1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 07:54:14.20 ID:xEaPwzhS0
従妹「早く一緒にお風呂に入ろっ」
男「おう」
母親「はぁ、また始まった……」
従妹「ん?」
母親「従妹ちゃん、悪いこと言わないから、男と入るのは止めなさい」
従妹「えー何でー?」
母親「何でって……従妹ちゃんも来年から中学生よ?」
従妹「うんっ、でもそれとこれは別だもんっ」
母親「……うぅ……なんて無垢な子なの……?」
母親「男、あんたがしっかりしなきゃ駄目よっ」
男「俺にどうしろって言うんだ……断ればいいのか?」
従妹「それは駄目だもんっ。にぃにぃと一緒に入るっ」
母親「従妹ちゃん……」
3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 08:29:41.43 ID:xEaPwzhS0
──現在
母親「……あんた、昼間からだらっとしないっ」
男「うるせーな……久しぶりの実家なんだからいいだろ?」
母親「大学から課題とか用意されてるんじゃないの?」
男「まだ休みは始まったばっかりだ。焦る必要はない」
母親「もうっ、だったら家の手伝いでもしなさい」
男「あーもうっ! 少しぐらい静かにしろって!」
母親「テレビ消すっ!」
男「うわっ! 今、いいとこだったのに……」
母親「ダウンタウンは下品だから、母さん嫌いよ」
男「知らねえよ……」
母親「そうだ、今日から従妹ちゃん我が家で預かることになったから」
男「……うん、あー従妹ね」
男「って、えっ!?」
母親「昨日、佐智子さんから電話がかかってきて、『よろしくっ!』って」
男「いつもながら豪快な人だな……それでオーケしたわけか」
母親「だって仕方ないじゃない。それに、従妹ちゃんとも久しぶりだし」
男「まあ……なんだかんだ言って何年も会ってないからな」
母親「そういうことだから、あんた頼むわよ」
男「はっ? 頼むって?」
母親「ほら、昔、あの子あんたに懐いてたじゃない。だから、色々面倒は任せたわ」
男「いや、ちょっと待て。あの頃はあいつも小さかったけど、今はもうそんな歳じゃないだろ?」
母親「……そうね、ガン黒ギャル娘になってたりするかも……」
男「あいつに限ってそんなことは……って、あいつ、もう高校生か」
母親「モデルの佐智子さんの血を受け継いでるから、相当美人さんになってると思うわよ」
ピンポーン。
母親「噂をしてたら、なんのそのってね」
男「えっ? もう来たわけ?」
母親「昼のまでには来るって言ってたから、そうじゃない?」
男「ちょ、ちょっと待てよ……まだ心の準備が……」
母親「はいはい、そんな時間はないわよ。ほら、二人で出迎えましょう」
男「……お、俺は遠慮しとくよっ……」
母親「今更になって、なに恥ずかしがってんの。待たせちゃ悪いから急ぐわよっ」
男「ひ、引っ張るなっ、押すなっ! 俺はいいって言ってんだろっ!」
母親「ハーイ、今、開けるわねーっ」
ガチャ……。
従妹「……あっ、どうも……」
母親「…………」
男「…………」
母親「……い、従妹ちゃん……?」
従妹「そ、そうです。お久しぶりですっ……」
男(うわぁ……めっちゃ美人になってる……)
母親「一瞬、芸能人が来たのかと思ったわ……これまた綺麗になっちゃってっ」
従妹「えっ……いや、そんなことないです」
母親「いや、とっても可愛いわっ。ほら、男なんて、驚きのあまり放心状態よ」
男「ちょっ、ババア余計なこと言ってんじゃねえよっ」
じぃー。
男(何だこの視線……見られてる……確実に見られてるっ!)
従妹「……にぃにぃ?」
男「お、おうっ……」
従妹「…………」
男「ひ、久しぶりだなっ! 元気してたかっ!」
従妹「……にぃにぃだぁ……」
男「えっ?」
従妹「にぃにぃっ!」
たたたたっ……ぽんっ!
男「うおっ!」
従妹「会いたかったよぉっ、 にぃにぃ!」
男「おいっ、抱きつくなってっ……」
ぎゅっ。
従妹「やだっ! もう少しこうしてるもんっ!」
男「は、ははっ……」
母親「あらあら、お暑いコト」
従妹「この匂い……ほんとだぁ……にぃにぃだぁ……」
男「汗臭いからあんま嗅いでくれるな……汚いぞ?」
従妹「汚くなんてないもんっ、にぃにぃの匂いだもんっ」
男(しかし、身体は大きくなっても、全然変わってねぇな……)
……ぽよんっ。
男「……えっ?」
……ぽよんっ、ぽよんっ。
男(なんだこれ……ぽよんっ?)
従妹「にぃにぃ……」
男「あっ、うん……」
男(……ま、まさか……こ、これは……)
従妹「今日からよろしくお願いしますっ」
母親「いいわよ、そんに畏まらなくて」
男(……ぽよん……)
母親「佐智子さんはいつぐらいまで海外なの?」
従妹「多分、この月はずっと……」
母親「あら、結構忙しいのね。でも、学校が休みの間はずっとここにいていいから」
従妹「すみません、お世話になります」
男(……ぽよん……ぽよん……)
従妹「……ん?」
男「…………」
従妹「にぃにぃ、さっきからどうしたの?」
男「……あ、うん……」
男(昔と変わらない、あどけなさが残る表情)
男(にもかかわらず、ところどころに美人の風格が……)
男(そ、そして……こ、この……)
従妹「……?」
男(──なんなんだぁこの胸はああああああああっ! たゆんたゆんだぁっ!)
男「け、けしからんっ」
母親「……あれ、あんた鼻血出てるわよ」
従妹「……あ、ほんと……」
男「……ちょっとのぼせちゃったかな? てへっ!」
母親「…………」
母親「従妹ちゃんも着いたことだし、そろそろ買い物にでも行ってこようかしら」
従妹「あっ、私も行きますよっ」
母親「いいのいいの、あなたはここでゆっくりしてなさい」
従妹「で、でも……」
母親「ほら、積る話もあると思うし……ねっ?」
従妹「……は、はい……」
男(頬を赤らめてこっちを見ないでくれ……)
母親「ふふ、では行ってくるわ」
従妹「すみません、お手伝いできなくて……」
母親「そんなの気にしなくていいから。あと、男ちょっとこっちに来なさい」
男「はっ?」
母親「いいから、早くっ」
男「な、何だよ……」
母親「……この辺まで来れば向こうには聞こえないわね」
男「ババア、俺は買い物には行かんぞ」
母親「何、馬鹿な勘違いしてんのよこの子は」
男「だったら何だ、早く用件を言え」
母親「……従妹ちゃん、とても綺麗になったわね」
男「あっ? ……ま、まあ、そこそこだろ」
母親「とっても可愛いし、それに身長も伸びたわ」
男「……俺の方がまだ高いけどな」
母親「それに……発育いいし」
男「…………」
母親「あんた、さっきからあの子の胸ばっかり見てるでしょ」
男「なっ……み、見てねぇしっ」
母親「嘘おっしゃい。そういう視線には女は敏感なのよ」
母親「でも幸いなことに、あの子はまだそれに気付いてないわ」
母親「でもそれも時間の問題。だから気付かれる前に、やめなさい」
母親「さもないと、大好きなにぃにぃから変態の糞野郎に格下げよ」
男「糞野郎って……」
母親「それと、この際だからはっきり言っとくわ」
男「な、何だよ……」
母親「あんた、あの子に少しでも手を出したら……」
母親「──実の子でも殺すっ」
男「ひぃっ」
母親「……それでは、行ってくるわ」
男「…………」
男「……はぁ……」
従妹「あっ、にぃにぃ……って、あれ? 顔、真っ青だよ?」
男「ちょ、ちょっとな……」
従妹「それで、おばさん、何か言ってた?」
男「……ええと、仲良くしなさいとか、そんなところ」
従妹「あ、うん……」
男「ふぅ……とりあえず、お茶でも飲むか」
従妹「私、コップ持ってくるねっ」
男「お、おうっ」
男(くそ……なんか、気恥ずかしくてうまく会話できねぇな……)
男「…………」
従妹「…………」
ズズッ……。
従妹「……こうやって会うの、久しぶりだね」
男「そうだな、何年ぶりだろうな」
従妹「にぃにぃ、おばあちゃんのとこに顔出さないんだもん」
男「それは……確かに俺が悪かったかもな」
従妹「……変わったね、にぃにぃ」
男「そうか? もしかして、ちょっと格好良くなってたり?」
従妹「うん、前より格好いいよっ」
男「……あ、うん……」
男(なんだよ……調子狂うぜ……)
従妹「にぃにぃはもう大学生だよね。どう、新しいキャンパスライフは?」
男「思ってたほどのものじゃないけど、色々楽しいよ」
従妹「いいなぁ……早く私も大学に行きたい」
男「その前に厳しい受験戦争が待ってるからな」
従妹「やめてよぉー、そういうのいらない」
男「ははっ、ちなみにどこ目指してるんだ? もしや、東大とか言わねえよな?」
従妹「うんとね……にぃにぃと同じとこ」
男「……え」
従妹「私の頭じゃ、ちょっと難しいかもしれないけど、頑張るつもり」
従妹「そうすれば、にぃにぃが四年の時に私一年だよ。一緒に通えるねっ」
男「そ、そうか……」
従妹「……ねぇ、にぃにぃは、彼女いる?」
男「か、彼女?」
従妹「大学生になったし……それとも高校から……とか」
男「……残念なことにそういう相手はいないな」
従妹「ふーん、意外だぁ」
男「もしかして、彼氏でも出来たか?」
従妹「にぃにぃと同じ。私もいないよ」
男「そんなこと言っても、結構お誘いはあるだろ?」
従妹「うーん、でも、なんか違うんだよね」
従妹「好きだっ!っていう感情が生まれないっていうかなんていうか……難しい」
男「確かに、恋愛は難しいよな」
母親「てなわけで、夕飯よっ!」
従妹「わーいっ」
男「なんなんだ、その説明口調は……」
母親「今日は従妹ちゃんが手伝ってくれたから、結構早く出来たわ」
従妹「手伝いってよりも、明らかに邪魔だったと思います……」
母親「そんなことないわっ。ほら、男」
男「何だよ?」
母親「この中のどれかが従妹ちゃんが作ったハンバーグよ。ほら、好きなの選んで」
従妹「えっ……おばさん……」
男(見るからに一つ、形が崩れてるやつがあるな……)
男「……これにするわ」
従妹「にぃにぃ、でもそれ……」
男「いいんだよ、なんか旨そうだし。ほれ、お前も選べ」
従妹「うん……ありがと」
母親「いいわ、この初々しい感じ♪ なんか、娘が一人出来たみたいっ」
男「馬鹿言ってねぇで、早くご飯よそえよ」
母親「息子はこれだからね……もうやんなっちゃうわ」
『ただいまぁーっ!』
母親「あら、お父さん帰ってきたみたい」
男「え? もう親父帰ってきたの?」
父親「おっ、従妹ちゃん、久しぶりっ!」
従妹「どうも、お邪魔してます」
父親「母さんに聞いてたけど、ほんと別嬪さんになったねぇ……」
従妹「いえ……そんなことないです」
父親「はは、しかし、おぉーいい匂いがするなあ」
男「うわっ、変態だよ……」
父親「ち、違うわ、馬鹿息子っ、飯のいい匂いって意味だっ」
男「取り繕っても無駄だぜ」
父親「うるさい。母さん、さっそく私も食べたい」
母親「……ごめんなさい」
父親「へっ?」
母親「こんなに早く帰ってくるとは思わなくて、お父さんの分用意してないわ」
父親「あれ? 今日は従妹ちゃんも来たし、早く帰るって言わなかったっけ?」
母親「……ごめんなさい、完全に忘れてた」
男「くくっ、ざまあ」
父親「そ、そんな……」
従妹「あっ、私の分でよければお先に」
父親「いやいや、今日のメインは従妹ちゃんなんだから」
父親「おい男、お前の分を食わせろ」
男「は? 何でだよ」
母親「お父さん、それも無理よ……」
父親「何で? 先に食べちゃ駄目なのか?」
母親「男の分は今日は従妹ちゃんが作ったものなの」
父親「なにっ!? 従妹ちゃんが作っただとっ!?」
従妹「下手っぴなんです……すみません」
父親「いやいやっ! 従妹ちゃんの初手料理なんてっ! 逆にそれは食べたいっ!」
男「誰も初だとは言ってねぇよ」
父親「やかましいわっ! これは何としてもゲットしないとな」
母親「……お父さん」
従妹「…………」
父親「ん? どうした?」
母親「それは従妹ちゃんが男のために作ったの……だから」
父親「なあ、従妹ちゃん、おじさんが食べてもいいよね?」
男「ほんと話を聞かねぇオヤジだな……」
従妹「……え、ええと」
従妹「やっぱりそこは……にぃにぃに食べてもらいたいです……」
母親「ふふ、可愛い」
父親「よ、良かったぁ、にぃにぃって勿論、おじさんのことだよねっ」
母親「お父さん、悪あがきはよして下さい」
父親「いやっ! 嫌だっ! 俺は従妹ちゃんの手料理が食べたいっ!」
男「……もぐもぐ」
従妹「あっ……」
父親「ああああああああっ! この馬鹿息子おおおおっ!」
男「うん、結構おいしいぞっ」
従妹「ほ、ほんと?」
男「見た目はちょっと崩れてるけど、味は上出来だぜ」
従妹「や、やったぁ……」
父親「そ、そんなぁ……くっ……くそぉっ……」
男「はぁ……ほんと糞親父には困ったもんだぜ……」
男「……しかし、従妹……可愛くなってたよな……」
男「しかも……きょ、巨乳なんて……」
男(抱きつかれた時、柔らかかったなぁ……)
コンコン。
男「ご、ごほんっ」
従妹『にぃにぃ、入ってもいい?』
男「あ、うん……」
ガチャ。
従妹「うわぁー昔と全然変わってないねー」
男「男の部屋なんてみんなそんなもんだ」
男「それで、一体どうしたんだ?」
従妹「うん、おばさんがお風呂湧いたよーって」
男「あーそういうこと。分かった、今から入るわ」
従妹「うん、じゃあ私も用意してくるね」
男「おうっ、それじゃ」
従妹「うんっ、先入ってて」
ガチャ。
男「……ふむ、一番風呂か」
男「…………」
男「……って、あれ? 私も用意……? 先入ってて……?」
男「ま、まさか、嘘だろ……?」
たたたたたたっ。
男「おい、ちょっと待てっ!」
従妹「え? 何、どうしたの?」
男「お前、もしかして、俺と一緒に風呂入るつもりじゃねぇよな?」
従妹「ははっ、にぃにぃ、冗談キツい」
男「そ、そうだよな……俺も早とちりして馬鹿だな……」
従妹「そうだよー、一緒に入るに決まってるじゃんっ」
男「決まってるよなっ……って、ええええええええっ!」
従妹「何驚いてるの? 昔も一緒に入ってたよね?」
男「いや、それは昔の話であって……今は、その、身体も大きくなったし……」
従妹「私は気にしないよ?」
男「俺が気にするよっ! この歳で一緒とか、そんな話聞いたこともねぇ!」
母親「……そんなことが」
男「この俺も、まさかの汗だくだぜ」
母親「あの子、危ないわね……まだ無垢なのかしら」
男「分からんが、『にぃにぃ、何言ってんの?』みたいな顔はされた」
母親「とりあえず、あんたを褒めとくわ。よく我慢したわね」
男「当然だろっ! そんな……あ、あの……」
母親「大きいおっぱいみたら、冷静でいられないと」
男「そうそう、大きなおっぱいが……って、誘導尋問やめろっ!」
母親「うーん、私からも一応言っとくわ。多分、気休めにもならないと思うけど」
男「そ、そんな……このままじゃ、時間の問題だぞ……」
母親「急に入ってこられたりしたら、どうしようもないものね」
男「頑張れ、俺……頑張れ、俺の理性……」
コンコン。
男(くっ……ついに来たか……)
従妹『にぃにぃ、わたしー』
男「お、おう、今開ける……」
ガチャ。
従妹「……で、分かってるよね?」
男「あ、ああ」
従妹「久しぶりに一緒にお風呂に入るの楽しみにしてたのに……」
従妹「にぃにぃが、どうしてもっ!って言うから、やめたんだよ?」
男「ご、ごめん……」
従妹「取引条件……きちんと、覚えてる?」
妹「……風呂に一緒に入らない代わりに?」
男「何でも言うことを一つ聞く……だろ?」
従妹「うん、正解っ」
従妹「さーて、何してもらおうっかなぁ♪」
男「お、お手柔らかに頼むよ……」
従妹「どうかなぁー、うーん」
男「……何すればいい?」
従妹「…………」
じぃー。
男「ん?」
男(なんだ……? 俺の顔見て……って、あれ、下の方……?)
従妹「……にぃにぃって彼女いないんだよね」
男「ああ、いないけど」
従妹「……ふーん」
男「な、何だよ……今日、聞いただろ……?」
従妹「私もー、彼氏いないんだー」
男「いや、だから、それも聞いたって……」
従妹「でもね……」
男「え?」
従妹「恋愛に興味がないってわけじゃないの。色々、友達の話とか聞くし」
男「そ、そうなのか……」
従妹「それでね……私も少しだけ経験してみたいっていうか……」
男(……この視線……ま、まさか……)
従妹「……にぃにぃ、キス……してみない?」
男「…………」
男(うおおぉぉぉぉぉっ! やはりぃぃぃぃぃこの流れかぁぁぁぁぁ!)
従妹「ねっ? ちょっとだけ経験してみようよっ」
男「い、いや……ちょっと待って……」
従妹「ほら、にぃにぃも今は彼女さんいないみたいだし、私もフリーだし」
従妹「誰も困らないよ、ねっ? ノープロブレムっ」
男「問題ありまくりだよ……」
従妹「にぃにぃ、もしかして……約束破るの?」
男「何でもするとは言ったが……それは、ちょっとさ……」
従妹「……嘘つき……」
男「うっ……」
従妹「ねっ? ほんの少しだけだからっ」
男「……うぅ……で、でも……」
従妹「家族がチュッってやる感じだよっ、よくあるでしょっ?」
男「……た、確かに家族同士なら……」
男(妹が兄にキスするようなもんだ……な、何の問題もなな、ないかなっ)
従妹「……ん」
男「え……」
従妹「んんっ!」
男(目瞑って唇を突き出してるっていうことは……そ、そういうことなのかっ!?)
男「まさか……お、俺からいくのっ?」
従妹「……ん」
男「……ええ、ええと……ちょっ、ちょっと待って……心の準備が……」
従妹「……にぃにぃ?」
男「うっ……」
男(駄目だっ……男なら覚悟を決めろっ! ここは、いくしかないっ)
男「……っ」
男(で、でも、このままいくと鼻がぶつかっちまうぞ? ど、どうすれば……)
従妹「……早くぅ……」
男(ちょっと顔を横にずらして……)
男(うおおおっ!)
ちゅっ。
従妹「……ん」
男「……ん」
男(うわぁぁ……やべぇ……唇やわらけぇよぉ……)
男(でも、これいつまで続ければ……っ)
男「……んん」
従妹「……ん」
男(息が……息が……も、もう限界……)
男「……ふっ……」
従妹「……あっ」
男「はぁーっはぁっーはぁっ!」
従妹「……ど、どうしたの?」
男「い、息……さ、酸素が足りない……お前は、大丈夫かっ?」
従妹「え? 鼻で息してたけど」
男「あっ……そうか……」
男(……俺は、なんて馬鹿なんだ……)
従妹「しかし……ね?」
男「……ど、どうした?」
従妹「初めてのキス……にぃにぃとしちゃったっ」
男「……う、うん」
男(実は、俺も初めてだ……)
従妹「まだ、胸ドキドキいってるよ……」
男「…………」
従妹「にぃにぃもドキドキしてる?」
男「お、おう……」
従妹「どれどれ……」
ぴたっ……。
男「ちょ、ちょっとやめろってっ……」
男(こいつ……俺の胸に頭を寄せきたよ……)
従妹「ほんとだぁ……ドキドキいってる」
男「わかったなら、も、もういいだろっ」
従妹「うん……」
男「……はぁはぁ……」
従妹「ほら、にぃにぃも確認してみて」
男「えっ……」
従妹「私の胸の音……ね?」
男「……いい、いいよっ……」
従妹「いいからっ」
ぎゅっ。
従妹「どう? 心臓がドクンドクンいってるでしょ?」
男「うわあ……」
男(お、おっぱいっ! 顔に当たってるっ、おっぱいぃぃっ!)
従妹「どう、聞こえる?」
ぽよんっ……。
男「う、うん……」
男(や、柔らかい……な、何なんだこれ……)
従妹「ドクンドクンって」
ぽよんっぽよんっ……。
男「う、ん……」
男(……駄目だ……これは、やばいぃ……やわらか過ぎるぞぉ……)
従妹「すごいね……身体って」
ぽよんっぽよんっぽよんっ……。
男「す、凄いな……」
男(ああぁぁ……もう、だめぇ……たゆんたゆんだぁぁ……)
従妹「じゃあね、にぃにぃ」
男「…………あ、ああ」
従妹「今日は、ありがとね。おやすみっ」
ガチャ……。
男「…………」
男「……あれ……」
男「……俺……キス」
男「従妹と……キスしちゃったんだよなぁ……」
男「……それで……」
男「……ああ」
男「や、柔らかかったぁ……」
男(……駄目だ……もう今日は寝よう……)
男(おやすみ、なさい……)
トゥルトゥルトゥル……。
従妹「にぃにぃ、携帯鳴ってる」
男「……あ、ほんとだ」
男「もしもし……」
……………。
従妹「何の電話だったの?」
男「いや……今から大学来いって……」
従妹「え? にぃにぃの大学?」
男「サークルの先輩が、俺に書いてもらいたい書類があるんだって」
従妹「それじゃあ、今から行くの?」
男「ああ、めんどくさいけど、そうなる」
従妹「ふーん……なら、私もついてっていい?」
男「え?」
従妹「うわぁ……ここがにぃにぃの大学かぁ」
男「そんなに綺麗なもんじゃないだろ」
従妹「ううんっ、しかも、高校に比べるとでっかいっ」
男「そうだなぁ、キャンパスは結構広いほうかも」
従妹「早く中に入ろっ! でも、私入っても大丈夫かな?」
男「全然大丈夫。高校とは違って、誰でも入れるのが大学だからな」
とことことこ。
従妹「道行く女の人……みんな、綺麗だね」
男「いや……」
男(お前の方が何倍も綺麗だろ……)
従妹「いいなぁ……早く私も大学生になりたい」
男「焦らなくても、すぐになれるさ」
ガチャ……。
男「おはようっす」
先輩「あっ、男くん。急に呼び出して悪いね」
男「いや、全然構わないですよ」
先輩「今度の学園祭に必要な書類があって、本人に書いてもらわないと駄目なんだ」
男「あー、そういえばそんなこと言ってましたね」
先輩「これがめんどくさくて……とりあえず、その席に座って……」
先輩「って……あ、あれ?」
従妹「……にぃにぃ?」
男「そうだ先輩、この子……」
先輩「……えっ……なにこれ……か、可愛いすぎる……」
男「先輩?」
先輩「お、男君っ、この子はっ!」
男「あ、はい……」
男(どんな女の告白にも動じない先輩が……なんだこの慌てぶりは……)
従妹「…………」
先輩「芸能人の子かっ? ちょっ、ちょっと紹介してくれっ」
男「いや、実は家のしんせ……」
従妹「にぃにぃっ」
男「えっ? 何っ?」
従妹「いいからっ、ちょっとこっち来てっ」
男「な、何だよ……引っ張るなって……」
従妹「……ここまで来れば聞こえないかな?」
男「何だよ、こんな内緒話みたいな真似、先輩に悪いだろ……」
従妹「これ、マズいよ……」
男「は? マズいって何が?」
従妹「私の勘だけど、ちょっと嫌な感じする」
男「嫌な感じって……先輩が?」
従妹「うん……だから、正直に言うのやめて」
男「じゃあ、どうすればいいんだよ……」
従妹「そうだっ、彼女ってことにしようよ」
男「お前が俺の彼女っ!? いや、それ無理ないか?」
従妹「いいからっ、ほら、そういうことでお願いっ」
男「お、おい……」
先輩「お、男くん、早く紹介してくれっ」
男「あ、ええと……ですね」
先輩「なんだっ、君にしてははっきりしないなっ!」
男「いや……その」
従妹「にぃにぃ……」
男「わ、分かったよ……」
先輩「……にぃにぃ? ってことは、兄弟か何かか?」
男「いや、先輩……」
男「これ、俺の……彼女、なんです」
先輩「…………」
先輩「あっ……そ、そうなんだぁ……」
先輩「男君に……こんな、可愛い彼女がいるなんて……」
男「あー……先輩、まあそういうことなんです」
従妹「…………」
先輩「しかし、待てよ‥‥‥」
男「え?」
先輩「確か君のことをにぃにぃって呼んでたよな……」
男「そ、そうですね」
先輩「ここから考えるに……君達……本当に恋人か?」
男(……大学きっての秀才と呼ばれる先輩を欺くのは難しいか?)
従妹「恋人ですよ」
先輩「あ、うん……で、でも、恋人同士の呼び方としてはちょっと……」
従妹「なんかおかしいところありますか?」
先輩「いやね……にぃにぃってのはさ、うん、微妙だよね……」
従妹「…………」
男(もう隠すのは無理だろ……変態プレイみたいになってるよ……)
先輩「……男君、その辺実際どうなんなんだ」
男「じ、実は……」
従妹「別にいいじゃないですか、にぃにぃでも」
先輩「いや、そうなんだけど」
従妹「そんなに疑うなら、いいです。ここで証明しますからっ」
先輩「し、証明……?」
従妹「にぃにぃ、ほらっ」
男「はっ? ほらって……」
従妹「……ん、んん」
男(……ま、まさか……!?)
先輩「…………」
じぃー。
男(く、くそっ……先輩、がん見じゃねぇか……)
男(何とか逃げれないものかっ……こんな、人の目の前とか……)
従妹「……にぃにぃ」
男(あーもうっ! どうにでもなれっ!)
