前作
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし後編
白菊ほたるのコミュ2に日野茜が乱入してきた話
【モバマス】ほたるのひかりが眩しくて
【モバマス】安部菜々「ほたるちゃんの」日野茜「初仕事です!!」
【モバマス】悪魔とほたる
【モバマス】白菊ほたる「私は、黒猫が苦手です」
【モバマス】ありがちな終末
【モバマス】安部菜々と24人の千川ちひろ
白菊ほたる「黄昏に迷い道」
【モバマス】面接官「ところで白菊さん。貴女、凄くエロいですね」白菊ほたる「え」
岡崎泰葉「ヴォカリーズ」
【モバマス】あの子の知らない物語
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし
【モバマス】ほたると菜々のふたりぐらし後編
白菊ほたるのコミュ2に日野茜が乱入してきた話
【モバマス】ほたるのひかりが眩しくて
【モバマス】安部菜々「ほたるちゃんの」日野茜「初仕事です!!」
【モバマス】悪魔とほたる
【モバマス】白菊ほたる「私は、黒猫が苦手です」
【モバマス】ありがちな終末
【モバマス】安部菜々と24人の千川ちひろ
白菊ほたる「黄昏に迷い道」
【モバマス】面接官「ところで白菊さん。貴女、凄くエロいですね」白菊ほたる「え」
岡崎泰葉「ヴォカリーズ」
【モバマス】あの子の知らない物語
白菊ほたると不思議体験その2
【モバマス】響子「混ぜる」ほたる「混ざる」
1: ◆cgcCmk1QIM 19/05/21(火)20:38:09 ID:eau
【5月15日夜/女子寮・岡崎泰葉の部屋】
(谷底試聴中)
ほたる「ステキな曲でした……!」
泰葉「ステキな曲だったね。13歳のアイドルのデビュー曲としては重たすぎないかとも思うけど」
ほたる「でも、なんていうか、共感できてしまって」
泰葉「解る」
ほたる「私もこの歌の花のように、クチクラをみなぎらせてあるがままの自分で頑張っていきたい……!」
泰葉「うんうん――ところでクチクラってなに?」
ほたる「……なんでしょう?」
2: ◆cgcCmk1QIM 19/05/21(火)20:38:53 ID:eau
泰葉「知らないのにみなぎらせたがってたの?」
ほたる「あ、あのあの。外国語で根性とか執念とか、きっとそんな感じの意味にちがいないと思って」
泰葉「13歳のアイドルのデビュー曲って感じからさらに遠ざかった感じがする」
ほたる「し、調べてみましょう、調べてみましょう。泰葉ちゃんお願いします」
泰葉「何故ほたるちゃんが調べないの」
ほたる「私が何か調べようとするとスマホが爆発するから……」
泰葉「冗談じゃなさそうなのが恐ろしいよね……(検索中)あ、あった」
ほたる「ど、どんな意味なんですか(わくわく)」
泰葉「……皮?」
ほたる「皮」
泰葉「細胞の、表面の膜みたいなもののことなんだって。体を保護するための膜」
ほたる「じゃあ、クチクラをみなぎらせるってこう、面の皮を厚くしてとかそんな感じなんですか」
泰葉「アイドルが面の皮とか言わない」
ほたる「だってえ」
泰葉「文脈から考えると、不幸や苦しみを跳ね返すようなタフさを身につけて、って事だと思うよ」
ほたる「なるほど……でもだとすると、クチクラをみなぎらせるって一体どうすれば……!」
泰葉「ほたるちゃんはすでにもうかなりものすごくタフな気がするんだけど――あ、でも人間にもクチクラってあるみたいだよ」
ほたる「あるんですか。面の皮ですか」
泰葉「皮から離れようよ。あとなんで顔限定なの」
ほたる「一応アイドルなので顔が強いのはいいかなって。ほら、顔面が強いって褒め言葉があるじゃないですか」
泰葉「それ強いの意味が違うからね? ――ほら、髪」
ほたる「髪、ですか」
