1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 02:24:27.81 ID:IvKgodXi0
ちひろ「………」
ちひろ「……あれ?」
ちひろ「も、もしかして……」
ちひろ「ご存知、ないのですか!?」クワッ
ちひろ「……キラッ☆」
2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 02:28:04.36 ID:IvKgodXi0
~2012年1月某日~
P「今日もお疲れ、凛」
凛「お疲れ様……プロデューサー、それで用事って?」
P「あぁ、実はちひろさんが、凛に用があるって」
凛「ちひろさんが?」
P「何でも二人だけで話がしたいらしくてな。会議室に来てくれ、だそうだ」
凛「……何の用だろう」
P「さぁなぁ」
ガチャッ
凛「失礼します」
ちひろ「あぁ渋谷さん。お待ちしてましたよ」
ちひろ「実はですね、渋谷さんもそろそろ通っても良い頃かなーって思って」
凛「通う?」
ちひろ「そうです。アイドルしてより一層魅力的になるための養成所的な所にです」
凛「……そんなの、聞いたことありませんけど」
ちひろ「えぇ、それもそのはず。これはウチだけがやってる独自のシステムですから」
ちひろ「……まずは場所を移動しますので。私の後についてきて下さい」
凛「はぁ……」
~駐車場~
ちひろ「さてと……」
凛「あの……何故駐車場に?」
ちひろ「……渋谷さんは、ウチに来てからまだ間もありませんよね?」
凛「……まぁ、そうですけど」
ちひろ「貴女には、一つだけ約束していただきたいことがあります」
凛「約束?」
ちひろ「これから私達は、そこにある黒塗りのマイクロバスに乗るのですが……」
ちひろ「そこで貴女が見聞きした事柄は全て、他言無用でお願いします」
凛「他言無用……」
ちひろ「はい。勿論、プロデューサーさんにもです」
ちひろ「もし、これを守れない場合は……」
凛「……分かったよ」
ちひろ「あら?」
凛「どの道、選択肢はなさそうだし」
ちひろ「そうですか。貴女のような方は話が早くて助かります」
凛「………」
ちひろ「プロデューサーさんには私から連絡しておきますので、安心して下さいね」
ちひろ「それでは早速、パッションセンターへ向かいましょう!」
ブロロロロ……
凛「ちひろさんに言われるがまま、バスに乗ってしまったけど……」
凛「パッションセンターって……一体どんな場所なんだろう」
美嘉「あれ、凛?」
凛「?……美嘉?」
かな子「こ、こんにちは~」
美嘉「ふーん、凛も行くんだ。パッションセンター」
凛「美嘉達は、何でこのバスに?」
美嘉「アタシ達だけじゃないよ?後ろの席、チラッと見てみたら?」
凛「………」チラッ
藍子「では、あれは……」ヒソヒソ
瑞樹「えぇ、もう少し工夫が必要ね」ヒソヒソ
みく「また今日も押さないとにゃ……で、でもにゃあ~……」
幸子「にゃあにゃあうるさいですよ」
凛「(いっぱいいる……)」
かな子「皆、仕事の合間を縫ってパッションセンターに通ってるんです」
凛「へぇ」
美嘉「プロデューサーに見向きもされない娘は、一日中入り浸ってるけどね~」
かな子「ちょ、ちょっと美嘉ちゃん……」
凛「……どういうこと?」
美嘉「着けば分かるって。もうそろそろじゃない?」
ブロロン……キキッ
ちひろ「さぁ皆さん!今日も情熱を以て、受難に打ち勝ちましょう!」
ちひろ「……パッションセンターへようこそ、渋谷さん」
ゾロゾロ
卯月「かな子ちゃーん、こっちこっち!」
かな子「……そ、それじゃ私達はこれで」
美嘉「まったね~★」
凛「うん」
ちひろ「では渋谷さん。私についてきて下さいね」
凛「……ちひろさん、聞きたいことがあるんだけど」
ちひろ「何でしょう?」
凛「ここって一体何をする所なんですか?」
ちひろ「……そう言えば、まだ何も言ってませんでしたね」
ちひろ「でも私から説明するよりは、施設をご覧になった方が理解して頂けると思いますよ?」
凛「………」
美羽「……っしょ、よいしょっ……」ズッズッズッ
みく「うぐぐぐっ……」ズッズッズッ
凛「……あの二人は何やってるの?」
ちひろ「どうやらドラム缶を指定の位置まで押す作業中ですね」
美羽「ふぅ、ふぅ……や、やっと折り返し……」
みく「……も、もう嫌にゃあっ!」ドカッ
美羽「だ、駄目だよみくちゃん!まだ三往復も残って」
みく「何でみくがこんな無意味な事しなきゃなんないにゃ!!」
みく「美羽は……美羽は、こんなんでホントに目覚めると思ってるのにゃ!?」
美羽「で、でも、これで楓さんはやってのけたんだし……」