ちゅっ……。
従妹「……あ」
男「ん……」
先輩「……えっ……」
従妹「んん……」
男(何だ……今日は、やけに積極的だな……)
男(てか、何だかんだ言って、今日で四回目のキスだよ……)
従妹「ん……」
男「……んん」
先輩「もう、分かった……二人はれっきとした恋人同士だ……」
先輩「だから、これ以上はやめてくれぇ……俺の……お、俺の心が……」
先輩「たのむからぁぁぁ、もう見せつけないでくれぇぇぇぇっ!」
父親「おお、今日はカレーか」
男「……最近帰ってくんの早くね?」
父親「うるさいっ、従妹ちゃんがいるんだから当然だろっ!」
母親「じゃあ、お父さん、ご飯よそってね」
男「なんだかなぁ……仕事大丈夫なのか……」
従妹「にぃにぃ、今日も私手伝ったんだよっ」
男「おおそうか、頑張ってるな」
従妹「ふふ、少しずつ、包丁の使い方とかわかってきたの」
母親「従妹ちゃんの上達ぶりは目を見張るものがあるわ。良いお嫁さんになるわね」
従妹「だってぇー、にぃにぃ」
男「お、俺にふるなよ……」
父親「か、かわいい子だなぁほんとに……」
男「親父……手元狂って、ご飯、地面に落ちてるぞ……」
がららら……。
男「ふぅ……良い湯だなぁ……」
男「しかし、今日の先輩……ちょっと可哀想だったな……」
男「もしかしたら、遅咲きの初恋だったりして……ああ、悪いことした……」
男(……ってしてると、もうすぐだな……)
従妹『にぃにぃ、私も入っていい?』
男「だめっ! 絶対、だめっ!」
従妹『えー、今日はいいじゃんっ、一緒に入ろうよぉーっ』
男「あーもうっ、何度言っても分からん子だなっ! 駄目なものは駄目なのっ!」
従妹『ぶーぶーっ……じゃあ、にぃにぃ、いつもの約束だよっ?』
男「……わ、分かったよ……」
従妹『うん、上がるの待ってるからっ』
男「……はぁ……母さんに知られたら、確実に殺される……」
従妹「あっ、にぃにぃ」
男「これから、また俺の部屋か?」
従妹「もちろんだよっ、約束だもんねっ」
男「……そういうことだよな……」
母親「あれ? 二人ともどうしたの?」
男「……あっ」
従妹「あーおばさんっ」
母親「もしかして、今から二人で男の部屋?」
男「あーうん……まあ、そう」
従妹「大学受験に向けて、勉強教えて貰ってるんです」
母親「そういうこと。ほんと兄妹みたいに仲良いわね」
従妹「へへっ」
男「…………」
男(何が良い兄妹だ……こんなこと……)
妹「んー」
男(こんなことやってる家なんて……日本中どこにもねぇよ……)
妹「にぃにぃ、早くぅー」
男(ぐずぐずな流れで……これも四日目……)
妹「まだなのぉー……んーっ」
男「……はいはい……」
ちゅっ……。
妹「ん……」
男「……ん」
男(どうすんだよ……これ……)
男(もう後にも引けなくなってる……うわぁ……柔らかい……)
従妹「ふふっ、もうなんか慣れたもんだね」
男「まあ、こう何度もやってればな」
従妹「でも、心臓はバクバク言ってるよ? にぃにぃも?」
男「そりゃ、勿論だ……」
男(高血圧だったら死んでるよ……)
従妹「へへっ、お揃いだー」
男「んじゃ、また明日な」
従妹「……うん、そう、だよね」
男「どうした? まだ、なんかあるのか?」
従妹「ちょっとさ……私、考えてることあるんだ」
男「……まさか、本当に勉強教えて欲しいとか?」
従妹「それもいいけど、違うよ」
従妹「私ね、ちょっと友達に聞いたことあるんだ」
男「なんか嫌な予感がする……その友達は今後、付き合いを考え直したほうがいい」
従妹「それでね、キスってあるじゃん」
男「だから、今さっきやったやつだろ」
従妹「うん、でもキスはキスでもレベルがあるんだって」
男「レベルねぇ……」
従妹「初心者は、唇と唇をくっ付けるだけ」
男「……ああ」
男(……ま、まさか……)
従妹「でも、上級者になると、舌をお互いに入れ合うだとか、何とか」
男「……で、ディープキス……」
従妹「そうそう、それっ。なんか、卑猥だよね」
従妹「初めそれを聞いた時は、なんか気持ち悪いなぁって、思ってたんだけど」
従妹「今はちょっと大丈夫かなって……」
男「い、いやいやっ! それは全然大丈夫じゃないでしょっ!?」
従妹「にぃにぃが相手なら……私、全然いいかも……」
男「そ、その気持ちは有り難いが、やはりな……」
従妹「駄目かな? にぃにぃ……」
男「そういうのは、恋人同士がやるもんだから……ちょっと……」
従妹「私のこと嫌い? 舌とか入れるのは、汚い?」
男「そ、そういうことじゃなくてさ……やっぱり倫理的っつうか、道徳心っていうか」
従妹「お願いだよ、にぃにぃ。私に他に相手とかいないから……」
男「……従妹……」
従妹「一生のお願いだと思って……ねっ?」
男「…………」
従妹「に、にぃにぃ……私は、目瞑って待ってればいいの?」
男「い、いや、俺も初めてだからよく分からん」
従妹「……にぃにぃも初めてなんだ……」
男「お、おう」
従妹「ふふっ、なんか嬉しいなぁ……ん? でもどうしてだろ?」
男「と、とりあえずっ……舌を絡めるんだよな……」
従妹「う、うん……」
男「ん、んじゃ、舌出して……」
従妹「えっ? キスしてからじゃないの……?」
男「そうなの? 俺、わかんねぇよ……」
従妹「んー……あんま詳しく聞いてないからなあ……」
従妹「と、とにかく、にぃにぃに任せるっ」
男「それじゃあ……舌、出して……」
従妹「う、うん……」
男「……ああ……」
男(うわぁ……なんか、この光景エロいぞ……)
従妹「ほのはは?」
男「お、おう、そのまま……んで、俺も舌出して……」
男(そんで、顔を近づけて……えっ?)
従妹「……うぅ……」
男(やっぱりこれおかしいぞっ……舌出すのは、キスしてからじゃねぇか……!?)
従妹「……?」
男(くそっ……でもここからじゃ、後に引けねぇっ! なんとか強引に行くしかないっ!)
男「……いくどぉ……」
従妹「んっ……」
ぺろ……。
妹「……んっ」
男「……あ」
ぺろ……ぺろ……。
妹「……んっ、んっ……」
男「……あっ……」
男(うおおおおおぉぉぉぉぉっ、なんだこの変態プレイはぁぁぁぁっ!)
男(仕方ねぇ……このままキスに持ち込むぞっ)
ぶちゅっ……。
妹「あっ……んんっ」
男「…………」
男(なんだこれ……未知の世界か……)
男(従妹の口内温かい……うわぁ……涎がすげぇ出てくる……)
男「……んっ」
男(もうこれ以上はやばいっ!)
従妹「……あっ……」
男「……はぁ……はぁ……」
従妹「す、凄いね……」
男「お、おお……」
従妹「なんか、エッチぽかった……」
男「う、うん……」
従妹「口の中が……なんか、お、犯されてるみたいで……」
男「……犯されてるって……」
従妹「うわぁっ駄目だ……恥ずかしい……」
男「……恥ずいな……」
従妹「わ、私……もう部屋に戻るねっ!」
男「そ、そうだなっ、もう遅いしなっ!」
従妹「お、お休みっ!」
男「また明日っ!」
男「…………」
……ガチャ。
従妹「にぃにぃ……?」
男「あっ、うん……」
従妹「また……今度、やろうねっ」
男「……っ」
従妹「ば、ばいばいっ!」
……ガチャン。
男「…………」
男「うおおおおおおぉぉぉぉっ! やっちまったああああぁぁぁ!」
………………。
…………。
……。
こうして従妹と男は、熱々で暮らしましたとさ。
-ラブラブEND-
従妹「しかし、にぃにぃよく食べるね」
男「そうか? 育ち盛りだからな」
従妹「もう大学生でしょ……成長は止まってるんじゃないかな……」
母親「それを言うなら、従妹ちゃんのほうが育ち盛りよね」
従妹「えっ……そんなことは……」
母親「だって見て見なさいよ、この胸っ」
ぽよんっ……。
従妹「あっ……ん……」
男「──ぶはっ! ごほっごほっ……」
母親「きったないわねぇ……」
男「ば、ババアっ! 何触ってんだよっ!」
母親「いいのよ女同士なんだから。ちなみにサイズいくつ?」
従妹「え、ええと……」
母親「あーっ、男がいたら言い難いわねっ! ほら、耳貸すから」
ごにょごにょ……。
母親「うわっ……なにそれっ……ほんと大きいわ……」
男「くそっ、人が飯食ってるって言うのに……」
母親「でもそれだと、気に入ったブラ見つからないでしょ」
従妹「そうなんです……あんまり可愛い系はなくて……」
母親「そうよねぇ、特別に作って貰うのにもお金かかるし」
母親「あっ! でも、確かそういう専門のお店、私、知ってるわ」
従妹「え、それ、本当ですかっ?」
母親「うん、私は利用したことないけど、確かそうだったと思う」
男「洗濯板だもんな」
母親「……はい、晩飯抜き決定ー」
男「ちょっ……」
母親「夕飯が食べたいなら、従妹ちゃんと一緒に買い物行ってきなさい」
男「えっ? 俺がランジェリーショップについてくわけ?」
母親「それも兼ねて、どっか色々遊びに行ったらいいでしょ?」
男「いや、まあそうだけど」
従妹「にぃにぃも来てくれると助かるなっ」
母親「その店までは、バスで二十分ぐらいのとこにあるから」
母親「あと近くに遊園地みたいのもあるはずよ。男分かるでしょ?」
従妹「遊園地?」
男「ああ、そっち方面か……となると……」
従妹「ねっ、にぃにぃ行こうよっ!」
男「あー分かったって……まあ、あの辺なら遊ぶに困らないか……」
母親「どうせ暇なんだから、行ってきなさい。従妹ちゃんをしっかりエスコートするのよ」
男「はいはい、分かりましたよ」
従妹「着いたぁっ!」
男「こんな時間なのにバスこんでたな」
従妹「でも、にぃにぃ、庇ってくれたもんね」
男「そりゃあ……男の役目だからな……」
男(周りの男どもの野獣の目には対抗せざるをえなかった……)
従妹「ええと、この先にあるんだよね」
男「母親のへったくそな地図によるとな」
従妹「地図、もう一回見せて」
男「ほれ、ここの『もくてきちっ!』って書いてあるとこ」
従妹「はは、文字が可愛い」
男「ババア、実は漢字書けねぇんじゃねーかと心配になったわ……」
従妹「もう、そういうこと言わないっ」
男「店に入ると変態だから、俺は外で待ってるよ」
従妹「えー、別に、同伴ならいいでしょ?」
男「いいや……俺にはちょっと無理だって……」
従妹「いいのっ! ほらっ、ついてきてっ!」
ぐいぐい……。
男「うわっ……また、またこの流れっ……引っ張るなっ……」
カランカラン。
従妹「うわぁぁ、おばさんの言った通りだっ」
男(うっ……周りの視線が痛いっ!)
従妹「にぃにぃ見てっ! これすごく可愛くないっ!?」
男「わ、わからんって……俺に聞くな……」
従妹「うーん……でも、ありすぎて迷っちゃう……どれにしようかな……」
店員「どうです、お目当てのもの見つかりましたか?」
従妹「あっ……いっぱいいいのがあって困っちゃってます」
店員「それは有り難いお声、ありがとうございます。失礼ですが、お連れの方は彼氏さんですか?」
男「いいや、しんせ……」
従妹「はいっ! 実はそうなんですよっ」
店員「ふふっ、それはそれは。そうですね、なら彼氏さんに選んでもらうなんてどうです?」
従妹「あっ、それ名案ですね。にぃにぃ?」
男「……え、俺が選ぶの?」
店員「ちなみに、彼女さんはサイズ幾つですか?」
従妹「ええと、Fの70です」
男(……え?Fカップもあんの!?)
店員「そうですね……それだと、この辺がお勧めかな……」
従妹「この店、ほんと種類が豊富ですねっ」
店員「はい、サイズが大きい方のをたくさん用意してますので」
従妹「ほら、にぃにぃ、選んで」
男「選べって言われても……」
従妹「直感でいいから、なんかこれだっ!みたいなやつ」
男「……うーん……」
男「……こ、これかな?」
店員「あらあら……また、アダルティなものをお選びに……」
従妹「く、黒……?」
男「い、いや、なんとなくいいかなって……」
従妹「私がつけるには……うーん……でも、にぃにぃがそういうなら……」
店員「ご試着なされますか?」
従妹「はい、じゃあ、他にもこれと……ええと、これでお願いします」
従妹『……にぃにぃ……ほら、入って見てみてっ』
男「それは、駄目だって……店員さんも見てるしっ」
店員「私は全然構いませんよ。いないものと思って結構です」
男「そ、そんな……」
従妹『ほらお店の人もそう言ってるんだから、悪あがきはやめてさっ』
男「……うぅ……」
従妹『もうじれったいなぁ……よしっ!』
ザザッ……。
男「なっ……」
男(一瞬の隙に引きずり込まれたっ!)
従妹「どう? 結構似合ってるかな?」
男(し、下着姿……しかも、近いっ、近過ぎるっ……)
男「お、おお……似合ってる! 似合ってるよっ!」
従妹「むーほんとぉー? なんか適当な感じがするなぁ」
従妹「もっと近づいてよく見て。ねっ?」
ぐいぐい……。
男「いいって……ここからで十分だって……」
男(当たる……当たっちまうっ! 胸に顔がっ!)
従妹「どう? にぃにぃに選んでもらったやつだよっ」
男「グッドグッド! だから、お願い……もう限界だって……」
従妹「んーまあ、いいか」
男「……はぁー……はぁー……これでやっと終わりか……」
従妹「あと二つあるから、そっちもよろしくねっ」
男「……へっ?」
従妹「ここが遊園地なんだ」
男「……うぅ……」
男(くっ……俺の息子よ……そろそろ鎮まれっ!)
従妹「もうげっそりしてないで、早く元気取り戻してねっ」
男「……あ、ああ……」
従妹「ほらほらっ、初めは勿論、ジェットコースター!」
男「もしかして、回る方か?」
従妹「あれ? にぃにぃって絶叫系駄目だった?」
男「いや……大好きだけど」
従妹「ならオッケーだね。よっし、レッツゴーっ!」
男「そ、その前に……トイレに行かせてっ」
男「やべぇ……まだ目が回る……」
従妹「小さい遊園地なのに、結構ガチのやつだったね」
男「どうだ? そろそろ飯時だし腹がへってきた」
従妹「うん、どっかで昼食にしよっ」
男「んー……お店とか結構出てるけど……」
従妹「あっ、にぃにぃあれっ」
男「ん? どこだ?」
従妹「ほらっ、あのカップル」
男「ああ……なんか飲み物飲んでるな……って、二つストロー?」
従妹「一緒に同じもの飲んでるね、いいなぁ」
男「えっ……まさか」
従妹「にぃにぃ、私達もあれ飲もうよっ」
男「……『カップル限定、真夏のトロピカルジュース』」
従妹「ははっ、もう秋なのにね」
男「……マジで頼むのか?」
従妹「うん、もう決めちゃったもん」
男「はぁ……」
店員「ヘイ、オニイサン。ナニニスル?」
男「ええと、ホットドック一つと……」
従妹「私も、同じ物で」
店員「オーケー、ホットドックフタツネ」
従妹「あと、真夏のトロピカルジュースもお願いしますっ」
店員「オオ、オフタリアツアツネー。ナカイイコトイイネ」
従妹「ふふ、そんなことないですってー」
従妹「わぁ……ストローがハートマークだ……」
男「ちょっ……聞いてないっ!」
店員「オアツイオフタリニ、サービスネ」
男「ノー! ストローチェンジッ!」
店員「イイノイイノ、ハズカシガルノヨクナイネ」
従妹「そうだよっ、折角店員さんが気をきかせてくれてるのに」
男「こんなもんで飲めるかっ! 恥ずかしくて死ぬわっ!」
店員「……シネ? モシカシテ、オニイサン、イマシネイッタ?」
男「えっ? 言ってないよ……」
店員「シネイウナラ、ワタシアイテナルヨッ!! Fuck you, boy!!」
男「いや……そんな……」
従妹「ほらっ、にぃにぃいくよっ!」
男(くそ……今更、変えてもらえそうな空気じゃねえよ……)
ちゅぅー……。
男(はずいっ! これは恥ずかし過ぎるっ!)
従妹「にぃにぃ、もっと一緒に飲もっ」
男「い、いいよっ、交互に飲もうぜっ!」
従妹「そんなのつまんないよっ、一緒に飲めばハートが綺麗な色になるのに」
男「お前はこの視線に堪えられるのかっ!?」
通行人A「うわぁ……見て……あれ」
通行人B「熱々だな……そうそう、あれは出来ないぞ……」
通行人C「しかし、あの子すげぇ可愛い……相手は微妙な癖して、うぜぇな……」
男(この刺すような視線……男どもの醜い嫉妬の目)
従妹「いいのいいのっ、他の人は気にしない」
男「そ、そんな……」
従妹「にぃにぃ、せーので飲もっ! やらなかったら、チューしてもらうからっ!」
男「ちょっ……それはさらに無理っ!」
従妹「次は……お化け屋敷っ!」
男「おい、いいのか? 確か、怖いの苦手だっただろ?」
従妹「そ、そんなことないよ……?」
男「完全にまだ苦手じゃねぇか。無理しなくていいんだぞ?」
従妹「で、でも、この機会逃したら、一生入れなさそうだし……」
男「別にお化け屋敷に入れなくたっていいだろう」
従妹「いいのっ、もしかしたら、それほど怖くないかもしれないし……」
男「……お前、看板ちゃんと見たのか?」
従妹「う、ううん……怖くて直視してない……」
男「血だらけの首無し女が大量に描かれてたぞ……」
従妹「……うぅ……」
男「やめとこうな? あんま無理していいことないぞ?」
従妹「行くもんっ! もう、私、大人だからっ!」
従妹「きゃあああああっ!?」
男「うおっ……」
従妹「にぃにぃ、怖いっ……もうやだよぉっ……」
男「だから、やめようってあれだけ言ったのに」
従妹「……うぅ……もう出たい……」
男「はぁ……もう少しだと思うから頑張れ」
従妹「にぃにぃ……」
ぎゅっ……。
男「お前、さっきから近すぎだって……」
従妹「やだっ、絶対離れないもんっ」
男「これじゃあ、抱き合って歩いてるみたいなもんだぞ……」
従妹「そんなの知らない……私、もう目瞑ってるから後はお願いね……?」
ぽよんっ……。
男「くっ……」
従妹「……にぃにぃ?」
男「わ、分かったっ、俺に任しとけっ!」
男(暗闇の中でこんな状態だったら……くっ、理性がヤバいぞっ!)
男「よ、よしっ! かっ飛ばすぞっ!」
従妹「えっ!? にぃにぃ早いよっ!?」
男(急げっ、一刻も早くこの場から離れないとっ!)
男「…………」
従妹「…………」
男「……あー……つかれた……」
従妹「……もう二度と入らない……」
男「それがいい……お前のためにも、お前と一緒に入る人のためにも……」
従妹「どういう意味なの……それ……」
男「深い意味はない……。で、次どうする?」
従妹「……なんか、落ち着ける場所がいいよね……」
男「んー……そろそろ日も落ちる頃だからなあ……」
従妹「あっ……あれ」
男「どうした?」
従妹「ほら、観覧車っ」
従妹「うわぁ……どんどん上がってくねっ」
男「久しぶりだな、観覧車なんて」
従妹「にぃにぃとも昔、一緒に乗ったよね」
男「どうだろ……そうだったっけ?」
従妹「覚えてないのー? 高いのが怖くて泣いてた私をずっと励ましてくれたじゃん」
男「あー何となく……微かに記憶が……」
従妹「手をずっと握ってくれて、私、とっても心強かったんだから」
男「鼻水垂らしてたな、確か」
従妹「もうっ、何でそんないらない部分だけ覚えてるのっ」
男「はは、ごめんごめん」
従妹「でも、もうあの頃からずっと時間が経ってるんだね」
男「…………」
従妹「お互い、大きくなって……住んでる環境も変わって……」
男「……そう、だな」
従妹「昔みたいに、頻繁に会えるみたいな状況も無くなって……」
男「…………」
従妹「にぃにぃは私と会えなかった間、どうしてた?」
男「普通に高校に通ったり、受験したり……そんなもんだ」
従妹「うん、私もそんな感じ」
従妹「でもね……その間、ずっと会いたかった」
男「…………」
従妹「にぃにぃに、ずっーと会いたかったんだ……」
男「……ああ」
従妹「おばあちゃんのところに帰省するときには、いつもワクワクして……」
従妹「だけど、向こう着いたら、やっぱりにぃにぃはいなくて……」
男「……ご、ごめん……」
従妹「会いたかった……寂しかった……」
男「…………」
従妹「だからね、私……決めたの」
男「えっ?」
従妹「大きくなって環境が変わって、こんな風に疎遠になるくらいだったら」
従妹「私がその環境を変えてやろうって……私自身で何とかしようって」
男「…………」
従妹「だから、私はにぃにぃと同じ大学に行く」
男「……従妹」
従妹「たった一年だけかもしれないけど……でも、それでも私にとっては大切なの……」
男「…………」
男「……そんなに」
従妹「……ん?」
男「そんなに、俺のことを中心に考えなくても……」
男「歳をとって……それで疎遠になっていくって、普通の形なんじゃないか?」
男「血が繋がった兄妹とかなら、その縁は一生離れられないけど」
男「俺達は、従兄妹なんだ。小さい頃は一緒に遊ぶけど……時間が経てば、それも変わってく」
従妹「…………」
男「でも、こうやってたまに会って……昔話に花を咲かせたり、近況を話し合ったり」
男「……それで、いいだろ。それが……普通だろ?」
従妹「……ふつう……なんだろうね」
男「だからさ、お前が俺と同じ大学に来るって言うのは嬉しい……でも」
男「それが、俺と会えるからっていう、つまんない理由なら……正直、賛成は出来ない」
従妹「……にぃにぃ」
男「自分の進路のことをしっかり考えるべきだ。それこそ、自分自身のためにな」
男「厳しいこと言うかもしれないけど、それがお前のためだと思うぞ」
従妹「…………」
男「……ごめんな……ちょっと暗い話しちまった」
従妹「……いいの……私のことを思って言ってくれたんだし……」
男「…………」
とことことこ……。
男「…………」
従妹「…………」
男(……あんなこと言っちまったせいで……気まずい……)
男(がらにも無く……真面目なこと言っちまったからな……)
男「……なあ、従妹」
従妹「……ん?」
男「さっきはああ言ったけど、まあ、深く考えなくていいぞ」
従妹「え……でも」
男「俺の気持ちはそうだけど……実際、決めるのは本人なんだから」
従妹「うん……」
男「すぐに受験ってわけでもないんだから、ゆっくりと考えればいい」
従妹「そう、だよね……」
男「お前がどう決めても、最終的には俺は応援するから」
従妹「にぃにぃ……」
男「せっかく久しぶりに会えたんだ、今は楽しく明るくいこうぜっ」
従妹「ははっ、にぃにぃがそんなこと言うなんて」
男「なんだー? 俺がお前と会って楽しくないとでも思ってんのか?」
従妹「……だって、にぃにぃ、今日もそうだけど乗り気じゃなかったじゃん」
男「そ、それはさ……」
従妹「久しぶりに会ったときも……何か、あんまり相手したくないみたいな」
男「いやいや……それは照れみたいなのが影響してだなっ」
男(あまりにもお前が美人になってるから……正直、どうしていいのか分かんないんだよ……)
従妹「でも、そうやって言ってくれるなら助かったよ」
男「そ、そうか?」
従妹「うん、まだ、にぃにぃも私のこと好きなんだって分かったし」
男「ま、まあ、そういうことだ」
従妹「よしっ、元気取り戻したっ。仲良くいこっ」
ぎゅっ……。
男「えっ、手……握るの……?」
従妹「むっ、にぃにぃ……」
男「わ、分かったよ……今さっき否定したところだしな……」
従妹「そうだよっ、二人仲良くっ」
男「お、おうっ」
男(しかし、この歳になって、手を繋ぐ従兄妹って変だよな……)
従妹「ふふっ……にぃにぃ、顔真っ赤」
男「うるせっ、夕陽のせいなんだから勘違いすんなよっ」
従妹「うん、そういうことにしとくから」
男「くっ……いいようにあしらわれた……」
従妹「いいのいいの、さっきの仕返しだもんっ」
男「なんだよ……仕返しって……」
男(まあ……暗い空気が変わっただけでも良しとするか)
?「……あれ」
男「ん?」
女友「もしかして……従妹?」
従妹「……えっ、うそ……」
男「なに? 知り合い?」
従妹「う、うん……学校の友達……」
女友「なんで従妹がこんなとこにいんの?」
従妹「それは私の台詞だよっ。今、親戚の家に来てるの」
女友「私も実家がこっちだから……」
従妹「えっ……そうだっけ?」
女友「従妹には話したことないっていうか……そんなこと普通話さないというか」
従妹「まあ……そうだね」
女友「……で、お隣さんは彼氏か何か?」
従妹「ええと……」
男「──違います」
女友「うわっ……即答……」
男「こいつの従兄だ。よろしくな」
女友「はぁー従兄ねぇ……しかし、手握ってるけど」
男「そ、それは……ちょっとしたふざけたスキンシップというか……」
女友「ちなみに従兄妹同士なら結婚出来るって知ってます?」
男「ちょ、ちょっと待って」
女友「ははっ、そんなに焦らなくていいのに。逆に疑われちゃいますよ?」
男「…………」
従妹「もう女友っ、にぃにぃを困らせないで」
女友「にぃにぃ?」
男「……そこも深く追求しないでくれるかな……」
女友「あーはい。今ので何となく理解できました」
男「察してくれると、ありがたい……」
女友「なんとなくお兄さんとは、分かり合える気がしますね」
従妹「えっ、何……二人の間で何が?」
女友「いいの従妹は。今の調子でガンガンいきなさい」
男「ちょっ……君」
女友「お兄さんとは分かり合えますが……私、面白いことも好きなんですっ」
男「えっと、何飲む?」
従妹「私、オレンジジュース」
女友「アイスコーヒーでお願いします」
男「了解……オレンジジュースとアイスコーヒー二つで」
店員「かしこまりました」
女友「すみませんね、奢ってもらっちゃって」
男「いやまだ言ってない……まあ、そのつもりだったけどさ」
女友「ははっ、ちょっとした冗句ですよ」
男「君、バリバリ計算高いだろ……」
従妹「……むぅっ」
男「あ、どうした?」
女友「さっきから、お兄さんと私の会話に入れてなくてむくれてるんですよ」
従妹「そんなことないもんっ」
女友「あっ、『もん』が出た」
従妹「そ、そんなことないですっ!」
男「はははっ」
女友「……あれ、何か今おかしいこと言いました?」
男「いや、従妹がどうやって学校生活送ってるか、今ので分かった気がする」
女友「そういうことですか」
従妹「……なんか、言葉に悪意を感じるなぁ」
男「女友さんは、従妹と結構仲良いんだ」
女友「入学式の時に偶然隣の席になりまして……それからこんな感じです」
従妹「いい、にぃにぃ。この子、結構黒いから騙されちゃ駄目だよ」
女友「ちょっと、従妹、何余計なこと言ってんの」
男「まあ、何となく分かってるけどね」
女友「お兄さんまでそんなこと言って……」
男「じゃあ、なんか従妹の面白い話とか知ってるんだ?」
従妹「にぃにぃっ!」
女友「それは勿論、数多くをご用意してますよ」
女友「私が一番驚いたのはですね、入学初日のことでした」
従妹「うわぁ……ちょっとやめてよぉー……」
男「ふむふむ」
女友「入学式もちょっと変な気がしてたんです。でも、それがなんのか分からなくて」
女友「その後、各生徒は自分の教室に移動したわけなんですが、その時も私は従妹と喋っていて」
女友「教室に入った時……あっ、これは、と」
男「ほう」
女友「その時、なんの違和感か理解したんですね。それが、男どもの飢えた視線だって」
男「は、はは……」
従妹「絶対、違うもん……」
女友「幸運なのか悪運なのか分かりませんが、私達は席も隣同士で」
女友「そこからもやっぱり、粘着質な気持ち悪い視線がつづく一方でした……」
女友「それで、女の直感で分かったんですよ……これは、この後、何かあると」
女友「事が起きたのは、担任が挨拶を終えた後のことでした」
女友「生徒たちも初めの緊張からやっと解放され、一人また一人と続々と帰っていく中」
女友「顔をひきつらせながら、一人の男子が私達の元へ」
男「あーはい……」
女友「私も顔には自信が無いわけではありませんが、この隣の子には勝てる気が全くありませんでした」
女友「女の私から見ても、嫉妬を通り越して……最早『すげぇな』の一言で片付けられる始末」
女友「勿論、男子の視線は私など眼中になく、しっかりと従妹を見据えていました」
女友「で、呼び出しですよね、そこは古典的です」
女友「従妹に無理矢理連れられた私、そして従妹」
女友「裏庭では、男子の一世一代の告白が今にも始まりそうな時」
男「え……始まらないの?」
女友「どこに隠れてたんだ……と呆れるほど、木々の端からそれぞれ男が三人現れました」
男「……はぁ……それはまた」
女友「奇怪な光景でした……。男四人が奥で話し合った後、従妹に向かって一列に並んだんです」
男「絶対、奥でジャンケンしてたよね」
女友「そして……」
女友「──悪魔の四人切りっ」
男「……はぁ……」
従妹「……うぅ……だって……」
女友「四人が連続でふられる光景なんて、私初めて見ました」
女友「二人とかなら分かりますが、四人ですよっ?」
男「……俺も今まで見たことねぇな」
従妹「……そ、そんなぁ……」
女友「まぁ、それが初めて従妹と会った日のことで……」
男「いや、本当に凄いね……」
従妹「にぃにぃ……」
女友「ちなみに、授業が始まった後の一週間、のべ十三人が切られましたけど」
男「…………」
従妹「もうっ! にぃにぃが言葉失ってるよっ!」
女友「それで、渋谷のスカウトマンに従妹が言ったんですよ」
女友「『私、エッチなビデオに出るつもりはありませんからっ!』」
男「ははははっ」
従妹「……うぅ……」
女友「初めからきちんとした雑誌の人だって、名刺見せて貰って分かってるのに」
女友「アダルトビデオって……くくっ、スカウトマン、口開けて呆然としてましたよっ」
男「ははっ、し、しかし、話が尽きないな……」
女友「そうですね……話し出すと幾らでもありますから」
従妹「もうーそういうのいいから、にぃにぃも満足したでしょ?」
男「いや、うん、もうたっぷり聞いた」
従妹「女友も喋り過ぎだよ……私のイメージ崩れて来てるじゃん……」
男「それはないって、お前、やっぱり可愛いもんな」
従妹「……えっ……あ、あ、ありがと……」
女友「ふふっ、お兄さんには従妹はメロメロですね」
従妹「もうっ、そんなことないもんっ!」
男「……っと、話してたからもうこんな時間か」
女友「あっ……七時をとっくに過ぎてますね」
男「そろそろ出ないとな、夕飯作って帰りを待ってると思うし」
従妹「うわぁ……おばさんに悪いことしたかも……」
女友「そうだ、従妹」
従妹「ん?」
女友「私、こないだ聞いたんだけど、滝先輩の話」
従妹「えっ……う、うん」
男「滝先輩?」
女友「近いうちに、また告白しようとか言ってるみたいだよ? メール来てるんじゃないの?」
従妹「いや……うん……ちょっとここではいいじゃん……」
男「俺に遠慮しなくていいんだぞ? で、滝先輩って?」
女友「あー、滝先輩っていうのはですね……」
従妹「──女友っ! にぃにぃに話さなくていいっ!」
女友「えっ……でも……」
男「……従妹?」
従妹「別にここで話さなくてもいいでしょ?」
女友「それはそうだけど……」
男「なんだ? 俺に、聞かれたくない話なのか?」
従妹「そ、そういうことじゃないけど……」
男(なんかモヤモヤするな……はっきりと聞いとくか……)
男「滝先輩っていうのは、お前の元カレだったりするのか?」
従妹「違うっ! それは違うよっ、そういうのじゃないって……」
男「でも、お前、すごい言い難そうにしているから……」
従妹「もういいじゃん……この話はあまりしたくないよ……」
男「…………」
男「……ああ、分かった」
男(……くそっ……なんか気になるな……)
女友「…………」
女友「じゃあ今日は、ありがとうございました」
男「おう、こっちも色々、話し聞けて良かったよ」
女友「はい……従妹」
従妹「うん……なに……?」
女友「最後のほう……ちょっと余計なこと言ってごめんね」
従妹「……べつに……いい」
女友「……うん……じゃあ、また」
男「また機会があったらな」
従妹「……ばいばい」
女友「…………」
女友「……そうだ」
男「ん?」
女友「お兄さん、ちょっといいですかっ?」
従妹「女友?」
従妹「にぃにぃに余計なこと言うの止めてよ」
女友「違うって。私も女なんだから、察してくれない?」
男「……えっ……それって」
従妹「だ、駄目だよっ!」
女友「ちょっと待って。別にお兄さんは従妹の彼氏でも何でも無いんでしょ?」
従妹「そ、それはそうだけど……」
女友「だったらいいでしょ。そんなの私の勝手だし」
従妹「……う、うぅ……」
男「お、おいおい……」
男(なんなんだ……この流れ……)
女友「お兄さん、ちょっとこっち」
男「で、でも……」
従妹「…………」
男(従妹が俺のシャツを握ってんだよな……これを振り切りわけにはいかないし……)
従妹「……お兄さん」
男(……ん……? 待てよ……?)
