1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 21:47:32.98 ID:VjVauTVu0

中学一年生の頃。


私は結衣にごらく部設立を提案した。


ごらく部は、生徒会の許可も得ていない、、ダラダラするだけというメチャクチャなものだったけど


結衣は、微笑みながら私について来てくれた。






2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 21:49:54.94 ID:VjVauTVu0

中学二年生の頃。


あかりと、ちなつちゃんが入部してきた。


あかりは、昔からの幼馴染だし


ちなつちゃんは、少し腹黒いところもあるけど、純粋な良い子だった。


だから、ごらく部で過ごす時間がさらに楽しくなった。


結衣も、楽しそうだった。



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 21:54:03.45 ID:VjVauTVu0

でも、この頃から二人の時間が減った。


あかりとちなつちゃんが居るから、4人で行動することが多くなっていたし


結衣は、一人暮らしを始めた。結衣は買い物やらなんやらで、忙しい時間が増えるようになったからだ。


迷惑かけたくなくて、最初はガマンしていたけれど、ガマン出来なくなって遊びに行くようになった。


結衣は、毎度呆れながらも快く私を家に迎えてくれた。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 21:57:36.01 ID:VjVauTVu0

中学三年生の頃。


私と結衣の学年は受験シーズン。


綾乃や千歳、千鶴……同学年の友達も、勉強の時間を取るようになっていた。


私は、良い高校でも余裕だったので、相変わらず結衣の家へ遊びに行った。


最初は、快く迎えてくれたけど


1月の中旬あたりから、結衣の様子がおかしくなった。




7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 22:00:03.16 ID:VjVauTVu0

「……あの、京子。黙っててくれないかな」
「……うるさいなぁ……」
「……ごめん。今日は帰ってくれないか?」


こんな言葉を投げかけられるようになった。


でも、私が毎日、結衣の家へ行くことは決定事項なので、毎日通った。


すると


1月も終わりの頃、結衣に怒られた。







9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 22:04:39.15 ID:VjVauTVu0

「……あの、京子。話があるんだけど」

「なに?」

「受験が終わるまでは私の家に来ないでくれ……」

「えっ」

「京子は余裕だろうけど……私は、一生懸命勉強しないと、良い高校に行けないんだよ」

「……………………」

「受験が終わるまでは、私が集中出来るようにしてくれ……頼む」

意味が分からなかった。


なぜ、勉強の時間を増やしてまで、二人の時間を削るんだろう。


ちょっとショックだったけど


結衣に迷惑はかけられない。


そう思って、我慢した。




12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 22:10:48.90 ID:VjVauTVu0

受験までの時間は苦痛だった。


学校では話せるけど、放課後は結衣の顔が見られない。


中学二年生の頃からずっと泊まったり、夜遅くまで遊んだりしていたので


心の中がカラッポになったようだった。


結衣は昔は私を守ってくれて


成長すると、黙って一緒に居てくれる存在だった。常に一緒だった。


なのに


仕方ないとはいえ、拒絶された。


ベッドで寝転びながら、そういう風なことを頭の中で何度も何度も繰り返し考えて


何度も何度も、自分の心を自分でえぐっていった。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 22:16:07.16 ID:VjVauTVu0

そして、受験。


私と結衣は、同じ高校の推薦を志望した。


本当は、もっと上の高校を狙えたけど、結衣が言うなら仕方ない。


そう考えて


「私もこれぐらいがギリギリだー!」


と、ウソをついた。


受験が終わりしばらく経って、


推薦なので、卒業式よりも一足早い合格発表。


もちろん、一緒に結果を見に行った。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 22:22:15.81 ID:VjVauTVu0

結果は、二人とも合格。


結衣は泣いていた。


私も泣いていた。


結衣は多分、努力が報われたことの嬉し涙。


私も、嬉し涙を流していた。


でも、別に高校に受かったことが嬉しかったワケではなく


結衣と一緒の高校に行けることに、嬉し涙を流していた。

「結衣が受かって良かった!一緒の高校で過ごせる!これからは家へも遊びに行ける!」

「また結衣に甘えられる!結衣とずっと一緒に居られる!うれしいうれしいうれしいうれしいうれしい!」


私は飛び跳ねながら嬉し涙を流していたので


結衣に笑われた。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 22:26:41.23 ID:VjVauTVu0

