846: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:06:11 ID:UTP
更新します。22話。
The brake of the heart and the one and only friend.
847: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:07:00 ID:UTP
~クロノシティジム・夜~
美世「よいしょ……と」ガチャガチャ キュイイン
美世「うん、今日のメンテナンスはこんなところかな…あとはフレームを……」
ピピピピピ ピピピピピ
美世「あ、ポケギア鳴ってる……もしもし?」ピッ
拓海『よう、元気か美世』
美世「拓海ちゃん。あぁ、ごめんね、急にあたしからかけたりして…忙しかったよね」
拓海『いや、着信気付くの遅くなっちまってこっちこそ悪かった。…何かあったか?』
美世「何か…っていうか……ホラ、拓海ちゃん前に言ってたでしょ、例のあの子達」
拓海『あの子達……ああ、忍達の事か?』
美世「無事クロノジムも勝ち抜いたよ、ふふ、負けちゃった」
拓海『おお!そんじゃあ忍のヤツもやっとジム戦に挑めるって事だよな!いやぁ~、やっぱアタシの見込んだ通りの奴らだったぜ!加蓮達もやんじゃねえか…!』
美世「……うん、そうだね」
拓海『美世?』
美世「拓海ちゃん、あたしさ……やっぱり、この街のジムリーダーは……」
拓海『自分のせいで負けたポケモンに申し訳ない、ってか? …気にすんなってのは、違うか…』
美世「ううん、そうじゃない……あたし、やっぱり5年前のあの事故のこと……」
拓海『美世』
美世「ジムリーダーって、この街の代表選手って事じゃない。なのにあたしは大した実力もないし…未だにクルマの…レースの事も諦めきれずにいるんだ」
拓海『いいじゃねえか、兼業ジムリーダーなんて、どの地方にもゴロゴロいるだろ。元はクロノジムだって兼業ジムだったじゃねえか』
美世「あたしには器じゃないよ……もし、どっちか片方をやめれば、もう片方に全力で挑めるんじゃないかな、なんて……思っちゃう時が、あってさ」
美世「わかってるよ、ジムリーダーの役目は勝つことじゃない、トレーナーの実力と心を試す、試練のための場所なんだって」
美世「けどあたしは…元々、そんな資格…」
拓海『美世、資格云々なんてのはアタシにはわかんねぇけどよ…これだけは言えるぜ』
美世「なに…?」
拓海『お前は自分が思ってるほど、弱いオンナじゃねえってこった…だってよ、お前は』
美世「買いかぶり過ぎだって……それならどうして、これくらいで拓海ちゃんに愚痴なんか…」
拓海『そりゃ、強いヤツだろうが同じだろ。やり場のねえ拳のもどかしさは、アタシにだってよくわかんぜ』
美世「拓海ちゃん…」
拓海『お前は優し過ぎんだよ。ボル爺さん見てみろよ、山一つ吹っ飛ばす、なんて事やらかしてんのに、むしろそれが自慢ってくらいじゃねえか』
美世「けど、それは……あたしのせいでボルさんは…」
拓海『……気にし過ぎんなよ、爺さんだって全然…』
美世「…………」
拓海『あー……悪リぃ…今のはやっぱ…』
美世「ううん。大丈夫だよ、拓海ちゃん…大丈夫だから、あたしは…」
拓海(…かなり無理してんな……ったく、ボルケニオンの爺さんも何つーか…)
拓海(そう……5年前、か。もう5年……いや、まだ5年なんだよな、あれから)
~~~~~
>>5年前・クロノ霊峰に連なる山…ノルニル山、その、ふもと。
美世「あなた達がこの山で悪さしてるウラノス団ね…!街の天気をおかしくしたりして…ずっと雨続きで皆困ってるんだよ!」
ウラノス団員「ああ、何だお嬢ちゃん、俺達に文句付けに来たってのか?」
団員2「どうやらオシオキが必要な様だな!いけ、アメタマ!」
団員「お前もだ、コラッタ!」
コラッタ「ヂュ!」
アメタマ「アッアッアッ!」
美世「…2匹くらい相手ならあたしでも…! 行って、モウカザル! ドンメル!」ボボン
モウカザル「キキーッ!」
ドンメル「ドメ…」ノタノタ
団員「へっ、いっちょ前にトレーナー気取りかよ? 俺達ウラノス団を!」
団員2「なめるなよーっ!」
~~~~~
美世「はぁ……はぁ……よし!」
団員「馬鹿な……俺達ウラノス団のポケモンが……」
団員2「こんなガキ一人にやられるだと……!?」
美世「よくやったね、モウカザル、ドンメル!」シュウウウ……
美世「さぁ、勝負はついたんだから!今すぐ街の天気を元に……むぐぐっ!?」
団員3「へへ、隠れて隙を伺ってたのさ…勝ったと思ってポケモンをボールに戻すとは、流石おこちゃまだな」
団員「でかした!このまま捕まえてラボの部屋にでも閉じ込めてやれ!」
団員2「ついでにそのガキンチョのポケモンも奪ってやれ! へへ…ほのおタイプのポケモンが必要なラボがまだあったはずだ…」
美世「むーっ!むーっ!」ジタバタ
ボルケニオン『オメェら、誰のナワバリで勝手してやがる』ズシズシ…
団員「な、喋るポケモンだと!?」
団員2「み、見るからにレアなポケモン…!これを捕まえない手はないだろう!」
団員3「よっしゃあ、ボスへの手土産に……」
ボルケニオン『ケッ、身の程知らずが……マトモに相手すんのも面倒くせえ…この技で消し飛ばしてやるぜ…』キュイイン
団員「おっと!それはどうかな!?」バッ
団員3「こちらには無関係の子供がいるのですよ…」グイッ
美世「むぐーっ、むーっ!」ジタバタ
ボルケニオン『何!?』キュイイン キュイイン キュイイン キュイイイン
ボルケニオン『チッ、油断してる間にタメ過ぎちまった……!止められねえ…!』キュイイン キュイイン キュイイン
美世「むーっ!」ジタバタ
ボルケニオン『く……おい、テメェらボサッとしてんじゃねえ!今すぐその小僧連れてこっから逃げねえか!』キュイイン キュイイン キュイイン
団員「はぁ?何ほざいてんだ爺さん」
団員2「今狙われてんのはお前の方だぜ、なあ」
団員3「まったくもってその通り!覚悟しやがれこの野郎!」
ボルケニオン『く……!』キュイイン キュイイン キュイイン
美世「んむーっ、んぐーっ!」
ボルケニオン(チッ……何だってこんな間の悪い時に出くわしちまったんだ……!)
