1: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:05:14.91 ID:Mx35aiI0.net

遅れましたがルビィちゃん誕生日短編


以前書いた
花丸「心中」
というSSの外伝的な要素がありますが、未読でも特に問題はありません。



2: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:05:42.46 ID:Mx35aiI0.net

 これはまだ二人だった頃のお話。



3: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:06:30.43 ID:Mx35aiI0.net

花丸(いつもの待ち合わせ場所)

花丸(少し雨が心配になる、曇り空の下)

花丸(のんびりと本を読んで、相手を待つ)


花丸(九月二十一日)

花丸(今日は、ルビィちゃんの誕生日)

花丸(運命的な出会いの後)

花丸(初めての、特別な日)



4: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:07:31.66 ID:Mx35aiI0.net

花丸(こっそり、心に決めていることがある)

花丸(今日ここで)

花丸(ルビィちゃんに、告白するということ)


花丸(悩んだ)

花丸(関係を壊してしまいたくなかったから)

花丸(断られたときの想像をしたくなかったから)

花丸(だけどそれ以上に――)



5: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:08:51.93 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ「マルちゃん!」

花丸(いつもと同じように、オラの顔を見ると小走りで駆け寄ってくる女の子)


花丸「ルビィちゃん」

ルビィ「ごめんね、遅れちゃって」

花丸「ううん、マルが早く来ちゃっただけだよ」

花丸「ルビィちゃんに会うのが、待ちきれなくて」

ルビィ「えへへ」



6: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:09:19.94 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ「じゃあ行こうか」

花丸「あっ、その前に」

ルビィ「うゅ?」

花丸「お誕生日おめでとう」

ルビィ「ありがとう!」


花丸「はー、緊張したずら」

ルビィ「お祝いを言うのに?」

花丸「うん、ドキドキだったよ」



7: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:10:07.95 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ「それならルビィも、マルちゃんの誕生日の時はドキドキなのかな」

花丸「そうだと嬉しいかな」

ルビィ「じゃあドキドキしておくね」

花丸「だけど、意識してできるものかな?」

ルビィ「できるよ、きっと」

花丸「そうなのかな」

ルビィ「うん!」



8: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:11:37.04 ID:Mx35aiI0.net

花丸「そういえば」

花丸「今日はいつもと違うリボンだね」

ルビィ「うん、お姉ちゃんがくれたの。誕生日プレゼントに」

花丸「へえー」

花丸(ルビィちゃんのお話の中にしょっちゅう登場する『お姉ちゃん』)

花丸(顔も知らないけど、やさしい人だってことは分かる)

花丸(いつか会ってみたいな、なんて思っているけど)



9: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:12:18.68 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ「ちなみに」

花丸「ちなみに?」

ルビィ「……マルちゃんは何かくれたり、するのかな?」

花丸「もちろん」

花丸「だけど、放課後になってからだよ」

ルビィ「えー、そんなぁ」

花丸「お楽しみずら~」

ルビィ「気になるよぉ」



10: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:13:01.04 ID:Mx35aiI0.net

花丸(実は内心、焦ってる)

花丸(理由は単純)

花丸(用意したプレゼントは、髪留め)

花丸(ルビィちゃんのお姉さんと、被っちゃったんだよね)

花丸(今さら、変えるなんて無理だし)

花丸(どうしようかな、これ……)



11: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:13:49.31 ID:Mx35aiI0.net

   ※


花丸(だけど代替案なんて思い浮かぶわけもなく)

花丸(気づけば放課後)


花丸(遊びに行こうか、なんて話もしたけど)

花丸(『いつもどおりがいいな』と)

花丸(ルビィちゃんが希望したから、普段と変わらない図書室で過ごす時間)

花丸(二人きりの空間で、過ごす時間)



12: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:14:39.61 ID:Mx35aiI0.net

花丸(ああ)

花丸(今はまだ、静かに本を読んでいるからいいけど)

花丸(帰るまでには、考えないと)


花丸(【お楽しみ】は失敗だったかな)

