627: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 18:37:53.95 ID:dIWqa2t10

~次の日

絵里「ふぁー……っていったっ!?」

絵里(眩しい光を受け瞼を閉じて、それに負けじと無理矢理瞼を開けて背伸びをした直後、私に激痛が走る)

絵里(お腹を中心とした痛みが体の中で広がっていく。すぐさまお腹を見れば包帯越しでも赤く染まっているのが分かる)

絵里「…果南か」

絵里(果南の遺した傷は随分と痛い。それは直接的でもあって精神的でもあった)

絵里(今頃果南と善子が生きてれば戦況はどうなってたのかしら、在りもしない希望を掲げた絶望がイマジネーションを発生させた。鞠莉という一人の人物を殺すのになんでこんな想いをしないといけないんだろう、世界は常に理不尽で謎しかない)

絵里「……変な顔」

絵里(誰もいない寝室のテーブル、さりげなく置かれた誰かの鏡を見ると私の瞳とその周りは赤かった)

絵里(泣いたのかしら、でもいつ泣いたのかしら?)

絵里(果南と善子が死んで冷静でいる自分が少しおかしく感じてはいたけど、やっぱり無意識の中の私はとてもつもなく悲しいのよね、分かるわよ)


絵里(こんな退廃的世界で次は何をしてけばいいのかしら)


絵里(エンドロールに向かっていくはずの私は、足を動かすことも憂鬱だった)





628: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 18:40:23.44 ID:dIWqa2t10



絵里(エンドロールに向かっていくはずの私は、足を動かすことも憂鬱だった)


スタ…スタ…スタ…


ことり「! 絵里ちゃん!」

花丸「絵里さん!?」

せつ菜「絵里さん!」

絵里(二足歩行で歩くのが辛くて、壁に寄り添いながら少しずつ歩いてリビングへ向かった。昨日の深夜とは違って痛みは鮮明に感じる、だから今の身体はものすごく不自由だった)

スタスタスタ

絵里「ありがとうことり、せつ菜」

ことり「いいよっ絵里ちゃんは無理しないで」

せつ菜「その通りです!」

絵里(二人の肩を借りて一緒に歩いてもらった。そうすればだいぶ楽に歩けるようになった)

絵里「よいしょっいたたっ…」ストンッ

真姫「あんまり無理しないようにしなさいよ?」

絵里「え、ええ…」



629: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 18:41:19.06 ID:dIWqa2t10

ことり「…曜ちゃんから聞いてたけど、やっと起きたんだね」

曜「今回は二週間で起きれたね」

絵里「に、二週間!?」

せつ菜「穂乃果さんはまだ目覚めません…」

絵里「そ、そんな経ってたの…」


ルビィ「おはようございま…ってぴぎっ!?」


絵里「ルビィ!」

ルビィ「絵里さん!」


ギューッ


絵里「…あの時はありがとう」

ルビィ「…いいんです」



630: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 18:42:55.60 ID:dIWqa2t10

ことり「…どういう状況?」

絵里「ルビィは私を助けてくれたの」

ことり「…じゃあやっぱりあの時は助けた後だったんだ」

ルビィ「あ、はい…」

ことり「そっか…ごめん」

ルビィ「大丈夫です、焦る気持ちはルビィも分かるので!」

絵里「…そういえば果南と善子の事は話したの?」

曜「いや…まだ…」

花丸「…?果南さんと善子さんがどうなったかを知ってるんですか?」

絵里「あぁ…うん……」

絵里(私の口からはあまり言いたくない事実だった。でも、当然よね。過去は消せないけど、あんな忌々しい記憶はそうと分かっていても消したくなるものよ)

曜「あ、えっとね…私の口から言うと善子ちゃんと果南ちゃんは…死んじゃったんだ」

ことり「っ!?」

せつ菜「ど、どうしてですか!?」

曜「それは————」

絵里(それ以降は昨日の深夜私が話したのと同じだった、初めて聞くせつ菜とことりは昨日の真姫と曜と同じ反応をしてた)



631: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 18:45:54.14 ID:dIWqa2t10

ことり「……やっぱり」

曜「やっぱり?」

ことり「連絡がつかなくなった時、何かやらかすなら絶対に松浦果南だと思った。だから私は急いで絵里ちゃんを探しに行ったんだよ」

曜「…今見返せばもっと気にするべきだったのかな」

ことり「……いや、気にするのは多分無理だよ、だって仲間だもん」

せつ菜「…そうやって、穂乃果さんも一度死にましたからね」

ことり「うん……」

絵里「………」

曜「これは最近知ったことなんだけど、対アンドロイド特殊部隊も今著しい戦力の低下が起こってるらしいんだ」

絵里「どういうこと?」

曜「海未さんとにこさんが死んだらしいんだ」

せつ菜「………」

絵里「えっ…」

ことり「…内紛を起こして共倒れしたんだって」

絵里「そんなことが…」



632: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 18:47:02.62 ID:dIWqa2t10

せつ菜「にこさん…海未さんを倒せるほど強かったんですね…」

曜「…それは私も思った、確かににこさんは強いけどまさかあの生命力お化けの海未さんを殺すなんて……」


ルビィ「…殺してないよ」


花丸「え?」

ルビィ「にこさんは確かに海未さんに勝ってた、けど最後に油断したせいで海未さんに殺された。だから結果的に海未さんの勝利だった」

せつ菜「ど、どうしてそんなことが分かるんですか?」

ルビィ「…だってルビィいたもん、その時そこに」

曜「えっ…じゃあ海未さんって……」


ルビィ「ルビィが殺した」





633: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 18:48:16.78 ID:dIWqa2t10

ことり「……やっぱりあなた只者じゃないよね、あの時の戦闘といい何かの戦闘員でしょ」

ことり「あの時のハンドガンだって随分と持ち慣れてた、少なくとも私は穂乃果ちゃんや曜ちゃんとも対等に戦える強さだと思った」

曜「最初はずっと泣いてたからあまり気に留めてなかったけど…」

せつ菜「あなたは一体…?」

絵里「…それは私から話すわ」ガタッ

絵里「ルビィはね……」

スタ…スタ…

絵里「昔東京で起こった大規模な銃撃戦で民間人として参加した————」

スタ…スタ…


絵里「——殺し屋という異名を持つ子なの」ポンッ





634: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 18:49:23.12 ID:dIWqa2t10

曜「っ!?」

せつ菜「殺し屋って…!」

花丸「希ちゃんが探してた人ずら!!」

ことり「殺し屋ってこんな人だったんだ…」

真姫「…名前は聞いてたけどこんな身近にいたなんてね」

絵里「元々ルビィは善子とタッグを組んで日々悪と戦うまさに正義の味方だった」

絵里「善子は持前の接近戦の強さを活かして突っ込んで、ルビィはそのカバーをスナイパーでするのと同時に善子の後に続く。たった二人だけというのに恐ろしく強かったわ」

絵里「ルビィは恐ろしく才能に恵まれた子よ、モノの動きを完璧に捉えることが出来る目の良さで相手を必ず射貫くわ」

花丸「…!それがいわゆる偏差撃ちの所以…?」

絵里「ええ、百発百中のその腕は敵に回したら死はほぼ間違いないものよ」




635: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 18:50:45.15 ID:dIWqa2t10

絵里「だけどルビィの強さはそこだけじゃない。ルビィは姉の才能をも受け継いでるの」

真姫「姉の才能?」


曜「…分かった、ダイヤさんでしょ」


絵里「正解、ダイヤの才能を受け継いでるの」

せつ菜「ダイヤさんの才能ってなんですか?」

絵里「ダイヤはね、近接戦闘がものすごく得意なの。元々ダイヤは小さい頃から薙刀とか刀を嗜んでいた身だったから体術に関しては指折りで、でもそういうの関係無く黒澤の血を引く者としてダイヤはその刀や体術の才能に恵まれた」


絵里「…そして、ルビィもそれ同様に」


ことり「…なるほど、ようやく分かったよ。アンドロイドの私を超える反応速度の原因が」

ことり「薬だけじゃどう考えてもあんな動き出来ないからね」

ルビィ「…近接戦闘は奥の手だからあまり使いたくなかったんだけどね」




636: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 18:52:52.77 ID:dIWqa2t10

曜「ダイヤさんはナイフの使い方がものすごい上手い人だったよ、梨子ちゃんや私がヘイト集めてダイヤさんがそそくさに近づいて近接戦闘持ち込んではい終わりっていうムーブを何十回とやったことか」

花丸「はぇ~…」

絵里「…とりあえずそういうことよ、以後ルビィとも仲良くしてあげて、普段は大人しい子だから」

ルビィ「改めてよろしくお願いします」ペコリッ

曜「うんっ!頼もしい仲間が来てくれて嬉しいよ!」

せつ菜「はいっ!私も考えは同じです!」

真姫「ええ、困ったことがあったらちゃんと言うのよ」

ことり「あの戦いでは驚かされるばかりだったよ、よろしくね」

花丸「ルビィちゃん!よろしくずら!」

ルビィ「!」パアアア

ルビィ「うんっ!」

絵里「…ふふふっ」

絵里(ルビィは大人しい子よ、そして故に大人しいから姉であるダイヤにも自分の強さがばれなかった)

絵里(大人しいから人と話すのが苦手だった、だからあの大規模な銃撃戦の時は誰とも話さなかった)

絵里(…でも、今はこうしてみんなが優しくしてくれてるのを見るとなんだか安心した。真姫に出逢う前は善子と私とルビィと果南と千歌の五人がいつものメンバーだったんだから……その中でも妹のように可愛がったルビィが幸せだと私も何故か幸せな気持ちになれた)




637: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 18:54:09.01 ID:dIWqa2t10

ことり「はいっことり特製朝ごはんですっ」

曜「あれ?今は思考が攻撃寄りなの?」

ことり「そんな伝わるか伝わらないか微妙なこと言わなくていいから早く食べて!」

曜「はーい」

花丸「チーズケーキ……」

ことり「どうしたの?」

花丸「いや…朝なのにデザートが出てくるなんてちょっと驚きずら…」

ことり「そうなの?ことりは普通だと思うんだけどなぁ」

せつ菜「花丸さんはいつも希さんに頼んでちゃんとした朝食を食べてますもんね、それに比べて希さんなんて夜以外大体菓子パンですし」

真姫「それは甘いわね…」

絵里「…うん、おいしいじゃない」



638: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 18:56:13.85 ID:dIWqa2t10

ことり「当然だよ、ことりはデザート作りが好きなんだからっ」

絵里「えっ…」

ことり「…何その顔!?ことりだって女の子だよ!?」

曜「あはは…ことりちゃんってすごく可愛いけど戦闘になると鬼になるし……」

せつ菜「…間違ってないです」

花丸「異論無しずら」

ルビィ「?」

ことり「えぇ…じゃあもうちょっと女の子らしくしなきゃっ」

絵里(いつもは私が朝ごはんを作ってるのだけど、まともに動けない今はことりが朝ごはんを作ってくれた)

絵里(…ただ朝ごはんと呼ぶにケーキは少し重い気がするけど味は一級品なので文句は言わないでおく)

絵里(まぁそんなおいしいチーズケーキを口に運ぶ中で、話は進む)

絵里「あれから何か変わった?」

真姫「特に変わってないわ、Y.O.L.Oも対アンドロイド特殊部隊も何も起こしてない」

ことり「それどころか政府すら何も変わった動きを見せてないんだよね、やる気あるのかな?」

花丸「…何かありそうずら」

せつ菜「私もそう思います」



639: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 18:57:11.59 ID:dIWqa2t10

曜「……でも何かって何だろう」

曜「政府の武器庫と呼ばれるY.O.L.Oが攻撃を受けそうになったというのに追撃が来ない、政府は本当に何をしてるんだろう?本当なら今頃私たちは政府に追われててもおかしくないはずなのに」

絵里「行動を起こさないことで起こる相手側のメリットは何?」

曜「ないよ、だってどう考えたって私たちと、対アンドロイド特殊部隊と結託してる政府じゃ相手側に軍配があがるじゃん。なのに攻めてこないなんて私たちに復活のチャンスを与えてるだけだよ?」

絵里「…ということは向こうで何かが起きてるんじゃない?」

真姫「例えば?」

絵里「例えば…?えーっと…」



絵里「内紛とか」






640: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:04:19.04 ID:dIWqa2t10

~四十分後

曜「そういえばルビィちゃんは何のスナイパーを使ってるの?」

ルビィ「L115A3っていうスナイパーだよ」

ことり「…うわっ」

花丸「おお、なるほど」

真姫「趣味がいいのね」

絵里「…え?何?私全然分からないんだけど……」

曜「L115A3っていうのは超簡単に言うと命中精度がものすごく高いボルトアクション式のスナイパーライフルだよ」

曜「スナイパーだから重いのは変わりないんだけど、その中でもこのスナイパーは軽くて他のスナイパーと比べて理論的にコッキングにかかる時間が短いとされてるんだ」

絵里「コッキング?」

花丸「とっても簡単に言うとチャージハンドルを引くことを意味していて、ボルトアクション式のスナイパーは一発弾を撃つたび絶対にコッキングをしないといけない特徴があるずら」

花丸「また、ボルトアクション式のスナイパーっていうのは他の武器と比べてたった一つの弾を撃つに手間がかかるものの、威力はやはり最高級の一言で、相手を一撃で仕留めるのに適した武器種ずら」

花丸「その中でルビィちゃんという偏差撃ちが得意で目がいい人がこのL115A3を持つことは鬼に金棒ともいえるずら!」

曜「その通り」ウンウン

絵里「へ、へぇ…」

絵里(毎回この銃の説明になると面食らって返答が引け気味になってしまう、銃のことはこれからの為にもっと知りたいとは思うけどこういう銃一つの知識というか…専門的な知識を目の当たりにすると銃の世界が広いことを思い知らされる)




641: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:05:17.54 ID:dIWqa2t10

せつ菜「これからの戦いでスナイパーがいてくれるのはとても頼もしいですね」

曜「そうだね、相手がアンドロイドだろうと人間だろうと効果は絶大だからね」

絵里「…というか勝手にルビィは戦いに参戦することなってるけどルビィはいいの?」

ルビィ「もちろん任せて、善子ちゃんの意志はルビィが受け継ぐよ」

絵里「…そう、ルビィがそう言うなら私は何も言わないわ」

絵里(果南と善子が消えて、新たなに加わったルビィという最強の矛)

絵里(それは即戦力どころか一種のモンスターであり、何か異常がない限り百発百中を保つルビィの腕は頼もしいってレベルじゃない)

曜「…しっかしこうしてみると私たち色んな武器持ってるんだねぇ」

絵里「人が増えた証拠ね」

絵里(ダイニングのテーブルやその辺に床に転がってる武器の数々を見てこの家の住居者もふえたことを実感できる。ホントなら後三人ここにいるはずだったのに、どうしてその三人はいないのかしら。分かっていながら疑問に思う)

絵里(エンドロールへ歩く私たちのそのエンドロールも、悪い意味だとしても良い意味だとしても終わりが近いように思える)

絵里(その中で最初は四人だったのに、次第に増えていって今じゃ八人もいるなんて感慨深いにも程がある)


絵里(この八人で、どう乗り越えていくのか)


絵里(果たして革命は起こせるのかしら)



642: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:06:14.02 ID:dIWqa2t10

絵里「…あれ?ルビィはもう動けるの?リハビリとか必要じゃないの?」

ルビィ「うん、必要だよ。まだ歩けるってだけで全然動けない」


ルビィ「でもスナイパーは撃てるよ!」


絵里「なるほど、でもそれじゃあ戦線の復帰は無理ね」

ことり「人の事いえたことじゃないけどね」

絵里「わ、私はなんとかするわよ!アンドロイドだし…」

曜「…だけど傷が治ってもちゃんと対策も考えないとね」

せつ菜「その通りです、新型アンドロイドはただのズルです。私たちに出来ないことを平然とやってのける疑似的な魔法を持っています」

せつ菜「その魔法にどう立ち向かっていくか検討していく必要があります」

曜「私が戦ったアンドロイドは命が複数ある…或いは記憶保存領域が別の場所にある。もしかしたら痛みを感じないなんてこともあるよ」

せつ菜「私と穂乃果さんが戦ったアンドロイド二人は喋らずに会話が出来る、或いは意思疎通がとれるはずです」

せつ菜「近づいて作戦を取ることも必要とせず思い立った瞬間すぐに二人共理想の行動に移せるのは驚異的です」

真姫「そうね…」



643: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:07:57.29 ID:dIWqa2t10

曜「まず前提条件として数で勝っていこう、こっちは戦える人が六人いる。でも向こうは三人、こっちには三人のアドバンテージがあるんだからそれをどう使うにせよこの三人のアドバンテージは活かしていこう」

絵里「もちろんよ」

曜「次に」


花丸「待ってほしいずら」


曜「ん?どうしたの?」

花丸「…次Y.O.L.Oに行くときはマルも連れていってほしいずら」

せつ菜「だ、ダメです!あそこはとっても危険な場所なんですよ?花丸さんが行っていいところではありません!」

花丸「それでもマルは行きたい、真姫さんには失礼かもしれないけどこのまま家で待ってるだけの人間にはなりたくない」


花丸「それにマルも戦えるよ」


花丸「銃は撃てなくても、投げ物は扱えるしナイフでなら人を殺せる。マルだって一応は希ちゃんの部下だもん」


花丸「希ちゃんに評価されたのは情報だけじゃないずら」





644: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:09:39.89 ID:dIWqa2t10

曜「…んまぁその辺はまた考えよう」

曜「それで————」

絵里(その日は来る次の戦いに向けてずっと話し合いだった。そんな戦いなんてまだ遠い話————)


絵里(——そう思っていたけど、あの別荘で何かしてる度に時は加速していき最初は人の手を借りないと歩けない私も気付いたら自分で歩けるようになっていて、みんな囲む食卓には穂乃果もいた)

絵里(その長い期間…そうね、一ヶ月半くらいかしら。それだけ長い期間が空いてるというのに政府も対アンドロイド特殊部隊も何もしてこない。一体なぜ?)

絵里(疑問だらけの世界は今日も謎を置いていく、しかしそんな謎に振り回されずにこの家は動いていく。地下の射撃場では今日も銃弾が飛ぶし、図書室の本は今日も複数抜かれ複数戻ってくる)

絵里(こんなのうのうと暮らしてていいのかしら、流石の私も平和ボケしてるわけじゃない、危機感は充分なほどにある。だけどそんな危機感も空回りしてしまうほどその時は何もなくて、逆に心配になってる私がいた)

絵里(テレビをつけても大したニュースはやってないし私たちの事も何も載ってない、真姫や花丸さんが情報を集めに行ってもそれらしい情報は一切なし)


絵里(戦いの合間に平和があるのか、平和の合間に戦争があるのか)


絵里(…違う、どちらもそうだとも肯定できなくはないけどこの一ヶ月半の沈黙は何を言おう戦争の真っ最中よ)

絵里(決して平和などではなく“何か”が動き出してた、だから来る日はみんなが動けるようになってすぐに来た)




645: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:10:49.88 ID:dIWqa2t10

~夜、リビング

せつ菜「………」

ことり「………」

曜「………」

絵里「…それじゃあこれからY.O.L.O強襲作戦を実行するわ」

花丸「…了解ずら」

絵里「今回も前回同様グループ三つに別れて行動するわ、一つは姉妹のアンドロイドと対峙、一つは命が複数あるといわれるアンドロイドと対峙、そして最後の一つはY.O.L.Oの破壊を担当する」

絵里「それで姉妹のアンドロイドを担当するのは穂乃果、せつ菜」


絵里「そして花丸よ」


花丸「…はい!」

せつ菜「ホントに大丈夫なんですか?」

穂乃果「…助けれる保証はないよ」

花丸「もちろん、任せてほしいずら」

穂乃果「………」



646: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:12:15.91 ID:dIWqa2t10

絵里「そして命が複数あるアンドロイドを担当するのが私とルビィよ」

ルビィ「よろしくね、絵里さん」

絵里「ええ、よろしくね」

絵里「最後にY.O.L.Oの破壊を行うのが曜とことりよ、じゃんじゃん破壊しちゃって」

曜「もちろんっ!任せといて!」

絵里「…正直、今回はアンドロイドを殺すことが目標じゃない。Y.O.L.Oの破壊が出来た場合は撤退した方がいいわ、だから殺さずとも耐えるだけでもいいわ」

せつ菜「分かりました、ですが」


穂乃果「そんなつまらないことはしたくない」


穂乃果「…お返ししないとね」

せつ菜「その通りです」

絵里「…ほどほどにね」

絵里(大都会の街も少しだけ賑わいが落ち着く深夜、また再び私たちは戦闘服へと着替えて銃を持つ。今度こそとリベンジの思いを胸に秘めてみんな銃のチャージハンドルを引いた)


絵里(もう銃のセーフティーは要らない)





647: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:14:47.70 ID:dIWqa2t10

穂乃果「じゃあ私たちは行くね」

絵里「ええ、死なないようにね」

穂乃果「大丈夫、もう負けない」

絵里(また銃弾で物語を語るのね、私は私自身に呆れた。けどこれも必要なストーリーだ、既に銃についてる弾倉の確認と持ち物の確認をして大丈夫なグループから好きなルートを使って動き出した)

絵里「じゃあ私たちも行きましょうか」

ルビィ「はいっ!」

絵里(準備が出来た私とルビィも動き出す。後は曜とことりだけで、真姫はここには呼ばずに家で待機してもらった)

タッタッタッタッ

ルビィ「……絵里さん」

絵里「何?」

ルビィ「…ルビィ、負けないよ」


ルビィ「……だから善子ちゃんとの約束は多分守れないや」


絵里「………」




648: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:15:34.63 ID:dIWqa2t10



善子『……私はルビィとの約束を守れない』


絵里「…許してくれるわよ、あの善子よ?」

ルビィ「…うん、そうだよね」

絵里(やはり善子とルビィは同じ気持ちを通わせてるのね。やはりあなたたちは二人であるべきだった)

絵里(善子とルビィが交わした約束——それはもう絶対に戦わないということだった)

絵里(善子から聞いた、数年前ルビィが数年眠ることの原因となったデパートの事件でルビィは倒れる前に善子と約束したらしい)


絵里(もうルビィみたいにならないように戦うのをやめて平和に生きて、と)


絵里(善子はそれを数年守った、そう…数年ね)

絵里(だけどこのアンドロイド隔離都市でその約束をずっと守るのは無理にも程がある、そんなルビィと善子の平和条約は今日完全に破綻した)



649: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:16:09.91 ID:dIWqa2t10

絵里「…もうすぐなの、もうすぐで鞠莉のところまで届くと思うの」

絵里(最初こそ月を目指す地上の兎というくらいに遠かったのに、今では手を伸ばせば届きそうなほど近くなった。ここを乗り越えればきっとそこに目指していた場所がある)


絵里(果たしてそこは天国か地獄か)


絵里(…行ってみるまで分からないけど、おそらくそこは地獄だろう)

絵里(でも、その先にユートピアが待っていることを私は知ってる。だからそこへ向かうの)

絵里(その為にも…)


絵里「……ここが正念場よ、頑張っていきましょう」


ルビィ「うんっ!」



650: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:18:04.64 ID:dIWqa2t10

~路地裏

絵里「…また来ちゃったわね」

ルビィ「………」

絵里(私にとって最悪の場所。今も果南と善子の死体は転がってるのかしら、それとももう回収されたのかしら。分からないけどあの時通ったルートを通るのはやめよう、そう私の中で答えが出た)

絵里「…監視カメラは壊して行きましょう、もう隠密である必要は全くないわ」

ルビィ「分かったよ」

絵里(あの時とは違って今回は時間との勝負、いくらY.O.L.Oのアンドロイドが魔法のようなものが使えても人数は増やせない。銃の世界において数に勝てるステータスは無くて、それなら私たちは数で勝つしかない)

絵里(その為にも命が複数あるといわれるアンドロイドには負けてもらわないとね)


タッタッタッタッ


絵里「…!」ピタッ

ルビィ「!!」ピタッ

絵里(目に映る監視カメラはハンドガンで撃ち抜いて颯爽と路地裏を駆け抜ける私たちに待ち受ける一つの影。消えかけている防犯灯がその相手にスポットライトを当てていた)



651: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:19:42.14 ID:dIWqa2t10

絵里「…わざわざ待ってくれてたの?」


歩夢「うん、戦闘型アンドロイドは耳がいいからね」


絵里「…そう」

ルビィ「………」カチャッ

歩夢「前回のMSMC使いと戦えないのは残念だけど、あなたたちもあなたたちで侮れなさそうだね」

絵里「私たちを高く評価してくれてありがとう、その期待に応えるべくあなたを殺してあげるわ」

歩夢「…殺せたらいいね」

絵里「ええ、そっちは生きれたらいいわね」

歩夢「…あまり標準型が大きな口叩かないほうがいいよ、弱く見えるから」

ルビィ「じゃあルビィから言ってあげるよ」


ルビィ「せいぜい死なないように頑張ってね」





652: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:21:24.11 ID:dIWqa2t10

歩夢「…人間?またあのMSMC使いと同じパターン?」

ルビィ「別に曜さんより強いというつもりはないけど、あまりルビィを舐めないほうがいいよ」

歩夢「舐めてるつもりなんてないよ、あのMSMC使いは強かったからね。きっと私が新型じゃなければ瞬殺だったもん」

歩夢「…だからこそ私はそこの標準型アンドロイドよりあなたを警戒してるんだよ?」

ルビィ「…そっか」

歩夢「…そんなことより始めよっか、時間稼ぎとかされたらたまったものじゃないし」

絵里「そうね、じゃあ————」


「——始めましょうか?」


絵里「っ!?」

ルビィ「!」


歩夢「何っ!?」





653: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:23:13.57 ID:dIWqa2t10


ドドドド!

歩夢「ちっ…」シュッ

絵里「あれは…梨子…!?果林!?」


果林「可愛い可愛いY.O.L.Oの新型アンドロイドちゃんは私たちと遊びましょう?」


絵里「何…!?なんで…?」

絵里(どこからともなく聞こえた声と共に飛ぶ銃弾は歩夢に一直線で、梨子と果林が私の前に現れてもその殺意はずっと歩夢に向けられたままだった)

果林「は~いごめんなさいね、絵里と可愛い赤髪ちゃん、この子の相手は私たちがするから」

絵里「…何が目的?」

歩夢「…それは私も知りたいです」

果林「鞠莉が人を模して作ってないアンドロイドは要らないっていってるの、その結果私たちの殺害対象は絵里やことりよりダントツであなたが上ってわけ」

梨子「私も人の形を投げだしたアンドロイドに興味はないかなぁ」



654: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:24:29.07 ID:dIWqa2t10

絵里「…それで信用出来ると思う?」

果林「別にいいわよ、信用しなくて。でもあなたたちにとってこの子と私たちを相手するなら信用出来ない私たちにこの子を相手してもらった方が嬉しいでしょ?」

果林「それに今回のこの戦いには鞠莉も一枚噛んでるのよ?今までの一ヶ月半何も無かったのなんでか知ってる?」

絵里「…知らないわ」

梨子「鞠莉さんがずっと政府にサイバー攻撃仕掛けてたからですよ、政府が持ってるデータのほとんどが今ノイズ化してるからてんてこ舞い状態で今もまともに機能してないんですよ」

絵里「…! そんなことが…」

果林「…だからね、本当簡単に言っちゃえば」


果林「今の私たちは相対的にあなたたちの味方になってるの」


絵里「………」

ルビィ「…信じて良いと思いますよ、絵里さん。その青い髪が出してる人の殺意は本物だしそこの紫色の髪の人が出してる気だるい感じも本物、人間は完璧には感情を偽れないんだよ、ルビィがそうだから」

果林「あはは、全然気にしてなかったけどもしかして赤髪ちゃんものすごい強い感じ?その観察眼は目を配りたいわね」

梨子「将来的に戦う事になったらまずはあの子狙いたいね」

ルビィ「………」



655: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:26:17.64 ID:dIWqa2t10

果林「…まぁいいわ、それより絵里」

絵里「何よ?」

果林「これは鞠莉からの伝言だと思って聞いて」

絵里「…?」


果林「どうやらY.O.L.Oを守ってるアンドロイドは三人じゃなくて五人いるらしいわ」


絵里「…それホント?」

果林「ええ、だからここで一人殺してあげるからその四人目五人目を殺してきなさい。私たちと絵里たちの目標は利害の一致で同じよ、後々私たちと戦うとしても今は私たちに任せて先に向かうのが頭の良い選択だと私は思うんだけど?」

絵里「……ええ、そうね。そうしてくれるならそうさせてもらうわ」

果林「ありがとう」ニコッ

絵里「…行きましょう」

絵里(あまり納得は出来ないけど、ルビィもあまり警戒はしてなさそうだったから静かにルビィに耳打ちをして私たちはY.O.L.Oへ向かった)




656: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:27:35.41 ID:dIWqa2t10

果林「…はーあ、対アンドロイド特殊部隊も人数減っちゃったわねぇ」

梨子「ダイヤさんはいつまでもしょげてるから実質二人ですよ今」

果林「ここに凛ちゃんとにこがいてくれたらもっと楽になるんだけどねぇ…」

梨子「はぁ……」

果林「ちょっと私の溜め息吐かないでよ、先に私が吐きたかったのに」

梨子「私が初めて対アンドロイド特殊部隊の人たちと会った時は負ける気がしないなんて思ってましたけど、二人しか残ってない現状を見ればそりゃあ溜め息の一つや二つも出ますよ」

果林「海未は強かったわねぇ、あんなのと戦ったら絶対に死ぬわよ、だから実は一番戦いたくなかった相手だったり」

梨子「私も凛ちゃんとは戦いたくなかったですよ、あの本能的に動く姿は対処のしようがないですから」

果林「うんうん、行動の読みにくさで言えば凛ちゃんが圧倒的だもの。戦いにくいに決まってるわ」

梨子「単純に強い曜ちゃんとも戦いたくないし対アンドロイド特殊部隊一の戦闘のセンスを持ったダイヤさんとも戦いたくないですね…ってもう全員ですね」




657: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:29:31.54 ID:dIWqa2t10

果林「にこを忘れてない?」

梨子「にこさんは…まだマシかなって思いますよ」

果林「そう?私はにこと戦うのもイヤだけどね、確かに対アンドロイド特殊部隊ではそこまでだけど、それはあくまでも対アンドロイドだからであって」


果林「にこは対人間でなら一番強いと思うわよ」


梨子「…それが本当ならにこさんと敵ではなくてよかったです」

果林「にこの相手をした海未は可哀想ね、また逆も然りで海未の相手をしたにこも可哀想だわ」

梨子「こうもドミノみたいに対アンドロイド特殊部隊が崩壊してくとアンドロイドって一生厄介のままなんだなって思いますよ、同時に私たちみたいな殺しの過激集団も同じように」


梨子「いずれ私たちも死ぬのかな…」


果林「…まっいずれは死ぬでしょうね」

果林「でも、死ぬ前に最新型のアンドロイド一人くらいは殺しておきたいかしら」

梨子「その通りですね」カチャッ



658: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:30:53.46 ID:dIWqa2t10

歩夢「…お話は終わった?」

果林「待たせてごめんなさいね」

果林「鞠莉というアンドロイドの母があなたは要らないって言ってるの、これは罪でもなければ罰でもなくて理なのよ」

歩夢「そのバッチ…あなたたちはY.O.L.Oとも友好な関係であった小原社直属の部隊と認識したよ、そんなところが私を傷つけていいの?」

梨子「残念だけどその友好な関係にある小原社の社長が命令したことなの、鞠莉さんにとってアンドロイドというのは子供みたいな存在と聞いてるので、そんな中で異形の子供が生まれたら殺したくなると私は思うな」

果林「回りくどい言い方をするつもりはないわ、単純に新型アンドロイドっていう人の域から外れたアンドロイドがムカつくから殺したいだけよ。そこに友好も敵対も関係無く、それで関係が悪くなるならそこまでの関係ってことよ」


果林「鞠莉は本気よ」


梨子「私もそろそろあの金髪美人のアンドロイドの下につく準備はしておいた方がいいのかな」

果林「冗談は死んでからにしなさい」

梨子「残念ですけど死ぬつもりはありませんよ」



659: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:32:29.68 ID:dIWqa2t10

歩夢「……そっか、ならやることは一つだね」

果林「ええそうね」


カチャッ


果林「……梨子」

梨子「分かってます、心配しないでください」

歩夢「………」


果林「…今!」



バァンッ!



梨子「はっ!」ダッ

梨子(果林さんの持つハンドガンの銃声を皮切りに私の足は動き出す。果林さんは後衛をやって私は近接で攻める前衛をやる——それが私と果林さんの攻めパターンだ)



660: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:34:13.14 ID:dIWqa2t10

歩夢「1と1の動きだね!何回も見たことあるよ!」

梨子「果たしてその何回がどこまで通じるかな!」

歩夢「経験だけが全てじゃないよ!」

梨子(私が右ストレートの体勢を走りながらとれば相手はたちまち受け止めるか回避のどちらかの準備をした、本当だったらここで私はこの体勢通りに右ストレートを打つのだけど、二対一なら話は違う)

梨子「よっと」ピョーン

歩夢「なにっ!?なんで人間がそんな高く…!」


果南「驚いてる暇はないわよ?」


歩夢「!!」

梨子(曜ちゃんが作った靴の恩恵は大きかったよ、凛ちゃんのような勢いだけのフェイントはアンドロイド相手でも効果的で、パンチを振る直前まで気迫を出し相手をその気にさせて回避に専念して空回りさせる、そうして出来た隙を他の人がカバーする。それが今回の動きの目的)

梨子(まさか私がアンドロイドの上を跳ぶようなジャンプをするなんて思ってなかっただろうし、ましてやこれがフェイントとすら思ってなかったと私は思う。そうして大きな大きな空回りをした相手にもう余裕はない)



661: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:35:25.80 ID:dIWqa2t10

歩夢「くっ…」シュッ

梨子「こっちも見てね人間やめたアンドロイドさん!」ババババッ!


歩夢「あッ……!」


梨子「ヒット♪」

梨子(果林さんの放った銃弾をだいぶ反応が遅れた状態で回避した上で私の放つ銃弾を回避出来るはずがない。それに私の持つ銃はサブマシンガンな上に連射速度も速い、そんな近距離特化ともいえる銃の弾丸を回避するのはいくら最新型でも無理みたいだった)

歩夢「また……」


バタッ


果林「…呆気ないわね」

梨子「機械は単純な動きに対しては強いですけど特殊な動きに対応できませんからね」

果林「にしてもこれが最新型なんて片腹痛いわね、まだ旧型の方が強いわよ」

梨子「私もそう思います、穂乃果ちゃんの次世代機とか言ってますけど全然穂乃果ちゃんの方が強いですよ」



662: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:36:57.68 ID:dIWqa2t10



歩夢「………期待外れなのは否定しないけど、私にもプライドがある」


果林「あら?」

梨子「これが鞠莉さんの言ってたやつかな?」

歩夢「不死身は死なないことだけが取り柄じゃない」


歩夢「やられ役はもう飽き飽きだよ」


歩夢「私だってこんな人の道外したアンドロイドに生まれたくて生まれたわけじゃない。でも私のこの力があなたたちを亡ぼせるというのなら私は喜んでこの力を肯定するよ」


歩夢「始めよう?夢への一歩はもう歩んでる」


歩夢「私、最強のアンドロイドになりたいから」


果林「…皮肉なものね、最強になりたいのは私も分かるけど射撃の腕前でもなければ身体能力の高さでもなくて」


果林「複数ある命で強さを誇るなんて」


果林「…これには海未も失笑でしょうね」

梨子「………」



663: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:38:25.25 ID:dIWqa2t10

歩夢「これが私のチカラなので」

果林「ええ、とっても素敵なチカラだと思うわ。でも最強のアンドロイドになる為には穂乃果やことりを殺さないとなれないでしょうね」

歩夢「…私の下位互換のアンドロイドが私より強いの?」

果林「総合的な腕前はどう考えても穂乃果ね、あなたは相対的に他のアンドロイドより強いとしか言いようがない、頂点に立ちたいその心意気は私すっごく好きだけど弱い子は私好きじゃないの」

歩夢「…そっか、ならあなたの持つ強さを教えてよ」


歩夢「それで世界の広さを推し量るから」


果林「…そう、ならせいぜいがっかりさせないように頑張るとするわ」

果林「…梨子」

梨子「準備は出来てますよ、命が複数あるのは知ってます。焦る必要はありません」

果林「もちろんよ」

梨子(穂乃果ちゃんの次世代機と呼ばれるアンドロイドに命が複数あるのは鞠莉さんから聞いてた)

梨子(それを聞いた時から私は思った、鞠莉さんから言われるまでもなくね)


梨子(…命が複数あるとは言っても爆発物で殺せば体をもぎ取れるって)





664: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:40:30.63 ID:dIWqa2t10



ジャランッ


梨子(私と果林さんの腰回りにぶら下がる投擲物が威嚇をしだした。今回の戦いに備えて投擲物をたくさん用意した、このアンドロイドを殺すには万全すぎるくらい)

梨子(それに今回の戦いには絶対に負けられない理由がある)


梨子(新型アンドロイドとはいえど私たちは対アンドロイド特殊部隊————そんなところがアンドロイドに完全敗北なんてしたら名が廃るでしょ?)


梨子(あのアンドロイドにもプライドがあるというのなら私にだってそれ相応のプライドがある。だからこれは正義対悪なんかじゃない)



梨子(一方的な正義 vs 一方的な正義の戦いなんだ)



梨子(…正直、そんな戦いではまだどちらが勝つかなんて分からない)

梨子(だからこそ私たちは勝つよ、勝たなきゃいけない)


スタッ


梨子(静かに果林さんはその一歩を踏み出す。第二ラウンドの合図はもう鳴った、だから後の私たちは————)



梨子(————勝利を持ち帰るだけ)タッ






665: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:41:36.38 ID:dIWqa2t10




ドドドドド!


