頼子「そういう事をさりげなく出来て、みんなが快適に過ごせる空間を作れるのは簡単な
事ではありませんよ。だから美優さんも、もっと自信を持って下さい」
美優「あ、あうう……」プシュー
頼子「ふふ、『アイドルに定義はない』か…… そうですよね、私何をこだわっていたの
でしょうか……」クスクス
美優「物語が気に入らないなら、自分が脚本家になって変えてしまえばいいのね。ドレス
もガラスの靴もカボチャの馬車も、与えられたものでは満足できないしね」クスクス
頼子「そうですよ!王子様を恰好よくさらうルパンみたいなお姫様がいてもいいと
思いませんか!? 」キラキラ
美優「ルパン……?」キョトン
頼子「あ…… すみません私推理小説とか好きで…… やっぱり変ですよね……」シュン
美優「いいんじゃない?怪盗ヒロイン。昔セ○ントテールってアニメがあってね……」
END
―おまけ―
~レッスン場外にて~
真奈美「全く、レナにはいつもおいしいところを持っていかれてしまう」ハア
レナ「決めゼリフは譲ってあげたでしょ?『頼子は頼子だけの物語の……(低音)』」
真奈美「やめてくれ。今になって顔から火が出そうだ……」カアア
レナ「ふふ、真奈美の弱点みーっけ♪」ニヤニヤ
美優「まってくださ~い!」パタパタ
レナ「あれ?美優さんどうしたの?」
真奈美「何か忘れ物でもありましたか?」
美優「はあ……、はあ…… よかった間に合った…… あ、あの、私もご一緒させて
ください。よろしくお願いしますっ!」ペコリ
真奈美「それは構わないが…… しかし良いのか?私達に付き合うと遅くなるぞ?明日の
仕事に影響が……」
レナ「な~にカタい事言ってるのよ!人数多い方が楽しいでしょ♪ 美優さんだってオトナ
なんだから、セーブくらい出来るわよね?」
美優「は、はいっ、お酒は強い方なので大丈夫です!」
レナ「よしケッテ~イ!今夜は飲むわよ~!」
真奈美「ふむ、美優さんも一緒となるとあまり変な所には行けないな…… ここから近くて
安全な所と言えば……」
***
―都内居酒屋―
レナ「……ど~~~してここなのよ。私の運気が下がるんだけど?」ムス
真奈美「他意はない。ここが一番近かっただけだ。それにギャンブラーだか何だか
知らんがそんなのは迷信だ。いつまでも辛気臭い顔してないで楽しく飲め」グビ
美優「あ、あのすみません…… 私が気を遣わせてしまったみたいで……」オロオロ
レナ「ううん、美優さんは悪くないよ。そうよね、お酒は楽しまないとね!それじゃあ
切り替えて飲もっか!美優さん何注文する?」
真奈美「そうだな。私は麻婆ナスと焼きナスとナス田楽と……」
レナ「わざとよね!? あんたわざとやってるわよね!? 」ガタッ
美優「お、おちついてください……」アタフタ
「バッキャロー!やってられっかー!」ガチャーン
「落ち着きなさい。わかった、わかったから」
真奈美「何だ、隣も随分にぎやかだな」ヒョコ
レナ「ケンカでもしてるのかしら?ウチも人の事言えないけど」ヒョコ
美優「あれ……?何だかこの声聞き覚えが……」ヒョコ
瑞樹「あら?美優ちゃん?それから真奈美ちゃんと……キュートのレナちゃんだっけ?」
美優「み、瑞樹さん!? どうしてここに!? 今日は向こうのスタッフさんと一緒じゃ……」
瑞樹「ええ。そのつもりだったんだけど、カウンターで一人で飲んだくれてるこの子を
見かけて放っておけなくて。仕方ないから一緒に連れて抜けてきたのよ」
真奈美「ほう、連れがいるのか?ん、確かこの女……」
留美「ぬわ~にが、『表情がカタいね』だよ!んな事はわかってんだよ~!」ヒック
美優「留美さん!? 」ギョッ
留美「み~ゆ~!! オンナらしさって何~!? やわらかい笑顔ってどんなの~!?
うえええぇぇぇぇええん……」ダキッ
美優「え?え?ええぇ~っ!? 」
レナ「あちゃ~、すっかり出来上がっちゃってるね~ せっかくだから一緒に飲む?」
瑞樹「そうしてくれると助かるわ。一人で二人の酔っ払いの面倒を見るのは大変でね。
もう一人は留美と違って大人しいんだけど……」
真奈美「ん?奥にもう一人いるのか?」ヒョイ
のあ「…………………………全然声が出せなかったわ」ズーン
真奈美・レナ「「アンタかい!! 」」ズコー
美優(のあさんまで…… 留美さんものあさんも、私が知らなかっただけで泣いたり
落ち込んだりする事があるの……?)