凛「……何がやりたいのか、余計分からなくなったんですけど」
ちひろ「新しい自分を発掘しようとしてるんですよ」
凛「あ、新しい自分……?」
ちひろ「アイドルに求められるのは主に歌やダンス、演技力ですが……」
ちひろ「残念ながら、それらだけでは実力を発揮できない方も、少なからずいらっしゃいます」
ちひろ「そんな伸び悩むアイドルの皆さんの内に眠る、新しい自分を発掘する……」
ちひろ「情熱を以て、受難に打ち勝つ。それがパッションセンターの目的なんです」
凛「つまり……ドラム缶を押す作業で、新しい自分を発掘出来ると?」
ちひろ「まぁ、過去には高垣さんくらいしかいませんけどね」
ちひろ「見つけ方は人それぞれですよ。あれは方法の一つに過ぎません」
凛「(……どうしてそうまでして、新しい自分を……?)」
かな子「……痛っ!」ドテッ
卯月「かな子ちゃん、大丈夫!?」
かな子「う、うん……これ位平気……」ズキズキ
ちひろ「あの子達は歌だけじゃなく、ダンスの方面でも才能を磨こうとしています」
凛「……そうなんだ」
ちひろ「まだファンも少ないですし。プロデューサーさんからのお仕事も、そんなに多くはありませんから」
凛「ここで行われてる事を秘密にする理由って……」
ちひろ「サプライズ性も大事ですからね」
ちひろ「皆、見えない所で努力してるんですよ……表舞台に立つために」
藍子「瑞樹さん。これ、ちょっと見てほしいんですけど」カチカチ
瑞樹「……まだ不自然ね。この部分、もう少し隠せない?」
藍子「あ、はい……やってみます」カタカタ
凛「あの二人は何を?」
ちひろ「彼女達は、主に自分のポスターの加工処理を行っています」
凛「えっ?」
ちひろ「いわゆるコラ画像って奴ですね。首から下は違うアイドルを使ったり……」
ちひろ「これがなかなか、色々種類があって面白いんですよ」
凛「な、何で加工を?」
ちひろ「インターネット上に加工した画像を流して、自身の知名度を上げる為です」
凛「知名度って……」
ちひろ「面白いは正義って言葉、聞いた事ありません?」
ちひろ「どういった形であれ、彼女達の人気上昇に繋がってますから」
ちひろ「アレも一つの『新しい自分』の形と言えるのではないでしょうか?」
凛「………」
幸子「うぅぅぅぅ……!」
未央「ほらー、さっさと飛んで!下はクッションだから!大丈夫だって!!」
美嘉「プロデューサーが見てたらどうすんのさー!」
幸子「ぼ、ぼぼぼボクは……ボクはっ……!」ガタガタ
凛「……あの子は何で、あんな高いところから飛ぼうと?」
ちひろ「輿水さんは、今度プロデューサーさんにお仕事を持ち込む予定なんですよ」
ちひろ「まずは高所に対する恐怖心を克服する、と言った所でしょうか」
凛「……バンジーでもやるんですか?」
ちひろ「スカイダイビングらしいですね。野外会場までカッコよく降り立つ企画だそうで」
凛「そ、それって……結構危ないんじゃ」
ちひろ「えぇまぁ、それなりに。パラシュートを開くタイミング等を考慮しなければなりませんから」
ちひろ「我が社としても彼女を全面的にバックアップして、みっちり仕込む予定ですよ」
ちひろ「……万が一ですが、企画で死なれても困りますしね」ニコッ
凛「………」ゾクッ
凛「で、でも、何でそこまでして……」
ちひろ「芸は身を助けるって言うじゃないですか」
ちひろ「それに、成功すれば……」
ちひろ「もしかしたら、多分、恐らく、きっと、あるいは」
ちひろ「ファンが、プロデューサーさんが、自分達に振り向いてくれる」
ちひろ「かも知れませんからね♪」
ちひろ「……あり得ない話だと思いますか?バカげた話だと?」
凛「………」
ちひろ「確かに、こんな事をやってたってファンが増えるとは限りません。プロデューサーさんの事だってそうです」
ちひろ「でもパッションセンターに通う皆さんは全員、その可能性に賭けてるんですよ」
ちひろ「例えば、あそこにいる城ヶ崎さんは、妹さんのついで扱いされるのを何とかしたい……」
ちひろ「本田さんは、アイドルとして行き詰った自身の現状を何とかしたい……」
ちひろ「皆さん、本気なんです。私だって、単なるおふざけでここを運営なんかしてません」
凛「………」
ちひろ「まぁ、渋谷さんに彼女達のような事をしてもらう必要はありませんけどね」
ちひろ「……っと、着きました。この部屋です」
~多目的室~
ちひろ「丁度空いてる部屋がここしかなかったんですよね、すみません」
凛「……何をするんです?」
ちひろ「ちょっとお待ちを……」ゴソゴソ
ちひろ「さぁ渋谷さん、これをどうぞ」ドサッ
凛「……何ですか、これ」
ちひろ「プロデューサーさんのコートです♪」
