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SS速報VIP:服部瞳子「アシンメトリー」
1: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:13:17.69 ID:T1Wm4Z7X0
―レッスン場―
真奈美「かはっ、はぁ……はぁ……」
千秋「ぜぇ……ぜぇ……」
マストレ「はっはっはっ、そんなもんか真奈美~!トレーナー辞めてたるんでないか~?」
真奈美「わ、私は元々ボーカル専門だ……」ハア…ハア…
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11: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:27:36.19 ID:T1Wm4Z7X0
マストレ「まあいい、千秋とドリンクでも飲んで休憩しとけ。瞳子、泰葉、問題ないな?」
瞳子「ええ、余裕よ……」フウ…フウ…
泰葉「お願いします」
真奈美(レッスンはトレーナー四姉妹に合わせて内容が4段階に分かれている。末の
妹から順番に初級、中級、上級、そして長女のマストレの最上級コースだ。
私は普段のダンスレッスンは上級コースを受けているのだが、最近少し物足り
なくなっていたので、今日は試しに最上級コースを受けてみた)
マストレ「ずれてるぞ瞳子!ステップが遅れてるからドタバタするんだよ!」パンパン
瞳子「ぐ……」ドン、ドドン
マストレ「泰葉は表情を意識しろ!能面みたいな顔で踊られると不気味だ!」パンパン
泰葉「はい」タン、タタン
真奈美「あいつらは化け物か……?」
真奈美(正直甘く見ていた。クールでダンスのマスターコースを受けているのは現在3名。
内一人は女子高生だと聞いていたので、私でも何とかなると思っていた。しかし
次元が違ったようだ……)
千秋「ぐ……ううぅ……」ポロポロ
真奈美「あ~、なんて言うかだな、そう気を落とすな千秋。お前の歌唱力は素晴らしいし、
ダンスも上級ならこなせるのだろう?だから気持ちを切り替えてだな……」
千秋「お節介はいらないわ…… アナタに私の気持ちなんてわからないわよ……」バタン
マストレ「なんだ、また途中で帰ったのかアイツ。根性があるのかないのかわからんな」
瞳子「どうせ次回も来るでしょう。さぁ、続きをやりましょう」フウ…フウ…
泰葉「いえ、そろそろ終了の時刻です。クールダウンに入りましょう」
瞳子「まだ10分あるでしょう?1曲くらいは踊れるわ」
泰葉「無理をしても技術は身に付きませんよ」
瞳子「余計なお世話よ!あんたはそれでいいかもしれないけどね……!」イラッ
真奈美(ずいぶん殺伐としているな。同じコースを受けているメンバーなのだから、
もっと仲良くすれば良いと思うのだが―――――)
―夜・都内居酒屋―
レナ「で、このザマなわけ。だらしないわね、あんたそれでも元トレーナー?」
真奈美「すまない…… 久々にこのメンバーで集まる事が出来たのに……」グッタリ
早苗「無理しちゃダメよ真奈美ちゃん、今日は早めに切り上げてゆっくり寝なさい」
夏美「ま、仕方ないね。ちょっと前までぶっ倒れてたんだし」
レナ「お、そうだそうだ♪ウワバミ四天王との対決の様子教えてよっ!」ワクワク
真奈美「今日は勘弁してくれ。それにあの夜の事はしばらく話したくない……」ゲンナリ
レナ「え~!つまんな~い!今日はその話を楽しみにしてたのにぃ~!」ブーブー
早苗「そのくらいにしときなさいレナちゃん。今日は真奈美ちゃんのリハビリも兼ねて
いるんだから。こうしてお酒が飲めなくなるのも嫌でしょ?」
真奈美「いや、私は酒に潰されたというよりは楓に潰されたのだが。 怒涛の駄洒落
ラッシュに対応出来ずに悪酔いしてしまったのだ……」
夏美「そんなのいちいち答えなくていいのよ。変な所で融通が利かないんだから……」
レナ「ところでそのあんたと同じ年のマスターレベルの子、なんて名前だっけ?」
真奈美「ああ、服部瞳子だ。何でも元アイドルで、一度引退したもののまた復帰した
らしい。しかしブランクを感じさせないほどレベルは高いぞ」
夏美「へえ、面白そうな子ね。一度一緒に飲んでみたいわ」
真奈美「私もそう思ったのだが断られてしまった。ストイックにレッスンに打ち込んで
いるし、アスリート並に健康管理に気を遣っているのかもな」
早苗「無理強いするのはよくないわね。残念だけど飲めない人は全く飲めないんだし」
レナ「真奈美がこのザマなんだから、案外その子も今頃ひっくり返ってたりして♪」ケラケラ
真奈美「お前も一度受けてみろよ。舐めてかかると冗談抜きで死ぬぞ……」ギロ
―同時刻・隠れ家的な小さなダーツバーにて―
瞳子「泰葉相手にムキになるんじゃなかったわ……」グッタリ
菜々「だ、大丈夫ですか瞳子ちゃん!? 顔色悪いですよ!? 」アセアセ
瞳子「いえ、お気遣いなく。今日はゆっくりやりますけど、別に菜々さんは合わせて
くれなくてもいいですから……」
菜々「唯一の飲み友達が苦しんでいるのに、ナナだけ楽しめませんよ!」
瞳子「お互い苦労しますね。アイドル活動一筋でお酒を覚えるのが遅くなってしまった
私と、(永遠の)17歳でデビューしたばかりに堂々とお酒を飲めない菜々さん。
私達って大人としてどうなんでしょうね……」ズーン
菜々「だからナナ、瞳子ちゃんには感謝してるんですよ?人目につかずに飲めるお洒落な
お店を教えてもらって。いつもは一人で家飲みですから」
瞳子「たまたま同じグループにダーツが好きな子がいまして、その子に教えてもらった
んですよ。その子は未成年だから一緒に飲めないんですけどね。私も菜々さんと
お酒の練習が出来るし、お互い様です」
菜々「売れないアイドル時代を一緒に過ごした瞳子ちゃんだからこそですよ。不思議な
縁で同じ事務所になったことですし、これからもお願いします」ペコリ
瞳子「こちらこそ。アイドルの大先輩の胸をお借りします」ペコリ
菜々「ちょっと!? そんなに年変わらないでしょ!それに今の事務所ではナナは17歳
なんですからね!? だから敬語も禁止です!」プンプン
瞳子「そうでしたね。ウサミン星からやって来た(永遠の)17歳……ぷっ」
菜々「今笑いましたね!? 先輩をバカにしましたね!! 」キー!
***
菜々「でも瞳子ちゃんもだいぶ強くなりましたし、そろそろ他の人と飲んでみたら
どうですか?美優ちゃんや瑞樹ちゃんはその辺り弁えていると思いますから、
きっと楽しめると思いますよ?」
瞳子「確かに何度かお誘いは受けてはいるんですけど、美優さん達のメンバーの仲には
レナさんがいるじゃないですか……」
菜々「ああ、レナちゃんですか。ナナもちょっぴりムカっときちゃう事があります。
あの子はいつも飄々としてますもんね……」
瞳子「一方的な嫉妬だって事は分かってるんですけどね。でも私が苦労して地道に歩いて
来た道をあの人はあっさりショートカットして、あっという間に同じステージに
立ったんです。恨み言も言いたくなりますよ」
菜々「元ギャンブラーでしたっけ?ド○クエに出てきそうな遊び人で人生ナメてますよね。
ナナと[ピ――]歳しか変わらないのに、スタイルもあんなに良いし……」ブツブツ
瞳子「スタイルの話はやめましょう。年齢の話以上にダメージが大きいです……」ズーン
菜々「だ、大丈夫ですよ瞳子ちゃん!そんな事言ったらナナはどうなるんですか!?