のあ「…………………………全然声が出せなかったわ」ズーン
真奈美・レナ「「アンタかい!! 」」ズコー
美優(のあさんまで…… 留美さんものあさんも、私が知らなかっただけで泣いたり
落ち込んだりする事があるの……?)
***
留美「ぐすん……すん、すん……」
美優「よしよし。もう大丈夫ですよ……」ナデナデ
のあ「zzzzz……」
瑞樹「ふう、ようやく静かになったわ。ありがと三人とも。これでゆっくり出来るわ」
真奈美「いや、私達は特に何もしてない。礼は美優さんに言ってくれ」
レナ「しっかし瑞樹さんもよくやるわね。私だったら他人のフリするけど」
瑞樹「前の職場ではよく後輩の愚痴を聞いてあげてたからね。この子達も可愛気はない
けど、何だか放っておけないのよ」
美優「瑞樹さんは知ってたんですか?留美さんやのあさんが本当は普通の人だって……」
瑞樹「美優ちゃんの言う普通がよく分からないけど、自分を強く見せようとしている人間
ほど本性は臆病で弱いものよ。だから人より一所懸命頑張るんだけどね。私だって
偉そうにしているけど、それほど大したことないわよ」
真奈美「至言だな。プライドで飯は食えないが、プライドが無ければ人間は戦えない。
どんなに自分が弱くても、敵に弱味を見せるわけにはいけないしな」
レナ「私だったらその弱味すら武器として利用するけどね。そっちの方が敵が油断する
でしょ?人生は勝負の連続なんだから、使えるものは何でも使わないと♪」
美優「みなさん色々考えてるんですね……」
瑞樹「そこまで難しく悩む必要はないわよ。美優ちゃんみたいに自然体でいるのが
一番だわ。誰も好き好んで戦ってるわけじゃないし、避けられるなら避けるに
越した事はないのよ」
真奈美「そうだな。無敵とは最強という意味ではなく、敵がいないという事だ。美優さん
ならその境地に辿り着けるかもな」
レナ「まあ美優さんも楽しくアイドルすればいいのよ。このメンツでお嫁さんにしたい
アイドル投票したら、間違いなく美優さんがぶっちぎりで一位よ」ケラケラ
美優「お、お嫁さんって……」カアア
留美「むにゃ……みゆ……、いつもありがと……」スヤスヤ
瑞樹「ふふ、この子ずっと『美優がうらやましい』『美優みたいに可愛くなりたい』って
言ってたのよ?だから美優ちゃんも、これからはこの子とも一緒に飲みに行って
あげてくれないかしら?」
美優「そ、そんな…… むしろ私が留美さんみたいになりたいのに……」
レナ「いいんじゃない。一周回って今はまた古風な日本女性がモテる時代よ。私も
美優さんから女らしさの極意を知りたいわ♪」
真奈美「これでも家庭的だと自負している私だが、美優さんには敵いそうにないな。
私もあなたの癒しとおしとやかさについて、ぜひご教授願いたい」
美優「あ、あはは…… 私に教えられる事でしたら……」テレテレ
美優(勇気を出して真奈美さん達とご一緒させてもらって本当に良かった…… 自分を
変える事って、意外と難しくないのかもしれないわね…… おとぎばなしに出てくる
お姫様みたいな姿をした自分はまだ想像出来ないけど、でも少しずつ変わって
物語を作っていけば、いつかきっと私も……)
おわり
以上。美優さん可愛いよ美優さんのはずだったが、レナさんカッコいいよ
レナさんになってしまった。ちなみに本編は普通に読めるように作りましたが、
おまけは
兵藤レナ「遊んで行かない?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1362832266/
を読むとより楽しめます。では。
元スレ
美優(退職する時は、会社の皆に送別会を開いてもらいました。ダメだったらいつでも
戻って来いと社長に温かい言葉をかけて頂いた時は、思わず泣いてしまいました)
美優(今の生活に不満があったわけではありません。でもスカウトをお受けしたのは、
私も心のどこかでおとぎばなしのシンデレラに憧れていたからでしょうか――――)
3: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:07:36.60 ID:bQXDSAAk0
―事務所にて―
瑞樹「あ、え、い、う、え、お、あ、お、」
留美「ええと、来週のスケジュールは……」カタカタカタ…
美優「瑞樹さん、お茶です……」コト
瑞樹「ありがと美優ちゃん。でも同じアイドルなんだから気を遣わなくていいのよ?」ニコ
4: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:08:21.15 ID:bQXDSAAk0
美優「いえ、ちょうど暇でしたから…… 留美さんにはコーヒーを……」コト
留美「ありがと」カタカタカタ…
瑞樹「ちょっと、その態度はどうかしら。美優ちゃんはあなたの部下じゃないのよ」
美優「み、瑞樹さん、気にしないで下さい。留美さん忙しそうですし……」アタフタ
5: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:09:02.78 ID:bQXDSAAk0
留美「ごめんなさい美優、ちょっと手が離せなくて。いただくわ」ズズ…
瑞樹「全く、私の後輩だったら1時間説教コースよ。最低限の礼儀は弁えなさい」
留美「あら、私達は同じアイドルじゃなかったのかしら。先輩も後輩もないと思うけど」
瑞樹「そういう事じゃなくて、私は社会人としてね……」
6: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:10:06.50 ID:bQXDSAAk0
留美「お説教は今度聞くわ。悪いけどこれからオーディションだから時間がないのよ。
ごちそうさま美優。それじゃあ行ってくるわ」
美優「い、いってらしゃい……」
カツカツカツカツ……バタン
瑞樹「相変わらず可愛気のない子ね。おまけにスーツにピンヒールって、まだ前職の