凛「は?……コート?」
ちひろ「はい」
凛「……これを私にどうしろって言うんですか?」
ちひろ「決まってるじゃないですか。嗅ぐんですよ」
凛「嗅ぐ!?」
ちひろ「はい♪」
凛「……こ、これを?」
ちひろ「えぇ。肺で臭いを満たす程度に、思いっきり嗅いじゃって下さい」
凛「………」
ちひろ「……あ、コートの他にトランクスもありますよ」ゴソゴソ
凛「え゙っ」
ちひろ「聞こえませんでした?トランクスですよ。ブリーフじゃありません」
凛「と、トランクス……!?」
ちひろ「そうです。正真正銘、プロデューサーさんのトランクスです」
ちひろ「これも頭に直接かぶって、思いっきり……」
凛「ちょ、ちょっと待ってくださいちひろさん!」
ちひろさん「何でしょう」
凛「その……意図が、分からないんですけど」
ちひろ「……あら。嫌だ、とは言わないんですね?」
凛「!」
ちひろ「私はただ、渋谷さんの新しい側面を見出したいだけですよ」
凛「で、でも!……こんなので……!」
ちひろ「……興味は、あるんですよね?」
凛「っ……!」
ちひろ「あっ、私の前だからって、別に遠慮することはありませんよ?」
凛「………」
凛「(……ぷ、プロデューサーの、コートに……トランクス……)」ゴクリ
ちひろ「ふふふ……」
凛「………」
ドクンドクンドクン……
凛「(……コレに手を出したら……色々なものが崩れ落ちる気がする……)」
凛「(……でも……だけど……いや……)」
ちひろ「さぁ、どうします?」ニコニコ
ドクンドクンドクンドクンドクン……
凛「(……わ、私……私はっ……)」
凛「…………ちひろさん」
ちひろ「はい♪」
凛「……これ、やっぱり受け取れません」
ちひろ「はい♪……えっ?」
凛「………」
ちひろ「え、えぇっと……いきなりトランクスは、ちょっとハードル高過ぎました?」
ちひろ「じゃあ、軽くハンカチから」
凛「いいんです!」
ちひろ「………」
凛「……私は、このままでいたいんです」
ちひろ「そうですか」
ちひろ「別に私は、それを咎めたりはしませんよ」
ちひろ「どうやら渋谷さんは、渋谷さんのなりたいアイドル像を持ってらっしゃるようですし」
凛「………」
ちひろ「……もう一度、聞かせてもらいますが」
ちひろ「本当に、その選択でいいんですね?」
凛「……はい」
ちひろ「……ふふっ」ニコッ
美嘉「断ったぁ!?」
かな子「ほ、ホントに?」
凛「うん」
卯月「ちひろさんに、直々に呼ばれたんだよね……?」
美嘉「どうしてそんなチャンスをふいにできるんだか……」
凛「私は……ありのままの自分を、大切にしたいから」
美羽「ありのままの……」
みく「自分……にゃ?」
凛「……あのさ」
凛「皆も、もうちょっとだけでいいから……今の自分に自信、持ってみて」
凛「そしたら、プロデューサーだってきっと、私達のことをちゃんと……」
未央「……そんな簡単に、変われるわけないじゃない」
凛「未央……?」
未央「じゃあ、今まで私達がここで信じてやってきた事って……何だったの?」
未央「凛はそれを、無駄な努力でしたって言いたいわけ?」
凛「そ、そんな事は……」
未央「私はそんなの認めない……認めないから」スタスタ
美羽「あっ……み、未央ちゃん、待って!」タタタ
卯月「未央ちゃん……」
みく「(少なくともドラム缶押しは、みくにとって物凄いムダだった気がするにゃ……)」
美嘉「……んー。幸子の手伝いしなきゃなんないから、アタシも戻るけどさ」
美嘉「凛の言ってること、多分間違ってないって思うよ★」
凛「美嘉……」
かな子「わ、私も……!」
卯月「かな子ちゃんも?」
かな子「そうですよ……もっと自分の好きなことを、推し進めればよかったんです!」
卯月「え?好きなことって……」
かな子「さぁ行きましょう、卯月ちゃん!いざ、洋菓子店へ!」
卯月「え、えぇ!?あ、ちょっと……!」ズルズル
瑞樹「若いっていいわね、自分の理想を貫けて……」
藍子「瑞樹さん。次の画像のチェックお願いします」カチカチ
瑞樹「……ねぇ、藍子ちゃん」
藍子「……凛さんの事、気になるんですか?」
瑞樹「うーん……ちょっと羨ましいかなって。藍子ちゃんは?」
藍子「……私がこれを始めた理由。瑞樹さんは、知ってますよね?」
瑞樹「え、えぇ……でも」
藍子「身体のことを弄られながら今更真面目に取り組めるほど、私は強くないですから」
瑞樹「……藍子ちゃん」
藍子「開き直ったままでいるしか……引き返せないんです、もう」カチカチ
ちひろ「黒髪ロングヘアーな子は変態属性が付きやすいって、調べはちゃんとついてたんですけどね~」
ちひろ「発想が安直過ぎましたかね?……まぁ、どちらに転んでも良かったんですけど」