そして、卒業式。


あかりや、ちなつちゃん。
綾乃や千歳、千鶴、向日葵ちゃんや櫻子ちゃんともお別れだ。


綾乃や千歳、千鶴は同学年だけど、私達二人とは違う高校を志望していた。


だから結衣は皆との別れを惜しんでいた。


卒業式に、珍しく結衣は涙ぐんでいた。


もちろん、私だって寂しかったけど


私にとっては


結衣が居ることが1番大切だった。


だから、卒業式でも


私はずっと笑顔だった。




20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 22:31:32.27 ID:VjVauTVu0

高校一年生の頃。


私は卒業して以来、ずっと結衣の家へ遊びに行っていた。


クラスも一緒で、私の高校生活は順調だった。


でも、ある日


結衣の家にラムレーズンが無かった。


そんなことは一度も無かったので


少し不安になった。


結衣に聞くと、忘れていただけらしい。


家で一時間、本当に忘れただけなのか考えた。


中学三年生の時に離れて以来、私は異常に結衣のことに対して敏感になっていた。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 22:37:02.70 ID:VjVauTVu0

高校二年生の頃。


いつのまにか、結衣の家にラムレーズンが無いのが当たり前になっていた。


どういうことだどういうことだどういうことだどういうことだどういうことだ。


ラムレーズンの無い冷蔵庫を見る度に、頭の中でつぶやいた。


別に、ラムレーズンが食べられないのが残念だったのではなく


「結衣が私との時間をおろそかにしているののかな? 私の存在が結衣にとって小さくなっているのかな?」


こういう風に考えた。嫌な予感がしていた。


でも、しつこくして、また離れるのも嫌だったので我慢した。


でも、そんな高校二年生のある日。


嫌な予感が的中してしまった。



26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 22:42:46.59 ID:VjVauTVu0

その日、いつものように結衣の家へ寄っていた。


いつもなら、学校から一緒に結衣の家へ行くけど


その日は結衣が日直だった。


だから、結衣の家の前で待っていた。ずっと、ずーっと待っていた。


ドアの前に座り込んで。結衣の帰りを心待ちにしながら。近所の人に少し変な目で見られでも、気にしなかった。


そして、二時間ほど経ち、私が憂鬱な気分になり始めた時


ようやく、結衣が帰ってきた。


横に、私の知らない友達を連れて。









29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 22:48:53.67 ID:VjVauTVu0

私達と同じ制服を着た子だった。


「あれ……京子、まだ居たんだ」


ーーーまだ居たんだ?


「……結衣の友達?」


ーーー結衣?名前で呼び合う仲なの?


「うん、そうだよ。……ったく、無茶するなぁ、京子も。私が日直の日にまで来るなんてさ」


ーーー当たり前だ。


私は結衣と二人きりの時間が1番大切なんだから。


「二人きり」の時間が。


その子が知らない子ということもあって
私は、軽くパニック状態になってしまった。



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 22:54:06.64 ID:VjVauTVu0

「え、ええっと……」


どもってしまう。頭の整理がつかない。


体が熱を帯びる。背中に嫌な汗をかく。


「まぁ、二人とも仲良くしてね」

「はーい。よろしくねー」

「…………ごめん…………あの、今日は帰る!」

「えっ? ずっと待ってたんだろ?もう帰っちゃうの? 」

「……うん、帰る!また明日!」

「あっ…………」


自分でも何が何だか分からず走り出す。


「……私、邪魔だったかな?」


ボソボソと、そんな声がわずかに聞こえた。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 22:58:50.19 ID:VjVauTVu0

その日は、家で自分だけの反省会を開いた。


中学三年生までこんなことは決してしなかったけど


一度引き離され、異常に結衣のことに対して敏感になった私は、自分だけの反省会を開くことにしていた。


大体は、精神不安定になった時に反省会を開く。


その日は、まさに精神不安定だった。


最初は、まず気分を落ち着けるために


ノートを開いて、思い思いのことを書き込んでいく。



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 23:03:20.22 ID:VjVauTVu0

『死ね死ねバカバカアホバカ結衣結衣結衣うわぁぁぁぁぁぁぁぁくそぅマジで何で何で何で上手くいかないよ何で???????!!!!!!!!!!誰か教誰教誰教誰っっ!!!!!!』