泰葉「というか体毛、かな。ほら、キューティクル。あれがクチクラなんだって」
ほたる「へええ、あ、言われてみればキューティクルとクチクラって音の感じが似てる気がします」
泰葉「キューティクルが英語で、クチクラはラテン語ってことらしいから、同じ言葉の発音が違うだけなのかもね」
ほたる「しかし、体毛、ですか……じゃあ、クチクラをみなぎらせるってどうすればいいんでしょう」
泰葉「どうしてそんなにクチクラをみなぎらせたいか解らないけど……しいて言えば」
ほたる「しいて言えば」
泰葉「増毛?」
ほたる「増毛」
泰葉「だってまあ毛の表面にあるわけだし」
ほたる「とはいえ私たちアイドルですから顔のうぶ毛とか放置できません」
泰葉「髪の毛を伸ばせばいいじゃない」
ほたる「私が髪の毛を伸ばすと皆さんが危険なので」
泰葉「ちょっと聞き捨てならないけど突っ込まないからね」
ほたる「でも、そうか、毛、毛……」
泰葉(あれっ、考え込んじゃった)
ほたる「これはなんとしてもクチクラをみなぎらせなくちゃ!」
泰葉「だからそのクチクラへの情熱はいったい何なの」
ほたる「実は前から悩んでることもあって……誰か、専門家に相談すればアドバイスがもらえるでしょうか」
泰葉「クチクラの悩みって何なの……増毛の専門家。プロデューサーさん?」
ほたる「一度も成功してない人を専門家って呼んでいいんでしょうか」
泰葉「それ絶対Pさんに言っちゃダメだからね」
ほたる「はい。増毛はともかくとして心から感謝しているんですから――あっ、GBNSにも専門家がいました!」
泰葉「いたっけ!?」
ほたる「いましたよ。そういえば前々から教えてほしいと思ってたのでした……このさいです、勇気出して教えてもらいに行きましょう!」
泰葉「あ、ちょっとほたるちゃん」
ほたる「クチクラをみなぎらせた私の姿を楽しみにしていてくださいね!」
泰葉「あ、ちょっと待って――ああ、行っちゃった」
【同日夜/女子寮・松尾千鶴の部屋】
ほたる「というわけで千鶴ちゃん、いろいろ教えてください!」
千鶴「何故私!?」
ほたる「GBNSで毛といえば千鶴ちゃんじゃないですか」
千鶴「言い方。というか、髪の毛の量なら圧倒的に裕美ちゃんじゃない?」
ほたる「だって私と裕美ちゃん、髪質が全然にてないし」
千鶴「ああ、確かにそうかも」
ほたる「ふわふわでお姫様みたいで憧れるけど」
千鶴「わかるなあ。私も裕美ちゃんみたいなフワフワの髪にして、ふわふわの衣装を着て……(うっとり)」
ほたる「裕美ちゃん可愛いですよね……でも私たちは直毛かつ醤油顔ですから」
千鶴「そうなんだよね(しょぼん)」
ほたる「でも、千鶴ちゃんの毛もステキです」
千鶴「褒められてるってことでいいんだよね?」
ほたる「勿論です。色が濃くてツヤツヤで。烏の濡れ羽色ってこういうかんじなのかなっていつも」
千鶴「そ、それほどでも。えへへ」
ほたる「本当ですよ。だから前々から千鶴ちゃんに聞きたい聞きたいと思ってたことがあって。このさいだから勇気を出して、と――」
千鶴「なるほど。それならアドバイスするよ。まずシャンプーは」
ほたる「いえ、髪の毛のことも聞きたいんですが
千鶴「?」
白菊ほたる「千鶴ちゃん」
千鶴「な、なあに?」
ほたる「どうしたら眉毛が濃くなるんでしょう」
千鶴「どうして眉毛に行ったの!?」
ほたる「教えてください千鶴ちゃん、その濃くて太い眉の秘密を!!」
松尾千鶴「喧嘩売られてるのかなあ」
ほたる「まさかそんな。私真剣なんです」
千鶴「真剣に『なんで眉濃いの?』って聞かれるとは。私はほたるちゃんの眉毛かわいいと思うんだけどな」
ほたる「他人はいつもそういうんですよ(ヘッ)」
千鶴「なんかやさぐれてない?」
ほたる「いえ別に」
千鶴「かわいいって思ってるのは本当だよ? ほたるちゃんて私と同じ黒髪だけど、全体にフワッとしてて淡い雰囲気で、羨ましいなあと思う」