ちひろ「ともあれ、渋谷さんの意気込みに感化された子もいるみたいですね。良い傾向です」
ちひろ「まぁどの道正統派アイドルは必要でしたから。色モノ枠はまた別の機会にでも……さてと」
ポパピプペ
ちひろ「……あ、もしもし。社長ですか?……はい、えぇ……それで、例の企画なんですけど」
ちひろ「はい、まず一人目は渋谷凛――」
―――――
―――
―
~一ヶ月後~
ザワザワ……
P「よーし、じゃあ発表するぞー」
P「……えー、まずは渋谷凛!」
凛「はい」
P「次、双葉杏!」
杏「えぇー……」
P「えぇー、じゃない。社長命令は絶対だぞ?」
杏「えぇー……」
凛「(あれから随分経って、私を含めたアイドル5人のCDが出る事に決まった)」
凛「(……ちひろさんは、相変わらず笑顔でプロデューサーの横で佇んでいる)」
ちひろ「CDデビュー、おめでとうございます!今後とも頑張ってくださいね♪」
かな子「は、はい!」
凛「………」
凛「(時々、本当にこれで良かったのかなって思う時もある)」
凛「(もしあの時、ちひろさんの提案を受け入れてたら……)」
凛「(今とはまた違ったアイドルになれたかもしれない……って)」
凛「(……でも)」
P「凛?……ボーっとして、どうしたんだ?」
凛「あっ……うん、大丈夫。私は変わらず、いつも通りだよ」
P「そうか。それなら良いんだ」
凛「……行こう、プロデューサー。CD、収録しなきゃね」
P「おう、楽しみだな!」
凛「(私は今、このままの私でいられる事に……幸せを感じている)」
おわり
元スレ
~2012年1月某日~
P「今日もお疲れ、凛」
凛「お疲れ様……プロデューサー、それで用事って?」
P「あぁ、実はちひろさんが、凛に用があるって」
凛「ちひろさんが?」
P「何でも二人だけで話がしたいらしくてな。会議室に来てくれ、だそうだ」
凛「……何の用だろう」
P「さぁなぁ」
3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 02:32:13.19 ID:IvKgodXi0
ガチャッ
凛「失礼します」
ちひろ「あぁ渋谷さん。お待ちしてましたよ」
ちひろ「実はですね、渋谷さんもそろそろ通っても良い頃かなーって思って」
凛「通う?」
ちひろ「そうです。アイドルしてより一層魅力的になるための養成所的な所にです」
凛「……そんなの、聞いたことありませんけど」
ちひろ「えぇ、それもそのはず。これはウチだけがやってる独自のシステムですから」
ちひろ「……まずは場所を移動しますので。私の後についてきて下さい」
凛「はぁ……」
4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 02:36:20.91 ID:IvKgodXi0
~駐車場~
ちひろ「さてと……」
凛「あの……何故駐車場に?」
ちひろ「……渋谷さんは、ウチに来てからまだ間もありませんよね?」
凛「……まぁ、そうですけど」
ちひろ「貴女には、一つだけ約束していただきたいことがあります」
凛「約束?」
ちひろ「これから私達は、そこにある黒塗りのマイクロバスに乗るのですが……」
ちひろ「そこで貴女が見聞きした事柄は全て、他言無用でお願いします」
凛「他言無用……」
ちひろ「はい。勿論、プロデューサーさんにもです」
5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 02:40:02.72 ID:IvKgodXi0
ちひろ「もし、これを守れない場合は……」
凛「……分かったよ」
ちひろ「あら?」
凛「どの道、選択肢はなさそうだし」
ちひろ「そうですか。貴女のような方は話が早くて助かります」
凛「………」
ちひろ「プロデューサーさんには私から連絡しておきますので、安心して下さいね」
ちひろ「それでは早速、パッションセンターへ向かいましょう!」
7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 02:43:30.67 ID:IvKgodXi0
ブロロロロ……
凛「ちひろさんに言われるがまま、バスに乗ってしまったけど……」
凛「パッションセンターって……一体どんな場所なんだろう」
美嘉「あれ、凛?」
凛「?……美嘉?」
かな子「こ、こんにちは~」
美嘉「ふーん、凛も行くんだ。パッションセンター」
凛「美嘉達は、何でこのバスに?」
9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 02:45:32.95 ID:IvKgodXi0
