SS速報VIP:川島瑞樹「ローカルマドンナ」
1: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:24:01.40 ID:BDU7bnsa0
2: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:25:26.63 ID:BDU7bnsa0
夏美「おっはよーございまーす!」ガチャ
ちひろ「おはようございます夏美さん。今日も元気ですね」
夏美「元気と笑顔が一番ですから♪ あれ?ちひろさん、それ履歴書ですか?」ジロ
ちひろ「はい。明日からウチの事務所所属になる人なんですけど、でも彼女の履歴書に
ちょっと問題がありまして……」ウーン
夏美「問題?どれどれ…… あ―――――っ!! 」ギョッ
ちひろ「ど、どうしたんですか!? もしかしてこの人の事を知ってるんですか?」ビクッ
夏美「『世界のヘレン』じゃないですか!? どうして日本に!? てかアイドルに!? 」
―夜・都内居酒屋―
夏美「CA時代に空港でトラブって、入管に連行されていく彼女を見た事がありました。
何でも入国の手続きが適当だったとかで。聞けば彼女、日本以外でもあちこちで
似たようなトラブルを起こしていた常習犯らしいんですよ」
美優「密入国とか、怖い人なんでしょうか……」ビクビク
夏美「いえ、そういう子じゃないんですけど。ただ彼女全く悪びれない様子で、やたら
態度がデカくて入管職員も手を焼いたそうです。それで『世界のヘレン』という
通り名がついたんですよ」
瑞樹「3の倍数だけアホになるのかしら?クールみたいだし試してみましょう」ワクワク
夏美「瑞樹さんって妙な所で関西人ですよね。私も京都人ですけど……」
美優「変な事して怒らせちゃったら国際問題になりますよ……」オドオド
瑞樹「大丈夫よ、私に任せなさいっ!世界だかナベ○ツだか知らないけど、日本は私の
テリトリーよ。元地方局のマドンナの実力見せてあげるわっ!」フフン♪
夏美(川島さんってパッションでも通用しそうな人よね。クールにしては熱いというか、
アクティブで早苗さんに通じる所があるかも……)
瑞樹「さぁっ!仕事の話はこれくらいにして飲みましょう!夏美ちゃんも美優ちゃんも
今日は帰さないわよ!」カンパイ!
美優「大丈夫かなあ……」
***
― 翌日・事務所にて ―
ヘレン「ヘレンよ。知ってると思うけど。歌でもダンスでも、私は世界レベルじゃないと
意味がないと思ってる。そして私にはその素質がある。見たいならいつでも証明
してあげるわ」フフン
夏美「相変わらずねあんたは。元CAアイドルの相馬夏美よ。ここでは空港みたいな
ふてぶてしい態度は許さないからね」ギロ
瑞樹「瑞樹よ。海外には旅行でしか行った事がないからよく分からないけど、国内じゃ
敵なしよ。特に関西は私の支配下だから。疑うなら証明してあげるから、しっかり
その目で確かめなさい」フフン
夏美「瑞樹さんも変な張り合い方しなくていいですよ。何ですか関西は支配下って。
ローカルすぎて悲しくなりますよ……」
P「では自己紹介も終わったし、仕事の話に入りましょうか。今回は瑞樹さんと夏美さんの
グルメリポートに、ヘレンさんが見学について行くという形になります」
夏美「ロケ地が関西なのね。だから私と瑞樹さんが選ばれたと」
瑞樹「前の職場の上司にお願いして、プロデューサーとずっと調整していたの。ちょうど
イカナゴが美味しい季節だし、夏美ちゃんもどうかなって思って♪」ニコ
夏美「私の地元じゃあまり食べませんけどね。でも関西でお仕事ってだけでテンションが
上がります。今からワクワクしますよ♪」ワクワク
P「それは良かったです。では詳しいスケジュールはこちらの用紙に……」
ヘレン「ちょっと待って。どうして私がリポーターの見学なんてしなくちゃいけないの?」
瑞樹「うん?」
夏美「ちょ、あんた……!! 」
ヘレン「だってそうじゃない?私は歌とダンスをする為に日本に来たのに、どうして全く
関係のないグルメリポートに行く必要があるのよ。これは重大な契約違反よ」
夏美「黙って聞いていれば……!! 」P「まあまあ抑えて下さい夏美さん。ヘレンさんの
疑問もごもっともです。ご説明しましょう」
ヘレン「いいわ、聞かせて頂戴」
P「はい。今回のお仕事はヘレンさんに日本を知って戴こうという趣旨も含まれています。
名目は仕事の見学と勉強ですが、観光のつもりで楽しんで下さい。当事務所は貴女と
末永くお仕事をしたいと思っていますので、まずは日本を好きになって下さい」
ヘレン「わざわざ嫌いな国に来ないわよ。日本に来たのも初めてじゃないし。でも納得
したから、無駄だと思うけどやってあげる。じゃあ瑞樹、夏美、後はよろしく。
私はレッスンを見学してくるわ」スクッ
スタスタスタ……バタン
夏美「今すぐ国外追放したいんですけど!とにかく日本からゲラウトヒア!」バンッ!!
P「まあまあ落ち着いて下さい。いや~、外国の人ははっきり意見を言われますね」ニコニコ
夏美「余裕ですね!? 本当に大丈夫ですか!? 私はこの仕事、早くも失敗の二文字が頭の中に
浮かんでいるんですけど!? 」クワッ
瑞樹「大丈夫大丈夫。町工場の頑固職人や偏屈な編集局長に比べたら、外国人の小娘
なんて可愛いものよ」ケラケラ
P「瑞樹さんなら俺も社長も安心してお願い出来ます。ヘレンさんの事頼みますね。
向こうのテレビ局にもよろしくお伝え下さい」ペコリ
夏美(そういえば私、瑞樹さんの事あまり知らないのよね。元アナウンサーってのは
知ってるけど。でもプロデューサーも美優さん達も絶大な信頼を寄せてるから、
きっと只者じゃないんだろうな―――――)
***
―レッスン場・初級コース―
<ハイサイショカライキマスヨ―、ラーラーラーラー…… <ラーラーラーラー……
ヘレン(ふ~ん、小さい子も結構いるのね。良い環境だわ……)ジー
ベテトレ「ん?見かけない顔だな。新人か?」スタスタ
ヘレン「ヘレンよ。よろしくね。今日は見学に来たの」
ベテトレ「ベテラントレーナーだ。上級コースを担当している。今君が見ていのは
初級コースだが、私のレッスンも見学していくか?」
ヘレン「あら、あなたがそうなの。私上級コースを受ける予定なのよ。マスターコースを
希望したんだけど、上級コースのクリアが条件だって言われちゃって」
ベテトレ「ほう、なかなか豪気だな。だが上級コースも楽ではないぞ。新人だからと
言って甘くしないから覚悟しとけよ」ニヤリ
ヘレン「それは楽しみね。それじゃあ早速案内して……」
ガチャ ぱたぱたぱた…… ぎゅっ
ヘレン「ん?何か腰の辺りやわらかいものが……」チラ
雪美「たすけて……」ウルウル
ルキトレ「こ~ら雪美ちゃん、しっかりレッスンしなくちゃダメよ?」ガチャ
雪美「いや……」フルフル
ベテトレ「ほう、珍しいな。人見知りの雪美がPと美優以外に抱きつくなんて」
ルキトレ「すみません、すぐに連れて帰りますから……」ペコペコ
雪美「いや……」ジワ
ヘレン「今日はもういいんじゃない?さっきから見てたけど、この子調子悪そうだし。
これ以上無理させても逆効果でしょ」
ルキトレ「え…… そうなの雪美ちゃん?」ギョッ
雪美「のど…… ちょっといたい……」ケホッ
ベテトレ「ほう、見ていただけで気付いたとは大したものだな。おい、お前はもっとよく
注意しろ。何も言わない雪美も悪いが、お前が気付かないでどうする?」ギロ
ルキトレ「すみません…… ごめんね雪美ちゃん、じゃあ今日は終わりにしよっか。でも
次はちゃんと言ってね?私に言い辛かったら他の子に言ってもいいから」
雪美 コクコク
ヘレン「一件落着ね。じゃあ私はこれで……」
ぎゅっ
ヘレン「……離してくれないかしら?」
雪美 フルフル
ベテトレ「はっはっはっ、すっかり懐かれてしまったなようだな。そうなると雪美は
なかなか離れないぞ。いつも美優も苦労してるんだ」ニヤニヤ
ルキトレ「すみません、少しの間でいいのでその子の様子見ててもらえないでしょうか?