年確される度に免許証出して、キャラ作ってるのがバレて……うう……」ズーン
瞳子「や、やめましょう辛気臭い話は!」アセアセ
菜々「そ、そうですね!楽しくいきましょう!」カンパイ
瞳子(でも実際、レナさんは華があって私よりアイドルに向いているのよね。歌とダンス
は負けない自信があるけど、今はそれだけでは通用しない時代だし。私が必死に
なって追いかけてきたアイドル像は、もう古いのかもしれないわね――――)
―数日後・熱帯魚店―
瞳子(やっぱり熱帯魚は綺麗ね。見ていて飽きないわ……)ジー
トン
瞳子「あ、すみません」
泰葉「いえ、こちらこそ…… 瞳子さん?」
瞳子「泰葉?どうしてここに……?」
泰葉「レッスンまで少し時間があったので。瞳子さんもですか?」
瞳子「そんなところよ。事務所の外で会うのは珍しいわね」
泰葉「もしかしてお昼まだですか?よかったらご一緒してくれませんか?この近くに
行きたいカフェがあるんですけど、私一人で入る勇気が無くて……」モジモジ
瞳子「驚いたわ…… あなたでも今時の女子高生みたいな事を言うのね……」ポカン
泰葉「今時の女子高生ですから。業界に長く居過ぎて枯れてしまいましたけど」ニコ
瞳子「ふふ、意外と面白いのねあなた。いいわよ、それじゃあ行きましょうか」
―カフェ―
瞳子「へえ、ドールハウスの参考にアクアリウムを……」
泰葉「小さな世界を作って表現するという点ではこの二つは似ていると思うんです。
最近はアクアリウムでも水槽内に陸や海を表現して……」ペラペラ
瞳子(事務所では全くそんな素振りを見せないのに、自分の趣味の話になると饒舌なのね
この子。レッスン中は無機質なロボットみたいなのに)
泰葉「あ、すみません私ばかり話してしまって。退屈ですよね……」シュン
瞳子「いいわよ別に。でもあなたよくしゃべるのね。事務所やレッスン中でも話して
くれたらいいのに。あなたも千秋も全然喋らないから、私も遠慮してるのよ?」
泰葉「仕事場では自分を出せないようにプログラムされてますから……」ボソ
瞳子「え…… やっぱりあなたロボ……!?」ギョッ
泰葉「ふふ、冗談ですよ。でも私は物心がつく前から芸能人として、当時の事務所に
徹底的に訓練を受けました。台詞や振付けは一度で覚える。カメラを向けられたら
どんな状況でも表情を作る。余計な感情は一切排し、仕事場では自分を殺す。
まるでロボットみたいだと思いませんか?」
瞳子「今の自分に不満があるの……?」
泰葉「そうとも言い切れませんけどね。おかげでマストレさんのレッスンについて行けて
ますし。でもあのハードなレッスンを平気でこなせる自分が正直気持ち悪いです」
瞳子「自分のなりたいアイドルの理想像とズレがあるって事……?」
泰葉「私本当は、菜々さんみたいな可愛いアイドルになりたかったんです。菜々さんは
昔から私の憧れでした。子役モデルから転身したのは菜々さんの影響が大きいです」
瞳子「今年一番の衝撃だわ…… でもあの人、この事務所では17歳って事になってるから
本当の歳を知っててもバラしちゃダメよ」ヒソヒソ
泰葉「ウサミン星人ですもんね。私は昔の瞳子さんも好きでしたよ。クールでキリっと
していて、とっても恰好良いって思ってました」ニコ
瞳子「昔の菜々さんを知ってるって事は、当然私の事も知ってるわよね…… ほんの一瞬
だけデビューしてすぐに消えたアイドルのどこが恰好良いのよ……」
泰葉「あれはあそこの事務所の売り方が下手だったんです。でも瞳子さんはあれからも
ずっとレッスンを続けていらしたし、私の思っていた通りの恰好良い人でした。
だから今私、お二人と同じ事務所にいるのがとても嬉しいです」ニコ
瞳子「まさかあなたにそんな事を言われるなんてね。私はあなたの才能が羨ましくて、
ずっとあなたに負けないようにと思ってレッスンを頑張っていたのに」
泰葉「私みたいになってはいけませんよ。私がレッスンをしているのは、プログラムを
破壊して本当の自分が出せるようにする為です。今の事務所とはそういう契約を
結んでいるので。だから本格的に活動するのはもう少し先になりそうですね」
瞳子(いつも涼しい顔をしているのに、この子も苦労しているのね。どれだけ技術が
あっても、理想の自分と違ったら納得できないのかしら―――――)
***
―レッスン場前―
瞳子(あの後泰葉は『たまにはレッスンをサボってみます。ふふ、反抗期っぽくてロック
だと思いませんか?』と言って帰ってしまった。そんな事が出来る時点で既に大物
の貫禄が漂っていると思うんだけど。少なくとも私には無理だわ……)
瞳子「仕方ないわ、今日は千秋と二人でやりましょう。たまには私の方から話しかけて
みようかしら」
ガチャ
瞳子「おはようございま……」
レナ「あ、こんにちは~♪あなたが瞳子ちゃん?はじめましてっ!キュートの兵藤レナ
です!真奈美が言ってた通り、マジメそうな子だね!」
瞳子「え…… レナさん、どうしてここに……?」ギョッ
マストレ「おう瞳子来たか。今日は千秋も泰葉も休むそうだから、お前達2人だけだ」
レナ「なんだかよく分からないんだけど、真奈美から千秋って子の代わりにレッスンを
受けて来いって言われちゃって。だから今日はよろしくね!」ニコ
瞳子「安請け合い出来るほどマスターレベルは楽じゃないわよ。大丈夫なの……?」
レナ「だ~いじょうぶだ~いじょうぶ♪それにこれは真奈美との勝負でもあるの。
ギャンブラーとして負けるわけにはいかないわ!」キリッ
マストレ「私も断ろうと思ったのだが、こいつがどうしてもと言うからな。まあ私も
レナがどれくらい踊れるのか興味があるから許可した」
レナ「まかせて!ダンスなら向こうでいっぱいやったから!」フフン
瞳子(やっぱりレナさんとは合わないわ。でもマストレさんが許可したんだし、堅物の
真奈美が千秋の代理を頼んだという事はそれなりに信頼はされているのかしら。
とりあえずお手並みを拝見させてもらいましょうか―――――)
―――
マストレ「驚いたな。早々に潰れるだろうと踏んでいたのに、なかなかやるじゃないか」
レナ「ダンスホール併設のカジノとか向こうには結構あるからね。昔は休憩時間に
ちょっと踊らせてもらったりして遊んだわ」
マストレ「なるほど。伊達にギャンブラーを名乗っていないという事か。瞳子は平気か?」
瞳子「大丈夫よ…… まだまだ行けるわ……」ハア…ハア…
瞳子(いくらレナさんがダンス経験者でも、それだけで負けるわけにはいかないわ……
とりあえず前半耐えたわけだし、後半はペースを抑えてムダな動きをなくして……)
レナ「すごいね瞳子ちゃん。真奈美が褒めるだけの事はあるわ。さすがマスターレベル♪」
瞳子「あなただって凄いじゃない。全然息も切れてないし……」フウ
レナ「ああそれ?それはね……」
<pipipipi…pipipipi……
マストレ「ん?何の音だ?」
レナ「最初から半分だけって決めてたから……」バターン!!
