1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 02:52:56.38 ID:oxY/m9AF0
京子「結衣ー! 遊びに来てやったぞー!」
結衣「はいはい、ちょっと待っててね……」
京子「およ? 結衣さんや、何をするおつもりで?」
結衣「何って、寒いから押入れから電気ストーブ出すだけだよ」
京子「もしかして結衣にゃん、暖房つけないで生活してたの!?」
結衣「結衣にゃん言うな。……まあ、私は寒さに強いから」
京子「結衣は修羅の者だよー」
結衣「誰が修羅の者だ、誰が。だから、ちょっと待ってて」
京子「ほいさっさー! ってか本当に結衣の部屋さむっ!」
結衣「ガサゴソ……」
結衣「ブツブツ……」
結衣「ガサゴソ……」
京子「結衣ー、まだー? 寒すぎて死にそうだ!」
結衣「はいはい、今出すから……っと!」
京子「うおう、冬の救世主!」
3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 02:58:44.12 ID:oxY/m9AF0
結衣「設定温度は……20度でいいかな?」
京子「なんでもいいからはやくしてくれ!」
結衣「じゃあ3度で……」
京子「ごめんなさい、20度でお願いします!」
結衣「はいはい」ポチッ
京子「うおー、ストーブついた! 全然あったかくならん!」
結衣「そんなすぐに暖かくなるわけないだろ……」
京子「ダメだー! 気を紛らわすためにゲームでもしなきゃ死んでしまう!」
結衣「いっつもうちに来たらゲームばっかりやってるくせに」
京子「まあそうなんですけどね」
結衣「じゃあ、私はご飯つくるから、レベル上げておいてよ」
京子「ごはん!」
結衣「ボス戦は自分でやりたいからストーリー進めるなよー」
京子「了解であります、ご飯隊長!」
結衣「よろしい」
結衣「……さて、何をつくろうかな?」
京子「~♪」
結衣「京子ー、何たべたーい?」
京子「ラムレーズン!」
結衣「……それ以外で」
京子「じゃあ麻婆豆腐!」
結衣「りょうかーい」
結衣「麻婆豆腐ならあまり時間もかからないし、すぐに……」ガサゴソ
結衣「……って豆腐切らしてるや」
結衣「……京子ー、ちょっと私買い物行ってくるから」
京子「行ってらー」
結衣(着いて来ようとしない……よし)
結衣「ストーリー絶対進めるなよー」
京子「んー」
結衣「えーっと、豆腐は……っと」
結衣「あった。ついでにラムレーズンも補充しておくか。アイスコーナー、アイスコーナーは……」
結衣「……あれ?」
綾乃「!? ふ、ふふふふふ船見さん!?」
結衣「そんなに動揺しなくても……。こんなところで、奇遇だね」
綾乃「そ、そそそうね、奇遇ね!」
結衣「こんなに寒いのにアイス買いにくるなんて、意外な一面もあるんだね」
綾乃「船見さんこそ、真冬にアイスなんて風邪引くわよ!」
結衣「ああ、私は京子のためにラムレーズン買いにきたんだ」
綾乃「そ、そうなの~」
結衣「……あれっ、綾乃もラムレーズン食べるんだ」
綾乃「そ、そそそうなのよ! これは決して歳納京子を家に呼んで一緒に食べようだなんて魂胆は微塵もナイアガラなんだから!」
結衣「プッ」
綾乃「と、というわけで、それじゃあ船見さん! また!」ソソクサ
結衣「うん、また学校でね」
結衣「そうか。綾乃、京子を家に……ねぇ」
結衣「無駄なのに……別の意味で笑っちゃったよ」
結衣(そう、大丈夫。今のところは順調だ……)
その頃、結衣宅――
京子「しっかしレベル上げってつまんないなー」
京子「えいっ、結衣も買い物行ってるし先に進めちゃえ!」
ガサッ
京子「ビクゥ!? な、何っ!?」
結衣「……」ノソッ
京子「ゆ、結衣、これはちが……って結衣、押入れで何やってるの?」
結衣「……」タッ
京子「あ、おい、結衣って……ってトイレか」
京子「しかし結衣ったら、音も立てずに帰ってくるなんて忍びの者かよ……」
京子「……まあいいや、結衣がトイレ行ってる間に進めとこ」
ピンポーン
京子「およ、誰だろ?」
結衣「ただいま。開けて欲しいんだけど」
京子「えっ、結衣?」
結衣「はい」
京子「はいじゃなくて……」
結衣「うん。はいじゃなくて、開けてな」
京子「あっ、うん」ガチャッ
結衣「さっき綾乃に会ったよ」
京子「そ、そう。って言うかさっきトイレ行ったんじゃ……」
結衣「えっ、私は今帰って来たばっかりだけど……」
結衣(やばい、もしかすると――)
結衣「なあ京子、もしかして家に誰かいたとか?」
京子「誰かも何も、さっき結衣押し入れから出てきてトイレ行ったよね……」
結衣「私が!?」
京子「うん、結衣が」
結衣(おかしい。なぜ京子はよりにもよって『私』を……)
結衣「ねえ、その京子が見た私ってのは……トイレから出てきた?」
京子「いや、トイレ行ったっきりだったと思うけど……。でも音も立てずに帰ってきて押入れに入ってたぐらいだから、隠密行動ぐらいはできるんじゃないの?」
結衣「隠密行動って……。まあ、とにかく私ちょっとトイレを見てくるから」
京子「もしかして心霊の類!? ここって心霊スポットだったりするの!?」
結衣「ねーよ」ガチャッ
結衣「……」バタン
京子「あっ、結衣にゃんトイレに入っちゃった……。言ってることおかしかったし、生理なのかな?」
結衣「……」ガチャッ
京子「およ、結衣。どうだった?」
結衣「トイレには誰もいなかったよ」
京子「なんだー、つまんないのー」
結衣「言い忘れてたけど、そもそもうちのトイレって今壊れてるから……」
京子「えっ、そうなの!? じゃあどうやってトイレすればいいのさ! この純情な乙女である歳納京子ちゃんにお漏らししろって言うのかー!」
結衣「誰が純情な乙女か。……部屋から出て一階に共用のトイレがあるから、そっちを使って」
京子「はーい」
結衣「ってことで、うちのトイレは使用禁止な」
京子「まあいざとなったらベランダですればいいしな」
結衣「ねーよ」
結衣(ふぅ、なんとか誤魔化しきれた……か?)