別に、誰かを恨んで書いてるワケじゃない。


暴言を書いたり、思いっきりノートがほとんど黒になるまで激しく書き殴っていくと


気分が落ち着いていく気がした。


「はぁ……はぁ……」


それが終わると


ベッドに寝転んで、頭の中で色々と整理していく。




39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 23:09:43.10 ID:VjVauTVu0

「私が待ってることを結衣は知ってた?知ってたなら、嫌われてるってことだよね。普通、あんなに待たせないでしょ」

「あの子は誰? いつのまに名前を呼ぶまで仲良くなったの? 結衣のことには常に気を配っていたのに」

「何で私は逃げたんだ!! 結衣に変に思われちゃうって!!!」

「てゆーか、こうしてる間にも、あの二人は遊んでる? もしかして、私の陰口してるかな。だとしたら、嫌だな……」

「もしかして、私よりあの子なのかな。追いかけてくれなかったし」

「でも、全部わたしが悪いよね。私に追いかけるぐらいの魅力がない、そういうことだよね?」

「あぁぁぁぁ………」


頭の中で繰り返し繰り返し考えていく。


そして、どんどん不安になっていく。





42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 23:15:09.96 ID:VjVauTVu0

ベッドの中で悶えながら、不安に思っていることを一つ一つ吟味していく。


「もしかして、明日からあの子はずっと結衣の家に? そんなの嫌だ、結衣は私と二人きりがいい」

「そういえば、最近はラムレーズンもないし。やっぱり、結衣にとって私の存在はどんどん、どーでもよくなってるんだ」

「『わざわざ京子のためにラムレーズンを用意するのはバカバカしい』そういうことだよね。昔はちゃんと用意してくれてたのに」

「やっぱり、嫌な予感は当たってた。私は結衣にとっての1番じゃなくなってきてるんだ!!!!!!!」



そうしているうちに



ピンポーン


インターホンが鳴った。






44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 23:18:58.72 ID:VjVauTVu0

「………誰だろう、こんな時に」


その時、家には私以外、誰も居なかった。


反省会を開いて鬱になっている時は、終わるまでは、何故か鬱の殻に閉じ込もっていたくなる。


だから、その時、迎えに行くのは面倒くさかった。


でも、仕方ない。


いったんベッドから出て、ドアを開ける。


すると、そこには


結衣が立っていた。



46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 23:22:57.74 ID:VjVauTVu0


「はぁ、はぁ……」

「ーーー結衣?」

「……はぁ、はぁ……」

「ど、どうしたの。何があったの?」

「……京子、突然帰り出すからさ。何事かと思って」

「ーーーそれって……私のためってこと……?」

「……いや、当たり前だろ。心配するに決まってるよ」

「……!」


それまで、鬱のドン底に居たことが信じられないほど


体と心が軽くなる。




50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 23:29:26.41 ID:VjVauTVu0

「あ、あの子は? 一緒に居た子」

「え?普通の友達だけど?」

「もしかして、帰らせた?」

「そうだよ。今日は遊ぶどころじゃ無くなったしね、京子のせいで」

「……結衣ぃ……!!!」

結衣「え、ちょ、なに!?」


その時、それまでに無いほどの喜びを感じた。思わず泣いてしまう。結衣に抱きつく。


あの子を帰して私を追いかけに来たということは


私の方が、一枚上手。ということは


『私が結衣の1番だ!!』


そう思った。






54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 23:34:21.34 ID:VjVauTVu0

全て、救われた気がした。


中学三年生の頃から感じていた、結衣への 後ろめたさ。

「結衣に嫌われてないかな」
「結衣にとって、私は1番なのかな」


そんな感情が、一気に吹っ飛んで行く。


「……京子。なんだか分からないけど、悩みでもあるのか?」

「……いや。今、その悩みが無くなったんだ。ありがと結衣」

「……?」


不思議そうな顔をする結衣をよそに


私はこんなことを考えていた。


『やっぱり結衣は最高のパートナーだ!』
『一生、一緒に居たい!!』





55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 23:38:20.63 ID:VjVauTVu0

高校三年生の頃。


受験シーズンだ。


私と結衣はずっと同じクラスだった。


結衣は、また家に来ることを拒んだ。
勉強に集中するためだ。


それまでの私なら、一気に不安になっていたと思うけど


高校二年生の時に追いかけてもらってきて以来、私は結衣へ完全に信頼を寄せるようになっていた。


だから、この時も


「ああ、勉強か。じゃあ仕方ない」


と、すんなり受け入れることができた。



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 23:43:46.47 ID:VjVauTVu0

卒業式。


結衣は涙を流していた。
友達との別れを惜しんで。


私は笑顔だった。
これからも、結衣と一緒に居られるから。


私は、高校の時と同様、結衣に合わせて大学を選んでいた。


私は、幸せだった。


とにかく、幸せだった。


結衣が居れば、何でも耐えられた。


結衣と私は二人で一つ。


そんなことを、本気で信じていた。



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 23:49:05.99 ID:VjVauTVu0

大学一年生の頃。


結衣と私は同棲し始めた。


結衣は最初は抵抗していたけれど、一緒に下宿した方が金も浮くし、効率的だった。


結衣との同棲生活、大学生活は最高だった。

一緒に目を覚まし
一緒に大学に行き
一緒に講義を受け
一緒に食事を取り
一緒に寄り道して
一緒に家へ帰って
一緒に就寝する。


そんな生活が続いた。


私と結衣の距離はほぼ0に近かった。


結衣も、悪い気分ではないようだった。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/05(月) 23:54:59.88 ID:VjVauTVu0