後でのど薬をお渡ししますから……」ペコペコ
ヘレン「別に構わないけど…… でも遊んであげないわよ?」
ベテトレ「それでいいさ。その子は気まぐれな猫みたいなものだ。必要以上に干渉される
のも好きじゃないみたいだし、適当に頭でも撫でてやれ」
ヘレン「猫って…… まあいいわ。おいで雪美、こっちらしいわよ」スタスタ
雪美「♪」テクテク
―レッスン場・上級コース―
ベテトレ「はいステップ、ステップ、ステップアンドターン!」パンパン
真奈美「おい、誰だあの怪しい外国人は。そして何故雪美が懐いているんだ?」キュッ、キュッ
留美「知らないわよ。でも雪美を盗られた気がして軽くショックだわ。私が猫じゃらしを
振っても見向きもしなかったのに……」タン、タタン
千秋「アナタは何をしているのよ。あの子は猫っぽいけど本物の猫じゃないでしょ。
でも私に全く近づかない雪美が、他人にくっついてるなんて珍しいわね」トン、トン
ベテトレ「そこ!余計な事しゃべってないでレッスンに集中しろ!」パンパン
ヘレン「平和ねこの国は。ここならあの子達も……」ボソッ
雪美「……ヘレン?」ピク
ヘレン「雪美も頑張りなさい。あなたも世界を目指すのよ」ナデナデ
雪美「うん……?」ゴロゴロ
***
―仕事当日・グルメリポートin関西―
チーフ「久しぶりだな瑞樹!よく来た!」ガシッ
瑞樹「私も一緒に仕事が出来て嬉しいわ。今日はよろしくね」ガシッ
チーフ「おうよ。それに今日は△テレビの奴も近くでグルメリポートをするらしいんだよ。
向こうには絶対に負けられないから頼んだぞ!」ポン
瑞樹「相変わらず仲が悪いみたいね。ま、こっちはこっちで楽しくやりましょう」ニコ
マイク「よろしくお願いします瑞樹さん!東京でも大活躍ですね!」
カメラ「瑞樹さんとまた仕事が出来るなんてサイコーっすよ!」
<オネガイシマース! <サインクダサーイ! <ネエサーン!
瑞樹「ふぅ、みんな元気そうで安心したわ。ん?どしたの夏美ちゃん?」
夏美「す、すごいですね瑞樹さんって…… あんなにスタッフの皆さんに好かれてるなんて。
いつでもアナウンサーで現場復帰出来そうな勢いじゃないですか……」アゼン
瑞樹「みんな一緒にロケを回った戦友だからね。台風の日も吹雪の日も、マイク一本
カメラ一台で中継したわ。離れてても仲間は仲間よ。そうよねヘレン?」チラ
ヘレン「ふんっ、こんな小さい島国で離れても知れてるじゃない。そういうセリフは
せめて国境を超えてから言いなさい」プイ
夏美「こいつ……っ!! 」イラッ
瑞樹「まあまあ落ち着いて。夏美ちゃんも笑顔!今日は天気も良いしクルーも楽しそう
だし、きっと素敵な仕事になるわよ。だから私達も頑張りましょう!」オー!
夏美「そうですね。瑞樹さんの顔に泥を塗るわけにはいきませんね。ほら、アンタも
しっかりやりなさいよ」ジロ
ヘレン「私はそもそも見学だし…… ん?メール?」~♪~♪
――――――――――
From 雪美
がんばって
――――――――――
ヘレン「ふっ……」クス
瑞樹「どうしたのヘレン?」
ヘレン「何でもないわ。よろしく瑞樹。ついでに夏美も」
夏美「ついでって言うな。まあ私はついでみたいなものだけど…… いきなり素直になって
気味が悪いわね。ロケ中はマナーモードにしときなさいよ?」
***
瑞樹「わあ~っ、いい香り~っ!今年も安心して春を迎えられますねご主人!」
夏美「おいし~っ!! 醤油と砂糖の加減が絶妙でご飯にもよく合います~!! 」パクパク
ヘレン「世界レベルの私に、あれを見て一体何を勉強しろと言うのかしら?夏美は
普通に食べてるだけだし。おいしいけど」パクパク
チーフ「よぅ姉ちゃん。口に合うか?」スタスタ
ヘレン「ええ、ナポリ料理には劣るけどね。それよりチーフのあなたが仕事をサボって、
こんな所で私とおしゃべりしててもいいのかしら?」
チーフ「ははは、こりゃ手厳しいな。俺も普段はもっと働いてるんだが、瑞樹になら安心
して任せられるからな。アイツは昔からツラがいいだけの女子アナとは違って、
現場をよく知ってるんだよ」
ヘレン「ふ~ん、私には日本のTVのレベルはよく分からないけど」
チーフ「そのうち分かるさ。ところで姉ちゃん、言いたくなければ答えなくていいが、
あんたもしかして○○国の人じゃないか?いや、俺も20年前に一度取材に行った
きりだから確証はないが……」
ヘレン「……へえ、伊達にチーフなだけの事はあるわね。でもよく分かったわね」
チーフ「やっぱりそうだったか。顔立ちや雰囲気が何となく、な。しかしよくあそこから
脱出出来たな。だってあの辺りは今でも戦争が……」
ヘレン「ニュースで報道されてるほど酷くはないわ。ただみんな世界のあちこちに移住
しちゃったから、元気かどうか分からないんだけどね。まぁ、私もこうして
生きてるんだしきっと大丈夫でしょう。ミズキ達には内緒よ?」ウィンク☆
チーフ「わかったよ。俺も姉ちゃんを応援してるから、頑張れよ!」ニカッ
瑞樹「チーフ、終わったわよー!そこでウチの子ナンパするのやめてくれない?」
チーフ「うるせー、お前が俺の分まで仕事するから暇なんだよ。あとカミさんにバレたら
追い出されるから、この事は内緒にしてくれよ?」シィ―ッ
<ワハハハハハハハハ…… <クスクスクスクス……
瑞樹「さぁさっさと撤収!! 営業の邪魔にならないように急いで片付けるわよ!! 」
―――
チーフ「喜べお前ら!瑞樹のおかげで1時間早く片付いた!つまり1時間長く打ち上げが
出来るという事だ。今日は遠慮なくガンガン飲むぞ!」
スタッフ「「「「「「「「オ―――――――――――ッ!! 」」」」」」」」
瑞樹「お待たせ。じゃあ行きましょうか二人とも。しっかり自分をアピール出来たら、
またここで仕事が出来るかもね。私もフォローするから頑張りなさい♪」
夏美「ありがとうございます!! 私も全力で」ヘレン「くだらないわね」夏美「は?」カチン
ヘレン「ちまちまと根回ししてコネを築かないと仕事も出来ないの?撮影クルーは全員
顔見知りだし、台本も原稿も揃っていて全て予定調和。そんな低レベルな仕事を
続ける為に時間外営業するなら、早く帰って休みたいのだけど」
夏美「黙って聞いていればあんたいい加減に……!! 」瑞樹「いいのよ夏美ちゃん」
夏美「いいわけないですよ!? 今回の仕事だって瑞樹さんがどれだけ頑張ったか……!! 」
瑞樹「それは私の都合でヘレンには関係ないわ。確かにスタッフと馴れ合いもあって
緊張感が足りなかったかもしれない。でもねヘレン、これだけは言わせて」
ヘレン「何かしら?」
瑞樹「どれだけ準備を重ねても失敗する事はあるのよ。自分は完璧にこなせても、外的な
要因で仕事が上手く回らない事もある。だから私達は根回しをしたり、原稿を準備
したりして全員で万全の体制を整えるの。大きな仕事は一人じゃ出来ないのよ?」
ヘレン「ふ~ん……」
瑞樹「あなたの実力が世界で通用しても、世界はあなたを必要としないかもしれないわ。
どれだけ遠くに目を向けても、あなたの世界はあなたの足元から始まっているの。
だからまずは自分の足元をしっかり固めなさい」
ヘレン「……全く、日本はお節介な人間が多いわね。雪美みたいなちっちゃい子まで
私を心配するんだから、本当に参っちゃうわ……」ポリポリ
夏美「雪美?もしかして雪美ちゃん?どうしてあんたが……」ギョッ
ヘレン「いいわよ、受けて立つわ。でも私根回しとかした事ないから、普通に座ってる
だけよ。それでもいいかしら?」
瑞樹「いいわよ。その分私が売り込んであげるから。それじゃ行きましょうか♪」ルンルン
―――
瑞樹「お待たせチーフ……ってどうしたのラジオなんて聞いて。事故でもあった?」
チーフ「いや、どうやらこの近くで車の衝突事故があったらしいんだが、片方の車が