翌朝――
京子「ふぁ~、よく寝た気がする~」
結衣「あ、京子起きたんだ。おはよう」
京子「おはよう、結衣ぃ。今何時?」
結衣「今は9時40分ぐらいだよ。よく寝ていたね」
京子「そうかぁ~、9時40分かぁ~……ってすっげえ遅刻してるじゃん私達!」
結衣「えっ、遅刻? 学校行くつもりだったの?」
京子「行くつもりだったのって、そりゃあ行くよ! ……って、もしかして今日は土曜日だったり?」
結衣「ばりばり平日だが」
京子「うおい、早く支度しないと!」
結衣(なんで京子は学校なんかに行こうと……私は確かに……)
結衣「学校なんて行かなくてもいいんじゃないかな?」
京子「うおっ品行方正な結衣さんらしからぬ発言!」
結衣「ねえ、もう学校なんて一生行く必要ないでしょ?」
京子「結衣、無理した良い子ちゃんアピールがたたってついにおかしく……」
結衣「誰が無理した良い子ちゃんアピールか」
京子「とにかく、これ以上サボって宿題増やされた日には私死んじゃうから! 学校行ってきます!」バビューン
結衣「おいこら、パジャマのまま……って行っちゃった」
結衣「……」ガチャッ
結衣「……おいこら、どういうことだ。私は確かにあいつに――」
結衣「……きちんと効いてはいるはずだって? なら、どうして――」
結衣「クソッ、もういい。私も京子を追う!」タッ
学校、玄関付近――
京子「ゼハーッ、ゼハーッ やっと学校に……」
「あら、歳納さん。今日は一段と遅かったなあ。二時間目の体育は雪合戦やるらしいから外で――」
京子「結衣!? 着くのはやっ!」
結衣「えっ、ゆ、結衣? 船見さんのことか?」
京子「船見さんのことかも何も、着くの早すぎだよ! どんな裏技使ったのさ!」
結衣「どんな裏技って……私は普通に8時頃に家を……」
京子「8時頃!? ちょっと待って、私が家出た時って結衣まだ家に残ってたよね!? 学校行く必要あるのだのなんだの言って!」
結衣「な、何を言って――」
京子「あー、もう結衣ってばなんなんだよー! ……まあいいや、早く雪合戦しに行こうよ!」
結衣「……その前に、パジャマは流石にどうかと」
京子「あらやだ。京子ちゃん恥ずかしい!」
結衣「というか寒くないん?」
京子「そう言われると凄く寒い気がする、教室行って着替えてくる!」ダッ
結衣「あっ、歳納さーん!」
京子「……どういうことなの?」
結衣「歳納京子ー! 遅刻は罰金バッキンガムなんだから!」
結衣「歳納さん、いくら急いで来たからってパジャマは……クスッ」
結衣「あっ、次体育だから急いだ方がいいよ。歳納さん」
京子「結衣が、いっぱい……」
結衣「結衣? ああ、そう言えば船見さんも遅いわね。船見さんも罰金バッキンガムよ!」
京子「いやあの、何をツッコんだらいいか……」
ガラッ
結衣「はぁっ……はぁっ……やっと追い付いた……」
京子「また結衣がやってきた!」
結衣「はぁっ……えっ、『また』って何?」
京子「だ、だってこんなにいっぱい結衣が……」
結衣「はぁ?」
結衣「船見さん、遅刻は厳禁金閣寺よ!」
結衣「ブフッ、厳禁金閣寺って……」
京子「結衣が結衣のギャグで笑ってる……」
結衣「とにかく船見さんも歳納さんも、次は外で体育なんだから早く準備しなさいよっ!」
結衣「あー、次の体育は外なんだ。ありがとね、綾乃」
結衣「副会長として当然よ!」
京子「ま、待って! 綾乃がどこにいるの!?」
結衣「えっ」
結衣「私はここにいるけれど……」
京子「いや、それは結衣じゃん!」
結衣「わ、私は杉浦綾乃よ!」
京子「どういうことなんだぁ~!」
結衣「こっちが聞きたいぐらいよ……」
結衣「……」
結衣(これはまさか……)
結衣「ごめん京子、体育は先に行ってて!」ダッ
結衣「あ、ちょっと船見さん! 待ちなさい!」
京子「なんだこれ! なんだこれ!」
結衣「おおよその見当はついたけど……だとしたら、これはマズイぞ……」タッタッタッ
結衣「一刻も早く帰ってあいつと合流しなきゃ――」タッタッタッ
「……」
結衣「ってお前! なんで家から出て……まあいいや。今は都合がいい」
「……」
結衣「人目につくのは好ましくない。屋上に行こうか」
「……」
その頃、教室では――
京子「結衣ぃ、なんなんだよこれ! 綾乃は? 千歳は? みんなはどこに行っちゃったんだよぉ!」
綾乃「お、落ち着きなさい、歳納京子! 私ならここにいるわ! 千歳だってグラウンドに――」
京子「結衣しかいないじゃん! 今私が話してるのも結衣じゃん!」
綾乃「……」
綾乃(歳納京子には、私が船見さんに見えているというの? いや、それどころか――)
綾乃「ね、ねえ、歳納京子」
京子「なにさ!」
綾乃「あそこにいるのは、誰?」ユビサシッ
京子「結衣!」
綾乃「……じゃあ、あそこには?」ヒトサシッ
京子「結衣!」
綾乃「……それじゃあ、歳納京子の前の机に座っているのは?」
京子「結衣だよ! みんな結衣! もうやだよ! 結衣は好きだけど、結衣だけじゃやだよ!」
綾乃(なるほど。歳納京子の目に映る人は皆船見さんに見えている、ということね)
綾乃「……ねえ、歳納京子。西垣先生のつくった薬とか、飲んだりしなかったかしら?」
京子「飲むわけないよ! 西垣ちゃんの薬なんて爆発物と一緒だもん、身体に取り込んだら死んじゃうよ!」
綾乃「そ、そりゃそうよねえ……」
綾乃(そういえば昨日スーパーで会った船見さんの口ぶりからすると、歳納京子は船見さんの家に……)
綾乃「……それじゃあ誰かに薬を飲まされたりしなかった? 例えば、その、船見さんからとか」
京子「えっ、結衣わたしになんか薬飲ませたの!?」
綾乃「私は飲ませてないわよ! 今は船見さんの……あっ、昨日家に泊まったときに、何かおかしなことはなかったかって聞いているのだけれど」
京子「あっ! 結衣、忍者みたいに音も立てずに買い物から帰ってきたかと思ったらトイレに行って、で、今度はトイレに行ったかと思ったらまた外から帰ってきたよね。あれなんだったのさ?」
綾乃(!? どういうことなの……。取り敢えず、船見さんに色々問いただす必要がありそうね)
京子「もう、分かんないことだらけだよっ!」
綾乃「……その分からないこと、解明してみたいと思わない?」
京子「結衣?」
綾乃「船見さんを……いえ、昨日あなたを泊めた船見さんを探しに行きましょう。彼女は何か知ってるはずよ」
京子「あ~~、もーわけわからん! なるようになれっ!」
屋上――
結衣「さっきから奇妙なことばかりだ」