ほたる「どうも」
千鶴「私は、髪も眉もちょっと堅い雰囲気で。量も多いし――もっと優しい感じになりたいなあっていつも」
ほたる「千鶴ちゃん剛毛ですものね」
千鶴「やっぱり喧嘩売ってるよね。買うよ?」
ほたる「すみません、眉毛のことになると、つい」
千鶴「眉毛の何があの優しいほたるちゃんを荒ぶらせるというの」
ほたる「まあ、まずはこの写真見てください」
千鶴「これは――あ、かわいい。ほたるちゃんの小さいころ?」
ほたる「はい、私の4歳のときの写真です」
千鶴「やっぱりー! 面影あるなあ――あれっ?」
ほたる「気付きましたか」
千鶴「眉毛、濃いね。というか普通だね」
ほたる「そう、このころの私は普通の眉毛でした。でも」
千鶴「でも?」
ほたる「毎日トラブルが起きて、ああ自分は不幸を招くんだと気付いたころから眉毛がどんどん薄くなりはじめて、ついにはここまで……」
千鶴「その眉毛ってストレスで薄かったの!?」
ほたる「はい……」
千鶴「そんな……かわいいと思って見てたほたるちゃんの眉毛に、そんなPさんの生え際みたいな秘話があったなんて」
ほたる「Pさんの前では気付かないふりしてあげましょうね」
千鶴「うん、約束ね」
ほたる「約束です」
ほたる「それで、眉毛なんですが」
千鶴「続くのかあ」
ほたる「教えてください、その眉の秘密を」
千鶴「別に秘密なんかないんだけど!」
ほたる「そんな事言わずに!」
千鶴「うわあこんなぐいぐい来るほたるちゃん初めて見た」
ほたる「おーねーがーいーしーまーすー」
千鶴「というかなんでそんな突然眉毛眉毛言い出すの!? 今までも薄かったけど、別に普通にしてたじゃない」
ほたる「……」
千鶴(あ、黙っちゃった)
ほたる「やっぱり薄いと思ってたんですね」
千鶴「あ、あのその。淡い! 淡い!! 可愛いのはほんとだから!!!」
ほたる「……その」
千鶴「うん」
ほたる「ソロCD、出たじゃないですか」
千鶴「おめでとう。私も裕美ちゃんも明日、予約したお店に受け取りに行くの」
ほたる「ありがとうございます――それで、いままではお写真撮るときは四人だったのが一人で撮る機会が増えて」
千鶴「うん」
ほたる「そしたら、顔がいままでより、うんと大きく写るじゃないですか」
千鶴「……あー」
ほたる「気にしないようにしていたけど。なんだか、大写しの自分の顔を見ていると、だんだん気になってしまって」
千鶴「……それはそうだよね」
ほたる「千鶴ちゃんは可愛いって言ってくれたけど。誰も気にしてないのかもしれないけど、なんだか大きなお写真を撮るのがだんだん憂鬱になってきちゃって」
千鶴「……うん」
ほたる「前から千鶴ちゃんの眉毛、いいなあって思ってたのは本当です。新曲貰って、舞い上がった勢いのままなら聞きにこられるかなって、思って」
千鶴「……私も、もうちょっと綺麗に細い眉だったらなあ、なんて思うから。気持ちわかるよ」
ほたる「ごめんなさい。ちょっと舞い上がりすぎてました」
千鶴「うーん……ちょっと待ってね」
ほたる「?」
千鶴「多分それ、泰葉さんなら解決できると思うよ」
ほたる「!?」
【再び岡崎泰葉の部屋】
泰葉「なるほど、そういうことだったのかあ」
千鶴「可愛いと思うし、Pさんがメイクさんに指示しないんだからいいと思うんだけど、ほたるちゃんが気にしてるなら……」
泰葉「うん、そうだね。やってあげようか」
千鶴「お願いします。私はそういうのやらないほうなんで」
ほたる「あ、あの?」
泰葉「はいそこに座って。眉書いてあげる。色は――これかな」
ほたる「え、えっ!?」
泰葉「勿論眉毛を本当に濃くしてはあげられないけど、自信の持てないところを抱えたままで顔を撮られるのは嫌だよね。わかる……はい動かないでね」
ほたる「は、はい」
千鶴「やっぱり手馴れてますね」