△テレビのチーフの野郎の車によく似てるんだよ。ここいらであんな派手な
スポーツカー乗り回してるのはヤツしかいないからな」
瑞樹「△テレビって確かこの近くでリポートしてるのよね。もし事故を起こした車がその
チーフだったら、撮影はどうなるのかしら……?」
チーフ「いざとなれば近くの支社から替えのスタッフが来るだろう。それにあちらさんも
収録終わってるかもしれないし、俺達が気にする事じゃないさ」
瑞樹「……いえ、やっぱり気になるわ。チーフ、すぐに△テレビの収録現場に向かって!」
チーフ「やれやれ、そう言うと思ったよ…… ま、元々瑞樹のおかげで早く終わったんだし
俺が反対出来る立場でもねえか。おいお前ら!瑞樹の為に今からタダ働きになる
かもしれんが、文句ないよなぁ!? 」
スタッフ「「「「「「「「瑞樹さんの為なら喜んで!! 」」」」」」」」
チーフ「ったくバカ共が、いつもよりやる気満々じゃねえか。悪いがそういう事だから、
姉ちゃん達も打ち上げはお預けだ。いいな?」
夏美「え?え?何が始まるの?どこに行くの?」オロオロ
瑞樹「それは着いてからのお楽しみよ。ヘレン、ラッキーねあなた。滅多に見られない
私達の本気が見られるかもよ?」ニヤリ
ヘレン「本気?今までの仕事は手を抜いていたのかしら?」ピク
瑞樹「本気と言うか限界突破、リミットブレイクね。乱発したら体が保たないから
普段はセーブしてるんだけど、特別サービスしてあげる♪」ギラリ
ヘレン「リミットブレイク……?」
―△テレビ現場―
チーフ「なるほど、下っ端スタッフのお前らに撮影準備を全部押し付けて……」
瑞樹「チーフ以下メインクルーは全員ご飯を食べに行って事故に遭ったと」
チーフ「しかも全員病院送りで撮影はまだかよ。想像以上に最悪の展開だな……」
△スタッフ1「そうなんすよ、もう俺達どうしていいかわからなくて……」グス
チーフ「アホなチーフと頭のユルい女子アナを使うからこういう事になるんだよ。前は
もうちっと現場を大事にしていたのに、△テレビも質が落ちたなあ」
△スタッフ2「返す言葉もありません。この件はすぐに本社に……」瑞樹「それで?」
△スタッフ2「え……?」
瑞樹「それで撮影はどうするの?時間圧してるんじゃないの?」ズンズン
△スタッフ1「いや、だってチーフもカメラもリポーターもいないし、下っ端の俺達だけ
じゃどうしようもないから中止に……」タジタジ
瑞樹「仕事ナメんのもええ加減にせえよこのボケエエエエエェェェェェッッッ!!!!!! 」クワッ!!
△スタッフ「「「「ひっ!? 」」」」ビクッ
夏美「ひっ!? 」ビクッ
ヘレン「Oh……」
チーフ「やっぱりかよ」ハア
瑞樹「あんたんとこのカスチーフのしょうもない事故のせいで取材先の人に迷惑かける
わけにはいかんやろが!! 向こうさんもこの不景気の中、忙しいのに時間作って準備
して待っとんや!! テレビ局やからって勘違いしとんちゃうぞゴラァッ!! 」グイッ
△スタッフ1「でももう取材は断ったし、それに支社から応援を呼ぶにも今からじゃ中継に
間に合いませんし……」オドオド
瑞樹「撮影はうちらが引き受けたるわ。あんたはもっかい取材させてもらえるように
お願いして来いや。土下座してでも許してもらえ。わかったな!? 」ギロ
△スタッフ1「い、いってきま~す!! 」ピュ―――ッ
瑞樹「さてと、じゃあみんなやりましょうか!私は原稿のチェックするから、みんなは
すぐに撮影の準備に入って。時間もないから超特急で頼むわよ!」
スタッフ「「「「「「「「オ――――――――ッッッ!!!!!! 」」」」」」」」
<ウワ、コノゲンコウナイヨウスカスカジャナイ! <タイムスケジュールヨコセ!
夏美「すごい…… 瑞樹さん達ゼロから現場を作り上げてる…… 」ポカーン
ヘレン「クルーの動きも全然違う…… これがリミットブレイク……?」アゼン
チーフ「現場第一なのは変わってないなあいつ。あれが本気の瑞樹だよ。俺達の身体には
作業の手順が染み込んでるから、いざとなれば準備無しでも仕事が出来るんだ。
ただしリスク上等、片道切符のエマージェンシーモードだがな」ニヤリ
夏美「瑞樹さんがあんなひど…過激な言葉を遣っているの初めて見ました。いつもは関西
の人だと分からないくらい綺麗な標準語をしゃべっているのに……」
チーフ「あいつは元々全国ネット志望だったからな。でも地方局を馬鹿にされたとかで
本社と大喧嘩して、自分からローカル放送に残る道を選んだんだ。全国区で活躍
出来る能力は十分あったのに、アホな女やでホンマに……」
瑞樹「聞こえてるわよチーフ!そこでウチの子達をナンパしてるヒマがあるんだったら
こっち手伝って!私今すごく忙しいんだけど!? 」ガリガリガリガリ……
チーフ「わかっとるわい。でもワシももう歳やから、お前らみたいな無理は出来んわ。
せやから△テレビのガキと一緒に、取材の再交渉してくるわ。なんやさっきから
向こうの店主ごっつ怒っとるみたいで難航しとるからな」
瑞樹「5分で終わらせて戻ってきて!ほらさっさと行く!」シッシッ
チーフ「お前はチーフを何やと思っとるんや…… よっしゃ!そんじゃワシが久しぶりに
カメラやったろか!お前らワシが戻るまでにちゃんと準備しとけよ!」
カメラ「ちょ!? 俺の仕事取らんとってくださいよ!? 」ギョッ
チーフ「やかましい!ワシの伝説の撮影テクで△テレビの連中をビビらせたるわい!! もう
二度とワシらに対抗しようと思わせんくらいになっ!! 」ニヤリ
瑞樹「口を動かさずに手動かす!こっち原稿終わったわよ!ほらさっさとしなさい!」
スタッフ「早!? マジすか姐さん、ローカル放送のマドンナ健在っすね!」
瑞樹「その名前は古いわ。今の私はアイドル川島瑞樹よっ!」ニコッ
***
―数日後・レッスン場―
雪美「あ…… ヘレン……」パタパタパタ……
ヘレン「ただいま雪美。ちゃんとレッスンしてた?」ナデナデ
雪美「うん…… 約束したから……」ギュッ
ヘレン「それは良かったわ。これおみやげね。ゴトウチキ○ィだっけ?このストラップ
あっちでしか売ってないらしいわよ」チャラ
雪美「ありがとう……でも私…… 京都人…… 関西の持っとるどす……」チャラチャラチャラ…
ヘレン「あらそうだったの。じゃあ無駄になっちゃったわね」
雪美「ううん…… ちょうだい…… 私のあげる…… これでおそろい……」ニコッ
ヘレン「それは良いアイデアね。やるじゃない」ナデナデ
雪美「うん…… じゃあ私…… 行ってくる……」グッ
ヘレン「がんばりなさい。雪美も目標は世界レベルだからね!」ニコッ
ぱたぱたぱた……
真奈美「お前本当に雪美と仲が良いんだな」スタスタ
ヘレン「あなたは確か……千秋だっけ?」キョトン
真奈美「木場真奈美だ。何度かレッスンで一緒になっただろうが。どうだったグルメ
リポートは?夏美は完全にノビていたが、お前は大丈夫か?」
ヘレン「鍛え方が違うわよ。まぁ、世界レベルの私でも少しキツかったけどね。瑞樹も
クールでクレイジーで、ラストはみんなグロッキーだったわ」ケラケラ
真奈美「あの瑞樹さんがそんな無茶をするとは、是非見たかったな。しかしおかげで
リポートは好評だったぞ。『川島瑞樹二局制覇』『局を超えたローカル放送の
元マドンナアナ』って、東京でもニュースになったしな」
ヘレン「瑞樹が張り切りすぎてライバル局の方が視聴率良かったみたいだから、後で
チーフに文句言われたけどね。流石の私も瑞樹の実力を認めざるを得ないわ」
真奈美「瑞樹さんは誰をどう動かせば仕事が回るか、徹底的に知り尽くしているからな。
私はそれが煩わしくてフリーになったのだが、あの人は自分の仲間を守りながら
ずっと巨大な組織と戦って来たんだ。集団戦法では敵わないさ」
ヘレン「私は今までずっと1人でやってきたから、ああいう仕事のやり方があるなんて