ボルケニオン『こうなったら……』ジャコン
※ボルケニオンは砲身を山に向けた……。
美世「………!」
ボルケニオン『許せよ、山のポケモン達…!』キイイイイイン……!
美世「んっ!」ガブッ
団員3「あ痛ァ! このガキ噛みやがった!」
美世「お爺ちゃん!ダメーっ!!」
ボルケニオン『ぬおおおおッ!!!』ドヒュウン………
カッ………
ドカアアアアアアア……!
……ポツ ポツ……ザアアアアア……!
※その日、クロノ霊峰に連なるもう一つの山、ノルニル山は跡形もなく消し飛んだ。
結果として、山にあった研究所も団員ごと消し飛んでしまい、人為的な悪天候は収まったものの、ボルケニオンの水蒸気爆発砲・スチームバーストの威力から、連日、凄まじい豪雨に見舞われる事になる。
そして…。
団員「ひっ……ひいいい…!」ダダダダ
団員2「許して、許してーっ!」ダダダダ
団員3「たすけてくれーっ!」ダダダダ
ボルケニオン『……………これでもう、ここいらに近付く事ぁねえだろうな、アイツら』
美世「ひっく、ひっく……」
ボルケニオン『おう、小僧、大丈夫か………』
美世「あたしのせいで……」
ボルケニオン『あん?』
美世「ノルニル山が……あたしのせいでなくなっちゃったよぅ……」ヒック ヒック…
ボルケニオン『……オメェ…』
美世「山のポケモン達も、あの人達の仲間も……あたしのせいで……あたしが……」
ボルケニオン『……バカ言っちゃいけねえよ。アレは俺様が勝手にやっちまったこった、小僧にゃ何の責任もねえよ』
ボルケニオン『それに、遅かれ早かれ…このところの悪天候で山のポケモン達は死に体も同然だったんだ……助けようにも助けきれねえぐらいにな…だから、どのみち元を断つ必要があったんだよ』
ボルケニオン『俺様はチマチマした戦い方は得意じゃねえからな…どっちにしろこうなっちまってただろうぜ。だから小僧は何にも悪くねえんだ』
美世「……っ」ヒック ヒック
街の人「おおーい!大丈夫かぁー!」
街の人2「これは……ノルニル山が…どうしてこんな事に……」
ボルケニオン『ヘッ、俺様が吹っ飛ばしてやったんだよ! どーにも山が2つもあると、邪魔くさくって仕方なかったんでな』
街の人「な、それだけの理由で…」
街の人2「こんな事をしたら、これまでより更に天候が悪くなってしまうんじゃ……」
街の人「いや、それよりクロノ霊峰は大丈夫なのか、この刺激で噴火したりしたら…」
ガヤガヤ……ガヤガヤ……
ボルケニオン『さて、ほとぼりが冷めるまでは山に引きこもるしかねえやな、これは』ズシズシ
美世「あ、あの……!皆、違うの……聞いて、あたしが……!」
ボルケニオン『小僧!!』
美世「ひうっ」
ボルケニオン『いいか、余計な事は言うもんじゃねえぞ。言えばお前はタダじゃ済まなくなる…街のニンゲンから恨まれて、憎まれて……その役はお前みたいなニンゲンの小僧には重すぎらぁな』
美世「……でも、じゃあ、あなたは……あなたはどうなるの…?」
ボルケニオン『ケッ、ニンゲンからどう思われようが、知ったこっちゃねえよ。…じゃあな』ズシズシ……
美世「…………」
拓海「美世!!」タタタッ
美世「拓海ちゃん……?」
拓海「親父さんからお前が山に向かったって聞いてよ…何で一人で乗り込もうなんて無茶しやがった!」
美世「それは……だって、危ないかもしれないし……」
拓海「危ないから二人で行くんだろうがよ……お前、マジで優しすぎんぞ……」
美世「ごめん…なさい…」
拓海「…あー………にしても凄えな!ノルニル山がカッ飛んでやがる……火山に凄えのがいるってのは聞いてたが…コイツは……」
美世「拓海ちゃん…あのね、本当はね…」
拓海「……美世……」ポリポリ
美世「え」
拓海「お前の顔見てりゃ、何となく何があったのか想像ついちまうぜ……幼馴染だしよ…」
美世「拓海ちゃん……」
拓海「わざわざ傷を突くのもなんだと思って誤魔化そうとしてみたが……ガラじゃねえな、アタシには…」
美世「ねえ、拓海ちゃん……あたし、どうしたらいいのかな……どうしたら……」
拓海「……美世、今回のこれは、アタシらだけの秘密だ。これから先、口が裂けてもこの一件は…誰にも言うんじゃねえ」
拓海「代わりに、アタシらがあの爺さんの話し相手に…いや、ダチになってやろうぜ、な」
美世「……う、うん」
美世「……それで……それだけで本当にいいのかな…」
拓海「美世…?」
美世「う、ううん、何でもない! あの、ありがとね、拓海ちゃん…」
拓海「おう」
美世「……あたし、この責任は必ず取るからさ……」ボソッ
拓海「ん? 何か言ったか?」
美世「何でもない! 帰ろう、今日は疲れちゃった…へへ」ニコッ
拓海「お、おう……その、無理すんなよ…?」
美世「わかってますって!安全第一、無事故が自慢の原田モータースだもん!」
拓海「おう、だな! じゃ帰ろうぜ、走ってきたから腹減っちまったしよ、へへ」
美世「拓海ちゃんがもう少し大きくなったらうちの店のバイク使わせてあげるんだけどね~。まだ乗れる歳じゃないもんね」
拓海「な、そりゃオメーもだろ美世!からかうなよな!」
美世「あはは、ごめんなさい」
拓海「ったく、すぐこれだ…心配する事なかったかもな」
美世「……拓海ちゃん」
拓海「ん?」
美世「ありがとね、来てくれて」
拓海「…おう」
美世「ありがとね…ホントに……」ヒクッ……グスッ
拓海「……おいおい……まぁ……しゃーねえよな…」ギュ
美世「うっ……うああ……うあああん……!」
拓海「…………美世…」
~~~~~
美世(無事故が自慢、なんて、嘘ばっかり。あたしは、取り返しのつかない大事故を起こさせてしまった)
美世(そう。この事故を引き起こしたのは……あたしの……あたしだけの罪)
美世(だから……この責任は必ず……必ず…!)