聖良「何度戦っても結果は変わりませんよ二人とも!」


せつ菜「あなたたちの仕組みは理解したつもりです、今日という日は少し展開が違うかもしれませんよ?」シュッ


理亞「でも、防戦一方なのはどうして?」ドドドドッ


穂乃果「理解する必要はないと思うよ」


せつ菜(現在私と穂乃果さんは前回戦った森ではなく既にY.O.L.Oの中にありました。射線や物音には気を遣ったのですが敵の様子はなくそのまま進めば内部で待ち構えてるあの二人)

せつ菜(ここは拳銃を並大抵使える研究員とY.O.L.Oを守るアンドロイドしかいません。内部とはいえどそのアンドロイドと私たちが戦ってる中では野次から飛ぶ銃弾はどちらの立場からしても邪魔でしかありません)

せつ菜(ですから敵の本拠地とはいえど結局は私たちとあの姉妹アンドロイドだけのフィールド。誰も邪魔は出来ません)




666: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:43:07.40 ID:dIWqa2t10

せつ菜「ほっと」タッ

聖良「物陰に隠れても無駄ですよ」シュッ


せつ菜「果たしてそうでしょうか?」ニヤリッ


聖良「っ!?またっ!?」


ドカーン!


せつ菜(コンテナが多いこの場所ではとにかく銃弾が貫通しない遮蔽物が多い、そんな中でとにかく引いて引いて誘い受けのような戦法で戦う私たちの牙が今光った)

せつ菜(コンテナに隠れればそれはもう相手から見たら死角——私がその死角へと移れば相手は決め撃ちのような形で跳躍と共にやってくる)

せつ菜(そうと分かれば私はそこにグレネードを転がすだけ、そうすれば必ず避けなきゃいけない状況が出来て————)


穂乃果「今っ!」ドドドド!


せつ菜「これで終わりです!」パサパサパサッ

聖良「きゃっ…」

理亞「姉様!」

せつ菜(グレネードが転がったタイミングで穂乃果さんが私の相手をしている聖良さんに発砲、そして私はその聖良さんの逃げ場を無くすように発砲。これには妹の理亞さんも焦ってるのを見て手応えが感じた)



667: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:44:51.07 ID:dIWqa2t10



聖良「いあっ…!」


穂乃果「ちっ…腿だ…」

せつ菜「腿ですね…」

せつ菜(命中したのは胸でも頭でもなくて腿。もちろん致命的なダメージではあるのですがここは仕留めたかった)


せつ菜「でも、今度こそ終わりです!」ダッ


せつ菜(アサルトライフルの弾は切れた、だからハンドガンを持って聖良さんに突っ走った)

理亞「させない!」ババババッ!

穂乃果「私の方も見てほしいな!」ドドドドッ

理亞「このっ…こんな時に…!」シュッ


タッタッタッタッ


せつ菜「さあどうしますか!」バンッ!バンッ!

聖良「くっ…」シュッ

せつ菜(苦し紛れに回避をするけどもう遅い)



668: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:46:36.00 ID:dIWqa2t10



穂乃果「はっ!」バンッ!


聖良「ぐああああっ…!」

せつ菜(穂乃果さんが左肩を貫いた時点でもう勝負は決まってた、膝をついて左肩を抑える相手に容赦などしない。私はすぐそばまで近づいてナイフを首元に————)


ガキンッ!


せつ菜「っ!?!?」

聖良「……くっ」

理亞「姉様に近寄らないで!」ババババッ!

せつ菜「きゃっ!あっ…」

穂乃果「せつ菜ちゃん!?」

せつ菜(ナイフを首元に振った直後に当たる固い何か。フルスイングで振っただけに“それ”に当たれば私のナイフを持った手は反動で飛び跳ねて無防備な状態になり、その状態のまま別方向から飛んでくる銃弾は————)


せつ菜「いやあああああああああああああああああああっ!?」



せつ菜(——私の胸を貫いた)






669: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:47:59.73 ID:dIWqa2t10

せつ菜(なんだろうこの感覚。私の胸から明らかに何かが離れていった、激痛で辺り全ての人間とアンドロイドの耳を塞げそうな甲高い悲鳴を上げれば、波を感じることが出来る電波のようなモノが私の身体中を駆け巡った)


せつ菜(…あ、そうだ。私死ぬんだ)


せつ菜(力が抜けて、膝をつき、口も手も動かせなくなって倒れるその最後の一秒まで痛いのかすらも分からないような強烈な電撃が私には走って、頭がずっと真っ白のままだった)


『感情保管領域で深刻な損傷が発生————記憶保存領域の稼働が出来ません。システムオールダウン、機能を停止します』


せつ菜(私の頭に直接響いた何かのアナウンス。それすらも分からない私は目を開けたまま仰向けになって倒れた)


バタッ


穂乃果「せつ菜…ちゃん?」

せつ菜「………」

穂乃果「せつ菜ちゃん!!」ダッ




670: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:49:51.65 ID:dIWqa2t10



ババババッ!


穂乃果「!」シュッ

理亞「…絶対に許さない」

理亞「姉様を傷つけた罪は重いよ」カチャッ

穂乃果「…これほどまでに頭がおかしくなりそうな感情はないね」

穂乃果「希ちゃんが死んだ時もそうだったよ、無限に湧き上がる怒りが抑えられずにイライラしてた」

穂乃果「そして今もそうだよ、せつ菜ちゃんを傷つけたあなたが憎い。痛めつけたい、泣かせたい」


穂乃果「殺したい」


穂乃果「だからもうブレーキは要らないね」


穂乃果「“穂乃果”も許さないから」


理亞「…初期型ってやつは一人称を変えると行動パターンが変わるんだっけ、分かりやすいね」



671: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:50:32.69 ID:dIWqa2t10

穂乃果「…そっちは随分と分かりにくい特徴があるんだね」


聖良「……あまり使いたくなかったんですけどね」


穂乃果「ナイフを弾く腕って何?アンドロイドの域から外れてるよね?」

穂乃果(もしせつ菜ちゃんが振ったナイフの先が普通のアンドロイドか人間であったら勝負はついてた、けどこの相手は違う)

穂乃果(最新型のアンドロイド——最先端の技術がコーティングされたアンドロイドは何故かせつ菜ちゃんのナイフを腕だけで弾いた)

穂乃果(……それはつまり腕が硬かったからナイフを弾いたんだ)



672: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:53:27.19 ID:dIWqa2t10

穂乃果「…気持ち悪いね」


ババババッ!


穂乃果「!」シュッツ

理亞「御託はいいよ」

穂乃果「…そうだね」


穂乃果「じゃあやろうか!」ドドドドッ


穂乃果(確かに相手の言う通りだ、御託はいい、さっさとけりをつけてしまいたいのはどちらも同じ)

穂乃果(せつ菜ちゃんは胸を貫かれただけでまだ死んではいない、相手のお姉ちゃんも動けないだけで生きてはいる。ならどっちも早くけりをつけて早く相方を安静な状態にさせたいに決まってる)

穂乃果(だから穂乃果も相手も長期決戦は望んでなかっただろう、相手は武器の軽さを活かして突貫してきてるしこの戦いはすぐに決着がつくと思った)



673: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:57:01.63 ID:dIWqa2t10



タッタッタッタッ


穂乃果(相手がこちらへ突っ走ってくるならこっちはしっぺ返しを狙うのみ、こちらへ飛んでくる銃弾は横へ跳躍して躱しそれでも近づいてくる相手に私はナイフを逆手で横に振って応戦した)

穂乃果「はっ!」ブンッ

理亞「分かりやすいね」シュッ

穂乃果(だけど相手はしゃがんで軽々しく避けてくる、でもそれは予想済み。第二の攻撃はもう用意してた)


穂乃果「いつも上から目線なのがむかつくね」


穂乃果(ナイフを振った後は飛び膝蹴りで相手の顎を狙った)


理亞「だって上だからね」シュッ


穂乃果(だけどそれすらも横への跳躍で避けてきた、可能性の一つとしてこの攻撃を避けるっていうのはちゃんと予想してたけどいざ避けられると少しこの戦いがイヤになる)

穂乃果(…だけどイヤになってても仕方ない、避けられた後飛んでくる蹴りは飛び膝蹴りの隙で避けることが出来ない。だから腕でガードすることを選んだ)



674: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 19:58:34.11 ID:dIWqa2t10




穂乃果「ぎっあああああっ!?」



穂乃果(…ガードはした…けど、骨にまで届くような打撃は声に出してしまうほどの激痛だった。今まで受けた蹴りとは比べ物にならない痛み——痛すぎて腕が動かなかった)

理亞「勝負あったね」ドカッ!


穂乃果「がっ……」


理亞「軍神とはいえ初期型が最新型に勝とうなんて片腹痛いね」

穂乃果(痛みで怯む私に止めの蹴りが私のお腹に当たった。そうすればどうなったんだろう。まるで魔法でも使われたみたいに体が宙に浮いて十数メートル離れたコンテナに叩きつけられ、たちまち口からは悲劇的な血が噴射される、最新型の近接威力は桁外れでそれを熟知してなかった私はこのインフレの波に呑まれてしまった)


スタスタスタ


理亞「色々言いたいことはあるけど、今は時間惜しい。だからさよなら」カチャッ


穂乃果(穂乃果に向けられた銃口————感じる射線はどうすることも出来ずただ見守って死を待つだけだった。また負けるんだ、なんて不甲斐ない終わり方なんだろう)

穂乃果(後十秒でもあれば痛みが引いてまた動けるようにはなるはずだけど、そんなたったの十秒が長くて長くて生き延びるのは絶望的。せめて道連れにでもしていきたいけど、していける手段がない)

穂乃果(……ごめん、絵里ちゃん。せつ菜ちゃん。希ちゃん。)


穂乃果(穂乃果……勝てなかった………)





675: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:00:12.18 ID:dIWqa2t10




「待つずらっ!」バンバンバンッ!



理亞「!」シュッ

穂乃果「はな…まる…ちゃん……!?」

穂乃果(信じられない光景だった。穂乃果の一番身近なところにいた人で、この人の事はよく知ってるつもりだったから尚更目を疑ったんだ)


穂乃果(銃を発砲出来ないはずの花丸ちゃんがショットガンを連射してたんだ)


理亞「何…!?」

花丸「あなたの相手はマルずら!」

穂乃果「は、花丸ちゃんっ…はダメだよ…!」

穂乃果(あの姉妹と戦闘を起こす前、このコンテナが多い場所に来た時明らかに罠だと確信し、花丸ちゃんを待機させた。その行動は今振り返ってみれば正解だったと思う、この姉妹との戦いに花丸ちゃんがいたらきっと花丸ちゃんは死んでしまうから)




676: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:02:02.39 ID:dIWqa2t10

花丸「食らえっ!」ポイッ

穂乃果(だけど、花丸ちゃんは命を失う恐怖に臆することなく果敢にも攻めた)

穂乃果(近距離特化である希ちゃんのショットガン——AA-12は至近距離でやり合えば相手に反撃の隙も与えない超高火力だ、だから相手を一度引かせて追撃に花丸ちゃんはグレネードを投げた)

穂乃果(そして花丸ちゃんはAA-12を二丁下げて希ちゃんの面影を感じさせてくれる背中を穂乃果に見せた)

花丸「穂乃果ちゃん、マル分かってたよ」

穂乃果「な、何が…?」

花丸「穂乃果ちゃんとせつ菜ちゃんじゃあの二人には勝てないって」

穂乃果「ど、どうして!?だって…うぅ…けほっ…」

花丸「無理しないで黙って聞いてほしいずら、時間も無いし」

穂乃果「………」




677: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:03:49.55 ID:dIWqa2t10

花丸「確かに穂乃果ちゃんやせつ菜ちゃんはアンドロイドという枠の中ならトップレベルで性能が良くて強いアンドロイド…だけど最新型アンドロイドは人の子をやめたアンドロイドずら」

花丸「常識に囚われない強さを持っていて、その常識に囚われない強さが何なのかも分からない状態で逃げ道のない殺し合いをしたら死ぬに決まってるずら」


花丸「穂乃果ちゃんたちとあの二人じゃ持ってるカードの枚数が違いすぎるんだよ」


穂乃果「………」

花丸「…だけどマルはそれを言わなかった、だってそれを言ってもプライドが高い穂乃果ちゃんには逆効果だったからね。むきになって冷静に立ち回れなくなっちゃうと思ったずら」

花丸「だから少しは穂乃果ちゃんたちが勝てるかもって期待したけどやっぱり無理だよね、ただ安心して?今回のこの負けは負けには加算されないよ、だって相手が異常すぎるから…」


花丸「————それに、今ここでマルが勝つからね」


穂乃果「…!けほっ…それってどういう————」




678: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:04:45.33 ID:dIWqa2t10

花丸「喋らなくていいずら、だけど“最後に”言わせてほしいずら」


花丸「マル、希ちゃんの下に就けたり穂乃果ちゃんやせつ菜ちゃんと戦線を共にする仲間になれて幸せだったずら!」ニコッ


穂乃果「……ぇ?」

花丸「じゃあね、マルいってくるよ」ダッ

穂乃果「え、ま、まっ…ぐっ…けはっ……!」

穂乃果(意味深な事を言って花丸ちゃんはさっきのグレネードで発生した煙の中に突っ込んでいった。動転した気と切羽詰まったこの感情と再発しだす痛みは私の口から汚れたモノを出して花丸ちゃんを追うのを許してくれなかった)




679: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:06:04.87 ID:dIWqa2t10



タッタッタッタッ


花丸「………」

花丸(…マルは銃が使えなかった)


花丸(まず第一にトリガーを引くのが怖かった)


花丸(これを引いたら人が死ぬ、そう考えるだけで銃の何もかもが怖くなる)

花丸(でも、銃は好きだった。小さい頃はモデルガンをよく買ってもらったりして遊んでた。だけどマルの家はお寺だったからお寺外で尚且つお寺のイメージを崩さないよう人にばれないよう静かに遊べという決まりはあった)


花丸(…そして第二に、トリガーを引いた後鳴る甲高い銃声と跳ね上がる肩の感覚が嫌いだった)


花丸(銃はカッコいい、けど所詮それは人を殺める道具に過ぎない。普通の人間じゃ回避不可能な弾速で飛び殺されたことに気が付けないまま人が死んでいく、その一瞬で起こる悲劇を見てしまったからマルはトリガーを引くのが怖かった)


花丸(……そしてその悲劇のトリガーを引いたのはマルだった)





680: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:07:39.10 ID:dIWqa2t10





花丸(最後…第三に、マルは拳銃で親を殺したことがあるから銃が怖かった)




花丸(…ある日お母さんの買い物ついでに銀行に寄った時だったよ、架空の作品でもよく見る絵に描いたような銀行強盗がやってきて場は騒然で、マルもその騒ぐ一人だった)

花丸(その後は色々あったけど、簡単に言ってしまえば立てこもりみたいな膠着状態になってそこで動いたのがマルだった)


花丸(強盗の数は全員で五人、その五人全員がマルを視界から外した瞬間を狙って一人の男の拳銃を奪った。強盗が持ってた銃はM45 MEUで装弾数は八発、手に持った瞬間それが分かった)

花丸(だからこれで充分と思った、次の瞬間には一秒で二人殺す流れで強盗を全員殺した。モデルガンやエアガンで射撃は飽きるほどした、だから拳銃もエアガンなんかのそれらと感覚は全く同じで放った弾丸は面白いように相手の胸を突き抜けた)

花丸(その時はトリガーを引く感覚が快感でたまらなかったけど、またその次の瞬間にはそれが吐き気になった)


花丸(一人の強盗を貫いた先にマルのお母さんがいた)


花丸(…結果としてその事件の死人は六人だった。強盗五人と————)


花丸(——マルのお母さんが死んだ)





681: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:09:26.06 ID:dIWqa2t10

花丸(…マルがまだ子供だったってこともあってその時は正当防衛で認められたけど、その後のマルの生活は酷いものだった。大量の記者が押し掛けるし、学校ではいじめが発生するし、近くの住民からは恐れられるし、とても精神を正常にして生きていくには困難な環境下に陥った)

花丸(だからマルはある日決意したよ、ここを出ようって。小さい頃の弱い頭を使いお小遣いを全部持ってどこか遠くへ行ってしまおう、そうすれば何か変わる。そう思ったずら)

花丸(…だけど現実はそう甘くない、マルの行った先はここ東京。マルの地元静岡から丁度よく離れたところだったからここでいいやって思った。けど如何せんここは危ないところで水準物価もバラバラ、街中には怪しげな人がズラズラ。とても弱いマルが生きていけるところじゃなかった)


花丸「………」カチャッ


花丸(だから次第に残り少ないお小遣いは尽き無一文になって生きるための力を失った、もう静岡へ帰るお金も無くなってしまったから)


『帰るところに困ってるなら、ウチの下に就かない?』


花丸「…ありがとう、希ちゃん」

花丸(そこでマルは運命の人に出逢った。希ちゃんが死にかけのマルを助けてくれた)



682: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:10:37.09 ID:dIWqa2t10



『困ったことがあったらこの私にお任せです!』

『花丸ちゃんは情報収集をして、私は花丸ちゃんと希ちゃんの為に殺害をするから』


花丸「…ありがとう、穂乃果ちゃん、せつ菜ちゃん」


花丸(そして希ちゃんとマルのところに来た二人のアンドロイドはとても優しくて強かった。夏は海に行って楽しんだ、冬はこたつにくるまってみかんを食べてた。そんな普通の生活の中でみんなといるのが幸せで幸せで仕方がなかった)


花丸「さて……」スタスタ


花丸(…だけどそれも今日で終わり。これでマルのお話はおしまい)

花丸(続きはもうないからさっさと終わらせるずら)


花丸(エンドロールをね)





683: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:12:20.09 ID:dIWqa2t10



タッタッタッタッ


理亞「あなたよくも…ッ!?」

花丸「最悪ずら、せっかく明日かよちゃんのライブに行こうと思ってたのにこんなことしなきゃなんて」バンッ!

花丸(煙が無くなる頃にはもうマルと相手との距離はほぼゼロに等しかった。その中で希ちゃんのショットガンを二丁使って連射する。アンドロイドとはいえ魔法は使えない、だからこのマルと相手にある距離を伸ばすことは出来ない)

花丸「あなたの使ってる銃はミニ UZIずら、軽い分機動力が上がるけど銃から放たれる弾丸の威力の期待値はそこまで無くて人を殺すには充分だけど脅威として認識させるには不充分ずら」

花丸「今ここでそれを撃ってみるずら、弾切れが起こったら今度はマルのショットガンを避け続けるだけのゲームになるね」バンバンバンッ!

理亞「なにこいつ…!」シュッ


理亞「…でもいい、そこまで言うなら撃ってあげるよ」


理亞「人間風情があまり調子にのらないで!」ババババッ!




684: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:13:01.59 ID:dIWqa2t10

花丸「はっ!」シュッ


穂乃果「!」


理亜「その靴…!」


花丸「曜ちゃんに貸してもらったずら!」バンッ!


花丸(マルだってそこまでバカじゃない、ちゃんと対策くらいはしてる。けど、これはある意味賭けだった)

花丸(銃弾は避けれても銃弾の射線は見えない、だからどこに避けるかはマルのセンス次第だった)


花丸「後はマルのゲームだね!」バンバンバンッ!


花丸(…そしてその賭けに勝った今、マルのしたいことがようやく出来るずら)

花丸「はっ!」

花丸(マルの本来の戦い方であるナイフを使って相手に吐息が感じれる距離まで顔を詰めた。反撃も何もかもを恐れずにナイフを振れば、それに恐怖を覚える顔を相手はした)




685: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:14:29.08 ID:dIWqa2t10



ガキンッ!


花丸「!」

花丸(だけどそんなフルスイングのナイフもたった一つの腕で弾かれる)

理亞「勢いだけは今までで一番すごかったけど、それが私に通るかと言われたら無理だね」


花丸「…知ってる」


理亞「あ?」

花丸「きっと単純な銃の撃ち合いや近接のやりとりじゃどうやってもマルはあなたに勝てない、なら単純なことをしなければいいだけの話ずら」


ガシッ


理亞「っ!?何っ!?」

花丸「はっ!」

花丸(弾かれたマルはすぐに体勢を立て直し相手の腕を掴んで姉の方向へ流した、マル自身あんまり力が強くないからそこまで距離は伸びなかったけど姉の近くにやれただけでも充分)



686: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:16:17.93 ID:dIWqa2t10



タッタッタッタッ


花丸「ずらっ!」

花丸(そうして流した妹の方へ突っ走った、相手はすぐに体勢を立て直し“近接”で応戦する準備をしてる。きっとここで相手に弾があったらマルの負け。だけど相手には弾がない————サブとしてハンドガンを持ってない相手には近接でマルの攻撃を対応するしかないんだ)


花丸「これで終わりずらっ!」タッタッタッタッ


理亞「近接なら負けない!」



ギューッ



理亞「…え?」


花丸(近づいた瞬間飛んでくる右ストレートを避けてマルは相手に抱き着いた)

花丸(きっとここにいる誰もがマルの行動の意味を理解してなかったと思う、例え最新型の知能でも、経験を積み過ぎた穂乃果ちゃんでも誰もマルのしたかったことが分からなかったはず)



687: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:17:40.33 ID:dIWqa2t10



理亞「…っ!?グレネード!?」



花丸「…これでおしまいずら」



ドカーン!!



花丸(マルが抱き着き相手と密着する中で擦れる丸い物体——それに気付いた時にはもう遅い)

花丸(きっとこのアンドロイドも命が複数ある、なら話は早い)


花丸(爆発物で一気に命を削ればいいだけ)


花丸(でも最新型とは言わずアンドロイドという相手に爆発物を当てるのは至難の業。一対一じゃまず無理、だけどマルはみんなとの戦いにはついていけない、だからこうするしかなかった)

花丸(穂乃果ちゃんでもせつ菜ちゃんでも勝てない相手に勝つ唯一の方法。抱き着くことで私と相手の位置を固定してその間にピンを抜いたグレネード挟む、そうなった時にはどんな抵抗をしてももう遅い。暴れてもマルを殺してももう遅い、遅すぎるずら)

花丸(マルと相手の間で起きた爆発はすぐに私と相手とその近くにいた姉を呑んだ。ただそれだけでこの戦いは終わった)



688: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:19:08.17 ID:dIWqa2t10



穂乃果「うそ………」


穂乃果「ウソ…だよね…?嘘だよね…!?」

穂乃果「ねえ!嘘だよね!嘘って言ってよ!ねえ花丸ちゃんッ!!」


穂乃果「………」


穂乃果「そんなっ……!」

穂乃果(目の前で起こった爆発が消えれば無惨な死体が三つ出来上がってた。敵であったアンドロイド二人は中身である部品が出てきててとても見れたものじゃない)


穂乃果「花丸…ちゃん…!」


穂乃果(…だけどこの花丸ちゃんの死体はもっと見るに堪えないモノだった。全身のほとんどが黒く変色して、片腕がもげてもう花丸ちゃんとして原形をとどめていなかった)




689: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:20:06.28 ID:dIWqa2t10

穂乃果「…こんなのって」


ポロポロ……


穂乃果(思わずひざをついた。これが勝利?そんなのあり得ない)

穂乃果(これじゃあ何もかもが希ちゃんの時と同じ)


穂乃果(穂乃果はまた大切な人を守れなかったの?)


穂乃果(そう思うと、自分の軍神という異名がイヤになる。なんだ、穂乃果全然強くないじゃん…)

穂乃果「!」

穂乃果(悲しんでれば飛んでくる射線、名前も顔も知らないここの研究員が穂乃果に拳銃を向けてた)

穂乃果「………」

穂乃果(それを見て我に返った。悲しむのは後、今はこのせつ菜ちゃんを持ち帰るのみ。だから穂乃果はすぐに行動に移した)




690: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:20:32.19 ID:dIWqa2t10



穂乃果「…こちら穂乃果、聞こえる?」


曜『聞こえるよーどうしたの?』

ことり『聞こえてるよ』


穂乃果「新型アンドロイドの二人はやった、けど……」


曜『けど?』


穂乃果「…花丸ちゃんが死んだ、せつ菜ちゃんは生きてるか死んでるかも分からない重傷だから穂乃果とせつ菜ちゃんは戦線を離脱するよ」

ことり『え、う、うん…』

曜『…そっか、でも悲しむのは後だね。とりあえず了解だよ』



691: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:20:59.54 ID:dIWqa2t10



穂乃果「今無線拒否してる絵里ちゃんにも伝えといて」


曜『了解、帰るまでが遠足だよ、最後の最後まで死なないようにね』

ことり『遠足じゃないけどね…』


穂乃果「分かってるよ、それじゃあ」


ピッ


穂乃果「………」


ダッ





692: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:22:46.65 ID:dIWqa2t10

~一方その頃、十分前

スタスタスタ

絵里「…Y.O.L.Oってこんな迷路みたいな場所なのね」

ルビィ「迷子になっちゃいそうだね…」


果林『どうやらY.O.L.Oを守ってるアンドロイドは三人じゃなくて五人いるらしいわ』


絵里「四人目と五人目のアンドロイド…本当にいるのかしら」

ルビィ「あまりウソを言ってるようには見えなかったけど…」

絵里「でも入ってアンドロイドどころか人すらいないのよね…」

ルビィ「…曜さんや穂乃果さんたちが荒らしてるからかもね」

絵里「…そういえば他のみんなは何してるのかしら」

絵里「無事だといいけど…」

ルビィ「………」

絵里(あれからして私とルビィは何事もなくY.O.L.Oへ入った。曜とことりには連絡したけど曜とことりはどうやらその四人目と五人目のアンドロイドには会ってないらしくてますます謎は深まるばかり)

絵里(それに私たちのいるところにはアンドロイドどころか人すらいない、意味不明な機械が並ぶだけのこの空間で人一人いない静まり返った雰囲気は実に不気味だった)



693: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:24:21.01 ID:dIWqa2t10

ルビィ「…こういう機械も破壊しておいた方がいいんじゃないかな……」

絵里「確かに……」

絵里「じゃあ破壊しときましょうか」

ルビィ「うん、そうしよっか」

絵里(私は曜やことりとは違って爆発物を用意してない。もちろんグレネードはあるんだけどこれは用途がまた違う)

絵里(それにこの辺の機械だけ壊すって言うなら爆発物に頼らなくてもハンドガン一丁で充分。そう考えた私は謎多き機械にハンドガンの銃口を向けた)


「お姉ちゃん?」


絵里「!!」

ルビィ「!」

絵里(そんな時声がした。後ろ——すぐ後ろから聞こえるこの声はどこかで聞いたことがある、随分と久しぶりで心地の良い声。この場所で声が聞こえるっていうのは不気味かもだけど、私にとっては心地の良い声だった)

絵里(その声の人物は————)



694: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:26:18.90 ID:dIWqa2t10



絵里「亜里沙!?」


亜里沙「お姉ちゃん!!」

絵里(そこには私の妹である亜里沙がいた。数か月ぶりに見た私の妹は相変わらず可愛くて、家でもよく見る私服姿だった)


亜里沙「お姉ちゃーん!」ダッ

絵里「亜里沙ー!」ダッ


絵里(感動的ではないけど、この再開を嬉しくないと思う私と亜里沙はいない。お互いがお互いの方向へ走り出し、私は一秒でも早く亜里沙の肌に触れたかった)

ルビィ「…!」ダッ


亜里沙「お姉ちゃん会いたかったよー!」

絵里「私もよ亜里沙っ!」





695: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:30:19.66 ID:dIWqa2t10



ルビィ「させないっ!」


ガキンッ!


絵里「っ!?」

絵里(私と亜里沙が抱き合う直前、それは当然横から来たルビィが私たちの間に入り亜里沙とルビィの間で甲高い音が鳴った)


ギギギギ……


ルビィ「…その刃物は何?」

亜里沙「………」

絵里「えっ…え?ど、どういうこと…?」

絵里(突然の状況に頭がついていけてなくて混乱を起こす一方で、少し経つとルビィの持つ刃物と亜里沙が持ってる刃物が軋んでるのが確認出来た)



696: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:33:06.54 ID:dIWqa2t10

ルビィ「…ルビィの目が正しいならその刃物は明らかに絵里さんに対しての殺意が込められてたと思うんだけど」

亜里沙「………」

絵里「亜里沙…?一体どういうことなの…?」


絵里「! ルビィ後ろへ跳躍して!」


ルビィ「っ! うんっ!」シュツ


バァン!


「あちゃー外しちゃったかー」

絵里(目の前の出来事が私の頭の中で段々と整理されていき、その答えが見えると私の心臓が大きく悲鳴を上げだした。そんな中で見えた射線はルビィの頭を貫いてた)


ルビィ「くっ……」


絵里(私の警告が後少しでも遅かったらルビィは死んでただろう、逃げ遅れたルビィの可愛らしいツインテールの一つが銃弾によってほどけた)




697: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:35:52.13 ID:dIWqa2t10

絵里「…亜里沙、説明しなさい。これはどういうこと?」

亜里沙「………」


亜里沙「はーあっこれでお姉ちゃんはやれると思ったんだけどなー」


絵里「…!」

絵里(私の妹である亜里沙から出る言葉は絶望への一言だった。無邪気な亜里沙が今とんでもないことを口にした、それを聞くだけで全身が震えて吐き気がする)

ルビィ「…やっぱりあなたたちなんだ」


ルビィ「ここの四人目と五人目のアンドロイドって」


亜里沙「そう、でも普段はこんなところこないよ、来たくないもん」

亜里沙「でも最近は色々ありすぎて私たちはいつもここで寝泊まりだったよ」

絵里「………」

ルビィ「絵里さんしっかりして…」

絵里「え、ええ……」



698: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:38:03.20 ID:dIWqa2t10

亜里沙「安心してお姉ちゃん、亜里沙とお姉ちゃんは姉妹————殺すことはしないよ」


亜里沙「半殺しで済むから」


絵里「………」クラッ

ルビィ「絵里さんしっかり!」

絵里(これは夢よ、夢なのよ)

絵里(そう信じたくて目を瞑っても世界は変わらない。戦いが辛いことばかりなのは知ってる、けどこんなの聞いてない)


絵里(私が最も信頼してる存在から裏切れた)


絵里(その真実が——事実が辛すぎて目眩が止まらない。私の本能がこの現実から逃げようとしてる)



699: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:39:30.47 ID:dIWqa2t10

「…私、あまり一方的な戦いは好きじゃないんだけど」

亜里沙「いいよ、お姉ちゃんは亜里沙がやるからあの人をやってよ——」


亜里沙「————雪穂」


雪穂「分かってるって、すぐに片付け…られればいいんだけどね」

ルビィ「…あなたは相手を舐めてかからないんだね」

雪穂「真剣勝負が好きだからね、下に見るなんてダーティーなことはしないよ」




700: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:40:48.09 ID:dIWqa2t10

絵里「……ルビィ」

ルビィ「! 絵里さん大丈夫?」

絵里「…ええ、なんとか。ルビィは亜里沙じゃないほうをやって。私は亜里沙をなんとかするから」

ルビィ「分かったよ、でもみねうちとか考えてるんだったらそれはやめたほうがいいよ…そんな余裕は絶対にないよ」

絵里「……覚悟してるつもりだわ」

絵里(現実はイヤでも変わらない)

絵里(私がレジスタンスとなってから今に至るまでいっぱい現実から逃げたくなる出来事があった、それと比較すればこの一件もその一つに過ぎない。いくら現実がイヤになってもそのまま一方的に殺される運命を辿る私はどこにもいない)


絵里(このアンドロイド隔離都市東京を変えたくて私は動いてるのよ、何があったって死ぬまでは挫けちゃいけない)


絵里(…峰打ちなんて甘いことを考えてるわけじゃない、けど亜里沙と戦うのにまだ覚悟は足りてない。だけどここまで来て絶望には負けたくない)





701: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:43:10.56 ID:dIWqa2t10



亜里沙「…行くよ、お姉ちゃん」


絵里「……ええそうよね、行かなくちゃよね」

絵里(…結局私と亜里沙の関係も銃弾で語るのね。いくら私の敵とはいえ亜里沙は私の妹、そんな亜里沙も私と戦う事には覚悟と躊躇があるように見えた)

絵里(でも、お互い譲れない思いがある。それに従って今ここで最悪の戦いが始まるのでしょう)

絵里「………」


カチャッ


絵里(覚悟を決めた私はスコーピオンEVOを手に持った)

絵里(横を見れば既にルビィと雪穂って子が戦っててこちらも数秒後には戦いが始まるらしい)





702: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:44:01.80 ID:dIWqa2t10



千歌『果南ちゃん! っあ……』

善子『…ぁっ!?』

果南『あ…れっ……?』


絵里(…私の始めた戦争でもう三人死んだ。だからその死を無駄にはしたくない)

絵里(元はといえば私は亜里沙の姉————姉である私が妹に負けるわけにはいかない)

絵里(可愛い姿だけど、強さはきっと並外れたモノだ。だからそう——)


絵里「————お手並み拝見と行きましょうか」


絵里(そう言い鳴らす始まりの合図。スコーピオンのトリガーを引けば亜里沙は跳躍をするんだけど穂乃果や果南ほど跳躍は鋭くないしその時の亜里沙の顔は苦しそうで他の新型ほど余裕が感じられなかった)



703: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:46:55.63 ID:dIWqa2t10

絵里「リロード! ルビィ!」


ルビィ「任せてっ!」ドオーン!


亜里沙「くっ…」シュツ

絵里(ルビィに宿った才能は全部で四つあった)

絵里(一つは射撃術、一つは空間認識能力、一つは近接戦闘センス)


雪穂「私と戦ってる合間に…!しかもスナイパーで…」


ルビィ「出し惜しみなんて器用なことルビィ出来ないから」


絵里(そして最後が親譲りの判断力よ)


絵里(黒澤家は銃が主流の現代でも剣術を嗜むところよ、私は武道をよく知らないから何とも言えないのだけど武士は迷わないらしい)

絵里(それは死ぬことも厭わぬ覚悟を持った行動を常に行うという意味であり、ルビィは私の声を聞き多少の無理をしてでも亜里沙へスナイパーの発砲を行った。ルビィの百発百中の腕前とこの肯定まっしらぐらな判断力は相性が良すぎる)

絵里(…正直、私たちレジスタンスの中で一番強いのは穂乃果でもなければ曜でもなく)


絵里(ルビィなんだと思う)


絵里(…少なくとも私はルビィを敵に回したら勝てる自信がないわ)





704: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:48:59.40 ID:dIWqa2t10

絵里「はっ!」バリバリバリバリ!

亜里沙「んっ!きつっ…!」


雪穂「亜里沙!」


亜里沙「きっ…」シュッ

絵里(物陰やアンドロイド特有の瞬発力でスコーピオンの弾を回避するけど、それでも私の放つ銃弾は亜里沙の皮膚を剥いでいく。腿、腕、横っ腹、頬と様々なところから赤い涙が出てきているのが確認出来た)

亜里沙「亜里沙だって負けてないよお姉ちゃん!」ドドドド!

絵里「ええっ!でも曜や凛と比べたらまだまだね亜里沙っ!」ダッ

絵里(向かう射線は随分と分かりやすいもので、私の頭に一直線だった。亜里沙がトリガーを引けば私に銃弾が飛んでくるんだけどそれも変則撃ちでもなければ偏差撃ちでもないただ動く私へ向けての射撃)


絵里「…?」


絵里(…あれ?私今Y.O.L.Oを守るアンドロイドと戦ってるのよね?)

絵里(なんだろう…亜里沙の行動があまりにも普通すぎて何かおかしく感じてしまう)



705: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:51:49.41 ID:dIWqa2t10



絵里「接近戦はどう?亜里沙!」ブンッ!

亜里沙「全然いけるよ!」シュッ


絵里(腰にかけてたマチェットを横に振れば亜里沙は姿勢を低くして回避する、そして次に亜里沙がやるのは私のお腹に向かっての掌底だった)


絵里「!!」


絵里(…なんだろう、この既視感。どこかで見たことある気がする)

絵里(なんでか分からないけど、でもこれは気のせいじゃない。絶対にどこかで見たことある)


絵里「ふっ」


絵里(…まぁ何はともあれ私はその掌底をヒット直前に、両手で手首を掴むことで止めた)



706: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:52:51.11 ID:dIWqa2t10



絵里「随分と分かりやすいのね!」ドカッ!


亜里沙「がっ…!」

絵里(そしてお返しとして間髪入れずにお腹に向かって飛び膝蹴りで亜里沙を後方へ吹っ飛ばした)

亜里沙「うっ…げほっ…」

絵里「………」

絵里(跳ね飛ばされ機械に叩きつけられだらしなく涎を垂らす亜里沙を見ると心が痛くなる。愛すべき妹を痛めつけてるというのだからとてもそこで普通にしてはいられない)

絵里「…亜里沙?もうやめにしない?きっと他の道があるはずよ、私と亜里沙は戦うべきじゃないでしょ?」

亜里沙「おね…げほっ……お姉ちゃんが降伏してくれるならそうだね、戦うべきじゃない」

絵里「……それは無理ね」

亜里沙「ならこの話は無しだね、亜里沙がY.O.L.Oを守るアンドロイドで、お姉ちゃんがそれを倒すべく動いてるなら亜里沙とお姉ちゃんは一生敵のままだよ」

絵里「………」



707: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:53:52.77 ID:dIWqa2t10

亜里沙「にしてもお姉ちゃんは強いね、亜里沙びっくりしちゃったよ」

亜里沙「亜里沙一応戦闘型アンドロイドなのに押され気味でどうしようって今必死に考えてるんだよ?」ウーン

絵里「…!」

絵里(…そうだ、亜里沙は戦闘型アンドロイド。なのにどうして動きがこんなにも鈍いの?)