知らなかったわ。チームのパワーも侮れないわね」ニヤリ
真奈美「そうだな。それなら尚更、瑞樹さんに組織での動き方を教えてもらえばいいさ。
ところでお前、日本に来る前はどこにいたんだ?履歴書に『海の向こう』なんて
書いていたから、ちひろさん困っていたぞ」
ヘレン「どこだったかしらね。今まで沢山の国を回ってきたからよく覚えてないわ。
だから私のファンは世界中にいるの。瑞樹がローカルマドンナだったら、
私はグローバルマドンナよ―――――」
END
―おまけ―
―東京・△テレビ本社―
瑞樹(ふぅ、地方局とはいえ勝手な事をしたのに逆に感謝されるなんて、社長さんは割と
まともだったみたいね。東京じゃまだ私の力は弱いから、これを機につながりが
出来ればいいんだけど……)スタスタ
瑞樹「あら?あれは…… レナちゃん?」
―――
大物「またそうやって逃げる~ でも今日はOKもらえるまで離さないよん♪ 今夜夜景の
キレイなホテルのバーを予約したんだ。収録が終わった後に……ね?」スッ…
レナ「(キモッ!)すみませ~ん。今日は収録終わってからレッスンがあるんですよ~。
私これでもアイドルなんで、レッスンもしなくちゃいけなくて~……」サッ
瑞樹「大物さんおはようございます。あら、レナちゃんもいたの?」ペコリ
レナ(瑞樹さん助かりました!コイツ今日メッチャしつこくて!)アイコンタクト
瑞樹(大体の事情は察したわ。スキを見て逃げるわよ)アイコンタクト
大物「おほっ♪ 瑞樹ちゃんまで来てくれるなんてボク嬉しいなあ。瑞樹ちゃんからも
言ってよ~ ずっと誘ってるのにレナちゃん全然つれないんだよ~」クネクネ
瑞樹「レナちゃんはみんなのアイドルですから。それにレナちゃんのファンはラスベガス
にもいっぱいいますし、あまりちょっかいを出すと危ないかもしれませんよ?」ニコ
大物「そ、そうだったね…… レナちゃんはベガスのディーラーさんだったね……」→サッ
レナ(ナイス瑞樹さん!でも私のイメージ悪くなってませんか?確かにアブない客も
いましたけど、私マフィアのオンナじゃないですよ!? )アイコンタクト
瑞樹(この手のタイプはビビリだからこう言っておけば大丈夫よ。どうせ遊びだし、
現地まで行って確かめる度胸もないわよ)アイコンタクト
大物「う~ん、それじゃあ美優ちゃんにしよっかな~?あの子最近明るくなったし。
瑞樹ちゃ~ん、ボクに紹介してよ~」ニタア
瑞樹「な……!? 」ギョッ
大物「あ、そういえば留美ちゃん、今度ボクの番組のアシスタントのオーディションを
受けるみたいなんだけどどうしよっかな~?ボクが一言Noって言っちゃえば、
あの子がどれだけ頑張っても落ちちゃうんだよねぇ~」ニタニタ
レナ(留美の奴、いくらオーディションが受からないからって仕事選びなさいよ!
私だってこのエロオヤジと嫌々仕事してるのに!でもコイツに嫌われたら今の
競馬番組の仕事も降ろされちゃうかもしれないし……)ギリリ
瑞樹(社長の名前を出す?いえ、まだそこまでのコネは使えないわね…… それにコイツ
結構数字持ってるし、局に抗議した所で聞き入れてくれるかどうか……)グヌヌ
大物「さあどうする~?瑞樹ちゃんもイイオンナだね。ボクは大阪人が大嫌いなんだけど、
瑞樹ちゃんだったらトクベツに愛人にしてあげてもいいよ~♪」ニタニタ
瑞樹(この……!! )イラッ
礼子「あら、瑞樹とレナじゃない。こんな所で何してるの?」スタスタ
レナ「げ……」瑞樹「れ、礼子さん!? どうしてここに……?」ギョッ
礼子「私はここの会長さんからパーティーのお誘いを受けたから、ドレスの打ち合わせに
来たんだけど。あら?大物ちゃんもいたの。ウチのコに何か用?」ギロ
大物「ヒ…… れ、礼子ちゃん……」ビクッ
礼子「やあねえ大物ちゃん、そんなに怖がらなくていいわよ~♪ 働きすぎで幻覚でも
見えてるんじゃないの?」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
大物「そ、そうだね…… じゃあボク、収録があるから失礼するよ……」コソコソ
礼子「あ、その必要はないわよ。大物ちゃんその番組降板だから。最近疲れてるみたい
だし、ざくっと仕事を減らして休ませてあげようって私が言ったら、会長さん
すぐにOK出してくれたわよ。良かったわね」ニコ
大物「な……?そ、そんなバカな……」サアア…
礼子「これを機にそろそろ引退も考えたら?南の島に別荘が欲しかったらいつでも相談
してね。あてはいくらでもあるから♪」ウィンク☆
大物「あ…… う…… 」バタン
礼子「あらあら、こんなところで寝ちゃうなんてよっぽど疲れてたのね。それじゃあ私は
帰るから。レナも瑞樹も頑張ってね」ヒラヒラ
レナ(まさにキングだわ…… 絶対に敵に回したくないわねあの人……)ゾク
瑞樹(生きてるかしらこの人?業界では死んだも同然だけど…… 私もちまちま根回しとか
しないで、たまには礼子さんみたいにズバっとやってみたいわ……)ツンツン
おわり
ここまで。川島さんカッコいいよ川島さんということで。
川島さんは気の良い姐さん=世話焼き=仲間思いというイメージです。
その為にいつも色々考えてそうな。ではまた。
元スレ
夏美「おっはよーございまーす!」ガチャ
ちひろ「おはようございます夏美さん。今日も元気ですね」
夏美「元気と笑顔が一番ですから♪ あれ?ちひろさん、それ履歴書ですか?」ジロ
ちひろ「はい。明日からウチの事務所所属になる人なんですけど、でも彼女の履歴書に
ちょっと問題がありまして……」ウーン
3: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:26:08.93 ID:BDU7bnsa0
夏美「問題?どれどれ…… あ―――――っ!! 」ギョッ
ちひろ「ど、どうしたんですか!? もしかしてこの人の事を知ってるんですか?」ビクッ
夏美「『世界のヘレン』じゃないですか!? どうして日本に!? てかアイドルに!? 」
4: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:27:35.11 ID:BDU7bnsa0
―夜・都内居酒屋―
夏美「CA時代に空港でトラブって、入管に連行されていく彼女を見た事がありました。
何でも入国の手続きが適当だったとかで。聞けば彼女、日本以外でもあちこちで
似たようなトラブルを起こしていた常習犯らしいんですよ」
美優「密入国とか、怖い人なんでしょうか……」ビクビク
5: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:28:24.74 ID:BDU7bnsa0
夏美「いえ、そういう子じゃないんですけど。ただ彼女全く悪びれない様子で、やたら
態度がデカくて入管職員も手を焼いたそうです。それで『世界のヘレン』という
通り名がついたんですよ」
瑞樹「3の倍数だけアホになるのかしら?クールみたいだし試してみましょう」ワクワク
夏美「瑞樹さんって妙な所で関西人ですよね。私も京都人ですけど……」
6: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:29:52.70 ID:BDU7bnsa0
美優「変な事して怒らせちゃったら国際問題になりますよ……」オドオド
瑞樹「大丈夫よ、私に任せなさいっ!世界だかナベ○ツだか知らないけど、日本は私の
テリトリーよ。元地方局のマドンナの実力見せてあげるわっ!」フフン♪
夏美(川島さんってパッションでも通用しそうな人よね。クールにしては熱いというか、
アクティブで早苗さんに通じる所があるかも……)
瑞樹「さぁっ!仕事の話はこれくらいにして飲みましょう!夏美ちゃんも美優ちゃんも
今日は帰さないわよ!」カンパイ!