花丸(いっそ、プレゼントは忘れたことにしておいた方が、よかったかも)

花丸(だけど、大切な人の大切な日を忘れる人間だと思われるのは嫌だし)

花丸(もう、素直に渡しちゃった方がいいかな)



13: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:15:40.82 ID:Mx35aiI0.net

花丸「ルビィちゃん」

ルビィ「ん?」

花丸「プレゼント、なんだけどね」

ルビィ「あっ、ついにお楽しみの」

花丸(嬉しそうな笑顔)

花丸(少し、罪悪感)



15: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:19:34.08 ID:Mx35aiI0.net

花丸「これ」

花丸(鞄から小さな袋を取り出し、渡す)


ルビィ「これは?」

花丸「髪留め、なんだけど」

ルビィ「髪留め――わっ、可愛い」

花丸「その、お姉さんと被っちゃって、ごめんね」

ルビィ「そんなの気にならないよ」

ルビィ「ありがとう、マルちゃん」



16: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:24:14.09 ID:Mx35aiI0.net

花丸(よかった)

花丸(ちゃんと喜んでくれている)

花丸(ルビィちゃん、マルの前では素直で分かりやすいから)

花丸(分かる、心の中も)


ルビィ「ねえねえ」

花丸「ずら?」

花丸(ルビィちゃんは突然、自分の頭に付いていたリボンを解く)



19: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:30:21.96 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ「これ、マルちゃんがルビィに付けてみてくれない」

花丸「えっ、あっ、うん」


花丸(手元に戻ってきた、あげたばかりの髪留め)

花丸(マルがやる意味、あるのかな)

花丸(自分では髪型とかいじらないし、不安というか)

花丸(ルビィちゃんの髪に触れるなんて、緊張するし)

花丸(だけどルビィちゃんの希望なら、断るのも申し訳ないかな)



18: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:28:29.35 ID:Mx35aiI0.net

花丸(後ろからそっと、髪に触れる)

花丸(柔らかい)


ルビィ「うーん、なんか違う」

花丸「えっ?」

ルビィ「マルちゃん、正面から付けてくれない?」

花丸「で、でも」

花丸(それじゃあ、やりにくい)

ルビィ「いいから、お願い」

花丸「う、うん」



20: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:32:24.24 ID:Mx35aiI0.net

花丸(椅子ごと身体をこちら側に向けるルビィちゃん)

花丸(髪おろした姿)

花丸(いつもの幼い可愛らしさとは違う)

花丸(どこか、煽情的な姿)


花丸(心が揺れる)

花丸(お祝いの言葉を伝えた時とは比べ物にならないほど)

花丸(胸がドキドキと、弾んでいる)



21: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:33:47.64 ID:Mx35aiI0.net

花丸(髪の毛に触れる)

花丸(顔が近づく)

花丸(不自然なほどに)

花丸(顔が近づく)


花丸(不器用に鼻がぶつかる)

花丸(目の前に、互いの瞳)

花丸(少しだけ)

花丸(少しだけ、顔をずらした)



22: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:36:06.09 ID:Mx35aiI0.net

花丸(触れ合う)

花丸(たどたどしい)

花丸(キス)

花丸(どちらからともなく)

花丸(自然に)

花丸(ごく自然に)



23: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:36:55.02 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ「マル、ちゃん」

花丸「ルビィ、ちゃん」


花丸(上気した表情)

花丸(スイッチが、入った)


花丸(何かが溢れ出して)

花丸(止められなくなる)

花丸(止まらなくなる)



24: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:38:02.28 ID:Mx35aiI0.net

花丸(最初に比べて荒々しく)

花丸(唇を重ねる)


花丸(互いの服に手をかけ)

花丸(大切な部分に触れて)

花丸(無知で無垢な二人の)

花丸(たどたどしい行為)


花丸(二人きりの図書室を)

花丸(自分たちの荒い息遣いだけが支配していた)



25: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:38:35.77 ID:Mx35aiI0.net

   ※


花丸(気づいたときには)

花丸(下校時刻なんて、とっくに過ぎていて)