瞳子「え!? ちょ、ちょっとレナさん!? 」ギョッ
レナ「もうダメ…… 死ぬ……」ゼエ…ゼエ…
―――
レナ「はあ~、何とか耐えきったあ~ しっかし凄いねマスターレベル。こんなの人間の
やる事じゃないわよ」アハハ
マストレ「全く、あの余裕が全て演技だったとはな。マンガみたいな奴だなお前は」
レナ「なかなか様になってたでしょ?これが本当のポーカーフェイス、なんちゃんて♪
でももう体が動かないわ。だからここまでね」
瞳子「え?リタイアするの……?」
レナ「真奈美と勝負してたの。『レッスンを半分でも耐えきったら一杯おごる』って。
そうじゃないとこんなハードなレッスン受けに来ないわよ」
マストレ「だからあんなに張り切っていたのか。根っからのギャンブラーだなお前は」
瞳子(なにそれ)
レナ「勝負に勝ったら即撤収!これがギャンブラーの鉄則だからさ♪」
瞳子(なんなのよそれ)
レナ「じゃあね瞳子ちゃん。真奈美と仲良くしてあげてね。あの子不器用だから♪」スタスタ
瞳子「待ちなさいよっ!! 」
レナ「え……?」ピタ
マストレ「瞳子?」
瞳子「あなたの生き方に口を出すつもりはないけど、でも遊び半分で仕事しないでよ!!
こっちは真剣にやってるのよ!! 」
マストレ「おい、瞳子」
瞳子「確かにアイドルの定義や活動は曖昧よ。でもここ(レッスン場)ではみんな必死に
レッスンして自分の土台になる技術と自信を作り上げているの。なのにあなたは
ここでも遊んで中途半端に放り投げて…… ふざけるのもいい加減にして!! 」
マストレ「瞳子」
瞳子「私は今まで死にもの狂いでやってきたの!何年も何年も血の滲むような努力をして、
ようやくここまで辿り着いたの!冷やかしならここに二度と来ないで!! 」
マストレ「瞳子!! 」
瞳子「 !? 」ビクッ
レナ「……あ~あ、こりゃ私の負けね。いい感じで終われると思ったんだけどな」ポリポリ
マストレ「レナ?」
レナ「確かに瞳子ちゃんの言う通りだよね。瞳子ちゃんのテリトリーに土足で入って、
勝手に荒らした私が悪い。ごめんなさい」ペコリ
瞳子「あ…… 」
レナ「ごめんねレッスンの邪魔しちゃって。それじゃね」バタン
シーン
瞳子「どうしてあんなにあっさり引くの……? 一言も怒らないの……?」
マストレ「気にするな。生き方の違いだ。トレーナーの私に言わせれば、どんな理由
があろうとレッスンを途中で放棄する方が悪い。さあ続きをやるぞ」
瞳子(結局もやもやした気持ちが残ったまま、その日のレッスンは終了した。いつもと
違って達成感もなかった。私には理解出来ない。レッスンを途中放棄したレナさん
も、丸々サボった泰葉も―――――)
― 夜・ダーツバー ―
瞳子(菜々さんも誘えば良かったかしら。でも今日は何だか一人で飲みたい気分ね。
こういうのをお酒に逃げるって言うのかしら。明日のレッスンに響かない程度に
程々に…… もういいか。余計な事を考えるのはやめよう)グビ
カランカラン
マスター「いらっしゃい…… おおレナちゃん、久しぶりだな!」
瞳子(レナ……?もしかして……)クルッ
レナ「マスターおひさ~ あれ?瞳子ちゃん?どうしてここにいるの?」
瞳子「レナさんこそどうして……?」
レナ「ここ私の実家の近くで昔からよく遊びに来てたの。そうよねマスター?」
マスター「中学生の時から来てたよな。夜遅くまで遊んでいて、父ちゃんや母ちゃんに
連れ戻されてたっけな」ニヤリ
レナ「もうやめてよそんな恥ずかしい話。マスター、久しぶりに遊ばせてもらうわね。
どうせ誰も来ないんだし、私の貸切って事で」スタスタスタ
瞳子「え?飲みに来たんじゃないの?レナさんもダーツをやりに?」
マスター「いや、あの子は昔からダーツじゃなくてだな……」
レナ「うわっ、ホコリかぶってる!もうマスター、ちゃんと掃除しといてよね!」パタパタ
マスター「うるせえ、ウチはダーツバーだ。ビリヤードやるのはお前だけだよ」
瞳子「ビリヤード……?」
***
レナ「道具の状態はそれほど悪くないか…… マスター、私しばらく日本にいるから、
ちゃんと手入れしといてよ。曲がってるキュー何本かあったわよ!」
マスター「わかったよ」
レナ「さて、と……」スッ
瞳子(キューを構えるレナさん、すごく様になってる。やっぱりこの人はそういう世界の
人間なのね。なのにどうしてアイドルなんて……)
レナ「すぅ――――……、はぁ――――……」ジリジリ
瞳子「……」ゴクリ
レイ「おりゃっ!」
スカッ
瞳子「え……?ミス……?」
レナ「あ、あはは…… 実は私ビリヤードって得意じゃないんだよね~ キューを持つのも
6年ぶりくらいで…… みんなには内緒にしててね?」テヘ☆
瞳子「えええぇぇぇぇぇっっっ!? 」
―――
レナ「む、昔はちゃんと出来てたのよ!? でも駆け出しのディーラーの時にミスショットで
指をケガして、カード切れなくてクビになった事があったから、それ以来ずっと
避けてたの。今もちょっと怖いかな」ポリポリ
瞳子「じゃ、じゃあどうしてやろうと思ったの……?」
レナ「う~ん、さっき瞳子ちゃんに言われたからかな。中途半端に放り投げたままにして
いたから、瞳子ちゃんを見習ってしっかりやろうと思って。私ってこういうの得意
そうなキャラじゃない?なのに出来なかったらカッコ悪いでしょ♪」
瞳子(ああ、そうか。そういう事なのね)
レナ「どれだけ頑張っても、私は瞳子ちゃんみたいなアイドルにはなれないのよね。
ついこの間までディーラーだったんだし、これからも生き方は変えられない。
だからその中で、どうすればアイドルになれるか考えてるの」
瞳子(この人にはギャンブラーとして築き上げてきた土台と信念があって――――)
レナ「瞳子ちゃんから見たら遊んでいるように見えるかもしれないけど、私は人生賭けて
勝負してるの。レッスンは敵わないけど、アイドル勝負なら負けないわよ」ニヤリ
瞳子(私と同じステージで、私と同じアイドルとして、私と全く違う勝負をしている)
レナ「あ、でも今日みたいに時間を限定したり、社交ダンスだったら私にも分がある
かしら。直接勝負は出来るだけ避けて、こちらに有利な状況になるように……」
瞳子「ふふ、あなたは本当にギャンブラーなのね」
レナ「当然!私の人生全てが勝負よ!アイドルになったのも、プロデューサーとポーカー
で勝負して…………」
瞳子「……?勝負してどうなったの?」
レナ「あれは無効よ私は別にあんなゲームしなくてもアイドルになってみようかなって
思ってたしそれに真奈美も乗り気だったし……」ブツブツ
瞳子「よく分からないけど、あなたも落ち込む事があるのね……」
瞳子(泰葉もレナさんも、理想の自分を追いかけながらアイドルをしている。もう二度と
挫折したくなくてただがむしゃらに走っていた私は、いつの間にか理想の自分を
見失っていたのかもしれないわね……)
瞳子「レナさん」
レナ「ん?なに?」
瞳子「私も伊達に10年以上業界にいないわよ。真奈美とまとめて相手してあげるわ」スッ
レナ「上等!そうこなくっちゃね!カジノアイドルの実力見せてあげる!」スッ
レナ・瞳子「「カンパーイ!」」キン
END
―おまけ―
カランカラン
真奈美「何だ、瞳子もいたのか。お前も普通に飲むんだな」
瞳子「真奈美!? 」ギョッ
レナ「あれ?どしたのあんた?こんな所までわざわざ来て」キョトン
真奈美「どうしたもこうしたもないだろう。今日は瑞樹さん達の復帰祝いで一緒に飲もう
って言ってたじゃないか。忘れたのか?」
レナ「あ、そういえばそうだった。すっかり忘れてた」テヘ☆
真奈美「はあ、全くお前は携帯も切ってるし…… もういい、代わりに瞳子を連れて行くぞ」
瞳子「私!? どうして!? 」ギョッ
真奈美「先日酒の席でちょっとした事故があってな。それで皆少し落ち込んでいるんだ。
そういう時はレナみたいなうるさい奴じゃなくて、お前みたいな奴の方がいい。
心配するな、あまり飲めなくても今日なら大丈夫だ」
レナ「ちょっと~?私はどうすればいいのよ~?」ブーブー
真奈美「安心しろ、ちゃんと瞳子の代わりは置いて行ってやる。さっき近くで見かけた
時は家に帰そうと思ったのだが……」
菜々「ど、どうも~……」ヒョコ
瞳子「菜々さん!? 」
レナ「菜々ちゃん?真奈美、あんた頭大丈夫?この子未成年よ?」
真奈美「いや、私もそう思っていたのだが実は……」ゴニョゴニョ
レナ「……失礼しました安部先輩。今まで17歳だと思っていたからすっかり調子こいて
ました。まさか(永遠の)17歳だったとは……プッ」ペコリ
菜々「やめてください!? ナナだって必死なんですよ!! 」キー!