雰囲気抜けてないじゃない。アイドルとしての自覚あるのかしらあの子」ハア
美優「わ、私は格好良いと思いますけど…… 留美さんは私と同じ年なのにしっかり
してるし、お仕事も自分で選んで取ってきてるし……」
7: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:11:00.40 ID:bQXDSAAk0
瑞樹「いくら優秀でも愛想のない女は嫌われるわ。クールビューティーなんて幻想よ。
同じアイドルだったら、世間ではあの子より美優ちゃんの方が支持されるわよ」
美優「そ、そうでしょうか…… でも私なんて何の取り柄もないし……」
瑞樹「そんな事ないわ。あなたはとっても笑顔が素敵よ。優しいし気配りも出来るし、
私が男だったら思わず押し倒しちゃうわよ」ニコ
美優「お、おし……!? 」カアア
8: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:12:00.72 ID:bQXDSAAk0
瑞樹「うふふ、冗談よ。それじゃ私も仕事に行ってくるわ。今日はそのまま向こうの
スタッフと飲み会だから、プロデューサーに言っといてくれる?」
美優「わ、わかりました…… 頑張ってください……」
スタスタスタ……バタン
美優「すごいなあ二人とも…… それに比べて私は……」ハア
9: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:13:03.83 ID:bQXDSAAk0
美優(事務所の方針は特に厳しくないので、プロデューサーから頂いたお仕事以外にも、
自分のなりたいアイドル像に向かって自主的に頑張っている人もいます)
美優(留美さんや瑞樹さんは事務所の仕事の他に、前職のツテや個人的にオーディション
に応募して独自に仕事をしていますが、私は基本的にプロデューサーに全てお任せ
しています。特にこだわりや希望はないので……)
美優「別に今のままでも不満はないけど、でもこのままでいいのかしら……」
10: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:14:00.65 ID:bQXDSAAk0
美優(ただでさえ不安定な職業なのに将来の展望も理想もなく、このまま漠然とアイドル
を続けていて大丈夫なのだろうか。地味でも堅実に働いていた方が良かったのでは
ないだろうか。最近になって、昔を懐かしむ事が多くなりました)
美優「今日は17時からボイスレッスンだけね……」
美優(シンデレラになることを夢見て入ったアイドル事務所ですが、最近迷っていました。
やっぱり普通のOLだった私には、敵わぬ望みだったのでしょうか……)
11: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:15:36.37 ID:bQXDSAAk0
―17:00・レッスン場にて―
真奈美「本日急遽レッスンを行う事になった木場だ。トレーナーは熱を出してダウンした。
この事務所には皆と同じアイドルとして所属しているが、前職はトレーナー
だったので技術指導は大丈夫だ。よろしく頼む」
頼子「はい……」
のあ「…………」
美優「よ、よろしくお願いします……」
真奈美「声が小さあああああいっっっ!!!!!! 」クワッ
頼子・美優「「 !? 」」ビクッ
のあ「…………」
12: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:16:57.54 ID:bQXDSAAk0
真奈美「おっとすまない、ついつい昔のくせが出てしまった。皆は歌手活動は行ってない
のだったな。しかし今後歌う事もあるかもしれないし、人前で話す事も必要に
なるかもしれない。だからボイスレッスンもしっかり受けてくれ」
頼子・美優「「は、はいっ!」」
真奈美「いいな、のあ?」ジロ
のあ「…………お願いするわ」ボソ
真奈美「前途多難だなこれは……」ハア
13: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:18:17.19 ID:bQXDSAAk0
***
真奈美「頼子、背筋を伸ばして。ではもう一度。ラーラーラーラー……♪」
頼子・美優・のあ「「「ラーラーラーラー……♪」」」
美優(確か木場さんって先月入ったんだっけ。もうあんなに堂々としているなんて
すごいなあ。私なんて最初の1ヶ月誰にも話かけられなかったのに……)
美優(前職はトレーナーさんって言ってたっけ。やっぱり留美さんや瑞樹さんみたいに
社会人から転職した人はしっかりしているなあ。全然敵わないよ……)
14: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:19:13.69 ID:bQXDSAAk0
真奈美「美優さんどうしましたか?何やら上の空のようだが」
美優「あ、す、すみませんっ!」ハッ
真奈美「そんなに緊張しなくても結構ですよ。私はあなたより年下なんだから。手を
抜かれては困るが、もっとリラックスしてやりましょう」ニコ
美優「ご、ごめんなさい……」シュン
真奈美「では最初からもう一度。のあ、お前はもう少し声を出せ」ジロ
のあ「………………らー」
15: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:20:30.92 ID:bQXDSAAk0
美優(のあさんは前は何をしていたのかしら。でもいつも悠然と構えているし、自分に
確固たる自信があるのね。そういえば木場さんと一緒に、自信ありそうな元気な人
が何人か来たって聞いたわ。確か元婦警さんと元スチュワーデスさんと……)
レナ「真奈美―――――っ!いる―――――っ?」バーン!!