~~~~~~
※時は進み、2年前。
拓海「ふぅ……やっぱいいハシリだぜ、美世んとこのバイクはよ」
美世「えへへ、そう言ってくれると嬉しいな…けどね、もう少しで新しいバイクが完成しそうなの」
拓海「新しいバイクだぁ? もっと速えェやつか!?」
美世「ううん、速さは今のとそんなに変わらないんだけど……空気を汚さない、新しいエネルギーで走るバイクなの。このバイクなら、きっと野生のポケモンが汚染に苦しんだりしなくて済むんじゃないかなってさ」
拓海「お前、相変わらずポケモンを大事にするんだな…」
美世「これは、あたしのライフワークだからね。ポケモンや環境を傷付けず、便利で快適な暮らしが送れるように、人や街を豊かにする……あたしには、これくらいしかできないから…」
美世「偽善だって、思う?」
拓海「難しい話はアタシにはわかんねえよ。知ってんだろ」
美世「…そうだよね、ごめん」
拓海「そのバイクよぉ、もし形になったら、アタシが試乗してやんよ」
美世「いいの? もしかしたら、そんなにスピード出ないかもしれないよ…?」
拓海「そこはおいおい良くしていきゃ良いじゃねえか。そのバイクでこの地方を回って、原田モータースの広告塔になってやんのも悪くねえ」
美世「……この地方を、か。……ホントに行っちゃうんだね、ポケモンリーグ」
拓海「四天王、なんてな、へへ。なんつーか、響きが良いよな、まさにテッペンって感じでよ」
美世「でもさ、あたしにジムリーダーなんて大役…できるのかな」
拓海「仕方ねえだろ、神誠道場の師範、身体痛めてジムリーダーできなくなっちまったんだからよ。有香は道場そのものの切り盛りで忙しそうだし」
美世「ジム兼野生ポケモンの道場だったもんね…無理して身体痛めても仕方ないかぁ……でもなぁ……あたしがジムリーダー……うーん」
拓海「何だよ、バカみたいにシゴイてやったろ、自信持てって。アタシのシゴキに耐えられるヤツ、ウチの連中の中にもそうはいねえんだぜ」
美世「ウチの連中……か。拓海ちゃん、バイクの免許取るなりこの辺りの暴走族を一纏めにしちゃうんだもん、あれはビックリしたなあ」
拓海「好き勝手されちゃそれこそポケモンも困んだろ。アイツらには本物のツッパリ方ってのを叩き込んでやった。誰彼構わず傷付ける抜き身のナイフみてえな安っぽい野郎共じゃねえ。大事なモンを護り抜くために振りかざす…アタシ自慢の名刀だ、アイツらはよ」
美世「自慢…かぁ。何か凄いね、拓海ちゃんにそうまで言わせちゃうなんてさ、ふふ」
拓海「だろ? アイツら、美世の事も慕ってくれてるみてぇだしよ。アタシがいない間はアイツらの事、よろしく頼むな」
美世「それも、あたしなんかに務まるかなぁ…」
拓海「だーから自信持てっての」
美世「いや、これは自信とかって言うより……でも、そうだよね。いずれはそういう人達にもバイク周りのお世話してあげなくちゃなんだし、拓海ちゃんにそうまで言わせちゃうくらいなんだから悪い人じゃない……んだよね?大丈夫だよね?」
拓海「別にアイツらお前の事とって食いやしねぇよ落ち着けって」
美世「…むぅ、それはそれで何か……あたしの身体ってそんなに魅力ないかなぁ…」
拓海「そういう意味で言ってもねえよ!!ってか、ソコ気にすんのかよ!」カァーッ///
美世「あはは、やっぱ拓海ちゃん、こういうからかい方すると反応可愛いよね♪」
拓海「お前……みーよ~っ!」
美世「厳しくしごかれた分のお返しだよーだ♪逃げろーっ!」タタタタッ
拓海「待てコラ、美世ォ!!」タタタタッ……
~~~~~~
※時は戻り、現在……。
美世「うん……うん、ありがとね。何か、ちょっとスッキリしたみたい、話したら」
美世「拓海ちゃん、お仕事忙しいでしょ?マジカ団……だっけ、あちこちで悪さしてるのって」
美世「うん……天候で悪さって……あたし、どうしてもウラノス団の事を思い出しちゃってさ……けど、別の組織……なんだよね」
「そう、全く別の組織です。天候を支配してレックウザを呼び起こそうとしたウラノス団とは………目的が違う」
美世「えっ…!?」バッ
空に浮かぶマジカ団総帥「あなたの過去は…今しがた、ここで聞かせて貰いましたよ。後悔と自責の念、まさにあなたは己の心中にブレーキをかけ続けて生きていると言える……」
拓海『どうした? オイ美世、オイ!』
美世「あたしが……心にブレーキを……?」
マジカ団総帥「苦しいでしょう、全力で走りたいはずなのに、どこかに引っかかりを覚えて、後ろ髪を引かれながら……街の人々を欺き、騙しながら、笑顔を貼り付けて生きるのは…私には、その苦しみがよくわかります」
美世「……何が言いたいの…!? あたしを揺さぶって、一体……っ!?」ガキン
美世(体が……動かな……)
マジカ団総帥「『かなしばり』という技ですよ。もっとも、それくらいは、ジムリーダーならご存知かとは思いますがね」
マジカ団総帥「そして……これであなたを苦しめるリミッターは、外れる……」グワン……
美世「………あ……あ………ァ……」グワン……