レナ「あっはっはっ!まさか菜々ちゃんが飲める人だったとはね!キュートは若くて
マジメな子ばかりだから、飲む人はいないと思ってたよ!」ゲラゲラ
真奈美「そういう事だ。同じグループ同士仲良く飲んでろ。それじゃ行こうか瞳子」
瞳子「え…… でも……」チラ
菜々「大丈夫です瞳子ちゃん!良い機会ですし楽しんで来てください!ナナの事なら
心配いりませんから!」グッ
レナ「瑞樹さん達によろしくね。私はここで菜々ちゃ……安部先輩と飲んでるから♪」
菜々「『菜々ちゃん』でお願いします!! あと敬語も禁止です!! 」ムキー!
瞳子「そ、それじゃあ…… いってきます!」
菜々・レナ「「いってらっしゃ~い♪」」ヒラヒラ
***
真奈美「今日はすまなかったな。レナがお前のレッスンの邪魔をしたみたいで」
瞳子「それはもういいんだけど。で、あんたは千秋と何をしていたの?」
真奈美「ああ、ダンスレッスンを1ランク下で受けるように説得していた。余計なお節介
だが、ダンスで無茶をしてあのクリスタルボイスが聴けなくなってしまうのは
元ボーカルトレーナーとしては惜しくてな」
瞳子「面倒見が良いのね。でもよくあの頑固な千秋が言う事を聞いたわね」
真奈美「夏美じゃあるまいし、何でもかんでも全力でやればいいというわけではない。
千秋はダンスに挫折して、歌の自信まで無くしかけていたからな。まだ若いし、
マスターレベルも研鑽を積んでからまた改めて挑戦すればいいさ」
瞳子「何でもかんでも……ね。勝負所はここだと決めて、それに負けなければいいのよね」
真奈美「何だ?レナみたいな事を言うのだな。ああいう生き方はあまり感心しないぞ」
瞳子「そんな事言ってあんたもレナさんの事随分気に入ってるじゃない。どうして堅物の
あんたがあの人と付き合ってるのか不思議だったけど、今日何となく分かったわ」
真奈美「あいつはああ見えて結構真面目だぞ。ギャンブラーの矜持だか知らんが、純粋に
勝負にこだわっているし。そういう点では私と似た者同士かもしれん」
瞳子「真面目に遊んでいるのねあの人。今までよく生きて来れたと思うわ」クスクス
真奈美「ああ、だが私はあいつの生き方を認めん。今日もレッスンを途中でサボるとは
許せんしな。私は帰っていいとは言ってないし、勝負は無効だ」
瞳子「レナさんあんなに頑張っていたのに、あんたも大概ひどいわね…… ところであんた、
よくあのダーツバーが分かったわね。普通に街を歩いているだけだったら絶対に
分からないと思うけど」
真奈美「礼子さんに聞いた。あの人は『UWABAMIネットワーク』という独自の情報網を
持っていて、都内全ての飲み屋に誰がいるのか常に把握しているらしい。礼子
さんもレナと一緒に飲みたいって言ってたから、今頃向かっているかもな」ニヤリ
瞳子「ちょっ!? いきなりラスボスじゃない!? 大丈夫でしょうね!? 」ギョッ
真奈美「四天王の方も社長とプロデューサーに注意されたらしいし、おそらく手加減を
してくれるだろう。礼子さん一人だし、心配しなくてもいいんじゃないか―――」
――――次の日、レナと菜々は仕事を休んだ。
おわり
以上。画像さんに感謝。瞳子さん重…努力家さんだよ瞳子さんという事で。
瞳子さんSSもっと増えろという願いを込めて。ではまた
元スレ
2: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:15:10.83 ID:T1Wm4Z7X0
マストレ「まあいい、千秋とドリンクでも飲んで休憩しとけ。瞳子、泰葉、問題ないな?」
瞳子「ええ、余裕よ……」フウ…フウ…
泰葉「お願いします」
真奈美(レッスンはトレーナー四姉妹に合わせて内容が4段階に分かれている。末の
妹から順番に初級、中級、上級、そして長女のマストレの最上級コースだ。
私は普段のダンスレッスンは上級コースを受けているのだが、最近少し物足り
なくなっていたので、今日は試しに最上級コースを受けてみた)
3: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:15:59.29 ID:T1Wm4Z7X0
マストレ「ずれてるぞ瞳子!ステップが遅れてるからドタバタするんだよ!」パンパン
瞳子「ぐ……」ドン、ドドン
マストレ「泰葉は表情を意識しろ!能面みたいな顔で踊られると不気味だ!」パンパン
泰葉「はい」タン、タタン
真奈美「あいつらは化け物か……?」
4: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:18:08.70 ID:T1Wm4Z7X0
真奈美(正直甘く見ていた。クールでダンスのマスターコースを受けているのは現在3名。
内一人は女子高生だと聞いていたので、私でも何とかなると思っていた。しかし
次元が違ったようだ……)
千秋「ぐ……ううぅ……」ポロポロ
真奈美「あ~、なんて言うかだな、そう気を落とすな千秋。お前の歌唱力は素晴らしいし、
ダンスも上級ならこなせるのだろう?だから気持ちを切り替えてだな……」
千秋「お節介はいらないわ…… アナタに私の気持ちなんてわからないわよ……」バタン
5: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:19:10.40 ID:T1Wm4Z7X0
マストレ「なんだ、また途中で帰ったのかアイツ。根性があるのかないのかわからんな」
瞳子「どうせ次回も来るでしょう。さぁ、続きをやりましょう」フウ…フウ…
泰葉「いえ、そろそろ終了の時刻です。クールダウンに入りましょう」
6: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:19:58.90 ID:T1Wm4Z7X0
瞳子「まだ10分あるでしょう?1曲くらいは踊れるわ」
泰葉「無理をしても技術は身に付きませんよ」
瞳子「余計なお世話よ!あんたはそれでいいかもしれないけどね……!」イラッ
真奈美(ずいぶん殺伐としているな。同じコースを受けているメンバーなのだから、
もっと仲良くすれば良いと思うのだが―――――)
7: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:20:47.62 ID:T1Wm4Z7X0
―夜・都内居酒屋―