泰葉「小さい舞台だと自分でメイクすることも多かったからね」
ほたる「……」
泰葉「Pさんに相談すればよかったのに」
ほたる「なんだか、言いにくくて」
泰葉「だけど、これもクチクラだよ」
ほたる「えっ」
泰葉「ひとつ綺麗になって、自信が持てて、誰かの目を気にせずにステージに上がれるなら、このアイブロウ一本だってほたるちゃんを守ってくれてるってことでしょ」
ほたる「……はい」
泰葉「はい出来た。とりあえずだけどどうかな? 鏡はあっちね」
ほたる「わあ……!」
千鶴「あ、ステキ! またちょっと雰囲気変わるね」
泰葉「ほたるちゃんの顔、私は眉毛もふくめて大好きだけどさ」
ほたる「……はい」
泰葉「ほたるちゃんが気になることは、こうしてカバーできるんだから、気持ちよくステージに上がれるようにすべきだよ。ためしに今度のお仕事で眉書いていいか、Pさんに聞いてみたら?」
ほたる「はい、そうします……泰葉ちゃん、千鶴ちゃん、ありがとうございました……!」
泰葉「じゃ、そうやってほたるちゃんの納得が得られたところで(がきっ)」
ほたる「泰葉ちゃん、どうして私を羽交い絞めに……!?」
泰葉「ほたるちゃん今日はちょっと暴走気味だったから。罰としてクチクラみなぎらせまくってもらおうかと」
ほたる「えっ、えっ」
泰葉「千鶴ちゃん、メイク道具はそこのボックスね」
ほたる「あ、あのあの、舞い上がっちゃってすみませんでした……!」
千鶴「それはそれ、これはこれ。ほたるちゃんいつもメイク薄いから、一度いろいろやってみたかったの!」
ほたる「千鶴ちゃんがわくわくしてる!!」
泰葉「はーいおとなしくしてねー」
(そしてほたるの悲鳴、そしてやがて三人の笑い声が女子寮に響きわたった。その夜撮影された大量の写真は見れば爆笑間違いなしのネタとしてGBNSでながく重宝されたという)
ほたる「メイク顔も眉を書いた顔もいいですけど、素の顔もいいなって気がしてきました」
泰葉「自分の顔好きになってあげるのは大事だよね。ということでこんどはほたるちゃんが千鶴ちゃんにメイクしてみる?」
ほたる「あ、是非!」
千鶴「あ、え、ちょっと待って待って……!」
にぎやかな夜は、続く。
(おしまい)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
元スレ
泰葉「知らないのにみなぎらせたがってたの?」
ほたる「あ、あのあの。外国語で根性とか執念とか、きっとそんな感じの意味にちがいないと思って」
泰葉「13歳のアイドルのデビュー曲って感じからさらに遠ざかった感じがする」
ほたる「し、調べてみましょう、調べてみましょう。泰葉ちゃんお願いします」
泰葉「何故ほたるちゃんが調べないの」
ほたる「私が何か調べようとするとスマホが爆発するから……」
泰葉「冗談じゃなさそうなのが恐ろしいよね……(検索中)あ、あった」
ほたる「ど、どんな意味なんですか(わくわく)」
泰葉「……皮?」
ほたる「皮」
3: ◆cgcCmk1QIM 19/05/21(火)20:39:16 ID:eau
泰葉「細胞の、表面の膜みたいなもののことなんだって。体を保護するための膜」
ほたる「じゃあ、クチクラをみなぎらせるってこう、面の皮を厚くしてとかそんな感じなんですか」
泰葉「アイドルが面の皮とか言わない」
ほたる「だってえ」
泰葉「文脈から考えると、不幸や苦しみを跳ね返すようなタフさを身につけて、って事だと思うよ」
ほたる「なるほど……でもだとすると、クチクラをみなぎらせるって一体どうすれば……!」
泰葉「ほたるちゃんはすでにもうかなりものすごくタフな気がするんだけど――あ、でも人間にもクチクラってあるみたいだよ」
ほたる「あるんですか。面の皮ですか」
泰葉「皮から離れようよ。あとなんで顔限定なの」