男「……従妹、シャツ離して」
従妹「うっ……」
男「……ん、ありがと」
従妹「…………」
男「そっちで、話せばいいんだな?」
女友「あっ、はい……」
とことことこ……。
男「それで、滝とか言う奴の話なんだろ?」
女友「……話が早くて助かります」
男「この後のフォローのことをもう少し考えて欲しかったけどな」
女友「すみません……咄嗟に、思いついたのがあれしかなくて……」
男「で、何なんだ? 従妹は俺に聞かれるの嫌だと言ってたぞ?」
女友「……それでも、お兄さんには話しておきたいんです」
男「…………」
女友「滝先輩っていうのは、うちの三年の人なんですけど」
女友「サッカー部のキャプテンやってる凄い人で、人気もあるんです」
男「ああ」
女友「その人が、最近、従妹に夢中になってまして……」
男「昔の元カレとかではないんだな?」
女友「勿論違います。というか、従妹が他の男子と付き合ったことは無いです」
男「……そうか」
男(何だよ……なんで、安心してるんだ、俺……)
女友「一度、その人が従妹に告白して……ふったんですけど」
男「ん? 何か問題があったのか?」
女友「いや、そこまでは問題ないんですが」
女友「滝先輩には、その前に付き合ってた方がいて……」
男「ああ……」
女友「従妹が好きになったってことで、その人と別れたんです」
男「……そういうことか」
女友「従妹はそれが自分のせいだと思ってるらしくて」
女友「あんまり、その滝先輩の話は嫌みたいですね」
男「……ん」
女友「とくにお兄さんに聞かれるのは……」
男「…………」
男「…………」
従妹「…………」
男(また、この空気か……いらん置き土産をしてくれたよな……あの子)
従妹「……にぃにぃ?」
男「ん、どうした?」
従妹「……え、ええと……さ」
男「おう」
従妹「女友……何だって?」
男「いや、まあ……うん」
従妹「……にぃにぃ?」
男「ちょっと、気になります……みたいなこと言われただけだよ」
従妹「……そ、それで?」
男「いや、うんと、ありがとう……みたいな」
従妹「……にぃにぃは、女友のこと好きなの?」
男「いや……」
従妹「……そ、そのさ……」
男「ああ……」
従妹「私は……どう、かと思うなあ……」
男「えっ……何が?」
従妹「いや、女友って可愛いけど、本当は腹黒いし……」
男「ああ、そういうことか」
従妹「ケーキだってねっ、お腹一杯とかいいながら、三つとか普通に食べちゃうんだよっ」
男「あ、うん」
従妹「そ、それに……ええと、他に何があるかな……」
男「もういいよ」
従妹「……え?」
男「あの子に悪いけど、俺は付き合う気とかそういうのは無いから」
従妹「……全く? これっぽっちも?」
男「おお、ああいうしっかりものタイプは俺には合わない」
従妹「そ、その通りだよっ」
男「年下に尻敷かれるっていうのは、ちょっとな」
従妹「……う、うん」
男「まあ、どっちかというと」
従妹「……ん?」
男「あの子と従妹なら……俺は、従妹の方がタイプだな」
従妹「……うぅ……」
男「ははっ、照れちゃったか」
従妹「……にぃにぃ」
こてっ……。
男「お、おい……バスの中だってっ……」
従妹「ありがと……にぃにぃ」
男「う、うん……」
従妹「私も……にぃにぃのこと、好き……」
男「…………」
男「ただいまー」
従妹「すみません、遅くなってしまって……」
母親「気にしない気にしない。もう、ご飯は出来てるから」
男「親父は今日も帰って来てんのか?」
母親「さっき電話があって、急な仕事が入っちゃったんだって」
男「いつもならしない連絡をわざわざ……」
母親「それだけやっぱり若い娘がいると、はりきっちゃうんでしょ」
男「完全に変態親父だな……」
従妹「は、はは……」
母親「それで、従妹ちゃん。気に入った下着あった?」
男「ふぼっ!」
従妹「おばさんの言った通り、ばっちしでした」
母親「それは良かったわ。入ったことはなかったから、結構心配だったのよね」
男「食事中に、それも、異性がいるところでする話題ではないだろ……」
母親「どんなの買ってきたの?」
従妹「ええと、三つほど可愛い系を選んできました」
男「おい、お前ら俺の話を聞け」
母親「どれどれ……」
がさがさ……。
男「もうやだ……この母親……」
母親「ちょ、ちょっと……従妹ちゃん」
従妹「えっ……どうかしました?」
母親「黒のやつあるじゃない……最近の子だと、これも可愛い部類なの……?」
従妹「あー、そうだった……。えっと、それはですね……」
男「…………」
従妹「にぃにぃが選んだものでして……」
母親「な、なんとまあ……」
男「好きで選んだんじゃないっ! あくまで強制されてだからなっ!」
母親「それにしても、これを選ぶとは……我が子ながら恐ろしいわ」
従妹「そ、そうですね……」
男「おい、フォローはどうしたフォローは」
母親「でも、あんたが気に入ったのを選んだんでしょ? これが良かったわけ?」
男「いや、まあ……そうだけどさ……」
母親「やはり、あの人の血を継いでるだけあるわね」
男「……それは凹むわ」
従妹「にぃにぃ、元気出して……」
母親「はあー、やっぱり遊園地に行ったんだ」
従妹「はい、時間いっぱいまで色々回りました」
母親「観覧車とかも乗った?」
従妹「最後に一回乗りましたよ」
母親「いいわねぇ……青春してるわね……」
男「まあ、なんだかんだ言って、楽しかったな」
従妹「うん、とっても楽しかったっ」
母親「なんか、懐かしいわね。昔、二人が小さかった頃、みんなで行ったじゃない?」
男「あー……それ、従妹が言ってたな」
従妹「聞いてくださいよ、おばさん。にぃにぃ全然覚えてないんです」
母親「あれ、あんたが一番楽しんでたのに?」
男「いや……微かに記憶はあるけど、そこまでは……」
従妹「私は完璧に覚えてるのにひどいよぉ……」
母親「ほんとこの子ったら肝心なところで駄目ね。親の顔がみたいわ」
男「お前だよ、親お前だから」
男「……ふぅ……」
男(こうやってガス抜きしとかないとな……何があってからじゃ遅い……)
男(しかし従妹が来てからというもの、完璧に回数が増えちまってる……)
コンコン。
従妹『にぃにぃっ、早く入れてっ』
男(噂をすれば何のその、ってやつだな……)
男「おう、今開ける」
ガチャ……。
従妹「もう、遅いよっ!」
男「いやいやごめん……って、おいっ!?」
従妹「どうかな?」
男「どうってお前っ、下着姿じゃねえかっ! このバカっ!」
従妹「だって、せっかくにぃにぃが選んでくれたんだもんっ」
男「だから、試着室で見たってっ!」
従妹「ちゃんと見て欲しいのっ、似合ってるかどうかっ」
男「似合ってるってっ! 頼むから、服を着てくれっ!」
男(やべぇ……このボディは反則だろっ……)
従妹「ほら、後ろも……」
男「あーもうくそっ、埒があかねぇっ」
ザバッ……。
従妹「あっ……」
男「変な声だすな、俺のジャージ貸してやるからそれ着ろ」
従妹「……むぅ……もう、何か適当……」
男「適当も何も……この流れが俺には意味分からんわ」
従妹「気を取り直して……にぃにぃ、いつもの、ね」
男「……そろそろ止めにしようぜ」
従妹「ダメだよっ、私がお風呂に一緒に入らないことの条件でしょ?」
男「それがかなり無茶あるんだって……」
従妹「でも、約束は約束だもんっ! にぃにぃ、お願いっ!」
男「……はぁ……」
男(付き合ってもいないのに……こんなこと続けてもいいのかな……)
従妹「にぃにぃ……?」
男(俺がもし、今後、従妹と付き合う彼氏だったら、従兄とキスしてた女なんて嫌だよな……)
従妹「……も、もしかして……怒った?」
男(やっぱり、従妹のためにも……こういうのは止めた方がいいじゃないのだろうか……)
従妹「何か……返事してよぉ……」
男「…………」
従妹「にぃにぃ……」
男「なあ……従妹」
従妹「……え?」
男「やっぱりこういうのは良くない」
従妹「そ、そんな……」
男「ほら、これからのこと考えろよ。今はお前に好きな奴はいないかもしれないけど……」
従妹「今だけじゃないもんっ、これからもだよ?」
男「まあ俺の話を聞け……確実に今後、付き合いたいなって思う男性が現れるよ」
従妹「……絶対ないもん……」
男「そんな男性が現れた時に、今みたいなことを一から始めればいいだろ?」
男「そんなに焦らなくても、いつかはしなきゃいけない時がくるんだから」
従妹「今がいい……」
男「そう言って、あまり俺を困らしてくれるな……」
従妹「にぃにぃは……にぃにぃは、私だと嫌なのっ?」
男「そういうことじゃなくてな……」
従妹「誤魔化さないでよっ!」
従妹「私だから、年下だから? それとも、妹みたいに思ってるから嫌なの?」
男「そうじゃない……」
従妹「だって、にぃにぃが言ってることってそうだもんっ」
従妹「にぃにぃにだって、付き合ってる女性いないんでしょ? 私もいない……なら、問題ないじゃんっ」
男「それとこれは、話が別だ」
従妹「……にぃにぃ……」
男「母親にも言われたけど、俺はお前に手を出しちゃいけない」
男「お前がまだ恋愛に対して無垢だからこそ、年上の俺が歯止めをきかせないと駄目なんだ」
従妹「そんなこと……」
男「はっきり言って、俺は恋愛を経験したことがない」
従妹「……っ」
男「だから、キスとかそういうのは恋人同士がやるもんだって、信じてる」
従妹「……うぅ……」
男「だから、今みたいなこと続けるのは正直しんどいんだ」
従妹「にぃにぃは……私のことを恋人だと思えないの……?」
男「……恋人というよりは、妹に近いな」
従妹「…………」
男「小ちゃい頃から一緒にいたじゃないか。何も知らない同士とは訳が違う」
従妹「……っ」
男「それにさ、やっぱり俺はお前に幸せになって欲しいんだ」
従妹「……にぃにぃの言う、私の幸せってどんなの?」
男「そりゃ……お前がいい人と付き合って、楽しい日々を送……」
従妹「──押しつけだよ」
男「押しつけって……」
従妹「にぃにぃは私のこと妹みたいに思ってるって言ったけど」
従妹「私はにぃにぃのことを実の兄だと思ったことは一度もない」
男「…………」
従妹「兄でもないにぃにぃに、そんな心配してもらわなくてもいい」
男「……お、お前……」
従妹「大体、いい人って何? あまりにも漠然としてる」
男「そりゃ……お前のことを一番に考えてくれて……」
従妹「そんな人いないもん」
男「お前が知らないだけで、いるって……」
従妹「……いない」
男「従妹……」
従妹「……っ」
従妹「にぃにぃ以上に私のこと考えてくれる人なんて、絶対いないもんっ!」
男「…………」
従妹「にぃにぃじゃ駄目なの? その役目を負ってくれないの?」
男「だから、そういう極端な話じゃなくてさ……」
従妹「私は真面目だよっ? にぃにぃがいいっ」
男(……従妹は……俺を勘違いしてる……)
男(昔の頃の思い出が強すぎて……俺のことを過剰に評価してるんだ……)
男(……有り難いけど……嬉しいけど……でも)
男「お前の錯覚だよ、それは……」
従妹「……そんな……」
男「……もう少し経てば分かる。今は分からないかもしれなけどな……」
従妹「…………」
従妹「……だ、だったら……」
男「ん?」
従妹「にぃにぃは……私が、他の人と付き合うの許せる?」
男「……別に……」
男(……何だ……何でもっとはっきり言わないんだ……)
従妹「別に……って」
男「相手がいい人間だったら……いいじゃないか?」
従妹「…………」
男「ほら……あの、滝先輩とかいたじゃないか」
男(おいっ! 俺は何を言ってるんだっ!)
従妹「……滝先輩は全く関係ないよ」
男「そんなに初めから毛嫌いしなくてもいいだろ?」
従妹「にぃにぃは知らないんだから、それこそ余計なお世話」
男「前の人と別れて……それは、従妹のことを大切に思ってくれている証拠じゃないのか?」
従妹「……な、何でそれ……」
従妹「ああ……女友が話したんだね……」
男「…………」
従妹「……にぃにぃが言いたいことは、もう分かった」
従妹「それで、にぃにぃは滝先輩と私が付き合えばいいって思ってるの?」
男「……まぁ、そういうことだな」
従妹「ふーん……滝先輩ねぇー……」
男「…………」
従妹「いいよ、なんかもう私も分け分からなくなってるし」
男「……えっ?」
従妹「ここに呼び出そ、滝先輩」
男「ちょっと待て……こんな時間にか?」
従妹「いいよめんどくさいし。さっさとこの話を終わらせたい」
男「明日でもいいだろ……相手のことを……」
従妹「私が決めたの。もう、指図しないで」
男「…………」
従妹「滝先輩って人は、にぃにぃが言うようにいい人かもしれない」
従妹「あんまりうわついた話も聞かないし、前の彼女とも別れたしね」
男「……そうか」
従妹「誰が私の連絡先教えたのか知らないけど、たまにメールもくるんだ」
男「…………」
従妹「私は興味なかったから、いつもゴミ箱に直行だったけど」
従妹「まあそれで、連絡先は知ってるの」
男「ああ……」
従妹「じゃあ、連絡するから。時間になったら、二人で駅まで行こっ」
男(俺の思い通りになったはずだ……)
男(従妹との不純な行為も終わって、アイツも幸せになれる……)
男(誰も損をしない……誰もが最良になれる選択だ)
男(でも……どうしてだ……)
男「…………」
従妹「もうすぐ時間だね」
男「……そうか」
従妹「どうしたの? さっきから全然喋らないけど」
男「…………深い意味はないよ。ただ、色々考えてるだけ」
従妹「ふーん……しかし、滝先輩も、こんな夜遅くにバイクで大丈夫かな」
男「…………」
男(どうして……胸が張り裂けるほど、痛いんだろう……)
男(妹を取られる……そんな気持ちなのか……)
男(でも……きっとこれが正しいんだ……)
従妹「……あっ」
男「ん……もしかして、あれが」
従妹「……うん、滝先輩だと思う」
滝「……どうも」
従妹「ごめんなさい……こんな時間に呼び出してしまって……」
滝「あーうん、別にいいよ」
従妹「本当に、ごめんなさい……」
滝「気にしなくていいって。で、話って何なの? それに、この……横の人は?」
男「…………」
男(身長は俺よりもずっと高い……顔も整ってるし……勝てる要素が見つからないな)
男(……ん? なんで、俺が勝てなきゃいけないんだ?)
従妹「この人は、私の従兄です」
滝「はぁー……それで、何でこの人が?」
従妹「ちょっと付き添ってもらったんです」
滝「ええと……ごめん、良く理解できないな……」
従妹「滝先輩には、前から色々気持ちを伝えられてきました」
滝「う、うん……そうだね」
従妹「ごめんなさい、一回目は断ってしまって」
滝「ははっ、あの時は結構落ち込んだよ……」
従妹「でも、彼女さんとも別れたみたいで……」
滝「そりゃ、別の人に告白するんだ、別れるのが普通だろ?」
従妹「それでも……私のせいで、本当にすみません」
滝「もう、さっきから謝ってばかりだな……別れたのは君のせいじゃない」
滝「俺が勝手に決めたんだ。君がぐじぐじ悩むことじゃないし、それに遠慮する必要もない」
従妹「……先輩」
男「…………」
男(……ははっ……なんだ、いいやつじゃないか……)
男(初めはどうなるかと思ったけど……これは任して大丈夫だ……)
男(……ああ……そうか……終わりなんだな……)
男(俺がアイツの面倒を見るのもこれで……最後……)
滝「……もしかして、このことを謝りたくて呼んだの?」
従妹「それも……あります」
滝「そうか……なら、ちょっとだけ俺から話をしてもいい?」
従妹「……え?」
滝「前に一度、俺は君に振られたよね」
従妹「あ……はい」
滝「それからずっと色々考えたんだ。諦めようとか、他の人を探そうとか」
滝「でも、やっぱりさ……君のことを追ってる自分がいて……」
従妹「…………」
滝「ごめん……君には本当に迷惑かもしれないけど」
滝「もう一度やりたいんだ。結果が分かっていてもね……」
従妹「……先輩」
従妹「実は……今日来てもらったのはその話なんです」
滝「ん?」
従妹「この話をしたら、従兄のほうから色々言われまして」
滝「あ、うん……そうなんだ」
従妹「こんなんじゃ駄目だって……いい人がいたら、付き合うべきだって」
男「…………」
滝「えっ……でも」
従妹「私……思ったんです。滝先輩は……いい人なのかもしれないって」
滝「……あ、ありがとう」
従妹「だから……私」
滝「……え……」
男「…………」
男(あー……これで……終わりか……)
従妹「先輩に……今日ははっきりと言います」
滝「…………」
従妹「私……先輩と……」
男「……っ」
従妹「──先輩とは、付き合えませんっ!」
男「なっ……」
滝「…………」
従妹「いくら滝先輩がいい人だって分かってても、にぃにぃに言われてもっ!」
従妹「私が好きな人は先輩じゃないっ……」
従妹「私が……私が……本当に大好きなのはっ……」
滝「……うん」
従妹「──この横にいる……従兄なんですっ!」
男「…………」
男(……何だ……何言ってんだこいつは……)
滝「……じゃあ、前断ったのも?」
従妹「はい……ごめんなさい……」
滝「他の人からの誘いをずっと断り続けていたのも?」
従妹「にぃにぃが……従兄が好きだったから……」
滝「そうか……そうだったんだ」
滝「初めから……全て決まってたんだね」
従妹「…………」
滝「俺が振られる理由がやっと分かったよ。そりゃ、勝てないわ」
従妹「……ごめんなさい……」
滝「そうか、そういうことで今日は呼んだんだ」
従妹「……ごめんなさい、ごめんなさいっ」
滝「ははっ、まあ、すっきりしたからいいよ。残念だったけど、モヤモヤは消えた」
従妹「…………」
滝「話がこれで終わりなら、俺はそろそろ帰るわ」
滝「……ここからまた、一悶着ありそうな気配だしね」
従妹「…………」
男「…………」
男(何だよ……俺のことが好き……? だから、告白を断ってた?)
男(意味がわからない……あいつの言う『好き』は、恋愛のものとは違って……)
従妹「……にぃにぃ」
男「……あ、うん……」
従妹「これで、分かってもらえた?」
男「…………」
従妹「多分、いくら鈍いにぃにぃでも、今ので分かってくれたと思う」
男「……それは……」
従妹「にぃにぃは言ったよね、滝先輩は前の彼女と別れて告白したから、多分いい人だって」
男「…………」
従妹「だから、私もそうしたよ。先輩には悪いけど、そのためだけに呼んだの」
男「……お前……」
従妹「にぃにぃはまだ私のこと子供か何かと勘違いしてるんじゃない?」
従妹「もう私だって、色々分かってるもんっ」
従妹「大切な人のためなら、他の人を犠牲にしても、傷つけても構わない」
従妹「にぃにぃが思ってるほど、私は純情じゃないよ。もっとホントは汚いんだ」
男「…………」
従妹「にぃにぃは気付いてないかもしれないけど」
従妹「お風呂に入ろうって言い出したのもそう、キスし始めたのもそう」
従妹「その場のなりゆきなんかじゃないよ。全部、考えてやったんだもんっ」
男「……そうか……そうだったんだ……」
従妹「にぃにぃが好きだから。少しでも、気付いて欲しかったから」
従妹「でも……にぃにぃの中には……昔の私しかいなくて……」
男「…………」
従妹「なにやってもっ! いくら頑張ってもっ! 『妹』の一言で片付けられちゃうっ!」
男「……ああ……」
従妹「もうそんなの嫌だっ! 私は、にぃにぃが誰よりも好きなのっ!」
男「…………」
従妹「昔から……ずっと昔から……それは初めは兄を慕う気持ちだったかもしれないよ……」
従妹「でも今ならそれは違うって分かるもんっ」
従妹「私は……今も昔も……ずーっと」
従妹「──にぃにぃのことが大好きなんだからっ!」
男「…………」
従妹「…………」
男「……ははっ……」
従妹「……にぃにぃ?」
男「……これじゃあ、どっちが年上か分かんねえな」
従妹「……え」
男「ここまでされて、やっと気付くなんて……つくづく俺も馬鹿だよ」
従妹「……にぃにぃ」
男「滝先輩には悪いことしたな……俺の責任だ」
従妹「ち、違うっ……」
男「それにさ……お前のことをずっと妹として見てたのは事実だし」
男「今まで必死に、女として見てこなかったのも……正しい」
従妹「…………」
男「逃げてたんだよな、ずっとさ」
男「久しぶりに会ったら、急激に可愛くなって戻って来たお前に……」
男「正直、どうやって対応していいのか、分からなかった」
従妹「……うぅ……」
男「ごめんな……頼りない兄で……」
従妹「…………」
男「本当にごめんな……しっかりしない男で」
従妹「……そ、それって……」
男「俺も覚悟を決めるよ。ここまで想いをぶつけられたなら、真面目になるさ」
従妹「……う、うん……」
男「でも、もう少しだけ時間をくれ」
男「今まで妹として見て来たお前を、きちんと一人の女性として扱うから」
男「それで……答えを出させてくれないか?」
従妹「……ぅう……にぃ、にぃ……」
男「ちょっとだけ時間はかかるかもしれないけど」
男「お前の想いに応えられるだけの……しっかりとした男になるから」
従妹「……うっ……うぅ……ひっく……」
男「泣くなよ……ここから始まるんだからさ」
従妹「だ、だって……うぅ……う、嬉しくてっ……」
男「…………」
従妹「やっ、と……おもいが……通じ、て……うっ……」
男「そうか……」
男「洟垂れで泣き虫のお前が……本当によく頑張ったな」
従妹「……にぃにぃっ!」
ドカッ……。
男「おいおい……急に抱きつくなよ」
従妹「……ぅう……うぇっ……うっ……」
男「でも、もうそれも気にしなくていいんだよな……」
男「……そうだ」
従妹「……っ……ん?」
男「そういえば……今日はしてなかったよな」
従妹「……えっ」
男「……ほら、顔こっち向けろ」
……ちゅ。
男「………ん」
従妹「……んん!?」
男「……はい」
従妹「えっ……もう終わり……?」
男「まだ、付き合うって決まったわけじゃねぇぞ?」
従妹「で、でも……」
男「お互いフリーだし、まあキスぐらいならいいか」
男「なんか、俺がかなり得してるけど……」
従妹「にぃにぃ……はや……」
──んちゅ。
従妹「……ん…んっ」
男「ん……」
男(なんか……胸の奥がすかっとするな……)
男(やっと……これで、対等になれたのかもしれない……)
男(でも、これから……これからが……本当に大事だな……)
男(……こいつのことを本当に女として見れるか……そこが肝心だ……)
従妹「……ひぃひぃ……?」
男「んんっ!」
従妹「ん……あ……」
男(まあ、どうにかなるか……)
男「……とまあ、そういう感じで」
母親「…………」
男「……何か、言いたいことある?」
母親「言いたいことっていうか、今更気付いたわけ?」
男「……は?」
母親「そんなの前から分かってるわよ。従妹ちゃんがあんたのこと好きってことぐらい」
男「マジで?」
母親「見れば分かるじゃない。どう見ても、あれは恋してる顔でしょ」
男「……気付いてなかったのは俺だけか……」
母親「で、どこまでいったの? もしかして、やった?」
男「……どこまでって……」
母親「私、前に言ったわよね。手出したら、殺すって」
男「…………」
母親「あの子が毎日、あんたの部屋に行ってるのは知ってる」
母親「だから、聞くの。どこまでいった?」
男「……うぅ……」
母親「別に殺したりはしないわ。あれは、半端な気持ちで手を出して欲しくなかったから」
母親「あんたがその気なら、特に何もいわない」
男「……おい、それって……」
母親「大体、従妹ちゃんを預かる時に、佐智子さんからそれっぽいことは言われてたの」
母親「『従妹、今回は完璧に男くんのこと落としにいくと思うんで』みたいな」
男「……はぁー」
母親「実の兄妹でもないし、反対みたいなのはしないわ」
母親「男が真面目に付き合うつもりがあるならだけど」
男「…………」
母親「しっかり考えなさい。他所の場合とは全然違う」
母親「何たって従兄妹同士よ? 別れたらそれでおしまいってわけにはいかないんだから」
男「おう……」
母親「それにね、従妹ちゃん、相当優秀みたいよ」
男「…………」
母親「あんたの大学なんて、すかしっぺみたいなもん」
男「す、すかしっぺって……」
母親「それだけ好きなんでしょ。こんなに一途な子なんて普通いないわよ?」
男「…………」
母親「恵まれすぎね。だから、あんたももう少し変わらないと」
母親「何で、従妹ちゃんが好きになったか、ぐらい思い出しなさい」
男「……そんなのあるのかよ……」
母親「これ以上は手助けしないから。あとは自力で頑張れ」
男「……分かった」
母親「……私の子なんだから、期待してるわよ」
男「…………」
男(理由ねぇ……俺のことを好きなる理由……)
男(んー……思い出せねぇ……なんかあったっけ?)