レナ「で、このザマなわけ。だらしないわね、あんたそれでも元トレーナー?」
真奈美「すまない…… 久々にこのメンバーで集まる事が出来たのに……」グッタリ
早苗「無理しちゃダメよ真奈美ちゃん、今日は早めに切り上げてゆっくり寝なさい」
夏美「ま、仕方ないね。ちょっと前までぶっ倒れてたんだし」
8: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:22:14.03 ID:T1Wm4Z7X0
レナ「お、そうだそうだ♪ウワバミ四天王との対決の様子教えてよっ!」ワクワク
真奈美「今日は勘弁してくれ。それにあの夜の事はしばらく話したくない……」ゲンナリ
レナ「え~!つまんな~い!今日はその話を楽しみにしてたのにぃ~!」ブーブー
早苗「そのくらいにしときなさいレナちゃん。今日は真奈美ちゃんのリハビリも兼ねて
いるんだから。こうしてお酒が飲めなくなるのも嫌でしょ?」
9: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:23:25.97 ID:T1Wm4Z7X0
真奈美「いや、私は酒に潰されたというよりは楓に潰されたのだが。 怒涛の駄洒落
ラッシュに対応出来ずに悪酔いしてしまったのだ……」
夏美「そんなのいちいち答えなくていいのよ。変な所で融通が利かないんだから……」
レナ「ところでそのあんたと同じ年のマスターレベルの子、なんて名前だっけ?」
真奈美「ああ、服部瞳子だ。何でも元アイドルで、一度引退したもののまた復帰した
らしい。しかしブランクを感じさせないほどレベルは高いぞ」
10: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:24:18.13 ID:T1Wm4Z7X0
夏美「へえ、面白そうな子ね。一度一緒に飲んでみたいわ」
真奈美「私もそう思ったのだが断られてしまった。ストイックにレッスンに打ち込んで
いるし、アスリート並に健康管理に気を遣っているのかもな」
早苗「無理強いするのはよくないわね。残念だけど飲めない人は全く飲めないんだし」
レナ「真奈美がこのザマなんだから、案外その子も今頃ひっくり返ってたりして♪」ケラケラ
真奈美「お前も一度受けてみろよ。舐めてかかると冗談抜きで死ぬぞ……」ギロ
12: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:30:01.98 ID:T1Wm4Z7X0
―同時刻・隠れ家的な小さなダーツバーにて―
瞳子「泰葉相手にムキになるんじゃなかったわ……」グッタリ
菜々「だ、大丈夫ですか瞳子ちゃん!? 顔色悪いですよ!? 」アセアセ
瞳子「いえ、お気遣いなく。今日はゆっくりやりますけど、別に菜々さんは合わせて
くれなくてもいいですから……」
菜々「唯一の飲み友達が苦しんでいるのに、ナナだけ楽しめませんよ!」
13: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:30:56.96 ID:T1Wm4Z7X0
瞳子「お互い苦労しますね。アイドル活動一筋でお酒を覚えるのが遅くなってしまった
私と、(永遠の)17歳でデビューしたばかりに堂々とお酒を飲めない菜々さん。
私達って大人としてどうなんでしょうね……」ズーン
菜々「だからナナ、瞳子ちゃんには感謝してるんですよ?人目につかずに飲めるお洒落な
お店を教えてもらって。いつもは一人で家飲みですから」
14: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:32:00.83 ID:T1Wm4Z7X0
瞳子「たまたま同じグループにダーツが好きな子がいまして、その子に教えてもらった
んですよ。その子は未成年だから一緒に飲めないんですけどね。私も菜々さんと
お酒の練習が出来るし、お互い様です」
菜々「売れないアイドル時代を一緒に過ごした瞳子ちゃんだからこそですよ。不思議な
縁で同じ事務所になったことですし、これからもお願いします」ペコリ
15: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:32:59.03 ID:T1Wm4Z7X0
瞳子「こちらこそ。アイドルの大先輩の胸をお借りします」ペコリ
菜々「ちょっと!? そんなに年変わらないでしょ!それに今の事務所ではナナは17歳
なんですからね!? だから敬語も禁止です!」プンプン
瞳子「そうでしたね。ウサミン星からやって来た(永遠の)17歳……ぷっ」
菜々「今笑いましたね!? 先輩をバカにしましたね!! 」キー!
16: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:34:40.41 ID:T1Wm4Z7X0
***
菜々「でも瞳子ちゃんもだいぶ強くなりましたし、そろそろ他の人と飲んでみたら
どうですか?美優ちゃんや瑞樹ちゃんはその辺り弁えていると思いますから、
きっと楽しめると思いますよ?」
瞳子「確かに何度かお誘いは受けてはいるんですけど、美優さん達のメンバーの仲には
レナさんがいるじゃないですか……」
菜々「ああ、レナちゃんですか。ナナもちょっぴりムカっときちゃう事があります。
あの子はいつも飄々としてますもんね……」
17: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:36:24.52 ID:T1Wm4Z7X0
瞳子「一方的な嫉妬だって事は分かってるんですけどね。でも私が苦労して地道に歩いて
来た道をあの人はあっさりショートカットして、あっという間に同じステージに
立ったんです。恨み言も言いたくなりますよ」
菜々「元ギャンブラーでしたっけ?ド○クエに出てきそうな遊び人で人生ナメてますよね。
ナナと[ピ――]歳しか変わらないのに、スタイルもあんなに良いし……」ブツブツ
瞳子「スタイルの話はやめましょう。年齢の話以上にダメージが大きいです……」ズーン
18: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:37:52.61 ID:T1Wm4Z7X0
菜々「だ、大丈夫ですよ瞳子ちゃん!そんな事言ったらナナはどうなるんですか!?
