1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/15(日) 22:20:32.46 ID:4eMvD+6J0
???「……るたにさん、古谷さん!」
向日葵「ん……、は、はい!」ガバッ
先生「あなた、また居眠りしていたわよ。初めてならまだしも、今日3回目じゃない!」
向日葵「も、申し訳ありません……」
先生「これ以上続いたら、平常点から減点することも考えますからね!」
向日葵「はい……」シュン
最近、あまりよく眠れていない。
特にここ4日間は酷く、そのせいか失敗続きだ。
あまり先生から叱られ慣れていないせいか、そのままずるずると引きずってしまう。
昨日は……。いや、思い出すのは止めよう。
向日葵(また今夜もきっと眠れませんわ……)
その繰り返し。
負のスパイラル。
櫻子「…」
2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/15(日) 22:23:34.93 ID:4eMvD+6J0
キーンコーンカーンコーン
先生「それでは授業を終わります」
ガヤガヤ
あかり「うーん、授業終わったねぇ」
ちなつ「でも、この後漢字テストがあるからね……」
向日葵「えっ」ドキッ
しまった。
今日は国語の時間に漢字テストがあったのだった。
向日葵(完全に忘れていましたわ……)
あかり「昨日大変だったよぉ」
ちなつ「えへへ、実は私も頑張ったんだ。量、多かったもんね」
向日葵(うう……)
もう今からでは間に合わないだろう……。
それでも最後に足掻こうと、漢字ドリルを取り出して頭に叩き込む。
あかり「向日葵ちゃんはどう?」
向日葵「あ、ええと、その……」ズキ
変なプライドが邪魔をして、やっていないとは言えずにはぐらかす。
テストが返って来た時、余計に恥をかくというのに……。
ちなつ「頑張ろうね♪」
向日葵「ええ……」
キーンコーンカーンコーン
先生「はい、それじゃあ予告通り漢字テストを始めますので、筆記用具以外の物を仕舞って下さい」
結局、漢字テストは散々な出来に終わった。
櫻子「…」
向日葵「はぁ…」
身体が重い。
そのせいで眠れないのか、それとも眠れないから身体が重いのか……。
少し頭も痛い。
何だか心が押しつぶされそう。
誰とも話したくない気分。
でも、一人で居ると……。
フッ
向日葵「っ」ズキ
今日あった、昨日あった嫌なことが脳裏に浮かぶ。
向日葵「……忘れましょう」
そう。こんな時は仕事に没頭するのが一番。
甘えた事を考えてはいけない。
HRが終わったらすぐにでも生徒会室へ行こう。
掃除も無いことだし。
【生徒会室】
向日葵「こんにちは」
綾乃「あら、こんにちは、古谷さん」
千歳「こんにちは~、えらい早かったなぁ~」
向日葵「そ、そうでしょうか?」
そういう先輩方はもっと早くからいらっしゃったのでは……。
綾乃「大室さんは?」
向日葵「特に用事も無いはずですし、すぐに来るかと」
櫻子「どうも~」
千歳「こんにちは~。言うてる間に来たな~」
綾乃「こんにちは、大室さん」
生徒会のメンバーが全員揃う。
綾乃「それでは早速だけど今日の作業を説明するわね。量は少ないからちゃっちゃと終わらせましょう」ニコ
内容は資料を順番にホチキスで止めるだけ。量も手分けすればそんなに多くない。
向日葵「はぁ」
単調な作業。作業自体が嫌な訳では決して無い。
頭を使う仕事では無いが故に、手を動かし続けていても嫌な事が独りでに思い出されてしまう。
千歳「どうしたん?」
向日葵「い、いえ。なんでもありませんわ!」ドキッ
いけない。人前では溜息をつかないようにしていたのに。
綾乃「っ!ちょ、ちょっと古谷さん。この資料順番間違っているわよ」
向日葵「えっ」
見返してみると確かにおかしい。
しかもかなり前から間違っているようだ。
向日葵「申し訳ありません!すぐに直しますわ」ササッ
千歳「私も手伝うわ~」
向日葵「そんな訳には……」