男「あーだめだ……」
男「考えても仕方ねぇか……」
男(なんかの弾みで思い出してくれるといいだがな……)
男(……昔か……昔……)
男(……何だっけ……)
男(……んー……)
男「……駄目だ……何も浮かばない……」
男「…………」
従妹「にぃにぃ、おはようっ」
男「……うっす」
従妹「あれ、元気ないね。あっ……目の下にクマ出来てる」
男「ちょっと昨日は眠れなくてな……」
従妹「……もしかして、私のせい?」
男「んにゃ、ちょっと違うな」
従妹「ふーん……でも、夜更かしは身体に良くないよ」
男「おう、分かってる」
従妹「…………」
男「ん? 朝のキスでもして欲しいのか?」
従妹「ちょっ……い、今はだめっ!」
たたたたっ。
男「何なんだいったい……」
もぐもぐ……。
母親「……聞いたわよ、従妹ちゃん」
従妹「……へっ?」
男「…………」
母親「よく頑張ったわね、えらいわ」
従妹「……あ、はい……どうも……」
父親「ん、何の話だ? お父さんも参加させてくれ」
男「……いいから黙ってろよ」
父親「うるさいわバカ息子」
男「……はぁー……」
母親「今日の二人の予定はどうなってるの? 久しぶりの休日だけど?」
父親「ははっ、待ちに待った休日だなっ」
男「……ええと、まだ考えてない」
従妹「にぃにぃと一緒です」
母親「あら、そうなの」
父親「実は、前々から考えてることがあってなっ」
トゥルトゥルトゥル……。
男「おっ……携帯が鳴ってる」
従妹「にぃにぃ、誰から?」
男「んと……先輩だな……」
従妹「あ、こないだ会った大学の人?」
男「おう……もしもし」
父親「えっと、前から考えたんだがっ、どうだ、キャンプにでも……」
男「あ、はい……え、今日ですか」
父親「みんなで行ったら、楽しいと思うん……」
男「分かりました、飯食べたら向かいます」
従妹「にぃにぃ、何だって?」
男「いや、大学に来いってさ」
従妹「え……なんか、用事でもあるの?」
男「捲し立てられてよくわからんかった……」
父親「えっ……キャンプは?」
男「これから大学行かないと駄目だから俺は無理だ」
母親「あら、それは残念ね」
父親「まあ、男は運が無かったってことで仕方ないな」
父親「悪いが、俺と母さんと従妹ちゃんは今日でかけて……」
従妹「あっ、私もにぃにぃについてく」
男「ん? どうせ、暇だぞ?」
従妹「でも、一緒にいたいし。別に構わないよ」
男「ならいいけど……まあ、邪魔はすんなよ」
従妹「うんっ」
父親「……はい……じゃあ、そういうことで」
母親「お父さん……元気出して……」
父親「せ、折角の……休みなのに……うぅ……」
父親「仕事中なのに……必死に色々考えてたのに……ぐすっ」
男「いや、仕事しろよ……」
ガチャ。
男「ちっーすっ」
先輩「おっ、来たくれたかっ」
男「先輩、急な用って何ですか? 電話では何にも聞けず仕舞いだったんですが」
先輩「ちょっと話があって……そうだ、こないだの彼女さんは?」
男「えっ……あ、はい」
従妹「ど、どうも……」
先輩「……よ、よしっ……うっしっ!」
男「せ、先輩?」
先輩「気持ちが急ぐあまり、彼女さんを連れて来てくれって言い忘れてしまったんだ」
先輩「でも、これでOK。男君、ナイスだよ」
男「えっと……こいつが何か話に関係あるんですか?」
先輩「僕はね……あの後、ずっと考えてたんだ」
男「はぁ……」
先輩「『にぃにぃ』って呼ばれる彼氏がいるのかどうか……」
先輩「一日中……それも、夜の間もずっと眠らないで、考えてたんだ」
男「……えっと……」
先輩「ここまで僕を唸らせた命題も……大学受験以来だ……」
先輩「紙に書いては消し、必死に考え尽くしたっ」
先輩「そして……遂にっ、今日の朝、その真理に辿り着いたんだっ!」
男「…………」
先輩「ズバリ断言しようっ! 男君っ!」
先輩「『にぃにぃ』がまかり通る仲の男女に、恋愛関係などないっ!」
男「…………」
男(……こいつバカだ……)
先輩「ははっ、驚きのあまり言葉も出ないか」
男「それで……先輩はどうしたいんですか?」
先輩「どうしたいもなにも、君は僕を欺いたんだよ? まずはその謝罪が聞きたいな」
男「謝罪ですか……」
先輩「それと、そうしなければならない理由」
先輩「そ、そして……そこにいる、じょ、女性の本当の紹介をして欲しいっ」
従妹「…………」
男「……ちょっと時間下さい」
先輩「構わない。十二分に話しあってくれ」
男「……従妹、ちょっとこっちこい」
従妹「う、うん……」
とことことこ……。
男「で……どうする?」
従妹「やっぱりあの人……変な人だね……」
男「俺も今までは真面目な人だと思ってたんだが……どうやら、病にかかってるらしい」
男(完全に、恋の病だと思うがな……)
従妹「にぃにぃ……どうするの?」
男「……とりあえず、俺に任せろ」
従妹「……信じてもいい?」
男「ああ……昨日の俺とは違うところを見せてやる」
従妹「……にぃにぃ」
先輩「話はそろそろ終わったか?」
男「……はい」
とことことこ……。
先輩「……で、どうなったんだ?」
男「初めに、確かに先輩に嘘をついてたことを認めます」
先輩「ははっ、やっぱりそうだろう。僕を騙そうなんて、君も思い切ったことをする」
男「それは、本当にすみませんでした」
先輩「まあ、いいよ。それで……そ、そこの、女性は一体……?」
男「こいつは俺の従妹で、夏休みの間だけ家で預かってます」
先輩「そ、そうか……従妹なのか……」
男「ただ、先輩」
先輩「……と、なると……ぼ、僕がアプローチしても問題は……」
男「──あるんです」
先輩「……えっ?」
男「こないだ、この子に告白されまして」
先輩「こ、告白……?」
男「今は保留中ですが、正直、他の野郎に渡すつもりは更々ありません」
従妹「……っ」
先輩「そ、そんなっ! 従兄妹同士なんだろっ!? 男君、また君は嘘をついて……」
男「残念ですが、嘘じゃないです」
先輩「う、嘘だっ! 僕は騙されないぞっ!」
男「……だったら、証明してみせますよ……」
従妹「にぃにぃ……?」
ぎゅっ……。
従妹「……あっ……」
先輩「なっ……抱きしめて何を……」
男「先輩には申し訳ないと思ってます……でも」
先輩「……ま、まさか……」
んちゅ……。
男「……ん」
従妹「……あん」
先輩「くっ……躊躇いもなく……目の前でっ……」
男「……んんっ」
男(今日はかなり激しくいくぞっ……)
ぎゅっ。
従妹「……んっ……あっ……」
男「んん……」
先輩「……あっ……なんて熱いんだ……この二人……くっ、くそっ」
男(抱きしめてわかるけど、こいつの身体ってほんと柔らかいな……)
従妹「はっ……んっ……」
男(しかも、必死に俺の強烈なキスについていこうとしてるし……)
従妹「……んっ……あ……んっ」
男(……声も生々しい……やべぇ……ちょっと興奮してきた)
男(俺も負けてられないぞ……唾液を流し込んでやるか……)
にゅちょ……にゅるん……。
従妹「んっ! は……ん……」
男「……んん……」
先輩「……うぅ……なんだよ……こ、こんなの……」
先輩「……はつ、初恋だったのに……これは……キツい……」
従妹「……あっん……ん……」
男「……んっ……」
先輩「……で、でも何だろう……この胸の高まりは……」
先輩「……も、もしかして……自分は……ああ……うっ……」
従妹「…………」
男「どうした、さっきから黙り込んで」
従妹「……いや、にぃにぃが凄い猛烈だったから……」
男「なんだ、意外だったか?」
従妹「予想外だよぉ……あ、あんな……人の前で……」
男「前だってやってるだろ?」
従妹「で、でも……こんなにす、凄いのじゃなかったし……唾液だって……」
男「は、ははっ……あれはかなりやばかったな」
従妹「う、うん……新発見だよ……頭、くらくらしたもん……」
男「また、帰ったらやるか?」
従妹「にぃにぃ……」
男「ん?」
従妹「絶対だよっ! 約束だからねっ!」
男「ははっ、勿論だっ」
男(しかし、帰る直前、先輩が解放された顔だったのが気になるな……何だったんだあれ)
男「案外、用事が早く終わっちまったな」
従妹「家に帰ってもいいよね。みんな待ってると思うし」
男「…………」
男「そうだ」
従妹「……にぃにぃ?」
男「どうだ、これからデートしてみないか?」
従妹「……えっ」
男「こないだは俺がきちんとエスコートも出来なかったしな」
男「挽回もかねて、もう一度仕切り直しなんていいと思うんだ」
従妹「…………」
男「お前はどう思う?」
従妹「う、うんっ!」
従妹「行こっ! 絶対に行こうよっ!」
男「よしっ、そうと決まれば話は早い。どうだ、どこに行きたい?」
従妹「どこだったいいよっ! にぃにぃと一緒なら、どこでも楽しいもんっ!」
従妹「……うわぁ……凄い……」
男「俺も初めて入ったわ」
従妹「……にぃにぃ……でも、これ……」
男「気にするな、お前が好きなものを選べばいい」
従妹「で、でも……値段どれも高いよ?」
男「今までの全部のお返しだよ。こんなんじゃ返せないぐらいだけど、それぐらいさせてくれ」
従妹「う、うん……」
男「どうだ? この辺のネックレスなんていいと思うが」
従妹「……ネックレスかぁ……」
男「何だ? 違うのがのいいか?」
従妹「うーん……」
男「じっくり考えればいい。時間はたっぷりあるんだからな」
従妹「…………」
従妹「あっ……」
男「ん?」
従妹「……これ……」
男「……指輪か」
従妹「う、うん……」
男「これが欲しいのか?」
従妹「……だ、駄目かな……?」
男「そんなことないさ。お前が気に入ったものを買うつもりだからな」
従妹「でも……恋人同士でもないのに、指輪を贈るって……」
男「気にしたら負けだぞ? 言ったもんが勝ちだ」
従妹「…………」
従妹「にぃにぃ」
男「おう、決めたか」
従妹「これ……二つ買おっ」
男「……ん? もう一つ欲しいのか?」
従妹「ううん……私とにぃにぃが一緒につけるのっ」
従妹「ルンルンル~ン♪」
男「えらくご機嫌だな」
従妹「だ、だって……にぃにぃと同じ指輪っ」
男「そうか、そんなに嬉しいのか」
従妹「うんっ! なんか、一緒にずっといるみたいっ」
従妹「これがあれば、離れててもにぃにぃのこと感じられるし……」
男「……確かにそうだな……」
従妹「だから、絶対離さず身につけてないと駄目なんだからねっ」
男「風呂の時もか? 錆びちゃうぞ?」
従妹「でも、銀だから大丈夫なんだよっ。変な成分のお風呂に入らなければ大丈夫っ」
男「ははっ、それは一本取られた」
従妹「ふふっ、にぃにぃっ」
ぎゅっ……。
男「おいおい、一目についちゃうぞ?」
従妹「いいのっ、今日はデートなんだからっ!」
従妹「にぃにぃ、こっちの服とさっきのとどっちがいいかな?」
男「……ええと、前のほうがいいじゃないか……?」
従妹「じゃ、じゃあねっ……次はこっちのやつと……」
男「そろそろ決めようぜ……もう、かれこれ一時間もこのやり取りやってるぞ……」
従妹「だって、いいのがいっぱいあるんだもん」
男「それも分かるけど……もう腹減ってきたって……」
従妹「えー……じゃあ、もう少ししたら決めるよ」
男「……出来るだけ早くな……」
従妹「うんとねー……あっ、あっちのもいいのがあるっ」
たたたたっ……。
男「……なんか、かなり長引きそうな予感がするな……」
従妹「にぃにぃっ! 早く、こっちに来てっ!」
男「お、おう……」
男「…………」
従妹「ご、ごめんね……」
男「……あー……後少しから本当に長かったな」
従妹「だから、さっきから謝ってるじゃん。もう、許してよぉー」
男「別に怒ってないけど……まあ今日はいいさ」
男「今までの謝罪と感謝を込めたのが、本日のデートの意味だからな」
男「姫に振り回されるのも、我慢我慢」
従妹「むぅー……絶対、意地悪だよぉ……」
男「ははっ、よし、飯頼むか」
男「ちなみに、ここはオムライスが評判のお店らしいぞ」
従妹「そうなの? じゃあ、それを頼もうよ」
男「ただ、二種類あってな……どっちにしようか迷ってるんだ」
従妹「ふーん、よくわかんないけど、そんなの悩む必要ないじゃん」
男「えっ? どうしてだ?」
従妹「だって二つ頼んで、分け合いっこすればいいだけだもんっ」
店員「お待たせしました」
従妹「うわぁー……いい匂い」
男「これは……結構うまそうだ……」
従妹「温かいうちに食べよっ! 頂きまーすっ」
男「おう、頂きます」
もぐもぐっ。
従妹「お、おいしいっ」
男「……こ、これは半熟の卵と具が最高のハーモニーを醸し出して……」
従妹「もうっ、そんな解説いらないって」
男「そ、それもそうだ……うまいな」
従妹「うんっ、それに……にぃにぃと食べてるから二倍おいしいよっ」
男「はは、二倍って何の基準なんだ」
従妹「細かいことはいいのっ! すっごくおいしいってことだもんっ」
男「それは良かった。誘った甲斐があるってもんだ」
従妹「うんっ、本当に楽しいっ!」
従妹「にぃにぃ、ほらこっちも食べてみて」
男「おう……って」
従妹「あーん」
男「…………」
従妹「んっ、にぃにぃ! あーん」
男「……ああ、分かったよ……」
ぱくっ……。
従妹「おいしいでしょ?」
男「おう……おいしいな」
従妹「じゃあ、にぃにぃのやつもちょうだいねっ」
男「……まさか」
従妹「勿論、今のをお返しだよ? ほら、にぃにぃの出番っ」
男「……し、仕方ない……あ、あーん」
ぱくっ。
従妹「ふふっ、なんかバカップルみたいだねっ」
男(どうしてこいつは……俺のことを好きになってくれたんだろう)
従妹「にぃにぃ、あーん」
男「……みんな見てるぞ……」
従妹「周りは気にしないのっ、二人だけの時間だもんっ」
男(どうしてこいつは……俺に笑顔を向けてくれるんだろう)
男「……もう、どうにでもなれっ」
ぱくっ……。
従妹「ははっ、豪快な食べっぷりだねっ。さすが、にぃにぃっ」
男「……この野郎……ほらお返しだっ……あーん」
従妹「私は全く恥ずかしくないのだっ」
ぱくっ。
男(どうして……)
男(……どうしてなんだろう……)
男(こんなに楽しそうに……幸せそうに……俺を想ってくれるのは……)
従妹「にぃにぃっ、楽しいねっ!」
──『……嫌……』
男(……えっ……?)
──『……ち、近づかないで……』
男(な、何だコレ……?)
──『……うぅ……ええ……ん……』
男(これは……この声は……?)
従妹「にぃにぃ……?」
男「あ、ああ……」
男「…………」
従妹「どうかした? なんか、表情が変だよっ?」
男「……そ、そうだな……」
男(あの声は……確かに……従妹……?)
従妹「急にどうしたの? なんか、お腹でも痛かったり?」
男「いや……そういうことじゃなくてな……」
男(……そうだ……)
男(あれは……多分……昔の、小さかった従妹の声だ……)
男「…………」
従妹「……にぃにぃ?」
男「……ああ」
男(……何か、思い出しそうだぞ……)
従妹「ちょ、ちょっとどうしちゃったの……?」
男(こうやって……急におかしくなった俺を心配そうに覗き込む、この子も……)
従妹「……なんか変だったらすぐに言ってよ…‥?」
男(確か昔は……)
男(…………)
男「……そうだ……そうだったんだ……」
従妹「……え?」
男「思い出した……思い出したぞっ」
従妹「ちょっと……にぃにぃ……?」
男「小さかった頃……」
男(そうだ……そうだよっ……)
男(今は慕ってくれるこいつも……昔は……)
──『……ち、近づかないで……』
男「…………」
従妹「……えっと……?」
男「……昔さ……お前、俺のこと嫌いだったよな」
従妹「……あ……で、でも何で……?」
男「初めて会ったときも、佐智子さんの後ろにずっと隠れててさ」
従妹「もしかして、にぃにぃ……」
男「俺が必死に遊ぼうって誘ってんのに、ぴぃーぴぃー泣いちゃって」
従妹「……う、うそ……」
男「それでも、ずっとめげずに誘って」
男「でもお前、追いかける俺から一生懸命逃げてさっ、ははっ……」
従妹「……ああ……」
男「仲良くなりたかったのに、お前ってやつはひどいやつだった」
従妹「……にぃにぃ……」
男「でも、ある時、それを見かねた親たちが遊園地に行こうって」
従妹「…………」
男「でも、ずっとお前は佐智子さんの側にいて」
男「なんか悔しくて、それでもまだ仲良くなりたい自分がいて……」
従妹「……う、うん……」
男「そしたらお前、急にいなくなってやんの」
従妹「……あ、あの時は……アイスクリームに目を奪われちゃって……」
男「ははっ、その時から甘いもんが好きだったのか」
従妹「でも……にぃにぃ、思い出したんだ……」
男「ああ……それでな」
従妹「うん……」
男「慌て出した親たちを尻目に……俺は、一人で駆けたんだ」
男「母さんを振り切って……がむしゃらにな」
従妹「…………」
男「憎たらしいお前だったけど、多分泣いてるんだろうなって」
男「寂しがりやで臆病なお前だったから、絶対泣いてるんだろうなって」
従妹「うん……うん……」
男「その姿が何となく浮かんじゃって、居ても立ってもいられなくて」
男「……人ごみの中、小さいからだでその間を走り抜けた」
従妹「……にぃにぃ」
男「そして……見つけたんだ」
従妹「…………」
男「やっぱり泣いてた……小さなお前を……見つけたんだ」
男(……覚えてる……)
男「……覚えてるよ……」
──『……うぅ……ええ……ん……』
男「真っ赤に晴らした目と……視線が合って……」
──『……うぅ……』
男「一瞬、安心した様子だったけど……俺だけだったことに、すぐに戸惑い出して……」
──『……うっ……』
男「それで、泣き虫なお前は……また泣き始めようとしたから」
男「それを止めたくて……女の子を泣かせたくなくて……」
──『えっ……』
男「俺は……手を差し伸ばしたんだ」
従妹「……にぃにぃ……」
男「うん、思い出したよ」
従妹「……ああ……」
男「そうか……そうだな」
従妹「…………」
男「俺のほうが……先に……」
従妹『えっ……』
男『……いいから、手、握れよ』
従妹『……うぅ……で、でも……』
男『ほらっ、遠慮するなっ』
従妹『……っ』
男『……すぐに母さんたちも来るからさ』
従妹『う……うん……』
男『しかし心配したぞ……急にいなくなったりするから』
従妹『ご、ごめんなさい……』
男『いいよ、気にすんな』
従妹『でも……ど、どうして……探してくれたの……?』
男『……だって……俺……』
──……お前のこと好きだから
男「……俺の方が、先に……お前を好きになったんだな」
従妹「……うぅ……にぃにぃ……」
男「ははっ、馬鹿だな……こんな大事なこと忘れてるなんて……」
従妹「……うん……ほんと、馬鹿だよぉ……」
男「そうか……そうだったのか」
男「悩むとか、悩まないとかそんな話じゃなかったんだ」
従妹「……?」
男「前からおかしいと思ってんだよな」
男「お前のこと考えると……なんか、胸の奥がちくちくするんだ」
男「初めは兄として、妹を大事に思う気持ちかな、とか思ってたけど」
男「今なら分かる……確実に分かるさ」
従妹「……にぃにぃ……?」
男「俺は、お前のことが……好きだったんだ」
従妹「ああ……」
男「ずぅーっと昔から……そして、今も……」
従妹「……う……ん……」
男「──俺は、お前のことが大好きだっ!」
従妹「にぃにぃっ!!!」
─本当のラブラブEND─
ういっす、これで終わりです
何だかんだ言って、最後までいけて良かった
保守してくれた人、支援してくれた人、読んでくれた人
本当にありがとうございました!
また今度、どこかで会いましょっ!
元スレ
──現在
母親「……あんた、昼間からだらっとしないっ」
男「うるせーな……久しぶりの実家なんだからいいだろ?」
母親「大学から課題とか用意されてるんじゃないの?」
男「まだ休みは始まったばっかりだ。焦る必要はない」
母親「もうっ、だったら家の手伝いでもしなさい」
男「あーもうっ! 少しぐらい静かにしろって!」
母親「テレビ消すっ!」
男「うわっ! 今、いいとこだったのに……」
母親「ダウンタウンは下品だから、母さん嫌いよ」
男「知らねえよ……」
4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 08:44:27.61 ID:xEaPwzhS0
母親「そうだ、今日から従妹ちゃん我が家で預かることになったから」
男「……うん、あー従妹ね」
男「って、えっ!?」
母親「昨日、佐智子さんから電話がかかってきて、『よろしくっ!』って」
男「いつもながら豪快な人だな……それでオーケしたわけか」
母親「だって仕方ないじゃない。それに、従妹ちゃんとも久しぶりだし」
男「まあ……なんだかんだ言って何年も会ってないからな」
母親「そういうことだから、あんた頼むわよ」
男「はっ? 頼むって?」
母親「ほら、昔、あの子あんたに懐いてたじゃない。だから、色々面倒は任せたわ」
男「いや、ちょっと待て。あの頃はあいつも小さかったけど、今はもうそんな歳じゃないだろ?」
母親「……そうね、ガン黒ギャル娘になってたりするかも……」
男「あいつに限ってそんなことは……って、あいつ、もう高校生か」
母親「モデルの佐智子さんの血を受け継いでるから、相当美人さんになってると思うわよ」
6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 09:00:19.05 ID:xEaPwzhS0
ピンポーン。
母親「噂をしてたら、なんのそのってね」
男「えっ? もう来たわけ?」
母親「昼のまでには来るって言ってたから、そうじゃない?」
男「ちょ、ちょっと待てよ……まだ心の準備が……」
母親「はいはい、そんな時間はないわよ。ほら、二人で出迎えましょう」
男「……お、俺は遠慮しとくよっ……」
母親「今更になって、なに恥ずかしがってんの。待たせちゃ悪いから急ぐわよっ」
男「ひ、引っ張るなっ、押すなっ! 俺はいいって言ってんだろっ!」
母親「ハーイ、今、開けるわねーっ」
ガチャ……。
7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 09:06:05.44 ID:xEaPwzhS0
従妹「……あっ、どうも……」
母親「…………」
男「…………」
母親「……い、従妹ちゃん……?」
従妹「そ、そうです。お久しぶりですっ……」
男(うわぁ……めっちゃ美人になってる……)
母親「一瞬、芸能人が来たのかと思ったわ……これまた綺麗になっちゃってっ」
従妹「えっ……いや、そんなことないです」
母親「いや、とっても可愛いわっ。ほら、男なんて、驚きのあまり放心状態よ」
男「ちょっ、ババア余計なこと言ってんじゃねえよっ」
じぃー。
男(何だこの視線……見られてる……確実に見られてるっ!)
8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 09:09:59.79 ID:xEaPwzhS0
従妹「……にぃにぃ?」
男「お、おうっ……」
従妹「…………」
男「ひ、久しぶりだなっ! 元気してたかっ!」
従妹「……にぃにぃだぁ……」
男「えっ?」
従妹「にぃにぃっ!」
たたたたっ……ぽんっ!
男「うおっ!」
従妹「会いたかったよぉっ、 にぃにぃ!」
男「おいっ、抱きつくなってっ……」
10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 09:16:34.61 ID:xEaPwzhS0
ぎゅっ。
従妹「やだっ! もう少しこうしてるもんっ!」
男「は、ははっ……」
母親「あらあら、お暑いコト」
従妹「この匂い……ほんとだぁ……にぃにぃだぁ……」
男「汗臭いからあんま嗅いでくれるな……汚いぞ?」
従妹「汚くなんてないもんっ、にぃにぃの匂いだもんっ」
男(しかし、身体は大きくなっても、全然変わってねぇな……)
……ぽよんっ。
男「……えっ?」
……ぽよんっ、ぽよんっ。
男(なんだこれ……ぽよんっ?)