年確される度に免許証出して、キャラ作ってるのがバレて……うう……」ズーン
瞳子「や、やめましょう辛気臭い話は!」アセアセ
菜々「そ、そうですね!楽しくいきましょう!」カンパイ
瞳子(でも実際、レナさんは華があって私よりアイドルに向いているのよね。歌とダンス
は負けない自信があるけど、今はそれだけでは通用しない時代だし。私が必死に
なって追いかけてきたアイドル像は、もう古いのかもしれないわね――――)
19: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:39:14.76 ID:T1Wm4Z7X0
―数日後・熱帯魚店―
瞳子(やっぱり熱帯魚は綺麗ね。見ていて飽きないわ……)ジー
トン
瞳子「あ、すみません」
泰葉「いえ、こちらこそ…… 瞳子さん?」
瞳子「泰葉?どうしてここに……?」
20: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:40:03.75 ID:T1Wm4Z7X0
泰葉「レッスンまで少し時間があったので。瞳子さんもですか?」
瞳子「そんなところよ。事務所の外で会うのは珍しいわね」
泰葉「もしかしてお昼まだですか?よかったらご一緒してくれませんか?この近くに
行きたいカフェがあるんですけど、私一人で入る勇気が無くて……」モジモジ
21: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:40:54.12 ID:T1Wm4Z7X0
瞳子「驚いたわ…… あなたでも今時の女子高生みたいな事を言うのね……」ポカン
泰葉「今時の女子高生ですから。業界に長く居過ぎて枯れてしまいましたけど」ニコ
瞳子「ふふ、意外と面白いのねあなた。いいわよ、それじゃあ行きましょうか」
22: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:41:56.74 ID:T1Wm4Z7X0
―カフェ―
瞳子「へえ、ドールハウスの参考にアクアリウムを……」
泰葉「小さな世界を作って表現するという点ではこの二つは似ていると思うんです。
最近はアクアリウムでも水槽内に陸や海を表現して……」ペラペラ
瞳子(事務所では全くそんな素振りを見せないのに、自分の趣味の話になると饒舌なのね
この子。レッスン中は無機質なロボットみたいなのに)
23: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:42:47.79 ID:T1Wm4Z7X0
泰葉「あ、すみません私ばかり話してしまって。退屈ですよね……」シュン
瞳子「いいわよ別に。でもあなたよくしゃべるのね。事務所やレッスン中でも話して
くれたらいいのに。あなたも千秋も全然喋らないから、私も遠慮してるのよ?」
泰葉「仕事場では自分を出せないようにプログラムされてますから……」ボソ
瞳子「え…… やっぱりあなたロボ……!?」ギョッ
24: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:43:50.57 ID:T1Wm4Z7X0
泰葉「ふふ、冗談ですよ。でも私は物心がつく前から芸能人として、当時の事務所に
徹底的に訓練を受けました。台詞や振付けは一度で覚える。カメラを向けられたら
どんな状況でも表情を作る。余計な感情は一切排し、仕事場では自分を殺す。
まるでロボットみたいだと思いませんか?」
瞳子「今の自分に不満があるの……?」
泰葉「そうとも言い切れませんけどね。おかげでマストレさんのレッスンについて行けて
ますし。でもあのハードなレッスンを平気でこなせる自分が正直気持ち悪いです」
25: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:44:51.17 ID:T1Wm4Z7X0
瞳子「自分のなりたいアイドルの理想像とズレがあるって事……?」
泰葉「私本当は、菜々さんみたいな可愛いアイドルになりたかったんです。菜々さんは
昔から私の憧れでした。子役モデルから転身したのは菜々さんの影響が大きいです」
瞳子「今年一番の衝撃だわ…… でもあの人、この事務所では17歳って事になってるから
本当の歳を知っててもバラしちゃダメよ」ヒソヒソ
26: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:46:03.75 ID:T1Wm4Z7X0
泰葉「ウサミン星人ですもんね。私は昔の瞳子さんも好きでしたよ。クールでキリっと
していて、とっても恰好良いって思ってました」ニコ
瞳子「昔の菜々さんを知ってるって事は、当然私の事も知ってるわよね…… ほんの一瞬
だけデビューしてすぐに消えたアイドルのどこが恰好良いのよ……」
泰葉「あれはあそこの事務所の売り方が下手だったんです。でも瞳子さんはあれからも
ずっとレッスンを続けていらしたし、私の思っていた通りの恰好良い人でした。
だから今私、お二人と同じ事務所にいるのがとても嬉しいです」ニコ
27: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:47:17.49 ID:T1Wm4Z7X0
瞳子「まさかあなたにそんな事を言われるなんてね。私はあなたの才能が羨ましくて、
ずっとあなたに負けないようにと思ってレッスンを頑張っていたのに」
泰葉「私みたいになってはいけませんよ。私がレッスンをしているのは、プログラムを
破壊して本当の自分が出せるようにする為です。今の事務所とはそういう契約を
結んでいるので。だから本格的に活動するのはもう少し先になりそうですね」
瞳子(いつも涼しい顔をしているのに、この子も苦労しているのね。どれだけ技術が
あっても、理想の自分と違ったら納得できないのかしら―――――)
28: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:49:07.75 ID:T1Wm4Z7X0
***
―レッスン場前―
瞳子(あの後泰葉は『たまにはレッスンをサボってみます。ふふ、反抗期っぽくてロック
だと思いませんか?』と言って帰ってしまった。そんな事が出来る時点で既に大物
の貫禄が漂っていると思うんだけど。少なくとも私には無理だわ……)
瞳子「仕方ないわ、今日は千秋と二人でやりましょう。たまには私の方から話しかけて
みようかしら」
29: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:50:39.56 ID:T1Wm4Z7X0
ガチャ
瞳子「おはようございま……」
レナ「あ、こんにちは~♪あなたが瞳子ちゃん?はじめましてっ!キュートの兵藤レナ
です!真奈美が言ってた通り、マジメそうな子だね!」
瞳子「え…… レナさん、どうしてここに……?」ギョッ
マストレ「おう瞳子来たか。今日は千秋も泰葉も休むそうだから、お前達2人だけだ」
30: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:51:28.03 ID:T1Wm4Z7X0
レナ「なんだかよく分からないんだけど、真奈美から千秋って子の代わりにレッスンを
受けて来いって言われちゃって。だから今日はよろしくね!」ニコ
瞳子「安請け合い出来るほどマスターレベルは楽じゃないわよ。大丈夫なの……?」
レナ「だ~いじょうぶだ~いじょうぶ♪それにこれは真奈美との勝負でもあるの。
ギャンブラーとして負けるわけにはいかないわ!」キリッ
31: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:52:27.12 ID:T1Wm4Z7X0
マストレ「私も断ろうと思ったのだが、こいつがどうしてもと言うからな。まあ私も
レナがどれくらい踊れるのか興味があるから許可した」
レナ「まかせて!ダンスなら向こうでいっぱいやったから!」フフン
瞳子(やっぱりレナさんとは合わないわ。でもマストレさんが許可したんだし、堅物の
真奈美が千秋の代理を頼んだという事はそれなりに信頼はされているのかしら。
とりあえずお手並みを拝見させてもらいましょうか―――――)
32: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:53:52.22 ID:T1Wm4Z7X0
―――
マストレ「驚いたな。早々に潰れるだろうと踏んでいたのに、なかなかやるじゃないか」
レナ「ダンスホール併設のカジノとか向こうには結構あるからね。昔は休憩時間に
ちょっと踊らせてもらったりして遊んだわ」
33: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:54:40.74 ID:T1Wm4Z7X0
マストレ「なるほど。伊達にギャンブラーを名乗っていないという事か。瞳子は平気か?」
瞳子「大丈夫よ…… まだまだ行けるわ……」ハア…ハア…
瞳子(いくらレナさんがダンス経験者でも、それだけで負けるわけにはいかないわ……
とりあえず前半耐えたわけだし、後半はペースを抑えてムダな動きをなくして……)
34: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:55:13.77 ID:T1Wm4Z7X0
レナ「すごいね瞳子ちゃん。真奈美が褒めるだけの事はあるわ。さすがマスターレベル♪」
瞳子「あなただって凄いじゃない。全然息も切れてないし……」フウ
レナ「ああそれ?それはね……」
35: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:55:54.57 ID:T1Wm4Z7X0
<pipipipi…pipipipi……
マストレ「ん?何の音だ?」
レナ「最初から半分だけって決めてたから……」バターン!!