大学二年生の頃。


結衣と私は、一緒のサークルに入った。


コンピューター研究会とかいうサークルだ。


私達は、ムリヤリ誘われて入ったけど、意外に楽しかった。


もともとゲームが好きな結衣は、自分でオリジナルのシューティングゲームを作った。


家に帰り、完成したシューティングゲームを、二人でプレイしてみる。


思ったよりも完成度が低く、とてもおかしなBGMが聞こえてきた。


とてもおかしかったので、二人でひどく笑ったのを覚えている。



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 00:03:10.80 ID:3R9IX4vT0

大学を卒業し、就職した頃。


私達は男とは無縁だったので、自分達で働かなければいけなかった。


いわゆる、OL。親の仕送りにいつまでも頼っているワケにはいかなかった。


結衣と同じ会社に入れるように努力してみたけど、流石に無理だった。


それぞれ、違う会社に内定した時


私は、残念そうな表情を浮かべながら結衣に言った。


「二人の時間が減っちゃうな。残念」


それを聞いた結衣は、残念そうな表情を浮かべながら、こう返事した。


「ああ、さみしくなるね」






69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 00:10:18.09 ID:3R9IX4vT0

就職して一年たった頃。


私は、会社で順調に働いていた。
相当の人材だと言われ、上の地位も約束された。


しかし、結衣は上手くいっていないようだった。

家でたまに落ち着いて話せる時、いつも私に不満をもらしていた。


上司にペコペコしたり、ありえない量の書類を渡されたりする。残業も当たり前らしい。


私は、結衣の愚痴を聞くのも楽しかった。


なので、自分は大丈夫だったけど、結衣のことが少し心配だった。














73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 00:15:44.68 ID:3R9IX4vT0

就職して二年たった頃。


結衣がとても遅い時間に帰ってくるようになった。


それも、とてもやつれた顔で。


どうやら、会社がピンチな時期らしい。結衣の体力は日に日に削られていった。


もちろん私は、毎日結衣が帰ってくるまで待機して、結衣が早く寝れるように努めた。


結衣が睡眠剤を飲んで寝息を立て始めたら、私も寝転がる。


寝顔を見てから寝るのが日課だった。
結衣の顔を覗き込む。



この頃には


結衣の顔に、常にクマが浮かんでいるのが当たり前になっていた。




76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 00:19:50.10 ID:3R9IX4vT0

就職して三年たった頃。


結衣が倒れた。


病院に運ばれた。


無理も無かった。結衣の体には相当な重荷がかかっていた。


もちろん、毎日お見舞いに行きたかったけど、結衣の入院費用、自分の生活費のために会社には行かなくちゃいけなかった。


毎週、土日にお見舞いに行くしかなかった。







79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 00:24:25.08 ID:3R9IX4vT0

結衣が入院して一週間たった頃。


私は、土日を使ってお見舞いに行った。


この頃には、診察も終わり、結衣の体は検査済みだった。


結衣は、異常な過労だけでなく、うつ病、乳がん、栄養失調‥その他など。


ヒドイ状態になっているらしい。


話を聞き終わると、私は結衣の病室へ行った。









84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 00:28:15.18 ID:3R9IX4vT0

「……京子?」

「うん、来たよ。大丈夫?」

「ああ……大丈夫大丈夫。すぐに会社に復帰できるよ、多分」

「……ウソは駄目だよ、結衣にゃん?」

「…………なんだ。知ってるなら茶化さないで欲しいな」