美嘉「アタシ達だけじゃないよ?後ろの席、チラッと見てみたら?」
凛「………」チラッ
藍子「では、あれは……」ヒソヒソ
瑞樹「えぇ、もう少し工夫が必要ね」ヒソヒソ
みく「また今日も押さないとにゃ……で、でもにゃあ~……」
幸子「にゃあにゃあうるさいですよ」
凛「(いっぱいいる……)」
10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 02:49:01.19 ID:IvKgodXi0
かな子「皆、仕事の合間を縫ってパッションセンターに通ってるんです」
凛「へぇ」
美嘉「プロデューサーに見向きもされない娘は、一日中入り浸ってるけどね~」
かな子「ちょ、ちょっと美嘉ちゃん……」
凛「……どういうこと?」
美嘉「着けば分かるって。もうそろそろじゃない?」
ブロロン……キキッ
ちひろ「さぁ皆さん!今日も情熱を以て、受難に打ち勝ちましょう!」
ちひろ「……パッションセンターへようこそ、渋谷さん」
11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 02:52:29.26 ID:IvKgodXi0
ゾロゾロ
卯月「かな子ちゃーん、こっちこっち!」
かな子「……そ、それじゃ私達はこれで」
美嘉「まったね~★」
凛「うん」
ちひろ「では渋谷さん。私についてきて下さいね」
凛「……ちひろさん、聞きたいことがあるんだけど」
ちひろ「何でしょう?」
凛「ここって一体何をする所なんですか?」
12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 02:55:56.39 ID:IvKgodXi0
ちひろ「……そう言えば、まだ何も言ってませんでしたね」
ちひろ「でも私から説明するよりは、施設をご覧になった方が理解して頂けると思いますよ?」
凛「………」
美羽「……っしょ、よいしょっ……」ズッズッズッ
みく「うぐぐぐっ……」ズッズッズッ
凛「……あの二人は何やってるの?」
ちひろ「どうやらドラム缶を指定の位置まで押す作業中ですね」
13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 02:59:17.61 ID:IvKgodXi0
美羽「ふぅ、ふぅ……や、やっと折り返し……」
みく「……も、もう嫌にゃあっ!」ドカッ
美羽「だ、駄目だよみくちゃん!まだ三往復も残って」
みく「何でみくがこんな無意味な事しなきゃなんないにゃ!!」
みく「美羽は……美羽は、こんなんでホントに目覚めると思ってるのにゃ!?」
美羽「で、でも、これで楓さんはやってのけたんだし……」
凛「……何がやりたいのか、余計分からなくなったんですけど」
ちひろ「新しい自分を発掘しようとしてるんですよ」
凛「あ、新しい自分……?」
14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 03:03:54.54 ID:IvKgodXi0
ちひろ「アイドルに求められるのは主に歌やダンス、演技力ですが……」
ちひろ「残念ながら、それらだけでは実力を発揮できない方も、少なからずいらっしゃいます」
ちひろ「そんな伸び悩むアイドルの皆さんの内に眠る、新しい自分を発掘する……」
ちひろ「情熱を以て、受難に打ち勝つ。それがパッションセンターの目的なんです」
凛「つまり……ドラム缶を押す作業で、新しい自分を発掘出来ると?」
ちひろ「まぁ、過去には高垣さんくらいしかいませんけどね」
ちひろ「見つけ方は人それぞれですよ。あれは方法の一つに過ぎません」
凛「(……どうしてそうまでして、新しい自分を……?)」
16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 03:07:29.26 ID:IvKgodXi0
かな子「……痛っ!」ドテッ
卯月「かな子ちゃん、大丈夫!?」
かな子「う、うん……これ位平気……」ズキズキ
ちひろ「あの子達は歌だけじゃなく、ダンスの方面でも才能を磨こうとしています」
凛「……そうなんだ」
ちひろ「まだファンも少ないですし。プロデューサーさんからのお仕事も、そんなに多くはありませんから」
凛「ここで行われてる事を秘密にする理由って……」
ちひろ「サプライズ性も大事ですからね」
ちひろ「皆、見えない所で努力してるんですよ……表舞台に立つために」