ほたる「一応アイドルなので顔が強いのはいいかなって。ほら、顔面が強いって褒め言葉があるじゃないですか」
泰葉「それ強いの意味が違うからね? ――ほら、髪」
ほたる「髪、ですか」
4: ◆cgcCmk1QIM 19/05/21(火)20:41:43 ID:eau
泰葉「というか体毛、かな。ほら、キューティクル。あれがクチクラなんだって」
ほたる「へええ、あ、言われてみればキューティクルとクチクラって音の感じが似てる気がします」
泰葉「キューティクルが英語で、クチクラはラテン語ってことらしいから、同じ言葉の発音が違うだけなのかもね」
ほたる「しかし、体毛、ですか……じゃあ、クチクラをみなぎらせるってどうすればいいんでしょう」
泰葉「どうしてそんなにクチクラをみなぎらせたいか解らないけど……しいて言えば」
ほたる「しいて言えば」
泰葉「増毛?」
ほたる「増毛」
泰葉「だってまあ毛の表面にあるわけだし」
ほたる「とはいえ私たちアイドルですから顔のうぶ毛とか放置できません」
泰葉「髪の毛を伸ばせばいいじゃない」
ほたる「私が髪の毛を伸ばすと皆さんが危険なので」
泰葉「ちょっと聞き捨てならないけど突っ込まないからね」
5: ◆cgcCmk1QIM 19/05/21(火)20:42:06 ID:eau
ほたる「でも、そうか、毛、毛……」
泰葉(あれっ、考え込んじゃった)
ほたる「これはなんとしてもクチクラをみなぎらせなくちゃ!」
泰葉「だからそのクチクラへの情熱はいったい何なの」
ほたる「実は前から悩んでることもあって……誰か、専門家に相談すればアドバイスがもらえるでしょうか」
泰葉「クチクラの悩みって何なの……増毛の専門家。プロデューサーさん?」
ほたる「一度も成功してない人を専門家って呼んでいいんでしょうか」
泰葉「それ絶対Pさんに言っちゃダメだからね」
ほたる「はい。増毛はともかくとして心から感謝しているんですから――あっ、GBNSにも専門家がいました!」
泰葉「いたっけ!?」
ほたる「いましたよ。そういえば前々から教えてほしいと思ってたのでした……このさいです、勇気出して教えてもらいに行きましょう!」
泰葉「あ、ちょっとほたるちゃん」
ほたる「クチクラをみなぎらせた私の姿を楽しみにしていてくださいね!」
泰葉「あ、ちょっと待って――ああ、行っちゃった」
6: ◆cgcCmk1QIM 19/05/21(火)20:43:36 ID:eau
【同日夜/女子寮・松尾千鶴の部屋】
ほたる「というわけで千鶴ちゃん、いろいろ教えてください!」
千鶴「何故私!?」
ほたる「GBNSで毛といえば千鶴ちゃんじゃないですか」
千鶴「言い方。というか、髪の毛の量なら圧倒的に裕美ちゃんじゃない?」
ほたる「だって私と裕美ちゃん、髪質が全然にてないし」
千鶴「ああ、確かにそうかも」
ほたる「ふわふわでお姫様みたいで憧れるけど」
千鶴「わかるなあ。私も裕美ちゃんみたいなフワフワの髪にして、ふわふわの衣装を着て……(うっとり)」
ほたる「裕美ちゃん可愛いですよね……でも私たちは直毛かつ醤油顔ですから」
千鶴「そうなんだよね(しょぼん)」
ほたる「でも、千鶴ちゃんの毛もステキです」
千鶴「褒められてるってことでいいんだよね?」
ほたる「勿論です。色が濃くてツヤツヤで。烏の濡れ羽色ってこういうかんじなのかなっていつも」
千鶴「そ、それほどでも。えへへ」
7: ◆cgcCmk1QIM 19/05/21(火)20:44:01 ID:eau
ほたる「本当ですよ。だから前々から千鶴ちゃんに聞きたい聞きたいと思ってたことがあって。このさいだから勇気を出して、と――」
千鶴「なるほど。それならアドバイスするよ。まずシャンプーは」
ほたる「いえ、髪の毛のことも聞きたいんですが
千鶴「?」
白菊ほたる「千鶴ちゃん」