結衣はヒドく憔悴していた。


声に張りが無かった。


窓の外をボーッと見て、死んだように固まる結衣。


元気づけようとしても、何も出来なかった。





86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 00:31:57.88 ID:3R9IX4vT0

「ーーあ、果物あるよ。食べる?」

「…………ごめん。いらない、かな」

「ーーそっか。食べたくなったら言ってよ」

「ああ…」


会話が途切れる度に、結衣は再び固まる。


見ていられなかった。


うるむ目を必死に拭いて、見られないようにした。


一人の人間が無理し過ぎた結果、壊れていく様。


それを見ているようで、つらかった。



90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 00:35:48.98 ID:3R9IX4vT0

「ーーーごめん、結衣。ちょっとトイレ行ってくるね」

「ああ……………」

我慢できなかった。

トイレに駆け込む。

周りに人が居ないことを確認し

ノートを開く。


書き殴る。



『何で結衣なんだ何で何で何で何で死ね死ね役立たず低脳バカバカ結衣は何も悪くないっっっっ!!!!!!教え神どうなっ教えてみろ!!!!!!?????ふ』


「はぁ……はぁ……」


気分を落ち着けると、また結衣の病室へ向かった。







91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 00:39:54.77 ID:3R9IX4vT0

「……京子。仕事で疲れてるだろ?」

「結衣を放っといて呑気に休んでいられると思う?」

「……はは。私みたいになっちゃうぞ?」

「それも悪くないかもね~♪」

「……冗談はやめてくれ」

「結衣だって冗談混じりに言ったクセに」

「……ご、ごめん」

「……謝ることじゃないよ」

「……ごめん」

「謝らなくていいってば」

「……ありがとう」

「うむ、それでいいのだ!」



93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 00:42:59.68 ID:3R9IX4vT0

「仕事はどうなの?」

「私のことは心配しなくていいって!私は順調順調!」

「……そういえば、京子から入院費用を出してもらってるんだよな。ごめん」

「謝るの禁止!!」

「!」

「私は、好きでやってんだからさ!気にしたら負けだよ、結衣にゃん?」

「……あり、がとう……」

「うむ」





96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 00:47:57.98 ID:3R9IX4vT0

こんな状態になっても。


好きだから。


依存だって言われてもいい。


大好きだから、仕方ない。
ほっとけない。


結衣に、全てを捧げるよ?


結衣がどんなに弱っても、心配無用だよ。


私が守ってみせるよ。


昔は、世話になりっぱなしだったもんね。



その土日は、結衣と途切れ途切れに会話をして、終わった。



100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 00:53:15.22 ID:3R9IX4vT0

結衣が入院して、二週間たった頃。


もちろん、この土日も結衣の病室へ向かう。


入ると、結衣が本を持っていた。


「……結衣、何を読んでるの?」

「……あ、京子。親が忙しくて来れないから、看護師さんに頼んでもらったんだ」

「ーー『うつと戦うため本』?」

「そうだよ。京子にばかり迷惑はかけられない。私は、頑張らなくちゃいけない。病気と戦うんだ」

「…………」


やっぱり、どんなになっても。

結衣は結衣だ。

私の依存してる人は。
私の愛している人は。

つらくても、こういうことを平気で出来る、強い人間なんだ。



103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 00:59:53.66 ID:3R9IX4vT0