綾乃「大丈夫よ。こんなの心配ナイナイナイアガラだから」ニコ
向日葵「ありがとうございます……」
またやってしまった。
しかも誰かに迷惑をかけてしまうなんて……。
櫻子「…」
自分のミスを皆にカバーしてもらったのでほとんど時間は取らずに済み、予定通りいつもよりも早くに解散となった。
櫻子「…」テクテク
向日葵「…」トボトボ
櫻子「……あのさ」
向日葵「(ビクッ)な、何ですの?」
そういえば、今日はこの子とほとんど会話していなかった気がする。
櫻子「向日葵、最近疲れてない?」
向日葵「……そうかもしれませんわね」
櫻子「『そうかも』じゃない!今日の、いや最近の向日葵ちょっと変だよ!」
向日葵「…」
櫻子「今夜、向日葵の家に泊まってもいい?」
突然、この子は何を言い出すのだろう……。
櫻子「いい?じゃなくてもう泊まっていくの決定。ご飯は私んちで食べていくし」
向日葵「は、はぁ……」
櫻子「あと、お風呂に入っといて。その後連絡くれたら行くから」
向日葵「……分かりましたわ」
全くもって支離滅裂なやり取りだったが、断る気力も無いのでそのままOKを出しておく。
そしてそのまま家に到着し、櫻子と別れた。
向日葵「少し時間がありますわね」
早く家に帰れたおかげで、夕食の準備にも余裕がある。
向日葵「…」
櫻子の事が引っかかる。一体何を考えているのか……。
向日葵「…今日は早めに準備をしましょう」
こうして、いつもより少しだけ早めの夕食、入浴を終えて櫻子に連絡を入れることにした。
櫻子「やほー」
向日葵「いらっしゃい」ペコ
櫻子「おおっ、なんだ!?」ビクッ
いつもはかしこまって出迎えなどしないのに。やはり自分でも変だと思う。
その後、櫻子は何の許可も取らずに私の部屋に入っていった。
櫻子「じゃあ、向日葵。布団の上でうつ伏せになって寝転んで」
向日葵「な、何をする気ですの!?」
櫻子「べ、別にヘンな事はしねーし、このえろっぱい!マッサージだよマッサージ」
向日葵「…マッサージ?」
櫻子「最近向日葵疲れてるみたいだしさ。しかも寝不足じゃん。そんなんじゃ身体も心もボロボロになっていくよ」
向日葵「…」
櫻子「これでもねーちゃんに仕込まれてるから、少しは自信あるんだ。任せてよ」
向日葵「そ、それではお願いしますわ」
櫻子がここまで自分のことを考えていてくれたなんて……。
少し嬉しくなる。
櫻子「ちょっと明かりを暗くするね。寝る少し前から暗くしておいたほうがいいんだって」
部屋の照明が弱まる。
私はうつ伏せになって枕に頭を乗せた。
足を掴まれる。
これってひょっとして例の痛いマッサージでは……。
櫻子「あ~。私、ツボ?とかよく分かんないから、揉むだけね。ちゃんとマッサージはするから」
グイッグイッ
親指が足裏を押していく。
疲労が溜まっていたのだろうか。
足の裏がほぐされ柔らかくなっていくのを感じる。
それに気持ちいい……。
向日葵「あぁ」
櫻子「へへ。あんまり足の裏に気を使ってないでしょ。結構疲れが溜まってたりするんだ」
あまりの気持ちよさに思わず声が出てしまった。
でも恥ずかしさなんてどうでも良くなってくる。
確かに……この子は上手だ。
ギュッギュッ
グイッグイッ
何だか足がポカポカしていくのを感じた。
血の巡りが良くなってきているのかもしれない。
右が終われば今度は左へ。
次にふくらはぎをさすられる。
すーっと手のひらが脚を滑っていく。
櫻子「ちょっとむくんでるかな」
脚を手で握るようにして、そのままぎゅーっと頭の方へ持っていく。
ギュッギュッと脚を揉まれ、またぎゅーっと、の繰り返し。
とても心地がいい。
櫻子「眠かったら、寝てもいいよ」
櫻子はそう言ってくれるも、まだいつもよりも早い時間なので完全には眠れない。
うつらうつらとした状態のまま、マッサージは続く。
太ももは手のひらでグーッと体重をかけられ、その後ギュッギュと揉まれ、柔らかくされていく。
グーッ
ギュッギュ
身体が揉みほぐされていく……。柔らかくなっていく……。
太もものマッサージが終わり、手のひらを親指で押される。