花丸(外は真っ暗)

花丸(マルとルビィちゃんは横たわりながら)

花丸(一緒に、暗闇を眺める)



26: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:40:36.60 ID:Mx35aiI0.net

花丸「……凄かったね」

ルビィ「……うん」


花丸(薄暗い部屋だから確認できないけど)

花丸(たぶん二人とも、顔が真っ赤)

花丸(恥ずかしい)

花丸(獣のような自分の姿)

花丸(思い出すと、本当に)



27: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:42:41.36 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ「いけないこと、だよね」

ルビィ「こんなの」

花丸「そうかな」

ルビィ「だって」

ルビィ「友達同士ですることじゃないよね」

ルビィ「本当は」


花丸(そうだね)

花丸(友達同士じゃ、変だよね)



28: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:43:33.06 ID:Mx35aiI0.net

花丸「ルビィちゃん」

ルビィ「うん」

花丸(タイミングは、ここしかない)


花丸「今さら、かもしれないけどね」

花丸「マルの恋人になって、ほしいの」

花丸(口に出した)

花丸(もう引き返せない)



29: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:48:56.27 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ「……酷いよ」

花丸「えっ」

花丸(頭が、身体が、凍り付く)


ルビィ「ルビィから告白、するつもりだったのに」

花丸(だけど一瞬で、溶けて)

花丸(心が、温かくなっていく)

花丸(満たされていく)



30: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:51:08.97 ID:Mx35aiI0.net

花丸「駄目だよ、ルビィちゃんはお姫さまなんだから」

花丸「求愛される側なんだから」

ルビィ「それなら、マルちゃんは王子様かな」

花丸「そんなの、ガラじゃないよ」


ルビィ「ううん」

ルビィ「ルビィにとって、マルちゃんは王子様」

ルビィ「格好いいもん、今も」

花丸「王子様……」

花丸(お姫様を守る、王子様)



31: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:51:39.00 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ「ルビィね」

花丸「うん」

ルビィ「花丸ちゃんのこと、好きだよ」

花丸「マルも、ルビィちゃんが好き」

ルビィ「お揃いだね」

花丸「お揃いずら」



32: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:52:22.48 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ「ずっと」

ルビィ「ずっと、一緒に居ようね」

花丸「うん」

花丸「ずっと、一緒」


花丸(幸せだな)

花丸(きっとマルたちは)

花丸(ずっと互いのことを愛して)

花丸(最後まで一緒に生きていける)

花丸(不思議とそんな確信が)

花丸(心の中に、宿っていた)



33: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:56:10.23 ID:Mx35aiI0.net

――――――――――――



 時は流れる。

 これは一人になった後のお話。



34: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:56:58.57 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ「朝……」


ルビィ(鳥の鳴き声)

ルビィ(ちょっとうるさい?)

ルビィ(だけどちょうどいい目覚まし時計かな)

ルビィ(時間、ピッタリだもんね)



35: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 17:57:45.70 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ(窓からは日差しが差し込む)

ルビィ(身体を起こし、ベッドから立ち上がる)

ルビィ(何となく、近くに会ったクッションを抱きしめながら、部屋のドアを開ける)


??「ルビィちゃん、お誕生日おめでとう!」

ルビィ「ピギッ!?」


ルビィ(それと同時に耳をつんざく、静かな朝には相応しくない声)

ルビィ(思わず、昔のような悲鳴を上げてしまう)



37: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 18:33:41.74 ID:Mx35aiI0.net

千歌「おー、驚いたね。サプライズ成功だ!」

ルビィ「千歌ちゃん……」


ルビィ(いつの間に来たんだろう)

ルビィ(内浦の実家の旅館で働いていて)

ルビィ(朝だって、忙しいっていつも愚痴ってて)

ルビィ(沼津に来る余裕なんて、そうそうないはずなのに)


曜「ごめんね、朝から急に押しかけてきちゃって」

ルビィ「曜ちゃんも」



38: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 18:39:35.01 ID:Mx35aiI0.net