「……つらくないの?」

「……つらいよ。体は常にダルいし、正直……常に死にたい気分なんだ」

「ゆ、結衣……ムリしちゃ駄目だって」

「でも、それでも。私は頑張らなくちゃいけない。京子に迷惑はかけられない」

「…………なんで、そこまで出来るの?」

「京子が好きだから」

「えっ」

「そういえば、一度も言ったことなかったっけ。好きだよ、京子」

「……ま、マジ?」

「……なんか、ここまでくるとさ。吹っ切れた」

「………まぁ、私も結衣が好きだけど。こんだけ一緒に居るんだからさ」

「……ありがとう。知ってたけど」





105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 01:02:48.26 ID:3R9IX4vT0

「し、知ってた!?」

「……気づいてないとでも思ったのか?」

「ま、マジ!? うわー恥ずかしー……」

「……ぷっ」

「……あ、結衣が笑った」

「あ……………」

「……なんか、案外、うつなんて簡単に治るような気がしてきた」

「……そんな簡単なものじゃないよ……」




107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 01:07:12.98 ID:3R9IX4vT0

結衣が笑った。


すごく嬉しかった。


この日も、結衣と途切れ途切れに会話して、マンションへ帰った。


部屋がとんでもないことになっていた。






109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 01:11:18.43 ID:3R9IX4vT0

「ただいまー……………っ!?」


部屋がめちゃくちゃに荒らされていた。


パッと見ただけでも、私達の大切な卒業アルバムが破られているのが見え、背筋が凍った。


窓が割れている。


盗みだった。


私は


「あぁ……うそ……は、は……」


ーーと、声にならない声を上げながら、部屋を這いずり回った。


ショックで、二時間ぐらい、警察に通報するのを忘れていた。




114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 01:15:31.65 ID:3R9IX4vT0

警察の人が手伝ってくれたおかげで、部屋はすぐに片付いた。


大切な物がほとんど無くなっていた。


通帳が無くなったのが1番痛かった。


通帳がないと、結衣の入院費用を払うには、会社で働く以外に、バイトもしなければならなかった。


さっそく、バイトの求人チラシをあさった。






119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 01:22:05.73 ID:3R9IX4vT0

その日の、翌日。


面接無しで、夜間のビル巡回というバイトの募集に電話をかけると、あっけなく採用された。


さっそく、今日から毎日夜11時から4時まで、巡回をお願いしたい、ということだった。


その時間帯なら、会社が終わってからでも行くことが出来る。好都合だった。


この日は日曜日だったので、病院へ向かう。


夜のバイトまで、結衣のお見舞いをすることにした。



122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 01:25:59.42 ID:3R9IX4vT0

「どう、調子は?」

「………………」

「……結衣?」

「………くそっ………っ」

「……!」


結衣は泣いていた。


よくみると、下に、乱暴に本が落ちていた。


結衣が読んでいた本だった。


「こんなの……私にはできない……なんだよ、くそっ………どうしようもないのか……」

「…………」




125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 01:32:20.43 ID:3R9IX4vT0

「……ゆ、結衣っ!!京子だよーん!」

「………はぁ?」

「」

「……あ。ごめん!京子か……その、イライラしてて………誰の声か分からなかったんだ」

「結衣…………」

「……私、症状が追加されたよ。躁鬱って言うらしい」

「な、何それ?」

「……突然、元気になることを躁状態。元気を無くすことを鬱状態」

「躁鬱は、この二つの状態を繰り返す病気なんだってさ……」

「じゃ、じゃあ、もしかして昨日は?」

「躁状態……おかしいと思ったんだ……突然、やる気が生まれてきて……何でも出来そうな気がして……でも」

「今は、死にたい」

「ーー結衣!死にたいなんて言っちゃダメ!」



129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 01:37:04.91 ID:3R9IX4vT0

「……ごめん。今は……死にたい」

「やめて!」

「死にたい……死にたい……」


結衣の目は虚ろになっていた。

頭を小刻みにフラフラと左右に動かしながら、つぶやく結衣。

「死にたい…死にたい…死にたい…」

「……や、やめて……私が何とかするからさ……そんなこと言うなって……!」

「……私の側に居ても、つらいだけだと思うよ」

「……いや、ギリギリまで……」

「……ごめん。迷惑かけて」

「……」




131: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 01:42:21.42 ID:3R9IX4vT0