従妹「にぃにぃ……」
男「あっ、うん……」
男(……ま、まさか……こ、これは……)
14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 09:39:27.99 ID:xEaPwzhS0
従妹「今日からよろしくお願いしますっ」
母親「いいわよ、そんに畏まらなくて」
男(……ぽよん……)
母親「佐智子さんはいつぐらいまで海外なの?」
従妹「多分、この月はずっと……」
母親「あら、結構忙しいのね。でも、学校が休みの間はずっとここにいていいから」
従妹「すみません、お世話になります」
男(……ぽよん……ぽよん……)
従妹「……ん?」
男「…………」
18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 09:44:34.49 ID:xEaPwzhS0
従妹「にぃにぃ、さっきからどうしたの?」
男「……あ、うん……」
男(昔と変わらない、あどけなさが残る表情)
男(にもかかわらず、ところどころに美人の風格が……)
男(そ、そして……こ、この……)
従妹「……?」
男(──なんなんだぁこの胸はああああああああっ! たゆんたゆんだぁっ!)
男「け、けしからんっ」
母親「……あれ、あんた鼻血出てるわよ」
従妹「……あ、ほんと……」
男「……ちょっとのぼせちゃったかな? てへっ!」
母親「…………」
34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 10:34:35.43 ID:x+zEJKiC0
母親「従妹ちゃんも着いたことだし、そろそろ買い物にでも行ってこようかしら」
従妹「あっ、私も行きますよっ」
母親「いいのいいの、あなたはここでゆっくりしてなさい」
従妹「で、でも……」
母親「ほら、積る話もあると思うし……ねっ?」
従妹「……は、はい……」
男(頬を赤らめてこっちを見ないでくれ……)
母親「ふふ、では行ってくるわ」
従妹「すみません、お手伝いできなくて……」
母親「そんなの気にしなくていいから。あと、男ちょっとこっちに来なさい」
男「はっ?」
母親「いいから、早くっ」
男「な、何だよ……」
36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 10:40:14.06 ID:x+zEJKiC0
母親「……この辺まで来れば向こうには聞こえないわね」
男「ババア、俺は買い物には行かんぞ」
母親「何、馬鹿な勘違いしてんのよこの子は」
男「だったら何だ、早く用件を言え」
母親「……従妹ちゃん、とても綺麗になったわね」
男「あっ? ……ま、まあ、そこそこだろ」
母親「とっても可愛いし、それに身長も伸びたわ」
男「……俺の方がまだ高いけどな」
母親「それに……発育いいし」
男「…………」
母親「あんた、さっきからあの子の胸ばっかり見てるでしょ」
男「なっ……み、見てねぇしっ」
母親「嘘おっしゃい。そういう視線には女は敏感なのよ」
38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 10:47:12.84 ID:x+zEJKiC0
母親「でも幸いなことに、あの子はまだそれに気付いてないわ」
母親「でもそれも時間の問題。だから気付かれる前に、やめなさい」
母親「さもないと、大好きなにぃにぃから変態の糞野郎に格下げよ」
男「糞野郎って……」
母親「それと、この際だからはっきり言っとくわ」
男「な、何だよ……」
母親「あんた、あの子に少しでも手を出したら……」
母親「──実の子でも殺すっ」
男「ひぃっ」
母親「……それでは、行ってくるわ」
男「…………」
39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 10:51:39.73 ID:x+zEJKiC0
男「……はぁ……」
従妹「あっ、にぃにぃ……って、あれ? 顔、真っ青だよ?」
男「ちょ、ちょっとな……」
従妹「それで、おばさん、何か言ってた?」
男「……ええと、仲良くしなさいとか、そんなところ」
従妹「あ、うん……」
男「ふぅ……とりあえず、お茶でも飲むか」
従妹「私、コップ持ってくるねっ」
男「お、おうっ」
男(くそ……なんか、気恥ずかしくてうまく会話できねぇな……)
45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 11:19:12.84 ID:x+zEJKiC0
男「…………」
従妹「…………」
ズズッ……。
従妹「……こうやって会うの、久しぶりだね」
男「そうだな、何年ぶりだろうな」
従妹「にぃにぃ、おばあちゃんのとこに顔出さないんだもん」
男「それは……確かに俺が悪かったかもな」
従妹「……変わったね、にぃにぃ」
男「そうか? もしかして、ちょっと格好良くなってたり?」
従妹「うん、前より格好いいよっ」
男「……あ、うん……」
男(なんだよ……調子狂うぜ……)
46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 11:25:29.39 ID:x+zEJKiC0
従妹「にぃにぃはもう大学生だよね。どう、新しいキャンパスライフは?」
男「思ってたほどのものじゃないけど、色々楽しいよ」
従妹「いいなぁ……早く私も大学に行きたい」
男「その前に厳しい受験戦争が待ってるからな」
従妹「やめてよぉー、そういうのいらない」
男「ははっ、ちなみにどこ目指してるんだ? もしや、東大とか言わねえよな?」
従妹「うんとね……にぃにぃと同じとこ」
男「……え」
従妹「私の頭じゃ、ちょっと難しいかもしれないけど、頑張るつもり」
従妹「そうすれば、にぃにぃが四年の時に私一年だよ。一緒に通えるねっ」
男「そ、そうか……」
61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 12:55:02.78 ID:x+zEJKiC0
従妹「……ねぇ、にぃにぃは、彼女いる?」
男「か、彼女?」
従妹「大学生になったし……それとも高校から……とか」
男「……残念なことにそういう相手はいないな」
従妹「ふーん、意外だぁ」
男「もしかして、彼氏でも出来たか?」
従妹「にぃにぃと同じ。私もいないよ」
男「そんなこと言っても、結構お誘いはあるだろ?」
従妹「うーん、でも、なんか違うんだよね」
従妹「好きだっ!っていう感情が生まれないっていうかなんていうか……難しい」
男「確かに、恋愛は難しいよな」
62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 13:00:24.12 ID:x+zEJKiC0
母親「てなわけで、夕飯よっ!」
従妹「わーいっ」
男「なんなんだ、その説明口調は……」
母親「今日は従妹ちゃんが手伝ってくれたから、結構早く出来たわ」
従妹「手伝いってよりも、明らかに邪魔だったと思います……」
母親「そんなことないわっ。ほら、男」
男「何だよ?」
母親「この中のどれかが従妹ちゃんが作ったハンバーグよ。ほら、好きなの選んで」
従妹「えっ……おばさん……」
男(見るからに一つ、形が崩れてるやつがあるな……)
63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 13:05:42.23 ID:x+zEJKiC0
男「……これにするわ」
従妹「にぃにぃ、でもそれ……」
男「いいんだよ、なんか旨そうだし。ほれ、お前も選べ」
従妹「うん……ありがと」
母親「いいわ、この初々しい感じ♪ なんか、娘が一人出来たみたいっ」
男「馬鹿言ってねぇで、早くご飯よそえよ」
母親「息子はこれだからね……もうやんなっちゃうわ」
『ただいまぁーっ!』
母親「あら、お父さん帰ってきたみたい」
男「え? もう親父帰ってきたの?」
64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 13:10:07.22 ID:x+zEJKiC0
父親「おっ、従妹ちゃん、久しぶりっ!」
従妹「どうも、お邪魔してます」
父親「母さんに聞いてたけど、ほんと別嬪さんになったねぇ……」
従妹「いえ……そんなことないです」
父親「はは、しかし、おぉーいい匂いがするなあ」
男「うわっ、変態だよ……」
父親「ち、違うわ、馬鹿息子っ、飯のいい匂いって意味だっ」
男「取り繕っても無駄だぜ」
父親「うるさい。母さん、さっそく私も食べたい」
母親「……ごめんなさい」
父親「へっ?」
66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 13:14:46.20 ID:x+zEJKiC0
母親「こんなに早く帰ってくるとは思わなくて、お父さんの分用意してないわ」
父親「あれ? 今日は従妹ちゃんも来たし、早く帰るって言わなかったっけ?」
母親「……ごめんなさい、完全に忘れてた」
男「くくっ、ざまあ」
父親「そ、そんな……」
従妹「あっ、私の分でよければお先に」
父親「いやいや、今日のメインは従妹ちゃんなんだから」
父親「おい男、お前の分を食わせろ」
男「は? 何でだよ」
母親「お父さん、それも無理よ……」
父親「何で? 先に食べちゃ駄目なのか?」
母親「男の分は今日は従妹ちゃんが作ったものなの」
68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 13:20:15.98 ID:x+zEJKiC0
父親「なにっ!? 従妹ちゃんが作っただとっ!?」
従妹「下手っぴなんです……すみません」
父親「いやいやっ! 従妹ちゃんの初手料理なんてっ! 逆にそれは食べたいっ!」
男「誰も初だとは言ってねぇよ」
父親「やかましいわっ! これは何としてもゲットしないとな」
母親「……お父さん」
従妹「…………」
父親「ん? どうした?」
母親「それは従妹ちゃんが男のために作ったの……だから」
父親「なあ、従妹ちゃん、おじさんが食べてもいいよね?」
男「ほんと話を聞かねぇオヤジだな……」
従妹「……え、ええと」
69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 13:25:44.71 ID:x+zEJKiC0
従妹「やっぱりそこは……にぃにぃに食べてもらいたいです……」
母親「ふふ、可愛い」
父親「よ、良かったぁ、にぃにぃって勿論、おじさんのことだよねっ」
母親「お父さん、悪あがきはよして下さい」
父親「いやっ! 嫌だっ! 俺は従妹ちゃんの手料理が食べたいっ!」
男「……もぐもぐ」
従妹「あっ……」
父親「ああああああああっ! この馬鹿息子おおおおっ!」
男「うん、結構おいしいぞっ」
従妹「ほ、ほんと?」
男「見た目はちょっと崩れてるけど、味は上出来だぜ」
従妹「や、やったぁ……」
父親「そ、そんなぁ……くっ……くそぉっ……」
71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 13:41:12.69 ID:x+zEJKiC0
男「はぁ……ほんと糞親父には困ったもんだぜ……」
男「……しかし、従妹……可愛くなってたよな……」
男「しかも……きょ、巨乳なんて……」
男(抱きつかれた時、柔らかかったなぁ……)
コンコン。
男「ご、ごほんっ」
従妹『にぃにぃ、入ってもいい?』
男「あ、うん……」
ガチャ。
従妹「うわぁー昔と全然変わってないねー」
男「男の部屋なんてみんなそんなもんだ」
73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 13:45:02.09 ID:x+zEJKiC0
男「それで、一体どうしたんだ?」
従妹「うん、おばさんがお風呂湧いたよーって」
男「あーそういうこと。分かった、今から入るわ」
従妹「うん、じゃあ私も用意してくるね」
男「おうっ、それじゃ」
従妹「うんっ、先入ってて」
ガチャ。
男「……ふむ、一番風呂か」
男「…………」
男「……って、あれ? 私も用意……? 先入ってて……?」
男「ま、まさか、嘘だろ……?」
75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 13:49:30.86 ID:x+zEJKiC0
たたたたたたっ。
男「おい、ちょっと待てっ!」
従妹「え? 何、どうしたの?」
男「お前、もしかして、俺と一緒に風呂入るつもりじゃねぇよな?」
従妹「ははっ、にぃにぃ、冗談キツい」
男「そ、そうだよな……俺も早とちりして馬鹿だな……」
従妹「そうだよー、一緒に入るに決まってるじゃんっ」
男「決まってるよなっ……って、ええええええええっ!」
従妹「何驚いてるの? 昔も一緒に入ってたよね?」
男「いや、それは昔の話であって……今は、その、身体も大きくなったし……」
従妹「私は気にしないよ?」
男「俺が気にするよっ! この歳で一緒とか、そんな話聞いたこともねぇ!」
79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 13:55:17.06 ID:x+zEJKiC0
母親「……そんなことが」
男「この俺も、まさかの汗だくだぜ」
母親「あの子、危ないわね……まだ無垢なのかしら」
男「分からんが、『にぃにぃ、何言ってんの?』みたいな顔はされた」
母親「とりあえず、あんたを褒めとくわ。よく我慢したわね」
男「当然だろっ! そんな……あ、あの……」
母親「大きいおっぱいみたら、冷静でいられないと」
男「そうそう、大きなおっぱいが……って、誘導尋問やめろっ!」
母親「うーん、私からも一応言っとくわ。多分、気休めにもならないと思うけど」
男「そ、そんな……このままじゃ、時間の問題だぞ……」
母親「急に入ってこられたりしたら、どうしようもないものね」
男「頑張れ、俺……頑張れ、俺の理性……」
81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 14:00:24.61 ID:x+zEJKiC0
コンコン。
男(くっ……ついに来たか……)
従妹『にぃにぃ、わたしー』
男「お、おう、今開ける……」
ガチャ。
従妹「……で、分かってるよね?」
男「あ、ああ」
従妹「久しぶりに一緒にお風呂に入るの楽しみにしてたのに……」
従妹「にぃにぃが、どうしてもっ!って言うから、やめたんだよ?」
男「ご、ごめん……」
従妹「取引条件……きちんと、覚えてる?」
83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 14:03:35.81 ID:x+zEJKiC0
妹「……風呂に一緒に入らない代わりに?」
男「何でも言うことを一つ聞く……だろ?」
従妹「うん、正解っ」
従妹「さーて、何してもらおうっかなぁ♪」
男「お、お手柔らかに頼むよ……」
従妹「どうかなぁー、うーん」
男「……何すればいい?」
従妹「…………」
じぃー。
男「ん?」
男(なんだ……? 俺の顔見て……って、あれ、下の方……?)
86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 14:07:52.96 ID:x+zEJKiC0
従妹「……にぃにぃって彼女いないんだよね」
男「ああ、いないけど」
従妹「……ふーん」
男「な、何だよ……今日、聞いただろ……?」
従妹「私もー、彼氏いないんだー」
男「いや、だから、それも聞いたって……」
従妹「でもね……」
男「え?」
従妹「恋愛に興味がないってわけじゃないの。色々、友達の話とか聞くし」
男「そ、そうなのか……」
従妹「それでね……私も少しだけ経験してみたいっていうか……」
男(……この視線……ま、まさか……)
89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 14:12:09.81 ID:x+zEJKiC0
従妹「……にぃにぃ、キス……してみない?」
男「…………」
男(うおおぉぉぉぉぉっ! やはりぃぃぃぃぃこの流れかぁぁぁぁぁ!)
従妹「ねっ? ちょっとだけ経験してみようよっ」
男「い、いや……ちょっと待って……」
従妹「ほら、にぃにぃも今は彼女さんいないみたいだし、私もフリーだし」
従妹「誰も困らないよ、ねっ? ノープロブレムっ」
男「問題ありまくりだよ……」
従妹「にぃにぃ、もしかして……約束破るの?」
男「何でもするとは言ったが……それは、ちょっとさ……」
従妹「……嘘つき……」
男「うっ……」
92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 14:17:36.86 ID:x+zEJKiC0
従妹「ねっ? ほんの少しだけだからっ」
男「……うぅ……で、でも……」
従妹「家族がチュッってやる感じだよっ、よくあるでしょっ?」
男「……た、確かに家族同士なら……」
男(妹が兄にキスするようなもんだ……な、何の問題もなな、ないかなっ)
従妹「……ん」
男「え……」
従妹「んんっ!」
男(目瞑って唇を突き出してるっていうことは……そ、そういうことなのかっ!?)
男「まさか……お、俺からいくのっ?」
従妹「……ん」
男「……ええ、ええと……ちょっ、ちょっと待って……心の準備が……」
93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 14:27:07.47 ID:x+zEJKiC0
従妹「……にぃにぃ?」
男「うっ……」
男(駄目だっ……男なら覚悟を決めろっ! ここは、いくしかないっ)
男「……っ」
男(で、でも、このままいくと鼻がぶつかっちまうぞ? ど、どうすれば……)
従妹「……早くぅ……」
男(ちょっと顔を横にずらして……)
男(うおおおっ!)
ちゅっ。
従妹「……ん」
男「……ん」
男(うわぁぁ……やべぇ……唇やわらけぇよぉ……)
男(でも、これいつまで続ければ……っ)
95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 14:30:56.87 ID:x+zEJKiC0
男「……んん」
従妹「……ん」
男(息が……息が……も、もう限界……)
男「……ふっ……」
従妹「……あっ」
男「はぁーっはぁっーはぁっ!」
従妹「……ど、どうしたの?」
男「い、息……さ、酸素が足りない……お前は、大丈夫かっ?」
従妹「え? 鼻で息してたけど」
男「あっ……そうか……」
男(……俺は、なんて馬鹿なんだ……)
96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 14:35:05.13 ID:x+zEJKiC0
従妹「しかし……ね?」
男「……ど、どうした?」
従妹「初めてのキス……にぃにぃとしちゃったっ」
男「……う、うん」
男(実は、俺も初めてだ……)
従妹「まだ、胸ドキドキいってるよ……」
男「…………」
従妹「にぃにぃもドキドキしてる?」
男「お、おう……」
従妹「どれどれ……」
ぴたっ……。
男「ちょ、ちょっとやめろってっ……」
男(こいつ……俺の胸に頭を寄せきたよ……)
100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 14:38:01.65 ID:x+zEJKiC0
従妹「ほんとだぁ……ドキドキいってる」
男「わかったなら、も、もういいだろっ」
従妹「うん……」
男「……はぁはぁ……」
従妹「ほら、にぃにぃも確認してみて」
男「えっ……」
従妹「私の胸の音……ね?」
男「……いい、いいよっ……」
従妹「いいからっ」
ぎゅっ。
従妹「どう? 心臓がドクンドクンいってるでしょ?」
男「うわあ……」
男(お、おっぱいっ! 顔に当たってるっ、おっぱいぃぃっ!)
101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 14:43:14.10 ID:x+zEJKiC0
従妹「どう、聞こえる?」
ぽよんっ……。
男「う、うん……」
男(や、柔らかい……な、何なんだこれ……)
従妹「ドクンドクンって」
ぽよんっぽよんっ……。
男「う、ん……」
男(……駄目だ……これは、やばいぃ……やわらか過ぎるぞぉ……)
従妹「すごいね……身体って」
ぽよんっぽよんっぽよんっ……。
男「す、凄いな……」
男(ああぁぁ……もう、だめぇ……たゆんたゆんだぁぁ……)
104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 14:46:07.73 ID:x+zEJKiC0
従妹「じゃあね、にぃにぃ」
男「…………あ、ああ」
従妹「今日は、ありがとね。おやすみっ」
ガチャ……。
男「…………」
男「……あれ……」
男「……俺……キス」
男「従妹と……キスしちゃったんだよなぁ……」
男「……それで……」
男「……ああ」
男「や、柔らかかったぁ……」
男(……駄目だ……もう今日は寝よう……)
男(おやすみ、なさい……)
175: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 23:43:06.29 ID:x+zEJKiC0
トゥルトゥルトゥル……。
従妹「にぃにぃ、携帯鳴ってる」
男「……あ、ほんとだ」
男「もしもし……」
……………。
従妹「何の電話だったの?」
男「いや……今から大学来いって……」
従妹「え? にぃにぃの大学?」
男「サークルの先輩が、俺に書いてもらいたい書類があるんだって」
従妹「それじゃあ、今から行くの?」
男「ああ、めんどくさいけど、そうなる」
従妹「ふーん……なら、私もついてっていい?」
男「え?」
178: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 23:48:13.34 ID:x+zEJKiC0
従妹「うわぁ……ここがにぃにぃの大学かぁ」
男「そんなに綺麗なもんじゃないだろ」
従妹「ううんっ、しかも、高校に比べるとでっかいっ」
男「そうだなぁ、キャンパスは結構広いほうかも」
従妹「早く中に入ろっ! でも、私入っても大丈夫かな?」
男「全然大丈夫。高校とは違って、誰でも入れるのが大学だからな」
とことことこ。
従妹「道行く女の人……みんな、綺麗だね」
男「いや……」
男(お前の方が何倍も綺麗だろ……)
従妹「いいなぁ……早く私も大学生になりたい」
男「焦らなくても、すぐになれるさ」
182: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/02(土) 23:54:42.01 ID:x+zEJKiC0
ガチャ……。
男「おはようっす」
先輩「あっ、男くん。急に呼び出して悪いね」
男「いや、全然構わないですよ」
先輩「今度の学園祭に必要な書類があって、本人に書いてもらわないと駄目なんだ」
男「あー、そういえばそんなこと言ってましたね」
先輩「これがめんどくさくて……とりあえず、その席に座って……」
先輩「って……あ、あれ?」
従妹「……にぃにぃ?」
男「そうだ先輩、この子……」
先輩「……えっ……なにこれ……か、可愛いすぎる……」
男「先輩?」
193: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 00:05:33.87 ID:gnuypYpN0
先輩「お、男君っ、この子はっ!」
男「あ、はい……」
男(どんな女の告白にも動じない先輩が……なんだこの慌てぶりは……)
従妹「…………」
先輩「芸能人の子かっ? ちょっ、ちょっと紹介してくれっ」
男「いや、実は家のしんせ……」
従妹「にぃにぃっ」
男「えっ? 何っ?」
従妹「いいからっ、ちょっとこっち来てっ」
男「な、何だよ……引っ張るなって……」
194: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 00:08:53.72 ID:gnuypYpN0
従妹「……ここまで来れば聞こえないかな?」
男「何だよ、こんな内緒話みたいな真似、先輩に悪いだろ……」
従妹「これ、マズいよ……」
男「は? マズいって何が?」
従妹「私の勘だけど、ちょっと嫌な感じする」
男「嫌な感じって……先輩が?」
従妹「うん……だから、正直に言うのやめて」
男「じゃあ、どうすればいいんだよ……」
従妹「そうだっ、彼女ってことにしようよ」
男「お前が俺の彼女っ!? いや、それ無理ないか?」
従妹「いいからっ、ほら、そういうことでお願いっ」
男「お、おい……」
196: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 00:12:37.12 ID:gnuypYpN0
先輩「お、男くん、早く紹介してくれっ」
男「あ、ええと……ですね」
先輩「なんだっ、君にしてははっきりしないなっ!」
男「いや……その」
従妹「にぃにぃ……」
男「わ、分かったよ……」
先輩「……にぃにぃ? ってことは、兄弟か何かか?」
男「いや、先輩……」
男「これ、俺の……彼女、なんです」
先輩「…………」
先輩「あっ……そ、そうなんだぁ……」
197: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 00:15:54.19 ID:gnuypYpN0
先輩「男君に……こんな、可愛い彼女がいるなんて……」
男「あー……先輩、まあそういうことなんです」
従妹「…………」
先輩「しかし、待てよ‥‥‥」
男「え?」
先輩「確か君のことをにぃにぃって呼んでたよな……」
男「そ、そうですね」
先輩「ここから考えるに……君達……本当に恋人か?」
男(……大学きっての秀才と呼ばれる先輩を欺くのは難しいか?)
202: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 00:18:43.09 ID:gnuypYpN0
従妹「恋人ですよ」
先輩「あ、うん……で、でも、恋人同士の呼び方としてはちょっと……」
従妹「なんかおかしいところありますか?」
先輩「いやね……にぃにぃってのはさ、うん、微妙だよね……」
従妹「…………」
男(もう隠すのは無理だろ……変態プレイみたいになってるよ……)
先輩「……男君、その辺実際どうなんなんだ」
男「じ、実は……」
従妹「別にいいじゃないですか、にぃにぃでも」
先輩「いや、そうなんだけど」
従妹「そんなに疑うなら、いいです。ここで証明しますからっ」
先輩「し、証明……?」
204: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 00:22:51.85 ID:gnuypYpN0
従妹「にぃにぃ、ほらっ」
男「はっ? ほらって……」
従妹「……ん、んん」
男(……ま、まさか……!?)
先輩「…………」
じぃー。
男(く、くそっ……先輩、がん見じゃねぇか……)
男(何とか逃げれないものかっ……こんな、人の目の前とか……)
従妹「……にぃにぃ」
男(あーもうっ! どうにでもなれっ!)
ちゅっ……。
207: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 00:26:40.57 ID:gnuypYpN0
従妹「……あ」
男「ん……」
先輩「……えっ……」
従妹「んん……」
男(何だ……今日は、やけに積極的だな……)
男(てか、何だかんだ言って、今日で四回目のキスだよ……)
従妹「ん……」
男「……んん」
先輩「もう、分かった……二人はれっきとした恋人同士だ……」
先輩「だから、これ以上はやめてくれぇ……俺の……お、俺の心が……」
先輩「たのむからぁぁぁ、もう見せつけないでくれぇぇぇぇっ!」
219: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 01:06:07.75 ID:gnuypYpN0
父親「おお、今日はカレーか」
男「……最近帰ってくんの早くね?」
父親「うるさいっ、従妹ちゃんがいるんだから当然だろっ!」
母親「じゃあ、お父さん、ご飯よそってね」
男「なんだかなぁ……仕事大丈夫なのか……」
従妹「にぃにぃ、今日も私手伝ったんだよっ」
男「おおそうか、頑張ってるな」
従妹「ふふ、少しずつ、包丁の使い方とかわかってきたの」
母親「従妹ちゃんの上達ぶりは目を見張るものがあるわ。良いお嫁さんになるわね」
従妹「だってぇー、にぃにぃ」
男「お、俺にふるなよ……」
父親「か、かわいい子だなぁほんとに……」
男「親父……手元狂って、ご飯、地面に落ちてるぞ……」
220: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 01:10:27.70 ID:gnuypYpN0
がららら……。
男「ふぅ……良い湯だなぁ……」
男「しかし、今日の先輩……ちょっと可哀想だったな……」
男「もしかしたら、遅咲きの初恋だったりして……ああ、悪いことした……」
男(……ってしてると、もうすぐだな……)
従妹『にぃにぃ、私も入っていい?』
男「だめっ! 絶対、だめっ!」
従妹『えー、今日はいいじゃんっ、一緒に入ろうよぉーっ』
男「あーもうっ、何度言っても分からん子だなっ! 駄目なものは駄目なのっ!」
従妹『ぶーぶーっ……じゃあ、にぃにぃ、いつもの約束だよっ?』
男「……わ、分かったよ……」
従妹『うん、上がるの待ってるからっ』
男「……はぁ……母さんに知られたら、確実に殺される……」
222: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 01:19:30.90 ID:gnuypYpN0
従妹「あっ、にぃにぃ」
男「これから、また俺の部屋か?」
従妹「もちろんだよっ、約束だもんねっ」
男「……そういうことだよな……」
母親「あれ? 二人ともどうしたの?」
男「……あっ」
従妹「あーおばさんっ」
母親「もしかして、今から二人で男の部屋?」
男「あーうん……まあ、そう」
従妹「大学受験に向けて、勉強教えて貰ってるんです」
母親「そういうこと。ほんと兄妹みたいに仲良いわね」
従妹「へへっ」
男「…………」
224: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 01:23:29.71 ID:gnuypYpN0
男(何が良い兄妹だ……こんなこと……)
妹「んー」
男(こんなことやってる家なんて……日本中どこにもねぇよ……)
妹「にぃにぃ、早くぅー」
男(ぐずぐずな流れで……これも四日目……)
妹「まだなのぉー……んーっ」
男「……はいはい……」
ちゅっ……。
妹「ん……」
男「……ん」
男(どうすんだよ……これ……)
男(もう後にも引けなくなってる……うわぁ……柔らかい……)
226: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 01:27:38.26 ID:gnuypYpN0
従妹「ふふっ、もうなんか慣れたもんだね」
男「まあ、こう何度もやってればな」
従妹「でも、心臓はバクバク言ってるよ? にぃにぃも?」
男「そりゃ、勿論だ……」
男(高血圧だったら死んでるよ……)
従妹「へへっ、お揃いだー」
男「んじゃ、また明日な」
従妹「……うん、そう、だよね」
男「どうした? まだ、なんかあるのか?」
従妹「ちょっとさ……私、考えてることあるんだ」
男「……まさか、本当に勉強教えて欲しいとか?」
従妹「それもいいけど、違うよ」
229: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 01:32:59.63 ID:gnuypYpN0
従妹「私ね、ちょっと友達に聞いたことあるんだ」
男「なんか嫌な予感がする……その友達は今後、付き合いを考え直したほうがいい」
従妹「それでね、キスってあるじゃん」
男「だから、今さっきやったやつだろ」
従妹「うん、でもキスはキスでもレベルがあるんだって」
男「レベルねぇ……」
従妹「初心者は、唇と唇をくっ付けるだけ」
男「……ああ」
男(……ま、まさか……)
従妹「でも、上級者になると、舌をお互いに入れ合うだとか、何とか」
男「……で、ディープキス……」
従妹「そうそう、それっ。なんか、卑猥だよね」
231: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 01:37:18.67 ID:gnuypYpN0
従妹「初めそれを聞いた時は、なんか気持ち悪いなぁって、思ってたんだけど」
従妹「今はちょっと大丈夫かなって……」
男「い、いやいやっ! それは全然大丈夫じゃないでしょっ!?」
従妹「にぃにぃが相手なら……私、全然いいかも……」
男「そ、その気持ちは有り難いが、やはりな……」
従妹「駄目かな? にぃにぃ……」
男「そういうのは、恋人同士がやるもんだから……ちょっと……」
従妹「私のこと嫌い? 舌とか入れるのは、汚い?」
男「そ、そういうことじゃなくてさ……やっぱり倫理的っつうか、道徳心っていうか」
従妹「お願いだよ、にぃにぃ。私に他に相手とかいないから……」
男「……従妹……」
従妹「一生のお願いだと思って……ねっ?」
男「…………」
234: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 01:54:19.70 ID:gnuypYpN0
従妹「に、にぃにぃ……私は、目瞑って待ってればいいの?」
男「い、いや、俺も初めてだからよく分からん」
従妹「……にぃにぃも初めてなんだ……」
男「お、おう」
従妹「ふふっ、なんか嬉しいなぁ……ん? でもどうしてだろ?」
男「と、とりあえずっ……舌を絡めるんだよな……」
従妹「う、うん……」
男「ん、んじゃ、舌出して……」
従妹「えっ? キスしてからじゃないの……?」
男「そうなの? 俺、わかんねぇよ……」
従妹「んー……あんま詳しく聞いてないからなあ……」
従妹「と、とにかく、にぃにぃに任せるっ」
237: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 01:58:35.54 ID:gnuypYpN0
男「それじゃあ……舌、出して……」
従妹「う、うん……」
男「……ああ……」
男(うわぁ……なんか、この光景エロいぞ……)
従妹「ほのはは?」
男「お、おう、そのまま……んで、俺も舌出して……」
男(そんで、顔を近づけて……えっ?)