絵里(確かに戦闘型アンドロイドは強さに個体差がある、けどそれ以前にこれじゃあY.O.L.Oを守るどころか自分を守ることすらできない)

絵里(それに亜里沙は私より後に生まれた私より性能の良いアンドロイド、なのになんでこうも私が一方的に勝ってるの?)


絵里「…いいわ、なら再開しましょう。待たせてたら向こうでやってるルビィに申し訳ないからね!」ダッ


絵里(こうして会話をして亜里沙の体力が回復するのはよくない、決めるなら即行——これに限る。だってその方が亜里沙が苦しむ姿を見ずに済む)




708: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:55:19.51 ID:dIWqa2t10



タッタッタッタッ


絵里(走りながら弾倉に約20発残ったスコーピオンの銃弾を放つ、連射するとすぐに弾がきれるけどその短い時間で近づければ何の問題もない。私の中で攻めるなら近接と亜里沙への戦い方が決まってるからね)

絵里「はっ!」

絵里(亜里沙へ近づいた私は上段回し蹴りで一気にノックアウトを狙った)


亜里沙「それくらいなら亜里沙も躱せるよ!」

絵里「ええ、そうよね」


絵里「だからこそそれは読めてたわ」


絵里(私の上段蹴りに対して亜里沙はしゃがみの一手、だけどそんなよく見る回避の仕方をするんならこっちにだって対処法がある)


絵里「こっちは躱せるかしらッ!!」


絵里(躱された直後に後ろ回し蹴り——亜里沙がしゃがんだ直後だったから狙わずとも私の蹴りは亜里沙の頭に当たる)



709: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:56:55.20 ID:dIWqa2t10



亜里沙「ッ…!」クラッ


絵里(多少の躊躇はあったけどそれでも強烈だった私の蹴りは亜里沙に脳震盪を与えた。戦闘型アンドロイドの戦闘センスとも言われるモノは頭に蹴りを食らっても切り返しの早さと絶妙なバランス感覚で倒れないけど、脳震盪による怯みは避けれない)

絵里(片手で頭を押さえる亜里沙を見れば勝利はほぼ確実だった、次に私はマチェットを取り出して心臓目掛けてマチェットを突き出した)


亜里沙「んくっ…!」シュッ


絵里「!」

絵里(でも亜里沙は苦し紛れに横方向への跳躍を行い私の突き刺しを躱し、頭を押さえながらもう片方の手に持ってたサブマシンガンのトリガーを引いた)

絵里「浅いわね…」

絵里(しかし思わず言葉に出してしまうほど亜里沙の射撃は拙かった、脳震盪で麻痺してるのは分かる。けどいくらなんでも動かなくて大丈夫っていうのは少しまずい気がする)

絵里「…もういいわ」

絵里(これ以上亜里沙の苦しむ姿を見たくない。だからもう楽にしてあげようと思った…いや、峰打ちで済ませようと思った。これくらいの相手なら峰打ちだって可能なはず、だからスコーピオンのリロードをして亜里沙に向かって走ればばらつく射線が飛んでくるけどほとんどが回避する必要のない射線でその射線をかいくぐりながらスコーピオンで亜里沙の足元に向かって発砲した)



710: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 20:57:57.33 ID:dIWqa2t10



亜里沙「んっ…」シュツ


絵里「! また……」

絵里(そろそろ脳震盪の影響も軽くはなると思うんだけど、それでもまだ目眩とか起こるはず、それなのにスコーピオンの弾をなんとか回避して機械の物陰に隠れてみせた。やけに粘るわね…)


絵里「隠れても無駄よ!」

亜里沙「そんなの分かってる!」


絵里(でも隠れて場が膠着するほど緊張感はない、あるのはむしろ緊張感を切り裂く戦いへのボルテージだ。その熱に巻かれた私は隠れた亜里沙の元へ突っ走って跳躍と同時に決め撃ちをした)


亜里沙「えいっ!」ポイッ!


絵里「甘いっ!」


ピカーン!


絵里「くっ…」

絵里(私と亜里沙が目が合う頃に飛んできたスタングレネードは私のスコーピオンで跳ね飛ばした、けど着弾と同時に強い閃光を辺りにばらまき一時的に私と亜里沙の動きを止めた)



711: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 21:00:01.34 ID:dIWqa2t10



タッタッタッタッ


亜里沙「そこだ!」


絵里「っ!?亜里沙っ!?」

亜里沙「亜里沙だってやれば出来るんだからねッ!」

絵里(だけど閃光の中で私の元へ突っ走ってくる亜里沙に焦らずにはいられない、足を止めるほど眩い閃光の中でどうやってここまで来たのか確かめるために腕と腕の隙間から前を見れば亜里沙は目を瞑ってた。だから音だけでここまで来たんだろう)


亜里沙「まずは一撃っ!」ドカッ!


絵里「っ……けはっ…」

絵里(ゼロ距離で姿を現した亜里沙を前に回避の術はなくて、未だに私の視界を奪う閃光に腕を奪われ無防備な私のお腹に入る強烈なパンチはとても可愛い亜里沙からは想像できない威力だった)

絵里(しかしそれで倒れてなんかいられない、痛いなんて感じていれば次の瞬間には上段回し蹴りが飛んできてそれを回避するためにしゃがめば追撃に後ろ回し蹴りが飛んできた)



712: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 21:02:03.45 ID:dIWqa2t10



絵里「ッ…!!」


亜里沙「今度は亜里沙のターンだね!」


絵里(…なんだろう、この違和感。亜里沙の蹴りは私の頬にヒットし頭にダメージが入りさっきの亜里沙と同じように脳震盪を起こした。けどそんな中で感じるこの何とも言い難い感覚は何?)

絵里(ここまで戦って亜里沙はそこまで強くないと思った、けど後一歩——殺すまでがなぜか遠く感じる。それは殺すことへの躊躇いとかではなく後一歩のところで亜里沙が謎の粘りを見せてくるから中々仕留められない)

絵里(それに違和感はそれだけじゃない……でも、その違和感が何なのかが全く分からない。亜里沙と戦ってると何かがおかしいと感じる、でもその正体がずっと掴めないままでいる)


亜里沙「亜里沙は耐えたんだもん!お姉ちゃんも耐えてよね!」


亜里沙「雪穂!手伝って!」

雪穂「はいはいっ」バンッ!


絵里「くっ…!」シュッ


絵里(亜里沙とは別に雪穂から飛んでくる銃弾を苦し紛れに躱した、けどここで私はイヤな感覚を覚える)




713: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 21:03:02.33 ID:dIWqa2t10

絵里「あっ…」ズコッ

絵里(跳躍の着地際で酷い目眩が起こり私のバランス感覚が決壊した。その結果目眩と相まって立ってるのが困難になり這いつくばるような状態で私は倒れた)


亜里沙「チャンス!亜里沙のヒッサツの一撃をお見舞いしてあげる!」ダッ


絵里(すぐに起き上がろうとしながら後ろを振り返れば刃渡り十数センチのナイフを両手で持った亜里沙が宙に浮いていて死のタイミングが近いと察した)


絵里「…!!」


絵里(まただ、この違和感。なんなのかしら……)



凛『これは凛の全てを込めたお返しだよッ!!!』



絵里「…見たことある」


絵里「その攻撃は見たことあるッ!!」バンッ!


亜里沙「っ!?」

絵里(酷い既視感だった。記憶を辿った時に見える凛のあの時の姿と今の亜里沙の姿は酷似してる)

絵里(それ故に、私は一方的にはやられなかった。一回見たことがあったから対処法が分かった、ほとばしる違和感からの解放感が私の脳震盪を一瞬でかき消した。目眩が消えた瞬間定まる亜里沙への心臓のフォーカスに私は銃弾を放った)



714: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 21:06:38.53 ID:dIWqa2t10



亜里沙「っ!でもこれならっ!」ブンッ!


絵里「!!!」


果南『でも私相手じゃ“いつも通り”は通用しない!絵里には絶対に戦ってもらうよ!』ブンッ!


絵里「またっ…!」

絵里(まただ。宙に浮く亜里沙は咄嗟に体を捻り横方向へ高速回転し、空中で体が横方向へ動く慣性を作り銃弾を回避した、そしてその慣性を利用して横方向にもう一回転し、振り向きざまに既に持ってたナイフと回転途中腰にかけてた二本のナイフの計三本を指と指の間に挟んで投げてきた)

絵里(そうして感じるのは回避の意識ではなくて激しい既視感。ナイフを投げるまでの行動は違えど投げる時の姿は果南そのものでそんな姿を見れば飛んでくるナイフを見ずともナイフの場所が分かってしまう)


絵里「ならこうすればよかったのね果南!」


絵里(あの時は暗かったのもあって超すれすれで避けた、けど一度見た後だとこの時の対処法が自然と浮かんでくる、分かっている)

絵里(飛んでくる三本のナイフに対してする行動はこうよ)



715: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 21:08:44.44 ID:dIWqa2t10



絵里「銃に比べたら弾速が遅すぎるわね!」ズサー


亜里沙「なんでっ!?なんでそれを避けれるの!?」

絵里(スライディングで躱す、きっとあの時もこれで対処して発砲していれば私は勝っていただろう)

絵里(そしてそうと分かってるこの状況ではこのフィールドは私のモノ。スライディングと同時に残弾数10発のスコーピオンを発砲、そうすればどうなったかしら、その銃弾は亜里沙の胸を————)


亜里沙「まだ終わってない!」


絵里「それはっ…!」


絵里『まだ終わってないッ!』


絵里「………」

絵里(あの時の私と全く同じだった。丁度左手がハンドガンがかけてある左腰にあったのを良いことに、着地際で右へ跳躍し左方向へハンドガンを発砲。そうすれば“あの時”と同じように跳躍にブーストがかかりその後の着地は困難なものにはなるものの銃弾は避けれるモノへと変わる)



716: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 21:10:23.45 ID:dIWqa2t10

亜里沙「ぐっ…」

絵里(跳躍した後の展開も私と全く同じだ、力んだ顔が固まって背中から地面へと不時着した)

絵里「亜里沙…!」

亜里沙「はぁ…はぁ…はぁ…」

絵里「…一つ聞いてもいいかしら?」

絵里(しかし私は追撃にいかなかった、亜里沙が起き上がる時間にスコーピオンをリロードして亜里沙の息が落ち着くのを待った)

絵里(…それが舐めた行動だったとか慈悲だったとかそういうのではなかった)

絵里(死人に口なし————ここで知っておきたいことを知る為に私は今亜里沙に問う)

亜里沙「はぁ…はぁ………何?」

絵里「…今のハンドガンで跳躍にブーストをかける技術、どこかで学んだの?」

亜里沙「まさか、亜里沙のアドリブだよ。いくら相手が亜里沙より強いお姉ちゃんとはいえこんなすぐには終わりたくないもん、だから例え無理だとしても強引にやらなきゃお姉ちゃんには勝てないよ」

絵里「………」

亜里沙「それに諦めたくないんだよ、最後の最後まで抗ってカッコいいままでいたい」


亜里沙「一人の妹として、お姉ちゃんに負けたくない」


絵里「…そう」

絵里(…ダメ、何も分からない。何か掴めそうだったにも関わらず掴めたのは疑問符だけ、こんなことなら追撃すればよかった————なんて言うわけじゃないけどリターンが無さすぎるのは何とももったいない気持ちになる)




717: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 21:11:20.93 ID:dIWqa2t10

絵里「…ふぅ」

絵里(しかし切り替えは大事、こんな相手にチャンスを与えるような甘いことをしてるけどこれは遊びなんかじゃない、正真正銘の殺し合いなんだから次に放つのは私の言葉じゃなくて殺意のこもった銃弾でしょう)


ルビィ「隙ありっ!」バァン!


絵里(小休止する亜里沙に飛んでくるのはルビィのスナイパー弾、スナイパーにとって——いや、銃火器を持つ者にとって動かない相手はただの的。不意をつけばそれに反応してすぐさま対応しないといけなくなるので余分な体力を使わせることが出来るから当たっても当たらなくても出し得だったでしょうに)

絵里(…でも、次の瞬間は何かがおかしかった)


亜里沙「それはさっき見た!」シュッ


バンッ!


ルビィ「っ!?」シュッ

絵里「ルビィ!」


雪穂「ナイス亜里沙!私も負けてられないね!」ババババッ!


ルビィ「この子……!」ダッ

絵里(アンドロイドは射線が見えるとはいえ完全な不意打ちだった。それなのに亜里沙は回避と同時に射撃という完璧な対応をしてみせた)

絵里(これにはルビィもビックリしてた上に、回避もかなりギリギリだった。これは曜の跳躍ブーストの靴がなければおそらくルビィは死んでたでしょう)



718: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 21:12:05.62 ID:dIWqa2t10

絵里「…いや」

絵里(…違う、そんなことを言いたいわけじゃない)

絵里(今一番焦点を当てるべき点はどう考えても————)


亜里沙『それはさっき見た!』


絵里(——亜里沙のその驚異的な対応力だろう)

絵里(見たかも怪しいくらいの攻撃を一回で回避し、攻撃に転じるまでした。最初こそ予想を大きく下回る実力に浅い考えが出てきてたけどこの潜在的な力には少し目を配る必要がありそうね…)


絵里『その攻撃は見たことあるッ!!』


絵里「……あれ?」

絵里(待って、違う。見たことある、その亜里沙の様さえも見たことがある)

絵里(一度見た行動を次見た時には完璧な対応で対処するその様……)



719: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 21:13:08.52 ID:dIWqa2t10



亜里沙『今度は亜里沙のターンだね!』


絵里(それにあの亜里沙の上段回し蹴りからの後ろ回し蹴りは私が最初にやった攻撃……)


絵里『こっちは躱せるかしらッ!!』


絵里(さっき私がやった攻撃パターンにそっくり……)

絵里「…!!」

亜里沙「…?」


絵里「A-0613…!!」


絵里(いや分かってた、亜里沙の識別コードくらいはね。でもそうよ、識別コードの英語の次の数字が0だとそれは誰かの後継機とされていて、その後継機のオリジナルは0の後のコードと花丸は言っていた)

絵里(それに従えばもちろん亜里沙は私の後継機になる、私のコードはF-613——亜里沙のコードはA-0613…それが何を意味するのかといえば)


絵里(私と亜里沙は同じなんだ、やることや特徴、そして性能が)





720: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 21:14:45.55 ID:dIWqa2t10

絵里「!!!」

亜里沙「…お姉ちゃん?」

絵里(あぁ…まずい…気付けば気付くほど新たな真実が見えてくる)


千歌『絵里さんは何かやってたんですか?武術とか』

絵里『んー特にそういうのは』

真姫『じゃあ生まれつきであんな動きが出来たってこと?』


絵里(…そうよ、そうじゃない。私は標準型アンドロイド、なのに戦闘型アンドロイドや対アンドロイド特殊部隊の人間と戦える。それは何故?何故なのか?)


曜『標準型アンドロイドなのに、どうして戦闘型アンドロイドや高い戦闘力を有した人間と戦えるの?』


絵里(…その答えは)



絵里(私が今まで色んな人の戦いを見てきたから色んな人の戦法や武術が使えるんだ)



絵里(…それは銃を持つことになったこのレジスタンスの一件で私の強さは一気に加速したのよ)





721: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 21:15:32.75 ID:dIWqa2t10



ことり『強くてごめんねっ!』


絵里(ことりの中国拳法やアサルトライフルの射撃術)


希『あなた面白いやんねっ!』


絵里(希のショットガン裁きや手品のような技術)


曜『ふふふっ分かってるよ、あなたがそれをやるのだって』


絵里(曜の体術や先読みの意識)


凛『躱さないでちゃんと受け止めてよ!』


絵里(凛の本能的な動きやアクロバティックな身のこなし)


果南『スコーピオンなんて怖くないね!』


絵里(…果南のクライミング術や強引なその姿勢)


絵里(…なんで私気付かなかったんだろう、真似してみたら出来たとかそんな人が持ってる技術を簡単に真似出来るわけないじゃない………)

絵里(ことりの中国拳法も曜の先読みの意識も、凛のアクロバティックな身のこなし希のショットガン裁きも試したことないけどきっと使えるんだろう)


絵里(…だって見たことあるもの)





722: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 21:17:17.04 ID:dIWqa2t10



果南『絵里は色んな面を含めて最強なんだよ?絵里もよく考えてみてよ』


絵里(…あの時、果南はそう言った。そうよね、悔しいけど、認めたくないけど今なら肯定できるわ)

絵里(だって…だって……)



絵里(例えば私に、一度見た動きをコピー出来る機能なんかが搭載されてたら最強の他なんでもないでしょ?)



絵里(…私がアンドロイドである故に銃弾を回避し、窮地に立たされてもそれをなんとか出来る術がある。物事を数値化出来る、ピンチ脱却ルートを知ることが出来る)

絵里(だから格上でも粘れる、そうして粘った間に見た動きをコピーする)


絵里(そしてそれをすぐに自分のモノにする)





723: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 21:18:17.65 ID:dIWqa2t10

絵里(…つまり私、人間じゃない)

絵里(人間を元に造られたアンドロイドだ、でも人間じゃない……)



絵里(私は人を模して造られたアンドロイドじゃない!)



絵里「あ、え、あ……え…?えっ……?」


亜里沙「お、お姉ちゃんどうしたの…?」

絵里「あぅ…あ…うっ…」

絵里(上手く言葉が話せなかった。自分が何者なのか、それを知った途端私という存在が怖くなった)

絵里(市民権を得るために、人間と平等でありたいと願って色々起こしたというのに私が人間として設計されてないんじゃ千歌も善子も果南も、そしてにこも凛も海未も希って人も全て全て死んだ意味がない)

絵里(私が引いた始まりのトリガーは相対的にも直接的にも様々な人を殺した、その中で私自身がクロとなるの?)



絵里(私、何の為に戦ってるの?)






724: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 21:19:06.61 ID:dIWqa2t10



ポロポロ…


亜里沙「な、なんでお姉ちゃんが泣くの?ねえなんで?」

絵里(アンドロイドであり、多少人間より優れた点があるというのを考慮した上で私は人間であることにこだわりを持っていた。例えばそれは日常的に人間らしい——高校生らしい会話をして過ごしたり、一緒にお昼を食べたり)

絵里(例えばそれは、誰かと恋愛をしたり。例えばそれは、誰かとゲームで遊んだり)


絵里(例えばそれは、色んな面で優れた私が悪い行いを正す非人道的行為を無くす正義でありたかった)


絵里(標準型アンドロイドという人間に最も近いアンドロイドだったけど私は戦えた、だから戦った。でも、そうなのね、その正義感溢れる戦いすら私は八百長をしてたのね)

絵里(そう気づいた瞬間、冷めた。生きる?戦う?ううん、全てに対する熱を失った)



725: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 21:20:15.10 ID:dIWqa2t10



カチャッ


亜里沙「っ!?お姉ちゃん何してるの!?」

雪穂「!」

ルビィ「絵里さん…!?」

絵里(恐怖が混乱を招き、混乱が絶望を招く。絶望が退廃を招き、退廃が死を招く)

絵里(その場にいる全員が戦うことをやめて私に注目を集めた)


絵里「……ごめんなさい、ルビィ。そして亜里沙」


絵里(スコーピオンを手放して、腰にかけてたハンドガンの銃口に私の頭に当てた)

絵里(目を瞑るとより鮮明に感じる射線にはもう何の恐怖もない。今まであんなに必死に当たらないようにと避けてたのに、こんなにも潔く射線を貫かれる私がいるんだ。正直驚いた)




絵里「…こんな弱い私を許して」







726: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/05(土) 21:20:50.27 ID:dIWqa2t10

絵里(そこからは時が止まった、世界が動かなくなった。真空に包まれたみたいに音が聞こえなくなって、まるで私が絵本の一ページであったかのように動かなくなった)

絵里(その中で微かな動きを見せる赤く染め上げられたその記憶は一体どれだけ禍々しかったんだろう、今となってはもう分からない)

絵里(…次にその世界はどんな動きを見せるのかしら、それももう分からない)

絵里(…ただ、きっと次この世界で最初に鳴る音はこんな音でしょう————)


バンッ!


絵里(——終わりのトリガーの音)





728: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 18:54:49.80 ID:hEQnKdja0



梨子「…はぁ」

果林「ちょっとまた私の溜め息吐かないでよ」

梨子「……そりゃあ吐きたくなりますよ」

果林「ええそうね、吐きたくなるわね」


歩夢「次はどういう手で来る?」


果林「死なないわねこの子」

梨子「死にませんね」




729: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 18:55:35.95 ID:hEQnKdja0

果林「どうする?」

梨子「私にどうするって言われましても……」

果林「完璧に開き直ってるわね、撃たれても死なないことを良いことにグレネードにだけ当たらないようにしてる」

梨子「銃が銃として機能してないですね」

果林「ええ、というか一つ聞いてもいいかしら?」

梨子「なんですか?」

果林「なんでさっきからそんな冷静なの?もっと“どうすればいいんですか!?”とか“これじゃあ私たち負けちゃうじゃない!”とか言わないの?」

梨子「私にそう言ってほしいんですか?」

果林「そりゃあ言ってほしいわよ、年中不敵な笑み浮かべて変な事考えてる梨子が切羽詰まったセリフ言ってたら面白いじゃない」

梨子「…果林さんも充分冷静ですよね、無感情」

果林「えぇ酷い、私も一応人間なのよ?」

梨子「一応って何ですか…」




730: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 18:56:44.14 ID:hEQnKdja0

果林「人殺すのに慣れちゃうとその刺激を上回る出来事が無くなって大して驚くことがなくなっちゃうのよね、最近の悩みだわ」

梨子「銃で撃たれても死なないってすごい驚くところだと思うんですけど…」

果林「死なない生き物自体は既にいるしそれがようやくアンドロイドにも行き渡ったって考えると案外すぐに受け入れられたわよ、鞠莉から初めて聞いた時は驚いたけど…あ、これ内緒ね♪」

梨子「あ、はい……」


曜「…何してるの?」


歩夢「!」

果林「あら、曜じゃない」

梨子「曜ちゃん!!」キラキラ

曜「誰かがべらべら何か言ってるなーって思って来たらまさか梨子ちゃんと果林さんがいるなんて…」



731: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 18:57:17.28 ID:hEQnKdja0

ことり「………」カチャッ

曜「いいよことりちゃん、銃を下げて」

ことり「えっ…でも…」

曜「いいよ、なんか状況的に今は敵じゃないっぽいから」


梨子「…誰その女」


曜「…あ、やっぱり敵かも」




732: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 18:58:33.73 ID:hEQnKdja0

果林「こんなところで会うなんて奇遇ね、そっちの調子はどう?」

曜「バッチリ…と言いたいところだけど絵里さんとルビィちゃんの連絡が取れなくて困ってるところだよ」

ことり「………」

果林「絵里?絵里なら四人目と五人目のアンドロイドを倒しに行ったわよ」

曜「四人目と五人目のアンドロイド…」

果林「Y.O.L.Oには三人のアンドロイドがいるのは知ってるでしょ?それとは別に実は四人目と五人目がいるらしいの、元々絵里とルビィって子は今そこにいる不死身のアンドロイドと戦う予定だったんだけど私と梨子が役を変わってその四人目と五人目のアンドロイドを倒しに行ってもらったわけ」

ことり「……最低」

果林「え?なんで?」

ことり「もしその話が本当なら絵里ちゃんたちは今頃あなたの実験体にされてるわけじゃん、何の情報も出てないアンドロイドを相手するより不死身って分かってるこのアンドロイドを相手にする方が勝率はいいでしょ?しかも人数の有利を取れるし」

果林「…別にそんなつもりはなかったのだけどね。鞠莉が一番危険視してたのはこのアンドロイドだったからこいつをやれって言われただけなんだけど」



733: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 18:59:27.05 ID:hEQnKdja0

梨子「…一つ言っていい?」

曜「ん?何?」

梨子「曜ちゃんには悪いんだけど…その絵里さんとルビィちゃんって子、連絡取れないんだよね?」

曜「えっうん」

梨子「それって————」


梨子「——死んでるんじゃないの?」


ことり「黙って」カチャッ

曜「…そうだね、ごめん。今はそれを言わないでほしい」

梨子「……ごめんなさい」

果林「………」

果林(あの梨子がナチュラルに謝った…)



734: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:00:51.56 ID:hEQnKdja0

果林「…私ことりのこともよく知ってるわ、やけにプライドが高い一匹狼だったからね。対アンドロイド特殊部隊に所属してからはイヤというほどことりという名前を聞いたわ」

果林「そんなことりが背中を追いかけ、曜までを従わせるその絵里ってやつは何者なの?」

曜「…希ちゃんの寛容さと鞠莉さんに似た意志を持った人かな」

果林「うわなにそれ最強じゃない」

曜「そう思うでしょ?」

果林「なるほど、絵里というアンドロイドがよく分かったわ」

ことり「分かったんだ……」

果林「…なら曜とことりがやるべきことは一つでしょ?」

曜「…うん」



735: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:02:02.03 ID:hEQnKdja0



曜「絵里さんのところへ行く」果林「絵里のところへ行く」


梨子「………」

果林「答えが出てるなら早く行ったら?しんで……おっとごめんなさい、なんでもないわ」

曜「あははっ果林さんが気遣ってくれるなんて珍しいね」

果林「私も人間だからね」エッヘン

梨子「一応をつけろ一応を」

果林「先輩に向かってその口の利き方は何かしら?」

梨子「はいっ!ごめんなさい!」

ことり「……漫才?」


歩夢「というか私を置いて話を進めないで…」


果林「あららごめんなさい、じゃあやりましょうか」


カチャッ


果林「最終ラウンド————そろそろいたちごっこも飽き飽きだわ」





736: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:02:45.44 ID:hEQnKdja0

曜「…じゃあ私たちは行くね」

果林「ええ、行ってらっしゃい」


曜「…勝ってね」


果林「えっ?う、うんもちろんよ!」

梨子「何戸惑ってるんですか…」

曜「じゃあ行こう、ことりちゃん」ダッ

ことり「うんっ」ダッ


梨子「はぁ…最悪」

果林「何がよ?」

梨子「曜ちゃんに距離置かれた…」

果林「自業自得じゃない」

梨子「…それは素直に認めます、だからこの怒りはあなたにぶつけるよ」

歩夢「…そんなとばっちりなんだけど」



737: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:04:47.26 ID:hEQnKdja0

梨子「…それについてはごめんと思う、だけど私とあなたは敵同士、戦って勝負を決めよっか」

果林「なんかやけにやらかくなってない?気のせい?」

梨子「気のせいですよ、やりましょうよ」カチャッ

果林「…気のせいじゃない気がするけどまぁいいわ、やりましょうか」


歩夢「望むところ!」


果林「……梨子、仕方ないけど対絢瀬絵里用にとっておいたEMPグレネードを使いましょう」

梨子「え、いいんですか?」

果林「さっきの曜とことりを見て絢瀬絵里は私たちの敵ではないことを確信した、もちろん私たちが絵里とその愉快な仲間たちを殺しに行けば敵になってしまうんでしょうけど、攻めない限りは敵じゃない」

梨子「……分かりました、でも本当にいいんですか?曜ちゃんが味方じゃないからEMPグレネードは量産できないので数が限られてくる。果林さんが敵じゃないとはいえ、未来なんて予想できるものじゃないですし、万が一あの金髪美人のアンドロイドや穂乃果ちゃんと戦うことになった時、有効手段が無くなって厳しい戦いを迫られると思うんですけど」

果林「…その時はその時よ!」

梨子「何も考えてないんですね……」

果林「いいじゃない!絵里だって穂乃果だって死ぬのよ?それに対してこのアンドロイドは死なない、つまりEMPグレネードはこのアンドロイドを殺す為にあるの、つまりはそういうことよ」

梨子「…はぁ、分かりましたよ」



738: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:06:22.27 ID:hEQnKdja0

梨子「じゃあ————」


梨子「——私は先に行かせてもらいますね!」


果林「ええ!私も続くわ!」

果林(サブマシンガンを持ち果敢に突っ込む梨子の背中を追った、曜に距離を置かれたせいか、それとも何かが梨子の奮いを立たせたのかいつにも増して梨子の踏み込みは強くやる気に満ち溢れているようだった)

梨子「はぁっ!」バババッ!

歩夢「ほっと」シュッ

果林(工夫も何も施していない銃弾はアンドロイド相手には利かない、でもいいの。EMPグレネードを使うと決めたなら銃弾なんか当たらなくていい、避けさせることに意味があるのだから)


タッタッタッ!


果林「梨子!カバーよろしくっ!」


梨子「任せてください!」

果林(そうして梨子の背中から飛び出して避けた直後の相手に接近戦を仕掛けた、EMPグレネードは貴重よ、だから使うなら絶対にEMPグレネードが当たる状況に使わなきゃいけない、その為に準備を今からしようじゃないの)



739: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:07:56.01 ID:hEQnKdja0

果林「せいっ!」

歩夢「よっと、まだあのぶどう色の髪した人の方が鋭い近接攻撃持ってたよ!」

果林「生憎私は近接戦闘を得意としていないのよっ!」

果林(私はダイヤや梨子と比べて近接戦闘に対する理解が乏しい為に、とりあえず適当に回し蹴りをして何かアクションを待つことにした。この相手がアンドロイドだろうと人間だろうと、流石にこんな浅い私の蹴りは当たらなかっただろうけど、基本的に私の攻撃は当たらなくていいのよね)


梨子「もらったぁー!」


歩夢「何っ!?」

果林(————だって、私より優れた仲間がいるんだもの)

果林(梨子はアンドロイドに親を殺されてからアンドロイドを殺すことしか考えてないような狂ったやつよ、そのせいで名誉も称号も何もかもを必要とせず、ただ貪欲に強さだけを求めてきた)


果林(だからこそ梨子はまだ気づけていない、梨子は私よりも強いということに)





740: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:09:04.22 ID:hEQnKdja0

果林(梨子は狂ったところがよく目立つけど、案外優しいところもある。それは戦いの中で仲間を心配出来る思いやりがあったり、アンドロイドに親を殺された故に仲間を失うことの恐怖からカバーは必ずする必死さがある)

果林(対アンドロイド特殊部隊に入ってからは曜に優しくされたり曜に誕生日プレゼントを貰ったり曜にお手製の武器を授かったり曜に命を助けてもらったりでそれ以来ずっと曜にゾッコンだけど、そんなところから梨子との関わりが増えたりして曜も分かってるんじゃないのかしら)


果林(本当は梨子って優しい子なんだって)


果林(だからそう、結局梨子も)


果林(自分の——そして誰かの命を守るために、命を奪っているだけに過ぎないというわけよ)


果林(アンドロイドへの復讐とかよく言われてるけど、ただ単に梨子は自分と知り合いの命を失うのが怖いだけなのよ)

果林(それに免じて私は死んじゃいけないし、梨子を守らないといけない)

果林(表には一切出さないけど、凛やにこを失い、精神をすり減らす梨子はきっと私が死ぬことでその弱弱しい心が決壊してしまう。だからこそこの戦いは勝たなきゃいけないのよ)




741: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:11:36.34 ID:hEQnKdja0

歩夢「っ!」

梨子「くっ…!」

果林(横からやってきた梨子は歩夢の腕を掴もうとしたけど、歩夢は掴まれそうになった腕を素早く曲げ肘を前に突き出し梨子の手を弾いて攻撃にまで転じて見せた。その驚くべき対応力はやはり能力値の高いアンドロイドならではの行動よね)

果林「隙ありっ!」

果林(けど、梨子がカバーに来てくれたおかげで歩夢は梨子へヘイトを向けた、するとどうなるのかしら?私へ向いていたヘイトが消えて歩夢は梨子への対応を迫られる)

果林(至近距離で二体一をしてる以上有利なのは私たち、だから私は梨子の対応に追われる歩夢のお腹に向かって蹴りをいれた)

歩夢「ぁっ!?」


果林「一気に行くわよ梨子ッ!」


梨子「っ!はいっ!」

果林(歩夢と梨子の間に入り追撃に右肘でもう一度歩夢のお腹に打ち、打つ為に肘を動かしたその慣性をそのままに左回転し左肘で歩夢の胸に向かって鋭い打撃を与え、その後すぐに歩夢の真正面から離れた)



742: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:13:10.81 ID:hEQnKdja0

歩夢「かはっ…!?」


梨子「これで終わりッ!」


果林(そうして私の後ろからやってきた梨子の牙がようやく光った)

果林「決めて!」


梨子「いけーっ!」


果林(梨子はEMPグレネードの起動スイッチを押して怯む歩夢のお腹に押し付けた)


ビリビリッ!


