SS速報VIP:所恵美「1/2の夢旅人」



1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/08(金) 09:03:43.34 ID:VqLnaxO40

 私にとって、彼女に出会えたことは本当に幸運なことだった。

 彼女がいなければ今の私はない。彼女はそんな人物だ。

 面倒見が良くて、人見知りしなくて、誰とでも仲良くなる、そんな……私には、無いものばかりを持っている。

 そんな彼女を、私は一人の人として尊敬している。

 名を、所恵美という。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1431043413




2: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/08(金) 09:05:47.42 ID:VqLnaxO40

 私が765プロライブ劇場に照明として就職したのは、28の時のことだった。

 学生時代に演劇部に入った私は、一生芝居に関わっていたいど思っていた。

 その考えは大人になっても変わらず、自分に出来ることを考えた結果、照明技師の道を選んだ。

 照明の仕事は大変だけど、やりがいがあった。

 特に今の仕事はアイドル事務所だ。華やかな女の子たちが私の照明一つでよりいっそう綺麗に輝く。そう思うと身が締まった。

 男ばかりの裏方で数少ない女というのが効いたのだろう。

 最初はすれ違った時に挨拶する程度だったアイドル達が、一人また一人と話しかけてくるようになった。

 確か最初は亜利沙が「むむっ!亜利沙の目はごまかせませんよ!照明さん!実は磨けば光るタイプの人ですね!」とか言ってきたんだっけ。

 それから色んな子と仲良くなった。特に恵美とは好きなものが同じなことが多く、すぐに打ち解けた。



3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/08(金) 09:10:10.40 ID:VqLnaxO40

 アイドルの子たちと仲良くなると仕事にも変化が起きた。

 アイドルのことを良く知ることで、照明の割り振りにもその子らしさを加えられるようになった。

 志保のライアールージュでは前のようにすべてが赤いのではなく志保にだけ赤いスポットを落とすようにした。

 まつりのフェスタ・イルミネーションでは緑一色ではなく小さい玉状のライトを5色ほど用意してそれを水玉のように使うようにした。

 ある日のアンケートでこんなことが書かれていた。

 「照明が前より演出らしくなってきた。演者だけではなく演出も一緒に進化しているのは素晴らしい」と。

 この仕事をして本当に良かったと思った。



4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/08(金) 09:11:04.77 ID:VqLnaxO40

 765プロライブ劇場にも子供に好かれる子がいる。

 環、星梨花、杏奈、育、それに恵美なんかがそうだ。

 その日は確か、小学生とその保護者に限定したライブだった。

 開演直前、新しい試みとしてスポットライトでできたアイドル達のシルエットを正面のスクリーンに写した日のことだった。

 「すごーい!」 
 「うわー! 恵美ちゃんだ!」
 「かっこいー!」

 自分が関わるライブで心の底から楽しむ純粋な子たちを見て、思わず涙が出てきた。

 この子たちがもっと楽しめるようなステージを作りたい、そう思った。

 そして何よりも、この子たちをここまで盛り上げられる恵美たちは本当にすごいと思って……私もこうなりたいと思った。



5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/08(金) 09:12:13.01 ID:VqLnaxO40

 学生時代から、一生芝居に関わる仕事につきたかった。

 演者という選択肢がなかったと言ったら嘘になる。

 本当は、ずっとステージの上に立つ立場になりたかった。

 それでも、私なんかじゃ一生かかってもなれないと思った。

 だから、照明技師の道を選んだ。

 けど、やっぱりなりたいと思ってしまった。

 1番にやりたかったことを、このまま挑戦もせずに諦めて。

 おばあちゃんになって後悔したくなんてなかった。



6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/08(金) 09:13:47.73 ID:VqLnaxO40

 退職届を社長に渡す直前に恵美と鉢合わせた。

 私が持った退職届を見るなり恵美は問い詰めてきた。

 「はっ!? もしかして、やめちゃうの? そんな、せっかく仲良くなれたのに……なんで……?」

 半分泣きながら訪ねてくる恵美があまりにも愛しくなり、思わず抱きしめる。

 「……私ね、夢があったの。恵美と同い年くらいの時から、役者になりたいって思ってた。でもね、一回諦めたんだ。私なんかじゃ一生かかってもなれないと思って
 ……恵美がね、きっかけをくれたんだよ?
 私、子供が大好きなんだけど。この前のライブで恵美の歌を聴いて喜ぶ子供達を見てこうなりたいって」

 ……私には歌は歌えないけど。それでも演じることで、たとえば声優という仕事でも子供達を笑顔にすることは出来ると思うのだ。

 ああ、私が本当にめざすべき道が見えた気がする。

 「……もう。そんなこといわれたら止めらんないじゃん……わかった。ずっと応援してるから……がんばってっ、がんばれ!」



7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/08(金) 09:14:26.30 ID:VqLnaxO40

 そうして私は照明技師をやめ、声優という仕事をついた。

 この時予想はしてなかったのだけど、結局私はキャラクターソングという形で歌を歌うことになった。

 なんの因果か。その歌は、765プロライブ劇場が育成ゲームになり、メンバーがキャラクターになったという前提の曲だった。 

 そのメンバーの名は所恵美。
 ちなみに。私の芸名は、藤井ゆきよという。



8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2015/05/08(金) 09:16:38.41 ID:VqLnaxO40

終わり
ゆきよさんお誕生日おめでとうございます!
ラジオやブログでのお言葉、アニメやゲームなどの声や歌でいつも勇気や元気、笑顔をもらってます
この一年ゆきよさんが幸せでありますように!


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