千鶴「な、なあに?」
ほたる「どうしたら眉毛が濃くなるんでしょう」
千鶴「どうして眉毛に行ったの!?」
ほたる「教えてください千鶴ちゃん、その濃くて太い眉の秘密を!!」
松尾千鶴「喧嘩売られてるのかなあ」
ほたる「まさかそんな。私真剣なんです」
千鶴「真剣に『なんで眉濃いの?』って聞かれるとは。私はほたるちゃんの眉毛かわいいと思うんだけどな」
ほたる「他人はいつもそういうんですよ(ヘッ)」
千鶴「なんかやさぐれてない?」
ほたる「いえ別に」
8: ◆cgcCmk1QIM 19/05/21(火)20:44:19 ID:eau
千鶴「かわいいって思ってるのは本当だよ? ほたるちゃんて私と同じ黒髪だけど、全体にフワッとしてて淡い雰囲気で、羨ましいなあと思う」
ほたる「どうも」
千鶴「私は、髪も眉もちょっと堅い雰囲気で。量も多いし――もっと優しい感じになりたいなあっていつも」
ほたる「千鶴ちゃん剛毛ですものね」
千鶴「やっぱり喧嘩売ってるよね。買うよ?」
ほたる「すみません、眉毛のことになると、つい」
千鶴「眉毛の何があの優しいほたるちゃんを荒ぶらせるというの」
ほたる「まあ、まずはこの写真見てください」
千鶴「これは――あ、かわいい。ほたるちゃんの小さいころ?」
ほたる「はい、私の4歳のときの写真です」
千鶴「やっぱりー! 面影あるなあ――あれっ?」
ほたる「気付きましたか」
千鶴「眉毛、濃いね。というか普通だね」
9: ◆cgcCmk1QIM 19/05/21(火)20:44:38 ID:eau
ほたる「そう、このころの私は普通の眉毛でした。でも」
千鶴「でも?」
ほたる「毎日トラブルが起きて、ああ自分は不幸を招くんだと気付いたころから眉毛がどんどん薄くなりはじめて、ついにはここまで……」
千鶴「その眉毛ってストレスで薄かったの!?」
ほたる「はい……」
千鶴「そんな……かわいいと思って見てたほたるちゃんの眉毛に、そんなPさんの生え際みたいな秘話があったなんて」
ほたる「Pさんの前では気付かないふりしてあげましょうね」
千鶴「うん、約束ね」
ほたる「約束です」
ほたる「それで、眉毛なんですが」
千鶴「続くのかあ」
ほたる「教えてください、その眉の秘密を」
千鶴「別に秘密なんかないんだけど!」
ほたる「そんな事言わずに!」
千鶴「うわあこんなぐいぐい来るほたるちゃん初めて見た」
ほたる「おーねーがーいーしーまーすー」
千鶴「というかなんでそんな突然眉毛眉毛言い出すの!? 今までも薄かったけど、別に普通にしてたじゃない」
10: ◆cgcCmk1QIM 19/05/21(火)20:45:54 ID:eau
ほたる「……」
千鶴(あ、黙っちゃった)
ほたる「やっぱり薄いと思ってたんですね」
千鶴「あ、あのその。淡い! 淡い!! 可愛いのはほんとだから!!!」
ほたる「……その」
千鶴「うん」
ほたる「ソロCD、出たじゃないですか」
千鶴「おめでとう。私も裕美ちゃんも明日、予約したお店に受け取りに行くの」
ほたる「ありがとうございます――それで、いままではお写真撮るときは四人だったのが一人で撮る機会が増えて」
千鶴「うん」
ほたる「そしたら、顔がいままでより、うんと大きく写るじゃないですか」
千鶴「……あー」
11: ◆cgcCmk1QIM 19/05/21(火)20:46:08 ID:eau
ほたる「気にしないようにしていたけど。なんだか、大写しの自分の顔を見ていると、だんだん気になってしまって」
千鶴「……それはそうだよね」
ほたる「千鶴ちゃんは可愛いって言ってくれたけど。誰も気にしてないのかもしれないけど、なんだか大きなお写真を撮るのがだんだん憂鬱になってきちゃって」
千鶴「……うん」
ほたる「前から千鶴ちゃんの眉毛、いいなあって思ってたのは本当です。新曲貰って、舞い上がった勢いのままなら聞きにこられるかなって、思って」