梨子「うっ…!」

果林「くっ…」

果林(歩夢のお腹にEMPグレネードを押し込んだ瞬間その辺りには強力な電撃と風が弾けて歩夢を飲んだ、この時の風ときたらかなりの強風で、ついでに飛ぶ閃光も相まって梨子も私も思わず腕で顔を隠し少しの間その場から動くことが出来なかった)

歩夢「ぁ………」


バタッ


果林(そうしてEMPグレネードから飛び散った粒子をゼロ距離で吸い込んだ歩夢は電撃に巻かれながら俯けになって倒れた)




743: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:13:58.48 ID:hEQnKdja0

梨子「……終わった」ホッ

果林「…終わったわね」

果林(緊張感と謎に包まれた戦いにようやく終止符が打てたことをキッカケに梨子はその場にへたり込んだ、だから私はそっと梨子の傍に行き、梨子の隣に座った)

果林「お疲れ様」

梨子「お疲れ様でした…」

果林「…よく頑張ったわね」

梨子「……帰ったらゆっくり休みたいな」



744: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:14:39.35 ID:hEQnKdja0

果林「…今日くらいは私が奢ってあげるわよ」

梨子「どうしたんですか?急に優しくなって気持ち悪いですよ?」

果林「えぇ酷い、私はいつも優しいわよ?」フフンッ

梨子「……そうかもしれません、だから今は甘えておきます」

果林「…ええ、それがいいわ」

果林(梨子も疲れたんでしょう、もうそれは色んな意味で)

果林(普段は弱いところなんて見せない子だけど、そっと抱きしめてあげたら強く抱き返してくれてやっぱり仲間の死が精神に来てるんだろうな、なんてちょっと思った。やっぱり今の梨子は少しまいってるみたい)




745: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:16:53.55 ID:hEQnKdja0

果林「…絵里の下につくつもりはないの?」

梨子「あの金髪美人はアンドロイドですよ?私がアンドロイドと共同戦線すると思いますか?」

果林「……まぁ、それが出来るんだったら今頃梨子はこんなとち狂った部隊になんか入ってないわよね」

梨子「そうですよ」

梨子「……でも、狂った部隊なんだとしても…やっぱり私はここが恋しいな……」

果林「…そうね、なんだかんだみんな面白い人だったもの」

果林(今やその全てが過去形になってしまった)

果林(海未も、凛も、にこも死んで、ダイヤは精神的にまいってしまって、曜は敵であった絵里の元へ行ってしまった。でも、部隊っていうのはいえば一つのチームなのよ、仲が良くて楽しいことがあって笑える環境下であるからこそこの部隊は消滅することがなかった)

果林(だけどもうそんな面白い部隊も、ないのよ)



746: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:18:57.92 ID:hEQnKdja0

梨子「…もう、何が何だか分からなくなってきました」

果林「どうしたの?急に」

梨子「曜ちゃんがアンドロイドと仲良くやってるのを見てると、きっと私のお母さんとお父さんと……後私の犬を殺したアンドロイドが悪かっただけなんだろうなって思うんです。私はアンドロイドの事が今でも憎いけど……盲目的じゃない」

梨子「だからきっとアンドロイドには私の事気遣ってくれたり仲良くしてくれる子もいるんだろうなって思うんです。でも、そんなことを考えると私が今までしてきたことの意味が分からなく…なるんです」

果林「……難しく考える必要はないと思うわよ」

果林「アンドロイドは結局人間と同じなのよ、人間にも悪はいるしもちろんアンドロイドにも悪はいる。だから梨子の親を殺したのが人間だったとしても別に不思議な話じゃない」

果林「…私は梨子本人じゃないわ。梨子がこれからも復習に努めるんだったらそれはそれでいいし私は喜んで肯定するわ」


果林「……だけど、もし梨子がアンドロイドの事、信じてみようって思うならそれも私は喜んで肯定する」


果林「…元々、私はアンドロイドの事好きなのよ?ただそれ以上に殺すことが好きだからこの部隊に入ってるだけ、だから私としてはアンドロイドを信じてみるのも選択の内に全然入ってくるかなって思うの」

果林(もしこれから梨子がアンドロイドの事を信じて仲良くやってくれるんだったら、私も幸せだ。そこからアンドロイドへの復讐以外の生きがいを見つけてほしい、私は梨子の親じゃないけど、抱いている気持ちは梨子の親と変わりないんだと思う)

果林(私は殺すのが好きだけど、逆に言えば殺すのが好きなだけでそれ以外は普通の女だと思ってる。だから私の心の中で迸るこの優しさだって本物だし、梨子を救いたいと思うこの気持ちももちろん本物だ)



747: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:20:41.16 ID:hEQnKdja0

梨子「ぅ…うあああああああぁああぁ……!」


ポロポロ…


果林「………」ギュッ

果林(梨子は答えを出すことなく、私の服に顔を埋めて泣き出した)

果林(今、梨子の心の中ではアンドロイドを肯定したい気持ちと否定したい気持ちの両方が存在している、だからこそ梨子の心はぐちゃぐちゃなのだ)

果林「……鞠莉?聞こえる?」

鞠莉『ええ、聞こえるわよ』

果林「とりあえず不死身のアンドロイドはEMPグレネードで無力化したわ、これからどうすればいい?」

鞠莉『そいつは放置してもらって結構よ、それよりも今は向かってほしいところがあるの』

果林「向かってほしいところ?」


鞠莉『ええ、それは————』


果林「…分かったわ。その代わりこの戦いが終わったら私も梨子も休暇を貰うとするわ」

鞠莉『…そう、分かったわ。じゃあラストワーキングを頑張ってちょうだい』

果林「了解、それじゃあね」

ブツッ




748: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:21:33.53 ID:hEQnKdja0



果林「……本当、東京って騒がしいわね」


果林(鞠莉から受けた新たな仕事を胸に秘めて、私は梨子の手を取った)

果林(どんな時も弱音は吐かないつもりだったけど、正直私も梨子と同じで疲れちゃったわ。殺すことに全てを置きすぎて辛いという感情も嬉しいという感情も悲しいという感情も全てを置き去りにしてここまで来ちゃったみたいだから、今感じてるこの胸が痛まれるこの感情は何とも懐かしくて、なんだかイヤが気分だ)

梨子「うぅうう……ひっく……」

果林「………」

果林(…梨子が泣き止むまで動くはやめましょうか)

果林(仕事も大事だけど、今は何より……)


果林(梨子の命が大切だと感じているから)





749: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:22:33.17 ID:hEQnKdja0



タッタッタッタッ


ことり「…結局敵になっても仲いいんだね」

曜「まぁ希ちゃんと私みたいなものだよ、お互いちょっかいかけていいことないって分かってるから」

ことり「そっか…」

曜「……どう思う?」

ことり「…絵里ちゃんのこと?」

曜「うん……」

曜(果林さんが指さしてくれた方向にことりちゃんと一緒に走る、その中で想像する絵里さんとルビィちゃんの現状はあまりいいモノではなかった)




750: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:23:31.44 ID:hEQnKdja0

ことり「………」

曜「…言いたくないならいいよ」

ことり「うん…」

曜(きっとことりちゃんも分かってるんだろう、まさか絵里さんが死ぬとは思ってないだろうけど死んでるんじゃないかって可能性が頭の中で出てきてしまうのはすごく分かる)

曜(ことりちゃんは絵里さんに命を助けてもらった身だから絵里さんのことを大切にしたい気持ちは分かる、だからこそ苛立ってた。何回連絡をいれても繋がらない事態は初めてじゃないし二回目という今度はどんな危険性があるか分からない)

曜(だから私もことりちゃんも絵里さんが生存してる事を願ってた、Y.O.L.Oに戻ってくれば扉が少しだけ開いてるところがあってなんとなく絵里さんたちがここから入ったんだなって言うのが分かった)


曜「……なにこれ」


曜(…だけど、その先で待っていたのは私たちの考えていた“最悪”を超越してた)



751: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:24:56.26 ID:hEQnKdja0



ことり「あ……ぁ……」クラッ


曜「ちょ、ちょっとことりちゃん!」ギュッ

曜(これが現実なんだ、目の前にある光景を見てそう思う)

曜(その光景は実にここ東京らしいモノで、赤だけだというのに極彩色に見えてしまうトラジック。そんな極彩色の姿を見てかことりちゃんは涙を流しながら膝をついて何も喋らなくなった)

曜「………」


スタスタスタ


曜(だからことりちゃんはその場に置いといて私はその先——その奥へ向かった。ことりちゃんに背を向けながら歩けばことりちゃんの嗚咽が聞こえてきて、なんで私はこんな冷静なんだろうと少し疑問に思った)

曜(こんな状況なのにまだ私は現実を理解出来てないのかも、いや…理解したくないのかも。目に見えてても頭と心で理解しなきゃ何も始まらない)

曜(…じゃあ整理しよう、したくないけど)



752: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:26:45.53 ID:hEQnKdja0



スタスタスタ


曜(…私の前で倒れてる人が四人、それぞれがそれぞれの血溜まりを形成して倒れていた)

曜「………ことりちゃん」

ことり「うっ…ひっく…おえっ……な、な…に……?」

曜「………死んでる」

ことり「…あ、あはっ……うわあああああああああああぁ……!」

曜(すすり泣くことりちゃんに現実をつきつけた)

曜(倒れる絵里さんの脈と心臓を触っても聞こえない鼓動は紛れもない死の証拠で、少し振り返ってことりちゃんを見れば赤子のように大きな声を出して泣く姿が瞳に映る。ことりちゃんがこうも泣くなんて誰が想像したんだろう、ことりちゃんを前から知る私からしたらあり得ない話だ)

曜「………」

曜(…それだけ絵里さんの存在はみんなにとって大きかった。私やことりちゃんだけじゃなくて穂乃果ちゃんやせつ菜ちゃんまで引率していった寛大でとても強い人だった)

曜(これからどうすればいいんだろう、絵里さんを失った私たちがやるべきことはなんだろう。少し考えたけど、出てきそうにない)

曜(あぁ…お先が真っ暗すぎてこの現実がイヤになる。自国の大将を討ち取られた武士の気持ちっていうのはきっとこういう気分なんだろう、自分だけじゃどうすればいいのか、どう生きていけばいいのかも分からないまま時間が経とうとしてるんだ)




753: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:27:44.64 ID:hEQnKdja0



ルビィ「ん…ん……」


曜「!」

ことり「!!!」

曜(ことりちゃんが大声で泣く中で絵里さんの隣で倒れていたルビィちゃんが微かな声をあげた、次の瞬間にはむずむずと動いて目をゆっくり開けて起き上がった)

ことり「…まただ」

ルビィ「………」

曜「…また?」

曜(起き上がって周りを一回見渡すルビィちゃんと目が合ったことりちゃんはよく分からないことを言った。それに対してルビィちゃんは顔を下げて何も言わなかった)




754: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:28:40.91 ID:hEQnKdja0



ことり「…また、あなただけが生き残ったんだね」


ルビィ「………」

ことり「あの時もそう、善子ちゃんが死に、絵里ちゃんは重傷。松浦果南は首謀者だったから死んで当然だったけどあなたは無傷だった」

ルビィ「…それは」

ことり「知ってる、後から来たからギリギリ絵里ちゃんを助けられたんでしょ?」


ことり「…でもあなたが生きて、絵里ちゃんが死ぬなんて納得できない」


ルビィ「………」

ことり「………のせいだ」

曜「…?」


ことり「お前のせいだッ!!!」バンッ!


ルビィ「っ!」シュッ

曜「ちょ、ことりちゃん!?」



755: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:30:15.76 ID:hEQnKdja0



ことり「なんで絵里ちゃんを守らなかったの!?なんで絵里ちゃんを死なせたの!?」


ことり「絵里ちゃんが死んだら私たち何も出来ないって分かってたはずだよ!?これからどうする気!?私たちだけで小原鞠莉を倒しに行くの!?」

ルビィ「………」

ことり「そんなの…そんなの……!!」


ことり「そんなのやだよぉ……!」ポロポロ


曜「ことりちゃん……」

曜(常識外れだけど、当然の行為だと思う。絵里さんの近くにいたルビィちゃんに当たりたくなるのは絵里さんの背中を追う者の性だよ、ここにいるのが穂乃果ちゃんやせつ菜ちゃんだとしてもことりちゃんと同じ反応を見せたと思う)

ルビィ「…………じゃあ」

曜「ん……」


ルビィ「じゃあことりさんなら絵里さんを守れたの!!?!?!」バンッ!


ことり「!」シュッ




756: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:30:53.23 ID:hEQnKdja0

ルビィ「あんなの守れるわけないじゃん!“あれ”をどう止めろっていうの!?」


ルビィ「なんで…なんでルビィが絵里さんにごめんなんて言葉を言われなきゃいけないのぉ…!」ポロポロ…


ルビィ「うぇええええええええええええぇぇ……!」


ことり「うっ…うぅ…うあああああああああぁ…」


曜「ふ、二人とも……」

曜(幼稚園児のように涙は伝染していった。手を目にあて口を大きく開けて泣く二人を前に、私はどうすることも出来なくて、こんな自分が悔しかった。泣かない私でいるなら何かしてあげたかった、でも二人にかける言葉がなかった)



757: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:31:21.17 ID:hEQnKdja0



曜「絵里さん…!」


曜「……うぅ」

曜「うぅうううう……うわあああぁ…あああああああああああああ…!!」

曜(私って弱い人間なんだなぁ)

曜(泣く二人を見てたら色んな感情が巡りに巡ってきた。さっきここを出る前に爆薬は仕込んだから後はこのボタンを押せば爆発してY.O.L.Oは終わりなのに、このボタンが押せないや)



曜(…これから私たち、どうすればいいんだろうなぁ……)






758: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:32:53.88 ID:hEQnKdja0

~???

絵里「ん……」

絵里「こ、こは…」

絵里「…どこ?」

絵里(目が覚めて見える景色、それは辺り一面真っ暗な世界。建物もなければ地面も空も真っ黒。それは到底現世とは呼べなかった)

絵里「私…死んだの…?」

絵里(両手を開いて、閉じて自分の状態を確認した。体は動く、目も正常なはず、頭も回ってる。確認すればするほど異常なところはこの景色だけだと分かってくる)


「…そう、あなたは死んだの」


絵里「!!」

絵里(不意に聞こえる声はどこかで聞いたことのある声で、声の成る後ろへ向けばそこには“私”が立ってた)




759: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:34:23.97 ID:hEQnKdja0

絵里「私…!?」

「…私を見ても分からない?」

絵里「…! まさか…!!」


えりち「そう、えりちよ」


絵里「やっぱり…!どうしてここに…」

えりち「…やっぱりあなたは自殺で生涯を終わらせたのね」

絵里「やっぱり?」

えりち「あなたは最強に最も近いアンドロイド、敵の技術を全て吸収する兵器————そして強い正義感を持っていることで様々な者を引っ張っていく守られ愛されるリーダーのような存在を自分に確立させる人との生き方が分かっているアンドロイド」

えりち「あなたには死ぬ要素がない、亜里沙の動きを見て思ったでしょ?これを野放しにさせとくとまずいって」

絵里「………」

えりち「自分のした動きを吸収してリベンジしてくるんだもの、早めに決めたいって思うでしょ?でもあなたは諦めが悪い人、それは亜里沙も同じで粘ってくるのよ。だからみんなあなたと戦うと負けてしまうの」



760: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:35:34.11 ID:hEQnKdja0

絵里「…果南には負けたけど?」

えりち「果南は対策を積んできたのよ、あなたの最強は少し特殊だもの。一度見た動きをコピーするのだから初めてだらけで勝負した果南にその最強は通じないの」


えりち「…でも、ああやって生き延びてしまったあなたは更に強くなってしまった」


絵里「………」

えりち「そんなあなたが死ぬのなら、自殺しかないと思ったの。あなたを殺す為に一番有効な手が精神攻撃なんだから」

絵里「精神攻撃…」

えりち「そう、正義感が強いあなたは人一倍感受性に優れたアンドロイド。一つのテーマで複数の感情を抱くのも案外普通なアンドロイド」

えりち「あなたは自分の正体に気付いた途端、自殺した。それは何故かしら?」

絵里「…私が人間を模したアンドロイドではないからよ、人間じゃないアンドロイドがアンドロイドと人間を平等にしろなんて言うのはおかしいでしょ?」

えりち「…どうかしらね、それは返答し兼ねる問いかしら」

絵里「そう、とにかく私に生きる意味はもうなかったのよ」



761: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:36:27.41 ID:hEQnKdja0

えりち「……違うかしら」

絵里「…どうして?」


えりち「あなたは大きな勘違いをしているわ」


絵里「勘違い?」

えりち「ええ、あなたはそれを知る権利がある」

絵里「…つまりそれは何?」

えりち「もし死ぬのであればあなたには真実を知ってから死んでほしい、その真実こそがあなたにとって存在証明にもなるし、自殺のトリガーにもなる」

絵里「ねえ話聞いてた?その勘違いって言うのは何?」

えりち「…知りたいの?」

絵里「知りたいわ」

えりち「無理ね、あなたはもう死んだのよ」

絵里「…生きてれば分かったの?」

えりち「分かったと私は思うわよ、でもあなたは死んだ」




762: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:37:21.22 ID:hEQnKdja0

絵里「…じゃあこれからはあなたが私として生きるの?」

えりち「いやそれはないかしら、まだ」

絵里「まだ?」

えりち「いずれはそうなるかもしれない、けど今の私にはあなたの身体を乗っ取ることは出来ない」

絵里「それは技術的な意味で?」

えりち「ノーね、感情的な意味で、よ」

えりち「乗っ取ることが出来ないというよりかは乗っ取りたくないが正しいわ」

絵里「どうして?私は死んだんでしょ?あなたが今度から絢瀬絵里として生きればいいじゃない」

えりち「…本当にそう思ってる?」

絵里「………」

えりち「いくら自分が常識外れの何かを持ってたとしてもそれで死んでいい理由にはならないと私は思うんだけど?」

絵里「…そうね、でも今更悔しがったって何もならないじゃない」



763: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:40:01.15 ID:hEQnKdja0

えりち「…園田海未は分かるかしら?」

絵里「園田海未?あぁあの青い髪の…」

えりち「そう、あの子はとても真面目で何事にも真摯で、とっても可愛い子だったわ」

絵里「…なんであなたがそんなことを知ってるの?」

えりち「いいから聞いて、そんな可愛い海未だったけど、海未は人間に存在する生命力を否定するようなモンスターのような生命力を有していた。銃弾を腹に貫かれても死なないくらいにね」

絵里「…聞いたことあるわ」

えりち「ええ、海未は人間だった、けど人間染みたモノではなかった。故に蔑まれた存在だった」

えりち「だけど海未が青色のシャツを着て、灰色のスカートを穿いて街中を歩き、時に無邪気に笑う姿を見れば彼女もやっぱり人間なんだって思ったの」

絵里「………」

えりち「人間じゃないっていうのはね、あからさまなの」

えりち「人の心を持っていて、ちゃんと笑うこと怒ること泣くことが出来て、そして中身も含めて人の形をしてることが人間なの」

えりち「それに従えばあなたは人間でしょ?あなたは人のために自分を犠牲にすることが出来る心優しき人間でしょ?」


えりち「というかむしろ、誰かを守れる力があなたにはあるのだからそれを誇りに思うべきだと私は思うの」


絵里「………」



764: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:40:43.85 ID:hEQnKdja0

えりち「…あなたは生きるべきだったのよ」

絵里「…そんなこと言われたら死んだ私がバカみたいじゃない……」

えりち「……ええ、あなたはバカよ。大馬鹿者よ」

絵里「…うぅ……!」

えりち「…やっぱりあなたは私なのね」

絵里「ううう…どういうこと…?」メソメソ

えりち「……ねえ」


えりち「私とバトルしない?」


絵里「ば、バトル…?」

えりち「文字通りよ、今は銃が無いから格闘だけだけどね」



765: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:41:54.64 ID:hEQnKdja0

絵里「バトルなんかして何になるの…?」

えりち「最後に確かめたいの、あなたの意志を」

えりち「この東京に住んでたのなら戦いの意味は分かるでしょ?」

絵里「…生きたいと思う意思の表れ」

えりち「そう、例え力不足でも必死に抗って変わる未来もある。だからあなたの意志を確かめたいの」

絵里「……わかったわ、いいわよやりましょう。私も最後くらいは本気で殴り合いをしたいわ」

えりち「…あなたも生粋のアンドロイドなのね」

絵里「溜まった感情を吐き出すにはこういうことをしないと出ないのよ」

えりち「そうね…その通りだわ」

絵里(そう言った直後に高まる緊張感を感じないわけない、張り詰めた空気が鼓動を早くしてうるさい、うるさすぎる)

絵里(始まりの合図はきっともう鳴ってるのでしょう、相手のその一言が始まりで、だけど始まってるというのに私も相手も動こうとはしなかった)




766: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:43:23.44 ID:hEQnKdja0

絵里「………」


えりち「…来ないの?なら私から行くわね!!」ダッ


絵里「!」

絵里(そう言って始まった戦いは銃が無いというのに銃撃戦のように凄まじい勢いを秘めたものだった)


タッタッタッタッ


えりち「先手必勝!攻撃が最大の防御よ!」ブンッ!

絵里「おっと」シュッ

絵里(走り込みで私に近づき最大火力と言ってもいいくらいの右ストレートが飛んできたから私は素早く左へ回避して、私の横を通り抜ける相手に対して回し蹴りで後頭部へ狙いを定め脳震盪を与えようとした)


えりち「それは見たことある」ガッ


絵里「!!」




767: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:45:58.70 ID:hEQnKdja0



えりち「そしてこれは見たことある?」


絵里(左上腕で私の蹴りをガードし、右ストレートで伸ばした右腕を戻しそのまま私の喉元に向かって肘打ちをしてきた、だけどそのくらいなら見えるし反応速度だけでなんとかなる)


絵里「はっ!」ガシッ


絵里(私は咄嗟に右手で肘打ちを受け止める————けど攻撃は止むことはなかった)


えりち「そう、あなたはそれを受け止めるのよね、だからわざわざ受け止められる選択を取ったの…よっ!」ドカッ!


絵里(相手はどれだけ計算高かったのかしら。回し蹴りにより右足を高く上げたまま、右手で肘打ちを受け止める私に、次来る突き蹴りを躱す術はない)

絵里「くっ…!」

えりち「よい、しょっとっ!」ドカッ!


絵里「ッ…!!」


絵里(少し弱めに調整された控えめな突き蹴りは私を倒すことなくよろめかせるだけにとどまった、しかしそれがいけなかった。次、よろめく私に歯向かうのは鋭い上段蹴りで、これには死を悟った)



768: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:46:51.18 ID:hEQnKdja0

えりち「…やはりあなたは強くなりすぎてる、私の計算なら今の三連撃で勝負はついてたはず」

えりち「そして驚いたわ、今の一瞬で顔じゃなくて首に命中するよう角度を変えるなんて」

絵里「亜里沙の蹴りをもろに食らったものでね、あの時も回避は出来ない状況だったしせめての対処法をしたまでよ」

えりち「…私の蹴りも見たことがあったってことね」

絵里「……そうなるわね」

絵里(これが私なんだ、ただそう思った)

絵里(見たことあるから対応されて、自分のやった攻撃でやり返される…そんな相手が弱いはずがない。実際今の私は強い、蹴りを首に当たるようにしたその一瞬の判断はきっと今までの戦いがなきゃ出来なかった)

絵里(だから今となっては私は戦いの道を選ばないほうが幸せだったのかもしれない)




769: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:48:18.15 ID:hEQnKdja0



えりち「そうなのね、でも私が有利なのは変わらないことよ!」ダッ


絵里(さきほどの走り込みとは違い、両手を下げて私の元へと来る相手——それを見るに戦法を変えてきたみたいね)


えりち「ほらほらっ!私の舞は躱せるかしらっ?」


絵里「っ!その動き…!!」

絵里(チョップや掌底、後ろ回し蹴りや跳び膝蹴り、ローキック、肘打ち、スライディングなど技の種類問わずとにかく鋭い一撃が私に歯向かう、それを避けようと飛び退くと相手も引っ付いてくるように跳躍で私との距離を開かせず逃げる隙を与えてくれなかった)


絵里「…っ!それって!?」


絵里(よくよく見れば分かることだった。その速度や打ち方だけでなく指先まで整っているキレのいい掌底や肘打ちはどう見てもことりのモノよ、だけどその身軽で、本能的で、戦闘を楽しむような姿は凛そのものだ。しかもこの何度も何度も鋭い一撃を繰り返して相手を寄せ付けない上に死を全く恐れてなさそうな勢いで相手との距離を放さないその戦法————それはまさしく希のショットガンの舞だった)

えりち「気付いた?そうよ、こうやって応用だって出来るのよ!」

絵里「くっ…そんな反則でしょ!」シュッ

えりち「あなたにも使えるのよ?文句は言えないはずよ」

絵里「だからってそんな…!」

絵里(やっぱり私にも使えるのね、今も希のショットガンの舞を格闘だけで疑似的に再現してる相手を見てるとこの力がどれだけとんでもないものかを痛いほど感じさせてくれる)




770: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:49:29.15 ID:hEQnKdja0

絵里「………」

絵里(ここで私は一つ思う、このまま戦いを続けててもそれぞれが見たものを返し合ういたちごっこになる。それは不毛であり意味のない戦いに過ぎない、なら短期決着が望ましい)


絵里「……よしっ」


絵里(その時私は一つの道を見つけた、この相手に————私に勝つ方法を)

絵里(私一人じゃ勝てなくても、“みんなの力”を使えば勝てるのよね、私にだって)


絵里「…じゃあラストスパートと行きましょうか」


絵里(私個人の始まりのトリガーは今引かれた、ショットガンの舞をしながら近づく相手に私は姿勢を低くして近づいた)


えりち「っ!この舞に近づくの?」


絵里「ええ、私はそれが良いと思ったから」




771: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:50:14.47 ID:hEQnKdja0

絵里(あの時の希の動きは双方にショットガンを持つことで片方でトリガーを引いてももう片方を撃つことで反動を相殺する仕組みで、銃があってこそのよく出来た戦術だ)

絵里(ただしそれは力業でもなければ希だけが出来る業でもなく、工夫を何重にも施し、メリットとデメリットを計算しつくした希の有する力でも出来るようにした業であったと思う)

絵里(この動きのメリットは相手を寄せ付けない、相手を無理矢理動かすことが出来る、手数で勝つことが出来たりと火力面では強い)

絵里(だけどその動きは————)


絵里「片方の足を上げないと成立しないのよね!!」


えりち「!!」

絵里「もらったぁ!」ズサー

絵里(あの動きは重心をどちらかの足に置いてバレエのような舞を射撃と共にするまさにダンスそのもの、片足を上げることで次へのステップをすぐに行えるように、そしてそれを連鎖的に行えるようにした最大の特徴であり最大の弱点)

絵里(銃が無い今は近づくことも不可能ではない、あの片足を————重心を弾くことが勝利への第一歩なのよ)



772: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:54:36.64 ID:hEQnKdja0



えりち「あっ……」


絵里「これがことりの力よ!」ドカッ

絵里(バランスの要であった片足をスライディングで崩して宙に浮かせ、その後すぐにスライディングを解除して飛び膝蹴りをした)


ことり『強くてごめんねっ!』


絵里(あの時ことりが見せてくれた飛び膝蹴りを真似た、右足から天を統べる鳳凰のよう凛々しく飛んで、左膝で“打撃”を行うのではなくこの左膝を相手の背中に“めり込ませて”相手を吹き飛ばす。中国拳法で鍛えられたキレの良さは他の人の飛び膝蹴りとはまた違う強さがあった)


えりち「っあぁ…!がっ………」

絵里「えっ…ちょっと……」


絵里(背中から私の蹴りを受けた相手は派手に宙を舞い横へ吹っ飛ぶのではなくて上へと吹っ飛び胸から地面へと叩きつけられ、大量の血を口から吐き出して動かなくなった)

絵里(…これは相手がアンドロイドだから分かるけど、私の蹴りは確実に背中辺りにある何か重要なシステムを担う何かを壊した。その結果機能が一時停止してる可能性が高くみんなの力を使わずともことりの力だけでKOさせてしまった)




773: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:55:52.02 ID:hEQnKdja0

絵里「……やっぱり私…」

絵里(目を開けたまま、口を開けたまま動かない相手…ううん私を見て思うのはやはりこの力は使うべきものではないというのが分かる)

絵里(拳銃も持ってなかった私が今では格闘だけでこんなことができるなんて思いもしなかった)

絵里「………」

絵里(確かに相手が言う通り、誰かを守る為の力があるのは誇らしいことだと思うけどこの力はいくらなんでも人間離れしすぎてるし、ましてやアンドロイドの括りにも到底嵌められたモノじゃない)

絵里(この力を持って私は何を全うするのだろう、この力の存在を知っていながら私はどういう生き方をするのだろう)

絵里(分からないけど…分からないけど私という化け物が死んで私は心底安心した)


『…やっぱりあなたは自殺で生涯を終わらせたのね』


絵里(…そう、そうなってしまうのよ。今ならよく分かるわ)

絵里(だって私は死にたくないもの、死にそうになったら必死に抗って逃げたり戦ったりして生き延びたい生き物なんだもの)

絵里(だけど生き延びた分強くなっていく私はあのまま生き続ければきっと軍神と謳われた穂乃果以上にアンドロイドという歴史に名を深く刻むことになるのでしょう。だからそんな物語がここで止まってよかった、正義感という私が、私という正義感が私の死を心から喜んでいた)



774: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:57:14.02 ID:hEQnKdja0

えりち「…ぷはっ」

絵里「!」

えりち「はー…負けたわ」

絵里「…私の勝ちね」

えりち「ええ」

えりち「…さっきも言ったけどあなたは強くなりすぎてる」

絵里「ええそうよ、だから私は平和を崩さない為に死ぬ運命にあるのよ?よく分かったでしょ?」

えりち「いいや、あなたは生きる運命にある。何故ならあなたには守るべき人がいて、知るべき真実があるから」

絵里「…あなたは一体何を知っているの?」

えりち「……少なくとも、あなたよりかは遥かに知っていることが多いはずよ」



775: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 19:58:32.83 ID:hEQnKdja0

絵里「…じゃあ聞くわ」


絵里「私の知るべき真実っていうのはどこにあるの?」


えりち「ええ、答えてあげる。それは————」



えりち「——小原鞠莉がいるあのホテルの最上階よ」



絵里「………」

えりち「そこにあなたが一番知りたい真実があるわ、あなたはそこでこれまでとこれから全部を含めたとしても最大となる選択に迫られる」

えりち「あなたは死ぬ前にターニングポイントを作りなさい、死を語るのはそれからよ」



776: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:00:21.92 ID:hEQnKdja0

絵里「…まるで私が生きていてそこに行けって言ってるような口振りね」

えりち「ええ、生きてるもの」

えりち「…いや、具体的には死んでるけどね」

絵里「…何を言ってるの?」

えりち「あなたは死んだわ、人間の脳に当たる記憶保存領域に鉛玉を撃ち込んだからね、記憶保存領域の内部を破壊したことによりあなたの記憶は機械的に保持が出来なくなる。壊れた記憶保存領域からしちゃあなたの記憶は存在不明、解析不能なモノになってしまうからまさにTHE ENDって感じ」

えりち「でもおかしいと思わない?記憶保存領域が壊れてるのになんであなたの記憶は今もこうして保持されてるの?」

絵里「それは…」

絵里「………」

えりち「…分からないでしょ?当然よ、だって知るはずがないもの」

絵里「…どういうこと?」




777: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:01:33.72 ID:hEQnKdja0



えりち「あなたは私————私はあなた」


えりち「ここまで言えば分かる?」

絵里「………分かりたくない」

えりち「正直ね、でもごめんなさい。分かってもらうわ」


えりち「私という存在が生きてるからあなたはまだ記憶を保持していられるのよ」


えりち「あなたには真実を知る権利があるの、だからその真実を知ってもらうまで私はあなたを殺さない」

絵里「…じゃあ私があなたを今ここで殺せば私は死ぬの?」

えりち「ええ、死ぬわ」

絵里「………」




778: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:02:29.22 ID:hEQnKdja0

えりち「さっき戦って分かったわ、まだあなたには戦う気力がある。生きる力を完全に失ったわけじゃない」

えりち「勝ちたいって思えるならもうそれでいいわ、小原鞠莉のところに往って小原鞠莉に勝ってきなさい」

絵里「…無茶言うわね」

えりち「でも、その無茶をやろうとしてたのはあなたでしょう?」

絵里「………」

えりち「…残念だけど今ここで私を殺そうとは思わないほうがいいわよ、私とあなたは平行線の存在。今という状態じゃあ何をしたって変わらないわ」


えりち「だって同じ存在なんだもの」


絵里「………」

えりち「元々私はあなたが死んだ時に埋め込まれる新しい記憶だった、けどいいわ。私の命をあなたにあげる」

えりち「この命こそが最後の命。私とあなたは一心同体なの」

えりち「だからこの私が託した命で退廃した世界を変えなさい、あなた自身の力で」

絵里「………」




779: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:04:06.56 ID:hEQnKdja0

えりち「返事は?」

絵里「…何故私にそこまでするの?」

えりち「あなたは私だけど、私はあなたではないからよ」

絵里「……意味が分からないしさっきと言ってることが違うんだけど」

えりち「同じ存在でも、違う私たち————でも今の本当のあなたっていうのは生まれた時から記憶を保持してるあなたでしょう?あなたが生きている以上私はあなたを応援するわ」


えりち「これは“私”としてのけじめなの」


えりち「私、命に盲目じゃないから」

絵里「……そう、分かったわ」



780: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:04:55.11 ID:hEQnKdja0

絵里「なら初代絢瀬絵里に免じてここはあなたの命を貰うわ」

えりち「ええ、ありがとう」

絵里「…お礼を言うのは私なんだけど?」

えりち「あなたは私、私はあなた。だから嬉しいのよ」

絵里「………」

絵里(私という人物はこういう人なのかしら…少し考える)

絵里(確かに私は正義感の強いアンドロイドよ、決して自分の持つ強さを曲がらせることのない自分を強く持った人格が備わってる)

絵里(でも、自分の命をあげる?私が?当事者でもなんでもないしこれに関しては考えたくもないから一概には何とも言えないけど私はそんな人が良いアンドロイドだとは思わない)


絵里(……これが“次の私”なのかしら)





781: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:06:07.69 ID:hEQnKdja0

えりち「とにかくあなたは後数分後には現実へとトリップする、記憶保存領域は壊れてるしおそらく頭には穴が空いたまま、だけどあなたはそれでも正常よ」

絵里「…なんなのそれ」

えりち「私のおかげよ、だからあなたは諦めるまでは最後まで強く生きていきなさい」

絵里「……ええ、分かったわよ」

えりち「素直でよろしい、じゃあね」


えりち「私は常に私でありなさい」


絵里「……なにそれ」

えりち「偽物の命なんて、この世にはないんだから————!」

絵里(その言葉はよく木霊した、この何もない世界で、この穴の開いた私の頭の中で、何重にもなって木霊した)

絵里(————視界が真っ白になった、そう感じた一瞬を最後に私の感覚全てが消えた)

絵里(それは現実へ向かう為の動作であり、臨死体験とでも言っておきましょうか、ある意味仮死を体験した瞬間でもあった)




782: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:07:23.22 ID:hEQnKdja0



絵里「ん……んん……」


絵里(次に意識が戻ってきた時は目を開ける前から自覚した)


絵里(私、生きてるって)


絵里「…はっ」

絵里(だから強く目を見開いた)

絵里「……ここって」

絵里(匂いだけでも分かるこの懐かしい感じ、レジスタンスであったみんなと生活を共にして、時には刃物にもなり兼ねない言葉が飛び交った小さな戦場でもあり、みんなの笑いが集う楽園でもあったこの場所…)


絵里「…家だ」


絵里(明かりが何一つついてない真っ暗なリビング、いつも回ってるはずの天井扇も回ってなくて、横になっていたイスから降りて真っ暗な地面を歩けば当たる金属の感覚)

絵里「これ……」

絵里(せつ菜の武器だ、リビングのテーブルには曜のハンドガンがあり、このリビング・ダイニングに無造作にみんなの武器が散らばってた)




783: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:08:29.47 ID:hEQnKdja0

絵里「………」

絵里(…荒れたんだ、なんとなく想像がつく)

絵里(私がリーダーなんだから、その私が死んだら統率が取れなくなって何をすればいいのか分からなくなるのよね、もし私がことりや曜の立場だったら私だって荒れるもの、ずっと泣くもの)

絵里(…でも、そんなみんなが今ここにいない)


絵里「…みんなっ!」


絵里「………」

絵里(返事は無かった。寂しさを誤魔化す為に完全に閉じられたカーテンを少し開ければ月明かりが私の視界を奪う。だから眩い月明かりから外れればここら辺に転がってる武器が照らされてこのリビングにみんなの持つ武器全てがあることが分かった)

絵里「……っ」ダッ

絵里(家中を駆け回った、私や曜がいつも寝てる寝室、お風呂、図書室、ことりや善子が寝てた寝室、トイレ、この家全てを回ったけど誰もいなかった)

絵里「………」ジワッ

絵里(みんないなくなっちゃった)

絵里(私がいなくなってみんな戦う意味がなくなったのかしら…そう思うと私の物語ももう、終わってしまったのかも)




784: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:11:04.77 ID:hEQnKdja0

絵里「うううぅううううっ………」

絵里(ただ単純に悲しかった、今まで戦線を共にした仲間全員が消えた。それに私は実質ルビィを殺した、私の無駄な死が人数不利を作ってルビィを死へ一気に近づけた)

絵里(二代目の私からエールを貰ったのはすごい励みになったけど、現実がこうじゃ見えるのは絶望だけ)

絵里(……いや、自業自得なのは分かってるんだけどまさか自殺してから現実へ戻ってくるなんて考えてるわけないでしょ?)

絵里(それにあの時の私は本当に死を望んでいた、あの時ほど自分がイヤになったことはない)


絵里(…事実、今でも私は人間離れを起こしているわけだし)





785: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:12:33.14 ID:hEQnKdja0

絵里「うぅ…うぇえええあああああああ…!!」ポロポロ

絵里(戻ってきた現実は相変わらず退廃的で、死にたくなるほど絶望的でどうすればいいか分からなくてただ泣いた。涙を我慢する必要なんてなくて募りに募った悲しみ全てが赤子のように泣く私の口から出てた)

絵里(これからどうすればいいんだろう、私一人で鞠莉のところへ行けるのかしら?)