その日は、結衣が途中で寝てしまったので、その後は特に何も話さなかった。


夜11時。


バイトをこなすと、マンションへ帰る。


帰る頃には、午前5時半。会社に行く時間は、6時半。


自分でも分かっていた。


これは、絶対続かない。


すぐに倒れる。


でも、やめるワケには行かなかった。








134: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 01:48:41.00 ID:3R9IX4vT0

結衣が入院して、三週間たった頃。


私は、結衣の横のベッドに居た。


結衣は隣で寝ていた。


平日、会社で働いてからバイトして、家へ帰ってほとんど寝ないまま会社へ向かう。


3日持ったのが、自分で驚きだった。

体がものすごくダルかった。

結衣が読んでいた、うつの本を読んでみると

ほとんど、自分の症状と当てはまっていた。

うつ病になったらしい。











138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 01:52:43.11 ID:3R9IX4vT0

「……ん」

「あ、起きた」

「おはよう」

「おはよう」

「……私のせいだよな、京子が倒れたのは」

「違うよ」

「私のせいだ」

「その話、したくない」

「……わかった」

「私は、後悔はしてないからさ。結衣に全てを捧げるつもりで働いただけだから」

「………京子」



140: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 01:59:38.10 ID:3R9IX4vT0

「……でも。悪く思ってるなら……代わりに、私の質問に答えてよ」

「いいよ」

「正直にね?」

「わかったよ」

「じゃあ、私と結衣が逆の立場だったら……私と同じことした?」

「……当たり前だろ。愛してるから」

「あっ! 愛してるかどーかは二つ目の質問に取っておいたのにぃ!」

「あ、そうだったのか?」

「……ま、いいや。じゃあ、これが最後の質問になるから」

「わかった」



144: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 02:04:07.00 ID:3R9IX4vT0

「私と結衣は、一心同体?」

「……は、どーいう意味?」

「もう、頭固いなぁ! 二人で一つだよね!?」

「……うん」

「……!」

「私と京子は、一生一緒。当たり前だろ?」

「……へへ、うれしい」

「……」



147: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 02:07:37.03 ID:3R9IX4vT0

「……」

「……」

何故か、とても冷静だった。


何も怖くなかった。


悪いことだとも思わなかった。


なぜ、こんなに落ち着いてるのかも、わからなかった。


でも、結衣がいるだけで。


安心できた。


そして、結衣が何をしたいのかも


わかった。



150: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 02:11:09.10 ID:3R9IX4vT0

私も、それを望んでいた。


私と結衣は一心同体。


私と結衣は同時に立ち上がった。


別に、私は絶望感だとかを感じていたワケではなかったけど


結衣がそうしたいなら、私もそうしたいんだろうな、と思った。


向かおうとしている場所もわかった。



155: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 02:13:38.71 ID:3R9IX4vT0

ーーそして今。




私達は空中にいる。





死ぬ前に走馬灯を見るというのは本当らしい。






中学一年生の頃からの記憶が私の頭で再生された。







161: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 02:15:46.41 ID:3R9IX4vT0

屋上から、向かいあう形で抱き合い、飛び降りた私達。




時間が、とてもゆっくりと流れる。




こんなに、落ちるのって遅かったっけ?




目をあけると、結衣が私に笑顔を向けている。





私も結衣に笑顔を向ける。



163: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 02:16:57.67 ID:3R9IX4vT0

まだ、地面にぶつからない。




そうだ、結衣としてないことがある!




私は懸命に唇を動かす。




結衣がそれに気づく。





私達の唇が重なった。



170: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 02:19:44.28 ID:3R9IX4vT0

「……………」

「……………」

「ありがとう、京子」




「ありがとう、結衣」




「おつかれさま、京子」




「おつかれさま、結衣」







175: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 02:24:14.34 ID:3R9IX4vT0

「愛してるよ、京子」


「愛してるよ、結衣」



おそらく、私達は寄り添う形で死ぬか、肉が混ざり合って死ぬ。



うれしい。




結衣も、そう思ってくれてるはずだ。











177: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/06(火) 02:26:34.29 ID:3R9IX4vT0

「…………」

「…………」



「またね、京子」



「またね、結衣」



「…………」

「…………」



グシャ



◆おわり◆





元スレ
京子「依存」