千歌「えー、その言い方だと迷惑かけたみたいじゃない?」

曜「実際そうだよ、千歌ちゃん」

曜「ルビィちゃん、まだ目をパチクリさせてるもん」

千歌「あっ、本当だ。ごめん」

ルビィ「う、うん」

千歌「一応サプライズのお祝いのつもりでさ」

曜「そうそう、悪気はなかったんだよ」

ルビィ(知ってる)

ルビィ(空回りしているところまで、千歌ちゃんらしい)



39: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 18:43:20.50 ID:Mx35aiI0.net

千歌「待ちきれないじゃん、ルビィちゃんの誕生日なんだから!」

ルビィ「そんな大層な日じゃないよ」


曜「そんなことないって」

曜「パパとママもさ、ルビィちゃんが起きるのを待ってたんだよ」

ルビィ「そうなの?」

曜「うん、夜にお祝いの予定でしょ」

ルビィ「うん」

曜「だけど朝からもう、パーティーできそうな状態だったよ」

ルビィ「そ、そうなの?」



40: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 18:45:33.57 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ(沼津に、内浦に戻ってから)

ルビィ(私は曜ちゃんの実家でお世話になっている)

ルビィ(寝泊まりしているのも、曜ちゃんの部屋)

ルビィ(曜ちゃんは沼津に部屋を借りて、善子ちゃんの面倒を見るようになったから空いた)

ルビィ(曜ちゃんのお父さんとお母さんは)

ルビィ(娘の大切な時間を奪い、長い間苦しめ続ける原因となった私のことを)

ルビィ(一人娘の代わりだって、笑顔で受け入れてくれて)

ルビィ(心の底から可愛がってくれる)



41: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 18:46:33.13 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ「だけど朝は、黒澤家の予定だよ」

曜「あ、そうか」

曜「誕生日でも行くんだね」

ルビィ「うん」

ルビィ「お姉ちゃんにとって、今日は普通の日」

ルビィ「私の誕生日じゃ、ないから」

曜「……そうだね」



42: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:34:12.71 ID:Mx35aiI0.net

 ―黒澤家―


ルビィ「お邪魔します」

黒澤母「……ルビィ」

ルビィ「お母さん、おはよう」

黒澤母「ダイヤなら、いつもどおり部屋にいるわ」

ルビィ「うん、分かった」


ルビィ(時間がある日は毎日)

ルビィ(曜ちゃんに運転してもらって)

ルビィ(黒澤家、お姉ちゃんに会いに行っている)



43: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:34:38.28 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ(襖を開けて入る)

ルビィ(お姉ちゃんの部屋)


ルビィ「ダイヤさん」

ルビィ(最初は違和感しかなかったこの呼び方)

ルビィ(今はすっかり、慣れてしまった)

ダイヤ「……ああ、花丸さん」

ルビィ「うん、そうだよ」



44: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:35:28.06 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ(お姉ちゃんの中のルビィは)

ルビィ(もう善子ちゃんのものだから)

ルビィ(元々いた私の存在は、もう消えちゃったから)

ルビィ(空いた部分は)

ルビィ(もう花丸ちゃんの場所しか残っていなくて)

ルビィ(だからルビィは、花丸ちゃん)

ルビィ(お姉ちゃんの前だけ、昔の恋人になる)



45: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:36:51.33 ID:Mx35aiI0.net

ダイヤ「今日も遊びに来たのですか?」

ルビィ「うん」

ルビィ「相変わらず、暇なんだよね」

ダイヤ「駄目ですよ、あなたはしっかり者なんですから」

ダイヤ「私に構わず、ちゃんと働かないと」

ルビィ(髪を)

ルビィ(花丸ちゃんと同じように、伸ばした髪を撫でられる)


ルビィ「平気だよ、生活できる程度には仕事もしているから」

ダイヤ「それなら、いいのですが」



46: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:37:24.01 ID:Mx35aiI0.net