マジカ団総帥「さぁ、生まれ変わりし我が尖兵よ。今こそ、私と共に走り抜こうではありませんか」
洗脳美世「ハイ……アタシハ……ハシル………ソウスイサマノ……オオセノママニ……」
マジカ団総帥「素晴らしい……私の催眠術の力もどうやら上がって来ているようだ……いや、心に付け入る隙を見つけたのが功奏したのか……」
拓海『オイ、美世、返事しろ!オイっ!』
マジカ団総帥「……耳障りな声が聞こえますね」パチン
バチィッ!!! ……ブツン
※美世のポケギアは音を立てて壊れてしまった……。
マジカ団総帥「……心の隙、か。…我ながら、惨い事を言うようになったものです」
マジカ団総帥「ですが…もう決めた事……例え何と謗られようと、私は私の願いを果たす……」
マジカ団総帥「そうでしょう……私の…無二の友よ……」
~~~~~~~
~翌日~
加蓮「さて……皆、やり残しとかないよね?」
肇「はい、準備万端です」
未央「えと、ここからだとクロノ霊峰を越えなきゃなんだっけ…? あの山、パッと行ってきただけでも凄く高いし広いし険しいし…大変だよ、越えるの…」
ジラーチ【未央の無茶のせいで遠回りすることになっただけだからね】
未央「ジラちんや、それは言わないお約束って奴ですよ……私もそれはわかってるんだからさ…」アハハ…
ネネ「そう言えば、美世さんの姿が見当たりませんけど…見送りに来てくれるって、確か……」キョロキョロ
加蓮「いっそ空を飛んで山を越えたりできればねぇ……って言うか、一度ティリオまで戻ってさ、そこからマギア経由でまたメーヴェ側からのルートじゃ……」
ネネ「危険だと思います、それ……かなり雨が降りましたし、もしかしたらその影響で流砂に飲まれてしまうかも……」
未央「じゃあ結局山越えしかないのかぁ……街の人はこういう時どうしてるんだろ?」
忍「おーい!」タタタッ
肇「忍さん、何か山越えの方法はわかったのですか?」
忍「山越え……どころじゃないって……!」
ネネ「ど、どうしたんですか、そんな息切れするくらい慌てて……」
加蓮「…未央」
未央「うん……ジムリーダーの姿が突然見えなくなるって、前にもあったよね…」
ネネ「………まさか」
忍「さっき、師匠から……拓海さんから連絡が入って………!」
忍「美世さんが…行方不明になったって……!」
加蓮「………!」
未央「……マジカ団、だよね……」
ジラーチ【十中八九、かな】
ネネ「そんな……」
肇「……私達、呑気にジム巡りなんかしていて…良いのでしょうか……もうジムリーダーが二人も……」
皆「「「「…………」」」」
泰葉「だからこそ、挑戦できるうちに挑戦するべきだと、思いますよ」スタスタ……
加蓮「え?」
未央「えっと……誰、だっけ…? 誰かの知り合い…?」
泰葉「申し遅れました。私はグリモ四天王のリーダー、泰葉。ひこうタイプの使い手で、あなたと戦った悠貴さんの師匠にあたります」
未央「ゆうきちゃんの師匠……ああ、ああ!その泰葉さん!ゆうきちゃんが言ってた言ってた!」
加蓮「グリモ四天王のリーダーって事は……この地方で二番目に強いトレーナー……そんなあなたが出てきてまで私達に伝えたい要件って……」
泰葉「ジム挑戦を継続して下さい。お願いします」ペコリ
忍「な……そんな、頭まで下げなくても…」
泰葉「私達リーグ協会は、こういう事態が起きるとわかっていながらも、それを阻止できなかった……何より、それであなた達一般のトレーナーにまで迷惑をかけざるを得ないことを……心から恥じているんです」
未央「そんな…それを言うなら、私達だってこの街にいたのに止められなかったんだし…」
加蓮「でも……どっちにしても、他人事じゃないよね。もう未央だって、前にあいつらに攫われたりしてるんだし」
ネネ「智絵里さんも……美世さんも……皆、強くて優しくて、立派なジムリーダーさんでした…私、二人を助けたいです…」
肇「…そのために、助けられる力を得るために、ジムへの挑戦を継続しなければならない……そういう事、ですよね、泰葉さん」
泰葉「はい。攻めを焦り、勝ちを急いでも…それこそ返り討ちにあえば、何もかも終わりなんです」
泰葉「鍛えられるうちに、今。どうかジムへの挑戦を続けて貰えませんか」ボウン!
トゲキッス「キスキッスー」
スワンナ「スウォー!」バサァ
泰葉「山越えには、ひこうタイプのポケモンを使いましょう。私達が先導しますので、ひこうポケモンをお持ちでない方はこちらへ」
忍「肇ちゃん、アタシ達は…」
肇「はい。お願いします、泰葉さん」
ネネ「トロちゃん、お願い!」ボウン
加蓮「行くよ、まろ!」ボウン
未央「りゅーすけ、ゴー!」ボウン!
泰葉「成程……皆さん良いポケモンを持っていますね。ここまでジムを勝ち抜いてこられたのも納得です」
泰葉「さぁ、飛んで、スワンナ、トゲキッス! 霊峰を越えて、シデロスシティまで!」
スワンナ「スウォー!」
トゲキッス「キスキッスー!」
※かくして、次の街、シデロスシティへと空路を急ぐ一行。
洗脳されてしまった美世はどうなるのか。
マジカ団総帥の目的は何なのか。
次回もまだまだ、目が離せないぞ!
続く!