結衣「私は確かに、京子が私の家から二度と出ることのないよう取り計らったし」
結衣「それなのに京子は私の家から出て学校に行った挙句、『結衣がいっぱいる』などと分けのわからないことを口にする」
結衣「いや、実に奇妙だ。……まあ、主人の紡いだ言葉を現実のものとして錯覚させてしまう、だなんて現実離れも甚だしい能力を持ったお前が一番奇妙なんだけど」
結衣「なあ、別天王」
別天王「……」
綾乃「……なるほど、どうやらその子の能力で歳納京子に影響を与えたってわけね」
結衣「!? 綾乃!? どうしてここに!?」
綾乃「どうしても何も、昨日歳納京子が昨日船見さんの家に泊まって、それからこんなことになったんじゃあ、船見さんを真っ先に疑ってかかるのは当然よ!」
結衣「グッ……」
結衣(そうか、昨日綾乃に出会したから……クソッ、解決を急かずに一旦家に戻って話を進めるべきだったか)
京子「結衣に結衣。これ、どうなってるのさ? 私こわいよ……」
結衣(京子はああ言っているが……ここで逃亡を図るなら、元に戻すべきでは――)
綾乃「心配ないわ、歳納京子。すぐに全て元に戻るわ」
結衣「……」
綾乃「というわけで船見さん、何が言いたいかは分かるわよね」
結衣「……分からないな」
綾乃「!?」
結衣「そもそも、何だ? 私が昨日京子を家に泊めたからって、それと京子がおかしくなったことの何が関係あるって言うのさ?」
綾乃「だって昨日は歳納京子、何も変わりがなかったもの! 昨日船見さんの家に泊まったときに、その別天王とかいう子の能力を使って何かしたとしか思えナイアガラよ!」
結衣「プッ……クッ……クハハハハ!」
綾乃「な、何よ!?」
結衣「今日の綾乃はギャグだけじゃなくて発言も面白おかしいな!」
綾乃「なんですって!?」
結衣「だって、変じゃん。仮に私が『みんなが私に見えるようになれ』とでも言ったとして、それで私に何のメリットがあるのさ?」
綾乃「……」
結衣「私には何も得るものがないよね、そんなことを叶えたところで」
綾乃(確かに、歳納京子をそんな催眠状態に陥れるメリットは、船見さんにはない)
綾乃「で、でも、それじゃあなんで歳納京子にはみんなが船見さんに見えているのよ! 船見さんに何かしらの関係があるとしか思えないわ!」
結衣「それは言いがかりだよ」
綾乃「そ、それにさっきあなたは『京子が私の家から二度と出ることのないように取り計らった』って……やっぱり歳納京子に何かしたんじゃないのかしら?」
結衣「ああ、あれは言葉のあやだよ。ただ単に、京子が家から出ないようにわざとゲームに夢中にさせたり、朝になっても起こさなかったりしただけの話さ」
京子「あれやっぱりわざとだったんだ! 結衣にゃんひどい!」
結衣「ごめんごめん」
綾乃(ここに歳納京子を連れてきた以上、船見さんの歳納京子に関する発言に矛盾があれば何かしら歳納京子が指摘するはずだけれど……反応を見る限り嘘は言っていない。……言葉の、あや――!?)
結衣「綾乃、そろそろ授業に向かっていいかい?」
綾乃「……船見さん、やっぱりあなたは別天王の能力で歳納京子に催眠をかけたのよ」
結衣「だから、私にはそんなことするメリットないってば」
綾乃「……確かに、歳納京子がみんなを船見さんとして認識する――そんな催眠をかけるメリットはないわね」
結衣「でしょ。私は本当に無実なんだって」
綾乃「だけど、本来かけようとした催眠は別のものだったとしたら?」
結衣「……何が言いたい?」
綾乃「出てきていいわよ、因果」
因果「へへっ、やっと御魂が食べられるんだね」
結衣「誰だっ!?」
京子「また結衣が出てきた!」
綾乃「紹介するわ。因果――私のパートナー、そして今から真実を暴いてくれるのも、こいつよ」
因果「真実を暴くのは綾乃だろ? 僕は真実を“喰う”だけだ」
綾乃「そうだったわね」
因果「――それで、私は何を質問すればいい?」
結衣「ひ、ヒィ!? 身体が変成した!? バ、バケモノぉ!」
綾乃「もちろん、決まっているわ。船見さんが何と言って別天王の能力で歳納京子に暗示をかけたか――船見さんに問い質して頂戴」
因果「了解」
結衣「く、来るな! 私に何をする気だ、やめろっ、この!」
因果「私は何もしない。ただ、答えてもらうだけよ」
結衣「ヒ、ヒィ! やめろ! 近寄るな!」
因果「さあ、答えて。お前は何と言って歳納京子に暗示をかけた?」
結衣「わ、私は京子に暗示なんか――」
因果「無駄だ。人は私の質問に、一回だけならなんでも答えてしまう」
結衣「グァァアアアアアア!!」ドサッ
結衣「……私は、別天王を使って歳納京子を催眠状態に陥れた」
結衣「……押入れに別天王を住まわせ、歳納京子を家に連れ込み、電気ストーブを取り出すと言って押入れにはいって、別天王の元で言ったんだ」
結衣「……『京子には私のことしか目に映らない』と」
綾乃「なるほどね」
結衣「……京子を、私のものにしかたかった。京子が私だけを必要とするよう仕向けたかった」
綾乃「でも、失敗した。暗示の言葉が曖昧すぎた……まさに“言葉のあや”ってやつね」
結衣「……」
綾乃「当初は歳納京子が船見さんに依存しきり、船見さんの元を離れないようになる……そう想定していた」
結衣「……」
綾乃「でも、実際にはその暗示はあまりにも言葉通りにかかってしまった。結果として、歳納京子は、目に映る人が全て船見さんに見えるようになってしまった」
結衣「……その通りだ」
京子「じゃ、じゃあ、私が結衣ん家で見た、結衣が買い物から帰ってくる前に押入れから出てきた結衣は」
綾乃「別天王が船見さんに見えていたというだけの話ね」
京子「な、なるほど……」
綾乃「……さて、船見さん」
結衣「……真相が分かったからと言って、どうする? 別天王はこっちにいるんだぞ? 京子を治すことができるのは私だけだ!」
京子「結衣……」
結衣「京子、私の部屋から二度と出ないと。一生私の部屋で私のペットとして暮らすと誓え。そうすれば元に戻してやる」
京子「そ、そんな……そんなのひどいよっ!」
綾乃「船見さん、あなた……最低ね」
結衣「なんとでも言え。別天王がこっちにある以上、強気に出るのは当然だ」
綾乃「『別天王はこっちにある』……ねぇ」
結衣「……?」
綾乃「因果、確か因果ってあの別天王とかいうのに封印されていたのよね?」
因果「うん、あいつは神だから。正直、あいつに関わるのはやめた方がいいよ」