17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 03:11:10.21 ID:IvKgodXi0
藍子「瑞樹さん。これ、ちょっと見てほしいんですけど」カチカチ
瑞樹「……まだ不自然ね。この部分、もう少し隠せない?」
藍子「あ、はい……やってみます」カタカタ
凛「あの二人は何を?」
ちひろ「彼女達は、主に自分のポスターの加工処理を行っています」
凛「えっ?」
18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 03:14:50.26 ID:IvKgodXi0
ちひろ「いわゆるコラ画像って奴ですね。首から下は違うアイドルを使ったり……」
ちひろ「これがなかなか、色々種類があって面白いんですよ」
凛「な、何で加工を?」
ちひろ「インターネット上に加工した画像を流して、自身の知名度を上げる為です」
凛「知名度って……」
ちひろ「面白いは正義って言葉、聞いた事ありません?」
ちひろ「どういった形であれ、彼女達の人気上昇に繋がってますから」
ちひろ「アレも一つの『新しい自分』の形と言えるのではないでしょうか?」
凛「………」
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 03:18:12.60 ID:IvKgodXi0
幸子「うぅぅぅぅ……!」
未央「ほらー、さっさと飛んで!下はクッションだから!大丈夫だって!!」
美嘉「プロデューサーが見てたらどうすんのさー!」
幸子「ぼ、ぼぼぼボクは……ボクはっ……!」ガタガタ
凛「……あの子は何で、あんな高いところから飛ぼうと?」
ちひろ「輿水さんは、今度プロデューサーさんにお仕事を持ち込む予定なんですよ」
ちひろ「まずは高所に対する恐怖心を克服する、と言った所でしょうか」
20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 03:21:45.29 ID:IvKgodXi0
凛「……バンジーでもやるんですか?」
ちひろ「スカイダイビングらしいですね。野外会場までカッコよく降り立つ企画だそうで」
凛「そ、それって……結構危ないんじゃ」
ちひろ「えぇまぁ、それなりに。パラシュートを開くタイミング等を考慮しなければなりませんから」
ちひろ「我が社としても彼女を全面的にバックアップして、みっちり仕込む予定ですよ」
ちひろ「……万が一ですが、企画で死なれても困りますしね」ニコッ
凛「………」ゾクッ
23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 03:26:04.94 ID:IvKgodXi0
凛「で、でも、何でそこまでして……」
ちひろ「芸は身を助けるって言うじゃないですか」
ちひろ「それに、成功すれば……」
ちひろ「もしかしたら、多分、恐らく、きっと、あるいは」
ちひろ「ファンが、プロデューサーさんが、自分達に振り向いてくれる」
ちひろ「かも知れませんからね♪」
25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 03:29:51.53 ID:IvKgodXi0
ちひろ「……あり得ない話だと思いますか?バカげた話だと?」
凛「………」
ちひろ「確かに、こんな事をやってたってファンが増えるとは限りません。プロデューサーさんの事だってそうです」
ちひろ「でもパッションセンターに通う皆さんは全員、その可能性に賭けてるんですよ」
ちひろ「例えば、あそこにいる城ヶ崎さんは、妹さんのついで扱いされるのを何とかしたい……」
ちひろ「本田さんは、アイドルとして行き詰った自身の現状を何とかしたい……」
ちひろ「皆さん、本気なんです。私だって、単なるおふざけでここを運営なんかしてません」
凛「………」
ちひろ「まぁ、渋谷さんに彼女達のような事をしてもらう必要はありませんけどね」
ちひろ「……っと、着きました。この部屋です」
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 03:33:24.86 ID:IvKgodXi0
~多目的室~
ちひろ「丁度空いてる部屋がここしかなかったんですよね、すみません」
凛「……何をするんです?」
ちひろ「ちょっとお待ちを……」ゴソゴソ
ちひろ「さぁ渋谷さん、これをどうぞ」ドサッ
凛「……何ですか、これ」
ちひろ「プロデューサーさんのコートです♪」
27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 03:37:05.25 ID:IvKgodXi0