そして腕をギュッギュと揉まれる。そしてぎゅーっと頭の方へ。
ふくらはぎの時と少し似ている。
右腕。そして左の手のひら、腕。
櫻子「意外に気持ちいいでしょ、これ」
向日葵「そうですわね……」
囁くような櫻子の声。
意識がぼんやりとしたまま答える。
櫻子「おじゃましまーす」
櫻子が上に乗る。
適度な体重が身体にかかって心地良い。
背中のマッサージ。
手のひらで何度も擦られたり、ぎゅ~っと押されたり。
固まっている所があると、親指を使って揉みほぐしてくれる。
気持ちいい……。
櫻子「どう?」ギュッギュ
向日葵「とても気持ちいいですわ……」
そして肩まですっと手が伸びる。うつ伏せのまま肩を揉まれるのだろうか。
ギュゥ~
櫻子「うおっ、すっごい凝ってるね。これじゃ辛いはずだわ」
櫻子の手は、固まった筋肉をしっかり捉えて丁寧にほぐしていく。
まるで嫌な事もそのままほぐして、消してしまうかのように……。
向日葵「櫻子…、上手ですわ……」
櫻子「えへへ~、でしょ?」
そういってマッサージを続ける櫻子。
ギュッギュ
向日葵「はぁ~」
肩が軽くなっていくのを感じる。
今まで自分の肩はこんなにも凝り固まっていたのか。
ギュッギュ
グリグリ
肩の緊張がほぐされ、柔らかくなっていく……。
本当に気持ちがいい。意識が飛んでしまいそう……。
櫻子「……向日葵が頑張っているの、私知ってるから」
向日葵「え?」
櫻子「最近は……、ちょっと辛いこともあったかもしれないけれど。私はいつも向日葵が一生懸命だったの見てたから」
この子……。
櫻子「向日葵はさ。あんまりみんなに頼ろうとしないからさ。ちょっと疲れちゃったんだよ」
櫻子「独りで抱え込んじゃって……。あまりにもボロボロになった向日葵を見たくなかったから」
櫻子「こんな形でしかお礼できないけれど」
櫻子「……受け取ってくれるかな?」
向日葵「……ええ。ありがとう、櫻子……」
私は流れてくる涙をそっと枕で拭き取った。
今まであまり誰かに頼ろうとしなかったけれど。
こんな風にいたわってくれる人を心のどこかで求めていたのだろう。
今考えてみると、悩んでいたことは全て些細なものだったのかもしれない。
でも櫻子がいなかったら……自分は……。
肩が終わると次は首。
親指がちょうど良い強さで、首の凝りをほぐして柔らかくしていく。
グリグリ
グリグリ
櫻子「首が凝っているとね。頭が痛くなったり、そのせいで身体全体がだる~くなったりするから気を付けて」
向日葵「何だか詳しいですわね」
櫻子「ま、ねーちゃんが言ってたんだけどさ」
そして頭。
両手の指で掴まれ、ギュッと押される。
場所を変えて、何度もギュッギュ。誰かに頭を洗われているみたいで気持ちいい。
『向日葵が頑張っているの、私知っているから』
櫻子の言葉を頭の中で反芻する。
向日葵(ふふ)
心も身体も、軽くなっていく。
最後に再び軽く全身を揉まれ、マッサージが終わった。
櫻子「これで終わり。どうだった?」
向日葵「とても良かったですわ。本当にありがとうございます」
起き上がって軽く伸びをする。
今まであった身体の重さが取れて、気分もいい。
櫻子「んじゃあ帰るわ」
向日葵「え……。泊まっていきませんの?」
櫻子「そのつもりだったけど、やっぱり悪いかなーって」
向日葵「一応伝えてきてはいるのでしょう?だったら泊まっていきなさいな」
櫻子「うーん、うーん……。じゃあお言葉に甘えて」
向日葵「どうぞ」ニコ
櫻子「あのさ……。このまま隣で寝てもいい?」
向日葵「ふふ。いいですわよ。では電気を消しますわ」
パチッ
櫻子のおかげで、今夜はとてもよく眠れそうだ。
【翌朝】
向日葵「ううーん」ガバッ
ここ最近で一番良い目覚め。
昨日はほとんど夢も見ず、深い眠りにつけた。
時計を見ると、普段起きるよりも少し早い時間。でも、眠気は殆ど無い。
カーテンを開けると眩しい朝日が飛び込んできた。
向日葵(今日は洗濯物が良く乾きそうですわね)
そんなことを思っていると。