絵里(…否、無理があるわ)


絵里(ならどうすればいいの?私は私に問う)

絵里(……ダメね、他の方法も見つかるはずがない)

絵里(こんなお先真っ暗じゃ涙も枯れることを知らないままでいるようで、今はただ…ただただ泣き続けるだけだった)




786: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:14:19.54 ID:hEQnKdja0



「絵里…ちゃん…!?」


絵里「!!」

絵里(それは突然声が聞こえた。昨日聞いた…いや今日聞いたばっかなのに数年ぶりくらいの懐かしさを感じるこの声————その声に私は目を丸くした)

絵里「こ、ことり…?」

ことり「絵里ちゃんなの…?絵里ちゃんなの!?」

絵里「ええ!ことりなのよね…!?」

ことり「うんっ!ことりだよ!絵里ちゃんに助けてもらったことりだよ!」

絵里「うぅ…うわああああああああああん!」


ギューッ


ことり「わぁ!?ど、どうして絵里ちゃんが…?」

絵里「帰ってきちゃったのよぉ…!」




787: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:14:49.79 ID:hEQnKdja0

曜「ことりちゃんどうし————って絵里さん!?」

絵里「曜!曜よね!?」

曜「な、なんで絵里さんが……」


タッタッタッタッ


穂乃果「絵里ちゃん!?」

絵里「みんな…!」

絵里(ことりの存在に気が付けば玄関の方の扉が開いててそこから曜や穂乃果がやってきた。それを見て安心した、仲違いを起こしたり分裂したりしたわけじゃないんだって)




788: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:15:56.01 ID:hEQnKdja0

ルビィ「…絵里さん」

絵里「ルビィ…ごめんなさい……」

ルビィ「…どうして、あんなことしたんですか?」

絵里「…そうよね、言わなきゃダメよね」

穂乃果「…何があったの?」

曜「私も気になる、そして絵里さんがこうして今ここにいる理由も」

ことり「私も」

絵里「ええ、話すわ。全てを」

絵里(私は私自身の機能について、自殺してから今に至るまでの事、そしてこれから行うべきことの三つを話した。どれもこの世界では初めて話すことで聞いてる誰もが驚きを隠せないようでいた)

曜「それじゃあ希ちゃんの探してた標準型アンドロイドXっていうのは……」

絵里「…ええ、多分私の事」

ことり「私の中国拳法が使えるって…」

絵里「実際使ったけどよく真似出来てたわ」

ルビィ「…絵里さんは人間だよ、ちゃんとした人なんだから」

絵里「…ありがとう、ルビィ」

絵里(しかしみんなのその後の反応といえば驚きもあったけど何より温かった。こんな大罪を犯した私でも許してくれるみんなの優しさが逆に痛かった)



789: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:16:40.01 ID:hEQnKdja0



えりち『あなたは最強に最も近いアンドロイド、敵の技術を全て吸収する兵器————そして強い正義感を持っていることで様々な者を引っ張っていく守られ愛されるリーダーのような存在を自分に確立させる人との生き方が分かっているアンドロイド』


絵里「………」

絵里(分かる気がする)

絵里(……いや、自分を優しいとかそういう風に思うつもりはないけど、私ってちゃんとリーダーをしてて引っ張っていってるんだなって自覚はある)


絵里(人間関係に恵まれてるんじゃなくて、人間関係を上手いように操ってるのが私なんだ)


絵里(そしてそれが本能的に、感情的に行ってるから私は私を憎めない。私が心から思うことがその人にとって最高の選択になるんだから改めて私の存在が強く見えた)




790: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:18:12.11 ID:hEQnKdja0

絵里「…あれ?花丸とせつ菜は?」

ことり「え、それはぁ……」

ルビィ「………」

絵里「…何?」

絵里(…だけど現実が良いことばかりじゃないのはもう知ってる、今まで笑顔やら安堵の息をついてたみんなが急に顔を曇らせた時には何かを察した)

穂乃果「…花丸ちゃんは死んだ、せつ菜ちゃんは意識不明の重体」

絵里「えっ……」

穂乃果「…花丸ちゃん、自爆特攻をしたんだ。私とせつ菜ちゃんだけじゃあの二人に勝てないからって」

絵里「……そんなことが」

曜「…だから、そんな花丸ちゃんの死や絵里さんの今まで繋いでくれた道を無駄にしない為にも最後まで頑張ろうって私たち決めたんだよ」

ことり「…多分、私たちの銃はもう敵に割れてる。街中で銃声がしたならそれは私たちだってすぐにばれちゃうからまだ知られていない武器でせつ菜ちゃんを真姫ちゃんのところへ連れてくために外へ行こうって言って武器を整えたんだ」

絵里「…あ、じゃあこの武器は……」

曜「そうだよ、とりあえずここの武器庫にあった武器をいっぱい持ってきて自分に合う武器を取っていったんだ」

絵里「なるほど……」



791: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:19:20.87 ID:hEQnKdja0

絵里「…花丸が死んでせつ菜が目覚めない……」


絵里「…となると残り戦えるのは私たちだけになるのかしら?」


ルビィ「…そうだね」

ことり「…うん」

穂乃果「随分と減ったね……」

曜「五人か……」

絵里「…こうなっては仕方ないわ、この五人で鞠莉のいるホテルの最上階を目指しましょう」

絵里(戦いは増えるモノと減るモノが一緒な出来事だ)

絵里(生きてる人が減り、死人が増えるこの出来事では時間によってもたらされる変化がとてもよく分かった)

絵里(最初こそたくさんいた、敵も味方もね)

絵里(でも今は敵も味方もほとんどいない、千歌も善子も果南も…凛も海未もにこもいない)

絵里(やはりこの東京では——ううん、東京のせいにはしない)


絵里(この戦いという出来事には死と正面から向き合わないといけないらしい)


絵里(…そんなこと分かってたけどね。でも気付くと周りは死んだ人たちばっかりだったから少し過去が淡く見えた)



792: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:20:08.41 ID:hEQnKdja0

穂乃果「……小原鞠莉のいるホテルの最上階に行くならどう考えても実行は今日の夜だよ、Y.O.L.Oまで破壊したんだ、流石に政府も黙っちゃいないよもう」

曜「その通りだよ、政府が戦いに絡むとなると逃げることは可能だけど挑むのはかなり難しい」

曜「だからおそらく今日が最初で最後のチャンスだよ」

ルビィ「…うん、ルビィもそう思う。ホントなら今すぐにでも行きたいけどそれだと準備不足だからね、明日ならまだ政府も対応に追われる頃だからまだ間に合うと思う」

ことり「…じゃあいよいよなんだね」

絵里「……ええ、果林と梨子がY.O.L.Oのアンドロイドを殺しに動いてたのも一枚鞠莉が噛んでるらしいわ、だから今この混沌の時に行くべきよ」

穂乃果「…うん」



793: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:22:15.85 ID:hEQnKdja0



絵里「……ってあれ?そういえば果林と梨子はどうなったの?」


曜「それならY.O.L.OのアンドロイドにEMPグレネードを当てて終わったよ」

絵里「え?」

曜「一番最初に戦った時私が銃弾を避けることに驚いてたからEMPグレネードの知識も無いんだろうなぁって思ってたけど案の定やっぱりなかったよ」

ことり「…死んだ絵里ちゃんを連れて帰る時に会ったけど“私たち必要なくない?”みたいなこと言いあってて人生楽しそうだなって思ったよ」

曜「…まぁ私たちに対して敵意が無いのはすごくいいことなんだけどね」

絵里「やっぱりEMPグレネードって強いのね……」

曜「まぁね、でもアンドロイド相手に投擲物は基本当たらないからそれを当てることが出来た二人の腕は本当にすごいよ」

曜「絵里さんにも勘違いしてほしくないんだけど、EMPグレネードは万能武器じゃないからね」

曜「コストが高くて量産も出来ないからちゃんと使い時を見極めないといけないよ」

絵里「難しいのね…」



794: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:27:39.74 ID:hEQnKdja0



ルビィ「…亜里沙ちゃんと雪穂ちゃんは私が殺した」


絵里「!!!」

ルビィ「……ごめんなさい」

絵里「…そう、いいわ。気にしないで、元々私が殺す相手だったんだから」

絵里「……それにしてもよく亜里沙を殺せたわね?」

ルビィ「…ルビィもあの時は狂ってたよ、絵里さんが死んで泣いてた亜里沙ちゃんを狂った衝動で殺してその後雪穂ちゃんとタイマンをして勝った」

穂乃果「狂ってたって何?」

曜「それは同じ事思ったかな」

ルビィ「…絵里さんが死んだショックみたいなものだよ、自然と笑いが出てきて目の前にいる生き物を殺したくなっちゃって……」

絵里「……ダイヤもそうだったわ、ダイヤという名前に恥じない壊れない精神を持っていたものけど、ルビィの件で一度壊れてしまうと心の修復が利かなくなって性格がどんどん曲がっていった」

絵里「…私はそこまでダイヤとは関わりがなかったけど、ルビィが目覚めなくなってからのダイヤは一目見て変わってしまったというのが分かった」

絵里「だから遺伝…なんだと思うの」

穂乃果「……そっか」

曜「そうなんだ……」



795: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:28:29.44 ID:hEQnKdja0

絵里「……ええ」

絵里(…まぁ覚悟はしてたけどやはりきついものがあった)

絵里(あんな純粋無垢な妹の死に様を見なくて済んだのが不幸中の幸いと言っておきましょう、戦闘型アンドロイドなのに一度も戦闘をしたことがないというのは嘘偽りもなく、それ故に亜里沙は戦いのリスクをもろに受けて死んだ)

絵里(…もし、次の亜里沙が私の元へつくとしたら今度はどんな亜里沙なのかしら)

絵里(そしてそれを愛せるのか————今の私には新しい亜里沙を愛することが出来る自信がない)


絵里(……やっぱり、東京は道徳が廃れた場所だ)


絵里(東京のせいにはしたくないけど、東京じゃなかったらきっとこうじゃなかったのよ)





796: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:29:41.19 ID:hEQnKdja0



ことり「……とにかく準備しようよ、今こんな話してても誰も得しないよ?」


絵里「…その通りね、準備しましょう?またあの時みたいに楽しく生きていかなきゃ!」

曜「うんっ!よしっ!準備しよう!もう出し惜しみは無しだよ!使える物は全部使っていこう!」

穂乃果「…分かったよ、やるよ!勝利を取るよ!」

ルビィ「…うんっ!」


絵里(あぁ良かった、自分が使う武器を整え始めるみんなを見て私は強く思った)


絵里(————この五人で戦っていく)


絵里(…いや、正確には六人よね。真姫も入れなきゃいけないもの)

絵里(最後の戦いで歴史を変える人物として選ばれた私たちはどこまで往けるのかしら)



797: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:31:06.94 ID:hEQnKdja0



ガチャッ


絵里「!」


真姫「…!絵里…!?」

絵里「真姫!」

真姫「し、死んだって聞いてたのにどうして…?」

絵里「まだ死んでなかったの!だから…今日——今日の夜に決めにいくわ」

絵里(準備が始まると同時に、選ばれし人物の六人目がやってきた)

真姫「…よかった、私絵里が死んだ時私も死のうって思った、私も絵里の仲間として生きていくと決めた以上、絵里が死んでもうやれることはなかったから」

真姫「……でも死ねなかった、怖くて、怖くて…」

真姫「…絵里、あなたが生きているのなら私もまだ生きれるわ」


真姫「…本当に良かった」ギューッ


絵里「……私も真姫に会えてよかったわ」ギュッ

絵里(私と真姫はお互い強く抱き合って、気が済むまで相手の温もりを感じたところでようやくツッコミが入った)

ことり「…重くない?真姫ちゃんの愛」

穂乃果「私も同じ事思った」



798: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:32:31.54 ID:hEQnKdja0

曜「うーんアリだと思うけどなー真姫ちゃんは絵里さんに尽くしてるし」

ルビィ「うんうん、ルビィも良いと思う」

真姫「ちょっ…尽くしてるってなによ!」

曜「違うの?」

真姫「ちが…うと思うわ」

ことり「そこ迷うんだ…」

絵里「…まぁいいわ、とにかく各自準備をしましょう、今回の戦いでは爆発物は最低限でいいわ、ホテルの最上階を目指すからグレネードは正直使えない、今回の作戦では屋内戦を強いるから動きやすい軽装でいいわ」

ことり「了解だよ」

絵里(ことりがお風呂へと向かうのを見てそれぞれ自分のやることをやり始めるのを見て私も動き出す、真姫も機材をたくさん持ってきたらしく最後の戦いではオペレーターになるらしい)

絵里(曜とルビィは銃器のチェックをし、穂乃果は目的地の情報を集めてた)

絵里(そんな私は夏真っ只中の夜に戦いをすれば汗はべとべと、だからそれを洗い流す為にことりと一緒でお風呂に入ったのだけど、そんな時思った)


絵里「……本当に穴が空いてる」


絵里(9mmの弾が私の頭を突き抜けたことによって空いた穴が気になった、この様子じゃ記憶保存領域が壊れてるっていうのもウソではなさそうだしますます私の存在が意味不明になってくる)

絵里(あの新型アンドロイドも複数命があるとは言ってたけど、じゃあその複数の命はどのような意味があって複数の命とされてるのかしら…)

絵里(…頭と胸を撃っても死なないとなると、後はお腹と足と肩を撃てば死ぬのかしら?いや、そんな単純じゃないのかしら…?)

絵里(考えれば考えるほど深みにハマっていって謎が解けそうにないわね…)



799: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:34:28.51 ID:hEQnKdja0



絵里「…いや、分かるのよね」


絵里(そう、それが知りたきゃ鞠莉のいるホテルの最上階へ向かえばいいのよね)

絵里(そこに全ての真実が眠ってる、私はそれを知りたいからこの現実へ戻ってきた)


絵里「……待ってなさい、鞠莉」


絵里(これは私からあなたへの————宣戦布告よ)


ことり「……あのー」


絵里「ひゃああ!?!?」

ことり「いやなんで驚くの!?最初から私いたよ!?」

絵里「い、いや全然気付かなかったわ…」

ことり「えぇ…気配隠してたわけじゃないのに……」

絵里「ご、ごめんなさいね、ちょっと今日の夜のことで集中してて……」



800: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:35:41.27 ID:hEQnKdja0

ことり「……まさか絵里ちゃんとこんなことするなんて思いもしなかったよ」

絵里「私もよ、最初は敵だったのにね」

ことり「…今も分からないの?」

絵里「えっ?」

ことり「…私を助けた理由だよ、あの時絵里ちゃんは自分でも分からないって答えたじゃん」

ことり「私を助けても意味なんてなかったはずだよ、曜ちゃんや矢澤にこには見つかるし死ぬ危険性も充分にあった、それなのになんで?」

絵里「……私が助けるべきだと思ったから助けたのよ」

絵里「例え敵だろうと、目の前でことりが殺されそうになってたなら助けるべきだと私は思ったの」

絵里「あそこで見殺しにしたら私は一生後悔する、必死に逃げることりの姿を見てられなくて、私が助けなくて誰がことりを助けるんだって自分を奮い立たせたの」

絵里「…今ならよく分かるの」


絵里「私、人が殺せないんだって」


ことり「………」

絵里「人が殺せないから、ことりを見殺しになんか出来ないの」

絵里「またことりが死にそうになった時はきっと…いや絶対に助けるわ」




801: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:36:20.70 ID:hEQnKdja0

ことり「…うぅ……!」ジワッ

絵里「えっちょっとことり!?」

ことり「うぅうううう…!ぅ絵里ちゃん優しすぎるよぉ…!」

絵里「そ、そうかしら……」

ことり「…よかった、私絵里ちゃんの背中を追いかけることが出来て」

ことり「苦しいことはたくさんあったけど、それと同じくらい嬉しいことや楽しいこともあった」


ことり「私、この戦いが成功に終わったら絵里ちゃんの学校に通ってみたい!」ニコッ


絵里「…!」

ことり「…なんて、無理かなぁ?」エヘヘ

絵里「…ううん、無理じゃないわ。あそこはアンドロイドを平たく見てくれる人がいっぱいいるからきっと楽しいわよ」

ことり「うんっ!」

絵里(…今、この上ないくらいに幸せを感じた)

絵里(…なんでかって?)

絵里(考えれば分かるでしょ?ことりが笑ったのよ?)


絵里(感情保管領域に欠如が見られることりが、笑ったのよ?)





802: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:37:11.64 ID:hEQnKdja0



ことり『感情の欠如だよ、果南って人に胸を撃たれて私の心から喜びという感情が消えた』

ことり『だから私は笑えない、怒るとか泣くとか悲しむとかは出来ても喜ぶことは出来ないの…』


絵里(…奇跡だ、奇跡としか言いようがないわよ)

絵里(ことりが喜びの感情を取り戻した、それが嬉しくて嬉しくて…嬉しすぎて何故か涙が出てきた)

絵里「うぅぅううことりぃ…!」ギューッ

ことり「わっちょ、ちょっとどうしたの絵里ちゃん!?」

絵里「死ぬんじゃないわよことりぃ…!」

絵里(困り顔して笑うことりを見ればたちまち心は大空へと舞い上がった、もうすぐゴールなんだから…私の目指したエンドロールならもうすぐなんだからここで後ろを向いてなんかいられない)

絵里「よしっ!じゃあ私準備してくるわね!」

ことり「え、えぇ!?お風呂は!?」

絵里「シャワーだけで充分よ!今の時点からスパートかけてやるんだからっ!」ダッ

ことり「えぇ…もっとゆっくりしてればいいのに…」

絵里(やる気に満ちた私は装備の支度をしにいった)



803: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:38:18.92 ID:hEQnKdja0

絵里「…あなたたちは相変わらずこだわりが強いのね……」


曜「ん?あ、絵里さんおかえり~」

ルビィ「ルビィのスナイパーはこれしかないから!」エッヘン


絵里「あははは…」

絵里(リビングに戻れば武器の手入れをしてる二人がいて、アタッチメントや外見の汚れなど至らないところがないか入念に確認してて、曜に関しては終わったと思えば私や穂乃果の武器までチェックしてるからすごい情熱が伝わってきた)

曜「スコーピオンEVO…いつ見ても恐ろしい武器だなぁ」

絵里「…強いのは分かるんだけど、大して強みを発揮できてないような気がするのは私だけ?」

曜「そんなことないよ、絵里さんが強みを実感できないのはスコーピオンを相手にしたことがないからなんだよ、相手にするとその凄まじい発射レートに驚くことになると私は思う」

絵里「そういうものなの?」

曜「うん、そうだよ。ただ今回はホテル内とその周辺での戦闘を想定した際にはスコーピオンの弱みと強みがハッキリするよ」




804: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:40:16.47 ID:hEQnKdja0

絵里「どうして?」

曜「スコーピオンの強みは連射速度が速いから例えアンドロイドだろうとも避けるのが辛い手数の多さと一瞬で狙ったところに蜂の巣を作るその火力かな」

曜「逆にスコーピオンの弱みは手数に集中してる分一発が小さいから壁を貫通する威力が無くて、アンドロイド相手ならそこまで致命傷を与えられないこと、また反動が強すぎるから狙ったところにあまりいってくれないところも弱みかな」

曜「ホテル内はエントラスト以外ならとにかく角が多いと思う、その場合は近距離から中距離を想定した銃を持つべきだけどスコーピオンは中距離が対応出来ない銃だから数十メートル空いた距離を一直線で戦うとなるとスコーピオンはあまり機能しないものとなる」

曜「でもその逆は比類なき強さを発揮する、サブマシンガンという身軽さを重視したにも関わらず恐ろしい火力を持つスコーピオンは近距離でなら兵器と化すよ、あの路地裏以上に狭い道でスコーピオンなんて対になった状態じゃ避けれるはずがないからね」

曜「だからもし絵里さんがホテル内で戦ったならなるべく近づいて戦うようにしよう、それがベストな戦い方だよ」

絵里「…分かったわ、そこまで教えてくれてありがとね、曜」

曜「お安い御用であります!」ビシッ



805: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:41:07.78 ID:hEQnKdja0

ルビィ「…ルビィずっと思ってたんだけど、スナイパー主体のルビィに今回の作戦で輝ける場所あるのかなぁ…?」

絵里「………」

曜「…確かに」

曜「屋内でスナイパーは荒業すぎるし武器を変えるとかしないとルビィちゃんは戦えないかも…」

穂乃果「…いや、正直武器はそこまで関係無いと思う」

絵里「え?」

絵里(武器について三人悩んでいたらダイニングの方でパソコンとにらめっこする穂乃果が口を開けた)

穂乃果「鞠莉ちゃんのいるホテルには特にこれといった名高いアンドロイドや人間がいないんだよ、もちろん警備隊とかその辺はいるだろうけどそれより問題なのはセキュリティだよ」

曜「…確かに、鞠莉ちゃんのその技術は希ちゃんと花丸ちゃん、そして私を合わせた三人の力でさえ敵わなかった、その堅すぎるセキュリティをどう崩していくかも課題になってくると思う」

ルビィ「…でもルビィパソコンとか分からないよ…?」

絵里「…正直私もそこまで……」



806: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:41:42.39 ID:hEQnKdja0

曜「うーん…穂乃果ちゃんってどのくらい機械に詳しい?」

穂乃果「いや、私もあんまり詳しくはないよ。希ちゃんにパソコンの使い方を一通り教えてもらっただけだもん」

曜「そっか~うーん厳しいね、こういう時希ちゃんとかがいてくれたらすっごく楽なんだけど…」

穂乃果「………」

絵里「…困ったわね」


真姫「…機械なら私に任せてくれない?」


ルビィ「!」

絵里「真姫…大丈夫なの?」

真姫「とーぜんよ、そりゃあ鞠莉って人に敵うかは分からないけど私、機械には相当な自信があるわ」

真姫「そうでなきゃ機材なんて持ってこないわよ」

絵里「そ、そうよね」



807: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:42:30.75 ID:hEQnKdja0

曜「…でも機械に強いのと機械に詳しいはまた別だよ、鞠莉ちゃんのホテルにあるパスワードやカードキー型の扉みたいなロックシステムをハッキング出来る?それが出来なきゃ意味がないよ」

真姫「舐めないで、何年絵里と一緒にやってきたと思ってるのよ?喧嘩っ早い絵里をアシストする為にずっと機械を触ってきたんだからハッキング程度なら余裕よ」フフンッ

穂乃果「…でもあんまり無理はしないほうがいいよ、鞠莉ちゃんのシステムだもん、希ちゃんが無理だったんだから出来なくても誰も責めないよ」

真姫「…分かってるわよ、でもやってみなきゃ分からないじゃない!」

穂乃果「…それはそうだね」

真姫「見てなさい!今にぎゃふんといわせてやるんだから!」ダッ

絵里「あ、真姫…」

ルビィ「行っちゃったね……」

絵里「あれは真姫本気ね…」



808: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:43:51.62 ID:hEQnKdja0

穂乃果「実際どうなの?真姫ちゃんって」

絵里「少なくとも昔馴染みであった私、千歌、善子、果南、ルビィ、真姫の中ならダントツで機械が強かったわ」

絵里「元々私や果南が誰かと喧嘩ばっかしてたのもあって、真姫自身自分が戦闘的に無力だって分かってたみたいだったから、そういう技術面で自分を伸ばしていったの」

絵里「…だから私は真姫を信じるわ、無理な時はまた新しい入り方や上り方を考えましょう」

曜「そうだね、できることをしてる真姫ちゃんは立派だよ、だから私たちもそれに応えよう?真姫ちゃんがハッキング出来ても私たちがちゃんとしなきゃ意味ないんだから」

穂乃果「うん、その通りだよ」

ルビィ「…じゃあルビィもう寝るね、来る時まで後は寝て備えるよ」

ルビィ「絵里さんの寝室借りるね、おやすみ」

絵里「え、ええ分かったわ、おやすみ」

穂乃果「おやすみルビィちゃん」

曜「おやすみ!」

絵里(ルビィはもうほとんどの準備が終わったらしく、最後の準備である睡眠をしに寝室へ行ってしまった)

絵里(ルビィにおやすみの挨拶をして見送った後ルビィがいたところを見れば、いつも持ってる赤色のスナイパーと赤色のハンドガンがあり、私がそれを瞳に映すと不意に部屋の明かりに反射してルビィの武器が煌きだした)



809: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:44:35.13 ID:hEQnKdja0

曜「…なんというか歳と見た目に似合わぬ強さだよね、ルビィちゃんって」

絵里「それがルビィの武器だからね」

絵里「姉であるダイヤにも弱いという自分だけを見せて生活してきたし、強者の所以ってきっと自分を弱者にみせるところから始まると思うの」

絵里「小さい体で大きな敵の喉を喰いちぎるようなその姿がルビィには合いすぎてる」

穂乃果「…確かにね」

穂乃果「……希ちゃんが生きてればきっと喜んだんだろうね、ずっと探してた殺し屋と会えてあの時の
強さを今でも維持してるんだもん」

絵里「そうね…でもきっと無理だったわ、ルビィは最近まで眠っていたもの、死ぬ運命にあったなら会えるはずもないわ」

穂乃果「…その通りだよ」




810: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:45:59.74 ID:hEQnKdja0



曜「……穂乃果ちゃんの探してる人は見つかった?」


穂乃果「…ううん、見つかってない」

曜「心当たりはないの?」

穂乃果「………無いと思う」

絵里「どんな人を探してるの?」

穂乃果「…それが私もよく分からないんだ」

絵里「分からない?どういうこと?」

穂乃果「……私が知ってるのはその探してる人が私にとってとても大切な人だっていうことだけ、後は全部曖昧なんだ」

穂乃果「私は一回死んで記憶保存領域のリセットがかかった、だけどそれでも私は感じてるの」


穂乃果「この胸に宿る輝き……その正体を知りたいの」


絵里「輝き……」



811: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:46:52.37 ID:hEQnKdja0

曜「…絵里さん、穂乃果ちゃんが探してる人はね、穂乃果ちゃんが死ぬ前の親友とか家族なんじゃないかって希ちゃんが言ってた。でもその人は一向に現れないんだよ」

絵里「そ、そうなの……」

穂乃果「でもいいんだ、これを悲観する気は全く無いし」

絵里「どうして?」


穂乃果「この戦いに勝ったら、私は私の探してる人を探すよ」


穂乃果「もちろん、絵里ちゃんの背中を追いながらね」

穂乃果「だからこの戦いは絶対に生きて勝つよ、誰も死なずにね」

絵里「…そうね、全力を尽くしましょう」

絵里(穂乃果もことりと同じでやることを見つけたようだった、だから尚更負けられない)

穂乃果「私も寝るよ、正直今日はもう疲れたよ…作戦実行までの時間で気が済むまで寝てるよ」ガタッ

スタスタスタ

穂乃果「…あ、絵里ちゃんの寝室で寝るね」

絵里「ええ、分かったわ」

穂乃果「おやすみっ!」

絵里「おやすみなさい」

曜「おやすみー!」

絵里(そうして穂乃果も眠りについてしまった、流石戦闘慣れしてる人はこの辺の準備は早く、ダイニングのテーブルには穂乃果の武器と投げ物と紫色のシュシュが一つ置かれていた)




812: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:47:51.34 ID:hEQnKdja0

曜「…やっぱり穂乃果ちゃんは真面目だなぁ」

絵里「どうしたのよ急に」

曜「あのシュシュは希ちゃんのだよ、せつ菜ちゃんも穂乃果ちゃんも髪を片方だけ結ぶサイドテールみたいな髪型をしてるから二つあるシュシュを一つずつ使って希ちゃんの形見を離さないつもりでいるんだよ」

絵里「へえ…」

曜「…きっと絵里さんも後少ししたら希ちゃんと同じくらい慕ってくれると思うよ」

絵里「そうなの?あまり自信はないのだけれど…」

曜「大丈夫、絵里さんはもう充分に主としての役目をこなしてる」

絵里「…そう、曜にそう言ってもらえるならよかったわ」

曜「えへへっ」

絵里(曜のとびっきりの笑顔も何故か今は哀愁漂う笑顔に変わっていて、一度舞い上がった心もそろそろ今目の前にある恐怖に目を向け始めてるのかもしれない)

絵里「…曜はこの戦いに勝ったら、何をするの?」

曜「そうだなーうーん…分からないな…」

絵里「えー…何よそれ」

曜「だって私お金が欲しくて対アンドロイド特殊部隊に入ってたけど、お金はもういらなくなったし、なんか作るって言っても今は作るモノないしなー」




813: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:48:55.85 ID:hEQnKdja0

曜「んー……あ、そうだ!」

絵里「ん?」

曜「私はこの戦いに勝ったら」


曜「私がやることを探しにいこうかな!」


絵里「…ふふふっ曜らしいわね」

曜「曜らしいって何さー!」

絵里「んふふふふっなんでもないわ」

曜「もー何さー……」

絵里(曜ってこういう人よね、強いんだけどまずその前に曜は面白くて元気な人だ)

絵里(戦いの後もこういうやりとりができるように努めないといけないわね、メーターを振り切ったやる気は更に限界を超えていた)



814: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:49:50.65 ID:hEQnKdja0

曜「じゃあ私も寝るよ、絵里さんの部屋でね」

絵里「あはは…私ではないんだけどね…」

曜「絵里さんの寝室であることは間違ってないからね、じゃあおやすみ!」

絵里「ええ、おやすみ」

絵里(姿が見えなくなる最後の最後まで曜は笑顔で寝室へ向かっていった)

絵里「……最後か」

絵里(これでリビング・ダイニングにいるのは私一人だけ、ことりは未だにお風呂だし真姫は現在進行形で機械と戦ってるしそれ以外はみんな寝た)


絵里「……終わりなのね」


絵里(ラストバトルの前夜は、今まで以上に感慨深いモノになっていた。何度も言うけど、もうすぐ終わりなのよ。ゴールなのよ。答えの在り処なのよ)

絵里(願わくばその終わりが良い意味であることを私は願うだけ)




815: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/07(月) 20:51:13.47 ID:hEQnKdja0

絵里「……よしっ」

絵里(その場に立って通常より弾薬が多く入った拡張マガジンのついたスコーピオンを片手に下げ、目を瞑り戦いの意識を研ぎ澄ました。覚悟が決まれば目を見開き銃にセーフティーがかかっているかを確認して私も寝室へと向かった)


絵里「……ふふふっ可愛い寝顔ね」


絵里(そうして静かに寝室の扉を開ければ可愛い寝顔をした三人が私をお出迎えしてくれてた)

絵里(相変わらず曜は面積を取ってるしルビィはダンゴ虫のように丸く縮こまってるし、穂乃果は予想以上に寝相が悪い)

絵里(そんな中でわざとらしく空いているベッドの中央で横になった、目覚めた時が決戦の時間。だけどそれまではこの幸せな気持ちをみんなと共有していたい)


絵里「…おやすみなさい、みんな」


絵里(ある意味でこの寝室で起こる“最後の眠り”はどこまでも心地の良い今までに感じたことのない幸せの香りがした)



824: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 18:58:27.46 ID:wesiesbo0

~数時間後

絵里「………」

ルビィ「あれが……」


曜「オハラホテル…だね」


ことり「たかーい……」

穂乃果「あのホテルの最上階に……」


絵里「…待ってるのよ、鞠莉が」


絵里(夜景という名の人口宇宙の中で聳え立つホテルをビルの上から見つめる私たち)

絵里(あのホテルが瞳に映るだけで緊張が段々と漂い始めた)





825: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:00:37.17 ID:wesiesbo0

曜「…風が強いね」

穂乃果「でも雨が降る様子はないよ」


絵里(その風は歓迎であったのかしら、警告であったのかしら。そしてその風は追い風だったのかしら、それとも向かい風だったのかしら)

絵里(どちらにせよ、髪を常に靡かせる強い風は緊迫感を煽り黄昏を作りだした)


真姫『こちら真姫、こっちはいつでもおっけーよ』


絵里「ええ、了解」

曜「いよいよだね…」

ルビィ「緊張してきた…」

ことり「私も……」

絵里「…私も超緊張してるけどとりあえず作戦のおさらいをするわよ」

穂乃果「うん、了解だよ」


絵里(これがラストバトル)


絵里(強風に煽られれば煽られるほどそういう意識が出てくる。今私が背にしてるあの建物で終止符が打たれるのよね)

絵里「すう…はぁ……」

絵里(緊張を抑えるために一度大きく深呼吸をした。覚悟を決めてゆっくり目を見開けば自然と戦いの意識は研ぎ澄まされ、みんなの顔も引き締まったものになってた)



826: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:02:30.98 ID:wesiesbo0



絵里「まず前提条件として、無駄な殺傷は避けること」


絵里「鞠莉がいるここで事を大きくしてしまっては元も子もないわ、Y.O.L.Oは跡形なく消し飛ばしたから私たちの痕跡も消えてるけどここでは絶対に痕跡が残る。だから戦闘をしても殺すのは少し考えて」

曜「前から聞いてたけどすごいハードなミッションだよねー今回」

穂乃果「そうだねー」

絵里「ええ、それで今回は2と3の動きでいくわ、先行する二人と後衛、或いは追手の殲滅をする三人よ」

絵里「ルビィと私は2、それ以外が3ね。私たちは突貫するから3は注意を引いたりして」

曜「了解でありますっ!」

絵里「侵入に関しては真姫が用意してくれたこのカードキーでなんとかして」

絵里「…真姫、ありがとう」

真姫『いいわよ別に』

絵里「真姫がハッキングして大体のシステムはこのカードキーを認証場所にかざすだけでいけるはず、もしいけないようだったら……壊して進みましょう」

ことり「そんなんで大丈夫かなぁ…」



827: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:05:06.44 ID:wesiesbo0

絵里「大丈夫よ、というかプラン通りに事が進むわけないんだからそこは臨機応変に、そして柔軟に対応していきましょう」

穂乃果「そうだね、もう何やったってもいいんだから出来ることに全力を尽くそう」

絵里「…よしっじゃあ行きましょう」


「うんっ!」


絵里(もう後戻りはできない)


絵里(待つのは死か————それとも生か)


絵里(…それを決めるのは誰でもない私で、その未来を照らすのは他でもない私の銃)



絵里(————それじゃあ、銃弾で物語を語りましょうか?)






828: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:06:21.15 ID:wesiesbo0



曜「うわー…分かってたけど人いっぱいだなぁ……」

穂乃果「…殺傷は極力避ける、か」

ことり「難しいね……」

ことり「私たちは揺動でしょ?どうすればいいのかなぁ?」

曜「簡単だよ、殺さずに揺動なんて“これ”を使えばいいんだよ」

穂乃果「これ?」


曜「スタンとスモークグレネード、これだけで視界と聴覚の情報が消える。後は様子見すればいいよ」


曜「せーのっと!!」ポイッ



829: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:07:57.01 ID:wesiesbo0



ピカーン!


曜「よしっ大成功、ちょっと様子見する位置を変えよう。ここにいたらさっきのグレネードの飛んでくる方角を見てばれると思うから」ダッ

穂乃果「了解」

ピッ

曜「こちら曜、とりあえず下はてんてこ舞いって感じだよ、そっちはどう?」





絵里「絵里よ、曜の見立て通り二階に窓が空いてる部屋を発見したからそこから侵入したわ」

ルビィ「怖かった……」

絵里「…このラペリングってやつは意外にもスリリングね……ルビィは恐怖のあまり顔面蒼白よ」




830: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:09:36.36 ID:wesiesbo0

曜『あはは………とりあえず侵入出来たなら何よりだよ。こっちはこっちでやってるからそっちも頑張ってね』

絵里「ええ、もちろんよ」

絵里「それじゃあね」

曜『うん!それじゃあ』

ピッ

絵里「…よしっじゃあ行きましょうか」

ルビィ「うん、分かった」

絵里(侵入した部屋から出て周りを確認する、ここから先は見つかってはいけない、隠密行動を心掛けて用心深く歩みを進めていく)

絵里(…のだけど、下で陽動を行ってくれたおかげで上は筒抜け状態。流石一流ホテルの警備は報告が早いけど、早いせいで警備隊や宿泊客の移動も早くて私たちも早く行動できた)



831: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:11:16.36 ID:wesiesbo0


スタスタスタ

絵里「……待って」

ルビィ「!」ピタッ

絵里「………この角の先に足音がする」

絵里「人数は……おそらく一人ね、こっちへ来るわ」

絵里「…待ち伏せして気絶させましょう、この先に階段があるから迂回もできないわ」

ルビィ「………」コクコク

絵里(万が一のことを考えてゆっくり進む中で段々と聞こえるこの静寂をかき消し残響を伝わせる足音に私たちは一度足を止めた)

絵里(あくまで私たちは隠密行動をしてる、だからルビィも言葉を使わずに身振りや手振りで返事をしてて私もかなり声を抑えて喋ってたけど、足音が近づけば近づくほど緊張感が加速してたちまち口は開かずの扉になってしまった)




832: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:13:32.13 ID:wesiesbo0


スタスタスタ

絵里「………」

ルビィ「………」


スタスタスタ


絵里「…今!」ダッ

ルビィ「うん!」ダッ


「!」


絵里(足音の人物が角を挟んですぐそこまで来ただろうという時ルビィと一緒に飛び出した。まず私が相手のお腹に向けて肘打ちをし、そしてそれを食らい怯んだ相手の頭にルビィが跳び蹴りをかました)


絵里(————はずだった)





833: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:18:56.83 ID:wesiesbo0



「はっ!」


絵里「何っ…!?」

絵里(私の右肘で出した肘打ちを左回りに体を捻ることで攻撃を躱し、次に来るルビィの蹴りはしゃがんでよけた。そして更には蹴りの後隙で無防備なルビィの背中に入る肘打ち、続けざまに私の頭に飛んでくる回し蹴りと相手は回避からすぐさま攻撃に転じ私たちの進行は突然止まった)


ルビィ「ぐぇっ!?」

絵里「くっ…」


絵里(ルビィは背中に強く肘を打たれたことで近くの壁に叩きつけられ、私は私の頭に歯向かう蹴りを右上腕を使いヒット直前で受け止めた)



834: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:19:28.34 ID:wesiesbo0



「私に近接で勝とうなんて片腹痛いですわ」


ルビィ「!!!」

絵里「あなたは……」


ルビィ「……お姉ちゃん」

絵里「ダイヤ……」


ダイヤ「ルビィ…病院で聞きましたがやはり生きていたのですね……」

ルビィ「………」



835: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:20:14.35 ID:wesiesbo0

ダイヤ「…しかしどうしてですか?この絵里という方の下でつく意味を考えなかったのですか?」

ルビィ「…それはどういうこと?」

ダイヤ「この方は言ってしまえば反社会的勢力なのですよ?自分らの目的のために破壊の限りを尽くして人々に迷惑をかけたのですよ?」

絵里「………」

絵里(確かにその通りかもしれない、現状アンドロイドでテロリズムを心に宿すのはマイノリティであり反旗を翻す為に銃を持って行動を起こすのは確かに常識的じゃないし過激だ)

絵里(…だから正直ダイヤには返す言葉がなかった)


ルビィ「お姉ちゃん、それは違うよ」


ダイヤ「!」

絵里「ルビィ……」

絵里(だけど、ルビィは考える素振りもなく即答だった)



836: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:21:35.47 ID:wesiesbo0

ルビィ「私は小さい頃から善子ちゃんや絵里さん、そして千歌さんや果南さんとかアンドロイドと一緒に大きくなってきたからアンドロイドの気持ちはよく分かる」

ルビィ「だけどお姉ちゃんはアンドロイドの生活を知らない、だから好き勝手言えるんだよ」


ルビィ「アンドロイドだからっていう理由だけでいじめをうけた」


ルビィ「……そんなのをルビィの眼で見てきたらアンドロイドが何か行動を起こしたくなるのも分かるよ、だって理不尽なんだもん、納得できないもん、意味分からないもん」


ルビィ「それを何も知らないお姉ちゃんの口からあーだこーだ言ったらアンドロイドの心には更に火はつくの分からない?」


ダイヤ「…!」

ルビィ「…お姉ちゃんは認めてくれなかったよね、ルビィがアンドロイドと関わるのを」

絵里「………」

ダイヤ「………」

ルビィ「お姉ちゃんみたいな人がいるからアンドロイド差別は収まらないんだよ」



837: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:22:28.08 ID:wesiesbo0

ルビィ「……でも、ルビィはお姉ちゃんのことが大好きだよ」

ルビィ「ただね」


ルビィ「アンドロイド差別をする人を好きになるなんて無理にも程があるよ」カチャッ


絵里「る、ルビィ……」

絵里(殺意と敵意丸出しでダイヤの顔に銃口を向けたルビィに思わず私は唾をのんだ)

ダイヤ「……ルビィ」

絵里(そして言うまでもなくそのルビィの言葉はダイヤにとって死刑宣告のようなものだった。何かを抑えるような力が拳に宿ると手がぷるぷると震え始めて不意に出たダイヤの“ルビィ”という呼び声は実に弱々しくてすぐに消えていった)



838: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:23:15.95 ID:wesiesbo0

ルビィ「絵里さん、お姉ちゃんはルビィに任せて先へ行って」

絵里「え、でも……」

ルビィ「いいの、黒澤家の問題は黒澤家の人だけで解決するよ」

ルビィ「…それに見て」

絵里「え?」

ルビィ「あそこ、監視カメラがあるのに誰一人ここへ来ない」

ルビィ「ルビィたちは今見られてるのに誰もこないんだから、きっと鞠莉さんは来るのを待ってるんだと思うよ」

ルビィ「だから絵里さんは往って、ルビィが思うに今最上階に上る資格があるのは絵里さんだけだと思うから」

絵里「……分かったわ、でも無理はしないようにね」

ルビィ「…うんっ!」ニコッ

絵里「…それじゃあね」ダッ




839: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:25:02.32 ID:wesiesbo0



タッタッタッタッ


絵里「………」

絵里(本当にこれでよかったのかしら、エレベーターに乗り、ドアが閉まってから思う)

絵里(…私がダイヤとルビィの話にどうこう言える話じゃないけど、もっと穏便に済ませられたんじゃないかって……)


絵里「……いや、無理ね」


絵里(…そう思ったけど無理そうね、私がダイヤの妹でルビィが善子のようにいじめられてるのを見たらルビィと同じ事をするでしょう)

絵里(アンドロイドを大切にしたい自分の一番近くにいるのがアンドロイドに差別意識を持ってる姉だなんて言ったらイヤになるし、嫌いになる)

絵里(それなのに好意で向こうからずりずり寄ってきてきちゃあルビィも銃口を向けたくなるわよ)

絵里(ダイヤに悪気がないのは分かってる、だけどルビィの意志とは対極の位置にあるダイヤの意志は残念だけど平行線で双方が永遠に理解出来ない交感になるでしょう)

絵里(…だからきっとここでも始まるんでしょうね、一方的な正義と一方的な正義の戦いが)

絵里(……いや、もし私の考えが外れていたならきっとルビィも違う行動を起こすのでしょうけど)


絵里(もし、ルビィと私の考えが同じだったらルビィは————)





840: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:27:25.66 ID:wesiesbo0



ダイヤ「……さっきの跳び蹴り、驚きましたわ」

ダイヤ「鞠莉さんや果林さんなどから聞きました、ルビィは戦える子だというのを」

ダイヤ「…しかしですね、正直言うとルビィが力を隠しているのは知っていましたわ」

ルビィ「…!?」

ダイヤ「理由の方はお答えできませんが、やはりルビィの力は私の考えをいつも超越してくる」

ダイヤ「その力が……羨ましくて……憎いですわ」

ルビィ「………」

ダイヤ「…アンドロイドの件については謝罪しますわ、ごめんなさい」


ダイヤ「……しかし」


ダイヤ「今更考えを曲げたところでもう遅いでしょう?ルビィ、あなたから向けられたその銃口と殺意——それは殺し合いをお望みですか?」

ルビィ「…そうだよ、ルビィが絵里さんの下で就く以上、ルビィが善子ちゃんを忘れない以上、ルビィがアンドロイドの事を好きでいる以上はお姉ちゃんとは敵同士、ルビィだって今更お姉ちゃんに考えを改めてほしいなんて思ってないよ」

ダイヤ「…そうですか」



841: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:29:23.18 ID:wesiesbo0

ダイヤ「……私はルビィの事が大好きです、今も昔もずっと…」

ダイヤ「ルビィが長い眠りについた時に私は強くなろうと決心したのです、いつまでも刀に囚われてないで、現代を生き抜く為に銃を学ばないとと思い必死に勉強をして今では対アンドロイド特殊部隊という強さは指折りの人間しか入れないところに所属しました」

ダイヤ「…ですが、そうですよね。そういう問題じゃないではないのですよね」

ダイヤ「私が育むべきだったのは生き物を殺める為の物理的な強さではなくて、広い心を創る精神的な強さだったのですね…」

ルビィ「………」

ダイヤ「ただ、ここ数年で手にしたこの力が無駄だったとは思いません」

ダイヤ「……何故なら、今ここでルビィと対等に戦うことが出来るのですから」カチャッ

ルビィ「…!」


ダイヤ「侮るつもりはありませんわ」


ダイヤ「いくら大好きな妹だからとはいえそう易々と殺されるわけにはいきません、ここは東京————ルビィもここで育ったというのならその言葉の意味は当然分かるでしょう?」


ルビィ「……戦いで勝負をつける」


ダイヤ「その通り、だから容赦は致しませんわ」

ルビィ「…ルビィもだよ」



842: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:31:09.29 ID:wesiesbo0

ダイヤ「………ふぅ」

ルビィ「………」

ルビィ(お姉ちゃんの深い息を吐く姿はお姉ちゃんの近くにいた人なら誰だって知ってる、あれは武士としての精神統一みたいなものでもあって人を殺めることを全てに置いた証拠でもある)

ルビィ「……っ」

ルビィ(深い息を吐いたと同時に飛んでくる鋭い眼差しに思わず後ずさりした。長いこと眠ってたしお姉ちゃんのことはよく知らないけど、対アンドロイド特殊部隊に入れるのならきっと相当強く、それ以前に黒澤家として、武術を学んだ身としてその一つのハンドガンを両手で下げた時のスレンダーな姿はまるで刀を持っているかのような錯覚さえ感じてしまう)

ルビィ「……はぁ」

ルビィ(だけど、ルビィも黒澤家の人間だよ)

ルビィ(小さい頃からスナイパーを使っていたルビィの集中力を舐めないでほしい、ただ一点だけを————殺すことだけを考えて撃つまでの緊張感、ルビィはそれさえも振り払ってトリガーを引いてきた)

ルビィ(スナイパーで人を殺めるのに比べたらこの緊張だって可愛いものだよ、そう考えるルビィに宿るのは勝利への強い意志、この意志を持ってお姉ちゃんを————)


ルビィ(————殺すよ)





843: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:32:55.44 ID:wesiesbo0



ダッ


ルビィ「決めるっ!」バンッ!