頼子・美優「「 !? 」」ビクッ
真奈美「……なんだレナ。今はレッスン中だから後にしてくれないか?」
16: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:22:02.31 ID:bQXDSAAk0
レナ「あらそうだったの。じゃあ終わるまで待たせてもらうわ♪ いや~早苗さんと夏美と
飲みに行くつもりだったけど、両方ともパッショングループのミーティングだとか
で無理になっちゃってさ~」
真奈美「私はレッスンがあるから断ったはずだが。まあいい、遅くなっても構わない
なら付き合おう。ただしそこで待たれていても気が散るから、お前もレッスンに
参加していけ」ジロ
レナ「え~!? 私競馬番組のリポートで疲れてるんだけど~」
真奈美「問答無用。嫌なら出て行け。ただしその場合は今夜の飲みもナシだ」ニヤリ
17: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:23:04.82 ID:bQXDSAAk0
レナ「うう、真奈美が冷たいよう…… 初めて会った頃は『レナ先輩♪』って可愛く慕って
くれたのに」シクシク
真奈美「そんな事実は存在しない。すまない皆、予定外だがレナも入れて構わないか?
邪魔をしたらすぐにつまみ出すから」
美優「私はいいですけど……」
頼子「私も……」
のあ「…………………らー」
18: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:24:14.93 ID:bQXDSAAk0
真奈美「よし、じゃあ再開しようか。実に癪だがレナは元ディーラーで、人前で話す事に
慣れているから発声など参考になる点は多いと思う。レナもお手本になるように、
しっかりやってくれよ」
レナ「わかってるわよ。よろしくねみんな!真奈美コワかったでしょ?でも本当は良い子
だから、みんなも仲良くしてあげてね♪」キラン☆
真奈美「よ、余計な事を…… じゃあもう一度最初から始めるぞ。ラーラーラーラー……♪」
頼子・美優・のあ・レナ「「「「ラーラーラーラー……♪」」」」
美優(真奈美さんとレナさんは仲が良いのね…… 私は仕事の中でも外でも、あんな風に
遠慮なく付き合える人いないわ。小さい子達は慕ってくれるけど……)
19: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:25:01.90 ID:bQXDSAAk0
***
真奈美「よし、じゃあ今日のレッスンはここまでとする。家でしっかり復習してくれよ」
頼子「ありがとうございました……」ペコリ
美優「ありがとうございました(ふう、結構しんどかったわ)」ペコリ
のあ「ありがと………………らーらー」スタスタスタスタ……バタン
20: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:25:54.76 ID:bQXDSAAk0
真奈美「相変わらず何を考えてるのかよくわからないな。悪い奴ではないんだが……」
レナ「なになに?あの銀色ちゃんと知り合いなの?」
真奈美「先週モデルの仕事で一緒だった。一日中隣にいたが、片手で数えるほどしか
話していない。あれでちゃんと仕事が務まっているのだろうか」
レナ「しゃべらなくてもあの子才能ありそうだし、きっちり結果は出すタイプでしょ。
だったら余計な会話はいらないんじゃない?」
21: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:26:44.01 ID:bQXDSAAk0
真奈美「それはそうだが、しかしそう言われてしまうと私の立場がないな。やはり自分の
主義主張はしっかり言葉にして相手に伝えないと」
美優(自分の主義主張は言葉にして……か。そんなの全然持ってない私は、一体何を
しゃべればいいのかしら…… きっと頼子ちゃんも……)チラ
頼子「…………」プルプル
美優「?どうしたの頼子ちゃん?顔色が悪いけど……」
22: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:27:20.40 ID:bQXDSAAk0
頼子「…………ぐすっ」ポロポロ
美優「え!? わ、私何か言っちゃった!? 」ギョッ
真奈美「ぬあ!? お、落ち着け頼子!? レッスンが辛かったのか!? 」アタフタ
レナ「あ~あ、なーかしたーなーかしたー♪」ケラケラ
真奈美「お前は黙ってろ!」クワッ!!