だいぶ間が空いてしまいましたが何とか更新。
美世の過去の一件は、描くべきかだいぶ迷いました。きっと賛否あるだろうな、と思いつつも、結局はこんな形になってしまいました。
ではひとまず、今回はこの辺で。
お目汚し、失礼をば。
元スレ
~クロノシティジム・夜~
美世「よいしょ……と」ガチャガチャ キュイイン
美世「うん、今日のメンテナンスはこんなところかな…あとはフレームを……」
ピピピピピ ピピピピピ
美世「あ、ポケギア鳴ってる……もしもし?」ピッ
拓海『よう、元気か美世』
美世「拓海ちゃん。あぁ、ごめんね、急にあたしからかけたりして…忙しかったよね」
拓海『いや、着信気付くの遅くなっちまってこっちこそ悪かった。…何かあったか?』
美世「何か…っていうか……ホラ、拓海ちゃん前に言ってたでしょ、例のあの子達」
拓海『あの子達……ああ、忍達の事か?』
美世「無事クロノジムも勝ち抜いたよ、ふふ、負けちゃった」
848: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:07:24 ID:UTP
拓海『おお!そんじゃあ忍のヤツもやっとジム戦に挑めるって事だよな!いやぁ~、やっぱアタシの見込んだ通りの奴らだったぜ!加蓮達もやんじゃねえか…!』
美世「……うん、そうだね」
拓海『美世?』
美世「拓海ちゃん、あたしさ……やっぱり、この街のジムリーダーは……」
拓海『自分のせいで負けたポケモンに申し訳ない、ってか? …気にすんなってのは、違うか…』
美世「ううん、そうじゃない……あたし、やっぱり5年前のあの事故のこと……」
拓海『美世』
美世「ジムリーダーって、この街の代表選手って事じゃない。なのにあたしは大した実力もないし…未だにクルマの…レースの事も諦めきれずにいるんだ」
拓海『いいじゃねえか、兼業ジムリーダーなんて、どの地方にもゴロゴロいるだろ。元はクロノジムだって兼業ジムだったじゃねえか』
美世「あたしには器じゃないよ……もし、どっちか片方をやめれば、もう片方に全力で挑めるんじゃないかな、なんて……思っちゃう時が、あってさ」
849: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:07:46 ID:UTP
美世「わかってるよ、ジムリーダーの役目は勝つことじゃない、トレーナーの実力と心を試す、試練のための場所なんだって」
美世「けどあたしは…元々、そんな資格…」
拓海『美世、資格云々なんてのはアタシにはわかんねぇけどよ…これだけは言えるぜ』
美世「なに…?」
拓海『お前は自分が思ってるほど、弱いオンナじゃねえってこった…だってよ、お前は』
美世「買いかぶり過ぎだって……それならどうして、これくらいで拓海ちゃんに愚痴なんか…」
拓海『そりゃ、強いヤツだろうが同じだろ。やり場のねえ拳のもどかしさは、アタシにだってよくわかんぜ』
美世「拓海ちゃん…」
850: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:08:04 ID:UTP
拓海『お前は優し過ぎんだよ。ボル爺さん見てみろよ、山一つ吹っ飛ばす、なんて事やらかしてんのに、むしろそれが自慢ってくらいじゃねえか』
美世「けど、それは……あたしのせいでボルさんは…」
拓海『……気にし過ぎんなよ、爺さんだって全然…』
美世「…………」
拓海『あー……悪リぃ…今のはやっぱ…』
美世「ううん。大丈夫だよ、拓海ちゃん…大丈夫だから、あたしは…」
拓海(…かなり無理してんな……ったく、ボルケニオンの爺さんも何つーか…)
拓海(そう……5年前、か。もう5年……いや、まだ5年なんだよな、あれから)
~~~~~
851: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:08:28 ID:UTP
>>5年前・クロノ霊峰に連なる山…ノルニル山、その、ふもと。
美世「あなた達がこの山で悪さしてるウラノス団ね…!街の天気をおかしくしたりして…ずっと雨続きで皆困ってるんだよ!」
ウラノス団員「ああ、何だお嬢ちゃん、俺達に文句付けに来たってのか?」
団員2「どうやらオシオキが必要な様だな!いけ、アメタマ!」
団員「お前もだ、コラッタ!」
コラッタ「ヂュ!」
アメタマ「アッアッアッ!」
美世「…2匹くらい相手ならあたしでも…! 行って、モウカザル! ドンメル!」ボボン
モウカザル「キキーッ!」
ドンメル「ドメ…」ノタノタ
団員「へっ、いっちょ前にトレーナー気取りかよ? 俺達ウラノス団を!」
団員2「なめるなよーっ!」
~~~~~
852: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:08:56 ID:UTP
美世「はぁ……はぁ……よし!」
団員「馬鹿な……俺達ウラノス団のポケモンが……」
団員2「こんなガキ一人にやられるだと……!?」
美世「よくやったね、モウカザル、ドンメル!」シュウウウ……
美世「さぁ、勝負はついたんだから!今すぐ街の天気を元に……むぐぐっ!?」
団員3「へへ、隠れて隙を伺ってたのさ…勝ったと思ってポケモンをボールに戻すとは、流石おこちゃまだな」
団員「でかした!このまま捕まえてラボの部屋にでも閉じ込めてやれ!」
団員2「ついでにそのガキンチョのポケモンも奪ってやれ! へへ…ほのおタイプのポケモンが必要なラボがまだあったはずだ…」
美世「むーっ!むーっ!」ジタバタ
ボルケニオン『オメェら、誰のナワバリで勝手してやがる』ズシズシ…
853: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:09:25 ID:UTP
団員「な、喋るポケモンだと!?」
団員2「み、見るからにレアなポケモン…!これを捕まえない手はないだろう!」
団員3「よっしゃあ、ボスへの手土産に……」
ボルケニオン『ケッ、身の程知らずが……マトモに相手すんのも面倒くせえ…この技で消し飛ばしてやるぜ…』キュイイン
団員「おっと!それはどうかな!?」バッ
団員3「こちらには無関係の子供がいるのですよ…」グイッ
美世「むぐーっ、むーっ!」ジタバタ
ボルケニオン『何!?』キュイイン キュイイン キュイイン キュイイイン
ボルケニオン『チッ、油断してる間にタメ過ぎちまった……!止められねえ…!』キュイイン キュイイン キュイイン
美世「むーっ!」ジタバタ
ボルケニオン『く……おい、テメェらボサッとしてんじゃねえ!今すぐその小僧連れてこっから逃げねえか!』キュイイン キュイイン キュイイン
団員「はぁ?何ほざいてんだ爺さん」
団員2「今狙われてんのはお前の方だぜ、なあ」
団員3「まったくもってその通り!覚悟しやがれこの野郎!」
ボルケニオン『く……!』キュイイン キュイイン キュイイン
美世「んむーっ、んぐーっ!」
ボルケニオン(チッ……何だってこんな間の悪い時に出くわしちまったんだ……!)