ルビィ(狙いは心臓、頭という小さな的を狙おうとすると目線でばれる、ならそれよりお姉ちゃんと顔を合わせながら的が大きい胸を狙うのが得策。人間と人間の戦いはほぼ一瞬で決まる、アンドロイドなら話は違うけど、人間相手なら攻めたもん勝ち!)

ダイヤ「はっ!」シュッ

ルビィ(だけどそれを避けるお姉ちゃんにはもう驚かない、お姉ちゃんの靴にも曜さんの作ったアシストが施されてるんだよね、分かってるつもりだよ)


ルビィ(だから回避と同時に放たれたお姉ちゃんの銃弾の存在もなんとなく分かってた)


ルビィ「やあっ!」ズサー!

ルビィ(射線は見えてないけど銃口の向いてる位置が上向きだったのを確認してルビィはスライディングをして銃弾を避けた)


ダイヤ「お覚悟ですわ!」

ルビィ「望むところだよお姉ちゃん!」


ルビィ(お互いトリガーを一回引けば縮まるルビィとお姉ちゃんの物理的距離は近接戦闘の始まりの証。ここの戦いを制した人が勝ちだよ、だからこの一瞬の戦いにルビィの全てを注ぐ)



844: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:34:07.49 ID:wesiesbo0



ルビィ「せいのッ!」


ルビィ(近づいたのはルビィ、だから攻撃を仕掛けるのはルビィからで、そんなルビィの一発目は絵里さんもよく使ってる後ろ回し蹴り)

ダイヤ「くっ…」

ルビィ(苦しそうな顔はするけど普通に片腕で受け止めてくる様子を見るにやっぱり生半可な技じゃ攻撃は通らないし倒せないなと思う)


ルビィ「もう一回!」


ルビィ(だからこそルビィは用意してたよ、次の一手をね)

ルビィ(後ろ回し蹴りをガードされた後は逆さ回りでもう一回後ろ回し蹴り、そしてその後がガードされてようがされなかろうがそのまま回し蹴り、と反撃の隙も与えない連続攻撃をお姉ちゃんにお見舞いした)


ルビィ『お姉ちゃんに比べたらっ!』


ルビィ(ことりさんと戦った時にも似たようなことをした。後ろ回し蹴りからの後ろ回し蹴り————それは常識では考えられない動きだ)

ルビィ(それ相応の運動神経が必要で、その動きを完璧にこなすための勇気と瞬発力がいる。後バランス感覚とか色々)

ルビィ(でもそれ以前にルビィはそれを可能にするポテンシャルがあった)



845: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:35:26.12 ID:wesiesbo0



ダイヤ「ッ…!!」


ルビィ(体が小さいこと)


ルビィ(ルビィはお姉ちゃんのようにスレンダーな体には育たなくて、だからルビィに刀は似合わなかった。体が小さいと走る時もお姉ちゃんより大股にしないと追いつけないし、精神的に強気に生きていけない————つまりそれはマイナスだらけの体だった)

ルビィ(……だけど少なくともルビィのこの小さな体がプラスに働くこともあった。それが運動神経に関わることだったんだ)

ルビィ(ルビィは絵里さんやお姉ちゃん、ましてや穂乃果さんや曜さんと比べても手は小さいし足の長さが短い、だけどそれは蹴りや殴りを行う時の空気抵抗に関わってくる)

ルビィ(足が短ければ短いほど空気抵抗による重さのようなものを受けにくくなるし、例えそれがほんのごくわずかな差でもバカには出来ない。実際その影響でルビィはこの動きが可能だし、ことりさんはこの動きに驚いてた)

ルビィ(だからことりさんほどの体格だとあの動きは難しいのだと思う…多分……)


ルビィ(…まぁね、この動きはとにかく常識外れな動きでお姉ちゃんも流石に予想出来ないからこれに対して対策が出来るはずもなく、ましてや初めて見る動きだというのに)


ルビィ(避けれるはずないよね)





846: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:36:16.02 ID:wesiesbo0



ルビィ「これで終わりッ!!」


ルビィ(これもあの時と同じ、二回目の後ろ回し蹴りが頭にヒットしてここからずっとルビィのターン)

ルビィ(今回は二つ目に続き三つ目の蹴りもおまけとして入ったから結果的に、お姉ちゃんは頭に強力な蹴りを受けてその直後にお腹に同じように強力な蹴りを押し込まれた。そうすればお姉ちゃんは仰向けに倒れてそこで戦いは実質終わりを迎えた)



バァン!



ルビィ(ルビィが二回目のトリガーを引いたのが最後、大きな銃声が鳴った直後にその世界から音が消えた)

ルビィ(倒れたお姉ちゃんは目を開けたまま動かない、立ってる私も目を開けたまま動かない)



847: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:38:32.94 ID:wesiesbo0



ルビィ「………」


ルビィ(ルビィはただお姉ちゃんから広がる赤を無感情で見つめてた)

ルビィ(結局ルビィがお姉ちゃんの気持ちを理解することはなかった。ルビィだって薄情じゃない、お姉ちゃんがルビィの為に強くなってくれたのはとても嬉しいし、こうして終わりを迎えてはお姉ちゃんは一生報われない存在だ)

ルビィ(だからそこに同情は出来るし、今となっては一緒に生きる道も存在してたのかもしれない)


ルビィ(でも、時間は巻き戻せない)


ルビィ「………」


スタスタスタ


ルビィ「……終わったんだね」

ルビィ(お姉ちゃんに近づいて脈を確認して放った言葉はすぐに消えた。止まった鼓動はいうまでもなく死の証拠、今も広がり続けるこの血だまりは終わりの証拠)




848: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:41:17.78 ID:wesiesbo0

ルビィ「…これでよかったのかな」

ルビィ(ふと呟いたその言葉。これでよかったっていったらウソになるけど、これが当然の結果といっても納得はできる)

ルビィ(……ただ、ルビィの足元を飲む血だまりに落ちる涙はどうにもこうにもルビィが後悔を感じてる証拠だった。昨日涙は枯れたはずだったのに、また無限に溢れ出るのはどうしてだろう)


ルビィ(あぁ…これなんだね…あの時の亜里沙ちゃんの気持ちって……)


ルビィ(殺すまでは出来るけど、殺した後がどうしようもないんだ。どちらかというとそれは“自分が殺されるから抵抗するしかない”というところから始まる殺意なわけで、決して相手を殺したくて殺したわけじゃない)

ルビィ(…ルビィ、この気持ちを抱いてる亜里沙ちゃんを殺したんだ)


ルビィ(……最低だなぁ)


ルビィ「……んん」

ルビィ(…でも、こんなとこで泣きじゃくってるだけの弱いルビィにはなりたくない。お姉ちゃんに勝った今、お姉ちゃんより強く生きていかないといけないのがルビィの務め)

ルビィ(絵里さんが死んだ時も残りのメンバーだけでなんとか頑張っていこうって決めて自分を強くもったんだ、だからルビィは涙を拭って手に持ってたハンドガンを強く握った)




849: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:43:34.09 ID:wesiesbo0

ルビィ「……あれ?」

ルビィ(ふとしてお姉ちゃんの死体を見つめると、お姉ちゃんの持ってるハンドガンに目がいった)

ルビィ「これ……?」

ルビィ(そのハンドガンは普通の人からすれば何もおかしくないただのハンドガン、だけどルビィから見ると何かがおかしい)


ルビィ「ぶろーにんぐはいぱわー…?」


ルビィ(お姉ちゃんの銃に刻まれたこのハンドガンの名前らしきもの。手にもってモデルを確認すれば更に疑問符は増えていった)

ルビィ「……こんなハンドガンあったっけ」

ルビィ(ルビィが持ってるのはブローニングというハンドガンで、このお姉ちゃんが持ってるのは次世代モデルにあたるのかな。でもこんなハンドガンあったっけ……銃にはすごく詳しいけど、こんなハンドガン知らなくてちょっと違和感を覚えた)

ルビィ「…あるよね」

ルビィ(それは今気にすることじゃない、そう判断したルビィはお姉ちゃんの形見としてこのブローニング・ハイパワーを持ってそこを後にした)



850: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:44:59.46 ID:wesiesbo0

ルビィ「……絵里さん」

ルビィ(流石高級ホテルといえるような近未来エレベーターの前につくと、現在エレベーターがある位置は最上階を示していた)

ルビィ(きっと絵里さんはもう鞠莉さんと会ってる、そこでは絵里さんは何を知るのだろう。予想も出来ないや)


ルビィ「……よしっ」


ルビィ(深呼吸をして、エレベーターを押した。けどエレベーターが動かなかった)

ルビィ(疑問に思いながら数回エレベーターで上がるためのボタンを押してるけど反応しない。だから気付いた)


ルビィ(上で何か起こってる、これは————罠だということに)





851: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:45:30.71 ID:wesiesbo0

ルビィ「ッ!!!」ダッ

ルビィ(そう思ったルビィはエレベーターのすぐ近くにあった階段へ突っ走った、短い脚じゃ階段も一つ飛ばしでしか登れないし絵里さんや曜さんと比べちゃそもそも速度が遅い)

ルビィ(だけど走らなきゃ。今本気で走らないでいつ本気で走るんだ、何十階とあるこの階段は本気で走らなきゃ間に合わない!)

ルビィ(そう自分自身の戒めや、昂る感情が奮いを立てて汗も一瞬で過ぎ去ってしまうほどルビィは焦ってた。足音の残響すら置いていかれて、時々つまずきそうになっても無理矢理足をねじって前へ進む)

ルビィ(待つのは生か死、それを確かめる為に今は真実への階段を上る)


ルビィ(そうしてルビィは————)





852: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:47:08.06 ID:wesiesbo0




曜「穂乃果ちゃん後ろ!」


穂乃果「なっ…!」


ことり「せやぁっ!」ドカッ!


ことり(スタンとスモークを投げてから約二十五分後くらい経った今、下は大騒乱だった)

ことり(スタンとスモークは時間が経てば効果も薄くなるしそれは有限、だから私たちが見つかるのも時間の問題で見つかれば見つかったで今度は組手のようなものが始まった)


穂乃果「た、助かったよ」

ことり「いいよ、気にしないで」


ことり(十数人、それも全員拳銃を持ってる相手に近接だけでやり合うのは辛くて、いくら私たちが上手く立ち回れるからとはいえ数の暴力もあるし、武器の性能差を経験だけで埋めるのは無理に近かった)



853: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:49:11.71 ID:wesiesbo0



バンッ!


穂乃果「! はぁっ!」シュッ

ことり「ほっと!」シュッ

ことり(三人全員殴りと蹴りだけを駆使して相手に近づいて一人ずつ無力化していく、だけど伊達に最上級ホテルの警備をしてるだけあって統率はかなり取れてて全員が射撃に集中するのではなくてそれぞれ近接か射撃かの役目を持って行動してる)

ことり(そんな相手に三人だけで挑むのは正直荷が重い、戦いながら何度もそう感じた)

穂乃果「よい…しょっと!」ドカ!

ことり「後は任せて!」ダッ


タッタッタッタッ!


ことり「ふんっ!とりゃー!」ドカッ!


ことり(いつも穂乃果ちゃんは最前線にいる人で、どんな相手でも恐れずに立ち向かう勇敢な人だ)

ことり(だからこの戦いでもまず穂乃果ちゃんが先行する、だから私はその穂乃果ちゃんのカバーをする。穂乃果ちゃんが相手のお腹に肘打ちを入れた後は、私が大きな踏み込みと一緒に掌底をかまして相手を吹っ飛ばした)



854: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:50:41.17 ID:wesiesbo0



曜「スタン投げるよー!」


ことり「! うんっ!」

穂乃果「了解だよ!」

ことり(そうして後ろから飛んでくるスタングレネードはここ周辺全ての人間の視界を奪う。私と穂乃果ちゃんで殲滅を行って曜ちゃんは追撃がこないように辺りをかき乱す役目をやってもらってる)


タッタッタッタッ


穂乃果「悪いね!私たちも本気でやってるから!」

ことり「痛いと思うけどごめんねっ!」


曜「二人とも殺さないようにね…」

ことり(フラッシュに備えた特殊なゴーグルをつけてる私たちには曜ちゃんの投げたスタングレネードは効かない、だから相手の視界を奪ってる間に近づいて殴り、或いは蹴り飛ばす)



855: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:52:12.49 ID:wesiesbo0



ことり「よしっ」

穂乃果「ふう」


ことり(穂乃果ちゃんと連携して数人を殴って蹴って吹っ飛ばしたら、背中を寄せ合って周りを見渡した)


ことり「…囲まれたね」

穂乃果「どうしようか…」


曜「はいはーい!そんな時は渡辺曜にお任せ!」バンッ!


ことり(そういいながら曜ちゃんは天上に向かって銃を発砲、そうすると銃声に反応した数人が曜ちゃんの方を向いたので、私たちはその間を使って曜ちゃんの方向にいる警備員一人に、穂乃果ちゃんはスライディングで相手を宙に浮かせて私はその宙に浮いた相手に飛び膝蹴りをしてそこからどかした)



856: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:53:57.22 ID:wesiesbo0

曜「ぃよしっ!いいね二人とも!残りの人もだいぶ少なくなってきたよ!」

穂乃果「このくらい余裕だよ」

ことり「ねっ」


曜「よーし!後の人たちをちゃちゃっと片付け——————」



ドカーン!



ことり「……え?」穂乃果「え?」


ことり(一歩、二歩、三歩と進んだ曜ちゃんが眩い赤い爆発と共に突然消えた。もう少し近かったら肌が焼けていたかもしれないし、そうでなくても火傷をしてしまいそうな熱が私に伝わってきて、私と穂乃果ちゃんを吹き飛ばす爆風は困惑の声を出してからやってきた)





857: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:56:01.29 ID:wesiesbo0



ことり「ぐっ……」

穂乃果「急に何…!?」


ことり(後ろに数m吹き飛ばれたけど空中で体勢を立て直して着地は怪我無く出来た。だけどそのすぐに飛んでくるモノに私は顔を青くした)


ことり「ッ!?!!!?」

穂乃果「よう……っ!」


曜「……っぁ」

ことり(私たちの前まで飛んできて見せたその姿————頭から血を流して顔の一部が黒く変色してる。ころころと転がって仰向けの状態で止まると見える曜ちゃんのその顔はあまりにも絶望に満ちていて、口が空いたままであまりにも厭世的でトラウマになりそうだった)

曜「…あっ………」

ことり(倒れる曜ちゃんの場所からはじわりじわりと血が広がっていって、首の皮一枚繋がってる状態で生きてはいるみたいだけど、ほぼ死んでるようなものだった)


ことり「曜ちゃん!!!?」


ドカーン!


穂乃果「くっ……一度逃げよう!!」


ことり(曜ちゃんをおんぶした穂乃果ちゃんはそう言った。驚く暇も与えてくれない爆撃がことりたちを襲うもので事態は一気に形勢逆転を迎えた)





858: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 19:58:43.39 ID:wesiesbo0



タッタッタッタッ


ピッ

ことり「真姫ちゃん!」

真姫『こちら真姫、どうかした?』

ことり「曜ちゃんが死んじゃう!!!」

真姫『どういうこと?落ち着いて状況を説明して」

ことり「爆発を受けて曜ちゃんがっ!」

真姫『出血は?』

ことり「もう酷いよ…このままじゃ死んじゃう!というかなんで生きてるのかが分からないくらいだよ!」

真姫『ならいい?まず頭の出血を止めなさい、そうしてすぐにこの位置へ向かって』

ことり「…!ここは……」

ことり(フラッシュに備えたゴーグルに浮かび上がる電子地図に目を丸くした、どこだろうこれ……)



859: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 20:00:47.49 ID:wesiesbo0

真姫『私の今いる位置よ、黒い車の中にいるからすぐに来て』

ことり「ち、近くない?なんでこんなところに……」

真姫『私の提案よ、あの家からじゃ電波も届きにくいからね、それに私にだって出来ることはあるし』


真姫『そう、例えば治療とか』


ドカーン! ドカーン!


ことり「この爆撃は何!?」

穂乃果「グレネードランチャーだよ!多分後二発か三発は来るよ!」

ことり「そんなここはホテルの立地でしょ!?なんでそんな…!」

穂乃果「私たちが危険な存在として認識されたのかもね…」




860: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 20:03:22.81 ID:wesiesbo0

ことり「…矢澤にこでももっと考えて撃つと思うけどなぁ」

穂乃果「にこちゃんは堅実だもんね」

穂乃果「…それで真姫ちゃん、話は聞いてたけど今すぐ向かうのは無理だよ、追手が来るんだもん。このまま真姫ちゃんのところへいったら真姫ちゃんも一緒に巻き込まれちゃう」

真姫『それは……そうね』

穂乃果「仮に今から戦って20分で決着がついたとしたら曜ちゃんは助けられる?それとも死んじゃう?」

真姫『…それは曜を見てないから何とも言えないけど、曜がどれだけ耐えられるのかにもよるわ』




861: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 20:04:54.96 ID:wesiesbo0

穂乃果「…曜ちゃん」

曜「……ぁ」

穂乃果「20分耐えられる?」

曜「………」フルフル

ことり「…!」

ことり(ごくわずかだけど、死にかけの曜ちゃんは首を横に振った)

穂乃果「…じゃあ十分は?」

曜「………」フルフル

穂乃果「五分」

曜「………」フルフル

穂乃果「……三分」

曜「………」フルフル




862: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 20:06:14.23 ID:wesiesbo0

穂乃果「……二分、二分もつ?」


曜「………」コクコク


穂乃果「…そっか、なら制限時間は二分だよ」

真姫『…えっ二分…?』

ことり「……分かった」

穂乃果「二分後にそっちに行くね、真姫ちゃん」

真姫『えっちょっと待っ————』


プツンッ





863: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 20:08:04.88 ID:wesiesbo0

穂乃果「……ねえことりちゃん」

ことり「何?」

穂乃果「どうして制限時間は二分って私が言ったのに、驚かないの?」

穂乃果「普通そこは無理でしょって驚く場面じゃない?それなのにことりちゃんはあたかも当然のように受け入れてくれた」

ことり「………」



穂乃果「…ラブライブ」



ことり「…!!」

穂乃果「記憶を失っても、何故かこの言葉だけは覚えてた。この言葉だけは記憶を失う前の言葉だってことが分かった、そしてそれが忘れちゃいけない言葉だって強く自覚が持てた。その名の通り業務用アンドロイドである私が生きることを愛す、私が変化を望もうとした証拠なんだって思ってる、ラブライブっていうのは」

穂乃果「だからそれだけ記憶を失う前の私はその言葉に強い想いを抱いてるんだって思った、記憶を失っても失われない私に沁み付いた何かが私の心にはあったんだ」



864: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 20:09:33.96 ID:wesiesbo0



穂乃果「ことりちゃん、手を貸してよ」


ことり「えっ」


ギュッ


穂乃果「……ほら、やっぱりことりちゃんは私の知ってる温もりとそっくりなんだもん。機械的に判断して、純度100%の温もり」

ことり「………」

穂乃果「最初に会った時からおかしいって思ったんだ、私はことりちゃんの事知らないのにことりちゃんは何故か私の事をよく知ってた」

穂乃果「絵里ちゃんと話す時は鼓動のスピードが遅いのに、私と話した途端鼓動のスピードが加速する、なんで私と話すことに緊張してるんだろうって」

穂乃果「他にも色々あるよ、初めて会ってからあの家の図書室で話をした時、ことりちゃんは儚そうな淡い笑顔をしてた。それが儚いって分かったのは花丸ちゃんも同じ笑顔をよくしてたからね、そしてそれは間接的に過去に何かを抱えてる人なんだって私は確信したよ」

ことり「………それで?」




865: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 20:10:51.93 ID:wesiesbo0

穂乃果「あの時手を握った時には明らかな手応えがあった、ここまで私の探してる人の温もりと合致する人…いやもう本人なんじゃないかって思うほどの人は初めてだったよ」

穂乃果「希ちゃんの合致率は63パーセント、花丸ちゃんの合致率は41パーセント、せつ菜ちゃんの合致率は18パーセント、念のためと思って握ったにこちゃんに関しては3パーセントだったよ」

穂乃果「だけどことりちゃん自身が否定をするからきっと違うんだって思ってたよ」

穂乃果「…だけど、今確信したよ」



穂乃果「ことりちゃん、あなたは私が記憶を失う前にずっと一緒にいた人でしょ?」



ことり「……!」

穂乃果「私のペアでもないのにことりちゃんはせつ菜ちゃんと同じくらい…いやそれ以上に息のあった動きが出来てる、私の行動癖を知ってて、私がやるであろう行動をもう知ってての動きをしてる」

穂乃果「それはつまり私が記憶失うずっと前から戦線を共にしてきた人なんだよね?ことりちゃんは初期型、私も初期型、昔から一緒でも何もおかしな話じゃないんだよ」



866: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 20:12:09.41 ID:wesiesbo0



ドカーン!


ことり「……気付いちゃったんだね、穂乃果ちゃん」

ことり(爆発が近くで起きても動じない私たちがそこにはいた)

ことり(例え記憶を失っても、私の事をどこかで覚えていてくれるのは何とも穂乃果ちゃんらしかった)

ことり(別にばれたくないって思ってたわけじゃない、だけど秘密にしておいた方が悲しまずに済むと思ってずっと逃げてた。前の穂乃果ちゃんとは別人だって思ってても、ニッコリとした笑顔や最前線を突っ走るあの姿は何も変わらなくてもどうしても昔の穂乃果ちゃんと重なってしまう)

ことり(穂乃果ちゃんと喋ると緊張する、心があたふたする。昔の穂乃果ちゃんより真面目で笑顔の数も減った穂乃果ちゃんといると心が苦しくなる)

ことり(だけどやっぱり穂乃果ちゃんは穂乃果ちゃんのまま。記憶を失ってもどこか冷静だし戦う時に見せる背中はとても大きく感じる、笑ってなくてもなんだかんだ優しいし、軍神としての強さも失ってない)

ことり(だからそっと傍で穂乃果ちゃんを見てるのがことりにとって幸せだった。もう悲しくなりたくないから、もう何も起こってほしくないから私は進展よりも停滞を望んだんだ)


ことり(それなのに穂乃果ちゃんは私のことに気付いちゃったんだね……)


ことり(別にイヤなわけじゃないよ、でも…ことりの心が揺れだすのはもはや避けられないことだよ)



867: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 20:15:18.30 ID:wesiesbo0

ことり「…当たり前じゃん、穂乃果ちゃん動きを知ってるんだから連携が取れないわけないじゃん」

穂乃果「……やっぱり」

ことり「だって…ずっと昔からいた人のこと忘れられるわけないじゃん!どんなに辛い思い出抱えてたってことりにとっては大切な思い出なんだもん!」

穂乃果「…穂乃果だってそうだよ!今は記憶を失って何もわかんないけどことりちゃんの事大切にしてたっていうのは覚えてる!この体で感じてる!!」


穂乃果「穂乃果にとってことりちゃんは運命の人だったもん!!!」


ことり「!!」


穂乃果「……会いたかった」


ギューッ



ことり「………ことりもだよぉ!!」ポロポロ



ことり(穂乃果ちゃんに“運命の人”って呼んでもらえるだけでもうこの上ないくらいに幸せだった)

ことり(気付いたら笑えるようにもなってて、それもこれも全て絵里ちゃんのおかげだよ。幸せを運んでくれることりたちのリーダーに、穂乃果ちゃんの主に)


ことり(東京を変える人物として相応しい人だよ)





868: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 20:17:45.28 ID:wesiesbo0

穂乃果「…さて、ことりちゃん」

ことり「んん…」ゴシゴシ

ことり「何?」

穂乃果「真姫ちゃんから無線を切ってからもうすぐ一分半だけどどうする?」


ことり「……三十秒もあれば充分だよ」


ことり「倒す必要なんてないんだから」

穂乃果「うん!そうだね!」ダッ

ことり「行こう!」ダッ

ことり(そう言って穂乃果ちゃんは曜ちゃんを背負いながら走り出し、後に続くことりは残った全てのスモークとスタンを一定の間隔をあけて投げた)

ことり(するとどうだろう、後ろで大きな煙幕が上がった途端に飛んでくるグレネードランチャーの弾二発に対しては、私たちがほぼ同じタイミングで後ろを向きそれぞれ別々の弾を撃って空中爆破させた)



869: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 20:19:09.18 ID:wesiesbo0



穂乃果「えへへっやっぱり分かってるね」

ことり「元相棒だからね♪」


ことり(穂乃果ちゃんが右にいるにも関わらず撃ち落とすのは左のグレネード弾っていうのは知ってる、こういう局面に陥った時、穂乃果ちゃんは自分の方向とは逆の方を撃ち落としてクロスファイアを作りたがる、その方がかっこいいからって言ってたのを覚えてる)

ことり(そうして前を向いて走り出せばすぐに左へ大きく曲がって相手の視界から外れた。ここで左に行くのはずっと昔から困ったら左に行こうって根拠も無しに胸張って言ってたから)


ことり「はっ」ピョーン

穂乃果「ほっと!」ピョーン


ことり(横に橋があっても飛び越えられる川ならジャンプで飛び越えるのも知ってる、その方が風が当たって気持ちいいからって言ってるのも覚えてる)


タッタッタッタッ


ことり「真姫ちゃん!」

真姫「二人共!大丈夫?」

穂乃果「追手は撒いた、後は曜ちゃんをよろしくね」

真姫「ええ、任せない」



870: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 20:20:51.04 ID:wesiesbo0

曜「……ぅ」

真姫「あなたたちは今からどうするの?」

穂乃果「絵里ちゃんがどうなってるか知ってる?」

真姫「絵里からはとうとう最上階に上るっていう連絡が最後、ルビィはそもそも連絡がないわ」

ことり「絵里ちゃん最上階に行ったんだ……」

真姫「……無事だといいわね」

穂乃果「………」

真姫「どうする?行くのもよし、ここに残るのもよしだと私は思うわよ」

ことり「……二人に応答を入れられない?」

真姫「………無理ね、電波の届かないところにいるみたいだわ」

ことり「うーん………」



871: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 20:22:36.65 ID:wesiesbo0



穂乃果「……待とう、絵里ちゃんが生きてるのを祈って私たちは待とう」


穂乃果「今ここで出てもまた見つかって辺りが騒然とするだけだよ、確かに私たちが最上階に行くことで変わることもあるだろうけどハイリスクすぎる、そしてそこにリターンがあるのかすら分からない。今鞠莉ちゃんと一対一の状態の絵里ちゃんを邪魔するわけにはいかない」

穂乃果「だからここは待とう」

ことり「……分かった」

真姫「…そうね、賢明な判断だと思うわ」

穂乃果「………」

ことり「………」

真姫「………」


「何もないといいけど……」





872: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 20:24:03.37 ID:wesiesbo0



絵里「……うん、お願いね、うん、それじゃあ」

真姫『ええ、それじゃあね』

絵里「……はぁ」

絵里(もしかしたらこれが最後の応答になるかもしれない、そう感じながら真姫に最上階に行くと連絡をした)

絵里(果たして何が待ってるんだろう、考えたくないような気がして思考を停止させ興味のままで終わらせたけど、もうすぐしたらイヤでも見ることになる)

絵里「十二…十三…十四…」

絵里(現在の階を示す数字が増えるにつれ増していく緊張感)

絵里(これが最上階まで来たらとうとう私の目標地点にまで到達する)



873: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 20:25:24.37 ID:wesiesbo0

絵里「………三十」

絵里(長かった。このエレベーターに乗るのにどれだけ苦労したんだろう、様々な死線を超えて、たくさんの感情が巡って、絶望をイヤと味わって、自殺までした)

絵里(だけど、こうして私は真実を知る者としてこのエレベーターに乗っている)


絵里(————ここからが本番)


絵里(ゴールが終わりじゃない、ゴールに何があるかが重要だ)





874: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 20:27:21.27 ID:wesiesbo0



絵里「……四十六」


ピコンッ♪


絵里「………」

絵里(最上階である四十六階につくと鳴る軽快な効果音。しかし扉は開かない)

絵里「…ここに当てるのね」

絵里(エレベーターの階を入力するところの上に、カードを読み取るっぽい場所があった。だからここに真姫が用意してくれたカードをかざした)


『————コード613、機密ID認証をしました。ウイルス、スパイウェアの確認無し』

『ロックを解除、扉が開きます』


ウィーン

絵里「………」

絵里(セキュリティによる何重にもかけられたロックの解除が終わると、扉が開いた)



875: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/10(木) 20:31:22.86 ID:wesiesbo0



スタスタスタ


絵里「………」

絵里(その先はとても広く、奥は全面ガラス張りの社長室。床はロイヤリティ溢れる絨毯が敷かれていて、入って斜め左にあるテーブルには分厚い本の束がいくつもあって、右の壁には様々な資料が貼り付けられている)

絵里「……ようやくなのね」

絵里(私の目線の先にあるイスに座る誰か。私が声を発することで外を向いていたイスがゆっくりとこちらを向き始めた)

絵里(あぁ、ようやくなのね)



絵里(やっとこそで私は————)






883: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 19:50:32.02 ID:raJY7OxV0



鞠莉「…待っていたわ」


絵里「鞠莉……」

鞠莉「海未とにこに銃弾を放った時からあなたは絶対にここに来ると思ってた」

鞠莉「アンドロイドの生みの親にしてアンドロイドの差別を作り上げた私のところに来るのはもはや分かっていたこと」

絵里「………」

鞠莉「…でも、ここに来るまでのあなたは様々なDifficultyに遭遇してきた」

鞠莉「対アンドロイド特殊部隊との衝突、仲間の突然の裏切り、大切な仲間の死、自殺、愛すべき妹との殺し合い」

鞠莉「それを全て乗り越えてここまで来たのよ、まずは私からおめでとうを言いたいわ」

絵里「…ふざけないで、私の今までのしてきたことはおめでとうなんて綺麗な言葉で収められるものじゃないし収めていいものでもない」

絵里「そもそもなんで鞠莉が果南が裏切ったことや私が亜里沙と戦ったことを知ってるの?ましてや自殺まで知ってるのはおかしいんじゃない?」



884: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 19:53:09.04 ID:raJY7OxV0



鞠莉「私は常に私でありなさい」


絵里「……!」

鞠莉「聞き覚えない?」


えりち『私は常に私でありなさい』


絵里「まさかあなた…!!」

鞠莉「そうよ?」フフフッ


鞠莉「私がえりち、あなたの二代目になる予定だった記憶よ?」


絵里「…どういうことよ、あなたは死んで終わりの人間じゃない。仮にアンドロイドが機械的に記憶の移動が出来たとしてもあなたは機械仕掛けの記憶を有していないから記憶の移動が出来ないわ」

鞠莉「ええ、人間の脳を有してる私だけじゃ出来ない。けどそれを補助する機械を使えば記憶の移動も可能になるっていったら信じてくれるかしら?」

絵里「そんなこと出来るの…!?」



885: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 19:59:50.65 ID:raJY7OxV0

鞠莉「——ええ、私はそれをソウルボックスと名付けた。それは脳に存在する意識という概念の発生源を見つけた時に私は考えた」

鞠莉「テキストやワードにはコピー&ペーストなんて便利な機能があるじゃない、それと同じ原理よ、意識の源が分かったのならその意識の源をスキャニングして、解析する。そして解析して得たデータを元に、私の脳にあるニューロンをアンドロイドを作ったのと同じ方法で人工的に再現して、機械的に私の記憶をコピーした」

鞠莉「するとどうなる?機械化された私の記憶がそこには出来て、ソウルボックスを埋め込んだアンドロイドの機械化された記憶が私の今この胸に刻まれているソウルボックスへやってくる、それを他のアンドロイドと連携させれば私はそのアンドロイドを乗っ取ることが出来る。そうして私はもはや半永久的な不死身になったのよ」

絵里「そんな馬鹿げた話が————」


鞠莉「あるのよ」


絵里「!!」

鞠莉「これを使えばクローンだって作れる、もちろんそんなことはしないけどね」

鞠莉「元々アンドロイドは私が作ったのではなくて私と希で作ったのよ、その中で私たちは相手が特定の行動をすることでそれを読み取りこちらも特定の行動をする、という人間とロボットが差別化されるようなものにはしたくなかった」

鞠莉「希には強いこだわりがあった、まるで人間みたいなんじゃなくて、人間そのものとして機能させたいという強い思いがあった」

鞠莉「だから私たちはここのホテルのスタッフに脳のスキャンを協力してもらってをニューロンの可視化をして、意識の源を発見した。アンドロイドの脳は機械仕掛けよ、意識はあるけど記憶の保存は全て機械で行ってる。だから私たち人間の脳に存在する細胞や神経は別に要らなくて、記憶の移動に関しては記憶の機械化が出来た時点で十分に可能だった」