ダイヤ「私自身、偉そうなことを言える立場ではありませんし」

ダイヤ「ルビィが家を出てから、あまり連絡がなくて」

ダイヤ「情けないことに寂しいのです」

ダイヤ「花丸さんが来てくれるおかげで、ずいぶん助けられています」


ルビィ「マルも、ダイヤさんとお話できて楽しいよ」

ルビィ「嫌ならわざわざ来ないし」

ダイヤ「そうですか……」



47: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:38:41.45 ID:Mx35aiI0.net

ダイヤ「ルビィは、元気ですか?」

ルビィ「うん、結構充実した生活を送れているみたいだよ」

ルビィ(曜ちゃん二人、沼津に暮らしている)

ルビィ(今は善子ちゃんに戻る為の、リハビリ中)


ルビィ「メールやメッセージのやり取りは、しているんだよね」

ルビィ(それだけは続けてくれる約束だから)

ダイヤ「ええ」

ダイヤ「私も早く外に出て、あの子に会いたいですね……」



48: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:39:54.66 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ(まだ虚構の世界にいて)

ルビィ(強い刺激を与えることを避けなければならないお姉ちゃんは)

ルビィ(外出さえ許されていない)

ルビィ(症状は改善に向かっているはず、だけど)

ルビィ(私やお母さんでさえ、共に過ごせる時間は限られている)

ルビィ(腕時計を眺めるとほら、もう時間)



49: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:41:31.09 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ「ごめんね、ダイヤさん」

ルビィ「マル、そろそろ帰らないと」

ダイヤ「あら、今日は早いのですね」

ルビィ「うん、忙しいんだ」

ダイヤ「そうなのですか」


ルビィ「またすぐに来るから」

ルビィ「今度は、もう少し長くいられる予定だし」

ダイヤ「ええ……」


ルビィ(寂しそうな顔)

ルビィ(昔は知らなかった、お姉ちゃんの弱い部分)

ルビィ(この関係になってから、まざまざと見せつけられる部分)



51: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:46:18.18 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ「じゃあね、また――」

ダイヤ「待って」

ルビィ(いたたまれなくなって部屋を出ようとすると、いつもより少し、強い言葉で引き留められる)


ダイヤ「お誕生日、おめでとう」


ルビィ「えっ?」

ルビィ(今、なんて)

ダイヤ「……なんでも、ありません」

ダイヤ「ただ、今日はルビィの誕生日ですので」

ルビィ「……そうだね」

ルビィ「今日は、ルビィちゃんの誕生日、だもんね」



52: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:47:03.66 ID:Mx35aiI0.net

   ※


曜「おかえり」

ルビィ「うん」

ルビィ(私がお姉ちゃんと話している間)

ルビィ(曜ちゃんはいつも家の前、車の中で待っていてくれる)



53: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:47:54.09 ID:Mx35aiI0.net

曜「ダイヤさん、どうだった」

ルビィ「いつもどおりだよ」

曜「そっか」


曜「周りの人に言わせればずいぶん良くなったみたいだけどね」

ルビィ「そうかな」

曜「うん」

曜「ルビィちゃんのおかげだって」

ルビィ「……」



54: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:48:29.72 ID:Mx35aiI0.net

曜「それは?」

ルビィ(曜ちゃんが目ざとく指摘したのは)

ルビィ(帰り際、渡された小さな包み紙)

ルビィ「お母さんから」

ルビィ「誕生日プレゼント、だって」

曜「……そっか」



55: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:49:02.53 ID:Mx35aiI0.net

曜「ルビィちゃん」

ルビィ「うん」

曜「今年も生きたね」

ルビィ「だね」


曜「私はさ、嬉しいんだよ」

曜「こうやって地元に帰って」

曜「君と昔みたいに、一緒に居られることが」

ルビィ「……」



56: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:49:44.94 ID:Mx35aiI0.net

曜「そろそろ行こうか」

ルビィ「うん」

曜「今日は天気がいいから、海も綺麗だね」

ルビィ「だねぇ」

曜「せっかくだし、どこか寄っていこうか」

曜「学生気分に戻って、寄り道とか」

ルビィ「寄り道……」



57: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:50:11.17 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ「ねえ、曜ちゃん」