23: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:28:13.98 ID:bQXDSAAk0
頼子「ひっ、ご、ごめ、ごめんなさい……」ビクッ
真奈美「いや、頼子に言ったんじゃない、だから謝らないでくれ……」
美優「だいじょうぶだいじょうぶ、ゆ~っくり深呼吸して。誰も怒ってないから、理由を
教えてくれないかな……?」ポンポンナデナデ
24: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:28:57.25 ID:bQXDSAAk0
レナ「優しいねえ美優さんは。それに比べてどこかの女コマンドー殿は……」ニヤニヤ
真奈美「」ズーン
レナ「ちょ!? 冗談よ冗談!真に受けないでよ!? 」アセアセ
頼子「ひっく……ひっく……」ポロポロ
美優「だいじょうぶ、だいじょうぶだから……」ヨシヨシ
25: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:29:58.78 ID:bQXDSAAk0
***
頼子「ご、ご迷惑をおかけしました……」グス
美優「ううん、全然迷惑だなんて思ってないよ。もう大丈夫なの……?」
頼子「はい……三船さんもありがとうございました……」ペコリ
美優「いいよ全然。それよりどうしたの?言いたくなかったら言わなくてもいいけど……」
26: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:30:45.92 ID:bQXDSAAk0
頼子「いえ、ちゃんと言います…… 言葉にしないと伝わりませんから……
そうですよね……?」チラ
真奈美「う、うぐ…… そうしてくれると私も助かるが……」ビク
レナ「何ビビッてんのよ。あんたは今日はトレーナーなんだからもっと堂々としてなさい」
真奈美「そうは言っても、全く心当たりが無いのに急に泣かれるとだな……」
27: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:31:57.76 ID:bQXDSAAk0
頼子「木場さんは悪くありません…… ただ私、自分がどうしていいのかわからなく
なっちゃって……」
美優(ああやっぱり。この子も私と同じなのね……)
頼子「アイドルなんて柄じゃないって分かってましたけど、それでもスカウトされた時は
夢を見ちゃって…… でもただ華やかな世界に憧れていただけで、具体的な目標とか
全然なくて……」
美優(私も一緒。ただプロデューサーに言われた仕事を毎日こなすだけで、自分の
やりたい事や主義主張なんて全然なくて……)
28: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:33:03.12 ID:bQXDSAAk0
頼子「それでもプロデューサーは気にしないでいいって言ってくれて、私のために
レッスンのスケジュールを組んでくれるのに、でも私は歌もダンスも全然ダメで、
今日も皆さんの足を引っ張っちゃって……」
真奈美「いや、お前よりのあの方がひどかったが。そもそもあいつ、今日ほとんど
声出してなかったし……」
美優(でものあさんは私達とは違う。あの人は歌わなくても、それくらいで自分を見失う
ような弱い人じゃない。きっとしっかりした自分の主義があるのでしょう)
29: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:33:50.87 ID:bQXDSAAk0
頼子「人前で話すのも苦手だし、地味で猫背気味の私がアイドルになるなんて、やっぱり
無理なんです…… ましてやシンデレラなんて……」グス
美優「頼子ちゃん……」
真奈美「ふむ、なるほど……」
美優(出来れば励ましてあげたいけど、頼子ちゃんと同じ悩みを抱えている私には
無理だわ。でもこのままだとこの子は事務所を辞めてしまう。一体どうすれば……)
30: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:34:40.58 ID:bQXDSAAk0
レナ「ねえ頼子ちゃん、シンデレラってどんな女の子だったっけ?」
頼子「え?な、何ですか急に……」ビク
美優(レナさん……?)
レナ「確かあのお話って、イジワルな継母と義姉に虐められていた女の子が魔法使いに
お姫様にしてもらって、お城のパーティーに参加して王子様とダンスして、ガラス
の靴を落として、それを拾って追いかけてきた王子様と結ばれる話よね?」
頼子「は、はい。そうですけど……」
31: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:35:26.83 ID:bQXDSAAk0
レナ「じゃあシンデレラってどんな子だったの?身長は?体重は?スリーサイズは?
趣味は?好きな食べ物は?好みのブランドや男のタイプは?」
頼子「え?え?え?」ドギマギ
真奈美「おいレナ、突然何を……」
レナ「ちなみに私は知ってるわよ。教えてあげよっか?」
美優(え?そんなのお話に書いてあったかしら……?)