瞳子「え!? ちょ、ちょっとレナさん!? 」ギョッ
レナ「もうダメ…… 死ぬ……」ゼエ…ゼエ…
36: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:56:52.28 ID:T1Wm4Z7X0
―――
レナ「はあ~、何とか耐えきったあ~ しっかし凄いねマスターレベル。こんなの人間の
やる事じゃないわよ」アハハ
マストレ「全く、あの余裕が全て演技だったとはな。マンガみたいな奴だなお前は」
レナ「なかなか様になってたでしょ?これが本当のポーカーフェイス、なんちゃんて♪
でももう体が動かないわ。だからここまでね」
37: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:57:56.84 ID:T1Wm4Z7X0
瞳子「え?リタイアするの……?」
レナ「真奈美と勝負してたの。『レッスンを半分でも耐えきったら一杯おごる』って。
そうじゃないとこんなハードなレッスン受けに来ないわよ」
マストレ「だからあんなに張り切っていたのか。根っからのギャンブラーだなお前は」
瞳子(なにそれ)
38: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 20:58:54.47 ID:T1Wm4Z7X0
レナ「勝負に勝ったら即撤収!これがギャンブラーの鉄則だからさ♪」
瞳子(なんなのよそれ)
レナ「じゃあね瞳子ちゃん。真奈美と仲良くしてあげてね。あの子不器用だから♪」スタスタ
39: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:00:07.33 ID:T1Wm4Z7X0
瞳子「待ちなさいよっ!! 」
レナ「え……?」ピタ
マストレ「瞳子?」
瞳子「あなたの生き方に口を出すつもりはないけど、でも遊び半分で仕事しないでよ!!
こっちは真剣にやってるのよ!! 」
40: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:01:27.90 ID:T1Wm4Z7X0
マストレ「おい、瞳子」
瞳子「確かにアイドルの定義や活動は曖昧よ。でもここ(レッスン場)ではみんな必死に
レッスンして自分の土台になる技術と自信を作り上げているの。なのにあなたは
ここでも遊んで中途半端に放り投げて…… ふざけるのもいい加減にして!! 」
マストレ「瞳子」
瞳子「私は今まで死にもの狂いでやってきたの!何年も何年も血の滲むような努力をして、
ようやくここまで辿り着いたの!冷やかしならここに二度と来ないで!! 」
41: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:02:22.39 ID:T1Wm4Z7X0
マストレ「瞳子!! 」
瞳子「 !? 」ビクッ
レナ「……あ~あ、こりゃ私の負けね。いい感じで終われると思ったんだけどな」ポリポリ
マストレ「レナ?」
42: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:03:04.40 ID:T1Wm4Z7X0
レナ「確かに瞳子ちゃんの言う通りだよね。瞳子ちゃんのテリトリーに土足で入って、
勝手に荒らした私が悪い。ごめんなさい」ペコリ
瞳子「あ…… 」
レナ「ごめんねレッスンの邪魔しちゃって。それじゃね」バタン
43: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:04:21.90 ID:T1Wm4Z7X0
シーン
瞳子「どうしてあんなにあっさり引くの……? 一言も怒らないの……?」
マストレ「気にするな。生き方の違いだ。トレーナーの私に言わせれば、どんな理由
があろうとレッスンを途中で放棄する方が悪い。さあ続きをやるぞ」
瞳子(結局もやもやした気持ちが残ったまま、その日のレッスンは終了した。いつもと
違って達成感もなかった。私には理解出来ない。レッスンを途中放棄したレナさん
も、丸々サボった泰葉も―――――)
44: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:05:37.50 ID:T1Wm4Z7X0
― 夜・ダーツバー ―
瞳子(菜々さんも誘えば良かったかしら。でも今日は何だか一人で飲みたい気分ね。
こういうのをお酒に逃げるって言うのかしら。明日のレッスンに響かない程度に
程々に…… もういいか。余計な事を考えるのはやめよう)グビ
45: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:06:25.31 ID:T1Wm4Z7X0
カランカラン
マスター「いらっしゃい…… おおレナちゃん、久しぶりだな!」
瞳子(レナ……?もしかして……)クルッ
レナ「マスターおひさ~ あれ?瞳子ちゃん?どうしてここにいるの?」
瞳子「レナさんこそどうして……?」
46: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:07:26.54 ID:T1Wm4Z7X0
レナ「ここ私の実家の近くで昔からよく遊びに来てたの。そうよねマスター?」
マスター「中学生の時から来てたよな。夜遅くまで遊んでいて、父ちゃんや母ちゃんに
連れ戻されてたっけな」ニヤリ
レナ「もうやめてよそんな恥ずかしい話。マスター、久しぶりに遊ばせてもらうわね。
どうせ誰も来ないんだし、私の貸切って事で」スタスタスタ
瞳子「え?飲みに来たんじゃないの?レナさんもダーツをやりに?」
47: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:08:08.85 ID:T1Wm4Z7X0
マスター「いや、あの子は昔からダーツじゃなくてだな……」
レナ「うわっ、ホコリかぶってる!もうマスター、ちゃんと掃除しといてよね!」パタパタ
マスター「うるせえ、ウチはダーツバーだ。ビリヤードやるのはお前だけだよ」
瞳子「ビリヤード……?」
48: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:09:35.92 ID:T1Wm4Z7X0
***
レナ「道具の状態はそれほど悪くないか…… マスター、私しばらく日本にいるから、
ちゃんと手入れしといてよ。曲がってるキュー何本かあったわよ!」
マスター「わかったよ」
レナ「さて、と……」スッ
瞳子(キューを構えるレナさん、すごく様になってる。やっぱりこの人はそういう世界の
人間なのね。なのにどうしてアイドルなんて……)
49: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:11:04.20 ID:T1Wm4Z7X0
レナ「すぅ――――……、はぁ――――……」ジリジリ
瞳子「……」ゴクリ
レイ「おりゃっ!」
スカッ
瞳子「え……?ミス……?」
レナ「あ、あはは…… 実は私ビリヤードって得意じゃないんだよね~ キューを持つのも
6年ぶりくらいで…… みんなには内緒にしててね?」テヘ☆
瞳子「えええぇぇぇぇぇっっっ!? 」
50: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:11:59.24 ID:T1Wm4Z7X0
―――
レナ「む、昔はちゃんと出来てたのよ!? でも駆け出しのディーラーの時にミスショットで
指をケガして、カード切れなくてクビになった事があったから、それ以来ずっと
避けてたの。今もちょっと怖いかな」ポリポリ
瞳子「じゃ、じゃあどうしてやろうと思ったの……?」
51: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:12:59.67 ID:T1Wm4Z7X0
レナ「う~ん、さっき瞳子ちゃんに言われたからかな。中途半端に放り投げたままにして
いたから、瞳子ちゃんを見習ってしっかりやろうと思って。私ってこういうの得意
そうなキャラじゃない?なのに出来なかったらカッコ悪いでしょ♪」
瞳子(ああ、そうか。そういう事なのね)
52: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:13:51.94 ID:T1Wm4Z7X0
レナ「どれだけ頑張っても、私は瞳子ちゃんみたいなアイドルにはなれないのよね。
ついこの間までディーラーだったんだし、これからも生き方は変えられない。
だからその中で、どうすればアイドルになれるか考えてるの」
瞳子(この人にはギャンブラーとして築き上げてきた土台と信念があって――――)
53: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:14:39.72 ID:T1Wm4Z7X0
レナ「瞳子ちゃんから見たら遊んでいるように見えるかもしれないけど、私は人生賭けて