ルビィ「それならちょうど、行きたい場所があるの」


ルビィ(ひとつ)

ルビィ(一つだけ)

ルビィ(誕生日)

ルビィ(思い出の場所)



58: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:51:19.96 ID:Mx35aiI0.net

 ―某中学校跡・図書室―


ルビィ(曜ちゃんには少し経ったら迎えに来てくれるように頼んで)

ルビィ(やってきたのは、既に廃校になってしまったという母校)


ルビィ(あれから、ずいぶんと時間が経過して)

ルビィ(あらゆる場所が姿を変えている)

ルビィ(だけどその中でも変わらない)

ルビィ(誰にも利用されない図書室)



59: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:52:03.33 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ(本はほとんど無くなってしまっていたけど)

ルビィ(懐かしい)

ルビィ(本棚)

ルビィ(椅子)

ルビィ(机)

ルビィ(そのまま放置されている)



60: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:53:59.94 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ(取り残されてしまった僅かな本は、隅に積み重ねられている)

ルビィ(その中に懐かしい)

ルビィ(二人で一緒に読んだ本を見つけた)


ルビィ(ページをパラパラめくり、一番後ろ)

ルビィ(貸出カード)

ルビィ(ほとんど意味を持たないそれに書いた、二人の名前)

ルビィ(『国木田花丸』と『黒澤ルビィ』の文字)



61: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:54:31.82 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ(ここには、色々な思い出が詰まっている)

ルビィ(出会ったのも)

ルビィ(運命に気づいたのも)

ルビィ(初めてキスをしたのも)

ルビィ(身体を重ねたのも)

ルビィ(恋人になったのも)

ルビィ(全部、この場所)



62: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:55:01.61 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ「……マルちゃん」

ルビィ(彼女の定位置だった椅子に座る)

ルビィ(彼女がよく本を乗せていた机に突っ伏す)


ルビィ「私ね、頑張ってるよ」

ルビィ(頑張っている)

ルビィ(あの日、心の中のあなたに誓ったように)

ルビィ(だけどやっぱり)


ルビィ「寂しいよ……」



63: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:55:37.37 ID:Mx35aiI0.net

   ※


ルビィ「あ……」

ルビィ(気づいたころには、眠っていたのかな)

ルビィ(外はもう、真っ暗)


??「……おはよう」


ルビィ(だけどその中に、ぼんやりとした人影)

ルビィ(この声は、そう)


ルビィ「理亞ちゃん」



64: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:56:05.07 ID:Mx35aiI0.net

理亞「久しぶり」

ルビィ「……どうして、こんな場所に」


理亞「お祝いしようと思って、沼津まで来たんだけど」

理亞「家に居ないから困っていたら」

理亞「曜が、連れてきてくれたの」

ルビィ「……サプライズ失敗?」

理亞「うん、そうかも」



65: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:56:32.93 ID:Mx35aiI0.net

ルビィ「曜ちゃんは?」

理亞「外で待ってる」

理亞「お腹ペコペコだって、少し不機嫌だった」

ルビィ「ありゃ、悪いことしちゃったかな」

理亞「千歌も待ちきれなくなって、曜の家で暴れてるらしい」

ルビィ「あはは、それは大変だね」

理亞「お酒が入って、曜への愛を、曜のご両親の前で語り始めてるとか」

ルビィ「それは、本当に止めてあげないとかな」



66: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:57:08.01 ID:Mx35aiI0.net

理亞「うん、早く戻らないと」

理亞「だから帰ろう、ルビィ」


ルビィ(差し伸べられた手は)

ルビィ(私の手より小さい)

ルビィ(だけど、力強い)

ルビィ(そんな、手)


ルビィ(……バイバイ、マルちゃん)

ルビィ(また、いつかね)



67: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:57:45.35 ID:Mx35aiI0.net

終焉を迎えない限り、物語は続いていく。



68: 名無しで叶える物語 2019/09/22(日) 19:58:05.88 ID:Mx35aiI0.net

以上です


元スレ
花丸「前日譚」ルビィ「後日譚」