従妹「……うぅ……」
男(やっぱりこれおかしいぞっ……舌出すのは、キスしてからじゃねぇか……!?)
従妹「……?」
男(くそっ……でもここからじゃ、後に引けねぇっ! なんとか強引に行くしかないっ!)
男「……いくどぉ……」
従妹「んっ……」
243: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 02:14:29.40 ID:gnuypYpN0
ぺろ……。
妹「……んっ」
男「……あ」
ぺろ……ぺろ……。
妹「……んっ、んっ……」
男「……あっ……」
男(うおおおおおぉぉぉぉぉっ、なんだこの変態プレイはぁぁぁぁっ!)
男(仕方ねぇ……このままキスに持ち込むぞっ)
ぶちゅっ……。
妹「あっ……んんっ」
男「…………」
男(なんだこれ……未知の世界か……)
男(従妹の口内温かい……うわぁ……涎がすげぇ出てくる……)
246: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 02:16:28.42 ID:gnuypYpN0
男「……んっ」
男(もうこれ以上はやばいっ!)
従妹「……あっ……」
男「……はぁ……はぁ……」
従妹「す、凄いね……」
男「お、おお……」
従妹「なんか、エッチぽかった……」
男「う、うん……」
従妹「口の中が……なんか、お、犯されてるみたいで……」
男「……犯されてるって……」
従妹「うわぁっ駄目だ……恥ずかしい……」
男「……恥ずいな……」
248: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 02:18:49.87 ID:gnuypYpN0
従妹「わ、私……もう部屋に戻るねっ!」
男「そ、そうだなっ、もう遅いしなっ!」
従妹「お、お休みっ!」
男「また明日っ!」
男「…………」
……ガチャ。
従妹「にぃにぃ……?」
男「あっ、うん……」
従妹「また……今度、やろうねっ」
男「……っ」
従妹「ば、ばいばいっ!」
……ガチャン。
男「…………」
男「うおおおおおおぉぉぉぉっ! やっちまったああああぁぁぁ!」
249: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 02:19:42.64 ID:gnuypYpN0
………………。
…………。
……。
こうして従妹と男は、熱々で暮らしましたとさ。
-ラブラブEND-
272: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 03:37:28.00 ID:gnuypYpN0
従妹「しかし、にぃにぃよく食べるね」
男「そうか? 育ち盛りだからな」
従妹「もう大学生でしょ……成長は止まってるんじゃないかな……」
母親「それを言うなら、従妹ちゃんのほうが育ち盛りよね」
従妹「えっ……そんなことは……」
母親「だって見て見なさいよ、この胸っ」
ぽよんっ……。
従妹「あっ……ん……」
男「──ぶはっ! ごほっごほっ……」
母親「きったないわねぇ……」
男「ば、ババアっ! 何触ってんだよっ!」
母親「いいのよ女同士なんだから。ちなみにサイズいくつ?」
275: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 03:44:21.81 ID:gnuypYpN0
従妹「え、ええと……」
母親「あーっ、男がいたら言い難いわねっ! ほら、耳貸すから」
ごにょごにょ……。
母親「うわっ……なにそれっ……ほんと大きいわ……」
男「くそっ、人が飯食ってるって言うのに……」
母親「でもそれだと、気に入ったブラ見つからないでしょ」
従妹「そうなんです……あんまり可愛い系はなくて……」
母親「そうよねぇ、特別に作って貰うのにもお金かかるし」
母親「あっ! でも、確かそういう専門のお店、私、知ってるわ」
従妹「え、それ、本当ですかっ?」
母親「うん、私は利用したことないけど、確かそうだったと思う」
男「洗濯板だもんな」
母親「……はい、晩飯抜き決定ー」
男「ちょっ……」
276: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 03:52:19.34 ID:gnuypYpN0
母親「夕飯が食べたいなら、従妹ちゃんと一緒に買い物行ってきなさい」
男「えっ? 俺がランジェリーショップについてくわけ?」
母親「それも兼ねて、どっか色々遊びに行ったらいいでしょ?」
男「いや、まあそうだけど」
従妹「にぃにぃも来てくれると助かるなっ」
母親「その店までは、バスで二十分ぐらいのとこにあるから」
母親「あと近くに遊園地みたいのもあるはずよ。男分かるでしょ?」
従妹「遊園地?」
男「ああ、そっち方面か……となると……」
従妹「ねっ、にぃにぃ行こうよっ!」
男「あー分かったって……まあ、あの辺なら遊ぶに困らないか……」
母親「どうせ暇なんだから、行ってきなさい。従妹ちゃんをしっかりエスコートするのよ」
男「はいはい、分かりましたよ」
283: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 04:23:26.87 ID:gnuypYpN0
従妹「着いたぁっ!」
男「こんな時間なのにバスこんでたな」
従妹「でも、にぃにぃ、庇ってくれたもんね」
男「そりゃあ……男の役目だからな……」
男(周りの男どもの野獣の目には対抗せざるをえなかった……)
従妹「ええと、この先にあるんだよね」
男「母親のへったくそな地図によるとな」
従妹「地図、もう一回見せて」
男「ほれ、ここの『もくてきちっ!』って書いてあるとこ」
従妹「はは、文字が可愛い」
男「ババア、実は漢字書けねぇんじゃねーかと心配になったわ……」
従妹「もう、そういうこと言わないっ」
285: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 04:27:03.24 ID:gnuypYpN0
男「店に入ると変態だから、俺は外で待ってるよ」
従妹「えー、別に、同伴ならいいでしょ?」
男「いいや……俺にはちょっと無理だって……」
従妹「いいのっ! ほらっ、ついてきてっ!」
ぐいぐい……。
男「うわっ……また、またこの流れっ……引っ張るなっ……」
カランカラン。
従妹「うわぁぁ、おばさんの言った通りだっ」
男(うっ……周りの視線が痛いっ!)
従妹「にぃにぃ見てっ! これすごく可愛くないっ!?」
男「わ、わからんって……俺に聞くな……」
従妹「うーん……でも、ありすぎて迷っちゃう……どれにしようかな……」
289: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 04:39:14.85 ID:gnuypYpN0
店員「どうです、お目当てのもの見つかりましたか?」
従妹「あっ……いっぱいいいのがあって困っちゃってます」
店員「それは有り難いお声、ありがとうございます。失礼ですが、お連れの方は彼氏さんですか?」
男「いいや、しんせ……」
従妹「はいっ! 実はそうなんですよっ」
店員「ふふっ、それはそれは。そうですね、なら彼氏さんに選んでもらうなんてどうです?」
従妹「あっ、それ名案ですね。にぃにぃ?」
男「……え、俺が選ぶの?」
店員「ちなみに、彼女さんはサイズ幾つですか?」
従妹「ええと、Fの70です」
男(……え?Fカップもあんの!?)
店員「そうですね……それだと、この辺がお勧めかな……」
290: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 04:42:55.31 ID:gnuypYpN0
従妹「この店、ほんと種類が豊富ですねっ」
店員「はい、サイズが大きい方のをたくさん用意してますので」
従妹「ほら、にぃにぃ、選んで」
男「選べって言われても……」
従妹「直感でいいから、なんかこれだっ!みたいなやつ」
男「……うーん……」
男「……こ、これかな?」
店員「あらあら……また、アダルティなものをお選びに……」
従妹「く、黒……?」
男「い、いや、なんとなくいいかなって……」
従妹「私がつけるには……うーん……でも、にぃにぃがそういうなら……」
店員「ご試着なされますか?」
従妹「はい、じゃあ、他にもこれと……ええと、これでお願いします」
291: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 04:46:40.26 ID:gnuypYpN0
従妹『……にぃにぃ……ほら、入って見てみてっ』
男「それは、駄目だって……店員さんも見てるしっ」
店員「私は全然構いませんよ。いないものと思って結構です」
男「そ、そんな……」
従妹『ほらお店の人もそう言ってるんだから、悪あがきはやめてさっ』
男「……うぅ……」
従妹『もうじれったいなぁ……よしっ!』
ザザッ……。
男「なっ……」
男(一瞬の隙に引きずり込まれたっ!)
292: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 04:50:34.19 ID:gnuypYpN0
従妹「どう? 結構似合ってるかな?」
男(し、下着姿……しかも、近いっ、近過ぎるっ……)
男「お、おお……似合ってる! 似合ってるよっ!」
従妹「むーほんとぉー? なんか適当な感じがするなぁ」
従妹「もっと近づいてよく見て。ねっ?」
ぐいぐい……。
男「いいって……ここからで十分だって……」
男(当たる……当たっちまうっ! 胸に顔がっ!)
従妹「どう? にぃにぃに選んでもらったやつだよっ」
男「グッドグッド! だから、お願い……もう限界だって……」
従妹「んーまあ、いいか」
男「……はぁー……はぁー……これでやっと終わりか……」
従妹「あと二つあるから、そっちもよろしくねっ」
男「……へっ?」
299: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 05:17:38.68 ID:gnuypYpN0
従妹「ここが遊園地なんだ」
男「……うぅ……」
男(くっ……俺の息子よ……そろそろ鎮まれっ!)
従妹「もうげっそりしてないで、早く元気取り戻してねっ」
男「……あ、ああ……」
従妹「ほらほらっ、初めは勿論、ジェットコースター!」
男「もしかして、回る方か?」
従妹「あれ? にぃにぃって絶叫系駄目だった?」
男「いや……大好きだけど」
従妹「ならオッケーだね。よっし、レッツゴーっ!」
男「そ、その前に……トイレに行かせてっ」
331: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 11:52:58.00 ID:gnuypYpN0
男「やべぇ……まだ目が回る……」
従妹「小さい遊園地なのに、結構ガチのやつだったね」
男「どうだ? そろそろ飯時だし腹がへってきた」
従妹「うん、どっかで昼食にしよっ」
男「んー……お店とか結構出てるけど……」
従妹「あっ、にぃにぃあれっ」
男「ん? どこだ?」
従妹「ほらっ、あのカップル」
男「ああ……なんか飲み物飲んでるな……って、二つストロー?」
従妹「一緒に同じもの飲んでるね、いいなぁ」
男「えっ……まさか」
従妹「にぃにぃ、私達もあれ飲もうよっ」
333: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 11:57:23.60 ID:gnuypYpN0
男「……『カップル限定、真夏のトロピカルジュース』」
従妹「ははっ、もう秋なのにね」
男「……マジで頼むのか?」
従妹「うん、もう決めちゃったもん」
男「はぁ……」
店員「ヘイ、オニイサン。ナニニスル?」
男「ええと、ホットドック一つと……」
従妹「私も、同じ物で」
店員「オーケー、ホットドックフタツネ」
従妹「あと、真夏のトロピカルジュースもお願いしますっ」
店員「オオ、オフタリアツアツネー。ナカイイコトイイネ」
従妹「ふふ、そんなことないですってー」
334: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 12:02:51.74 ID:gnuypYpN0
従妹「わぁ……ストローがハートマークだ……」
男「ちょっ……聞いてないっ!」
店員「オアツイオフタリニ、サービスネ」
男「ノー! ストローチェンジッ!」
店員「イイノイイノ、ハズカシガルノヨクナイネ」
従妹「そうだよっ、折角店員さんが気をきかせてくれてるのに」
男「こんなもんで飲めるかっ! 恥ずかしくて死ぬわっ!」
店員「……シネ? モシカシテ、オニイサン、イマシネイッタ?」
男「えっ? 言ってないよ……」
店員「シネイウナラ、ワタシアイテナルヨッ!! Fuck you, boy!!」
男「いや……そんな……」
従妹「ほらっ、にぃにぃいくよっ!」
男(くそ……今更、変えてもらえそうな空気じゃねえよ……)
336: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 12:11:10.31 ID:gnuypYpN0
ちゅぅー……。
男(はずいっ! これは恥ずかし過ぎるっ!)
従妹「にぃにぃ、もっと一緒に飲もっ」
男「い、いいよっ、交互に飲もうぜっ!」
従妹「そんなのつまんないよっ、一緒に飲めばハートが綺麗な色になるのに」
男「お前はこの視線に堪えられるのかっ!?」
通行人A「うわぁ……見て……あれ」
通行人B「熱々だな……そうそう、あれは出来ないぞ……」
通行人C「しかし、あの子すげぇ可愛い……相手は微妙な癖して、うぜぇな……」
男(この刺すような視線……男どもの醜い嫉妬の目)
従妹「いいのいいのっ、他の人は気にしない」
男「そ、そんな……」
従妹「にぃにぃ、せーので飲もっ! やらなかったら、チューしてもらうからっ!」
男「ちょっ……それはさらに無理っ!」
338: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/03(日) 12:16:21.36 ID:gnuypYpN0
従妹「次は……お化け屋敷っ!」
男「おい、いいのか? 確か、怖いの苦手だっただろ?」
従妹「そ、そんなことないよ……?」
男「完全にまだ苦手じゃねぇか。無理しなくていいんだぞ?」
従妹「で、でも、この機会逃したら、一生入れなさそうだし……」
男「別にお化け屋敷に入れなくたっていいだろう」
従妹「いいのっ、もしかしたら、それほど怖くないかもしれないし……」
男「……お前、看板ちゃんと見たのか?」
従妹「う、ううん……怖くて直視してない……」
男「血だらけの首無し女が大量に描かれてたぞ……」
従妹「……うぅ……」
男「やめとこうな? あんま無理していいことないぞ?」
従妹「行くもんっ! もう、私、大人だからっ!」
535: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 09:13:35.41 ID:KapuKFan0
従妹「きゃあああああっ!?」
男「うおっ……」
従妹「にぃにぃ、怖いっ……もうやだよぉっ……」
男「だから、やめようってあれだけ言ったのに」
従妹「……うぅ……もう出たい……」
男「はぁ……もう少しだと思うから頑張れ」
従妹「にぃにぃ……」
ぎゅっ……。
男「お前、さっきから近すぎだって……」
従妹「やだっ、絶対離れないもんっ」
536: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 09:15:16.53 ID:KapuKFan0
男「これじゃあ、抱き合って歩いてるみたいなもんだぞ……」
従妹「そんなの知らない……私、もう目瞑ってるから後はお願いね……?」
ぽよんっ……。
男「くっ……」
従妹「……にぃにぃ?」
男「わ、分かったっ、俺に任しとけっ!」
男(暗闇の中でこんな状態だったら……くっ、理性がヤバいぞっ!)
男「よ、よしっ! かっ飛ばすぞっ!」
従妹「えっ!? にぃにぃ早いよっ!?」
男(急げっ、一刻も早くこの場から離れないとっ!)
538: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 09:19:18.99 ID:KapuKFan0
男「…………」
従妹「…………」
男「……あー……つかれた……」
従妹「……もう二度と入らない……」
男「それがいい……お前のためにも、お前と一緒に入る人のためにも……」
従妹「どういう意味なの……それ……」
男「深い意味はない……。で、次どうする?」
従妹「……なんか、落ち着ける場所がいいよね……」
男「んー……そろそろ日も落ちる頃だからなあ……」
従妹「あっ……あれ」
男「どうした?」
従妹「ほら、観覧車っ」
539: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 09:26:41.45 ID:KapuKFan0
従妹「うわぁ……どんどん上がってくねっ」
男「久しぶりだな、観覧車なんて」
従妹「にぃにぃとも昔、一緒に乗ったよね」
男「どうだろ……そうだったっけ?」
従妹「覚えてないのー? 高いのが怖くて泣いてた私をずっと励ましてくれたじゃん」
男「あー何となく……微かに記憶が……」
従妹「手をずっと握ってくれて、私、とっても心強かったんだから」
男「鼻水垂らしてたな、確か」
従妹「もうっ、何でそんないらない部分だけ覚えてるのっ」
男「はは、ごめんごめん」
従妹「でも、もうあの頃からずっと時間が経ってるんだね」
男「…………」
従妹「お互い、大きくなって……住んでる環境も変わって……」
男「……そう、だな」
541: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 09:32:21.61 ID:KapuKFan0
従妹「昔みたいに、頻繁に会えるみたいな状況も無くなって……」
男「…………」
従妹「にぃにぃは私と会えなかった間、どうしてた?」
男「普通に高校に通ったり、受験したり……そんなもんだ」
従妹「うん、私もそんな感じ」
従妹「でもね……その間、ずっと会いたかった」
男「…………」
従妹「にぃにぃに、ずっーと会いたかったんだ……」
男「……ああ」
従妹「おばあちゃんのところに帰省するときには、いつもワクワクして……」
従妹「だけど、向こう着いたら、やっぱりにぃにぃはいなくて……」
男「……ご、ごめん……」
従妹「会いたかった……寂しかった……」
男「…………」
544: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 09:37:30.02 ID:KapuKFan0
従妹「だからね、私……決めたの」
男「えっ?」
従妹「大きくなって環境が変わって、こんな風に疎遠になるくらいだったら」
従妹「私がその環境を変えてやろうって……私自身で何とかしようって」
男「…………」
従妹「だから、私はにぃにぃと同じ大学に行く」
男「……従妹」
従妹「たった一年だけかもしれないけど……でも、それでも私にとっては大切なの……」
男「…………」
男「……そんなに」
従妹「……ん?」
男「そんなに、俺のことを中心に考えなくても……」
男「歳をとって……それで疎遠になっていくって、普通の形なんじゃないか?」
545: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 09:45:28.63 ID:KapuKFan0
男「血が繋がった兄妹とかなら、その縁は一生離れられないけど」
男「俺達は、従兄妹なんだ。小さい頃は一緒に遊ぶけど……時間が経てば、それも変わってく」
従妹「…………」
男「でも、こうやってたまに会って……昔話に花を咲かせたり、近況を話し合ったり」
男「……それで、いいだろ。それが……普通だろ?」
従妹「……ふつう……なんだろうね」
男「だからさ、お前が俺と同じ大学に来るって言うのは嬉しい……でも」
男「それが、俺と会えるからっていう、つまんない理由なら……正直、賛成は出来ない」
従妹「……にぃにぃ」
男「自分の進路のことをしっかり考えるべきだ。それこそ、自分自身のためにな」
男「厳しいこと言うかもしれないけど、それがお前のためだと思うぞ」
従妹「…………」
男「……ごめんな……ちょっと暗い話しちまった」
従妹「……いいの……私のことを思って言ってくれたんだし……」
男「…………」
550: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 09:57:00.34 ID:KapuKFan0
とことことこ……。
男「…………」
従妹「…………」
男(……あんなこと言っちまったせいで……気まずい……)
男(がらにも無く……真面目なこと言っちまったからな……)
男「……なあ、従妹」
従妹「……ん?」
男「さっきはああ言ったけど、まあ、深く考えなくていいぞ」
従妹「え……でも」
男「俺の気持ちはそうだけど……実際、決めるのは本人なんだから」
従妹「うん……」
男「すぐに受験ってわけでもないんだから、ゆっくりと考えればいい」
従妹「そう、だよね……」
男「お前がどう決めても、最終的には俺は応援するから」
従妹「にぃにぃ……」
551: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 10:03:09.16 ID:KapuKFan0
男「せっかく久しぶりに会えたんだ、今は楽しく明るくいこうぜっ」
従妹「ははっ、にぃにぃがそんなこと言うなんて」
男「なんだー? 俺がお前と会って楽しくないとでも思ってんのか?」
従妹「……だって、にぃにぃ、今日もそうだけど乗り気じゃなかったじゃん」
男「そ、それはさ……」
従妹「久しぶりに会ったときも……何か、あんまり相手したくないみたいな」
男「いやいや……それは照れみたいなのが影響してだなっ」
男(あまりにもお前が美人になってるから……正直、どうしていいのか分かんないんだよ……)
従妹「でも、そうやって言ってくれるなら助かったよ」
男「そ、そうか?」
従妹「うん、まだ、にぃにぃも私のこと好きなんだって分かったし」
男「ま、まあ、そういうことだ」
従妹「よしっ、元気取り戻したっ。仲良くいこっ」
ぎゅっ……。
男「えっ、手……握るの……?」
556: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 10:09:39.72 ID:KapuKFan0
従妹「むっ、にぃにぃ……」
男「わ、分かったよ……今さっき否定したところだしな……」
従妹「そうだよっ、二人仲良くっ」
男「お、おうっ」
男(しかし、この歳になって、手を繋ぐ従兄妹って変だよな……)
従妹「ふふっ……にぃにぃ、顔真っ赤」
男「うるせっ、夕陽のせいなんだから勘違いすんなよっ」
従妹「うん、そういうことにしとくから」
男「くっ……いいようにあしらわれた……」
従妹「いいのいいの、さっきの仕返しだもんっ」
男「なんだよ……仕返しって……」
男(まあ……暗い空気が変わっただけでも良しとするか)
?「……あれ」
男「ん?」
557: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 10:15:35.54 ID:KapuKFan0
女友「もしかして……従妹?」
従妹「……えっ、うそ……」
男「なに? 知り合い?」
従妹「う、うん……学校の友達……」
女友「なんで従妹がこんなとこにいんの?」
従妹「それは私の台詞だよっ。今、親戚の家に来てるの」
女友「私も実家がこっちだから……」
従妹「えっ……そうだっけ?」
女友「従妹には話したことないっていうか……そんなこと普通話さないというか」
従妹「まあ……そうだね」
女友「……で、お隣さんは彼氏か何か?」
従妹「ええと……」
男「──違います」
女友「うわっ……即答……」
男「こいつの従兄だ。よろしくな」
561: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 10:21:38.37 ID:KapuKFan0
女友「はぁー従兄ねぇ……しかし、手握ってるけど」
男「そ、それは……ちょっとしたふざけたスキンシップというか……」
女友「ちなみに従兄妹同士なら結婚出来るって知ってます?」
男「ちょ、ちょっと待って」
女友「ははっ、そんなに焦らなくていいのに。逆に疑われちゃいますよ?」
男「…………」
従妹「もう女友っ、にぃにぃを困らせないで」
562: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 10:22:48.63 ID:KapuKFan0
女友「にぃにぃ?」
男「……そこも深く追求しないでくれるかな……」
女友「あーはい。今ので何となく理解できました」
男「察してくれると、ありがたい……」
女友「なんとなくお兄さんとは、分かり合える気がしますね」
従妹「えっ、何……二人の間で何が?」
女友「いいの従妹は。今の調子でガンガンいきなさい」
男「ちょっ……君」
女友「お兄さんとは分かり合えますが……私、面白いことも好きなんですっ」
565: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 10:44:06.61 ID:KapuKFan0
男「えっと、何飲む?」
従妹「私、オレンジジュース」
女友「アイスコーヒーでお願いします」
男「了解……オレンジジュースとアイスコーヒー二つで」
店員「かしこまりました」
女友「すみませんね、奢ってもらっちゃって」
男「いやまだ言ってない……まあ、そのつもりだったけどさ」
女友「ははっ、ちょっとした冗句ですよ」
男「君、バリバリ計算高いだろ……」
従妹「……むぅっ」
男「あ、どうした?」
女友「さっきから、お兄さんと私の会話に入れてなくてむくれてるんですよ」
従妹「そんなことないもんっ」
女友「あっ、『もん』が出た」
従妹「そ、そんなことないですっ!」
568: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 10:49:18.57 ID:KapuKFan0
男「はははっ」
女友「……あれ、何か今おかしいこと言いました?」
男「いや、従妹がどうやって学校生活送ってるか、今ので分かった気がする」
女友「そういうことですか」
従妹「……なんか、言葉に悪意を感じるなぁ」
男「女友さんは、従妹と結構仲良いんだ」
女友「入学式の時に偶然隣の席になりまして……それからこんな感じです」
従妹「いい、にぃにぃ。この子、結構黒いから騙されちゃ駄目だよ」
女友「ちょっと、従妹、何余計なこと言ってんの」
男「まあ、何となく分かってるけどね」
女友「お兄さんまでそんなこと言って……」
男「じゃあ、なんか従妹の面白い話とか知ってるんだ?」
従妹「にぃにぃっ!」
女友「それは勿論、数多くをご用意してますよ」
570: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 10:56:33.73 ID:KapuKFan0
女友「私が一番驚いたのはですね、入学初日のことでした」
従妹「うわぁ……ちょっとやめてよぉー……」
男「ふむふむ」
女友「入学式もちょっと変な気がしてたんです。でも、それがなんのか分からなくて」
女友「その後、各生徒は自分の教室に移動したわけなんですが、その時も私は従妹と喋っていて」
女友「教室に入った時……あっ、これは、と」
男「ほう」
女友「その時、なんの違和感か理解したんですね。それが、男どもの飢えた視線だって」
男「は、はは……」
従妹「絶対、違うもん……」
女友「幸運なのか悪運なのか分かりませんが、私達は席も隣同士で」
女友「そこからもやっぱり、粘着質な気持ち悪い視線がつづく一方でした……」
女友「それで、女の直感で分かったんですよ……これは、この後、何かあると」
573: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 11:07:08.32 ID:KapuKFan0
女友「事が起きたのは、担任が挨拶を終えた後のことでした」
女友「生徒たちも初めの緊張からやっと解放され、一人また一人と続々と帰っていく中」
女友「顔をひきつらせながら、一人の男子が私達の元へ」
男「あーはい……」
女友「私も顔には自信が無いわけではありませんが、この隣の子には勝てる気が全くありませんでした」
女友「女の私から見ても、嫉妬を通り越して……最早『すげぇな』の一言で片付けられる始末」
女友「勿論、男子の視線は私など眼中になく、しっかりと従妹を見据えていました」
女友「で、呼び出しですよね、そこは古典的です」
女友「従妹に無理矢理連れられた私、そして従妹」
女友「裏庭では、男子の一世一代の告白が今にも始まりそうな時」
男「え……始まらないの?」
女友「どこに隠れてたんだ……と呆れるほど、木々の端からそれぞれ男が三人現れました」
男「……はぁ……それはまた」
女友「奇怪な光景でした……。男四人が奥で話し合った後、従妹に向かって一列に並んだんです」
男「絶対、奥でジャンケンしてたよね」
576: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 11:13:39.85 ID:KapuKFan0
女友「そして……」
女友「──悪魔の四人切りっ」
男「……はぁ……」
従妹「……うぅ……だって……」
女友「四人が連続でふられる光景なんて、私初めて見ました」
女友「二人とかなら分かりますが、四人ですよっ?」
男「……俺も今まで見たことねぇな」
従妹「……そ、そんなぁ……」
女友「まぁ、それが初めて従妹と会った日のことで……」
男「いや、本当に凄いね……」
従妹「にぃにぃ……」
女友「ちなみに、授業が始まった後の一週間、のべ十三人が切られましたけど」
男「…………」
従妹「もうっ! にぃにぃが言葉失ってるよっ!」
578: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 11:26:37.14 ID:KapuKFan0
女友「それで、渋谷のスカウトマンに従妹が言ったんですよ」
女友「『私、エッチなビデオに出るつもりはありませんからっ!』」
男「ははははっ」
従妹「……うぅ……」
女友「初めからきちんとした雑誌の人だって、名刺見せて貰って分かってるのに」
女友「アダルトビデオって……くくっ、スカウトマン、口開けて呆然としてましたよっ」
男「ははっ、し、しかし、話が尽きないな……」
女友「そうですね……話し出すと幾らでもありますから」
従妹「もうーそういうのいいから、にぃにぃも満足したでしょ?」
男「いや、うん、もうたっぷり聞いた」
従妹「女友も喋り過ぎだよ……私のイメージ崩れて来てるじゃん……」
男「それはないって、お前、やっぱり可愛いもんな」
従妹「……えっ……あ、あ、ありがと……」
女友「ふふっ、お兄さんには従妹はメロメロですね」
従妹「もうっ、そんなことないもんっ!」
580: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 11:33:49.09 ID:KapuKFan0
男「……っと、話してたからもうこんな時間か」
女友「あっ……七時をとっくに過ぎてますね」
男「そろそろ出ないとな、夕飯作って帰りを待ってると思うし」
従妹「うわぁ……おばさんに悪いことしたかも……」
女友「そうだ、従妹」
従妹「ん?」
女友「私、こないだ聞いたんだけど、滝先輩の話」
従妹「えっ……う、うん」
男「滝先輩?」
女友「近いうちに、また告白しようとか言ってるみたいだよ? メール来てるんじゃないの?」
従妹「いや……うん……ちょっとここではいいじゃん……」
男「俺に遠慮しなくていいんだぞ? で、滝先輩って?」
女友「あー、滝先輩っていうのはですね……」
従妹「──女友っ! にぃにぃに話さなくていいっ!」
女友「えっ……でも……」
582: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 11:37:35.85 ID:KapuKFan0
男「……従妹?」
従妹「別にここで話さなくてもいいでしょ?」
女友「それはそうだけど……」
男「なんだ? 俺に、聞かれたくない話なのか?」
従妹「そ、そういうことじゃないけど……」
男(なんかモヤモヤするな……はっきりと聞いとくか……)
男「滝先輩っていうのは、お前の元カレだったりするのか?」
従妹「違うっ! それは違うよっ、そういうのじゃないって……」
男「でも、お前、すごい言い難そうにしているから……」
従妹「もういいじゃん……この話はあまりしたくないよ……」
男「…………」
男「……ああ、分かった」
男(……くそっ……なんか気になるな……)
女友「…………」
584: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 11:40:51.75 ID:KapuKFan0
女友「じゃあ今日は、ありがとうございました」
男「おう、こっちも色々、話し聞けて良かったよ」
女友「はい……従妹」
従妹「うん……なに……?」
女友「最後のほう……ちょっと余計なこと言ってごめんね」
従妹「……べつに……いい」
女友「……うん……じゃあ、また」
男「また機会があったらな」
従妹「……ばいばい」
女友「…………」
女友「……そうだ」
男「ん?」
女友「お兄さん、ちょっといいですかっ?」
従妹「女友?」
585: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 11:45:20.47 ID:KapuKFan0
従妹「にぃにぃに余計なこと言うの止めてよ」
女友「違うって。私も女なんだから、察してくれない?」
男「……えっ……それって」
従妹「だ、駄目だよっ!」
女友「ちょっと待って。別にお兄さんは従妹の彼氏でも何でも無いんでしょ?」
従妹「そ、それはそうだけど……」
女友「だったらいいでしょ。そんなの私の勝手だし」
従妹「……う、うぅ……」
男「お、おいおい……」
男(なんなんだ……この流れ……)
女友「お兄さん、ちょっとこっち」
男「で、でも……」
従妹「…………」
男(従妹が俺のシャツを握ってんだよな……これを振り切りわけにはいかないし……)
586: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 11:46:26.74 ID:KapuKFan0
従妹「……お兄さん」
男(……ん……? 待てよ……?)