美優「大丈夫かなあ……」
7: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:31:34.31 ID:BDU7bnsa0
***
― 翌日・事務所にて ―
ヘレン「ヘレンよ。知ってると思うけど。歌でもダンスでも、私は世界レベルじゃないと
意味がないと思ってる。そして私にはその素質がある。見たいならいつでも証明
してあげるわ」フフン
夏美「相変わらずねあんたは。元CAアイドルの相馬夏美よ。ここでは空港みたいな
ふてぶてしい態度は許さないからね」ギロ
8: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:32:26.04 ID:BDU7bnsa0
瑞樹「瑞樹よ。海外には旅行でしか行った事がないからよく分からないけど、国内じゃ
敵なしよ。特に関西は私の支配下だから。疑うなら証明してあげるから、しっかり
その目で確かめなさい」フフン
夏美「瑞樹さんも変な張り合い方しなくていいですよ。何ですか関西は支配下って。
ローカルすぎて悲しくなりますよ……」
9: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:33:30.09 ID:BDU7bnsa0
P「では自己紹介も終わったし、仕事の話に入りましょうか。今回は瑞樹さんと夏美さんの
グルメリポートに、ヘレンさんが見学について行くという形になります」
夏美「ロケ地が関西なのね。だから私と瑞樹さんが選ばれたと」
瑞樹「前の職場の上司にお願いして、プロデューサーとずっと調整していたの。ちょうど
イカナゴが美味しい季節だし、夏美ちゃんもどうかなって思って♪」ニコ
夏美「私の地元じゃあまり食べませんけどね。でも関西でお仕事ってだけでテンションが
上がります。今からワクワクしますよ♪」ワクワク
10: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:34:20.66 ID:BDU7bnsa0
P「それは良かったです。では詳しいスケジュールはこちらの用紙に……」
ヘレン「ちょっと待って。どうして私がリポーターの見学なんてしなくちゃいけないの?」
瑞樹「うん?」
夏美「ちょ、あんた……!! 」
11: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:35:14.43 ID:BDU7bnsa0
ヘレン「だってそうじゃない?私は歌とダンスをする為に日本に来たのに、どうして全く
関係のないグルメリポートに行く必要があるのよ。これは重大な契約違反よ」
夏美「黙って聞いていれば……!! 」P「まあまあ抑えて下さい夏美さん。ヘレンさんの
疑問もごもっともです。ご説明しましょう」
ヘレン「いいわ、聞かせて頂戴」
12: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:36:28.03 ID:BDU7bnsa0
P「はい。今回のお仕事はヘレンさんに日本を知って戴こうという趣旨も含まれています。
名目は仕事の見学と勉強ですが、観光のつもりで楽しんで下さい。当事務所は貴女と
末永くお仕事をしたいと思っていますので、まずは日本を好きになって下さい」
ヘレン「わざわざ嫌いな国に来ないわよ。日本に来たのも初めてじゃないし。でも納得
したから、無駄だと思うけどやってあげる。じゃあ瑞樹、夏美、後はよろしく。
私はレッスンを見学してくるわ」スクッ
13: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:37:30.46 ID:BDU7bnsa0
スタスタスタ……バタン
夏美「今すぐ国外追放したいんですけど!とにかく日本からゲラウトヒア!」バンッ!!
P「まあまあ落ち着いて下さい。いや~、外国の人ははっきり意見を言われますね」ニコニコ
夏美「余裕ですね!? 本当に大丈夫ですか!? 私はこの仕事、早くも失敗の二文字が頭の中に
浮かんでいるんですけど!? 」クワッ
14: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:38:33.18 ID:BDU7bnsa0
瑞樹「大丈夫大丈夫。町工場の頑固職人や偏屈な編集局長に比べたら、外国人の小娘
なんて可愛いものよ」ケラケラ
P「瑞樹さんなら俺も社長も安心してお願い出来ます。ヘレンさんの事頼みますね。
向こうのテレビ局にもよろしくお伝え下さい」ペコリ
夏美(そういえば私、瑞樹さんの事あまり知らないのよね。元アナウンサーってのは
知ってるけど。でもプロデューサーも美優さん達も絶大な信頼を寄せてるから、
きっと只者じゃないんだろうな―――――)
15: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:39:45.76 ID:BDU7bnsa0
***
―レッスン場・初級コース―
<ハイサイショカライキマスヨ―、ラーラーラーラー…… <ラーラーラーラー……
ヘレン(ふ~ん、小さい子も結構いるのね。良い環境だわ……)ジー
16: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:40:39.09 ID:BDU7bnsa0
ベテトレ「ん?見かけない顔だな。新人か?」スタスタ
ヘレン「ヘレンよ。よろしくね。今日は見学に来たの」
ベテトレ「ベテラントレーナーだ。上級コースを担当している。今君が見ていのは
初級コースだが、私のレッスンも見学していくか?」
17: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:41:48.56 ID:BDU7bnsa0
ヘレン「あら、あなたがそうなの。私上級コースを受ける予定なのよ。マスターコースを
希望したんだけど、上級コースのクリアが条件だって言われちゃって」
ベテトレ「ほう、なかなか豪気だな。だが上級コースも楽ではないぞ。新人だからと
言って甘くしないから覚悟しとけよ」ニヤリ
ヘレン「それは楽しみね。それじゃあ早速案内して……」
18: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:42:33.35 ID:BDU7bnsa0
ガチャ ぱたぱたぱた…… ぎゅっ
ヘレン「ん?何か腰の辺りやわらかいものが……」チラ
雪美「たすけて……」ウルウル
19: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:43:57.36 ID:BDU7bnsa0
ルキトレ「こ~ら雪美ちゃん、しっかりレッスンしなくちゃダメよ?」ガチャ
雪美「いや……」フルフル
ベテトレ「ほう、珍しいな。人見知りの雪美がPと美優以外に抱きつくなんて」
20: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:45:12.28 ID:BDU7bnsa0
ルキトレ「すみません、すぐに連れて帰りますから……」ペコペコ
雪美「いや……」ジワ
ヘレン「今日はもういいんじゃない?さっきから見てたけど、この子調子悪そうだし。
これ以上無理させても逆効果でしょ」
ルキトレ「え…… そうなの雪美ちゃん?」ギョッ
雪美「のど…… ちょっといたい……」ケホッ
21: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:46:10.14 ID:BDU7bnsa0
ベテトレ「ほう、見ていただけで気付いたとは大したものだな。おい、お前はもっとよく
注意しろ。何も言わない雪美も悪いが、お前が気付かないでどうする?」ギロ
ルキトレ「すみません…… ごめんね雪美ちゃん、じゃあ今日は終わりにしよっか。でも
次はちゃんと言ってね?私に言い辛かったら他の子に言ってもいいから」
雪美 コクコク
ヘレン「一件落着ね。じゃあ私はこれで……」
22: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:47:13.10 ID:BDU7bnsa0
ぎゅっ
ヘレン「……離してくれないかしら?」
雪美 フルフル
ベテトレ「はっはっはっ、すっかり懐かれてしまったなようだな。そうなると雪美は
なかなか離れないぞ。いつも美優も苦労してるんだ」ニヤニヤ
ルキトレ「すみません、少しの間でいいのでその子の様子見ててもらえないでしょうか?