櫻子「う……ん」
向日葵(あら)
カーテンを閉める。
この子は、もう少しだけ寝かせておいてあげよう……。
向日葵「ありがとう。櫻子」
起こさないように小声で囁く。
天使の様な寝顔。このまま見つめていたい。
向日葵(今日はとてもいい一日になりそう)
晴れやかな気持ちのまま、でもちょっとだけ静かに部屋を出て洗面所へと向かうのだった。
終わり
ありがとうございました。
今回の向日葵ちゃんのように、少し辛いことが続いていらっしゃる方へ……
これを読んで、少しでも心が軽くなった、などの感想を抱いて頂けるのであれば幸いです。
このSSが皆さんにとっての櫻子ちゃんでありますように……
元スレ
キーンコーンカーンコーン
先生「それでは授業を終わります」
ガヤガヤ
あかり「うーん、授業終わったねぇ」
ちなつ「でも、この後漢字テストがあるからね……」
向日葵「えっ」ドキッ
しまった。
今日は国語の時間に漢字テストがあったのだった。
向日葵(完全に忘れていましたわ……)
あかり「昨日大変だったよぉ」
ちなつ「えへへ、実は私も頑張ったんだ。量、多かったもんね」
向日葵(うう……)
もう今からでは間に合わないだろう……。
それでも最後に足掻こうと、漢字ドリルを取り出して頭に叩き込む。
4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/15(日) 22:29:14.75 ID:4eMvD+6J0
あかり「向日葵ちゃんはどう?」
向日葵「あ、ええと、その……」ズキ
変なプライドが邪魔をして、やっていないとは言えずにはぐらかす。
テストが返って来た時、余計に恥をかくというのに……。
ちなつ「頑張ろうね♪」
向日葵「ええ……」
キーンコーンカーンコーン
先生「はい、それじゃあ予告通り漢字テストを始めますので、筆記用具以外の物を仕舞って下さい」
結局、漢字テストは散々な出来に終わった。
櫻子「…」
6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/15(日) 22:33:03.18 ID:4eMvD+6J0
向日葵「はぁ…」
身体が重い。
そのせいで眠れないのか、それとも眠れないから身体が重いのか……。
少し頭も痛い。
何だか心が押しつぶされそう。
誰とも話したくない気分。
でも、一人で居ると……。
フッ
向日葵「っ」ズキ
今日あった、昨日あった嫌なことが脳裏に浮かぶ。
向日葵「……忘れましょう」
そう。こんな時は仕事に没頭するのが一番。
甘えた事を考えてはいけない。
HRが終わったらすぐにでも生徒会室へ行こう。
掃除も無いことだし。
8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/15(日) 22:39:21.50 ID:4eMvD+6J0
【生徒会室】
向日葵「こんにちは」
綾乃「あら、こんにちは、古谷さん」
千歳「こんにちは~、えらい早かったなぁ~」
向日葵「そ、そうでしょうか?」
そういう先輩方はもっと早くからいらっしゃったのでは……。
綾乃「大室さんは?」
向日葵「特に用事も無いはずですし、すぐに来るかと」
櫻子「どうも~」
千歳「こんにちは~。言うてる間に来たな~」
綾乃「こんにちは、大室さん」
生徒会のメンバーが全員揃う。
9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/15(日) 22:41:07.68 ID:4eMvD+6J0
綾乃「それでは早速だけど今日の作業を説明するわね。量は少ないからちゃっちゃと終わらせましょう」ニコ
内容は資料を順番にホチキスで止めるだけ。量も手分けすればそんなに多くない。
向日葵「はぁ」
単調な作業。作業自体が嫌な訳では決して無い。
頭を使う仕事では無いが故に、手を動かし続けていても嫌な事が独りでに思い出されてしまう。
千歳「どうしたん?」
向日葵「い、いえ。なんでもありませんわ!」ドキッ