854: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:09:49 ID:UTP
ボルケニオン『こうなったら……』ジャコン
※ボルケニオンは砲身を山に向けた……。
美世「………!」
ボルケニオン『許せよ、山のポケモン達…!』キイイイイイン……!
美世「んっ!」ガブッ
団員3「あ痛ァ! このガキ噛みやがった!」
美世「お爺ちゃん!ダメーっ!!」
ボルケニオン『ぬおおおおッ!!!』ドヒュウン………
カッ………
ドカアアアアアアア……!
……ポツ ポツ……ザアアアアア……!
855: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:10:12 ID:UTP
※その日、クロノ霊峰に連なるもう一つの山、ノルニル山は跡形もなく消し飛んだ。
結果として、山にあった研究所も団員ごと消し飛んでしまい、人為的な悪天候は収まったものの、ボルケニオンの水蒸気爆発砲・スチームバーストの威力から、連日、凄まじい豪雨に見舞われる事になる。
そして…。
団員「ひっ……ひいいい…!」ダダダダ
団員2「許して、許してーっ!」ダダダダ
団員3「たすけてくれーっ!」ダダダダ
ボルケニオン『……………これでもう、ここいらに近付く事ぁねえだろうな、アイツら』
美世「ひっく、ひっく……」
ボルケニオン『おう、小僧、大丈夫か………』
美世「あたしのせいで……」
ボルケニオン『あん?』
857: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:13:59 ID:UTP
美世「ノルニル山が……あたしのせいでなくなっちゃったよぅ……」ヒック ヒック…
ボルケニオン『……オメェ…』
美世「山のポケモン達も、あの人達の仲間も……あたしのせいで……あたしが……」
ボルケニオン『……バカ言っちゃいけねえよ。アレは俺様が勝手にやっちまったこった、小僧にゃ何の責任もねえよ』
ボルケニオン『それに、遅かれ早かれ…このところの悪天候で山のポケモン達は死に体も同然だったんだ……助けようにも助けきれねえぐらいにな…だから、どのみち元を断つ必要があったんだよ』
ボルケニオン『俺様はチマチマした戦い方は得意じゃねえからな…どっちにしろこうなっちまってただろうぜ。だから小僧は何にも悪くねえんだ』
美世「……っ」ヒック ヒック
858: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:14:22 ID:UTP
街の人「おおーい!大丈夫かぁー!」
街の人2「これは……ノルニル山が…どうしてこんな事に……」
ボルケニオン『ヘッ、俺様が吹っ飛ばしてやったんだよ! どーにも山が2つもあると、邪魔くさくって仕方なかったんでな』
街の人「な、それだけの理由で…」
街の人2「こんな事をしたら、これまでより更に天候が悪くなってしまうんじゃ……」
街の人「いや、それよりクロノ霊峰は大丈夫なのか、この刺激で噴火したりしたら…」
ガヤガヤ……ガヤガヤ……
ボルケニオン『さて、ほとぼりが冷めるまでは山に引きこもるしかねえやな、これは』ズシズシ
美世「あ、あの……!皆、違うの……聞いて、あたしが……!」
ボルケニオン『小僧!!』
美世「ひうっ」
859: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:14:48 ID:UTP
ボルケニオン『いいか、余計な事は言うもんじゃねえぞ。言えばお前はタダじゃ済まなくなる…街のニンゲンから恨まれて、憎まれて……その役はお前みたいなニンゲンの小僧には重すぎらぁな』
美世「……でも、じゃあ、あなたは……あなたはどうなるの…?」
ボルケニオン『ケッ、ニンゲンからどう思われようが、知ったこっちゃねえよ。…じゃあな』ズシズシ……
美世「…………」
拓海「美世!!」タタタッ
美世「拓海ちゃん……?」
拓海「親父さんからお前が山に向かったって聞いてよ…何で一人で乗り込もうなんて無茶しやがった!」
美世「それは……だって、危ないかもしれないし……」
拓海「危ないから二人で行くんだろうがよ……お前、マジで優しすぎんぞ……」
美世「ごめん…なさい…」
拓海「…あー………にしても凄えな!ノルニル山がカッ飛んでやがる……火山に凄えのがいるってのは聞いてたが…コイツは……」
美世「拓海ちゃん…あのね、本当はね…」
860: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:15:23 ID:UTP
拓海「……美世……」ポリポリ
美世「え」
拓海「お前の顔見てりゃ、何となく何があったのか想像ついちまうぜ……幼馴染だしよ…」
美世「拓海ちゃん……」
拓海「わざわざ傷を突くのもなんだと思って誤魔化そうとしてみたが……ガラじゃねえな、アタシには…」
美世「ねえ、拓海ちゃん……あたし、どうしたらいいのかな……どうしたら……」
拓海「……美世、今回のこれは、アタシらだけの秘密だ。これから先、口が裂けてもこの一件は…誰にも言うんじゃねえ」
拓海「代わりに、アタシらがあの爺さんの話し相手に…いや、ダチになってやろうぜ、な」
美世「……う、うん」
美世「……それで……それだけで本当にいいのかな…」
拓海「美世…?」
美世「う、ううん、何でもない! あの、ありがとね、拓海ちゃん…」
拓海「おう」
美世「……あたし、この責任は必ず取るからさ……」ボソッ
拓海「ん? 何か言ったか?」
美世「何でもない! 帰ろう、今日は疲れちゃった…へへ」ニコッ
拓海「お、おう……その、無理すんなよ…?」
美世「わかってますって!安全第一、無事故が自慢の原田モータースだもん!」
拓海「おう、だな! じゃ帰ろうぜ、走ってきたから腹減っちまったしよ、へへ」
861: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:15:48 ID:UTP
美世「拓海ちゃんがもう少し大きくなったらうちの店のバイク使わせてあげるんだけどね~。まだ乗れる歳じゃないもんね」
拓海「な、そりゃオメーもだろ美世!からかうなよな!」
美世「あはは、ごめんなさい」
拓海「ったく、すぐこれだ…心配する事なかったかもな」
美世「……拓海ちゃん」
拓海「ん?」
美世「ありがとね、来てくれて」
拓海「…おう」
美世「ありがとね…ホントに……」ヒクッ……グスッ
拓海「……おいおい……まぁ……しゃーねえよな…」ギュ
美世「うっ……うああ……うあああん……!」
拓海「…………美世…」
~~~~~
862: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:16:03 ID:UTP
美世(無事故が自慢、なんて、嘘ばっかり。あたしは、取り返しのつかない大事故を起こさせてしまった)
美世(そう。この事故を引き起こしたのは……あたしの……あたしだけの罪)
美世(だから……この責任は必ず……必ず…!)