綾乃「……ねえ、別天王。あなたが封印した因果は、今こうして封印を放たれて地上を闊歩しているわけだけど――あなた、それでいいのかしら?」
別天王「……」
綾乃「因果は人の御魂を喰らう。そんな存在が地上で暴れ回ったならば、神のあなたとしては黙って見過ごせないはず……」
因果「お、おい、綾乃!」
別天王「……」
綾乃「あなた、私の側につかない? そうすればいつでも因果を監視していられるわよ。私は『因果に真実を喰わせる』という契約をしている以上、因果と行動を共にしなくてはいけないの」
別天王「……」
因果「綾乃、やめろよ! 別天王とは関わらない方がいいってさっき――」
綾乃「別天王の力は上手くすれば御魂を喰う一助となる……そうは思わない? 第一、あなたが好き勝手に生者の御魂を食べたりしなきゃ別天王もあなたに危害を加えたりはしないわよ」
因果「それはそうかもしれないけど……」
結衣「別天王、そんな誘いに乗らないよな!? 別天王は私と京子の恋を手助けしてくれるんだよなあ、なあ!?」
別天王「……」
別天王「……ごめんなさい」タッタッタッ
結衣「なッ!?」
綾乃「どうやら、あなたの恋路は“有害”と判断されたようね」
結衣「クソぉ……クソぉおお!!」
京子「結衣……」
綾乃「……」
京子「あのねっ、綾乃っ――」
綾乃「船見さん、あなたは罰を受けなくてはならない。分かっているわね」
結衣「……何をする気だ?」
綾乃「簡単なことよ。これで全てが解決するし、もう歳納京子が危険に曝されることもなくなる」
京子「ちょ、ちょっと待って! 結衣もきっと反省してるし、とりあえず私を治してくれれば、それで私はいいかなー……なんて」
結衣「京子……」
京子「えへへ」
綾乃「……」
京子「綾乃――」
綾乃「ダメよ、船見さんは何をしでかすか分からない。今回の一件で、それがよく分かった」
京子「そんな!」
綾乃(それに船見さんがいれば、船見さんが手を下すまでもなく歳納京子はきっと――)
綾乃「別天王。あなたの主として、あなたに能力を行使してもらうわ」
別天王「……」
京子「綾乃っ、ダメッ!!」
綾乃「歳納京子は、船見結衣を認識できない」
結衣「綾乃、それは――」
別天王「ズォォオオオオオオオオ」
京子「ひッ、やめて、いやぁぁあああああああああ!!」
京子「……なんだよ。神だかなんだか分からないけど」
京子「さっきは結衣しか見えなくなったと思ったら、今度は結衣のことが見えなくなるだなんて……」
京子「いい加減にしてよ、私は普通でいいのに! 普通に結衣が一人だけいて、もちろん綾乃も一人だけいて……みんなが一人ずつ居てくれればそれでいいのに!」
京子「綾乃、全てを元に戻して。じゃなきゃ私、綾乃のことを嫌いになっちゃうかも」
京子「……綾乃? 綾乃!?」
京子「綾乃、どこにいったのさ! 返事してよ! 綾乃ぉ!」
京子「あれ、そう言えばさっきいた別天王とか呼ばれてた結衣や、因果とか呼ばれてた結衣は?」
京子「ねえ、みんなどこにいったの!? 私を元に戻して! 私っ、ぐすっ、こんな世界、生きていけないよぉ……」
京子「ねぇ。みんなぁ……ひっぐ……何か言ってよぉ……」
綾乃「……船見さんには暫く反省してもらうわ」
結衣「綾乃……なんてことをしてくれたんだ……」
綾乃「あなたの自業自得じゃないの」
結衣「違う、そうじゃない……」
京子「……なんだよ。神だかなんだか分からないけど」
京子「さっきは結衣しか見えなくなったと思ったら、今度は結衣のことが見えなくなるだなんて……」
京子「いい加減にしてよ、私は普通でいいのに! 普通に結衣が一人だけいて、もちろん綾乃も一人だけいて……みんなが一人ずつ居てくれればそれでいいのに!」
綾乃「と、歳納京子まで! 船見さんがいる限り、“普通”だなんてありえないのよ!」
京子「綾乃、全てを元に戻して。じゃなきゃ私、綾乃のことを嫌いになっちゃうかも」
綾乃「そ、そんな! 歳納京子、私はあなたのためを思って……」
京子「……綾乃? 綾乃!?」
京子「綾乃、どこにいったのさ! 返事してよ! 綾乃ぉ!」
綾乃「歳納……京子?」
京子「あれ、そう言えばさっきいた別天王とか呼ばれてた結衣や、因果とか呼ばれてた結衣は?」
綾乃「因果も別天王もここに――ハッ!」
結衣「……やっと気付いた? 京子は全ての人間を私として見ていたから、『船見結衣を認識できない』という暗示が上書きされることによって……」
因果「なるほど、結局誰も認識できなくなってしまったってわけだね」
綾乃「そん……な……」
京子「ねえ、みんなどこにいったの!? 私を元に戻して! 私っ、ぐすっ、こんな世界、生きていけないよぉ……」
綾乃「と、歳納京子! ごめんなさい、今すぐ元に戻してあげるわ! べ、別天王、頼むわよ!?」
別天王「……」
綾乃「歳納京子は人をその人そのものとして認識する」
別天王「……」
綾乃「ちょ、ちょっと、別天王! 能力を使ってよ! じゃなきゃ歳納京子が!」
結衣「無駄だよ」
綾乃「なんで、どうしてよ!」
結衣「別天王は、声を媒介して催眠をかけるんだ。つまり誰も人を認識できない今の京子に、別天王による暗示は……」
綾乃「そんな……」
京子「ねぇ。みんなぁ……ひっぐ……何か言ってよぉ……」
京子「その日以来、私の周りからは全てのヒトが消えた」
京子「代わりに、自然が私を手助けしてくれるようになった」
京子「料理はいつの間にやらテーブルの上に用意され、学校に行けば黒板にコツコツとチョークの音が響いて授業内容が書き表される」
京子「洗濯も洗濯カゴに入れておけばアイロンをかけたものが綺麗に畳み置かれるし、ヒトが消えたはずなのにミラクるんは毎週放送されている」
京子「まるで、見えないヒトが私を手助けしてくれているようで……それはそれで嬉しいんだけど」
京子「やっぱり誰もいないのはつらい。孤独はつらい。一人ぼっちはもう嫌だ……」
京子「そう思って死のうとしたときもあったけれど、そんな時すら見えないヒトは私を邪魔するんだ」
京子「屋上から飛び降りようと思えば、見えない圧力に支えられ、どうしても飛び降りることができない」
京子「包丁で喉元を掻っ切ろうと思っても、包丁が私の手元に渡ることはない」
京子「結局、私はこの生き地獄を寿命が尽きるまで全うしなくてはならないんだ」
京子「だから、私はこの哀しい感情や辛い感情を捨てようと努めて――そうしているうちに感情そのものが取り払われたのか、全てがどうでもよくなった」
京子「結局私は、私自身の心に盲目になって生きることを選んだんだ」