鞠莉「そうして長い年月を経てソウルボックスという機械があるのだけれど、実際の成功例をあなたはもう知っているでしょう?凛を殺したのは誰?」

絵里「……!!!」



886: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:01:56.38 ID:raJY7OxV0



鞠莉「そう、私よ?」


鞠莉「あなたの身体を借りて私があの戦場に立ったわ、あの時は死ぬかと思ったわ。だって目覚めたら背中にナイフが突き刺さってるんだもの」

絵里「な、なんで…凛は対アンドロイド特殊部隊でしょ?仲間じゃない……」

鞠莉「凛という人物とあなたという人物を天秤にかけた結果よ?私にとってあなたの方が重要だったの」

絵里「…それはどうして?」


鞠莉「————標準型アンドロイドX、聞いたことある?」


絵里「!!!」

鞠莉「その様子だと聞いたことあるのね、どこから漏れたかは知らないけどアンドロイドを作っていく中で私はとあるアンドロイドにそういう特殊な呼称をつけた」

鞠莉「標準型アンドロイドXという特別性を持たせるためにね」




887: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:04:54.34 ID:raJY7OxV0



鞠莉「第一に、それは人間でなきゃいけなかった」


鞠莉「目に見えて強い戦闘型でもなければ、目に見えて人間とはまた違う業務型でもない。人間に最も近い標準型でなきゃいけなかったの」


鞠莉「そして第二に、それは識別コードが私の誕生日でなきゃいけなかった」


絵里「!」

鞠莉「あなたの識別コードを今のうちに確認しておきなさい?」


鞠莉「第三に、それは私が死んだ時に自動で記憶が飛ぶ対象でなきゃいけなかった」


鞠莉「ソウルボックスは近年に開発された代物よ、そんなものを有象無象のアンドロイドが有してるわけもなく、標準型アンドロイドXという呼称をつけるにあたってはそのアンドロイドの胸にソウルボックスを埋め込んで、私が死んだ時自動で私の胸のソウルボックスに入っている私の記憶がその標準型アンドロイドXに転移するように作った」

絵里「……!」


鞠莉「最後第四に、それは私とそっくりなアンドロイドでなきゃいけなかった」


鞠莉「私の分身であるような、そしてそれが作られる頃には私がソウルボックスを利用してそちらの身体に移動しても違和感のないようなアンドロイドでなきゃいけなかった」



888: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:06:11.74 ID:raJY7OxV0

絵里「……それが私?」

鞠莉「そうよ、識別コードF-613、名前は絢瀬絵里、高校三年生」

絵里「………」

鞠莉「あ、そうそう、なんであなたに絵里って名前がついたか知ってる?」

絵里「…知らないわ」

鞠莉「あなたは私————私の分身、そしてもう一人の私。そういうコンセプトで作られたアンドロイドなのよ」


鞠莉「Electric Loot Identity」


鞠莉「その頭文字を取ってELI、そう…だからあなたは絵里なのよ」

絵里「…意味が分からないわ、その単語に込められてる意味がまるで分からないんだけど?」




889: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:08:53.15 ID:raJY7OxV0

鞠莉「さっき言ったわよね、あなたは私だと」

鞠莉「あなたの特徴は何?」

絵里「特徴…?」

絵里「………」

鞠莉「…そうね、あなたはちゃんと言われるまで自覚しない人だもの。私とそっくりだわ」


鞠莉「あなたは一度見た動きを即座にコピーする」


絵里「!」

鞠莉「……私がそうだったの」

鞠莉「テレビで見たプロレスの技や時代劇の剣捌き、サスペンスでやってた犯行の手口、実際に見たプロのタイピング、他にも色々見てきたわ」

鞠莉「そうしてく中で私は歳をとればとるほどやれることが多くなってることに気付いた、それも全てが職人レベルでね」

鞠莉「だから私は七年前というまだ中学生でもない時にアンドロイドの開発に成功した」

絵里「………」




890: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:10:18.75 ID:raJY7OxV0

鞠莉「私もね、希に言われるまでは気付かなかったわ。自分のこの才能に」

鞠莉「私はこの才能を誇りに思った、けどね、私のやってることがいくらすごくてもそれって率直に言ってしまえば」



鞠莉「他人の個性を盗んでるだけに過ぎないのよ」



絵里「…!!」

鞠莉「気付いた?Electric Loot Identity、それぞれを直訳して電子、盗む、独自性————その三つの単語のうち、後ろの二つから形成される人物が私なのよ」

鞠莉「この才能が人を傷つけるっていうのを知ったのは運動会の時、クラスで一番速い子のフォームを見て覚えてそれを真似て学年一位の座についた」

鞠莉「そのクラスで一番速い子、泣いてたわ。それはもう大泣き」

鞠莉「他にも中学の美術はプロのを見て先に覚えてたからダントツで上手かった、私が上手すぎたせいでクラスで絵がとっても好きだった子の熱意を殺してしまった、差を見せつけすぎて現実を直視させてしまった」

鞠莉「料理番組を意図せずとも数百と目にしてきたから私は料理がものすごく上手かった、調理実習は私の料理が上手く出来過ぎて逆に上手く出来なかった子がバカにされてた」

鞠莉「私のこの才能は色々な人を傷つけすぎた、だからこの才能はプラスではなくてマイナスのニュアンスとして扱われるべきだと思って私はElectric Loot IdentityのLの部分をLootにした」

鞠莉「…これで分かったでしょう?ELIという名前の意味が」



891: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:10:46.32 ID:raJY7OxV0

絵里「……ええ、よく分かったわ。この力はあまりにも人間離れしすぎてる、それは鞠莉と戦ってる時によく分かった」

鞠莉「…そうよ、この才能は恐ろしすぎるの」

鞠莉「希はこの才能を才能とは呼ばなかった、多分希の優しさかしら」


鞠莉「行動記憶体質って、希はそう言ってた」


絵里「行動記憶体質……」

鞠莉「そう、あなたもその体質なのよ」




892: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:11:48.12 ID:raJY7OxV0

絵里「……じゃあ私が頭を撃ち抜かれても生きてるのは何故?記憶保存領域が壊れてるはずでしょ?」

鞠莉「あなたの死は私の死と同義だからよ、事実あなたの命はもう消えた。だけど私の命が残ってる」

鞠莉「私の胸に埋め込まれたソウルボックスが私の心臓の鼓動を検知しなくなったら自動的に機能を停止してあなたも死ぬわ」

絵里「…じゃあ今の私はゾンビなの?」

鞠莉「いや死に至る痛みを感じたらあなたのシステムが自動でシャットダウンするから死ぬわよ、今は死を誤魔化してる状態にすぎないの」


絵里「……今ここで鞠莉を殺せば私も死ぬのかしら?」


鞠莉「ええ、その通りよ」


カチャッ


鞠莉「……私を殺すつもり?」

絵里「ええ、あなたを殺すわ」



893: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:13:28.42 ID:raJY7OxV0

鞠莉「私を殺したらあなたも死ぬのよ、それでもいいの?」

絵里「いいわ、元々はない命だもの、もうどう使ったって後悔なんてないわよ」

鞠莉「……やっぱりあなたは私と同じね、その頑固な感じは私を見てるみたいだわ」

絵里「…それは嬉しくないわね」

鞠莉「素直に喜んでもいいのよ?」フフフッ

絵里(最上階に上ってから様々な情報が私の脳へ伝達した。えりち————いや、鞠莉が言ってたその“真実”ってやつはパンドラの箱だった)

絵里(アンドロイドの抱える過去のその全貌が見えたような気がして、私というアンドロイドと、鞠莉という人間の関係がよく分かった)

絵里(…そして、それが分かった上で取った行動は鞠莉を殺すこと)


絵里(今ここで鞠莉を殺して、私も死ぬ)





894: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:15:13.33 ID:raJY7OxV0

絵里「……!その武器は…!」

鞠莉「ええ、あなたと同じ武器よ、スコーピオンEVO A1とPR-15、さいっこうにcoolな武器構成だと思うわ」

鞠莉「私も生きとし生ける東京を知ってる人間だからね、抵抗空しく殺される気はないわよ」

絵里「…そう」

絵里(…きっと鞠莉の立場に私がいたらきっと私は鞠莉と同じ事を言っていた、そのことに少し驚いてしまった)

絵里(東京が好きでここにいる私、どんな相手でも抵抗をする私、どんな相手でも勝てないとは思わない私がいる。そんな私がいう言葉はきっとその鞠莉の言葉なんでしょう)

鞠莉「last battleに相応しいわね、あなたと私」


鞠莉「最強対最強の戦いよ?」


絵里(そういいながら鞠莉は曜がいつも使ってる射線が見えるゴーグルをかけ、スコーピオンを下げて戦闘態勢に入った。これがラストバトル、これが天下の分け目)

絵里(泣いても笑ってもこれで最後)

絵里「すぅ…はぁ…」

絵里(鞠莉から目を離さず呼吸を整える為に息を吸って吐いた。私の人生の集大成——秘められた私の想いと宿る強き思いを乗せて私は————)


絵里(————ラストバトルへのトリガーを引いた)





895: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:18:24.21 ID:raJY7OxV0

絵里「はっ!」ダッ

絵里(発砲と同時に鞠莉に近づいた、願わくばこれで終わってほしいけどやっぱり鞠莉はスコーピオンのトリガーを引いた分すべての弾を回避してきて、跳躍の際に靴の裏がほんのり光ってるのを見て鞠莉も曜と同じで跳躍アシストを使ってるのを確認出来た)

鞠莉「あなたはこれを避けられるかしら?」


バリバリバリバリ!


絵里「っ!?」シュッ

絵里(とんでもない数の射線が私の瞳に映る。果南のアンダーバレルショットガンや希のショットガン二丁の射線に劣らないその手数の多さに目を丸くした)


曜『そんなことないよ、絵里さんが強みを実感できないのはスコーピオンを相手にしたことがないからなんだよ、相手にするとその凄まじい発射レートに驚くことになると私は思う』


絵里「ちっ……」


絵里(曜の言う通りだ、トリガーを引くことで鳴る恐ろしい銃声は恐怖の権化で、それと共に飛んでくる数えきれない銃弾は一発自体は小さいもののトリガーを引きっぱなしなら弾の全てが連なった状態で飛んでくる、そんなのを受けたらひとたまりもない)

絵里(スコーピオンの弾丸を初めて見た私は左へ大きく跳躍、動き自体はよかったものの驚きで少し反応が遅れて結果的に上腕に銃弾一発が掠った)



896: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:23:16.50 ID:raJY7OxV0



タッタッタッタッ


鞠莉「あの時の再戦といきましょう!」


絵里「ええ、そうねっ!」

絵里(私が走り出せばまるで鏡のように同じスピード、同じ体勢、同じタイミングで鞠莉も走り出し、結果的な距離の縮まりは近接戦闘の始まりの証だった)

鞠莉「ふっ!」

絵里(しかし攻め方は少し特殊で大体ここで飛んでくるのはストレートやフックなんかの殴りなんだけど、鞠莉が行ったのは私の前で止まって上段蹴りで、どうやら鞠莉は私が一度見たものをコピーするという特性を知っている以上みんながしてるような行動では攻めてこなさそうだった)


絵里「はっ!」ガシッ


絵里(でも、上段蹴り自体は見たことある。それをしゃがんでよければ第二の蹴りが飛んでくるのでしょう?それは知ってる、だから私は避ける選択をしたのではなくて鞠莉の足首を掴んで受け止める選択をした)

絵里(そうして私は掴んだ足首を引っ張って鞠莉のお腹に膝蹴りをして、そのまま怯んだ鞠莉の足首をもう一度強く引っ張り後ろに流し鞠莉の後頭部目掛けて蹴りを————)


鞠莉「はい、残念」ドカッ


絵里「ッ…!?」

絵里(——入れることが出来なかった)



897: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:25:47.94 ID:raJY7OxV0



鞠莉「受け止められるのは想定済み、この場合希みたいに反撃するためのコラテラルダメージを受けるのがいいのよね、私は希の動きを何十回と見てきたからこれには自信があるの」


鞠莉「私、受け手なものでね」フフフッ


絵里「ぐっ…うぅううう…!!」

鞠莉「ごめんなさいね絵里、私はあなたより戦闘経験豊富だから」

絵里(鞠莉は後ろに流され私の視界から外れた瞬間にバランスを元に戻しもう片方の足で私の横っ腹に蹴りを入れてきた)

絵里(アンドロイドにも劣らない蹴りの威力はおそらく後二発でも受ければ体がおかしくなる、だからもう食らえない、食らっても一発…だから次攻撃する時はちゃんと行動を選んでやらないといけない)


鞠莉「そんなゆっくり起き上がってたら死ぬわよ?」バリバリバリバリ!


絵里「!」

絵里(鞠莉の蹴りの痛みが全然消えなくて起き上がるのが辛かった、でもそんなゆっくりしてたら死ぬのは確かに間違ってない)

絵里(しかし幸いにも片足はもう既に立ってる状態だったからなんとかすぐ回避行動に移れた。ただ、これじゃあ跳躍の勢いが足りなくて銃弾をもろに受ける、だからとりあえず右に跳躍をした後すぐに左へスライディングして、あの時の果南のようなジグザクの形で避けた)



898: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:28:47.53 ID:raJY7OxV0



絵里「今度こそ行くわっ!」タッ

鞠莉「ええかかってきなさい!!」


絵里(そうして回避すれば自然と痛みは消えていく、そうなればたちまち起こる近接戦闘は今まで戦ったどの相手よりもハイレベルなものだった)

絵里(右ストレートを繰り出せば体を捻って避けられすぐに反撃の後ろ回し蹴りが飛んでくる、それを少し姿勢を低くして回避し私も負けじと振り返り鞠莉の顎にアッパーカットを入れる、けどそれも体を少し反って回避され、それはもう回避をしたら反撃をして、反撃されたら回避をするの繰り返しだった)


絵里「はぁ…はぁ…本当に人間なの…?」

鞠莉「ん、んん……私はあなただからね…」


絵里(一進一退の攻防を続けて汗も出始め息も切れ始める、しかしアンドロイドの体力についていける鞠莉という人間は一体何者なんだ、どれだけすごい人間なんだと不思議になってくる)




899: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:30:31.18 ID:raJY7OxV0



鞠莉「そんなことより…早く決着をつけましょうか…長期戦にでもなったら私が負けちゃうからね!」ダッ


絵里(私の問いに答えてすぐに鞠莉は動き出す、いくらアンドロイドの体力についていけてるとは言ってもやはり人間であるのは変わりなく、長期戦に持ち込まれて不利になるのは既に分かっているみたいだった)


絵里「…ええそうね!」ダッ


絵里(だけど、それが分かったところで私の戦法は変わらない。逃げに徹するわけでもないし攻めることをやめるわけでもない)

絵里(私だってすぐに決めたい、だって正直私だってこのまま持久戦をしてたら動けなくなって負ける未来しか見えない。なら鞠莉が望むように、私が望むように私も鞠莉と同じように突っ走った)


絵里「はっ!」

鞠莉「食らって!」


絵里(お互いスコーピオンの弾をリロードする暇なんてなく、この期に及んでは考えることが一緒。前へ走りながらスコーピオンの残弾を相手に向かって発砲、そしてその後する行動も全く同じで、お互い射線で心臓を狙ってるのが確認出来てるからそこはスライディングで一気に距離を詰めながら回避)




900: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:31:57.94 ID:raJY7OxV0



絵里「…!!」


絵里(蹴りが届く位置まで来て鞠莉が次にする行動はさっきと同じ上段蹴り、それが分かったのはさっきのフォームを見てたから)

絵里「………」

絵里(上段蹴りを初めて見た時はしゃがんでよけた、けどそれだと追撃が来てしまう)

絵里(だからさっきは足首を掴んで反撃に転じた、けどそれでも鞠莉には通用しない)

絵里(ならこの攻撃はどうする?安定択で攻撃に付き合わない?それともまた受け止める振りをしてフェイント?)

絵里(……いや、違う)


絵里「っ!」タッ


絵里(ここで弱気になっても勝負はつかない、鞠莉は私、なら私は鞠莉だ。如何なる状況においてもコンディションはほとんどが同じ)

絵里(鞠莉が体力切れなら私も体力切れだし、鞠莉の限界が私の限界だ)


絵里(…でも違う)





901: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:34:20.55 ID:raJY7OxV0

絵里(私と鞠莉の決定的な違いで私は勝負にいかなきゃいけないみたいだ)

絵里(確かに私は鞠莉で、鞠莉は私。そこは素直に認めよう)


絵里「だけど違う!!!」


鞠莉「!」


絵里「鞠莉!これが私と鞠莉の違いよ!!!」


絵里(ここが勝敗の分かれ目だった)


絵里(鞠莉の上段蹴りと私の上段蹴りが交わった直後に発生する小さな衝撃波を感じた瞬間、鞠莉の蹴りは私の蹴りの威力に負け体勢を崩した)

絵里(そうして私は追撃にフルパワーの飛び後ろ回し蹴りを鞠莉のお腹にヒットさせ、吹き飛ばし壁に叩きつけた)



902: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:38:32.74 ID:raJY7OxV0



鞠莉「がっ…けはっ…!うっぷっ……」


絵里「はぁ…はぁ…はぁ……」

絵里(————私と鞠莉の違い、それはアンドロイドか人間であるかの違い)

絵里(アンドロイドは人間より運動神経がよくて、力は強い、例え戦いで人間がアンドロイドと並べてたとしてもそれは表面上に過ぎなくて、武器という小細工がない戦いで交えれば力の差はすぐに出てくる)

絵里(鞠莉、あなたはきっと見たことがないのでしょう?)


絵里(色んな人の動きを見て最強を積み上げてきたけど、鞠莉と同じ立場にいる私の力を見たことがないでしょう?)


絵里(文字通り鞠莉は最強だ、だけどその最強のコピーであり、戦闘的な意味で人間の上位互換種族であるアンドロイドの私の力は、見るだけじゃ分からないでしょう?)



903: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:40:46.23 ID:raJY7OxV0

絵里「………」

スタスタスタ


鞠莉「あ…ぅ……」


絵里(口からよだれを垂らす鞠莉にハンドガンの銃口を近づけた)

絵里(このトリガーを引けば全てが終わる。そう、何もかも全てが終わるのよ)

絵里(始まればいつかは終わる、それが今日なんだとしたら随分と長いようで短い日々だった)

絵里(様々なモノを失った、鞠莉を殺して得るものがあったとしてもきっと失ったモノの数に勝ることはない)

絵里(この戦いで数多くの命が失われた、果たしてその全てが失う必要のある命だったのかしら。今となってはもう分からない)

絵里(振り返ってみればあのままずっと多少の差別を受けながらも平和な暮らしをしていればよかったのかもって思う、だけどレジスタンスになってから得たものには値段とか価値とかそんなものじゃ推し量れない最高のモノだってあったはず)

絵里(ことりや穂乃果、曜やせつ菜————出会いだってたくさんあった)

絵里(だけど、そのレジスタンス生活も今日でおしまいね)

絵里(目を見開いた私はゆっくりとトリガーに指をかけた)



904: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:41:48.47 ID:raJY7OxV0



プルプルプル


絵里「……!」

鞠莉「……ぅ?」

絵里(……まただ)

絵里(鞠莉に銃口を向け、トリガーに指をかけた瞬間に手が震えだした)


絵里『私が…私が…!』

絵里『……なんで』


絵里(何回目だろう、この手の震えは)

絵里(震えた手に力を込める為にもう片方の手を絡めて、無理矢理トリガーを引こうとした)



905: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:42:31.21 ID:raJY7OxV0



絵里「くっ……なんで…なのっ…!!」


絵里(トリガーが引けない、怖い、怖い、怖い)

絵里(これを引いたら人が死ぬ、私は人を殺すことになる。鞠莉という忌々しい相手を前にしても、今までずっと殺すつもりでいた相手を前にしても、殺すことへの恐怖心が拭えてなかった)

絵里(どうして私は人が殺せないのかしら、どうして私は殺すことが怖いのかしら)

絵里(……それはいつまで経っても分からない永遠の謎みたいだった)




906: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:53:52.83 ID:raJY7OxV0



鞠莉「……ふんっ!」


絵里「あっ!?」

鞠莉「はぁッ!」

絵里「ぐふっ…!?」

絵里(あの時のように堂々巡りをしてれば下る甘々な覚悟を持ってた私への天罰)

絵里(尻もちをつき壁に寄り添っていた鞠莉は突然私の足に突き蹴りをいれてきて、トリガーに対して戸惑っていた私は避ける術なく命中するけど、アンドロイド特有のバランス感覚はこれだけじゃ決壊せず怯むだけに留まる)

絵里(だけど間髪入れずに飛んでくる追撃の更なる突き蹴りに対してはどうなるのかしら?)

絵里(……答えはとっても簡単、それに対応できずお腹に強烈な蹴りがめり込んで私はさっきの鞠莉と同じように吹き飛ばされた)

絵里「かっ……なんで…ッ!」

鞠莉「殺さないなら私が殺してあげる、私を殺す時間はたくさんあったのよ、それなのにあなたは殺さなかった」


鞠莉「だから恨むのなら私を殺すことが出来なかった自分を恨むことね」


絵里「……くっ」

絵里(仰向けに倒れる私に向けられた鞠莉のハンドガンの銃口。私自身動けなくはないけどここで動いたら撃たれて死ぬでしょう)

絵里(鞠莉の瞳にはちゃんとした殺意がある、数秒前に私もその瞳の影を宿してれば鞠莉を殺せたのかしら)




907: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:54:25.78 ID:raJY7OxV0



鞠莉「じゃあね、絵里」


絵里(トリガーにかけた指に力が加わるのを感じた私は力強く目を瞑った)

絵里(こんな最後は不甲斐ないけど、ある意味私らしい最後だ)

絵里(東京で人一人殺せないんじゃきっとこうであるべきだったのよ、甘い考えを求めているなら東京から離れるべきだったのよ)

絵里(私の人生を起動修正できるポイントはいくつもあった、そこで私は東京を選んだ)


絵里(殺される直前になって、今更鞠莉を恨むなんてことはしない)


絵里(……もう、悪いのは私なんだから)





908: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:55:30.26 ID:raJY7OxV0



スカッ


絵里「………?」

鞠莉「………」

絵里(だけどどうしてかしら、鳴り響くのは弾が込められていない空の発砲音だけ)


絵里「…ん、ま、鞠莉……?」


絵里(ゆっくり目を見開けば、既にハンドガンを下げてる鞠莉がそこにはいて、瞳を大きく揺らしながら私を見ていた)

鞠莉「………わけないじゃない」

絵里「…え?」


鞠莉「殺せるわけないじゃない!!」


絵里「!!」

鞠莉「あなたは私とかそれ以前にあなたは私の作ったアンドロイドなのよ…?そんな私のアンドロイドを私が殺せるわけないじゃない……」

鞠莉「だから殺しは対アンドロイド特殊部隊の人に任せてたのよ……」

絵里「鞠莉……」



909: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:57:12.67 ID:raJY7OxV0

鞠莉「やっぱりあなたは私よ、誰かの為って時にしか人を殺せなくて、だけどいざ殺せる状況になっても相手を殺せないの、殺すことが出来ないの」

鞠莉「絵里、あなたはここに来るまで人を一回でも殺した?凛は私が殺したのよ、それ以外であなたは人を殺せたの?」

絵里「……殺せてない、殺せなかった」

鞠莉「…知ってるわ、だってあなたは私なんだもん」

絵里「………」

絵里(私はゆっくりと立ち上がった)

絵里(鞠莉のハンドガンは最初から弾が入ってなかった。そして鞠莉も私と同じで理由も無しに人を殺せない人だった)

絵里「…あなたは一体何者なの?仲間なの?敵なの?」


鞠莉「……仲間よ」


鞠莉「私も希も気持ちは同じだった、アンドロイドと仲良くしたい。アンドロイドを人間として扱ってほしい。私たちはアンドロイドの味方なのよ」




910: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:57:48.03 ID:raJY7OxV0

絵里「なら————」


鞠莉「待って、一つ昔話をさせてくれない?」


絵里「昔話…?」

鞠莉「ええ、一番初めに作られた識別コード1のアンドロイドのお話よ」

絵里「…いいわよ、聞いてあげる」

鞠莉「ありがとう」

鞠莉「そうね…どこから話しましょうか」

鞠莉「じゃあアンドロイドを作った理由から話しましょう」

絵里「アンドロイドを作った理由…」

鞠莉「ええ、実は梨子にはちょこっとだけ話したことがあるの、その時にはアンドロイドを作った理由は言わなかったんだけどね」

鞠莉「アンドロイドを作った理由、それは————」


鞠莉「————海未の為だった」





911: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 20:59:51.94 ID:raJY7OxV0

絵里「…海未?あの青い髪の…」

鞠莉「ええ、海未は産まれてすぐに事故で家族全員を失った孤児だったのよ。きっと親の顔も覚えてないでしょうね」

鞠莉「元々私と海未が出逢ったのは海未が十歳の時———いえば私がアンドロイドを作った年だった)

鞠莉「海未はとっても臆病で人見知りが激しくて知らない人じゃ会話もまともに出来ないくらいに弱い子だった、元々孤児ということもあって小原家が海未を引き取ったのだけど、それでも会話が出来たのは私だけだった」

鞠莉「なんでかって?それは私の親はとても厳しい人だったからよ」

鞠莉「臆病な海未が厳しい私の親とまともに会話が出来るはずがなかったのよ」

絵里「………」

鞠莉「だから私は海未を強くしてあげたかった、私以外とも喋れるようになってほしかった」



鞠莉「だから私はアンドロイドを作ったのよ」



鞠莉「人間と瓜二つ、ちゃんと意識があって自我がある。一番最初に作ったアンドロイドの名前はしずくという名前だったわ、海未のように礼儀正しく優しい子だった。けどね、アンドロイドは何もないと破壊を生み出すことに気付いたの」

絵里「破壊?」

鞠莉「ええ、当時のアンドロイドっていうのは標準型だとか戦闘型だとかそういうタイプにわけられてたわけじゃなくて普通に人間として造っただけのアンドロイドだった」

鞠莉「結果しずくは一日で海未と友達になったの、ここまでならよかったねって言えるでしょ?」



912: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:01:42.72 ID:raJY7OxV0

絵里「…何かあるの?」

鞠莉「…そうよ、タイプもわけられてなかった初期型のアンドロイドには課した目標があまりにも簡単すぎたのよ」

絵里「課した目標?」

鞠莉「戦闘型には戦うっていう目標がある、業務型には業務をこなすっていう目標がある、標準型には人間らしく生きるっていう目標がある」

鞠莉「この三つは死ぬまで達成できない目標なのよ、争いは無限に発生するし、業務だって減ることはない。人間らしく生きるなら死ぬまで人間らしく生きなきゃ達成できない。そういう永久的な目標があるの」

鞠莉「でも初期型にはそれがなかった、海未と友達になるっていう目標を課しただけで、それを一日で達成してしまったしずくは後に破壊的衝動を自発的に生み出した」

鞠莉「それから何度と試行錯誤してもその破壊的衝動を抑えることが出来なかった、何故か人を殺すし身の危険を感じると何らかの過激な対抗手段を持って反撃してくる」

鞠莉「いえばアンドロイドはイレギュラーな存在なの、私が作ったにも関わらずまだ謎の多いミステリーな存在なの」

絵里「………」

鞠莉「…そう、それでなんで私がアンドロイドの味方なのにアンドロイドを差別するような発言するのか、それはね—————」



913: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:08:06.05 ID:raJY7OxV0



ルビィ「絵里さん!!!」


絵里「!」

鞠莉「!」

絵里(鞠莉の話を聞いていたら突然階段へ続く扉があいてルビィが大きな声で私を呼んだ)

絵里(その声に私も鞠莉も反応して首をかしげた?)

ルビィ「あ、う…えっと……邪魔しちゃった…かな…?」

絵里「いえ、いいわ。それより来てくれたの?」

ルビィ「もちろんだよ!絵里さんを助ける為だもん!」


絵里「…そう、だけどその必要はないらしいわ」


ルビィ「えっ……」チラッ

絵里「…今の鞠莉は大丈夫よ」

ルビィ「そ、そうなの?」

絵里「ええ」

絵里(警戒するルビィをなだめる私だけど、こんなにも鞠莉を受け入れるのが早いんだなって我ながら不思議に思ってしまった)

絵里(こんな平和的な私がいるんじゃ、今まで戦ってきた私がバカみたいじゃない……)




914: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:12:15.00 ID:raJY7OxV0

ルビィ「あ、だ、だったらえっと、聞いてほしいことがあるの!」

絵里「ん?どうしたの?」


ルビィ「かよさんが!かよさんが狙撃されちゃうよ!!」


鞠莉「花陽が?どうして?」

ルビィ「えっと…かよさんのライブ、今日やっててここの階段からライブ会場が見えてたんだけどその数百m離れたビルの屋上にスナイパーのスコープに反射してる光っぽいものがあったの!」

鞠莉「Really?勘違いじゃない?」

絵里「……いや、ルビィはスナイパーで戦線を潜り抜けた猛者よ、スナイパーのことなら私や鞠莉より詳しいはずよ」

鞠莉「…ならいいわ、今花陽の防衛任務についてる果林と梨子に連絡するまでだわ」

鞠莉「果林、梨子、応答して」


ザー…ザー…ザー……


ルビィ「……応答しないね」

絵里「………」

鞠莉「果林、梨子、緊急事態よ、今がどんな状況でもいいから応答しなさい」


ザー…ザー…ザー…


鞠莉「…ウソでしょ」

ルビィ「やっぱり向こうで何かあったんじゃ……」



915: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:13:43.69 ID:raJY7OxV0

絵里「…!スナイパーに狙撃されるかもしれないんでしょ!?なら今すぐにでも向かわないと助けられないじゃない!」

鞠莉「!!!」

ルビィ「う、うん…」

鞠莉「なら今すぐにGoingでしょ!?そうよね絵里!?」

絵里「え?ええ!」

鞠莉「花陽は守らないといけないわ、あの子を死なせることは————」

絵里「…?」

絵里(鞠莉って花陽の事知ってたのね、どうでもいいかもだけどそう思った)


花陽『はい、私、鞠莉さんに気に入られてるみたいで、鞠莉さん直属の対アンドロイド特殊部隊っていうのは対アンドロイドの前に特殊部隊であるので、SPみたいなボディーガードをすることもあるんですよ』


絵里「……!」

絵里(…いや、既に布石はあった。だからつまりはそういうことなんでしょう)

絵里(私も花陽の事は助けたい、その気持ちは鞠莉と一緒。人が死ぬのを分かっててそれを見捨てるなんてことは)


えりまり「絶対にしたくない!!」





916: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:15:13.48 ID:raJY7OxV0

鞠莉「行きましょう!!」

絵里「ええ!ルビィも行くわよ!」ダッ

ルビィ「う、うん!」ダッ

鞠莉「どこ行ってるのよ!」

絵里「え?だってエレベーターで下に降りるんでしょ?」

鞠莉「何言ってるのよ!それじゃあ時間がかかるじゃない!」

絵里「…まさか」

絵里(喋りながら何かを手に持って私を招く鞠莉を見て私は何かを察した)


鞠莉「そうよ!このパラシュート一つでここから飛び降りましょう!」


ルビィ「え、ええ!?」

鞠莉「時間がないの!」

絵里「……んあぁもうどうなっても知らないわよ!?」

鞠莉「come on!」

絵里「ルビィ、怖いかもだけど耐えなさいよ」ダッ


ルビィ「えっ……」





917: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:17:19.04 ID:raJY7OxV0



ダッ


絵里(急いでパラシュートバッグを背負い、ルビィを抱っこして、そして強く鞠莉の手を握って私は走り出した)


絵里「鞠莉!あの硝子撃って!」


鞠莉「了解よ!」バンッ!


パリーン!



絵里「行くわよー!!!」ピョーン



ルビィ「ぴぎぃいいいいいいいいいいいいい!?」



鞠莉「シャイニー!!」


絵里(摩天楼に響くルビィの悲鳴と鞠莉の楽しそうな一声。銃弾で散る硝子と共にこの重力場へ飛び出した)

絵里(ルビィは抱っこしてるからいいけど、鞠莉とは手を繋いだ状態ってだけで、パラシュート無しのスカイダイビングをしてるようなもの、だからこの手は離してはならない)




918: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:18:10.55 ID:raJY7OxV0



鞠莉「…私が離さないわ」

絵里「!!」


絵里(以心伝心とはまさにこの事なのかしら、それとも鞠莉と繋いだ手が力んでしまって悟られたのかしら)

絵里(風の音で声も一瞬でかき消されてしまう中で鞠莉の声は風に邪魔されることなく透き通って聞こえた)


絵里「着地するわよ!鞠莉はルビィに掴まって!」

鞠莉「ええ!」ギュッ

ルビィ「ぴぎっ…」


絵里「よっと」


絵里(そうして風に揺られながら着地。パラシュートを開いた為にもうこのバッグやパラシュートは邪魔でしかないので急いで外してすぐに花陽のライブ会場に向かう体勢を整えた)

絵里「る、ルビィ大丈夫?」

ルビィ「あ、足が震えて動かない……」

絵里「じゃあ私がおんぶするわ…」

ルビィ「ご、ごめんなさい……」



919: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:19:46.32 ID:raJY7OxV0

絵里「よしっ行くわよま————」


鞠莉「これに乗りなさい!二人とも!」


絵里「——って、え?」

ルビィ「なにあれ……」

鞠莉「車に決まってるじゃない、これで向かう他ないでしょ?」

絵里「車って鞠莉、運転免許証持ってるの?」

鞠莉「当たり前じゃない!ゴールド免許よ!」

絵里「…なら大丈夫か」

絵里(車なんて聞いて悪寒しかしなかったのだけど、ゴールド免許って胸張って言ってるから安心した)


絵里「ひゃああああああああああ!?」

ルビィ「ぴぎいいいいいいいいいいいいい!!」


鞠莉「かっ飛ばすわよおおお!!!」


絵里(……そう錯覚してたみたいだったわ)

絵里(さっきまでのシリアスはどこにいったのか、天井のない超高級車に乗った矢先、ゴールド免許なのかと疑う荒すぎるドライビングに私もルビィも絶叫だった)




920: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:20:49.34 ID:raJY7OxV0

絵里「ゴールド免許っていくら運転が酷くても一度も運転しなきゃゴールド免許じゃない!!」

鞠莉「教習所の時は超真面目に普通の上位免許を取りに行ったんだからゴールド免許なのよ?」

絵里「というか鞠莉の年齢じゃゴールド免許取れなくない!?」

鞠莉「それは気のせいデース!」


絵里「何なのよそれはぁ!!!」


絵里(一応信号は守ってはいるけどあまりにも荒い。こんな破天荒なことに付き合わされてると今まで鞠莉を殺すために色々してきた自分が本当に馬鹿みたいに思えてくる)

絵里(ルビィはルビィでおそらく鞠莉に対して本来とは違う意味で恐怖を植え付けられたでしょうね……)



921: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:24:23.38 ID:raJY7OxV0

絵里「真姫!聞こえる!?」

ブウゥウウゥウン

絵里「鞠莉うるさいわよ!」

鞠莉「エンジン音は消せないのよ!」

真姫『…どういう状況?』

絵里「話は後!とにかく花陽のライブ会場に来て!」

鞠莉「その無線私にも繋げない?」

絵里「え、でも鞠莉って…っ!?」

絵里(赤信号で止まってるのをいいことにイヤホンをかけパソコンを用意してる鞠莉を見て言葉を失った、事故を起こせば終わりなのにどんだけリスキーなことをしてるのよ…)

鞠莉「それで繋げない?」

絵里「わ、分かったわ。この携帯の電波に入ってきて」

鞠莉「了解よ」カタカタカタカタ

絵里(ふざけながら真面目にパソコンをタイピングしてるのを見てると鞠莉という人物がよく分からなくなる。最上階に行ってから鞠莉に引っ張られっぱなしだ)

絵里(……でも、不思議と悪い気はしなかった。一緒に行動しててこの何も企んでなさそうな純粋な感じはむしろ心地いい感じがして、鞠莉は私で私は鞠莉————同じ存在だからこそ裏に何もないことが分かってしまって鞠莉への信頼はこの短い時間でとても厚くなったような気がした)



922: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:27:13.69 ID:raJY7OxV0

鞠莉「hello!」

真姫『は、はろー……』

鞠莉「私たちは今花陽というアイドルのライブ会場に向かってるの」

絵里「花陽がスナイパーに狙われてるかもしれないの、だから急遽だけど花陽を助けにいくわよ」

ことり『花陽?アイドル?それってあの高校一年生の?』

絵里「ええ、昔助けてもらったことがあるの。だから今度は私が花陽の事を助けてあげたいの」

穂乃果『…それはいいけど、鞠莉ちゃんは信用出来るの?私にとって鞠莉ちゃんと戦線を共にするっていうのはにわかにも信じ難いことなんだけど』

真姫『…ええ、それは正直私も思う』


真姫『今まで敵だったのに急に味方になるのはなんかおかしいんじゃない?』


鞠莉「それは………」

絵里「…いや……」

真姫『え?何?』


絵里「今は鞠莉を信じていいわよ」


鞠莉「絵里……」

絵里(私は鞠莉の事を知ってる、もし鞠莉が私であるなら私と戦線を共にした時点で裏がない。それは私がそうだから、私が鞠莉であるなら鞠莉は私と同じ気持ちを抱いてるはずだから)

絵里(……今の鞠莉は信じていいでしょう)



923: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:28:23.43 ID:raJY7OxV0

穂乃果『…分かった、じゃあその花陽ちゃんって子のライブ会場に向かえばいいんだね?」

鞠莉「いや、待って」

鞠莉「向かうならこっちね」

絵里「そこは……」

絵里(鞠莉がパソコンを使って真姫のパソコンにどこかの位置情報を送ってた、鞠莉のパソコンを確認すればライブ会場周辺のいくつかのビルに赤点がついてた)

真姫『これは…?』

鞠莉「その殺し屋がいると思わしきビルよ、あなたは分からない?」

ルビィ「う、うーんと……階段から見たのが西で、飛び降りて向かった方も西だから……」

ルビィ(思い出して…!)