32: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:36:52.52 ID:bQXDSAAk0
レナ「身長167センチ、体重48キロ、3サイズは上から92‐56‐84、趣味はトランプで
好きな食べ物はお酒に合う物ならなんでも。好みのブランドはCOPAGで、男の
タイプはギャンブルに強い人かな♪」
頼子「それって……」
真奈美「それはお前の事だろう。何を言うかと思えば……」ハア
レナ「でも違うとも言いきれないでしょ?シンデレラがどんな女の子だったかなんて
どこにも書いてないんだから。だったら私がシンデレラでもいいじゃない?」フフン
美優(確かに……そうだけど……)
33: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:38:38.59 ID:bQXDSAAk0
レナ「それにシンデレラの目的が王子様をゲットする事だったら、私だったらもっと
徹底的にやるわよ。魔法使いには好みのドレスが出るまで何回でもやり直し
させるし、ガラスのヒールだってデザインに注文つけるわよ。魔法使いと私の趣味
が合わなかったらサイアクだしね」
真奈美「お前は自分を救いに来たありがたい魔法使いさんに何てひどい事をするんだ」
レナ「まあそれは魔法で何とかなったとしても、でもカボチャの馬車は戴け無いわね。
何となくだけど、馬車って乗り心地悪そうじゃない?私だったらパンプキンカラー
のフェラーリを準備してもらうわ。それで王子様のいるお城の前に颯爽と
乗り付けるの。そっちの方がクールでしょ?」
頼子「パンプキンカラーのフェラーリって……くすっ」
美優(確かに、レナさんならやりそう……)
34: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 19:40:06.03 ID:bQXDSAAk0
レナ「それでガツンと決めて王子様のハートをゲットしたら、12時で魔法が切れても
ふられないわよ。ていうか私だったら家に帰らないし。もしイジワルな継母と
義姉がお城に乗り込んできても王子様に守ってもらうわ。彼にはそれくらい
してもらわないと、出来ない男はこっちからお断りよ」
真奈美「シンデレラはそんな傲慢な女じゃないぞ。もっと心優しくて、清貧を絵にかいた
ような清らかな娘だったと思うが」
レナ「そんなの幻想よ。だいたい毎日いじめられて灰をかぶったような女が、まともな
神経してるわけないじゃない。きっと負け癖がついちゃって、卑屈でジメジメ
してるに決まってるわ。そんな女が魔法でちょっと綺麗に着飾ったくらいで
お姫様になんてなれないわよ」
美優(そうよね…… 魔法の力でも、人間の内面までは変えられないわよね……)
38: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:00:25.26 ID:bQXDSAAk0
レナ「だからね頼子ちゃん、あなたはあなたのなりたいシンデレラになればいいのよ。
そうしたらきっと素敵なアイドルになれるわ。大丈夫、あなたはプロの目に
留まった逸材なんだから。だからもっと胸を張りなさい」
頼子「私のなりたいシンデレラ……?」
真奈美「レナの話は無茶苦茶な部分もあるが、しかしシンデレラやアイドルに明確な定義
はないというのは同意出来る。歌が歌えなくたって、お前は十分輝いているぞ。
私達にはない滲み出る知性はお前の武器だ」
頼子「そ、そんな…… 私なんて……」カアア
39: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:01:34.80 ID:bQXDSAAk0
レナ「そうそう。キラっと光るメガネがクールよね。私だったら企画モノの女教師に……」
真奈美「例えが下品だ。未成年の前では慎め」ビシッ
レナ「あうっ」
美優(わかってしまう自分が悲しいわ……)
40: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:02:49.86 ID:bQXDSAAk0
真奈美「ボーカルトレーナーの私としては歌も続けて欲しいが、もっと色々な事に目を
向けてチャレンジすればいい。それにレナ風に言わせてもらえれば、シンデレラ
はひとりだけだが、おとぎばなしのお姫様や王子様は他にもいるんだ。頼子は
頼子だけの物語のお姫様になればいいさ」
レナ「わ、真奈美がロマンチックな事言ってる。メモっとこっと♪」
41: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:03:28.48 ID:bQXDSAAk0
真奈美「と、とにかくだ、私はお前の将来を全く心配してないし、お前も全く不安に思う
事はない!以上だ!」カアア
レナ「『おとぎばなしのお姫様や王子様は他にもいるんだ(低音)』」キリッ
真奈美「レナ―――――ッ!!」
レナ「じゃあね美優さん頼子ちゃん♪まったね―――――☆」
42: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:04:27.42 ID:bQXDSAAk0
マテ――――ッ!! イヤ―――ン♪ バタバタバタバタ……
美優「に、にぎやかな人達ね……」ポカーン
頼子「ふふ…… でも元気が出ました」クスクス
美優「それなら良かったわ…… 私も頼子ちゃんなら、きっと素敵なアイドルになれると
思うわよ。だから頑張ってね……」
43: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:05:28.96 ID:bQXDSAAk0
頼子「ありがとうございます…… 美優さんにそう言われると自信がつきます」ニコ
美優「そ、そんな、私なんかが言っても……」アタフタ