―京子「結衣に盲目」・完―
お付き合いいただきありがとうございました
最初にクロスである旨を追記しておかずごめんなさい、UN-GOは割りと面白いので劇場版含めてオススメです
元スレ
結衣「設定温度は……20度でいいかな?」
京子「なんでもいいからはやくしてくれ!」
結衣「じゃあ3度で……」
京子「ごめんなさい、20度でお願いします!」
結衣「はいはい」ポチッ
京子「うおー、ストーブついた! 全然あったかくならん!」
結衣「そんなすぐに暖かくなるわけないだろ……」
京子「ダメだー! 気を紛らわすためにゲームでもしなきゃ死んでしまう!」
結衣「いっつもうちに来たらゲームばっかりやってるくせに」
京子「まあそうなんですけどね」
結衣「じゃあ、私はご飯つくるから、レベル上げておいてよ」
京子「ごはん!」
結衣「ボス戦は自分でやりたいからストーリー進めるなよー」
京子「了解であります、ご飯隊長!」
結衣「よろしい」
7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 03:03:18.41 ID:oxY/m9AF0
結衣「……さて、何をつくろうかな?」
京子「~♪」
結衣「京子ー、何たべたーい?」
京子「ラムレーズン!」
結衣「……それ以外で」
京子「じゃあ麻婆豆腐!」
結衣「りょうかーい」
結衣「麻婆豆腐ならあまり時間もかからないし、すぐに……」ガサゴソ
結衣「……って豆腐切らしてるや」
結衣「……京子ー、ちょっと私買い物行ってくるから」
京子「行ってらー」
結衣(着いて来ようとしない……よし)
結衣「ストーリー絶対進めるなよー」
京子「んー」
10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 03:09:27.52 ID:oxY/m9AF0
結衣「えーっと、豆腐は……っと」
結衣「あった。ついでにラムレーズンも補充しておくか。アイスコーナー、アイスコーナーは……」
結衣「……あれ?」
綾乃「!? ふ、ふふふふふ船見さん!?」
結衣「そんなに動揺しなくても……。こんなところで、奇遇だね」
綾乃「そ、そそそうね、奇遇ね!」
結衣「こんなに寒いのにアイス買いにくるなんて、意外な一面もあるんだね」
綾乃「船見さんこそ、真冬にアイスなんて風邪引くわよ!」
結衣「ああ、私は京子のためにラムレーズン買いにきたんだ」
綾乃「そ、そうなの~」
結衣「……あれっ、綾乃もラムレーズン食べるんだ」
綾乃「そ、そそそうなのよ! これは決して歳納京子を家に呼んで一緒に食べようだなんて魂胆は微塵もナイアガラなんだから!」
結衣「プッ」
12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 03:11:48.89 ID:oxY/m9AF0
綾乃「と、というわけで、それじゃあ船見さん! また!」ソソクサ
結衣「うん、また学校でね」
結衣「そうか。綾乃、京子を家に……ねぇ」
結衣「無駄なのに……別の意味で笑っちゃったよ」
結衣(そう、大丈夫。今のところは順調だ……)
14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 03:16:17.87 ID:oxY/m9AF0
その頃、結衣宅――
京子「しっかしレベル上げってつまんないなー」
京子「えいっ、結衣も買い物行ってるし先に進めちゃえ!」
ガサッ
京子「ビクゥ!? な、何っ!?」
結衣「……」ノソッ
京子「ゆ、結衣、これはちが……って結衣、押入れで何やってるの?」
結衣「……」タッ
京子「あ、おい、結衣って……ってトイレか」
京子「しかし結衣ったら、音も立てずに帰ってくるなんて忍びの者かよ……」
京子「……まあいいや、結衣がトイレ行ってる間に進めとこ」
17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 03:20:32.81 ID:oxY/m9AF0
ピンポーン
京子「およ、誰だろ?」
結衣「ただいま。開けて欲しいんだけど」
京子「えっ、結衣?」
結衣「はい」
京子「はいじゃなくて……」
結衣「うん。はいじゃなくて、開けてな」
京子「あっ、うん」ガチャッ
結衣「さっき綾乃に会ったよ」
京子「そ、そう。って言うかさっきトイレ行ったんじゃ……」
結衣「えっ、私は今帰って来たばっかりだけど……」
結衣(やばい、もしかすると――)
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 03:24:40.47 ID:oxY/m9AF0
結衣「なあ京子、もしかして家に誰かいたとか?」
京子「誰かも何も、さっき結衣押し入れから出てきてトイレ行ったよね……」
結衣「私が!?」
京子「うん、結衣が」
結衣(おかしい。なぜ京子はよりにもよって『私』を……)
結衣「ねえ、その京子が見た私ってのは……トイレから出てきた?」
京子「いや、トイレ行ったっきりだったと思うけど……。でも音も立てずに帰ってきて押入れに入ってたぐらいだから、隠密行動ぐらいはできるんじゃないの?」
結衣「隠密行動って……。まあ、とにかく私ちょっとトイレを見てくるから」
京子「もしかして心霊の類!? ここって心霊スポットだったりするの!?」
結衣「ねーよ」ガチャッ
結衣「……」バタン
京子「あっ、結衣にゃんトイレに入っちゃった……。言ってることおかしかったし、生理なのかな?」
23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 03:30:16.05 ID:oxY/m9AF0
結衣「……」ガチャッ
京子「およ、結衣。どうだった?」
結衣「トイレには誰もいなかったよ」
京子「なんだー、つまんないのー」
結衣「言い忘れてたけど、そもそもうちのトイレって今壊れてるから……」
京子「えっ、そうなの!? じゃあどうやってトイレすればいいのさ! この純情な乙女である歳納京子ちゃんにお漏らししろって言うのかー!」
結衣「誰が純情な乙女か。……部屋から出て一階に共用のトイレがあるから、そっちを使って」
京子「はーい」
結衣「ってことで、うちのトイレは使用禁止な」
京子「まあいざとなったらベランダですればいいしな」
結衣「ねーよ」
結衣(ふぅ、なんとか誤魔化しきれた……か?)