ルビィ(階段を上ってる時に見えた光…近くに大きなアンテナがあって…かなり高いビルで…でも距離はそこそこあって…だけど丁度ライブ会場が見えるようにビルが並んでて……)

ルビィ「………」

ルビィ(ライブ会場があっち、ならそのスナイパーがいるビルはどう考えても向こう……)

ルビィ「……!」


ルビィ「あれ!あれだよあれ!!」


鞠莉「あれ…ってあれね!」




924: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:29:36.22 ID:raJY7OxV0

絵里「じゃあこのマップでいうと…ここよね!」

鞠莉「ええ!聞いて!このマップだとライブ会場が中央辺りにある緑色の建物なの、その緑色の建物から西一直線にあるビルの赤点!そこに向かって!」

真姫『わ、分かったわ』

穂乃果『行ってどうする?そのスナイパーを止めればいいの?』

鞠莉「止めたいけど止めれるかしら…」

真姫『この距離ならすぐにつくわ、とりあえずいくしかないわよ』

ことり『そうだね』


ルビィ「任せて、ルビィが時間を稼ぐよ」


カチャッ


絵里「…!」

絵里(オープンカーで、しかも高速で走ってるというのにルビィはトランクフードに片足を乗っけてそのスナイパーがいると思わしき屋上に向かってスナイパーを構えた)

絵里(さっきまで絶叫してたのにスナイパーを持つと急に変わるのは何ともルビィらしくて、ルビィのスナイパーの射線を確認をしてても射線がぐらぐらと揺れることなくレーザービームのようにただ一点を貫いていた)



925: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:30:33.88 ID:raJY7OxV0



鞠莉「こ、ここから撃つつもり!?」


絵里(そして流石に鞠莉もルビィ以上のスナイパーテクニックを見たことがなかったのでしょう、目を丸くして驚いてた)

ルビィ「すぅ……」


ドォンッ!


ルビィ「はぁ………」

ルビィ「ちょっと屋上から飛び出してたスナイパーの銃口にヒットさせたよ、でも当たりが浅いから多分壊すことは出来てないと思う…」

鞠莉「い、今のを当てたの…」

絵里「さ、流石ルビィね…」

ルビィ「これで少しは下へ意識を向けることが出来たはず」

ルビィ「後はお願い!」


真姫『ええ、分かったわ』

ことり『もちろんだよっ』

穂乃果『任せて!』





926: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:31:10.58 ID:raJY7OxV0

絵里「…あれ?そういえば曜は?」

ことり『あ、えっとね……』

絵里「…?」

真姫『ちょっと大怪我をしたの、今喋るのもおそらく辛いだろうけど死んではいないわ、安心して』

絵里「そ、そうなの…」

ルビィ「曜さん……」

絵里「…まぁ、とりあえずお願いね」

真姫『ええ、了解よ』

ピッ

絵里「…とんでもないことになってるわね」

絵里(無線がきれると悟りだす私の心)

絵里(私鞠莉と仲良くなるためにあそこに行ったわけではないんだけど…なんて思っちゃって、しかもその後にみんなして花陽を助けにいくんだから想像も出来ないわよ、曜も喋るのも辛くなるくらいに大怪我したって言ってるし)



927: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:32:04.00 ID:raJY7OxV0

ルビィ「…花陽さんを助けた後、ルビィたちと鞠莉さんは……どうなるの?」

絵里「……まだ、決まってないかしら」

絵里(…正直言って、この結果は私の予想していなかった未来だ)

絵里(もし、世界がいくつもあって同じ世界の同じ私がいたとしたらこの未来はきっと…そう多くはないはずよ)

絵里(鞠莉を殺す為に動いてきたのに、鞠莉が仲間のような存在になってしまっては私は不完全燃焼だし、心が晴れたとは言えない)


絵里(だけど、鞠莉を殺して私の心が晴れるわけじゃない)


絵里(ここから色々あったとしても、また平和に暮らすのが一番なのかしら)

絵里(……いや…ここで色々してきたから平和には暮らせないのかも…ってそれはどうか知らないけど、とにかく私たちの未来は何も分からない状態だった)


鞠莉「花陽を助けることが最優先事項よ、その他の話は全部後」


絵里「……ええ、そうね」

ルビィ「…うん、分かった」



928: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:34:37.29 ID:raJY7OxV0

鞠莉「花陽は東京のみならず日本のトップレベルのアイドルよ、だからファンの数は尋常じゃないし、今回のライブに参加してるファンの数もおそらく数えられたものじゃない、今丁度ライブ中だからライブ会場の外にわんさか人がいるわけじゃないとは思うけど移動には充分気をつけなさい、はぐれる可能性もあるわ」

絵里「なるほど…分かったわ…」

鞠莉「今回花陽の使ってる会場はドームみたいな全方位から見渡せるような感じじゃなくて一つの方向をみんなで見る舞台型の会場よ、だから最悪ステージへの侵入も出来る…いや、最悪じゃなくてもステージへ上がって直接花陽を助ける可能性の方が高い」

ルビィ「アナウンスで避難しろーっていうのはダメなの?」

鞠莉「それだとまるで意味が無いわ、だって花陽は人間なんだから避難しろって言われても避難してる最中に撃たれて死ぬわ」

ルビィ「あ、そっか…」

鞠莉「私たちがあのビルに行くっていう考えもあったけどそれもダメ、あそこにいって屋上に上るまでの時間とライブ会場にいって花陽を直接助けるまでの時間はどう考えても花陽を直接助ける方が早いわ」

絵里「…なるほど、じゃあ私たちがやることは」


絵里「一早くライブ会場に入って、ステージに上がり、花陽を助けることね」


鞠莉「その通りよ、私は花陽の事務所のスポンサーやってるからステージ裏には上がらせてくれるはず、だから早く行きましょう」


絵里「ってうわぁ!?」

ルビィ「ぴぎっ!」


絵里(そういい突然アクセル全開にしてくるもので心だけが置いていかれてまた声を出してしまった、真面目だろうと不真面目だろうとどんな鞠莉でも運転は相変わらず荒かった)

絵里(…が、しかしそんな荒い運転に気を取られてるだけじゃない。突然私たちに歯向かう射線に目を丸くして戦いの意識を急激に研ぎ澄ました)



929: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:35:54.55 ID:raJY7OxV0

絵里「射線!あの屋上から!」

絵里「…!ルビィに向いてる!ねえ鞠莉もっとスピードあげて!」

鞠莉「了解よ!!」ブウウン

絵里「んくっ……」


カチャッ


ルビィ「…ホントだ、こっち向いてる」


絵里「撃てる?」

ルビィ「…!!身を引いたよ…?」

鞠莉「…!そいつアンドロイドよ!ルビィの射線が見えてる!」

絵里「アンドロイド…!?」

鞠莉「当たらなくてもいいわ!射線で威嚇して!さっきルビィが一発当てたから射線だけでも充分脅威になるわ!」

鞠莉「絵里もやって!!」

絵里「え、ええ!!」カチャッ!

絵里(そういいあの屋上が見える限りハンドガンの銃口を当て続けた)



930: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:36:33.68 ID:raJY7OxV0

絵里「……今って花陽のライブ中でしょ?」

鞠莉「ええ、そうよ」

絵里「なんで相手は撃たないの?花陽はもうステージに上がってるはずよ、殺すのが目的ならさっさと撃てばいいじゃない」

ルビィ「確かに……」


鞠莉「……何か他にあるのかも」


ピッ!

絵里「!」


真姫『ねえ絵里聞こえる!?』


絵里「え、ええどうしたの?」

真姫『スナイパーの件だけど絵里はおかしいって思わない?』

絵里「おかしい?何が?」


真姫『殺すのが目的なら今ライブしてる花陽を撃てばもう終わるじゃない』


絵里「!」



931: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:38:04.43 ID:raJY7OxV0

真姫『それなのに何故か花陽は死んでない、おかしいでしょ?』

絵里「ええ、それを今私たちも話してたところだったの」

真姫『そ、そうだったの?』

絵里「ええ」

真姫『…まぁとにかく私たちも絵里との無線を切った時におかしいって思ったの、だから穂乃果と私でネットを駆け巡って見つけたの!』

絵里「何を?」


真姫『花陽が死ぬタイミングを!!』


絵里「!!」



932: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:39:28.18 ID:raJY7OxV0

鞠莉「oh what!?どういうこと!?」

穂乃果『殺し屋っていうのは依頼人がいないと成立しない、だから多くは殺し屋サイトみたいなのを所有してることが多くて、またその殺し屋サイトっていうのは大体表面上は普通のサイトなんだけど例えばサイトの一番上にあるロゴの一部分だとかサイトの端っこに透明なリンクが貼ってあるとか何らかの方法で本来の殺し屋サイトにいけるんだよ』

絵里「へぇ…」

穂乃果『だから花陽ちゃんを狙ってる殺し屋を希ちゃんや花丸ちゃんが残してくれた情報網で片っ端から調べた、そしたらヒットしたよ!しかも実行日が今日!』

絵里「!!」

穂乃果『その殺し屋サイト、本当かどうかは知らないけどアンドロイドがいるみたいなんだ!だからスナイパーの精度は相当いいよ!絶対に撃たせちゃいけない!』

ルビィ「アンドロイド…!?」

絵里「それってさっきの…!!」


鞠莉「…もはや確定ね」


絵里「それで花陽が死ぬタイミングっていうのは?」

穂乃果『それは————』



穂乃果『孤独なheavenを歌い終わり次第殺害を実行するらしいんだ!!』






933: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:40:24.56 ID:raJY7OxV0

絵里「孤独なheaven?」

鞠莉「花陽の代表曲よ、花陽といったらまずこれというくらいに、そして花陽を知らなくても孤独なheavenは知ってるという人がいるくらいに有名で、花陽を飾る曲なの」

ルビィ「ルビィも花丸ちゃんからたくさん聞かせてもらったけどものすごくよかったよ、まず開幕のウィンドチャイムから感じるボルテージがすごくて!」

鞠莉「ええ!そして片思いの子の気持ちを綴った切ない歌詞もまた魅力の一つ……」

ルビィ「いつもはワイワイとした盛り上がる曲を歌ってるのにも関わらず孤独なheavenは真面目で切なくて、いつもの花陽さんとのギャップも楽しめる一曲だよね!」

鞠莉「そう!そうなのよ!ウィンドチャイムに続くどこまでも奥ゆかさを感じてしまうダークトーンなピアノ!そしてサビ前ではドラムが最前線を仕切ってボルテージを上げてくれたりCメロではギターが織りなすノスタルジーのようなものが良い味出してて後ろの演奏の良さはまさにexcellent!」

ルビィ「Cメロ後の“言えないよ…”は感情移入しちゃって本当に鳥肌が立つよ!」

鞠莉「Yes!あれは花陽の良さが詰まってるのよぉ!そして花陽も当事者になり切ってるようなあの必死な顔も必見!そう、まさにあれは——」


ルビまり「奇跡の歌!!」


絵里「そんな曲が…」




934: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:42:18.74 ID:raJY7OxV0

ルビィ「まだその孤独なheavenは歌われてないの?」

ことり『今ライブ中継見てるけどまだ歌われてないよ』

真姫『…とまぁそんな感じなの、あなたたちも花陽のライブ中継開いて孤独なheavenが流れたらもうすぐだと思って』


キラキラキラ


絵里「!」

絵里(そんな時ある音が流れた。最初はどこからともなくというようなどこから鳴ってるのかもわからなかったけど、よく耳を澄ませばそれは無線から聞こえてるものだということに気付いた)



『すぅ…あなたへのHeartbeat…熱く…熱く——————♪』



絵里「!!」

絵里(そして次に流れるメロディと共に乗せられた声に鳥肌が立った)

絵里(この透き通った声、高校一年生とは思えない大人びた雰囲気、声から感じられる本気度のようなもの)

絵里(ルビィの言う最初のウィンドチャイムが鳴った瞬間聞こえるファンの歓声を聞くとまるで別の世界へ誘われたかのような錯覚と高揚の気分になっていた)



935: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:43:20.11 ID:raJY7OxV0

絵里「これ……!」

絵里(私の心も乗せられて…いやその花陽さんの声に心を奪われてしまって、無線から聞こえるその花陽さんの言葉一つ一つがとても恋しく感じてしまう)


絵里(確かにこれは、奇跡の歌だ)


ルビィ「!!!」

鞠莉「この曲は……!」

ことり『わぁ!?始まっちゃったよぉ!』

穂乃果『えぇ!?』


真姫『ついた!ついたから行って!』


ことり『う、うん!』ダッ

穂乃果『任せて!』


真姫『絵里!孤独なheavenが始まった!』


真姫『時間がもうないわ!!』





936: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:44:07.09 ID:raJY7OxV0

絵里「なら急がなきゃ!!鞠莉!」

鞠莉「言われなくてもアクセルぜんっかいよッ!!」

絵里「孤独なheavenが終わるまでどのくらいかかる!?」

鞠莉「約四分半よ!孤独なheavenが終わるまで後四分くらい!」

絵里「四分って…!」

真姫『そんな無茶な————』


鞠莉「無茶じゃないわ!」


真姫『!』

鞠莉「私たちなら出来る!後四分もあれば充分よ!」

鞠莉「今は一秒たりともバカには出来ないわ!」



937: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:45:23.14 ID:raJY7OxV0



『——————眠たげなのね。後ろからそっと語り掛けるの』


鞠莉「…っ!ついた!こっちもついたから行きましょう!」

絵里「ええ!」

ルビィ「うんっ!」

絵里「真姫!行ってくるわ!」

真姫『え、ええ!』

ダッ


タッタッタッタッ


絵里「間に合って…!!」

絵里(オープンカーを駐車場の適当な場所に留めて会場へ突っ走った、ルビィは携帯で花陽のライブ中継を開いてて、今ここに、今ここで————)


絵里(————ロストソングがクレッシェンドを含み始めた)





938: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:46:02.17 ID:raJY7OxV0



ピッ


鞠莉「!」

果林『こちら果林よ』

鞠莉「果林!?どこに行ってたの!?」

果林『説明は後、それより今から』


果林『防衛対象に殺意を抱くアンドロイド三体と交戦するわ』


梨子『同じく私もです』

鞠莉「…!それってあの屋上の?」

果林『あの屋上かは知らないけど、屋上で、殺害方法はスナイパーよ』

鞠莉「…分かった、気をつけなさい」

果林『了解』

梨子『了解です!』

ピッ

鞠莉「……だけど時間を遅らせることは無理そうね」



939: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:47:31.54 ID:raJY7OxV0



果林「初めて会ってから一回も姿を見なくなったから何をしてるのかと思えばこんなことを企んでたなんてね」


果林「綺羅ツバサ」


ツバサ「別に企んでたわけじゃないのよ?これも殺し屋としてお仕事の一環だから」

梨子「それでもあの花陽ちゃんを殺すなんてアンドロイドとして道を踏み外してます!」

英玲奈「別に我々はアンドロイドの道を往こうとはしていない、殺し屋として生きていくと決めた以上殺すことを重点的に置いた道を往くだろう」

果林「…何故人を殺すの?」

ツバサ「平和な世界っていうのは案外つまらないものなのよ、知ってる顔と毎日笑いあって、時に苦難を乗り越えて過ごしていく日々…最初はそれで充分だと思っていたけど、つまらないって感じた途端急に生きることに対してやる気が失せた」

ツバサ「当時目標だった成績学年一位も何やってるんだろうなーんて悟っちゃってイヤになったわ」


ツバサ「だからこそ私たちは殺しという新たな境地へ辿り着いた」


梨子「…!」


鞠莉『何も無いと、破壊を生み出すということに』


梨子「これ……」

梨子(鞠莉さんの言ってたことだ、もしかしたらこのアンドロイドもその類のアンドロイドなのかもしれない)



940: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:49:57.26 ID:raJY7OxV0

ツバサ「元々私たちは全員戦闘型アンドロイド、だから戦う事に特化してたし、ちゃんと殺害目標を立てて行う殺害っていうのは面白いほどに心が満たされるというか…やり遂げた気分になれるのよ」

梨子「………」

梨子(全ては鞠莉さんの言うことに沿っていた。アンドロイドという生き物は目標を失うと破壊を生む、それは本当だったんだ)

梨子(このアンドロイドの場合、殺しを目標としてしまった以上は人という生物が消えるまで永遠に殺しを目標にするのだと思う)

梨子(…やっぱりアンドロイドはまだまだ危険な存在だ)

果林「…そう、それは分かったけど、そろそろ二人の後ろにいるスナイパーの子にも喋ってもらえないかしら?」


あんじゅ「えー私?」


果林「あなたがそのスナイパーを下げてくれれば私たちとしてはミッション完了なんだけどね」

あんじゅ「それは無理かしら」

果林「…そう、なら話はもう終わりね」



941: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:51:28.12 ID:raJY7OxV0



カチャッ


果林「これよりミッションを開始するわ」


果林「梨子」ダッ

梨子「はいっ!」ダッ

梨子(あのスナイパーがさっさと花陽ちゃんを撃たないのが引っかかるけどいずれにせよ撃たないのであればこちらとしても好都合だ)

梨子(だから決めるなら即行、私たちが動き出すと同時に動き出す射線をかいくぐって近づく刹那に高まる緊張感は全て銃弾が切り裂いた)


梨子「はぁッ!」ババババッ


梨子(射線が見えてる者同士銃弾が当たらないのは基本、相手から飛んでくる銃弾を避けたら今度は私たちのターンで、私が発砲をする)



942: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:52:35.84 ID:raJY7OxV0



英玲奈「おっと」シュッ


梨子(だけど相手もそれを避けるのは当然、するとたちまち発生する接近戦。ナイフを首元目掛けて横に振れば体を反って回避され、相手の後ろから飛んでくるカバーの銃弾は右に飛び退き回避した)

梨子「はっ…ふッ…!」

梨子(だけど避けても尚まだ飛んでくる銃弾は全てのあの後ろのスナイパーからの攻撃。銃弾を避けること自体はそこまでの事だけど追撃に来る英玲奈というアンドロイドの攻撃が鬱陶しかった)


英玲奈「人数の有利はやはり偉大だなっ!」ブンッ


梨子「ちっ……」

梨子(私がなんとか銃弾を避ける中で右ストレートが私の顔に向かってくるもので、それを姿勢を低くして片手を地につけた状態で回避)

梨子「そっちも見えてる!」シュッ

梨子(何故片手を地につけたのかといえば、それは次に来る銃弾を前転回避する為で、地についた手を使って勢いをつけた)


ツバサ「じゃあ、こっちの銃弾は見えてた?」


梨子「!」



943: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:54:40.54 ID:raJY7OxV0

果林「梨子っ…!」

梨子(果林さんは負けてない、けど戦ってる合間に撃たれたその銃弾に、果林さんは焦ってた)


梨子「そんなっ…!!」


梨子(そんな果林さんの顔を見て悟った)


梨子(私、死ぬんだって)


梨子(偏差撃ちに偏差撃ちを重ねた人数の有利をもろに受けた戦いだった、放たれた銃弾は果林さんの手じゃ止めることも出来なくて、前転回避を終えた直後にはもう迫ってた銃弾だったから私も回避が出来ない)

梨子(見える射線は私の頭を射貫いてる)

梨子(流石に急ぎすぎたかな…最後になって自分の行動に対して反省をした)

梨子(だけど、これでよかったんだと私は思う。元々私の人生なんて腐ってたものだ、アンドロイドを殺す為だけに生きている私は元々死ぬべき存在なのだ)

梨子(…それに花陽ちゃんを守る為に、鞠莉さんからの任務な為に、私が出来ることを尽くして死ぬのなら戦人冥利に尽きるまでだ)


梨子「…はぁ」


梨子(死を受け入れた私は小さな溜め息と共に目を閉じた)





944: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:55:58.84 ID:raJY7OxV0



穂乃果「させないっ!」バンッ


カンッ!


梨子「!!」

梨子(一つの銃声と同時に私の目の前で飛び散る火花と甲高い音に目を見開いた)

梨子(そして見開いて尚意識があって、自分の手を開いて閉じてを繰り返しててようやく自分が生きてることに気が付いた)

梨子「あなたは……」

穂乃果「…助けたわけじゃないよ、ただ目の前で人が殺されてるのを見ていい気分になる人はいないから」

梨子「……ありがとう、穂乃果ちゃん」

梨子(突然現れた穂乃果ちゃんは私に飛んでくる銃弾を穂乃果ちゃんの放った銃弾で跳ね飛ばした)

梨子(アンドロイドだから射撃の精度はもちろんその弾速を機械的に見て自分がどこにどのように撃てば目的が銃弾と接触するかが分かる。だから穂乃果ちゃんはそれを実行して私を助けてくれた)

梨子(その時の穂乃果ちゃんのクールな眼差しといったら痺れてきちゃって、これが軍神たる所以なんだなって思った)


梨子(強いだけが全てじゃないって)





945: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:58:06.97 ID:raJY7OxV0



ことり「こっから逆転だよっ」


穂乃果「絶対に勝つ」カチャッ


英玲奈「…軍神と南ことりが来たことは正直驚いたが、そろそろ時間のようだ」

穂乃果「…!」

ことり「この声…」

果林「何?どういうこと…?」


ツバサ「聞こえる?この歓声」


ツバサ「東京ドーム以上に人を動かしたこのライブの歓声はかなり離れたここまで聞こえてくる凄まじいものよ」

ツバサ「そしてその歓声の元である歌、そして人物————」



ツバサ「——————孤独なheaven、小泉花陽」






946: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 21:59:53.32 ID:raJY7OxV0

ツバサ「…あんじゅ!」


あんじゅ「了解よ」カチャッ


ことり「! 待って!」ダッ

梨子「それはダメ!」ダッ

果林「撃つ気!?させないわ!!」


あんじゅ「ほいっと」ポイッ


ことり「っ!グレネード!?」シュッ

果林「ちっ…」シュッ


梨子「わっ…」


梨子(スナイパーのアンドロイドはスナイパーを構えるのではなくて腰にかけてあったグレネードを投げて私たちを注意と視界を奪った)

梨子(そのせいであのアンドロイドを止めるべくして動く足も止まり、トリガーを引くためにある手もグレネードの爆破範囲から外れるのに精一杯で手を動かすことが出来ず、突然の不意打ちグレネードにみんな怯んでしまった)



947: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 22:01:03.18 ID:raJY7OxV0



穂乃果「そんなの希ちゃんに比べたら手品にも届かないよ!!」ダッ


英玲奈「無駄だ」バンッ



穂乃果「舐めないで!」シュッ



梨子(だけど、穂乃果ちゃんだけは足も手も止まらずにあのスナイパーのアンドロイドに牙を向けた)

梨子(もうすぐ爆発するというのにそれすらも恐れずに、転がるグレネードを蹴ってグレネードを相手に返却した)

梨子(これが軍神たる所以……その勇ましくグレネード如きで怯まない姿は私たちとの格の違いを知らしめている気がした)



949: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 22:02:29.90 ID:raJY7OxV0



ツバサ「流石軍神だけど、それも無駄よ」


穂乃果「偽物…!?」

ツバサ「惜しかったわね、もしこれが本物のグレネードだったら私たちは死んでいた。けど生憎そんな危険性を秘めたグレネードを投げるほど私たちはバカじゃないの」

穂乃果「ッ……!」

梨子(穂乃果ちゃんが決死の判断で蹴り返したグレネードは着弾しても地面に転がるだけだった、ピンはちゃんと抜かれてるのに、でもそれはただのおもちゃで——私たちはまんまと嵌められた)



あんじゅ「さよなら東京の歌姫!!」ドォンッ!



ことり「あ………」


梨子「そんなっ…」

穂乃果「間に合わなかった…!!」

果林「……くそっ」

梨子(凄まじく低い銃声がビルからこの摩天楼へ響くと聞こえる絶望感)

梨子(ファンの人が騒いでる。穂乃果ちゃんは強く握った拳を下げて悔しさが隠しきれてない、果林さんも下を向いて喋らないまま、ことりちゃんに関しては崩れ落ちてる)



950: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 22:03:28.89 ID:raJY7OxV0

梨子「…鞠莉さん」

梨子(一人虚しく呟いた)

梨子(鞠莉さんは今どういう反応をしてるんだろう、気になるけど考えたくない)

梨子(私自身、鞠莉さんの命令だからっていう理由以上に花陽ちゃんを守りたかった)


梨子(それなのに守れなかった)


梨子「……鞠莉さん」


梨子(……この場に残るスナイパーの銃声は、私の心にいつまでも悔しさという残響を発生させていた)





951: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 22:05:09.15 ID:raJY7OxV0

~四分前


タッタッタッタッ


絵里「どうやってステージまでいくの!?私この会場全然知らないわよ?」

鞠莉「もう時間がないわ!とりあえず入って関係者用のところからステージ裏まで突っ走りましょう!」

ルビィ「そんな許可も無しにいって大丈夫なの?」

鞠莉「そんなこと気にしてる場合じゃないわ!」


『————見つめることも、迷惑ですかと…』


絵里「なんか会場外なのに人いっぱいじゃない!?」ピタッ

鞠莉「会場内にいなくても花陽の声は聞こえるからそのおこぼれを狙ってこうして集まるのよ!」

ルビィ「どうやっていくの…?」


鞠莉「正面突破しかないでしょ!」ダッ


絵里「仕方ない…ルビィ行くわよ!」

ルビィ「え、うんっ!」

絵里(会場を前にして分厚い人混みと遭遇した私たちは一斉に足を止めた。迂回は多分出来るけどそんなことしてたら曲が終わる、ここは正面から行くしかなくて考える暇もなく鞠莉は止めた足を再び人混みの方向へ動かし始めた)



952: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 22:05:55.79 ID:raJY7OxV0

絵里「ルビィ、少し私の元へ来て」

ルビィ「う、うん」

絵里(鞠莉は人混みの中へ突っ込んでいった、けど私はルビィをおんぶして会場に行くためにかかっている橋の手すりを走った)


ルビィ「え、絵里さんそれ大丈夫!?」

絵里「心配しないで!いくわよっ!」


絵里(手すりが無くなれば私はそこから大ジャンプ————人混みを一気に跳び越えてここで聞いてるファンを抑えていた警備員の列さえも跳び超えた)


鞠莉「絵里!」


絵里「ええ!」

絵里(そうして着地した頃に後ろから声が聞こえて振り替えれば警備員の抑制をスルーしてやってくる鞠莉がいて鞠莉がある程度近くにきたら再び私とルビィは走り出した)



953: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 22:07:10.27 ID:raJY7OxV0



『————放課後のバス停の前で』



タッタッタッタッ


絵里「ここからどう行くの!?」

鞠莉「ステージ前にはちょっと深い水があるから正面から花陽を助けるのは不可能よ!だからステージ裏から行くしかない!その為には入ってすぐ左にある関係者用の通路を通ってそこから花陽に近づく必要があるわ!!」

絵里「了解よ!」


「————同じクラス?隣のクラス?」


絵里(入口を超えるとライブの中継じゃなくても聞こえてくる)

絵里(心臓の鼓動と共鳴しだすこの音と声、今も上がり続ける会場のボルテージを肌で感じることができる)


鞠莉「……やはりすごいわね、花陽は」

絵里「ええ…これは心が奪われてしまうわ」


絵里(関係者用の通路を走る際に交わしたそんな言葉はすぐに花陽の歌にかき消された)

絵里(無限に広がっていく波状攻撃のような強い音色と印象を与えていくこの歌————この歌を聞けば聞くほど花陽を守らなきゃという気持ちが強くなっていく)



954: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 22:08:29.15 ID:raJY7OxV0

絵里「!!!」

鞠莉「!!」

ルビィ「ど、どうしたの?」

絵里「花陽に射線が向かってる…」

鞠莉「まずいわね…」

ルビィ「…!ならルビィが威嚇するから二人は先に行って!」カチャッ

絵里「え、でも」


ルビィ「いいから行って!花陽さんを助けるんでしょ!」


絵里「!!」

絵里(ルビィの必死の声でさえ花陽の歌声やファンの歓声にかき消されてしまう、けどルビィの思いは充分なほどに伝わった)

絵里(スナイパーのトリガーに加わる強い力はルビィの本気の表れ。普段は見せない強気な表情を私に見せることでルビィの真剣さはより分かりやすいものになっていた)



955: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 22:09:53.44 ID:raJY7OxV0



絵里「…分かった、頼んだわよ」

ルビィ「任せてっ!」


絵里(ルビィはその場で片膝を立てて向こうの屋上に向かってスナイパーの銃口を向けた。そこの角度から果たして見えるものなのか疑問なところだけど動かないということはきっと見えてるのでしょう)

絵里「行きましょう」

鞠莉「ええ!」

絵里(そうして私たちも花陽のところに向かって走る。ルビィの事や私たちの事を気にするスタッフはいっぱいいたけどそんなのに構ってられない。今はとにかく分け目もふらずに走って走って走り続けるだけだった)


『————抱きしめたい…』


絵里(悲愴感が広がるピアノの音色と哀愁漂うギターの音色が合わさり、歌もそろそろクライマックスへ入ろうとしてて、私の身体もクライマックスな汗を流してた)


絵里(そろそろ雌雄を決するでしょう)


絵里(音で切羽詰まる私の心の行方は————)





956: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 22:11:13.52 ID:raJY7OxV0



「言えないよ……」


絵里「はああああッ!」

鞠莉「もうすぐよ!!」

絵里(花陽の声にエフェクトがかかりだした。会場のボルテージもこの上ない最高潮なのが分かる、だからそのボルテージに乗せられて私たちの足もより加速していく)


「————私だけの、孤独なheaven」


絵里「…っ!!!」

鞠莉「まずい!射線がっ!!」

絵里(はっきりと見えるその射線。真っ赤な線が花陽さんの頭を貫くその様はこの瞳に焼き付いて見える)



957: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 22:12:50.76 ID:raJY7OxV0



絵里「花陽ッ!!」


絵里(クライマックスなメロディは私の限界を限界でなくしてくる。充分に加速した足は更なる加速を遂げてやっとステージ裏まで来た)

絵里(心臓に響くビート、心に刻まれたその金声、熱が迸るボルテージ、感情さえ司るメロディ)


絵里(私を本気にさせる花陽の心)


絵里(全てが合わさったカオスなフィールド————その階段を私たちは上って——)


「——————熱いねheaven……♪」




ドォンッ!







958: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 22:15:01.82 ID:raJY7OxV0



花陽「わっ!?」


絵里(広大な人口宇宙の中で響くひっくい銃声が鳴る刹那——直後、この世界で流れる時間は何もかもがスローになり、この世界からほとんどの音が消えた)


『花陽です!私…花陽って言うんです!だからもし…助けが必要だったら絶対に助けますから!』


絵里(すると、突然花陽さんの声がどこからともなくこの世界で木霊し始めた)


花陽『ふふふっ照れてる絵里さんも可愛いですね』クスッ


絵里(そして次に、いたずらっ子みたいに笑う花陽さんの顔が浮かんできた。結局、今になっても私を助けてくれた理由はよく分からない)


花陽『私、絵里さんのファンなんです!音ノ木坂高校のビューティフルスター!』


絵里(理由らしい理由も、なんだかふにゃふにゃしてて変な感じだし、やっぱり花陽さんは不思議な人だ)





959: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 22:16:04.34 ID:raJY7OxV0



花陽『だからまた今度、お会いした時はもっといっぱいお話しましょう♪』


絵里(でも…そしてだからこそ私は花陽さんを助けたいのよ)

絵里(命を助けてもらった恩があり、次を作りたい私がいる)

絵里(助けたい————抱く思いは当然鞠莉と同じ、だから鞠莉と一緒にこのステージで翔ぶの)

絵里(勢いをつけて、足にこれまでの全てを賭す。これまでの苦難を乗り越え、死を直視して、それでいてようやく手にしたこの翼の耀きで私は————)



えりまり「いっけえええええええええ!!!」



絵里(このクソみたいな東京《ミライ》を変えるのッ!!!)






960: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 22:17:02.83 ID:raJY7OxV0

絵里「はぁ…はぁ…はぁ…」

鞠莉「たす…けれた…?」


花陽「え、絵里さん…?鞠莉さん…?」


絵里「…うぅううううううう…!はなよぉ…!!」ギューッ

鞠莉「よかった…!ぐすん…よかったわ…!!」

花陽「わわわっ…ど、どうしたんですか!?」

絵里(花陽の歌声が無くなり後奏が鳴り始めた同時に飛んでくる銃弾————それを私と鞠莉で花陽に向かって飛び込み抱き着くことで回避させた)

絵里(花陽に当たらなかった銃弾はステージ後ろのモニターを割り、会場は大パニック。だけど、今も後奏として響くこのメロディは紛れもない勝利のメロディであり、今も溢れでる涙の源でもあった)



961: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 22:19:34.85 ID:raJY7OxV0


ピッ


真姫『絵里!大丈夫!?どうなった!?』


絵里「…勝ったわ、勝ったわ……」


絵里「花陽を助けれたわぁ…!!!」


穂乃果『そ、それホント!?』

絵里「ええ!やったわ!!」

ことり『よ、よかったぁ…』

ルビィ『ルビィもよかったよぉ…』

穂乃果『ごめん…止めれなくて……』

鞠莉「いやいいわ、多分あの状況じゃ私たちが行っても止めることは出来なかった。だから仕方ないことよ」



962: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 22:20:56.71 ID:raJY7OxV0



曜『おめで…とう……』


絵里「曜!?大丈夫なの?」

曜『なん…とか……ね』

絵里「そう…よかったわ……」

花陽「もしかして花陽を助ける為に……」

絵里「当たり前じゃない」

鞠莉「その為に私たちここまで本気で走ってきたんだから」

花陽「あ、ありがとうございます!」ペコリッ

花陽「花陽狙われてるなんて気付かなくて…お二人にはなんてお礼したらいいのか…」

絵里「お礼なんていいわ、それよりもこれは私と鞠莉だけの力じゃない」




963: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 22:21:48.35 ID:raJY7OxV0



真姫『…ふふふっ』

穂乃果『あははっ』

ことり『えへへへ……』

ルビィ『んふふふっ』

曜『よーそろー……』


絵里「寛容で強く、絶望にも負けなかった私の仲間や」


善子『ヨハネよ!』

果南『絵里は人に言えないことがありすぎるんだよ、抱えないで言ってよ?私たち親友でしょ?』

花丸『だからいつまでの話になるか分かりませんが、しばらくの間ここでよろしくお願いします』

にこ『あんたらを狙って悪かったって話よ、私も目が覚めたわ、あいつらとはいたくないもんでね。海未には悪いけど』

せつ菜『……とにかくよろしくお願いしますね、絵里さん』


絵里「……今、ここにはいないけど、彼女たちも寛容で強くて、私を信じてついてきてくれた大切な仲間」

絵里「そのみんなの力が合わさって花陽を助けることが出来たの」



964: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 22:23:24.32 ID:raJY7OxV0

花陽「…そうだったんですね」

花陽「あれから…また色々あって…それでも絵里さんが生きていてくれてて、花陽はすごく嬉しいです」

花陽「Y.O.L.Oが爆破されたと聞いた時は、少し不謹慎ですけど花陽嬉しかったんです。絵里さんがまだ生きてるって思って…」


花陽「だからまた…こうして会えたこと…そして助けてくれたこと…すごく嬉しい!」ニコッ


絵里(勝利のBGMがまだ響いてる。この胸に宿した勝利があまりにも大きすぎる)

絵里(後ろのモニターは黒く染まってしまったけど、それでもステージはまだキラキラしてる)

絵里(…これなのかもしれない、このキラキラ輝いた場所。この心躍る素敵な場所)


絵里(この“輝き”を私はずっと待ってたのかもしれない)


絵里(ここにいる時はアンドロイドとか人間とかどうでもよくなる気がする…いやそれは根本的にはいけないことだけど、今は…この勝利を胸に宿してる今はそれでいいのよ)


絵里(この余韻はいつまで、続くのかしら…?)





965: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 22:24:36.84 ID:raJY7OxV0



ツバサ「あーあ、やり逃しちゃったわね」

英玲奈「やはりあの金髪二人は厄介そのものでしかないな」

あんじゅ「あらら、やっぱり殺し屋って難しいものね」

穂乃果「よくもやってくれたね」

果林「…正直、あなたたちの殺しに対する考え方には興味あるけど花陽を殺そうしてた以上は私たちの敵にしかなりえない、悪いけどここで死んでもらうわ」

梨子「その通りです!」

ツバサ「あぁごめんなさい、もう戦う気なんてないから」ピョーン

ことり「っ!?飛び降りた!?」

英玲奈「悪いな、だが消化不良なのはお互い様だ。ここは痛み分けといこうじゃないか」ピョーン

あんじゅ「ばいば~い」ピョーン




966: ◆iEoVz.17Z2 2019/10/14(月) 22:25:18.43 ID:raJY7OxV0

穂乃果「っ!逃がさない!」ダッ

ことり「ダメ!穂乃果ちゃん追っちゃダメ!」ギュッ

穂乃果「どうして!?あの三人はここで殺さないとまた何かするよ!?」

ことり「穂乃果ちゃんにはここから飛び降りて確実に助かる術があるの!?ここで死んじゃったらまたみんなとの出会いが消えちゃうよ!」

穂乃果「っ……」

果林「…やっぱりあの三人、謎ね」

梨子「鞠莉さんの言ってた通りのアンドロイドとして典型的な破壊衝動を抱いてますね」

果林「ええ、まぁいずれまた会うことになるでしょう」


果林「だって、彼女らもこの東京が好きなアンドロイドだから」





【スクスタ】絵里「例え偽物だとしても」 part2に続く





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SS速報VIP:絵里「例え偽物だとしても」