頼子「いえ、美優さんはいつも事務所にお香を焚いたり、お茶やお菓子を用意してくれて
アイドルのみんなに気を配ってますよね。小さい子にも慕われているし、私ずっと
すごいと思ってました」
美優「あ、あれは趣味でやってるだけで…… それにお茶やお菓子の準備は前の会社で
私の仕事だったから……」カアア
44: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:06:29.97 ID:bQXDSAAk0
頼子「そういう事をさりげなく出来て、みんなが快適に過ごせる空間を作れるのは簡単な
事ではありませんよ。だから美優さんも、もっと自信を持って下さい」
美優「あ、あうう……」プシュー
頼子「ふふ、『アイドルに定義はない』か…… そうですよね、私何をこだわっていたの
でしょうか……」クスクス
美優「物語が気に入らないなら、自分が脚本家になって変えてしまえばいいのね。ドレス
もガラスの靴もカボチャの馬車も、与えられたものでは満足できないしね」クスクス
45: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:07:27.35 ID:bQXDSAAk0
頼子「そうですよ!王子様を恰好よくさらうルパンみたいなお姫様がいてもいいと
思いませんか!? 」キラキラ
美優「ルパン……?」キョトン
頼子「あ…… すみません私推理小説とか好きで…… やっぱり変ですよね……」シュン
美優「いいんじゃない?怪盗ヒロイン。昔セ○ントテールってアニメがあってね……」
END
46: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:09:32.64 ID:bQXDSAAk0
―おまけ―
~レッスン場外にて~
真奈美「全く、レナにはいつもおいしいところを持っていかれてしまう」ハア
レナ「決めゼリフは譲ってあげたでしょ?『頼子は頼子だけの物語の……(低音)』」
真奈美「やめてくれ。今になって顔から火が出そうだ……」カアア
レナ「ふふ、真奈美の弱点みーっけ♪」ニヤニヤ
47: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:11:17.97 ID:bQXDSAAk0
美優「まってくださ~い!」パタパタ
レナ「あれ?美優さんどうしたの?」
真奈美「何か忘れ物でもありましたか?」
美優「はあ……、はあ…… よかった間に合った…… あ、あの、私もご一緒させて
ください。よろしくお願いしますっ!」ペコリ
48: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:12:43.84 ID:bQXDSAAk0
真奈美「それは構わないが…… しかし良いのか?私達に付き合うと遅くなるぞ?明日の
仕事に影響が……」
レナ「な~にカタい事言ってるのよ!人数多い方が楽しいでしょ♪ 美優さんだってオトナ
なんだから、セーブくらい出来るわよね?」
美優「は、はいっ、お酒は強い方なので大丈夫です!」
レナ「よしケッテ~イ!今夜は飲むわよ~!」
真奈美「ふむ、美優さんも一緒となるとあまり変な所には行けないな…… ここから近くて
安全な所と言えば……」
49: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:14:05.75 ID:bQXDSAAk0
***
―都内居酒屋―
レナ「……ど~~~してここなのよ。私の運気が下がるんだけど?」ムス
真奈美「他意はない。ここが一番近かっただけだ。それにギャンブラーだか何だか
知らんがそんなのは迷信だ。いつまでも辛気臭い顔してないで楽しく飲め」グビ
美優「あ、あのすみません…… 私が気を遣わせてしまったみたいで……」オロオロ
50: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:14:54.12 ID:bQXDSAAk0
レナ「ううん、美優さんは悪くないよ。そうよね、お酒は楽しまないとね!それじゃあ
切り替えて飲もっか!美優さん何注文する?」
真奈美「そうだな。私は麻婆ナスと焼きナスとナス田楽と……」
レナ「わざとよね!? あんたわざとやってるわよね!? 」ガタッ
美優「お、おちついてください……」アタフタ
51: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:15:46.58 ID:bQXDSAAk0
「バッキャロー!やってられっかー!」ガチャーン
「落ち着きなさい。わかった、わかったから」
真奈美「何だ、隣も随分にぎやかだな」ヒョコ
レナ「ケンカでもしてるのかしら?ウチも人の事言えないけど」ヒョコ
美優「あれ……?何だかこの声聞き覚えが……」ヒョコ
52: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:19:18.95 ID:bQXDSAAk0
瑞樹「あら?美優ちゃん?それから真奈美ちゃんと……キュートのレナちゃんだっけ?」
美優「み、瑞樹さん!? どうしてここに!? 今日は向こうのスタッフさんと一緒じゃ……」
瑞樹「ええ。そのつもりだったんだけど、カウンターで一人で飲んだくれてるこの子を
見かけて放っておけなくて。仕方ないから一緒に連れて抜けてきたのよ」
真奈美「ほう、連れがいるのか?ん、確かこの女……」
53: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:20:19.45 ID:bQXDSAAk0
留美「ぬわ~にが、『表情がカタいね』だよ!んな事はわかってんだよ~!」ヒック
美優「留美さん!? 」ギョッ
留美「み~ゆ~!! オンナらしさって何~!? やわらかい笑顔ってどんなの~!?