いけない。人前では溜息をつかないようにしていたのに。
綾乃「っ!ちょ、ちょっと古谷さん。この資料順番間違っているわよ」
向日葵「えっ」
見返してみると確かにおかしい。
しかもかなり前から間違っているようだ。
10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/15(日) 22:43:34.14 ID:4eMvD+6J0
向日葵「申し訳ありません!すぐに直しますわ」ササッ
千歳「私も手伝うわ~」
向日葵「そんな訳には……」
綾乃「大丈夫よ。こんなの心配ナイナイナイアガラだから」ニコ
向日葵「ありがとうございます……」
またやってしまった。
しかも誰かに迷惑をかけてしまうなんて……。
櫻子「…」
11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/15(日) 22:47:21.55 ID:4eMvD+6J0
自分のミスを皆にカバーしてもらったのでほとんど時間は取らずに済み、予定通りいつもよりも早くに解散となった。
櫻子「…」テクテク
向日葵「…」トボトボ
櫻子「……あのさ」
向日葵「(ビクッ)な、何ですの?」
そういえば、今日はこの子とほとんど会話していなかった気がする。
櫻子「向日葵、最近疲れてない?」
向日葵「……そうかもしれませんわね」
櫻子「『そうかも』じゃない!今日の、いや最近の向日葵ちょっと変だよ!」
向日葵「…」
櫻子「今夜、向日葵の家に泊まってもいい?」
突然、この子は何を言い出すのだろう……。
14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/15(日) 22:50:50.26 ID:4eMvD+6J0
櫻子「いい?じゃなくてもう泊まっていくの決定。ご飯は私んちで食べていくし」
向日葵「は、はぁ……」
櫻子「あと、お風呂に入っといて。その後連絡くれたら行くから」
向日葵「……分かりましたわ」
全くもって支離滅裂なやり取りだったが、断る気力も無いのでそのままOKを出しておく。
そしてそのまま家に到着し、櫻子と別れた。
向日葵「少し時間がありますわね」
早く家に帰れたおかげで、夕食の準備にも余裕がある。
向日葵「…」
櫻子の事が引っかかる。一体何を考えているのか……。
向日葵「…今日は早めに準備をしましょう」
こうして、いつもより少しだけ早めの夕食、入浴を終えて櫻子に連絡を入れることにした。
17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/15(日) 22:54:14.84 ID:4eMvD+6J0
櫻子「やほー」
向日葵「いらっしゃい」ペコ
櫻子「おおっ、なんだ!?」ビクッ
いつもはかしこまって出迎えなどしないのに。やはり自分でも変だと思う。
その後、櫻子は何の許可も取らずに私の部屋に入っていった。
櫻子「じゃあ、向日葵。布団の上でうつ伏せになって寝転んで」
向日葵「な、何をする気ですの!?」
櫻子「べ、別にヘンな事はしねーし、このえろっぱい!マッサージだよマッサージ」
向日葵「…マッサージ?」
櫻子「最近向日葵疲れてるみたいだしさ。しかも寝不足じゃん。そんなんじゃ身体も心もボロボロになっていくよ」
向日葵「…」
櫻子「これでもねーちゃんに仕込まれてるから、少しは自信あるんだ。任せてよ」
向日葵「そ、それではお願いしますわ」
櫻子がここまで自分のことを考えていてくれたなんて……。
少し嬉しくなる。
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/15(日) 22:58:30.30 ID:4eMvD+6J0
櫻子「ちょっと明かりを暗くするね。寝る少し前から暗くしておいたほうがいいんだって」
部屋の照明が弱まる。
私はうつ伏せになって枕に頭を乗せた。
足を掴まれる。
これってひょっとして例の痛いマッサージでは……。