25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 03:38:36.90 ID:oxY/m9AF0
翌朝――
京子「ふぁ~、よく寝た気がする~」
結衣「あ、京子起きたんだ。おはよう」
京子「おはよう、結衣ぃ。今何時?」
結衣「今は9時40分ぐらいだよ。よく寝ていたね」
京子「そうかぁ~、9時40分かぁ~……ってすっげえ遅刻してるじゃん私達!」
結衣「えっ、遅刻? 学校行くつもりだったの?」
京子「行くつもりだったのって、そりゃあ行くよ! ……って、もしかして今日は土曜日だったり?」
結衣「ばりばり平日だが」
京子「うおい、早く支度しないと!」
結衣(なんで京子は学校なんかに行こうと……私は確かに……)
結衣「学校なんて行かなくてもいいんじゃないかな?」
京子「うおっ品行方正な結衣さんらしからぬ発言!」
28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 03:46:46.17 ID:oxY/m9AF0
結衣「ねえ、もう学校なんて一生行く必要ないでしょ?」
京子「結衣、無理した良い子ちゃんアピールがたたってついにおかしく……」
結衣「誰が無理した良い子ちゃんアピールか」
京子「とにかく、これ以上サボって宿題増やされた日には私死んじゃうから! 学校行ってきます!」バビューン
結衣「おいこら、パジャマのまま……って行っちゃった」
結衣「……」ガチャッ
結衣「……おいこら、どういうことだ。私は確かにあいつに――」
結衣「……きちんと効いてはいるはずだって? なら、どうして――」
結衣「クソッ、もういい。私も京子を追う!」タッ
29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 03:55:18.69 ID:oxY/m9AF0
学校、玄関付近――
京子「ゼハーッ、ゼハーッ やっと学校に……」
「あら、歳納さん。今日は一段と遅かったなあ。二時間目の体育は雪合戦やるらしいから外で――」
京子「結衣!? 着くのはやっ!」
結衣「えっ、ゆ、結衣? 船見さんのことか?」
京子「船見さんのことかも何も、着くの早すぎだよ! どんな裏技使ったのさ!」
結衣「どんな裏技って……私は普通に8時頃に家を……」
京子「8時頃!? ちょっと待って、私が家出た時って結衣まだ家に残ってたよね!? 学校行く必要あるのだのなんだの言って!」
結衣「な、何を言って――」
京子「あー、もう結衣ってばなんなんだよー! ……まあいいや、早く雪合戦しに行こうよ!」
結衣「……その前に、パジャマは流石にどうかと」
京子「あらやだ。京子ちゃん恥ずかしい!」
結衣「というか寒くないん?」
京子「そう言われると凄く寒い気がする、教室行って着替えてくる!」ダッ
結衣「あっ、歳納さーん!」
32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 04:04:59.38 ID:oxY/m9AF0
京子「……どういうことなの?」
結衣「歳納京子ー! 遅刻は罰金バッキンガムなんだから!」
結衣「歳納さん、いくら急いで来たからってパジャマは……クスッ」
結衣「あっ、次体育だから急いだ方がいいよ。歳納さん」
京子「結衣が、いっぱい……」
結衣「結衣? ああ、そう言えば船見さんも遅いわね。船見さんも罰金バッキンガムよ!」
京子「いやあの、何をツッコんだらいいか……」
ガラッ
結衣「はぁっ……はぁっ……やっと追い付いた……」
京子「また結衣がやってきた!」
結衣「はぁっ……えっ、『また』って何?」
京子「だ、だってこんなにいっぱい結衣が……」
結衣「はぁ?」
34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 04:10:11.61 ID:oxY/m9AF0
結衣「船見さん、遅刻は厳禁金閣寺よ!」
結衣「ブフッ、厳禁金閣寺って……」
京子「結衣が結衣のギャグで笑ってる……」
結衣「とにかく船見さんも歳納さんも、次は外で体育なんだから早く準備しなさいよっ!」
結衣「あー、次の体育は外なんだ。ありがとね、綾乃」
結衣「副会長として当然よ!」
36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 04:12:32.69 ID:oxY/m9AF0
京子「ま、待って! 綾乃がどこにいるの!?」
結衣「えっ」
結衣「私はここにいるけれど……」
京子「いや、それは結衣じゃん!」
結衣「わ、私は杉浦綾乃よ!」
京子「どういうことなんだぁ~!」
結衣「こっちが聞きたいぐらいよ……」
結衣「……」
結衣(これはまさか……)
結衣「ごめん京子、体育は先に行ってて!」ダッ
結衣「あ、ちょっと船見さん! 待ちなさい!」
京子「なんだこれ! なんだこれ!」
37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 04:18:02.06 ID:oxY/m9AF0
結衣「おおよその見当はついたけど……だとしたら、これはマズイぞ……」タッタッタッ
結衣「一刻も早く帰ってあいつと合流しなきゃ――」タッタッタッ
「……」
結衣「ってお前! なんで家から出て……まあいいや。今は都合がいい」
「……」
結衣「人目につくのは好ましくない。屋上に行こうか」
「……」
41: 三人称滅茶苦茶だったので訂正 2011/12/10(土) 04:25:55.91 ID:oxY/m9AF0
その頃、教室では――
京子「結衣ぃ、なんなんだよこれ! 綾乃は? 千歳は? みんなはどこに行っちゃったんだよぉ!」
綾乃「お、落ち着きなさい、歳納京子! 私ならここにいるわ! 千歳だってグラウンドに――」
京子「結衣しかいないじゃん! 今私が話してるのも結衣じゃん!」
綾乃「……」
綾乃(歳納京子には、私が船見さんに見えているというの? いや、それどころか――)
綾乃「ね、ねえ、歳納京子」
京子「なにさ!」
綾乃「あそこにいるのは、誰?」ユビサシッ
京子「結衣!」
綾乃「……じゃあ、あそこには?」ヒトサシッ
京子「結衣!」
綾乃「……それじゃあ、歳納京子の前の机に座っているのは?」
京子「結衣だよ! みんな結衣! もうやだよ! 結衣は好きだけど、結衣だけじゃやだよ!」
綾乃(なるほど。歳納京子の目に映る人は皆船見さんに見えている、ということね)
43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 04:35:27.16 ID:oxY/m9AF0
綾乃「……ねえ、歳納京子。西垣先生のつくった薬とか、飲んだりしなかったかしら?」
京子「飲むわけないよ! 西垣ちゃんの薬なんて爆発物と一緒だもん、身体に取り込んだら死んじゃうよ!」
綾乃「そ、そりゃそうよねえ……」
綾乃(そういえば昨日スーパーで会った船見さんの口ぶりからすると、歳納京子は船見さんの家に……)
綾乃「……それじゃあ誰かに薬を飲まされたりしなかった? 例えば、その、船見さんからとか」
京子「えっ、結衣わたしになんか薬飲ませたの!?」
綾乃「私は飲ませてないわよ! 今は船見さんの……あっ、昨日家に泊まったときに、何かおかしなことはなかったかって聞いているのだけれど」
京子「あっ! 結衣、忍者みたいに音も立てずに買い物から帰ってきたかと思ったらトイレに行って、で、今度はトイレに行ったかと思ったらまた外から帰ってきたよね。あれなんだったのさ?」
綾乃(!? どういうことなの……。取り敢えず、船見さんに色々問いただす必要がありそうね)
京子「もう、分かんないことだらけだよっ!」
綾乃「……その分からないこと、解明してみたいと思わない?」
京子「結衣?」
綾乃「船見さんを……いえ、昨日あなたを泊めた船見さんを探しに行きましょう。彼女は何か知ってるはずよ」
京子「あ~~、もーわけわからん! なるようになれっ!」