凛「は?……コート?」
ちひろ「はい」
凛「……これを私にどうしろって言うんですか?」
ちひろ「決まってるじゃないですか。嗅ぐんですよ」
凛「嗅ぐ!?」
ちひろ「はい♪」
凛「……こ、これを?」
ちひろ「えぇ。肺で臭いを満たす程度に、思いっきり嗅いじゃって下さい」
28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 03:40:54.01 ID:IvKgodXi0
凛「………」
ちひろ「……あ、コートの他にトランクスもありますよ」ゴソゴソ
凛「え゙っ」
ちひろ「聞こえませんでした?トランクスですよ。ブリーフじゃありません」
凛「と、トランクス……!?」
ちひろ「そうです。正真正銘、プロデューサーさんのトランクスです」
ちひろ「これも頭に直接かぶって、思いっきり……」
凛「ちょ、ちょっと待ってくださいちひろさん!」
ちひろさん「何でしょう」
凛「その……意図が、分からないんですけど」
ちひろ「……あら。嫌だ、とは言わないんですね?」
凛「!」
29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 03:45:59.99 ID:IvKgodXi0
ちひろ「私はただ、渋谷さんの新しい側面を見出したいだけですよ」
凛「で、でも!……こんなので……!」
ちひろ「……興味は、あるんですよね?」
凛「っ……!」
ちひろ「あっ、私の前だからって、別に遠慮することはありませんよ?」
凛「………」
凛「(……ぷ、プロデューサーの、コートに……トランクス……)」ゴクリ
31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 03:49:37.13 ID:IvKgodXi0
ちひろ「ふふふ……」
凛「………」
ドクンドクンドクン……
凛「(……コレに手を出したら……色々なものが崩れ落ちる気がする……)」
凛「(……でも……だけど……いや……)」
ちひろ「さぁ、どうします?」ニコニコ
ドクンドクンドクンドクンドクン……
凛「(……わ、私……私はっ……)」
32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 03:53:15.71 ID:IvKgodXi0
凛「…………ちひろさん」
ちひろ「はい♪」
凛「……これ、やっぱり受け取れません」
ちひろ「はい♪……えっ?」
33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 03:56:55.03 ID:IvKgodXi0
凛「………」
ちひろ「え、えぇっと……いきなりトランクスは、ちょっとハードル高過ぎました?」
ちひろ「じゃあ、軽くハンカチから」
凛「いいんです!」
ちひろ「………」
凛「……私は、このままでいたいんです」
ちひろ「そうですか」
34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 04:00:34.35 ID:IvKgodXi0
ちひろ「別に私は、それを咎めたりはしませんよ」
ちひろ「どうやら渋谷さんは、渋谷さんのなりたいアイドル像を持ってらっしゃるようですし」
凛「………」
ちひろ「……もう一度、聞かせてもらいますが」
ちひろ「本当に、その選択でいいんですね?」
凛「……はい」
ちひろ「……ふふっ」ニコッ
36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 04:06:11.60 ID:IvKgodXi0
美嘉「断ったぁ!?」
かな子「ほ、ホントに?」
凛「うん」
卯月「ちひろさんに、直々に呼ばれたんだよね……?」
美嘉「どうしてそんなチャンスをふいにできるんだか……」
凛「私は……ありのままの自分を、大切にしたいから」
美羽「ありのままの……」
みく「自分……にゃ?」
37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 04:10:45.09 ID:IvKgodXi0
凛「……あのさ」
凛「皆も、もうちょっとだけでいいから……今の自分に自信、持ってみて」
凛「そしたら、プロデューサーだってきっと、私達のことをちゃんと……」
未央「……そんな簡単に、変われるわけないじゃない」
凛「未央……?」
未央「じゃあ、今まで私達がここで信じてやってきた事って……何だったの?」