~~~~~~
863: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:16:23 ID:UTP
※時は進み、2年前。
拓海「ふぅ……やっぱいいハシリだぜ、美世んとこのバイクはよ」
美世「えへへ、そう言ってくれると嬉しいな…けどね、もう少しで新しいバイクが完成しそうなの」
拓海「新しいバイクだぁ? もっと速えェやつか!?」
美世「ううん、速さは今のとそんなに変わらないんだけど……空気を汚さない、新しいエネルギーで走るバイクなの。このバイクなら、きっと野生のポケモンが汚染に苦しんだりしなくて済むんじゃないかなってさ」
拓海「お前、相変わらずポケモンを大事にするんだな…」
美世「これは、あたしのライフワークだからね。ポケモンや環境を傷付けず、便利で快適な暮らしが送れるように、人や街を豊かにする……あたしには、これくらいしかできないから…」
美世「偽善だって、思う?」
864: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:16:52 ID:UTP
拓海「難しい話はアタシにはわかんねえよ。知ってんだろ」
美世「…そうだよね、ごめん」
拓海「そのバイクよぉ、もし形になったら、アタシが試乗してやんよ」
美世「いいの? もしかしたら、そんなにスピード出ないかもしれないよ…?」
拓海「そこはおいおい良くしていきゃ良いじゃねえか。そのバイクでこの地方を回って、原田モータースの広告塔になってやんのも悪くねえ」
美世「……この地方を、か。……ホントに行っちゃうんだね、ポケモンリーグ」
拓海「四天王、なんてな、へへ。なんつーか、響きが良いよな、まさにテッペンって感じでよ」
美世「でもさ、あたしにジムリーダーなんて大役…できるのかな」
拓海「仕方ねえだろ、神誠道場の師範、身体痛めてジムリーダーできなくなっちまったんだからよ。有香は道場そのものの切り盛りで忙しそうだし」
美世「ジム兼野生ポケモンの道場だったもんね…無理して身体痛めても仕方ないかぁ……でもなぁ……あたしがジムリーダー……うーん」
拓海「何だよ、バカみたいにシゴイてやったろ、自信持てって。アタシのシゴキに耐えられるヤツ、ウチの連中の中にもそうはいねえんだぜ」
美世「ウチの連中……か。拓海ちゃん、バイクの免許取るなりこの辺りの暴走族を一纏めにしちゃうんだもん、あれはビックリしたなあ」
865: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:17:15 ID:UTP
拓海「好き勝手されちゃそれこそポケモンも困んだろ。アイツらには本物のツッパリ方ってのを叩き込んでやった。誰彼構わず傷付ける抜き身のナイフみてえな安っぽい野郎共じゃねえ。大事なモンを護り抜くために振りかざす…アタシ自慢の名刀だ、アイツらはよ」
美世「自慢…かぁ。何か凄いね、拓海ちゃんにそうまで言わせちゃうなんてさ、ふふ」
拓海「だろ? アイツら、美世の事も慕ってくれてるみてぇだしよ。アタシがいない間はアイツらの事、よろしく頼むな」
美世「それも、あたしなんかに務まるかなぁ…」
拓海「だーから自信持てっての」
美世「いや、これは自信とかって言うより……でも、そうだよね。いずれはそういう人達にもバイク周りのお世話してあげなくちゃなんだし、拓海ちゃんにそうまで言わせちゃうくらいなんだから悪い人じゃない……んだよね?大丈夫だよね?」
拓海「別にアイツらお前の事とって食いやしねぇよ落ち着けって」
866: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:17:29 ID:UTP
美世「…むぅ、それはそれで何か……あたしの身体ってそんなに魅力ないかなぁ…」
拓海「そういう意味で言ってもねえよ!!ってか、ソコ気にすんのかよ!」カァーッ///
美世「あはは、やっぱ拓海ちゃん、こういうからかい方すると反応可愛いよね♪」
拓海「お前……みーよ~っ!」
美世「厳しくしごかれた分のお返しだよーだ♪逃げろーっ!」タタタタッ
拓海「待てコラ、美世ォ!!」タタタタッ……
~~~~~~
867: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:17:52 ID:UTP
※時は戻り、現在……。
美世「うん……うん、ありがとね。何か、ちょっとスッキリしたみたい、話したら」
美世「拓海ちゃん、お仕事忙しいでしょ?マジカ団……だっけ、あちこちで悪さしてるのって」
美世「うん……天候で悪さって……あたし、どうしてもウラノス団の事を思い出しちゃってさ……けど、別の組織……なんだよね」
「そう、全く別の組織です。天候を支配してレックウザを呼び起こそうとしたウラノス団とは………目的が違う」
美世「えっ…!?」バッ
空に浮かぶマジカ団総帥「あなたの過去は…今しがた、ここで聞かせて貰いましたよ。後悔と自責の念、まさにあなたは己の心中にブレーキをかけ続けて生きていると言える……」
拓海『どうした? オイ美世、オイ!』
868: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:18:12 ID:UTP
美世「あたしが……心にブレーキを……?」
マジカ団総帥「苦しいでしょう、全力で走りたいはずなのに、どこかに引っかかりを覚えて、後ろ髪を引かれながら……街の人々を欺き、騙しながら、笑顔を貼り付けて生きるのは…私には、その苦しみがよくわかります」
美世「……何が言いたいの…!? あたしを揺さぶって、一体……っ!?」ガキン
美世(体が……動かな……)
マジカ団総帥「『かなしばり』という技ですよ。もっとも、それくらいは、ジムリーダーならご存知かとは思いますがね」
マジカ団総帥「そして……これであなたを苦しめるリミッターは、外れる……」グワン……
美世「………あ……あ………ァ……」グワン……
869: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:18:35 ID:UTP
マジカ団総帥「さぁ、生まれ変わりし我が尖兵よ。今こそ、私と共に走り抜こうではありませんか」
洗脳美世「ハイ……アタシハ……ハシル………ソウスイサマノ……オオセノママニ……」