後でのど薬をお渡ししますから……」ペコペコ
23: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:48:05.15 ID:BDU7bnsa0
ヘレン「別に構わないけど…… でも遊んであげないわよ?」
ベテトレ「それでいいさ。その子は気まぐれな猫みたいなものだ。必要以上に干渉される
のも好きじゃないみたいだし、適当に頭でも撫でてやれ」
ヘレン「猫って…… まあいいわ。おいで雪美、こっちらしいわよ」スタスタ
雪美「♪」テクテク
24: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:49:26.87 ID:BDU7bnsa0
―レッスン場・上級コース―
ベテトレ「はいステップ、ステップ、ステップアンドターン!」パンパン
真奈美「おい、誰だあの怪しい外国人は。そして何故雪美が懐いているんだ?」キュッ、キュッ
留美「知らないわよ。でも雪美を盗られた気がして軽くショックだわ。私が猫じゃらしを
振っても見向きもしなかったのに……」タン、タタン
千秋「アナタは何をしているのよ。あの子は猫っぽいけど本物の猫じゃないでしょ。
でも私に全く近づかない雪美が、他人にくっついてるなんて珍しいわね」トン、トン
25: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 17:50:20.28 ID:BDU7bnsa0
ベテトレ「そこ!余計な事しゃべってないでレッスンに集中しろ!」パンパン
ヘレン「平和ねこの国は。ここならあの子達も……」ボソッ
雪美「……ヘレン?」ピク
ヘレン「雪美も頑張りなさい。あなたも世界を目指すのよ」ナデナデ
雪美「うん……?」ゴロゴロ
29: >>27thanks ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 20:44:01.00 ID:BDU7bnsa0
***
―仕事当日・グルメリポートin関西―
チーフ「久しぶりだな瑞樹!よく来た!」ガシッ
瑞樹「私も一緒に仕事が出来て嬉しいわ。今日はよろしくね」ガシッ
チーフ「おうよ。それに今日は△テレビの奴も近くでグルメリポートをするらしいんだよ。
向こうには絶対に負けられないから頼んだぞ!」ポン
30: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 20:45:22.67 ID:BDU7bnsa0
瑞樹「相変わらず仲が悪いみたいね。ま、こっちはこっちで楽しくやりましょう」ニコ
マイク「よろしくお願いします瑞樹さん!東京でも大活躍ですね!」
カメラ「瑞樹さんとまた仕事が出来るなんてサイコーっすよ!」
31: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 20:46:21.43 ID:BDU7bnsa0
<オネガイシマース! <サインクダサーイ! <ネエサーン!
瑞樹「ふぅ、みんな元気そうで安心したわ。ん?どしたの夏美ちゃん?」
夏美「す、すごいですね瑞樹さんって…… あんなにスタッフの皆さんに好かれてるなんて。
いつでもアナウンサーで現場復帰出来そうな勢いじゃないですか……」アゼン
瑞樹「みんな一緒にロケを回った戦友だからね。台風の日も吹雪の日も、マイク一本
カメラ一台で中継したわ。離れてても仲間は仲間よ。そうよねヘレン?」チラ
32: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 20:47:20.64 ID:BDU7bnsa0
ヘレン「ふんっ、こんな小さい島国で離れても知れてるじゃない。そういうセリフは
せめて国境を超えてから言いなさい」プイ
夏美「こいつ……っ!! 」イラッ
瑞樹「まあまあ落ち着いて。夏美ちゃんも笑顔!今日は天気も良いしクルーも楽しそう
だし、きっと素敵な仕事になるわよ。だから私達も頑張りましょう!」オー!
夏美「そうですね。瑞樹さんの顔に泥を塗るわけにはいきませんね。ほら、アンタも
しっかりやりなさいよ」ジロ
ヘレン「私はそもそも見学だし…… ん?メール?」~♪~♪
33: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 20:48:49.73 ID:BDU7bnsa0
――――――――――
From 雪美
がんばって
――――――――――
ヘレン「ふっ……」クス
瑞樹「どうしたのヘレン?」
ヘレン「何でもないわ。よろしく瑞樹。ついでに夏美も」
夏美「ついでって言うな。まあ私はついでみたいなものだけど…… いきなり素直になって
気味が悪いわね。ロケ中はマナーモードにしときなさいよ?」
34: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 20:50:18.05 ID:BDU7bnsa0
***
瑞樹「わあ~っ、いい香り~っ!今年も安心して春を迎えられますねご主人!」
夏美「おいし~っ!! 醤油と砂糖の加減が絶妙でご飯にもよく合います~!! 」パクパク
ヘレン「世界レベルの私に、あれを見て一体何を勉強しろと言うのかしら?夏美は
普通に食べてるだけだし。おいしいけど」パクパク
35: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 20:51:18.24 ID:BDU7bnsa0
チーフ「よぅ姉ちゃん。口に合うか?」スタスタ
ヘレン「ええ、ナポリ料理には劣るけどね。それよりチーフのあなたが仕事をサボって、
こんな所で私とおしゃべりしててもいいのかしら?」
チーフ「ははは、こりゃ手厳しいな。俺も普段はもっと働いてるんだが、瑞樹になら安心
して任せられるからな。アイツは昔からツラがいいだけの女子アナとは違って、
現場をよく知ってるんだよ」
ヘレン「ふ~ん、私には日本のTVのレベルはよく分からないけど」
36: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 20:52:57.52 ID:BDU7bnsa0
チーフ「そのうち分かるさ。ところで姉ちゃん、言いたくなければ答えなくていいが、
あんたもしかして○○国の人じゃないか?いや、俺も20年前に一度取材に行った
きりだから確証はないが……」
ヘレン「……へえ、伊達にチーフなだけの事はあるわね。でもよく分かったわね」
チーフ「やっぱりそうだったか。顔立ちや雰囲気が何となく、な。しかしよくあそこから
脱出出来たな。だってあの辺りは今でも戦争が……」
ヘレン「ニュースで報道されてるほど酷くはないわ。ただみんな世界のあちこちに移住
しちゃったから、元気かどうか分からないんだけどね。まぁ、私もこうして
生きてるんだしきっと大丈夫でしょう。ミズキ達には内緒よ?」ウィンク☆
チーフ「わかったよ。俺も姉ちゃんを応援してるから、頑張れよ!」ニカッ
37: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 20:53:59.44 ID:BDU7bnsa0
瑞樹「チーフ、終わったわよー!そこでウチの子ナンパするのやめてくれない?」
チーフ「うるせー、お前が俺の分まで仕事するから暇なんだよ。あとカミさんにバレたら
追い出されるから、この事は内緒にしてくれよ?」シィ―ッ
<ワハハハハハハハハ…… <クスクスクスクス……
瑞樹「さぁさっさと撤収!! 営業の邪魔にならないように急いで片付けるわよ!! 」
38: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 20:55:21.26 ID:BDU7bnsa0
―――
チーフ「喜べお前ら!瑞樹のおかげで1時間早く片付いた!つまり1時間長く打ち上げが
出来るという事だ。今日は遠慮なくガンガン飲むぞ!」
スタッフ「「「「「「「「オ―――――――――――ッ!! 」」」」」」」」
瑞樹「お待たせ。じゃあ行きましょうか二人とも。しっかり自分をアピール出来たら、
またここで仕事が出来るかもね。私もフォローするから頑張りなさい♪」
39: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 20:56:32.19 ID:BDU7bnsa0
夏美「ありがとうございます!! 私も全力で」ヘレン「くだらないわね」夏美「は?」カチン
ヘレン「ちまちまと根回ししてコネを築かないと仕事も出来ないの?撮影クルーは全員
顔見知りだし、台本も原稿も揃っていて全て予定調和。そんな低レベルな仕事を
続ける為に時間外営業するなら、早く帰って休みたいのだけど」
夏美「黙って聞いていればあんたいい加減に……!! 」瑞樹「いいのよ夏美ちゃん」
夏美「いいわけないですよ!? 今回の仕事だって瑞樹さんがどれだけ頑張ったか……!! 」
40: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 20:57:38.04 ID:BDU7bnsa0
瑞樹「それは私の都合でヘレンには関係ないわ。確かにスタッフと馴れ合いもあって
緊張感が足りなかったかもしれない。でもねヘレン、これだけは言わせて」
ヘレン「何かしら?」
瑞樹「どれだけ準備を重ねても失敗する事はあるのよ。自分は完璧にこなせても、外的な
要因で仕事が上手く回らない事もある。だから私達は根回しをしたり、原稿を準備
したりして全員で万全の体制を整えるの。大きな仕事は一人じゃ出来ないのよ?」
ヘレン「ふ~ん……」
41: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 20:58:48.43 ID:BDU7bnsa0
瑞樹「あなたの実力が世界で通用しても、世界はあなたを必要としないかもしれないわ。