男「……従妹、シャツ離して」
従妹「うっ……」
男「……ん、ありがと」
従妹「…………」
男「そっちで、話せばいいんだな?」
女友「あっ、はい……」
588: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 11:50:57.21 ID:KapuKFan0
とことことこ……。
男「それで、滝とか言う奴の話なんだろ?」
女友「……話が早くて助かります」
男「この後のフォローのことをもう少し考えて欲しかったけどな」
女友「すみません……咄嗟に、思いついたのがあれしかなくて……」
男「で、何なんだ? 従妹は俺に聞かれるの嫌だと言ってたぞ?」
女友「……それでも、お兄さんには話しておきたいんです」
男「…………」
女友「滝先輩っていうのは、うちの三年の人なんですけど」
女友「サッカー部のキャプテンやってる凄い人で、人気もあるんです」
男「ああ」
女友「その人が、最近、従妹に夢中になってまして……」
男「昔の元カレとかではないんだな?」
女友「勿論違います。というか、従妹が他の男子と付き合ったことは無いです」
593: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 11:54:52.95 ID:KapuKFan0
男「……そうか」
男(何だよ……なんで、安心してるんだ、俺……)
女友「一度、その人が従妹に告白して……ふったんですけど」
男「ん? 何か問題があったのか?」
女友「いや、そこまでは問題ないんですが」
女友「滝先輩には、その前に付き合ってた方がいて……」
男「ああ……」
女友「従妹が好きになったってことで、その人と別れたんです」
男「……そういうことか」
女友「従妹はそれが自分のせいだと思ってるらしくて」
女友「あんまり、その滝先輩の話は嫌みたいですね」
男「……ん」
女友「とくにお兄さんに聞かれるのは……」
男「…………」
596: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 12:00:26.95 ID:KapuKFan0
男「…………」
従妹「…………」
男(また、この空気か……いらん置き土産をしてくれたよな……あの子)
従妹「……にぃにぃ?」
男「ん、どうした?」
従妹「……え、ええと……さ」
男「おう」
従妹「女友……何だって?」
男「いや、まあ……うん」
従妹「……にぃにぃ?」
男「ちょっと、気になります……みたいなこと言われただけだよ」
従妹「……そ、それで?」
男「いや、うんと、ありがとう……みたいな」
従妹「……にぃにぃは、女友のこと好きなの?」
男「いや……」
597: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 12:05:29.70 ID:KapuKFan0
従妹「……そ、そのさ……」
男「ああ……」
従妹「私は……どう、かと思うなあ……」
男「えっ……何が?」
従妹「いや、女友って可愛いけど、本当は腹黒いし……」
男「ああ、そういうことか」
従妹「ケーキだってねっ、お腹一杯とかいいながら、三つとか普通に食べちゃうんだよっ」
男「あ、うん」
従妹「そ、それに……ええと、他に何があるかな……」
男「もういいよ」
従妹「……え?」
男「あの子に悪いけど、俺は付き合う気とかそういうのは無いから」
従妹「……全く? これっぽっちも?」
男「おお、ああいうしっかりものタイプは俺には合わない」
従妹「そ、その通りだよっ」
600: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 12:08:12.35 ID:KapuKFan0
男「年下に尻敷かれるっていうのは、ちょっとな」
従妹「……う、うん」
男「まあ、どっちかというと」
従妹「……ん?」
男「あの子と従妹なら……俺は、従妹の方がタイプだな」
従妹「……うぅ……」
男「ははっ、照れちゃったか」
従妹「……にぃにぃ」
こてっ……。
男「お、おい……バスの中だってっ……」
従妹「ありがと……にぃにぃ」
男「う、うん……」
従妹「私も……にぃにぃのこと、好き……」
男「…………」
643: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 17:22:14.36 ID:KapuKFan0
男「ただいまー」
従妹「すみません、遅くなってしまって……」
母親「気にしない気にしない。もう、ご飯は出来てるから」
男「親父は今日も帰って来てんのか?」
母親「さっき電話があって、急な仕事が入っちゃったんだって」
男「いつもならしない連絡をわざわざ……」
母親「それだけやっぱり若い娘がいると、はりきっちゃうんでしょ」
男「完全に変態親父だな……」
従妹「は、はは……」
646: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 17:28:38.89 ID:KapuKFan0
母親「それで、従妹ちゃん。気に入った下着あった?」
男「ふぼっ!」
従妹「おばさんの言った通り、ばっちしでした」
母親「それは良かったわ。入ったことはなかったから、結構心配だったのよね」
男「食事中に、それも、異性がいるところでする話題ではないだろ……」
母親「どんなの買ってきたの?」
従妹「ええと、三つほど可愛い系を選んできました」
男「おい、お前ら俺の話を聞け」
母親「どれどれ……」
がさがさ……。
男「もうやだ……この母親……」
母親「ちょ、ちょっと……従妹ちゃん」
従妹「えっ……どうかしました?」
649: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 17:32:42.28 ID:KapuKFan0
母親「黒のやつあるじゃない……最近の子だと、これも可愛い部類なの……?」
従妹「あー、そうだった……。えっと、それはですね……」
男「…………」
従妹「にぃにぃが選んだものでして……」
母親「な、なんとまあ……」
男「好きで選んだんじゃないっ! あくまで強制されてだからなっ!」
母親「それにしても、これを選ぶとは……我が子ながら恐ろしいわ」
従妹「そ、そうですね……」
男「おい、フォローはどうしたフォローは」
母親「でも、あんたが気に入ったのを選んだんでしょ? これが良かったわけ?」
男「いや、まあ……そうだけどさ……」
母親「やはり、あの人の血を継いでるだけあるわね」
男「……それは凹むわ」
従妹「にぃにぃ、元気出して……」
651: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 17:40:02.81 ID:KapuKFan0
母親「はあー、やっぱり遊園地に行ったんだ」
従妹「はい、時間いっぱいまで色々回りました」
母親「観覧車とかも乗った?」
従妹「最後に一回乗りましたよ」
母親「いいわねぇ……青春してるわね……」
男「まあ、なんだかんだ言って、楽しかったな」
従妹「うん、とっても楽しかったっ」
母親「なんか、懐かしいわね。昔、二人が小さかった頃、みんなで行ったじゃない?」
男「あー……それ、従妹が言ってたな」
従妹「聞いてくださいよ、おばさん。にぃにぃ全然覚えてないんです」
母親「あれ、あんたが一番楽しんでたのに?」
男「いや……微かに記憶はあるけど、そこまでは……」
従妹「私は完璧に覚えてるのにひどいよぉ……」
母親「ほんとこの子ったら肝心なところで駄目ね。親の顔がみたいわ」
男「お前だよ、親お前だから」
652: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/05(火) 17:49:55.72 ID:KapuKFan0
男「……ふぅ……」
男(こうやってガス抜きしとかないとな……何があってからじゃ遅い……)
男(しかし従妹が来てからというもの、完璧に回数が増えちまってる……)
コンコン。
従妹『にぃにぃっ、早く入れてっ』
男(噂をすれば何のその、ってやつだな……)
男「おう、今開ける」
ガチャ……。
従妹「もう、遅いよっ!」
男「いやいやごめん……って、おいっ!?」
従妹「どうかな?」
男「どうってお前っ、下着姿じゃねえかっ! このバカっ!」
729: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 06:32:28.61 ID:J3pGO6No0
従妹「だって、せっかくにぃにぃが選んでくれたんだもんっ」
男「だから、試着室で見たってっ!」
従妹「ちゃんと見て欲しいのっ、似合ってるかどうかっ」
男「似合ってるってっ! 頼むから、服を着てくれっ!」
男(やべぇ……このボディは反則だろっ……)
従妹「ほら、後ろも……」
男「あーもうくそっ、埒があかねぇっ」
ザバッ……。
従妹「あっ……」
男「変な声だすな、俺のジャージ貸してやるからそれ着ろ」
従妹「……むぅ……もう、何か適当……」
男「適当も何も……この流れが俺には意味分からんわ」
731: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 06:37:34.14 ID:J3pGO6No0
従妹「気を取り直して……にぃにぃ、いつもの、ね」
男「……そろそろ止めにしようぜ」
従妹「ダメだよっ、私がお風呂に一緒に入らないことの条件でしょ?」
男「それがかなり無茶あるんだって……」
従妹「でも、約束は約束だもんっ! にぃにぃ、お願いっ!」
男「……はぁ……」
男(付き合ってもいないのに……こんなこと続けてもいいのかな……)
従妹「にぃにぃ……?」
男(俺がもし、今後、従妹と付き合う彼氏だったら、従兄とキスしてた女なんて嫌だよな……)
従妹「……も、もしかして……怒った?」
男(やっぱり、従妹のためにも……こういうのは止めた方がいいじゃないのだろうか……)
従妹「何か……返事してよぉ……」
男「…………」
従妹「にぃにぃ……」
男「なあ……従妹」
732: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 06:43:18.68 ID:J3pGO6No0
従妹「……え?」
男「やっぱりこういうのは良くない」
従妹「そ、そんな……」
男「ほら、これからのこと考えろよ。今はお前に好きな奴はいないかもしれないけど……」
従妹「今だけじゃないもんっ、これからもだよ?」
男「まあ俺の話を聞け……確実に今後、付き合いたいなって思う男性が現れるよ」
従妹「……絶対ないもん……」
男「そんな男性が現れた時に、今みたいなことを一から始めればいいだろ?」
男「そんなに焦らなくても、いつかはしなきゃいけない時がくるんだから」
従妹「今がいい……」
男「そう言って、あまり俺を困らしてくれるな……」
従妹「にぃにぃは……にぃにぃは、私だと嫌なのっ?」
男「そういうことじゃなくてな……」
従妹「誤魔化さないでよっ!」
733: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 06:48:48.05 ID:J3pGO6No0
従妹「私だから、年下だから? それとも、妹みたいに思ってるから嫌なの?」
男「そうじゃない……」
従妹「だって、にぃにぃが言ってることってそうだもんっ」
従妹「にぃにぃにだって、付き合ってる女性いないんでしょ? 私もいない……なら、問題ないじゃんっ」
男「それとこれは、話が別だ」
従妹「……にぃにぃ……」
男「母親にも言われたけど、俺はお前に手を出しちゃいけない」
男「お前がまだ恋愛に対して無垢だからこそ、年上の俺が歯止めをきかせないと駄目なんだ」
従妹「そんなこと……」
男「はっきり言って、俺は恋愛を経験したことがない」
従妹「……っ」
男「だから、キスとかそういうのは恋人同士がやるもんだって、信じてる」
従妹「……うぅ……」
男「だから、今みたいなこと続けるのは正直しんどいんだ」
734: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 06:53:39.58 ID:J3pGO6No0
従妹「にぃにぃは……私のことを恋人だと思えないの……?」
男「……恋人というよりは、妹に近いな」
従妹「…………」
男「小ちゃい頃から一緒にいたじゃないか。何も知らない同士とは訳が違う」
従妹「……っ」
男「それにさ、やっぱり俺はお前に幸せになって欲しいんだ」
従妹「……にぃにぃの言う、私の幸せってどんなの?」
男「そりゃ……お前がいい人と付き合って、楽しい日々を送……」
従妹「──押しつけだよ」
男「押しつけって……」
従妹「にぃにぃは私のこと妹みたいに思ってるって言ったけど」
従妹「私はにぃにぃのことを実の兄だと思ったことは一度もない」
男「…………」
従妹「兄でもないにぃにぃに、そんな心配してもらわなくてもいい」
男「……お、お前……」
736: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 06:59:37.26 ID:J3pGO6No0
従妹「大体、いい人って何? あまりにも漠然としてる」
男「そりゃ……お前のことを一番に考えてくれて……」
従妹「そんな人いないもん」
男「お前が知らないだけで、いるって……」
従妹「……いない」
男「従妹……」
従妹「……っ」
従妹「にぃにぃ以上に私のこと考えてくれる人なんて、絶対いないもんっ!」
男「…………」
従妹「にぃにぃじゃ駄目なの? その役目を負ってくれないの?」
男「だから、そういう極端な話じゃなくてさ……」
従妹「私は真面目だよっ? にぃにぃがいいっ」
男(……従妹は……俺を勘違いしてる……)
男(昔の頃の思い出が強すぎて……俺のことを過剰に評価してるんだ……)
男(……有り難いけど……嬉しいけど……でも)
737: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:02:48.56 ID:J3pGO6No0
男「お前の錯覚だよ、それは……」
従妹「……そんな……」
男「……もう少し経てば分かる。今は分からないかもしれなけどな……」
従妹「…………」
従妹「……だ、だったら……」
男「ん?」
従妹「にぃにぃは……私が、他の人と付き合うの許せる?」
男「……別に……」
男(……何だ……何でもっとはっきり言わないんだ……)
従妹「別に……って」
男「相手がいい人間だったら……いいじゃないか?」
従妹「…………」
男「ほら……あの、滝先輩とかいたじゃないか」
男(おいっ! 俺は何を言ってるんだっ!)
738: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:07:57.72 ID:J3pGO6No0
従妹「……滝先輩は全く関係ないよ」
男「そんなに初めから毛嫌いしなくてもいいだろ?」
従妹「にぃにぃは知らないんだから、それこそ余計なお世話」
男「前の人と別れて……それは、従妹のことを大切に思ってくれている証拠じゃないのか?」
従妹「……な、何でそれ……」
従妹「ああ……女友が話したんだね……」
男「…………」
従妹「……にぃにぃが言いたいことは、もう分かった」
従妹「それで、にぃにぃは滝先輩と私が付き合えばいいって思ってるの?」
男「……まぁ、そういうことだな」
従妹「ふーん……滝先輩ねぇー……」
男「…………」
従妹「いいよ、なんかもう私も分け分からなくなってるし」
男「……えっ?」
従妹「ここに呼び出そ、滝先輩」
740: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:12:08.88 ID:J3pGO6No0
男「ちょっと待て……こんな時間にか?」
従妹「いいよめんどくさいし。さっさとこの話を終わらせたい」
男「明日でもいいだろ……相手のことを……」
従妹「私が決めたの。もう、指図しないで」
男「…………」
従妹「滝先輩って人は、にぃにぃが言うようにいい人かもしれない」
従妹「あんまりうわついた話も聞かないし、前の彼女とも別れたしね」
男「……そうか」
従妹「誰が私の連絡先教えたのか知らないけど、たまにメールもくるんだ」
男「…………」
従妹「私は興味なかったから、いつもゴミ箱に直行だったけど」
従妹「まあそれで、連絡先は知ってるの」
男「ああ……」
従妹「じゃあ、連絡するから。時間になったら、二人で駅まで行こっ」
742: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:16:43.43 ID:J3pGO6No0
男(俺の思い通りになったはずだ……)
男(従妹との不純な行為も終わって、アイツも幸せになれる……)
男(誰も損をしない……誰もが最良になれる選択だ)
男(でも……どうしてだ……)
男「…………」
従妹「もうすぐ時間だね」
男「……そうか」
従妹「どうしたの? さっきから全然喋らないけど」
男「…………深い意味はないよ。ただ、色々考えてるだけ」
従妹「ふーん……しかし、滝先輩も、こんな夜遅くにバイクで大丈夫かな」
男「…………」
男(どうして……胸が張り裂けるほど、痛いんだろう……)
男(妹を取られる……そんな気持ちなのか……)
男(でも……きっとこれが正しいんだ……)
従妹「……あっ」
744: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:21:09.54 ID:J3pGO6No0
男「ん……もしかして、あれが」
従妹「……うん、滝先輩だと思う」
滝「……どうも」
従妹「ごめんなさい……こんな時間に呼び出してしまって……」
滝「あーうん、別にいいよ」
従妹「本当に、ごめんなさい……」
滝「気にしなくていいって。で、話って何なの? それに、この……横の人は?」
男「…………」
男(身長は俺よりもずっと高い……顔も整ってるし……勝てる要素が見つからないな)
男(……ん? なんで、俺が勝てなきゃいけないんだ?)
従妹「この人は、私の従兄です」
滝「はぁー……それで、何でこの人が?」
従妹「ちょっと付き添ってもらったんです」
滝「ええと……ごめん、良く理解できないな……」
746: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:26:46.65 ID:J3pGO6No0
従妹「滝先輩には、前から色々気持ちを伝えられてきました」
滝「う、うん……そうだね」
従妹「ごめんなさい、一回目は断ってしまって」
滝「ははっ、あの時は結構落ち込んだよ……」
従妹「でも、彼女さんとも別れたみたいで……」
滝「そりゃ、別の人に告白するんだ、別れるのが普通だろ?」
従妹「それでも……私のせいで、本当にすみません」
滝「もう、さっきから謝ってばかりだな……別れたのは君のせいじゃない」
滝「俺が勝手に決めたんだ。君がぐじぐじ悩むことじゃないし、それに遠慮する必要もない」
従妹「……先輩」
男「…………」
男(……ははっ……なんだ、いいやつじゃないか……)
男(初めはどうなるかと思ったけど……これは任して大丈夫だ……)
男(……ああ……そうか……終わりなんだな……)
男(俺がアイツの面倒を見るのもこれで……最後……)
748: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:30:31.65 ID:J3pGO6No0
滝「……もしかして、このことを謝りたくて呼んだの?」
従妹「それも……あります」
滝「そうか……なら、ちょっとだけ俺から話をしてもいい?」
従妹「……え?」
滝「前に一度、俺は君に振られたよね」
従妹「あ……はい」
滝「それからずっと色々考えたんだ。諦めようとか、他の人を探そうとか」
滝「でも、やっぱりさ……君のことを追ってる自分がいて……」
従妹「…………」
滝「ごめん……君には本当に迷惑かもしれないけど」
滝「もう一度やりたいんだ。結果が分かっていてもね……」
従妹「……先輩」
従妹「実は……今日来てもらったのはその話なんです」
滝「ん?」
751: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:33:46.81 ID:J3pGO6No0
従妹「この話をしたら、従兄のほうから色々言われまして」
滝「あ、うん……そうなんだ」
従妹「こんなんじゃ駄目だって……いい人がいたら、付き合うべきだって」
男「…………」
滝「えっ……でも」
従妹「私……思ったんです。滝先輩は……いい人なのかもしれないって」
滝「……あ、ありがとう」
従妹「だから……私」
滝「……え……」
男「…………」
男(あー……これで……終わりか……)
従妹「先輩に……今日ははっきりと言います」
滝「…………」
従妹「私……先輩と……」
男「……っ」
755: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:37:35.19 ID:J3pGO6No0
従妹「──先輩とは、付き合えませんっ!」
男「なっ……」
滝「…………」
従妹「いくら滝先輩がいい人だって分かってても、にぃにぃに言われてもっ!」
従妹「私が好きな人は先輩じゃないっ……」
従妹「私が……私が……本当に大好きなのはっ……」
滝「……うん」
従妹「──この横にいる……従兄なんですっ!」
男「…………」
男(……何だ……何言ってんだこいつは……)
滝「……じゃあ、前断ったのも?」
従妹「はい……ごめんなさい……」
滝「他の人からの誘いをずっと断り続けていたのも?」
従妹「にぃにぃが……従兄が好きだったから……」
滝「そうか……そうだったんだ」
762: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:42:16.37 ID:J3pGO6No0
滝「初めから……全て決まってたんだね」
従妹「…………」
滝「俺が振られる理由がやっと分かったよ。そりゃ、勝てないわ」
従妹「……ごめんなさい……」
滝「そうか、そういうことで今日は呼んだんだ」
従妹「……ごめんなさい、ごめんなさいっ」
滝「ははっ、まあ、すっきりしたからいいよ。残念だったけど、モヤモヤは消えた」
従妹「…………」
滝「話がこれで終わりなら、俺はそろそろ帰るわ」
滝「……ここからまた、一悶着ありそうな気配だしね」
従妹「…………」
男「…………」
男(何だよ……俺のことが好き……? だから、告白を断ってた?)