マジカ団総帥「素晴らしい……私の催眠術の力もどうやら上がって来ているようだ……いや、心に付け入る隙を見つけたのが功奏したのか……」
拓海『オイ、美世、返事しろ!オイっ!』
マジカ団総帥「……耳障りな声が聞こえますね」パチン
バチィッ!!! ……ブツン
※美世のポケギアは音を立てて壊れてしまった……。
マジカ団総帥「……心の隙、か。…我ながら、惨い事を言うようになったものです」
マジカ団総帥「ですが…もう決めた事……例え何と謗られようと、私は私の願いを果たす……」
マジカ団総帥「そうでしょう……私の…無二の友よ……」
~~~~~~~
870: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:19:02 ID:UTP
~翌日~
加蓮「さて……皆、やり残しとかないよね?」
肇「はい、準備万端です」
未央「えと、ここからだとクロノ霊峰を越えなきゃなんだっけ…? あの山、パッと行ってきただけでも凄く高いし広いし険しいし…大変だよ、越えるの…」
ジラーチ【未央の無茶のせいで遠回りすることになっただけだからね】
未央「ジラちんや、それは言わないお約束って奴ですよ……私もそれはわかってるんだからさ…」アハハ…
ネネ「そう言えば、美世さんの姿が見当たりませんけど…見送りに来てくれるって、確か……」キョロキョロ
加蓮「いっそ空を飛んで山を越えたりできればねぇ……って言うか、一度ティリオまで戻ってさ、そこからマギア経由でまたメーヴェ側からのルートじゃ……」
ネネ「危険だと思います、それ……かなり雨が降りましたし、もしかしたらその影響で流砂に飲まれてしまうかも……」
未央「じゃあ結局山越えしかないのかぁ……街の人はこういう時どうしてるんだろ?」
忍「おーい!」タタタッ
肇「忍さん、何か山越えの方法はわかったのですか?」
忍「山越え……どころじゃないって……!」
871: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:19:26 ID:UTP
ネネ「ど、どうしたんですか、そんな息切れするくらい慌てて……」
加蓮「…未央」
未央「うん……ジムリーダーの姿が突然見えなくなるって、前にもあったよね…」
ネネ「………まさか」
忍「さっき、師匠から……拓海さんから連絡が入って………!」
忍「美世さんが…行方不明になったって……!」
加蓮「………!」
未央「……マジカ団、だよね……」
ジラーチ【十中八九、かな】
ネネ「そんな……」
肇「……私達、呑気にジム巡りなんかしていて…良いのでしょうか……もうジムリーダーが二人も……」
皆「「「「…………」」」」
872: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:19:48 ID:UTP
泰葉「だからこそ、挑戦できるうちに挑戦するべきだと、思いますよ」スタスタ……
加蓮「え?」
未央「えっと……誰、だっけ…? 誰かの知り合い…?」
泰葉「申し遅れました。私はグリモ四天王のリーダー、泰葉。ひこうタイプの使い手で、あなたと戦った悠貴さんの師匠にあたります」
未央「ゆうきちゃんの師匠……ああ、ああ!その泰葉さん!ゆうきちゃんが言ってた言ってた!」
加蓮「グリモ四天王のリーダーって事は……この地方で二番目に強いトレーナー……そんなあなたが出てきてまで私達に伝えたい要件って……」
泰葉「ジム挑戦を継続して下さい。お願いします」ペコリ
忍「な……そんな、頭まで下げなくても…」
873: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:20:12 ID:UTP
泰葉「私達リーグ協会は、こういう事態が起きるとわかっていながらも、それを阻止できなかった……何より、それであなた達一般のトレーナーにまで迷惑をかけざるを得ないことを……心から恥じているんです」
未央「そんな…それを言うなら、私達だってこの街にいたのに止められなかったんだし…」
加蓮「でも……どっちにしても、他人事じゃないよね。もう未央だって、前にあいつらに攫われたりしてるんだし」
ネネ「智絵里さんも……美世さんも……皆、強くて優しくて、立派なジムリーダーさんでした…私、二人を助けたいです…」
肇「…そのために、助けられる力を得るために、ジムへの挑戦を継続しなければならない……そういう事、ですよね、泰葉さん」
泰葉「はい。攻めを焦り、勝ちを急いでも…それこそ返り討ちにあえば、何もかも終わりなんです」
泰葉「鍛えられるうちに、今。どうかジムへの挑戦を続けて貰えませんか」ボウン!
トゲキッス「キスキッスー」
スワンナ「スウォー!」バサァ
874: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:20:31 ID:UTP
泰葉「山越えには、ひこうタイプのポケモンを使いましょう。私達が先導しますので、ひこうポケモンをお持ちでない方はこちらへ」
忍「肇ちゃん、アタシ達は…」
肇「はい。お願いします、泰葉さん」
ネネ「トロちゃん、お願い!」ボウン
加蓮「行くよ、まろ!」ボウン
未央「りゅーすけ、ゴー!」ボウン!
泰葉「成程……皆さん良いポケモンを持っていますね。ここまでジムを勝ち抜いてこられたのも納得です」
泰葉「さぁ、飛んで、スワンナ、トゲキッス! 霊峰を越えて、シデロスシティまで!」
スワンナ「スウォー!」
トゲキッス「キスキッスー!」
875: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:20:45 ID:UTP
※かくして、次の街、シデロスシティへと空路を急ぐ一行。
洗脳されてしまった美世はどうなるのか。
マジカ団総帥の目的は何なのか。
次回もまだまだ、目が離せないぞ!
続く!
876: ◆6RLd267PvQ 19/09/08(日)16:22:25 ID:UTP
だいぶ間が空いてしまいましたが何とか更新。
美世の過去の一件は、描くべきかだいぶ迷いました。きっと賛否あるだろうな、と思いつつも、結局はこんな形になってしまいました。
ではひとまず、今回はこの辺で。
お目汚し、失礼をば。
シンデレラガールズ×ポケモンクロス クロノスライトストーリー
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1562165347/