櫻子「あ~。私、ツボ?とかよく分かんないから、揉むだけね。ちゃんとマッサージはするから」
グイッグイッ
親指が足裏を押していく。
疲労が溜まっていたのだろうか。
足の裏がほぐされ柔らかくなっていくのを感じる。
それに気持ちいい……。
向日葵「あぁ」
櫻子「へへ。あんまり足の裏に気を使ってないでしょ。結構疲れが溜まってたりするんだ」
あまりの気持ちよさに思わず声が出てしまった。
でも恥ずかしさなんてどうでも良くなってくる。
確かに……この子は上手だ。
ギュッギュッ
グイッグイッ
20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/15(日) 23:02:13.22 ID:4eMvD+6J0
何だか足がポカポカしていくのを感じた。
血の巡りが良くなってきているのかもしれない。
右が終われば今度は左へ。
次にふくらはぎをさすられる。
すーっと手のひらが脚を滑っていく。
櫻子「ちょっとむくんでるかな」
脚を手で握るようにして、そのままぎゅーっと頭の方へ持っていく。
ギュッギュッと脚を揉まれ、またぎゅーっと、の繰り返し。
とても心地がいい。
櫻子「眠かったら、寝てもいいよ」
櫻子はそう言ってくれるも、まだいつもよりも早い時間なので完全には眠れない。
うつらうつらとした状態のまま、マッサージは続く。
太ももは手のひらでグーッと体重をかけられ、その後ギュッギュと揉まれ、柔らかくされていく。
グーッ
ギュッギュ
21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/15(日) 23:05:34.83 ID:4eMvD+6J0
身体が揉みほぐされていく……。柔らかくなっていく……。
太もものマッサージが終わり、手のひらを親指で押される。
そして腕をギュッギュと揉まれる。そしてぎゅーっと頭の方へ。
ふくらはぎの時と少し似ている。
右腕。そして左の手のひら、腕。
櫻子「意外に気持ちいいでしょ、これ」
向日葵「そうですわね……」
囁くような櫻子の声。
意識がぼんやりとしたまま答える。
櫻子「おじゃましまーす」
櫻子が上に乗る。
適度な体重が身体にかかって心地良い。
背中のマッサージ。
手のひらで何度も擦られたり、ぎゅ~っと押されたり。
固まっている所があると、親指を使って揉みほぐしてくれる。
気持ちいい……。
櫻子「どう?」ギュッギュ
向日葵「とても気持ちいいですわ……」
22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/15(日) 23:10:37.36 ID:4eMvD+6J0
そして肩まですっと手が伸びる。うつ伏せのまま肩を揉まれるのだろうか。
ギュゥ~
櫻子「うおっ、すっごい凝ってるね。これじゃ辛いはずだわ」
櫻子の手は、固まった筋肉をしっかり捉えて丁寧にほぐしていく。
まるで嫌な事もそのままほぐして、消してしまうかのように……。
向日葵「櫻子…、上手ですわ……」
櫻子「えへへ~、でしょ?」
そういってマッサージを続ける櫻子。
ギュッギュ
向日葵「はぁ~」
肩が軽くなっていくのを感じる。
今まで自分の肩はこんなにも凝り固まっていたのか。
ギュッギュ
グリグリ
肩の緊張がほぐされ、柔らかくなっていく……。
本当に気持ちがいい。意識が飛んでしまいそう……。
23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/15(日) 23:16:52.59 ID:4eMvD+6J0
櫻子「……向日葵が頑張っているの、私知ってるから」
向日葵「え?」
櫻子「最近は……、ちょっと辛いこともあったかもしれないけれど。私はいつも向日葵が一生懸命だったの見てたから」
この子……。
櫻子「向日葵はさ。あんまりみんなに頼ろうとしないからさ。ちょっと疲れちゃったんだよ」