うえええぇぇぇぇええん……」ダキッ
美優「え?え?ええぇ~っ!? 」
54: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:21:13.37 ID:bQXDSAAk0
レナ「あちゃ~、すっかり出来上がっちゃってるね~ せっかくだから一緒に飲む?」
瑞樹「そうしてくれると助かるわ。一人で二人の酔っ払いの面倒を見るのは大変でね。
もう一人は留美と違って大人しいんだけど……」
真奈美「ん?奥にもう一人いるのか?」ヒョイ
55: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:23:05.80 ID:bQXDSAAk0
のあ「…………………………全然声が出せなかったわ」ズーン
真奈美・レナ「「アンタかい!! 」」ズコー
美優(のあさんまで…… 留美さんものあさんも、私が知らなかっただけで泣いたり
落ち込んだりする事があるの……?)
56: 訂正>>55 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:24:43.59 ID:bQXDSAAk0
のあ「…………………………全然声が出せなかったわ」ズーン
真奈美・レナ「「アンタかい!! 」」ズコー
美優(のあさんまで…… 留美さんものあさんも、私が知らなかっただけで泣いたり
落ち込んだりする事があるの……?)
57: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:26:15.44 ID:bQXDSAAk0
***
留美「ぐすん……すん、すん……」
美優「よしよし。もう大丈夫ですよ……」ナデナデ
のあ「zzzzz……」
瑞樹「ふう、ようやく静かになったわ。ありがと三人とも。これでゆっくり出来るわ」
58: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:27:19.66 ID:bQXDSAAk0
真奈美「いや、私達は特に何もしてない。礼は美優さんに言ってくれ」
レナ「しっかし瑞樹さんもよくやるわね。私だったら他人のフリするけど」
瑞樹「前の職場ではよく後輩の愚痴を聞いてあげてたからね。この子達も可愛気はない
けど、何だか放っておけないのよ」
美優「瑞樹さんは知ってたんですか?留美さんやのあさんが本当は普通の人だって……」
59: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:28:30.95 ID:bQXDSAAk0
瑞樹「美優ちゃんの言う普通がよく分からないけど、自分を強く見せようとしている人間
ほど本性は臆病で弱いものよ。だから人より一所懸命頑張るんだけどね。私だって
偉そうにしているけど、それほど大したことないわよ」
真奈美「至言だな。プライドで飯は食えないが、プライドが無ければ人間は戦えない。
どんなに自分が弱くても、敵に弱味を見せるわけにはいけないしな」
レナ「私だったらその弱味すら武器として利用するけどね。そっちの方が敵が油断する
でしょ?人生は勝負の連続なんだから、使えるものは何でも使わないと♪」
60: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:29:37.27 ID:bQXDSAAk0
美優「みなさん色々考えてるんですね……」
瑞樹「そこまで難しく悩む必要はないわよ。美優ちゃんみたいに自然体でいるのが
一番だわ。誰も好き好んで戦ってるわけじゃないし、避けられるなら避けるに
越した事はないのよ」
真奈美「そうだな。無敵とは最強という意味ではなく、敵がいないという事だ。美優さん
ならその境地に辿り着けるかもな」
レナ「まあ美優さんも楽しくアイドルすればいいのよ。このメンツでお嫁さんにしたい
アイドル投票したら、間違いなく美優さんがぶっちぎりで一位よ」ケラケラ
61: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:30:32.02 ID:bQXDSAAk0
美優「お、お嫁さんって……」カアア
留美「むにゃ……みゆ……、いつもありがと……」スヤスヤ
瑞樹「ふふ、この子ずっと『美優がうらやましい』『美優みたいに可愛くなりたい』って
言ってたのよ?だから美優ちゃんも、これからはこの子とも一緒に飲みに行って
あげてくれないかしら?」
美優「そ、そんな…… むしろ私が留美さんみたいになりたいのに……」
62: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:31:29.46 ID:bQXDSAAk0
レナ「いいんじゃない。一周回って今はまた古風な日本女性がモテる時代よ。私も
美優さんから女らしさの極意を知りたいわ♪」
真奈美「これでも家庭的だと自負している私だが、美優さんには敵いそうにないな。
私もあなたの癒しとおしとやかさについて、ぜひご教授願いたい」
美優「あ、あはは…… 私に教えられる事でしたら……」テレテレ
63: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:32:36.68 ID:bQXDSAAk0
美優(勇気を出して真奈美さん達とご一緒させてもらって本当に良かった…… 自分を
変える事って、意外と難しくないのかもしれないわね…… おとぎばなしに出てくる
お姫様みたいな姿をした自分はまだ想像出来ないけど、でも少しずつ変わって
物語を作っていけば、いつかきっと私も……)
おわり
64: 1 ◆Wi/8f2BHo6 2013/03/11(月) 20:35:33.58 ID:bQXDSAAk0
以上。美優さん可愛いよ美優さんのはずだったが、レナさんカッコいいよ
レナさんになってしまった。ちなみに本編は普通に読めるように作りましたが、
おまけは
兵藤レナ「遊んで行かない?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1362832266/
を読むとより楽しめます。では。
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