男(意味がわからない……あいつの言う『好き』は、恋愛のものとは違って……)
764: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:47:37.29 ID:J3pGO6No0
従妹「……にぃにぃ」
男「……あ、うん……」
従妹「これで、分かってもらえた?」
男「…………」
従妹「多分、いくら鈍いにぃにぃでも、今ので分かってくれたと思う」
男「……それは……」
従妹「にぃにぃは言ったよね、滝先輩は前の彼女と別れて告白したから、多分いい人だって」
男「…………」
従妹「だから、私もそうしたよ。先輩には悪いけど、そのためだけに呼んだの」
男「……お前……」
従妹「にぃにぃはまだ私のこと子供か何かと勘違いしてるんじゃない?」
従妹「もう私だって、色々分かってるもんっ」
従妹「大切な人のためなら、他の人を犠牲にしても、傷つけても構わない」
従妹「にぃにぃが思ってるほど、私は純情じゃないよ。もっとホントは汚いんだ」
男「…………」
765: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 07:52:24.55 ID:J3pGO6No0
従妹「にぃにぃは気付いてないかもしれないけど」
従妹「お風呂に入ろうって言い出したのもそう、キスし始めたのもそう」
従妹「その場のなりゆきなんかじゃないよ。全部、考えてやったんだもんっ」
男「……そうか……そうだったんだ……」
従妹「にぃにぃが好きだから。少しでも、気付いて欲しかったから」
従妹「でも……にぃにぃの中には……昔の私しかいなくて……」
男「…………」
従妹「なにやってもっ! いくら頑張ってもっ! 『妹』の一言で片付けられちゃうっ!」
男「……ああ……」
従妹「もうそんなの嫌だっ! 私は、にぃにぃが誰よりも好きなのっ!」
男「…………」
従妹「昔から……ずっと昔から……それは初めは兄を慕う気持ちだったかもしれないよ……」
従妹「でも今ならそれは違うって分かるもんっ」
従妹「私は……今も昔も……ずーっと」
従妹「──にぃにぃのことが大好きなんだからっ!」
772: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 08:01:25.75 ID:J3pGO6No0
男「…………」
従妹「…………」
男「……ははっ……」
従妹「……にぃにぃ?」
男「……これじゃあ、どっちが年上か分かんねえな」
従妹「……え」
男「ここまでされて、やっと気付くなんて……つくづく俺も馬鹿だよ」
従妹「……にぃにぃ」
男「滝先輩には悪いことしたな……俺の責任だ」
従妹「ち、違うっ……」
男「それにさ……お前のことをずっと妹として見てたのは事実だし」
男「今まで必死に、女として見てこなかったのも……正しい」
従妹「…………」
男「逃げてたんだよな、ずっとさ」
776: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 08:05:32.51 ID:J3pGO6No0
男「久しぶりに会ったら、急激に可愛くなって戻って来たお前に……」
男「正直、どうやって対応していいのか、分からなかった」
従妹「……うぅ……」
男「ごめんな……頼りない兄で……」
従妹「…………」
男「本当にごめんな……しっかりしない男で」
従妹「……そ、それって……」
男「俺も覚悟を決めるよ。ここまで想いをぶつけられたなら、真面目になるさ」
従妹「……う、うん……」
男「でも、もう少しだけ時間をくれ」
男「今まで妹として見て来たお前を、きちんと一人の女性として扱うから」
男「それで……答えを出させてくれないか?」
従妹「……ぅう……にぃ、にぃ……」
男「ちょっとだけ時間はかかるかもしれないけど」
男「お前の想いに応えられるだけの……しっかりとした男になるから」
781: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 08:10:11.27 ID:J3pGO6No0
従妹「……うっ……うぅ……ひっく……」
男「泣くなよ……ここから始まるんだからさ」
従妹「だ、だって……うぅ……う、嬉しくてっ……」
男「…………」
従妹「やっ、と……おもいが……通じ、て……うっ……」
男「そうか……」
男「洟垂れで泣き虫のお前が……本当によく頑張ったな」
従妹「……にぃにぃっ!」
ドカッ……。
男「おいおい……急に抱きつくなよ」
従妹「……ぅう……うぇっ……うっ……」
男「でも、もうそれも気にしなくていいんだよな……」
男「……そうだ」
従妹「……っ……ん?」
男「そういえば……今日はしてなかったよな」
787: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 08:14:16.34 ID:J3pGO6No0
従妹「……えっ」
男「……ほら、顔こっち向けろ」
……ちゅ。
男「………ん」
従妹「……んん!?」
男「……はい」
従妹「えっ……もう終わり……?」
男「まだ、付き合うって決まったわけじゃねぇぞ?」
従妹「で、でも……」
788: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 08:16:26.50 ID:J3pGO6No0
男「お互いフリーだし、まあキスぐらいならいいか」
男「なんか、俺がかなり得してるけど……」
従妹「にぃにぃ……はや……」
──んちゅ。
従妹「……ん…んっ」
男「ん……」
男(なんか……胸の奥がすかっとするな……)
男(やっと……これで、対等になれたのかもしれない……)
男(でも、これから……これからが……本当に大事だな……)
男(……こいつのことを本当に女として見れるか……そこが肝心だ……)
従妹「……ひぃひぃ……?」
男「んんっ!」
従妹「ん……あ……」
男(まあ、どうにかなるか……)
800: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 09:23:38.58 ID:J3pGO6No0
男「……とまあ、そういう感じで」
母親「…………」
男「……何か、言いたいことある?」
母親「言いたいことっていうか、今更気付いたわけ?」
男「……は?」
母親「そんなの前から分かってるわよ。従妹ちゃんがあんたのこと好きってことぐらい」
男「マジで?」
母親「見れば分かるじゃない。どう見ても、あれは恋してる顔でしょ」
男「……気付いてなかったのは俺だけか……」
母親「で、どこまでいったの? もしかして、やった?」
男「……どこまでって……」
母親「私、前に言ったわよね。手出したら、殺すって」
男「…………」
母親「あの子が毎日、あんたの部屋に行ってるのは知ってる」
母親「だから、聞くの。どこまでいった?」
802: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 09:27:39.47 ID:J3pGO6No0
男「……うぅ……」
母親「別に殺したりはしないわ。あれは、半端な気持ちで手を出して欲しくなかったから」
母親「あんたがその気なら、特に何もいわない」
男「……おい、それって……」
母親「大体、従妹ちゃんを預かる時に、佐智子さんからそれっぽいことは言われてたの」
母親「『従妹、今回は完璧に男くんのこと落としにいくと思うんで』みたいな」
男「……はぁー」
母親「実の兄妹でもないし、反対みたいなのはしないわ」
母親「男が真面目に付き合うつもりがあるならだけど」
男「…………」
母親「しっかり考えなさい。他所の場合とは全然違う」
母親「何たって従兄妹同士よ? 別れたらそれでおしまいってわけにはいかないんだから」
男「おう……」
804: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 09:31:47.47 ID:J3pGO6No0
母親「それにね、従妹ちゃん、相当優秀みたいよ」
男「…………」
母親「あんたの大学なんて、すかしっぺみたいなもん」
男「す、すかしっぺって……」
母親「それだけ好きなんでしょ。こんなに一途な子なんて普通いないわよ?」
男「…………」
母親「恵まれすぎね。だから、あんたももう少し変わらないと」
母親「何で、従妹ちゃんが好きになったか、ぐらい思い出しなさい」
男「……そんなのあるのかよ……」
母親「これ以上は手助けしないから。あとは自力で頑張れ」
男「……分かった」
母親「……私の子なんだから、期待してるわよ」
男「…………」
805: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 09:35:18.52 ID:J3pGO6No0
男(理由ねぇ……俺のことを好きなる理由……)
男(んー……思い出せねぇ……なんかあったっけ?)
男「あーだめだ……」
男「考えても仕方ねぇか……」
男(なんかの弾みで思い出してくれるといいだがな……)
男(……昔か……昔……)
男(……何だっけ……)
男(……んー……)
男「……駄目だ……何も浮かばない……」
男「…………」
806: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 09:39:09.53 ID:J3pGO6No0
従妹「にぃにぃ、おはようっ」
男「……うっす」
従妹「あれ、元気ないね。あっ……目の下にクマ出来てる」
男「ちょっと昨日は眠れなくてな……」
従妹「……もしかして、私のせい?」
男「んにゃ、ちょっと違うな」
従妹「ふーん……でも、夜更かしは身体に良くないよ」
男「おう、分かってる」
従妹「…………」
男「ん? 朝のキスでもして欲しいのか?」
従妹「ちょっ……い、今はだめっ!」
たたたたっ。
男「何なんだいったい……」
808: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 09:50:24.21 ID:J3pGO6No0
もぐもぐ……。
母親「……聞いたわよ、従妹ちゃん」
従妹「……へっ?」
男「…………」
母親「よく頑張ったわね、えらいわ」
従妹「……あ、はい……どうも……」
父親「ん、何の話だ? お父さんも参加させてくれ」
男「……いいから黙ってろよ」
父親「うるさいわバカ息子」
男「……はぁー……」
母親「今日の二人の予定はどうなってるの? 久しぶりの休日だけど?」
父親「ははっ、待ちに待った休日だなっ」
男「……ええと、まだ考えてない」
従妹「にぃにぃと一緒です」
母親「あら、そうなの」
809: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 09:54:15.26 ID:J3pGO6No0
父親「実は、前々から考えてることがあってなっ」
トゥルトゥルトゥル……。
男「おっ……携帯が鳴ってる」
従妹「にぃにぃ、誰から?」
男「んと……先輩だな……」
従妹「あ、こないだ会った大学の人?」
男「おう……もしもし」
父親「えっと、前から考えたんだがっ、どうだ、キャンプにでも……」
男「あ、はい……え、今日ですか」
父親「みんなで行ったら、楽しいと思うん……」
男「分かりました、飯食べたら向かいます」
従妹「にぃにぃ、何だって?」
男「いや、大学に来いってさ」
従妹「え……なんか、用事でもあるの?」
男「捲し立てられてよくわからんかった……」
811: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/06(水) 09:57:38.90 ID:J3pGO6No0
父親「えっ……キャンプは?」
男「これから大学行かないと駄目だから俺は無理だ」
母親「あら、それは残念ね」
父親「まあ、男は運が無かったってことで仕方ないな」
父親「悪いが、俺と母さんと従妹ちゃんは今日でかけて……」
従妹「あっ、私もにぃにぃについてく」
男「ん? どうせ、暇だぞ?」
従妹「でも、一緒にいたいし。別に構わないよ」
男「ならいいけど……まあ、邪魔はすんなよ」
従妹「うんっ」
父親「……はい……じゃあ、そういうことで」
母親「お父さん……元気出して……」
父親「せ、折角の……休みなのに……うぅ……」
父親「仕事中なのに……必死に色々考えてたのに……ぐすっ」
男「いや、仕事しろよ……」
894: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 00:23:52.44 ID:BKGilZsL0
ガチャ。
男「ちっーすっ」
先輩「おっ、来たくれたかっ」
男「先輩、急な用って何ですか? 電話では何にも聞けず仕舞いだったんですが」
先輩「ちょっと話があって……そうだ、こないだの彼女さんは?」
男「えっ……あ、はい」
従妹「ど、どうも……」
先輩「……よ、よしっ……うっしっ!」
男「せ、先輩?」
先輩「気持ちが急ぐあまり、彼女さんを連れて来てくれって言い忘れてしまったんだ」
先輩「でも、これでOK。男君、ナイスだよ」
男「えっと……こいつが何か話に関係あるんですか?」
899: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 00:30:40.03 ID:BKGilZsL0
先輩「僕はね……あの後、ずっと考えてたんだ」
男「はぁ……」
先輩「『にぃにぃ』って呼ばれる彼氏がいるのかどうか……」
先輩「一日中……それも、夜の間もずっと眠らないで、考えてたんだ」
男「……えっと……」
先輩「ここまで僕を唸らせた命題も……大学受験以来だ……」
先輩「紙に書いては消し、必死に考え尽くしたっ」
先輩「そして……遂にっ、今日の朝、その真理に辿り着いたんだっ!」
男「…………」
先輩「ズバリ断言しようっ! 男君っ!」
先輩「『にぃにぃ』がまかり通る仲の男女に、恋愛関係などないっ!」
男「…………」
男(……こいつバカだ……)
先輩「ははっ、驚きのあまり言葉も出ないか」
900: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 00:34:58.75 ID:BKGilZsL0
男「それで……先輩はどうしたいんですか?」
先輩「どうしたいもなにも、君は僕を欺いたんだよ? まずはその謝罪が聞きたいな」
男「謝罪ですか……」
先輩「それと、そうしなければならない理由」
先輩「そ、そして……そこにいる、じょ、女性の本当の紹介をして欲しいっ」
従妹「…………」
男「……ちょっと時間下さい」
先輩「構わない。十二分に話しあってくれ」
男「……従妹、ちょっとこっちこい」
従妹「う、うん……」
とことことこ……。
男「で……どうする?」
従妹「やっぱりあの人……変な人だね……」
男「俺も今までは真面目な人だと思ってたんだが……どうやら、病にかかってるらしい」
男(完全に、恋の病だと思うがな……)
902: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 00:38:16.82 ID:BKGilZsL0
従妹「にぃにぃ……どうするの?」
男「……とりあえず、俺に任せろ」
従妹「……信じてもいい?」
男「ああ……昨日の俺とは違うところを見せてやる」
従妹「……にぃにぃ」
先輩「話はそろそろ終わったか?」
男「……はい」
とことことこ……。
先輩「……で、どうなったんだ?」
男「初めに、確かに先輩に嘘をついてたことを認めます」
先輩「ははっ、やっぱりそうだろう。僕を騙そうなんて、君も思い切ったことをする」
男「それは、本当にすみませんでした」
先輩「まあ、いいよ。それで……そ、そこの、女性は一体……?」
903: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 00:42:33.03 ID:BKGilZsL0
男「こいつは俺の従妹で、夏休みの間だけ家で預かってます」
先輩「そ、そうか……従妹なのか……」
男「ただ、先輩」
先輩「……と、なると……ぼ、僕がアプローチしても問題は……」
男「──あるんです」
先輩「……えっ?」
男「こないだ、この子に告白されまして」
先輩「こ、告白……?」
男「今は保留中ですが、正直、他の野郎に渡すつもりは更々ありません」
従妹「……っ」
先輩「そ、そんなっ! 従兄妹同士なんだろっ!? 男君、また君は嘘をついて……」
男「残念ですが、嘘じゃないです」
先輩「う、嘘だっ! 僕は騙されないぞっ!」
男「……だったら、証明してみせますよ……」
従妹「にぃにぃ……?」
904: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 00:45:06.99 ID:BKGilZsL0
ぎゅっ……。
従妹「……あっ……」
先輩「なっ……抱きしめて何を……」
男「先輩には申し訳ないと思ってます……でも」
先輩「……ま、まさか……」
んちゅ……。
男「……ん」
従妹「……あん」
先輩「くっ……躊躇いもなく……目の前でっ……」
男「……んんっ」
男(今日はかなり激しくいくぞっ……)
ぎゅっ。
従妹「……んっ……あっ……」
男「んん……」
先輩「……あっ……なんて熱いんだ……この二人……くっ、くそっ」
908: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 00:50:57.23 ID:BKGilZsL0
男(抱きしめてわかるけど、こいつの身体ってほんと柔らかいな……)
従妹「はっ……んっ……」
男(しかも、必死に俺の強烈なキスについていこうとしてるし……)
従妹「……んっ……あ……んっ」
男(……声も生々しい……やべぇ……ちょっと興奮してきた)
男(俺も負けてられないぞ……唾液を流し込んでやるか……)
にゅちょ……にゅるん……。
従妹「んっ! は……ん……」
男「……んん……」
先輩「……うぅ……なんだよ……こ、こんなの……」
先輩「……はつ、初恋だったのに……これは……キツい……」
従妹「……あっん……ん……」
男「……んっ……」
先輩「……で、でも何だろう……この胸の高まりは……」
先輩「……も、もしかして……自分は……ああ……うっ……」
912: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 00:56:02.06 ID:BKGilZsL0
従妹「…………」
男「どうした、さっきから黙り込んで」
従妹「……いや、にぃにぃが凄い猛烈だったから……」
男「なんだ、意外だったか?」
従妹「予想外だよぉ……あ、あんな……人の前で……」
男「前だってやってるだろ?」
従妹「で、でも……こんなにす、凄いのじゃなかったし……唾液だって……」
男「は、ははっ……あれはかなりやばかったな」
従妹「う、うん……新発見だよ……頭、くらくらしたもん……」
男「また、帰ったらやるか?」
従妹「にぃにぃ……」
男「ん?」
従妹「絶対だよっ! 約束だからねっ!」
男「ははっ、勿論だっ」
男(しかし、帰る直前、先輩が解放された顔だったのが気になるな……何だったんだあれ)
917: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 01:07:29.72 ID:BKGilZsL0
男「案外、用事が早く終わっちまったな」
従妹「家に帰ってもいいよね。みんな待ってると思うし」
男「…………」
男「そうだ」
従妹「……にぃにぃ?」
男「どうだ、これからデートしてみないか?」
従妹「……えっ」
男「こないだは俺がきちんとエスコートも出来なかったしな」
男「挽回もかねて、もう一度仕切り直しなんていいと思うんだ」
従妹「…………」
男「お前はどう思う?」
従妹「う、うんっ!」
従妹「行こっ! 絶対に行こうよっ!」
男「よしっ、そうと決まれば話は早い。どうだ、どこに行きたい?」
従妹「どこだったいいよっ! にぃにぃと一緒なら、どこでも楽しいもんっ!」
918: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 01:11:45.44 ID:BKGilZsL0
従妹「……うわぁ……凄い……」
男「俺も初めて入ったわ」
従妹「……にぃにぃ……でも、これ……」
男「気にするな、お前が好きなものを選べばいい」
従妹「で、でも……値段どれも高いよ?」
男「今までの全部のお返しだよ。こんなんじゃ返せないぐらいだけど、それぐらいさせてくれ」
従妹「う、うん……」
男「どうだ? この辺のネックレスなんていいと思うが」
従妹「……ネックレスかぁ……」
男「何だ? 違うのがのいいか?」
従妹「うーん……」
男「じっくり考えればいい。時間はたっぷりあるんだからな」
従妹「…………」
従妹「あっ……」
924: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 01:15:40.09 ID:BKGilZsL0
男「ん?」
従妹「……これ……」
男「……指輪か」
従妹「う、うん……」
男「これが欲しいのか?」
従妹「……だ、駄目かな……?」
男「そんなことないさ。お前が気に入ったものを買うつもりだからな」
従妹「でも……恋人同士でもないのに、指輪を贈るって……」
男「気にしたら負けだぞ? 言ったもんが勝ちだ」
従妹「…………」
従妹「にぃにぃ」
男「おう、決めたか」
従妹「これ……二つ買おっ」
男「……ん? もう一つ欲しいのか?」
従妹「ううん……私とにぃにぃが一緒につけるのっ」
925: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 01:20:23.17 ID:BKGilZsL0
従妹「ルンルンル~ン♪」
男「えらくご機嫌だな」
従妹「だ、だって……にぃにぃと同じ指輪っ」
男「そうか、そんなに嬉しいのか」
従妹「うんっ! なんか、一緒にずっといるみたいっ」
従妹「これがあれば、離れててもにぃにぃのこと感じられるし……」
男「……確かにそうだな……」
従妹「だから、絶対離さず身につけてないと駄目なんだからねっ」
男「風呂の時もか? 錆びちゃうぞ?」
従妹「でも、銀だから大丈夫なんだよっ。変な成分のお風呂に入らなければ大丈夫っ」
男「ははっ、それは一本取られた」
従妹「ふふっ、にぃにぃっ」
ぎゅっ……。
男「おいおい、一目についちゃうぞ?」
従妹「いいのっ、今日はデートなんだからっ!」
927: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 01:24:43.27 ID:BKGilZsL0
従妹「にぃにぃ、こっちの服とさっきのとどっちがいいかな?」
男「……ええと、前のほうがいいじゃないか……?」
従妹「じゃ、じゃあねっ……次はこっちのやつと……」
男「そろそろ決めようぜ……もう、かれこれ一時間もこのやり取りやってるぞ……」
従妹「だって、いいのがいっぱいあるんだもん」
男「それも分かるけど……もう腹減ってきたって……」
従妹「えー……じゃあ、もう少ししたら決めるよ」
男「……出来るだけ早くな……」
従妹「うんとねー……あっ、あっちのもいいのがあるっ」
たたたたっ……。
男「……なんか、かなり長引きそうな予感がするな……」
従妹「にぃにぃっ! 早く、こっちに来てっ!」
男「お、おう……」
933: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 01:32:27.66 ID:BKGilZsL0
男「…………」
従妹「ご、ごめんね……」
男「……あー……後少しから本当に長かったな」
従妹「だから、さっきから謝ってるじゃん。もう、許してよぉー」
男「別に怒ってないけど……まあ今日はいいさ」
男「今までの謝罪と感謝を込めたのが、本日のデートの意味だからな」
男「姫に振り回されるのも、我慢我慢」
従妹「むぅー……絶対、意地悪だよぉ……」
男「ははっ、よし、飯頼むか」
男「ちなみに、ここはオムライスが評判のお店らしいぞ」
従妹「そうなの? じゃあ、それを頼もうよ」
男「ただ、二種類あってな……どっちにしようか迷ってるんだ」
従妹「ふーん、よくわかんないけど、そんなの悩む必要ないじゃん」
男「えっ? どうしてだ?」
従妹「だって二つ頼んで、分け合いっこすればいいだけだもんっ」
938: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 01:37:25.81 ID:BKGilZsL0
店員「お待たせしました」
従妹「うわぁー……いい匂い」
男「これは……結構うまそうだ……」
従妹「温かいうちに食べよっ! 頂きまーすっ」
男「おう、頂きます」
もぐもぐっ。
従妹「お、おいしいっ」
男「……こ、これは半熟の卵と具が最高のハーモニーを醸し出して……」
従妹「もうっ、そんな解説いらないって」
男「そ、それもそうだ……うまいな」
従妹「うんっ、それに……にぃにぃと食べてるから二倍おいしいよっ」
男「はは、二倍って何の基準なんだ」
従妹「細かいことはいいのっ! すっごくおいしいってことだもんっ」
男「それは良かった。誘った甲斐があるってもんだ」
従妹「うんっ、本当に楽しいっ!」
939: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 01:41:15.06 ID:BKGilZsL0
従妹「にぃにぃ、ほらこっちも食べてみて」
男「おう……って」
従妹「あーん」
男「…………」
従妹「んっ、にぃにぃ! あーん」
男「……ああ、分かったよ……」
ぱくっ……。
従妹「おいしいでしょ?」
男「おう……おいしいな」
従妹「じゃあ、にぃにぃのやつもちょうだいねっ」
男「……まさか」
従妹「勿論、今のをお返しだよ? ほら、にぃにぃの出番っ」
男「……し、仕方ない……あ、あーん」
ぱくっ。
従妹「ふふっ、なんかバカップルみたいだねっ」
941: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 01:45:09.84 ID:BKGilZsL0
男(どうしてこいつは……俺のことを好きになってくれたんだろう)
従妹「にぃにぃ、あーん」
男「……みんな見てるぞ……」
従妹「周りは気にしないのっ、二人だけの時間だもんっ」
男(どうしてこいつは……俺に笑顔を向けてくれるんだろう)
男「……もう、どうにでもなれっ」
ぱくっ……。
従妹「ははっ、豪快な食べっぷりだねっ。さすが、にぃにぃっ」
男「……この野郎……ほらお返しだっ……あーん」
従妹「私は全く恥ずかしくないのだっ」
ぱくっ。
男(どうして……)
男(……どうしてなんだろう……)
男(こんなに楽しそうに……幸せそうに……俺を想ってくれるのは……)
従妹「にぃにぃっ、楽しいねっ!」
943: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 01:47:45.28 ID:BKGilZsL0
──『……嫌……』
男(……えっ……?)
──『……ち、近づかないで……』
男(な、何だコレ……?)
──『……うぅ……ええ……ん……』
男(これは……この声は……?)
従妹「にぃにぃ……?」
男「あ、ああ……」
男「…………」
従妹「どうかした? なんか、表情が変だよっ?」
男「……そ、そうだな……」
男(あの声は……確かに……従妹……?)
946: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 01:51:48.14 ID:BKGilZsL0
従妹「急にどうしたの? なんか、お腹でも痛かったり?」
男「いや……そういうことじゃなくてな……」
男(……そうだ……)
男(あれは……多分……昔の、小さかった従妹の声だ……)
男「…………」
従妹「……にぃにぃ?」
男「……ああ」
男(……何か、思い出しそうだぞ……)
従妹「ちょ、ちょっとどうしちゃったの……?」
男(こうやって……急におかしくなった俺を心配そうに覗き込む、この子も……)
従妹「……なんか変だったらすぐに言ってよ…‥?」
男(確か昔は……)
男(…………)
男「……そうだ……そうだったんだ……」
947: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 01:54:53.78 ID:BKGilZsL0
従妹「……え?」
男「思い出した……思い出したぞっ」
従妹「ちょっと……にぃにぃ……?」
男「小さかった頃……」
男(そうだ……そうだよっ……)
男(今は慕ってくれるこいつも……昔は……)
──『……ち、近づかないで……』
男「…………」
従妹「……えっと……?」
男「……昔さ……お前、俺のこと嫌いだったよな」
従妹「……あ……で、でも何で……?」
男「初めて会ったときも、佐智子さんの後ろにずっと隠れててさ」
従妹「もしかして、にぃにぃ……」
男「俺が必死に遊ぼうって誘ってんのに、ぴぃーぴぃー泣いちゃって」
948: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 02:00:02.47 ID:BKGilZsL0
従妹「……う、うそ……」
男「それでも、ずっとめげずに誘って」
男「でもお前、追いかける俺から一生懸命逃げてさっ、ははっ……」
従妹「……ああ……」
男「仲良くなりたかったのに、お前ってやつはひどいやつだった」
従妹「……にぃにぃ……」
男「でも、ある時、それを見かねた親たちが遊園地に行こうって」
従妹「…………」
男「でも、ずっとお前は佐智子さんの側にいて」
男「なんか悔しくて、それでもまだ仲良くなりたい自分がいて……」
従妹「……う、うん……」
男「そしたらお前、急にいなくなってやんの」
従妹「……あ、あの時は……アイスクリームに目を奪われちゃって……」
男「ははっ、その時から甘いもんが好きだったのか」
949: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 02:05:09.14 ID:BKGilZsL0
従妹「でも……にぃにぃ、思い出したんだ……」
男「ああ……それでな」
従妹「うん……」
男「慌て出した親たちを尻目に……俺は、一人で駆けたんだ」
男「母さんを振り切って……がむしゃらにな」
従妹「…………」
男「憎たらしいお前だったけど、多分泣いてるんだろうなって」
男「寂しがりやで臆病なお前だったから、絶対泣いてるんだろうなって」
従妹「うん……うん……」
男「その姿が何となく浮かんじゃって、居ても立ってもいられなくて」
男「……人ごみの中、小さいからだでその間を走り抜けた」
従妹「……にぃにぃ」
男「そして……見つけたんだ」
従妹「…………」
男「やっぱり泣いてた……小さなお前を……見つけたんだ」
951: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 02:10:20.61 ID:BKGilZsL0
男(……覚えてる……)
男「……覚えてるよ……」
──『……うぅ……ええ……ん……』
男「真っ赤に晴らした目と……視線が合って……」
──『……うぅ……』
男「一瞬、安心した様子だったけど……俺だけだったことに、すぐに戸惑い出して……」
──『……うっ……』
男「それで、泣き虫なお前は……また泣き始めようとしたから」
男「それを止めたくて……女の子を泣かせたくなくて……」
──『えっ……』
男「俺は……手を差し伸ばしたんだ」
954: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 02:14:28.01 ID:BKGilZsL0
従妹「……にぃにぃ……」
男「うん、思い出したよ」
従妹「……ああ……」
男「そうか……そうだな」
従妹「…………」
男「俺のほうが……先に……」
956: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 02:16:01.78 ID:BKGilZsL0
従妹『えっ……』
男『……いいから、手、握れよ』
従妹『……うぅ……で、でも……』
男『ほらっ、遠慮するなっ』
従妹『……っ』
男『……すぐに母さんたちも来るからさ』
従妹『う……うん……』
男『しかし心配したぞ……急にいなくなったりするから』
従妹『ご、ごめんなさい……』
男『いいよ、気にすんな』
従妹『でも……ど、どうして……探してくれたの……?』
男『……だって……俺……』
──……お前のこと好きだから
960: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 02:20:38.71 ID:BKGilZsL0
男「……俺の方が、先に……お前を好きになったんだな」
従妹「……うぅ……にぃにぃ……」
男「ははっ、馬鹿だな……こんな大事なこと忘れてるなんて……」
従妹「……うん……ほんと、馬鹿だよぉ……」
男「そうか……そうだったのか」
男「悩むとか、悩まないとかそんな話じゃなかったんだ」
従妹「……?」
男「前からおかしいと思ってんだよな」
962: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 02:24:34.68 ID:BKGilZsL0
男「お前のこと考えると……なんか、胸の奥がちくちくするんだ」
男「初めは兄として、妹を大事に思う気持ちかな、とか思ってたけど」
男「今なら分かる……確実に分かるさ」
従妹「……にぃにぃ……?」
男「俺は、お前のことが……好きだったんだ」
従妹「ああ……」
男「ずぅーっと昔から……そして、今も……」
従妹「……う……ん……」
男「──俺は、お前のことが大好きだっ!」
従妹「にぃにぃっ!!!」
─本当のラブラブEND─
989: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/10/07(木) 02:38:21.55 ID:BKGilZsL0
ういっす、これで終わりです
何だかんだ言って、最後までいけて良かった
保守してくれた人、支援してくれた人、読んでくれた人
本当にありがとうございました!
また今度、どこかで会いましょっ!
従妹「にぃにぃ久しぶりっ!」