勝負してるの。レッスンは敵わないけど、アイドル勝負なら負けないわよ」ニヤリ
瞳子(私と同じステージで、私と同じアイドルとして、私と全く違う勝負をしている)
54: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:15:46.59 ID:T1Wm4Z7X0
レナ「あ、でも今日みたいに時間を限定したり、社交ダンスだったら私にも分がある
かしら。直接勝負は出来るだけ避けて、こちらに有利な状況になるように……」
瞳子「ふふ、あなたは本当にギャンブラーなのね」
レナ「当然!私の人生全てが勝負よ!アイドルになったのも、プロデューサーとポーカー
で勝負して…………」
56: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:16:54.75 ID:T1Wm4Z7X0
瞳子「……?勝負してどうなったの?」
レナ「あれは無効よ私は別にあんなゲームしなくてもアイドルになってみようかなって
思ってたしそれに真奈美も乗り気だったし……」ブツブツ
瞳子「よく分からないけど、あなたも落ち込む事があるのね……」
瞳子(泰葉もレナさんも、理想の自分を追いかけながらアイドルをしている。もう二度と
挫折したくなくてただがむしゃらに走っていた私は、いつの間にか理想の自分を
見失っていたのかもしれないわね……)
57: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:18:09.13 ID:T1Wm4Z7X0
瞳子「レナさん」
レナ「ん?なに?」
瞳子「私も伊達に10年以上業界にいないわよ。真奈美とまとめて相手してあげるわ」スッ
レナ「上等!そうこなくっちゃね!カジノアイドルの実力見せてあげる!」スッ
レナ・瞳子「「カンパーイ!」」キン
END
59: >>55thanks ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:24:23.57 ID:T1Wm4Z7X0
―おまけ―
カランカラン
真奈美「何だ、瞳子もいたのか。お前も普通に飲むんだな」
瞳子「真奈美!? 」ギョッ
レナ「あれ?どしたのあんた?こんな所までわざわざ来て」キョトン
60: >>55thanks ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:25:46.38 ID:T1Wm4Z7X0
真奈美「どうしたもこうしたもないだろう。今日は瑞樹さん達の復帰祝いで一緒に飲もう
って言ってたじゃないか。忘れたのか?」
レナ「あ、そういえばそうだった。すっかり忘れてた」テヘ☆
真奈美「はあ、全くお前は携帯も切ってるし…… もういい、代わりに瞳子を連れて行くぞ」
瞳子「私!? どうして!? 」ギョッ
真奈美「先日酒の席でちょっとした事故があってな。それで皆少し落ち込んでいるんだ。
そういう時はレナみたいなうるさい奴じゃなくて、お前みたいな奴の方がいい。
心配するな、あまり飲めなくても今日なら大丈夫だ」
61: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:27:13.00 ID:T1Wm4Z7X0
レナ「ちょっと~?私はどうすればいいのよ~?」ブーブー
真奈美「安心しろ、ちゃんと瞳子の代わりは置いて行ってやる。さっき近くで見かけた
時は家に帰そうと思ったのだが……」
菜々「ど、どうも~……」ヒョコ
瞳子「菜々さん!? 」
レナ「菜々ちゃん?真奈美、あんた頭大丈夫?この子未成年よ?」
62: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:28:20.53 ID:T1Wm4Z7X0
真奈美「いや、私もそう思っていたのだが実は……」ゴニョゴニョ
レナ「……失礼しました安部先輩。今まで17歳だと思っていたからすっかり調子こいて
ました。まさか(永遠の)17歳だったとは……プッ」ペコリ
菜々「やめてください!? ナナだって必死なんですよ!! 」キー!
レナ「あっはっはっ!まさか菜々ちゃんが飲める人だったとはね!キュートは若くて
マジメな子ばかりだから、飲む人はいないと思ってたよ!」ゲラゲラ
63: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:29:17.74 ID:T1Wm4Z7X0
真奈美「そういう事だ。同じグループ同士仲良く飲んでろ。それじゃ行こうか瞳子」
瞳子「え…… でも……」チラ
菜々「大丈夫です瞳子ちゃん!良い機会ですし楽しんで来てください!ナナの事なら
心配いりませんから!」グッ
64: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:30:02.73 ID:T1Wm4Z7X0
レナ「瑞樹さん達によろしくね。私はここで菜々ちゃ……安部先輩と飲んでるから♪」
菜々「『菜々ちゃん』でお願いします!! あと敬語も禁止です!! 」ムキー!
瞳子「そ、それじゃあ…… いってきます!」
菜々・レナ「「いってらっしゃ~い♪」」ヒラヒラ
65: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:31:04.56 ID:T1Wm4Z7X0
***
真奈美「今日はすまなかったな。レナがお前のレッスンの邪魔をしたみたいで」
瞳子「それはもういいんだけど。で、あんたは千秋と何をしていたの?」
真奈美「ああ、ダンスレッスンを1ランク下で受けるように説得していた。余計なお節介
だが、ダンスで無茶をしてあのクリスタルボイスが聴けなくなってしまうのは
元ボーカルトレーナーとしては惜しくてな」
66: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:32:09.38 ID:T1Wm4Z7X0
瞳子「面倒見が良いのね。でもよくあの頑固な千秋が言う事を聞いたわね」
真奈美「夏美じゃあるまいし、何でもかんでも全力でやればいいというわけではない。
千秋はダンスに挫折して、歌の自信まで無くしかけていたからな。まだ若いし、
マスターレベルも研鑽を積んでからまた改めて挑戦すればいいさ」
瞳子「何でもかんでも……ね。勝負所はここだと決めて、それに負けなければいいのよね」
真奈美「何だ?レナみたいな事を言うのだな。ああいう生き方はあまり感心しないぞ」
67: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:33:00.30 ID:T1Wm4Z7X0
瞳子「そんな事言ってあんたもレナさんの事随分気に入ってるじゃない。どうして堅物の
あんたがあの人と付き合ってるのか不思議だったけど、今日何となく分かったわ」
真奈美「あいつはああ見えて結構真面目だぞ。ギャンブラーの矜持だか知らんが、純粋に
勝負にこだわっているし。そういう点では私と似た者同士かもしれん」
瞳子「真面目に遊んでいるのねあの人。今までよく生きて来れたと思うわ」クスクス
68: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:33:56.99 ID:T1Wm4Z7X0
真奈美「ああ、だが私はあいつの生き方を認めん。今日もレッスンを途中でサボるとは
許せんしな。私は帰っていいとは言ってないし、勝負は無効だ」
瞳子「レナさんあんなに頑張っていたのに、あんたも大概ひどいわね…… ところであんた、
よくあのダーツバーが分かったわね。普通に街を歩いているだけだったら絶対に
分からないと思うけど」
69: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:35:03.75 ID:T1Wm4Z7X0
真奈美「礼子さんに聞いた。あの人は『UWABAMIネットワーク』という独自の情報網を
持っていて、都内全ての飲み屋に誰がいるのか常に把握しているらしい。礼子
さんもレナと一緒に飲みたいって言ってたから、今頃向かっているかもな」ニヤリ
瞳子「ちょっ!? いきなりラスボスじゃない!? 大丈夫でしょうね!? 」ギョッ
70: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:35:55.97 ID:T1Wm4Z7X0
真奈美「四天王の方も社長とプロデューサーに注意されたらしいし、おそらく手加減を
してくれるだろう。礼子さん一人だし、心配しなくてもいいんじゃないか―――」
――――次の日、レナと菜々は仕事を休んだ。
おわり
71: 1 ◆l/VPjvBxwk 2013/03/15(金) 21:39:00.02 ID:T1Wm4Z7X0
以上。画像さんに感謝。瞳子さん重…努力家さんだよ瞳子さんという事で。
瞳子さんSSもっと増えろという願いを込めて。ではまた
SS速報VIP:服部瞳子「アシンメトリー」