未央「凛はそれを、無駄な努力でしたって言いたいわけ?」
38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 04:14:47.42 ID:IvKgodXi0
凛「そ、そんな事は……」
未央「私はそんなの認めない……認めないから」スタスタ
美羽「あっ……み、未央ちゃん、待って!」タタタ
卯月「未央ちゃん……」
みく「(少なくともドラム缶押しは、みくにとって物凄いムダだった気がするにゃ……)」
39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 04:19:01.62 ID:IvKgodXi0
美嘉「……んー。幸子の手伝いしなきゃなんないから、アタシも戻るけどさ」
美嘉「凛の言ってること、多分間違ってないって思うよ★」
凛「美嘉……」
かな子「わ、私も……!」
卯月「かな子ちゃんも?」
かな子「そうですよ……もっと自分の好きなことを、推し進めればよかったんです!」
卯月「え?好きなことって……」
かな子「さぁ行きましょう、卯月ちゃん!いざ、洋菓子店へ!」
卯月「え、えぇ!?あ、ちょっと……!」ズルズル
40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 04:22:48.90 ID:IvKgodXi0
瑞樹「若いっていいわね、自分の理想を貫けて……」
藍子「瑞樹さん。次の画像のチェックお願いします」カチカチ
瑞樹「……ねぇ、藍子ちゃん」
藍子「……凛さんの事、気になるんですか?」
瑞樹「うーん……ちょっと羨ましいかなって。藍子ちゃんは?」
藍子「……私がこれを始めた理由。瑞樹さんは、知ってますよね?」
瑞樹「え、えぇ……でも」
藍子「身体のことを弄られながら今更真面目に取り組めるほど、私は強くないですから」
瑞樹「……藍子ちゃん」
藍子「開き直ったままでいるしか……引き返せないんです、もう」カチカチ
42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 04:26:52.42 ID:IvKgodXi0
ちひろ「黒髪ロングヘアーな子は変態属性が付きやすいって、調べはちゃんとついてたんですけどね~」
ちひろ「発想が安直過ぎましたかね?……まぁ、どちらに転んでも良かったんですけど」
ちひろ「ともあれ、渋谷さんの意気込みに感化された子もいるみたいですね。良い傾向です」
ちひろ「まぁどの道正統派アイドルは必要でしたから。色モノ枠はまた別の機会にでも……さてと」
ポパピプペ
ちひろ「……あ、もしもし。社長ですか?……はい、えぇ……それで、例の企画なんですけど」
ちひろ「はい、まず一人目は渋谷凛――」
―――――
―――
―
43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 04:31:15.86 ID:IvKgodXi0
~一ヶ月後~
ザワザワ……
P「よーし、じゃあ発表するぞー」
P「……えー、まずは渋谷凛!」
凛「はい」
P「次、双葉杏!」
杏「えぇー……」
P「えぇー、じゃない。社長命令は絶対だぞ?」
杏「えぇー……」
凛「(あれから随分経って、私を含めたアイドル5人のCDが出る事に決まった)」
凛「(……ちひろさんは、相変わらず笑顔でプロデューサーの横で佇んでいる)」
44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 04:35:43.31 ID:IvKgodXi0
ちひろ「CDデビュー、おめでとうございます!今後とも頑張ってくださいね♪」
かな子「は、はい!」
凛「………」
凛「(時々、本当にこれで良かったのかなって思う時もある)」
凛「(もしあの時、ちひろさんの提案を受け入れてたら……)」
凛「(今とはまた違ったアイドルになれたかもしれない……って)」
凛「(……でも)」
45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/03/16(土) 04:39:59.12 ID:IvKgodXi0
P「凛?……ボーっとして、どうしたんだ?」
凛「あっ……うん、大丈夫。私は変わらず、いつも通りだよ」
P「そうか。それなら良いんだ」
凛「……行こう、プロデューサー。CD、収録しなきゃね」
P「おう、楽しみだな!」
凛「(私は今、このままの私でいられる事に……幸せを感じている)」
おわり
ちひろ「765プロライブ劇場を倒す方法、ご存知ですか?」