千鶴「……私も、もうちょっと綺麗に細い眉だったらなあ、なんて思うから。気持ちわかるよ」
ほたる「ごめんなさい。ちょっと舞い上がりすぎてました」
千鶴「うーん……ちょっと待ってね」
ほたる「?」
千鶴「多分それ、泰葉さんなら解決できると思うよ」
ほたる「!?」
12: ◆cgcCmk1QIM 19/05/21(火)20:46:41 ID:eau
【再び岡崎泰葉の部屋】
泰葉「なるほど、そういうことだったのかあ」
千鶴「可愛いと思うし、Pさんがメイクさんに指示しないんだからいいと思うんだけど、ほたるちゃんが気にしてるなら……」
泰葉「うん、そうだね。やってあげようか」
千鶴「お願いします。私はそういうのやらないほうなんで」
ほたる「あ、あの?」
泰葉「はいそこに座って。眉書いてあげる。色は――これかな」
ほたる「え、えっ!?」
泰葉「勿論眉毛を本当に濃くしてはあげられないけど、自信の持てないところを抱えたままで顔を撮られるのは嫌だよね。わかる……はい動かないでね」
ほたる「は、はい」
千鶴「やっぱり手馴れてますね」
泰葉「小さい舞台だと自分でメイクすることも多かったからね」
ほたる「……」
13: ◆cgcCmk1QIM 19/05/21(火)20:47:00 ID:eau
泰葉「Pさんに相談すればよかったのに」
ほたる「なんだか、言いにくくて」
泰葉「だけど、これもクチクラだよ」
ほたる「えっ」
泰葉「ひとつ綺麗になって、自信が持てて、誰かの目を気にせずにステージに上がれるなら、このアイブロウ一本だってほたるちゃんを守ってくれてるってことでしょ」
ほたる「……はい」
泰葉「はい出来た。とりあえずだけどどうかな? 鏡はあっちね」
ほたる「わあ……!」
千鶴「あ、ステキ! またちょっと雰囲気変わるね」
泰葉「ほたるちゃんの顔、私は眉毛もふくめて大好きだけどさ」
ほたる「……はい」
泰葉「ほたるちゃんが気になることは、こうしてカバーできるんだから、気持ちよくステージに上がれるようにすべきだよ。ためしに今度のお仕事で眉書いていいか、Pさんに聞いてみたら?」
ほたる「はい、そうします……泰葉ちゃん、千鶴ちゃん、ありがとうございました……!」
14: ◆cgcCmk1QIM 19/05/21(火)20:47:16 ID:eau
泰葉「じゃ、そうやってほたるちゃんの納得が得られたところで(がきっ)」
ほたる「泰葉ちゃん、どうして私を羽交い絞めに……!?」
泰葉「ほたるちゃん今日はちょっと暴走気味だったから。罰としてクチクラみなぎらせまくってもらおうかと」
ほたる「えっ、えっ」
泰葉「千鶴ちゃん、メイク道具はそこのボックスね」
ほたる「あ、あのあの、舞い上がっちゃってすみませんでした……!」
千鶴「それはそれ、これはこれ。ほたるちゃんいつもメイク薄いから、一度いろいろやってみたかったの!」
ほたる「千鶴ちゃんがわくわくしてる!!」
泰葉「はーいおとなしくしてねー」
(そしてほたるの悲鳴、そしてやがて三人の笑い声が女子寮に響きわたった。その夜撮影された大量の写真は見れば爆笑間違いなしのネタとしてGBNSでながく重宝されたという)
ほたる「メイク顔も眉を書いた顔もいいですけど、素の顔もいいなって気がしてきました」
泰葉「自分の顔好きになってあげるのは大事だよね。ということでこんどはほたるちゃんが千鶴ちゃんにメイクしてみる?」
ほたる「あ、是非!」
千鶴「あ、え、ちょっと待って待って……!」
にぎやかな夜は、続く。
(おしまい)
15: ◆cgcCmk1QIM 19/05/21(火)20:47:29 ID:eau
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
白菊ほたる