櫻子「独りで抱え込んじゃって……。あまりにもボロボロになった向日葵を見たくなかったから」
櫻子「こんな形でしかお礼できないけれど」
櫻子「……受け取ってくれるかな?」
向日葵「……ええ。ありがとう、櫻子……」
私は流れてくる涙をそっと枕で拭き取った。
今まであまり誰かに頼ろうとしなかったけれど。
こんな風にいたわってくれる人を心のどこかで求めていたのだろう。
今考えてみると、悩んでいたことは全て些細なものだったのかもしれない。
でも櫻子がいなかったら……自分は……。
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/15(日) 23:21:54.08 ID:4eMvD+6J0
肩が終わると次は首。
親指がちょうど良い強さで、首の凝りをほぐして柔らかくしていく。
グリグリ
グリグリ
櫻子「首が凝っているとね。頭が痛くなったり、そのせいで身体全体がだる~くなったりするから気を付けて」
向日葵「何だか詳しいですわね」
櫻子「ま、ねーちゃんが言ってたんだけどさ」
そして頭。
両手の指で掴まれ、ギュッと押される。
場所を変えて、何度もギュッギュ。誰かに頭を洗われているみたいで気持ちいい。
『向日葵が頑張っているの、私知っているから』
櫻子の言葉を頭の中で反芻する。
向日葵(ふふ)
心も身体も、軽くなっていく。
27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/15(日) 23:27:26.99 ID:4eMvD+6J0
最後に再び軽く全身を揉まれ、マッサージが終わった。
櫻子「これで終わり。どうだった?」
向日葵「とても良かったですわ。本当にありがとうございます」
起き上がって軽く伸びをする。
今まであった身体の重さが取れて、気分もいい。
櫻子「んじゃあ帰るわ」
向日葵「え……。泊まっていきませんの?」
櫻子「そのつもりだったけど、やっぱり悪いかなーって」
向日葵「一応伝えてきてはいるのでしょう?だったら泊まっていきなさいな」
櫻子「うーん、うーん……。じゃあお言葉に甘えて」
向日葵「どうぞ」ニコ
櫻子「あのさ……。このまま隣で寝てもいい?」
向日葵「ふふ。いいですわよ。では電気を消しますわ」
パチッ
櫻子のおかげで、今夜はとてもよく眠れそうだ。
28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/15(日) 23:31:16.53 ID:4eMvD+6J0
【翌朝】
向日葵「ううーん」ガバッ
ここ最近で一番良い目覚め。
昨日はほとんど夢も見ず、深い眠りにつけた。
時計を見ると、普段起きるよりも少し早い時間。でも、眠気は殆ど無い。
カーテンを開けると眩しい朝日が飛び込んできた。
向日葵(今日は洗濯物が良く乾きそうですわね)
そんなことを思っていると。
櫻子「う……ん」
向日葵(あら)
カーテンを閉める。
この子は、もう少しだけ寝かせておいてあげよう……。
30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/15(日) 23:34:48.74 ID:4eMvD+6J0
向日葵「ありがとう。櫻子」
起こさないように小声で囁く。
天使の様な寝顔。このまま見つめていたい。
向日葵(今日はとてもいい一日になりそう)
晴れやかな気持ちのまま、でもちょっとだけ静かに部屋を出て洗面所へと向かうのだった。
終わり
34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/15(日) 23:43:45.82 ID:4eMvD+6J0
ありがとうございました。
今回の向日葵ちゃんのように、少し辛いことが続いていらっしゃる方へ……
これを読んで、少しでも心が軽くなった、などの感想を抱いて頂けるのであれば幸いです。
このSSが皆さんにとっての櫻子ちゃんでありますように……
櫻子「頑張っているあなたへ」