46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 04:42:02.30 ID:oxY/m9AF0
屋上――
結衣「さっきから奇妙なことばかりだ」
結衣「私は確かに、京子が私の家から二度と出ることのないよう取り計らったし」
結衣「それなのに京子は私の家から出て学校に行った挙句、『結衣がいっぱいる』などと分けのわからないことを口にする」
結衣「いや、実に奇妙だ。……まあ、主人の紡いだ言葉を現実のものとして錯覚させてしまう、だなんて現実離れも甚だしい能力を持ったお前が一番奇妙なんだけど」
結衣「なあ、別天王」
別天王「……」
49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 05:02:03.33 ID:oxY/m9AF0
綾乃「……なるほど、どうやらその子の能力で歳納京子に影響を与えたってわけね」
結衣「!? 綾乃!? どうしてここに!?」
綾乃「どうしても何も、昨日歳納京子が昨日船見さんの家に泊まって、それからこんなことになったんじゃあ、船見さんを真っ先に疑ってかかるのは当然よ!」
結衣「グッ……」
結衣(そうか、昨日綾乃に出会したから……クソッ、解決を急かずに一旦家に戻って話を進めるべきだったか)
京子「結衣に結衣。これ、どうなってるのさ? 私こわいよ……」
結衣(京子はああ言っているが……ここで逃亡を図るなら、元に戻すべきでは――)
綾乃「心配ないわ、歳納京子。すぐに全て元に戻るわ」
結衣「……」
綾乃「というわけで船見さん、何が言いたいかは分かるわよね」
結衣「……分からないな」
綾乃「!?」
結衣「そもそも、何だ? 私が昨日京子を家に泊めたからって、それと京子がおかしくなったことの何が関係あるって言うのさ?」
綾乃「だって昨日は歳納京子、何も変わりがなかったもの! 昨日船見さんの家に泊まったときに、その別天王とかいう子の能力を使って何かしたとしか思えナイアガラよ!」
52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 05:16:33.52 ID:oxY/m9AF0
結衣「プッ……クッ……クハハハハ!」
綾乃「な、何よ!?」
結衣「今日の綾乃はギャグだけじゃなくて発言も面白おかしいな!」
綾乃「なんですって!?」
結衣「だって、変じゃん。仮に私が『みんなが私に見えるようになれ』とでも言ったとして、それで私に何のメリットがあるのさ?」
綾乃「……」
結衣「私には何も得るものがないよね、そんなことを叶えたところで」
綾乃(確かに、歳納京子をそんな催眠状態に陥れるメリットは、船見さんにはない)
綾乃「で、でも、それじゃあなんで歳納京子にはみんなが船見さんに見えているのよ! 船見さんに何かしらの関係があるとしか思えないわ!」
結衣「それは言いがかりだよ」
綾乃「そ、それにさっきあなたは『京子が私の家から二度と出ることのないように取り計らった』って……やっぱり歳納京子に何かしたんじゃないのかしら?」
結衣「ああ、あれは言葉のあやだよ。ただ単に、京子が家から出ないようにわざとゲームに夢中にさせたり、朝になっても起こさなかったりしただけの話さ」
京子「あれやっぱりわざとだったんだ! 結衣にゃんひどい!」
結衣「ごめんごめん」
綾乃(ここに歳納京子を連れてきた以上、船見さんの歳納京子に関する発言に矛盾があれば何かしら歳納京子が指摘するはずだけれど……反応を見る限り嘘は言っていない。……言葉の、あや――!?)
53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 05:24:22.54 ID:oxY/m9AF0
結衣「綾乃、そろそろ授業に向かっていいかい?」
綾乃「……船見さん、やっぱりあなたは別天王の能力で歳納京子に催眠をかけたのよ」
結衣「だから、私にはそんなことするメリットないってば」
綾乃「……確かに、歳納京子がみんなを船見さんとして認識する――そんな催眠をかけるメリットはないわね」
結衣「でしょ。私は本当に無実なんだって」
綾乃「だけど、本来かけようとした催眠は別のものだったとしたら?」
結衣「……何が言いたい?」
綾乃「出てきていいわよ、因果」
因果「へへっ、やっと御魂が食べられるんだね」
結衣「誰だっ!?」
京子「また結衣が出てきた!」
綾乃「紹介するわ。因果――私のパートナー、そして今から真実を暴いてくれるのも、こいつよ」
因果「真実を暴くのは綾乃だろ? 僕は真実を“喰う”だけだ」
綾乃「そうだったわね」
55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 05:32:16.77 ID:oxY/m9AF0
因果「――それで、私は何を質問すればいい?」
結衣「ひ、ヒィ!? 身体が変成した!? バ、バケモノぉ!」
綾乃「もちろん、決まっているわ。船見さんが何と言って別天王の能力で歳納京子に暗示をかけたか――船見さんに問い質して頂戴」
因果「了解」
結衣「く、来るな! 私に何をする気だ、やめろっ、この!」
因果「私は何もしない。ただ、答えてもらうだけよ」
結衣「ヒ、ヒィ! やめろ! 近寄るな!」
因果「さあ、答えて。お前は何と言って歳納京子に暗示をかけた?」
結衣「わ、私は京子に暗示なんか――」
因果「無駄だ。人は私の質問に、一回だけならなんでも答えてしまう」
結衣「グァァアアアアアア!!」ドサッ
57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 05:43:49.30 ID:oxY/m9AF0
結衣「……私は、別天王を使って歳納京子を催眠状態に陥れた」
結衣「……押入れに別天王を住まわせ、歳納京子を家に連れ込み、電気ストーブを取り出すと言って押入れにはいって、別天王の元で言ったんだ」
結衣「……『京子には私のことしか目に映らない』と」
綾乃「なるほどね」
結衣「……京子を、私のものにしかたかった。京子が私だけを必要とするよう仕向けたかった」
綾乃「でも、失敗した。暗示の言葉が曖昧すぎた……まさに“言葉のあや”ってやつね」
結衣「……」
綾乃「当初は歳納京子が船見さんに依存しきり、船見さんの元を離れないようになる……そう想定していた」
結衣「……」
綾乃「でも、実際にはその暗示はあまりにも言葉通りにかかってしまった。結果として、歳納京子は、目に映る人が全て船見さんに見えるようになってしまった」
結衣「……その通りだ」
京子「じゃ、じゃあ、私が結衣ん家で見た、結衣が買い物から帰ってくる前に押入れから出てきた結衣は」
綾乃「別天王が船見さんに見えていたというだけの話ね」
京子「な、なるほど……」
59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 05:54:36.69 ID:oxY/m9AF0
綾乃「……さて、船見さん」
結衣「……真相が分かったからと言って、どうする? 別天王はこっちにいるんだぞ? 京子を治すことができるのは私だけだ!」
京子「結衣……」
結衣「京子、私の部屋から二度と出ないと。一生私の部屋で私のペットとして暮らすと誓え。そうすれば元に戻してやる」
京子「そ、そんな……そんなのひどいよっ!」
綾乃「船見さん、あなた……最低ね」
結衣「なんとでも言え。別天王がこっちにある以上、強気に出るのは当然だ」
綾乃「『別天王はこっちにある』……ねぇ」
結衣「……?」
綾乃「因果、確か因果ってあの別天王とかいうのに封印されていたのよね?」
因果「うん、あいつは神だから。正直、あいつに関わるのはやめた方がいいよ」
62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 06:01:34.88 ID:oxY/m9AF0