どれだけ遠くに目を向けても、あなたの世界はあなたの足元から始まっているの。
だからまずは自分の足元をしっかり固めなさい」
ヘレン「……全く、日本はお節介な人間が多いわね。雪美みたいなちっちゃい子まで
私を心配するんだから、本当に参っちゃうわ……」ポリポリ
夏美「雪美?もしかして雪美ちゃん?どうしてあんたが……」ギョッ
42: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 20:59:26.19 ID:BDU7bnsa0
ヘレン「いいわよ、受けて立つわ。でも私根回しとかした事ないから、普通に座ってる
だけよ。それでもいいかしら?」
瑞樹「いいわよ。その分私が売り込んであげるから。それじゃ行きましょうか♪」ルンルン
43: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:00:48.36 ID:BDU7bnsa0
―――
瑞樹「お待たせチーフ……ってどうしたのラジオなんて聞いて。事故でもあった?」
チーフ「いや、どうやらこの近くで車の衝突事故があったらしいんだが、片方の車が
△テレビのチーフの野郎の車によく似てるんだよ。ここいらであんな派手な
スポーツカー乗り回してるのはヤツしかいないからな」
瑞樹「△テレビって確かこの近くでリポートしてるのよね。もし事故を起こした車がその
チーフだったら、撮影はどうなるのかしら……?」
44: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:02:04.43 ID:BDU7bnsa0
チーフ「いざとなれば近くの支社から替えのスタッフが来るだろう。それにあちらさんも
収録終わってるかもしれないし、俺達が気にする事じゃないさ」
瑞樹「……いえ、やっぱり気になるわ。チーフ、すぐに△テレビの収録現場に向かって!」
チーフ「やれやれ、そう言うと思ったよ…… ま、元々瑞樹のおかげで早く終わったんだし
俺が反対出来る立場でもねえか。おいお前ら!瑞樹の為に今からタダ働きになる
かもしれんが、文句ないよなぁ!? 」
スタッフ「「「「「「「「瑞樹さんの為なら喜んで!! 」」」」」」」」
45: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:04:13.13 ID:BDU7bnsa0
チーフ「ったくバカ共が、いつもよりやる気満々じゃねえか。悪いがそういう事だから、
姉ちゃん達も打ち上げはお預けだ。いいな?」
夏美「え?え?何が始まるの?どこに行くの?」オロオロ
瑞樹「それは着いてからのお楽しみよ。ヘレン、ラッキーねあなた。滅多に見られない
私達の本気が見られるかもよ?」ニヤリ
ヘレン「本気?今までの仕事は手を抜いていたのかしら?」ピク
46: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:05:31.31 ID:BDU7bnsa0
瑞樹「本気と言うか限界突破、リミットブレイクね。乱発したら体が保たないから
普段はセーブしてるんだけど、特別サービスしてあげる♪」ギラリ
ヘレン「リミットブレイク……?」
47: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:06:33.48 ID:BDU7bnsa0
―△テレビ現場―
チーフ「なるほど、下っ端スタッフのお前らに撮影準備を全部押し付けて……」
瑞樹「チーフ以下メインクルーは全員ご飯を食べに行って事故に遭ったと」
チーフ「しかも全員病院送りで撮影はまだかよ。想像以上に最悪の展開だな……」
△スタッフ1「そうなんすよ、もう俺達どうしていいかわからなくて……」グス
48: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:07:55.27 ID:BDU7bnsa0
チーフ「アホなチーフと頭のユルい女子アナを使うからこういう事になるんだよ。前は
もうちっと現場を大事にしていたのに、△テレビも質が落ちたなあ」
△スタッフ2「返す言葉もありません。この件はすぐに本社に……」瑞樹「それで?」
△スタッフ2「え……?」
瑞樹「それで撮影はどうするの?時間圧してるんじゃないの?」ズンズン
49: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:11:40.23 ID:BDU7bnsa0
△スタッフ1「いや、だってチーフもカメラもリポーターもいないし、下っ端の俺達だけ
じゃどうしようもないから中止に……」タジタジ
瑞樹「仕事ナメんのもええ加減にせえよこのボケエエエエエェェェェェッッッ!!!!!! 」クワッ!!
△スタッフ「「「「ひっ!? 」」」」ビクッ
夏美「ひっ!? 」ビクッ
ヘレン「Oh……」
チーフ「やっぱりかよ」ハア
50: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:12:58.67 ID:BDU7bnsa0
瑞樹「あんたんとこのカスチーフのしょうもない事故のせいで取材先の人に迷惑かける
わけにはいかんやろが!! 向こうさんもこの不景気の中、忙しいのに時間作って準備
して待っとんや!! テレビ局やからって勘違いしとんちゃうぞゴラァッ!! 」グイッ
△スタッフ1「でももう取材は断ったし、それに支社から応援を呼ぶにも今からじゃ中継に
間に合いませんし……」オドオド
51: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:14:11.59 ID:BDU7bnsa0
瑞樹「撮影はうちらが引き受けたるわ。あんたはもっかい取材させてもらえるように
お願いして来いや。土下座してでも許してもらえ。わかったな!? 」ギロ
△スタッフ1「い、いってきま~す!! 」ピュ―――ッ
瑞樹「さてと、じゃあみんなやりましょうか!私は原稿のチェックするから、みんなは
すぐに撮影の準備に入って。時間もないから超特急で頼むわよ!」
スタッフ「「「「「「「「オ――――――――ッッッ!!!!!! 」」」」」」」」
52: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:15:23.78 ID:BDU7bnsa0
<ウワ、コノゲンコウナイヨウスカスカジャナイ! <タイムスケジュールヨコセ!
夏美「すごい…… 瑞樹さん達ゼロから現場を作り上げてる…… 」ポカーン
ヘレン「クルーの動きも全然違う…… これがリミットブレイク……?」アゼン
チーフ「現場第一なのは変わってないなあいつ。あれが本気の瑞樹だよ。俺達の身体には
作業の手順が染み込んでるから、いざとなれば準備無しでも仕事が出来るんだ。
ただしリスク上等、片道切符のエマージェンシーモードだがな」ニヤリ
53: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:16:21.78 ID:BDU7bnsa0
夏美「瑞樹さんがあんなひど…過激な言葉を遣っているの初めて見ました。いつもは関西
の人だと分からないくらい綺麗な標準語をしゃべっているのに……」
チーフ「あいつは元々全国ネット志望だったからな。でも地方局を馬鹿にされたとかで
本社と大喧嘩して、自分からローカル放送に残る道を選んだんだ。全国区で活躍
出来る能力は十分あったのに、アホな女やでホンマに……」
54: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:17:55.89 ID:BDU7bnsa0
瑞樹「聞こえてるわよチーフ!そこでウチの子達をナンパしてるヒマがあるんだったら
こっち手伝って!私今すごく忙しいんだけど!? 」ガリガリガリガリ……
チーフ「わかっとるわい。でもワシももう歳やから、お前らみたいな無理は出来んわ。
せやから△テレビのガキと一緒に、取材の再交渉してくるわ。なんやさっきから
向こうの店主ごっつ怒っとるみたいで難航しとるからな」
瑞樹「5分で終わらせて戻ってきて!ほらさっさと行く!」シッシッ
55: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:30:45.43 ID:BDU7bnsa0
チーフ「お前はチーフを何やと思っとるんや…… よっしゃ!そんじゃワシが久しぶりに
カメラやったろか!お前らワシが戻るまでにちゃんと準備しとけよ!」
カメラ「ちょ!? 俺の仕事取らんとってくださいよ!? 」ギョッ
チーフ「やかましい!ワシの伝説の撮影テクで△テレビの連中をビビらせたるわい!! もう
二度とワシらに対抗しようと思わせんくらいになっ!! 」ニヤリ
56: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:32:30.13 ID:BDU7bnsa0
瑞樹「口を動かさずに手動かす!こっち原稿終わったわよ!ほらさっさとしなさい!」
スタッフ「早!? マジすか姐さん、ローカル放送のマドンナ健在っすね!」
瑞樹「その名前は古いわ。今の私はアイドル川島瑞樹よっ!」ニコッ
57: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:34:19.40 ID:BDU7bnsa0
***
―数日後・レッスン場―
雪美「あ…… ヘレン……」パタパタパタ……
ヘレン「ただいま雪美。ちゃんとレッスンしてた?」ナデナデ
雪美「うん…… 約束したから……」ギュッ
58: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:35:52.03 ID:BDU7bnsa0
ヘレン「それは良かったわ。これおみやげね。ゴトウチキ○ィだっけ?このストラップ
あっちでしか売ってないらしいわよ」チャラ
雪美「ありがとう……でも私…… 京都人…… 関西の持っとるどす……」チャラチャラチャラ…
ヘレン「あらそうだったの。じゃあ無駄になっちゃったわね」
59: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:37:36.68 ID:BDU7bnsa0
雪美「ううん…… ちょうだい…… 私のあげる…… これでおそろい……」ニコッ
ヘレン「それは良いアイデアね。やるじゃない」ナデナデ
雪美「うん…… じゃあ私…… 行ってくる……」グッ
ヘレン「がんばりなさい。雪美も目標は世界レベルだからね!」ニコッ
60: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:38:32.52 ID:BDU7bnsa0
ぱたぱたぱた……
真奈美「お前本当に雪美と仲が良いんだな」スタスタ
ヘレン「あなたは確か……千秋だっけ?」キョトン
真奈美「木場真奈美だ。何度かレッスンで一緒になっただろうが。どうだったグルメ
リポートは?夏美は完全にノビていたが、お前は大丈夫か?」
61: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:39:53.50 ID:BDU7bnsa0
ヘレン「鍛え方が違うわよ。まぁ、世界レベルの私でも少しキツかったけどね。瑞樹も
クールでクレイジーで、ラストはみんなグロッキーだったわ」ケラケラ
真奈美「あの瑞樹さんがそんな無茶をするとは、是非見たかったな。しかしおかげで
リポートは好評だったぞ。『川島瑞樹二局制覇』『局を超えたローカル放送の
元マドンナアナ』って、東京でもニュースになったしな」
ヘレン「瑞樹が張り切りすぎてライバル局の方が視聴率良かったみたいだから、後で
チーフに文句言われたけどね。流石の私も瑞樹の実力を認めざるを得ないわ」
62: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:41:47.07 ID:BDU7bnsa0
真奈美「瑞樹さんは誰をどう動かせば仕事が回るか、徹底的に知り尽くしているからな。
私はそれが煩わしくてフリーになったのだが、あの人は自分の仲間を守りながら
ずっと巨大な組織と戦って来たんだ。集団戦法では敵わないさ」
ヘレン「私は今までずっと1人でやってきたから、ああいう仕事のやり方があるなんて
知らなかったわ。チームのパワーも侮れないわね」ニヤリ
63: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:44:08.52 ID:BDU7bnsa0
真奈美「そうだな。それなら尚更、瑞樹さんに組織での動き方を教えてもらえばいいさ。
ところでお前、日本に来る前はどこにいたんだ?履歴書に『海の向こう』なんて
書いていたから、ちひろさん困っていたぞ」
ヘレン「どこだったかしらね。今まで沢山の国を回ってきたからよく覚えてないわ。
だから私のファンは世界中にいるの。瑞樹がローカルマドンナだったら、
私はグローバルマドンナよ―――――」
END
65: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:55:54.76 ID:BDU7bnsa0
―おまけ―
―東京・△テレビ本社―
瑞樹(ふぅ、地方局とはいえ勝手な事をしたのに逆に感謝されるなんて、社長さんは割と
まともだったみたいね。東京じゃまだ私の力は弱いから、これを機につながりが
出来ればいいんだけど……)スタスタ
瑞樹「あら?あれは…… レナちゃん?」
66: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:56:52.55 ID:BDU7bnsa0
―――
大物「またそうやって逃げる~ でも今日はOKもらえるまで離さないよん♪ 今夜夜景の
キレイなホテルのバーを予約したんだ。収録が終わった後に……ね?」スッ…
レナ「(キモッ!)すみませ~ん。今日は収録終わってからレッスンがあるんですよ~。
私これでもアイドルなんで、レッスンもしなくちゃいけなくて~……」サッ
67: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:58:13.23 ID:BDU7bnsa0
瑞樹「大物さんおはようございます。あら、レナちゃんもいたの?」ペコリ
レナ(瑞樹さん助かりました!コイツ今日メッチャしつこくて!)アイコンタクト
瑞樹(大体の事情は察したわ。スキを見て逃げるわよ)アイコンタクト
大物「おほっ♪ 瑞樹ちゃんまで来てくれるなんてボク嬉しいなあ。瑞樹ちゃんからも
言ってよ~ ずっと誘ってるのにレナちゃん全然つれないんだよ~」クネクネ
68: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 21:59:17.77 ID:BDU7bnsa0
瑞樹「レナちゃんはみんなのアイドルですから。それにレナちゃんのファンはラスベガス
にもいっぱいいますし、あまりちょっかいを出すと危ないかもしれませんよ?」ニコ
大物「そ、そうだったね…… レナちゃんはベガスのディーラーさんだったね……」→サッ
レナ(ナイス瑞樹さん!でも私のイメージ悪くなってませんか?確かにアブない客も
いましたけど、私マフィアのオンナじゃないですよ!? )アイコンタクト
瑞樹(この手のタイプはビビリだからこう言っておけば大丈夫よ。どうせ遊びだし、
現地まで行って確かめる度胸もないわよ)アイコンタクト
69: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 22:00:42.89 ID:BDU7bnsa0
大物「う~ん、それじゃあ美優ちゃんにしよっかな~?あの子最近明るくなったし。
瑞樹ちゃ~ん、ボクに紹介してよ~」ニタア
瑞樹「な……!? 」ギョッ
大物「あ、そういえば留美ちゃん、今度ボクの番組のアシスタントのオーディションを
受けるみたいなんだけどどうしよっかな~?ボクが一言Noって言っちゃえば、
あの子がどれだけ頑張っても落ちちゃうんだよねぇ~」ニタニタ
70: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 22:02:51.79 ID:BDU7bnsa0
レナ(留美の奴、いくらオーディションが受からないからって仕事選びなさいよ!
私だってこのエロオヤジと嫌々仕事してるのに!でもコイツに嫌われたら今の
競馬番組の仕事も降ろされちゃうかもしれないし……)ギリリ
瑞樹(社長の名前を出す?いえ、まだそこまでのコネは使えないわね…… それにコイツ
結構数字持ってるし、局に抗議した所で聞き入れてくれるかどうか……)グヌヌ
大物「さあどうする~?瑞樹ちゃんもイイオンナだね。ボクは大阪人が大嫌いなんだけど、
瑞樹ちゃんだったらトクベツに愛人にしてあげてもいいよ~♪」ニタニタ
瑞樹(この……!! )イラッ
71: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 22:05:10.11 ID:BDU7bnsa0
礼子「あら、瑞樹とレナじゃない。こんな所で何してるの?」スタスタ
レナ「げ……」瑞樹「れ、礼子さん!? どうしてここに……?」ギョッ
礼子「私はここの会長さんからパーティーのお誘いを受けたから、ドレスの打ち合わせに
来たんだけど。あら?大物ちゃんもいたの。ウチのコに何か用?」ギロ
大物「ヒ…… れ、礼子ちゃん……」ビクッ
72: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 22:07:08.76 ID:BDU7bnsa0
礼子「やあねえ大物ちゃん、そんなに怖がらなくていいわよ~♪ 働きすぎで幻覚でも
見えてるんじゃないの?」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
大物「そ、そうだね…… じゃあボク、収録があるから失礼するよ……」コソコソ
礼子「あ、その必要はないわよ。大物ちゃんその番組降板だから。最近疲れてるみたい
だし、ざくっと仕事を減らして休ませてあげようって私が言ったら、会長さん
すぐにOK出してくれたわよ。良かったわね」ニコ
大物「な……?そ、そんなバカな……」サアア…
73: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 22:08:19.12 ID:BDU7bnsa0
礼子「これを機にそろそろ引退も考えたら?南の島に別荘が欲しかったらいつでも相談
してね。あてはいくらでもあるから♪」ウィンク☆
大物「あ…… う…… 」バタン
74: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 22:10:06.63 ID:BDU7bnsa0
礼子「あらあら、こんなところで寝ちゃうなんてよっぽど疲れてたのね。それじゃあ私は
帰るから。レナも瑞樹も頑張ってね」ヒラヒラ
レナ(まさにキングだわ…… 絶対に敵に回したくないわねあの人……)ゾク
瑞樹(生きてるかしらこの人?業界では死んだも同然だけど…… 私もちまちま根回しとか
しないで、たまには礼子さんみたいにズバっとやってみたいわ……)ツンツン
おわり
75: 1 ◆t7Wsrwb.1. 2013/03/24(日) 22:18:09.10 ID:BDU7bnsa0
ここまで。川島さんカッコいいよ川島さんということで。
川島さんは気の良い姐さん=世話焼き=仲間思いというイメージです。
その為にいつも色々考えてそうな。ではまた。
SS速報VIP:川島瑞樹「ローカルマドンナ」