綾乃「……ねえ、別天王。あなたが封印した因果は、今こうして封印を放たれて地上を闊歩しているわけだけど――あなた、それでいいのかしら?」
別天王「……」
綾乃「因果は人の御魂を喰らう。そんな存在が地上で暴れ回ったならば、神のあなたとしては黙って見過ごせないはず……」
因果「お、おい、綾乃!」
別天王「……」
綾乃「あなた、私の側につかない? そうすればいつでも因果を監視していられるわよ。私は『因果に真実を喰わせる』という契約をしている以上、因果と行動を共にしなくてはいけないの」
別天王「……」
因果「綾乃、やめろよ! 別天王とは関わらない方がいいってさっき――」
綾乃「別天王の力は上手くすれば御魂を喰う一助となる……そうは思わない? 第一、あなたが好き勝手に生者の御魂を食べたりしなきゃ別天王もあなたに危害を加えたりはしないわよ」
因果「それはそうかもしれないけど……」
結衣「別天王、そんな誘いに乗らないよな!? 別天王は私と京子の恋を手助けしてくれるんだよなあ、なあ!?」
別天王「……」
別天王「……ごめんなさい」タッタッタッ
結衣「なッ!?」
綾乃「どうやら、あなたの恋路は“有害”と判断されたようね」
63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 06:07:24.58 ID:oxY/m9AF0
結衣「クソぉ……クソぉおお!!」
京子「結衣……」
綾乃「……」
京子「あのねっ、綾乃っ――」
綾乃「船見さん、あなたは罰を受けなくてはならない。分かっているわね」
結衣「……何をする気だ?」
綾乃「簡単なことよ。これで全てが解決するし、もう歳納京子が危険に曝されることもなくなる」
京子「ちょ、ちょっと待って! 結衣もきっと反省してるし、とりあえず私を治してくれれば、それで私はいいかなー……なんて」
結衣「京子……」
京子「えへへ」
綾乃「……」
京子「綾乃――」
綾乃「ダメよ、船見さんは何をしでかすか分からない。今回の一件で、それがよく分かった」
京子「そんな!」
綾乃(それに船見さんがいれば、船見さんが手を下すまでもなく歳納京子はきっと――)
64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 06:11:27.04 ID:oxY/m9AF0
綾乃「別天王。あなたの主として、あなたに能力を行使してもらうわ」
別天王「……」
京子「綾乃っ、ダメッ!!」
綾乃「歳納京子は、船見結衣を認識できない」
結衣「綾乃、それは――」
別天王「ズォォオオオオオオオオ」
京子「ひッ、やめて、いやぁぁあああああああああ!!」
67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 06:18:47.86 ID:oxY/m9AF0
京子「……なんだよ。神だかなんだか分からないけど」
京子「さっきは結衣しか見えなくなったと思ったら、今度は結衣のことが見えなくなるだなんて……」
京子「いい加減にしてよ、私は普通でいいのに! 普通に結衣が一人だけいて、もちろん綾乃も一人だけいて……みんなが一人ずつ居てくれればそれでいいのに!」
京子「綾乃、全てを元に戻して。じゃなきゃ私、綾乃のことを嫌いになっちゃうかも」
京子「……綾乃? 綾乃!?」
京子「綾乃、どこにいったのさ! 返事してよ! 綾乃ぉ!」
京子「あれ、そう言えばさっきいた別天王とか呼ばれてた結衣や、因果とか呼ばれてた結衣は?」
京子「ねえ、みんなどこにいったの!? 私を元に戻して! 私っ、ぐすっ、こんな世界、生きていけないよぉ……」
京子「ねぇ。みんなぁ……ひっぐ……何か言ってよぉ……」
68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 06:23:17.49 ID:oxY/m9AF0
綾乃「……船見さんには暫く反省してもらうわ」
結衣「綾乃……なんてことをしてくれたんだ……」
綾乃「あなたの自業自得じゃないの」
結衣「違う、そうじゃない……」
京子「……なんだよ。神だかなんだか分からないけど」
京子「さっきは結衣しか見えなくなったと思ったら、今度は結衣のことが見えなくなるだなんて……」
京子「いい加減にしてよ、私は普通でいいのに! 普通に結衣が一人だけいて、もちろん綾乃も一人だけいて……みんなが一人ずつ居てくれればそれでいいのに!」
綾乃「と、歳納京子まで! 船見さんがいる限り、“普通”だなんてありえないのよ!」
京子「綾乃、全てを元に戻して。じゃなきゃ私、綾乃のことを嫌いになっちゃうかも」
綾乃「そ、そんな! 歳納京子、私はあなたのためを思って……」
京子「……綾乃? 綾乃!?」
京子「綾乃、どこにいったのさ! 返事してよ! 綾乃ぉ!」
綾乃「歳納……京子?」
京子「あれ、そう言えばさっきいた別天王とか呼ばれてた結衣や、因果とか呼ばれてた結衣は?」
綾乃「因果も別天王もここに――ハッ!」
71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 06:29:01.30 ID:oxY/m9AF0
結衣「……やっと気付いた? 京子は全ての人間を私として見ていたから、『船見結衣を認識できない』という暗示が上書きされることによって……」
因果「なるほど、結局誰も認識できなくなってしまったってわけだね」
綾乃「そん……な……」
京子「ねえ、みんなどこにいったの!? 私を元に戻して! 私っ、ぐすっ、こんな世界、生きていけないよぉ……」
綾乃「と、歳納京子! ごめんなさい、今すぐ元に戻してあげるわ! べ、別天王、頼むわよ!?」
別天王「……」
綾乃「歳納京子は人をその人そのものとして認識する」
別天王「……」
綾乃「ちょ、ちょっと、別天王! 能力を使ってよ! じゃなきゃ歳納京子が!」
結衣「無駄だよ」
綾乃「なんで、どうしてよ!」
結衣「別天王は、声を媒介して催眠をかけるんだ。つまり誰も人を認識できない今の京子に、別天王による暗示は……」
綾乃「そんな……」
京子「ねぇ。みんなぁ……ひっぐ……何か言ってよぉ……」
74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 06:43:35.21 ID:oxY/m9AF0
京子「その日以来、私の周りからは全てのヒトが消えた」
京子「代わりに、自然が私を手助けしてくれるようになった」
京子「料理はいつの間にやらテーブルの上に用意され、学校に行けば黒板にコツコツとチョークの音が響いて授業内容が書き表される」
京子「洗濯も洗濯カゴに入れておけばアイロンをかけたものが綺麗に畳み置かれるし、ヒトが消えたはずなのにミラクるんは毎週放送されている」
京子「まるで、見えないヒトが私を手助けしてくれているようで……それはそれで嬉しいんだけど」
京子「やっぱり誰もいないのはつらい。孤独はつらい。一人ぼっちはもう嫌だ……」
京子「そう思って死のうとしたときもあったけれど、そんな時すら見えないヒトは私を邪魔するんだ」
京子「屋上から飛び降りようと思えば、見えない圧力に支えられ、どうしても飛び降りることができない」
京子「包丁で喉元を掻っ切ろうと思っても、包丁が私の手元に渡ることはない」
京子「結局、私はこの生き地獄を寿命が尽きるまで全うしなくてはならないんだ」
京子「だから、私はこの哀しい感情や辛い感情を捨てようと努めて――そうしているうちに感情そのものが取り払われたのか、全てがどうでもよくなった」
京子「結局私は、私自身の心に盲目になって生きることを選んだんだ」
―京子「結衣に盲目」・完―
75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/12/10(土) 06:45:13.24 ID:oxY/m9AF0
お付き合いいただきありがとうございました
最初にクロスである旨を追記しておかずごめんなさい、UN-GOは割りと面白いので劇場版含めてオススメです
京子「結衣に盲目」